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1985-05-23 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月二十三日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       加藤 六月君    金子原二郎君       瓦   力君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    山岡 謙蔵君       山崎武三郎君    山中 貞則君       伊藤  茂君    川崎 寛治君       武藤 山治君    古川 雅司君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 澄田  智君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  羽倉 信也君         参  考  人         (社団法人日本         証券業協会会         長)      渡邊 省吾君         参  考  人         (名古屋大学教         授)      水野 正一君         参  考  人        (一橋大学教授) 石  弘光君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十年度財政運営に必要な財源確保を  図るための特別措置に関する法律案内閣提出  第九号)  国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一〇号)  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一号)      ――――◇―――――
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  これより各案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席をいただきました参考人は、日本銀行総裁澄田智君、全国銀行協会連合会会長羽倉信也君、社団法人日本証券業協会会長渡邊省吾君、名古屋大学教授水野正一石及び一橋大学教授石弘光君であります。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、各案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。まず参考人から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただいた後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず最初澄田参考人からお願いいたします。
  3. 澄田智

    澄田参考人 日本銀行総裁澄田でございます。  本日は、財政及び国債発行に関する問題について、日本銀行考え方を申し上げます。  我が国財政現状を見まするに、既に巨額の公債残高を抱えていることに加えまして、引き続き高水準の公債依存を余儀なくされるなど、国際的に見ましても極めて厳しい状態に置かれていると思います。しかも、今後社会の高齢化が急速に進むことが確実であるだけに、財政需要増大の圧力はその面からますます高まってくることが予想される次第でございます。  こうした認識に立ってみまするに、財政弾力性適応力を回復することは、我が国経済の健全な発展を図る上で引き続き極めて緊要な政策課題である、かように存じます。幸い、我が国経済は総体として見まするに現在順調な拡大を続けておりますし、六十年度内需主導の安定的な成長も期待し得る状態であると思われますので、こうした時期にこそ財政再建の基盤をしっかり固めておくことが大切であろう、かように思うわけでございます。  最近、我が国対外均衡に関連し、一層の内需拡大を図ることによって対外黒字縮小を図るべきであるという考え方が提起されております。もとより、内需拡大、内外需のバランスのとれた経済成長ということは、それ自体極めて望ましいことであると思います。ただ、内需振興のために財政負担をさらに重くするようなことにつきましては、ただいま述べましたような財政現状から見まして、政策発動の効果とそのコスト、これを十分に吟味し、慎重に対応することが必要であろう、かように考える次第でございます。  次に国債発行額の推移を見まするに、歳出抑制等を通じまして新規債発行減額がここ数年着実に行われてきておりまして、その点、今までの政府の御努力を多としたいと思います。しかし、六十年度から特例債償還借りかえがかさんでまいりますことでありますので、借換債を含めた国債発行規模は相当大きなものになっておるわけであります。たまたまここ一年ぐらいは、こうした大量の発行にもかかわらず市中における国債消化は比較的順調に推移してまいりましたが、これには、金融緩和状態が維持されている中で企業等借入需要も落ちついているという、最近の金融情勢及び金融政策が少なからず影響していると考えられるわけでございます。しかし、こうした環境が将来にわたって持続するという保証はないわけでありまして、景気拡大に伴って企業資金需要が活発になれば、大量の国債発行民間需資と競合することになりまして、国債発行環境は悪化をせざるを得ない、こういう状態も十分に想定し得るところでございます。したがって、国債の円滑な市中消化確保するためにも、できるときに国債発行量を極力圧縮しておくことが必要である、こういうふうに思うわけであります。  国債を大量に抱えた経済というものは、欧米諸国の例を見るまでもなく、どうしてもインフレ体質化しやすい、そういう問題が内在しております。政府におかれては、昭和六十五年までに特例国債依存から脱却するという方針を立てておられますが、将来にわたり財政インフレ未然に防止し、民間経済の活力を維持していくためにも、引き続きこの目標に向けて財政各般抜本的見直しを進め、国債減額に全力を挙げて取り組んでいただきたい、かように要望するわけでございます。  国債市中消化の原則を堅持していく上で、発行量抑制と並んで重要なことは、国債発行に当たって市場実勢尊重考え方を引き続き徹底していくことであると思います。発行条件市場実勢に即した適正なものであり、投資家のニーズに合致したものであれば、国債購入資金が円滑に振り向けられることは期待されるわけでありまして、市場が梗塞するという事態を回避し得るはずでございます。五十年度以降発行された特例公債満期が到来し、借換債大量発行が避けられなくなっている現在、発行条件の適切な設定ということは一層重視せらるべき点である、かように存じます。最近、長期国債発行条件は弾力的に改定されるようになってきておりますが、関係者の間でこうした慣行を一層定着させていくことがどうしても望まれるところでございます。  最後に、国債大量償還及び借りかえという環境の中で、日本銀行といたしましては、従来同様、国債日銀引き受けを禁止している財政法精神をかたく守っていく考えであることを申し上げたいと思います。  現在、日本銀行は、財政法等の歯どめのもとで、政府短期証券引き受けを行い国庫の一時的な資金不足を補てんすることには協力しているわけでございますが、今般発行が提案されている国債整理基金による短期国債を含めまして、現状以上に政府に対して日銀信用を供与するという考えは全く持っておりません。財政法精神を遵守していくことが、将来にわたってインフレ未然に防止していく上で極めて重要であると確信しているということを申し上げまして、私の陳述を終わらしていただきます。(拍手
  4. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、羽倉参考人にお願いいたします。
  5. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいま委員長から御指名をいただきました全国銀行協会連合会羽倉でございます。  本日は、昭和六十年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案等に関しまして、私ども意見を述べるようにとのことでございます。  そこで、まず昭和六十年度予算についてでありますが、一般会計全体では五十九年度に比べ三・七%の増加となっておりますものの、国債費地方交付税交付金を除いた一般歳出は三年連続のマイナスとされており、歳出の節減に努められた財政当局の御努力がうかがわれるわけでございます。一方、歳入面は、税制改正による法人関係における若干の負担増加といつた点もございますが、全体として「増税なき」の精神は遵守されているものと申せると存じます。  しかしながら、財政当局のさまざまな御努力にもかかわらず、六十年度におきましてもなお十一兆六千八百億円もの国債発行に依存する予算になっておるのでありまして、このことはまことに遺憾であると申さざるを得ません。後に申し述べます借換債発行額の大幅な増加とあわせまして、国債引き受け消化を担います私どもといたしましては、容易ならざる事態が続くと受けとめております。  財政の不均衡につきましては、なお一層の歳出見直し削減に努められますとともに、長期的な展望を踏まえて財政再建を強く推し進められますことを希望する次第であります。  次に、財確法の内容について申し述べます。  第一に、特例公債発行についてであります。六十年度予算における特例公債発行額は五兆七千三百億円が予定され、五十九年度と比べて七千二百五十億円の減額となっております。この間の財政当局の御努力には並み並みならぬものがあったと思料いたしますが、ここはなお前年度に示された「財政中期展望」に沿い、減額幅を一兆円程度にまで持っていっていただきたかったところでございます。  第二に、特例公債借りかえにつきましては、現在の財政事情から考えますとまことにやむを得ない特例措置であると思われますが、早期償還につきまして最大限努力をしていただきたいと存ずる次第でございます。  第三に、定率繰り入れ停止についてであります。現在の財政事情からいたしますとこれまたやむを得ない措置ではありましょうが、今回で五十七年度の補正以来四年連続して定率繰り入れ停止することになります。国債減債基金制度の趣旨は、その償還財源をあらかじめ積み立て確保することによって負担を平準化することにあり、加えて制度存在自体財政の膨張に対する間接的な歯どめとなり、ひいては公債政策に対する国民理解と信頼を得ることにもなってもいるというふうに思われます。厳しい財政事情の中ではありますが、このような定率繰り入れを基本とする減債制度は今後ともこれを維持すべきものと考えております。  なお、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案の中に、日本たばこ産業株式会社日本電信電話株式会社株式の一部を国債整理基金に帰属させる措置が盛り込まれております。このことは、国債償還資金の充実に資するものと考えられ、まことに結構な措置であると思うのでありますが、これはこれといたしまして、先ほど申し上げましたように定率繰り入れ中心とする減債制度は維持していくべきものと考えております。  ここで、せっかくの機会でございますので、平素から私ども考えております国債問題一般につきましての考え方を、若干の要望等も交え申し述べさせていただきたいと存じます。  第一は、財政収支効率化による国債発行額圧縮重要性についてであります。  財政の諸機能を生かすために、国債発行額圧縮が必要とされますことは改めて申し上げるまでもございません。これを国債引き受け消化を実際に担っております私ども民間金融機関立場から申しましても、国債の円滑な消化のためには国債発行額圧縮が最も重要であります。今年度について申しますと、四条国債特例公債を合わせて、新規財源債につきましては発行額が前年度に比べ一兆円減額されました。ところが、その一方で借換債発行が大幅に増加するため、国債発行総額では前年度に比べ二兆五千九百六十九億円増加し、二十兆円を超える見込みになっております。  申すまでもなく、借換債発行されます裏には必ず満期が到来した国債が存在し、その償還資金が支払われるわけでございます。このため、借換債発行消化は、ともすれば容易であるというふうに考えられがちであります。しかしながら、満期償還された資金が再び借換債に投資されるとは限らず、現実の市中消化観点からは、むしろ借換債新規財源債も全く同様であるということの方が適切なのでございます。したがいまして、借換債を含め国債発行額圧縮が最も重要な課題であると考えていただきたいと思う次筋でございます。  第二は、資金運用部引き受けの一層の活用についてであります。  国債の円滑な消化のためには、市中消化額をできるだけ圧縮することが必要であり、そのためには資金運用部資金活用が望まれるわけでございます。六十年度につきましてはこの点御配慮をいただきましたが、今後とも財政投融資計画見直し等を通じまして、資金運用部資金による旧債引き受けを一層充実していただくようお願いをいたします。  第三は、市場実勢に沿った国債発行条件決定についてであります。  国債市中消化を円滑に進めるためには、金利価格といった発行条件市場需給実勢を反映させて決めることが必要であります。この点、近時は弾力的な改定が行われておりますが、金利上昇局面においても対応がおくれがちになることがないよう、一層の市場実勢を尊重した発行条件決定が行われることを強く要望するものでございます。  第四に、国債の最大の引き受け手である風間金融機関資金吸収力強化につきまして格段の御配慮をいただきたいとお願い申し上げます。  この点につきましては、郵便貯金肥大化により、民間金融機関資金吸収力が阻害されておりますことが極めて大きな問題でございます。臨調答申でも指摘されております官業たる郵貯の肥大化の是正につきまして、賢明かつ早急な御配慮をいただきたいと存ずる次第でございます。  最後に、短期国債につきまして、私ども民間金融機関見地から一言申し述べさせていただきます。  国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案が成立しますと、年度内償還される借換国債発行が本年度から可能になります。これを含めた償還期限一年未満のいわゆる短期国債は、銀行預金と競合する面があることも考えられますので、預貯金金利自由化金融市場動向についての配慮を欠く場合には、民間金融機関資金吸収力の面だけでなく、金融市場全体にも好ましくない影響が生じかねません。したがいまして、短期国債の具体的な発行に際しましては、そのときどきの金融自由化進展状況配慮しつつ検討される必要があると考えております。  以上、いろいろと申し述べましたが、私ども要望につきまして格別の御配慮をお願いいたしまして、私の陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手
  6. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、渡邊参考人にお願いいたします。
  7. 渡邊省吾

    渡邊参考人 日本証券業協会会長渡邊でございます。  本日は、昭和六十年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案等について意見を申し述べよということでございますので、証券市場に携わります者の立場から意見を申し上げて、御審議の御参考に供したいと存じます。  まず最初に、財源確保法案等の前提となっております昭和六十年度予算について申し上げますと、現下の厳しい財政事情のもとにあって、財政再建を推進する見地から一般歳出予算が三年連続して圧縮されましたことは適切な措置でございまして、財政当局の英断に対しまして深く敬意を表するものであります。  一方、歳入につきましては、新規財源債発行額が五十九年度当初予算に比べて一兆円減額されており、これまた関係当局の御苦心のほどを察しますとともに、その御努力を評価するものであります。  次に、ただいま御審議を進められております財源確保法案等について申し上げます。    一〔委員長退席熊谷委員長代理着席〕  我が国財政状況にかんがみ、昭和六十年度財政運営に必要な財源確保し、これにより国民生活国民経済の安定に資する観点から、昭和六十年度特例公債発行額が五兆七千三百億円とされておりますことは、現下の諸情勢考えました場合まことにやむを得ないものと存じます。  また、同法案において、昭和六十年度においても、国債費定率繰り入れ等停止措置を講じることとされておりますことは、国の財政収支が著しく不均衡状況にあることから見まして、これもやむを得ないことと存じます。  次に、国債整理基金特別会計法改正案におきまして、年度内償還される借換国債発行並びに翌年度における国債整理または償還のための借換国債発行等の方策を講じることとされておりますことは、いずれも今後の国債大量償還借りかえに対処するための措置でありまして、その実現が強く望まれるところであります。  今後の経済動向に即して財政の円滑な運営を図るため、六十年度予算と表裏一体をなします六十年度財源確保法案を初め、一連の法案早期成立が強く望まれるところであります。  私ども証券界は、昭和六十年度におきましても、引き続き新規財源債、借換債の双方について円滑な消化を図ることによりまして財政運営に御協力申し上げてまいる所存であります。  つきましては、国債の円滑な消化流通拡大を図る観点から、若干の事項について要望を申し述べさせていただきたいと存じます。  まずその第一は、国債発行条件の一層機動的な決定国債多様化をさらに図られたいということであります。  国債発行条件につきましては、関係当局の御配慮によりまして、市場実勢化が大きく進展いたしております。公社債年商売買高は八百兆円を超え、市場規模は急速な拡大を示しており、新発債を取得するに当たって、流通市場価格投資判断をする上で極めて大きなウエートを持つという状況が生まれつつあるのでございます。こうした状況にかんがみ、国債発行条件につきましては、今後とも引き続き市況の変化に応じて弾力的に決定されるよう御配慮をお願いしたいのであります。  また、国債の種類につきましては、近年多様化が進められてきておりますが、今後、財政負担の軽減を図りつつ国債の円滑な消化を促進するため、さらに投資家の選択の幅を広げる意味からも、多様化を一層推進されるようお願いしたいのであります。  第二は、国債大量償還借りかえに対処して、短期国債の十分な活用等について御配慮をお願いしたいということであります。  御高承のとおり、昭和六十年度には特例公債建設国債を合わせて十兆二千六百億円という多額の償還が予定されており、それ以降も大量の償還が予定されております。国債消化という点から見ますと、借換債新規財源債と何ら異なるところがございません。したがいまして、今後、借換債大量発行による流通市場への影響を回避しつつ借りかえを円滑に処理していくためには、さきに申し上げました発行条件のより一層の実勢化のほか、短期国債活用がぜひとも必要であると存じます。  また、短期国債の円滑な発行が実現すれば商品の多様化がさらに促進されることとなり、短期金融市場の一層の拡充に資することになるものと存じます。これがまた、最近における金融資本市場国際化の要請にこたえるゆえんであると考えられます・この点に関しまして十分な御配慮をお願いしたいのであります。  第三は、債券先物市場育成についてであります。  昨年十二月に証券取引審議会から「債券先物市場創設について」の報告が行われ、これを受けて関係当局において検討が進められた結果、債券先物市場創設に関する証券取引法改正案が今国会に提出され、現在審議が進められていると伺っております。  申すまでもございませんが、債券先物取引導入の目的は、国債を大量に保有している機関投資家事業法人等に対して債券価格変動に対するリスクヘッジ手段を提供することにございます。また、その導入国債中心とする公社債市場の安定、拡大に資するとともに、我が国金融資本市場が国際的な市場として一層その機能を充実強化していくこと等に寄与するという大きな期待が込められております。  本委員会の諸先生方におかれましては、債券先物市場創設国民経済的意義とその役割について十分な御理解を賜り、証券取引法改正案が一日も早く国会で成立されますよう御尽力をいただきますとともに、市場創設が実現した暁におきましても、債券先物市場の健全な育成を図るため、諸般にわたり御配慮を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。  最後に、有価証券取引税についてお願い申し上げます。  有価証券取引税は、転々流通する有価証券に対して課税される流通税でありまして、その税率は本来低率であるべきだと考えております。しかしながら、我が国有価証券取引税税率は、先進主要国の中で最も高い水準にあります。金融資本市場自由化国際化進展し、証券市場機能強化拡充が要請されていることにかんがみまして、株式公社債に対する有価証券取引税税率を大幅に引き下げるとともに、国債に対する課税を撤廃されるようにお願いしたいのでございます。  特に、国債等の現先取引に対して有価証券取引税課税されていることが大きな要因となりまして現先市場縮小の一途をたどっておるのであります。つきましては、国債等の現先取引に対する有価証券取引税課税を撤廃されるよう強くお願い申し上げる次第でございます。  以上、昭和六十年度財源確保法案等について意見を申し上げますとともに、国債発行流通拡大に資する観点から幾つかの事項について要望を申し上げた次第でございますが、金融資本市場自由化国際化進展によりまして、証券市場国民経済に果たすべき役割はいよいよ重要性を増してきております。私ども証券界としては、このような証券市場重要性を深く認識し、市場機能の一層の強化のため、引き続き努力を重ねてまいる所存でございます。  本委員会の諸先生方におかれましては、証券市場運営に関しまして今後とも引き続き格段の御高配を賜りますようお願い申し上げ、私の意見陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手
  8. 熊谷弘

    熊谷委員長代理 ありがとうございました。  次に、水野参考人にお願いいたします。
  9. 水野正一

    水野参考人 名古屋大学水野でございます。ただいまから財源確保法案等についての意見を申し上げたいと思います。  その前に、六十年度予算編成につきましては、非常に厳しい財政状況のもとで、財政再建に向けて一兆円の国債発行減額を行う予算を編成されたということにつきましては、財政当局の御努力に非常に敬意を表する次第であります。また、財源確保法案等につきましても、こういう厳しい中での予算編成に関しまして、例えば特例公債発行であるとかあるいは国債整理基金への定率繰り入れ停止、こういう措置をとることはやむを得ない措置であるというふうに考えられますし、また、その他の国債償還に向け、あるいは国債管理政策の弾力的な運営、こういうための法律的な改正措置をとるということは極めて適切な措置であろうかと存じます。  ただ、こういう予算編成及び財源確保法案等に関連いたしまして、そこに含まれております若干の問題につきまして意見を申し上げたいと思います。  第一の問題は、「増税なき財政再建」と予算編成についてであります。  六十年度予算は、六十五年度特例公債依存から脱却するという目標に向けまして、一兆円の国債発行減額を盛り込んだという点では非常に評価されるわけでありますが、そのため、この予算編成におきまして非常に無理を重ねているという印象を持ちます。歳出の面あるいは歳入、特に税制の雨その他におきまして、多くの面でひずみを拡大させているという感じがいたします。こういうやり方を六十一年度予算編成におきましても続けられるかどうかということは極めて疑問視されるわけでありまして、仮にこれを続けたといたしましても、財政運営のあり方としては決して好ましいものではないというふうに考えられます。そういう意味で、六十一年度予算は重要な岐路に立っているというふうに考えられます。  すなわち、財政再建について本当に基本的な姿勢といいますか、これをはっきりさせるべきときに来ているというふうに考える。特例公債脱却の目標年次というものを六十五年度ということでいいのかどうか、果たして六十五年度までに達成できるのか、あるいはそれを延ばさざるを得ないのかどうか、あるいは六十五年度特例公債脱却という線をあくまでも守るとした場合に、あくまでもそれを歳出削減でやっていくのか、すなわち税制面での税の増収措置というものを一切とらないで、あくまでも歳出抑制を貫いていくのか、あるいは歳出抑制とともに増税という方法も織り込んで考えるのかという、どういう基本的な路線をとるかという選択に直面するというふうに考えられます。  この問題では、最近税制改革論が高まっておりますが、これに関しましても、今後の財政運営についての基本方針というものがはっきりしませんと、まともな税制改正論議というものもできないのではないかという気がするわけであります。  そこで、今後の財政運営につきましては、私の考えでは、次のように考えるわけです。  まず、六十五年度特例公債脱却という線は、あくまでもこれを守ってほしいということであります。それから第二に「増税なき財政再建」というものにいつまでも固執すべきではないというふうに考えられます。ある程度の増税というものは、本当に六十五年度特例公債脱却という目標を達成しようとすれば避けられないのではないかというふうに考えられます。そこで、将来を展望した上で、少なくとも三年程度を含んだ実効性のある財政計画というものを国民に示す必要があるというふうに考えられます。それとともにこの財政再建と並行して、あるいは財政再建の重要な一環として税制改革というものを進めるべきであるというふうに考えます。  第二の点は、国債償還問題についてであります。  国債償還問題というのは今後ますます重要性を増す問題であるというふうに考えられます。     〔熊谷委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕 これにつきましては、当面の問題としては、期限の到来する特例公債についての償還の問題と、さらに長期的な、また制度的な問題としては、減債基金制度のあり方の問題が考えられます。  期限の到来する特例公債償還につきましては、特例公債についても借換債発行を認めるということにいたしまして一応の決着はつけられているわけでありますが、これは国債発行に関する節度を緩めるとして心配する向きもありますけれども、現実に特例公債発行を余儀なくされているという状態におきましては、特例公債について借換債発行を認めるということはやむを得ない現実的な措置であるというふうに考えられます。また、これにつきましては、財源確保法の第二条第四項におきまして、特例公債については借換債発行は「できる限り行わないよう努める」こととされておりますし、また、同法の第二条第五項で、特例公債について借換債発行をした場合は「速やかな減債に努める」こととしておりますのは、適切な規定であるというふうに考えられます。  減債基金制度につきましては、昭和五十七年度以降四年にわたりまして、定率繰り入れ停止措置がとられております。六十年度には国債整理基金の余裕金残高というものは九千九百億円というふうに底をつく状態となりまして、制度の基本が危なくなっております。六十一年も定率繰り入れ停止を続けるといたしますと、償還財源というのは要償還額を下回って、行き詰まってしまうということになると予想されます。六十一年度において定率繰り入れを復活せざるを得ないというように考えられますが、その場合には予算編成は非常に苦しいものになることが予想されます。  ただ、今回の法律改正で日本たばこ株式会社と日本電信電話株式会社株式の一部を国債整理基金に帰属させるという措置をとることになりますが、これによってかなりの救いになるものと考えられます。しかし、減債基金制度のあり方が根本的に問われることになることは間違いないことと思われます。将来における国債償還計画、それとともに減債基金制度のあり方について基本的に検討しておく必要があるというふうに考えられますが、これにつきましては、やはり制度の基本をあくまでも守ってほしいというふうに考えます。  第三に、国債管理政策の問題であります。  長期にわたる国債大量発行によりまして、国債残高は巨額に上ります。六十年度末には約百三十三兆円に上ると推定されておりますが、国債管理政策重要性が増しております。すなわち、新規債、借換債大量発行におきましてその消化の円滑化を図り、また、国債発行、巨額の国債残高が金融市場に及ぼすインパクトというものを緩和し、もって国債の利子負担の軽減を図るとともに、金融政策の有効性を確保するということが国債管理政策の目的でなければならないと思います。  これについては、国債借換問題懇談会が昨年五月に「当面の国債借換問題について」という懇談会の報告書を出しておりますが、そこでこれについての当面の諸方策を示唆しておりますが、そこに盛られていることはほぼ妥当な考え方であるというふうに思います。  国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律におきまして、年度内償還される借換国債、すなわち短期国債及び翌年度における国債整理償還のための借換国債発行を認めることにしたことは、新規債、借換債を合わせた国債発行総額を円滑に消化するための方策としては注目すべきものであろうというふうに考えられます。  ただ、特に短期国債発行につきましては、金融自由化進展する中で、金融市場におきまして他の金融商品との間で深刻な競合が生ずるとするおそれもありまして、これについて消極的な見方をすることもできますが、他方、この短期国債発行によりまして借換債発行の平準化、借換債の円滑消化国債整理基金資金繰り手段の必要性、財政負担の軽減等の観点から、一応適切なものではないかというふうに考えられます。ただ、短期国債発行につきましては、金融市場に与える影響等を十分に配慮して行う必要があろうかと存じます。  いずれにせよ、金融自由化情勢もにらんで、今後とも国債管理政策の機動的、弾力的な運用を望みたい次第であります。  以上で終わります。(拍手
  10. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 ありがとうございました。  次に、石参考人お願いいたします。
  11. 石弘光

