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1985-05-21 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和六十年五月二十一日(火曜日)    午前十時開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    尾身 幸次君       大島 理森君    加藤 六月君       金子原二郎君    瓦   力君       笹山 登生君    塩島  大君       島村 宜伸君    田中 秀征君       中川 昭一君    林  大幹君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       町村 信孝君    宮下 創平君       山岡 謙蔵君    山崎武三郎君       山中 貞則君    井上 一成君       伊藤  茂君    上西 和郎君       川崎 寛治君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    武藤 山治君       渡部 行雄君    石田幸四郎君       古川 雅司君    宮地 正介君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣審議官   海野 恒男君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁調査         局長      横溝 雅夫君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官      門田  實君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主計局次         長       保田  博君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 矢澤富太郎君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省理財局次         長       亀井 敬之君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         農林水産省農蚕         園芸局次長   畑中 孝晴君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局給与第一         課長      丹羽清之助君         内閣総理大臣官         房参事官    杉浦  力君         総務庁恩給局次         長       平尾 秀夫君         外務省経済協力         局国際機構課長 榎  泰邦君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         農林水産省経済         局国際部国際経         済課長     白井 英男君         日本国有鉄道共         済事務局長   小玉 俊一君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十五日  辞任         補欠選任   玉置 一弥君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     玉置 一弥君 同月二十一日  辞任         補欠選任   加藤 六月君     町村 信孝君   東   力君     島村 宜伸君   平沼 赳夫君     尾身 幸次君   山中 貞則君     林  大幹君   伊藤  茂君     上西 和郎君   野口 幸一君     渡部 行雄君   藤田 高敏君     井上 一成君 同日  辞任         補欠選任   尾身 幸次君     平沼 赳夫君   島村 宜伸君     東   力君   林  大幹君     山中 貞則君   町村 信孝君     加藤 六月君   井上 一成君     藤田 高敏君   上西 和郎君     伊藤  茂君   渡部 行雄君     野口 幸一君     ――――――――――――― 四月二十四日  国際金融公社への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第七六号)  (参議院送付)  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第七七号)(参議院送付) 同月二十三日  所得税課税最低限度額引き上げ等に関する請  願(瀬崎博義紹介)(第四一八七号)  同(戸田菊雄紹介)(第四一八八号)  同(簑輪幸代紹介)(第四三六二号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願北口博紹介)(  第四三三六号) 五月十七日  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願岩垂寿喜男紹介  )(第四五七二号)  同(小坂徳三郎紹介)(第四五七三号)  同(堀昌雄紹介)(第四五七四号)  同(山下元利紹介)(第四五七五号)  同(若林正俊紹介)(第四五七六号)  同(渡辺省一紹介)(第四五七七号) は本委員会に付託された。 五月二十日  大型間接税導入反対に関する陳情書外一件  (第三五三  号)  公共事業用地取得に伴う税制改正に関する陳情  書  (第三五四号)  北海道における燃料手当の非課税に関する陳情  書  (第三五五号)  所得税課税最低限度額引き上げ等に関する  陳情書  (第三五六号)  国有財産処分事務迅速化に関する陳情書  (第三五七号)  自動車関係諸税増税反対等に関する陳情書  (第三五八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十二年度以後における国家公務員等共済  組合等からの年金の額の改定に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出第六八号)  米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律  案(内閣提出第七五号)  国の会計税制及び金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 金子企画庁長官大蔵委員会にお出ましをいただきまして、大変ありがとうございます。いろいろ都合があって、十時から十時半までしか長官都合がとれないので、大蔵大臣への質問は後に譲りまして、まず企画庁長官から少し意見を交換してみたいと思います。  この間企画庁が発表いたしました三月の機械受注実績動向を見ますと、余り民間設備投資の先行きが好ましくない数字が出ているようであります。機械受注前月比で九・二%の減となった。四-六の見通しと一-三月を比べてみても二・七%ぐらい減少するのではないか。この機械受注減少というのは、やはり設備投資の一服あるいは弱含み、そういう傾向をあらわしているような気がするのでありますが、目下の経済全体の番人である企画庁長官として、今の経済動向を見て不安のない、心配のない状態だと見るのか。まず最初、その辺の全体を含めた経済動向状況をちょっと御説明いただいて、それから機械受注減少が何を意味するのか、原因は何なのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席堀之内委員長代理着席
  4. 金子国務大臣(金子一平)

    金子国務大臣 機械受注減少が多少目立ってきたことは事実でございます。これはやはり、特にアメリカ向け輸出が最近鈍化いたしておりますから、輸出をもとにしておる設備投資が若干落ちかかってきておるということが原因であると考えております。しかし、全体としての民間設備投資状況を見ますと、五十九年度製造業中心に前年比一二・三%と大幅な伸びを見せたわけでございますが、六十年度に入りましても、伸びは鈍化しておるとは言っても、これは年度全般計画経済企画庁で調べたものでございまするが、年率八%台の増加が見込まれておるような状況でございます。  産業別で見ますと、製造業伸びがかなり鈍化しておりまするけれども、非製造業、これはサービスや不動産などを中心に底がたい伸びが見込まれておるわけでございまして、六十年度計画は、全産業で前年比三・七%増、上期に比べて下期は伸びが鈍化するという結果となっておりまするけれども、基本的には今までの調査のパターンと大体同じような傾向を示しておると考えております。  私どもといたしましては、輸出産業伸びが鈍化するのは当然でございまするけれども、最近のOA化に関連する投資中心にした、技術革新に対応するための投資意欲は、依然根強いものがあるというふうに考えておる次第でございます。
  5. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 ただいまの長官お話では、設備投資は当初の目標見通し程度にはいくだろう。そういう見解は、政府の決めた経済見通しを下回るようなことはない情勢と見ていいのか、それとも経済見通しをやや下回るかもしらぬという不安があるという方にウエートがかかるのか、そこのところはどのように認識されていらっしゃいますか。
  6. 金子国務大臣(金子一平)

    金子国務大臣 大体経済の当初の見通しは十分達成できるというふうな、比較的強気の見方を持っておるわけでございます。
  7. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 それでは人為的なカンフル注射を打つとか、そういう内需拡大策を特別に企画庁としてお願いをしたいというような空気は、閣僚の席でも全然発言なさらない、現状のままで推移して経済は好ましい状態に推移する、こういう御見解でございますか。
  8. 金子国務大臣(金子一平)

    金子国務大臣 御承知のとおり、アメリカの一-三月のGNP伸びが、一・三でございましたか、大幅な低落を見せました。この修正の見解が今夜アメリカで発表になるはずでございますので、まだ今の段階ではこちらに届いておりませんが、アメリカ経済見通しにつきましてはいろいろな見方があることは先生も御承知のとおりでございます。ただ、大方の見方といたしましては、GNP三%から四%の間、三・五%くらいの伸びは十分示すのではなかろうかという見方が大勢を占めておるわけでございまして、もちろん最近の経済伸びを憂慮して公定歩合の引き下げが行われたわけでございますけれども向こう向こうなりにいろいろな手を打っておりますから、世界経済並びに日本経済をそう大きくひっかき回すような経済動きはなかろうというふうには考えております。  ただ、やはり何といっても大きなアメリカ経済のことでございますから、今後の動向がどうなるかということにつきましては、我々も細心の注意を払って、経済全体の運営をこれから考えていかなければいかぬ。決して楽観一点張りでいっておるわけではないのでございますが、去年の実績に比べて今の見通しては、設備投資はまあまあこの程度いくんではなかろうかというふうに考えておる次第でございまして、今後慎重な対処をしてまいりたい、そういう気持ちは十分持っております。
  9. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 サミットでいろいろ日本がこれから果たさねばならない責務が決められたわけでありますが、今の中曽根内閣の中で閣僚がいろいろな意見を展開しておりますね。例えば河本先生は、五兆円の所得税減税をやるべきだ、それを早期にやるべきだ。また二階堂さんは、公共事業予算財政出動で思い切ってやるべき時期が来たと言っておりますね。経済全体の整合性を考え、経済運営の基本をつくるのは企画庁長官ですね。こういうお二人の、自民党首脳大臣の、内需拡大のために減税公共事業というこの意見に対して、金子長官はどのようにこれを理解し、そういう発言は好ましいと思っているのか、企画庁としてはちょっと迷惑千万だなと感じているのか、この辺はいかがですか。
  10. 金子国務大臣(金子一平)

    金子国務大臣 財政に余裕がございますならば、大いに思い切った減税もやり、あるいは思い切った公共事業投資もやったらいいと私は思っておるのでございますが、大蔵大臣しょっちゅうおっしゃっているとおり、本当の追い詰められたサラ金財政を今やっておるわけでございまして、いかにして一日も早く財政健全化を回復するかについて、それこそ血みどろの努力をしておられる最中でございますから、財源があれば思い切った減税もできますけれども、なかなかこれはやはり難しいと思うのです。  ただ、経済は生き物でございますから、これからの景気動向いかんによってどういうような情勢になるかわかりませんし、ある程度刺激策を講ずることも必要になってくるかもしれません。私は、これはやはり一日も早く財政を身軽にして、必要な財政政策金融政策がとれるように持っていくことが必要であると考えておるわけでございまして、例えばことしも、減税こそできませんでしたけれども、与野党間の合意で、ある程度の税制上の措置をとるとかいろんなことが考えられております。特に投資減税も、金額は大きくはございませんけれども、ある程度やってそれなりの効果をこれから生み出すかと考えておりますし、去年に比べてやはり実質三・七%ぐらい公共投資の額をふやしたわけでございます。  できれば、私どもは一番必要なことは、経済のすそ野の広い住宅投資あたり重点に置いて必要な手を打つとか、あるいはしょっちゅう言われておることでございますが、利子補給をやってもっと民間資金を大々的に活用する。特に都市再開発なんか、今のままじゃなかなか思い切った手が打てませんから、そういう面において税制上あるいは財政上必要な手を打つことは、それはそれなりに考えていっていいんじゃなかろうか。何兆円の減税とかいうようなことではなしに、必要なことを着実にこれから考えていくことが必要であろうかと思っています。  しかし、それはこれからの経済の全体の動きを見ながら、秋に向けていろいろ関係者の間で今模索を続けておる最中でございます。御承知のとおり、四月九日に決定しました内需拡大諮問委員会答申におきましても、税制問題につきましてもいろいろ取り上げておりますし、それから民間活力導入につきましても幾つかの提言をいたしておりますので、そういう問題についで行動計画を、できれば七月中に大体の見通しをつけたいということで、今関係者手分けをしてやっておる最中であることを申し上げておきます。
  11. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 長官に伺いたいのは、私が今聞こうとした意味は、当初政府が決めた経済見通しというのは、一応経済全体の整合性を考えてできておるわけですね。その経済見通しが達成できないという状況ならば、財政出動とか内需拡大とか、いろんな手当てが必要なんですが、先ほどからの長官の話は、経済は大体心配のない、不安のない状態で推移しておるという前提なんですね。だとしたら、今ここで大幅減税とか公共事業とか、そういう財政による内需拡大という論争をする必要はないんじゃないか、経済がやや好ましい方向に動いているという前提ならば。しかし、経済に不安がある、どうも経済見通しどおりいきそうもないというならばそういう論理も必要ですが、そこのところを長官にきちっとした姿勢を聞きたいわけなんですよ。そうでないと、これは百家争鳴で、せっかく決めた経済見通しなんというのはそっちのけで、ただ国民人気がその場だけとれればいいという目先のことだけで、その手当てが中期的に見たときには大変な災いを起こすことがあるのですね、経済というのは。  私は、レーガンはそれで大失敗していると思うのですよ。大統領選挙前に大減税をやり、いろいろな手で、ばっと人気取りをやってみた。さあ後始末で、これからは大増税予算の大削減をやらなければアメリカ経済どうにもならぬ。今世界じゅうから批判を受けているわけでしょう。ですから、私は、目先だけのことと中長期的なことというのを切り離して物を考えたら、大変な禍根を将来残すと心配する一人なんであります。だから、当初に経済動向心配ないのですかということを聞いたのはそういう意味なんですね。今の閣内におけるいろいろな意見というのを見ると、目先だけの、足元だけの人気取り的な発言をすることによって経済全体の整合性というものを破壊さしていくのじゃないかというのが一つあるわけです。そこで、私は、しっかりした企画庁長官の決意と指導方針というものを聞かなければいかぬな、こう思っているわけなのであります。  そこで、今のお話によると、内需拡大諮問委員会からいろいろ方針が出ている、あるいはこれから規制緩和も七十項目ばかりやる、七月には行動計画をきちっと出す、ただ七月まで待ってみてくれ、これが出たところで企画庁としてはきちっとした方針ができるのです、こういう意見なのか、それとも、もう一つ、必要とあらば秋口に何か考えるというのは、経済の推移にかなり不安が秋口はまだ出るのじゃないかという心配があるのか、そこらのことが、どうも今の長官答弁によると腹の中が定かでないのですね。あれもまあ少しはいいだろう、こっちの言うことも少々いいだろうということで、今の答弁では企画庁としての毅然とした経済運営姿勢がさっぱり読み取れないのですよ。そこのところ、ひとつきちっと一回聞かしてください。
  12. 金子国務大臣(金子一平)

    金子国務大臣 経済全体の運営としては、当初の予定どおり動くものと私ども見通しておるわけでございます。ただ、ボンサミットOECD関係もございまして、市場開放について内需拡大ということも大きく取り上げられておりますので、今その作業計画が進んでおりますということが一つ。  それからもう一つは、当初申し上げましたように、アメリカ景気動向が一体どうなるか。私どもはやはり何といっても大きくアメリカ貿易に依存した日本経済でございましただけに、この動向がやはり日本経済をある程度動かしてくると思うのでございまして、そこら辺の見通しを十分見きわめながら当初の予定どおり目標を達成するように努力していかなければいかぬという意味において、秋口にかけての世界経済全体を慎重に見守りたい、こう申し上げたわけでございまして、今のところは現在の状況心配ないと私どもは考えておる、こういうふうに御理解いただければ結構でございます。
  13. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 そうすると、自民党内や閣僚の中にいろいろな意見を述べる者がおるが、現状はそういう新たな需要を喚起したり新たな財政による購買力増大策などを考える段階ではない、こう受けとめてよろしゅうございますか。
  14. 金子国務大臣(金子一平)

    金子国務大臣 これはもういろいろな御意見があることは私も十分承知いたしておりまするけれども企画庁といたしましては、今後、世界経済動きに対応しながら十分やっていかなければいかぬ、またいける自信がある、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  15. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 長官、今国際収支が、日本の場合は大変アンバランスになってきた。経常収支が五十九年度三百六十九億九千百万ドル、約三百七十億ドルの黒字が出た。貿易収支を見ても、四百五十六億ドルの黒字になった。その裏側の長期資本収支においては五百四十四億ドルの赤である、こういう状態。こういう姿は一体、経済運営番人から見た場合に、ノーマルな経済の姿なんだろうか。ここのところはどう受けとめますか。
  16. 金子国務大臣(金子一平)

    金子国務大臣 黒字解消につきましては、先ほど来申し上げましたような諮問委員会答申に沿ってのいろんな案をこれから七月にかけてやるわけでございますし、また、現在貯蓄過剰というようなことでいろんなことが言われておりまするけれども、これもやはり税制改正との関係において貯蓄と消費と投資の問題をどうするか、慎重にひとつ検討してもらうつもりで、今作業を進めておる段階でございます。
  17. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 私が聞きたいのは、こういう国際収支面におけるアンバランス解消をしていく努力をしなければならぬ、これはそう短期間に解消なんかできませんね。これはアメリカ側承知しておると思うのですよ。世界じゅう先進国も、こういう日本構造がそう簡単に直るとは期待していないと思うのですね。これはかなり時間をかけなければ、なかなか均衡をとれるようにはならない。しかし、やはり総理大臣自身が、一人百ドル、アメリカのものを買ってやってくれというようなことを言っておるのですから、輸入がふえるあるいは輸出を少々減らすということになると、政府経済見通しそのものを変えなければならぬわけですよ、従来のものを。その減った分を内需でどうカバーするか、そういう広範な、グローバルな経済政策というようなものをやはり企画庁は考えておかないと、何か行き当たりばったり、相手に押されれば押されたことにだけ対応する、常に不安動揺国民に与えていくという姿勢が見えるのですね。  ですから、やはり企画庁として対外経済政策原理原則、そういうようなものを早く作成して、そういう原理原則に基づいてもろもろの政策が展開されていく、推進されていく、そういう青写真を見せてくれないことには、アメリカから少し強く言われたらそこのところだけちょっといじる、ECから言われたらそこのところだけちょっといじる、その後どうなるのかという中期的な展望はない、こういう対応で一体いいのだろうか。国民はそういうやり方に対しては大変な焦燥感、不安、そういうものを持っているのじゃないだろうか。そういうものはつくり得ないのでしょうか。つくるだけの能力がないということであきらめちゃうのでしょうか。それとも、あるならある、その青写真を今示してみてください。
  18. 金子国務大臣(金子一平)

    金子国務大臣 大変難しい問題の御指摘でございまして、先生も御承知のとおり、日本経済構造からいって、私はそう簡単に黒字が一挙に解消するものだとは考えておりません。OECDで取り上げられていました問題も、ボンサミットも同様だったと思うのでございまするが、関税障壁については日本は新ラウンドを提唱して、工業品については関税率ゼロまで持っていっても結構ですよと言っておるのですから、それはよく理解してくれておるのです。  問題は非関税障壁ですね。いろんな面におきましてアンフェアな、透明でない輸入障壁を設けておるということに対する不満がいろんな誤解を生み、摩擦の大きな原因になっておると私どもは考えておるのでございまして、これを一日も早く取り除いて、黒字もそれによってある程度減ると思いまするけれども、とにかく、そういう対外無差別、各国とも同じような取り扱いを輸入についてやるということに今重点が置かれておるんじゃなかろうか。そういう面に今中心を置いていろいろなアクションプログラムを進めておる段階であるというふうにお考えいただいたらいいと思うのでございまして、私どもは、そういうことをやることによって国際的ないろいろな批判もなくなりますし、また日本のこれからの経済力に応じた国際的責任を果たす面においての、例えば政府開発援助と申しますか、発展途上国に対する援助等も、新年度におきましてはさらに新しい中期目標をつくろうというようなことで、今いろいろ関係省庁の間で努力をしておるようなことでございますので、だんだんとそういう点の誤解は解けていくというふうに考えておる次第でございます。
  19. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 長官にこれからしっかりひとつ、その七月の行動計画あるいは七十項目にわたる規制緩和、そういうものが日本経済にどういう具体的な影響を及ぼすか、そういう試算を企画庁できちっとやってもらって――例えば七十項目規制緩和をすることによって民間活力がどのように生かされ、どのくらいそれが需要となって影響を及ぼすのか、そしてまた関税障壁の撤廃によって輸入がどのくらいふえるというある程度の目安というものが立つのか、そういうものを全然我々の前に明らかにしないのですね。だち言葉だけが先行していて、それで結果はまた国際会議日本が、どうもまだ日本努力が足りぬ、こう言われる。どうも国民感情として、今の経済運営の指針というか、原理原則というか、そういうものがさっぱりわからないですね。  今貯蓄が過剰になっているとかという意見、あるいはもっと輸入をふやさねばならぬ、あるいは関税障壁日本は高過ぎるとか非難があるけれども、同じアメリカ人でも、そういう非難は当たらないということをはっきり言っている。前の大統領経済諮問委員長フェルドシュタインという人です。今週号の「エコノミスト」に「摩擦対策としての内需拡大は疑問 日本の高貯蓄は“悪”ではない」と、世界を助けているのだ、世界の資本不足を助けているのは日本なんだ、したがって、アメリカ日本に感謝すべきだ、そういう意味のことを彼は長々と「エコノミスト」に寄せていますね。結局、悪いのはアメリカの怠けた企業なんだ、努力の足りなかったのはアメリカ自身の企業にあるのだということで警鐘を乱打しているのですよ。これは大統領経済諮問委員長ですよ。  ですから、我々はこういうのを読んでみると、どうも日本の対応もちょっとへっぴり腰なんですね。なぜそうなるかというのは、原理原則が定まっていないからなんです。閣僚もばらばらなんです。大蔵省も企画庁も通産省も、河本国務大臣もあるいは副総裁も、みんなばらばらで好き勝手なことを言っているのですね。本当に経済がわかって物を言ってくれているならいいのですけれども、どうも本当にわかっていないような気がするのですよ。アメリカにこびを売るような態度、そういうような姿勢というのでは、物事はきちっと処理できないんじゃないか。ぜひひとつ長官、この経済諮問委員長の論文を早急に読んでみてください。これは日米関係のあり方の正しい姿勢を大変示唆しているような気がしてなりません。お読みになりましたか。
  20. 金子国務大臣(金子一平)

