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1985-04-08 第102回国会 衆議院 大蔵委員会内閣委員会地方行政委員会文教委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会建設委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月八日(月曜日)    午前九時三十一分開議 出席委員  大蔵委員会   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       金子原二郎君    瓦   力君       笹山 登生君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       平沼 赳夫君    宮下 創平君       山崎武三郎君    伊藤  茂君       小川 仁一君    川崎 寛治君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       武藤 山治君    石田幸四郎君       古川 雅司君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  内閣委員会   委員長 中島源太郎君    理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君    理事 小川 仁一君 理事 市川 雄一君       堀内 光雄君    角屋堅次郎君       山本 政弘君    鈴切 康雄君       柴田 睦夫君  地方行政委員会    理事 愛知 和男君 理事 糸山英太郎君    理事 臼井日出男君 理事 平林 鴻三君    理事 加藤 万吉君 理事 安田 修三君    理事 柴田  弘君 理事 岡田 正勝君       伊藤 公介君    大村 襄治君       工藤  厳君    小杉  隆君       中川 昭一君    細田 吉藏君       五十嵐広三君    小川 省吾君       佐藤 敬治君    細谷 治嘉君       山下洲夫君    宮崎 角治君       経塚 幸夫君  文教委員会   委員長 阿部 文男君    理事 石橋 一弥君 理事 大塚 雄司君    理事 白川 勝彦君 理事 佐藤  誼君       青木 正久君    臼井日出男君       榎本 和平君    田川 誠一君       中村  靖君    木島喜兵衛君       田中 克彦君    中西 績介君       有島 重武君    山原健二郎君       江田 五月君  社会労働委員会   委員長 戸井田三郎君    理事 稲垣 実男君 理事 丹羽 雄哉君    理事 浜田卓二郎君 理事 村山 富市君    理事 大橋 敏雄君 理事 塩田  晋君       愛知 和男君    伊吹 文明君       自見庄三郎君    中野 四郎君       長野 祐也君    林  義郎君       多賀谷眞稔君    竹村 泰子君       沼川 洋一君    森田 景一君       浦井  洋君    小沢 和秋君       菅  直人君  農林水産委員会   委員長 今井  勇君    理事 島村 宜伸君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 神田  厚君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       島田 琢郎君    細谷 昭雄君       駒谷  明君    津川 武一君  運輸委員会   委員長 三ッ林弥太郎君    理事 鹿野 道彦君 理事 吉原 米治君       関谷 勝嗣君    田中 直紀君       林  大幹君    福家 俊一君       堀内 光雄君    関山 信之君       富塚 三夫君  建設委員会   委員長 保岡 興治君    理事 亀井 静香君 理事 桜井  新君    理事 中島  衛君       榎本 和平君    金子原二郎君       唐沢俊二郎君    東家 嘉幸君       野中 広務君    浜田 幸一君       清水  勇君    関  晴正君       前川  旦君    山中 末治君       伊藤 英成君    瀬崎 博義君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣 古屋  亨君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣審議官   海野 恒男君         内閣法制局第三         部長      大出 峻郎君         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         総務庁長官官房         長       門田 英郎君         総務庁長官官房         審議官     佐々木晴夫君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         国土庁計画・調         整局長     小谷善四郎君         国土庁土地局長 鴻巣 健治君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵大臣官房審         議官      角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省関税局長 矢澤富太郎君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      菱村 幸彦君         文部大臣官房会         計課長     坂元 弘直君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省社会教育         局長      齊藤 尚夫君         文部省体育局長 古村 澄一君         厚生大臣官房総         務審議官    北郷 勲夫君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      吉崎 正義君         厚生省保健医療         局長      大池 眞澄君         厚生省社会局長 正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘仲君         社会保険庁年金         保険部長    長尾 立子君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房審議官    吉國  隆君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君         通商産業省生活         産業局長    篠島 義明君         運輸大臣官房長 永光 洋一君         運輸省海上技術         安全局長    神津 信男君         運輸省航空局長 西村 康雄君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省道路局長 田中淳七郎君         鶴大臣官房審  石山  努君         自治大臣官房審         議官      土田 栄作君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省財政局長 花岡 圭三君         自治省税務局長 矢野浩一郎君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      石川 健一君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君         文教委員会調査         室長      高木 高明君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例  等に関する法律案内閣提出第八号)      ――――◇―――――
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより大蔵委員会内閣委員会地方行政委員会文教委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会建設委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案を議題といたします、  本案の趣旨説明については、これを省略し、お手元に配付してあります資料により御了承を願うことといたします。     ―――――――――――――  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例   等に関する法律案    〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 越智伊平

    越智委員長 これより質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山富市君。
  4. 村山富市

    村山(富)委員 私は、まず最初に、これはもう議運でも本会議でも議論をされてきたことではございますが、五十九の法律関係しておる、しかも項目は六十六項目ある、こういうものを一括して審議をしてくれと言って出すようなやり方については問題があるのではないか。補助金負担金というのは、やはりそれぞれ政策目的があってつくられておるものでございます。したがって、その実態に即応してこれはどの程度負担率ならいいとかあるいは補助率ならいいとかというようなことは、長い期間の中で検討されてきて決められていることなんです。それを一括してこういう形で出してくるということは、やはりどう考えても問題がある。それぞれ所管の委員会十分精査をし、審議をしてどうあるべきかということを結論を出すべきではないかと思うのです。しかもこの法案の中には行革特例法まで一緒に出しておる。全く異質のものじゃないですか。こういうやり方について総理はどういうふうな見解を持っておるか、お尋ねいたします。
  5. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 村山さんのおっしゃることも筋の通っている点もあるように思われます。ただ、政府といたしましては、やはり財政処理という面から共通性を全部持っておるものでございますから、そういう面からとらえまして、今までの前例もございますのでそういう措置をとらしていただいた次第なのでございます。(「議場が少しうるさいですから、委員長、静かにさせてください」と呼ぶ者あり)
  6. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。――村山君。
  7. 村山富市

    村山(富)委員 例えば補助金を一括引き下げるとか一般財源に振りかえるとかあるいは交付金にするとかいう、そのねらいは同じかもしれませんよ。しかし、変える内容については全然異質のものが全部入っているわけですから、それを一括してやるというのはやはり私は無理があると思うのですよ。責任を持てないと思いますよ。これは明らかに審議権を軽視することではないかと思うのですが、これはひとつ大蔵大臣にも見解を聞いておきたいと思うのです。  それからもう一つは、これもまた議運で相当問題になって、採決までして決められたことですが、行革関連特例法案審議する際には特別委員会を設置したんです。そして、それぞれ関係専門家出席をして十分議論をしてもらったわけですね。今度の場合には、きょう開かれておりますが、連合審査でお茶を濁そうというのです。これもやっぱり問題があるのではないですか。切実に野党が要求したにもかかわらず与党が受け入れずに、ついに採決で押し切られたわけです。これはもちろん議会決めることではありますが、総理自民党総裁ですから、これを拒否した与党総裁としてどのようにお考えになっているか、それもあわせて見解をお聞かせください。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 村山さんの御意見を交えての御質疑に対し今総理からもお答えがございましたが、私どもも、このたびいわゆる一括法として御審議をお願いするに当たりましては、今の村山さんの御意見等十分議論をしてまいりました。結論から申しますと、先ほど総理からお答えがございましたとおり、言ってみれば財政上の措置である、そして大蔵大臣予算調整権の中身であるということからお願いをいたしたということに相なるわけであります。まげて御理解をいただきたいと思います。  なお、いわゆる審議そのものの問題につきましては、村山さんからもお話がありましたように、国会自体でお決めをいただく問題でございますので、行政府がとかく論評するのは差し控えるべきだ、こう考えます。
  9. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 どの委員会でどのように審議をするかということは国会のマターでございますから、議運を中心にして各党の御意見を持ち寄って御決定になったと承っております。ただ、財政処理法案という性格を持っておりますから、それは大蔵委員会がしかるべき場所ではないかということで、自民党としてはそのようにいたしたものと考えます。
  10. 村山富市

    村山(富)委員 極めて不満でありますけれども、もう時間がありませんから、しかもこれはもう決着のついたことですから繰り返し申しませんけれども、私はやっぱりこういうやり方については今後に問題を残すのではないかというように思いますから、その点だけを申し添えておきます。  それから次に、今回提出された一括法案立法趣旨を見ますと、国の財政収支改善を図る見地から、累次の臨調答申趣旨を踏まえ、財政資金効率的使用を図るため、国の負担補助等について見直しを行う、こういうふうになっておりますが、この国の負担補助等について見解を承っておきたいと思うのです。  言われる「補助金等」という定義、その定義を解説した辞典なんかを見てまいりますと、補助金等には、補助金負担金利子補給金、その他政令で定めるもの、こういうふうに区分をいたしております。補助金とは、相手方が行う事務または事業に対して、それを助成するためあるいは奨励するために、財政的な援助として交付する給付金である。負担金は、相手方が行う事務または事業につき、交付する側も一定の義務または責任があるので、その義務または責任程度に応じて、相手方に対して交付する給付金を言う。こういうふうになっておりますが、こういう解釈でいいか悪いか。これは大蔵大臣見解を聞いておきたいと思うのです。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいましたとおり、いわゆる「補助金等」とは、予算科目上の補助金負担金補給金委託費の総称でありまして、中の説明は今村山さんのおっしゃったとおりであります。
  12. 村山富市

    村山(富)委員 続いて、補助金の中には法律決めて出す補助金予算に計上して出す補助金と二つありますね。六十年度予算で、予算的補助法律的補助と、補助金全体の中でその割合は一体どういう比率になっていますか。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 法律補助八三・一%、予算補助一六・九%であります。総じて私どもがよく申しますことは、法律補助予算補助、それぞれ若干の相違がございますが、八対二。それから、地方自治体を通して交付するものとそうでないものがおおむねまた八対二。それから公共事業文教社会保障の占める比率とその他の比率がおおむね八対二ということを、よくお答えを総称してさしていただいておるところであります。
  14. 村山富市

    村山(富)委員 そうすると、よくわからないからこの際大蔵大臣見解を聞いておきたいと思うのですが、法律補助予算補助区分する根拠上何ですか。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 これは補助金等交付根拠によりまず区分でありまして、その交付根拠法律に基づくものを法律補助法律に基づかないものを、歳出予算のみによるものを予算補助、これは今おっしゃっていることに対する後追いをしたお答えでございますが、法律補助とは、国が補助金等交付するについて根拠法令のあるものをいうが、その規定により国が補助することを義務づけられているものと、単に補助することができる旨規定されているにすぎないものとがございます。法律補助以外の補助金等は、すべて予算補助に属するということであります。
  16. 村山富市

    村山(富)委員 いや、私がお尋ねしておるのは、同じ補助等の中で、法律規定する補助金と、それからそうでない、予算だけで計上してする補助金と、どういう根拠区分けをするのですか。これは法律決める必要がある、これは予算だけでよろしい、こういう区分は一体何の根拠でされるのですか、これを聞いているわけです。
  17. 平澤貞昭

    平澤政府委員 法律補助予算補助区分は、今大臣が御答弁したとおりでございますが、それでは実際上それをどのように区分するかということでございます。  法律補助の場合は、御存じのように地方財政法第十条、それから十条の二、十条の三等に掲げられておりますいわゆる負担金的なものがございます。これにつきましては、地財法第十一条によって、その負担割合等法令決めろというふうになっておりますので、こういうものは法律補助になるわけでございます。  それでは、それ以外のいわゆる奨励的な補助金等、これがどうなるかということでございます。これは地財法第十六条に規定がございます。そしてその奨励的補助金等のうち、それではまず法律根拠を持つもの、これはどういうものかといいますと、通常、特定施策について立法措置を講ずるときに、あわせて国が援助を行う規定法律上置いているわけでございます。その場合、法律規定されているわけでございます。その他の場合が大体予算補助になっておるということでございます。
  18. 村山富市

    村山(富)委員 それでは答弁にならない。法律決めてあるのが法律補助、これはわかっていることです。法律決めてなくて、予算だけに計上して、予算がありますからやります、予算がありませんからこれだけです、こういって行政裁量でもって交付する、給付する、これが予算補助ですね。私が聞いておるのは、何の根拠でこれは法律決める必要がある、これは予算で計上してやるだけでよろしいということをお決めになるのですかと、こう聞いているわけです。
  19. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほど申し上げましたように、特定施策についての立法措置を講ずるときに、国の財政援助がその施策の遂行と密接な関係がある、かつまた立法政策上その施策の一環として位置づけを法文上明らかにしておくことが望ましい、そういうふうに考えた場合は法律補助といたしておるわけでございます。
  20. 村山富市

    村山(富)委員 これはこれだけで時間をとるわけにいきませんが、望ましいと判断する根拠は何ですか、わからぬじゃないですか。  私は重ねてお尋ねしますけれども、それでは補助金見直しをする際に、予算補助についてはどのような見直しをされたのですか。五十九年と六十年と比較をしてどういうことになっておりますか。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほど来の議論について、ちょっと私から付言をいたしますと、いわゆる奨励的な意味を持つ補助金と、それから法律そのものに、「国が全部又は一部を負担する。」というので地方財政法第十条においてずっと書いてございます。したがって、言ってみればそれ以外が奨励的補助、こういうことになろうかと思うのでございます。  そこで、いわゆる予算補助に対する見直しはどのようにして行ったか、こういう御質問でございます。  六十年度予算におきましても、予算補助法律補助を問わず、補助金等のすべてについて洗い直しをしよう。それにはやっぱり既存の制度、施策の根源にさかのぼった見直しを行う、そういうことで整理合理化を積極的に進めましたが、この結果、一般会計補助金等全体で前年度比の〇・九%減となったわけであります。金額で申しまして、総体で千三百四十四億円減になっておりますが、予算補助は三百六十五億円減となったわけでございます。したがって、今回の補助金整理特例法案にあります高率補助率引き下げ一般財源化交付金化の各措置についても、予算補助を含めて、もう目的を達したものもございますし、それから交付金化しても、地方自治体で長年消化していただいた形になっているものもございますし、そういう視点に立ちましていわば整理合理化をやらしていただいた、こういうことになろうかと思います。
  22. 村山富市

    村山(富)委員 時間がありませんから、もう次に進めますけれども補助金なんかの整理合理化一般の大衆が期待しておる、国民が期待しておる、あるいは地方自治体が期待しておる、それと今度やられた面とは大分違いがあるのじゃないかと私は思うのです。と申しますのは、むしろ補助金整理合理化をする必要があると期待されておるのは、今申し上げましたような予算上つかみ金で自由裁量がきくような補助金、あるいは地方自治体が余り歓迎しないような補助金、そうした補助金がもしあるとすれば、そうしたものはやはりこの際思い切って整理合理化すべきでないか。  これはずっと前に、前といっても四、五年前ですが、出された本がありますけれども、その本の中に補助金についてこういうことが書いてある。これは各首長がそれぞれ意見を言っているわけですけれども、「変な話だが、ほしくもない補助金をもらってやるのも、官庁に対する義理のひとつだ。農水省が五五年から水田利用再編対策で「事務費補助」をつけた。われわれの手に届くのはごく少額で申請手続き使途報告にかえってカネがかかる。面倒でもあるし「いらない」といったら県農林部にしかられた。新規補助金を返上する市町村が出たとあっては、農水省の面子はまるつぶれというわけだ。」こういう発言があります。  また、ある市長は「正直いって、こまごました零細補助金は迷惑だ。補助事業となると、どんなに小さくても、実施計画から実施報告までひと通り手続きがいる。全国市長会手続きのための人件費のほうが余計にかかる実例をそろえて改善を要求しているが、各省庁の怒ることといったらない。私たちも強くはいえない。一方でお世話になっているのだから。」こういう発言がありますけれども、こういう事実があることを知っていますか。
  23. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、地方議会出身でございますので、今村山さんのおっしゃったような意見が存在しておることは承知をしております。  今お話のありましたところのまさに補助金等の中の補助金水田利用再編奨励補助金というのがございますが、それの事務に関しては、理屈から申しますならば、国の農政全般に対する御協力をいただくための事務的補助金とはいえ、それが交付に当たっての事務的手続とかということが煩瑣だというような意見を承ったこともございます。そういう点につきましては、可能な限りそういう事務上の手続を簡素化することもまた行財政改革一つであろうという意味においては、私どもも考え方を同じくしておるところであります。
  24. 村山富市

    村山(富)委員 時間がありませんから省きますけれども一つの事例を申し上げただけですけれども、やはり国民が期待している補助金整理というのは、この第二臨調が第一次答申の報告の中にも書いてありますけれども補助金整理をする場合には、「既にその目的を達し、あるいは社会的経済的実情に合わなくなったもの」、「補助効果が乏しいもの」、「受益者負担、融資など他の措置によることが可能なもの」、こういうふうに五点ほど列挙してありますよね。こういう審査、精査をした上で今度の一括引き下げをやったのか、あるいは単なる財政のつじつま合わせにやったのか、その根拠は何ですか。
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 まず臨調答申で、今村山さんおっしゃいましたように、きちんと項目が五十六年の第一次答申で書かれてございます。そのときには、御高承のとおり「生活保護費等を除き」ということも、その前文に書かれてあることも事実であります。したがって、今回の一律カットというのは、当時はいわゆる補助率にまで手を染めなかったわけであります。  今度はいわゆる高率補助というものに着目をいたしましてとった措置でございます。この高率補助の原点の議論というのは、国と地方との役割分担、そして費用負担のあり方ということについての見直しということが考え方の底辺に存在するものでございます。したがって、予算のつじつま合わせと私いつも言うのでございますが、つじつまが合わなきゃ予算にならないわけでございますけれども、「まずつじつま合わせありき」という形でこれに対して取り組んだものではございません。
  26. 村山富市

    村山(富)委員 後でまたそれは触れますから、もう先へ移りますけれども、これは総理にちょっとお尋ねしたいと思うのですけれども、第二臨調が答申をした答申の中に、補助金等の中で生活保護費は除外されておるという答申がありますけれども、第二臨調が生活保護費だけを特別に除外した理由は何だと思いますか。
  27. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 最初の答申ではたしか除いてあったと思います。その後の答申では合理化あるいは不正受給の防止等々で記載されてあったと思います。  恐らく補助金整理ということに目を注いだ場合に、生活保護というようなものは国民の皆様方の生活に非常に影響する大事な福祉政策の基幹の一つでございますから、つまり国が直接的にしょっておる、そういう性格がございますから、第二臨調におきましても、いろいろその辺を初めは勘案されたのではないかと思っております。  しかし、その後の答申におきましては、生活保護費というものも一応図上に乗せて、要するに臨調には聖域はない、そういう考えで総点検をいたしまして、そしてやはり合理化とかあるいは不正受給の防止とかそういう面で言及する必要がある、そういうふうに考えてきたのでしょう。しかし、生活保護費というものの重要性というものに対する認識は変わっていない、制度も変わっていないと思います。
  28. 村山富市

    村山(富)委員 今総理から答弁がありましたように、生活保護費はやはり沿革を見ましても、生活保護法の目的からしてこれは明確になっておりますけれども、その生活保護法の第一条を見ますと、「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、」こうなっていますが、これはもう国の責任は明確ですよ。したがって、私はもう時間がありませんから詳しくは申しませんけれども、二十一年から、援護法ができてからずっとこの保護費なんかの手直しはされましたけれども、この生活保護費だけは手を入れずに今日まで十分の八が守られていたのです。  だから、やはり臨調はそういう沿革やら今までの経緯等を踏まえてみて、これは一般補助金とは違う、こういう判断で除外されたというふうに思うのですけれども、これはひとつ厚生大臣大蔵大臣と両方からも見解を聞かしてください。
  29. 竹下登

    竹下国務大臣 御案内のとおり、その第一次答申の中では明瞭に外してございます。これは、当時はいわゆる金額の一割削減措置という答申でございます。したがって、極めて件数が多くて金額の小さいものを含みます補助金等の個々につき、すべてに改善策を示すことは事実上困難なことから、各省ごとに総枠を設定する手法でその削減を図ったものであります。したがって、生活保護費につきましては金額が非常に大きいことから、この方式の対象とすることはその際は適当でなかっただろうと私は思います。  そしてまた、今村山さんおっしゃいましたように、昭和二十一年前まではいわゆる半々でございますが、二十一年の一時期、敗戦直後でございますから、全額国費ということもございました。そうしてそれが二十一年から二十二年にわたって、残念ながらまだGHQの間接統治下にある時代ではございますものの、当時の文献を読んでみますと、大蔵省がおよそ二億円ということで最後のおさまりをつけようと考えておった、厚生省は八億円で最後のおさまりを考えておった、しかし要求は三十億円。そうしたらGHQから三十億でやれ、こういう当時の進駐車命令でございますか、それがやってきた。さあそうなればということで当時の安井誠一郎先生が判断されたというような問題について、私も興味深く読ましていただきましたが、確かにそういう経過はあるものの、憲法二十五条を引いてそういう制度はできたものであるという事実認識は、私はそう考えが違うわけではございません。が、今回は、そこでこういう状態になった際に一体費用分担の国と地方のあり方ではどうしたらいいか、こういういろいろな議論をいたしました結果、今のような法律で御審議をちょうだいしておるというのが現状であります。
  30. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 ただいま大蔵大臣からお答えになりましたとおりでございます。  臨調答申も、補助金の総枠の一割削減という手法と別に、高率補助金補助率引き下げという手法と、二つの異なる方法を盛り込んでおられるわけでございます。今回の生活保護費のことにつきましてもそのような観点から対処したわけでございますけれども、御指摘のように、生活保護は国民の生存権保障の最後のよりどころであることはもちろんのことでございます。  しかし、同時に、住民福祉の観点からも、従来から一貫して地方公共団体も一定の負担をしていただいてきたところでございます。今回先ほど申し上げました行革審等の意見を踏まえて改定を行うわけでございますけれども、その地方の負担につきましては地方財政対策を通じ、また、厚生省といたしましても生活保護臨時財政調整補助金等で適切に対処をして、私どもの念願でございます福祉の水準の内容に影響は与えないものと考えているところでございます。
  31. 村山富市

    村山(富)委員 全然質問してないことを答弁するものだからね。  問題は、生活保護費の負担率が十分の八というのは昭和二十一年、生活保護法ができてからずっと一貫して守られてきた。その間にはたびたび補助金等見直しがあったけれども、これだけは手がつかずに守れた。それは一体こういう理由によるのではないのか、その見解はどうか、こう聞いているだけの話で、第二臨調が最終答申でどうのこうのと聞いているわけじゃないんですよ。その点はもう総理が答えたとおりでいいですね、同じでいいですな。  そこで私は、先ほど来から答申が問題になっていますから答申の問題に入らせてもらいたいと思うのですが、ちょっと答申の経過を振り返ってみますと、第一次答申は五十六年七月十日に出ているのです。この第一次答申の中では明確に生活保護費は除外するとなっていますね。この第一次答申を受けて、五十六年八月二十五日に政府は「行財政改革に関する当面の基本方針」という閣議決定をしているわけです。この閣議決定の中でも明確に生活保護費は除外しているわけです。いいですか。  そして、五十八年三月十四日に第二臨調の第五次答申、最終答申が出ているわけです。この答申は従来の答申とは若干違うのです。どういう点が違うかと申しますと、わざわざ一項を設けて生活保護費の問題に触れているわけです。その生活保護費の問題に触れているのは、これは明確にするために申し上げておきますけれども、「生活保護費補助金」「不正受給者を排除し制度の適正な運用を確保するため、資産及び収入の的確な把握、関係機関との連携の強化等不正受給防止対策を徹底する。」三つばかり挙げているわけですね。挙げて、この生活保護費については適正に給付されるようにしなさいということを指摘しているんですよ。そしてその次に、高率補助やらあるいは二分の一補助やら等々についても一括カットしなさいという条項があるわけですね。  私は、わざわざ生活保護費を別項を設けて挙げておるということは、次の項の高率補助とか二分の一補助とかそういうものとは全然区別をして扱われている、これは明らかにずっと一貫しておる臨調の考え方だ、生活保護費は除くという考え方は一貫している、こう思うんですよ。現に、政府がこの最終答申を受けて五十八年の五月二十四日に行政改革の具体的方策を閣議決定しています。その閣議決定の中身は、あくまでも答申の趣旨に沿ってということが明確に書いてあるわけです。  私の解釈からすれば、答申の趣旨は明確だ。最終答申まで明確になっておる。同時に、五十九年の七月三十一日に六十年度の概算要求について閣議了解をされています。その閣議了解の中では、昭和五十六年八月二十五日の閣議決定、これは生活保護費を除外するという閣議決定ですよ。その閣議決定に準じて、原則としてその一割を削減することとする、こうなっているわけですから、閣議決定も一貫していますよ。その臨調答申や閣議決定に基づいて今度の措置がとられたとすれば、生活保護費を加えて一割カットしたことはこの趣旨に反するのではないか、こう思うのですが、どうですか。
  32. 竹下登

    竹下国務大臣 これは村山さん御指摘のとおり、確かに今までこの問答の中で御披露がありましたように、憲法二十五条の規定に沿って昭和二十一年、二十二年、きちんとしたのは二十六年でございますけれども、それが今日まで貫かれた。そしてそれが多額に上るものであるということからして、第一次答申ではこれが除かれた。臨調第一次答申とは、いわば一割を金額でカットをするという総合的な施策としてとらしていただいたのです。  そこで、五次答申の中身に対する御意見を交えての御質問、こういうことになるわけです。  臨調の五次答申の、まずは「個別補助金等整理合理化方策」、そこで(イ)して「生活保護費補助金」というものが書かれておるわけであります。このi)、ii)、iii)については村山さん御承知のとおりであります。したがって、第一次答申から第五次答申に至る間の個別補助金整理合理化一つの流れとして、今日に至っていわば率というところに着目をいたしまして、費用負担のあり方、地方と国との業務分担というところからこれを対象にさせていただいた、こういうことであります。
  33. 村山富市

    村山(富)委員 率とか額とか、それはおたくの方が勝手に解釈しているんであって、臨調答申というのは明確ですよ。第一次答申の中には「具体的な整理合理化方策を個別に明らかにしたもの及び生活保護費等を除き、」こうはっきり書いてあるのですね。そしてこの第一次答申を受けて閣議決定もしておるし、その後の答申も出ておるわけですよ。最終答申は、さっきわざわざ読み上げましたように、生活保護費の補助金に関する件は一項を設けて、これはこういう点をもってやりなさいよといって挙げてあるわけです。ですから、第一次答申から最終答申に至るまで、臨調の考え方というのは明確ですよ。生活保護費は除くと一貫しておりますよ。さっきから言っておりますが、後の項で触れておる高率補助や二分の一補助について一割カットという問題は、生活保護費の補助はわざわざ別項に設けてあるだけに、これは除外したものだ、違うものだというふうに解釈するのが自然じゃないですか。それを含めて解釈するというのは、明らかにゆがめて解釈しておる、故意にゆがめて解釈して無理やり説明しておるというふうにしかとれませんけれども、その点はどうですか。
  34. 竹下登

    竹下国務大臣 これは再度申し上げるようでございますが、私は臨調第一次答申の物の考え方というのは否定をいたしません。しかし、その後の流れの中で、いわば臨調の第五次答申におきましては具体的な整理合理化方策というものが提言されておることも明らかであります。したがいまして、その具体的な整理合理化方策の提言に沿って、そこで、重ねて申し上げるようですが、国と地方の仕事のあり方とか負担区分という物の観点からこのような措置をとらせていただいたわけであります。
  35. 村山富市

    村山(富)委員 第一次答申から最終答申に至るまで、生活保護費を含めなさいとどこに書いてあるのですか、対象としてやりなさいとどこに書いてあるのですか。それを言いなさい。
  36. 竹下登

    竹下国務大臣 これは具体的に申しまして率を下げるとは、その第五次答申の特に生活保護とメンションされたものには率のことには触れられておりません。しかし、御案内のとおり、「不正受給者を排除し制度の適正な運用を確保するため、資産及び収入の的確な把握、関係機関との連携の強化等不正受給防止対策を徹底する。」二番目は「長期入院患者の社会復帰の促進、レセプト審査の強化等により、医療扶助の適正化を図る。 また、就労促進等の自立助長対策を推進する。」そして三番目に「真に生活に困窮する者に対して必要な保護を確保することを基本として、生活扶助基準の設定方式、加算制度等生活保護制度の在り方を見直す。」と書かれてあります。そして、いわゆる整理合理化一般方策といたしましては、第五次答申の3の「整理合理化一般的方策」の「個個の補助金等ごとの整理合理化と併せて、一般的基準により補助金等整理合理化を進めることも極めて重要である。」ということからいたしまして、そこの「補助率の総合的見直し」ということに敷衍されておるわけでございますので、私どもはいわば生活保護費等の補助率を対象の外に置けというふうには理解をしておりません。
  37. 村山富市

    村山(富)委員 第二臨調の最終答申でも、さっきから申し上げておりますようにわざわざ生活保護費の補助金については一項を設けて、不正受給をやらぬようにしなさいよ。同時に、いずれにいたしましても私がさっきから繰り返し言っていますように、答申の中ではどこにも生活保護費を含めて検討してその率を下げなさいということは書いてないのですよ。その対象に促してないのですよ。あなた方が対象にしておるというのは、率でごまかしておるのですよ。これは一貫していますよ。  同時に、先ほど来私が申し上げておりますように、なぜ昭和二十一年から一貫してこの生活保護費の十分の八という負担率は手を加えられなかったかということは、明らかに、これは憲法第二十五条に基づく国の責任である。これはやはり政策の理念に関する問題ですよ。だから、いいかげんな解釈で右へやったり左へやったりすべき問題じゃないのですよ。これは総理、どうですか。
  38. 竹下登

    竹下国務大臣 これは憲法二十五条の精神から引っ張ってまいりまして、先ほど村山さん御存じのような二十一年、二年の経緯を経て八割に決まったものでございますが、私どもやはり国の責任ということに思いをいたしますならば、今日までいわば一貫して、これが補助率というものについては、公共事業等はその都度の財政事情で多少変化してきたこともございますが、まさに変化しないで来たというのは、やはり最終的に給付を受ける人に対しましてそれのいわば給付のダウンが成ってはならぬ。したがって、このたびは国と地方の財政上、あえて地方の方が豊かであるなどというやぼったいことは申しません。が、いずれにしても、車の両輪であり、そして最終的な給付そのものは従来よりダウンをしないということになれば、現状においてその負担区分はいかにあるかという議論は、いわば整理合理化の方策の中にも当然あらゆる施策で聖域を設けるなく、その根源にさかのぼって議論したときに、今日の時点でいわば七対三というものに給付、負担のあり方から合理性を見出してお願いをしておるというのが実情であります。
  39. 村山富市

    村山(富)委員 今のような答弁では納得できませんよ。総理は第二臨調の答申を尊重する、こう言っているのでしょう。尊重するのなら、臨調の言っていることを素直に尊重しなさいよ。これは、私がさっきから申し上げておりますように、基本理念に関する問題ですよ。何ぼにすればいいという問題じゃないのですよ。これは歴史的な沿革があるわけですよ。それほど大事なものなんですよ。だから臨調も除外しているわけです。  私は、この問題については、答申をした臨調の責任者を呼んで解釈を明確にしてもらわなければ審議できませんよ。これはできませんよ。呼びなさいよ。
  40. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり、いわゆる推進方策の中で、「歳出面の見直しに当たっては、次の諸点に基づき行うべきである。①すべての行政分野について、聖域なく、制度・施策の根本に遡った見直しを行い、歳出削減を大胆に進める。」これが一応一番の前提にあるというふうに御理解をいただければ結構であろうと思います。
  41. 村山富市

    村山(富)委員 これは七対三がいいとかなんとかというような議論じゃないのですよ。臨調答申をどう解釈しているかという問題ですから、総理、あなた答えなさいよ。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず臨調の大原則、総論というものがありまして、私、当時行管長官もやりまして第一次答申以来関係したものでございますが、すべて聖域を設けない、そういうことがまず大方針に、ありました。そして、しかし第一次答申におきましては、生活保護という問題についてはやはり非常に注目をして取り扱ってきました。その精神は今日といえども変わっていないのです。ただしかし、高率補助という観点から見た場合に、これもやはり例外ではない。それは臨調にも一貫した考え方であるのであります。  しかし、今回の処置におきましては、国民に対する負担というものは変わりはない、中央、地方の負担区分において変化があった、そういうことでございまして、憲法が指示しておる国の責任という考えや社会福祉に対する大きな国あるいは地方公共団体の共同の責任という問題がないがしろにされておるわけではないのでありまして、そういう意味におきまして、これは違法または不当なる措置ではないと私は考えております。
  43. 村山富市

    村山(富)委員 これはもう時間がないからるる申しませんけれども臨調答申の解釈、答申された中身の解釈とあなた方の受け取り方は違うのですよ。これは明らかに故意にゆがめていますよ。  この問題は基本的な問題ですから、臨調の責任者を呼んで、一体臨調の審議はどうだったのか、この解釈はどうなのか、明らかにしてもらわなければ、これは審議できませんよ。
  44. 越智伊平

    越智委員長 ただいまの問題は留保していただいて、後で理事、社労委員長と協議をいたしまして処置をいたします。
  45. 村山富市

    村山(富)委員 これはさっきから言っておりますように、基本的な問題ですから、率をどうこうすればいいという問題じゃないのですよ。率を変える必要があるのかないのか、また変えるべきかどうか、臨調が答申しているわけですから、その答申を受けてどう扱うかという問題なんです。だから、私は留保してもいいですよ。いいけれども、この問題の解釈は明確にする必要があるのだから、土光会長をここにお呼びになるということを前提にして留保するということでなければだめです。
  46. 越智伊平

    越智委員長 理事会において協議をいたします。(発言する者あり)  ただいまの問題は、要請をいたしまして呼ぶことにいたします。これは相手もあることだから、要請して呼ぶことにする。  質問を続けてください。
  47. 村山富市

    村山(富)委員 それじゃひとつ、ぜひそのように御協力をいただくことにして、次に移ります。  今度の一括カットの問題について、社会保障関係については大蔵大臣と自治大臣と厚生大臣の三大臣が覚書を交わしているわけです。これは、関係する各省はそのほか建設、運輸、文部、農水、総理府とあるわけですけれども、こういう三大臣以外の各省庁はこうした覚書を交わす必要はないのか、もう大蔵省に任せきりなのか、どうするつもりですか。
  48. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘のとおり三大臣合意というものを行いました。これは、社会保障についてこのような申し合わせを行いましたのは、今回の補助率引き下げの経緯におきまして議論が最終までなかなか詰まらなかった問題であります。だが、他の分野につきましても必要に応じ同様に協議して検討を加えていくというのは、当然そういうふうに考えておるところであります。
  49. 村山富市

    村山(富)委員 じゃ、ひとつ関係大臣もそれぞれそのことについてお答えください。
  50. 松永光

    ○松永国務大臣 文部省関係の高率補助金補助率引き下げにつきましては、六十年度の予算編成の過程で、六十年度の暫定措置として大蔵省、自治省、文部省との間で合意されたものでありまして、文書は別にございません。
  51. 村山富市

    村山(富)委員 同じ答弁だろうからもういいです。時間がもったいない。  それで、これはまた早速来年度予算の編成が始まるわけですけれども、この覚書を見ますと、一年限り、「六十年度における暫定措置とする。」「六十一年度以降の補助率のあり方については、」「政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする。」こうなっていますね。そうすると厚生大臣、あなたは八月には概算要求をしなければならぬわけです。これは大蔵省の中期財政見通しを見ましても、もとに戻すことを前提にして財政見通しはつくられているわけです。厚生大臣はこの覚書に基づいて、一年以内といえば大分期間があるわけですけれども、八月には概算要求をしなければならぬわけですね。その概算要求はもとに戻した形でされるつもりですか、どうですか。
  52. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 ただいま六十年度予算を御審議いただきましたばかりでございますので、六十一年度につきましては現在全く白紙の状態であります。なお、今御指摘のございました点につきましても三省間で協議をいたすことになっておりますので、その結果を踏まえて検討してまいりたいと思います。
  53. 村山富市

    村山(富)委員 厚生大臣、あなたは社会保障に対して責任を持っている担当大臣でしょう。それが来年はどうなるか全く白紙ですなんて、そんなばかな話がありますか。それは大蔵省がどう言おうと、厚生大臣としてはもとに戻してもらいますとなぜそれが言えないのですか。
  54. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 三省間で協議をいたすことになっておりますので、その結果を踏まえて厚生省の立場を考えながら十分に検討してまいりたいと思います。
  55. 村山富市

    村山(富)委員 大蔵大臣、私はあなたの今までの説明を聞いておりましたら、補助金のあり方についてこれでいいのか悪いのか見直しをして、そして出したのです、こう言っていますね。ところが、生活保護費は、社会保障関係費はこの一年間のうちに見直しをするというのでしょう。違うじゃないですか。これは十分見直しをし、精査して、しかし精査し尽くせぬからこの一年間もう一遍見てみましょうというのならともかく、これは予算編成の中で間に合わせをしただけじゃないですか。だから説明とは違うじゃないですか。一年間既成事実をこしらえて、不都合がなかった、だからこのままいきましょうやと、これは恒久化する考えじゃないですか。一年限りでやめるべきだと思いますが、どうですか。
  56. 竹下登

    竹下国務大臣 お願いしております法律は、もとよりこれは暫定措置でございますから、一年限りの暫定措置であることは事実でございます。  そこで、三大臣合意によりましてこれから検討しよう、こういうことになっておりますが、その検討をどういうふうにしてやるかということになりますと、関係省庁間でどういうふうにしてやるかということを今や検討中、こういうことに相なるわけであります。したがって、やはりこの制度、施策の根本にさかのぼって費用負担はいかにあるべきかという議論をして、そして現状においては一割、必ずしもすべてが一割とは限りませんが、こういう措置でやろうという合意に達したわけですが、なおこの問題を具体的に検討していこうということで継続して検討を行うわけであります。そうして、結果としてはこれは内閣一体の責任において予算書を作成し、法律案を提出しておるわけでございますから、その内閣一体の責任の中でこれは検討をしなければならぬ課題であるというふうに考えております。
  57. 村山富市

    村山(富)委員 これは大蔵大臣がほかの委員会で答弁をしている答弁の中では、できるものなら恒久化したいものだなというようなことも言っていますから、だからこれはずっと引き続いてそうなる可能性を持っている問題ですから、先ほど理事会で第二臨調の責任者もお呼びになるというところでまた議論をしてはっきりさせたいと思いますから、そういうことを確認をして次に移ります。  もう一つの問題は、行革特例法の一年延長の問題についてです。これは厚生年金の国庫負担を二〇%から一五%にして四分の一カットしたわけです。この行革特例法が提案をされたとき行革特別委員会審議をされていますが、その審議の経過を見てみますと、当時の鈴木総理大臣あるいは渡辺大蔵大臣それぞれ答弁は明確なんです。ちょっと御紹介をしますと、五十六年十月十二日の行革特別委員会で我が党の森井委員の質問に対して渡辺大蔵大臣は、  国庫負担の繰り入れの減額分につきましては、政府は適用期間後、必ず差額繰り入れをいたします。   そのほかに、いわゆる利息の問題も含めて適切な措置を講ずる責任を負っておりますから、御心配これなきようにお願いをいたします。 まことに歯切れのいい答弁をしているわけです。続いて総理大臣は、  この問題につきましては、先ほど来、大蔵大臣並びに厚生大臣からるる申し上げておりますように、これは保険財政に支障を来さないように、必ず返す。金利はもとよりのこと、運用益につきましても適正な運用益を加算をして返済をする、こういうことを明確に申し上げておるわけであります。こういう国会の正式な委員会で速記をとり、明確にいたしておるわけでございますから、御心配のないように措置してまいる方針でございます。 これははっきりしていますよ。一体御心配のないようなどのような措置をされたんですか。言ってくださいよ。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私も当時行革委員会委員の一人でありまして、そういう答弁は記憶いたしておりますし、そうしてまた五十七年から大蔵大臣になりまして、今回の法律を御提案をいたしますまでにその答弁を確認をいたしてきております。  この前の国会から、あるいはこういうこともあり得るかと思って、少し言葉を選んでさきの問題に対して私なりにまじめなお答えをしてまいったつもりでございますが、要は、五十九年で赤字公債からの脱却をするということを、第二次石油ショック等世界同時不況の中で思わざる歳入欠陥をもたらしてこの措置を延長しなければならなくなったといういわば環境の変化がございまして、五十九年赤字公債脱却は断念せざるを得なかった。したがって、今申しておりますのは、適用期限が来たらやはりその措置を行いますということにはいささかの変化もないわけですが、その適用期間を申しわけないがいま一度延ばしてくださいということをお願いしておるのがこの法律の中身であります。
  59. 村山富市

    村山(富)委員 今私が政府の答弁を読み上げたのは五十六年です。五十八年に、当時の林厚生大臣がまた質問に対して答えているわけです。これは大蔵大臣、厚生大臣同意の上でという前提をつけて答弁しているわけです。その答弁を見ますと、  行革関連特例法による年金国庫負担金の減額分については、積立金運用収入の減額分を含め、将来にわたる年金財政の安定が損なわれることのないよう、特例適用期間経過後において、国の財政状況を勘案しつつ、できる限り速やかに繰り入れに着手するとの考えに変更はない。特例適用期間経過後は、本則に戻る。 こう答弁しているわけです。だから、三年たったら本則に戻る、これは明確に言っているわけです。そして、適用期間経過後の国の財政状況を勘案しつつ、できる限り速やかに負担金の減額分と積立金運用収入の減額分を含め繰り入れに着手をする、こう言っているのですよ。いいですか。延長するということは全然書いてない、言ってないのです。約束ですよ、これは。三年経過したら返します、本則に戻ります、減額分については利子も含めて一緒に繰り入れます、こう言っているわけです。約束とは違うじゃないですか。約束違反じゃないですか。
  60. 竹下登

    竹下国務大臣 その林厚生大臣の答弁の際も私が大蔵大臣でございます。確かに適用期間が参りましたらそのような措置を行いますということを申しました。その後、適用期間を延ばさざるを得なくなったという政策判断は、その後に私がというより、言ってみれば内閣一体の責任で行ったわけでございますが、適用期間後における措置については依然としてその考え方は変わっておりません。
  61. 村山富市

    村山(富)委員 総理、これは前の総理大臣も当時の大蔵大臣も、それから前の厚生大臣も次の厚生大臣も、そして今おられる竹下大蔵大臣も含めて国会ではこう約束しているのですよ。しかも、念が入っていますよ、議事録にまで書いてあるのだから間違いありません、御心配なきように、そして皆さんを安心させておるわけです。そしてこの一括法案の中で一年間延長する。約束違反じゃないですか。総理、どうですか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 当時、鈴木内閣におきましては、五十九年度赤字公債依存体質から脱却する、五十九年度ということを目標にそれができると考え、また努力しておったところでありますが、それができなくなりましたので、まことに申しわけないのですけれども期間を延長する、こういうことでお願いしているわけなのであります。
  63. 村山富市

    村山(富)委員 五十九年に赤字国債から脱却する、だからここで期限を切ってあとは繰り入れます、こういう約束をしたんですね。ところが、五十九年に赤字国債を脱却できない、だからこれも延ばしてもらわなければならぬ、こういう理屈ですね。そうすると、今の政府の方針は赤字国債の脱却の目標は六十五年になっているのです。同じ理用なら六十五年まで延ばすのですか。
  64. 竹下登

    竹下国務大臣 村山さんがおっしゃった論理になるわけです。論理を整理していただいてありがとうございます。  そこで、その論理をそのまま継続していくならば、赤字公債脱却を六十五年にしたんだからそれまで延ばす気か、こういうことでございましょうが、特に年金問題につきましてはいわばいろいろな制度改正等が念頭にあるわけでございますので、私、専門家ではないから詳しくは承知しておりませんが、そういう中でこれを措置していく問題となろうかと思われます。したがって、このまま自動延長で将来六十五年になりますなどということは、その前に年金制度改革の問題がございますから、そのようなことで今日お願いすべきものじゃないと思いまして、一年ということでお願いしたわけであります。
  65. 村山富市

    村山(富)委員 今、大蔵大臣からお話がありましたように、この国会で年金法の改正案が審議されるわけです。これは私どももちろん反対ですよ。反対ですけれども、仮にこの国会で成立する、こうなった場合に六十一年から施行されるわけです。その改正される中身には、六十一年からは厚生年金に対する二〇%の国庫負担はなくなるのです。基礎年金で三分の一だけ負担するわけですから、そうするとその対象になる二〇%負担の本体がなくなるのです。そのことを前提に置いて一年延長だと私は思うのです。だけれども、前段の論理からいけば、六十五年まで赤字公債の脱却はできないのですから六十五年までこれは返せませんということになる可能性があるのです、六十一年からは制度が変わる可能性があるわけですから。  しかも、この金は国民の金ですよ、厚生年金被保険者の金ですよ。しかもこの改正案を見ますと、将来、老齢化に向かって年金財政は不安定になります、だから、長期にわたって安定させるために皆さん我慢してください、保険料は上がります、給付はダウンします、だけれども、長期に安定させるためにはやむを得ないのです、こう言ってやっておるんじゃないですか。そうして一方では、政府はその金を借りて、いつ返すかわからぬ、こんなことではこれは我慢できませんよ。共済の関係なんかは被保険者も入って運営しているんじゃないですか。厚生年金だけは運営について被保険者に発言権がないのです。政府が一方的に言っているのです。それをいいことにしてこういう運用をするということは間違いではないか。六十一年から制度が改正されて二〇%負担の本体がなくなるのですから、したがって、六十一年では必ず返します、ただ、六十一年から返す方法についてはこういう計画で返します、運用利子も全部含めて返しますということを明らかにしなければこのままにするわけにはいきませんよ。
  66. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、私よりも年金問題についてお詳しい村山さんでございますから、事実二〇%が今度は基礎年金の三分の一でございましたか、そういう制度改正をお願いしておる。そういう前提がありますだけに、やはり一年ということにすべきだという判断を下したわけであります。そうして、一年ということになればやはり従来申し上げておりますいわゆる特例適用が一年延びるわけでございますから、特例期間経過後において本則に戻るという政府の統一見解というのはそれなりに私どもは守っておる。例えば当分の間とかあるいは財政再建期間中とか、いろいろな議論もいたしましたが、なかんずく一連した暫定措置としてお願いしたということもありましたが、いわば法律の改正をお願いしておるのでございますから、したがって、これはそういうことを念頭に置いて一年ということでお願いをした。特例期間が過ぎたら本則に戻るということもそのとおりであります。
  67. 村山富市

    村山(富)委員 私がるるこの経過を申し上げたのは、特例経過期間が来たら本則に戻ります、財政事情を勘案して云々というのは、返す方法、繰り入れをする方法について財政状況を勘案をしてやります、中身はこういうことですよ。今度は事情が違うのですよ。なぜならば、六十一年からは二〇%負担の対象がなくなるのです。だから、仮に一年間延長したら、せめて繰り入れの計画ぐらいは明らかにしてもらわないとこれはうやむやになりますよ。私は承認できません。これはうやむやにするつもりはないでしょうけれどもね。国債だって償還期間をちゃんと決めているわけですから。こんな金は、前段にこういう約束をしておきながら一年間延長して、後は野となれ山となれ、どうなるかわかりませんよ。そんないいかげんなことで承認するわけにいきません。せめて返済計画ぐらいはこの際明らかに、すべきではないか。
  68. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほどの大臣の御答弁に尽きるわけでございますけれども、統一見解にもございますように、年金財政を損なうことのないよう、かつまた国の財政の収支等々も考えながら、特例期間経過後には政府としては十分の措置をとりたいということでございます。
  69. 村山富市

    村山(富)委員 年金財政を損なわないようにと、それは今厚生年金は相当積み立てがありますから、今直ちに損なうことはないですよ。だけれども、長期の安定を図るために年金法の改正をやっているのじゃないですか。いずれはそうなるのですよ。しかも、国の財政状況を勘案してというのは、国の財政状況を勘案して返済する方法は検討してくださいという意味ですよ。これはもう六十一年から本体がなくなるんです。だから一年で必ず本則に戻る、一年以上は延長しません、そして六十一年から返済計画はこういう計画でもって返済しますと明らかにしなければ、これは私は承服できませんよ。一年延長するわけです、後のことは何もありません、そんなことで了解できますか。総理、どうですか。
  70. 竹下登

    竹下国務大臣 まず私からお答えした後で……。  今のおっしゃる意味も私理解できるのです。私も法律の担当でないものですから控え目に申しておりましたが、そして、国会で御審議いただいている法律の通過することを前提に置いて御議論するのはいかがかと思いましたので言葉を選んでお答えしておりましたが、変わっていくことは事実でございます。したがって、法律が通ったならば変わっていくことも事実でございますので、そういうことも念頭に置きながら一年ということにしたわけでございますので、いわば従来の精神でありますところの、この経過期間が済んだ場合は年金財政に不都合なことをもたらさないようにきちんといたしますという物の考え方には変わりございません。  ただ、年次計画を示せということになりますと、これは私は、今日の段階で、今後の年金財政、制度そのもののあり方からいたしまして、年次計画をお示しすることは非常に困難な問題ではなかろうかというふうに考えます。
  71. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣と同じでございます。  ともかく、法律に書いてありますように、本年度の措置としてそのようにお願いをしておりまして、将来のことはいろいろな状況も考え、ことしはこういう措置をやった。元来言えば、もとの措置というものが本則の措置であって、ことしは例外的であるから一年ということにしてあるのだろうとは思います。しかし、いろいろ今後の情勢判断、流動的な経済関係やらその他も考えながら関係閣僚で相談をしていただく、こういう措置にお願いしておるわけであります。
  72. 村山富市

    村山(富)委員 六十年度末になったら、これは両方含めて額は何ぼになりますか。
  73. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答えを申し上げます。  六十年度末で、元本すなわち繰り延べました額が、当初予算ベースで申し上げまして九千四百七十億円でございます。これに対しまして利息分でございますが、利息といたしましては、それぞれの年度に資金運用部に預託いたしました場合に得べかりし利息という前提で計算をいたしますと、それが千三百五億円でございますので、合計いたしまして一兆七百七十五億円と考えております。
  74. 村山富市

    村山(富)委員 これはやっぱり前の国会で約束したことが全部守られぬわけですからね。そんな答弁したって信頼できませんよ。一兆円を超すんですよ。一兆円を。その一兆円を超す金を一年間だけ延長して、後はその事情によって判断しますなんて、そんな無責任なことで納得できますか国の二〇%負担の本体がなくなるわけですよ。本体がなくなるんだから。だから一年たったらもとに戻す、そしてこういう計画でもって返済しますということが明らかでなければ承服できませんよ、これは。
  75. 竹下登

    竹下国務大臣 返済計画というお尋ねでございますが、この返済計画というのは、先ほどお答えいたしましたとおり、年金財政に支障をもたらさないようにということの以上を出て、何年に何ほどか、これは例えば村山さんと私と攻守所を変えたとしてもなかなか難しい問題だと思います。
  76. 村山富市

    村山(富)委員 いや、行革特例法審議する際に、三年たったら本則に戻る、そして元金も運用利子も含めて全部返します、こう言っているんでしょう。返しますと言う限りはどういう方法で返しますという約束をしなさいよ。しかも、さっきから何遍も言っていますけれども、これは本体がなくなるのですよ。本体がなくなったらうやむやにされる心配だってないことはないですよ。年金財政はまだ安泰です、政府財政は厳しいからと言えば、それっきりになるじゃないですか。そんなことじゃ納得できませんよ。返済計画が仮にそのとおりにならなくても、今はどういう方法で返したいと思っていますということくらい明らかにしてもらわないと審議できませんよ。
  77. 竹下登

    竹下国務大臣 プロでございますから、今もおっしゃっているように、厚年が今のままの制度で仮にいったとした場合、今すぐ年金財政に対して影響があるという段階ではないわけでございます。したがって私どもとしては、年金財政に支障をもたらさないようにということを前回の特例法を御審議いただきましたときから言い続けておるわけでございますから、それを今の段階で返済計画ということをおっしゃるのは、よしんばそれがラフなものでもいいと仮におっしゃったといたしましても、やはり私どもは将来の年金財政というものの推移の中で判断しなければなりませんし、いま一つは、先ほど来おっしゃっておりますように、制度改正そのものが私の念頭にもございますので、今日それを計画としてお示しするというのは非常に難しい問題ではなかろうかと、いささか担当を踏み出したお答えになりますが、そのように思います。
  78. 村山富市

    村山(富)委員 これは同じことの繰り返しになりますけれども、前回三カ年間の特例法の際も、期限が切れたらもとに戻ります、そしてすべて返済します、こう約束しているわけですよ。その約束が守れなかったわけですよ。それで一年間延長するのですよ。一年間延長して、また同じことを言っているわけですよ。また同じことの繰り返しになるじゃないですか。しかも負担部分の本体がなくなるのですから、せめて返済計画くらいは明らかにしてもらわないと納得できません、この法案審議はできません、こう言っているわけですから、その扱いを委員長、相談してくださいよ。
  79. 越智伊平

    越智委員長 政府、どうですか、検討してみますか。――平澤主計局次長。
  80. 平澤貞昭

    平澤政府委員 御答弁いたします。(村山(富)委員「同じ答弁じゃないか」と呼び、その他発言する者あり)
  81. 越智伊平

    越智委員長 理事の皆さんお集まりいただきたいと思います。大蔵の理事と社労委員長。――ただいま社労委員長及び大蔵委員会理事において協議いたしました結果、この問題については政府において連合審査中に誠意を持って回答をしていただくということに決定をいたしましたので、質疑を続行していただきたいと思います。村山君。
  82. 村山富市