    ○石参考人 一橘大学の石でございます。  現在提案されております三つの法案に具体的に即しまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。時間も大分立て込んでおるようでございますし、既に四人のお方が述べられました意見とおおむね一致しておりますので、以下四点に絞りまして、できるだけ手短に意見を述べさせていただきたいと思います。  第一点は、特例債発行並びにその借りかえの仕方についてどういう意見を持っておるかということでございます。  六十年度予算におきまして特例債が五兆七千三百億円発行されておりまして、前年度に比べまして一兆円減額するという目標は達成されませんでした。本来から申しますと、もう一段の努力をしてこの一兆円減額を目指してもらいたかったということでありますが、しかしながらマイナスシーリング等々で財政当局は非常な努力をしていたわけでございまして、出てきた結果はやむを得なかったのかなという感じはいたしております。国債依存度が二二・二%に下がりまして、これは昭和四十年代以来低いわけでございまして、このペースを今後とも引き続いて守るべきではないかと考えております。  したがいまして、今、六十五年に特例公債脱却という財政再建の目標がございますが、これが実行できるか実行できないか非常に難しいところでございます。しかしながら、このスローガンは引っ込めるべきではございませんで、今後の予算編成の基本的姿勢としてやはり重視していくべきではないかと考えております。  それから、今特例債償還が六十年ルール、つまり建設国債と同じようなルールになっておるのですが、これはややアドホックな感じがしないでもございません。と申しましても、現金で一挙に償還するというのもこれまた非現実的でございます。恐らくこれだけの大量の公債の償還財源を税で求めることは無理でございましょうし、一挙にこのような公債を現金で返すということは、恐らく資本市場に大きな混乱を招くことだと思います。したがいまして現金償還は難しい。といっても、六十年ルールというものを建設国債に準拠してやるのもいかがなものかということになりますと、やはり特例債に関しまして何らかの償還ルールというものをつくる必要があるのではないかなという感じがいたしております。しかしながら、建設国債と違いまして物的資産を担保にしているわけではございません。したがいまして、六十年といったようなはっきりした年限で償還のルールをつくるというのは恐らく無理であろうということになりますので、現金償還と六十年ルールの何か中間ぐらいなことをこれからひとつ持っていくべきではないかと思います。現在努力規定というのがあるようでありますが、こういうたぐいのごく大まかなルールということで当面しのぐほかないのかなという感じがいたしますが、この努力規定についても国会並びに国民の目で絶えず厳しい監視をすべきであろうと思います。  第二点は、国債整理基金定率繰り入れ停止しているのをどう考えるかということであります。  四年間定率繰り入れが中止になっておりますが、これは財源難の折、一種の苦し紛れの手段であったかという評価もできようし、あるいはやむを得なかったという評価もできようかと思いますが、やはりこの繰り入れ停止は今年度限りでやめるべきであろうと思いますし、また現実が厳しくやめざるを得ないということになるのであろうと思います。本来、筋論を展開すれば、この定率繰り入れというのは継続すべきであったわけでありまして、そういった意味で、臨時特例的にやったこの措置はやはり中止のやむなきに至るだろう、あるいは中止すべきだろうと考えております。  ここで、電電株の三分の一あるいはたばこ産業株式会社の株が二分の一国債整理基金に入るということ、これは定率繰り入れの問題と無関係ではないと思います。恐らくこの種の株の取り扱いというのが非常に重要な問題を持ってこよう。売却益というものが将来国債償還に充てられるということが既定の線とは思いますが、しかしあらかじめこれを予期して、そのために国債整理基金定率繰り入れを怠るというのはどうも好ましくないと考えます。言うなればこの種の売却益は経済学で申しますとウィンド・フォール・アセッツでありまして、思わぬ資産であり、思わぬもうけでございまして、このようなものに全面的に依拠いたしまして従来の堅実なる財政運営をかき乱すべきではないという考えを持っております。電電株等々は国民の資産でございますから、国民の借金である国債償還に充てるべきというのは筋だろうと思います。が、これによって償還計画が大幅に乱されるというのは好ましくない。そういう意味で、この電電株等の取り扱いについては慎重に対処すべきであろうと考えております。  第三点は、国債整理基金で短期の借換債発行するのはどうかという問題であります。  今後、大量の公債が短期間に、いっときにどっと償還されるということが目に見えております。例えばことしの五月には一兆六千億円、十一月には二兆三千億円、六十一年二月には二兆三千億円であり、最大の月といたしまして六十三年五月に三兆六千億円が見込まれているようであります。恐らくこのような短期間に集中いたします公債の償還は、いっときに出てきたときにかなりの攪乱が起こると思いますので、何らかの平準化という操作が必要であろうと思います。ということは、短期の借換債を出して 数ケ月前、その前後、その発行量を調整するということは避けて通れない。そういう意味では短期の借換債発行というのはそのための一つの有力な手段であると思います。  ただ、次の二つの点で注意をする必要があろうと思います。言うまでもございませんが、いかなる場合であっても日銀の引き受けはよろしくない、と同時に、発行はあくまで市中消化、かつ市中消化のルール、これはもっと詳しく申しますと、市場実勢を尊重するということでございますが、この精神を忘れてはならないということが第一点でございます。それから第二点は、今民間セクターにおきます貯蓄超過というのがございますから、急速な格好でクラウディングアウトの問題が当面まだないと思いますが、将来いつ起こるとも限りません。と同時に、民間金融との競合というのに関しましては十分この短期の借換債発行に関して配慮すべきだろうと思います。そういうわけで、短期債の期間の設定等々についてはこの点を十分に配慮して決めるべきではないかと思います。  最後に第四点といたしまして、産投会計に株を入れ、その配当金収入をいろいろな施策に使うということに関してでございます。  ここにも電電の株の残り三分の一とそれからたばこ産業株式会社の二分の一の株が入り、この産投会計のてこ入れに使われるようでございます。その配当金が技術の研究であるとか日本の産業育成等に回され、それなりに成果を上げるということが期待されております。従来産投会計は財政投融資の中で次第にウエートが少なくなり、その活躍がほとんど最近は無視されておりましたが、こういう意味で産投会計を通じての財投のてこ入れというのは、一つの方法ではないかと思います。恐らく財源難で一般会計からは潤沢な資金が回らなくなった部分にこういう形の資金を使うというのは一つの方法かと思いますが、ただ、財政投融資全体が今大きな問題となっております。資金運用部の国債引き受けの問題もそうでありましょうし、郵便貯金肥大化の問題もそうでありましょう、あるいは財投機関そのものの非効率的な運営といった問題もあるわけでありまして、こういう面を踏まえまして抜本的に財投を見直すというのが、この産投会計に株の配当を使わせるというときにはやはりあわせて議論すべきことではないかと思われます。  以上四点、手短に意見を述べさせていただきました。(拍手
  12. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  13. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  14. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 参考人の皆さん方には、公私ども何かと御多用のところ、まげて本委員会法案審議のために御参加いただきましてまことにありがとうございます。  さて、私は、今大きな問題になっております対外貿易摩擦の問題を二、三お聞きさせていただきまして、あと財政問題につきましてお聞かせいただきたい、このように思うわけであります。  まず澄田参考人にお聞きいたしたいわけでありますが、昨日の新聞報道を見ますと、アメリカの実質成長率は第一・四半期で年率〇・七%と大幅に低下をしている、こういう減速傾向がはっきりとあらわれておるという報道があるわけでございます。一方、アメリカ議会では現在総額五百六十億ドルの財政赤字削減案が討議されておる。この五月十七日には公定歩合が〇・五%引き下げられて七・五%になった、こういうことでございます。  これらはドル高修正に向けた動きとして一応歓迎できるわけでございますが、ドル高修正が急激に進んで、一挙にドルの下落といいますか、景気後退となると大変な危険性もあるわけでございます。そういう点で、アメリカのドル高修正の動きとあわせてアメリカの景気の動向について日銀としてどのようにとらまえておるのか、その点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  15. 澄田智

    澄田参考人 最近のアメリカ経済状態でございますが、これはやはりドルの異常な高さと申しますか、それがしかも長期化している、こういうことから、輸入が非常に増大をして、それがアメリカの経済成長をその分だけ妨げている、こういうことであろうと思います。そういうことから、景気の減速傾向がこの一-三月期非常に明確化してきたというのが発表された数字であろう、こういうふうに思います。改めて、ドル高の影響が非常に大きいということを痛感する次第でございます。  アメリカの連邦準備制度が公定歩合を〇・五%引き下げましたが、これは物価は安定をしておる、引き続き安定している、そういう意味で、そういう状態のもとで今のようなアメリカの景気面に対してこれに配慮をして、ああいう政策をとったものである、こういうふうに考えております。  しかしながらアメリカの経済は、アメリカ国内の最終需要という点から見ますると、個人消費を中心に底がたい動きを示しております。そしてまた、これはドル高のプラスの面でありますが、物価が安定し、インフレの再燃の懸念が極めてこのところは薄くなっている、こういうふうなところから、なおある程度成長、安定的な成長は可能であるという見方が依然多いわけでございます。不安定な要素がいろいろございますが、私どもといたしましては、引き続いて、ドル高の影響が先行きどうなっていくかということを含めまして、今後のアメリカの経済の動向には十分注意をしていかなければならない、こういうふうに思っております。  なお、ドルの相場の点でございますが、アメリカの高金利がドル高の有力な背景になっていたという点から、アメリカの金利の引き下げはドル高修正の上でプラスに働く、こういうふうに見ておりますが、今のところ、ドルの相場は大勢としては若干弱含みというぐらいなところでありまして、そして、既に公定歩合も引き下げられるであろうということを織り込んでおった、そこへ引き下げが実施された、こういうようなこともございまして、目下目立った変化はまだございません。円で申せば、二百五十円から五十一円というぐらいなところにまだあるわけでございます。今後はアメリカの財政赤字対策がさらに進んで、そうして高金利の是正がもっと本格化をするということを期待しているわけでございます。  それからドル相場が急落するかどうかという点につきましては、これはアメリカ当局も、ドルの相場が高過ぎるのは困るが、急落はなお一層困る、こういうようなところで、それには深甚の配慮を払っているというふうに見受けられますし、アメリカが債務超過国になるという問題はございますが、これが直ちにドルの信認に響くというものではございません。ただ、不安定になりやすいというような、そういう要素のあることは否定できませんが、私どもとしては、やはりドル高の着実な是正を期待をしている。暴落といった事態は決して望ましくない。また、そういうことにならないように、アメリカ当局中心として配慮をしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  16. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 総額三百七十億ドルに上る日本のいわゆる経常収支黒字でございますが、こういうものを背景として、ますます対外経済摩擦が深まる。こういうことの中から内需拡大を求める声が非常に大きい。我々しばしば本委員会でそのことを当局に求めてきたところであります。  我が国は、アメリカの高金利あるいはドル高というものが一つの大きな原因になっておるということもあり、やはり早急なその是正、こういうことでありますが、さりとてアメリカ経済が急激に減速する、こういうことになってもこれまた困る。こういうことでありますが、アメリカがどうあろうと、やはり我が国は独自のといいますか、経済政策を持たなければならぬだろう。こういう意味で内需拡大、とりわけまたアメリカがそういう少し風向きが変わってきたということでありますから、なおさら内需拡大の声が大きくなってくることは当然だろう、こういうように思うわけでございます。  そこで大蔵当局は、口を開けば、内需拡大は認めながらも財政の悪化といいますか、財政の事情からと、なかなか財政の出動というところには至っていないわけであります。来年もマイナスシーリング、こういうことのようでございまして、四年連続ということで、一部の輸出関連の企業は潤っておるようでございますけれども多くの中小零細企業は非常に苦しい状況にあると見ていいんじゃなかろうか、こういうように思うわけでございまして、ぜひともこの財政の面からのてこ入れが必要だ、我々そのように思っておるわけであります。いわゆる規制の緩和とかあるいは民間活力のみでは到底大幅な内需拡大というものは見込まれない、こういうように思っておるわけでありますが、そういう点についてさらに突っ込んでお聞かせをいただきたいし、また同時に、アメリカも公定歩合を引き下げた、こういうことでありますので、日銀においても我が国の公定歩合を下げる、そういう考え方があるのかどうか、その点についてあわせてお聞かせいただきたい、このように思います。
  17. 澄田智

    澄田参考人 内需拡大自体、そしてまた内外需のバランスのとれた経済成長ということ自体、これは極めて望ましいということについて私ども全く異存はございません。しかし、財政金融政策の直接的な発動によりまして内需振興を図るということにつきましては、現在の厳しい政策的な環境から申しまして、その政策の効果とコストという点を十分に吟味して慎重に対応することが必要であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。現在、その財政金融政策による内需拡大を図る余地というのは極めて限定されている、こういうふうに言わざるを得ない状態であろうと思います。  したがいまして、まず対外経済対策として打ち出された市場開放、アクセスの拡大という、そういった政策を着実に実行に移していくということが、当面何よりも必要だろうと思いますし、それと同時に、こうした対策が実効を上げていくためには為替相場が円高方向、安定的にそういう方向にあるということが望まれるわけでございます。  内需拡大の方法につきまして、ただいま申しましたような前提で考えまして、それではどういうふうにしたらいいかという点については、やはり市場機能強化という方向で民間活力を活用する、そういう方向で考えるべきだろうと思いますが、この点につきましては対外経済問題諮問委員会内需拡大方策として掲げております公的規制の緩和、週休二日制の普及、労働時間の短縮、民間活力の導入による社会資本の整備、税制の見直し等の提言がございますが、これは大いに参考になると思っているわけであります。  金融政策について申し上げますと、現在国内の景気は、輸出が鈍化いたしておりますが、設備投資は底がたい動きでございますし、個人消費も緩やかながら回復基調がはっきりしてきている、こういうことで総体的には着実な拡大を見ております。金融面では、金利の点から申しましてもマネーサプライの動向から見ても十分に緩和している状況でございまして、経済拡大、回復というものを金融面から妨げるような環境では全くございません。むしろ為替面におきまして、まだ円高方向で安定しているという状態ではございません、アメリカの公定歩合引き下げ後も日米間の金利格差はかなりなものがございます。せっかくアメリカの公定歩合引き下げで、まだ大きいですが金利差が若干縮まった、こういうところでございますので、ここで日本が金利を引き下げてしまうということになりますれば、金利差はちっとも改善されないことになりまして、一層の円安を招くおそれが大きいわけでございます。こういう情勢にかんがみまして、当面公定歩合を引き下げることは適切でない、かように考えておる次第でございます。
  18. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 規制の緩和とか民活に依拠する、こういうことでその枠を出てないように思うわけでございます。民間活力といいましても、明治以来の日本の資本主義の発展、経済の発展を見てきたら、国が果たす役割というのは非常なものがあったのではないか、特にドルショックあるいはオイルショック以後の世界の景気低迷の中で、やはり我が国の果たした経済界に対するてこ入れは非常なものがあった、こういうように見なければならぬと思っているわけであります。今、特例公債がふえて利子がかさむ、非常に財政が苦しいということがあるわけでありますが、同時に、景気回復によって自然増収をもたらす、それがまた財政再建に役立つという面を我々はやはり見ていかなければならぬだろう。そういう意味で、公共投資を初めとする基盤整備、消費の拡大、減税あるいは賃上げということも考えていかなければならぬだろう、やはり拡大均衡をとっていくということが一にも二にも大事ではないか、こういうように私は思っております。民活の一番のいい例が、私はこんなことを言っていいのかどうかわかりませんけれども、三光汽船じゃなかったのかな、こういうように思っておるわけであります。そういう点で、大企業だけではなしに、特に中小零細企業の置かれている立場というものを考えた場合、あなた方の努力で、自助でやりなさいといったってできない部分があるわけでありますから、お答えいただかなくても結構でございますが、そういうことを申し上げたいと思います。  続いて羽倉参考人渡邊参考人にお聞きしたいわけでございますが、アメリカなどでは、日本の経常黒字の原因は我が国の高い貯蓄率にある、そういう意味で議論が沸騰しておるわけであります。我が国の貯蓄過剰を抑えるために利子・配当分離課税や非課税貯蓄制度などの貯蓄優遇策を取り除け、こういうことのようでございます。山下元利小委員長が主張しておりますマル優廃止と低率分離課税導入による財源で所得税減税を行うという構想も、そのような一つかと思うわけでございます。  そこで、我が国の貯蓄水準というものを一体どのように思っておるのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  19. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいまの御質問に対してお答えさせていただきます。  我が国の貯蓄率が諸外国に比べまして大変高いということが言われておりますが、私、ただいま手元に数字を持っておりませんので大体の数字でございますが、日本の貯蓄が一七・六%ぐらいであろうかと思います。これはアメリカに比べますともちろんかなり高い水準でございますが、この中には住宅ローン等の償還であるとか生命保険料等の支払いとかいろいろなものも含んでおりまして、そういうものを除きますと大体一〇・九%ぐらいだったかと記憶いたしております。諸外国の数字が同じような基準においてとらえているかどうかという点については、これも必ずしも十分細かいところまで承知いたしておりませんが、そういう一・○幾らという数字と比べますと、アメリカのように非常に低い五%といったようなものに比べますと確かに高いわけでございますが、ヨーロッパの国、例えばイタリーなどに比べましてそれほど高いというふうには承知いたしておりません。  特に、我が国の貯蓄率が非常に高いというのは、我が国におきます老後の生活に対する備えというのが、今申し上げました貯蓄率の低いアメリカ等に比べますとまだ依然として不十分であるというふうに申さざるを得ないかと思います。また人口構成につきましても、アメリカあるいはヨーロッパに比べまして日本の人口構成はこのところ急速に高齢化が進んでおるというような事情もございます。また、住宅が日本はアメリカあるいはヨーロッパに比べて非常に見劣りがするということはよく指摘されるところでございますが、これまた、住宅の取得費用等がそういった国々に比べて非常に高いわけでございます。そういういろいろな特殊事情から日本の貯蓄率が高くなっておるということが申されるのではないかと思います。  しかしながら、高いと申しましても、我が国の貯蓄率というのは実はこのところ年々低下してきているわけでございます。日本は昔から、私ども子供のころでございますと徳川時代の二宮尊徳とかいうことをよく言われましたが、貯蓄ということは日本では大変美徳になっておるわけでございます。そういったことから考えても貯蓄というのは、特に先ほど申し上げました高齢化社会というものを考えますと、これをすべて国の財政負担によってやるということよりは、やはり国民の自助努力によってそれをある程度まで補っていくということが必要であろうかと考えるわけでございまして、そういった点からも必要であろうと思うわけでございます。そういった観点からいたしますと、いわゆる貯蓄優遇策というのは、国民のいろいろな面での自助努力を促すという面で非常に大きな役割を果たすと私ども考えておるわけでございます。  したがいまして、高貯蓄批判ということに対してましては、そういった高貯蓄をいかに活用するかという方向で対処すべきではないかと考えておる次第でございます。そういった点では、先ほどもお話が出ました規制緩和等によりまして民間の力を大いに活用する国内の投資あるいは住宅投資等の振興といったようなことが肝要であろうかと考える次第でございます。  以上でございます。
  20. 渡邊省吾