    金子国務大臣 今の御指摘の論文は私も拝読いたしましたが、それは正論だと思うのです。アメリカ人の中にも、今お話しのような正論を吐く人は何人かあるのですけれども、とにかくここ急速に、昨年一年間のドル高の関係アメリカへの日本輸出がふえたものですから、まあ業界が国会を巻き込み、あるいは国民全体を巻き込んで大きな政治問題化している。理屈の問題なら我々もそう負けるつもりはないのですが、やはりこれは政治問題になってしまっているものですから、どうやってこれを切り抜けるかということで、今政府を挙げて努力をしておるような最中でございまして、先生の御意見につきましては、私どもも敬服して承っております。十分心してこれからの運営に誤りなきを期してまいりたい、かように考えております。
  21. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 長官との約束時間、十時半になりましたから、どうぞお引き取り願って結構でございます。ありがとうございました。  次に、河本国務大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、河本先輩は四月十五日に政府・与党首脳会議で次のようなことをお話ししたというのが新聞報道にありました。それは、四分野の市場開放策だけでは対日批判がおさまるとは思えない、この際、財政主導の思い切った内需拡大策に取り組むべきだ。また、その後の新聞報道によると、五兆円程度の所得税の大減税を主張した、こういう新聞報道があったのですが、この新聞報道は誤報でしょうか。
  22. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 正確に申し上げますと、私の申し述べました趣旨は、御案内のように四月九日に一連の対外経済対策を政府の方で決めました。それは、第一は緊急の市場開放対策と、第二は中期的な対策でございますが、いずれも政府対外経済問題についての諮問委員会からの答申を受けまして、それを参考にして決めたわけでございますが、その中に、市場開放だけでは対外経済摩擦は解消しない、そこで市場開放と並行して内需の拡大、あるいは為替対策、あるいは産業協力、技術協力、あるいはODA、こういう諸問題を並行して前向きに取り組んでいかないと、問題の処理はできませんよ、こういう答申がございまして、政府はそれを全面的に尊重してその方向で政策を進める、こういうことになったわけでございます。  その中の内需振興という項目の中では、実は四項目を挙げて、こういう方向でやるべきであるということを指示されております。その一つが、内需拡大ができるような方向で税制の改革をしなさいということ。それから第二が、社会資本投資の分野に民間資金導入して、民間活力を進めたらどうか、こういう項目がございます。さらに、労働時間の短縮とかあるいは週休二日制、それから、経済活動を活発にするための規制緩和の促進、こういう項目中心にして内需拡大をやりなさい、そういう答申を受けまして、そういう方向でこれから政策を進めることを決めたのでございまして、その方向に沿って一連の発言をした、こういうことでございます。
  23. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 方針があったから発言したので、自分の自発的な、主体的な意思ではない、没主体的な発言なんだ、そういうことですか。
  24. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 今申し上げましたような方針政府が決めた、こういうことでございます。そういう方針政府が決める段階におきましては、諮問委員会で私どももいろいろ、あるべき今後の経済政策の姿について発言をしておりますから、そういう経過を受けて政府方針が決まった、こういうことでございます。
  25. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 政府方針というのは、総理大臣の閣議で決めたことが政府方針ですね。中曽根総理は、記者会見の席でもあるいはサミットで行った外国での発表でも、内需拡大財政支出ではできかねるとはっきり言っておるのですね。そういうことを言って、政府規制の緩和、そして税制改革も内需拡大に資するだろう、こう言っている。しかし、所得税減税五兆円という具体的金額まで先生は言っているのですよ。総理の、財政支出ではできないという発想は、これ以上赤字をふやすようなことはしないという大前提があるのです。だから、もし河本大臣意見を実現するとしたら、どこかで五兆円の増税をして減税五兆円ということをしない限り、できないですね。総理の意向に反するのですね。ここは総理と詰めてあるのですか。五兆円所得税減税発言というのは、合理性はあるのでしょうか。
  26. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 私は、現在の状態のもとでは、六十年度予算編成で、御承知のように建設国債を増発して社会資本投資を拡大する、こういうことはなかなか合意が得にくいと思います。そこで、六十年度予算でとりました方法は、建設国債は増発はしない、しかし、地方債を増発して社会資本投資全体をふやしましょう、それから、あわせて民間資金を社会資本投資導入しましょう、この二つの方法で社会資本投資全体を拡大いたしております。だから、私は地方債の発行というものもある意味では財政資金ではないか、こう思っておりますが、広い意味でいろいろな工夫をして社会資本投資を拡大していくということ、これは先般決めた政府の基本方針の一項目に入っておりますから、私はそういう方向で検討すべきではないか、こう思っております。  それから、五兆円減税問題につきましては、私が参議院の委員会で述べましたのは、実はこういう質問があったのです。一兆円規模の減税では景気浮揚に効果があるか、こういう御質問がございましたから、その程度の減税では景気浮揚には何ら影響がない。それじゃ幾らぐらいの減税をすれば影響があるのか、こういう御質問がございましたから、私から幾ら幾らということを申し上げる立場にはない、これから政府税調や党税調でいろいろ作業をするということになっておりますから、私からしかじかこれこれという意見を申し上げる立場にはないが、御参考までに申し上げますと、昭和四十八年には一兆八千億の所得税減税をしておりまして、それを今のGNPとの比較で換算をいたしますと、当時のGNPは今のGNPの三七%ぐらいでありますから、約五兆の減税になりましょう。経済情勢は、四十八年当時と今と比べますと、若干今の方が悪いように思う。したがって、四十八年当時と同じような効果を上げていこうとすれば五兆円以上の減税が必要でしょうと、これは過去の例に照らして一つの参考意見を申し上げた、こういうことでございます。
  27. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 所得税減税にけちをつけたり反対する人は一人もおりません。これは国民みんな大賛成です、税金が安くなるということは。私も賛成です。田中内閣のときに約二兆円の減税を提唱して約束させたのは私なのであります、大蔵委員会で。その当時は、課税最低額が余りにも低いから、独身者で中学出てすぐ国税を取られるのは余りにもかわいそうじゃないか、したがって課税最低限を徹底的に見直してもっと上げてやるべきだ、そういう論争から、その日の夕刊の一面トップに各紙がばっと書いて、田中さんの決断であの減税が確定的になったのです。  そういう経過を私自身当事者の一人として、提唱した者として今振り返ってみて、今の事態の中で、だれもやっていただきたいけれども、五兆円の減税なんというべらぼうな金額は実現可能性があるのか、やりようがあるのか。不公平税制を全部正して、財源を見出して所得税減税に回したとしても、私は、二兆円か二兆五千億くらいが現実可能な、財政のわかっている者の主張じゃないかと思うのですね。それを、仮に話の例としても、国務大臣という立場にある人が、五兆円もやればという比較論を国会の場でやるということは、少々軽率なんじゃないでしょうか。国民は本気に受けとめますよ。本当にやってくれるのだろうか、五兆円どうやってできるんだろうか、あっちこっち行っても質問されます。私も減税論者で賛成ですよ。もしそういうことが可能なら、与野党一致したのは年度内に一兆円くらいの話なんだから、すぐやってもらいたい。  大蔵大臣、この話を聞いてどう感じますか。総理候補を二人目の前に置いて聞くのはちょっと酷なような気がするけれども、国家国民の立場から、やはり財政を預かっている者と対外経済の責任を総理から仰せつかっている国務大臣との間の意見が余り違っていたんじゃ、国民は迷いますね。大蔵大臣はどう思いますか。五兆円減税の可能性というのはあるんでしょうか。
  28. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 今秋の問題では、問題が三つあると私は思っております。一つは、六十年度税制のあり方についてというときに答申をちょうだいした。異例のことながら、抜本的な見直しをしなさいということに基づいて、国会での論議等を踏まえ、政府税調で議論をしていただこうということが一つであります。  それから二つ目には、今度は与野党の幹事長・書記長会談において税の問題を専門的な立場からこれから検討をしよう。政策税制の問題と分けられてはおりますが、所得税制にとっていえば、年度内に結論を得るものとするということが二つ目です。  それから三つ目が、今河本大臣からお話がありましたように、対外経済対策でこれを尊重することに決まっておるところの諮問委員会答申に基づく税の指摘。この三つが、客観的に見れば、今政策課題として取り上げなければならない環境、三環境ではないかというふうに考えるわけであります。  私も先般参議院の特別委員会において、河本大臣との一問一答を聞いておりましたが、当時河本大臣がお答えなすった問題は、たしか四十八年――四十九年度税制だと思いますが、ちょっと後から整合性を保ってみますが、四十八年に答申をいただいて、四十九年度税制で一兆八千億の所得減税、それを今のGNPに引き直した場合には五兆円を超すことは事実であります、そういう例を引かれたというふうにこれを受けとめて私も承っておりました。  さて、今の状態で五兆円の減税ができるか、こういう御質問でございますが、総理が申し上げておりますのは、いわば減税はしたい、がしかし、後世代への負担転嫁であるところの赤字公債を財源に充ててはならない、したがってこれから抜本改正の中で審議してもらうんだ、もう一方、各党間の申し合わせの問題はもとより尊重していかなきゃならぬ、こういう答弁の限界を申し上げておるわけでございます。したがって、できるかできぬか、こうおっしゃれば、それは財源の問題に入ってまいります。  私もサミットでいろいろな議論をしておりますと、概してヨーロッパの国は、国民負担率にして一五%から二〇%日本より高いわけでありますから、したがって減税ということは、その財源はどうするかということについてはそれだけ歳出を削減するんだ、こういう気構えてあります、現実なかなか難しい問題でありますが。アメリカの場合はやはり増減ゼロとでも申しますか、中立性の上に立っての税の論議をしております。  そういうことを考えると我が国の場合も、今さらに減税に見合うだけの歳出削減をするということになるとこれは大変な、蛮勇の限界を超すようなことになるかもしらぬ。そうなると、勢い財源という論議がなされていかなきゃならぬ。その財源をどうするかということにしますと、私は理論的には不可能じゃないと思います、理屈の上では。しかし、それの問題になりますと私の答弁の限界というものがそこに生じますのは、税制改正のいわば事務局を務めるであろう大蔵当局の代表者として申し上げる場合は、それに見合うところの財源についての論及をいたしますと、税制調査会等に対して予見を与えることになるから、私の立場としてはそれが自分のお答えの限界ですと、こういうことを今日まで申し続けてきておるわけであります。
  29. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 惻隠の情もちらつかせて、まあまあの答弁しかできないと思いますから、これ以上この問題は質問いたしませんが、対外経済対策の責任大臣として、河本さんのやるべき仕事はたくさんあると思うのであります。  その中の一つで、今国際的比較をしてみても日本の労働時間は非常に長い。総実働労働時間を比較してみると、日本は二千百三十六時間、アメリカは千八百五十一時間、西ドイツは千六百八十二時間。これを見ると、日本の実労働時間というのは非常に多い。これはやはり国際的な競争をフェアにし、お互い国際基準である程度世界は同一歩調をとっていこう、そういう開放経済体制になっていくとするならば、この労働時間はどう見ても日本は多過ぎると思うのですね。これについて河本さんはどうお考えですか。そして、これをどう改善しようと提言をし、努力をなさいますか。私の守備範囲ではないということで放置しますか。見解を聞かしてください。
  30. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 さっきも申し上げましたように、諮問委員会答申の中に内需項目の一項として労働時間の短縮と週休二日制ということがございますが、それを受けて、政府はそれを全面的に尊重して実現の方向に努力する、そういうことを決めたのが四月九日の決定でございます。これをどのように具体化していくかということについては、これから政府部内で労働省が中心になりまして進めていくということでございまして、これからの取り組み方につきましてはまだ具体的に明らかになっておりません。
  31. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 日本が国際会議でいろいろ発言をしたり約束したりいろいろ議論した問題を、時間をかけ、ずるずるとしているときに、その期間にまた非難が出てくる。私はもう理屈や理論や政策の問題ではない段階に来ていると思うのですよ、現段階は。政府の勇気、決断の問題だと思うのですね。それをしない限り、こういう国際的な摩擦や非難というのはなかなか解消しないと思うのです。迅速果敢という言葉がいいのかどうかわかりませんが、いずれにしても、今一番政治家、政府に求められておるものは勇気と決断だと私は思うのです。  財界から、いやそれは困る、これはだめだと言われれば、財界の言いなりになっちゃって、労働時間もそっちのけ、アメリカがこう言ってくれば、アメリカの言ったことを何とかうまくその場しのぎのことをやればいいというようなことではもう済まされない時代が来た。日本は領土が狭くて、人間が多くて、資源がないから小国だ、小国だから少々大目に見てくれよ、勘弁してくれよという発想は、もはや国際的に通用しない時代が来たと思うのですよ。ですからやはり、サミットでお互いが決めたことを国内経済の中で対応しようというような問題は、今や何をやったか何をやらないかも世界じゅうにすぐわかってしまうのですから、そういう意味でやはり勇気、決断というものは今大変重要な、そういう時期に来ていると思うのです。そういう意味で、私は労働時間の短縮なんというのは、やろうと思えばこんなものはすぐできると思うのです。なぜそれができないのでしょうかね。障害は何ですか、河本先生
  32. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 さっきも申し上げましたように、そういう方向で労働時間の短縮と週休二日制を実現していこう、こういうことを決めたわけです。決めたということは実現の可能性があるということでございますから、これからそれに取り組んでいく、こういうことでございます。
  33. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 河本先生とあと十分しかありませんから、あれもこれも聞きたいことはいっぱいあるのですけれども、大きな問題で、民間活力民間活力の活用という言葉を盛んに政府は言うのですが、中曽根さんもそう言うのですが、具体的な中身が国民にわからないですね。民活というのは何で、何をどうするのだ、いつごろ何がそれで実現するのかがさっぱりわからない。     〔堀之内委員長代理退席、熊谷委員長代理者席〕  それからもう一つは、民活でやれる都会地と民活が全然活用できない東北だとか九州だとかちょっと田舎の地域、公共事業しかないような県、こういうようなところを一体民活論で平準化できるのか、難しいですね。だから、民活のやり方の中身や何か今聞きたいのですが、確定したものじゃなくて、こんなことが考えられるというものでいいです。確定はこれからなんでしょうが、これをやることによって、こういう条件のところはこのようになる、このくらいな金額が需要になる、投資になる、公共施設になるということですね。  その場合、そういう民活のできる地域は民活でやり、できないところは公共事業予算を、都市部に行く部分を地方に回して、地方はどうしても財政でやる以外にないという地域がある。そういうもののアンバランスをどう調整していくか。山中先輩のところなんか、鹿児島なんていうところもへんぴなところだから、民間でやれなんて言ってもなかなかないのじゃないかと思うのです。そういうような地域の問題を、同じ日本国民としてどうやっていけるのか。北海道にしても東北にしても大変心配なんですね。民活民活といって、公共事業は従来どおりの配分方式で配分されたのでは、地方はさっぱり何の恩恵もないじゃないかという議論が出てくる。  そこでまず、経済の専門家であり実業家である河本先生は、民活という場合に何が目玉になるのか。こういうことをやれば、なるほどと目につくような活力が出るのだというようなものが何かあるのでしょうか。あるとしたら、こういうもの、こういうもの、こういうものがあるが、おれは総理大臣じゃないから実行をすぐできないのだというのか。そこらをひとつ意見をちょっと聞かしてくれませんか。
  34. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 民間活力導入するということのために今政府の方で考えておりますのは、その前提条件としての規制緩和という問題でございます。経済活動を自由にする、自由競争を拡大する、投資が進みやすいような環境をつくる、こういうことで規制の緩和をするということがその前提条件だと思いますが、この問題につきましては今行革審の方で作業を進めておられまして、七月には大体具体的な答申が出てくる予定になっております。私のお預かりをしております特命事項担当室におきましても、産業界と何回か懇談をいたしまして具体的な要望を聞きまして、行革審の方にこういう方向でやってもらいたいということを言っておりますが、まず民活の前提条件は規制緩和だ、こう思うのです。  しからば、規制緩和が仮に実現した場合に、では具体的にどういう形でそれが事業化されるかということでございますが、今政府の考えておりますのは、関西空港方式のような形で、できるだけ公共事業民間資金導入していく、こういうやり方を考えていこうということが中心になっております。そのためには、国有地の払い下げ開放、これを最大限に進めていこう、こういうことにいたしておりますが、ただ、国有地の開放といいましても、五年先、十年先に開放されるような土地では、当面の経済と何ら関係ございませんので、やはり一年ないし二年の間に開放されて、その土地の上に着実にある程度の事業が前進をする、こういうものでなければならぬと思いますが、そういう事業に限定いたしますと、そんなに数多くございません。  したがって、国有地の開放によりまして、果たしてどこまで民間活力導入できるかということは、具体的な効果としてはよほど研究する必要があろうかと、こう思っておりますが、それと並行いたしまして、例えば神戸市でやっておりますようなああいう島をつくって、その上に新しい近代都市を建設する、こういうやり方なども一つの方法だと思いますが、地方公共団体が計画しております。そういう事業が進みやすいような環境をつくってあげる、こういうことも今いろいろ工夫をいたしております。そして一兆円規模の大事業に、何らかの形で政府が最小限、仕事が進みやすいようなそういう前提条件をひとつ何かつくれないかということで、今十幾つかの事業を対象にいたしまして、いろいろ建設省その他と十分連携をとりながら工夫をいたしておるところでございます。
  35. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 これも経済を均衡ある発展をさせる方向に進むのか、独占、寡占に利益を与え、大変ひずんだ経済構造になる危険もはらんでいる。私は過般、そういうことを心配したものですから、竹下大臣に、信託制度と国有地や公有地の活用というようなことも提案をして、みだりに国民の財産を払い下げることは好ましくない、そういう理論をここで展開した一人でもあります。中曽根さんの十月三十一日付の新経済政策も全部読んでみました。国有地を片っ端から払い下げしようというのだ。払い下げする年限も書いてある。これは何年度、これは何年度。そのために、その付近ではもう不動産屋が群がって値上げ競争だ。そこで今慌てて都市整備公団か何かを中へ入れさせて、一年以内につくらぬものは契約を解除するような方法を考えたらどうかとかなんとか、また小手先の議論を政府はしていますね。私はそんなことが民間活力がといってちょっとがっかりしちゃっている。まあ新空港の話なんかはいいですね。島をつくって投資をして、大いに収入を考えるのもいいですね。こういうのはペイするでしょう。  河本さん、ひとつ提案がありますけれども、これから対外経済政策の一環の内需拡大という形の一こまとして、こんなことはどうでしょうか。今住宅は、確かにもう皆家を持って貸し家も大分あいている。しかし、それは皆劣悪な、狭い、かなり老朽化したものが多い。まだまだセカンドハウスも欲しい。土地さえ安ければ家が欲しいという人はいっぱいおるのですね。しかし、調整区域がかなり広くて家が建たない。そういうような規制が今あるわけですね。そこでひとつ、五メートル以上の道路のあるところは、調整区域内であっても住宅建設を許可する、そういうように規制を取っ払ったら、私はまだ十万戸や二十万戸の住宅建設はふえると思うのですね。今百十万戸ラインですね。一番多いときは百七十万戸年々できたわけです。それがどんどん減って今百十万戸ぐらい。これを河本さんは、先ほどの話では、利子を補給してやるとか住宅金融公庫の待遇をよくしてやるとか、こういう発想があるようなことをちょっと伺ったのですが、政府はその逆をやっているのですよ。住宅金融公庫に申し込みしたら、今度は申し込みの手数料を取るなんということをことしから始めたのですね。逆なんですよ。そういうちぐはぐな政策政府はやっていらっしゃるのですが、ひとつ調整区域というものの中をもっと活用できることに規制緩和をすれば、私はかなり住宅建設はふえるような気がするのですが、こんな提案については河本さん、どんなお感じですか。
  36. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 住宅建設ということは非常に大きな問題でございまして、これから研究すべき課題の一つとして、住宅建設をもう少し拡大するためにはどうしたらいいかということが非常に大きなテーマになってくると思います。これから研究していかなければならぬ問題でございますが、今お述べになりましたことも一つの参考にさせていただきまして、各方面とよく打ち合わせをいたしまして研究いたします。
  37. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 大臣の約束時間ですが、河本さんへいま二分時間をいただけますか。  対外経済対策の責任大臣として、今の開放経済あるいは自由化――市場開放金融の自由化、いろいろな問題が押し寄せてきている。第三の黒船到来、開国だと言う学者もいる。日本アメリカ人のペリーによって開国をされ、大変だと大騒ぎしたが、開国してみたらかえって日本に力がついて、日本経済発展した。経済発展したら、うぬぼれて日清戦争をやり日露戦争をやって、また少々鎖国的な政策昭和になって入った。第二の開国は、結局第二次世界大戦で敗れたことによって日本は門戸を聞かされた。門戸を聞かされてみたら、また日本経済活力が発展をし、今四十年の歴史を経過した。第三の門戸開放、この開国が中長期的に見て日本にどういう影響を与えるかというのが、我々の今一番興味のあるところなんであります。  その結果が出るのは僕らがもう政治家をやめた後だと思いますけれども、この第三の開国と言われる今の自由化の道を誤ったら大変なことになるし、また、この中でどういうところに落ちついていくのかということを事前に国民に知らしむるのが、政府の責任でもあると私は思うのであります。特に総理大臣の責任だと思うのであります。お二人ともやがてひょっとすると総理大臣になるかもしれない二人だからこういう話をするのでありますが、どっちが先になるかは別として、これは自民党が決めるのですが、いずれにしてもこれから自民党だけで決めることのできない時代が来るかもしれない。野党の力も、応援する方が勝つ場合があるかもしれない。今やそういう時代がやってきたのですね。  そういう時代に、国際行動原理というのはいかなるものであるべきか、問題はここです。国際経済に対する行動原理というようなものを政府はきちっと国民の前に示す責任があると思うのですよ。今のように世界各国から、あるいは世界会議でいろいろ言われると、今までは外圧への対処の姿勢がまことに無定見、低姿勢的な態度、無原則そして没主体的な姿勢、これが日本対外外交の特徴だったと私は思うのです。だからアメリカは、少し言ってもやらなければ、すぐまた次の新しい攻撃をかけてくるのですね。次から次に際限なくやってくる。これはいかぬですね。やはり日本という国として、国際経済行動原理というようなものがきちっと、ある程度へそが据わってなければいかぬと思うのです。そしてアメリカに言うべきものは言う、ECに言うべきものは言える、これは国民の総意なんだ、そういうものをやはり一つつくっておく必要がある。  例えば、私がこの間大変感心した論文で、篠原三代平先生の「小国の論理を捨てよ 経済大国の国際的使命を考える」という今週号のやはり「エコノミスト」ですね。これを読んで大変示唆を受けたのであります。私は篠原先生は好きで、もう何回か会って、迷ったときには長期的な経済論を聞けるすばらしい学者だと私は今でも思っております。そしてこの篠原さんはコンドラチェフの長期波動説などもかなり分析をして、経済がおかしくなったときに、政治は今まで三つの手法をやってきた。一つは戦争という手段によってそれを解決しようとする指導者が出る。あるいはインフレーションによってそれらの危機を乗り切ろうとする手法をやった。しかし、この二つとも現代では通用しない。これからは技術革新、技術革命によってその道を切り開いていく以外にないという発想を持つべきだ。なかなか示唆に富んだ篠原さんの説に、私はかなり賛成する部分が多いのであります。  その篠原さんが言っている中を私なりに集約をしてみると、一つは、現状の自由貿易とはどういうものであるべきなのか。口で自由貿易と言うけれども、自主規制をさせたり、あるいは波際でいろいろな制限を加えるアメリカの態度を見たり、フランスの態度を見て、一体自由貿易という限界、範疇はどこまでなのか。国民はそれも知りたい。自由という言葉だけで、中身が漠然としておってわからぬ。そういうものをやはり政府が、我々が考える自由貿易とはこういう姿なのであるということを示す。  二番目は、国際化とは何か。アメリカの言いなりにアメリカ経済に統合することが国際化なのか、それとももっと大きな国々との平均値のところを見て、国際化はこういうもの、この程度のものであり、限界はここにある。そういうようなものがもっともっと具体的に検討されなければいけない。  世界インフレに対処するためにはどうしたらいいか。アメリカの言いなりに内需拡大内需拡大と言って、今の政府企画庁経済見通しよりも経済成長を何%高くするんだ。五%前後の経済成長で当分いこうと決めた政府方針を、アメリカの圧力が来たからといってこれを七だ、八だと上げていったら、これは完全な調整インフレ政策ですよ。これはとどのつまりはインフレにつながる道ですよ。したがって内需拡大と言っても、しからば何%まで拡大するのか。五、六までならインフレにならない、安心度の経済拡大なのか。その辺のめどは、政府は一体どこへ置いているのか。これも知りたい。ただむやみに内需拡大と言っても、その限度はどこなのか。この点の中身がさっぱりわからない。  経済協力の問題、あり方についても、開発途上国あるいはもっと最貧国、いろいろな国がある。世界にすべて友達を持ちたいという日本として、日本が困ったときに世界の友が日本に協力をしてくれる体制を世界につくっていく、それが文化国家日本の立場だと私は考える。しからば、その経済協力はいかなる姿であるべきなのか、そして到達目標はどこに行くのが好ましいという考えなのか。  国家を経営し、国民を統合する政治、それは政府が握っているのであります。この力を発揮して、国民の前に、こういう国際経済行動原理たるようなものを策定する必要があると思うのです。河本大臣対外経済政策の担当大臣として、いかがお感じになりますか。
  38. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 戦後四十年の間に我が国が比較的順調に発展をすることができましたのは、前提条件が二つあると思いますが、その一つが世界の平和であり、第二が、自由貿易という体制が一応曲がりなりにも維持できた、こういうことだと思うのです。  ところが、最近になりまして日本貿易動きを見ますと、史上空前と言ってもいいくらいの黒字が出ております。そこで我が国が引き金になりまして、ややもすると頭をもたげがちな保護貿易傾向をさらに助長するということになりますと、世界全体に迷惑をかけることになりますので、来年からは新ラウンドも開かれようとしておりますし、何としても日本が思い切った市場開放体制を進めていく。そういう観点から今回の一連の政策が決まったわけでございまして、その基本的な考え方は、これからの貿易は原則自由である、制限を設けるのは例外である、こういう観点に立って七月の行動計画をつくり上げたいと考えております。
  39. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 七月の約七十項目にわたる規制緩和あるいは行動計画民間活力論、具体的なすばらしいものを出していただくことを期待して、河本大臣との論争を終わりたいと思います。ありがとうございました。  大蔵大臣に二、三点お伺いをしてみたいと思います。  竹下先輩は、大蔵大臣として何回かサミットに出席をされてまいりました。そもそもサミットとは目的は何で、何をやるところか、そういうことも十分御承知大臣であります。ランブイエから今日までのサミットで、ことしのサミットは何か特色がある、従来と違う点がある、もしあるとすればどういう点が従来の、昨年のサミットなりその前のサミットと比べて違いがあるでしょうか。
  40. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 ことしのサミットでどういう違いがあったか。私はベネチア・サミットから参加をしておりますが、間二回抜けております。で、素朴な感じを持つのは、元来エコノミックサミットであった。いわゆる主要先進国がマクロ経済政策その他、そのときどきに重要とされる、参加国に共通する議題について、どちらかといえばインフォーマルに、非公式な意見交換を行って、それぞれの立場と考え方の理解を深め、そのことによって経済運営に関し、建設的な目標について合意を図って今日まで来た。  確かに、ECを含めてサミット参加国でアバウト七億ぐらいでございますか、世界の人口の七分の一ぐらい、GNPの恐らく五七%くらいでございましょうか、を持っておる国の集まりということになるわけですから、それは世界経済全体にも影響するところ大であるというような考え方で始まって、経済財政関係を担当しておりますと幾らか感じますのは、それが政治サミットという傾向に逐年移りつつあるというような印象は持っております。  ことしの場合、私は私なりの印象として受けましたのは、これは公式に報道もされておりますが、フランスのミッテラン首脳の物の考え方が、まさに最初インフォーマルな形の議論というようなことから始まったものが、個人代表あるいはそれぞれの外交機関を通じてあらかじめいろいろなペーパーができておって、そのペーパーの山の中で議論を積み重ねるようになって、事前に共同宣言も用意される、かつてのインフォーマルなフリーディスカッションからいわば官僚的になったではないか、したがって、我々も原点に帰らなければならぬじゃないか、こんな発言に象徴されるような感じは私なりに持っております。  しかし、経済関係では、双方がいわば非難、中傷、揚げ足取りをするのではなく、世界全体の経済中心である、半分以上のGNPを持っておるという認識からして、双方が抱えておる問題点について、自己批判と言うと少し言葉がきついかもしれませんが、自分が認識しておることを率直に述べ合って、それを自分のところの果たすべき役割として持ち帰っておるというところには、やはりその意義は続いておると考えます。
  41. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 私も、ことしのサミットの政治宣言を見て、従来と大変趣が違ってきたな、当初は経済を通じて世界の融和、協力、相互依存、そういうことをお互いが追求し合おうというのから、ことしは大変論調の強い政治宣言が発せられておる。特に私の目を引いたのは、「我々は、欧州の分割を深く遺憾とする。」すなわち、ヤルタ体制というものについて批判をした。このことは、これからの世界史の中で大変大きな意味を持ってくるなどいう感じを私は抱いたのであります。  戦後四十年の米ソ二超大国による世界支配、管理という体制というものは、だんだん緩められていかねばならないな、民主主義の価値と人権を尊重するという体制とそうでない体制との間の対立がずっと続いておるわけでありますが、これを武力によって解決しようとすれば、人類は崩壊であります。ですから、サミットはそういう体制を経済的な側面からどう崩していくか、そして地球は人類の住みかだという発想で人類的な立場から共存を考えるか、そういう時代をつくらなければ地球は人類の住みかとして維持できない時代がやってきたと私は認識をしております。そういう意味で、サミットのことしの政治宣言は、今後の世界史をつくっていく上で非常に意味のあることを言っているな、こういう感じを受けたわけであります。  しかし、きょうは、本当はこの問題は総理大臣との論争でなければかみ合わないわけでありまして、大蔵大臣財政経済の担当大臣ですからやめます。本当は竹下さんがトップリーダーになるための勉強のためにやってもいいと思うのでありますけれども、時間がなくなっちゃうので、経済の方の問題を中心に入りたいと思います。  このサミットで、当面日本の責任分担が決められました。金融市場の規制緩和、円の国際化、市場アクセスの改善、輸入増加の促進、この四つが、大蔵大臣としてこれから消化しなければならない項目としてサミットで決められたわけでありますが、これがいつごろまでにどの程度実行に移されるかを、また世界じゅうが注視をしているわけであります。  この四項目について、まず大蔵大臣から、これからのスケジュール、それから中身、こんなことをするというようなことを少し説明をしてみてください。
  42. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 おっしゃいますとおり、「日本政府は、金融市場の規制緩和、円の国際的役割の増進、市場アクセスの改善及び輸入増加の奨励において一層の進展を図る考えである。」こういうことをこちらから宣言の中へ盛り込んだわけでございますから、これが与えられた大きな役割だという認識を持つべきであると思っております。その前提にありますのは、これはウィリアムズバーグ・サミット以来続いてきておりますのが、経済の問題では、言ってみれば一国に対してかつての機関車論的な役割を負わすというようなことは、これはかつての機関車論の失敗に基づく反省からして全く出ない議論になりまして、「インフレなき持続的成長」、こういうことが基本に存在していくわけであります。  そこで、今の問題につきまして、まず金融の問題でございます。この問題につきましては、今日、金融市場の規制緩和という点においては、ああして一昨年来の、これはどちらかといえば、いわば米国から円ドル委員会というよなものが持ち出されたことが一つの契機となって、これは着々と進んでおります。先ほど黒船の話がありましたが、私はこの問題は日本経済自身にとってもいいことであるという認識の上に立っておりましたので、この点については、今までもこの金融の規制に対しましてはいろいろなプログラムをつくって、着実にこれを実行をしてきたという気持ちを持っております。しかし、最終的には、この問題は自由化の問題になりますと、いわゆる大口の金利から今やってきておりますが、小口、なかんずく日本の長い伝統にあります郵貯というような問題にまで立ち至っていくには、少しく時間がかかるのではなかろうかという認識の上に立っております。  ただ、これを日米だけのものにしてはならぬというので、サミットからの帰りに、イギリスとの金融協議を行いました。それから、西ドイツとも同様の協議を行うべく既に話し合いを行っております。フランスは間もなくこちらへお見えになりますのでやっていこう、こういう話し合いをしておりますので、この点は、今のプログラムを順調に進めていくことによって対応できる問題ではなかろうかというふうに私は考えております。  ただ、私ども、為替レートの問題がございますので、六月の二十一日にサミットメンバープラス四カ国、オランダ、ベルギー等を加えまして、十カ国蔵相会議を行うことによって、これは東京でございますが、さらにその問題の議論をしようということになっておるところであります。  いま一つは、これは相手さんがあることでございますから、なかなか思うようにいきませんけれども、円建ての貿易の比率がふえていくような努力はこれからもしていかなければならないというふうに今考えておるわけであります。  それから、市場アクセスの改善の問題は、先ほど来御議論のありましたいわゆる九日の決定で、アクションプログラムをどういうふうにつくり、進めていくか。私は四月九日のあの決定がなかったらちょっと困ったと思います。あれがあったから、当面はそれの効果を期待しようという考え方に相手国もなるわけでございますから、あの四月九日の政策をいかに具体化していくかということであろうと思うわけであります。この問題は市場アクセスの問題であり、そしてその市場アクセスのアンフェアな感じを与えないということが、輸入の拡大にもつながっていくのではなかろうかというふうに私は考えております。  大きく内需拡大、こういう範疇でこれをとらまえてみますと、私はいろいろな角度から、先ほど来御議論がありましたような問題を進めていくことであろうと思っております。  内需拡大輸入にどれだけつながるか、すべて仮定の前提を置いた数字でございますけれども、五兆円の減税をすれば七億ドル輸入がふえるだろう、あるいは三兆円公共事業をふやせば十二億ドルふえるだろう、こういう前提を置いた計算でございますけれども、私どもも計算をしてみておりますが、一挙に一つのことをやって製品輸入等がふえるものではない。したがって個々の問題について、今まではどっちかといえば国内折衝でございまして、外務省に対してこれは難しい、これは難しい、こう言って、外務省だけが今度は対外交渉で非常に苦しい立場に立つわけでありますが、それぞれがいわゆる今度のMOSS方式のように、通貨は私とリーガンさんでやりましたが、今度はそれぞれのプロジェクトにつきまして各省、お互いのカウンターパート同士で大臣会議、次官会議というようなもので物を決めていくという姿勢で、一つ一つを解決して実効を上げていかなければならぬ課題だというふうに考えております。
  43. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 そういたしますと、まず金融市場の規制緩和ということで、目下CDの金利は自由化でかなり大口預金は自由化されたわけでありますが、これからのスケジュールとして、CDはどのくらいの単位まで自由金利にしようとしているのですか。例えば一年後はこの程度、三年後はこのくらい、きょうは銀行局長も来ているから、スケジュールも決まっているのかな。それともまた文句を言われるまで現在の水準でずっと頑張っていって、文句が出たらそこで考えるというのか。自発的に大蔵省として、ある程度のスケジュールを持っているのかな。CDの金利自由化の限度。
  44. 吉田(正)政府委員(吉田正輝)

    ○吉田(正)政府委員 ただいま大臣が御答弁申し上げましたとおり、私ども大口かつ短期の市場から金利自由化をしようということで、CDにつきましては、今年四月一日から三億円の単位を一億円、期間も三-六カ月のものに一-三という短期のものを追加いたしました。同時にMMCは五千万円。これは辛口と申しますか、大口より小さいということで、これにつきましても、上限金利を定めつつも自由化の方向で規制を緩和したわけでございます。  今後の方針でございますけれども、私どもといたしましては、今後二、三年以内に大口金利の規制の緩和ないし撤廃ということを努力目標として内外に告示しておりますから、最終着地といたしましてはそこを予定しておるわけでございますけれども、これをどういうふうに進めていくかにつきましては、例えばMMCの期間を延ばすとかあるいは額を下げていくとかいうような手法が考えられると思っております。  しかしながら、これの実際の方法につきましては、ただいまそのCD、MMCの期間、額等規制を緩和したところでございますので、その進行状況を見ながら、やはり現実の状況に合わせながら考えてまいりたい。努力目標としてはそういうことになっておるのですが、ただいま具体的に申し上げるわけにはまいりませんけれども、やはり全体といたしましては、額を次第に小さくする、それから期間を次第に拡大していくという方向にあるということだけを申し上げさせていただきたいと思います。
  45. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 大蔵大臣、MMCが五千万円、CDが一億円、これは二、三年このままやってみよう。究極は、預金金利を本当に自由にできるのかどうか。日本の制度、経済の秩序、そういうようなものから見て、預金金利を十年後あたりに完全に自由化できるのかどうか。今アメリカ金融機関の過当競争、自由化のためにかなり銀行がつぶれておるし、みんなに迷惑をかけている。私はああいう轍を踏んではいけないと思うのですね。ですから、アメリカがやれと言うから何でもやるんだという発想は、さっき言った行動原理がないからそういうことになるので、その辺はやはり十分大蔵省としては、預金金利完全自由化というのは十年先十五年先に本当にできるのか、やる気なのか。それともアメリカとの制度、秩序の違いがあるからここまでなんだ、そういう限界は考えているんですか。
  46. 吉田(正)政府委員(吉田正輝)

    ○吉田(正)政府委員 私どもといたしましては、先ほど大臣が申しました金融の自由化の現状と展望におきましては、大口預金金利を二、三年内に撤廃し、さらに引き続き小口預金金利の自由化の検討の展望を示しているわけでございますから、政策意識としてはそれを頭に持っておりますけれども、ただいま先生が確かに御指摘されたような預金金利の自由化というのは、経済の効率化、資金の適正な配分というような面では、大筋として日本経済のためによいと考えておりますけれども、やはり金融産業あるいは金融の問題は信用秩序の維持、預金者の保護という重大な使命をもう一方において抱えているわけでございます。したがいまして、ただいま申しましたように、大口預金金利の規制を漸次撤廃しつつ、かつ小口預金金利の検討課題、理論的問題、郵貯との関連等も頭に置きつつ、信用秩序の維持、預金者の保護等の課題もございますので、ただいま金融制度調査会におきましても、自由化を進める際の受け皿整備としまして、例えば金融機関の健全性の強化あるいは預金保険機構の強化、整備拡充等のような手段を講じつつ、経済に与える影響あるいは金融機関に与える影響等を考慮しながら慎重に進めてまいりたい、方向としてはそういうことでございます。  この問題については、いろいろと受け皿、環境等についても整備しながらやっていかなければならないという点では、全く先生御指摘のとおりだと考えております。
  47. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 もう一つ金融市場の規制緩和、自由化の中でやはり問題が大きいなと思うのは、長短金融分離の方針です。大蔵省は今まで長短金融分離方針をずっとある程度維持してきて、信託銀行のやるべきこと、普通銀行のやるべきこと、長短の貸し出しなども規制をしてやってきたのですが、アメリカはそういう制度になっていないですから、銀行と名がつけばみんな何でもやれるということになる。証券の関係もそうでありますが、そういう大蔵省の長い間伝統的に続いてきた長短金融分離方針というのは、いつごろ撤廃されるのですか。
  48. 吉田(正)政府委員(吉田正輝)

    ○吉田(正)政府委員 我が国の金融制度は戦後構築されたものでございますけれども、長短分離制度、先生おっしゃいますような興長銀の制度あるいは信託制度は、我が国の戦後の成長を支えた点で、機能として大変評価されるべき面があったと思います。それはやはり専門性を発揮しつつ、金融機関の中でも分業を行いながら、設備投資を長期信用銀行が行う、商業銀行あるいは普通銀行が一般普通銀行業務を行うということで、経済の発展に貢献してきたことは事実でございます。しかしながら、その後の自由化あるいは国際化というような面が進行しつつありまして、その面では環境の変化が出てきたということでございます。業際問題と申しますのは、やはり長短問題だけでもなく、証券、金融その他各種の部門で出てきているわけでございます。したがいまして、こういう問題につきましては、実際の変化を見きわめながら今後検討していく課題でございますので、検討していく所存でございます。  しかし、全体としましては、私どもの認識としては時代の流れに沿うように考えていかなければならないと考えておりますけれども金融の問題でございまして、歴史、慣行等我が国の土壌という問題がございますから、それに沿うように考えていくべきであると考えられますので、現在進んでおります自由化、国際化の状況を見ながら、いずれしかるべき時期に検討すべき課題ということで、現在の進行状況を十分に見きわめて、現実的な展開がどのようになっていくかを考えながらやってまいりたい。ただし、その法律、制度問題、これをいじるということは大変重要な問題でございますから、ただいま申し上げましたような慎重な姿勢をとりつつ、いずれかの時期を見きわめなければならぬと考えておりますけれども、今の制度の中でできるような問題あるいは現実に沿うべき問題については、私どもとしてはいろいろと、具体的に今申し上げませんけれども、逐次手をつけているというふうに考えておるわけでございます。
  49. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 公の席でなかなか言えない、金融機関の問題ですから、トラブルを起こしたら大変ですから、余り言えないのだと思うのですが、ひとつ銀行局長、後で資料を持って部屋に来て、じっくり本音を報告してもらいたい。それは国会議員としての調査権の範囲内に属する。  次の円の国際化の問題ですが、大臣、円の決済でもっとASEANなりアジア諸国、オーストラリア、ニュージーランドを含めて、そういう傾向にこれからかなり有望になっていくかどうか、それとも今の国際通貨がドルであり、ドル高であり、アメリカの資源や国土の大きさ、信頼性、そういうような点からなかなか円の国際化は道が狭いと認識をするか。  もう一点は、十年間でドルの値が少なくとも七〇%上がったのは高過ぎると思うのです。ですから、これががくっと下がる可能性なしとしないと思うのです。そうなったときを予見すれば、円の国際化の方にかなりシフトしてくると思うのですが、そこらのドルのこれからの推移を見通して、そして円の国際化というものを図っていくというにらみをどのようにしていったらいいのか、その辺は大蔵大臣として今日どんな考え方を持っていらっしゃいますか。
  50. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 具体的ないろいろな問題がございますので、この後行天国際金融局長からもお答えさすことをお許しいただきたいと思います。  一番先、私ども、円ドル委員会で出ましたときの議論が、これだけ通貨として大きい力を持っておる円がもっと国際化すべきだという主張。そのときに私どもがリーガン前財務長官と議論いたしましたのは、なるほどそうは言っても、為替レートはちょっときな臭い情報が入るとドル高になるじゃないか、したがってやはりベトナムで、ドルを持って逃げる難民はいらしても、円を持って逃げる難民はいないじゃないかと私が申しましたら、そんなこと言ったって、世界全体どこに行ったって円は通用するじゃないかという議論もいたしましたが、基本的にはやはり私はまずは貿易そのものの決済、円建て貿易というものを進めていかなければならぬ課題だと思います。今おっしゃいましたような地域に対しては、確かに為替レートの心配もございませんし、円建てで輸出はある程度できる、伸びていくわけでありますが、問題は油でございます。油が円建てで輸入契約ができるという情勢には、これは今日の慣行からしてなかなか難しい問題だ。その辺が私はやはり大きなネックだなと思いますけれども、しかし円に対する信認は高まってきつつありますから、逐次そういう方向に進んでいくではなかろうかと私は考えます。  それから、ドルの急落の場合ということを予測しての御議論でございました。今、実際問題アメリカは債務国になっておるのに依然としてドル高じゃないか、それは金利もあるだろうけれども経済のファンダメンタルズ全体から言えばそういいという見方もできないじゃないかという議論もございますけれども、やはり経済だけでない強いアメリカということで、ドルに対する信認というものは、私はこれが急落する環境にはないじゃないかな、こんな感じを持っております。
  51. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 その辺の議論は、篠原さんにしてもまたアメリカのフェルドシュタインにしても、ドルはもう実勢以上に高過ぎる、やがていつかこれはしっぺ返しを食うぞ、こういう見通しを持っていますね。かなりの有名な学者がそういう心配を持っています。ですから、投機筋なんかは、そういう状況が出るということになったときには、恐らく予想以上の速い足でドルの下がり得る可能性はあると私は見ているのです。ですから、そういうときに対処できるように、日本投資のあり方というようなものも、先ほど言った国際行動原理というようなものの中で十分検討しておかないと、大変な損失をこうむることもあり得るぞということも、今からある程度本職、専門家の間では議論を詰めておいた方がいいのではないかな、私はそういう感じがいたします。  いずれにしても五十四分までで、あと農林省を呼んであるものですから、大臣に最後に大きな視点からの問題でありますが、私はサミット会議で、もっと世界経済活性化を世界全体の責任と分担においてやることをなぜ議論しないのかな、これが不思議でならぬのであります。  あれは三菱総研の中島さんでしたか、大きな世界プロジェクトを十五ばかり列記して、戦争の方向を防ぎインフレを防いで世界経済を活性化する道はこれだと、すばらしい提言をなさっておりました。私はあれを大変興味を持って勉強してみたのであります。例えばジブラルタル海峡にトンネルをつくってアフリカとヨーロッパをつなぐとか、コンゴ川をせきとめて大きなダムをつくってアフリカの食糧増産に資するとか、マレー半島のクラ地峡のあの根元に運河をつくっても百七十キロじゃないか、そうすればマレーやシンガポールの利益にもなり、あるいはアジアに運ぶ油送船の距離も二千キロ以上も短縮できるではないかとか、そういう大きなプロジェクトを世界じゅうサミット会議でお互いがひとつ民間の資金でやらせようじゃないか、それぞれの国はそれを保証しようじゃないか、そういう世界的な大きな視点に立った世界経済の持続性、発展性、そういうのを三十年くらい続けていったなら、地球はすばらしい人類の住みかになると思うのです。  ブラジルだってまだまだ開発するところはいっぱいある。ヒマラヤの水だって利用できる。そういうようなことをなぜこのサミットで議論できないのか、不思議でしょうがないのであります。そういう大きな視点に立った政治家がいないのか。それとも、お互いが主権国家ということにしがみついて、民族、国家ということだけが頭の中にあって、人間、人類という発想が希薄なのか、そのために自国のことのみにきゅうきゅうとして、それぞれがもっと広い視野の地球という問題に思いが及ばないのか、どちらに原因があるんだろうか。私はサミット報道を聞くたびごとに、その点を残念に感じて仕方がないのでありますが、この点はどうでしょうか。  もう一点、世界の軍事費が今や年間九千億ドルに達しようとしているのです。九千億ドル、もったいないですね。これを年々三%ずつお互い減らそうじゃないか、減らした金で世界の大きなプロジェクトの開発をやって、これから二百年、三百年後まで地球が安全であり、生活が豊かになるようにやろうじゃないか、そういう話し合いをするのが本当のサミットじゃないかなと思うのであります。  軍事費の増強はなぜだめなのか、とまらないのか。それはソ連が情報閉鎖の国で、ソ連の国内の軍事の状況や配備の状況がつまびらかでない、そしてソ連の今までのやり方がどうも軍事増強で、領土拡張主義で不安が消えない、だから経済の問題に我々が力を入れていけない、軍事の面にも力を入れなければならぬということでどうにもならぬのか。資本主義だ共産主義だというのを克服して、この緑の地球、美しい地球を守らなければならないという哲学の方がもう優先する時代が来たのではないのか。したがって、古きそういう政治論や支配論、戦争論というものを終えんに導かなければ、人類の未来はないと私は考える。  そういう意味で、サミットでそういう先駆けの話ぐらい出ないものかな、大プロジェクトと今言った軍縮の具体的な呼びかけを人類にできないのかな、そういうことが大変残念なんですが、大臣は、それらの問題については参加をしてどのようにお考えでありますか。
  52. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 私もそういう考え方を持っておったことがございます。今でも心の中にはございますが、サミットで世界全体の大型プロジェクト問題の議論ということになりますと、勢い南北問題を含めて議論をしなければならぬということになるわけです。したがって、参加しない国にかかわる問題が多いというので、とかく南北問題というきょうの時点の問題に議論が集中しがちであります。  それから、軍縮の問題は当然のこととして主張される議論でございますが、それを今のように三%をインターナショナルプロジェクトに充てようというような気宇広大なところまで行くには、東西問題という別の問題が存在しておるということを遺憾ながら考えなければならぬではないかと思います。ただ、この間私がぶるさと論議というのをいたしましたときに、小松左京さんが、ソ連とアメリカの宇宙飛行士が一緒に宇宙をランデブーいたしますと、地球の上で何であんなつまらぬ争いなどをしておるんだろうか、宇宙全体がふるさとだ、こういう意識になるような人類社会を模索していかなければいかぬ、竹下登の「列島ふるさと論」なんかは余りにも小さいという議論を聞きまして、その限りにおきましては、今の武藤さんの宇宙ふるさと論みたいなものは、人類の一つの指針だと私も思っております。
  53. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 大蔵大臣への質問は、時間がありませんからこれで終わります。  農林省に二百答えてもらいたいと思います。これはまた人類史的な話から小さな話になりますが、今埼玉、茨城、栃木、関東のそれぞれの県がビール麦の病害で参っているのです。御承知ですね。しま萎縮病にかかって、この間あなたの上司である農蚕園芸局長の関谷さんですか、栃木県へ参りましてこの状況を視察されて、その後記者会見か何かで、栽培側だけの事情では決められない、加工適性とつくりやすさの調和が必要だ、農家にとってのつくりやすさと加工適性とは別物、こういうことをしゃべって帰ったものだから、農家の皆さんは、農水省は血も涙もない言い方をするなという受けとめ方をしてこの報道を読んだ。  そこでどうしたらいいか。もちろん共済金をもらったり作付転換したり、いろいろ考えなければならないが、共済なんというのは微々たるものだ。きのう農業団体に聞いてみたら、五割被害で一万五千円程度だというのだ。  私があなたに一番聞きたいのは二つ。  一つは、麒麟麦酒も朝日麦酒も、皆それぞれのビール会社は耕作者と一応契約栽培しているわけですね。しかもその契約栽培のときに、はるなという品種がいいぞ、あまぎという品種がいいよ、これをつくりなさいと大体品種を指定するわけだ。ことしの病気を見ると、このあまぎというのが大体全滅なんだ。同じビール麦でも、種類の違うものは全く病気にかかっていないんだな。栃木県が発明した二条二十二号なんというのは、どこの畑でもほとんど被害がないですね。だから、余りいいビールの品種だけにこだわって、ビール会社が新品種をつくったものは非常に病気に弱い。  そうすると、とれないときにピール会社は見舞い金の一円も出さない。痛くもかゆくもないものだから、そういうことだけを追求して、品種をつくり出してつくらせる。ひどい目に遭うのは農民だけですね。昔の農民の小作料よりひどいな。昔の農民の小作料もひどかった。とれようがとれまいが、一反三俵と決めれば、凶作のときは買ってでも三俵持っていかないと、おまえ、もう土地貸さぬとやられた。しかし、似ているね、今度のも。おまえ、これつくって、では買ってやるからと言って、全然とれないやつ、これは見舞い金も出さないんですね。これは契約栽培だから、農水省は少し指導して――あれはビール組合があるわけでしょう、酒造組合が。だから少しあっせんをして、見舞い金を少し考えてやることが一つ。  それから今言った、新しい品種で病害に強い二条二十二号というようなものを早くピール会社に、これで引き取るようにということを交渉して、やはり農民の立場というものをもうちょっと考えてやらぬと、大蔵大臣もこれは少々関係あるんだ、ビール税を取っているんだから。これは取っている方だから、おれはそうは言えぬと言うかもしらぬが、やはり業界との関係、号令権を一番強く持っているのは大蔵大臣だから、農水省と大蔵大臣とよく相談して、農民の不安をできるだけ小さくしてやるように最善の配慮をひとつしてもらいたい。質問と要望を兼ねて、私、五十四分までだから、あなたにちょっと答弁をしてもらって終わりたいと思います。
  54. 畑中政府委員(畑中孝晴)

