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1985-05-29 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月二十九日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       加藤 六月君    金子原二郎君       瓦   力君    笹山 登生君       塩島  大君    田中 秀征君       中川 昭一君    東   力君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       宮下 創平君    山崎武三郎君       山中 貞則君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    武藤 山治君       古川 雅司君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      大出 峻郎君         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局次長    林  淳司君         外務大臣官房会         計課長     林  貞行君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      小田原 定君         大蔵大臣官房審         議官      大山 綱明君         大蔵大臣官房審         議官      大橋 宗夫君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 矢澤富太郎君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省証券局長 岸田 俊輔君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省銀行局保         険部長     加茂 文治君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君         厚生大臣官房会         計課長     末次  彬君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     宝珠山 昇君         経済企画庁総合         計画局計画課長 谷口 米生君         法務省民事局第         四課長     宇佐見隆男君         通商産業省貿易         局輸出課長   土居 征夫君         運輸省運輸政策         局総合計画課長 向山 秀昭君         労働大臣官房政         策調査部総合政         策課長     逆瀬川 潔君         自治省財政局地         方債課長    柿本 善也君         自治省財政局指         導課長     横田 光雄君         日本国有鉄道常         務理事     竹内 哲夫君         参  考  人         (日本電信電話         株式会社常務取         締役)     寺島 角夫君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出第九号)  国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出第一〇号)  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)      ――――◇―――――
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  三法律案につきまして、本日、参考人として日本電信電話株式会社常務取締役寺島角夫君出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 越智伊平

    越智委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  5. 沢田広

    沢田委員 大臣も連日でありまして、こういう法案を出していることが随分じくじたるものがあるのではないかなどというふうな気もいたします。ひとつ大臣、これだけの赤字を抱えて、これをなくしていこう、こういうことでありますから、ある意味においては「中期展望」はあるのでありますが、二年なり三年の「中期展望」が守られるという条件はない。とすれば、思い切って今年度予算はこうだ、仮定で言えば、二カ年計画、三カ年計画ぐらいの予算国民の前に示して、大臣がこれでかわったら来年はどうなってしまうのかわからない、あるいは再来年はどうなってしまうのかわからないというのではなくて、少なくとも世界の情勢が特別の変更がない限りこういうことで向こう三年はいくんですというような予算の組み方、あるいは示し方、そういうことが必要ではないかというふうに思うのであります。  まず第一点として、来年度予算編成にもう入るわけでありますが、そういう考え方はないかどうか。そういう不安定要素を与えることが必ずしも国民にとってプラスではないと判断をするわけですが、その点いかがでしょうか。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 今の議論を進めてまいりますと、言ってみれば財政再建計画のようなものがあって、そしてそれに向かって進むために中期の、あるいは二年とか三年とか、そういうような時限を付した一つ見通しの上に立って財政運営を行ったならば、受けとめる方の国民にとっても先行きもろもろ計画等が立ちやすく、そして個人経済運営にもそれは参考になる、こういう意味においては私はあり得る議論だと思っております。  一つには、我が国の予算のいわば単年度主義というのがございます。それからいま一つは、結局いろいろ議論いたしました結果、今数字として明らかにしておりますものは、八〇年代後半におけるいわば「展望と指針」ということで、よく申します「七、六、五抜きの四、三、二、一」、すなわち六ないし七%程度名目成長、四%程度実質成長、三%程度消費者物価上昇率、二%程度失業率、一%程度卸売物価上昇率数値の上で示されたものはこれだけ、こういうことになっております。  それでは先行き見通し等にとっての論議を進めることはなかなかできないじゃないか、こういうことからして、いわゆる「中期展望」というのを、名目成長率を六、七の中間値の六・五に置いて、そして租税弾性値を一・一、こういうようなことからして、要調整額を後年度負担推計という形でお示しして議論資料としていただいておるというのが実態であります。そうして一年たってみれば、その当時示したところの要調整額というのがどういう形で埋められていったかということが明らかになってくるわけであります。  結局、こういうときにはあらゆる制度、施策国民理解と協力を得ないことには成り立つものではないということになれば、毎年毎年の予算編成の中で苦悩して、それを実績の形でお示しするのが予算案、こういうことになるではなかろうか。したがって、あらかじめ二年あるいは三年といえども、リジッドな数値をお示しして、それでもって参考に資することがなかなかできないというのが今日の現状でございます。  ただ、その裏には、例えば今御審議いただいております電電株等の行方が決まりますと、そういう一つの将来展望の透かしのような形で諸施策変化というものをそこに新たに見出していただく参考ともなるではなかろうかということで、毎年毎年苦悩しながら、結局同じようなものをお示しして御審議参考としていただいておるというのが実態であります。したがって、おっしゃる意味は私どもにも理解できるところでありますが、なかなかそういう実態に届かないというのが現状であります。
  7. 沢田広

    沢田委員 それでなおその間、我慢の予算を組んでいる間に、同じ政府の中でも、一方は内需の拡大をしようとか、いや少しぐらいは伸びてもいいじゃないかとか、決められたことに対して単年度主義であるということの理由をもって時たま不規則発言が行われる。要すれば、政党政治発言の自由ということを一つ前提としながら、そこには一種の混乱といいますか、政府方針がいい悪いは別問題として、国会で決まったものは決まったものとして進められていくシステム、そういうことが責任体制として必要なのではないかというふうに思うので、それぞれの発言には我々も傾聴すべきものがありますから全部否定しているわけではありませんけれども、そのことによって景気の見通しなりあるいはそれぞれの商売なり家庭の設計なりに国民としてはいわゆる不安定要素を抱える、こういうことになると思うのでありますが、その点はどうお考えになっておられますか。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 今、日本の議会は政党政治、こういうことであります。その政党というのもそれぞれ極めて民主的に運営されておりますので、そこの中でもろもろ議論が出てくるのは当然のことではなかろうかというふうに私は思うわけであります。国会というところの議論を踏まえながら、それぞれの考え方の基礎の上に立つ政党議論を積み重ねる中で、整合性を得た施策として、例えば予算なら予算法律なら法律として年々国会で御審議をいただく、こういうことに相なっておるわけであります。特に国際的にも非常に先行きというものがきちんとしない今日、その見通しについても、主観の相違あるいはよってもって立つ資料相違というところからいろいろな議論が行われる中に最大公約数が見つけられていくわけでございますから、私は、それはそれなりの機能を果たしておるではないか、国民の総参加という中にいろいろな考え方、素材を投げ出してきておるのではないか、そういう理解の仕方もまたできるではなかろうかと思います。
  9. 沢田広

    沢田委員 それでは若干異論があるわけですけれども、それ以上はやめますが、あの人が言うのだからきっとこうなるのじゃないかというかけをする人も出てくるでしょう。あるいは、あの人がこう言うのだからこうなるのだろうというふうな方向を考える人もいると思うのです。これは人生一種のばくちですから、ある意味においてはそれが外れて一家心中になる人もいるかもしれません。しかし、そういう影響力を持っておるがゆえに、よりその点は慎重であらねばならないという一面の責任体制も必要である。だから、言うことは自由であるけれども、そのことに責任を負うという分野がなくてはならない。ある大臣のように自分の足元が倒産してしまうなんていうような場面もなくはないのでありまして、いかにも経済見通しは確かだったようなふりをしていて、実際には自分の会社がつぶれちゃったなんて、そういう漫談にもなりかねない話もなくはないわけでありますから、そうすると国民はより混乱を招く。だから、少なくとも閣僚となったならばその閣議は一枚板でなければならぬ、そういう原則は当然必要なんじゃなかろうか。  それがそれぞれ自由だというならば、何をもって一つの柱にしていったらいいのか。自分能力と勘である、こういうことになってしまうわけですが、これは簡単で結構ですが、それでは政府というものは適当なことをどう言おうと無責任体制はしばらくの間続く、こういうことを国民は頭の中に入れて対応自分で判断していけ、結論的に言うとそうなってしまうのでありますが、大臣には酷な質問かもわかりませんが、ひとつどうお答えいただけますか。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 行政府、その最高は内閣、その内閣一体である、結果はまさに一体であらなければならぬと思っております。が、その過程においての議論というのはあり得ることでございますけれども、おのがじしその節度を踏まえなければならぬということは、私も常日ごろみずからにも言い聞かせておるところであります。
  11. 沢田広

    沢田委員 赤字現状というものについて、大蔵自治国鉄、それから林野はきのう質問がありましたから省略をいたしましたが、それぞれ現在時点における赤字額、それから向こう三年ぐらいなら三年ぐらい後の赤字額、推定を含めても結構でありますが、一応それぞれ大蔵自治国鉄、これは再建委員会も来ていただいておりますので、再建委員会からも一応どの程度展望しているのか。これ以外に大蔵は総括的な赤字赤字国債だけじゃなくて、他の機関における赤字分野も合わせてひとつお答えをいただきたい。いわゆる日本政府が持っておる赤字の総額というか、部分的に合わせたらどれだけになるのか、それをひとつお示しいただきたい。
  12. 平澤貞昭

    平澤政府委員 御質問の趣旨が、赤字等という……(沢田委員赤字国債」と呼ぶ)赤字国債、そうしますと、公債残高が現在六十年度末で百三十三兆円となるわけでございますが、このうちいわゆる赤字国債特例公債は五十九兆円というふうに見込まれております。
  13. 横田光雄

    横田説明員 地方公共団体関係でございますが、六十年度末で地方債残高普通会計で四十一兆七千六百四十四億でございます。それから交付税特別会計借入金残高が五兆六千九百四十一億でございます。トータルいたしますと四十七兆四千五百八十五億でございます。  なお、それ以外に、企業債残高のうち普通会計負担分が八兆九千四百六十一億ございますので、トータルいたしますと、六十年度末で五十六兆四千四十六億となります。
  14. 竹内哲夫

    竹内説明員 五十八年度決算でございますけれども一般勘定特定債務整理特別勘定と合わせまして、長期債務残高は十九兆九千八百三十二億円でございます。これが六十一年度末の予定といたしましては、およそ二十五兆二千億円と予定をいたしております。
  15. 沢田広

    沢田委員 これは大蔵自治国鉄、その順序でいきますが、大体借金も――借金という言葉ですが、ゼロにしろとまで私も言わない。やはり一定のそれぞれの持つ能力限界があって、ある程度借金は許される。これは国の場合は建設国債は許される、赤字国債は許されない、こういうふうに考えてみた場合に、あるいは自治の方においてもそうですが、許される赤字限界というものはどの程度に置いているのか。国鉄も同じように、それぞれ一言ずつ……。大蔵としては当面許される赤字限界はこの程度までです、これ以上はやはり何としてもなくさなければなりません、こういったものの方針があると思うのであります。それをひとつ大蔵自治国鉄、それ以外のところもあるのでしょうけれども、一応三つを挙げて、順次お答えをいただきたいと思います。
  16. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほど申し上げましたように、全体で国債で百三十三兆円という巨額のものがあるわけでございますが、しからば財政赤字限界を具体的にということになりますと、これはまたなかなか困難な問題であるわけでございます。しかし現実の姿といたしまして、現在、財政に期待されている諸機能の発揮が十全に行われないような状況にあるわけでございます。したがって、今後の高齢化社会、急速に進むことが予想されておりますけれども、そういうものを中心とした経済社会変化対応していくためには、財政対応力ということを回復していくことが必要であるわけでございます。  そういう意味から、このような百三十三兆円の国債の元利払い、これが結局財政の機動的な運用にとって非常な足かせになっておりますので、何としてもこれをできるだけ早く解決していくことが必要であるということでございます。その意味で、六十五年度までに赤字国債からまず脱却していこうということが一つの大きな柱になっているというのが現実の姿であるわけでございます。
  17. 横田光雄

    横田説明員 地方公共団体の場合には、借金限度につきましては、マクロの問題もさることながら、それぞれの個々団体ごとに判断していくということが必要になってくるわけでございます。  そこで、まず地方債についてでございますが、それを許可するに当たりましては、公債費比率が高い団体について、地方財政健全性確保する見地から起債制限を行うこととしておりまして、具体的には起債制限比率が二〇%以上の団体については起債を制限しておるところでございます。なお、起債制限比率が二〇%未満の団体についても、赤字団体あるいは経常収支比率が九〇%以上のように高い団体、さらに起債制限比率が二〇%ではございませんが、単年度で一八%以上の団体あるいは三年平均で一六%以上の団体等につきましては、個々の市町村につきまして、財政構造改善等について個別指導を行うというようなこともやっておるわけでございます。  しかしながら、地方財政硬直化をこれ以上進めないためには、やはり極力借入金依存体質からの脱却を図っていくことも必要でございます。そこで六十年度地方財政計画において、地方債発行額を約八千百億円減らし、地方債依存度を前年度の九・九%から七・八%に引き下げるというようなこともやっております。今後とも、借金依存体質からの脱却のため、地方税地方交付税等一般財源安定的確保に努めてまいりたいと考えております。
  18. 竹内哲夫

    竹内説明員 事業を健全に運営していくためには、借入金残高はやはり将来事業収益をもって償還できる範囲内である必要があるのではなかろうかというふうに存じます。そうした意味におきまして、六十年度予算では、六十年度長期債務残高約二十三兆六千億円といたしております。このうち、増強改良工事等のための借入金が九兆六千億円程度でございます。その他はいわゆる赤字債務ということでございまして、この中には赤字による資金不足による借入金減価償却費相当の取りかえ工事のための借入金、合わせて十四兆円が含まれておりますが、この増強改良工事等のための借入金につきましては、資産を構成しておりますし、将来の償還ということも考えていく必要があるのではなかろうかというふうに思いますが、これも将来の国鉄そのもの収益力がどの程度あるのかということによって変わってまいるものでありますが、およそ一般的に言えば、収益性で償還できる範囲内だということは言えるかと存じております。     〔委員長退席熊川委員長代理着席
  19. 沢田広

    沢田委員 ひとつ自治省の方にお伺いしますが、脱却という言葉を使われました。私は許容限度があるでしょう、こういうことを言ったわけですが、全部なくすということを目的にしているというふうに解釈してよろしいのですか。ある程度許容限度というものはあり得るでしょう。起債が許される限界は当然あるでしょう。しかしそれは二割だ、こういうふうならば、それも許容限度であらばそれでいい、こういうことになるわけですが、その辺は今日的段階でどうお考えになっておりますか。
  20. 横田光雄

    横田説明員 地方公共団体は三千数百ほどございます。したがって、完全に赤字をなくすということはなかなか困難でございますが、できる限り財政構造をよくしていきたいというのが私ども考え方でございます。
  21. 沢田広

    沢田委員 できる限りとか、自治省がそういう方針も何もないなんて、それで二割まではいいんだ、あとはできる限りだ、そんないいかげんな答弁はないと思うんだね。今問題になっておる国の方は国の方だ、地方はこの程度でいいんだ、これは今の答弁はとにかくなっていない。できる限りだなんて、そんないいかげんなことでは、みんなみんなできる限りなんだよ。だからそれはひとつ後でもう一回出直してもらうということが一つ。  それから、国鉄の場合は意味不明瞭。じゃ国鉄は、どの程度が今許される赤字考えているのか。再建委員会の方に来ていただいておりますから、国鉄当事者能力はほぼ失っているんだから、もう後聞いてもしようがないのかもしれないけれども再建委員会としては、許される赤字というのは現状どの程度で、それ以上のものはじゃどういうふうに解決しなければならないと思っておるのか、その点ひとつお答えいただきたい。
  22. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 借金限界ということでございますけれども、これは前提条件によって変わってくるわけでございまして、私ども現在、国鉄再建ということで効率的な経営形態の確立ということの内容を詰めておるわけでございますけれども、一般的に申し上げますと、新しい企業体最大限効率化をする、現在の状況ではなくて生産性を上げて最大限効率化をするということを前提にいたしまして、さらに財務構造につきましても、私鉄その他の競争企業とできるだけ財務構造を均等化していく。例えば年金負担問題等がございますけれども年金負担等につきましては、現在国鉄は他の企業に比べると非常に大きな負担を背負っておりますので、その辺をどう考えるかというふうなことを含めまして、財務構造をできるだけ均等化していく。そういう前提条件のもとに最大限効率化をして、どれだけの借金が背負えるかというところが、抽象的な意味ではまず限界だということでございます。  そこで、先ほど国鉄の方から答弁がございましたように、私ども一つのめどとしております昭和六十二年の新しい経営形態への移行の時点、その時点でおおむね二十五兆円強のいわゆる累積債務が残ると思います。これについての処理方法でございますけれども、私どもとしては、今申し上げましたような、まず第一に最大限効率化をした上で新しい企業体がどれぐらい背負えるか。次に、残った債務につきまして二段構え考えておりまして、一つは、国鉄自助努力と申しますか、例えば土地でございますけれども、現在国鉄が使用しております用地というものは、事業に必要なものと、それからもう現在の状況からいって必ずしも事業に必要でないものとあると思います。そういう今後の事業継続に必要でない土地については、できるだけこれを処分していただいて、その処分収入でもって債務を返していく、これが二つ目方法。それから、それでもなおかつ残る債務というものについては、これは最終的には何らかの形で国民負担をお願いするしかない、こういう三段構え債務処理考えておるわけでございます。  そこで具体的に、それでは第一番目の事業体がいろいろな手だてを講じてどれぐらい背負えるかということでございますけれども、その具体的な数字については今詰めの作業をしておる最中でございまして、まだ明確な数値を出しておりません。ただ一般的に言えますことは、現在の国鉄資産として持っておりますものに見合う債務、これは九兆六千億というのが現在の国鉄資産簿価でございますけれども、その辺が一つ目安になろうか、いわゆる先ほど申し上げましたような最大限効率化ということをどの辺までやれるかということとの兼ね合いもございますので、結局いろいろな検討をした上で、新しい企業体が採算がとれるというところが限界だと思いますので、その具体的数値は必ずしも資産額に一致するわけではないと思いますけれども、その辺が一つ目安、九兆六千億、大まかに言えば十兆前後というところが一つ目安だなというふうに考えておるわけでございます。
  23. 沢田広

    沢田委員 大蔵省の方は六十五年度、これももう実際には難しそうですが、一応それを目標にした。自治省は、これは後でこれから答弁してもらいます。  再建委員会の方としては十兆円ぐらいが限界だ。だけれども、十兆円としても、七%なりに計算をいたしましても七千億ぐらいの利息になりますか、そういうような金額の借金を背負って、三兆有余の運賃収入で賄っていけますか。だからそれから見ると、十兆円というのは運賃収入の三年分ですからえらい借金の金額になるのではないか。三年分借金してしまっていて、果たして利息を払ってやっていけるのか。例えばほかをどんなに減らそうと減らすまいと、大ざっぱな限界として十兆円というのもちょっと無理な数字ではないのかという気がするのですが、その点いかがですか。  自治、それから再建委員会お答えいただきたい。
  24. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 ただいま申し上げましたように目下作業中でございますので、十兆円前後かなという程度のめどということで、まだ明確な数字を出しているわけではないわけでございます。そこで、これは結局先ほど申し上げました前提条件にかかわってくるわけでございまして、効率化程度、あるいは年金負担の問題とか大規模プロジェクトの資本費の問題とか、そういういろいろな財務的な問題をどういうふうに処理していくかということとのかかわり合いになりますので、そのようないろいろな前提のもとに考えますと、今申し上げたようなことになるのかなと考えておるわけでございます。  国鉄の場合は、地方交通線あるいは地方幹線でも非常に採算性の悪い線区も相当ございますけれども、一方におきまして、東海道新幹線あるいは首都圏の国電というふうに非常に大きな利益を上げ得る線区もあるわけでございまして、そういうものを総合的に見て数字的に収支を計算し、採算がとれる限界を今探っているわけでございます。そういうことで、新しい企業体が健全にやっていけるという限界が先ほど申したようなことになるのかな、こう考えているわけでございます。
  25. 横田光雄

    横田説明員 地方公共団体の場合、公債費比率あるいは公債費負担比率がどの程度が適当かということは、実は一概には言えない問題がございます。地方財政基盤を充実していくためには、ある程度地方債というものを活用していった方がいいというようなこともございます。ただ、それでは現在の状態がいいかどうかということになりますと、例えば公債費負担比率が二〇%を超えている団体が五十八年度決算で八百二十団体に上っている、こういうことになっております。それをどの程度下げればいいかということは、個々団体ごとに非常に事情が違ってまいりますので、一概には言えないわけでございますが、マクロ的に見てこれだけの状態がいいものであるとは決して私ども考えておらないわけでございます。  それではどうしたらいいかということでございますが、先ほどもちょっと触れましたけれども一つはやはり地方公共団体自体の自助努力がどうしても必要になってくるわけでございまして、行政運営効率化等についてこれからも徹底して行っていかなければいけないと考えておるわけでございます。あわせまして、先ほど申し上げたような形での地方税等の充実ということも図っていかなければならないと思うわけでございます。
  26. 沢田広

    沢田委員 そこで大蔵省にお伺いしますが、国鉄の方は十兆円と言ったのですけれども、私は大変な金額だと思います。差し引き計算しても十五兆、民間金融機関から借りている金もこれの中にはあるわけでありますし、高い金利で鉄道債券で出ている部分もあるわけであります。  大蔵省としては、再建委員会から答申があれば、その分は建設国債という形になりますか、国鉄再建のためにはやむを得ぬからそれは受けて、そのかわり自分の方は自分で一生懸命やる、こういう形になった場合にはそれは了承されていく、こういうふうに考えてよろしいのでしょうか。一方だけがあなたの方に頼みますと言ったって、受ける方が受けないと言えばこれはしようがないのですからね。その点どうなんでしょうか。
  27. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほど来御議論がございますように、国鉄は現在六十年度末で二十三兆六千億円という巨額の長期債務を抱えているという非常に厳しい状況にあることは、財政当局としても十分に認識しているわけでございます。したがいまして、国鉄再建をどうしていくかということは今後の大きな課題になるわけでございますが、いずれにいたしましても、現在国鉄再建監理委員会でこの問題を精力的に御検討しておられますし、七月ごろ提言も予定されているということでございます。その提言を受けてから我々としても一生懸命勉強し検討していきたいと考えているわけでございますが、先ほど来委員もおっしゃっておられますように、国の財政もまた百三十三兆円という巨額の赤字を含めた国債残高を抱えておりますので、国も非常に苦しいということも事実でございますので、そういう中で提言を受けてどうしていくかということを検討していくことになろうかと考えております。
  28. 沢田広

    沢田委員 受けてくれるとも受けてくれないとも言ってない。それから改めて検討しますという答弁なんですが、では、そのときは再建委員会ではどういうふうに考えているのですか。
  29. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 私ども再建監理委員会は、法律に基づきまして設立された機関でございまして、いわゆる行政執行機関ではなくて国鉄再建策を企画立案する機関でございます。私どもが各方面の御意見等も十分聞きながら案をつくりまして、それを内閣総理大臣に御提出申し上げる。あと政府の方で内閣総理大臣がそれを尊重して方針を御決定になる、こういうことになるわけでございまして、私どもとしては、十分各方面の御意見を聞きながら最も適切と思える案をまとめまして政府の方に提出をさせていただく。あとは政府の方でそれを御処理いただく、こういうことになるわけでございます。
  30. 沢田広

    沢田委員 あなた個人だけを言っているわけじゃないのですが、大臣、こういう無責任体制が結果的には今日のように返済不能の赤字をしょっていく。そのときだけ調子よく合わせておけば、役人はそのうちにはかわっちゃって、借りた人はとっくにやめちゃっていない、その後を継いだ者がその上にまた上乗せしていく、こういうシステムが続いてきた。責任体制が確立していない。要すれば自分借金に対して自分責任を持つという姿勢が確立していないためにだんだんと膨れていく、それを急に圧縮しようとしているために今日のような予算がいろいろと厳しい状況になってきて、国民の不満を買っておる。いつでもそのときの借金には借金意味があったんだと言うけれども、その功罪を考えてみると結果的にはちっとも説明のつかない借金になってしまう。  そういうことで私は、これからの財政を再建するというならば赤字国債はこの程度までだ、自治体における赤字はこの程度までは可能であろう、これをあえて具体的に提案してみますと、自治体の金融公庫をつくったらどうか。そこに資金を投じて、二〇%であるか一五%であるかわかりませんけれども、それにしても大体国の予算と同じように五十兆程度地方財政ですね。ですから十兆円程度起債金額になる。資金を資金運用部から入れるかあるいはどこから入れるかは別として、自治体の金融公庫をつくって、その中からそれぞれ貸し付けをする、その範囲内で預金もする、そこへ資金も投入する。自治体自身は自治体の手で、国の金も入れながらも自治体の金融公庫を持ってその償還計画財政運営というものを図り、同時にまた国民のシビルミニマムあるいはナショナルミニマムへと到達を目指してそれぞれが協議をしながら行う。だから、自治省がコントロールするのではなくて、自治体自身の手で借金をすることも考え、そして同時にまた償還も考え、その財源考えていく、こういう自立体制の公庫をつくり、資金はあてがうけれどもあとは自治体自身の判断にゆだねていく、そしてその再建をみずから図らしていく。今の答弁のように、八百団体程度赤字で、二〇%を超えて残ってしまっておる。しかし、これだって将来から考えれば、社会資本として残っているのかもわかりませんから、必ずしもマイナスだとは言いがたい。ですから、そういう調整は自治体にゆだねたらどうだ。そのためには、医療金融公庫とかいろいろ公庫があるのですから、同じように自治体の公庫をつくって、自治省が年じゅう監督するのじゃなくて自治体自身に任せる、こういう体制もこれからの一つの手法ではなかろうか。そうすれば、自治省が大分、なくて済むというわけじゃありませんけれども、大分人数も減っていくことにもなりますし、自治体自身の手で自治体が考えていく、こういう方向をとっていくということになれば、中央の統制とか管理とかあるいは監督とかそういうものから放れて、自治体自身の手で賄っていける、こういうこともつくり出されるのだろうと思うのです。  突然でありますから、大臣がここで、はいそうですと言えないかもわかりませんけれども、産投会計の方の問題もあったり、それぞれの公庫にも金が出ているくらいでありますから、自治体の一つの公庫の中で運営をしていく、そういう形はとれないかどうか。そして自治省が一々起債を認可するとかしないとか、陳情してくるとかなんだというこういう煩わしさをなくして、総枠の中で自治体自身の手で配分をしていく。こういうことによれば、総枠規制の中でそれぞれ運営は配分の問題だけになるわけでありますから、どの政策を選択するかはそれぞれの自治体の協議にゆだねる、こういうことで中央官庁はいいのじゃないか。一つ一つの、下水を直す、河川を直す、あるいはごみ焼き場をつくる、一々チェックしてこれを起債をつけるつけないなんて、そんなせせこましいことを今中央がやる必要はないんじゃないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  31. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 地方債務につきましては、普通会計債と公営企業債と二つに分かれるわけでございますけれども普通会計債につきましてはできるだけ運用部の資金を投入していくということを考えております。公営企業債につきましては、今先生御提言があったわけでございますが、公営企業金融公庫というものをつくっておりまして、これが小さな地方団体、三千三百地方団体あるわけでございますけれども自分で調達できない市町村があるわけでございまして、そういうところにつきましては、公営企業金融公庫が全部共通の政保債を発行いたしまして、そしてそれを調達してその三千三百の地方公共団体に配分するというふうな、そういう仕組みを今とっているわけでございまして、現在、地方債全体の中で運用部の引き受け比率は五八・六%になっておりますし、公営公庫が引き受けておりますのは一七・三でございまして、運用部と公営公庫を合わせますと既に七六%をそういうふうな資金でもって配分しているということでございまして、地方債の調達につきましては、かなり円滑な調達方法あるいは仕組みが現在でき上がっているのではないかというふうに考えております。
  32. 沢田広

    沢田委員 発想の原点が違うのですね。私の言うのは、中央管制をやめて自治体自身の手で、その年度の枠の中で何をどう政策選択をするかの順位等はそれぞれの協議にゆだねていったらどうだ。一々中央がこれだあれだということで押しつけをするものではない。それは取りっこになるかもわかりません、けんかするかもわかりませんけれども、その枠の中で自治体自身にゆだねる。そういう中から、いわゆる赤字というものの限界は総枠で規制をすればいいんであって、一々チェックする機能は必要ないんじゃないか、こういうことを言っているわけなんで、今の話の問題は、自治体金融公庫という一つの例を挙げたということはそういう自主性を持った機能を持たせることについてイエスかノーか、こういうことを言っているわけで、自治省の指導監督なんというものはその枠の中ではもう一切無用、介入無用、こういうことで進められないかどうか、基本原則をそこに置いたらどうかということを今私は言っているわけなんです。その点についてはいかがですか。
  33. 柿本善也

    ○柿本説明員 大変独自の観点からの御質問でございますが、確かに公営企業金融公庫をつくります際に、地方団体で共同して資金調達をしようという発想から、かなりの経過を経てつくられたものでございまして、一部におきましては御質問のような趣旨も生かされて――ただ、公営企業ということに限定された事業になっているわけでございます。  ただ御質問の趣旨が、地方団体地方債資金の調達ということで、総枠を確保すればそれで事は足りるのではないかという御趣旨かと思いますが、やはり地方団体三千二百ございまして、いろいろな団体財政状況あるいは事業の需要量、需要の差もございます。現在、許可制度がございますのも、そのような団体間の財政状況あるいは事業の需要の状況あるいはそういう間の資金にも差がございますので、それらの資金が財政力のあるところにいい資金が行くという、経済原則だけに従っては困りますので、そういう調整をするとか、そういうことも考えていろいろな運用をやっておるわけでございまして、そういう観点からいたしますと、確かに安定した資金をそういう何らかのものを使って確保するという点は御指摘のとおりかと思いますが、先ほど理財局長から御答弁ありましたように、現在公的な資金として資金運用部並びに簡保資金の政府資金と、それから公営企業金融公庫の資金と合わせまして四分の三ぐらいを六十年度確保されておるわけでございまして、今後とも、御指摘のような線も踏まえながら、良質な資金をできるだけ確保する方向で努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  34. 沢田広

    沢田委員 今の言っている言葉の中に、いみじくもいろいろな運用だとか、そういうことでいろいろちょっかいを出したり何かするというようなこともあってむだも多くなるわけで、そういう立場から見れば、これは大臣答弁限界はあるでしょうけれども一つの方向としてその方にウエートを置いていく、地方地方のいわゆる主権によって運営をしていける、こういう条件づくり、そのかわりまた、今日の中央の財政再建というような状況については協力を仰ぐものは仰ぐ、こういう分離が必要なのではないか。この点、大臣からお答えをいただきたいと思います。
  35. 竹下登