    渡邊参考人 ただいまの御質問でございますが、私の考え方羽倉参考人の御意見とほとんど同じでございますが、日本が経済力が非常に大きくなったとは申しましても、国民生活現状を見ますと、例えば社会資本という点から見ましても、近年これが充実しつつあるとは申しましても、まだまだ国の国力と比べますとその整備がおくれているという点も指摘できるかと思います。それから、ただいまもお話がございましたように、これは日本の一つの大きな特徴だと存じますけれども、近年高齢化が非常に速いテンポで進みつつあるということで、今後二十一世紀にかけてこの問題が国の経済なりあるいは文化面なりに大きく影響してくるであろうという点を考えますと、こういった社会資本の整備でございますとか老齢化社会の急速な進展に対応するために、御覧…の貯蓄の重要性というふうな点についてはいささかもその重要性が失われていないのではないかというふうに思います。  貯蓄率が高いという点は、今も御指摘のように、将来にわたってそうかどうかは問題でございましょうが、現状ではやはり貯蓄率の高いという、点についてはそういった特に老後社会に対応するために、それに適応するために各自の貯蓄が高くなっているという面もあると思います。したがいまして、そういった国民の活力の血であり結晶であるといったような貯蓄を、貯蓄率を下げるという方向ではなくてその貯蓄を生かして、そして今も申し上げたような国民生活の向上とかあるいは社会体制に即応するようなことに、ないしは経済摩擦の解消等にそういった貯蓄を役立てるということを積極的に考えることがむしろ日本の現状には適当ではないかというふうに考えますので、大体前の参考人の方と同じような考え方を持っておりますので、さよう御了承いただきたいと思います。
  21. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私は、貯蓄率はふえても減ることはないだろう、特に高齢化社会を迎えて、また公的年金だけでは老後の保障はない、こういうことになればますますそういう傾向が深まっていくのではないか、こういうように思うわけであります。そういう貯蓄の部分が社会資本の充実とか内需拡大によって消費に回っていく、そういう政策が必要になってくるんじゃないか。それがこの内需拡大がないと、貯蓄された資本が海外流出する。今日既にそれがアメリカの高金利を支えることに結果的になっているだろうし、またドル高の原因にもなっている。何かそういう点で、アメリカの高金利、ドル高といってもそれを日本が支えておるということにもつながってきておるのではなかろうか、私はこういうように思っておるわけであります。そういう点で、やはりその点について今後十分考えていかないと、高貯蓄、貯蓄の過剰というこの現象に対して抜本的にどう解決をつけていくのかということに大きな問題が出てくるものではなかろうか、私はこういうように思うわけであります。  そこで、次に移ります。  石参考人にお聞かせいただきたいわけでございますが、四月九日に発表されました対外経済問題諮問委員会の報告書によりますと、中期的政策の提言の中で内需拡大の方策が四点挙げられておるわけでございます。第一には各種の規制緩和、第二に労働時間の短縮、第三に民間活力の導入と並んで、第四点目に「内需中心の持続的、成長に役立つ税制の見直しが重要である。基本的には貯蓄・消費・投資のバランスを図る観点から検討を行う必要がある。」このように提言されておるわけであります。この提言を受けて河本対外経済担当大臣などから所得税の大幅減税といったような考え方が既に出されていることは御承知のことだろう、こういうふうに思うわけでありますが、この内需拡大のための税制見直しという場合、どのような方策を考えておられるのか、具体的にお聞かせいただきたい、このように思います。
  22. 石弘光

    ○石参考人 それではお答えいたします。  内需拡大が必要かどうかという問題と、その必要性を認めたらどういう具体的な方策、特に税制でやるべきかどうかという二点が問題の核心かと思います。  第一点から申しますと、私は、今内需拡大という形で政府がいろいろな形の説とか公共投資とか何かひつ提げて前面に立って出る時期がどうかという点に関しては、やや時期尚早だし、もう少し成り行きを見詰めるべき時期ではないか、こう考えております。確かに先ほど御説明ございましたように、アメリカの経済がへたってまいりましたから、輸出が減って、日本がうまく内需につながない限り成長率がダウンする等々で問題が出てこようかと思います。ただ目下、見るところ国内均衡に関しては物価もあるいは雇用もあるいは実成長率もさほど憂慮すべき点ではないのではないかと思います。ただ、今後どうなるかというのは、経済は不確定でありますから絶えず準備はしておかなければいけないと思いますが、そういう意味で今すぐさま大幅五兆円所得税減税であるとか等々をやるべき時期ではないと考えております。したがいまして、私は内需拡大に関しまして税が出ていくということに関しては極めて消極的であるということをまず最初の一点としてお答えいたします。  それから、それに関連いたしまして、今減税して景気回復して、将来自然増収で今手放した財源の赤字を埋めればいいじゃないかという議論が先ほどちょっとございましたが、それに関してちょっと一言つけ加えさせていただきます。  恐らく二つほど懸念すべき点があろうと思います。一つは、今急にそういう財政の積極路線に転じたとき、曲がりなりにも行革路線でやってきましたここ三、四年のムードが大分大幅に変わってくるというときに、行財政改革によります構造改革というものに対してまだやるべきことがあると見ておりますので、かなり手抜きになるのではないか。第二点は、恐らくこの政策は極めてリスキーであると思います。手放すのは現ナマでございまして、出てくるのはわからない、不確定な自然増収ということでありまして、こういうリスキーなことを今やるべきかどうかということに関しては、私はかなり安全志向型なものですから、その辺についてケインジアン等々はいろいろなことを申しておりますが、私は一貫して、これはよほどでない限りはとるべきでないし、その効果というのは非常に問題がある。現にアメリカは一生懸命経済を次かそうと思いつつやって財政赤字というのは減らない、かえってふえたということもありますので、そういう経験は学ぶべきだろうと思います。  それから、税制で具体的にやるとすれば有効需要拡大という視点から何があるかということでありますが、今申しましたように第一点の、私、比較的控え目でございますが、消極的でございますが、もし仮にやるとしたら、有効需要を刺激するという意味から申しますと民間の貯蓄超過をどういう形で民間の投資に結びつけるかという、その辺の接点のところで税制を使うというほかはないでしょうね。それで恐らく海外から議論されておりますような貯蓄優遇税制、投資優遇しない税制というその辺を改めるなら、恐らく税制としてはあり得る施策であろうと思います。やり方としては、高貯蓄の方は、高貯蓄と言われておりますが、私はこれはおいおいだんだん下がってくる、ちょっと御意見が違うのですが、そういう感じを持っておりまして、やはり社会保障の充実とか公的年金がふえできますとどうしてもそれだけ公的な方に依存しようという形があれば、と同時に高齢化社会になればそれだけ所得稼得能力も落ちますから、そういう意味で社会全体としてはそう拡大しないだろうと見ております。  それはさておき、そういった形で貯蓄はそのままにして投資を拡大したければ、恐らく投資減税であるとか法人税制をいじくるという点があろうかと思いますが、いずれにしても財源が問題である。財源を直にやるんでしたら、貯蓄優遇税制のところをいじくって恐らくそれを投資減税に持っていくということが一つ手であろうと思いますが、今お二人の参考人から御意見ございましたように、貯蓄優遇税制ということに関してはいじるのはかなり難しい問題もあろうと思います。私は個人的にその辺はいじっても大して貯蓄は落ちないであろうという観点に立っておりますが、十分検討すべきことだろうと思います。  それより私は、どちらかといいますと、間接税等々を入れて、その財源で法人税、所得税というものを減税するのが当面の税制改革のねらい、ただこれは有効需要の造出にはつながりがたいと思いますが、その辺が税制の課された当面の問題ではないかと思います。
  23. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私たちは、内需拡大によって、そうして景気が回復することによって自然増収が図られる、そうしてそれが赤字財政の補てんにつながるんじゃないか、財政再建につながる。これは結果論を我々は言っているわけでありまして、目的は一にも二にも景気の回復だ。今一部の大手は別にして、中小零細企業状況がどうなっておるのか、そのもとに働く労働者がどういう生活をしているのか。確かに日本は経済大国で豊かな国になったが、それじゃその国民の中のアンバランスを一体どうするのか、こういうところにやはり問題を見なければならぬと思っておるわけでありまして、大もうけをしておる大企業にもっともっとてこ入れしてやってくれということを我々は言っているのじゃないので、本当に財政出動をしてやらなければならない企業にするべきだ、こう言っているのでありますから、その点ひとつ履き違わないでいただきたい、こういうように思うわけであります。  時間の関係もありますので、さらに進めてまいりたいと思いますが、本年度末になりますと国債残高が百三十三兆円程度になるということでございます。ことしの新規国債発行高が十一兆六千八百億円でございまして、その利払い償還のための国債費が十兆二千二百億円、十兆円台に上ったわけでありまして、歳出のトップということで、地方交付税の九兆七千億程度、社会保障費が九兆六千億程度でありますから、まさしく歳出の一番大きなウエートを占めるということでありますから、この利払いが少なくなることによってどれだけ財政が潤うか、こういうことになろうと思います。一年三百六十五日、一日当たりにしますと約二百五十億円の利払いですね。一時間当たりにしたら何と十億六千万円の利子を支払っていることになるわけでございます。しかしそれも、国民はその利子を受け取っているのじゃないか、こういう理屈もありますが、本当に個人が受け取っている利子というのはどれだけになるのか。結局は銀行であり大企業であるとか、その他の資産家の部分がやはり多くある。庶民には余りかかわり合いのないことにならざるを得ないのではなかろうか、こういうように思っておるわけであります。そういうことで、この財政再建のしわ寄せを増税とかあるいは歳出のカットということで、補助金の一律カット等で本当に弱い者がさらに切り捨てられていく、こういうことに対して我々は反対をいたしておるわけであります。  そこで、ことしから大量の借換債、去年から始まっておるわけでありますが、ことしから大量になる。また、その関係で短期債の発行ということにもなってくるわけであります。  そこで、澄田参考人、それから水野参考人、石参考人にひとつお聞かせいただきたいわけでございますが、いわゆる特例公債ですね、赤字国債というものは、戦前においてはやはり軍備費の調達、また戦後においてもインフレというものに国民は泣かされてきたわけであります。そういう観点から、日本の財政法によりますと、やはり基本的な精神としては、国債そのものの発行については否定をしているのじゃないか。建設国債についても、それはもう特例中の特例というのですか、そういうようなことでありますから、赤字国債というものはもう論外である、こういうのが日本の財政法の基本精神ではないか、私はこういうように思っておるわけであります。  ところが、四十一年から建設国債、そして五十年からは赤字国債、こういうことになっておるわけであります。しかし、特例法によって毎年歯どめをかけていこうという形になっていることは先刻御承知のことであろう、こういうように思うわけであります。ところが、利払いについてもそうでございますが、元金の支払い自身ができない、十年たってみたらその元金を支払うお金がない、こういうことから借換債、短期債の発行ということになっておるのではないか、こういうように思うわけであります。こうなってまいりますと、赤字国債特例国債建設国債四条国債との関係について、そういう意味ではもうけじめがつかない、私はこういうように思うわけであります。そういう点で、財政法の趣旨を踏まえて歯どめというものを一体どのようにお考えなのか、ひとつ御説明いただきたい、このように思います。
  24. 澄田智

    澄田参考人 赤字国債特例中の特例であるという上田先生の御意見は、私もそのとおりだと思います。特例債という言葉自体がそれを示しているわけでございますし、それから先ほどおっしゃられたように、特例債発行については法律で毎年その都度、その年度だけに限って認めているという制度自体がそういうことを示していると思います。  そこで、将来の歯どめということでございますが、万やむを得ないとしてその特例債発行するということになっている現状におきまして、赤字国債を含めましてやはり国債発行総額を極力抑制をしていくということ以外に実質的な歯どめというのはないのではないか。歳出抑制等によって現在までここ数年、新規発行減額を続けてきているわけでございます。その減額自体がもっと望ましい減額の金額に達しないというような、そういうことはなかったわけではないわけでございますが、しかしとにかく減額努力は続けてきているわけでございます。したがいまして、今後とも引き続き財政全般にわたって抜本的な見直しを進めていって、そうして歳出抑制を続けていく、そうしてその特例国債減額、さらには特例国債を含む国債全体の発行額減額ということを続けていく、こういうことであろうと思います。そういう点から申しまして、昭和六十五年度までに特例国債依存からの脱却という目標については、あくまでこれを掲げて、そうして全力を挙げてこれに取り組まれていくということがまず肝要であろう、こういうふうに思っている次第でございます。
  25. 水野正一

    水野参考人 私も、今澄田日銀総裁がおっしゃったような意見とほぼ同じような考えてあります。  国債発行についての歯どめとしまして、教科書的には市中消化の原則とそれから建設公債の原則を挙げてありますけれども、現在守られておりますのは市中消化の原則、これも非常に変則的な市中消化の原則ですが、それだけで、建設公債の原則は特例公債発行で事実上形骸化してしまっております。  そこでやはり問題は、今の日銀総裁のお話もありましたように、財政そのものが非常な赤字を出しておりまして、そしてそれは建設公債の発行の範囲内では足りなくて特例公債発行せざるを得ないというふうな財政の収支といいますか、問題はそこにあるわけでありまして、そこのところを改善しない限りは、財政自体、大きな赤字体質そのものを放置しておいて幾ら公債の歯どめというのを考えても、これは現実が示すように無力化するわけであります。  そこで、財政再建というのがやはり取り組むべき重要な課題だと思うのですが、これにつきましても、最初昭和五十九年度を目標に特例公債依存から脱却するという目標でやっていたわけでありますが、これが不可能になりまして、そして六十五年に目標を延ばしたわけでありますが、どうも最近では、またその六十五年も危ぶまれるという情勢であります。  最初五十九年という目標を置いたのは、五十年度特例公債の大量の発行が行われた、それの償還期限が五十九年に来る。最初特例公債については借りかえを認めないという方針でやっておりましたが、どうしてもそれを償還しなきゃいけない、それまでに少なくとも特例公債発行はゼロにするというところまでこぎつけなきゃいけないというのが、五十九年特例公債脱却の目標だったと思うのですが、これがやはり不可能になりまして、だんだん延びてきている。問題はそういうところにあるというふうに思うわけで、やはり五十九年度特例公債から脱却するという、これはあくまでも崩さないで、そしてこれについて真剣に取り組むべきだったというふうに思います。どうも今までの財政再建のあり方を見ておりますと、そういう点をきちんとした計画性を持ってやっているのかどうかというのは疑わしい面がありまして、今度六十五年までに特例公債依存から脱却するというのであれば、やはり歳入歳出両面にわたりまして一応もっと実効性のある見取り図のようなものをきちんとつくる必要があるというふうに考えます。  終わります。
  26. 石弘光

    ○石参考人 それではお答えいたします。  大量に出てしまった公債をどのような形で償還したらいいか、あるいは歯どめというのをどう考えたらいいかという御質問だと思います。  ちょっと一般論を申しますと、これだけ大量に出てしまった公債をいかにして返すかというのは、大げさなことを言いますと、今後の資本主義経済の一大問題だと思います。過去は、戦争とインフレで大体これを帳消しにしてきたわけですね。それが恐らく今後はそういう形で減らせない。つまり平和時で、かつインフレもなくして減らそうということは、恐らく経済学に課された大きな問題でもありましょうし、通常の先進諸国で課された最大の問題であろうと思います。いずれにいたしましても、財政赤字というのはやはり厳しい負担国民に求めない限り減らないわけでありますから、その辺をどうやっていくかというあたりは、今後国民課題になろうかと思います。  そこで、歯どめの問題でありますが、従来我が国では法律面、制度面の歯どめと、それから市場のテーストによる歯どめと二つ持っていたわけでございますが、どうもいずれも余り機能を発揮していないのではないか。少なくとも特例債が出てきたということは法律の歯どめがきかなかったということでありまして、それから大蔵省が持っておりました国債依存度三〇%という壁も、これもいっとき破られたわけでありまして、どうも制度法律をつくっても、経済の実態が変わればそれだけ破られてしまうという恐らく経験を示されたのだと思います。それから市場のテーストによるのも、恐らくこれは利払い費がかさんでにっちもさっちもいかなくなったら公債をやめろということだろうと思いますが、どうもその状態でもなさそうであります。そういう意味で、人為的あるいはいろいろな形で歯どめをつくっても余り効果がない、ややそういう感じを持っております。  ただ、最近の歯どめというのは、恐らくこのままいったらどうしようもないよということが大分国民に浸透してきた歯どめが、ある意味では有力ではないか。例えば、利払い費というのはもう新発債を超えるというわけでありまして、何のための新発債かという、そういう問題が極めて容易に国民の納得を得る一つの情報提供になると思います。そういう意味で、国民の危機感というもの、それを受けての国会審議あるいは政治家の皆さんの活動、あるいは官僚機構の活動等々というような地道なものが結果として歯どめになり、行革を生み、今日に至っていると思いますので、このムードを大いに持続させるべきだ。したがって、このムードを壊すような政策選択というのは、よほどのことがない限り極力とらない選択をすべきである。そういう意味で、僕は、景気刺激等々すぐさま財政が出ろというのはちょっと反対である、こういう趣旨であります。
  27. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 十兆円の利払いのために新たに十一兆円の国債発行しなければならぬ。利払いのために新たな利子のつく借金をする、こういうことはまさしくサラ金地獄ですね。来年は、利払い恐らく十一兆円になるだろうし、再来年は十二兆円、大体そういうようなテンポになるのじゃなかろうか、こういうように思うわけでありますから、ますます大変な状況になる。いつまでも歳出のカットといいますか、そういうのも限度である。もういいかげんにしてくれ、こういう国民の気持ちでありますし、さりとて大型間接税、これも大変人気が悪い、こういうことになるわけでありますから、そうしたらおのずから何をしたらいいのか、こういうことから、やはり内需拡大というものも国民の生活を豊かにする、そしてそのことがひいては財政再建の原点になるのじゃないか、こういう安易と言われてみれば安易かもわからぬが、もうそれ以外の方法はないのではないか、こういうふうに我々自身考えておるわけです。  赤字国債の脱却を五十九年度にということだったのですが、これができなかったわけです。今度六十五年度にと。果たしてできるのか、これはやってみなければわからぬ、こういうことであります。あるいは特例公債についても、歯どめということで毎年毎年この議会で決まる、こういうことでありまして、そういう意味では、本当に国民の感情から言えば、うそつきの政府、うそつき内閣、結局国民に約束しても初めから守る意思があったのかどうか。守る気はあったのだけれどもできなかったということにもなるのかもわからぬが、そういうことが許されるだろうかというように思うのです。借換債等についても、これはもう民間で言うたら、手形が落ちないということになるわけでありますから、倒産ですよね。利子は渡すけれども、元金は待ってくれというのですから、これは民間では絶対に――ただ、これは国家権力ですから、日本政府はまだ国民から信用されているから借換債で済むということにもなるのかもわかりませんが、本当にそういう意味では、民間から言わすと全然理解できないような状況が今起こっておるのではないか、こういうように思うわけであります。  これ以上聞いてもどうかと思いますが、六十五年度に脱却と、こういうことでありますが、これも恐らく無理ではないか、こういうように思っておるわけでありますが、その点について、澄田参考人は、いつ、どのように思っておるのか。実際これが可能であるというように思っておるのか、可能でないけれどももうしようがないじゃないか、こういうことなのか、その点、これはあしたまた大蔵大臣に私、聞こうと思いますが、ひとつ日銀総裁としてどういうふうな感じを持っておられるか。
  28. 澄田智

    澄田参考人 私の立場で六十五年が本当に可能か、こういうふうに質問されましても、それは可能でないというふうに申し上げるわけにはまいらないわけでございます。  やはり毎年の新規発行国債、なかんずく特例国債発行額を逐年減額していく、そして六十五年までにこれをなくする、まだ現在六十年でございますから、あと五年たっぷりあるわけでございますので、その間にそういう努力を続けていくことが何よりも望まれるということでございます。また、特例国債発行は、その都度、本日の議題のように財源確保法律ということで審議をされ、国会審議にさらされて、そしてその削減努力というものが毎年問われるということ、それから、先ほど石参考人も仰せられましたが、国民全体も問題の重要性というのに十分気がついてきているという現状でございますので、そういう国民の監視、そういう中で達成を期していく、こういうほかはない、かように思う次第でございます。
  29. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 恐らくこのままの状況で達成は難しいだろう、このように思っております。この問題についてはまだ後日に譲りまして、時間の関係ありますから、さらに質問を続けさしていただきます、別の角度で。  まず、四月一日から電電と、それから専売公社が民営化された、こういうことで、そういう意味では民活導入の第一歩、こういうことにもなるのかもわかりませんが、そこで、銀行協会、証券業協会はこの民営化についてどのように考えておるのか。特に経済的な効果とかあるいは内需拡大等といったような観点からも含めて、ひとつ概括的な感想を聞かせていただきたい、このように思います。
  30. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいまの御質問にお答えさしていただきます。  電電株式会社、日本たばこ産業株式会社が四月一日から民営化されましたことにつきましては、今先生御指摘のように、民間活力の活用という点で私どもは大変これは歓迎すべきことであろうというふうに受けとめておる次第でございます。特に私ども金融関係とのかかわり合いにおきまして、従来これが財政資金によって資金が調達、運用されておったわけでございますが、これが民間資金によって資金の調達が行われ、また資金の運用も行われるということになりますと、そういった財務面におきます資金効率化というのがたばこ産業株式会社におきましても日本電電株式会社におきましても行われてきておるのが現実でございまして、そういった面から私は、金融効率化、資源の適正な配分化というのはやはり自由なマーケットを通じて資金を調達する、またそれを運用することによって行われると思いますので、従来のいわゆる政府機関としての経営に比べまして、はるかにより効率的な、より合目的な経営ができるというように考えております。そういう意味で私どもは、そういった政府機関の民営化がさらに一層進められることによりまして財政負担の軽減ということが行われていくことを歓迎するものでございます。
  31. 渡邊省吾

    渡邊参考人 先生の御質問のNTTの民営化につきまして、私どもはもちろん、国会でもいろいろ議論の尽くされたところでございますから、まことに結構なことだと思います。日本における最大の企業と言ってもいいと思いますが、そういった形で民営で新出発される、恐らく効率経営が貫かれると思いますし、また、それに関連して同種の事業がいろいろもくろまれておりますので、この影響は非常に民間経済全般に広がっていくというふうに考えます。証券界といたしましては、当然新しい企業のNTTの資金調達なりいろいろな面でまたお役に立ちたいし、日本における最も信用力のある会社の一つとして、そういう点について発展していくことが期待されるというふうに思います。  また、本日の法案の御審議にも関係ございますが、NTTの政府持ち株が計画的に将来放出される、その資金国債償還に利用されるといったような計画をお持ちのようでございますが、これにつきましてもまだ具体的な案は何にも固まっておりませんけれども、しかし証券界としては過去にそういった政府持ち株の処理をしたこともございますので、御協力したこともございますので、それが実現の暁には大いに努力して所期の目的を達成したいというふうに考えておる次第でございます。
  32. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 NTTの株価は額面の五倍から六倍、こういうようなことも言われておるようでございまして、時価総額にして五兆円前後、あるいはもっとではないか、こういうような意見もあるようでございます。いずれにしても日本の株式市場に大きな影響を与えることは間違いなかろう、こういうように思うわけでございまして、そういう意味で株式市場あるいは金融市場にどのような影響を与える一これはちょっと一般的なことになってしまって答えにくいかもわかりませんが、どのように考えておられるか。  それと同時に、イギリスのBTですね、もう既に民営化されているわけですが、BTの場合はこれは二百三十万人の個人株主のうちの半分が新たに株を購入した人たちだ、こういうようなことも報道されておるわけでありますが、日本の場合どうなるのかということになりますが、その点についてお考えがありましたらお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。これは渡邊参考人に……。
  33. 渡邊省吾

