運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1985-04-16 第102回国会 衆議院 地方行政委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十六日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 高鳥  修君    理事 愛知 和男君 理事 糸山英太郎君    理事 臼井日出男君 理事 平林 鴻三君    理事 加藤 万吉君 理事 安田 修三君    理事 柴田  弘君 理事 岡田 正勝君       伊藤 公介君    大村 襄治君       工藤  巖君    小杉  隆君       中川 昭一君    細田 吉藏君       松田 九郎君    五十嵐広三君       小川 省吾君    佐藤 敬治君       細谷 治嘉君    山下八洲夫君       小谷 輝二君    宮崎 角治君       吉井 光照君    藤原哲太郎君       経塚 幸夫君  出席国務大臣         自 治 大 臣 古屋  亨君  出席政府委員         警察庁刑事局長 金澤 昭雄君         自治大臣官房長 津田  正君         自治大臣官房審         議官      石山  努君         自治大臣官房審         議官      土田 栄作君         自治大臣官房会         計課長     大島  満君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自治省財政局長 花岡 圭三君         自治省税務局長 矢野浩一郎君         消防庁長官   関根 則之君  委員外出席者         国土庁地方振興         局過疎対策室長 仁科 英麿君         大蔵省主計局主         計企画官    藤井 誠人君         大蔵省主計局主         計官      兵藤 廣治君         大蔵省主計局主         計官      田波 耕治君         文部省教育助成         局財務課長   菴谷 利夫君         文部省体育局学         校給食課長   小西  亘君         厚生省生活衛生         局食品保険課長 玉木  武君         厚生省社会局保         護課長     清水 康之君         厚生省保険局国         民健康保険課長 近藤純五郎君         林野庁林政部長 浜口 義曠君         労働省労働基準         局企画官    畠中 信夫君         参  考  人         (中央大学経済         学部教授)   一河 秀洋君         参  考  人         (横浜国立大学         経済学部教授) 宇田川璋仁君         参  考  人         (八幡市長)  西村 正男君         参  考  人         (前橋市長)  藤井 精一君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出第二四号)      ————◇—————
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方交付税法等の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人から意見を聴取することといたしております。  御出席参考人は、中央大学経済学部教授河秀洋君、横浜国立大学経済学部教授宇田川璋仁君、八幡市長西村正男君及び前橋市長藤井精一君、以上四名の方々でございます。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人皆様には、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序は、初めに参考人方々からそれぞれ十五分程度意見をお述べいただきまして、次に、委員諸君からの質疑に対し御答弁をお願いいたしたいと存じます。  それでは、まず、一河参考人にお願いいたします。
  3. 一河秀洋

    ○一河参考人 中央大学の一河でございます。  本日は、参考人として意見を述べる機会をお与えいただきまして、大変ありがとうございます。地方交付税法等の一部を改正する法律案に関して意見を述べさせていただきます。  この問題には、非常に大きく分けて考えてみますと二つ側面があろうかと考えております。一つは、長期的動向を踏まえての地方財政あり方関連をしての問題点でございます。そしていま一つは、さしあたって六十年度についての、いわば今回の改正に直接に関連をしての問題点でございます。  まず、第一点の長期的動向を踏まえての地方財政あり方ということに関連をしてでございますが、地方財政の現状、これは地方財政計画収支バランス状況、あるいは実質収支がかなり改善をされている、あるいは歳入構造の面で地方税等比率が高まっている、こういう推移から考えまして、地方財政状況は表面的にはかなり改善をされていると言ってよろしいようでございます。しかしながら、その反面におきまして、経常収支比率が悪化をしておりますし、特に公債費比率上昇が目立っております。あるいは人件費比率上昇しております。こういう歳出構造推移などから考えてみますと、表面的には地方財政収支状況改善されているとはいうものの、基本的には地方財政、相変わらず硬直化傾向が強いということは明らかだと言って差し支えないのではないかと考えられます。五十年代と同様に、これから来る六十年代の地方財政も、基調としては極めて硬直的な収支アンバランス財政であると言っても差し支えないものと考えられますので、長期的には安定的財源を確保するということが相変わらず地方財政の最重要課題であると存じております。  確かに考えてみますと、国の財政比較をするときに、地方財政逼迫の度合いにはある程度の相違があることも事実でございます。しかしながら、そうだからといって、制度でありますとか施策あるいは事業内容、こういうものについての基本的な見直しを十分にしないままに、いわば苦しさを分かち合おうというような形で一律に経費削減したりあるいは財源削減したり、こういう方向での調整は望ましくないと考えております。また、現在地方自治体は言うまでもなく高齢化社会の進行への対応がございます。あるいは、現在行政サービスに対するニーズが極めて多様化してきておりますし、また質的に変化をしておりまして、特に地方自治体のこれに対する対応が非常に重要な問題でございます。  これに対応していくためには、地方自治体あり方として、一つは、地方自治体行政サービス自主性を確立をするということが必要でございますし、また第二には、住民のニーズを的確に捕捉し、効率的にこれを充足することができるような行政能力の向上が地方自治体に求められます。そしてまた第三に、極めて重要な点として、やはり安定的な地方財源の確保ということが欠くことのできない条件ではなかろうかと思うのでございます。  長期的には、このような視点から考えてみますと、交付税制度でありますとかあるいは補助金制度あり方について根本的な見直しが必要であることは確かでございます。しかしながら、国と比較をした場合に、幾らか財政逼迫程度が軽いからといって、財政逼迫程度をならすというような形で交付税率引き下げようと考えてみたり、あるいは補助率を一律に削減しようとしてみたり、このような措置妥当性を欠く、適当ではないと考えるものでございます。基本的に考え直すことが長期的には必要であろうと考えております。  次に、このような長期的な動向についての視点を踏まえて、六十年度交付税法一部改正、特に地方交付税総額特例について三点ほど意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  第一点は、恒久的な措置必要性ということでございます。今回の措置も一応は本年度限り、特例だということでございます。たまたま本年度は、国庫補助負担率引き下げがなければ地方財政収支バランスをする、財源不足はないということでございますが、いわばこういう時期にこそ財源不足に対する長期的で恒久的な措置を検討すべきではなかったかと思うのでございます。  昨年度の本委員会地方交付税法等一部改正についての附帯決議の第一といたしまして、「今後、恒久的な措置を講ずるよう努力すること。」という条件をつけ加えられております。確かに考えてみますと、年度ごと措置というのは非常に不安定でございます。地方財政の計画的な運営を大きく損なうおそれがございます。制度的な安定化を図ることが非常に望ましいと思うのでございます。  もっとも恒久的な措置ということを申しましても、その恒久的な措置は、地方財源の圧迫になるような措置は極力避けるべきでございおす。殊に、現在地方財政収支改善されていると申しましても、それは一つには地方自治体それなり努力もございますし、また、反面におきましては、好況が継続して税収が極めて好調だという事情もこれに重なっております。したがいまして、一律に地方に対して流れる財源削減するというような措置は、一つ地方自治体財政改善のための努力のインセンティブを損なうおそれもございますし、また、長期的に考えてみれば、基調といたしましては現行三二%の交付税率では財源が必ずしも十分ではない、基調といたしましては財源不足に陥らざるを得ないという状況はこれから先も続くのではなかろうかと考えられます。したがいまして、地方財政の安定的な運営のたかには、例えば三二%を下限として、不況で財源不足が出てきた場合には交付税率を自動的に変動させることができる、このくらいの思い切った措置を講じられることが望ましいのではなかろうかと思うのでございます。  第二点は、利子配当課税特例関連をしてでございます。  この点につきましても、昨年度の本委員会附帯決議におきましては、第三項におきまして「利子所得課税合理化を早急に行うとともに、税財政制度抜本的改正に努めること。」こういう点をつけ加えられております。これは御承知のとおり、利子課税合理化ということにつきましては、非課税貯蓄限度額管理強化ということで本年度一応の決着はついております。しかしながら、この措置によって合理化が図られたとは到底言えるものではございません。限度額管理強化したと言いましても決して十分なものとは言えないだろうと思うのでございます。現行分離課税税率を見直す、非課税貯蓄制度見直しを行うということも含めて、地方財源強化という観点から利子配当課税の再検討を行うことが必要なのではなかろうかと考えるものでございます。  第三点は、国庫補助負担率の一律削減に対しての地方財源措置関連をしてでございます。  この点につきましては、特に地方財政地方自治体ごとのひずみが問題になるのではなかろうかと思うのでございます。  一つ問題点は、補助金削減が極めて機械的で、制度施策事業内容見直しとは全く無関係で行われているために生ずるためのひずみでございます。単に国から地方への負担のいわば一部肩がわりになっているということだけでございまして、行政事務合理化とか、あるいは地方経費削減が一方において伴わないままに財源削減だけが行われるということからのひずみでございます。  このため、例えば一つには自治体によっての補助率引き下げ補助率引き下げに伴う事業量拡大事業量拡大に伴う裏負担増大、この裏負担増大に耐え切れないものもあるのではなかろうかと思うのでございます。もちろん、一応は補助率削減による事業量拡大、これに伴う補助金のいわば裏負担増大に見合う財源措置もとられているということでございますが、自治体ごとに考えてみた場合にこの財源措置が果たして十分なものであろうか、かなり疑問に思うといいますか、かなり不安に思うものでございます。あるいはまた、特に産炭地のように経済力財政力が極めて低い、しかも一方におきましては生活保護世帯比率が極めて高い、こういう自治体では、補助率削減に伴って財政破綻のおそれが出てくる心配があるのではなかろうかと思うのでございます。  また、いま一つのひずみは、逆に富裕自治体関連をしてのことでございます。不交付団体に対する措置が極めて不十分ではなかろうかという心配でございます。  確かに不交付団体財源に余裕があると言えるかもしれません。地域別財政による受益財政による負担比率比較をしてみますと、大都市ほど受益負担に対する比率が著しく低くなっております。これは、地域間格差解消という観点から当然のこととも言えるかもしれませんし、そこに財政調整の本来の意味があると言えるのかもしれません。しかしながら、その反対に、あるいはその反面で、現在のように経済力基準として、ほとんど経済力のみを基準とした格差是正財政調整ということにも問題があるのではなかろうかと思うのでございます。  殊に近年、一人当たり所得水準上昇に伴いまして、国民の意識が随分と変わってきているようでございます。従来のような単なる所得水準の高さ、経済的な豊かさ、物の面での豊かさから、自然環境でありますとか、あるいは生活環境を含めました非常に幅の広い豊かさを求めるようになっているのではなかろうかと思うのでございます。こういう状況の中で、主として経済力基準とした調整を行うということがひずみを生ずる心配があるということでございます。  極端に申しますと、一方においては非常に快適な生活環境自然環境である、しかし所得水準が低い、また一方におきましては、所得水準は極めて高い、しかしながら生活環境は劣悪である、こういう二つのケースを比較をしてみますと、どちらが一体より豊かな生活と言えるかどうか、かなり疑問が出てくるのではなかろうかと思うのでございます。現在のように経済力のみを基準として調整をした場合には、この格差がさらに制度的に拡大をされる、こういう心配もございます。何を基準にして格差調整を行うべきか、こういうことを再検討する必要があるわけでございまして、一律に経費を減らす、それによって財源を節約をする、こういう態度での財政対策を基本的に考え直す必要があろうかと思うのでございます。不交付団体に対しても、何らかの十分な財源措置を講ずることが必要だと思うのでございます。  まとまりのない意見で恐縮でございますが、以 上陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、宇田川参考人にお願いいたします。
  5. 宇田川璋仁

    宇田川参考人 横浜国立大学宇田川でございます。  交付税問題は結局財政危機高率補助金の一割カットというところから話が始まっておりますので、そういう側面にも触れながら私の意見を述べたいと思います。  財政再建が国の大きな課題であるということは、地方団体もそうでありますが、よく知られております。  ところで、国の一般会計を見まして、いろいろ経費分類はあるわけでございますが、私ども注目する分類として使途別分類というのがございます。それを見ますと、国のお金はどこへ行っているかと申しますと、大体三割以上が補助金、それから五割が他会計への繰り入れということでありまして、世上よく袋たたきに遭いがちな人件費なんというのは旅費、ボーナス等も入れて五、六%だ。したがいまして、国の財政を見直すとすれば、補助金と他会計への繰り入れということで、この二本を重点的に行わなければならないという状況にあると思います。特に私は、この補助金もさることながら、他会計への繰り入れ、要するに他の会計、いろいろな事業団その他もろもろがあるが、これに徹底的にメスを入れなければ五割を占める財政支出合理化というわけにいかない、こう思っております。そのことは、ここでは議題でありませんので触れませんが、補助金について申し上げますと、補助金による財政効率化、そして「増税なき財政再建」を図るとすれば、本来なら私は次のような形であるべきだと思うわけであります。  それは、一つは言うまでもなく補助事業を廃止するということであります。そういたしますと、当然一般会計から補助金が減る。それだけ歳出要求が減る。それから仕事が、落としたわけでありますから地方裏負担を必要としない。両方、国の場合も地方団体の場合も、その浮いた財源は最大の課題であります国債減額に向けることもできましょうし、その他重点的に、さらに施設へ向けることもできるというのが本来の補助金問題に対する筋であります。  そうでなければ、事業を継続するとするならば、そして補助金制度を改めるとするならば、これは事業をするわけでありますが、しかし補助金というシステムを変えるということであれば、その仕事内容を国と地方で分ける。そして国は直接支出をすべきでありましょうし、地方はやはり直接支出をする。そういたしますと、さしあたりお金の面では減らないように見えますけれども、実はそうではないのでありまして、よく言われておりますように、いわゆる補助金に伴うもろもろ行政経費というものは大変なものであろうと思います。私はこれは社会的空費である、公共サービスという形で出てこない、全くの行政手続上の社会的な空費だと思いますので、その空費を減らすということにおいて、たとえ事業継続があったとしても、補助金システムを外すということは大きなメリットがあるように思われます。  しかし、そういう本来の補助金改革ではなくて、今回の補助金問題は、特徴を見ますと私は三つあると思います。一つは、補助金は存続する。二番目は、補助率引き下げる。そしてその補助率引き下げによって、いわば一定支出でむしろ乗数倍をねらう。これが、新聞等では政治が中心になった、メリットだというふうに言われております。まあそうかもしれませんが、補助金というシステムをとりながら補助率を下げ、いわばその一定の頭で、それから倍増する。例えば、最初一般会計のファンドが百あったとする。そうすると、十分の八補助率であれば、百掛ける今度は逆に八分の十にすれば、八分の千という事業が行える。それを今度は半分にして、補助率を例えば十分の四にしたということになりますと、百掛ける四分の十で四分の千。八分の千から四分の千、確実に二倍の仕事がふえる。それに伴いまして、第三番目に、そういうことをした結果、いわば国、地方を含めて、とりわけ地方を含めて自主的な事業の方にしわ寄せが行く、国の統制的な仕事の割合が高くなる、しかもそれだけではなくて、地方団体に余計な債務をしょわせるということになっております。  それを具体的に見ますと、これは皆様方よく御存じなわけでありますが、要するに今回の一連の補助金問題による財源不足が五千八百億だ。経常が二千六百億、そして投資関係が三千二百億等々があるわけでありまして、経常的な二千六百のうち、不交付団体の六百を除きまして千が交付税でことし措置をする、残りの千は六十六年度以降加算するという暫定措置になっております。投資的関係の三千二百のうち、二千億はこれはいわば地方財源カットする、そして千二百で先ほど申しましたてこ作用仕事をふやすということであります。  しかし、地方にも財源を付与しなければならないということでありますから、一体どれだけ国の財政がこれによって救われたかとちょっと考えますと、素人計算でございますが、五千八百を減らしたわけです。ただし交付税で千を見た。それから六十六年度以降千を一応見る。それから、投資の三千二百のうちの二千はカットするのですが、そのうち元利償還分の半分は六十一年度以降交付税繰り入れるということでありますから、先の話であるものも含めますと、ことしの交付税千、それから六十六年度以降加算の分が千、それから投資の方の二千億カット、これは二分の一ですから二千の二分の一で千。そうすると、五千八百億浮かせようとして国は三千億はやはり支出するということになりますと、わずか二千八百億、これほどの国と地方を挙げての大騒動をして二千八百億の資金を浮かしただけ。もっとも、今の三千億は将来交付税特会に入れるということでありますが、本年度で見ればさしあたり一千億だけ入れて、あと四千八百億は国の負担にならないわけでありますが、そういう意味では、なるほど五千八百億を一千億でいわば賄った。それプラス、先ほど申しましたてこ作用仕事をやるということになっているのだろうということが実態だと思います。  私は、今回のいろんな経過の評価に移りたいと思いますが、今回のような措置は、よく国と地方は車の両輪であって、国が困難なときには地方がそれを救うということがあっていいじゃないかということになりますが、その結果今申しましたようなことになります。  それを、先ほども三つ言いましたが、もう一度繰り返しますと、私はこういう財政問題において政治家方々各省方々自治体方々等々があるわけでありますが、いわば一見みんなうまくいっているようなところもある。しかし問題がある。どういうところがうまくいっているかといいますと、最初のその五千八百億をことしは千億で処理したということでありますから、四千八百億を減らしたということで財政当局は一応満足であろうと思います。それから、補助金という制度を動かさなかった、事業を減らすということをしなかったということで、恐らく財政当局地方団体を除いた中央各省当局も一応満足であったろう。それから第三に、てこ作用事業を拡張した、公共事業を行い、生活保護も手を下さなかった等々のことで、いわば政府仕事を減らすことがないということで、恐らくここにいらっしゃる方々も含めまして、政治家方々も満足であったろうと思われます。  しかし、それに対してはコストがないわけではないのでありまして、そのコストは、先ほども申しましたように、一つは、地方にその分だけ借金を強いた、二番目に、その借金について国は一部だけ将来返還するということしかしていかない、それから三番目に、ひもつき補助金に手を下さなかったという意味において地方自主財政運営というものはかなり損なわれたということであります。  この国庫支出金は、これは言い古されたことでありますが、ここにいらっしゃる先生方も思い出していただきたいのでありますが、昭和二十四、五年にシャウプがこの問題を、今日あることを予見したように批判しております。  その批判は、もう一度思い出していただきたいために私ここで申し上げますが、一つは、国と地方責任を混乱させる傾きがある。二、中央政府の統制が強まること。三番目、これがまさしくそうだと思いますが、負担率が独断的に定められること。四、行政責任の帰属が不明確になる。昭和二十五年に現行の税制、地方財政制度をつくったときのシャウプ勧告の中ではっきりこう言っておるわけでありまして、国庫支出金はそういう内在的な欠陥を持っているから、むしろそういうものでやるよりも国と地方仕事の割り振りを十分やって、補助金はむしろ奨励的な、地方がそれを受けてその気になって自主的にやれるようなものがいいと言ったわけであります。その後事態はそうでなく、今日それなり補助金制度は一応秩序立ったものになっているかのようでありましたが、一たび国が、あるいは地方財政困難に立ち至るならば、その国庫支出金国庫支出金本来の弱点、問題点を赤裸々にここに出してきたということでありまして、我々はやはりその点十分に考え直さなければいけないのではないかと思うわけであります。  もうあと一、二分で終わらしていただきますが、そういうことでいろいろな問題をはらんでいると思いますが、しかし、シャウプ以後いろいろな経験を経て、戦後の国と地方財政関係というものは、地方団体方々のいわば行政能力が高まったこと、そして地方団体方々行政に対する自負心が非常に強まってきた、それからジャーナリズム初め一般の人々の地方自治、地方分権に対する考え方がはっきりしてきた、それから政治のルールというものも今日皆様方を中心にはっきり築かれているということで、先ほど申しましたような資金の面から見ればほんのわずかな手直しであっても、このような大きな問題として大きく取り上げられているということは私は結構なことだと思うわけであります。  この補助率引き下げについては、大蔵省とか自治省、厚生省、その他の皆様方がこの一年間もう一度ゆっくり研究なさるということを伺っておりますので、ひとつ十分国庫支出金の本来の姿、それから先ほど私がちょっと触れましたが、一般会計財政問題については制度改革が必要だ、現行制度の上で資金量を動かすにはほとんど限度がきている、しかしそれは現行制度を前提にすれば限度がきているのでありまして、現行制度を手直す。これは単に私個人ではなくて、最近、私のところに舞い込んできましたある雑誌に大蔵省の有力なOBの方が書いていらっしゃったわけでありまして、むしろ財政当局から外れて、いわば外側から見られて、制度の上で幾らやってもだめだ、見直すべきは制度だ、こうおっしゃっているわけでありまして、それが恐らく正しい考え方ではないかと思うわけでございます。  これで終わらしていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 高鳥修

    高鳥委員長 どうもありがとうございました。  次に、西村参考人にお願いいたします。
  7. 西村正男

    西村参考人 京都府の八幡市で市長を務めております西村正男でございます。  本日は、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、国会の場で意見を申し上げる機会をちょうだいをいたしまして、まことに光栄に存じております。よろしくお願いを申し上げます。  改めて申し上げるまでもなく、地方交付税制度といいますものは、国庫支出金地方税のあり方など地方財政制度全体と密接に関連をいたしておりまして、これと不可分の関係を有するものであります。特に、地方に対する国庫補助負担率の一律的な引き下げがなされようとしておりますこの六十年度におきましては、基本的に大きな課題が存すると承知をいたしております。この点につきましては、地方団体の一員といたしまして、国の行政責任がその裏づけとなる財政の面において安易に地方に転嫁されることのないよう、そして地方への負担の転嫁によって、地方固有の財源であります交付税不足の上になお不足を告げるということがないように心から願うものでありますが、そのことを前提といたしまして、ここで私は、自治体におきまして直接財政運営の衝に当たっている者といたしまして、地方の現場から見た地方交付税の現実の姿というものを率直に御披露を申し上げたい、そのように存じております。  一人の市長といたしまして、国税三税の三二%を基本としております交付税一つの市の現場においてどんな断面を示しているのか、財政の実態と比較をしてどんな状況にあるのか、それを具体的にお話をさせていただくことによりまして、交付税の貧しさというものを私なりに証明をさせていただきたい。そしてそのことを通じまして、交付税がいかに乏しく、いかに不足をしているかということについて先生方の温かい御理解を賜りたい、そのように存じておるわけであります。  言うまでもないことでございますが、それぞれの団体の規模と態容に応じた行政水準というものを財政の面で保障するのが交付税でありまして、そのために、一定の算式によりまして基準財政需要額と収入額を計算し、需要額に満たない部分を補てんするという仕組みになっておるわけであります。この交付税の算定のもとになります需要額は、それぞれの団体が標準的な行政水準を維持し得るということを前提として計算がなされることになっておりまして、例えば義務教育施設、小学校や中学校の建設費につきましても、事業費補正という形でその必要経費が算入をされることになっております。  私の市では小中学生の増加が相次いでおりまして、今年度でどうしても中学校を一つ新設しなければならぬ、そういう状況になっております。以下、丸い数字で申し上げますが、その規模は生徒数が七百人、十八クラスでありまして、必要といたしております用地の面積は二万三千平米、建物は、校舎と体育館で六千平米であります。この建設費の総額は、文部省の基準どおり計算いたしまして、つまり超過負担は一切なしという計算をいたしまして、二十四億二千万円かかるわけであります。これに対しまして国庫からは、校舎が十分の六、体育館が二分の一、用地が七分の二というそれぞれの負担率補助率で合計九億二千万円が交付されてまいります。国庫以外の市の負担が十五億円ということになるわけでありますが、このうち地方債が十三億五千万円入りますので、残り一億五千万円がさしあたって今年度で必要な市の負担ということになるわけであります。  そこで、交付税がこの義務教育施設の整備という事業に対してどう機能するかということになるわけでありますが、今年度、つまり事業年度で必要な一億五千万円につきましては、今年度交付税事業費補正という形で措置をされてまいります。ここまではいいのでありますが、問題は、十三億五千万円の地方債の来年度以降二十五年間にわたる元利償還金に対する財源措置でありまして、各年度交付税に算入はなされるものの、その償還金の算入割合は、校舎と屋体分につきましては六五%、用地に係る分につきましては六〇%でありまして、残る三五%なり四〇%分なりについては制度財源の裏づけがないということであります。  この二十五年間におきます償還金の総額は、元金十三億五千万円に利子が加わりますので合計二十九億六千万円になるわけでありますが、このうち、交付税によって財源が保障されるのは十八億円でありまして、残りの十一億六千万円につきましては制度の外に放置をされているというのが、現在のこの面における交付税の実態であります。  それに加えまして、給食室とかプールとか柔剣道場などにつきましては、全く地方債の元利償還金の算入がないということでありまして、私の市の六十年度におきますこの面の状況を申し上げますと、人口の増加に伴いまして、この十五年間に小学校と中学校合計十校を建設をいたしてまいりましたが、その地方債の償還に、今年度一年間で六億円を必要といたしております。そのうち交付税財源の保障がありますのはちょうど半分の三億円でありまして、残る三億円につきましては、制度の上では返す金がないということであります。もちろん交付税は、各行政項目ごとに積み上げて計算はするけれども、その使途については特定をしない、一般財源として自由に使えばよいということになっております。しかし、このようにどうしても要る支出財源の裏づけがなければ、全体的に行政の水準を落とさなければやっていけないのが道理でありまして、学校の新設を必要としない団体と比較いたしますと、明らかにこれは衡平の原則にもとることになる、そのように思うわけであります。  もともと義務教育施設の整備は団体の任意の施策ではございませんで、児童生徒の増加によりまして取捨選択の余地なしに対応が必要な義務的なものであります。でありますからこそ、これに対する国の負担が法律で義務づけられているのでありますが、このような性格を持つ経費においてすらこのような実態にあるのが現在の交付税であります。  自治省におかれましては、この実態を改善すべく、校舎と屋体につきましては、昭和四十四年度以降すっと六〇%の算入率でありましたものを、五十九年度では、交付税の総額が減少する中で特に五%引き上げて六五%にされたところであります。また用地につきましても、最初は三〇%から出発をいたしたのでありますが、四〇%、五〇%と順次算入の割合を高めまして、五十四年度からは六〇%として昨年度に至っております。義務教育施設という性格からしまして、小中学校の運営経費のように、あるいはまた生活保護費の例のように、一〇〇%を算入すべきである。しかし、そうしたくてもこのような算定しかなし得ないくらい今の交付税は貧しいということであります。よくわかっていても、いかにせん、ないそでは振れないというのが今の自治省のお立場であろうと思うのであります。  今年度交付税総額も三年ぶりにふえるということでありますので、校舎や屋体分につきましては昨年度に引き続いてさらに改善をしていただけるだろう、また用地分につきましても六年ぶりに引き上げていただけるのじゃないかと期待をいたしているわけでありますが、事は義務教育施設だけではございませんで、これも絶対的な生活基盤施設と言えるごみ焼却場やし尿処理場につきましても、その元利償還金の算入率は二分の一でありまして、これを八幡市で見てみますと、六十年度で約一億円が算入から外れることになっております。いわゆる同和対策、地域改善対策事業につきましても同じような事情にございまして、京都府下で最大の部落を有するところから、同和問題の解決という国家的課題を解決するために地元の市といたしまして鋭意努力をいたしておるのでありますが、六十年度で必要といたします関係地方債の償還金五億七千万円のうち、普通交付税に算入される額はわずかにその二三%、一億四千万円でありまして、交付税算入外に四億三千万円という多額の支出を余儀なくされているのが実情であります。  以上申し上げました義務教育施設、清掃施設、地域改善対策の三事業の元利償還金の交付税から外れる額は、今年度で合計して実に八億三千万円に上るわけでありますが、ちなみに本市の六十年度におきます標準財政規模は七十七億円でありますから、これはその一割強に相当いたします大変な金であります。これはもう他の経費の節減や事業の抑制で賄い得る数字ではありませんし、また、いかに特別交付税で御配慮をいただくといたしましても、その限度をはるかに超えた額であります。これまでは何とか工夫を重ねましてここまで切り抜けてまいったわけでありますけれども、もうそれもここにおいて限界に達したというのが私の市の実態であります。  以上、一つの例といたしまして、最もよく承知をいたしております自分の市のことを申し上げたわけでありますが、私の知る範囲でありますけれども、地方団体状況を見てみますと、近年財政構造の面でもまた公債費比率の面でも、団体間の格差というのが大変際立ってきている、そういう感じがいたしております。地方財政の全体が窮迫の度を強めている中で、より窮迫度の著しい団体がたくさん生じてきている、その反面、比較的ゆったりとしている団体の存在しているのが目立ってきているような感じがいたしてならないのであります。  これは、もちろん団体自身の財政運営あり方によるところも大きいものがあると思うわけでありますけれども、それとともに、各団体間における財源の均衡化を図るべき役割を持っている交付税というものが、ここ数年その総額が伸びず、逆に減少を見る状況にありましたために、この間における地方団体間の財政状況の変動に的確に対応する機能を十分に果たし得なかったという事情があるのではないか。原資が不足をしているために、地域の特性や年次の進行による変化に即応して弾力的に対処する点に欠けるところがあったのではないかと思うのであります。  もちろん、六十年度で余裕が生じるということではさらさらありません。しかし、厳しい中でありましても、この辺で、たとえ少しでも実態に応じた財源を付与するという交付税本来の調整機能の回復を図るべきではないか。少なくともその団体の任意によってではなく、国の責任との関係において、また、住民に対する普遍的かつ不可避的な義務の立場において必要としている経費については、これを積極的に保障するように交付税の配分の方法を見直すべきではないかと思うのであります。  それとともに私が特に申し上げたいのは、当然算入をすべき義務的な経費さえ十分に算入できないくらい現在の交付税は総額が乏しいということであります。総額が不足をしておるということであります。今年度地方財政は、国庫補助負担率引き下げによる影響を除きましてはその収支は均衡したということでありますが、それは先ほど申し上げたような実態の上における均衡でありまして、現実はなお著しく不足しているということであります。私どもの立場からいたしましたら、最近一部でささやかれております交付税率三二%の切り下げ論というものは全く論外の論でありまして、逆に引き上げを要望することまことに切実なものがございます。  ありのまま、思うままを申し上げまして、失礼の段はお許しをいただきたいと存じます。どうかよろしく御高配を賜りますよう心からお願いを申し上げまして、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  8. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、藤井参考人にお願いいたします。
  9. 藤井精一