    竹下国務大臣 お尋ねにもありましたように、おのずから答弁にも限界があろうかと思いますが、大体今のような思想の一つ地方の公営企業金融公庫ができております。そうして金融公庫は既にスイス外債等も発行して、多角的に資金調達をする機能も果たしてきております。  それで今度は沢田さんの構想、仮に私なりに構築してみますと、公営企業金融公庫も皆改組しまして、自治体がささやかながら出資をして、その上は政府資金が、資金運用部資金がマクロで大体これぐらいは毎年要る、地方財政計画でおおむねの見当がつく、そして、その公庫が自主的に時には外債の調達もするとかいうような形で、その仕組みは成り立つかもしらぬ。  さあ今度はどういうふうにして起債を自主的に認めるかということになると、審議機関みたいなものが要るでございましょう。あるいは、時によると力関係になるかもしらぬ。都道府県の四十七を除きますとたしか三千二百五十五でございますから――待ってください。三千三百二十五のうち東京二十三区を除いて三千三百二、マイナス四十七だから三千二百五十五市町村あるはずでございます。その中にはこれこそ大変な財政力の差もありまして、それでその審議会みたいなところで決めなければいけませんね、金融機関でございますから。そうすると、全く借りられないところも事によったらできてくる。借りられないところはその地方の農協なら農協から一応間接融資の形でやってこい、こう言うと、今度はその資金は保証能力を持って、もし取り立て不能になってもそれが保証能力を持って農協なら農協から資金調達する、だれかがコントロールしなければならぬわけですから、そのコントロールするためにもう一つそういう仕組みが必要になってくるようになっても、行政改革のみぎりいかがなものかな、こんな素朴な感じでもって受けとめたわけであります。  地方というものが可能な限り自主的に運用していくというその哲学は私もちょうだいをいたしますが、仕組みを考えてみると、三千二百五十五で力の差もある、どういうふうにして配分、その資金需要にこたえていくかという運用自身が、これは公営企業と限っておりますとおのずから限界がありますが、全体になりますから、その点は運用そのものが大変なことじゃないかな、これは地方議会出身者としての体験からいささか限界を知りつつ自己の私見を述べたにとどまります。
  36. 沢田広

    沢田委員 私も地方自治体出身者の一人として、そういう今の中央と地方とのつながりというものに対してワンクッション置いた方がかえって運営はよくなるのではないか、こういう提言をしたわけです。  これ、一問目でほぼ一時間かかってしまったので、あと十五問あるわけなんですが、今度は国鉄の関係に入ります。  国鉄の意見と再建委員会では、国鉄赤字解消についてひとつ国民にわかるようにここで、検討中だ、検討中だなんてしらばっくれていないで、国会の場ですから、細かい一々の数字は別としても、こういう考え方国鉄の再建の方向は模索しているんだというぐらいは、何も秘密主義だけがすべてじゃない、だからその点は私は亀井さんが来るなら来てちゃんと言うべきだ、こういうことを言っているわけであって、そういうことで、国鉄もそうだが、再建委員会では、現在の具体的な再建の方向について国民に言えることは――答申まではだめなんだということじゃ国会審議権もなくなってしまう、国会が終わってからあなたの方は提案するのだから。その後の国会でやるということはあるにしても、一応この程度の概略はこうですということはきちんと言ってください。お願いします。
  37. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 現在検討中でございますので詳細については別でございますけれども、基本的な考え方といたしましては、法律にも書いてございますように、一つは効率的な経営形態の確立、それからこれに伴い問題となります長期債務その他のいわゆる財政問題の処理、それからもう一つはいわゆる余剰人員と申しますか、その余剰人員対策、この三つがいわば大きな柱ではなかろうか、こう考えておるわけでございます。  そこで、では、どういう経営形態、いわゆる効率的な経営形態の確立という場合にどういう経営形態がいいかということにつきましては、監理委員会としましては昨年の八月に第二次緊急提言というのをお出しいたしまして、その中で、一年間勉強した結果でございますが、いわゆる分割・民営化という方向で新しい活性化された事業体をつくっていくということが必要ではなかろうか、したがって、監理委員会としてはその方向で具体的な検討を進めたいということを昨年の八月に緊急提言で申し上げたわけでございまして、その方向で具体案を今作成中ということでございます。  それから、いわゆる第二番目の長期債務等の問題につきましては、先ほど申しましたように新しい経営体にとって負担となるもの、これにつきましては何らかの形で処理をする必要があるわけでございまして、その場合に、債務全体で考えた場合に、先ほど申しましたように、そのうち新しい企業体最大限効率化を行ってなおかつ承継できるものは新しい企業体に承継してもらう。それから二番目に、国鉄の非事業用地というものを極力処分していただいてそれで充てていただく。それから三番目に、最後に残ったものについては最終的には何らかの形で国民に御負担をお願いする。こういう三つのパターンで処理をしていくしかしようがないだろう、こう考えておるわけでございます。  それから三番目の余剰人員の問題。これは非常に大変な重要問題でございまして、現に働いている職員の生活にかかわる問題でございますので、私ども、亀井委員長がしばしば国会等でも表明しておりますように、少なくとも現在働いている職員が路頭に迷うということは絶対ないようにしたい、こういう前提で、いわゆる余剰人員の雇用対策というものについて国民理解のもとに全力を挙げて取り組む必要があるということで目下その具体的な方途を検討中、概略を申し上げますとそういうことでございます。
  38. 沢田広

    沢田委員 これでやっていると本当になくなりそうですが、ただ、こういうものを提案する場合に、その後、テンポ、いわゆるスピードですが、スピードと結果に対して責任を持つという体制を、これもいろいろなことを言うことはまた自由なんでありますが、言ったことに対して責任を持ってもらうということも一項加えて、これによってもし国民の福祉なり交通網なりというものが重大な事態になったといった場合は、どこでだれが責任を負うのかということをみずから省みて明言をするぐらいの決意で臨んでもらいたいということをお願いしておきます。言いっ放しでしらばっくれてしまって、後は雲をかすみと逃げてしまって知らぬぷりするということじゃなくて、その提言をする以上はするだけの決意を持って臨んでもらうことを特に期待しておきたいと思うのであります。そうでないと、今言っているようなこともそれぞれ意見はあるのでありますけれども、その点、言うならば余り効果的な提言ではない、私はこういうふうに思えるからあえてそう言うわけであります。  以上で第一点の方向は終わりますが、結果的に、大臣、こういうことでどうでしょうかね。これから借金をする場合は、その返済の見通しをきちんと立てて、返済の見通しのないものには金は貸さぬ、こういう原則を確立するというのを、財政法の中にこれは書いてあることなんでありますが、もっときちんとそれを確立するということが必要なのじゃないか。返済計画、これは国債だって償還計画があるわけでありますが、そういう意味において返済条件をきちんと整備して、そして借りていくというふうな原則を立てる。  これでちょうど一時間になってしまったので、あとはしょっていろいろ聞かなければなりませんのでその点だけお願いいたします。
  39. 竹下登

    竹下国務大臣 今御指摘なさいましたように特例公債、これにもいわば償還計画というものを立てますように、何の将来の計画もなく、それに対してつなぎ的な融資を行っていくということは、厳に戒めるべきことであるというふうに私も考えます。
  40. 沢田広

    沢田委員 もう一つは、国鉄問題、それから汽船、船舶の問題、今の自動車もやがてまた今度は電気自動車が出てきたりその他によって紆余曲折を経るであろうと思うのでありますが、あわせて交通の公庫をつくって、そして交通網の財源、投資額はやはりそこで一括してそれぞれの分野の調整を図っていく、こういうことも今後の必要な課題ではないのかという気がするわけです。  公庫公庫で余り特殊法人をつくることがいいかどうかという問題は、私は原則的に若干疑問はなくはないのでありますが、しかしさっき言ったように、このままの状態でそれぞれ置いておいてもどうにもならない。だから、交通金融公庫というようなもので交通全体の総合調整を図り、また飛行機の方なら飛行機の方に投資をするときには投資ができる、あるいは関西空港の方も、これは臨調がいけないと言っていますが、そういうときには整備をするための資金を提供する、こういうふうな意味において、日本国土の交通網の整備を図っていくための資金源としての交通公庫というものを整備しながら、これは滅び行く国鉄というようなものもありますし、あるいはまた滅び行く汽船というものもあるかもわかりません。そういうようなものは需要と供給の関係で生まれてくる時代の一つのひずみですから、そのひずみはひずみなりに対応していくということを自主的に運営できるそういう体制をつくるためには、交通公庫というようなものの資金を一つ確保しておいて、それぞれの新しい知恵を出すまでの間のつなぎをそれぞれ対応していく、こういうことが必要になっているのではないか。自動車も今栄耀栄華を誇って、いろいろな税金を自分で独立して持っているからいいやというような格好になっておりますけれども、やがてはそうはいかなくなってくる時期も必ず来ると思いますから、いろいろな立場を考えながら、交通網の整備というのは国民生活と離れられないものでありますので、そういう公庫をつくって、バスもそうですが、バスも含めながら、そういう立場で国民生活を守る。これは運輸省、大蔵省再建委員会も、そういう知恵があるのかないのか、ひとつお答えをいただきたい。
  41. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今、交通全般を金融面から見るためにそういうような公庫をつくってはどうかという御提言であるわけでございますが、一つは、今委員がおっしゃいましたように、臨調の答申におきまして、新たに公庫等をつくることはできるだけ慎重にいくべきである、むしろ現在ある公庫は整理統合していったらどうだという趣旨の御提言がたしかあるわけでございます。これとの関係をどう考えるかという問題が一つあると思います。  それとともに、現在の政府資金のそういう交通分野への供給につきましては、主として開銀がやっております。地域的には、あと北東公庫と沖縄公庫がそのミニ版をやっているわけでございます。したがいまして、その意味からいいますと、既に開銀というものがあってそういう機能を果たしているということが言えるのではないかというように思うわけでございます。  あと、公営企業金融公庫が地方債を通じてそういう交通面、特に地方団体が行う地下鉄、それから自動車事業等には資金供給をしております。これはそういう意味で、地方債を通じてということで一つ分野が確立しておる。  そういう意味では、既に開銀等がある、それから公営企業金融公庫もあるということでございますので、委員がおっしゃいましたような趣旨のもとでこれをどう運営していくかということがやはり現実的な方策ではないかというふうに考えておるのでございます。
  42. 向山秀昭

    ○向山説明員 先生御指摘のように、交通機関には消長がございまして、そのとおりでございますが、私ども交通政策を進めている立場から申しますと、そのような点を踏まえまして従来から、できるだけ各交通機関の特性を考慮しつつ政策の推進をしていかなければならない、そのような考え方で対処してきているところであります。  それで、これに必要な各施設の整備あるいはそれの維持等に要する資金のことでございますが、いろいろな方法がございまして、一般会計あるいは特別会計等からの助成、それから先ほどお話がありましたけれども、開銀等の政府系の金融機関からの融資等、そういう所要の財政措置を講じてきているところでありまして、今後とも必要な資金の確保には最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。  同時に、先生の御質問の趣旨にはもう一つの視点と申しますか、そういう施策を推進するに当たりましては、総合的な観点から交通政策を展開せよ、こういう御趣旨かと思いますが、そういう点につきましても、運輸省といたしましては従来にも増しましてそのような方向で最大限の努力をしていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  43. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 私ども監理委員会は、国鉄再建ということで、そのための具体的方策というものを検討しているわけでございまして、国鉄再建をしていくためには交通全体が、交通市場が今後どういうふうに動いていくかというふうなことはもちろん踏まえながら検討しているわけでございますが、交通全体のいわゆる金融あるいは財政措置というふうなことについては私どもの委員会の所掌外でもございますし、具体的な検討をしているわけではございません。
  44. 沢田広

    沢田委員 これもまたこれから長くなる問題になるのでありますが、大蔵大臣、こういう交通関係の税目というのは、軽油引取税、揮発油税、自動車税というような税目で今日種々雑多に混在をしているわけであります。それが今までの形では建設族であるとか自動車族であるとかという名称をつけられながら、今日の予算編成の中ではそういう形の中で対応をしてきた。言うならば、この面だけはでこぼこの行政でやっておる、力の行政がこの分野には極めて強く動いてきておる。だからワンクッション置いて、総合調整を図っていく段階にも来たのではないか。  じゃあ独立的に、ここの分野はこう、あるいはこの分野はこうというふうに対策をとっていくことは、資金的にも大変であるし、行政的にも極めて困難がある。やはりどこかに総合調整というような分野をつくらないと、これからの交通網の対応というのは時代のテンポにもおくれてしまう場合も起こり得る、こういうふうに思うわけでありまして、これはきょう今直ちにこうだとは言えないにしても、予算編成の中において、そういうことによって相互の足らざるところを補っていく、相互に足らざるところを補いながら財政再建の痛みというものを分かちあっていく、そういう方向というものは必要な条件になるのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、抽象的になりますけれども、そういう立場でこういうものも検討の対象としてほしい、こういうふうに思いますが、いかがでしょう。
  45. 竹下登

    竹下国務大臣 臨調の第五次答申で、「政策金融関係法人については、金融構造の変化を踏まえ、」「縮小あるいは撤退する。」こういう答申をいただいております。したがって、新たな政策金融の新設ということになりますとそれはなかなか難しい問題であろうと私も思いますが、言ってみれば、これは多種多様でございますので、十分ペイをしておる交通機関もありますれば、また国家財政出動によりまして過疎バスでございますとかいろいろな補助政策をやっておるものもございます。したがって、運輸省におかれて、恐らく総合交通体系というようなものの調整機能でもって、その中の、されば助成の財源には何を求めていくか、あるいはそれに対応するためには、今で言えば開発銀行のどういう条件の金利等、これが必要かというようなことを組み立てていただく一環として検討をすべき課題であろうというふうに考えます。
  46. 沢田広

    沢田委員 続いて、次の問題へ行きます。  内閣法制局と法務省にお伺いいたします。  一人株主、一人法人、こういうことは今度の電電あるいはたばこ等においてできたわけでありますけれども、一人法人というのは合法と解しているのかどうか、法務及び内閣法制局にお伺いをいたしたい。  なお、判例では、七名で出発をしていって、一人ずつ消えていって結果的に一人になった一人法人は許される、こういう判例が出ていることは承知をいたしております。これは念のため申し添えておきますが、それ以外に、スタートから一人法人は法律上許されるのかどうか、ひとつお答えいただきたい。
  47. 大出峻郎

    ○大出政府委員 お答えを申し上げます。  商法上の問題として考えてみますと、株式会社の設立につきましては、商法の百六十五条等におきまして七人以上の発起人が必要である、また、各発起人が株式を引き受けるべきものとされておるということでございますから、複数の株主の存在が株式会社の成立要件となっているというふうに考えております。  ただ、しかしながら一たん成立をいたしました株式会社につきましては、それが例えば株式の移動等によりまして、たまたま一人株主の会社になるというようなことがあった場合にどうかということにつきましては、現行法の解釈としましては、そのような一人会社というものも商法上是認され得る、こういう考え方が一般にとられておるところだろうと思います。先ほど先生が御指摘されました最高裁の判決におきましても、でき上がった株式会社というものについて、一人会社ということがあり得るということを前提とした判決が見受けられるところであります。  以上でございますが、たばこ産業株式会社とそれから日本電信電話株式会社につきましては、その法律におきまして、附則で設立手続をいろいろ特例として定めておるわけであります。その点につきましては、商法の特例というような形でそれぞれの法律で定めておりますので、そのような形で現在の日本たばこ産業株式会社なりあるいは日本電信電話株式会社ができ上がっているというふうに理解をいたしております。
  48. 宇佐見隆男

    ○宇佐見説明員 この問題は、現行法の解釈の問題と立法論と、二つに分けて考える必要があると思います。  解釈論としては、今法制局の方から御説明がございましたとおり、現行商法の解釈といたしましては、一人会社の設立ということは認められておりません。  立法論でございます。この点につきましては、法制審議会の商法部会で現在議論の最中でございます。その議論に先立ちまして、一人会社の設立ということを認めるべきかという点につきまして各界に意見照会をいたしました。その結果は、賛否両論がございましたけれども、数としては賛成論の方が多かったというふうに承知しております。  反対の論拠といたしましては、会社というのは社団であるということから、一人というのは理論的に問題がある、あるいはその実際上の弊害といたしまして、一人会社というのを認めると会社が乱設されるのじゃないか、あるいは会社という形態が乱用されるのじゃないかというような御指摘がございます。  一方、賛成論の論拠といたしましては、実際には一人会社というものを認める必要があるのだから、それを禁止しておきますとかえって弊害があるのじゃないか、それから社団性の問題でございますけれども、会社というのは、これを認めるのはむしろ企業の財産と個人の財産を区別するという点にあるのであって、社団性というのは本質的な問題ではないのではないかというようなことから、一人会社というのは理論的にも認めていいのじゃないか、こういう議論でございまして、結論的に立法論としてどうするかということにつきましては、今申し上げましたとおり、法制審議会の商法部会で議論の最中でございます。
  49. 沢田広

    沢田委員 つけ加えて、監査に対しての対応というものは、これは法制局にもお答えいただきたいのですが、一人法人の場合の監査能力、監査が全然あり得ない、そういうことについてはどういうふうに判断をされて認められていると解しているのか。これは法務省とあわせてお答えいただきたい。  しかも、商法改正をして、今度は総会で監査を選ぶ、こういうふうに先般変えたばかりのときでありますから、監査のない一人法人があちこちうろうろ、うろうろしていたら、これはどうにもならなくなるのじゃないかという心配もあるのでありますが、その点いかがですか。
  50. 宇佐見隆男

    ○宇佐見説明員 確かに御指摘のような問題があろうかと思います。それから、一人会社ということになりますと、果たして個人企業と区別できるのかどうかというような弊害も予想されないではないわけでございます。  ただ、監査といいましても、株主総会によるところの監査もございます。それから監査役による監査、あるいは外部の会計監査人というような監査の方法もございます。それから監査が十分でないとすれば、一人であるところの株主に別個責任を負わせるかというような手だても考えられなくはないわけでございますので、監査ができないから理論的には一人会社というのは認められないのだという結論にはならないのではないか、こういうふうに考えております。
  51. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいま監査についてのお話がございましたが、商法一般の関係につきましては、ただいま法務省の方がお答え申し上げたとおりかと思いますが、今度の日本たばこ産業株式会社あるいは日本電信電話株式会社等につきまして、例えば利益の処分等につきましては、法律大蔵大臣あるいは郵政大臣の認可を必要とするとか、あるいは同じく法律の中で、大蔵大臣の一般監督権に服せしめるあるいは郵政大臣の監督権に服せしめるというような形がとられておるわけであります。したがいまして、両会社につきましては、形の上では現段階では一人法人というような形になっておりますが、監査、監督等の面においても法制的には問題がないであろうというふうに理解をいたしております。
  52. 沢田広

    沢田委員 法制局の方で申しわけないのですが、そうすると例えば一人法人の日本電電で株の公開をしたり株の処分をしたりするような場合は、竹下大蔵大臣がみずから決定をし、そしてみずからこれを監査をし監督をする、こういうことが許される、現実的にはそういうことになるわけですね。どれだけ発行をするか、そして、どういう価格で発行するか、その価格が適当かどうか、入札制度が適正かどうか、そういうこともすべて自分で決め、自分で監督し、そして自分で監査をする、こういうあり方は、法体系として存在するんですか。
  53. 大出峻郎

    ○大出政府委員 お答えを申し上げます。  日本たばこ産業株式会社あるいは日本電信電話株式会社につきましては、現段階では一人株主というような姿である。その一人株主といいますのは、国が全額株を保有しておる、こういう状態であるわけであります。そして、これの処分等につきましては、これは法律にも規定されていたことであると思いますけれども国会の御審議も煩わすというような形になっておりますので、一人の者が恣意的にというような形のことはとられないであろうというふうに考えております。
  54. 沢田広

    沢田委員 ちょっとそれ、国会審議にかけるといった中身を言ってくれませんか。どういうものがかかるという判断をされているわけですか。
  55. 大出峻郎

    ○大出政府委員 手元に法律の条文を用意いたしておりませんので恐縮でございますが、条文の中に、株の処分の限度数につきましては国会の議決を要するというような規定があったというふうに理解をいたしております。
  56. 沢田広

    沢田委員 そうじゃないのですね。いわゆる手続、さっき言ったように、一人法人で一人の発行、同時に入札、価格及び監査、こういうもの一切を、しかも監督も含めて担うということが法体系として許されるのかどうかということを今原点として聞いているわけですね。要すれば神様みたいなもので、一人が全部やってしまう。今大蔵大臣に聞くことは知っているんですが、大蔵大臣に聞いてみても、これは一人七役ぐらいをやっているわけですから、私はこの立場で物を言っているんですと言ったらわからないのですね。だからあなたに聞いているので、そこをもうちょっと詳しく言っていただきたい。ちょっと時間を置いて次にいきます。よく考えておいてください、もうちょっとしっかりした答弁ができるまで。  現在のような財政状況というもので、今拡大ということを、さっきこちらの山中さんももうこれ以上我慢はできぬぞ、そういうような意見も出ておりますし、自民党の中に資産倍増論なども出ておりまして、言うならばこういう緊縮財政に対する一方の抵抗体といいますか、が起きておる。  そういうようなことについて私、幾つかの問題を挙げました。こういう財政的な均衡を図らなけりゃならないし、圧縮予算を組まなきゃならないし、三兆幾らも財政調整が必要である。だからどれもこれも我慢してもらわなくちゃならないのでありますが、建設省、ひとつ公共事業はさらに我慢ができるという見通しなのか、協力する体制というのはあるのか、それとも、とてもじゃないがもうこれ以上は限界なのか、その三つのうちのどれだということを建設省でお答えいただきたい。  それから大蔵省では、不公平是正というのはより一層強めて行わなきゃならぬ問題で、それ以外に財源というものは出てくる見通しはない、だから不公平是正はより積極的に進めていかなければならぬであろう、こういうこともあるわけです。あるいはまた、一部に言われているようにマル優に何%かをかけようかなんという案もそぞろ新聞の報道では出ております。あるいはなりふり構わずもっと輸出を拡大してもうけて、そしてそれを税にはね返らして増収を図っていく、貿易摩擦も何のその、こういうことでいくという説もある。これは通産省から、いやそうはいかぬ、貿易摩擦も大変だから輸出は抑制をして、景気の停滞はある程度我慢する、こういう方向かどうかと。これも大体三つ言っている一つになるわけでありますが、それから、じゃ減税をやって内需の拡大を図るということは、大蔵省としてはこれは考えられないかどうか。よく預金に回ってしまうから余り効果がないという答弁がありますが、そういう答弁だけじゃなくて、もう少し発展的な答弁をしていただきたい。あと間接税については別のところで聞きますから、以上の四点についてだけ、建設省等から……。  それから労働省に、これ以上長時間労働をやっておったのではさらに貿易の均衡が崩れる、だから時間の短縮はもう全力を挙げなければならぬ問題で、二千時間は割らなければならぬ、これはもう至上命令であると解しておるのかどうか、その点もあわせてお答えをいただきたいと思います。  以上、現状財政を継続するとするならば、そのそれぞれの分野においてどうお考えになっておられるか、お答えいただきたいと思います。
  57. 望月薫雄

    ○望月政府委員 御案内のような厳しい財政事情のもとで、公共事業予算昭和五十五年以降連年して抑制されてきているわけでございますが、この結果、社会資本を計画的に整備するという課題に対して十分対応できていない、こういった現実が起こっております。また、一部の事業では非常に施行が経済的でなくなっているとか、あるいは地方団体が強い要望を持っているのに対して新規採択を抑制せにゃならぬというようなこと等々のいろいろなひずみが出ているわけでございます。そういった中で、昭和六十年度予算では、おかげさまでいろいろな工夫を講じていただく中で事業量の確保、拡大ということがなされたわけです。  こういったことを踏まえながら今後のことを考えてみますと、やはり社会資本の整備というものを中長期的展望に立って着実に進めなければならぬという課題にこたえる、あるいはまた地域経済の活性化、さらにまた内需の拡大振興というようなこと等々の役割を考えてみますと、公共事業事業量の安定的な確保、拡大ということが非常に重要な課題である、こんなふうな認識に建設省は立っておるところでございます。     〔熊川委員長代理退席、堀之内委員長代     理着席〕
  58. 土居征夫

    ○土居説明員 輸出の問題につきましては、先生御指摘のように我が国経済を支える非常に重要な柱でございますけれども、ただ、貿易摩擦問題等もあります。輸出のみに過度に依存する構造というものはなかなかこれから続けていけないという状況にありますので、海外発展あるいは技術輸出といった形でバランスのとれた産業構造にしていく必要があるということで、御指摘のように輸出のみに依存して拡大していくというような状況ではないというように考えております。
  59. 逆瀬川潔

    ○逆瀬川説明員 労働時間の短縮の問題でございますが、労働省といたしましては、労働者の生活の充実、長期的に見た雇用の維持確保の観点、さらには国際化への対応とか消費機会を増大させるための内需の拡大、そういう側面からも時間の短縮に努めているところでございます。週休二日制の普及促進、連続休暇の普及、年次有給休暇の消化促進とあわせて恒常的な所定外労働時間の短縮にも努めているところでございます。  なお、今後の労働時間対策につきましては、中央労働基準審議会の審議参考にいたしまして新たに「労働時間短縮の展望と指針」を策定いたしまして、総合的に対策を進めてまいりたいと考えております。
  60. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税制の問題につきましては、既に既存税制の抜本的見直しという基本的な政府考え方が示されておるところでございますが、現行税制につきましても、租税特別措置法に限りませず、各種の面につきまして今後とも引き続き適正かつ公平な負担という観点からの検討と努力を続けてまいらなければならないと思います。  それから減税の問題につきましては、たびたび当委員会で大蔵大臣が御答弁になっておりますけれども、抜本改革の問題もございますし、当面は与野党間の問題もございます。したがいまして、そういったものを見守るという立場でございますが、内需拡大の減税問題につきましては、各方面からいろいろな提言がございますけれども、これはあえて税制事務当局としての考え方ということでお受け取り願いたいわけでございますが、私どもは、その効果と財政の資金のコストベネフィットから見て非常に慎重でなければならない、あえて言えば消極的な態度をとっております。
  61. 沢田広

    沢田委員 じゃ、あと法制局の方、先ほどの保留した分……。
  62. 大出峻郎

    ○大出政府委員 どうも大変恐縮をいたしました。  ただいまの株の処分等につきましては、まず監査の問題につきましては、これは御承知のように会社法の中におきまして監査役というものも選任され、かつ、それは大蔵大臣なりあるいは郵政大臣の認可というような形で公正妥当な人を監査役として選任するという仕組みがとられておるわけであります。したがいまして、その監査役によって監査が行われる。  それからさらに商法上の問題といたしまして、その特例といたしまして、いわゆる株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律というものによりまして、この二つの会社はいずれも大きな法人でありますから、会計監査法人の監査の対象になるというような形になると思います。  それから、株式会社についての行政的な監督の規定がそれぞれございまして、大蔵大臣なりあるいは郵政大臣責任者という立場で行政的な監督を果たしていくという仕組みがとられているわけであります。  なお、株の処分等につきましては、その他国有財産法等の関係の諸規定の規制等も働くであろうというふうに考えておるところであります。
  63. 沢田広

    沢田委員 法制局にもう一回だけ御足労いただきますが、これは極めて異常な形態である、常識的な形態ではないということはどうも言えそうな気がするんですね。法制局でもこの答弁には非常に苦労をされる。一人七役みたいな格好になってしまって、どこをどういうふうに整理していくべきかということに対しては極めて多くの疑問点が残っている、こういうふうに思うわけでありますが、いかがですか。
  64. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいまの点につきましては、例えばたばこ会社に関連いたしまして昨年も国会でいろいろ御議論もいただいたところでありますが、今回の会社法の制定につきましては、これはいわゆる従来公社という組織であったものを、行政改革の一環といたしまして、株式会社という組織に衣がえをするという法制措置がとられたわけであります。新しい会社の設立段階におきましては、その際、民間からの出資というものを仰ぐ必要がないし、またこれを予定もしていないというようなことで、当面、いわゆる全額政府出資の一人会社、こういう形態をそれぞれの法律でとっておるわけであります。  しかしながら、これはいずれにいたしましても株式会社で商法上の規制を受けるものであり、商法上の団体ということでもありますから、当然、その法律の中にもございますように、株式につきましては将来これが民間その他に譲渡が予定をされておる、そういう体制でこの法律がつくられたもので、設立当時におきましてやや異例な姿ででき上がってきておるということは事実であろうかと思います。
  65. 沢田広

    沢田委員 自治省、労働省、運輸省、厚生省、防衛庁、建設省、法務省、国有鉄道、それから再建委員会内閣法制局、通商産業省、以上は大変御苦労さまでした。申し落としたところもあるかもしれませんが、お帰りをいただいて結構であります。  それで大臣、今の質問の応答の中で、この電電の――電電はおいでになっておりますね。電電に大変申しわけないのでありますが、損益計算書と貸借対照表をお願いした。ところが、五十九年三月三十一日までの分の損益計算書、それから貸借対照表をいただいたわけです。発足してから間もないということはあると思うのですが、少なくとも民間に移行すれば一カ月一カ月の締めが可能なわけですね。いわゆるお役所みたいに五月まで会計閉鎖期なんというのは、民間にはないわけです。ですから少なくとも四月なら四月末、五月末はできていなければ、次の会社のこの年度のもうけはどうなる、あるいはこの年度はどうなっていくという見通しはっかないはずなんであります。少なくとも長となるべき人は、損益計算は恐らく毎月見て、日計で見ていくというのが常識になっているだろうと思うのです。ところがそういうものができていないということは、これは大蔵大臣の管轄にあるわけでありますが、民間会社になって間もない、間もないからできないのが当たり前だという論理は通用しない。少なくとも民間会社になったらそれになり切って、四月までの成績はどうだったか、五月までの損益はどうだったか、こういうチェック機能は持っていかなければならぬのではないのかというふうに思うわけでありますが、電電さんも来ておられますから、これは電電さんからお答えいただきましょう。
  66. 寺島角夫

