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1985-04-03 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月三日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       伊吹 文明君    糸山英太郎君       大島 理森君    加藤 六月君       金子原二郎君    瓦   力君       笹山 登生君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    宮下 創平君       山崎武三郎君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    渋沢 利久君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       武藤 山治君    古川 雅司君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         自 治 大 臣 古屋  亨君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      大出 峻郎君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房審         議官      角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         厚生大臣官房総         務審議官    北郷 勲夫君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省薬務局長 小林 功典君         厚生省社会局長 正木  馨君         林野庁長官   田中 恒寿君         自治大臣官房審         議官      土田 栄作君  委員外出席者         参  考  人         (全国知事会代         表)         (滋賀県知事) 武村 正義君         参  考  人         (全国市長会副         会長)         (北海道千歳市         長)      東峰 元次君         参  考  人         (福岡田川市         長)      滝井 義高君         参  考  人         (名古屋市立大         学経済学部教         授)      牛嶋  正君         参  考  人         (朝日新聞社論         説委員)    広瀬 道貞君         参 考  人         (法政大学社会         学部講師)   中西 啓之君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 委員の異動 四月三日  辞任         補欠選任   山岡 謙蔵君     伊吹 文明君 同日  辞任         補欠選任   伊吹 文明君     山岡 謙蔵君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例  等に関する法律案内閣提出第八号)      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案を議題といたします。  これより本案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席をいただきました参考人は、全国知事会代表武村正義君、全国市長会会長東峰元次君、福岡田川市長滝井義高君、名古屋市立大学経済学部教授牛嶋正君、朝日新聞社論説委員広瀬道貞君、法政大学社会学部講師中西啓之君であります。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚なき御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。まず、参考人から御意見を十分ないし十五分程度お述べいただいた後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず最初武村参考人からお願いいたします。
  3. 武村正義

    武村参考人 滋賀県知事武村でございます。  諸先生方には、日ごろは地方行財政の諸問題につきましても格別の御理解を賜りまして、厚く御礼申し上げる次第であります。  本日は、国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に関しまして、地方団体意見を申し述べる機会をお与えいただきましたので、意見を申し述べることにいたしますが、私ども地方団体考え方につきましては、既に三月二十九日の本委員会におきまして、全国市長会及び全国町村会代表から申し述べましたとおりでございますので、重複する点がありますことにつきましてはお許しを賜りたいと存じます。  今さら申し上げるまでもございませんが、行政改革財政再建の要請は、国も地方も現在の事務事業そのものを抜本的に見直しをし、思い切った整理縮減を行うことによって、行政全体の減量化と総歳出の削減を図るとともに、国と地方との二重行政を排除して、国も地方も身軽になることが最も肝要であると考えております。ただいま論議されております国庫補助金等整理合理化につきましても、このような観点に立って進められるべきであると考えております。  このため私どもは、地方団体に対する国庫補助金のうち、一、地方団体事務事業として同化定着しているもの等、地方自主性にゆだねることが適切と考えられる補助金や、二、人件費法施行事務費等運営費に係る補助金等を廃止、縮減をし、地方一般財源化を図るべきであるとして、具体的な方策知事会として提案を申し上げているところでございます。このようにすれば、地方自主性自律性もより強化されますとともに、国の事務も、さらには負担も大幅に軽減をされ、財政再建にも大きく寄与することができると考えるからでございます。  ところで、昭和六十年度の予算編成に当たって、政府がおとりになった国庫補助負担率の一律削減方式では、国、地方を合わせた公的支出の総計は全く軽減されず、また、仕事の進め方の上でも何らの合理化も見られないのでありまして、単に国の負担地方に転嫁したにすぎず、行政改革基本理念に反するものと言わざるを得ないのであります。このような地方の一方的な犠牲の上に立った国の財政再建が続けられますと、車の両輪としての国と地方との正常な財政秩序は乱され、国と地方との間の信頼関係をも損なうものと危惧しているものでございます。  もっとも今回の措置は、昭和六十年度限りの暫定措置としてとられておりまして、とりあえず、昭和六十年度の地方財政運営には支障を生ずることのないよう当面の措置が講じられており、また、昭和六十一年度以降のあり方につきましては、政府部内において今後検討されるとのことでございますので、早急にこれまで私どもが要望をしてまいりました方向での適切な結論が得られ、明年度から改善が図られますよう期待を申し上げる次第でございます。  また、ただいま申し上げましたように、今回の措置昭和六十年度限りとすることも厳守をいただきたいと存じますし、今後、今回のような地方団体の不信を招くようなやり方は二度と繰り返されないよう、この点も強くお願いを申し上げる次第でございます。  なお、今回提出されております法律案によりますと、昭和五十九年度限りとされておりました地域特例に関する補助率引き下げ措置につきましても、さらに一年間延長されることになっております。この点につきましては、昭和五十七年におけるこの措置制定経緯に照らしましても、私どもといたしましてまことに遺憾に存じておる次第であります。  以上、私ども地方団体立場から忌憚のない意見を率直に申し述べましたが、何とぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手
  4. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、東峰参考人お願いいたします。
  5. 東峰元次

    東峰参考人 全国市長会の副会長をいたしております千歳市長東峰元次であります。  衆議院大蔵委員会の諸先生におかれましては、地方行財政の諸問題につきまして、日ごろから特段の御理解と御尽力を賜っており、衷心から感謝申し上げます。  本日は、国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案につきまして、意見を申し述べる機会をいただきましたので、直接都市行政に携わっております市長立場から意見を申し上げることといたしますが、私ども地方団体考え方につきましては、ただいま滋賀県知事さんから申されましたように、三月二十九日の本委員会におきまして、全国市長会会長代理福井市長から申し述べましたとおりでありますので、重複の点がありますことをお許しいただきたいと存じます。  国庫補助金等の問題につきましては、都市財政自主的運営資金効率的運用を図るため、機会あるごとに整理合理化推進を要請してまいりました。すなわち、国庫補助金等整理合理化に当たっては、まず事務事業見直しを行い、行政の責任を明確にするとともに、都市自主性自律性を強化するため、一般財源化統合メニュー化総合補助金化等推進し、事務処理簡素効率化を図っていくべきであると考えております。  しかるに、政府は、昭和六十年度の予算編成に当たり、国民生活と密接に関連する生活保護を初めとする社会保障関係費公共事業国庫補助負担率を一律に引き下げたり、義務教育費国庫負担金における教材費族費国庫負担対象から除外するなど、国、地方を通ずる事務事業の抜本的な見直しを行わないまま、一方的に削減を行ったのであります。このことは、単に国の財政負担地方へ転嫁するだけであり、国、地方を通ずる事務経費節減合理化には何ら寄与するものではありません。さらに行政改革の趣旨にも反するのみならず、国と地方の間の信頼関係をも損なうものと言わざるを得ないのであります。  したがいまして、このような国庫補助負担率の一律引き下げについては、その撤回を強く求め、反対運動を展開する一方、先ほど申し述べましたような見地に立った私ども整理合理化方策をも提案して、国庫補助金等整理合理化が速やかに図られるよう要望してまいったところでありますが、単に国の財政事情のみによってこれが受け入れられなかったのは甚だ残念であり、まことに遺憾に存ずる次第であります。  しかし、今回の措置は、昭和六十年度限りの暫定措置とした上で、とりあえず昭和六十年度の地方財政運営には支障を生ずることのないよう当面の対策が講じられており、また、昭和六十一年度以降の補助率あり方については、政府部内において今後検討されるとのことでありますので、これまで私どもが要望してまいりました方向で早急に適切な結論が得られ、明年度から改善が図られますよう期待するものであります。  なお、ただいま申し上げましたように、今回の措置昭和六十年度限りとすることを厳守していただき、今後、今回のような地方団体信頼関係を損なうようなやり方は二度と繰り返さないように、この際強く要望申し上げる次第でございます。  また、申し上げるまでもなく、法律案審議、取り扱いにつきましては、私どもがとやかく申し上げる筋合いではございませんが、私ども直接地方行政を執行する立場にある者といたしましては、地方行政を円滑に執行してまいりますためには、法律制度の安定と行政が継続して行われることが不可欠であると考えるのでございます。したがいまして、予算法制とが一致しないという不確定な状態が長く続くというようなことは極力避けていただくよう、切に要望申し上げる次第でございます。  以上、市長立場から忌憚のない意見を申し述べましたが、何とぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手
  6. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、滝井参考人お願いいたします。
  7. 滝井義高

    滝井参考人 おはようございます。  大蔵委員の諸先生方には、地方行政に対して常日ごろから非常な御尽力、御推進をいただいておりますことを、この機会に心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。  なお、本日大蔵委員会に、国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に対して参考意見を述べる機会を与えていただきましたことを感謝をいたしたいと思います。総論的な問題につきましては、本日も滋賀県知事さん、千歳市長さん、二十九日には我々市長会代表福井市長さんがお述べになりました。私は少し角度を変えて、第一線の自治体を担当し、特に財政の苦しい産炭地財政を担当する市長として、この法案がいかに我々地方自治体行政を圧迫するかという点について御説明し、御理解を得たいと思います。  まず、この法案を提出する理由について見てみますと、国の財政収支改善を図るということが第一でございます。第二には、財政資金の効率的な使用を図るということです。しかもその根底には、累次の臨時行政調査会答申を踏まえてこの補助金一括削減法案を出しました、こういう形になっております。国の財政収支改善を図るために地方負担をかけることは、地方財政収支がうまくいかないということをお忘れになっているんじゃないかという感じがいたします。どうして国がこういう考え方を持つかというと、国は百二十二兆の借金を持っている、地方自治体は五十六兆だ、半分だ、だから国に比べて地方自治体財政余裕があるという地方財政余裕論に立っておるんじゃないかと思うのです。ところが、その考え方は、国のように自由自在に財源を調達できるところと、国の法律に基づいて条例をつくって自由財源をつくるのとは、全然立場が違うわけです。この認識を大蔵省は忘れているんじゃないかという感じがいたします。  そこで、こういう法案が出ましたので、私は当初予算自分で組んでみたわけですが、財源不足予算が組めない。そこで、国と同じように補助金をまず一〇%カットせざるを得なくなった。四面楚歌の中でカットいたしました。同時に手当や支払いを全部繰り延べをいたして、六月以降、国の財源がある程度見通しがついた段階でそれを補てんせざるを得なくなったわけです。同時に、職員の定期昇給を全部ストップいたしました。それでもなお財源が足りませんので、なけなしの蓄え、いわゆる財政調整基金を二億円も使ってようやく収支のつじつまを合わせだというのが、六十年度予算編成の姿でございます。  しかし、一応この法律を出していただいたために、私たちはある程度節約をしなければいかぬかなという節約精神は持ちましたけれども、この法律を出されたために我々の受けたショックは非常に重大です。まず地方自治が危機に瀕するということ、もう一つ福祉の前進ができなくなるという点です。これは私たちにとっては大きなショックでした。節約精神よりもっと大きなショックを受けたということでございます。こういう前提に立って、今回のこの一括法案には、当然我々を安心させるために財政措置が講じられております。その財政措置のいろいろの問題点について、まず御報告をさせていただきたいと思います。  お手元に、ちょっと数字を書いておりますので、ざっと文書でお配りをいたしております。  まず、この法律カットによって五千八百億の財政的な穴が我々にあくわけです。そこで、政府はこれを二つ方向財源措置をしました。まず経常的な経費系統二千六百億円、それから投資的経費系統で三千二百億円でございます。経常的経費系統の二千六百億円は、まず気前よくばっと千億の交付税特例加算というものをくれたわけです。これは、国がこれだけの面倒をこの法律によって見てくれるのはありがたいという感じを持ちました。ところが、二千六百億のうち千億はそうしましたけれども、残りの千六百億は建設地方債で賄う、借金でやれということになった。それから、投資的経費の三千二百億は、二千億は臨時財政特例債というものでやります。臨時財政特例債というのは、元利償還は一〇〇%見てくれるものです。これはちょっとありがたいです。千二百億は建設地方債です。したがって経常的経費の千六百億、それから投資的経費千二百億、計二千八百億は建設地方債で賄うことになりました。この財源措置で一応財源不足は完全に措置された、こうおっしゃるわけです。果たしてそうかどうかということでございます。  そこで、まず経常経費系統カット分の千六百億を建設地方債で賄ってくれますけれども、これは矛盾があるのじゃないかというのです。どういう矛盾があるかというと、私たちのような産炭地はもう金を借りられないんです。私の郡の中では四〇%の起債率を持っているところがあるんです。一々地方課に伺いを立てないと地方債をもらえないわけです。そうすると、そういう地方債をもらえぬような、うんと借金のあるところが建設地方債をもらえるかというと、もらえない。もらえなかったら、それは全部自己負担になるわけです。こういう矛盾があるということです。これは具体的にどのような形で矛盾が出てくるかわかりません。わかりませんけれども、理論的に言うと、まず最初にそういう矛盾があるということです。  それからもう一つは、地方交付税起債によって財源不足をカバーすることになっておりますけれども、そのような措置で個々の自治体にどのように具体的に一体金が来るかということは、今皆目不透明でわかっていません。ただ五千八百億は交付税特例加算建設地方債で賄ってやると言われるのですけれども、さて具体的に田川市にどのくらいの金が来るかということはわかっていないわけです。  次に三番目の問題点として出てくるのは、最前申しますように、建設地方債を経常的な経費で千六百億、投資的経費で千二百億、計二千八百億について措置してくれるわけですが、その二千八百億をどのようにして私たち地方自治体にくれるかというと、二つの方法でくれるんですが、まずそのうちの八〇%を地方交付税で見てやりましょう、こういうことです。そうすると、八〇%を交付税で見てくれるわけですが、非常に各論的になるのですが、その四分の一は公債費の項で見ます。四分の三は単位費用で見る。ここが問題なんです。そうすると、四分の一を公債費で見、四分の三を単位費用で見ますと、建設地方債を借り入れていない団体単位費用の分で交付を受けることになるわけです。単位費用というのは、地方債を借ろうと借るまいと、全国みんな単位費用で計算をしますから、そうすると、建設地方債生活保護や失対やその他を削られて受けたところと受けないところに不公平ができるわけです。受けないところも単位費用でもらえるわけですから、ここに不公平が出てくるわけです。これはそういう疑問が出るわけです。  そこで、四分の三を単位費用で見るのじゃなくて、建設地方債をもらった地方自治体の八〇%全部を公債費で見てもらいたい。そうすれば、この団体建設地方債をもらっておるのだからというので、それは全部行くことになるわけです。それを四分の三、大部分を単位費用で見るということについてはどうも疑問がある。これは私の勉強不足で間違っておるかもしれぬけれども、そういう感じがいたします。ここらあたりは篤と御調査を願いたいと思います。  それからもう一つ、大変大きな転換がこの法案に隠れておるのは、このように交付税で全部肩がわりしていくという点でございます。交付税は、御存じのように所得税法人税と酒税の三二%というのは、包括的にいえば地方一般財源でございます。その地方一般財源補助金カットしておって、それをカバーするときに地方交付税で見るというならば、タコが自分の足を食うのと同じでございます。すなわち、交付税はことしは一〇%以上も伸びた、九兆四千四百九十九億もあるんだ、一〇%もふえたんだから、少しぐらいは国のカット分交付税で賄ってもいいじゃないか。そういう安易な考え方でこれを処理しておると、これから財源不足するときは全部、三二%の交付税がふえるからそれをカットせいといえば、地方財源は極めて不安定な状態に置かれる。そういうものを含んでおる。もしかすると、大蔵省は来年以降交付税に手をつけるんじゃないかという心配が、このやり方を見ると出てくるわけです。  御存じのように、近時、国は地方公共団体財源不足に対して、毎回財源対策債を出すわけです。財源対策債、いわゆる建設地方債も含めてそういうものを出すわけです。これは一〇〇%国が見てくれるわけじゃないのです。私の市のように既に二〇%を超えて赤信号の出ている自治体は、最前申しましたように借れないわけです。そうすると、この恩典をうまく受けられるかどうか非常に疑問が出てくるという点が、ここにもあらわれてくるわけです。  次に、この補助率引き下げによって、私の方の市は約六億六百万円の影響を受けます。そしてこれを地方交付税建設地方債措置をされることになるのですけれども、その六億六百万が具体的にどういう形でやってくるかということは、最前申しましたように、全然わかりません。わかりませんから、今のように予算カットしてやっているんだけれども、薄氷を踏む思いでございます。  もう一つ生活保護削減されたわけですが、これは激変緩和措置として官房調整費八百億円の中から二百億円を厚生省に与えておるようでございます。この二百億円の配分をどのようにやってくれるのかという点でございます。これについては、四日か五日ごろに参議院で予算が通ったら、その段階でどういう基準でやるか基準を決める、こうおっしゃるわけです。その基準というのはどういうことになりますかというと、国が今千分の十二ぐらいの生活保護率でございます。その十二より恐らく高いところになるだろう。財政力指数の低いところになるだろう。福祉事務所の人員の配置や運営が適正であるかどうか、そういうことになる。じゃ、金はいつくれますか。金は十月以降になるであろう。こういうことなんです。そうしますと、私たちはその間借入金をしなければならぬことになるわけです。これは私どもで四月二日に一億三千万ぐらい払うわけです。そうすると、その金がないわけですから、借入金で払っていくことになります。その利子が出てきます。私の市で五十億ぐらいの借入金の枠を持っておりますが、利子だけで一億円ぐらいになるのです。そうすると、今度こういう措置でますます借りなければならぬというと、それがふえてくる。こういう点が逆に地方財政を圧迫をすることになる。  もう一つ生活保護と関連をして、実は土光臨調の第一次答申を読んでおりましたら、補助金カットの中で、生活保護は切っちゃいかぬ、除外をすると書いていらっしゃるわけです。第一次答申が五十六年七月に出ております。これは生活保護除外をすると書いてあります。それから五十六年八月二十五日に「行財政改革に関する当面の基本方針について」という閣議決定があるのです。これでも同じくこれは除外することになっているわけです。ところが、政府土光臨調を最大限に尊重いたしますという閣議決定をしておりながら、天下に公約をした方針をみずから破っていくという形をとっております。こういう点は大変遺憾な点で、そういうことになりますと朝令暮改で、政府方針地方自治体は信頼することができない、地方自治体の長期の方針を立てることができない、こういう形が出てきます。  以上、概要を申し述べましたけれども、これが一年限りの暫定措置だということですけれども、聞くところによりますと中、長期の財政見通しては、来年度三兆円くらい国の財政不足する。そうなりますと、またもう一年延ばしてくれということになるのではないかということを心配しております。  なぜそういう心配をするかというと、行革特例法は五十七、五十八、五十九年限りですと言っておりました。特に私の方がそのときに問題にしたのは厚生年金ですが、これは当時渡辺さんが大蔵大臣だと思うが、借りておるわけですが、それをまた一年延ばすわけです。そうすると、政府は国会を通じて国民に約束をして三カ年とした時限立法をどんどん延ばしていくという形になれば、こういうものも延ばされると、地方自治体はまさに見通しを持って行財政運営ができなくなるという危機に直面しております。  最後にもう一つ、私の方の危機があるのは、このように政府が期限のある時限立法を勝手にどんどん、いわゆる我々に負担のかかる形で延ばしていく。一方、私の方では、例えば今度生活保護と失対が一番切られるわけで、失対が一億五千万くらい切られることになるわけですけれども御存じのように五十五年、六十年、五年ごとに失対制度の見直しがあります。そうすると、この失対制度の見直しで、六十五歳以上の線引きがもしぱっと行われると、私の方で二千六百人の失業者が働いておりますが、そのうち半分以上が六十五歳以上でございますから、首を切られる。こういうふうに補助金カットされる、それで六十五歳の線引きをされるといったら、地域経済というものはもう全く陥没をしてしまって、いかんともしがたい状態になってしまうわけです。第一線で日夜苦労をいたしております我々も、自立自助、みずからの力でみずからの自治体を築く努力を最大限にいたしますけれども、やはり政府法律その他を、期限が来てぎりぎりになって延ばすか延ばさぬか、国会でがたがたして決められてしまうという形はとらずに、一年くらい前からこの法律は延ばす、この法律は延ばさない、こういう方針を決定していただければ、我々はそのまにまにきちっと自分方針を決めて、財政運営を健全にやってまいりたい、こう思っております。  いろいろくだらぬことを申し上げましたけれども、以上、第一線で担当しておる自治体の首長としてのこの法案に対する考えを申し述べまして、私の参考人としての意見を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  8. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、牛嶋参考人お願いいたします。
  9. 牛嶋正

    牛嶋参考人 きょう、国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について意見の陳述をさせていただくことにつきまして、委員長にお礼を申し上げます。  ちょっと長い法律の名前でございますので、この後法律案というふうなことで御説明をさせていただきたいと思います。  この法律案の提案理由説明の中で、二つの趣旨と申しますか、目的が掲げられております。  その一つは、国の財政収支改善を図ることということであり、いま一つは、財政資金の効率的使用を図ることということになっております。  このうち、最初の、国の財政収支改善を図ることでありますが、もしそれが地方団体財政収支の悪化を招くということになりますと、国と地方団体を含めた公共部門全体としては、財政収支改善につながらないということになってしまいます。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕 したがって、納税者の立場からいいますと、今回の法律案というのは、国から地方団体財政赤字のツケが回されたというふうな形でとらえられることになります。したがって、国の財政収支改善が図られるとともに、公共部門全体として、財政資金の効率的使用につながっていくものでなければならないわけであります。  この場合に、財政資金の効率的使用を図るということでございますが、今の国と地方事務配分量から申しますと、特に地方団体における行政の効率性を高めるということが重要な意味を持ってくるのではないかというふうに思いますし、その地方自治体におきまして、行政の効率化を図っていくためには、私は少なくとも三つの条件が必要かと思います。  その条件と申しますのは、第一番目には、今進められておりますが、地方団体がみずからの努力で、行政合理化、効率化を図っていくということであります。この内容につきましては、「地方行革大綱」の中で示されております七項目が考えられるところでございます。  二番目の条件といたしましては、地方団体自主性を強めるため、できるだけ一般財源比率あるいは自主財源比率を高めて、地域の実情に合った行政を進めるということでございます。  そして、第三番目の条件として挙げたいのは、地域間あるいは地方自治体間の財政力格差の是正を図っていくということでございます。  この三つの条件が、今後地方団体行政改革を進める場合の基本的な課題というふうに私は考えているわけでございますが、きょうは、今回の法律案に含まれております五つの項目を検討する場合の検討基準として、今申し上げました三つの条件に基づいて、逐次検討をしてまいりたい、こういうふうに思います。  今回の法律案は、その内訳を見ますと、第一番目には補助規定の削減に関するもの、これは補助金等の項目で申しますと、十二項目含まれております。二番目は、補助規定を交付金規定へ改正するとするものであります。ここには七項目が含まれております。それから三番目は、補助金臨時法の措置の恒久化でございまして、この中には六項目含まれております。それから、行革関連特例法の一年延長でございます。そして、最後が高率補助金引き下げ特例ということになっておりますが、項目の数あるいは金額から申しまして、後の二項目、すなわち行革関連特例法の一年延長、それから高率補助金補助率引き下げの特例、これが重要な内容を持っているというふうに思われます。  このうち、第一番目の補助規定の削減についてでございますが、これは交付税措置への振りかえを伴うものでございますから、さきに挙げました、検討する場合の三つの基準から申しますと、第二のものにこれは適合するというふうに考えられますので、行政改革方向にかなった見直し整理であるというふうに私は考えております。  そして二番目の、補助規定を交付金規定へ改正するという項目につきましては、これは従来の定率補助金方式を改めて交付金方式とするものでありますが、この交付税措置への振りかえほどではありませんけれども地方自治体にとりましてある程度選択の幅が広がるという意味では、この改正案につきましても一応評価をすることができるのではないかというふうに思っております。  そして次に三番目の、補助金臨時法の措置の恒久化でございますが、これは従来の臨時法で取り扱われておりましたものを個別法に移して恒久化するということでございますので、これは恐らく地方自治体から見て実質的にはほとんど変化がないのではないかというふうに考えております。むしろこういうふうに恒久化することによりましては、次の段階としてこれを交付税措置の方へ振りかえていくというふうな見通しがあります場合には、この措置もある程度の評価ができるものというふうに思っております。  問題は、後に残されました二つ措置でございまして、まず四番目の行政改革関連特例法の一年延長につきましては、これは先ほど説明もございましたけれども、五十九年までの臨時特例措置であるわけでありまして、六十年度からもとへ戻すということになるものであります。それが一年延長されるわけでありますから、この点につきましてはやはり国の財政赤字のツケが地方自治体の方に回されたという印象をぬぐうことはできませんで、この措置につきましては私は反対の意見を持っております。  そして最後の高率補助金の一律引き下げでございますが、この内容を見ますと、いずれも法律補助でございます。したがって補助率カットされましても、地方自治体の方で行政水準を引き下げることはできないわけでありますから、その分だけ地方自治体財政収支を悪化させることになることは明白でございます。  しかもこの四十項目の内容を見ますと、民生、福祉関係、さらには僻地、過疎対策に関する項目が多いわけでございます。これによりましてより大きな影響を受ける団体というのは、これは財政力の乏しい団体と言えます。したがって、この措置が講じられることによりまして、私は地方自治体間の財政力格差がかえって拡大していくというふうな問題を含んでいるのではないかと思います。したがってこの項目につきましては、さきに示しました三つの検討基準のいずれにも不適合というふうに考えられるわけでありまして、したがってこの措置は、今進めております地方行革に対しまして逆行する措置であるというふうに考えております。  国の側から見ますと、地方財政が窮屈になればなるほどかえってその地方行革への励みといいますか、推進力になるのではないかというふうな考え方があるかもしれませんけれども地方団体は従来からもそれなりの行政合理化、効率化に努めてきているわけでありまして、現在も地方行革の大綱に従いまして、各自治体におきましては行政改革推進本部などを設置いたしまして、その行政改革推進しようという機運は非常に大きく膨れているわけであります。特に財政力の乏しい団体ほど行革への意気込みは大きいと思っておりますけれども、このような機運、意気込みが、むしろ今申し上げましたように、財政力の格差を拡大するような高率補助金引き下げによりまして抑えられてしまうのではないかという心配をしております。  したがって、最後に申し上げたいことは、先ほどからのお話もありますけれども、少なくともこの措置が六十年度限りであるということを地方自治体に明確に示すべきであると考えております。  以上でございます(拍手
  10. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 ありがとうございました。  次に、広瀬参考人お願いいたします。
  11. 広瀬道貞

    広瀬参考人 朝日新聞の論説委員をしております広瀬道貞でございます。  私は、この特例法案に反対でありまして、六十年限りという意見もございますが、できればこれは廃案にした方がいいと思います。以下、その理由を申し述べます。  私は、政治と行政改革を担当しておりますが、補助金一般については削減していく性格のものだと思います。第一の理由は、やはり「増税なき財政再建」を確実にするためには、歳出のかなりの部分を占める補助金にメスを入れざるを得ない。いずれはこれを削減していかざるを得ないというのが一つの理由です。第二の理由は、やはり補助金行政には必ずむだがつきまどうものだということ。あるいは補助金行政というのは地方自治の本旨に背く部分が非常に多いということ。さらにまた補助金というのは政府、省庁が一方的に給付する貨幣ということでありますから、かなりこれが政治的に使われるということ。非常に有力な政治家のいる選挙区には補助金が比較的多く流れる。こういう行政の不公平といいますか、政治の不公平を排除していくためには、やはりできるだけ補助金を少なくして、地方一般財源をふやすべきだと思うからであります。  以上、補助金削減すべきであるという立場なんですが、今回の法案を見ますと、削減すべき補助金の対象をまず間違っている。二番目に、削減の方法が悪い。補助金削減に賛成する立場にありながら、この法案に反対せざるを得ないわけです。  非常に大ざっぱに言いまして、補助金というのは二つに分かれると思います。どこに交付するか、民間団体であるか地方自治体であるか個人であるか、いろいろ対象によって分けることもできますけれども自治体交付する補助金も、大ざっぱに言って二つに分けることができると思うのです。  第一の分野は、制度を維持するための補助金というような言い方ができるのではないかと思うのです。例えば、憲法では初等教育を受ける権利がある。義務教育の制度を守っていくために、国と地方で大体半分ずつの金を出し合っていこうよというのが今の義務教育の制度になっております。それからまた、生活保護につきましては、だれだって最低限の文化的な生活をする権利がある。この生活保護の制度を守るために、これも国と地方で金を出し合っていこう。その場合、これは国によるところが大きいので、国が八割は出します、地方が二割は出します。それからまた失対事業についても同じようなことで、失業者をほうっておけば非常に社会の混乱がふえていく。したがって、これは国の責任で救済していく。それで失対事業という制度が出てくるわけですが、この制度も国が中心になるべき仕事であるから国が八割は持つ、地方が二割は持つ。こういう制度を守っていくための補助金は、名前は補助金でありますけれども、いわば国と地方がお金を出し合う分担金みたいなものだと見ていいと思うのです。つまり、これは一般の補助金とは範疇がちょっと違うのじゃないかと思います。  二番目の補助金というのは何かといえば、これは政策誘導的な補助金という言い方をしていいのじゃないかと思うのです。これは別段法律にはないのだけれども、例えば地域で文化活動を大いに推進していきたいと文部省が考える。そうしますと、府県なり市町村なりの文化関係の予算をふやしたいと文部省が思うの似当然でありまして、そうすれば、文化センターをつくるとか、あるいは美術館をつくるとか、そういうことには国がお金を出しましょう、文部省がお金を出しましょうということになってくる。そして府県なり市町村の財政を文化的な面に誘導していく、そういうものだろうと思います。下水道を普及させるのが国の基本的な政策だと建設省が考えれば、下水道の建設についてかなり高額の補助金を出す。つまりこういう市町村、府県の政策を誘導していくために、言葉は悪いのですが、釣りえみたいにして補助金を出していく。この補助金はもらえるところもあるし、もらえないところもある。非常に政治絡みになってきているケースが非常に多いと思うわけです。  私は、補助金を削るべきだというときには、こうした政策誘導的な補助金を削っていけばいいのだ、それを行うのが地方自治の本旨にもかなうと思うわけです。ところが、今回の特例法を見ますと、まず四十二件の補助金というのはいずれも前者の制度的な補助金になっている。この特例法案のもう一つの柱であります公共事業の高率補助金については、私はこれは必ずしも反対ではありませんで、仕方がないかなと思うのですが、その四十二件の制度的補助金、これは全く理由も何もない。最初申しましたように、いわば分担金であるべきものを自分の分担をやめる。一方的にやめられたら相手方が困るのは当然でありまして、それをやるには相当の手続も要ると思うのですけれども、そういうのも踏まれてない、そう思うわけです。  それでは一体制度的な補助金を削ることが一切許されないかといえば、もちろんそれはそうじゃないと思うのです。どうしようもない、国の財政がどんなに振っても財布から何も出てこないという段階になったらば、それは頭を下げて地方自治体の協力を仰がなければいかぬと思うのですけれども、私が見る限り、そこまでは行ってないと思うのです。  ここにありますのは「補助金総覧」という五十九年度の版で、これは五十九年度の予算でもらえている補助金約二千六百件あるわけですが、その一つ一つについて、金額でも手続でも、どこに払うかというような細かい説明があるわけです。これは大蔵省関係の出版なので、皆さんの手元にもあるかと思いますが、例えばこの一ページ目、総理府から始まるわけですが、一ページ目を開きますと「動物収容施設整備費補助金」という、約六千万か何かのがあります。最初に出てきます。これは地方自治体が保健所に犬や猫の施設をつくるときに、国が半額補助しましょうという補助金なわけです。私は、一体国が犬猫の世話までしなければいかぬのか、そんなのは市町村に任せていいじゃないかと思うわけです。こういう補助金をまず削ったらどうか。  次のページを開きますと、「国民健康体力増強費補助金」、これは一億以上のものですが、これが出てきます。これは何かというと、財団法人健康・体力づくり事業財団という財団がありまして、そこに委託費として払う。するとその財団が全国の府県、市町村の体育担当者を集めて、合宿訓練か何かして指導者養成に金を使っていく。こういう金がない方がいいとは思いませんけれども、体力の増強だとか健康増進に一体国が何ができるか、そういう仕事は本来は市町村の仕事じゃなかろうかと思うのですね。そういうのをまず削っていけばいいじゃないか。  六十年度の予算案を見てみますと、最初の犬猫の方はさすがに削られております。国民体力の方はそのまま残っている。どうしてだろうかといろいろ聞いてみますと、既に財団ができていて、その財団というのはいろいろな人も働いておる、そう簡単には切れないということのようです。しかし、行政改革というのは、実はそういうあってもなくてもいいような機関を整理していく、廃止していくというのが趣旨でありますから、本来はそういうものを削っていくべき性格のものだろうと思います。  それからさらに、さっき誘導的な補助金の中で、例えば農水省にしてみれば大いに農業関係の予算をふやしてもらいたいし、農業関係の職員をふやしてもらいたい。したがいまして、農業改良普及員というような市の職員に対しましては、その人件費の一部を補助しましょう。それから厚生省にしてみれば、保健所をふやしてもらいたい。保健所の職員をふやしてもらいたいために、そういう職員には厚生省人件費の一部を負担しましょうという、そういう職員の人件費の補助があるわけですね。  今回の法案政府部内でもめた際に、自治省側は府県、市町村を代表して、削るならばそういう人件費補助金をまず削ったらどうですか、そうなれば府県、市町村は、一体ここに保健所の職員が必要かどうか、農業改良普及員が必要かどうか、それを自分たちの頭で考えることができる。補助金を減らされた分、それを地方が丸々負担するのではなくて、一体こういう制度が必要かどうかを改めて見直すチャンスになる、だからそっちを減らしなさい、こういうことを言ったわけです。ところが、そういうのは温存されていて、一番削りやすいといいますか、人の懐に落ちつきやすいところの制度的補助金を削ってしまった、そういう法案になってしまった、非常にそこが残念に思うわけです。  一つの例だけ挙げてみますと、各省が競うようにして、箱物といいますが、集会所だとか会館の補助金を持っている。かつては、戦後の非常に貧しい時期には、そういう施設というのはやはり国が援助しなければ市町村にはできなかったかと思うのです。ところが、戦後四十年たって、市町村もだんだん力がついてきた。そうすれば、本当に必要な集会施設、会館というのは自分たちの力でつくっていけるわけです。あるいは、つくっていこうと思えば、借金をしてつくればいいわけです。真っ先にこういう会館の補助金を削ってしまえば、今回の金額程度のものは軽く出てくるわけで、私はそういう措置をとるべきだと思います。そういう会館の補助金というのは、今は政府が高額の補助金を出すものですから、取ったが勝ち、もらったが勝ちということで、必要でもない会館が各地にできていく。  島根県のある町の場合には、これは人口一万一千人ですけれども、そこに農林省、厚生省、通産省、文部省、各省の会館補助金を取って七つの会館を建てる。人口約一万一千人ですから、千何百人あるいは二千人に一つ以上の会館ができてしまう。こんなに会館づけの町ができれば、その町の財政がおかしくなるのは当然でありまして、この町は赤字再建団体に転落したわけですけれども、そういう弊害を生む補助金というのが一方にたくさんあるわけですから、今回はぜひそういうところを見て勇断を奮っていただきたい。何も野党がやるべき仕事ではなくて、自民党が率先してやれば政治の前進に寄与するわけで、ひとつこの機会に与野党もう一つ補助金の根源を見直していただきたい、こう思うわけです。  潜越でございますが、意見を申し述べさせていただきました。(拍手
  12. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 ありがとうございました。  次に、中西参考人お願いいたします。
  13. 中西啓之