    ○畑中政府委員 きのう先生方が現地に行かれたということですので、余り細かいお話を申し上げるあれはございませんけれども局長がこの前も連休明けに現地を見ましていろいろ御要望を聞いてまいりました。私どもとしても、ことしのしま萎縮の被害、大変な事態だというふうに認識をしておるわけでございますが、今共済制度という制度でいろいろなこういう被害のあった場合の補てんをするということになっておりますので、私どもとしては、そういう形で補てんをきちっとしていくという格好のものにしてまいりたいと思いますけれども、今お話しのような関東二条二十二号という、これは指定試験地でつくっている品種でございまして、これが昨年ぐらいから、しま萎縮病に大変強いということで、非常に農家の方の御要望も強いので、これを何とか品種として早く世に出して面積を広げていきたいということで、これはビール会社の方も醸造試験を急がせておりまして、昨年の麦で試験をやったのが七月ごろに結論が出ます。  これはことしの麦も少し規模を大きくした醸造試験をすることにしておりますけれども、六十一年産というのをことしの秋まきますので、それに間に合うように、六十一年産は今のところビール会社との話では千トンの大量醸造試験をやるということにしております。これも通常よりは多い数量でございますけれども、それにさらに千トンを何とかして上積みをして、もう少し大きな量の醸造試験ができるように、私どもも今、農業団体それから酒造組合、私どもと三者の間で話し合いをやっております。  いずれにいたしましても、結論を早く出しませんと、種の手当てとかいろいろな問題がございます。我々の方も十分事態を認識をしてやっておるつもりでございますので、できるだけそういった農家の御希望に沿うようにしてまいりたい。ただ、補償金を出すということにつきましては、共済の制度もございますし、会社と農協との間の契約の問題でもございますので、私どもとしては慎重にならざるを得ないというふうにお答え申し上げます。
  55. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 補償金出してなんというのじゃない。見舞い金でいいんだよ、見舞い金。農水省とすると、言いにくいのはわかる。それは外国から買った方が安いんだから、ビール麦もそれから発芽したやつも。それは業界は日本の大麦なんか使いたくない気持ちはわかる。それを無理やり国策として、日本の農業所得を確保してやる、農民の立場を守るという政府政策としてやらしているんだから、そして契約栽培をやらしているんだから、何もあとは知らぬ、自由契約だから、とれないときはとれなかったやつが損をするので、ばかを見てしようがないのだ、この発想はやめなければいかぬね。やはり言うべきことは言ってやって、見舞い金ぐらい少しは出してやりなさい。スズメの涙でも、気は心だ。それが恩情ある政治だ。  大蔵大臣は造り酒屋の大将だから、酒のことは特に関心があるが、やはり私はこの際、大蔵大臣も農林水産大臣と相談して、何らかの見舞い金ぐらい少し出すようなことはやってしかるべきだ、そう思うのですが、ひとつ最後に大臣、農林水産大臣と相談をしてみてやろうという気持ちになるのか、いやそれはわしは知らぬ、もうさわりたくないという心境なのか、ちょっと聞かしてください。
  56. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 現状認識が必ずしも正確でございませんが、両省でよく協議させます。
  57. 武藤(山)委員(武藤山治)

    武藤(山)委員 終わります。
  58. 熊谷委員長代理(熊谷弘)

    ○熊谷委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時十七分開議
  59. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  60. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 五月の連休におきまして、我々は一息入れさせていただいたわけですが、大臣サミットに出席になりまして、大変御苦労さまでございました。我々、新聞等で拝見をいたしますと、とりわけ大蔵大臣は大変な御活躍であったということでございまして、敬意を表したいと思います。  まず、このサミットにおきます全体の様子からお聞きをしておきたいと思うのですが、先ほど、午前中にも議論がございましたけれども、今までとはサミットの内容と申しますか、雰囲気が少し変わってきたのではないかという印象を、我々はマスコミを通じて受けるわけでございます。  そこで、全体の雰囲気として、非常に友好的な感じの中でこの会議というものが進められたのか、あるいは、時には非常に対立的にいろいろの激論が交わされる場面も多かったのか、その辺のところ、アウトラインを一言お聞きをして、質問の中に入らせていただきたいと思います。
  61. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 一口に言えば友好的雰囲気で、私自身が最初から考えておりましたのは、日本の新聞論調などを見ますと、いわば日本が袋たたきに遭うのではないかとかいろいろな議論がなされておりました。しかし、私自身考えてみますと、ウィリアムズバーグ・サミットから先進国が、共通の課題として「インフレなき持続的成長」を遂げるようにおのがじし国は異なれど、その立場に応じて健全な財政金融政策をやっていこう、これが最大公約数だ。それがロンドン・サミットに通じ、そうして五カ国大蔵大臣会議を経て今日に至っておりますので、言ってみれば、客観的に見て大きな政策転換のような議論はなされるはずがないと実は思っておりました。しかし、さはさりながら新聞なんかいろいろ書いてありますので、急激な変化というものもあるいはあるのかなという感じは皆無ではございませんでしたが、そういう議論は全く出なかったわけであります。  最初、きょうの武藤さんの御感想の中にもございましたが、一つは戦後四十周年、まさに切れ目である。このときに、かつては戦ったお互いの国々がこうして民主主義、平和主義の土俵の上に立って、そして経済産業を通じて世界全体にどういうふうにして貢献していくべきか、そういう新たなる出発だ、こういう空気が醸成されておりました。特に中曽根総理が、私は日本の総理大臣であると同時にアジアの代表であります、そのアジアも、かつては迷惑をかけた多くの国々の諸君が私をアジアの代表として見詰めてくれております、そういう表現から全体会議に入りましたので、ぎしぎしした議論というものは雰囲気の中でもなかった問題ではないかと思います。  経済の問題というのは、何分、年に三回くらい会っておりまして、よく通貨マフィアが会っていると言われるぐらいでございますので、さしの会談の中ではお互いいろいろな皮肉を言ったりしますけれども、揚げ足をとろうとかあるいは集中攻撃をしようとか、そういう空気の会合では全くなかった、こんな感じを受けたわけであります。
  62. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 財政あるいは経済問題において、今まで非常に熱烈な議論が進められてまいりましたけれども、今回は一味違った感じであるというお話が午前中にも出たわけでございます。また、もう一つ違った意味合いがそこに含まれていはしないか。それは、自由経済社会はどうしても手を握り合って前進をしていかなければならないが、自由経済社会にもいろいろの問題があって、アメリカ日本アメリカとヨーロッパあるいは日本とヨーロッパ、それぞれの間にいろいろの意見の相違もある。財政経済の問題を華々しくここで議論するということは、これら自由経済社会の間のきずなを切ることになりはしないかというような気持ちが強く働き過ぎて、非常に難しい問題、ここで煮つめなければならない問題というのはできるだけ横に置いておいて、そしてお互い議論して共通点を探し出すことができる問題を、そこでよりじっくりと話し合っていこうじゃないかというような気持ちが強く出たサミットではなかったろうか、そんな感じを実は受けているわけでございます。  これに対するコメントを大臣からまたお聞きしたいと思いますが、それも時には大事かとも思いますが、またそういう行き方に終始いたしておりますと、サミットとは一体何ぞやというそのもとの議論に戻っていくわけでございまして、儀礼的、形式的なものになってしまう可能性はないかということもございます。たとえガラスの城であったといたしましても、余りにも恐る恐るそれに出入りをするというのではなくて、もう少し突っ込んだ議論が、意見の相違点においてもそこでは取り上げられてもいいのではないかなという気もするわけでございます。その辺のことにつきまして、もう一言だけお聞きしておきたいと思います。
  63. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 仲のいい者同士だから、時には激論を闘わすことが相互の信頼関係を余計確立することになるのではないかというのも、一つの考え方だと思っております。が、先ほどおっしゃいました一つのポイントとしては、言ってみれば自由主義西側陣営の中に大きな亀裂が生じたという印象を与えたくないということは、最大公約数としてあり得ることではないか。何か私自身が評論家のような表現をするようでございますが、そういうことはしっかり土俵の上にあることではなかろうかというような印象は、私もないわけではございません。が、結局、考えてみますと、東西問題というものが一方にあり、一方に南北問題というものがあって、それらをすべてインタルードしながらの議論でございますので、まず最初の共通認識、これは経済の面で言えばまさに「インフレなき持続的成長」、そしてそれぞれが健全な財政金融政策をとるということが、世界全体にいい影響を与えることだという基本認識があることは事実であります。  ただ、各国が自分に言い聞かせるというような感じで、宣言の中に、自分の国が抱えておる問題点をそれぞれが出し合ったということは、最終的には、コンバージェンスとか言っておりますが、お互いが調和のとれた経済政策をやれば一番いいのではないか、そしてサーべーランスと言っておりますが、相互が監視をすることによってお互いの経済運営をうまくやっていこう。こういう考え方が基本にはあるわけでございますが、みずからの認識しておる、みずからの抱えておる問題点を、自分の国はこのような問題点を抱えておるということを出し合って、それは結果として自分の言ったことに対する責任を感ずるわけでございますから、そういう意味においてはこの会議の進め方というのはよかったのではないかな、こんな感じを受けたことは事実であります。
  64. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 貿易不均衡の問題に触れさせてもらいたいと思います。  貿易収支黒字幅が四百五十六億ドル、実質成長率の約五〇%を占めるに至りました。この数字を見た限りにおきましては、世界からいろいろな声が出るのも無理からぬ数字ではないかという気もするわけであります。しかし、我が国からの海外投資動向を示します長期資本収支も約五百四十四億ドルというふうに、非常に大きな数字になっているわけであります。  ことしの四月十三日でございましたか、安倍外務大臣アメリカに行かれましたときに、シュルツ長官日本貿易黒字のことに触れまして、貯蓄高の問題だとかいろいろなことを言いました。これらの意見が出ますたびに私も静かに考えているわけでありますが、日本の国からアメリカに対しまして企業等もたくさん進出してまいりましたし、アメリカの方も企業進出を非常に望みまして、そして東京あたりには、それぞれの国がその事務所を置くというようなこともあるわけでございます。  日本の国からの資本進出というものが一体どう評価をされているのであろうかということを、アメリカからの声が新聞に載りますたびに私、思っておりました。そうしましたら、立教大学の西山教授が同じような指摘を先日、日本経済新聞でされました。長期資本収支赤字の五百四十四億ドルから貿易収支黒字四百五十六億ドルを引きました九十億ドルというのは、考え方によっては輸入超過ではないかという理屈も成り立たないことはないのではないかと私は思うわけでございますが、これはいろいろ議論のあるところだろうと思います。  しかし、この貿易不均衡の問題の中で、少なくとも日本からそうして外国に企業が進出をいたしまして、地元でいろいろの機材を買う、素材や中間材を買う、あるいはまた地元の人たちもたくさん雇うというようなことは、輸出ではありますけれども、逆に考えれば日本輸入をしているのと同じ理屈にならないだろうか。向こうでいろいろの材料を買い、そしていろいろの人たちを雇うということは、日本の中へ物や人を輸入しておるのと同じことになるのではないだろうか。この辺のところが同じように輸出という形で全部ひっくるめて議論をされているとすれば、これはアメリカの議論も少しおかしいのではないだろうか、そんな思いが実はしたわけでございます。  こうしたこともございますが、貿易不均衡という問題について、大蔵大臣としてはどういうふうにお考えになっているのか、基本的なところからもう一つお聞きをしたいと思います。
  65. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 一つは、エネルギー源のほとんどを輸入に頼らなければならぬ、それから、資源はすべて輸入に頼らなければならぬという宿命的な我が国の構造からいたしまして、それに見合うだけの輸出はぜひ必要だ、すなわち貿易立国という言葉が出てくるわけであります。したがって今の状態を見ますと、いわばそういう資源あるいはエネルギー源は、石油価格が下落いたしますから、輸入がそれだけ相対的に減ってくる、現象面をとらえればこういう構造的な状態一つはございます。  それからもう一つは、これはきょうは一般質問でございますから歯にきぬ着せず申し上げてみますと、やはり日本人の努力の結果ではなかろうかという感じが強くしております。何分、安くて、長もちして、いいものをつくりますから売れるわけでございます。そしてまた、中曽根総理がよく、さしの会談なんかで申されておりますが、日本人はつくったものを一生懸命売り込まんとして、大部分の者はちゃんとその国の言葉を覚えて一生懸命販売努力をしておる、あなた方の国は日本語を余り御存じなくして時たまいらっしゃるんで、それで売れるでございましょうか、もっと努力をなすったらいかがですかということを私よりももっと表現よくおっしゃっておりますが、これはつぼを得た発言であるというふうに私は思っておるところであります。したがって、その努力の相違というものがやはり一番大きな原因ではなかろうか。  勝手なことを言わしていただきますと、ちょうど私はサミットに参加する前二日間は、バンコクにおいて行われましたアジア銀行の総会に行っておりました。その総会で各国の新聞記者から聞かれたことを総合しますと、日本のように働こう、日本のように貯金しよう、日本のように勉強しよう。それでサミットヘ参りますと、首脳の間でそういう話が出るわけではございませんが、各国からついてきております記者は、日本よ、もっと働かないでください、日本よ、もっと貯金しないでください、もっと勉強しないでください、こう言っているのじゃないかというふうな印象すら時に受けることは事実でございます。したがって、基本的には日本人の勤勉さというようなものが貿易不均衡の土台にあるのじゃないかという感じを私は強く持っております。それだけに、アンフェアな印象を与えてはいけませんので、いわば市場開放というようなことについては相手の誤解もたくさんありますから、十分理解を得ながら姿勢を正していかなければならぬというふうに思います。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕  それから、今の資本の輸出の問題でありますが、けさほど来も議論がありましたフェルドシュタインさんは、結果として日本の資本流入というものが、世界全体の資本提供国としての立場を日本にとらせておるではないか、こういう御議論でございます。  一昨年のちょうど山中通産大臣時代に通商白書が出まして、あのとき初めて、結果としてという遠慮しながらの前提を置いて、資本提供の役割を果たしておるではないかという分析がなされておりました。あれ以来私も意を強くいたしまして、しかしあくまでも謙虚に、結果としてという表現を前提にそういうことを申し上げておるわけであります。したがって専門家は、日本の資本というものが世界全体の資本提供になっておるということは十分わかりますが、とかく私どもも含めて選挙をやりますと、アメリカの下院議員の皆さんから見れば、貿易でもうけた上に、うちに貯金して利ざやまで稼いでいるじゃないか、こういう素朴な議論がまたあるということも、みずからも選挙していますから、そういうことは私どもにはわからないわけではございません。  それからいま一つは、資本進出することによって云々と今おっしゃいました。それも一つの論議でございまして、この問題は、その地域、地域の雇用に役立っておるという意味においては、確かに評価されておるというふうに認識すべきじゃないかなと考えるところであります。
  66. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 感情的な議論ばかりではなくて、地道な、まじめな議論もたくさんされておりますし、すべてが感情的というふうに申し上げておるわけではありませんが、中には今大臣からもお話がありましたように、アメリカの議会からも感情的な議論も出てまいりますし、ややもいたしますと日本の側からも、それに対する感情的な反論といったものもないわけではございません。しかし、この貿易不均衡の問題は、何らかの形で解決をしていかなければならない問題であることだけは事実でございまして、今大臣が御指摘になりましたように、日本人の努力の結果ということになってまいりますと、これは構造的と言えるかどうかわかりませんが、この貿易不均衡はこれからも末永く続いていかざるを得ないという気もするわけでございます。日本人の方がその努力を放棄するということになれば、これまた話は別ですが、そういうことにはならないだろう。日本人をして努力をさせているこの姿というのは、一朝一夕にしてでき上がったものではありませんし、それなりの理由があってこのような現状が続いているわけでありますから、これがそう急になくなるというわけではないだろうと思います。  そういたしますと、大臣の御意見のように、努力のたまものということであれば不均衡はなかなか解決していきにくい。それを制度の問題ですとか金融の自由化だとかあるいはその他の関税の問題でございますとか、いろいろこれらをひっくるめて改革を加えていきながら、なおかつその結果がどうかということになるのだろうと思うのです。アメリカの側は、そうした制度上の問題が非常に大きなネックになってこういう差ができているのではないかというふうに思っている節もあるわけではありますから、それらを取り除いた後でなおかつこの貿易不均衡というものが残るとしたら、私はその可能性が多分にあると思うのですが、そのときにこちらの意見というものは十分理解がされるものだと思われますか。それとも、そうした周辺のいろいろのものを取り除いてなおかつ貿易不均衡が存在したときに、これは日本人の努力のたまものだと言ってもなかなか理解してくれないものだ、そちらの方が強いというふうに大臣はお考えになりますか。
  67. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 長年民主主義になれた国民性として、欧米では、フェアでさえあれば、腕で負けだというなら、それなりの理解がしていただける問題ではないか。  これは本当に細かい話でございますけれども、しょうちゅうブームでウイスキーの売れ行きが悪くなりました。どれくらい悪くなったかなと思ったら、これは量でございますが、国産が二〇%減、そしてスコッチが九%減、ふえたわけではございませんけれども、減り方が少ない。その話をしましたら、ははあ、イギリスのスコッチというのは日本よりいいのかな、じゃ一生懸命でもっといいものをつくろう、こういう冗談話をしておりましたが、土俵がフェアでさえあれば、アンフェアでなかったら、私はある程度の理解というものはいただける問題ではないかというふうに考えます。  しかし、それは確かに、日米繊維交渉のときに向こうから来たレポートの中のことを思い出しますと、随分前の話になりますけれども、きょうおれはレイオフで休んでおった。そうしたら、レイオフでちょうだいしたお金を持って自分の女房が外出した。そうしたら、えらいきれいになって帰ってきた。見てみたら、おれがつくった着物じゃなくて、みんな日本人のつくった着物であった。おれが女房にやった失業手当で、またぞろ日本の繊維を女房は買いに行ったのか、こういう記事が出ておったことがございますから、感情的な問題というのはどこの社会にもあろうかと思いますが、要はフェアである、日本は開放された市場であるということをいかにして示すかということであろうと思います。誤解に基づくものも、今でもたくさんあると私は思います。  しかし、振り返ってみますと、また今から二十年ぐらい前を考えてみますと、自動車は、日本が競争力をつけるために、ノックダウン組み立て工場も禁止しておったわけですから。今は一日に出るのが、アメリカだけで二百三十万台を三百六十五で割りますと六千三百台。アメリカから入ってくるのが一日九台でございますから、そういうものを見ると、あのときはノックダウン工場も認めなかった日本が今やこれほどになってという、古い人にはそれなりの感情はあろうかと思います。しかし、要はいかにアンフェアでないかということを示すことではなかろうかというふうに感じておるところであります。したがって今後の問題といたしましては、ただ結果として資本提供をしておるというだけでなく、いわば資本そのものをもって合弁会社とかそういう形の進出によって、なかんずく中進国等の雇用の場を広げていくという努力はしなければならぬではなかろうかなというふうに考えます。  それからもう一つは、やはりODAじゃないかと思っております。このODAは、大変困った国、アフリカ等に、例えば食糧援助する。これもまさに人道上必要でございますが、私、この間からちょっと考えてみますと、世界に四十八億おって、おおむね日本並みの暮らしをしておる一人当たり所得の国が、上から数えますと大体二十三くらいございます。人口が全部で七億ちょっとでございます。そうすると、日本でつくるいいものを買う力のある国民は、総体としては七分の一しかいないじゃないか。そこへますます壊れない、長もちをするものをつくりますと、だんだん購買の対象も耐用年数が長くなりますから減ってくる。そうすると、資本協力など資本提供することによって、中進国などの購買力もつけていかないことには、日本自身の貿易国家としての限界というものもまた感じ取っていなければならぬな、こんな感じもいたしておるところでございます。
  68. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 アメリカ側の主張もだんだんと細かくなってまいりまして、小口金融の自由化の問題あるいは貯蓄高の問題、そうしたところにまでいろいろと意見が挟まれてきているわけでございます。小口金融の自由化の問題はけさも議論が出ましたので割愛をさせていただきますが、日本の国といたしましては、そこまで急速に進めていくことは非常に難しい情勢にあることはだれしも認めるところでありまして、それを承知の上でアメリカも言っているのではないだろうかという気もするわけでございます。  それから貯蓄の問題も、考え方によりましていろいろ議論の分かれるところでありますが、老齢人口比率ですか、六十五歳以上の人の人口を二十歳から六十四歳までの人口で割ったもの、それを百倍したものでございます。この老齢人口比率と貯蓄率というものとを比較をいたしますと、老齢人口比率が低いときには貯蓄率が高い、老齢人口比率が高くなれば貯蓄率は下がってくる、いわゆる逆相関の関係にあるということが大体言われておりますが、今までの日本の老齢人口比率を見ますと、欧米先進国の中では一番低い方であったわけであります。したがって、貯蓄率は非常に高いところにあった。これからこれが逆相関という一つの流れに従って低下してくるのかどうか、ちょっとよくわかりませんが、老齢人口比率がこれから日本はだんだん高くなってくるわけでありますので、高くなってまいりましたときに日本の貯蓄率がなおかつ高いというのであるならば、これは異常だというふうに非難をされてもやむを得ないと思いますけれども、今までの人口構成からいきまして、今までは少なくとも貯蓄率が高くなってもやむを得ない、これは日本だけの現象ではなくて世界の趨勢であるとも思えるわけでございます。これからそれがどうなっていくか注目しなければなりませんが……。  それからもう一つは、五十九年度のサラリーマンの勤労者貯蓄が六百四十九万円という数字が出ました。こうした貯蓄が高いのか低いのか、これもはかります物差しによりまして評価もまた違ってくると思いますが、この六百四十九万円は平均値でございますが、最頻値で見ますと百八十四万円である。順番に並べました中間に位置する数字で見ますと四百四十万円である。平均で見ますと六百四十九万円というふうに非常に高い数字になりますけれども、最頻値やあるいは中間数で見ますとうんと下がってくる。したがって、最多のところは百五十万から二百万ぐらいのところにあり、それから三分の二以上の人が平均よりも下である、こういう非常に偏った形になっておるわけですね。ちょうど富士山のような形にはなっていなくて、初めに非常に大きな山があって、あとは山のすそ野が長々と続いているという形のグラフになっているわけで、そういうことを考えますと、一口に日本の貯蓄が高いというのが、平均値で見るとこれは高いのかもしれませんけれども、内容を分析するとそれほどでもない。  これらのことも、アメリカ側にはかなりわかっているのか、それとも、そんな細かな議論は抜きにして、日本はただ平均だけを比較してみたときに高いというだけに終わっているのであろうか、その辺も我々といたしましては実はよくわかりにくい点でございます。こうしたことにつきまして、現場での議論の中でどんな議論がされているのか、もしそうした面での国際的な議論がございましたらひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  69. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 一般質問でございますから、私もかなり自由な発言をさせていただくということを前提にいたしてお答えいたしますならば、まず何で日本は貯蓄率が高いのや、こういう質問ばございます。これは全体会議ではございませんけれども、さしの会合のときには必ずございます。サミットというのが非常に窮屈なのは、朝飯、昼飯、夕飯、全部七人で一緒に食って、それがまた全部ワーキングランチでありワーキングディナーであるわけでございますから、私のように自分の国の言葉しかしゃべれない者にとっては大変な苦痛でございますけれども、そういうことからして、さしの話し合いというものがありまして、何で貯蓄率が高いのや、こういう質問がございますと、私も自分でおよそ六つの点に整理しております。  一つは、勤倹貯蓄の精神が強い。質素、倹約を旨とする。これは家庭教育から学校教育から、我々大正生まれ――大正と言ったってわかりませんけれども、一九二〇年代生まれの者はそういう教育を受けてきたんだ、こういうことを言いますと、どうも勤倹貯蓄というのは、私の言い方が悪いのか、国民性というのがよくわからぬようでございますけれども、それはいいことだというふうに総体的には言っております。  それから、老後に備えた貯蓄が高い。要するに老後対策というのが日本はできてなかったんだ。しかし、今の年金を見ますと、何だ、結構できてるんじゃないか。いや、それが一つの習慣となっておる。これは後からつけ加えますが、坂口さんのおっしゃった人口比率との問題がもちろん存在しておるわけであります。かつてそのことがあったと思うのです。  それからもう一つは子女教育のための資金、これは言うことをやめました。と申しますのは、高等学校進学率がイギリスなどは日本の半分ぐらいでございますから、子女教育に熱心だから蓄えがあると言うのは、おまえのところは熱心でないからというふうにもとれますものですから、ちょっと控えて、これは一言うことをやめました。  それからもう一つは、ボーナス比率が高い、これは言えると思います。比較的十二で割った給与体系になっております。公務員にいたしましても一六・九でございまして、四・九カ月がボーナスになっておりますから、いわば毎月の月給で生活して、ボーナスで貯金したり消費したりする。こういうボーナス比率が高いというのも一つ原因であろう。  それからもう一つは、日本金融機関は倒れないからだ。これは私がつけた理屈でございますけれども、確かに統計を見ても、日本金融機関が絶対に倒れないことでは世界の模範生でございます。もっともアメリカは一万四千五百も銀行がありますし、日本は相互銀行を入れても百五十六しかありませんので、その違いはございましょうが、それもございます。  そして今度は、私が言う前に向こうが言いますのは、結局公的負担率が欧米諸国より低いから貯金が多いのじゃないか、こういう議論です。確かに公的負担率は、ヨーロッパに比べますと大体一五%から二〇%国民負担率が違いますから、そこのところは今坂口さんのおっしゃった議論に結びつく議論でございまして、要するに高齢化社会が急激にやってきますものの、またほかの国よりもはるかに低いわけでございますから、したがって、そういういわゆる年金の掛金とかいうのが非常に高いわけでございます。向こうの場合は、これだけたくさん掛金払っているから、早く元だけは取らなければいかぬというので、いち早くリタイアして年金生活者になっていくという習慣が少しつき過ぎているのじゃないかなと、こういう感じがしないわけではございません。  だから、これは確かに御指摘のような問題もあろうかと思うのであります。要するに高齢化社会が完全に来ますと、若い人は貯蓄よりも、今のお年寄りを養うための賦課に当たる年金の掛金がふえできますので、どうしても個人貯蓄にはなかなか回らないという状態になってくるのじゃないか。また、そういう社会情勢の中ですと、年をとったときには、早く掛けただけは元を取らなければいかぬ、こういう気持ちもあるのじゃないかと思うのですが、これは向こうがよく言い出す公的負担率が欧米諸国よりはるかに低いのじゃないか。租税負担率ももちろん低うございますから、したがって日本減税しろなんという議論は出る環境にはないわけです、租税負担率全部みんなが持っておって議論するわけでございますから。  それからもう一つは、向こうが申しますのは、これは私もこっちから言わないようにしておりますのは、貯蓄優遇税制の問題を向こうは間々質問をしてまいります。およそ少額貯蓄の金利といえども所得であるから、税の対象になるべきものを税の対象にしていないというのは、逆に言えば補助金を出して貯金させておるという論理になりはしないか。それは私の方ではまた長々と、郵便局というものがあり、そして少額貯蓄を奨励したからこそこれだけの公債も出せているのですとかいうことを申しておるわけでありますが、多くの外国の人から、いかに少額たりとも、いわゆる資産から生み出す利潤が税の対象にならないということに対しては非常に不思議な感じを持って、間々質問を受けることがございます。  そんなようなところが私は貯蓄の多い理由ではないかと思いますが、今例示としておっしゃいました高齢化社会の仕組みは貯蓄率に反比例するとでも申しますか、それは私は論理として当たっているのじゃないかなと思うのです。  ただ、一つだけわからないことは、今度六十五歳以上の人の個人貯蓄を調べましたら、日本も意外と少ないのですね。はてなと思って、竹下論理ももう一つ踏み込んだ勉強をしてみなければいかぬなと、これは最近感じたことであります。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
  70. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 いろいろその中に貯蓄に関する議論の出ましたことを教えていただきましたが、そうしたことを踏まえていろいろ議論がされました暁において、日本がいろいろのことを説明して、特別ではないということを理解してくれれば、そういう意見というものもだんだん少なくなっていくのではないだろうかと思うのですが、どうも表面に出てまいります議論の要約だけを見ておりますと、そうした詳しい理解なしに、ぽんぽんと思いつくままに向こうが出してきているという感じを強く受けるわけでございます。話が細かくなってまいりましたけれども、そうした貿易不均衡の問題の行きつきますところは、さてそれじゃ日本の側として内需拡大をどのようにして進めていくかということに結びついてくるのだろうと思います。     〔委員長退席、熊谷委員長代理着席〕  この内需拡大につきましては、これはけさからも議論がございましたが、ひとつ減税をやろうじゃないかという議論もございますし、財政の歳出を増加させようじゃないか、それは税金との絡みの話もございますし、税金にできるだけ絡めずにできないだろうかという話もございます。あるいはまた、年金を初めといたします政策上の転換というものを図ることによって、できる限り内需を拡大をしようじゃないかという議論もあろうかと思います。これは、先ほど大臣お話しになりました、いわゆる欧米側から出されております、公的負担率が低いから貯蓄が高いのじゃないかという議論に一致してくるわけでありますが、そういう議論も、これは国内におきましても起こる可能性としてはやはりあるわけであります。  そうした減税あるいはまた歳出を増加させて、そして公共事業をふやそう、増税との絡みあるいはまた増税を抜きにして公債発行でやろうというような意見、新聞に出てまいりますのだけを拝見しておりましても、政府自民党の中でいろいろの方がいろいろのことをおっしゃっている。それがすべて本当かどうか、ちょっとよくわかりませんけれども、とにかくいろいろの意見が出ているということを我々はそこでかいま見ることができるわけでございます。竹下大蔵大臣も、非課税貯蓄の問題については、先ほどちょっと触れられましたが、もう一度見直そうというようなことをおっしゃったという意味のことが新聞に出たことがございます。  先日、非課税貯蓄の問題、この委員会で議論をされて通過をしたところでございまして、まだ実際それが軌道に乗ってない段階でございますが、さらにそうした見直しをしていこうという動きがあるのかどうか、分離低率課税と減税とを絡めようというような議論が起こっているのかどうか。一般質問でございますから、それこそひとつ率直な御意見をお伺いしたいと思います。
  71. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 いわゆる非課税貯蓄制度の適正化というような問題を現時点でまず申し上げますと、いろいろ議論してあの法律を通していただきまして、今回の税制改正においては、非課税貯蓄制度の適正化を図る観点から、本人確認制度の厳正化を中心に相当思い切った措置を講ずることとしておって、これらの諸措置の実施に伴い、郵貯やマル優の限度管理の適正化が図られることになるものと、今は期待をしておるわけです。  この間の、たしか先週の閣議で政令を決めてもらいまして、運転免許証、それからいわゆる住民票、いろいろな種類の分を、私も一つ一つ持ったことはございませんものですから、全部を――またいつでも資料としてお配りしてもいいのですが、全部コピーをしまして、ははあ、なるほどなと思って、それを見ながら勉強させてもらっているわけでございます。  ただ、この問題は税制調査会において、結論は今のようなことで法律をお願いしたわけですが、いろいろな議論がなされたわけでございます。したがいまして、その議論等をひもといてみますと、今後における利子・配当課税のあり方については、利子・配当所得の持つ特異性、金融の国際化、自由化の進展といった新たな状況を踏まえ、所得税制の見直しとの関連の中でさらに検討されるべき問題であると考えるということが、今日の時点で、この間法律を通してもらったばかりでございますから、最大公約数の私のお答えになることであろう。しかし、現実問題として、いわゆる低率分離課税とかいう問題もあれだけ議論になったわけでございますから、やはり特別措置である限りにおいては、将来検討の課題であるという状態は継続しておるというふうに理解をすべきである。  ただ、この間通していただいたばかりで、政令をこの間出したばかりで、来年の一月からでございますから、この段階でガラガラポンにしていわゆる積み上げ方を変えていきますというようなことは、もちろん時期尚早、そういうお答えをするのは今の段階で適当ではないのじゃないか。ただ、いろいろな議論があることは事実でございます。
  72. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 グリーンカードに始まりまして、グリーンカードが決定をされ、そしてそれがまた葬られまして、新しくまた今回のマル優制度の見直しの問題が出てまいりまして、通過をいたしました。通過をいたしまして、またさらにこの問題に新しい展開が起こる可能性があるのかなと、どうもいわく因縁つきの少額貯蓄問題だという気持ちを持ちながら、実は報道を見守っていたわけでございますが、それは大臣の口から、今また次のを考えておりますとは言えないことは、私も十分にわかっております。  しかし、今お話をお伺いいたしますと、今度の制度をつくったけれども、今回の制度というものが十分なものであるとは言いがたいところがあって、なおかつ今後のことについてはいろいろと検討はしているというお気持ちかな、多少表現上の誤りがあるかもしれませんけれども、そんなふうに聞かせていただいたわけでありますが、今回通過をいたしました、来年一月一日から実施に移されます方の政令あるいはその取り扱い、そうしたことで、今までよりも少し考え方を変えていこうとか、現在決まりましたこの法律の中での扱い方についての取り組みの違いというような形は、これから出てきますか。  この間法案審議のときにいろいろ出ましたような範囲を超えて、いろいろ社会情勢等から見まして、もう少し、具体的な取り扱いについては――もっと具体的に言わしていただきますと、今までの行き方を頭に描いていたのは、グリーンカードに対して、例えばそれは六〇なら六〇ぐらいの効果しかないだろうというような考え方。しかし、それではいけないので、もう少し的確にやって、これはグリーンカードとまではいかないけれども、その八割ぐらいまではいくように持っていかなければいけないのだというような考え方の違いだとか、その辺の変化と申しますか、また新しい法律を出すとかなんとかということではなくて、厳正な執行の中での問題というようなことで、変化があるのかどうか。新聞報道を見まして、今さらまた新しい制度というものを、来年一月一日から始まるというのに、来年また変えるというわけにはいかぬだろう。しかし、できないということになれば、何かに改革を加えようとすればそういうことでないのかなという気がするわけでありますが、いかがですか。
  73. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 まず、先週の閣議で決定いたしました限度管理をより適正化するための政令について、ちょうど主税局が来ておりますので簡単に御説明申し上げますと、さらに私どもはより適正化されることを期待をしておりますが、一つの具体的な御説明になると思いますので、わずかな時間それを説明させていただきます。
  74. 梅澤政府委員(梅澤節男)