    寺島参考人 決算のお話でございますが、先生御案内のとおり五十九年度の決算は公社時代の最後の決算になるわけでございますが、旧公社法の規定によりまして六月いっぱいにこの決算をまとめる、こういうふうになっておりますので、現在作業中でございます。したがいまして、はっきりしておりますのは五十八年度の決算までということになっておるわけでございます。  それから、月次経理のお話がございましたが、御指摘のとおり、私ども今度会社になったわけでございますけれども、旧公社時代から一つの経営管理の手法といたしまして、月々の経理状況を把握をいたしましてよりよい経営をやっていくという手法を取り入れながら進めてきたところでございまして、そういう意味では今後ともそういう手法をいろいろ駆使しながら経営の改善に努めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  67. 沢田広

    沢田委員 ちょっとお伺いいたしますが、電話収入は大体四兆円、これは今年度においても、特別な価格の値下げという案もあるようでありましたが、四兆円はほぼ動かない、こういうふうに判断できると思うのであります。あとは専用収入が三千百二十九億ぐらいですか、電信はそう大した金額じゃありませんが、結果的に四兆五千億。これに何%増ぐらいを今年度収入として考えておられますか。
  68. 寺島角夫

    寺島参考人 御案内のとおり、法律によりまして新電電の事業計画が郵政大臣の認可を必要といたします。この事業計画の認可につきましては現在郵政大臣に認可申請をいたしておるところでございまして、まだ認可に至っておらないというのが現状でございます。  その中の一つに、附属資料といたしまして収支計画を出しておるわけでございますが、そこにおきましては、ただいま先生御指摘ございましたように、電話収入としては約四兆二千五百億というものを計上いたしておる次第でございます。
  69. 沢田広

    沢田委員 その収支計画書は実は私の方には来てないのでありますが、ここで問題になりますのは、一番大きいのが減価償却。支出の方で見ますと、費用の約二五%ぐらいが減価償却、こういうような経営形態なんであります。営業費はそう大きくないのでありまして、二千七百九十六億ですからそれほどのものではないというふうに思えるわけであります。  そうすると、三千八百億前年利益を上げ、さらに臨時国庫納付金を二千億上げて五千八百億、さらに資本支出充当積立金を一千八百億いたしますと、合計七千億程度のいわゆる損益においては利益を得ておる、こういうふうにも言えるわけでありますが、その点は、今度は法人税がかかってまいりますから、もし三千八百億の四二%を税金に取られたといたしますと、千六百億程度が税金で引かれ、あるいはまた配当が今度行われる。配当についてはどの程度、このぐらいの計算でいくと判断されておられるわけでありますか、この程度状況は。
  70. 寺島角夫

    寺島参考人 ただいま郵政大臣に認可申請をいたしております六十年度事業計画、それに伴います収支計画で、私どもは六十年度におきましていわゆる経常利益として大体二千億を予定をいたしております。これはもちろん予定でございまして、いろんな意味の経営努力をさらに重ねなければならないわけでございますが、これに伴いますいろいろな諸税の負担が、法人税等概算をいたしましたのを含めまして約二千億というふうに考えておるわけでございます。  そこで、ただいま配当の問題についてのお尋ねでございますけれども、何分にもまだこれは決算が来年度になることでございますので、配当をどうするかということは決算を見て決めなければならない、そしてまた株主総会において議決を要する事項だと考えておるわけでございます。したがいまして、今配当を幾らにするか、その結果配当性向がどうなるかということについて申し上げる段階ではございませんけれども、一般的に上場されております企業の行っております程度の配当をいたすように努力をしなければならない、そういうふうに考えておるわけでございます。
  71. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣、今までいろいろと同僚議員が言ったように、五兆一千五百六十億の赤字を抱えて会社に出発をした。恐らく帳簿価格二十一万六千円程度の一株当たりの単価は、五割増しとしても三十数万円になるし、倍にすれば四十万程度になる。ただ一番問題になりますのは、もしこれを五兆一千億に充てたと仮定しますと、その分は全部利益になって計上をされてくるわけなのであります。それで、結果的にはその点は――電電の方、聞いておいてくださいよ。例えば利益があった、二十一万円よりも三十五万円で売れました、大蔵大臣の方で株が売れました、その売れてもうかった分の一〇%なら一〇%は――一千万株売るか一億株売るか、それはわかりませんけれども、まあ一億株はないでしょう、一千万株でも売ると仮定をした場合に、三兆円近い収入が入るわけです。そうするとその部分は、一年で返すとしても、今度は三兆円の利益が上がったということに経理上なるわけですね。電電さん、そうですね。そうすると、その分はいわゆる資産の勘定ですから、資産の分を返済しちゃって、その分利益があったから返済をしたのだ、こういうことになるわけです。そうすると、三兆円の四〇%としても一兆二千億くらいの税金を当然納める、こういうことに今度商法上なってしまうわけですね。――わかりませんかな、言っている意味が。借金を返せば、それはいわゆるみずからの財産である、こういうことなんです、わかりやすく言えば。あなたが、会社であれば借金を五百万していたものを五百万返せば、五百万もうかったということで税務署は計算をするのであります。そうすると、もし三兆円返した、まあ三兆円返すわけはないですが、三兆円返したとすれば、三兆円の利益があったとして計算をされる。そうすると、それに伴って法人税と住民税はかかってくる。こういうことで、これは電電の財務関係は専門なんだから、まだなれてないと言われればそれきりかもしれませんが、そういうことになるわけなんですが、そういうのはわかっておられるのだろうと思うのでありますが、いかがでしょうか、その点。ひとつ簡単にお答えいただきたい。
  72. 寺島角夫

    寺島参考人 あるいはお尋ねを取り違えましたらお許しをいただきたいと存じますが、現在、御承知のとおり、法律に基づきまして発行済み株式につきましては全部政府に引き渡しておるわけでございまして、これをどのように御処分されるかということは、これは政府の決定されることでございまして、私どもNTTといたしましてそれをとやかく申し上げる立場にはないということでございます。したがいまして、株式の売却によります収入というのはNTTの収入とは関係のないことになるわけでございます。  それとは離れまして、私ども、現在、五兆円を超えます固定負債を持っておりますので、この負債をいかに減らしていくかということにつきましては、ここずっと努力を重ねておるわけでございまして、毎年少しずつ、いわゆる借り減らしと申しますか、その年度に返し、また新しい借金もいたすわけでございますけれども、その差額が少なければその分だけ固定負債が減るわけでございまして、そういう意味の借り減らしに努めてまいりました。そのことは、今後もなお一層借り減らしにつきましては大きな努力を重ねまして、私どもの財務体質の改善ということに努めたい、かように考えております。
  73. 沢田広

    沢田委員 くどく話をしておりますが、そういうふうに直接いくと、結果的にはそういう課税方式がとられるわけであります。だから私は、産投会計にもこの利益金の、例えば二十一万円と三十何万で売れたとした場合のその差額の一〇%――二十一万は当然国が、大蔵大臣が株主として保有している株の原価みたいなものですから、これはまあ当然国債の整理基金会計へ入ることはいい。それより市場価格で高く売れたといった場合は、そのうちの一割ぐらいは産投会計へ入れて――これを五兆一千億に充当すると、今言った税金の問題が起きてくるわけですから、私はそういう意味においては、産業開発の研究費なりそういうところへ充当していけばそれは必ずしも今言った税金の対象にはならないというふうに考えますので、できればそういう方法をとって、せっかくこれまで築き上げた職員の努力あるいは会社の努力、その分に対応する見返りがないというのでは若干冷た過ぎやしないかというのが多くの声だと思うのですね。ですから、これを無視していくことは私は極めて危険だ。危険だというのは、いいときばかりじゃありませんので、そういうときを考えてみると、やはりこの分の全額と言わずともある一定の割合は、差額の一〇%程度ずつでも産投会計に入れて、産投会計は極めて多様化されているわけでありますから、産投会計の中からあるいは通信技術の研究とかそういう費用はそこへ出して、全体的な損益計算の中においては電電に任せる、こういうことは私は財政運営としては可能だ。あるいは委託事業もある。大学なんかの委託事業費はそういう立場から大蔵予算で組んでわざわざいろいろ委託研究をさせている面もあるくらいですから、産投会計の中からいわゆる電信電話の研究費を支出することは、必ずしも財政法上触れる不当な支出ではない、こういうふうに思います。  だから結論を言ってしまえば、そういう形でこの五兆一千億そのものに直接充当は困難であるにしてみても、そういう委託の業務は可能である、こういうふうに思うので、さっきの内閣法制局の解釈もありますけれども、そういうようなことで、これから国が利益を大いに上げたときはその程度の、何%であるかは別としても、産投会計を通じて電信電話の基盤整備を……。  もう一つ、時間がもうありませんけれども、今度民間になりますと、今までのような便宜供与はなかなか難しくなりますよ、電柱一つとっても。今までは地方公共団体が黙っていても今度は有無を言わさずに、今もう電力会社がなかなか苦しくなっているのですからね、民地はもうほとんど借りられないという状況があるくらいですから、それは電話でもケーブルにでもしてしまえば別ですが、そうでない限りにおいては、もう電話線の柱を立てるのでも民間会社になると極めて国民は冷たくなっていく、こういう傾向は当然起きてくることなんです。あるいは補償費も極めて厳しくなってくる。  こういうようなことを考えると、私は今言ったようなところへ産投会計を通じて出せる仕組み、そういうものだけはつくっていただきたい、こういうふうに思いますが、この点、大臣の見解は、ぜひそういう方法は講ぜられる道だけ、するかしないかは別ですよ、するかしないかは別として、その道だけ講ずることについてひとつ御配慮をいただきたい、こういうふうに思いますが、お答えをいただきたいと思います。
  74. 竹下登

    竹下国務大臣 今二つの点があると思いますが、一つは、沢田さんが御指摘なさいました、いわばこの新会社の債務の償還に充てるべしという意見、これはもう今日まで努力してあの隆々たるかつての電電公社、今のNTTをおつくりになった方々から見れば、企業家の、あるいは労使双方ともそういう意見が出てくるというのは、これは一つの必然性があるわけでございますが、しかし現実問題としては、債権債務ともに、両方引き継いでおるわけであります。それと、いわば、もちろんその努力が積み重なってこその今日の実績でありますが、まさに国民全体の資産である。だから、その国民共有の負債である国債の償還財源に充てることが適当じゃないかというので、売ってもいいのはそうさせていただく。売ってはならないのは産投会計で、これが結果として試験研究とかというような技術、恐らくこれが可決成立いたしました際、来年から入ってまいりますこの配当等はそういう方向へリードされていくではないかという一つの期待を持って私は見ているわけであります。  ただ、売ってもいい分につきましては、やはりそれがどれだけに売れようかといいましても、基本的には国民共有の財産は、有利に売ることによってなお国民共有の負債を減すための機能を高めていこうという方向で対応していくべきものではないかな、こういう感じを持っておるところであります。
  75. 沢田広

    沢田委員 そういう御配慮をひとつぜひいただきたい。  それから、先般質問がありました持ち株制の問題等は法制的にも極めていろいろな手続が必要だろうと思うのでありますが、そういう面に向けても考慮していただきたい、こういうふうに、これは要望をいたしまして、もし再び質問する時間があれば、その点の細かい点について若干お願いを申し上げたいと思うのであります。  それからもう一つ、あと一分ぐらいでありますが、今国鉄は、もう開始しましたけれども、九・四なんという借り入れをやっているのですね。これは長い歴史的な過程があったからということもありますが、九・四とか八・四とかという借入金額がある。こんな赤字を抱えて倒れそうな会社が、幾ら義理があるかどうかわからぬが、八・四とか九・四というような金利で借り入れをしているなんということは、これは同じ全体的な分野から考えて非常に不経済であるということで、ぜひ大蔵省にお願いしたいのでありますが、せめて現在の一般の七・一とか六・幾らとか、そういうものとの借りかえが可能なような方途を講じることは、当面の債務の幾らかでも負担を少なくしていく、それが結果的には日本全体の一つ経済負担減につながることだということをこれはお願いして、お答えは、一分なんですが、考えられるなら考えてもらう、だめならだめだという答えでしようがないですが、そういうことも検討してみましょうということなら、まだ一分ありますから、それだけひとつお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  76. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 国鉄借入金につきましての九%台というのは、多分民間だと思うのでございます。運用部からの貸し出しは最高でも八%台だと思います。ただこれは、従来長期の固定金利でもって貸し出しておるものでございますから、やはりお約束はお約束として貸し出すときの条件でお返しいただくというふうなことで我々としては考えてまいりたい、こういうふうに思っております。
  77. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 午後一時より再開することとし、休憩いたします。     正午休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  78. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。米沢隆君。
  79. 米沢隆

    ○米沢委員 昭和六十年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案、その趣旨を読みますと、「昭和六十年度における国の財政収支が著しく不均衡な状況にあることにかんがみ、同年度財政運営に必要な財源確保」する、こういうことが書いてあります。     〔委員長退席中川(秀)委員長代理着席〕 意外に「財政収支が著しく不均衡」だというふうにさらっと書いてあるのでございますが、しかし、その中身たるや惨々たる状況であるということを痛感せざるを得ないのであります。  例えば、公債発行額は御案内のとおり昭和六十年度で十一兆六千八百億、公債依存度は五十八年、五十九年よりも少しはよくなりましたが、依然として二二・二%を占めます。公債残高は約百三十三兆に六十年度末にはなってしまう。また、公債残高のGNPに占める比率は四二・三%、これが長期政府債務残高の対GNP比を見ますと、驚くなかれ四八・四%にも達します。国債費も、御案内のとおり、とうとう歳出項目の中の第一位になってしまいました。また、一般会計の中に占める国債費の割合は一九・五%、歳出総額に占める割合が一八・八%、アメリカやイギリス、西ドイツ、フランス、どの国に比べましても圧倒的に高いという状況でございます。  そういうところからまさに容易ならざる事態であるということを考えるわけでありますが、一体どうしてこういう姿になってしまったのであろうか。確かに二度にわたる石油ショック等の影響もありましょうし、歳出圧力のもとであります国会だとか政治家の責任もあろうと思いますが、財政当局として反省はどのようになされているのか。よって来る背景、理由、そして反省の弁を聞かせてもらいたいと思います。
  80. 竹下登

    竹下国務大臣 既に米沢さんから御指摘がありましたように、やはり二度にわたる石油危機、これはまさに大変なことであったと思います。それによって我が国経済の成長率が低下して、これに伴って税収の伸びが大幅に鈍化をした。一方、昭和四十八年度をいわゆる福祉元年、そういうふうに位置づけておったことも事実であります。したがって、四十年代後半における社会保障等の施策水準の引き上げが、それ以前の高度成長期におきますところの各種施策ともあわせて、歳出を押し上げる大きな要因となってきたということも事実であります。また、第一次石油危機を契機とします世界的景気の落ち込みの中で、景気の回復と国民生活の安定を図るために、大量の公債発行によって公共事業を拡充するなどの、財政が積極的な役割を果たす必要があった。そうしたことが私は原因として正確に位置づけされるべきものではなかろうか。  それはいいことだったか悪いことだったかと言えば、これはいろいろな評価はあるであろうと思っております。が、少なくともそこで昭和五十五年度財政再建の初年度として位置づけて、そして五十九年度赤字体質脱却という目標、これが達成しなかったということについては、私は前総理が退陣されたゆえんのものもそこに存在しておったではなかろうか、全部が全部とは、私がはかるべきことでもございませんが、そういう要因があったではなかろうか。したがって、政治責任というものについてのあり方というものを示されたではないかという私なりの推測をいたしておるところでございます。  したがって、それは今、国会とか政治家の歳出圧力ということもおっしゃいましたが、私自身も政治家でございますので、その間にあってどのような節度を保っていくかということを、政治家としては私自身も自重、我と我が身に言い聞かしておる、こういう心境でございます。
  81. 米沢隆

    ○米沢委員 今いろいろと、財政がこのようなおかしい状況になった背景について抽象的にお述べになりましたが、しからば現在の国債残高百三十三兆というものは、まさにその背景でお述べになったことが集約的にその公債残高をつくってしまったということになるのでありましょうが、具体的に百三十三兆というものが一体どういうふうなものに配分されていったのか、国債に色がついておりませんのでわかりかねますけれども、少なくともマクロの分析みたいなものはなされてしかるべきであり、その分析があって初めて、いろいろとこれから先の歳出歳入問題等についてのメスが入れられるものではないかな、こう思うのでございます。  よく我々も選挙区で、何でそんなに大きな残高を持つまでにほっておいたのかと、何でそんな残高を、おまえらの責任ではないか、こう問われるのでございますが、私はそういう税に対して、分析をした上での議論ではありませんが、少なくとも四十八年の石油ショック、五十三年の石油ショック、その当時は、まさに石油ショックのゆえに不況が到来して中小企業は倒産をする、失業者はふえる、何とかしてくれ何とかしてくれの大合唱であった。しかし、手元に金があったわけではないので、金を借りては公共事業、金を借りては公共事業という形で、景気浮揚のためにかなりの金を使ったことも事実である。  同時にまた、ちょうど四十八年が先ほどおっしゃいましたように福祉元年という年でございました。その当時、年初には、まさに福祉元年と言うて、その暮れに石油ショックがやってくるなんて思ったこともなかったわけでありますから胸を張ったのでございますが、一応福祉の制度が形式的には完成をし、これから充実するというときに石油ショックに襲われた。しかし、一たん約束したものを金がありませんからもうやめましたというわけにはいかない。そういう意味では、いつかは景気もよくなって、いつかは福祉の財源ができるであろうから、その間やはり赤字公債等を結果的には振り向けて福祉の充実のために使っていく。そういうことで、公共事業のためのお金あるいは福祉充実のためのお金、そういうものが大半この百三十三兆を占めるのではないか。  したがって、国民の一人として共通のやはり何らかの形で受益をしておるならば、この百三十三兆という大幅な赤字は、決して政府けしからぬ、自民党けしからぬではなくて、政治家すべてがその責任を負うべきである、そういうふうな話をしながら行政改革を述べるようになっておるのでございますが、大蔵大臣として、百三十三兆は一体何で使ったんだと言われたときにどういうふうにお答えになりますか。また、財政当局でもしマクロな分析でもありましたらこの際聞かせていただきたいと思います。
  82. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃいました百三十三兆、六十五年に赤字公債依存体質から脱却したといたしましても、建設国債を今と同じ発行額を続けていくならば、大ざっぱに百六十五兆九千億ぐらいですか、昭和六十五年、百六十五兆。百兆が建設、六十五兆が赤字公債、こういうことになろうかと思われます。されば、今日までの建設国債というのは、特定財源を持つところの公共事業以外の公共事業に当てたということでこれはすっきり割り切れるのじゃなかろうかというふうに私は考えます。その中に私ども予算編成するたびにこれは公共事業として見ていいじゃないか、こういうような問題もございますけれども、例えば防衛費の中におきましても施設整備でございますとか、あるいは防音とか防潮堤とかそういうようなのがございますが、それはそれとしてその範疇の外に置いて、とにもかくにも公共事業に使ってまいりました。  そうすると、あと残りの赤字国債はいつかということになりますと、もちろん今米沢さんおっしゃいましたとおり何に使ったと色はついておりませんものの、まさに年度は、昭和三十九年までは国債の発行はなし、四十九年度までは赤字国債はなし、そしてその残高が九兆七千ですか、それで五十年から赤字公債を発行したというと、四十八年度の福祉元年というものの制度を何が何でも我慢しながらでも充実させようというのと大体年度は符合するということになるわけでございますが、これは福祉充実のためにこうなったということは言えないではなかろうかと私は思うわけであります。しかし、中身をいろいろ精査してみますと、あるいは人員整理でございますとか、そういうものは当然増はあり得ても当初の上昇のスピードが鈍っておるというようなことを考えますと、社会保障面にもそういうものが分析してみればかなりウエートを占めたであろうということは言えるではなかろうかと思うわけであります。  四十七年に田中内閣ができました。四十七年に言ってみれば佐藤内閣が終わりました。私はその幕引きの官房長官をしておったときに、ついに福祉元年というような声は聞かれないままに内閣の最期を遂げたわけでありますが、その翌年福祉元年ということが使われるようになったときには、何だか気持ちの上では物すごいやったというふうな印象を受けたことは今でも記憶をいたしております。ただ、その四十八年の暮れからでございますけれども石油ショックがあのような形で、とりあえずは倍、倍、倍と申しましても二ドル原油が大ざっぱに十二ドルまでに上がっていったわけでございますけれども、あのことはしょせん私どもの予測の外にあった。それの予測もできなかったということに対する批判も当時は随分聞きましたけれども、やむを得なかったではないかというふうに当時も申し上げておったわけであります。  いささか分析しておるかとも思いますので、事務当局からお答えすることをお許しいただきたいと思います。
  83. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今大臣から御答弁がございましたように現在百三十三兆円あるわけであります。そのうち、いわゆる建設国債残高が六十年度末で七十四兆円ということでございます。したがいまして、これは投資的経費に充てられているということが一応観念的には言えるわけでございます。そうしますと、残りの特例公債残高でありますけれども、五十九兆円と見込まれるわけであります。  これを六十兆円程度と一応丸く考えてみますと、それではこれがどこへ使われたかということでございますが、先ほど委員も言っておられましたようにお金にはどこへ使われたという色がついてございませんが、この十年間の六十兆円残高と主要経費の増分とを仮に比較してみますと、例えば社会保障関係費は五十年度予算で約四兆円でございまして、六十年度ではこれが九兆五千億円ということでございますから五兆五千億ふえているわけでございます。その部分がゼロから五兆五千億まで毎年ふえてくるわけですから、これを十年間の面積で出しますと、五兆五千掛ける十は五十五兆、それの二分の一となるといたしますと、二十数兆円が結局毎年の累積として残る部分になるわけでございます。したがって、先ほどの六十兆円のうち半分強が充てられたというふうに考えれば考えることができるわけでございます、一つ考え方といたしまして。それからあと、文教とか科学振興費は五十年度には二兆六千億でございました。それが約五兆円弱になっておりますので二兆円ちょっとふえている。先ほどの計算でいきますと十兆円強残高としてふえるわけでございます。等々考えていきますとそういう見方、かなり問題はあるかと思いますけれども、そういうことも言えなくはないと思うわけでございます。
  84. 米沢隆

    ○米沢委員 今度の六十年度予算の編成に当たりましては、「増税なき財政再建」という制約のもとで、竹下流に言えばまず国債発行の前年度比一兆円減額ありき、そのためにまた一般歳出は対前年度同額以下、いわゆるゼロ成長を達成しなければならなかった、これが六十年度予算編成の大きな足かせみたいなものではなかったか、そういうふうに思います。  そういうところから、歳出につきましてもマイナスシーリングを設定されたり、補助金の合理化をされたり、人件費の抑制をされたり、公共事業の減額を行ったり、あるいは歳入面についても現行税制の枠内で三千百六十億の増税を含めて何とか三十八兆五千五百億を確保した、そして税外収入二兆二千七百億を加えて四十兆八千二百億になったけれども、やはり歳出総額に合わずに、結果的には十一兆六千八百億の公債発行で埋めざるを得ない状況であった、これが大まかな今度の予算編成の流れではなかったかと思います。  そういう意味でそれぞれ努力をなさった陰はよくわかるのでございますが、この六十年度予算編成が終わった段階で、大蔵大臣国債発行の一兆円減額ができたし、あるいは一般歳出をゼロ成長に抑え込んだ、したがって財政再建は一歩を進めたんだというふうに評価する方向でとらえられておりますが、どうも中身を分析をしますと我々は合点がいかない。そういう点について、大蔵大臣どういうふうな御見解だったんでしょうか。
  85. 竹下登

    竹下国務大臣 今おっしゃいました大筋に間違いないと思います。  それで、まず一つには一兆円の減額ありき。これは昭和五十五年度予算を私が編成させていただきましたときにも、一兆円の減額ありきというのでそれは実行することができたわけでありますが、やはり反省として考えなければいかぬのは、税収の伸びが大幅に鈍化した中で既存の制度、施策の見直し、すなわち制度、施策の根源にさかのぼって云々とよく申しておりますが、それが不十分であったから依然としてこういう体質にならざるを得ない、これは財政審の指摘にもそのことがございました。今度予算編成をやりましたときにも、何かの目標がないといかぬ。これは、全額一兆円が赤字国債の減額に回っておればあるいは単純平均したのだけは達成したな、こういうことになろうかと思いますが、結果としてはそうはなっておりませんが、当初の目的のまずは一兆円の減額はできたな、こう思います。  それから二番目は、結果からいえば補助率の問題に手がついたということから一般歳出ゼロを継続することができたという意味においては、補助率というのは暫定措置とはいえ一つの制度そのものに対するメスでありますだけに、そういうことに対することを評価をしたということでございます。  しかし、中身に至って一歩進めたんだと、国民の前に胸を張って誇れるような中身がすべてであるというような大それた考えは持っておりません。
  86. 米沢隆

    ○米沢委員 御案内のとおり中曽根内閣は六十五年度赤字国債をゼロにしようという看板はまだ掲げておるわけでありますから、そういう趣旨に基づいてできておる「財政中期展望」あるいは「中期的な財政事情の仮定計算例」、これは毎年出されております。それを見るごとに思うのでございますが、例えばことしは建設国債と合わせて一兆円減額できたけれども赤字国債はわずか七千二百五十億しか減額できていない。五十九年度も五千二百五十億でしたか、それくらいしか赤字国債は減額されていない。財政の「展望」を読む限りは、まさに二年前は一兆円減額しなければならないという計算であり、一年前は一兆八百億減額しなければならぬということであり、とうとう今度提案された「中期展望」では一兆一千五百億削減しなければならない。結果的には、これは単純計算でございますから期間によって寄せたり分散したりすることは可能かもしれませんが、少なくとも一応の赤字国債減額の目標というものがもう既に財政再建に入ってから二年目を迎えるにもかかわらず、赤字国債の減額規模は「中期展望」に示されているような数字を全然達成できていない。このことはやはり大きな問題ではないかと思うのでございます。  国債ですから、建設国債赤字国債もないという議論はあるかもしれませんが、少なくとも六十五年に赤字国債をゼロにするためには、一兆円減額、一兆八百億減額あるいは一兆一千五百億減額という、そのもの自体を減額させるということが一つの目標であって、そこらができなくてトータルで何しろ国債は一兆円というものでは、財政再建に一歩進めたという議論は当たらないのではないか。逆に、もう既に二年目にして六十五年度をねらう目標は破綻をしておるのではないかと言われても仕方がないのじゃないか、私はこう思うのでございます。  特に問題なのは、六十年度予算の歳出入の数字と五十九年度の「展望」に書かれた数字とを照らし合わせてみますと、歳出全体は五十九年度の「展望」よりもかなり減らしておるわけですね。歳入の方はまだ五十九年度の「中期展望」よりもかなりふえておる。そういう意味では、経済が活況化して自然増収がふえておる中にもかかわらず赤字国債の一兆八百億というものを減額できなかったということは、もう既に六十五年度赤字ゼロ計画は破綻を来しておると見た方が素直じゃないのかなと私は思うのです。そうでなかったならば、例えば一兆一千五百億円来年度から本当に赤字国債を減額できるのかどうか、またその保証があるのかどうか、そのあたりも我々に説明がなければ、大蔵大臣がおっしゃるような財政再建を一歩進めておるという理解は余りにも安易な考え方ではないかなと思うのでございますが、大臣の御見解はいかがですか。
  87. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに五十九年ぎりぎりやってみて、御説のとおりの赤字公債の減額、心の中に残って、昨日、いわゆる出納期間内国債発行千五百億やりますと当初予定しておった五十九年度赤字国債が、さらに八百億くらい発行しなくて済んだ。これは予算編成のときではございません。結果としてはそうなるのかな、こう思っております。そういう点も執行に当たってぎりぎりの工夫をした。だから、編成だけでなく執行に当たっても赤字国債を可能な限り発行しなくて済むような財政運営とでも申しましょうか、そういうことに心がけてきたと思います。  やはりなかなか単純平均でいくものではございません。六十五年度脱却は、見通しは容易かとおっしゃれば断じて容易でないとお答えせざるを得ない。しかし、私もいつも思うのでございますが、おおむね六十五年ごろを仮にめどとして、こう言って「ごろ」が入った途端に歳出圧力に耐えていくという我々の体力も直ちに弱っていくのではないか。こういうことになると、やはり年々の努力の積み重ねの結果としてそういう六十五年脱却という姿が出るのが最も好ましいことではなかろうか。五十六、五十七のあの歳入欠陥という時点では、五十九が余りにも近いだけに、断念し得る環境が整っておったという表現はおかしいのですが、断念し得るタイミングがそれなりにあったと思うのですが、今日、まだ六十五年をめどとした場合に、仮に今からこれに対して断念するというような――財政の弾力的運営の中から、そんな窮屈なことは考えない方がいいという議論も一方にはございますものの、これを断念した途端から歳出圧力に抗し切れなくなってしまうのじゃないか、こういうことを絶えず心配をいたしておるところであります。
  88. 米沢隆

    ○米沢委員 また、この一般歳出をゼロに抑え込んだということも一つの評価として大蔵大臣はいろいろなところで話をされておるわけでございますが、これも各委員が指摘をされておりましたように、確かに数字の字面においては三年続きで一般歳出の伸び率をゼロに抑えたということで世間には緊縮ムードを振りまく効果はあったかもしれませんが、その内実は、もう御案内のとおり、多くの会計間の操作や粉飾が行われておることは事実でございます。  私どもが試算をしてみましても、結論から言うと、例えば本来なら一般会計に計上すべきものを特別会計に振りかえ操作をしたり、後年度に先送りした見せかけの削減あたりをトータルしてみますと、大体一般歳出は〇・四%増になりますね。一般会計そのものも九・七%増くらいに膨らむのでございます。  御案内のとおり、揮発油税の一部、千百十億円を一般会計の税収としてではなく道路整備特別会計に直接繰り入れて地方道路の財源に使うことにしたとか、あるいはまたこれは物の考え方がいろいろとありますが、六十年度に創設された登記特別会計も、一般歳出の見せかけ上の圧縮をもたらす効果がありましたね。こういうものをいろいろと計算をしてみますと、一般歳出もゼロに抑えた、トータルでは三百億円くらい抑えたというのではなくて、実際は〇・四%増になっておる。  同時にまた、本当は六十年度予算に計上すべきもので計上していないものの中から、例えば申し上げますと、住宅金融公庫への利子補給金千百八十億円の後年度への繰り延べ、国鉄予算で国が棚上げ措置をした長期債務のうち五十九年度で棚上げの期限が切れる五兆六百億円の、期限到来による元利支払い金千二百四十四億円も一年繰り延べになっておりますね。そういう意味で、後年度の歳出分として先送りした分は約一兆四百億円、私の手元で計算するとあります。  同時に、見方によっては、満期の来た国債の償還財源用として積み立てるよう法律で義務づけられておる国債整理基金への定率繰り入れの停止、これは六十年度分だけでも一兆八千六百三十億円にも上るわけですよね。こういうように、すべて会計のやりくりの結果、見せかけの粉飾決算をした上で、一般歳出をゼロに抑え込んだというのですから、やはり一般歳出をゼロに抑え込んだという議論もちょっと強弁に過ぎる、こういう感じがしてなりません。  そういう意味では、これから先のことを考えますと、五十九年度は医療保険の改革がありましたよね。あるいは年金法の改正がありましたよね。六十年度地方の方にツケを回したというものがありましたが、六十一年度にこれと似たような大きな歳出削減項目があるかというと、まあ頭のいい人はわかっているかもしれませんが、我々ぼんくらには一体何があるだろうか、こういう感じでして、そういう意味では、やはり財政再建というのを念頭に置いたときには歳出カットもかなり限度に来たんだなという感じがしないではないのですが、そのあたりはどういうふうに御理解いただいておりますか。
  89. 竹下登

