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1985-03-29 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十九日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 沢田  広君    理事 坂口  力君       糸山英太郎君    大島 理森君       金子原二郎君    瓦   力君       笹山 登生君    塩島  大君       田中 秀征君    中川 昭一君       東   力君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    宮下 創平君       山崎武三郎君    山中 貞則君       川崎 寛治君    渋沢 利久君       藤田 高敏君    武藤 山治君       古川 雅司君    宮地 正介君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主計局次         長       保田  博君  委員外出席者         参  考  人         (全国市長会会         長代理)         (福井市長)  大武 幸夫君         参  考  人         (全国町村会会         長)               (茨城県玉造町         長)      坂本 常蔵君         参  考  人         (一橋大学教授大川 政三君         参  考  人         (東京都立大学         助教授)    黒崎  勲君         参  考  人         (青山学院大学         教授)     館 龍一郎君         参  考  人         (成蹊大学教授肥後 和夫君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  参考人出頭要求に関する件  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例  等に関する法律案内閣提出第八号)      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案を議題といたします。  この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  本案につきまして、審査の参考に資するため、委員派遣いたしたいと存じます。  つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣地派遣の日時、派遣委員人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 越智伊平

    越智委員長 これより本案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席をいただきました参考人は、全国市長会会長代理大武幸夫君、全国町村会会長坂本常蔵君、一橋大学教授大川政三君、東京都立大学助教授黒崎勲君、青山学院大学教授館龍一郎君、成蹊大学教授肥後和夫君であります。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただいた後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず最初大武参考人からお願いいたします。
  6. 大武幸夫

    大武参考人 全国市長会会長代理をしております福井市長大武幸夫でございます。  衆議院大蔵委員会の諸先生方には、地方行財政の諸問題につきまして日ごろから特段の御理解と御尽力を賜っておりまして、衷心より感謝を申し上げます。  本日は、国の補助金等整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案につきまして地方団体意見を申し述べる機会をいただきましたので、意見を申し上げることといたします。  国、地方を通じます行政改革の推進と財政再建は、現下における最も緊急かつ重要な課題でありますので、これを着実に推進してまいらなければならないことは今さら申し上げるまでもないことでありますが、地方団体におきましては、これまでも、行財政運営効率化を目指して自主的な改革に努めてきたところであります。  行政改革財政再建は、国、地方を通ずる行政全般につきまして事務事業の思い切った整理を行い、行政減量化と総歳出削減を図るとともに、国と地方との二重行政を排除して行政の責任を明確にし、事務処理簡素効率化を図ることが必須の要件であります。  私どもといたしましては、このような観点に立って、国、地方を通じます行財政簡素合理化を図るとともに、地方団体自主性自律性が強化される方向国庫補助金等整理合理化も進められるべきであると考えております。しかし、残念なことに、政府は、昭和六十年度予算編成に当たりまして、国民生活に密接に関連いたします生活保護を初めとする社会保障関係費公共事業国庫補助負担率を一律に引き下げたり、義務教育費国庫負担金におきます教材費旅費負担対象から除外するなど、一方的な削減が行われたのであります。  このように、国、地方を通ずる事務事業の抜本的な見直しを行わないまま、単に国の財政負担地方へ転嫁することは、国、地方を通ずる事務と経費の節減合理化には何ら寄与するものではなく、行政改革の趣旨にも反するのみならず、国と地方の間の信頼関係をも損なうものと言わざるを得ないのであります。したがいまして、私どもは、このような国庫補助負担率の一律引き下げについては断固反対し、その撤回を強く求め、反対運動を展開する一方、先ほど申し述べましたような見地に立った私ども整理合理化方策をも提案して、国庫補助金等整理合理化が速やかに図られるよう要望してまいったところでありますが、単に国の財政事情のみによってこれが受け入れられなかったことは甚だ残念であり、まことに遺憾に存じている次第であります。  しかし、今回の措置昭和六十年度限りの暫定措置とし、昭和六十一年度以降の補助率あり方につきましては、政府部内において検討し、今後一年以内に結論を得るということであり、また、とりあえず昭和六十年度地方財政運営には支障を生ずることのないよう当面の対策が講じられたところでもありますので、これまで私どもが要望してまいりました方向で早急に適切な結論が得られ、明年度から改善されるよう期待するものであります。  なお、仄聞するところによりますと、昭和六十一年度以降においても今回の措置を継続すべき旨の意見があるようでありますが、昭和六十年度限りとすることを厳守していただきますよう、この際強く要望申し上げますとともに、今後このような国と地方信頼関係を損なうようなことは二度と繰り返されてはならないと存じますので、この点もあわせてお願いを申し上げる次第であります。  以上、私ども地方団体立場から忌憚のない意見を申し述べましたが、何とぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手
  7. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、坂本参考人お願いいたします。
  8. 坂本常蔵

    坂本参考人 全国町村会長坂本でございます。  本日は、当院の参考人としてお招きくだされ、目下審議中の補助率削減法案について意見開陳機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  さて、ただいま市長会の代表の方からお話がありましたが、実は私ども町村にとりましては、既に先生方も御承知のとおり、今回の補助率削減による影響は、町村全体としては金額的にもそれほど大きいものではありません。対象となった事業も、公立学校施設整備費児童保護措置費などの範囲にとどめられ、金額の全体に占めるウエートも五%程度で、それほど高いものになってはおりません。しかしながら、個々町村では強い影響を受けるものも少なくないと考えられますし、また、地方団体共通財源としての地方交付税へのはね返りや、さらにまた、このような措置が今後も継続されるといった事態に思いをはせますと、もともと税源が乏しく、地方交付税に大きく依存している町村にとりましては、まことに容易ならぬ措置であり、他団体ともども重大なる危惧の念を抱かざるを得ないのであります。幸いに、今回の措置昭和六十年度限りという条件が付され、また、当面する所要の財源対策も講じていただきましたが、このようなことは二度と繰り返すべきでないというのが、まず第一に申し上げるべき私どもの素直な気持ちでございます。  次に指摘しておきたいのは、今回の措置行財政改革一環として行われたにもかかわらず、肝心な国と地方役割分担事務事業見直しを行うことなく、地方への負担転嫁という最も安易な道に走ったということであります。これは改革の名に値しないものであります。言うまでもないことでありますが、私ども行財政改革それ自体に反対しているわけではありません。新たな時代の転換期を迎えて、国と地方の仕事や財源の配分を見直すことは当然であり、そうした見直しによって地方自治振興の基盤がより適正に再構築されることが必要であり、そのような真の行財政改革を私どもは強く望んでいるのであります。私といたしましても、この時期の行財政改革は明治維新にも比肩すべき歴史的な大事業であると考えておりますので、この点がまことに残念でならないのであります。  次に申し上げたいことは、私ども町村は、数は多くても、そのほとんどが農山漁村に位置しており、個々町村の人口や財政などの規模が小さく、職員の数も少ない、また住民の監視も行き届いている。したがって、そこでの行財政改革は、小さな改善合理化として昔から恒常的に実施されてきているのが大方の実態でありまして、今日、先進的とされる行革町村などの業績にしましても、国の唱導にこたえたものではなく、昔ながらの自発的な改善努力の成果であるといった場合が多いのであります。巷間言われますような行革批判対象となるような町村は、文字どおり九牛の一毛にすぎないのでありまして、当を得ない批判であろうと思われます。本年度は、社会保障関係を含めて、六十一年度以降の国と地方負担あり方についての検討政府部内で行われると聞いておりますが、将来のあり方を考えるに当たっては、ぜひともこうした町村実態について、誤解のないよう、十分な御理解をいただきたく、ここに申し述べる次第であります。  また、この際、公共事業補助率削減問題は、一般行政事務補助率引き下げとは性質が異なり、現下の状況ではやむを得ない措置と考えていますので、その実施については遅滞なく執行できるよう、よろしくお願いを申し上げます。  最後になりましたが、行財政改革は、国民理解協力を得つつ、国と地方が車の両輪となって後世代のために汗をかく大事業であり、改革範囲もまた行政、立法に及ぶ抜本的な改革を目指すことになると思われます。私ども町村長等もその一翼を担う者として、先生方ともども、今後とも最善の努力を尽くしてまいる決意を申し添えまして、発言を終わりたいと存じます。  ありがとうございました。(拍手
  9. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、大川参考人お願いいたします。
  10. 大川政三

    大川参考人 私は、行政の実務に参加しているものではございませんが、こういった財政問題なんかをやや客観的にといいますか、少し離れたところで見ておるということで、少し抽象的な議論になるかもしれませんが、その点、お許しいただきたいと思います。  私は、一応財政学といいますか、経済学をやっておるものでございますから、かねがね、財政政策のみならず、一般公共政策というものを考える場合に、絶対的な思考というよりは、物事はすべて相対的に考えるべきではないかということを思っております。絶対的にいいだとか、絶対的にだめなんだとか、そういう考え方は、一応私ども経済学といいますか、限られた資源を効率的に配分する、こういう立場からいうと、ちょっと私どもには一あることは絶対的に正しいんだとか、絶対的にいいんだ、負担の増加することは絶対的にいけないんだ、こういうことは、私どもはなるべくもう少しそういう問題を相対的な考え方に引き直して考えてみたい。相対的に考えるということは、あることの便益とあるものを得るためには、何らかの代償を払わなければいけない。したがって、そういうあるものを得ることに対して支払うべき費用負担というものを見比べながら、何らかの基準で選択する。これはまあ経済というものの立場になるわけでありますが、先生方の参加されております政治の世界では、そういう経済的に考えるということはなかなか通りにくいかもしれませんが、一応私ども立場ではそういう立場物事を考えて、何らかの御参考になればと、そういうふうに思っております。  それで、そういうような考え方の上に立って、今回の補助金の一律削減、こういった問題をどういうふうに考えるかということでありますが、やはりこの場合も、そのように補助金一括削減といいますか、そういうことによって、先ほどもお話がありましたように、場合によれば、地方の方の負担がふえるということがあり得るかもしれない。他方においては、国の側からいえば、国の歳出削減ということが可能になって、財政再建一翼を担うかもしれません。しかし、そういう、一方では便益があり、あるいは地方の方には負担がある、その一面だけを考えて、断定的にいいか悪いかということは、そういうことを決める前に、もうちょっと手前で考えるべきことがあるのではないかということなんであります。  しからば、今回の六十年度予算前提としたこの補助金の一律削減の場合に、もし補助金削減によって国費の節約が可能になる、国の側からいうとそういうような便益が得られる。そのために、それでは国は何を支払うのか、負担するのか、こういうふうに考えてみると、今回の六十年度予算における暫定措置では、国は歳出削減というベターなものが得られるかわりに、それに見合うべきものを何か負担するかどうかということになると、ちょっと考えるべきことはあるかもしれません。また、地方の方から言わせれば、もし補助率削減によって何らそれにかわる措置が講じられなければ、地方負担はふえる。そのかわりに何か取るものが地方の方にあるかどうかということになるわけでありますが、私は基本的には、補助率削減する見合いとして、やはり国は地方に対して自主的な裁量権、そういったものを組み合わせてやるべきではないか。補助条件の緩和というものを結びつけて考える。お互いに、やはり国としても統制権なり地方に対する監督権を一応緩和させる意味で補助率引き下げる、そういう組み合わせで考えるべきではないかというふうに思っております。  しかし、今回の措置は、そういった組み合わせという点から見ると非常に不十分なことは免れないのですが、逆に考えると、それほど現在の財政危機が深刻であるとも言えるわけなので、もしまたその方面について何か御質問があればさらに補足いたしますけれども、一応最初陳述としてはこれで終わらせていただきます。(拍手
  11. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、黒崎参考人お願いいたします。
  12. 黒崎勲