    ○梅澤政府委員 本年度税制改正をお願いいたしまして、六十一年の一月一日から新しい方法で限度管理の適正化を行うわけでございますが、これに関する政令につきましては、ただいま大臣から御答弁がございましたように、先週公布をさせていただきました。実施は当然六十一年一月一日からでございますが、従来のやり方と比べまして本人確認を厳正にした点は、本人を確認をする場合の公的書類を限定列挙いたしまして、それで定められていない書類での本人確認はできない。しかも、その本人確認をする公的書類というのは、ポイントは従来と違いまして、公的機関が発行したものであって、しかも生年月日が明記されておる。これは国税庁から立案過程で非常に強い要請がございまして、生年月日が入っていることによって、御本人のアイデンティティーというものを確認する場合に大きな保証になるということでございます。  したがいまして、これでやらせていただくわけでございますけれども、立案あるいは法案審議の過程で私ども御説明申し上げましたように、名寄せのパーフェクトな管理という点からいえば、グリーンカードに比べましてこの制度というものは、公的書類が複数以上にわたっておりますので、なかなか難しい点もあるわけでございますけれども、少なくとも現状よりは相当本人確認は厳正になるということでございます。六十一年一月一日以降、施行の状況を見まして、さらに部分的な手直しということが将来あるいは起こり得るかも存じませんけれども、少なくとも今回の政令でもって。現状よりかなり限度管理は前進する。  ただ、制度論の問題のほかに、これは今国税庁、郵政省ともに六十年度予算化されておるわけでございますけれども、コンピューターシステムによる名寄せの技術的問題、これはかなり時間をかけて、やはり手法を開発し、執行面でそれがうまくやっていけるようにということでの研究、検討については、この成果が本当に出てまいりますまでもう少し時間をかしていただいて、その推移を見守る必要があると考えておるわけでございます。
  75. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 ありがとうございました。  ちょっと私の質問、細かく入り過ぎてしまいまして、内需拡大の基本から外れてしまいましたが、内需拡大に対してずばり大臣にお聞きしたいわけですが、これは減税によるのかそれとも財政歳出の増加によるのか。それも増税との絡みによるのか単独でいくのか。いろいろな行き方もあろうかと思いますが、内需拡大財政的方法としては何を優先されるのか、ひとつ大臣の御意見を簡単にお聞きをしておきたいと思います。
  76. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 非常に難しい問題でございます。一口に内需拡大といいましても、それがいわゆる対外経済対策の諮問委員会の方の角度にこたえる税制ということになりますと、減税というのは一つございます。しかし、対外政策上から見ますと、所得税のおおよそ三分の一に当たる五兆円を減税して輸入がふえるのはせいぜい七億ドルだという計算も、一応の前提を置いてしておるわけです。それからもう一つは、公共事業をふやすと三兆円で大体十三億ドルくらいかな。しかし、いずれにしても今財政当局で非常にこれに厳しく対応しなければならぬというのは、やはりいわばその財源が赤字公債であってはならぬ、こういうことだろうと思います。  ヨーロッパの皆さんが減税とおっしゃいますと、それだけ歳出を切る、極端に言うと福祉を切るという感じの物の言い方でございます。アメリカの場合は中立てございます、増減ゼロ。日本も増減ゼロみたいな形でとかく議論をいたしますから、その財源が赤字公債であったら、やはり一兆円の金は三兆七千億を六十年間にわたって子や孫やひ孫にツケを回すわけでございますから、これは耐えがたいことではないか。これが公共事業であったとしても、一兆円ですと四千五百億くらい三年間にわたって税収で一応は返ってまいりますが、結果として借金は借金としてやはり三兆七千億のツケを後世代に回すということになる。そうすると、いずれにしてもそういう財政出動が公債発行によって賄われるような手法はとるべきでないということになりますと、勢い民活。  民活といったって、ディレギュレーションといっても、ディレギュレーションするところはそう急にはないじゃないか。これは一生懸命やって、恐らく七月ころにそういうディレギュレーション、規制緩和のいろいろな手法が考えられるでありましょうし、そういうものを環境整備の公共事業、例えば都市再開発とか区画整理とか、そういうものとどういうふうにして組み合わせていくかというのがこれからの課題ではないかな、こういうふうに私は考えておるところでございます。
  77. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 時間が迫ってまいりましたので、もう一つだけお聞きしておきたいと思います。  先ほどの貿易不均衡のところで税制の問題を飛ばしましたが、貿易不均衡のもとをたどっていけば、それは例えば日本アメリカであれば日本アメリカの間の税制上の差である。日本税制アメリカ税制とそこに大きな差があるために、先ほど大臣の議論の中にもありましたけれども、これはその差によって生まれてきているものだという理論を述べられる方もあるわけであります。  一つは、これは先ほど大臣が述べられました、外国からも指摘のよくある日本の貯蓄優遇税制という、こちらからは言いたくはないけれども、しかしそういう言葉として言われることがあるわけであります。それからもう一つアメリカ側投資優遇税制という言葉もあるわけであります。  こうしたことを代表といたします日本並びにアメリカあるいはヨーロッパ、そうしたいろいろの税制をそのままにしておいて貿易不均衡というものの改革を進めることはでき得ない。これからサミットにおきましては、税制問題というのももう少し議論をすべきではないかという議論をされます学者もあるわけでございます。これは、私も率直に申しましてそうすべきだと言うほどの勉強もまだいたしておりませんし、これはすべきでないと言うこともまたでき得ない立場でありますが、各国間で税制問題というものを討議をして、そうしてお互いにそれぞれの国民の間の利害というものを失うことなしに、なおかつ協調できるものがあるのならば、それは結構なことではあろうかと思います。  しかし、大体税制というのは、それぞれの国の中の国民の利害と大きく結びついておりますから、非常に難しい問題ではあると思いますが、国際社会がだんだんと進展をしていった中で、財政経済はいろいろの協調はしていくけれども税制だけは今までのままで置いておいていいかどうかということにつきましては、なるほどその議論には耳を傾けなければならないかなという気持ちは、私も実はするわけでございます。この問題につきまして、ひとつ御意見をお伺いをいたしたいと思います。
  78. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 税制サミットをやったらどうだという先生の御意見もございます。ただ、私ども考えますことは、サミットの場、あるいは私どもとすれば先進十カ国蔵相会議、こういうものがございます。それからIMFの暫定委員会、こういうふうに七が十になり二十幾らになりと、いろいろな会合がございますけれども、今先進国で言っておりますのは、経済政策財政経済全体をできるだけ、コンバージェンスと言っておりますが、調和のとれたものをお互いがやろうじゃないか、その中のワン・オブ・ゼムとして税制も入るだろうと私は思います。だから、そういう議論は私どももたびたびしておるわけであります。  ただ、今日まことに違いますのは、ヨーロッパというのは、要するにEC型付加価値税ということでいつも論ぜられますように、間接税比率に非常にウエートの高い税制でございますし、日本アメリカと比べた場合には、貯蓄優遇税制日本にあって、米国は今度は投資減税等について多少優遇措置をやめるような傾向にあるそうでございますけれども、どっちかといえばそういう投資優遇税制みたいな形が多いという傾向の相違は私もあると思います。したがって、各国がいろいろな経験に対して議論をする中で、可能な限り自然にそれが調和のとれた税制になっていくということを模索することは大事だと思いますけれども、長い歴史に基づいてできた税制でございますから、かなりの相違をいきなり調和させるというのはなかなか難しい点があろうかと思っておりますが、お互いがそうした場で政策の調和、整合性という中で議論していくということは非常に大事なことだというふうに私も思っております。
  79. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 ありがとうございました。終わります。
  80. 熊谷委員長代理(熊谷弘)

    ○熊谷委員長代理 米沢隆君。
  81. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 御案内のとおり、今度のボンサミットは、我が国の記録的な貿易黒字に対する欧米諸国の批判が燃え盛る中で開催をされました。サミットの前には、日本が袋だたきになるのじゃないかというような大方の危惧にもかかわりませず、ニューラウンドとかSDIの論議が沸騰しまして、その陰に隠れて対日批判の声は一部を除いて何とか回避できたんじゃないかと思います。しかし、日本に対する名指し批判が回避されたその代償は決して安くないと言われておるのでございまして、そういう観点から、まず最初に大蔵大臣に三点だけお尋ねいたします。  今回のボンサミットをまずどのように総括されているのかというのが第一点。  第二点は、御承知のとおり、経済宣言が発表されております。その中には我が国の宿題のようなものが記載をされておりますが、この宣言の文章だけを見ましても、サミット段階でどういう議論がなされて、具体的に日本はどういう国際的な約束をしたのかというのが定かにわからない部分がございます。そういうところから、今度のボンサミットにおきまして、日本が国際的な約束としてどのようなものを負ってきたのか、ぜひ端的に説明してもらいたい、これが第二点でございます。  それから第三点は、そのような今度のボンサミットで背負ってきた約束を果たすために、我が国はこれから先どのような課題と取り組まねばならないのかという点についてお答えいただきたい。  以上三点、大蔵大臣にお尋ねをいたします。  また同時に、対外経済対策の元締めであります河本大臣には、今回のサミット経済宣言あるいは日本の負ってきた国際的な約束、こういうものをどのように受けとめていらっしゃるのか、同時に我が国のこれからの課題について、対外経済担当大臣としてどのように対処しようとされておるのか、大臣の所信をあわせてお伺いしたいと思います。
  82. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 まず第一にボンサミットの総括でございますが、要するに引き続き共通の「インフレなき持続的成長」のためということを基本戦略としていこうというウィリアムズバーグ、ロンドン・サミットに引き続いて、節度ある財政金融政策の継続、強化、市場機能の活性化、こういう中期的経済戦略が確認された、これが前提にかります。そうして各国がその基本的な枠組みの中で、私が自己批判とか自己評価とか言いましたが、おのおの自国の目指す政策分野を明らかにして、これに積極的に取り組むという姿勢を宣言の中でも示したということが、経済の面からいえばまず重要な意義であったと思うわけであります。日本がお約束と申しますか自己批判をしながら、自分のところに抱えている問題をこのように宣言に載っけたわけでございまして、これは国際的に果たす役割を明示したことでありますから、約束事と一言えば、私も言えると思います。  それについて申しますと、やはり財政面での規律、この問題は、日本も対GNP比とかそういうことからいえば、いわゆる財政赤字というのは単年残高等から見ますとアメリカを超すということになっておりますので、財政面での規律、そうして投資を促進していくための市場機能強化の政策の堅持、すなわちあらゆる規制というものをディレギュレートしていく、規制を解除していくということが必須であるという前提のもとに、日本政府金融市場の規制緩和と円の国際的役割の増進、そうして市場アクセスの改善、それから輸入増加の奨励において今後一層の努力をして、いろいろ言われております四百五十六億ドルの貿易収支等々について、我々がみずから指摘したことに対して約束を果たしていかなければならない課題だというのが、第二問に対するお答えでございます。  そして、それをどういうふうにしてやっていくか、こういうことになりますと、特に金融市場自由化、この問題は今できておりますプログラムを一層進めていくことに係るわけでございます。ただ、アメリカのみならず、ヨーロッパ全体に対して、よりこういうことを進めていかなければならないと思います。それから市場アクセスの改善と輸入増加の奨励という点につきましては、まさに四月の九日に決まりました経済対策の中のいわゆるアクションプログラムを可及的速やかに作成し、それが実効の上がるような措置を引き続き行って、結果を見ていただかなければならないという感じを持っておるところであります。
  83. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 サミット一つの大きな課題は、新ラウンドの問題だったと思います。新ラウンドがなぜ大きな問題であるかといいますと、これからも世界の自由貿易体制を守っていきながら世界貿易を大きく発展をさせていこう、こういう目標のもとにこの問題が大きな議論になったわけでございますが、フランスが時期を明示することに賛成をしなかったために、来年後半からのスタートということは正式の合意はございませんでしたけれども、しかしフランス自身も新ラウンドそのものに反対しておるわけではございませんで、近く高級事務レベル会議が開かれましてこれからの段取りを協議することになっておりますので、私は、日本アメリカの期待どおり来年の後半からこれが正式に聞かれまして、成功をおさめることを強く期待しておるわけでございます。  そういう流れの中にありまして、日本としてなすべきことは、去る四月九日に日本が正式に決定をいたしました一連の対外経済対策、これは御案内のように市場開放という問題だけではございませんで、対外経済摩擦を縮小するためには幾つかのことをやらなければならぬ、こういうことを決めておりますが、内需の拡大であるとか為替対策であるとか、あるいは産業協力、技術協力、ODA、こういう諸問題について前向きに対応するということを正式に決定いたしましたが、その作業を確実に進め、そして実効あらしめるということがこれからの課題であろう、こう思っております。
  84. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 今度の経済宣言の中身に関連して二、三質問したいと思うのでありますが、御案内のとおり日本の課題として、「財政面での規律及び、特に投資を促進して行くための市場機能強化の政策を堅持することが必須と考える。」こういうような文章がございます。一体これは何を意味するのかということでございますが、「財政面での規律」というのは行財政改革を一層推進するということでございましょう。また投資促進政策という点に関しては、投資促進を中心内需拡大経済政策の転換を求めたものではないかな。大蔵大臣の御答弁では、ディレギュレーションを通じて投資あたりが活発になるような措置をするという、非常に限定された解釈で今お述べになりましたけれども、この文章を、皆さんが参加されて書かれたのですから、そうだったと言われればどうしようもありませんが、私は、内需拡大のために投資促進というものをてこにして、できれば経済政策を転換することを求めたというふうに理解をすべきだな、こう思うのでございますが、その点はどういう解釈なんでございましょうか、大蔵大臣にお答えいただきたいと思います。
  85. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 この問題につきましては、今御指摘なさいましたように、一つには行財政改革を推進することによってより小さな政府をつくって、そうして民間部門の信認を確保していくということでございます。この点は日本から言い出しますと、公務員あるいは国家機関に対する準公務員でございますか、そういう者は対人口比率からいえば先進国の中で日本が一番低いわけでございますから、まだやるのかというような顔でございましたけれども、これはどこへ行っても、行財政改革を推進してより小さな政府をつくって民間部門の信認を確保するということは通る話だと思います。  それから二番目の問題につきましては、あらゆる投資についてのいわば障害を除去しなければならぬ。参加国共通の戦略として「成長への障害を除去し、」「我々の国民の創造的エネルギーを解き放つべく独創性及び進取の気性の喚起を図る」、これが一応あるわけでございます。したがって、市場原理を基本とする我が国経済が今後ともインフレのない内需中心の成長を持続していくためには、規制緩和民間活力の活用によっての環境整備を図っていくということが、内需振興の大きな柱であるというふうに私は理解をいたしておるところであります。
  86. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 またその点は後で議論をすることにいたしまして、次は、この経済宣言の中には、先ほど大蔵大臣の御答弁にありましたように、「インフレなき持続的成長」及び雇用の拡大を維持するために、各国がそれぞれ責任と役割を分担することになっておりますが、この目的を達成する上で重要なかぎを握るのは、これはもうだれに言わしてもそう言うはずでございますが、アメリカの高金利、ドル高の是正であろうと思われます。しかし経済宣言では、アメリカの役割として「相当額の公共支出の削減を達成し、もって財政赤字の大幅な削減を達成することが重要である」として、間接的には高金利、ドル高是正につながるような問題の指摘はありましたけれども、具体的に高金利、ドル高是正について直接的な言及がなされていない。そういう意味で、貿易収支の不均衡の拡大している原因でもあります高金利、ドル高という問題に対して、一体サミットではどういう議論がなされたのか、そしてどのような約束が取りつけられたのか、その点について具体的にちょっと御説明賜りたいと思います。
  87. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 まず各国共通の原則として、金利の低下等のための節度ある、また必要な場合においてはさらに毅然たる金融財政政策の実施について合意したということが一つございます。したがって、今度アメリカの優先政策の中に、こういうことになりまして高金利、ドル高の背景となっておるのは、財政赤字についてその大幅な削減を達成することが重要であるということを宣言で述べたわけであります。したがって、そのことはアメリカ自身が承知してまず書くわけでございますから、私は、間接的表現とは必ずしも言えない、面接的表現であると思います。  ただ、では為替レートの問題になりますと、それは時に私も「神のみぞ知る」というような言葉を使いますように、実際問題金利が下がりましても、さればすぐ連動してはそれが相場になかなか響きません。それで基本的には経済のいわゆるファンダメンタルズによって動くとはいえ、そのファンダメンタルズから見れば、アメリカの今日のファンダメンタルズは必ずしもいいことばかりじゃない。にもかかわらずドルが強いというのは、いわゆるストロング・アメリカと申しましょうか、アメリカ全体の経済も、またその他を含めた国力に対する信認も、それは確かにあろうかというふうに思います。     〔熊谷委員長代理退席、堀之内委員長代理着席〕  したがって、財政赤字ということは一つのポイントでございますが、いま一つの国際通貨のあり方ということにつきましては、結局、ウィリアムズバーグ・サミット以来議論をしております――議論の場は十カ国蔵相会議でございますが、結論が出ておりません。言ってみれば、現在出ておることを簡単に申し上げますと、変動相場制にかわるべき直ちの具体策は見当たらない。しかし、確かに問題があることはわかる。したがって、折に触れ協調会議をしようというところまでが今日までの最大公約数になっておるわけでありますが、この六月の二十一日に東京で十カ国蔵相会議を開いて、よしんば中間報告であろうとまとめ、そしてそれを十月にソウルで行われますIMFの暫定委員会の中へ持ち込むということだけは私どもの合意になっておるわけでありますが、通貨制度だけでドル高を是正するという決め手を議論しておるわけではございません。
  88. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 確かに財政赤字というものがドル高、高金利の背景にあることは事実でございます。しかしながらこの経済宣言では、アメリカ側の表現として財政赤字を縮小するということが記載されることになっておりますが、結局、高金利、ドル高是正というものに対して財政赤字は縮小しようということを書いてくれた、しかしドル高、高金利というものに対してもっと腰を入れて是正しようという、そのあたりの気持ちがこの経済宣言にあらわれてないというのが私は非常に問題だと思うのですね。  それで大蔵大臣にお聞きしたいのは、このような表現の仕方で帰ってこられたわけでございますが、結局そういう響き方そのものによって、これからドル高あたりが本当に是正されるような方向に行くというふうに確信されておるのかどうか、そのあたりを僕は聞きたいと思うのです。いかがですか。
  89. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 これは今日の財政赤字というものが、需要と供給とのバランスからいたしましていわゆる市場金利をつり上がておるということになることは事実であると思っておるわけであります。だからこそ、日本から流出する資金というものが、ある意味において金利を抑制しておるのじゃないかという議論をする人もあるわけでございます。したがって、財政赤字の削減が金利の低下につながれば、世界じゅうの金がドルの信認だけを選んで動くわけじゃございませんから、私は、それはドルの独歩高を是正する要因になるであろうというふうに思っております。  ただ、為替相場というのは、確かに短期的には金利が一番効きます。が、中長期的に見ますとやはり全体の国力というようなもの、経済の諸指標はもとよりでありますが、したがって決め手がないということは事実であります。  ただ、私どもがいつも思いますのは、かつて百八十何円になったこともございますし、私も最初大蔵大臣に就任したときに二百四十二円、やめたときは二百十九円二十五銭でございました。ああよかったなと自分で思ったわけですが、されば私が何をしたから円高になったのかという分析は、よく通貨会議で言われます「神のみぞ知る」、こういう感じになりがちなものでございますので、結局中長期的には我が国の経済の諸指標というものがより一層健全化することによって、結果としての円高というものを期待しなければならぬし、またそれになり得る可能性は十分に持っておる日本経済ではないかな、こういうように考えます。対ドルの問題を別にすれば、対ヨーロッパ通貨に対しては皆強いわけでございますから、そういう感じを持って毎日為替レートを見ながら一喜一憂しておるのが現状でございます。
  90. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 現在の対日批判を鎮静化させるためには、我が国の市場開放が不可欠であることは言うまでもありませんが、対米黒字の決め手は、何といいましてもアメリカ景気が一体どうなるのかという問題と、やはりドル相場にあると思います。その意味で、今後あらゆる機会にアメリカの高金利、ドル高是正について発言を強めていただきたいということを要請しておきたいと思います。  ところで、ボンサミットに前後いたしまして、アメリカのシュルツ国務長官やボルカー連邦準備制度理事会議長らを中心にしまして、日本は膨大な貯蓄をもっと投資と消費に振り向けるよう内需を拡大すべきだという声があるわけでありますが、大蔵大臣、そして河本大臣、このような指摘に対してどういうような見解を持たれるか、ちょっと御見解を聞かせてもらいたいと思います。
  91. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 一番最初ボルカーさんから始まりまして、ボルカーさんはかねてからの、やや持論でございます。いつもおっしゃるのは、日本は貯蓄過剰とも言えるであろうが、ある意味において投資不足ではないか、こういう議論はいつもなさる一つの議論であります。  それからシュルツさんは、あの人が大学で講演されたのをつまびらかにしてみますと、あれはいわゆる原則的にそれだけの貯蓄は、もちろん貯蓄が悪いとはおっしゃっておりませんが、可能な限り投資に振り向けるべきだという基本的な考え方を申されておるというふうに認識いたしております。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕  その後、今度はまたベーカーさんの演説がございましたが、ベーカーさんの演説も非常に原則的な基調を述べておられるということであろうかと思っております。  私自身といたしましても、日本の貯蓄がよりいわば投資に回るような環境は大いにつくるべきものであるという理解は持っておるつもりでございます。ただ、私がいつも申しますのは、その貯蓄を国債という名で国が借り上げて、これでもって投資をするということに対しては、後世代の納税者ヘツケを回す結果になりかねないことであるので、この点はおのずから節度を持って考えなければならぬということを申し上げておるわけであります。したがって、私は、おっしゃっている論理が大変に間違っておるというふうには思っておりません。
  92. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 今大蔵大臣もちょっとお触れになりましたが、日本経済を簡単に申しますと、貯蓄過剰の投資不足、こういうことになろうかと思います。そこで、それじゃ投資とは何ぞやといいますと、それは社会資本投資民間設備投資だ、あるいはまた住宅投資だと思いますが、貯蓄過剰と言われておるこの状態を今申し上げました投資の方向に向けるということは、やはり当面の日本一つの大きな課題であろうと思います。
  93. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 その議論も後で具体的にお尋ねしますが、ボンサミットで我が国が約束しましたのは、要約するならば、一つ金融市場の規制緩和、円の国際的な役割を増進するということ、第二に保護貿易主義の台頭を抑えるためになお一層の市場開放努力をするということ、第三に貿易収支、五十九年度だけでも四百五十六億ドルの黒字という問題が対日批判の最大の要因でございますから、これから輸入増を図り黒字減らしを図るということ、この三点が今度の約束事ではなかったか、こう思います。  そういう意味からお尋ねをしたいのでありますが、一つ政府の規制解除、ディレギュレーションのうち、とりわけ金融市場の規制解除について、どういうふうな先行きの計画があるのかという点でございます。我が国も自由化の意図を表明はいたしておりますが、政府の短期証券や金融商品の預金金利を初め、短期金利の自由化スケジュールがどうも定かでない。成り行きに任せるというのか、それとも政府として意図してそのようなスケジュールをある程度つくり、実施する方向を示そうと思っていらっしゃるのかどうか、その点について大蔵大臣見解を聞かしていただきたいと思います。
  94. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 いわゆる金融の自由化、国際化の問題につきましては「展望と指針」というものを既に公表しておるわけでございます。この問題につきましては、確かに最初はアメリカ日本との間で持ち上がった問題でございます。したがって、日米間の広範な議論を踏まえまして円ドル委員会報告書ができました。これは今のところプログラムどおりに実行をいたしておりますので、米国初め諸外国からもそれなりの評価をいただいております。少しおくれて、三大市場というとロンドン市場とニューヨーク市場と東京市場でございますから、ロンドン市場とのこの問題からいたしまして、日英との金融協議は先般サミットの翌々日にも行って今日に来ておりますので、EC全体とも行いましたし、近くまた西ドイツ、フランスとも行う。したがって、この点は着実にこのプログラムどおりに実行されておる。  そこで、具体的に何をやったかということになりますと、ことしに入ってからやりましたのが、四月初頭までに市場金利連動型預金、いわゆるMMC、それからCD、譲渡性預金の発行条件の一層の緩和、円建てBA市場の創設、それから債券先物市場の開設についてその具体化を進めますとともに、業際問題でございます。最初は国債の窓販、ディーリングをどうするかこうするかというところから議論していったわけでございますが、現行の法律の範囲内においてやれるだけの業際問題についての規制の緩和を今日までやってきておりますので、これはこれからも着実に進めていかなければならぬと思います。  そこで、今おっしゃいましたように、預金金利については、自由金利商品の拡充を含め漸次大口預金金利の規制緩和、撤廃を進めておりますが、さて引き続き小口預金金利自由化の検討を行うということは示しておるわけでありますが、何年後に行うかということは、率直に育って示しておりません。これは、方向は示しておりますものの、何分日本には郵便局という偉大なる歴史を持った金融機関も存在いたしておりますので、この問題についてはいつをめどにというところまでは行っておりません。したがって、金融市場の規制緩和、自由化を進めますと、どうしても預金の保険制度の拡充と、それから信用秩序の動揺を防がなければなりませんので、今までもあります預金保険制度などの充実というものも一方で行いながらやっていかなければならぬという問題がございますだけに、何分各国とも金融制度の歴史が違いますから、これは一足飛びに小口預金の金利の自由化はあと二年後にやりますというような環境には今日ない、ということは率直に申し上げるべきであろうと思います。
  95. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 次は河本大臣にお尋ねしますが、問題の第二は市場開放努力の問題でございます。  今のところ、四月九日に対外経済対策を発表され、七月には市場開放のための行動計画をつくるということになっておりますので、一応市場開放努力についてはタイムスケジュールに乗っておると言ってもいいとは思いますが、しかし七月に出される行動計画の中身が具体的に黒字減らしにつながるようなものになるのかどうか、それが大変大きな問題だろうと思います。この前発表されました対外経済対策をどう見ましても、もしあれをすべて実施したとしても、現在のような三百六十億ドルを超えるような経常収支黒字が大幅に削減されるような可能性はない、こう言わざるを得ないのでございまして、そういう意味では、七月の行動計画をつくられると同時に、やはりこれからの大きな問題でありましょう内需拡大策を、一体どこまで腰を入れて政府としてやるのか、そのことが問われてくるのじゃないかな、そう思うのです。  その点について河本大臣の御見解を聞きたいと思いますし、同時に、七月の行動計画が発表される段階で具体的な内需対策を一緒に発表することが、やはり黒字減らしのためにも、あるいは今後東京ラウンドを早くやっていきたいという意思を多くの皆さん方に伝えるためにも、最も大事な問題ではないかな、こう思うのでございますが、この二点について河本大臣の御見解を聞かしてもらいたいと思います。
  96. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 市場開放対策は、四月九日に緊急対策を決めまして、六月に発展途上国向けの関税問題の処理をすることになっております。そして中期的な当面する貿易の課題全部を、数項目にわたりまして行動計画で大枠を決めまして、順次これを実行に移していくというのが、これまでの政府の決めましたスケジュールでございます。  ただ、御案内のように、四月九日には諮問委員会の数項目にわたる答申市場開放計画のほかに、今御指摘の内需拡大も含めて数項目の対応策を決めておりますが、私は、その中でも特に重大なのがやはり為替対策とそれから内需拡大対策だ、こう思っております。一連の市場開放対策はあくまで中期的な課題でございまして、この問題の方向を明らかにすることによって一挙に貿易が拡大均衡の方向に改善される、こういうものではないと思います。やはり何といたしましても内需の拡大と為替問題がある程度解決をいたしませんとなかなか貿易摩擦は改善されない、こう思います。  そこで、今のお話内需拡大策を七月に同時にやったらどうかということでございますが、内需拡大策につきましては、さしあたって諮問委員会から四項目を示されておりまして、政府もその方針でやります、こういう約束をいたしておりますが、その中身が、一つ内需拡大ができるような税制の改革をしなさい、こういうことでございますから、これはなかなか間に合いかねる、こう思います。やはり政府の税調、党の税調等の作業が進みませんと結論はなかなか出にくい、こう思っております。  それから、社会資本投資民間資金導入できるような、そういう対応策を考えなさい、こういうことでございますが、これもなかなか、若干の財政問題等も絡んでまいりますので、七月に方向は明らかにできても、具体的にこれを決めることは難しい、こう思います。  それから規制緩和につきましては、七月の末に行革審から具体的な対応が答申されますが、その具体的な対応が答申されまして、さて政府がそれをどう取り扱うかということはそれからの問題でございますので、これも七月に決めることは大変難しい。  それから労働時間の短縮、週休二日制という問題も内需拡大一つの柱として言われておりますが、これも、その方向でやりますということは決めたのでございますが、七月に具体的な内容をすべて決めてしまうということは難しい、こう思っております。ただしかし、内需拡大という問題は貿易の問題と表裏一体の関係にございますので、できるだけ早くこの具体的な効果が上がるような、そういう結論を出さなければならぬ、このように考えてはおりますし、今御指摘のように早いにこしたことはございませんけれども、七月に全部を明らかにするということはやや困難がある、このように思います。
  97. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 この黒字減らしとか輸入増対策の問題は、言うべくして非常に難しいと思うのですね。現に輸出の自主規制が鉄鋼とか自動車でなされておりますが、それをすべてに広げるのも大変おかしい話だし、あるいは輸出税の新設をしたらどうかという話もありますが、これも言うべくして難しい。そういう意味では、今我々が問われておるのは、輸入拡大のためにどういう内需拡大策があるのかという、そのあたりを詰めねばならないと思うのですね。ところが、今河本大臣がおっしゃいましたように、税制改革にしても、社会資本に対する民間資金導入にしましても、規制緩和にしても、労働時間の問題にしましても、すべてこれから先の話だ。しかし、一体こういう状況で流れていって、来年は東京サミットですね、それまでに具体的に黒字減らしがなされ、あるいは具体的に輸入増がなされた、あるいは収支がある程度黒字が減ってきた、そういう実績を問われておるこの段階において、すべてが今から先の話だという議論では、まさに東京サミットは、東京において対日批判が逆に集中してくるのじゃないかなと、こういう危惧さえ持つのでございます。そういう意味で、少なくとも年内に何か輸入増につながるような内需拡大策を的確にとらない限り、大変な事態になるのではないかなということを私は危惧いたします。そう悠長なことを言っておられぬような事態ではないかな、こう思うのでございます。  対外経済対策を発表された後、河本大臣政府・与党首脳会議で、四分野の市場開放対策だけではアメリカの対日批判はおさまるとは思えない、この際財政主導の思い切った内需拡大策に取り組むべきだ、こういう発言があったと新聞には報道されておりますが、そのあたりの財政主導というのも非常に厳しい状況でありますから、そう簡単にはいきませんが、政府がおっしゃるようなディレギュレーションあたりでも、ある程度財政の呼び水みたいなものがないと具体的な内需拡大にはつながらない。そういう観点から、今河本さんがおっしゃったような内容の具体的な内需拡大策、そのための所得税減税あるいは政策減税等をもっと具体的につまびらかに、私はもう発表されていいころではないかなと、そう思うのでございますが、河本大画、大蔵大臣、両大臣の御見解を聞かしてもらいたいと思います。
  98. 河本(敏)国務大臣(河本敏夫)