    村山(富)委員 じゃ、その質問は留保して、これで終わります。
  83. 越智伊平

    越智委員長 加藤万吉君。
  84. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 最初に総理にお聞きしますが、今同僚の村山委員からも御質問がありましたが、この一括法案の中心的な課題は、いわば高率補助金の一律引き下げといわれる問題、交付金化一般財源化の問題等でありますが、特に、五十九年の十二月二十二日に大蔵、厚生、自治各大臣の連署による覚書、なお同日結ばれました大蔵、自治両大臣の覚書が、六十年度予算編成に当たって大変重要な措置としてかわされたわけであります。この社会保障に関する問題の覚書の第一項は、六十年度暫定措置としてこの覚書を締結した、二項は、国と地方との役割の分担、費用の負担見直し等の検討を進めて、今後一年間の間にその結論を得るということでございました。  これは結局、この高率補助の切り下げについては各省との合意がないまま、先ほどの大蔵大臣の答弁によれば、いわば予算編成権を持つ大蔵大臣の調整権として六十年度予算に削減の案を予算案として計上し、これを今国会一括法案として提起をした、こういうことになるわけでありますが、各省との内容についての完全な合意がなされないまま本法案として提起をされている、こういうように理解してよろしゅうございましょうか。
  85. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 各省との合意が終局的になかったということはないと思います。これは予算編成については政府与党一体になりまして調整をいたしました。政務調査会の各段階におきましてもいろいろ御議論をしていただきまして、最終的には政府与党一体になってこの案を承認したものでございまして、各省大臣もその承認のもとにあるわけでございます。
  86. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 補助金の一括切り下げ率がどのくらいがよろしいのか、あるいは費用の負担や地方団体と国との財政負担のあり方などは今後一年間検討する、こういうことになっているわけであります。結果的には、予算の編成そのものについては総理がおっしゃいますように合意があったかもしれませんが、内容そのものについては今後一年間の検討を要するということでありますから、その内容については合意が得られなかった、こういうように見るのがこの覚書をまともに見る見方ではないかと私は思うのですが、重ねて御答弁いただきたいと思います。
  87. 竹下登

    竹下国務大臣 これは加藤さんおっしゃいますとおり、総理からもお答えがございましたとおり、とにもかくにも我々はいわば一年の暫定措置としての合意を見たわけです。将来にわたっての問題は、一年間かかってまた将来の問題として合意を得るように検討しようという約束をして今日に至っておるということでございます。
  88. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 自治大臣、今大蔵大臣から将来の問題についてはこれから検討しようと。総理も、予算の編成の過程で予算編成については合意は得たけれども、内容については、私が指摘をいたしましたように、覚書条項にあるような形で一年間の検討を要する。特に自治大臣大蔵大臣との覚書では、なおこの上に、検討を加え調整をするという覚書条項までが締結されているわけであります。  先ほど村山委員からも指摘をいたしましたが、仮に暫定であれ、こういう覚書を結ぶことは、地財法の第二条の第二項といいましょうか、地方財政法の基本である地方財政の自主的かつ健全な運営に対する国の関与あるいは地方の自主的な運営というものを極めて妨げる条件として、違法性が強いのではないか。それだけに自治大臣は、この問題はあくまでも一年限りです、したがって今後一年間検討を加えてまいります、同時にそれは、例えば先ほどから議論がありました生活保護や行政的な切り下げについてはもとへ戻して私はするつもりです、こう地方行政委員会等では御答弁をされておりますが、どうでしょうか、自治大臣の所見をお聞きいたしたいと思います。
  89. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今加藤先生の、一年限り、その間の地方財政に及ぼす影響については交付税あるいは建設地方債等によりまして完全に補てんをするという約束になっておりますが、社会保障等の経常費につきましては、六十一年度どうするかということはこの一年間に検討をするということでありますので、社会保障の国家的意義とかそういうことを頭に置きながらこの折衝に当たる所存でございます。
  90. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 自治大臣、重ねてお聞きをいたしますが、どうでしょうか、今四月です。先ほども答弁のやりとりがありましたように、八月には概算要求をしなければなりません。あと三カ月ないしは四カ月の間でこの調整が可能でしょうか。
  91. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 これは御承知のように、私がそう思いましても相手がそうならなければできないことでございますから、一年以内ということは三者覚書の精神にのっとりますから、予算が済みましてこの法律が通りました後直ちに、今事務的にいろいろ検討しておりますが、私どもも検討に入りまして、覚書にあるような六十一年度予算の最後的な決定には間に合うように努力をしてまいりたいと思っております。
  92. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 大臣、今交付税の審議地方行政委員会でやっているのですよ。交付税の審議の中で花岡財政局長は、ほとんど不可能です、こう言っているのです。今日の段階までの大蔵省、厚生省、自治省との間の検討その他の経過から見て、サマーシーリングあるいは概算要求をまとめるまでの間にこの問題を決めるのは極めて困難です、ほとんど不可能に近いです、こう実は答弁をされておるのです。これは四月四日の答弁ですよ。所管大臣である大臣、どうお考えですか。いま一遍お聞きします。
  93. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 事務的に極めて難しい問題であることは、私も承知しております。極めて難しい問題でありますが、一年内の約束、決めるということを、六十一年度の分を決めねばならぬのですから、これは事務的に不可能であっても、何としても政治的にも最後的決着をつけねばならぬと私は考えておりまして、来年度の予算の場合までには、とにかくどういうことでやるべきか、三者で話し合いが結了するように努力をしてまいる決意でございます。
  94. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 厚生大臣どうですか。
  95. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 三省間で約束をしたことでございますから、厚生省としては厚生省の立場を考えながら、十分に議論を尽くして検討を重ねたいと思います。
  96. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 自治大臣、投資的経費に対するかさ上げの切り下げがございますね。これについてはどうお考えですか。
  97. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今度の補助金法案では一年限りの補助金の改定だとなっております。私どもはそういう意味も含めまして、とにかく社会保障費のような経常費についての三者の覚書というものはありませんけれども、必要な場合には協議するということになっておりますので、そういうようなものを含めまして検討することになると私は考えております。
  98. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 大蔵大臣、六十年度予算が参議院で通過をしました。翌日、これは大臣も見られたと思いますが、六十一年度予算に対する各社の新聞社のコメントがそれぞれ出ています。これは新聞社の情報ですから――ただ、予算委員会の過程で大蔵省が出されました中期財政見通し、これによりますと、当然なことでしょうけれども一般経常経費の切り下げ分はもとに戻してありますね。その単価の積算基礎はもとに戻してあります。なぜかと言えば、これは一年限りの暫定であるからです。  しかし、投資的経費はどうですか。これは六十年度投資的経費として切り下げた額を六十一年度の積算の基礎にして、そして六十一年度以降の財政見通しを立てられているんじゃないですか。いかがですか。
  99. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいは私の指摘が間違っておりましたら、今平澤次長から正確に申し上げますが、おっしゃっているとおり、社会保障関係につきましては、いわば補助率がもとへ返るという前提の上に試算なり仮定計算なりをつくっております。投資的経費につきましては、国費ベースにおいて同額をたしか計上しておる。すなわち、建設国債を横ばいでたしか仮定計算、中期試算には計上しておるというふうに思っております。  それは、補助率問題というものは、いずれにしても一年間の暫定措置にかかわるものは見直しするわけでございますから、額の面で同じように仮定計算、中期試算ではお示ししておる、こういうふうに理解しております。
  100. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 大蔵大臣、私は大蔵大臣と自治大臣の答弁で、社会保障については一年限りの暫定というのはわかるのです、これは覚書を結んでおりますから。しかし、自治大臣はさらに言及しまして――自治省の予算では御案内のように投資的経費と言っていますね、大蔵省の予算では公共的経費。この公共投資については、大蔵省の方では六十年度の補助率の切り下げた分で踏襲されるんじゃないですか。自治大臣は、六十一年度は社会保障の一年間の暫定と同じように見直しをして行います、こう言っているのです。どちらが本当でしょうか。少なくとも中期財政見通しを参考にする限り、この指数を参考にして私どもが投資的経費を将来的に見通すならば、六十年度の切り下げられた分で投資的経費が踏襲されてくる、こう見ざるを得ません、大蔵省の案でいけば。いかがですか。
  101. 竹下登

    竹下国務大臣 そういう見方は私もできると思っております。ことしの場合、もう一つの角度から議論いたしましたのは、いわば事業費ベースでプラスになるように、国費ベースでは減額したが措置としてはそのようにしたという問題が一つあるわけでありますが、財政の中期試算なり仮定計算なりでお出しした場合には、いわば国費ベースの同額ということでお示しするのが大体従来からしてその方が妥当であろう、仮定計算上の数字としてお出しするならばその方が妥当であろうと思ってお出ししたわけであります。
  102. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 総理、この問題、今私は三つ問題があると見ているのです。  第一には、社会保障に係る補助率の引き下げに対する調整あるいはこれからの検討が、恐らく八月の概算要求を確定するまでにはできない。厚生省、自治省、大蔵省との間のことは調整が不可能に近い。少なくとも地方行政委員会での財政局長の答弁等を見る限りはそういう見通しです。したがって、私はそういう権限があるのを今大蔵大臣の答弁で初めて聞いたのですが、予算に対する調整権という中で今年度のこの一括法案を出しましたという先ほどの答弁を聞きまして、再び補助金に係る補助率の切り下げが大蔵省の財政調整権という中で六十一年度も今年度同様に予算化されていく、この危険性を第一に私は指摘をしておるわけです。  第二の指摘は、投資的経費に対する補助率の切り下げ分に対しては、大蔵省はおおむね私が指摘をするとおりと言いますから、六十年度の予算どおりにやります、自治省は、いや六十一年度については、一年間の暫定的な見通しですから、その暫定案に沿って投資的経費についてもさらに検討します、こう言っているのです。  三つ目は、長期的見通しによりますと六十一年度の財政調整額はたしか三兆七千億だと思いましたけれども、国の財政で三兆七千億の財政不足額が出る。結果的には六十一年度も再び補助金の切り下げをせざるを得ないというのが、六十年度予算が成立した後の各新聞社の論評であります。  この三つの視点について、第一に大蔵省と自治省との間で補助率の切り下げに対する扱いに意見の食い違いがあることをどうお考えになるのか。さらに第二番目には、六十一年度のサマーシーリングまでの間に、必ず大蔵省、厚生省あるいは自治省との間の調整、検討というのが総理の手元できちっと最終的に調整を可能とされるのかどうか。この御答弁をひとつ聞きたいと思います。
  103. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 最終段階におきまする党との調整で三省大臣の覚書がありますが、これにもありますように一年以内にやるということであります。しかし、できるだけ早くということは望ましいと思いますが、一年ぐらいはかかるだろうと思います。大体今までの例でも、最終的に予算全体の総合的なバランス、経費の出入り等々もかんがみまして、十二月予算編成のときに最終的に決着するというのが今までの例でございます。しかし、にもかかわらず、できるだけ早く努力するということは当然のことであろうと思っております。  それから、投資経費につきましてはややニュアンスが違っていると私考えております。  それから、六十一年度以降の分につきましては、これは六十年度の措置としていろいろ御審議を願っておるものでございまして、それは今後の情勢をよく見まして総合的に判断をする、そういうことになると思います。しかし、社会福祉というものが重要である、特に生活保護費という問題については国が直接責任を持っておるという点は、我々としては念頭に置かなければならないと思っております。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 一つだけつけ加えさせていただきます。  今私が公共事業について、おおむね前年同額、こういうこと、それでデフレーターだけが掛かっております。正確に申し上げますならば、今年の公共事業費にいわゆるデフレーターを掛けただけが上積みしてある、こういうことになります。
  105. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 生活保護費の問題につきましては先ほど同僚議員が質問申し上げましたから、義務教育費の国庫負担制度の改正について二、三御質問をいたしたいと思うのです。  今回の一括法案の中では、旅費と教材費をそれぞれ一般財源化をするということで改正がされているわけでありますが、昨年の十月三十一日に人事院勧告が行われまして、その改定給与ベース財源として給与改定影響額四千四百億円、この追加を当時の六十年度予算編成に合わせて繰り込んでいかなければならない、結果的に歳出ベースで七千二百億円一般会計で増になる、したがってこの際にこの一般会計歳出をできる限りプラス・マイナス・ゼロにする、そのために歳出カットを教育関係義務教育の国庫負担制度にということで大蔵省側から自治省に話があり、その内容は学校の事務職員、栄養職員あるいは共済費、恩給費、不交付団体への国庫負担の一〇%削減等があったと聞いておりますが、これは事実でしょうか。
  106. 平澤貞昭

    平澤政府委員 教材費、旅費以外につきましても検討の対象としたことは事実でございます。
  107. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 今回は旅費、教材費ということになったわけですが、この給与改定費の増加とともに義務教育費の国庫負担の総見直しというものが、直ちにとは言いませんけれども、期間を置いて漸次行っていく、国庫負担の対象から外していくという試案が自治省側に意向打診をされた。私の計算によればその対象額は四千三百億円です。どうですか。  これは総理にお聞きした方がよろしいと思うのでありますが、義務教育というものに対する国の責任、私は先ほど、生活保護費に対する国の責任、地方の責任という問題を含めまして、お金の問題に問題がすりかえられておると申しましたが、教育の機会均等を与えるという立場から見ましても、義務教育に対する国の責任というものは極めて広い範囲にわたって行わなければなりませんし、特に学校教職員の給与の問題はもちろんでありますが、最近のように大変技術進歩が激しいそういう時代には、寒村僻地の子供にもしっかりとした近代科学を教えるような教材などというものは必要な条件だろうと思います。本来国の責任で行うべきそういう教材関係一般財源化することによって寒村と都市との間に学力の差というものを拡大するというようなことがあってはならないというように思いますが、教育という問題に対する国の責任について総理はどのようにお考えでしょうか。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 義務教育につきましては、国は責任がございます。憲法でも無償とする、そういうふうに規定されておりまして、これは国の政策の中でも、国の責任の中でも非常に大事な部分を構成すると考えております。  ただ、義務教育を行うにつきましては地方公共団体にもいろいろお手伝いを願って、御協力を願っておるところでございますが、それらの経費の区分につきましては、これは国と地方公共団体がその義務教育の国家的責任というものを踏まえながらいろいろ分担し合い協力し合う、そういうことは話し合いによって決められる。しかし、責任の大本が国にあるということは踏まえていくべきものであると思います。
  109. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 国に教育の責任があればこそ、総理も大変力を入れて、教育臨調、それぞれの部会を設けられていろいろな分野にわたる諮問、答申を受けられようとしておるわけであります。  今度教育臨調の答申が六月とも言われ、それぞれの部会の答申もそれぞれなされるというふうに聞いておるわけであります。私は、国と地方の教育に対する責任、教育と言ったら範囲が大変広いわけでありますが、その経費についてもどこまでが国が負担をすべきか、地方が負担をすべきか等も含めて今教育臨調の主要な議題になっているのではないか、こういうふうに思うのですが、総理、いかがお考えでしょうか。
  110. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育臨調というよりも臨時教育審議会でございますが、ここにおきましては、教育の理念とかあるいは教育の方法、各段階における適切なる教育というものをいかに行うかという問題、あるいは教育の国際化あるいは生涯教育の問題等々が総合的に論ぜられていると思います。その中における国と地方との協力関係については、財政面もございますが、あるいは管理面の問題もございます。これらにつきましてもいろいろ御論議が行われるものと期待されております。
  111. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 文部大臣、今第一部会では、国と地方公共団体の教育に対する役割、それから教育に対する教育条件の整備の審議をされておられますね。どうでしょうか、先ほど言いました例えば教材費、御案内のように今十カ年計画で教材費の計画が進行中ですね。しかも、五十三年度から始まりましたこの総計画予算は四千六百億円、今、年度の途中でありますが、六十年、六十一年、六十二年、国費の負担分は千百六十億円残しているわけです。残しておりますね。今度教材費の六十年度予算のうち百三十億円、これは一般財源化でございますね。一般財源負担をするということは、一体どういうことになりますか。国の計画されている教材費の予算計画に対してはどういう影響を及ぼすことになりますか。  特に私は、恐らくその教材費の整備に関する十カ年計画を基礎に置きながら、今第一部会では審議が継続中だと思うのです。あるいは、審議を検討し、まさにその答申を受けられる段階ではないかと思うのですね。その段階で教材費に関する、部分的ではありますけれども、六十年度に百三十億に及ぶお金が一般地方財源に財源化されるということは、その計画を途中で挫折させることになりませんか。いや、それよりも、今総理がおっしゃったように、教育が極めて国の責任として重要だ、教育臨調もその意向を受けているということになれば、その国の責任なりあるいは教育臨調の意向というものを財政面でコントロールすることになるのじゃありませんか。いかがですか。
  112. 松永光

    ○松永国務大臣 学校教育について国と地方の負担のあり方の問題、それとの関連での教材の整備はどうなっていくのかということがお尋ねの趣旨だと思いますが、学校教育費については、一般論としては、先生も御承知のとおり学校教育法第五条で設置者がこれを負担するというのが一般的な原則でありますが、義務教育につきましては、先ほど総理から御答弁がありましたように国の責務でもありますから、しかも義務教育の本質からいって、全国的なレベルで機会均等が図られなければならない、あるいは教育の水準も地方であろうと都市であろうとその水準の維持向上が図られなければならないという義務教育の性格から、義務教育に関しましては国がその経費を地方と分担するという制度がつくられたわけであります。  その場合の国が分担する経費は、沿革上もまたその実体上からいっても教職員の給与費がその中核をなすものとしてできたわけでありますが、教材費につきましては昭和二十八年から、その当時地方の財政が極めて窮乏しておったということがございまして、学校教育なかんずく義務教育に必要な教材の整備についてPTAに寄附の割り当てをするなどということが行われておったわけでありまして、それを改善するということ等の趣旨から、教材費も国が義務教育については分担するということに実はなってきたわけであります。  しかし、今日におきましては、義務教育の教材については公費で支弁するという、そういう状況が定着をしてまいりました。一方、先生よく御承知のとおり、国の財政状況、極めて厳しい。そういうことになってまいりまして、公費負担という状況が定着してきたこともありますので、自治省とも相談をいたしまして、一般財源化するけれどもその財源については地方交付税で前年度を上回る措置をしていただけるというふうなことになりましたので、一般財源化を実はしたわけであります。  ところで、第二次教材整備計画でございますが、これが計画どおり進んでないことは先生御指摘のとおりでありますが、なぜそうなったのかといえば、五十七、五十八、五十九と国の財政状況が厳しいものですから、一〇%以上の経費の予算の削減を受けた、そのことが計画どおり進んでない実は原因なんであります。  ところで問題は、この一般財源化するかあるいは国の負担を残すかという問題でありますけれども、要は義務教育の学校における教材の整備が進んでいけば実はよろしいわけなんでありまして、その分、地方財政計画の中でこれまで以上に財源措置がなされるようなことが続いていくならば、ややおくれぎみでありますけれども教材の整備は進んでいくというふうに私たちは考えておりまして、そういう方向で最大限の努力をしていく所存でございます。
  113. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 大臣交付税にカウントするから教材費はいい、(「みんな交付税に入れればいいんだ」と呼ぶ者あり)みんな交付税にカウントすると言っているんですよ。先ほどの生活保護費が八割が七割になった、一千億は交付税に加算されますけれども、その他の分については建設地方倍を発行して、これまた交付税で見る。交付税三二%の粋なんですよ。そこへいろいろなものをカウントしていけば、今まであったものはどこかへはみ出していくんですよ。ですから、何でもかんでも地方交付税にカウントすればそれでいいんだというんじゃ、何でもかんでも全部交付税でカウントすればいいんだということになってしまって、意味ないんですよ、これは。  大蔵大臣、さっき大蔵省と自治省との間で、今年度は教材費と旅費でございましたが、先ほど実は私は幾つか例を挙げました。その中で、不交付団体について一〇%の削減というのを例示として挙げました。そういう話もありましたという当局からの答弁でした。松永大臣、あなたは文教委員会の答弁で、義務教育の国庫負担の中心的なものは給与費ですと、こうおっしゃっているんです。今総理も、周辺のものについては地方と財政負担の問題と、こうありましたけれども、不交付団体に一〇%削減をするということは、これはどうなんですか大蔵大臣人件費も含まれてくるわけでしょう。どうですか。
  114. 竹下登

    竹下国務大臣 我々が地方財政計画というものをいろいろ御相談さしていただく際に気になりますのは、いつでもまず基準財政需要額と基準財政収入額、その基準財政需要額の中へいろいろなものを将来にわたって入れていくというのがこの交付税による後始末のお話になります。そういう際にも感じますのは、不交付団体、私があるいは俗に言う貧乏県出身だからであるかもしれませんけれども、不交付団体と地財計画のあり方とということにつきますと、いつも私なりに悩みを感じます。そこには幾らかの財政措置として不交付団体なるがゆえにという措置がとられるのも、今日の苦しい財政状況の中にはやむを得ないことではなかろうかという感じを率直に私は持つわけであります。  一〇%の具体的問題については、主計局次長からお答えをいたさせます。
  115. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 いや、いいです。確かに交付団体と不交付団体とで財政力指数で差があるのは僕も認めますよ。しかし、だからといって地方財政余裕論というのは間違いなんだ。先ほど不規則発言で、何でもかんでも交付税にカウントすればと、こういう交付税掃きだめ論が最近横行しているんですよ。いわゆる交付税の総額が多過ぎているという意見が一部にあって、交付税にカウントすればすべてそれで一般財源化してもいいんだと。交付税は御案内のように、今地方と国との利子の負担区分が五十九年度からはっきりしまして、その結果、五十九年度の交付税は三一・三%ですよね。今年度は三一・五%ですよ。交付税率、三二%切ったわけです。上から交付税率を実際的にまず切ってきて、今度は下からは、あんこではないけれども、これも詰めろ、あれも詰めるという形でいろいろなものを一般財源化をして、結果的に実質的に交付税を変動交付税率に変えつつあるんです。そういう見方ができるんですよ。  教育関係の今度の場合には旅費と教材費になっていますが、もし不交付団体に対する国庫負担の教育費を一〇%カットするということは、不交付団体でも給与費は二分の一国庫負担なんですから、この国庫負担の二分の一をカットするということは結果的に給与費までカットすることになりますよ。今まで義務教育の教科書の地方負担云々という話はしばしば出た話です。先ほど私が指摘をしました今年度は三百四十億程度一般財源化ではありますけれども、もし先ほど私が言いましたものを全部国庫負担の対象から除外をいたしますと、四千三百億円です。さらに、不交付団体が今年度はどうでしょうか。愛知県、神奈川県、大阪府、東京、ふえるんじゃないですか。五十九年度ベースで百七十億ですから、さらにこれはふえるでしょう。加えて今言ったように、今度は給与費に至るまで削減の対象にするということになりますれば、総理の答弁ではございませんけれども、国の教育に対する責任はどうなるんですか。  いま一つ、私は一番大事なのは、そういう問題を含めて、今教育臨調と言われる場で、しかも地方と国との責任の分担を含めて第一部会では論議がされている真っ最中であります。この論議の真っ最中に、財政がひとり歩きをしているんです。しかも自治省との間では、文部大臣はどういう御理解かは知りませんけれども、今言ったところまで既に大蔵省から話が来ている。その話の延長を持っていけば、先ほど言いましたように、国の責任の一番中核である教員の給与の分に至るまでそのカット対象に当てはまってくる。  こういうことになりますと、私はこの際、やはり義務教育というものに対する国のあり方というものの結論が出て財政問題に対処していく、このことが最も適当な方法論、方向ではないか、こう思うのです。したがって私は、教育臨調の一定の方向性――今まで生活保護費については行政臨調の方から答申が出て、それを受けて議論もされた。多少問題のすれ違いは、どう言いますか、私どもから見れば大変ごまかしはありますけれども、教育の問題についても、そういう条件を見詰めて予算化をすべきではないか、予算の対応をしていくべきではないか、私はこう思うのですが、これは大蔵大臣総理に御答弁をいただきたいと思うのです。
  116. 竹下登

    竹下国務大臣 私も昔の人間でございますので、よく義務教育は市町村、高校は都道府県あるいは大学は国というような中で推移してきて、今日いわゆる憲法の義務教育無償の原則等々からいたしまして、それを国がどのようにしてバックアップするかということがいわば人件費の半額補助ということであろうというふうに基本的には考えておるものでございます。  したがいまして、そのことにつきましては、このたびはいわば国と地方との財政負担のあり方に関する検討の一環として、種々の観点から検討を行って、旅費と教材費について、国庫負担を導入した当時と諸般の事情が変わってきたということから対象外とさしていただいたわけでありますが、これと教育臨調との関係につきましては、たまたま予算委員会におきまして、総理にかわって藤波官房長官からのお答えがございます。教材費や旅費については地方自治体でこれを支出をしようということについての考え方が定着しておるということの上に立ちましてとられた措置だというふうに理解をしておるところでございます、これからも臨教審の中では広い角度からいろいろなテーマにわたって、教育をさらによくしていくためにいろいろな論議が進められていくことになろうと考えます、今次の改正と、これから臨教審でいろいろ論議をされていくであろうということにつきましては矛盾はしないというふうに考えておりまして、また臨教審でいろいろな問題について御議論がむしろ深まっていけば、非常に大きな意味があるというふうに考えておるわけであります、むしろそっちは中長期的な立場に立っての論議が進められていくことになろう、このように考えておるわけでございます、したがって、この間に矛盾はないというふうにお答えをいたしますという趣旨の答えをしておりますが、私も大筋そのとおりに理解をさしていただいておるところであります。
  117. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 義務教育の重要性と国の責任、それから国と地方との協力関係につきましては、先ほど来申し上げたとおりでございます。今後も義務教育は重視してまいりたいと思って来るところでございます。  ただ、国と地方を見ますと、国も非常に財政的に厳しい状況にあり、地方もまた同じように財政的に厳しい状況にあると思っております。ただ、借金の率だけを、それだけ比較してみますと、やはり国債の累積率及び利払いの費用、国債費等を見ますと、やはり国の方がその部分からは非常に大きな重圧を受けておるということは否定できないと思います。  それから、地方公共団体を見ますと、非常に苦しいところと、また中くらいに苦しいところと、まあまあやっていけるところと、多少余裕のあるところと千差万別でございまして、何しろ市町村三千数百もあるわけでございますから、当然千差万別あるわけであります。しかし、それらの地方公共団体は地方自治の本旨にのっとりましてそれぞれのニュアンスとその運営の仕方を個性的におやりになっておるところで、それはそれ自体として尊重さるべきものであると思っております。ただ、富裕団体とそれから厳しい団体との間の調整という問題は、国の政策としてもある程度あり得る、そう思っておるのであります。されば自治省がいろいろそういう点で配慮もしているところであると思うのであります。それを具体的にどうするかというような問題は、これは関係各省において地方自治の本旨にのっとって協議していただく、それが正しい態度であると思います。
  118. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 大蔵大臣、教育問題は教育臨調、これは総理の諮問機関。地方行政については地方行政調査会、これまた総理の諮問機関。ところが、大蔵大臣財政審議会ですか、いわば今教育問題に対するところも、その審議会の答申を受けて今年度、六十年度予算化されているわけですね。どう見でもやはり大蔵省のそういう意味での主導型ですよ。したがって、結果的に、先ほどの一般財源化の問題あるいは補助金の問題も含めまして地方自治と国とのかかわり合い、例えば義務教育に対しての国と地方とのかかわり合い、そういう面の関与、あるいは委任事務等も含めまして、そういう観点がおろそかにされて財政面だけの押しつけがされている。今総理は多少地方にアンバランスがある、これは私も認めます、あるでしょう。しかし、それよりも国全体の財政事情という中で地方に押しつけが非常になされている、そこに問題点が非常に出てくるのですよ。このぎすぎすした条件、いわゆる地方と国との信頼関係というものをしっかりしませんと、どのような条件をつくろうとも今日の国の財政再建は成り立っていかない、私はこう思うのです。  六十一年度予算の編成に当たっては、今幾つか述べました点をしっかりと踏まえながら再吟味していただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  119. 越智伊平

    越智委員長 小川国彦君。
  120. 小川国彦

    小川(国)委員 私は非常に限られた時間でございますので、中曽根総理一本に絞って質問をさしていただいて、関係閣僚の方々にはこの質疑を御参考にしていただいて、また問題点を各省で御検討願えれば、こういうふうに思うわけでございます。  なかなか総理に質問の機会というのは難しいものでございまして、七夕様ではございませんが、一年に一回ぐらいしか総理に質問できない。しかも短時間でございますので、丁寧に答えていただきますと時間がなくなりますので、ひとつ簡潔に御答弁をお願いしたいというふうに思うわけでございます。  最初に、総理に農政いわゆる農業政策を充実発展させていく、これを重視していくという考え方はあるのかどうか。日本全国の農業あるいは農家というものを総理が肌に感じて日本の食糧、農業をどう守っていくかということをお考えになっていらっしゃるかということに私はときどき疑問を感ずることがあるわけなんです。     〔越智委員長退席。熊川委員長代理着席〕  先日私は総理の地元の群馬県に参りまして、総理のおひざ元の農業はうまくいっているかどうかというので、ずっと赤城山ろくの農村地帯を回ってきたんです、山村を。しかし残念ながら、群馬は日本で有数の養蚕県でありますが、養蚕農家いずれも生糸あるいは絹織物の輸入の中で非常に減産に次ぐ減産、あるいは収入の減ということで、群馬県一という養蚕農家へ行ってきたんですが、昨年は大変な赤字で養蚕をやっていくことに自信をなくした、これは四ヘクタールの桑畑をつくっている農家です。  また、畜産農家も回ってまいりましたが、いろいろ牛肉の輸入あるいは日本の肉価格の低迷、そういう中でこれも行き詰まっている。野菜をやるにも果樹をやるにもなかなか転作するものもないということで、非常に農業に行き詰まりを感じている。何をやったら農業で飯が食えるかというぐらい、農業のどの部門も行き詰まっている。私はこれをやはり何とかしなければならないんじゃないかというふうに思うわけであります。  私は総理の経歴を見て、農林水産大臣をおやりになった経験がないので、やはり農業者あるいはそういうものに肌で接する機会が大臣総理としてはちょっと乏しかったんじゃないかというような感じもするわけですが、そういう肌に感じた農業政策というものを、日本の国の農業全体というものを総理としてどうお考えになっているか、ひとつ端的にお答えになっていただきたい。
  121. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、農は国のもと、あるいは農業は生命産業である、ほかの工業その他とは違う、そういうことを申しておる人間でございまして、農業を国のもととして極めて重視している政策を実行しておるものなのでございます。  私の県はかつては養蚕王国でございましたが、今は畜産が第一番になってまいりまして、それから野菜とか米麦、それから養蚕、そういうような形で……(「コンニャクを忘れちゃだめだ」と呼ぶ者あり)コンニャクの生産はもちろん大事でございますが、生産額からいえば野菜の類という、そういうジャンルに、入ってくるだろうと思います。そういうことで、非常に農業関係自体が流動してきつつある。それから農家の形態や農家の経営方針というものも非常に変わってきている。若手のいい後継者が出ているところは非常に積極主義でいい点もあるけれども、しかし注意を怠るというとたちまちにして情報不足から損をする、そういう面が出てまいりまして、農業についても非常に情報、それから教育ということが重要な時代に入ってきたと思っております。そういう点については、新しい時代に即応するような農業というものを国としても展開し、協力していくようにしていかなければならないと思っております。  選挙になりますと、私は群馬県の農林山村を跋渉してマイクでお訴え申し上げているので、また、昔はよく農家へ泊まったりして農業関係の青年と合宿やその他もしておりますので、よく知っておるつもりでおります。
  122. 小川国彦

    小川(国)委員 ただ、最近総理の日程を見てみますと、いろいろ政界人、財界人、外国のお客さんと会うのは非常に多いのですが、農業者、農業団体の人が総理と会っているというのは非常に少ないように思うのですが、これをもっと積極的におやりになるというお気持ちはありますか。
  123. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 農業団体の方も陳情によくお見えになって、聞いております。群馬県の農業関係の五連の長である宮崎君であるとか、あるいはまた中央の農業団体の方々、あるいは農林省、農林省のOBの皆さん、私の友人も多いわけでございますが、常時いろいろお尋ねをしておるところであります。
  124. 小川国彦

    小川(国)委員 いろいろそういうことであれですが、ぜひ本当の生産農民ともっと積極的に会っていただくということで、やはり総理言われるような食糧の重大性というもの、農業の重要性というものの認識を国政の中で深めていただきたいというふうに私は思うわけであります。  今度の補助金の一律カットの法案でいきますと、農林予算では約六百七十一億円カットをされるわけです。北海道から沖縄、あるいは山村、離島、過疎のところに高い補助率の補助がある、これがカットされているので、農業の低所得の立ちおくれているところに犠牲がしわ寄せさせられている、そういう感が深いわけであります。  こういった地方にしわ寄せする実態は先ほど来教育や福祉や地方行政の中で明らかにされてきたんですが、中央の特殊法人なり外郭団体の出している補助金、これは私、中曽根さんが行政管理庁長官のときから再三委員会で申し上げてきたつもりであります。昭和五十五年ごろから指摘をしてきているのですが、具体的に農林水産省の関係で申し上げますと、例えば中央競馬社会福祉財団というものの補助金が今二十三億七百万、この人件費、運営費で一億一千四百七十八万で、約二十五億円ですね。私は、なぜ農水省所管の中央競馬会が福祉の補助金を分配しなければならないかということに非常に疑問を持っているわけなんです。補助金の配分をやっているのは、馬主会が二十五億の予算の八〇%を配分するわけです。馬主さんがとても福祉に精通しているとは、これは厚生大臣もおりますが、厚生省の方々がやっている行政の養護施設、身障施設、老人施設、保育園、こういうところにやっていることはやはりおかしいんじゃないかと私は思うわけなんです。  それで、その補助金も、結局これは自民党の方が多いと思うのですが、政治家が介入して、一つの選挙区に全国の一割くらいの予算を持っていっちゃったりしているのですね。それからもう一つは、役人はそういう福祉財団などというものをそこへ天下りしていこうとしてつくっていく、こういうやり方が少しも改められていないわけです。それからもう一つは、やはり中央競馬会で競馬場の周辺自治体に、約三十カ市町村ですが、五十九年度で五十六億円予算を配分しているのです。これは競馬場の周りの二キロ以内、最近三キロ以内というふうに改められたんですけれども、そこの道路から下排水道、社会福祉施設、教育施設、公園緑化、消防施設、こういうようなものに、もう十数年来競馬場の周りの三キロ以内のところにだけに五十六億もの予算を使ってきていますから、やりようがなくなって、競馬場へ行く道路をカラーの道路にして色を染めた道路をつくるというようなことまで起こっている。こういう補助金も全廃していいんじゃないかというふうに私は思うわけなんです。  それから、同じくこの中央競馬会でいいますと、周辺自治体の町内会とか学校、消防、警察、こういうのに対する物品の寄附が、五十九年度で四億一千六百万あるのです。これは競馬場のある周辺の町内会にテレビからピアノ、ビデオ、楽器、それから神社の鳥居、屋根の改修、祭礼の浴衣、みこし、太鼓まで配っているわけですね。こういう農水省の特殊法人のこういう補助金のあり方がいいかどうか、総理見解を承りたいと思います。     〔熊川委員長代理退席、越智委員長着席〕
  125. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 特殊法人の整理統合、合理化、それからこれが事業経営の改善等につきましては、今後も引き続いて積極的に努力していくつもりでございます。特に役人の天下りという問題については厳重に監視してまいりたいと思います。ただ、特殊法人もそれぞれの設立の理由があり、活動もしておるわけでございますから、立派にやっておるところはそれなりに我々もこれを承認し、また奨励してまいりたい、そう思っておるところです。  競馬関係については小川さんは最高の権威者でございまして、よく事情を知悉していらっしゃるので、いろいろ今まで御指摘になった点は我々も大いに勉強さしていただいた点が多いし、その結果改革された点も多々あると思っております。今のようないろいろな仕事は果たして妥当であるかどうか、我々も勉強してみたいと思いますが、しかし、地方の迷惑をかけている関係市町村に対してそれ相応なりのお礼を込めた思いやりのことをやるということは、やはり地域との密着のためにもある程度必要でありまして、お祭りのときに多少のお酒を出すとかあるいは太鼓ぐらい寄附するというのは、やはり地域との融合という面において日本的な一つやり方じゃないかと私は思います。あながち否定すべきものではないのではないかと思っております。ただ、そういうことが政治家の圧力によって行われるということはこれはよくない、そのように思っております。
  126. 小川国彦

    小川(国)委員 これは総理農水省からもう少し篤とこの事情を聞いていただきたいと思うのですが、今申し上げた金額だけでも百億近くなるわけです。  それから、競馬会だけではなくて、例えば畜産振興事業団、これは牛肉を輸入して、その差益が毎年出るわけです。五十九年度でいうと三百十七億。この畜産振興事業団が牛肉の差益で得た利益を補助金に使っている。ところが、例えば川崎に日本食肉流通センターというのがある。ここに約百五十億の補助金を出して部分肉取引のセンターにしていくということでやっているわけなんですが、ここなども二十五億円の補助金をやって、その利息が年間二億円、それを人件費とそれからコンピューターの代金に充てているというのですね。  私は、特殊法人であれ、こういうものは自主努力の中で人件費なり管理費というのは生んでいくべきもので、補助金の利息で人件費をやっている、こういうやり方はやはり直していかなければならない問題じゃないか。ですから、天下りのためにこういうような団体を次々とつくって、そしてそこに補助金がおりてくる、人間が天下っていく、こういう特殊法人、外郭団体のあり方というものはやはり正していくべきじゃないのか。地方にしわ寄せする前に特殊法人なり中央の外郭団体の補助金というものをもっと見直す必要があるのじゃないか。  私が調べた農水省関係だけで、ざっと今申し上げたような予算だけでこの補助金が百億を超えるわけです。これは少なくも農水省が福祉なりあるいは自治体なりあるいは町内会の寄附までやるのではなくて、そういうものはそれぞれのふさわしい行政がやるなり、あるいは農水省が本来の、先ほど総理も言ったように農業振興をしなければならないというところにもっと予算が必要なんですから、六百億も削られる状態にあるわけですから、そういうところへこの百億の補助金なら補助金をぴしっと向けていく、やはりそういう指導をなさるべきじゃないか。それから地方への負担というのは考えるべき問題じゃないのか。もちろん地方へ負担をさせるべきじゃなくて、そういうところから国がやっていくべき仕事がまず中央においてあるのじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  127. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、天下りとかあるいはそれに伴う持参金の形態、そういうようなものは厳重に規制し、監督しなければならぬと思っております。  今御指摘のような問題につきましては、やはり地域の実情に即して、今申し上げた行革の精神にのっとってこれは規制されるべきものである、そのように考えます。
  128. 小川国彦

    小川(国)委員 この問題についてはひとり農水省の問題だけではないわけなんです。これは運輸省所管の日本船舶振興会、それから通産省所管の日本自転車振興会、日本小型自動車振興会あるいは建設省所管の日本道路公団、この孫会社になっている道路施設協会、こういうところを調べてまいりますと、本来的業務ではない、医療とか福祉とか教育とかスポーツとか、こういうところにこれらの省庁の外郭団体、特殊法人が相当な補助金をやはり出しているわけです。五十九年度、日本船舶振興会でいいますと、こういう今私が申し上げた項目にわたる補助金が八百六十二億円あります。それから日本自転車振興会でいいますと四百十五億円、日本小型自動車振興会でいうと七十三億円、中央競馬会で六十億円、中央競馬社会福祉財団で二十三億円、これを累計いたしますと、千四百三十四億円ですね。千五百億円近いものがこうした特殊法人なり外郭団体から補助金として出されている。それは、運輸省なり厚生省なり農林省なりあるいは通産省が行っている行政とまた別な観点でこういう特殊法人、外郭団体が補助金をやっているのです。全く省庁の所管の違うところの補助金を出している。いわば二重行政になっているわけですね。  中曽根さんは行政管理庁長官を長くお務めになってこういうことにやはり精通しておられるわけでありますから、そういう意味では、こういうものをこそ二重行政をなくし、行政改革の精神に沿ってきちんと国庫に吸い上げるなら吸い上げる、あるいはその省庁の本来の目的に使うなら使わせる、そういうことで、現在のこの一括法案のようにやみくもに自治体に負担を転嫁するんじゃなくて、国みずから国が監督指導している特殊法人や外郭団体の中で適正な行政改革を行うならば、私が指摘しただけでも約千五百億円の財源が生まれてくるわけなんです。こういうところを行革せずして地方に負担を転嫁すべきじゃない、こういうふうに私は思うのです。  こういった各省庁にわたる問題について、総理としてきちんと指示をし、この改革への取り組みをさせる、こういうお考えがおありになるかどうか、明確にひとつ御答弁ください。
  129. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、国が何でも取り上げて自分でやりたいということは必ずしも適切ではないと思うのであります。やはり官庁や役人さんがやるというと、どうしてもしゃくし定規になって、それが動き出すまでには随分時間がかかる、東京へ出てきて陳情しなければならぬ、代議士さんにまたお願いしなければならぬ、そういうような悪風が必ずしもなきにしもあらずという状況であります。そういうような特殊法人が非常に有機的に機動的に住民のニーズにこたえ、あるいは市町村のニーズにこたえて、そしていろいろ補助を行うというようなことも、社会的に非常に貢献している部分が私はあると思います。  ただ問題は、それが不正に行われるとか不当に行われるとか、乱用されるということがいけないのでありまして、そういう特殊法人が、国が直接行わずしていろいろバラエティーに富んだ機動的なやり方をやるということは、社会を非常に融和させているという面もあると思うので、何も官庁や国家が万能で、全部これを自分でやるというやり方は必ずしもいいとは私は思っておりません。やり方に不正や不当や乱用が行われるということを厳重に監督すればいい、そのように思います。
  130. 小川国彦

    小川(国)委員 私はもう一度農水省の問題へ戻って総理に伺いたいのですが、例えば、もう一度申し上げますけれども、中央競馬社会福祉財団というのは使っている予算が二十五億円なんですよ。そして、さっき申し上げたように全国の施設へ配っているわけですが、これは私も見ていると、全く思いつきなんですよ。それから、国会議員が持ち込めば、その力の順位で決めていくというようなやり方なんですよ。それでその基準は、厚生省が出しているこういう福祉施設の補助金の基準にはマッチしていないのです。厚生省は厳正な基準をつくってやってますが、この馬主会が主力となっている補助金はそれにマッチしていないのです。  それで、総理と盟友だったそうですが田中六助さんですね、亡くなったから時効になるかもしれませんが、この人の選挙区には日本の一割ぐらいの補助金、二十億の一割の二億ぐらいが福岡四区に全部使われていたんですよ。そういう事例はまだ残っているんですね。やはりまだまだ残っている。どう考えても私は、農水省が指導監督をしている中央競馬会が福祉の補助金を配るというのは、これは合わないと思うのですよ。こういうものは農水省が本来の仕事に使うのか、あるいは国庫に収入として上げて――これは私が国会で指摘してから政府も特別国庫納付金の法律をつくって、電電公社や中央競馬会から五百億円ずつ取るようになりましたでしょう。これは私が提唱してからだと思うのですよ。そういうように、農水省の所管の問題であってもやはり総理みずからが、行革を大きくスローガンとしている総理なんですから、そういうところをきちんと掌握さして、そしてこれに対してはこういう処置をしたということを、次のどういう委員会でもいいです、農林水産委員会でも結構ですが、総理が指示して、こういうものはこういうふうに改革させる――競馬の社会福祉財団、それから地方自治体への交付金、これだって、全国の中からわずか三十カ市町村だけ、毎年毎年競馬場の周りの三キロ以内に何億というお金、どう考えたって使い切れませんですよ。今まで二キロ以内だったのが、使い切れないから三キロに広げたわけでしょう。それを私は中曽根さんが行管長官のときに指摘したわけです。長官も傾聴に値する御意見だと非常に褒めていただいたんです。褒められただけじゃ困るわけでありまして、やはり総理になられたわけですから、これは実行していく、こういうことをやっていただきたい。  ですから、地方に転嫁する一括補助金の前に、こういう特殊法人の補助金の洗い直しを、私は農林水産委員ですから農林水産委員会のところを詳細に申し上げるわけでありますけれども、各省庁にこういう問題がある。そういうものをやはり洗い直して、中央の行革、補助金の削減をもっと徹底さしてもらいたいのです。私はこういうふうに総理に申し上げたいわけですが、いかがでしょう。
  131. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 不正や不当あるいは乱費乱用、そういうものを厳重に監督するという点は、前から申し上げているように私は賛成なのでありますが、そういう機関がそういうようなことをやってはいけないということについては小川さんとは考えを異にする。何でも国に持ち込んでしまって、国が役人や官庁の判断で物をやるというやり方が、必ずしも社会を円滑に運ぶ、また適正に行われる方法であるとのみは限らない、そう私は考えておるのであります。また、それらの団体が、いろいろ競馬やあるいはそのほかの収益を上げるについてはそれ相応の努力もしておると思いまして、国としてはある程度励みという点も政策の一環としては考えられると思うので、しゃくし定規にやることは自由主義政党としてはどうか、そういう考えを私は持っておるのであります。
  132. 小川国彦

    小川(国)委員 これは、中曽根総理まだ勉強不足だと思うのですよ。競馬会は一兆三千億ないし四千億の売り上げの中から経費というものは取っているわけですよ。国庫納付金を一〇%やりまして、残った一五%の中から経費を取って、残ったら第二国庫納付金をやるので、十分経費は出ているわけですね。そういうことを考えましたら、一律に中曽根さんの答弁は言っているのですが、一律にということじゃなくて一つ一つの中身を検討して、必要な特殊法人、必要な予算、それから整理されるべき補助金、そこのところをやはり総理として、行革に取り組むということを看板にしているのですから、おやりになるというぐらいの国民に対しての熱意や誠意があっていいんじゃないか、こう私は思います。
  133. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やり方が適正でないものやあるいは乱費しているもの、そういうような我我が考えてみてもよくないものは、これを整理し、監督し、各省によく目を見張るようにいたしたいと思います。
  134. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  135. 越智伊平

    越智委員長 柴田弘君。
  136. 柴田弘

    柴田(弘)委員 私は、きょうは高率補助金の一律カットということ、これを中心にして御質問をしたいと思うのです。  総理、私は今地方行政委員会におりまして、前は大蔵委員を五年ほどやっておったのですが、やはり地方経済の活性化というのは非常に大事だなというふうに思います。そこで関連をして、主題に入る前に御質問をしていきたいわけであります。  総理も御承知かと思いますが、今中部におきまして愛知、岐阜、三重三県を中心にしまして中部新空港を建設しよう、こういう動きがあります。去る一月九日には三県知事を中心にいたしまして、建設促進の期成同盟会も発足をいたした。それから、三月八日には超党派の議員、三県選出の国会議員が相寄りまして、建設促進の議員連盟も結成をされました。何とか国の計画の中に位置づけていこうじゃないか、これが趣旨であるわけでありますが、とにかく政官財挙げてひとつやろう、こういうふうにかつてない盛り上がりの機運を今見せておるわけであります。こういった動きについて、総理も御承知かと思いますが、いかが評価されるか、まずお聞きをしたいと思います。
  137. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 名古屋を中心に中部三県の諸県が国際空港を大きくつくろうという企画をお持ちであることは私よく承知しております。一つの将来的なビジョンとして、それはそれなりに尊重さるべきものであり、それがどういうふうに具体化していくか、また関係住民がどのような協力を行うか、また、そういう必要性がどの程度その時代に出てくるか、そういう点をよく我々は見守ってまいりたいと思います。
  138. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そこで必要性の問題でありますが、四全総の国際航空の長期展望の作業においても、ますます航空需要は今後伸びていくであろう。私どもの考え方というのは何も三年、五年先ということではなくて、二十一世紀を目指してのいわゆる中長期の展望に立った中で、空港というのは中部圏の活性化、国際化という問題だけでなくて、日本の将来を展望した場合には、近畿圏とがあるいは首都圏だけでなくて、日本の一番ど真ん中である中部にも新空港が必要であろう、やはりそういった二十一世紀を目指しての展望であるということであります。この必要性についてはどうでしょうか。簡潔で結構であります。
  139. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 将来のことを考えますと、そういうアイデアもあり得ると思うのです。私が聞いた中では、国際貨物空港というアイデアもあるとか聞いておりました。どういうふうにニーズが実り、また国際関係がどれぐらい日本にそういうニーズを生んでくるか、そういうような点も注目していきたいと思います。しかし、中部の皆さんがそういう御熱意を持って子孫のために立派な仕事を残していきたいという心がけは立派であると称賛いたしたいと思います。
  140. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それで、最後の問題ですが、やはり空港建設ということになりますと一大プロジェクトということになります。やはり地元のコンセンサスをどう形成していくかという問題も大事であると思います。地元といたしましても、そういった中で何とか建設をするには、まず地元が動かなければならないということで調査費を計上して、そしてきょう第一回の期成同盟会の会合をやっておりまして、これから調査をしていこう。伊勢湾湾上だというのだが、一体適地をどこへ持っていくのか。それから資金面の問題もあります。それから事業主体をどうしていくかという問題、環境問題、いろいろな問題がある。ところが、残念ながらこれは初めてのことでありまして、こういった地元がまず先駆けて調査をしていく上においても、やはり国の指導というものが必要になってくるであろう。その専門的な立場に立って、国としてもそのノーハウ等について技術的な立場等等、ひとつ地元の調査について御援助をいただきたい。こういった問題が一つあるわけであります。ひとつできることなら総理の方からも、そういう点もよく含んでいただいて、運輸省にも話をしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。     〔越智委員長退席、堀之内委員長代理着     席〕  それから総理として、今地元として盛り上がることは結構なことだという答弁でありますが、一体どういう条件が地元として整備されたら、政府としても新空港建設についてのゴーサインが出せるのか、この辺簡単で結構ですが、お考えがあればお聞かせいただきたい。
  141. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 時代の推移と、それからどういうニーズが起きてくるか、住民がどのように協力するか、そういう点が大事であると思います。国としては合成田の第二期、それから関西新空港、そのほかの各地域のジェット化という問題もございまして、財政的にはほとんど手いっぱいでございますが、いろいろ技術的助言等につきましては、御要求があれば協力させるようにいたしたいと思います。
  142. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それでは本題の高率補助金の一律カットについて御質問をしたいと思います。  今回の高率補助金の一律カットというのは、分権と自治の精神に反した財政措置と言わざるを得ない、こんなふうな考え方を持っております。地方制度調査会の答申を見ましても、国と地方との間の機能分担と費用負担のあり方、こういったものを根本的に見直すことなく、負担割合を一律に引き下げるということは、これは単に国の財政負担の地方への転嫁である。国、地方を通ずる行政改革の理念に反し、国と地方間の信頼関係を損なうこととなるので、とるべきではない。こういう昨年十二月四日の地方制度調査会の答申もあるわけであります。ところが、今回財政難ということで強行されました。自治体関係者もこの補助金の一律カットというものには大反対であるということですね。先回、大蔵委員会としても地方公聴会をやられたわけでありますが、反対の意見であったということであります。  こういった地方の反対、国のパートナーともいうべき地方の反対を押し切ってなされたということに対して、いかに財政難と言っても、本当に地方が理解をするであろうか、私は極めて疑問であるというふうに思います。こういったいわゆる財政措置をしなければならなかった総理として、やはり地方に対する弁明といいますか、反省といいますか、そういったお気持ちというものがあるのかないのか、お聞かせいただきたいと思います。
  143. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 地方に対しましていろいろ御迷惑をおかけしておりますことは、大変恐縮に存じております。地方も財政的に非常に苦しい折でもあり、また、国はそれ以上に苦しいと我々は考えておりまして、この際、中央、地方は車の両輪でございますから、両方でよく話し合って、そして両方仲よく仕事を達成できるように、今後とも協調してまいりたいと思う次第でございます。
  144. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そこで、この措置は一年限りの緊急避難的な措置である、こういうことでありますね。今総理は、国と地方とは車の両輪である、こうおっしゃいました。この一年限りの措置ということにつきまして三省の大臣による覚書があって、そしてこの一年以内に役割分担ですとか費用負担のあり方ですとかといったものを検討していこう、こういうことであるわけでありますが、自治大臣等々は、一年限りの措置だから、私はやむを得ず、本当は反対だったけれどもそうなりましたというような答弁であったわけでありますが、やはり一年限りの措置であるかどうか、これは本当に今後の推移を見なければわかりませんし、疑問がある、私はこういうふうに思うわけであります。  そこで自治大臣にお尋ねしますが、あなたは、これは本当に六十年度一年限りの措置である、こんなふうに確信していらっしゃいますか、どうですか。
  145. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 私は地方行政でもたびたび申し上げておりますが、今度の措置は一年限りの措置ということで、その間に六十一年のことを検討するという約束でございますので、あくまでも一年限りと考えております。
  146. 柴田弘

    柴田(弘)委員 では大蔵大臣、今自治大臣が一年限りの措置とおっしゃいましたが、大蔵大臣も一年限りの措置であるというふうにお考えになっていらっしゃいますか、どうでしょうか。
  147. 竹下登

    竹下国務大臣 これは今古屋自治大臣からお答えありましたとおり、六十年度一年限りの暫定措置である、六十一年度以降の問題については今後相談する、そういう措置であります。
  148. 柴田弘

    柴田(弘)委員 六十一年度以降については相談するということであるわけであります。この覚書を見ましても、確かに「この措置は、昭和六十年度における暫定措置とする。」と書いてありますが、六十一年度は五十九年度並みにもとに戻す、こういうふうには書いてなくて、相談する内容が二項目目に書いてありますが、「昭和六十一年度以降の補助率のあり方については、国と地方の間の役割分担・費用負担見直し等とともに、政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする。」こういうふうにありますね。これは大蔵大臣、一年限りの措置ということは、当然六十一年度にはもとに戻すことだ、こういう理解だと思います。それは自治大臣見解としても私はそうだと思いますね。だから緊急避難的な暫定措置としてやむを得ず了解したんだと思うのです。  ところが、この一年間にいろいろとそういったことを検討します、そうすれば補助のあり方が、一割カットがやはり正しかったなということになるかもわかりませんよ。あるいは一割五分にしよう、あるいは二割、こういうことになるかもしれません。あるいはまたもとに戻すのが本当だということになるかもしれません。はっきりとこれは一年限りの暫定措置ということは言えないと思います。しかも「財政の中期展望」を見ましても、六十一年度は三兆七千三百億円の要調整額が出ている。私はこの補助金の一律カットというのは恒久的な措置として、今後の六十一年度以降の予算編成においてやはり継続を避けて通れないのじゃないか、こんなふうに見ているわけでありますけれども、どうなんですか。これは大事なととろですので、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  149. 竹下登

