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1985-02-27 第102回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月二十七日(水曜日)     午後二時一分開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 熊谷  弘君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 堀之内久男君    理事 上田 卓三君 理事 野口 幸一君    理事 坂口  力君 理事 米沢  隆君       糸山英太郎君    大島 理森君       金子原二郎君    笹山 登生君       塩島  大君    田中 秀征君       中川 昭一君    長野 祐也君       東   力君    平沼 赳夫君       山岡 謙蔵君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    戸田 菊雄君       武藤 山治君    古川 雅司君       宮地 正介君    矢追 秀彦君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         議大臣官房審  大山 綱明君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         参  考  人         (中央大学商学         部教授)    富岡 幸雄君         参  考  人         (TKC国会         会長)     飯塚  毅君         参  考  人         (国税労働組合         全国会議議長) 渡辺 康之君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   山中 貞則君     長野 祐也君 同日  辞任         補欠選任   長野 祐也君     山中 貞則君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第一五号)  租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第一六号)      ――――◇―――――
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  これより両案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席をいただきました参考人は、税制調査会会長小倉武一君、中央大学商学部教授富岡幸雄君、TKC国会会長飯塚毅君、国税労働組合全国会議議長渡辺康之君であります、  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、両案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。まず参考人から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただいた後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず最初小倉参考人からお願いをいたします。
  3. 小倉武一

    小倉参考人 昭和六十年度の税制改正に関しまして、御意見を申し上げるようにという御要請でございますが、私、税制調査会会長としての意見を述べる、こういう御趣旨だと思いますので、昭和六十年度の税制改正に関する答申に即しまして申し上げる次第でございますので、もう既に先生方承知のことを繰り返すようなことになりまして、むしろはなはだ恐縮に存じております。  六十年度の税制改正につきましては、多少中期的に見まして、これからの財政運営をどうしたらよろしいかというようなことも頭に置いて考えておるわけであります。  御承知のとおり、五十年代を通じまして行われました歳出歳入両面におきまする健全化努力にもかかわりませず、財政状況は一層深刻な状況になっておるというような状況かと思われます。したがいまして、現状のままに推移しますと、財政が果たすべき本来の機能がなかなか果たせなくなりはしないか、あるいは多額の公債発行によって世代間の受益と負担の不均衡という事態が生じはしないか、あるいはさらに将来インフレの要因になりはしないか、あるいは資金需要につきましてクラウディングアウトといったような事態が起こりはしないかというようなことがいろいろと懸念されておるように思われます。  したがいまして、今後のまた財政を展望しましても、このままでは大変難しい状況が立ちはだかっているということでございますので、今後、我が国社会経済の活力を維持し国民生活の安定と充実を図るというためには、財政を健全にしていく、そして財政社会経済に対する対応力というものを回復しておく必要があるのではないかというのが基本的な考え方でございます。  したがいまして、これからの財政運営に当たりましては、引き続き、歳出面の問題につきまして既存制度あるいは施策の根本にまで立ち入った見直しが必要ではないかと思われますけれども、これは税制調査会としてはむしろそういう希望を申し述べる程度でございまするけれども、歳入の面については何しろ税制基本的な役割を果たすわけでございまするし、今後公共サービスの確保に努めるということでありますれば、国民負担にその基本を求めなければならぬ、国民負担に裏づけられた歳入を確保していくというのが税制基本的に課せられておる役割、こう思います。したがいまして、こういう考え方でこれからの社会経済情勢の変化に即応しまして、これに対応し得るよう幅広い角度から抜本的な検討あるいは見直しを図らなければならぬと思います。  つきましては、昭和六十年度でございますが、無論御承知のとおり、昭和六十年度におきまして税収の大幅な伸びを期待することはどうも難しい、こういうことでございます。そういう状況のもとで、公債発行をできるだけ縮減するということが求められておることは言うまでもございません。したがいまして、歳出見直しとあわせまして、税制改正につきましては、前年度に引き続きやはり税負担を一層公平化していくあるいは適正化していくという観点からできるだけ努力を払う必要がある、こういう所存でございます。  それで、六十年度の改正の個々の問題について申し上げますと、第一に法人税のことで、貸倒引当金法定繰り入れ率を引き下げるということでありますが、貸し倒れ実態実績等も勘案いたしまして見直しをするという必要があります。したがいまして、現行法定繰り入れ率がなお平均貸し倒れ実績率に比べ相当上回っておるというようなものにつきましてその適正を図る、そのために引き下げるというふうにいたしたらよかろうということが第一点であります。  第二は、同じ法人税でございますが、公益法人あるいは協同組合等軽減税率につきまして検討を加えまして、それの引き上げもやむを得ないということでございます。もともと公益法人あるいは協同組合というのは一般法人と違いまして特殊性を持っておりますので、法人税の賦課につきましてもそういうことは既に考慮されておる、その上にさらに税率も低いということになっておりますので、いわば二段階に優遇されております。そこで、この点を考慮いたしまして、法人税率につきましては、基本的には一般法人あるいは少なくとも中小法人に右へ倣えするということでいいのではないかと思われます。したがって、現行のこの軽減税率というのは、どちらかというと、協同組合あるいは公益法人の本質に基づくというよりは、政策的に特に優遇するという、いわゆる税調で言う政策税制ということから発足しておるのであろうと思われますので、六十年度におきましては基本税率との格差を少し縮めるということでお考えになっていただく方がよろしいということでございます。  第三は、利子配当等課税適正化でございます。非課税貯蓄制度見直しということでもございますが、これにつきまして、税調では随分長い間かかりましていろいろ審議したのでありますが、意見も、意見というのは、その是正についてのいろいろな意見が異なっておりまして、なかなか一本化することに難儀したわけですが、最終的には多くの方々の御意見としまして、この際、一定額の元本から生ずる利子に低率の分離課税をお願いする方式を導入したらどうかというようなことに答申を申し上げたわけであります。  なお、これとともに限度管理適正化するということの必要性は無論伴うわけでありますが、こういう低率分離課税導入しないときは、限度管理を一層厳しくする、厳正にするという必要があろうということも当然あったわけであります。政府におかれましては多少税調とは変わった考え方がおありになったのだと思いますが、ただし、その限度管理適正化を図る、そしてできるだけ民間の金融機関と郵貯との間のいわゆるイコールフッティングをやるという趣旨で、一歩前進をさせたような法案になっているというふうに承っております。  なお、この利子課税につきましては、これでファイナルになったというふうにはちょっと私どもとしては考えられませんので、今後やはり税制全体の見直し一環としてでございますか、多分一環になるでしょうけれども、そういうものとして、やはり今後もさらに適正化に努めるような利子課税の、あるいは非課税貯蓄制度見直しをしておく必要があるだろうというふうに思います。  第四は、租税特別措置についてでございますが、これはもう累年といいますか、ほとんど毎年のように整理合理化に努めてまいりました。また、実際そういう方針も税制調査会としては堅持をいたしております。特に、だんだんと財政事情が厳しくなればなるほど、この租税特別措置についての見直しをし、その整理をするという必要性が高まってきておりますので、六十年度からは準備金特別償却等について見直しをすべきであるというふうにいたしておるわけであります。  なお、新規にこういう政策税制項目をふやす、創設するという御主張もあったようでございますが、これはできるだけ抑制するというのが税制調査会の建前でございまして、でき得れば新しく項目を立てられることはやめていただきたいというわけでございますが、やむを得なくて新しい特別措置をおつくりになっていただく際は、既存のものを身がわりにやめてもらうというようなことで、スクラップ・アンド・ビルドというのですか、ひとつああいうような原則でやっていくということが必要であろうということであります。  そのほか、タックスヘーブンの税制については大分整備を進めておったわけですが、なお漏れがあったようでございますので、それを整備する。それから自動車関係諸税については、期限が来るというような関係上、それを延長するというようなことがしかるべきであるということを御答申申し上げたわけであります。  最後に、いわゆる税制改革についてでございまするけれども、年度改正答申としてはちょっと珍しいのでありますが、税制の全般的な見直しが必要であるということを申し上げております。  どういうふうに申しましたかと申しますと、「従来、その時々の諸情勢に応じて税制見直しが行われてきたところであるが、既存税制の枠内での部分的な手直しにとどまる限り、所得、資産、消費等の間で適切な税負担のバランスを図るという観点からは税体系に歪みを生じさせ、また、税制を一層複雑化させることとなる」ので、既存税制手直しをするということで糊塗するわけにはどうもいかなくなってきておる。そこで、国民各層にわたって広範な議論をしていただいて、そういうものを踏まえて、「幅広い視野に立って、直接税、間接税等を通じた税制全般にわたる本格的な改革検討すべき時期にきている」という考え方を申し述べた次第であります。  税体系あり方いかんということについては、なかなか難しい問題で、国民各層それぞれが御意見のあるところでございまするので、活発な議論が行われることが期待されますが、税制調査会におきましても、政府からの要請も多分おありかと思いますが、今後、国会でこれまでなされ、また今後なされるであろう御議論も十分踏まえまして、要すればできるだけ早く審議を進めるというのがしかるべきではないかというふうに考えております。  以上でございます。(拍手)
  4. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、富岡参考人にお願いいたします。
  5. 富岡幸雄

    富岡参考人 中央大学教授富岡でございます。  税制改正法案を御審議なさっていらっしゃいます衆議院のこの大蔵委員会出席を許され、所見を述べる機会を与えられましたことは、租税問題の研究者として無上の光栄でありまして、越智委員長を初め各委員先生方にお礼を申し上げたいと思います。  税金問題が国民各層政治的関心の大変高いものになっております。まことに今日、税金問題に対する国民関心は高いのであります。国民政治への信頼度は、税制に対する信頼度によって測定されると申しても過言でないかと思います。国会が、国民のために、国民によって真に高い信頼と尊敬を獲得できる公正な税制実現のために御尽力していただいていることに、まず敬意を表します。  これから述べさせていただく私の愚見が国権の最高機関である国会においてお取り上げ賜り、日本税制の権威と尊厳の確立のためにいささかなりともお役に立つことができればありがたいと思っております。  与えられた時間は非常に短うございます。私は四十年近い租税研究をやってきておりますから、この間たくさんの意見を持っております。昨年の十月からこの一、二カ月の間に書いた論文を、大変僭越ではございますが、「意見陳述参考論文」としてお手元にお届けいたしました。これらにつきまして要点だけ申し上げ、多くの御質問を賜ればと思っております。  最初の第一論文は、「我が国現行税制基本的検討課題」と題するものですが、これは五十七年の二月のある雑誌に書いたものです。したがって、かなり前のものですが、今回読み直しましたら、ほとんどこれがそのまま先生方に読んでいただきたいものです。  まず前提として申し上げたいことは、一ページの左にございますように、三点あります。高度成長によって肥大化した行政機構徹底的な縮小効率化実現する行政改革を一層断行してください。二つ目歳出構造の抜本的な改革刷新と、支出の合理化効率化による歳出徹底的削減の強力な実施が望まれます。ここで論ずる問題ではないかもしれませんが、これが国民の期待するすべての前提です。そして三つ目租税理念の原点に立脚し、公平原理回復を目指す税制抜本的改革の断行により、租税負担公正化を図りながら適度の増税をするということです。以上の三点が前提です。先ほど税制調査会小倉先生からも触れられた趣旨のとおりでございます。  さて、ここで私は、まず何を今やるべきか、巷間言われておりますようにいきなり大型間接税の是非を論ずるのではなく、まずもって現行税制のどこに是正すべき不公平があるのか、税制上の問題点は何であるのか、これを申し上げたいと思います。  一ページの左側の下です。第一点は、所得課税中心現行租税構造堅持緊要性ということです。所得課税が最も公平であり、適正な租税なんです。大型消費税導入による租税構造改悪的変革はなすべきでないということです。これが第一点です。別に大型間接税大蔵委員会に提案されたわけじゃございませんが、提案されてからでは間に合いませんから、今から私は申し上げるのです。これは論文の1にありますように、直接税中心のすぐれた租税構造を持っている我が国税制です。  2は、問題が極めて多く不公平性を増大する間接税移行への反対なんです。ここに書いておきました。一般消費税大型間接税等は、国民生活及び企業経営に与える影響は極めて大きいのです。しかも、その間接税としての性格からして、所得水準の低い所得階層に相対的に重い負担を課することになり、一方、所得水準の高い所得階層には相対的に軽い税負担になるという、逆進性という問題は避けて通れない問題です。租税負担の公平を阻害することが甚だしく、これを検討導入することは極めて重大でございます。赤字財政の克服というような理由によって安易にこれを論じていただきたくないのであります。  二ページの3にございますように、所得課税中心とする申告納税制度は、尊重さるべき国民的文化遺産であると私は考えます。戦後、四分の一世紀にわたる国民的努力によって、所得課税中心とする最も近代的なかつ進歩的な租税制度我が国に次第に浸透し、定着しつつあります。巷間、国民は脱税をするとか所得税をごまかすとか、中小企業税金をごまかすような理解と風潮が多うございますが、そんなことはございません。大部分の国民はまじめに一生懸命確定申告をし、申告納税をしておるのが実態なんです。こういうことを知るべきです。一部の不心得者の存在することを取り上げて、あたかも所得税そのものが悪いような議論一般に行われることは甚だ遺憾であります。  第二点は、二ページの下でございます。総合課税機能回復実現を図る個人所得税制改善策検討してほしいのです。所得税そのものは立派なんですが、今の日本所得税は余りにも惨めです。無残な姿です。包括的な課税ベース総合課税徹底による個人所得税制のあるべき姿へ引き戻してほしいのです。そうすることによって、税収は確保していけます。所得税中心現行税制基本構造堅持現行所得税制抜本改革が必要なんです。  そのためには、三ページにございますような包括的な課税ベース回復総合課税徹底です。現在我が国所得課税において最も問題なのは、課税所得浸食現象タックスエロージョンです。あるべき課税所得がむしばまれて非常に小さくなり、ゆがんでおるということです。これをタックスエロージョンと言っています。ある所得非課税にする、ある所得分離課税にする、所得控除を設ける等々、現在の総合課税制度はまさに空洞化し、崩壊しております。このような課税基準浸食は、税率を必要以上に高いものにしています。日本所得税税率が異常に高いのは、課税標準浸食化がその原因であります。このタックスエロージョンを是正することが先決なんです。先ほど利子配当課税につきまして税調会長からもお話がありましたが、あのような改革では決して課税の公平は期し得られません。なぜグリーンカードをおやりにならないのですか。なぜグリーンカードをつぶしたのですか。国民はそれを嘆いております。  第三点、法人税基本構造抜本改革と、同じく法人税におけるタックスエロージョンの解消です。現在の法人税制は非常に混迷しています。所得税法人税を通じての税制基本的メカニズムに立ち入って抜本的な改革をし、法人税基本構造を見直す必要がございます。これにつきましては、後ほど少し時間をとらしていただきます。  第四点としては、この論文の五ページでございますが、租税公共政策配慮租税負担公平との調和を図る方策です。租税特別措置につきましては、政府努力されて逐次縮小合理化を図っておられますが、この租税を経済政策的に機能させることも極めて重要な意義を持つのです。租税経済的機能というものと公平性をどのように調和させるかは永遠の課題でありますが、英知が求められます。  私はその問題について若干の提案をいたします。  まず、租税特別措置徹底的な整理合理化二つ目は、租税誘因措置に対する定期審査制度公示制度導入です。つまり、だれが幾ら特別措置によって税金をまけてもらっているかということを毎年毎年明確に発表してください。そして、できればこれは産業の種類別に、階層別に、そして一定規模以上になりましたらば企業単位で公表してください。一定以上の多くの減税を受けている企業は、補助金をもらっているのと同じですから、会計検査院の監査と同じように定期監査を、何らかの公共監査を受けるべきです。そして場合によったら、一定以上の特別措置を受けている会社配当を制限するとか、役員の賞与とかそういうものを規制することも検討してよろしいのじゃないでしょうか。その場合、そういう規制を受けたくなかったら減税の恩典を受けなければいいのです。そこに選択の論理が妙味ある論理で働くと思います。  さて、残しました第三点の問題が法人税制改革ですが、これは七ページの論文でございます。  現在の法人税制シャウプ勧告によって導入されたと言われておりますが、その中身は非常に変容しています。そして、七ページに書いておきましたように、法人を、公開法人中小閉鎖法人とを十把一からげにして、同じような課税構造課税所得計算構造税率でやっているところに問題があります。企業の体質、構造に応じてその実態にマッチした税制をつくるべきである。これがいわゆる法人区分論というかねがね私が主張している説であります。  九ページに、法人区分論による法人税制改革基本論理が書いてあります。十ページにございますように、法人実態にマッチした法人所得税制仕組みを構築することです。そうすることによって負担の公平が確保できます。で、近く商法において会社を大小に区分して別な規制をしようというわけですが、この商法改正の動向とも調和しながら、税制においても考えていただくべきだと思っております。  十一ページにございますように、企業三つに分けます。表1にございますように、個人企業、それから資本閉鎖性法人である第一種法人資本開放性法人である第二種法人とし、個人企業も含めて企業課税をこの際検討する必要がございます。そして、十一ページの右にございますように、第一種法人には、これは資本閉鎖性法人ですから法人個人一体主義、第二種法人開放性法人ですから法人独立課税主体主義、こういう考え方整理していくことが必要である。つまり、法人税制抜本改革というのは、法人税制課税基本的仕組みについて検討を加えることでなければならないと思います。  さて、それに伴う課税のシステムは十五ページ以下に詳しく述べておきました。後で御質問いただきたいのですが、公開法人中小閉鎖法人では課税所得計算基準を別にします。貸倒引当金の率の改定が提案されておりますが、そういうものであっても、公開法人中小企業では全く実態が違うのです。税制そのものを区別すべきです。  それから、十五ページの右の方へいきまして、②配当軽課措置は、その論拠があいまいでありますとともに政策効果も得られませんから、これは全廃していただきます。  ③は、法人からの受取配当金についての株主に対する課税は、いわゆる法人個人一体主義から二重課税排除受取配当金益金算入をしています。ここに膨大な課税除外所得が存在しています。日本企業法人株式構造は、機関株主化傾向が顕著であります。膨大な配当収入課税除外されて、傾斜的に大企業に不当な蓄積が行われる傾向がございます。  ④税率構造も、この法人区分に応じて考えていただきたい。中小企業には中小企業負担能力も考慮して、例えば年所得一千万以下は二〇%、五千万以下は三〇%、一億円超四〇%等三、四段階ぐらいにする。アメリカやイギリスにおいてもそのような傾向がございます。それから公開法人につきましては、その実在性に着目して、多段階的な税率をも考慮してしかるべきである。現在の四三・三%を最低税率とした上で、年所得一億円超、十億円超、百億円超といった区分ごとに、一、二%ずつこの際御負担をお願いして財政再建に協力してもらうようにしてはいかがと、こう提案したいと思います。  十六ページには、過去五年間で、この受取配当金益金算入配当軽課措置で実に一兆七千五百二十六億円も税収が減っているという事実を、私は資料によって明らかにしています。その後五十六年、七年はもっと大きな数字になっております。法人税制を抜本的に改革し、中小企業には中小企業実態にマッチした税制にすることによって中小企業の活力を大いに増進し、日本の経済の発展を図るような税制をつくるべきであるということをお願いしたいのであります。  最後にもう一点、時間が過ぎて恐縮でございますが、現在問題になっておるのは、経済の国際化に伴って国際関係税制の整備をすることが緊急であるということです。  現に、この委員会にタックスヘーブン税制改革が提案されております。まことに結構でございます。しかし、まだ必ずしも十分ではございません。特に外国法人税額控除制度には制度としても問題があります。つまり、海外に進出しているような多国籍企業が膨大な利益を上げながら、日本政府には一銭も税金を払っていないというような事実を、先生方はどう考えていますか、答えてほしいのです。日本の一流企業が、膨大な課税所得を申告しておりながら税金がないのです。決算利益がありながら課税所得がないというのは、税務会計と企業会計の違いなんですが、課税所得が膨大なものがありながら、三菱商事六百八十四億、三井物産四百九十四億、日商岩井二百十七億、五十八年三月期決算でこういう膨大な利益を上げながら法人税納付額がないのですね。結局、これは制度にも問題があります。運用にも問題があります。  つまり、現行税制には多くの点に余りにも問題が多過ぎる。これらを徹底的に審議検討し、真に公平、公正にして国民信頼と尊敬を得られるような税制を確立し、財政再建を図ることをぜひともお願いして、意見陳述を終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、飯塚参考人にお願いいたします。
  7. 飯塚毅