    中西参考人 御紹介いただきました中西でございます。  昨年、昭和六十年度の予算編成過程で、今問題になっております地方自治体への高率補助金削減問題、特に一割カットの問題が全国地方自治体で非常に大きな問題になりまして、約八割の地方議会がこの削減についての反対決議を行ったという事実経過がございます。  これにつきまして、昨年の年末、一年限りの措置であるということ、それから財源補てんを行うという二つの条件をつけて大蔵、自治、厚生大臣の意見がまとまって、今回の法律案が作成されたという経過になっているわけですが、私の考えでは、依然としてこの法律案はいろいろな問題点を持っているのではないかと考えますので、これについて意見を述べさせていただきたいと思います。  第一の問題点は、財源補てんについてであります。  私が入手いたしました昭和六十年度地方財政対策についての政府関係の文書によりますと、国庫補助負担率引き下げに伴う地方財政負担の増は、地方財政対策において万全の措置を講じたというふうに述べられております。ところが、その内容を見ていきますと、全体の削減額五千八百億、そのうち経常経費が二千六百億、投資的経費が三千二百億。この経常経費の二千六百億のうち一千億は交付税の特例措置で増額をする、しかしあとの一千六百億は建設地方債を充当して、そのうちの一千億については暫定的に昭和六十六年度以降の交付税で一応加算される。しかし、その取り扱いは自治、大蔵で調整するということになって  おりまして、後者の一千億については必ずしも補てんするかどうかということははっきりしないということのようであります。それから、残りの六百億は不交付団体相当額ということで、全く補てんはされないということであります。  それから、投資的経費削減額三千二百億のうち、先ほど田川市の市長さんもおっしゃいました二千億については臨時特例債を充てる。しかし、私の入手いたしました文書によりますと、この二千億のうち半分を国が元利償還をするということでありまして、結局、元利償還で補てんされるのは一千億である。  そういうことでありますから、まとめて申しますと、確実に補てんされるのは、五千八百億のうち経常経費の一千億と投資的経費の一千億、結局二千億である。あと一千億は今のところ不確かだ、その残りは補てんはしない、こういうことでありまして、万全の措置とは決して言えないのではなかろうか。結局、地方財源の実質的な削減負担の増加ということになるのではないか、これが第一の問題点であります。  第二の問題点は、これが国民の暮らし、生活にどう影響してくるのかということでありますが、実質的な地方自治体財源負担増が進んでいきますと、どうしても地方経費削減がいろいろな形で進むわけです。その場合に、むだな経費を節減するというのは非常に結構なことなんですが、そうではなくて、住民の暮らしにかかわる重要な経費削減していくという傾向が進むわけです。例えて申しますと、高率補助金削減のトップであります生活保護行政について、このところ、実態を調べてみますと、まだ保護が必要な人を強引に廃止、打ち切るとか、あるいは保護の申請をなかなか受け付けないというふうな傾向が進んでいるわけです。ある市では、保護の廃止の数をケースワーカー同士に競争させるというふうなところも出てきております。現在でもこういう状況ですから、補助金削減がこういう傾向をますます強めていくということが考えられます。  それから、この削減額ナンバーツーの保育行政の分野でも、最近児童数が減少いたしまして、いわゆる定員割れの現象が進んでおります。ところが、これもよくよく調べてみますと、なぜ定員割れが起こっているかといいますと、保育料が高いこととゼロ歳児保育が行われないということ、それから保育所の存在を知らないというふうなことがありまして、結局保育財政削減が定員割れに響いているという現実があるのですね。やはり補助金削減がこういう傾向をますます進めていくのではないか。こういうことになりますと、結局住民の福祉への要求にこたえる自治体行政ができなくなっていく、こういうことが考えられます。  第三の問題点は、一年限りの措置という点なんですが、これは昨年の十二月二十二日に大蔵、厚生、自治大臣の覚書が交わされておりまして、「社会保障に係る高率の補助率の引下げ措置を講ずるに当たり、次の通り申し合わせる。 一 この措置は、昭和六十年度における暫定措置とする。」二として、六十一年度以降については今後検討を進める、こうなっているわけですね。  まず第一の問題は、社会保障に係る高率の補助金についてのみ一年限りの措置だという点ですね。ほかは一年限りとは言っていないわけです。そうすると、これは下げられっ放しということが考えられる。これが第一の問題点であります。  それから、社会保障関係の高率補助金はとりあえず一年限りで、これは恒久的にどうかということは検討する、こうなっているわけです。そうすると、検討された結果、恒常的に下げるということになる可能性もあるわけですね。そうすると、これは一年限りでなくなってしまう。ということは、一年限りというと一年限りでまたもとに戻すというふうにとられがちなんですけれども、必ずしもそうじゃないというところですね、ここが第二の問題点だろうと思うのです。  それから第三の問題点は、地方自治地方財政のこれは根幹にかかわる問題なんですね。例えば、生活保護行政の一割の財源削減するというのは根幹にかかわる。あるいは児童福祉法にしてもそうなんですね。非常にたくさんの法律の根幹にかかわる問題でありますから、これを一括して論議するのは非常に乱暴である。やはり一つ一つ時間をかけて慎重に検討するのが議会の正しいあり方ではないかというふうに思うわけであります。  第四の問題ですが、結局今回のこの補助金法案というのは、国の財政危機による財源不足地方財源に肩がわりをさせるということになっているわけですね。そうすると、より根本的な問題というのは、今日の国の財政危機を一体どういうふうにとらえるのか、こういう問題になってまいります。  確かに国の財政危機は深刻であると思いますが、実際の国の予算の動きを見ておりますと、防衛費や政府開発援助費には特別に多額の予算がつけられているという経過がございます。昭和五十六年を一〇〇といたしまして、昭和六十年までの四年間に各省庁別に予算がどういうふうに伸びているのかということを調べてみますと、一番伸びているのが政府開発援助を含む外務省関係でございまして、指数が約一三五ですね。防衛庁が一三一。この二つが際立って伸びております。最も低いのが農水省でありまして、これは九一ということで下がっております。次いで建設省の九八、文部省の一〇二。厚生省は当然増経費がたくさんある関係上一〇九・五ぐらいになっております。つまり、財政危機であるにもかかわらず、軍事関係といいますか、防衛関係が優先をされている。  ところが、マスコミや総理府なんかでやっております世論調査の結果を見ますと、現在、国民の約六割が、防衛費は今のままでいい、約一割五分から二割が、下げた方がいい、少なくした方がいいという意見でございまして、言ってみれば、軍事費、防衛関係費をふやすよりは、社会保障や社会福祉に金をかけた方がいい、それに密着した地方自治体財源拡充をやった方がいいということを国民は望んでいるわけでございまして、そういう点で、国民のそういう意向あるいは八割に及ぶ地方自治体の意向に逆行する法案ではなかろうかということが考えられます。そういう点で、私も広瀬参考人と同じく、この法案は廃案にした方がいいというふうに思うわけでございます。  どうも御清聴ありがとうございました。
  14. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  15. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  16. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 参考人の皆さん、きょうは御苦労さんでございます。  先に武村さんと滝井さんが時間の都合で退席をされるようでありますので、先にお二人中心にお話を伺いたいと思います。  きょうのお話を聞いて、実態が大変よくわかり、地方の市町村が苦労するなということをしっかり受けとめたのでありますが、まず全国知事会あるいは市長会が昨年十月ごろ、いろいろなパンフレットや印刷物を持って私どもの部屋に陳情に参りました。それこそたくさんあるのでありますが、それを読んでみると、どうしても今回の補助金カットする方法は地方負担転嫁であって断じて許し得ない、そういう趣旨の、財政秩序を乱す、国と地方との信頼関係を覆す、そして一方的に地方財政にしわ寄せするものである、こういう反対決議が私どもの手元に、たくさん持ってきておりますが、こんなにも各市町村から陳情書が来ているわけであります。こういう皆さんの団体で決めたことを、政府並びに行政当局が言うことを聞いてくれない、皆さんの意見を聞き入れてくれない、こういうことに対して知事会は一体どんな受けとめ方をしておるのでしょうか。総理大臣は過般、川崎寛治代議士の質問に答えて、やむを得ない措置だ、この一点張りで逃げておるのでありますが、知事会としてはどんな感じで受けとめているのでしょうか。
  17. 武村正義

    武村参考人 私ども地方で責任を預かっております立場からいきましても、国の借金が今年度末百三十二兆余でございますか、大変な額になってきている。そういう意味で国の財政危機というのは大変厳しく受けとめておりますし、そのことがまた国と地方というかかわりでいきますと、地方でない国の世界の問題ではありますけれども、結局は同じ船に乗り合わせている一員でありますから、国家がその財政を破綻させてしまったのでは地方もその存立基盤がなくなってしまうというふうなことも考えますと、非常に心配もいたしているものでございますが、ただそういう限りにおいては、財政再建、それにかかわる行政改革は非常に大事な課題であるという認識を持っております。  ただ、私ども地方にかかわる行政改革について申し上げますと、まず、先ほどからほかの参考人さんの御意見もございましたように、国と地方の仕事の見直しをやるべし、事務事業を思い切って整理すべし、先ほど犬猫の話もございましたが、本当にこの仕事が必要なのかどうか、あるいはこれは本当に国がかかわるべきなのか、地方が全責任を負うべきなのか、その辺をきちっとこの時期に整理すべきだ。それに並行して、補助金制度全般についても思い切った整理合理化見直しを行うべきである。あわせて、地方事務官制度でございますとか例の機関委任事務でございますとか、さらには国の出先機関のあり方というふうな問題、事務事業財政それから組織、そういったもの全般にわたって思い切った改革をすれば、地方も国のそういった錯綜した制度がなくなるということで大変明るくなる。精神的にも解放されて、自治の気概というのはむしろ高まるだろうと思いますから、地方もそれを大歓迎できますし、国もそのことによって随分負担が軽くなるという意味で、国も地方も喜べる方向行政改革ができる。そういう期待を強く持っておりまして、そのことを知事会は一貫して主張してきているわけでございます。そういう主張からいきますと、今回のこの一割カットというのは大変唐突でもありますし、そういう前提がほとんど議論すらされないで突如出てまいりましたから、強い反対をしてまいりました。  ただ、状況がどんどん進んでまいりますし、その中で一年限りというふうな大臣のお約束もございまして、今ここになってみますと、法律予算が全く矛盾している、一致してないということ自身も大変困った状況であり、そういう意味で、法案審議そのものにとやかく申し上げる立場ではございませんが、私どもは今の事態は非常に異常であるということで憂慮いたしている次第でございます。
  18. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今地方自治団体起債総額、借金が五十四兆程度と、黄色いこれには書いてあるのでありますが、国の財政規模と地方自治団体財政規模がやや同じくらいだから、地方借金も百三十三兆までぐらいはよろしいんだという財界の発想、だから国の方の借金が多くなって地方はまだ四十四兆だから、百兆までぐらいはいいんじゃないか、起債起債で押しつけてしまえ、一つはどうもこういう発想が臨調の財界の親玉の頭の中にあるような気がするのですね。もう一つは、彼らの頭の中には、地方はまだまだ余裕があるんだ、むだ金をかなり使っているんだ、だからぬれ手ぬぐいじゃないが、まだまだ絞れるんだ、そういう発想がかなり強くあるような気がするのです。  実際に地方自治団体は、借金の限界はどの程度までが財政運営上まあ許容限度なのか、知事会などではそういう観点ほどんな見方をしているのでしょうか。
  19. 武村正義

    武村参考人 これは知事会の公式な見方ではありませんで、私の感想でありますが、御承知のように国、地方を通ずる歳入全体で見ますと、国家がほぼ三分の二歳入を確保し、その一部を交付税補助金等地方に回し、執行は三分の二地方がやるという体質でございます。そのことで御理解いただけますように、歳入の権限で見ますと国が三分の二、地方は三分の一、大ざっぱにそういう状況でございますから、借金の問題につきましても、ちょうど今地方が五十数兆でございますから、国の約半分、だから歳入の権限を前提に考えますとしんどさは同じである。  一般論としては、地方三千数百の自治体がございますが、その四分の一が公債費率二〇%を超しておりまして、自治省が指導しておりますいわゆる赤信号を既に超しておるわけでございます。そのことからも、一応地方団体はさまざまありますが、二五%が危険ラインを突破しているという状況もございます。地方財政も大変しんどい。ただ、数が多い中で、どの問題についても、新聞報道にあるような、まだまだ地方側が反省をしなければいけない、もう少し締めてかからなければいけないようなケースが一部にはございます。その点は我々知事会としても、地方団体としても、一層厳しくみずからも戒めながら努力をしていきたいというふうに思っております。
  20. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 どうも日本は中央集権的な発想が非常に強くて、地方の市町村長、首長を中央は信頼できないという何か気持ちがあるように思えてしようがないのです。特に大蔵省などはそんな感じで、金を自由に存して交付税の方へどんどんやってしまったら何に使うかわからぬ、だからみんなひもをつけて管理監督をしておかぬと気が済まぬ、そういう中央官庁の発想がこういう措置を一律にやるんじゃないかな。これを直すにはどうしたらいいのかな。知事会市長会や、もっと強力な発言、総理そのものの発想に歯どめをかける、ブレーキをかける、こういうことをもっとできないものなのか。野党は今結束して、社会、公明、民社、共産、皆これは廃案にしろ、こんな乱暴な一括法律大蔵委員会にかけること自体が過ちだと言って総理以下大蔵大臣を責め立てているのでありますが、全然反省の色がない。こういうことが数でどんどんまかり通って、「増税なき財政再建」という言葉のもとにみんな地方にしわ寄せがいくという傾向ですね。  こういうような措置はあと何年ぐらいが我慢できる限界だと思いますか。今まで三年間いろいろなことで転嫁を、あらゆる会計の方にしわ寄せしてきているのですが、きょうは市長会代表もおりますからお二人に、こういう措置はもうこれ以上はとても耐え忍ぶことはできない、あるいはもう少し「増税なき財政再建」で締められてもやむを得ないと思うのか、その辺は知事会市長会、御両人は現状をどんなお感じで受けとめているのでしょうか。
  21. 武村正義

    武村参考人 私ども、国、地方全体を通じて財政を考えますときに、大変しんどい状況に来ていることは十分認識をいたしておるわけでありますが、先ほど申し上げたように、まずは国、地方のかかわりについて地方が長年主張し続けてまいりましたし、地方制度調査会等においても答申がされてきたようなことが、ここ二十年来ほとんど実現を見ておりません。それは本当に各政党の皆さんからごらんいただいても、憲法の保障しております地方自治の本旨を踏まえれば当然御納得をいただける、そういう主張だと思っておるわけでありますが、このことに大変いら立ちを感じておりますし、今回の行政改革が、いわばそういう長年の地方側の主張が一気に解決をしていただける機会だというふうな期待を強く持ってきたわけでございますが、そのこともむしろほとんど実現を見ないで裏切られているわけでありまして、精神的に、そういう意味では行革の進め方については大変不満を持っているわけであります。しかし、国全体の問題としますと、まだまだ地方側にも努力をすべき分野もございますし、今申し上げたような長年の懸案に今後思い切って取り組んでいくことによって、その上で初めて増税の議論が行われてしかるべきではないか。その問題に手が加えられないで増税の問題については私どもはむしろ納得がいかない。一般論としては増税なき再建の方が正しいというふうな認識を持っております。
  22. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでは知事会では、これは一年限りの措置だ。しかし、先ほどの参考人のお話のとおり、厚生省福祉関係というものは一年限りかもしらぬが、あとのはそういう歯どめがかかっていないという陳述がありましたね。知事会としては、今回の措置は全部一年限りできちっと歯どめがかかっていると受けとめているのかどうか。そこらは知事会としての受けとめ方はどうなんですか。
  23. 武村正義

    武村参考人 私どもとしては、全体にその歯どめがかかっているというふうに理解をいたしております。
  24. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵省主計局次長、これはすべてが一年限りということで歯どめはきちっとかかっていると大蔵省は考えているのかどうか、ちょっと答弁してください。
  25. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今お話がございました高率補助として法案で取り上げておりますものを、約一割程度補助率を下げることで御審議願っているわけでございますけれども、このものにつきましては一年の暫定措置ということで法案を提出いたしております。
  26. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは暫定措置としてお願いをしておるまではわかっているんだが、完全に一年間で、継続できないという歯どめがかかっているのかどうかということを聞いているんです。各大臣とそういう文書で、これは完全に一年で、後は続けませんという確約があるんだろうかどうだろうか。今参考人の話を聞いて一番不安なのはそこの点なんですよ。それが歯どめがかかっていると認識したから我慢をするという意見知事会市長会なんだな。あとの参考人は、それはかかっていないと心配しているから、廃案にしないと大変なことになるぞ、こうお述べになっているのですよ。だから、大蔵省でこれを直接担当している主計局次長が、いや歯どめがかかっています、一年限りで絶対延びることはありません、そう言ってくれぬと、またその場になってから、いや財政が苦しいからまた延ばします、年金財源から借りたのと同じようなことがまた行われるのじゃないか。だから、もう一度しつこいようだけれども、歯どめがかかっているのかどうか、その点どうですか。
  27. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 本委員会でもたびたび御答弁申し上げましたが、予算編成段階で、高率補助の問題につきまして、本来国と地方の機能分担あるいは費用負担あり方を検討して結論を出すべき問題ではないかという御意見が、特に地方団体の方々から出てまいったわけでございます。そこで三大臣の合意という覚書がございまして、そこでは、それらの問題等も含めて補助率の問題を今後検討する、そのための場を設ける、こういうことになりましたので、そこの検討の結果によって、今後どうしていくかということもおのずから結論が出てくるというふうに考えているわけでございます。
  28. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうなると、来年からは白紙状態で、また力関係でどう決められるかわからぬ。しかも次長、あなたはやがて主計局長になる大蔵省のエリートだな。きょうこの参考人のお話を聞いていて、これはさらにまた協議をしてその先へ延ばすようなことだけは断じてすべきでない、そういう感じぐらい持ったと思うのですが、参考人意見を聞いて、あなたは率直にどんな心境ですか。日本の財政を担当する主計局長のすぐ下のあなたがここでどういう感想を持ったかということは、日本全体にとって大変重大なんです。そこで私はちょっと聞きたいんです。どうですか。
  29. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 きょうの各参考人の御意見につきましては、私としては真剣に聞かせていただいております。
  30. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 真剣に考えてもらって、本当の一年限りにしないと、あなたはここでうそをついたことになるから、「綸言汗の如し」という言葉を忘れないで、ひとつきょうの参考人意見を尊重するような姿勢をしっかり貫いてもらいたいと希望を申し上げておきます。  次に、滝井参考人にお尋ねします。  滝井さんは我が党の衆議院議員として、国対副委員長として私たちを指揮監督をしてくれた大先輩でもございます。また、お医者さんでもありますから、財政の治療をするのはかくあるべし、そういう処方せんもかなり具体的なものを構想されておるように私はお見受けをしました。この資料でもかなり具体的に、それぞれの自治体が、小さい市、町へ行くほど大変な困難に遭遇しているということをつまびらかに知ることができました。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、今回のこの法案が通った後、大蔵省はもう完全な措置をしたから住民には実害がないんだ、従来どおりの末端の給付はきちっと行われるんだ、ただ財政支出の形式が、国が出すのを地方に出してもらうという形だけで、実害はない、こう総理もここで再三言い張っているんですが、地方自治体として実害はかなりあるというのが滝井先生の先ほどのお話でありますが、その実害のところを、この印刷物以外の点でお気づきの点をちょっと御披露いただきたいと思うのであります。
  31. 滝井義高

    滝井参考人 武藤委員にお答えいたします。  まず、保護費を削られておるわけですが、私の方で八割が七割になりますことによって三億三千万程度になるわけです。そうしますと、四月二日に支払いをしたんですが、一億三千万払うわけです。その金は借りないとないわけです。借りますと当然その利子を払わなければいかぬ、こういう問題がすぐ出てくるわけです。  それから、失対事業で一般失対と開就があるわけですが、これで一億四、五千万円くらいの削減をされるわけで、これも働かせてすぐ賃金を支払わなければならぬですから、その分の補てんを私たちは当然考えてやっていく。こういうように、財政運営が非常に窮屈になっていくわけです。  それからもう一つ、我々産炭地はほとんど二割以上の起債率を持っているわけです。そうすると、二割の起債率ということになりますと赤信号で、武村知事さんが言われたように、もう国は金を貸してくれないわけです。そうすると今度は建設地方債で賄うわけですから、それを貸してくれるかどうかということがまず疑問なんです。それで政治折衝をして、貸してもらえるようにしなければいかぬことになる。そうすると、貸してもらえたとしても、それが今度はタコの足を食うと同じように交付税措置をされてくるわけですから、結果的に言うと、交付税全体の財源自分に来る分を自分で食うことになるわけです。だから、国が措置をせずに地方自治体自分財源自分の穴を埋める、こういう形が投資的経費においても経常的経費においても出てくることになるわけです。  既に我々は今二〇%の赤信号あるいはそれ以上のところへ来ているわけですが、福岡県では、自治体によっては借金が多くて、もうにっちもさっちもいかなくなってきているわけです。したがって、県が利子のつかない金を措置するかどうかしないと、みんな赤字団体に転落をしてしまう。そんなことはできないわけですね。ただ、私のところで現在二〇%の起債率で、二百六十億ぐらいの借金を抱えているわけです。しかし、問題は、財政運営上注意しなければならぬのは、何でもかんでも借金すればいいという形で私は借金しておりません。それはやはり起債を借りるならば、その裏のあるもの、すなわち交付税その他で七五とか八〇とか見てくれるものをできるだけ起債で借りていく。そうしますと、二百五、六十億の起債があっても、実態の起債は百五、六十億、こういう形になってくるわけです。したがって、そういう財政運営をやらないといかないことになっておる、こういう実態でございます。
  32. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 この知事会市長会などが出したパンフレットによると、福岡県の例が出ているんですが、直方市、人口六万五千、そうすると、滝井市長のところと大体同じくらいな規模の市だと思いますね。ここで今回の措置で五億円近い負担増になる、こうなっておるんですね。そうすると、国の方は全部それを起債交付税で見るんだから心配ないと言うが、それは当初予算を組む段階で今あなたの説明のような借入金が必要なんで、この法案が通ればそれは埋め合わせがつくんだ、したがって、純粋の自治体負担増というのはないんだと受けとめていいのか。この法案が通って、交付税起債で仮に賄うとしても、まだ地方負担増というものはあるのかないのか。その辺ちょっと教えていただけますか。
  33. 滝井義高

    滝井参考人 最前から意見を述べたように、たくさんの起債を持っておるところに建設地方債を割り当てていただいても、それを私の方の自治体がもらえるかどうかというのが、まず疑問なんです。だから、我々のような自治体で、補助金を直方のように生活保護で四億も五億も出すところ——私の方は三億三千万ですが、それは必ず建設地方債にひもつきで賄ってくれるんだという確証をいただければそれでいいんです。そういう確証は何もないわけです。したがって、非常に不安であるということ。しかも、我々のもらえる交付税にそれがどんどん肩がわりをされていくと、交付税もまた減る。こういう往復びんたの損害を受けることになるわけで、大変困るわけです。
  34. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 本当は大蔵大臣か総理大臣でもおれば意見が少しかみ合うんですけれども、きょうは大蔵大臣おらぬものですから、皆さんのお話を聞きっ放しということで大変残念なのでございますが、いずれにしても地方自治体借金というのは、恐らく大蔵省資金運用部の金じゃなくて、かなり高い金利の金を使っているんだと思うのですね。滝井さんのところの市の例でいうと、仮に起債が許可された場合、大体どういう金融機関から借りるんですか。金利はどのくらいになるんですか。大体政府資金で全額起債は認めてくれるんですか。それとも普通の銀行とか相互銀行とか、小さな町では農協からまで金を借りるところがありますね。そうすると、金利はどのくらいにつくんですか、パーセントは。
  35. 滝井義高

    滝井参考人 多分政府のものは六分台だと思います、資金運用部その他から。そうでなくて、縁故債その他にいくと、七分以上になると思います。したがって、例えば同和対策で住宅改修資金等を貸す場合には、政府が貸してくれるのと我々が銀行その他から借りる、それとの利ざやがあって、それが赤字の理由になっていくわけです。だから、できる限り政府資金を借りたいのですけれども、なかなかそうはいかぬわけで、縁故債その他を借りなければならぬし、その分だけ財政を圧迫する。今、地方自治体で金利が楽になれば、例えば三分五厘ぐらいの金を貸していただければ、その金利差だけで私たちは息をつくことができるわけです。そうでないと、今地方自治体は金利で参っておるというのが実情でございます。  細かい、詳しいことはちょっとわかりませんが、金利は非常に大事です。
  36. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それから、滝井さんのところは新たな起債を起こすのが大変難しい、早く政府がうまい起債の許可と方法、そういうものをあっせんをしてくれないと大変な事態になるということはわかりましたが、大蔵省、それはもう既に、どの自治体はどのくらいの起債を、どこからお金を融資をさせるようにしよう、法律が通らぬからできないという答えだと思うのですが、そういうことについて自治省と大蔵省は万全な措置というものを考えて、もう既に手元ではつくってある、そういう状況で、法案が通ればすぐそれは心配ないような措置ができるんだ、こういう答えができるんでしょうか、大蔵省としては。きょうは自治省おらぬのか。——おる。ちょっと答えてみてください。
  37. 土田栄作

    ○土田政府委員 現在、地方債の許可方針でございますとか運用方針といったものを準備いたしておりまして、これは国の予算の成立を見ました段階におきまして、各団体に対してお示ししたいというふうに考えております。
  38. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは予算が通ったら、迅速にすぐできる、心配はない、そして今言った二〇%以上起債が既に行われている市町村、そういうところも、従来の慣例ではなくて、今回はもう特別な措置と配慮によって、起債がちゃんとできるようにいたします、その金はどこから出すんですか。政府資金を出すというのか、それとも地元銀行から借りるというのか、その計画はどうなっておるのか。
  39. 土田栄作

    ○土田政府委員 地方行政の遅滞は許されないところでございますので、一般的に今回のような法律の制度改正にかかっております部分、これは法案の御議決を待たないと、私どもとしても執行できないわけでございますけれども、その他の、法律と関係のない分につきましては、ちゃんと地方団体で執行できるように通達も出し、それから所要の起債の粋というものも配分してまいるということでございます。  それから、資金の質についてでございますけれども、これにつきましては、実は今回、一括法によりまして地方団体にいろいろ負担をかけますので、特に大蔵省の方と協議をいたしまして、政府資金をふやすということにいたしております。具体的には、地方債計画におきます計上額を二千九百八十億政府資金をふやすということにいたします。また、地方債の配分に当たりましても、良質の政府資金はできるだけ市町村を重点にして配るということにいたしまして、できるだけ市町村の財政負担を減らしてまいるように努めてまいりたいと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、今度の特別措置によりますカット分についての対応というのは、やはり法律が通らないと、私どもとしては手が出せない、こういう状況でございます。
  40. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 二〇%を超えておるところは……。
  41. 土田栄作

    ○土田政府委員 ちょっと数字をもちましてお返事申し上げます。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕
  42. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでは、後で数字がわかったら答えてもらうことにして、滝井さんにちょっとお尋ねいたします。  産炭地あるいは旧産炭地、そういうところは財政が大変苦しい状況にある。特に今回の措置で、地方経済の停滞というか、経済に与える影響も非常に大きい。その意味は、結局、公共事業費の高額補助が減らされることによって、種銭がどうしても地方自治体は苦しいから、公共事業の方も全体としてはかなり減る、減らさざるを得ない。そういう意味から経済に特に悪い影響を与えるというお話なのか、それとも、生活保護とか失対事業とか、そういうものの資金交付が減るから経済に悪い影響を与えるというのでしょうか。公共事業の方にウエートは大きいんでしょうか。その辺は、経済に悪い影響を与えるとおっしゃいましたが、どういう実態を予想されるのでしょうか。
  43. 滝井義高

    滝井参考人 まず生活保護につきましては、御存じのように負担を肩がわりするだけでございまして、したがって、本人に行くのは、十五万何がしを差し上げる点については変わらないわけです。ただ、地方財政がその肩がわりを負担するだけ弾力がなくなり、硬直化していく、こういう形が出てくるわけです。それから失対事業につきましても、同じように賃金を払い、就労箇所はつくっていくわけで、カット分だけは一般財源をどこからか倹約して持ってくる。すなわち、我々のところで言えば、ためておった貯金を二億円、調整財源として使って当面は過ごしていくわけです。  しかし、そういうことを毎年繰り返していきますと、私の方で大体失対事業五十億、住宅建設、学校建設等五十億、同和対策など消費的経費も入れて五十億、公共的事業を約百五十億やっておるわけです。失対事業や生活保護の問題からしますと、失対で縮小すればそれが生活保護に来るわけです。それがまた二割の負担金が三割に拡大する、こうやって財政がだんだん縮小悪循環を繰り返しているわけです。そうしますと、それだけ今度は市民が、公共事業その他、仕事をやる分が少なくなりますから、町の購買力が低下してくる。失対事業と同和対策とそれから炭柱改良、学校建設で町が支えられているのに、失対事業やら生活保護ががっと沈下すれば、町が衰退をして、二、三年のうちに地域経済に大きな破綻がくる、こういうことでございます。
  44. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次に、東峰参考人にちょっと御意見を伺いますが、先ほどのお話しの中で、とにかく今回の政府措置節減合理化に何にも寄与しない、一律引き下げや一方的削減というのは行政改革という本旨にかなっていない、そういう趣旨のお話がありました。今まで撤回を求めて活動してきたと経過報告があったのでありますが、残念ながら撤回が実現しなかった。そこで市長会としては、行政の継続性から、早く国会に議決してもらう以外に、弱い地方自治体としてはもうどうにもならぬという苦衷を吐露したような気がするのでありますが、この行政の継続性からという視点、その点をもうちょっと解明をしてお話しをいただきたいと思います。
  45. 東峰元次

    東峰参考人 御設問の補助金カットに関する法律の改正案でございますが、これは非常に自治体によって異なる点があると思うのです。しかし、今回は市長会全体を代表して私が申し上げるわけでございまして、これは御高承のように、一括法案の上程以前に執拗に、六団体を通じて高額補助金カット負担金の減少というものを食いとめるように陳情、請願を嘆願をいたしたような次第でございます。しかし、これを認められなかった、そして今日このような結果になったという点は、全国市長会としては極めて遺憾な点であるのであります。  しかし、先ほど来申し上げましたように、五千八百億の財源をもって全部これを措置するというような政府御当局の御指示でありますので、これは私どもが信頼して、しかも六十年度一年度限りであるということで指示されておりますので、これはやはり究極のところ、これを信頼して六十年度の予算は編成し、執行すべきものであるというように考えまして、私どもはその方針にのっとって、私ども千歳市としては六十年度予算の決定を原案可決ということで、多数可決で決定いたした次第でございます。
  46. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 市長会は特に県よりも一県は中間地方自治団体ですから、住民との直接接触というのは、市と比較した場合には大変薄いわけでありまして、私は一番苦悩するのはやはり市町村だと思うのですね、今回の措置で苦しむのは。そういう意味で、やはり市長会としてはもう少し毅然とした態度で、その一年限りという歯どめをこれからどうしたらできるか、そういうことを本気でやらぬと、大変な結果になるのじゃないか。  もちろん、野党は今こぞって廃案にしろ、撤回しろ、各委員会で分割審議しろ、こうして抵抗しているのでありますけれども、相手が耳をかさないわけですね。政治は多数であります。数であります。法をつくる力も法を破る力も多数が持っているわけですから、歯が立たない状況に今ある。したがって、本当はこういう皆さんの見解をNHKテレビが全国放送して茶の間で聞いてもらうようにすれば、自民党政府多数のやり方がいかに偏って、格差を広げ、そして制度として確立をされた福祉国家を目指す日本の道筋が今崩壊をする、まさに福祉国家崩壊につながる道を進んでいる、そういうことを国民に知っていただけるのでありますが、残念ながらそういう手だてがテレビでも新聞でもない、こういう残念な状況に今あります。しかし、きょう出席している与党自民党の国会議員の皆さんは、大体みんな立派な人ですから、参考人意見を聞いて党内で一暴れしてくれるんだろうという期待を持ちながら、私は今ここで伺っているわけでありますが、やはり党内でもなかなか歯が立たないのじゃないかなと心配であります。  先ほど広瀬参考人、なかなかおもしろい実例を幾つか挙げてくれました。私も「補助金総覧」を見て、大変その優先順序が間違っているな、削減する順序が一例えば、今でも中央自動車研究所の補助金あるいは電力中央研究所の補助金、商工会議所などに対する補助金、各機関に対する研究委託費、産業関係の補助金にはほとんど手がついてないんですね。そして、一番生命を維持する、一番末端の生活に直結する補助金などが一律やられちゃうんですね。どうもここらの点、選択の順序が間違っている。それは、日本の官僚制度が縄張りが全部できているものだから、どことどこだけむだだ、ここだけはちょっと切っても自助努力でできる、金もある、そういうところだけ本当は切るべきなんですけれども、それをやると各省間のバランスが破れてなかなか手がつかない、だから一律一割カットだ、こういう無謀なやり方大蔵省はやってしまう。  そこで、広瀬さんにもうちょっと具体例で、そういう産業関係補助金というのには手がついていないなというお感じは持っておりませんか。その辺をちょっと、お調べの状況を披露していただけますか。
  47. 広瀬道貞