    竹下国務大臣 なかんずく社会保障関係予算における補助率の問題についていろいろ議論をいたしまして、そして私どもは今年度は、さればおおむね一割カットということが適切であろうという内閣一体の責任でお願いをすることにいたしました。  その後の問題は今おっしゃいますとおりで、それこそ可能性からしますならば、まずどうなるだろうということではございません。とにかくまず政府部内で、いつからどのような形で始めるかということをまさに検討中でございますけれども、相談をして決めていこうということでありますので、初めから一つの予見を持ってその相談に臨むという性格のものではなかろうというふうに思っておるわけであります。ただ、柴田さんのおっしゃいます議論というものは、私どもとしても十分参考にさせていただきたい議論であるというふうには受けとめさせていただいたわけであります。
  150. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そこで総理、今お聞きのように、自治大臣はやはり六十一年度はもとに戻そう、そして一年限りの暫定措置ということで渋々了解をした。ところが、覚書をだれが見ましても、こう書いてある以上は、もとに戻すと書いてありませんから、役割分担なり費用負担のあり方というのを検討すれば、六十一年度以降というのはどうなるかわからないと私は思う。むしろ車の両輪だから、国の財政難、地方は財政が好転してきたんだから協力してくれ、こういうことで六十一年度予算編成のまた一番大きな問題として出てくると私は思います。やはり継続は避けて通れないのじゃないか、こんなふうなことを私は考えているわけであります。今大蔵大臣から答弁があったんですが、この調整というのをどう果たしていくのか、総理としてのお考えをお聞きしたいと思います。
  151. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは昭和六十年度一年の仕事として御審議願っておるところでございますが、覚書の線に沿いまして、六十一年度以降につきましてはよく話し合ってもらいたい、そう思っております。     〔堀之内委員長代理退席、熊谷委員長代     理着席〕
  152. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それで総理、これはやはり政府部内だけで結論を出すものではなくて――一番の問題は恐らく三省の覚書ということなんですから、三大臣でやられると思います。政府部内だけの結論を出してしまうんではなくて、地方自治体意見を十分に聞いていただきたいと思います。地方は一律カットには反対でありますけれども、例えば国、地方の事務事業の廃止とか縮減あるいはまた補助対象のいわゆる見直しとか補助金整理、統合メニュー化ということには賛成している部分もあるわけですよ。やはり国と地方の信頼関係を大事にしていくという上には、地方自治体関係者の意見も十分に聞いていただきたいと思います。  もちろん第一段階は、結論を出すのは各省の概算要求までが一番いいかもしれませんが、年末までの予算編成にきちっと間に合わせればいいわけでありますから、私は十分そういう意見を聞く場はあるかと思うのですね。そういった点は何らか協議会なり検討機関を三省で設置されるのですが、その中へ自治体関係者の代表も入れていこう、こういったことをぜひお願いをしたいわけであります。十分に意見を聞いていくということをお願いしたいんですが、総理としてどうでしょうか。
  153. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 一年間かけて検討することになっておりますけれども、その検討機関の設置の方法につきましては、各省間で現在詰めておるところでございます。その際には、地方団体の代表の御意見は十分に聞けるような機関にいたしたいと考えておるところでございます。
  154. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それから厚生大臣にもお聞きしておきますけれども、先ほど来議論しておりますように、生活保護費の問題がありますよね。これは政府だけで結論を出してしまうのではなくて、やはり社会保障制度審議会等の意見も聞かなければいけない、あるいは民間のそういった関係者の意見も聞かなければならないのですね。そういった考え方はあるのですか。全然政府だけでやってしまうのですか。これはどうですか。
  155. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 社会福祉の面で広範な影響がある問題でございますので、広く御意見を承りたいと思います。
  156. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そこで、大蔵大臣補助金削減政策といいますか、やはり私はこの機会に、これは本当に国の財政という立場を考えて御提案を申し上げるわけでありますけれども、先ほど来申しておりますように、財政再建を進めていく場合には、補助金削減の継続というのはこれは必要であろう、避けて通れないであろう、こう思います。ただ一律カットは反対なんですよ。でありますから、六十一年度予算も厳しいマイナスシーリングである、緊縮財政路線であるわけでありますけれども、これはこういったことで地方自治体意見もよく聞いて、本当にだれが見てもなるほどなというような、いわゆる行政改革とそれに伴う補助金削減計画というものも、予算編成の時点においてはきちっとしていただくのが本当じゃないか、そのための検討だ、こう私は思うのですよね。そこら辺まで、ただ一律カットという問題をどうこうするだけでなくて、補助金政策のあり方を一体どうするのだという、そういった大きな大義名分を掲げた検討に入っていかなければいけない、こういうふうに私は思っているのですが、どうですか。
  157. 竹下登

    竹下国務大臣 これは御説のとおりであろうと思っております。  なるほど我々も、今おっしゃいますように、いわゆる補助率の一割カットというのは数字があって哲学がないじゃないか、こういう御議論もあろうかと思っております。それを踏まえながら種々議論をした結果、ことしのところはまさに暫定措置として、費用負担のあり方で合意に達したわけですから、今後一年間の検討課題に際しましては、当然のこととして国、地方の役割分担、費用負担のあり方ということになりますならば、さらに広範な議論をして、今の財政改革に対して国、地方の担うべき役割等々も念頭に置きながら議論を進めていくという御提言には、私どもは賛成です。
  158. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そこで、私はこの後に何が来るかということを心配しておるわけであります。これは総理にぜひともお聞きしたいのでありますが、地方財政好転論というのは、恐らく総理としても余り信用していらっしゃらないと思います。五十数兆円の借金を今抱えている。ところが、大蔵省部内には、私はあるかと思いますね。やはり一律カットは当然である、でき得ればその後には、今財界等が言っておりますが、地方交付税の税率の引き下げというものをやはりやるべきじゃないかという意見もある。地方交付税法の第一条の精神をどうその人たちは読み取っているかということが極めて疑問である。これは補助率一割カットどころの騒ぎじゃないと思う。大問題です。恐らく総理には三二%の交付税率引き下げという考え方はない、こういうふうに私は確信をしていますが、この辺はひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。どうでしょう。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 別にそんなことを今考えておりません。ただ、一般的に中央と地方の借金の累積額、この利子の支払い、こういうことを見ると、国の方は負担が多い。また給与を見ますと、ラスパイレスを見れば一〇五・九ですか、地方の方がまだいい場所もある、平均的にはいい、そういう数字になっています。まずいところもありますけれども、場所によっては一二八というところもまだ残っていると聞いております。そういう点を見ますと、そういう市町村等においてはよほど行革もやっていただきたいと考えざるを得ない点があります。
  160. 柴田弘

    柴田(弘)委員 どうも玉虫色の答弁でございますが、大蔵大臣はどうですか、今の問題は。そこまで踏み込まれないと思いますか、どうでしょうね。
  161. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる交付税率の問題等について議論がある前提として考えますならば、いわば交付税そのものは所得税、法人税、酒税の三二%ということになりますと、普通の経済の名目成長率に対する国税全般における租税弾性値よりも幾らか弾性値が上だというようなことからすれば、中長期な展望を見た場合に、そこにアンバランスが生じてくるではないか、こういうような議論のあるところでございますが、今現にこれに手をつけるということは、これは大変な問題でございますので、慎重の上にも慎重であらなければならないでございましょうし、今総理がおっしゃったように、今そういうことを考えていないとおっしゃるお答えでもって尽きるのではなかろうかというふうに考えます。
  162. 柴田弘

    柴田(弘)委員 今度はちょっと観点を変えまして、今回のカット分の財政措置の問題についていろいろお聞きをしていきたいと思うのです。  それで、このカット分、いわゆる地方負担分五千八百億円、これは地方交付税の増額、建設地方債の増発というものによって完全に補てんをして、地方公共団体の円滑な財政運営が図られるように万全の措置を講ずる、こういうことになっておるわけであります。ところがこれは、六十年度は確かに地方交付税の特例加算一千億、それからあと四千八百億円は建設地方債を発行して、地方公共団体の予算編成が円滑にいくように図られている。しからば六十一年度以降はどうかというと、これがきちっと地方交付税等々で補てんされるか、まだ極めて不透明でないかというふうに思います。  そこでお聞きしたいのでありますが、経常経費分の一千億について、六十六年度以降交付税で精算することとして、国の財政措置を見送りにしておりますね。つまり、これは一年間かかって大蔵省と自治省と一遍検討しましょう、はっきり決まっていないわけでありまして、玉虫色の結論であります。カットをもとへ戻すか戻さないかという問題もありますが、やはり財政措置は先送りして不透明であるということには変わりがない。大蔵大臣にお聞きしたいのですが、この一千億、きちっと交付税で精算するわけでありますか。
  163. 平澤貞昭

    平澤政府委員 この一千億につきましては、大蔵大臣、自治大臣の覚書がございまして、今後一年間検討した結果を踏まえて、六十六年度精算に当たってどうするかを決めようじゃないかということになっております。
  164. 柴田弘

    柴田(弘)委員 今御答弁がありましたように、はっきり決まっていないわけであります。一年間かかって検討しましょう、こういうことですね。  それからもう一つ、投資的経費分の二千億については臨時財政特例債を発行し、その元利償還の二分の一のみ国庫が負担をすることとしている。これはいいですね。ところが、残りの元利償還の二分の一は、交付税を増額することなく、現行交付税総額の枠内で対応する仕組みをとろうとしておるわけでありますが、やはりこれは交付税総額の実質減につながってくる。自前の交付税で、三二%の枠内でやっちゃうということでありますから、地方自治体にしてみれば、自前の交付税で負担をするということになるわけでありますね。だれかがおっしゃっておりましたが、タコが自分の足を食べる、こういうことになるわけであります。それから、同じように投資的経費分の一千二百億円については建設地方債を増発し、その元利償還金については現行交付税総額の枠内で対応する仕組みをとろうとしているということ、やはりこれも交付税総額の実質減につながるわけであります。  それからいま一つ、経常経費分の六百億円、不交付団体が増発する建設地方債で、結果的にはこの元利償還は不交付団体の一般財源負担することになって、不交付団体に対する国の負担転嫁が直接及んでいるわけであります。でありますから、地方債で完全に補てんしますよ、こう言われても、地方債は借金であり、地方財政のしわ寄せには変わりはないわけでありまして、このために財政基盤の弱い自治体、これは削減分を穴埋めするために、その単独事業としての公共サービスの縮減あるいは廃止につながりかねないわけであります。国民へのしわ寄せも避けられない、こういうふうに思います。こうした現実、結局合計三千八百億円になりますが、これは先ほど来申しておりますように、自治体が自前の地方交付税で負担することに、なるわけであります。  地方自治体事務の執行及び財政運営に支障を生ずることのないような財政金融上の万全の措置を講ずる、こう言いましても、やはりその実体というものは国の負担の地方転嫁以外の何物でもない、こんなふうに私は断言をしたいわけであります。これは自治大臣、どうですか。
  165. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 ただいまのお話で、五千八百億の財源のうちで一千億は交付税で上積みし、それからあと四千八百億は建設地方債で補うとなっております。つまり経常的経費を見ますと、一千億交付税、あと一千六百億を建設地方債ということになっておりますが、その一千億につきましては、先ほど財政局長が答弁しましたように、一年間の検討によってどうなるか、それで必要によっては六十六年事業交付税に加算をすることあるべしということで、ことしの一年間の社会保障関係の交渉の経緯によって、自治省と大蔵省でその調整を決めることになっております。  それから六百億の問題につきましては、先ほどから言っておりますが、地方財政の基準額には計上してございません。では、そうかといって交付税は不交付団体には行かないことになっておりますので、これはその交付税の行かない県、不交付団体の地方財源によらなければならぬ。それから、あとの投資的経費のうちで二千億の問題は、特例債と同じように元金の半分を交付税で見る、それから、あとの千二百億につきましては、後年度の地方債の償還につきまして、毎年度の地方財政計画からいって財源措置を講じておるような次第でございます。
  166. 柴田弘

    柴田(弘)委員 総理、どうぞ食事で退席してください。  そのように御答弁をいただいたわけでありますが、交付税の措置というのは三二%の枠内でしょう。カットした分は別に特別交付税のような形で交付しないわけでしょう。交付税の枠内でやりなさい、だったらほかの事業が当然締め出されてくるわけなんですよ、そうでしょう。私はそのことを申しておったわけでありまして、確かに六十年度は一千億の特例加算の交付税と四千八百億円の地方債でまあ何とかいいわけです。六十一年度以降の地方自治体が地方債を償還するときに、当然いわゆる自前の交付税で負担をしていくことになるわけでありますから、やはりそれだけ自分のタコ足を食うことになりまして、そして単独事業が縮減をされたりあるいは廃止していかなければならない、こういった事態になりますよということを私は申し上げているわけであります。その点、納得していただければいいわけであります。  そこで、今回の一律カットは、財政力の強いところも弱いところも同じように一律カットしてしまった、そこに私は問題があろうかと思います。それで大臣、高率補助金の引き下げによって、その補助金にかかわる裏負担の増加というのは、地方としてはやはり一般財源によってやらなければならぬでしょう。特に産炭地の生活保護世帯が多いところですとかあるいは過疎地域ですとか辺地とか離島とか、そういったところを抱えているいわゆる財政力の弱い自治体に対して、何らかの措置というものをされるべきではないか、こうした特殊性というものを考慮して、今後のそういった地域の自治体の財政状況を考えた財政措置も十分に配慮して考えていかなければいけないのじゃないかという考え方を持っております。  そこで、この問題はこれから出てきますから、自治省としても約三千三百ある自治体に対して、よく自治体の意見も聞き、調査もして、そういった財政力の弱い自治体に対する何らかの財政的な対応措置というものも、これから十分に考えていっていただかなければならぬのじゃないか、こんなふうな考え方をいたしているわけでありますが、いかがでしょうか。
  167. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 お話しのように、財政力の乏しい市町村におきましていろいろな影響があると思いますが、辺地あるいは過疎というような地域におきましては、それぞれの、国土庁等においての費用もございますが、私の方では辺地債あるいは過疎債というものによりまして、こういう措置をしてまいりたいと思います。  それから、炭鉱地帯の市なんかで社会保障の問題は非常に大きい問題、これは私が答えるべきであるかどうかわかりませんが、総額で二百億のそういう金が、厚生省の社会保障の方に、私どもと別途に行っておるようでございますので、そういうものの重点配分というものも当然考えてもらえることと私は思っております。
  168. 柴田弘

    柴田(弘)委員 大蔵大臣、今の問題はどうでしょうか。
  169. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和五十三年でございましたか、千人当たりで福岡県が四十・一人、それから岐阜県が四人、いわば十倍。それで福岡県が一人当たり県民所得が上から五番、岐阜県が当時二十七番。ところが最近のものを見ますと、福岡はさらにその比率がわずかでございますがふえて、そうして今度はおたくの愛知県が四人を割って全国一低い、こういう状態になっておるのを私も非常に興味を持って眺めておりますが、それにはそれなりの事情がございましょう、平均的所得が高いにいたしましても。したがって、それらに対応する措置は、自治省等とも十分協議すべき課題だと私も認識をいたしております。
  170. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それから自治大臣もう一つ交付税の不交付団体に対する措置ですね。不交付団体だから、財政が豊かだからいいんです、今回の一律カット。これはもろにかぶってくるわけです。起債は認められるのですけれども、全部自前の地方税なり自前の一般財源でその仕事はやらなければならない。ところが、今回のこの補助金というのは、名前は補助金だけれども、これは負担金なんです。社会保障、生活保護費等々あるいは公共事業補助金。これは地方財政法に言われている負担金に属するものが多いわけなんです。これは法律上、国と地方の共同責任に基づいて、国の負担分として国が割り動的に支出すべき義務を負うという性格のものであるわけなんです。でありますから、今まで交付団体であろうが不交付団体であろうが、ひとしくこういった補助金が支出されてきたわけでしょう。これは補助率の引き下げによる負担増加に対してどういうような対応措置をとっていくかという点についても、そういう趣旨であるならば変わらないというふうに思うわけであります。  しかも、交付税を交付するか不交付がというのは、多分に交付税総額の配分方法という技術的操作の結果という色彩が濃く、不交付だから財政状況がよい、富裕団体であるということは言えないというふうに私は考えております。だから、交付団体と同じような財源措置をしなさいというのは無理かもしれませんが、何らかの措置を今後検討し、よく実情を調査し、こういった地方の不交付団体の意見も聞きながらやっていかなければ、今後、行革だ行革だといって補助金整理して、こうやろうという場合に、結局不交付団体は補助金がカットされるということになって、不交付団体の補助金分の一般財源振りかえに協力が得られない、支障を来してくるおそれがあるのではないか、こういうことであります。激変緩和措置という言葉が妥当かどうかわかりませんが、不交付団体についてはいいよということでなくて、自治省で検討を開始していただきたい。何らかの措置がとれないかどうか、当該団体の意見もよく聞いてやっていくべきじゃないかというふうに考えるのですが、どうですか。     〔熊谷委員長代理退席、越智委員長着席〕
  171. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 御指摘のように、今回の補助率カットに伴います地方負担の増加につきましては、交付、不交付に分かれているわけでございますが、私どもとしましては、交付団体、不交付団体を問わず、その団体の負担が増加する部分は基準財政需要額に増額算入するわけでございます。ただ、不交付団体につきましては、六十年度の場合、経常経費等に係る国庫補助負担率の引き下げによる地方負担の増加額に対しては、交付税の基準財政需要額に算入しました措置が現実に財源にならない。こういうことから、地方債の増発で対処することにいたしているわけでございます。  なお、この地方債の後年度負担の問題につきましては、各年度におきます地方財政計画の策定を通じまして、適切な財源措置をしてまいる所存でございます。
  172. 柴田弘

    柴田(弘)委員 今財政局長から答弁がありましたが、自治大臣もそういった考えですか、どうですか。
  173. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 御承知のように、不交付団体につきましては基準財政需要額に、入れておりますが、現実には交付税が行かないことになっておりますので、地方財源によらざるを得ないわけでありますが、そういう場合には、地方債その他を特別に考えまして措置をしていきたいと思っております。
  174. 柴田弘

    柴田(弘)委員 それでは大蔵大臣に質問していざます。  六十年度予算も参議院を通過したわけでありますが、六十一年度予算編成でもやはり緊縮財政路線、四年間続けてのマイナスシーリングは続けざるを得ないのですか、どうでしょうか。
  175. 竹下登

    竹下国務大臣 まだ六十年度予算が成立したばかりでございますので、六十一年度予算編成方針、なかんずく概算要求時にいかなる対応をするかということを決めたわけではございません。しかしながら、私どもとして客観情勢を勘案してみます場合に、勢い厳しいものにならざるを得ないというふうな認識は持たざるを得ないと思っておるところであります。
  176. 柴田弘

    柴田(弘)委員 そこで、今までとってまいりました予算編成の手法というもの、今回の補助金の一律カットにしても、役割分担、費用負担も何の検討もしないで、国が財政難ですから一律カットだということで、国が当然負担しなければならないような経費あるいは政策的な経費も、一律に各省横並びでシーリングをかけるということです。何とかこういった予算編成のやり方をもう一遍検討してみてはどうか、一工夫あっていいのじゃないかと思います。シーリングという名分のもとで、本来合理化されなければならない分野のむだが温存され、資源の最適配分という財政目的が忘れられている。  今回、経常経費二千六百億円をカットした。しかも、生活保護費をカットした。カットしたこの生活保護費以上に大事な施策、経費があるかという疑問を私、正直に言って持ったのです。一体カットした分はどこへ行ってしまったんだろうか。私は財政の素人ですから、そんなふうに思ったのです。恐らく国民の皆さんも率直にそう思いますよ。こういった生活保護費を一律カットしてしまって、一体それはどこへ行ってしまったのか。国が財政難、財政難と言うが、果たしてそれ以上の大事な経費があるかどうか。だから、私が先ほど申しましたように、補助金の削減政策は自治体の意見をよく聞いてしっかりとやっていただきたい。同時に、一節カットでありますが、シーリングをかけて一律にどんな経費も一切横並びでやってしまう予算編成のやり方は、これから考えていただいていいのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  177. 竹下登

    竹下国務大臣 だれしも考える一つのポイントだと思うのであります。言ってみれば、予算編成が資源の再配分あるいは所得の再配分という機能を持つ限りにおいては、その優先順位が考えられてしかるべきだという御議論は、私もちょうだいできる御議論だと思っております。  しかし、このことをいざ実行に移すということになりますと、各省庁それぞれの歴史的経過の中で積み上げられた予算でありますので、財政状態が厳しい場合には、それぞれの区分をいたしまして、いわゆる後年度負担で既に債務負担行為の中に認められ、それを現金化しなければならない分野とか人件費とか、そうしたものを引いた後のものにつきましては、勢い経常経費で一〇%とか投資的経費で五%とかというように、各省それぞれの感覚で優先順位をお決めいただいて、そして予算編成作業に入っていくというのが、現実問題として今日まで続けられてきたわけであります。しかし、そのおさまりぐあいによりまして、それぞれの予算についての伸び率等が、結局我が国の予算の単年度主義の、年度年度における優先順位としてそれぞれ決定されることになっておるというのが実情でございますが、今おっしゃいましたとおり、絶えず総合した資源の再配分ということから考えまして、やはり政策の優先順位ということは念頭に置いて当たらなければならない課題であると理解しております。
  178. 柴田弘

    柴田(弘)委員 わかりました。  最後に、総理もお戻りになりましたので、貿易摩擦問題、あと五分ほどありますからお聞きしていきたいのですが、いよいよあす対外経済対策を四分野を中心にして政府が発表される。これで多少の鎮静化というのはあるにしても、これによって貿易摩擦というのは解消されたということは言えない。むしろこれからこれを発端にして長期化するであろうし、またいろいろな分野にも波及をしていくであろうと私は心配しております。こういった見通しについてはどうお考えになっているのか。果たして今回のこの対策によって、アメリカ側が考えているような百億ドルの対日貿易赤字というのは数字的に減少するのか。恐らくできないと思いますが、その辺のところもあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  179. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 貿易摩擦問題の解消につきましては、政府といたしましては誠意を持って全力を注いで努力もし、国民の御理解もいただきたいと思っております。また、野党の各党の皆さんの御協力もいただくように努力したいと思っております。  ただ、やはり日本の輸出の黒字という問題については、かなり日本の生産性が高い、日本の品物が優秀である、納期が早いあるいはアフターケアが非常に親切で行き届いておる、そういうような長所を持っておる面もございまして、構造的要因もあると思うのであります。それだけに、この問題を解決するには若干時間がかかると思うのであります。  しかし、当面、理屈はいずれにせよ、約三百七十億ドルに近いと言われているアメリカの出超あるいはそのほかの面等も考えてみますと、現実問題としてこれだけのアンバランスを是正する努力をしなければなりませんし、また外国からは日本の市場の閉鎖性あるいは不透明性あるいは内外差別性等々が指摘されておりまして、全部は当たらないといえども、若干そういう面がなきにしもあらずの面もあるわけでありますから、そういう点は思い切ってフェアにやって、そして日本がアンフェアな国でない、そういうことを現実に見せる必要があると思っております。そういう面におきましては、今後とも政府は持続的に粘り強く、誠意を持って解決してまいりたいと思っております。
  180. 柴田弘

    柴田(弘)委員 もう最後の質問をいたしますが、今総理がおっしゃったように粘り強く持続的にやっていく、当然ですね。だから、私は今回の対外経済対策を発表したからといって直ちにすべてが終わったわけじゃない、長期的にあるいはまた範囲も拡大をしていくであろう。  そこで、この貿易摩擦は構造的なものでありますが、やはり私は、一つは今政府が積極的に行ってみえる、市場開放についての積極的な努力をしておるということは、これは大事である。非常に私も敬意を表しておるわけでありますが、二つ目には、この構造的な問題もありますが、今の為替問題というものもある。これはアメリカの高金利だけの責任じゃない、日本の貯蓄過剰という問題も僕はあるかと思います。こういった為替対策ということで、アメリカと協調して積極的に今の円安・ドル高の問題というものを是正していく努力もしていかなければならない。そして三つ目には、政府筋の中にもお話がありますが、幾ら市場開放で窓口を広げても、国内需要というものが停滞をしてはだめである。やはりこの減税なりあるいは民間活力の増大なりを通した、いわゆる積極的な内需拡大策というものも展開をしていかなければならない。私はいろんな対策があろうかと思いますが、やっぱりこの三つが三位一体となって、どこまで日本が誠意を持って行っていくかという評価が、貿易摩擦の解消に一歩一歩つながってくる問題ではないかというふうに思うわけであります。  この三つの点について最後に総理の御所見をお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  181. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり自由貿易を堅持していくということは、日本の発展のためにも最大限大事なことでありますし、万一世界が保護貿易の方向に走るというようなことになると、一九三〇年代の悲劇を再び招来するという危険性もなきにしもあらずであります。そういう意味で、大局的に日本が今後高い生活水準を持って発展していくというためには、どんなことがあっても自由貿易を推進するという国是を推進していく必要があると思うのです。そういうためには、自分でなすべきことも行っていくということが大事なのでありまして、そういう点につきましては、国民の皆様方に多少難さを強いるという面が出てこないとも限りませんが、それにはそれで十分なる対策を行いつつ、そのような大局に向かった日本の繁栄、二十一世紀に向かっての子孫のための措置を我々としてはやっておきたい、そう考えておる次第であります。(柴田(弘)委員「三つの……」と呼ぶ)  日本の長所につきましては、やはり拡大均衡というのが貿易の理想でございまして、その長所を矯める必要はないと思うのであります。長所は長所としてやっぱり堅持していく必要があると思います。しかし、輸入を促進して均衡を保つということもまた非常に大事であります。  貯蓄率とか、そのほか生産性とか、日本の長所というものは幾つもございますが、それらはそれらとして堅持しつつ、今おっしゃるような内需の拡大とかそのほかの面も講じつつ、今のような調整を行っていく必要があると考えております。
  182. 柴田弘

    柴田(弘)委員 じゃ終わります。
  183. 越智伊平

    越智委員長 沼川洋一君。
  184. 沼川洋一

    ○沼川委員 非常に短い持ち時間でございますので、答弁はぜひ総理にお願いしたいと思います。御了承ください。  まず総理にお伺いしたいのが、憲法二十五条には、御承知のとおり国民の生存権、国の社会的使命が明記されておるわけでございまして、 「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」このようにございます。今日長期的な低経済成長下における国の財政難あるいは行政改革を進めなければならぬ、そういった一つの流れの中で、ややもするとこの社会保障とか社会福祉という問題が後退することを心配するわけでございますが、また反面、時代に沿って見直しをすべきだ、こういう意見もあるわけでございます。  総理は、この国の果たすべき使命であるところの社会保障あるいは社会福祉、こういうものに対してどういうお考えをお持ちか、ぜひひとつお伺いいたしたいと思います。
  185. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法二十五条でございましたか、最低限の国民生活の保障の条項がございますが、やはりあれは国の大きな、基本的な政策でございまして、その線に沿って政府はできるだけ努力をしていかなければならない、そう考えております。
  186. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間がございませんのでこの論議を進めようとは思いませんが、特に今回審議をされておりますこの補助金の一括削減の問題でございますけれども、国の負担が二分の一を超える高率の補助金補助率を一割カットする、こういうことですが、特にこの中に、ただいまもちょっと問題にしました生活保護費など社会保障関係補助金が十九件含まれております。その額が二千百七十七億円と大半を占めておることは御承知のとおりでございますけれども、特にこの中で生活保護法関係が千五百十億、これは七割以上を占めておるわけでございます。これが一律にカットされるということは、言ってみればこれはもう社会保障。制度の根幹を揺るがすようなものじゃないか、このように心配をするわけでございます。特にこういった根本的な制度の見直しを十分論議しないまま、補助率をいわば引き下げるということは、まさに筋違いでございまして、一口に言うと国の責任を放棄したのじゃないか、そして地方への負担転嫁だ、このように批判されてもいたし方ないじゃないか、このように考えますが、いかがでしょう。
  187. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の措置は、国民の皆様一人一人に対しては直接の影響はないのでありまして、前と同じであります。ただ、国と地方との負担割合が変わるということでございますので、憲法に明示された福祉への国家の責任と理想というものはいささかも変わっておるものではないと考えております。
  188. 沼川洋一

    ○沼川委員 確かにただいま御説明のとおり、今まで八対二という関係が七対三になった。言ってみれば公的経費は少しも変わりませんし、受給者にとっても変わらないという御説明は一応わかるわけでございますけれども、私に言わせれば、国サイドから考えた、机上の計算はそうでしょうけれども、これは国の機関委任事務となって、実施機関は自治体でございますが、自治体といっても三千三百もあるわけでございます。自治体個々の財政事情は、それぞれいろいろな難しい問題を抱えております。全体としてとらえるならば、説明の上からは確かに総理がおっしゃるとおりだろうと思います。  そこで、一つの具体的例としてお尋ねしたいわけでございますけれども、結局、御承知のように、この生活保護の自治体における実施機関は大体福祉事務所がやっておるわけでございます。全体で千百七十二カ所の福祉事務所があるというわけでございますが、この中でほとんど、八百三十一が市にございまして、七〇%が市であるということでもありますが、特に全国で現在六百四十八ある市を眺めてみますと、人口七万人以下の市が三百七十一ございます。これは全体の五七・三%に当たるわけです。いわば過半数を超えておるわけでございますけれども、これらの多くの市が、言ってみれば農村地域に所在している場合が多くて、財政的に見て極めて厳しいところが多いわけでございます。さらに人口四万人未満の市が二百四十ございまして、これは全体の二五%でございますけれども、これらの市を眺めてみますとこれはほとんど過疎地域です。したがって、財政的になお一層厳しい、そういった事情を抱えておる、こういう問題がございます。  御承知かと思いますけれども、現在でさえ自主財源の限界から財政運営に非常に苦慮しているのが自治体の実態でございますけれども、生活保護費がいわば義務費であるということから、財源を優先的に取り扱います結果、他の事業が実施不能に近いという状況を抱えておるわけでございます。今回それを一割カットするということになりますと、国の責務であるところのこういった生活保護行政の遂行という面でも、よくなることはなくても、今以上後退するという心配があるわけでございます。  総理は、そういった地方の新たな負担分については地方交付金等で見る、だから心配ないということをおっしゃっておるわけでございますけれども、実際にそういう事情の中で、例えば国が地方交付金で見てくれる、言ってみれば一般財源を強化して補てんしてあげようという考え方ですから、恐らく国でもそういう方向に使いなさいという指導はなさるでしょうけれども地方自治体にとってみれば一般財源であるということで、今も申し上げたように、地方単独でやらなければならぬ事業がたくさんございます。自主財源は少ない。いろいろな面で、むしろ気持ちとしてはそういう方向にいわば使おうと思えば使えるお金でもございます。ただでさえこういった生活保護が義務負担ということで重荷になっている中で一割カットする、交付税で見る、一応つじつまは合っているようですけれども、やはり結果的には行政の後退を意味する、そういう結果になるのじゃないか。ですから、総理がおっしゃるように、どこにも影響を与えないという論法は、個々の自治体を見た場合にはこれは当たらないのじゃないか。そうなりますと、これは当然憲法で保障されたところの国の権利の放棄だ、こう言われるのじゃないかと実は私思うわけです。  大体、もともとこの生活保護費等は、言ってみれば憲法二十五条の理念をそのまま具現したという、そういう意味でこれは特徴のある一つ法律でもありますし、一割削減ということによって後退を余儀なくされるような方向に進むということは問題であろうかと思います。したがいまして、こういったいわば率を変更する、こういう重要な問題が、ただ単に国の予算編成の事情だけが先行して、法の遵守といいますか、こういった法律がないがしろにされていくということを実は心配するわけです。少なくとも制度審とかいろんなものがあるわけですから、そこで十分意見を聞く、あるいはまた地方自治体意見を十分聞く、そういう手順が踏まれてすべき問題ではなかったかと思いますが、いかがでございましょうか。
  189. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、国民の皆様方直接直接に対する影響力はいささかもないように、我我は十分措置してまいるつもりであります。市町村の中ではお困りの市町村もあるでありましょうから、そういう市町村につきましても、よく自治省あるいは県等と提携いたしまして、そういうことにつきましては十分相談にも乗るし、そういうことが起きないように措置してまいるつもりでおります。  一般論といたしまして、今回の問題は国と地方との負担区分に関する問題で、国民の皆様方には直接影響を及ぼさないように、今後ともいろいろ、十分配慮してまいるつもりでおります。
  190. 沼川洋一

    ○沼川委員 一貫してそういうような御答弁、問題はない、またいろいろあってもいささかの迷惑もかけないようにするということでございますけれども、ぜひともひとつ国サイドからだけのとらえ方じゃなくて、三千三百ある自治体の財政事情、また生活保護の行政の実態が実際どうなっているのか、そういう流れをよく踏まえた上で措置する。やはりそれだけの国の責務としての重要な問題であると思いますがゆえに、あえてお尋ねしたわけでございます。  私の前に質問があったそうでございますけれども、臨調第一次答申ではそういう重要な、いわば憲法に保障された社会保障事務であるがゆえに外しております。しかしいつの間にか、何か臨調の第五次の答申においては聖域が外されたというような解釈が成り立っておるそうでございますけれども、ここでこの問題は論議しようとは思いませんが、ぜひひとつ当事者の土光さんにその辺をしかと伺った上、この問題は検討するだけの問題ではなかろうかとも思っております。  時間がございませんので、先へ進めたいと思います。  今回のこの補助金整理合理化の進め方についてでございますけれども、削減の理由として、国は、財政が厳しい、削減を実施するためには、一般歳出の約四割を占める補助金の徹底した整理合理化を積極的に進めていくことが不可欠である、こういったことを理由とされておりますが、率直に言いまして、私も補助金整理には大いに賛成でございます。ただ、その補助金の中身によるわけでございまして、その補助金によって行われる行政そのものが不必要であるか過大であるかというようなものに限るところに意味があるのではないかと思います。例えば、現在既に役割を終えた補助金あるいは効果が不明確な補助金、あるいは特定な対象を優遇する補助金などは当然撤廃すべきだ、そういう考え方を持っておるわけです。さらに、自治体の自主性を妨げ、膨大なむだを生んでいるような、こういう各省ばらばらな縦割りの補助金は、私は整理統合すべきだと思うわけです。  ただ、地方団体に対する補助金そのものを削減して、その行政を廃止するとかあるいは縮小するとか、そういうことでありますと、これは地方団体もその自己負担分だけ、いわば経費負担が減少するわけですから、これは財政面だけからいえば非常に結構なことです。ところが、今回の一律削減は、いわば行政分量は減らさずに従前どおりに行う、ただその率だけを切り下げる。こういうやり方は非常に問題であって、こういうやり方そのものは、一口に言いますとまさに地方に対する国の負担の押しつけ、このように言わざるを得ないのではないかと思います。  そこで、これは地方財政法の第二条第二項に、「地方公共団体に負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」こういう規定がございますが、まさにこの精神に反すると思いますし、さらに、同法の第十一条には、「国と地方公共団体とが負担すべき割合は、法律又は政令で定めなければならない。」こうされておるわけでもございます。要するに、地方財政の円滑な運営を保障するために、みだりに費用の負担割合を変更してはいけない、こういう一つの禁止規定でございますが、言ってみれば、今回の予算編成の都合でこういう一割カットをいわば強引に行うということは、まさにこれは国の地方への財政介入でありまして、地方自治法にも違反する、こういうふうに考えますけれども、いかがでございましょう。
  191. 土田栄作

    ○土田政府委員 お答え申し上げます。  昭和六十年度の予算におきましては、国の極めて厳しい財政状況にかんがみまして、昭和六十年度限りの暫定措置として国庫補助負担率の引き下げを行うことにしたわけでございますけれども、今回の場合は、ただいま御審議をいただいております補助金整理一括法の第六十条におきまして、対象となる地方団体に対して、事務事業の執行及び財政運営に支障を生ずることのないよう財政金融上の措置を講ずる旨を規定いたしまして、国会の御審議をお願いしているところでございます。  また、昭和六十年度の地方財政対策として、国庫補助負担率の引き下げに伴います地方負担の増加額五千八百億に対しましては、地方交付税の増額と建設地方債の増発により完全に補てんいたしまして、地方財政の運営に支障が生じないよう適切に対処しているものでございますので、私どもとしては、今回の措置地方財政法あるいは地方自治法に抵触するものではないというふうに考えている次第でございます。
  192. 沼川洋一

    ○沼川委員 総理に再度お伺いしたいと思いますが、国の予算編成上の都合、それと今申し上げましたように、地方自治法とかあるいは憲法第二十五条の一つの国の責務といいますか、こういった法を遵守しなければならぬという立場と、これはどちらを本当に遵守すべきものか、総理の御意見をお伺いしたいと思います。
  193. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算編成の都合等によって、地方自治法あるいは地方自治の本旨というようなものがじゅうりんされてはならないと考えております。
  194. 沼川洋一

    ○沼川委員 確かに、基本的には踏まえていらっしゃると思いますけれども、今回の処置は本年度限りということでございますが、しかし、今後たびたび予算編成の都合で法が軽視されるというようなことがありますと、これはまさしく国会軽視であるし、これは重要な問題だと思うのです。したがいまして、今後この問題を検討される際に、やはり制度審の意見を聞く、あるいは地方自治体意見を聞く、当然そういった関係機関の手順を踏んでこれは行うべきものではないか、こういう考え方をひとつぜひ根底に置いてやっていただきたいと思います。  時間が余りございませんので、最後に一言だけまた総理にお尋ねしたいと思いますが、総理はかつて講演の中で、臨調の作業について、あたかも最高裁判所の判決のごとく国民のすべてがこれに服するように持っていかなければならない、こういった講演をなさったことがございますが、どうも総理が意図されているその真意というのは、その裏には何か中央集権の体制を強化していこうというような意図があるように思えてならぬわけですけれども、この御発言はいかがでございましょうか。
  195. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、臨時行政調査会というものをつくっていただきまして、その答申を最大限尊重していこう、そういうような気持ちのあらわれをそういう意味で象徴的に申し上げたのでございまして、最高裁判所のような法的最高機関の判決の性格とはまるっきり違うものであると心得ております。  しかし、臨調答申の中にも地方の重視ということは盛られておりますし、また、現在既に行革審におきまして、機関委任事務とか許認可の権限移譲であるとか、その他中央と地方との調整の問題を地方の観点から推進しようというところも大いに作業をしているところで、その結果を見て、我我は最大限に尊重して実行したいと思っておるところであります。
  196. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間が参りましたので、最後に一言だけ申し上げて終わりたいと思います。  今臨調の問題が出てきましたけれども、確かに臨調で、行政の洗い直しの観点に地方への分権化を掲げてあります。また、国と地方の機能の分担のあり方で部会を設けていらっしゃいます。ところが、もう一つの柱であるところの、一つの観点である民間活力という問題と比べますと、その力こぶの入れ方が明らかに違うという感じを受けるわけです。民間重視と余りにも対照的ないわば地方軽視、そういう感じを非常に受けてならないわけでございます。これはかつて総理行政管理庁長官のときにいろいろと発想された、それがいわば土光臨調と言われる行革の方向だろうと思いますが、この国と地方の行政事務のあり方、また負担の問題は極めて重要な問題でございますので、「地方の時代」という言葉だけが先行して、何も実のないまま今日に至っている現状でもございますが、ぜひそういう面も考慮されまして、今回のこの一括法案等については撤回すべきが筋ではないか、私はこういうふうに考えております。  意見を最後に申し上げまして、終わりたいと思います。
  197. 越智伊平

    越智委員長 安倍基雄君。
  198. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いよいよ日米貿易摩擦対策があした発表ということになっております。この問題につきましては、既に今柴田委員からも質問がございましたし、大蔵委員会で我が党の米沢委員が、数日前に総理自身にいろいろ御質問したと思いますが、私は、この問題は今回の補助金カット法案と関連が非常に深いと思います。  時間が非常に短うございますので、簡潔に総理の御答弁をいただきたいのでございますけれども、第一に、いわゆる日米関心四品目についていろいろ譲歩しようと思っておる、特に国際競争力の弱い木材について、あるいは米側は紙パルプも入っているような感じを持っておるようでございますけれども、それを譲歩を行うつもりかどうか。最近また新聞によりますと、東南アジアからの広葉樹についても譲歩を行おうとしておるというぐあいに言っておりますけれども、こういったものについて譲歩を行うつもりであるかということが第一点でございます。  第二点は、今回譲歩を行っても、これから化学薬品とかあるいはアルミニウムとかいろいろ品目を選んで、次々と提出してくるというようなぐあいにも伝えられておりますけれども総理は、希望的観測ではなくて現実の動きとして、この四品目が一応けりがついたとしても、その後また新しい要求が来るものかどうかということをどうお考えになっておるか、この二点について質問したいと思います。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自由貿易の推進、それに伴う障害の打破ということは、我が政策の大きなテーマでございまして、今後とも引き続いて、この四品目が終わった後も、うまずたゆまず努力をしてまいりたい。ニューラウンドの推進ということも、我々は今提唱しておるところなのでございます。  それから、木材の問題でございますが、これはある程度林政の振興ということも考えつつ、ある期間的な段階の中で、段階的にこれを実行していきたい、そう考えております。
  200. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今回の貿易摩擦につきましては、例えばアメリカのワシントン・ポストあたりも、これは消費者のためになるという説をしてみたり、やはり米ドルのドル高の影響であるということを言ってみたり、フェルドスタインあたりもそのことを言っておるわけでございますけれども、こういった基本問題があるわけでございますし、それとの関連におきまして、それでは今度は農林水産大臣にお聞きしたいと思いますけれども、まとめて幾つかの問いをいたします。  まず、今回の譲歩によって合板等の輸入がふえると思われるかどうか、これが第一点。  二番目に、木材について譲歩した場合に、業界に対して援助資金をどのくらい出さなくちゃいけないかというのが第二点。  第三点、これから円ドル相場が逆転したときに、こういった援助資金がどのくらい要るということを想定されているかということでございます。  今総理が、何かいわば林業発展のために金が要るというお話でございますけれども、そういったことを含めまして、将来大体どのくらい金が要るものかどうかということをはっきりとお答え願いたいと思います。
  201. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 安倍先生にお答えします。  大体四つにわたる御質問じゃないかと思いまして、簡単にお答えしたいと思います。  今回の譲歩によって、合板等の輸入が増加するかどうかという問題でございますが、これは率直に言いますと、関税引き下げを行いましたら当然輸入木材製品が安くなる、競争力がふえてくる。他の諸要因、今先生が言った為替等の問題がございますが、一般的には輸入量はふえてくる、こういうふうに考えております。  それから第二番目には、業界に対して援助資金が必要であるということだと思いますが、実はこれは基本的に先生御存じのことでございますが、現在の森林・林業が置かれた厳しい現状を見ると、関税問題の対応に先立ちまして、単に合板業界の体質改善のみならず、中長期にわたりまして実は林産業、木材産業の対策を進める必要がある。したがって私は、関税問題は林業、木材産業が活力を取り戻した後にこの問題を考えるべきである、こう考えております。そういうことの中で、実は、じゃ、ということでございますが、いろいろな対策につきましては、現在鋭意検討中でございます。  それから、最後の御質問でございますが、円ドル相場が将来逆転した場合どうか、こういう御質問だと思います。私が先ほど申したことで、やや重複するかと思いますが、関税問題の対応に先立ちまして業界の体質改善を進める必要がある、したがって、関税問題はあくまでも林業、木材産業が活力を取り戻した後に対処すべき問題であると考えております。
  202. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 と申しますと、まず農林水産大臣は、どのくらい金がかかるかははっきりしないということが第一点でございまして、第二点は、農林水産大臣の立場としては、活力を取り戻した後に関税問題を論じるべきであるという御意見でございますね。間違いございませんか。  実は私、この前大蔵委員会で関税法の改正のときに提示したのでございますけれども、東京ラウンドが五十四年の四月に大体合意されました。それから比べますと、米ドルは一五%上がっているわけですね。これは一五%の関税が課せられたのと同じ効果を持っているわけです。となりますと、今ここで関税率を譲許しても、そうアメリカからの輸入が急増するとは思われない。これが第一点でございます。  それとともに、米ドルが高いときには関税は余りいじっては困る、もし逆転したときに非常に大きな問題が起こる。私は、かつて中国の財務局長をしておりましたが、そのときに円高がどんどん進行しまして、次々と造船業界も倒れ、あのときには永大産業という大きな合板メーカーも倒れたわけでございます。そのときは一円一円どうなるかということが非常な関心でございました。銀行あたりから、もうこれ以上支えられないけれどもどうだろうというような話がございました。私は、どうにか支えてくれないかということで、真夜中でも電話がかかってきた。そういったときに、いろんな企業を見捨てにゃいかぬのかという非常に苦しい思いをしたことがございます。円ドル相場が逆転したときに、恐らく倒産が相次ぐのではないかと思われるのでございます。  それとともに、第一次産業と申しますのはどのくらい金をかければいいのか、非常に問題がある。と申しますのは、これは中曽根総理によく聞いていただきたいのですけれども、大体、たくさん援助すれば、投資すれば、非常に生産力の伸びる部門と、そうでない部門があるわけでございます。林業なんかの場合には、非常に長期間の年月がかかりますし、どのくらいこれが、要するに生産力開発のために金が必要か、非常に難しい。その点、私は農林大臣にどのくらいお金が要るだろうかということを聞いたのでございますけれども、それがはっきりわからない。新聞紙上伝えるところによりますと、大体二、三千億ぐらい用意しなければいかぬのじゃないかというようなことを言っております。これは恐らく円ドル相場が逆転したらもっと要るかもしれない。  総理、今度のいわば補助金削減一括法案、まあ五千八百億節約できるかもしれぬ。しかし交付税などもいろいろ含めますと、最終的に三千億ぐらいどうにか節約できるかもしれぬ。それが一挙にして今度の譲許によって、それと同じくらいの額の補助金あるいは救済資金を出さなければいかぬかもしれない。木材の次には何が来る。アルミニウムが来る、化学薬品が来る。我々は何のために――私は公聴会に参りました。岩手県に行きまして、地方からの実情、非常に苦しい。さっきもいろいろ質問がございましたが、一年以上延長しては困るという話がございました。我々は三千億のいわば節約のためにこれだけ苦労しておる。対米協調も大切でございましょう。しかし何のために我々はこうやって審議をしているのか。あるいは三千億、五千億、そういった補助金が将来要るかもしれない。  この点、本当に私は中曽根総理、そして今回の取りまとめをなさっていらっしゃる河本対外経済大臣、このお二人に、こんなことでいいのだろうか、お聞きしたいと思うのでございます。いかがでございます。
  203. 河本敏夫

    ○河本(敏)国務大臣 確かに御指摘のような問題があるのですけれども、しかし一方、我が国が世界経済において占める立場、そして今、自由貿易体制をどう守っていくか、さらに来年からの新ラウンドを控えて大きな課題がございます。  そういうことで、林産物には確かに問題がございますが、ある程度の国内対策を考えながら市場開放を進めていこう、こういう基本方針のもとに、現在農林省が中心になられましていろいろ案をつくっておられる段階でございます。今、最終段階でございますので、あすじゅうには何らかの方向が決まる、このように考えております。
  204. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 河本長官が申されたとおりでございます。日本は何といっても自由貿易を国是とする国で、これで発展してきているわけでございますから、国際関係におきましても、そういう点で日本がアンフェアだと言われないように処置することが国家百年の大計であると思います。  しかし、片っ方におきましては、やはりこれで被害を受ける皆さん方に対しては十分なる措置をやる必要がありますし、長期的観点から生産性を上げるという、そういう構造的な問題も考えていかなければならぬ部面もございます。そういう点については十分注意をいたしまして、努力してまいるつもりでおります。
  205. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私が今ここで指摘しておりますのは、これからどのくらいお金がかかるかわからないというような状況のもとに、いわば市場開放も必要かもしれませんけれども、いわゆる補助金もしくは援助資金を出してまでも市場開放するという一つの前例をつくれば、これは次々と言ってくる。  私自身、フルブライトの留学生として二年半ばかりアメリカの大学院に行ったことがございますので、アメリカ人気質を私なりに知っているつもりでございます。その際に、こちらが本当に理屈があって粘り強く説得すれば、それを受け入れるフランクさがある。しかし、こちらが無原則にいわゆる妥協すると、かさにかかつて言ってくるわけでございます。  今度の場合に、総理、もし援助が必要である、補助金に類するものが必要であるというような品目につきまして市場開放すれば、この次は必ずアルミも言ってくる、化学製品も言ってくる。そういったことが重なったときにどのくらい補助金が必要になるか。我々は何のためにこの補助金一律カットをやっておるのか。本当の日米友好のためにも、主張すべきことは主張すべきであると私は考えております。まさに今回の日米貿易摩擦問題で、我々は岐路に立っておる。あしき先例をつくって、いわば無原則のままに、見通しのないままに譲歩していくのか、いやここは譲れないというかたい決意でいくか、その大きな岐路に立っておると思います。  去年私は、アメリカが高金利の際に、余り金融自由化を進めちゃいかぬと言いました。何ですか、ことしの日本の資本の流出額が五百億ドルでございます。その前はせいぜい二百億ドルでございました。アメリカへのこの資本の流出が、去年の決断のみならず、前からの為替の自由化の結論でございましょうけれども、アメリカの金利がこう高いときには、どうしても不自然な動きが起こるわけでございます。本来ならば為替相場というものは、片一方の国に黒字がたまり、片一方の国に赤字がたまれば、自然に調節されるはずである。ところが資本の流出入によって永続的なドル高・円安があるわけです。これがいわゆる継続的な貿易の黒字、赤字の一番の原因でございます。何で我々は、こういった状況のもとに門戸開放にも限度があるよと言えないのか。我々は現在補助金カットの法案を出しておる、その際に、将来大きな穴をあげるような開放には応じられない、補助金法案そのものが危なくなるという形で頑張れないのでございますか。  私は最後に、あと一日、二日、日にちはございますけれども総理にもう一度この問題を考え直していただきたい。総理は全生庵で座禅を組んでおられると聞いております。私もかつて学生時代に、先代の山本玄峰老師のもとで全生庵に何回も通いました。恐らく総理は日本国家のためを思って、心を無にして判断しておられると思います。非常に好意を持っておるわけでございます。どうぞ総理、もう一度、日本のためにどっちがいいのかということを、心を澄まして考えていただきたい。これが私の最後のお願いでございますけれども、これに対する総理の御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  206. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 おっしゃいますように、各国はそれぞれの国情があり国益がございますから、それを守るのが政治家の使命であると思っております。  ただ、それは事と次第、物によるという状況であるのでありまして、日本のような国是、貿易立国で生きていくという国、別に物資や資源を持ってないで、外国から原料を入れて、それを製品にして売って生きていく、こういう柄の国にとりましては、自由貿易ということは死命を制するほど重要な問題なのであります。そういう意味において、国際水準並みの透明性の確保とか、内外無差別とかあるいは市場原理、市場の開放とか、そういうものは人に先駆けてやるぐらいの意気込みでやらなければ、自由貿易の推進ということはややもすれば保護主義の方向に引き込まれるということになるのであります。そういう長い目で見た国の利益を考えた場合には、やはり物、物によりましてある程度の政策を考えつつ、妥当なやり方で一歩一歩推進していくというのが我々の任務であります。  したがいまして、この四品目にとどまらずに、将来もこれは自主的にそういう大局的観点から、諸種の政策も講じつつ推進していくということが日本の国益につながる。その点は国民の皆さんも御了承を得たいと思いますし、各党の御了解もいただきたい、そう思っておる次第なのであります。
  207. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今ちょっと同僚議員の了承を得たので、あと一問やらしてください。
  208. 越智伊平

    越智委員長 簡単に願います、時間でありますから。
  209. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 総理、自由貿易主義が大事なことは私も重々承知しております。日米協調が大事なこともよく知っております。しかし、日本とアメリカとの交渉の際に、アメリカ人のかたぎから見て、主張すべきものを主張しないで無原則な妥協をすると、必ずかさにかかってきます。私は何も、自由貿易主義が日本の生命線であることを知らないわけじゃないのでございます。しかし、いわばこの変則的なドル高という状況のもとに決断をすることで、将来どのくらい補助金が要るようになるかわからない。日本の国家に非常に大変なことになる。何のために我々はこの補助金法案審議しているのかということを、本当に、心にしみて考えていただきたいと思うのでございます。自由貿易主義も大事でございましょう。しかし、主張すべきことを主張しない外交というのはないわけでございます。  私は、時間がございますれば、これまでの外務省のやり方についていささか質問しようかと思いましたけれども、時間もございませんのでやめますが、どうぞもう一回、一体今回の決断はいいものかどうか、真の意味の日米友好のために役に立つものかどうかを考えていただきたい。最後にもう一遍御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  210. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もとより、国益を踏まえてと私申し上げておるので、主張すべきものは堂堂と主張しております。  しかし、国の前途を考えますと、やはり妥協すべきときは妥協しなければ、これはもっと大きな損が日本にわいてくる、こういうこともあり得る。現に、日本が約四百億ドルに、近いような黒字を持っている、こういう状況を考えてみますと、可能な限りの我々の努力はしていかなければならない。すべてそれは事と次第による、そういうことを申し上げておる次第でございます。
  211. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 次の同僚議員が待っておりますので、質問を終わります。
  212. 越智伊平

    越智委員長 岡田正勝君。
  213. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 きょうはお釈迦さんの誕生日であります。もう虚心坦懐に、飾らぬところの答弁を冒頭にひとつお願いするのでございますが、まず第一に、松永文部大臣にお尋ねをいたします。  先般は、大臣大変期待をしておりました甲子園の高校野球の始球式ですね。あれ、二日も行ってまことに残念であったと思うのですが、御心境いかがでございましたか。
  214. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、日本の学校教育の中で体育を充実することが極めて重要であると考えておりまして、スポーツを一生懸命やっておる高校生を励ましたい、こういう気持ちで、国会の了承を得て二日間行かしてもらいましたけれども、私の心がけが悪いのか、二日間連続して雨になったわけであります。幸いに三日目は、私の代理として鳩山政務次官が出席をいたしまして、立派なあいさつをして、高校生を励ましてくれました。ただし、あの始球式自体は大臣でなければいかぬそうでありまして、それはできなかったわけでありますが、八月八日という日がございますので、それを楽しみに架しておるわけでございます。
  215. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 やはり誕生日にふさわしい御答弁で、私は、ひょっとしたら大臣、感情の赴くままに、まことに残念、天を恨む、こういう言葉が出るかと思ったのですが、さすがに言葉じりをとられるようなことはしませんでしたね。政務次官にその功を譲って満足しておる、八月八日を楽しみにする。これはもう必ず晴れます、心配ありません。     〔越智委員長退席、中川(秀)委員長代理     着席〕  さて、今私が何でそんなことを質問したかといいますと、世の中というものはえてして、添え物と当て物というのは先方から外れちゃうんですね。  そこで、先般来質疑が繰り返されております中で、教育ということに対してはこれはもう全国民挙げて関心の深いところでありますが、今回のカット法案の中で、教材費などは補助金からこれをカットする、そして地方の一般財源化するんだ、それで交付税に含めるんだから、それは基準財政需要額の中に入れるので何ら心配は要らないよと、こういう応答が繰り返されておるのでありますね。そこで、文部大臣、ちょっとこれからの応答をよく聞いておいてくださいよ。  大蔵大臣、お尋ねをいたしますが、交付税の中に入れるんだよということであるならば、恐らく地方団体の諸君は、交付税率三二%という枠がその分だけぴゅっとふえるんだなと、こう期待をしますね。これが当てというのですね。当て物にしているわけですよ。これは当たりますか。三二%はぷいっと膨れますか。
  216. 竹下登