    藤井参考人 私は、全国市長会の財政分科会委員をいたしております前橋市長藤井と申します。  きょうは、地方行政委員会の諸先生方には大変御熱心な御審議を賜り、私どもの話までお聞きをいただきまして、本当にありがたく思っております。そういう意味から、これから少し申し述べさせてもらいます。  昭和六十年度地方財政は、高率の国庫補助負担率の一律引き下げ問題で大揺れに揺れました。今さら申し上げるまでもないわけですが、国、地方を通ずる行政改革の推進と財政再建は現下における最も緊急かつ重要な課題でありますので、これを着実に推進していかなければならない、このように思っております。多くの地方団体におきましては、これまでも行財政運営効率化を目指して自主的な改革に努めてまいりました。行政改革と財政再建の要請は、国も地方も現在の事務事業そのものを抜本的に見直し、思い切った整理縮減を行うことによって行政全体の減量化と総歳出の削減を図るとともに、国と地方との重複している行政部分を整理することによって、国も地方もともに身軽になることが肝要であると言われております。  そのために、私ども地方団体に対する国庫補助金のうち、一つは、地方団体経常的な事務事業として既に同化定着しているものなど地方自主性にゆだねることが適切と考えられる補助金、次に、人件費、法施行事務費等の運営費に係る補助金を廃止縮減し、地方の一般財源化を図るべきであるとして、具体的方策を市長会として提案してきたところでございます。このようにすれば、地方自主性、自律性も強化され、国の事務と負担もまた大幅に軽減され、財政再建にも大きく寄与することができるものと思うものであります。  ところで政府は、昭和六十年度の予算編成時におきまして、国の深刻な財政事情に基づいて、国民生活に密接に関連する生活保護を初めとする社会保障関係費や公共事業国庫補助負担率を一律に引き下げ、また、義務教育費国庫負担金における教材費、旅費を国庫負担対象から除外するなど、国、地方を通ずる事務事業の抜本的見直しを行わないまま一方的に削減を行おうとしたのであります。このことは、単に国の財政負担地方に転嫁するというだけでありまして、国、地方を通ずる事務と経費の節減合理化にはつながりません。そしてなお、車の両輪としての国と地方との正常な財政秩序は乱され、その信頼関係をも損なうものと危惧していたものでございます。したがいまして、私ども地方団体は、このような国庫補助負担率の一律引き下げにつきましては、その撤回を強く求める運動を展開したのでございます。しかし、予算編成の大詰めの段階で、今回の措置昭和六十年度限りの暫定措置とされて、とりあえず地方財政運営には支障を来すことのないような当面の対策が講ぜられました。私どもといたしましては、まことに残念ながらこれを受け入れざるを得ないことになったのでございます。  国庫補助負担率引き下げによる地方負担の増加額は合計で五千八百億円と言われておりますが、六十年度限りの措置地方交付税特例加算や建設地方債の発行、さらには後年度交付税の需要額に算入するという措置等、地方財政運営に支障のないように配慮をされました。このことは、社会保障制度あり方、国と地方との間の機能分担の見直しが抜本的に行われないまま補助率を一律に引き下げるのは納得できないという地方団体の考えには変わりがございませんけれども、時間的余裕がないので六十年度はまことにやむを得ないと考えるものでございます。昭和六十一年度以降の補助率あり方について政府部内においては今後検討されるということでありますので、早急にこれまで私どもが要望してまいりました方向での適切な結論が得られますように強く期待をするものでございます。  さて、国が作成した昭和六十年度地方財政計画内容は、累積した巨額の借入金を抱え、引き続き厳しい状態にあることにかんがみまして、おおむね国と同一の基調によりまして、歳入においては地方債の抑制に努めるとともに、地方負担の公正、適正化を推進しつつ、地方税源の充実強化地方交付税の所要額の確保を図り、歳出面においては経費全般について徹底した節減合理化を図るとともに、限られた財源の重点的配分と経費支出効率化に徹し、節度のある行財政運営を行うことを基本として策定されたところでございます。それぞれ所要の配慮がなされており、私ども地方団体としては一応の評価をしているものであります。しかし、先ほどから申し述べておりますように、国庫補助負担率引き下げに伴う地方負担の増があることを考慮しなければならないと思います。  なお、地方財政計画中、一般財源の伸びは一〇・五%に対して歳出を四・六%、伸び率にして二分の一以下に抑制した中にあって公債費が九・八%の増、給与関係経費が五・六%の増というように義務的経費が高い伸びを示しており、一般行政経費は三・八%の増、投資経費は一・五%の増にとどまりまして、すなわち歳出構造は引き続き硬直化の傾向にあります。さらに、地方財政の現状は、昭和六十年度においては五十六兆円に上る借入金残高を抱えるなど、極めて厳しい状態に置かれておりまして、個々の地方自治体についても公債費負担比率が年々著しく増加をしておりまして、危険信号と言われておる二〇%を超える団体が全体の四分の一、八百二十団体を占めるのが実態となっております。  私ども前橋市におきましては、幸い一〇%以内というやや良好な財政運営になっているとは思いますが、地方団体は直接住民と密接にかかわり合ってその行政を行っており、行政水準の低下は本当に許されないのでございます。しかし、行政を行う上での裏づけとなる財政は、国の財政構造とは異なり義務的経費のウエートが高い上、歳入構造から見ても自主財源が乏しく、国の制度施策の影響を極めて強く受けるという特質を持っておりまして、現下の地方財政の実態は全く予断を許さない状況であります。地方財政の健全化はまだ今後の課題と言わざるを得ません。  一部の地方団体財政運営のまずさといいますか、地方団体富裕論などが言われる向きもございますが、しかし大部分の地方団体においては、この危機を打開すべく事務事業見直し、組織、機構の簡素化、職員給与、定員の適正化、経費の節減合理化に努めてみずから対処しているところでございます。今後も引き続き行政の減量化と財政の効率的運営を積極的に進めてまいる所存でございますが地方自主性、自律性を確保する観点から、地方財政の長期的、安定的な財源を確保するために、ぜひ先生方に特に御配慮を賜りたい三点について申し上げさせていただきます。  第一点は、地方税源の拡充強化についてであります。  地方団体行政事務は住民福祉の向上、公共施設の整備維持など、住民に身近な経常的なものが多い上に、人口の高齢化、住民の価値観の多様化などから地方団体に対する要請はますます増大し、行政需要は増加の一途をたどっております。これらの要請にこたえ、地域の特殊性、多様性を生かし、魅力ある地域づくりを進めるためには安定した財源が必要であり、特に地方団体の収入の中心をなす地方税源の拡充強化がぜひとも必要であると考えられます。  昭和六十年度地方税収入見込み額は二十二兆五千百八十五億円で、前年度に対して一〇・六%の増になっておりますが、これは我が国の経済の順調な推移を反映した法人関係税の大幅な自然増収によるものでございます。このような既存税制の基本的枠組みの範囲内で自然増を期待するということだけではなく、中長期的な観点から適正な租税負担あり方、国、地方を通ずる税源の再配分に関して抜本的な検討を行い、地方税源の増強を図っていただきたいのであります。さらに都市の立場から申し上げますと、都市的税目である法人所得課税の市町村への配分の強化、個人所得課税における市町村への配分割合の拡充、消費流通課税等間接税の充実を図るとともに、地方道、特に市町村道の整備促進のための道路財源強化を推進する必要があろうかと存じます。  また、今問題になっておりますマル優などの非課税貯蓄制度の改革、これが大きな問題となりますが、結局現行制度の中で限度額管理強化することで決着し、住民税については、現在と同様に所得税の課税貯蓄の利子所得等の中で課税対象とならないものがあるという不公平が依然として残ることになったのであります。私ども地方団体としては、何とか地方税として課税できる方途を検討していただきたいと思うものでございます。  第二点は、地方交付税総額の安定的確保でございます。  御承知のように、地方交付税制度は、地方団体自主性を確保しながら地方財源の均衡化及び必要な財源の保障によって地方自治の本旨の実現を図ることを目的としております。また、私ども地方団体は、地方の共有の独立財源であるとの認識をいたしておりまして、地方税とともに自主財源の大きな柱となっております。現在御審議中の改正法案におきましても特別措置等が行われておりまして、前年度に対し一〇・九%の伸びとなり、昭和五十七年度以来三年ぶりの大幅な増額になっております。しかし、先ほど申し述べましたとおり、累積した地方債残高、巨額の交付税特別会計の借入金残高など地方財政を取り巻く厳しい財政環境を考え合わせたときに、財源の確保については今後とも極めて重要な課題であると思います。ぜひ諸先生方におかれましても、個々の地方団体の各年度財政運営に支障を生じさせないような十分な御留意を賜り、地方交付税総額を安定的に確保していただきますようにお願い申し上げる次第でございます。  第三点は、国庫補助金等の整理合理化についてでございます。  この問題につきましては、初めの方でその内容について詳しく申し述べさせていただきましたので、重複を避けます。  なお、昭和六十年度予算が通りましたけれども、地方交付税法案が通らない、例えば生活保護の支給などについても地方団体はこれを立てかえ支出をしなければならないと思います。そしてなお公共事業がおくれます。公共事業がおくれることによって我々地方団体仕事の着手が延びます。そのために寒冷地等の地方団体は大変な困難も生じますし、その他の地方団体においても景気の問題、雇用の問題等大変な問題があると思いますので、ぜひ六十年度限りのことを厳守していただきまして、この際特に強く要望申し上げ、今後このようなことを繰り返さないことをぜひともお願いするものでございます。  なお、補助金等にかかわる超過負担の解消につきましては、政府において毎年度合同調査を実施してその解消措置がとられてきておりますが、引き続き御配慮を賜りますように心からお願いを申し上げます。  以上でございます。当面する地方財政の諸問題につきましてお願いかたがた意見を申し述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)
  10. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  これにて参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 高鳥修

    高鳥委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、念のため申し上げますが、参考人委員長の許可を得て御発言をお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。臼井日出男君。
  12. 臼井日出男

    ○臼井委員 本日は、参考人皆様方におかれましては、大変お忙しいところありがとうございました。自由民主党・新自由国民連合を代表して、一言各先生方にお伺いをさせていただきたいと思います。  一河先生に最初にお伺いをいたしたいわけでございますが、長期的な視野それから短期的な、本年度、六十年度についての措置、わかりやすくお話しをいただいたわけであります。その中に、今地方が抱えている長期的な問題として幾つかお挙げになったわけでありますが、高齢化の問題とあわせて、特に質的な変化というのが非常に来ているんだというお話がございました。特にその質的な変化ということになりますと具体的にどういうものがあるのか、簡単にお話しをいただきたいと思います。そして次に、安定財源確保について何か御意見があればお聞かせをいただきたい。この二点についてお願いをいたしたいと思います。
  13. 一河秀洋

    ○一河参考人 重要な点の御指摘をいただいて、大変ありがたく存じます。  第一点は、高齢化社会の進行に伴う地方財政対応行政の質的な変化に伴う地方財政対応、この点について具体的に説明をせよ、こういうことでございました。  高齢化社会の進行に対する対応といたしましては、高齢化に伴って年金、医療、福祉サービス、この三つの問題がございますが、一つは医療問題。例えば健康保険の本人負担の実施が行われたけれども、老人でありますとか身障者については、かなりの地方自治体がその自治体措置として無料化を行っているということがございます。あるいは、殊に福祉サービスにつきましては、これはまさに地方自治体の問題でございまして、非常に多様なニーズが出てくるだろうと思うのでございます。  また、行政の質的な変化ということでございますが、これは何と申しましても生活内容の変化に伴いまして、行政に対するニーズがかなり変わってきている面があるということでございます。例えば従来の行政サービスから申しますと、生活環境等にいたしましても、道路の整備でありますとか下水道の整備でありますとか、その地域社会全般にわたってかなり画一的に必要とされる事柄でございまして、いわばかなり純粋に公共財に近い性格のものでございます。こういうサービスにつきましては、その必要性についてかなり社会的な合意が成立しやすいかと存じます。負担との兼ね合いで程度の違いはありましても、その必要性そのものについては社会のほとんどの人が賛成をすると言ってもよかろうかと思うのでございます。  しかしながらその反面で、最近非常にニーズが強くなってきておりますのは、生活のゆとりから来た生活の余暇の時間に対する行政サービスということだろうと思うのでございます。文化行政でありますとかスポーツ振興行政でありますとかレクリエーション行政、こういう分野についての住民のニーズが非常に大きくなってきている。これに何とかこたえていかなくちゃいけないという側面があろうかと思うのでございます。しかしながら、このような側面につきましては、住民の間で選好と申しますかニーズが千差万別でございまして、一様なニーズというものがなかなかないわけでございます。そうなってまいりますと、この住民のニーズをいかに反映していくか、いかにとらえていくか、いわばどれだけ行うかという行政よりも、何を行うかという行政の重要性が増大してくると思うのでございます。しかもこれは地域的にも非常に大きな差があるわけでございます。  ということになりますと、従来のように主として人口を基準にした行政ということではなくて、やはりその地域、地域の独自性を強調した行政必要性が強まってまいりまして、いわば国の基準に従っての一律の行政、国の計画に従っての行政ということから離れて行政事務仕事、計画的な事務と実施的な事務に区分をして考えれば、従来よりは計画的な行政の事務をもっと地方自治体に配分をしていく必要があろうと思いますし、また、計画的な事務を地方自治体に配分をした場合にでも、補助金行政等を通じて国が関与、介入をするというケースも間々見受けられますので、これをなるべく避けるような方途が望ましい。そしてまた、これを実現していくためには、地方自治体の職員の資質の向上と、それを支える地方自治体それ自体の安定的な財源の確保、これが欠くべからざることだ、このように考えます。  そこで、安定的な財源といたしましては、一つは、地方財政逼迫の際に交付税率を何とか引き上げる方法を講じるべきじゃなかろうかということと、いま一つは、利子課税強化いたしまして、この利子課税強化から生ずる財源によって地方自治体財源強化を図ることが望ましい、このように考えております。
  14. 臼井日出男

    ○臼井委員 どうもありがとうございました。  次に、宇田川参考人にお伺いいたしたいと思うわけでありますが、補助事業の廃止という御提言があったわけでありまして、それには制度改革というものが必要であるというふうなお話もいただきました。この補助事業が廃止ということになりますと、国の地方団体に対する補助というものの考え方をどういうふうな形でやるのか。交付税の三二%あるいは国庫支出金、それにプラスをして何らかの方法でもって配分をしていかなければいけないと思うわけでありますが、この補助事業廃止というものに伴って、それではどういう形でもって地方団体に対して財源配分をさらにしていくのか、その点についてのお考えをいま少し詳しくお伺いをさせていただきたいと思います。
  15. 宇田川璋仁

    宇田川参考人 補助事業の廃止であれば、補助事業を廃止するんですから国は事業なし、補助金なし、地方補助金受け入れなし、仕事なしということでありますから、さしあたりそれでよろしい。要するに国、地方挙げてその分だけ浮くということになるわけだと思います。それからもう一つ、今のお話は、そういうことはなかなか難しい——(臼井委員「やらなければいけない事業はあるのですか」と呼ぶ)事業はあるということで、私の考えでは現行では地方財政法で義務的——私は法学者でありませんから法文は余り正確ではありませんが、要するにその趣旨は、義務的な事業であって国と地方に利害がともに絡んでいる場合は両方で負担せいということになっているわけでありましょう。それは確かにそういうことでありましょうが、その裏側にはいつも、先ほど触れておきましたような危険がある。恣意的に国と地方の力関係で動く。  そういう場合、一つの解決は、あるいはシャウプも既に触れておりますように、補助金システムを見直す。そうすると今度は、補助事業をするんだ、大事なことだ、やり方を変えよう。要するに国が引き受ける、あるいは地方が引き受ける。どういう割り振りがまず必要かということになりますと、その場合は、事業をやる上でありますからお金が必要だ。その場合、幾分かは地方自主性の方の仕事にするということになりますと、国は今度はその仕事を放棄する、地方責任に任すわけでありますから、その分だけ国の一般会計補助金支出は一応理屈としては減る。仕事をするんでありますから、その仕事地方に行った限り地方は丸々仕事をする。  そうすると、従来補助金が例えば半分半分であったとすれば、五割受けていたわけでありますから五割不足する。その五割を今度は国が要らなくなる、国が仕事を放棄した。半分負担していた、その五割を地方に移すということで収支が合う。その移しの仕方は、ある場合によっては地方税でいいかもしれません。しかし地方税でやるということになれば、地方税固有の地域的な偏在ということがあるとすれば、交付税とミックスするということが当然考えられるわけでありまして、それは、いかなるものを地方団体責任に移すか、そしてそれに伴う当時の地方財政経済力いかんによって判断さるべきものであって、一概にここで地方税の方が望ましいとか交付税の方が望ましいということはなかなか——いわば実証の問題でありまして、しかし、その両方のコンビネーションで行うべきであろうということだけは間違いなかろうかと思うわけでございます。
  16. 臼井日出男

    ○臼井委員 時間がありましたらまた御質問させていただきたいと思います。  西村参考人にお伺いをいたしたいわけでありますが、私どももとかく現場については国の立場でやっておりまして疎くなっているわけでありますが、きょうは非常に具体的に、率直に地域の実情をお話しいただいて大変参考になったわけであります、これからも私どもは、地域の市長の皆さんお仕事がやりやすいように一生懸命に努力をさせていただくつもりでございます。  そこで、確かにお話のとおり交付税等は多ければ多いにこしたことはないわけでありますが、御承知のとおり、一応基準財政需要額というものを積み上げるような形でやっているわけであります。そうした中で、どの方面にどれだけふやしたらいいかというのは極めて難しい問題になってまいります。特に最近は、地方財政収支は均衡しつつあるということで切り下げ論も一部にはあるわけでありますが、それは困る、切り上げをしてもらいたいというふうな御意向もあったわけであります。この点についてどの程度の範囲でお考えになっておられるのか、お聞かせをいただければありがたいと思います。
  17. 西村正男

    西村参考人 温かい御理解をいただきましてありがとうございました。  お尋ねの件でありますが、今年度地方交付税は五十九年度に比して、一千億も含めてでありますが、一〇・九%伸びた。これは単年度間の伸び率からいえば非常に大きいわけでありますが、実質は先生方御案内のように、三年前の五十七年度交付税額九兆三千三百億、今年度が九兆四千五百億でありますから、やっと三年前の額に戻ったにすぎない、二年間引き続き減ってきておりましたから。実質的な交付税率が過去どうであったかというのを見てみますと、四十九年度以前は三二%でずっとそれまで来ておった。五十年度で、オイルショックその他の原因で非常な財政窮迫の状況が出てきて、交付税についても国税の三二%では足りないということで、交付税特別会計に対する借入措置などいろいろな措置が出されてきたわけでありますが、五十年度が四三・二%、実質税率にしたらそれだけの交付税になった。飛びますが、五十五年度では三八・三%、先ほど申し上げました五十七年度も三八・九%というのが、実質的な国税三税に対する地方に配分をされた額をもとにした交付税率です。  どれぐらいということでありますが、五十九年度のこの面では三一・三%ということでありますが、私といたしましては、これは地方税にどれだけ財源が付与されるかということと絡んでまいりますので一概に言えないわけでありますが、地方税が今のままであるというふうに仮定をいたしましたら、現在の状況の上において、六十年度状況の上においてあと五%ぐらいは少なくともふやしていただかないと、私が先ほど申し上げましたような当然見るべきものが見られておらないということについての補てんは難しいのではなかろうか、そのように思っております。
  18. 臼井日出男

    ○臼井委員 どうもありがとうございました。今後の参考にさせていただきたいと存じます。  最後に、藤井参考人にお伺いをさせていただきたいと思うわけでありますが、藤井参考人は、主として全国市長会というお立場でその御意見を代表するようなお話をしていただいたわけであります。  そこで、お話の中でほぼ言い尽くされておりますけれども、六十一年度以降の改正について、特にこういう点に留意をして抜本改正に資してもらいたい、さらにおつけ加えをいただく点がありましたらお願いをいたしたいと思います。
  19. 藤井精一

    藤井参考人 いつもいろいろお世話になっております。  さっきの説明にも申し上げましたけれども、六十年度財政措置がとられた、だからやむを得ないのだという結論を市長会が出しましたけれども、もう少し中を詰めていきますと、地方団体の中には交付税をもらっている団体ともらわない団体がある、もらわない団体にすると、財源をつけていただいたといってもそれが実はゼロだ、こういう内容等もあるわけでございます。それで私どもは、しかしもう時間がないから、それを言っていたんではとてもいろいろな問題があるから大変だ、少なくとも六十一年度までには、今参考人先生方、学者の先生方もいろいろ御意見がありましたが、この一年間に抜本的に国と地方仕事をしっかり区分してそれに対するそれぞれの財源を、満足というわけにはいかないけれども、ややの数字を張りつけていただくような、全体的な基本をはっきり踏まえた財源措置をぜひともお願い申し上げたい、こういう意味でございます。
  20. 臼井日出男

    ○臼井委員 どうもありがとうございました。  私もこの委員会に所属をするようになってかなり長いわけでありますが、毎年金国市長会からの御提言、よく読ませていただいておりまして、大変仕事の上の参考にいたしているわけでございます。今後ともそういう点大いに配慮をしてやってまいりたいと思っております。  もっと多くの質問をしたいわけでありますが、もう時間も来ておりますので、遠慮させていただきますが、宇田川参考人に対しまして、ぜひとも今後、補助事業の廃止等について一体どのような事業でもって分けていくのか、そういう点についてもまた機会があればお聞かせをいただければ大変ありがたいと思います。  どうもありがとうございました。
  21. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、細谷治嘉君。
  22. 細谷治嘉

    ○細谷(治)委員 時間が二十分しかございませんので、私の方から各参考人にそれぞれお尋ねしたい点を最初申し上げて、順次お答えをいただきたい、こう思います。  最初に一河参考人にお尋ねいたしたいわけでございます。いろいろ基本的な問題がありましたけれども、具体の問題でお聞きしたいのです。  交付税率は三二%を下限にすべきだ、こういう御意見であります。私も同感なんですけれども、けさの朝日新聞にはっきり、三二%というのは法律ではおろさないけれども、現実には、今まで国の方から地方特例交付で加算しておったのを、今度はマイナスの加算を国に地方の方から加算してやる、こういうような形でやるという記事が載っておりました。財界等からも地方財政裕福論、そして来年度の予算編成という点からいきますと、もはや義務教育の負担金をカットするとか、あるいはさらに交付税率カットしなければいかぬというのが、国会の論議の中でも衣の下からよろいが見え隠れするような形で出てきております。単に下限ということだけでは済まないような大変大きな問題になってきておると思うのですが、原則的な地方と国の役割分担、こういう点から先生のお考えをお聞かせいただきたいと思う。  これに関連して、利子配当の課税も参考人から出ましたけれども、これは大変な問題であります。今度のカットによりまして、先生おっしゃるように間違いなくひずみが拡大した、そうして各団体の間にひずみがどんどん拡大していく。それを財政調整したと言うけれども、後ほどありますように、財政調整というのは極めて不十分であるということを私は心配いたしております。この点についてもう少し突っ込んだ具体的な御説明をいただければ幸いだ、こう思っております。  それから、宇田川参考人に、今も話がありましたが、補助事業のある意味での廃止、抜本的な整理ということだと思うのですけれども、国と地方は両輪だと言いますが、憲法の点からいきましても、例えば生活保護とか義務教育とかこういう基本的なものについてはナショナルミニマムを確保していく、こういう点からいって国の負担というものを確立する、その上に地方団体がそれぞれの状況に応じてプラスするなり何かしてシビルミニマムを達成していく、こういうのが本当の車の両輪論だろう、こう私は思うので、ただ単に補助事業の廃止と言い切ってしまっては問題が一歩も進まない段階に来ているのではないかと思いますので、少し御説明をいただきたい、こう思います。  それから、先生の言葉の中に、シャウプ税制の見直し論が多い中において、シャウプ税制について評価をされておる言葉がございました。私も、今日なおシャウプ税制を高く評価すべきであって、シャウプ税制を見直さなければならないような状況に来たという議論には同調できない。例えば地方税の有力なものであります法人事業税、これはシャウプ税制のもとでは本当は付加価値税でありましたけれども、それを法律をつくりながら実施せぬで今日まで来てしまった、こういうためにかなり不安定な地方の府県等の財源ができてきておりますから、私はシャウプ税制を見直すということを評価しつつ、その原則を守りながら今日の情勢に対応できるようにすべきじゃないか、こう思っておりますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。  それから、第三番目の西村市長さん、第一線の御苦労を率直に数字的にお聞かせいただきまして、私も大変参考になりました。実は補助金一括法案を論議しておる大蔵委員会におきまして市長さんがおっしゃったようなことが大変議論になって、端的に申し上げますといまだに未解決です。この間出ました地方財政白書によりますと、官僚の作文でありますから可否なく、六十年度においては完全に穴埋めしました、こう書いてあります。そうして千二百億と千六百億については財源対策債でいくのだ、こう締めくくっておるのですよ。  ところが、六十年度においては確かに完全ということが言えるかもしれませんけれども、おっしゃられるような事態が六十一年度以降出てきてしまっておる、これはもう間違いない問題である。私どもそれを現地の事情をお聞かせいただいて大変結構である、これは何とかして大蔵委員会の論議をこの委員会でも引き継いで問題を明らかに解決しておかなければいかぬ、こう思っておるのです。それにつけても、やはり財源対策債、裏づけておりますよ。そうして完全にという言葉がいつの間にか一〇〇%と移ってしまうのですね。完全にという言葉は六十年度に完全にであって、一〇〇%なんということは一つもないのですよ。  そういう問題がありまして、市長さんの方からは地方交付税の配分について再検討すべきだという御意見であります。総額はもちろんでありますが、配分の内容について再検討すべきだという意見は私も賛成なんです。自治省あたりでは、そこに交付税課長もおりますけれども、日本の交付税制度というのは世界に冠たる精緻、巧緻な制度だと言っておりますけれども、そういう精緻、巧緻な制度に絡まってしまって、そのしがらみから抜け出せないで本当の意味財政調整ができないような事態になっている。したがって、抜本的に配分の方法を見直すべき、ある意味では簡素化すべきである。わかりやすく、完全にと言っているのが一〇〇%なのか八〇%なのか、だれでも見当がつくように簡素化する、こういうことも必要ではないかと思うのですが、この点についてもう少し御説明をいただきたい、こう思います。  第四番目は、市長会の代表的な形で前橋の市長さんにおいでいただきました。この問題について既に市長会を代表して福井の市長さんから大蔵委員会意見の陳述がございました。さらに、福岡県の田川の市長さんからも意見の陳述がございました。端的に言いますと、基本的に賛成できない、断固反対だけれども、ここまで来てしまうとしようがない、こういう結論に落ちついておるようでありますけれども、問題はこの一年間なんですね。そうして、一年間どうするかという制度の問題がこれから検討されるわけですけれども、ことしの例を見ても明らかなように、八月の概算要求までに片づけておきませんと、間違いなくこれは財政当局に押し切られてしまうのですよ。自民党の政調会長等も八月の概算要求に間に合うようにするということを約束しているのですけれども、この委員会でそんな簡単なものではない、こういうふうに言っている政府委員もおります。私もそうだろうと思うのですよ。  そこで、今おっしゃられるような問題点は、これからその問題がどういうふうになっていくのかということについては、私もかつて市長会に籍を置いた一人として、もうちょっと市長会あるいは全国知事会、地方六団体がこの問題について地方第一線の言い分を積極的にやってもらいたい、今度の言ってみますと完敗の経験にかんがみて、もっと積極的にこの問題について取り組んでいただきたい。取り組んでいただきたいというよりも、地方の主張を実現するために、ずばり言いますと闘っていただきたい、こう思いますが、いかがでしょう。
  23. 高鳥修

    高鳥委員長 それでは、逐次御答弁をお願いいたします。まず、一河参考人
  24. 一河秀洋

    ○一河参考人 非常に難しい問題を与えられまして、ありがとうございます。  二点ございまして、一つ交付税率三二%の問題でございます。いま一つは、今年度の一律補助率引き下げのひずみの問題でございます。  第一点でございますが、実は私どもの生活は非常に朝遅いのが習慣になっておりまして、けさの朝日新聞を読んでおりません。大変申しわけございません。しかしながら、かねがね補助率引き下げという議論があちらこちらで出ていることは承っております。あるいはまた、昨年度交付税改正の際にも、大蔵省側から交付税率の弾力化、上下三%ぐらいの幅で弾力化を図るべきではなかろうか、こういう案が一時見え隠れしたということも伺っております。確かに、三二%という数字に必ずしも何らかの理論的な根拠があるわけのものではなかろうと思いますし、一定不変のものと考えるべきものでもなかろうと思うのでございます。地方財政安定化のためには、交付税率を弾力的に考えるということの必要性は非常に強いかと思うのでございます。  しかしながら、その弾力化が地方の側に少しでもゆとりが出たら、国の方が苦しいのだからこちらへ回せ、こういう形の発想であったとすれば、非常に大きな問題が出てくるということでございます。やはり何と申しましても、今後の豊かな社会の実現のためには地方自治体の責務が極めて重大でございますし、地方自治体行政事務増大というものが極めて圧力が大きいと思うのでございます。その中で、地方自治体が長期的な動向を見越して極めて計画的な行政運営、計画的な財政運営を行うということが、自主性のためにも効率性のためにも欠くことのできない条件だろうと思うのでございます。その際に、地方自治体努力あるいは場合によっては景気の動向によってゆとりが出たら財源を減らされるということでは、到底計画的な運営などはできたものではないだろうと思うのでございます。  そこで、現在いわゆるナショナルミニマムということを申しますが、一昨年の臨調答申でもほぼ水準に達しているという評価を与えておりました。これが本当にそうかどうかは考え直してみなくちゃいけないと思うのですが、現在の行政水準に対して、景気の状態が普通であった場合には、三二%ぐらいで大体バランスをする、あるいは多少景気がいいときにバランスをする、これくらいの水準だろうと思うのでございます。したがって、国の財源逼迫しているから、本当ならただ上げろというところであるけれども、それは無理であろうから、せめてこれを下限にして、これでは極めて不足をしているというこの数年間の状況のような際には、もっと弾力的に見直しを考えた方がいいのじゃなかろうか、こういうことでございます。  第二に、ひずみの問題でございますが、一律に削減をするということは、これは本来非常に乱暴な、論理のない話であることは言うまでもございません。ましてや、高率補助金を一律削減するということがそれ自体無理でございまして、先ほどから本店でもいろいろ取り上げられておりますように、むしろ補助金で問題なのは高率補助金よりも低率補助金の方だと思うのでございます。高率補助金はむしろ国の責務である、したがって率が高いという面が大きいと思うのでございます。したがって、整理をするならば低率のものについて、あるいは小さいものについて一つ一つ検討していくのが本来の筋で、補助金が大きいから削るというのは乱暴でございます。  ただ、この場合に、一律の引き下げの結果どういうゆがみが来るか。富裕団体についてのゆがみは先ほど申し上げたとおりでございまして、これはある程度推測がっこうかと思うのでございます。問題は、事業量拡大に伴う貧困団体のひずみでございまして、これについては一応表面的な算数としては対策がとられているということでございますが、実態として本当にそうなんだろうかということに疑問を持つわけでございます。特に超過負担の問題がございまして、それはぜいたくなものをつくるからいかぬという面もあるかもしれませんけれども、実際に高くなった行政水準、施設水準を、財源の問題だからといって急に落とす、去年つくった学校はいいけれども、ことしは金がないから粗末なものをつくる、これでは到底納得ができないし、やっていけることではなかろうと思うわけでございまして、やはり一律削減の結果特に事業量拡大をする、この事業量拡大の結果として裏負担がどのくらい増大しているのだろうか、もっと実態を正確につかまえる必要があろうと思っております。
  25. 宇田川璋仁