    河本(敏)国務大臣 私が先ほどスケジュールについて若干申し上げましたが、一刻も早く決まる方がいいと思いますが、ただ政府が決めました四項目は、財政税制関係する分野が相当ございますので、そうなりますと予算編成、税制改革とも絡んでまいりますので、年内いっぱいはかかるのではないか、このように思います。ただ、七月の行動計画貿易政策に関するすべての問題を含んでおります。そして、これとてもすぐに七月に全部実行するということではございませんで、実行する方向を明らかにして順次実行に移す、こういうことでございますが、その基本方針を明らかにすれば、海外からのある程度の評価は得られるのではないか、私はこう思っております。
  99. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 これは、大蔵省は大蔵省で、事務次官を長といたしますところの、このアクションプログラムを作成するための委員会をつくっております。各省とも、本当に自分の所管の問題で少しでもそれが輸入拡大に、すなわち黒字減らしにも役立つような問題に対しての衆知を集めなければならない課題ではなかろうか。ほかの税制の問題あるいは財政出動の問題等につきましては、河本大臣が言われましたように、方向を示すことはできても、現実問題として税調等々の作業等もございますので、それを具体化することには至らないのではなかろうかというふうに考えます。
  100. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 もう時間がなくて大変残念でございますが、この前もサミットの場で中曽根総理が、日本も三十数年ぶりに税制改革をやる、そのことはイコール内需拡大に資するものだという発言をなさった、こういうふうに伝えられておりますが、そういう意味では、例えば来年東京サミットですね。ボンサミット発言された内容は、まさに税制改革が内需拡大に資するというくだりでございますから、東京サミットが開催されるまでに、今問題になっております所得税減税政策減税、労働時間等々ある程度、少なくとも来年の東京サミットが行われる前にすべて決着をし実施されているという姿が、いわゆる国際約束を守る道理だ、私はこう思うのでございますが、その点はいかがですか。
  101. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 中曽根総理が発言されましたのは、我々の大蔵大臣会議でもございましたが、各国が、自分のところが今取り組まんとしておる税制についての考え方をお互いに申し述べたわけであります。ヨーロッパは、どちらかといえば減税し、その分は歳出をカットする。アメリカ日本がどちらかといいますならば、いわば中立的な税制改正ということであります。アメリカの場合はフラット税制というようなことでありますが、日本の場合は、いつも中曽根総理が答弁しておりますように、公平、公正、簡素、選択そしていわゆる活力という点が、内需拡大ということに直接つながる表現であろうというふうに考えております。  これらの問題につきましては、いま一つは党対党の問題がございますが、これはしばらくおくといたしまして、可能な限りその結論が出るような努力は続けていかなければならぬと思っております。
  102. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 特に所得税減税ですね。これは、来年の予算の概算要求等が七月に始まりますよね。それまでに少なくとも結論を出すということじゃないと問題じゃないかと思うのですが、最後にその点いかがですか。
  103. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 これは国会の議論をまとめて正確に税調にお伝えしてということになりますと、概算要求時点においてまとまることは私は困難だというふうに思います。一方、党対党のお約束の中においても、今年度中に結論を得る、こういうことを申されておりますので、そこらとの調整をしながら話を進めていかなければならぬ課題ではなかろうか、概算要求のときに税制大綱ができておるというのはちょっと難しいことだと思います。加藤税制調査会長がうなずいております。
  104. 米沢委員(米沢隆)

    ○米沢委員 このごろ大蔵大臣答弁を聞いておりますと、みんな政府税調任せですね。もっと腰を入れて、我々で何を考えるというぐらいのことをおっしゃったらどうですか。  以上です。
  105. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 正森成二君。
  106. 正森委員(正森成二)

    ○正森委員 主としてボンサミットに関連して若干聞かしていただきます。  既に同僚委員がいろいろ伺いましたので、なるべく重複しないように伺いますが、ボン経済宣言を見させていただきますと、第五項のところに、「我々は次のことを行うことに合意した。」という項目がありまして、その中に「我々各国は夫々財政赤字が過大な場合にはこれを削減し、また、必要な場合には国民総生産に占める公共支出の割合を低減させるため、公共支出に対する確固たる管理を行う。」こう書いてあります。その後で、第六項で「我々は夫々の優先的な政策分野を示した。」というようにして、各国が優先的になすべきことが書かれております。  それを見ますと、例えばアメリカの場合には「迅速かつ相当額の公共支出の削減を達成し、もって財政赤字の大幅な削減を達成することが重要であると考える。」フランスその他も同様でございまして、例えばイタリアの場合は「公共財政赤字の一層の削減に優先度を置く。」とか、カナダの場合にも「財政赤字の低減並びに政府支出の抑制に焦点をあてる。」とか、あるいはイギリス、ドイツでも同様のことが書かれております。  日本のを見てみますと、日本だけはそういう財政赤字の大幅な削減とかいうようなことが書かれていないのですね。国内では、六十五年度までに赤字国債依存体質脱却とかあるいは財政再建を最優先させると言っておりますが、このボン経済宣言の全文を読む限りは、日本においては財政赤字の削減というのはそれほどの関心事ではなく、先ほど同僚委員も触れましたが、「財政面での規律」という表現でさらりと過ごされておりまして、それよりはむしろ投資を促進するとかあるいは金融市場の規制緩和とか、そういうもろもろの方に優先度があるように、これは率直に言って読めるわけであります。これは何かお考えがあってわざわざこういう表現になさり、対外的には財政赤字の削減ということを、日本政府は優先的に考えておらないのであるということを表明なさったものでしょうか、承りたいと思います。
  107. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 今の問題、まず全体として、いわゆる「国民総生産に占める公共支出の割合を低減させるため、公共支出に対する確固たる管理を行う。」というのが「成長及び雇用」の五項のところに書いてあるわけでございますので、これは全体に共通することであるという考え方がございました。  それからもう一つは、お互いがいろいろな相互監視と言うとちょっと言葉が悪うございますが、特にサーべーランスと言いますと、何かサーベルをつって来るような印象を受けますが、確かに相互監視のような批判会を行います。そうすると、日本に集中するのは、むしろそれは黒字問題であることは事実であります。黒字がけしからぬとは申しません。貯蓄率が高いのがけしからぬとは申しませんけれども、これが大きな問題の一つだという指摘はあります。  と同時に、財政赤字の説明をいたしますと、六十五年に何とか脱却したいんだ、そしてあとは残高を減らしたいんだ、これがいわば節度の問題であって、同時に、租税負担率が一緒に議論されますと、日本財政赤字は租税負担率が低いから出るんじゃないかという、相手がそういう印象を持ちがちな傾向がございますので、各国が財政支出というものを厳しく管理するということが全体に書かれてありますから、中身においては、日本に対して最も要請されておる貿易黒字の問題等についてのものがより適切ではないかと思って、そのような宣言に結果としてなった。私一人でやったわけじゃございません、各国が寄ってそういうことになった。  それから、ヨーロッパの側は、問題にならぬと言うと表現がおかしゅうございますが、高失業率がございますから、そういう形のものにトーンが大体一緒になってくる。アメリカは高金利、ドル高というものがございますから、その元凶は財政赤字だというところにやってくるという流れであったと思います。
  108. 正森委員(正森成二)

    ○正森委員 今御説明を伺って、流れというかお気持ちはわかりました。しかし、この宣言文を読んでみますと、第五項の共通の部分は、「我々各国は夫々財政赤字が過大な場合にはこれを削減し、また、必要な場合には」ということで、過大ではないと思っておる国あるいは必ずしも必要に思っていない国は、一般的な考え方にも拘束されないかのように受け取れるわけですね、無条件では言ってないわけですから。ですから、私どもとしては、国内で財政赤字あるいは財政再建ということを非常に優先されて御発言になっている大蔵大臣としては、ややトーンが変わったのではないか。特に、黒字減らしのために財政支出を過大に――過大にといいますか、ふやせという議論が出てきている中ですから、先ほどの委員からの質問にもあったように、意味ありげにとらざるを得ないということで伺ったわけであります。  そこで、細かい点について若干伺いたいと思いますが、この中で「金融市場の規制緩和、円の国際的役割の増進」という文言がございます。これが何を意味するかということで先ほどからも御質問がございましたが、具体的に伺いますと、五月十六日の日経に「財投金利、市場連動型に」ということが載っております。これは預託金利と同じ利率で貸し付ける、これが七・一%でありますが、これを硬直化しておると、政府金融機関の基準貸出金利が市場金利に連動しているために、原資の財投金利の高どまりで利ざやが縮小して赤字体質になるとか、いろいろな問題があるので市場連動型にするというような記事が出ております。  時間の関係で申しますと、さらに五月の初めのある新聞でありますが、ベーカー米財務長官日本側にやってきて、日本の貯蓄を国内投資にもっと多く振り向ける一つの手段として金利自由化ということに関心を持っておりまして、特に「金利自由化が必要な分野として、いまは事実上の日銀引き受けになっている政府短期証券(TB)などの短期金利を挙げたという。」云々という記事があります。つまり、金利自由化を急げという一つのターゲットとしてTBを挙げているというようなことも出ております。  そこで、金融市場の規制緩和、円の国際的役割の増進という一般的な問題と同時に、私が今挙げました具体的な二点について、お考えがございましたら御答弁願いたいと思います。
  109. 宮本政府委員(宮本保孝)

    ○宮本政府委員 預託金利につきましては、今先生御指摘のとおりでございます。預託金利が預貯金金利に連動して動いておるものですから、硬直的に今七・一%に高どまりしております。一方で長期金利というのが自由に動き始めておりますので、まず国債の金利がどんどん下がり始める。そうしますと、仮に運用部が七・一で預かりまして国債を持ちますと、運用部自体が非常に赤字になってしまうという問題がございます。それから、政府関係金融機関でも、長期のプライムレートが下がっておるものですから、運用部から七・一で借りまして下がった長期プライムで貸しますと非常に利ざやが少なくなりまして、そこでそっちに赤が出るというようなことでございますので、やはりどうしても長期金利体系の一環として考えなくてはいけない面もある、実は預託金利がそういう性格を持っているものですから。  したがいまして、長期金利が動き始めておる段階で、長期金利的な性格を持っている預託金利をそのままにしておきますと、どうしてもいびつな面が出てまいりますので、私どもといたしましては、この預託金利につきまして、できるだけ早い時期に、預託をしてきておられる郵政省とか厚生省、こういうところとも相談をいたしまして、自由に動く長期金利体系の一環の中で預託金利というものを変えていってもらえないだろうかということを相談し始めたい、こういうことを考えておるところでございます。  それからTB金利でございますけれども、TBといいますのは、いわゆる歳入債と違いまして国庫の資金繰りをつけるものでございます。ところが、国庫の資金繰りといいますのは、一時に非常に巨額の資金を調達したりあるいは繰り上げ償還したりということがでざいますので、一度にどっと出たりするものですから、どうしても市場を混乱させる可能性があります。これを円滑に行いますためには、したがいまして今のところは定率公募をいたしますけれども、残額を日銀引き受けでやってもらっておる状況でございます。ところがその金利は、日銀が一般の金融機関に貸し出す公定歩合、これと、国が日銀から借りるわけでございまして、市中銀行が借りるよりは国が借りる方が信用力があるわけでございますから、やはり金利が低くてもいいんじゃないかという財政負担の見地もあるわけでございます。そういうこともございまして、現在のところやや公定歩合を下回る金利でもって、日銀に引き受けてもらっているという状況でございます。  ただ、今申し上げましたように、国庫の資金繰りでございますから、これはどうしても今の方法が今の段階で私どもとしては最もふさわしいやり方ではないかなということを考えておりますので、今のところそういう方法を変えていこうというつもりはございませんけれども、ただ今後、期近債がふえてまいりますとかあるいは短期国債が出てまいりますと、だんだん短期の国債市場が形成されるようになってまいります。そういたしました場合には、その段階で短期の国庫の資金繰りのあり方についてもやはり検討していかなければならないと思いますので、そのような段階になりますれば、その検討の一環といたしまして、TBについても検討していくということだと思いますが、もう少し時期が欲しいという状況でございます。
  110. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 今理財局長からお答えがあったとおりでございますが、後半の部分につきまして、正森先生おっしゃるのは、人によって今のTBを、それによって短期金融市場ができるじゃないか、それをつくって、どうせおまえのところはこれから短期国債なんかも出すわけだからという議論があることも十分承知しておりますが、現状においては、資金繰りということになりますと、例えばことしのように法律の成立が、この間通過させていただきましたが、おくれますと、それをいろいろな形で政府が可能な限り早目に、少し割り増しした交付税を出したりしますと、TBで調達しなければいかぬというようなことを考えますと、資金繰りは幸い今のままの方がいいのじゃないか。  しかし、今のような議論もあるわけですから、今理財局長からお答えいたしましたように、今度この法律を通していただきますと短期国債が出るわけですから、それがどういうふうな市場を形成していくかというようなことをよく見ながら勉強していかなければならぬ課題じゃないかなと思っております。
  111. 正森委員(正森成二)

    ○正森委員 サミットで同じように、内需拡大との絡みで、総理が税制の抜本的見直しということを言われました。これについては、参議院の補助金一括法案の総理質問等で、相当御質疑があったというように承っております。  それを前提にして伺いたいと思いますが、先ほど、坂口委員でございましたか、同僚委員お話しになりましたが、大蔵大臣自身も、同志の集われた会合で相当気楽に物をおっしゃったのかもしれませんが、こう言っておられるのですね。   「サミット参加国は日本の貯蓄率が高いのは租税負担率が低いからだと見ており、日本にもっと減税しろという議論はなかった」と語り、自民党内に減税による内需拡大で高貯蓄率批判をかわすべきなどの考えが出ていることに批判的な見解を表明した。   また「日本の利子優遇税制は、本来課税すべきところをしないのだから、政府が補助金を出して貯蓄奨励しているのと同じだ、との批判があった」とマル優などの利子優遇税制見直しに意欲をみせた。 こういう表現になっております。  これは、出所を申しますと五月十六日の毎日新聞の夕刊でございますから、必ずしも蔵相の真意を報道されておるのかどうかわかりませんが、こういうことが出ておりますので、サミットの議論を踏まえて、大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
  112. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 まず、総理から税制改正についてのお話がありましたのは、私どもが同じく大蔵大臣会議で絶えず話しますように、今おまえさんのところの国は税をどう考えているか、こういうことで、そうすると、アメリカでは例のフラット税制の話が出ます。しかし、これは申立てございます。やはり増減税ゼロという感じでございます。この問題で優遇措置を仮に残せと言えば、じゃこの問題をどうするかというような形で中立的に進めていく。ヨーロッパは、概して租税負担率というよりは国民負担率が高いから、したがって、減税してそれだけ歳出を削減していくという考え方が強うございます。我が国の方は、総理が申し述べておりますように、シャウプ以来これだけ過ぎ去ったから、公平、公正、簡素、選択、活力ということで今これからやろうと思う、その中の活力という点が内需という点につながって理解されておるのじゃないかというふうに思います。  それから、私が帰りまして、総理の本会議でのサミット報告があるまでは、私は軽々に自分で勝手な話をしちゃいかぬと思っておりましたが、それが済んだものですから、会合で話をしてくれということがございましたときに、きょう一般質問でございますからという前提を置いてお話ししましたように、ちょうど私とある国の大蔵大臣と話しておりましたときに、私がとうとうとして貯蓄率の高いことはいいことだという話をしたら、向こうが、租税負担率が低いからじゃないですかとか、そしてもう一つは、優遇税制があるんじゃないですかという指摘があった。しかし、これには私なりのお答えはしておいたというお話をしまして、特に租税負担率を、だから上げるべきだ、あるいは利子優遇税制を、だから廃止すべきだというような前提の考えを持って講演をしたわけじゃございません。きょうお話ししたと同じような、平たい気持ちでお話をいたしました。
  113. 正森委員(正森成二)

    ○正森委員 それでは、御本人がそうおっしゃるわけですから、そういうぐあいに承っておきたいと思います。  それから、この規制緩和とかあるいは民活の関係で、最近の報道を見ておりますと、大蔵省は「都市再開発の有力手段として最近注目されている土地信託制度を国有地にも適用する方向で検討に入った。ボンサミットでの政府規制緩和の提言を受けたもので、土地信託方式に基づく国有地開発について明文化していない現行国有財産法の改正など法制度面の整備が検討の中心となる。」「年内に答申を得て六十一年度にも同法改正にこぎつけたい考えである。」というような報道が出ております。そのほかにも、住宅取得控除を拡充するとかあるいは住宅ローンの利子の控除を考えるとかというような報道が、サミットに関連して出ております。そこで、それについてどのようにお考えなのか、お答え願いたいと思います。
  114. 中田政府委員(中田一男)

    ○中田政府委員 土地信託の問題についてお答えいたしたいと存じます。  土地信託の問題につきましては、当委員会でもいろいろ御質問いただきまして、その都度お答えしてまいりましたように、現行の国有財産法上等、信託を予定してないというような問題が一つございます。もう一つは、仮に国有地を信託に付して利用していくのに適当な事例があるかどうか、具体的なケースでいいものがあるかどうかという二つの問題がございますので、その二つの問題について我々勉強しております、検討しておりますというお答えをしてまいりました。その状態は現在も変わっておりませんで、今の新聞記事にございますように、何か特別な動きあるいは期限を切っての作業というふうなことはまだいたしておりません。
  115. 梅澤政府委員(梅澤節男)

    ○梅澤政府委員 五十八年の改正で住宅取得控除を大幅に拡充したわけでございます。現在十五万円というのは、サラリーマンの年収でいいますと四百二十万強の年税額全部を免除するぐらいの制度でございまして、私どもそれなりに効果を発揮していると考えておるわけでございます。ただ、委員ただいまお尋ねの当面の諸問題との関連におきまして、住宅取得控除の拡充なりあるいは住宅税制について新しい具体的な検討に入っておるという事実はございません。
  116. 正森委員(正森成二)

    ○正森委員 具体的な研究に入っておることはないというお話でございましたが、一部の報道を見ますと、国会が六月二十五日に終わって七月に入りましたら、政府税調の会議を開いてもらって、サミットでのいろいろなこともあるのでいろいろ検討してもらいたいという報道が出ております。これは蔵相絡みで出ておりますが、いかがお考えでございましょうか。
  117. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 やはり私もたびたびお答えしておりますように、国会でなされた税制に関する論議というのは、最後まで今度の国会は続く問題だと私は思います。したがって、それを全部整理しまして、それをまとめて、それで税制調査会に報告して御審議をいただこうという基本的な考え方を持っておりますので、今、いつごろあるいは期限はどうするかというところまではまだ検討しておりません。
  118. 正森委員(正森成二)

    ○正森委員 時間がございませんので、新ラウンド問題について若干伺いたいと思います。  新しいラウンドの問題については、異例のことに全会一致でなしに、ミッテラン大統領が相当抵抗したように――抵抗という言葉は適切ではありませんが、自説を述べられたように伺っております。ところが、新聞を見ておりますと、四月二十日の日経でございますが、「政府市場開放策の切り札として、関税の引き下げ時期や幅を政令で決める権限を政府に与える関税弾力化法の制定を検討し始めた。」という重大なニュースが載っております。これは、関税を上げる方はいかぬけれども、下げる方は政府が自由にできるようにしようという考えのようで、それが報道されておりますが、こうなると、租税法律主義で非常に重大な問題になると思います。  時間の関係でもう一つ伺いますが、政府筋は、ボンサミット後の国際公約として、農水産物の市場開放問題について、現在輸入枠を設けている牛肉、オレンジ、小麦粉、落花生など残存輸入制限二十二品目の農産物について制限緩和または自由化を含め、全面的な見直し作業を行うという報道が、東京新聞でありますが出ております。しかもこれには「こうした国内対策と並行して、政府は米国に対し関税貿易一般協定のウェーバー品目であるチーズ、バターなど十三品目と米食肉輸入法に基づく牛肉などの輸入制限品目の撤廃を求める一方、ECには保護色の強い共通農業政策の改善を申し入れる方針である。」こういう表現が出ているのですね。そうなりますと、我が国の農業のぎりぎりの線を守るというところで奮闘するどころか、よその座敷まで出かけていって、おまえのところも自由にせいというようなことを言えば、おまえの頭の上のハエを追えというようなことを言われて余計大変なことになる。だから、こういう報道がもし若干事実を反映していると思えば、我が国の農業にとって大変なことになりはしないかというように思うのです。  ちなみに、今度のサミット関係について報道関係でいろいろ出ておりますが、こういう表現もあるのです。「ミッテラン大統領の態度は、あらゆる問題で、米国との協調に努め、記念撮影でさえレーガン大統領に寄り添って離れなかった中曽根首相と対照的である。」こういうぐあいに、これは何も赤旗じゃないのですね。東京新聞の社説に載っていて、もう少しミッテランに見習えということを表現しているわけでありますが、今の農作物について出ている議論がもし本当だとすれば、とんでもないことだと思うのです。大蔵省と農水省の答弁を求めたいと思います。
  119. 矢澤政府委員(矢澤富太郎)

    ○矢澤政府委員 前半の問題でございますが、これは御承知のように、七月末までに骨格を作成すべきこととされておりますアクションプログラムの中に、対外経済問題諮問委員会から出しました中に、「なお、一定条件のもとに暫定税率を施行しうるような授権法についても検討する必要がある。」という文言がございます。したがいまして、私どもとしては、七月末までにどういう対応をするか検討をしなければならない課題であることは事実でございます、  一方、先ほど御披露がございました新聞報道につきましては全く事実無根でございまして、私どもはまだそこまで立ち入った検討をいたしておりませんし、また、実際に検討の課題といたしましてはどのような仕組みになるのか、あるいは委員御指摘になりましたような租税法律主義との関係をどう考えるのか。また、大変大きな減収額になりますということになりますと、予算との関係をどういうふうに考えるのか、かなり難しい問題をはらんでいると思っているわけでございまして、今後慎重な検討を要する問題であると思っております。  目下のところ格別の、細部に入りました検討等は行っておりません。
  120. 白井説明員(白井英男)

    ○白井説明員 御質問のございました後段の部分についてお答えいたしますと、報道されているような内容につきまして、農林水産省の中で検討しているような事実は全くございません。農林水産物の輸入に関します各国の国境措置というのは、それぞれの国の事情や農業の特殊性によりまして措置されているものでございます。その対応に当たりましては、慎重に対応すべきものであると考えております。
  121. 正森委員(正森成二)

    ○正森委員 終わります。      ――――◇―――――
  122. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律案の両案を議題といたします。  まず政府より順次趣旨の説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣。     ―――――――――――――  昭和四十二年度以後における国家公務員等共済   組合等からの年金の額の改定に関する法律等   の一部を改正する法律案  米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  123. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 ただいま議題となりました昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  最初に、旧和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、国家公務員等共済組合法等の規定により支給されている年金につきまして、別途、本国会に提出しております恩給法等の一部を改正する法律案による恩給の改善措置に倣い所要の改定を行うとともに、掛金及び給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額の引き上げ等措置を講じるため、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、国家公務員等共済組合等からの年金の額を改定することといたしております。  すなわち、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法、旧国家公務員共済組合法及び国家公務員等共済組合法に基づく年金につきまして、恩給における措置に倣い、昭和五十九年度の国家公務員の給与の改善内容に準じ、年金額の算定の基礎となっている俸給を本年四月分から増額することにより年金の額を引き上げることといたしております。  ただし、昭和五十七年度において仲裁裁定等による給与改定の適用を受けた者で同年度に退職したものにつきましては、昭和五十八年度の仲裁裁定等の改善内容に準じ、年金額の基礎となっている俸給を増額することにより、年金の額を引き上げることといたしております。  また、昭和五十八年度において仲裁裁定等による給与改定の適用を受けた者で同年度に退職したもの及び国鉄共済組合から年金の給付を受ける者につきましては、年金額の引き上げは行わないこととしております。  第二に、六十五歳以上の者の受ける退職年金、公務関係年金等の最低保障額を恩給における措置に倣い改善することといたしております。  その他、掛金及び給付額の算定の基礎となる俸給の最高限度額につきまして、国家公務員給与の引き上げ等を考慮し、現行の四十五万円から四十六万円に引き上げることとするほか、昭和五十八年度において退職した公共企業体職員の旧公共企業体職員等共済組合法に基づく退職年金等の額につきまして、退職手当支給額との関連から既裁定年金の額の改定に準じて引き上げること等の所要の措置を講ずることといたしております。  次に、米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  この法律案は、別途本国会において御承認をお願いしております米州投資公社を設立する協定に基づき、我が国が米州投資公社加盟するために必要な措置を講ずることを目的とするものであります。  米州投資公社は、ラテンアメリカ地域の加盟開発途上国の主として中小規模の民間企業に対し投融資を行い、もって当該国の民間経済活動の促進等に資することを目的とする地域開発金融機関であり、米州開発銀行の活動を補完するものとして、一昨年十一月、資本金二億ドルをもって設立することについて合意が成立したものであります。米州投資公社の行う投資が呼び水となり、ラテンアメリカ地域に対する民間投資が活発化することは、累積債務問題解消のため歓迎すべきことであり、またこれら諸国と我が国との友好関係にの増進にも資するため、政府といたしまして、同公社の設立に当たりこれに加盟することとし、本法律案を提出した次第であります。  法律案の内容は、加盟に伴い、政府が同公社に対し六百二十六万ドルの範囲内において出資ができることとするほか、予算で定める金額の範囲内において追加出資ができることとするものであります。  以上が、昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及び米州投資公社への加盟に伴う措置に関する法律案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  124. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  125. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  126. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 現在、出席者は、自民党で、まあ越智委員長委員長席にしようがないから座っているでしょうけれども、あと熊川委員、熊谷委員、大島委員、公明党で宮地委員、それから不肖私、我が党の川崎委員、上田委員、あとは簑輪委員、以上です。これでは成立する要件には達しておりません。  私の言っている言葉に間違いがあったら、委員長、言ってみてください。
  127. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 間違いありません。
  128. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 なければ、成立はしていないのでありますから、成立要件が具備するまで質問は留保いたします。
  129. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 暫時休憩をいたします。     午後四時七分休憩      ――――◇―――――     午後四時二十七分開議
  130. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  沢田広君。
  131. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 先ほど氏名を朗読しましたが、塩島委員の名前が入ってなかったことを申し添えて、つけ加えておきます。  大臣が最初、提案理由の説明に、米州の「加盟することとしこういうふうに言われたと思いますが、間違いございませんか。――後で調べてからでも結構であります。わかりますか。
  132. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 「米州投資公社を設立する協定に基づき、我が国が米州投資公社加盟するために必要な措置を講ずることを目的とするものであります。」というふうに読んだつもりでございます。
  133. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 その後にありませんか。
  134. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 「同公社の設立に当たりこれに加盟することとし、本法律案を提出した次第であります。」それはございます。
  135. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 正式には、外務において協定が成立をし、その上に立って加盟する意思が政府として決まっていく順序ではないのか。別に揚げ足をとろうというような気持ちではありません。性格的にはそういうことなのかどうかという点を確認したかったためにお聞きをしたわけであります。要すれば、その協定が国会の意思として決定をし、そしてその上に立って、今後大蔵省が所管しながらそれに対応する、そういう筋道なのではないかという気がいたしますが、その点いかがですか。
  136. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 実際に加盟が成立するためには、委員御指摘のとおり、協定が批准され、それからこの加盟措置法を成立をいただくということが必要でございます。ただ、政府といたしましては、既に、加盟をしたいという意思につきましては閣議決定を行っておりますし、その意味では対外的に政府加盟したいという意思は明らかにしておる、こういう趣旨でございます。
  137. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 これは今後の議会の運営一つの筋道なんでありますが、予定の法案が一方で外務で審議をされている場合に、その議案に伴う財政的な分野の対応の法案が同時に進行することの是非という問題にもなるわけでありますし、常識的に言えば、やはり外務において批准が終わり、国会でその正式な意思表示がされて委員会の審議が始まる、こういう筋道が妥当なものといいますか、正確なものということが言えるんじゃないかという気がいたします。気がすると言ったのは遠慮して言っているわけで、そうでなければならぬはずだというふうに思うわけなんです。政府の意思は加盟するんだから国会の方は審議することは構わない、こういう論理なのかもわかりませんが、今後もあることでありますから、今回はそういう点だけ指摘をするだけにとどめて、今後のあるべきもののありようについては、条約とかそういうものに基づく措置についてはひとつより慎重を期していただきたい。これは委員長及び政府に要望しておきたいと思います。お答えいただければ、それはひとつ区切りをつけて進めていきたいと思います。
  138. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 委員御指摘の点、十分留意してまいりたいと思っております。
  139. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 次に、共済組合法のスライドでありますが、スライドと一口に言ってしまっているわけでありますけれども、諸関係について、それぞれ関係の機関の皆さんにお伺いをいたします。  一つは、改正法案が出されるやに伺っているわけでありますが、これは大臣に率直にお伺いします。成人式を迎えた人たちに、来年の一月になりますが、成人式を迎えたら、さて皆さん、年金のことを考えてください、あなたこれから四十年掛けていかなければ月五万円の年金はもらえないんですと、成人式イコール老人式にこれからはなっていく。その首長も、恐らく成人式のときには、早速その日から加入しないと六十歳になったときに資格要件を具備するということにはならない、滞納でもあればその分だけは抜けてしまう、こういうことが今の伝えられる改正案の中身なんですね。  そのこと一つを見てもちょっと寂しい感じがする。若い青春の人たちが、成人式に参加したときにすぐ老人年金を考えなければならない。しかも四十年間働くということが一つ前提となってその成人式を迎える。そういうことは、この共済組合法であろうと既に通ったその他の法律でありましょうと、大臣がその場に立ち会って若い人を見たときに、あなたこれから四十年間しなければ資格がつかないのですよ、二十五年で資格はつきますが、給付としては四十年でなければ五万円にならないのですよ、こういう言い方は果たして政治家として言えるであろうかという気がするのです。私は非常に寂しさを感ずるのでありますが、大臣いかがですか。
  140. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 実感としてまだ私もわいてまいりませんが、一つには、国民年金であったらこれからいろいろな制度を理解してもらって、高校時代から掛けておくという手もあるのかな、それからリタイアいたしました後でも不足年数分だけは掛けていって補てんできるのかな、この程度の知識しかございません。
  141. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 結論的には総枠が決まっているわけですし、二八・九という将来の展望の掛金率を設定する以上、その総枠の中での判断ということになっていくわけですから、その後の中身の運用というものは一応別の問題になっていくことだと思うのです。しかし、基礎年金の問題だけを例にとればそういう成人式イコール老人式になっていくということ、数字的には合致をするということが働く者にとってあるいは若い人にとって一つの寂しさ、働こうと思ったらもう年金のことを考えなくちゃならぬというあり方というものは問われてしかるべきであろう。  もう一たん通った法律の問題です、厚生年金の方は通った問題でありますし、基礎年金の方も通った問題でありますけれども、共済年金についても同様なことが言える。学生時代から入ることも可能である。可能であるけれども、それは基礎年金の部分は可能であるでしょう。しかし、報酬比例の部分についても同じようなことがまた言えてくるようになると思うのです。ですから、これは担当の厚生省だけでなくて、日本の政治的な課題としてとらえて、私は厚生年金のときとは違った処方をとったっていいんじゃないかという気がしているわけです。厚生年金国民年金と必ずしも中身が一緒である必要性はない、変えても差し支えないのではないかというふうに思うわけですが、一たん出たものがあるわけですから、これも政治的な発言なんでありまして、実際にはそうはいきませんということになるんだろうと思うのです。しかし、考え方として今言った要素というものは酌んでいかないと、掛金額だけで押さえて、それから逆算して四十年が出た、資格が二十五年で出た、そして六十五歳が出たという形で進めることが今の我が国の年金の処方として果たしていいかどうかという問題はあるんだろうと思うのです。  きょうのはスライドだけでありますが、やはり基本に触れる問題ですから、今後どういうふうになるかは別として、私の申し上げたことが大蔵大臣の心のどこかに残り、頭のどこかに残って、それが幾らかずつでも是正されていくことを期待するわけでありますが、いかがでありましょう。
  142. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 厚年のときにも議論がありましたが、今度厚年を通していただいて、そうして今、スライド分でない本体といいますかにつきましては、国会に提出をして未付託と申しましょうか、議運で俗称つるされておるという性格のもの、今そういう実態になっておるわけであります。  いずれにせよ、両方が跛行した形で実施に移されるということについての整合性を欠く点があるのかなという感じもないわけじゃございませんが、七十一年でございますか、総合的な年金のあり方について年金担当省を中心としてこれから検討していくわけでありますが、今の場合、私は、急速に進んでくる高齢化社会に対応し今からその準備をしておくという基礎的考え方からいえば、やむを得ない一つの積み上げではないかな、しかし、勉強さしていただきたいと思います。
  143. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 厚生省では決まりの答弁しか返ってこないのだろうと思っておりますが、通った法案をこれからもスライドするということは、生活を守るという意味だと思うのですが、これからは大臣、結論を言うと、年金では食っていけませんよということなんです。これは社労の方の委員会の審議なんですが、年金だけで老後の保障はありませんよ、六十五になろうと七十になろうと、年金だけの老後の保障はありません、あくまでもある程度の自力のお金を持たなければだめです、こういうのが結論ですね。  そのことが今度何をもたらすかということになると、保険であり、あるいはまた貯金であり、みずからの老後はみずから守っていかなければならぬという仕組みを国民に言うならば強いて、預貯金率はより一層高まる、こういう現象がこの年金制度が発足すると出てくると私は思うのです。今でも一八%と言われる預貯金率、諸外国が高いと言っているが、さらに加わって、あの手この手の保険システムが生まれて結果的にはそれに依存しなければこの公的年金だけでは老後は守れない、こういうシステムが、果たして財政が苦しいからやむを得ないということでいいのかどうかということが問われると思うのです。  もう一つ言ってしまえば、年金の掛金は二八・九、その半分ですから約一四・四五ですね。一五ぐらいを標準として十万円で一万五千円。それで健康保険の掛金が、これを計算しましても約四千五百円ぐらいになりましょうか、五千円ぐらい、こういうことになるのだろうと思うのですね。     〔委員長退席堀之内委員長代理着席〕 それで、あと税金が約一五%ぐらいということになると、十万円で一五%にはなりませんが、一万幾らということになります。  それをどう減らしていくかという形をとるためには、減税をやって、直接税の方を減らして間接税に切りかえる、こういうシステムを導入していかない限り、可処分所得が現状を維持するということが困難になるか、あるいは医療費の方を減らすか、あるいは年金の掛金を減らすか、いずれにしろその三つ程度、皆さんが持っていく百八十兆の中でそういう形をとる以外に道はないはずである。さもなければ四〇%以上の、いわゆる可処分所得が六〇%ぐらいになってしまう、それ以下になってしまうということにつながる議論、それで二八・九という数字が一つは出てきたものなんだろうと思うのですね。全体的にどうでしょうか、大臣、どういうふうにその点思われておりますか。
  144. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 沢田さん、なかなか専門的な知識の上に立っての御質問でございますので、素人の私には明快にこれを分析する今準備もございませんが、いずれにせよ自主自立の精神、あるいは金融の自由化の中でいろいろな商品が出てくると思いますので、そういうものへの指向はある程度出てくるだろうということはわかります。  それから、基礎年金だけで議論をしますと、課税最低限には達しないかなという感じはいたします。したがって、社会医療保険それから年金掛金、総じて言えばマクロで見れば国民負担率ということになりましょうか、その国民負担率は、今ヨーロッパの高いところは五五でございますから、我が国は三五程度として、臨調答申等でもヨーロッパのそれをかなり下回るというところで将来設計をして、そうして国民の理解を今から得ていかなければならない課題だというふうには感じます。  ただ、基礎年金二人で十万円ですと、今の生活保護基準よりは少しまだ高いではないかというふうにも考えますし、また、生活保護基準と基礎年金整合性を求めると、一定年齢に達した方には生活保護の対象になる人はいなくなるという理屈も成り立ちますので、そこのところの決め方、私も定かに理解いたしておりませんが、難しい問題だなと思って、厚年の審議から今日に至るまで問答を聞いて勉強しておるというのが、現段階の私がお答えする限界でございます。
  145. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 今までの議論で、厚生省としては例えば共済年金について今回スライドすることを提案されました。恩給の方もスライドすることを提案をいたしました。将来あるべき姿としての厚生年金国民年金は既に法律が通過をしたわけであります。厚生省としては、この状況、この法案の提出に当たって、今までの議論というものをしたときには、どういう考え方で提案をされ、また、どういうふうにしていきたいと考えてきょうのこの法律は提案されているのか、これは厚生省からひとつお聞きをしたい、こういうふうに思います。
  146. 山口説明員(山口剛彦)