    広瀬参考人 まさに順序が違っておるというのはそのとおりでありまして、さっきも申しましたように、もともと補助金というのは、つまり各省が自分の省の仕事を自治体に大いにやってもらいたい、その動機においては極めて間違ったものはないと思うんですね。農林水産省にしてみれば、より多くそちらの方面に金を使ってもらいたい、人を出してもらいたい、そういうことからいろいろな補助金を出してくる。最近の農業補助金のほとんどは、農家そのものよりもむしろ農村に住む人たち、その中にはサラリーマンだとかそういう人たちが多いわけですが、そういう人たちを対象にした、いわば村づくり的な補助金まで出してくる。その段階で既に目的は変わってしまっているわけですけれども、そういうものを見直せば、歳出削減の余地は相当あるわけで、それができないのは、やはりひとえに各省が自分たちの縄張りを非常に大事にするからだというふうに思うのです。  それで、たまたま大蔵省が今回の法案の提出元になっておりますけれども、私は、率直に言って、大蔵省にしてみればどこの補助金でもいい、つまり二千億なり三千億なりの歳出削減ができればそれでよかったのだと思うんですね。それが結局各省間でできなくて、地方に一方的にしわ寄せしてしまう。こういう官僚優位といいますか、官僚が何でも自分たちの縄張りを中心に決めていくという政治の体質を直せば、相当全体が改善されるわけで、こういう問題も出てこなかったと思うのです。  それで、お尋ねのその産業関係ですが、やはり通産省の補助金というのは、こういう折にもかかわらず、比較的ゆとりある配分をしておるのではなかろうかと思います。その理由は、結局石油関係の省エネを名目としたところの収入が通産省所管になってしまって、通産省は比較的それを活用しつつ自由に対応できる。ちょうど建設省が道路予算について大きな発言力を持つように、省エネ関係、省エネ名目の収入が通産省の補助金の大きな財源になっているがゆえに、こういう時期でも比較的楽な運用ができている。それに比べると農水省の方が、まだ同情の余地があるのではなかろうかというふうに思っております。
  48. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いずれにしてももう借金がこんなにできちゃったんだから、いつの日かはこの借金ができないような構造に変える必要があり、五十年かかるか六十年かかるかわからぬが、この借金をやがて大部分を返さねばならないということを考えると、これは大変な事態であるということは、野党の我々も十分認識しているのでありますが、これはやはり何らかの増収策を考える以外に、もう地方をいじめたり福祉や教育をいじめても、大体限界に達したなというのが私の感じなのであります。     〔堀之内委員長代理退席、中川(秀)委員長代理着席〕  きょうはその税の方を論争する場所じゃありませんし、参考人の皆さんでありますから、そういうお話は抜きますけれども、いずれにしても、地方自治体が今回その一助として均等割市民税の引き上げを認めた。これをやっても、地方自治体全体としてはそう大した金額じゃないのかな。五百円ずつの引き上げですね。市町村会などの計算では全体でどのくらいになりますか、今回の地方税の引き上げの増収は。これは自治省でわかるな。地方自治団体全体としてどのくらい増収になるかな。
  49. 土田栄作

    ○土田政府委員 まことに申しわけありませんが、参考人質疑ということでお呼びがなかったので、答弁資料を持ってきておりません。したがいまして、先ほどの数字とあわせまして、後ほど先生に御説明させていただきたいと存じます。
  50. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これはかえって次長の方が知っているのかな。次長ら、わかってないですか。大蔵省も、今回の地方税の税制改正でどのくらい増収になるかは、きょうは持ってきてない。——はい。  参考人の皆さんの御意見を聞いて、本当にこれは大変なひずみがあちこちに出てくる。地方自治体関係の格差の拡大、あるいは行政の継続性というものが失われて、中期的な財政展望が地方自治体も立たない。こういうことが次から次へ法律でやられたんでは、もう安定した地方財政運営ができないということになってしまうと思うのですね。中曽根内閣の大変な危険性がこういうところにある。行政が独走して、そして包括的な権限を全部行政の中央の権力でほしいままにして、財政制度そのものも、補助金の制度そのものも、根幹を揺るがす、ひっくり返すようなことが平然と行われている。幾ら戦後の総決算といっても、こういう乱暴な政治が続いていったら、一体地方自治の本旨とか地方分権とか、そういうことが本当に確立されるんでしょうか。私はそこが大変心配なんです。憲法で保障する地方自治の本旨というものは守られなくなっちゃうんじゃないかな、そういう不安があります。皆さんはそういう不安をお持ちじゃないでしょうか。お一人ずつ全員にお尋ねをして私の質問を終わりたいと思うのですが、順次ひとつ見解を述べてみてください。
  51. 武村正義

    武村参考人 いい意味で、憲法の本旨に合った地方自治の根幹が、より確立されるような方向に改革をしていただきたい、これが私どもの願いでありますが、少なくともそういう願いからすれば、今回の措置は私どもとしては素直に納得できるものではなかったという考えでございます。
  52. 東峰元次

    東峰参考人 武藤先生のおっしゃることは一応ごもっともでございまして、深く拝承いたしておかなければならぬというように考えておりますが、先ほど来申し上げましたように、本年度限り、六十年度限りという政府の御方針を私どもは本当に心から信じておるわけであります。  御設問の事柄につきましては、六十年度内において真剣に御検討くださいまして、今後の地方自治運営につきましてもこれを踏襲するようなことのないように、それと同時に、やはり一括法案を通過していただきませんと、制定いたしていきませんと、事務が非常に渋滞を来しておるものでありますから、その点ひとつ御理解を願わなければならぬというように存ずる次第であります。よろしくお願いいたします。
  53. 滝井義高

    滝井参考人 元総理大臣の大平さんが「地方の時代」というのを提唱いたしましてから、燎原の火のごとく「地方の時代」というのが各自治体に浸透しておったわけですが、大平さんが亡くなるとともに「地方の時代」は淡雪のように消えてしまった。そして現在は非常に中央集権的な状態が出てきておることは、今度の法律がそれを示しておるわけですが、中央財政が非常に苦しい、地方財政余裕があるというので、がんじがらめに今地方自治体はなって、主体性とか自主性というのが非常にない。起債の制限、特別交付税にペナルティーをかけるというように、非常になくなってきておるというのが現状でございます。  こういう実態の中で、今度のような地方の行革、地方自治の改革というのは、学者によれば一割も行われていないというわけです。地方制度調査会は今十七次か十八次にいっているのですが、最前滋賀県知事も言われましたように、地方制度調査会で補助金合理化、すなわちメニュー化、統合化、それから事務の再配分、そして財源の再配分ということを絶えず言っているのですが、一つも実行されない。同時に、土光臨調の第一次答申をごらんいただきましても、行政の権限というのは国民が生活をしているところ、すなわち葉隠れ武士道で「武士道とは死ぬことと見つけたり」、自治とは生きることと見つけたりで、住民が、市民が、国民が生活をしておるところに権限を与える必要があるということも明確に言っているわけです。そして、今までの補助金見直しをやりなさい、メニュー化、統合化を図りなさい、権限は移譲しなさい、財源もやりなさい、こうなっているのです。それを、一番大事なところは一つも実行せずに、こういう生活保護なんか削ってはいけませんよと書いているのを平気でおやりになるわけですね。  こういう点で、地方が中央を信頼しない。中央は、地方に金をやったら何をしてかすかわからない。だから、日本では地方自治が育たないのです。中央集権のままで政治が行われておるというのが現状で、非常に残念でございます。
  54. 牛嶋正

    牛嶋参考人 私、先ほど申し上げましたように、今行われております地方行革はまさに地方自治確立の好機だというふうに思っております。ところが、地方行革の大綱の七つの重要項目を見ますと、どちらかというと財政再建に重点が置かれている、しかもそれは国の財政再建を手助けするというような形で何か進められるような気がいたします。それと関連して今回の法律案を見ますと、先ほども申し上げましたように、さらに地方自治体間に格差を広げるような形で行われようとしておりますので、そういう意味では、地方自治確立にとりましては非常にゆゆしい法律ではないか、こういうふうに考えております。
  55. 広瀬道貞

    広瀬参考人 国の予算は間もなく成立するわけですけれども地方予算も三月中にほぼできている。ところが、地方予算は三月に通過するのは骨格予算で、政府予算が決まった後、そしてまたその補助金の配分が決まった後、夏から秋にかけて本格予算を組む。この一事をとってみても、いかに国が地方自治というのを粗末にしているか。当初予算というのは骨格だけだというのがもう当たり前みたいに考えておりますけれども予算というのはもともと全体を見なければ何にもわからないわけで、これは常々大蔵省が言うとおり。ところが、その原則は地方では全く無視されている。  つまり補助金の制度が、補助金が余りに膨大なためにそういうことになっているわけでありまして、やはり基本的には補助金制度を抜本から改めていく。今回みたいなのは、さっきも申しましたように制度的な補助金で、いわば名前は補助金だけれども分担なんだから、こういうものは別個改革が必要ならば改革していくべきものであって、財政の面から取り上げる改革ではないと思います。これをやればますます地方は貧しくなって、三割自治が二・五自治になっていくというようなことだけで、百害あって一利なしというふうに思います。
  56. 中西啓之

    中西参考人 先ほども申し上げましたように、全国で八割近くの地方議会が反対をしている。一年限りと申しましても、先ほどの大蔵省の方の御発言にもありましたように、実質的には一年限りでもとに戻すという意味ではないということなんですね。そうしますと、これはやはり八割もの地方自治体議会が反対しているのをあえて強行するということになろうかと思います。これはやはり憲法で定めております地方自治の本旨という点から見ても、大変重大な問題ではなかろうかというふうに考えております。
  57. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 参考人の皆さんに御意見を聞かしていただきまして、大変ありがとうございました。  さっきの点、答えられますか。
  58. 土田栄作

    ○土田政府委員 問題は二つあったと思います。  一つは、起債制限団体の数が幾つかということでございますが、これは二〇%以上の起債制限比率でひっかかっております団体が三十二団体ございます。実は私ども、いろいろ財政危機のときに、地方団体の四分の一が地方債の比率が二〇%を超えるとかなんとかと申し上げております。それは公債費負担比率ということ、つまり公債費の支出額を分子にとりまして、分母に一般財源をとった形で計算しておりますけれども、実はそういう形でやりますと、みんなかなりの団体地方債の許可制限にひっかかってまいりますので、地方債の許可制限比率を算定いたします場合は、その中で交付税に入っているものを抜きますとか、いろいろな差し引き計算をいたしまして地方債の制限団体というものを決めます関係で、三十二団体ということになっているわけであります。  それからその次、税についてのお尋ねでございますけれども、税につきましては、昭和六十年度の初年度で、地方税の税制改正によります増収額は三百二十七億でございます。その中で、個人の均等割でございますけれども、個人の均等割に係るものが二百二十九億、こういうことに相なっております。  以上のとおりでございます。
  59. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  60. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 午後一時三十分より再開することとし、休憩といたします。     午後零時八分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  61. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  62. 坂口力

    ○坂口委員 参考人の皆さん方には、非常にお忙しい中を、しかも急なことを申し上げて、大変御迷惑をおかけをしたのではないかと思います。御出席をいただきまして、ありがとうございます。  この補助金一括法の審議を先日以来この委員会で行っているわけでございますが、昨日も総理大臣に出席を求めまして、総理大臣からもいろいろお話を伺ったわけでございます。そういたしますと、総理大臣からはいろいろお話がございましたが、その中で、中央の統制というものはできるだけ少なくしていくことに私も賛成であるというお話もされました。そして、補助金のメニュー化あるいは地方の自由意思の尊重、そして国民の選択、選好性というものをより大事にしていきたいというお話もございました。今回のこの措置はやむを得ない措置である、やむを得ない措置であるから一年こっきり、そして、それから後のことについては現在白紙の状態であるというお話がございました。そういうお話がございます一方、地方の自由意思並びに国民の選好性あるいは選択性というものを大事にするという話がございますのは、やむを得ずとった措置ではあるけれども、今回のこの法律の中には今までの補助金というものを交付金に変えていくという一面がありますと、その交付金に変えていくということは、地方の主体性あるいは自由意思というものを尊重するという意味も含まれておりますということを、総理大臣はおっしゃりたいのであろうと思いながら聞かせていただいたわけでございます。  そこで、きょうは市長さん方にもお見えをいただいておりますし、また、それぞれふだんから財政問題につきましていろいろと御研究をされております皆さん方がおそろいでございますので、交付金と補助金というものを考えました場合に、補助金交付金化していくということが本当に地方の自由意思というものを高めていくことになるのであろうか、私は実は一抹の不安を持っているわけでございます。  と申しますのは、例えば今回のこの法律案の中に保健婦さんの問題が実はあるわけでございます。先日も参考人の皆さんに私はこのことをお聞きしたわけでございますが、例えば離島でございますとかそうしたところの保健婦さんの問題や、その他二、三、この保健婦さんの問題が出てまいります。保健婦さんの必要性というものを痛切に感じておみえになります市町村でございますと、今まで補助金がつきますから採られたというケースもございますが、今までの補助金がついておりますときにおきましてもなおかつ、そうした人は要らないといってなかなか採らない市町村も中にはあるわけでございます。こうした問題は、交付金化をしていきますとさらにそういうことに拍車をかけはしないかという心配も一面においてはあるわけでございます。  確かに選択性、自由意思を与えるということは事実ですけれども、選択によっては、市町村民にとりましては非常にマイナスの面が出てくる可能性もなきにしもあらずというふうに私は思っているわけでございますが、そうしたことも含めまして、ひとつ参考人の皆さん方の御意見をお伺いしたいと思うわけでございます。  最初でございますので、きょうは、御出席いただきました皆さん方に一言づつお伺いをしたいわけでございますが、交付金化をしていくということがどんな影響を与えるのであろうか、マイナスの面はないであろうか、そしてまた、さらにつけ加えていただくとするならば、地方自主性あるいは選択性というものをより高めていくために、今回のこの法律のように補助金カットするという方法ではなくて、やらなければならないことがあるとしたら、もう少しほかにどんなことがあるだろうか、その辺もあわせてお答えをいただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いを申し上げます。
  63. 東峰元次

    東峰参考人 全国市長会の副会長を仰せつかっておる千歳市長東峰でございます。  ただいまの御質問に対するお答えになるかどうか存じませんが、実は、今回は一律補助金負担金の引き下げ地方負担の増加というようなことが伴いますが、しかし、これは本年度限りである、しかも五千八百億の財源をもって、経常関係が二千六百億、投資的関係が三千二百億、これは政府当局で全部これを補う、カバーする、したがって六十年度の地方財政には支障を来さないというので、今一括法律案を提案するというような御方針を承って、私どもは固くこれを信じて、この法案が通過し、予算を御決定願った後に、この六十年度内に、ただいまの御設問のような点の改革案、改造あるいは改正案につきましては篤と御検討、見直しを願いたい。国と地方の関係の補助の合理化あるいは事務分担の合理化、そういう方面の見直しについてもっと熟慮御検討願いたい、こういうように念願しておるわけであります。  ただいま交付税があるいは補助が、二者択一の御設問でございますが、地方交付税にこれを総括するということは非常に強力になるんじゃないか。地方の問題として、それがために保健婦を減員するとかなんとかというようなことがなく、かえって財源化がスムーズにいくのではないかと私は直観します。その点をひとつお含み願いたいと思います。  以上であります。
  64. 滝井義高

    滝井参考人 田川市長でございます。お答えいたします。  行政改革をやるときには、土光臨調でも書いているように、三つの関係をやはりきちっと実行していく必要があると思います。一つは変化への対応です。情勢がいろいろ変化します、的確にそれに対応していく。二番目は、簡素効率化でなければならぬ。三番目は、やはり信頼をされる、信頼性の確保の中で行政改革を行わなければなりません。  そうしますと、補助金交付金化するということになりますと、御存じのように補助金は十四兆を超えております。交付税は九兆円でございます。その十四兆をどんどん交付税化をしていくということは九兆の交付税補助金が肩がわりして食っていくことになります。そうしますと、私たちは十四兆の補助金地方自治体へもらい、九兆を一般財源としてもらって予算を組んでいるわけで、その補助金が肩がわりしていけば、我々の自主財源はどんどん減っていくことになるわけです。したがって、補助金交付税化しようとすれば、酒税、法人税所得税の三二%の枠を変えなければそういうことはできないわけです。だから、今の日本の財政上三二%を変える——かつてこれを四二%ぐらいにしようという論が随分あったわけです。しかし、それは大蔵その他でそうはいかぬということで、三二%のままに据え置かれております。したがって補助金交付税化するのではなくて、補助金というものは統合制、メニュー制でやはりきちっと手続を省略して簡素な形でやる。例えば私の方で百億もらっておるなら、その八割の八十億をぽんと年の初めにくれさえすれば、あと二十億はそれぞれややこしい手続があっても、随分事務がいわゆる簡素化する、しかも信頼関係が出てくるということになるわけです。  それから保健婦の問題についてですが、実は保健婦がいないわけですね。例えば福岡県で保健婦の学校がありますけれども、二十五名か三十名しか卒業しないのです。今度御存じのように四十歳以上の老人保健法ができまして、この法律で初めて予防体制をとるようになった。今までの日本の健康保険法その他、予防体制が全然ないのです。施設はありましても、いわゆる予防的な健康相談をやり、健康教育をやり、健康診査をやるなんということはなかったわけなんです。今度は老人保健法で初めてそれをとることになり、今度の健康保険法の改正で一部そういう形が出てきた、右へ倣えすることになった。そうしますと、全国で四十歳以上の人の健康体制、いわゆる包括医療体制、予防、治療、後保護というような形をとるとすれば、たくさんの保健婦が要るわけです。今その保健婦がなかなかいなくて、かねや太鼓で探しているけれどもいない。そこで厚生省は、やむを得ぬからOBの看護婦さん、いわゆる退職して遊んでいらっしゃる看護婦さんを登録して、それをしたらどうだと言うけれども、もう十年も十五年も前に看護婦をやめた人は、近代の医学というのはぐっと進んでおるから、適応性が少ないという問題があるわけなんです。  そういう問題が別にあるということ。それから、今のように補助金を即交付税化するとすれば、これは大変な事態になる、こういうことでございます。
  65. 牛嶋正

    牛嶋参考人 高度成長から低成長へ移行いたしまして、地方行政の内容というのはかなり変わってきたというふうに私、思っております。  高度成長期の税の自然増収が非常にあったときに、地方自治体、各自治体とも非常に努力いたしまして、一応住民の生活に必要な公共サービスの水準というのは、一定の水準まで大体達したんじゃないだろうかというふうに私は思っております。低成長へ移行いたしましてから住民の価値観も非常に変わってきたわけで、これまでのそういった生活に必要な公共サービスに、さらに選択的といいますか、高次なサービスを要求するようになってきた。それは端的には文化行政等々で出てきているというふうに思っております。  これらの選択的あるいは高次の行政を今後地方自治体が行っていくためには、恐らく住民の選好を非常にうまく酌み取って、地域の実情に合った行政を行っていかなきゃいけないのじゃないか。そういたしますと、ますます自治体に選択の余地をできるだけ与える、いわゆる自主性を与えるということが、これからの行政にとっては非常に必要ではないかというふうに私は思っておりまして、先ほども、これから行われる地方行革の一つの課題に、自主財源あるいは一般財源比率の拡充というふうなことを申し上げたわけです。そういう意味から申しますと、補助金交付税化していくということは、私は原則的には賛成であります。  この場合に非常に懸念されますことは、今も先生がおっしゃいましたように、そういうふうな選択を与えた場合に、十分に住民の選好を反映するような形で行政が行われるだろうかというふうな懸念があろうかと思いますけれども、だんだんと地方自治体も、国が考えている以上に力をつけてきているというふうに私は思っておりますので、この時点でまずそういった自治体の方に責任を持たせるというふうな国の譲歩が必要ではないか、そういうふうに私は考えております。
  66. 東峰元次

    東峰参考人 今先生からの御質問に私は一番先にお答えしたのですが、後段の方の交付化、これは交付税の問題でなく、補助金交付化をするかどうかというような御設問のように私は考えなかったわけです。直ちに地方交付税というように考えたものですから……。
  67. 坂口力

    ○坂口委員 それでいいんです。だから、初めのお考えで結構なんです。
  68. 東峰元次

    東峰参考人 そうですか。それではそのように御了承願いたいと思います。どうもありがとうございました。
  69. 広瀬道貞

    広瀬参考人 特定目的の補助金地方交付税というような形で一般財源化した場合に、その政策が手薄になる可能性はないかという最初の御質問ですが、私はそれは大いにあり得ると思います。ある地域では保健婦を減らすとか、またある地域では農業改良普及員を減らすとか、それは自治体自主性でいろいろなことが起こり得ると思います。しかし、その危険性をも含めてそれが地方自治であって、時には失敗することもある。しかし、基本的には住民のニーズに返ってくるものだ、そう信ずる以外にないのじゃなかろうか。ある種の冒険であるけれども、それが地方自治の本旨だというふうに思います。  それから二番目の今回の四十二補助率削減の前にやるべきことがあるのじゃないかという点につきましては、例えば全国市長会だとか全国知事会もたしかあったと思いますけれども補助金のリストをつくりまして、こういう補助金は手続が非常に複雑である、あるいは地方自治の本旨にもとる、したがってこれをメニュー化するか、地方交付税の中に入れて一般財源化すべきであるというような提言を過去にもしたことがあります。全国市長会などの主張は、その見返りとして、これまでは補助金として使われた財源をそのまま地方交付税の中に改めて加えなさいという主張であります。そうすれば万全ですが、仮にそうでなくても、その五割ぐらいは結局政府の手元に残って、残りの五割だけが地方財源の中に入れられるにしても、そうした紛らわしいもの、効果の薄いもの、地方自治の本旨にもとるような補助金がなくなれば、それだけでも随分結構なことであり、中央の財政再建に役立つことであって、まずそうしたことからやるべきだったのじゃなかろうかというふうに私は思います。
  70. 中西啓之

    中西参考人 私も一般論として言いますと、地方自治体自主性を重視するという点からいいますと、補助金を少なくして一般財源を増強していくという方向に賛成であります。しかし、現在、その場合でも私は三つぐらいの条件が必要じゃないかというふうに考えております。  第一は、地方自治体一般財源がかなり確実に増強をされる、強化されるということが一つの条件であります。それから二番目には、地方自治体と国との間の一定のこれは廃止をしていく順序、手続の問題として、合意形成といいますか、相互了解みたいな過程が必要だろうというのが第二の条件であります。第三には、そういうことを前提にして、なおかつ、どういう補助金でもいいからばさばさ切っていいということにはならないと思うのですね。やはり全国的な視点から見て、国民の暮らしに非常に重大なかかわりを持つ、それを廃止することが国民の生活に非常に大きな影響を与えるというふうなものはできるだけ後回しにして、どっちかといえば、そういう影響の軽いものから整理をしていく、こういうことが必要だろうと思うのですね。その三つの条件をつけた上で、一般論としては一般財源化方向に賛成であります。  ただし、現在の状況はそれでは一体どうかと申しますと、この第一の条件、地方自治体一般財源そのものがだんだん圧迫されてきているという方向に来ているわけです。それの一番重大なのは、私は昨年の地方財政対策だったと思うのです。昨年の地方財政対策で、一九七五年以降毎年大蔵省資金運用部資金から交付税特別会計に対して貸し付けをやってきた。これを去年やらないというふうに決めてしまったのです。これは私は非常に重大な、地方財政対策における一般財源の切り捨て策だったと思うのです。あれで毎年一兆円から二兆円、一番多い年が一九七九年だったと思うのですが、あの当時二兆円ぐらいの補てんをやっているのです。そうしますと、これは実質の交付税率として計算すると、たしか四四%くらいにいっていたんじゃないかと思うのです。それほど交付税財源不足をしている。不足をしているにもかかわらず、それを補てんしないという措置を決めてしまって、その上で補助金カットする、こういうふうにことし出てきたわけです。ですから私は、今回の補助金整理というのと昨年の交付税に対する貸し出しのストップと、これは連関して動いているんじゃないか。こういうふうに見ているわけです。  そういう点から見ますと、第一の一般財源自体の非常に重要ないわば補てん策が切られたまま補助金も切られるということになりますから、これはもう大変重大な結果をもたらすんじゃないかということで、特に今日のそういう一般財源の切り捨て策を前提とする限り、補助金整理合理化というのは非常に重大な、いわば地方自治の侵害という結果をもたらすんじゃないか、こういう意見であります。
  71. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  引き続きまして、牛嶋参考人滝井参考人のお二人にお聞きをしたいと思います。  まず、牛嶋参考人にお聞きしたいと思いますが、牛嶋参考人は、先ほど、地方行政の効率化それから自主性並びに財政格差の是正でございましたか、三つの条件をお挙げになりまして、この判定基準から見て今回のこの法律の内容を検討されたわけでございます。その中で、財政格差を広げていく可能性がある、とりわけ四、五の公共事業その他の高率補助の切り下げのところは財政格差を広げる可能性があるというお話をされましたが、その辺のところ、なぜ財政格差を広げていくというふうにお考えになるのかということを、もう少しお話しをいただきたいと思うわけでございます。  大蔵省の方の説明をお伺いいたしますと、例えば公共事業補助率が下がりますけれども、例えば十分の八が十分の七に下がったといたしましても、そこから浮いてまいりました額は、決してほかのところに使うのではなくて、さらに公共事業の枠を拡大するために使うのだから、少し薄く広くこれを使うのであって、決してよそに使うわけではありません、したがいまして、確かに地方の方の財源には少し負担をかけるけれども、しかしまたより多くの公共事業をするということに結びつくのだから、これは一つの方法なのだというお考えを示しておみえになるわけでございます。こうしたことに対しまして、ひとつお考えをお聞きしたいと思います。  また、滝井参考人の方からは、先ほどるる実際に御苦労なすっているお話をお伺いさせていただきまして、財政格差がなぜ進むかという参考人のお考えがその中にもう既に出ておりますが、その中で一千億の交付税が今度新しくそこへ設けられるけれども、それがどのように振り分けられるのかということが明確でないというお話がございました。参考人のお考えとして、この一千億なら一千億の交付税は、地方自治体としてはどのようにしたらいいかということについての御意見がございましたら、ひとつお聞かせをいただきたいと思うわけでございます。
  72. 牛嶋正

    牛嶋参考人 例えば生活保護費の場合、これは四十項目の中でも一番大きな金額になっておりますので、これを取り上げて少し考えてみたいと思います。一律カットですから、比率から申しますとそれぞれの自治体は同じ痛みを受けるわけでございますけれども、ただそれぞれの自治体でどれだけ生活保護費を計上しているかということは、その地域の経済活動と非常に関係がある、これは明らかでございます。やはり地域の経済活動がそれほど活発でない地方自治体のところでは、比率から申しますと生活保護費の計上は大きくなっているわけです。そして、そういった自治体はまた財政力が豊かでない、非常に乏しいところでございます。そういうことを考えますと、比率から申しますと一律カットでありますけれども、額的には、今申しましたように、財政力の乏しいところで大きくかかってくる、こういうふうに考えます。したがって、先ほど申しましたように、この一律カットの中でそういった民生、福祉関係のものがかなり含まれておりますが、そういった補助金項目は、そういう意味では財政的な圧迫の度合いがそれぞれの自治体でかなり違う、しかも財政力の乏しいところで強くあらわれてくるということでございます。  それから、国側は全体としてはそれほど財源を削ってはいないというお話ですけれども、問題は地方財政を全体として見るか、それとももう少し個々の自治体を見ていくかということで非常に議論が変わってくると思います。なるほど全体としては地方財政はそれほど大きな財源削減はなかったわけですけれども、こういう措置によって圧迫を受ける度合いがそれぞれの自治体で違うということ、それからまた起債のお話も先ほどありましたけれども起債ということになりますと、比較的財源の豊かなところが起債がやりやすいというふうな面を見ていきますと、またそこでも格差が生じてくるのではないか、こういうふうに考えております。そういう意味では、常に地方財政を全体として見るんじゃなくて、その措置が講じられることによってその地方財政の中でどのようなアンバランスができるか、この点を国と地方財政関係を考える場合には常に念頭に置いておかなければならない問題ではないか、こういうふうに考えております。
  73. 滝井義高

    滝井参考人 坂口先生にお答えいたします。  例えば生活保護に例をとってみますと、千億の交付税特例加算が出てきたわけです。十分の八負担しておったのを十分の七負担をすることになりますので、その分がきちっと歳入に入ってくる道を講じていただければいいわけです。ところが、御存じのように、もう一つ八百億の官房調整費の中から二百億が生活保護に臨時に交付金として入ってくるわけです。そうすると、その千億と二百億との関係がどういう形で計算をされてくるかというのは全然わからないわけです。ここらあたりは、自治省の方で千億はこういう形、二百億は厚生省の方でこういう形でやるんだといって、それがドッキングして生活保護の百分の七十を賄ってくれる、そういうことをきちっと明確にしていただければ、私たちはいいことになるわけです。しかもそれは今年限りである、こういう前提に立っておるということです。
  74. 坂口力

    ○坂口委員 きょうは参考人に対する質問であって、大蔵省や自治省にお聞きするのは失礼かと思いますけれども、今滝井参考人からお述べになりましたことにつきまして、自治省ですか、もし今までわかっておりますことでお答えできることがございましたら、ひとつお願いをいたします。
  75. 土田栄作

    ○土田政府委員 簡単にお答え申し上げますと、まず今回の補助率の一律カットによりまして五千八百億だけ、地方財政の全体計算として財源不足が生ずるということになったわけでございます。それに対します、個別の団体に対する財政措置でございますけれども、これは地方交付税の算定を通じ、あるいは地方債の配分を通じて財政措置をしてまいることになるわけでございます。  その場合に、経常経費系統につきましては、これは地方団体の場合は赤字公債を出すことができません。これにつきましては一般財源で充てなければいけないということでございますので、この関係のものにつきましては交付税基準財政需要額におきます生活保護費をふやしまして、つまり一律一段階引き下げに伴います地方負担の増といいますのが、ただいまお話がありました二百億を引きますとおおよそ千三百億ほどあると思いますけれども、この分につきましては各地方団体生活保護費の基準財政需要額をふやすということで財政措置をする。  ただ、しばしば議論がありましたように、交付税といいますのは需要と収入の差っ引きになりますから、不交付団体については、そこのところはなかなかいかないわけでございまして、起債の対応策しかできないわけですけれども交付団体分につきましてはそういうことで、経常経費不足額についてはきちっと交付税余裕がふえるということで財政措置がされるということでございます。  ただ、いろいろ御懸念がありますのは、交付税というのは標準単価で計算いたしまして、一律計算ですから、団体によりましては、例えば医療費が非常に高いとか生活保護費の中の単価が非常に高いとか、そういう団体が出てまいりますけれども、そういうふうなでこぼこの問題につきましては、厚生省の方とよく相談いたしまして、今回予算に計上されております二百億の臨時財政調整補助金の配分を通じまして適正に対処してまいると考えております。  いずれにいたしましても、これらの方針を具体化して地方団体に伝えますためには、現在の法案の内容というものが確定いたしませんと、私どもとしても地方団体に連絡できないというわけでございまして、そういう意味におきまして各団体がいろいろ不安の念を持っているということも事実でございますけれども、できるだけ早くお決めいただければ大変ありがたいと存じている次第でございます。
  76. 坂口力

    ○坂口委員 時間がなくなってしまいましたので、もう一問だけお聞きをして終わりたいと思います。  広瀬参考人が先ほど、補助金削減をするという総論的な意味では賛成だけれども、しかし削減先と方法を間違っているというふうに御指摘になりまして、私も同感の面があるわけでございます。参考人のお考えで、その削減先と方法をどうするかということは先ほどある程度御説明をいただいたわけでございますが、参考人がお考えになっている、これはそんな細かな話ではなくて大ざっぱなことで結構なんですけれども、現在の中で補助金は額としてどのくらい切れるとお考えになっているか。削減先と方法とを考えてやればこのくらいは削れるんじゃないだろうかとお考えになっているかということ、もしも発言をしていただけたらお願いをいたします。  牛嶋参考人も同じ質問で、もしも発言していただくことができればお願いを申し上げたいと思います。
  77. 広瀬道貞

    広瀬参考人 ここ三年ほどゼロベース、ゼロシーリング、マイナスシーリングが続きまして、歳出総額に占めるうちの補助金の額は、ウエートはだんだん下がってきております。一時は三三%ありましたが、たしか六十年度の予算は二八とか九だろうと思います。つまり補助金のウエートはそれだけ下がってきておりますが、一つ際立った特徴がありますのは、件数がほとんど変わってないということです。これはどうしてかといいますと、各省が持っている補助金の一割削減と言われると、みんな金額を少しずつ下げていく。今回は法律補助ですから法改正が必要なわけですが、法改正を要しない補助金がたくさんあるわけで、そういうものについて見てみますと、一件当たりの補助金が減っていくとかあるいは金額が下がったため交付先を減らすとか、つまり非常にびほう策でもってやってきているわけです。その結果、補助金がますます細分化されていくということが起こってくるわけです。  逆に、件数が減ればどうなるかということを考えてみますと、ある一つ補助金につきまして、役所には必ず一つの係なり班なりがいて、一年じゅうその補助金の申請を受け付けてみたり、交付額を決めてみたり、あるいは仕事が終わった後、正しくやっているかどうか検査してみたり、つまり補助金にまつわる仕事をやっている官僚の陣容が大変な数に上るわけです。その件数が減れば、そういうポストも必要でなくなるわけで、役所の機構の簡素化にもつながっていく。これが本来の行政改革だろうと私は思うのです。ところが、役所は、補助金が減っても、せめて陣容だけは減らしたくない。したがって、わざと件数を減らさないという、一番悪い格好の補助金削減がここ数年続いていると見ていいと思うのです。  私は、農業関係の補助金を中心に調べてみたことがあるのですけれども、最近は、市町村の集会施設をつくるについても、あるいは下水道をつくるについても、道路をつくるについても、それが農業補助金という格好で出てくるわけですね。道路は、普通の通勤、通学道路が農道という格好で農林省から支出される。一般の集会施設というのは市町村固有の仕事であって、これは何も農林省が口を出す性格のものじゃないと思うのですけれども、その種の補助金が農林省から出てきている。そういうものをよく見ていけば、不要不急の補助金というのは、さっきも言いました「補助金総覧」の中に数限りなくあるわけで、それを削っていくべきだと思うわけです。今の補助金削減というのは、官僚の権限を今のままにして、あるいは陣容を今のままにして、こういう財政の厳しいときだから金額だけは若干減らすという、一番悪い格好の補助金削減が続いているというふうに思います。
  78. 牛嶋正

    牛嶋参考人 私は、補助金というのは二つ大きな役割を持っていると思っております。  一つは、行政サービスをできるだけ全国統一したい、一律の水準にまで高めたいという場合に、補助金を活用いたしましてその水準を維持していく、これが一つかと思います。もう一つは、それぞれの地域の実情によって、こういう行政サービスをこの地域で伸ばしたい、むしろ伸ばす方が望ましいという、いわば奨励的な意味を持った補助金、こういうふうに大きく補助金の役割は分けることができるのではないかと思います。  しかし、実際補助金が制度としてある限りは、自治体の方はそれに頼るという気持ちがやはりどうしてもあるわけですし、国の方はそれを使って自治体をある程度コントロールするという、制度自体のそういう機能が働いてくる、こういうふうに思っております。したがって、先ほど申しましたように、住民の生活に必要な行政サービスというのは大体一定の水準まで達していると思っておりますので、前者の役割を持った補助金は大体その役割が終わったのではないか。したがって、これからは、もちろんタイムスケジュールの問題がありますけれども、やはり漸次一般財源化して、地方自治体の方に責任を持たせていくという方向で進めるべきではないかというふうに思います。  あとの奨励的な補助金につきましては、今後もこれを活用して、それぞれの地域の特色をできるだけ出していくという方向で活用していけばいい。ただ、この場合にも、地方自治体の方でそういった責任にこたえることのできる行政能力みたいなものをどうしても身につけていかなければいけませんので、それとの絡みで漸進的に補助金一般財源化していくという方向を考えてみたいと思っております。
  79. 坂口力