    宇田川参考人 私への御質問は二点でございまして、第一点は、おまえは補助金を整理ということはかり言って非常に無責任だというおしかりでございますが、私は決してそういうことではございませんで、要するに補助金見直しということでありまして、その見直しということは、基本的には不要なものをカットすること、削減すること、補助事業を廃止することだ。繰り返すようで恐縮でございますが、補助事業をそのままにしておいて補助金システムを変えるということはいわば次善の策であって、一番望ましいのは、当面この国と地方財政危機の中で、補助金を法令廃止。  では、どういうものを廃止したらいいかということですと、ちょうど私どもここへ来るに当たって、衆議院地方行政委員会調査室からいただきました資料がございますが、その後ろの方に、これははっきり言ってよろしいのでしょうか、朝日新聞の社説といいますか、ありますが、その中で、こんなことを言っております。政府補助金は二千六百件ほどある。半減させるほどの決意が必要だ。ではどういうものをやったらいいか。むしろもらう方の市長会や何かで、整理すべき補助金のリストをつくってさえいる。それにブレーキをかけているのは、地方ではなくて政府の諸機関だ。こう言っているわけで、補助金というと、これは結局国の税金でありますから、補助金といえども資金コストがゼロではないわけです。しかし、もらう方から見ると、当該自治体の住民には負担をかけないということで、あたかも資金コストがゼロのように見えるというところにいろいろな根源があるわけでございますけれども、そういうもらう側の地方団体の方でさえ整理すべき補助金のリストをつくっている。むしろそれさえ抑えられている状況。  これは私自身の個人のことでございますが、私は今、地方財政学者という幾人かのグループをつくって、地方財政の長期的な研究をさしていただいておりますが、それについては、自治省の方々から事務局としていろいろ資料をいただいておりますが、約七、八年前にこの補助金問題を検討いたしまして、その当時私どもの試算では、当時の金額で二割、三割は切れる。それはどういう判断かというと、要するによく言われているように、これは地方団体で受け入れていい、地方団体も望んでいる、いわば定着同化しているものがそのようにかなりあるということは、いわばもらう方から言っているということで、そういう事実をはっきり認識して、一体どこでそれが実現できないのかということを探すべきではなかろうかというふうに思います。  それから、シャウプ税制のことでございますが、私、本日シャウプ勧告を持ち出しましたのは、国庫支出金に関してでありまして、国庫支出金のいわば潜在的魔力といいますか魅力、かつメリット、デメリットはかくかくあるということは、いわば高名なシャウプ博士が世界の財政事情に通じておりますものですから、はっきりとその当時指摘している。かつては国の方が豊かであり、地方が苦しいということであればかさ上げも行えたでありましょうし、また逆の場合、今日のようなことも起こる。いずれにしても、ケース、ケースはそれだけの理由はあったにしても、しかしそういう問題について、いつでも攻める側、守る側があるということの本質は、やはり国庫支出金の、先ほど言った四点の本来的欠陥があるので、むしろその点を踏まえて、やはり国庫支出金の性格それ自体を吟味する必要があるのではないか。私は役所におりませんし、自治体にもおりませんものですから、いわばそのように原理的に考えているわけであります。といって、決して現在の地方財政法の考え方が間違っているというふうには思いません、それなりの理由はあると思います。しかし、原理的にはそうだ。  それから、税制でございますが、ここで税制を論ずるのは大変場違いかとも思いますが、シャウプ税制の見直しが叫ばれている、そういう問題についてどう思うかということでございますので、一言だけ申し上げておきます。  これは今後の課題であると思いますが、基本的にはシャウプ税制のような直接税からもっと間接税の方向に行ってはどうかというようなことの中で、見直しが一部叫ばれているのだろうと思うのであります。基本的な問題は、やや理屈っぽくなって恐縮でございますが、そういう間接税中心型の理論のいいところ、悪いところを一つだけ申し上げておきます。  いいことは、所得税よりも効率性がいいということを主張できるということです。しかし基本的に欠陥があるというのは、間接税移行はエクイティーといいますか、公平、これを猛烈に逆進型にするという点で、その功罪半ばし、むしろ私個人としては、また多くの租税学者は恐らく罪半ばする。これはアメリカにおいても、今御存じのように、アメリカは日本と同じように直接税中心で、付加価値税その他を入れようという声もある。しかし、地方団体は消費税課税は本来的に州、地方団体のいわば税なので、国が付加価値税を入れたければ、消費課税ではなくて加算法でやれ、そして企業課税型にしろというようなのが地方団体の主張でございます。また財政学者、租税学者等は、消費税型を入れることによって、非常に逆進型になるということを憂えている状況で、同じようなことは、日本ではむしろ地方は消費税は困る。むしろ地方分権にかなうのは法人税であり、企業税ということですから、アメリカとは逆でありましょうが、いずれにしても消費税問題については功罪半ばし、私は罪の方が多いのだろうと個人的には思っております。
  26. 西村正男

    西村参考人 先生のお尋ねの件でありますが、私が先ほど申し上げました交付税総額がここ数年減少したために、交付税地方団体個々の状況対応するすべを失ってきたのじゃないかということを具体的な数字で申し上げますと、経常収支率ですね。これが九〇%以上の団体、これは極めて財政状況が悪いわけでありますが、五十五年度では百七十四団体でありましたが、五十八年度では百八十一団体に、七団体増加しております。それから八〇%から九〇%の範囲内にある団体、これも決していいわけではありませんが、一千七十二団体が一千百六十六団体に、九十四団体増加しております。この三年間で約百団体というのがまあまあという財政構造からこれはいかぬなという財政構造の方へ転化してきておる。  その原因の一つに、公債費の償還費が非常に各団体ごとに偏って増加している、そういう傾向がある。公債費比率二〇%以上の団体が、既に三千三百余りの全地方団体の中で八百を超えておる、こういうことと決して裏腹ではないわけです。ですから、この公債償還費の中で、先ほど私が申し上げましたような義務教育施設でありますとか、地域改善対策でありますとか、そういった性格のものについては、交付税の総額が許せば、そういう面で交付税に計算を織り込むことによって、この経常収支率の悪化を防げたわけでありますけれども、そういう機能が今まで交付税総額が減少したためにやれてなかった、こういうことでありまして、これはもう基本的に絶対的に交付税総額が足りないということを一つ申し上げたいわけであります。それと同時に、六十年度で若干でありますが、と言っても五十七年度に戻る程度でありますが、昨年度と比べたらふえたわけでありますので、そういう中で少しでもこの三年間に措置できなかった部分を措置していただくべきではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。  そこで先生おっしゃったように、非常に精緻をきわめておりましてわかりにくいのが、交付税の特に需要額の計算であります。単位費用がありまして、基礎数値がありまして、それがもとになるわけですが、いろいろな補正係数が中にいっぱいありまして、どの部分がどれだけ計算されておるのかというのは本当に専門家でないとわかりません。  先ほど申し上げました例でいきましたら、いわゆる同和対策、地域改善対策事業債の交付税に織り込まれておる額といいますのは、公債費の分類の中ではっきり出てきておりますから、これは自分のところで償還するのが五億なら五億要る。その中で二億しか織り込まれておらない。数字が二億とはっきり出ておりますから、すかっとわかるわけでありますが、義務教育施設、小学校費、中学校費の中で計算をされておる。表にはちっとも出てこないわけでございまして、計算式の中で分析をしませんとどれだけ入っておるかということがわからない。清掃施設もそうであります。事業費補正という形で元利償還金の計算がなされておるということでありますので、やはりこういったものは、特に義務的な経費にかかる元利償還金の算入などについては、形としてはやはり独立した費目で、公債費の中ですっきりと計算していただいて、だれが見てもわかるような計算式が望ましいのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。  ちょっと時間がございますし、簡単な例だけ申し上げて申しわけございませんが、以上でございます。
  27. 藤井精一

    藤井参考人 市長会に籍を置かれた大先輩の御意見、しかも市長会しっかりせいという激励も含めましたお話を承りまして、私も早速市長会に帰りまして、よくその旨を伝え、もう八月までに時間がないぞという御意見もありますが、ひとつ十分知事会等にもお力をかりながらやってもらうように報告をし、私も努めたいと思っております。  以上でございます。
  28. 高鳥修

    高鳥委員長 どうもありがとうございました。  本日は、午後一時から本会議が開かれることになっておりまして、時間も限られておりますので、質疑並びにお答えの方もなるべく簡潔にお願いいたします。  それでは、宮崎角治君。
  29. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 参考人先生方、きょうは大変御苦労さまでございます。私は、公明党・国民会議を代表いたしまして若干先生方にお尋ねするわけでありますが、今回は学者の先生方お二人と、そして実際現場で直接財政運営の衝に当たっておられる市長さんお二人でございますので、順を追って御質問したいと思っております。  初めに一河参考人にお尋ねしたいと思うわけであります。  御承知のように、国税の所得税におきましてグリーンカード制が廃止になったわけであります。利子配当の地方税の課税については、従来からいろいろと論議があるところでありますけれども、地方税の利子配当課税あり方について、一河参考人の方から御見解を賜りたいと思うわけであります。
  30. 一河秀洋

    ○一河参考人 ありがとうございます。  地方財源一つといたしまして、利子配当課税強化ということを先ほど申し上げた次第でございます。御指摘のとおり、グリーンカードの凍結期限が参りますとともに、グリーンカードを廃止し、限度額管理強化するということでこの問題は一応決着がつけられております。しかしながら、限度額管理強化も不十分でございますし、利子配当課税そのものに問題が残っていると思うのでございます。一つは少額貯蓄非課税制度そのものに問題があろうかと思いますし、また一つは、一歩を譲っても分離課税制度に問題が残っていると考えております。  と申しますのは、少額貯蓄と申しましても少額貯蓄、少額国債、そして郵貯を合わせますと、それぞれ三百万、一人九百万に達しております。財形貯蓄分は別にいたしましても、一家四人の名義をフルに利用したとしたら九百掛ける四でございますから三千六百万になるわけでございまして、現在勤労者世帯の所得の動きと貯蓄残高の動きがほぼ並行して動いてきている状況を踏まえて考えますと、少額貯蓄は低中所得層向けの対策というより、かなりの部分高所得層の税金軽減のための隠れみのになっていると言って差し支えなかろうかと思います。  現在、非課税貯蓄残高が各種合わせて二百四十五兆円ほどございます。利子率を六%といたしますと、非課税利子所得が約十五兆円、少し多い目の計算になるかと思いますが、乱暴に考えてみれば、所得税二〇%とすれば、十五兆円の二〇%、三兆円の税収減、この三二%は交付税財源でございますから、九千六百億円ほど交付税財源が削られていることになってまいります。地方財源が減っているわけでございます。  これに加えて、住民税の税率を県、市町村分合わせて一〇%と乱暴に考えますと、十五兆円の一〇%で一兆五千億円、合わせてみますと大変な金額、約二兆五千億円近い金額が財源の減少になっているわけでございまして、これだけをもってしても地方財源強化には随分と役立つだろうと思うのでございます。また、百歩譲りまして、分離課税の分だけについて考えてみましても、現行分離課税税率は御承知のとおり三五%でございます。この利子所得課税につきましては、イギリス、アメリカ、西ドイツ等の主要諸国いずれも優遇措置を講じておりませんで、総合所得課税が原則でございます。  ただ、フランスにおいてのみ分離課税の選択が認められておりますが、フランスの場合でも分離課税税率は四五%と聞いております。フランスの所得税の累進度は我が国よりもはるかに低いのでございまして、最高税率もはるかに低い、そのフランスでさえも貯蓄の分離課税税率は日本よりも一〇%高い、せめてこの一〇%分だけでも上乗せをして、これを地方財源にすることによって地方財源強化を随分と図ることができるだろうと考えられます。  以上でございます。
  31. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 ありがとうございました。  宇田川参考人にお尋ねしたいのは、今回補助金のいわゆる一律カット措置をとるに当たりまして相当論議がなされてきたわけであります。五項目の論議の中の第三番目に当たる論議は非常に注意を引くわけでありますが、それは本日の朝日新聞にも出ているように、国庫財政に比べまして地方財政の方に非常に余裕がある、国庫財政負担を軽くするために行うのだ、こういった論議があったように思うわけであります。  地財法の第二条第二項によりますと、やはり国は地方財政の自主的なかつ健全な運営を助長することに努めて、いやしくもその自律性を損なったり、または地方公共団体に負担を転嫁するようなことがあってはならぬ、こういうくだりがあるわけでございまして、今回の補助金の一律カット措置はその動機から見まして、またその及ぼす影響から見ましても法律違反ではないか、このように思うわけでありますが、宇田川参考人の御見解を承りたいと思うわけでございます。
  32. 宇田川璋仁

    宇田川参考人 趣旨は全く同意いたします。  要するに、現行制度を崩さないで資金のたらい回しということは、それは結局たらい回される方が困るということでありまして、問題はまたもう一度たらい回しの方にいろいろ動くということでありますから、歳出をカットするという方式においては、国と地方が両輪であるとすれば、両輪の中で回されても歳出カットにはならないということだろうと思うわけでございます。
  33. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 ありがとうございました。  それでは西村参考人にお尋ねしたいのでございますが、自治省が今回の補助金カットを完全に補てんする、こういうような方向で進んでいるわけでありますけれども、行政を預かっておられる市長さんとして、完全に補てんがなされると思っていらっしゃるのか。今後一年限りという限定でございますけれども、この補てん策については極めて不十分であるというようにお考えなのか、その辺の影響度につきましての御見解を承りたいと思うわけでございます。
  34. 西村正男

    西村参考人 六十年度国庫補助負担率の一律的な引き下げによる五千八百億の影響でありますが、私の市で、これは現実に数字として計算できるわけでありますが、生活保護費を主体といたします経常的な補助率削減によりまして約一億二千万円減少いたします。それから公共事業関係高率補助金の減少によりまして、これも約一億二千万円減少する、合計約二億四千万円既存の国庫補助金なり支出金が入ってこないということであります。これによるカバーがいかになされるかということについては、理論的には承知をいたしておりますが、その基本となる交付税の算定がまだでございますので、現実的にそれがどういう形で出てくるか、まだはっきりとつかみがたい状況にあるわけであります。  まう一つは将来にわたる問題でありますけれども、一応今年度地方交付税に織り込まれるなりまた地方債によって措置をされましても、将来、特に地方債に措置された部分の措置が、当然元利償還金をどうするかという先ほど申し上げたようなことにかかってくるわけであります。それが全部交付税三二%の枠の中へ及ぶということになりましたらこれは困ったことになる。やはり少なくともこれは全部国の方から特別に出していただくという形で財源措置をお願いいたしたい、このように思っておるわけでございます。
  35. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 藤井参考人また西村参考人、両市長さんにお伺いしたいわけでございますけれども、退職者の医療制度の対象者の予定数ですか、これは両市ともどれくらいいらっしゃるのか、現在まで何人がこの制度に加入したのか、今後の見通し等もあわせまして予測どおりの加入者が見込めるのかどうなのか。また、それによって国保への国庫補助率が大幅に引き下げられたのですけれども、両市におきます国保財政の見通しはいかがなものでしょうか。大変具体的な問題で恐縮ですけれども、お尋ね申し上げたいと思うわけであります。
  36. 西村正男

    西村参考人 先生からお尋ねいただきました国民健康保険財政の悪化というのは、今全国の市町村にとって大変切実な問題になっておるわけであります。昨年十月から退職者医療制度ができまして、退職者の見込み率が大体全保険者の一〇%ある、こういう想定の中で、退職者医療が別建てになるので国保会計については余裕ができるということで、それまで四五%でありました国庫負担率が三八・五%に落とされた、こういうことであります。  現実問題私の市で申し上げますと、厚生省は被保険者の中で一〇%程度退職者はある、こういうふうに見込まれておったわけでありますが、幾ら探しても六%しかございません。その結果、昨年の当初予算編成時の見通しては国保会計収支は、一般会計から三千万ほど補てんするという前提でありましたけれども、その上で均衡をするということで予算を組んでおったわけでありますが、最終的に約五千万円の赤字を五十九年度に生じました。六十年度では一億三千万足りないということで、やむを得ず、心ならずも新年度から二〇%保険税率を引き上げるという形でこれを措置いたしたわけであります。  この点については全国の地方団体が現在非常に大きな問題に直面いたしておりますので、少なくとも退職者医療制度の創設と国庫負担金との絡みの問題についてはぜひ国の方で責任を持って財政欠陥が生じないように、生じた分についてはさかのぼって補てんをしていただきたい、このことを強く望んでいる次第であります。
  37. 藤井精一

    藤井参考人 本市の場合の細かい数字等持ち合わせがございませんが、しかし、国保財政においては政府において責任ある措置をとる、こういうことを申されておりますし、今私ども、国保財政を見る限りでは何かうまくいく数字ではなかろうかと思っております。しかし、内容的に最終的な財政措置を講じてほしいということは市長会の決議どおり、要望どおりになっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  38. 宮崎角治

    ○宮崎(角)委員 御参考にして今後のいろいろな論戦の糧にしていきたいと思います。  本日は、大変ありがとうございました。
  39. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、岡田正勝君。
  40. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 民社党・国民連合を代表いたしまして御質問申し上げたいと思います。  四人の参考人の皆さんには、大変お忙しいところ貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。どういうことか、時間がだんだんずれ込みまして、予定された時間を大幅に削り込んでくれぬかという事務当局の要請もありますので、それに協力しなければならぬ非常につらい立場にありますものですから、質問の仕方が大変失礼なことになると思いますけれども、簡単に質問をいたしますので、四人の参考人方々からそれぞれお答えをいただきたいと思うのであります。  御承知のように、今回出されました補助率の一律カットなんということはまことに乱暴なことでございまして、これをやったことによって何か役に立つことがあったのかなというふうに考えてみると、行政改革にもなっていない、それから本当の意味補助金カットということにもなっていない、それじゃ一体何が行われたのかと言えば、ただ国の負担地方に転嫁したということだけになっておるんではないかと思うのであります。大変な不満を持っておるのでありますが、それが一体どこから出てきたんだろうかということを考えてみると、どうやら国の方は、地方の方が裕福だよという地方裕福論が根にあってこういう問題が出てきておるのではないかというふうに私は思っておるのでありますが、四名の皆さんは、地方自治体は国に比べて裕福だというふうに思っていらっしゃるかどうか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  41. 高鳥修

    高鳥委員長 それでは、順次お答え願います。まず一河参考人
  42. 一河秀洋

    ○一河参考人 非常に難しい問題でございまして、一番最初にお答えをしなければいけないのは身の不幸でございます。  国に比べて地方の方は本当に裕福なんだろうかということでございますが、私は、必ずしもそうは考えておりません。確かに表面的には地方財政の方に幾らか明るさが出てきた感じがいたしますし、財政の再建にいたしましても地方の方が何とか見込みがありそうなそういう数字ではございます。あるいは日常の感覚からいいましても、どうもまだ地方自治体の方が汗水垂らせば減量できる余地も少し大きそうな感じもしないではございません。  ただ、しかしながら本来のあり方から考えますと、国と地方の事務分担は非常に明確にしておくべきであって、そのための財源措置は論理的なものでなければならないと存じます。その論理を無視して片方が楽そうだからということで負担肩がわりを図る、こういうことを繰り返していると全く脈絡のない行政がそこに出てきそうな気がするのでございます。また、地方自治体の安全な、また安定した計画的な財政運営も損なわれると思うのでございまして、どうしても肩がわりをするのならば行政事務見直し財源配分のあり方から根本的に考え直すべきであると考えております。
  43. 宇田川璋仁

    宇田川参考人 私は、国と地方財政量の問題よりも、幸か不幸かわかりませんが、我が国の地方財政はやはり国の行政によって大きく影響を受ける、そういうことでありますから、国が意思決定さえすれば、むしろ地方財政は従属変数でありまして、国が意思決定をすれば、地方も豊かになり得るんだろうと思うわけであります。国は残念ながら諸般の事情でしてないということにあるんだろうと思います。
  44. 西村正男

    西村参考人 先ほどから申し上げておりますように、地方はまだまだ貧乏であるというふうに私は思っております。ただ、三千二百五十五団体もございますので、中にはゆったりしているところもなきにしもあらずだと思います。どうしてもそういうところが目につきまして、しんどい状況にあるところが表に出ておらない、このような感じがいたしておるわけであります。
  45. 藤井精一

    藤井参考人 地方団体は、住民の目から一番近いところにございます。そういう意味であるいは少し裕福じゃないかというようなことも言われるのではないかと思いますが、今前参考人が言いましたとおり、地方団体それぞれが大変いろいろな状況を備えております。したがって、一律な答えはできませんけれども、しかし小回りがきく、これだけは言えます。したがって、私どもできるだけ国の模範を示すぐらいの小回りのきく健全財政をやってまいりたい、そのように考えております。
  46. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大変ありがとうございました。  次に、一河先生からは相当詳しく地方財源の確保の問題についてお答えがございましたが、ダブるようになりますけれども、私どもも地方自治団体の財源の安定的確保をどうすればいいんだということについてはみんなひとしく心配をしておることでございますので、四人の方々のお考えがあればひとつお伺いしたいと思うのであります。
  47. 一河秀洋

    ○一河参考人 先ほどから申し上げているとおりでございまして、一つは、交付税率の弾力化と申しましても、下の方は三二%を保障した上での弾力化を図る、第二点は、利子配当課税地方財源としての強化を図る、この二点が重要であると考えております。
  48. 宇田川璋仁

    宇田川参考人 交付税は、国の問題との関係で単に地方の方に回せというわけにいかないだろうと思うわけでありますし、また地方税制についても、私は今にわかに増税に賛成するわけにもまいらないわけでありまして、国と地方を挙げて財政収支というのは両面から考慮すべきということで、私は、多くの国民は当面二輪で、両方、とりわけ国のサイドにおいてもう一踏ん張りも二踏ん張りも歳出カットということを要求しているようにも思いますし、それをまだ可能であるというふうに信じております。
  49. 西村正男

    西村参考人 先ほどから申し上げておりますように、地方団体相互間の格差が際立ってきておるという状況から見まして、財源の安定的確保の面から、やはり各団体間の財源の総合的な調整機能を持つ交付税総額の確保なり充実を図るという形で財源の安定的確保を図るべきである、そのように思っております。  それからもう一つは、制度を早く安定させていただきたいということであります。毎年のように制度が変わりますと、地方団体として来年度どういう予想で仕事をすべきか、再来年度どうすべきか、ある程度長期的な視野に立った行政運営が必要なわけでありますが、それができない、そういう状況でありますので、早く制度の安定を図っていただきたい、そのことをお願いしたいわけであります。
  50. 藤井精一

    藤井参考人 市長会としては、さっき私が御意見を申し述べさせていただいたとおり、とにかく国と地方が一体となった事務配分等の財源をしっかり決めていただいて、それによってしっかりしたルールをつくってほしい、それに我々も努力したい、そのように思っております。
  51. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 従来からよく言われますが、税金を取る方については地方が三で国が七、仕事をする面では地方が七で国が三、全くてれこになっている、けしからぬじゃないか、だから交付税率をもっと上げろ、こういうような意見が随分あるのでありますが、そういうことについてはどのように思っていらっしゃいますか。
  52. 一河秀洋

    ○一河参考人 支出と税収の面で七、三の比率が逆になっている、全くそのとおりでございますが、逆に言いますと、いわば国は税を取って地方に配分する機関になっているという面もあろうかと思います。ですから、七、三の比率が逆になっているということが問題ではなくて、国から地方お金が流れる、この流れ方がどうであろうかということが問題でございます。この点から申しますと、その流れ方の総額が十分かどうかという問題と、国が取って地方に流すのが妥当であろうかどうか、この二点が問題だろうかと思うのですが、この点については、やはり行政事務の配分についての原則、財源の配分についての原則、改めて洗い直していかなければ六十年代に対応できないと思っております。
  53. 高鳥修

    高鳥委員長 ほかの参考人の方、御発言ありますか、いいですか。——西村参考人
  54. 西村正男

    西村参考人 私は交付税を上げて、特に地方団体自主性に任せたらいいような零細な補助金というのは整理すべきである、そう思っております。もちろんそれにかわる財源は要るわけでありますけれども、その前提の中で整理すべきである。地方の現場におりますと、国庫補助金を申請したり、それを受領したり、後で報告をしたり、そういう事務量が大変であります。正確には計算しておりませんが、そういう少額の零細の補助金がそこそこなくなれば相当な人件費が節減できる、そう思っております。
  55. 藤井精一

    藤井参考人 市長会の立場からすると、補助金よりも交付税財源をということになろうかと思います。しかし、交付税の算定方法には大変いろいろな難しさがあります。また、全国の各市町村の国庫補助対象事業等がやや均衡がとれるような仕事をやっていく上からは補助金も必要ではなかろうか。要は事務分担をしっかりしたところにおいてのそれぞれの財源をつけてほしい、こういうふうに思っております。
  56. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 最後の質問をさせていただきます。  先ほど来出てまいりますのは私も同感でありますが、ただ単に補助金をいじっただけでは行政改革にも何にもならない、それから地方自主性を尊重したことにもならない。今回の問題で一番欠点とされるところは補助金の問題の、いわゆる補助金を交付金にするとかいろいろなテクニックを使っておりますが、そういうことをしながら、事務配分、いわゆる事務の移譲ということを全然手をつけてないというようなところに一番大きな問題があると思うのでございますが、この事務事業の中でも、国から地方への移管も当然急がなければならぬことでございますけれども、既に事務事業地方に定着したものも相当あるわけですね。そういうものにつきましては第二交付税とでも言いますか、そういうものを新たに設けて地方に配分をして、地方のそれぞれの首長さんや議会が独自の判断でその地方の特色やカラーが生かせるように、自主的にその財源が使えるようにしていくというようなことが地方自主性を尊重することでもあり、言葉は悪うございますが、いわゆるひもつきを断ち切ることにもなるのであり、行政上のむだをなくすということにもつながる非常に大事な問題であって、第二交付税というものを真剣に考えなければならぬ時代が来ているのじゃないかというふうに私は思っておるのでありますが、私のその意見についてどのように思われるでしょうか。
  57. 一河秀洋

    ○一河参考人 全くお説のとおりだろうかと私は思います。  ただ、事務事業見直しということを申しましても、一つは、事務の中には計画をつくる事務と実施をする事務とがございます。この二つを明確に区分をして考える必要があろうかと思うのでございます。いかに事務の大量を地方に移管したといたしましても、計画的な事務、基準をつくる事務を国が押さえていたとすれば、地方自治体自主性は全く生かされないことになろうかと思うのであります。事務事業の分担あるいは配分の見直し、その質を十分に考えるべきであろうということをつけ加えさせていただきたいと存じます。
  58. 高鳥修

    高鳥委員長 他に御発言ございますか。——宇田川参考人
  59. 宇田川璋仁

    宇田川参考人 私もそういう一般財源化ということは賛成であります。しかし、一般財源化が有効であるためには、やはりもろもろ補助金が出ないということを、出さないということをいかにして保障するか、その保障がなければまた同じことをやるわけで、そんな第二交付税はまた切ってしまえということになるわけでありますから、第二交付税という発想を生かすためには、ただお金を出すということじゃなくて、それによっていかに各省をして、あるいは代議士の先生方をして補助金への発想が消えるかということを連結して保障させるように考えていただければ結構だと思うわけであります。
  60. 高鳥修

    高鳥委員長 よろしゅうございますか。市長さん方、何か御発言ございますか。——いいですか。
  61. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 どうも大変ありがとうございました。  これをもって終わらせていただきます。
  62. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、経塚幸夫君。
  63. 経塚幸夫

    ○経塚委員 日本共産党・革新共同の経塚でございます。  参考人方々、本当に御苦労さまでございます。まず最初に、西村市長さん、藤井市長さんにお尋ねをしたいわけでございます。  今回の補助金カット問題につきまして、重要な問題としては、特に地方財政法十条で言われております国庫負担金、内容は公的扶助が中心でありますが、この公的扶助に対する国の負うべき責任問題、これが極めてあいまいにされようとしておるところに重大な問題があるというふうに私は考えております。一年かけて役割分担、費用負担の問題を検討ということでありますが、この公的扶助に対する国の負うべき責任というものは戦後の新しい憲法のもとで定着をしておりますから、事このことについては改めて見直しをする必要もありませんし、むしろ充実をすべき性格のものではないかと私は考えております。  かつて厚生省も、この公的扶助に対する国の責任というものは極めて重要な問題で、そのときどきの財政事情によってこの責任があっちへ行ったりこっちへ行ったりされるようなことがあってはならない、同時に全面的に地方にこの権限が移譲できない最大の理由も、地方財政は極めて不安定だ、この不安定な財政状況のところへ公的扶助の責任地方にゆだねるということになれば、制度そのものの存在が極めて危険な状況にさらされるということまで言っておったわけなんですね。したがいまして、公的扶助に対する国の責任、特に生活保護などはそうでありますが、これを改めて明確にすべき段階ではないか。これが第一点。  それから二つ目には、交付税カットした分の財源措置を講ずる、したがってこれで国が負うべき責任を負っておるじゃないかという意見もございますが、交付税というのはおっしゃられるとおり地方の共有財源でありますから、これを食って国の最終責任を果たしたということにはならないという意見を私は持っておるわけでございます。両参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  64. 西村正男

    西村参考人 特に経常的な公的扶助を中心とする、この場合は国庫負担金でありますが、国庫負担金の一律削減についての考え方をお尋ねいただいたわけであります。  先生のお話にありましたように、戦後新しい憲法ができましてから、健康な最低限度の生活を保障するという趣旨にのっとって生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法その他いろいろな法律ができて、そこで八割の負担というのがずっと続いてきておるわけです。ですからここでそれが七割に落ちるというのは大変残念なことでありまして、市長会といたしましてもこの点については困りますということをやかましく申し上げながら、結果は御承知のようなところに現在落ちついておるわけであります。ですから、今年度再度御検討いただくということでありますが、少なくともこれまでの線に戻していただくように、確保していただくようにお願いをしたいと思っております。  それと関連して、当然交付税で一千億、地方債で千六百億を措置したからそれて終わりだということには性格上ならない問題であると私も承知をいたしております。
  65. 藤井精一

    藤井参考人 ただいまの市長さんと同じ意見でございますが、特に交付税の問題につきましては共有の財源ということで認めざるを得ませんけれども、各市町村になりますとなかなかこれは一〇〇%補完されたというわけにはまいらない内容が伴ってまいります。これは五十八年度に引き続いて、五十八年度を基本にした考え直しをぜひともお願い申し上げたいと思っております。
  66. 経塚幸夫