    黒崎参考人 黒崎でございます。  今回のいわゆる補助金一括法案に対して、私は強く反対をいたしたいと思っております。  以下、特に義務教育費国庫負担制度の問題に即しまして、教育学専門とする者として、幾つかの基本的問題点を述べさせていただきます。  第一は、一括法案という形式にかかわる問題であります。今回の補助金一括法案に一括されておりますおのおのの法律は、それぞれ独自の目的を持ち、固有の経過をたどって成立に至ったものであり、さらには、同じ国庫支出といいましても、その中のあるものは負担金であり、あるものは補助金であるというように、性質が異なっております。これらのものを一括法案として扱うことは、国会が十分な審議を尽くすという点で、極めて大きな問題を含むものではないかと考えております。とりわけ義務教育費国庫負担法に関しましては、単に時限的なものとして問題が提出されているのではなくて、旅費教材費負担制度対象から除外するというものであって、義務教育費国庫負担制度基本にかかわる改正でありますから、到底一括して扱い得るものと考えるべきではないと思っております。  既に周知のこととして、あえて申し上げる必要もないことですけれども義務教育費国庫負担制度は、昭和二十八年以来今日に至るまで、一貫して我が国教育財政制度の最も根幹をなしてきたものであって、極めて安定した制度として定着しております。したがって、この義務教育費国庫負担制度改正にかかわる問題は、教育財政制度、ひいては教育制度全体に深く影響を与えるものであり、少なくとも今回の補助金一括法案の中でも、この部分に関しては文教委員会において、義務教育制度あり方を左右する重要な問題として、独自に検討されるべきではないかと考えております。  第二の問題は、今回の補助金一括法案に見られる教育についての認識が、極めて貧困なものであるということであります。今回の法案が提出される過程においては、学校事務職員等の給与に対する負担を除外しようとする考えがあったことが新聞等において報道されておりました。このことをも考え合わせますと、そこには、教育という活動を、何か一人の教師がクラスの大勢の生徒に対して一方的に知識を伝えて終わるものといった、大変乏しいイメージを持って教育財政問題が取り扱われているような気がいたします。  国際的な教育改革動向を見ましても、今日そこで改革の焦点とされているのは、いろいろたくさんのことが課題になっていますけれども教師だけの手によって教育を行い得るという観念に立つのではなくて、教師教師以外の学校職員、あるいは日本ではまだ十分に観念が育っていませんけれども、パラプロフェッショナル、訳せば准教育職員と呼びましょうか、そういうような人々、そして親や地域の文化的活動を担っている人々、こうしたさまざまな人々子供教育のために豊かな協力関係をいかに結ぶことができるかということであって、そのための具体的方策がさまざまに追求されているように思われます。さらに、教育実践の内容と質とは、現代社会における生活の変貌に伴って、かつてないほどに子供生活と密着した動態的なものであることが求められております。このことは、とりもなおさず、教育財政制度によって保障すべき教育費範囲を大幅に拡大させるに至っています。  こうしたことは、何も国際的動向などといった大げさな言い方をするまでもなく、身の回りの教育の現状をつぶさに見るならば、だれの目にも明らかなことであろうと思います。残念ながら、今回の補助金一括法案前提としております教育観は、こうした今日の教育活動実態及びそこで求められているものから大変かけ離れたものであって、その教育観は極めて貧困なものだと言わざるを得ません。  さらに重要だと思いますことは、教育財政制度あり方教育活動の質との関係について、十分な正しい自覚がないように見えることであります。私は、大学で教育財政問題についての講義を担当しておりますけれども、その主たるテーマは、教育財政制度あり方は、教育活動の質に深くかかわりを持つものであるという点の追求にあります。もとより両者の関係は短絡的なものではあり得ませんが、新しい質の教育実践というものは、それにふさわしい教育財政制度ないし活動というものを求めますし、逆に、教育財政制度変更は、教育活動の質に変更を迫るものとならざるを得ないと考えております。今日、教育改革論議において、我が国義務教育制度画一化硬直性といった点がしばしば批判対象として取り上げられておりますけれども、それが現行の文部行政による教育財政活動硬直性と深く関係しているということは、否定することのできないものであると私は考えております。  ですから、補助金一括法案にある義務教育費国庫負担制度改正の問題は、単に国と地方との教育財政についての負担比率変更といった問題を超えまして、新しい財政制度がいかなる質の教育活動を促すことになるのかといった問題にならざるを得ないと思うわけですけれども、このことについてほとんど全く自覚されていないように思われます。教育財政制度根幹にかかわる改正問題は、単なる財政問題としてではなくて、重大なる教育問題としても十分な議論が尽くされるべきであると申し述べておきたいと思います。  第三は、教育政策における整合性の問題であります。既に御承知のとおりですけれども臨教審は第一部会検討課題として、国、地方公共団体教育に対する役割を挙げ、その中で国、地方公共団体教育行政あり方教育条件整備の二点を挙げています。この点だけからいっても、補助金一括法案は少なくとも文教費、とりわけ義務教育費国庫負担法に関する限りは、明白に臨教審審議課題と抵触することになると言えましょう。  問題は、こうした形式的な点にとどまるものではありません。臨教審第一部会議論において、教育自由化ないし個性化という理念が唱えられていることは周知のことですけれども、この理念は、本来教育財政制度の根本的な見直しを含んでおります。自由化理念は、教育学専門とする者から見ますと、明らかに教育財政システムを親の選択の権利という概念を基本に据えて再構成し、そのことによって教育を活性化させようとするものだと把握できます。ですから、もし仮に、教育自由化という理念臨教審教育改革のプログラムの中心理念になるのであれば、当然それに即応した教育財政制度改革検討されなくてはならないのであって、今回の補助金一括法案は、まさにこの点で致命的な限界というか、問題点を抱えていると言わざるを得ないと思います。  念のために申し添えますけれども、私は教育自由化理念に必ずしも賛成するものではありません。ここで臨教審改革理念を引き合いに出して、補助金一括法案との教育政策上の不整合を問題にしましたのは、教育という本来長期的な観点から慎重に取り扱われるべき問題が、一時的な、ないしは部分的な政策上の都合によって軽々に左右されることに深い危惧の念を持つからであります。  教育は国家の独占物でもなく、いかなるエゴイズムに対してもじゅうりんを許すべきではない、いわば真に公共的なものであるべきなのではないでしょうか。教育をそのようなものとしていくためにも、重ねて補助金一括法案に対しては反対せざるを得ないこと、少なくとも義務教育費国庫負担法にかかわる部分については、これを文教委員会において、今日広く求められている教育改革問題の一環に位置すべきものとして、慎重に審議をしていただきたいと考えていることを表明して、意見陳述を終わりたいと思います。(拍手
  13. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、館参考人お願いいたします。
  14. 館龍一郎

    館参考人 ただいま御紹介いただきました館でございます。本日のこの問題につきまして意見を述べる機会を与えられたことを大変光栄に存じております。  今さら申し上げるまでもないことでございますが、経済が比較的順調な発展を示しているにもかかわらず、日本の財政は依然として毎年多額の公債発行、特に赤字公債といいますか、特例公債の発行に依存せざるを得ないという状況にございます。何をもって財政再建と見るかということは大変難しい問題でありますが、常識的に考えました場合に、今日のように経済が順調に発展しつつある際には、経常的な歳出は経常的な歳入によって賄われ、しかも、そのような状況が安定的に維持されるという状況をつくり出すのが正常な姿ではないかと考えるわけでございます。  このような観点から見ましたときに、経済が順調に発展しつつあるにもかかわらず、多額の赤字公債を発行せざるを得ないという現状は大変不健全であり、構造的な赤字がそこに存在するというように言わざるを得ないと考える次第でございます。したがいまして、経済が十分な活力を備えている現在のような状況において、今の赤字公債に依存せざるを得ないという状況から脱却するためにできるだけ努力するということは、後の世代に負担を残さないために我々がなすべき義務であると考える次第でございます。  予算委員会の公述の際にも述べましたように、六十年度予算におきまして特例公債の一兆円の減額ができなかったという点は、遺憾といいますか、残念に感ずる点でございますが、補助金等整理合理化を初めとする歳出削減合理化によって、一応三年連続一般歳出マイナスという状況になり、曲がりなりにも一兆円の公債の減額を行ったという点については、一応評価してよろしいのではないかと考えております。  ところで、補助金等につきましては、補助金等は一般歳出の約四割を占めておりまして、歳出削減合理化を行うに当たっては、補助金等の徹底した削減合理化を行うことなしには、財政削減合理化は行い得ないというのが実情でございます。一方、この補助金等の大宗は地方公共団体向けのものでございまして、補助金等整理合理化は、国と地方との行財政運営と大変密接な関係を持っております。したがいまして、その削減合理化に当たっては、国と地方とがお互いに唇歯輔車の関係にあるということを正しく認識いたしまして、それぞれが行政の責任領域を見直すということを行うと同時に、あるいは役割分担を見直すということを行うと同時に、国と地方を通じて行財政効率化減量化に努める必要があると考える次第でございます。  ところで、国と地方財政状況を見ますと、国も地方もともに財政収支は不均衡の状態にございますが、御承知のように、公債残高も、公債依存度も、公債費も、どれをとりましても、地方に比べて国の方が困難な状況にございます。数字といたしまして六十年度をとってみますと、地方の公債残高は四十二兆でありますが、それに対しまして国の方は百三十三兆、ほぼ三倍に相当する公債残高がございます。それから公債依存度について見ますと、地方は七・八%の公債依存度になっておりますが、国の方は二二・二%、これまた三倍程度という状況になっております。公債費につきましても、地方は五兆六千億でございますが、国は十兆二千億というほぼ倍の公債費になっておるという現状でございます。さらに、昨年出されました中期見通しを見ましても、国に比べて地方の方に余裕があるということは非常に明確でございます。  以上述べましたような状況を踏まえて考えますと、六十年度予算編成に当たって行われました人件費補助の見直し、それから地方公共団体事業として既に同化定着している事業に対する補助金の廃止であるとか一般財源化であるとか、あるいは高率補助率引き下げ等、思い切った整理合理化は当然のこと、あるいはやむを得ないものと言わざるを得ないというように考える次第でございます。  高率補助率の一律引き下げについては、いろいろの議論がございますが、一般に補助金はもともと既得権化しやすいという性質を持っておりまして、それが不必要になっても廃止されにくいというのが現状です。そのことが、従来とも補助金整理合理化が言われながらなかなか行われなかった一つの理由でございますが、高率補助について考えてみますと、高率補助が財政資金の効率的な使用意欲を減殺して事業の拡大を生じやすいという性質があることも否定できないように思われますし、さらに現在の国と地方財政状況が先ほど申しましたような状況にあることを考慮し、大変財政状況のよい、余裕のある地方公共団体に対しても高率の補助金が交付されていることなどを勘案いたしますと、高率補助の削減というのはやむを得ない措置であったというように考えるわけであります。  また、一律削減という点につきましても、補助率がほかとのバランスをとって従来決定されてきていることを考えますと、この際、補助率体系をいたずらに複雑化しないというために、一律カットを行うことも合理的な措置であり、また、実際に実行可能性ということを考えますと、その点からも実際的な措置であったというように考える次第であります。  ただし、そういうようには申しましても、これが理想的な姿であるかと申しますと、そこには問題がないわけではございません。したがいまして、これを契機として、国と地方との費用分担等の問題につきまして、さらに検討が深められることを期待するものでございます。  補助金のカットが、単に国の財政負担地方への転嫁といいますか、押しつけであってはならないと私は考えます。しかし、国が困っているときに、余裕のある地方が応分の援助を国に対して行うということは、同じ国の中において当然のことであるというように考えるものでございます。そして、こういう措置を行うことによって、時として厳しい批判対象となっている地方における歳出であるとか、あるいはしばしば補助金待ちと言われているような安易な姿勢が改められることになれば、そしてそういう効果があるものと私は考えておるわけでございますが、そういう点からも、今回の措置は一応評価することができるのではないかというのが私の見解でございます。  以上で終わります。(拍手
  15. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、肥後参考人お願いいたします。
  16. 肥後和夫

    肥後参考人 御紹介にあずかりました成蹊大学の肥後でございます。  恐縮でございますが、この法案の名前が長過ぎますので、自分勝手に補助金整理特例法案というふうに略称させていただきまして、この法案に対する意見陳述いたしたいと思います。  それにつけましても、私には一つの感慨がございます。と申しますのは、五十六年十一月十二日でございますが、第九十五回国会の参議院行財政改革に関する特別委員会におきまして、行財政改革関連一括法案について参考人として意見陳述をいたしました。言うまでもありませんが、この法案は、臨調第一次答申の線に沿って国の五十七年度予算を編成し、五十九年度までに赤字公債依存を脱却するという目標を達成するために緊急に必要とされた、補助金等整理合理化を中心とする法案であったのであります。そのときの法律は、五十七年度から五十九年度までの三年間の時限立法であったのでありますが、今回の法案におきまして、この行革関連法案の一年延長が一つの大きな要因になっている、そして財政再建の目標が五十九年度から六十五年度に延長されている、しかもその目標を達成する道は極めて険しい、そういう点で四年前を思い出して感慨深いものがあるわけでございます。  その節の意見陳述におきましても、第二次石油危機が経済成長率と税の減収にかなり大きな影響を及ぼすのではないかという懸念を陳述いたしました。これは記録に残っていることでございます。その後、赤字脱却の目標は六十五年度に現在延長されているのでありますが、新しい「財政の中期展望」によりますと、この目標を達成することも、尋常一様の努力ではなかなか難しいということが示されているように思われます。  五十六年度以降の政府努力にもかかわりませず、五十六年十一月の時点の国の財政に比べまして事態はさらに悪化し、公債残高は五十六年度末から六十年度末までの間に五十兆円もさらに増加し、国債費がとうとう主要経費の中で社会保障費を抜いて最大の費目になるという異常な予算を編成せざるを得ない事態になっております。経済の安定的成長のためには、国の財政に対する国民の信頼が揺るがないことが必要であります。そのためにも、景気が回復に向かっております現在、税の自然増収をできるだけ公債の減額に向けるよう努力することが望ましいと考えます。六十年度予算案では、一兆円の公債減額を達成するために、一般歳出が三年連続して対前年度微減に抑制されております。そのために、数次の臨調答申や行革審意見を踏まえまして、この補助金整理特例法案によりまして約八千四百億円、政令等で措置するものを含めますと約九千五百億円の歳出削減効果を期待しているのであります。  第一に、この法案が国の財政再建の目標達成の重要な一環であり、一般歳出の四割を占める補助金整理合理化歳出の節減のために必要不可欠であること。第二に、補助行政というものは、国がその政策を遂行するための重要な政策手段であることは疑う余地がありませんけれども、一面では、補助金待ちの行政でありますとか、補助金が出るから事業をやろうといったような非効率の問題もあるのであります。また、高度成長時代の、税源に余裕のあった時代に定着しました補助率等を含めた補助制度が、税収の余裕のそれほどないこれからの安定成長時代に必ずしもそぐわないのではないか、その点をあらゆる機会をとらえて見直してみることは非常に必要なのではないかということでございます。第三に、いろいろ問題はあるにしましても、中心をなしております行革関連特例法の延長、これで経費節減効果が三千五百六十億ほどあると見積もられております。それから、高率補助金の原則一割削減の特例法案によって約四千五百億円、政令等で措置するものを含めまして五千五百億円の節減効果が見積もられておりますが、これらは一年の暫定措置とされておりまして、六十年度中に関係各部門できめ細かな検討を重ね、より深い合意を求めるべきこととされておりますこと。第四に、その他の補助金に関する廃止あるいは交付金化、臨時特例法の措置の恒久化等は、地方団体自主性自律性を尊重する性質のものか、定着した制度の妥当な追認であること等を考慮いたしまして、せっぱ詰まった財政環境における再建のための非常手段としてはやむを得ないし、行財政改革への積極的な意気込みは評価したいと考えるものであります。  特に、率直過ぎることをおそれながらあえて申し上げるのでありますが、経済財政環境の変化の激しい昨今でありますから、一年後にも現在のような行革ムードが維持できるかどうか、心もとない気もしております。その場合に、必要な制度改革等を徹底させることなしに事態がうやむやになってしまい、後世に悔いを残すことをおそれるものであります。やるべきことは、機会をとらえてできるだけ直ちにやるように努力することが必要であろうと思います。  なお、言うまでもないことでありましょうが、国の補助金の八割は地方団体に関するものであります。国と地方は車の両輪であります。補助金節減合理化に当たりましては、地方の国に対する信頼と協力が必要であり、地方自主性自律性を尊重するという地方分権の基調は、臨調答申においても強調されていることであります。今回の時限立法におきましては、国の補助率が中心になり、補助対象になっている制度改革にまでは触れておりませんが、国と地方を通じる事務事業見直しなしに、単なる地方への負担のツケ回しであってはならないとする地方の主張には、十分耳を傾けるべきであろうと思います。  また、事業の所管省が違えば、立場は違います。福祉を担当する部門では、今回の高率補助の削減法案、あるいは行革関連特例法の延長によって、福祉の水準の切り下げには至らなかったことが歓迎されるでありましょう。しかし、五十六年度の臨調答申と行革関連特例法によって始動し始めた医療と年金制度改革が、三年たってようやく具体化し始めているのが現在でございます。大きな制度改革には時間がかかります。本格的な高齢化社会を間もなく迎えようとしている現在、安定成長下における福祉のあり方、国と地方の責任分担や公私の責任領域について、さらに掘り下げた前進を今後に期待したいと思います。  最後に、今回の法律が実現いたしたといたしますと、地方は五千八百億円の負担増となるものと予想されておりますが、交付税の増額と建設公債の増発によって、一般の自治体の行政水準が低下を来すことがないように措置されていることは、結構なことだと思います。ただ、交付税の不交付団体である大都市圏の富裕団体は、この補助金カットの影響を全面的に受けると思われます。都市の基盤整備の終わっている団体とそうでない団体、富裕団体といっても事情はまちまちでありますが、一般のその他の団体に比べれば、財政的に恵まれていることは疑う余地がありません。とかく高額退職金や高額の給与等、批判もある時期でございますので、この機会にみずからの力で行政サービスの節減合理化に努められて、自治の誇りを実証していただきたいと思うのでございます。  大変長くなりましたが、このように考えますと、問題はこの法律で終わったのではなくて、まだまだ多くの課題を抱えていることは疑いありません。このことを確認して、私の意見陳述を終わりたいと思います。(拍手
  17. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終了いたしました。     —————————————
  18. 越智伊平