    ○坂口委員  ありがとうございました。ちょっと超過いたしましたけれども、終わらしていただきます。
  80. 越智伊平

    越智委員長 安倍基雄君。
  81. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 参考人の方々、お忙しいところ、貴重な御意見を拝聴させていただきましてどうもありがとうございました。民社党の安倍基雄でございます。同僚議員が既にいろいろなことを聞いた後でございますので、できるだけ重複しない範囲内で皆さんの御意見を承りたいと思うのでございます。  たしか牛嶋参考人でございましたか、地域における格差ということを取り上げられておりますけれども、私も実はこの点非常に関心がございまして、自治省からデータを集めてみたのでございます。例えば東京都、メガポリスを見ますと、人口が全国比で九・六%でございますけれども地方税収入は全体の一七%、非常に高い額でございます。例えばこれを法人住民税で見ますと、全国の約二五%が東京都にあるわけでございます。この点、牛嶋参考人の御意見をお伺いしたいと同時に、それぞれの自治体から出てこられた参考人の方々、そしてその後新聞社の方の御意見を承りたいと思います。
  82. 牛嶋正

    牛嶋参考人 今、東京都の話が出ましたが、私は名古屋に住んでおりまして、いつも愛知県のデータでもって、地域格差の状況をいろいろな計算をしているわけですけれども、東京都にいたしましても愛知県にしても、いわば大都市圏でございます。したがって、地方の農村県に比べまして、全般的に財政力は高いはずでありますけれども、愛知県の中を見ましても、かなりの財政力の格差が見られるわけです。  財政力の格差を比較する場合に、よく財政力指数が使われますけれども、私はもう一つは市民あるいは住民一人当たりの税収額で比較をするということもやっているんですが、愛知県のような、今申しました大都市圏の中でも最も低い財政力の都市、それから豊かな都市を比較いたしますと、三倍ぐらいの税収額の開きがあるわけであります。ですから、こういう状況をそのままにして国から地方財源を移譲しても、もちろん全体としては、地方財政の自主財源は高まるかもしれませんけれども、やはり税源の乏しいところはそれほどふえなくて、税源の豊かなところがますます税収が上がるというふうなことで、格差が拡大されてまいります。  そういう意味で、一般財源あるいは自主財源の拡充ということが地方自治の第一の条件でありますけれども、それだけではなくて、今申しました格差の問題をいつも念頭に置いて、それを是正するような形で財源の移譲を考える、あるいは自主財源を全般的に高めていくというふうなことになりますと、やっぱり先ほど申しましたように、漸進的な改革でなければなかなかうまくいかないんではないか、こんなふうに私は考えております。
  83. 滝井義高

    滝井参考人 お答えいたします。  今度の問題で、地方自治体の中に格差をつくるというのは、私は財源補てんが十分にうまくいかないときは出てくると思っております。  例えば私の市で御説明申し上げますと、老人人口が非常に多いわけです。全国で一番新しいときで九・九%、私のところで一五%、昭和七十五年の日本の姿を呈しておるわけです。国民健康保険の被保険者で、所得百万円以下が六割おるわけです。したがって、保険料を上げたり税を取り立てるということは非常に難しゅうございます。しかも老人人口が多くて、低所得が多いわけです。企業がつぶれまして、炭鉱がつぶれましてから、ほとんどが生活の糧を失対事業でやっておる。失対事業が二つの企業になっておるわけです。今は失対事業も打ち切られようとしておりますから、かわりに企業誘致を本格的にやろうとしておる、そういう実態でございます。  財政力指数は、人口六万ぐらいの類似団体が〇・七ぐらいあるんですが、私のところは〇・三五、財政力は半分ぐらいですね。したがって、そういうところでこれをカットされますと、自主財源が何もかも入れて、全部で税が一割五分から二割しかないわけです。したがってこれを切られますと、補てんをする財源がない、こういう実態になりますから、財政はますます硬直化してくることになります。したがってそこに格差が明らかに出てくる、こういう形になると思います。  以上です。
  84. 広瀬道貞

    広瀬参考人 やはり今回の特例法の弊害の一つは、地方自治団体財政格差を助長するという点だろうと思います。今回の問題が起きましていろんな自治体の責任者の方々と話す機会があったんですけれども、富裕な市町村では比較的問題を軽く受けとめておるといいますか、自分のところにはもともと失対事業も少ないのでというような話があるわけです。今回は、もともと貧しい市町村に対して直撃する措置だろうというふうに思います。  日本の自治体の場合には、制度的には自治というのが保障されておりながら、実質的運用でそれがうまくいかない。それはつまりはお金がないからだ。今回ますます地方の自主財源を圧迫するわけですから、日本の地方自治にとってやはり非常に大きな脅威であって、同じ財政対策財政が苦しい中で地方も協力するという場合に、ほかのやり方がいろいろある、それをとらなかったというのが非常にまずい点だろうというふうに思います。
  85. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今度の補助金カット財政格差にどういう影響を与えるかということと同時に、基本的には財源そのものを考え直す必要もあるのではないか。これは地方税、私はこれからの大蔵大臣に対する質問でもまた取り上げようと思っておりますけれども、例えば法人住民税なんといいますものは、いろいろな会社が法人を東京へ持っていってしまうわけですね。現実問題として方々で仕事をしてもですね。その結果、東京における法人がぐっとふえちゃって、それで結局金がそこへ集中してしまうというようなことで、地方税そのものがちょっといびつになってきておるんじゃないかなという気もするのでございますけれども、この点やはり税源について、これは次の問題になるんですけれども財源についてこういった地方と国との再配分のときに、どういった税が地方税に適するんだろうか、あるいは国税に適するんだろうか、それとどういった事務がもともと国が分担すべきものであろうか、地方が分担すべきものであろうか、こういった基本的な洗い直しが必要なんじゃないかなというような気がするのでございます。それについて、自治体滝井参考人東峰参考人、どちらでも、あとそれぞれの皆様の御意見で、税源の問題、どういったものが地方の税金でいい、国の税金でいい、あるいはどういった事務は国が当然やるべきだ、地方が当然やるべきだということについて、なかなか急な話でございますけれども、それぞれのいわばお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
  86. 東峰元次

    東峰参考人 私からもお答えを申し上げたいと思いますが、御高承のように、地方財政は五十六兆円に上る借入金等を抱えております。極めて厳しい状態に置かれておるわけでありますが、私どもの市といたしましても、税収は六十六億でございますが、公債費が二百七十二億円に達しておるわけです。財政運営上甚だ危惧をしているところでございます。  したがって、地方財政の状況を国の財政と比較して、地方財政余裕論といったような意見も承っておりますが、必ずしも都市財政の実情を理解したものとは思料されません。そこで、今後ともこのような地方財政の状況を踏まえ、行財政の改革を積極的に進めて、経費節減合理化を進めてまいる考えでありますので、そのためには地方財源の充実確保を図っていただかなければならないと考えておりますが、地方財源の充実確保のためには、地方税源の充実強化とあわせて、地方交付税の所要額を安定的に確保されるよう強く要望してまいったわけです。  御設問の、どういうような税を地方に配分することが適切であるかということでございますが、私は今日までの経験上、今の税制から考えますと、やはり交付税によって適正な配分をする以外にないと思うのです。法人税ども、いわゆる本社所在地、あるいは分社、支社等の関連した施設が地方にある場合には課税標準の根拠になりますが、それ以外はやはり地方交付税によって適切に、時代に即応できるように慎重に、地方交付税の改革とかそういうようなことにつきましては真剣な御検討を願わなければならぬと平素考えておるような次第でございます。
  87. 滝井義高

    滝井参考人 お答えいたします。  現在のところ、新しい税源を地方に求めるといっても、御存じのように、我々がいただく税金の一番大きなものは市民税と固定資産税でございます。そのほかにたばこ消費税とか電気税とか、あるいは譲与税的なものがありますけれども、やはり地方自治体を支えるものは何といっても市民税と固定資産税です。そのほかのものにやるといっても、そんなに地方財政の硬直化をさっと弾力的にするようなものは見当たりません。そうなりますと、必然的に地方交付税をきちっと一般財源として私たちに入れていただく、いわゆる基準財政需要額と基準財政収入額を見合って操作をしていただく、それから補助金一般財源化していただくということ以外に、当面はいいものは見つかりません。  以上です。
  88. 牛嶋正

    牛嶋参考人 今全体として増税をしないということになりますと、今の国税と地方税の間の税源の配分を変えていかざるを得ないと思います。その場合に、それではどういう税目がいいのかということですが、先ほど申しました愛知県の分析によりますと、一番地域間格差をもたらしているのはやはり法人関係税でございます。したがって法人住民税、それから固定資産税の中でも法人が支払っている固定資産税、これが地域間格差をもたらしているわけです。ですから、国から地方へ税源を移譲する場合には、まず法人関係税はまずいのではないかと私は思っております。住民税が比較的地域間格差が少ないわけでございます。これは恐らく累進度が非常に緩やかであることとか、均等割がございます。そういうことで格差が少ないわけで、そういう意味では所得税の税源を、今の国の所得税と住民税を合算いたしましてここのところをうまく配分すれば、それほど地域間に格差をもたらさないで、国から地方へ税源の移譲を図ることができるのではないかと考えております。  それからもう一点、事務の配分でございますが、私は、今の事務配分でいいのではないかと思っております。ただ、一つ事務を考えた場合に、その事務の内容を私は二つに大きく分けることができるのじゃないかと思います。一つは、どういう水準でサービスを供給するかというふうな、いわば計画に当たる事務、私はこれを計画事務と言っていいと思います。それからもう一つは、その計画に基づいて実際に実施する事務であります。ところが、今多くの地方自治体が行っている事務のうち計画事務は、国が行って、そしてただ実施だけを地方が受け持っている。これは機関委任事務が非常に典型であります。望ましいのは、計画事務も実施事務もすべて地方自治体が受け持ってやるべきだと思いますので、さしあたってはやはり今の機関委任事務見直していくべきではないか。それからまた団体委任事務の中にも、実際には計画が国の方でやられて、地方は実施だけという事務もございますので、これは補助金との絡みも出てまいりますけれども、そのあたりも見直していかなければならない。しかし事務の配分というよりも、その事務を進めていく場合の機能、特に計画機能が重要ですが、それをできるだけ地方自治体の方におろしていくというふうなことをお願いしたいと私は思っております。
  89. 広瀬道貞

    広瀬参考人 まず地方税の方ですが、既に国税だけでなくて、地方税についても相当重税感が強いと思うのです。したがいまして、新たな課税は自治体の場合に非常に困難であって、また安易にやるべきじゃないと思います。要するに早急に国の財政再建をやって、同時に地方交付税の三二%をもっと大きくしていく、これがとるべき正しい道じゃないかと思います。  事務事業ですが、臨調答申の中に、身近な行政というのは府県、市町村に任せなさい、府県よりも市町村を中心に移していきなさいというのがはっきり書かれております。政府は既に行政改革は五合目に達したと言いますけれども、仕事を地方に移していくというこの分野については、ほとんどと言っていいほど進んでおりません。これはやはり早急にやっていくべきだと思います。早い話が、市町村道についても今は国の補助事業ということになっております。しかし、市町村道と言えばもともと住民の暮らしに極めて密接な道路であって、それをつくるとか舗装するとか、もっと変わった道路にするとかいうような場合に、一々建設省まで陳情に行ってオーケーをもらうのは大変なロスであるばかりでなくて、住民が自分たちで地域社会をつくっていくんだという趣旨に全く反するわけであって、ほとんどの事業について、一体国がこれに一口乗るべきか、それとも一切合切地方に任せるべきか、ほとんどの分野で洗い直しが必要だと思います。今の事業のうち大半はもう一度洗い直していい事業だと思います。
  90. 中西啓之

    中西参考人 御質問の趣旨は二つに分かれると思います。現在の国税、地方税を含めて、税源としてどういうふうなものを考えていくかというのが一つと、それを前提にして国税と地方税の配分あるいは地方と国の財源配分をどう考えるかということになろうかと思います。  第一の、現在国、地方を含めまして大変な財政危機になっているわけですが、これは昨年の朝日新聞でも出していたと思うのですが、現在民間の預金とか民間の資金というのは相当だぶついてきているし、預金高も上がってきている、それに比べて公的財政というのは非常に窮乏しているということですね。そうしますと、何かの形で増税をやる、こういうことが私は必要だろうと思うのですね、この財政再建のためには。その場合にどういう増税をやるかということが非常に大きな問題になってくるわけですが、大分前に東京都が提起しているわけですけれども所得税の関係でいきますと預金の利子所得とか株式の配当所得あるいは土地の譲渡所得が別建ての税率になっている、これが高額所得者に相当優遇という結果を出しております。これを段階的に総合課税に持っていくというふうな方法が一つあると私は思います。それから、法人関係については大分改正されてきたわけですが、退職給与引当金等々もまだ相当多額に蓄積されているようでありますから、こういうふうな課税を強化していくということで、いわゆる不公平税制の是正をやるという方向が考えられると思います。  そういうことを前提にいたしまして配分問題ですが、これは牛嶋参考人も申されましたように、できるだけ税源配分において地域格差を出さないような配分を考えるべきだという点では、所得税地方に移譲するという案に賛成であります。ただし、それでもなおかつ今日の地域経済の格差は非常に大きいわけですから、どうしても格差が出るわけで、そういう点では地方交付税制度というのは、今日の地域経済を前提にする限りどうしても必要なわけで、これをどういうふうに強化するかということがやはり農村財政にとっては非常に重要ではないかというふうに私は思っております。  以上です。
  91. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 次の質問者の時間もございますので、簡単に一問だけ。  今のことで、さっきの坂口委員からは、いわば補助金交付金かという話が出たわけでございますけれども、私がここで提示した問題は、交付税か自主財源かという話になるわけです。と申しますのは、交付税を中心といたしますと各団体のばらつきは一応調整される、しかし、自主財源中心でやった方が自主性は保てるということでございまして、非常に困っている団体は自主財源と言われても困るじゃないか、富裕の団体は自主財源の方がいいと言うでしょうし、その辺のバランスが問題でございます。私どもは、どちらかと申しますとできるだけ財源はそれぞれ移譲して、交付税は減らしていくということがいいような考えでおるのでございますけれども、この点はいろいろ意見が分かれると思うので、最終的に、東峰参考人滝井参考人はどちらかというと交付税がいい、中西参考人もそうかと思いますが、その辺をお一人ずつ簡単にお答え願います。
  92. 東峰元次

    東峰参考人 これは、現行法を基本的に改革するということになると、御高承のように、今の税制というのはシャウプ勧告以来こういうことになったわけですから、旧制度に戻さなければならない。旧制度は自主財源を根拠とした税制でありますから、基本的にもう違ってくるわけです。現行法からいうと、一番確認できるのは地方交付税であるというように私は考えております。
  93. 滝井義高

    滝井参考人 お答えいたします。  自主財源を取り得る税源があれば、自主財源でした方が一番いいと思います。しかし、現実に日本全体の経済の状態をごらんいただきますと、過密地帯と過疎地帯と分かれて、千百十九ぐらいの自治体が過疎地区になって、過疎債を千二百億ぐらい出してもらって、それで動いておるという現実があるわけです。この現実に立ちますと、自主財源を今簡単に見つけることはほとんど不可能と言っていいと思います。したがって、基準財政需要額、基準財政収入額を調整する交付税方式、当面、財政のアンバラを直すためには、現実としてはこれでいかざるを得ない、こういうことでございます。
  94. 牛嶋正

    牛嶋参考人 交付税か自主財源かということは、言いかえますと、自主財源を強化するということと地域格差とは二律背反でございます。自主財源を高めていきますと、どうしても地域格差は広がる。そんなことで、先ほど国から地方への税源移譲に当たりまして、所得税というのを一つ提案させていただいたわけでございます。そういうことで、どちらを重視するかということですけれども、できるだけ自主財源が強化されることが望ましいわけですけれども、一方で地域格差の問題もあるわけで、それを是正しながらということになりますと、やはり交付税との絡みで少しずつ自主財源を高めていくという方法をとらざるを得ないのではないかと思っております。
  95. 広瀬道貞

    広瀬参考人 本来地方交付税というのは市町村の自主財源であるべきものなわけです。安倍委員の御質問が出てくるということは、現行の地方交付税というのが、何かひもつきみたいな感じになってきつつあるんじゃないかという警告だろうと思います。まさにそのとおりでありまして、我々が地方交付税の算定基準だとか何とかいろいろ説明してもらってもわからないシステムになっておりまして、地方自治体としては、自治省から財政課長などに天下りしてもらわなければ何となく損をするみたいな格好になっていて、これが本当に自主財源かという疑問の起こるところじゃないかと思います。つまり、今の地方交付税の配分がよりガラス張りで簡単明瞭になってくれば、今のような問題は出てこないんじゃないかと思います。地方交付税の配分をもっと明快にすべきだというふうに思います。
  96. 中西啓之

    中西参考人 私も、地方交付税の方がいいという意味で申し上げたのではなくて、理論的に、例えば所得税をすべて地方財源に移譲したとしても所得格差が非常にありますから、必ず地域間の格差が出る。そうすると何らかの方法で地域財政の調整をやらざるを得ない。それは交付税制度しかないのではないかということでありまして、できるだけ自主財源を強化しつつ、なおかつ交付税制度で調整をするということであります。  その場合に、交付税制度そのものの民主化といいますか、改善というのは、今広瀬さんが言われたとおりなんですが、それにつけ加えまして、現在の交付税制度の中の特別交付税制度、これのいわばあり方というのも同時に改善をして、どういう基準でどういう決定をしたというふうなことが公表をされるとか、できるだけ恣意的な決定をしないような改善が必要だろうと思っております。
  97. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いささか時間を超過いたしましたが、これで質問を終わります。
  98. 越智伊平

    越智委員長 正森成二君。
  99. 正森成二

    ○正森委員 中西参考人に伺いたいと思います。  今度の一括法案では、先生の御意見の中にもありましたように、国民生活への影響の問題が相当大きく出てまいると思います。自治体行政の現場に、例えば生活保護の面あるいは保育の面などで具体的にどういうような影響があらわれるか、あるいはあらわれ始めているかについて、御存じ寄りのことがあれば御説明願いたいと思います。
  100. 中西啓之

    中西参考人 お答えいたします。  先ほど陳述の中でも、特に今回の高率補助金削減の額の非常に大きなもの、生活保護、その次は保育ですね、それに限らず、今回の補助金削減福祉、教育等々あるいは地域経済に非常に大きな影響を与えると思うわけですが、そういう点で今回の法律案を一括して審議することそのものに私は問題があると思っているわけです。  例えばこんなことが進んでいるという例として、生活保護の問題を一つ御紹介申し上げたいわけですが、これはやはり一つのきっかけは臨時行政調査会の第三部会の報告が昭和五十八年の一月十日に出されまして、この中で生活保護補助金交付にかかわって、不正受給を排除して適正な運用を確保する、そのために資産、収入の的確な把握と関係機関との連携の強化、これによって不正受給防止対策を徹底する、こういうことが報告として出されて、それ以前にも厚生省から適正実施の通達が出ております。この不正受給の防止ということは全く当然のことなんですが、現場ではそれと違って、適正な受給を制限するという傾向が現在随分進んできているんですね。  例えば一つの方法は、なかなか申請を受理しない、そういうことが進んでいるんです。これは具体的な県を申し上げますのもちょっとなんですが、埼玉県のある市では、これはある福祉事務所の方ですが、役場のさじかげんで生活保護というのは何とでもなるんだ、同じ条件の町でも、一方は年間七十件から八十件の保護申請があるのに、一方では十五件ぐらいのところもある、これは要するにやり方でもって抑えることができる、こういうことが言われているわけですね。ある市では、生活保護の相談というのはすべて係長がやって、一回の面接では受け付けない、二度、三度と足を運ばせてやっと受理する。この保護を申請する本人というのは、いわばある意味の引け目を持っているわけです。そうすると、言いたくないのを恥を忍んで言っているという意識がある。これを何回も何回も足を運ばせるというやり方をとりますと、もういいわ、こういうことになってまいります。こういう形で、申請をなかなか受け付けないという方法によって保護の件数を減らしていくという傾向が、この数年かなり、この二、三年進んできているわけですね。  それから、今度は保護を廃止させる、こういうやり方がいろいろなところで進んでおりまして、ケースワーカー同士、幾ら廃止したかということを競争させるわけですね。だれが何番、幾ら廃止させたというふうなことで表彰したりするというのが実際に進んできているわけですね。  そうしますと、これは臨時行政調査会の提起あるいは厚生省の通達等々の流れの中で、臨調の最終答申でも不正受給防止が出ておりますけれども、もともとの意図はそういうことでなかったとしても現場ではそういうことが進んできている。  今回のこの補助金削減がどういう結果をもたらすかということですが、これは先ほど田川市長さんもおっしゃいましたように、これを一般財源に回して補助金削減する。ところが、先ほど自治省の方の答弁でもありますように、この一般財源にした場合に、その配分は、基準財政需要額の算定を通じて配分されていく。例えば不交付団体なんかの場合には配分されない。要するに補助金を切られっ放しだ、こういうことになってきます。あるいは起債についても、これは建設地方債等々の申請を通じて配分をされる、こういうことですね。  そうすると、当然でこぼこが出てまいりますし、一般財源といういわば非常に迂回した方法で財源が補てんをされる。こういうことですから、生活保護とか保育とかそういう現場にしてみると、切られるという意識が非常に強くなる。切られるという意識に非常になってくると、これは何とかして件数を減らすかあるいは保護を受け付けないということをますます強制されざるを得ない、こういう事態が考えられるわけですね。生活保護を例にとりますと、これが影響を与えてそういう従来の傾向をますます強めるんじゃないかというのが一点であります。  それからもう一つ、保育の例を挙げますと、現在保育所の統廃合というのが猛烈な勢いで進みつつあるんです。これは昨年十二月に発行されました例えば一つの例、私が入手しました資料で、愛知県常滑市の例なんですが、行政改革プランの中で、保育所を何カ所か六十一年、六十二年の二年間で統廃合する、こういうプランを出しております。具体的に保育所の名前まで載っているわけですね。ところがその保育所はまだ住民が子供を預けている。そういう保育所を廃止してしまう、それで遠いところに通ってもらう、こういう案ですね。だから当然その地元の住民が反対運動、自然発生的に反対の署名が始まっている、こういう状況であります。そうしますと、これが今度また保育の補助金が切られるということになりますと、従来からの保育所統廃合とかあるいは保母の人員削減とかいうふうな傾向がますます促進される、こういう結果をもたらすと思うのですね。  それからもう一つ田川市長さんも地域経済への影響というふうなことを大変強調されておられましたけれども、この補助金削減、いろいろ見てみますと、例えば離島振興法の一部改正であるとか過疎地域振興特別措置法の改正であるとか、いろいろそういう過疎地域の経済に非常に重大な影響を与えるものがかなりある。これは補助率を下げたという、それがいわば大都市地域には必ずしも大きな打撃を与えない場合でも、過疎地域の経済というのは非常に経済の底が浅い、規模も小さい、そうすると、補助金カットに伴ういわば財源削減というのは過疎地域の経済に非常に大きな影響を与えるんじゃないか。だからそういう点で私は、財政格差の問題もさることながら地域経済そのものに与える影響、特に辺地の地域経済に与える影響が非常に大きいんじゃないかということを心配しているわけであります。  以上三点申し上げました。
  101. 正森成二

    ○正森委員 それでは滝井参考人に伺いたいと思います。  たしか滝井参考人は、四年前に行革の一括法案がございまして、福岡地方公聴会に参りましたときもおいでいただいて、そのときにお尋ねさせていただいたこともあろうかと思います。  今国の方では、国は百三十三兆円も国債残高が出るんだ、地方の方はそれに比べると少ないんだというようなことを申しますが、しかし、昭和六十年度末の地方債の現在高は確かに四十二兆弱ですが、そのほかに二十兆円を超す公営企業債がございますし、交付税特会の借入残高も五兆を超す額がございまして、全部で七十兆円にも達しますから、決して地方も楽ではない。特に公債費負担比率の段階区分別団体数の状況を見ますと二〇%を超えているところがたしか八百十九市町村ございまして、これは起債の制限ラインを突破するわけですね。  特に、こう申してはなんですが、九州は、参考人の地域もそうですが、炭鉱が昔ほど思わしくありませんで生活保護の件数なども非常に多いと聞いておりますが、その中で、大変御苦心の点があろうかと存じます。もう既にお述べになった点があると思いますが、なお一言、それらの決して富裕でないという点からのお困りの点がございましたら、お述べいただければありがたいと思います。
  102. 滝井義高

    滝井参考人 正森先生にお答えいたします。  冒頭の参考人意見として申し述べましたように、今度のカットで六十年度の予算が組めなくなったわけです。そこで私、泣いて馬謖を切ったわけです。というのは、国と同じように補助金を全部無原則に一割切りました。そして後で討議をして、どうしても切られた補助金を復活する必要があるというときには、行財政検討委員会というのをつくっておりますからそこに申し出て、そこでよろしいというサインの出たものは市長は六月か九月に補正をいたしましょう、それから、七十歳以上のお年寄りに祝い金を二千円とか三千円とか差し上げておったのですが、だんだん平均寿命が延びましたので、七十五歳以上にして、七十歳から七十四歳までは御遠慮いただこう、予算が組めないのでこういう過酷なものをやらざるを得なかったわけです。泣いて馬謖を切ったわけです。そして何とか予算を組みました。  そこで、生活保護だけで三億三千万円ありますから、最前から申し述べますようにその財源を、いわゆる基準財政需要額ですから、その需要に対して収入額をきちっと国が見て、そして財源補てんを収入の面にしていただく。それから厚生省の二百億は、最前も土田審議官からお話がございましたが、厚生省と話し合って、そして八割をきちっとやるというお話がございました。そういうことをしていただかなければその分だけ財源欠陥が出てまいります。したがって、財源欠陥が出れば、私の方はこれは借金でいく以外にない。借金でいけば今度は一時借入金利子を払わなければならない。どこにいっても全部壁にぶつかってしまうわけです。  したがって、財政が非常に硬直している上にますます硬直化してきます。自主財源が何もかも入れて二〇%、税が二〇%ぐらいしかなくても、あとの八割は公債と交付税とそれから補助金、こういう中央依存財源が大部分ですから、学者の先生方が言われたように、私の方は、福岡県二十二市の中で山田市と私のところだけが過疎です。したがってその過疎のところには生活保護も多いし、失対も多いのですから非常に深刻な影響を受けます。ぜひひとつ、こういうところには間違いなく財源補てんをしていただく方途を講じていただきたい、こう思うわけです。  以上です。
  103. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  104. 越智伊平

    越智委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  お引き取りいただきたいと思います。ありがとうございました。     —————————————
  105. 越智伊平

    越智委員長 引き続き、本案について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渋沢利久君。
  106. 渋沢利久

    ○渋沢委員 本題に触れる前に大蔵大臣に一、二お尋ねしておきたいと思います。  きのう、きょうのワシントンからの報道で、日米経済摩擦打開のために来日いたしましたシグール大統領特別補佐官とオルマー商務次官と中曽根首相との会談及び首相の指示による郵政次官の対米親書等の新たな約束を通じまして、政治決着の方向が見えてきたというようなことが大きく報道されているところでありますが、大蔵大臣も同様の見方でいらっしゃいますか。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕
  107. 竹下登

    ○竹下国務大臣 来る九日にいわゆる対外経済の九閣僚会議でございますか、それで一応の結論を出そう、そして失明かりが見えてきたということを私なりに期待はいたしておりますが、中身について実はまだ詳しく聞いておりませんので、私が評価しますとあるいは間違うといけませんので、そうなることを期待しておると言うにきょうはとどめさせていただきます。
  108. 渋沢利久

    ○渋沢委員 日米関係、国を挙げて最大の課題にかなり激しい綱引きとも思われるやりとりがあるのでして、全く知らないのでコメントのしようがないというのはいかがかと思うのであります。そういうことでしょうか。知ってはおるが、今いろいろあれこれの会合を用意しているので言えぬというならまだわかるのですけれども、全く御存じないということでございましょうか。
  109. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今のところ私に言えますことは、九日にそういう会合がございますので、明日、安倍外務大臣と、いわゆる対米そのものではございませんけれども、大きな意味において関係ございますので、ODAの今後のあり方についての大臣の意見交換をしよう、可能なことならばOECDの閣僚理事会に外務大臣が出席するときに幾らか表明できるようなことの決着をつけようということが一つ決まっておる事実です。  それから、いわゆる四分野の問題になりますと、現在本当に鋭意折衝が行われておるということでございますので、詳しく中身を私が承知しておりません。きのうも郵政次官とちょっと会いましたけれども、何分衆参両院の委員会をやっているものでございますから詳しく報告を聞く時間もございませんでしたが、それの立場で進んでおるではなかろうかというふうに思っております。私どもの方といたしましては、それが財政上の問題にどのようにはね返ってくるかということについても関心は大いに持っておるわけでありますが、具体的な詰めの段階にはまだ至っていない。  それでもう一つは、私の関係ではいわゆる円ドル委員会を中心といたします国際化、自由化の問題も、どういうふうな表現でこれを対外経済で書きますのか、これは今のところ他の問題ほどにエキサイトしておる問題ではないわけでございますけれども、それにも私なりの意を用いておるという状態でございます。
  110. 渋沢利久

    ○渋沢委員 伝えられるような新たな約束あるいは新たな負担というものが新たな政治決着の見通しを開くと同時に、日本の中には新たな負担をどういう形で持ち込むことになるのだろうかということに関心を持たないわけにはいかない。これらの市場開放の課題というのは、もちろん財政当局にとりましても重大な関心を持たざるを得ない課題でありまして、それらのことについて若干お尋ねしたいと思ったのですが、特にきょうあたりの報道とは別に、私はこれはかなり長期的な、構造的なやりとりが行われるというものであって、そう簡単に片づくものではなかろうというふうに思うのです。  ただ、伝えられるように、対日攻勢というものが急速にエスカレートしてきた背景には、もちろん基本的にはアメリカ自身のさまざまな財政事情が下敷きになっておるということは言うまでもありませんけれども、特に一月の日米首脳会談が一つ契機になって対日要求というものがかなり急速にエスカレートしてくるという状況になってきているという見方が大変強いわけであります。やはり大臣も同じように感じておられますか。
  111. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私、感じておりますのは、大統領選挙までは比較的波穏やかだった。同時に下院議員の選挙が行われて、あそこは二年に一遍選挙をやるわけでございますから、下院議員の皆さんが肌でもって感じられてきた問題が大きなプレッシャーになったということと、それから来年は御案内のとおり上院の選挙でございますから、それがさらにプレッシャーをより多くしたという背景があろうかと思います。  なお、もとより、数字が徐々に明らかになるにつれてアメリカの経常収支の赤字問題ということ、それに対応する日本の経常収支の黒字問題というようなことがそういうことに大きな背景になったであろう。  そういうものを踏まえて一月の中曽根・レーガンのロサンゼルス会談というのは行われたであろうというふうに思います。双方が自由貿易主義という旗をおろさないで、できるだけ円滑、円満なそれぞれの隘路の打開に向かって努力をしなければならぬという事実認識の上に合意されて、それが結局私とリーガン前財務長官とでやっておりましたいわゆる所管同士のさしの話し合いとでも申しますか、それがよかろう、こういうことになって、今度は四分野でMOSS方式というものができたという経過でございますので、MOSS方式でやろうじゃないかという合意はロサンゼルス会談で行われておりますから、それも一つの大きな契機になったであろうというふうに思っております。
  112. 渋沢利久

    ○渋沢委員 閉鎖的な対応が認められる状況でないことは当然のことなんですが、しかし首脳会談でトップの勇み足が、あるいはロン・ヤスというようなことで非常に安易に言われておりますけれども、そういうものが非常に大きなツケ回しになって国内にしょい込まれてくるというような風潮が最近非常に際立っておるということは非常に遺憾に思うわけであります。そういうことで、余り長い時間を費やすわけにいきませんのでそれは改めてまた御意見を伺うことにして、本題に入ります。  時間が少ないので簡潔にお尋ねいたします。三大臣の間で十二月二十二日に交わされました覚書に関してまずちょっとお尋ねをしておきたいというふうに思います。ここで、制度見直しについては今後一年以内に結論を得る、こうあるわけですけれども、これは六十一年度予算編成あるいはその関連する法改正に間に合わせる、こういう含みで確認されたことですか。
  113. 竹下登

    ○竹下国務大臣 覚書の第二項でございます「昭和六十一年度以降の補助率あり方については、国と地方の間の役割分担・費用負担見直し等とともに、政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする。」そういうことでございますから、いわば国と地方との役割分担、費用負担あり方ということになりますと、あるいはまた改めて法律お願いすることになるものもあろうというふうに考えます。
  114. 渋沢利久

    ○渋沢委員 その一年限りということは、本当に厳格な意味でとらえられて、ここでその一年の暫定措置ということが確認をされている、こういう趣旨に受け取ってようございますか。
  115. 竹下登

    ○竹下国務大臣 一年間かかって一つあり方をもう一度検討しよう、今年度の地財のあり方、そして国家財政あり方からすれば、いわゆるアバウト一割削減方式というもので合意をした、したがって、それは暫定措置である、こういうことであります。
  116. 渋沢利久

    ○渋沢委員 ここで言うところの「六十一年度以降の補助率あり方」というのは、国の補助金負担金等すべての補助制度における補助率について見直しをやろう、こういうことですか、あるいは高率補助率について絞った見直し、こういう趣旨ですか。
  117. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題に関しましては、いわゆる社会保障関係、社会保障に係る高率の補助率引き下げ措置に対しての申し合わせであります。
  118. 渋沢利久

    ○渋沢委員 そうすると、社会保障以外の高率補助率の扱いについては一年というような暫定的なものではない、こういうことになるわけですか。
  119. 竹下登

    ○竹下国務大臣 社会保障以外の問題につきましても、法律上ではそれぞれ暫定的な措置になって御審議お願いしておる。ただ、社会保障の問題が随分もめまして、こういう申し合わせになったわけでございますが、当然のこととして公共事業投資的経費につきましても、その役割分担、費用負担あり方についてはやはり検討すべき課題であると思っております。
  120. 渋沢利久

    ○渋沢委員 どうもこの社会保障に係る高率補助率引き下げ一年の暫定措置というのは、いま少し疑問の余地のないように歯切れよく、確実に一年以内、この六十年度限りのものである、やはりこういう説明が欲しいと思うのです。地方代表の皆さん、参考人意見もきょうまた伺いましたけれども、これが再び同じようなものが、あるいはこの延長という形で行われることは、もう国と地方とのかかわりにおいて許しがたいということを強く指摘をしております。これはまさに、この一年の間に見直しの協議はするが、ともあれ一律カットなどというこの措置は、まさに一年間の暫定的な措置でしかないということは明言できますか。
  121. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まさに六十年度に限っては、これは一年限りの暫定措置であるということであります。
  122. 渋沢利久

    ○渋沢委員 それから先は全く保証しないということじゃありませんか。冗談じゃない。  自治大臣、今大蔵大臣が言うようなそういう理解ですか、この覚書は。
  123. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 費用負担あるいは役割の分担ということはこの一年内に行うということでありまして、六十一年以降は、この検討の結果によらなければ何とも言えない。だから六十年度一年限りというふうに私どもは解しておりまして、六十一年度はどうかというと、この間に相談をいたしまして、それによって決めるということになっております。
  124. 渋沢利久