    ○経塚委員 ありがとうございました。  次に、一河参考人宇田川参考人にお伺いいたします。  これから国の方でも、国と地方の役割分担で権限移譲の問題、特に機関委任事務の見直し問題などが焦点になってくると思います。これは今の補助金問題とも関連いたしますし、今後の交付税あり方とも関連してまいりますし、戦後四十年、まさに財政的に見ましても、地方の自治権からいたしましても重要な局面に直面してくると思います。  そこで、この権限移譲、機関委任事務などの見直し問題につきまして、従来、地方制度調査会の答申が再三出されておるわけですが、ここで原則といいますか三つの点が強調されてきたやに私どもは受けとめております。この権限移譲あるいは機関委任事務の見直しに当たりましては、まず第一に行政責任を明確にする、第二に効率化に役立つ、第三に、これは大変重要な問題だと私は思いますが、市町村を優先した立場から権限移譲あるいは機関委任事務の見直し問題をやるべきだ。今回の補助金カットに当たりましても、昨年暮れに総理に進言をされました調査会の答申でも、この権限移譲あるいは機関委任事務の見直し問題を先行させるべきだということが意見として出されておりますが、先ほど申し上げました三つの立場は今後の検討の出発点であり、同時に帰着点であると考えられるわけでありますけれども、その点について両先生の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  67. 一河秀洋

    ○一河参考人 非常に基本的な問題でございますが、お説に全く賛成でございます。権限移譲の問題につきましては、責任の明確化、効率化、市町村優先という原則が極めて重要であろうと存じます。殊に市町村優先の原則につきましては、先ほど宇田川参考人からも指摘なさいましたようにシャウプ勧告以来の本来の精神でございますが、必ずしもそれが計画事務を国が握ることによって実施されていないというところに大きな問題があろうかと思うのでございますし、また、それがひいては機関委任事務の問題その他にも響いてきていようかと思っております。  殊に、今後の行政事務を考えてみますと、地方自治体に対する住民のニーズの多様化はますます市町村優先の原則の強調を必要とするかと思いますし、あるいは高齢化社会の進展に対応する対策にいたしましても、医療費の問題とか、特に老人福祉サービスの問題になってまいりますと、ますます市町村優先の原則に基づいて事務配分を行っていかなければならないと考えられるのでございまして、この原則は従来にも増して守るべき必要性が強くなってくるものと考えます。  したがいまして、市町村優先の原則をまず第一にして行政事務配分の見直しを図るべきだと考えております。例えば生活保護費等にしてみますと、一つ補助率を減らすことによって、かなりルーズになっている面もある生活保護仕事をもう少し厳格に実施するというねらいもあるのではなかろうかと思うのでございますが、そのようなお金の面で締めづけることによって行政事務効率化を図るのは本末転倒だろうと思うのでございまして、まず制度見直しをする必要があろうかと思います。
  68. 宇田川璋仁

    宇田川参考人 私は趣旨は全く同意いたしますが、しかし、その根源を考えますと、今日のような事態をもたらしたところにはそれなりの理由がある。その理由を十分考えてそれをどうカットしていくか。一つは、先ほど申しましたように、財政当局財政支出カットするということが、少し極端な言葉を言わしていただきますと、なりふり構わずそういうことをなさる。各省は、国が支出をするあるいは地方負担しても構わない、要するに補助金という、自分の事業というところを確保したい。それからまた、政治にいらっしゃる方々はやはりそれぞれの事業拡張、したがいまして私はこれもそれぞれもっともな理由だと思うのですね。  私は学校におりますけれども、私が立場を変えて役所に行けばやはりそういうことを考えるかもしれない、私が政治家になればあるいはそういうことを考えるかもしれない。要するに、人間の動機とか行動というものはみんな同じだと思うのです。その行動や何かを変えるとすれば、おまえのような行動はいけないということであってはいけないので、何が基本がというとルールを設定しておく、そしてそのルールから違反ということであれば、ちょうど違憲というような形でそれはできない。そういう意味での自治と分権、そして国との機能分担というルール設定をきちんとするということが、いわば人間のビヘービアをいけない、こうすべきだというよりも一番大事なことであるということを私今回の事件などを知ってひしひしと感じ、学び取っている次第でございます。
  69. 経塚幸夫

    ○経塚委員 どうもありがとうございました。今後の国会の審議などにも生かしてまいりたい、かように考えております。  本日はどうもありがとうございました。これをもって終わります。
  70. 高鳥修

    高鳥委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、お忙しいところ御出席いただき、貴重な御意見をいただきまして大変ありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ————◇—————     午後三時三十一分開議
  71. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  地方交付税法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。吉井光照君。
  72. 吉井光照

    ○吉井委員 まず最初に、今大きな問題になっておりますところの山口組と一和会の抗争事件について警察庁にお尋ねをしておきたいと思います。  去る一月二十六日の山口組四代目組長の殺害に絡んで、去る十四日の白昼に、神戸の三宮の繁華街で乱射事件が発生をいたしました。この日は三千人の買い物客で現場は大混乱をしたと伝えられておるわけです。幸いなことに一般市民に被害はなかったわけですが、同種の抗争事件は最近に至って名古屋、京都といったところでも連続的に発生をしておるわけでございます。したがって、現在までに全国でこの抗争事件は何件発生をしておるのか、またそれに対して検挙件数はどうなっておるのか、一般市民への被害はなかったのか、この点についてまずお尋ねをしたいと思います。
  73. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 一月二十六日の夜に大阪府下で発生をいたしました山口組組長の射殺事件に端を発した山口組、一和会双方の抗争事件の現在までの発生状況でございますが、高知県を含めまして北陸、近畿、四国等で四十回の抗争事件が発生しております。  これによる被害ですが、死者十名、負傷者九名となっております。ただ、幸いなことに一般人の被害は現在までのところございません。流れ弾が飛び込みまして三件ばかりの物的損害はございますが、人的被害は幸い今のところ発生をいたしておりません。  その四十回の抗争事件につきましてはそのうち二十件を検挙いたしておりまして、被疑者六十二名逮捕、それと事件に使われたけん銃二十四丁を押収しております。なお、三件につきましては現在被疑者を指名手配、追跡捜査中でございます。  以上でございます。
  74. 吉井光照

    ○吉井委員 これはいつものことですが、それぞれの組事務所にはたくさんの警察官が張りついているわけですけれども、そうした中で今回の事件が発生しておるわけでございます。これでは市民の安全が本当に確保できるのかという声も非常に高くなってきているのが現状でございます。したがって、こうした方法だけではなくして、他の方法も含めてこうした発砲事件の未然防止のため一刻も早く抜本的な対策を講ずべきであると考えるわけですが、いかがですか。
  75. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 事件が発生いたしまして以来、全国の各都道府県警察の暴力団担当課長を数回集めております。きょうも東日本の暴力団担当課長を集めて、現在会議中でございます。その会議におきまして指示をいたしておりますのは、まず市民保護の徹底を第一義といたしまして、そのための施策といたしましては、一つは警戒措置の徹底。これは暴力団組事務所その他抗争事件の発生しやすい場所へ警戒員を張りつけておるわけでございますが、この目的は、何せ繁華街の中に組の事務所がありますので、こういった場所での発砲事件によりまして一般人が被害に遭うことを防止するために警戒員を張りつけ、警戒させておりまして、事件の未然防止とともに発生した場合には直ちに検挙する、こういう体制を徹底させておるわけでございます。  そのほか、構成員の大量検挙によって事件を収束させるということで、幹部を含め大量検挙を指示しております。そのほか、けん銃の摘発、これは警察各部門におきます連携によりまして、けん銃をできるだけ多く摘発するということも指示しております。  あわせまして、警察だけの取り締まり警戒ということでもなかなか徹底いたしませんので、広く国民全体、市民全体に暴力排除活動といいますか暴力排除運動の機運を盛り上げる。今までやっておりますのは、公営競技場からの暴力団の締め出し、また組事務所をいろいろな施設から排除する、それからゴルフ場とかいろいろな娯楽施設からの暴力団の排除、なかなか難しい問題がいろいろありますけれども、各関係機関の協力を得まして、できるだけ社会から暴力団を孤立させる、締め出すということもあわせ行いまして暴力団取り締まりの実を上げたい、こういうふうにやっておるわけでございます。
  76. 吉井光照

    ○吉井委員 警察当局の大変な御苦労はよくわかるわけでございますが、今回の事件の内容からして今後相当エスカレートしていく要素も十分含んでおるわけでございます。したがって、警察当局としては、ぜひとも今おっしゃったような市民の安全確保を第一義に暴力団の撲滅に全力を挙げていただきたい、このことを強く要望しておきたいと思います。——どうも御苦労さんでございました。  次に、交付税関係に移りたいと思います。  まず、地方交付税の法定税率は三二%でございますが、これが五十九年度は三一・三%、六十年度は三一・五%と実質的に下回っているわけです。これは交付税特会の借入金利子に地方負担が導入されたためである。しかも、これに加えて高額補助金の一律カットが加わるわけですが、このような利子は今後特会に借入金がある限り支払わなければならない問題でございます。したがって、この額を上回る特例加算でもない限り法定税率三二%を下回ることになるわけですが、そのように理解してよろしいですか。
  77. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 特会の借入利子につきましては、将来の交付税の前倒しというふうなことで払わなければならない形になりまして、五十九年度に国と地方とでそれぞれ支払うべき額を分けたわけでございますので、この意味からいきますと、昨年度地方財政対策におきましてとった措置によりまして、地方負担分につきましては地方負担するという形にならざるを得ないと思います。
  78. 吉井光照

    ○吉井委員 しかも、この利子額は国の財政悪化によりまして増加の傾向にあるわけです。五十九年度は三千六百三十八億、これが六十年度には三千六百九十四億とふえております。元金は六十五年度までは変わらないわけですが、五兆六千九百四十一億一千万円に〇・〇七、これは政府金利でございますが、掛けますと四千四十三億、最大ここまでいく可能性があるわけです。そう見ると、なし崩し的に地方負担が増加することになるわけですが、この政府金利の七・一%を妥当と見ていらっしゃるのか、またこれは国の財政悪化を理由に、国が地方交付税一般会計から交付税特会への先行繰り入れを減らしているためにそうなっているのではないか、この点いかがですか。
  79. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 国は交付税特会におきます利子負担の軽減のために、地方交付税交付金の一部を一般会計から特別会計に対して先行繰り入れをすることにしておるわけでございますが、本年度の利子負担額三千六百九十四億円は昨年度より五十六億円増加をいたしております。  この先行繰り入れの利子の負担額がふえたと申します理由は、一つには先行繰り入れのための金額が若干減ったということ、それから日数でございますけれども、ことしの三月三十一日が日曜日でございますために一日分借り入れの利子がふえた、それから五十八年度の利子の精算分が五十九年度には含まれていないというふうなことがございまして昨年よりふえたわけでございます。  この利子の七・一というのが正しいと思っておるかというお尋ねでございますが、この政府資金の利率というものはそのように決まっておりますので、これはやむを得ないものだというふうに考えております。今後とも私ども、この地方財政の円滑な運営を確保するという観点からも先行繰り入れによる利子負担の軽減措置というものを極力やっていただくように努力してまいりたいと考えております。
  80. 吉井光照

    ○吉井委員 ちょっと大蔵省にお尋ねをするわけですが、こうした国の財政難が続く限りこのような状況はずっと続いていくわけですが、来年度以降も地方負担の利子額は増加していくのですか。
  81. 田波耕治

    ○田波説明員 お答え申し上げます。  今自治省の方から御答弁がございましたように、あるいは先生が申されましたとおり、本来、基本的には借入金の額というのは六十五年度まで同額でございますから、理論値を計算いたしますと、金利の変動がない限り毎年同額になるというのが基本的な物の考え方だろうかと思います。  ただ、その額というのは年によって若干変動はございます。例えば五十九年から六十年にかけては確かに五十六億円ふえておるわけでございますけれども、その中には、今財政局長から御答弁がございましたように、日数の関係であるとか過去の精算の関係であるとか、あるいは先行繰り入れの額も影響をしておるわけでございます。したがいまして、これは傾向としてどうなるかというよりも、その基本となる理論的な利子の金額に加えて、年々の事情、国庫の状況あるいは地方状況、そういうものを総合的に勘案いたしまして年々決められていくものだというふうに私どもは理解しております。
  82. 吉井光照

    ○吉井委員 先ほどちょっと先行繰り入れの質問をしたわけですが、地方交付税地方の固有財源であるということを明確にするために、一般会計を経由せずに、国税収納整理資金から交付税特会へ直入すべきであるという意見もかなりあるわけです。  仮にそうした場合に、現行に比べて地方負担の利子はふえるのですか、それとも減るとお考えですか。大蔵省、自治省にお尋ねいたします。
  83. 田波耕治

    ○田波説明員 現在地方利子の負担につきましては先ほど来お話をいたしておりますように、例えば先行繰り入れというような形で利子負担の軽減を図っているとともに、もう一つは、現在の交付税の交付時期というのは、先生御存じのように普通交付税が四月、六月、九月、十一月、特別交付税が十二月と三月ということで、二、三カ月を区切って交付が行われておるわけでございます。片や税金の収納というのは月々ずっと上がっていく格好になるわけでございますから、今の先生の御質問が、仮に税金を収納するペースでもって、交付税を三税の三二%分ずつ払っていくような仮定を片方でしたならば現行の額よりもどうなるかという御質問だというふうに仮定いたしますと、その場合にその差額が幾ら出てくるかというのは、いろいろな仮定の置き方によって計算は違ってくるだろうと思います。  したがいまして、これは自治省と御相談したわけでもございませんし、そういう決まった試算があるというわけではございませんけれども、六十年度交付税の総額というものは、どういうペースで税金が入ってくるかというのはこれはまた一つの仮定の置き方でございますけれども、最新の決算というのは五十八年度の決算がございますから、その決算の割合でもって税金が入ってくる、それに応じてどんどん出ていくというふうに計算をいたしますと、今の交付税というのは四月に四、五、六というものがぼんと出る、それから六月が出る、こういうことでございますから、どちらかというと、当然のことながら国が先に交付税をお払いしているというふうになるだろうかと思います。  ですから、結論から申せば今先生がおっしゃったような収納のペースで払っていくというものに比べますと、今の方が地方にとってやや有利になっているんではないかなというふうに私どもは考える次第でございます。
  84. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 今大蔵省の方から御答弁がありましたように、交付税の特会に入ってきた税収の繰り入れといいますか各月の入りぐあいと、それから交付税支出する時期をどのように決めるかというふうなことで変わってくるかと思いますが、先ほど答弁がありましたようなことで、一般的に申しますと先行繰り入れ分が若干減る形で結果が出てくるのではなかろうかというふうに思います。
  85. 吉井光照

    ○吉井委員 六十年度の国の予算では揮発油税収入の一五%、これで地方道路整備臨時交付金がつくられたわけです。しかし、それは一般歳出の伸び率をゼロにするために一般会計を通さずに道路特会に直入されているわけです。このような単なる予算編成上のテクニックのために直入できるぐらいなら、地方交付税の性格からいって、明確化のためという大義名分があるわけですが、直入がどうしてできないのか、ここらあたりを再度大蔵省にお尋ねしたいと思います。
  86. 田波耕治

    ○田波説明員 先生御指摘のいわゆる交付税特会の直入論というのはかなり古くからございます。そういうことを私どもも承知はしております。しかしながら、今の地方交付税一般会計から交付税特会繰り入れるという制度は、二十九年に地方交付税制度ができまして以来ずっとそういう制度をとっておるところでございますし、さらにさかのぼりますと、その前の配賦税制度のもとにおいてもそういう制度はとられてきておるわけでございまして、それはそれなりにかなり意味のあるところであると考えておるわけです。したがいまして、これをもし変更するということになりますと、国の予算制度あるいは会計制度全体にも非常に大きな影響が出てくるということもございまして、私どもはそういう考え方には賛成できないということを申しておるわけでございます。  実体的な理由は何かというと、一つは、現行交付税のもととなっております所得税であるとか法人税であるとか酒税というのは、国の財政にとっても非常に大きなウエートを占めておる税目でございます。それで、片一方で一般会計からそういうものを一たん受け入れて地方に出していくということを歳入歳出で両面、一卵性と申しますか、極めてウエートの大きい項目でございますから、そういう構成をとる方がいいのではないか。  なお、つけ加えて申し上げるとするならば、先ほど先生から御質問ございまして答弁申しましたように、直入というような形になりますと、今よりは若干地方の方にも不利になるというようなこともあるのではないかということも申し上げられると思います。
  87. 吉井光照

    ○吉井委員 六十六年度から交付税特会の借入金の返済が始まるわけですが、これによって法定税率への割り込みは必至ですね。したがって、地方財政に与える影響も非常に大きいと思うのですが、この点はいかがですか。
  88. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 六十六年度以降特会借入金の元金償還が始まるわけでございますが、結局この借入金を払っている段階においては、先生御指摘のように三二%を割るのではないかと言われれば、そういう形になってこざるを得ないわけでございます。現在の段階で六十六年度以降の財政状況というものを予測することは極めて難しいわけでございますけれども、私ども、この地方交付税の総額を安定的に確保するために格段の努力をしていかなければならないと考えております。
  89. 吉井光照

    ○吉井委員 そこで、この六十年度の高率補助率引き下げに伴う地方負担五千八百億については、交付税特例加算一千億を除いた四千八百億について起債を認めているわけですが、その起債のうち二千億の元利償還費に対して国が二分の一を交付税特会繰り入れることになっておる、こういうことですが、この繰り入れは六十年度の地域特例臨時の扱いから見ても六十六年度以降に繰り入れられるだろう、このように思うわけです。このように六十六年度以降なら国の負担はずっと軽くなるはずですね。  したがって、ここで四千八百億の起債の償還費の全額について国が将来の繰り入れをすべきではなかったか、このようにも思うわけでございます。そうすれば、今回の高率補助率引き下げに伴う地方負担は、政府が完全補てんするという趣旨にも合うと思うのです。また、交付税借入金の五兆六千九百四十一億の償還が始まる六十六年度以降の地方財政にとってもプラスになってくるのじゃないか、このように思うわけですが、いかがですか。
  90. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 今回の国庫補助負担率引き下げに伴う経常経費に係る地方負担の増加額二千六百億円のうち、交付団体分の残りの一千億円につきましては、国が暫定的に六十六年度以降において地方交付税の総額に加算することとしておるわけでございます。また、投資経費に係る国費減額相当額二千億円につきましては、六十一年度以降におきまして、国が地方債の元利償還金の二分の一相当額を交付税総額に加算することとしておるわけでございまして、先生御指摘のように、全部残りの分は六十六年度以降に持っていけば地方は楽ではないか、これはそのとおりでございますけれども、また将来の国の財政負担というふうなこともありまして、その辺はなかなか難しい点があったわけでございます。  私ども、今後これらの措置を含めましてもなお交付税総額が不足するという場合には、毎年度地方財政計画の策定を通じまして所要財源を確保して、全体として必要な交付税の総額を確保して財政運営に支障のないようにしてまいりたいと考えております。
  91. 吉井光照

    ○吉井委員 先般からの委員会その他のいろいろなやりとりから判断いたしましても、六十一年度に再び国の負担地方転嫁が問題となる可能性が非常に強いわけでございますが、その場合には、地方交付税で国の負担を引き受ける前に地方団体共有の借金である交付税特会の借入金五兆六千九百四十一億の繰り上げ償還を行うべきである、このように思うわけでございます。この点についてどういうお考えかという問題と、既に六十一年度交付税の法定税率引き下げもこの委員会でたびたび問題になったわけです。昨日大蔵大臣は否定的な答弁をされたわけでございますが、もしそういう動きでもあればなおさら繰り上げ償還すべきである、このように思うわけですが、この点についてはいかがでしょうか。
  92. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 現段階では六十一年度以降の財政がどのようになりますか、経済の動向あるいは国の財政状況、この辺が不確かでございますので、地方財政に余裕が生じるのか生じないのかということは御答弁できないわけでございます。御指摘のように、仮に余裕が生ずるという場合には、基本的には交付税特会の借入金負担の軽減を含めまして地方財政の健全化を図っていく、自主、自律性を高める方向で対処をするというのが基本的な考え方であろうかと思いますが、まだ現段階でそこまで検討したわけではございません。
  93. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、六十年度地方財政対策では、経常経費補助率引き上げに伴う地方負担の二千六百億について、一千億は六十年度特例加算するほか、なお一千億が自治、大蔵の覚書で、三大臣による一年以内の国、地方間の機能分担等の検討の結果将来追加されるかもしれない、このようにされているわけです。しかし、このペンディングの一千億、これは六十年度補助率引き下げによって発生する地方負担に対するものであって、三大臣による国、地方間の機能分担等の検討の結果とは無関係のはずですね。仮にペンディングだとしても、その旨を交付税法上にきちんと明記しておくべきではないか、このように思うわけですが、いかがですか。
  94. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 御指摘の千億円につきましては、当面の暫定措置といたしまして、六十六年度以降に精算すべき地方交付税の額に加算することとしておりますけれども、これは財政対策の折衝の過程におきましていろいろ議論をした結果でございますが、六十年度におきます国庫補助負担率暫定措置である、すなわち六十一年度以降の国庫補助負担率あり方につきましては六十一年度の予算編成に向けて改めて検討される、そしてその検討の結果を踏まえてこの一千億円の扱いについて自治、大蔵両省間で調整をしようという結論になったわけでございますので、そういった意味で今回の法律改正には盛り込まなかったわけでございます。
  95. 吉井光照

    ○吉井委員 補助金等の一括整理法案では、補助率引き下げは、たびたび言われておりますように六十年度に限る、こういうことが各補助金ごとに明記されているわけです。この補助率引き下げに伴うところの地方負担地方交付税基準財政需要額に参入されるわけですが、その部分は恒久化されるものではなくして六十年度に限るということを、地方交付税法上に明記しておくという工夫を立法技術的にすべきではなかったか、このようにも思うわけですが、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
  96. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 御指摘ごもっともな点があるわけでございますが、地方交付税法に定めます単位費用は、給与改定あるいは各種の制度改正によりまして毎年度改正を必要としておりますところから、法律上本則ではなくて別表で定めて、毎年度交付税法の別表改正として国会の御審議をお願いいたしておるところでございます。単位費用の内容には、恒久的なものもあれば、また単年度措置を前提としたものもあるわけでございますが、これらを区分して別の法形式で改正するということは法制上も大変繁雑になるということもございますし、例えば五十年代の財源対策債に振りかえられた場合にも別表改正という方式によって改正を行ってきたところでございますので、今回の措置も、こうした最近の立法形式に準じて行わせていただいたものでございます。
  97. 吉井光照

    ○吉井委員 では次に、退職者医療制度につきまして厚生省にちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  最近の報道によりますと、厚生省が昨年度創設した国保の退職者医療制度では、当初の加入予定数の四百六万人が大幅に下回って、実加入者は二月末で二百六十四万人、六五%にとどまっているわけでございます。そのために、四百六万人加入を前提に、既に補助率引き下げられた補助金と健保等の拠出金を予定して五十九年度の予算を組んでいる市町村の国保会計では、五十九年度決算は大赤字、このようにも言われているわけでございます。そこで、この赤字の見通しはどのくらいあるのか、またこの原因は一体何なのか、ひとつ具体的に説明を願いたいと思います。
  98. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 お答え申し上げます。  国民健康保険の赤字につきましては、市町村の国保の会計というのは五月末の締め切りということになってございますので、まだ決算というのは出ない状況でございますが、先ほど先生が申されましたように、退職者医療を四百六万と見込んでおりましたのが現在六五%の把握率ということで、この結果市町村の財政負担を与えているというのは事実であろうかと思うわけでございますけれども、一般的に申し上げれば、非常に老人が多いところ、あるいはその老人医療の清算分というものがあったり、あるいは受診の状況でございますとか、あるいは急に高額な医療費の人が突発する、こういうふうなさまざまな原因があるわけでございますが、私どもといたしましては、市町村国保の退職者医療制度に伴う財政影響につきましてはこれから調査をいたしまして、全国的な状況を把握したいというふうに考えております。
  99. 吉井光照

    ○吉井委員 この問題については、各地方自治体では非常に深刻な問題になっております。けさほども参考人質疑が行われたわけですが、その中で、京都府の八幡市長さんがお見えになって説明をしておられましたけれども、一〇%の見積もりが幾ら探しても六%しか見つからない、このようにおっしゃっています。幾ら探してもというような文句までついておるわけです。したがって、これだけによって五千万円の赤字である、したがって国保の値上げをせざるを得ない、このようなこともおっしゃっていたわけでございます。  そういったところから見れば、やはり厚生省側に大きな見積もりの誤りがあったのじゃないか。ちょっと言い方は悪いかもしれませんが、こうした見積もり誤りが生じたのは、厚生省が五十九年度の当然増を削ることに急な余りに、十分な事前調査もせずに、単純な数字合わせだけで四百六万人が加入するというように考えたのではないかという一部の評論もございます。つまり国庫補助金削減のため、当初から実現不可能とわかっていた数字をわざわざつくって、それによって強引に補助金を減らしたのではないか、このようにも言われておるわけですが、いかがですか。
  100. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 退職者の数につきましては、厚生年金でございますとか各種共済組合といった年金受給者をもとにいたしまして、これに厚生行政基礎調査にあります国保の加入者の割合といった統計に基づきまして私どもといたしましては正確に推計したつもりでございますが、実績は実績と受けとめる必要があると考えております。しかし、今後とも退職者の把握には全力を尽くしてまいりたいということでございまして、最初から私どもがそういうふうな財政影響というものを見込んで積算したというものではございません。
  101. 吉井光照

    ○吉井委員 私はこうした事態になることを恐れて、当委員会で昨年の四月十七日に、またことしも去る二月八日に厚生省に念を押したわけです。ところが、いずれも、大丈夫です、このような答弁が返ってきたわけです。しかしながら、現実はこうした今申し上げたような状況になっているわけでございます。五十九年度の退職者が、全員直ちに五十九年度中に加入するということは事務手続の上から見ても不可能なことは明白なんですね。仮に全員加入したとしても四百六万人という数字にはほど遠いのではないか、このように思うわけですが、いかがですか。
  102. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 先ほども申し上げましたように、私ども各種の統計を用いましていろいろ推計をさせていただいたわけでございます。しかもこれから私どもも市町村と協力いたしまして退職者の把握に努める所存でございますが、やはり結果は結果として受けとめる必要があるというふうに考えております。
  103. 吉井光照

    ○吉井委員 この問題につきましては、既に全国の町村会それから市長会は、政府は十分な財政措置を講ずべき旨の決議をしております。また、それを申し入れしておるはずでございます。また、来る五月二十九日には市町村が国保財政危機突破全国大会、これを開いて、国の昨年の制度改革に伴うところの市町村の負担増について国で完全補てんすべきだという運動を強力に展開をする意向を明らかにしております。  厚生省はこうした動きを御存じなのか。また五十九年度の国保の赤字対策として厚生省はどういうふうにお考えになっているのか。いつも言われますけれども、調査をしてとか調査を待ってとか、こんなことを言っておったら五十九年度は過ぎてしまうわけですね。これらについてはいかがですか。
  104. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 繰り返して申し上げますけれども、私どもこれから調査をいたす所存でございまして、この結果を踏まえまして市町村国保の財政運営に支障がないような方策を私どもとして検討していきたいというふうに考えているわけでございます。  五十九年度の場合で申し上げますと、赤字がどうかということで申し上げますと、従前から健全財政を維持してきた、こういうところは積立金等——この積立金につきましては、老人保健法の改正によりまして結構財政的に有利に働いたという面もございまして、その結果五十八年度末にはかなりの市町村におきまして積立金等を持っているわけでございます。したがいまして、従前からそういう健全財政でやってきたというところにつきまして、これは大体九割以上の市町村だと思いますけれども、こういったところは五十九年度は赤字は余り出ないのではないかと考えております。
  105. 吉井光照

    ○吉井委員 そこで、五十九年度に国保の負担増分の三分の二を穴埋めする、こうしたことが言われておるわけですが、その残りの三分の一はどうするのですか。
  106. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 先ほど先生が御指摘になりました退職者医療制度の影響分の三分の二を埋めるということでございますが、この措置は特に今度の制度改正によりまして急激な財政影響を受ける普通調整交付金が行かない団体、これを念頭に置きまして、優先的にショック緩和の措置ということで三分の二の補てんをしたわけでございますが、このあとの三分の一の分につきましては普通調整交付金の財政需要額の中に組み入れまして、その中で財政力の弱い団体につきましてはその分も埋めるというふうなことにしているわけでございます。
  107. 吉井光照

    ○吉井委員 先ほどから繰り返して言うようですが、市町村ではこの問題について非常な関心を持っておりますし、全国大会も開いて強く政府にも要請をしていく、こういった非常に強い態度を示しておるわけです。先日報道されたところによりますと、市町村ではこの赤字というものは国の制度改正の見積もり誤り、これによるものだから、市町村の一般会計からの補てんをせずに赤字のままで放置をしておくという動きがあるのだ、こういうことも聞くわけですが、もしこのような動きがあった場合はどうされるのか。またそのような動きを御存じなのか、いかがですか。
  108. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 先生の御指摘のような事実は、全国町村会の方で各県の町村会あてに出された文書だと思いますけれども、これは財政上の穴埋めをどうするかという点は市町村のお考えということでございますので、その結果については私どもがどうこう言うことはないわけでございます。しかし、これをどうやって埋めるかということにつきましては、これからいろいろ市町村ともども私どもも検討していく必要があるというふうに考えております。
  109. 吉井光照

    ○吉井委員 このようなケースですね。市町村が国の政策のミスによるものだから赤字のままにしておく、これは市町村の気持ちも十分わかるわけですが、会計処理の仕方としてはいかがなものか、このように考えざるを得ないわけでございます。  そこで自治省としては、もしこのような市町村が出てきた場合にはどう指導をされるおつもりなのか。また、その指導に違反した市町村に対して制裁措置か何かあるのか、この点いかがですか。
  110. 土田栄作

    ○土田政府委員 委員御指摘のように、最初四百六万人と見込んでおりました退職者医療制度の適用者が、二月末現在で二百六十四万人ということで百四十二万人分だけ穴があいているわけでございますが、これの国保財政に及ぼします影響は非常に大きいものということが予想されるわけでございまして、全国町村会を初めといたします地方団体においても、国保財政の急激な悪化ということに対して大きな懸念を持っているわけでございます。  現に先ほどからの委員の御指摘にありましたように、全国町村会におきましては、制度改正に基づく五十九年度の国保会計の赤字については、市町村の一般会計からの繰入金によって補てんしないで赤字決算とするという申し合わせがされているわけでございますけれども、自治省といたしましては、国民健康保険事業というのは、本来保険料と国庫支出金で賄われるべきものでございまして、一般会計から国保会計事業への繰入金についてはその性質上認めるべきでないというふうに考えているところでございます。従来からその旨を地方団体に指導してきたところでございまして、この考え方は今後とも堅持してまいりたい。  それからこの財政運営をどうする、赤字を出したとかどうとかということによって、それに対して制裁をするとか、そういうようなことは全く考えておりません。  それから厚生省におきまして、今回の制度改正による影響を含めまして、できるだけ早く市町村の国保財政状況を全国的に調べるということにしておられるわけでございますけれども、私どもといたしましては、退職者医療制度の創設等の制度改正によりまして、市町村国保の全体としての大幅な保険料水準の引き上げを余儀なくされるというような事態が生ずることのないように、市町村国保財政の実態を踏まえまして、所管省におきましてどうしてこういうことになったかという原因を十分分析し、今後所要の適切な措置を講ぜられるべきものというふうに考えているところでございます。  私どもといたしましても、今後、健全な国保財政運営が確保されますように厚生省とも十分連絡をとり、市長会、町村会とも連絡をとって対処してまいりたい、このように考えております。
  111. 吉井光照