    渡邊参考人 お答えいたします。  先ほども触れましたが、このNTTの株式の民間放出はどういう方式で行われるか、あるいはその具体的な時期もまだわかりませんが、そのときの株式市場状況がどうなっているかということは現在全く想像つきませんので、はっきりしたことを申し上げることはできませんけれども株式市場の規模は御承知のように昨年末で百六十七兆円というようなスケールになっておりますし、売買高も昨年一年で八十三兆円というような額になっておりますから、電電株式の放出は株式市場にそれほど大きな影響を与えることはないのではなかろうか。先ほど時期、方法がまだ確定してないのでしかとは申し上げかねると申しましたけれども、しかし、一般論から申しましてそういう形で受け入れられるのではあるまいかというふうに想定しております。  それから御質問の一つに、BTの関係から個人株主がふえたがというような御質問でございますが、これも先ほどちょっと触れましたように、どういう方式でこの株式を放出するか、いろいろな方法があると思うのでございますね。しかし、その場合に、価格にいたしましてもできるだけ公正に、しかもその取得についても公平に行われるような方法が考えられなければ、当然のはずですけれども国民の資産を処分するわけですから、そういう方法は検討されなければならないというふうに思います。一般論として、その株価算定にはいろいろな方法がございますけれども、現在何もまだ決まっていないというのが実情でございます。
  34. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 時間が参りましたので質問を終わります。参考人先生方、ありがとうございました。
  35. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 武藤山治君。
  36. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 参考人の皆さんの御意見を伺いまして、大変勉強になり参考になりました。感謝をいたします。時間がわずかしかありませんから、要点だけかいつまんで皆さんの御見解、学識、経験のほどをいろいろ伺いたい、こう思っております。  最初に、日銀総裁に伺いますが、日銀券の平均発行残高が三月は六・八%の増、四月は六・二%の増と高い伸びが続いている。さらにマネーサプライは、前年同月比で見ると二月が七・九%増、三月が七・九%増、こういう発表が昨日月例経済報告の中で報告をされております。また金利ども、三月は平均約定金利が〇・〇〇八低下した、また長期でも〇・〇五低下した。こういうような数字は、一体、金融の番人として見てノーマルな状態に今数字があらわれているのか、やや何か警戒信号がこの数字の中に見受けられるのか。  いずれにしても日本銀行というのは貨幣価値の安定ということが最大の任務でありますから、そういう動向、マネーサプライや今申し上げたような発行券の状況などを常に監視、注目をしていなければならぬところだと思うのですが、総体的にそういう最近の動きは何か少し警戒すべきなのか、全くノーマルで、日本銀行としては今手放しで民間の動向を見ていればいいということで、特に何も注意しなければならぬ点はないと受けとめていいのか。その辺をちょっと、感覚で結構ですから、述べてください。
  37. 澄田智

    澄田参考人 ただいま御指摘の点でございますが、最近の銀行券あるいはマネーサプライのM2プラスCDの数字等につきましては、私どもは、全体といたしまして金融が十分緩和している状況である、そういうふうに見ておりますが、いろいろ特殊条件もあるところでございます。  例えば銀行券について申し上げれば、四月は、四月の後半連休控えというようなことで、レジャー関係その他本年は大変活発なようでございます。そのための銀行券というようなものも出たということもございます。それから、昨年十一月から行っております新札でございますが、新札の金融機関側の手当て、そのための影響というのはもう完全になくなってきている段階で、これは平常化しておりますが、旧札に対する愛着というようなものから、個人において旧札を温存をしているというようなものが若干はあるんではないか。こういうふうな要因も考えられるところでございます。  それから、M2プラスCDの方になりますると、三月から相互銀行、信用金庫、それから四月から普通銀行までMMCというものが発行されました。MMCの発行に伴いまして、あるいは四月からはCDがさらに小口化をされまして、ああいうような新しい金融商品の発行によりまして、そのために金がそういう金融商品に向かった。これは預金になっておりますためにM2プラスCDの中に入るわけでございまして、M2プラスCDに入らなかった金でそういう新商品によってM2プラスCDに入ってきた、こういうようなものもある、こういうふうに考えられるわけでございます。  こういう特殊条件はございまするが、しかし全体として現在の状態は、名目成長率の瞬間風速的な状態等から考えてみまして、今武藤先生が言われたように手放しでこれでいいんだという状況というよりは、緩和のぎりぎりのところに来ている、こういうような感じは率直に言って持っているところでございます。もちろん現在、総合的に判断いたしまして、現在の金融政策というものをこのまま維持していくという状態であると判断はいたしておりますが、そういったマネーサプライ状況等は、今後慎重に見守っていく、いわば緩和の状態がフルに働いている状況である、こういうような判断をしているところでございます。
  38. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 緩和の状況がフルに続いているという状態は、預金量が日本の場合非常に多い。大蔵省、預金の純増額は年間三十兆から四十兆の間ぐらいで、何兆円ぐらいですか。――きょうはいない。銀行局じゃないとわからぬか。約四十兆近いと思うのですね。三十七兆くらいになるのでしょうかね。そううち国債消化に回る部分、民間企業が使う部分、そしてなお余剰――これは全銀協会長の方がわかりますか。国内ではなお余剰になる。それがアメリカへ出ていく、東南アジアへ出ていく、中国へ出ていく。目の子勘定で言うと大体どのくらいの資金が海外に行くんですか、余剰貯蓄という言葉で一口に言いますけれども。――いいでしょう。  澄田総裁、この間、日本経済新聞に「貯蓄減らし・資本流出規制論 日銀総裁、強く批判」こういう記事が出ておりましたね。そこで、この余剰の金がアメリカへ年間三百億ドルくらい、去年あたりはかなり行っておりますね。五百四十四億ドルのうちかなりの部分がアメリカへ行っておりますね。もしこれを、行くのがいかぬのだ、外国へ資金が流れていくのはよくないことなんだという前提に立ては、内需でもっとうんと金を使えという議論になって内需拡大論になりますね。日本人の勤勉で貯蓄をした金を、なるべく外国へ行かないように歯どめをかけて国内にもっとうんと使えという政策が正しいのか、世界経済全体の不況化を防ぐためにこの資金を世界じゅうのために活用させるという政策が是認されるのか、ここらは非常に難しい理論だと思うのですね。  澄田総裁は大蔵省の銀行局長、次官、大蔵省の最高峰をきわめてから金融に、輸出入銀行もやり、そういういろいろな経験者ですから、いろいろなことを大臣よりも詳しいのですね。だから私は聞くのでありますが、もし内需拡大といった場合、その余剰資金のうち、海外に流れていく分のうち何%くらいは内需拡大の方に、投資に回すべきだと考えるのか。  もしそういうことで無制限に内需拡大論を展開しますと、私が心配するのは、調整インフレ政策の方にだんだんだんだん踏み込んでいってしまって、結局最後のしりぬぐいは日銀が苦労することになるのじゃないのかな、こういう感じもするものですから、この余剰資金の海外流出の限度と国内に置く歩どまりのパーセント、そしてそれを民間活力に使うという限界、調整インフレにならない限界、これは金融の番人としてはどんなところをおぼろげながら設定しているんでしょうか。
  39. 澄田智

    澄田参考人 大変難しい問題でございますが、日本の余剰貯蓄が海外に資本として資本流出をしていくという点、なかんずくアメリカに多いわけでございますが、そういう点につきまして、海外諸国におきます貯蓄不足を日本の貯蓄超過が補っている、この面は否定できないと思います。  それがやはり、アメリカ経済を例にとりますれば、アメリカ経済の貯蓄不足という分に対しまして、アメリカは高金利でございますが、しかし日本からの流入によってあの程度金利がとまっている、それがなければもっと金利が高くなる、こういう性格があると思います。基本的にはそういうことだと思います。したがいまして、日本の貯蓄が海外に資本として流れるということは、直接投資、経済協力、そういうものも含めまして、大宗であります証券投資のようなものもすべて入れてみまして、海外経済にそういう意味でもってプラスになっている面、これは十分認めなければならない、そういうふうに思うわけでございます。  ただ、それはどの程度までが適切であって、どの程度はもっと国内の投資に向かうべきであるか、その辺の振り分けのぐあいはどうかという問題、これは非常に難しい問題でございます。数字的にはっきりしにくい問題でございますが、ただ、日本の経常収支の黒字、昨年度で申しますれば三百七十億ドル、この分が海外に投資として向かう、これは極めて適正な範囲でございまして、経常収支のそれだけの黒字が出ておるのを日本でため込まれているという状態は世界経済のためにマイナスでございますので、これが出ていくという点は極めて適切なことだと私は思います。  それを超えまして、資本収支、殊に長期資本収支という形で出ていっております点について、どの程度までが是認さるべきであるか、どの程度は過剰と言うべきであるかという点は難しいところでございますが、大体めどは経常収支の黒字をめどにして、そうしてこれを、若干短期資本の方の動きもございますし、それから国際収支のあのバランスに出てこない金融面の資産、負債の関係もございますのではっきりした筋は引けませんが、それを上回る部分、これは基礎収支の赤字ということになるのでありますが、その基礎収支の赤字分というものが余り過大にならないように、こういうふうなことではないかというふうに思う次第でございます。
  40. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もう一つ、総裁、今与党内にも二階堂さんの公共投資論、河本さんの五兆円減税論、中曽根総理の国有地払い下げによる民間活力論、いろいろあるわけですね。いろんな勝手なことをみんなが言っているものですから国民をいろいろ惑わしているわけですよ。これは金融家の立場から見ても、政治家がこういういろんなことを無責任に言っていることがいろいろな関係でやはりはね返るのですよ。  特に日本のように、麻薬患者になってしまった財政で、ヒロポンをどんどん打ってやめられなくなってしまっている、急にやめればまた禁断症状で経済がおかしくなってしまう、そうするとまた打ち続けるということで悪循環がずっと続いて、さっきの大学の先生の話じゃないけれども、これはそう簡単に歯どめはかからぬし、やがては貯金が減ったときには大変なことになるだろう。コンドラチェフは、さっき先生がおっしゃったように戦争かインフレによって片づけるかと、昔はそういう手段でやった。今はそれをやれないから、技術革新、技術革命で需要を喚起し、拡大をして乗り切ろうという平和政策以外にない。今中長期的に展望してみると、そういうような大変厳しい、難しい中に国債問題も経済全体にビルトインされてしまっているのだから、いい悪い言ったところでもうどうしようもない。日本の経済そのものの中にしっかりとビルトインされてしまっている。  そういう前提でやはり我々議論しなければならないとなると、民間需要喚起、民間活力によって経済を活性化するというのですが、これだってやはり限界を考えなければいけないでしょうね。民間活力でどこまでぐらい成長率をそれじゃ高めるのだ、五を八まで持っていくのか、九まで持っていくのか。そして税収がふえさえすればいいのだという発想になれば、これは完全な調整インフレ政策になっていく。そうすると、通貨の番人である日銀としては、今の世界情勢なり日本の状態からいって、成長率を政府経済見通しよりも高めるような民間需要喚起をする場合もおのずから限界がなければいかぬ。そこらの限度をやはり総裁としては大蔵省に進言したり企画庁に進言したり、いろいろチャンスはあると思うのですが、その成長率、どこまでぐらいならば通貨の方との関連で心配ないと考えるか、その辺はどうでしょうか。  これから来年度予算編成をめぐって、公共事業費もっとふやせ、いや減税でもっと需要を喚起するのだ、いろいろな議論が七月ごろから出てきますね。その場合の成長率の設定というのは、私は大変因果関係強いと思うのですね。総裁としては、これを総裁に聞くのはちょっと筋違いかどうかわかりませんが、私、澄田さん好きなものだから、何でも知っていると思って今聞いているので、ちょっとその辺感触を述べてくれますか。
  41. 澄田智

    澄田参考人 この点は、武藤先生が今述べられましたような財政状況、そういうようなところから要するに極めて厳しい環境にある、政策選択の環境が極めて厳しい状況にある、こういうことを前提で当然考えなければ――それが最大の前提であろうと思います。先ほど私が冒頭におきまして政策の効果とコストを十分吟味の上で内需拡大策を考える場合には考えていただきたい、こういうことを申した次第もそういうところにあるわけでございます。そういう状態でございますので、財政、あるいは金融政策も含めまして財政金融政策、そういうことによって内需を振興し得るその余地というのは極めて限定している。これも私冒頭申しましたが、それはやはり今武藤先生の言われるように、調整インフレあるいは財政インフレ、そういうことにならない範囲内でなければ絶対にいけない、こういうふうに思うわけでございます。  そういう点から、財政政策の限界というものは、やはり財政再建、六十五年度特例公債をゼロにする、そういう基本方針に逆行しない、その方針の範囲内において、内需拡大のためにそれがプラスになる面であり、マイナス効果としてはそういう逆行というようなことのない、そういうものを選んで、その範囲内で選択をしていかなければならない。したがいまして、そういう点から申しますると、成長率の点につきましても非常に限られているというふうに言わざるを得ないと思います。  金融の面につきましては、これも先ほど申し上げましたとおり、円高方向で安定をさしていく、そういうめどを常に持ち続けなければならない。アメリカ側、ドルの側の原因はなかなか何ともならない点がございますが、日本側から円安にしていくようなことは絶対避けなければならない、こういうことが条件であると思います。  そういう条件の中で成長率というようなことになるわけでございまして、これは、本年は政府経済見通しもございます。来年度の場合にどういうふうに設定するか、まことに申しわけございませんが、ちょっと私も、今から申し上げる数字を持ち合わせておらない次第でございます。     〔熊川委員長代理退席、中川(秀)委員長     代理着席〕
  42. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もう一つ総裁、今、国会にもかかっている短期国債発行問題で、年度繰り越しもできるようにしよう、とにかく平準化を図ろう、金利の安いときに発行しよう、こういう短期市場の問題がこれからやはり金融政策の中で大きな比重を占める位置になると思うのですね。  そこで、日銀の指導方針として、短期市場育成強化、助成、そういうような方針というのは、どんなことを今お考えになっていらっしゃるのでしょうか、日銀としては。
  43. 澄田智

    澄田参考人 これから金融自由化が進む、円の国際化が進んでいく、そういうことになりますると、ますます金融調節、金融政策というものは金利機能を一層活用して行っていく、そういうことにならざるを得ない、こういうふうに思っております。そういう点から、短期市場といたしましては、インターバンク市場のみならず、オープン市場、ここは金融機関以外の企業、その他、それから非居住者、これも参加するオープンマーケットというものを育成強化をしていくということが何より必要であろうと思います。インターバンク市場の調節というものをも一層工夫を凝らしていく必要がある、それは日本銀行として常時思っておりますが、オープンマーケットを育成していくというのもやはりこれからの主眼であろう、かように思っている次第でございます。
  44. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 先ほど全銀協会長さんは、短期国債がこれから出回ってくると、普通銀行の預金吸収に競合してちょっと困るなというニュアンスの発言をされたわけであります。しかし、今度は財政の方から見ると、できるだけ金利の安い時期に短期国債発行して、なるべく金利負担を少なくすることは国民のためになる。  そういう観点から見ると、銀行側としてはちょっと短期が余り出ると困るなという気持ちはわかるけれども、しかしその気持ちは、反対だというほどの気持ちではない、十分話し合いながら上手にひとつやっていきたいという程度の感触なのか、それとも、全銀協としては反対という方針を既に決めてこれから対処していこうとしているのか。その辺ちょっと、短期市場の問題を、国債発行との絡みで御意見を聞かせてください。
  45. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいまの御質問でございますが、今御指摘のとおり、先ほど冒頭の意見陳述のときに申し上げたことの繰り返しになりますが、私どもとしましては、やはり短期国債発行ということは銀行の預金と競合する面が非常にございます。そういった点で、預金金利自由化というのがまだ必ずしもすべて完全に進んでいるわけではございませんし、また金融市場の動向等というようなものについての配慮が十分なされた上で発行がなされませんと、私ども民間金融機関資金調達力の面だけでなく、金融市場そのものの正常な運営といいますか、それにも好ましくない影響が生じかねないというふうに思うわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、この短期国債の具体的な発行ということにつきましては、そのときどきの金融自由化進展状況に応じて御検討をしていただく必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  この具体的な内容としましては、発行期間であるとか発行単位、発行時期等が考えられるわけでございますが、そういったことがすべて金融自由化進展状況あるいは進め方と絡んでいるということでございまして、その一つ一つが私ども民間金融機関資金調達力に影響を与えるということでございます。したがいまして、私どもとして一番懸念いたしておりますのは、そういった一つ一つの問題、期間、発行単位、発行時期等によりまして、いろいろな形で民間資金のといいますか、特に民間の規制金利預金、これがまだ民間の金融機関ではほとんど大部分でございますが、そういう規制金利預金からの急激な資金シフトということが起きるということは、私ども民間金融機関の経営の立場からいいますと大変これは経営に大きな影響を与えることになるわけでございますので、そういった点に十分配慮をしてこの問題を取り上げていただきたい、かように思う次第でございます。
  46. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これからますます金融国際化自由化、そしてこれはサミットでも日本の責務として約束をしてきた、そういう金融自由化問題との絡みで、銀行、証券、信託、さらに余剰資金をいっぱい持ったトヨタ自動車、日立、東芝、こういうのがみんな社債、株を買う。とにかく顧問会社を通じても出す。もう大量な金額が出て、兆単位になってきた。この金融をやるところが、方々同じような商品をだあっといじるようになってきたのですね。  ですから私は、そういう歴史的時代が今来たんだという認識を全銀協側も持たねばならぬし、証券業界も持たなきゃいかぬ。昔は、銀行よさようなら証券よこんにちは、証券よさようなら銀行よこんにちはという、何か全く違う、お互いが利益追求の集団として全く利害が相反して対立しているような印象が長い間持たれてきたんですが、私はもうそういう発想や考え方をすべて捨てなければならぬ時代が来たと思うのですよ。ですから、これからは銀行と証券界は常に共同して新しい商品を開発する、これはお互いが、垣根は大分もう取っ払われたわけですから、窓販も許され、ディーリング業務も許され、銀行のやる仕事も証券界の方へだあっと入り込んでいく、また証券界も銀行のやれる仕事にずっと突っ込んでいくという、お互いが許し合ってきた時代ですから、私は、やはりこれからは共同で新商品を展開していくという姿勢が大変重要な時代が来たんだなという認識なんです。  この私の認識に対して、全銀協あるいは証券業協会はどんな考え方でございますか、ちょっと披瀝してみてください。
  47. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいまの銀行と証券の問題につきましては、まことに御意見のとおりだというふうに思います。  御承知のように、本年の三月末に行政当局から一つの方向が示されたわけでございます。これは、我が国金融自由化が非常に急テンポで進んでいく中で、公共債の市場あるいは短期金融市場の整備拡充を図る見地から、今御指摘のような銀行、証券の業際間の規制の緩和措置が講じられたというふうに私ども理解しておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましても、今後さらに金融自由化進展していく中におきまして、業際間の垣根をこれから低くしていくことは、いわゆる今御指摘のように銀行と証券といろいろ手を携えて新商品の開発に当たるというようなことが必要でございますし、これはいわゆるお客様のニーズというのが非常に多様化、高度化いたしておるという観点からも必要になってきておるというふうに考えておる次第でございます。  ただ、そういった証券と銀行の問題につきましての進め方につきましては、やはり銀行、証券それぞれ固有の業務というものがあるわけでございますので、私どもといたしましては、周辺業務について相互の乗り入れ、提携ということを進めていくことが妥当であると考えておるわけでございます。したがいまして、繰り返しになりますが、やはりお客様の利便性ということを高めて、相互に補完ができるそういった分野についてはできるだけ協調してまいりたい、かように考えておる次第でございます。  しかし、繰り返しになりますが、私どもの固有業務、例えば預金、貸し出し、これはいわゆる信用を受ける受信、あるいは信用を与える与信、あるいは信用相続、あるいは決済機能という預金為替業務、そういったことがこれに当たるわけでございますが、そういった面につきましては、やはり銀行としての固有の業務でございますし、また、これにつきましては銀行に与えられましたいろいろな役割という点から、証券会社とはまた違ったいろいろな規制がされているわけでございまして、これは銀行という立場から申しまして、そういった規制は私は当然あるべきだと思います。また、そういう最小限の規制が必要だということは、銀行という組織が、先ほどお話もございましたが、やはり単に中央銀行だけでなく、我々民間の銀行におきましても、内外における通貨価値の安定と信用秩序の維持に協力するという社会的な責任があると考えておる次第からでございます。
  48. 渡邊省吾