    飯塚参考人 TKC国会会長飯塚毅でございます。  今の我が国の最大問題の一つは、財政再建の問題であり、とりわけ「増税なき財政再建」の問題であると私は考えます。  そこで、今国会大蔵委員会において提出された所得税法法人税法租税特別措置法の一部改正案を拝見しまして、非常に残念だと感ずる点が私には三点ございます。  その第一点は、商人一般のより一層の記帳義務の明確化が企図されていない点。第二点は、財政学の大原則である犠牲平等の原則、税法学ではこれを課税正義、または租税正義の原則と呼びますが、この原則の貫徹を図ろうとする条文がどこにも見当たらない点。第三点は、法治国家の基盤をなす行政法律主義の原則を確固として確立しようとする条文がどこにも見当たらない点、以上の三点であります。もちろん税法の不備、不公正な点は他にもたくさんありますが、時間の関係上、この三点をめぐって意見を申し上げ、他は質疑応答の時間に譲りたいと存じます。  第一点の、商人一般の記帳義務の明確化につきましては、大蔵官僚及び当委員会が、昭和五十九年の春の法律改正所得税法第百二十条に第四項を加える等、大きな努力を払って下さった点は心から称賛申し上げますが、財政再建という大目的からすればなおほんの一歩的前進にすぎないものであり、甚だ残念であります。特に、所得税法施行規則第五十七条では「取引を正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りょうに記録し、」と定めておきながら、その「正規の簿記の原則」とは何を言うかについていまだに有権解釈規定を置こうとはしていません。これは東京大学の教授、故田中耕太郎博士の犯した学問上の過ちを今なお引き継いでいることを意味します。速やかに西ドイツ所得税法第五条、同施行規則第二十九条の考え方等を取り入れて、もっとしっかりしたものにしていただきたい。記帳の綿密さは、正しい所得捕捉の絶対的基盤条件にほかならないからであります。  去る二月一日に私は、イギリスの会計事務所で、二万人の職員を抱えておるホーワス・アンド・ホーワス・インターナショナルの会長ハウスフィールド卿の来訪を受け、会談の機会を持ったのでありますが、彼は日本の会計水準の低さを指摘し、国際取引が緊密化してきている段階で非常に迷惑などの抗議を私は受けたのであります。しかし、日本の大蔵官僚や国会議員がこれに気がつかないで直してくれないのだから、どうしようもないではないかと弁明するほかはなかったのであります。ちなみに、ハウスフィールド卿はサッチャー首相の顧問もやっているお方であります。  第二点の、犠牲平等の原則の貫徹を図ろうとする条文がどこにも見当たらないのは重大であります。乏しきを憂えず、等しからざるを憂うというのは、国民の心からの本音であります。トーゴーサンピンは困ります。脱税目的で逃げ回っている無数の納税有資格者を完全に正しく補促するための与野党合同の委員会でもつくったらどうですか。専門的な知識は幾らでも無償で提供いたします。  例えば、所得税法第二百三十九条、二百四十条で、源泉徴収をしなかった、または徴収しても納付しなかった者は条件なしで「三年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と定めておきながら、確定申告書を提出しなかった者については「正当な理由がなくて」という条件での逃げ道が与えられており、さらに「一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。」と大甘に定めている。これは不公正の典型です。もっとひどいのは、今回の法案にもまた、第二百二十九条違反、つまり開業等の届け出義務違反に罰則の条文の用意がない。これでは全国のサラリーマン諸君はたまりませんよ。西ドイツは日本の六・六倍もの税務官吏を抱えながら、開業届け出違反には罰金はもちろん、一年未満の懲役刑まで定めているのであります。カナダでは赤ちゃんにまで申告書が送付される仕組みとなっています。こういう処置をとらずに、どうやって財政再建を図らんとするのですか。  第三点は、行政法律主義の確立を図ろうとする条文がどこにも見当たらない点です。国会は国権の最高機関ではなかったのですか。国会はいつ、法律にかわる通達制定権を国税庁長官に与えたのですか。戦前のドイツのライヒ国税通則法第六条は、法律の欠陥を補正する、または法律の欠けている部分を補正する通達制定の権限を行政当局に与えていましたが、戦後の各国の憲法に相当する基本法、グルントゲセッツと言いますが、その第百二十九条でこれを完全に消滅させました。今や、行政法律主義を無視し通達行政がまかり通っているのは、先進国では日本だけであります。  さらにひどいのは、公認会計士の監査法人の場合を除いて、税理士の事務所を自由に会社にさせないのは、世界の先進国では日本だけです。法務省の次官通達という、国家行政組織法第十四条に真っ向から違反する通達で登記所は登記を受理できないようになっています。私は次官と六時間討論してきたのですけれども、中国本土には米国のビッグ・エイトがどんどん進出しています。日本は一軒も出ていません。反国益的な不公正の典型的見本がここにあると私は信じます。  終わります。(拍手)
  8. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、渡辺参考人にお願いいたします。
  9. 渡辺康之

    渡辺参考人 国税労働組合全国会議、略称国税会議と申しますが、そこで議長をしております渡辺でございます。  私たち国税会議は、国税の賦課、徴収事務に従事しております職員で組織しております労働組合でございます。私たちは、税を執行する職員の立場と労働組合の社会的責任の一端を担うべき立場から、税制に関する調査研究を重ねてまいり、税制改正に関する提言を行い、制度上の不公平是正を求めてまいりました。また、国民の税に関する不公平感は、制度上の不公平感と執行上の不公平感が混然一体となって存在しております。このことは否めない事実だと私どもも認識し、税制の適正、公平な執行を行うに足りる環境整備を求める運動を展開してまいりました。  本日、私は国税の職場における責任組合でございます国税会議二万九千名を代表いたしまして、以上のような観点から、税制の執行上の問題点につきまして三点ほど、簡単ではございますが陳述させていただきたい、このように思う次第でございます。  まず第一点といたしまして、所得の捕捉と実地調査の問題でございます。  我が国における税制基盤である申告納税制度昭和二十五年に発足し、自来私ども国税職員は一貫して、納税者の皆さんがみずからの手で適正な申告をしていただく、このことを希求し、その実現のために難解な税法や通達を理解し、納税者の皆さんに対する指導、相談及び脱漏所得の補正と適正な申告のための牽制効果としての調査、すなわち指導、相談、それと調査、これを執行上の両輪として位置づける中で努力してまいった次第でございます。  申告納税制度は、ようやくにして制度としてはそれなりに定着したものと認識しておりますが、納税者の方々にとっては、まだまだ税は取られるものとの認識が根強く潜在しております。実地調査の結果を見る限りにおきましては、残念ながら所得を過少に申告している納税者が大半を占めております。  具体的に申し上げますと、五十七事務年度における申告所得税の調査実績を見ますと、十五万四千人について実地調査を行いました。その九五%に当たります十四万六千人が、五千二百九十三億円、これを一人当たりに換算いたしますと三百四十三万円の申告漏れとなっております。この脱漏所得額は、昭和五十八年のサラリーマンの平均給与収入三百二十九万円を上回っており、サラリーマンが個人納税者の八〇%強を占めていることを考えますと、税に関する不公平感が充満していることも否めない事実だと思っております。  また、法人税につきましても、五十八事務年度におきましては、十九万八千社を調査しました結果、その八二%に当たる十六万三千社が一兆八百四十九億円、これを一社当たりに直しますと五百四十八万円の申告漏れとなっております。  このように、ほとんどの納税者に申告漏れがある状況下にあって、実地調査は、直接的には不正あるいは不正確な申告を発見し、過少な申告の修正を求め、税の脱漏を補正するという意味におきまして、また間接的には納税者に対し適正な申告を促すための牽制効果となるという意味においても、執行面の公平を確保するための重要な手段ではないかと考えております。  翻って、実地調査を割合で見ますと、申告所得税四・一%、法人税一〇・九%でございます。このことは、個人の九六%、法人の九〇%が調査を受けずに済むという現実にございます。私は、納税者が自主的に適正な申告をしていただくことを望むものでございますが、現実論といたしましては極めて困難であることから、もっと広範に実地調査を実施することが執行上の公平を担保するために不可欠であろうかと考える次第でございます。  しかしながら、最近十八年間で申告所得税の納税者数が二・四倍、法人数が二・三倍、源泉徴収義務者数が三倍と、急増しております。その間の職員数は、当大蔵委員会の諸先生方の御理解、御支援によりまして定員増の附帯決議をいただきました結果、公務員全体といたしまして減員傾向にございますが、私ども国税職員は増員していただきましたことを感謝申し上げます。しかしながら、十八年間でわずか二%の増員しか認められておりません。その結果といたしまして、急増する納税者数、事務量の増加等に対処することができず、内部事務の合理化、一件当たりの調査日数の削減という、職場として、また職員といたしましても血のにじむような努力を重ねております。  このような、職員の旺盛な使命感、責任感によってのみ執行上の公平を図ろうとする措置も、しょせんは糊塗策にすぎず、指導、相談の充実はもとより、経済の発展、拡大に伴う企業取引の大型化、多様化、広域化等を考慮いたしますと、税務調査は従前に増して複雑、困難になっております。限られた職員数では、実地調査率どころか調査件数の維持すら困難であろうかと思う次第でございます。私は、執行上の公平を確保し、執行面から生じるクロヨン、トーゴーサンと称される不満感を解消するために、国税職員の大幅な定員増加を切にお願いする次第でございます。  このことは、単に執行上の公平確保だけにとどまらず、現在、国税職員一人当たりの調査による年間増産税額が六千五百万円強であることから、また、その波及効果等も考え合わせますと、国家財政に対する寄与率は高いものがあろうかと考える次第でございます。一方、国税職員を増員することは徴税強化につながると主張する人が多うございますが、私は、ひとしく制度国民に適用するための措置であり、そのことが税の職場における真の行政サービスではなかろうかと理解しております。さらには定員増から生じる税収増により、制度としての減税も可能になってくることも、あわせて御賢察をいただきたいと思う次第でございます。  次に、第二点といたしまして、執行面を無視した税制のひとり歩きの問題でございます。  本来、制度と執行というものは、同時に同じ土俵の上で議論し、検討されるものではなかろうかと私は考えます。しかし、現在の状況を見ますと、担当官庁でございますが、税制は主税局、定員査定は総務庁、予算は主計局、執行は国税庁と、それぞれの主管が分離されていることもございます。税制改正時にその執行が円滑に行われるような配慮が従来十分行われていなかったのが現在の状況を招いたんではなかろうかと考える次第でございます。  いかに制度面で整備されていましても、その執行に問題があれば国民の税に対する不満を招来いたし、結果として脱税や厭税を招きかねないこととなるのじゃないかと思う次第でございます。現在、税の見直しにつきまして各方面で論議されておりますが、私といたしましては、現行税制下における税負担を公平にすることが先決ではなかろうかと思う次第でございます。その後において、執行面を十分に配慮した税制見直しをすべきであると考えます。  最後に第三点といたしまして、租税教育の問題がございます。  我が国では、憲法第三十条に「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と規定されておりますが、国民にとって税は租庸調の時代から取られるものとの意識が強く、この意識は、歴史的な沿革、税金の使途その他もろもろの問題に起因していることが考えられますが、租税教育の不徹底も大きな要因だろうと考えます。特にイギリスの小学校では、数十年前から、税はきちんと納めることを繰り返し教育しておると聞いております。  我が国におきましても、国民の一人一人が税の持つ意義、目的等を正しく理解するため、義務教育だけにとどまらず、すべての学校教育のカリキュラムに租税教育の時間を加え、その充実を図っていただき、納税思想の高揚を図ることが民主主義への発展の道だと考える次第でございます。  以上で、私の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  10. 越智伊平