    ○吉井委員 厚生省にお尋ねしますが、先ほどもちょっと触れましたように一部の市町村では、六十年度にこの赤字解消のために保険税、また保険料の引き上げを行わざるを得ない状態になっている、このようにも聞いておるわけですが、六十年度の税や料の引き上げ状況は掌握していらっしゃいますか。この点はいかがですか。
  112. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 六十年度の予算の状況につきましては現在調査中でございまして、まだまとまっておりません。六月には私どもも把握したいというふうに考えております。
  113. 吉井光照

    ○吉井委員 報道によりますと、自民党内部でもこれを放置できなくなって、何らかの対策を講じなくてはならなくなった、このようにも聞いているわけです。しかるに厚生省は、五十九年度負担増の三分の二は穴埋めするけれども、六十年度負担増の三分の一の穴埋めにとどめて、さらに六十一年度はこの穴埋めは廃止することにしている、このように聞いておるわけでございます。つまり、残りは、先ほどからもちょっと申しましたように、市町村での国保税や国保料の引き上げによるべきだということのようですが、これでは今回の厚生省の生活保護補助金補助率引き下げと全く同じですね。国が大型消費税を導入するのには国民の抵抗が非常に強い。したがって、まず国の負担地方に転嫁して、そして地方はこれを住民に再転嫁する。つまり、地方団体をクッションにして国民の負担を求めて、大型間接税でない形で国民に国の財政再建に協力させるということではないか、このようにも思えるわけでございます。  厚生省は、今回の高率補助率引き下げで国民に迷惑をかけない、このように言っておりますが、この退職医療でも国保税等の引き上げはないと当初言っておられたはずでございます。ここで退職者医療制度を見直すというお考えはありませんか。
  114. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 退職者医療制度につきましては、被用者保険と地域保険である国民健康保険、これの負担の公平化を図るということで、従来から国保関係者の間で非常に強い要望があった制度でございまして、その面で今回の退職者医療制度は、私どもとしても評価できるというふうに思っているものでございますが、遺憾ながら、先ほど来のお話にございますように、退職者の数等、見込みどおりにいってないという面があるわけでございます。私どもこれから今後の推移をさらに見きわめて、まだでき上がって半年たったばかりでございますので、その辺今後の動向を見守りながら、この制度についてあり方を検討したいというふうに考えております。
  115. 吉井光照

    ○吉井委員 健保の組合や共済組合の四百六万人加入を前提とした拠出金、これは退職者医療制度への加入者が減少するわけですから減額できるのじゃないですか。そうなると、その拠出金を必要とすることになったために組合員の保険料の引き上げを予定している組合においては、その引き上げが不要になるわけですが、この点はいかかでしょう。
  116. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 退職者医療制度のための被用者保険からの拠出金につきましては、六十年度について申し上げますと、当初標準報酬の五・七パーミリというふうな見込みを立てていたわけでございますけれども、今までの実績等を勘案いたしまして四・〇一パーミリというふうに決めたわけでございます。それで余るということは、これによって解消できたのではないかというふうに考えております。
  117. 吉井光照

    ○吉井委員 では、その問題の締めくくりとして大臣にお尋ねしておくわけですが、高率補助率の一律引き下げによって国と地方との信頼関係が大きく揺らいできた、このようにも思われるわけですが、その上今度は国保の問題がまた覆いかぶさってきた。これではやはり地方の国に対する信頼関係はますます失われていくような気がするわけでございます。厚生省予算というものは、これは福祉予算として、年金にしろ医療にしろ福祉一般にしろ、当然増経費が多いことは当然だと思いますが、それなのに大蔵省に聖域化してもらえない。マイナスシーリングがかかってしまって、毎年その当然増を削るのに厚生省の皆さんも大変御苦労なさっていることはよくわかるわけでございます。  しかしながら、到底実行できそうもないことを実行できるような形に仕上げて予算をつくり上げて、そしてそのしわ寄せを無理に地方団体に押しつけるということは絶対にあってはならないことでございます。今までは中央各省地方不信で、地方に権限を移譲するのに反対をしていたわけですが、今度は地方の中央不信といいますか、そういったことも言われております。自治省も、せっかくの地方行革大綱も、行革をしてもその努力の成果が国の負担転嫁で消えてしまうというのでは、これは地方にとってもその意欲をなくしてしまうのではないか。今回のことも一律マイナスシーリング方式の欠陥だ、このように思うわけですが、こういう問題が再び起きることがないようにするためにも、この一律マイナスシーリング方式とかこういったものはもう見直す時期ではないか、このように考えるわけですが、大臣の所感をお伺いしたいと思います。
  118. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今の国保の問題につきましては、吉井委員のおっしゃったことと私どもの調査しておるところはほとんど一致しております。でございますので、自治省といたしましては、地方の保険料の値上げということは、実際調べてみますと、一二%以上のところも相当出ておるようであります。そういうようお状況でありますので、町村会からも私どもはこの二月にいろいろの陳情を受けておるのでありまして、何としてもこの負担は厚生省において、大蔵省と連絡して措置すべき問題であると考えておりまして、赤字になったから地方負担するという性質のものでは絶対ないと思っております。そういう意味におきまして、厚生省と十分私どもも実情につきましては話し合いまして、とにかく所要の措置を講じてもらうという点で折衝してまいるつもりでございます。  それから、シーリングその他につきましての御意見がございました。毎年五%とかまた一〇%というようなシーリングで予算が編成されております。そういうことで、今度の補助金カットの問題におきましては、暫定的な一年限りの措置として国で補てんするというような約束のもとにやっておるのでありますから、一年限りということは、この間に地方仕事の分担とかいろいろ検討いたしまして、実は昨年の九月ころから十二月の、この話が厳しい財政状況であるからということでやむを得ない措置として私どもが承知した間におきましても、補助金が定着しているもの、あるいは事務事業の廃止によって要らぬもの等の問題は、大蔵当局に事務的にも私どもは相当連絡しておるところでございます。  だから、国の厳しい財政状況というものはよくわかっておりますが、地方も御承知のように、先ほどからお話しのように、莫大な借金を抱えておりますし、また、特に国は一本でございますが、地方は三千三百近い団体、それぞれのいろいろな状況にあるわけでありますし、公債費負担率におきまして二〇%以上の団体が残念ながらふえまして、四分の一、八百二十団体もあるというような現状からいたしまして、地方の税源の確保と申しますか、先ほどからお話しになりましたような交付税の利子の問題、これはもう言っておりますように補助金引き下げの問題、その次には交付税引き下げというようなことに至らないとはだれも予測できないところでありますので、そういうような事態を構え、地域の情勢というものも十分構えまして、地方制度調査会というものにも十分意見を聞きながら地方財源の充実、自主性というものの確保には一生懸命に努力をしなければならぬし、そういうつもりで今後も折衝に当たっていきたいと私は思っております。
  119. 吉井光照

    ○吉井委員 では厚生省、ひとつしっかり頑張ってください。  次は、六十年度地方財政状況についてお尋ねをするわけですが、御承知のように、六十年度地方財政は高率補助率引き下げによる地方負担増を除けば収支均衡した、このように言われておりますが、これはあくまでもマクロの話でありまして、ミクロでは到底そうは思えないわけです。これは単純な計算かもしれませんが、さきに発表された都道府県の当初予算の対前年度比を見ても、その伸び率が地方財政計画の伸び率四・六%を上回ったのはわずか十八都道府県にすぎません。伸び率が一%以下という団体が二県もあるわけでございます。また伸び率がよいという地方税にしても、地財計画の一一%増を上回っているのはこれも十八県、五%未満の低率にとどまっているのが六道県に上っているわけでございます。  地方税の伸びは景気回復を背景とした法人関係税の伸びに支えられているわけですが、地域的には立地企業の数の多少やまた地域の基幹産業、いわゆる先端技術とか輸出関連産業、こういったものの好、不調によってかなりの差が生じるわけで、ミクロでは決して財政好転とまでは言い得ない、このように思うわけでございます。また、五十九年度財源対策億一兆二千億、これは六十年度には全廃をされたわけですが、それにかわる交付税が来るかと言えばその保証もないわけであります。  こういうことで、地方財政は全体としてつじつまが合ったかもしれませんが、個別に見れば好転とか余裕があるとかとてもそうは言えないと思うのですが、ひとつ自治省のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  120. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 六十年度地方財政計画におきましては、歳入面において地方債の抑制に努めますとともに、地方税あるいは地方交付税等、地方一般財源のほぼ順調な伸びが確保され、また歳出面におきまして国と同一基調によってその抑制が図られました結果、国庫負担率引き下げが行われない前提では収支が均衡することとなったわけでございます。  また、この一般財源比率を見てみましても、六四・二%というふうに向上しておりますし、地方債依存度は七・八%に下がるというふうに、歳入構造はある程度改善の方向には向かったわけでございます。しかし、地方財政の現状は、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、巨額の借入金を抱えておる、また公債費の増加というふうなこともありまして、非常に厳しい状況に置かれておるわけでございます。  さらに、この地方財政は国の財政構造とは異なっておりまして、義務的経費のウエートが非常に高い、また歳入構造から見ましても、自主財源が乏しくて国の制度施策、こういったものの影響を極めて強く受けるという性質を持っておるわけでございまして、御指摘のように、この三千三百の団体それぞれにいろいろと違った財政状況を示しておるわけでございまして、現下の地方財政というものは依然として容易ならざるものがあるだろうと私どもも考えておるわけでございます。  このような状況でございますから、この地方財政状況といいますか特質を踏まえながら、財政構造の抜本的な改善とその健全化に努めてまいらなければならないというふうに私どもも考えております。
  121. 吉井光照

    ○吉井委員 財政力の弱い団体は、今回の高率補助率引き下げも加わって、既存の財政調整基金を取り崩して予算編成に大変苦労した、こういう団体も数多くあるわけでございます。  ところで六十年度地方財政対策では、従来財源対策債が廃止されたりまた減額された年には、必ずその減額による個別の地方団体の激変を緩和するために調整債が計上されてきたわけです。そしてこれによって収支均衡し、財対債が全廃された五十七年度にもこの調整債千二百五十億が計上されて、また五十九年度も前年度よりも減少したものの千百五十三億計上されているわけでございます。  ところが六十年度には調整債が計上されておりません。これは六十年度地方税等の伸びがよいからという理由のようですけれども、地方税は五十七年度の方がむしろ伸びはいいし、地方交付税の差も大きくありません。個別の団体にとって財対債の廃止に伴う激変緩和の必要性は五十七年度と何ら変わらない、このように思うわけです。せめてこれがあれば、六十年度地方税の伸びが小さく、また交付税にも大きな期待ができない団体では随分助かる、このように思われるけれども、調整債が計上されなかった理由は何ですか。
  122. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、現在の地方財政というものはできるだけ早く借入全体質から脱却しなければならないということが大きな課題でございます。そういった基本的な考え方から、今回、五十七年度におきますような調整債と申しますか、激変緩和のための起債を設けなかったわけでございます。  六十年度と五十七年度状況比較してみますと、税収の見込みの計画、それぞれ五十六、五十七の計画同士を比較してみますと、五十七年度の場合におきましては一一・七%の税収の伸びを見込んでおったわけでございます。この五十七年度の計画の見込みに対して五十六年度の税収の決算見込み、実際に入るであろうと見込まれる実績の伸び率を見てみますと一一・六%という状況でございまして、五十七年度の見積もりというのは非常にぎりぎりの見込みを立てておったわけでございます。今回、六十年度の計画の税収は一〇・六%、これは対計画の伸び率でございますが、五十九年度の決算見込み、これに対比いたしますと八・二%というふうに若干のゆとりと申しますかすき間と申しますか、こういった面が見られるわけでございまして、五十七年度の場合のようなぎりぎりの計上ということはしておらないわけでございます。そういった意味合いもありまして、今回はできるだけこの借入全体質から脱却いたしたいという考え方を貫いたわけでございます。  なお、今後それぞれの個々の団体におきまして財政運営にいろいろ問題がある場合には、私どもは地方債の配分等によりまして各団体とも十分相談しながら適切な措置を講じてまいりたいと考えております。
  123. 吉井光照

    ○吉井委員 さらに、この高率補助率引き下げが、このような財政力の弱い団体に強い団体と等しく一律に適用される、財政力の弱い団体は公共事業補助率がかさ上げされていたことを考えると、その補助率引き下げによる影響はむしろ財政力の弱い団体の方が大きいのではないか、このように思われるわけでございます。そして、その引き下げに伴う地方負担増五千八百億のうち四千八百億は起債で補てんされておる。地財計画では六十年度末の地方債残高は四十一兆七千六百四十四億、前年に比して九千六百一億増とされておりますが、ちょうどその半分が補助率引き下げによるものですね。  従来自治省は公債費負担率二〇%赤信号、このようにされてきたわけですが、五十八年度末でこれを超えている団体数が八百二十団体、二五%に達しております。その内訳を見ますと、県は一、市が五十一に対して町村が七百六十八で、全町村の三〇%が既にこの赤信号を超えているわけです。今回の起債措置でさらに赤信号を超えざるを得ない団体が出てくると予想されるわけですが、自治省は二〇%を超したら赤信号ですよという赤信号を出しておきながら、一方では赤信号とわかっておっても渡らざるを得ない、越えざるを得ない状態にしておるのは一体どういうわけですか。
  124. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 いろいろ財政力の違う団体がございますが、今回の補助率カットによります影響につきましては、いずれの団体につきましてもそれぞれ財源措置をいたしまして地方財政運営に支障のないようにいたしておるところでございます。今回も地方債の増加の問題がございましたけれども、全体といたしまして計画では地方債を八千億ばかり減らしておるわけでございます。この地方団体の公債費負担率が年々高くなっている。これは確かに財源対策債というものをこれまで増発してきたことによるものでございますけれども、それぞれの財源対策債につきましては、元利償還金について所要の措置を講じておりまして、これらの元利償還費につきまして地方団体が困ることのないように、別途の措置を講じておるところでございます。これまでの財対債の増加ということは非常に大きな割合を占めてまいりましたが、今年度はこれも減額と申しますか、廃止したわけでございまして、先ほどから申しておりますように、できるだけ早く地方財政を借入全体質から脱却させるべきであるという基本を貫いてまいりたいと思っております。
  125. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、国土庁がお見えになっておりますので、ちょっとお尋ねをしておきたいのです。  自治省によれば、昨年三月三十一日現在の住民基本台帳登録人口は、前年の五十八年三月三十一日の人口に比較して減少している県が八県に上っておる、このように言われております。これは、五十七年はわずか一県ですね。一時ストップしたと言われておるこうした過疎から過密への人口流出が再び始まっているのが実態ではないか、このような気もするわけですが、その実態はどうなっておるのか。今後の見込みはどうなのか、また、このような人口流出は何が最大の原因なのか、ここらの点についてお尋ねをしたいと思います。
  126. 仁科英麿

    ○仁科説明員 お答え申し上げます。  過疎地域からの人口流出についてでございますが、まず過疎法に基づきます過疎市町村の数が、現在全国で千百五十一町村でございます。これらの市町村の人口動向でございますけれども、まず長期的に見ますと、過疎化が進行した昭和三十五年から四十年までの五カ年では、国調人口で一二・九%の減少をいたしております。四十年から四十五年までの五カ年間では一三・六%ということで、いずれも大幅な人口減少になっていたわけでございますが、その後は、昭和四十五年から五十年まで見ますと八・八%、五十年から五十五年まで見ますと三・七%の減少ということで、長期的には減少率はだんだん低下をしているという状況でございます。  しかし、御指摘のようにこれを最近の昭和五十五年以降の動向で見ますと、これは住民基本台帳人口になるわけでございますが、五十四年までだんだん低下してきておりました減少率が横ばいの状況になっております。昭和五十五年から五十九年までの四年間の減少率が三・一%でございますが、先ほど申し上げましたように五十年から五十五年までの減少率三・七%に比べて、まあ四年間と五年間で違いがございますが、五年間に直しますと、五十五年以降四%前後という数字になりますので、ほぼ同じ程度の減少率だということになるわけでございます。  この減少の内容を、社会減少と自然増加とに分かれるわけでございますが、分けてみますと、従来、社会減少がだんだん低下をしてまいりまして減少率が低下をしたということがあるわけですが、最近は減少率が横ばいの傾向にあるということでございまして、五十八年と五十九年の社会減少率、数字を申し上げますと〇・九七九%となっておりまして、約一%の減少ということでございます。結局、若い方が進学あるいは就職によって流出をしている、そういう状況が引き続いているというふうに考えられるわけでございます。  今後の見込みでございますけれども、一部の団体につきましては、青年層の他地域からの流入あるいはUターンというものが見られる団体もあるわけでございますが、多くの団体においてはなおそういう流出の歯どめのめどが立っていないというような状況でございまして、今後大きな状況の変化がない限りは引き続きある程度の流出が続いていくというふうに予想されるところでございます。  その原因でございますけれども、過疎地域は公共施設の整備水準あるいは医療、教育等の生活の面において他地域と格差があるということも一つの原因でございますが、やはり基本的には過疎地域にはいい職場がない、安定した収入があり、かつ多様な就業の場といいますか、生きがいと夢のある就業の場が少ないというようなことで流出をする結果になっているのではないかと思います。それらとあわせまして、若い方はどうしても都会にあこがれるというような状況もあろうかと思います。そういうものが一体になって流出が続いていると考えられるところでございます。
  127. 吉井光照

    ○吉井委員 今の御答弁にもありましたように、やはり就業の機会が非常に減少しておる、こういったことも過疎に拍車をかける一つの大きな要因であるわけです。ところが、この人口流出地域の団体は、こうした公共投資拡大しようとしてもその裏負担とすべき一般財源が十分にない、ならば起債に頼ろうとしても公債費の負担比率が非常に高いために起債もできない、こういう状況でございます。先端技術産業にも景気のよい輸出産業にも乏しい地域、特に町村の財政状況は、現在こういうところに追い込まれているのが実情ではないかと思うわけでございます。  このような状況にさらに追い打ちをかけたのが今回の高率補助率引き下げ、これによって産業構造の違いによる府県間格差はますます拡大をしてくる。また、府県と市町村、または市町村の中でも市と町村との格差がますます拡大の傾向にあるし、その結果、財政力の強弱によって住民の生活水準の格差までが拡大してくるのではないか、このようなことも懸念されるわけでございます。こういったことを考えますと、やはりこの地方交付税を、これら財政力の弱い団体に対する傾斜配分というものを一層強化すべきではないか、このように思うわけですが、いかがですか。
  128. 土田栄作

    ○土田政府委員 過疎市町村に対する財政措置の問題でございますけれども、一つは、起債の関係で、辺地及び過疎対策事業債がございます。これらのものにつきましては、例えば過疎対策債は六十年度で千六百七十億ございまして、一市町村当たりにしますと一億四千五百万円ほどの金額になります。これが過疎振興整備の前期、後期の五カ年計画の財源として有用に活用されている。なお、これにつきましては、起債の制限比率を計算いたします場合は交付税に算入される分は引いて計算いたしますので、この分の起債といいますのは有効に過疎対策として活用されているというふうに考えております。  それから、地方交付税による措置はいろいろあるわけでございます。例えば僻地医療対策費でございますとかあるいは小中学校の遠距離通学対策費でございますとか、そういうふうなものにつきましていろいろ財政措置を行っているわけでございますし、それから普通交付税の段階補正なりあるいは投資経費におきます一定額、定額分の算入の強化とか、いろいろな財政措置をやっているわけでございますけれども、今後とも引き続き過疎地域の振興が図られますように、所要の措置を講じまして過疎地域の振興を図ってまいりたい、このように考えております。
  129. 吉井光照

    ○吉井委員 時間も参りましたけれども、きょう農水省お見えになっていただいておりますので、一点だけ最後にお尋ねをしておきたいと思います。  政府は、去る九日に、緊迫化するところの通商摩擦の解消を目指して第七次の対外経済対策を決定して、市場開放策を推進することになったわけですが、その中で、特に焦点であった合板関税についてはおおむね三年目からの引き下げが打ち出されて、既に合板業界は大幅縮小は避けられない、このように言われておりますが、合板業界に対するところの影響をどのように見ていらっしゃるか、この一点だけを最後にお尋ねしておきたいと思います。
  130. 浜口義曠

    ○浜口説明員 我が国の林業、林産業を取り巻く状況は、先生御指摘のとおりでございますが、木材需要の低迷あるいは木材価格の低落、そういったようなことから極めて厳しい状況にあります。合板の関税引き下げを行うことにつきましては、合板の競争力が低下し、現在深刻な状況にある合板業界等に大きな影響を与えるというふうに考えております。  今回の、今御指摘の対外経済対策の中で、現在の厳しい状況のことにかんがみまして、単に合板業界の体質改善のみならず、中長期の視点に立ちまして木材産業及び林業を通ずる対策を詰める必要があると考えておりまして、一つは木材需要の拡大二つ目は木材産業の体質の強化あるいは間伐、保育と森林・林業の活性化等を中心に、財政金融その他の所要の措置を当面五カ年にわたり特に講ずるということにしております。具体的内容等については、現在鋭意検討中でございます。
  131. 吉井光照

    ○吉井委員 議事進行に協力いたしまして、この辺で終わりたいと思います。ありがとうございました。
  132. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、山下八洲夫君
  133. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 まず最初に三点ばかり、私にとっては基本的な問題を大臣にお尋ねさせていただきたいと思います。  まず最初に、二月二十一日の地方行政委員会の自治大臣の所信表明をお聞かせいただいたわけでございます。そういう中で、私もこの所信表明につきましては相入れるところが随分たくさんございまして、ある面では大変すばらしいな、また実行していただきたいなという考えを持っているわけです。  そういう中で、特に行政改革の推進と地方行政の充実というところで、「住民福祉を増進し、活力ある地域社会を実現していくためには、行政改革の推進が当面の最重要課題となっております。」また、その続きとしまして、「国民に身近な行政は国民に身近な地方公共団体において自主的、自律的に処理することのできる体制を強化し、地方分権を一層推進することが必要であると考えております。」特に「地方分権を一層推進する」、私もぜひそういう方向で進んでもらいたいし、同時に、その努力に敬意を表するわけでございます。  同時に、総理の施政方針演説におきまして、「地方公共団体と協力して、花と緑に囲まれた、安全で快適な生活環境づくりを進め、さらに、各地域が独自の創意工夫により、特色ある文化の花を吹かせた、魅力ある町づくり、村づくりを進められるよう努力してまいります。」と言われておるわけです。考え方によればこれの裏打ちにもなるのではないか、そのように思います。私も今日、特にこの一、二年を見ておりますと、中曽根内閣自身も、総理あるいは今の自治大臣も盛んに地方分権に一層力を入れてまいりたい、同時に地方分権を確立していきたい、地方の時代づくりに積極的な発言であろうかと思うわけです。だが、実際に見てどうだろう。逆にだんだんと中央集権化が太くなりつつあるのじゃないか。特にこの一、二年そのように私は感ずるわけです。その辺につきまして、まず最初に大臣の御所見をお聞かせいただきたい、このように思います。
  134. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 山下委員から当面の地方自治の問題で御意見をお伺いしたのでありますが、私もたびたび述べておりますように、住民の自治というのは近いところでやるということが一番基本だろうと思うのであります。その住民の自律性とか自治というものに基づいて創意工夫を凝らして、地域の潤いのある行財政をやっていくということが一番必要だと考えております。  ただ、そのために今のところ地方の自律性に基づきまして完全にできるような状況になっておるかというと、補助金の問題もありますし、同時に国の関与とか必置規制、これは今度法律が出ておりますが、やはり権限の移譲ということが相当大きい問題だと私は思います。権限の移譲に伴う財源もまた確保していかなければならぬだろうということも考えておりますし、さっきから言っております補助金についても、いろいろの区域の地方生活が複雑化するにつれまして、住民のニーズというものもいろいろ変わってきているのじゃないだろうか。そういうものに対応していくために補助金は、今後事務事業見直し、あるいはそういう点から考え直して、地方にとりまして本当に有効な補助金——補助金というのは、一律カット先ほどから申し上げておりますように私どもは予算編成の直前までは反対したのでございますが、やむない厳しい財政ということでこれを認めざるを得なかったということは私も大変残念でございます。  しかし同時に、それならこの一年間の検討によりまして、今言ったような方向で地方分権、自治というものを基本にして、事務事業見直し、それに邪魔になるような国の制度はできるだけ早く解決をして、六月ごろ行革審から答申が出るということでございますので、それもあわせて行っていかなければならぬと私どもは思っておりますが、何と申しましても、それと同時に今後は地方税源の問題につきまして、行財政改革が進んでいくにつれまして、地方財源ということにつきましてもいろいろの問題が出てくると考えております。そういうものに対処しながら地方自主性あるいは地方分権というものを、何としても実質上町村が潤いのある行政ができるようにするということを基本にいたしまして進めていかなければならぬと考えておりますので、一層の皆さんの御指導、御鞭撻を得たいと思っております。
  135. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 補助金カットの問題やら地財計画などについて触れたいと思うわけですが、そのときに今の大臣のお話に対してもっと深く触れさせていただきたいと思いますが、その前にあと二点ばかり大臣にお尋ねしておきたいわけでございます。  私も百一国会で不公平税制の問題について質問させていただきました。ほかにも先輩の委員の皆さんがたくさん質問もなさっていますが、特に昨年の百一国会ではマスコミ関連七業種の不公平税制の問題、同時に医者の社会保険診療報酬の不公平税制の問題について質問させていただきました。当時は田川自治大臣でございましたので、特にマスコミ出身の関係か、大変前向きの答弁をいただきまして、とにかくこの不公平税制を正してまいりたい。当然そのときは社会保険診療報酬についても入っていたわけでございますが、ふたをあけますと、マスコミ関連七業種の方はかなりいい方向で改正へスタートなされた、そのことに対して私はある面では敬意を表しておるわけでございます。  特に古屋大臣も病院関係には大変関係の深い方とも聞いておりますし、そういう意味で今度はこの積み残しの方の社会保険診療報酬の不公平税制是正について、ぜひ任期中に一定の明るい見通しが出るように取り組んでいただきたいと思うわけでございますが、その取り組みの決意についてお聞かせいただきたいと思います。
  136. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 昨年私がこの地位を引き受けましてから、これらの問題は党の税調並びに政府税調でいろいろ論議されたところでございます。特に今お話しの社会保障診療ということは、政府税調でも積極的な取り上げ方をしておったのでございます。率直に言いますと、党税調の私どもの頑張り方が足りなかったのじゃないか、自分ではそういうように反省しておりますが、マスコミ関係の税とこの社会保障の診療というものは両方ともぜひ実現したい、自分ではそう思っておったのでございます。  ところが結局医療のいろいろの問題の制約やそういうことからいたしまして、一年間しばらく検討してくれというような話になりまして、自治省としては例の利子所得の問題とか事業所の規模の問題とか社会保障の診療ということは検討項目としてちゃんと党税調にも報告し、党税調もこれは検討項目とするということにしておりますので、今山下委員のお話のように、私どもはことしの税調ではぜひ実現するように一生懸命努力してまいりたいと思っております。
  137. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 ただいまの御答弁を私もしっかり胸に刻んで、ぜひ実行していただくように重ねてお願いをしておきたいと思います。  自治省に先にちょっと触れておきたいと思うわけです。けさの委員会参考人質問のところでもちょっと出たわけでございますが、よく三割自治、三割自治と言われているわけですが、なぜ三割自治という言葉があるのですか。
  138. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 この三割自治というのはかなり以前から言われておるわけでございますが、いろいろな考え方もあろうかと思います。その中で税収のウエートが三割程度しかないではないかとか、あるいは別途歳出の面から見ました場合に、公共事業等を除いたいわゆる自分でやる仕事というのは三割程度しかないではないかとかいろいろな観点から言われるわけでございますが、根本といいますのは、私ども考えますのに、やはり財政基盤というものをもう少し高めなければならないという意味でそういうことが言われているものと考えております。
  139. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 今、約三千三百の団体があるわけでございますが、都道府県で交付税の不交付団体が幾つぐらいあるか、また市町村で幾つぐらいあるか、おわかりになったらちょっと教えていただきたいと思います。
  140. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 五十九年度におきましては、都道府県で二団体、それから市町村で百三十六団体でございます。
  141. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 冒頭大臣にお尋ねさせていただいたわけでございますが、同時にまた決意を聞かせていただいたわけでございますが、現実に五十九年度交付団体が都道府県で二つ、市町村で百三十六、私も正確には調べておりませんのでわかりませんが、多分推測では東京と大阪ぐらいではないかな。——東京と愛知だそうでございますが、都道府県でこんな程度ということでありますし、同時に、今の地方分権を一層進めるというようなことを考えていきますと、一方では交付税率見直しというのも大変大事であるというふうに私は思うわけです。いいか悪いかは別にしまして、今一応三二%ということになっておりますが、それを例えば四〇%あるいは五〇%、六〇%というふうに高くすればするほど不交付団体ももちろんふえできますし、同時に地方分権もなお一層拍車がかかって進んでいくのではないか、また地域に見合った町づくりあるいは村づくりももっと可能になるのではないか、そのように考えるわけでございます。  そういう意味で、例えば一遍に六〇%にしろということも大変無理ではありますが、けさほどの質問の中でもちょっと出ていましたけれども、けさのある新聞によりますと、地方裕福論のような形で、国は地方から借金をしようじゃないか、来年度はそのようにしていきたいというようなことが出ているわけです。これも全部の新聞に出ていないから、どこからどうやって出たのかなと一方では不思議な面もあるわけでございますが、そのような考えも大蔵省の中にはちらちら出てきているのではないかなということからこの新聞記事になったと私は思うのです。  私はそうじゃなくて、総理も言っておりますように、立派な町づくりや村づくりをするためにはやはり不交付団体がふえて、自立できる団体をふやしていくということが大切だろうと思うのです。そういう意味からいって、今の国の取り分と地方の取り分についてもっともっとふやしていく、数字は言えないとしてもせめて半々ぐらいまで持っていく、そしてその中で自由に町づくりあるいは村づくりをしていく、そういうシステムにした方がいいと私は思うわけです。そういう意味で大臣はどのようなお考えを持っているか、お聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、平林委員長代理着席〕
  142. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 非常に厳しい財政状況である。きょうの新聞はもっと率を下げてもいいじゃないかという記事であったと私も考えております。この前、月曜日に大蔵大臣からそういうような問題について、今上げるとか下げるというようなことは考えていないようなお話がございました。  だから現実の問題としては、今の税制体系というものが直間比率とかあるいは相当大きく変わっていく、そういう問題が出たときにどういうふうに考えていくべきかということでございまして、現実の問題で今これを上げるとか、また下げるということは新聞に出ておりますけれども、上げるという話は今山下先生から激励を受けまして、そうかなというふうに私も考えておったのでございますが、厳しい財政状況と三税の三二%ということが一応決まっております。だから、今これを上げるのは難しいが下げるのは簡単かと言われるような議論になりますと私も困りまして、上げられれば上げた方がいいけれども、下がることは絶対困るということは言っております。三税の三二%という現状でございますから、将来直間あるいはこういう税の性格が変わってまいりますと、私どもは地方税源の問題としてこの問題に真っすぐ取り組んでいきたいと思っております。  大蔵大臣流に言えば、国と地方は車の両輪のごとしと言っておりますが、切り捨ては私どもも大変困るわけでありまして、そういう意味で今の先生の御意見は私も頭に置きまして、これからの地方分権の確保という見地からひとつ十分慎重に検討してまいりたいと思います。
  143. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 地方の自主財源拡大される、あるいは強化されない限り、幾ら演説で言っても立派な町づくりやら村づくりはなかなかできないと私は思うわけです。今地方裕福論がちょこちょこ言われておりますけれども、地方は本当に血の出るような努力をして一生懸命頑張っていると思うわけです。後ほど細かいことに触れたいわけでございますが、そういうことを考えますと、何といっても今のこの国税三税の取り分をふやすことが、冒頭申し上げました地方分権にしましても町づくりにしましても大きく前進をすると思うわけでございます。そういう意味で触れさせていただきましたので、ぜひこれからも間違ってもこの三二%を割ることなく、どんどん一年一年ふやしていくのだという意味で自治大臣は特に頑張っていただきたいと思いますし、自治省も頑張っていただきたいと思うわけでございます。そういう中で補助金一括削減等があったわけでございますが、きょう衆議院の本会議で一括法案が成立をし、参議院での審議が始まろうと思うわけでございます。そういう中で、私は厚生省と文部省の方へちょっと質問をさせていただきたいわけでございます。  まず憲法の二十五条に国民の生存権、国の社会保障的義務がうたわれているのはもう皆さん御案内のとおりでございます。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」同時に、生活保護法の第一条から第三条にかけていろいろと書いてあるわけでございますが、特に第三条の中には「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」また二十六条には「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」そのほかまた教育基本法等もあるわけでございますが、この法律について厚生省それから文部省はどのように理解をなさっているかお答えいただきたいと思います。
  144. 清水康之