    渡邊参考人 お答えいたします。  金利自由化と並びまして業務の弾力化という方向が打ち出されておりますが、今もお話がありましたこととほとんど符節を合することになりますが、銀行と証券の周辺の業務の分野ではお互いに競争していく、競争していろいろなイノベーションを図ることによりまして、投資家なり一般の消費者のニーズにこたえていくというようなことでございます。そのために、似たような仕事で商品あるいはサービス、そういうものを開発していくという面が次第にふえております。したがいまして、競争といったような形で世間で受け取られる面もあるわけでございますが、そういった周辺の競争分野におきましては、これは我々グレーゾーンと呼んでおりますけれども、結局競争をフェアにするということが前提条件でございますから、イコールフッティングと申しますか、競争条件を等しくするということを図りまして、そして今の顧客のニーズにこたえていろいろな開発をしていく、そして、いい意味の積極的な競争をしていくということが進歩発展につながるのではないかというふうに考えます。銀行さんもそういう努力をしておられるように思いますし、私どももその努力を続けておるわけでございまして、今後ともさように進めたいと思います。  しかし、今もお話がありましたように、銀行と証券とはそれぞれ固有の中核の業務がございます。今の預金や為替とか、そういったような銀行の中核の業務がございましょうし、私ども証券は、株式や社債の引き受けとか、あるいは証券の売買とか、あるいは投資信託といったような業務、これは証券の固有の業務だと存じます。こういう中心の核となる分野では、それぞれお互いに尊重し合って、侵食し合うというのではなくて、それぞれの固有の業務はそれぞれ伸ばす。つまり、私ども資本市場に対して、銀行さんは金融市場と申しましょうか、それぞれの発展に努力しなければならないという使命を持っているのだと思います。そういう分野につきましては、これをお互いに尊重し合う。お互いに侵食し合うあるいは両方を兼ねるといったようなヨーロッパ型のユニバーサルバンキングのようなシステムもございますけれども、日本の現状を見ますと、やはり資本市場金融市場が、車の両輪で、バランスのとれた発展をするということが必要ではないかと思いますので、こういった固有の業務は尊重し合って、それぞれが自分たちの使命としてこれを発展させていくことがいいのではないかと私も思います。  しかし、その固有の業務がどうしても必要な場合がございますれば、そのときには今のように尊重し合うあるいは侵食しないということと同時に、うまく組み合わせる、提携をするという形で、尊重とそれから提携によるメリット、進歩発展ということを考えていいのではないかというふうに思うわけでございます。  したがいまして、今の羽倉参考人の御意見と同じでございますけれども、本業はお互いに尊重し合いながら、必要ならばそれを提携し合うことによって、それからその周辺の業務については商品開発やサービスの開発につきましてお互いにフェアな競争をし、さらに進歩発展させていくというようなことでこれからいきたいと思います。銀行さんと私ども証券とが意見が全く似ているという点で、決して競争ではなく協調しているというふうに御理解いただければありがたいと思います。
  49. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それから、先ほど上田君からも話がありましたが、対外経済諮問委員会が提言をした中でい労働時間の短縮ということが入っているのですね。これは対外摩擦を防ぐ上においても、世界と同じような労働時間にしないといかぬのですね。年間総実働時間が日本は二千百三十六時間、アメリカは千八百五十一時間、西ドイツは千六百八十二時間ということで、これも貿易摩擦の根底にある。日本はどうも働き過ぎるのだろう、もっと休暇をとって、雇用ももっとお互いが分配をして、働き過ぎという非難を解消するという二つの面をねらって、恐らく政府はそういう方針を決めたのだと思うのです。  そこで問題は、完全週休にするためにいつも一番ネックになるのは金融機関なのであります。金融機関が開いていると民間の企業は、小切手だ、手形だ、いや現金の引き出したで、やはり銀行が開いていれば休まないんだという、お互いが責任のなすり合いみたい形で、政府の方の川雇用問題は、公務員が先に休んだのでは国民の税金をいただいている立場で申しわけないから、どこかがやらなければ公務員はできないんだというのが人事院の立場です。そこで過般、銀行の決断で、銀行法改正のときに今の、完全週休ではないけれども、ひとつ幾らか導入しようということになった。  しかし、ここまで世界的な、いろいろな指摘を受けている段階では、思い切って完全週休二日制、さらに五月には緑の休暇、四、五、六日あたりを休暇にして、大体先進国並みに労働時間もだんだん追いついていって、世界の標準的なものの中に日本も入らないといけないと思うのです。やはりまた銀行がその先導役を引き受けてくれないと、これはなかなか実行できないのですよ。  そこで、全銀協としてそういう取り組みについて今どんなお考えでいるのか。これは今度は政府が大きな網をかぶせて、労働時間短縮という方針を七月には確実に具体案を出すと言っておるわけです、河本さんも。ですから、全銀協としての姿勢をここで少し伺っておきたいわけであります。
  50. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいま先生からお話がございましたように、週休二日制の拡大の実現ということにつきましては、全銀協としてこれは前向きの姿勢で取り組んでおるということをまず申し上げたい、かように存じます。  御案内のとおり、現在の月一回の週休二日制というのは、五十八年の八月に実施されたわけでございます、それ以来二年弱経過して、これが完全に定着したというふうに私どもは判断をいたしておるわけでございます。したがいまして、次のステップとして、休暇の拡大を検討していいという基本的な認識に立っておるわけでございます。  そこで、そういった基本的な認識に立ちまして本年の二月に週休二日制の拡大について次のような方針を決めたわけでございます。  第一が、本年九月の三連休となる第二土曜日、九月十四日でございますが、そのときに試行的に機械稼働をして払い出しを行う。これは、休日にすることによってお客様の利便を妨げてはならないということからこういう措置をとるわけでございます。  また次に、土曜休業日の機械稼働と週休二日制の拡大ということにつきましては、月一回の週休二日制の実施後三年目に当たります来年の八月ごろをめどといたしまして実施したいというふうにしております。  この具体的な時期と方法は、一番問題は、御承知のように今銀行の仕事というのはほとんど大部分がコンピューターによる機械稼働でございます。したがいまして、その機械稼働の点でいろいろテストをしなければならないといったようなこともございますし、また、プログラムを組まなければならないというようなこともございます。そういったことで、かなり時間がかかるわけでございます。そこで私どもとしましては、先ほど申し上げましたことしの九月の機械稼働を控えまして、これにつきましての調整をいろいろ行って結論を出したいというふうに思っておるわけでございます。  私どもとしましては、そういったことで週休二日制の拡大を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございますが、ただいまも御指摘ございましたように、私どもがそういう方針を打ち出しました後で、労働省からも労働大臣が週休二日制の拡大というために金融機関の協力が必要であるということをお話しになりましたし、また通産大臣も、海外経済摩擦解消の一環として週休二日制の一層の定着を図るというための検討の指示を出されております。そういった意味では、私どもが週休二日制の拡大を目指す上で大変力強い御指示であり、御支援というふうに存じておるわけでございます。  また、先生から御指摘がございましたように、日本は確かに先進国に比べまして、先進国がほとんど大体千五百時間くらいの労働時間に対しまして、二千百時間を超える労働時間を依然として日本は保っておるわけでございます。私自身のことを申し上げて恐縮でございますが、私自身も銀行におりまして、海外で仕事をしたこともございますし、また海外関係の仕事をしたこともございますものですから、私の海外の友人から、日本の銀行はまだ土曜日仕事をしているのか、あるいは銀行に限らず、日本ではまだ土曜日仕事をしているのか、それは働き過ぎじゃないか、おれは土曜日に休んでいるんだ、おまえが土曜日働いているというだけでアンフェアではないかということをよく言われたわけでございます。これはまさに私どもとしましては全く答えのしようのないことでございまして、そういったいわゆる一般の人たちの日本人は働き過ぎという感情が貿易摩擦の根底にある一つの大きな要因になっておるというように思うわけでございます。  そういうことからいたしましても、私自身、ぜひともこの週休二日制の移行ということ、特に完全移行についてこれからもできるだけ努力をしてまいりたい、しかしその一方におきまして、やはり銀行の持つ公共的な使命あるいは社会的な責任ということから考えまして、お客様に対して御不便をかけてはいけない、したがいまして、少なくとも銀行が休日にする土曜日には機械をできるだけ動かして、御不便をかけないようにするというふうなことについては積極的に取り組んでまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  51. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ぜひ羽倉頭取が全銀協会長の間に具体化できますことを期待を申し上げて、この問題は終わります。  証券の方は問題ないですね。週休二日制は、銀行ができれば証券も右へ倣えで、これはもう確実にやれる、こう理解しておいてよろしゅうございますね。
  52. 渡邊省吾

    渡邊参考人 証券界も五十八年から週休二日制が定着しておるわけでございまして、今後それの拡大ということはテーマでございます。その前提にはやはり銀行がどういうビヘービアをされるかということが大きな影響を持ちますが、銀行が踏み切られたら即証券もやるというわけではございませんけれども、非常に大きな前提条件でございますので、その点は御指摘のとおりでございます。
  53. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 全銀協会長、ゆうべのニュースで都市銀行の収益が減少した、銀行名まで挙げてNHKやりましたね。  この都市銀行の幾つかが収益が減少したという原因、これはやはり預金量が思うように集まらないための利益の減少なのか、あるいはMMCあるいはCDが高金利を付与するために利ざやが減ったのか、それとも経営が散漫で為替リスクか何かで損をしたためなのか、どれが一番大きな原因なんでしょうか。これは細かい数字はいいですが、大ざっぱな感じでもいいのですが、どういうことでしょうか。
  54. 羽倉信也

    羽倉参考人 大変難しい御質問でございまして、また個別銀行によりましてもかなり事情も違うかと存じますが、平均的に考えまして、やはり二つの大きな原因があろうかと思います。  その一つは、やはり資金量の伸び悩みということがあるというふうに思います。それからもう一つは、やはり利ざやの縮小ということでございます。資金量がふえ利ざやが拡大すれば銀行とすれば一番よろしいわけでございますが、利ざやが縮小しましても、それをカバーし得るに足る資金量の増大が図れれば減少ということには結びつかないと思いますが、やはり利ざやが縮小するということによりまして利益が減少するという結果があらわれているというふうに思います。  もちろんそれ以外にもいろいろな原因が考えられるわけでございまして、特に御承知のように最近はいろいろなコンピューター投資等をいたしておりますので、これはやはり先行投資に今ならざるを得ないというような段階でございまして、それの償却費等もかなり経費の上で大きく出てきておるという実情にあろうかと思います。
  55. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もう一つ金融問題で私が心配しているのは、これからの問題ですが、亀井さんが監理委員長で国鉄再建監理委員会を今やっていますね。これが七月ごろ答申案を出す。そのときに、国鉄の累積債務二十二、三兆円のうち、かなりの部分は国債発行で穴埋めしようという議論になるんじゃなかろうかというのが私の見通しなんです。恐らく十兆円くらいは国債発行をして埋め合わせをしなければどうにもならぬ、国鉄再建国債というようなものを出さざるを得なくなると思うのですね。もちろん一挙に十兆円ばあんと出るわけじゃありませんが、五、六年の間に恐らく出して埋めようという発想になると思うのですが、そういう際に証券界と金融、銀行関係は、今の国債発行の金額にまたオンされてそういうものが消化し得る限界というのは、今の現状を延ばしたとして考えて、年間二兆円くらいはまだ増加されても大丈夫なのかどうか。現在の政府一般会計プラス二兆円くらいが五年続く、そのくらいは今の貯蓄量からいっても、インフレ志向にいかずに、何とか消化できる、そういうめどは大体、これもちょっと先の話ですから確実な見通しはだれも立ちませんが、そういう大きなグローバルな話は日銀総裁の方がいいのでしょうか。僕は国鉄再建問題でこれはきっと出てくると思うのです。その場合に、どの程度までなら今のにオンしても何とか金融政策金融市場を乱さずに消化していけるというのは、大体どこらがめどになりましょうか。どなたでもいいです、お三方でひとつ聞かしてください。
  56. 澄田智

    澄田参考人 現在、国債消化は順調に消化をされているという状況と申して過言はないと思います。これはやはり、民間の資金需要が非常に落ちついているということにあると思いますし、それからまた、資本取引の自由化等によって内外の資金の移動というものが拡大をいたしまして、資金調達手段も多様化をしている、そういうようなこともあるわけでございます。  したがいまして、将来国内市場において民間の資金需要が非常にふえてくるというような場合を考えますと、現在の国鉄の問題をちょっとよそに置きまして、将来の国債消化ということを考えてみても、クラウディングアウトというようなおそれが全然ないわけではない。発行条件等を適正に市場の実勢に合わせて設定して、国債の管理政策、国債発行の時期的な調節等も十分やってまいらねばならない、こういうふうに思うわけであります。いわんやこれにオンされるという問題になりますと、やはりクラウディングアウトというような心配を常に持ちつつ慎重にやっていかなければならない問題であろう、かように思う次第でございます。
  57. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 本会議の予鈴が鳴りましたので質問を終わりますが、最後水野プロフェッサーと石プロフェッサーに、もしあなたが大蔵大臣であったとするならば、この百三十三兆円に及ばんとする国債累積、そして赤字を減らしていく――国民の犠牲を覚悟する以外に道がないとさっき石先生はおっしゃいましたし、増税以外に実際ないのですね。増税と節約を兼ねてやる以外にないのでありますが、だとするならばどんな税目を、どんな税収を考えることが最も国民の合意が得やすくて実効が上がるとお考えになっておりますか。おれは大蔵大臣で日本の財政の経営をこうするのだという観点からの、一部分の話で恐縮ですが、どういう税目を考えるか、これをお二人に聞いて、ちょうど一時から本会議でありますから、終わりにいたしたいと思います。
  58. 水野正一

    水野参考人 結論だけ申しますと、私は、やはり日本の税体系から考えまして、間接税をもっと増強してやるということだと思います。それで、その場合に間接税として考えられるのは、現行の間接税は個別消費税の体系でありますので、これを増強するということについては限界があるし、また税の合理性からいいましてもいろいろ問題がありますので、やはり課税ベースの広い間接税と言われているもの、その中でいろいろタイプがありますが、私はやはり消費型付加価値税、かつて導入しようとした一般消費税とほぼ同じようなものでありますが、厳密にはいろいろ違いがありますけれども、消費型付加価値税を導入するのが最もよい。その場合に、やはり国民の合意を得るという点からいって、それとある程度抱き合わせに所得税の減税を行うというのが一番いいんじゃないかと思っております。     〔中川(秀)委員長代理退席、堀之内委員     長代理着席〕
  59. 石弘光

    ○石参考人 仮の話でありますが、大蔵大臣になる夢を与えてくれまして、どうもありがとうございます。  所得と資産と消費と、この三つが基本的なタックスペースでありまして、結局のところ、どこの先進国もこの三つの組み合わせで税というのをいろいろ取っておるわけであります。世界の先進国と日本の現状を比べますと、端的に言いましてやはり消費にかける割合が低い、低くなったという言い方をした方がいいかと思いますが、所得がどんどん課税ベースの中でウエートを占めてきたという経緯が高度成長時代にあったわけであります。したがいまして、やはり今後考え得る有力な方向としては、消費に対して課税する、あるいは消費のウエートを高めるという税制にすべきである。これは水野先生と全く意見は同じでございます。  そのときにいろいろやり方があると思います。網をかけるとかかけないとかいう話もあったようでありますが、やはり大きく網をかける形にして税率を低くするのか、あるいは個々の商品に高い税率で対処するのか、この選択はいろいろあると思いますが、私は課税の基本的原則から申しまして、やはり課税ベースの広い間接税をかけ、それから税率を低くするという意味でその辺を模索すべきである。  最後に一言申しておきたいのは、やはり日本というのは極めて中産階級の群がった国でありますから、そういう健全なる社会の担い手が不平不満なく払う税というのをつくっていかない限り、今後の民主主義の経済社会はうまくいかないという感じで、やはり納得を得るのは難しい層もあるかもしれませんが、間接税を詰めるべきだ、こう考えております。
  60. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 どうもありがとうございました。
  61. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十三分開議
  62. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢追秀彦君。
  63. 矢追秀彦

    ○矢追委員 最初に、参考人先生方、きょうは本当にありがとうございます。  日銀総裁にお伺いをいたしますが、今回、短期国債が出されるようになり、また前倒しも行われるようになったわけでございます。これはしばしば言われておりますが、日銀では今後とも引き受けを絶対にしない、これは確約されますか。     〔堀之内委員長代理退席、熊谷委員長代     理着席〕
  64. 澄田智

    澄田参考人 けさほどの冒頭でも申し上げましたが、今回御審議になっております短期国債を含めまして、財源債、財源を補てんするための国債につきましては、日本銀行はこれを引き受けるということは財政法においても禁止されているところでございますし、私どもとして、引き受けるという考えは毛頭持っておりません。
  65. 矢追秀彦

    ○矢追委員 たしか去年の十一月ごろの新聞で、何かそういう引き受けるやにという記事が出まして、また、一昨日ですか、総理もきちんと否定をされておりますので、私は今の総裁のお言葉を信じたいし、またそうしていかなければならぬ、こう思っておるわけでございます。  次に、国債の保有状況でございますが、資金運用部と日銀と一緒になって――大蔵省からいただいたこの表は一緒になっておりますが、予算委員会に出された資料によりますと、パーセンテージにおきましては、だんだん減ってはきておりますが、金額としては、もちろん少々のでこぼこはあるにせよ、全体的にはふえ続けている、こう言っていいと思うのです。最近では、資金運用部の方が非常に多いわけですけれども、昔は日銀の方が多くて、最近ではむしろ日銀がうんと減って、資金運用部の方がふえてきている、こういう傾向がうかがわれるのですが、この原因はどこにあるのか。今後この日銀の保有というものは大体どれぐらいが限界といいますか、現在両方で二八・八になっておりますが、このデータによりますと、五十九年九月末では日銀は六・一%、七兆一千百二十三億円、こういうふうになっておるわけでございますが、その点はいかがですか。
  66. 澄田智

    澄田参考人 矢追先生お手元の資料と違うかもしれませんが、六十年三月末現在の日銀の保有をしております長期及び中期国債は、額面ベースで六兆八千三百九十五億円、これが中長期国債発行残高に占める割合は五・六%、こういうことでございます。日銀保有のシェアは、一ころに比べてかなり低下をいたしております。これは日本銀行による市中からの国債の買いオペが成長通貨の範囲、すなわち経済拡大に伴う銀行券の増大に見合う範囲で行われている、こういうことでありまして、私どもそういう成長通貨を供給する手段として国債市中からの買いオペを行う、こういう方針を貫いておりますし、今後も続けてまいる、こういうことでございます。これは適正な通貨供給量を一つコントロールする、そういう観点からそういうふうに行っている次第でございます。  したがいまして、成長通貨を上回って国債発行されている、こういうような状況のときには、日銀の方は成長通貨の範囲内で国債の買いオペをしているわけでありますから、日銀の持っております中長期国債のシェアというものはだんだん低下をする。したがって、例えば国債の増発が非常に少ないということになって、あるいはもう国債増発がないというような事態においては、成長通貨分だけ日銀の手持ちシェアはふえるわけでございますが、今のような事態においては日銀の手持ちのシェアというのは減っていく、こういう段階でございます。
  67. 矢追秀彦

    ○矢追委員 シェアの方は今言われた点でわかるのですが、しかし現実に全体のトータルですね、金額の方でいきますと、五十五年度末が額面ベースで九兆二百二十六億円です。これが最高で、ずっとその次は八兆一千億あるいは八兆三千億、八兆五千億、それで先ほど申し上げた九月末が七兆一千億、今総裁お示しの六十年三月で六兆八千三百九十五億。こういうふうに、金額にしますとシェアは減っているもののかなり多いと思うのですがね。これも今言われた、今後国債の新規発行はそうふやさないという方針ですから抑えられていくと思いますが、借換債あるいは残高が非常に多くなってくる、そういうような事態においてシェアが少なくなっても、今後、先ほど成長通貨の範囲とおっしゃっておりますが、それ以上のことをしなければならぬ事態は果たして起こってくるのか起こってこないのか。起こったら私よくないと思いますけれども、その点の今の傾向からの見通しはいかがですか。
  68. 澄田智

    澄田参考人 日本銀行は、通貨価値の安定を保持するという使命を持っておりますし、経済流通に必要な範囲の通貨を供給するという機能を持っているわけでございまして、そういうところから、経済成長し取引上必要な通貨量、これは経済成長すればふえるわけでございまして、そのふえる部分というものは、日本銀行としては国債を買う、買いオペをすることで供給するということを従来もやっておりますし、今後とも続けてやっていく、この方針は適正な通貨量を維持するという金融調節の基本的なやり方から申しまして堅持してまいる、こういう所存でございます。そういうことでありますれば、常に経済成長に見合った通貨を供給し、それに見合って国債の日銀保有量が決まってくるわけでありまして、経済成長に必要な適正な通貨を超えて日銀が国債を保有することは厳に避けてまいらねばならないと考えております。
  69. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、クラウディングアウトの問題をお伺いしたいのです。  こういうことがあってはならないわけでございますが、現状は非常に物価も安定しておりますし、また金融も緩んでおる状況でございますから心配はないと思いますが、もし将来起こるとすれば、どういう状況になった場合に起こるか、それが一つ。それから、それを起こさないためには何に一番重点を置いて対策を講じていかなければならないか。総裁としてはどうお考えですか。
  70. 澄田智

    澄田参考人 国債大量発行がいつまでも続いている、そして民間資金需要が非常に盛り上がってくる、こういうようなことが競合する場合にはクラウディングアウトが惹起される危険性があるわけでございます。今日のところはそういうことは幸いにしてございませんが、また今そういう問題が現実化するとは考えておりませんが、今後ともクラウディングアウトを未然に防止していくためには、やはり何といっても国債発行量を極力圧縮していく、やむを得ない発行量であるにしても、極力これを圧縮していくことが基本であると存ずる次第でございます。
  71. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、羽倉参考人にお伺いいたします。  借換債の問題でございますけれども、非常に大量に借換債発行されていくわけでございます。昨年までは特例債は十年で現金で償還、しかし借りかえに変わったわけですが、それだけにシ団としてはやはり負担が増になると思うわけです。借換債金融機関に与えておる負担影響、ことし始まったばかりですからまだわからないかもわかりませんが、ぼつぼつ大きな金額の時期がやってまいるわけですから、その点はいかがですか。
  72. 羽倉信也

    羽倉参考人 借換債の問題でございますが、借換債金融をマクロの面でとらえますと、これは新たに資金を必要としないということになるわけでございます。したがいまして、資金の需給あるいは金利に与える影響は中立的であると申せるわけであります。  しかしながら現実は、満期償還金を受け取る主体と、新しく発行される借換債引き受ける主体は必ずしも一致しておらない、むしろ別であると申し上げられるわけでございます。御高承のとおり、我々銀行の中にもいわゆるマネーポジションにある銀行がかなりあるわけでございまして、そういった銀行にとりましては、借換債発行は基本的には新規債発行と同じ影響があると私ども考えているわけでございます。したがって借換債の円滑な消化を図る観点からいたしますと、新規債と合わせた国債発行総額抑制はもちろんでございますが、その中で、シ団引き受けあるいは公募入札また資金運用部の引き受けの金額をそれぞれの市場状況に応じて適正に決定していただきたい。そういうふうなことが適正に行われませんと金融機関に与える影響が出てまいる、かように存じております。
  73. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今回の法改正で前倒し発行が可能になったわけですけれども、これによってどういう影響が出てくるのか、金融界としてはいかがでございますか。
  74. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいまの前倒し発行をどう考えるかという御質問でございますが、今年度から、御指摘のとおり、五十年度以降大量に発行された国債満期が到来し、借換債発行が大幅に増加するわけでございます。しかしながら、これらの満期の到来いたします償還日が二月、五月と特定の月に集中しているわけでございまして、そういった点から借換債をそういった集中した時期に大量に発行する必要が現在では起きてきているわけでございます。そういう状況を打破して、マーケットに一時に大量の借換債発行されることを避ける見地からこれを平準化する、そういう意味で前倒しの発行ということが検討されたわけでございますが、私ども民間金融機関は依然としてシ団として一番大きな発行のシェアを占めておるわけであります。そういう点で、消化という点、引き受けという点からいいますと、発行額の平準化は、そういう特定月に集中することによる弊害をできるだけ避け得るものと評価いたしております。
  75. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、今度短期国債発行が行われるわけでございますけれども、これは先ほどもちょっと質問にもあったかと思いますけれども、正直言って、証券界は非常に期待される、金融機関の方は場合によってはちょっとまずいんじゃないか。要するに一年物ですから、一年の定期預金等そのときの金利によりましては逃げてしまう、余り低いと、今度は売れないわけですから、むしろこの辺が証券さんと銀行さんの間のあれになるかもわかりませんけれども、しかし銀行でも売れる時代になりましたのであれでしょうけれども、要するに短期国債が出される、結局発行のあり方によってはどっちかが得してどっちがが損すると考えてよろしゅうございますか。この問題は渡邊参考人にもお答えいただきたいと思います。
  76. 渡邊省吾