    ○山口説明員 ちょっと先生の御質問の趣旨、正確に理解しているかどうかわかりませんですけれども、今回の私どもの改革の考え方からまず申し上げたいと思います。  今回の私どもの改革の考え方、給付の水準の問題が出ておりますので、それについて申し上げますと、やはり年金というのは、費用負担をする者と受ける者とのバランスをとるということ、それを、しかもいつの時代になってもそういうバランスがとれるということが安定のために必要じゃないかということで、負担される側とのバランスの問題を中心に考えまして、将来に向かって給付水準の適正化を図る。その水準の目標としましては、大体現役の方の七割弱のところで横ばいにしていこうということでございます。基礎年金については五万円、夫婦十万円ということで、決して十分な額ではございませんけれども、老後の基礎的な部分を保障する水準としては、負担面のことを考えればこれは適当な水準ではないか。特にサラリーマンの年金の場合に平均で十七万円が保障されるというのは、公的年金としては適当な水準ではないかというふうに考えております。  その水準を今後どう維持していくかということですけれども、公的年金としては、やはり物価が上昇しましたときにはそれに応じてスライドをしていくというのが公的年金の機能としては一番大事なことでございますので、それはきちっとするということを今回の法案でも決めております。そのほかの国民の生活水準等に応じた年金額の引き上げにつきましては、従来どおり財政再計算期ごとに判断をしていきたいということでございます。  今回、共済年金等でスライドの法案を出しております趣旨は、現行法で厚生年金の場合には物価スライドというのが決まっておりますし、共済年金については、政策的な判断ということでございますけれども、現行法のもとで公務員給与等御判断をされて今出ているスライド法案は提案をされているというふうに理解をしておりますし、私どもの厚生年金国民年金についても、それとバランスをとった法案を今国会でお願いをしているという状況でございます。
  147. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 今のおっしゃられた中に、やはり片一方は物価スライド、片一方は賃金スライド。これを今年度施行するということは、一年おくれの給与体系の場合については翌年度もその権利は引き継がれていく、こういうことになると思うので、もっと具体的に――抽象的にさっき育ったのは、今回提案するときにおいて、既にある意味においては調整が必要ではなかったのかという疑問があったということなんです。これは私の考え方であります。それから、現行法があるから現行法でとにかくいってみて、あとは新しい改正案でやっていこう、こういう方式も随分勇断が必要だったんだろうと思うのでありますけれども、今度のスライド自身において調整していくという道はなかったかどうかという気がしたから、一応聞いたわけです。そのことはもう答弁要らない、これは私の意見なんですから。  だから、もし賃金スライドの現行法を守るということであれば、前年度の人勧でカットした分が今年度上乗せされるであろうけれども、その分については、当然次の支給水準に影響してくるべきいわゆる職員の権利に属する部分である。あえて言えば、掛金はその分は比例して納入していないというデメリットはある、あるけれども、権利としてその分が上げて支給される職員の権利というものは保有されているものである、こういうふうに解釈しますけれども、それは間違いないですか。これは厚生省に聞いている。
  148. 山口説明員(山口剛彦)

    ○山口説明員 現行法におけるスライドの考え方をちょっと御説明さしていただきますと、厚生年金国民年金の場合は物価が五%超えて変動になった場合ということが原則でございます。しかし、御案内のとおり、五十九年度の物価上昇率、五%を超えない見通してございます。(沢田委員「だから共済年金について聞いている。」と呼ぶ)したがいまして、厚生年金の場合は六十年度どうするかというのも政策判断になるわけです。  共済年金の方も、もともと制度的には毎年毎年政策的な判断をしていくということでございます。そのときに、公務員の年金は別の指標で上げる、民間サラリーマンなり自営業者の年金はまた別の指標で上げるというのは、政策的な判断をするときに適当でないだろう、やはり横並びのバランスということが必要ではないかということで、現役の公務員の方の賃金が人勧は六%を超える人勧があったわけですけれども三・四%程度で抑えられたということもございますので、そういうものを全部バランスをとって三・四%ということでスライドをしたらどうかということで政策的な判断をさしていただいたということで、私どもはその判断は現時点のいろんな客観情勢を考えますと適当ではないかというふうに判断しております。
  149. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 答弁する方も迷っているというか、戸惑っているでしょうけれども政府では年金担当大臣は厚生大臣をもって充てるというふうに決めたわけでしょう。それでこの前の質問で、恩給は一応別です、他の年金は厚生大臣が所管をしますということで決めたと思うので、あえて厚生省にその趣旨を聞いたということなんですよ。ですから、何かおっかなびっくり大蔵省の顔を横目で見つつ答弁をしているという筋合いのものではない。本来は厚生省の所管に属するものである、こういうこと。ただ、現行法である限りはそうじゃないんだ、これはやはり大蔵省なんだということなら、またこれで割り切ってわかるんですよ。どっちなんです、これは。政府で決めた年金の所管大臣を厚生大臣とするという決め方は、現行法に定められている部分は大蔵省であって、将来の年金を考える考え方は厚生大臣が決める、そういう線引きでもしたわけですか。
  150. 門田政府委員(門田實)

    ○門田政府委員 先生が今おっしゃった、大体そういうことでございまして、現行法の責任は、これは共済法は大蔵省が責任を持ちます。ただ、将来年金一元化の方向でありますとか、今後全体としてこれをやっていくという場合の所管といいますか責任者は、年金大臣たる厚生大臣である、こういうことでございます。
  151. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 例えばこの改正案が、今つられているという言葉が言われましたが、そうすると今後は、厚生省所管、社会労働委員会で――まあこれは議会の運営に関することですからあなた方がとやかく言うべき筋合いのものではありませんけれども、厚生大臣所管のものとして改正案は提案される、こういうふうに考えていいですね。
  152. 門田政府委員(門田實)

    ○門田政府委員 先生おっしゃられましたのは、共済年金の今、国会に提案しております改正法だと思いますが、これにつきましては所管は大蔵省ということで、私どもの方で責任を持って処理さしていただきたいと思います。
  153. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 それじゃおかしいじゃないですか。政府が決めた年金に関する所管大臣の所管の範囲というものは、じゃどこからどこまでが厚生省なんで、どこからどこまでが大蔵省なんですか。簡単にひとつ言ってくれませんか。
  154. 山口説明員(山口剛彦)

    ○山口説明員 厚生大臣年金担当大臣として指名を受けているわけでございますが、そのときに総理から職務内容として御指示がございましたのは、年金制度の改革及び年金行政の一元化を円滑に推進するための行政各部の所管する事務の調整ということで、年金担当大臣として厚生大臣がお引き受けをしているわけでございます。したがいまして、この調整は年金担当大臣がやらせていただきますけれども、それぞれの年金制度を各省が所管をしておりますので、一義的には各省でやっていただきまして、各省間の調整を要する事項につきましては年金担当大臣が御指示に従って処理をするというふうに理解をいたしております。
  155. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 そうすると、年金制度の調整だけが厚生大臣の所管である。この前の委員会のときに答弁されたこととは違ってきたということで、調整だけであって、それ以上はそれぞれの主管大臣になる、こういうことですか。もう一回確認します。
  156. 山口説明員(山口剛彦)

    ○山口説明員 ただいま申し上げましたように、年金制度の改革及び年金行政の一元化を円滑に推進するための行政各部の所管に属する事務の調整が年金担当大臣の職務内容というふうに理解しております。
  157. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 いや、同じことを答弁されても……。だから調整するまでであって、要すれば子供を生むまでで、生まれた子供は今度はちゃんと大蔵省なら大蔵省、文部省なら文部省にいくのです、その生むまでの間の過程は厚生省がやります、わかりやすく言えばそういうことだと解釈していいのか。だとすれば、その一元化に向けての調整についての中身は、また改めてそれぞれの所管が物も言えるし考え方も言える。それは言えないんですか、言えるのですか。  今二つ質問しました。子供を生むまでがあなたの方の役割で、生んでしまえば今度はそちらのものだ、こういうことなのか。それからまた、その間の調整だから、その自主裁量権はそれぞれの所管省が持っておる、こういうことに解釈していいのですか、悪いのですか。
  158. 門田政府委員(門田實)

    ○門田政府委員 先生承知のように、今、年金制度は各制度が分立しておるわけでございまして、これを一元化へ向けてやっていこうとしますと、そこのところに調整の問題が起きてくる。ですから現行法の建前は、それぞれの法律はそれぞれの省が責任を持って処理していく、その間の調整あるいはこれを大きくとらえて見ていくというのが、厚生省じゃございませんで、年金担当大臣たる大臣である、こういうことでございます。
  159. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 例えばという言葉はよくはないのだと思うのですが、今いろいろうわさされておりまするものは、調整後の法案であるから厚生大臣が所管をする、調整をした後の法律なんであるから政府としては責任者は厚生大臣である。それで、そうじゃない、調整するまでは厚生大臣がやったけれども、後は大蔵省は大蔵大臣、文部省は文部大臣が、おれのつくったものによっておまえたちは責任を果たせ、言われたことで変更は認めぬぞ、おまえたちはその言われたとおりやればいいんだ、こういうことですか。これは厚生省と大蔵省、そういうことですか。法案の提案の内容はそうなるわけですか。
  160. 山口説明員(山口剛彦)

    ○山口説明員 年金担当大臣の職務は調整ということでございますが、調整をした結果、今御提案をしているような法案が提出をされているわけですが、公的年金改革の全体の今後のスケジュールといたしましては、年金行政の一元化ということもその改革のスケジュールの中に入っております。したがいまして、調整をした結果もし年金行政についても一元化をしていくということになりますと、将来の問題としては、現行の権限以上に例えば厚生省なら厚生省で一元附にそういうものもやるというような方向も出てくる可能性がないとは言えませんけれども、今回の共済年金の改革というのはまだそこまで進んでおりませんで、全体としての整合性をとるための調整というものを年金担当大臣がやらせていただきまして、それぞれの共済組合の所管の権限ということについては今回の改正案では異動がございませんので、それぞれ所管に応じた権限を持ってやっていただくということであろうかと思います。
  161. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 十分とは言いがたいのでありますが、これが実際の場合になりますとそうはいかないだろうと思いますから。ただ、改正の方に進んでいっているわけでありませんので、これは後にとめておきます。  恩給はどういう性格のものなのか、これは総務庁ですか。それから厚生省はどういうふうにこれを見ているのか。その点ひとつお聞かせいただきたい。
  162. 平尾説明員(平尾秀夫)

    ○平尾説明員 御質問にお答えします。  恩給の意義及び性格につきましては恩給法に別段規定してはございませんが、恩給は、公務員が相当年限忠実に勤務しまして退職した場合、あるいは公務による傷病のために退職した場合、あるいは公務のために死亡した場合に、国がその者との特殊な関係に基づきまして被用者に対しましてあるいはその遺族に対しまして給付するものでありまして、公務員の退職または死亡後における生活の支えとなるものであるというふうに解しております。
  163. 山口説明員(山口剛彦)

    ○山口説明員 私ども、今回公的年金制度の改革のスケジュールを全体で決めておりますけれども、その中には恩給は入れておりません。と申しますのは、恩給というのは、ただいま御説明がございましたように、社会保険方式を原則にいたしました一般的な社会保障制度としての年金制度とはその基本的な性格を異にするということで、私どももそういうふうに理解をしておりますので、公的年金改革のスケジュールの中には恩給制度は一応別という整理をいたしております。
  164. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 今言われた中に、結論的に言えばそれぞれの業務、細かいことは省きますが、文官恩給であれ軍人恩給であれ、職務に忠実に精励格勤をし、そして長期にわたってそれぞれ勤務に従事をした、そしてその労に報いるために老後の保障として恩給を支給する、こういうことですね。言葉じりのてにをはを別にすれば、そういう趣旨に間違いないでしょう。そうですね。-首を縦に振っているからそうだ、こういうことにしましょう。  そうすると、老後の保障を図っていくという形に立てはやはり社会保障の一つである。それは、生活に困ってない人にも支給していることも事実である、陸軍大将でも中将でも。しかしそれは現在の制度の中においても同じ。総理大臣やろうが次官をやろうが大蔵大臣をやろうが、やはり支給される。だからいわゆる社会保障の貧富の問題ではない。制度としては、忠実に精励恪勤をして当時は十七年、今日は二十年、これがまた二十五年と延びていくんですが、いずれにしてもその間まじめに働けば、まじめに働かなくてももらうけれども、それはいずれにしてもその間そういうような状況において勤続をすれば恩給なり年金は支給される、こういうことの意味においては変わりないのじゃないですか。根本的に違うなんて言っているのは、どこを根本的に違うと言っているわけですか。これは厚生省。
  165. 山口説明員(山口剛彦)

    ○山口説明員 私どもの公的年金は、一定の拠出をしていただきまして、それに応じた保険数理の原則に基づきまして老後あるいは障害、死亡というような事故があったときに生活の安定を保障するために一定の給付をするという考え方でございますが、私ども聞き及ぶところによりますと、恩給制度はそういう保険数冊の原則にものっとっておりませんし、また性格的にも国家補償的な観点もあるというようなことで、基本的に一般の公的年金制度とはかなり違う性格を持っているというふうに私どもは理解しております。
  166. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 あなた、そんなことを考えているから大間違いを起こすんで、やはり軍人は軍人なりに命をかけるという保険を出しているのですよ。文官恩給は文官恩給として、無定量の義務を負って、昼も夜もなく、官吏は官吏としての義務を背負って従事をするものなんですよ。それはイコール、体をもって掛金にかえているわけで、軍人は軍人としてやはり命をかけて、それが保険になっているわけなんです。官吏は無定量の業務に従事するという趣旨のことが背の官吏服務紀律には書いてある。だからそこに軍人は軍人恩給の出てきたゆえんがある、文官は文官恩給として出てきたゆえんがある。雇傭人と一面言いますが、雇いの場合はそうではない、超勤手当ももらえる。そこが根本的に官吏とは違っているわけなんだ。だから、その意味において保険がなかったなどという論理はない。保険金、掛金にかえられないものをそれぞれ官吏は背負っていた。そういうことで、あるいは任官が早い職種もあった。蒸気機関士などが早くなったというのは、それだけの業務内容を持っていたからそうなった。あるいは警察官にしても税務署員にしてもそういうことが言えるわけだ。だから、そういう時代の要請によってなったので、あなたの言っていることでは全然――もっとそれ以上の掛金を納めてきているのですよ。  ですから恩給は、文官恩給にしても軍人恩給にしても、無定量の奉仕をし無定量の業務に従事をする、そういう義務を負って当時の法律の中で働いてきた。それは掛金じゃありませんか。掛金という自分の中の給料の一部を割いたか割がなかったかは別として、国に対する一つの掛金を自分の体で払ってきた、こういうことが軍人恩給が出てきた一つの田発点でしょう。また同時に、一年が三年に加算をされたというのは、それだけ危険率が高かったということで、内地と外地の差をそこで加算を考えたということでしょう。それは、中には矛盾はありますよ。たくさんの矛盾はあるけれども、そういうことが出発点であって、それが掛金じゃなかったのですか。どうです、お答えいただきたい。
  167. 山口説明員(山口剛彦)

    ○山口説明員 先生のおっしゃることもよくわかりますが、私ども一般の年金を所管をしております立場からいたしますと、まさに今先生が御指摘になったような、体で保険料を払うというような思想がもともとありませんので、そういう意味でも、基本的に私どもの所管をしておる年金制度と恩給とは違いがあるんじゃないかという理解でございます。  ただ、ちょっと申し落としましたけれども、全く違うかということになりますと、これは総務庁の方でもよく言っておられることですけれども、恩給も年金として果たしてきている機能という点からすれば公的年金と類似する面もあるのでということで、その点は恩給制度と年金制度も共通している部分はあるということで、それまで否定をするつもりはございません。そういう観点から、臨調等におきましても、年金制度の改正とのバランスを考慮しながら恩給についても必要な見直しをしていくべきだというような御議論もあるくらいでございますので、共通する部分は確かにございますけれども、私どもの所管をしている年金制度とは基本的な部分でかなり違いがあるのではないかというのが私どもの認識でございます。
  168. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 別に私は賛成して考え方を言っているわけじゃないのだけれども誤解されると困るのですけれども、やはり制度的に見れば老後の不安を解消していく一つの手段であった。そしてその掛金は、文官恩給においては文官恩給で掛金を徴収されていたときもあるし、また任意で加入されている場合においては甲と乙と分かれてそれぞれ掛金を掛けてきた経緯もあるわけですね。だから、あなたのおっしゃったようなふうにだけ割り切ることは極めて危険である。私は、先ほども言われたように、老後の保障を図っていくという分野に立ては、総合的な一元化なりの方向に向けて考えていかなければならない課題である。これだけを別枠にしていくという課題ではあり得ない。やはり一つの総枠の中でやっていかなければならぬ問題なんだ。政治的な問題は、背景は別ですよ。政治的にこだわる、こだわらないの問題は別として、物の考え方としてはやはり一つの大きな課題なんだという認識を厚生省が持たなかったら、これは話にならないと思うのですね。その点はいかがですか。
  169. 山口説明員(山口剛彦)

    ○山口説明員 その点については私ども全く同様に考えておりますし、共通している部分があるわけでございますので、私ども年金制度の改正とのバランスをとって恩給制度についても必要な見直しをしていただく、その観点に立った見直しを今総務庁の方が中心になってやっていただいているというふうに理解をいたしております。
  170. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 そうすると、総務庁は今言われたような方向で見直しをしているというふうに理解してよろしゅうございますか。テンポの割合は別です。そういう方向で進んでいるということが言えればいいのです。
  171. 平尾説明員(平尾秀夫)

    ○平尾説明員 先生の御指摘いただいた点ですけれども、公的年金については、御指摘のように国民年金、厚生年金の改正案が今国会で成立しまして、共済年金も改正案が現在国会に提出されているところでありまして、恩給については、今議論がなされましたように国が被用者あるいはその遺族に対する国家補償という性格を持っておりますので、他の公的年金とは性格が違うと我々は解釈しているわけでございます。ただ、先生が今御指摘になりましたように、恩給も年金としての機能を果たしているという機能を眺めますと、公的年金と類似している面もあるわけでございまして、臨調の答申でも年金制度との構成のバランスを考慮しながら必要な見直しを行うべきであるというような答申もありますので、総務庁の恩給局におきましては、今全力を挙げましてこういった点を検討しているところであります。
  172. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 念のためですが、これからやる場合には、厚生年金国民年金、共済年金、恩給、これらはやはり一つの制度の中で考えていかないと、政治に不平等、ひずみを生じてくるということを警告をして、この問題は終わります。  今、日本政府は赤字で、大臣答弁で百三十三兆円の赤字、しかも借金返すにまた借金をしなければならぬという状況である。会社にすれば大変厳しい状況にあるということですね。これは大臣に立ってもらうほどのことではないのですけれども、間違いないでしょう。――首を縦に振られたから間違いない。  国鉄も赤字であることも、これも間違いない事実。国鉄、来てますね。二十二兆も、また二十三兆になりますか、の赤字を持って、共済組合も赤字だし、木家も赤字だ、こういう状況ですね。これも間違いないですね。――手を挙げて賛成しているから、これも間違いない。  そうすると、恩給の場合は、国の赤字があっても一兆六千億の金が出ていく。国鉄の場合は、おまえら赤字だからスライドはだめだよといって禁止をされる。その気持ちもよくわかる。気持ちもよくわかるし、財政的な立場もよくわかるわけでありますが、しかし政治として考えた場合には、今の恩給問題でも若干触れましたが、一〇〇%でなくとも、例えば二分の一でも、あるいは翌年度に入ってからおくれてでも改善をしていくという方向が一歩でも踏み出る、あるいは三分の一でも二分の一でも、やはりその辺幾らか、皆生活は苦しいのですから、それだけしていく。もう一つの方法は、私の一般的な論でありますけれども、一般所得が大ざっぱな数字を申し上げると四百五十万くらいでありますが、その三分の一の百五十万以下の所得者についてはスライドをある程度考えるという措置は、百万の者も四百万、五百万の者も何も一律に扱えとは私も言いませんが、そういうくらいなものは考えてもいいのではないのか。恩給の場合は、大将から、今もう生きておられる方は中将ぐらいになっちゃったでしょうけれども、そういう人たちも同じく三・五%である。だとすれば、せめて下の方の所得水準の人にはスライドが当てはまってもいいのではないか。  これはまあ政治的な話でありますが、赤字だから逆さにしても血が出ない、どうにもならないんだということはわかります。また、将来の年全体制を考えればそうなることは、ますますこれはその速度は進んでいるわけですから、合理化が進んでいるのですから当然そういうことになるわけですが、せめて低所得者階層に対するスライドは認めてやっていいんじゃないのかということを考えますが、その点いかがですか。
  173. 小玉説明員(小玉俊一)

    ○小玉説明員 お答えいたします。  年金の支給額が低い者で、かつスライドがない、こういうものをどうするかということでございますが、私どもとしましては、私どもの置かれたこういうような情勢からすればせめて最低保障額の改定はぜひお願いしたい、こういうふうに考えておりまして、今回の法律案にも最低保障額の改定については、国鉄の共済組合も他の共済組合と同一の取り扱いをしていただいております。
  174. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 今の最低保障額は八十三万か八十四万というような場合のことを言っているんだろうと思うのでありますが、私は、一般の標準の生活水準までは考えてやるということは考えられないかどうか。これは他の組合にも関係してくる、あるいはその財源が皆影響してくるということになります。しかしこれは、恩給だって一兆六千億どこから出ているかといえば、赤字国債から出ていることには変わりがない。だから、金に色がついていないということになれば、当然その論理は同じである。ただ、一方はそういう形で赤字国債でも三・五%改善されるけれども、一方は赤字であれば停止をされるという論理は若干妥当性を欠くのではないのか。お互いを絞るのならやむを得ない。ところが、一方が許されて一方が許されないということは妥当性を欠くのではないかと思いますが、これは大蔵省の方の関係だと思うので、大蔵省側からお答えをいただきたい。
  175. 門田政府委員(門田實)

    ○門田政府委員 国鉄共済の話が出たわけでございますが、その財政状況は、先生今おっしゃったとおり六十年度年金の支給に支障を来すというような非常に憩い状況にございまして、六十年度から実施されます長期給付の財政調整事業、こういうことで、他の共済組合からの助けをかりましてその支払い財源を確保して今後出していく、こういうことをやっておるわけでございます。  そういう状況のもとでございますから、年金額を改定いたしますと、その費用といいますのがやはり他共済の人に回ってくる、あるいは国鉄の現役の組合員の方の負担がふえていく、こういうことでございますが、率直に申しまして、今、国鉄の現役の方はかなり高い負担水準にございます。こういう方たちのことも考えますと、年金の支給額の方もやはりある程度受給者に辛抱いただかなくてはいかぬのではないか、こういう感じがいたすわけでございます。  スライドがずっとないというのは不当ではなかろうか、こういうお話でございますが、今、国家公務員等共済組合法に規定がございまして、国鉄共済につきましては、その「長期給付に要する費用の負担状況、長期給付財政調整事業の実施状況、他の公的年金制度における給付水準その他の諸事情を総合勘案して行う」、こういうことでございまして、今の財調委員会では、まあ年金額が一割程度のところまではスライドを停止しよう、しかし、この水準に来ましたら後はスライドを行っていこう、こういう考えでやっておるわけでございます。  それからもう一つ、最低保障額の御議論がございましたが、これもなかなか難しいところでございます。現在は、そういうことでスライドを停止しましても最低保障額は引き上げていく、こういうことをやっておるわけでございますが、おっしゃるようにもっと高い水準までそれが保障できればいいのでありますけれども、なかなかやはり、厚生年金、恩給、いろんな横並びもございまして、現状のような水準である、こういう状況でございます。
  176. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 兵隊の場合でもそうでありますが、七十七万ぐらいで、片っ方は今九百万ぐらいになりますか、ぐらいな倍率になっているわけであります。ですから、一〇%までのスライドというけれども、これから次の財政再建のときにはもっとでっかい負担を負わなくちゃならない状況が生まれるわけですね。だから、その一〇%が果たして担保として今の答弁で確認できるのかどうか。今の状況からいけば、今度はもっと大変な状態が出てくるという心配財政的にはありますね。  これは、基本的な問題は一元化という言葉の中の問題もあるわけです。これから日本全体をどう調整していくかわかりませんけれども、一元化という形で合併はしてみたものの、独立体系はそのまま維持している。だから、赤字だから片っ方はスライドないよ、それは復活する見通しはあるのかといえば、一割まではもう見通しないよ。では、その後例えば何か別な方法が生まれて、豊かにはなる条件はないでしょうけれども、恩給みたいに国が全部持つような格好にでもなれば、そうなったら、今度は独立採算になっていけばそれは回復できるということなのかどうか。そういう点、非常に疑問が多いわけでありますけれども、あなたのおっしゃった一〇%というのは、次の大きな財政状況を勘案してもそれでやり切れる、こういう意味に解釈してよろしいですか。
  177. 門田政府委員(門田實)

    ○門田政府委員 先ほど申し上げました国鉄財調計画といいますのが、昭和六十年度から六十四年度までの五年間というものを見渡しているわけでございまして、その期間につきましてはそういう方針でいこう、こういうことをその財調委員会が決めておるわけでございます。  それから先の話は、今お話にございましたとおり非常に大変な問題でございまして、これは今もちょっと触れられたところでございますが、やはり公的年金全体の一元化あるいはそういう全体の中でこれを支えていく、こういうことがかぎではなかろうかというふうに思っております。
  178. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 だから、そういう状況の中で結果的に、大臣、今のこの年金制度、日本財政がこう苦しくなって、一方では内需拡大、インフレ政策というようなことも出ていて、大きな目から見たら果たしてどっちがこれからの歴史的な判断として正しいかということが問われている時期にちょうど当たっていると思うのです。ですから、これは足の引っ張り合いみたいなものが今続いているわけですね。お互いに足を引っ張って、だんだんお互いが低い水準にみんな合わせていこう、こういうことが今順次進められていっている状況にある。それが完成するまでには相当な長期を要する。そうすると、全体的な問題として、長期間我慢していられるかどうか、そうして、そうでないとこれはくたびれ損だけで、我慢損だけになってしまって、削られた者だけがつらい目に遭う、こういうことで、一番後から削られそうになったところは助かってしまう、こういうような面が出てくる可能性がある。  大臣も、もう今度はかわるかもしれないなんということを座談の中で言われたので、こういうことでさらりとかわられたのでは役人の転換と同じで、後は知らないよ、こういうことになりかねない。やはりやりかけたことに対して責任を持ってもらうということは、政府としてこれはきちんとやってもらわなければならぬことだ。ところが政府というのは、やはり選挙の結果の数の力でかわっていくということになるとすると、極めてこういう問題は政治的であるし、非常に慎重を期さなければならぬ。  私は結論的に申し上げますが、将来七十年を展望することはいいことだけれども、果たして七十年の担保はだれが保証するのかということになると、極めて不安定要素が強い。いわゆる切られ損という形にならぬことを確保していかなくちゃならぬというのが我々政治家に課せられた使命だと思うのですね。ここで削られた者だけがどんどん損して、残った者はそれでぬくぬくとそのまま居座りましたという形はとってはならない、そういうふうに思いますけれども、これは大臣どういうふうにお考えになりますか。
  179. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 やはり年金問題というのは、結局、いや応なしにやってまいります高齢化社会に対して、長期に見ていわば負担と給付というものが妥当な形で継続されていくということを前提に置いて、そしていわば保険数理学でございますね、保険数理というものの基礎の上に立って積み上げられていくべきものではないかな、こう思います。  一方、恩給というのは、出だしは今御議論がありましたようにそれぞれ違いますが、大体恩総受給者の方の年齢というものもかなり高齢化しておりますし、そして中長期の展望の中では、それぞれこれから妥当な形で決められていく年金統合の中へほぼ吸収されていくではなかろうか、こんな感じで見ております。
  180. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 時間の関係で、あとは簡単に聞いていきます。  人事院が来ておりますが、人勧の見通しはどうか。それから、この前のいわゆる切り捨て残は、今後の人勧の場合にどういうふうに考えておられるのか。ひとつお答えいただきたいと思います。
  181. 丹羽説明員(丹羽清之助)

    ○丹羽説明員 人事院の勧告は、単に春闘のアップ率によるものではございませんで、四月の時点における公務員と民間の個人ごとの給与の実額を実際に調査いたしました上で較差を算定しまして、これに基づいて行うものでございます。現在、そのための調査を行っておる段階でございます。  なお、お尋ねの昨年埋め切っていない分でございますが、昨年の勧告で埋め合わせが不足した分につきましては、確たる数字はわかりませんけれども、本年の較差に反映してくることになるだろうと考えております。
  182. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 あとは大蔵省の方にお伺いしますが、今七%ぐらいの自然増収ですね。総予算歳入に対して七%ぐらいの増収ですね。梅澤さんも首を縦に振っていますから、そのとおりだ。そうすると大体二兆円よりもやや多くなるだろう、結論とすると。そこで、人勧が前の切り捨て分にプラス例えば民間の五%程度になったと仮定しまして、大体どの程度の資金を要するとお考えですか。大ざっぱな数字で結構ですが。
  183. 保田政府委員(保田博)

    ○保田政府委員 お答えいたします。  一般会計の負担しております給与費を基準といたしますと、ベースアップ一%を実施するに要する経費は約七百三、四十億円でございますから、それにベースアップ率を掛けた数字、こういうことになるわけでございます。
  184. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 当初予算にも組まれている分がありますから、例えば今六・五と仮定をいたしましても、二・何%かは当初予算に定期昇給分を見込んだということなのかもわかりませんが、それにしても五千億程度である、大体こういうふうに想定して間違いないですか。
  185. 保田政府委員(保田博)

    ○保田政府委員 アップ率がそう決まればそういう計算になります。
  186. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 大臣、そうすると、二兆円ぐらいの自然増、実質は三兆をちょっと超えるような増収だと思うのであります。景気がよくなった、こういうわけでありますから、当然その程度の自然増収は考えられると思うのであります。人件費の分がこれだけマイナスされると仮定して、大臣、例えば三兆円あったと仮定した場合にあとの二兆五千億は、もしありとせば、どういうふうにお考えになっておられるでしょうか。
  187. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 恐らく五十九年度、三月期決算がまだわかりませんが、補正とんとんぐらい、補正の税収は確保できるのではなかろうかということですから、昭和六十年度予算で見込んでおります税収を上回る自然増収が期待されるということには、今日とても予測するところではないというふうに思います。仮に決算の上で剰余金が出るような場合は何にするかといえば、第一義的に考えるのは、それは赤字公債の減額に充てる、これが筋でございましょう。
  188. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 もう一つ建前があると思うのです、建前の議論として。各党で決めました減税の資金に充てるという項目と、それから建前としては赤字国債の償還に充てる、こういう二つ。まだもう一つあるかもわかりませんが、そういうことになるのだろうと思うのでありますが、まさか五九中業の中にこの増収が充てられるということにはならぬと思いますが、これは間違いないでしょうな。その点、いかがでしょう。
  189. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 五九中業が始まりますのは昭和六十一年でございます。五九中業に基づくところの、この予算要求に基づいて予算が編成されるというのは六十一年度予算でありますから、六十年度予算にはこれは関係がございません。
  190. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 安心しました。  それで、この間北海道へ行きまして、へそと言われる富良野、帯広を歩きました。その中で戦車の問題がやはり出されました。ばかに北海道に戦車を持ってくる、戦車でも動ける場所があると思って持ってくるのかなと。これは本当に素人議論になるのかもわかりませんけれども、今の戦車、動く場所なんかありはしない、何であんなものを持ってきてやるのだろうかというふうに質問もされたり、あるいはまた意見も述べられたりということなのであります。私もこのところ戦車撲滅論をやって、大体もう人を殺せば――まあ殺すものになっているのですが、内地で動く性格のものではないというふうに私は思っておるから、実はもうここのところ何回も言っているわけです。できれば戦車なんというものは本土には、本土といいますか日本の国には必要ない、最低限度まず戦車はなくしていいんだというふうに思っている一人なんです。昔は北海道も大分動いたと言うのですよね、道路を舗装する前は。うるさくてうるさくてどうしようもなかったのに、このごろ音もしないと言うのです。どこからか、やみからやみへ持ってくるのかもわからぬけれども、全然音もしないで動いておる、というようなことを住民は言っておりました。  大臣、来年度予算編成に、具体的に戦車がどういう場合にどう動いてどう働くのか、それを明らかにしてもらったら予算をつけてもらうし、もしそれが明らかにされなかったら廃車してもらう、こういうふうに国民に納得できる説明ができるなら――これはおもちゃじゃないのです。相当な税金をつぎ込んでいるわけですから、だから、どうやって具体的に働いて国民の生命財産を守るのか、その具体的なものを一つ示していただきたい。私はこの分は要望にしておきますが、いかがですか。
  191. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 いつの場合でも、結果として見ますと陸四、海、空がそれぞれ三、三ぐらいな比重に防衛予算というのはなっておるというふうに理解をいたしております。沢田さんの御議論を初め、いわば水際作戦あるいは水際のその前という意味において海空重視の予算を細め、こんな議論はたびたびいただいておる議論でございます。ただ、いろいろ聞いてみますと、やはりそれは現実問題として、この水際あるいは海上等々がもとより一番適切なことでございますけれども、陸に万々一上がった場合におきましてもなおかつやられてしまうという意味において、陸の備えというものもいわば抑止力になるというような説明も承っております。  ただ、戦車が具体的にどういうふうに能力を持っておるかは私は定かには承知しておりませんので、今後の予算編成の際に、国会等の議論をぎりぎり詰めまして、各施策との調和をとりながら防衛費というものは組んでいくべきものだというふうに考えております。
  192. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 梅澤さん、予算編成やられたわけですね。戦車はどういうふうに使うということで前年度予算編成のときには理解をされて組まれましたか。記憶ありますか。
  193. 保田政府委員(保田博)