    竹下国務大臣 国税三税、所得税、法人税、酒税の三二プロというのは、いわば六・五%の名目成長率に一・一の弾性値を掛けて、結果として今までは三税は一・二ぐらいの弾性値になっておりますから、その限りにおいては、数学の上ではふえます。が、今岡田さんおっしゃいますことは、間々、いわば地方財政計画を立てる場合の基準財政需要額の中へ入れられるものを、それが交付税の中にプラスしてオンされるという印象を与えがちだということは、私もそのように思っております。
  217. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 といいますように、地方団体は当然のことに膨らむだろうと期待をしておりますが、現実は、本年におきましても三二%までは行ってないのですね。枠は残してあるわけです。こういう状態のときに、それが一般財源化されるんだから、補助金はやめたけれども一般財源化されて交付税の中に含まれていくんだから、地方団体の諸君には決して迷惑はかけない、こう言いますけれども、本当にそういうふうになっていくでしょうか。地方団体の諸君は非常に心配をしておるのです。この当ては外れやせぬかと思うのですが、いかがでございますか。
  218. 松永光

    ○松永国務大臣 義務教育の教材費につきましては、先生御承知のような経過で、義務教育費国庫負担制度の中に、昭和二十八年から国庫負担の対象として取り入れられたわけでありますが、その当時は、もう先生御承知のとおり、地方財政が大変窮乏しており、かつ、教材について公費で支弁するということが必ずしも定着をしていなかった。そのために、父兄に対しては割り当て寄附などということがあったので、そういった現象を解消したい、同時にまた、教材の整備を進めていきたいということから、昭和二十八年から義務教育費国庫負担法の中に取り入れられたのでございます。現在に、おきましては、市町村で公費によって所要の教材を整備するという状況が定着をいたしております。  一方、先生も御承知と思いますが、国の財政が厳しいものですから、五十七、五十八、五十九と三年連続して、教材費につきましては国の補助金額が削減のやむなきに至っておりました。それに対応して、交付税による措置も実は減ってきておったわけでありまして、そのことから、教材の第二次整備計画の進捗率がはかばかしくないという状況に実はなっておったわけであります。  そこで、国の財政状況は厳しい。一方、自治省、大蔵省と協議をいたしまして、今申したとおり、公費負担という状況は定着をしておる、地方財政計画による財源措置はきちっとしてくれる、しかも六十年度は五十九年よりも数%多い財源措置をしてもらえるということになりましたので、私は、現在の市町村の教材の重要性が認識されることでもありますから、今までに劣らないように――数%ふえたことでありますから、数%ふえる程度の教材の整備がなされるものと確信いたしておるわけでございます。
  219. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 文部大臣、今の御答弁の限りにおいては、私は素直に受け取りたいと思います。ただ、問題はこれからの実行にあるのでありまして、文教責任者といたしまして、このことの経緯がどうなっていくのかということについては、十分なる関心とそれから監視の目を光らせていただきたい、それが父兄にいささかもしわ寄せをするというようなことがないように、ぜひひとつ努力をしていただきたいと思います。希望しておきます。  次に、竹下大蔵大臣、実はこれはある新聞から私が読み取ったことでありますが、何とまあ竹下さんは、言葉はまことに明瞭であるが意味不明なことが多いなあというつぶやきが聞こえた。それで、括弧して後藤田正晴と書いてあるのであります。人気さわやかで、次期総理大臣疑いなしとまで呼び声の高い竹下さんにとっては、私は先々これは差しさわりがあるのではないかと思うのです。天下の大秀才がお答えになることですから、あれこれとしっぽをつかませないように言うためには、結局は、言葉は明瞭であるが、何を言ったかようわからぬというので時間をつぶす、これも一つのテクニックですから否定はいたしませんが、しかし、将来大きなさわりになるかもしれません。ですから、今から質問いたしますことについては、どうぞそういう心配を抜きにして、とにかくはっきりと、意味明瞭なお答えをひとつお願いしたいと思うのであります。  さて、またこれも新聞でございますが、どうやら交付税率は税制の改正と並行して下げるのではないかな、どうも大蔵省はそういう意思を持っておるようにうかがえるということがしきりにこのごろ喧伝されるのでありますが、いや、そんなことは絶対ない、むしろ上げるんだという方向に行かれるのじゃないかと期待をしておりますけれども、明確な意味を御説明願います。
  220. 竹下登

    竹下国務大臣 言語明瞭、意味不明が、徐々に意味まで明瞭になっていくのは、双方の問答が大変円熟してきたことからそうなることをいつも期待しておりますが、ただいまから答えますのも必ずしも意味明瞭でないかもしれません。が、要するに国と地方公共団体というのは相互に協力していくことが必要であって、したがって、国と地方の財政は、まず税源配分とそして交付交付金補助金、これらがまさに密接な関係を有しておる。そこで交付税のあり方、こういうことになりますと、いわゆる税財源配分の問題として国と地方の行政事務配分と費用負担のあり方、そうして別に地方税、それから地方譲与税制度、国庫補助金のあり方、すべてを総合的に勘案して幅広い角度から検討をすべき課題である、だから軽々に、まず減額ありきとか、率を下げるとか上げるとかいう考え方で取り組むべきものではない、こういうふうに考えております。
  221. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 半ば明瞭でありました。  そこで、総理にお尋ねするのでありますが、総理、先週末にようやく参議院の方も無事予算が無修正で通過をいたしまして、まことに複雑な心境というか、どういう御感想をこの時点でお持ちかなというふうに、興味がありますので、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  222. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 与野党の御協力をいただきまして、暫定予算なしにこれだけの大きな内容を含む予算が成立いたしましたことは、本当に感謝にたえないところでございまして、ちょっぴりほっとしたところであります。
  223. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ちょっぴりほっとしたところで、中曽根内閣の支持率というのが、調査をやるたびにぐんぐんと上がっておりますね。大変御満足であろうと思います。その大きな原因というのは、私は、一つには総理の非常に明快な答弁、わかりやすい答弁、これがテレビを通じて全国民隅隅にまで行き渡るので、ああ、よかんばいというので支持率が高まっておるのではないか。私はそれが主な要因ではないかと思っておるのですが、そこで総理にも明確な、意味のはっきりした答弁をお願いしたいのでありますけれども、この交付税率を将来税制改革の時期に合わせて下げるというようなことは、よもやないでありましょうね。いかがでありますか。
  224. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中曽根内閣に対する支持率の御評価をいただきまして恐縮ですが、私は、私の答弁が原因ではなくして、物価の安定が原因だろうと思います。やはり国民の皆さんはインフレを一番恐れておるのでありまして、物価を安定さしてインフレを起こさない、これをあくまで堅持していきたい、そう考えております。  交付税率の問題につきましては、これは今、上げるとか下げるとか明言する限りではないのでございまして、今後税調あるいは党税調等の御意見を承りまして判断すべきものであると思っておりますが、地方自治の本旨に基づきまして、中央地方ともによく話し合って、しっかりとした財政的基調を両方が持つように配慮すべきものであると考えております。
  225. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今、御謙遜になったのかどっちか、よく意味がわかりませんが、人気がよくなったということは決して私の答弁が明確であるとかいうことではない、物価が安定しておるからだ、こういうふうに力を込めておっしゃいましたが、景気が沈滞しておるために、消費が鈍って物価が上がるということがなかったということが一番大きな原因なのであります。大勢の国民は、今の税制そのものについても喜んではおりません。不公正税制の是正、それに伴う公共事業の投資、それによって起こる景気の浮揚、そういうようなことがなくして、内需の喚起なくして、いかにして今のような物価の安定を自慢できるでありましょうか。私は、見解が違うかもわかりませんが、これは一言お言葉を返しておきたいと思うのであります。  それから、けさほど来のやりとりの中でどうも気になることが一つありますのは、地方自治団体が裕福であるとは、三千三百からあるのですから、一口には言いません。しかしながら、借金の残高を見てみましても、国は大変重たく地方は軽いと言えるのではないかという答弁が何回も出てきているのですね。これは私非常に心配になるのでありますが、そうしてみると、地方ではラスパイレスが平均したら結局一〇五・何ぼある、国の給与よりも高い、借金は国の半分以下であるという観念がそこにどしっと座っておって、この一括カット法案が出てきたのじゃないかなという気がしてしようがないのですよ。総理、どう思われますか。今の借金の度合いですね。借金の残高というもので比べてみたら、明らかに国の方が大変困っておるので、地方は裕福である、給与がラスパイレス一〇五・何ぼということは明らかに地方の方が裕福なのである、そういうふうに腹を決めていらっしゃるのですか。それをひとつお答えください。
  226. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、三千三百にわたる市町村があるわけですから、市町村おのおのによって違うわけであります。しかし、自治省がまとめました総計を見てみますと、やはり国の方がはるかに借金が多くて、そして国債費の利払いも多い。どっちかといえば国の方がサラ金財政により陥っている、これは客観的に言えると思うのです。それから、給与につきましても、高い村、町、市もあるし低い村、町、市もありますけれども、全国平均してみますと、地方の方が一〇五・九%と平均して高い。中には一二九というラスパイレスを持っているところもある。特に大都市の周辺の市やその他について、よく新聞で報道されているとおりでございます。これは事実でありますから、明確に物を言うと今おっしゃっていただいたので、たまには明確に物を言うのもいいだろうと思って、事実は事実と申し上げておる。だが、それで地方をないがしろにしていい、そういう話ではないのであります。
  227. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大蔵大臣、同様のことを。
  228. 竹下登

    竹下国務大臣 いろいろな比較がございます。我が方で言えば財政制度審議会等でいろいろな議論を聞いておりますが、今総理が素朴におっしゃったという気持ちは、財政審等の議論を通じてないわけではもちろんございません。が、基本的に国も地方も今やいわば苦しい財政事情にあるということと、そしてそれぞれの国また地方を組織していらっしゃるところの国民あるいは住民の皆様方が、ある意味において、かつての高度経済成長の幻想から安定成長の方へ意識転換もしていただかなければならぬ、こういう認識はいつでも持っております。
  229. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今回の一律カットについて覚書が三大臣で取り交わされていますね。このことについてでありますが、この三大臣の覚書に基づいて一体どのように見直すのか、そしていつ見直すのかということについて明確な答弁をいただきたいのであります。これは自治大臣それから大蔵大臣にまずお尋ねをいたしたいと思いますが、自治大臣、答弁は大蔵大臣が先の方がいいですか。どっちでもいい。それじゃひとつ……。
  230. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 三大臣の覚書は、六十一年度の予算に間に合うようにやらなければならぬということが骨子でございます。したがいまして、事務的にはいろいろ準備をしておりますが、できるだけ早いうちに結論を出さなければ、問題が問題だけに大変重要でございますので、一生懸命にやって話をしまして、間に合うように決着をつけるべく努力をいたしておるところでございます。
  231. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 厚生大臣、いかがですか。今の六十一年度予算に間に合うようにする約束であるということにお間違いございませんか。
  232. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 一年以内にということでございますので、そのとおりでございます。
  233. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで大蔵大臣、この覚書を交わした他の二人の大臣からは、六十一年度予算に間に合うように見直しをするという約束である、こういうふうに明確なお答えがあったのでありますが、お間違いございませんか。
  234. 竹下登

    竹下国務大臣 一年以内でございますから、まさにそのとおりに心得ております。
  235. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは改めて初めの質問に返りますが、何を、どのように、いつ見直すのかということのお答え大蔵大臣にお願いしたいのであります。
  236. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに今おっしゃった何を、どのように、いつということ、あるいはどういう場所でということが、今各省庁間で鋭意検討されておることでございます。私の考えを素直に申し述べますならば、本委員会の場における御意見等を判断しながら、それの結論を出すべき問題だと考えております。
  237. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大体ああいう答弁でだまされるのですがね。この委員会意見ども判断をして、こういうことでありまして、一体何が、どのように、いつごろ見直されるのかというのは、具体的にはさっぱり出てこないのですね。  という状態でありますが、国の概算要求は八月、そしてそれぞれ地方の自治団体も、市町村あるいは県段階でいろいろ時期が違いますけれども、いずれにしても早い時期に行わなければなりませんが、そうすると大体八月には結論が出る、こういうふうに考えてよろしいのかどうか。もう一度お答えください。
  238. 竹下登

    竹下国務大臣 概算要求時点におきまして、いわゆる補助率のあり方等の結論がきちっと決まっていくというのは、私も好ましいことだと思いますが、今できるだけ早くという表現以上に出ないのは、何分にも歴史的経過の積み上げの上に今日存在しておる補助率でございますから、それまでに出しますと確約できる心境に現在ないから、それで可能な限り早くということに答弁の限界を私なりに決めておるわけでありますが、やはり一番大事なことは、この国会でこの法律案議論されるときに、どのような角度からの御議論が行われるかというのを整理して取り組むべき課題だというふうに私は思っております。
  239. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、お気持ちはよくわかるのでありますが、先ほど来の質疑を聞いておりましてどうも気になりますことは、例の特例措置で三カ年やりましたね。あれをまたもう一年延ばしたいということで、今度も御提案に相なっておりますが、その理由は何じゃ、こういうことになりますと、いや、これは赤字国債発行ゼロに持っていくのが五十九年の目標であったのが、六十五年に延ばさざるを得ない状況になってきた、したがって、ともあれことし一年再度特例措置の延長をしてもらいたい、なお、この一括カットの五千八百億円、これも今年一年限りということでひとつお認めをいただきたい、こうおっしゃっておるのでありますが、事の発端の特例措置そのものが、五十九年に赤字国債発行ゼロをめどにしてやってきた制度でありますだけに、赤字国債発行ゼロが現在の見通しては六十五年度、こういうことになると、ずっと続いて六十五年までこれは引っ張られてしまうのではないかという危惧が、地方自治団体には濃厚にあるのでございますよ。だから、この三大臣の覚書というのは、これは空文に等しいのではないか、一年限りではなくて六十五年までと本当は書きたかったのじゃないのかというふうに思うのでありますが、こういう場ですから遠慮は要りませんので、どうぞ本心をひとつお話しください。
  240. 竹下登

    竹下国務大臣 こういう場でございますから、できるだけ遠慮などはしないで、正確に申し上げようと思っております。  今の議論、二つございまして、三大臣合意というのはいわゆる社会保障関係でございます。そういたしますと、私どもが今念頭にあるものとしては、先ほど来議論のありました厚生年金の問題がございます。これにつきまして、これに限ってのお答えは先ほど来も議論しておりましたが、六十一年度において制度改正というものが考えられておるということになると、当然扱い方自体はまた新しい発想にならざるを得ないではないかという意味におきまして、特例法の中にございました厚年に関する取り扱いについては一年に――これは仮に六十五年にしたくても、制度の改廃等を考えれば、六十一年にしておかなければならぬという措置だと思っております。  いま一つは、いわゆる公共事業関係等の特例措置の問題が出てまいりますが、これは三大臣合意の外にあるという議論もございますが、当然のこととして、補助率のあり方は必要に応じて詰めていかなければならぬ課題でございますから、そうなりますと、この問題はやはり総合的な補助率と特例措置との兼ね合いの問題もございますので、この一年限りという措置に一応して御審議をお願いしておるということでございます。
  241. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私はもう多分にその点の疑いを残しながら、時間がないものでありますから最後の質問に移りたいと思うのでありますが、願わくは今の本年限り、一年限りという全く判こでついたようなここ二カ月間ほどの論議がひっくり返らないように、ああは言っておりましたが状況の変化、けさほど来からもよく言われた言葉は、環境の変化がございまして……、まことにこの日本語というのは都合がいいなと思うのでありますが、そういうことが起こらないように念願をしつつ申し上げますが、各省一律マイナスシーリングというようなことは、やはり来年も続けざるを得ないのじゃないですか。今度は、国債の償還というのは、国債の借入金よりも約二兆円くらい多くなるというような事態が来年度から出現しますね。三兆五千億か七千億程度歳入不足が出てくるというような状態が出かねない情勢である、ことしよりまだ悪い、ますます悪いという状況の中ですから、各省一律カットという手法は来年以降もとり続けられるのではないかという疑いが濃いのでありますが、いかがでありますか。
  242. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる当然増を含む義務的諸経費を除き、投資的部門で五%、そして経常部門で一〇%ということでここのところ続けさしていただいたわけでありますが、それも今日まで三年間それをやらしていただいたわけであります。ただ、六十一年度予算をどうするかということになりますと、まだ通ったばかりで、まだそれをこのようにいたしますと言える段階ではございませんが、いずれにしても厳しい厳しいものにならざるを得ないかなというのが素朴な感情でございます。
  243. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 総理、今お聞きのように、全く先を見れば見るほど、嫌になるほど金がないなどいう感じがしますよね。本当に銭こがどこかに転がってないかという感じがします。新電電の株券なんか相当期待を持っていらっしゃるのだと思いますが、これとても、さて一兆円も国庫へ入れることができるかどうか。これは非常に危ない芸当だと思っておりますが、こういうふうに窮屈になってまいりますと、やはりまた一律カットというようなことをやりそうな気がするのですが、また来年一律カットというようなことを、財政が厳しいからというのでやるのでは、これはだれでもできる方法である。ただそろばん勘定を合わしておいて、各省一項目ずつやったら面倒くさいから、一律で一遍にいけ、そうすれば「みんなで渡れば怖くない」、こういうやり方をやるというのは、全く政治としてのリーダーシップがないと言えるのではないかと私は思うのでありますが、いかがでありますか。
  244. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 来年のことはまだ白紙の状態でございます。各省一律カットと申しましても、各省内部におきましては、その重点によりましてみんな自主的に選択して優先順位をつけておるわけでございますから、そうのっぺらぼうに全部が一律カットというわけではないわけなのであります。今後もよく研究してまいりたいと思います。
  245. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。これをもってやめさしていただきますが、私ども一番おそれておりますことは、同じような手法で、えい面倒くさい、一律カットでいけというような乱暴な手法が再びとられていくのではないだろうか、またそれが延長されるのではないだろうかということが非常に心配なわけでありまして、私どもは行革に非常に熱心な民社党でございますけれども、一律カットをやる前に、不公平税制の改革とか、あるいは減税とか、許認可事務整理とか、特殊法人、認可法人の整理、地方出先機関の整理、ひいては総人件費の抑制、こういうものを徹底的に行政改革をやるだけやって、どうにもならぬから国民の皆さん、ひとつぜひ御協力を願いたいという話でなければ、恐らくや国民の中からうつぼつたる不平不満の渦が巻き起こってくるであろうということを私は予測するのであります。  日本のためにもぜひひとつ真剣に、いかにしたら日本の財政がよくなるかということについてお考えをいただきたいということを注文を申し上げまして、終わらしていただきます。ありがとうございました。
  246. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 山原健二郎君。
  247. 山原健二郎

    ○山原委員 けさ来の質問と多少ダブるかもしれませんが、明日政府は市場開放問題について対外経済政策を打ち出すと新聞に出ております。そのことを確認しておきたいと思うのですが、総理、そういうことでしょうか。
  248. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 発表したいと思っております。
  249. 山原健二郎

    ○山原委員 新聞の報道によりますと、木材、合板関係の関税を現行の一五%から五ないし七・五%引き下げると伝えられておりますが、これはそういうお考えでしょうか。
  250. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点はまだ固まってはおりません。
  251. 山原健二郎

    ○山原委員 こういうことをいたしますと、日本の林業はまさに壊滅的な打撃を受けることは明らかでございまして、今でも総理御承知のように深刻な事態を迎えております。「山は死んでいる」という言葉がありますように、こういう事態をなぜ引き起こしたのか、農水大臣に一言この理由をお伺いしたいのです。
  252. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 山原先生にお答えいたしますが、林業が大変な不況に陥った。例えば五十五年に比較しまして、住宅建設が二割減っております。また木材の需要は二割減っている。それからまた木材製品価格は三割安くなっております。そういう形の中で、造林費と人件費は三割から五割上がっておる。したがって、倒産件数も毎年一千件以上、二千百億前後負債を持っておる。そんなことで実は林産業は大変な長期的な不況を続けておるというのが現状でございます。
  253. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣、この第二臨調のいわゆる第五次、最終答申ですが、その中で、林業の今日の現状、これを分析しておりますね。これはいわゆる構造的なものである。  ちょっと読み上げてみますと、日本林業の「経営悪化を招いた原因としては、まず我が国の林業全体を取り巻く構造的な要因が挙げられる。すなわち、昭和三十年代半ばにおける外材輸入の自由化により国内市場の大部分を奪われ、木材価格が低迷する一方、人件費等生産コストが上昇し、林業の採算性が著しく低下したこと、」こう述べています。まさに構造的なこの不況、これに対して今回の関税の引き下げというものがどういう事態を起こすのか。  私は中曽根総理にお伺いしたいのですが、あなたは「花と緑」というキャンペーンを張っておられます。国土を荒廃させた今日の状態を考えますときに、今回報道されております関税の引き下げというものは、まさに無原則な譲歩あるいは妥協であると断ぜざるを得ません。そうなりますと、これは大変な事態を迎えるわけでございまして、断じてそういうことはしてはならぬと思います。この点についてお約束をしていただきたいのですが、いかがでしょうか。
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府与党首脳部会議におきまして、やはり日本の自由貿易を推進して国際摩擦を避けていくためには、林業生産物等についても、林政を振興しつつその状況を見て、関税問題等についても段階的にある程度時間を置いて対処する必要がある、そういうことを申し上げまして、今党でも一生懸命政府と一体になって検討しておるところでございます。
  255. 山原健二郎

    ○山原委員 農水大臣に伺いますが、我が国の林業は決して他国に比較して閉鎖的とかあるいは保護されているとかいうような実情にないと私は思うのですが、農水大臣はどのような御見解を持っておりますか。     〔中川(秀)委員長代理退席、越智委員長     着席〕
  256. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  我が国の林業というのは、中曽根総理を含めて皆さん方の大変な御理解を得ながら、私どもも林業政策を進めております。そんなことで、今度の問題につきましても先生からいろいろ御意見がございましたけれども、私は基本的に関税問題は林業、木材産業が活力を取り戻した後に対処すべき問題と考えております。
  257. 山原健二郎

    ○山原委員 今第二臨調の答申の中身を申し上げましたけれども、私は臨調のやろうとしていることに賛成しているわけではありませんが、少なくとも日本林業に対する情勢分析というのは誤ってはいないと思うわけでございまして、現在アメリカが合板の場合二〇%、インドネシア五〇%、日本は一五%、一番低いわけです。まるで裸同然だと言われる状態にあるわけでございまして、しかも現在木材需要の六割から七割が外材である。これが日本の木材業不振の最大の要因でございまして、森林所有者は二百五十万おりますが、私の県などは四万六千世帯が森林所有者です。それがみんな貧乏している。宝の山を目の前にしながら全く材は売れないし、どうにもならないという事態の中で、関税を少なくともアメリカ並みに引き上げよというのが日本国民の要求でしょう。それが引き下げをやる。  仮に引き下げをしましても、合板はアメリカの対日輸出が現在十三億でありますが、それが十倍にふえましても、先ほど総理がおっしゃった四百億ドルに達するアメリカの貿易収支の赤字を解決することにはならぬし、三百五十億ドルとしましてもわずか〇・二%の効果しかない。わずか〇・二%の効果しかない関税の引き下げをやって、それで国土は荒廃する、一層深刻な事態を迎えるというのは、どこから見ても正当な理屈がつかないわけでございまして、今回お考えになっておられるであろう関税の引き下げは断固としてやめるべきである、日本の林業と日本の国土を守ってほしいということを私はあえてお訴えしたいのでありますが、総理、いかがでしょうか。
  258. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 林業の状況あるいは木材産業の状況等については、私の家は材木屋でございまして、山も多少ありますから、一番よく知っておるのであります。  一番の端的な話は間伐ができない、間伐しても費用がそれで賄えない、そういう状況から、終戦後植えた木がもはや過熟林になりつつある。間伐ができないから、したがって下枝も取らぬし、結局節の多いひょろひょろした木ばかり生えてしまって、林相が非常に悪くなってきておる。一番大事なことは、間伐ができるようにしてあげることが端的な一つの象徴なのであります。そういうような政策をこれから編み出して――今までも多少やっていますけれども、まだ不徹底です。そういう点で、大いにひとつ林相を整えるようないい森林政策を逐次これから推進していきたい、そう考えておるのであります。
  259. 山原健二郎

    ○山原委員 これは第二臨調の情勢分析を申し上げたのですけれども、構造的なものであるということですね。今までも林業振興に対する補助金は出してきております。今度も三千億とかいうふうに新聞に出ているわけでございますけれども、材が売れないからでしょう。間伐をやろうにもその人件費も出ないという状態に置かれる、売れないという状態です。外材はどんどん入ってくる、七割を占めている。これでは日本の林業が成り立つはずはないわけでございまして、それをさらに関税を引き下げるという問題が出ているわけですが、今回の対日報復決議に見られる異常なアメリカ側のいら立ちというのは、約束を日本が守らないということにあるわけでございまして、一体約束とは何なのか、何を約束されたのか、私はこの点を明確にしていただきたいと思うのです。  新聞等を見ましても、中曽根総理の一月のロサンゼルスにおける日米首脳会談で話されたこと、首相が米側に与えた言質がすべてである、こういうふうに外務省の方も言われているというふうな新聞も出ているわけでございますが、約束とは一体何なのか、だれが種をまいたのか、言質とは一体何なのか、私はこの点をぜひお伺いしたいと思うのでございます。一月に訪米されましたときのレーガン大統領とのお約束は一体何であったのか、お伺いしたいのであります。
  260. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その新聞記事は間違いです。外務省の人間がそんなことを言うはずはないと私は思っております。アメリカのみならず、ECその他発展途上国におきましても、日本の市場が閉鎖的であるという声は今まで随分高かったのであります。特に内外無差別、透明性という点についていろいろ議論がありました。  そこで私は累次にわたる政策をやり、特に基準・認証制の問題等につきましてもかなり改善もしたのでありますが、ここでも申し上げましたように、日本の国柄、日本は二千年の歴史を持っておる国で、しかも律令国家という体系をとっていて、国が国民の面倒を見る、護民官的な政策をやってきた、これが仁の思想による政治の要請であると言われてきておるところです。したがいまして、洪水が起これば政府責任だといって訴訟がなされる。自賠責も、かなり高い値段ではあるが、国がいろいろやってきた。外国では自分で全部責任をとって、それがうまくいかなければ訴訟するというやり方ですから、日本は弁護士が一万五千人しかいないけれども、アメリカは五十五万人もおる。そういう国柄の差があるわけです。ですから、電気通信にいたしましても、国が面倒を見て良質の通信体系を維持するという形で今までやってきたのに対して、向こうは消費者が選択すればいいじゃないか、まずければ消費者はやめるよという、いわゆる契約国家という思想で来ておる。こっちは律令国家という国のいきさつで来ておる。その差があるわけです。これは二千年もかかってきているものを、一朝一夕にして変えれるわけはないです。  しかし、日本は今や資源を輸入して製品を売っていく国ですから、自由貿易でいく以外にない。それで今まで伸びてきたわけで、非常にこの恩恵を受けている国であります。この恩恵をさらに享受していこうと思ったら、日本が率先して自由貿易の方向に進まなければならぬのであります。そういう意味において、いわゆる律令国家の体制から、必要不可欠な公共性のものは国がやるけれども、それ以外は原則として国民の選択において、国民の責任において処理するという形に転換しなければ、長続きのする体系にはならない。そういう努力を今までもしてきたし、今後もしていこうという考えに立っているということを御了承願いたい。  私がアメリカに行って約束してきたということは一つあります。それは、こういう方法で解決しましょう、つまり、今までよりハイレベルの相談の会議をつくりましょう、そういう方法を約束したのです。中身をどこまでいくとかどこまで開放するとか、そんなことを約束したことはありません。そんなことをするはずもないのであります。それで、四つの部門にわたるその協商の会議ができ、事務次官レベルで交渉して、そしてこの間うち新聞で報ずるような結果になった。  ああいうように、前から申し上げますように、アメリカ側におきましては、去年の大統領選挙中は両方何も言わなかったのです。というのは、共和党は日本がうまくいっているということを言いたいわけです。民主党は、それを持ち出すとAFL・CIOのひもつきじゃないかということで、民主党もそれを恐れて言わなかった。しかし、選挙が過ぎたら一遍に出てくるぞと私らは考えておりまして、それで十二月からいろいろ考えて、一月にレーガンさんと会って、そういうものが爆発してくる場合のエネルギーの処理の方法を、私は先手を打ってやってきたつもりなんです。それが今の四つのチャネルにおける話で、言いかえれば避雷針ができたようなものだと私は思っておるのであります。それで、四つのチャネルで一生懸命やりまして、曲がりなりにもある程度話はついたと私は思っております。  しかし、アメリカ議会におけるいろいろな情勢は、まだフラストレーションもありますし、何しろ二千年の律令国家に対する誤解やら思惑もまだあります。また、来年はアメリカの上院議員の選挙、下院議員の選挙があります。それを目がけてのいろいろな思惑もあるでしょう。政党間の駆け引きもあるでしょう。そういうような面を考えてみると、これで一朝一夕にすべてがなくなるとは考えない。持続的に日本は自由貿易で生きていける国だということを基本に置いて、一歩一歩着実にそういう誤解をなくしていくということが政治家の責任である、山原さんも御協力願いたいと思うのであります。
  261. 山原健二郎

    ○山原委員 何か律令国家、聖徳太子の時代に返ったような感じがするわけでございますが、私が聞いておるのは、本当にどういうことを約束したのかということなんです。これは一昨日の読売新聞の夕刊ですけれども、マンスフィールド駐日大使がワシントン・ポストに中曽根構想を述べています。「中曽根首相構想に従うと、木材の通商障壁をなくすにはなお二、三年かかるが、」「ずっとくぐり続けてきたかの有名な(貿易障壁という)トンネルの端に見える明かりが初めて見えたのだ。」というふうに述べております。この中曽根構想というのは、これから見ますと当然アメリカ側に伝えられておると思いますが、これはどういうものですか。
  262. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はアメリカ側にそんなことを言った覚えはない。ただ、これは政府与党首脳会議におきまして、林政の荒廃は一刻も早く我々が手をつけて直す必要がある。そして、ことしは特に国際森林年でありますから、林政を推進するには絶好のチャンスであります。そういう意味におきまして、政府与党首脳会議におきまして、林政への思い切った刷新政策をやろう、それと同時に中期的なある程度のめどをつけて、これらの諸問題についても解決する方向へ持っていこう、したがって、党の方で段階的にそういうことをやること、それから林政の振興を行うということ、そういう点について御検討を願いたい、そう申し上げたのがそういうことになって出てきておるのではないかと思います。
  263. 山原健二郎

    ○山原委員 短い時間でございますから、総理お話を長く聞きますと私の質問の時間がなくなってくるものですから、私はこの問題でまとめて申し上げたいと思うのですが、現在の日本の林政、林業そのものの荒廃に対して深刻に受けとめる必要があると思うのです。今の林業荒廃の最大の原因はやはり過疎化問題ですね。同時に、私ども高知市に木材団地というのがあるのですけれども、ほとんど今機械工業団地に変わっておるのです。したがって、構造的な不況をどう解決していくかというその深刻なとらえ方がないと、とにかく少し振興の予算を出せばいいとか、今までやってきたことを少しやって――しかし、その基盤が崩れておるということになればこれは大変な事態でございまして、私は補助金を出すことについて反対をするわけではありませんけれども、大事なことは、この基盤を大事にするかどうか。その基盤を崩して金を出したって、第一利子が五%つけば、今全く収益がないわけですから、金を借りる人だっておりはしません。そうなってくるとますます荒廃の一途をたどり、同時に、これは繊維と少し違いまして、工業製品の場合はまた復活することもありますけれども、山の場合は、荒廃したならば、これをもとへ戻すことは至難のわざです。そういう荒廃で、日本の国土とこれに関係するたくさんの人々を犠牲にするわけにはいかぬでしょう。だから、今度のわずか〇・二%の赤字解消のために、これほど日本が犠牲にならなければならないのか。  しかも、どこから来ておるかというと、レーガン大統領が大統領選挙に当たって、シアトルの近くのタコマの町で、レーガン氏を支える森林業者に対して、木材の市場開放、関税の引き下げについて日本に要求するというスピーチ、演説をしておるわけでございまして、まさに他国の大統領の選挙公約を日本が援助していく、そのために日本国民が犠牲になる、国土が犠牲になる、これは断じて許されません。しかも、今度の四項目につきましても、せいぜい赤字解消については数十億ドルにすぎないと思うのですが、また次にはこの貿易摩擦ということで、次々と要求が出てくる。こうなりますと、まさに「どこまで続くぬかるみぞ」ということになるわけでございまして、そういう意味ではもう断じて許せないということを私は申し上げておきたいと思います。  もう一つ、教育問題がございますので、これでとどめますけれども、本当に今度のアメリカに対する針葉樹の関税を引き下げたならば、きょうの、これは日本経済新聞ですが、「広葉樹も引き下げ ASEANに配慮」ということで、こういうお考えでしょう。そうすると、これはもうまさに直撃を受けるわけですね。そういう意味で、中曽根首相がとられようとしていることを私は容認するわけにはまいりません。まして、国会においても十分な中身が審議されないまま、明日対外経済政策の方針を発表するということについては、絶対に賛成できないということを申し上げておきたいと思いますが、そういう国会の十分な了承も得られないままにこれをやられるつもりかどうか、この問題について最後に一言お答えをいただきたい。
  264. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 対外政策は日本が生きていくためにも非常に大事なところでありまして、政府与党とも相談をいたしまして、既定方針どおりでやるつもりであります。  林政の問題につきましては、今後とも大いに努力してまいるつもりでおります。
  265. 山原健二郎

    ○山原委員 納得はいたしませんけれども、先へ進みたいと思います。  今回の補助金カットの一括法審議をしているわけですが、教育の面における旅費、教材費の地方交付税化の問題ですけれども、これにつきまして、先般我が党の蓑輪委員が、教材費、旅費の地方交付税化というのは国庫負担制度の大きな改悪ではないのか、根本を崩すものではないのかという質問をされております。それに対して総理は、負担区分を変えただけであって精神は変わらない、こういうふうに述べておるわけでございますけれども、私はそうではないと思うのです。  国庫負担法の第一条を見ますと、これは憲法、教育基本法にのっとりまして、「義務教育無償の原則に則り、」「国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする。」こういうふうになっておりまして、「国が必要な経費を負担することにより、」これが原則なんですね。これが国庫負担法の精神でありまして、金勘定の問題ではないわけであります。金の区分を、どちらが負担するかという問題ではなくて、国がこの支出をしていくという原則、これが国庫負担法の第一条に書かれました原則であり、最大の精神であります。  この問題について、総理は覚えておられると思いますけれども、昭和二十七年にこの法案が出ましたときに、あなたは改進党に所属されておりました。そのとき、当時の政権党である自由党がこの法案を出されましたときの討論の経過を、ちょっと私は参考のために読み上げてみたいと思うのです。これは坂田道太現議長が賛成討論をやっておりますね。  憲法上重要な国民の権利であり、義務であるのみならず、わが国文教政策の根幹でございます義務教育について、国が明確に財政上の責任負担することにより、義務教育の基礎を確立し、わが国文教の振興をはかりますことは、日本教育史上画期的な措置であります。さらに学校教育上、教職員の給与費と相並びまして最も重要でございます教材費につきましても、新たに国が一部を負担する原則をここに明らかにしましたことは、義務教育無償の原則を実現し、あわせて義務教育の振興をはかる上から、まさに画期的な法案であり、わが国全教育界の要望であると思うのでございます。従いまして、将来国家財政及び地方税制の改革等とにらみ合せまして、早急にわれわれの抱いておりますところの、また野党諸君の考えておられますところの理想的義務教育費国庫負担制度が、一日も早く確立されることをここに要望いたしまして、賛成の意を表する次第でございます。これですね。  このときに中曽根首相が何をされておったかと調べてみますと、恐らく政策副委員長かあるいは改進党の常任委員ではなかったかと思いますけれども、重要な役割をされておりまして、その改進党の出されました修正案というのは、義務教育費国庫負担法の自由党の案は一部負担です、それに対して五分の四を負担せよ。すばらしいことですよ。すばらしい計画を持っておられたわけですね。それがだんだん文教行政の努力によって改善をされてきて、今度の行政改革を迎えて一〇%、一〇%、一五%減、そして今度の予算では何と地方交付税に負担をさせるという。ゼロどころじゃない、制度まで変えるということですね。  随分政治家も考え方が変わるものだと、私は今昔の感にたえない次第でございますけれども、問題はどこにあるかというと、教育に対する気構えの違いですね、気構えの違いですよ。本当に子供たちを大事にしよう、五分の四の負担金を出そうというあの当時の中曽根さんのお考えと、今これを切って地方交付税に回して、三二%の枠をつけていますから大丈夫だなどというちゃちなものではない。これは教育に対する考え方として私は大変な後退、義務教育費国庫負担法に対するまさに、大後退でなく大改悪である、精神のじゅうりんであると思わざるを得ません。この点について総理の御見解をぜひ伺っておきたいのです。  二十一世紀に向かって教育大改革をやるというならば、今日育ちつつある子供に対してどう撤かい手を差し伸べていくか。国連憲章にはどうなっていますか。児童の権利に関する決議の中には、民族は持てる最高のものを子供たちに用意しなければならぬ。これだけの気持ちで教育改革をやるならば、私は信用します。そうではなくて、次々打ち切っていって、何が教育大改革ですか。これはもう私の気持ちは変わりませんが、このことについて、一言でいいですからお答えをいただきたいと思います。どうですか。
  266. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 教育を重視しようという考えは、今でもちっとも変わっておりません。その中曽根が今こういうことをやらざるを得ぬという、国家財政の窮乏等もよく御認識願いたいと思うのであります。
  267. 山原健二郎

    ○山原委員 これはもうこれから続くところだと思いますが、実は中曽根内閣の直属機関として臨時教育審議会がつくられまして、その審議が行われているわけでございますが、最後に申し上げたいのですけれども、この審議の経過を見ますと、今出てきておりますのは、六年制の中等学校をつくるという。これは後で文部大臣に伺いたいのですけれども、教育基本法あるいは学校教育法を変えなければ、そんなことできませんよ。それが早くも出てくる。共通一次を私学にも適用するという。共通一次の問題なんかは、国会において二年間かかって論議をしたものなんですよ。臨教審が半年間で結論出せるようなものではないわけですが、そういうものが出てくる。そしてさまざまなことが出ていますけれども、自由化、個性主義という名前のもとに、自由化イコール義務教育民営化論、こうなってくるわけですね。首相みずからも、昨年のNHKの「総理は語る」で、義務教育民営化論を肯定的に発表されました。臨教審の今の審議の状況を見ますと、やはり義務教育あるいは教育に対する公費支出の撤退論、これが今論議をされておると思うわけでございまして、今度の補助金一律カットの問題等と関連をしますと、臨教審そのものが教育予算を削るという方向に向かっておるのではないか。  この点については私は、この連合審査会におきまして、臨教審の幹部あるいは会長さんを、委員長にお願いするわけですけれども、ぜひお呼びをいただきまして、教育予算に対する理念あるいは教育費の問題等についてどういうお考えを持っておられるか、あるいはどういう討議を今日までされてきたか、このことについてぜひお伺いをしたいと思いますので、最後に委員長、参考人として招致をいただきたいのですが、この私の提案に対してどういうお考えを持っているか伺いたいのです。  その前に、今私が申し上げました教育予算をできるだけ削っていく、国の財政支出から撤退していこうという、これが今の臨教審に秘められた考え方ではないか、また、中曽根首相その人の考え方もそこにあるのではないかと思いますが、この点について御見解を伺いたいのであります。
  268. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 義務教育民有化肯定論というのは、私言ったことはありません。それは重大なる認識不足でありますから、ここではっきり申し上げておきます。  やはり義務教育は国が責任を持ってやる、これも前から申し上げているとおりでありまして、教育というものについては、義務教育、小学校、中学校、それから高等学校、大学、おのおの発展段階に応じて国の関与の度合いが違ってきているのはしかるべきである。特に小学校、中学校というような義務教育については国が直接責任を持っておることでありまして、その点については我々はあくまでも国の責任という考えを持ちまして、しっかりやっていかなければならぬ。これを民間の団体が勝手に何でも好きにやれるようにしようなどということを考えたことは一回もありません。  やはり義務教育というものは国民に普遍性を与えて、そして一定レベル以上の子供たちをつくり出していくという考えに基づいておるので、国の大事な仕事だと思っておるのでありまして、それを民有化しようというような考えを一般的に行うなどということは考えておりません。もとより私立は、学校として認められるものはいいわけです。しかし、それは一定の基準、規格というものに合致したものでなければやってはならぬのは今も同じことであります。その点は共産党は重大なる誤解をしておりますから、赤旗でそんなこと書くと国民が惑いますから、直しておいてもらいたいとお願いいたします。
  269. 山原健二郎

    ○山原委員 今の御発言ですが、私はかなり言葉は正確に使うつもりです、間違うときもありますけれども。申し上げましたのは、NHKの「総理は語る」で義務教育民営化論を肯定的にお話しになった。あなたが義務教育民営化論者であると私は言ってないです。そんな間違ったことは私言いませんよ。臨教審の中にはおりますけれどもね。それはそう言っていませんから、その点はそれこそ誤解をされないようにお願いをしたいと思うのです。  時間があと一分ありますから、もうこれでおきますが、最後に、自治大臣、国家公安委員長、おいでになります。私は高知県ですが、野球も相撲もよかったのですけれども、暴力団の抗争が激化しまして、いよいよ近日中には短期決戦をやるかもしれないということで、既に私がこの前予算委員会で御質問申し上げたときに、徹底的な対策を立てるというお話でございましたが、あれから数名の方が亡くなっています。民間人の方も亡くなっています。そういう事態が起こっているわけですが、これについて国家公安委員長、民間人という言葉はおかしいのですけれども、暴力団と関係のない一般市民が被害を受けているという状態でございますが、これについて一言、どういう対策を持っておられるのか、伺っておきたいのです。
  270. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 山口組と一和会との抗争に続きますこういう事件が、まだ高知県におきましてはいろいろ問題があることは私も承知しております。やはり市民生活を保護するという立場におきまして、同時に私は再三申し上げましたように、この機会に暴力団を絶滅するというかたい決意を持ちまして、警察力を動員して頑張ってまいりたいと思います。
  271. 越智伊平

    越智委員長 先ほどの御意見につきましては、文教委員長並びに理事会に諮って決定をいたします。  江田五月君。
  272. 江田五月

    ○江田委員 総理の貴重なお時間を四分間いただきまして、私にとっても非常に貴重な時間ですので、長工場の最後でお疲れかと思いますが、恐縮ですがよろしくお願いします。  総理が最初に総理大臣に就任されたときに、お茶の間直結政治ということをたしか言われましたね。当時私は参議院の方におりまして、たしか予算委員会で、総理からお茶の間へは、これはテレビ時代ですからうまいぐあいに直結をするかもしらぬが、しかしお茶の間から総理の方へは直結しているんだろうかということをお尋ねしたと思うのですが、今のこの法律、これはお茶の間に怨嗟の渦を巻き起こしていると言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、地方自治体が三月議会予算を組むときに、本当にどこも悲鳴を上げてきていると思うのです。そういう一般の人たちの声が一体どう総理に届いておるのかということをまず最初に伺いますが、何分時間が短いもので、次の質問をあわせてお尋ねをして、あわせてお答えをいただきたいと思うのです。  民間の声の中は、確かに総理がおっしゃるとおり、財政は非常に厳しい、そういうときに、こういう厳しいことを国民も耐えていかなければならぬということは理解をしながら――そこまでの理解を持っておる国民もこれまた多いと思うのですね。必ずしもみんな、だれもかれもが国に対して金を出せ、金を出せと言うだけじゃない。しかし、一体今度の法律はどういうことになっておるのか。そういう国の財政事情をある程度理解しながらも、なお今度のこの法律について、大変な反対の声あるいは恨みつらみの声がある。それは、これから先、国と地方との財政負担のあり方というものが一体どうなるかわからないままで、国の方がどんどんと補助金を削って、地方の一般財源があるからいいじゃないかと言われる、これは大変不安だと思うのですね。  そこで、今までのような、金は出すけれども口も出すというやり方ではなくて、こうやって削っていくならそれもそれでいいけれども、それではいっそのこと金も出さないけれども口も出さない、ひとつ大いに地方に自主性を認めてほしいという声はあると私は思うのです。今回のこの法案は、財政のつじつま合わせだけで、そうした国と地方との負担のあり方というものについて、根本的な検討もなく哲学もなく、ただ場当り的に出されているだけじゃないか。そういう場当たり的に出されている今回のあり方について、これではいかぬという声が根底にあって、いろいろ悲鳴が聞こえてきているんだと思うのですね。  考えてみれば、今のこの財政危機というのも、そうしたこれまでの財政構造が問題なんで、その構造にメスを入れずに、ただ財政のつじつま合わせだけでやろうとしたって、これは財政再建にならない。まことにこういう法案は愚劣と言うと恐縮ですが、やはり愚劣な、財政再建に名をかりた法案だと思うのですが、以上二点、お答えください。
  273. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民の茶の間におきましては、私はそういう悪評があるとは思っておりません。なぜならば、これは国民の皆様方に対しては直接何ら影響はないのであって、国と地方との負担区分の話でありまして、国民の皆様方の腹を痛めるとか、不便が出るとか、そういう問題ではないのであります。  それから第二に、国と地方とのいろいろな調整問題については、江田さんのお考え、我々も同感でございます。これはもっと総合的包括的にいろんな面で、税の見直しの場合、あるいはそのほか中央地方の事務の配分あるいは費用負担の問題、そういう問題について見直してしかるべきであると思います。
  274. 江田五月

    ○江田委員 見直してしかるべきだとおっしゃるなら、今回のこの法案は今回限りで、あとは見直すまでこういうことはやらない、こういうお考えになって当然と思いますが、いかがですか。これをお答えいただいて、質問を終わります。
  275. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 将来のことは三省でいろいろ協議もいたしますし、党におきましてもよく検討してまいりたいと思っております。
  276. 江田五月

    ○江田委員 終わります。
  277. 越智伊平

  278. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 中曽根総理はお立ちになったようでありますが、しかし、未来の総理と目せられる竹下大蔵大臣はおられるわけでありますので、まず大蔵大臣にお聞きしたいのであります。  歴代の総理大臣は、それぞれ持ち味のある政策提言であるとかあるいは政治信条であるとか、そういうものをお持ちになっておられたと思うのです。今言われておるニューリーダーの皆さんもそれぞれお持ちになっておられる。宮澤さんは「資産倍増論」を言っておられるようでありますし、あるいは河本さんは「積極財政論」を言われておられる。あるいはまた安倍さんは「創造的外交論」というようなことを言われておられるわけでありますが、私どもお伺いするところでは、竹下大蔵大臣は「日本列島ふるさと論」ということをしばしばお話しになっておられるようであります。お聞きして、非常にいいフィーリングといいますか、そういう感じなんであります。しかし、「日本列島ふるさと論」という言い方でちょっと思い出すのは、田中角榮さんの「日本列島改造論」のことであります。  あの当時、私なんかは市長をしていたわけなんですが、当時、「日本列島改造論」で地方というものに脚光を浴びさせたという点であるとか、あの当時初めて自民党で都市政策大綱というものをつくって都市問題を政策化したというようなことは、地方にあっては私ども一つの注目をした点であったと思うのです。しかし、結局は、地方や都市というものは論じられたけれども、一番大切な自治というものがそこに欠落をしておったという感が深いわけであります。  私は、竹下さんの「日本列島ふるさと論」というのは決してそんなことはないと思うのでありますが、この機会に、自治の本旨というようなものの上に立って、お話しになっておられる「ふるさと論」について、余り長い時間はおかけいただくわけにはいかないのでありますが、御紹介をいただければありがたいと思います。
  279. 竹下登

    竹下国務大臣 私が申しております「日本列島あるさと論」というのは、各地へ講演を頼まれましたりあるいは選挙の応援に参りましたときにささやかに使わしていただく私の持論でございまして、こういう晴れがましい席で御披露するような、中身を十分に整えたものであるなどというおこがましい考え方は持っておりませんことをまず前提に申し上げておきます。  私自身が考えておりましたのは、田中角榮元総理の「日本列島改造論」、その後大平さんのいわゆる「地方の時代」あるいは「田園都市構想」という言葉がございました。そのときに、「列島改造論」からそういう「田園都市構想」へ移っていく経過を、書物を引用しますと長くなりますが、見ておりまして、そうして選挙等で参りますと、「田園都市構想」と書いて真ん中に大平さんの顔がでんと座っておりますと、まさにあの顔は田園都市そのものの顔だというような気がして、ある種の躍動すら私は感じておったことがございます。  やはりふるさとというのは二面性があるのではないか。一つは自治の世界だと思っております。その自治の世界とは、小さく言えば隣近所の人間関係等もその中へ入るでございましょう。この間、大蔵省へ入りました二十五名の新しい人を対象にして、ふるさととは何ぞやと申しましたら、お互い五十嵐さんや私のような地方出身の者は、必ず山とか海とか、ウサギ追いし山もあれば、また小ブナ釣りし川もある、こんな感じでございました。それから都市出身の人というのは、どうしてもあの広場でけんかした思い出とか、あの先生おっかなかったとか、何と申しましょうか、そういういわばコミュニティーとか、お互いの身近な、自治として相談する延長線の問題がふるさと意識に定着しております。その二面性があるから、まずは心の問題と自治の問題からみずからのふるさとを考え、いま一つは、例えば私が五十嵐さんの旭川に行けば、ああ、ここは空気もきれいたし、いいなと感じます。そうすると、日本列島全体がふるさと意識としてある種の意識転換が行われたときに、国を愛する心もまた生じてくるではなかろうかという、ささやかなロマンを語ったにすぎないということを申し上げておきます。
  280. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 結構なお説で、ぜひひとつ竹下大蔵大臣、その「ふるさと論」、自治の世界というものを忘れないで、それは県議二期御経験なされているわけでありますし、地方の問題も極めて詳しいわけでありますから本当にニューリーダーあるいは総理と目せられるという方で、考えてみると地方の政治の経験を持って今まで総理をなされた方はちょっとないわけでありますし、そんな意味では、ぜひひとつそういう持ち味を持ってやってほしいという感じがするわけです。  そう思うと、またそう期待すればなおさら、どうも今度の法案については竹下さんらしくない法案だなというぐあいに思わざるを得ないわけであります。  全国の各地方団体から相当反対の意見書が政府に出されてきていると思います。お聞きしますと、大体三千三百余のうち七、八割くらいの各自治体は、それぞれ議会で議決をして意見書を出しているようであります。同時にまた一方で、総理の諮問機関である地方制度調査会というのがあるわけですね。この地方制度調査会で今まで何次にもわたっていろいろな意見が地方の立場で出されているのでありますが、ことに今回の一律カットの問題に関しては、地方制度調査会としては非常に厳しい、絶対反対だという答申が昨年の暮れ出されていることも御承知のとおりだと思うのです。  こういう地方あるいは地方を考えている有識者寺から非常に反対の機運の強い中で今回のような法案提出に踏み切った、断行したというからには、その間に、地方の団体の代表者であるとかそついう方々とのお話あるいは説得を十分なされた上でこういう御決断をお持ちになったと思うのだか、その辺は大蔵大臣、いかがですか。
  281. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃるとおり東京二十三区も加えて三千三百二十五でございますか、それらの中で今おっしゃったように反対決議あるいは意見書の提出が行われておったことも承知しております。事ほどさように、この考え方を地方の皆さん方に理解をしていただくためには大変な努力をすべき問題であるというふうに考えました。また、諮問機関であります地方制度調査会も御指摘のとおりであります。したがって、これらの問題につきましては、それこそ自治省の大臣初め担当の皆さん方が六団体の方々とのいろいろな意見交換をしたり、そして最終的に政府一体の責任でこれをなしたということでございますので、その間の御苦労に対しては、私は予算調整権を持つ立場から大変に敬意を払っておるというのが実態でございます。  いずれにいたしましても、その中にあって、また財政というのもいわば地方とそして国との二面性を持っておりますものの中で、ぎりぎりの調和をとったというのが今回の措置であると御理解を賜りたいと思う次第であります。
  282. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 さっき「ふるさと論」の中で、自治の本旨といいますか、そういうようなものにも触れてお話があったわけでありますが、今御承知のように、例えば税源配分といいますか、全体的な租税の収入は最初のところでは国が七割で地方が三割なわけですね。しかし、最終のところではこれは逆になって、国が三割で地方では七割歳出をしているという、その関係では国と地方の非常なかかわりというものが各面であるわけであって、いわゆる車の両輪というようなことはそういう中から言われるわけだろうというふうに思うんですが、どうも地方自治体に対する国のこの種の重要な問題を考えたり論議したり決めたりするときに、日ごろはそういうことを言うのだけれども、ちっとも地方をまともな相手として相談をしながら決めるというようなことは行われてない。この点を眺めてみて、私はいつも非常に残念に思っているわけなんです。  例えば自治大臣、これから一年の間にいろいろ協議をして六十一年以降のことについて決めていく、こういうことになって、三省でこれを協議するというわけだが、こういうような問題について協議するときは、当然地方自治体の代表であるとかこういうような方は入れて、一緒になって論議をしながら、そして納得の上で方向を決めていくということであるべきだというふうに思うのだが、関係機関といいますか、何か協議していく機関をつくるわけですから、一体どういう機関を設けて、そこに地方自治体なんかを積極的に参加させていくというような考えがあるのかどうか。ちょっとお考えを聞かせてください。
  283. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 社会保障の協議の問題だと思っておりますが、これは一年以内に結論を出さなければならぬ問題でございます。たびたびお話ししておりますように、大変難しい、しかも重要な問題でございますので、私ども三省の間において、どういう場においてこれを話し合うか、今事務的にその基本的な立場を検討しておりますが、早急にそういうのを構えまして、私ども関係大臣で協議をいたしたい。  その場合に地方団体の意見ということは、どういう機構をつくるかということはまだ私ども考えておりませんので、私どもとしては、そういう場合には地方団体からあらかじめ意見を聞くなりいろいろの方法を講じまして、地方団体と緊密に連絡をとりながらこういう問題の結論を出すように努力をしていきたいと思っております。
  284. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 この前、大臣が鈴木知事と対談なんかなさっておられるわけですね。これは「都道府県展望」に出ているわけでありますが、ここではこう言っているのですよ。「また、昭和六十一年度以降の国庫補助負担率のあり方については、昭和六十一年度の予算編成に向け、改めて検討することとなりますが、この検討の場には、全国知事会をはじめとする地方団体の代表の方々にも加わっていただき生の声をぶつけていただきたいと考えております。」僕はこれでいいと思うのですよ。今のお話、ちょっとそれから見ると少し弱いんじゃないですか。
  285. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今そういう協議の場をどうするかという基本問題で協議を進めておって、これから進めてまいりますが、少なくともこういう場合に、地方団体の意見はあらかじめ十分聞いてまいります。  ただ先生がそういう三省の会談に地方団体を入れるか入れぬかというお話のようでございますが、意見を聞くことは確実に聞きます。しかし、その場がどういうふうになるかということは、機構の相談の場所がまだ決まっておりませんので、私としては、例えば都の知事さんともいろいろ話しまして、まあ地方行政の大先輩でございますので、そういう意見も十分踏まえて会議に臨みますが、そこの会議に入れるかどうかということにつきましてはまだ今のところ決定した考えは持っておりません。
  286. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 こういうことで余り時間を長くとりたくないのですが、しかし、今読みましたように明確に、知事会の会長の鈴木さんとの対談で、この「都道府県展望」というのはもう全国の地方自治体にみんな行っている機関誌みたいなものですが、そこで述べているわけですからね。「この検討の場には、全国知事会をはじめとする地方団体の代表の方々にも加わっていただき生の声をぶつけていただきたいと考えております。」こう言っておるわけでしょう。そう言っておいて今のようなことをまた言うから、不信感が次々に出てくるのですよ。自治省はもっとしっかりしてもらわなければ困ると思うんだ、こういうことではね。  だから、それはやはり今のようなことでなくて、それはいろいろお話ししている間に、何と言ったって自分の意思が通らなかったということもあるかもしれぬが、やはり地方を代表する毅然たる気持ちで自治省はやっていってもらわなければいかぬわけで、短い答弁でいいですが、もう少しきりっとしたことを話してください。
  287. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 三者会談は、こういう問題を解決するために絶対やらなければならぬ三省の間の問題でございます。そういう場合におきまして地方団体の意見が極めて必要でございますので、少なくとも自治省がそういう態度を決める場合には地方団体の意見も十分聞きますし、それから三者会談でどうするかということは、協議の法則、やり方が決まりました場合において決定されると思いますから、私の気持ちはぜひ地方団体の意見も入れたい、こういうことでございます。
  288. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これは尊敬する石原自治省事務次官がある月刊誌の対談で述べているところなんです。僕はもっともだと思うから言うのです。「結局、私どもの役所は地方自治を守るという役割を担っているが、全体としての国政を円滑に運営するための政府機構の一部であることから来る制約は否定できない。」これは僕はそうだと思うんですね。だから僕はやはり、自治省として一生懸命やっていただいているのはわかるが、こういう国と地方のさまざまな根幹的な関係にかかわる問題については、本来地方団体の代表を入れて、一緒に平場でちゃんと話し合うようにしなければならぬと思うのですよ。  それはまさか、地方自治の本旨というものの中で、国と地方の関係が上下、従属の関係だなんということをお思いになっていることはもちろんないんだろうと思いますがね。これはさっき大蔵大臣から自治の本旨の話がちょっと出ましたが、上下の関係か、あるいは国と地方自治体というものは横並びの、いわばお互いに対等、独立した関係で結び合っているというものなのか、大蔵大臣、どうですか。
  289. 竹下登

