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加藤(万)
委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となりました
住民基本台帳法の一部を
改正する
法律案につきまして、以下述べる諸点に十分な運用上の留意をすることを含め、賛成の討論を行うものであります。
本
法律案は、国民のプライバシー保護及び地方自治に関し重大な
内容を含んでおります。
現行の
住民基本台帳制度の問題の第一は、行政が法に基づき収集した個人情報を
本人の意思にかかわらず不特定多数の者に対して行政みずからが公開していること。
第二に、本籍、世帯主との続柄等の
記載についてみだりに公開されるべきではないとする意見が強まっていること。
第三に、台帳の閲覧により住民名簿を作成し販売する試みのような遺憾な事件の発生や、ダイレクトメール発送等の営利目的のための利用のような、制度設定の
趣旨の
範囲を超えるような利用法が増加していること等が指摘をされ、また、現行法が
窓口トラブルの原因となったり、あるいはプライバシーの侵害の判定が困難であるとの指摘もなされているところであります。
以上のような指摘を踏まえて立案された本案でありますが、
改正案を検討いたしますると、第一には、行政における個人情報の適正な管理が国民のコンセンサスを得つつ適正化が図られるべきところ、本案は政令、省令委任が多く、国民は法を読んでも、何が保護され、何が公開されるか不明である点が指摘をされます。これは、本法の持つ性格上致命的な欠陥であるばかりか、今後の高度情報化社会においては情報の中央集中、個人管理の強化をも招きかねず、国民総背番号制への端緒となりかねないとの声も聞かれます。
第二に、本法は、適正な管理の名のもとに磁気テープ、ディスク等による調製を明文化し、さらに調製、管理の民間委託における
記録の保護規定を定めておりますが、これも委託の促進、誘導となり、集中と情報の保護に関する歯どめをみずから外し、国民みずから関知せぬ間に個人情報がさまざまな目的に使用されかねない事態を誘発する危険性があります。
第三に、本案が、個人情報の保護をうたいつつ、保護規定について極めてあいまいかつ緩やかな点が指摘をされます。本案においては、請求者に対し請求事由、氏名等を求め、また、不当な目的の場合は請求を拒否できるとし、また、
写しの
交付に当たっては
住民票記載事項
証明書をも
交付できるとし、
自治省の
指導、通知によって実効性を確保していきたいとしておりますが、これは前述の報告書に比べましても極めてあいまいかつ不十分な制限であり、
窓口における混乱は避けられません。また、さきの
証明書は、大都市においては早急な実施は困難との指摘もあります。さらに、戸籍の附票の
写しの
交付についても、その制限は極めて緩やかかつあいまいなものになっております。
研究会報告は、例えば
住民票の閲覧については、請求できる者、閲覧対象事項及び使用目的の限定が必要とし、具体的には、請求者については、
本人や家族、公職またはこれに準ずる者、
世論調査等に利用するため、不特定多数の情報を求める場合であっても
必要性が客観的に認められ、かつ知り得た情報を適正に管理、保護されると認められる者として、そして閲覧の対象については住所、氏名、生年月日、姓別に限定するとしております。また、
写しの
交付についても、戸籍の謄抄本の
交付制限と同様の措置が必要としております。さらに報告は、住民や民間企業の
職員等、一般私人であっても、台帳の公開によって知り得た個人情報をみだりに他に漏らしてはならないとする責務を法令上明確化すべきという積極的な
内容も盛り込んでおります。
以上のように報告と本案は大きな開きを持っており、本案は個人情報の管理に対する中央支配、集中を促すとともに、その責任は
窓口業務を担う
市町村に負わせるものとなっていることは明らかであり、政府、
自治省の個人情報保護に対する及び腰の姿勢をはっきりと示しているものであります。また、請求者に公開が認められるなら、公開された側にも請求者を知る権利を認めるべきではないでしょうか。可視性を持たないものを台帳と呼べるか、あるいは続柄、本籍地等を現住所や性別、年齢、生年月日と同様の扱いをしてよいのか等の疑問も指摘をされ、進んだ保護行政を行っている自治体にかえって水を差すおそれがあると心配する声も聞かれます。
私
どもは、今や個人情報の保護については、法でその具体的担保措置を含め明示し、何人も差別を招くような、またプライバシーにかかわる情報は保持せず、提供せず、使用せずの原則を行政、民間、個人を問わず確立すべきであると
考えます。また、情報の調製、管理については、その保護の観点から慎重であるべきであり、したがって、少なくともその委託については、国民が信頼するに足る保護制度の確立なくしてはみだりに進めるべきではないと
考える次第であります。
これまで述べてきましたとおり、本
改正案は極めて問題が多く、政府は研究会報告を忠実に踏まえ、本案を再検討すべきであると
考えているところであります。
自治省案は「不当な目的」による請求を制限し、また、そのチェックについて前進を図ろうとするものであり、その点においては評価をいたします。しかし、同時に、今後の運用とさらなる制度改善について、研究会報告、また、私
どもの主張の裏づけとなっている多くの国民の声を踏まえ、十分な検討をすることを要求いたします。
以上、本
改正案が一定の評価はできるものの、不十分かつ問題点も多いことを指摘いたしまして、我が党は本案に対する態度につきましては、本法を端緒として個人情報保護行政が進むことを期待し、その運用とさらなる制度改善について留保しつつ賛成をするものであります。
以上であります。(拍手)