    越智委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  19. 沢田広

    ○沢田委員 各参考人の皆さんには、お忙しい中、我々のために貴重な御意見を賜りまして、心から敬意を払う次第であります。お忙しい方もおられるようでありますので、質問をいたします順序が特別に変わるようなこともありますけれども、その点は御了承いただきたいと思います。  最初大武参考人坂本参考人、大変御多用のようでもありますし、またそれぞれ議会も抱えておることだと思いますので、最初に質問をさせていただきたいと思うのであります。最初、大変失礼な質問もあるかと思いますが、その点は国民のためだという立場でひとつ御了承をいただきたい、こういうふうに思います。  貴重な意見をいただきましたが、今のこの一括法案という提案の仕方、もし福井の市議会で扱ったと仮定をした場合、どういう反響が出ると思われますか、お答えいただきたいと思います。
  20. 大武幸夫

    大武参考人 国会の議案につきましてはとやかく私申し上げる立場にございませんけれども地方議会で審議する場合には、一括法案ということはございません。
  21. 沢田広

    ○沢田委員 今度は坂本参考人の方にお伺いいたしますが、地方にはこうやって補助金とかいろいろとやってまいりますが、国の省庁の合併とか合理化、こういうことはちっともやられていない。今の参考人の方の御発言もありましたが、この縦割り行政の壁はますます厚くなってきている。そういう点で、地方行政上二重になったりあるいはそれがそごしたりという業務も出てきていると思うのでありますが、国の方に対して皆さん方から見た場合に、こういう補助金ばかりじゃなくて、国自身の行革が果たして正しく整合性あるように行われていると思っておられるのかどうか、ひとつその点お聞かせいただきたいと思います。
  22. 坂本常蔵

    坂本参考人 我々最先端の行政を預かっている者としましては、それぞれ所管省から一括で参りまして、じょうごの受け皿のように受けましてこれを出すようなものですが、いろいろ見てみますと、例えば自治省、厚生省に対しましても、同じ福祉関係あるいは国保関係を見ましても、それぞれ局、所管が違うわけでありますね。したがって、県等におきましても、それを受けまして我々町村に来るわけでありますが、大変迷惑する点が多いわけでありまして、可能な限り、関連性を持つ省庁について、各部局については守備範囲はありましょうけれども、まずひとつ簡素化してやっていただきたいというのが我々の願いでございます。
  23. 沢田広

    ○沢田委員 それについて、こういう補助金でひもつきで来るのではなくて、もしこれだけの金が必要であれば、その分を全都市、町、県も含めて出して、それであとそれぞれ地方自主性に基づいてこういう次の行政水準は確保してほしい、ナショナルミニマムは確保すべきである、こういう法律のもとに、一つのまとまった金の中で運営を任せる、こういう発想はいかがでしょうか。大武参考人からお願いします。
  24. 大武幸夫

    大武参考人 内容によってそれぞれ異なると思いますけれども、御趣旨の点がやはり、必要な場合は生ずると思います。
  25. 沢田広

    ○沢田委員 二つに分けてお伺いします。これも大武参考人坂本参考人ですが、公共事業関係は、これから例えば予算が決まっておりるとしても、設計をして発注をするというのは、雨季を避けて大体九月ごろになると思うのです。ですから、今この法案が通ってどれだけ減ってくるかということの考え方はあるにしても、それの影響度は、公共事業等については恐らくこの九月以降の執行に影響が出てくるのであって、今直ちにその影響が目前に迫ったというものではないというふうに私たち判断をいたしておりますが、その点はいかがでしょうか。
  26. 大武幸夫

    大武参考人 直接お答えはできないわけでございますけれども法案の成立の成否いかんによって地方影響が出ないように、ひとつお願いをしたいと思います。
  27. 沢田広

    ○沢田委員 坂本参考人にお伺いしますが、特に厚生費関係生活保護支給をやったり、あるいは身体障害者等の補助の現実四月支給というものを控えているわけでありますが、先ほどのお話では五%程度であって、会計閉鎖期は五月までである。ですから、財政運営として資金繰り——これは財政運営と言うより金のやりくりと言った方がわかりやすいと思うのですが、金のやりくりとしては、別に法案が三月三十一日までに通っていかなければ運営ができないというものではないと思うのでありますが、一番末端でやっておられる町長さんの坂本参考人から、五月ぐらいまでのやりくりは大体できる、こういうふうに考えておられるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  28. 坂本常蔵

    坂本参考人 御案内のとおり、昨年は退職医療制度が発足したわけであります。十月ということになったわけでありますけれども、それ以前に当然我々は決まるものとしておったわけですね。こういうような一つの方向づけをされる法案がおくれますと、我々最末端の行政としては極めて困るわけでございます。  特に、先ほども私は御意見を申し上げましたが、公共事業補助率削減の問題は、一般行政事務補助率引き下げとは性質が異なりますが、今現在景気浮揚などと言っている場合に、予算は通りましたが関連法案が通らぬということになりますと、我々については開店休業ということになります。引き下げはやむを得ないといたしましても、その実施については遅滞なくやってもらいたいというのが偽らざる我々の考えでございます。  以上です。
  29. 沢田広

    ○沢田委員 御趣旨そのとおりだと思うのです。  しかし、あなたのところで三月三十一日までに完全に工事が全部終了する。五月まで会計閉鎖期がある。いわゆる決算見込みはつくるでしょうけれども、支払いは五月までに行う。これが今現実の市町村の支払い形態ではないのかというふうに思うのです。また、五月までは三月末のいわゆる残務整理である。あるいはまだ執行残というか、執行中のものも当然あるでしょう。あるいは、繰り越し事業として議決を求めるものもあるでしょう。そういう状況で、予算が決まらなければ、例えば公共事業について五%なり一割がカットされて、どれだけおりてくるかわからぬというほどの、何といいますか、能力と言っては悪いのですけれども、そういうものが予想がつかないほどではないだろう。だからそれは、今までの執行業務と、雨季を控えて、今度は新たな予算をもう当然編成されていると思うのですね。その編成されている予算は、これから設計をしたり、公共事業でいえば場所も指定されているでしょうし、それぞれ地元への話し合いも行われるわけですから、直ちにこの法案が四月とか五月とかということは我々合点がいかないのです。これは、より早い方がベターだということにおいては否定はしませんけれども、それがなければ、公共事業において絶対六十年度予算の執行ができないということにはならないだろう。私の地方議会の経験等を通ずれば、大体そういうことじゃないかと思うのです。これは、大武参考人もあわせて一言ずつお答えをいただきたいと思います。
  30. 大武幸夫

    大武参考人 直接地方行政を執行している立場でございますので、円滑に行政を執行してまいるためには、やっぱり法律制度の安定、また行政の継続ということが不可欠でございます。したがいまして、今のような予算と法制が一致しない状態が長く続くことにつきましては大変困りますので、そういうことがないように極力避けていただきたい、こういうぐあいに思います。
  31. 沢田広

    ○沢田委員 前の行革法も約束が破られたわけです。先ほど参考人も言われたように、政治に信頼は必要である。これが一年で見直しされると思われておりますか。これは長く続くんじゃないかと、恐らく腹の底では考えておられるんじゃないかと思うのでありますが、市長さん、いかがでしょうか。
  32. 大武幸夫

    大武参考人 予測困難でございますけれども、私どもといたしましては、来年度も続かないようにひとつお願いを申し上げたいと思っております。
  33. 沢田広

    ○沢田委員 町長さんも、自民党がいても別に遠慮することはないのでありますから、どうぞ本音で言っていただきたいと思います。
  34. 坂本常蔵

    坂本参考人 これは補助金の問題でありますから、法改正ができなければ執行ができないわけで、新しいことはできないわけであります。法改正をできるだけ早くやりたいといいましても、それぞれの御事情でおくれることもありますが、せっかく予算化されての改正であるとするならば、できる限り早くこれを通していただいて、実行に移していただくというのが結構であろうと思います。  特に先ほど、我々の五十九年度事業について、五月まであるではなかろうかというような先生のお話であろうと存じますが、それは一部の場合、諸事情がある場合でありまして、普通の場合については、原則的に見まして三月三十一日までには当年度事業は終了することが建前であります。四月、五月についてはいわゆる会計決算期でありますので、事業と会計決算についてはおのずから若干違うところもあるのでなかろうかと思います。  いずれにいたしましても、我々といたしましては、年度内の事業年度内に完結するように努力するわけでありますが、これは特に公共事業その他でありまして、行政事務補助金の問題については既に予算化が図られておりますので、我々としてもやむを得ないこととして、できる限り早くお通し願い、実行に移したらどうかなということを考えているような次第でございます。  以上でございます。
  35. 沢田広

    ○沢田委員 市長さんの立場なり町長さんの立場になれば、自分の議会に照らしてみてもそういうことだろうと思います。完全にということではなくて、建前、原則、そういう言葉がついておるのが本音だなというふうに思います。やはりそれが建前であり原則であるということをいみじくもおっしゃられた、こういうことだと思います。我々が市なり県なりにおりましたときもそういうことでありますから、恐らく大体似たり寄ったりだろう、こういうふうに思っておりました。  続いて、一番末端の市民生活影響のあります生活保護費。これはお金も、金額とすると他のものよりも大変多くかかるわけです。それから学校関係教材費旅費、これも大変な、すぐかかる費用なんですね。その意味において急がれる気持ちはわかりますが、その点はこの改正によってどういう支障が出てまいりますか。お気づきになっておられれば、教材費あるいは旅費、同時に生活保護費等について、行政のいわゆる手続上、事務上どういう問題が起きるか、ひとつ市長さんと、それから町長さんにお願いいたします。
  36. 大武幸夫

    大武参考人 福祉費等につきましては、手続等はどうなるか、私ちょっと今よくわかりませんけれども、現実の問題として、これは全部自主財源で見ぬといけませんので、やはり一般財源を食うという意味で、それだけ数倍の自主財源の運用がなくなるわけでございますので、私どもとしては大変困る、行政サービスの低下を来すわけでございますので困るということが言えようかと思います。  なお、今最後におっしゃいました義務教育費の国庫負担金の除外につきましては、これは一応昭和六十年度地方財政計画で所要の財源措置がなされるようでございますので、私どもは前年度の実績で予算を計上しているというような状況でございます。
  37. 沢田広

    ○沢田委員 じゃ、続いて坂本参考人
  38. 坂本常蔵

    坂本参考人 今度の行政事務補助金カットの問題は、先ほど申し上げたとおり、我々町村にとりましては比較的少ない。ですから、前年度踏襲でいきましてもそれほど影響はありませんが、結局、県、政令都市となりますと大変影響がありますし、我々地方交付税を大きな財源としている町村といたしましてはそのはね返りがありますから、この影響度はもう既にあらわれているというようなことでありまして、今年度、六十年度については財源措置がとられましたが、六十一年度以降どうなりますかについて、我々としても大変大きな危惧を持っている、こういうことでございます。
  39. 沢田広

    ○沢田委員 続いて、今の事務上ではというのですから、三月末、それから四月段階に、例えば市長さんのところでお伺いしますが、三月末で一時借り入れを——代表で、あなたの市で申しわけありませんが、福井市長さんのところでは三月末で一時借り入れをどの程度今までやってこられましたか。今はやる予定はありますか。ちょっとお答えいただきたいと思います。
  40. 大武幸夫

    大武参考人 今のところ、一時借り入れをやるかやらぬかということについては、まだちょっとはっきりしておりません。
  41. 沢田広

    ○沢田委員 いや、はっきりしてないというよりも、三月もきょうは末になっているのですから、見通しとして、一時借り入れしなくても、三月から五月まで会計閉鎖期はあるのですから、その中では新たな歳入も入ってくるわけで、当然それで十分間に合う、こういうふうに私たちは推量するわけです。六月ごろのボーナスになりますと、これは一時借り入れをしないと支払いができないのではないか、それまでは大体間に合っていくんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょう。
  42. 大武幸夫

    大武参考人 一時借り入れしなくてもいけると思います。
  43. 沢田広

    ○沢田委員 坂本参考人、町長さんの方はいかがでしょうか。これは後で会計検査院に調べてもらえば結果はわかるわけでありますから、念のため申し上げながら、お答えいただきたいと思います。
  44. 坂本常蔵

    坂本参考人 我々町村といたしましてはまず節約、支出を十分考えなければいけません。一時借り入れは努めてしないという方向で進んでいるわけでございまして、私の町といたしましては、一時借り入れはいたしません。
  45. 沢田広

    ○沢田委員 ちょっとこれには関係ないのですが、市長さんにお伺いしますが、これからの金利の自由化によって、いわゆるCDの額が四月一日から下がります。その場合に、指定金融機関は今後はやはり幅を広げて扱われる予定ですか。それとも、ある二足限度の幅の中でやっていかれるつもりですか。参考のため、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  46. 大武幸夫

    大武参考人 今まで相当幅を広げておりますので、今の状態でいきたいと考えております。
  47. 沢田広

    ○沢田委員 町長さんの方はいかがでしょう。
  48. 坂本常蔵

    坂本参考人 町村については金融機関も少のうございまして、指定取扱銀行等については指定してありますので、ふやす考えは持っておりません。
  49. 沢田広

    ○沢田委員 行革法の場合も先ほど述べられましたが、これでもし一年でなく二年あるいは三年となってきますと、じわじわとその影響力が出てくるというふうに私たちも想定するわけです。今は補てん措置も講じました。あるいは一応政府の答弁を真に受ければ、これはそのとおりにはいかないと思うのですが、住民に影響を与えませんと総理大臣は言っております。しかし、現実的にこれが続いていった場合には、そういう影響が出てくるのではないかというふうに思われますが、その点のお考えをお聞かせいただきたいと思います。ひとつ市長さん、町長さん、お願いします。
  50. 大武幸夫

    大武参考人 一応本年のような一部カット等の問題が長引くと、やはり私ども地方自治体としては大きな痛手になるというぐあいに言えようかと思います。
  51. 坂本常蔵