    ○清水説明員 お答えをいたします。  生活保護は憲法二十五条の規定に基づきまして、国民の生存権を具体的に保障するための最後の措置であるということはそのとおりでございますし、このことは憲法、生活保護法の諸条文の中でも明らかにされていると思います。したがって私どもは、生活保護行政につきましての最終的な責任は国が持っているものと理解しております。  以上でございます。
  145. 菴谷利夫

    ○菴谷説明員 今、先生お尋ねの憲法二十六条の義務教育無償でございます。この二十六条には、「義務教育は、これを無償とする。」それだけしか書いてございません。それで、教育基本法では、公立の小中学校につきましては授業料を取らない、そういう規定が具体的にございます。それから無償につきましては、昔いろいろな諸説もあったようでございますが、昭和三十九年の最高裁の判決によりまして、この二十六条の無償は、授業料を取らないということが原則といいますか、その規定の実際の意味である、こういうふうにうたっておるわけであります。  ただ、そうはいいましても、授業料という形式はとらないけれども、いろいろな意味で学校で備えるべきものを別な形で父母からいただくというのは、やはりそれとの関係でそごがあるということから、いろいろな条件整備というものは国、地方を通じましてやっていくということがそれをさらに敷衍した考え方であろう、こう思っております。
  146. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 生活保護法にしましても最終的には国が責任を負う。今また義務教育の方では、授業料は取らないという最高裁の判決も確かに出ていることは私も承知しております。そういう中で、特に生活保護法で申し上げますと、最終的な責任は国が負うという形で今回一割カットをされているわけです。そういう中で、文部省のは後ほどまたちょっと触れさせていただきますが、それを厚生省も何ですんなり認めてしまったのか、私は不思議でならないわけでございます。  今御答弁がありましたとおり、国が責任を負うのであれば、私は今までの八対二だっておかしいと思うわけです。十割全部国で見ても当然のものを、国に金がないから、そう言って地方にまた一割余分に責任を持ちなさいということはどうしても理解できないわけです。また、補助金削減法案は一応今期限りと言われておりますけれども、実際にそうなってくるのか。また、厚生省としては次は最悪の場合でも五十九年度並み、八割には責任を持って戻すのか、その辺についてちょっとお答えいただきたいと思います。
  147. 清水康之

    ○清水説明員 お答えをいたします。  私どもとしましては、国が最終的な責任を持っているということと、国が直接自分の機関で、あるいは国がすべて負担をしてやっていくということとは直接的なつながりはないと考えておりまして、御案内のとおり現行生活保護法はもちろんのこと、それ以前の旧生活保護法時代以来、住民の福祉の観点ということも含めまして、従来より生活保護費の一部については地方団体負担してきていただいているわけでございます。このことは地方財政法の規定上も明らかになっているわけでございます。     〔平林委員長代理退席、委員長着席〕  今回の措置につきましては、各省が足並みをそろえていろいろ行った措置の一環ということでございますけれども、私どもとしましては、地方負担につきましては全体として地方財政計画を通じて措置がなされているし、生活保護につきましては、御案内のとおり臨時財政調整補助金二百億円というものの計上もお願いしておりますので、その上に今回の措置はあくまで国と地方との負担割合の見直しということでございますから、直接生活保護の水準及び内容には影響を与えるものではないということ等々を考えますと、国の最終的な責任は確保されておるし、今回の措置によって生活保護制度の趣旨が特別に変わったものでもないと考えておるわけでございます。
  148. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 確かにおっしゃることはわかるわけです。生活保護者自身が十割給付されることは明らかですが、地方の持ち出しが一割ふえることは事実なんです。これは、本来国の仕事地方が一部かわって行っていると私は理解をしているわけです。そういう意味で言いますと、当然十創見るのが当たり前であって、今まで八割だった国の方がそのことを怠っていた。それをまた一割余分に地方に転嫁をさせていくというふうに理解をしているわけです。ですから今お尋ねしたわけでございますが、特に大蔵省にもあわせてお聞きしたいわけでございますが、本当に本年限りということは、来年は少なくともこれは八割に戻すという方針でいかれるのですか。
  149. 藤井誠人

    藤井説明員 お答え申し上げます。  まず先ほど厚生省から御説明がございましたけれども、今回の高率補助率引き下げの考え方等について若干補足させていただきたいと思いますが、補助金の整理合理化というものは、申し上げるまでもなく臨調答申、行革審意見等でしばしば指摘されておるわけでございます。行財政の簡素合理化という観点と、使い手である地方公共団体の自主性、自律性尊重という大きな二つの柱を据えまして、同時に、国と地方の間の機能分担とかあるいは費用負担あり方というようなものも見直しながら、その一環として推進していく必要があるということで、六十年度予算編成過程におきまして措置したわけでございます。  しからば六十一年度以降どうなるかというお尋ねでございますが、これまた御承知のように、昨年末の予算編成過程におきまして、厚生大臣、自治大臣、大蔵大臣、三大臣を中心といたしまして合意了解事項がございます。今回の措置は六十年度における暫定措置だということを確認しつつ、かつ、六十一年度以降の補助率あり方というものにつきましては、先ほど申し上げました、今後さらに国と地方の間の機能分担、費用負担あり方をどういうようにすることが望ましいのであるかということをにらみながら政府部内で検討していくということでございます。したがいまして、今後一年程度の時間をかけましてさらに検討していくということでございます。
  150. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 三大臣合意覚書などは私も承知しているわけでございますが、これからそんなに時間はないと思うわけです。概算要求はもう夏にはするわけでございますし、その前にこれはきちっと方針が出ていない限り私は心配で仕方がないわけです。といいますのは、いろいろなところでいろいろな発言の中で、どうも地方へもっともっと負担をさせていく、公式な発言ではなくてもそんなものが見え隠れしておりますし、また同時に、あの一括法案の審議の中でも大蔵大臣あたりもなかなか歯切れの悪い答弁をしていらっしゃいますし、本来なら、素直に考えると一年限りということは、一年たったらもとへ戻るというのが一般社会の常識的な考え方だと思うわけです。それを一年かけてと言っても、この夏には少なくとも概算要求を出さないといけない。そのときには一定の方針を出しておかないといけないということであれば、今もうかなりのレベルで、かなりの段階まで煮詰まっていない限り、私はこの問題は大変なことになっていくのじゃないかという気がしてなりません。自治大臣、その辺の話し合いはいまだに一向にされていないのですか。
  151. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 大蔵大臣もそうかと思いますが、私もそういうことを話すような余裕が、今のところ法案などでほとんどありませんので、事務的にどういうふうに進んでおりますか、私も一生懸命にやりまして、ことしの予算編成までには当然始末をつけなければならぬ問題であります。そういう意味におきまして、地域の状況、また大蔵大臣は国会における皆さんの論議をよく考えましてというようなお話もございます。私は地方制度調査会とか地方団体意見を聞き、あるいはまた国会における御論議も十分頭に置きまして、この問題を処理していかなければならぬと思っております。  でありますから、これは概算までにできるか、あるいは暮れのいつもの予算の成立するくらいにできるか、遅くともそれまでには、十二月前には解決しなければならぬ問題でありますので、それは早ければ早い方がいいと思いますが、なかなか問題が問題であるだけに複雑でありますので、私は予算成立前にどうしてもこれは解決しなければならないというような考えでございます。
  152. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 そのような問題を抱えながら、もう一つはこの一括法案が成立をされていない。予算は成立をしたけれどもということで、何か地方団体は大変困っている状況でございますが、大蔵省としてはこの生活保護費の手当ては、いつ地方団体にお配りになるわけですか。交付するわけですか。
  153. 兵藤廣治

    ○兵藤説明員 お答え申し上げます。  補助金整理特例法案が成立するまでの間におきまして補助金の交付決定を行うということになりますると、その場合は現行法に基づき、引き下げ前の補助率で交付決定を行わざるを得ないことになりますけれども、このような交付決定を行うことは、高率補助率の一律引き下げ等を重要な柱といたします六十年度予算、既に成立を見ておるわけでございますけれども、その国会の御議決の趣旨にも反することに一方ではなるわけでございまして、適当ではないと考えております。  したがいまして、補助金整理特例法案についての、本日衆議院で御議決をいただいたところでございますけれども、まだ両院一致の議決は得てないわけでございまして、その御審議の結論が明らかになりますまでの間は、交付決定は差し控えざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  154. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 そうしますと、その間地方団体が仮に立てかえをしなければ、生活保護家庭、生活保護者はどうやって生活をすればいいのですか。
  155. 田波耕治

    ○田波説明員 お答えを申し上げます。  生活保護を受けておられる方々へは、実際問題としてお金が配られるということになるだろうと私どもも考えておるわけでございます。そういたしますと、そこの金はどうなるのかね、こういうことになるわけでございますが、我々といたしましては、その間は、いろいろな資金繰りの事情というのは、それぞれの年あるいはそれぞれの地方団体に事情があるわけでございまして、その中の一環として資金繰りを何とかつけてお支払いいただくほかはないのではないかというふうに考えております。ただ、それで終わりかね、こういうことになりますと、どうしても資金繰りがつかないというような団体がもしあれば、そこは政府資金での手当てというようなことも制度としては可能であるというふうに考えておるわけでございます。
  156. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 資金繰りが地方団体でつくとかつかないとかいう以前に、二、三日前の新聞ですけれども、「自治体音を上げる 立て替え、四月は八百七十億円」、その中で、約四百億円が四月分として立てかえに必要だ、また今月末には四百七十億円必要だという状況に追い詰められているわけですね。これは地方には何ら責任がないと思うわけです。当然国の責任で、私は早急に立てかえするようなことではなくて、補助金をそれぞれ交付すべきだと思うわけですが、なぜそれができないのですか。
  157. 田波耕治

    ○田波説明員 結論としてなぜ交付決定ができないかということになるわけでございますけれども、先ほど兵藤主計官がお答えいたしましたように、現行法の補助率というのは、御存じのように、例えば生活保護であれば十分の八という規定になっておるわけでございます。それに対しましてこの間成立いたしました予算では、生活保護費の補助率というのは十分の七ということで組んであるわけでございますから、その交付決定をする場合にどういう補助率でやるかということが一つ問題になるわけでございます。  その場合に十分の八で交付決定をするということになりますと、予算でお認めいただいたのは十分の七でございますから、それと法律の十分の八というものの間に不一致が生ずるということでございまして、私どもといたしましては、これは国会の方のお決めになることではございますけれども、できるだけ早く法律をお通しいただいて、交付決定ができるような状態になることを強く望んでいるということでございます。
  158. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 今十分の八の現行法は生きているのですね。死んでいないですね。そういうことであって、一方予算が十分の七でしか組んでいない、だから交付できないということなのですね。会期は四月二十九日までなのですね。その間これが通らなかったらどうするのですか。
  159. 兵藤廣治

    ○兵藤説明員 御指摘のとおり、現行法は生きております。現行法でまいりますと十分の八の負担ということになりまして、予算で予定をいたしました生活保護補助金におきましては、支弁額が不足を生ずることに相なってしまうということになるわけでございますが、私どもといたしましては、重ねてのお願いで恐縮でございますけれども、今度参議院で御審議をいただきます法案、極めて厳しい財政事情のもとで六十年度予算と裏腹一体のものとしてお願いをいたしておりますので、政府としてはぜひともその実現をお願いしなければならないというふうに考えておるわけでございまして、ともかく会期内に成立をさせていただきたいと思うわけでございまして、ぜひとも御理解を賜りたい。ともかく大臣がよく申しますが、猛烈な期待権といいますか、そういうような大臣の言葉どおりのお願いを専ら申し上げるということでございます。
  160. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 昨日も先輩の佐藤先生が質問されましたので余りくどくどしたくないわけでございますが、それこそ四月の二十九日が会期であって、また四月の末には五月分を四百七十億円立てかえないといけないということになってくるわけですね。だけれども、四月二十九日まで、私は参議院が幾ら早くスピードを上げて審議をやっても、ちょっと会期中にはこれは成立しないのじゃないかと思うわけです。  場合によって、例えば二カ月、三カ月会期延長すればそのうち通るかもわかりませんが、いずれにしたって今決められております会期は四月の二十九日でありますし、それまではまず常識的に見てまだいろいろと問題点はたくさんあるから審議がなされていると思うわけです。そのことを考えますと、私は当然大蔵省の方で早く措置をすべきだと思うわけですが、法律が通らない限り絶対に措置をしないのですか、もう一度聞かせてください。
  161. 兵藤廣治

    ○兵藤説明員 重ねてのお尋ねに対しましてまた同じようなお答えをしておしかりを受けるかもしれませんが、私どもといたしましては、予算と裏腹の関係にある法律案でございますものですから、予算と同時に一月二十五日に提出をさせていただきまして、これがこの会期内に成立をしないというような大幅な遅延は政府としては考えていないところでございまして、ともかく参議院、これからでございますけれども、ぜひとも早期成立をお願いいたしたい。重ねてお願いを専らいたしたいと思っておるわけであります。
  162. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 そうじゃなくて、そんな難しい話じゃなくて、会期内に通らなかったらどうするのですか、その一言だけを聞いているのです。
  163. 兵藤廣治

    ○兵藤説明員 ともかく政府としては通らないということは考えてはいないわけでございますけれども、仮定として仮に本法が通らないということになりますと、それは生活保護費の予算に不足を生ずることになってしまうことになります。昨日もお答えをいたしたと存じておりますけれども、再度提案をして、またお願いを申し上げるかどうかという問題になろうかと思いますが、ともかくその通らなかったことによりまして追加財政需要が必要になるという事態が出てくることになろうかと思います。
  164. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 もう一つわからないのですけれども、要するに会期内に成立をしなかったら、七割であれ八割であれ生活保護費の補助金は交付しないのですか。
  165. 兵藤廣治

    ○兵藤説明員 先ほど田波主計官の方からお答え申し上げましたように、地方公共団体の事務事業の執行に支障が生じたり、資金繰り等による地方団体負担が生ずる好ましからざる状態になるおそれがありまして適当ではないということになりますが、政府としてはとにもかくにも本法案の成立をひたすらお願いをするということで、通らなかったらという仮定のことは——(山下(八)委員「会期は二十九日までしかないよ」と呼ぶ)でございますが、まだ会期がございますので、通らなかった仮定のことはまだ政府としては考えておらないというのが正直なところでございます。
  166. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 そうしますと、会期は二十九日までですから、二十九日までに補助金現行法あるいは成立したら新法でそれぞれ交付するのですね。
  167. 兵藤廣治

    ○兵藤説明員 新法で交付するということは——(山下(八)委員「新法であろうと旧法であろうと、四月二十九日までにということです」と呼ぶ)まず、先ほどお答えしましたようにまだ国会で御審議中でございますので、新法でともかく給付するわけにもまいりません。これは国会の御審議を先取りしてしまうことになります。かといって旧法で交付決定をいたしますということも、これまた成立いたしました予算、それから本日衆議院で御議決いただきました、一院を通りました法案の内容ともそぐいませんので、いずれともいたしかねるわけでございます。  ともかく残された短い会期内でございますけれども、参議院での御審議の促進をひたすらお願いを申し上げることしかただいまのところ何ともいたし方がないのでございます。
  168. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 ほかの質問ができなくなりますのでもうこの辺でおきますが、いずれにしましても地方団体は大変困っているわけです。大蔵省に強く要望しておきますけれども、これは少なくとも現行法があるわけでございますから概算交付という方法もあるでしょうし、そういう方向でそれぞれ至急に交付をしてもらいたいということを強く要望しておきたいと思います。  同時に、この補助金一律カットの問題ではたくさんの意見書や要望書が全国の団体から来ていると思うわけです。やはりそれだけ地方の団体というのは大変深刻に受けとめていると思うわけです。私のところにもたくさん来ておりますし、同時にこれは十二日でございましたか十一日でございましたか、大蔵委員会において補助金の一律カット法案が一応成立したわけでございますが、そのときにも全党一致で附帯決議が成立をいたしております。この中でもまず冒頭に「今回の高率補助率の一律引下げ措置と行革関連特例法の延長措置は、一年間の暫定措置とすること。」ということがうたってあるわけです。それだけやはり重要な法案であったろうと思うわけです。だからこそいまだに慎重審議で成立を見ない、あるいは会期内に成立を見ないという状況に追いやられているのではないかと私は思うわけです。  そういう意味から、ぜひ自治大臣にもう一度最後にこの件で御答弁をいただいておきたいわけでございますが、いろいろな話がされております。どんなことがあってもこれは一年限りとして、同時に冒頭申し上げましたとおり、これからは地方の時代ということであれば交付税の三二%はもちろんのこと、どんなことがあってもやはり地方に対して自由に財政を、一定のものをいじれて、そして立派な二十一世紀に向かった町づくりあるいは村づくりができるような環境づくりのためにぜひ努力をしていただきたい、そのためには一歩も譲らないでほしいということを私は強く要求する次第でございます。その辺について決意を聞きまして、この問題は終わらせていただきたいと思います。
  169. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 一番大事な問題は三省間の協議の問題であると思います。先ほど申し上げましたような決意のもとにこの問題の処理に当たっていきたいと思っております。なお、再三お話しになりましたような地方の自律性ということについては同感でございますので、そういう趣旨を踏まえまして処置をいたしてまいります。
  170. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 地財計画やら交付税を若干お尋ねしたかったわけですが、時間がなくなりましたので、一つどうしても質問しておきたいことがありますので、そちらに先に入らせていただきたいと思います。  消防問題で若干質問を先にさしていただきたいと思います。消防力の整備というのでございますが、その状況は今日どのようになっているか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  171. 関根則之

    ○関根政府委員 「消防力の基準」を消防庁といたしまして示しておりまして、それに基づいて地方団体におきまして極力消防の整備を進めていただいております。  それの最近の状況でございますが、五十六年四月現在におきまして消防ポンプ自動車におきましては八七・九%、小型動力ポンプにおきましては六六%、はしご自動車が五七%というような形で、項目によりましてそれぞれ充足状況が異なるわけでございます。
  172. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 充足率はどういう状況ですか。
  173. 関根則之

    ○関根政府委員 ただいま申し上げましたように、それぞれのポンプなり、あるいは水利等の項目によりまして変わっておるわけでございますが、おおむね充足率は七割程度というふうに考えております。なお、職員の充足率につきましては、現有車両に対しまして七七・九%、こういう数字になっております。
  174. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 私も消防庁からもらった資料でその七七・九というのを承知しているわけでございますが、これは一応全国計ということで、私ちょっと北海道の消防職員協議会というところの資料を見ますと、これは北海道だけでございますが、人員の充足率の平均が四六・二%と大変低いわけでございます。北海道あたり大変広大な土地で、北海道平均で四六・二%という状況でございますので、こういう県、例えば五割を割っていなくてもまだかなり低い県があるのではないか、そのように思うわけですが、もしその辺の数字がわかりましたら教えていただきたいですし、同時にこのような低いところに対して消防庁としてはどのような指導をなさっているか、その辺について教えていただきたいと思います。
  175. 関根則之

    ○関根政府委員 御指摘の数字がどういう数字であるのか私どもの手元に資料がございませんが、先ほど申し上げましたように、全国平均では現有の車両に対しまして職員の充足率が約八割ちょっと切れるということでございますが、そもそも車両そのものが基準どおりに整備されていないという問題があるわけでございまして、仮に八割程度の車両の整備状況だとしますと、それの人員が八割でございますから、実際の基準に対する職員の充足率ということになりますと六〇%程度になってしまうことになると思います。全国平均でもそういうことでございますから、地域によりましてはそれよりももっと低いところも出てくる可能性があるわけでございます。特に今北海道の充足状況は、私はよくないと考えております。  こういうところに対する指導の方針でございますけれども、ともかく全体といたしまして私どもは、全国どこでも目標の基準を充足するように努力していただきたいということをお願いいたしておるところでございますので、充足率が全国平均に比べても著しく低いといったところにつきましてはなおさらその充足のための努力をお願い申し上げておるところでございます。これからもそういう方針でやっていきたいと考えております。
  176. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 北海道は私もちょっと低過ぎるなと思うわけでございますが、全国平均の約七八%、これも決して高いとは思わないわけです。一〇〇%といかなくてもせめて九〇%台をクリアしているということならまあまあかなと言えると思うわけですが、消防業務もある面では人命と財産を守る大変重要な任務であるわけです。そういう意味で、ぜひ充足率につきましても積極的に高くしていただく努力をしていただきたいと思うわけです。  同時に、そういう中で、消防職員の賃金はどこの機関でどのようにして決めるのか、また消防業務というのは組合消防とか単独とかございますけれども、どうも勤務条件もかなり違っているような気がするわけでございます。その勤務条件につきましてはまたどういう機関で決定をしているのか、その辺につきましてもあわせてお尋ねしたいと思います。
  177. 関根則之

    ○関根政府委員 消防は市町村が責任を持って行う事務でございます。したがって、消防職員は市町村の一般職の公務員という性格を持つわけでございますので、特定の市町村の公務員の給与ないしは勤務条件地方公務員法の規定に従いまして当該市町村が独自に条例によって具体的に決めていく、こういうことになるわけでございます。
  178. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 条例で決めるということであれば全くそのとおりであるわけですけれども、例えば市町村の職員は消防のようにばらつきはないと思うのです。市町村の一般職の職員も条例で決めて何ら自治省の指導やらそのようなものはないのですか。
  179. 中島忠能

    ○中島(忠)政府委員 これは先生の方がよく御存じだと思いますけれども、一般の市町村の職員につきましても消防職員と同じように、その勤務条件は住民を代表する議会によって決めるシステムになっております。そうして決められたものが実はあるわけでございますけれども、すべて条例ということじゃなくして、その中で市町村長の運用に任されているものもある、そういうことで今日の給与水準があるわけでございますけれども、私たちの方では、必要に応じて指導をするということはいたしております。
  180. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 しつこいようで申しわけないわけですが、必要に応じて指導なさっているのであれば、私は、特に消防の場合は、ほかの市町村の一般職と違って、幾ら条例で決定をしたといたしましても、全国を見ますといろいろと余りにもばらつきがあると思うわけです。もう少し幅を狭める、そのような指導をしてもいいと思うわけですが、その辺についてはいかがですか。
  181. 関根則之

    ○関根政府委員 私ども、消防職員の給与につきましていろいろ状況は把握しているつもりでございますけれども、それぞれの地方団体、大小がございますし、立地条件もそれぞれ違うわけでございます。特に消防の場合には、田舎の小さな消防があります一方で、一万八千人の職員を擁しておる東京都消防というものもあるわけでございまして、その間には職務の、職員数が違いますから、結局その一番上の指揮官の給与の格付というようなものも違ってまいりますし、そういう意味におきまして、個々の地方団体の消防職員によりまして相当の差があるという結果が出てきているものというふうに考えております。  ただ、考え方そのものは、やはり基本的な指導は私どもいたしておるわけでございまして、消防職員の職務なり責任の度合いというものは、大体よく言われますように、警察と同じような性格を持っているものというふうに理解をいたしておりますので、警察につきましては、市町村警察はございませんが、県に地方公務員としての警察がございまして、公安職給料表を適用いたしておるわけでございます。そういう公安職の給料表を適用しておる警察とほぼ同じような給与の実態といいますか、考え方で給与の指導をしていくべきものというふうに考えております。  もちろん給料表そのものを公安職で、小さな地方団体において公安職給料表をわざわざつくらなければならぬというふうには考えておりませんし、そういう指導をしておるわけではございませんが、基本的にはそういった考え方で指導をし、著しく不適正な給与というものが消防職員についてあらわれないよう指導をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  182. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 公安職給料表がぴしっと適用されていれば、消防職員ももう少しはにこやかな顔をしているんじゃないかと思うわけです。私はそんなに給与がいいとは思っておりません。  その辺はいいとしまして、消防署の職員の勤務状態には、二交代制あるいは三交代制という方法が一番多いわけですね。私の持っています資料では二交代制というのが圧倒的に多いわけでございますが、そういう中でも、一週間の勤務時間を見ますとかなり長いわけですね。特に一週四十八時間以上の勤務時間になっていますのが、全部で八百六十七中三百三十九もあるわけです。こういうことを見ていきますと、かなり勤務条件というのは悪いのではないか。もう一方では、それ以外に拘束時間もあるわけでございます。私は本来なら拘束時間も勤務時間に入ると思うわけですが、その辺について、いかがお考えでしょうか。
  183. 関根則之

    ○関根政府委員 先ほども申し上げましたように、消防職員の勤務条件なり勤務体系と申しますか、これはそれぞれの市町村の消防の状況によりまして、その実態に合うようにそれぞれ市町村が工夫をして決めているところでございます。したがって、勤務の形態につきましても、二交代制もありますれば三交代制をとっておるところもあるわけです。しかし、三交代制をとっておるというのはむしろ例外でございまして、東京のような大都市に主として限られておる、比較財政的にも恵まれているようなところに限られておるというふうに理解をいたしております。  いずれにいたしましても、その地方団体状況によりまして、しかも火災の発生件数でありますとかあるいは集落の構成の状況、非常にばらばらにあるのかあるいは密集地が多いのかというようなこと、風のぐあい等によっても消防力というものは変わってくるわけでございますから、そういったもろもろ条件に応じましてそれに対応する必要な消防力を的確に確保していく、そういう面から勤務条件というものは変わってくるものというふうに理解をいたしております。しかし、あるいは実態的に非常に劣悪な条件があるではないかという御趣旨のお話かとも思いますが、私どもは必ずしもそうは理解をいたしていないわけでございまして、労働基準法に定める勤務時間の制限ないしは規制というものを守って勤務の組み方がなされているものというふうに考えております。  なお、二交代制の場合には二十四時間で一勤務という制度がございまして、したがってその翌日は丸々休みになるわけでございます。二十四時間の直があるわけでございますけれども、そうなると二十四時間の勤務時間なのかということをよく言われるわけでございますが、その二十四時間の直の中身は、十六時間が勤務時間でございまして、八時間が休憩時間ということになっているわけでございます。休憩時間というのは当然のことながら勤務時間には入りませんから、したがって、消防の場合には特殊的な理由がございまして、休憩時間だからといって余り遠くの方へ行ってしまっては困るというようなことから、庁舎内で休憩をとるようにという指示がなされている場合が多いと思いますけれども、いずれにしろ休憩でございますので勤務時間ではございませんから、勤務時間としての取り扱いはなされていない、給与その他の面で勤務時間としての取り扱いはなされていないということでございます。
  184. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 そうしますと、今の御答弁では、特殊な勤務だから休憩時間も余り遠くへ行ってはいけない、できれば庁舎の中で休憩をしていただきたいということは、何か事が起きたらすぐ職務につける状態で休憩をしてほしいということであろうと思うわけです。それは、確かに考え方によれば休憩時間でありますけれども、一方では拘束時間でもあるわけです。拘束時間だからこそ何か事あればすぐ出動してほしいという意味での休憩であれば、私は決して休憩時間とは思わないのですが、その込もう一度御答弁いただきたいと思うのです。
  185. 関根則之

    ○関根政府委員 消防で二交代制の場合に、先ほど設例で申し上げました直の時間が二十四時間で十六時間の勤務時間、いわば労働時間でございますが、残り八時間が休憩時間、こう定められておるところにおきましては、その八時間はあくまでも休憩時間というふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。ということは、それによって労働をさせるわけではございませんし、自由に休息をとることができるわけでございますので、あくまでも勤務時間以外の休憩時間として扱っているわけでございまして、法律上、労働基準法上もこれは認められているところでございます。
  186. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 労働省いらっしゃいますか。——休憩時間とか仮眠時間というのは、労働基準法上どのようになっているのですか。
  187. 畠中信夫

    ○畠中説明員 私ども、労働基準法上の労働時間の解釈といたしまして、労働者が使用者の指揮監督のもとにある時間を労働時間と考えております。それから、休憩時間は、労働者が権利として作業から離れることを保障されている時間、それを休憩時間と考えております。この労働時間と休憩時間をあわせまして、先ほど先生がおっしゃられておりました拘束時間というふうに考えておるわけでございます。
  188. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 では、休憩時間で、例えば今消防庁長官から御答弁がありましたように、できれば庁舎内で休息をするのが一番好ましい、簡単に言いますと、何か起きたらすぐ職場に戻れる状況にいるのが望ましいというのは拘束時間であることは間違いないと私は思いますけれども、これは労働時間には入らないのですか。
  189. 畠中信夫

    ○畠中説明員 休憩時間は自由利用が保障されるというのが原則でございますけれども、消防業務の特殊性にかんがみまして、労働基準法の施行規則第三十三条におきまして、消防職員に関しましては自由利用の原則の適用が除外されております。であるからといいまして、完全に労働時間におけるのと同じように使用者の指揮命令下に置かれているかと言いますと、それは決してそうではございません。もしそういう実態があるとすればそれは労働時間でございますけれども、この自由利用の原則の適用除外のもとにおきまして、例えば自由に仮眠しあるいは自由に入浴するということは十分に保障されるべき時間でございます。
  190. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 時間がなくなってまいりましたので、ちょっと先へ進みたいと思いますが、消防職員は法律によって団結権が否認をされているわけでございます。諸外国で消防職員の団結権のない国はどのような国がございますか。
  191. 中島忠能