    竹下国務大臣 私も六十年度予算編成が終わった直後、自己評価をしようと思ったときに、記者に取り巻かれまして、もう絞るだけ絞ったような気がするのでなかなか水の一滴も出ないという印象を素直に述べました。言って、歩きながらこれじゃいかぬぞよと思いまして、それで記者会見を正式に行って、引き続き厳しい姿勢で六十一年度以降も対処しなければならぬということを自分の身に言い聞かすつもりで言ったわけでございます。したがって、今おっしゃいましたように、一般歳出というのは一つのシンボリックなものでございますので、今の御批判、各種特会、一般会計、会計間の調整措置でございますとか、そういうことはもとよりございました。そして、とりあえず後年度に送った問題もありました。しかし、その象徴的なものに対する対応の姿勢は貫かれたな、こういう印象を受けておることも事実でございます。  さて、そうなると、これからいわゆる大物がないじゃないか、こういう感じは私も等しくしております。そうすると、まさに一つ一つの制度、施策の根源にさかのぼったところからメスを入れていかなければならぬではないか。それは確かに税制改正というものも掲げております。しかし、今まだ結論がもとより出たものでもございません。やがて概算要求の時期は、好むと好まざるとにかかわらず国会が終われば訪れてまいります。それに対して、どのような厳しい姿勢で各省庁の御協力をいただくかということは、それこそいま一度心を鬼にして対応しなければならぬ課題だというふうに自覚をいたしておるところでございます。
  90. 米沢隆

    ○米沢委員 主税局、来ておられますか。――そういうことで、歳出の抑制もカットも、あるいは歳入増も極めて難しい状況になったという認識は、これは皆さん方だけではなくて、関心のある者にとっては異口同音に共通の認識を持っておるんじゃないかと思いますが、例えば昭和六十年度の税制改正において、とうとう政府税調も音を上げ、悲鳴を上げた。これはもう抜本的に改革してもらわない限りだめだ、こう言って悲鳴を上げました。それで、異例と言われるような抜本改正をやれという答申になったのではないか、そう思います。  そういうことで、今政府も税制改正に取り組もうとされておりますが、例えば六十一年度という次の年度予算編成を眺めたときに、そう大幅な税制改革は、今から政府税調で議論していくわけですから、結論的に出てくるわけではない。そういう意味では六十一年度の税制改正をどうするかというのは、まさに六十年度のあの苦労に満ちた、苦難に満ちた税制改正、歳入増につながるものはないかと探すその気持ちは、ほぼ同じような状況で六十一年度税制改正でも歳入項目に何をふやすかという努力がなされねばならない、そういうものではないかな、こう思うのです。  今主税局として、既存の税制の枠内で増収を図るというものが、例えば六十一年度税制改革等で議論したいなと思うようなものがありますか。同時にまた、それは個別に言えなかったら、果たして税収増、歳入増につながるような税制改革みたいなもののネタが本当にあるというのか、ないというのか。個別の件名はなくともいいですから、そのあたりについて主税局としてどういうふうに考えていらっしゃるのか、その点ちょっと聞かしてもらいたい。
  91. 大山綱明

    ○大山政府委員 お答え申し上げます。  大変難しい問題でございますが、今私ども、六十年度の税制改正に関する政府税調の答申を受けまして、シャウプ以来長年見直してまいりませんでした各税目を根っこから洗い直す検討をいたしておるところでございます。シャウプにさかのぼりまして、その後の税制改正を勉強している最中でございまして、いずれ税制調査会をお開きいただきました上で、基本的な議論をいただく段取りにいたしております。  そんなような状況でございまして、かねがね大臣大蔵委員会等の席でお答え申し上げておりますように、私ども個々の税目どれについてどういったような問題点があるかという点は、これは税制調査会の答申などにも随所に指摘されているとおりでございますが、それではここをどういうふうに直していく、どの税目についてどういうふうに直していくか、あるいはどういう点に増収の余地があるかといった観点からのアプローチはまだいたしておりませんものですから、今具体的にどういうものが考えられるか、確かに非常に難しい作業がこれから続くんだろうと思いますが、今の段階におきましては白紙でございまして、まだ具体的なことを申すような段階にはないということでございます。
  92. 米沢隆

    ○米沢委員 「ファイナンス」の四月号に水野先生が論文を書いておられますね。もう読まれたと思いますが、その中にも、先ほど私が申しましたようなことがいろいろ書いてあって、   六十年度予算編成をみると、「増税なき財政再建」を貫くために、随分と無理を重ね、後年度負担を繰越すとか、数々の予算的テクニックの駆使によって、つじつまを合せざるをえなかった。 かなり厳しいなという認識も示されておりますし、   歳入面においても、法人税に偏った、摘み食い的増税措置もそろそろ限界で、今後はあまり大きい増収措置は望めない。税外収入等においても、六十年度予算では、外国為替資金特別会計受入金が三、一〇〇億円も計上されたが、これは臨時異例の措置である。   要するに、「増税なき財政再建」予算の編成は、すでに限界にきており、基本方針の転換が求められる。 こういう基調で書かれておりますね。  この点、先ほどから大臣答弁を聞いておりますともう既にわかりますけれども、再度、こういう見解に対してどういう御感想を持たれるか、聞かしてもらいたい。
  93. 竹下登

    竹下国務大臣 水野先生の論文、これは私どもも素直に耳を傾けるべきものであるというふうに考えております。「増税なき財政再建」というのは確かに私は一つのかんぬきであった、てことして今日も守り、今後も守っていかなければならぬ。  それのいわば定義はどうかということになりますと、まあ言ってみれば、この租税負担率というような問題を新たな措置によって上げることのないようなことを念頭に置いていかなければならぬという気持ちは今日も持ち続けております。が、税調の、今いみじくもおっしゃった異例のことながらという前提のもとに答申していただいたということを受けての税制改正というのは、これはやはり「増税なき財政再建」の転機だととらえることなく、それはそれとしてのかんぬきとして残しながらも、抜本的な見直しには取りかかっていかなければならぬ。  今大山審議官からお話し申しましたように、今確かに白紙でございます。ただ私どもとして整理しておかなければならぬのは、国会議論と、もう一つは今日まで政府税調でたびたび指摘されながら引き続き検討すべき課題であるとして残っておるものは、みんなやはり整理をしておかなければいかぬものではなかろうかと考えておるところでございます。したがって、今度三十一日に検討委員会が行われます補助率のあり方とかいう問題についても真剣な対応の仕方が必要でありましょうし、いろいろお願いしております、本国会にもかかっております六十一年度からを予定しておる共済年金制度でございますとか、そういう制度改正の問題についても、十分意を用いながら対応していかなければならぬ課題だと思うわけであります。そして、税外収入の面におきましても、ああして電電、専売は税外収入ではなく、まさにことしの引き続きになりますから、これは法人税収の中へ埋め込まれてしまうわけでございますから、新たな税外収入というと何があるかということ、これらについてもまだまだ洗いざらいやっていかなければならぬ課題もあるだろうと考えておるところでございます。
  94. 米沢隆

    ○米沢委員 ことしも、六十五年度赤字国債をゼロにするための「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」、またその数値的な手がかりを示します財政収支計算でございます「財政中期展望」及び「中期的な財政事情の仮定計算例」というのが出されました。これを読みましても、「中期展望」もかなり厳しいものであることがわかりますし、「仮定計算例」によりますと、六十五年度赤字国債ゼロになるためには一般歳出の伸びを今から六十五年までゼロにしなければ実際ならない。こういう数字が、幾ら仮定計算であれ、一応の趨勢を示すような数字が出ておるわけです。  先ほどから大蔵大臣は、六十五年度赤字国債ゼロという年限は、ごろなんて言い出すと大変なことになる。精神的な気持ちはよくわかりますが、六十五年度赤字国債ゼロというのを具体的に確実に実行していくためには、一般歳出をゼロにしなければならぬというようなまさに厳しい関門があるわけでして、政府が六十五年度赤字国債を確実に守るとおっしゃるならば、一般歳出を六十五年までゼロにする気概と決意と、そのための実行が求められておると思うのです。そういう意味で、いろいろと先ほどから議論をしておりますが、政府はそういうような仮定計算に示されたような気持ちで六十五年度までやる、こういうふうに我々受け取っていいのでしょうか。
  95. 竹下登

    竹下国務大臣 それは確かにおっしゃいますように、我々としての心の支えとなるものの一つとして、法律を通していただきますならば電電株等の売却収入というようなものも、いわば仮定計算の下敷きの中にこれからは透かしみたいな形で考えることができるものであるかもしれません。そしてまた、税制改正をやりましたならば、その中であるいは景気の動向いかんによっては自然増収につながるようなものもあるかもしれません。それはまだまさに下敷きの透かしみたいなものでございますから、やはり私は対応の仕方としては、具体的に透かしが浮き彫りになるまでの間は私どもは仮定計算にお示ししておりますような構え対応していかなければならぬことではなかろうかと考えております。
  96. 米沢隆

    ○米沢委員 確かに電電の株を売って財政再建に資するとか、自然増収がちょっと今から伸びるかもしれないとか等というものがありますから、一般歳出の編成の仕方もいろいろ組み合わせは出てくるかもしれませんが、精神的には六十五年度まで一般歳出をゼロにするような気構えでやっていくというふうに今私は御答弁を受け取ったわけでございます。  そうであるならば、例えば「仮定計算例」はゼロ、三、五と単純に計算をしておりますが、具体的に例えば「中期展望」的な発想で六十五年までを見通しますと、いわゆる義務的経費といいましょうか、歳出の自然増といいましょうか、これはかなりのものになるような気が私はするのですが、そういう議論のためにちょっと教えてもらいたいのは、いわゆる歳出の中で義務的経費あるいは自然増みたいなものは毎年どれぐらい伸びていくと判断したらいいのか、その点聞かせてもらいたいと思います。     〔中川(秀)委員長代理退席、熊谷委員長     代理着席〕
  97. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今委員の御質問は、いわゆる当然増的経費としてどの程度見ているかということだと思います。  そこで過去の数字でございますけれども、いわゆる当然増としてありますのは、国債費は一つ挙げることができます。地方交付税交付金も制度として三税の三二%ということになっておりますので、これも当然増の経費でございます。そうしますと、あと一般歳出の中でどういうものが含まれるかということでございますが、一つが給与費、これは定昇その他があって当然上がっていくものがございます。それから、その他のものといたしましては、いわゆる前の年に制度が直った、その結果平年度化増というのが当然増として翌年度以降に来る部分がございます。それから国庫債務負担行為等の歳出化による増、こういうものもあるわけでございます。  具体的に実数としてどういう数字になるかということでございますが、例えば五十七年度から五十八年度について見ますと二兆円強ございます。それから五十八年度から五十九年度にかけましては約一兆六千億、それから五十九年度から六十年度につきましては二兆八千億が当然増的な経費というふうに我々としては見ているわけでございます。
  98. 米沢隆

    ○米沢委員 厚生省、来ておられますか。一番これからシーリングをかけられて苦労するのは厚生省予算だと思いますが、厚生省予算だけで当然増はどのくらい来年は見込まれますか。
  99. 末次彬

    ○末次政府委員 お答えいたします。  正式な当然増の計算はまだやっておりませんが、昨年の例から見まして、私どもの方の計算と申しますか考え方と申しますか、いわゆる高齢化によりまして必然的にふえる年金ですとか医療費ですとか、そういうものを考慮いたしますと大体昨年で六千五百億程度考えております。これに六十一年度の特別な要因を加味いたしまして私どもなりの計算でいきますと、見込みとして約九千億から一兆円程度の必要な額というものが出てくるのではないかと考えております。     〔熊谷委員長代理退席、中川(秀)委員長     代理着席〕
  100. 米沢隆

    ○米沢委員 そうなりますと、結局当然増になる歳出項目に抜本的なメスが入れられて改革されれば別ですが、その改革は無理だとしますと、当然増だけで二兆円から三兆円、まだ年度が伸びていきますと、特に高齢化の率が高くなっていきますから、厚生省予算を中心にして三兆から四兆というのが見込めることになりますね。  そうなりますと、先ほどの話になってしまいますが、いわゆる一般歳出をゼロに抑えていくということは並み大抵のことではない。ある程度当然増のところも行革するにしても、三兆から四兆という割合で伸びていけば、これは逆に仮定計算における三%増、五%増、そのあたりの数字になるのではないかと思うのですが、主計局はどういう御見解ですか。
  101. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほど申し上げましたように、当然増経費はその年度によって違いますが二兆前後の数字考えられるわけでございます。  それでは具体的に六十一年度どれくらいになるかという点でございますけれども、具体的な数字そのものは我々としてもまだ検討している段階でございまして、つかめていないこともまた事実でございます。しかし、これまでにおきましても二兆円前後の当然増経費がございましたけれども、例えば六十年度予算の場合におきましては公共事業費あるいは食糧管理経費、それから地方財政等でかなりの削減を行いまして、その部分を今の当然増経費の中に充当するというようなことで予算編成をしているわけです。しかも、当然増経費につきましても毎年制度の根幹、仕組みにまでさかのぼってメスを入れるということで、その当然増の部分をかなり大幅に削減してきております。そういうことで、過去三年間一般歳出において若干のマイナスの予算を組むことができたということでございます。したがいまして、六十一年度はまだこれからでございますけれども、六十一年度以降の予算におきましても、今までやってまいりましたその努力を引き続きその予算編成につぎ込むことによって、できるだけ合理的な予算を編成していきたいと考えている次第でございます。
  102. 米沢隆

    ○米沢委員 私が申し上げたいのは、例えば「仮定計算例」の数字を読みましても、一般歳出を五%の伸びとした場合、毎年大体一兆六千億か七千億ずつふえていく計算になっています。三%の場合、大体一兆円くらい伸びていく計算になっています。しかし、先ほど申し上げましたように、確かに今から当然増にも具体的にメスが入れられて少々の削減にはなるかもしれないけれども、圧倒的にすべてを削るというわけにはいかないわけですから、逆に当然増が二兆八千億とか三兆円なんという議論をしますと、この「仮定計算例」にもし当てはめるならば三%成長、五%成長以上の伸びを見込まないと当然増を吸収できないということになるわけです。そうなりますと、先ほど精神論としておっしゃったのかもしれませんが、大蔵大臣が一般歳出ゼロを六十五年まで続けるような気持ちだというそのものとは、具体的な数字は全然別個のものに現実にはなってくるであろうということを財政当局としてはどう思っているのかということを私は聞いたわけです。  いろいろと理屈の言い方はあるかもしれませんが、何回も言うようで恐縮ですけれども、少なくとも当然増というものは、少々の歳出カットがあったとしてもかなりのものがこれから伸びていく、それは三%の例、五%の例以上に伸びていかざるを得ないであろう。そうなりますと、要調整額がここに記載されているような数字以上に大きくなるであろう。そうなったら、六十五年度財政再建、ゼロを確実にやりますというのを口では言っても、実際は実現不可能であるということを示しておりはしませんかということを大蔵大臣にちょっと聞きたいのです。
  103. 竹下登

    竹下国務大臣 したがってこそ毎年毎年の予算編成に当たってそれに近づけていく努力を続ける、最終的にはこういうことに尽きていくなということを私はいつも感ずるわけであります。今おっしゃいましたような感じ方で私が見ておったのは昭和五十五年度予算のときでありました。あのときは俗称シーリング一〇%増しというところで置いたわけでございますから、したがって、そのとき素直な感じで見ておりましたが、その次が七・五、それからゼロ、こういうふうに今日に至っておるわけでございますので、歳入、歳出両面から見ていかなければならぬわけでございますが、今ゼロ、三、五と三つの試算をお示しいたしておりますものの、今のような仮定の計算でいきますと、五十五年度予算編成あるいは五十六年度予算編成のときに考えておったような感じと大体似たようなことが言えるのではないかな。だから歳入、歳出両面で見てまいりますが、やはり現行の施策、制度の中での制度改革がどこまでやれるか、関心の中心をなおそこに置いて対応していかなければならぬというのが現実の状態ではないかな、こういうふうに考えております。
  104. 米沢隆

    ○米沢委員 財政当局としても答えにくい部分はあるかもしれませんが、少なくともこの「中期展望」あるいは「仮定計算例」を見る限り、先ほどからるる議論しておりますように歳出カットもかなり難しくなっておる、歳出カットを超えるぐらいの勢いで当然増が伸びていく。そういう意味で、これは六十五年度まで歳出をゼロにしないと赤字国債ゼロを達成できないのですから、歳出そのもののカットは言うべくして実際は難しい。  そうなれば歳入をどうするかということだけれども、先ほど答弁なさったように、既存の税制改革の増収策はもう万策尽きたという感じの部分が多いのです。まだ不公平税制、クロヨンの是正とか実調率がおかしいとかいろいろ残っていますが、そこらは余り手をつけないで、従来の年末のちょろちょろやるような税制改正等ではもう増収は非常に見込みがたくなっておる。そういうことを考えますと、結果的には、「仮定例」とか「中期展望」の言わんとするところは、みんなが言うように、増税してください、増税でなければどうしようもありませんということを言っておるのではないかというふうに素直に読めば見えるわけです。財政当局としてはそれは言いたくないような様子で、ああするこうするとか抽象的な話しかしてくれませんが、しかし、この「中期展望」なり「仮定計算例」を見る限り、財政改革をするためには歳入をふやすか歳出を削るかあるいは両建てで組み合わせて頑張るかという以外にないわけでございますが、どう考えても、歳入も頑張り歳出カットも頑張るという一番無難な手法でも六十五年度赤字国債をゼロにすることはほとんど不可能である、この試算例はこういうことをすべて語っておるというふうに我々はとらざるを得ないような感じなんです。  もしそうならば、私は予算委員会でも大蔵委員会でもいろいろやりましたけれども、これは単に仮定計算だとか、これは現在に引き伸ばして中期展望しただけだと言って、この数字を説明しようというときに、機械的にやったんだからコメントしづらいなんということを言いますけれども、この中身を充実して、国民にわかりやすいような状況財政再建の計画をもっと具体化できないものか。確かに余り具体化すると財政当局の桎梏になったり、あるいは経済がどう動くかわからぬのだからそう簡単には言えませんということだろうけれども、読む人によってはそのあたりをわかった上でもっと親切な財政計画を提示するのは当たり前ではないかという議論を抜きにして、これから先これは国民の選択の問題でございますなんといういいかげんなことを言って財政再建に対処することは無責任そのものではないか、そういう感じがするのです。  この際、大蔵省としても、「仮定計算例」だって「中期展望」だって、もっと積み重ねの中身を私たちは教えてもらいたい。できれば我々としてはこういうこともやりたいんだということを言ってきたら議論がかみ合うのだけれども、そのあたりを何にも言わずにあなた方の選択の問題ですなんと言われても、国民財政再建の重要性を知ることもできないし、財政再建に協力しなければならないなという気持ちにもならぬのじゃないかな、こう思うのですね。もっとまじめに考えたらどうなんですか、大蔵大臣
  105. 竹下登

    竹下国務大臣 そこのところが難しい問題でございまして、事実その中で具体性を持ったものを示せということになると、少なくとも何年度からはこのような増収措置を行わなければならぬ、その増収措置についてはどのようなことを考えておるかというと税制調査会で引き続き検討というものにはこういう問題がございますとか、あるいは歳出削減を制度、施策の根源にさかのぼってさらにやらなければならぬということになるとそれをやるためにはこのような制度の仕組みに手を突っ込まなければなりませんというようなことを全部、いわばまだ確たる自信も持たないままに提示しなければならぬ。むしろ国会の論議の中でそういうものが出てきて、問答を通じ国民理解してくれるということが自然ではなかろうか。  ただ、言えますことは、いわば税制改正という問題が今出ておりました。そして御審議いただいておる電電株等の収入の問題というのが、いわばそういう下敷きの中には描かれておる。その下敷きの絵が逐次顕在化することによって国民議論がさらに深まっていくのじゃないか。まだ透かし絵の段階で、それが浮き彫りにされず、もとより金額等も書かれないままの透かし絵だけしか今日出ていないということは事実でありますが、そういう問答を重ねながらそういう透かし絵が顕在化し、そして毎年毎年の予算編成のときにそれらの問題を詰めていくということしか、結論から言うとなかなか国民の前に計画としてお示しするということは困難な問題が多いというふうに考えるわけであります。
  106. 米沢隆

    ○米沢委員 最終的には、毎年毎年の予算編成の段階で、ことしはこの歳出項目についてメスを入れる、ことしはこの歳入項目についてメスを入れるということをせざるを得ないわけですね。しかし、予算編成のあのどたばた劇の中でちょろっと出てきて、そしてほとんど雲の上で予算編成がなされるよりも、逆に財政計画の中で、今後の課題として歳出項目はこういうものを今からメスを入れねばならぬと我々は思うとか、あるいは歳入についてはこういうのを税制調査会では御検討してくれとなっておる、だからこうならばこうだろうというようなことを事前に吐き出すことの方が財政再建についての国民の協力が得られる、同時に財政再建に対する健全な合意ができる、そう思うのですね。  確かに、前もって言いますとそれぞれ反動があったり圧力団体が騒ぎ出したりするかもしれませんけれども、そのことは常に予算編成の段階でやはり一回は受けねばならない試練みたいなものなのですからね。我々は、年末の予算編成期に何かしらわけのわからぬところで急に出てきたとかこんな話になっておるそうだというよりも、少なくとも来年あるいは再来年ぐらいの検討課題のものは示して、やはり「中期展望」をもっと具体的な財政計画に仕立てていくということ、これは決して不可能ではないと思うのですね。国民の選択だとか国民の皆さんの理解をいただきたいとおっしゃるならば、そちらの方が正当な手法ではないのでしょうか。
  107. 竹下登

    竹下国務大臣 その議論がいつもちょうだいしておる議論でございまして、現実問題としてそれは一つの手法でありましょう。私どもの方でその手法をどのようにして生かしていくかということは、この「仮定計算例」「中期展望」等を中心として議論をしてもらって、そこに出た問答というのを専門機関である財政審あるいは税調へ正確に報告しながらまた新たな問題提起をしてもらう、こういう手法をとっておるわけでございますので、透かし絵のもう一つもとになる検討事項というものを、具体性のないままいかなる施策といえども国民理解と協力を得なければできないわけでございますから、いわばまだ透かし絵の以前の問題をそこに定量的な数値をはめ込んで国民に問いかけるという手法はとっていないというのが現実の姿であります。
  108. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほども申し上げましたやはり水野さんの論文の中に「今後の財政のあり方」として、「第一に、財政再建の実現可能な計画を確立すべきである。」として、我々がなるほどと言えるようなことを書いておられますね。  これは文章ちょっと長いのですが読みますと、   これまでも、財政再建計画にあたるものとして、①「一九八〇年代経済社会展望と指針」(五十八年八月)における財政改革に関する部分、②「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」(五十九年一月、六十年一月)③「財政中期展望」及び④「中期的な財政事情の仮定計算例」(五十九年一月、六十年一月)等がある。しかし、これらは必ずしも実行可能な財政再建の具体的方策を示すものではない。①は財政改革の方向を示すものであり、②は六十五年度までに特例国債依存体質からの脱却国債依存度の引下げを、いわば努力目標に掲げているに過ぎない。また、③は後年度負担推計型の財政展望であり、それにおいて生ずる「要調整額」について、それをいかにして解消するかの方策を示すものではない。これをいかにして解消するかが示されて、実行性のある財政再建計画となりうるのである。④は、標題の示すように単なる仮定計算例である。   これらは、「増税なき財政再建」のたががはめられた条件の下では、財政再建の手だてを示すぎりぎりの努力であり、それなりの意義をもっていたことは十分に認めるにしてもわれわれの求める財政再建計画ではない。   われわれの求める財政再建計画が策定されなかったもう一つの理由は、「社会経済情勢の変化が激しく、中長期的に見通しの困難な条件において、信頼性のある計画を作ることは極めて困難である」というものである。しかし、われわれの求める財政再建計画は、具体的には、「財政中期展望」における要調整額をいかにして解消するかの方策を示すものであればよいのである。そう、厳格なものを要求しているのではない。年次の進行に伴う見込み違いや乖離については、絶えず見直して軌道修正していけばよい。そのような計画が作れない筈はない。 こういうふうに書かれておりますね。  私どもと全く見解を一にするのでございますが、そういう意味で、従来大蔵大臣がそういうものはできないということで一貫して御答弁なさっておられますけれども、私はこの際、財政再建計画をもっと具体的に我々にわかりやすく、そして大蔵省の気持ちも込めたものをほうり出して、いろいろと国民の間で議論ができるようなものにしてもらいたいということを再度御検討いただくようにお願いしたいと思うのです。いかがですか。
  109. 竹下登

    竹下国務大臣 国民に選択を求める、言うならば適正な経済成長を維持するための目標値あるいは具体的施策を加味したものを出したらどうだ、この要求に対して、私は昨年、たとえ一歩でも半歩でも努力をしてみたいというお約束をいたしました。そしていろいろ議論しました結果、昨年と同じものを資料としてお出しするにとどまった。  ただ、先ほど来、適切な言葉かどうかというのを自問自答しながら使っておりますが、例えば透かし絵とかいうような形のものとして法律を御審議いただいておるわけでございますので、さらにどのようなものが出るかというのについては、これはここのところ三年ぐらい勉強してきておるわけでございますから、その努力は引き続き重ねていかなければならぬ。  それで、私も自問自答しながら時として思うのは、私は、経済社会七カ年計画でございましたか、あのときの企画委員会の最終的な詰めにメンバーとしてでなく、党の責任者でございましたかで参画をいたしておりました。そうして、例えば祖税負担率二十六カ二分の一とか公共事業が二百四十兆でございましたか、そういうものを決めました。そうしてその後見直しのときに、二〇%も下がった百九十兆というような目標に変更をせざるを得なかった。それは経済社会の変動が国際的国内的を含めて余りにも大きかったからでございますけれども、そのときにいささか、これはその後のいわば「七カ年計画」でなくして八〇年代後半における「展望と指針」を作成するときに、そのときの反省というものがあったと思うのであります。そこで、数字として出したのはいつも申し上げますように「七、六、五抜きの四、三、二、一」、その数字しか出さなくて、今水野先生、また米沢さん自身が御指摘のとおり、私どもはそれ以上は六十五年度脱却、そして公債残高を減していく、こういう一つ考え方しかお出ししていないわけであります。  したがって、もう少ししっかりしたものを出してそれの乖離が生じたものは毎年毎年ローリングしていけば、それに対することはそれなりに許容されるじゃないかという議論は私どもにはわかりますけれども政府サイドから見れば、かつての反省ももちろんございます、あるいは私個人の反省かもしらぬ。反省もございますが、半歩でも一歩でも近づく努力はいたしてみますものの、今米沢さんのおっしゃるような形の、ローリングしていくにしてもややリジットな形のものを出すということについては非常に難しい問題があるということも承知の上で、私どもも努力をしてみたいというふうに思います。
  110. 米沢隆

    ○米沢委員 もっと前向きにぜひ再検討してもらいたいと思います。そうでなければ財政再建に関する国民の合意なんて絶対できない、また財政再建を六十五年にうまくやろうなんということも絶対できないということを私は申し上げておきたいと思います。  それから、次に移りますが、同じ財確法の中に、特例公債の発行と同時に国債費定率繰り入れ等の停止、これもまたさらっと書いてあります。御案内のとおり、国債費の定率繰り入れ等の停止はもうことしで四年目になりますね。ことしはこの特例措置によりますと、国債費の減額は定率繰り入れ分で約一兆七千四百五十四億円、発行価格差減額繰り入れ分で約千百七十三億円、合計約一兆八千六百二十七億円となっておる。もし停止しなかったならばこの分だけまたカットしなければならなかったから、それはまた相当の努力が強いられたのではないかと思いますが、しかし四年がかりで国債費定率繰り入れをやめる、こうなると一体大蔵省は減債の制度を、何をどう考えておるのだ、こう叫びたくなるのは私だけではないと思うのですね。  少なくとも減債制度ができる場合には、本格的な公債政策の導入にあわせて、今日このような状況になるかもしれないということを予想して減債制度をつくれという趣旨でできたものであって、どうも大蔵省のやり方は、借換債にしてもこの国債費定率繰り入れにいたしましても、ここまで来たらどうしようもないじゃありませんか、仕方がありませんといって、みんな事後的に、今まであった制度をぶっつぶしていくのですね。こういうやり方が果たして正当なものとは思っていらっしゃらないかもしれませんけれども、ここまで来ると何だと言いたくなりますね。あなた方のやれるようにうまく、どういう規制があっても、どういう足かせがあっても、都合が悪くなってどうしようもなくなったら、仕方ありません、済みません、やめさせてください、こんなことを言うのだったら、国会議論することもないし、減債制度をつくることもない、そういうことをつくづく感ずるのですが、今の大蔵省のやり方は大変おかしい。財政事情がどうであれ、それはあなた方にも責任があるんだから、それで仕方がありませんからといって財政制度審議会まで丸め込んで、仕方がありませんなんて答申書かせるなんて言語道断だ。どういうふうに考えておられるのですか、減債制度というものを。
  111. 竹下登