    渡邊参考人 短期国債の問題でございますけれども、これから国債大量償還、したがって大量借りかえという問題が起こってまいりますが、大きくいって二つ問題があるかと思います。  一つは借換債発行が時期的に集中する、したがいまして一時的に負担が加重されるという問題でございます。もう一つは、償還の時点と発行する時点とのずれがございまして、その間の資金の流動性管理の問題、この二つあると思うのでございます。その両方、つまり一時的な集中をならすという意味でも、それから発行の時期的ずれを資金的に管理する意味でも、短期国債活用するというのは一つの非常に有力な手段ではないかと思います。  もう一つ短期国債について、短期国債発行されることになりますと、その機能といたしまして、けさほどもちょっとお話がございましたが、短期金融市場における商品の多様化あるいは金融市場効率化といった点でこの短期国債役割を果たすのではないかと思います。日本の短期金融市場は、国力の割合から見ましても、アメリカ等に比べまして非常に規模が小さい。計算の仕方ですけれども、十分の一くらいだと言われているということもございますし、それがインターバンクの市場になっている、オープンなマーケットになっていないということもございます。また、商品の種類も非常に少ないというような点もございます。ところが、今後金利自由化が進みますと、そういう短期金融市場と長期資金市場との間に裁定が働くといった意味でも、この市場機能重要性を増しますと同時に、円が国際化されますが、その場合に円の保有者である非居住者、外国人でございますが、その資金の運用の場としても、この短期金融市場が非常に重要な役割を果たすと思います。  それこれの理由から、短期金融市場の将来の発展充実が期待されておりますけれども、この市場の有力な商品として短期国債がこれにこたえるといった面があるかと存じます。銀行さんの心配しておられることも私よく理解できますけれども短期国債につきましては、今のような側面からはぜひ推進していただきたいと考えております。
  77. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいまの短期国債発行につきましては、銀行の立場から申し上げますと、率直に申し上げまして銀行預金と競合する面があるわけでございます。したがいまして、これはけさほど実は御質問がございましてお答えしたわけでございますが、預貯金金利自由化であるとか、今お話がございました短期金融市場の発展の割合とか動向というようなものとのバランスを考えていかなければならないのではないか。したがいまして、そういうふうな配慮が欠けますと、民間の金融機関の資金調達力という面だけでなく、これから発展させなければならないと言われております短期金融市場全体にも、必ずしもよい影響ばかりとは言えないのではないかと私ども考えております。そういった観点から、短期国債の具体的な発行につきましては、これから進展してまいります金融自由化進展状況にいろいろ配慮しつつ御検討をいただきたい、かように考えるわけでございます。  特に、この具体的内容としまして発行期間、発行単位、発行時期等一つ一つのことが金融機関の資金調達力に影響があるわけでございまして、それによりましては経営に少なからぬ影響が及んでくるという面もあるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、特に短期国債導入による影響を一番受けるであろうと思われる規制金利預金からの急激なシフトを避けるようにぜひお願いをしたい。また、そういうふうに商品設計を考えていっていただかなければならないのではないか、かように存ずる次第でございます。
  78. 矢追秀彦

    ○矢追委員 そうなりますと発行条件と、どれぐらい出すかということですよ。それによって決まってくるわけでして、これからの問題ですけれども、その点では果たして大体どれぐらいが適当とお考えになりますか。一つは発行条件、もう一つは短期国債発行の規模ですね。どれぐらいなら金融機関として耐えられるかというか、その辺はいかがですか。
  79. 羽倉信也

    羽倉参考人 発行の条件、規模、発行単位といった問題は、現在私どもの方でもいろいろと考えてはおりますが、ただ、現在のところそれを受け入れるいわゆる金融市場の規模とかがまだ必ずしもはっきりいたしておりませんし、また銀行側としては、規制金利からどのぐらいならばシフトが起きないであろうかということにつきましても、非常に想定しにくいわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、こういった点についてはできるだけ慎重に御検討いただいた上で、そういった条件をお決めいただきたいということでございます。なかなか具体的な金額を申し上げられないのはまことに残念でございますが、そういう状況であるということを御理解いただきたいと存じます。
  80. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今の問題の続きになりますけれども渡邊参考人にお伺いをいたします。  先ほどの御意見はよく理解をしたわけですけれども、結局、発行条件が証券さんとしてはいいにこしたことはないわけですが、今言われたような問題もございますから、規模は果たしてどの辺が適切と考えておられるのか。  それから、今実際二年物、三年物、五年物、特に中国ファンドなどは一時評判が非常によくて売れたのが、最近はまたちょっとダウンしているようですけれども、そういう人気のある商品がいろいろ出ておるわけです。今度この短期国債というのは、もちろん発行条件によりますけれども、果たしてどれぐらい人気が出るか、またそれについて証券としては何か考えておられるのか、その点はいかがですか。
  81. 渡邊省吾

    渡邊参考人 短期国債の条件等については、現時点ではまだ発行の時期でございませんので、具体的ではございません。これは一年未満のものでございますから、その辺の短期の金融商品とにらみ合わせて条件が決まってまいるものと存じます。しかし、短期といえども国債でございますから、お国の考え方としては、なるべくならば資金コストが安くて、財政上それだけ資金負担が少なくて済むということをお考えだと思います。一方、借りかえをスムーズにするためには、その償還が時期的にもスムーズに償還されなければならないとなりますと、市場の実勢を参考にして適当なところに決められるということではないかと存じます。  もう一つ、金利の点と同時に、今御承知のように日本銀行のトレジャリービル、短期政府証券につきましては、これは同じような短いものでございますけれども、これには取引税が課せられておりません。したがいまして、そういう点も考えますと、この短期国債についての税制上の問題というのも一つあるかと存じます。  いずれにいたしましても、その条件、御質問の量等につきましては、現時点ではちょっとはっきりしたことは申し上げかねますけれども、一般論から申しますと、ただいま申し上げたようなことではないかと思います。
  82. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それでは、次に水野先生にお伺いしたいと思いますが、先生、「ファイナンス」にも論文をお書きになっておりまして、「増税なき財政再建」はもうこの六十年度予算でほぼ限界に来たんではないかということをお書きになっております。先生の御主張は御主張としてわからないわけでもございませんが、我々は「増税なき財政再建」をやれということを強く主張してきたわけでございまして、増税はもちろん反対ですが、税制の面でまだまだ見直しをやって、不公平を是正することによる増収といいますか、いわゆる増税ではない増収、これはまだまだできるのではないか。特にグリーンカードのことにもお触れになっておりますけれども、あれなんか取りやめられたことは大変残念なことでして、そういう点でやはり六十五年赤字国債をゼロにするということを目指して、「増税なき財政再建」を必死になって国民にも訴え、また政府も本当に努力をしてもらうということで、本当につらいでしょうが、これは頑張らなければならぬと思うのです。その点、先生の場合は、何か増税やむなしというキャンペーンのように思うのですが、その点はいかがですか。
  83. 水野正一

    水野参考人 私も、進んで増税をやれということじゃありません。ただ、六十五年度特例公債依存から脱却するという目標をぜひ達成してもらいたい。そうしますと、その場合に、果たしてこれまでのような、増税という方の道をふさいでいて、そして歳出抑制中心にした財政再建で可能であろうか。また、やろうと思えばそれはできないことはありませんけれども、そういう方向というのは、本当に財政のあり方としていいあり方かどうかという点を考えますと、やはり大きな疑問を持つわけであります。したがって、六十五年度までに特例公債依存から脱却するという目標、これを達成するためにはどういう財政の姿を描かなければいけないか、その中で歳出はどの程度、そういうところからそれを可能ならしめる財源の方はどうかという、そういう歳出歳入の両面を考え財政再建というのを考えなければいけないわけですけれども、どうも私、ずっと予算編成その他を見ておりますと、その両方をにらんで考えるというよりも、歳入の方、特に税制面の方はそういう増税の道を全くふさいでしまう。  実際にはそうでありませんで、その場その場の小さな増税をやっておりますけれども、もっと税体系のあり方、また今後の長い将来を考えてのあり方というもの、そういうものを踏まえての税制のあり方というものは十分考えてない。むしろそのときそのときの予算編成のしわ寄せのような形で単発的な増税をやるということになっているわけで、そういうやり方をいつまでも続けておるべきではないということで、増税をやるというのが初めからの結論じゃなくて、そういう財政再建が可能であるかどうか、また望ましい財政の姿かどうかというのを考えた上で、やはりこれだけの増税というのが避けられないとすれば、そういう方向で考えるべきではないか。それが、そういう方を全然ふさいでいて、歳出オンリーでやっていくということにはどうしてもいろいろな無理が来る、これが私の考えです。  それから、税制の方を考えるにしても、不公正税制の是正がいろいろあるじゃないかということですが、これはおっしゃるとおりでして、例えば利子・配当課税の問題にしても、これは午前にも議論がありまして、貯蓄率との関係もあるかと思いますが、私はやはり利子優遇税制といいますか、少額貯蓄非課税制度というものの時代的な役割というようなものも一応終わったんじゃないか、そういう気がしておりまして、例えば貯蓄率なり総額としての貯蓄の水準というようなものは、税というのを考慮した利子率というものにそれほど大きな関係はないというような気がするわけですね。ですから、優遇税制を外してもそれほど貯蓄率が大きく落ちるというふうには考えられない。  むしろそういう非課税制度あるいは分離課税制度をやっているということによる不公平の面というのはやはり大きいのじゃないかということで、昨年も政府並びに党税制調査会でいろいろ議論しまして、結局非課税貯蓄の限度管理の強化という線に落ちついたわけですけれども、私は、例えばそれを非課税貯蓄全体について一律に低率課税に踏み切るというようなことをやると、かなりそこで税収が上がるということも考え、また不公平税制という、例えば利子所得と給与所得との税の取り扱い上の不公平というような問題もかなり解決されるというふうに思うわけです。  そのほか、不公平税制の是正という点でまだまだいろいろあると思いまして、そういうところに手をつけることはもちろん先決でありますけれども、これも今後の高齢化社会の到来なり長い将来を考えての税制のあり方というものを考えますと、もうそういう不公平税制の是正だけで事足りるという情勢ではないと思いまして、不公平税制の是正も含めてやはり税体系全体の見直し、また財政再建の中で果たす役割といいますか、こういうものを基本的に見直す時期だというふうに考えております。  以上です。
  84. 矢追秀彦

    ○矢追委員 先生のお話を伺っておりますと、結局、結論的にはどうもやはり間接税の強化、すなわち、この前できなかったいわゆる一般消費税(仮称)、これを導入していくことが望ましい、こういう御意見ですか。御意見は自由ですから。
  85. 水野正一

    水野参考人 ええ、大体結論はおっしゃるような結論です。  それで、最近税制改革の議論が大分出ておりますけれども、その場合に、長い目で見て税体系を合理的なものにするということに主力を置くべきで、財政再建に余りかかわらしめないで、財源のための増税というようなものを余り出すなという意見もかなりあるわけですけれども、そもそもがやはり最も重要な財源の道として税というのがあるわけで、これは税の基本であります。それを配分する場合に、公平の原則とか中立性の原則、いろいろありますけれども、やはり必要な財源というものが調達できるというのが税の基本だと考えておりますので、税制改革の議論におきましても、そういう財源論といいますか、あるいは財政再建に絡めて大きく問題を考える、それだけではやはりだめでありまして、税体系の合理化というのも重要でありますけれども、両方等しいウエートを置いてやるべきだというのが私の考えです。
  86. 矢追秀彦

    ○矢追委員 もう一点先生にお伺いしたいことは、今度財確法で新しく九百四十億政管健保から、私は召し上げるという言葉を使って余りよくないらしいのですけれども、これだけ補助の方を削る、こういう形で財源をつくっているわけです。今までこの財確法、ずっと過去見ておりますと、いろいろその年その年によってお金のあるところからどんどん持ってくるという形をとってきたわけですね。電電公社があるときは電電公社から持ってくる、あるいは中央競馬会から持ってくる、いろいろなことをして、とうとう政管健保の補助金に目をつけて、ここから九百四十億すぱっと切った。これは保険料の値上げと、それからいわゆる医療費が適正になってきたために起こった黒ですから、これは本来的にはこういうふうなところに持ってきてはいけないのじゃないかと私はきのうも質問をしたわけですが、悪い言葉ですけれどもこういう財源あさり、そのときそのとき非常に行き当たりばったりでやってようやく予算編成をやっておる、こういう状況なんですね。こういう点は非常に不自然であるし、特に今度の政管健保の黒字に目をつけてやってくるやり方というのは非常によくない、私はこう思うのですけれども、この点はいかがでございますか。
  87. 水野正一

    水野参考人 私も、そういう財源あさり的なものというのはやはりよくない、こういうものは財政の構造というものをゆがめるとともに、負担を将来に繰り越すだけでありまして、一時逃れで、また将来かえって大きな負担になって返ってくるということで、そういうものを本来やるべきではないと思います。そして歳出抑制をやるのであれば、制度改革を含めて、あるいは歳出のそれぞれの優先度といいますか、こういうものに従って切るべきところは切る、また必要なところにはつけるというのが本来のあり方だと思いますけれども、どうも実際問題としては、また短期間にこういうことをやろうとしますと、なかなかそれは、理屈はそうでありますけれども実際は難しい。特に実際の年々の予算編成に当たりましてはそうも言っておれないということで、どうしてもそういういろいろなしわ寄せ的な財源あさりということにならざるを得ないと思うわけです。ですから私が「増税なき財政再建」というのはもう限界で、これ以上続けるのは問題だと言うその意味は、そういうところを特に重視するためにそういう考えを持つわけであります。  ただ、「増税なき財政再建」を見直せというのは、財政再建そのものを少し後退させろということではなくて、六十五年度までに特例公債を脱却するというのはぜひ守るべき線で、ただ税制の方、そちらの方の増税の道をふさいだ財政再建のあり方というのはやはり大きな問題であって、そこのところを見直す必要があるという趣旨であります。こういうことを申しますと、せっかく行革をてこにして歳出抑制努力してきたのが、またもとのもくあみになるのではないか、そういう反論があるわけですけれども、これは例えば税の増収による収入の増加というようなものを、公共事業費の追加とかその他の歳出増加に向ければそういうことになりますけれども財政再建というのは、税の増収をやったところで、他方では歳出抑制というものも必要で、車の両輪で両方きちんとやってこそ達成できるというふうに考えているわけです。
  88. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、石先生にお伺いをいたします。  まず初めに借換債のことなんですが、特に昨年法案が通りまして特例債借りかえということになったわけです。その特例債借りかえ、これはもう法律が通ったのでやられるわけですが、やはりあくまでも特例債償還というのは努力していかなければならぬと思うのですね。ところが、今年度政府の方としては四千百億しか現金償還をしない、一兆八千七百億ですか、これは借りかえをしてしまう、こういうことになったわけでして、結局ルールとしては四条債のルールと全く同じ。したがって、入り口では、発行するときには、これは赤字ですよ、これは建設ですよと分けておりますが、一たん中へ入ってしまうとこれは全然差別がない。そうすると、何のために初めから分けておったのかわからぬ。ただ、これは赤字国債を出さないように努力するためなんだ。要するに今までずっと過去、十年たてば現金で返すんです、だから赤字国債というのは極力出してはいけないんだ、それで十年たったらキャッシュというのがきていたものですから、それなりに歯どめみたいなものがあった。しかし、現状はもうそれもできなくなったので借りかえてもよろしい。  私は、財政事情もつらいし、大変なことはわかります。赤字国債発行も、それは減らさなければいけません。しかし、百三十二兆円にもなるこのストックがたまった中で、しかもことしの償還が来ておる赤字国債を、建設国債と同じルールで現金で四千百億しか返さないという点は、スタートからちょっとまずいんじゃないか。せめてもう少しでも返す努力をすべきではなかったのか。そうでないと、全く建設、赤字の区別はない、四条債、特例債、こんな法案は要らない、これからは全部一緒、こういうことになることはもう目に見えていると思いますので、その辺はいかがですか。
  89. 石弘光

    ○石参考人 今の御意見、もっともだと思います。と申しますのは、建設国債、赤字国債と決めておりますが、色がついているわけではございませんし、日本の予算制度は資本勘定と経常勘定を区別しているわけではございませんから、一たん入ってしまいますとわからない。返すときも、従来はキャッシュで返すと言ったのを、今度は借換債にした、それも六十年ルールであるということなら、その両者を区別する意味は全くないということだろうと思います。ただ、一つあるのは、物的資産であります公共事業に結びつけてその健全性を維持するといった、言うなれば制度を少しメンタルな面に結びつけたということかもしれませんが、その辺の建設国債の意義づけというのはあるんだろうという気がいたします。  そこで、借換債のやり方でありますが、先ほどもちょっと申し述べましたが、恐らく強制的に借りかえを強行しているわけではなくて、要するに資金運用部、日銀が持っている以外のもの、非公共部門が持っているものは一たん返して、それをまた改めて市場に乗っけて、借換債という形でもう一回金を吸収するわけだろうと思いますから、その点に関しましてはかなり市場の原理でやっているんだろうと思います。逆に言って、全額現金で返すなんということになりますと、それだけの資金をどこから持ってくるか。恐らく増税はそんなにできませんし、あるいは急にそれだけ返されても、恐らく市場で混乱が起きるということだろうと思いますので、それはそれなりにキャッシュで返すといったてまえはあっても、現実的にはそれを実行するのは、僕は非現実的であろうという考えでございます。  先ほど申しましたが、六十年ルールをそのまま援用するというのは安易な方法だろうと思います。したがって、今ある一つは努力規定というようなことで、極力努力するという言い方で削減を図るという考え方だと思いますが、これにかわる何かもっとはっきりした償還ルールというのを決められるのか、あるいは決める必要があるのか、その辺、僕もちょっとその制度がよくわかりませんので、恐らく何か見当があるんだろうと思いますが、目下のところその努力ルールで、極力皆で監視し合ってやるほかないのではないかという感じを持っております。
  90. 矢追秀彦

    ○矢追委員 先生に先に言われてしまいましたが、実はその努力規定のところも非常に問題でして、私は昨年の本委員会において借換債法案の出たときに、赤字国債は十年でキャッシュで返すんだから、今度は借りかえの場合も今の六十年ルールではなくて少なくとも十年ルールぐらいにしてはどうか、こういうふうなことを申し上げたわけでございまして、そういう意味では私もこの努力規定というものは、今先生言われたように、文章をただ精神的なものではなくてきちんとしたものにしてもらいたいという強い希望は持っておるわけでございます。  それで次に、先ほどもちょっとおっしゃっておりましたが、要するにキャッシュで返せないということは、結局償還財源がなくなってきたからですね。この償還財源をどうするか。減債基金制度というのは維持する、こう政府はしばしば言われておるわけでして、この問題についてお伺いをしたいのですが、要するに過去のこの流れも見てまいりますと、まず剰余金が崩されました。それから定率繰り入れが四年間ストップ、その金額は約十兆円です。もちろん予算繰り入れもできない。結局、残ったお金は六十年度末九千九百億円の余裕金しかなくなってしまう。いよいよ来年定率繰り入れを復活させなければならないのですが、これもなかなかできない。そうすると、これはどうするのか。ただ一つの期待は株券、電電とたばこの株が入ってくる。しかしこれとても、仮に五千二百億円の電電の株が十倍になったとしても五兆円しかないわけです。これはそれで売っちゃったらもう終わりです。今までの余裕金の残りを見ていきますと、定率繰り入れをしない場合はもう大体六十二年、六十三年ぐらいで全部売り出して、仮に十倍として、五十倍になればこれは二十五兆ですからまた違いますけれども、なくなってしまう。これも大きな期待はできない。  となると、いよいよもって償還財源、特に減債基金制度というものはどうしていくのか。私はやっぱりつらくとも定率繰り入れを復活せざるを得ぬのじゃないか、した方がいいのじゃないか。これはどうも今のままでいくとなくなってしまう。来年はまだちょっとですから何とか、九千九百億円があるからそれでやれば、大体一兆五千億ぐらい何とかすればいけるのじゃないかと思うのですけれども、その辺は先生どうお考えになりますか。
  91. 石弘光

    ○石参考人 お答えいたします。  これに関しましても御指摘のとおりでございまして、六十年度まで予算がどうやら組めたのは、定率繰り入れをかなりの類カットしたからだということでございましょう。六十一年から非常に厳しいと今から財政当局が言っておりますのは、まさにこの点に尽きるだろうと思います。  そこで、もう一兆円を切った残高を見ますと、やはり定率繰り入れというのは当然復活しなければいけない。その額をどこから探すかというのは、恐らく六十一年度予算編成の大きな問題になろうかと思います。それを歳出カットで全部できるのか、あるいは先ほどから問題になっております財源あさりでやるのか、はたまた、そこでまた増税というようなことが出てくるのか。それを今この時点でどれがいいかという言い方はなかなか難しく、ちょっと私即答しかねております。建前からいいますと、当然のこと、歳出カットというものをもう一段進めてやれということだろうと思います。  あと、株券に大きな期待をかけるのは、御指摘のとおり非常に問題である。これはある意味で神風的な、何かぼんと出てきた話でございますから、これをまた慎重に使いませんと、今御指摘のとおり、十倍になったとしても五兆円、たかだか五兆円と言っては言い過ぎかもしれませんが、その程度の金でありますから、今後の株価の形成等々をにらんでこれを慎重に使うという意味で、これを当面定率繰り入れの復活であるとかあるいは定率繰り入れの規模等々とひっかけて議論するのはちょっと筋違いではないかという感じがいたしております。その辺、峻別すべきではないかというのが私の意見でございます。
  92. 矢追秀彦