    ○渋沢委員 ちょっと自治大臣、もう一度聞きますが、一年かかって協議をする、そして来年度は、六十一年度以降はその協議の結論に基づいて新しい取り組み、対応をするのであって、したがって、一年限りというのはまさに文字どおりこの六十年度で終わるもの、そういう意味で一年限り、そういう暫定措置としての理解を自治大臣はしておられるというふうに思うのです。
  125. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 私は、六十年度一年の問題である。それで、六十一年の問題はこれから検討をして相談をしますということでありますから、この一割カットというのは、私どもは六十年限りの問題として一応受けとめておるのでございます。
  126. 渋沢利久

    ○渋沢委員 それじゃ自治大臣、重ねて伺うが、一年かけて協議をした、それから先の問題については何が飛び出すか、それは全くそれから先のことだ、一割カット、このような案の延長とか恒久化ということもあり得るということを前提にして、あたかも白紙であるがごとき理解をしておるのですか。それとも、一割カットなどというこのような措置は本来あり得ないことだ、自治省の態度はそういうことだったろう。しかし、一年以内に必ず結論をつけて見直しをやる、六十一年度以降は明確に新しい方針で、見直しを前提にしたもので措置をするという確約があったからこそ一年間の暫定措置を認めた、確認をした、これが自治大臣の立場じゃないでしょうか。
  127. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 だから、経過的に言いますと、予算編成の直前まで地方と国の立場が違っておりまして、非常に厳しい財政状況であるのでこれを予算編成の上で何とかのむ手はないかということで、私は一年限り、それでこの金は交付税ないし起債によって補ってもらうということで、一年限りというふうにしたわけでございます。ただ、六十一年度をどうするかと言われると、これはこれからの検討項目でございますから、今までの趣旨は六十年限りでございます。
  128. 渋沢利久

    ○渋沢委員 今、自治大臣の決意なり考え方はよくわかりました。そのとおりだろうと思う。しかし、先ほどの大蔵大臣の答弁、これは全くあなた一流の茶化し、かわしの論理でありまして、これはこの間伊藤さんも本会議で言っておったけれども、鈴木善幸元総理が、これは決して美辞麗句で大演説をなさる方じゃなかったが、五十九年度赤字財政からの脱却を訴えられて、総理として物をおっしゃったことのその発言に責任をおとりになった行為は、これは何年たってもこうして野党の我々もまたあえて記憶をよみがえらして言の葉にする、こういうものですよ。こういうことは人の心に残るのですよ。中曽根さんが幾ら名演説をしても、速記録を読むと大変きれいな言葉で名演説をやっておるが、我々に印象づけられておるものは、巧言令色少なきかな何がし、こうならざるを得ない。竹下さんは、かわしと茶化しの名人みたいなことで言われておったら、あなた、それはよろしくない。  この際はもう時間がないので、この間の質問の残りをわずかお尋ねしているということで不十分で大変恐縮ですが、最後に大蔵大臣、先ほど来の発言の中でも参考人の皆さん、地方の皆さんは痛切に訴えられておる。大蔵省が説明しているように、この地方転嫁は単に国と地方財政割合の調整だけであって、そこからくる地方財政への影響は全くないか、とんでもない。全くないところか、具体的な影響がこのようにあるということを、つい先ほど来、現場で第一線で自治体を預かっておられる市長さんが切々と具体的な事例をとらえて訴えられております。これはみんなの頭の中に残っている。具体的な影響を、明らかに転嫁と言うほかないような状況を地方に残しているわけでありまして、それを何の影響もないなどと言いくくって、しかも一年限りということについて、あたかもそれは、一年やるはやるがそれから先はどう考えるか、どう処置するか全く見通しかありません、言質を与えませんというようなかわしの発言では、到底納得することができない。一年限りということをもっと明確にこの国会を通して約束をする、そして一年以内にきちんとした見直しの上で、地方を含めて世間が納得するようなものをつくるという決意を表明していただきたいものだと思う。
  129. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の渋沢さんの質問に答えますならば、私は、古屋大臣の答えというのは非常に正確である、私も正確に同じように理解をしておる、こういうことであります。
  130. 渋沢利久

    ○渋沢委員 終わります。
  131. 中川秀直

    中川(秀)委員長代理 伊藤茂君。
  132. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 きょうは四月二日であります。四月に入りまして、たしかこの法案に関係をする部面でも、四月五日ごろから生活保護関連の皆さんなどに支給をしなければならないというふうに聞いているわけでありますが、総理は大変明快に、国民に迷惑はかけませんということを再三繰り返しをされました。私どもは、審議がこのように延々と延びている事態は残念なことだと思います。しかし、この法案の中身が立法府でどう判断できるか、あるいは将来にどういう影響を及ぼすのかという意味からいたしますならば、これは十分な審議を尽くさなければなりません。これも事実であります。  この四月段階、恐らく相当の出費が必要であろうというふうに思うわけであります。予算は間もなく成立いたしますが、本法案の成立はそれよりもおくれるという事態の中で、国民に迷惑をかけないところの措置というものをどうなさいますか。
  133. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはどういうふうにお答えすべきでございますか、国民生活に影響がないように、国会で御審議の促進方を心から最大限期待をしておる、こういうことでございましょう。
  134. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 とお答えになるでありましょうが、そんな段階ではない。現実の問題であります。  たしか四月五日の日には四百億円余りの金を、例えば生活保護世帯を見ても、関係の皆さんに支給をしなければいけないということだと思います。特に、社会保障に関する部面につきましては月初めに支給というのがルールになっているようであります。昨日も総理がこの場で言われました。三月段階ではなくて、四月に入ってから総理も国民の皆さんに絶対迷惑はかけないということを繰り返し言われているということでございまして、分解して申し上げますと、例えば、四月五日なら五日の日に市町村の社会福祉事務所を通じて生活保護世帯の方々に定められた金額を支給をするということには、支障を来すようなことはなさらないわけですね。
  135. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 ほぼ九八%ぐらいまでが五日までに払うことになっておりますが、これにつきましては法律の規定に従って決まった額が払われるということでございますので、その額がそれぞれの日に支払われるということでございます。
  136. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 法律があるとおっしゃるのは、平澤さん、現在の法律ですか。
  137. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 生活保護法の規定に従って支払われるということであります。
  138. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういたしますと、今度は国と自治体とのお金の関係になってくるというふうなことだと思います。  つまり四条からいうならば、ここに新しい一部改正が出ておりますが、改正されない法律は厳然としてあるわけですから、この法律が、例えばですが、五月一日に成立をしたとなれば、繰り上げて施行ということは通常あり得ないので、公布の日から施行されるというのが通例であろうと思います。そういうようなことを含めて考えてみますと、国の方から地方の支払いに影響のないような手当てをするというのも法律に基づいて当然の措置ではないかと思いますが、いかがですか。
  139. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先ほどもお話がございましたように、四月分として四百億円強のお金が地方団体に支払われるわけでありますけれども、国費が通例ですと地方団体に対して支払われるわけですが、それが仮に、今のお話ですと、法律が成立しない場合どうなるかということでございますが、その場合には、国としてはそのお金を地方団体に支払うのは適当でないというふうに考えております。
  140. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういたしますと、例えば生活保護世帯の皆様に市町村の窓口を通じて支払いはなされる。国の方から自治体に、この法律が通らない段階のもとで、この法律によるかあるいは一部改正でないもともとの法律によるかは別にいたしまして、お金を交付をするということはできないということですか。
  141. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 国といたしましては、新しい法律が成立しない段階でございますので、そういう措置はとれないということでございます。
  142. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そうすると、その間は丸々自治体負担という意味ですか。
  143. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 したがいまして、その資金繰りをどうするかということが地方団体にとっては非常に問題になろうかと思っております。
  144. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 これは、例えば予算が決まりますと、これらに関係のない交付税一般財源貸与とかさまざまのことは計画が立てられ、早急に施行されるということになりますね。それらを含めた中でやりくりをしなさいというようなことになりますか。
  145. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 地方団体の全体の資金繰りの中でやりくりするということになろうかと考えております。
  146. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういう意味でいいますと、例えば生活保護については今までは八割、この法律では七割、それらについて自治体が例えば一カ月間持たなければならなかった。当然金利もかかります。あるいは内部の資金繰りでやるかもしれませんが、金利負担があるとすれば、それらはやはり自治体がしょわなくちゃいけないんですか。
  147. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先ほど申し上げましたように、地方団体の全体の資金繰りの中でそれをしょうということになると思います。
  148. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 というふうなことのようなんですが、この法案に関係したさまざまなたくさんの項目があります。後ほど申し上げますが、特に生活保護とかさまざまなそういうところの部分というのは、これは国の責任にかかわる問題であります。確かにそれは、国会の審議も都合がございます。しかし国の政治として責任を持たないという、今主計局からお話しがあったようなしゃくし定規の解釈でいいんだろうか。前に育英資金の問題でも、昨年ですか、似たような議論がございました。今多くの国民の皆さんに対する政治の姿勢としてそれでいいんだろうか。  今のお話をただ伺っているだけならば、本当に私は次の質問なんかしたくないつもりですが、大臣、どんなお気持ちをお持ちですか。
  149. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今平澤次長からお答えをしたとおりでございますが、いわば地方団体財政資金状態全体の中でこれを消化していただくということに結果としてならざるを得ないというふうに考えます。もとより我々といたしましては、いわばこれらの問題の責任の所在というのはこれは政府にあるわけでございますから、したがって、そういう状態が少なくとも可能な限り短い状態になることを今日国会に対してひたすら期待とお願いを申し上げておるということに尽きるであろうと思います。
  150. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 今のお話を伺っておりまして私は、国と地方との関係についても、先ほど参考人の皆さんがまさに切実な気持ちを言われましたけれども、踏んだりけったりとは言いませんが、本当に余りにもこれは過酷な姿勢ではないだろうかというふうに思わざるを得ません。——何か理事会をやっているそうですから、本来でしたら相談でもしてもらいたいというところでありますが、私は、事柄の認識をもうちょっと真剣に持ってもらいたいということを申し上げたいわけであります。  生活保護のことを申し上げました。本法案の二十二条には附則に一項を追加をするということで、いとも簡単に書かれております。その内容を、関連をして法令を読んでみますと、非常にいろいろな思いをするわけであります。  例えば、生活保護法を広げてみますと、こういう構造であります。生活保護法の第一章総則第一条には「この法律の目的」として、「この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」とあって、「国が」ですよ、国が主語になっております。第一条です。  第二章の第八条にはこう書いてあります。「保護は、厚生大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、」ベースという意味ですね。「基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。」とありますね。それから二十条には、「この法律の施行について、厚生大臣は都道府県知事及び市町村長を、都道府県知事は市町村長を、指揮監督する。」と書いてあります。  要するに、第一条には国が行うのだと書いてあるわけであります。第二十条には国の方がといいますか、厚生大臣はこれを指揮監督すると書いてございます。これは立法の趣旨からしても、国が定めた基準に基づき国が責任を持って生活保護というシビルミニマムに関することをやらなければならないという当然の発想からしてこのような法律ができている、条文ができているというふうなことだろうと思います。  なお、七十三条には「都道府県は、政令の定めるところにより、左に掲げる費用を負担しなければならない。」ということで、一応の分担の規定もございます。また、第七十五条には国の費用分担というようなことが書いてございます。しかし、例えばこの第一条に言う国の責任とか二十条に言うところの国の方の指揮監督権とかいうことからすれば、本当はこれはもともと全額国が持つべき理念に基づいてできた法律ではないだろうか、それがまた政治の理念でもないだろうかというふうな気がするわけであります。  そういう論理からいたしますと、今回の法律、例えば生活保護の分につきましても、地方財政法二条二項というのがあります。「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体負担を転嫁するような施策を打ってはならない。」というふうに二条二項には書いてございます。  確かに、地方財政法の十条には国と地方との分担がございまして、十条の中には「国が進んで経費負担する必要がある左の各号の一に掲げるものについては、国が、その経費の全部又は一部を負担する。」という中の第二項に「生活保護に要する経費」というのもございます。ですから法理論を巧みに理解をするならば、今までの八割を七割にする、地方の方は県、市それぞれ一、一でございますから、これが五割増のそれぞれ一・五というふうなことになってまいるわけでありますが、法理論を巧みに解釈をすればこれは妥当なんだという理屈も成り立つでありましょう。  しかし、この生活保護法というものの基本的な理念、あり方というものがこの一条や二十条に表現をされていると思うわけでありまして、そういう理念からしても、地方財政法二条二項に違反するそういう政治的な中身を持ったものと言われてもやむを得ないというのがこの問題ではないだろうかと私は思うわけであります。どう思いますか。  同時に、そういうことからいっても、先ほどお話のございました、生活保護世帯には支払いをいたします、国からは出しません、地方が処理なさいという精神もまた、これは政治論として本末転倒であるというふうに思いますが、いかがでしょう。
  151. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今伊藤さん自身、いわゆる地方財政法十条というところ、あるいは九条から十条にかけての御議論は、それなりに法律的な問題としては理解できるという表現は適切でないかもしれませんが、それなりの答弁はできるであろう。しかし、本来精神的には、いわば生活保護法制定当時の経緯から、そして地方財政法等々からきた場合に、政治的にじくじたるものがありはしないかという意味においては、私もじくじたるものがあることは事実でございます。したがって、そのじくじたる期間が可能な限り短縮されることを国会でひたすら誠心誠意お願いをしておるというのが素直な現在の心境であります。
  152. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 であるならば、私どもの方も意地悪で延ばしているわけではありませんから、やはり中身のある、私どもの納得できる——どういう改善があり得るかというのは国会審議の役割であろうかと思いますから、それはそれでありますけれども、そういうお気持ちをお持ちならば、例えば四月一カ月間地方にさらに何かおもしがかかるような、あるいはまた自治体の方からは、困った内容だけれども早く通してもらわないともっとひどいことになるからというふうな声もあるようであります。そういうことは、与党の皆さんからも方策も含めて言われるわけであります。私は何とも言えない気がします。先ほどの参考人の御意見もそうでございましたが、八割から九割の自治体の皆さんが反対の意見書を出し、あるいは反対決議をされました。これではたまったものじゃないというのが切実な声だと思います。そうして、審議が延びていくとなおさらひどいことになるということで、何ともやるせない気持ちで言っている人が自治体なんかはあるいはあるかもしれません。そういう気持ちを理解しなければならないということではないだろうかと思うわけであります。  大臣、とにかくこの四月段階、どちらにしても一日一日、私は泥仕合いにはしたくないのです、私どもも真っ当な審議をしたいと思います。そして、何か泥仕合いになって、野党の方が審議を延ばしているからおまえらに金を払えないのだというような話になったら、国と自治体、あるいは政治の役割というものについてお互いに誠心誠意話し合える状況はないというみたいなことになるんじゃないだろうか。まだ四月のごく早々ですから、これから先に参りますと、そんなことになったらお互い権威の落ちる話じゃないだろうか。やはり誠心誠意可能な措置をさまざまな方法を通じてやっていくということはなさなければならないのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  153. 竹下登

    ○竹下国務大臣 本法律案審議に当たりまして、言ってみれば俗に言われる党利党略が働いて、野党の皆さん方が審議に対して協力的でないから、したがって交付がおくれるなどというようなことを言うようであったら、内閣ももうおしまいだな、こういう気がいたします。  これは、私どもとしては可能な限りの誠意を尽くそうというので、こういう措置でありますだけにいわば予算案と同時提出ということに当初からこだわったわけであります。だが、国会の審議は与野党の合意でなされるわけでございますから、その審議の経過がいわば党利党略の中でおくれたなどというようなことを思うほど愚かであってはならぬと、絶えず自分にも言い聞かせておるところであります。  したがって、いわゆる地方団体資金手当て問題ということになりますと、私が答える範囲の外にあろうかと思いますが、政府全体として十分念頭に置いておかなければならない課題であるという問題意識は持っております。
  154. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 今の問題は、恐らくは今月いっぱい、さまざまの話題になることだろうと思います。大臣のお気持ちの部分と御答弁の正直な部分とを含めまして、私ども対応を考えていきたいというふうに思います。  次に、渋沢委員からも質問のございましたいわゆる三大臣覚書、それから今後の政府の協議ということについて一、二お伺いをしたいと思います。     〔中川(秀)委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕  自治大臣の率直なお答えがございまして、大蔵大臣からも同じ言葉であるというお話がございました。こういうものは覚書の文章に書いてあるとおり、文字どおり読んで字のごとしというふうに解釈をしていくのが一番素直な内容ではないだろうかというふうに思うわけでありまして、大蔵大臣、そういう意味からいきますと、この第一項、第二項ございます。その覚書の、第二項ももちろんございますけれども、第一項でいけば、少なくともこのような一律カットという形の法律を固定化する、あるいはあと一ないし三年自動延長するとか、そういうふうな意味ではないというふうに考えてよろしゅうございましょうか。
  155. 竹下登

    ○竹下国務大臣 「この措置は、昭和六十年度における暫定措置とする。」ということでございますから、まさに読んで字のごとしたと思っております。  そこで、六十一年度以降においては「政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得るものとする。」まさに読んで字のごとく、我々はこの覚書の趣旨に沿ってこれから検討を始めなければならぬというふうに考えております。
  156. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 覚書の第二項に関連をいたしまして、二つ伺います。  その一つは、今後の作業テンポの問題でありますけれども予算のこれからの作業を考えますと、六十年度予算が成立をした後さまざまのそれに対する手配の仕事があるでありましょう。執行上の問題があるでありましょう。それから新たな勉強に入りまして、六月中下旬でしょうか、シーリング、それから八月概算要求締め切り、査定、年末予算編成というふうな段取りを当然たどることだと思います。  私が心配するのは、第二項にあるような内容を政府部内で十分検討することができるか。その背景には、自治体を含めたさまざまな切実な要望などを踏まえた議論に当然なるでありましょうが、そういう議論がろくに行われないうちに、シーリングの段階でまず一割カットかあるいは二割カットか三割カットか、そういう枠組みの方が先に決まって、それに縛られて理屈が後からついていくから大蔵省に押し切られる。予算の編成作業とそれから「今後一年以内に」ということを考えますと、そういう心配が非常にするわけであります。  これは大蔵大臣、自治大臣、そういう心配がないような相談をしないとまずいですね。そこは、初めにシーリングで枠が狭めて決まっちゃって、制度の理屈は後から行くというようなことでない方法が保証されなければならないと思いますが、両大臣一言ずつ、どうお考えになられますか。
  157. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる部内における補助金に係る具体的な検討方法、これは現在関係省庁間で鋭意検討中であります。可能な限り早く政府部内における検討の場を設けなければなりませんから、したがって、関係方面とも相談していくことといたしたいと思っております。  当然のこととして、早期に結論を得るべく鋭意努力しなければならぬ、こういうことになりますが、今伊藤さんのいわゆるプロの議論として、そのうち概算要求基準を決めるだろう、そして今度は概算要求そのものは法律に基づいてやらなければならぬじゃないか、それがいわば生煮えのままでずっといった場合、最後には金がないからやむを得ないという形で決着がつくという手法はまさか大蔵省も考えてはならぬぞよ、こういうことでございましょう。私もプロとしてお聞きして、まさにそうだろう。  で、どういう事態が予測されますか、余り今から予測することは避けたいと思いますけれども、少なくともそういうプロの議論というものも念頭に置きながら検討を始めなければならぬ課題だという問題意識は持っております。
  158. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もう一つ、この「一年以内」ということで心配なのは、今度の経過を見ましても、例えば自治省にあるさまざまの審議会、大蔵省にあるさまざまの審議会、ございますけれども、自治省に関係をする地方制度調査会あるいは地方財政審議会ですか、そちらの方では、今回のような措置はとにかく筋が通らぬという意味のことをそれぞれ御答申をされているわけであります。大蔵省に関係すると言ってはちょっと筋が違うかもしれませんが、一つ財政制度審議会の答申がございます。それから行革審の答申といいますか報告書がございますが、違うのですね。地方制度調査会などの方は、こういう筋の通らないやり方はよろしくないということをそれぞれ言われている。それから、大蔵省に関連をする財政審などの方はやりなさいという答申をするというふうな形になって、結局、大蔵省がパワーが強いせいか、こういうことになったというふうな経過になるわけであります。  私は、横断的なといいますか、やはりもっと総合的な政府としての議論あるいは政府間のさまざまな議論というのがあるべきなのじゃないだろうか。確かにそれぞれの固有の任務を持った審議会なり行政委員会調査会でございますから、どうしてもそれなりの立場意見はまとめられるでありましょう。しかし、双方にかかわる重要な問題であります。何か別々の意見が煮詰まって最後にどうなるのかというふうな形だけでは、ここの「一年以内に」ということにもまずいのじゃないだろうか。  私どもも実は議会の場で、財政再建論は、主として国の財政再建大蔵委員会地方財政にかかわる部分は、当然ですが地方行政委員会となるわけでありまして、私ども党の中でも、大蔵委員会地方行政委員会、国と地方というのはこれからまさに時代の大きなテーマでございますから、もっと共同の勉強を大いにしなければならぬと言っておるようでありますが、この経過を見まして、二本立て答申、二本立て意見というものを感じますので、その辺もやはり改善することを念頭に置いて実りある議論をするということが必要であると思いますが、いかがでございましょう。     〔熊川委員長代理退席、中川(秀)委員長代理着席〕
  159. 竹下登

    ○竹下国務大臣 我が方でいえば財政審ということになりますでございましょう。自治省でいえば今おっしゃったとおりであります。まさか審議会の連合審査、公式的な連合審査というわけにも、国会の委員会とはまた違いますので、そういう仕組みは別といたしまして、双方の意見が実際問題として十分に調和できるような研究の場というものを我々も考えなければいかぬと思っております。
  160. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 自治大臣も特別それについては御意見ございませんか。
  161. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 実はお話しのとおり、十二月四日の地方制度調査会では先生のお話のような結論が出たわけでございます。これに従えなかったのは、先ほど申し上げましたように、予算編成の直前におきまして、国の厳しい財政状況のもとで予算が組めないということになりますと国全体として大変だということで、一年限り、そしてこれをカバーしていただけるという条件のもとで、私どもこれをのんだわけであります。  地方制度調査会にはもちろんその後も話して連絡しておりますし、今後はこういうことのないようにあらかじめちゃんと御相談いたしますということを言っているわけでございます。
  162. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ことしから来年にかけての問題でもう一つ、これは大蔵大臣に伺いたいと思いますが、福田幸弘という人がおりまして、私は大変いい男だと思っているのですが、まさに大蔵省の使命感の権化みたいな面があるわけでありまして、非常に筋の通ったいいことも言いますけれども、また非常に困ったことも言うわけであります。この人がある雑誌に論文を書きまして、それを読んでみましたら、実は今の問題にかかわって非常に重大なことを言っているわけであります。  その論文の題目は「抜本的税制改革の方向「公平、公正、簡素、選択」の理念を問う 福田幸弘」というのでありますけれども、この中にこういうことを言っております。  所得税法人税、酒税の三二%を自動的に地方交付するという地方交付税を、国債費と同じ義務的な別枠として扱うことは、据えおかれている一般歳出とのバランス上問題がある。しかも、地方財政は国に比べて余裕がある。だからこそ、国や民間よりも多額の退職金や高水準の給与を支払うことが出来るのである。地方交付税補助金という歳出の大項目に制度的なメスを入れることは、税という制度改正以上に重要なことである。 と書いてございます。こういう発想が財界の一部などにもあるように私は聞き及んでおります。ことしのことでもこういう問題になるのに、こんな重大問題が出てくるとしたら、まさにこれは国と地方の関係の根本を破壊するということになると私は思います。また、大蔵省のOBにすれば、国の赤字を何とかしなくちゃならぬ、まさにその国難に対する使命感みたいなものが私はあると思います。しかし、それだけが至上主義で突っ走ったんではこれからの社会の制度は成り立たないと思います。  そういう意味で、いろんな議論がなされなければならない。先ほどの参考人の知事や市長さん方や学者の御意見も、平澤主計局次長も真剣に伺っておりますと言われておりましたが、いろんな意味でやはり広範な、また真剣な勉強をしなければならない。そういうことでなければ、国の財政収支合わせもまさに大事です、だけれども、それだけが至上主義になって、そこからすべてが強制されるということであっては、これは大変なことになると思います。ちょっとほかのところではいいこと言っているのですが、福田幸弘氏が言っているこの部面については懐然たる思いがいたしました。大蔵大臣、いかがですか。
  163. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も地方議会におったことがございまして、いわゆる平衡交付金制度が交付税制度になったそのときは、いい制度ができたなあと、率直にそう思いました。今日、今のような議論がなされますとすればその背景は何かといえば、やはり租税弾性値が比較的高い三税が固定的にということであって、そういうところから一つの論理が出てくるのではなかろうかというふうに思います。  いま一つは、国も地方も同じように財政は苦しいと思います。一部富裕団体の事情は私詳しく知っておりませんが、同じように苦しいと思います。強いて言えば、いわば公債残高で、なかんずく赤字公債がないということは確かにうらやましいなと、こういう印象はいつでも持っております。  しかしながら、そういう議論ももとよりなされるでございましょうが、今日の時点で、されば交付税そのものについて部内で検討を始めたとかいうような状態にはありません。
  164. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 今日ただいまの時点ではなくて、将来にわたってぜひそうあるべきだと思います。  補てん措置について一、二伺いたいのですが、自分の神奈川県のことを言うわけじゃないのですけれども、一般行政経費二千六百億、そのうち一千億の交付税の加算、それからあと一千億は借金で、六百億は不交付団体というようなことのようでありますけれども、私は、例えばさっき申し上げました生活保護についてのあるべき形、あるべき思想からいうならば、これは国の委託補助金的なものでございまして、本来国が主要な責任を持って行うという分野の問題であろうと思います。そういう意味からいたしますと、これが交付税の上乗せという形になったものですから不交付だということになって、もちろん基準を変えて不交付団体には行かないということになるわけでありますが、本来これは交付団体、不交付団体に関係なしに国から措置されるべき性格のものである、仕組みを変えて不交付団体になったから、その六百億はないんだという発想というのは何か違うんじゃないだろうかというふうに思うわけでありますが、いかがでしょう。
  165. 竹下登

    ○竹下国務大臣 昭和二十一年以前はこれは五分五分でありました。それから一時、数カ月の間、日本が敗戦国で極度な貧困状態になったとき、全額国庫補助であった時代が数カ月ございます。それから二十一年の予算の際、もとより当時はいわゆるGHQの間接統治下にあったときでございますが、大蔵省がおさまりを二億に考えておった。そして厚生省が七億でございましたか、におさまりを考えておった。そうしたらGHQから、やはり三十億にすべきだ、こういうことがサゼストされた。そこで、このいわゆる補助率論争というのは、もういきなり八対二、こういうことになったというようなことが、もうお亡くなりになりました元厚生事務次官安井誠一郎さんの本に書いてありまして、ことしこの予算編成に当たって読ませていただきました。  それ以来、今度は昭和二十六年でございますか、いわゆる独立いたしましてから、この議論というものの中では余り補助率論争というのはなされておらないというのは、やはり憲法二十五条の精神からくるよってもって立つ一つの理由があったんじゃないかなと思って、私も読ませていただいたわけでございます。  が、しかしながら、いずれにしても車の両輪であるという考え方の上に立ったとき、苦しい中で相互の役割分担と費用負担あり方というところから、暫定的な措置としてこのような措置をとらせていただいたということで御理解をいただかなければならないということで、勇気を持ってこの法律案を提出したということであります。
  166. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もう一つ伺いたいんですが、先ほどの参考人の御意見の中にもございましたけれども、特に田川滝井市長さんなど、産炭地の大変な状態についてのお話がございました。私も本当に大変だと思います。何か聞きますと、全国幾つかそういう地域があるようでありまして、一律一割カットという方針になっているわけですが、地域差によるアンバランスが随分たくさんあると思います。  例えば生活保護に関するところを厚生省から数字を伺って見てみましたら、人口千人当たりの保護世帯の率、いわゆる保護率ということのようでありますけれども、沖縄が二六・二、福岡が最高で四四・五、福岡県の中でも北九州と田川とか、旧産炭地に大変集中をしていると思います。何か町の世帯の三分の一以上が保護世帯というようなところもあるようでありまして、びっくりいたしました。それから、北海道が案外高くて二一・二というふうなことが出ております。それに関連をいたしまして、地域差によるアンバランスがある。  それで、今回のさまざまの地方交付税の上乗せ部分とかあるいは特別の二百億の部分とか、借金する部分とかというお話がございましたが、それらがどのように配分をされるのかということについて早く知りたいとかいろいろな懸念のお話がございました。こういうのはやはりなるべく早く、法案審議途上でも、そういう不安はないようにしてあげるということが必要だと思います。少なくとも、生活保護世帯の多い県ほど何か負担も多く残るとかあるいは負担も多くなるということでない方法というものを考えてあげるべきではないだろうかというふうに思いますが、この地域差という問題についての対応をどういたしますか。
  167. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 自治省の方からさらに御答弁があろうかと思いますが、地域差の点については我々といたしましてもいろいろ念頭にございまして、基本的にはできるだけ配慮していきたいということでございます。  したがいまして、まず交付税の場合には、当然のことながら、基準財政需要額の算定に際して、地域差が反映できるようにしていくだろうということが一つでございます。  それからもう一つは、厚生省予算生活保護臨時財政調整交付金二百億円というのを計上いたしております。これを今おっしゃいましたような地域に、できるだけ生活保護の支給上支障がないように配慮しながら配分方法を決めていきたいということでございます。  そのようなことをあわせて、地域差について問題ないようにできるだけしていきたいということでございます。
  168. 土田栄作

    ○土田政府委員 厚生省に計上されます二百億の臨時財政調整交付金、これがいろいろ、すき間といいますか、交付税とそれから実際の所要額との差に入ってまいりますので、そちらの分も考える必要があるわけでございますけれども、この影響を考えませんと、今回の経常経費負担増というのは二千六百億と二百億と合わせまして二千八百億ということになります。  この二千八百億につきましては、ただいま委員御指摘のように、負担に各県別に非常にアンバランスがございます。例えて申しますと、五十八年決算をベースにして推計いたしますと、福岡県は二百五十二億ほどございますし、今度は逆に神奈川県でございますと百三億でございますとか、あるいは非常に生活保護世帯等の少ない福井とか山梨でございますと十六億というふうに、いろいろでこぼこがあるわけでございますけれども、こちらの方につきましては、ただいま地方行政委員会地方交付税法の審議お願いいたしておりますけれども、この地方交付税法の改正によりましてまず単位費用というのを改定いたしまして、生活保護費に係る地方負担の増というものを算入いたすという措置をとります。  それからもう一つは、生活保護費の測定単位は、県でございますと、町村分の生活保護費というのは県が支弁いたしますので、町村部人口というものを測定単位の数値にいたし、それから都市にありましては市部人口というものを測定単位の数値にして算入するということにいたしておりますけれども、まずこの単位費用というのを引き上げます。  それからもう一つは、生活保護世帯というのはそれぞれの団体によってかなりばらばらでございますので、さらに密度補正という補正を加えまして、これは生活保護世帯の多いところにつきましてはその分だけ割り増しをするという補正によって算入するということで、これらの地方負担というものを的確に地方交付税基準財政需要額に算入する、それによって普通交付税を配分する。それでまたさらに、実態とのすき間につきましては厚生省お願いしまして臨時財政調整補助金で穴埋めするということで、地方団体財政運営支障がないように対処してまいりたいと考えておりますけれども、何せ今回の一括法及び地方交付税法が現在国会で御審議を受けておりますので、まだ具体的な内容というところまでは地方団体に指示ができないという状況でございます。
  169. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大蔵委員会にこのような法律がかかった機会に、私も財政面から見た国と地方とのあるべき関係というものを考えてみたいと思って、ちょっとだけ勉強してみたのですが、勉強すればするほど、非常に大事なことだと思いました。あるいはまた、国と地方、あるいは国会も大蔵委員会地方行政委員会になりますか、いろいろな分野で共同の作業をすることが非常に大事になってくるということを痛感をいたしましたし、また、そういう意味での共同の幅広い勉強なり何なりが、これからの社会の新しい構図に合うように、あるいは今ぶつかっている双方の借金をどう解決をしていくのかということについての打開の方向にもなるように、どういう知恵なり勉強をしなければならないのかという、結論はなかなか出ませんが、問題意識の方だけはますます強く持たされたような気がいたします。  それで、そういうことについて若干お伺いしたいのですが、最初に大蔵大臣の抱負経綸に関することをちょっと伺いたいのであります。  一つは、私は最近こう思うわけであります。日本は明治以来というか、国が最も重要な政策や物の考え方の物差しだったと思います。国がただ一つ物差しとなるという意味で、富国強兵の時代とかいろいろな時代があって、こう来たんじゃないだろうかという気がいたします。ただ、今日の事態を考えますと、先般来御議論がございましたように、まさに経済的にも世界経済の第一専務か副社長ぐらいの大きな役割を持っておるわけでありますから、常に世界との関連で物事を考えなければなりません。これは貿易だけではなくて、まさに多くの面で考えなければならない問題だと思います。  もう一つは、これからの社会を考えますと、例えば二十一世紀に向けたこれから十数年を考えてみましても、地方、地域の持つ役割というものはますます大きくなる。例えば高齢化社会を見ましても、確かに医療もあります。雇用対策もあります。さまざまな面もありますけれども、それらと同等に地域も、まさに地域社会でのボランティアなどを含めた、どのような住みよい豊かな社会をつくるのかという視点がなければ解決がつかないと思います。また、今問題となっている高度情報化社会というような問題にいたしましても、ケーブルテレビとかいろいろな新しいシステムが開発をされ、発展をしてまいります。そういたしますと、これはコントロールされない多量の情報が家庭に押しかけてくるという時代になると思います。そういう時代になりつつあるわけであります。そういうものを一体社会的にどうコントロールするのかと考えてみましても、これは政治の分野、行政の分野でできることもございますし、もっと市民運動とか地域でコントロールされなければならない問題も大きい。ですから、高齢化社会の問題を見ましても、あるいは高度情報化社会というものを考えてみましても、地方の持つ意味、それは従来言ってきた意味と同時に、今後の社会における地方の持つ役割というものを思うわけであります。  そういうことを考えますと、さまざまの施策を行う、重要な施策を考えるという場合にも、物差しは三つですね。国、それから世界、地方と、この三つの物差しを考えながら社会設計の将来を考えるということが必要ではないかなという気が非常にするわけでございますけれども、大臣、そんなことでどんなお考えをお持ちですか。     〔中川(秀)委員長代理退席、熊谷委員長代理着席〕
  170. 竹下登