    坂本参考人 市長さんと同様に考えております。
  52. 沢田広

    ○沢田委員 お二人の方への質問は、一応私の方はここで一時打ち切りまして、あと他党の方があれば……。
  53. 越智伊平

    越智委員長 いいですか。ないですか。——それじゃ、続いてやってください。
  54. 沢田広

    ○沢田委員 それでは、大武参考人坂本参考人のお二人には、公明党さん、民社党さん、共産党さん、大変御遠慮をいただきまして、社会党の私だけで、自民党さんも御遠慮なされました。皆さんのお述べになられたものを心としながら、国政の上に反映をしてまいりたいと思います。  時間が若干残りましたから、最後に一言だけお答えいただきますが、私たちは財政再建も必要だと思っています。そのために、厳しい状況もまた必要だと思います。しかし、国民あっての財政再建、市民あっての財政再建、また、やはり市民あっての国の財政である、あるいは市の財政であり町の財政である。ですから、市民、弱い者をいじめるような形にならぬということが、最後のこういう施策を行う場合は最大限必要なことだと思うのです。このままでいったのでは、結局負担のすりかえ、まず市町村負担がふえる、それから今度は住民の負担がふえる、こういうことにならざるを得ない経過をたどるのではないか、こういうことを危惧するわけです。  最後に市長さん、これは政治哲学ですが、市長さんの立候補に当たっての公約でそれぞれやられていると思いますから、その点の公約の一端を述べていただいて、私の質問を終わりたいと思います。町長さんも公選ですから、これも改めて町の人たちに約束することでありますので、ひとつお答えをいただいて終わりたいと思います。よろしくお願いします。
  55. 大武幸夫

    大武参考人 大変忌憚のない意見を述べさしていただきますと、地方団体が大変富裕であるというような御意見がございますけれども、私ども観点としては、一部をもって全体を律することは非常に危険であるというぐあいに思います。  それから、三割自治という言葉がございますように、やはり地方自治といたしましても、行政サービス等について欠けるところが今の段階ではあるわけでございます。したがって、今までの長年の慣習といいますか、決めの中で決められたいろいろな国と地方団体との関連においては、やはり十分審議して、両方納得いく、いわゆる責任の分担をはっきりさせたような中でいろいろ行革を進めていただきたい、こういうぐあいに思っているわけでございます。
  56. 坂本常蔵

    坂本参考人 行政改革というものは、私は常に時代の、政治の流れについてやっていかなければならぬというふうに考えているわけでございます。その原点はやはり住民サイドというものにあるだろうというふうに考えておりますけれども、私は、このたびの行政改革あるいは財政再建というものが、ただ単に金減らしだけによってやるんだというようなことは、これはどうかというふうに考えておりまして、やはり行政をしておりますと、ある点については改革すべき点は十分改革し、あるいは財源の支出につきましても、均等にこれを減額するということが果たしていいのかどうか。どうしても必要であるという場合については増額する場合もあり得るわけでありまして、そこの点については、我々最先端にある者といたしまして、まず十分これを認識し、行政に反映していくというのが我々の姿勢であるわけであります。  以上であります。
  57. 越智伊平

    越智委員長 川崎寛治君。
  58. 川崎寛治

    ○川崎委員 大武参考人、また坂本参考人には特に年度末の大変忙しいときに急な御出頭を願いまして、本当にありがとうございました。心からお礼を申し上げたいと思います。それから他の参考人先生方も本当にありがとうございました。お礼を申し上げたいと思います。  ちょっとお残りいただきましたのは、今一部をもって全体を見てもらっては困る、こういうことに対しまして、財政審あるいは大蔵、財政当局というのは、地方は裕福だ、だから国と一緒になって苦労せい、こういう趣旨でございますね。  そこで、これは館参考人にお尋ねをしたいのですが、今全国市長会会長代理さんは、そういうことで一部をもって全体を見てもらっては困る、そしてこれが続くなら大変だ、こういうことで、今沢田委員とのやりとりでいろいろございました。財政審にもお関係になっておられます立場からしまして、今の全国市長会会長代理さんの大武参考人のその御意見というのは大変大事なポイントだと思います。ですから、答申をお出しになられます立場、また、先ほどの御陳述いただきました点も大変食い違っておる、私、こういうふうに思いますので、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  59. 館龍一郎

    館参考人 それではお答えいたします。  私の陳述の仕方に多少誤解を招くようなところがあったかもしれませんが、私、全体として地方が楽であるというように考えておるわけではこざいません。国と地方とを比べた場合、相対的に地方にまだ余裕があって国の方が財政状況は厳しいという状況にあるので、そういう状態にあるときにはお互いに譲り合いの精神を、そのときどきに、国に余裕があるときには無論国が地方の面倒を見るということが必要だし、地方に余裕があるときには地方が面倒を見るのがいいんではないか、そういう意味で、地方が決して大変楽であるというように申し上げているわけではございません。ただ、そうは申しましても、地方の中には相当余裕のある団体のあることも否定できない事実である、こういうように考えておる次第でございます。
  60. 川崎寛治

    ○川崎委員 私は楽であるなんという表現はいたしておりません。ですから、そういうとり方で表現されますことは大変迷惑でありまして、つまり一部をもって全体を余裕があると見てもらっては困る、こう大武参考人の方がお述べになられましたので、そういう点で言ったわけで、地方が楽であるなんということは私は申しておりませんので、その点は明確にしておかないと、そういうあいまいなことでこの議論をすりかえてもらっては困る、こういうふうに思います。その点をひとつはっきりしておきたい、こう思います。  それからなお、余裕があると言うけれども、それは地方の全体じゃないのだ、余裕のあるところもあるのだ、こうなりましたならば、なおさら一律ということには大変問題があるのではないか、こういうふうに思いますが、大武参考人、いかがでしょうか。
  61. 大武幸夫

    大武参考人 とやかく私の方から申し上げる内容ではないと思いますけれども、私どものいわゆる地方団体としての総体的な意見としては、やはり地方団体影響がないように、どの団体にも影響がないようにひとつお願い申し上げたい、こういうような立場でございます。
  62. 川崎寛治

    ○川崎委員 館参考人に大変恐縮ですが、つまり、余裕のあるところもあるのだ、こう御表現になりました。そうしますと、なおさら一律ということは大変問題があるのじゃないか、こういう点もはっきり浮かび上がると思うのですね。その点、いかがでしょうか。
  63. 館龍一郎

    館参考人 お答えいたしますが、楽という言葉について一言申させていただきますが、楽というのは余裕があるという意味でございまして、基本において御趣旨と違うわけではございません。最初に数字で申し上げましたように、公債残高をとっても公債依存度をとっても公債費をとってみても、地方と国とでは非常な違いがある、そのことが大事なのだということを私は申し上げたつもりでございますので、その点は、私の方もひとつ誤解のないようにお願いしたいというように存じます。  それから、余裕のある団体があるのに一律というのはおかしいではないかというお話でございますが、これは余裕のない、と言うとまた語弊があるかもしれませんが、大部分の公共団体については交付金等の方法であるいは建設公債の発行という形で手当てをするわけでございますが、余裕のある団体についてはそういう特別の措置を講じないとか、そういう形で調整を行っているわけでございまして、完全に一律に結果として取り扱うということになっているわけではないというように理解しております。
  64. 川崎寛治

    ○川崎委員 お二人、どうぞ。大変ありがとうございました。
  65. 越智伊平

    越智委員長 ほかの党、いいですか。  大武坂本参考人におかれましては、御多用のところ御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございます。感謝を申し上げまして、御退場いただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)  川崎君。
  66. 川崎寛治

    ○川崎委員 肥後参考人にお尋ねしたいのでございますが、財政再建の目標を五十九年に最初置きました。しかし、それは失敗をしまして、六十五年に延長したわけでありますけれども、もうそれも尋常一様じゃない、こういうふうにお述べになられているわけでありまして、また、行革特例法案のときにも大変お世話になったわけでありますが、そうしますと、つまり六十五年を目標に財政が苦しいからということで補助金を削っていきますね。負担金を削っていきます。六十五年に実際にできなかった、今もうそういう羽目になる見通したと思いますね。先生もそういうお見通しを言っておられるわけです。  そうしますと、そのときに生活保護費であるとか、義務教育費国庫負担制度であるとか、つまり地方財政法の上の大変根幹にも迫るそういう問題、あるいは福祉の、これは予算委員会その他でもずっと議論のある点でもありますし、当委員会でも議論がある点でございますが、実際にやれないときに、国民の方の福祉あるいは教育制度、そういうものは財政の事情で変えられてしまう。六十五年にはもう既に変えられてしまっておるということになりますと、その目標の設定ということ自体に問題がありますし、また、そういう進め方に大変問題がある。ですから先生も、できない、しかし一方では財政の事情だ、こういう点でお述べになっておるわけでありますが、そうなりますと、民主主義、あるいはもっと言いますならば憲法に基づいております戦後の経済民主主義、そういうものの根幹に今触れてきておる、こういうふうに思いますのですが、両先生はその点をどういうふうにお考えになりますか。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕
  67. 肥後和夫

    肥後参考人 十分なお答えになるかどうかわかりませんが、まず第一に、六十五年度に赤字公債依存を脱却することが不可能であるかどうかということなんですけれども、中期財政展望は御承知のように一定の仮定に基づいて税収の見積もりをやっております。経費については後年度負担推計法で積み上げでやっておりますが、税収の方は名目GNP成長率の一定の仮定のもとにやっております。  この仮定が、例えばいろいろなふうに——これは本当に私個人の責任で申し上げているわけですが、やはり手がたく推計しなければなりませんので、これまでの、過去の長期の平均値を一応土台にせざるを得ないわけです。そうしますと、やはり景気上昇過程では景気下降期の平均がかなりウエートを持ってきます。ですから、例えば景気の下降期には、今度は景気上昇期の平均がウエートを持ってきて過大な見積もりになる。そういう面もありますし、税収の所得弾性値にしましても、法人税や所得等の税収の伸びというのは、景気の長期的な動向でどうなるかというのはなかなか正確に見通しができないのではないかと思っておるわけです。でありますから、非常に頭のいい人たちがみんなでつくったのですが、この前の中期展望の前提になっておる成長率が過大であったというわけですね。でありますので、私は、必ずしも不可能とも断定していないわけでございます。  ですから、例えばだんだん、六十五年度にきちっとできるかどうか知りませんが、この技術革新という一つの時代の上げ潮のあれが効いてかなり税収に余裕が出てきたときに、逆に今度は、今本当に安定成長時代に見合うような制度をこういうときに頑張ってつくっていかなくちゃならないのに、それがうやむやになってしまって、また後に悔いを残すという面もあるのではないか。日本の経済力には活気がありますので、この際はやはり、財政危機になったということは要するに納税者の負担の合意のないような給付水準というものが、例えば昭和四十八年度の福祉元年の宣言がそうでありましたけれども、そういったものを土台にしてできているものを見直さなくちゃならないという面があるのではないか。この点は、国際的に福祉国家の危機という問題が出ておりますので、福祉を支えられる社会的な力との見合いということがあるのではないか、そういうふうに思っておるわけでございます。  特に、先ほども申しましたけれども、これからいわゆる年寄り、高齢者がどんどんふえていくわけでございますから、そのときに税金を負担する、子供を抱えて教育がかりで、住宅ローンを負っている、そういう人たちの負担と、それから高齢者その他の給付とのつり合いがとれないのではないかという心配を多くの経済学者がこのごろ警告しておるという事実もやはり考えまして、相当長期的に責任の負えるような制度をつくる、そういうことに向けて努力を続けていかなくちゃならないのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  68. 川崎寛治

    ○川崎委員 館参考人にお尋ねしたいのですが、財政審が義務教育費国庫負担制度対象を見直せ、こういうことを言っておるわけです。それで文部省は予算の編成の過程の中で、義務教育費は義務教育根幹に触れるということで大変抵抗をしたわけでありまして、この財政審の答申というのは、中央と地方とか、あるいは義務教育費国庫負担制度そのものというこの検討なしに、正直に言いまして、その点は十分な検討なしに財政上の事情で予算の編成ということに追い込まれたわけであります。  そういたしますと、財政審の立場からしまして、義務教育費国庫負担制度根幹に、つまり旅費教材費という点に限定をしましたけれども、永久に国庫負担制度から削除する、廃止をするということは義務教育費国庫負担制度根幹に触れると私は思うのです。その点は、黒崎参考人もそういう御指摘をしておられるわけでありますが、財政の事情というものがそういう教育制度根幹に触れておるんだという点については、館参考人はどういうふうにお考えになりますか。
  69. 館龍一郎

    館参考人 お答え申し上げます。  国の非常に重要な施策が財政の面だけから決定されるということがあってはならない、一般原則としてそうであるということは、私も同感でございます。  ところで、この場合、義務教育費のうちの職員旅費であるとか教材の一部補助であるとか、これは全く補助がなくなるわけではございませんで、国から直接補助するということが廃止されるということであるという点を踏まえた上で、果たしてそのことが義務教育根幹に触れるかというように考えた場合に、私どもはこれは根幹に触れるというように考えなかったわけでございまして、そのこと自身が廃止されるわけではないのであり、それは地方で考えていただくということであります。さらに、これが国庫補助になりましたのも、時間的に考えてみましても、初めから国庫補助であったわけではなくて、後に国庫補助に追加されたというように私は承知しております。  そういうことを踏まえて、今のような非常に厳しい財政事情のときに、やはりどこかで負担していただかなければこれは財政の再建というものはできないわけです。財政サービスについてのある程度の低下であるとか、あるいは実質的に税負担が上がっていくとか、あるいは受益者負担というような形で負担が上がっていくとかいう、何らかの形で負担増なしには財政の再建はあり得ないというように考えておるわけでございまして、これは今のような非常に厳しい財政事情ということを考えて、ぜひ国民の御理解協力をいただきたいというのが私ども基本的な考え方でございます。
  70. 川崎寛治

    ○川崎委員 それでは、次に黒崎参考人にお尋ねをいたしたいのでありますが、財政当局は当初、今度提案されております旅費教材費の上に、さらに学校事務職員、それから栄養職員の給与も国庫負担制度から外したい、こういう提案であったわけでありますが、それは世論あるいは文部省の強い抵抗といいますか、そういうもので私は旅費教材費ということにとどまったと思うのです。しかし今、館先生は根幹に触れていない、こういうあれですが、ただ大変大事だと思いますのは、財政の事情が制度根幹を侵すということであってはならないという原則的なお立場をお述べになりまして、私はその点大変正しいと思います。  そこで、文部省が、義務教育無償の原則の根幹だ、こういうことで旅費教材費も含めた義務教育費国庫負担制度というものを積み上げてきたわけですね。二十八年からでございますけれども、そういう経過があったのは戦後の日本の財政困難とかいういろいろなものもあったわけでありまして、そういうものの上で積み上げられてきた、こういうふうに思うのですが、そういたしますと、私はやはりこれは根幹に触れる問題だ、こういうふうに思っておりますし、単なる補助率削減とは大変性格を異にする本質的な問題だというふうに受けとめております。館先生も一部はそこを根幹に触れているという御認識もあると思うのです。しかし、財政事情だということでそこのところを飛躍しておられるわけでありまして、これもこの法律の中の非常に大きなポイントだというふうに私は思っております。  そこで、その点について、先ほどは十分なお時間もなかったと思いますので、ひとつ先生のお考えを伺いたいと思います。
  71. 黒崎勲