    ○中島(忠)政府委員 消防職員を含めまして、公務員一般に団結権を認めていない国が十四カ国ございます。それ以外に、特に消防職員に団結権を否定するという国が日本を含めて三カ国でございます。私も時々外国に行っていろいろなところを視察するわけでございますけれども、例えて言いますと、フランスのパリなんかは消防が軍隊と一体になっている、そういうところでは団結権は当然否認されております。今、私は合計十七カ国と申し上げましたけれども、そういう軍隊と一緒になっておるところ、そういうところはそれ以外にございまして、そういうところが三カ国というふうに記憶しております。
  192. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 世界で団結権を認めていない国がたったの三カ国であるわけです。その中へ日本も入っておるわけですね。団結権を早急に認めようという気持ちはないのですか。同時に、日本は先進諸国だと言われながら、こういうことについてはなぜなかなか世界の趨勢の仲間入りをしないとしているのか、ぜひ教えていただきたいと思います。
  193. 中島忠能

    ○中島(忠)政府委員 三カ国というふうに申し上げたそれが少し誤解されておるようでございますけれども、軍隊とともにやっているところを含めますと二十カ国でございます。二十カ国で否定されておるということでございます。  それで、なぜ日本でそれが否定されているのか、こういうことなんですが、これは先生もよく勉強しておられますので御存じだと思いますけれども、日本の消防の歴史的な経過、例えて言いますと、昔は軍、警察と一体であったとか、あるいはまた消防職員の持っておる権限が講学的に見た場合には保安警察と同視すべきものだというふうにされておる、そういうようなこともございますけれども、消防職員というのは、先生もお話しになられましたように、国民の生命とか財産というものを守るために、地震とか火災とかあるいはまた救急活動のときには一糸乱れずに活動しなければならない、高度な規律のもとに迅速に行動しなければならない、そういう消防職員の特殊性というものはあろうかと思います。  そういうこととともに、結局、日本というのは外国と違いまして木造家屋が非常に多い。したがいまして、木造家屋の多い日本におきましては、特に迅速性というものが要求されなければなりません。そういうことで、消防職員に要求される高度の迅速性、消防職員が持っておる職務の公共性、そういうことから日本においては消防職員に団結権が認められていないというふうに私たちは理解しております。
  194. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 日本には軍隊があるわけでありませんし、また、消防と警察は全然別個のものであります。一緒のものではないわけです。また一方、消防は、例えば市町村なりあるいは広域組合方式で今運営をなされているわけです。警察はまた全然運営の仕方が違っていることは御案内のとおりであるわけです。私も申し上げましたが、確かに消防も国民の生命と財産を守っています。迅速に活動しないとならないわけです。  私は世田谷のあのケーブル火災を、今そのお話を聞いてひょっと思い起こしたのですけれども、あれだって、あの火災でもっと長期間混乱状態が続けば、多くの国民の財産あるいは安全が本当にたくさん失われる可能性もあったと思うわけです。そういうことで言えば、今あらゆるところであらゆる方が国民の財産を守っていれば生命も守っている、それがお互いにかすがいになって日本の国は立派に進んでいると私は思うわけです。  そういうことを考える中で、世界の趨勢としても何らおかしくない団結権を消防に与えないのか、私は不思議でならないわけです。その辺について、少なくとも地公法の五十二条の五項、団結権禁止の改正を早急にすべきである、そして団結権を与えていく、そういうことが一つは日本の民主化へつながっていくのではないかというふうに私は考えるわけです。その答弁をお聞きしまして、私も先輩の皆さんから早くおけと言われておりますから、審議に協力いたしますので、積極的な御答弁をいただきたいと思います。
  195. 中島忠能

    ○中島(忠)政府委員 重ねてのお話でございますけれども、私たちは、先ほど御答弁申し上げましたように、やはり日本というのは外国と異なりまして、外国というのは鉄筋の建物が多いとか石づくりの建物が多いわけでございますけれども、日本の都市づくりの特殊性といいますか、そういう特殊性の中における国民の消防に対する期待の大きさというものを考えた場合には、現在の規定というものを改正するにまだ客観情勢が熟していないんじゃないか、こういうふうに考えざるを得ないというふうに思います。
  196. 山下八洲夫

    ○山下(八)委員 どうもありがとうございました。
  197. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、経塚幸夫君。
  198. 経塚幸夫

    ○経塚委員 大変時間が遅くなりまして恐縮でございますが、最初に、自動車取得税の問題についてお尋ねをしたいと思います。  最近この問題につきましてはいろいろと報道されておりまして、問題の焦点は、自動車取得にかかる税を販売業者が車の購入者から徴収をしながら府県に納めておらない、あるいは全額着服をしたとか、あるいは何割か着服したとかいうことで、その総額が五百億円とも言われております。私の手元にも随分たくさんの資料が参っておりますが、例えば無限オートセールス、これは八万円取得税を徴収しながら一円も納めておらない、全額着服であります。マツダオート城西、これも一万五千二百五十円全額着服であります。トヨタオート多摩、これは注文書で八万一千百円税金を取ったわけでありますが、納税証明を納税義務者がとってみると四万九千二百円しか納められておらなかった。こういう事件が相次いております。  税務局長はこの事実についてはよく御承知だと思いますが、一体何でこんな不正事件が起きてきたのか、しかも長年にわたってこれが続けられてきたと言われておりますが、その原因と責任について自治省の方ではどういうふうに考えておられるのか、まずお尋ねをいたします。
  199. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 ただいま委員御指摘のような事実につきまして、当省としてこれを一々調査し確認をするという立場にはございませんけれども、新聞報道等を通じましてかなりの事例が見受けられるということは私も承知しております。まことに遺憾なことだと考えております。この問題は、税制そのものにかかわる問題では必ずしもないのかもしれませんけれども、しかしだからといって看過できない問題であろうと考えております。免税点以下のものであるのに買い主から税相当額として受け取ってこれを懐に入れるというような事例、あるいは取得額と基準額との差について懐に入れるという事例、まことに遺憾な事案だと思います。  こういう事例がなぜ起きるのかということでございますが、大きく分けまして三つぐらい原因があるかと考えます。  一つは、この問題は主として中古車について起きておる事例と考えられますけれども、中古車の実際の市場価格と、自動車取得税の税務の運用上定めておりますところの基準額一覧表と言われるものの価格の差が大きいこと、これが一つでございます。  それから、この自動車取得税につきましては取得価格を課税標準として申告納付をするという方法を採用しておりますけれども、この取得価格が車種ごとにあらかじめ決められております。この基準価格以上である場合には、特に契約書の写しの添付を要しないという取り扱いにしておるということ。  それから第三番目には、実際問題として納税義務者がみずから自動車取得税の申告納付をするケースが少なく、自動車販売業者が代行する場合が多いわけでございますが、その場合、府県は納付をした者に対して領収証を渡しておりますけれども、その領収書がユーザーに交付をされていない。こういったことによるものだと思いまして、いわば税制及びその運用上のすき間と申しますか、間隙を悪用した事例であろうかと思います。  税制及びその運用上の取り扱いとして、納税者の便宜及び課税事務の簡素化ということをできるだけ図りたいという趣旨から設けられておるところでございますが、こういった仕組みを悪用されるということはまことに残念であると思います。これが果たして税制及びその運用上の欠陥によるものであるのかどうか、この辺につきましては私どももさらに十分検討してみる必要があろうかと思いますが、いずれにいたしましても問題としては看過できない事柄である、このように考えております。
  200. 経塚幸夫

    ○経塚委員 三つ理由を挙げられたわけでありますが、一つは実際の取引価格と基準額一覧表の問題、それから契約書を必要としなかった、それから領収証の問題でありますが、これは局長どうなんですか、納税義務者が納税をしたのですから、当然その領収証は納税義務者に渡されなければならぬでしょう。納税義務者に、税金はかくかく、何月何日入りましたよという領収証が渡されておれば、自分が販売業者に払った金がそのまま税額として納付されておるのかおらないのか一日でわかったはずなんですね。何でこんなわかり切ったことを自治省は指導しなかったのですか。  逆に自治省の税務局長名で出ている通達では、領収証は納税義務者ではなしに登録した販売業者に交付することという通達をわざわざ出しておったわけでしょう。何か今の局長の御答弁を聞きますと、悪用、悪用と言って、盲点をついた者が悪いようにおっしゃるけれども、通常ならば、税金を納めれば納税義務者が領収証をもらうのは当たり前なんですよ。これをわざわざ通達でもって、自動車取得税については登録をした販売業者に領収証を交付すること、こういう通達を出しておったわけでしょう。だから、そういうすき間を自治省みずからがつくったのじゃないですか。だから私が原因と責任をお尋ねしたのは、これは自治省に重大な原因と責任があるのじゃないですか。その点いかがなものですか。
  201. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 御指摘の点は、この自動車取得税ができましたときに通達が出ておりますが、その中におきまして、「領収証の交付」という項目の中で、「証紙による自動車取得税の納付が当該自動車販売業者によってなされた場合においても領収証を交付すること。」という点を御指摘のことと思います。  確かにおっしゃることは私もごもっともだと思います。ただ、現実に自動車取得税の申告納付、これはもちろん本人が行うのが建前でございますけれども、実際には自動車販売業者が代行するケースというのが非常に多いわけでございます。その場合、それが本人であるのかどうかということを一々確認をしていくという点、これも課税事務の簡素化という観点からいろいろ問題もあろうかと思います。むしろ私どもの方の気持ちといたしましては、ユーザーにかわって販売業者がそのような申告を現実にしてきたと認められるような場合にも、領収証を出すことによってその領収証が本来の納税義務者、ユーザーに交付されるであろうということを考え、あえてそのような通達を出してきたところでございます。ただ、最近の新聞報道による事例によりますと必ずしも渡っていない、交付されてない、その辺が非常に問題だ、こういうぐあいに考えるところでございます。
  202. 経塚幸夫

    ○経塚委員 何のためにわざわざ登録業者に領収証を交付することという通達を出されたのか、ここは全く疑問ですよ。登録事務を代行する販売業者の立場だけを考えておる。納税義務者の立場は全然無視されておるわけですな。長年、しかもこれは百件や二百件ではないのですよ。年間五百億といったら相当なものですよ。きっちりした自治省ともあろうものが、何のために明らかに悪用されることがわかり切っているような通達をわざわざ出したのか。これは解せぬですな、今の局長の答弁では。これは販売業者だけを責めるわけにはいきまへんで。自治省がみずからそういう悪への道を開いたようなことになっておるわけですよ。どうされるのですか。  私は今からでも遅くはないと思う。登録をした販売業者が領収証を納税義務者に渡してくれるだろうというようなことでこんな大事な書類を——税の領収証というものは言ってみれば公文書です。いつ、どこで、どういうようなことで必要になるかわからぬ大事な書類を、渡してくれるだろうということで販売業者、第三者に長年にわたって渡してきておったというのはこれまたけしからぬ。もし仮に渡すにしても、もう一方のルートとして、あなたの方から何月何日、自動車取得税幾ら領収いたしましたというようなことは通知しようと思えばはがき一枚で簡単にできることですがな。簡単にできまっしゃろ。こういう手続もとっておらない。どうなんですか、これ、改めますか。
  203. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 自動車の販売の実態がそのような形で代行して行われておるという点にかんがみまして、私どもとして、ユーザーが確かに税を払ったということを明確にするために領収証をディーラーに渡すという仕組みにしたわけですが、これはあくまでも善意のもとに、あるいは信頼関係のもとに行われるということを前提として考えておるところでございます。  御指摘のように、納税義務者本人が申告してこない場合に、本人に納税の事実を明確に通知するということは確かに大事なことだと考えられるわけでございますが、全国でどの程度の実態があるのかというのが必ずしも明確ではございません。しかし、一部のそういった悪意の業者のために善意の業者が行っておることまでが疑惑を招く、あるいはそのために課税事務の複雑化を招くということも問題かなという気がするわけであります。  本来、納税義務者自身が申告なされば一番問題がないわけでございますが、そういう実態にないというところがこの問題の難しさだろうと思います。したがいまして、一つには、せっかく税を納めていただくのでございますから、やはり納税者に十分関心を持っていただくように周知に努めるよう指導する必要もあろうかと思います。いま一つは、一部であろうと思いますけれども、こういった仕組みを利用して金を懐に入れるような悪質な業者の存在にかんがみまして、関係業界に対して既に私どもの方から申し入れもいたしておりますが、必ず領収証を渡すようにという指導を監督官庁、所管官庁あわせて十分指導していただくということが必要であろうかと思います。  それにいたしましても、もしそれでもなおかつこういった事態が改まらないということになりますれば、私どもの方といたしましても、そういった納税義務者にどれだけの税金を納めたかということが明確になるような手続を、課税事務の簡素化というようなことも十分考えながら検討してみたいと思います。何分にも自動車取得税の課税件数が年間約六百万件を超えるという大変膨大な数でございます。したがいまして、そういう意味では、一つ一つは小さな事務でございましても、全体としてはかなりの事務になるということでございますので、課税事務の簡素化という点も念頭に置きながら、しかも一方ではこういった遺憾な事態を防止できるような仕組みを私どもとしても検討する必要があるというぐあいに考えておるところでございます。
  204. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そんな悠長なことを言っておってはあきまへん。今までのような登録している販売業者に領収証を渡すという手順を変えないことにはこれは防止できません、はっきり言って。局長の答弁だと、ユーザーも関心を持ちなさい、それから販売業者もこんな悪いことをしてはいけませんといって指導すると言いますけれども、制度として、何ぼ税金を納めたのか納税義務者に直接わからないような仕組みが続く限りは不正は絶えぬですよ。これはわかり切った話です。納税義務者にこれだけの税金をいただきましたよといって領収証を渡すのは当たり前じゃないですか。法律は、納税義務者が直接申告する、こうなっておりますけれども、これはやろうと思ってもできやしません。  局長、大阪におってよく御承知でしょう。大阪に自動車税の事務所は何カ所ありますか。府税事務所が十四カ所で、自動車税の事務所はたった三カ所ですよ、あの広い大阪府下で。これは行くだけでも大変ですよ。もともと納税義務者が直接行って申告して税金を納めるようなシステムになっておらぬのです。そこへあなたの方で通達を出したから余計ややこしいことになってきたのですよ。だから、結果を見て指導するというような悠長なことを言っておらぬと、私は今一つの案を出しましたけれども、納税義務者に直接はがきで納税の結果を連絡するとか、やろうと思ったら簡単にできることですよ。  これは後で警察庁に聞きますけれども、これはまさに刑事事件でしょう。金額も大きいです。取引価格との差も大きいのでしょう。実際は千五百億くらい損しているのじゃないですか。自動車取得税総額からいったら大変な額ですね。千五百億ということになりますと半分近くになるのじゃないですか。領収証の問題については直接納税義務者に渡るような措置を至急に講じていただきたいということを重ねて申し上げておきます。  それから取得価格の問題でありますが、通達を見ますと、この一覧表というのは六百九十九条の七の二項、つまり持っていた車を親戚の人にやったとか、あるいは代物弁済で取得したとかいうようなことで、実際の取引の金が動いていないという場合に課税するために、一体どれくらいのものを取得されたのかというみなし取得価格という例として出されたわけなんでしょう。そうじゃないのですか。
  205. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 仰せのとおり、本来はそういった特殊な取引のケースについて、その場合にはこういう価格をもってみなし価格とするということで設けられたものでございます。
  206. 経塚幸夫

    ○経塚委員 特殊な例の場合にこの一覧表に基づいて計算をしなさいといって出されたものが、今一般化しているわけですね。だから、これが新車の場合ですと一覧表による価格は大体一割ぐらい安い、中古車ですと半分から三分の一ぐらいの値段になっているということになるわけです。これも事務をやっておればすぐわかることなんですね。そこへもってきて法令上は、売買契約書など取得をしたことを証明する書類を添付することになっておった、これも要りまへんという通達を出しておるわけですな。これはおかしな話ですね。自治省みずからが幾らでも不正ができるような道をどんどんつくっちゃっておるわけです。ここに今回の事件が起きておる大きな背景があるのですよ。だから私は最初に、自治省は責任を感じとりゃしまへんのか、原因と責任は自治省がつくったんじゃないか、このことを指摘しておるわけです。  そこで、この一覧表はどうされるおつもりなんですか。私はこれは、現実に取引されておることとの重大な矛盾を法令と通達の違いが指摘をしておると思うのです。例えば法令どおり課税標準は、実際に取引された価格に課税をいたしますよ、それを証明するに足る売買契約書を申告書につけて出しなさい、こういうことになりますと、新車で今よりも一割以上高くなる、中古車の場合は倍から三倍ぐらいの税額を納めなければならぬということになって、これは大問題になると思うのですね。だからこれは自治省も、事実上消費者にとっては随分重い課税になってくるということを百も承知の上で、実際の取引価格よりもはるかに下回っておる一覧表を、特例に限って適用すべきものを一般化されておるのを黙認しておったのか、添付すべき売買契約書を添付しなくてもいいという通達をわざわざ出したのか。私はここは全く解せぬわけであります。その点はどうなんでしょう。
  207. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 御指摘のように、基準額一覧表につきましては、六百九十九条の七の各ケースに該当する場合としてこれは設けられたものでございます。ただ設けました以上はやはりその価格というものは、いろいろ御議論はあろうかもしれませんけれども、特に中古車の場合は取引の実態が千差万別だというようなこともございまして一概には言えませんが、一つの通常の取引価格という意味を持つものだ、このように考えなければならないと存ずるのでございます。  そういう意味から、こういった基準額というものがそれ以外の場合につきましても一般に実際の課税に当たって用いられることをあえて否定しない、また、基準額以上である場合には特に契約書の添付を必要としない、こういう通達もあえて出したわけでございますが、結局自動車の取引の実態というものが非常にさまざまであり、かつ数がふえてきたということから、課税事務の簡素化という点も考えましてこのような取り扱いにしておるところでございます。
  208. 経塚幸夫

    ○経塚委員 車の場合は税金がたしか九種類ぐらいかかっているのですね、自動車一台に。自動車連盟の調査によりますと、千六百cc、耐用年数六年としまして、百十七万八千円ぐらいの車で十四万九千七百七十二円税金がかかる。車の価格に対する税負担率は日本は何と世界一なんです。イギリスが九・七、フランスが一一・五、西ドイツが八・二、アメリカが二・九、これに対して日本は一二・七%なんですね。だから、自動車一台持てば随分これは税金がかかるものだということを私もこの数字を見て驚いておるわけですが、ここへまともに売買契約書をつけて取引価格に課税をするということになりますと、先ほど言いましたように、これは大変な重課税になるわけですね。  だから、私は領収証はきっちり納税義務者に交付をする、そしてその一覧表を実際の市場取引価格として今後も堅持をしていく、こういうようなことであれば、やはりこの際法も実態に即したように改正する必要があるのではないか。そうでないと、現在の法令と通達上の矛盾というものは解消しないと私は思うのですよ。したがって、焦点は二つ、車を取得されたユーザーに対して不利にならないように、同時に販売業者のこういう不正は絶対に許さないという観点から通達、法令の見直しを行うべきではないかと考えるのですが、その点いかがでしょうか。
  209. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 確かに先ほどからお答え申し上げておりますように、我が国における自動車の取引というものが非常に数がふえてきておるという観点から、扱いにおきましてもいろいろそのような便宜性を考慮してきたわけでございますが、一方でそういった不正な事案が出てくるということになりますれば、私どもとしてもやはり考える必要があると思います。したがいまして、先ほど申し上げましたように、一つには、関係業界に対する指導も当面のこととしてこれは必要かと思いますが、根本的な問題といたしましては納税者がきちんと把握できるようにすること、それからもう一つ基準額の問題でございますが、この制度は私ども実際問題としてやはり維持していくということの方が適切であろう、こう考えております。その場合に、果たして法令にこれが準拠して行われているのかどうか、かなり便宜的な扱いではないのか、むしろその辺を法令においてはっきりさせるべきだという点につきましては、よく検討をいたしたいと存じます。
  210. 経塚幸夫

    ○経塚委員 警察庁の方へお尋ねをしたいと思いますが、この件についてきょう付で警視総監あてに告発状が出ております。それから、三月二十七日ですか、千葉県柏警察署長あてに同じような趣旨で出ておると思いますが、これはどう考えてみましても明らかに刑法二百四十六条一項の詐欺罪に該当するものだと考えられるわけであります。それからもう一点は、出されました告発状につきましては警察庁としてどのように対応されるのか、その点お尋ねいたします。
  211. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 三月二十七日に警視庁と千葉県の柏警察署に告発状が郵送されております。千葉県の方では関係人からの事情聴取もしまして、四月九日に告発を受理して、現在捜査中でございます。警視庁の方は、きょう告発人等から詳しい事情を聞きまして態度を決定する、こういうことにしております。  そこで、詐欺に当たるかどうかというお話でございますが、今千葉県の方では捜査が始まりましたし、警視庁もきょう態度を決めるということでございますから、具体的な事実関係が何罪に当たるかを今この席で申し上げるのはいかがかと思いますけれども、一般論として申し上げますと、相手を欺罔して、その結果錯誤に陥らせて財産上不法の利益を得るとか財物を得るということになりますと、これは事実関係のいかんにもよりますけれども、詐欺罪の成立が考えられるわけでございます。  以上でございます。
  212. 経塚幸夫

    ○経塚委員 ぜひひとつ二度とこういう不正が起こらないように、警察庁としても厳重に対処されたいということを申し上げておきたいと思います。  それでは、続きまして、地方行革の問題についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  閣議の報告事項としてもう既に全国に通知をされております地方行革大綱でありますが、これは守らなければならないという拘束力を持ったものなのですか。
  213. 大林勝臣

    ○大林政府委員 一月に出しました地方行革大綱は、今後の地方行革を推進するための行政運営の指針として、いわゆる指導助言の一環として要請したものでありまして、御質問の御趣旨が法的拘束力関係の御質問だとすれば、法的拘束力はございません、あくまでも指導、要請でございます。
  214. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうしますと、その二百四十五条の勧告、助言の中で「助言」、こういうことですね。
  215. 大林勝臣

    ○大林政府委員 助言、指導の一環でございます。
  216. 経塚幸夫

    ○経塚委員 助言、指導の一環ということであれば、これについては昭和二十五年の地方行政調査会の行政事務再配分に関する勧告の中で、サービスであって権力的な監督であってはならない。好意ある援助、サービス、こういうぐあいに解釈してよろしいですね。
  217. 大林勝臣

    ○大林政府委員 権力的なものではございません。
  218. 経塚幸夫

    ○経塚委員 それでは引き続きお尋ねいたしますが、この大綱の策定時期は八月までとも解釈できるわけでありますが、この時期についてはどういうふうに考えておられるわけですか。
  219. 大林勝臣

    ○大林政府委員 できるだけ早く全地方団体が足並みをそろえて地方行革に努力していただきたい、こういう御要請でありますから、できるだけ早くという目途を八月というふうにお願いをしておるところであります。
  220. 経塚幸夫

    ○経塚委員 八月まででなければならないということですか。
  221. 大林勝臣

    ○大林政府委員 八月までに策定をお願いしたい、こういうことでありまして、一応の努力目標ではありますけれども、できるだけ早くお願いするという趣旨でございます。
  222. 経塚幸夫

    ○経塚委員 さっきの答弁では、いわゆる助言、助言とは好意的なサービス、こういうことであって、しかもその前段には拘束力は持たない、こう言っておいて八月までというのはどういうことですか。何で地方がやるべきことについて期限を切るのですか。切っているのですか、切っていないのですか、どうですか。
  223. 大林勝臣

    ○大林政府委員 行政指導を行います場合には一つの目標というものが当然要るわけでありまして、策定の内容につきましては概括的に列挙をいたしておるわけでありますが、その策定する時期につきましても目標は必要だということで目標の設定を私どもはお願いしておるところであります。
  224. 経塚幸夫

    ○経塚委員 八月までとはっきり期限を切って、八月までにつくらなければならないということなのか、いや、そんなに拘束するものではないということなのか、そこはどうなのですか。
  225. 大林勝臣

    ○大林政府委員 八月までにつくっていただくように努力をお願いしておるわけであります。つくらなければならないとかなんとかということではございませんけれども、八月までにつくっていただきたいという要望であります。
  226. 経塚幸夫

    ○経塚委員 お願いですね。
  227. 大林勝臣

    ○大林政府委員 要請であります。
  228. 経塚幸夫

    ○経塚委員 要請とお願いとどう違うのか。  局長、想定質問と回答、行政行政課作成、この中に想定質問に対する回答として、自治省として無理は承知しているが、八月策定が目標である。基本的には弾力的運用はできない。これは何ですか。これはお願いじゃありませんね。基本的には弾力的運用はできない。これは回答ですね。幅も何もないですね。これで拘束しておらぬとかサービスだとか助言だとか、あなた、よくそういうようなことが言えたものだと思いますね。これは内容が、こういうふうに一つ一つずっと突いていきますと、断定しているのですよ。ノーかイエスか。完全に義務化していくような問答集の内容になっておるじゃないですか。それじゃ、こんな想定問答集は撤回しなさい、おっしゃるようなことだったら。  できれば八月までに作成していただきたい、あくまでもお願いでございます。お願いというのは、聞いても聞かぬでも、はっきり言えば相手の勝手ですね。お願いだから聞かなければならぬというような義務は何もありません。お願い、ああ、そうでございますか、聞きおきましょうと言われても済む問題なのでしょう。そういう性格のものなのでしょう、もともとは。閣議の決定でもなければ、単なる報告事項なのでしょう。それで、法制上何の権限もまた権力的な性格のものでもないということになってきたら、何で問答集でここまで断定的なことを言わなければならぬのですか。撤回されたらどうですか。
  229. 大林勝臣

    ○大林政府委員 一月の総務部長会議で行革大綱を提示いたしまして、その後各都道府県からいろいろ細かい質問が殺到したわけであります。その質問を質問集という格好で別途ブロック別に地方課長会議を招集いたしましてそこで説明をいたしたわけでありますが、その御指摘の問答集というのは、質問集というのは示したわけでありますが、答えの方は私どもは存じておりません。
  230. 経塚幸夫

    ○経塚委員 これは重大な発言でございます。そうしますと、この問答集は、自治省行政行政課作成、一九八五年二月四日、「回答は、自治省が各県担当者会議で示したもの」こうなっておりますが、それじゃこれは自治省のものじゃないわけですね。こういう質問が出るかもわかりませんという想定質問だけは自治省が出しました、その答えは自治省出しておりません、こういうことなのですね。
  231. 大林勝臣

    ○大林政府委員 資料として配りましたのは問いだけでありまして、その問いについて質疑に応じて口頭で説明をいたしたところであります。
  232. 経塚幸夫

    ○経塚委員 それじゃ、自治省が回答したわけじゃないですか。質問集をつくって、その質問について自治省は、回答としてはこういうことですよ、こういうことですよ、それが文書になってきておるわけです。こういう質問が出ますよという想定質問を出したら、回答をつくるのは当たり前ですね。こんな質問がありますよといって質問集だけつくって回答集をつくらぬというなら、質問集の値打ちがないわけでありますから、これは自治省の回答なのでしょう。自治省の回答と違うのですか。どうなのですか。
  233. 大林勝臣

    ○大林政府委員 回答をも盛り込んだ資料をつくっておるということではないということであります。質問集を集約いたしまして、印刷をして配付をして口頭で説明をした、こういうことであります。
  234. 経塚幸夫

    ○経塚委員 その口頭で回答したものが文書になっておるわけです。だから、私は聞いているのです、これは自治省の回答じゃないのですかといって。自治省は回答したのでしょう。それは局長認めているわけです。それが文書になって出ているわけです。自治省は何も回答しておりません、質問集だけを出しましたということなら話はわかりますよ。しかし自治省が回答したことを局長は今お認めになったわけです、何にしてもこれは自治省の回答であることは局長の答弁からでも間違いない。  そこで続いてお尋ねをしておきたいと思いますが、この回答の中で、この大綱は「議会の議決権の対象外とする。」こういうふうに自治省は回答されておるわけですね。これほど重大な地方行革の大綱問題について、その地方公共団体の議会の議決権事項にするかあるいは議決権事項にしないかは、これは地方公共団体が決めるべきことでしょう。する必要はないというところまでなぜ自治省は回答するのですか。明らかに地方公共団体に対する、これこそまさに議会に対する介入、干渉じゃございませんか。ところによっては、重大な行革大綱である以上は議会の議決の対象にすべきだということだってあり得るわけですよ。それはする必要おまへん、議決の対象外として扱いなさい、これが介入、干渉でなくて何ですか、どうです。
  235. 大林勝臣

    ○大林政府委員 いろいろ行革大綱を実施いたしてまいります場合に、委員会の設置でありますとかあるいは行革推進本部の設置でありますとか、いろいろな組織上の問題もございましょう。特に委員会の設置を附属機関というような位置づけをするといたしますれば条例ということになり、その段階で議会の御審議が当然加わるということにもなるわけであります。と同時に、そういったメンバーの中に議会の方がお入りになるということも当然考えられ、現実にもお入りになっている例はあるわけでありまして、そこでいろいろ御審議を賜るわけであります。  現在、議会の議決事項というのは、九十六条に列挙されてありますのは限定列挙ということになっておるわけでありまして、そういう意味で正式な議会の議決事項ということではないけれども、そういう本部の設置でありますとかあるいは御審議の過程において当然議会の御意思というのは十分に参酌されるであろう、こういうお答えでございます。
  236. 経塚幸夫

    ○経塚委員 だから議会の議決の対象にするかしないかは、それは地方公共団体が決めるべき筋合いのものなんでしょう。その点はどうなんです。
  237. 大林勝臣

    ○大林政府委員 現在の仕組みにおきましては、議会の議決事項はどういうものであるかというのは、地方自治法で長と議会との権限の均衡関係を考慮した上で列挙主義になっておるわけでありまして、この列挙主義以外に議会の議決事項をつくるということはできないことになっておるわけであります。
  238. 経塚幸夫

    ○経塚委員 するかしないかは地方公共団体が決めるべきことなんでしょう、こう聞いておるわけなんです。それはどうなんですか。
  239. 大林勝臣

    ○大林政府委員 つまり議会の議決事項が法律の上で限定列挙になっておるということは、議会が自由に議決事項にするかしないかを決めることはできないということであります。もちろんいろいろ全員協議会でございますとか、事実上の議会に対する御相談というような場面はこれはあろうかと思いますが、法律上の議決ということではございません。
  240. 経塚幸夫

    ○経塚委員 条例事項にする場合は当然議決が必要になりますがな。どうなんですか、条例事項にするかしないかは地方公共団体が決めるべきことでしょう。そうじゃないですか。
  241. 大林勝臣