    ○竹下国務大臣 なかなか御卓見とでも申しますか、そういう認識はひとしくすることがほとんどであろうと思っております。  私は最近、ちょっと角度の違った話でございますけれども、いつも思いますのは、今いわゆる富国強兵の時代という言葉が出ましたが、富国強兵というような旗印ではあったにいたしましても、明治生まれの人と大正一けたの人はそれなりの気宇広大な点がありはしないだろうか。そして、昭和、なかんずく二けたの人は、物心ついたときはある意味において経済大国あるいは二大強国かもしれません、そんな感じになっておる。それなりにまた気宇広大ではないか。一番気宇広大でないのが、私と伊藤さんの大正二けたと昭和一けたじゃないか、こういう感じをいつも持っております。したがって、我々は戦前を知り、敗戦を知り、焼け跡、やみ市を知り、それだけに現状に対する調和とか糊塗する習性はおのずから備えておりますが、言ってみれば気宇広大さに欠けておるということをいつも思います。  しかし、そういう気宇広大から気宇広大への時代の推移をそれなりに物心ついて知っておりますので、分析というのが、国際国家というものに対しても対応が可能な体質を我々は持っておるのではないかという意味において、今まさに、いわゆる経済摩擦とかそういう問題に限らず、世界規模の問題というのを問題意識としていつも持っていなければならぬ。  それから、国はもとよりのことでございますが、なかんずく自治体に関してはいろいろな議論があろうかと思います。あるいは面積が余りにも小さいとはいえ、いわゆる合衆国的な物の考え方というのも一つはあり得るのかなあと私自身も思ったことがございます。しかし、地域格差がかなりひどかったということからしてやはり国そのものにコントロールする役割が求められ、今度、昭和五年から比べてみますと、確かに地域格差は、所得で見ますと東京の九分の一ぐらいが福島県でございまして、意外や意外、その次がたしか千葉県、恐らくあの半島の向こう側の方が足を引っ張ってきたと思うのでありますが、それがだんだん変わってきまして、今沖縄といえども約半分、そして二番目が大体いつも鹿児島県、それからその次が青森とか私の島根県というようなことに大体なるわけでございますが、しかし、そういう地域格差というのが、ある程度当時から見れば五十年間で大変な縮小をされてきて、そうして自治体自治体として、そのコミュニティーの中でいろんなものを考え、施策をされる許容範囲が広がってきたんじゃないかという感じがいたしておりますので、むしろ私はそういうところからこの国を眺め、世界を眺めていくということを、お互いそれぞれ選挙区を持っておりますから、そういうことが一番総合して調和のある施策が生まれてくるのじゃないかな、こういうふうな感じでもって私も見ておりますが、今の伊藤さんの理論は私は全く賛成でございます。
  171. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 この間、ある雑誌を読んでおりましたら、自民党三人のニューリーダー、それぞれの抱負、政策、経綸というようなことが書いてございまして、竹下さんのところは「ふるさと論」というのが書いてございました。新聞ではちょっと「ふるさと論」をということとか、「ファイナンス」なんかでちょっと一言言われていることは読むのですが、本法案に関係をいたしてみますと、「ふるさと論」という抱負は本来中央集権国家ではないと思います。まさにこれは地域の、「地方の時代」ということと直通ではないだろうか。にもかかわらず、このような中央集権的発想の法案をなぜ出されたのかなという気もするわけであります。  そういうこともございますけれども、ほかの方と比べて竹下さんの大抱負経綸という話は、「ふるさと論」以外には実は伺う機会が余りないのでありますけれども、これから創政会で勉強会をおやりになることかもしれませんけれども、その「ふるさと論」、日本の将来に関する抱負といいますか、考え方というのは、もうちょっと拡大して申したらどういうことですか。
  172. 竹下登

    ○竹下国務大臣 「列島ふるさと論」なんというのは自分で勝手につけた名前でございまして、適切かどうかということは後世の史家これを評価するところであろうと思っております。  が、私がかねがね思っておりましたのは、ちょうど昨年でございましたか、大蔵省へ二十五名のいわゆる新入の人が入ってまいりまして、ふるさととは何ぞや、こういうアンケートを出しましたら、概して都会育ちの人は、あの広場で遊んだ思い出とか、あの先生おっかなかったとか、隣のばあちゃんやさしかったとか、そういう人間関係が非常にふるさとの意識の根底にあるな、我々田舎では、みんなウサギ追いし山もあれば、また小ブナ釣りし川もある、こういう感じでございまして、ははあ、ふるさとというのは二面性があるんだなということになると、一面の問題というのはまさに目に見えるところ、住んでおるところ、あるいは我々地方出から言いますならば、生まれ在所、こういうことになろうと思っております。歌謡曲を調べてみましたら、やはり大体六〇%はふるさとに関する歌謡曲でございます。これはすぐお気づきになるところでございます。  したがって、もう一つ、そういう面のふるさとと同時に、日本列島全体をみんながふるさとだと意識するようになったときに、ある種の意識転換ができて、ふるさとを愛する心はすなわち国を愛する心につながるというようなことから考えてみますと、例えば私が建設大臣をしておるときに考えたことでございますが、高速道路がついたとしても、それは言ってみれば我々産地から消費地へ物を送るための物流の道路でなく、むしろ過密に住む諸君が、それこそ富士山ろくや信州の方へ休みになれば四千万人も旅する今日でございますから、そこで自然に触れることによって日本に生まれてよかったなというロマンのある建設行政というのが必要じゃないかというようなことを組み合わせでそんなことを言ったんでございますけれども、またそれを政策としてぶち上げるほど私も勉強もしておりません。  ただ、大平さんがおっしゃった「地方の時代」とかいうときには物すごい魅力を感じましたし、選挙のポスターに「地方の時代」と書いてあって、「田園都市構想」と書いてあって、その真ん中に大平さんの顔がありますと、いかにも田園そそのものの顔だという感じを持って、私なりにある種の躍動を感じたということがございます。
  173. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いずれ竹下登著「日本列島ふるさと論」が出ましたら買って読んでみたいと思います。  今、大臣のお答えにもございましたが、私は、まじめな意味で地方の基本認識というものを持たなければならないということを、この法案に関連をいたしましてもしみじみ実は思うわけであります。言葉では国と地方は車の両輪というふうに総理も皆さんも言われております。片っ方は百三十三兆、片っ方は五十数兆の借金。これは落ちぶれ三度がさみたいな話ですね。おまえの方の借金が少ないからおまえの方が余裕があるてな話でありまして、考えてみたら何ともうら寂しい話であります。車の両輪といいますが、片っ方の車輪がパンクしたからおまえの方もパンクしろみたいな話は、これはいかんともしがたいわけであります。やはりこれは、ある意味では困難を乗り越えて壮大な将来計画をどう持つのかということを考えなければ、やりきれない話が延々と続くだろう。今後一年間の政府部内の検討でありますが、それについても同じような思いがするわけであります。  たまたまそんなことを考えながら本棚を見ておりましたら、さっき竹下さんもお話がございましたが、大平総理の政策研究会報告、大平プロジェクトの「田園都市国家の構想」がございまして、読み直してみました。  私は非常に感心をしたのでありますが、感心をした一つは、日本の将来を歴史的に振り返り、歴史的に展望する中での地方というものの位置づけを非常に明快に論じられているということであります。もう一つは、中央集権社会から分権社会へということを、今後の社会論と組み合わせて明確に論じられているという面であります。もう一つは、そういう形での分権型社会と世界ということをいろいろと論じられているということも大変興味深く拝見をいたしましたし、もう一つは、文化論ですかね、地域、経済、文化を今後の文化国家というものとの関連においてとらえられているということも非常に立派な着想としてもう一度読み直したわけであります。  内容を御紹介することは質問の趣旨じゃありませんから質問に関連をするところだけを一、二申し上げますと、こういう言葉がございます。   明治維新以降の中央集権体制は、日本の歴史のなかで、むしろ異例の事態であった。政治権力の過度の集中の結果、生産も、流通も、管理も、教育も、文化も、中央に集中し過ぎる結果となり、大都市の膨張と過密化を招き、一方では地方の過疎化をひき起こすこととなった。   二十一世紀の日本の国家システムの方向は、明治以降の過度集中を是正し、バランスのとれた「分散=集中型」システム、「多極分散型」システムヘの移行であろう。それが「地方の時代」の到来である。   中央は、過度に集中している行政権限や補助金を徹底して削減するとともに、地域は、各地域の要請に対応した行政を自らの判断によって選択し、そのために必要な財源を自ら確保することを基本としなければならない。 そして、「簡素で効率のよい行政へ」という意味で、   中央、地方を通じ、肥大化した行財政を根本的に見直し、免許・許認可事務などの各種行政権限・行政事務補助金などの思いきった整理削減と再編成を、断行すべきときである。と言われております。  しかも、こういう筋合いのことを先ほど幾つか申し上げましたような非常に幅広い視野から論じられている。言うならば日本の将来社会設計の中で、ここに一つの視点を当てて論じられたと思うわけでありまして、近く期待をされる竹下登著「日本列島ふるさと論」もぜひそういう壮大な構想であることを望みたいというふうに実は思うわけでありますが、そのような基本認識があれば恐らくは今度のような乱暴な法律は出なかっただろう、総理・総裁あるいは政府の首脳部にそういう哲学なり気持ちがあればこんな法案は出なかっただろうと思います。出てしまっているからしようがないんで、少なくともこれから一年間政府部内で検討されるときには、そのような物の考え方を、その是非論ももちろんあるかもしれませんが、論じられるべきであるというふうに私は思うわけでありまして、この法案審議しながら、何か明朗快活な議論じゃなくて、本当に勉強すればするほどいじましいというのかやるせないというのか、そんな中身になるわけです、負担の転嫁の話ですから。そういうせこい話じゃない一つの発想というのがベースにあって初めて、これから一年間第一歩として、これは一遍で一年間に全部解決しませんから、そういう長期のいい方向づけのもとに当面なし得る一年間の議論も行われる、国会でもさまざまな意見をみんなで申し上げるというようなことではないだろうか。  今後一年間の議論に関する姿勢にも関連をいたしますが、これについてのお考えを自治大臣と大蔵大臣と双方にお伺いしたいと思います。
  174. 竹下登

    ○竹下国務大臣 人それぞれの感じ方の相違はございますでしょうが、私も大筋今おっしゃったような物の考え方をベースに置かなければならぬと思っております。本当に今度の法律を作成するに当たりまして、端的に申しまして、これは私の私的な感じでございますけれども、いわば公共事業等において補助率カットすることによって事業費を確保するということについては、まだ御理解を得やすい点が私の気持ちの中には存在しておりました。が、いわゆる社会保障関係の問題につきましては、従来の経過からして、私なりに非常に悩み多き予算編成であったわけであります。  しかし、平素抱く政治に対する抱負とそして現実我々が毎日やっておることとの差というのは相当なものであるな、これが徐々に縮まるようなことをやっていかなければならぬという気持ちは持ちつつも、一方、厳しい財政事情の中でこれに対応することとなりますと、時には心を鬼にしなければならぬ。顔で笑って心で泣いてというような気持ちになることも間々ございますが、基本ベースは今御指摘いただいたものをベースとして、今後の検討にも臨んでいかなければならぬというふうに考えます。
  175. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 ただいま先生からのお話でいろいろ私も感銘を受けたわけでありまして、特に社会保障という憲法その他の立場ということは、先ほどお話しになりました福岡県の炭鉱地や何かは非常に対象者も多いということで、自治省としては、全体的には一応のカバーは、ことしに限っては財政措置は講じた、また講じてもらったと考えておりますが、地域にこれをどういうふうに配分するかということになりますと、お話のようにいろいろの問題が出てくると思っております。  そういう意味で私は、先生もお話しになりましたように、今の歳入構造なんかから見ましても、現行制度を前提とすれば地方というのは自主的財源が非常に乏しい。それでまた義務的な経費というものも相当払わねばならぬ。しかも、三千三百という集合体でございますので、それぞれ千差万別の状況にあることは御承知のとおりでありますから、そういう点も考えながら、地方財源の充実、心豊かな暮らしができる地方ということを頭に置きながら、大蔵大臣ともよく話し合いましてひとつ地域の発展に尽くしてまいりたいと思っております。
  176. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 それで国と地方についての若干の問題を出していきたいと思いますが、その前に自治大臣に伺いたいのでございます。  先日、三月十九日の日本経済新聞でありますが、読んでおりましたら、「地方行政に新長期ビジョン 自治省」ということで、大臣のお写真が入っておりますが、戦後制度を総点検して情報化に対応、効率化も探るということで、この四月から二十一世紀初頭をにらんだ地方行政の長期指針となる「新・内政ビジョン(仮称)」の作成に着手する。大臣のお言葉として、今さまざまな社会の変化によって「大きな節目にさしかかり、抜本的な制度改革を検討する必要がある」というお言葉がございます。  私もここに掲げてあるさまざまの問題意識、確かに二十四年のシャウプ勧告、それから地方財政地方税制などの骨組みというものは今日非常におかしな格好になってしまいまして、改めて過去を振り返り、これからの社会に対応した国と地方との関係あるいは地方自治のさまざまの新しい諸課題をどう考えるのかということを検討されることは非常に大事なことだと思います。  率直に言わしていただくならば、私もいろいろなものを読ましていただきまして、地方制度調査会の十七次答申、あるいはそのころの全国知事会の制度改革についての報告書でございましたか、幾つかあのあたりに総まとめについての問題提起なり有効な御意見がございました。何かそれがほどんど実行されないうちに厳しい状態になっちゃったというのが実は現実でありまして、どのような問題意識を持って自治省としてこのような作業をなさいますか。焦点とすべき柱は何で、いつごろまでにこういうのをやってみたい、できたらこういう問題点を早くやって、そして理論的にも政策的にも政府部内で声を大にして胸を張って主張できる、こういうようなことが大事ではないだろうかと私は思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  177. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今先生がお話しになったのは私のビジョンの一端でございまして、こういうことをやりたい、こういうことを検討したいということを恐らくマスコミで記録されたことと思っております。  私、率直に感じまして、今地方でいろいろの問題を見てみますと、高齢化社会というものが予想以上に非常に早く進んでおるということと、科学技術の進展、つまり技術改革というものが地方にも相当大きく出ておりますので、こういうような技術社会あるいは高齢化社会に対応してどういうふうにやるべきか。特に老人の問題とか医療福祉の問題とかいろいろ出てくるわけでございますが、やはり情報化社会と申しますか、そういう情報を的確に把握いたしまして、これを活用していくということも必要でございますし、また、そういうことをやるについていろいろの財源ということも必要でございます。お引きになりましたシャウプ勧告等は、やはり地方の市町村というものを基盤にして、財政の問題についても、昔で言ういわゆる財政均衡といいますか、平衡交付金というようなものをその当時でも考えたらいいんじゃないかというような点は、私もこれからの地方財政の上において、さっき申し上げましたような構想と申しますか条件のもとに考えていかなければならぬ問題だと考えております。
  178. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 それで、そういう総括的な長期の見通しは、見直しにも関連をいたしますし、三大臣覚書にあるこれから一年間の検討の方向というものとも関係をするわけであります。また地方余裕論とか、余裕論といっても大きな黒字があるというのじゃなくて、おまえの借金の方が少ないという話でありますからまさにつまらぬ話でありますけれども、そういう議論からスタートをしたということでは展望性のある議論にはならぬと思います。しかも、そういうものが政府の権威ある例えば財政制度審議会とか行革審とかいろいろなところでなされているというのも、国全体の状況、将来の社会設計という意味で考えますと、権威ある方々が集まってどうしてこういう発想になるんだろうとけげんな気がするわけであります。目先だけの議論になるからこんなことになるのじゃないだろうかというふうな気もするわけであります。  私は、いろいろございますけれども、これからの議論について考えるべきベースが二つあるのじゃないだろうかと思うわけでありまして、一つは、先ほど古屋大臣もおっしゃいましたが、シャウプのときにそれなりの一つの原点があって構築をされた、それから後高度成長の時期、それからオイルショック以降経済低迷の時期といろいろなことがございまして、いろいろな意味で税収、財政構造も変わってまいりました。その間に地方と国との関係についても、あるべき姿はどうかという意味からいたしますと非常にわからない、ゆがんだ形になって今日になってしまった。そして今、国の方が膨大な借金を抱えているからということでこの法律になっていると思うわけであります。私は、そのことの総括といいますか、よって来ったシャウプ以来のプリンシプルと経過、問題点、現状はなぜこうなったかということを改めてきちんと総括をする必要があるだろうと思います。  もう一つは、今後を考える場合に現実からスタートをしなければならないと私は思います。それは地方の方もさまざまの厳しい財政事情下にある、国の方もまさに世界に例のない莫大な累積国債を抱えている、これも現実であります。この問題を抜きにした設計ということはできないと私は思います。ですから、そういう実態というものを前提にきちんと置いて、しかもこの法案をつくった経過のように国の財政収支論至上命令ということではなくて、どうしていくのか、そういうことを長期の目標を立て、あるいは中期の目標を立て、当面一年、二年、三年にどうできるのかというふうなことを考えなければ、これはやった結果さらにゆがんだ結果になってしまうということではないだろうかと思うわけであります。  先ほど参考人の御意見の中でも、気持ちとして言うならば地方の方が国より先に国以上に行革をやってきました、非常に苦労してきましたというお話がございました。あるいは、国の財政再建のテンポを早めるためにも今日の国と地方財政のシステムというものを合理化する、それが国の財政再建にとっても大きくプラスになると思いますという角度の御意見もございました。私も伺っておりまして、ああなるほどと思ったわけであります。そういうことをさまざま新しい知恵なり方法で考えれば、例えば補助金の十四兆、その中には削れないという義務的な部分も相当大きいわけでありますけれども、しかしそういうものがあったにしろ相当巨額のお金でありますから、どっちにしたって最終的には地方の消化率の方が六九・幾らですか、七割くらい行っているわけですから、国と地方の間のあり方の問題を考えれば相当大きなむだも省けるということになってまいるだろうと思うわけであります。  そういう意味で、一つはシャウプ以来のさまざまな状況を冷静に総括をしてみる。もう一つは今日の国の厳しい財政事情財政再建という国民的課題あるいは地方財政状況、それらを含め、その現実を踏まえて、そしてどう解決をしていくのかという構図を描いていく。その場合には、国の財政危機至上主義というますますひずみを大きくするような方法ではない広い視野で検討していく、そういうふうな角度が、関係のさまざまの審議会、調査会の中でも、あるいは覚書第二項にございます政府部内の中でも、ベースとしてはあって議論されないと、来年は私どもますます頭が痛くなる議論をしなくちゃならぬようになってしまうのではないかと思うわけでありますが、そういう基本的な視点についていかがでございましょうか。
  179. 竹下登

    ○竹下国務大臣 よく役割分担でございますとかあるいは費用負担あり方、その前段の役割分担というところからやはり議論は入っていかなければならぬ問題だ、私もそのような事実認識をいたしております。その上に立って財政というものが今度は考えられていくべき課題である、それが私も正論だと思っております。  確かに、戦後四十年の間でいろいろな変化が起きております。そういう状態でも、単なる経済社会あるいは考え方の変化をも含めて議論をしながら、いわゆる費用負担あり方というものは、それに並行しつつも本来あるべき地方と国とのあり方という中でそれが消化されていくべき課題だという認識で対応すべきであるということについては、私も考え方をひとしくするものであります。
  180. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もうちょっと具体化をしますと、こういうことを考えるべきではないだろうか。こう大蔵大臣も言われましたが、一つには事務事業の分担関係の見直しが必要であります。そしてまた税財源配分の再検討が必要であります。また補助金の大幅な整理というようなことも考えなければなりません。それらを含めた設計図をどうしていくのかという観点になるわけであります。そういう意味では先ほど自治大臣もおっしゃいましたけれども、今まであった総括的な答申地方制度調査会の十七次答申など、それをひとつ発展をさせた作業をそう長期間でないうちに今仕上げなければならない。そうでないとまた難しくなりかねないという気持ちがするわけであります。  そういうものを考えますときに私はこういう気がするわけであります。単純な論理でありますけれども、確かに国が義務的に補助金負担金などの形で自治体に支給しなければならないという分野の問題はあると思います。国の責任に関する部分というものはあると思います。また同時に、地方財政全体への影響を考えますと、判断の基準として三千数百の自治体がございます。その中では経済状況の相対的にいいものもあるし、非常に厳しいものもある、非常に地域差もあるというのが現実であります。大中小、規模も違います。私は少なくとも大都市、中都市ぐらいは、国からお金をもらうのではない、自主財源でやることはきちんとやれる、財政的にも自立をしてきちんとやれるということが一つ必要ではないだろうか。昔はそうだったわけですね。今は違ってしまって、私の地元の横浜を初め人口三百万のところで威張っておりますけれども、そんな日本有数の都市でも交付団体になるとか、ことしは川崎だけが何か不交付団体になるんですか、そんな状態ですね。政令指定都市、十大都市でも国からお金をもらって支えている状態というのは異常だと思うわけであります。少なくとも大都市や中都市は自立できるような体制をどうつくるのかということを一つはきちんとしたターゲットにすべきであろう。その反面でさまざま対策を講じなければならない自治体があるのは当然であります。残された中小市町村などについては当然でございますけれども交付金的と申しますか交付税制度の適用というものが必要であります。その算定にしてもそのやり方にしても、より民主的な方法は何かを検討しなければならないと実は思うわけであります。  いずれにしろ、私ども社会党の中でも十大指定都市の国会議員団が集まって新しい勉強を始めようというのでやっておりますけれども、その中でやっておりましても、何でこれだけ日本有数の大都市がこんな状態にあるのかということを思うわけでありまして、重要な一つのターゲットとして設定をされる、そこに向けて当面中期、短期計画が立てられるというような方法が必要であると思いますが、これは自治大臣どうですか。
  181. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 地方立場で、今三二%の交付税というものはあるわけでございます。また、それが地方のアンバランスを助けるための費用と言われております。  ただ、現実の姿を見ますと、今のお話のように大都市財政が豊かであるというように思われるところ、交付税はそういうところへいかなくても税源だけでも随分あるというような状況を考えます。また反対に、過疎あるいは山村振興の対象となっておるような地域は国からのいろいろの援助がなければとてもやっていけぬ、暮らしもできないというような状況のところもあるわけでございます。そういう意味で、いずれ遠くなく税制問題も検討されると私は思うのであります。そういう場合にも、地方財源が相当あるところとそうでないところ、交付税制度の活用以外にもそういう点においては何か考えるべき点があるのではなかろうかということを今自分でもいろいろ反省しながら考えておるのでありまして、この間も神奈川の知事さんにお目にかかりまして、来ていただきまして、例の条例の問題で、こういうことをやられると地方がとても豊かというふうに思われてもしようがないんだから、知事さんもぜひひとつ考えてもらいたいということを私も申し上げたところでございます。  これは一つのあれでございますが、大きな県といいますか豊な県、六大都市あるいはその他でも豊かな県、指定都市といっていいか悪いか、これまたちょっと指定都市もつらいところも相当あるように見ておりますが、そういうところのあるべき姿と、弱小といいますか財政的に非常に豊かでない地域との関係の問題、税源の問題、こういう問題は自治省内部におきましてもいろいろな点から十分考えていかなければならぬ、ひそかに私そのような気持ちを強く持っておるのでございまして、交付税制度の活用はもちろんでございますが、そういうような点も機会を見て何らか私ども考えていく必要がある、自分でもつくづくそういうことをこのごろ感じておるところでございます。
  182. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 自治大臣、申し上げました政令指定都市だけではなくて、少なくとも人口が五十万、七十万、百万とか、そういう大都市くらいはとりあえず自立できるような仕事と税財源対策を考える。そうでないと本当の意味での自立した都市ということにならぬと思うのです。また、自治体の中でも、政策研究活動その他いろいろと活発に起こりつつある今日の段階だと思います。やはり自治体自分の責任で自発的にどうするのかという意欲を持つような、そして個性のある町をどうつくっていくのかということでなければならぬと思うわけでありまして、そのベースにも、国がかり親がかりではない、また安定して一般財源で賄えるということが当然あるべきであるということは、お考えは同じでございますね。
  183. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 私もそういう点は、先ほど言葉が足らなかった点は十分考えてまいります。
  184. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 では、最後にもう一つ伺います。これは地方の国政参加という問題であります。  国と地方は車の両輪ということを総理を初めよく言われます。もうちょっとそれを具体的に考えてみますと、国のさまざまの法律や政令のうち、自治体を通じて執行されるものはおびただしい数に上っているというのが言うまでもなく今日の状況であります。そして国の立法によって、国の監督権によって自治体がやらなければならない仕事がある。また、さまざまの事業の超過基準の問題などなど、自治体財政負担が増加するということも自治体側からは毎年繰り返して要望されている問題であります。  そういう実態を考え、あるいは皆様のおっしゃっている車の両輪という面から見ますと、国の立法過程と申しましょうか、国のさまざまの仕事の過程に自治体がもっといろいろな形で参画をすることが必要ではないだろうか。運用面では自治体の意向を当然反映させる、特に自治省初めそういう努力は行われているわけでございますけれども、立法は国会であります。これは当然であります。しかし、膨大な政省令などを通じて行政は行われる。そうすると、法律本体だけではなくて、そういうさまざまの政省令、通達などのあり方の問題もあるわけであります。しかし、そうかといって自治体の国政への参加、車の両輪にふさわしいシステムをどうするのかといいましても、三千数百がみんな参加するというわけにはまいりませんから、例えば地方団体がその選定などに当たって、あるいは地方団体がその任に当たってやっていくというのが私は適当な方法であろうと思います。  それから、国の法令で決まったおびただしい仕事があるけれども、当然ながら地方にも地方独自の計画権というのがあるわけでありまして、さまざまの計画が組まれる。しかもこれからの時代でありますから、「地方の時代」は大平さんが亡くなってうたかたのごとく消えたといって先ほど田川市長さんが嘆いておられましたけれども、やはり個性のある町づくりをやらなければなりませんし、そういう意味での地方の計画があることも前提であります。  そういうことを考えますと、さまざまの国の政令、国の計画の設定にも参加をしていく、あるいは国家的なプロジェクトに参加をしていくということが必要ではないだろうか。これらを改めていろいろ振り返って読んでみますと、先ほど申し上げました地方制度調査会の十七次答申とかあるいは全国知事会地方行財政基本問題研究会の報告書とかございますけれども、これはいずれも五十四年、五十五年のところの問題なわけであります。  それとほぼ同じでありますが、先ほど神奈川県知事にお会いになったことを自治大臣おっしゃいましたけれども、その議論は私ども当然意見がございますけれども別といたしまして、五十七年に「地方行政システム改革に関する意見」が出されておりまして、いろいろございますが、その中で参加ということについて二つ三つございます。  これは無理のないお話だと思いますが、例えば国の大きな計画の作成段階で、国の担当者と地方の担当者が共同のプロジェクトチームをつくって、言うならば原案作成段階でも共同の議論、できれば共同の作業がある、これは車の両輪の関係からいってもあるいは今日の国と地方事務関係からいってもふさわしいことではないだろうか。例えばそれが一つ県としての提言書に出されております。あるいはさまざまの審議会に参加をする、あるいは意見を言うようにという機会があるという仕組みが現実にあるわけでありますが、知事の場合が多いわけでありまして、市町村長の代表も加えることが必要ではないだろうか。それから三つ目には、各省庁の長、大臣と地方の首長が定期的に意見交換のできる場をつくっていく。できればこれを制度化をする。これは全国知事会とかそういうやや準備の積み上がった上でセレモニー化するのではなくて、十分な懇談もできるような場を制度化をするというふうな問題。できればこういうものも地域ごとに、ブロックくらいでそういうのもやれたらいいのではないかとか、三つだけ申し上げましたが、そういうことがあるわけであります。  国と地方を含めて将来をどう開拓をするのかということを考えますと、そういうことも大いに活用されるべきであろうと思うわけでありますが、自治大臣、いかがでございますか。
  185. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今のお話は、十七次の地方制度調査会における答申にも先生のお話が出ておって、国と地方の相互の協力、協同の関係を促進するために、都道府県及び市町村の全国的な連合組織は、地方公共団体の利害に関係する法令の制定、改廃について国会あるいは関係行政庁に意見を提出することができるとするなど、地方公共団体の意向が国政にもっと適切に反映するような道を講ずべきであるということが指摘されておりますし、また全国知事会の報告も同様の趣旨のことを言われておるのであります。  確かに国と地方公共団体は、国民福祉の向上という共通の目的に向かいましてそれぞれの機能と責任とを分かつ相互協力関係にあるのでありまして、今後国と地方団体の相互信頼の上に立った円滑な協力、協同を確保するために、この答申の趣旨を踏まえまして、公共団体の利害に関係する国の施策の推進に当たりましては十分地方の声を聞いていただくよう、これを尊重する必要があると考えております。
  186. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣、真剣に書かれたものをお読み上げになりましたけれども、三つほど申し上げましたね。そういうことは前向きに検討すべき課題だということですか。
  187. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 非常に慎重に私も先生のお話を聞いたのでありまして、これからの施策の上において、十分私の頭に置いて考えていきたいと思います。
  188. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 終わります。
  189. 熊谷弘

    ○熊谷委員長代理 矢追秀彦君。
  190. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大臣、初めに本論に入ります前に、先ほども議論が出ておりましたが、夕刊によりますと、アメリカの上院の委員会で対日報復法案が可決をされ、さらに下院でも強硬決議が採択をされておりまして、非常にアメリカの態度が異常と言えるような状況であると思います。政府は談話を発表されたり、また審議官を外務省は派遣されたり、いろいろされておりますが、今度は今までのようなものとは違って相当厳しいものである、よほど腹を据えて交渉をしないと大変なことになる、そういった意味で、ちょっとまだまだ日本政府は弱腰ではなかったか、私はこのように思うわけでございます。総理も、昨日もこちらでいろいろ答弁をされておりましたのを聞いておりましても、まだ非常に楽観的であるように思います。  そこで、大蔵大臣といたしまして、この問題を本当にどう真剣に受けとめ、どういう点が問題点であるか。アメリカにもやはり言うことは言わなければいかぬと思います。ドル高あるいはまた高金利、こういったことも大きな原因の一つですから、ただこちらだけが悪者になっているようじゃしようがないと思います。そういった意味において、大臣の所感、決意をお伺いしたいと思います。
  191. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も今夕刊を読ましていただきまして、下院においても恐らく上院と同じように全会一致という形だと予測されますが、そういう決議がなされたことは、自由貿易主義の旗を掲げておるものといたしましては、これは実にゆゆしき問題だというふうに思っておるわけであります。  私どもといたしましても、今日までも、今矢追さんいみじくも御指摘がございましたドルの独歩高あるいは高金利、その理由となっておるアメリカの財政赤字の問題等について、その都度意見交換なり議論なりをしてまいりました。先般本委員会で参議院へ送っていただき、上がった法律案の中の関税の暫定措置法などを見ますと、ごらんになりましたとおり、一つ一つ見ますと一%下がるとかあるいは一・五%下がるとか、ところが去る先月の十八日から半月ほど見ましても、為替レートは四%、私が五十五年に大蔵大臣をやめたときは二百十九円ぐらいでございましたから、そのときから思えば恐らく二十数%、だから、考ようによれば関税というのはもうアクセサリーじゃないか、こういう議論ができるような、ことほどさように、いわばドルの独歩高というものの影響が大きいわけであります。したがって、それらの問題、これはいわば人為的になし得る問題ではないにいたしましても、それらの根源をやはりお互いの議論の中で直していかなければならぬ。  だから、あくまでも主体的な立場にあって、そして日米関係が外交の基軸であるということも考えつつ、当面はこのいわゆる四分野の問題についての市場開放策についてお互いの議論の幅を縮めていくという努力が早急に行われるべきものだというふうに考えております。
  192. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それでは、いわゆる補助金削減一括法案についてお伺いをいたします。  初めに自治大臣にお伺いをいたしますが、これもしばしば議論に出ております、地方財政法の第二条にございます地方公共団体負担を転嫁するような施策を国は行ってはならぬというこの負担の転嫁でございますが、本法律案では結局は五千八百億円というものが負担増になるわけです。しばしば転嫁にはならないというふうな答弁でございますが、じゃどういうふうになれば、どういうふうな状況であればこれが転嫁であるのか。金額なのかあるいは制度、仕組みなのか、その点はいかがですか。
  193. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今回の措置は、補助金整理の一括法におきまして、地方団体に対して財政金融上の措置を講ずる旨を入れて、そういう文句を入れていただいております。それが一つ。そういうことで国会審議お願いしておる。  それからもう一つは、六十年度の地方財政対策といたしまして、国庫補助負担率引き下げに伴う地方負担の増加につきましては、交付税建設地方債の増発によりまして完全に補てんをしておるというところでございまして、自治省といたしましては、そういう意味では地方財政法の第二条には抵触するものではないというふうに考えておるわけでございます。
  194. 矢追秀彦

    ○矢追委員 そういう答弁をずっと繰り返しておられますが、それでは伺います。  今、その交付税といわゆる地方債によって補てんをされておるから心配ないと言われますが、いただいた資料の中を見ますと、これは一つずつ御説明いただきたいのですが、三ページに表が出ております。資料は「昭和六十年度地方財政対策の概要」昭和五十九年十二月二十二日、これでございますが、この中のいわゆる経常経費系統二千六百億、投資的経費系統三千二百億、これで五千八百億ということですが、その下に交付団体分二千億、不交付団体分六百億とあります。この六百億は、結局は地方負担なんでしょう。
  195. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 六百億につきましては、つまり交付税とそれから建設地方債おのおの一千億と六百億、合わせて二千六百億につきましては交付税基準財政需要額に組み入れておるのでございます。しかし現実には、そう言っておりましても富裕団体にはその金は参らないのでございますから、地方の自己財源によって六百億は賄えることになると思っております。
  196. 矢追秀彦

    ○矢追委員 もう一つは、建設地方債三千二百億の下ですね、調整分の千二百億、これと、その次の臨時財政特例債二千億、このうち半分は国が負担するわけですが、その残り一千億、この二つについてはどうですか。
  197. 土田栄作

    ○土田政府委員 投資的経費に係る補助率カットでございますけれども、これはまず公共事業等の補助金補助率を一段階引き下げる、例えば四分の三を三分の二にするというようなことによりまして、国費をまず二千億生み出すということをいたしまして、その国費をさらに事業費の拡大に回して事業量をふやす、こういうやり方をやっておるわけでございます。そういうことでございますので、まず地方負担の増となりますのは国費カット、国費を一段階下げたことに伴いまして地方負担としてふえてまいるものが二千億ございまして、そのほかに事業量の拡大ということで地方負担がふえるものが千二百億あるわけでございますので、これらの財源措置については一応私ども分けて考えているわけでございます。  まず最初に国費カットの二千億の分でございますけれども公共事業関係の国費カットにつきましては、しばしば当委員会でも御議論がございますように、やはり生活保護等の義務的経費負担の転嫁の分とはわけが違うのではないか。これを事業費拡大に回すことによりましてそれぞれの地域の公共施設の整備水準が上がりますし、それらの事業というのは地域の要請によってやる事業であるということでございますので、二千億のうちの半分というのは一応地方として負担するべき合理的な理由があるということで地方負担にいたしている、こういうことでございます。  それから、千二百億の地方負担の増につきましては、これは普通の、ほかの事業と色分けのされない通常の地方負担の増でございますので、これにつきましては地方交付税の三二%の枠内で処理し、通常の財政措置をする、これにつきましても地方負担とする、こういうことでございます。
  198. 矢追秀彦