    ○保田政府委員 申しわけないんですが、担当外でございまして、その具体的なところはちょっと承知いたしておりませんので、御勘弁いただきたいと思います。
  194. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 やはりそういう逃げ道もあるんだということを教えてもらったような気がしますが、大臣に聞いたってこれはわからぬだろう。わからぬと言っては悪いですが、そこまでは詰めてないだろうと思ったので、先輩各位がいるんだからと思ったわけです。では、それはいいです。大臣の方でこの次ははっきりお答えください。私、執念深くこれを聞いていきますから、ひとつその覚悟の上でお答えをいただきたいと思うのです。  各国の累積債務残高は、表を見ればわかるように、ブラジルもメキシコもアルゼンチンも韓国もインドネシアもフィリピンもベネズエラも、それぞれ相当多いのです。今度アメリカのだけ、と言っては悪いのですが、ラテンアメリカのいわゆる地域途上国だけをしなければならない、今度の場合には米州投資協定の中身でやっていくという役割は、果たして何なんだろうか。他にもたくさん手をつけなくちゃならぬものがある。その中で、今度アメリカとの投資協定によってラテンアメリカの地域開発、しかも中小企業その他と書いてありますが、開発途上国の現状から比べて、東南アジアなりその他の債務国と比較して、これが優先順位として挙げられなければならない理由は果たして何であろうか、その辺の意味をひとつ解説していただきたい。
  195. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 このたび我が国がこの新しく設立されようとしております米州投資公社加盟をしたいというふうに考えております理由は、御承知のとおり、現在、世界の開発途上国の開発を促進しようというためにいろいろな機関があるわけでございます。世界銀行というのが世界全体を相手にしている機関でございますが、その中には投資を行います国際金融公社というのがございますし、それから、今先生御指摘の各地域ごとに、アジアにつきましてはアジア開発銀行があって、これは融資も投資も両方できるようになっておる。それから、アフリカにつきましてはアフリカ開発銀行というのがあって、これも協定上、融資も、それから民間企業に対する投資もできるようになっているわけでございますが、従来、中南米地域につきましては米州開発銀行というのがございまして、主として政府とか政府機関に対する融資活動を行っておるわけでございますが、民間企業に対して政府の保証なしに融資あるいは投資ができるという権限がなかったわけでございます。  今回新しい公社をつくりましょうという目的は、まさにこういう中南米諸国におきます、主として中小企業に投融資を行いまして、それによってこの地域に市場原理にのっとった経済のもとで経済発展を促進していこうということにあるわけでございます。したがいまして、私どもといたしますと、こういう公社が立派に成長いたしますと、我が国の途上国に対する援助の基本原理でございます自助努力を支援するという意味にもなると思いますし、それからまた、こういう国際機関が活動を拡大してまいりますと、そのことによってこういう地域に対して民間投資というものもふえてくるんじゃないかということも考えられる。そうすると、我が国の金融機関も大きな影響を持っております累積債務問題にも好影響があるんじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  196. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 戦争は貧困から生まれるということでありますから、その貧困をなくしていくということは大切なことだと思うのです。ですから、こういう海外援助は我々大いに賛成をするわけですが、そのした分だけは軍備を金額的に減らしていく。両方ともふえていくという論理はちょっとおかしいんじゃないのかというふうに思うのです。金はギャンブルでも使うわ、一方入ってくるという論理はないわけですから、これだけ海外援助をさらに強めていくならその分は軍備の費用を削減する、やはり平和に寄与するという道は一つであるというふうに思うわけで、両てんびんではないんではないかというふうに思うわけです。そういう意味から見れば、今回の措置もそういう立場で判断をしていくべきであろう、こういうふうに思いますが、いかがでしょう。管轄外であるかもしらぬのですが、そのことが同時に、日本の国全体から見れば、海外援助がそれだけふえればそれだけ防衛費が減っていく、だから国民の皆さん、海外援助に我々は力を入れるんですという説明ができるようにしてもらうことが必要なのではないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  197. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 先生におしかりを受けるかもしれませんが、防衛費の問題は私の所管ではないのでございますが、海外援助につきましては、まさに御承知のとおり日本経済というものが世界的な規模の中で大きくなっている、それだけの責任と同時に、日本自身の利害関係というのが非常に強くなっておるわけでございますから、この途上国に対する援助というものが非常に大きな重要性を持っておるわけで、したがいまして、御承知のとおり今回のサミットでも政府といたしまして前向きの姿勢を示しておるわけでございます。この件もその一環としてお考えいただきたいと思っております。
  198. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 じゃ、あと二分くらいですが、これは平和のためにやるんじゃなくて、市場原理でもうけていくための、もうけていくというと品が悪くなりますが、利益を追求する、これはそれぞれ現地も助かる、日本も助かる、そういう利益につながるということの方を主体にあなた方は物を考えている。そうじゃないんだと言うかもしれぬが、そうだということでしょう。
  199. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 経済が発展いたしますということは恐らく経済的な利益を伴うことでございますから、それが、もうけるという言葉は余りよくないのかもしれませんが、まさに経済的利益につながるということだろうと思いますけれども、同時に、やはり経済発展というものが途上国の平和をもたらす非常に大きな要素であるということも間違いないことだろうと思います。したがって、援助と申しますのは、恐らくそういう経済開発をし、民生を安定させ生活を向上させることによって、その地域における平和を一層確かなものにしていくという意味も非常に大きいのじゃないかと思っております。
  200. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 大臣、これから日本貿易摩擦もありますし、海外援助もやらなくてはならないだろうと思いますし、それなりに我々の生活を時にはある程度下げてもしなければならぬ場合も起きてくるかもわかりません。しかし一方、それにはそれだけ力を入れるのですから、いわゆる戦争への危機というものをやはり低めていく、あるいはなくしていく、そういう努力が一方に行われて初めて国民が、今日社会資本が足らないのじゃないか、自民党内においても社会資本倍増論もあるという現実はそのことを示しているものでもあろうと思うのですが、そういう意味において、海外援助をすることはいいとして、それはそれなりに、国民生活がそれだけ犠牲を負っているのだから今度は軍備の方もある程度バランスをとって我慢するところは我慢して下げていく、そういう努力を我々に言わしてもらいたい。国民に向けて、軍備もどんどんでっかくなるんです、海外援助もどんどん出すんですと、花咲かじいさんじゃあるまいし、こういうことではらまくような話じゃなくて、やはり片っ方も、軍備も我慢をします、だから海外援助で国民生活の方も我慢してもらうんです、そういうのが大蔵大臣としては答弁になって返ってくるのじゃないのかと期待するわけでありますが、どうでしょうか、ひとつお答えいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  201. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 いわゆる経済協力の問題につきましては、私ども国会でいつも御協賛をいただくのは、かつて日本の国が今日の先進国の中では唯一のいわば借り方であったということであろうと思います。新幹線にしても東名高速にしてもダムにしても、皆世銀の金を借りて今日に至っておるわけでありますから、その体験からしても、私ども国会でこの海外経済協力問題に対しては各党挙げて応援をいただくゆえんのものではないかと思います。  貧困こそ戦争の根源である、沢田さん絶えずおっしゃるとおりです。防衛問題というのは、やはり我が国の防衛そのものに最低限必要な費用をいわば各施策とのぎりぎりの調和の中で計上すべきものでございますので、これとこれとが金額の上でリンクするという形のものではなく、精神的には一方軍縮を唱え、海外経済協力を唱えていくということは私は正しいと思いますが、予算の金額で見たときに、必ずしもこれがリンクするものではないというふうにも考えます。
  202. 沢田委員(沢田広)

    ○沢田委員 以上で終わりますが、米州のいわゆる加盟の問題については外務委員会でも審議中でもありますし、同時に、加盟の結果とその中の意見を参酌して我々も態度を決めてまいりたい、こういうふうに思いますので、きょうは以上をもって質問は終わりますが、あと三十分程度残っておりましたが、それは留保させていただく、こういうことで御了解いただきたいと思います。
  203. 堀之内委員長代理(堀之内久男)

    ○堀之内委員長代理 坂口力君。
  204. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 午前中に続きまして、今度は国家公務員共済の方の質問をさせていただきます。  年金に対します議論は本体の方が出てまいりましたときにやるのが筋でございますが、きょうはそのはしりとして、一部だけひとつ議論をさせてもらいたいと思います。  全体の年金が一本化の方向に進んでまいりましたが、一本化の方向に進みますこと自体は私ども賛成でございまして、そのことは、長い間年金制度がいろいろと議論を重ねてまいりましたけれども一つの終着駅を迎えたというふうにも思うわけでございます。  この国家公務員共済は、現状のままでいきますと、これは何年か先に財政的破綻を迎えるというふうに言われておる。国鉄共済の方は既にもう破綻状態になっておりまして、そして国家公務員共済あるいは専売あるいは電電、こうしたところからの援助を求めなければならないような状態になっておるわけでありますが、国家公務員共済そのものは、それじゃこのままでいったといたしましたら何年先に破綻状態になるのでしょうか。そこからひとつお聞きしたいと思います。     〔堀之内委員長代理退席、中川(秀)委員長代理着席〕
  205. 門田政府委員(門田實)

    ○門田政府委員 お尋ねの国家公務員共済でございますが、各組合の年金財政、将来的にはいずれも厳しい状況にございます。連合会一般組合、これがもう大宗を占める組合でございますので、連合会一般組合について申し上げますと、五年に一度財政再計算いたします。それが昨年の十月、ちょうどその時期でございましたので、そのときの再計算時での収支見通しということを申し上げてみたいと思いますが、掛金率を五年ごとに三・八%、これは本俸に対しまして三・八%という率ですが、五年ごとに三・八%ずつ引き上げたといたしましても、昭和八十六年度には積立金をいわば食いつぶしまして賦課方式に移行する、そうしてその場合の賦課保険料率、これが本俸に対しまして四八・四%、こういう数字になっておるわけでございます。四八・四%といいますと、現在の保険料率の約四倍でございます。数字の上ではこういった数字が出るわけでございますが、組合員負担がその二分の一としましても二五%近いということで、到底そんな負担には耐えられないわけでございますが、今のままでいきますと、そういった非常に考えられないような数字になってしまうということでございます。  こういう現状にかんがみまして、やはりこれからは負担と給付のバランスをとっていかなくちゃいかぬ。また、今おっしゃいました公的年金一元化の方向というものを目指さなくちゃいかぬということで改正案を提出申し上げておる、こういう状況でございます。
  206. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 どの時点をもって破綻とするかは別にいたしまして、昭和八十六年には非常に厳しい状態になるという試算がここに出されたわけでありますが、もともと年金というのは、大きなグループの間で、国全体あるいはまたそれに近いような状態でこれは運営されるべきものであって、一部の職種の間だけでこの運営をしようとすること自体に問題があるわけでありますから、今までこうした幾つにも分立をするという形で年金が今日を迎えたこと自体、これは最初から非常に難しいことであった、最初から無理なことであったのではないかと思うわけでございます。そうした意味で、今回はアップでありますが、本体の方はいよいよその辺のところを改革しよう、こういうことになってきたわけです。  それで、もう一つお聞きをしたいと思いますが、これはモデル計算で結構でございますけれども、これも今回のこの改正案ではなくて、本体の方の話でございます。本体の方で改正をされますと、そうすると年金手取り額というのは一体どれだけの差になるのか。現在と比較いたしまして、モデルで結構でございますが、お示しいただきたいと思います。
  207. 門田政府委員(門田實)

    ○門田政府委員 ただいまお話しございました本体の改正案の方で計算いたします額でございますが、まずその仕組みが、今度の改正案では全国民に共通する基礎年金制度を導入して、その上に報酬比例の年金として共済年金を設ける、こういう形をとっております。現在の共済年金はいわば世帯単位の年金でございますが、今度の改正案によりますと、これは夫と妻というふうに二つの個人単位の基礎年金というのがありまして、その上に夫といいますか稼ぎ手の方の報酬比例年金がある、こういうことに分解されるわけでございます。したがいまして、改正前後の年金水準を比較します場合には、いわゆる改正後の共済年金に基礎年金を加えまして世帯ベースで比較をすべきだというふうに考えますが、そういう比較をいたしますと、五十八年退職者の平均で試算いたしまして、夫婦とも六十五歳以上という場合でございまして、かつ、いろいろな経過期間がありますがそれは完成時ということで比較いたしますと、現行水準に比べておおむね九割程度になる、こういうことでございます。ただ、激変を避けるために経過措置がいろいろ工夫されておりますので、施行当初ではほぼ現行年金額程度である、こういうことになろうかと思います。  それからもう一つ内容的に申し上げますと、一般的に言いまして、完成ベースで見まして俸給の低い人につきましては現在の年金水準に比べて給付率の低下がそんなに大きくない、俸給が高い人になりますと低下率も高くなる傾向にあるということが言えるわけでございます。
  208. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 大臣、今お聞きいたしましたように、このままで国家公務員共済が進んでまいりますといつの日か財政的に破綻状態に陥ってくる。今回と申しますか、この後の本体の改正がもしも成立をしたといたしますと、先ほどお話がありましたように現在の九割程度、それも、給与の低い方はそれほどの差はないけれども、高いところにおいてはかなり差が大きくなる、こういうふうに下に厚い形での今回の本体の改正ではないかと思います。  そういうふうな改正を見ましたときに、年金は、もちろんのことながら現在のようにあるいはそれ以上に高ければ高いにこしたことはないわけでありますが、しかしそうもいかないということで基礎年金制度が生まれ、そしてその上に比例年金制あるいはまた職域年金というものが上積みされるというような形で新しい制度が生まれてくるわけでありますけれども、もしそれが成立するということになれば、大体これはやむを得ざるところかなというふうにお考えになるか、いやこれはもう少し勉強すれば何とかなると思うというふうにお考えになるのか、その辺のお考えをひとつ聞かせていただきたいと思います。
  209. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 やはりこれは好むと好まざるとにかかわらずやってまいります高齢化社会というものを予測した場合においては、給付も負担も長期に客観的に見てこれが妥当であるということを、またその上に保険数理の角度からも検討してみた場合にこれは至当な線ではなかろうかというふうに私は考えます。
  210. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 そこで、この年金の制度が改正になると仮定をいたしますと、その後にどんなことが起こってくるのだろうか、これを一遍考えてみたいと思うわけであります。  そういたしますと、これから高齢化社会を迎えましてだんだん六十五歳以上の人たちの人口の比率が大きくなるわけでありますが、年金の制度の方はこれは頭打ちにしますよ、今までよりも少し下げますよ、少なくすることで、制度としてはそれで済むわけですが、しかしだからといって六十五歳以上の人の人口が減るわけでもありませんし、その人たちの費用が少なくて済むわけでもないわけであります。年金で見る分が少なくなりましても、それを養いますところの若い人たちが出さなければならない分、負担をしなければならない分というのは決して減るわけではない。むしろその年金の少なくなった分は養っておる一般の若い人たちが負担をしなければならないということで、マクロで見ますとこの若い世代が負担をしなければならない分というのは変わらないわけですね。年金の分が減って、その分だけ余分に若い人たちが見なければならない、こういうことになるわけてあります。そういたしますと、午前中に議論になりました貯蓄との関係がここにまた顔を出してくるわけでありまして、その分だけ若い人たちは貯蓄をしておかなければならない。自分のお父さんやお母さんの状態を見ると、それを養っていく分も使わなければならないし、そしてそういうふうになってはならないから自分たちもまた年をとったときのためにというので自分たちの分も貯蓄をしておくということになってまいりますと、内需拡大に非常にマイナスになってくる可能性がある。  そういうことから、公務員世帯と一般勤労者世帯の純資産所得比というのが、これは総理府の方からの資料で出ております。これは昭和五十五年までしかちょっとまだ出ておりませんので、最近の例でこれがどれだけになっているか、もしも数字が出ましたらお示しをいただきたいわけであります。年間収入に対する純資産がどれだけかということを見たものでございます。さっき言った数字の方をひとつ御説明をいただきたいと思います。
  211. 門田政府委員(門田實)

    ○門田政府委員 お尋ねがございましたので調べてまいりました。五十九年の総務庁の貯蓄動向調査、これによりますと、若干近似的な数字になっておりますが、収入分の貯蓄残高、こういう比率を見ますと民間の方が貯蓄残高が七百七十五万二千円、年間収入に対する貯蓄の割合が一二八・五%、それから官公職員、いわば公務員等でございますが、これが貯蓄残高が七百五十六万円、収入分の貯蓄比率が一二〇・一%。ですから貯蓄残高の方が年間収入を少し上回っておる、こういう状況でございます。
  212. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 この数字で見ると大きな違いはないわけですね。総理府から出されました収入分の純資産という数字で見ますと、昭和五十五年に公務員の方が〇・六〇、一般勤労者世帯の方が〇・八四というふうになっておりまして、一般勤労者の方が収入に対する貯蓄と申しますか純資産の方が多くなっている。さらに公務員あるいは一般勤労者以外のその他で見ますと、これがさらに高くなってくるということで、この年金額が低いところほど純資産というものは高くなってくるという大体傾向があるわけでございます。したがいまして、これから年金制度が改正をされまして、既に厚生年金の方は国会を通過をいたしましたけれども、もう一つまた共済年金等もこれが改正をされた暁において、全体に基礎年金制度なるものが歩き始めますと、こういう傾向はさらに高くなってくる可能性はないだろうか。これは一つ注意をどうしてもしておかなければならない点だと思うわけでございます。このことを財政当局としては考えておいていただく必要があるのではないだろうか。今まで以上に貯蓄性向が高まってくる可能性はどうしても避けられないのではないかと思うわけでございます。  それに対して何か歯どめをする方法がないか、そのことを一つ考えておかなきゃならないと思うわけでございますが、その一つとして、いわゆる個人年金、公にやっております年金とは別に個人年金がございます。個人年金の方の取り扱いについては今までそう注目をしてこなかったわけでありますけれども、今回の年金改正がもしでき上がったといたしますと、年金だけで生活をしていくことは全体的に見ますと非常に厳しい状態にならざるを得ない。そういうことになってまいりますと、言うならばプラスしてそれぞれが自分で個人年金等も積み立ててやりなさいと言わんばかりの形になってくるわけでありまして、そうすると、それじゃ個人年金制度は今のままでいいのか、これをもう少し考えておく必要はないのか、こういうことになってくるだろうと思うのですね。  大蔵省として、こういう国家公務員共済の問題を議論するに当たって、個人年金について、将来これをもう少し皆が利用できるような形にしようというような何か対案があるかどうか、この辺をひとつお聞きをしたいと思います。
  213. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 老後生活の安定のための自助努力ということからいたしましてこれを奨励するという意味と、それから老後生活に対する相互扶助の推進と社会的連帯の意識の助長という観点から、五十九年度税制改正におきまして、いわゆる生命保険料控除と別枠で年五千円を所得控除する個人年金保険等の別枠控除というものができたわけでございます。これは今の財政状態からすれば最大限の考慮を払ってつくったものでございまして、五十九年度でございますから、まさに昨年始まったばかりでございますので、これについて今これを拡大していくという考えはございません。  もう一つ、これをやりますときに、個人年金保険の積み立て段階、すなわち保険料の支払い段階での控除について税制調査会において各種の議論が行われ、その結果として、五十九年度答申におきましては「今後の政策税制として検討に値する方策ではあると考えられるが、そうした制度を先行的に実施することについては、基本的には慎重な態度で臨む必要があると考える。」こう述べられておるわけであります。  そこで、この制度ができましてからは、個人年金保険契約等に係わる個人年金保険料を支払った場合には、これまでの生命保険料控除の別枠で所得金額から一定額が控除されることになりました、こういううたい文句といいますかそういう文言で、各民間企業といいますか保険会社等、これを非常に推進されていく一つのてこに使われて今日に至っておるということでございます。
  214. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 五十九年度にこの制度ができましたときには、共済年金を含むところのいわゆる年金の一元化の問題がまだ俎上にのっていないときのことでございます。五十九年のこの法案が成立しましたときとはかなり全体の状況は変わってきた、それは先ほどから申し上げたとおりでございます。この状況の変化によって、もう少しこちらの方に目を向ける必要がありはしないかということを私は申し上げているわけでございます。  五十九年度に改正されたところは今御指摘になったとおりでございます。五千円を限度ということでございますが、五千円そのものが全部控除されるわけではなくて、この中で控除ですから、五百円くらいになりますか、そのくらいだろうと思います。大した額ではないわけであります。ですから、どこかに風穴をあけて、そして公の部分で抑えるのであるならば、どこかでそれにかわるべきものをつくっていくということが政治の考えるべきことではないだろうか、私はこう思うわけでございます。  したがいまして、今までの経過は大臣の御指摘のとおりでございますけれども、この新しい事態に立ち至りまして、それが税制なのか、ほかのことを考えるべきことなのか、それは別にいたしまして、税制に限らず、やはり個人年金というものに対して何かもう少し政治が目を向けていく必要がありはしないか、こういう私の意見でございますので、もう一度御答弁いただきたいと思います。
  215. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 今おっしゃられたのですが、私、五十九年のを読みました。それは確かに先行する課題じゃない、政策税制としては考えるべきだ、こういうことでありましたが、ことしの分で見ますと、「現行の公的老齢年金に対する課税については、掛金段階での所得控除、支払段階での老年者年金特別控除・給与所得控除等のあり方について抜本的な見直しを行う必要がある旨中期答申で指摘したところであるが、現在進められている各種年金制度の統合化、受給単位の個人化等公的年金制度自体の改正の動向を踏まえて、早急に検討を行うべきであると考える。」そこまで今度、六十年度税制では一歩進んできた。  これは坂口さんもお感じになっていると思いますが、私が年金の審議会などに出ますと、実際、仮に十万円お取りになる人が七千円くらい払っておる、そうしておやめになっておる人が二十二万円くらいお取りになっておる。おじさん、何でおれが七千円出して二十二万円差し上げなければならぬかという、いわば世代間のバランスの問題がよく議論されるようになりました。そうして国会でもこういう議論が行われますから、年金制度自体に対する国民の関心は非常に深まってきて、その議論を聞いておりますと、基礎年金部分をちゃんとやってもらって、あと二階、三階は自分たちで考えればいいじゃないか、こういう議論も出るくらいでございますから、税制調査会のことしの分で指摘されておりますように早急に検討されるべき課題である。  問題点がもう一つございますのは、いわば貯蓄ではないか。そうすると貯蓄税制との関係をどうするか、こういう議論ももちろんございますけれども、今の政策税制として早急に検討すべき課題であるという認識は、今坂口さんのおっしゃることと私は等しくしておるつもりであります。
  216. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 それじゃ、ひとつぜひそういう方針で早急にお考えをいただきたいと思います。  それでもう一つは、この改革に当たりまして考えなければならないことは、年金資金の運用の問題でございまして、これはいつか予算委員会で私は大蔵大臣に質問させていただきましたので、あるいは御記憶をいただいているかと思いますが、これは、国家公務員共済の場合には一部自主運営をなすっておみえになりますが、しかし厚生年金の場合には一切自主運営というのは認められていない。非常な乱暴な比較であることを承知の上で、生命保険の場合と、それから新しく出発をいたします厚生年金の掛金の場合とを比較をいたしまして、同じ掛金をしていきますとどちらが得かという比較をして大臣にお見せをしたことがございます。それでいきますと、片方はこれは積立方式であり、片方は修正積立方式であり、それを比較するのは非常に乱暴であることは承知の上で比較をいたしますと、年々歳々の物価上昇率が三%以下であれば、生命保険の方がより多くの額を手にすることができる、しかし、物価上昇率が五%ぐらいになってまいりますと年金の方が有利である、こういう結果を出しまして、そしてごらんをいただいたことがありますけれども、その積立方式において、なおかつそれだけの額が用意ができるというのは、それはやはり年金資金の運用をどうするかということによって違ってきているわけでありまして、生命保険の場合には、昨年あたりは八・二%ぐらいで運用をしているというふうに聞きました。厚生年金の方は七・一ですか、あるいはもうちょっと下がったかもしれませんけれども、今までは七・一ですね。大体その辺にあるわけでありまして、現在の仕組みの中におきましては、これは余りまた下げることもできず上げることもできずという状態にあるわけであります。  この年金資金の運用をどうするか。少なくとも一部に風穴をあけていくということは、これは財投の方から見れば資源が不足していくということで、大蔵省としてはいつも反対をなさるわけでありますけれども、しかし年金の方から見ますと、そうしたことも考えておかないとなかなか立派な年金がこれから成立してこない。掛金の方もそう上げるわけにはいかずということでありますから、どうしてもこれは年金額が低くなってくるわけでありますので、ぜひひとつ、この運用の部門につきましても、これから考えてもらわなければならないのではないか、こう私は常々考えている一人でございます。そのことをもう一つ答弁をいただいて、あとわずかでおりますけれども、米州の質問に入らせていただきたいと思います。
  217. 亀井政府委員(亀井敬之)

    ○亀井政府委員 お尋ねの点でございます。  いつも同じようなことをお答えして恐縮でございますが、確かに、生命保険とか信託でやっております利回りが高いというのは御指摘をちょうだいしたとおりでございます。一方、国の特別会計で集め、経営をいたしております厚生年金国民年金でございますが、こういうものは国の制度、信用を通じて集めさせていただいておるお金でございます。そういう意味で、一方、公共的な資源の配分ということを大変重視する必要があるというふうに考えているわけでございます。  先生今おっしゃいましたように、それの有利運用ということにつきましても、もちろん私どもその必要があるということで、公共性の範囲の中で十分配慮しながら考えてきているわけでございますけれども、こういうお金の集め、それから運用を通じまして一つのシステムとして調和を図っていくというのが、現在のまとめます統合運用のシステムでございますので、こういうことによりまして政策的な重要な資金の配分ができますし、また財政金融政策との整合もとれるということで、同じようなことをいつも申し上げておりますけれども、ひとつ御理解をいただき、統合運用を堅持させていただきたいというふうに考えております。
  218. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 その答弁も何遍か聞いたわけですが、こういうことを考えていますか。  これは国家公務員共済だけの枠を外れますけれども、主に厚生年金を見ました場合に、今はもうみんな財投に行っておりますね。そしてそれがいろいろの方面に使われている。そのこと自体は、そこだけを見ておりますと非常にスムーズに行っているようにも思うし、また大事なことのようにも思うわけですが、一方におきましてそれじゃ年金の方はどうかということを見ますと、年金の方は足りないものですから、これから三分の一ずつ国家財政の方から埋め合わせをしていかなければならないわけですね。将来それはまたさらにふえていくかもしれない。その将来そこへ入れなければならないお金と、そして今までのように年金の資金を財投等に運用していくことと、これは現在だけではなくて将来も含めてどちらが得なのか、大蔵省なりにですね。現在、それを自主運用をして、そこから少しでも稼いで、そして国からの財源を年金の方に入れない方が得なのか、それとも全部今はそれは運営を財投の方に回して、そして将来は一般会計の方から繰り入れる方が得なのか、このことも一遍私はよく考えてみる必要があると思うのです。  今までそういうことをやってきたから、今までそれでスムーズに来たから、だからこれからもそうやっていくというのではなくて、その計算がきちっとできた上で、いや、やはりこの方が得なんです、よろしいんですよというのであるならばそれは私も納得するのですが、その辺のところがきちっとされていないにもかかわらず、今までの経緯がこうだからこのままで今後も行きたいと思うというのではちょっと納得できないですね。できていますか。
  219. 亀井政府委員(亀井敬之)

    ○亀井政府委員 御指摘の点でございますが、実は今お話をいただきましたように、全体の利払い、それから一般会計からのいろいろな補給金、そういったものの損得とおっしゃいましたが、それを民間と対比してみるというような、そういう作業をいたしておるわけではございません。ただその前提には、とにかく私どもの気持ちといたしまして、お金自身が国の制度、信用を通じまして公的な年金制度として集めさせていただいておる、そういうことでございますので、お金の利用といいますか運用の方も非常に公共的なものに運用をさせていただく、そういうシステムの中でできるだけ有利な運用に努めるよう配慮はいたしておるわけでございます。そういう点で御理解をいただきたいというふうに思います。
  220. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 今のお答えは現在の枠組みの中でのお話であって、その枠組みを外してもう少し広い目で見ることはできないかということを私は申し上げているわけで、あなたの答弁はちょっと納得しかねます。しかし、これをやっておりますと時間がありませんので、きょうはこれだけにいたしまして、続編は次の本体のときにやらせていただきたいと思います。  もう時間がなくなってまいりましたが、米州の方を一問だけお聞きをしておきたいと思います。  外務委員会の方で、中小企業に貸し付けるというが中小企業というのは一体どんなものなのだろうか、その中には武器をつくっているところもたくさんあると聞くが、そういうところにも貸し付けるのかというような議論が出たようでございます。たまたまきょう新聞を拝見しますと、武器輸出のことがある新聞に出ておりまして、「中南米諸国も”台風の目”」になっている。中を見ますと、「なかでも注目されるのが中南米諸国の動き。ブラジルはすでに年間二十億ドルを超える第三世界最大の武器輸出国となった。最近では国営航空機メーカー、エンブラエルが英国空軍から練習機「ツカノ」百三十機を受注、先進国のライバルメーカーを歯ぎしりさせた。」というような記事が出ておりまして、中小企業ですから、中小企業がそう武器をつくるということではないのだろうとは思いますけれども、下請をすることはあり得るわけでありまして、日本も一生懸命中小企業を助けるという意味で今回のこれに参加をすることにしたわけであります。そのこと自体は結構ではありますけれども、参加をして助けてはみたものの、武器がたくさん生産されて、それが戦争のために役立ったというのでは、どうも日本としてもじくじたるところがある。その辺が果たしてどうだろうかという議論が出ますのは当然のことだろうと思うわけであります。  これは、どちらかと申しますと外務委員会の方で決着をつけてもらわなければならぬ問題であって、大蔵委員会で決着をつけるべき問題ではないかもしれませんが、こういうことがあるということに対して、どんな所見をお持ちかということだけはひとつお聞かせをいただいて、終わりにしたいと思います。
  221. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 中南米の企業構造開発途上地域としての特殊性がございまして、エネルギー関係とか鉱業は公営の企業が多いようでございますし、自動車とか電機とか、どちらかと申しますと技術集約的な企業は外資系のものも多いようでございます。結局残った分野、つまり伝統的な食料品であるとか繊維であるとか建築業というようなところがほとんど中小企業であるようでございます。これは国によってもちろん違います。ブラジルとかメキシコ、アルゼンチンのように総体的に経済が発展している国には大企業もかなりございますけれども、そのほかの国ではほとんどが中小企業だということだろうと思います。  御指摘の武器の製造でございますけれども、これはほかの国際金融機関でも同じでございますが、こういった国際金融機関の目的はあくまで経済開発にあるわけでございますから武器の製造というようなものに融資を行うことはございませんし、それがそれぞれの機関の政策として確立しておるわけでございます。米州投資会社のいわば親会社になります米州開発銀行がございますが、ここでも武器製造に対しては投融資を行わないという政策が確立しております。したがって、実績もございませんし、今度の米州投資公社につきましても同じようにそういった政策が守られると理解しております。
  222. 坂口委員(坂口力)

    ○坂口委員 ありがとうございました。終わります。
  223. 中川(秀)委員長代理(中川秀直)

    中川(秀)委員長代理 安倍基雄君。
  224. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 同僚議員がいろいろの質問をされた後でございますし、また共済年金につきましては、さっき坂口委員もおっしゃいましたけれども、本体のときにいろいろ聞くといたしまして、一、二の問題を取り上げて御質問したいと思います。  まず第一に、いわゆる軍人恩給欠格者の問題がございます。これは、御承知のように期間が短いとかいろいろな要素があって、相当の人数の方々が軍人恩給を受けられないという人々でございます。さっき沢田委員から、戦前の役人は無定量の義務、軍人は体を張ってというようなことが一種の保険料ではないかという御指摘もございましたけれども、軍人恩給にしても共済年金にしても年々スライドして上がっていくというときに、片っ方では全然もらえないという人々が相当数いるということがいろいろ問題になっておるわけであります。  私、個人的に申しますと、実は昭和二十八年に役所に入りまして、二十九年にいわゆる外債課というところに一年間おりました。今ない課でございますけれども、そこで戦前のいわば外債の処理とともに、いわゆる在外財産とかそういう問題を全部いろいろ調査したり、将来の方向をやるという課でございました。そのときに、いかに引揚者たちが困ったかという要素もいろいろ知っておりますし、すべて物事はバランスをとらなくてはいけない、でございますから、例えば軍人恩給欠格者の問題をまた持ち出すと、そこで例えば戦災者をどうするんだとか在外財産はあれでよかったのかとか、いろいろな問題が出てくることは事実かと思います。  しかし、こうやって年々恩給、共済年金が上がっていくところを横に見ながら、軍人恩給をたまたま期間が短いとかいろいろな要素からもらえなかったという一部の人々がいることは事実でございまして、これにつきましていろいろ政府は検討しているということは聞いておりますけれども、その現状はどうなっているのか、これからどういう方針で臨むのかということについて、最初に御質問したいと思います。
  225. 杉浦説明員(杉浦力)

    ○杉浦説明員 お答え申し上げます。  私どもの総理府の総務長官の私的懇談会でございます戦後処理問題懇談会と申しますのが五十七年に発足いたしまして、二年半をかけまして、先生おっしゃいました方々の問題点につきまして御検討いただいたわけでございます。  その結果、結論といたしまして、昨年の十二月報告いただきました中身につきまして申し上げますと、いわゆる戦後処理問題についてこれ以上国において措置すべきものはないとするとともに、関係者の心情に深く心をいたすという趣旨から、特別の基金を創設することを提唱しているわけでございます。  したがいまして、その報告の趣旨に沿いまして総理府に特別基金検討調査室が設けられまして、その特別基金の内容あるいはどういう事業をするかという点につきまして検討するということになっております。  以上でございます。
  226. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 特別の基金というのが何か施設をつくるとかなんとかいう話も聞いておりますけれども、そういうやり方はどうなのか。国庫のいわば一時金を何回か出したという話も聞いておりますけれども、恩給に準じた形で考えないのかどうか、その辺はいかがでございますか。
  227. 杉浦説明員(杉浦力)