    越智委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
  11. 越智伊平

    越智委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊川次男君。
  12. 熊川次男

    ○熊川委員 御質問のトップバッターとして、まず自民党の熊川よりお伺いいたします。  飯塚参考人にお尋ねしたいと思いますが、最近におけるコンピューターの普及、これはまことに目覚ましいものがございます。財務計算面においてもその浸透は極めて顕著であります。しかるところ、先ほど参考人がお示しになりました問題点の第二、犠牲平等の原則こそ国民の税におけるファンダメンタルな理念であり、原理原則であろうと思います。このようなところを考えるときに、最近見過ごすことのできない現象が漸次増加してきております。  例えば、極めてその職業が独立性を担保さるべき職業会計人においてすら、このコンピューターを使って、後日さかのぼって額あるいは期日、そういうものを証拠を残さずに事実と異なる計数関係を反映できるようなコンピューターソフトを活用している面もございます。あるいは一定の職業に関しては一割なら一割、一割五分なら一割五分というものを売り上げから当然控除できるようなコンピューターソフトを市販されている。これはもう白日のもとに堂々と売られている。こういうことが一体どの程度まで浸透しているのか。まず、この実態、現状の程度、どう御認識が、あるいは法的規制面においての先生の所見はどういうものか。特に、正しい租税の債権債務の確定の担保ということこそ、その租税税制における基盤であると思います。諸外国の例などもあわせ参考にさせていただいて、御所見をお伺いいたしたいと存じます。
  13. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  ただいまの熊川代議士のいわゆる犠牲平等の原則の御主張については、私は全面賛成であります。  ただ問題は、今のオフコン、それからパソコン、こういうものは年間約百万台市場に出ています。ところが、一番いい方法は、大蔵委員先生方がパソコンまたはオフコンのカタログをおとりになることです、買うかもしれぬから持ってこいと。カタログをおとりになると、どのメーカーの製品でも、全部さかのぼって修正できますよ、あるいは修正しても跡は残りませんよ、あるいは期間が過ぎちゃってから、十二月になってから十二月、十一月、十月とさかのぼって入れてもちゃんと正常な数字が出ますよということがカタログに書いてありますよ。だから、まず最初にカタログをお取り寄せになると、はあ、ここにでかい脱税の穴があったということがわかる。これが重大。  私の見るところでは、全国の大中小法人残らずと言ってもいいぐらい、実は脱税をやっている。だから最近、新聞を見ますと、一兆円減税の問題について自民党と野党の先生方とが何か押し引き押し引きやっているようなことを聞いていますけれども、ばかばかしいのもほどがある。我々は国会議員じゃないですから、したがって電信柱におじぎして票をもらう必要ない。だから、真実を言いますよ。先生方、どうかこの点をわかってください。実は、大中小もろもろの会社が脱税を唆されているのです、今。なぜか。理由は簡単です。コンピューターを使っての脱税について何らの歯どめも今用意されていないのです。日本だけです。  例えばアメリカの場合、一九六四年の二月二十四日に、内国歳入法六千一条の附属施行令としてレベニュープロセデュアという電算機会計のガイドラインが既に法定されております。それはわずか五カ条ですけれども、まずそれを採用するということが必要だと僕は思う。  さらに、例えばイギリスの場合は、そのソフトウエアが二十三本ぐらいあります。ドイツの場合は、そのソフトウエアが、何と驚くなかれ、四十七本あります。それで、私は、さる郵政大臣――現職じゃないですよ、悪いから。さる郵政大臣に、これは何ですか、先生、ひど過ぎませんか、日本はコンピューターを使って会計をやっている場合には全く脱税のしほうだいだ、これでは財源がなくなってしまうのは当然だということを話したのですよ。そして、ドイツは四十七本持っているぞ、イギリスは二十三本だという話をしたんだ。そうしたら、その郵政大臣いわく、そういうふうに法律がないから、だから我が国のコンピューター産業は発展したのだ、こう言っている。冗談言っちゃいかぬ。たまげたものだ。  特に、ドイツの国税通則法の百五十条第六項、そこには、大蔵大臣は参議院の了解を得てコンピューター会計に関する法規命令を自由に制定することができるという条文がある。そういうのができ上がっている。日本だけないのですよ。どうか、そこをお気づきいただきたい、こういうわけです。
  14. 熊川次男

    ○熊川委員 ただいまのと同じ質問を、小倉会長、本当に時間が少ないので手短かに一、二分でお答え願えたらありがたいと思うのです。
  15. 小倉武一

    小倉参考人 コンピューター会計法人のお話、なかなか重要な問題でございますが、国税庁で恐らくいろいろな手法で、脱税といいますか、適正な徴税を図る努力をされているのじゃないかと思いますが、詳しいことは私、存じません。
  16. 熊川次男

    ○熊川委員 それでは、さらに飯塚参考人にお尋ねしたいのですが、先ほど帳簿の記載は一歩的前進だとか、第一点の問題点で述べられましたが、一歩的前進というのは、不満も含めている意味なのか褒めているのかわかりませんけれども、ちょっとその辺を、どういうふうに持っていくのがベターだと考えているか、具体的に簡潔にお願いしたいと思います。
  17. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  具体的に簡潔にと申しますので、しようがありませんからドイツの立法例をそのまま申し上げます。  例えばドイツ商法の四十三条二項、そこには何と書いてあるか。非常に重要なことが書いてある。つまり、商人はすべての取引を完全網羅的に真実を適時に整然明瞭に記帳しなければならぬと書いてある。それだけじゃない、四十三条の三項に何と書いてあるか。訂正をやってもいい、いいけれども、もとあった取引をどのような時期にどういうふうに訂正したかということが後になってわかり得るようにしなければいけないという規定がある。そういうのが日本にはない。あればしめたものなんだけれども、ない。したがって今は脱税が横行しておる。横行した上で、国会議員諸君はのんきに押し引きやっておるというような現状です。
  18. 熊川次男

    ○熊川委員 国会議員はのんきにやっているわけではありませんが、そこですぐれた御参考人意見を拝聴しているわけであります。  富岡参考人にお尋ねしたいのですが、先ほど飯塚参考人から、コンピューターに関するいろいろの御意見がありました。これに関して、中小企業租税の債権債務の確定担保についての先生の御所感を簡潔にお尋ねしたいと思います。
  19. 富岡幸雄

    富岡参考人 恐縮でございますが、熊川先生の質問の趣旨が必ずしも明確ではございませんが、もう一度質問の要点をお願いします。
  20. 熊川次男

    ○熊川委員 中小企業においては、ごくまれな例を除いては税は非常に正直に納め、担保されているという趣旨の御意見を拝聴いたしました。そこで、飯塚参考人の御意見によりますと、オフコンなどを使って、的確な、正確な納税が担保されているというのは、ほど遠いと昼言わなくても、かなりそこにそごがあるというふうに理解をしたのですが、先生の御所見を承りたいのです。
  21. 富岡幸雄

    富岡参考人 わかりました。  実は、私は現在中央大学教授をしておりますが、その前に十五年ほど国税の職員をしておりました。昭和二十一年から第一線の税務署にもおりました。約十五年間、きょう渡辺さんがおいでですが、渡辺さんたちと同じような立場で、第一線で泥にまみれてやってまいりました。二十一年というのは終戦直後で混乱期でございます。統制経済の時代でございます。その後、申告納税ができ、シャウプ勧告ができ、そして申告納税制度をこの国に定着させる努力を、末端ではございますがやってまいりました。そして、その後三十五年から大学に参りまして、大学でもう二十五、六年でございますが、終始一貫税の問題をやらせていただいております。  私の意見でございますが、飯塚先生の御意見はどうか知りませんが、コンピューター会社が脱税ができるようなものを売り出しているかどうかは知りませんが、それを用いるかどうかは、問題は国民の良識です。コンピューター会社がそういうソフトを売り出したとしても、仮にですよ、国民が全部それを利用して脱税するような文化的水準の低い国民じゃないということを私は信じており、かつ願いたいのです。  そして、確かに脱税その他もございます。しかし、それは調査をなさった者についての割合なんです。いいですか、国税局では限られた人員の中でやりますから、事前調査、事前分析をされて、対象を選定しておやりになりますから、対象を選定したものについて問題が出るということは、税務行政を的確にやっているということです、ある意味において。ですから、調査の割合が極めて少ないのですから、大部分の調査を受ける必要のないような納税者はまじめにやっていると推定することが社会通念に即するのじゃないかと私は思っております。  私は現在、昭和二十三年でしたか、私が日本橋税務署におったときに調査した納税者が、その翌年の二十四年から三十五年間連続して申告納税を是認されておるまじめな納税者を知っております。私は、納税者と税務官吏の相互信頼がやはり申告納税制度を支えて、最も近代的で進歩的な申告納税制度によって国家財政を維持することになるのではないかというように考えております。  以上でございます。
  22. 熊川次男

    ○熊川委員 あと一分あるかと思うのですが、ただいまの御意見、いわば性善説に立っているかとも思うのですが、飯塚参考人、ただいまの富岡先生の御所見について、国税局の職員が少ないからこそ私は、法的規制といいましょうか担保があるいは若干必要でないかという疑念も持っている者ですが、その辺について御所感を、簡潔に一分ほどでお願いいたします。
  23. 飯塚毅

    飯塚参考人 端的に申し上げます。  現在、ドイツは人口六千万、そうして税務官吏の数は日本の六・六倍。したがって、ドイツの場合は三年に一遍ずつ調査ができるようになっておる。しかるに日本の場合は、法人は年間九%、個人は四%前後。とてもじゃないけれども、個人の場合は時効期間がはるかに過ぎてしまってから調査を受けるという始末なんです。これじゃ問題になりませんよ。それは、富岡先生は象牙の塔にいるからそういうことをおっしゃるんだけれども、我々は実務家だから違うんだ。
  24. 熊川次男

    ○熊川委員 終わります。
  25. 越智伊平

    越智委員長 伊藤茂君。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕
  26. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 参考人の皆様には、当委員会にお越しいただきましてありがとうございます。また先ほど来、熱のこもった御意見を拝聴いたしまして、ありがとうございました。  幾つかお伺いをさせていただきたいと思いますが、まず、小倉税調会長にお伺いいたします。  まさに税をめぐる重大な時局でございまして、国民の注目の焦点であります。重責を担って御活動されていることは、まことに御苦労さまでございます。まず第一にお伺いしたいのでありますが、政府税調としての大きな仕事をこれからしなければなりません。そういうこれからの審議のスケジュール、見通しといいますか、そういうことと、それから論議の進め方についてちょっと意見を交えて御所見を伺いたいのであります。  一つは、これからの審議のスケジュールでありますが、前の一般消費税のとき、その前の外国に行かれましたEC型付加価値税の勉強のとき、それぞれ三年くらい大変な御苦労をされたようでありますが、今回は全体の情勢厳しい中で、ことし、来年、満二年というよりも一年半くらいでいろいろなこの膨大な仕事をしなければならぬというふうな感じがするわけであります。いろいろ私ども報道で読んでおりますと、間もなく政府の諮問もあるでしょうし、それから税調として基本的な問題の審議ということもございますが、ことし四月ごろから始めて十月ごろにはどうとかあるいは来年の段階で本答申とか伺うわけでありますが、どんなお心構えをお持ちなのだろうか。  兼ね合いまして、論議の進め方で思うわけでありますが、今税調をめぐる環境というのは非常に厳しいと私は思います。党高政低というようなことがございますけれども、先般の利子課税の問題の答申もそうでございましたが、前の利子課税の問題もグリーンカードのときの問題も、大きな問題について自民党税調意見が違い、自民党税調政府の案に採用されるというようなことがございます。また今日の税の全体の情勢ですから、国民の見る目もいろいろな意味で厳しいものがあるというのが今日の状況であろうと思います。  シャウプ以来の見直しということがございますので、二十四年、五年、あの当時の記録などを改めて勉強してみますと、いろいろな意味で、今考えても敬意を表されるような活動であったというようなことを読むわけでありまして、メンバーもそうであったようでありますし、あるいはまた精力的に各界の意見を聞く、地方を回ってさまざまな意見を聞く、さまざまのそういう御努力の上にああいうものがあったようであります。  そういうことを考えますと、先ほど会長言われました政府税調の六十年度税制についての報告の中にも、今こそ国民各階各層の意見を基礎にとかいうふうなことがございますが、何かやはり、総理大臣にレポートを出すだけでは意味がないと思いますので、国民信頼を形成するような方向への努力が、活動の仕方が必要ではないだろうか。昨日、大蔵大臣にお伺いしましたら、マンネリであってはなりませんみたいな意味の御答弁もございましたけれども、どういうふうに活動、審議をなさっていくのか、それをまずお伺いしたいと思います。
  27. 小倉武一