    竹下国務大臣 もう十年も前のことになりますが、私は官房長官をやめましてから建設大直になったことがあります。そのときに、最初職員に訓示をしてくれという話がありましたときに、国家公務員たる者、いささかも地方公務員の上に位するなどということを思った途端に地方自治の本旨にもとることになるから、それをまず気をつけてもらいたいということを申しました。あるいは、県庁職員また市町村職員に対してそうであってはならぬ。あくまでも、大きく分けて国と地方団体といいますならば、まさに対等であるべきものであると考えております。
  290. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうであるべきだと思います。僕は少し安心をしたのでありますが、そうであれば、自治省と話をすれば、三省で話をすればそれは地方の声を代表したものであるからそれでいいというのではなくて、地方団体の代表六団体があるわけですから、やはり直接その代表とでも大事な話はきちっとして、いろいろ地方にもお願いをしなければ、負担をかけていかなければならぬことがあるとすればなおさらのこと、そこで十分な話し合いと理解が成り立たない以上は、それは押しつけるということに結果としてはなっていくのではないかと私は思うのです。  昭和五十六年であったと思うのですが、僕は非常に残念なことをしたと思う。あのとき自治省は地方自治法の一部改正を考えた。そのほかいろいろ、例えば機関委任事務の問題について地方の議会で監査をすることができるようにとか、議会で十分に論議できるようにだとか、そういうこともあわせながら、同時に、地方団体の代表の意見を聞くべきだということを含めた改正案を出そうとした。つまり、国と地方の関係改善として、地方自治体の連合組織、これは全国知事会など地方六団体を言うわけでありますが、これに対し、地方自治体またはその機関が処理する事務に関する法令地方自治体負担を伴う法令その他地方自治に影響を及ぼす法令の制定、改廃について内閣、国会への意見提出権を与え、これまでの陳情、要望を法的に根拠づけるとともに、内閣に対し、意見趣旨を尊重して必要な措置を構ずるよう努力規定を設けようとする内容のものであったわけです。  我々は、実はこれは非常に期待をしたのです。全国の地方自治体もみんな熱い目でこれを見た。自治省の皆さんも一生懸命努力をした。ところが各省がこれに対して大変な抵抗をしたわけですね、反対をした。結局は日の目を見なかった。こんなものができないで行政改革をどうやって進めていけるかと当時僕は考えたものなんでありますが、これを出し直してはどうですか、本当に。どうですか自治大臣
  291. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今の三年前の問題につきましては、後ほど政府委員行政局長から答弁させます。  それから、さっき先生が地方公共団体の人を入れろということで、私、入れられるか入れられぬか、いろいろと言いましたけれども、閣僚会議というのは閣僚だけの会議であります。私の私見ですよ。これはまだほかの大臣とも話し合っておりませんが、その下に有識者なりそういう会議をつくりまして、そこへ地方団体のそういう方を入れたい。これは私の今の私見でございますから、一応さっきのに関連してお答えいたしました。  行政局長からその当時の経過をちょっと申し上げます。
  292. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 当時の経過は要らないから、出し直さないかということだけでいいのです。
  293. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 私も、監査委員、監査制度が国の事務には及ばないとか、そういう点はよく知っております。よく知っておりますから、機会あればそういうこともぜひ、今後の権限移譲の問題等が六、七月ごろ答申が出ることになっておりますから、そういう機会にまた地方政治の問題がいろいろございますので、地方制度調査会の意見を聞きながら、ぜひ先生の言われた監査委員とかそういう地方の問題について検討することは私もしたいと思っております。
  294. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 総務庁長官、元自治大臣でもありますし、非常にこういうことは詳しいわけでありますが、しかし各省で大変な抵抗がこれにはあるわけで、まとめていく上では、総務庁長官あたりの大変な協力や努力をいただかなくてはなかなかまとめていけないのではないかと僕は思うのですが、御意見いかがですか。
  295. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 五十六年に自治省がそういう考え方を持って各省と折衝して、大変な論争になって、結局できないということで今日に至っているわけでございます。  さて、それをどうするかということでございますが、五十嵐さんのおっしゃるのも一つの御意見だろうと思います。ただ、これはやはり国政全般の立場で論議しなければなりません。そこでこれについて、機関委任事務の問題とかあるいは許認可の問題あるいは補助金の問題、これらすべて行革審で改めて御審議をしていただいておりますので、その御意見がどういう御意見が出ますか、それらを見た上で検討いたしてまいりたい、かように思います。
  296. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 時間がおりませんから先に進みたいと思います。  大蔵大臣政府税調は結局どうなんですか、従前言われていたのでは四月にというようなことを言われていたのですが、総理答弁では今国会終了後というようなお話もあるようでありますが、その辺はどうなんですか。
  297. 竹下登

    竹下国務大臣 結論から申し上げますと、まだ決めておるわけではございません。最初、可能な限り早く、こういうことを申しておりましたが、私ども今部内で折々議論しておりますのは、さて何が土台になるかといいますと、五十八年の暮れに出ました中期答申が一つございます。それから六十年度税制のあり方についての答申が一つございますが、その上にやはり御議論いただく各方面の意見とは何ぞやということになりますと、まず国会意見ありき。そうなると、いま少し国会議論等を通じて、また一方、国会で各党の幹事長、書記長さんなどの政策レベルに対するいろいろな申し合わせ等も残っておりますので、それらの推移を見ながら諮問の時期は決めなければならぬのかな、こんな感じで現在おります。     〔越智委員長退席、中川(秀)委員長代理     着席〕
  298. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いずれにいたしましても、今年は大型間接税の導入を初め、総理の言葉で言えば戦後税制の抜本的な検討をしようとしているわけであります。そうなりますと、これはもちろん直間比率の是正というものが正面に来るわけでありますから、当然国と地方の税源配分の問題であるとか、あるいは地方交付税制度の問題であるとか、あるいは一方で御検討いただいている補助金制度のあり方の問題であるとか、こういう問題が、個個の問題としてではなくて総合的な問題として議論の対象に正面から出てくることになるのではないか。一方で、これは機関委任事務の問題は御検討を続けていただいているわけでありますし、これを初めとして事務配分の問題もいろいろ論議になる。国と地方に関する戦後の今まで続いてきた体制というものを基本的に見直すような大きな議論、検討というものが行われることになってくると判断をしていいのかどうか。この辺は大蔵大臣いかがですか。
  299. 竹下登

    竹下国務大臣 税制調査会で、今五十嵐さんおっしゃいましたような問題も正確にお伝えする必要があると思っておりますが、税源配分という問題になってまいりますと、交付税から補助金から、今おっしゃいました機関委任事務から、あるいは地方税そのものから、譲与税から、こういうことになってみますと、非常に広範な角度から議論されなければいけない問題であろうと思っておりますものの、今のところいわばそういう方向で議論があるでございましょうと言う段階ではなかろう。言ってみれば、そういう議論を正確に伝えて、税制調査会の主体性の中で議論していただこうということでございますから、あらかじめ予見を与えるようなお答えは差し控えさせていただいておるというのが現状でございます。
  300. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それは、税調としての絡みでいうとそういうことかもしれませんが、僕がお聞きしているのは、政府税調というよりは大蔵大臣としてのお考えをちょっとお聞きしているわけで、考えてみると、それはただ税制の問題だけひとり走りしていくということにはならぬわけでありますから、それは直間比率が変わってくるということになれば地方交付税の基礎になる三税がまず大きく変わってくるわけでありますし、何をどう考えてみても、いずれもがっちり入り組んで構造的にできているわけでありますから全面的な議論というものに展開せざるを得ないということになるのだろうと思うのですが、大蔵大臣、どうですか。
  301. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃる趣旨は十分に理解をできますが、今さればといって、直間比率見直しという言葉は臨調で一度使われた言葉でございますが、税制調査会においては、直間比率とは結果として生ずるものであるから税体系の見直しという言葉に一応統一しよう、こういうことになっておりますが、税体系の見直しをした場合に、今おっしゃったような方向の答えが出ようとすれば当然税源配分の問題につながってまいるという事実認識は私にもございますが、いわば直間の形が初めから変わっていくであろうという前提の上に今立っていないわけでございますから、今度の税制調査会に御諮問申し上げるのは、戦後以来の、シャウプ税制以来の税制そのものを公正、公平、簡素、選択並びに活力という点から審議してくださいと言っておりますので、直間比率を変えるために審議してくれ、こう言っているわけじゃございませんので、今にわかにそういう論理になるでございましょうということは言いにくい問題ではないかという考え方であります。
  302. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そんなことはないと思いますね。これは今までの議論からいっても国民的常識からいっても、今税制の抜本的な議論というのはまさにそこでないですか。そこのところを、それこそさっきの話じゃないけれども、率直に国民にある程度こういう場をかりてお話をしてもらわなければやはりうまくないわけで、全然あしたのこともこれは真っ暗でわからぬということではうまくないと思いますね。今までそれは、各種の税に関する議論の中心はまさにそこで来ているわけですから。だからそれを前提にして僕は今ちょっとお聞きしているわけで、もうちょっとこれはお答えをいただいた方がいいんじゃないでしょうか。
  303. 竹下登

    竹下国務大臣 もとより、じゃそのシャウプ勧告以来のひずみとは何ぞや、ゆがみとは何ぞやというところにいろいろな議論がございまして、結果としてではございますが、直接税と間接税との比率というものについての検討も指摘されておることはもとよりでございますが、今の場合は、言ってみれば私ども国会における議論等を正確に伝えて、予見を与えることなく税制調査会で抜本的な審議をしてもらおうという考え方に立っておりますので、税体系の見直しの中で恐らくそれは交付税の基礎にまで響いてくるであろうと思うということを初めから前提に諮問するというわけにもまいらないじゃなかろうかな。議論としてそういう議論が出るということは、五十嵐さんの議論も正確に伝えますだけに私はあり得る議論だと思いますけれども、やはりあらゆる予見を挟まないで税調の審議を煩わそうという考え方に立っておるものですから、この辺がお答えの限界かな、こう思っておるところであります。
  304. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今のことでありますから、したがって、それじゃちょっと角度を変えまして、仮に大型間接税等が導入されることを中心として直間比率が変わるというようなことになった場合に、それに関連して、国と地方の税源配分であるとかあるいは地方交付税制度であるとか、この絡みでその他補助金の問題もそうだし、あるいは機関委任事務もそうだし、そういう総合的な検討というものに触れざるを得ないというように思われるが、直間比率が大きく変わるとすればそう思われるが、それは見通しとしてはどうですか。それはそういうものだか、そういうものでないかということでいいんですよ。
  305. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる間接税というものは――今の場合所得税、法人税と、酒税は間接税でございますけれども、言ってみれば交付税の基礎に他の物品税等はなっていないということも事実でございますだけに、税体系の見直しの中でそういう議論の展開が行われる可能性は私もあると思っております。
  306. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 自治大臣、自治省は六十年度、地方自治制度の総点検というものを今年度の重点施策として実施するというようなことが伝えられておるわけであります。ある報道によりますと、地方自治法の全面的な見直しを含めて戦後地方自治制度の総点検を行う、こういう報道をしている向きもあるわけであります。自治省に聞いてみると、そこまでは考えていないんだというお話でもありますが、しかし、確かに今大蔵大臣お話し合いをしたところでも明らかなように、税制の論議というものが進んでいくと、その絡みで国と地方とのかかわりの非常に抜本的な変革というものに論議が展開をしていく可能性は当然考えられるということでもあろうと思います。一方では、機関委任事務の問題もその整理について御検討いただいているようでありますから、これらの答申も近々出てくると思いますし、あるいは許認可の制度もそうであろうと思います。さまざまな問題が、こう進んでいく。  それは、今度のこの一括法案でわかるように、大変な時代に地方は置かれてきているわけでありますから、したがって、もし今地方自治制度の総点検を自治省が行うということになるとすれば、まさにこの危機的な状況の中で、地方自治の本旨というものの上に立ってどうやって地方をしっかり守っていくか、地方自治の本旨に立ってどうそれをさらに発展させていくことができるかということから、それは全面的な防衛の視点からの点検というようなものに思われる。もちろんそのほかに、新しい時代の要請といいますか、そういう状況を背景にしての御検討もあろうとは思うが、そういうようなことで検討すると受け取っていいですか、どうですか。
  307. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 ただいまの、自治制度の根本的改革を行うかという問題でございますが、ちょうどことしで御承知のように自治制度四十年でございまして、一応定着をしてまいりました。しかし、最近の状況を見ておりますと、高齢化はどんどん進む、経済のスピードというのは鈍化してくる、住民のニーズというのは非常に多様化してくる。だから、我々の地方自治を取り巻く環境というのは大変昔と違って複雑なデリケートな問題があるわけであります。そういうことに際しても、地方自治の活性化といいますか、活力ある地方自治をどういうふうにやっていくか、それを、中長期的観点に立ってどういうふうにやるかということも自治省としては研究しなければならぬ問題であると私は考えております。  そういう意味におきまして、私は、地方制度調査会あるいはその他の地方団体の意見を聞きながら、時代の要請にマッチするのに一番問題の点がどういう点であるか、そういう点を十分検討いたしましてこの自治の充実を図っていくということでございまして、ただそのお話、今一般的なことを申し上げたのでありますが、それについては地方税源の確保、国と地方との事務の分担、税源の配分とか、いろいろの問題が出てまいります。そういう問題もあわせまして、税の問題は税制調査会、地方制度の問題は地方制度調査会の御意見等を聞きながら私は対処してまいりたいと思っております。
  308. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ひとつ自治大臣、しっかり頑張ってほしいと思うのです。今のような状況では、どんどんとにかくやられっ放しということになっていくような不安が地方には大変大きいわけでありますから、一層の御努力をいただきたいと思うのです。  さて、今度のこの一括削減問題を中心とする地方税制対策の問題について、自治省のある大幹部は、先ごろのある月刊誌でそのときの状況を率直にこう述べているわけです。「最終的には地方の言い分は正しいが、このままでは予算が組めないというので六十年度予算においては補助率の引き下げを行うという裁定がなされ、一応この問題は決着を見た。」そこで三省の覚書が交わされたということだろうと思うのですが、地方の言い分は正しいが、このままでは予算が組めぬ、何とか頼むということでこういうことになったと率直なお話であります。  細かいことはいいのですが、大筋でいえばややそんなものだということかどうか、自治大臣、どうですか。
  309. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今の地方の立場からいいますと、補助金整理合理化されることを地方でも希望しております。ただ一律カットは別ですよ。補助金整理合理化ということは地方の立場でもやらなければならないという考えでございましたが、厳しい財政状況下において、一年限りで、金は交付税と地方公債で負担するからこれをやってもらいたいという財政上の制約もございまして、私どもはこういう措置をとらざるを得なかったということが真相でございます。
  310. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 地方の言い分は正しいが、このままでは予算が組めないということで往生じたと言っておるわけで、大蔵大臣から言ってもややそんなことですね、大筋で言えば。
  311. 竹下登

    竹下国務大臣 なかなか予算も組みにくい、この際、制度、施策の根本にさかのぼっていわば負担の問題も話し合おうじゃございませんかということで、最終的に政府一体の責任で合意に達したものだ、やはり正確にいえばそう言わざるを得ないと思っております。
  312. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今度の法案趣旨のところに書いてある文章を見てみても、趣旨説明では、国の財政収支改善財政資金効率的使用ということになっているわけですね。今のお話を聞いても、大幹部の言う御趣旨はややそんなことだろう、だれが見てもまたそういうことであろうと思うのですが、しかし、こういう地方への負担転嫁を専ら目的として国家補助金の一律削減というのは、地財法に違反しませんか。  地方財政法の第二条二項は「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」こう言っておるわけでしょう。しかも、専ら国の財政の都合で地方の補助金を切るということは、しかも負担金ですから、おかしいのではないですか。
  313. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今の問題ですけれども、国の財政上の都合によって地方の補助金の一括削減をやったのはおかしいじゃないかという御意見でございます。  地方財政法の二条に違反するのではないかということでございますが、今度の今御審議をいただいております法案の中にも地方に対する財政金融の措置を講じますということを書いておりますし、それから、私どもがこの問題の最終的な決定の際におきましては、これによって足らなくなってくる地方に対しては交付税と建設公債によって完全に補てんするという約束ができましたので、私はそういう二点から、地方に負担を転嫁してはならないという法律には反しないというふうに考えております。
  314. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり、その財源が補てんされるということだからということですね。しかし、よくお話をお聞きしましても、完全に補てんしている、完全に補てんしているというお話なんだけれども、五千八百億のうち、なるほど一千億は特例で交付税が上積みになる。これは確かにその補てんと言えるでしょうね。しかし、あと四千八百億は建設公債ということですから、建設地方債を認めるということが一体完全な補てんということに該当するのかどうかということには非常に疑問があるわけですよ。もっともそのうちで、非公共の分については千億を除いて千六百億だから、そのうちの千億について六十六年以降交付税で措置するということについて今検討していこうということになっているわけだね。しかし、これはつまりペンディングということであって、決まったということではないでしょう。まして六百億の不交付団体については何もないわけですからね。公共の面の三千二百億は、これは全くいずれも建設地方債でやっていこうということなわけです。このうちの二千億の半分について交付税で考えていこうということがついてはいるものの、全体を通じて措置の明確になっているのは、五千八百億のうちの二千億だ。あとは金を借りろということだけであって、借りたものは戻さなければいかぬのですから、これを完全な措置なんという言い方でいいのですか。
  315. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 完全に補てんしているということは、その借金を返すべきときにおきまして、その元金あるいは利子というものについて交付税で裏づけをしてやる、こういう意味でございます。
  316. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 交付税で補てんするというのは全体でないでしょう。四千八百億全体でないでしょう。
  317. 土田栄作

    ○土田政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、まず六十年度につきましては一千億の地方交付税の増額と四千八百億の建設地方債で穴埋めをいたしますので、六十年度については各地方団体の財政運営に穴はあかないということになります。  六十一年度以降、この四千八百億の建設地方債の元利償還に対する地方財政措置がどうであるかという問題であろうと思いますけれども、これらにつきましては、まず個々の団体につきましては地方交付税の基準財政需要額の算定を通じまして適切に措置をいたします。  それから、それでは国からこの四千八百億に対してどれだけの金がもらえるか、こういう問題になろうかと思いますけれども、四千八百億のうち、経常経費系統のものは千六百億でございます。この千六百億のうち交付団体分の一千億に相当するものにつきましては、これは昭和六十六年度以降の地方交付税に暫定的に加算するということにいたしておりますけれども、実はこの分につきましては、国庫補助負担率見直しの結果、再度自治、大蔵両省間で調整しなければいけないということになっております。それから六百億の不交付団体分でございますけれども、これにつきましては、国庫補助金のカットというものを交付税で受けるといいますか、交付措置をいたしますときには、不交付団体分に対する財政措置といいますのはそれぞれの団体の税源で賄うということにならざるを得ないというふうに考えております。(五十嵐委員「国からないということでしょう」と呼ぶ)はい。  それからもう一つ、投資的経費系統でございますけれども、これは、国庫補助金のカット枠に見合いますものといいますのは二千億でございます。この二千億につきましては全額地方債で充て、その元利償還費につきまして交付税上一〇〇%措置いたしますけれども、国からもらいますのは委員御指摘のとおり二分の一でございます。ただ、これを二分の一といたします理由でございますけれども……(五十嵐委員「理由はいいよ」と呼ぶ)よろしゅうございますか。  それからもう一つ、この二千億を財源としまして事業費を拡大する。事業量が拡大するということに伴います千二百億の地方負担がございます。これは当然地方が負担すべきものということで、私どもとしてはこの四千八百億のアロケにつきましては一応理論づけが十分行われているというふうに考えております。
  318. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それは今お話があったように、結局は地方が自弁しなければだめだという金額が三千八百億あるわけですよ。そうでしょう。しかし、そのうちの一千億はペンディングですけれども。そんな不完全な措置にしておいて、どうして地財法に違反しないと言えるんですか。専ら国の財政上の都合で地方に負担を転嫁して、しかもその穴埋めについても今のようなことなんです。さっき言ったように、地方財政法では、地方の財政に国の都合で負担を転嫁してはいけないということが明記されているわけですね。これは僕はやっぱり問題だと思いますよ。こんなことでこういう法案を通すということにはとてもならぬ。地方が納得がいかないのは当たり前の話であって、この種のことが通ったら、次から次に地財法に反する、その精神を無視するような法案が出てくることを非常に懸念するのはやはり当たり前だというふうに思うのです。  最後に厚生大臣にお聞きしたいと思うのですが、今度の経過をずっと見て感ずるのは、事業の所管の省が、大臣が非常に弱いということなんですよ。一体どうしてそれぞれが目の色変えてその制度をきちっと守ろうとしないのか。全く今度の経過ではその点が、まあ大蔵省に対しても我々は非常に問題を感ずるが、しかし担当の各省庁に対しても非常に不満を持たざるを得ないのです。何の哲学もないのです。本来こういうことのあるべき原点だとか原則だとかということに戻って、十分に論議をして方針を決めていくべきことでしょう。簡単に一括削減に応じていく態度というのは、全く行政責任を放棄しているものだと思うのです。殊に、生活保護の問題なんというのは、憲法二十五条の上に立って長い間の運動やあるいは歴代の大臣が苦労しながらそれを築き上げてきたものなんです。  僕はこの間、古い資料を見せていただいて感心したことがあるのです。それは昭和二十九年だ。やはりそのときも大変な財政難で、当時生活保護の補助を二分の一にカットしよう、こういうことを考えたときがあった。それでこれに対して、当時の山縣厚生大臣は真っ向から反対をしたわけです。彼は自分の職を賭してこれに反対をしたんだ。彼が辞任をしたときに、新聞に辞任の弁というのが載っている。ちょっと聞いてくださいよ。   厚生行政の基本線である生活保護費、児童保護費の国庫負担率の引下げ反対、民間雇用者の恩給ともいうべき厚生年金保険給付費の国庫負担減額の三つについてきょう吉田総理、緒方副総理によく話した。この問題は必ずこちらの要求通り復活する。これは断言できる。   一年三カ月の在任中信念を以って終始できたことはうれしい。特にこの厚生行政の基本線が守られたことは最大の努力を払っただけにうれしい。今後は自分のまいたこの種の育ち方を見守ってゆく。「自分のまいたこの種の育ち方を見守ってゆく。」こう言っているのですよ。   厚生行政は地味といわれるだけあってたしかに低い。それだけに一歩一歩盛りあがるよう大臣以下全庁員が団結する必要がある。こんどの復活要求問題では全庁員が実によく団結してくれたことはうれしい。こんどの辞任は犠牲かだって……まあ人柱というところかな。厚生行政には人柱が必要だよ……こう述べて、自分の職のかわりにこの制度を当時彼は守ったんだ。そういう気概のかけらでも僕は今度の経過の中では見るわけにいかぬのです。おかしいじゃないですか。そういう意味では、それぞれの事業所管の各省庁でぜひひとつ頑張ってほしいというふうに心から思いますが、最後に厚生大臣、決意のほどを一言。
  319. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 今回の措置に当たりましては、私どもは、特に生活保護の適正な実施に支障が生じないようにということが物事の考え方の基本でございます。したがいまして、後ほど申し上げますけれども、現在と違います昭和二十九年におきましては、生活保護法が二十五年に制定されて間もなくでございました。また、もろもろの社会保障施策も整備の緒についたばっかりでありまして、そのような瞬間に補助率を八割から一挙に五割に削減する、先生ただいま御指摘のとおりでございましたので、厚生省としては賛成しがたい状況にあったわけでございます。  しかし今回は、社会福祉政策の拡充強化、特に国民皆年金、皆保険の実現等取り巻く社会保障施策の状況も大きく異なっていること、あるいはまた補助率カットに、伴います手当てがなされた等のことから、最初に申し上げましたように、実質的な水準が下がることがないという確信のもとに判断を下したわけでございます。
  320. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうもありがとうございました。
  321. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 田中克彦君。
  322. 田中克彦

    田中(克)委員 今回の補助金一括法案、大変広範な省庁に関係しておりますし、またそれがゆえに、これが一括法で出された以上連合審査の必要が強調されて、きょうの機会を迎えたわけでありますが、私は文教委員会に所属をいたしておりますので、特に限られた時間でありますから、文教行政の立場から、この一括法が与える影響やその扱い等について政府当局の見解をただしてまいりたい、このように思っているわけであります。  質問の前提になります関係から若干申し上げておきたい、こう思うわけでありますが、ここ数年の間の政府予算の編成の傾向、またこの中に占める補助金比率、こういうものの推移を見ますと、特に昭和五十五年、四十二兆五千八百八十八億だった当初予算に対しまして補助金の額というのは十三兆八千五百二十億、こういうことでありまして、その比率は三二・五%であります。五十九年につきましては、五十兆六千二百七十二億の当初予算に占めるこの補助金比率というのは二八・八%。こう年々実は補助金比率も落ち込んできております。六十年度の予算につきましては、もう既にいろいろ言われておりますように、補助金につきましては十四兆四千三百一億と、昨年度に比べましてさらに〇・九%落ち込むということでありますが、その昨年度は、御承知のように大蔵省も予算編成の際に大変苦労いたしまして、件数にして千二百三十九件、金額にして七千八百四十八億円、過去最大の補助金整理だった、こう言われるくらいにこの補助金を切ったわけであります。医療保険、児童手当、育英奨励制度、私大の補助、こういうものが主なものでありますけれども、それをことしはさらにこの一括法によって切り下げて、このような予算編成になってその額というのは十四兆四千三百一億、こういうことであります。  そこで、この補助金の構成比を見ますと、五十九年度予算では社会保障関係で三六・三%、文教、科学の振興の関係で二三・二%、一般公共事業で二〇・七%であります。つまり、この三つの補助金を合わせると全体の補助金の八〇・二%ということで、補助金の大半はこの三つの部門の補助金である、こういう傾向にあります。しかも、二年連続して補助金が減額されたというのは戦後史上がってなかったことでもあります。  そういう前提に立って考えてみまするときに、私は思うわけでありますが、けさから議論されておりますように、この補助金を切るという影響が勢い社会保障関係あるいは文教関係公共事業関係、こういうものに集中せざるを得ない、こういうことであります。特に今問題になっております教育改革、大変中心的な課題でありますけれども、そのことが特に強調されているときに、単に補助金の制度からだけの削減で、補助金に最も依存をしている教育に大きく手がつけられている、このことは大変問題であろう、こう思うのです。  そこで私は、そのことに対する文部省の、この事態をどう受けとめているかについて、まず文部大臣の感想をお聞きをしたい、こう思います。
  323. 松永光

    ○松永国務大臣 国の財政事情極めて厳しい状況でありますので、先生御指摘のように、昨年、一昨年、その前あたりから、随分補助金等削減を受けてきたわけでありますけれども、国全体の財政事情等考えれば、教育水準の維持を図る、あるいは父兄負担の増額をできるだけなされないような措置をする等々のことを十分考えながら、やむを得ざる措置として今回の措置もお願いすることにしたわけであります。  ただ、そういう状況ではありますけれども、先生御承知のとおり、六十年度予算では、四十人学級の推進あるいは私学助成につきましては削減を受けずに前年度同額、あるいは科学研究費につきましては増額、留学生関係の経費につきましても増額等々の予算を確保して、そして文教施策の推進を図るべく努力をし、ある程度そういう方向で予算が組めたわけであります。これからもまた厳しい状況は続くと思いますけれども、いろいろ知恵を絞って、必要な施策が進んでいくように私どもは全力で頑張っていかなければならぬ、こう思っておる次第でございます。
  324. 田中克彦

    田中(克)委員 後から国庫負担金制度等の問題に触れて文教予算のことを詳しくお伺いをしてまいりますから、今の文部大臣の答弁に私は承服はできませんけれども、同時に、大蔵大臣にお伺いをしたい、こう思うわけです。  今回の予算編成の中で、特に防衛費、それから経済開発援助あるいはエネルギー対策、こういう六項目についてだけは特別枠で、ここへは全然手をつけていない。そして、今までマイナスシーリングということでやってきた予算編成をことしは要求基準という言葉に直して概算要求をさせたということからこの作業は始まっているわけでありますけれども、これだけ補助金を切るために、いわばその特別枠として残されたこの六項目、何としてもここに重点が置かれたから、ここを聖域としてここへは手をつけない。むしろ増額をさしたから、言われておりますように、防衛比はGNPの一%を突破するかもしれないという議論が大変続いています。経済開発援助費等についても、ほかの予算はみんな昨年をわずかに上回るかマイナスという状況の中で、ここだけは軍事費を上回るパーセントで伸びている事実もあるわけであります。こういうことになりますと、いわばこの予算を浮かすための手だてとして今回の補助金一括法案というものが出てきている、そしてその肩がわりを地方に転嫁をさしている、こういう性格が今回の一括法案の率直に私が受けとめている性格だ、こういうふうに考えるわけでありますが、この点については大蔵大臣、いかがでございましょう。
  325. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、予算編成に当たりましては概算要求基準を設けました。これは御案内のとおり、いわば国庫債務負担行為に対するところの現金化の時期の来ておりますものあるいは人件費あるいは年金等々を除外いたしました後の、いわば経常的経費一〇%、そして投資的経費五%ということを各省にお願いして、それは各省の方が一番詳しいわけでございますから、その中でそれぞれの優先順位を決めて概算要求をまず出してもらったというところから始まるわけであります。  そうしてその経緯におきまして、なお予算編成までの間に何とか一般歳出を前年度以下にしたいという気持ちがあったことも事実でございます。いわば税を見積もりますならば、その三二%は地方交付税になりますし、そして国債費というのは利払いでございますから、これまた待ったなしである。そこで一般歳出に着目をいたしまして、これをゼロにしていこう、それがためには、やはり制度、施策の根源にさかのぼろう、こういうことからして、この制度、施策の根源にさかのぼった結果、今日補助率問題について御審議をいただいておるということであります。  そして防衛費につきましては、もとよりこれも聖域であったわけではございませんが、端的に申しますならば、他の諸施策とのバランス上ぎりぎりの調和点ということがこの数字であるというふうに、防衛費につきましては御理解をいただきたいというふうに考えるわけであります。エネルギーも、またいわゆる海外経済協力も、もとより聖域として考えておったわけではございません。一つの国際的な約束等に対して、これまたぎりぎりの予算調整作業を行った結果としてそうなっておる。  だから、今いみじくも田中さんがおっしゃいましたように、一面、それだけのものを浮かすためにこちらの補助率カットを持っていったか、こういう見方も客観性の中で成り立ち得る一つの見方だと私は思いますが、本来のあるべきものを一つ一つを精査しまして、ぎりぎりの調和点を求めた結果がそうなっておるというふうに御理解をいただきたいというので、一生懸命お願いをしておるということでございます。
  326. 田中克彦

    田中(克)委員 あわせて大蔵大臣に伺っておきたいわけですが、八月になると来年度の概算要求を始めなければならないということで、先ほどからその考え方についても、暫定的な一カ年の措置を一年かかって詰める、でき得れば八月までにその話が詰まることが望ましいということを大蔵大臣は先ほどの答弁でおっしゃっている。ことしの場合、三十二兆六千億くらいに一般歳出がなっていると思うわけですが、来年度仮に、今言うような国債費あるいはまた地方交付税を差し引いた一般歳出について、さらに経費の節減を図っていくという予算編成方針を堅持するとすれば、今以上に削ることは大変難しいということをほかの機会にも答弁としておっしゃっている。来年、今の制度をさらに前進をさせて、いわば政府の立場からいうぜい肉を切りたい、圧縮をしていきたい、こういう考え方はお持ちですか。
  327. 竹下登

    竹下国務大臣 これは十二月二十九日でございましたか、予算の概算閣議が終わりましたときに記者会見をいたしましたら、質問がありまして、本当に六十一年度以降もこのような方針を貫くか、こういう趣旨の質問でありました。そのときの私の偽らざる心境といたしましては、もう搾っても一滴も出ない、こんな印象を持っておりましたので、それは非常に難しいことだと思うというふうに答えたと同時に、まさにアズ・スーン・アズ、これではいけないなと思いまして、もう一度みずからの心に言い聞かして、鬼と言われようともさらにそういう厳しい歳出削減の気持ちを持ち続けなければならぬというので、静かにそれを訂正をいたしたわけであります。  それが実感でありますが、今日もなお、前年同額以下に一般歳出を抑えるということの難しさは十分承知しておりますものの、まだ方針を決めたわけではございませんが、概算要求時点からいずれ厳しいものにならざるを得ないということは、みずからの心に言い聞かしておるというのが率直な現在の心境であります。
  328. 田中克彦

    田中(克)委員 本会議で、本案の提案趣旨説明の際の質問に答えまして、総理も「増税なき財政再建」は堅持をするということを確認をされております。しかも今、来年度の予算編成については大変厳しいということも大蔵大臣はお認めになっている。そういう状況の中で、この一括法審議の状況を踏まえて来年度のあり方を決めていく、こうおっしゃっておりますので、私は、この事態を踏まえての来年度の予算編成というものに大きな注目を寄せていきたい、こう思いますので、その鮮やかなお手並みを拝見をいたしたい、こんなふうに思っておるわけであります。  そこで、文部大臣にお伺いをするわけでありますが、実は軍事予算の際によく議論になったのは、例のGNP一%問題であります。私はさっきから申し上げておりますように、我が国として、国民として最も必要なもの、それはいろいろな部面、いろいろな分野にあるでありましょうけれども、やはり教育は百年の大計とよく言われて、将来を見て考えていかなければならぬ、こういう性格のものだというふうに思っております。そこで、公教育にかけておる費用とGNPの関係をちょっと指摘をしておきたいと思うのです。  文部省の所管の合計でいきますと、五兆一千二十一億六千万であります。地方自治体が教育費で負担をしているのは、これは推計でありますけれども、十兆一千五百三十三億であります。この比率は、構成比で国が三三・四、自治体が六六・六、率直に申し上げますと、国が一に対して地方自治体が一・九九、約二ですね。要するに国の倍の公教育に対する費用を地方自治体が現在負担している。これは昨年の数字であります。こういう現実をまずしっかりと踏まえてもらいたいと私は思うのです。  この両方を合わせた十五兆二千五百五十四億六千万、これが公教育にかけている費用でありますが、GNPが二百九十六兆としますと、この比率は五・一六%となるわけであります。ところが、ユネスコの八二年の文化統計によれば、ソビエトの場合は七・二、アメリカが六・四。ともに軍備拡大競争を続けているという超大国二国ですが、これが七・二と六・四、カナダが七・七、オランダが八・一。むしろ後進国である発展途上国の方が、率からいえばこれよりまだ高いわけです。これは逆に言えばGNPそのものが低いという関係がありますから当然のことだと思いますけれども、しかし、その発展途上国も非常に教育には金を惜しまずにかけているという事実は私ども注目しなければいかぬ、こう思うのです。  そこで、この先進国並みになるためには、例えば日本の場合七%にしたといたしますと二十兆七千二百億、現在の十五兆二千五百五十四億よりも五兆五千億もまだ足さなければ先進国並みにならない、こういう実態がここに浮かび上がるわけであります。  文部大臣、こういう実情について率直に感想を聞かせてください。
  329. 松永光

    ○松永国務大臣 文教は国政の基本であり、国家百年の大計であるという先生の御所論には私も全く同感であります。しかし一方、毎年毎年の予算の編成に当たりましては、国の置かれた厳しい財政状況も十分勘案して、その中で必要な予算を確保するというのが私の務めであるわけでありまして、そういうことで、一部縮減せざるを得なかったものや、あるいは地方一般財源化することでただいま御審議をいただいているような措置もしたわけでありますけれども、先刻もお答えをいたしましたように、そういう厳しい財政状況の中でありましても、四十人学級は着実に推進することにし、あるいは私学助成は確保し、科学研究費については増額を認めていただき、留学生施策も推進し、あるいは全国的に大変希望の多かった大規模改修についての補助の地域制限の撤廃、その他きめの細かい施策も実行できるよう予算措置がなされることになったわけでありまして、厳しい中にもきめの細かい施策をやる予算が六十年度はどうにかでき上がったというふうに私は思っております。  六十一年度以降、やはり厳しい状況は続くと思いますけれども、先ほどもお答えいたしましたように、文教は国政の基本であり国家百年の大計であるという認識のもとに、一生懸命努力してまいる決心でございます。
  330. 田中克彦

    田中(克)委員 先ほど私は公教育費の面から指摘を申し上げたわけでありますけれども、最近の状況で、特に教育費の中でもこの義務教育段階での家庭の負担が大変増加をしているという傾向にあることは御承知のとおりであります。  文部省が既に調査をして発表しております五十八年度の実態調査の中でも、小学校の場合で十六万五千二百二十円、中学校の場合になりますと十九万九千七百二十五円、公立の高等学校で二十五万九千七百二十八円です。私立は何と五十四万二千五百八円、こういう数字になっている。この教育費の総額の支出の構成のうち、小学校の場合は学校教育に二九%、そして家庭教師に五一・五%、これは塾通い、習い事、そういうことが多い状況を示していると思うわけでありますが、中学校になりますと、これが逆に四八・一%が学校教育費の中で父母負担がかかっている、そして三八・一%が家庭教育費だ、こういう状況があるわけです。これにそのほか学校給食が若干、小学校で一九・五%、中学校では一三・八%というふうにありますが、この数字が示しておりますように、最近の教育というのは、義務教育の段階でさえも保護者の教育費負担というのが非常にふえてきているという現実もあります。  そういう状況を踏まえて、今回私は特に問題だととらえておりますのは、実は教材費の一般財源化であります。  けさほどからもいろいろの方が触れられておりますように、教職員の旅費で二百二十億、教材費で百三十億、そのほか高等学校の定時制と通信制教育の手当の補助が一般財源化をされているわけでありますけれども、この地方財政の硬直化が進む中で、一般財源化というのが教育に与える影響というのは非常に大きくならざるを得ない。これは先ほど五十嵐先生が指摘をされたことに特に関連して、そういう状況が憂慮をされるわけであります。  ちなみに経常収支比率について、都道府県の場合は七九・二が八一・八、市町村の場合は七七・六が七八・一、こういう傾向にあります。この経常的支出のうち公債費が、県が一三・八が一四・九、そして市町村の方が一四・八から一五・五、まさに硬直化の要因は公債費にある、こういうことが数字の中にはっきり出ております。しかも、今比較的地方財政が豊かだ、黒字だ、こう言っておりますけれども、この黒字幅という平均で七ないし八%というものは、いわゆる地方債の大量発行によって赤字をカバーして出てきている黒字である、こういうことでありますし、特に、既に言われておりますように交付税率につきましても三一・五%、こういう状況でありますから、この教材費の一般財源化というのは、今後、全国的に教育条件を均一化していかなければならないそういう義務教育の現場というものに私は非常に大きな影響を与えると思うわけです。  そこで、この財源を一般財源化した事態の中で、自治省は財政課長内節という形で各地方自治体に通達をしておりますけれども、ただそれだけで済むものではない、私はこう思っているわけです。結局、地方自治体の実態の中からすれば、先ほどからも言われておるように、財源が保証されているわけではない。地方交付税の積算基準の中に基準財政需要額として教育費、教材費、含まれていますよ、こうなっても、それを措置するかしないかは自治体の主体性でありますから、それが本当にそうなっているかどうかという実態、このことは非常に問題だと思います。  そこで、各都道府県あるいは市町村に対してこの旅費、教材費を今回一般財源化したことについて、行政指導上どのような措置を、ほかにもしとっているとしたらおとりになっているか、これを答えていただきたい。
  331. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今の問題は、結局、教材費あるいは旅費というものについて、地方に相当定着しているということで、先ほど文部大臣が話しましたように交付措置を講じたわけでございますが、地方財政計画におきましては、旅費については今までの金額、それから教材費につきましては二・八プラスの交付措置を講じております。  ただ、お話しのように地方がその交付税をどうするということは地方のあれでございますが、私の方は財政課長内簡を出しましたが、財政課長会議におきまして、地方の教育費はついてこういうふうにしてあるから、先生のところや学校で寄附を集めるというようなことはできるだけしないでおけというような指示は、口頭でしておるところでございます。
  332. 松永光

    ○松永国務大臣 先刻からお答え申し上げておりますように、今回の教材費及び旅費についての措置は、必要な教材については公費で負担する、市町村が支出するということが定着をしておるということにかんがみまして、族費については県の方で負担するというそういうことも定着しておるということにかんがみまして、地方財源化ということで、それに合わせて、先ほど自治大臣から御答弁がありましたように、旅費につきましては前年と同じ規模、教材費につきましては数パーセントと申し上げておきましたが、今の自治大臣の話によりますと二・八%でございますけれども、増額した財源措置がなされることになっておるわけであります。  したがって、これからの問題は何かというと、私の立場からすれば、一つは、将来にわたって教材費等についての財源措置を地方財政当局に今後ともきちっとやっていただく、できればふやしていただく、そういうことを地方財政当局にしていただくことが一つ。  もう一つは、その措置された財源につきまして、教材費にそのままできることならば使われるように指導していくことが私の立場としては大切なことだと思いますので、県の教育委員会を通じましてしっかりとした指導を今後してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  333. 田中克彦

    田中(克)委員 これは要望になりますが、概算要求前の段階で各省庁十分協議し合う、こういうことでありますし、特に、先ほどの前の質問者からも触れられておりますように、教材整備第二次十カ年計画、これも四八%にしかまだ達していないという進捗率、こういう状況の中で今回の措置がとられたわけでありますから、この措置が地方財政や地方の予算の仕組みにどういう影響を与えているかという実態調査を早急にして、来年度に向けての協議の際の資料としてひとつそれを活用していただきたい、そのことを要望しておきます。  次に、臨調答申義務教育費の国庫負担金の検討が必要だという指摘をされたのを受けて、財政審もいろいろな小委員会をつくり、特別部会等で検討をされてきたようでありますが、このいわゆる財政審――大蔵原案と言ってもよろしいでしょう、大蔵省もこのことを確認しておりますから。大蔵大臣の諮問機関でもありますし、結構だろうと思うわけですけれども、この第一項で、事務職三万三千人、七百二十億、栄養職八千人、百六十億の削減、第二項で、旅費、教材費、共済費、恩給費を除外する、それから第三項で、地方交付税の不交付団体の国庫負担一〇%削減、こういう改革案なるものを、十一月概算要求段階で新聞も何回も報道しましたし、私どももそういうふうに聞いております。  今回具体的にとられましたのは、先ほどから申し上げておりますように旅費、教材費にとどまった、こういうことでありますけれども、先ほどから言われておりますように、ことし一年の暫定措置として今回の一括法は出た、来年からのあり方については、三省庁の覚書等を中心にして、それぞれ関係省庁と協議をして来年からの機能分担のあり方を決めていく、そして予算編成をしたい、これがお答えだったように思うわけです。  そうしますと、今ここで出てきておりますいわゆる国庫負担制度の改革案は、既にこういう格好で発表になっておりますけれども、私が確認しておきたいのは、今の補助金の一律カットやそれから一般財源への振りかえあるいは制度的に廃止になったもの、そういうものを全部含めて、今回の場合はいわば一括法の中にこれが含まれているわけですね。特例法の一年延長も含まれているわけです。そういうことでありますが、この国庫負担制度の見直し財政審答申、改革案なるものが出ているわけだけれども、私どもに言わせれば、今回適用された旅費、教材費の国庫負担金を除外する、一般財源化する、そのこと自体も大変疑問を持っているわけだけれども、あえてこの改革案なるものが出てきているという段階の中で、大蔵大臣は来年度の検討課題にこれを加えていく考え方なのかどうか、いかがですか。
  334. 竹下登

    竹下国務大臣 田中さん御指摘なさいましたとおり、一つ根拠になりましたことからあえて申し上げますならば、まずは臨調答申一つございます。その臨調答申は、御案内のとおり、「地方に対する補助金制度の改善」の「補助金等整理合理化」の中で「なお、義務教育国庫負担金については、地方財源の総体の在り方を含め、今後、検討を行う必要がある。」こういうふうに指摘されております。それから、財政審の指摘等がございます。したがって、今度、ただいま御審議をお願いしておることは、これまた今御指摘になりましたとおり、旅費及び教材費については、国庫負担を導入した当時とは諸般の事情が異なったので、いわば国庫負担の対象外として地方の一般財源措置することにしたという結論を御審議いただいておるわけでございます。  したがって、今後どうするか、こういうことでございますが、今後とも厳しい財政事情が続いていくということになりますと、これは教育のみならずあらゆる制度、施策につきまして、その根源にさかのぼった見直しの努力は引き続きしなければならないというふうに思っております。したがって、この義務教育費国庫負担制度につきましても、いわばきょうのような、各方面の意見を十分に聞きながらやはり検討をしていかなければならない問題だと考えます。  そこでさらに、事務職員及び学校栄養職員を国庫負担の対象外とすることについては、御案内のとおり、文教関係者の方々が極めて困難なことであるとしておられることは十分承知いたしております。しかし、財政当局といたしましては、今後とも各文教施策のあり方とあわせて各方面の意見を聞きながら、御指摘の点もやはり勉強の対象には絶えず置いていかなきゃならぬ。言ってみれば、今日の時点で聖域を指定するということはできないと考えざるを得ない状況でございます。
  335. 田中克彦

    田中(克)委員 臨調答申等の考え方も踏まえて、この私が指摘をした問題も含めて検討課題だ、こういうふうに答弁されましたが、今回の補域率の見直しとは違って、国庫負担金制度というのは、対象を除外するわけでありますから、そのことは制度そのものをそこから外すということになってくる。そうなると、これはこの措置によって制度的に終わりですよと、こういう性格を持っている違いがあると私は思うのです。今、そのことも含めて検討する、こうおっしゃいましたけれども、それでは、制度的にこれは終わりだという理解には大蔵大臣は立っていないと受けとめてよろしいですね。
  336. 竹下登

    竹下国務大臣 やはりこういう状態にありますときには、あらゆる制度、施策についてその根源にさかのぼった検討あるいは勉強というような趣旨の言葉を使わしていただきましたが、きょうのような各方面の意見を聞きながらも、やはり勉強は続けていかなければならぬ問題だというふうに御理解をいただきたいと思います。
  337. 田中克彦

    田中(克)委員 先ほど、前の質問の方の御指摘の中に、大蔵大臣の言われることが実に明快さを欠くときがあってわかりにくい、こういう御指摘がありましたが、私も、今の御答弁の中からどう解釈したらよいのか、どちらにも理解できるような答弁で、非常に理解がしにくいわけであります。私ども、希望としては、後からまだ触れていきますけれども、私は、国庫負担金制度というのは今回の補助金制度と本質的に性格の違うものだという認識に立っておりますので、そういう点で扱いをぜひ慎重にお願いしたいということを要望しておきたい、こう思うわけです。  そこで、文部大臣、今の問題で、参議院の決算委員会あるいはまた参議院の文教委員会などでそれぞれ質問がありまして、いわゆる教壇に立たない職員を基幹職員とみなすかどうかという点について質問がされておりまして、文部大臣見解が示されております。今の大蔵大臣の答弁とあわせて、文部省の立場から大臣としてのその見解について、私はこの機会にもう一度確認をしておきたい。そのことが概算要求へ向かって話し合いをしていく上で重要な要素になるだろうというふうに私は受けとめておりますので、御答弁をいただきたいと思います。
  338. 松永光

    ○松永国務大臣 義務教育費国庫負担制度というのは、何回か御答弁申し上げましたように、義務教育に関して教育の機会均等を図る、あるいは全国的なレベルで教育水準を維持する等々の趣旨から、本来、学校教育費は一般的に言えば設置者が負担するということになっておるのでありますけれども義務教育につきましては、特定の経費について国がその一部を負担するということで始まった制度であると認識いたしております。  したがいまして、義務教育費国庫負担制度の中の国が負担すべき経費は、その中核となるものは教職員の人件費である。教材費、旅費等につきましては、そのときの地方財政事情等を考慮して義務教育費国庫負担の対象になったものである。しかしながら、今日におきましては旅費、教材費について地方において公費負担ということが定着してまいりましたので、国の財政事情等から今回外されることになった、こういうことなんでございますが、先ほど先生の御指摘になりました栄養職員あるいは事務職員等の問題でございますけれども、前にも御答弁申し上げましたように、事務職員、栄養職員も学校教育の場における中核的な職員であるというふうに私は認識いたしておりますので、これを義務教育費国庫負担の対象から外すしとは極めて困難なことであるというふうに私は思っております。そうならないように努力していくのが文部大臣の務めであるというふうに私は考えておるわけでございます。
  339. 田中克彦

    田中(克)委員 文部大臣の決意を伺いまして、私どももほっとしたわけでありますけれども、ぜひ来年度へ向けて奮闘していただきたいと思います。そこで実は、私はこれから、国庫負担金問題の先ほどから本質的に違うといった点について質問をさらに進めていきたい、こう思います。時間が既に迫っておりますので、少しはしょった質問に似るかと思いますが、お許しをいただきたい、こう思います。  申し上げるまでもなく、憲法二十六条の国民に与えられている教育を受ける権利、これを受けた形で教育基本法第三条が「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」、二項では「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」こう規定しておりますし、なお、四条には、九年の義務教育を規定した上で、第二項につきましては「国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。」こうも規定をいたしておりまして、いわば教育を受ける国民の権利を、特に義務教育につきましてはそういう考え方に基づいて国庫負担法が定められている、こういうふうに思うわけです。  そこで、もう既に触れられておりますように、この法律目的というのは、第一条に「この法律は、義務教育について、義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする。」こうありまして、二条に二分の一負担決められているわけでありますし、なお、第三条には教材費の二分の一負担決められている、こういう体系になっているわけであります。  この国庫負担法につきましては、調べてみましたら、非常に長い歴史がありまして、戦後の負担制度が定着をするまでにはいろいろな議論があったようであります。一つには、財政負担の分担をどうするか、国と地方の財政負担の分担をどうするか、ということは、いわば行政の機能としてどう分担をし合うのか。もう一つは、そのことが教育の中立性や地方自治体の自主性を侵さない国の負担の仕方というのはどうなのか。こういう点が非常に折々に議論をされて今日の形が定着をしてきたというふうに私、理解をしているわけであります。  この考え方に立つ以上、私は特にお伺いをしたいわけでありますが、今申し上げましたような法体系に基づく考え方を前提にして、いわゆる教育のあり方について国と地方との負担のあり方、機能の分担のあり方、こういうものを決めて、そのために地方交付税法という制度もある。この第一条には、さっきからも言われているように「その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによって、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。」こうあります。そこで、この目的に沿っていわゆる国庫支出金の出し方について地方財政法はそれぞれ定めている。  一つは、もう言うまでもなく国庫負担金地方財政法十条から十条の三まで、しかもこの負担割合は政令で定めなければならないということを十一条で定めている。二番目には、地方財政法十条の四によって国庫委託金。これは当然国の事務を委託をするための費用でありますから、地方公共団体に負担を負わせない、逆に言えば地方団体は負わない、こういう性格のもの。地方財政法の第十六条で決められているのが国庫補助金。こういうふうに国庫補助金、国庫委託金、国庫負担金、それぞれ地方財政法で定められているわけです。しかも、地方財政法第二条では「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」これは先ほどから幾度も、幾人か触れられております。  こういう前提に立つとすれば、私は補助率見直しというものと、いわゆる負担金制度の対象とすることを除外をする、負担金制度そのものの性格とは本質的に違うと思いますけれども、そのことについては、これは大蔵大臣、自治大臣、文部大臣も、みんなに聞きたいわけです。それぞれ見解を承りたいと思います。
  340. 竹下登