    ○矢追委員 先ほどもちょっと出ておりましたいわゆる短期国債、これの特に前倒しについては、先生はどうお考えになりますか。これは私は、市場を平準化するのには効果は認めますけれども、こういうことをしなきゃならなくなったもともとの原因というのは、やっぱり余裕金、償還財源がなくなってきたことに淵源がある。それだけではない、これはまた別のものなんだという議論もありますし、市場の問題となればそれはそうかもしれませんが、私はやっぱり償還財源が枯渇をしてきたところに根本原因があると思うのですが、この前倒しは、特に単年度予算主義という上からもどうお考えになりますか。
  93. 石弘光

    ○石参考人 短期の借換国債を出さなければいけないのは余裕金が不足してきたからだろうという御指摘、一部そうだろうと思います。余裕金があれば、こういうことをそれほど緊急な課題として取り上げなくてもよかったかもしれません。ただ、仮に余裕金があるといたしましても、かなりの額の債券を返さなければいけないというのは、どうも短期債がなぐしてうまくいかないのではないかという感じを私は持っております。そういう意味で、平準化という手段としては、短期の借換国債というものの手段がない限りはどうもうまくいかないだろう。  それがたまたま年度越しになるというのは、これはある意味ではやむを得ないのでありまして、単年度主義というものに対して抵触するという御指摘もあろうかと思いますが、しかし、いろんな便法で単年度を越してやっております財政上の例外措置もあるわけでございまして、そういう点からいきまして、債券というのは金融債でございますから、従来の慣行とそれほど矛盾したものでもないし、やむを得ない措置ではないかと考えております。
  94. 熊谷弘

    熊谷委員長代理 玉置一弥君。
  95. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 参考人の皆さん方には大変お忙しい中を来ていただきまして、ありがとうございます。  けさほどは大変いい御意見を聞かせていただきました。大体のところ、今回の昭和六十年度予算はやむを得ないというのが大方の意見だったと思います。  今回の財確法につきましては、先ほどから論議が出ておりますように、まさに一時しのぎというような形で、問題点を後に残してしまっているのではないか、こういうような気持ちで私たちも見ております。そして、現在の五十九年度末で百二十二兆円という国債残高、これをいかに返していくか、そのための財政負担はどこまでが限度か、そして今度は、返していく段階でこの国債の部分が市場に出回ってくるわけでございますから、インフレに与える影響というのはやはり極力抑えていかなければいけない、こういうところからいつも大蔵委員会の中で論議をしているわけでございまして、今までいろんな御意見をお聞きしまして、まさにそれぞれの分野でお考えになっておられますけれども、もっともな意見というような感じがいたします。  そこで、今回特に財政運営の問題、先ほどからございますけれども、このままいきますと、どうも行き着いてしまうような感じがいたしますので、今の財政運営の方法でいいのかどうかという問題、そして先ほどからのお話の中で、澄田総裁、羽倉参考人渡邊さん、それぞれ市場との連動を十分見きわめていかなきゃいけない、そして国債発行の条件というものを定着させていかなきゃいけない、こういうお話をされておりましたけれども、これらを順番にお聞きをしていきたいと思います。  まず澄田総裁、そして水野参考人、石参考人、それぞれにお聞きをいたしたいと思います。先ほどの御意見の中でございましたけれども内需拡大の話を踏まえてお聞きをいたしたいと思います。  財政運営で、政府財政再建ということに固執をして、我々が見ておりますと、どうも緊縮財政ということで、今回補助金の一括整理法案のように、いろいろな分野へのしわ寄せというものもございます。また、公共投資抑制もここ数年続けられてきている。こういう状況の中で、どうも財政赤字の内容分析、これが十分行われていないのではないか、こういう気持ちがするわけでございます。     〔熊谷委員長代理退席、中川(秀)委員長     代理着席〕  昨日の大蔵委員会におきましても、構造赤字と循環赤字、これをやはり分けて考えるべきである、こういう考えのもとにいろいろな論議をしたわけでございますけれども、構造赤字は、幾ら景気がよくなってもこれを吸収し切れるものではないし、また、循環赤字を十分対策をとらないでそのまま見過ごしておりますと、いつまでたっても景気回復が行われないというような問題もございまして、やはりこれを分けて考えていかなければいけない、かように思うわけでございます。  そういう意味におきまして、確かに我々の党内でも賛否両論あるわけでございますけれども、やはり拡大均衡経済、先ほど総裁の方は安定成長、非常に中期的なというか、中程度の安定成長財政基盤を固める、こういうようなことをおっしゃいましたけれども、やはりこの面を重視をしていかなければいけない。そして特に財政が占めるウエートが、経済運営についてだんだん低下をしているわけでございます。しかし、なおかつ基盤固めという意味においても、財政運営が公共投資を踏まえて手を出していく部分というのはあるわけでございますから、そういう意味において、現在の段階において拡大均衡経済を望むのか、あるいは縮小均衡財政を望むのかということについての御意見をお伺いしたいと思います。  まず、澄田総裁の方から。
  96. 澄田智

    澄田参考人 内需拡大あるいは内外需のバランスのとれた経済成長ということ自体は、私は極めて望ましいものであるというふうに考えております。しかし、それはやはり市場機能強化を通じ、経済の活力を通じて自律的に拡大をしていくということを目指していくことが基本である、かように考えているわけでございます。  今さら申すまでもございませんが、我が国財政現状が既に巨額の公債残高を抱えている上に、引き続き高水準の公債依存を続けていくということになっておりまして、これは主要国を比較をしてみても、我が国状況というのは、極めて厳しい状況であると言わざるを得ないわけであります。しかも、今後社会の高齢化が進んでいく、そういう高齢化の社会における財政需要の増大の圧力というものを考えますと、どうしてもやはり財政再建の手を緩めるわけにはいかない。そうして財政弾力性、適応性を回復するということが、我が国経済にとってやはり喫緊の政策課題であるというふうに思わざるを得ないのでございます。  こういう点を考えますと、拡大均衡ということにつきましては、事柄自体は望ましいことであるとしても、それによる財政負担増大ということにつきましては、その効果と、一方、それに伴うコストということを十分に吟味して、慎重に手段を選び、限度、範囲を心得て対応していかなければならない、こういうふうに考える次第でございます。
  97. 水野正一

    水野参考人 御発言のありました財政赤字の性格についての御意見、特に構造的な赤字と循環的赤字を区別すべきだというお考え、私も全く同感でありまして、いわゆる循環的赤字だけであれば、これは景気の循環過程で生ずる赤字で、景気がよくなって完全雇用に近づけばおのずから解消するという性格の赤字ですけれども、こういうことだけであれば、これに対して歳出面で特別の抑制策をとるとか、あるいは歳入面で増税策をとる、こういう必要はないわけで、景気の同役にゆだねればおのずから収支は均衡する、問題ないわけで、ただ、我が国の現実の財政赤字というのは、やはりかなり大きい部分が構造的な赤字だというふうに私は思いまして、これは景気が回復しても解消されない赤字であります。こういう赤字がかなり大きな割合を占めて、それが簡単に解消できないというところが一番大きな問題だろうと思うわけで、そういう財政赤字の性格だということをよく認識した上でいろいろな問題を考える必要があるということは、私自身ずっと考えていることで、御発言と全く同じ意見であります。  それで、こういう情勢の中で縮小均衡拡大均衡かという御質問ですけれども、これはそれ自体でありますと、それは拡大均衡を目指すべきだという答えになるわけですけれども、むしろ御質問の趣旨は、内需拡大が余りぱっとしない中で財政金融政策による刺激策をとってもっと景気の拡大を図る、これが拡大均衡という方の考えだと思うわけで、拡大均衡というのをそういう意味だとしますと、これは先ほどから日銀総裁が御説明になっているように、私は、今の日本の情勢では、特にこういう構造的赤字を抱えている状態で、それ以上財政の赤字を拡大させてまで財政による景気刺激策をとる必要はないのではないかという気がするわけであります。  これは、ケインズ理論によりますと、こういう不況のときには、赤字になっても、歳出の増大なり減税なりをやって景気の拡大を図れというのがケインズ理論の教科書で教えているところでありますが、日本の今の情勢で、そういうケインズ政策というのをそのまま適用するということにはいろいろ問題があるわけであります。私は、今の日本の景気の情勢というのが、昭和の初期あるいは世界的な大不況の時期のような非常に深刻な不況で、このままでは自律的に経済が回復できない、ほっておけばますます深刻化する、そういう不況の状態であれば、仮に構造的赤字をたくさん抱えていても、やはり景気刺激策をとれということを主張をしたいわけですけれども、どうもそういう情勢ではないのじゃないかという気がするわけでありまして、やはり今の情勢では、経済の自律的な回復あるいは市場機構による景気の回復というものにゆだねて、少し時間はかかりますけれども、長い目から見るとその方が、財政のみならず国民経済全体にとってもいい行き方ではあるというふうに考えております。  それで、景気刺激策ですけれども、戦後のいろいろな先進国の例を見ましても、ケインズがその当時考えていたようなものとはかなり違ってきておりまして、短期的には景気刺激策をとって、それによって景気が一時的にはよくなったとしても、またその反動が来る、あるいはもう薬が切れればかえって前よりも悪くなる、そういうことの繰り返しで、要するに経済の不安定性というものがかえって増幅されるというのが多くの例でありまして、我が国もやはり同じことだと思うのですね。ですから、目先の景気拡大策というのをねらって、こういう時期にあえて財政による景気刺激策をとるということは控えるべきだ。これは財政再建という立場からだけではなくて、経済政策のあり方としても、その方が望ましいというふうに考えます。
  98. 石弘光

    ○石参考人 お答えいたします。  基本的には今お二人の方が述べられたと全く同じトーンで、同じ方向で物事を考えております。  そこで、今の御指摘で一番重要なのは、水野先生もおっしゃいましたが、構造赤字と循環赤字と分けるということだろうと思います。恐らく数量的に申しますといろいろ試算はあるかと思いますが、現在ある赤字の六〇%ぐらいが構造的な赤字ではないかと思いますので、日本経済というのは仮に完全雇用あるいはそれに類した状況になっても、赤字はそれだけ残すという体質を持っているわけでありますから、中長期的に見ますと、構造的な何か仕組みを変えない限り、この赤字というのは解決しないだろう。  そこで一つ重要な点は、今の名目成長率と国債利子率を比較したとき、どう見ても国債の利子率の方が高いわけでありますから、これは理屈の上でいきますと、まさに財政破綻型でございまして、利払い費が高まって、いわゆる俗に言うサラ金型財政状況であります。したがいまして、何らかの措置をしなければいけないということは理屈の上で言えるわけであります。  それから第二点は、内需拡大があるいは財政再建かということで朝からいろいろ議論が交わされております。これは本来両立しにくいものでありまして、したがって、内需拡大意見をいろいろ言った後で、かつその財政再建意見をまた言うというのは、本来二つの相反する方向の議論であるべきでありますので、どうも同じ次元で述べるのは非常に難しい。ただ、一つあるのは、拡大均衡的に今赤字をふやしても、恐らく内需拡大して経済成長を高めて自然増収をしろという御意見に尽きるかと思いますが、私は、どうもこれはかなり危険の多い選択ではないか、そういうことを前から考えております。  と同時に、これだけ赤字がある財政というのは決してデフレ的でございませんし、かつ縮小均衡というものをもたらすというふうに、僕は今のところそう考える必要はないのではないかと思っております。そういった意味で、行革型が極めてデフレ的で、日本経済というのは縮小均衡でだめになってしまうというような言い方は少し言い過ぎではないか。そういう意味でやはり自律的な回復というのが待たれて、それで日本経済がある姿になるというのが一番望ましい方向でありますので、それを殊さら――私、余り財政による引っ張る力というのは昔ほどないと思っておりますし、ないという以上に犠牲が大き過ぎると思っておりますから、その点は十分慎重にしなければいけない。そういう意味では、澄田総裁と水野先生の意見と全く同じでございます。
  99. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 確かに両方分けて対策を考えていかなきゃいけないと思います。ただ、内需拡大というのは、基本的な生活レベルといいますか、それを維持していくという面でも大変重要でございますし、また逆に財政再建というのは、今までの積み残しというものですか、こういうようなものを処理していくということで、かなり思い切った切り込みをやらなければできないというふうに思うわけです。今までの政府答弁の中でいろいろございましたのは民間活力の活用という言葉でございますけれども、これは普通の民間会社、いわゆる営利企業という面から見ると非常に難しいのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで羽倉参考人にお聞きをしたいわけでございますけれども、先ほどから、貯蓄率がまだまだ上がっていくのではないかというような予測もございましたけれども、やはり先ほどの御意見の中にも、民間金融機関資金吸収力強化するという問題、そして資金を吸収するならば逆にその活用というものを大いに図っていかなければいけない。これが我々から見ると民間活力の活用ということになるのではないか、だから民間資金をもっと回転させようということじゃないかと思います。そういう意味で、今中曽根総理を筆頭に各閣僚の方が、何かあるとすぐに民間活力。これは確かに資金が国で少ないですから、つじつま合わせというのもあると思いますけれども、そういう面で、より具体的な何かいい方法はないか、あるいは民間活力の活用についての御意見がございましたら承りたいと思います。
  100. 羽倉信也

    羽倉参考人 民間活力の活用という点でございますが、先ほども日本電信電話株式会社の設立といいますか、従来の電電公社の民営化ということに関連いたしまして、我々金融機関の立場から申しますと、あのような形で民営化が行われ、いわゆる資金調達面、運用面で民間の金融市場から資金の調達が行われるということは、資金の効率的な配分という点からいって大変好ましいということを申し上げたわけでございます。  そういうような形で資金の調達が行われ、そして今、日本電信電話株式会社中心として行われておりますいわゆる通信の自由化ということがございますが、これはやはり民間活力の活用ということの大変よい例ではないか、かように思うわけでございます。NTTといいますか、日本電信電話株式会社が民営化されたのに伴いまして通信が自由化され、それに伴いまして、現在まだ実際は稼働いたしておりませんが、幾つかの競争会社の設立が計画されておるわけでございます。そういった形で日本電信電話株式会社中心とした通信の自由化、それによる自由な競争、これは恐らく新しい内需拡大につながってまいるものというふうに思うわけでございます。また、最近電信電話株式会社を中心といたしましていろいろ民間の需要発掘ということをやっておられるわけでございますが、これも、私どもといたしましては民間活力の活用のよい例ではないかというふうに思うわけでございます。  また、最近内需拡大の中でやはり一番大きな目玉になると言われております住宅建設ということにつきまして、いろいろな土地に関します。あるいは住宅に関します規制の緩和、また法制上のいろいろな制約についての改正の提案というのがなされております。例えば法律の問題でいいますと、従来の借地借家法の見直しというようなことも言われておるわけでございますが、そういった問題によりまして民間の住宅投資というようなものがさらに促進されるということも考えられるわけでございます。  また、住宅につきましてはいろいろな建築上の規制がございますが、このうち必ずしも現在の状況に即さないものもかなりあるのではないかというふうに思われるわけでございます。まだそれほど一般化しておらないと思いますが、例えば最近では不燃性の住宅用建材といったようなものがかなり出回るように相なってきておるわけでございますが、そういったものを利用した場合の住宅建設について、従来のままの規制でよろしいかどうかというようなことも、一つの住宅建設の促進あるいは増大ということにつながるのではないか、かように存ずる次第であります。
  101. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 今お聞きしますと、要するに、民間が日常やっていることに対して、いろいろな規制だとが助成だとか、そういうことも含めてがやはり民間活力の活用であるというようなことだと思います。資金需要が今停滞しているようでございますから、やはりいかに資金需要を喚起させるかということが金融機関としては非常に重要なことだと思いますし、逆に言えば、将来金利が上がっていくから、逆に借りる方も一生懸命借りるようになるというようなことにもつながってくるかと思いますので、政府の方でもやはりその辺もっと考えるべきだというふうに思うわけでございます。  それで、澄田総裁にもう一度お伺いしたいのでございますけれども、先ほどのお話の中で、景気の好転が進めば民間資金との競合というものが金融環境の中で行われてくるというお話がございました。ここ数年、これでもかというぐらい国債が出てきたのでございますけれども消化状況を見ると、確かに押しつけの形もありますけれども、意外とまあまあ消化されている。持つ形態が若干移動しておりますけれども、それもまた大体戻ってきて、ちゃんと固定化されるというような状況でございます。  そういう状況の中で、先ほどから、借換債も新規と同じだというお話が出ておりまして、今の状況はどちらかというと金融緩和になっておりますけれども金融緩和が先に進んで景気がまだ追従してない、こういうふうな気持ちでいるわけです。設備投資においてもやはり先行きの見通しにまだまだいろいろな不安があるということで、各企業は、環境整備程度あるいは事務の合理化程度の投資はやるけれども、思い切った設備投資というところまでまだなかなか踏み切ってないんじゃないか。これが本当に動き出したら、資金需要というのは大幅に変わってくるのではないかというふうに思います。今の状態と、もっと景気がよくなる状態があると思いますけれども、その辺を比較して、現段階程度の公債発行であれば、先行きの見通し、国債消化という面でどうなのか、その辺についてお聞きしたいと思います。
  102. 澄田智

    澄田参考人 現状のような状態を想定いたしまして、そうして国債消化が順調がどうかということになりますと、やはり公債の発行条件、背に比べますと市場の実際の資金の需給の状況に応じて、市場の実勢に応じて発行条件が決められるということになってきておりますが、こういう形を一層定着をし、市場の実勢に応じた条件で、しかも、借換債の時期的な問題等で先ほどもお話が出ておりましたが、時期的な対応というような点についても十分に市場状況配慮して行うならば、国債の順調な消化は可能である、こういうふうに考える次第でございます。  また、民間の資金需要につきましても、昔と違って資金の調達方法も非常に多様化をしてきております。内外市場を通じての資金調達ということも行われるような状態になってきておりますので、そういうこともあわせ考慮いたしますれば、現在のような状態を前提にする限り国債消化は順調に行われるであろう、こういうふうに申し上げることができると存じます。
  103. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 渡邊参考人にお聞きしたいと思います。  渡邊参考人は、特に国債多様化推進という言葉であらわされておりますように、いろいろな部分を全部吸収していくためにやはり短期国債等の多様化が必要であるというようなお話だったと思います。そして公社債市場拡大安定がこういうことに寄与していくだろうということでございましたけれども、今、一般家庭の主婦なり、あるいは御主人もそうですけれども国債というものに対しての理解度、これがまだまだ少ないような気がするわけです。ですから逆に言えば、証券界としてもっと国債のアピールをして、いろいろなものがどういうメリットがあるんだと言うようなことも必要だと思いますし、今言われましたような多品種の商品、こういうものをもっと大蔵省に対して認可を要求すべきだ、そういうように思うわけでございます。  そういうように考えていきますと、先ほどからお話が出ておりますように、発行条件あるいは実勢の尊重とか弾力的な運営とか、御意見は大体同じだと思うのですね。ただ、今度は国民にいかに消化をしていただくかという方でございますから、そういう立場を踏まえて、将来の商品についてもうちょっと詳しく御意見ございましたら伺いたいと思います。
  104. 渡邊省吾

    渡邊参考人 先生の御質問はいわば国債の種類を多様化し、あるいは家庭の主婦にまで国債の認識を広めるような努力を証券界としてもやるべきではないかといったような御意見じゃないかというふうに理解いたします。  先ほど申し上げましたように、国債多様化は既にいろいろと図られております。長期国債を初め中期国債、あるいは利付国債のほかに割引国債、さらに今問題になっております短期国債ということでございます。しかし、短期国債というのは目的がやや一先ほどからの、借りかえを容易にするためという点はございますけれども、やはり同じ日本国政府発行する国債でございますから、これが一年未満の短期ということになりますと、先ほど申し上げましたが、短期金融市場の一つの有力な商品という形をとるのではあるまいか。そういう意味で多様化になる、こういうふうに申し上げたわけです。  もちろん、現在の国債保有者が満期が参りましてそれの償還を受けるということですから、償還を受けた人が新しく借換債を買ってくれるという期待は持てますけれども、現在の長期債の保有者が満期が近くなっております場合には、それは短期の資金として保有しているという場合もかなりあるわけでございます。そうでございますね、期近債を買ったということでございますから。したがってその借りかえには短期国債が最も適当であるという投資家もございます。     〔中川(秀)委員長代理退席、堀之内委員     長代理着席〕 そのほかに、先ほど申し上げましたように、時期が固まっておるとか流動性の管理とかという理由を申し上げましたが繰り返しません。そういう意味で、多様化のほかに短期国債はいろいろな意味を持っておりますので、これは多様化という点だけに限定された問題でないことだけを申し上げておきます。  次に、そういったいろいろの国債について一般の国民に広くPRをし、その消化を促進するような努力をすべきであるという点につきましては御指摘のとおりでございまして、私どもとしてもいろいろな商品を開発してそういうPRをしているつもりでおります。例えば、中期国債を組み込みました投資信託のようなものをつくりましたり、あるいは必要な場合には国債を担保に金融ができるような仕組みだとか、これは証券会社だけではなくて銀行さんもいろいろそういう工夫を重ねておられます。したがいまして、そういった商品についてのPRなり認識を広めるという努力については、このところ大変に力を入れておるつもりでございますが、これからますますそういったような国債大量発行と同時にいろいろな種類の国債が出るということになりますれば、それを御指摘のように家庭の主婦にまで身近なものにするという努力は私どもの仕事でございますから、今後そういう努力を続けてまいりたいというふうに考えます。
  105. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 大蔵省の方で財投金利をある程度市場に合わせて変動させていきたい、こういう動きがございましたけれども、これをやりますと当然国債の方もかなり影響してくるんではないか。また、金利自由化が叫ばれておりまして、金融界として体制がとれれば徐々に移行していこうという動きがございますけれども、その辺の絡みをやはりある程度見ておかなければ、国債もなかなか消化もし切れないし、対応できないというふうに思うわけでございますけれども、それぞれの関連を含めて、これからの国債金利、あるいはそれと連動する市中金利といいますか、こういうものがどう動いていくのか、その辺についての御意見といいますか、何かございましたら、澄田参考人、そして羽倉参考人、それぞれお願いしたいと思います。
  106. 澄田智