    ○矢追委員 その辺が私ちょっとよくわからぬのですよ。では、この法案が出なければこれはどうなっていたのですか。その調整費の千二百億はどうなっていたのか。それからこの一千億ですね、二分の一国がやってもらった後の残り一千億、これはやはり出てきたからこれが出てきたわけでしょう。だから私は、結論からいいますと、さっきの六百億とこの調整分千二百億、それから一千億、合計二千八百億は完全な地方負担になっている、これをまず主張したいわけです。  もう一つは、仮に今の調整分を本来のものだ、こう言われて除いたとしても、千六百億は完全に地方の今回の法案による負担増になる。いろいろ言われますよ、公共事業を削って、それをまたふやしてといろいろ言われますけれども、結局はこのカットが出たからこうなったので、私は少なくも千六百億は負担増になった、こう断定をしたいのですが、いかがですか。
  199. 土田栄作

    ○土田政府委員 まず公共事業の関係の地方負担増でございますけれども、これは国費をカットしてそれを事業量の拡大、事業費の拡大に回すという政策をとらなかった、つまり五十九年度と同じ法制でやったとしまして、要するにそれだけの国費なり公共事業費で国も地方も辛抱するという形でやりますれば、地方負担というものは生じなかった問題でございます。そういうことで、事業規模を拡大するためにそういう政策をとりましたために、新たな地方負担が発生した、こういうことでございます。  それからもう一つ経常経費系統でございますけれども経常経費系統につきましては、御承知のように二千六百億の地方負担の増が出てまいります。このうち一千億につきましては、御案内のように交付税財源措置するということでございます。それから残りのうちの一千億は建設地方債で埋めるということになりますけれども、その一千六百億のうちの交付団体分に見合います一千億というのは、昭和六十六年度以降の地方交付税に加算するということで一応大蔵省との約束をしておりますけれども、今回の補助率の一律カットというものが、昭和六十年度中にいろいろ議論をしまして本来あるべき補助負担率が幾らになるかということが決まりましたら、その負担率で一応再計算するという留保条件つきでの要するに国の負担ということになっているわけでございます。そういう意味におきましてこの一千億というのは、ある意味ではペンディングという形になっているものでございます。  それから、残りの不交付団体の六百億でございますけれども、これは国費をカットしてそれを地方交付税で補てんするという形をとります以上は、地方交付税の行かない団体については交付税による財源措置はできないということになります。ただ、そういう団体につきまして、いろいろ財政運営が困りますれば、そこのところについては建設地方債の充当で対応するということになります。  なお、やや蛇足にわたるかもしれませんけれども交付団体、不交付団体というのは最初から決まっているわけではございませんで、御案内のように基準財政需要額と基準財政収入額の差し引き額でございます。そういうことでございまして神奈川県の場合なんかはかなり不交付団体も多いわけでございますけれども、例えば神奈川県について見れば、交付になったり不交付になったりという状態でございますので、結果的に昭和六十年度に交付税を計算して不交付団体になりましたところについては現実の財政措置としての交付税は行きませんけれども、計算されない、要するに通常の交付税制度の上では財政措置として確保されているということが言えるだろうと思います。
  200. 矢追秀彦

    ○矢追委員 いろいろ言われますけれども、この六百億だって、これはカットが出てきたから五千八百億というのは穴があいたので、それをどうするかということで交付税と建設公債ということになって、それであと六百億は不交付団体が持ってくれということですから、これは個々にせよ全体にせよ不交付団体負担なんですから、この六百億と、私がさっき言った一千億、さっきいわゆるペンディングのものは別ですよ、これは将来埋めてもらうという仮定に立って、最小限度どうしても千六百億の負担地方にかぶっているんだと言いたいわけです。私の考えは間違いですか。  いろいろ言われますけれども、私は簡単に言うけれども、この書類だってはっきり五千八百億は負担増と書いてあるんですからね。ただ埋めたからそれでいいわというさっきの大臣の答弁ですけれども、少なくもこの六百億と一千億、千六百億については地方の完全な負担である。あとは、負担が大変だったら借金してもよろしいというのはまた別の議論でして、これはいかがですか。
  201. 土田栄作

    ○土田政府委員 公共事業の国費カット分の半分の一千億でございますけれども、これにつきましては地方も受益するということで、これは先生おっしゃるように地方負担増、地方がみずから始末をするという形になっております。  それから経常経費系統の六百億の不交付団体分でございますけれども、これは先ほど御説明申し上げましたように、要するに交付税計算いたしますので、その年度に不交付団体になったところには交付税が行かないという形で地方負担増ということになるわけでございますけれども、やや技術的になりますけれども、例えばすれすれの不交付団体というのがありまして、そこのところにつきまして今度の一律カットでまた需要がふえて交付団体として交付税がもらえるとか、いろいろなケースが想定されます。ただマクロ的に考えれば、この六百億というのは地方の不交付団体分としての負担増になるということも間違いのない事実でございます。
  202. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大臣、いかがですか。さっきの答弁とこの千六百億は矛盾してくるのです。いかがですか。
  203. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今の審議官の答弁は、経常経費の一千億については留保条件つきといいますか、ことしのあれによって決まる、場合によっては六十六年以降の地方交付税に加算します、そういうことでございまして、六百億の問題については、交付税基準財政需要額に入れますけれども、そのとき交付税の対象でない団体になる分が最大六百億あり得るということでございます。そのとき不交付団体でなければ費用も交付税で出るわけでございますが、私はそういうふうに考えております。
  204. 矢追秀彦

    ○矢追委員 そうすると、今の大臣の答弁だと、これはもし不交付団体がなかったら、その六百億は交付税で全部出るのですか。そうしたら、特例加算千億と、地方財政の振りかえの六十六年度以降の交付税に加算というのは千六百億になるという意味ですか。どうですか。おかしいですよ。
  205. 土田栄作

    ○土田政府委員 御指摘の趣旨が私にもちょっと正確に理解できないわけでございますけれども交付税は計算をしまして、交付基準額、要するに交付税として交付すべき額が出てまいりますれば交付税は行きますけれども、それが財源超過ということで三角がつきますればそれは交付税をやれないということになりますので、結果的には財政措置交付税ではできない。  つまり、これは宿命的なものでございますけれども、ある意味では、国庫補助金というものを整理合理化しましてそれを地方一般財源に振りかえるという措置をいたしますれば、その財政需要を何で見るかということになれば交付税制度であるということになります。そうしますと、交付税基準財政需要額の算定を通じまして現実にキャッシュベースで措置されるのが交付団体ということでございまして、それ以外の不交付団体については国費のカット分がかぶってくるというのは制度の仕組みとしてやむを得ないものである、このように考えております。そこは交付税制度と国庫補助制度が違いますので、制度的な限界であるというふうに考えております。
  206. 矢追秀彦

    ○矢追委員 私は頭が悪いのかどうか知りませんけれども、さっぱりわからぬわけですよ。千六百億は負担増なんです。さっき大臣が言われた地方に転嫁していない、五千八百億については建設公債と交付税でちゃんと処理しましたから決して負担ではございません、だから地財法には違反していない、そこが私はおかしいと言うんです。それはいかがですか。はっきり答えてください。
  207. 土田栄作

    ○土田政府委員 これは、この法案の第六十条に規定を置いてありますように、地方団体事務事業の「執行及び財政運営支障を生ずることのないよう財政金融上の措置を講ずる」ということでございまして、御指摘のように、五千八百億の中にその事業の性格あるいは交付税制度の性格から国費カット分をダイレクトに国費で埋めないという分があるということは事実でございますけれども、現在の厳しい財政事情のもとにおきましてはこれらの措置が精いっぱいといいますか、国の財政事情から考えればぎりぎりの財政措置であり、私どもとしましては、この五千八百億の財政措置を通じまして個々の地方団体財政運営支障を生じないような万全の措置を講ずることができるというふうに考えている次第でございます・
  208. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大臣に伺いますけれども、それでは負担の転嫁というのはどういうことなんですか。今回のこれは転嫁でないと言われる。私は認めませんよ。認めませんが、一般論として転嫁の意味はどういうふうになるのですか。
  209. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 財政のこういうことによって地方にこれだけ負担しろ、中央は何にも財政措置をしないというのが完全転嫁だろうと思うのです。つまり、政府のあれによりまして地方にこれだけの費用を負担しろ、それを中央では何にも財源措置をしないという場合には、当然私は地方に転嫁する、地方負担になると考えるわけでございます。
  210. 矢追秀彦

    ○矢追委員 だから、その千六百億は私は厳密に言うと今おっしゃったことに当たると思うのです。大臣は当たらぬと言う。これは水かけ論ですからあれですけれども、私は千六百億を一番下目に見ているのです。さっき言ったように、千二百億の調整金も負担増に入れたいのですよ。そうすると二千八百億です。さらに、さっきいみじくも言われた六十六年までの交付税の方は、やってもらえるかやってもらえぬかわからぬです。仮に国の財政がまただめになってできないとなれば、もう一千億プラスになるのです。そうすると、三千八百億は完全な負担増になるのです。だから、さっきおっしゃったようにできないのですからこれは国の財政の転嫁になる、私はこう決めつけたいと思います。  五千八百億だけ出ておりますけれども、今回のいわゆる一律カット法案でさらに上乗せしてくるものがありますね。何と何で、幾らですか。
  211. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 ちょっと数字は忘れましたが、義務教育の旅費であるとかそういうものだと思います。
  212. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 委員の御質問は、恐らく高率補助率引き下げ以外も含めてその他どういうものがあるか、こういうことだと理解いたしますと、その他一般財源化等で四百二十八億円、それから行革関連特例法の関係が三千五百六十三億円ということでございます。(矢追委員「その中で地方負担する分」と呼ぶ)このうち一般財源化等は地方へ行くものになるわけでございます。  細かく言いますと地域特例の関係で十億円、その他のものは本来の予算査定をどうやるかという結果としての話になるかと思いますが、地方がその結果として負担する可能性のあるものもあるわけでございます。
  213. 矢追秀彦

    ○矢追委員 その細かい数字は出てないのですか。これは自治省もつかんでないのですか。
  214. 土田栄作

    ○土田政府委員 先生のおっしゃられる趣旨は、一つ補助金等の廃止に伴ってどれだけ地方の一般会計での負担増があるかということであろうかと思いますが、私どもが承知しておりますのは、ただいま平澤次長が御答弁申し上げました四百二十八億のうち地方向け以外のものが五億ほどあるということでございまして、地方団体大体四百二十三億ぐらいだということであります。これは義務教育の旅費とか教材費といったものが中心でございまして、これらのものにつきまして交付税基準財政需要額に算入するということで財政措置を講ずることを予定いたしております。
  215. 矢追秀彦

    ○矢追委員 大蔵省も自治省もきちんとした数字出せないのですか。私はちゃんと質問要求もしてやっているのですから。五千八百億以外には——例えば一番の高率補助率引き下げは今の五千八百億になるわけですね、中身でわかりました。その次のいわゆる一般財源化四百二十八億、これは全部地方へ来るのか、そのうちどれだけ来るのか。三番の行革関連特例法の延長によるものがどれだけ地方へ来るのか、ちゃんと数字出してください。
  216. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 もう一度整理して申し上げますと、高率補助率引き下げに伴うものが五千四百八十八億円、一般財源化等が四百二十三億円でございます。それから行革関連特例法の関係で、厚年等は特会との間の関係でございますし、保険事務費もそうでありますし、児童手当は地方とは関係ございませんし、四十人学級は、これは微妙に関係するのは教職員の数と絡んでおりますので、その数をどういうふうに考えるかということで負担が変わってくるわけですけれども、これは先ほど申し上げましたように通例の予算査定と同じようにお考えいただいたらいいんじゃないかと思います。そうしますと、あと地域特例の十億円がございます。したがって、先ほどの高率補助率以外ですと四百二十三プラス十、四百三十三ということでございます。
  217. 矢追秀彦

    ○矢追委員 だから五千八百億だけじゃないんですね、自治大臣。ここでまた四百三十三億は地方へかぶるわけです。これは地方の方が自主的に行うからもう負担増ではない、地方がやりたいものを今回もらっただけだ、恐らくこういうように答弁されると思うのです。五千八百億は外れている点はわかりますけれども、これによって福祉が抑えられるんじゃないか、教育が問題あるんじゃないか、こうやっていろいろ大騒ぎになっているときに、これは前から地方があれされているから出すんだ、はい結構でございます、こういう姿勢に問題がある。何でもっと早くやらなかったか、私はこう言いたいわけです。国の財政が厳しいのは何も今から始まったことじゃない、もう大分前から始まっておるわけです。そういった意味で、大体答弁はわかっていますからね。しかし私は、ただ五千八百億だけではない、新たな負担がこれ以外にもこの一括法案によってある、これは指摘しておきたいと思います。それはお認めになりますか。
  218. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 今度五千八百億のカバーをしてもらった以外に、地方交付税で、つまり地方の通常経費として、補助は国でやめられたが地方で見ておるものは今の四百二十三億であるというふうに考えております。
  219. 矢追秀彦

    ○矢追委員 したがって、私は、今回のこの法案は、地財法でも問題があるし、また先ほど来も議論されておりました第十条、あるいは生活保護等に非常に大きな問題のある法案であり、地方自治にとっては大変迷惑な法案である。これはひいては国民に転嫁される可能性が十分ある。これはまず指摘しておきたいと思います。  そこで次に、現在〔各都道府県あるいは市町村、もう予算議会も終わりまして大体予算が成案を見ておるわけです。したがいまして、どこがどれだけの負担増になる、財政の規模の中で生活保護がどれだけ負担がふえるので大変厳しい、そういうふうなところも出てくると思います、特にこの法案が通ってないわけですから。私は、そういった地方自治体の実態というものを明らかにしていただきたいと思います。  私は、ちなみに大阪市からいただいた資料がございますが、大阪市にとりましても大変な負担増ということになっております。例えば生活保護補助金だけでも九十四億、こういうような負担でありますし、結局百二十二億九千五百万円、これがいわゆる経常的経費カットによる負担増、さらに、投資的経費については二百二十三億二千五百万、こういったものが出てきております。下水道はちょっと性格が違いますので別になっておりますが、三十七億三千万ですか、こうなっております。投資合計でも二百七十億、こういうふうにちゃんとデータが出てきておりますが、自治省としては全国の市町村あるいは都道府県のこういった六十年度予算の実態というものは掌握されておりますか。
  220. 土田栄作

    ○土田政府委員 個別の市町村段階については現在調査中でございますけれども、都道府県と指定都市につきましては予算編成の状況というのを承知いたしております。  ちょっと手元に資料はございませんけれども、頭の中にある数字で申しますと、都道府県につきましては全体で四・七%増しぐらいの予算が組めた、それから公共事業、単独事業等についてもややプラスという形での予算が組めだということを承知いたしております。  それから、実は地方負担の今回の負担転嫁によりますそれぞれの段階負担増をどうやって計算するかというのは技術的にかなり難しい問題があるわけでございます。と申しますのは、一つは制度改正によりまして負担増がある分がございますし、それからもう一つ厚生省の臨時財政調整交付金の二百億がどう配られるかわからないという問題がありますので、それぞれの団体の実態までは承知いたしておりませんけれども、五十八年度決算をベースにいたしました経常的経費地方負担の都道府県とか市町村の全体のマクロ推計というものは持っております。  それから、公共事業関係でございますけれども公共事業関係は箇所別に各省が予算を張りつけいたしますので、公共事業関係については実態というものは承知いたしておりません。
  221. 矢追秀彦

    ○矢追委員 今政府委員の方がお答えになっておりましたように、いみじくも負担転嫁という言葉を使われましたので、大臣の答弁はやはりおかしいですよ。これは問題です。本音はちゃんと転嫁ということ。これはあれですから、質問の本論にいきます。  要するに今私が申し上げたいのは、大体もう予算は全部通過しているのに都道府県だけ掌握して、手元に資料がない。私はきのうから出してくれと言っているのですよ。市町村だってそんな一万も二万もあるわけじゃないですし、ここには市町村会館もありますから出せるはずだと思うのです。  なぜ私がこういうことを言うかといいますと、それは決算ベースでないとある程度のことはわからないことはよくわかりますが、実際大阪市はちゃんとこうやって出してきております。それはいろいろな事情はわかりますけれども、しかし、ある程度今後の審議、特におくれているだけに、しかも公共事業起債なんか出す場合、市町村の小さいところではなかなか能力も大変です。そうなると、現在の実態はどうなのか。しかも、予算審議中ならしようがないが、もうほとんど終わっていますよ。すぐ集めて一覧表にして、こういう二、三枚の紙で済むのですから、これは出していただきたいと思うのですが、いかがですか、大臣。
  222. 土田栄作

    ○土田政府委員 まず、先ほど負担の転嫁と申しましたが、大阪市の資料によりますと「国庫補助負担制度の変更による」と書いてありますので、ここのところは訂正させていただきます。  それからもう一つ一つ一つにつきましての推計額といいますのは、都道府県段階では一定の前提を置けばできますけれども、市町村別はなかなか大変であると思いますが、各県の都道府県計で幾ら、市町村計で幾ら、それから両方合わせて幾らという推計は、一覧表としては一定の前提を置いた推計でございますけれども出せると思います。  それから公共事業関係は、先ほど御説明申し上げましたように箇所づけが決まりませんと推計できないというふうに思います。
  223. 矢追秀彦

    ○矢追委員 いつまでに出せますか。
  224. 土田栄作

    ○土田政府委員 ゼロックスを焼く時間だけお待ちいただければ出せると思います。
  225. 矢追秀彦

    ○矢追委員 資料の出方によってはまた後で議論させていただきますが、次に私は、今度は国の立場からこの一括法案によって実際とれだけのいわゆる歳出カットが行われたか、こういう問題を議論したいと思います。  その前に、さっき平澤次長が言われました五千四百八十八億、これと地方の方で出てきておる五千八百億との間が大分数字が違うのですね。これは約三百億ほど違っておりますが、この理由を説明してください。
  226. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 少しややこしくなりますが、高率補助率引き下げの国費の節減額が今おっしゃいました五千四百八十八億円、うち非公共部分、これが二千九百四十八億円、公共部分が二千五百四十億円それぞれございます。  ところが、この非公共分の中にいわゆる公立文教等のものがございまして、いわゆる施設費でございますが、これが約百億円ございまして、地方の場合にはこれは投資的経費に入るものですから、それを引きます。それから次にその生活保護調整補助金二百億円ございます。これがまた調整項目として入るわけでございます。非公共はそういう結果として二千六百億円ということで、地方財政上は経常経費関係ということになるわけでございます。  他方、公共の方は、先ほど申し上げました二千五百四十億円を使いまして事業が拡大することになります。国費はそのまま節減しませんで、また公共事業に充てるということで処理しております。そうしますと四千四百億円ふえるわけでございますけれども、その中に、またややこしくなりますが、千二百億円、いわゆる地財計画対象外というのがございまして、それを引きましたのが三千二百億。  先ほどの経常経費関係二千六百億プラス今申し上げました投資的経費関係の三千二百億を足しまして、合わせますと五千八百億円、こういう数字になるということでございます。
  227. 矢追秀彦

    ○矢追委員 後の方が私もう一つよくわからぬのですよね。二千五百四十億をカットしておいて、それをまた拡大をする。今数字の合わせは了解しておりますが、それはもちろん公共事業をふやさなければ景気等の問題はありますけれども、私は何もこれを減らせという意味ではありませんけれども、こういう非常にややこしい、入り組んだようなやり方をしていかなければならないのか。もっと単純明快な、我々にもっとよくわかるようなやり方がないのか。  私も実はきのうから一生懸命電卓で計算しておりまして、大蔵省からいただいた資料でずっとやりますと、どうしてもこの五千八百億というのは出てこない。それで今の答弁でわかったわけですけれども、こういった点が非常にややこしい。しかも、これは二百億の生活補助も別に組まれているわけでしょう。これをまた入れてきた。どういいますか、非常にややこしい。  しかも、片方ではゼロシーリングだマイナスシーリングだと締めるだけ締めておいて、国の方は何かすっきりしまして、地方の方ではふやしておる。これは、要望があるからふやすことは反対じゃありませんけれども、どうも一貫しない。そういう点を感じてならないのですが、この点、大蔵大臣いかがですか。
  228. 竹下登

    ○竹下国務大臣 数字につきましては今平澤次長から御説明年し上げたとおりでございます。  いわゆる地方財政計画というものが一方にあって、そして一方で高率補助率引き下げに対する個別措置と申しますか、そうしたことが行われておりますと、出たり入ったりで、矢追さんは十分わかっておりますが、私は今それを正確に暗唱して説明するほどの能力は持っておりません。が、事実、地財計画の問題とこのたびの高率補助率引き下げ措置とのこの二つの面から、個別な措置と地財計画全体の中との問題がございますので、先ほど説明しましたような出入りの計算があろうかと私も理解をしております。
  229. 矢追秀彦

    ○矢追委員 それで、最初に申し上げた、この法案で歳出カットが実際とれだけできたか。九千四百八十億円と言われておりますが、私は、この中から相当引いていかなければならぬものがある。純粋にカットされたものは三分の一くらいではないか。  まず私の考え方を申し上げますから、これは間違いなら間違いで指摘をしていただきたいし、そういう考えも、単年度主義ということがありますから、その点はひとつ了解をしていただきたいと思いますが、まず先ほど来議論に出ました補助金の廃止、これによりまして四百二十八億。その次は行革関連特例法の一年延長で二百四十八億。その次に、この問題になっております高率補助率引き下げの特例ですが、今五千八百億となっておりますが、その中で国が面倒を見るもの、そういうのを引いていきますと、先ほどちょっと指摘をいたしましたように、特例加算が一千億、それからその次の振りかえが一千億、それから元利償還の二分の一の国の負担、これを一千億。こういたしまして三千七百二十六億、私はこういうことになると思うのです。  要するにあとは全部地方に、国がもうほとんど面倒を見ないという考え方ですね。そういう考えに立ちますとこういうことになるんじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  230. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 今の委員のお話は、本法案によりまして全体で約九千五百億円節減があったが、しかし、地方の方にも各般の財政措置を国としてとっているので、したがって、節減効果としてはそれほど多くはない、こういう御質問と理解させていただきまして答弁させていただきますと、一つの問題は、今回の地方団体の関係でまいりますと、仮にこの措置をとらない場合、それで地方財源不足類がございました場合に、その場合でも過去におきましては国として各般の財政措置をとってきているわけでございます。六十年度は地方財政収支を見ましたら五千八百億ということでたまたま数字が一致いたしましたので、それについて財政措置をとってきたということでございます。  ただ、特に生活保護等の非公共の点につきましては、いろいろの経緯もございましたので、特例加算交付税にするとか、それから交付税措置等に当たってもいろいろ配慮するとか、それから公共事業等につきましても、例の六分の一のときと同様の二分の一の措置をとるとかということで財政対策をとっているわけでございます。したがいまして、おっしゃるような意味で、国としてかなり措置をとっているということも事実でございます。  それから、その他の行革関連特例法案の場合は、地方との関係がほとんどございません。これにつきましては、特会の中での将来との関係の年度間の財源調整ということもございますし、特会と一般会計との間の財源の調整を行ったというようなこともございますし、これはまた別の考えに基づいてそれぞれやっているということでございます。
  231. 矢追秀彦

    ○矢追委員 だから、私の数字が間違っていたらいけませんので、ちょっと今申し上げますけれども、一の四百二十八億はそういう考えに立った場合、まずよろしいかどうか。それからその次が、これは厚生年金の繰り入れの特例、これはやはり返さなければいかぬお金ですから省きます。それを引きますと二百四十八億になろうかと思います。ただ問題は、特定地域の問題の十億がありますので、その辺がどうなるのか。三番目は、その辺がさっきのちょっとずれが、出入りがありますからちょっとアバウトな数字になろうかと思いますが、三つで三千億。合計三千七百二十六億、こういうふうにしたんですが、その点はいかがですか。
  232. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 数字的には一と二は委員の今おっしゃったような数字になるかと思います。それから三番目につきましては、先ほど来いろいろ御議論もあるかと思いますが、国としての財源措置についての考え方、これについてはやはり数字を出す前に、御議論がかなり必要ではないかと思うわけでございます。
  233. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、さっき二百億と言われました生活保護臨時財政調整補助金、これはやはり削減額の大きい団体に重点的に配分するのが激変緩和の趣旨に合致すると私は思うわけでございますので、その点はこれからどう配分をされていくのか、その基本方針を伺っておきたいと思います。
  234. 正木馨

    ○正木政府委員 生活保護の臨時財政調整補助金でございますが、今回の補助率引き下げに伴う地方負担につきましては、先ほど来お話がございますように、基本的には地方財政計画を通じて補てんされるということでございますが、生活保護の場合には保護率、これは全国的には一・二%程度でございますが、非常に開きがある。それから実施は県と市がやっておるわけでございますが、財政基盤の脆弱なところもある、あるいはまた歳出規模に占める保護費の割合の高いところもあるということで、やはり保護の円滑適正な実施をするためには、そういった財政状況というものをよく勘案いたしまして効率的な配分をすることが必要ではないかというふうに思っておるわけでございます。     〔熊谷委員長代理退席、熊川委員長代理着席〕
  235. 矢追秀彦

    ○矢追委員 私は今金額を申し上げたのですが、今財政のことも言われておりますので、非常に総論的でちょっとよくわからぬのですが、実際いつごろまで、法案の通過との絡みもありますけれども、仮に法案が通過したらすぐやられるのですか、それとも大体決めて、後はその地方自治体と相談しながらやられるのですか、いかがですか。
  236. 正木馨

    ○正木政府委員 配分の時期でございますが、予算の成立、それから法案の成立というのを待ちまして、各県、市の状況というものを十分把握をいたしまして、私どもといたしましては、夏ごろに大体具体的な配分方針を定めて、十月ぐらいまでには第一回の配分が行われるようにしたいというふうな心づもりを持っております。
  237. 矢追秀彦

    ○矢追委員 次に、これも自治大臣に転嫁の問題で、また蒸し返して恐縮ですけれども、この地方債が四千八百億に一括法案のためになったわけですね。これがなければゼロになっていたわけです。これはやはり転嫁ととれるわけです。恐らく言い分は、地方が厳しいときは国は一生懸命応援した、それに対して、今度は国の方が厳しくなったから地方もちょっとは持ってください、こういうことになるのですが、せっかくゼロになって健全になりつつあるところを、仮に四千八百億は少ないという議論があるかもわかりませんが、それはパーセンテージで言えば確かに昨年度より減っていることは事実です。しかし、これもやはり転嫁というふうに考えたら転嫁になりはせぬかと思うのですね。転嫁という言葉は、やはり責任とか罪をほかになすりつけるというような意味でしょう、国語辞典見ますと。もたれ合いなら転嫁にならぬのか。しかし、やはり私は、国は応援するときは応援して、応援したから赤字になったのか。そんなものじゃない。やはり国がきちんとしないから赤字になったので、地方は今度は、国の恩恵もあったけれどもそれなりの努力をしてここまで来て、何とかこれからいわゆるゼロになるところを四千八百億持てと言われちゃった、こういうことになると思うのです。この点は、どうお考えになりますか。
  238. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 四千八百億の建設地方債の問題だと思っております。  大体、たびたび申し上げておりますように、一律カットがなければことしは地方財政収支がとんとんだというふうに私どもは当初は考えておりました。国の財政の厳しいことで、やむなく一年限りの措置としてこういうような交付税一千億、建設地方債四千八百億というような措置をいたしたわけでありまして、一応私どもは、さきに説明申し上げましたように、交付税あるいは地方債というものによりまして、その地方負担というものは現実には転嫁にならないように一応は措置しておるというふうに考えておるわけでございます。
  239. 矢追秀彦

    ○矢追委員 最後の方になりましたので、次に、国と地方とのあり方、これもいろいろ議論されてまいりましたけれども、臨調においては、自律性あるいは自主性、そういったことを非常に強調されておりますが、この法案が果たしてそういった自主性自律性を強化するものになるとは私は思いません。むしろ大変ではないか。むしろその自主性自律性というのは、やはり国と地方間における租税の配分を是正することからではないか、こう私は考えます。  また、手持ちの五十七年のデータによりますと、国、地方間における租税の配分は、地方税が三六・八%、国税は六三・二%でありますが、これを税の実質配分で見ますと、地方は七三・三、国は二六・七と、こういうふうなことになります。こんな実態では、やはり自主性自律性というのはほど遠いのではないか。  特に、私の住んでおります大阪市では、歳入中に占める税収の割合は、昭和三十五年が六一・五、四十年が四六・四、五十年が三七・一、五十七年が四三・四、こういうふうになっておりまして、こういった数字から見ましても、まだまだ地方財源というものを拡充して、そして自主性を保っていかなければならぬ、こう思うわけですが、こういった臨調の答申の線から、自治大臣、大蔵大臣、これはどうお考えになるか、これをお伺いしたいと思います。
  240. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 先生今の御質問は、大阪市のような大都市の税財源を充実強化すべきではないかという御意見だと考えております。  大都市の税源の充実のためには、行政事務の配分に即応して軽油引取税、石油ガス譲与税の一部を大都市に配分し、それから自動車取得税、地方道路譲与税を都道府県と同様な基準で大都市に配分しております。さらに、大都市行政需要の増大を念頭に置きまして、事業所税の創設、法人住民税の均等割、法人税割の税率の引き上げ、都市計画税の制限税率の引き上げ、地方道路譲与税の市町村に対する譲与割合の引き上げ等を行いまして、都市における行政需要の増大には対処しておるところでございます。
  241. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今、矢追さん大阪のお話をなさいましたが、私いつも感じますのは、これは数字は、税ではなく国税還付倍率というのでよく見ますと、東京が九でございますか、それから我が島根県が四四〇ぐらいでございまして、沖縄よりも高くて、日本一でございます。これは決して自慢にならぬ、本当にあわれなる告白でございます。したがって、二割自治とか三割自治とかというような状態にございます。  したがいまして、税源というのはやはり偏るものでございますので、税源配分そのものは、やはり単に地方税だけで考えては始末がつかないものだ。したがって、地方交付税と今お話のありましたいわゆる地方譲与税、そうしてもう一つは国庫支出金のあり方、それからその上に行政事務の配分というようなことを総合的に勘案してやりませんと、結局地方税だけで考えてみますと、地域間の経済力の格差等によってやはり税源の地域的な偏在が生ずるという問題も出てまいります。  したがって、そういうことから考えますと、やはり総合的に考えていかなければならない問題でございますが、なお慎重を要する問題だな、こういうことを私も常日ごろ感じております。そこのところ、いわゆる自主財源というもの、これはだれしもありがたいものでございますが、それを税源配分だけで解決つかない難しい問題があるというふうに私も理解をしておるところであります。
  242. 矢追秀彦

    ○矢追委員 最後に、資料をいただきましたが、これは五十八年度決算をもとの推計でございますので、これはこれで私、決してだめとは申し上げませんが、私が要求している六十年度予算が終わったところの都道府県——村までは難しくても市町ぐらいまでは、あるいは市ぐらいまではすぐでも出せると思うのです。この辺ひとつ、これだけでは不満でございますので、質問を終わりましたから今から寝るわけにもいきませんので、ひとつ理事会で検討していただきたいと思います。
  243. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 安倍基雄君。
  244. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 実は、矢追先生がこの新聞をごらんになって、いわゆる貿易摩擦の問題を大いに取り上げよう、こうおっしゃったのでございますけれども、私、次に聞く予定にしていると言ったら、それじゃまあひとつ譲ってやろうということでございまして、私はこれを中心にお聞きしたいと思っております。  この問題は、きのう我が党の米沢委員も提起して総理からいろいろ話を承ったところでございますけれども、何でいわば補助金の問題について貿易摩擦が関連あるのか、補助金一括法案とどういう関係があるのかという御疑問をお持ちかと思いますけれども、実は関税というものは一種の補助金なわけですね。結局対外競争力を持つために関税でもって守る、いわば一種の補助金を出しているのと同じことなのでございます。でございますので、私ども補助金一括削減法案ということを一生懸命論議しているときに、関税を簡単に譲許して、それでもって将来の補助金の大穴をあけるというようなことは許さるべきではないのではないかということを痛感するわけでございます。その意味におきまして、日米貿易摩擦問題は、すなわち補助金法案と一括して考えなきゃいかぬというぐあいに考えざるを得ないのでございます。  矢追委員が追及すべきところを私が二人分、あるいは昨日の米沢先生の話も含めまして、と申しますのは、非常にこれから数日間のうちにどうするかという決断を迫られている時期でございます。最初に、一体どの辺まで要するにこの話が来ているのか。具体的にまだ交渉中ということでございましょうけれども、数日中に結論を出すということまでうわさされております。特に私ども、いろんな問題がございますけれども、木材などにつきましては本当に大丈夫なのかという懸念もございます。一番最近の時点における話せるだけの内容、どういう気持ちでおられるかということをまず大蔵大臣にお聞きしたいと思います。
  245. 竹下登

    ○竹下国務大臣 きょうの夕刊で、先ほど矢追さんから御質問がありましたとおり、これはまさに容易ならざる事態であるなどいう問題意識を私自身も持っております。そうしてまた、大体自由貿易主義の旗頭がそういう決議などは好ましいことであるだろうか、そういう懸念もまた私自身持っております。  したがって、今のところ私もお答えできない問題は、いわゆるMOSS方式の四分野でございますね、この問題がどこまでいっているかということになりますと、電気通信機器でありますとか、そういう問題、私自身が詳細な知識の持ち合わせがないものですから、これについて具体的に御説明するだけのいわば完全な能力が私自身にないとでも申しましょうか、そういうことを素直に申し上げるべきであるというふうに思っております。  ただ、今おっしゃいましたように、私も極めて同感であると思いますのは、関税を下げるというのは結果的に、最近アメリカでよく使われる租税歳出という言葉でございますか、いわゆる国内の税制における特別措置のその一つでございましょう。関税もまさに、それを下げることによっていわば入るべき歳入が入らないというのはそれは補助金を出したと同じことであるという租税歳出という議論がよくなされておりますので、私もその感はまことに、いわば出すべき補助金のかわりを関税がしておるというような問題で、先般審議いただきましたのにも、たしかアルミ業界の問題なんかはそういう措置もとられておったように今思い出すわけでございます。  そういう意味におきましては、今度は関税という問題が正面に出ておりますのは確かに木材問題であろうというふうに思っておりますが、これは我が国の現在の状況から見ますならば、まさに慎重の上にも慎重に対応すべき課題ではなかろうかという問題意識は持っておりますが、個別の四項目についてお話しするだけの知識がちょっと私に不足しております。
  246. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 報ぜられるところによりますと、この九日ぐらいまでに結論を出す、そのときにいわば木材等についても関税を譲許するかどうか決めるというような段階に来ているわけでございますが、そういうときにあれでございましょうか、大蔵大臣御自身が余り知らぬというような状況でございましょうか。
  247. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私は、木材問題になりますと本当は農林水産省からお答えいただくのが実際は適当だと思っておりますが、現在の国内情勢からいたしまして、いわゆるフォレストプロダクツの関税問題というものについては、今日それをイエスと言う状態にあるというふうには考えておりません。
  248. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いわば個々の品目について果たして譲許して競争力あるのかどうかということを論議する前に、外務省にお聞きしたいのでございますけれども、我々はこれまでの論議において、貿易黒字のいわば主因は米国の政策である。この問題はきのうも米沢委員が総理に御質問したことでもございますし、私もその前に大蔵委員会で竹下大臣にお聞きしたことでございますけれども、大体為替相場だけでも東京ラウンド発足から比べて一五%アップしている。これは結局、日本の製品について一五%値引きが行われている、アメリカからの物については一五%の関税が課せられているというような状況なわけでございまして、このいわばドル高が継続しているのが、いわゆる彼らがしきりに我々に迫ってきた市場の自由化、資本のいわば国際移動の自由というところからアメリカの高金利に吸われて資金が向こうへ移動していって、結局通常であればこれだけの貿易黒字、赤字が出れば為替レートがちゃんと作動して調整すべきところが調整できてないということ、これはまことに正論だと思うのですが、その説得が十分行われてないのじゃないか。何でこの正論が通らないんだ、アメリカの上院、下院で一致して、自分の非を棚に上げて我々を責めてくる、まことに心外でございます。  それで、アメリカのいわば有識者、エコノミスト、こぞってアメリカ自体に非があるんだということまで言っておる。しかも貿易の担当者は、この貿易黒字、赤字、全くアメリカあたりでも問題はないのだ、ただ政治だけが騒いでいるのだというぐあいに言われておるわけでございます。この点につきまして、一体外務省、在外公館は従来どういう措置をとってきたのか。この今回の米国の申し入れの真の原因は何だ。聞くところによりますと、アメリカの共和党の選挙が来年あって、それを考えての政治的な動きであるということも言われておりますけれども、その真の原因は何か、それに対して外務省は何をやってきたかということを御説明願いたいと思います。
  249. 恩田宗