    竹下国務大臣 義務教育費国庫負担金は、いわゆる今おっしゃいました奨励的な補助金とは異なって、「国と地方公共団体相互の利害に関係がある事務のうち、その円滑な運営を期するためには、なお、国が進んで経費を負担する必要がある」もの、すなわち地方財政法第十条でありますが、このような負担金でありましても、地方公共団体に定着するに至ったものにつきましては見直しができるものだという考え方に立ったわけでございます。したがって、今回のいわゆる旅費、教材費の地方一般財源化は、文教関係者の方々や地方団体関係者の方々と十分相談をしながら行ってきたというつもりでございます。
  341. 田中克彦

    田中(克)委員 自治大臣、いかがですか。
  342. 土田栄作

    ○土田政府委員 ただいま大蔵大臣からも御答弁がございましたけれども義務教育費国庫負担制度における教材費、旅費につきましては、既に地方公共団体の事務事業として同化定着したということから一般財源化したところでございます。  国庫負担金と申しますのは、委員御指摘のように、ある意味では国と地方とのコストアロケーションでもありますので、そう簡単に変えるべき問題ではございませんけれども、やはり時の流れ、それから国と地方の財政事情によりまして、両者の間でコンセンサスがあれば変更することはできるものである、その場合は当然法律改正が必要である、こういうふうに考えております。
  343. 田中克彦

    田中(克)委員 今の答弁でも納得できないのですが、第十条には「国と地方公共団体相互の利害に関係がある事務のうち、その円滑な運営を期するためには、なお、国が進んで経費を負担する必要がある左の各号の一に掲げるものについては、国が、その経費の全部又は一部を負担する。」とありますね。国が進んで経費を負担する必要がある各号、その第一が義務教育に対する負担金なんです。二番目が生活保護に奏する経費なんです。筆頭にあるものが義務教育に対する経費の負担です。  今の答弁だと、それが地方に定着をしてきた。私は、定着をしてきたという意味がどこにあるのか理解できませんが、いわゆる国と地方との機能分担のあり方というものの議論があって、その上に税財源の配分の議論があって、あるいはまた地方交付税法の税率の変更の議論があって国の財政や地方の財政のかかわりが問題になり、その上に立ってこの見直しが出てきた、こういう順序をとったならばこんな議論にはならないと思っているのです。今回の場合は、とにかく三年で切れると思っていた行革特例法が急に一年延長だということになり、ことし一年の措置だといって一遍にこれだけの、五十九もあり六十六項目にも及ぶ法律を一からげにして、補助金を切るということだけで数字のつじつまを合わせようとしたところにこの議論が起こっているわけです。  だから私は、地方に定着をしているということについては納得できないし、この十条にありますが、国が進んで費用を負担する必要があると認めたからこの法律は成り立っているわけです。だから、その後の補助金の項へいきますと、第十六条の場合「当該地方公共団体に対して、補助金交付することができる。」とある。もし政府の主張に立つならば、「補助金交付することができる。」ということなんだから、その負担区分について、負担率についてその裁量権は国にある、国と地方で話し合うことにある、こういう議論も成り立つと思う。しかしこの十条には「国が進んで経費を負担する必要がある左の各号」こうあるのです。国庫負担の金というのは本質的に違うのですよ。さっき私が申し上げましたように、委託金、負担金補助金と三つあるけれども負担金の性格は十条における表現からしても違う。私は、この条文から見る限りそうとしか理解できない。だから負担金の扱いについてはもっと慎重にやってもらわなければ困るということを私は言っているわけです。いかがですか。
  344. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題は、私も先ほどのお答えでもまずは肯定しておりますのは、いわゆる奨励的な補助金と異なって、今申されました地財法第十条というものがあるわけであります。これは私も十分承知しております。しかしながら、このような負担金でありましても、地方公共団体に定着するに至ったという意味においては、見直すことは可能であるというふうに考えておるところでございます。
  345. 田中克彦

    田中(克)委員 自治大臣、いかがですか。
  346. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 地方財政法は、憲法にうたわれた地方自治の本旨を実現することを目途といたしまして、地方財政に関する原則を定めた基本法であることは御承知のとおりであります。それは、第一に地方財政の自主性と健全性の確保を図ること、第二に国と地方の責任分担の明確化を図ること、そういう意味におきまして、国庫負担金と国庫補助金の区別でございますが、端的に、常識的に言いますと、一方は割り算的なものであって、一方は奨励的なものだという考え方じゃないかと私は考えておるのであります。  国と地方公共団体相互の利害に関係ある事務のうちで、なお国が進んで経費負担を必要とするというものの経費とか、あるいは国民経済に適合するように総合された計画、例えば公共事業費、それから災害復旧に要する経費、こういうものは、今言いましたように国が法令の定むるところによって義務的に負担するものである。国庫補助金とは、国が地方財政援助して、奨励的に一定の事務事業を奨励する目的を持って配分されるものだと考えております。したがいまして、国庫補助金がいわば裁量的なものであるのに対して、国庫負担金義務的なというような感じを私は持っております。
  347. 田中克彦

    田中(克)委員 先ほどから、この制度が定着をしてきている、こういうことをしきりに言われるわけでありますが、これほど国庫負担金制度が重要な意義を持っているにもかかわらず、今回まさにこの方式が決められ、これに基づく予算編成が行われた。本当に、ことし一年限りということで、とっぴな状況の中からこの措置がとられてきているというところに私は非常に問題を感じます。しかも、こういう種の問題については、地方自治体と十分に時間をかけた話し合いが行われて 定着してきてしるかどうか、また 国庫負担制度から除外をすることによって地方自治体財政状況がどうなるのか、実態がどうなるのか、教育への影響がどうなるのかということを十分に検討した上で逐次移行していくということならいいけれども 今回の場合はそれが極めて唐突に行われている。このことはまさに数字合わせでしかない、こういうふうに私は言わざるを得ない。したがって、私は今申し上げましたような自分の考え方をここで変える意思は持っておりませんが、答弁は答弁として承っておきます。  そこで、時間が来てしまいましたが、法制局おいでになっていますか。――私は、今質問申し上げましたように、国庫負担制度というものは本質的に性格が違う、こういう認識に立っておりますので、今回の場合、補助金の一律カットやこの問題を法案として一つにからげて提案をしてきているという措置には、どうしても納得がいかないわけであります。したがって、そのことについて若干聞いてもみたし、調べてもみたわけでありますけれども、従前、国の行政のことでありますから、幾つもの省庁にまたがった法案一つにまとめられて提案された例は、いろいろな機会にあったと思う。  そこで、そういう際に起こった議論というものを調べてみますと、昭和五十年五月二十三日の衆議院内閣委員会で、許可、認可等の整理に関する法律案が提案された際に、この法律が外国人登録法の基本に触れる疑いがあって、許認可の一括処理法で処理することはなお検討を必要とする、こういうことから、この修正が動議として出されて、全会一致で決められたという経過もあります。  それからさらに、昭和五十二年五月二十四日、衆議院内閣委員会、これは中川秀直議員の質問でありますけれども、このときに内閣法制局に対して、二つ以上の法案をくくって処理する場合の議論として、どういう場合に国会審議権を侵さずに法案をくくって処理できるのかということで質問がありました。その際に三つの条件が示されている。一つは、法案に盛られた政策が統一的なものであること、その結果として法案趣旨目的一つであると認められる場合。二つは、内容的に法案の条項が相互に関連していて一つの体系を形づくっていると認められる場合。それから第三は、これは事実上の理由でありますが、やはり関連を持って国会委員会でできるだけ円滑に審議していただくという見地から、原則としては一つ委員会の所管に属する範囲内でまとめるもの。こういう三つの条件が示されています。  こうなりますと、この二と三は、今回の場合、全然条件から外れています。一の場合の条件はどうか、こういうことになりますと、政策が統一的なものであるという点からは、今回の場合は予算を積極的に削減をしていくといういわば政策的目的、この点については一つだと思うわけだけれども、私が先ほどから指摘をしているように、補助金制度と国庫負担金制度というものは本質的に違う、こういう認識に立ては、ここでこの条件にも当てはまらない。こうなりますから、私は一括法として処理することは極めて不当だ、こう思っているわけです。  そこで、この三つの条件、これは既に答えていることでありますが、このように確認していいかどうか。
  348. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 田中君、持ち時間が終わりました。
  349. 大出峻郎

    ○大出政府委員 何本かの法律案、すなわち複数の法律案を一括化いたします場合の基準といたしまして、内閣法制局におきます法制の審査の際の基準につきましては、次のいずれかに該当することであるという考え方を持っております。  すなわち、その一つは、法律案に盛られた政策が統一的なもので、その趣旨目的が同じであることということがその一つであります。もう一つは、法律案の条項が相互に関連をいたしておりまして、一つの体系を形づくっているというような内容のもの。以上のいずれかに該当することが必要ではないかという考え方を持ってきているところであります。  なお、以上の基準のほかに、実際上の考慮としての問題でございますけれども、いずれの法律も同一の委員会の所管に属する事項に関するものであることができるだけ望ましいと考えてきているわけであります。ただ、法律案の具体的な内容によりましては、これを一本化した方がとろうとする政策の趣旨なりあるいは目的なりがかえって明確になるというふうに考えられるような場合もあることは否定できないわけでありまして、このようなものにつきましては、同一の委員会の所管に属しないものでありましても複数の法律の改正案を一本化するということは、従来からしばしば行ってきておるわけであります。  今回の、今ここで問題となっております補助金等一括法案についてでございますが、これは大蔵省の方からるるお話がございましたようなことで共通の趣旨目的を持っておる、こういうことで、最初に申し上げました第一の基準、すなわち趣旨目的が同一である、こういう観点で一括をさせていただいたというような次第でございます。
  350. 田中克彦

    田中(克)委員 終わります。
  351. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 島田琢郎君。
  352. 島田琢郎

    ○島田委員 与えられている時間は一時間しかございませんで、あっという間に終わってしまう時間でございますから、聞く方も簡潔に質問をしてまいりたいと思いますので、大蔵大臣、先ほどもどなたかから言語明瞭、意味不明なんて言われておりましたが、その辺はひとつ明瞭にお答えをいただきますように、特にお願いを申し上げておきたいと思います。     〔中川(秀)委員長代理退席、越智委員長着席〕 最初に大蔵大臣に伺いますが、今回の一括法案予算削減額というのが、どなたもお聞きになっていますけれども、これは改めて議事録に載る質問でございますから、国全体でどれくらいの規模になるのか、また政令なんかによって措置されるものまで含めますと幾らになるのかというところから質問をしてまいりたいと思います。
  353. 竹下登

    竹下国務大臣 補助金整理特例法案によって措置されるものの節減額について申し上げます。  一、高率補助率引き下げによる節減額四千四百八十一億円、それに政令等により措置するものを含めますと五千四百八十八億円。  二、一般財源化等による節減額三百七十八億円、同じく政令等を含めると四百二十八億円。  三、行革関連特例法の延長による節減額三千五百六十一億円、政令等により措置するのを含めると三千五百六十三億円。  以上、特例法案全体の節減額八千四百二十億円、政令等によるものを含めますと九千四百七十九億円。  また、六十年度の地方財政対策を講ずるに当たっては、高率補助率の引き下げによる地方財政に与える影響額を織り込んでおります。この高率補助率引き下げによる影響額は五千八百億円。内訳は、経常的経費関係二千六百億円、投資的経費関係三千二百億円。  以上でございます。
  354. 島田琢郎

    ○島田委員 大変な額になるわけでありますが、そこで農林大臣、あなたの所管で削減される額、もちろん法律、政令分けまして、どういう金額になりますか。
  355. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 島田先生にお答えいたしますが、今回の補助金等特例法による農林水産省関係の節減額は、法律により措置するもの二百二十九億円、政令等により措置するもの四百四十二億円、合計六百七十一億円でございます。
  356. 島田琢郎

    ○島田委員 先ほどいろいろ大蔵大臣お話しの中で、各省の予算と防衛予算の比較、特に旧中さんからは教育予算との比較で防衛予算のことが出ておりました。農業予算との比較もこの際私はぜひしておきたい、こう思うのです。  というのは、年々農業予算がまた大幅に落ち込んでいる。行革予算と言われております今年度予算を含めた四年間で、農林予算は何とか横ばいか、ほんのちょっぴり上がったりしている。しかし、防衛予算は二一・三%も上がった、先ほどもこれは指摘があったとおりでございます。特に、農林予算は三兆三千億円がことしの、六十年度の予算、御承知のとおりであります。一方、防衛予算は三兆の台に乗りまして、三兆一千億を超えました。これはこのままでまいりますと、恐らくことしの秋には農林予算と防衛予算が逆転してしまうだろう。  先ほど午前中の小川質問で、あなたの農業に対する理念は、こう尋ねたのに対して総理が、農は国のもとであります、農業は生命産業であるとお答えになりました。しかし、そういうふうにおっしゃったって言行一致しなければ、政治家として、特に政府を預かるトップに立たれる総理としては責任が果たせないと私は思うのであります。こんなふうに格好よくおっしゃったって、現実にはこの予算のありさま、これでは私はまさに羊頭狗肉と言わざるを得ません。  そしてまた、先ほど田中委員の指摘に対して、何も最初から意図してそうなったのではなくて結論的にこういうふうになりましたと大蔵大臣お答えになりましたが、私はこの御答弁はいただけない。一体、政策なしで予算決められる、こういうことってあるんでしょうか。もう一遍お答えをいただきたいのですが、いかがですか。
  357. 竹下登

    竹下国務大臣 今、島田さんの御指摘でございますが、確かに言ってみれば、農林水産関係予算につきましては節減合理化を、もとより聖域としてでなく徹底して行っております。そして、今後の農政の展開方向を踏まえて、諸情勢に対処してその体質強化等を図りますための新規施策の推進をも含め、その質的な充実に配慮しながら重点的効率的な配分に努めました。防衛費は、先ほども申し上げましたように、いわゆる諸般とのバランスの上に立ったぎりぎりの必要最小限の経費を計上いたしたわけであります。  このように各種の経費は、そのときどきの社会経済情勢の変化等を踏まえてそれぞれの所要額を念査をいたしまして、そして計上した結果でありますので、予算額の増減のみで単純に比較するということが、いわば政策選択のあり方をそのバロメーターでもって比較することが必ずしも適当であるとは考えていないところでございます。
  358. 島田琢郎

    ○島田委員 私はかつて大蔵委員会におりまして、竹下大蔵大臣が初めて大臣におなりになったときにも、場違いだなんというやじも飛びましたが農業問題を取り上げました。すかさずあなたは、あなたは農業に詳しいと言うけれども、おれも農村の出身で農業の問題についてはあなた以上に詳しい、こう言ってえらい胸を張られました。以来私は、それはそれとして、あなたの見識として、おつき合いをしてまいりました。だから、何期も大蔵大臣を務めていらっしゃるという点について私は一定の評価を持っているわけであります。時々会って、農林水産関係予算についてもじかに要請をしてもまいりました。しかし私は、総理と同じように、財政を預かる立場でいらっしゃるからなおのことあなたに対して、農業に対する見方というものを財政に正しく反映してくれるということでないと、竹下登という人を評価することができないということに相なるわけであります。  それは確かに、この背景には財政的な問題があることは、私どもも政治に参画している以上、隅隅まで詳しく承知をいたしております。しかし、どうももう一つその裏に、農業過保護論あるいはまた国際分業論の再燃を思わせるようなそういう思想的背景、また特に財政を預かる立場からは、安上がり農政を目指す、こういうお考え方がどうもまた頭をもたげているのではないか、特にことしの六十年の予算を見ましてそのように感じておりました。  その上さらに、全体のキャパシティーからいえば、今度の農林水産省の削減額は、先ほども説明いただきましたように意外に少ないという印象で考えられがちでありますが、私は、その根っこに流れる政治のいわゆる理念というものが基盤としてしっかりないと、これは押し流されていく。そうでなくたって、後ほど触れますけれども、外圧で農林水産が集中的に今ねらわれている、こういうことでございますから、せめて予算の面でしっかり守っていただかないと、日本の農林水産、第一次産業がまさに皆さん御指摘のとおり壊滅してしまうという危機感を持っている一人でございます。私のこういう情勢分析というのに、大蔵大臣財政を預かる立場からコメントがございますか。
  359. 竹下登

    竹下国務大臣 これは原則的に申し上げますならば、ただその都度の予算をいわば念査いたしまして、そしてぎりぎりの予算編成をいたすわけでございますので、増減だけでもってこれを評価するということ、それだけでもってその適否を論ずるということを必ずしも適切だと私は思っておりません。そのことを申し上げたわけでございますが、基本的に、農業政策に携われる島田さんを初めとする方々がやはり増減の問題というのに重大な関心をお持ちになるということも、また私は否定するものではございません。  農林水産関係予算総額にいたしましても、残念なことでございますが、前回私が大蔵大臣をしておりました五十五年度予算、そして五十七年度予算まではささやかながら三角は立っておりませんが、重ねて私が就任いたしました五十八、五十九、六十という三年度にわたりまして三角が立っておるということは事実でございます。その限りにおいては五十七年から六十年に対しては四千二億円の減、こういうことになっておることは事実でございます。  したがいまして、その窮屈な財政の中で私どもといたしましては六十年度予算における質的充実を図る、そういうことから、中身といたしましては農林水産省においてそれぞれ優先順位をもって編成、そしてその予算折衝となるわけでございますが、基本的に補助から融資へという観点を踏まえた問題、そして活力ある村づくりの推進、そうした問題、それから新たに将来展望を開くためのバイオテクノロジー等の問題、そしてまた農林水産情報システムの問題、また国際協力の問題、その上に、私どもとして最終的にいろいろ議論いたしましたが、いわゆる農林漁業金融の充実ということを対象にして予算を念査し、御議論をいただいて、先般六十年度予算は通過させていただいたという現状でございます。
  360. 島田琢郎

    ○島田委員 そもそも私ども農林水産委員会に所属する者にとってみれば、今ちょうど農業金融制度の法案改正が委員会に提出されておりまして、その審議の真っ最中なわけであります。一括してこうした大蔵委員会でこの論議をするということになりますれば、どうしても論議が集中せず、論議の素材として大事なところが限られた時間の中ではなかなか消化し切れない、そういう問題も持っておりますので、農林水産委員会において専門的な議論が行われることが望ましい。そうすれば今のようなお話というのはもっと濃密的に、あるいはまた将来の農政の展開に当たって主要な事項等についても時間をかけて論議ができる、こういう立場をとってまいったわけであります。そういう面でいいますと、私は、これは農林大臣にかなりしっかりしていただかなければならぬという感を、今の大蔵大臣とのやりとりでさらに深く持っているわけです。  そもそも今回、金額的な面は先ほどのお話がありましたが、全体の法律関係する分野というのは決して少なくなくて十四法案にわたりますし、そのほか離島振興法にしても、過疎地域振興特措法にしてもあるいは行革関連の法律にいたしましても、これはすべてその地域の基幹産業であるという位置づけが基礎になってこうした法律がつくられている、こういうことでございますから、農林水産関係の今回のこの一律カットの法案の提出というのは、大変私どもにとっては重要視されるわけであります。したがって、こうした補助金カット等を含めた法律の改正を契機にして、改めて大臣はどういう考えでこれからの農政を展開されようとしているのか。  私は、この法律は今期限り、ことし限り、今回限り、幾ら政府がそうおっしゃったって、この先がとても心配でならぬのです。どんどんじりじりと追い詰められていく。先ほど私が申し上げましたように、安上がり農政、それを目指すとすれば、外圧も含めてねらわれるのは農林水産であります。ですから、今のうちにしっかりした農政の展開に当たっての担当する大臣の御決意がないと、これは大変なことになってしまう、こういう危機感を持っております。改めて佐藤農林大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  361. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  農林水産業は、先生御存じのとおりでありまして、自然条件に左右されやすく、また特質として三つございます。その一つは、日本の特に農業は、規模が零細である、それから収益性が低い、作目が極めて多様である、こんな特質を持っているわけであります。したがって、我が省の行政を推進する上で、補助金は非常に大切なものと考えております。  そんなことの中で、厳しい財政のもとで引き続き財政改革を着実に推進するために、農林水産省としましては、臨調答申あるいは行革審意見等趣旨に沿って、先ほどから議論されております高率補助率の引き下げ、あるいは地方に同化定着している事務事業に係る補助金等一般財源化等の問題を図ることとした次第でございます。  しかし、これらの措置につきましての地方公共団体の負担の増加につきましては、地方交付税の特例措置、建設地方債の増発等により適切に措置されるものと考えております。そんなことで農林水産行政の推進には支障はないと考えております。
  362. 島田琢郎

    ○島田委員 そんなことでいいんですか。案外安易に考えていらっしゃるようであります。  ところで大蔵大臣、今度の措置によって地方財政に及ぼす影響というのは大変に大きい。先ほど数字を挙げられたとおりでございまして、それは農林関係含めて大変なものでございます。  けさほど来、これは総理お答えになっておりましたが、地方公共団体の財政状況というのは大変さまざまな状態にあって、三千数百ある市町村財政というのはいろいろピンからキリまである、こういうお話でございました。しかし、総じて農村あるいは漁村、こういうところを抱えた町村はなかなか自主財源が窮屈でございます。つまり財源に非常に乏しくて、その実情は決して大臣がお考えになっているような楽なものではない。したがって、平均的な物差しで見るということは大変困るわけでありまして、どうかすると国よりも地方に余裕があるという判断が先行しがちでありますが、しかし私の知る限り、農山漁村の財政事情は年々非常に窮迫しつつある。こういう中で今度の地方に負担を転嫁するというようなことが行われることについては、私は強く反対をしてきた一人でございます。まだまだ決して足腰強い市町村の財政事情にはない。したがって、今回の補助率の引き下げによる地方財政に対する不足財源対策というのは大変大事だと思うのです。  具体的には一部、昨年の自治大臣との間で一千億ほどのものが出てまいりましたが、あとの残りの四千八百億は、地方債とか、いろいろな地方においての才覚でこの金を集めるということになる。こういうことでございますから、ますます財政的には厳しさが加わってくるわけであります。私はこれは酷だと思うのです。ですから、やはりあなたが地方の財政を面倒を見る、そういう姿勢がないと、それは大変なことになる。楽な町はもちろんあるでしょうけれども、総体的には農山漁村における市町村の実情は決して楽ではない。どうですか、この対策について具体的なお考えをお持ちならお聞きしたい、こう思います。
  363. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる三千三百二十五、マイナス東京の二十三ですと三千三百二でございますか、の都道府県並びに市町村、いわば地方財政計画全体の中で見ましたときに、適正な措置が行われておるというふうに私は理解をいたしております。が、しかし、個々の町村につきましては、それはもとより、総理からもお答えがあっておりますように、いろいろな財政上のばらつきはございます。なかんずく農山漁村が、あるいは時には二割自治とも言われ、そしていわゆる自主財源、これが、税源そのものが少のうございますので、少ない状態にあるということは私も承知をいたしております。  それから先の措置の問題につきましては私からお答えする範疇の枠外にあろうかと思いますけれども、それらの問題につきましては、絶えずきめ細かな配慮をしなければならないということは私も自覚をいたしておるつもりでございます。
  364. 島田琢郎

    ○島田委員 地方の不足財源の一部は国が責任を持たなければならぬということで、お考えは持っているやに、先ほどの五十嵐委員の質問に対して自治大臣もそれに近いことをお答えになっておるようであります。しかし、交付税の中の基準財政需要額というのは、さきの行革関連特例法によりますところの分も含めて考えますと、これはどんどん雪だるま式にふえていく、こういう性格を持っていると私は思います。所得税とか法人税、酒税などというようなもので三二%ですかの枠がありますけれども、これは限界がありまして、結局は地方の負担にしわ寄せされるというふうに、一般的には皆さんはそう受け取っているわけであります。  こうした財政を圧迫する状態を解消する、そういう点では、私は、同時に今度の削減法と一緒にやはり出すべきだ。これはけさ村山質問で、将来、この後のいわゆる返還の計画を政府が持ってないのはけしからぬという指摘をいたしました。私も同じ趣旨の考え方を持っているわけでありますが、こうした政策財源というものを圧縮する事態を回避するためにも、やはりそうした方針というものが一つないと安心できません。私は重ねてこの点はお聞きをしておきたいと思うのです。
  365. 竹下登

    竹下国務大臣 けさほど村山さんから御質問を受けました点につきまして、私どもは年金財政そのものの実態を見て適切に対処しますということを申し上げ、そのいわば具体的な返済計画につきましてはその都度の年金財政等を見詰めながらやっていくわけでございますから、今日の時点において具体的な返済計画をお出しすることは非常に難しい問題でありますと、このようにお答えをいたしたわけであります。  地方財政全般の問題につきましては、それぞれ基準財政需要額の中に算定することによって、適切な措置はとられておる、将来にわたってとられるであろうということを私なりに信じておるところでございます。したがって、原則的に言いますならば、いわば交付税というものが地方の独自財源であるという物の考え方に立ったとき、その中に基準財政需要額としてプラスされる要因が、言ってみれば総体的に見たところ、自主的判断に基づいて行われる政策費を侵食しておるという考え方というのは、総合的感覚からして一つ成り立つ論理であるというふうに私も思いますが、ぎりぎりのいわば基準財政需要額というものから基準財政収入額を引いた残りと申しますか、そうしたことに対しては交付措置等によって適切に対処されていくべきものであるという考え方であります。
  366. 島田琢郎

    ○島田委員 それじゃ個別の問題についてお尋ねをしていきます。  最初に、補助金一般財源化についてお聞きいたしますが、農林水産省関係ではこれによって、農協とか漁協とか森林組合の検査を行うために要する旅費なんかについて、今までは補助金で手当てをしておりましたが、これが今度廃止されるわけであります。これは、削減された部分については地方交付税で手当てするということになっておりますけれども、県によっては農協に対する検査がおろそかになるのではないか。そんな心配は全くないのですか。これは農林大臣に聞きます。
  367. 吉國隆

    吉國政府委員 お尋ねのございました農林水産関係の団体の検査旅費につきまして、都道府県に対して補助を行う規定がそれぞれの関係法律に設けられておったわけでございますが、お話がございましたように、長年の間都道府県の仕事として、いわば溶け込んで定着をしておる、こういう理解のもとに今回一般財源に移行するという形で規定の改正が提案されておる、こういう状況に相なっておるわけでございます。  検査が非常に重要であることはただいま先生御指摘のとおりでございますので、それぞれの関係法律にきちんと検査をすべきであるという規定はこれからも残ってまいるわけでございますので、その法律に即しましてきちんとした検査が今後も行われるよう、関係都道府県等に対しまして十分お願いをし、万々そういった検査がおろそかになるといった事態がないように措置をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  368. 島田琢郎

    ○島田委員 大臣が答える前にもう一つ。  審議官、万々後退するようなことのないようにちゃんとやります、こういうお話でございますが、例えば林業、林業は後ほど私触れたいと思っておるのでありますが、森林組合の問題に少し触れておきたいと思います。  言うまでもありませんが、国内林業は長期にわたって不振のもとにあえいでおります。林家の生産活動や出づくりに対する意欲というのが大変後退をしておる、こういう心配がありますのは、山元における実態も明らかにされていますし、また統計的な数字もそれを裏書きする。大変憂慮にたえないわけでございます。こうした機会に、森林組合というものが果たす役割というのはこれは大変大きいわけであります。その森林組合に対して、検査というのはちょっとあれですが、これは指導していかなくてはいかぬ。農協や漁協に比べますと、森林組合の機能とかあるいは組織とかいうものが全体的には必ずしもまだ強力なものとは言えない、こういうことであります。  そこで時々、ことしのあれを見てみましても、かなり欠損を出している組合がたくさんある。七九年には九%であったものが八一年には一四%とふえました。当期、この期末におきます欠損金も一組合当たり七五年の百六十五万円から八二年七百九十四万と、五倍にはね上がっておる、こういう統計数字も出されておるわけであります。こういう経営悪化の中で、残念ながら雇用労働者の就労条件あるいは労働条件、こういうものに大変悪影響をもたらしておりますし、労災であるとか社会保険の加入に当たっても、残念ながら適正を欠く事件が時々散発ではありますけれども出ている。また経理面においても疑惑を招く、こういう組合も散見されるわけでございます。  もちろん大体の組合はまじめにちゃんとやっているわけであります。しかし、ますますこうした森林組合の育成というのは大変重要になってくるわけでございますから、こうした点でいいますと、今度の森林組合法第百十八条の削除、そしてまた、同法第百十一条の問題で今お尋ねをしておるわけですが、こうした検査業務やあるいはその検査の機能とかが後退するというはうなことは許されない、私はこう思うのです。むしろ積極的に指導を図っていかなければならない、そういう状況にあると思うのです。  吉國審議官は大丈夫だとおっしゃったけれども、これはやはり県によってばらつきがないように、従前以上の指導を行うことができるようなそういう手当てというものをちゃんとやれるかどうか、私は大変心配なんです。額は大したことないとおっしゃるが、持っている問題は大変重要な意味を持っている。こういう点で重ねてお尋ねをしておきたいと思います。
  369. 吉國隆

    吉國政府委員 森林組合につきましては、林業を取り巻く非常に厳しい諸条件のもとで、先生からお話のございましたような種々の問題が出ておることは事実でございます。私どもといたしましては、林業の発展のためにも、またあるいは林業地域の地域社会の発展という見地からも、森林組合の活性化を図っていくということが非常に大切な仕事であるというふうに思っておるわけでございまして、今回の検査旅費の一般財源化ということにつきましては、これは地方の一般財源の中で適正に実施していただくように十分都道府県にもお願いをいたしますほか、森林組合の育成という観点から、必要な予算措置等については従来からもやってきておったつもりでございますが、今後とも状況の推移に応じまして必要な予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  370. 島田琢郎

    ○島田委員 大臣、これは今度地方交付税で手当てされるわけですね。ですから、ここのところはひとつ、予算の段階できちんと大臣からも自治省に対して地方交付税として万全を期してもらいたい。そういう事情が末端にもあるということの私の指摘をぜひ受けとめて、廃止に伴う地方交付税への切りかえに際してやはり特段の注文をつけておいてもらいたいと僕は思いますが、どうですか。
  371. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  農業委員会等の交付金についてどうかというような御質問だと思いますが……(島田委員「いやいや森林組合。吉國さんが答えたのに対して、大臣としても答えてもらいたい」と呼ぶ)これは実は率直に言いますと、今林業が大変不況にあります大きな問題の一つは、経営規模の拡大が難しいわけであります。大体日本で、私の記憶では五町歩以下が九七%、それを一体どのように経営規模を拡大するかという御質問でございますが、日本ではなかなか難しい。そういう場合に、森林組合がこれを取り扱うということで大変重要な役割を持っている。これは理解する。そんなことで、今吉國審議官が言ったようなことで、厳しく、検査をおろそかにしないような形で頑張りたい、こう思っております。
  372. 島田琢郎

    ○島田委員 大臣は問題の所在を十分御認識ではなかったようでありますが、これはきょうは時間の関係で、吉國さんあるいは長官もいらっしゃるから私の言わんとしたことはおわかりになったと思うので、後から大臣によく教えておいてください。     〔越智委員長退席、熊川委員長代理着席〕  それから、補助金交付金化について聞いておきたいと思いますが、農林水産省関係でいいますと農業委員会――これから大臣答えてもらうのが農業委員会お話です。あるいは病害虫防除あるいは漁業調整委員会関係補助金が、今度は補助金でなくて定額交付金になる。これはいずれも、農政にとってあるいは水産行政上重要な役割を担ってきたものばかりですね。  そこで、これらの定額交付金が各県に対して今度は配分されていきますが、この配分基準というのはどうなるのか、これが一つです。これは大蔵大臣。それから、各県の特殊事情というのが、年ほども言いましたようにいろいろばらつきがありますので、この面を十分カウントするお考えがあるかどうか。これが第一点のお尋ねです。  第二点は、定額交付金化した場合に、例えば今と違って大変大きく経済事情が変化をする、また物価が大幅に上がる、こういうふうなファクターが生じた場合に、これは当然のことながら事務執行に大変支障を来しますね。そういう場合に、交付金を率直に言えば増額をする、こういうことでないとこれはたまりません。こういう点については大蔵省としてお約束いただけますね。農林大臣にも同じようにお答え願いたいと思います。
  373. 吉國隆

    吉國政府委員 私からまず事務的な点についてお答えを申し上げたいと思います。  まず、交付金の配分基準の問題でございますが、それぞれ農業委員会、それから植物防疫所、漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会とございますが、農家数なりあるいは農地面積なりあるいは各県におきます市町村の数でございますとか、あるいは漁業の場合は海岸線の長さでございますとか、そういったそれぞれに応じまして、実態に即した配分基準をつくりたいというふうに考えておる次第でございます。  お尋ねのございました、各県別の特別な事情か十分に反映した基準になるのかという点でございますが、それぞれ各県別に事務処理量等が異なっておりますので、今回の交付金化趣旨にもかんがみまして、そういった特別な事情を反映できる形で交付基準を決めていきたい、これによって混乱がないようにしたいというふうに考えておる次第でございます。  また、物価上昇等があった場合にどうするかという点でございますが、今回の交付金化という趣旨からいたしまして、定額として取り扱うという考え方でございますので毎年その額を改定するということは考えておらないわけでございますが、お話のございましたような著しい経済事情の変化があったような場合に、私どもといたしましては、これらの行政委員会等それぞれ重要な任務を帯びておりますので、その任務の遂行に支障がないように適切に措置をしたいという考えを持っておる次第でございます。
  374. 竹下登

    竹下国務大臣 全般的ないわゆる交付基準の問題については、農林水産省からお答えがあったとおりでございます。  そうしてまた、大幅な物価上昇等経済事情の変化が生じた場合の措置でございますが、そもそも定率補助方式を改めて、標準定額によって一括して交付するものでございますから、これによって地方公共団体の自主性の発揮が促進されますとともに、事業の効率的、弾力的運用が期待されますので、その趣旨はそのまま継承しながら、そういう場合にはその趣旨にのっとって適切に対処していくべきものだというふうに考えております。
  375. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  今審議官の申したとおりでございます。
  376. 島田琢郎

    ○島田委員 せっかくの機会ですから、なるべく大臣お答えいただくように、役所もいよいよ僕が名指ししないうちは出てこないようにしてください。  次に、行革特例法の問題でありますが、これは一年延長ということで、けさほど来いろいろ質問があったわけであります。これは厚生年金保険の事業にかかわる質問も何人かの委員からなされましたが、私の方の関係もございまして、当時の行革委員会あるいは農林水産委員会でもうしつこいくらいに、三年間貸すけれども、これは金利つけて払うんだな、当時の大蔵大臣、農林大臣すべて、けさほど来指摘のあったように明確に答弁がなされているものでございます。  これは一年間また貸してくれ、こういう話でありまして、貸してくれと言われれば貸さないといったってこれはしようがないのでありますけれども、問題は、これをちゃんと返してくれる、それはいつなんだ、一年でまた本法に戻るということですから我々の理解ではこの一年間ということでありますが、何人かの方々からもお話がありましたように、財政再建に対しての大変厳しいお話が先に出てきてそして一年きりですよ、こう言うものだから、これはどうも何年も貸さなければならぬというようなことになっちゃうんではないか、こういう心配がどうしても出てくるのですね。  ところで、今どれくらい政府に貸しているのでしょう。金利つけてどれくらいの額になりましょうか。
  377. 平澤貞昭

    平澤政府委員 五十七年度から六十年度まででございますが、合計いたしますと、減額分で九千四百七十億円、これに運用収入の相当額が千三百五億円、合わせて一兆七百七十五億円という数字になっております。
  378. 島田琢郎

    ○島田委員 大蔵大臣、これはいつ返してくれますか。
  379. 竹下登

    竹下国務大臣 したがって、たびたび御答弁を申し上げておりますように、これはいわゆるこの期限が参りました後、年金財政に支障を来さないように適切に措置をするということ以上に具体的な返済計画をお出しすることは非常に難しい問題だ。残念ながら、従来とも、その返済計画につきましてはそのようなお答えをしてお許しをいただいておるわけでございます。
  380. 島田琢郎

    ○島田委員 御承知のように農林年金は、関係者の努力によりまして、私学年金と並び大変成熟度の低い、いわゆる優良な年金制度、共済制度と言われております。しかし、そうは言ったってこれは限度があるわけでありますし、今言われたように一兆円を超えるようなお金というのは、運営上に支障がないなどということはあり得ないわけであります。長々これをやられますと、年金会計そのものがやはり重大な支障を来します。  農林大臣、これは大丈夫ですか。私は大変心配がありますので、この際、農林年金の今の運営でいつまで正常でいけるか、そういう御認識はどう持っていらっしゃるか。
  381. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  私は、今度の措置につきましては、国の財政が非常に厳しいということで、六十年度限りの暫定措置と理解しております。
  382. 島田琢郎

    ○島田委員 では、こう考えていいのですか。六十年度はまあまあこれだけの金を貸してやっても何とか農林年金会計はやれる、しかしこの年度が明けたらたちまち運営に支障を来す、今のお答えからいったらそのように理解していいのですか。
  383. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  当面は積立金の余裕がございますので、何とかやっていけるのじゃないかと思っております。
  384. 島田琢郎

    ○島田委員 大蔵大臣は、いや一年だけ貸してくれれば来年返すよと今言わなかったんですよ。そのときの事情によってといったら、いつまで、どうなるのか、雲をつかむような話ですね。それでも農林年金は大丈夫ですか、支障はありませんかと聞いているのです。どうですか。
  385. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先ほどからも言っておることでございまして、私は六十年度限りのいわゆる暫定措置と理解しております。そんなことで、当面は余裕金がございますので何とかやっていけるのじゃないか、このように理解しておるわけです。
  386. 島田琢郎

    ○島田委員 心もとない話で、そんな調子なら竹下大蔵大臣はいつまでもこれは払わぬわ。  それでは、時間が刻々迫りますから、高率補助の一割カットについてお聞きいたします。  これは農水省関係では、土地改良とか治山、漁港整備等いずれも我が国農林水産施策の根幹をなす重要な事業にかかわるカットでございます。今回の特例措置による補助率カット分というのはすべて都道府県が負担するということになるわけでありますけれども、先ほど来言っておりますように、そうはいっても県によっては最終的には末端で農民や漁民や林業家にしわ寄せがされるものでございます。そういう心配が十分あるわけです。特に今、高度成長期に計画を立て、長い年月を経て完成をしなければならないという大変大型なプロジェクトもいっぱいございます。この大型プロジェクトを途中で挫折するというわけにはいきません。もう既に継続して仕事が進められておるわけであります。ところが、今のような財政事情でございますと連年予算が減る傾向にございますから、どうしてもその事業を縮小するか先延ばしをせざるを得ないということになるわけです。これでは困ってしまいます。中には、孫の代までかからないと完成しないなんという事業だって出てくる可能性がある。  こうしたいわゆる国づくり、国土改良というものが非常に急がれるわけでございますので、公共事業の五%カットというのはいただけない、私はこういう考えで、例年こうした公共事業をもう少し強力に進めてほしい、そうでないと事業がいつまでたっても終わらないということになってしまう、こういう心配を持っている一人でございます。とりわけ北海道のようなところは基盤整備に大変力を入れておりますし、またプロジェクトとしては決して小さくないものばかりでございます。ぜひこれを早期に完成させてもらいたいという期待は地元の人たちに強くあるわけです。農家の皆さんは一日も早い完成を期待しているところが非常に多いわけです。その上この一割カットなどということにひっかかってまいりますと、ますます事業の完成が困難になり、先の見通しもつかぬということになってしまいます。何とかこれを促進するという立場でひとつ重点的におやりいただくようなことをぜひお考え願いたいと考えているのですが、大蔵大臣、私が今申し上げましたような事情はのみ込んでいただけるでしょうな。
  387. 竹下登

    竹下国務大臣 農林水産関係公共事業、なかんずく基盤整備事業につきましては、多年の悲願がたしか九千億であったと思っております。その九千億に一度達しまして、またみずからが大蔵大臣としてその予算を削減方向に誘導して調整をとらなければならなかったということに対しては、まさにじくじたるものをその都度感じておりました。しかしことしの場合、国庫補助につきましては、この減額しましたものの補助率等によりまして総体的に事業費そのものを確保できた、若干の上乗せができた。そういうことからいたしまして、住民のニーズにこれからも乏しい中でも積極的にこたえていく努力は必要なものであろうというふうに私といたしましても認識をいたしておるところであります。
  388. 島田琢郎

    ○島田委員 次に林業に入りますが、けさからも話題になっておりますように、木材製品の市場開放問題というのはどうしても私も触れておかなくてはなりません。とりわけ農林水産委員会におきましては佐藤農林水産大臣に集中的な矢が当たっておりまして、孤軍奮闘されているとも聞いております。  そこで、きょうは本当はここに関係大臣にもおいでをいただきたいと思っておりましたが、残念ながら大蔵大臣しかお見えになっておられないので、大蔵大臣も経済対策閣僚会議の重要メンバーでございますから十分認識はされていると思いますが、佐藤農林水産大臣に孤立するというふうな思いをさせないためにも、ぜひひとつ国内林業の振興、これなくして関税を下げるなどということはむしろ国内対策としてはあべこべなやり方でございまして、あべこべというのは、財政当局から見たって、今それを下げて、それじゃ下げた分、新聞で報道されているように国内対策、川上から川下までの対策、二千億とも言われ、三千億とも言われるような金を出さなければならぬ、こういうふうに迫られていって、今の財政事情の中ではそう簡単にいきますまい。片っ方では関税を下げておいて国内でそれだけの金がちゃんと生まれる、仮にそういうことが実現するとしても、本来関税引き下げの問題と国内林業振興対策とを絡めて話をするなんということは、大体これは本末転倒の話であると私は思うのです。御所見を伺っておきたいと思うし、私は断固としてこれには反対であるという立場を明確にして、大蔵大臣のお考えを聞きたい、こう思います。
  389. 竹下登

    竹下国務大臣 川上対策でございますとか川下対策でございますとかいう議論がございます。が、元来我が国の林業の持つ重要性、これが施策の推進というものは、言ってみれば今日関税問題が起きたから特に重要になったということではなく、本来重要であるべき施策であろうという位置づけは私も承知をいたしておるところであります。  が、言ってみれば、このたびの関税引き下げ要求というようなものがそういう議論を改めて国民次元で行うところの一つの契機には私はなったのではなかろうか、こういう印象を持っておりますだけに、これについて私どもも、もとより担当省からいろいろ施策は御検討なさることでございますが、それと協議していく立場にあるという事実認識は持っておるつもりでございます。
  390. 島田琢郎

    ○島田委員 あと漁業の問題に触れます。  先ほども漁業の問題は触れてまいりましたけれども、鯨の問題に象徴されるように、海外からのいわゆる我が国水産漁業に対する圧力も日増しに強まってまいっております。これは加速を帯びこそすれ、おさまることはない、私はこういう認識を持っているわけであります。しかしながら、国内においては一体どうなのかといえば、農業や林業には基本法が曲がりなりにもございますね。しかし、漁業には基本法がない。また国内法といったって、沿岸整備法、沿整法があっても、これまた今度のこうしたいわゆる予算とかその他にひっかかって、なかなかこれが地元の期待どおり財政措置されない。やがては二百海里から全面撤退を迫られるというようなことだって想定しておかなくてはならないのに、しかし国内対策は全くお粗末きわまりない。  私は鯨のことで申し上げましたが、アメリカには漁民保護法がありますね、ペリー法、パックウッド・マグナソン法というのがまた、無資源を確保して、それを一定の規制のもとに置くという法律でございます。我が国にはそんな法律は何もないのです。だから、けんかにならぬから鯨だってギブアップ、もうあと二年でこれは長い歴史の幕を閉じざるを得ないということに相なります。無念やる方ない思いでしょう。この際、そうした国内法をやはり漁業の立場で真剣にお考えになる、こういうことでないといけないと私は思うのです。  そういうものが全くないのに、今度の一律カット法の中でこれまた被害を受けるわけです。漁港の整備だってまだまだこれからです。第七次の漁港整備長期計画だって相当のお金が必要になる、こういう予定でございましょう。私はぜひ、こうした実態に対処する、そういうお考えをお持ちになって今度の一律カットをお考え願いたかったと思いますが、残念ながら血も涙もない、そういう感じの提案になっている。どうですか、私の指摘に対して間違いだという反論がございますか。
  391. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  例の二百海里体制の定着に伴いまして、先生御指摘のとおり、我が国漁業の一層の振興を図るために我が国周辺水域の光度利用を図る必要があると考えております。そんなことで、国の財政の非常に厳しい折でございますが、漁港の整備や沿岸漁場の整備開発、栽培漁業の指導等いわゆる「つくり育てる漁業」の推進、沿岸漁業の構造改善等各種の施策を推進しております。特に、御指摘ございました漁港事業補助率の一部引き下げ等による地方公共団体の負担増加につきましては、地方財政対策において適切な措置が講じられることになっておりますゆえ、事業の推進には支障がないというふうに考えております。
  392. 島田琢郎

    ○島田委員 ところで、水産庁が主導されまして、豊かな海づくりという運動が展開されておりますね。山の緑、植樹祭、海の方も何か考えようというので、ことしは第五回目、それは私の地元で行われます。ところが、よくよく聞いてみたら、これは旗は振るけれどもお金は一銭も出さぬ。余りにもこれはひど過ぎるのじゃないですか、何ぼお金がないといったって。地元はこのお金の才覚に四苦八苦せざるを得ません。皇太子さんがおいでになるというのでてんやわんやでございます。しかし、せっかくこの豊かな海づくりなどという運動を提唱なさったのなら、幾ら何だって、大臣のポケットマネーだってあるんじゃないですか、少しは色をつけたらどうかと僕は思うのです。  聞くところによると、三百三十万だけつけるそうですね。しかし、北海道全体では一億三千万から四千万かかる。地元が何千万かまたかかりますから、これは大変なことなんです。そうして、中央から五千人も行きまして全体で七千人も我が町に集まってまいりますと、ちょうど我が町は六千七百人の人口でございますから、人口が当日は倍に膨れ上がる。  それは余談でございますが、大臣、今まで四回やっていないからおまえのところだけ特別に出すわけにはいかないと言うかもしれませんが、それは五回以降少しはお考えになったらどうですか。
  393. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  これは先生が私よりもっと詳しいわけでございますが、これは水産資源の保護増殖及び漁場の環境保全を啓発するということで、実は都道府県と豊かな海づくり大会推進委員会の共催でやっておるというのが現状でございます。そんなことで現在、放流経費、それから表彰等、大会経費の一部につき助成することにしておるということでございます。
  394. 島田琢郎

    ○島田委員 終わります。
  395. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 沼川洋一君。
  396. 沼川洋一

    ○沼川委員 まず大蔵大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、午前中総理が御出席の折にお尋ねした問題に関連するわけでございますけれども、今回六十年度予算編成におきまして、補助金の一律カット、九省庁、五十九法律にわたるそういったものを一括して一本化した法案を出されておるわけでございます。  特に、今回のこの補助金の内容を見ますと、一つには生活保護法など、憲法第二十五条にいわば明記されました社会保障、国が使命といいますか義務を負わなければならぬこういった社会保障に関連するものがたくさんございます。それからまたもう一方、国と地方自治体とのいわば負担割合というのが、法的にも一つの大きな問題でもございます。例えば、御承知のように地方には、地方財政法の第二条第二項によって「地方公共団体に負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」こういった一つの法がございます。お昼に質問をいたしました際、総理に、政府予算編成上の都合とこういった憲法第二十五条あるいは地方財政法あるいはこれに関連するそういった法令とのどちらがいわば優先するのか、こういう質問をいたしましたら、総理は、これはもちろんそういう法の遵守をしなければならぬ、こういう答弁をいただいたわけでございます。  そこで、あえてお尋ねしたいわけですが、そういう憲法、法律を無視してまでいわば予算編成の都合が先行する何か根拠があるのでしょうか、お示しいただきたいと思います。
  397. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 私ども厚生省といたしましては、今回の措置につきまして、実質的な福祉の水準の低下がないようにということが最大の考え方でございます。したがいまして、削減されることになりましたけれども、また地方の負担がふえました分についてはそれなりの手当てがなされたということでございます。したがいまして、国の責任である生活保護の問題につきましても、そのような観点からは支障なく福祉政策を実行できるものと判断いたしたわけでございますので、今回の措置に踏み切ったわけでございます。どうかその点を御理解いただきたいと思います。
  398. 沼川洋一

    ○沼川委員 大蔵大臣、今の問題についていかがでございましょうか。
  399. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる生活保護というのが生きるための最低限の権利、それに対する保障というようなことで憲法二十五条の精神を引き継ぎまして、そして今日まで存在しておるということは、これはお説のとおりであるというふうに私も考えます。しかしながら、今度お願いしておりますのは、その場合における国と地方の費用分担のあり方についてお願いを申し上げておるわけであります。今厚生大臣からもお答えを申し上げましたごとく、いわゆる末端の給付水準そのものは、現行をもとより維持し、なお、物価上昇分でございますかについてはこれをプラスすることによって措置をしておるということで、その精神は守られておるではなかろうかというふうに私は考えておるところであります。
  400. 沼川洋一

    ○沼川委員 あえてこの問題を最初にお尋ねしたわけは、恐らく来年度も本年以上に国の財政というのは厳しい状況下に置かれると思います。そういった財政事情で、憲法あるいは地方自治法、いろんなそういう法規が無視されるということ、これが一例になって今後もたびたびなされるのじゃないか、そういう心配があるわけでございますが、これはあくまでも今年度限りのいわば緊急避難的な処置というように理解してよろしゅうございますか。
  401. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、御審議をお願いしております法律は、これは一年間の暫定措置でございます。したがって、本来あるべき姿はどうか、こういうことについては、この一年以内に三省でまた相談をして決めよう、こういうことになっておるわけでございますから、一年限りの暫定措置であることは事実でございますが、いわばそういう国と地方との費用負担のあり方ということは、私は絶えず検討がなされるべき課題であるという認識の上に立っております。
  402. 沼川洋一

    ○沼川委員 一年以内ということをどういうふうにとっていいか、本年度内ということなのか。その一年という意味は、ことし一年ということでしょうか。来年度からとなりますと、もう既に八月ごろは次の概算要求等がございまして、早速、今すぐでも話し合いが始まらなければならぬ、そういう時期じゃないかと思いますけれども、その辺、いかがなものでございますか。
  403. 竹下登

    竹下国務大臣 これは種々議論した上で、いわゆる一年限りの暫定措置ということでお願いをしておるわけであります。この一括法の中には、先ほど来議論のありました文教関係のいわば恒久化のものも入っておりますが、今御指摘いただいております社会保障関係は一年限りの暫定措置であります。  さて、六十一年度以降どうするかという費用負担のあり方につきましては、三省大臣合意というものがございまして、これでこの一年かけて、当時から一年でございますから、言うなればことしの十二月の予算編成作業までにその結論を出さなければならぬわけであります。  さて、いつからその議論を始めるか、こういうことになりますならば、これは今その法律をお願いしておる最中でございますから、この法律審議するに当たって、沼川さん初め多数の皆さん方から展開された議論等も踏まえて、どういう仕組みであるかということも今関係省内で検討中ということが、今日のお答えの限度ではなかろうか、こういうふうに考えます。
  404. 沼川洋一

    ○沼川委員 このことばかり論議しても始まりませんので、再度ちょっとお尋ねをいたしたいと思います。  特に今回、生活保護法に切り込んでおるというのが一つの大きな論議を呼んでおるわけでございますが、これは言うまでもなく憲法第二十五条の精神を具体的に具現化したものの適例といいますか、まさしく生活保護がそういうものだという観点からいろいろと論議がなされておると思います。  これは増岡大臣よく御存じと思いますが、社会保障制度審議会設置法というのがございます。この第二条第二項を読みますと「内閣総理大臣及び関係大臣は、社会保障に関する企画、立法又は運営の大綱に関しては、あらかじめ、審議会の意見を求めなければならない。」こうございますが、今回の、特にこの生活保護法を初めとする、第二十五条に明記されたそういう関連の法案の、国庫補助の基準を八対二から七対三に変更された、これは重大な問題であるだけに、この社会保障制度審議会設置法の第二条二項に照らしても、当然審議会にかけて十分意見をいただきながら法案として出すべき性質のものじゃないかと思いますが、その辺については制度審議会にどの程度お諮りになっておりますか。
  405. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 今回の措置につきましては、本年一月に制度審議会において内容を説明し、御論議をいただき、御意見を承ったわけでございますけれども、私どもといたしましては、今回の措置負担割合の変更でございます。生活保護そのものの水準とかその内容に変更を加えるものではないということが一つと、それから六十年度の暫定措置であり、基本的なあり方に変更を加えるものではないという観点から、政府部内で関係省庁の協議が整った段階で説明を申し上げたわけでございます。国民に直接影響を与える社会保障のあり方にかかわるものでないということの事柄の性格上、審議会に内容を説明したわけでございます。
  406. 沼川洋一