    黒崎参考人 今の問題ですけれども、館先生のお考えを承って一番困惑するところがございますので、そのことから先に申し上げたいと思うのです。  現在、日本の教育だけではないと思いますが、我々が身の回り、つぶさによくわかるこの日本の教育を見ておりましても、何が一番問題なのかということで議論されている問題は、教師が孤立して教師だけで教育をする、そういう形で、今の教育問題を何とかしていくということが非常に困難になっている。昨今の教育改革の中では、教師の資質を高めるというような形で先行するという議論の経過があったように思いますけれども、そのことが出てくる背景にも、本当の問題は子供たちの教育をどういう力で打っていくかということについて相当根本的な見直しをしなければいけないような事態に立ち至っているというのが、日本だけではありません、現代社会に共通する教育問題のあり方ではないかというふうに考えているわけです。  そういうふうに考えますと、今お尋ねである教材費旅費というような問題、あるいはこの過程で取りざたされました他の学校職員の問題というようなことがどういうふうに位置づいてくるかというと、これは決して日本の義務教育活動の中の周辺に位置づく問題ではないというふうに考えるのが、今日の教育問題をまじめに考えておる人間の非常に共通した認識になっている。これは私だけの見方ではなくて、非常に多くの人々の共通の認識になっているのではないかというふうに思うわけです。  幾つかの例を挙げて本来はゆっくりお話をしたいところですけれども、例えば一つだけ例を挙げさせていただきますと、私は、アメリカ合衆国のここ二十年ぐらいの教育改革動向というものを自分の専門の一つのテーマとして関心を持って見詰めてまいりましたけれども、その中でも、とりわけニューヨークというような大都市における教育改革基本的な理念はどういう形で今表現されてきたかというと、リコネクション・フォー・ラーニング、学習のための再結合、そういう理念によって結晶化されて論じられてくる。これは何を言うかというと、学校で子供たちを教育するということが単に学校だけでできることでもなく、あるいはもちろん学校が中心になりますけれども、その学校で子供たちを教育するということが、単に教壇に立つ教師だけがその子供たちに何か物を伝えれば、子供たちがちゃんとまじめに覚えて教育がうまくいくというようなとらえ方で教育問題を到底語ることができない。したがって、例えば学校を取り上げれば、教壇に立つ教師以外のさまざまなそこで働く教育関係者、あるいは学校に非常に関心を寄せる地域の人々、とりわけ親の期待というようなものが、学校の教師に対して直接水路を開かれるといいますか、学校の門が開かれるといいますか、そういう形で進めていく以外にない。それに対応して、今度は教育実践の質というものが旧来の考え方から非常にイメージを広げまして、教室で子供たちが学習活動をしているその姿というのは、単に机の前に座って黒板を見て勉強するというような形で教育実践が進むものでは到底ない。もっと豊かな子供たちの活動を全体として組織しながら教育が進んでいく、そういうことでなければ、今日の教育問題は、国民全体の中から非常に現状は危機だというふうに言われていますけれども、その危機を打開することができない。これは私だけの個人的な意見ではありませんで、諸先生が例えば最近出回っております教育ジャーナリズム、教育雑誌というものをお開きいただければ、これに類する話がたくさんどこにでもある、そういう問題だというふうに思っているわけです。  ですから、館先生がおっしゃられたように、確かに旅費教材費というのは後から義務教育費国庫負担制度の中に加わった。そのことはまことにそのとおりですけれども、それは後から加わったから周辺的なものであって、もしそれに対して財政上何か手を加えなければいけないときにはそういうものから少しずつ手をつけていこう、そういう形で後から加わったということを理解していただくと、今日国民教育に期待をかけているその期待と非常にすれ違ったところで問題が立てられてしまう、そういうことになるのではないか。そのことが一番私にとってはといいますか、教育にとりわけ関心を寄せ専門的に教育の問題を考えてきている者にとっては、今回の法案にかかわって一番困惑しているところでして、くれぐれも、財政の困難というようなものから教育がひとり聖域であるはずはないわけですけれども、その問題を検討する際にも、今日どういう質の教育実践が求められており、それに当たってどういう形で教育財政制度というものが援助を与えなければいけないのかということを、もう少し今日の教育実態に即した形で厳密に、丁寧に検討していただきたい。  旅費教材費、さらに取りざたされておりました学校事務職員その他、つまり教壇に上る教師以外の教師活動というものは、今日の教育においては決して周辺的に位置づくものではなくて、そういう人々協力をどういうふうに組織するか、もっと真剣に教師活動とどう結びつけるか、そのことが今日の教育改革の焦点になっているということをひとつ御理解いただきたいと考えます。
  72. 川崎寛治

    ○川崎委員 私も同意見でございます。でありますから、財政当局が考えました、教壇に立って教える教員だけがといいますか、それが義務教育根幹をなしているんだという考え方をするとするならばこれは大変な間違いだと思いますし、このことは、後ほどまた法案審議の中でもいろいろと論議をしていかなきゃならないだろうと思うわけであります。学校をめぐります地域の父母あるいは文化的なそういう活動をされる方々、そういう方も含めまして、また、学校の中というのは分業だと思いますから、そうしますと分業がどう成り立っていくかということによって教育の環境整備もできるわけでありますので、その点は今後の議論を深めていきたいと思っております。  そこで、大蔵省は、財政制度審議会なり政府税調なり、一応そういう審議会を通して立法するという習慣を積んでおるのでありますけれども、きょうは文部大臣おりませんから後ほどの議論になるわけでありますが、文部省の場合にはそういう議論を積み上げる場所がないのですね。ですから、行政当局が法案を出したり改正提案をしたりということをやっておりまして、この点はもう大変大きな問題点であります。これは後ほどまた議論したいと思うのですが、でありますから、財政制度審議会が出しましても、それを受けた議論なしに予算編成というところに追い詰められておる。こういう経過がありますので、これは日本の教育行政上の大変大きな課題だと思います。しかし、これは先生方にお尋ねをすべき問題ではないと思いますので除きます。  ただしかし、短期の財政需要というものが教育なりあるいは社会保障制度なり、そういうものの根幹に触れてきておるという点では、立法過程というのは今大変大きな危機にある。財政の危機だからそういう立法過程はどうでもいいんだ、やむを得ないんだという短期の処理の仕方をしてはいけないと私は思いますから、これは政府に対する問題として今後追及していきたいと思うのであります。本来なら臨調や臨時教育審議会などで、まさに提起されております国と地方の問題なりあるいは今日の教育の危機の打開の問題なり制度そのものの議論があってしかるべきだったと思うのでありますけれども、全然そういうものにこたえないで別のところへ走っておるわけでありまして、これはいろいろと審議会自体の問題でもあるわけであります。  今教育自由化とか、いろいろございます。その教育自由化という問題は、学校教育における自由という問題と今日言われておる教育自由化という問題とはまた質の異なる問題でありまして、今後の大変重要な課題だと思います。私は、教育自由化というのは、一方で言いますと教育財政の問題にもかかわっておる重要な問題提起でもあろうかというふうに思っておるわけであります。その短期の財政需要にこたえていく場合には長期の教育あり方というものを破壊をしてしまうという点については、先ほど来お尋ねしてきた点でもございますが、今日の教育自由化というものについて黒崎先生はどういうようにお考えになられるか、教育財政学者の立場からひとつ御意見を伺いたいと思います。
  73. 黒崎勲

    黒崎参考人 教育自由化をどういうふうに考えるかというお尋ねですけれども、とりわけ教育財政制度の問題としてどう考えるかというお尋ねだと思いますので、そういう形でお答えをしたいと思います。  教育自由化というのは非常に華々しく取りざたされておりますので、改めてその内容について申し上げるまでもないと言うべきかもわからないのですけれども、我々の専門とする立場からあの議論を見てみますと、教育自由化というのは、本来言われ始めたのは決して臨教審教育自由化を主張する方々が最初ではないわけでして、そのモデルとなったような考え方が既にあるわけで、これも六〇年代のアメリカ合衆国の教育改革議論の中で非常にクローズアップされてきたことだと言っていいと思うのです。  今日紹介されている教育自由化理念のモデルは、もとより一九五五年に書かれましたミルトン・フリードマンという人の教育クーポン券制度と言われるものがモデルになっているかのごとく議論が進んでおりますけれども、本来この理念が現実の教育政策影響を持ち始めた、今日でも持っておりますけれども、そのことに即してこれを考えてみますと、決して今日流布されているといいますか、多くの人々の間に広まっているような単純な物の考え方ではないということがわかり、そのこととの関係で今日の義務教育費国庫負担制度見直しというようなこととも密接にかかわってくる、そういうふうな思いがございますので、ちょっと長くなって恐縮ですけれども、少し入り組んだ説明をさせていただきたいと思うのです。  もともと教育自由化という理念はどういうふうに出てきたかというと、今日、義務教育という形で非常に大規模な財政を伴って初めて国民教育が行い得る、そういう時代になって、教育財政制度というものがひとり歩きをする、硬直化してくる、そういうことに対して、もう少し教育の実際の当事者たち、子供や親の期待や要求というものに教育がもっと柔軟に対応するための教育財政制度というものをつくろうではないか。逆に言いますと、教育財政制度の仕組みに手を加えて、いわばかたい形で制度化されてきた教育制度を、より子供たちや親の期待に柔軟にこたえるようなものにしていこうという、もともと発想としては教育財政の仕組みを検討する、そういうふうに始まってきたものでして、その考え方の中には決して、義務教育費を私的な負担の方へ回していこうとか公共的な教育費負担の総額をそれによって減らすことができるであろうとか、そういうような期待から教育政策の中に持ち込まれたものではないということをはっきりさせておきたいと思うのです。  今日、よくこの問題のときに取りざたされますミルトン・フリードマンという人の理念だけを見ておりますと、何かおのずとそういうことによって教育に関する公共的な公費負担が、効率的になることによって減少していくであろうという彼の期待は述べられておりますけれども、そういうところが現実のアメリカ合衆国の教育財政政策教育改革政策に受け入れられたというふうに広まっているのではなくて、今までのように公共的な費用によって十分な教育制度を用意する、そのことについてはますますそれを強めようという考え方基本でして、その中にあって、しかしそれが真に子供たちのためになるといいますか、子供たちに対して教育力を持つような学校制度に結実する、そのために教育制度全体の改革への非常に強いインパクトを持つものとして独特の教育財政システムが考えられようとした、あるいは、ある程度の実験をされたということになっている。  その点をかなり多くの教育自由化議論に参加する方々が十分に踏まえていないように思いますので、初めに基本的に教育自由化というものを本来ある形で議論をするのであれば、今言ったような性格を持つものだ、とりわけ貧乏な家庭の子供たちに——日本よりももっとずっと貧困な家庭と富裕な家庭との教育環境の違いが激しい社会の中で、貧乏な子供たちの教育をいかに充実させるかという観点から出てきたものだということを、あるいは多くの方々には既に御承知のことかもわかりませんけれども最初に申し述べさせていただきます。  その上で、今言ったように公共的な教育費負担、例えば義務教育制度に対して、今よりももっと充実した公共の費用をもってそれを充実させるという観点から本来出てきました教育自由化論が、もし臨教審などというようなところで真剣に受けとめられて、そういう形でこれが今日の教育改革中心理念になっていくというようなことが仮にあるとすれば、そういう動向に対して、今回の義務教育費国庫負担見直しを含むいわゆる補助金一括法案あり方といいますか動向というのは大変逆行することになるのではないか、そこのところが一番私には問題として感じられることであります。  もちろんこの今申し上げましたことの中には、義務教育費国庫負担制度は非常に安定した、定着した制度だというふうに先ほどから申し上げてきましたが、それは確かに定着をし、安定した日本の教育財政制度根幹をなすものですけれども、やはり実際の運用についてはかなりいろいろな点で見直しをしないといけないところを含んでいるわけです。義務教育費国庫負担制度の中で、制度が必然的にそうなるというふうには言えないと思いますけれども、実際の今日の文部行政財政活動においては非常に教育財政というものが硬直的になっている。硬直的になっているということは、要するに本来学校で使えるはずのお金が、教師が本当に考えてこういう教育活動のためにその財源補助として使いたいというふうに言うと案外これが使いにくい、そういう問題が実際の運用の中にもいろいろあるわけです。  ですから、今日の教育財政制度は、基本的に非常に歴史的に安定した制度であるといいましても、これを改善する要素は相当たくさん実際の運用の中ではとりわけあるわけでして、そういう問題をこの際はぜひ真剣に取り上げて、これだけ義務教育費国庫負担制度というものの対象削減したりなんかするというほど大胆なことを提案しているわけですから、ならば、本来もっとそれに先行してやるべき日本の教育財政制度基本的なあり方は何であるのか、その中で、義務教育費国庫負担制度はいかなる内容で、いかなる運用を保障すべきなのかということにまで深くさかのぼって真剣な議論をすべき、そういう格好の時期なのではないか。  そういう点で、そういう性格の問題が補助金一括法案という形に一括されてしまうことによって十分な議論が妨げられる。そのことを非常に私は残念に思っているものでして、ぜひとも、今日の義務教育費国庫負担制度にさまざまな立場からさまざまな御意見があるのだと思いますけれども、それを十分に検討して、今の制度のよさを確かめる、あるいは今の制度の中の問題を改善していくという議論に立ち返っていただきたい。そのために、先ほど冒頭で意見を述べましたときに、ぜひともこの一括法案の中からこの部分だけは少なくとも切り離して独自の十分な時間をとった議論をしてほしいと申しましたのも、今言ったような趣旨でございます。
  74. 川崎寛治

    ○川崎委員 黒崎参考人にはどうも大変ありがとうございました。  それから、財政制度審議会の立場からも、今お聞きいただきまして教育制度根幹に触れてきておるという点について、これは見解が違うと思いますけれども、そういう御指摘もあったわけです。義務教育費国庫負担制度という問題については、財政当局と文教当局との間でこれからまた相当な議論も続く問題だろうと思うのです。そういたしますと、財政の要求に応ずる、制度根幹を変えていくという短期的な問題は大変問題でありますし、それだけに一括法案という形でくくられておることについては議論が大変あると私たちも思っておるわけでありまして、この点については、先生方とここで議論をするわけにまいりませんので、私は私の見解を申し述べてとめておきたいと思いますけれども、今度の法案の中でやはり一番大きなポイントだなと感じております。それは館参考人のお述べになられた中にも私は大変感じておりますので、それぞれの先生方の御意見というものを十分踏まえさせていただいて、私たちは今後の法案審議に臨んでいきたいと思いますので、特に義務教育費国庫負担制度の問題に絞りながら先生方にお尋ねをいたしました点、感謝申し上げて、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  75. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 沢田広君。
  76. 沢田広