    ○恩田政府委員 お答え申し上げます。  米国政府が、また米国の議会がなぜ、何を日本にまず要求して期待しているかという問題でございますが、これは、昨年の十一月に国務省が上院外交委員会パーシー委員長に提出し、パーシー委員長がそれを公表したものがございまして、それに端的に米国の考え方が示されていると思いますので、ちょっとそれをリファーさせていただきたいのですが、結局米国側の言っておりますのは、米国の企業が日本において、日本の企業が米国において享受していると同じ程度のアクセスをやってもらいたい。もちろん米国政府も、大きな貿易赤字というのはすべてが市場の閉鎖性の問題ではない、大きく七、八割はドルの問題であるとかその他マクロ経済の問題が影響しているということは知っているけれども、しかし現実の問題として米国の企業が日本において十分なアクセスを得てない、これが問題だというのが指摘でございまして、これは一貫して米国政府も、それから米国の議会も言っているところでございます。  これに対しまして、大河原大使を中心とした我が日本大使館は、この問題が出てから後、非常な密度で米国議会当局者及び現地のオピニオンリーダー、世論指導者に対して大変な働きをやっておりまして、これは私、調べておりますのであるいは数字的に御説明してもよろしゅうございますが、これは現地のこの問題を観測しているアメリカの当局も大変な努力で日本側はやっているということは認めているというふうに思います。
  250. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それでは、むしろ日本市場に対するアクセスの問題が中心であって、関税問題は中心ではないということなんですね。
  251. 恩田宗

    ○恩田政府委員 米国側が日本の市場に対するアクセスというものについては非常に広い問題がございます。昨年から関税の問題あるいは基準・認証の問題、いろいろな問題を言ってきておりまして、ことしの一月になってはこの四つの分野におけるさまざまな問題ということを言っております。関税につきましては、日本は平均いたしますと米国と比較しても劣らない低さでございますが、米国が関心を持っている一部の品目については非常に高い、こういうような問題についてはぜひ下げてほしいという非常に強い希望がある、かように承知しております。
  252. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 さっきはアクセスとおっしゃり、今度は関税も入るとおっしゃる。けれども、さっきの円高について十分説明しておれば、関税問題というのは相当、関係ないと言ってもしかるべきところではないですか。しかも、日本の関税は木材について例えば一五%。いろいろ種類はございますけれども、ECが大体一一%を一〇%に下げるぐらいのものでございますけれども、それほどべらぼうに高いわけはない。あなたはおっしゃるけれども、もし円ドルについての説明が十分であれば、これはさっきアクセスとおっしゃったけれども、関税問題は本当に本質的な問題になっているのでございますか。もう一遍答えてください。
  253. 恩田宗

    ○恩田政府委員 ドルレートという問題は日々変わる問題でございますから、具体的にある時点においてレートと関税が米国製品の日本輸出にどのように影響があるかということについては個々の問題について違うと思いますが、しかしながら、もしレートを一定とした場合は、やはり米国側が非常に競争力があって日本の市場は拡大していて、それに対して、非常に関心がある、輸出したい、かように考えている物についてもし日本側の関税が国際的に見て高い方にある、こういうふうな問題になった場合には、それをぜひ下げてほしいという希望が出てくるわけでございまして、それはまだその商品の日本に対する輸出についてもしかるべき影響があろうか、かように考えております。
  254. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 ではこの問題はさておきまして、これは私自身としてはいささか、これだけの大きな問題になったことについて現地はもう少ししっかりしておくべきじゃないかという気がしてならないわけでございますけれども、次に、私は何も木材だけをバックアップしているわけじゃないけれども、しかも民社党というのは必ずしも山林業者から支持を受けているわけじゃないんでございますけれども、そういった問題は別として、私は、この業界の問題、これから非常に大変じゃないかという気がしております。  金丸幹事長は、例えば三千億円のいわば補助金を出すとか、きのう例えば総理は補助金とは言わないで体質改善費だというようなことを言っておりましたけれども、こういった具体的な話は出ているのか。本当に関税を下げたときにこれだけの支出を要するのか。また、これから競争力を持たせるためにどのくらい金をかけなくちゃいけないのか。  それに加えまして、実は、現在円相場が相当円安になっておる。これは恐らく必ず逆転する時期が来る。この前、関税の論議のときにもお話ししましたけれども、円高のときに各業界が本当に一円二円を争って、これで輸出できるか、これで持ちこたえられるか、あのときに永大産業が倒れましたけれども、そういう状況が必ず来る。そういうときに、今体質改善費を何億出すとか言っておりますけれども、将来円ドル関係が逆転したときにどのくらいの経費が必要なのか、それについての見込み額を教えていただきたいと思います。
  255. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 現在の森林・林業が大変厳しい状態に置かれておりますので、関税問題の対応に先立ちまして合板の関税などが問題になっておるわけですけれども、単に合板業界の体質改善のみならず、中長期の視点に立ちまして木材産業及び林業を通じた対策を進める必要があると考えておりまして、関税問題はやはり林業、林産業が抵抗力がつくと申しますか、活力を取り戻した後に対処すべき問題だと考えております。  お話ございました三千億云々等々の関連につきましては、私ども具体的な内容は現在持ってない状態でございます。
  256. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いろいろの業種によりまして生産性を向上できるもの、できないものとあるわけでございますけれども、いわゆる山林など林業というのは、現実問題としてそう簡単に生産性が向上できるものじゃないんですよ。ですから、将来どのくらいかかるかわからぬ。我々が補助金削減法案だけ一生懸命やって、さっき矢追委員からいろいろ追及ございましたけれども、現実問題として、交付税を国が見るあるいは起債の結果を国が見るということで差し引きすれば恐らくネット三千億くらいしか節約にならぬだろうというような感じで質問されたわけでございますけれども、今の円ドルの逆転を考えたときに、その三千億円など簡単にすっ飛んでしまう。林業を救うために恐らく数千億の金がかかるだろう。もしそういうことであれば、一方においてこれだけぎしぎしと補助金削減しておきながら、一方において大口の穴をあける、市場開放策によって将来非常な補助金を必要とするというようなことを決してすべきでない、それぐらいだったらこの法案を廃案にした方がいいと私は考えます。こういったいわば関税の市場開放策に関連しまして、一体補助金を出されるつもりかどうか、そのことをはっきりお答え願いたいと思います。     〔熊川委員長代理退席、熊谷委員長代理着席〕
  257. 竹下登

    ○竹下国務大臣 最終的には、これは農林水産省から具体的なお話を聞いて措置することであろうと思っております。三千億ということを私も聞いてみようと思っておりますが、この間来議論しておられた中に、繊維のときに二千億かかった、あれは私が官房長官のときでございますから昭和四十六年でございます。そうして、四十七年度予算からいろいろ措置してきた。あれは六百億ぐらいが一般財源で、あとが融資ということであったと思います。  その当時からと経済力がうんと違うじゃないかという荒っぽい議論もございますが、現実、いわゆる業界対策そのものを考えましたときには、あの場合は、日本で力のついた繊維がいっぱいできまして、その過剰繊維をみんなアメリカへ集中豪雨的輸出をして、それでアメリカの繊維会社の人が失業が多くなって、そして、家内の着物、奥さんの着ているものは自分の国でつくったものじゃなく日本から来たものであって、そして柄もよくて質もよかったというようなあの当時議論がございましたが、今度の場合はそうでなくて、日本の木材業界自身が構造不況に陥っている。力があって何ぼでも出ていくというのとは全く逆な状態でございます。したがって、本来この構造対策というのは、一般財源を出す出さぬの問題は別として議論のあるところであろう。  五十四年にも構造対策をやったことがございます、これは合板に限ってでございましたが。したがって、合板の会社が今百四十、それから当時の繊維が十四万でございますから数は千分の一でございます。それから人員が二万人、七十五分の一ぐらいでございましょう。それから売上高が二十五分の千ということでございますので、業界問題としてとらまえることではなく、今林野庁長官からお答えがございましたように、恐らく我が国林業の基本的な中長期のあり方、私はよくこれを川上対策と川下対策といった言葉で使っておりますが、そういう点でいろいろ議論をしていらして、そういう点がしっかりして初めていわゆる川下の構造改善とかいう問題もできてくるというようなお考えを我々も時に聞かされておる。まだ具体的にそれを協議しておるという段階ではもとよりございません。
  258. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 現在の円安・ドル高の状況においても、いわば合板業界あるいは林業は苦しいわけでございます。でございますから、ちょうどかつての円高のときに、要するにみんなが苦しんだと同じくらいの状況になったときに恐らく倒産が続出するんじゃないかと私は思います。今はドルが高いですから少しぐらい下げたって余り影響がない。逆転したときに続々と、恐らく竹下大臣が、あるいは安倍大臣が総理になるころにそのツケが全部回ってくるのじゃないかと思います。でございますから、アメリカのいわば朝野挙げてじゃなくてむしろ政治家連中が将来の選挙目当てに騒いで、それに。乗っているときに、向こうの機嫌をとってもしここでもって関税などで譲許したら、恐らくこの数年後には非常な問題が起こってくるのじゃないか。この数日中に恐らくこの問題は決着がつくのじゃないかと思いますけれども、私は何も、さっき申しましたように木材業界や林業業界から支持を受けているわけでも何でもないですけれども、大体これは労働者の方は社会党、経営者の方は自民党でございますけれども、それとは無関係に、本当に、この前もお話しいたしましたように、私もかつて地方の長をしておったころに次々と倒産を目にしたわけでございますので、円高のときにその轍を踏みたくない。しかも、現在のように補助金の一括削減法案をやっているそのときに、将来において大きな風穴をあけるようなそういう措置をとってもらいたくない。これは、向こうの議会がうるさければ、これを譲許すればこちらも補助金法案が通らないのだというくらいの強い態度で対処していただきたい。  さっき、単にアクセスがどうのこうのという程度のことならいいけれども、本当に実質に関係のあること、しかもこの異常な円ドル相場のもとにおいて、私はもう一度中曽根さんにじかにお話ししたいと思ってその機会をとらえておりますけれども、その間に決まってしまうかもしれない。大蔵大臣、そして農林大臣、今来ておられませんけれども、林野庁は長官がかわりに来ておられますけれども、この数日間における論議のときにもっと正論を吐いていただきたい。その点をはっきりお約束していただきたい。そのために私は特にこの問題を取り上げたわけでございます。下手をすると補助金法案は通らぬよとレーガンに言っていただきたいと思うのです。いかがでございますか。
  259. 竹下登

    ○竹下国務大臣 あした予算委員会が終わりましてから経済対策閣僚会議をやりまして——今、日程を見ますと、お昼にODAの関係で安倍外務大臣と私とである種の決着をつけなければいかぬのかな、それで、夕方それをやってという、確かにぎりぎり詰まった日程になっておりますが、おっしゃるとおり、安倍さんの議論というのは、いわゆる関税問題と為替レートの問題については正しい議論だと思います。  とにかく本当に、この前御審議いただいた際にも一%関税下げますとか、ところがここのところ数日で四%くらい為替レートが違ってきたりするわけですから、今や関税というのはある意味においてはアクセサリーじゃないか、こういうような議論をする人もおるくらいですが、アクセサリーであると同時にまたシンボリックな問題でございますので、今度の問題については関税という言葉が使われておるのは、エレクトロニクスの方にあるかないか知りませんが、恐らくフォレストプロダクツだけの問題だと僕も思います。これは容易にそれに対応できるものではない。  私どもとしては、やはりドルの独歩高というものに対しては絶えずその原因について——今おっしゃいましたとおり、フェルドスタインさんの経済諮問委員会もそこに原因があると、経済諮問委員会でございますから、アメリカのいわゆる経済企画庁みたいなところがそういうことを明快に言っておるわけですから、それらを我々も主張していかなければなりませんし、為替レートの問題というのは、過去の経験からして、短期的には金利差が一番影響をいたします。しかし、中長期的には彼我のファンダメンタルの差というものが実際は影響しますから、私も安倍さんと同じように円高になるとか言いますと、私は今通貨当局責任者ですから世界じゅうに相場を刺激するようなことがあってはいけませんが、もっと円高になることを期待すべきものであるという考え方でございますので、今はやはり私は、ドルの独歩高に対してこれは指摘すべきものである、日本が指摘するまでもなく経済諮問委員会自身がアメリカで指摘しておるわけでございますから、これに対しては引き続きその線で主張すべきものは主張しなければならぬと思っております。ただ、レーガンさんに言うだけの機会は私にはございません。
  260. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 確かにドルの変動に比べると関税の率が大きくないのでございますけれども、しかし、これが逆になったときにその一%が非常に響いてくる。もし円高になったときに、どのくらいの関税になっているかというのが非常に響いてくる時期が必ず来るわけです。しかも今アメリカの要求は、いろいろございますけれども、一五%を八%にしてくれとかいうような要求もしておりますし、また、アメリカとの間を下げれば東南アジアからの分も下げなければいかぬということになるわけでございます。これはドル高のうちは現在下げても余り痛痒を感じない。逆転したときに、まさに一%、二%が大問題になる時期が必ず来るわけです。これをもう少し中曽根さんに理解してもらって、中曽根さん、何か国民に向かって訴えるんだなんて格好よく言っているけれども、その前にこういうことをもっとよく勉強してもらいたい、私はそう思うのです。もしここで下手をしたときに、将来だれが責任をとるのかということと同時に、こういう大きな風穴をあけようとしておきながら、補助金削減法案審議してくれとは何事かと孜々は言いたい。もしレーガンさんがアメリカの上院下院がうるさいというのであれば、日本だってうるさいんだということを本当に言っていただきたいのでございます。  余り時間もございませんから、これは大蔵大臣ばかりを責めてもいけないんで、農林大臣はまあこちらにおられませんけれども、ひとつこの辺を頑張っていただきたい。これは何も私は自分の利益で言っているわけではないんで、私は総理大臣はちょっとおかしいと思うのです。こちらには自治大臣も、実力者である後藤田長官も来られましたから、横から中曽根さんの目を少し開いていただきたいと思うのでございます。もし総理大臣質問がまたあったら、私もう一遍詰めようと思っていますけれども、どうぞ最後に御決意をもう一遍お聞きしてから、この関係を終わりたいと思います。
  261. 竹下登

    ○竹下国務大臣 おっしゃる趣旨は私ども十分理解いたします。  ただ、一つつけ加えますならば、中曽根総理は、朝の寄りつきとお昼値と終わり値と、毎日私の方からも送っておりますが、非常に関心を持って見ておられまして、それで金利変動と為替レートの変動のあり方というのは、かつてシュルツさんにみずからグラフを提示して説明をしておられますので、この為替レート問題については私ども以上にその知識も造詣もあるというふうに私は思っております。
  262. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 まあ、この問題はあと数日間に決着がつく問題であれば、それだけにひとつ十分に考えていただきたい。  ほかの省庁に、例えば医薬品とか医療機械とか、そういったことをお聞きしようと思ったのでございますけれども、時間の関係もございますので、この貿易摩擦問題につきましてはこの辺で話を終わりたいと思います。  今度は話が全く変わりますけれども、ある雑誌に、何か東京都の二十三区では緑のおばさんが年収四百六十六万円ある、こういうぐあいに書いてありました。これは一日三時間くらい働いて、それで年間四百六十六万円。こんな記述が本当であるのかどうか。もし本当であるならば、年間どのくらい支出しているのか。ちょっと自治省の方にお聞きしたいと思うのです。
  263. 土田栄作

    ○土田政府委員 御指摘の数字は、地方自治経営学会が十七区と市について調べまして推計した数字であるというふうに承知いたしております。  それで私ども、きのうのお申し出でありましたので、きのうの晩一生懸命区政課の方にお願いしてやっていただきましたところの数字によりますと、推計額として、五十九年の四月一日の給与実態調査のペースで四百三十七万円という数字が出ております。それからこれに従事いたします職員の数でございますが、千九百五十人ということでございまして、これを掛けますと、二十三区全体では八十五億の負担ということに相なると一応推定できるわけでございます。
  264. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは一つの例としてちょっと挙げたわけでございますけれども、いずれにしろいろいろな新聞、雑誌に、民間企業というか、それと比べて地方公共団体の給与が高いということが書かれておりますし、給与のみならず退職金なども、ちょっと調べてみましたら、国の勧奨退職で相当年輩の人が二千万くらい、指定都市は二千七百万くらい、一方町村は千八百万くらい。非常に貧しいところは貧しいけれども、いわゆる大都市はやりたいほうだいをやっているという感じがするわけでございます。  私、実は先回の予算反対演説のときに、東京都の人口は一〇%未満だけれども地方税の収入は一七%であるということを指摘いたしました。この点につきまして、東京都の人口比に対して地方税収入の全国比が幾らか。つまり今の一七%の内訳をお聞きしたい。そして、それを十年前と比較したらどうなるかということをお聞きしたいと思います。
  265. 土田栄作

    ○土田政府委員 昭和五十八年度におきます道府県税と市町村税を合わせました地方税の決算総額といいますのは十九兆八千四百十三億でございまして、それに対しまして、東京都と、それから都内の特別区と市町村の地方税収入額の合計額は三兆三千九百八十三億でございます。そういう意味で、これらの額が全部の地方税収入に占めます割合というのは一七・一%ということになっております。  それから、十年前と申しますと四十八年度の決算との比較でございますけれども、四十八年度の決算におきましては、これらのシェアというのは一九・二%でございまして、一七・一%ということで若干下がってきておりますが、これは、四十年代後半は高度成長期で、法人関係税収がこれらのところに集中したというような事情があったというふうに承知いたしております。
  266. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今ここで一々数字をあれしていくとなんですけれども、私どもの調べによりますと一七・一%ですけれども、例えば法人住民税を例にとりますと東京都が二五%くらいを占めているわけです。わずか一〇%未満の人口のところに法人住民税は二五%入っておる。これは簡単に申しまするならば、本社を東京に持ってくる、そうすると自動的にそこに収入が回るということでございます。でございますから、さっきの緑のおばさんのもう一つの例でございますけれども、至るところにむだができざるを得ないということでございますけれども、この点について自治大臣、大蔵大臣、どうお考えか。でき得れば、正式な質問は出しておりませんでしたけれども、行革の責任者としての後藤田長官の御意見もお聞きしたいと思います。
  267. 土田栄作

    ○土田政府委員 御指摘のように、法人関係税というのはやはり法人が集中するところにつきまして税収が集まってまいるという傾向は避けがたいわけでございますけれども、そういうことでなるべく都市に法人関係税収が集まらないというようなことを考慮いたしますために、例えば事業税の分割基準というようなもので、地方に対しまして有利に配分できるような分割基準というようなものも税制上工夫しているわけでございます。それから、御案内のとおり地方税だけでは特定の団体に税源が偏りますので、地方交付税を通じまして地方に対する財源措置をいたしております。  それからもう一つの問題として、ただいま緑のおばさんの御指摘があったわけでございますが、これにつきましてもいろいろ世論が厳しいということから、区長会におきまして再検討するということで、パート化なり民間委託ということでの努力というものをやっているというふうに聞いております。  以上のとおりでございます。
  268. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は事務当局の意見をあれしているのじゃないんで、今大蔵大臣、自治大臣なりのかわりに答えられたのだったらそれでいいですけれども、大臣の意見を聞いているのであって、いわゆる緑のおばさんをやめたやめないというような細かい話を聞いているのじゃないのですから、ちょっとその点、大蔵大臣の御意見あるいは自治大臣、長官の御意見を承りたいと思います。
  269. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほど申し上げましたように、その地方で収納される国税の何%がその県に還元されておるかといういわゆる国税還付倍率、ただし、昭和五十四年の資料かもしれません、僕が覚えていますのは。島根県四四〇、東京都九ということを私も覚えております。その理由は、もとより私の島根県だって月給取りがおらぬわけではございませんが、いわば法人本社がない、こういうことが非常に表れだなといつも感ずることでございます。  したがって、税源というものはどうしても偏りがちな性格を持っております。そこにいわゆる交付税制度が機能していただいておるというふうにも考えるわけでございますが、いずれにいたしましても国と地方財政というのは、いわゆる税源配分、交付税交付金、補助金等それぞれ密接な関係を持って存在しておるわけでございますから、いわば国も地方もやらなければならぬことは、今おっしゃいましたいわゆる行財政改革ということについては、歩調を合わしてやっていただくことが極めて望ましいことであるというふうに考えております。
  270. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 事務的な数字は先ほど審議官から申し上げましたが、現行の地方税を全体として見ました場合には、やはり国税ほどでなくても、地域的な、経済的な格差があります以上ある程度の税源の偏在は避けられないというふうに考えております。できるだけ普遍性の高い税目の採用によりまして地方税を充実すると同時に、今大蔵大臣が言いました交付税の問題につきましての財源措置の活用を図っていきたいと考えております。
  271. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 どうも私の所管ではないのですけれども、御指名ですから……。  これは税源が偏在をしているわけですから、それに伴っていろいろな調整措置は今講じてやっている。ただ、やはり比較的豊かな団体にとかく国民から批判を招くような財政運営が行われておる傾向が否定できない、こう思います。やはりこれらについては、自治権との関係がありましょうけれども、自治権というのは地方市長さんの自治権でもなければ、職員団体の自治権でもございません。また、地方議会の自治権でもない。これはやはり住民のための自治でございますから、そういう観点でひとつ批判を受けることのないように厳しい財政上の運営をやっていただきたい、かように思うわけでございます。
  272. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは私の一つのアイデアなんですけれども、こういうぐあいに非常に偏在する例えば法人住民税のようなもの、こういったのはむしろプールして、一種の交付税財源にしてしまったらどうか。これは大都市の方からは反発を食うかもしれませんけれども、しかし、一般的にこれだけアンバランスがある状況のときに、むしろ交付税財源にしてしまった方がまだましじゃないか。その方が公平なんじゃないか。もともとが、いわば中央というか東京に法人を置いておくために結局そこで払う、そうすると自動的に一緒に払うというような話は非常におかしな話じゃないか。これは私の全くの私案でございますけれども、大蔵大臣、どうお考えですか。
  273. 竹下登

    ○竹下国務大臣 それはその発想でいきますと、いわゆる法人税率をアップして、そのまた増収分の三二%が交付税に入ってということになろうかと思うのですが、いわゆる法人事業税を廃止するということは、それはトラスチックといいますか革命的といいますか、税源配分をできるだけ考えるべきだという考え方は私も否定をいたしませんが、そこまでいきますとこれは大変なことになるのじゃないかなと思っております。我がザ・シマネ・プリフェクチャーはいいかもしれませんけれども、その点は私の答える範囲をはるかに超えた話じゃないかと思います。
  274. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これはひとつトラスチックな案をぶつけてみて地方税体系を考え直すというか、非常に偏在する地方税、私も参考人の質問のときに小倉会長にも提示してみたのでございますけれども、結局、非常に財源が偏在する税そのものを地方税にしておくのはおかしいんじゃないか、それはもうちょっと、税源をもう一遍検討し直すべきじゃないかという意味でございます。  このように非常に地方自治との関係がどうかという問題はございますけれども、もともとこの税をいわば地方税にするしないということについて国が勝手に決めている要素があるわけです。でございますから、一番の理想は、各地区地区で自分である程度税を決める、そこで税の負担に応じた支出をする。ただしかし、さっき午前中の参考人意見もあったようでございますが、それを極端にしますと、非常に困っている要するに貧乏な県は、やろうと思ってもできない、大きなところは得するというような要素はございますけれども、もともとどれを税源にするかということをいろいろ考えていけば、それなりのいわば解決もあるだろう。  でございますから、地方税体系全体を見直して——私は戦前の実は税全体系もちょっと見たのでございますけれども、いろいろな国税に付随する税金がぞろぞろございました。市町村の方だったら、ちょっとここにございますけれども、犬小屋の税金とか細かいいろいろな戦前の税金と比べて、非常に興味があるわけでございます。そういったことでございまして、今地方税体系そのものをもう一遍見直す時期じゃないかと考えております。この点について自治大臣の御意見を承りたいと思います。
  275. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 これは安倍先生が分科会でも御質問になったところでありまして、確かにお話しのような税源の偏在ということはあるわけであります。将来の税制改革のときにもちろん検討しなければなりませんが、私はこういう問題はひとつ地方制度調査会等の意見を聞きまして、こういうようなアンバランスをどういうふうにすべきかということについて慎重に検討をいたしたいと考えております。
  276. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これはまたちょっとドラスチックな話ばかりして申しわけないのですけれども、いわば自治体の場合に、ある程度大きさの問題もある。かつて終戦直前は道州制という問題がございました。あれは別に経済面じゃなくて、日本がばらばらになったときに、それぞれ生きていけるかどうかという格好で道州制を考えたわけでございますけれども、こういった財源の再配分あるいは事務の再配分というときに、地方自治体の適正規模という問題も起こるのかと思います。こういったことの、いわば自治体のそういう規模の問題について、統、廃合といった言い方はトラスチックでございますけれども、統廃合までに至らないにしても、もう少し広域的にやるとか、その辺についての考え方を自治大臣と総務庁長官にお聞きしたいと思います。
  277. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 地方行政区画、自治体の廃統合というような問題になると思いますけれども、私は広域行政は市町村の合併というような問題になると思いますが、基本的には関係市町村の自主的な判断を尊重すべきものと考えております。おととし地方制度調査会の小委員会でも報告がありまして、現在の規模につきましては市町村間における規模の格差が相当大きい、住民の日常生活圏と市町村の行政区域との乖離、それから行政事務の再配分の受け取り基盤としての市町村の基盤が整備されていないというような問題がありまして、住民意識の一体化の進展あるいは広域行政の定着等によりまして、条件の整いました地域におきましては市町村の自主的判断に基づいて市町村の合併をすることも望ましいと考えておるのでありまして、先般、この点につきましては日切れ法案として通していただいたところでございます。その際に、市町村の合併の円滑化を図りますために、そういう希望のあるところにつきましては特例を延長すると同時に起債その他の部面において、希望あるところは合併を速急にするような財政措置も講じているところでございます。
  278. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御承知のように、市町村合併は昭和二十八年ごろから三十年代の前半にかけて相当大規模に行われたわけでございますが、それ以後そういった大きな市町村合併はなくなっております。この点について、財政効率といいますか経済効率の面から、もう少し規模を大きくしたらどうだ、あるいはまた府県についても府県合併を考えたらどうかとか、あるいは道州制問題、それぞれ各方面に御意見があることは私も承知をし、また第二臨調あるいは行革審といったところからも、これは極めて慎重な表現になっておりますけれども、検討というような御提言もいただいております。  ただ私は、基本的にはこれはあくまでも慎重にやるべきである。地方自治というものはその地域住民が連帯感を持っているということが基本でございます。したがって、経済効率とか財政効率だけでそういうことをやることはよほど慎重な配慮を必要とする、もちろん否定をするわけではありませんけれども、ここらはいろいろな幅広い目配りをした上でなければそうそうやるべきものではない、かように考えております。     〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕
  279. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それはもちろん御説のとおりでございます。地方自治というものは、戦前の上からの押しつけじゃなくて、それぞれの地方から育ってきたものじゃなくてはいけない。でございますから、いかに外部からよく見えても本人たちがこれがいいという話じゃなかったら絶対に進めるべきじゃないということは、そのとおりでございます。しかし、今お話しいたしましたように税源を最終的にどうするのか。本当は私は相当の部分を地方のいわば裁量に任せるという種類の税源配分がいいんじゃないか。その地区地区でこれの税金は取る、あるいは取らないということを決めていく。しかし、そのかわりに取った範囲内でやる。  私はこの前もある会で話したのでございますけれども、アメリカのある都市で発電所を新しくするかしないか、そのときに住民が税金を払って新しくするのか、我慢してそのままにするのか大論争をして、最終的には税金を払わないで古いままで我慢するという結論を出した。それはそれなりに、本当の意味の地方自治というのはそういうところから出発するのじゃないか。日本の場合にはどちらかと申しますとそういう要素が余りない。でございますから、税源の再配分につきましても、ある程度渡して、その後で内部で例えば取るか取らないかということまでも相当裁量の余地の多い形にすべきではないかと私は考えております。  この問題と絡みましてこれからの一番大問題といたしましては、今度の一律カットで問題となっておりますのは、本来国がやるべきものであってそれをカットしている、その辺で結局地方への押しつけになるのじゃないかという問題がございますが、何が国がやるべき事務であり、何が地方がやるべき事務であるのか。例えば福祉の問題、教育の問題、この辺はどこまで地方がそれぞれでかぶるべきものなのか。本来福祉、教育は国が全部面倒を見るべきものなのか、いわばその辺の線引きがこれから非常に大事なのじゃないか。例えば健康保険なんかにつきましても地方によって負担率が違うとか、いろいろな問題が起こっておりますけれども、この辺について議論が分かれておるところで、今度の補助金カット法案につきまして非常に問題となってくると思います。  例えば福祉、教育それぞれにつきまして、どの辺が国がやるべきものであるかあるいは地方がやるべきものであるかということについての基本的な考え方があれば、厚生省、文部省、自治省それぞれの考え方を聞かしていただきたいと思います。
  280. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 福祉関係について申しますと、一般的に申しまして全国的に統一性あるいは公平性といったものが要求される事務、これは国でやる。それから比較的住民の日常生活に密接に関係する仕事につきましては、住民に身近な地方公共団体でやっていただく。こういうのが適当ではないかと考えておるところでございます。
  281. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今の、何かえらい抽象的な答えで、具体的な話じゃないんでしょうか。住民に直結した、しないという程度の話じゃ、えらいあいまいな話でございますけれども……。
  282. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 一般的なお話を申し上げたのでございますが、例えば生活保護、これは全国的に非常に統一的、公平性というのを要求される仕事でございますので、これにつきましてはいろいろ議論があるところでございますが、こういったものについては国が当然責任を持つべき性格が強いということでございます。
  283. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それじゃ、生活保護は国が本来やるべきものだということであると、今度の一律カットというのはちょっと問題とお考えになるわけですな。
  284. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 国がやるべきか地方がやるべきかという問題についてお答え申し上げたわけでございますが、この問題と今回の財政問題とはまた別の議論と考えております。今回の補助率の問題につきましては、これはいわば給付水準を変えないという建前に立ちながら進めておりますので、議論は別だと考えております。
  285. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今の議論、恐らくこれから基本的に考えようということだと思いますけれども、非常に難しい答えぶりというか、認めていいか、認めて悪いのかという迷った形のお答えだと思います。いずれにいたしましてもこの福祉の問題、最終的に国が本当にやるべきものなのか、地方にやらすべきものなのかということをもう少し考えていかなければいかぬと私は考えております。  次に、文部省ひとつ。
  286. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 学校教育関係につきましては、先生御高承のことと存じますけれども、学校教育法に設置者管理主義、設置者負担主義という原則が載ってございまして、国立、公立、私立ございますが、それぞれの設置者がその学校を管理し経費負担をするということが原則になっているわけでございます。これに対しまして、これらのうちで義務教育につきましては事柄の性格上、国と地方公共団体がいわば車の両輪のごとく責任を分担し合って対応していくことが必要であるということから、これまで義務教育の教職員の給与費等、それから学校施設の建設費等についての国庫負担制度が設けられてきたわけでございます。これらにつきましてはおおむね半々、二分の一国が負担するというのがこれまでの状況でございます。もちろん経費の種類によりまして、あるいは児童生徒急増時期というようなときには学校施設の建設費について補助率のかさ上げをするというような措置も講じて、若干のバリエーションは行っておるわけでございますけれども、基本的にはそういうような方向で今後とも対処していくべきではないか、かように思っておるところでございます。
  287. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう時間も少ないですし、遅い時間ですけれども、非常に大事な問題でありますから。  基本的に今回の一律カット法案がもめた原因は、本来国がやるべきものを地方に押しつけるんじゃないかという議論があるわけでございます。でございますから、いわば税源の問題とともに、国が何をすべきなんだ、地方が何をすべきなんだということをもう一遍洗い直すことが本当に必要じゃないか。そしてその中で、できるだけ地方自主性、国がやるべきものを決めましてそれ以外は地方がやる、地方はそれを好きなようにやれるという形にすべきじゃないかと思うのでございますけれども、この点、自治大臣、総務庁長官のお答えをお聞きして、締めといたしたいと思います。
  288. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 国と地方事務配分につきましては、国、地方を通ずる行政簡素効率化地方分権の推進という観点から、住民に身近な事務は住民に近い地方公共団体において処理できるよう事務事業見直しを行わなければならないと考えておりまして、その意味において、国と地方との役割分担に応じまして適切な財源の配分をしなければならぬ、理論的にはそういうことを考えております。
  289. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 補助金等削減あり方は、今自治大臣がお答えしたとおりであろう、私はそう思うのですが、ここで一番議論になっておるのは生活保護費の問題ですね。この仕事は基本的に国の責任だと一応いわれておる。そういうことで、これは終戦直後大論争があって、そして八割、二割と決まって今日に至っておる。これを変えるということでございますから、やはりそれなりの理由がなければならぬ。  高率補助の削減は、あの例の地域特例、このときの論理と負担金の率の引き下げとは同じ論理では成り立たないのではなかろうか、私はこう思います。補助金であれば役に立たなくなったとかもう御用済みとかいろいろありますね。しかし、負担金の場合はよほどそれと違った角度で慎重に扱わなければなりませんが、今度御提案申し上げておるのは、私は別段、一番最初できたのは昭和二十二年ですか、だからといって今日そうでなければならぬという理屈もない。やはり国の財政の事情、地方財政の実態、これらを見まして、この際は従来の八割負担を七割にして地方に一割余計持ってもらいたいというのも、今日の国と地方の全体の統治機構ということを考えた場合には、あってもそう理屈に反するものでもなかろう、ただ、いわゆる地域特例の高率補助と同じ原理、原則でやることについては慎重な配慮を必要とする、かように考えているわけでございます。
  290. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では最後に、冒頭の貿易摩擦について頑張っていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  291. 越智伊平

    越智委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時六分散会