    ○沼川委員 私、いろいろ御答弁を承っておりまして、審議会でこの問題が徹底的に論議がなされたということよりか、何か事後承諾みたいな感じで渋々オーケーしたという感じが強いわけです。今の御答弁の中に、今回のこの処置はいわば国と地方との負担割合の変更であるから、受給者には直接支障を来さない、そういうことなんですけれども、確かに、国サイドからの御説明としてわからぬわけではないわけですが、御承知のように、国は一つですけれども地方自治体は三千三百もあるわけです。その中には、午前中もちょっとこれは総理に申し上げたのですが、いわば農村地域あるいは過疎地域、そういうところが全体の大体五五%以上ございます。言ってみれば、財政の非常に厳しい地域が大半以上を占めておるわけでありますが、確かに御説明されるように、要するに八対二であったのを七対三に変えただけで、公的負担というのは少しも変更がありませんし、受給者にとっては何らそれは支障がないかもしれません。  ただ、私心配しますのは、この机上の計算では心配ないということでしょうけれども、実際これは国の機関委任事務として、それを実施している自治体にとっては大変な問題だと思いますよ。今度のこの八割が七割に変更される以前から、各自治体にとって、仰せこの生活保護費というのは義務費でございますので、やはり最優先的に予算を計上しなければならぬ。ところが、非常に厳しい財政事情下で、今各自治体は自主財源が伸びるわけではないし、かてて加えて単独の事業はいっぱいやりたい。そういう事業を抱えておりますし、そういう中で自治体の財政圧迫になっているという現状もございます。しかも私心配しますのは、国が再三にわたってこの生活保護法の適正化対策というのを打ち出されておりますけれども、中身を一言で表現しますならば、生活保護法の受給者が余りふえるのはよくない、もっと徹底して抑えなさい、そういう流れが、国の言ういわば適正化対策じゃなかったかと思います。  財政難で非常にこれに苦慮している、さらにそういう適正化対策、さらに今度はそれに追い打ちをかけるように負担区分の変更ということ、これは地方財政にとっては、何かますます生活保護法を、いわばその行政を実施するという中で、厄介と言うとちょっと語弊があるかもしれませんけれども行政が伸びることは絶対ない、むしろ後退する、そういう心配を持つわけです。  しかも、今度財政的に負担が重いと見られる自治体に対しては、確かに地方交付税等で補てんするということですが、言ってみれば補助率は下げます、しかし、一般財源を強化してあげましょうということなんです。一般財源といいますと各自治体が自由に使えるお金ですから、先ほどから申し上げますように、いろいろとやりたい仕事がたくさんあるという流れの中で、生活保護法の行政の実施に今まで以上に力が入るだろうか。その数字的なつじつまは合いますけれども、実際の行政の流れからこの問題を考えてみますと、どうしたって国の義務である社会保障に位置づけられるところの生活保護の行政は、今よりも後退するということが結果としては言えるのじゃないでしょうか。ですから、大臣はただ単に区分の変更だけだから何も問題ないとおっしゃいますけれども、これはちょっと認識が違うのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  407. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 総体的には先ほど申し上げたようなことであろうかと思いますけれども、御指摘のように、市町村によりましては、その財政能力あるいは生活保護のニーズが多い少ないということがあろうかと思います。したがいまして、その点につきましては、生活保護につきましての財政調整のために二百億円予算をいただいておりますので、その利用によりましてできる限りのことは対処してまいりたいというふうに思います。しかし、何にしましても基本的には、生活保護というのは、それを受給する資格のある方々は当然お受けになる権利というものがあるわけでございますから、財政が豊かである、あるいは財政が豊かでないということによって左右さるべき問題ではないというふうに認識をいたしております。
  408. 沼川洋一

    ○沼川委員 この問題で多く論議をしたくはございませんが、それでもなおかつ財政的に非常に無理を生ずるようなところには、また特別に二百億の措置を考えてある。私の知るところでは、産炭地とか、特に福岡県なんかに厳しいところがあるようですが、直方とか田川とか、そういうところを想定してあると思います。しかし、これだって二重に見ているのだけれども、結局一般財源を強化するという方向であることを考えますと、数字的にはわからぬでもございませんけれども、内容として生活保護の行政が低下するということは、厚生省が一番御存じじゃなかろうかと思うのです。そういう意味から非常に問題だと私は指摘を申し上げておくわけでございます。  話を変えまして、時間の関係で次に進みたいと思います。  大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのですけれども、今回のこれは歳出削減の非常手段のように、盛んに大蔵省では説明されております。これしかないというような言い方で説明されておるわけですが、これが本当の歳出削減になっていないというのが問題じゃないかと思うのです。要するに国の分を肩がわりするだけですから、国と地方を合わせた公的支出の額というのは変わらないわけです。したがって、これでは納税者の負担低減というふうには全くつながりませんし、これは本当の意味での歳出削減とは言えないのじゃないかと思いますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  409. 竹下登

    竹下国務大臣 これは国の予算規模から見た場合には財政支出の削減ということになりますが、末端の給付水準そのものは変わらないわけでございますから、まさに沼川さんおっしゃった論理はそれなりには成り立つ論理だ。だから、大義名分の論理は何ぞやと言われれば、国と地方の費用負担のあり方というお答えになろうかと思います。
  410. 沼川洋一

    ○沼川委員 さらにお尋ねしたいと思いますが、その一割削減の理由として、特に補助金整理統合が不可欠である、これを非常に強調なさっておるわけでございます。率直に言いまして、私も補助金整理は大賛成でございます。ただ、補助金といいましてもいろいろございまして、時代の流れの上から、どう見たってこれは役目が終わって要らないのじゃないか、正直言ってそういうのがございます。また、補助金をつけても効果が非常に不明確で、これは不必要じゃないかという補助金もあるわけでございます。また、特定の対象を優遇すると思われるような補助金は即刻廃止すべきだ、私はそういう考え方であるわけです。ところが、今回補助金整理統合とおっしゃっていますけれども、余り廃止されたのはございません。その辺に私も非常に疑問を持つわけです。  行政改革というのは、そういう面にメスを入れるのが行革じゃないかと考えるわけです。特に今回のやり方は、行政分量を減らさずに、従前どおりに行うことを地方団体に義務づけておいて、国の補助率を減らした額だけ地方団体の新たな負担をふやすということですから、これはどう見たって地方に対する国の負担転嫁であるというふうに見ざるを得ないようなわけでございます。こういった補助金整理統合は行革の理念にも反しているのじゃないかと思いますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  411. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる財政改革ということを考えますと、十四兆数千億、いわば一般歳出の四割強、これにメスを入れなければならぬというのが一つの常識としてあり得るであろう。そうなりますと、いつも感じますのは、法律に基づくものと予算補助との比率がアバウト八対二、そうして社会保障文教公共事業ときにあらざるものとを見ますとこれまたアバウト八対二、それから地方自治体を通じて交付されるものがアバウト八対二。その三つが入り組んでおりますと、言ってみればそのらち外に出てきますのは非常に薄いものになってまいります。それを長い間削減しながら今日に至ったわけでありますが、その削減のポイントは何ぞやとおっしゃいますならば、おっしゃったとおり、まず目的を既に達成したものからこれを排除していくべきもの、あるいは既にその地方に定着をしていわば交付金化した方が適切なものというようなものの順序でやりまして、二年にわたりまして実質削減が行われたという事態にありますので、それなりの努力は御協力を得ながらやってきた。  しかし、おっしゃいます今日の社会保障の問題につきましては、まさに結論的に申しますならば、国と地方の費用負担のあり方という点について御理解をいただきたいものだと考えるわけであります。なかんずく、先ほど来御意見を交えての御質問の中に、地方の負担が多くなりますと、それだけ査定と申しましょうか、そういうものが厳しくなって、現実本当にそういう環境におられる方々に対する給付そのものが厳しくなってくるのじゃないかという御心配もあろうかと思います。それは議論の段階におきましてはそのような議論もいたしました。  また、考えてみますと、昭和五十三年がたしか福岡県が千人当たり四十・一人、岐阜県が千人当たり四人、十倍強であります。そうすると、一人当たり県民所得は福岡が全国で当時五番目で、岐阜県は二十七番。どこに問題があるだろうかと私どもなりにも検討してみました。しかし、今おっしゃいましたようなその地域地域の特殊性があるということを否定するものではございません。その後、今日までの経過の中で、先ほど柴田さんにもお答えいたしましたが、四十・一人はもう少し上になりまして、そしてまた一番は今度は四人を切った三・八人でございましたか、それが愛知県になっておるというような実態を見ながら、しかし、今例示としてお出しになりました産炭地等のケースがあるわけでございますから、そういうアンバランス、平均的に見ますとアンバランスのように見えますが、実態がそうであるという認識はしておるつもりでございます。
  412. 沼川洋一

    ○沼川委員 補助金整理統合について、今後いろいろと検討されると思いますが、ぜひひとつ私が申し上げましたような方向でお願いしたいと思います。  要するに、一口で言いますと、行政改革と言うからには、今の行政機構の中のかなりの部分はこの補助金の申請、受付あるいは審査、決定、交付事業報告受理、そういった仕事があるわけですが、仮に補助金の件数が整理されるとなりますと、それを担当してきた陣容がそこから解放されるわけです。つまり現在の政府の守備範囲が狭められるわけです。行政機構が縮小される、これが本当の行革じゃなかろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  413. 竹下登

    竹下国務大臣 本来は趣旨はそのとおりだと思います。交付手続あるいは審査基準等々によって、多くの人手がかかっていくというよりは、むしろ、本当のいわば人員の合理化縮小等が行われることによって、結果としてチープガバメントと申しますか、そういう姿になっていくというのが本来あるべき姿であるということは同感であります。
  414. 沼川洋一

    ○沼川委員 ぜひそういう方向に進むことを期待して、次の質問にいきたいと思います。  自治大臣、お見えでございますのでお尋ねをしたいと思いますが、今回の一律一割削減の背景に、地方財政が非常に好転してきている、いわば余裕があるのじゃないか、地方財政余裕論というのがありまして、大蔵省さんあたりが盛んにそういうことをおっしゃっているわけです。確かに人件費とかラスパイレス指数とかいうものをとらえていきますと、そういったことも言えるのじゃなかろうかと思いますが、私も長いこと地方におりまして特に感ずるわけですが、大蔵省がおっしゃるほど、そんなに地方財政というのは好転していると言えるような状況にはないと思いますが、自治大臣からごらんになって、率直に地方自治体財政事情について御説明いただきたいと思います。     〔熊川委員長代理退席、堀之内委員長代     理着席〕
  415. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 数字的に申しますと大体五十六兆という借金でございまして、地方債の借り入れしたのをまだ返さんならぬものが大部分でございます。それからまた、交付税特別会計の借り入れというのも数兆ございまして、現在五十六兆余の借金を持っておるということが一つでございます。  もう一つは、個々の団体によりまして、起債をどの程度やると地方財政上危ないか。私ども赤信号と言っておりますが、公債負担率二〇%以上という団体がだんだんふえまして、八百二十団体というふうになっておるのでございます。それで、御承知のように、個々の地方自治体というのは三千三百ございます。例えばこの間神奈川県が期末手当を二万五千円ずつ職員に配った。知事さんと会いまして、地方が豊かであるというような感じ、たまたま神奈川県は財政がよかったように思われるので、これはぜひひとつ検討をしてもらいたいという申し入れをしたのでございます。要するにそういう意味で三千三百の集合体であるということ。  もう一つは、財源その他におきまして、地方の自主的財源、つまり税を見ましても、普遍性のあるものは国と比べると大変少ないということでございますし、税源の範囲も少ない、また個々の町村によって財政事情も非常に違っておるというようなことから考えますと、私は、地方財源というものはこれからもっと充実を図っていかなければならぬもので、地方税につきましても今度若干の手直しをいただいたところでございますが、あるいは今後もそういう点で地方財政の税源の確保、交付税の問題ももちろんでございますが、そういうことに全力を挙げたいと思っておるわけでありまして、今申しましたような気持ちから、地方財政は決して裕福ではありませんということを申し上げたいと思います。
  416. 沼川洋一

    ○沼川委員 大蔵大臣、まことに恐縮ですが、今自治大臣から地方財政は決して甘くない、厳しい、こういうことでございますが、確かに大蔵省の方から見れば非常に余裕がある、そういうことがしきりにいろいろと言われておるわけでございますが、大蔵大臣からその辺のことをひとつ御説明いただきたいと思います。
  417. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、地方財政にいたしましても国の財政にいたしましても、総体的に見ました場合に、それぞれ厳しい環境にあるという事実認識を前提としてまず持っております。これらの議論が行われます前にはどういう議論が行われるかというと、いや、国は特例債すなわち赤字公債を発行している、地方団体はまだ建設公債だけではないかとか、あるいは残高が百三十三兆と五十兆ぐらいの差があるではないかとかいうような議論もございますし、一方、国の方は、硬直化する原因として、その利払い費が社会保障費を超えたとか、あるいはまた一方におきましては地方交付交付金というのはきちんと義務的経費として出ていくではないか、裁量権というものの幅が狭いではないか、こんな議論があるにはありますが、私は、だからいわゆる地方財政は富裕であるという考え方は全く持っておりません。  強いてそれを探してみますならば、年末にもらいましたいわゆる財政制度審議会の報告の中で「財政状況の良好な地方公共団体(特に超過財源を有する普通交付税の不交付団体)にまで高い補助率に基づく多額の補助金等交付される結果となっていることは、地方の財源均衡化を阻害するとともに、国と地方を通ずる財源配分の効率化からみて問題である。」というような指摘があったわけでございますが、総体的に私は地方財政富裕論という立場に立ってこの措置をとったわけではなく、あくまでも地方と国とのいわば負担割合という角度からこの法律をお願いいたしておるところであります。
  418. 沼川洋一

    ○沼川委員 古屋自治大臣に再度ちょっとお尋ねをいたしたいと思います。  今回のこの補助金の一律一割カットについて、最後まで一番抵抗されたのが自治省でございますし、また大臣も相当矢面に立って、地方にそういった財政負担はよくない、相当いろいろな角度で頑張られたことはよく承知しておるわけでございます。しかし、どうも最後の幕切れでいとも簡単にさっと納得されて、あれだけの反対をされていてえらいすんなりさっと引かれた。意外に思ったわけですが、それはどういう理由でございますか。
  419. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 御承知のように、地方の立場といたしましては、予算編成の直前十二月二十日ごろまでは、私ども補助金整理合理化は物によって大変必要だ、一律カットは、これをやっても数字の上では金が出るかもしれぬが、実質上地方行政の上では効果はありませんよということで進んできたわけでございます。ところが、その後予算編成の直前になりまして、国の財政は非常に厳しいが、ひとつ一年限りとして、その費用は国でできるだけ補てんするから、暫定措置として何とか考えてもらいたい、予算編成上もそうだからというような極めて強い要請がございました。  私もそこでいろいろ考えていろいろの対案を出したのでございますが、これが受け入れられなくて、結局一割カットとなったということは、やむを得ないといいましても、私も大変残念であったと思っておりますが、一年内のことでございますから、今度は地方団体の意見もよく聞き、また三大臣の間の閣僚協議会あるいはそのもとのいろいろの団体におきましてもひとつ地方の事情というものを十分反映するように、そういうことを心の面でも頭に置きまして、しっかり頑張ってまいります。
  420. 沼川洋一

    ○沼川委員 大臣のお立場もわからぬわけではございません。ただ、今おっしゃいました、要するに一年限りの処置である、あくまでも暫定的な処置、そこに期待をされてのことだろうと思いますが、私は、一年限りと言われても余り信じられない気持ちなのです、率直に申し上げまして。過去にもいろいろな例がやはりございまして、自治大臣も恐らく御存じではないかと思いますが、交付税特別会計借入金で、かつてこれは資金運用部資金より借り入れたわけですが、この借り入れたとき、元金は国と地方の折半、それから利子の金額については国が一切持ちます、そういうことで借り入れたのですが、実はこれは五十八年度、財政上の都合ということで、このときの約束が五十八年度限り、そういうことであったのですが、これがいつの間にか元金は国が二分の一、地方が二分の一、利息の方も国が二分の一、地方が二分の一。何かいつの間にか恒常化してしまって、結局こういう問題が出てくると、その次には必ず恒常化していく、こういう前例がございます。  ですから、今回の問題も、大臣は率直な方ですから、きっと一年限りということを一〇〇%御信用になっておると思いますが、こういう前例もあることからして、私は、やはり下手すると恒常化するのじゃなかろうか、むしろそこにねらいがあるのじゃなかろうかというふうに疑いたくなるわけでございますが、この点、いかがでございましょうか。
  421. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 そういう御心配をいただきましてありがたく、私も大変激励された気持ちでおるわけでございます。さっき言いましたように、地方財政は非常に厳しいものでございます。義務的経費が税金でも非常に多うございますし、それが普遍的でないというわけで、税源の確保も国と違って大変難しいというような状況でございます。でございますのが、今五十八年の状況と五十九年に書いた問題につきましては先生から御指摘がございました。私、この社会保障に関する一割カットというのは、とにかく憲法二十五条で言う国の責務という問題もございますし、一番大事な問題で、これを自治省と大蔵省でとにかく三カ月以上予算編成前にいろいろ議論しておったのでありますが、話がまとまらなくて最後までそういうふうにいったわけでございます。私は竹下大臣を信用しておりまして、いろいろまたあれしておりますので、一年限りの問題ということで、この間に十分検討して成果をちゃんとつくり上げたい、そういう決意を持っております。
  422. 沼川洋一

    ○沼川委員 来年も同じような答弁、恐らく聞かれないことを私も信じたいと思いますけれども、特に竹下大蔵大臣は、つい先日、参議院で六十年度予算が成立したわけでございますが、そのときの記者会見でも、来年度の予算の見通しについて相当厳しいことをおっしゃっておりますし、今まで以上に厳しい姿勢で臨まなければならぬ、ああいうお話を聞きますと、ますます心配になってまいりますし、ぜひ自治省が、今大臣の御見解を聞きまして、そういった見解を踏まえて、この問題はやはりなし崩しにならぬようにひとつ御努力いただきたいと思います。  この際ですから、もう一つ自治大臣にお伺いしたいと思いますのは、最近の臨調の基調を見ますと、確かに土光さんを中心とする臨調で地方財政見直しの問題が取り上げられました。確かに小委員会か何かつくって論議もされております。ところが、一方では地方財政を見直すと言いながら、一方では民間活力の導入、これが非常に大きな目玉になっていまして、どっちかというとこちらの方が何か重点的に進んで、非常に地方が軽視されているような、そういう心配を受けるわけでございます。きょうも総理にいろいろな質問をしました中にも、何かこれからの国の方向がますます地方を軽視するような、地方に負担の転嫁をしていくような方向に流れていくような心配を持つわけです。かつて、大臣も御承知のように、「地方の時代」という言葉が盛んに――もう十何年前になりますか、そういった言葉で、地方にも非常に活気がみなぎってまいりました。自治省でもそういう方向を大いに推奨されたと思います。最近、余り聞かなくなりましたね。ある方が、「地方の時代とかけて何と解く、UFOと解く、心は、声はすれども姿は見えず」こういったことを言いましたけれども、本当に姿を見ないまま、「地方の時代」というのはどこへ行ったんだろうか、こういうことがいろいろと今心配されておりますが、この点についていかがでございますか。
  423. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 私、これも大変自治省を激励してもらう意味においてのお話だと非常に感謝をしておるのでございますが、この「行革大綱」というのを、実は十二月二十九日の閣議の際に決定いたしました。一月二十二日にその報告をつくりまして、「行革大綱」を地方に示したわけでございます。これはあくまでも、例えば議員定数の問題であっても、あるいはまた機構の問題であっても、その他地方の自治、それで今までやっていることを邪魔することではなくて、全国足並みそろえてやってもらいたいからこういうことを申し上げるのだ、あくまで基準ということで指導的立場に立って――私どもは実は今までに、地方によりましては、五十九年の前の二年間の調べでは、相当行革を現実にやっておるわけでございます。例えば広島県のようなのは、職員一割を計画的に減らしておるとか、そういうように進んでおりますので、私は、そういう進んでおるところは足らぬ部分をやってもらいたい、決して自治省は干渉して指導するようなことはいたしません、基準を示して指導助言をすることでございますので、ぜひそういうふうで地方の実情を、十分自律性を考えながらやってもらいたいということが私どもの希望であり、また要請であったわけでございまして、私は、それをやってもらうことを今期待しておるところでございます。
  424. 沼川洋一

    ○沼川委員 せっかくこういった「地方の時代」という言葉が出てきて、かけ声だけに終わらぬように、ぜひひとつ今後も御努力いただきたいと思います。  そこで、先ほどもちょっと質疑が出ておったのですが、行政改革関連特例法についてちょっとお尋ねしてみたいと思います。一年間繰り延べる、こういうことですけれども、このことについて、内容はもう触れませんが、五十六年の十月、たしか当時の大蔵大臣、渡辺大臣のころだったと思います。やはり委員会の質問で、この問題については、特例適用期間後の繰り入れ措置については、できる限り速やかに着手する、この場でお約束をし、努力しますという明快な御答弁がたしかあっております。さらに五十八年の九月、これは行財政改革特別委員会竹下大蔵大臣、それから当時の林厚生大臣が全く同じような答弁をなさっておるわけです。ですから、今回のこの特例法の一年繰り延べというのは、あれだけ明確に大臣の御答弁として国会で約束されたのが、率直に言って何か公約違反みたいな感じを受けるわけでございます。  さらに、今御承知のように年金が大きな問題になっておりまして、六十一年度から年金制度改革の実施が予定されているというような時期でもございます。この厚生年金に対する国庫負担の仕組みというもの、これはもう基本的に変わってくるわけでございまして、そういう中で現行の行革関連法案による繰り延べ措置をこのまま延長するというのは非常に問題が大きいのじゃなかろうか。ちょっと調べてみますと、五十七年から五十九年まで三年間ということで、現時点でもう利子を含めて七千百七十五億、こういう金額になっています。これが六十年度になりますと、もう一兆円を超えまして一兆七百七十五億。恐らくこれ以上の繰り延べはないとは思いますが、ずっとこの推計の表を見ていきますと、六十五年度まで見ますと一兆五千二百四十八億、こういう金額になってまいりますが、この点、いかがでございますか。
  425. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘のとおりでございます。  私もその間引き続きこの職にございますので、当時明快にお答えしたことは公約違反ではないか、その環境のもとにおいては、私はそういう指摘も甘んじて受けなければならぬと自分でも思っております。  私どもが今度お願いいたしました趣旨は、言ってみれば五十九年に、いわば特例債を財源とするこの財政体質から脱却しよう、こういうことであったわけであります。しかしながら、諸般の情勢、なかんずく第二次石油危機以来の世界同時不況の中で膨大な歳入欠陥をもたらして、事実上五十九年赤字公債脱却というのは、五十九年度予算編成に当たり、そしてその国会を通じてこれはギブアップしたということを宣言せざるを得なかったわけであります。したがって、新しく六十五年という終期を、努力目標を設定しておるわけでありますが、そういう環境の変化というものにおいて、やむなくこのような措置をとらなければならなかった。  なかんずく厚年の問題につきましては、今御指摘のとおり、六十一年からこの制度の仕組みが変わっていくわけでございます。国庫補助率二〇%から基礎年金の三分の一でございますか、そういうことが予測されるわけでございますので、したがって、それをも含めてやはり一年間という暫定措置としてお願いするのが妥当であろうと考えてお願いをしておる。そしてその期間が過ぎた場合の方針は、今まで申し上げておる方針と変わっておりません。
  426. 沼川洋一

    ○沼川委員 厚生省の方では特に年金という問題を抱えております。この厚生年金の財政とても決していいということじゃございませんし、何か返してくれということを全然おっしゃっていないようですけれども、その辺、厚生大臣、いかがでございますか。
  427. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 厚生年金につきましては、高齢化に伴い、将来の給付金のためにやはり何としても財政状況をよくしておかなければならないわけでございますので、この繰り延べ分につきましても、特例の適用期間を経過しましたら、国の財政状況を勘案しながら、できる限り速やかに繰り戻しに着手するというのが私どもの考え方でございまして、今後その趣旨に沿って財政当局とも相談してまいりたいと思います。
  428. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間も余りございませんので、先に進みたいと思います。  これは厚生大臣、大変失礼な質問かと思いますが、この際ぜひ一言お伺いしておきたいと思います。  この前、これは一月八日のある新聞ですが「削減に物わかりのよさを示した厚生省」、こういう記事が出ておりました。ちょっと読んでみます。「国の負担削減に厚生省が物わかりのよさを示したのと日ごろの財政的努力の協力姿勢が評価されて生活保護に関する自治体への財政措置が円滑に実施された」という。私に言わせれば、生活保護等の非常に重要な問題がある。むしろ厚生省がそういう立場に立って反論し、そういうものを守っていかなければならぬ。それが何か一番物わかりがよかった、いかにも積極的に協力した、こういう記事が出ておるわけでございますが、よかったら大臣、一言反論してください。
  429. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 私ども、決して物わかりがよかったとは思っておりません。先ほどから申しておりますように、福祉の実質的な水準を下げないようにということのみを考えながら対処したつもりでおりますので、御理解をいただきたいと思います。
  430. 沼川洋一

    ○沼川委員 これは厚生大臣大蔵大臣、どちらにお尋ねするのが筋がちょっとわかりませんが、要するに生活保護費等の十分の八という補助率根拠、これを教えていただきたいと思うのです。
  431. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいは事務当局から正確にお伝えする方が妥当かと思いますが、私の私的な勉強におきますならば、従来昭和二十一年までは五分五分でございました。そうして二十一年の際、お互い残念なことでございますが、GHQの間接統治下にあった当時であります。大蔵省はおよそ二億円程度で調整をしようという考え、厚生省はたしか八億でございましたかでおさまりどころだというような予算折衝の過程において、当時GHQから三十億、こういうことが参りまして、さようしからば八割、二割だ、こういうことに極めて抵抗なく決まったと物の本で読んだことがございます。そして、その後の二十五年改正、本格改正でありますが、そのときも、それに対しては余り議論はなかった。そして、その後二十九年のいわゆる一兆円予算、九千九百九十九億予算でございますか、そのときだろうと記憶しておりますが、そのときにもう一度補助率見直し議論はあった。しかし、結論はそういかなくて今日まで続いてきた。  だから、八、二の根拠は私は定かでございませんので、この経過を御説明したにすぎないわけでありますが、あるいは事務当局の方が正確であろうかと思います。
  432. 平澤貞昭

    平澤政府委員 十分の八が決まりました経緯は先ほど大臣が御答弁したとおりでございますが、その際の理由づけといたしましては、一つは生活保護費補助金が創設された終戦直後においては、その対象となったものには戦争犠牲者等も多く、いわば国の責任の度合いが高い状況にあったということが一つでございます。  二番目は、日本全体が絶対的窮乏の状況にあり、国、地方の財政はともに疲弊していたが、地方財政は特に窮していた。  三番目といたしまして、このような状況下において一定の給付水準、行政水準を確保するためには、高率の国庫負担を行う必要があった。  四番目といたしまして、保護の実施主体である地方公共団体の責任ある遂行を確保する等の観点から、全額国庫補助とせず、一部地方負担を導入した方が適当と考えられたというような事情等もありまして、先ほど来大臣が申し上げたようなGHQとの関係もあって十分の八と決まったということでございます。
  433. 沼川洋一

    ○沼川委員 お話を聞いてよくわかったのですが、これは憲法第二十五条のいわば国民の生存権、国の社会的責任、この憲法に照らしてみますと社会保障、社会福祉が国の使命として義務づけられている。そういう点からしますと、ちょうど増岡大臣いらっしゃいますのでまたお尋ねしたいと思うのですが、本来ならばこれは一〇〇%国が保障すべきもの。実施機関が地方自治体でございますので、責任を持ってもらうという意味で二割の負担があるというお話を今承ったわけですが、私が言いたいのは、本来ならば一〇〇%国が責任を持つべきものが、負担割合八対二が九対一となるのだったら結構なことですけれども、逆にそれが七対三と切り込まれていくこと同体、憲法の精神がないがしろにされているのじゃないか、こういう感じを持ちますが、いかがでございましょうか。
  434. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 たびたび同じようなお答えで恐縮でございますけれども、いわば生活が困窮されておられる方々に対する保護水準そのものについては、おっしゃるように国が最終的な責任があるかと思うわけでございます。しかし、今回の措置はそのことには手をつけておりませんで、むしろ水準の、ベースアップでありますとか男女の格差是正とかに関係するわけでございますので、そういう意味からしましても、また、先ほど申し上げておりますような実際の水準が低下しないという意味から考えましても、国がもちろん最終的な責任を持つわけでございますけれども、そのことに違反していない、そういうふうに思っておるわけでございます。
  435. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間がございませんので先に進みたいと思います。  今後の問題として最後にお伺いしておきたいと思いますが、補助金の総合的な見直しというのが必要なことは、先ほどからも申し上げますようによくわかるわけでございますが、今後、大蔵大臣、それから厚生大臣、自治大臣三者の覚書等もあり、この国と地方の負担区分はどうあるべきか、また、社会保障にかかわるそういう問題についてどうあるべきか、いろいろと論議を重ねられると思います。  そういう場合にぜひひとつお願いしたいのが、これから二十一世紀に向かって、御承知のように今物すごいスピードで高齢化社会がやってきております。既にもう六十五歳以上のお年寄りがやがて一千二百万近くなろうとしていますし、その中でも心配なのが七十五歳以上の後期高齢者、こういった方々がたしか百五年には全体の一〇%を超すという状況下にございまして、この後期高齢者と言われる方々の中に痴呆症あるいは寝たきり、こういう方が物すごい勢いでふえております。一方、施設が足りなくて、特養にも病院にも入れなくて自宅待機の方々が二十七万人もいらっしゃる。こういう問題がますます大きな社会問題になりつつございますが、厚生省等のいろいろなお話を承りますと、福祉という問題も大きな転換期だ、今まではどっちかというと施設収容主義の福祉だったが、これから在宅中心の福祉に転換されつつあるのだ、ですから、建物をつくるというのではなくて、むしろ在宅でいかにケアしていくか、こういう問題が大事だとしきりに在宅ケアの重要性を指摘されております。  ところが実際問題、こういう業務を直接担当しているのは全都市町村なんです。ですから、市町村の役割というのはいろいろな面でますます仕事の量がふえてまいりますし、しかもこれから問題になってきますのが、例えば寝たきりのお年寄りの面倒を見る場合に、ただ福祉の分野だけではどうにもならぬ問題がございます。やはり医療、保健、福祉というそういう連携のとれた流れの中でケアをしていかなければならぬ。しかも、もう大臣よく御承知のように、肝心かなめの介護に当たる方々がますます核家族化が進んでいくでしょうし、しかもまだ、御婦人の方々が外に出て職業につかれるということも今からますますエスカレートしていくと思います。今さらこの時点で、婦人よ家庭に帰れなんてそういうお説教をしたって、これはどうにもならぬ現状がございまして、介護の手薄という問題があります。  ですから、ますます地方自治体の業務がどんどんふえできますし、そういう流れの中で、一つの例ですが、施設関係補助金補助率のほとんどが十分の八でございます。ところが、在宅ケアの場合の補助事業補助率を見ますと、ほとんどが三分の一なんですね。行政の政策の転換を言いながら、実際地方がますます負担面でもいろいろな業務の面でも量がふえていく。そういう流れの中で、これから地方の時代、地域福祉の時代ですと自助努力を盛んに説かれております。民間活力の導入も説かれております。何か主役が地方に移ったみたいで、国がわき役になってかけ声だけで、これは失礼なあれですが、本当にその辺の取り組みがまだ真剣に考えられていないような気がしてならないわけです。例えば補助金見直しをする場合に、何も打ち切る検討ばかりする必要はないと思いますよ。こういう補助率は、やはりこれから在宅ケアを言うんだったら、そういう面での補助率はむしろ変更して引き上げる、そういう論議があってもいいのじゃなかろうかと思いますが、その辺、厚生大臣、いかがでございますか。
  436. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 御指摘のように、施設に入っておられる方々と在宅の方々との措置につきまして補助率の開きがあることは事実でございます。また、それを整合性をもって是正すべきであるという意見も、先生御指摘のとおりであろうと思います。今後いろいろ国と地方との役割分担、費用負担のあり方について検討することとなっておりますので、この点につきましても十分検討してまいりたいと思います。
  437. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間が参りましたので一言だけ。  今申し上げましたように、高齢化社会というのはますます大きな問題になってくると思います。ぜひひとつ補助金の検討――国と地方の役割分担の検討の際に、地方の仕事がますますふえてくる、やはりそういう面での負担という問題もぜひひとつ御検討をいただきたい、このことを申し上げて終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  438. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 塩田晋君。
  439. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案につきまして、大蔵大臣、厚生大臣、自治大臣に御質問を申し上げます。簡潔にお答えをいただきたいと思います。  まず、いわゆる補助金一括法案目的は何でございますか、大蔵大臣にお伺いいたします。
  440. 竹下登

    竹下国務大臣 今回この法律案を立法した趣旨目的は、昭和六十年度の予算編成に当たりまして国の財政収支改善を図る、こういう見地から、そして累次の臨調答申趣旨を踏まえまして財政資金効率的使用を図るため、国の負担補助等についての見直しを行って、所要の措置を講ずることにより国の歳出の縮減に資するもの、そこにございます。
  441. 塩田晋

    ○塩田委員 国の予算の編成に当たりまして、政府補助金についてどのような基本方針を持って当たってこられたか、お伺いいたします。
  442. 竹下登

    竹下国務大臣 一般歳出の約四割、これを補助金が占めておるわけであります。そうなれば、歳出削減ということになりますならば、これだけ厳しい環境にある場合、それに着目して徹底した整理合理化を積極的に進める、こういうことがまず不可欠の条件としてございます。その整理合理化に当たりましては、臨調答申とか行革審意見とか、その趣旨に沿いまして、行財政の簡素合理化、また地方公共団体の自主性、自律性の尊重、そういう観点を踏まえて検討を行うとともに、あわせて国と地方の間の機能分担、費用負担、この見直しの一環としてこれを推進していく必要がある。こういう観点から、六十年度予算においてはいま一度補助金等のすべてについて洗い直しを行います。  同時に、いつも申し上げますように、既存の制度、施策見直しを行って、徹底した整理合理化を積極的に推進して、人件費補助等見直し補助率の引き下げ、その他廃止、一般財源化、統合メニュー化、こういう方策を幅広く講じてきたところでございます。その結果、真にやむを得ない増加要素を織り込んでも、なお一般会計補助金等総額において、前年度に比して千三百四十四億円の減額となったわけでございます。したがって、この二年連続減額ということは初めてのことでございます。今後とも不断の見直しを行っていかなければならぬという考え方の上に立っております。
  443. 塩田晋

    ○塩田委員 臨調答申の最終のものにおきましても、大胆な整理合理化補助金については進めよというふうに出ております。また、国と地方との分担の見直し、こういったことも求められております。  そこで、ただいま大蔵大臣から、二年連続して減少の予算補助金について組んだのは初めてであるということでございますが、国の一般会計で補助金はここ数年どのような増減をしてきたか、その状況につきまして御説明をいただきたいと思います。
  444. 平澤貞昭

    平澤政府委員 数年ということですので、五十五年度からの数字と伸び率を申し上げます。  五十五年度は十三兆八千五百二十億円で対前年七・五%の増でございました。五十六年度は十四兆五千六十七億円で四・七%、五十七年度が十四兆七千六百五十八億円で一・八%、それから五十八年度は十四兆九千九百五十億円で一・六%ということで、伸びがここまで落ちてまいりました。続きまして五十九年度は十四兆五千六百四十五億円で三角の二・九%ということでございます。それから六十年度が十四兆四千三百一億円で三角の〇・九%の伸びということでございます。
  445. 塩田晋

    ○塩田委員 補助金事業数、それから件数はどのように推移しておりますか。
  446. 平澤貞昭

    平澤政府委員 件数の推移を申し上げますと、五十六年度は三千五百十五件、対前年の三角の百九十二件、それから五十七年度が二千七百九十九件で三角の七百十六件、それから五十八年度でございますが、二千六町四十八件で三角の百五十一件、五十九年度が二千五百九十二件で三角の五十六件、六十年度が二千四百六十四件で三角の百二十八件というふうになっております。
  447. 塩田晋

    ○塩田委員 かなり件数といたしましては減ってきておるということは考えられます。したがいまして、スクラップすると同時にビルドされたものも中にはあろうかと思いますが、それはどれくらいありますか。
  448. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今の件数で申し上げますと、新規の方でございますが、五十六年度は百九十八件、五十七年度は百二十八件、五十八年度が八十八件、五十九年度が六十四件、六十年度が九十六件の新規がございます。
  449. 塩田晋

    ○塩田委員 臨調答申の線によりまして、補助金の金額、件数ともに、最近数年におきまして、かなり新規もございますが、スクラップの方が多くなってきておるということは、この中でわかったわけでございます。今回そのような補助金の件数の中身の見直しによって、臨調答申の言う「大胆な整理合理化を進める」ということを余りしないで、なぜ高率の補助をカットすることを選んでこのような措置をとられる必要があるのか、お伺いいたします。
  450. 平澤貞昭

    平澤政府委員 補助金等整理合理化につきましては、累次の臨調答申その他によりまして強く求められているところでございます。したがいましてその中には、先ほど大臣から御答弁がございましたように、既にその目的を達した補助金とか、地方公共団体の事務事業として同化定着したものとか、こういうものは廃止または一般財源化する、あるいは補助金の統合を行い、メニュー化する、それから人件費補助等についても交付金化その他を行う、その他終期を設定するとかいろいろのことをやってきているわけでございます。  したがいまして、六十年度もそういうことをやったわけでございますが、それ以外に、これもやはり臨調等の御指摘がございますように、高率の補助についてもこれを見直したらどうかというお話がございましたので、六十年度においてそれもあわせて行ったということでございます。ただ、それにつきましては、いろいろ地方と国との間の事務分担あるいは費用負担の問題について検討すべきではないかという御意見もこれあり、したがいまして、一年の暫定措置として法案をお願いしているということでございます。
  451. 塩田晋

    ○塩田委員 大蔵大臣にお伺いいたします。  補助金関係につきましてはいわゆるスクラップ・アンド・ビルド、特にスクラップの方を多くして、件数あるいは事業数ともに減らしていくという方針に変わりはございませんか。また、今回行われるような高率補助の一律カットといったことは今回限りであるのか、今後とも続けていこうとされるのか、臨調答申との関連におきましてお伺いをいたします。
  452. 竹下登

    竹下国務大臣 補助金整理合理化、削減、この方針は今後も続けていかなければならないと思います。それは当然のこととして、新規なものの場合は、これはスクラップ・アンド・ビルドの原則を維持していかなければならないことだと思っております。  それから一律、確かにそれ一つ一つを見ますと八が七になり、あるいは三分の二が六になりというようなことになりますから、確実に一律というわけではございませんが、そういう趣旨で、今年度限りの暫定措置として御審議をお願いしておることは事実でございます。したがって、今後のあり方につきましては、一年間のうちにそれぞれ相談をして結論を出す、こういうことに相なっておるわけであります。
  453. 塩田晋

    ○塩田委員 このスクラップ・アンド・ビルドは今後とも続けるというお考えはわかりました。  一律カットにつきましては今年度限りの暫定措置であると言われましたが、その後、今後どうするかは検討をしていく。こうなりますと、今年度限りの暫定措置というのは暫定措置ではなくなるのではないでしょうか。いかがでございますか。
  454. 竹下登

    竹下国務大臣 これは将来にわたってのことでございますので、将来と申しましても数年後という意味ではございませんが、一年間かかって三大臣協議の結果この検討をして決めよう、こういうことになっておりますので、その結果についてあらかじめ予見をすることは、いささか難しい問題ではなかろうかというふうに思います。
  455. 塩田晋

    ○塩田委員 私が申し上げておりますのは、今年度限りの暫定措置であるならば、今年度限りの暫定措置ということにとどめておかれたら、その表現のとおりになると思うのですけれども、将来にわたって今後検討するということであれば、今年度限りでないということを言っておられることになりませんでしょうか。
  456. 竹下登

    竹下国務大臣 この法律をお願いするに当たりまして、我々も議論をいたしました。あるいは、当分の間という書き方もあるではないかとか、いろいろな議論をいたしましたが、やはりこの問題は、今日の時点における国と地方とのいわゆる役割分担並びに負担区分というあり方からすれば、いわば今お願いをしておるような措置にしよう。されば、一年限りの暫定措置である。将来の問題については、これは法律には書かれてありませんが、三大臣の申し合わせによりまして、この一年かけて議論をして結論を出そう、こういうことになっておるわけであります。
  457. 塩田晋

    ○塩田委員 三大臣の申し合わせ事項、いわゆる覚書があるそうでございますが、この問題は今年度限りだということの申し合わせならば筋は通るのでございますけれども、今年度限りであると言いながら、今後のことは検討するというのは、これはほかの大臣はどのように主張されたのでございましょうか。内容的に矛盾の覚書ではないでしょうか。厚生大臣、いかがでございますか。
  458. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 先ほど大蔵大臣から御説明がありましたように、今回の措置につきましては暫定措置でございますけれども、これから三大臣のもとで、責任の分担、費用の負担お話をするわけでございますので、その結果にまちたいと思うわけでございますが、もちろん私どもは、福祉の水準の低下があってはならないという立場から協議に臨みたいと思っております。
  459. 塩田晋

    ○塩田委員 すっきりとは理解しにくい御答弁のように思います。恐らく厚生大臣も、この問題については今年度限りだということを主張されたと思うのですが、後から一筆を入れられてしまったという感じがするわけでございます。真相は、三大臣の協議による覚書でございますのでわかりませんが、どうも、出てきた結果からはそんな感じがして仕方がないことで、今の御答弁も腑に落ちないわけでございますが、これはこの程度にいたしておきます。  次に、国庫補助負担率が一律にカットされると、具体的に地方の負担の増加額はどれぐらいになるか。生活保護費の場合は、個々の団体にとっての負担増はどれぐらいになるか。これは、個々というのは千差万別で、三千三百の地方公共団体、非常に違った状況が出ておると思いますので、都道府県、市町村の総額においてどれぐらいになるか、お伺いをいたします。
  460. 土田栄作

    ○土田政府委員 生活保護費の地方負担の増は千三百十億でございます。これは、十分の一引き下げによりまして千五百十億地方負担がふえますけれども、二百億、臨時財政調整補助金交付されますので、それを引きますと千三百十億ということになります。  ただ、この二百億がどの団体にどういうふうに配られるかということはわかりませんので、私ども、この千五百十億というものをベースにして計算いたしますと、都道府県では平均で六億五千五百万円ということに相なります。それから市は一億七千七百万円ということでございまして、町村の分につきましては都道府県が支弁をいたしますので、生活保護費に係る町村の負担増はないということでございます。正確に申しますと四つほど例外的にございますけれども、原則的にはないということでございます。
  461. 塩田晋

    ○塩田委員 国庫負担率の一律カットによりまして、地方の増加額は総体として幾らになりますか。都道府県、市、町村あたりでお願いいたします。
  462. 土田栄作

    ○土田政府委員 生保も含めました全体は二千六百三十八億でございますけれども、これにつきましても、二百億の配分がわかりませんので、二百億を加えました二千八百三十八億というもので計算いたしますと、都道府県の平均で二十二億三千四百万、それから市の平均では約二億五千万になるというふうに考えております。
  463. 塩田晋

    ○塩田委員 今の金額は社会保障関係のものだけですか。今回の法案による一律カット、総額についてのお伺いをしておるわけです。
  464. 土田栄作

    ○土田政府委員 ただいまお答え申し上げましたのは社会保障関係と非公共のものでございます。公共事業関係につきましては、これは各省が補助金交付決定をどのようにやるかと、事業の張りつけの問題がございますので、私どもとしては計算ができないという状況でございます。
  465. 塩田晋

    ○塩田委員 社会保障関係二千六百三十八億円と言われましたが、そのほかにも公共事業等、今お話がございましたその他のものを含めまして五千八百億円の影響が出るというふうに承っておるのでございますが、この点はいかがでございますか。また、都道府県あるいは市町村別に、総額で結構でございますからお伺いをいたします。
  466. 土田栄作

    ○土田政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、五千八百億のうち二千六百億の関係は、これは生活保護世帯等が大体どこにどれくらいあるかという前年の実績がありますのでわかりますけれども、残りの公共事業関係の三千二百億につきましては、これは各省が都道府県にどれだけ割り振りをするか、それから市町村にどれだけ割り振りをするかという割り振りを決めていただかないと、私どもとして計算ができませんので、この影響額五千八百億全体についての都道府県、市町村の平均の影響額というものは計算できないという状況でございます。
  467. 塩田晋

    ○塩田委員 わかりました。内訳の都道府県あるいは市町村別がわからない、総額がわからないということでございますので、今の御説明でわかります。  そこで、お伺いをいたします。例えば生活保護の受給者が多い県や市、特に市町村でございますが、急激に負担がふえて十分適応できないといったような自治体が出ることも考えられますが、これについてはどのような対策を考えておられますか。
  468. 正木馨

    ○正木政府委員 生活保護の保護率でございますが、全国平均いたしますと一・二%強でございますが、先生お話しのように各県、各地方公共団体によりまして保護率の開きがございます。また、それぞれの地方公共団体の歳出規模に占める保護費の額というものも違いがあるわけで、なかんずく脆弱な地方公共団体に対する影響というものを考慮していかなければならないということで、先ほど来お話のありますように、基本的には地方の負担につきましては、地方財政対策を通じて補てんをするということでございますが、保護費、特に生活保護に関しましては、それぞれの地方公共団体の実情というものをさらに加味するということで、二百億円の財政調整交付金というものを計上させていただいたわけでありまして、これの有効適切な配分を通じまして措置をとっていきたいというふうに考えております。
  469. 塩田晋

    ○塩田委員 二百億円の財政調整交付金、これを有効に活用して、そのような脆弱な地方公共団体に対する手当てをするということでございますので、これは今後の問題として残しておきたいと思います。見守っていきたいと思います。  次に、一律カットの対象となる大きな金額は、生活保護費の関係でございます。厚生省の所管の問題でございますが、およそこの生活保護が国の高率補助、すなわち十分の八という高率補助となった理由は何でございますか、厚生大臣
  470. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 生活保護は憲法に定められておりますように、国民の生存権を保障する最後のよりどころでございます。したがって、国が最終的な責任を負っておるところでありますけれども、同時に住民福祉の観点からも地方負担を求めているところでございます。したがいまして、このような高率補助になったかと思いますけれども、しかし、一般にどの程度負担を求めることが妥当であるかについては、いろいろな事情、社会経済状況等を勘案して判断する必要があると思います。  高率補助になっております理由は、先ほど申し上げたとおりでございます。
  471. 塩田晋

    ○塩田委員 私がお伺いいたしておりますのは、高率補助の八〇%、これがどのような根拠で、理由で決められて、今まで実施されてきたかということをお伺いしておるのでございます。  憲法上、いろいろ話が出ましたけれども、七〇%でも高率と言えば高率でございます。八〇でなく七〇にするということですね。じゃ、どこまで考えられておるのか、どこまで許される問題なのか。憲法上のいろいろな問題を言われましたが、それならばどこまでならいいのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  472. 正木馨

    ○正木政府委員 生活保護の保護率でございますが、現在十分の八となっておりますが、これは過去の経過、先ほど大蔵大臣からもお話がございましたが、現行法は昭和二十五年にできたわけでございますが、過去の歴史を振り返ってみますと、終戦直後におきまして非常に戦災者が多い、引揚者が多い、いろいろな混乱状態の中でGHQの指導、指示というものもございまして、当時は救護法の時代でございましたが、まず生活困窮者の緊急生活援護要綱をつくれということで、その上で昭和二十一年に旧生活保護法ができたわけでございます。そこで、旧生活保護法におきましては、国が十分の八、都道府県が十分の一、市町村が十分の一、当時は市町村が実施をしておったわけでございますが、その後昭和二十五年に、現在の生活保護法になる。さらに昭和二十六年に社会福祉事業法ができまして、生活保護の実施は県と福祉事務所を設置する市、それから町村ということになりまして、そこで国が十分の八、都道府県あるいは市が十分の二ということで今日に及んでおるわけでございます。  先ほど大臣からの御答弁にもございましたように、国の負担はどの程度かというのは、やはり事務の性格、それからその制定時におきます行財政事情等、社会情勢というものを勘案して設定されるということで、生活保護についてもその例外ではなかったというふうに私ども承知をいたしております。
  473. 塩田晋

    ○塩田委員 国の財政状況を理由に国の負担率を引き下げるということは、地方への負担転嫁にほかならず、国の責任転嫁と言わざるを得ないと思いますが、いかがでございますか、厚生大臣
  474. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 私どもは、この措置をとります際に、国の財政事情が大変厳しいということ、それから厚生省といたしましてはあくまで保護水準の低下を招かないようにしよう、そういうことから考えましていろいろ折衝しておったわけでありますけれども、御指摘のように、都道府県及び市町村の影響も出るであろうというところから、それはその方の手当てが別途なされるということでございましたので、私どもも了解をいたしたわけでございまして、そのような状況でございます。
  475. 塩田晋

    ○塩田委員 臨調の最終答申の中にも、不正受給の排除を勧告いたしております。不正に対しては厳しい制裁措置を適用すべし、権利の乱用を受給者は慎むべきである、こういったかなり厳しい表現の文言がございます。厚生省といたしましては、認定の適正化を進めるべきであると私は思いますけれども、国の財政状況によって一律カットが行われる、そして県なり市にこれが転嫁されていく、こうなりますと、財政事情の厳しいところはなおさらでございますが、認定の適正化ということが行き過ぎになる、行き過ぎて厳しく締めるというような事態が起こってはならないと思うのでございますが、この点について厚生大臣はいかがお考えでございますか。
  476. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 生活保護適用に当たりましての認定の適正化は、常に行われなければならない問題でございます。今回の措置とは別の次元の考え方でございまして、今回の措置を行いましても、私は財政的な理由でもって認定ができないということはよくないことだという認識を持っております。
  477. 塩田晋

    ○塩田委員 厚生大臣の御答弁のとおりに、受給者については国と地方公共団体との財政関係が影響されて認定が厳しくなる、適正化を図るべきでございますけれども、認定が枠を超えて厳しくなって受給者が影響をこうむることのないように、どうか十分に御配慮をして今後進めていただきたいということを特に強く要望いたしておきます。  そして生活保護の関係につきましては、臨調答申の中には生活扶助基準設定の問題、また加算制度等の生活保護制度のあり方につきまして、今後見直しをしていくべきであるとうたっておりますけれども、これを受けて厚生省はどのような検討を進めていこうとしておられるか、お伺いをいたします。
  478. 正木馨

    ○正木政府委員 臨調答申におきまして、先生御指摘のありましたように、生活保護の適正実施というものについて御指摘がありますと同時に、生活扶助基準についての設定方式についても御指摘があったわけでございます。  生活扶助の基準につきましては、先生も御案内のように、かつてはマーケットバスケット方式をとり、それからエンゲル方式に変わり、そして一般の国民の消費生活水準と見合いながら、それとの格差縮小方式をとってきたわけでございますが、中央社会福祉審議会の御審議も経まして、生活扶助基準の水準というのが、一般の国民の消費支出の六〇%を超える大体六二、三%に達するということで、一般の国民とのバランスから見ても、従来の格差縮小方式というものを変更すべきではないかということで、国民の消費支出の上昇に大体パラレルに改定をしていくという、いわば水準均衡方式と私ども名づけておるわけでございますが、五十九年度からそのような改定方式に改めたわけでございます。また、加算制度につきましても、その実態にかんがみまして改定を行ったということでございます。
  479. 塩田晋

    ○塩田委員 最後に、地方負担の問題について自治大臣にお伺いいたします。  地方負担の増加が起こるわけでございますが、これについて国はどのような措置を考えておられますか、お伺いいたします。
  480. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今回の国庫補助負担率の引き下げに伴う地方費の増加五千八百億について、どういうふうに措置を講じたかという御質問だと思います。地方交付税の増額が一千億、建設地方債の増発四千八百億というものによりまして補てんをいたしました。
  481. 塩田晋

    ○塩田委員 五千八百億円につきましては、一千億円は地方交付交付金の増額、四千八百億円は建設地方債でもって賄うという御答弁でございます。  国の財政の都合上このカットをして、地方公共団体にその分を負担させる、またそれの補てんは完全に行うという御説明がございまして、今御答弁のございましたような方法で埋められるということでございます。片や自治省が出しておられますいわゆる地方財政白書、これによりますと、地方財政は累積した巨額の借入金を抱えて引き続き厳しい状況にある、そして地方債の抑制に努める、このようなことも書かれております、六十年度につきましての箇所でございますが。このような状況にあるのに、国が地方債を今回増発するということを強制するような形になっておるのではないかと思います。これは厳しい情勢を認識され、また、地方債を抑えるということを言われながら、片や実際には補助金のカットを国がするということで、あと補てんするということですね。これはどうも納得のいかないところでございますが、自治大臣はいかがお考えでありますか。
  482. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 先生、ちょっと細かくなりますので申しわけありませんが、五千八百億で、一千億は交付措置と言いました。あと四千八百億残るわけでございますが、実はその経常経費、つまり厚生省とかそういう関係の経常経費がそのうちで二千六百億あるわけでございます。それから、投資的経費というものが三千二百億あるわけでございます。     〔堀之内委員長代理退席、越智委員長着席〕  それで、経常経費について申しますと、二千六百億のうち、さっき言いましたように一千億は交付税の増額であれします。残りの一千六百億を建設地方債で対処いたしますが、この二千六百億のうち交付団体に相当する二千億分につきましては、先ほど申しました特例措置で一千億、残りの一千億につきましては、当面の暫定措置として六十六年以降において交付税に加算することといたしております。それからまた、不交付団体に係る額と見込まれる六百億の措置でございますが、これは現実には地方交付税による財源措置が不交付団体にはできないわけでございますので、これに相当する額については建設地方債を増発するということによって対処をいたします。  次に、投資的経費の三千二百億の問題でございますが、経費の性格にかんがみまして建設地方債の増発で対処しております。ただ、やり方が若干内容によって違っておりまして、そのうち、国庫補助負担率の引き下げによる国費減額相当分が二千億ございます。これにつきましては、いわゆる行革特例法に基づく特定地域におけるかさ上げ補助率の緩和措置に伴う財政金融の措置ということによりまして、臨時財政特例債とこれに係る元利償還に要する経費は地方交付措置を行うことといたしまして、国はその元利償還に要する経費の二分の一に相当する分を、六十一年度以降で交付税特別会計に繰り入れるということにしております。また、これ以外の、三千二百億から二千億引きました千二百億でございますが、これにつきましては建設地方債の増発によって行いますが、その元利償還に要する経費につきましては、地方交付措置を講ずることにしております。  そういうようにいたしまして、国庫補助負担率引き下げに伴う地方負担の増加につきましては、六十年度においては交付税の増額と建設地方債の増発によりまして地方財政措置を講じておるところでございます。  なお、先生がさっきお話しのように五十六兆という大きな借入金、マイナスが地方財政にあるわけでございます。それで起債をできるだけ制限するという措置をとっておる厳しい状況にあるところでありますが、今の補助率カットの五千八百億につきましては、今言いましたように、増発される地方債の元利償還など後年度地方財政負担に対しても、国として必要な財政措置を講じておるような次第でございます。大変複雑になりましたが、そういうような措置をとっております。  ただ、厳しい財政下にあって、こういう地方債をまたふやすというような問題、たとえ交付税でそうしておりましても、こういう点は、今地方債の増発はできるだけ――ことしは地方債の方はたしか七・八%だと思いますが、去年が八・八だったと思うのですが、になっておりますけれども、私どもといたしましては、地方債の問題は抑制するというように考えておるわけでございます。
  483. 塩田晋