    ○沢田委員 先生方、先ほどそれぞれ皆さんの高適な御意見をいただきまして、厚くお礼を申し上げます。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕  肥後先生、述べられた中にもありますが、政府は一年だと言っていた、次には今度は三年もまた延ばす、こういう形が果たして政治哲学といいますか、その場しのぎにごまかしてという意図があったかなかったかは別といたしまして、そういう方法で出してくるという法、初めから五年で出したら恐らく通らぬだろう、だから最初三年と出しておいて、次に延ばそう、今度のもまた一年と出しておいて、そのときになったら、財政事情が難しいから、国債も大変しょっていることだから延ばそう、こういうやり方が政治の信頼をつなぎとめていく上に立って果たして妥当なものなんだろうか。あるいはもっとせんじ詰めれば、中曽根さん自身の寿命がそんなに長くないから、それ以上のことは出したら自分の権限外にわたるからという善意な見方もあると思うのでありますが、その点は先生はどういうふうにお考えになりますか。
  77. 肥後和夫

    肥後参考人 どうも非常に難しい御質問をいただいて、お答えになるかどうかわかりませんが、私は五十六年の秋の行革関連法案のときに参考人に出ましたので、今度の法案に対する感慨が非常に深いわけですけれども、今度の行革関連法案の一年延長は、必ずしも今の御質問の趣旨ではないんじゃないか、どうも失礼ですが。  と申しますのは、厚生年金関連あるいは共済組合関連、こういう年金関連の制度改革が国会で可決をなされば動き出すわけでございますから、そうしますと、六十一年度国民年金も動き出す、あるいは共済年金のいろいろな改革も動き出すということになれば、やはりそれを待って、六十年度延長して一年待って、そこではっきりした制度の見通しが一応立てられる、しっかりした議論ができるということになるんじゃなかろうか。これは児童手当についても同じだと思うのでございますね。そういう意味で、今度の行革関連の特例法案の一年延長というのはそれなりに非常に意味があるんじゃないかと私は解釈しておるのでございます。
  78. 沢田広

    ○沢田委員 時間が短いものですから失礼でありますが、これは一言ずつお答えいただきたいのですが、今までの地方団体は、高度成長の時代に膨らんでいたぜい肉がまだあり過ぎる、民間なり国なりは精いっぱいやってきた、地方はまだぶくぶく膨れ——私みたいな者が言うのはあれですが、膨れ過ぎている、だからもっとぜい肉落としをしなければいかぬという意見が言われるわけであります。  その点簡潔に、やはり地方の行革はこの一括法案を含めてぎりぎりなんだ、あるいは目的別にやるべきだ、あるいは現状が妥当なんだ、そのいずれかの回答で、答えの言葉を言ってしまっては恐縮でありますが、先生方はもっと学識が豊富ですからいろいろを言い方があると思うのでありますが、時間の関係で、地方財政全体を眺めて、国と地方とのあり方の中でこれからどう対応すべきかという点で一言ずつ御教示をいただきたい、こういうふうに思います。大川先生からお願いいたします。
  79. 大川政三

    大川参考人 先ほど来お話がありましたように、今回非常に多くの法律にまたがるものを一括して提案しておる。これは、財政上の理由ということが強く反映してそうなっていることに対する御疑念がるる御披露あったわけでありますが、私も原則的に言えば一括についてはやや疑問を持ちますけれども、しかし、先ほどの私の考え方のように、こういうことは悪いんだというだけを指摘すれば足りるものではなくて、なぜそうせざるを得ないのか、もしそういう一括法案を提出しなければどういうマイナスが出てくるのか、それと絡めてやはり私としては考えたい。  しかし、かといってこれからの本質的な論議をネグレクトするわけではなくて、今後そういった本格的な論議をますます進めていただきたい、こういう希望は持っておりますけれども、そういう意味でごく暫定措置としてやっておるし、暫定措置なるがゆえに国の方でも地方に対する暫定的な補完措置は講じておる、そういう見合いになっていると思います。
  80. 黒崎勲

    黒崎参考人 やや専門を異にしますので意見を差し控えようかと思ったのですが、一言だけ申し述べさせていただければ、今大川先生とちょうど逆の方から物を私どもは考えておることになるのかわかりませんけれども、こういう形で削減対象になっていくというそのことの影響が、具体的にどういう形にあらわれてくるのかという、数字で指標化されるその奥にといいますか、現実に各分野で何が起こってくるのか、私の場合ですと教育活動というところにいきますけれども、その問題をやはりつぶさに具体的にとらえて検討していただきたい。そのことだけ一言申し述べさせていただきたいと思います。
  81. 館龍一郎

    館参考人 一言お答えいたします。  もう申し上げるまでもないことでございますが、補助金の内容そのものについては予算審議において既にその審議は行われているわけでございまして、この一括法案は国と地方との分担関係の問題を規定する法案であるというように考えますと、一括という形をとるということは効率性の観点からいっても適当であるというように私は考えております。  地方と国との財政事情関係につきましては、先ほど申し上げましたように、相対的に余裕のあるところから相対的に苦しい方へ少しは面倒を見るというのが当然ではなかろうか、こういうように考えております。
  82. 肥後和夫

    肥後参考人 国がスリムになったとは言えないと思います。まだまだやることはいっぱいあるわけであります。やっと例えば今のような制度改革に切り込んできたとか、あるいは金がないから各省の壁をとにかく超えて相互に話し合っていこうというような穴があいた。穴があき始めたわけですから、これからまだまだというふうに思うわけです。そういう意味で、五十九年度でだめだったからといって看板をおろさないで、六十五年度に設定してまた頑張るというのがいいことだと思っております。  それから、地方の方がぜい肉があるのかという点ですが、地方財政計画ベースのいろいろな指標について館先生は御発言になったのですが、何しろ三千三百の地方団体があって、それぞれ特殊な事情があるわけですから、一概に言えない面があると思います。  ただ私は、あるいはちょっと皮肉に聞こえるかもしれませんが、こういうふうに思っているのです。結局、一律の補助金カットと言われますけれども、弾が当たっているのは大都市圏の富裕団体である。大都市圏の富裕団体では、私も武蔵野の行革の委員長をやりましたり都財政の再建の委員をやったりしたわけですが、部かの富裕団体では納税者の目がむしろ厳しくなっているんだ、だからその納税者の厳しい目にこたえられるような効率的で公平な行財政運営をやるということが今大都市圏の富裕団体に求められているんじゃないか、そういうのがどうもアメリカ、日本を問わず一つの時代の流れになっているのじゃないか。それで、そう余裕のない地方団体は起債と交付税できちんと面倒を見るわけですから、そういう一律の形をとっているけれども、やはり富裕な余裕のある地方団体に弾が当たるような仕掛けになっているのじゃないかというふうに見ているわけでございます。
  83. 沢田広

    ○沢田委員 どうもありがとうございました。終わります。
  84. 越智伊平

    越智委員長 午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  85. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  86. 坂口力

    ○坂口委員 参考人先生方には大変お忙しい中をきょうは御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。お忙しい御日程のようでございますので、こちらもできるだけ短縮をいたしまして集中的にお聞きをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕  けさほどからいろいろと先生方の御意見をちょうだいしたわけでございますが、もう少し先生方お話の中でお聞かせをいただきたいと思う点もあったわけでございまして、そうした点をまずお聞きをしたいと思います。  まず、大川先生の方から、補助金の一律カットに合わせまして、国が地方になすべきことの一端として裁量権を与えるというようなお話をされたわけでございますが、国と地方との事務分担その他のなすべきことの割合等、これもやはり再検討をしなければならないことであり、むしろこちらの方が先にあって、そして補助金の問題がその後から出てくるというのが手順としては正しいのではないかというふうに私ども実は考えているわけでございますが、先生のお話にそうしたお話の一端が実はございまして、時間が十分ございませんでしたので先生に十分なお話をちょうだいできなかったわけでございますので、そうした点をもう一度ひとつ先生の方からお聞かせいただければというふうに思います。
  87. 大川政三

    大川参考人 論理的に申しますれば、補助金補助率をカットするような提案がもしあった場合には、例えば義務教育とか公共事業費とか、それを公共部門全体としてどれだけの負担をすべきか、そういうようなことがまずあって、その後で、同じ公共部門で引き受けるとしても国と地方でどういうふうに引き受けるか。その国と地方で引き受ける割合なんかは、一般的な議論として言えば、同じ公共性でも地方的な公共性と全国的な公共性というようなものはあろうかと思います。  そういうような詰めをした上で、公共部門が引き受けるべきか、公共部門が引き受けるとすれば国と地方でどういうような分担にすべきか。これは確かにおっしゃるように、本来の理屈からいえば、そういうことを各補助金個々について積み上げた上で、最終的に国としてどれだけ削減になるのか、地方負担するか、そういうことが結論されるはずでございますけれども、先ほどちょっと触れましたように、その意味では臨時的な便法措置を今回国がとろうとしておる。ある意味では、便法的な措置を国がとるがゆえに、それによって地方負担に重大な変化を生じないような補完的な措置をあわせとっておる、これはそういう臨時的な措置に見合うべき補完的な措置であろう。  そして、もし国と地方との負担割合をある程度詰めた上でそういうふうに長期的な制度として固まるならば、別段の補完的な措置が必要でないと思いますけれども、やはり国としても、先ほど言いましたように、財政再建のための歳出削減というものをやるからには地方に何かもう少し与えるべきものを考えてやったらいいんではないか、地方としても、もし地方負担が強化されるならば国に対してもう少し要求すべきものは要求したらどうだ、これは確かに正しい点である。で、地方の方も、最近は地方の支出の中でかなり非効率的な支出があるような批判が相当あちこちで発言されているわけなんであります。その発言に対して、地方としてもある程度反省していただく必要があろうかと思いますが、私は他方、地方の方もそういうような批判を受け身的に受けるだけではなくて、地方として何をすべきなのか、この社会経済変化の激しい中で地方としてやるべきことがどんどん出てくるのではないか。そういったものを地方の方でも積極的に考えながら、その上で自分で負担をすべきものか国の補助に仰ぐべきか、そういう議論地方の方としてももう少し積極的にやるべきだ。  そういうような、まだ地方としてもやり残されている仕事が仮にあるとすれば、そして現在の支出の中で仮にそれほど必要性がないものがあるとすれば、大変むだなことをしていることになる。やるべきことをしないで、ちょっと何か今やらないでもいいことで使っている、これは大変地方としても非効率的なので、地方歳出がむだだから切られる、それだけを受けとめないで、自分たちでまだ何をやらなければならないか、それと比べて今それほど必要でないものをもっと必要性の高いものに向けていく、こういう積極的な努力地方の方にも必要ではないか、そういうふうに私は考えております。
  88. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  先生が今御指摘になりましたところは、どちらかと申しますと、地方が自主的にと申しますか、自分たちの方から率先してやらなければならないことに焦点を当ててお話しいただいたわけですが、一番最初意見をお述べいただいたときに、国の方が補助率のカットをするかわりにと申しますか、それとセットにして、国の方が地方に対してもう少しこういうふうなことをしてはどうかというような点があるのではないかという御意見をつけ加えられたようにちょっと思ったものですから、お聞きしたわけでございますので、その点で、もう少し御意見ございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  89. 大川政三

    大川参考人 今回のような措置を国から一方的に地方に押しつけるんだ、あるいは地方が一方的に国からの要求を甘受せなければいけないんだ、こういう一方的な関係では今私は考えたくないわけであります。  先ほど言いましたように、やはり国の方としても、みずからの歳出削減ということによって国なりのメリットがある。しかし、それをただ一方的に押しつけるのではなくて、国としても余り細かなところまで干渉しないで済むところがあれば、もう少し地方の自主的な裁量権の選択の幅を広げるような形でそれと組み合わせてやるならば、地方の方の受け取り方ももっとスムーズになるのではないか。しかし地方の方も、余り自主的な裁量権は必要ないんだということでも補助金をとにかく量的に取ればいいというところもあるいはあるかもしれませんけれども、一応効用と費用との経済的な選択のセットの中で、お互いに国は国、地方地方で考えてもらう、こういうような選択の条件設定をした上でお互いに協力したらどうか、こういうことなので、今回の六十年度暫定措置においてもそのような、一応補助率引き下げるかわりにある程度地方裁量権部分的に広げる措置も補完的に含まれておるようでありますけれども、今後補助率を正面から議論する場合には、もう少しそういうような補助条件の緩和と補助率引き下げということを詰めた上で、地方も選択するし、国としてもそういうような条件のところで地方協力を得る、こういうふうにしたらどうかというふうに思っております。
  90. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  もうお一方、肥後先生にも今大川先生にお聞きしましたのと同じような質問をさせていただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  91. 肥後和夫

    肥後参考人 先ほど意見陳述の際に申し上げたわけでございますが、今度の六十年度法案は、財政再建のための非常手段であるというふうに考えております。確かに、御指摘のように望ましい姿は、あるべき姿をまず詰めて、そしてそれから具体的な手段に移っていくというのが筋だと思いますが、やはり私は一年を争うものではないかと思っているわけでございます。この点は先ほども申し上げたとおりでございます。
  92. 坂口力

    ○坂口委員 次に、館先生にお伺いをしたいと思いますが、先ほど先生のお話がございまして、その中でマクロで見ました国と地方お話が出ました。確かに、マクロ的な数字は先生が御指摘になりましたような数字になるのであろうと私も思います。  ただ地方の場合に、例えば公債の依存度を見ました場合に、確かに国とそれから地方とを比較をいたしますと、地方の場合には七・八%、国の場合には二二・二%、こういう数字になるわけですが、地方の場合には純粋に地方税だけに対する割合ではなくて、その中に補助金だとか交付金だとかいうものも含めた全体の地方予算に対する割合でございますので、地方が受ける感じといたしましては、自分たちの実財源といいますよりも国から出してもらったものを含めての形でございますので、やはりもっと窮屈な感じを実際には受けているのではないかというふうに思うわけでございます。その点、先生のお考えをもう一つお聞きをしておきたいと思います。
  93. 館龍一郎

    館参考人 お答えいたします。  今御指摘のとおりに、地方自治体によっていろいろの事情の違いもございますし、特に今のような措置を講じた場合に、マクロで見た状態よりは実際に地方の自治体、公共団体の方がお感じになる実感は厳しいものがあるだろうということは事実でございますが、これは甚だ厳しいようなことを申し上げているようにとられるかもしれませんけれども、多少やりくりが苦しくなるという感じが出ることによってさらに合理化節減のために工夫をしようというインセンティブが与えられるという面もなくはないというように思いますし、そのことは、要するに国、地方を合わせて全体として節減合理化が進まなければ財政の再建はあり得ないということを考えますと、必ずしもマイナス面だけではないのではないだろうかというふうに考えております。
  94. 坂口力