    小倉参考人 せっかくの御質問で、なかなか我々に教えていただくようなお話の内容であったと思いますが、政府税制調査会は、昨年の暮れ、六十年度の税制についての答申を申し上げました後には開いておりませんし、また政府からも特にどうこうという御連絡もございませんで、ただ、この国会での御審議の様子をときどき主税局等から聞いたり新聞紙上で拝見しているという程度で、推測しておるというようなことでございますので、これからどういう審議の方法をとるのか、あるいはどういう段取りをもって進めていくのかということについては全く白紙でございます。いろいろ先生方の御意見も、特に役所を通じましても、要約してあるいは個別にお話しをしていただくはずでございまするので、その際に、税制調査会としてもどうするかを決めていくということになろうかと思います。  しかし、そんなにのんびりしているわけにもお話のようにまいりませんので、恐らく四月、四月と申しますのは予算なり税制の法律が一応段落するという意味なんですけれども、四月には発足して段取りを決めるとかなんとかいうことになろうかと思います。  お話のように、大変広範な問題を含んでおり、場合によっては非常に国民各層に利害関係の多いような項目も当然含んでまいると思いますから、これまでのやり方とは大分趣向の変わったようなやり方をした方がいいようにも思います。そういう点についてはまだ具体的な考え方は持っておりませんので、いろいろとまた御所見をむしろ御拝聴したいと思います。
  28. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私どもも、当委員会でもさまざまの議論をこれからまたしてまいります。また機会もあろうと思いますので、先ほど参考人からもお話がございましたように、国民信頼を形成する努力というものを相ともにやってまいりたいと思っております。  小倉参考人に次にお伺いしたいのですが、国会が始まりましてから税制議論が大きな焦点でございまして、その中でEC型付加価値税、これを今後の検討に含むか含まないかというようなことが、予算委員会中心にしていろいろな御議論がございました。私、それを伺っておりましてちょっと奇異の感にとらわれるわけであります。政府税調でも一般消費税の御審議をされ、あるいは「一般消費税大綱」を出され、それから後の御説明もありましたし、当委員会でも政府側と随分たくさんの議論がございました。その中で表明されましたことは、このEC型付加価値税というのは一つのモデルである、しかし、日本の場合には消費税が長年行われてきたという経験を持たない、中小企業が多いという取引の特別の条件もある、いろいろなことでもってそのままストレートにそれを日本導入をすることは情勢あるいは日本の風土に合わないということでややソフトな一般消費税になったというのが税調の文書にもございますし、当委員会の議事録にも残っている経過であります。ということを考えてみますと、EC型ではだめだったというのが、改めてここに浮上するというのは非常に不思議な感じが実はするわけであります。  きのう大蔵省側に伺いましたら、いやこの際原点に戻ってとか、あの経過を白紙に戻してとかという話がございましたが、これは頭の中で大蔵省が白紙に戻したといたしましても、国民全体は忘れていないわけでありますし、国会の決議、いろいろな経過が実はあるわけであります。やはりそういうところはいろいろな意味で正直にまたフランクに議論しなければならぬというのがあるべき姿勢ではないだろうかと思いますが、このEC型付加価値税があり、そしてそれがだめだということで一般消費税になった、今EC型付加価値税を何か政府税調でも重要な焦点といいますか、に考えているというふうなことを新聞で伺うわけでありますが、その辺はどのようにお考えになりますか。
  29. 小倉武一

    小倉参考人 政府税調としてはその後――その後というのは、一般消費税について政府に御答申申し上げたその後のことですが、その後一般消費税というようなことについては審議したことがないわけです。したがいまして、税調がどういうふうな考え方をしているか――税調委員先生方ですが、税調委員がどういう考え方をしているかということを踏まえて私からとかく申し上げることはできません。  しかし、考えてみますれば、一般消費税と言っては語弊がございましょうか、課税ベースの広い間接税導入することの可否というのは、税制全体を見直す場合の必要条件といいますか、非常に重要な事項だと思います。課税ベースの広い間接税というようなものの中に一般消費税というようなものも入るでしょうし、それからEC型付加価値税も入るでしょうし、あるいは庫出税というようなものも入るかもしれません。何もかにも全部つぶさに検討するというわけにもまいらぬかもしれませんが、これぞと思うものに重点を置いて具体的な検討をするということは必要かと思います。  したがいまして、一般消費税の後もう数年たっていますので、改めて検討するわけですから、検討を始める前に余り、あれはいかぬ、これはいかぬというふうに枠をはめられるというか口封じするといいますか、そういうことはないようにひとつお願いしたい、自由に討議できるようにお願いしたいと思います。
  30. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 小倉さんの気持ちはわかりますが、何といってもこの数年来、総選挙のテーマにもなりましたし、多くの国民の念頭に残っていることでもございます。私は、アメリカの財務省の税制改革についての報告書を見ましたが、冒頭のところに、我が国税制は不公平であってそして煩瑣である、多くの国民に不満がある、これを直さなければ社会経済の発展はないというようなことから書き始められております。非常にフランクであります。社会的な土壌がそれは違いがあるでありましょう。しかし、フランクに語るときに初めて国民に説得性があるのではないだろうかと思うわけでありまして、やはり国民の記憶にとどまっているこの経過を十分きちんと念頭に置きながら、国民に理解される方向をどのように提起をしていくのかという御論議をぜひお願いしたいと思います。  続きまして小倉さんにお伺いいたします。  今おっしゃいましたように、課税ベースの広い間接税、避けて通れない課題ということで毎年報告されているわけでありますが、いよいよこれが現実の焦点になっている。  それに関連をいたしまして、従来とやや違う点がございます。例えば、一つは目的税、福祉目的税、年金財源とかですね、目的税としてやることによって初めて国民の御理解がいただけるのではないだろうかという考えもございます。それから国と地方との関係から見る見方もございます。ほんとかうそか知りませんが、新聞を見ますと、自治省の方では半分よこせと言い、大蔵省はいや二〇%だなどという、まことしやかな言葉が実は報道されているわけでありまして、そういう国と地方という観点との絡みというのもございます。これも前とはちょっと違った状況であります。それから、与党も含めました有力な意見として、大型減税大型間接税とセットという形でやっていこうというふうな意見もいろいろと出されているという状況にあるわけであります。  いろいろな意味で、一般消費税のときとはやや違ったそれらの要素、目的税とか国と地方とかあるいは減税セットとかいう問題が出ているということでございまして、これらのことをあるべき一つの税制とかいうような形から――審議しなければまだきちんとした税調としての御答申、御見解はないと思いますが、会長としてはその辺をどのようにお考えになりますか。
  31. 小倉武一

    小倉参考人 この前の一般消費税のことを論議したときと大分変わっていると。まあ変わっているといっても、税制調査会の論議を踏まえて変わっているのではなくて、世の中がいろいろ論じておられるところが変わっておると言えば変わっておるかもしれませんけれども、実は税制としましてはそんなに変わってはいないわけです。  例えば、目的税にしたらどうかというようなことは税制調査会でも随分議論があったことです。それから、仮に一般消費税というふうなものができた場合の税収を中央と地方でどういうふうに配分するのか、あるいは地方の法人事業税との兼ね合いなんかをどう考えるのかといったことについては、随分議論をしたといいますか、意見の交換があったのであります。一つなかったのは、あるいは、なかったと言っても正確じゃありませんけれども今日のようにそう議論はされなかったのが、所得税減税と何かセットにしまして一般的消費税を考えたらどうかという議論は一、二あったかもしれませんが、ファイナルにはそういうものもみな、目的税も所得税減税も落ちてしまいまして、地方税との関係については、どういう表現になったかは正確には覚えておりませんが、一般消費税実現されればその中でしかるべく中央と地方に配分しようというようなふうにたしかなっていったのじゃないかと思います。  したがいまして、違っている点と申しますれば、むしろ財政状況が非常に当時より苦しくなってきている。先ほどちょっと申しましたように、個々の税制をああだこうだといじる余地は、いじると言っては語弊がありますが、改正をする余地はだんだん減ってまいる。例えば物品税を拡大しようというのも一つの考え方と思いますけれども、これまた先生方の方がお詳しいのでしょうけれども、なかなか難しいというようなこともございまするし、法人税については、減税しろという要望が一方においてあるわけであります。したがいまして、一つ一つ税金のあり方を考えましてもなかなか難しい。また所得税についても、一方においては減税というような問題も何か出ておるようでございます。もっとも、税制調査会でも所得税については減税すべしという御意見もございましたのですが、この際はなかなかそれは難しいというようなことで見送るような大方の意見であったのであります。  しかし、今お話しのような新しい議論国会等において行われておる様子は、間接ではございますが承知していますので、これからの課税ベースの広い間接税というのを考えます場合は、目的税との関係、するかどうかという関係、あるいは地方財源としてどういうふうに考えるのかという関係、あるいは所得税減税とどういうふうに組み合わせるのかというようなことは、恐らく重要な検討項目になろうかと思います。
  32. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 小倉参考人に一、二伺いたいのですが、これも国会議論で、大きく報道されておりますから御承知かと思いますが、中曽根総理が今後の税制の抜本的見直しのプリンシプルとして公平、公正、簡素、選択、四つの標語を実は挙げておられます。公平、公正というのはイコーリティー、フェアネスですか、長く議論された問題ではございますが、簡素、選択というのは、私は、もうちょっと詰めた議論をしていかなきゃならぬと思っているわけであります。  簡素という場合に、総理も言われておるのでありますが、一つの例として、アメリカの財務省報告がございます。所得税については十四刻みを三つにでございましたか、法人税についても一本の税率にする。日本の場合でもさまざまな、最高、最低あるいは刻み、フラットがいいかどうか、長年議論があったわけでございますが、アメリカに近いような、そういう大胆なフラットなということについて、どんな御所見をお持ちになりますか。  それから、選択というこの標語は実は非常に迷うわけでありまして、実は何かテレビで見ておりましたら、有力な与党の幹部の方が、百万円の車には税金がかからないが、三百万円の車には税金がかかる、これが選択ですと、非常にわかりやすい言い方をするわけでありますけれども、私ども大蔵委員の目から見ましたら、今の物品税だってそんな選択の余地はもちろんございません。昔のぜいたく品課税というよりも、広く便宜品という方が中心になって、また税調の方でももっと課税ベースを幅広くという御答申をなさっているというふうな状態でありまして、これは税金があるから買うのをやめようないから買おう、そういう選択の原理というのは、今の物品税でも、ましてや大型の間接税になればなおさらでありますが、あり得ないと思うわけでありまして、総理が言われておることですから、私もいろいろな意味で聞いてみましたらわからないのですけれども、簡素と選択、どんな御感想をお持ちでございましょうか。
  33. 小倉武一

    小倉参考人 私も総理がそういうことをおっしゃっていることを新聞でも拝見しますし、予算委員会か何かでもお聞きしたことがございますのですが、直接解釈を聞いたことはございませんので、本当の感想みたいな話になって恐縮ですけれども、選択という場合は、お話のように納税者といいますか国民が、私はこういうふうな選択をして税金を納めないでいいようにする、あるいは私はこういう税金を納めてもこういう物を買うとか、こういう仕事をするとかというようなことにちょっととられやすいと思うのです。  しかし、どうも聞いてみますと、総理の言われる選択というのはそういうことではなくて、いわば税制上いろいろ考えます場合に、方針としましても制度としましても幾つかの選択肢が考えられる。例えば、税調でいきなり一つのこういう税制改正をするんだというふうに一本に決めてしまわないで、複数の選択肢のあるようなものを仮に出して、そして国民世論の意見も聞いて、それから絞っていく、どうも何かそういったようなことが頭におありになっておっしゃっているんじゃないか。したがいまして、今お話しになりましたようなことではなさそうだという印象を最近持っているのですが、私はしかし、お話のように憶測みたいな、感想みたいなことで、よくわかりませんです。
  34. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 先ほどの冒頭のお話の中に、昨年の暮れ大きな焦点でございました利子配当課税の問題が、党税調の方と見解が違うことになりまして、ことしは、私ども今審議しておりますような法案の内容になったわけであります。なお検討していかなければならない、これで済んだことではないという御見解がございましたが、これも遠い将来ではなくて、これから例えば六十一年度に向けてとか、近い将来にもさらに議論をしなければならぬとか、もう五年かそこら光とか、検討しなければならない課題ではございますが、どんな印象でお考えになりますか。
  35. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまの利子配当についての課税の問題につきましては、税調で考えた低率分離課税方式というものと政府国会に御提案されておる考え方がある程度違うということにこだわっておるわけでもございません。が、税制全体を見直すという際には、所得税あるいは所得、資産、消費、その三方面にわたって検討しなければなりませんので、利子課税についても今国会でどうお取り計らいになるかわかりませんが、新しく所得税あるいは間接税あるいは資産そのものについての課税、そういうもの全体を改めて検討するということでありますれば、当然やはり利子配当課税についてのあり方についても重要問題として検討の事項に入るだろう、こういうふうに思います。
  36. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 小倉参考人にたくさんお伺いしまして恐縮でございますが、もう一つだけお聞きしたいんですが、先ほど来どなたかのお話ございましたように、今、国会は一兆一千億の所得税減税などの問題をめぐりましてけさから全部ストップをしている、当委員会のみが活動しているというふうな状況でございまして、そんな財源はすぐあるんだという大変うれしい話もございました。  私は、これは率直に小倉会長に申し上げたいと思うのですが、前に私ども、所得税の物価調整措置についての法律案も当委員会に提出をしたことがございます。やはりいろいろな意味で大きなひずみの焦点がサラリーマンに集中しているというのは、これはもう否定できない事実であると思います。  昨日も主税局長に不公平、不公正、ひずみ、ゆがみとかというものは何かとお伺いしましたら、一番最初所得税制の問題という、幾つかの中で冒頭にそういう指摘がございました。私は、これは減税という名前をつけるのがそもそもおかしいので、本来取られ過ぎの是正、取られ過ぎないようにどう是正をするのかという仕掛けが、世界でも十以上、二十以上の国にもう既に制度として存在しているわけでありますから、それが公平のベースになる所得税制であろうというふうに実は思っているわけでありまして、財源の問題大変ですが、ある意味では理念としてはそれに優先するやはり一つの公平のベースであろうと思うわけでありますが、本年度、六十年度の税制改正の内容を見ましても私どもとしてはその面は実は非常に不満であります。その辺、やはりもうちょっとあるべき公平な所得税制、もっときちんとした姿勢、見解をお持ちになることが必要ではないか。そしてまた、日本のタックスペイヤーの非常に大きな部分がそのサラリーマンの方々にあるわけであります。これに正面から取り組む決意と姿勢を示さなければ、税のベースとしての信頼というものは生まれないのじゃないかというようなことを、特に今、国会がそれを焦点にして異常な状態でございますので、痛感するわけでありますが、いかがでございましょう。
  37. 小倉武一

    小倉参考人 ただいま国会で大変重要な政治的マターになっていることについてですから、私からあれこれつまらない感想を申し上げるのはちょっとどうかと思います。  したがって、それと切り離して一般論としてのことになりますが、所得税減税が仮に議題になる、我々が考えるというような場合に、それ自体が他の税制なりあるいは所得税の中で不公正になっている部分があるとすれば、それを是正する際に、一体その財源は税制の中で考えなければならぬのかどうか、考えていいのかどうかですね、これは実はちょっと重要な問題なんですね。  我々のところでは深くは論議したことはありませんけれども、これまでの慣行等からいいまして、政府なり国会の場は別かもしれませんが、どうも我々の場では、やはり所得税減税をするということであれば、税制上その減税をする余地が他の財源等で――税制上の財源ですが、税収があるだろうかということを考えざるを得ないような慣行といいますか、仕組みになっているようです。足りなければ主計局でどこかほかの歳出を削ればいいじゃないかということで、所得税減税すべしというふうにはちょっといかないようです。これはまあ、これまでの経験といいますか沿革みたいな話で恐縮ですが、余り理屈の問題ではないと思います。
  38. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 幾つか小倉参考人にお伺いいたしましたが、大分難しいことも申し上げましたけれども、昨日も竹下大臣に申し上げたところでございますが、今この大事なとき、税調国民信頼をいただけるような新たな御努力をいただく、責任はあくまでも政府でありますから、政府においても英知を結集して御努力いただく、私ども議会人といたしましても、法案を審査してやっているというだけではなくて、やはり国民の代表としての各党突き合わせた努力などをしなければならぬではないかという気持ちを申し上げたところでありますが、そういう気持ちで私どももやってまいりたいということであります。  次に、富岡参考人にお伺いをいたします。  先ほど内容を伺い、また急いでお配りいただきました文章を読みまして、全面的に私ども賛成でございまして、改めてこの意味はどうかというようなことを実は幾つかお伺いしようかと思ったのですが、今御説明を聞きましたら、もう改めて申し上げることも、また改めて詳しくお伺いすることもないような気持ちでありますが、一つだけお伺いしたいのです。  税の浸食というお話がございまして、これは今のさまざまの所得その他の扱い、いろいろな意味で検討しなければならぬと思います。同時に、租税特別措置法ではなく、法人税法の本則にあるけれどもその実態としては非常に政策的なというのか、あるいは優遇的なというのか、そういうものがあるではないかということを私ども長年指摘をいたしてまいりまして、例えば法人税の本体にある引当金などもそうなるわけでありますけれども、実態と非常にかけ離れている扱いになっている。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕 この点については、これは政策税制でありませんというふうに政府はお答えになりますけれども、検討課題にはいつも入っているということになるわけであります。国民から公正な、また富岡参考人冒頭に言われましたような税に対する国民信頼、公正、そういうベースに立ちますと、その辺もやはりさらにメスを入れなければならないということではないだろうかと思いますが、どうお考えになりますか。
  39. 富岡幸雄