    竹下国務大臣 これは丸め込んだわけでもございませんが、その財政審で御議論をいただいた。だが、御議論の中身は、減債制度の根幹はこれを維持すべきだ、こういう結論であったわけです。だから、当面はやむを得ない、こういう結論であったわけでありますので、なかんずく空っぽになってしまいますから、したがって、六十一年度予算編成に際しては大きなかせとでも申しますか、おもしとして乗りかかってきておる問題だという問題意識を持って、これから対応していかなければならぬ課題だと思います。それは、私も三年連続で同じ答弁しておることは容易じゃございませんけれども、だれかがやらなければならぬからやっておるわけであります。
  112. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止〕
  113. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 速記を起こして。
  114. 米沢隆

    ○米沢委員 さすがの財政制度審議会も、「六十年度国債の償還についていえば、国債整理基金の資金状況からみて、定率繰入れを行わなければ償還に支障をきたすという事態にはなお至ってはいない。」が「六十一年度において公債の償還財源の問題はもはや猶予を許されない状況となることにもかんがみ、公債の償還財源の充実について最大限の努力、工夫を行うよう、強く要望する。」こういうことを言われておりますね。  そこで、では、六十一年度はこれからの話というよりも、ここまで書かれたら、六十一年度国債費定率繰り入れというのはぜひ実施しなければならぬという立場で議論されるはずだ、こう思うのですが、新聞なんかを読みますと、大蔵省は六十一年度予算編成国債の償還財源となる国債整理基金への定率繰り入れを五年連続で取りやめる方針を固めたなんと書いてある。これはどういうことですか。六十一年度国債費定率繰り入れについてどういうふうな御見解をお持ちですか。
  115. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今委員も言っておられますように、六十年度末におきましては九千九百億円しか基金の残高がなくなるわけでございます。六十一年度に償還が予定されているもの、いわゆるネット償還額が一兆五千九百億円でございますから、今委員おっしゃいましたように、もう猶予できない状況に立ち至ることが予想されているわけでございます。  そこで、それでは六十一年度一般会計から資金の繰り入れをどうするかという問題でございますけれども、定率繰り入れをある程度行うか、いずれにいたしましても、その問題につきましては今後の財政状況等々を考えて、その中で答えを出していかざるを得ないというふうに思うわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、基金残高がゼロになるということは、国債管理政策を行う上で種々問題を生ずることも予想されますので、ある程度残高を維持しようということも念頭に置いて考えていかざるを得ないのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  116. 米沢隆

    ○米沢委員 今おっしゃいましたように、来年度中の償還に必要な財源は約一兆六千億円ですから、このままでは約六千億円不足するわけですね。したがって、何らかの形でこれは繰り入れをしなければならぬ。今その分だけの答えに聞こえたのですが、問題なのは、この際、それならばこの日本たばこ産業株式会社及び日本電信電話株式会社の株式の一部を特別会計に所属させるという、これをどういうふうに織り込むかとの兼ね合いで議論になってくると思いますね。  そこで御見解を聞きたいのでありますが、日たばとNTTの株の売却収入を六十一年度はどういうふうに織り込んでいくのか、その基本的な方針は決まっておりますか。決まってなかったら、今どういうことを検討されておりますか。
  117. 竹下登

    竹下国務大臣 この株の問題につきましては、やっぱり私がお答えするのが適当かと思います。  民間活力を導入して事業経営の一層の活性化を図るという意味で民間になったわけでございますから、できるだけ早く株を売るべきだというふうに基本的には考えております。これは民活、活性化の意味からそういう基本的な考え方一つあります。  それからもう一つは、いわば国債整理基金に直入していただけることになったといたします場合、それは私どもにとっては大変な魅力であることも事実でございます。  その意味において、私も素人なりにいろいろなことを考えてみましたけれども、民活のためには、量は別としても、それは中間決算があれば売れるじゃないかという議論もしてみました。すなわち、ことしでも売れるじゃないかという問題でございますが、まだ諸指標が整ってないものに中間決算だけでやれるわけないじゃないか、なるほどそれもそのとおりだというふうに思ったわけであります。それで、予算を組むのは、御案内のように十二月に組まなければならぬ。ということになると、決算はまだ行われていませんので、諸指標はないという状態の中で、組むとすればどういうふうにして評価をすべきかということについての勉強もしていかなければなりませんし、そうなれば、もちろんこの国会国債整理基金に対する数字だけ出してお許しいただけるものじゃないから、さればどういうふうにして売るのか、値決めはどうするのか、こういうことにもなるわけでございます。  その辺を踏まえて、率直に申しまして、これは難しい議論でございますから、今までの先例等もそれは参考になります。ならぬとは申しませんが、何分今までのとは量も質も違いますから、それこそ専門家の意見を十分に聴取して、それで検討をしていかなければならない課題だ。民間有識者の意見とでも申しますか、そういう表現にしておりますが、それで方向を模索していかなければならぬ課題だ。いろいろな議論はいたしますものの、今日こういうふうな方向で物を進めてまいりますというところまでのお答えができないというのが現状でございます。
  118. 米沢隆

    ○米沢委員 具体的な株の売却については、少なくとも六十一年度はもう必ず実施する、こういうふうに理解していいんですか。それとも検討が随分長引いて、六十二年度になるとか六十三年度になるとか、そういうことはあり得るんですか。
  119. 竹下登

    竹下国務大臣 これは六十一年度必ず売却するということを申し上げる段階でもないというふうに思います。  それは、素朴な質問として、決算の出ないものを腰だめで予算に盛れるかという議論も出てまいります。そうなるときの値決めはどうするものかな、場合によっては簿価で計上しておくべきものかな、あるいは資産内容でも評価して計上すべきものかなというような、これはただ私がまだ私の頭の中で待ちの議論みたいな感じで考えておるにすぎないことでございますが、実際問題としてそういう点を勉強していかなければならぬから、今何とかしたいと思っておりますというところまで踏み切ったお答えはできない。しかし、大変に大切なものがあるという事実認識はいたしております。だからこういう答弁にならざるを得ないということでございます。
  120. 米沢隆

    ○米沢委員 NTTの株の売却に関して既に決まっていることは、千五百六十万株の発行済み株式の二分の一以下を五年以内に売却できるものだというようなことが新聞に書いてありますが、こんなのは決まっておるのですか。例えばNTTと日本たばこ産業株式会社の資本金、当初の発行株数、それから売却の方針、こういうものに関して既に決まっておる部分だけでもいいから、わかっておることだけずっと教えてくれませんか。
  121. 竹下登

    竹下国務大臣 少しく細かいことを説明いたしますが、今私が譲渡を受けたのは、株券は四枚になっております。それは、たばこの方の売っていいのと売ってはいけないのと、それから電電の方の売っていいのと売っていけないのと四枚になっておりますが、その四枚で売買できると私も思っておりませんので、具体的にどういうふうな形になるか、どんな検討をしているかというところまではなかなか言えない、まだそういう段階でないと思いますが、事務当局からその実態だけ御説明申し上げます。
  122. 平澤貞昭

    平澤政府委員 御存じのように、まず電電株式会社の方でございますけれども、資本金の額が七千八百億、それからたばこの方が千億でございます。このうち電電の方は、三分の一を除きまして三分の二は売却可能であるわけでございます。たばこの方は、本則の方では二分の一まででございますけれども、附則の方で当分の間は三分の二政府で保有するというふうになっております。  そこで、今御質問にございました、それでは売れるものについてどう売っていくかということで、新聞記事に五年間というようなことがあったということでございますけれども、それにつきましては今大臣が申されましたように、我々としてはそういうことはまだ全く検討もしておりません。(米沢委員「発行株数なんかわかる」と呼ぶ)株数は今調べまして――電電株式会社の方は株数が千五百六十万株、それからたばこの株式会社の方は二百万株というふうになっております。
  123. 米沢隆

    ○米沢委員 話によると、かなり売却されて、それが市場に乗り入れますとかなりプレミアムがついて高くなるだろう、そういうことを言われていますね。同時に一方では、そういうのを消化できる市場があるのかどうか、こんな議論があるのですが、そのあたりの御検討はなさっておられますか。
  124. 竹下登

    竹下国務大臣 これも後からプロの方が正確に申し上げますが、検討じゃなくして実態だけ申し上げますと、たしか新株は二兆六、七千億が今まで一番多かったんじゃないか、そんなことでございますので、そういうことも恐らく民間有識者の会合のときには議論に出る課題ではないかという問題意識だけは持っております。
  125. 米沢隆

    ○米沢委員 プロの方、答えて……。
  126. 竹下登

    竹下国務大臣 まずアマの方から……。新株発行額は、五十六年度が一兆七千九百三十二億円、五十七年度が一兆百五十四億円、五十八年度が八千四百九十五億円、五十九年が八千百四十八億円ということで、秘書官のつくっておりましたメモに書いてありましたのを正確に朗読をいたしました。
  127. 米沢隆

    ○米沢委員 現在の市場で消化できるのですか。
  128. 岸田俊輔

    ○岸田(俊)政府委員 具体的な売却の方法その他が、先ほど来御説明いたしておりますように、まだわかっておりません段階でございますので、私どもとしては確たることは申し上げられないわけでございますが、全体の規模からいって、さほど不可能なことではないのかなというふうに考えております。
  129. 米沢隆

    ○米沢委員 まだ方針が余り決まってないようですし、この問題はまた後で議論するチャンスがあると思いますから、そのときに譲りたいと思います。  今度は、産投特会の法律に関しまして二、三お尋ねしたいと思います。  今回、先ほど申しましたような売却可能な株式以外は産投特会に入れて、その配当金で基盤整備等の研究をやろう、こういう趣旨で、御案内のとおり基盤技術研究促進センターというものが発足をすることになっておりますが、まず一番最初に聞きたいことは、この産投会計法の一部を改正する法律案の中で、一般会計への繰り入れ規定をわざわざつくったという意味一体どういうことなのか。一般会計から産投会計へ出すというのはわかるけれども、産投会計から一般会計へ渡すのを、今ごろ恒常化した法律にしなければならぬというのは、ちょっと時代錯誤じゃないかな、こう思うのですが、その点について、何かねらいがあるのでしょうか。
  130. 平澤貞昭

    平澤政府委員 産投会計と一般会計との関係につきましては、従来からも一般会計に繰り入れる措置をとっております。しかし、これまでは例えば単年度とか三年間とかいうことで暫定措置として行っておったわけでございます。そういうことでございましたが、今回御審議願っております法案では、これを恒久的な措置としてお願い申しているわけであります。  その理由でございますけれども、これは別途御審議願っております輸開銀法におきまして、いわゆる法定準備金の積立率を恒久的に引き下げることといたしました。それに伴いまして、これら輸開銀に財源的な余裕が生じることになります。その部分を産投会計に繰り入れていただくことといたしましたので、その結果といたしまして、この産投会計に今後余裕金が生じる可能性も非常に強まってまいりましたので、その措置とあわせて、一般会計への繰り入れも恒久措置でお願い申し上げているわけであります。
  131. 米沢隆

    ○米沢委員 大蔵流に言えば、そういうものはつくった方が便利かもしれませんが、今からセンターが稼働する際に、今度の予算だってえらいわずかなものですね。逆に、産投会計に入った金を一般会計に持っていくというのは、ねらいとしては大蔵流でそれはいいかもしれませんが、今から逆に、そういう余裕金はどんどんこの技術開発の方に金を使う。それでもまだ足りない。逆に一般会計からもらうというぐらいのことになるのが当然ではないかと思うのですがね。どうなんですか。もうこれは最初から締めようと思っているのですか。
  132. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回産投特会法の改正案の中におきましては、別途たばことそれから電電株式会社の株を帰属することも、中身として含まれているわけでございます。その措置と、先ほど申し上げました輪開銀等の措置等々で、将来にわたりまして産投特会にはしかるべき財源が生じることが見込まれているわけでございます。そういう中から、産業の開発、特に技術開発等へ資金を投入していくということも可能となっているわけでございまして、一般会計に召し上げるということで今回産投法の改正案をお願いしているわけではないわけでございまして、そういう趣旨もあわせて法案の御審議を願っているわけであります。
  133. 米沢隆

    ○米沢委員 今度この産投特会の方に例の政府保有の新電電株と日本たばこ産業株式会社の株の売却以外の部分をほうり込んで、そこの配当金でやろうというのですが、一体どれぐらいを見込んでおるのですか。二百億前後ですか。
  134. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 この両会社の配当金につきましては、今後の新会社の経営状況等に左右されるところでございますので、今何とも申し上げられないわけでございますけれども、仮に今試算するといたしますと、電電及びたばこ両会社の資本金はそれぞれ七千八百億円と一千億円、合計八千八百億円でございますので、そのうち産投会計に帰属することとなります額は三千百億円でございます。配当率を例えば一〇%といたしました場合には、三百十億円の配当となりますし、五%の場合には百五十五億円になるというふうに試算ができるわけでございます。
  135. 米沢隆

    ○米沢委員 問題は、ことしは立ち上がりですから、そんなに金も要らないというふうに見られたのかもしれませんが、六十年度においてこのセンターに出される総額は、わずか百六十四億円ですね。その中で事業費として使えるのは、わずか四十億円ですね。これから三百億と百五十億の間ぐらいのものが毎年入るのじゃないかと思いますが、それにしても二、三百億円の金で、鳴り物入りで出てきたようなこの基盤技術研究促進センターなんというのは、実際何をするんだろうか。僕はこんなの、不思議でたまりませんね。例えば我が国の総研究費は、科学技術白書によりますと、五十七年度時点で五兆八千八百億円です。そのうち基礎研究費というのが八千六百億円。我が国はどうも基礎研究に力を入れてない、こういう実績が出ていますね。例えば民間企業で最大級の研究所を持っておるという日立製作所あたりでは、五十九年度の研究費が約二千二百億円ですね。そういうものに比べると、事業費四十億円と、これから毎年二百億円ぐらいしか使えないというのは、これ一体何をする気だろうかと思うのだ。ただ役所をつくって、天下り先をつくっただけのことじゃないか、こう勘ぐって言いたいのですが、責任のある答弁をしてください。何するの、これ。
  136. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 このセンターにつきましては、通産、郵政所管のセンターでございますが、資源、国土の面で制約の多い我が国が、それを克服いたしまして経済発展の基盤を引き続き確保していく上で、技術開発の推進は非常に重要な役割を果たすと考えられるわけでございますが、六十年度におきましては今申されました基盤技術研究促進センターというものを設立いたしまして、民間活力の活用を図りながら基盤技術の研究を積極的に促進していくこととしているわけでございます。  同センターは、民間の技術開発等を促進するために、技術開発プロジェクト等に対します出融資事業、それから共同研究事業等を行うことといたしておりまして、これに対しまして、政府といたしまして産投特会から所要の財源措置を講ずることにいたしているわけでございます。政府の資金及び開銀からの出資あるいは民間からの出資も仰ぐわけでございまして、そういうことによりまして、当初は先ほどの百六十億円ということで発足いたしておるわけでございます。なお、順次こういうセンターの事業内容等見ながら、今後先行きにしかるべき対応をしていくということでございます。
  137. 米沢隆

    ○米沢委員 願わくは、先ほど申しましたように、一般会計へ繰り入れるのを恒常措置をつくったという、その条項が発動されないように願っておきたいと思います。  次に、国債整理基金の特別会計法の改正法案に関連してお尋ねしたいのでありますが、これはもうるる各委員から質疑がなされたと思いますが、これから先の国債管理政策の重要な柱は、宮本さんもおっしゃっておりますように、これから一兆円前後の赤字国債を減額していくという政策と、これから一挙にふえていきます借換債にどう対応するか、こういうことではないかと思います。いずれにせよ、資料等を読みますと、六十年度は新発債、借換債を含めて全体で二十兆六千三百億円の国債を発行しなければならないということだそうで、要するにこれから二十兆円台の国債にどうつき合っていくのか、こういうことが大きな焦点でしょう。そういう意味では、今度の改正法案は、ある程度それに即応するためには是とすべきだと我々も考えるわけでございます。  この際お尋ねしたいのは、六十年度の運用部引き受け、ことしの分は大体決まっておるんだそうでございますが、その内訳と、その中で運用部引き受けがかなり大きくなっていますね。これは一体どういう理由なんでしょうか。
  138. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 運用部引き受けは五兆円を予定いたしておるわけでございますが、今回五十九年度の三兆六千億から一兆四千億ふやして大幅に増加させたわけでございます。これは、我々が財投計画を策定いたしますときに、私どもといたしましては国と地方と財投機関、この三つのそれぞれの公的な資金需要部門に対しましてバランスある資金配分をしていきたいということをまず考えておるわけでございます。最近のそれぞれ三部門の資金需要を見てみますと、財投機関の資金需要は割と少なくなってきているわけでございますが、一方、国の資金不足が巨額でございまして、それに伴う国の資金需要が非常に強いものでございますから、やはりそういう資金需要の実態を見きわめた上で運用部による国債引き受けをふやさしたというのが一つでございます。  それからもう一つは、余り国債が市場に出ていきますと、場合によっては民間資金をクラウドアウトするような批判も出てまいりますし、それからまた、国債自体の値が下がりまして、非常に利回りが高くなりまして、金利負担がふえてしまうというふうな点もあるわけでございまして、そういうような点を考慮いたしまして、今回運用部によります国債の引き受けをかなり大きく増加させたということでございます。
  139. 米沢隆

    ○米沢委員 これはことし限りの措置ですか。それとも将来にわたって運用部の引き受けを拡大していくという方向なんですか。     〔中川(秀)委員長代理退席、熊谷委員長     代理着席〕
  140. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 今申し上げましたように、その年度その年度財投計画を策定します時点におきます、先ほど申し上げました三つの分野の資金需要の実態というものを見きわめながら配分していくわけでございますから、これを今後ふやしていくとかあるいは減らしていくとかというふうないわゆる方針はございませんけれども、余裕があればできるだけ国債の消化を図りたい、こういうような考えでございます。
  141. 米沢隆

    ○米沢委員 そうなった場合の一つの問題は、既に指摘があったと思いますが、現在運用部の預託金利は七・一%ですか、この預託金利よりも低い国債を引き受けるということになれば、当然運用部の利回りは低下するわけですね。従来この運用部のオペは有利運用を目指したものというふうに理財局では説明をしておられますが、低利運用はこれは矛盾することに、時においてはなるのじゃないか、そういう心配がございます。特に、七・一%の原資で六%ぐらいで運用するのは逆ざやじゃないのか、これは一般会計にしわ寄せにならないのかどうか、あるいは財政投融資資金、運用部の資金に硬直化という現象をもたらすのではないか、そのあたりが心配されるのですね。  同時にもう一つは、期の途中において資金のやりくりにおいては売買しますよね。そのときだって、やはり資金のやりくりですから、かなり長期的な観点というよりも、その場においてどうも今のうちに売らねばならないとかという時期に来ますね。そのときに、逆に国債が低かったりしますとやはりこれは問題になるのじゃないか、こう思うのですが、そこらはどういうふうな感覚で今から運営されるのでしょうか。
  142. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 ただいま国債の利回りが預託金利よりも下回っていることは事実でございまして、運用部が国債を持ちますと逆ざやになるということは事実でございます。ただ、一般的には、長い目で見ますと預託金利に比較いたしまして国債の方が有利であったという期間が非常に長いわけでございまして、一時的な金利の逆ざやということだけで有利運用に反しているというふうには言い切れないのではないかと思うわけでございます。  ただ、御指摘のように、この状態が長く続きますと、これは運用部の有利運用という点からいいまして非常に問題が生ずるわけでございますので、この預託金利のあり方というものについても見直していかなくてはいけないわけでございます。今預託金利は預貯金金利に連動して動いていく慣行になっておりまして、最近は公定歩合が動かないということで預貯金金利も動いていないということで、預託金利が七・一に張りついちゃっているというような状況でございますが、やはりこの長期金利体系の一環としての面も持っているわけでございますので、その長期金利が自由化されつつある段階では、預託金利もやはりある程度市場の金利に連動して動かしていく必要があるのじゃないかというふうに考えられるわけでございます。  ただ、この預託金利の問題、一方で預金者とか年金の受給者等、そちらの方の有利運用にも配慮しなければいけませんので、なかなかこれはどの辺に預託金利を決めていくのかというのは非常に難しい問題でございまして、郵政省、厚生省とも十分協議いたしたいと思っております。  それからもう一つは、途中で売買いたしますときというのは、余り運用部の場合には、資金繰り上国債を売らなければいけないという事態はそうないのでございますけれども、確かにおっしゃるとおり、場合によりましては損を出しても売らなくちゃいけないというふうな状況になることもあるわけでございますけれども、逆に利益が出るというふうなこともあるわけでございます。ただ、できるだけその辺は資金繰りにそういう手持ちの国債を売らなければいけないということにならないような配慮をしながら、できるだけ国債のオペによる損が出るようなことにならないように努力してまいりたい、こう考えております。
  143. 米沢隆

    ○米沢委員 この運用部資金のこれからの伸びみたいなものを見ますと、従来のような伸びにはいきませんね。そういう意味では、原資そのものはかなりタイトになってこざるを得ないだろう。一方で財投の合理化等がかなり行われて余裕資金をつくる努力をなされればまた別ですが、しかし傾向としては原資というのはそう簡単に伸びない状況になっておる。そうした中で運用部の引き受けが多くなるということは、やはり今、先ほどから御説明いただいておりますように、いろんな面があるわけですから、そういう意味では逆にいろんな影響を運用部資金そのものにもたらすという要因になっていく、こう思わざるを得ません。  そういうことを考えましたとき、例えば原資がもう本当に伸び悩んできた、そうした際に、運用部が日銀へ手持ち国債を売却するようなことがあるんじゃないか。結局日銀への手持ち国債売却を通じて新発債の引受資金を調達するようなことがあり得るのではないか。そうなったら結果的には日銀信用の膨張をもたらすことになるんじゃないか、こういう指摘もあるのですが、その点の懸念と対応策をどういうふうにお考えですか。
  144. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 今御指摘のような日銀からの資金調達を仰ぐというようなことは全く考えておりません。ただ、余裕金が発生いたします場合に、日銀手持ちのTBであるとか国債を日銀と運用部との間でだけで資金の運用として売買することはございますけれども、新たな資金の調達という意味日本銀行に依頼するというようなことは全く考えておりません。  それから、今のいろいろな御指摘でございますが、確かに原資が伸び悩む状況にあるわけでございますから、やはり私どもといたしましては財投計画を組みますときにはめり張りをつけまして、よく国会でも御指摘がございますけれども、スクラップ・アンド・ビルドというようなことも十分心がけまして効率的な財投計画を組んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  145. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  146. 熊谷弘

    ○熊谷委員長代理 武藤山治君。
  147. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きょうは三時間、時間をいただきまして、大蔵大臣とたっぷり議論をさせていただくことになりました。しかし、実は昨日葬式がありまして、何の資料も勉強する時間がなくて、大蔵省の担当係には大変御迷惑をかけたのですが、通告も思ったままをさらさらと項目だけ書いてお届けをしただけで、全くこのとおり質問できるかどうかも、資料を全然調べてないので失礼の段あるかと存じますが、お許しをいただきたいと思います。  第一に、特例公債からの脱却ということは大問題になっておりまして、既に大平内閣のときに、大平先生は結局消費税を大幅に増徴する以外に財政再建はないと信念的にそれを国民の前に訴え、一般消費税ということを口にした。恐らくそのことが悩みの種で急逝されたのではないかと私は推察をしているのでありますが、その後、あつものに懲りて鈴木内閣は、段階的にこれをきちっとしようということで、一般消費税という言葉は一切禁句になりました。鈴木先生はそのときに、五十九年度特例公債からの脱却ができなければ政治生命をかける、こういうことを八月の段階でおっしゃいました。しかし、それが実現できないという確実な事実が、ついに鈴木さんをして総理の職をなげうたせた、私はそんな見方をしているわけであります。  鈴木内閣が五十九年度ゼロの方針を立て、果敢に取り組もうとしたが、なぜそれが実行できなかったのか。いろんな原因があると思うけれども政党政治である今日の政治の状況の中で大蔵大臣は、一体何が最大の原因で五十九年度ゼロの方針が崩壊したか、ちょっと過去を振り返って、温故知新ということを孔子は教えておりますので、やはり古きをたずねるということも議論の上で必要だろうと思って、ちょっとその辺から大臣の所見をまず伺ってみたい、こう思います。
  148. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに温故知新で申し上げてみますと、五十五年度予算編成、これも第二次石油ショックの影響を受けつつも、五十四年度予算というものは公債依存度からいうと今までになく、結果的にはそうなりませんでしたけれども、一兆八千億くらいでございましたか、発行しなくて済んだわけでありますが、とにかく公債依存度が三九%。しかし、景気は上昇気流にありまして、だから五十二年、五十三年の公共事業等の、いわば建設大臣げっぷが出るだろうと言われた時代、増査定、機関車論が背景にありましたが、それの一番爛熟した時期が五十四年だったかな。  ところが、四〇%近くなると国債の消化が思うようにいかなくなって、したがって五十五年は財政再建に第一歩を踏み出さなければいかぬというので、初めに一兆円の減額ありきというところから組んでまいりました。それでも一〇%増しの概算要求基準でございますから、今から見れば本当にいい世の中だったなというか、そんな印象すら持っておりますが、初めに一兆円の減額ありきはできた。できたけれども制度改革には手を突っ込めなかった。だから財政再建元年とは言えない。クリスマスにもイブがあるごとく、これは財政再建元年の前の晩だ、こういう自己評価をみずから行って、そして五十五年度予算というのは、それから私も大蔵大臣をやめまして、それで執行の段階でもまずまずで、結果としては剰余金が四百八十四億出まして、ラーメン減税と言われるのをやった。よかったか悪かったか、後世の史家これを評価するでありましょうが、あのときは国債整理基金にぶち込むことをやめてそれを全部減税に回した。よかれあしかれそれだけのものが出るような状態にあったと思うのであります。  そこで五十六年度、五十七年度、たまたま私は編成の責任者になかったわけでございますが、これは後からどう考えてみてもだれしも予測のできなかった世界同時不況というものと言わざるを得ぬのじゃないか。たしか五十七年度の補正予算で三兆円以上の特例公債の追加発行をしたわけですから、三兆円も発行しておいてあと五十八年、九年でゼロになるということはおよそ考えられもしないという状態であったわけでございます。したがって今度は、今おっしゃいましたような鈴木先生の御退陣によりまして内閣がまた新たにできて、そこで正式に脱却できませんということをアナウンスといいますかデクレアをした、こういうことになろうかと思うわけであります。  それをデクレアすると同時に、いわば従来の「経済社会七カ年計画」というものも、数字の上で公共事業二百四十兆を百九十兆に二〇%減にするような状態でございましたから、今度つくった、八〇年代後半における「展望と指針」というのにはあらゆる数字を入れないで「展望と指針」、そしてその中で財政改革とは何ぞやというと、五十九を六十五に延ばし、そして将来にわたる公債の残高をいかに減していくかという目標を示して今日に至っておる。アクセントを余りつけない、平面的温故になったわけですが、知新はこれからでございます。
  149. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今大臣がおっしゃるとおり、ちょうど世界不況の局面に入ってきて、それが原因で税収ががたっと減った。もちろん歳出を概算要求で一〇%増というのも、今から振り返ってみればちょっと高い数値を出し過ぎたなという反省はありますが、何といっても最大の原因は世界不況ですね。日本もその渦の中に引き込まれて税収ががくっと減った。私も当時政審会長で、ラーメン減税に不満を持ちながらも約束を結んだ一人で、大蔵省をいじめることは簡単で、財政再建の具体的数字を出せ、計画を出せ、景気との調整で税収をきちっと出せと言うのは簡単だけれども経済の動向だけは何人もわからないのですね。神様もわからないのですね。それは四十四億の全世界の人たちの営みが経済というのを動かしておって、結果として数字が出てくるものですから、なかなか的確な予見を具体的に出すというのは本当に難しい。いろんな学者の書物を読んでも、的確にこれに答えられる書物はゼロに等しいと私は認識をしております。  そういう立場に立って今財政再建を論ずる場合に、本当に「増税なき財政再建」というキャッチフレーズが今度中曽根内閣になってから実現するのだろうか。どうも「財政再建なき増税」で終わってしまうのじゃないかなというのが私の危惧なのであります。そういう点、これから本当に「増税なき財政再建」という文字どおりのことがやっていけるのだろうか。もう既に去年もおととしも増税をやっているわけですね。ただ、大型であるか、中型であるか、小型であるかは別として、「増税なき」では一つ予算編成ができなかったわけであります。一度だけありましたか……。ですから、現実予算編成はやはり「増税なき」じゃないのですね。来年もここ両三年程度にやってきた増税を図って埋め合わせをする。今予算の伸びをゼロと計算をした場合でも一兆六千億円足りないのですね。三%にすると、これによると、もし三%の予算を伸ばすとすると二兆六千億円足りなくなる。五%財政規模を大きくすれば三兆三千億円不足する、あるいは歳出超過になる。これが大蔵省のこの「財政改革を考える」という数字の中に出ておるわけでありますが、そうなると、「増税なき財政再建」という意味はどういう定義をしたらいいんでしょうか。その辺からまず、「増税なき財政再建」とはどういうことを意味するのか、概念規定からひとつ大臣と少し意見を交換してみたいのであります。
  150. 竹下登