    ○杉浦説明員 また同じような発言をして大変恐縮でございますが、政府といたしましてはこの報告の趣旨に沿った事業をさせていただくということでございまして、個別の恩給に準じた措置を恩給法なりそういったものでやるということについては、現在のところ検討が進んでおらないという事情でございます。
  228. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 まだ総理府で検討している状況かもしれませんけれども大蔵大臣、御感想がございましたらちょっとお聞きしたいと思います。
  229. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 この問題は総理府の懇談会でございましたかでいろいろ意見が出た、しかし、それをどのようにして実効あらしむるかということで、この一億数千万円、それから元台湾兵の分が五百万でございましたか調査費を最終段階で計上し、それは総理府が、もとの総理府でございませんで旧総理府の本府が今内閣官房に行っておるわけでございますが、そこでこれからどうするかを御審議になるということを聞いております。  いわゆる戦後処理問題というのは、昭和四十二年でございましたか水田大蔵大臣、塚原総理府総務長官、福田赳夫先生が政調会長でございましたか、一応これにて打ちどめというような申し合わせがございますものの、その後、客観的に見て今総理府からも答弁のあったような経過で今日に至っておる。どういう中身でこれから御審議なさるかというのは、必ずしも私も詳しく存じておりません。
  230. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 今のちょうど米州の関係もそうでございますけれども、今非常に海外に援助を出しておる。海外にお金を出すのもいいのでございますけれども、戦後処理というか、これは等しからざるを憂うという要素がございます。私は後から申しますけれども、海外にはどんどん非常に気前よく出していく。それは貿易摩擦もいろいろございましょうけれども、一方で比較的リベラルにどんどん金を出していくのに対して、過去のそういう少なくとも考えてやるべきじゃないかというものが、ただ残されているままにそういったものはほうっておく、これはいささかおかしいのではないかな。きょうは必ずしも時間が十分ではないので、改めて財確法のときにもゆっくりお話ししようかと思いますけれども、戦後処理の問題はいろいろあったわけでございますから、そこでだれが本当に面倒を見るべきものか、これは仕方がないものかという区別も大変なわけでございますが、この軍人恩給なんかにしても、片っ方はどんどんと毎年上がっていくわい、役人の恩給も上がっていくわい、片っ方はちょっとしたために全くもらえなくて顧みられない、おまえは終わりだというのもいささか問題があるのではないかと思うのでございます。この点、もう少し突っ込んだ検討をお願いしたいと思うのでございますが、これが第一点でございます。  次の問題は、米州の問題でございます。  これはいろいろ聞くことがたくさんあるのでございますけれども、最初に今回の出資に関連して、本当に新会社に対して出資に応じて発言権をちゃんと持っているのかね。さっき沢田委員から、どっちかというと利益のために援助するのではないだろうなというような念押しもございましたけれども、また反面、やはり各国それぞれお金を出すならそれなり発言権を持つよという姿勢を持っていることも事実でございまして、今回の新会社に対して我が国としてそれだけ金を出すならば、それなり発言権をちゃんと持っているんだろうなということを念を押したいわけでございますけれども、この点についてお答え願いたいと思います。
  231. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 この公社の意思決定につきましては、各国の出資額に比例いたしました投票権というのが与えられておるわけでございます。御承知のとおり全体の五五%は域内の開発途上国が持つ。それから四五%の中では、同じく域外国でございますが米国が二五・五%を持つ、残りの一九・五%を域外の先進国で分けるというスタイルになっております。日本の場合は、この域外の主要先進国でございますドイツ、フランス、イタリー、スペインといったような国と同じ三・一%というシェアを持つことになっているわけでございます。  したがいまして、投票権という意味では日本のシェアは三・一%ということでございますが、今後運営に当たりまして、当然この域外の先進国の間からもグループ分けをして理事を選出するということになると思います。その場合には日本から理事が選出されることも十分可能でございますから、域外国ではございますけれども、いろいろな形で先進国の一員としてこの新会社の運営については日本なりに発言権を行使していきたいと考えておるわけでございます。
  232. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 さっき坂口委員から、中南米の企業の中には随分武器をつくっているのもあるじゃないかというような発言もございましたけれども、こういったことに対して目を光らせる意味合いにおきましても、我々は金を出すだけじゃなくて、それについてよく目をみはると申しますか発言権を留保すべきではないかと考えております。これが米州の会社についての一つの考え方でございます。  それとともに、私ちょっと冒頭に申しましたように、これは時間によっては次の財確法のときに取り上げたいと思いますけれども、私自身、海外に対していろいろ援助をするということは決しておかしいことはない、非常にいいことであるという観念は持っておりますけれども、どうも日本のやり方が、何かみんなにおだてられると言っては変だけれども、見えを張っている。と申しますのは、我が国の財政がこんなに悪い、国内ではさっき申しましたように戦後処理も終わってない、軍人恩給欠格者に対しても金も十分に払ってないというような状況で、外部に対しては非常に格好のいいことを言うことが多いという気がするのでございます。  例えば、私がいただいた資料でございますけれども、海外に対する資金の流れの中にODAによるもの、それからその他政府資金というものがございます。それ以外、民間資金というものがある。これは外務省の方にお聞きしたいと思いますけれども日本の場合に、一九八三年、政府開発援助三十七億ドル、その他政府資金十九億ドル、民間資金二十九億ドルと、その他政府資金のウエートが高いわけでございます。この点について、割合と申しますか、イギリスとかフランスがその他政府資金、アザー・オフィシャル・フローはそれぞれどのような数字であるか調べておられると思いますけれども、いかがでございますか。
  233. 榎説明員(榎泰邦)

    ○榎説明員 まず全般的なお話でございますが、その他政府資金も含めましてODAの順番にほぼ同じでございまして、全体で含めましてもアメリカが一番、フランスが二番、日本は三番ということになっております。  大体政府開発援助につきましては年によってそれほど大きな変動がございませんが、民間の資金につきましては、海外の経済情勢も反映しておりますので年によって違います。そういう前提を申し上げた上で御説明すれば、大体各国ともODAの全体の資金の流れに対しますシェアというのは似たようなシェアになるかと思います。
  234. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 例えばフランスなんかの場合には、いわゆる旧植民地、そういったところに対するものが相当ございまして、表にあらわれているよりは実質的にはそう大きくないという要素もございますし、今あるいはお答えの中ではっきりしなかったのですけれども、フランス、イギリス、ドイツのいわゆるOOF、アザー・オフィシャル・フローというのは非常に数が少ない。例えば日本の場合には十九億ドルでございますが、たしか八三年はフランスが五とか、イギリスが二とか、ドイツが六とかいう数字がある。それじゃとこの十九億ドルの内訳を聞きますと、その中には例えば輸銀がいわゆる日本の法人に金を貸して、その法人が現地に出資しているというのも相当あるかと聞いております。こういった場合、日本の会社が向こうに出資をしていれば、それは無償援助みたいなものなのです。援助と言わぬにしても、ODAに準ずるような要素を持っている。こういった形態の日本の援助が相当額あると思われます。この点について、ほかの国と比較してこの日本の特殊性というか、輸銀が例えば我が国の法人に貸して、それが出資しているというような要素は、もっと援助の中に入れてもいいんじゃないか、そういう考えがあると思うのでございますけれども、この点いかがでございますか。
  235. 榎説明員(榎泰邦)

    ○榎説明員 今先生の方から輸銀のお話が出ましたが、出資につきましては、海外経済協力基金の方でこれは出資というものがございます。海外経済協力基金の場合には、この出資案件の方もODAにカウントしております。  ODAの定義の話に関連してくるかと存じますが、先生承知のとおり、ODAにつきましては三つ定義がございまして、一つは公的資金の流れであること。もう一つ開発途上国の経済発展及び福祉の向上を主たる目的とするものであること。実は三番目が問題なわけでございますが、供与条件が緩和されており、グラントエレメントが二五%以上である。先生御指摘になりました輸銀の融資、それから本邦企業に融資をして、最終的にその本邦企業が投資に回したといたしましても、融資部分につきましてはこのグラントエレメント二五%という条件を満たしておりませんので、現在のODAの定義からしますとODAにカウントできないというのがDACでの規則でございます。  重ねて申しますが、同じ出資でもOECF、海外経済協力基金の場合にはこのグラントエレメント二五%という条件を満たしておりますので、従来からODAということでカウントしております。
  236. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 私の言いますのは、このグラントエレメントという決定、これは一九七二年ごろに大体具体化したようでございますけれども、もともとがいろいろの援助の仕方がある、いわば何が本当に援助なのかということをもう少し、例えば我々の立場からいえばもっともっと国際的にも主張してもいいのではないか。日本の場合、最近は非常に民間の資金が余って、余ってというか大きくなってきて、いろいろな形で開発途上国に投資をしている、お金を出しているという状況がございます。となりますると、単に国が援助しているということだけを取り上げて、その分が足りないじゃないか足りないじゃないかということをつつかれるのはいささかおかしいのではないかな。確かにグラントエレメントということが一つのメルクマールになりますけれども、グラントエレメントそのものをもう一遍再検討してもいいんじゃないかということを国際的に言ってもいいんじゃあるまいか。  特に我が国の場合に、この日本の国は財政的にこれだけ苦しい。ですから、よく言うのですけれども、私は、いわばサラ金を受けながらお中元を、あるいはお歳暮を持って回っている、それも直接余り関係のない人々にも持って回っているというような感じが非常にするのであります。もちろん、国際協力が必要である、貿易摩擦の解消のために、あるいはその圧力を緩和するために開発途上国に対する援助というのは意味があることはありますけれども、今のように民間ベースで相当の開発もしているという状況のもとに、また例えば輸銀を通じて日本企業に貸してそれが出資をしているというのは、ある意味から言うと実質的にはグラントエレメントが大きいと言えないことはない。こういったものをもっともっと我々は――何か外部に言われたら、どうも日本の格好をよくするために、年々これだけ我々が毎年ゼロシーリングとかいろいろきゅうきゅう言っているときにあたかも別枠であるというような形で、要するに一番聖域扱いにされているのがこの辺じゃないかと思うのでございますけれども、その聖域扱いする前にグラントエレメントについてもう一週再検討しようじゃないか、あるいはこういったものはODAに含めるべきじゃないかという主張をもっともっとしていただきたいと私は思うのでございます。この点、実はきょうは課長さんですけれども、もっと政府委員の方、あるいは状況によっては外務大臣にでもお聞きしたいと思っておるわけでございまして、これはまた後の財確法のときに取り上げるかと思いますけれども、この点について外務省の当事者として、そしてまた大蔵御当局としてどうお考えになるか、お聞きしたいと思います。
  237. 榎説明員(榎泰邦)

    ○榎説明員 先生御指摘の輸銀の融資等、私どもの言いますところのその他の公的資金の流れ、これに対する評価という点でございますが、これは途上国との関係におきましても、途上国側の方からも、日本の公的資金の流れというものに対する高い評価というものは耳にしております。また国際的にも、たまたま昨今、ODA、政府開発援助というものが非常に脚光を浴びておりますが、OECD開発援助委員会、ここに出します統計では、途上国に対する資金の流れ全般ということで、政府開発援助及びその他の公的資金の流れ、それからプライベートフロー、民間の流れ、この三つを報告しておりますので、国際的な比較というものは、政府開発援助、ODAの比較のみならず、この三つの数字についてそれぞれ比較し得る状況にあるわけでございます。ただ、現実問題におきましては、客観的にそういう比較できる数字が出ているにもかかわらず、やはり国際的にはどうしても政府開発援助実績というものに関心が集まっているのがこれは事実でございます。  二番目に、ODAの定義について変えるように日本として主張されたらどうかという御指摘でございます。実はOECDの場でも、このODAの定義を変えたらどうかという意見が全くないわけではございません。ただ、議論の流れといたしましては、むしろODAの定義をより厳しい条件にせよ、具体的にはグラントエレメントをより高くするようにしたらどうかというのが国際的な議論の流れではございまして、日本を除きますDAC平均でのグラントエレメントは約八〇%、それに対しまして日本の八三年のグラントエレメントは五五%ということでございますので、むしろODAの定義の変更ということは、日本のODAの額が減る方向で定義が変更されるおそれすらあるという状況ではございます。  以上が客観的な事実関係でございますが、今後ともOECD会議等に臨むに当たりましては、先生の御指摘のところを十分配慮させていただきながら、いかに対応していったらいいかを考えさせていただきたいと思います。
  238. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 対外援助の必要性については改めて申し上げる必要もないと思いますが、私ども考えなければならないのは、日本の現在置かれております国際的な立場、地位からいたしまして、この援助の問題というのは決して無理にやっておるという、またそういう性質のものではないだろうと思うのでございます。現在我が国が行っております援助、量の面、それから今お話が出ましたグラントエレメントの面、あるいはGNPに対する比率といったような面、我々非常に努力をいたしまして徐々に改善はしておりますけれども、決してまたほかの国と比べていいということにはなっていないだろうと思います。ですから、現在の日本の援助というものが既にやり過ぎだというような感じは私どもは率直に申しましてまだ持てないわけでございまして、まだまだ努力をする必要がある。ですから、それなればこそこの非常に厳しい財政状態の中ででも最大限の努力をして、今後ともこういったODAの拡大に努力をしていくし、またしていかなければならない事情にあるだろうと思っております。
  239. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 では、行天さんにお伺いします。  例えば今の輸銀の、いわば日本の法人に貸して日本法人が出資しているというケースも相当多いようですけれども、こういったものはどうなんでしょうね、実質的なグラント的な要素が非常に強いと思うのだけれども、そういったものはどう評価したらいいのでしょうか。
  240. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 ただいまのお話は恐らく輸銀が融資をいたしまして、その融資をした金が出資に使われる、こういうことだろうと思います。したがいまして、政府の金が使われているとしても輸銀の融資という観点から申しますと、これはやはりグラントではない、融資であろうというふうに考えざるを得ないんじゃないかと思っております。それからグラントエレメントは、現在のODAにカウントされておるものだけとりましても日本の平均というのは、先ほど外務省からお話がございましたが、DACの平均に比べてまだ低いわけでございますから、これをさらにグラントエレメントを低いものまで入れるということになりますと、日本の平均的なグラントエレメントがさらに下がってしまうということになるのではないかと案ずるわけでございます。
  241. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 私が持ち出している問題は、基本的には、民間資金のうち直接投資というようなものは、これはある意味からいっても援助とは言わぬにしても現地の開発に役立つということでございまして、こういった種類のもの、政府ベースのすべて我々は最近民間にどんどんやってもらおうじゃないかということを大いに主張しているわけでございますので、本当に苦しい財政事情のもとに政府がやるのも一つのあれであるけれども、もっともっと民間活力の活用という面からいえば民間の直接投資、今の場合にも輸銀を通じて基本的には直接投資ということでございますけれども、直接投資的なものを、特に日本はどんどんふえてきているというものをもっともっと国際的にカウントしてもらう。でありますから、政府ベース、恐らくODAが出た発足のころ、民間資金政府資金では政府資金の方がどっちかというと主力である。しかし、このように民間資金の量がどんどんとふえてきているという状況のもとでは、いわば開発途上国に対する援助を政府ベースの援助だけを中心に議論するということをもう少し観念を変えてもらうべきじゃないかという気がするわけでございます。  そこでグラントエレメントを、むしろ後進国の立場から言えばもっと高いものにするという要素はあるにしても、政府ベースはそれとしても、民間政府と両方合わせた形で我々はこれだけ後進国にやっているんだということを評価してもらえるような主張を大いにすべきじゃないかと私は思います。いかがでございますか。
  242. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 委員御指摘のとおり、途上国への金の流れには公的な金もあれば民間の金もあるわけでございまして、特に我が国の場合、最近は大幅な経常収支黒字を背景にいたしまして民間資本の海外流出が多いわけでございますね。その中には、御指摘のような銀行等による途上国への貸し付けもございますし、それから直接投資もあるわけでございまして、こういったものが途上国においてそれぞれ雇用の創出、所得の移転あるいは経済発展に役立っておるということはまさにおっしゃるとおりでございますし、それはそれなりに私は国際的に評価されておると思っております。ですから問題は、ODAという一つの国際的な定義の中にどこまで入れてそれを考えるかということであろうと思いますが、ODAはODAで努力もするし、まさに民間のそういった資金協力もそれなりに私は十分国際的には評価されておると思っておるわけでございます。
  243. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 きょうは何か時間が大分短縮されてしまったものでございますから、これはまた留保いたしまして、アフリカの援助の問題とか、今の問題につきましてももう一遍突っ込んだ質問をしたいと思いますけれども、最後に大臣にどんな感じで今の論争を聞いておられたか。最終的に対外援助が必要なことはわかるけれども、まあ政府ベースでODA、何と申しますか、例えば五十年から五十五年、五十六年、六十年、倍増するんだと胸を張って気前よくどんどん出してきているという要素はございますけれども、この中には実質的には輸銀を通じて現地に対する出資なんかもある、民間の資金をどんどん活用していくという格好がある、そういうときにODAばかり気張ることもないのじゃないか。対外援助を聖域扱いするというのはどうか。  さっき質問の中で言えなかったのですけれども、では、これから大体五年間に一体どれくらい伸ばしていくんだ。これは改めて財確法のときにお聞きしますけれども、これをぐんぐん伸ばしていきますと、これはちょっとまた新しい聖域ができていきつつあるんじゃないかなという気が私はいたしますが、この点について最後に御感想をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  244. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 ODAの問題をどうするかというのは、外務大臣、それから金子大臣と相談いたしまして、OECD閣僚会議の前に一応新規目標を設定しようということまでは合意をいたしておりますが、新規目標とは、さて、この前のように倍であるとか、あるいは面積で倍であるのか実額で倍伸びるのか、あるいは対GNP比の伸びを上回るとか、そういう議論はまだ全くいたしておりません。  ただ、今おっしゃいました直接資本投資等において大変に喜ばれております、雇用の場も提供いたしますし。しかし、ODAというのは、考え方がトタに税金が出されておる、こういうところで議論をされますので、私どもも出資の場合を、国際機関の出資が割に大きくなっておりますからもっとカウントのシェアを大きくしてもらえぬかというような感想は持っておりますものの、いわゆるグラントエレメントそのものは長い昔に設定されたとでも申しましょうか、そういうものを動かすということは、そういう気持ちは持っておりますけれども、現実問題としてなかなか難しい問題ではなかろうか。むしろ民間、そして政府資金が迂回してそれぞれお役に立っておるものが評価されていけば、それまたそれなりに国際的な信用をつなぐことになるではなかろうか、こんな感じで承っておりました。
  245. 安倍(基)委員(安倍基雄)

    ○安倍(基)委員 この問題についてはまだ改めて継続的に聞こうと思っております。  では、この辺で、時間も参りましたから終わります。
  246. 中川(秀)委員長代理(中川秀直)

    中川(秀)委員長代理 蓑輪幸代君。
  247. 簑輪委員(簑輪幸代)

    簑輪委員 最初に、共済年金額改定法案についての我が党の態度を明らかにしておきます。  この法案は、恩給法の改正に伴って、国家公務員等の既裁定年金額を、一九八四年度の公務員給与の引き上げ額平均三・三七%に準じて引き上げるなど表面上の改善措置になっているものです。しかし、八四年度の人勧が六・四%であるにもかかわらず、これを三・三七%に抑え、臨調行革以降八三年度年金給付額は凍結され、八三年度は人勧が六・四七%であったにもかかわらず二%の低率に抑えるなど、違法行為と言える措置に基づく低率引き上げ、こういうことになってきているわけです。人勧スライド制のなし崩しによる年金生活者への影響というのは非常に重大でして、このような低率引き上げによる実質改悪というものを認めるわけにはまいりません。     〔中川(秀)委員長代理退席、掘之内委員長代理着席〕  一方、物価の上昇率は、八二年度からの積み残し分を合わせると四・八%にも達しています。八一年までは五%未満でも全面的にスライドさせてきたものが、臨調行革の開始と同時に物価スライド制までもなし崩しにしており、共済組合法の目的及び社会保障制度の本来から見て、年金生活者や社会的弱者へのしわ寄せは国民の納得を得られるものではないと考えます。  あわせて、国鉄共済年金財政破綻は国策の誤りによる政府の責任であるにもかかわらず、国鉄財調五カ年計画によって一方的に国鉄関係者年金引き上げ停止措置を図り、国鉄労働者、公企体、公務員に負担を転嫁するということは言語道断の措置であると思います。軍事体制下の国鉄職員構成上のゆがみ、満鉄引揚者や戦時中の応召による外地鉄道期間等の恩給分など累積額二兆三千億円にも上る巨額負担を全部国鉄にかぶせ、さらに今日臨調行革路線による国鉄の分割・民営化計画に伴って、国鉄職員の仕事をわざわざ外注に出して余剰人員づくりに励んでいます。八三年度の外部委託費三千三百六十六億円、つまり六万人分の人件費に相当する仕事を外注し、職員を部外活用に回しています。人件費の二重払いというとんでもないむだ遣いまでやって職員削減の手段にしているということ、到底承知できません。  年金財政を危機的状況に意図的に追い込んでいるのはまさに政府そのものであり、政府の責任をすべて国鉄労働者や公務員及び国鉄運賃の値上げによって国民に負担を転嫁するということはとても承知できるものではありません。断じて許されるものではありません。  物価スライド、人勧スライド制は、国民生活の安定、福祉の向上を図る上で、人間らしい最低の生活を保障する上で、絶対必要条件であると考えます。したがって、本法案は、一定の改善措置が行われるものとはいえ、年金、社会保障のあり方そのものを崩すもので、賛成できないということを明らかにしておきたいと思います。  共済年金についてのさまざまな問題については次の機会に詳しくお尋ねをしたいと思いますので、きょうは米州投資公社について幾つかお尋ねいたします。  まず最初に、米州開発銀行のニカラグアヘの融資について大臣にお尋ねいたします。  新聞報道によれば、ニカラグアの農業開発のための五千八百万ドルの米州開発銀行の貸し付け決定をアメリカが妨害しているというふうにされています。米州開発銀行を設立する協定第八条第五項(f)では、「銀行並びに銀行の役員及び使用人は、いずれの加盟国の政治問題にも干渉してはならず、また、いずれかの決定を行うに当たっては、関係加盟国の政治的性格によって影響されてはならない。その決定は、経済上の考慮にのみ基づいて行うものとし、」云々と定めております。同様の規定はアジア開発銀行などにも置かれております。  こうしたアメリカのニカラグアに対する貸し付け妨害というのは、協定の趣旨に反するものだと思います。日本は米州開発銀行に理事を送っておりますけれども、こうしたアメリカの政治的介入を排除して、ニカラグアヘの農業開発資金の貸し付けを決定するように政府としても努力すべきではないかというふうに考えますが、大臣はこの問題についてどのようにされるおつもりでしょうか、お伺いします。
  248. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 ニカラグアのIDBに対する総合的農業信用供与プログラムの融資申請、これは現在IDB事務局においてフィージビリティースタディーの調査を終わりまして、技術的検討を進めておる。検討作業はほぼ終了した。したがって、近いうちに理事会で結論を出す、こういう運びとなるというふうに理解をしております。  ニカラグア向け融資に米国が反対しているということも私ども承知しておりますが、我が国としては、本件が理事会の検討に付されるならば、他の融資案件と同じように借入国の経済開発に資するか否か、その観点からのみ検討して、適当な案件であれば支持していくという所存でございます。
  249. 簑輪委員(簑輪幸代)

    簑輪委員 これまでの米州開銀のこの種の融資について、理事会に上がってきた案件について我が園が賛成をしなかったというケースはあるのでしょうか。
  250. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 お答えいたします。  従来、米州開銀の融資案件で、理事会に付託された案件につきまして我が国の理事が反対したというケースはございません。
  251. 簑輪委員(簑輪幸代)

    簑輪委員 そういういきさつもございますし、日本政府としては、アメリカの態度がどうであれ我が国としてニカラグアに対する適切な援助という形で正しい対応をされるように、賛成されるというふうに伺ったわけですが、今回この米州開発銀行を補完するものとして米州投資公社が設立されようとしているわけですけれども米州投資公社も米州開銀と同様の政治介入排除の規定が置かれております。開発途上国の自主的な経済開発に資するように米州投資公社運営に当たっても不当な政治介入が行われないよう努力すべきであるというふうに考えますが、今後の点について大臣のお考えを簡潔に伺わせてください。
  252. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 これはやはりその国の経済開発に資するか否か、これの観点から検討をすべきものであるという基本認識であります。
  253. 簑輪委員(簑輪幸代)

    簑輪委員 では次に、ラテンアメリカ諸国へのアメリカや我が国の多国籍企業の海外直接投資の問題についてお尋ねいたします。  政府は資本供給国としての我が国の役割を強調して、海外直接投資を促進するため輸銀法の改正まで提案しております。しかし、多国籍企業の投資について見ると、UNCTADの調査によれば、一九七〇年から八〇年の期間、発展途上国への直接投資額六百二十六億ドル、直接投資に対する投資国への送金利益は千三百九十七億ドルというふうになっています。多国籍企業は一ドル投資するごとに二・二ドル本国に送金するということになっているわけです。特にアメリカの多国籍企業に限って見ますと、同じ期間、直接投資純流量に対する本国送金利益の比率、これは投資純領一ドルにつき本国送金七ドル以上というような驚くべき数字が挙げられております。  多国籍企業は、ラテンアメリカ諸国など発展途上国投資して多額の利益を上げておりますけれども、再投資をわずかしか行わないというふうに指摘されております。発展途上国で得た利益の七一%を本国に送金し、残りを再投資するという事態です。多国籍企業が発展途上国投資をしたその結果は、このような高い利潤率と利益送金政策によって結局逆にアメリカへ多額な資金を還流させているということになるわけで、何のことはない、途上国が先進国に資金を提供しているというような実態にさえなっていると指摘されております。こうした実態から見ますと、発展途上国経済困難に拍車をかけるというわけで、とても見過ごすわけにはまいらない事態であるというふうに思います。  ラテンアメリカ諸国における多国籍企業の占める地位は、製造品の付加価値に占める割合が一九七五年時点で一九%、ブラジル一国では一一七・三%となっていますが、ブラジルの主要企業の製造工業品輸出を見ると、外資系企業が何と四七・四%を占めています。このように、ラテンアメリカ諸国においては多国籍企業が大きな地位を占めています。こうした多国籍企業の直接投資が、投資の結果その利潤の大半を本国送金して、結局受け入れ国の経済発展に資するという役割を果たしていないという問題、そして貿易についても、多国籍企業の場合には本社と子会社間の企業内貿易という形をとっているために、ラテンアメリカ諸国の外貨獲得に奇与しないという実態にさえなっているわけです。こうした実態を大臣はどのように受けとめ、どのように対処されるおつもりでしょうか。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕
  254. 行天政府委員(行天豊雄)

    行天政府委員 開発途上国に対します民間投資委員御指摘のように、決して問題はないわけではないと思います。しかし、我が国の例を考えてみましても、いずれの国も途上国の過程におきましては外部の資金を必要とするわけでございますし、それをいかにその国自体の経済発展に役立てていくかということは、その国自身の努力と同時に、国際的な一つの協力と申しますか監視の体制が必要になるのだろうと思います。私ども国際開発機関の役割を非常に高く評価しておりますのは、まさにそういった面で国際機関の役割があるのじゃないかというふうに思っている点もあるわけでございます。私企業が全くその利益の追求だけで途上国に投資を行うというようなことは、これはもう決して好ましいことではございません。まさにそういう意味で各国が参加をしており、一つ一つの案件についても十分な国際的な審査が行われる、そういう国際開発機関の役割というのは、やはり私はこれからも大事にしていかなければならないのじゃないかと思っているわけでございます。
  255. 簑輪委員(簑輪幸代)

    簑輪委員 世界の発展途上国は飢餓と貧困に苦しんで、開発という問題に大変重大な関心を持っているわけですが、発達した資本主義国がこうした飢えや貧困に苦しんでいるところに資本進出をして、そして莫大な利潤を上げて持ち帰ってくるというのは非常に許しがたい不公正ではないか。これを何らかの形でやはり規制し、正しく経済発展が行われるようにしていかなければならないのではないかというふうに強く思うわけです。  ここに「ブラジル、メキシコにおける債務危機後の日系企業の戦略」ということで、ジェトロのアンケート調査紹介されています。それによると、債務危機発生後の日系メーカー本社の対策として配当送金による投資回収の促進、それから日系企業現地法人の対策としては、人員整理、レイオフなどということが挙げられています。こうした多国籍企業が移転価格操作を行ったりして、投資受け入れ国であるラテンアメリカ諸国の経済を攪乱しております。ブラジルでは、海外利潤送金規制を行っていますけれども、ジェトロの「ジェトロセンサー」によれば、送金が利子や輸入品の過大申告という形で行われたり、多国籍企業の支社が設備を輸入するとき、実際価格以上の過大評価に基づいて支払いを行う、こんな形をとってブラジルの海外利潤送金規制を事実上骨抜きにしているということが、現地記者座談会という形で紹介されております。  多国籍企業の価格操作については、UNCTADの「多国籍企業の市場力の支配的地位」、一九七八年のものですけれども、こういう報告書が出されております。ここでの事例を見てみますと、非常に驚くべきことが幾つか指摘されておりまして、「原材料に人為的なトランスファー・プライスを課する目的で価格規制の裏をかく周知の方法は、「原材料ころがし」として知られている」というようなことで、一部の会社では実際に完成品を市場に出すに先だって原材料を各地転々とさせて、その結果、最後には価格が三倍にも四倍にもなって戻ってくるというようなことが指摘されておりますし、さらに「財とサービスの過大価格設定または過小価格設定を行なうことの誘因は、」「おそらく先進国よりも開発途上国における方が大きいであろう。」ということで、特に「途上国におけるトランスファー・プライス濫用の最も詳細な証拠」というのは、コロンビアの例が出されております。コロンビアの例では、いろいろ報告されておりますが、「個々の製品をとった場合、その過大価格設定は、時には三〇〇〇%にもなるものがあり、また「調査を受けた外国企業全体についての過大価格設定の金額は、総計してロイヤリティの六倍、被許可業者の公表利潤の二十四倍という数字にのぼった。」」というような驚くべきことが指摘されております。こうした多国籍企業の価格操作について、このまま放置しておくということはできない、何らかの規制をしなければならないだろうというふうに思います。  それから、移転価格操作については多国籍企業は課税逃れにも利用しているわけで、政府は、移転価格税制についての導入を検討しておられて、私も委員会で質問さしていただきましたけれども、現在、それに関連してどのような状況になっているのかということを簡単にお答えいただきたいと思います。
  256. 梅澤政府委員(梅澤節男)

    ○梅澤政府委員 ただいま委員が御指摘になりました中南米の問題でございますが、その移転価格の実態を国税当局がどういうふうに把握しているかということ、国税庁が参っておりませんので的確にお示しするわけにいかないわけでございますけれども、一般論といたしましては、国際間の租税の問題というのは、二重課税の防止、それから課税の不当な回避という観点から各種の税制を検討しておるわけでございまして、我が国におきましても、今国会で大臣から御答弁もございましたように、現在、移転価格税制のいろいろ研究もしておるわけでございますが、ただいま委員の御指摘の方は、発展途上国のサイドから見た問題ということでございますので、この辺の問題になりますと、国内税制というよりは、午前中この委員会でも問題になりました、こういう国際間の取引が非常に活発になってまいりますと、税制そのものの国際的なハーモニゼーションということが当然問題になってまいります。ただ、今委員が御指摘になりました問題につきまして、我が国の税制でどういうふうに対応するかということでは必ずしもないというふうに考えております。
  257. 簑輪委員(簑輪幸代)

    簑輪委員 そういう側面だけに限らず、この移転価格操作ということによって多方面に被害が出ているということでございまして、特に我が国として、今移転価格税制について検討しているというわけですから、例えば六十一年度実施の運びになっているのかどうか、その点についてそれじゃ簡潔にお答えいただきます。
  258. 梅澤政府委員(梅澤節男)

    ○梅澤政府委員 今、昨年の秋から研究会で検討いたしておりまして、その成案がいつ得られますか、必ずしも現段階でははっきりしないわけでございますけれども、私どもの希望といたしましては、秋口ごろにその研究会の結論でも得られますれば、大臣の御判断を待って、また税制調査会で御議論を賜りたいというふうに考えております。
  259. 簑輪委員(簑輪幸代)

    簑輪委員 これは再三申し上げておりますように、早急に実施を行うべきものであるということを強く申し上げておきたいと思います。  最後に、ラテンアメリカ諸国の累積債務残高に占める我が国金融機関の残高は二百八十億ドルと、アメリカに次ぐ比率となっています。アメリカや我が国の大銀行は、七〇年代以降、有利な投資先としてこれまで巨額な貸し付けを行ってまいりました。それによって大きな利益を得てきたわけですが、一九八四年で見ますと、ラテンアメリカ諸国全体で百六億ドルの純資本流入であるのに対して、流出の方は三百七十三億ドル、結局二百七十億ドルがアメリカ日本などに還流してきているという数字になっています。日本はラテンアメリカ諸国の累積債務問題に直接大きくかかわり合いを持っているわけです。  そこで、こうした点から見て、ラテンアメリカ諸国に対してはアメリカの中南米政策に追随するのではなくて、中南米諸国の民族自決権を擁護し、当該国の自律的な経済発展に資するように、投資公社やその他の国際機関の運営、さらに民間大企業や大銀行が受け入れ国の経済発展を阻害することのないように厳しく監視の目を光らせなければならない、そして、必要な行政指導を行わなければならないと考えますが、大臣のこの点に関する御所見をお伺いしたいと思います。
  260. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 羅米諸国に対する、例えば一例を申し上げますならば、メキシコの多年度リスケとかということにつきましては、やはり日本の場合は国際機関、なかんずくIMF、世銀等々、それの監視のもとにおけるいわばコンディショナリティーの問題を中心にしながら、それを念頭に置いて対応してきておりますから、私は、今御指摘なさいましたように、銀行も含め日本投資家、それがいわば羅米諸国の民族自決権を阻害しておる、そういうことはないというふうに見ております。そういう批判を仮に受けるといたしますならば、十分自戒するように指導すべき問題であろうと思います。
  261. 簑輪委員(簑輪幸代)

    簑輪委員 時間ですからこれで終わりますけれどもアメリカのニカラグアを初め中南米諸国に対する民族自決権侵害行動が、世界世論の大きな非難を浴びていることは周知の事実です。したがって、日本政府としてはこのようなアメリカの行動、政策に追随するのではなくて、真に中南米諸国の発展のために適切な対応をとるべきであるということを重ねて申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  262. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 これにて、昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  263. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 本案に対して、堀之内久男君外三名より修正案が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。堀之内久男君。     ―――――――――――――  昭和四十二年度以後における国家公務員等共済   組合等からの年金の額の改定に関する法律等   の一部を改正する法律案に対する修正案    〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  264. 堀之内委員(堀之内久男)

    ○堀之内委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、その内容を簡単に御説明申し上げます。  御承知のとおり、本法律案の施行期日は、原案において「昭和六十年四月一日」と定められておりますが、既にその期日は経過いたしておりますので、修正案は、施行期日を「公布の日」に改めるとともに、これに伴いまして所要の規定の整備を行うものであります。  案文はお手元に配付してございますので、その朗読は省略させていただきます。  何とぞ、御賛成くださるようお願い申し上げます。
  265. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  266. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、堀之内久男君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  267. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  268. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  269. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、熊川次男君外三名より、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。上田卓三君。
  270. 上田(卓)委員(上田卓三)

    ○上田(卓)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして朗読いたします。     昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記事項について配慮、すべきである。  一 恩給の歴史的経過も考慮しつつも、年金の大改革に当たっては、適正・公平の原則に立ち、老後の生活保障の視点に立って他の年金との調整を図ること。  一 国鉄共済組合に対する国家公務員共済組合等のみによる財政調整事業は、昭和六十四年度までが限度であると考えられるので、昭和六十五年度以降については、全ての被用者年金制度間の負担の調整が図られるよう、検討に着手すること。  一 共済年金制度については、歴史的経緯に配慮し、公務員制度の一環としての側面も考慮すること。 以上であります。  よろしく御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
  271. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  272. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  273. 竹下国務大臣(竹下登)

    ○竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましては御趣旨を踏まえまして十分検討いたしたいと存じます。ありがとうございました。(拍手)     ―――――――――――――
  274. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  275. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  276. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十年度財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案及び産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の三法律案につきまして、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  277. 越智委員長(越智伊平)

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明二十二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十九分散会      ――――◇―――――