    富岡参考人 大変重要な御質問をいただきまして、ありがとうございました。  先ほどアメリカの税制改正のお話が伊藤先生から出ましたが、税率を下げて簡単にするということも言っておりますが、彼らの税制改正のポイントは税制の簡素化ですね。つまり、いろいろな政策的な措置とか複雑に入り組んだものをやめるということが入っていますね。この点をやはり見落としてはいけません。どうも一部の人たちが都合のいいようにアメリカのレーガンの税制改正案を引用する傾向があるようですが、私はそれもやはり全部見ていただきたい。  日本所得税率がこんなに高いのは、課税所得浸食現象があるからである。つまり、課税所得を十五夜お月さんのような真ん丸だとしますと、実際の日本現行税制は変形三日月型ですね。ゆがんで非常に小さくなっちゃっているのです。庭の八重桜の葉っぱにアメリカシロヒトリがくっついて葉っぱを浸食するようなこと、これをエローションと言うのです。黒板があれば、かくとよくわかりますが、真ん丸は会計原則や租税原則や私がやっている税務会計学の原則、税務会計原則によって算定されたあるべき課税所得ですね。これは大いに議論がありますが、あるべき課税所得を真ん丸としますと、残念ながら現在日本税制は変形三日月型です。私に言わせると、実際の課税所得の半分以下ぐらいになっているのではないか。ですから所定の税収を上げるためには、国会先生方が御苦心なさって税率を必要以上の、倍ぐらい高い税率にしないと答えが出ないわけです。そこに問題があるのです。それを私はひずみと言いたいんですね。偉い先生方がひずみひずみとおっしゃっているが、このひずみの概念をまず明確にしていただきたいのです。  少し時間をいただいて、具体的にそのひずみを述べていきます。  この論文を、ちょっと恐縮でございますが。この最初の第一論文は一九八二年、五十七年の二月号の「説経通信」ですから、かなり古いはずなんです。こんなものを今ごろここで出すのは失礼なんですが、そこで言ったことがそのままここでまだ当てはまるということは、少しも税制改正されてないということです。言いかえれば、私が書いていることが少しも通らなかったということにもなるわけですが、ぜひきょうは聞いていただきたい。聞いてちょうだいということです。  三ページを見てください。「「包括的な」課税ベース回復総合課税徹底」。もうシャウプ勧告税制は、でき上がって一、二年たって崩壊の過程なんですね。シャウプ勧告は、あらゆる所得を総合し、徹底して課税するという制度なんです。それはもう昭和二十八年の税制改正で完全に崩壊したのです。ここにありますように、ある所得の全部または一部を非課税とする、つまり、株式譲渡所得非課税にするとか、利子配当等課税除外にするとか、それから不動産関係所得分離課税にするとか、複雑怪奇ないろいろな控除をたくさんつくるとか、こういうことによって課税所得はますます浸食しているわけです。  一回それをできれば全部取っ払ったらどうでしょうか。取っ払うようにして、政策のために税制を余りいじらない。つまり、いろいろな経済政策、産業政策、社会政策、政策はわかりますが、政策の手段として税制を余りお持ちにならない。必要なところにははっきりと必要に応じて厳格な条件のもとに補助金を出してやる、そして補助金をもらった人はその社会的責任を果たす、こういうやり方がいいんじゃないかというように考えるわけです。  論文の五ページに、アメリカではそういうのをタックスエクスペンディチャー、租税支出と言って予算にはっきり計上しておるわけです。国会においても法人税法改正案は毎年毎年審議されますが、租税特別措置等によって幾らの減収を特定の納税者階層にしているかということを、租税支出予算という形で毎年毎年国権の最高機関である先生方が御審議なさるべきです。一回つくればそのままずるずるといってしまっている。それで既得権化している。実際だれが幾ら税金をまけてもらっているか、大蔵省ではいろいろな資料をいただけるようですが、最近は余り細かい資料を我々にはくれない。先生方はもらっているのでしょうけれども、我々のところまでいただけない、これが実態なんですよ。だれが幾ら税金がどういうふうになっているか、それが正体不明なんですよ。それを一回整理していただきたいということを言いたいわけです。  具体的に法人税においてもたくさんそういうのがございます。先ほどお話しされた引当金ですが、引当金は非常に議論がございます。引当金は本来租税特別措置じゃございません。課税所得の計算を適正妥当にするための必要な費用を期間費用として計算するのです。ところがなかなか難しいのです。会計学の議論や税務会計学の議論、いろいろございまして、このたび貸倒引当金先生方が御検討いただいておりますように、実態よりかはるかに多くの引当金が設けられていることは事実です。こういうものをきちっと見直していただく必要がございます。  それから、一番問題なのは、法人税基本構造改革と関連して、受け入れ配当金の益金算入ですね。会社がよその会社の株を持って配当をもらっても、それが課税対象から除外されているということですね。日本会社の非常に多くの部分を金融機関とか証券会社とか事業会社とか生命保険会社とか、たくさん事業法人が持っております。膨大な収益が上がっておりますが、それらが課税除外になっている。これは租税特別措置じゃございません。これは法人税基本的仕組みに関する問題なんです。  法人税はだれの納める税金か。いわゆる法人擬制説的な考え方、実在説的な考え方、この果てしなき議論で混迷しているわけですね。だから私は、公開法人には実在説的な考え方ではっきりする。その場合は、公開法人には受け入れ配当金の益金算入は要りません。独立課税でいいです。中小法人の場合には法人個人一体主義で二重課税の排除を徹底するとか、そういう形でやっていく必要があります。  それから、課税所得の中身においてたくさん問題があるのです。恐縮ですが、私、本を書いております。それだけで一冊の本が出ておりますから、後でお送りします。これを見てください。ぜひひとつ課税所得浸食現象をなくしてすっきり、まさに簡素、公明ですね、中曽根総理がおっしゃるようにしていただくことをお願い申し上げます。言葉を勝手に使わないように、学問的真意に従った用法に従っていただくことを先生方にお願いして終わります。
  40. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ありがとうございました。私どもが主張しておりますことを元気づけられた思いがいたしますので、また勉強させていただきます。  持ち時間がだんだん少なくなってまいりますので、次に渡辺参考人にお伺いいたします。  二つお伺いしたいと思いますが、一つは皆様日ごろ第一線で御苦労されているその実感からということでお伺いしたいのですが、国税会議税制の提言でも執行面の不公平是正というようなことを取り上げられたと私どもは伺っているわけでありますが、またクロヨン、トーゴーサンという税負担の不公平感という問題があるわけであります。執行に当たられております立場から、この実態、どう対応をしたらいいのか、現実、現場でお考えになっていること、その辺のところを端的にお答えを願いたい。
  41. 渡辺康之

    渡辺参考人 ただいまの伊藤先生の御質問に対してお答え申し上げます。  執行面の不公平の問題でございますが、私どもは執行面の不公平な取り扱いにつきましては次のような点を考えております。実地調査に当たっては、一人の納税者に対しては少なくとも五年に一度は接触できる体制のもとで、全国民的な公平な接触を図っていきたい。次に、指導に当たりましては、常に窓口を開放いたしまして窓口サービスをさらに徹底させる。このことは全国民的に税務行政が国民に同一の機会をもって受けられる行政づくりであり、これで執行面の公平が保全されると判断しております。  また、先ほどもう一点御質問ございました、巷間では、私も申し上げましたクロヨン、トーゴーサンという言葉が使われておりますが、この言葉の内包している意味は、税の捕捉の実態についてとらえている言葉であると認識しております。  なお、税の捕捉の状況をとらえる場合、これについても制度面から見た点と執行面から見た点の二面性があるわけでございますが、制度面から見ますと、サラリーマンの給料はガラス張りで天引きされております。自営業者は記帳をして自主申告を行い、農業所得者の方々は、失礼な話なんですが、記帳も大変少のうございます。農業標準を適用した申告など、申告の方式からも異なるものと言われている現実でございます。さらに執行面で見ますと、自営業者、農業所得者、漁業所得者に対しては行き届いた調査ができていない面なども指摘されておりますし、その所得の捕捉の実態と割合等で表現しな言葉でございますが、その捕捉の割合、実態については残念ながら定かではございません。しかし、国民の税に対する不公平感の端的な表現のあらわれであるということは疑いもない事実ではなかろうかと考えております。
  42. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もう一つ渡辺さんにお伺いしたいのですが、先ほどの冒頭のお話でも、現在の税務職員の人員構成についての切実なお話がございました。私ども年来伺っておりましてそのとおりだと思います。  どうしたらいいのか、これは一つは人員の問題もあると思います。その他のさまざまな御努力もあると思います。また、それがスムーズに回転をしなければ公平な税制執行というものが実現できない。私は非常に大きな問題だろうと思いますし、国税庁長官をおやめになった福田さんなどなどOBの方々も、改めてそのことを先輩としてお述べになったりお書きになったりしているというふうな状況でありまして、どちらから見ても文句のないところ、努力をしなければならぬということだと思います。また実績を見ましても、昨年までで当委員会でちょうど十回附帯決議を付きしていただきまして、しかし、ゼロのときもあれば、二、三名のときもあれば、本年は純増十一だったですか、先ほどの飯塚参考人の西ドイツにおける六・六倍とはおよそかけ離れた状況、本当の意味での改善というには到らない一つの状況というものが存在をしているというようなことだろうと思います。  十年間の間に二%、そういうことをやってきて、現実どうなんですか。率直に現場の気持ちあるいは現場の状況を御説明願いたい。
  43. 渡辺康之

    渡辺参考人 今先生から御指摘がございました国税職員の定員の問題でございますが、昭和六十年度につきましては、今先生からお話がございましたように純増十一名ということになりました。これは当大蔵委員会において決議されました附帯決議のおかげだろうと思っております。と申しますのは、厳しい中であるということでございます。  しかしながら、私といたしましては、残念ながら国税の職場の抜本的な改革にはつながっていないのではないか。端的に申し上げますと、税務署が五百十二ございます。その中の十一名ということをまず御理解いただきたいと思います。増員につきましては、この場をおかりいたしまして諸先生方に切に再度お願いする次第でございます。  以上でございます。
  44. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 それでは飯塚参考人にお伺いいたします。  先ほども熱のこもったお話をいただきましたが、私はやはり日本税制は歴史的な転換の時期に直面をしている、また、最も重要なことは、税のベースは国民信頼だということだと思います。信頼なき税制は崩壊するということだと思います。そういう観点から将来を考えますときにいろいろ重要な問題が実はあると思うわけでありまして、時間の範囲内でお伺いしたいわけでありますが、ぜひ端的に的を射たところの御見解をいただきたい。  一つは、今政府の方では、昭和二十五年のシャウプ税制、それから三十五年を総括をして抜本的な見直しをするということになっているわけでありまして、そうして、不公平、不公正、ひずみ、ゆがみを是正をするというふうに言っているわけでありますが、国民信頼される近代的、民主的な方向ということをベースに考えますと、何がゆがみか、何を直さなくてはならぬか、端的に言ってどこにあると思いますか。
  45. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  先ほどから先生は反復して不公平、不公正、ひずみという言葉をお使いでありますけれども、私どもの実感からいたしますと、不公平というのは、ガラス張りのサラリーマン階級と比べて事業所得者や庶業所得者の所得というのは少し不透明になっておる、逆に負担率がサラリーマンほどはきつくないというような点がやはり不公平感を生んでいる、私はこう思っております。  なお、それにつきまして、開業届け出だとかあるいは転居の届け出だとかそういうものが現在強制されてない。だから自由自在に逃げ回ることができる。さらに問題なのは資料提出でございますが、資料提出については、アメリカではレーガンががっちりと資料提出義務を直しました。日本は資料提出の義務はあっても別に罰則はないし、だからやらなくたっていいやというので、忘れてしまいましたという形で資料の提出が行われていない。不公平についてはそういうのを直さなくてはだめだというふうに私は思っております。  さらに、不公正の問題でありますが、一番不公正だと思うのは、実は死亡保険金の課税でございます。御承知のように、人が死亡して保険金をもらったというときに、相続人一人当たり二百五十万までが非課税で、あとはもうけとして課税される仕組みになっている。これは、昭和十三年にあの臨時軍事費が足りなくなっちゃって、やむなく国会であれを、いわゆる相続税にまで食い込んで税金を取ろうということで、昭和十三年から制度化された。しかしこれは、不公正もいいところだ。世界の文明国の中で、死亡保険金を全額損金にしない国がない。日本だけだ。こういうことは先生方の見識が問われるというふうに私は考えております。  さらにひずみの問題でございますが、最大のひずみの一つは、税の執行について不服があった場合、その場合に国税不服審判所が国税庁長官の指揮監督下にあるというのはうまくない。やはり国税不服審判所は、第三者性を持つような方向に持っていかなければ、国民は納得しない。そういう点がちょっと欠けておる。  端的にと申しますから、三点だけを申し上げました。
  46. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 本当に極めて具体的に御指摘いただきまして、抽象的理屈を何ぼ聞くよりも非常に明快でございます。ありがとうございました。  もう一つお伺いしたいんでありますが、ここに飯塚さんがお書きになった文書がございます。「このままでは、一般消費税、売上税、蔵出し税は必ず失敗する。」中曽根さんにぜひ聞かしたいところでありますけれども、出されております。非常に興味深くこれを拝見をいたしました。  私はやはり、今増税が大きな話題となって、政府側からも出されておりますけれども、増税を言う前にやるべきことがたくさんあるんではないですかという気持ちを実は持つわけであります。これは、ほかの参考人からも言われましたし、そういう気持ちであります。これは総じて一般国民の皆さんがお持ちになっている気持ちではないだろうか。何か、納得して社会の将来のために私どもの負担をふやしましょうということが言えるような状況でない、これを正さなければならぬというのが今の状況であろうと思います。私は、そういう意味も共通してこのような書面を飯塚さんお書きになったというふうに思うわけでありまして、これも端的にその趣旨をお伺いしたい。  それはつながりまして、先ほど来申し上げましたように、一兆円減税要求をめぐって今、国会が全面的にストップをしている、当委員会だけがこのような実りある審議をしているという状態でございまして、それだけに私は参考人の皆さんから、財源問題を含めてどのように率直にお考えになるか、全国四千万サラリーマンの気持ちも含めてどのように実は考えたらいいのか、このところの考え方中心点を御披瀝お願いしたい。
  47. 飯塚毅