    澄田参考人 現在がなりなところまで市場の実情に応じて国債発行条件が弾力的に変更をされてきております。したがいまして、市場金利国債金利というものは同じ方向で、大体において均衡がとれた形で動いてきている、こういうふうに考えるわけでございます。市場金利の方でございますが、市場金利は、長期の金融債の発行条件あるいは長期プライムレート、こういったものはこれまた市場状況に応じて変動しているわけでございまして、そういう限りにおいては、この面における金利自由化というものは進んできている状態でございまして、むしろ国債金利がそれに追随して動いている、こういう状態になっている、こういうふうに見ております。  したがって、金利自由化の問題は、むしろ規制金利であります大口及び小口預金金利、こちらの方がこれからの自由化を進めていく分野である、そういうふうに理解をいたしております。現に円ドル委員会の報告等においても、金利自由化の方向としてはやはりそういう方向が進められようとしているというところでございます。
  107. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいま澄田総裁からもお話がございましたが、私も全く同じような意見でございます。  あえてつけ加えさしていただきますれば、やはり経済の安定成長ということが一国の経済の発展のためにはまことに好ましいことで、そのために自由化ということが行われるわけでございます。金利自由化ということも、実は経済が効率的に運営される中で、金利機能を有効に発揮させることによって資金配分が効率的に行われるということを目指しておる。そのためにはやはり金融自由化、なかんずく金利自由化が、今申し上げましたように適正かつ効率的に行われるようにしなければならないわけでございます。そういう意味で、国債発行に当たりましても、できるだけそういった国全体の資金配分が適正にかつ効率的に行われるように考えていかなければならないのではないかというふうに思うわけでございます。その一環といたしまして、国債発行条件市場実勢化ということは極めて重要なことであろうというわけでございます。  今もお話がございましたが、国債につきましては、最近は非常にそういった点では弾力化が従来よりは進められてきておりまして、また、発行後の国債流通市場で売買される場合には、需給関係に応じた市場レート、すなわち自由金利で取引されておるわけでございまして、それが発行市場にも十分反映されませんと国債消化を妨げることになるわけでございます。そういった意味での市場連動型の国債金利自由化ということは、私どもといたしましても非常に重要なことであるというふうに考えておるわけでございます。
  108. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、日本の経済も昔と違って、いわゆる金利政策のあれよりもマネタリスト、アメリカの影響が非常に強く出ておりまして、金融界の方が最近は経済運営に非常に力を持っているのじゃないか、そういうように思うわけで、これからもぜひ頑張っていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  109. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 正森成二君。
  110. 正森成二

    ○正森委員 まず日銀総裁澄田さんにお伺いいたします。  今度短期国債が公募で発行されるということになりますと、短期の金融市場にいろいろな影響を与えると思います。それで、資料を見ておりましたら、当面の責任者である宮本大蔵省理財局長が「金融財政事情」に論文を書いておりまして、その中でこう言っておられるのですね。   ところで、短期国債発行について、私どもには、二つの考え方がある。一つは、公募入札で発行する短期国債活用して、短期の国債市場育成していくのがよいという考え方。その考え方によれば、常時一定額を毎月恒常的に発行していくべきだということになる。   一方で、歳入債とか借換債はあくまでも歳入国債だから、短期国債で自転車操業をするような出し方はよくない。できるだけ安定的資金確保する必要がある。そういう意味から、極力長期の債券資金調達をすべきではないか、したがって短期国債発行は、臨時的に運営していくべきではないか、そして、短期の国債市場はTBによって育成していくべきだという二つの意見がある。というように書いておられまして、私どもはそのどちらともまだ決めておらないというように言っておられます。  一方、総裁の年頭のごあいさつその他を見ますと、「短期金融市場の中核にTB」というような見出しなどもつけておられるものもありまして、大体のお考えはわかるわけですが、日銀の一お考え、あるいはなぜそういうお考えをとられるのかについて承りたいと思います。
  111. 澄田智

    澄田参考人 まず短期国債でございますが、これは短期の金融商品としてはTBに類似している、そういうものだと思います。ただ、まだ短期国債の、規模もそうでございますし、発行方式、それから税制上の取り扱い等含めた商品としての設計と申しますか、内容が今後の検討課題である、こういうふうに存じておりますので、現段階におきましてこの短期国債が、先ほどお読みになりました宮本理財局長の二つの考え方最初考え方のようなことで、日銀のオペレーションの代表となるような中核的な短期金融市場となり得るかどうかというのは、どうも今見通ししにくい、現状においてはそう申し上げるより仕方がない、こういうふうに思うわけであります。  それから、借りかえということだけを考えますと、国債残高がこれだけ累増しておりますし、財政状況というようなものから見ますと、借換債発行はやはりできるだけ、先ほどの宮本局長の後段に言っているように、長期的、安定的に行っていくことが望ましい、こういうことになると思われます。そうなりますと、どうも借換債については、やはり主流としてはこれは中長期債の発行を基本とすべきである。まあしかし、一時的な状況等から中長期債の発行が難しいような、そういう状況のときに短期国債が非常に活用され得る場ではないか、こんなふうにも考えられます。ちょっとその辺の両方のところがございますので、現段階においては確たるところを申し上げにくい、こういう状況でございます。
  112. 正森成二

    ○正森委員 もう一点伺いますが、借換債で相当量の国債新規債も含めて発行するということになりますと、金融情勢が、ある場合には逼迫したり、ある場合には余裕ができ過ぎたりというようなことで、ここで私が読ませていただいたのは、名前は申しませんが、三井銀行の調査部の研究の論文でありますが、その中で「日銀の機動的買オペの実施」というのを言っておりまして、「借換債を含め、国債発行流通市場が急拡大するなかで日銀が流通市場で機動的な買オペを実施すると、国債市況の安定を通じ、(A)長期金利の高止まり是正に資すること、(B)銀行の円滑な窓販・ディーリング業務の運営に資すること、(C)銀行の売却損・償却負担の軽減に役立つこと、等のメリットが存在するため、この実現は望ましいといえる。」こう意見を書いているのですね。もちろん「ただし、」とこう書きまして、「日銀の国債買オペは民間経済部門への通貨供給増を通じ、金融情勢次第ではインフレを招来する懸念もあるので、この面への配慮が必要なことは改めていうまでもなかろう。」という留保つきになっております。  総裁の冒頭の意見の中で、これ以上の信用供与は与えるつもりはないと言っておられました。これは、日銀の引受発行ということになれば、もちろん頭から否定するということでございましょうが、買いオペということになりますと、これはどういうようにお考えになっておられるか、承りたいと思います。
  113. 澄田智

    澄田参考人 日本銀行金融調節の一環といたしまして、国債の買いオペを実施しておるわけでございますが、これはあくまで経済成長に見合って必要な通貨量がふえるわけでありますが、その通貨量、いわゆる成長通貨を供給する趣旨から行っているものでございます。  通貨の適正なコントロールということは、これは通貨価値の安定の上から極めて重要なことでございます。経済成長に伴う金融市場資金不足というようなものが、大体銀行券の増発にほぼ見合う、こういう状況、事実、これを踏まえまして、その状況を勘案しながら、見ながら、国債の買いオペを行っていくということでございます。  こういった経済の実情を無視して多量に国債を買い入れるということになりますと、これは通貨供給量が膨張してインフレを招く危険性が非常に大きい。マネーサプライを重視するということは、まさにこういう点を十分注意してやっていく、こういうことであると思います。したがいまして、先ほどお読みになりましたもので申しますと、後段の留保条件のところが極めて重要である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  114. 正森成二

    ○正森委員 羽倉さんに伺いたいと思います。  週休二日制についても伺いたいと思いましたが、同僚議員がもう御質問になりましたので、省略させていただきます。  羽倉さんが「金融ビジネス」その他にお書きになりましたものを拝見いたしますと、非常に含蓄のあることを言っておられます。「業界内業際、証券との業際、郵貯との業際の三つがあるが、これらに前向きに取り組みたい」、こういうことを言われまして、信託の参入の問題、それから「金融機関の長短分離行政そのものも俎上に載せて議論することをも暗示した。」こうなっておるわけですね。これは銀行が信託の業務にも出ていくとか、あるいは金融債が発行できるようにするとか、いろいろなことを含みにしておると思うのですが、御真意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  115. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいまの御質問につきまして、一つは、今金融自由化国際化ということが進んでおるわけでございますが、その過程におきまして、ただいま御指摘の、例えば信託の問題につきましては、諸外国からの自由化の要求にこたえまして、近く信託業務が一部の外国銀行に認可が与えられることになっておるわけでございます。  そういうような事実を踏まえまして、銀行業界あるいは金融業界全般として、そういった事態に今後どういうふうに対処していったらいいかということにつきましては、今すぐ例えば日本の銀行にも信託業務の併営を認めるというようなことを言うわけではございませんでして、そういった国際化とか自由化が進む過程において、目前に出てきた具体的な事実について、金融界あるいは銀行界としてどのように対処していったらいいか、それについての金融界またはさらに広く関連する業界のコンセンサスを得て、全体としての整合性のある対応をしていきたいというのが私の真意でございます。  長短金融の分離につきましても同じような考え方でございまして、既に外国の銀行から日本の市場において債券発行をさせてもらえないだろうかというような注文が出ているやに聞いておるわけでございますが、これはやはり諸外国におきましては、銀行が単に預金のみならず、いわゆる債券発行銀行であると同時に預金も集めるというような仕事をしておる銀行もあるわけでございまして、そういう銀行にしてみれば当然の要求でございますし、また私ども日本の銀行も海外においては、長期信用銀行はもちろんでございますが、それ以外の普通銀行におきましても、子会社を通じて債券発行することは認められるようになってきておりまして、そういうふうな現実の事態の変化を踏まえまして、海外においてはできるけれども、国内においては今のところはできないわけでございますが、そういう状態は現在のままでいいのかどうかということにつきましても、やはり全体の金融機構といいますか、システムといいますか、そういったものの中でどういうふうな位置づけをしていったらいいか、どういうふうな解決をしていったらいいかということについて、関係のそれぞれの人々のコンセンサスを得まして、答えを出していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  116. 正森成二

    ○正森委員 渡邊参考人に伺いたいと思います。  先ほどの冒頭の御意見の中で、有価証券取引税、これについて低率であるべきである、先進国の中でも最も高いので、引き下げと、国債については撤廃をすべきであるという御意見をお述べになりました。私も、大蔵委員になりましてから、有価証券取引税は一度ならず引き上げになっておりまして、御負担が大変であろうという気がいたしますが、同時に、率直に言いまして、シャウプ税制の中でシャウプ氏が、これこそ私の勧告の中核であると言いましたキャピタルゲインが、事実上骨抜きになって、例外の場合以外には課せられておらない。それにかわる税収措置という意味もないことはないのですね。そこで、証券業協会としてはこういう問題についてどうお考えになるかというのが一点であります。  第二番目が、地銀関係の論文を読んでおりますと、地方債の商品性を改善して市場流通性を向上してほしいという要望がございまして、その中で、例えば償還方法がばらばらでございますが、あれを統一するようにとか、いろいろ要望が出ておりますが、やはり有価証券取引税の見直しで、国債よりは約五割方割り増しであるというようなことの改善を言われている向きがあるようであります。  これらにつきまして、まず最初渡邊参考人から、それで、もし必要がございましたら、きょうは銀行協会会長ということで地銀も代表しておられますので、恐れ入りますが、羽倉さんから一言だけ御意見を承りたいと思います。
  117. 渡邊省吾

    渡邊参考人 ただいま御指摘になりました有価証券取引税につきましては、冒頭陳述で私から御要望申し上げたわけでございます。これは従来も繰り返しお願いしておりますので、改めて申し上げることになるかと存じますけれども、今御指摘のように、有価証券取引税の始まりにはそういったような事情も聞いております。しかし、いわゆるキャピタルゲイン課税につきましては、いろいろなところで、税調などでも議論されましたけれども、これはなかなか実際の徴収が難しい、新しい不公平を発生するおそれもあるということで、検討事項になっているわけでございますね。そういうことを片一方に置きまして、この取引税が創設されて、しかし三回ぐらいにわたりまして税率が引き上げられて、現在御承知のように万分の五十五という税率になっております。これは、ない国もありますし、それからありましても、ドイツのように万分の二十五とか、フランスの三十ぐらいですか。ですから、日本の五十五は非常に高いということでございまして、しかも、これが徴税費は全くかからないというような性質でございまして、税収は五千億に近いと私は思います。そういう意味では、非常に急成長をしておる税率でございます。この税率は非常に高いと同時に、例えば外人が東京で売買する場合には、この税率を非常に注目いたします。外国でやれば税金はかからない取引もたくさんございます。ということは、日本の商売が外国へとられてしまうということでもございます。したがいまして、この税率を下げていただきたい。これは株式の場合を申し上げておるわけです。  ところが、国債の方は万分の三でございまして、税率は低いのでございますけれども、しかし国債は現先という形で短期金融市場の有力な手段になっております。それと競争する商品はCDでございます。CDの方は、有価証券じゃないということもございましょう、税金がかかりません。したがいまして、この国債現先の課税がCDとの競争のイコールフッティングになっておりませんで、御承知のように昨日の新聞でしたか、CDの発行残は十兆円を超えるといったような成長で、もとは大体同じか、CDの方が少なかったのです。ところが、今は現先はむしろ横ばいもしくは減りまして、CDの方が何倍かにふえているというふうに、はっきりと傾向が分かれております。これは専ら取引税の関係だと思うのでございます。  したがいまして、簡単に申しますが、株式等の有価証券取引税は、ほかの国との関係からいって、この税率を下げていただきたい。それから国債の現先等に対する有価証券取引税は撤廃していただきたいということを冒頭申し上げた次第でございます。ちょうどいい機会を与えていただきましたので、お願いになりましたが……。  それから、地方債についてのいろいろの御要望というのも伺っておりますが、これはここでこういうようにいたしますというふうには申し上げられませんが、十分御意向を伺って検討いたしたいと思っております。
  118. 羽倉信也

    羽倉参考人 ただいま渡邊会長からもお話がございましたように、御要望がいろいろ出ているということは承知いたしておりますが、今のところ具体的にお答えする材料を持ち合わせておりませんので、御容赦いただきたいと思います。
  119. 正森成二

    ○正森委員 渡邊さんの御意見を伺っておりますと、無理からぬことであろうと思いますが、御自分の御要望はえらくはっきりおっしゃるのですが、国民の多くが考えているキャピタルゲインの点については、わかったような、よくわからないような御意見でございまして、我々としてはやはり、キャピタルゲインに適正な課税が行われて初めて、現行の税制のいろいろな不公平がそこで締められてバランスを回復するという、多くの学者やシャウプ氏自身の指摘は、その限りでは正しいことであるというように思いますので、我々としても研究していきたいと思っております。  それから、渡邊さんがおいでになりましたので、非常に失礼ですが、きのうも私、一つ問題にしたのですけれども、ここに東京証券取引所の「上場関係規則集」があります。きのう、野尻さんですか、常務理事においでいただいてお話ししたのですが、NTTですね、電電の株をいずれは売却しなければならぬ。今度の法案のうち二つまでがそれに関連した法案ですね。御承知のように、国債整理基金と産投会計。そうしますと、イギリスのBTの例を見ましても、公正な価格を形成することは国民に損失を与えないという点でも非常に大事なことなんです。私はかねがね、公正な価格を形成するのは、やはり証券取引所というものがあるのだから、そこで公にして、適正な値段が形成されるのを見ながら国が順次売却していくことが望ましいというように思っております。質問の中で大蔵大臣も、考え方の一つとして理解できるということを御答弁になりました。  この規定を見ておりますと、いろいろ御規則がありまして、NTTが上場しようと思うといろいろ困難があると考えられるわけですね。きのう、野尻さんは、もし関係者がいろいろ相談されて現実に上場ということになれば、規定についても柔軟にあるいは弾力的に考えたいというように言っておられましたが、私が思いますのに、一番問題なのは、「株式の分布状況」というところで、大株主十名あるいは特別利害関係者の所有する株式、つまり少数特定者持ち株数というのが、大きな企業の場合には上場株式の八〇%以下、あるいは「付則」のところで、一億二千万株以上の場合にあっては上場株式数の八〇%ということになっているだけでなしに、三千人ですか、たしかそういうように読める規定があるのですが、こういうものの解釈についてどういうようにお考えか、承っておきたいと思います。
  120. 渡邊省吾

    渡邊参考人 これは取引所のマターでございますけれども、私ども、証券界の関係者として重大な関心を持っておりますので、私の立場からお答えすることをお許しいただきたいのですが、今御指摘のように、上場に際しましてはいろいろな規定がございます。例えば設立後の経過年数が五年以上必要だとか、それから利益基準で上場前の三カ年間に一定以上の利益が必要だとか、あるいは公認会計士の監査について直近二カ年間の継続監査が必要だとか、株主の数とかいろいろございます。  NTTは、申し上げるまでもございませんが、民間会社になりましてこれだけの実績は持っていないわけでございます。また、株主なんかについてもその要件を満たしていないわけでございます。しかし、これは国家的に非常に大事なことでございますので、取引所としては、その投資家の保護に欠けるところのないようにはもちろん十分な配慮はいたしますけれども、そういった売却の後で、適正な、公正な、だれが見ても妥当だと思う価格形成には、市場で取引されることが望ましい。今御指摘のとおりでございますから、なるべく早期に上場することが望ましいという点から考えまして、取引所と相談をしながら、弾力的にこのケースについては対処していきたいという考え方を持っております。
  121. 正森成二

    ○正森委員 私どもは小さな党でございますので、もう時間がなくなってしまったような感じなんです。  最後に両先生に伺いたいと思います。  水野先生、石先生、いずれも一、二の論文を読ませていただきましたが、御意見がほぼ似通っておられる点が多いように思います。それで、水野先生の御持論のようでありますが、「増税も含む財政再建」という言葉をお使いになっておられました。「増税のみによる財政再建」と取り違えられてはならぬというように断っておられるわけですが、それをずっと見ていきますと、「核心となるのは所得税の合理化・簡素化と間接税の強化であろう。」「課税ベースの広い間接税を導入する必要がある。」そして、「消費型付加価値税は精巧な仕組みの税で、理論的には最も優れた間接税である。」前に失敗しておるので、「周到な配慮が必要であろう。新税の導入は新しい靴をはくのに似ている。当初は苦痛を伴うかもしれないが、そのうちに馴れてしまうものである。」こう言われているんですね。私は、大型間接税を導入したときに、靴を履くようにそのうちになれてしまうものであろうかどうかというのは、庶民のサイドから見て甚だ問題ではなかろうかという気がするわけです。  それで、こういう言葉をお使いになってEC型付加価値税を提唱なされておるわけですけれども、大平内閣の例を引くまでもなく、靴を履くように、当初はちょっとあれだけれども、そのうちになれるというようになるものであろうかどうかということについて伺いたいと思います。
  122. 水野正一

    水野参考人 靴を履く云々は、これは実は受け売りでありまして、数年前にヨーロッパヘちょっと間接税の方の調査に参ったときに、名前は忘れましたが、イタリアの財政学のある教授に会ったときに、その教授が言っていた言葉を使わしてもらったわけなんです。なれるかどうか、これはやはり多くの国民の問題でありまして、私自身がそう思っても実際にはそうなれないかもしれませんが、私は、なれるだろう、あるいはまた、なれることを期待しているわけです。
  123. 正森成二

    ○正森委員 最後に石先生に。石先生の御論文の「むすび」のところに、「この大型間接税は所得税減税と一体化して導入されるべきである。ということは短期的にネットの増減税ゼロで、増収を一義的に考えなくてもよいということになる。長期的にみての財源確保のメカニズムを、将来のためまず備えるという視点が現在不可欠である。」こう書いておられますね。これは真田幸村といいますか、そういうお考えで、まず最初は間接税を増税した分は全部減税してもいい、プラス・マイナス・ゼロでもいい、しかし一たん大型間接税を導入すれば、後で税率を上げれば増収できるんだから、そのメカニズムをまずつくっておけ、こういうわけで、政府・与党の大蔵大臣や政調会長が聞けば、なるほど名案であるというようなお考えでありますが、これはやはり先生の御持論でございましょうか。
  124. 石弘光

    ○石参考人 真田幸村ほど知恵もございませんが、平たく申しますと、そういうメカニズムがないと今後の高齢化社会に十分なる財源が上がってこない、そういう開き直った答弁もまた可能かと思います。  と申しますのは、一挙に増税というのは、先般の一般消費税(仮称)のときにやはり非常に無理があったという反省を持っておりますし、過去五、六年の間の学習効果を大いに生かすべきであろうと思います。それで、やはりまず最初に現行税制のひずみとか、ゆがみとか言われるものを直して、それなりに不公平税制感をなくし重税感をなくし、国民あるいは納税者の納得を得る必要があるだろうというのが第一歩ですね。そのひずみ等々の一番大きいところは、僕は、現行所得税のサラリーマンの重税感で代表されますあの辺の、累進税率の重さであるとか等々にあろうと思います。それをやるにはかなり財源が要ります。したがって、その財源を得るためにとりあえず、いろいろあろうかと思いますが、大型間接税。その大型間接税も、現行消費税のこれまたひずみ等々をなくす意味で課税ベースを広くしよう。  そういうところで、アメリカのレーガンもレベニュー・ニュートラリティーという税収の中立性を言っておりますが、そのアイデアを大いに借用すべきである。これは向こうから借りてきたと言っても結構です。それで、とりあえず税制の仕組みをしっかりした後で、今後の高齢化に伴う医療なり年金なりという財源、これを、結局のところ社会保険料でやり切れない分を間接税でやるほかないだろう。当然国会審議を経て税率を上げるわけですから、そう勝手に上げられない。恐らくかなりの、何というのですかね、歯どめはきいていると僕は思いますので、そういう形のものを一つの選択肢として出したい、こういうのが私の真意でございます。
  125. 正森成二

    ○正森委員 ありがとうございました。
  126. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、明二十四日金曜日午前十時三十分理事会、午前十時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十八分散会