○石
参考人 一橘大学の石でございます。
現在提案されております三つの
法案に具体的に即しまして、私の
意見を述べさせていただきたいと思います。時間も大分立て込んでおるようでございますし、既に四人のお方が述べられました
意見とおおむね一致しておりますので、以下四点に絞りまして、できるだけ手短に
意見を述べさせていただきたいと思います。
第一点は、
特例債の
発行並びにその
借りかえの仕方についてどういう
意見を持っておるかということでございます。
六十
年度予算におきまして
特例債が五兆七千三百億円
発行されておりまして、前
年度に比べまして一兆円
減額するという目標は達成されませんでした。本来から申しますと、もう一段の
努力をしてこの一兆円
減額を目指してもらいたかったということでありますが、しかしながらマイナスシーリング等々で
財政当局は非常な
努力をしていたわけでございまして、出てきた結果はやむを得なかったのかなという感じはいたしております。
国債依存度が二二・二%に下がりまして、これは
昭和四十年代以来低いわけでございまして、このペースを今後とも引き続いて守るべきではないかと
考えております。
したがいまして、今、六十五年に
特例公債脱却という
財政再建の目標がございますが、これが実行できるか実行できないか非常に難しいところでございます。しかしながら、このスローガンは引っ込めるべきではございませんで、今後の
予算編成の基本的姿勢としてやはり重視していくべきではないかと
考えております。
それから、今
特例債の
償還が六十年ルール、つまり
建設国債と同じようなルールになっておるのですが、これはややアドホックな感じがしないでもございません。と申しましても、現金で一挙に
償還するというのもこれまた非現実的でございます。恐らくこれだけの大量の公債の
償還財源を税で求めることは無理でございましょうし、一挙にこのような公債を現金で返すということは、恐らく
資本市場に大きな混乱を招くことだと思います。したがいまして現金
償還は難しい。といっても、六十年ルールというものを
建設国債に準拠してやるのもいかがなものかということになりますと、やはり
特例債に関しまして何らかの
償還ルールというものをつくる必要があるのではないかなという感じがいたしております。しかしながら、
建設国債と違いまして物的資産を担保にしているわけではございません。したがいまして、六十年といったようなはっきりした年限で
償還のルールをつくるというのは恐らく無理であろうということになりますので、現金
償還と六十年ルールの何か中間ぐらいなことをこれからひとつ持っていくべきではないかと思います。現在
努力規定というのがあるようでありますが、こういうたぐいのごく大まかなルールということで当面しのぐほかないのかなという感じがいたしますが、この
努力規定についても
国会並びに
国民の目で絶えず厳しい監視をすべきであろうと思います。
第二点は、
国債整理基金に
定率繰り入れを
停止しているのをどう
考えるかということであります。
四年間
定率繰り入れが中止になっておりますが、これは
財源難の折、一種の苦し紛れの手段であったかという評価もできようし、あるいはやむを得なかったという評価もできようかと思いますが、やはりこの繰り入れ
停止は今
年度限りでやめるべきであろうと思いますし、また現実が厳しくやめざるを得ないということになるのであろうと思います。本来、筋論を展開すれば、この
定率繰り入れというのは継続すべきであったわけでありまして、そういった意味で、臨時
特例的にやったこの
措置はやはり中止のやむなきに至るだろう、あるいは中止すべきだろうと
考えております。
ここで、電電株の三分の一あるいはたばこ産業
株式会社の株が二分の一
国債整理基金に入るということ、これは
定率繰り入れの問題と無
関係ではないと思います。恐らくこの種の株の取り扱いというのが非常に重要な問題を持ってこよう。売却益というものが将来
国債の
償還に充てられるということが既定の線とは思いますが、しかしあらかじめこれを予期して、そのために
国債整理基金の
定率繰り入れを怠るというのはどうも好ましくないと
考えます。言うなればこの種の売却益は
経済学で申しますとウィンド・フォール・アセッツでありまして、思わぬ資産であり、思わぬもうけでございまして、このようなものに全面的に依拠いたしまして従来の堅実なる
財政運営をかき乱すべきではないという
考えを持っております。電電株等々は
国民の資産でございますから、
国民の借金である
国債の
償還に充てるべきというのは筋だろうと思います。が、これによって
償還計画が大幅に乱されるというのは好ましくない。そういう意味で、この電電株等の取り扱いについては慎重に対処すべきであろうと
考えております。
第三点は、
国債整理基金で短期の借
換債を
発行するのはどうかという問題であります。
今後、大量の公債が短期間に、いっときにどっと
償還されるということが目に見えております。例えばことしの五月には一兆六千億円、十一月には二兆三千億円、六十一年二月には二兆三千億円であり、最大の月といたしまして六十三年五月に三兆六千億円が見込まれているようであります。恐らくこのような短期間に集中いたします公債の
償還は、いっときに出てきたときにかなりの攪乱が起こると思いますので、何らかの平準化という操作が必要であろうと思います。ということは、短期の借
換債を出して 数ケ月前、その前後、その
発行量を調整するということは避けて通れない。そういう意味では短期の借
換債の
発行というのはそのための一つの有力な手段であると思います。
ただ、次の二つの点で注意をする必要があろうと思います。言うまでもございませんが、いかなる場合であっても日銀の
引き受けはよろしくない、と同時に、
発行はあくまで
市中消化、かつ
市中消化のルール、これはもっと詳しく申しますと、
市場実勢を尊重するということでございますが、この
精神を忘れてはならないということが第一点でございます。それから第二点は、今民間セクターにおきます貯蓄超過というのがございますから、急速な格好でクラウディングアウトの問題が当面まだないと思いますが、将来いつ起こるとも限りません。と同時に、民間
金融との競合というのに関しましては十分この短期の借
換債の
発行に関して
配慮すべきだろうと思います。そういうわけで、短期債の期間の設定等々についてはこの点を十分に
配慮して決めるべきではないかと思います。
最後に第四点といたしまして、産投会計に株を入れ、その配当金収入をいろいろな施策に使うということに関してでございます。
ここにも電電の株の残り三分の一とそれからたばこ産業
株式会社の二分の一の株が入り、この産投会計のてこ入れに使われるようでございます。その配当金が技術の研究であるとか日本の産業
育成等に回され、それなりに成果を上げるということが期待されております。従来産投会計は
財政投融資の中で次第にウエートが少なくなり、その活躍がほとんど最近は無視されておりましたが、こういう意味で産投会計を通じての財投のてこ入れというのは、一つの方法ではないかと思います。恐らく
財源難で
一般会計からは潤沢な
資金が回らなくなった部分にこういう形の
資金を使うというのは一つの方法かと思いますが、ただ、
財政投融資全体が今大きな問題となっております。
資金運用部の
国債引き受けの問題もそうでありましょうし、
郵便貯金の
肥大化の問題もそうでありましょう、あるいは財投機関そのものの非効率的な
運営といった問題もあるわけでありまして、こういう面を踏まえまして抜本的に財投を見直すというのが、この産投会計に株の配当を使わせるというときにはやはりあわせて議論すべきことではないかと思われます。
以上四点、手短に
意見を述べさせていただきました。(
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