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安田委員 これはけじめをつけるということで、
皆さんは違反は違反だからと言う。それは確かに法違反、悪法も法なりとかいろいろ言われるところでありまして、現行ちゃんと法があるのですから違反しているのはそれはそのとおり。だが、それがそうだからといって直ちに今逮捕すべきかどうかというのは、
皆さんが決してしゃくし定規で判断すべき問題ではないと思う。そのために
警察庁の
皆さんも、現場の第一線の人
たちとは違った行政能力を持つ政治判断のできる方が長官であり、次長であり、それから局長でありという方が配置されておるのだと私は思うのです。そうでなければ、すりを捕らまえたり泥棒を捕らまえたりする
専門の人を偉いさんにしていったら、よっぽどあるいはグリコ犯がすぐ捕らまっておるかもしれぬ、しかしそうでないところに
警察行政と言われる行政という名のつくものがあるのだと私は思うのです。
例えば今の場合でも、本人が別に逃亡するとか証拠を隠滅するとかという
状況にはもちろんないし、それからこの当該自治体も担当
課長が
警察署の方に出てそれぞれ今までの事情聴取に応じておるという事情もございますし、また自治体がこの対応にいろいろな苦慮をして、そして説得を続けておるということも
警察が承知の上でもあるわけです。ましてや今、国会でもあるいは政府の
関係省庁の方でも非常に問題になってこれの対応をやっておられる、こういうときに
警察が直ちに逮捕ということは、問題の本質をこじらせることになってこれは私は好ましいことではないと思います。そういう点では、こういうときこそ
警察がどのように対処すべきかということについて高度な判断をなして、違反は違反で、何どきでも
皆さんが公権を行使すべき状態に置きながら、それをどういう解決をまつかというタイミングもあるかと私は思うのです。
私、これはことしの前の質問のときにも引用したかと思うのですが、例えば昨年九月二十四日朝日新聞に「
警察がなすべきこと」という論文がありまして、一遍一部言うたと思うのですが、味があると思うので改めて披露しておきますと、これはこの十日ほど前に、大阪と京都を結ぶ府道沿いで半ば白骨化した遺体をトランクに積んだマイカーが見つかった。それは二年四カ月もの間近くのアパートの駐車場や付近の歩道に放置されておった。それで付近の困った人
たちが
警察にどれだけ相談に行っても地元
警察は何もしてくれなかったというのですね。それを今ようやく開いたらトランクに白骨化した遺体があった。二年四カ月もうっちゃっていた。
警察は何もしてくれなかった。そこで、ここで
指摘しておるのです。
一方で
警察は、なすべきかどうか、疑問の残るところに力を入れている。「学警
協力」の名のもと、非行対策のために教育の現場に積極的に足を踏み入れようとするなどは、その一例であろう。
だが
警察のなすべきことと、そうでないことを画然と分けることは、なかなか難しい。私もそうだと思うのです。なかなか難しい。例えばこの間また犯人がピストルで撃たれました。私はやむを得ないと思います。決してあれは責めはしません。そうしないと、ああいう気違いじみた犯人がおりますと、相手も刃物を振り回す、
警察官だって殺されるのですから、私はあれも職務上やむを得なかったと思いますが、できたらなるべく足を撃って逮捕できるようにもう少し技術を
訓練してもらいたいな、こう思うのです。だからなかなか難しいと私は思います。そこで、
騒音、いたずら電話、少年非行、家庭内の不和――市民社会のなかで起こる困り事、もめ事の
件数は近年急増してきている。しかも、こうした事柄について他の公的
機関は、てきぱきとは対応してくれない。どうしても身近で二十四時間オープンの
警察に相談を持ち込むことになる。
警察の方はむしろ、こうした市民社会の需要を積極的にくみあげ、地域社会に密着しようとする。だが、市民社会の需要に追われているうちに、いつの間にか
警察本来の
仕事をなおざりにしてはいないか。その点を、
警察として自省してほしい。
また、市民社会の側にも、自分の力で解決できる問題は自分で解決するという意思がなくてはならぬ。
警察の権限や論理が、地域のごく内輪の問題にまで及んでくるような社会は、健全とはいえないと思う。要するに社会と
警察の両方に警告しておるわけでありますが、
警察のなすべきことについてここで
一つの忠告をなしておるわけです。
今の市民
警察と言われる
警察には、そうしたここに
指摘するようないわゆる思考のゆとりといいましょうか、人間的な幅といいましょうか、そういうものが判断に働いて初めて
警察は信頼されると私は思うのです。森永・グリコ犯でも、だめだと言いながら、一方では
警察のやり方に何だまた犯人逃がしてといってやんや言うという中には、それは大変
皆さんやっておられて御苦労だな――この間も大変御苦労さんでございました。神奈川のあの平野君の事件で早速犯人を捕らえた。ああいうすばらしいことをやっておられる反面、
警察と違和感があるというのは、今
柴田局長おっしゃった、いわゆるこれは法がこうだからやらなければならぬ、そこら
あたりの判断にもう一味考慮すべきものがあって、初めて
警察への信頼感ができるんじゃないだろうか。
大臣はついおとといだったでしょうか、参議院で、この問題については自治体の窓口も苦慮しておるから、ひとつ
関係省庁で調整をやってみよう、こうおっしゃったやさき、きのうでしょう。しかも、
警察庁を指揮しておられる公安
委員長兼任の自治大臣が参議院でおっしゃったそのほんのきのうの朝、早速
警察が逮捕、これだと私は公安
委員長である自治大臣の親心も踏みにじったというような感じがしてなりません。大臣の所感もお聞きしたいと思います。