    飯塚参考人 端的に申し上げます。  論文はここに書いてございますから、先生方にはもうお配りしてあるはずですから今さら繰り返してもしようがないと思うんです。  ただ問題は、要するに脱税防止の実効性のある条文が欠けているということなんです。例えば先ほど言いましたパソコンとかあるいはオフコンもそうですけれども、全くの野放しなんだ。大したもんですよ。日本は脱税天国ですよ。その点がちょっと先ほどの富岡先生と私が見解が違うところなんです。  それから第二点の、やはり理由は同じでありますけれども、歳入の漏れを防ぐ、そこに焦点を当てた条文がない、そこなんだ。歳入の漏れを防ぐところに焦点を当てた条文がない、これは困ったもんだ。私は実務家として非常にこれは頭を痛めておる、こういうことですよ。  それから今、先生が三番目におっしゃった一兆円減税の具体的方策について意見を出せということでございますが、こんな簡単なことはありませんよ。極めて簡単。一兆円でも二兆円でも簡単に減税できますよ。ただ、先生方は我々から見ると、我々は国会の見物人ですから、見物人から見ると、ああ我々の代表は随分もっともらしそうにお遊びだなという感じだね、本当の話は。  実は極めて簡単なんだ。つまり脱税者の味方をするのか、それともまじめな納税者の味方をするのかということなんだ。例えば郵便貯金、日本国民の数よりもはるかに多い郵便口座があるんですよ、御存じのように。資料は先生方の方が正確に知っているはずだ。その場合に、結局、脱税者の味方をしようとしているのか、それとも本当に公平な課税国民に与えようとしているのか、そこが問題ですよ。我々は先生方が奮起して公平な課税を断行するために郵便貯金に断固として切り込む、つまり租税正義のために切り込む。簡単ですよ。税率を変える必要はない。三五%でいい。それでやってごらんなさい。大体三兆以上出ちゃう。それでいいんですよ。簡単なんです。  だから問題は、脱税者のために肩を持つのか、それとも租税正義を実現せんとするのかというところに国会議員たるの見識がかかっておる、こういうふうに私は見ておる、こういうわけでございます。
  48. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 どうも参考人の皆さんありがとうございました。
  49. 越智伊平

    越智委員長 武藤山治君。
  50. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きょうは富岡先生と飯塚先生のお話を聞いて、大変賛意を表したいと思うのであります。  特に富岡先生は、総合課税化をきちっとすべきだ、大法人中小法人との不公平格差があり過ぎる、あるいはまた配当軽課措置とか配当益金算入制度などというものも、これは改めて法人実在説に立つべきである、至極ごもっともなこの論文を今さっと見まして、大方賛成でございます。  また飯塚先生は、法制度そのもののあり方を問い、最も基本的な税哲学の立場から租税正義の実現という大きな項目を掲げて、その中からなすべき事柄を指摘している。  御両人とも、まさに日本財政のあるべき姿を基本的に提言をしていると思うのであります。こういうすばらしい提言がなぜ日本で実行されないんだろうか。これは小倉さんに責任あると思うのであります。小倉さんがもっと毅然として、財界に右顧左べんせず、与党多数党に小言を言えるような、そういう税制調査会にならない限り国民税調信頼しない。したがって、ここで論争しても大蔵大臣、主税局長おらぬのでありますから、彼らが反省する材料は伝えることができません。まことに残念であります。  そこで、私の与えられた時間は二十分ですから、長い答弁していただくと、すぐ時間がなくなっちゃうのでありますが、富岡先生は、今ここで提案をしているような税制改正をもし税調が断行せよということになって、行ったとしたら、大体どの程度現在より増収があると考えるか、これが一点。  飯塚先生も同じでありますが、この第一、第二、第三点の改正をきちっとやったとするならば、税収はどのくらい今よりふえると、大ざっぱな感じでありますが、どんな数字が出てまいりましょうか。  お二人に順次御答弁をいただきたいと思います。
  51. 富岡幸雄

    富岡参考人 お答えします。  先ほど申し上げましたように、私どもは官僚組織に属しておりませんから、個人の研究者でございますから、いろんなものを調べる仕組みを持っておりません。公にされた文献等によって見るわけでございますが、例えばこの十六ページをあけてくださいませ。  これはささやかな一部のものですが、国税庁から発表された法人企業実態から私が推論したものでございますが、この十六ページの第五表にございますように、五十一年から五十五年まで五年間の法人配当無税、受取配当金益金算入、それから配当軽課措置による減収の推定額は、私の計算によると一兆七千五百二十六億円になっております。その後の新しい数字もございますが、このようなものは日本経済の拡大とともに一段と増大していることは明らかです。それから先ほど、飯塚先生の言葉を引用して大変恐縮ですが、郵便貯金に課税しただけでも三兆円以上ある、こういうわけです。  問題は、どこまで先生方がやっていただけるかですね。私に聞かれるのも極めて奇妙な話ではないでしょうか。つまり、個々の租税措置によって幾ら減収されているかということを、やはり私も含めて国民にわかるように知らしていただきたいと思うのです。私のこの論文の言うとおりにできたら、大型間接税とか複雑なことをおやりにならなくても、今の税制のフレームワークの中で、より公平な形で国民信頼を得ながら財政の再建ができるということを期待し、確信しております。  以上です。
  52. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  若干私は富岡先生と見解を異にしておる。それは要するに財政学の原則で、財政需要膨張の原則という原則が国際的通説として与えられておる。その意味において、やがては大型間接税導入しなければならぬだろう。その場合に一番合理的だと思われるのは、今のEC型の多段階式の前段階控除制による売上税である、こういうふうに私は見ております。しかし、それを実施するのは今ではない。それは今までの不公平、今までのひずみ、そういうものを全部是正した上において国民が納得したときにやるべきであって、それまでは控えるべきである。こういうことは同じであります。  そこで、では先生おっしゃったどれくらい出るのかという問題でありますが、アメリカの例を引いてみます。最近アメリカから到着したアメリカの公認会計士協会の機関誌「ジャーナル・オブ・アカウンタンシー」これの一月号の七十七ページに何と書いてあるか。アメリカの国税庁の発表によれば、脱漏している税金の額は九百六十億ドルであると書いてある。ところが、アメリカの公認会計士協会は、ふざけるな、大蔵官僚のばか者ども、実は脱税している額は国家予算と同額であると言っておる。さらに、フェイジという大学教授の試算によると、約八千億ドルの脱漏があるというのだ。そういうふうにいろいろ学者の推計の仕方によって計算が違う。が、いずれにせよ、国家予算の相当部分に該当するものが、実は免れておる。現に、先ほど私に最初に御質問いただいた熊川先生は弁護士であると思うのでありますが、弁護士先生は大体九割ぐらいは脱税しているという話が新聞に出ておったわけでありまして  いや、これは熊川先生が脱税しておるとは言っておらぬ。弁護士先生が九割ぐらいは脱税しているという新聞記事があったというだけのことであります。  そこで、はっきり言えることは、いわゆる我々が主張しているようなやり方をした場合、少なくとも十兆円以上の増収になることは間違いない、こういうふうに申し上げます。
  53. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いずれにしても時間がないので、飯塚参考人にお尋ねしますが、この第一点の記帳義務の問題であります。  過般これは飯塚さんの主張が税調にもやや取り入れられ、大蔵省も踏み切った。その結果できた法文でありますが、ただ、所得三百万以上の人だけですね。所得三百万以上というのは、収入一千万の人も二千万の人も、経費がいっぱいあれば所得三百万以下の人もあるわけでありますが、なぜ所得三百万という線を引いてこういう記帳をさせるようにしたか。さらに、三百万以上収入があったら申告をしなさい。  この二つだけは、先生の言によれば一歩、ほんのわずか一歩前進をした、こう評価されておりますが、結局先生の言いたいことは、所得基準の申告制度ではだめだということを言いたいのだろうと思うのですね。結局、収入基準に税法を直さない限り、今の個人事業約七百万軒あるうち、申告しているのは二百万でしょう。五百万の業者は申告していないのですから、これに一応赤字であろうと何であろうと申告させるという制度にしない限り正義は実現できないと思うのですが、その辺飯塚先生の御見解はいかがなんでしょうか。
  54. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  これは正確に評価して、先生の言論は妥当であると私は思います。つまり政府税調は、総収入基準を採用せよという勧告をしておる。そしてさらに、それはつまり所得基準じゃない、総収入基準でいくんだよということを言っている。ところが、いつの間にか、自民党税調を通っている間にそれが所得基準にすりかえられておる。だから、これは政府税調小倉会長先生の勧告文に反しているんだ。だから当然、政府税調の責任者としては政府に向かって職をかけて抗議すべきなんだ。それをやらないというのは、ちょっと幾らかお年を召し過ぎたんじゃないかという感じがするわけであります。――どうも申しわけありません。
  55. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 別に小倉先生がお年を召したわけじゃなくて、自由民主党という多数党が税調の言うことを聞かぬのですね。ですから、自由民主党の国会議員に責任があるのですね、政党政治ですから多数党に。ですから、やはり自民党の諸君が、税というものの正義、公正、平等、そういうものについてもっと本気でかかってやらぬと、今の選挙制度が悪いのか知らぬけれども、金がかかるから、味方もいろいろつくらねばならぬ、気がねもせねばならぬということはわかるけれども、しかし租税正義を実現するという見地にもっと本気で取り組まないと、多数党だから何を決めてもいいと――グリーンカードだって、せっかくできた法律を、税調もやるべきだと言ったものを、多数でもって今度の国会でこれは廃止だというのですね。こういうことでは総合課税化もできなければ、今言った所得、みんなどんどん虫食いになってしまって、財政再建なんかほど遠くなりますね。  そういう意味で、飯塚先生が今おっしゃった収入基準にするという場合に、外国の例で結構ですから、例えばどの程度の業種の区分をして、最低幾ら以上の収入があったら申告しろという基準ですね、農業だったら年間どのくらい、あるいは大工さんとかはどのくらいとか、小売はどうとか、いろいろあると思うのですね。大ざっぱな点でいいですから、もし日本でやるとしたらこの程度の基準を例にして収入基準に改めるべきではないか、この具体例をちょっと教えていただきたい。
  56. 飯塚毅

    飯塚参考人 実は各国によって総収入基準がまちまちでございますけれども、アメリカの場合は年間最低一千ドル、こういうのが基準ですね。年間一千ドル以上の収入がある者は課税所得があるなしにかかわらず申告せよ、そういうことになっておるわけです。それにはさらにいろいろありまして、実は四、五種類あるのですが、つまり夫婦者で片一方が六十五歳を超えているとか、あるいは両方とも六十五歳を超えているとか、そういう場合には幾らか基準が動きますけれども、最低一千ドルというのは基準ですね。  それから、もう一つ非常に重要なことは、これはレーガンになってから出たことでありますけれども、年間六百ドル以上の売り上げをした者のその売上先の住所、氏名、売り上げの中身、これを税務署に申告しなければならぬ。もし申告しなかった場合には一日につき十ドル以上二十五ドルの罰金に処す、最高限度五万ドル、こういうことで、これは断固たる態度をとっておるわけですよ。  私は、窮状に追い込まれたこの財政を抱えておる国会議員諸公としては、こういう断固たる措置が必要だと思っておる。ただ、そこで問題は、先生はやっぱり政党政治だからとおっしゃったけれども、なに、赤信号みんなで渡れば怖くないという言葉があるんだから、要するに与野党合同で徹底的な合理化を図ってしまえばいいんだから、そうすれば何ということはないんですよ。そう私は思います。
  57. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ヒトラーのような元気のいい、張り切った飯塚さんでありますから、みんなで渡れば怖くない、みんな一緒になってやれと。一緒になってやろうとしても、何を基準に、どれが正しいかで、なかなか一致しないのですね、国会という場所は、やはり利害が絡んで。これはきょう論争すべきでありませんが、選挙法が選挙区五名区、四名区、三名区、自民党同志で三人、四人で争う。政策不在なんです。結局、お金と動員の競争で選挙をやるのですね。ですから、そこにどうしても、より高度な高い見地から国家国民のためにという政治家がごく少ないんです、残念ながら。  そういう意味で、日本政治を本当に改革しないと、財政再建がこれから本当に容易ならぬ段階に来ると私は思うのですね。恐らくこのままいったら、建設国債がさらにどんどん上積みになって二百兆にすぐなってしまいますね。そうなってから一体これをどう片づけるかというのはまさに難儀で、そういう意味で、きょうの参考人富岡先生や飯塚さんの意見会長は率直に耳を傾けて、まさに職を賭して、もう税調会長は勲一等決まっているんですから、もうそういう点で後顧に憂いはないのでありますから、思い切った税調の権威をひとつ世に示していただきたい。  そして最後に、飯塚さんのこのせっかくの第三番目の、税理士法の改正がなければ税理士は法人化できないのか、あるいは事務所をもっと自由に持てないのか、それとも法務省の登記法か何かでできないのか。法務省の次官通達という方法で登記させないと書いてあるんですね。これはどちらに原因があるんですか。もしこれを改善するとすれば、税理士法改正で解決、処理できると思うのか。この辺ちょっと教えてください。
  58. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  実は、法務次官通達というのは国家行政組織法第十四条に真っ向から違反しています。何となれば、国家行政組織法という法律は各省庁の長たる者はとかになっている、今度は委員会が加わりましたけれども。いずれにせよ、各省庁の長なんだ。長でなければ通達はできないんだ。しかるに、法務省の次官が勝手に通達を出したというのは国会無視もいいところなんだ。しかし同時に、国会無視であるということを全然問題にしない国会議員諸公の見識というのも、お寒い話であると思うのです。  そこで問題は、堂々と次官通達を撤回せよ。そうすればいいんですよ。それで終わりなんだ。そうすればちゃんと実は法人化できる。御承知のように今ドイツでもアメリカでもフランスでもイギリスでも、各国全部、会計事務所には法人化を認めておる。自由に認めておる。日本だけですよ。したがって、日本は中国へも出られない、ASEANにも出られない、会計事務所は。そういう国益に反する大不公平を平気でやっているのは今の与党だ。これは反省を求めなければいかぬ。私は実は自民党員だ。だから、この際私は本当は与党の肩を持ちたいところでありますけれども、このままでいくと与党は少数党になる危険がある、このように私は思います。
  59. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あと持ち時間が一分少々になりましたので、最後に要望と期待を小倉会長に申し上げて終わりますが、昨日の日本経済に「大蔵省方針 税制改革、二段階で」という大きな報道がありました。報道の間違いだと言われればそれっきりでありますが、その中で、六十一年度と六十二年度から実施したいという税改正項目が並べられております。この中で、しょうちゅうの課税問題、これも川崎寛ちゃんみたいに鹿児島の人は困るなとおっしゃるかもしれませんが、年金受給者の税金を見直そうというのを見て、年寄りから随分電話がかかってきました、大蔵省、血も涙もないことをこれから研究するんですかと。  こういうことは、一応は会長と合意の上でこういう項目ができているんですか。例えば資産課税見直し、相続税の課税最低限引き上げ、年金受給者の所得控除制度圧縮と、こうはっきり年寄りに税金を余計かけようという意図がわかっているのですね。これは大蔵官僚だけが独走でこういうことを事前にばあん出したのですか。小倉会長の方は聞いておらぬのですか。
  60. 小倉武一

    小倉参考人 往々にして私ども存じないことが新聞に出ますので、別にこれは、また恐らく想像すると、大蔵省から出たというようなことでもないのじゃないでしょうか。そういうことはしょっちゅうあるのですね、どうも。
  61. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間ですから。
  62. 越智伊平