    ○大林政府委員 もちろん条例という形にいたしますれば、条例の議決ということで議会の議決事項になることは当然のことであります。したがいまして、先ほど委員会の設置におきましても、委員会の設置を条例で行うということになれば、それはそれで議会の議決事項になるわけであります。
  242. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうすると、議会の議決の対象外にせよという断定的なこと自体明らかに介入じゃないですか。何を言っておりまんねん。明らかに介入じゃないですか。  時間の関係もございますので、逐次内容の問題について入っていきたいと思います。  事業の民間委託の問題もいろいろと指導の内容として列挙されておりますが、まず学校給食についてお尋ねをしたいと思います。  文部省は一月二十一日に「学校給食業務の運営合理化について」という通知を出されておりますが、このいわゆるパート化あるいは共同調理方式、民間委託化、これの最大の目的は何ですか。
  243. 小西亘

    ○小西説明員 今回の通知は、各設置者が地域の実情等に応じて適切な方法により、学校給食業務の運営合理化を推進するようにお願いしたものでございます。
  244. 経塚幸夫

    ○経塚委員 運営合理化ということでございますが、厚生省の保健課、ちょっとお尋ねしますが、学校給食の食中毒事件、昭和五十四年と五十八年、それぞれ員数とそれから全体に占めるパーセンテージ、お知らせ願います。
  245. 玉木武

    ○玉木説明員 お答えいたします。  学校を原因施設としました食中毒事件の患者数は、昭和五十四年におきましては四千八百一名となっており、原因施設の判明した事件の総患者数の一六・八%を占めております。昭和五十八年におきましては七千九百二十三名で二二・五%となっております。  以上でございます。
  246. 経塚幸夫

    ○経塚委員 五十四年が四千八百一人、五十八年が七千九百二十三人、一六・八%から二二・五%、学校給食の中毒事件が随分とふえておりますね。文部省はこの学校給食の中毒事件の内容について自校方式、共同調理方式、民間委託、分析を行っておりますか。
  247. 小西亘

    ○小西説明員 今御指摘ございました食中毒の発生件数と私どもがつかんでおります数字と必ずしも一致しないようでございますけれども、今先生御質問のこと、恐らく単独調理場、共同調理場の区別がはっきりしているかどうかということだと思いますけれども、私どものつかんでいる数字でははっきりいたしております。
  248. 経塚幸夫

    ○経塚委員 最近学校給食の中毒事件が急増をしておる、これは数字上も極めて明らかなわけでありますが、果たしてこの一月の通知のように民間委託あるいは共同調理方式に切りかえて安全衛生が守れるのかどうか、私は極めて疑問に思うわけであります。これは大阪府の柏原市で起きた事件でございますが、民間委託の給食の中からミミズが出てきた。それに引き続いて三十人の集団中毒患者が出た。お母さん方が騒ぎ始めて、もう弁当を持っていくということで、給食と弁当と一つの教室内で相競い合うという事件が起きまして、新聞にも大々的に報道され、ついに請願署名が有権者の三割近くに達して、いまだに原因も解明されないまま来ておるというような事件もございます。  私もセンター方式のところを見てまいりましたが、これは同じく大阪府下の河南三市給食協会でありますが、これは三千食がまなんですね。わずか二人でやっております。プロペラで撹件をするものでありますから、これにうどんだとかそういうものが絡みついてかすが残る。搬送するベルトにはウジ虫がわく。何ぼ手入れをしようにも行き届かない。こういうことで、安全対策を市当局に求めましたけれども、これは協会に委託しておりますから、協会は、施設は市のものであるから手を入れるわけにはいかないと言う。市は、三市が関連をいたしておりますから、一市だけうんと言ったところで解決がつかない。こういうようなことで、現場の人たちは、三千食がまという共同大規模調理方式では安全に責任が持てない、こういうようなことも言われておるわけであります。  それからさらに、労働者の安心した労働条件が確保できるかという問題でございますが、これも大阪府下で最近民間委託を行ったところでございますが、これは一万食を扱っております。施設は公設、そして調理、加工は民間委託であります。何と従業員五十人のうち三十六人がパートであります。時給五百円ですね。推計をいたしましただけでも年間五百万から七、八百万、加工賃の手数料を業者が手にできるというような仕組みになっておるわけでありますが、何とこの民間の会社は、これも新聞に報道されましたが、成績が悪いといってここの専務が従業員を殴る、調理用の包丁で脅迫をする、そして深夜、翌日の午前四時まで軟禁をし、正座をさせた。このために、この給食会社の専務が傷害、軟禁の容疑で逮捕され、社長が事情聴取を受ける、こういう事件も起きております。  先ほど言いました柏原市の給食場は、私、写真を持っておりますが、これは菓子工場の一棟であります。両側が鉄工所であります。その菓子工場を借りて、給食センターという看板を掲げてやっているわけですね。合理化ということだけを目的にすれば、こういうふうに直接設置者が安全衛生についても責任を負えない、働いておる職場の労働者の労働条件についても責任が負えない、こういう事態が起こってくる。ここに食中毒発生の一つの要因も生まれてくる。一体こういう状況を文部省は御存じの上で一月通達を出されたのか。これじゃ、おいしく、楽しく、教育の一環としての給食の目的が達成されぬじゃないかと考えられるのですが、その点はいかがですか。
  249. 小西亘

    ○小西説明員 今回の通知では、先ほど申し上げましたように学校給食業務の運営合理化を推進するようにお願いしたものでございますが、同時に学校給食業務の運営については、これを円滑に行うことを基本とするとともに、合理化の実施につきましては、学校給食の質の低下を招くことがないように十分配慮するということも求めているわけでございます。  今先生の御指摘の民間委託についてでございますが、私の方も、この方法の一つとして例示していることは事実でございますが、民間委託を行う場合にあわせて幾つかの留意事項も示しておりまして、これは設置者である市町村が設置者としての責任を全うするための基本的な条件であろうと思うわけでございますが、そのうちの一つに、献立の作成というものは、設置者が責任を持って実施すべきものであるから、委託の対象としてはいけないということ。あるいはまた、物資の購入とか調理業務等における衛生、安全の確保という問題については、設置者の意向を十分反映できるような管理体制を設けること、その他幾つかのこういった条件といいますか、留意事項を示しているわけでございます。そのようなことを十分理解してこの民間委託を行っていただければ、私は今先生のおっしゃったようなことを避けられるのではないか、このように考えているわけでございます。
  250. 経塚幸夫

    ○経塚委員 避けられるのではないかという期待感でありますが、現実にやられておる現場を見ますと、これは避けられるどころじゃない、危険がいよいよ募るという不安を我々は感ぜざるを得ないのですね。先ほど申し上げました河南三市の協会などは、公設、そして協会へのいわば委託でありますから比較責任が負えるところなんですよ。そこでも今言ったような問題が起きているのですね。どうしても、これは安上がりで、委託を受けた価格の範囲内で上げなければなりませんから、働いている人にも大変過重な負担をかぶせなければならない。  ここでは調理員が交代で車の助手席に乗って、つくったものを学校まで運ばなければならない。何でそんなことになるかと言えば、委託を受けた協会が、今度は運搬を運送会社に委託しているわけなんです。委託を受けたこの運送会社は、運転手一人分の給料を払う程度の安い金額で下請をいたしましたから、助手を乗せる余裕がないわけです。そうすると、この助手席へ調理員が交代で乗るわけです。その結果どんな事故が起きたかといいますと、調理員が転落して死亡事故が起きたのです。こういう事態も起きておるわけですね。  私どもが現場へ入っていきますと、もうこれは本当にえさをつくっておるにすぎない。食べている子供の顔も見えないし、子供はつくっている給食のおばちゃんの顔も見えないし、全く情けない、こう言っております。それでも、顔は見えなくとも食べている子供の顔を浮かべながら、少しでもおいしいものをと思って気を配っているわけです。  ここはまだ職場でどんどん意見を出しているところなんです。聞いてみますと、丸太のようなゴボウがこの間入ってきたそうなんです。こんなもの子供に食べさせられぬじゃないか、こう言ってみんながそろって写真を撮って、そして委員会に直訴しておる。そうしますと、その翌日からは家庭でもちょっと買えぬような立派なゴボウが入ってきたそうであります。それからキャベツ。包丁を入れても包丁が刺さらない。そんなキャベツっておまんのかと聞いたら、これは韓国産のキャベツなんだそうですね。びっしりと葉が巻き締められているわけですね。包丁が立たぬと言うのです。こういう韓国産のキャベツが入ってきている。それから真っ黒けのブロッコリー、これも写真を撮ってあるのを見せていただきましたけれども、これは一カ月前に入札するのですね、材料の購入を。それで使っているうちにこれは大変だ、かえてもらおうと思いましても、一カ月前にもう入札をしておりますから急場の間に合わないのです。  しかも、ここの周辺は田園都市でありまして、軟弱野菜の産地であります。そして一つの市では、価格調整と称して農業振興のために年間四百万円の補助金を出しているのです。この三市でいわゆる軟弱野菜等の購入総額が七千万円なんですね。これは冷凍野菜です。給食場の目の前でサヤエンドウだとか、地場産業でどんどんつくられて、そしてこれが買いたたかれて売れないというので、価格調整補助金を出しておる。ところが、給食場では冷凍のサヤエンドウを入れているというようなことになっているのですね。こういう矛盾も起きているのですよ。これが自校方式では、自分の畑からとってくるように周りの農家から買い入れて、そして新鮮なものを直ちに調理できるわけでありますが、こういう矛盾も起きておるということを文部省は篤と考慮に入れておいていただきたいと思うのです。  そこで、四十六年の四月八日に、学校給食の食事内容、まあおいしい給食ということで通達が出されております。本来学校給食の基本は、原則は、この四十六年四月八日の通達の趣旨に沿って扱われなければならないものだ、私はこういうように考えているのですが、その点はどうですか。
  251. 小西亘

    ○小西説明員 今先生御指摘の通知は、四十六年四月八日の「学校給食の食事内容について」というこの通知かと思いますが、今御指摘のように、この通知も生きておりますので、これに準拠してやっていただきたいと思っております。
  252. 経塚幸夫

    ○経塚委員 それからもう一つは、一月の通知の線に沿って、パートとか、あるいは共同調理方式、民間委託、こういうものを採用するか、あるいは自校方式を続けるか、これはその地方の実情に合って、地方の判断でやってもらうべきだと考えるのですが、その点はいかがですか。
  253. 小西亘

    ○小西説明員 先ほど申し上げましたように、今回の通知は、いわゆる学校給食業務の運営合理化を推進していただくようにお願いしているわけでございまして、どのような方法でこれを行うかということは、設置者である市町村の判断にお任せしているわけでございます。
  254. 経塚幸夫

    ○経塚委員 この通知がひとり歩きをして、結果的には強制することのないように、重ねて要望申し上げておきたいと思います。  文部省の方は結構でございます。それから、保健課の方も結構でございます。  次に、この行革大綱の中で、同じく民間委託の問題でございますが、会館など公共施設の管理運営合理化ということの中で、いろいろその管理についても民営化、民間委託の問題を方針として出されております。  そこで私はお尋ねをしたいと思うのですが、公の施設の管理委託の問題について、二百四十四条では、公の施設の設置の目的として、住民の福祉を増進する目的を持って施設を設ける、こう明文化されております。この管理、二百四十四条の二で、「必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、その管理を公共団体又は公共的団体に委託することができる。」したがって、私は、原則は公の施設については、これは当然行政の直接責任で管理をする、原則はそこにある、こう考えるのですが、その点はいかがですか。
  255. 大林勝臣

    ○大林政府委員 御指摘のように公の施設というのは、住民の福祉を増進するために、また住民の利用に供するためにつくる施設でありますので、地方公共団体が責任を持って管理運営をするというのが一つの原則であります。ただ、同時に地方公共団体といたしましても、最小の経費で最大の効果を上げるような努力義務が地方自治法にも決められておりますので、そういう必要があると考える場合には、公共団体あるいは公共的団体、行政責任が保てるような団体というものに対して委託することができる、こういう趣旨でございます。
  256. 経塚幸夫

    ○経塚委員 私は最初に二百四十四条を申し上げましたのは、あくまでもその目的である住民の福祉の増進に役立つか役立たないか、これが基準なんでしょう。単に合理化できるとかどうとかいうものじゃなしに、この目的に照らしてプラスになるかマイナスになるか、ここがあくまでも基準だと考えるのですが、その点はどうですか。
  257. 大林勝臣

    ○大林政府委員 もちろん住民福祉の増進が目的であります。したがいまして、住民福祉の増進という目的を達成するためには、行政が直接手を下してやる方が効果的であるか、あるいは物によりましては、行政よりもそういう施設の管理に習熟をしておる団体、こういうものに委託をしてやる方が住民福祉の増進に役立つか、こういうことを勘案して決めるべき問題であろうと思います。
  258. 経塚幸夫

    ○経塚委員 あくまでも住民福祉が目的である、これが管理の方法、形態をどういうふうにするかということの大前提である。それからもう一つは、直接管理が原則である、こういうふうに解釈をしておきます。  そこで、こういう民間委託事業にしましてもあるいは施設の管理にしましても、直接行政責任が及ぶかどうか、これが極めて重大な問題だと思うのですね。  そこで、お尋ねをしたいと思うのですが、最近各地方で情報公開条例がそれぞれつくられていっております。この情報公開条例に照らして、民間委託をした場合に、その委託契約書はもとより、単価等を含めまして委託の内容、それからさらに委託をした相手方の会社の経理などを含めた実態、あるいは委託をした場合に、委託の直接作業に携わる労働者の労働条件等々について情報公開の対象になっておると考えておりますか、なっておらないと考えておりますか、どうですか。
  259. 大林勝臣

    ○大林政府委員 情報公開条例の定め方によると思います。情報公開条例ではいろいろ公開すべきもの、公開を控えるべきもの、こういった規定の仕方になっておるようでありまして、個々の条例の内容まで熟知しておるわけではございませんので、そういった御質問の点について具体の条例が対象にしておるかどうかということは、お答えは差し控えさせていただきます。
  260. 経塚幸夫

    ○経塚委員 お答えは差し控えさせてということでございますが、民間委託を大いにこれから自治省が奨励していこうという場合、これは重大な問題になると思うのですよ。  そこで私は問い合わせてみた、東京都の場合、神奈川の場合、埼玉の場合、情報公開条例をつくっておるところ。残念ながら、委託契約書の簡単なものは情報公開の対象になって、資料は提出いたします、ただし単価は情報公開いたしません。請負価格、単価、重大な問題。それから相手方の会社の経理実態、これも情報公開の対象になっておりません。それから働いておる人たちの雇用、労働条件、これも一切対象にいたしません、こういうことであります。これはどうなりますか。こうなってまいりますと、議会の調査、審議権が及ばないのですね。  例えば学校給食の場合自校方式ですと、一体幾らで材料を仕入れて、そしてそこで働いておる職員の給与がどれくらいで、何人ぐらい人が配置されておって、そして一食当たりどれくらいの実際の価格になるのか等々は、これは当然直営であれば行政がやっておるわけでありますから議会の審議の対象にもなるわけでしょう。一たん民間委託になりますと、これはたこの糸が切れてしまうのですよ。企業秘密という名目のもとに、単価が幾らなのか、材料費、調味料等々も含めまして、そういうような収支一切が議会の審議の権限外に置かれるわけなんですよ。これで一体行政責任が負えますか。その点はどうですか。
  261. 大林勝臣

    ○大林政府委員 どういうものを公開の対象にするかというのは、その地方団体地方団体において判断されて条例ができておるのであろうと思います。ただ、民間委託をいたします場合に、それぞれの団体でそれぞれの基準を決めて実施をいたしておるのでありましょうけれども、そういう民間委託の実施状況あるいは内容、具体の問題、そういったものについては当然議会の御論議の対象にはなるのであろうと存じております。
  262. 経塚幸夫

    ○経塚委員 その肝心のところが企業秘密という名に隠れて情報が議会にも報告をされない、それから一般の住民も知ることができない、こういうようなことでどうしてその管理監督の権限が及ぶのですか。及ぶはずがないじゃありませんか。何らかの事件が起きた、一体どういう状況でそういう委託をやっておったのかというようなことについて議会が知りたいと思って資料の提出を求めましても、これは企業秘密の名のもとに情報公開の対象にもしておらないということで、議会はもとより住民もそれを知ることができない、こういうようなことになって、どうしてこれは権限が及ぶのですか。及ばないことは明らかですよ。  民間委託を奨励されるなら、そこまで目を配って、果たして行政の管理監督の責任は及ぶのか及ばないのか、そこを十分確かめながら検討すべきじゃないですか。それは各地方地方の情報公開の内容によって千差万別でありましょうというようなことで済まされる問題ではないと思いますが、どうですか。
  263. 大林勝臣

    ○大林政府委員 問題は、民間委託をする場合にどういうふうに行政責任を充足するかという問題であろうと思います。各地方団体でそれぞれの種目ごとに民間委託を進めておるわけでありますけれども、民間委託をいたします場合に、相手方との契約の中に常に行政の目が光るように、あるいは監査、あるいは調査報告、あるいは値段でありますとか損害賠償の責任とか、こういったものを契約の各段階ごとに行政の入り込む根拠を契約上うたって現在やっていただくようにお願いをしておるところでありまして、そういう方法で行政責任を充足していくというのが現状でございます。
  264. 経塚幸夫

    ○経塚委員 これは何にしましても、施設の管理であれ事業であれ、民間委託というのはいろいろ重大な問題を含んでおります。したがいまして、管理あるいは事業の民間委託をやるかやらないか、やるとしてもどういう方法、形態が最も適切なのか、こういうことはやはりそれぞれの地方の特殊な事情があるわけでありますから、原則としてはこれも地方の判断にゆだねるべき性格のものだと考えますが、その点はどうですか。
  265. 大林勝臣

    ○大林政府委員 民間委託が始まりました当時、大体昭和五十年代に入りまして民間委託がかなり進んでまいったわけでありますが、これの一番の動機というのは、市長さん方にいろいろお話を伺ってみますと、施設関係では非常に多種類な施設がどんどん各地にできてまいったわけであります。そこで、それぞれに職員を配置して管理運営をしておったわけでありますけれども、同時に施設の種類によりましては、結局住民からかなり投書が舞い込む、要するに配置されておる職員が少しも仕事をしていないではないか、雑誌ばかり読んでおるではないか、これでは税金のむだ遣いではないか、こういう住民の声が一つの大きな動機になったことは間違いないところであります。  そこで、各地方団体といたしましても民間委託を頭に描いてきたわけでありますけれども、同時に、御指摘のような相手方の選定あるいは契約の基準、こういったものに十分に注意をしなければ行政責任が保てないわけでありますので、結局は行政責任を充足しながらいかにして住民の要望にこたえていくか、この兼ね合いが一番難しいわけであります。私どもとしましては、できるだけ民間委託におきましても行政責任を全うすること、これを民間委託における一番の重点事項ということで指導をしておるところであります。
  266. 経塚幸夫

    ○経塚委員 私がお尋ねしたのは、それぞれの地方の実情があるから、やるかやらないかは地方の判断に任せるべきだ、その点はどうかと聞いておるのです。
  267. 大林勝臣

    ○大林政府委員 どういったものを民間委託にするかしないかは、もちろん地方の実情に応じて決めるべきものであります。
  268. 経塚幸夫

    ○経塚委員 それでは続きまして、これもちょっと論議になっておりました国民健康保険の退職者医療の問題について、厚生省、これは四百六万二千人、一〇%の見込みということですが、目標どおりいく可能性はあるのですか。
  269. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 退職者の把握状況でございますが、現在のところ二百六十四万でございまして、全体の当初見込みの六五%という状況でございます。私どもとしましては、今後特に新規の加入者を中心に加入の促進を図ってまいるということでございますが、私どもいろいろな統計に基づきまして正確にやったものでございますけれども、実績は実績として受けとめるしかないと考えております。
  270. 経塚幸夫

    ○経塚委員 当初の計画どおり行く可能性があるかと聞いているのです。見通しはどうなんですか。
  271. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 これから加入促進を積極的にやりますので、どの程度になるかわかりませんけれども、その辺の見通しは現段階では立っていないという状況でございます。
  272. 経塚幸夫

    ○経塚委員 現段階で見通しが立っていない、随分無責任なことをおっしゃいますね。これで地方がどれだけ四苦八苦しているか、あなたちょっと全国を歩いてみなさい、そんなのんきなこと言っていないで。これは見通しがありませんよ絶対に、断言できます。  大阪府下の場合、国保加入者の一〇%以上は、四十四市町村中だった四市町です。五%以下が九市町、平均五・四一%、これはとてもじゃないけれども見込みがないですね。希望的観測をいつまでも申し立てて、いたずらに解決の日取りを延ばすようなことがあってはならぬと思うのです。  同時に、国保財政は大変な危機ですね。先刻あなたの御答弁では、老人医療の問題もありまして、全国的に黒字のところがふえてきておるという御報告もございましたが、実態はさほど甘いことはないですね。全国の統計でも、被保険者一人当たりの医療費が四・一一倍、これに対して保険税が四・六九倍でしょう。一般会計繰り入れが四・三八倍でしょう。国庫負担は医療費並みの四・一一倍しかふえておらないですね。大阪の例をとりましても、四年間で保険料がわずか一・五倍でしょう。一般会計繰り入れが一・九五倍ですよ。それで赤字は、ここまで一般会計から繰り入れをやりながら七割もふえているわけです。地方財政の影響は、東京都の国保会計百三十六億の欠損でしょう。高知市が七億七千万、大阪府下の場合は三十一市中二十六市で税、料金の引き上げを検討中、既に引き上げたところもございます。  これは私の住んでおります東大阪市の例でございますが、ここは低いですね。国保加入者の三・七八%です。赤字が五十九年二億一千七百万、六十年四億八千九百万の見込み、値上げ必至、一人二千七百円アップ、これで議会に相談をかけたところが議会は猛反対、そして議会の全会一致として、これは国の責任だ、したがって一般会計繰り入れで補てんする必要なし、赤字のまま行きなさい、こういうことになって、今理事者は頭を抱えておる、こういう事態になっておるわけです。これはどうされるのですか。厚生省の見込み違いで起きたわけですから、あなたの方の原因と責任ですね。当然あなたの方の責任でこれを補てんしなければならぬと思うのですが、そうされるつもりですか。
  273. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 退職者の関係で私どもも調査を行いまして、この結果に基づきまして、市町村の国保の財政が安定的にできるような方策を検討したいと考えております。
  274. 経塚幸夫

    ○経塚委員 いつまでに結論を出すのですか。
  275. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 調査結果の方は六月末までには出ると思っておりますけれども、その前におきましてもその後においてもまた検討を続けなければならぬと思っております。また、いずれにしましても厚生省だけで決まる話ではございませんので、政府部内で鋭意検討する必要があると考えております。
  276. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうしますと、六月調査結果が出る。それではそれに基づく対策はいつ手を打つのですか。
  277. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 これから政府部内で検討をする必要がございますので、現在いつやるかというめどは立っておりません。
  278. 経塚幸夫

    ○経塚委員 それもまたのんびりした話ですね。大阪府の例を申し上げたのは、もう十二月末でこういう状況が出ていて数字は動かないのです。これは、若干の上昇はあったとしても、ほぼ最終に近い数字なんです。大局は動かないという状況なんですよ。ところが厚生省はまだ今から調査、そして調査の結果が六月ごろ出ても、それから先いつ手を打つかは五里霧中だというようなことでは、ちょっとのんびりしてはおりませんか。  市町村はこの欠損分をどのようにして埋めているか御存じですか。私、あっちこっち行って聞いてみました。東大阪市の例の場合は五・五%一借です。そして連合会に納めているのですよ。これは後で利子も含めて面倒を見るのですか、国が補てんするという責任の範囲はどうなんですか。
  279. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 政府としてどういうふうな対策を講じるかということにつきましてはまだ決まってないということでございまして、具体的にこの席で申し上げるわけにはいかないわけでございます。
  280. 経塚幸夫

    ○経塚委員 どういう手を打つかわからないということは、国が責任を負わない場合もあり得るということですか。
  281. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 厚生省の立場といたしましては、国保財政が安定的に推移しなければいけないということでございますので、この辺につきましては誠意を持って私どもとしては頑張りたいというふうに思っております。
  282. 経塚幸夫

    ○経塚委員 例年ですと、調整交付で調整をするのが年度末ですね。これは例年どおりの年度末の調整では、私は市町村は承知ならぬということになると思うのです。だから、全国大会も近々計画されておるわけであります。したがって、例年の年度調整ではなしに、年内早い時期に中間的な調整をやる必要がある。そうでないと、一借できるところはいいですが、一借できぬところは国保会計がまわないですよ。厚生省の責任でまわないということになったらどうなりますか。さっきも意見が出ましたように、市町村はこれは国の責任だから一般会計から入れる必要はないと言ってかたい決意をかためておるわけです。だから、年度内ではなしに年内早い時期に中間的な調整をやるべきだと思うのですが、それはどうですか。
  283. 近藤純五郎

    ○近藤説明員 調整交付金の配分の決定につきましては、その年度におきます市町村国保の財政を公平に調整するという見地から行いますので、これはぎりぎりまで実績を踏まえてやる必要があると考えておるわけでございます。調整交付金の配分の時期につきましては、前年度の額を参考にいたしまして、それに基づきまして一部を先に、秋ごろでございますが渡すという措置も講じておるわけでございまして、六十年度におきましてもそういうふうな方法は検討したいと考えております。
  284. 経塚幸夫

    ○経塚委員 歯切れの悪い答弁ですが、地方の置かれておる実情をよく判断されて、無用な混乱を引き起こさないように、年内できるだけ早い時期に調整の手を打つということを検討していただきたい、かように考えております。  時間もぼつぼつ参りましたが、せっかく大臣に長時間お座りいただいたままでお帰りいただくのも大変申しわけないと思いますので、最後にお尋ねしておきたいと思うのです。  実はきのう大蔵大臣にお尋ねした問題とも関連をいたしますが、いわゆる国と地方関係の問題であります。  いよいよ本格的に国と地方の役割分担、費用分担をどうするかというまさに戦後四十年にして重大な岐路に地方も立つわけでございます。したがって、自治省がどういう態度で臨むかということは全国三千有余の地方自治体にとって極めて重大な問題だと思います。  そこで若干の資料を申し上げたいと思うのです。国の方は地方も車の両輪だとおっしゃっておりますが、ここ数年の経緯を見ますと、これはもう明らかに歳出、歳入ともに地方地方の住民が犠牲をこうむっておると言わざるを得ない。  例えばGNPに対する国と地方の歳出割合、規模の問題でございますが、GNPに対しまして歳出規模は、古い話になりますが昭和三十年は国が一一・五%、地方は一二・八%でありました。国も地方もそれからずっとふえてまいりました。昭和五十五年でありますが、国が一八%、地方は一九%までふえてきた。これは、歴史的に見ますとGNPに対する地方の歳出規模は最高に当たるのです。ところが五十五年から六十年度にかけて変わってきたのです、いわゆる臨調行革が叫ばれ出してから。どう変わったかといいますと、国は一八%から一六・七%、マイナス一・三%なんです。ところが地方は一九%から一六・一%ですから、実にマイナス二・九%なんです。五十五年から六十年度にかけましてはGNPに対する歳出の抑制率は国よりも地方に厳しいのです。これは頭に置いておいていただきたいと思います。  二つ目の問題は、GNPに対する項目ごとの歳出の内訳でございます。これは、五十五年と六十年と比較いたしますと、防衛費は〇・九から〇・九九七、これに比べて社会保障は三・三一であったのが三・〇四に落ちたのです。教育が一・七七から一・四五に、これは落ち込みが社会保障よりも大きいわけです。社会保障と教育でありますから、これは直接地方と住民、国民に影響が大きいということになります。  三つ目の問題は、昨日申し上げましたように歳入の方でありますが、租税総額に対する国税と地方税の割合であります。三十二年度は国税が六九・五%、地方税が三〇・五%であったのが、国税が六三%へ下がってきました。地方税は逆に三七%へ上がっていきました。歳入に占める、租税総額に占める国税と地方税の割合が国が下がって地方税がふえてきているのです。  最後に、国と地方の団体間における租税収入の実質配分は、五十六年から五十八年にかけまして国がプラス六・八%ふえたのですが、逆にその分だけ地方がマイナスになっているわけです。臨調行革が叫ばれ始めましてからここ数年の動き、GNPに対する歳出の割合、規模、歳入の面における国と地方の案分割合、あるいはGNPに対する歳出の項目別等々見てまいりますと、車の両輪だとか何だかんだうまいことを言っておりますけれども、やはり地方はいかれておりますね。そしてそのしわ寄せは住民、国民、地方に転嫁されておるのです。歳出規模もどんどん切り詰められていっておるわけでありますが、一体こういう状況をどこまで続けていくのか、私はこれは不安でならないわけですね。  地方財政計画財政規模の伸びが五十六年から六十年、これは一二・四%でしょう。臨調以前は五四・五%だったんですね。歳出の伸びも、これは公債費が五三・二%、一般行政費が八・七%、投資経費が〇・六%、交付税の伸びに至りましては、臨調行革以前五二・八%の四年間の平均伸びがたった八・四%でしょう。これはちょっと考えてみなければいけませんね。これで車の両輪と言えるかということなんです。結局は、車の両輪、両輪といいましても、国の方の、片っ方の車の輪が大きいのです、一回りも二回りも。地方の方が小さいのですよ。同じサイズの輪であれば順調に並んでいきますけれども、片っ方の輪が大きかったらどうなりますか。結局これに、行く方向へ引きずられていかざるを得ぬというようなことになってくるんですね。  だから私は、こういう実態を大臣よく踏まえまして、戦後四十年、戦後政治の総決算とは言いますけれども、結果としては、せっかくの地方自治の本旨に反する結果にならないように、ここは意を新たにして全国三千三百の地方自治体の置かれておる実態、きょうの参考人の八幡市の市長も、地方財政計画では収支均衡などと言っておるけれども、地方自治体の実態はそんなに生易しいものじゃない、予算総計七十七億のうち交付税に不算入の額が八億を超えているじゃないか、こういう生々しい実態がここで、参考人から意見が述べられましたけれども、そういう実態も踏まえまして対処していくべきだと考えておりますが、最後に大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  285. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 国と地方関係につきましていろいろな点から御説明いただきました。私どもといたしまして、また自治省といたしましては、地方自治そして地方団体の自律性、それから国との関係につきましていろいろお話がありましたような問題につきましても、そう遠くなく行われる国の税、あるいは国の税制改革があれば地方も当然あるわけでありますから、そういう機会ももちろんつかまえまして、地方税源の充実、それによりましてやはり住民の意思による潤いのある地方自治の実現できますようにひとつ一生懸命で頑張ってまいりますので、委員の皆さんにはどうぞ一層の御指導をお願いいたす次第でございます。
  286. 経塚幸夫

    ○経塚委員 遅くまで御協力、ありがとうございました。これで終わります。
  287. 高鳥修

    高鳥委員長 次回は、来る十八日委員会を開会することとし、開会時刻は公報をもってお知らせいたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十三分散会