    竹下国務大臣 この「増税なき財政再建」とは何ぞやということになりますと、やはり臨調で言われる租税負担率を大きく動かすような税制上の新たなる措置はとらないということで定義づけてきたわけです。ただ、ここのところ三年間の論議を振り返ってみますと、どうなっておるかということになりますと、それに対する世間、世間といいますか、この議論というものは、まず最初は、「増税なき財政再建」だからその中に自然増収も含まっておるぐらいな厳しい対応というか、あるいは誤解というか、自然増収が出たらそれを物価調整減税にでも充てればいいじゃないか、こんなぐらいな「増税なき財政再建」に対する国民の認識ではなかったか。しかし、徐々に財政の厳しさがわかってからは、いわば自然増収等はこのらち外に置くべきものである、そして新たなる措置による大きな変化が生じなければそれはよろしい、だから減税すれば、それに伴う財源の調達というのは、増収措置というのはいわばでこぼこの調整であるから「増税なき財政再建」には当たらない。こういうふうに議論が展開して、今度は税制調査会は、もう一度直接税、間接税を問わずその抜本的見直しをしなさい、シャウプ以来の見直しをしなさいという空気になっておりますから、徐々に世論の中でも変化してきておるという事実はあるではないか。  しかし、今「増税なき財政再建」を理念としておるというその理念の旗をおろしたわけじゃございません。なぜかというと、やはりこれをおろしますと、すぐ安易に増税ということに、歳出削減以上に増収措置を求めるところへ、とかく人間そっちの方へ志向していきがちになる。だからやはり理念としては、あるいはかんぬきとしてはこれを今おろす段階ではない。だから、税制の抜本改正が行われるに当たって、仮にその中に、制度改正といえばそれまででございますが、新しい税目などが出た場合、租税負担率が変わらなければいいじゃないか、そういう論理で今後続いていくものかどうか、もう少し様子を見ないとわからぬなと、今の段階では税制上の新たなる措置によって大きく租税負担率が変わるようなことはしない、こういう感じでございます。
  151. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、大臣、恐らくゼロシーリングで六十一年度予算概算要求させてやっても、やはり当然増経費がもう国債の利息だけで一兆円はふえてしまいますね。そうすると、どうしても六千億円というのはカットしなければいかぬ。そうすると六十一年度予算編成というのは、やはり今度はゼロではなくて概算はマイナスの要求をしてこい、マイナス〇・五かマイナス一ぐらいの線でそれぞれ行政経費すべてを減らしてこい、こういう方針、あるいはどこからか一時、別会計から、特別会計からひねってくる方法、そんなのをいろいろ合わせればまあ六千億ぐらいの不足分は問題ないだろう、税の方をいじらなくも大丈夫だろう、どっちでしょうかね。やはり価格変動準備金だとか貸倒引当金だとか医師の税制だとか、いろいろまだ不公平、不公正なものはかなりある。実態に合わないものもかなりある。そういうものをいじる程度で来年のつじつまは「増税なき」でいける、こんな感じでしょうか。  これ、まだわかりませんよ。六十一年度の話、こんな経済テンポの速いときに来年のことを言うと鬼が笑うと言われるほど当たらない予想になると思うけれども財政を預かっておる大蔵大臣としては、目の子感覚、やはり持ってなければいけませんね。天下の経綸を持ってなければいけないですね。特に竹下内閣待望の人たちが今ちょっと物足りぬなと思っているのは、やはり経綸ですね。バックボーンですね。これがあれば総理確実だと言われるところが竹下さんの一番痛いところですね。どうかそういう天下の経綸を、片りんをここで少しきょうは三時間の間にところどころで示してみてください。私もそうなったらもろ手を挙げて心の中では応援をしますよ。目先だけのことではなくて、やはり国家経営の責任者の一人として、言いづらいことも国民に対してきちっと言うべきものは言わなければならぬぞ、これが私は政治家の要諦だと思うのです。  石田博英さんが今週の朝日ジャーナルにいい論文を書いてますね。石橋湛山の知識と彼の先見性、私はあの論文を読んで、恐らく竹下さんも読んだろう、何か心に秘めるものを感じたのじゃないかな、そんな感じであのジャーナルを読んだのですよ。そんなことも心の中に持ちながら、きょうの論争をしてみたいなと。ちょっと欲深過ぎますか。しかし、やはりそういう期待があなたにはかなりかかっているのですよ。そういう意味でこんなことを聞いているのです。来年のことを聞くなんて本当に非礼かもしれないし、だれもわからぬと言えばそれっきりかもしらぬが、やはり政治家として、こんな道を選んでいくのがいいと思うよ、そのぐらいのことは言ってしかるべきではないか、こう思うのであります。どうぞひとつ大臣、そんな私の心中をも理解をしていただきながら、これから少しそれらの問題もお答えいただきたい、こう思います。
  152. 竹下登

    竹下国務大臣 一つには、今私は財政担当の責任者である。で、おのずからお答えの中に限界があると思います。  来年どうなるかな、こういうことでございますが、過去を振り返ってみましても、今、最初御意見の中にもありましたように、五十五年、いわゆる財政再建に関する国会決議というときに、私は、大蔵委員会のプロの方が決議文をつくられるときにオブザーバーとして参加させていただいた。「いわゆる一般消費税(仮称)」、こういう言葉をお使いになった。それを今日もなお、ばかの一つ覚えのごとく「いわゆる一般消費税(仮称)」こういうふうに申し上げてきたわけであります。それは、消費一般に係る税制を否定した場合には、これは後世の選択肢を失わすという基本が私にあったからであります。  そして今度は、ずっと年々の議論を積み重ねてみますと、かつて大平さんが赤字公債を発行されたときの大蔵大臣で、赤字公債発行というのはまさに税金の先取りをした、財政家としては取り返しのつかないことをした、それがあるいはいわゆる一般消費税の発想につながってきたかもしれません。その辺は今からお墓へ行って聞くわけにもまいりませんが、そんな感じがしております。  そして今度は、国会の論議を五十六、五十七、五十八とこう見ますと、だから初めから、「いわゆる一般消費税(仮称)」は悪である、あれを唱える者は国賊である、あるいは知性と教養の乏しき者である、こういう前提の論議が非常に多かったんじゃないかなと。ところがだんだん、そういう税制そのものとしてはあり得るが、日本の状態にはこれは適さないというふうな論議に変わってまいりまして、そして今度、ことしになりますと、税制調査会の方で、異例のことながらとにかく見直しをしなさい、こういうことになった。それで、税論議というのが、予算委員会を初めとして国民次元にこれがかまびすしく行われる状態、そういう環境を国会がつくったんじゃないか。これはいいことです。  そして、それが最初は、大型間接税とは何ぞや、網羅、羅列、包括、普遍、投網という大体五つのような文句で、実体は何かというと、必ずしも学問的論議ではなく、観念上の大型間接税論議みたいなのが行われ、それが今度は自然に、それだけを見詰めるのじゃなく、税全体の見直しということから、それぞれが考える不公正税制というような問題が論議されて今日に来ておるんじゃないか。だから税論議はまさに花盛り。それだから、それを正確に整理して、それじゃ政府税調に議論をしてもらおうというのが一つの段階ではないか。  一方今度は、各党の幹事長、書記長の間で減税論争というのがあり、これは六十年度中に結論を得る、政策税制については今年中に処理するでございますか、そういう申し合わせ。それからもう一つは、対外経済対策の中で、諮問委員会で、いわゆる内需拡大のための貯蓄、消費、投資を目的とした税制の論議をすべきだという答申がある。  三つの環境の中において税論議が深まりますと、これから非常に事務的な概算要求を詰めていきますのと並行して、税論議というのが国民全体の議論の中に出ていくのじゃないか、それを最後にどう選択するかという問題でございます。急ぐべきか急がざるべきか。しかし、私が今考えますのは、いかなる施策といえども国民理解と協力を得ることなくして実現に移すことはできない。となると、そう急ぐばかりが能じゃない。そうすると、当面は予算編成というような問題は大変厳しい厳しいものにならざるを得ないんじゃないかな、こんな感じを持っておりますが、ただ、どちらかといえば、手法として申し上げますならば、議論をみんな聞いた上で、それから選択していくというのが竹下流とでも申しましょうか、万事控え目であるかどうかは別といたしまして、そういう立場で対応していかなければ、一番頭のいい国民でもございますので、特別頭のすぐれた者が、おれについてこいということをする必要はむしろない。みんなの意見に耳を傾けながら、最後の選択をどうするかという手法で臨むべきであるのかな、こんな感じで、少し長くなりましたが、思っております。
  153. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 中曽根さんは審議会ばかりどんどんつくって、これ、二年半何をやったか、成果はほとんどない。口はなかなか勇ましいことをばんばん発表するけれども竹下大蔵大臣は控え目控え目で、これも何もやらないというのじゃ、結果は同じことになるので、やはり言ってやらない方がいいのか、言わないで、静かに控え目でやらない方がいいのかは、大変価値観は難しいのでありますが、いずれにしても、「増税なき財政再建」をやろうとしている。しかし、一方では学者や有識者の中には、増税しなければもう財政再建できないという意見も充満してきている。そういう時期は熟しつつあるという認識のようであります。  だとするなら、やはり、今いみじくも大臣は、国民は賢明である意味を言いましたね。納税者は賢い。だとしたら、そういう賢い納税者を集めて納税者会議、タックスペイヤー、税金を自分たちが納めているのだという意識に立った議論――税調は、これは専門家でみんなひもつきで、大蔵大臣の任命でもうびくびくして、大蔵省の出した資料に逆らうなんということはほとんどしないのですよ。大体もう大人で勲一等をもらうような人がそろっちゃうから、これはだめなんですね。新しい発想と勇気ある決断は税調にはないですね。だから私は、竹下大蔵大臣の手元で国民納税者会議というものを構成して、消費者も農家も婦人も、いろいろな人を入れてひとつ議論させる。それで、どうしたら財政再建は、一番国民として望むべき道か、これを早急に半年ぐらいの間にやらせてみる。こういうことをやって、税調は税調で専門家としての検討をする。一般世論というものは那辺にあるかということを少し議論させる。労働組合の連中も入れてもいいと思うのですよ。消費者も入れていいと思うのですよ。おのずから落ちつくところはこの辺だということを大臣は見て決断したらいいと思うのですよ。そして税調が、これで税法上のそごを来さないかということを見たらいいと思うのですが、どうですか、全国納税者会議、仮称国民議会だな、そういうような税に対する国民議会だな、そんなようなものを大蔵大臣のもとにひとつ設置してみたらどうかという私の感じなんですが、提案、どうでしょうか。
  154. 竹下登

    竹下国務大臣 その種の発想というのは、これは私は時にして直接民主主義、で、やはり……(武藤(山)委員「決定権はない」と呼ぶ)もちろん決定権はありませんが、やはりそういうことになると、間接民主主義、その国民議会の代表はどこにおるかというと、本院大蔵委員会に厳然としておる、こう見ておるのが、議会人としてはむしろ至当ではないか。多少与野党の立場を考え、お互いの選挙基盤を考える傾向は、それはございます、お互い選挙へ出るわけでございますから。しかし、やはりそれが間接民主主義の一番いいところではないか。それは場合によっては、これは国会運営に口を出してはいけませんが、国会議員としての立場であえて申しますならば、非公開であってもいいかもしらぬ。そういうようなところの実りある議論を積み重ねていくべきではなかろうか。だから、決定権はないが、そうしたものが時に直接民主主義のような感じに結びつくことは懸念していなければならぬのではないかというふうにも思っております。  ただ、税調も、幸いに労働組合の方も消費者の方もお入りになっておりますし、今若干若返って、勲一等の人は二人ぐらいしかおらぬかと思ってこの間見ておりましたけれども、そういう場所にみずからが可能な限り出かけて物を聞くという姿勢で、それを、会議のような形で物を聞くということに対しては、私も従来いろいろなことを考えて、いつも若干ちゅうちょする傾向にあります。
  155. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣政党政治を大事にしようというその発想は、一つの見識であり、私も否定するものではありません。しかし、今の日本の政治家の基盤というものを考えると、増税の議論なんというのはなかなかできないのですね。今の選挙制度そのものにいろいろな制約があるわけであります。特に自民党の場合は、五名区の場合三名立ったり四名立ったり、ほとんどで複数の候補者が同じ選挙区に立つ。そうすると、自民党の政策を訴えるのではなくて、いかに後援会の数をふやし、いかに福沢諭吉の数が多いかが競争の力になるのですね。これでは本当の国家国民のための正しい議論を、議会でなかなかできないのですよ。やはり利益誘導であり、自分の支持基盤の人たちに気がねした発言しかできない。  これがヨーロッパでは、小選挙区制と比例代表制を加味している国ですから、政策の争いなんですよ、与党と野党が。ですから、個人の利害よりも、政党が選挙してくれるし、政党の消長によって自分の当選が決まる仕組みですから、本物の政治家が出てくるのですね。ところが、日本の場合、今の中選挙区制、複数制では、自民党同士が三人も四人も立って、政策は同じ自民党の政策なんですから、票を集める力にならない。そこでおかしな選挙方法になってしまう。野党もそれに引きずり込まれてしまって、結局、自分の方も同じようなシステムをつくらなければ票をとられてしまうということになって、どうしてもそういう視野の狭い見解しか述べられなくなる。ですから、議会で堂々と――きょうの日経を見ると、堀副委員長のように、私見ではあるがと断って、堂々とEC型付加価値税論が正しいようなことをばんと言う勇気のある政治家もおりますが、なかなかそういうことを言えない選挙制度と選挙区との関係があって、大臣、どうも議会だけではなかなか言えないのですね。  特に、日本は民主主義ですから、オープンですから、秘密だなんと言ったって、秘密が守れるはずなんかないんだ。これはどうしても出てしまうのですよ。うちらの県の代議士がこういうことをしゃべったと、こうやられたら、もう増税案なんというのは弱い代議士ではとてもじゃないが言えない。だから、納税者国民会議というようなものをつくって、そういうところでオープンに、国民の声を大いに結集させてみせるということがいいのではないかというのが私の発想だったわけであります。大臣は、できるだけ国会議論に任せて、やがて一致する点を見出そうという発想のようでありますから、これは見解の相違ですから議論はいたしませんけれども日本の政治にはそういう欠陥があるということを私は常々感じているわけであります。  そこで、「増税なき財政再建」を口にしてきた中曽根総理が、サミットの会議に行って、記者会見で税制改革ということをまずばんと打ち出したわけですよ。これは世界に向かって公約したことですね。とにかくサミットの終わった後の記者会見で、税制改革。さあ、この税制改革の目的、ねらい、一体これは大蔵大臣と腹合わせして発表しておるのでしょうか。何がねらいなんでしょうか、この税制改革。
  156. 竹下登

    竹下国務大臣 サミットで税制論議をするというのは、これは税に対してどう考えるかというお互いの相互理解と、それから、サーべーランスと言っておりますが、サーべーランスという言葉は、人によってはサーベルつきで監視するような感じがしますけれども現実、相互監視を行うわけであります。したがって、中曽根総理は、国会でおっしゃっているようなこと、税制改正をしたいと、こういう発言が首脳会議であったであろうと思います。私は、私のカウンターパートは大蔵大臣ばかりでございますから、大蔵大臣会議で双方の現在置かれておる立場を話し合った。  総じて言えることは、ヨーロッパの人は、減税をしよう、そして減税する財源はどうかなと思って関心を持っておると、何分日本と比べれば国民負担率にすれば一五%あるいは二〇%近く高くなっておるわけですから、いや、減税をした分だけ、極端に言えば福祉をいかにするかというのが政治課題だ。だから増減税という感覚はございません。  それからアメリカの場合は、きょう発表になりまして、今分析を頼んでおりますけれども、現地時間の夜八時、きょうの午前九時ですか、レーガン大統領がアメリカ政府の税制改正案を発表した。これは考え方は増減税ゼロでございますが、我々としてちょっと考えられないこと、我々の従来の考え方からすると相当なものだなと。フラット税制でございますけれども、いずれにしても所得税を三段階にするというわけでございますから、それは相当なものだなと思います。しかも、その累進税率、一番高いところで三五%というのですから、日本の七〇%から見れば大変なことだな。それから、法人税を三三%をトップレートとする段階税率というようなことを言っております。それから投資減税は廃止、加速償却制度は圧縮するというような考え方でございます。それで、総じて個人所得税が七%減、法人所得税は九%増、結果としてそういうふうになるのではないか。だから、どっちかといえば財政に対しては中立的な立場をとった考え方。  日本も、率直に言って、財政にとっては中立的な考え方の税制改正の話を私どももいたしております。減税した分だけ歳出を切るという考え方には立っておりません。しかし、総じて言えるのは、サミット参加国の諸君が日本に減税を要求するということはありません。これはなぜかというと、比べてみて租税負担率も国民負担率もはるかに日本が低いから、財政赤字がそんなに多ければ増税すればいいじゃないかという感じはあっても、減税しろという感じは、みんな数字が並べてありますから、出てこない、こういうことになるというふうに考えます。  それで、中曽根さんの提案したのは、平素言っておることでございますので、私も非常に気を合わせて言っておりますのは、予見めいたことを言った場合に、これが税制調査会の審議に影響を与えるのじゃないか。だから、可能な限り予見めいたことは言わないで、お答えするにしましても、今日までの税調の検討では大体こういうふうな中間的意見がございますという第三者の意見を紹介するような形で今日に至っておるわけであります。したがって、先ほど来の議論ではございませんが、国会議論というのを正確に報告して、今もおっしゃいました、確かにヨーロッパは小選挙区でございまして、その足らざるところを比例代表で補っておる、イギリスは単純小選挙区でございますけれども。が、日本の場合は中選挙区でございますから、日本社会党は今二十一選挙区しか複数の選挙をお立てにならないのでございますけれども、私どもは百二十一でございましたか、複数候補者を出してせめぎ合いますから、それは派閥もできますし、その中で増税とかあるいは現体制におけるサービスを少しでも削減するような演説はできにくい環境にありますが、その辺は世界で一番賢い国民でございますから、将来はそういう勇気ある人をまた支持する国民がふえていくであろう。また、我々もそういう努力をしなければいかぬ。耳ざわりの悪いことを言ってもなお支持されていくような見識を持たなければならぬ。  話が横道にそれましたが、そういうことを考えますと、今日は可能な限り予見を与えないような議論をして、そして国会の論議を正確に伝え、税調でこれを消化してもらうという点においては、中曽根総理と私との考えは一致しておるというふうに御理解いただいてよくはないかと思います。
  157. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 アメリカもいよいよ、リーガン財務長官の一九八二年に発表した減税案が政府の本物の案として提案をされることになった、今お話を聞いて。アメリカの場合、最高税率七〇を五〇あるいは三五に引き下げ、イギリスのサッチャーも所得税率を三〇%から五%刻みで最高六〇に、非常に累進度の高かったイギリスの税制も改正案を出しまして通りましたね。中曽根さんはレーガンとサッチャーのやったことだけが頭にあって、本当に税理論というのをわかって税制改革ということを言っているのか。税制の国際化、税制の自由化という観点で、アメリカとサッチャーがやったから日本もそうやろうかという程度発言なのか、私には本当にあの真意はわからないのですよ。日本の税制とアメリカやイギリスの税制はおのずから違うのであります。長い歴史と伝統等もあるわけであります。そういう中で、レーガンやサッチャーがやったから日本もやるのだという発想はとるべきでない。したがって、日本の税制改革は何のために、何ゆえに税制改革を唱えるのか、その点をまず聞きたいのです、何ゆえに、その理由を。  私の方からちょっと言わしてもらうならば、税制改革をしなければならぬという社会的必要性はいろいろあると思います。サラリーマンから見れば不公平税制があり過ぎる。これは事業所得とサラリーマンの源泉所得との捕捉の問題や、いろいろな問題がある。今度は大企業と中小企業の間の格差を見て、同一、四三・三%の税率では、八百万以上の中小企業も四三・三は悪平等だ、これはもっと段階税率を考えてもいいではないかという不満、不平がある。そういう不公平だと思っているから税制改革をやるのか。  もう一つは、いや、これからは高齢化社会がやってきて、二〇二〇年には三人の労働者で一人の年寄りの医療と年金の財源負担する時代が来る。それがもう予見できておるわけであるから、今からそれに対応した税制を考えるのだという視点もあるでしょう。あるいはまた、財政赤字で四苦八苦でもうサラ金地獄だから、後世の子孫にこんなに借金のツケを回すのは、現代を生きる大人として申しわけない。子孫の負担をできるだけ軽くしておくのが現代を生きる者の責務だと考えるから、財政再建を最優先に考えて増税策を考える税制改革。税制改革にもいろいろな視点と理由があると私は思うのです。  そこで、今中曽根さんが言っている税制改革とは、この三つのうちの何なんだ、彼はどれを中心に据えようとしているのか。先ほど大蔵大臣は、租税負担率が上がらないという範囲内でいくとなれば、仮に一方の増収を図れば、片方の不公平を直すという点だけで終わり、税収そのものは変化がない。要するに移動だけである。富の再分配を図って不公正をなくすということだけに視点があることになる。租税負担率が上がってもやむを得ないのだ、後世のために役に立つのだ、ためになるのだという発想になれば、社会産業構造の変化、時代の進歩、高齢化、そういうものに耐え得る税制というものを今考えておく必要がある。政府はいずれをとるのか。その場合、中曽根さんの発想と専門家の大蔵大臣の発想が全く同じと受けとめていいのかどうか。同じだとしたら、この三つのうちどれを中曽根さんはとろうとしているのか、その点も明確にしていただきたいのであります。
  158. 竹下登

    竹下国務大臣 税制改正を唱えた背景はどこにあるか、こういうことになりますと、基本的にはやはり税というものに対するいろいろな議論がかまびすしく行われるようになった。それは私、大蔵大臣が不公平税制が存在しておりますということは言えませんが、言葉としてクロヨンとかトーゴーサンとかそういう言葉があるということは、十分認識をいたしておりますし、総理もそうでありましょう。  そこへ持ってきて、これをプッシュする大きなきっかけとなったのは、やはり政府税調、党税調の、これは異例のことながらとしての答申ではなかろうかな、こういうふうに思うわけでございます。「極めて異例ではあるが、当調査会としては、以上のことを指摘し、」「この問題については、国民に十分な理解と協力を求める努力を尽すことが是非必要であることを付言」する、こういうことでございます。その背景というのは「その時々の諸情勢に応じて税制の見直しが行われてきたところであるが、既存税制の枠内での部分的な手直しにとどまる限り、所得、資産、消費等の間で適切な税負担のバランスを図るという観点からは税体系に歪みを生じさせ、また、税制を一層複雑化させることとなる。」だから「既存税制の部分的な手直しにとどまらず、今こそ国民各層における広範な論議を踏まえつつ、幅広い視野に立って、直接税、間接税を通じた税制全般にわたる本格的な改革を検討すべき時期にきている」こういうことでございますから、それを受けると、私は今おっしゃった三つのうち、不公平そしてまた将来にわたっての高齢化そして財政の後世代への負担転嫁、そういうことのすべてがその中にインクルードされておるではないかというふうに思います。そこで、公平、公正、これは垂直的公平と水平的公平がございましょうが、それに簡素、選択、活力というこの五つの言葉を表題として出して、今日に至っておるというところであります。  ただ、税制改正の問題で、その中で国民の受けとめ方は、みんなこれで不公平の是正をしてくれるんだな、不公平ということも、個人個人によってその判断基準は違うにいたしましても、そう受けとめておる人もありましょう。そして社会構造のこの高齢化社会ということを認識しておる人もありましょう。そしてまた財政、私どもから見ると、本当は抜本改正ですから、その中へ数字を入れたものが出るわけじゃございませんので、したがって、財政ということの後世代の負担というのは、その定型を見ながらそこへどういう数字をはめていくかということで後世代の負担の問題はあろうかと思います。  立場、立場によって違うと思いますが、例えば私のような仕事をしておれば――ただ私は専門家ではありません。が、仕事をしておれば、どうしても二言目には後世代へ負担を回してはいけない、生きとし生ける者の務めじゃないか、今日のサービスを受けるために後世代へツケを回すことは、お互い生きとし生ける者避けようじゃないかということは、私も口を酸っぱくしていつでも叫び続けておるわけであります。それからまたある人は、それは負担率の点からいえば確かに低いわけでございますし、国民負担率からいってみれば、今サービスを削減するのか、あるいは負担を多くするのか、いずれかにしても、後世への負担転嫁を少なめてこの世を去らなければいかぬという角度から見る人もおるでございましょうから、三つのうちどれか、やはりすべてが総合されて、そしてやや専門的な表現がされたのが税調の答申に表現されておるようなものではなかろうかな、こんな感じで見ておるところであります。
  159. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 五十八年十一月の税制調査会の中期税制答申の中ではっきり言っておりますが、一つは、所得税は今後とも税体系の基幹として維持し、数年に一度の見直しをするが、中長期的な負担上昇は避け得ないとまず言っております。二番目に、企業課税は課税ベースの拡大を図るとともに税率の見直しを行う。三番目は、資産課税と間接税は補完税として位置づけ、後者については課税ベースの広い間接税の検討は避けて通れない、こういう意味のことを書いておりますね。この税調の答申の考え方というものを大蔵大臣としては支持するか、一年半たってどうもこういう考え方はとり得ないと考えるか、この辺ちょっと見解を聞かせてください。
  160. 竹下登

    竹下国務大臣 今の中期答申のことは、これは六十年度税制において指摘されておるものと同質であろう。それで、これを見ますと、所得の段階、それから今おっしゃいました資産の段階、消費の段階、言ってみれば、どこに担税力を求めるかといえば大ざっぱには三つある。  その三つに対する性格づけとして、所得税は、シャウプ以来の方針ですね、基幹税として位置づけなさい。あのシャウプ勧告というのはその後だんだんひずみができたのですけれども、あれが言っていることはまことにまともな話でございます。それから企業課税については、これはただ企業課税についての論議をしますときにかなり違った論議になりますのは、段階税制をとろうとする考え方と、いわば法人擬制説の上に立つ立場と、その議論は今度の先進国の十カ国大蔵大臣会議においても議論の分かれるところでございます、歴史的な経過からそれぞれの国が税制を持っておるわけでありますから。それから間接税、資産と消費に着目したものについては補完的な考え方というのは、私は大筋としては間違っていない。ヨーロッパあたりは補完じゃなく、それが基幹税に――最初はヨーロッパもなっておったわけじゃございませんけれども、要するに一遍入れれば付加価値税というのは税率を上げやすいから、それで勢い傾向としてそうなったと思いますが、私は今の御指摘の三つについては変化はしていないというふうに考えております。
  161. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、大蔵省がねらっているのは、財政収支のつじつまが合わないから、財政再建のために増税を考えるのじゃない、そういう狭い範囲じゃない、そう受けとめていいのですか。
  162. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり基本的にはそうであるべきであるというふうに思っております。後に数字を入れ込むのが、財政との関連で入れ込むべきものじゃないかと考えます。
  163. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、大蔵大臣はことしの予算委員会の当初のころは、EC型とはっきりは言い切れないが、何らかの増収策、間接税の増徴を考えなければならないというような意味のことを答えていましたね。私はあれを読んで、ああこれはEC型付加価値税を頭の中に描いているなと当初感じたんです。ところが、だんだん質問されている間にトーンダウンしてしまって、言わなくなっちゃった。言わなくなったばかりでなくて、最近は、六十一年度ではなくて、大型増税案は六十二年度だ、根本的税制改正は六十二年度実施、こういう発想に変わってきちゃったんですね。変わってきた理由は何で、六十二年度ごろ考えられる税制改革は何であると想定をしているか、この辺ちょっと明らかにしておいてください。
  164. 竹下登

    竹下国務大臣 私も終始一貫、いわゆる課税ベースの広い間接税は避けて通れないという答申があるということは言っておりましたが、間接税によって増収を得ようということは、表現の中にも慎んで入れないように入れないようにしてまいりました。論議はどうだったかというと、間接税是非論から始まったものでございますから、別にトーンダウンしたわけじゃございませんが、税制改正とは間接税だけじゃないということを、非礼に当たらないように御説明申し上げて、それがトーンダウンというふうに受けとめられたのか、これは新聞に対してもそうでございます。ちょっとした発言がすぐ、大型間接税いつごろ導入なんて出てしまいますから、そんな感じも持って来ておりました。  それから、現実問題として時期はどうか。早い方を好む、これは言っておりますが、さてと思ってそれについて考えましたのは、国会の論議を整理して税調にお願いするとすれば七月ということになりますと、その税調の論議を六十一年度税制までという日切れで諮問するというのも、これは三年に一遍国税、地方税のあり方についてという諮問をしておいて、その中で日切れで言うのはいかがかというある種の反省もありまして、そこで必ずしも日切れじゃない。そうするとかなり長い時間だから、六十二年に本格税制になりはしないかという観測記事もこれは生まれてまいりますが、今のところ中間答申にしてでも何とかもらおうとか、あるいは何が何でも急いで、引き続き検討の分が残ってもある程度のものをいただこうかとか、あるいは腰を据えて三年に一遍出してもらう中期答申にまさるようなものを出してもらうために、それこそ日限などは全くつけない方がいいのかという議論は、まだ部内ではしておりません。だから、これについては現在も白紙であるというお答えをせざるを得ないというところであります。
  165. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 余り勘ぐって非礼に及んでは申しわけないのでありますが、この間何新聞でしたか、竹下大蔵大臣は今期限りの大蔵大臣で、次は大蔵大臣を遠慮したい、こんなような意味のことが新聞に出てましたね。本意を伝えている報道かどうかわかりませんが、私は、せっかく財政再建に取り組んできた大蔵大臣がここで、いつ内閣改造があるのか知りませんけれども、来年度予算編成を終わって閣僚の入れかえがあるのか、あるいは国会が終わった段階であるのか全くわかりませんけれども、もう今期限りで大蔵大臣をおやめになるという気持ちだとすると、財政再建についての力の入れ方も情熱の入れ方も幾らかそがれて、せっかくここまで来た路線がまたおかしくなっちゃうかなという心配もこれあり。また、竹下さんが将来の政治家として登り詰める大きな頂上を目指す場合に、いつまでも大蔵大臣にいるのもいかがかな。いろいろな気持ちで推測をしているわけでありますが、本当にもう今期限りで大蔵大臣はおやめになるという気持ちがおありなんですか。
  166. 竹下登

    竹下国務大臣 新聞記事に一斉に出まして、それはちょうどテレビでビデオを撮っておりまして、そして対談者の方が、おいどうだいと言ったから、いや、きょうで数えれば百日ぐらいおれは座っておるからくたびれました、自分の時間が欲しいという心境ですということを言ったところを聞いておって、それで今度はテレビ各社の人、竹下番でついてきた人が皆、外に出されてしまいました。それで、そこのところだけをとって今期限りという表現になった。それで私も、参議院でも一遍質問を受けまして、まず一番、愚か者であってはならない。というのは、任命権者が何を考えているかわからない前に、おれはやめるんだ、残るんだ、あしたにでもやめてくれと思っておるのかもしらぬのに、そういうことに答えるほど竹下登は愚か者ではございません、こういうふうに否定しておきました。事実、内閣総理大臣の権限というのは閣僚の任免が行えるわけでございますから、その点は本当に大変な権限であります。おれはやめたとかやめないとか、そんなことは全くかかわりのない任免権があるわけでございます。  そうして、たまたま一年に一回党役員等の改選があるときに、連動して改造をしておることが多いわけでございますけれども、本来は任期があるものではないわけであります。したがって、今期ということも本来はないわけです。ただ、選挙がありますと、新たに首班を指名します。これはまた全く新たになるわけでありますから、やはりそういうことは言うべきものではない。  ただ、そのテレビ対談、後から詳細にビデオで見ますと、政治家は与えられた任務に対しては精いっぱい忠実に事を行うべきものである、自己の毀誉褒貶によってその熱意が左右されてはならないという旨の発言を私しておりますので、我ながらいいことを言っているなと後から感じました。
  167. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 まあ半分ジョークが入ったのでしょうから、それはそれで次へ進みます。  主税局長に聞くのがいいのか国税庁長官ですか、五十九年度の税収見込みですが、剰余金が出そうなのか、出るとすればどの程度になりそうなのか、その辺を説明してください。
  168. 大山綱明