    越智委員長 坂口力君。
  63. 坂口力

    ○坂口委員 参考人の皆さん方には、お忙しいところをまことにありがとうございます。きょうは大変お元気な方ばかりそろっていただきまして、最近これほどお元気な皆さん方おそろいいただいたことは珍しいと思うわけでありますが、時間が短うございますので、簡潔にお聞きしたいと思います。  皆さん方の御意見をお聞きいたしますと、小倉参考人それから富岡参考人のお二人は、大局的な立場から税制改革するかしないかの議論飯塚渡辺参考人の方は、現状の税制の中での実務面からの御意見が多かったというふうに理解をいたしております。また、別な面でお話をまとめてみますと、まず、現在の税制が十分に機能するように実行するのが先決なのか、それとも、十分に機能しないのは税制が悪いからであって、制度を改めるのが先決なのか、こういう一言に要約できるのではないかと思うわけでございます。  そこで、お声の大きかった方から順番にお聞きしたいと思いますが、富岡参考人飯塚参考人は甲乙つけがたかったわけでございますけれども、お席の順番から、富岡参考人からまずお聞きしたいと思います。富岡参考人は、現在の直間比率は約七対三になっておりますが、この現在の直間比率は大体このままで、そして先ほどからタックスエロージョンということを例を挙げて御説明になりましたけれども、そうした部分的な改革で、直間比率は現状のままでよいとお考えになっているのかどうか、これをひとつお聞きしたいと思うわけでございます。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕
  64. 富岡幸雄

    富岡参考人 お答え申します。  私は、かねがね直間比率なるものの概念というか、用語の用い方に問題が実はあると思います。例えば、今まで伝統的に法人税は直接税だというふうに言われてますが、学問的には議論があるのです。法人税にも転嫁という問題がございまして、企業の力関係によって転嫁があるという有力な学説もございます。ましてや、中小企業と大企業との関係になりますと力関係がございますから、そこにおいてはにわかに測定しがたい微妙な問題がございます。この転嫁の問題をはっきりしない限り、何が直接税であり何が間接税であるかを断定できません。  それから一数年前に政府から提案された一般消費税におきましても、中小小売業等の場合は、転嫁ができなければこれは新たな企業税になるというような危機感がございまして、間接税ではあるが、場合によったら部分的に中小企業に課せられる直接税化するおそれさえもあるわけです。税制というのはかくも複雑です。先生方が何をもって直接税といい、何をもって間接税というか、この概念を明確にした上で比率を議論していただければ、多くの国民もわかっていただけるんじゃないかという気がいたします。  それから二つ目は、直間比率が何%ということはアプリオリに決めるべき問題じゃございません。国民の英知と選択によって、その国の国民実態に応じた税制が合意のもとにできた結果、これは直接税、これは間接税という形で分類した結果、直接税、間接税の比率が決まるのでありまして、最初から、直間比率が今七対三だからよくない、間接税をふやすべきだという議論は、少しお急ぎになり過ぎるのではないかという気がいたします。  それから、私は冒頭間接税について極めて厳しい批判を述べました。現時点において間接税云々をするのはいささか困ります、その前に国会ではやっていただくべきことが山ほどございますと。支出を減らす方、それから、取るべきところから取ってなければ取っていただきたい、取り過ぎているところには減らしてほしい、そういうことをやった上で、なおかつどうしても国民の要求にこたえられない場合に新たな税を考えるということは、私はやむを得ないと思います。ただ、今の段階においてはそうではないのだということを強調したかったわけでございます。  お答えになったでしょうか、
  65. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  それでは、飯塚参考人に続いてお聞きをしたいと思いますが、捕捉率の問題をお取り上げいただきまして、かなり詳しく御意見をもう既に賜ったところでありますが、そうした捕捉が十分にできにくいということ、その根底に制度の問題というのはないのであろうかという疑問も私、ないではないわけでございます。そこで、現在の税制度の制度そのものに対する御意見というものがありましたら、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  66. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  アメリカの内国歳入法の六千六百五十二条というのがレーガン政権になってからつくられまして、これによると、要するに資料を提出しなかった者は一件につき一日当たり十ドルから二十五ドルの罰金、最高限度五万ドルと決まっているのだけれども、そういうふうに資料を出さない者は罰金を取るよというのはレーガンが初めてつくった。そういう意味では制度の一部改正なんです。やはりそういう点がないと、どうしても悪賢い人は舌を出して逃げてしまうという傾向がある。だから、その点ではやはり一部制度改正が必要であろう、こういうことです。
  67. 坂口力

    ○坂口委員 同じ質問ですが、渡辺参考人、ひとつお願いいたします。
  68. 渡辺康之

    渡辺参考人 坂口先生の御質問にお答え申し上げます。  私は執行面から見ますと、現状では限界の定員である。そうなれば、いろいろな、どんなすばらしい税法を仮におつくりになりましても、今後の税制を執行面から運営していくということを考えますと不可能ではないだろうか。まず現在の執行面のあり方というものに私どもとしてはメスを入れていただいて、その後において税制論議も、また新しい税制というものを見直すというものがあれば、そのときにあわせて御検討願いたいと思います。先ほどの飯塚先生のを引用するわけではございませんが、レーガン政権になって、アメリカにおいては国税職員を三千名増員したということも聞き及んでおりますので、参考にしていただければ幸いだと思います。
  69. 坂口力

    ○坂口委員 小倉参考人、大変お待たせをいたしました。  今お話がありましたように、捕捉の問題が制度の問題とあわせて非常に重要な問題になるわけでありますが、税制調査会におきまして、制度の問題とあわせて捕捉をどうするかという問題は、どの程度議論をされておるのでしょうか。あわせて、小倉会長のこれからの税制度のあり方の検討の中で、この問題をどのように位置づけていこうとお考えになっているかということもお聞きをしたいと思います。
  70. 小倉武一

    小倉参考人 税制の公平を期するという意味においては、徴税のことも同じく重要でございまして、徴税そのものは税制調査会のことには属していませんけれども、徴税制度みたいなことについては、税制調査会でも検討いたしましたことがございます。先ほどいろいろ質疑応答の中にございました記帳義務の導入というようなことも、随分長い間、一年以上かかった討議の結果できたわけでありますが、何しろそういうことのない仕組みの上での改正でございますので、余り強い記帳義務、例えば罰則をつけるというふうなことまでには至っていないわけです。  したがいまして、今後税制全体の見直しをするという際には、やはり徴税につきましても、制度の面で適正を期する、公平を期するという点で検討を加える必要性はあると思います。具体的にどういうふうに議題を取り上げるかは別問題にしまして、広く税制見直して考え直すという中には、そういう点も当然含まれるかと思います。
  71. 坂口力

    ○坂口委員 次の問題に移りたいと思いますが、先ほど小倉参考人は、政府税調の審議にできるだけ条件はつけないでほしいという発言をされたわけでありますが、小倉会長の立場からするならば、当然の御発言ではないかとも思うわけでございます。  それで、中曽根総理が、御承知のとおり予算委員会におきましても、大型間接税の問題につきまして非常に形容詞の多い発言があるわけでございます。御承知のとおりの多段階、包括的、網羅的、普遍的、大規模なものはやらない、こういう御発言もあったわけでありますが、この発言は、今後の間接税等の論議において一つの条件だというふうにお思いになりますか。それとも、そうした総理の御発言は条件にはならないというふうにお思いになりますか。
  72. 小倉武一

    小倉参考人 お尋ねの条件とおっしゃいますのは、恐らく政府税調の討議の場合の条件ということかと思いますが、私どもは政府税調に直接そういう条件をつけられたというふうには思っておりません。あれは恐らく政府としての心構えをおっしゃっておるわけで、政府税調に、総理のおっしゃったようなことで、その枠内で審議をしろということを御指示になったものとは思っておりません。
  73. 坂口力

    ○坂口委員 その御発言に対して私はとかくは申し上げませんが、現在の内閣がこういうことはやらない――これは大型間接税に限ったことではないのです、ほかの問題でも結構なんですが、こういうことは我々の内閣としてはやらないということを明確に指摘をしていることであったとしても、政府税調としてはそれにこだわることなく議論を続けていく、こういうふうにおっしゃったというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  74. 小倉武一

    小倉参考人 こだわらないというふうにさっぱりできればいいわけですが、そうもいかないので、ある程度こだわらざるを得ないと思うのですが、おっしゃっておること自体がしかく自明なことであるかどうか、甚だ疑問なわけですね。言葉じりをとらえるということじゃなくて、意味がいかなる意味であるかということは、非常に多義的に理解し得ると思うのです。これは解釈する人によるでしょうけれども、そういうこともありますから、余りあれに拘束されるんだということであれば、課税ベースの広い間接税議論すること自体が非常に狭い道を通らなければいかぬ。それがいいかどうか甚だ疑問でありますから、そう申し上げたわけです。
  75. 坂口力

    ○坂口委員 続きまして小倉参考人にもう一つお聞きをしておきたいと思いますが、直間比率の問題でございますけれども、税の公平という立場から、現在の七、三という割合は大体このままでいいというふうにお考えになるのか。税の公平からいくならば、もう少し直間比率の割合には改革を加える方が、より公平な税制実現できるというふうにお考えになるのか、この辺のお考えをひとつ聞きたいと思います。
  76. 小倉武一

    小倉参考人 これはなかなかお答えにくいお尋ねだと思います。  先ほども他の参考人の方からお話がございましたように、直接税というものは一体何を意味するのかということは、やかましく言うとわからないわけですね。税制調査会でも、法人税というものは転嫁できるのかできないのかということについては随分基本的に議論されまして、結局、税制調査会でも結論を得ていないわけです。なお、学会でも結論を得ていないらしいです。したがって、当然に直接税であるというのがどうも一般の常識のようですが、それじゃ全く転嫁ができないかというと、それは甚だ疑問である。場合によってはその企業の労働者に転嫁されていくかもしらぬというような議論さえあるわけです。そういうものでもありますので、直間比率が現在七、三であるとして、それが適当かどうかということを――仮に消費税と所得税の割合がどうだということならば、余り所得税に重過ぎて消費税に軽過ぎるのではないかということは、あるいは言えるかもしれません。だけれども、直間比率ということになりますと、それ自体がいい悪いというようなことはなかなか論じられないのじゃないかと思います。  ただ、日本の過去と比べましても、随分直接税が大きなウエートになってきている、半々だった時代もあるわけですから。それが七、三になっておる。外国と比べても、随分日本は直接税が重いようなことになっているわけです。外国では半々ぐらいの国もないことはないわけですから、そういうものと比べてみますとどうも直接税に余り偏り過ぎているのじゃないか、日本の過去あるいは横並びに他の先進国と比べると。そういうことは達観的には言えるでしょうけれども、しからばどれぐらいの率がいいのか、こうなりましても、それだけからは何も申し上げることはできないというふうに私どもも思います。  ただ、やはり税制改正は、具体的な制度そのものの公正さを確保していくとか、バランスをとっていくとか、あるいは税収を確保したければどういう税目がいいとか、減税するというのならばどういう税目がいいんだというようなことを総合した結果出てくるもので、大筋はやはりそういうことじゃないかと思っております。
  77. 坂口力

    ○坂口委員 では、マル優の問題をひとつお聞きをしたいと思いますが、御承知のとおり、グリーンカードの問題が議論になりました昭和五十五年から五十六年にかけてでありますが、五十六年にはいわゆる銀行預金から郵便貯金へと資金シフトがかなり行われたというふうに俗に言われております。これも数字のとり方によりまして、本当にそれがどれだけ行われたかということを把握することは非常に難しいと思いますが、日銀の経済統計月報で見ます限りにおきましては、五十五年におきまして郵便貯金は年度中に大体十兆円の増加をしている。増減率で見まして四五・二%。この前後の年に比べまして際立って増加をしているということが見られます。また銀行の方を見ますと、五兆二千七百六十二億円という年間の増加額でございまして、これは率で見ますとマイナス一五・六%であるということで、銀行の方は大体一兆四千億円ぐらいは流れたのではないだろうかというふうな試算をしているわけでございます。こうしたことが今回のマル優制度において果たして起こる可能性はないのであろうか、その心配はないのであろうかということが今言われているわけでございます。  そのことについてお聞きをしたいと思いますが、御承知のとおり、いわゆる駆け込み貯金というものも考えられるわけでありますし、定額貯金の方は最長十年間の預け入れ期間でございますし、銀行の預金の方は最長三年間でございます。こうしたことも絡めまして、これは現状で前と同じようなことが起こる可能性はないかということについて、ひとつ御意見を伺いたいと思いますが、飯塚参考人からこの問題についてお聞きをしたいと思います。
  78. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  そういうシフトが起こり得るということは、やはり郵便貯金を聖域化しているからだと私は思います。そこで、私は自民党の党員ではありますけれども、やはり郵便貯金というものは聖域化すべきではない、それをやらないと自民党は今後支持者が減るぞ、こういうふうに私は思っております。つまり、預金あるいはそればかりじゃありません、小口証券もありますけれども、要するにマル優について聖域を設けてはいけない。正しく完全にやれ、そうじゃないと自民党の票は減ってしまうぞとはらはらしているわけですよ、私は自民党員だから。  と同時に、そうなると結局はそこに選挙の問題が絡んでくる。先ほど武藤先生がおっしゃったけれども、選挙の問題が絡んでくる。とすれば、四年間は選挙できないように憲法を改正しちゃうべきだ、ドイツがやったように。今ドイツでは四年間解散できない。だから実質上は選挙がない。したがって選挙を考慮せずに立法に没頭できる。そういう状況をつくらねばいかぬ、このように考えているわけでございます。
  79. 坂口力

    ○坂口委員 多少脱線もありますが、四年間解散のないことだけは私も賛成でございますけれども、小倉参考人、今提起をいたしましたマル優の問題でございますが、この問題について何か御意見がございましたらひとつお聞きをしたいと思います。
  80. 小倉武一

    小倉参考人 特に意見があるわけでもございませんが、限度管理、御承知のとおり六十一年の一月一日から実施されるという法案になっておるようでございますが、それは前に預入したものについても、やはりその後預入する機会に見直しをして適正化を図るという趣旨に行政上されるように聞いております。銀行あるいは一般金融機関と郵便貯金との間で同じような取り扱いをする、できるだけそうするというのが税制調査会趣旨でもありましたし、政府の方も相当そういう考え方で措置され、聞くところによりますと、そういう趣旨で大蔵省と郵政省とが折衝されておる、あるいはもう最近済んだのかもしれませんが、ということでございまするので、御心配のようなことはないようになるはずだと思います。
  81. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、渡辺参考人にひとつお聞きしたいと思いますが、この租税特別措置法及び所得税法改正案でグリーンカード制度が廃止になりまして、そして本人確認をする案が出されているわけであります。また、昨年からの政府税調等の論議を見ておりますと、マル優を廃止をして少額分離課税導入するというような御意見もあるわけでございます。マル優制度について、今回の改正案も含めましてどのようにお考えになっているかということをひとつお聞きをしたいと思います。
  82. 渡辺康之

    渡辺参考人 ただいま坂口先生の御質問の問題につきまして、私職場の、税務の第一線の職員の立場から若干お話しさせていただきますと、マル優制度という問題についてグリーンカード導入されたときに、一般の方に若干誤解があったというのは一つ問題ではなかったんだろうか。先ほど郵便貯金の問題――郵便貯金だけではなく銀行等においても、マル優の悪用というのを私は耳にしておることは事実でございます。実際に調査に行った担当者あたり、それから新聞等でも皆さん御承知のとおりでございまして、もっと限度管理というものをしっかりやらなければ、この制度というものは生きてこないのじゃないか。  ところが、限度管理をやれとおっしゃいましても、ことし限度管理の強化という問題が小倉会長の方からいろいろございましたけれども、全国の税務署が今度五百十二になるわけでございますが、その中で十一名しか増をしないのでは、する余地はございませんので、これはまたそのままになるのではないか、私はこのように考えております。執行面についてよろしくお願いします。
  83. 坂口力