    ○塩田委員 地方財政計画の赤字あるいは収支の最近の状況をお聞きしたわけでございますが、昭和五十八年度におきましては地方財政計画は赤字が二兆円、五十九年度は一兆五千億円、これは約でございますが、そして六十年度はこの一律カットの措置がなければ収支とんとんになるというところが、この一律カットによりましてやはり赤字五千八百億程度出るということに結果するわけでございます。  そういたしますと、経費の徹底した合理化とか支出の抑制とか、節度ある行財政運営をやってきたまじめな地方公共団体といいますか、これがしわ寄せを食ってなお負債がふえる。地方債の残高を見ましても、六十年度四十一兆七千六百億円の累積債務になるそうでございますが、これにいたしましても、四千八百億円、一〇%カットがなければこれがもっと少なくなっておるはずでございます。国が財政赤字で借金をするということのかわりに、地方のまじめにやっておるところの債務は特にふえるというような、国の分を地方債務に振りかえたにすぎないような状況。これはだれが負担をするかというと、究極的にはやはり国民だと思うのですが、そのような移しかえをやっておるにすぎないんじゃないかというふうに考えられるわけでございます。これについても御答弁をいただきたいわけでございますが、時間が参りましたので、最後にもう一つ厚生大臣にお伺いいたしたいと思います。  いわゆる国の財政の再建のために、厳しいシーリングが続けられておるわけでございます。このシーリングの対象から、国民の老後の生活あるいは病気等に関係の深い社会保障関係、これにつきましてはシーリング外、枠外にするといったいわゆる社会保障の特別勘定をつくってはどうか、こういう意見関係者あるいは学者等からも出されておりますけれども、これにつきましてはシーリングの別枠にして、国民の暮らしを守っていく、あるいは老後の生活を守っていく、病気等の不安から守っていくという立場から、厚生省はどのようにお考えでございますか。厚生大臣にお伺いをいたします。
  484. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 社会保障勘定を別途設けるという御提言があることは承知をいたしております。一つの提言であると認めております。しかしながら、この問題は国全体の予算のあり方にもかかわる大変大きな問題でございます。いずれにしろ、今後の高齢化の進展により、社会保障関係費が増大していくこともまた事実でありますので、厚生省といたしましても十分研究をいたしてみたいと思います。
  485. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。
  486. 越智伊平

    越智委員長 神田厚君。
  487. 神田厚

    ○神田委員 農林水産関係で、大蔵大臣並びに農林水産大臣に御質問を申し上げます。  最初に林産物の市場開放問題でございますが、政府は、アメリカとの貿易不均衡の解消策の一環として、合板等の林産物の関税引き下げに踏み切ろうとしている、こういうふうに聞き及んでおりますけれども、この点、現在どういうふうな形で進んでおりますか、まず大蔵大臣の方から御答弁をお願いしたいと思います。
  488. 竹下登

    竹下国務大臣 木材製品の市場開放問題につきましては、現在まさに関係省庁間で協議中でありまして、具体的な内容についていまだ申し上げられる段階にはございません。関税そのものについてはそうお答えするのが限度であろうと思います。
  489. 神田厚

    ○神田委員 方向といたしまして、関税そのものを引き下げるという考え方に立っておられるのかどうか、この点はいかがでありますか。
  490. 竹下登

    竹下国務大臣 これはもとより主管省であります農林水産省との協議になるわけでございますが、私が現在承っておるところでは、関税下げに直ちに応ずるというような環境にはないというふうに理解をしております。
  491. 神田厚

    ○神田委員 農林水産大臣はこの点につきましてどういうふうにお考えでありますか。
  492. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生にお答えします。  竹下大蔵大臣には大変理解と御協力を賜っておることを申し上げておきます。  実は関税問題につきましては、総合的な振興策というようなことでございまして、現在木材需要の拡大とか木材産業の体質強化とか、間伐保育等森林事業の活性化等の策につき鋭意検討を進めております。そんなことでございまして、私は、関税問題は林業、木材産業が活力を取り戻した後に対処すべき問題と考えております。
  493. 神田厚

    ○神田委員 御案内のように、我が国の林産業界は、木材需要減退の中で未曽有の長期不況にあるわけでありまして、関税引き下げは生産縮小中の林産業界に追い打ちをかけ、地域経済に甚大な影響を及ぼすものだというふうに考えております。川下の林産業界の崩壊が川上の国内林業の崩壊につながり、ひいては国土保全等の森林の公益的機能の低下をもたらす。こういう意味におきまして、これらの取り扱いにつきましては、十二分に現在の日本の林業の現状につきましての認識を持った上で対処していただきたい、このように要望したいと思っております。  次にもう一点、農林水産大臣に。五日公表されましたが、対外経済問題閣僚会議の中に設置されました対外経済問題諮問委員会が、対外経済摩擦解消のための中期的な政策提言をした報告書を取りまとめました。この問題につきまして、農林水産大臣はどういうふうにお考えでありますか。
  494. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  対外経済諮問委員会のことにつきましては、いろいろな御意見がございます。そんなことで、この間の経済閣僚会議におきましても、私は特に経済諮問委員会の予想される答申につきまして三つの点を強調いたし、先ほどから申しているようなことでございますが、私とすれば、関税問題等につきましては、その前に総合的な対策を講ずるべきであるという主張を繰り返しておるわけでございます。
  495. 神田厚

    ○神田委員 関連いたしまして、過日農林水産大臣は経団連との会合に出席をして、いろいろ貿易摩擦問題等々についての話し合いがあったというように聞いておりますが、その内容につきまして、どういうことでございましたか。
  496. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  ちょうどこれは稲山会長等が、たしかASEAN諸国へ経団連のミッションとして行く前の話であったと思います。多分三番町でやったことだと思いますが、そのときにおきましては、当面する農林水産関係のちう特に木材関係、それから鶏、骨なし鳥肉の問題、あるいはバナナ、パーム油等につきまして日本の国内事情を十分話して、関税引き下げは極めて困難な状況にあるということを説明いたしました。
  497. 神田厚

    ○神田委員 それでは、この法案に直接関連する問題で二、三御質問を申し上げます。  まず第一に、この法律一括法案として処理をすることの問題でありますが、補助金は、そもそも国が政策を実行するに当たって、直接事業に手を下さず、地方公共団体等に資金を交付して、その活動を通じて、地域の実情に応じた事業の推進を図って、一定の政策目標を実現しようとする経費であるわけであります。したがって、本来補助金は政策実行の技術上の問題でありまして、補助金が問題とされるとすれば、そのもとになっている政策が論議をされなければならない、こういうことであります。  今回の法案の対象となっています農林水産関係補助金についても、所管の農林水産委員会で十分な政策論議を尽くした上で合意を求めていくべきであるというふうに考えておりますが、一括法案で処理をしようとするのは、所管委員会審議権も不当に拘束するものではないかということで、大変問題があるというふうに思っていますが、大蔵大臣、いかがでありますか。
  498. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題では、国会でどのように法案審議されるのかという問題は、これは最終的には国会でお決めいただく事項でございますので、政府からこれにコメントすることは差し控えなきゃならぬという立場をまず申し上げておきます。  そこで、提出した理由、こういうことは、政府責任で提出したわけでありますから申し上げたければなりません。が、これは各措置が、いずれも昭和六十年度予算編成に当たりましての財政収支改善を図る見地からとりましたところの、国の歳出の縮減に資する措置であるという共通点を持っておるわけであります。そして、この財政資金効率的使用を図るために、負担補助等見直しを行って、所要の措置を講じて今御審議をいただいておる。その背景には、累次にわたります臨調でございますとか、あるいは行革審でございますとか、財制審でございますとか、そういう背景が存在しておるというふうに考えるわけであります。  以上が一括して提出をした理由ということになります。
  499. 神田厚

    ○神田委員 議論をしている時間がありませんで不満でありますけれども、次に進ませていただきます。  一つは、高率補助の引き下げ等が、今回限りというふうな形で明確に出されてないという問題でありまして、延長される懸念があるのではないかというふうなことが大変指摘をされていることでございます。今回の法案では、高率補助率の引き下げ措置を六十年度限りと一応しておりますけれども、また、政令等によるものもこれに準じて措置をする、こういうことを言っておりますけれども、六十一年度以降の方針については、今後の検討次第で不明確である、こういうことであります。  補助率が高率となっているものには、それなりの政策配慮があって必要とされているものでありまして、例えば農業基盤整備事業などは、今最も重視されるべき重要な政策の柱であります。今回の引き下げについては、地方財政に対し、一部国の責任においての措置がなされているようでありますけれども、ほとんどがいわば国の負担の先送り的なものでありまして、今後、国の財政状況いかんによっては、地方財政への裏づけのないまま、引き下げ措置の継続や補助率の切り離しなどの措置が強行される懸念を感ずるわけであります。法律の延長をしないという旨を明確にすると同時に、農林水産業に対する現状認識と補助金の政策上の位置づけについて、大蔵大臣見解を示していただきたいと思うのです。
  500. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、社会保障関係に係る補助金につきましては、いわゆる予算折衝の際に三大臣申し合わせがなされております。が、このたび御審議をお願いしておるものは、今も例示として御指摘のありました基盤整備費等いわゆる公共事業にかかわるものもございます。したがって、これらの問題につきましても、やはり私どもは適切なあるべき補助率ということは引き続き検討をしなければならぬ課題であるというふうに思っております。  私どももいわば基盤整備というものの重要性を認識しておりますだけに、かつて九千億というのが一つのターゲットでございました。これを私が大蔵大臣のときに設定し、そしてそれを今度は削減するという立場にあったわけでありますが、補助率との調整によって事業費をいささかなりともふやすことによってニーズに対応をしていきたい、このように考えるわけであります。  何にいたしましても、基盤整備、それはすなわちいわゆる規模拡大にもつながることでございますし、なお効率化、合理化にもつながることでございますので、我が方の農政を支えるいわば重要な柱であるという理解のもとに対応すべきではなかろうかというふうに考えております。
  501. 神田厚

    ○神田委員 農業の現状やその他補助金の政策上の位置づけ等につきましても見解を聞きたかったのでありますけれども、時間がありませんので、次に進ませていただきます。  農業委員会、病害虫防除所、漁業調整委員会人件費補助等交付金化の問題であります。  交付金制度については、各都道府県が自主性を持って弾力的な運用ができることとなっておりまして、事業等の効率的な実施が可能となるという一面もあります。しかしながら、反面、今後都道府県の自主的判断に重点が置かれる結果、事業等への取り組みや資金配分の取り扱いについて、都道府県ごとに不均衡な面が生ずることが懸念をされております。また、今後経費の増額要因が出てきた場合、必要な予算を確保しなければ、結局事業や活動等の整理縮小につながるおそれがあるわけでありまして、今後の都道府県に対する指導方針、必要な経費の確保についての考えを示していただきたいと思います。
  502. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  今度の農業委員会補助金等交付金化は、二つのねらいがあると思っております。その一つは、農業委員会等の事務事業の重要性にかんがみまして、従来の個別経費の積み上げではなく、一定の財政上の基盤を付与することを通じまして、全国的に統一のとれた行政水準を確保すること、もう一つは地方の実情に応じましたきめ細やかな農業委員会等の運営を行うために行ったものであると思います。その意味において、御指摘のような農業委員会や都道府県の間で不均衡を生ずるようなことはないと考えております。  また、先ほど御指摘がございました農業委員会への交付金等の配分につきましては、大体三つの基準を設けております。その一つは、各都道府県の農家戸数、二番目には農地面積等の客観的指標を基礎とします。そしてその形の中に各都道府県の特殊な事情を考慮して行うことにしておる。そんなことで、従来の配分金額とほぼ同じ、こういうように考えております。  そんなことで、農業委員会への交付金等については、交付金化趣旨にかんがみまして定額として取り扱うものであり、毎年その額を改定すべきものではないと考えておりますが、今先生のおっしゃるような大幅な物価とか給与等の変動があった場合はどうかという問題でございますが、この場合には事務や運営に支障を来すことのないよう適切に対処してまいりたいと考えております。
  503. 神田厚

    ○神田委員 最後に大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、昭和五十七年度以降、農林水産関係予算は大幅な削減が続いております。今年度も大変厳しい切り込みを受けたわけでありますけれども、総合的な安全保障、その中におきます食糧の安全保障という観点から、今後この農林水産予算の問題について大蔵大臣どのようにお考えでありますか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  504. 竹下登

    竹下国務大臣 農林水産業は、食糧の安定供給の役割を果たしますとともに、その活動を通じて農用地、森林等の持っております国土の保全でございますとか自然環境の維持でございますとか、そういう機能を発揮しておる、まずそういうふうに基本認識を持っております。したがって、今後の予算に対しましても、いわば重点的、効率的な配分というものをしていかなければならぬ、御指摘のとおりでございます。五十五年度予算、私は大蔵大臣でございましたが、またいわゆる概算要求基準が去年に比べて一〇%増しまではいい、それがその後五十六年が七・五%増し、それから五十七年がいわばゼロ、それで八、九、六十、これがいわゆるマイナスシーリング、こういう厳しい中でございましたので、いわば補助から融資へとか、あるいは新しい時代に即応するところのもろもろの施策とか、そしてまたもろもろの農林漁業関係金融の充実とかいうことで対応してきておりますが、今後とも、基本的には所管であります農林水産省の政策選択に対して、私どもといたしましては、持つ調整権限の範囲内において極力対応をさせていただきたいというふうに考えておるものであります。
  505. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  506. 越智伊平

  507. 山原健二郎

    ○山原委員 文部大臣、どうも御苦労さまです。  教材というものが子供の教育にとってどれほど大事なものかということはお互いに認識しているわけですが、文部省の第二次教材整備十カ年計画につきまして最初に質問をいたしたいのです。  当初文部省は十カ年計画で八千三百三十億円の計画をされましたが、大蔵省によってこれが削られまして、半分の四千六百億円、こうなっております。したがって、もう最低必要な教材を備える基準を文部省はおつくりになりました。結局昭和六十二年度までに、半額国庫負担ですから二千三百億円出さなければならぬわけです。ところが、実際の進捗状況を見ますと、五十九年までに四八%しか到達しておりません。したがって、六十年、六十一年、六十二年のあと三年間で残りの五二%をやらなければならないわけでございまして、この分が今回地方交付税によって賄われるということになるわけです、要するに千二百億円。毎年これまでの四倍以上の経費をかけなければこの十カ年計画は達成できないということになるわけですが、三年でこれがやれるという自信を持っておられるのかどうか、最初に伺います。
  508. 阿部充夫

    阿部政府委員 お答えを申し上げます。  教材の整備につきましては、ただいま先生のお話にもございましたように、昭和四十二年度から第一次の整備計画というのを行いまして、これは総額で千六百億、国庫負担金ベースで八百億の十カ年計画でございました。この計画におきましては、基礎的、基本的な、どうしても必要だという最低必要なものを整備をするという予定で進めました。その金額全額について予定どおり完了いたしたわけでございます。  その次に、五十三年度から始めました第二次の教材整備計画は、その第一次の計画をさらに進めまして、基礎的、基本的なものというよりも、さらにどちらかといえば標準的なものあるいは望ましいものというようなものに品目を大幅に拡大いたしまして、そしてその総額で、お話にも出てまいりましたように四千六百億、国庫負担金ベースで二千三百億という計画をつくったわけでございます。これが十カ年計画の七カ年を五十九年度までで経過をしたわけでございますけれども、四十八・数%ということで約五〇%の達成率というようなことになっております。  これを今回交付税の方に一般財源化をしようということで法案審議をお願いを申し上げておるわけでございますけれども、この計画そのものは、これは国庫負担金についてこういう支出をしていこうという計画でございましたので、したがいまして、形式的なことを申し上げれば、負担金から一般財源化することによって、当初の計画そのものは、計画としてはなくなったと言わざるを得ないわけでございます。しかしながら、私どもといたしましては、せっかく立てましたこの計画でございますので、一般財源化をいたしました後も、今後三年間で達成をするというのはいかにも、今までの達成状況からいっても難しいかと思いますけれども、できるだけ早い時期にこの目標が達成されるように、地方の教育委員会を通じまして市町村等にも指導をすると同時に、自治省等地方財政当局の御協力もお願いをしてまいりたい、かように思っているところでございます。
  509. 山原健二郎

    ○山原委員 教材についての計画を立てられて、しかもそれが半分に、値切られると言っては語弊がありますけれども、値切られて、最低の基準をつくって、なおかつそれができるかできないかわからぬという状態ですね。しかも、今回の地方交付税に転嫁をするということになりますと、結局親の負担が増大する可能性が出てくるわけでして、例えばざら紙にしても粘土にしても版画の材料にしても、ファックスの原紙にしても工作セットにしても、全部値上がりしているのですね。そういう中で、まさに財源的には無理だということで、今度の経企庁の国民生活白書を見ましても、家庭にとって一番重荷になっておるのが住宅費と教育費ですね、この負担をどう減していくかということが大事なわけですが、これは文部大臣、いよいよこの父母負担というのが物すごいわけですから、これを軽減をしていく決意を持っておられると思いますが、そのことが一点です。これは後でお答えいただきたいと思います。  時間の関係で、二つ目の問題ですが、いわゆる過大規模学校の解消の問題について、今度の国会におきましても、三十一学級以上はなくしていくんだ、こういうことをしばしば言明をされてきております。これは、私に対してもそうおっしゃっておりますし、また我が党の不破委員長予算委員会の質問に対してもそうおっしゃっております。そういう意味では、私は文部省としては積極的な態度をとっておられると思うのです。私どもの調査によりますと、例えば大阪市、それから横浜市を見てみますと、大阪市の場合は、行政的に基準を決めておりまして、千五百人以上、そして三十五学級ないし三十六学級にならないと分離をしない、こういうふうに基準をつくっておられます。横浜市の場合は千五百人以上、かつ三十七学級以上でなければ解消はできない、こういうみずから立てた計画を持っておられるわけですが、これは、文部省の今までの言明からいいましても、三十一学級以上は解消するのだ、こういう立場から考えましても、私は、直ちに解消する方向で指導すべきではないかと思います。これは文部大臣お答えいただけると思いますが、この二つについて御見解を伺いたいのです。
  510. 松永光

    ○松永国務大臣 まず、前半の教材費の問題でございますが、今局長が答弁いたしましたように、十カ年計画の進捗率が計画どおり来てない。それは何が主たる原因であったかというと、五十七年に一〇%縮減、五十八年に一〇%縮減、そして五十九年は一五%縮減、こう国家の財政事情が極めて厳しいということから縮減をされてきた。そういたしますと、それに応じて地方交付税の方も少なくなってまいりますから、結果的には先ほど言ったようなことで、五〇%に足らざる程度の進捗率になっておるわけであります。しかし、今回六十年度におきましては前年度を二・八%でしたか上回る地方財政計画での財源措置をしていただきましたので、むしろ減額に歯どめがかかったというふうに私は見ておるわけでして、今後地方財政当局に財源措置の充実を図っていくように懸命に働きかけていくと同時に、その財源措置をしたものが地方公共団体で教材費として支出されるように適切な指導をしていきたい、そういったことで教材の充実を図ってまいりたい、こう考えておるわけであります。  次に、過大規模の問題でございますが、文部省といたしましては、先生御指摘のとおり、三十一学級以上の小中学校について、これを分離を促進するように措置をしてきておるわけでありますが、この場合一番問題になるのは用地の取得難なのでございまして、そこで、この過大規模校の分離を行う市町村に対して、先生御承知のように児童生徒急増地域の用地取得費補助という制度があるわけでありますが、この制度を拡充して、一定の要件のもとに過大規模校の分離を行うための学校用地取得についても補助を行う、そういったことをして過大規模校の解消に努めておるわけでありますけれども、今後ともそういうやり方で過大規模校の解消のために努力をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  511. 山原健二郎

    ○山原委員 私が具体的に挙げました、例えば横浜市とか大阪市の場合は独自の基準を持っておられるわけで、このままいきますと、これは放置すれば解消できない状態が続くわけでございます。しかし、文部省としては今まで、いわゆる大規模校の教育に与える弊害、しかもまだ文部省の法令によれば小学校十八学級、中学校二十四学級以上は適正規模として放置できないという態度をとってこられましたし、また今国会でも、三十一学級以上は分離、解消するということでございますから、この両市に対しましても、文部省としては適切な御指導をなさることが大事なのではないかと思いますが、この点再度お聞きしておきます。
  512. 松永光

    ○松永国務大臣 過大規模校の解消の問題は、今申し上げた分離をするための学校用地の取得難の問題が一つ。それからもう一つは、学校のあり方をめぐる住民意識の問題等々の問題もございますが、いずれにしても、今申されました大阪や横浜の例につきましては、文部省としては速やかに、文部省の方針である三十一学級以上のものについては早く分離をするよう適切な指導をし、そういうことで大阪や横浜も対処するようになっておるところでございます。
  513. 山原健二郎

    ○山原委員 その点、よろしくお願いいたします。  次に臨教審の問題ですが、実は臨教審の方はいろいろな審議をなされております。この中身は公開されておりませんからわかりませんけれども、その中で、例えば六年制中等学校をつくるとか、共通一次の問題とか、九月入学であるとか、専修学校の処遇の問題であるとかいうことが出ておりますが、この中で六年制中等学校の構想について、これは第三部会長の報告メモを私どもいただいておるわけでございますが、これを読んでもわかりにくいわけでございまして、これについて恐らく文部省も報告を受けておると思いますし、主査が元文部次官の齋藤さんでございますから、少なくとも審議の経過については文部省としても把握をされておるのではなかろうかと思います。  この点について二、三お尋ねをしたいわけですが、このいわゆる六年制中等学校構想というものは、教育基本法の第四条の義務教育年限九年をどうするのか、あるいは十二年という特例を設けるのかどうか、これが一つです。  それから、財源分担はどうされるのか。この中学校は、例えば地方公共団体に一切財源を任すのかどうか、この点。  それから三番目に、教員の費用の分担はどういうふうになるのでございましょうか。  さらに、この六年制中等学校は、教育基本法あるいは学校教育法三十五条の中学校の規定、四十一条の高等学校の規定を変えなくてはならなくなるのではなかろうかと思うのでございますが、そうなりますと、我が国教育制度の根幹にも影響してくる重要な意味を持っておると思うのでございます。  これらについてお答えをいただきまして、この六年制中等学校構想というものを、文部省としては積極的に推進をされる立場なのか、あるいはそうではないのか、この点についてお伺いをいたします。
  514. 松永光

    ○松永国務大臣 まず、臨教審における審議の都度における部会の外部に対する発表の問題でございますが、既に御承知と思いますけれども、臨教審では、部会等で審議がなされた場合には、その審議のなされた事項等につきまして、国民に広くお知らせする方が適当であろうというふうに自主的にお決めをしていただきまして、部会等の審議がなされた場合に、どういう点が議論されたかということの発表を、記者会見等を通じて部会長さんまたはそれにかわる人がなしていらっしゃるわけであります。しかし、部会というのは審議を深める場でございまして、臨教審としての決定というものは、これは総会でなされる、こういう仕組みになっておるわけでありまして、あくまでも部会長さんあたりの記者会見は部会における審議事項の概要を国民にお知らせするという立場から発表をなされておる、こういうことであることを御承知願いたいわけであります。  次に、六年制中等学校の問題でございますが、細部の点は必要があれば局長をして答弁をさせますけれども、要するに臨教審の第三部会におかれては、これは多様な教育の機会を提供するためのさまざまな試みの方策の一つとして、その構想が打ち出されたものと私は理解いたしております。先生御承知のとおり、現在の中学校、高等学校、十三歳から十八歳までになりますが、人間が少年期から青年期へ向かうという人間形成の上で非常に重要な段階なんでありますが、それが現在のところは三年、三年と区切られておる点が一つ。それから、高等学校に入るための試験が途中にあるということ等がありますので、それを一貫してやった方が人間形成の上でプラスになるのではなかろうか。そういう考え方で打ち出された構想だと理解をされるわけでありまして、傾聴に値する構想だというふうに私は考えておるわけであります。  その場合の教育基本法との関係でございますが、臨教審は教育基本法の精神にのっとって教育改革を進めるための御検討をしていただいておるわけなんでありまして、教育基本法の精神に反するような答申になることはないというふうに思うわけであります。教育基本法がその第四条で義務教育の年限を九年、こうしておるわけでありまして、さすれば小学校六年、それから六年制中等学校での三年を経過すればそれで合計九年の学校教育を受けるということになるわけでありますから、その観点では教育基本法の第四条の精神に反するものではないというふうに私は受けとめております。  その他、これを実際に実行する場合の学校教育法等の関係につきましては、細部にわたる点でございますので、必要がありますれば局長をして答弁させることにいたします。
  515. 山原健二郎

    ○山原委員 経塚さんいらっしゃいますので、もう時間がございませんが、事務当局で結構ですが、これは中高一貫教育でしょう。そうすると、これが義務教育になるのか、特例を設けるのか、あるいは学校教育法を変えなければならぬのか。このままでいけば、中高一貫教育ということになれば変えなければならぬのではないかと私は思いますが、その点だけ、事務当局で結構ですが、どういうふうに判断しておりますか、簡単に答えてください。
  516. 高石邦男

    ○高石政府委員 お答えいたします。  学校教育法の改正というのは当然に伴うと思っているわけでございます。(山原委員「教育基本法」と呼ぶ)教育基本法の改正は必要ないと思っております。
  517. 山原健二郎

    ○山原委員 一言言ってください、どうしてですか。
  518. 高石邦男

    ○高石政府委員 教育基本法では、義務教育の修業年限は九年ということでございますので、諸外国にもございますように、例えば六年制の中等学校の場合でも前期三年が義務である、そして後期は義務でないというような学校の形態になろうかと思います。
  519. 山原健二郎

    ○山原委員 これはおかしいのですね。中高一貫教育という形で出ておりますから、教育改革という名前のもとに出ているわけでしょう。それが三年生までは義務教育で、それから四年生、五年生、六年生がそうではないなんということは、これはよほど研究しておかないと判断できませんから、この点ではもう時間がありませんからこれでおきますけれども、研究をして方向を出さないと大問題になってくるということを指摘しておきたいと思います。  以上で終わります。
  520. 越智伊平

    越智委員長 経塚幸夫君。
  521. 経塚幸夫

    ○経塚委員 まず最初に大蔵大臣にお尋ねをしたいと思いますが、この三大臣の覚書によりますと、「昭和六十一年度以降の補助率のあり方については、国と地方の間の役割分担・費用負担見直し等とともに、」検討を進める、こう言われておるわけですが、本会議での大蔵大臣の御答弁によりますと、国と地方の役割分担それから費用負担、この検討を進める、こうお答えなんですね。したがって、ちょっとここで疑問が起きるわけでありますが、ここで検討を進めると言っておりますものは、また、大蔵大臣が御答弁をなさった国と地方の役割分担、負担割合の検討というのは、今回提案をされております削減対象に限るのか、あるいはそれ以外も含まれるのか、その点についてはどうですか。
  522. 竹下登

    竹下国務大臣 これは経塚さん、三つのことに関連するのかなと思います。  一つは、今私の本会議の答弁を引用なすったわけでございますが、それはそれとして、まず一つは「社会保障に係る高率の補助率の引下げ措置を講ずるに当たり、次の通り申し合わせる。」といういわゆる三大臣覚書がございます。それの二項で、「六十一年度以降の補助率のあり方については、国と地方の間の役割分担・費用負担見直し等とともに、政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする。」これが一つでございます。  それから二つ目の問題は、今度のこの法律で御審議いただいております内容は社会保障だけじゃないじゃないか、そうすると、そのほかはどうするか、こういう議論一つございます。これにつきましては、各分野においても必要に応じて同様に協議をして検討していくということは、これはもちろんのことであるというふうに考えられます。  それからその次、三番目といたしましては、いわゆる補助率というものに限らず、国と地方の費用負担と機能分担というものは、これは絶えず念頭に置いて検討を加えていかなければならない問題であるというふうに、三つのことが言えるのではなかろうかというふうにお答えをいたします。
  523. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうしますと、今回提案をされております高率補助の問題に限らず、これは広範多岐にわたってくると思うのですね。  そこで、私は全般にわたるものはさておくとして、例えば地方財政法十条で言われております、国が進んでその費用の全部または一部を負担する、地財法十条に限ってお尋ねしたいのですが、これは六十年度地方財政計画によりますと、この部分だけでも国庫負担にかかるものが総額七兆八千二百億余あるわけですね。そうしますと、これは全部今後一年間の見直し、検討の対象になるわけですか。
  524. 竹下登

    竹下国務大臣 この一年間を限っての問題で覚書にあるのは、これは社会保障関係の、先ほどの三大臣合意に関するものでございます。それから、その他公共事業等につきましては、必要に応じて検討をすることはまだ当然のことでございます。そうして、あとの役割分担、費用負担というのは、必ずしもいわゆる分担金、補助金に限らず、いわばこれは個人ないしは企業の問題ではないか、これこそまさに地方自治体の問題ではないか、これはまさに国そのものの責任ではないか、こういうような議論も、各方面で指摘されておる問題は引き続き検討の対象にある。したがって、今おっしゃいました地財法十条というものに限った問題で最後の分は申し上げたわけではもちろんございません。
  525. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうしますと、これ、ちょっと自治省にお尋ねしなければならぬことになるわけですが、四月四日の地方行政委員会では、大蔵大臣、この三大臣のいわゆる覚書に関連をして、今後一年間検討の対象とするのは、社会保障の分野だけではないという御答弁があるわけなんですよ。それはどうなるのですか。今の大蔵大臣の御答弁ですと、これから一年かけて検討するのはこの覚書どおり、今回カットの対象になっております主として社会保障の分野でしょう、ところが、せんだっての地方行政委員会の御答弁では、これには限らないと、こういう御答弁があるのですよ。これはちょっと食い違いやしませんか。
  526. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる三大臣合意に基づきます対象は、社会保障に係る高率補助率の引き下げ措置を講ずるに当たっての申し合わせでございます。ただ、必要に応じ、他の分野におきましても、同様に協議をして検討を加えていくことはもちろんのことである。絶えずそれはそういう見直しという観点に立っていなければならぬということを、総じて申し上げたわけであります。
  527. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうしますと、それは絶えず検討するという対象であって、これから一年間検討して結論を出す対象ではない、こう受け取ってよろしいのか。
  528. 竹下登

    竹下国務大臣 これは一年間の暫定措置になっておりますから、一部恒久の問題も法律の中には入っておりますけれども、したがって、一年間のうちに今度、次の措置についてはこれは検討しなければならぬ課題でありましょう。
  529. 経塚幸夫

    ○経塚委員 いやいや、この前の総括のときの質問もそうだったのですが、どうも大蔵大臣は、御自分でおっしゃっているとおり、言語明快ですが、論旨極めて不明確で、ちょっと首をかしげざるを得ないわけですが、私がお尋ねしているのは、この三大臣の覚書は、冒頭にありますように、社会保障に関しての申し合わせでしょう。それでその二項に書いてありますのは、費用負担割合等々今後一年かけて検討する、これは前段の、今回削減の対象になっておりますいわゆる社会保障に限って一年間かけて結論を出すということなのか、本会議などでの、これは総理の答弁、あなたの御答弁も一緒ですけれども、国と地方の負担割合と費用分担について検討する、こうおっしゃっている。そうしますと、これは範囲が広いですよ。六十年度の地方財政計画では、国庫支出金は十兆円に上っておりますね。地財法十条だけで七兆円。国と地方の負担割合、機能分担も含めて検討するということになりますと十兆円が対象になるんじゃないですか。なって、しかもこの三大臣の覚書のように、二項目には「社会保障に係る」とは書いておらぬわけですよ、「国と地方の間の役割分担・費用負担」こうなっているんですから。だから、その見直す、検討の対象の範囲はきっちりしておいてくださいよ。そうでないと、また数ヶ月後に論議をするときに、いやいや、実はあのとき社会保障だけだと御答弁申し上げたけれども、その後の検討の結果、十兆円あるいは七兆円、これが検討の対象になったんだというようなことじゃ困りますからね。その点いかがですか。
  530. 竹下登

    竹下国務大臣 まず申し合わせは、前文で「社会保障に係る高率の補助率の引下げ措置を論ずるに当たり、次の通り申し合わせる。」そこでその第二項におきましては「昭和六十一年度以降の補助率のあり方については、国と地方の間の役割分担・費用負担見直し等とともに、政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする。」でありますから、これは前文がかかっております。ただ、私どもが申しておりますのは、「国と地方の間の役割分担・費用負担」というものは、これに限らず、絶えず検討していくべき課題であるという問題意識は、今日までのいろいろな指摘、答申等に対して念頭に置いておるということであります。
  531. 経塚幸夫

    ○経塚委員 そうしますと、これは国庫支出金に係る十兆円の問題、それから地方財政法十条に係る七兆円の問題、これも検討の対象になる、こういうことですね。これから検討を進められる、こういうことですね。
  532. 竹下登

    竹下国務大臣 国と地方に、係るところの役割分担、費用負担という問題は、それは例外なく絶えず念頭に置くべき課題であるという問題意識であります。
  533. 経塚幸夫

    ○経塚委員 文部大臣にお尋ねしたいのですが、六十年度のこの補助金に関連する問題の対象として、今回削減をされた部分だけじゃなしに、例えば学校の事務職員、栄養職員の人件費、それから不交付団体への国庫負担金、給与費、これが検討の対象になったと思いますが、これは今後一年間検討の対象にされるお考えですか、その点はどうですか。
  534. 松永光

    ○松永国務大臣 文部省の考え方としては、すなわち私の考え方としては、義務教育費国庫負担の基幹をなすものは教育職員の給与費、これが国庫負担制度の根幹をなすものだ、こう考えております。  ところで、今申されました事務職員、栄養職員は学校の基幹的な職員である、こう考えておりますので、この点につきましては国庫負担の対象から外すことは極めて困難なことであると考えております。まあ具体的にそのことについて外してもらいたいという要望が将来出てくるとは考えておりませんけれども、しかしいろいろな制度につきましても常にいろいろな意見は出てくるわけでありますから、意見が出てくることはあり得ないということは断言できませんけれども、もし出てきた場合には、私といたしましては事務職員、栄養職員、先ほど申したとおり義務教育費国庫負担制度の根幹にかかわる問題でありますから、この義務教育費国庫負担制度の基本はあくまでも維持していくという方針で対処していく所存でございます。
  535. 経塚幸夫

    ○経塚委員 あっちもありこっちもありの御答弁ですが、結局は文部省としては、これは切られたら困る、こういうことですね。――いや、そこでうなずいてもらっても困るのです。
  536. 松永光

    ○松永国務大臣 学校の基幹的な職員でありますから、これについて国庫負担の対象から外すということは極めて困難、そうならぬように私どもは一生懸命努力していく所存でございます。
  537. 経塚幸夫

    ○経塚委員 大蔵大臣、どうされるのですか。
  538. 竹下登

    竹下国務大臣 六十年度予算編成に当たりましても、予算調整の段階あるいはその前と言った方がいいかもしれませんが、今のような議論をしたことは事実でございますが、教育関係方面、もとよりそれを代表される文部大臣等が、それを対象外にすることについては強い反対の意思があることを私も承知をしておりましたので、今年の段階におきましては、これはいわば対象外にはならなかったということでございます。
  539. 経塚幸夫

    ○経塚委員 ことしの六十年度の経過報告を求めているのじゃないのですよ。六十一年度どうされるか。文部大臣、これから一年検討の対象、削減の対象にするのですかとお尋ねしたら、それは困るということだから、大蔵大臣もそれはやりません、こうおっしゃれば簡単に片がつく問題であります。
  540. 竹下登

    竹下国務大臣 予算編成に際しましては、聖域として初めから確定させておくということは、問題によりけりでございますが、非常に難しいことであります。
  541. 経塚幸夫

    ○経塚委員 文部大臣、これは歯切れ悪いですよ。これは警戒警報ですよ。文部省頑張っていただかないと、大蔵大臣はどうも心の中で八分ぐらいは削減する気持ちが見えかかっておりますな。しかし、これは重大な問題でありますから、文部省も頑張っていただいて、大蔵大臣も文部大臣の御意見を尊重して、削減することのないようにひとつ申し上げておきたいと思います。  それから、厚生大臣にお尋ねをいたしますが、公的扶助に対する国の責任問題です。これはかつて厚生省はこんなように言っておったのですよ。あるという解釈についてこう言っておったのですね。生活保護法第一条は、憲法二十五条の理念に基づき、国が必要な保護を行い――国が必要な保護を行いとは「制度の企画だけでなく実施に至るまでその責任を国即ち政府が直接持つという原則」だ。これは厚生省の見解として「生活保護法の原理と原則」の中で公にされておったわけですね。この考え方、変わっているのですか、変わっておりはしませんのか、それはどっちですか。
  542. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 生活保護につきましては、実際には市町村で事務をやっていただいておるわけでございますけれども、最終的な責任は国にあることは間違いございません。
  543. 経塚幸夫

    ○経塚委員 最終的な責任が国にある、それと、もう一つ私が例を挙げました、直接国が責任を負う、これは明らかに違いますよ。直接国が責任というのは直接なんですよ。回り回って最終的にわしが責任を負うておりますということではないのですよ。厚生省の見解の大事な点はここなんですよ、従来の見解は。「直接」とわざわざ念を押しておるわけですな。今回の措置は直接責任を負ったことになりますか。公的扶助に対しては、削減した分は交付税で面倒見ているとか、そういうふうに御答弁されておりますけれども、国が直接責任を負う、その点についての解釈、どうなんですか。
  544. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 国が最終的な責任を持つことが生活保護法に明示されておるわけでございますけれども、と同時に住民福祉の観点からも、従来から一貫して地方公共団体にも一定の負担をしていただいたことも事実でございます。
  545. 経塚幸夫

    ○経塚委員 地方公共団体に負担をしてもらったことも事実でございますと言いますけれども、これは今の段階でも既定の事実として、例えば十分の八の段階でも十分の二は地方が持っておる。しかし大事なことは、それが、いわゆるここで言っている国が直接責任を持つということに当たるのかどうなのかということはいろいろ論議があるのですよ、経過から見ますと。  終戦直後は、生活保護は全額国の負担だったんでしょう。そうして、昭和二十四年、二十五年に社会保障制度審議会から答申が出た。この答申に何と書いてありますか。十分の二ではなお地方の負担は重過ぎる、こういうことで、国の負担を十分の九にしたらどうかという議論もなされたわけなんですよ。本来は国が十割負担をしなければならぬ性格のものだという前提で厚生省はいろいろ論議をされているわけですね。だから、事実経過として、地方が十分の二を持ってきておるという経過はありますけれども、国が直接責任を持つということになりますと、本来十割でなければならぬという前提に立っておるわけです。それを十分の八で、今度は十分の七ということは、これは一体、国が直接責任を負うという従来の厚生省の見解に沿った措置なんですか。その点はどうなんですか。
  546. 正木馨

    ○正木政府委員 大臣からもお答え申し上げましたように、生活保護法第一条に、憲法二十五条に規定する理念に基づいて、国が生活に困窮するすべての国民に対し、最低生活の保障をするとともに、その自立を助長するということに定められておりまして、国が最終的な責任を持つということであります。  なお、先生がおっしゃいます「直接」ということでございますが、それは、国民の最低生活の保障、というものについて、憲法の理念に基づいて国も責任を負っておるということでございます。ただ、直接ということは、国がみずから実施するということじゃなくて、御案内のように機関委任事務として従来から実施をしておる。そして、これは大臣からもお答えがありましたように、住民福祉の観点から地方にとっても関心の深い仕事であるということで、地方負担も行われておるということでございます。  なお、先生のお話のように、かつて十分の十、国が全額持ったというのは、先ほど他の先生にお答え申し上げたわけでございますが、終戦直後、戦災者とか引揚者で国民生活が非常に混乱をしておるというときに、当時は救護法の実施の時代でございましたが、GHQの指示によってとりあえず全額国が見てということで、その後、昭和二十一年に旧生活保護法が実施され、それ以来、国と地方で負担を分かち合うということで今日に及んでおるわけでございます。
  547. 経塚幸夫

    ○経塚委員 国が最終的に責任を負うと言葉を強めておっしゃいますけれども、ちょっと自治大臣にお尋ねしますが、交付税は国の財源ですか、地方の財源ですか。
  548. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 いろいろ論をなす人がありますが、私は地方固有の財源と考えております。
  549. 経塚幸夫

    ○経塚委員 厚生大臣交付税は地方固有の財源でしょう。交付税で面倒見ておりますからといって、国が最終的に責任を負ったことになりますか。なりゃしまへんがな。交付税は地方の固有の財源なんですよ。交付税で面倒見たからといって、何でこれは国が最終的に責任をとったことになるのですか。なりゃしまへんがな、これは。地方の財源に責任をかぶせておるわけです。地方の財源で手当てをしておるわけです。国が責任を負うというのやったら、これは親子の関係で言いましょうか。親は子供を扶養する義務がある。三度飯を食わさにゃいけまへんのや。それを二回にしてしもうて、そしてあなた、国が責任を負うていると言えますか。親が責任をとっていると言えますか、これは。それで、三度目の一度が、これは何ですか、地方の固有財源でしょう、これを充てるわけです。それで、何で国が最終的に責任を負うたことになりますか。なりゃしまへんがな。どうなんですか。厚生大臣とそれから大蔵大臣、御答弁願います。
  550. 正木馨

    ○正木政府委員 繰り返すようでございますが、国が最終的責任を持つということは間違いないわけでございますが、その意味は、国民の最低生活の保障というものが実現できるように国がバックアップをしていくという意味だと思います。  それから、先生のおっしゃいますように、地方交付税というものは、一体それで国の責任を果たしておるのかということでございますが、先生も御案内のように、地方財政法の十条の四では、国と地方の相互に利害の関係ある事務については相互に持ち合うという規定のあることも御案内のとおりでございます。地方交付税は要するに国が負担を行った、平たく言えばいわゆる補助裏について地方の財源が十分賄えるようにということで、その措置がとられておるというふうに私ども理解をしておるわけでございます。
  551. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる固有財源論というのは、これは古くて新しい議論でございますが、五十六年四月、これは当時渡辺大蔵大臣、それから鈴木総理が五十七年二月、これも福田大蔵大臣答弁を踏襲した国会答弁を行っております。とは何ぞや、こういうことになりますと、国会答弁において、地方の固有財源であるという表現を用いました。その意味するところは、次のとおりであります。  同じ言葉を使用しても、大蔵省と自治省の考え方とは、よく言われる同床異夢というような考え方がないわけでもございませんが、少なくとも地方の一般財源で、使途の制限がないということでございます。したがって、いわば地方固有の財源を国がかわって徴税をしているという意味における固有の財源ではなくして、まさに使途の制限のない地方の一般財源として、私どもは固有財源論、こういうふうにくみしておるわけであります。
  552. 経塚幸夫

    ○経塚委員 自治大臣が答弁されたように、これはあくまでも地方の固有財源なんですよ。それで、今いみじくも大蔵大臣が御答弁なさったように、交付税についてはその使途を制限されないのです。それほど地方の自由にしてよろしいというのは、地方の独立財源、地方のまさに固有財源なればこそ、法令上もそういう扱いにされているのです。それですから、ずっと一貫して、総理の答弁も大蔵大臣の答弁もそれから厚生大臣の答弁も、かつて文部大臣の答弁もこの前そうだったですが、交付税で措置をしておる、交付税で措置をしておる、それで国が責任をとっております、とっておりますと言うけれども、これは国は責任をとっておることにならぬじゃないですか、地方の財源を食うておるわけですから。  これは、今来られております自治省の花岡財政局長が、こういう答弁をしているのでしょう。「生活保護費のように社会保障の根幹をなしておるような性質のものでございますと、これは究極的には国に責任があるものと私ども考えておりますので、こういった基幹的な補助金というものは一律にカットの対象とすべきではない」。続きまして、「交付税で埋めるというふうな考え方は持っておりません。」私の質問に対しまして、「現在の交付税の率の中で補助率カットによる影響を措置するということになりますれば、結局、地方団体それぞれ共有の財源でございます自分たちの財源を食うわけでございますから、これは行革につながるものでも何でもない。地方団体が非常に苦しくなる、それ以外の何物でもない」と自治省は答弁をされておるわけですよ。交付税で見ておるから国が最終的に責任をとっておりますという論が通るなら、例えば生活保護につきましても、十分の五にして、あと十分の五交付税で見ても国が責任を負っている、こうなるのでしょう。公的扶助制度が全部そうなりますよ。そうしますと、地方財政法十条は死文化しますよ。何でわざわざ地方財政法十条で国の負担金という制度が設けられておるのですか。  これは自治大臣にお尋ねいたしますが、補助金負担金は一緒ですか、違うのですか、解釈どうなんです。
  553. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 補助金負担金の区別だと思いますが、負担金というのは、国の予算上の名称がどういうふうに使われておりましても、地方財政上は、一つは、国と地方公共団体相互の利害に関係ある事務のうち、なお国が進んで経費を負担する必要があるものに要する経費ということで、例えば社会保障のお金とか義務教育のお金がこれになると思います。二番目は、国民経済に適合するように、総合的に樹立された計画に従って実施されなければならない土木その他の建設事業に要する経費というので、公共事業がこれに当たる。それから三番目は災害に要する経費でありまして、国が法令の定むるところにより義務的に負担するものを指しておるのであります。  これと違って国庫補助金というのは、国が地方団体の財政援助し、あるいは特定事務事業に奨励する目的をもって交付するものと考えております。  だから、一言で言いますれば、一方は割り勘であり、一方は奨励のあれであるというふうに、世間的に言えばそんなような感じもしますけれども、国庫補助金と言えば裁量的かもしれません、あるいは国庫負担金というのは義務的であるとも言えるかもしれぬと思います。そういう点の議論はこの際失礼しますが、私どもで考えておる国庫補助金負担金の区別は大体そういうことでございます。
  554. 経塚幸夫

    ○経塚委員 自治大臣が、この際そういう議論は御遠慮いたしますと言う、ここが一番大事なところなんですよ。大いに議論しなければならぬところなんです。ここが焦点なんですよ。地方財政法十条で、これは国庫負担金と定めて国が進んでその費用の一部または全部を負担する。補助金は奨励的でしょう。だから、国が義務的にその負担を位置づけられておるものが地方財政法十条で列挙されているわけでしょう。今度の二千六百億の経常費のほとんど九九%が、国が義務づけられておる負担金の削減に関するものなんでしょう。だから私はその点を問いただしておるわけなんですよ。自治省ともあろうものが、地方財政法の十条の解釈についてはもうちょっとはっきりした見解を持ってもらわぬと困りますよ。補助金とは根本的に性質が違うわけですよ。地方財政は、御承知のように憲法第八章の地方自治の本旨の財政面からの担保なんですよ。そこで国と地方の機能分担を明確にした、これが第一の特徴なんですよ。それが十条にあらわれているわけです。だから、これは国が進んでその費用の全部または一部を負担するとわざわざ明記されているわけです。  そこで、私は具体的にお尋ねしていきたいと思うのですが、今回、この国庫負担金、国が義務的に負担をしなければならないもの十二法律四百二十八億円、国庫負担は廃止する、全額一般財源化する、こういう改正が提起されております。精神衛生センターの運営費補助、身体障害者更生相談所事務費それから婦人相談所職員設置、児童相談所、教材等々でありますが、この中で二、三お尋ねをしておきたいのです。  例えば精神衛生センターの国庫負担金でありますが、わかりやすく言えば、厚生大臣、私ちょっと大阪の例を取り上げますが、大阪の場合はBクラス、国の基準は医師一名とそのほか一名で合計二名なんです。ところがこれじゃ相談に対応できない。こういうことで、大阪の場合は医師一名とケースワーカー五名と心理職三名、合計九名。これは、決算を見ますと、何と国庫補助三分の一と定められながら七・二%しか補助が出ておらぬのですね。身体障害者更生相談所の事務費も、十分の八と定められながら実際は二八%しか補助が出ておりません。  児童相談所の例を挙げておきましょう。大阪の例ばかりでは失礼でございますから、大蔵大臣の島根県をちょっと申し上げておきましょう。島根県は大変ですね。相談件数全国第三位です。児童一万人に対しまして全国の平均が七十七人の相談件数でありますが、島根県は百三十人ですね。それで、福祉司一人当たりの相談件数でありますが、東京の場合は福祉司一人で百三十人、島根県の場合は何と東京都の三倍で三百八十四人ですよ、大蔵大臣大臣のおひざ元。これは東京のような交通の便利のいいところじゃなくして、島根県のようなところで、福祉司一人で何と三倍からの相談を消化しなければならぬということになると大変。私聞いてみた。相談件数が多くて毎日残業の連続。仕事仕事に、追われて十分対応できません。何とか定数をふやしてもらいたいと思っておりますけれども予算の都合で思うようになりません。泣かんばかりにおっしゃっていますよ。しかも、実支出額が千五百十六万円。このうち国庫負担が、法令で十分の八と定められながら、何と二百九十二万しか国庫負担出てやしまへんやないか。たった一九%でっせ。どないなりまんねん。大蔵大臣は昼間の御答弁で、私のような貧乏県は、こうおっしゃいましたけれども財政が窮迫をしておる状況の中で、こういう超過負担は大変だと私は思うのです。  お尋ねいたしますが、国庫負担をこれで廃止して一体どうなるのですか。私は相談窓口の例をたくさん申し上げましたけれども、まず最初にそれこそ相談ありきなんですよ。身体障害者、婦人、児童、老人、みんな相談窓口が初めにあって、それから更生だとかいろいろな対策が講じられるのですよ。この窓口がこういう状況の上に加えて、国庫負担が全額廃止をされるということになったら、果たしてこの窓口相談業務の制度が維持されるのかされないのか極めて不安ですよ。保障があるのですか、どうなんですか、厚生大臣
  555. 小島弘仲

    ○小島政府委員 児童相談所の例で申し上げますと、福祉法制定当時、昭和二十二年でございますので、まだまだこういう機関についての認識も十分でなかった。また、先ほどもお話ございましたように、地方団体の財政状況も極めて悪かったということでございますし、この種の施設は、先生御指摘のとおり、児童福祉のための中核的な施設であって、相談に乗ったり判定に乗ったり、その後の措置につながるものでございますので、これをやはり全国一律の水準で整備したいということから、高率の負担を行いながらそういう整備を推進してまいったわけでございますが、最近では、そういう機能面についての地方の認識も十分でございますし、御指摘のように、むしろ超過負担をしながらでもやっていくというような状態になってまいりました。一方、人件費等については、できるだけ一般財源化を図るというような臨調、行革審の御指摘もございますので、この際、定着したものについては一般財源化を図ってまいってもしようがないという判断のもとにやったものでございます。
  556. 経塚幸夫

    ○経塚委員 全くけしからぬ答弁ですよ。定着化定着化と言いますけれども、冗談じゃないですよ。超過負担が定着化しておるんじゃないですか。法令違反が定着化しておるんじゃないですか。そうでしょう。地方で固定化した、定着化したから国庫負担を廃止して一般財源化する、こうおっしゃるけれども、これは全部超過負担。国が十分の八だと言いながら、二割そこそこしか実際は手当てをされておらない。地方は超過負担で大変なんです。  これは大阪府の婦人相談所の担当者の声でありますけれども、国庫負担がふやしてもらえる、こう思っておったところが、何ですか、国庫負担今度全額廃止ですか。これで定着化した、固定化した、こんなことを言える義理合いがあるのですか。法令違反の超過負担を解消するのが国の責任じゃないですか。それをほっておいて、同化定着したなどという理由で国庫負担を全額廃止するなんて、これはもってのほかじゃないですか。一体何を考えているか、こう言いたいですよ。大蔵大臣、島根県の例も申し上げましたけれども、これはどないするのですか。
  557. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに高度な判断からして、それは同化定着したものである、こういう理解の上に立ってそのような措置をお願いしておる、こういうことであります。
  558. 経塚幸夫

    ○経塚委員 高度な判断というのはもっと別なところへ使いなさいよ。超過負担が定着しているのを称して同化定着。この論でいきますと、超過負担がたくさんあるものほど、これからは国庫負担だとか補助が廃止されて、そして、それだけ地方が一生懸命我慢をしてでも財政の支出をやって制度を維持しておるんだから、はいこれも国庫負担廃止、はい一般財源化、これも交付税で見なさい、全部そういう論理が成り立つじゃないですか。そんなことをやろうというお考えなんですか。
  559. 竹下登

    竹下国務大臣 そこはそれこそ財政上の節度というものは守っていかなければなりませんし、まさに国と地方の役割分担、費用負担のあり方、こういうことに尽きると思います。
  560. 経塚幸夫

    ○経塚委員 これは、私は根本にかかわる問題だと思うのですよ。財政の事情や都合でもって、公的扶助制度というものは軽々に右に左にされてはならないのですよ。厚生大臣、従来も厚生省はそういう見解をとっていたのです。かつてこの生活保護の問題について地方の審議会の方からは、機関委任事務ではなしに、全部地方に回したらどうかという意見がまとめられて提出をされたことがあるのですよ。このときに厚生省はどういう回答をしたかといいますと、公式見解として、機関委任事務でさえ問題がある、イギリスのように、本来は国が直接やるべき制度であるという見解を出していたのです。そしてその理由としては、地方にこれを委任するということになれば、また権限を全部移譲するということになれば、景気、不景気に地方の財政は変動されやすい、したがって公的扶助制度は財政や景気、不景気に左右されてはならないという前提でもって、機関委任事務でさえ問題がある、地方に負担をふやすことについては問題がある、財政のいかんにかかわらず、公的扶助制度は憲法二十五条で定められた、引くに引けないと総理も答弁でおっしゃったぎりぎりの制度だから、あくまでも初めからしまいまで直接国の責任で維持すべきだ、これが見解だったのでしょう。そういう見解をずっととってきておって、今回の厚生省の態度でしょう。私は、これは大蔵省に押しに押しまくられた結果だと思います。財政で左右されてはならぬですよ。  これは最後にお尋ねいたしますけれども大蔵大臣、厚生大臣、憲法二十五条の戦後制定の経過を御存じですか。最初に出ました憲法二十五条、その当時は二十三条でありますが、どういう文言だったのですか。
  561. 竹下登

    竹下国務大臣 憲法二十五条の精神は知っておりますが、当時の文言をそらんじてはおりません。
  562. 経塚幸夫

    ○経塚委員 時間が参りましたので質問を終わりますが、当時の文言は、法律は文化的、健康的な生活を維持するように立案をされなければならないという文言だったのです。それでは不十分だということで、二点挿入された。一つは、健康で文化的な生活を営む権利が国民の側にはある。もう一つは、それを守る国の義務がある。国民の権利と国の義務、この二項目が挿入されて二十五条が制定されたのです。だから、これは歴史的な所産なんですよ、公的扶助制度に対する国の責任というのは。それを無視して今回のような改正が、改正というより改悪でありますが、強行されることにつきましては、これは断じて承認できないということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  563. 越智伊平

    越智委員長 次回は、明九日火曜日午前九時三十分より連合審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時十三分散会      ――――◇―――――