    ○大山政府委員 五十九年度の税収でございますが、現在までのところ三月末までの税収が確定をいたしております。それを見てみますと、予算の八二・三%のところまでいっております。これを昨年度の同時期と比較いたしますと、昨年八二・六%でございまして、したがって、〇・三%ほど昨年よりも進捗割合がおくれているという状況でございます。もう一つ、前年度の決算に対します五十九年度の補正後予算額が、七・七%の伸びを見込んでおりますところ、三月末までの税収の伸びは七・二%でございます。  この二つの数字からしますと、三月末まででは予算額に対する進捗の状況というのは若干おくれておるというふうにも見られるわけでございますが、三月末の法人税収がかなり好調ではないかと見られますところから、現在の段階では五十九年度の補正後予算額につきましては、予算で組みましたものと大きな相違を生ずる結果にはならない、ほぼ予算どおりの税収が得られるのではないか。まだ六兆円ばかりの税収が残っておりますので、確たることを言い得る段階にはございませんけれども、大きな相違は来さないのではないか、私どもはこんなふうに見ているところでございます。
  169. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは、今度の出納整理期間発行として一千五百億円の公債を発行しますね。この数字を勘案しての話ですか。予算と歳入が大体一致するだろうというのは一千五百億円を見込んで計算した話ですか、それとも一千五百億は別枠ですか。
  170. 平澤貞昭

    平澤政府委員 五十九年度年度を通じての税収の見込みは、今主税局の方からお話ししたような感じであるわけでございます。  他方、幾つかの要素がございますが、一つは一般歳出の伸びはどれくらいになるかということでございますけれども、これは予備費込みで約一千四百億円と現段階では見込まれるわけでございます。それから収入の方で税外収入の増がやはり五百億円程度見込まれているということでございます。  もう一つは、五十九年度の出納整理期間国債発行額は、現在二千三百三十六億円残されているわけでございます。それで今回千五百億円を発行することを決めましたので、結果的には八百三十六億円残っている、こういうことでございます。こう決めましたのは、先ほどのような税収の見込みを前提に、今申し上げましたような歳出の不用、税外収入等を勘案して決めたということでございます。
  171. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、次長、一千四百億の削減と五百億の税外収入増で一千九百億増になりますね。この増になった部分は、歳出はどこに振り向けられるのか。それで、国債発行の予定額二千三百三十六億円のうち千五百億を六月に発行して、残りが八百三十六億円、そうすると、剰余金の可能性は八百三十六億くらいにとどまるのか。千四百億と五百億は既にもうどこか支出予定の中に入る収入なのか。その辺はどうですか。こういう聞き方で中身わかりますか。
  172. 平澤貞昭

    平澤政府委員 税収がどうなるか、最終的にはまだわからないわけでございますけれども、今私が申し上げました前提考えていった場合に、仮に公債金の発行残八百三十六億円を発行しないという場合でも、税収が一千億円程度三角になりましてもとんとんになるという計算になっておるわけでございます。
  173. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣、今事務当局に数字をお尋ねしたように、五十九年度は減税財源をひねり出すなどという余剰金は出ないと受けとめる方が事実に近いでしょうか。それとも前に戻し税でやったような、法律で決議して剰余金を減税に回すという、ラーメン減税をやったときのような形になりそうなのか。与野党幹事長・書記長会談で決めた減税に対する政府の受けとめ方と取り組みを考える際に、まず五十九年度の剰余金の問題を一つ議論してから、六十年度の推移はこの次に質問しますから、まず五十九年度だけの問題に限って、大蔵当局としてその辺はどんな形に受けとめているか。与野党幹事長・書記長会談と減税論、それと剰余金との関係についての大臣の所見をひとつ聞かしてください。
  174. 竹下登

    竹下国務大臣 きのうの閣議後、総理に千五百億出納整理期間発行をやります、こう申しました。その背景は、減税の問題、いわゆる財源の問題という考え方ではなく、これはやはり素直に決算がきちんとできる安全係数――別に係数があるわけじゃございませんが、安全運転、こういうことで、千五百億発行しておけば、仮に税収見積もりにぶれがあってマイナスに働いた場合も、赤字決算はしなくても済む。赤字決算をしますと、決算調整資金から借りてきてといっても、そこになければ、またどこかから借りてきてというような話になりますから、やはり赤字決算はしたくない。したがって、これだけあれば安全運転ですと、わかりやすくそんな説明をしました。     〔熊谷委員長代理退席、堀之内委員長代     理着席〕  だから、減税財源とか与野党の減税問題との兼ね合いというのは考えないままに、正常決算ということだけを考えてこの措置はとったわけであります。しかし、何分ぶれというのはございますから、三月期決算等がよかったら、あと税収が期待できる、六兆円ぐらいありますから、まだぶれもあるでございましょうから、その場合、剰余金の出ることはほとんど予測できないという状態ではないかもしれませんけれども、大きなぶれはないじゃないかな、僕はこんな感じです。  一方の減税問題というのは、政策減税が三つ、それから、所得減税が六十年度中に結論を得る、こうなっております。この問題はまた高度な立場での御議論でございますので、そうなれば、財源のことも考えながら、またプロに御勉強もいただくわけでもございましょうし、これに対しては、現在忠実に、資料を提供しろとか、税調の審議経過を持ってこいとかいうようなのを取り次ぐという姿勢で対応していこう、こういうことでございます。  四百八十四億でしたか、あのことは僕の頭にはまだ残っておりますものですから、あのとき、またちょうどたしか出納整理期間発行をしまして、結果としてああいうことになりましたものですから。が、あのときも、それがためにやったわけではなかったということであります。
  175. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、書記長・幹事長会談の合意は、私当事者じゃないから詳しくはわからないのでありますが、五十九年度の歳入に剰余金が生ずればそれを財源にすることも考えられるし、六十年度の税収の推移を九月か十月に見て、余裕がありそうならその財源考えて減税をしてもいいし、両方にまたがっている話なんでしょうか。それとも、これは六十年度財源、税収だけを基礎に置いた減税をするという約束なんでしょうか。あの当時書記長・幹事長会談で決まった裏話では、どちらを使ってもいいんでしょうか。年度だけというんですね。六十年度中――年中か。年度ではなくて、年中にという表現ですか。年中というと、ことしの十二月までということですか、結論を出すという話し合いの結論は。その辺はどうなっておるのですか。
  176. 竹下登

    竹下国務大臣 それは「所得税減税問題については、経済情況を勘案しつつ、内需拡大を含め、政調・政審会長会談において引き続き鋭意かつ誠意をもって検討を進め六十年度中に結論を出す。」所得税減税はそうなっております。「いわゆる政策減税等については今国会中に実施規模、方式を決定するよう政調・政審会長会談において協議し、次期国会冒頭において処理する。」というようなことでございまして、それで今おっしゃったぎりぎりの五十九年度に剰余金が出た場合はどうなるかとかという議論は、それは最高の方でございますから、それはまあえてしてなさらない場合もあり得るんじゃないか。  それで、二十九日といいますときょうですか、何か第一回会談があるようなふうには承っております。
  177. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、大蔵当局としては今の教育減税、単身赴任あるいはその他の幾つかの要求項目の減税は、年度ではなくてこの国会中に方針を決めて、次の国会の冒頭で実施が決まるということだと思うので、これは剰余金でいく以外方法はないですわね。この前項の方、一般減税じゃない方はね。そうすると、剰余金が出なかったときは、これはだめですね。財政に余裕がなければできないんでしょうから、剰余金が出ないと、この約束は実行できない。まさか赤字公債を発行して減税財源に充てるということまでは合意していないんでしょうから。そこはどうなんですか。財源はどうなんですか。赤字公債を発行してもやるということですか。
  178. 竹下登

    竹下国務大臣 これはかつての大蔵委員会の中に小委員会がありましたような詰めた議論にまでまだなっていないわけでございますから、したがって「次期国会冒頭において処理する。」というふうに書いてございますので、その処理とは何ぞや、こういうことになりますと、必ずしも私も定かに処理の定義づけをするというのは難しい問題だと思いますが、これからいろいろな議論をなさるんじゃないかなというふうに思います。あの大蔵の小委員会で議論が行われましたあのときのことを思い出しても、最初は大ざっぱといいますか、こう枠を決めて、後プロの議論、だからそういう経過をたどるんじゃないかな。たどる――余り予測してもいけませんが、どういう経過になりますか、そういくんじゃないかな。だから政府としては、それを見守って、いついかなるときにも正確な資料を出していくというような協力はしなければいかぬ、こんなことでございます。
  179. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 しばらく速記をとめてください。     〔速記中止〕
  180. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 それでは速記を始めて。  武藤山治君。
  181. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次に、ことしの税収の状況をいろいろ勘案する際に、どうもアメリカ経済が第一・四半期あるいは四―六も余り芳しくない。大変経済成長率がダウンをしてまいりました。この間、この大蔵委員会で河本大臣に、機械受注が大変減ってきたのは日本経済先行きちょっと弱含みになっていくのじゃないのか、心配はどうかという質問をしました。昨日企画庁が発表した鉱工業生産指数、特に景気動向に最も関係の深い指数が三つばかりどうも好ましくない弱含みの方向の数字が出た。これは短期の輸出が減ったためだという短期的な原因だと言う人と、いや、これはやはりアメリカ景気がかなり響いてきて、日本経済も余り好ましくない方向に少々下降するのではないかという意見と両論あります。大蔵省としては、この国際経済分析と国内経済の成長率との関係を今どのようにとらえておりますか。
  182. 北村恭二

    ○北村(恭)政府委員 最初にアメリカ経済の動向でございますけれども、御指摘のとおり、最近発表されました八五年第一・四半期の数字が年率で〇・七%ということで、これは二度下方修正になっております。したがいまして、こういったアメリカの経済動向をどう見るかということが、かなりいろいろ議論があるわけでございますけれども、内容をよく分析してみますと、いわゆる内需と申しますか、個人消費あるいは住宅投資といったものがかなりまだ強い伸びをしているわけでございます。ところが、御存じのとおり非常にドル高が続いておりまして、かなり輸入がふえておるということから、いわゆる国民経済計算で海外経常余剰といっておるものがかなりこういった国内の民間需要の伸びを相殺いたしまして、〇・七といったような実質の伸び率になっているわけでございます。ただ私ども、確かに一―三の数字はそういうことでございますけれども、アメリカ経済の全体の姿というのをもうちょっと基本的に見てまいりますと、今申しましたように非常に個人消費が安定的に推移している。これはアメリカ経済の全体の中に占める個人消費のウエートは非常に高いわけでございますので、こういったことから簡単に経済が何か急速に伸びを今後落としていくといったようなことにはつながらないのではないかということがあるわけでございます。     〔堀之内委員長代理退席、熊川委員長代     理着席〕 それから、さっきちょっと申し上げました住宅投資の関係も、これはいわゆる住宅金利が低下ぎみでございますので、こういったことがきっかけとなって今後さらにもう少し拡大していくのではないかという強気の見方もあるわけでございます。それから、何といっても経済の基本にあります物価が安定している、これまた非常にアメリカ経済の強さということにつながるのではないかと思います。やはり景気動向ということになりますと、金融政策の動きが非常に重要な意味を占めるわけでございますけれども、先般の公定歩合の引き下げということに見られますように、いわゆるFRBは、金融はやや緩和ぎみに今後政策を推移させていくのではないかというふうにも見られているわけでございます。  いずれにいたしましても、そんなことからアメリカの経済成長鈍化ということについて、これがどうも大きなリセッションといったようなことにつながることにはならないのではないかという見方が非常に強いといいますか、多いようでございます。私どもとしては、もちろんアメリカ経済の我が国経済に与える影響が非常に大きいわけでございますので、今後どういうような推移をたどるかということは非常に注目されるところでございますけれども、ただ、一方我が国経済の方のアメリカ経済との関係という面で少し動向を考えてみますと、アメリカ経済は八四年に比べて結果的にはかなり鈍化する姿でございますので、そういったことが日本の輸出動向にはかなり影響があるだろうと思います。  ただ、輸出の伸びの鈍化ということが直ちに我が国経済の非常な減速につながるかという点でございますけれども、私ども、よく設備投資の動向ということで物を見ますと、まだかなり高い水準にございます。特に内容的に見ますと、ハイテク関連投資は非常に強いわけでございますし、それから研究開発投資というようなものもかなり高い伸びを示しております。こういうものは必ずしも輸出動向ということに余り関連なく設備投資が続いている、根強い伸びを示しているということだと思います。したがいまして、個人消費等につきましても最近若干明るい指標が出てきておりまして、そういったことから見て、私どもいわゆる経済成長について持っております政府見通しというようなものに沿ったような成長がまだ続いているのではないかと見ているわけでございます。したがいまして、今後のいろいろな動向を注意深く見守っていく必要があると思いますが、おおよそそんな感じでとらえているわけでございます。
  183. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると大蔵省としては、政府経済見通しの輸出額、その程度は確実に推移するだろう。去年の十二月までの数字は大体月百四十億ドルぐらいの輸出がずっと続いていましたね。それがことしの一月になって百億ドル、二月百二十七億ドル、三月百四十三億ドル、こういう輸出の推移なんですが、まだ私の手元では四月がわからないから、その後どうなっているかわかりませんが、四月はどのくらいいっていますか。そしてこの傾向がかなり下降するのか。百三十億ドルくらいで大体推移するのか。去年は割合と同じような数字でずっとなだらかに百四十億ドルが続いていますね。このカーブはどういうぐあいになりますか。そのままずっと横ばいになりますか。見通しはどうですか。
  184. 行天豊雄

    行天政府委員 四月の国際収支統計、実は今計数整理の最終段階でございまして、まだ確信を持って申し上げられないのでございますが、輸出に関しましては、委員御指摘のございましたような、今までの大体百四十億ドル台の傾向から比べまして、御承知のとおり、四月から例の対米自動車輸出の自主規制の変更の問題等がございましたので、そういう一時的な要因も入っていると思いますけれども、多少輸出の鈍化がまた逆に力を盛り返してきたような感じも見られるようでございます。
  185. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこで、大蔵大臣、最近の新しいアメリカの動きでは、自動車とか鉄鋼ではなくて、半導体それから半導体関連のエレクトロニクス製品、私はこういうもののアメリカ側の制限がことし後半から大変きつい制限になってくるなという感じを持っているのであります。この辺については国際金融局はどういうぐあいに見ているのですか。
  186. 行天豊雄

    行天政府委員 米国に対します輸出につきましては、確かにいろいろな形での規制の対象になっている分野もかなりあるわけでございます。現在、米国の中におきまして議会等を中心といたしまして、さらにこれに加えた立法措置等についても動きがあることは御高承のとおりでございます。この議会の動きにつきまして私どももできるだけ正確に動向を把握したいと思っておるのでございますが、何分議会の動向につきましてはアメリカの特別の制度的な問題もございまして、現在の段階でその立法措置について余り確とした見通しを申し上げることは非常に危険ではないかと思いますので、ちょっとそういう評価は控えさせていただきたいと思うのでございますけれども、確かに底流といたしましては、米国内の、特に先端産業部門における保護主義的な動きは今後とも相当注意を要するものであろうということは、申し上げて差し支えないのではないかと思っております。
  187. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 心配の種はアメリカの経済の動向、これが何といっても日本のこれから後半の税収にもかなり影響してくるというような心配もありますが、一方、内需拡大、民活論、これから二百十七項目の規制緩和、いろいろな国内の手当てをやって民間活力の活性化ということを政府は鳴り物入りで言っているわけですから、政府経済見通しは間違いなく達成できるという議論と、いや、もっと成長率は高いぞ、政府の見ている六・一の名目よりももうちょっと高いところに成長率はいくかもしらぬという議論も学者の中にありますね。どちらが当たるかわかりませんけれども、いずれにいたしましても財政当局としてはこれからまだ支出要因がいっぱいあるわけです。  例えば人事院勧告、公務員の飯の材料は一体どうなるのか。幹事長は書記長との会談の中で、人事院勧告が出れば誠意を持って対処する、こう答えています。大蔵省は、人事院勧告が出たときの所要財源はどのくらい必要と計算しているのですか。
  188. 平澤貞昭

    平澤政府委員 まだ出ておりませんので、具体的に幾らという計算はできないわけでございますけれども、仮に一%ということになりますと、いろいろの経費を含めまして約千三百億円程度財源が要るということでございます。
  189. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 一%アップで一千三百億円。これは、定期昇給はもう財源措置をしてあるから、除いて新たにふえる分。ことしの民間の相場が大体五%内外。そうすると、仮に五%という仮定計算でいった場合、幾ら財源が必要で、その財源手当ては完全に実施する場合にはどういう方法でやるのか。あくまで仮定の話ですが、ちょっと説明してください。
  190. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今申し上げました一%は、人事院勧告以外のもろもろのはね返りを入れたわけでございます。したがいまして、人事院勧告が出た場合に、仮に五%ということですべてはね返っていくとした場合は、先ほどの約千三百億円掛ける五ということになるわけでございます。
  191. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 仮に民間の今の状態の最高の五%にした場合、定期昇給分の財源は既に見積もってあるのを差し引いても六千五百億円必要ですね。さて、六千五百億円ひねり出す方法大蔵省は既に何か名案を考えておられるのですか。誠意を持って善処すると与党の幹事長が発表したからには、三%の場合、四%の場合、五%の場合対応できるように今から財源考えておかなければいけない。何%の場合はどうしようか、赤字公債を発行しないでやれる自信があるのか。差し支えない範囲内で、一、二、三の例に仮定を置いて財源を説明してみてください。
  192. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほどの答弁にもう一つつけ加えさせていただきたいのでございますけれども、給与として一%別途組んでおります。これが六十年度に七百三十億円程度あるわけでございます。したがいまして、その分は財源として別途あるというふうにお考えいただけたらということでございます。
  193. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 だから一%で千三百億は要らないのでしょう。七百三十億引くわけでしょう。これから新たな財源措置は……。
  194. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほどの千三百億掛ける五というので出てきた数字から七百三十億円程度引いていただく、こういうことになるわけでございます。(武藤(山)委員「財源」と呼ぶ)あくまで仮定のお話でございますので、そういう仮定の事態の場合の財源といたしましては、従来の例をとって申し上げますといろいろの不用、節約等がございます。それから、仮に税収の増が見込まれる場合にはそれを計上したこともございます。それから、どうしても財源がない場合には公債を発行したという例もあるわけでございます。その他税外収入で見込んだこともございます。財源としては過去にはいろいろ工夫しながら補正予算を組んで措置をしたということでございます。
  195. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これから人事院勧告をどうするかということは大変重要なことであります。大臣、人事院勧告制度というのは、国会で合意した法律で人事院勧告制度をつくり、公務員にスト権を与えない、そういう合意をして立法でつくった機関が決定したことは尊重しなければいけないですね。これは法治国家として当然のことである。それを財政が苦しいからという理由で、御飯の糧である賃金を勝手に切っていくということは好ましくない。これは法秩序を乱して公務員の規律、働く意欲、希望を削減すると思うのです。ですから、どんな苦労をしても、人事院勧告が出て閣議で決めたら、大蔵省は速やかにそれに対応した財源をひねり出す、その姿勢と決意を大蔵大臣は持たねばならぬと思いますが、いかがですか。
  196. 竹下登

    竹下国務大臣 人事院勧告制度というのは、これは制度が、要するに労働権の代償であるといたしましても、きちんと存在しておる限りにおいては最大限尊重していかなければいかぬ。だから、昭和四十五年から完全実施をいたしまして、そして五十六年までは完全実施をした。五十七年以後今日に至っておる段階では、まことにそういう誠心誠意最大限尊重しながら、諸施策との調和の上に立ってぎりぎりの結論を出して今日に至っておるわけでございますから、あらかじめことしは半分ぐらいやりますとか、そういうことを言うべき筋のものではなく、あくまでも完全実施に向けての最大限の努力をするというのが大義名分であらねばならぬ。したがって、前回、今ちょっと見ましたら、幹事長・書記長会談で触れられておるのはどうも仲裁裁定でございますので、必ずしも――あるいはきょう触れられたかもしれませんが、先般の分には書いてありません。  それはそれとして、官房長官がお答えしておりますのにおきましても、あのお答え議論するときも随分我々も悩みました。最低限ここまでは、ことしよりは余計考えておりますよということをにじみ出せば、にじみ出し方によっては不完全実施を宣言しておることにもなるではないか。したがって、非常に苦心した作文をつくって官房長官の見解か何かを発表したと思うのでございますが、やはり制度が存する限り、それを最大限に努力するという基本姿勢はあくまでも貫いていかなければならぬ。その場合、財源というものを抜きで閣僚会議で決まるとも思いませんけれども財源等についても、それらを含めて財政当局としては最大限の努力をするという根本姿勢そのものは、結果としてできない場合でも、貫いていかなければならぬ課題だというふうに思っております。
  197. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今、平澤次長の、不用額、税収増、そういうもの、過去においてはあるいは赤字公債もやったことがあるが、そういうことで手当てした。私もいろいろ今までこういう問題にかかわってきた政治家の一人として、ことし余り災害がなければいいな、予備費が災害に食われないようなそんな天候が続いてくれればいいな、予備費のうち一千億か一千五百億が人事院勧告に回せるようならば幸せだな、神に祈るような気持ちで私は今天気予報を聞いている一人なんであります。だから、こういう財源をどうひねり出すかということを本気で真剣に大蔵省は今からいろいろ対応策を、あれもこれもという対応策をひとつ考えておいてほしい、そういう希望を申し上げておきます。  それから、きょうは梅澤主税局長、久しぶりでお顔を拝見いたしました。間もなく国税庁長官に行ってしまうようでありますから、きょうは一問だけあなたの声を聞いておきたいと思いますが、ことしの日本のGNPが六・一%から名目七・一ぐらいに、いい方に進んだ場合、税収はどのくらいふえるか、こういう質問であります。慣例によると、そんなことはわからない、大蔵省大蔵省で税金は個々に積算しているので、GNPが一%ふえたからといって税収がふえるとは限らないと答えるかもしれないが、そういう答えでない、やはり一%ふえたら税収はこういう好転をして、このくらい法人税と所得税がふえるかもしらぬという数字が出せるのだと思うのですが、そこらをちょっと梅澤さん、答えてみてください。
  198. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 六十年度の税収は、委員御案内のとおり、実は六月から本格的な税収が始まるわけでございますから、今の時点で六十年度の税収についていろいろ議論するのは非常に難しい段階でございますけれども、昨日の委員会で申し上げましたように、五十九年度の補正後予算の税収がほぼおかげさまでそう狂いのないところにいくということになりますと、それを土台に六十年度の税収を見積もっておりますから、今の時点では私どもはやはり予算どおりの推移をたどるだろうということでございます。  今後の経済の推移がどうなるかというのは、年度を追いましていろいろな情報も入ってまいりましょうし、税の面でいいますと、とりわけ問題になりますのは法人税収でございますけれども、九月期決算、三月期決算がどうなるかというのは今の時点ではなかなかわかりにくい問題でもございますが、ことしのマクロの名目GNPの伸び率に対しまして、私どもは税制改革による増収を除きました、いわゆる経済の実体に即した実力の自然増としてはかなりのものを見込んでおるというふうに考えております。  そこでGNPといいますか、経済状況政府経済見通しよりも上向きになった場合に、委員の仮定されるところで、例えば名目GNPが一%上がったらどうなるか。これは実は私どもお答えすることを先取りされたわけでございますけれども、私どもの税収見積もりというのは個々の税目によって積み上げますということでございますが、非常に機械的に計算をいたしますと、私どもが見込んでおります六十年度の自然増収のことしの政府見通しに対する弾性値が一・一強でございますので、非常に機械的に計算いたしますと、仮にGNPの名目成長率が一%ポイント上がるとすれば、見当としては四千億という数字が算出されるわけでございます。
  199. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次にテーマを変えますが、大蔵大臣国債問題で今度の整理基金の法案との関連でありますが、短期の借換債の発行をやるわけであります。短期預金を集めているのは普通銀行でありますが、したがって普通銀行とかなり競合するわけですね、短期借換債が。銀行が余り困るようなことで大蔵省がどんどん発行しても困るし、そこらの調整というのはどんな仕組みで、どんな指標が出たときに借換債を出そうと考えているのか。これはちょっと話が細か過ぎるから銀行局長ですな。証券局長かな、理財局長か。
  200. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 御指摘のとおりでございます。短期の国債につきましてはまだ発行方法は決めておりませんが、仮にこれを市場公募いたすようにいたしますと、自由金利商品になるわけでございます。したがって、現在三カ月とか六カ月とかいうふうな短期の規制商品である預金でございますね、これとかなり競合する。それから民間金融機関が扱っております自由金利商品でございますところのCDであるとかMMC、これは一カ月とか六カ月とか短期の商品でございますが、これとも競合するということでございますから、そういう既存の金融商品に余り大きな影響を与えるのはまずいし、それからまた資金の流れを急に変えるようなことがあってもこれはまずい。金融市場秩序の問題からいってもぐあいが悪いわけでございますから、その発行量とか発行の時期等につきましては、これは十分そういう短期の金融市場あるいは既存の金融商品の動向を見守りながら、妥当な時期、量を選んでまいりたい、こう思っております。  今御指摘のように、何か具体的なルールといいますか、そういうものがあるのかという御質問に対しては、なかなかそういう具体的な基準みたいなものはあらかじめ設定することはできないんじゃないかと思いますが、ただこの問題は歳入債でございますので、やはり発行当局といたしましてはできるだけ長期の安定した、しかも低利の資金をそういうもので調達していくのが筋だと思いますので、そういう中長期のものを出そうとすると非常に金利が高いとか、いきなりたくさんの中長期債を市場で消化するというのは非常に難しいような時期に限りまして発行していくことになりますので、余り短期債で転がしますと火の車みたいな国庫の状態になりますので、そこは慎重に対応してまいりたい、こう考えております。
  201. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 オープンマーケットの問題は銀行局長に聞いた方がいいのですか、やはり理財局長でいいかね。――短期のオープンマーケットが日本の場合、アメリカやイギリスと比較した場合に成熟度が非常に低い。まだ完全な金利のオープンマーケットというのは、日本ではかなりおくれていると私は思うのですね。そういう問題の制度的な改善やあるべき姿というものを、大蔵省として積極的に指導しなければいかぬと思うのですが、その辺はどうなっておるのですか。
  202. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、日本のオープンマーケットにつきましてはまだ成熟度が足りない、これは確かでございます。現在日本のオープンマーケットの対象となっております金融資産につきましては、現先それからCD、あと外貨預金のようなものを含めて考えているわけでございますが、問題点が二つございまして、一つは市場におきます商品が少ない、種類が少ないということでございます。この点につきましては、この六月から円建てのBAをオープンマーケット商品として育てていくということにしているわけでございまして、これが円の国際化等にも資していくことになるだろうと期待しているわけでございます。  もう一つの問題点は、市場の仲介者の拡充がまだ不足しておる。御承知のとおり、従来は現先につきましては証券会社、CDにつきましては銀行の関連会社及び短資会社が扱っていて、お互いに重複した扱いがなかったわけでございますが、この六月から証券会社がCDを取り扱うようになります。また銀行の公社債のディーリングも六月から本格化いたしまして、現先が取り扱えるようになる。来年の四月からは円建てのBAにつきましても証券会社の取り扱いが行えるというように、市場仲介者の機能が今後拡充していくことになるだろうと思っておりますので、こういうことを見ながらオープンマーケットも徐々に成熟していくものであろう、こういうふうに考えております。
  203. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、そういうオープンマーケットの金利の動向を見ながらできるだけ安いときに短期国債を買ってもらう、これがねらいでありますが、これは難しい計算になると思うが、こういう法律をつくることによって国民の金利負担国債の利息ですね、どの程度節約できると思うかね、理財局長。大ざっぱな、これは本当の感じだと思うけれども、うまく運用しないと同じことになってしまうから、ここのところはどうですか。うまく活用して、本当に利子がそれだけ幾らか安くなるという確信があるか、やってみなければわからぬという答えになるのか、その辺はいろいろ事務当局で議論していると思うのですが、どうですか。
  204. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 大変難しい問題でございますが、一般論的にいろいろお答え申し上げてみたいと思います。  一つは、短期債へのニーズがございますから、短期債を出すことによりまして、長期と短期を比べますれば短期の方が一般的には安い、低いわけでございますから、そういう意味でまず中長期で出すよりは短期で出した方が金利負担が少なくなるのではないか。例えば長短金利差のところを見てみますと、一つは長期国債の流通利回りと二カ月物の手形の金利を比較してみますと、例えば五十六年九月で見ますと一・九%の差がございます。それから五十七年九月で一・五二%、五十九年五月には一・六五というふうにかなり開きがある。ただ、最近は長短の金利が非常に接近しておりまして、五十九年十二月で見ますと〇・一%にまで縮まっている。ことしの三月では〇・四四%ということでございますが、しかし、いずれにいたしましても短期の金利の方が低いということが言える。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕  それから二番目には、中長期の借換債を発行するまでの間のつなぎが可能になるわけでございますから、仮に満期到来債が特定月に集中している、そのときに中長期債を平準的に発行することが可能になりますね。そういうようなこともございまして、それによる金利の軽減効果があるのではないだろうか。したがいまして、中長期債の発行時期を調節できる。これは金融が逼迫しまして、長期金利水準が一時的に極めて高い水準になったような場合には、こうした高い金利水準での利払いが長期間固定されるような中長期債を発行するよりは、むしろ一時的に短期債でつないでおきまして、そして金利が下がった段階で中長期に乗りかえるというようなことが可能になる。  例えば過去十年間の発行条件を見ますと、数カ月の間に国債の金利が一%前後動いているケースが間々見られるのです。例えば五十二年四月が八・〇だったわけですが、八月のものは六・九に下がる、それから五十七年の十一月に八・〇だったのが五十八年一月には七・五に下がる、さらに五十九年八月に七・三だったのが六十年一月には六・五に下がるということで非常にそういう時期があるわけでございますが、その辺はねらえるのじゃないかと思います。  それからもう一つは、短期の借換債という新しい消化方策の導入によりまして、私どもに非常にいろいろな資金の調達手段を与えていただくことになるわけでございますから、国債シ団との交渉といいますかバーゲニングパワーといいますか、そういうものが私どもとしては少し強くなるんじゃないだろうかというふうなこともございまして、それによりまして財政負担の軽減の効果も出てくるのじゃないだろうかというようなこと、あれやこれや、これをうまく使えばかなり負担が軽減されるのじゃないかなという気がいたします。
  205. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは国家、国民のために上手な運用を図って、金利の軽減に大蔵当局としてぜひ努力してほしい、そういう要望をしておきたいと思います。  理財局長、これは財政法だからだれかな、年度を超える前倒し発行は、今の財政法の単年度主義にほんの一部分だけれども穴をあけることになるのですね。こういうことは財政法学者なり財政法理論からいって財政法に余りなじまない、違法とは言わぬが好ましくない、そういう措置と認定していいでしょうか。
  206. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今委員がおっしゃいましたいわゆる会計年度独立の原則といいますのは、財政法の第十二条に規定がございまして、「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。」ということが規定されているわけでございます。  それでは、十二条のこの独立の原則はしからばいかなる例外も認められないのかというと、そうではございませんで、合理的な理由があれば認められているわけでございます。現在におきましても幾つか例外がございまして、例えば歳出予算の繰り越しがございます。これは明許繰り越し、事故繰り越しとか継続費の年割り額の逓次繰り越しといったようなものがそういうものに当たる。それから収入面では、過年度収入というのは会計法九条で認められておりますし、前年度剰余金の繰り入れも財政法四十一条で認められております。それからあと歳出の方でございますけれども、過年度支出が会計法二十七条で認められておるというように、合理的な理由があればこういうことも認められるということでございます。  それでは、今回法案でお願いしております年度超えの前倒し発行、これには合理的理由があるのかどうかということになろうかと思いますけれども、先ほど理財局長の方からも答弁がございましたように、合理的に国債を借りかえていく、かつ有利に借りかえていくという場合にはどうしても前倒しが必要なのではないか。例えば五月に大量に国債の償還が参ります。そうしますと、その財源のための借換債の発行が必要である。ところが、四月、五月は割合金融が詰まっている可能性もあるわけでございまして、そうなりますと、金融が比較的緩んでいる前年度末、二月とか三月とかというようなときに、有利にある程度発行しておく、そして四月、五月も発行して、徐々に財源を積み上げていって五月の大量償還に備えるということも必要であるわけでございます。そういう意味から、今回この年度超えの前倒し発行という規定を入れているわけでございます。  ただ、そういうことで、会計の独立の原則に、言うならば例外を設けるわけでございますので、限度額は予算をもって国会の議決を経るという歯どめも設けているわけでございまして、そういう意味での制度的な裏づけも入れているということでございます。
  207. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 年度超え前倒し発行をする場合に、幾ら特別法をつくったといえども財政法を余り紊乱してはならない、そのために限度額を設けた、六十年度のこの法律では大体一兆円という限度でやってみたい、こう言っておるわけですね。その一兆円という額を決めた根拠は何ですか。
  208. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 国会から一兆円の枠をちょうだいいたしているわけでございますが、実は六十一年度四―五月の償還額が三・五兆円あるわけでございまして、これを三カ月で平準化してみたら、三分の一いたしますと一兆二千億円程度になる。それからまた、四―五月分の償還額に六十年度末の基金残高を考慮に入れて平準化いたしますと八千億円程度になる。それから、過去の一―三月の月平均の国債発行額が、毎月大体七千億ずつ出せておるのでございます。そんなこともございまして、それらを総合勘案して一応一兆円の枠をちょうだいいたしたということでございます。
  209. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、理財局長、借りかえの金額が大きくなった年、六十二年、六十三年、六十四年の借りかえ額はもう大体わかっておるわけですが、この一兆円がさらに大きくなる可能性というのはあるのかないのか、これはどうですか。
  210. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 今申し上げました基本的考え方に従いまして六十一年度、二年度ということを考えてまいりたいと思いますので、その翌年度の借りかえといいますか償還額のいかんによりまして数字が動くことは考えられると思います。基本的な考え方は今申し上げましたようなことで対処してまいりたい、こう考えております。
  211. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、今の金額を引き伸ばすと六十二、三年は大体どのくらいになりますか。
  212. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 六十一年度は、先ほど申し上げましたように、四―五月で三兆五千億でございますが、六十二年度は三兆一千億、六十三年度が三兆六千億、六十四年度が三兆七千億というような数字でございまして、あるいは大体似たような感じかなと思っております。
  213. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 先ほど米沢さんも質問をしましたが、電電株の問題について大蔵大臣に少し御意見を伺っておきたいと思います。  電電民営化の際に逓信委員会あるいは予算委員会で大蔵大臣も随分答弁していると思うのです。いろんな角度から質問をされて、その都度、十分検討する、十分検討するという言葉が議事録にいっぱい出てきているわけです。そこで、逓信委員の諸君は、逓信委員会の小委員会をつくって、小委員会できっちり詰めなければこの法案を採決することは好ましくない、こういう意見が党内にも大変強くございます。  そこで、死んだ子の年を数えるようで大変恐縮な議論になるのでありますが、電電会社が今五兆円ちょっと超える加入者からの電電債という借金を持っているわけです。五兆六千億くらいあったのですが、ことしまた償還したから五兆ちょっとらしいのですが、こんなに借金を抱えたまま民間移行は好ましくないから、できるだけ電電債の償還に一部を充ててほしい、大蔵省がみんなそっくり公債財源に埋めちゃうのは虫がよ過ぎるんじゃないか、国民共有の財産、加入者のつくった財産なんだから、加入者に借りがあるんだから返す方に回せ、こういうことを言ったら、竹下大蔵大臣なかなか賢いですね、借金国民の共有借金だから、借金の方へ充てるのも共有財産の配分と同じ意味じゃないか、だから借金の方へ回すんだという答弁が議事録に出てくるのであります。そういう議論を逓信委員会でだあっとやってきたものですから、党内にも不信感があるわけです。  したがって大蔵委員会は、そう早々とこの法案の採決などに応じては困る、この点をきちっと詰めろ、こういうことが部会や合同部会やそれぞれの筋から強く要請をされて、理事の二人も大変苦心をしてここまで審議が進んできたのでありますが、今となってはそういう議論はもう証文の出しおくれじゃ、どうにもならぬ、こうお答えになるのか、これからその点は一部何らかの形で考えよう、こんな御答弁がいただけるのか、この点ひとつ確認をしておきたいのであります。
  214. 竹下登

