○
館参考人 ただいま御紹介いただきました館でございます。本日のこの問題につきまして
意見を述べる
機会を与えられたことを大変光栄に存じております。
今さら申し上げるまでもないことでございますが、
経済が比較的順調な発展を示しているにもかかわらず、日本の
財政は依然として毎年多額の公債発行、特に赤字公債といいますか、特例公債の発行に依存せざるを得ないという状況にございます。何をもって
財政再建と見るかということは大変難しい問題でありますが、常識的に考えました場合に、今日のように
経済が順調に発展しつつある際には、経常的な
歳出は経常的な歳入によって賄われ、しかも、そのような状況が安定的に維持されるという状況をつくり出すのが正常な姿ではないかと考えるわけでございます。
このような
観点から見ましたときに、
経済が順調に発展しつつあるにもかかわらず、多額の赤字公債を発行せざるを得ないという現状は大変不健全であり、構造的な赤字がそこに存在するというように言わざるを得ないと考える次第でございます。したがいまして、
経済が十分な活力を備えている現在のような状況において、今の赤字公債に依存せざるを得ないという状況から脱却するためにできるだけ
努力するということは、後の世代に
負担を残さないために我々がなすべき義務であると考える次第でございます。
予算委員会の公述の際にも述べましたように、六十
年度の
予算におきまして特例公債の一兆円の減額ができなかったという点は、遺憾といいますか、残念に感ずる点でございますが、
補助金等の
整理合理化を初めとする
歳出の
削減合理化によって、一応三年連続一般
歳出マイナスという状況になり、曲がりなりにも一兆円の公債の減額を行ったという点については、一応評価してよろしいのではないかと考えております。
ところで、
補助金等につきましては、
補助金等は一般
歳出の約四割を占めておりまして、
歳出の
削減合理化を行うに当たっては、
補助金等の徹底した
削減合理化を行うことなしには、
財政の
削減合理化は行い得ないというのが実情でございます。一方、この
補助金等の大宗は
地方公共団体向けのものでございまして、
補助金等の
整理合理化は、国と
地方との
行財政運営と大変密接な
関係を持っております。したがいまして、その
削減合理化に当たっては、国と
地方とがお互いに唇歯輔車の
関係にあるということを正しく認識いたしまして、それぞれが
行政の責任領域を見直すということを行うと同時に、あるいは
役割分担を見直すということを行うと同時に、国と
地方を通じて
行財政の
効率化、
減量化に努める必要があると考える次第でございます。
ところで、国と
地方の
財政状況を見ますと、国も
地方もともに
財政収支は不均衡の状態にございますが、御
承知のように、公債残高も、公債依存度も、公債費も、どれをとりましても、
地方に比べて国の方が困難な状況にございます。数字といたしまして六十
年度をとってみますと、
地方の公債残高は四十二兆でありますが、それに対しまして国の方は百三十三兆、ほぼ三倍に相当する公債残高がございます。それから公債依存度について見ますと、
地方は七・八%の公債依存度になっておりますが、国の方は二二・二%、これまた三倍
程度という状況になっております。公債費につきましても、
地方は五兆六千億でございますが、国は十兆二千億というほぼ倍の公債費になっておるという現状でございます。さらに、昨年出されました中期見通しを見ましても、国に比べて
地方の方に余裕があるということは非常に明確でございます。
以上述べましたような状況を踏まえて考えますと、六十
年度の
予算編成に当たって行われました人件費補助の
見直し、それから
地方公共団体の
事業として既に同化定着している
事業に対する
補助金の廃止であるとか一般
財源化であるとか、あるいは高率
補助率の
引き下げ等、思い切った
整理合理化は当然のこと、あるいはやむを得ないものと言わざるを得ないというように考える次第でございます。
高率
補助率の一律
引き下げについては、いろいろの
議論がございますが、一般に
補助金はもともと既得権化しやすいという
性質を持っておりまして、それが不必要になっても廃止されにくいというのが現状です。そのことが、従来とも
補助金の
整理合理化が言われながらなかなか行われなかった一つの理由でございますが、高率補助について考えてみますと、高率補助が
財政資金の効率的な使用意欲を減殺して
事業の拡大を生じやすいという
性質があることも否定できないように思われますし、さらに現在の国と
地方の
財政状況が先ほど申しましたような状況にあることを考慮し、大変
財政状況のよい、余裕のある
地方公共団体に対しても高率の
補助金が交付されていることなどを勘案いたしますと、高率補助の
削減というのはやむを得ない
措置であったというように考えるわけであります。
また、一律
削減という点につきましても、
補助率がほかとのバランスをとって従来決定されてきていることを考えますと、この際、
補助率体系をいたずらに複雑化しないというために、一律カットを行うことも合理的な
措置であり、また、実際に実行可能性ということを考えますと、その点からも実際的な
措置であったというように考える次第であります。
ただし、そういうようには申しましても、これが理想的な姿であるかと申しますと、そこには問題がないわけではございません。したがいまして、これを契機として、国と
地方との費用分担等の問題につきまして、さらに
検討が深められることを期待するものでございます。
補助金のカットが、単に国の
財政負担の
地方への転嫁といいますか、押しつけであってはならないと私は考えます。しかし、国が困っているときに、余裕のある
地方が応分の援助を国に対して行うということは、同じ国の中において当然のことであるというように考えるものでございます。そして、こういう
措置を行うことによって、時として厳しい
批判の
対象となっている
地方における
歳出であるとか、あるいはしばしば
補助金待ちと言われているような安易な姿勢が改められることになれば、そしてそういう効果があるものと私は考えておるわけでございますが、そういう点からも、今回の
措置は一応評価することができるのではないかというのが私の見解でございます。
以上で終わります。(
拍手)