    ○坂口委員 補助金のカットに対する効率と申しますか、効果と申しますか、そうした面に触れられたわけでございますが、もう一つ、補助金を交付金に変えるというものがかなりあるわけであります。  今回、補助金から交付金に変えるものが七項目ございまして、その内容を見てみますと、無医地区における保健婦の設置費補助金の交付金化、これは沖縄の場合と離島の場合と同じ内容でございますけれども、分けて書いてございます。同じこれは保健婦に係るものでございます。それから国土利用計画法の中に、これは土地利用規制等対策費及び地価調査費に係る補助金の交付金化。それから過疎地域振興特別措置法の一部改正で、これはやはり無医地区における保健婦の設置費補助金の交付金化。それから漁業法の一部改正がございます。それから植物防疫法の一部改正と、農業委員会等に関する法律の一部改正、こうしたものになっておりまして、今回出ましたものは、全体の中で占める割合はそう大きなものではございません。ただ、農山漁村に係るものがほとんどでございまして、この七つの中で三つは保健婦さんの設置費補助金の交付金化になっておるわけでございます。  実は、私も議員をいたします前に経験があるわけでございますが、私ごとを申し上げて恐縮でございますけれども、私は献血の運動を実はやっておりまして、昭和四十年当時に初めてこの事業が交付金の中に盛り込まれたわけでございます。ところが、都道府県によりまして理解のあるところとないところがございまして、交付金の算定基礎の中に入ってはいるのですけれども、実際には、都道府県によりましては、献血なり献血事業に対して金をつけますところとつけないところと実は出てくるわけでありますね。  ですから、例えば今回のこの保健婦さんの設置費の補助金の問題にいたしましても、こういうふうな補助金が出ておりますと、地方としてもこれはどうしても保健婦さんを雇おうということになるのですが、これが交付金の中に入れられてしまうということになりますと、ややもしますと、保健婦さんが必要だという意味が十分にわからない都道府県あるいは市町村におきましてはカットをしてしまう可能性も多分に含まれていると私は思うわけであります。  その意味で補助金を交付金化しますものにつきましては、どちらかといえば切られそうな、ややもすればなくなってしまいそうな部分を交付金化することは私は実は反対でございまして、これは都道府県といえ、あるいは市町村といえ、もう削ることはできないというような問題をむしろ交付金化するのならまだしも、非常に弱いところ、ややもすると削ってしまう可能性のあるようなところを交付金にすることは非常に格差を大きくいたしますし、大変重大な問題を含んでいると実は私は考えるわけでございます。  こうした点につきまして、各先生の御意見を順番にひとつお伺いをさせていただきたいと思います。まず大川先生からお願いを申し上げます。
  95. 大川政三

    大川参考人 現在の補助金を交付金化するのにどういう項目を選ばれたという具体的な詳細は私は存じ上げませんけれども、これは相当、財政当局なりあるいは厚生省を中心として地方の方とお話し合いの結果、だんだんそういうようなことになったんだと思います。  私の論理から原則的に申しますと、補助金というのは非常に細かなところに条件をつけられるわけで、申請するのにしてもあるいは支出後の結果についても非常に詳細な報告義務を国に対して負う、そういうような大変細かな縛りがあるわけで、それに対してもう少し縛りを緩くした形でやるのが交付金だと思いますが、金目の点で言えば、交付金もやはり広い意味での補助金であって、したがって国の歳出を節約するという点ではその出し入れはないわけです。ただ形を、非常に縛りの強い補助金というタイプから、もう少し縛りを緩くしてある程度地方自主性に任せるような形式に変えたというふうに私は了解しているのです。  私の論理からいえば、縛りを緩くしてもらったことによって地方としての選択の余地が広がるわけでございまして、その点からいうとむしろ地方としての仕事はやりやすくなると考えるのですけれども、先生の御議論ですと、むしろ何か今まで支出していたものの縛りがとられてしまうと消えてしまうんじゃないかというおそれを大変持っておられるようですが、それは地方の方がよほどしっかりしていただくなり、今まで自由がなかったから自由を与えるとその自由の活用の仕方にちょっと戸惑うというようなことであるとすれば、地方の側でも、保健婦さんのことはその地方にとって本当に必要であればそういう議論が通るような仕組みなり議論の仕方を考えていただく方が本筋ではないかと私は思います。
  96. 黒崎勲

    黒崎参考人 補助金という形態を選ぶか交付金という形態を選ぶかということは、教育行政にとっては非常に深刻な問題といいますか、歴史的に問われ続けてきた問題であるわけですね。その過程で教育に対する認識ということが教育財政制度をどういう形で選ぶかということにかかわって問われ続けてきた歴史的な経過がございますので、それを離れて一般的にどういうものを原則とするかという形でお答えをすることはちょっと差し控えさせていただく、それだけのことを申し上げることにとどめさせていただきたいと思います。
  97. 館龍一郎

    館参考人 何か財政当局のような発言をするのにややためらいを感じないわけではないのでございますが、今度の合理化の中で一般財源化あるいは交付金化する、そういうものの選択の基準としては、既に御承知のことだと存じますが、既に補助目的を達成したと認められるもの、それから地方公共団体事業としてもう既に定着しているというものを中心にして整理合理化をするという考え方に立ちまして一般財源化、交付金化を図ったというように思われるわけでございます。  そして、その点についてどういうように考えるかと申しますと、先ほどからほかの参考人の方も申し上げていることでありますが、要するに交付金化あるいは一般財源化ということは、それだけ地方自主性をある意味で尊重するということでございますので、そういう地方自主性をもっと尊重すべきであるという地方側の要請あるいは社会的な要請にもある程度がなっている。先生の御心配のようなことが全くないかどうかということになりますと、それは全くないとは私も思いませんけれども、しかし、中で地方自治体が本当にそれが必要であると考えればそれをみずから手当てしていくというように努めるべきものであるというのが私の基本的な考え方でございます。  私はどちらかといいますと、あらゆるものを地方の自主権に任せるようにしていくのがいいかと申しますと、地方の時代であるからといって何でもかんでも地方に権限を移譲していくというやり方に賛成ではございません。特に現在のように行政地域が固定化されてしまって、例えばベッドタウンのようなところは昼間の人口はほとんどない、そういう自治体にまで同じようにどんどん権限を移譲していくというようなことは適当でないというように考えております。そういう考え方ではございますけれども、なおかつ、今の点については以上のように考えております。
  98. 肥後和夫

    肥後参考人 大川先生、館先生と同じ意見でございまして、もともと国が地方を信頼できない、それでとにかく望ましい行政サービスの水準を確保しようということですと、一応補助金にひもをつけていろいろ監督するということが必要になるわけでございますが、一応地方自主性自律性を尊重するという立場でいきますと、やはりひもつきにするよりはひものつかない交付金の方がよりベターであるはずではないか。確かに、いろいろ実情に精通しておいでになりますと、そのために保健サービスの水準が低下するというような場合もあろうかと思いますが、そこは大川先生も言われましたようにやはり地方努力をなさるべき筋のものではなかろうか、そういうふうに考えております。
  99. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  それぞれ御意見をお伺いいたしましたが、先生方が御指摘になりますように、各地方におきまして交付金にすることによってアクセントをつけることができる、自由裁量に任される部分が多くなるというプラス面も確かにあることは私も決して認めないものではございません。  ただしかし、そういうふうなプラス面があります反面におきまして、中央におきましては非常に重要なことであると考えておりましても、地方にそのことが十分に伝わるまでにはやはりタイムラグがございまして、地方におきましてはなかなかそれが理解をできないというところもまた実はあるわけでございます。最近のように、行政改革等がやかましく言われ、そしてまた職員の定員等の問題も非常にやかましく言われるような時代になってまいりますと、非常に重要だと思われる部門、この保健婦さんの問題が出ましたので、この問題を中心にして申しましたが、例えば保健所の中の職員でございますとか保健婦さんなんかをまず切っていくというような姿勢が、地方公共団体によりましてはないとは実は言いがたい。むしろそういうところが非常に多々あちらこちらに見受けられるということがあるわけでございます。そうした面を考えますと、交付金にいたしますものにつきましても非常に慎重に考えて、そうしてそうした心配の非常に少ないような、先ほど先生方が御指摘になりましたように、自由裁量が十分発揮できるような部門につきましてはこれは考えてしかるべき問題かというふうに思いますが、しかし非常に危険性の多いものも中にあるという私の考え方を実は申し上げて、先生方の御意見を伺ったわけでございます。  もう私に与えられました時間が参りましたので、これで終わらせていただきたいと思います。まことにありがとうございます。
  100. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 玉置一弥君。
  101. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 大変お忙しい中、また長時間にわたりまして、御苦労様でございます。  今回の補助金一括法案、まさにいろいろなものが含められておりまして、個別に見ていって果たしていいのかなという気持ちで我々も取り組みを行ってきております。先ほどから先生方の御意見、いろいろお伺いをいたしておりましたけれども、大きく分けますと、行政改革の中においての補助金見直しというものはやらなければいけないけれども、ほかに得られるものが何だろう、こういうことが一つ大きく取り上げられておりますし、また、それぞれの成立した条件が違うのであるからそれなりの見きわめをつけていかなければいけない、これは黒崎先生でございましたけれども、それと、やはり経済的な物の見方をしなければいけないというような御意見もございますし、まさにそれぞれの御意見そのとおりだと思います。  今回特に補助金を一括して引き下げるということは、先ほどから御意見が出ておりますように国の財政難を見るに見かねて行った措置ではあるにしても、地方負担転嫁をするというようなことにしかならないということで、我々の方も今大変強い反対をしようというふうに論議をしておるところでございますけれども、しかしまず一つ、今の行政改革あり方、またその行政改革の中で補助金についての考え方、こういうものも整理をしていく時期ではないかというふうに思うわけです。  今までの政治の流れから見てまいりますと、戦後の復興期から経済の高度成長、そして激動期、今はもうまさにどっちを向いて動くかわからない、場合によっては大きく飛躍する可能性もありますし、また飛躍する部分が一部にとどまって、残りはいわゆる壮年期に入った経済というか、そういう形になる可能性もあるということから考えていきますと、一応今までの成長期に合わせた中でのいろいろな事業地方自治体におきます事業、このものについても一つの方向を見定めていかなければいけないのではないか、こういう気持ちでございます。  しかし、地方行政の人員配置あるいは国と地方との力関係あるいは財源配分、こういうものを見ておりますと、どうも中央集権に持っていくための補助金というような感じが私自身してならないわけでございまして、これを手放したならばいわゆる国家権力の行使というものが非常に難しくなるのではないかというのが片方にあるわけです。それともう一つは、地方自治体がより住民に密接な関係でございますから、地方自治体がこの補助金を扱ったならば、逆に選挙に利用されないか、これは野党でございますから当然そういう心配があるわけでございますけれども、こういう見方がございます。先ほどからの論議をいろいろ聞いておりまして、私自身まさにどちらがいいのか若干の迷いがあるわけです。  しかし、行政改革一環として、少なくとも地方自治体から中央官庁に来る陳情あるいはいろいろな説明、ヒアリング、そして事務手続、こういうものを省略してはいけないのではないかということが一つと、それから超過負担の問題、非常に細分化されております補助金、これについていろいろな条件がございまして、その条件に合わなければ補助金が出ないというところから、例えば一つの公民館と図書館あるいはほかの複合施設の関係を見ても、トイレなり入り日なりあるいは通用門といいますか、そういうものが別々につくられている。こういう現状を見ますと、何とか補助金の統合というものも進めていかなければいけない、かように思うわけです。それと、先ほどからお話が出ておりましたように、事業として既に地方に定着しているものについては、まさにもう地方のものでございますから、これは自主財源ということで地元に割り振りをするということにしていかなければいけない、こういうふうに思うわけでございます。  ですから、まとめて言いますと、第二交付税というような、いわゆる今の補助金の特に零細分割された補助金については、できるだけ一括した形で地方に渡して、どういうふうに使うかというのを自由に決めていただく。もう一つは、今国税のウエートの方が高い状況でございますから、これを地方財源にやはりある程度戻していくというようなことも考えていかなければいけない、こういうのが私の考えでございます。  そこでまず大きい話でございますけれども行政改革の中での補助金合理化というものをどういうふうにやっていけばいいのかということをそれぞれの皆さん方からお答えをいただきたいと思います。
  102. 大川政三

    大川参考人 大変大きい問題でございますが、補助金合理化ということはいろいろな側面からとらえられると思いますが、第一番目の基準からいえば、先ほど言いましたように、公共部門の中で国と地方がどのような割合で引き受けるのか、それに合わせて補助率を決めていく。もしその間にギャップがあれば、それを本来負担すべき分野に合わせて補助率を、ある仕事について全国的な公共性があるならばそれに見合うような中央政府からの補助率をつけていく、これが補助金合理化の一つの基準であろうかと思います。  それからさらに、合理化という内容、合理化という言葉によって地方自主性を生かすようなことを含めて言うならば、先生が御指摘になりましたように第二交付金とおっしゃるんでしょうか、あるいは細かな特定目的の補助金をある程度共通の目的でくくって、その範囲内で地方自主性を生かす、こういう地方自主性を生かすという合理化考え方もおありかと思いますが、私も基本的にはそういうような方向、かといって、先ほどほかの参考人の方がおっしゃいましたように全部地方に任せるという意味ではありませんけれども、それは国家利益性に基づいてはある程度やはり補助金という形が残るかと思いますが、しかし、基本的にはそういうようなメニュー化といいますか、補助金のメニュー化あるいはブロックグラントというような言葉もありますけれども、そういう方向地方の方が真剣にみずからの必要性を考えていく。  しかし、先ほどちょっと御指摘ありましたように、そういうふうに自由を与えると地方としてもちょっと戸惑ってしまう、そういうようなことがあるとすれば、これはお互いに先生方を通じて、そうならないように一生懸命御勉強していただくということをお願いせざるを得ないんじゃないかと思います。
  103. 黒崎勲

    黒崎参考人 先ほどの質問と同じで、一般的な形でお答えすることは留保させていただきますが、行政改革の中でという形で今問題が問われていますので、教育問題に関して行政改革の中でという問いかけがどういう意味を持つかというふうにだけ問題を考えさせていただく、それしかないのですが、問題になっておりますことで考えますと、つまり日本社会が経済的に成熟をするといいますか、社会として成熟をする。そのことがこれまでと違った補助金制度だったり財政制度全般について新しいものを要求している、そういう考え方がありますとすると、教育問題は、実はそういう新しい成熟した社会と言われるその社会が新たに大きな教育問題の源泉になっている、原因になっている。そういう関係があるわけでして、その観点からいきますと、むしろ行政改革を必要とする現代社会の中で、実は教育問題というのはそういう社会を原因とした新しい大きな課題を引き受けなければならないという関係にあるんではないかと思うのですね。そういう意味で言いますと、教育財政問題、教育財政制度を今日いかに考えるべきかという点について、他の分野の財政問題とは多少その質を異にする問題がそこにあるというふうな認識を持ちたいというのが私の意見でございます。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
  104. 館龍一郎