    竹下国務大臣 今御議論がありましたように、私も大蔵委員会あるいは予算委員会、逓信委員会あるいは連合審査会もあったかもしれませんが、出かけました。それで、議論の環境は、財政の立場からの議論というのは、どちらかといえば、国民共有の財産であるならば、国民共有の負債ということも検討に値するというような角度が多くて、それから逓信委員会サイドの御議論はどちらかといえば、これはただ勘の問題でございますけれども、労使協調して今日ここまでやってきた、世界に冠たるものですから、したがってその努力ということからすれば、やっぱり会社経営の中で常識的に考えて、旧債務に充当すべきだ、こういう感覚の議論が多かったと思います。  私も非常に言葉を選んでお答えをしておりましたが、会社経営の論理からいえばそれはよくわかる話です。が、しかし、結論からいって、今お願いしておりますように、予算編成のぎりぎりの段階で、売っていいものは国債整理基金、売っちゃならないのは産投会計、こういうふうな結論に達したということでございます。  私自身もそのときに考えましたのは、いわば民間活力ということが前提にある。で、そうして新規に参入する可能性のある、仮に第二電電とか第三電電とかというのがあり得たとしましたら、この人たちは、初めから自己調達の資金で全部に対応していって競争原理が働いていく。そうすると、政府保有ということで、無償譲渡、全額譲渡ということになった限りにおいては、補助金を出すということと同じ論理につながる。そうなると、この問題はやっぱり基本的に債権、債務両方を旧電電公社から引き継いでおるわけでございますから、そうすると、やっぱりその中の運営対応さるべきものであって、この株の売却収入をこれに充てるということは、これはやっぱり適当でないと言わざるを得ないという結論に到達をしたわけでございます。  それで、確かに会社経営者、そしてその労使の立場から言えば、その議論は非常に有力というか、多数意見としてあったということを十分承知の上で議論した結果、今お願いしているような形にしたということが、素直な現状の経過のお答えになります。
  215. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ただ、まことに残念だったのは、あれだけ逓信委員会なり各委員会で議論を積み上げてやったものを、全然相談なしに幹事長のところで、ある日目を覚ましてみたら、突然新聞に、売却益は国債償還にという発表になったのですね。これがいささか皆さんかちっときたのであります。そういう点、もう少し相談、時間的な協議、そういうものをもうちょっと尊重してほしかったな。もう今となったら、法律ができちゃったのだから、民間の株式会社に国有財産を売却したものを補助金なんか出せるかという議論になりますが、あの当時はまだ民間会社になってなかったのですから、あのときに少し詰めさしてくれる時間を与えてくれれば、別な法律にあるいはなったかもしれない。そういう点、今までのいきさつから言っても、大変親切さを欠いた処置だな。私も、いささかどうも竹下大蔵大臣、我々をちょっと無視をしたな、そういう感じでなりません。  しかし、これはもうこういう状態になってきちゃったわけでありますから、できることなら、今国会で電電株の問題だけは一応法案から削除して、これから一年間の間に、株はまだすぐ売るわけじゃないのだから、そういう時期に法律をつくってもよかったのじゃないのか。我々は、まだ理事と相談してみないとわかりませんが、修正案を提案して、電電株を三分の二全額国債償還に充てるという項目だけは削除したい、党国対も党の部会もそういう意向をずっと持っているわけなのであります。四日が採決という、もう目前に迫った段階でありますので、この問題についてやはり大蔵大臣として、もうそういう考慮の余地はない、こうお答えになるでしょうか、それともそこまで、社会党が修正案まで用意して考慮を求めるというならば、この国会でこの法律の電電分だけは外しても差し支えない、ほかの部分は大変重要な処置が絡んでいる法律ですから、これを廃案にするとか法律自体をだめにするということはできないものですから、電電株の問題だけでもひとつもっと先に延ばすことはできないのか。そして十分話し合って、株を売却する前までにはもちろん処置をするが、そういう措置はとれないかどうか、その点をひとつ確認をしておきたいのであります。
  216. 竹下登

    竹下国務大臣 確かにあの法律が、俗称電電方式という言葉ができたぐらい、参議院の段階で通常国会で継続審議になり、そして閉会中審査があり、そして常会、この十二月でございますから、その間慎重な答弁に終始し、そして予算編成というのが十二月ですから、間もなくやってきたから、その決め方が早過ぎたということに対しての不信感という言葉は私の方から言うべきでないのでございましょうが、そういう批判があるということは、十分私も聞いております。しかし、予算編成の過程でぎりぎりの議論として、各方面の意見を聞きながら決めたことでございますから、この原案どおり成立することを、私どもの立場は心からこれを期待をしておるということでございます。  この問題は、経営に携わった労使双方からの事業経営者としての感覚からすれば、それはよく理解のできる話でございますけれども、民営に移管した目的が、民間活力というものに期待するという点においては、やっぱり国が一方結果として助成する形というものにした場合には、非常に整合性がなくなっていくんだな。そのかわりじゃございませんけれども、いわゆる政府の干渉というものを可能な限りなくそうということでやってきたわけでございますから、修正案の御趣旨は、今の御意見で、それなりに私なりに理解できますが、それに対して、私の立場から言えば、重ねての協議の結果出したものでございますから、この原案どおり通過成立することを期待しておるというのが、現状の正しいお答えではないかというふうに考えます。
  217. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 先ほど沢田理事に、皆さんの質問の中で大蔵大臣どう答えていたかなとちょっと聞いてみたのですが、大臣は、残された方の三分の一の配当金で科学技術の振興に使える、その金をNTTが今後補助としてもらって使えるようになるから、そういう点で幾らか埋め合わせはつくのじゃないかというようなこともお答えになった。しかし、あれは株式会社ではだめなんでしょうね、あの補助の対象は。ですから、株式会社から別会社に研究部門だけ分離しなければ使えないのじゃないかと私は理解をしておるし、また、仮に分離しないでそういう補助金をもらうと、ノーハウを表に出さざるを得ないという問題がまた出てきて、国際的なあれだけの技術を持った電電が、ノーハウを外へどんどん流出をさせてしまうというのは、株式会社として耐えられないという問題もこれあり、今度の産投会計の方から補助金をもらうということは非常に難しいと私は考えておる。そのためにこの議論にちょっときょうは固執をしたわけなんであります。  確認しておきますが、今のままのNTTの株式会社の研究部門でも、今度は補助金は出せるのですか。そして仮に出せるとして、どういう基準で出すか知らぬが、あの二百億、三百億の配当金しか集まらない機関で、そんな補助金、大した金額出るんですか、どうでしょう。
  218. 竹下登

    竹下国務大臣 これも閉会中審査の際から問題がありまして、要するに、昭和二十七年でしたか、逓信省という業務が分けられて、電電公社、それから一部コンピューター部門が商工省、通産省へ移っていって、それぞれの分野で研究所が、その限りにおいては三つ存在しておる。そこで、最初はとにかく大変な新法人をつくって、世界じゅうの頭脳を吸収して新しい組織をつくりたい、こういうような意見でございました。その辺は私、専門的知識がありませんのでいろいろ調べてみたら、世界的頭脳が結構電電の研究所なんかにいらっしゃる。ははあ、なるほどなと思っておりました。  そこで、最終的に産投会計を通じて、今度できる機構は、これは私の所管ではないんだな――今度できる機構は通産、郵政共管でございましょう。それで、それの使い方なんかには余りのこのこ大蔵省は入っていかぬでいいなと思って見ておりましたが、正確な答えがあろうかと思いますが、たしか、あれは補助金はない組織だと思います。融資だったというふうに思っております。そこで、沢田さんにもお答えしましたのは、恐らく法律的な可能性としては今度直接融資ということもあり得ると思いますが、私は、今大変な頭脳の集団がいろんな基礎研究的なものをされるところに直接、間接のいい影響を及ぼすことは期待できるんじゃないかな。したがって、経過的に見てそういう印象で、言葉を選んでお答えをしておったわけであります。
  219. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 主税局長帰っちゃったな。だれか主税局おるかな。いないと大臣が苦労するぞ、これは。だめだな、大蔵大臣しか呼んでないときはちゃんと呼んでおかないと。文書課長責任だぞ、これは。大蔵大臣――いいよ、今から呼んでも間に合わないですよ。大蔵省から来るまでに時間になっちゃうよ。  電電が民間に今度移行することによって、商法の適用、株式会社のすべて、貸借対照表、損益計算書、従来なかったものを全部掲上した決算書をちゃんとつくらなければならない。そういう仕組みになって、私これ大臣にひとつ提案とお願いをしておきたいのは、電電しかない設備というのがあるわけですね。他の企業にない、NTTしかない設備というのがかなりあるのですね。今までの交換機なんというのは耐用年数十七年なんという、この変化の激しいときに十七年なんというのですね、耐用年数ちょっと調べてみたら。この際、電電プロパーの機械設備、そういうものについての耐用年数をやはり少し短く見てやる。これは大変な設備があるわけですね。これひとつ主税局で他の企業にない設備、機械についての耐用年数をもう一回見直してやろう。この間、大蔵省で決めた案をちょっと見せてもらったのですけれども、これはまだちょっと長過ぎるな、個々のを見ると。ですから、他の企業にないものだったらそれだけ短縮してやるということは、そんなに広がらないんだから、他の企業に、電電プロパーの問題だから。そういう点をひとつ検討していただけるかどうか。  部屋へ持ってきてあるのですが、ここへ持ってこなかったのです。私は全部品目別に調べてみたのであります。これは少々考慮してやってもいいんじゃないのかな。耐用年数は別に法律じゃなくて省令で決めているんでしょうから、大蔵省が決めればできることなんですね。突然主税局長がいないところで大臣にこれを伺って失礼だけれども、今後ひとつ検討して、公の場で答える時間が――私もう質問台に立てないかもしらぬから、大蔵大臣から、後で詰めて、もしも結論を出せたら連絡をしてやるという、そういう気持ちになっていただけるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  220. 竹下登

    竹下国務大臣 税の問題、別にふなれでございましょうという意味じゃございませんが、常任顧問ですか、福田幸弘氏が税の常任顧問で行っております。それで、これはまさに税の大家でございますから、いろんな御指導をなすっておるんじゃないか。常任顧問といえば、指導じゃなく、中でおやりになっておるだろうと思います。  ただ、要するに耐用年数の問題というのは、いつも言いますように物理的寿命と陳腐化ということで、政策税制の上で検討すべきじゃない、こういう論議があるわけです。それと、これは実態を知らないままの答えになりますが、いわば新しい参入者があった場合とのバランスの問題もあるかもしれません。いわば極端に耐用年数を短縮した場合におきますところは、言うなれば払うべき税金を払わなくて、それが措置されたのは逆に租税歳出と同じ意味じゃないかという議論も存在しておりますので、その辺私も実態がわかりませんので、物理的耐用年数とそれから陳腐化の程度でどういうふうな作業が行われるものか、十分検討さして経過を御説明に行かせます。
  221. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もとの国税庁長官、抜本的税制改革の方向など、なかなかいい提言をいろいろ福田さんも出しています。第二会館に来ると、昔の知り合いなものだから、やあと言って部屋にも寄るのでありまして、いろいろ電電の顧問としての立場のお話なども何回も私やっております。しかし、大蔵省という役所はなかなか厳しいところで、現職の上官には非常に従順でありますけれども、やめた人に対してはなかなか厳しい。これはいいところでもあると思うのですね。余りやめた者にまでサービスしてずるずるやったんじゃ国家の機能がおかしくなるから、いいことではあるけれども、なかなか言いにくいらしい。やめた人にいろいろ聞くと、なかなか言うことを聞かぬのだそうです。いずれにしてもこれは公正だな、不公平にはわたらないな、プロパーの設備のことを言っているんですからね、ほかに及ばない問題を私言っているわけですから、そういう問題の検討をぜひしてみてほしい。  なぜ言えないかというと、電電が言えないのは、初年度からできるだけ黒字を出さないと大蔵大臣に申しわけないと思っているんですよ、経営者は。だから、経費を余り見積もるようなことを要求すると株の値段が高く売れない、やはり一割配当を目指して何とかもうけないと、株はいい値で売れないぞという気持ちがあるんですよ。そうすると、財政再建に役立てようとする政府の意図が貫徹できないと、私率直に社長とも副社長とも話し合ってみたけれども、そこまでいろいろ思っているんですね、国家のことを。僕は立派だと思ったですよ。先生たちの御意見大変ありがたいけれども、とにかく初年度一割目指して配当出さないと申しわけないんだ、だからあれもこれもという、これも経費、これも落としてくれというようなことを積極的に言えない立場があるんです。なるほど、民間の社長だったらそれでなければいかぬという気持ちで、私も大変感心をした場面を経験したことがあるのであります。  そうなると、なおさらこう見てやりたいなという感じになるんですね。それが私は人の情というものだと思うのであります。どうも創政会は人情がないなんて、だれかがこの間演説ぶったけれども、人情の機微を知らぬなんということがテレビで映りましたけれども、いずれにしても「智に働けば角が立つ。」で、情もほどほどにないと政治というのはうまく運営できないのじゃなかろうか、そんな感じもするので、ひとつその問題も大蔵大臣に検討を願いたい。  さらに、電電株の売却をいつするか。先ほど米沢君からもその質問があって、株主は一人大蔵大臣、株主総会は一人で開ける、そういうものでありますから、これはなかなか国民が注視していますね。株価が安いときに売れば、もっともうかるものを大変安い値段で売っちゃったなと言われるし、今度は余り高く売ると、関連企業や持ち株制やいろいろな問題を考慮すると、これも高過ぎたなという非難を受けるし、ここのところはなかなか難しいですね。大蔵省は現在の段階、割り当てでやるか競争入札でやるか、それとも随意契約でやるか。方法は、今まで化学ゴムの会社や国際電電や日本航空やいろいろな例があるから、大蔵省に今どんな段階かと聞くと、そういう資料を全部持ってきて、A、B、C、三つの方法が過去においてありました、さて電電はどれにするんだ、いや、それは高度の政治判断であります、私たちは過去の例をきちっとつくって大蔵大臣に進言するだけであります、じゃいつごろ決めるのか、それも高度の政治的判断であります、目下そんな段階なんですね。理財局長、目下そんな段階ですね。それ以上進みましたか、検討は。
  222. 中田一男

    ○中田政府委員 まさに武藤委員御指摘のとおりでございまして、私ども一生懸命勉強いたしております。これから慎重の上にも慎重を期して検討してまいりたいと考えております。
  223. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこで大蔵大臣、先ほども、決算が出ないうちにどういう値づけをするかなかなか難しい。商法でいけば決算を見て、その決算に基づいてオープンで、公正に公平に株価というのは形成しなければならない、そういう仕組みになっているわけですから、決算が出るのは恐らく来年の六月。四月が新会社の年度初めですから、三月に締め切って、第一回がきちっと報告されるのは六月でしょうね。六分配当になるか一割配当になるか。これは一割配当になると、最初からかなりのいい値づけになると私は思いますね。しかし、これが六分だと、電電と言ってもやはり大したことないぞ、これはそんなにいいものじゃないぞということになると、株価はやはりかなり低いところで決まる。  じゃ大蔵省は、今の純資産と資本との対比で考えると、今の純資産額を株価に評価したら五万円株が二十一万円ぐらいですか。今の純資産との対比で、株価は、売れればいい、収入は少なくとも早い方がいいのだ、そういう選択をするか、いや財政再建上できるだけ収入がうんとふえる段階で売った方がいいんだと選択をするか、これはひとり大蔵大臣の判断にかかるわけですね。ですから、そういうことを考えると、拙速にとらわれて国家に損を与えたことになるし、上手にやれば国家にうんと利益をもたらした大蔵大臣ということになる。  そこで、売却できるのは早くて大体いつごろ。通常でいったら来年度予算に計上することはちょっと難しいんですね。専門の論争をしたら来年度予算収入に見積もることは大変難しい。諸般の、証券取引法だの今の商法だの、そういうものを全部一応素人なりに聞きかじった私の最終判断は、難しい。しかし、それをあえて大蔵省はやろうとしているのか、その辺の慎重さはどうなんでしょうか。大蔵大臣、これは大蔵大臣しか答えられないですね。
  224. 竹下登

    竹下国務大臣 たまたま国民の財産が政府の国庫大臣たる大蔵大臣という、株主には大蔵大臣と書いてあって竹下登とは書いてないわけでございますから、せめてもの救いでございますが、それだけに、これはまさにこの間のイギリスの場合でも――私はこれは労使関係を含めて、日本のかつての電電公社ほど世界一ではないと思っております。向こうが悪いという表現は非礼に当たりますから、世界一ではない。それで、あのことについても、イギリスの議会なんかのことを聞いておりますと多大なる国損を与えたというような批判もありますだけに、それはよほど慎重であらねばならぬと思います。  しかし、民営化したというのは、可能な限り早く株主が参加すること、これが第一義的に、お金の問題とは別に一つ存在しておるわけでございますし、したがってどういう値決めにするのか、あるいは値決めなしで計上できるのかというようなこともやはり勉強はしなければならぬ。値決めなしというか、簿価なら簿価あるいは資産評価なら資産評価だけで計上することが可能かどうかという問題も勉強してかからなければならぬということで、今中田次長の総括的な答えのごとく、まさに慎重の上にも慎重な対応で、民間の有識者、それから国会でもこれほど論議があっておるわけですから、そういうことを全部まとめて判断しなければならぬ課題だというふうに、その重要さは十分認識しておるつもりであります。
  225. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それから大臣、もう既に御案内だと思うのでありますが、今、日本企業は、株主安定工作あるいは経営参加意識、そういうようなものを拡大していこうということで、生産性を上げる上でも労使の安定を図る上でも、従業員持ち株制度というのを大きな企業でもかなり取り入れているわけですね。電電は労使とも持ち株制度をぜひやりたいという意向のようです。電電が持ち株制度をやりたいという場合に、大蔵大臣としては賛成か反対か、好ましいことか好ましくないことか、どうお考えですか。
  226. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる持ち株制度、経営参加意識、そして安定株主対策、日本の名立たる大企業の大変多くの法人でそのことが行われておる、それは十分承知しております。また、持ち株組合をつくるべきだとかつくるべきでないとか、それもやはり干渉の範囲になりますので、政府は言わぬ方がいいと実は思っておりますが、そういうことが我が国の大企業の趨勢としてあり得るということは私も十分理解しております。  ただ、難しい問題は何かなということになりますと、限定した従業員、会社であっても、いわば特定の者に特に値段を安くということに対する国民感情、そうしたものもございますので、それらに対しては、私がかくあるべきだ、こうすべきだと言うべき問題ではなかろうと思いますけれども、今後会社において十分慎重に検討される課題であろう。そして、そういうことは日本の大企業の多くで採用せられ、悪い結果が出ていないという認識は私も持っております。
  227. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今の法制度から見れば、持ち株制度というのは国家権力で制限したりいかぬと言うことはできないのですね。これは労使の話し合いで、協約で持ち株制というのをきちっとつくって、定款をつくって会員の希望者だけが全部入れる、そういう仕組みですから。問題は、今大臣がおっしゃったとおり、値段をどこで引き受けるのかが問題なんですね。イギリスのように、割り当て制にしてうんと安い値で分けちゃったから後で国家に損害をかけたという問題が起こったわけですから、そこらは恐らく大蔵省も十分検討をしてくれるんだろうと思うのですが、国家権力で持ち株制度そのものの否認ということはできないのですね。これは当事者でできるわけです。問題は値づけのところをどこにするか、ちょっと色をつけてやるか、つけてやらないかという問題になってくると思うのであります。これは後でまた竹下先輩のところへお邪魔をして、いろいろじっくりひざ詰めで、どういう案がある、こういう案があるということはひとつ私の意見も聞いていただいて詰めを少しやらしてもらいたい、こう思います。  それから、中田次長、あなたこの間ここで信託の問題で、土地信託、国有地や公有地、市町村のものを信託にこれからやることを法的に整備したらどうかという私の質問に対して、あの質問の結果、理財局長にちゃんと報告しましたか。
  228. 中田一男

    ○中田政府委員 理財局長にも報告してございます。
  229. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 理財局長は何と答えました。
  230. 中田一男

    ○中田政府委員 あのときも私ども、法制面とそれから実体面と両面の検討を続けてまいりたいというふうにお答えをしまして、そのとおり理財局長に御報告しました。検討を進めてくれ、こういうことでございます。
  231. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その後、日本経済だったか、朝日新聞だったか、業界の諸君が中田次長のところに陳情に行った話がちょろっと出ていました。あなたは、今の法律でできるのだからケース・バイ・ケースでやりたいところがあったら相談に持ってこい、こういう意味のことを言っているのですね。しかし、あのときに法制局がここにおって、法制度上法律を直さなければそういうことはできませんと答えているのです、法制局は。だから、これは法整備をしなければだめなのですよ。それをケース・バイ・ケースで持ってきたら、信託会社のお前らどこをやりたいのか持ってこい、そのときには相談して考えようというのは、ちょっと国会議員のここの議論を尊重してないんじゃないか。理財局長どう思いますか。法律改正しないであの信託、公有地、国有地どんどんできますか。できるならできるとはっきり言ってください。
  232. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 国公有地の民間活用といいますか、活力を導入して国公有地を有効活用するというのは、私ども今国有財産行政の基本にいたしておるわけでございます。そこで土地信託の御提案がある。かねてから私どもも法制局等と検討いたしておりまして、法制局の方の意向では、現在の国有財産法では土地信託はできないということでございまして、私どもその公的な解釈に従っているわけでございます。  ただ、中田次長が申しましたのは、果たして国有地の中で信託をして本当にうまく活用するようなケースがあるのだろうか、国有地を利用して、例えばテニス場を経営したり、何かそれを活用してもうかるようなものが一体あるのかどうか、あるいは例えば事務所なんかをつくってしまいますと、今度三十年して返ってきますときに、また借家権だとか借地権だとか問題がくっついておって、事後において国有地としてなかなか利用できなくなってしまうというようなことがございますので、本当に国有地を使って土地信託のケースあるのだろうか、あるのならば教えてほしい、もし本当にそれが有効に活用できるのだったら法律改正にまで持っていきたい、まずその前段階として、法律改正をする必要があるかどうかの判断として、業界に対してそういうケースがあるかどうかを持ってきてくれ、こういうふうに言ったのじゃないかと思います。
  233. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういうお答えなら私も異存ありません。私の知る範囲では、場所は書かないが、A、B、C、D、E、F、……で既に二十八カ所ぐらい、私のところにはこんなのがありますと、これは国有地ばかりでなくて、公有地、市町村、県、こういうところではかなりそういう希望というものはあるのですね。ですから、この場合には国有財産法と地方関係と両方の改正をしなければならぬのかな、そういう感じがしております。  いずれにしても十分検討をやって、それぞれ業界にケース、ケース持ってこいというような形じゃなくて、ひとつじっくり、法整備をするとすれば将来のためにどういうところを直したらいいのか。我々は我々で、自民党内にもかなり賛成者おります。民社党もおりますし、公明党もおります。私はそういう人たちと一応議員立法できるかどうかという形で検討に入りました。もちろん法制局の知恵もかりて、どういうことにしたらいいかということをこれから数名の皆さんと我々は我々で研究しますから、大蔵省としてもひとつ監督行政機関として、立法府で議論されたことを尊重してこれから準備してほしいと希望申し上げておきます。  まだ二十何分ありますが、実はブルガリアの大統領が今日本に来ておりまして、私もブルガリア協会副会長ということでお会いをしなければならぬ約束がございまして、大変失礼でありますが、――理事、いいですか、あと十五分残っているのですが、十五分はこの次の時間にたっぷりいただくようにして、本日はこれをもって、通告がまだたくさん残っておりますし、待機していただいた皆さんには申しわけないけれども、以上をもって質問を終わります。
  234. 越智伊平

    越智委員長 次回は、来る三十一日金曜日午前十一時三十分理事会、正午委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十六分散会