    館参考人 お答えいたします。  一般的に国、地方を通じて補助金整理についてどういうように考えるかという点を申し上げてみたいと思いますが、これは補助金も租税特別措置も、片一方は税金であり片一方は補助金でありますけれども、プラスとマイナスの違いがあるだけで基本的には同じ性格を持っておるというように申してよろしいと思いますが、その税制の特別措置なり補助金について申しますと、まず第一に検討されなければならないのは、その補助金の目的が現在の時点においてなお非常に重要なものであるかどうか、その点について国民の合意が得られるようなものであるかどうかということでございまして、それは時代とともにその目的の重要性も変遷してまいりますから、絶えず目的の見直しを行い、今やその目的の重要性が落ちたと考えられる場合にはそういう補助金整理するという方向で考えるべきであると存じます。  それから二番目に、その目的を達成するための補助金の交付が果たして目的達成に有効であるかどうか、交付の方法を含めて果たして有効であるかどうかということをこれまた絶えず検討しなければなりません。もし仮に、目的が非常に重要であってもその補助金によっては目的が達成し得ないものであるならば、そういう補助金の交付は無効ですから、整理する中に加えるべきであるというように考えます。  三番目に、やはりこの補助金が後代へ負担を残すことになります。したがって、後の世代に対する負担観点も考慮しながら、後の世代に非常に大きな負担を残すような補助金については非常に慎重な検討を行い、余り大きな負担が後に残るような場合には、それを整理するということが補助金及び租税特別措置についての基本的な考え方であると申してよろしいのではないか。  そういう点で、従来から補助金整理が行われてきたように思いますけれども、皆さん補助金整理すべきであるということの御指摘はなさりますが、個々補助金になりますとそれぞれもっともな理由があるから設けられたというところもございまして、整理が大変難しいというところに悩みがあり、実際に補助金を受けておられる方々に、しかし全体のバランスにおいてそのことはこの際我慢しなければならないというような理解をしていただくという必要があるのではないかというように考えております。  以上であります。
  105. 肥後和夫

    肥後参考人 三先生が既に理路整然とお答えになられまして、私が申し上げることもなくなったのでございますが、一応先ほども申し上げましたのですけれども補助金というのは、やはり一定の行政サービスの水準を国の立場で確保するために非常に強力な手段であるわけですが、一方で、そのように行政サービスに規格を厳重にしますと、いろいろ中央から地方に事細かに文句を言わなければならない。そういう意味で、中央の地方統制、干渉というものが出てまいります。ですから、もし地方がちゃんとやれるということであれば、なるべくひものつかない形で出す方がいいんじゃないか。ですから、特定補助金よりは一般補助金の方が望ましいのではないかということになろうかと思います。  ただ、補助金というのは見返りなしでもらえるお金でございますので、どうしてもその分だだだという感覚がありまして、全体としてやはり、納税者の負担しているお金であるというコスト意識が伴いませんから、効率を阻害するような傾向もあろうかと思います。そういう意味で、やはり補助金は絶えず見直す必要があるのではないか。特に補助金をもらうときには一生懸命になりますが、一たん補助がつきますと、もう当たり前になってありがたくないというようなことになりますので、ますますそういう非効率性というものが出てくる。しかもこれをやめようとすると非常な抵抗がある、非常に難しいという面があるわけでございます。  それからもう一つは、やはり補助金といいましてもいわゆる負担金である場合もありますし、要するに本来国が責任を持つべき性質のサービスで、国にかわって地方にやってもらうかわりに国がその費用を負担するというのもありますし、地方の責任ではあるけれども国の立場で助成するといういわゆる狭義の補助金もありますし、今まで議論になりました交付金のようなものもありますし、あるいは利子補給金のような、補給金というような形もあります。いろいろありますが、基本的には国の責任と地方の責任と、あるいは民間の責任と、そういうサービスについての責任領域をはっきりさせる必要があるのじゃないか。それが地方の側から国に対して主張される負担の一方的なしわ寄せにならないようにすべきであるということで、この点はやはりそうだろうと思いますが、そのためには責任領域についてのしっかりした相互の話し合いが必要なのではないか、こういうふうに思っております。  以上でございます。
  106. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 何か一問で終わりそうなんで、あとお一人だけちょっと一問お答え願いたいと思います。  館先生のお話の中で、いろいろな見直しお話がございましたけれども、特に、目的を達成したかあるいは有効であるかということでございますけれども見直しを必ずやるというためには、いわゆるサンセット方式、終わりの時期を設定しなければいけない、かように思うわけでございますけれども、これについてお答えをいただいて、終わりたいと思います。
  107. 館龍一郎

    館参考人 お答えいたします。  今先生御指摘のように、見直しを必ず一定の期間をもって行わせていくためには、終期が決められておるサンセット方式が望ましいことは明らかでございますから、すべての補助金というようには考えませんけれども、特別な目的を持って設けられるような補助金についてはそのサンセット方式がとられるのが望ましい、原則としてはそういうように考えております。
  108. 玉置一弥

    ○玉置(一)委員 ありがとうございました。いろいろ伺いまして、また我々もこれを参考にして、ぜひいい補助金が残るように頑張っていきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  109. 越智伊平

    越智委員長 正森成二君。
  110. 正森成二

    ○正森委員 参考人には御苦労さまでございます。時間の関係で全員にお聞きできないかもしれませんが、お許し願いたいと思います。  伺っておりますと、補助金の点について御意見が出ましたけれども、一律的に補助金ということで締めくくることはできないのです。補助金の中にも、純粋な補助金と国庫負担金と呼ばれる性格のものがありますね。諸先生方にはよく御存じだと思いますが、国庫負担金というのは、国庫補助金と異なって、国が義務的に支出しなければならないものであります。国庫負担金は経費負担区分によって支出されるものでありますから、その内容が明確にされていることが必要であり、またそれは国の財政状況や各省庁の考え方によってみだりに左右されるべきではないというのが、ここに持ってまいりましたが、現代地方自治全集第十四巻の鈴木慶明氏の見解であります。これは恐らく通説であろうと思われます。ですから、地財法の第十条にもそういう趣旨が定められているのですね。  こういう点について、先生方にはどういうようにお考えか。時間がございませんので、館先生と大川先生に伺いたいと思います。
  111. 館龍一郎

    館参考人 先生御指摘のように、補助金の中にもいろいろな性質のものがあることは事実でございます。最初の方でも申し上げたと思っておりますが、こういうように整理合理化を図っていくというこの法律考え方は、そういう補助をやめるということではございませんで、ただ補助のやり方が変る、この際変える、そういう問題であるというように私は理解しております。
  112. 大川政三

    大川参考人 御指摘のように、広い意味での補助金も、負担金とか奨励的な意味での補助金というような区分があるわけで、国の義務性が強いような場合には負担金という言葉を使っておると思いますけれども、これは私の持論で言えば、国家的な利益性が非常に強い場合にはそう軽々に動かし得ない義務的なものであるという点からいえば、そう簡単に補助率負担金の率を動かしてはならないということに原則的にはなるわけであります。  しかし、負担金という名前がついているものについては絶対動かし得ないとまで私硬直的にはまた考えない方で、先ほど言いましたように、いかなるコストがかかっても守るべきである、こういうものは我々の身の回りにはめったにないのではないか。もちろん国家的利益性が非常に強い弱いという区別はありますけれども負担金という名前のものであっても条件次第ではやっぱり見直す状況になる場合もあるというようなことで、私は理解しております。
  113. 正森成二

    ○正森委員 説は承ったんですが、しかし地財法の第十条でも、「地方公共団体又は地方公共団体の機関が法令に基いて実施しなければならない事務であって、国と地方公共団体相互の利害に関係がある事務のうち、その円滑な運営を期するためには、なお、国が進んで経費を負担する必要がある左の各号の一に掲げるものについては、国が、その経費の全部又は一部を負担する。」こうなっておりまして、今回カットされておるものの中には義務教育諸学校に関係するものあるいは生活保護関係するもの全部と言っていいくらい、あるいはその八割、九割が地財法第十条に規定するものなんですね。そして地財法の第二条では、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」というのに対して、役割その他について十分に論議をせずに一律にカットするというのは非常に問題があるという意見は、どうしてもぬぐい去ることができないのではないかと思います。  次に、肥後先生に伺います。  今度の一律カットが十分に財源措置をされており、地方自治体に対して負担がかからないのは結構であるというように受け取られる御趣旨の発言でございましたが、私ども委員会の質疑の中で論議しました限りでは、経常的経費が約二千六百億、それから投資的経費が三千二百億と言われておりますが、そのうち完全に国が手当でいたしましたのは、経常的経費の一千億だけなんですね。経常的経費でも、残り千六百億のうち六百億は、先生も御指摘になりました富裕県ですね、不交付団体については全くそれらの負担になりますし、残る一千億についても、政府の説明を聞きますと、昭和六十六年度以降清算すべきところに一応は入れるけれども、今後一年間の見直しによっては地方負担になり切る場合があり得るということを自治省の財政局長も認めているんですね。あるいはまた投資的経費につきましても、これを二千億と一千二百億に分けまして、二千億の補助金カットに伴う部分については、半分は建設債の元利償還を国が面倒を見るけれども、残りは地方が見なさい、裏負担の増加に伴う千二百億については丸々地方が見なさいということになっていると解釈されているわけで、そうだといたしますと、これは財源の点について地方自治体に負担がかからないように手当てされておるというのにはほど遠いというのが、我々が今まで審議してまいりまして政府の答弁を承っての印象なんですね。この点について肥後先生はどうお考えになるか、承りたいと思います。
  114. 肥後和夫

    肥後参考人 細かい計数については御指摘のとおりだと思います。  とにかく六十年度地方財政計画においては、この五千八百億の財源負担増によって、富裕団体は別にしまして、その他の一般の地方団体財政需要が低下を来すことがないように措置しましたというふうな意味なんでございますね。その後どうするのかというのは、これからの問題でございます。
  115. 正森成二

    ○正森委員 そういう意味ならまさにそのとおりで、今年度は何とかかんとか四苦八苦やっていけるんですね。それが今後元利償還しなきゃならないというときに至ってやはり非常に影響を受けるということは、肥後先生も御異論がないようで、そのことを私ども国会では心配しているんだということを申し上げておきたいと思います。  それで、黒崎先生に伺いたいと思います。先生は教育財政学の専門家でございますが、私どもも今度の教材費旅費等について一括カットあるいは法律の性格が変えられてしまうことは非常に遺憾に思っております。  例えば、私はもともと弁護士でございまして、勤評闘争などで逮捕された方を弁護したこともございますので、そのときには教育基本法を非常に読んだものでございますが、その第十条では「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」十条の二が大事でございますが、「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件整備確立を目標として行われなければならない。」つまり、教育行政の中心部分は、教育の目的を達成するための教育条件整備確立であるというようになっているのですね。その諸条件整備確立ということが十分に行われないで国の責務を次々に切り捨てていくということになれば、先生の教育財政というものは教育の質に大いに関係してくるというお説は、私はまことにそのとおりであるというように考えるわけであります。  教育臨調、御専門に関すると思いますが、それを読ましていただきますと、例えば専門委員の山本七平という人がおります。この人は、自由な私学があれば公立学校にも刺激になる、政府は普通教育に金をかけ過ぎている、政府が初等教育に力を入れる必要はなくなったのではないか、こういう見解の持ち主であります。  これと同じような見解は、アメリカの有名なフリードマンが「教育改革」などで言っておりまして、「教育荒はいの元兇は公立学校教育の中央集権や官僚化である」「この荒はいと質の低下の原因は財政不足のためでないことははっきりしている」と言いまして、有名な授業料クーポン制、これを主張しているんですね。それが我が国にも入ってまいりまして、例えば財界の日本経済調査協議会、代表は木川田一隆氏でありますが、その「自由主義の前進」というような本を見ますと、クーポン制を実施して、そして、いい小学校や中学校、これにはクーポン券がどんどん集まるだろう、そういうところはそれを現金にかえて増改築すればいいというような全くの教育自由化といいますか、民営化、これを公立学校でも唱えているのですね。  一方、松下幸之助氏、京都座会というのですか、あれなんかの主宰者の一人だと思いますが、そういう方もこの自由化を非常に支持されると同時に、一方で自由化だけを言っておられるのかというと、「あわせて規範的教育が必要だということです。かつてわが国には教育勅語というものがあり、国民は子どもに教え躾けるべき規範をはっきりした形でもっていました。そこに盛りこまれた徳目のかなりの部分は、今日の時代にも十分生かして用いることができるものだと思います。”自由”と”規制”、”個性教育と規範教育”それはまさに車の両輪のようなものではないでしょうか」と、こう言って、義務教育に金をかけないで自由化を行うと同時に、教育勅語のようなものを学校教育に持ち込む、これが車の両輪だというような考えを持っておられるようであります。  この臨教審の目指すものが今度の一律カットにも財政的にあらわれていると思い、私どもは非常に危惧の念を抱いているんですが、時間が残り少なくなりました。残る時間内で先生のこの点に関しての御自由な御意見を承って、終わりたいと思います。
  116. 黒崎勲

    黒崎参考人 教育基本法をお引きになりました前段の部分については、そのとおりだと私も考えております。  後段の部分で、京都座会の話が出たりフリードマンの話が出たりした教育自由化については、先ほどもちょっと述べましたことなんですが、改めて簡単に申し上げたいと思うのですけれども、今御紹介になったように、日本で今臨教審というようなところで話されている教育自由化は、今御指摘になられたような特徴を持つものであるというふうに考えております。  先ほど申しましたのは、本来あれらの方々がモデルにしたはずの教育自由化というものは、決して今日日本で論議されているだけのものではなくて、むしろフリードマンという人が授業料クーポンといいますか、教育クーポンといいますか、教育自由化といいますか、そういうものの創始者、提唱者、最初に提唱した人と言われているのはそのとおりですけれども、そのままの形で多くの、例えばアメリカ合衆国の教育改革理念になっているわけではないわけでして、そこで教育自由化に類することが教育政策影響を持ったのは、実はむしろ貧困人々が——富裕な家庭の子供たちならば私学に勝手にどんどん行ける、公立学校が衰退をしても私学に行ける、そういう事態が放置されている、貧困な家庭の子供たちの教育環境が非常に悪化しているという事態をどう解決するか、そういう趣旨から、フリードマンではなくて、むしろフリードマンの言葉を使いながら、フリードマンの精神にかなり批判的な見解を持つ人々によって具体的な模索がされてきた。その経過が全く無視されまして、今日臨教審教育自由化が論議されますときには、何かあたかもフリードマンの理論がアメリカの教育改革のある非常に有力な理論として一世を風靡しているかのごとく言われているという点では、日本の教育自由化論というのは大変恣意的な理論ではないか。そのことの危険性はやはりはっきり指摘しておかなければいけないのではないか。  その上で、しかし、教育自由化という問題については、本来それ以上の内容を含み得る、そういう側面もあるのではないかと思いますので、その点については本格的な検討が必要であり、そのこととの関係で、今日の補助金一括法案で言うようなこういう一括した形で義務教育制度、義務教育財政制度を論ずるのではなくて、教育の問題に即して具体的に時間をかけて検討をしていただきたい、今そういう時期なのではないか、そういうふうに思っております。
  117. 正森成二

    ○正森委員 どうもありがとうございました。
  118. 越智伊平

    越智委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。     —————————————
  119. 越智伊平

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております本案につきまして、さらに参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十分散会