    ○坂口委員 もう一つお聞きをしたいと思います。  これは小倉会長からも後ほど御意見を賜りたいと思いますけれども、大蔵省は税制抜本的改革一環といたしまして、赤字企業に一種の法人税課税する方向で検討が進められているというふうに聞いております。これについての実務的な立場からの問題点あるいは解決策、そうしたものをお持ちでございましたら、ひとつお伺いしたいと思います。  小倉会長には、赤字企業に一種の法人税課税する方向が検討されていることになっておりますが、こうしたことについて、会長としてどのようにお考えになっているのか、お聞きをしたいと思います。
  84. 渡辺康之

    渡辺参考人 今の坂口先生の御質問に対して、私、第一線の面からもう一度御説明申し上げます。  赤字企業法人となりますと、現状から見ますと大法人の赤字法人もございますが、小企業が大変多くなってくるのであろう。御主人と奥さん、二人というのは、給与で取りますとほとんど赤字になります。大変経営の苦しい方の場合に、もっとも赤字でございますから経営は苦しいのですが、そうなりますと、仮に幾らの課税をするかという問題で過去にいろいろ考えられたようでございますが、私の方の徴収サイドから見ますと、これは大変な滞納。金額としては大したことはございませんが、件数は膨大になる。額よりも手間の非常にかかる税制になるのではないか、このような懸念を持っております。  以上です。
  85. 小倉武一

    小倉参考人 税制調査会でも、赤字法人が非常に目立って多いということで、これについての税制上の取り扱いをどうするかということは随分論議を重ねました。それが赤字法人に対する法人課税というふうに巷間伝わったのかもしれませんが、法人課税ということはちょっと問題になりにくい。所得課税でございますので、赤字だから所得がないというのに、所得があると見て課税するというわけには無論まいりません。したがって、法人税をかけるということは問題にならないというふうな結論だったかと思います。  しかし、そのままで放置しておいてよろしいというような問題でもなさそうだということで、法人課税という趣旨じゃなくて、ちょっと便法的な措置を講じたらどうかというようなことが議論になって、そういう趣旨でやったらどうかというような――延納制度があって、その間に利益があれば税金を納めてもらおうというような制度のときに、たしか延納制度を切り上げるんですかな。法人税の増徴じゃなくて、便宜を供与しているそれをやめるといいますか、切り上げるといいますか、そういう措置を講じたらどうかというようなことを議論した覚えがございまして、法人税そのものを増徴するということは法人税の建前からできないというのが、税制調査会の結論だったと思います。
  86. 坂口力

    ○坂口委員 富岡先生も、ございましたら一言お願いします。
  87. 富岡幸雄

    富岡参考人 お答えします。グリーンカードの問題につきましても大いに意見を述べたいのですが、赤字法人のことにつきまして。  赤字法人に対して何の税金課税するのですか。法人税法人所得税、インカムタックスならば、所得がないのですから、課税されるものはないわけです。それは今小倉先生が述べられたとおりだと私も思います。赤字法人所得課税をするというような発想が、どこで言い出すか知りませんが、新聞などに時々出ることは、税の論理からいっても甚だおかしいんじゃないですか。  最近、大蔵省が悪いのか、政府税調が悪いのか、国会が悪いのか知りませんが、我々税の勉強をしている者から見て非常にわかりにくい新税候補が挙がるのですね。それがまたすぐ消えるのですね。これがますます国民の税に対する不信感を増幅しているのです。ですから、大蔵省でも国会でも、出したものは絶対通るようにしてください。筋の通ったものだけを出して、是が非でも国民にこれをのんでもらうということが必要ですね。  赤字法人について、所得がないのですから課税できない。日本中小企業が非常に多いのですよ。低成長、減速経済で中小企業はなかなか苦しいのです。そして家族の役員報酬を取ればもう赤字になっちゃうわけです。その家族だって、役員報酬には源泉所得税や住民税がかかってくるのですから、サラリーマンなんですよ。中小企業の経営者や家族を含めてサラリーマンなんですよ。サラリーマンの税金は、同時に中小企業の経営者、家族の税金でもあるのですね。この点を踏まえていただければありがたいと思っています。赤字企業所得課税をするなんということを今後絶対言わないように、租税の原理と原点に立ち戻った税制改正をしていただくことを特にお願いします。  以上です。
  88. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  最後に、飯塚参考人にお聞きをしまして終わりにしたいと思うのですが、以前文芸春秋に「税金これでいいのか」という論文を発表になりまして、土地価格の大都市における異常な高騰に触れられたものがございます。相続人の不安を解消するために、米国税法に倣い、生涯に一度は一定額非課税扱いの制度我が国の相続税法上に加えることを提言をしておみえになるわけでありますが、この点につきまして、御意見がございましたら若干お聞きをしたいと思います。
  89. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  どうしてそんな簡単なことが大蔵省はわからないのかなと私は思っておるわけです。どうしてそんな簡単なことを国会の諸公がわかってくれないのかと思うのです。というのは、東京の特に環状線の中、べらぼうに土地が高くなっちゃった。したがって、おやじが死んだという場合、相続税払えないのですよ、土地家屋売らなければ。だから、おやじが死んだ途端に土地家屋売らないと、相続税払えない。これはかわいそうだ。これは民主国家の先生方としてはおかしい。だから、そういう方には一生に一度だけ、つまり、世代交代のときにこれだけは非課税にするよという特別措置をつくってもらいたい。現にアメリカではそういう実例があるではないかということを私は申し上げているわけです。それだけです。
  90. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。  終わります。
  91. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 安倍基雄君。     〔熊川委員長代理退席、熊谷委員長代理     着席〕
  92. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 参考人の皆様、お忙しいところ本当に御苦労さまでございます。非常に貴重な討論でございまして、非常に参考になっております。  実は私の持ち時間、非常に短いものでございますので、一般論もございます、執行論もございますが、一般論となりますと長くなりますので、一応執行の面からまず最初にお聞きしたいと思います。飯塚参考人富岡参考人のどちらが声が大きいかということもございましたけれども、飯塚参考人からまずお聞きしたいと思います。  飯塚参考人、さっきも社会党の委員の方からも話が出ましたけれども、会計の事務所を法人にしないというのはけしからぬという問題もございます。確かに税の執行、納税者とそれから国との間がどのようにスムーズにいくかということは非常に大きな問題でございまして、この点について税理士あるいは公認会計士、これについてのいわば職業法規と申しますか、それをどういう方向に持っていった方がいいとお考えになるか。ほかの諸外国の例と比較いたしまして、それについての御見解をまずお聞きしたい。  その次に、それとも関連して、既にいろいろお話があったと思いますけれども、税の不公平感というのを直していくというためには、税務行政の中でどういうところを考えていかなければいかぬかという点につきまして、まだ言い足りないことがございましたら、お話しください。その二点について御質問させていただきます。
  93. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  イギリスにおいては、今から百五十年前に会計事務所の法人化は認められております。なお、アメリカの場合は全部の州の会計業法において、会社はいかなる形態の会社をつくってもいいということになっております。さらにドイツにあっては、公認会計士でも税理士でも、例えば有限会社でも株式会社でも、いかなる形態の会社でもつくってよいということになっております。フランスも同様です。ところが、日本だけはできない。しかも、日本だけは税理士法四十条によって一軒しか事務所を認めない、複数化を認めない。これはもうナンセンス。こんなことはやめてもらいたい、こう願う次第であります。  なお、税務行政についてちょっと触れられましたので申し上げますけれども、税金を不当に取っちゃったという場合について、税務官吏に対する罰則規定がどこにもない。したがって、ああ、おまえはいい子だ、いい子だ、よく取ってきたくらいのことで終わってしまう。それは困る。やはり民主国家である以上は、我々は余計に税金を取っちゃったという税務官吏は処罰の対象とすべきである、このように考えております。そういう点が問題です。  さらに、実調率が低いのでございますから、実調率の低さに対する抜本的な処置は何かということは、先生方は我々と違って頭がいいのでありますから、したがって、この低い実調率をどう克服をするかということについて御考慮いただきたい、このように考えております。  なお最後に、国税庁長官の監督下にあるはずの税理士審査会が試験問題を難しくするために、税理士が余りふえない。ふえないから、税理士は勢い、そう言っちゃなんだけれども、墜落しながらでも飯が食える、こういう状態になっている。これはいけない。今現在、ドイツは日本の税理士の二倍いるのです。アメリカの場合には、日本の公認会計士の三十五倍ぐらいいるのです。大体今三十万人を超えていますから。例えば、私は法務省で調べたのですが、日本の弁護士は一万二千三百人しかいない。アメリカは六十万人いるのですよ。だから、切磋琢磨が猛烈で、しっかりした仕事をやらない職業人は食えなくなってしまうのですよ。そういうふうに持っていかなければいかぬと私は思うのですけれども、そこらのところ、愛国心の所在が少し品質が違っているのではないかというふうに私は考えているわけであります。終わります。
  94. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私もかつて税務調査をしたことがございますが、そういったことで、取り過ぎたら罰せられるというのもなかなか厳しいあれでございますけれども……。  それでは渡辺参考人にお聞きしますけれども、今この問題についてどうお考えになるかということと、その次にもう一つ、さっきいろいろ執行面から税制は考えなければいかぬということを言われました。今大型間接税の問題が大分出ておりますけれども、これについて執行面からどういう問題点があるのかという二点をお聞きしたいと思います。
  95. 渡辺康之

    渡辺参考人 大変厳しい御意見をいただきまして、もしこれになれば私も勤められないのではないか。確かに、取り過ぎというのはいろいろな問題があろうかと思います。それをそのままでいいのか、どういうのを飯塚参考人は御指摘になっているのか、私もちょっと理解に苦しむ面がございますが、私どもはあくまでも正しく税を執行するということでございますので、じゃよくやったという場合にはどういう形で我々に報いていただくのかというようないろいろな問題があって、ちょっと私まだ勉強不足でございますので、詳しく述べられないのは残念でございます。  それから、大型間接税等の問題、過去の執行の問題等につきまして御質問がございましたが、現在、大型間接税導入の問題につきましては、今までこの場におきましてもいろいろ御論議いただいたわけでございます。私ども、先ほど申しましたように、現行制度における適正な執行すら不可能な状況である。それでは、またそこに新たな税制というものを導入された場合に、新たな不公平を招来するのじゃないか。今でさえ不公平感を持っているというところに、またもう一つの不公平感が導入されるということで、そうしますと、納税者の不満というものはより一層募ってくるのじゃないかということを危惧しております。私どもは、何度も申し上げるようですが、執行面というものから考えますと、そういう大型間接税等の論議はございますが、執行基盤というものをきちんと行っていただきたい、このように思う次第でございます。
  96. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 執行が非常に難しいというのは、それは制度のつくり方にもよりましょうけれども、どういう面が特に、人間が今のままじゃ少なくてやっていけないというのか、つくる以上は非常にやりやすいものにしてくれという意味なのか、どういう意味でございますか。
  97. 渡辺康之

    渡辺参考人 安倍先生の御質問の、やりやすいということではなくて、現在の人員が不足しておる。先ほどから何度も御説明申し上げておりますが、国税職員が不足している。だから、税がやりやすいとかやりにくいとか、徴税のコストの問題というもの、これについては政府税調の方また国会の場でいろいろ御論議いただくことだろうと私は考えておりますし、私どもは、そういう制度導入された場合にいかなる執行を行うかという問題についても、あわせて御論議いただければ、定員問題とかいろいろな諸問題、執行基盤というものは解決されるのじゃないか、このように思っております。
  98. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 確かに、いろいろ不公平感にしても何にしても、制度の問題とともに、それがどう執行されるかという問題でございまして、我々大蔵委員会におきましても増員については御協力しているつもりでございますけれども、私自身も出先におりまして、どんどんと人間が全体減らされていく、税だけはちょっとふえるけれども、ほとんどふえ方も少ないということを実感しておりまして、この点については我々も、単に法制だけじゃない、実行面が大事であるということは留意していきたいと思っております。  それと関連して、さっきの質問とも関連するのですけれども、中曽根首相が我が党のある委員の質問に対して聖書を引用して、貢ぎ取りが天国に行くのはラクダが針の穴を通るのと同じようだというようなことで、苛斂誅求はいかぬというようなことも発言されました。税の申告期のときに、皆様はどういう気持ちでこれを受け取られているか、渡辺参考人にお聞きしたいと思います。
  99. 渡辺康之

    渡辺参考人 今安倍先生から御質問いただきました問題でございますが、納税に対しましては目に見えた反対給付というものがございません。そのために国民は、税の必要性というものを認めながらも、納めなくて済むものなら納めないで済ませたいというのが当然の考えだろうと思っております。その税を、申告相談とか調査等によって、好むと好まざるとにかかわらず納めざるを得ないことになるわけでございますが、納税者にとって税務職員の存在というものは歓迎すべからざるものではないだろうか。これはまた、一部におきましては蛇蝎のごとく忌み嫌われているということも事実でございます。  しかしながら、私たち国税職員というのは、税法という法を適正かつ公平に執行すること、これは社会正義であろう、また真の行政サービスである、このように認識し、自覚を持って職務を全うしております。しかも調査におきましては、単に脱漏所得の発見のみを目的とするものではございません。自後の税に対する理解と協力をいただき、正しい申告を継続してもらえるよう、応接態度にも私ども細心の注意を払ったわけでございます。このことにつきましては、総務庁の調査しております行政サービスアンケート調査等にも反映されておるものと思います。  したがいまして、今回の総理の答弁の真意がどこにあるのか、私としましては知る曲もございませんが、行政の最高の総責任者の方が、税の第一線に働く者に対する理解と思いやりに欠ける発言ではないかと率直に思う次第でございます。職員の中では非常に怒った声が出ておることは事実でございます。
  100. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 こういった執行面の話は別といたしまして、では、私はまた一般論の話でちょっとお伺いしたいのでございますけれども、今私ども方々回りますと、私どもの地区は非常に中小企業が多うございまして、ちょうど戦後営々として築き上げた人々が世代交代の時期にあるということでございまして、さっきちょっと飯塚参考人からもお話が出ましたけれども、これが、死んだ後、事業を後に継がせるというときに、土地は高くなる、そして株は公開してないから、どう評価されるかと戦々恐々、そこで果たして事業を継続できるかという問題が起こってきております。  この点、富岡参考人、さっき中小企業について非常に御理解のある発言をされておられましたけれども、我々の申しておりますいわゆる中小企業承継税制ということを考えてみますと、これについてどうお考えになっておられるか、そして富岡参考人の次に小倉参考人から、これについての見解あるいは審議状況ということをお聞きしたいと思います。
  101. 富岡幸雄

    富岡参考人 お答えします。  その前に、安倍先生、先ほどの税務行政の問題と税理士の問題につきまして、私にも質問していただきたかったのですが、よろしいですか。
  102. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それではどうぞ、結構でございます。
  103. 富岡幸雄

    富岡参考人 では、順序を追ってやります。  どんな立派な制度先生方がつくっていただきましても、第一線の税務行政がワークしなければだめなのです。この点は渡辺さんが切々と述べられたとおりです。  私は、この点につきまして以下のように考えます。  まず、税務行政の充実刷新を図ることです。量的側面として、優秀な税務職員の大幅増員を国会は断行すべきです。それによって、コストの数百倍、数千倍の収入を上げることができることは確実です。量的改革。  それからもう一つは、大変言葉は悪いですが、質的改善ですね。税務職員のモラールの問題です。決して税務職員を非難しているわけではありません。日本の税務官吏には早出晩退という伝統があるのです。朝早くから役所へ行って、夜はもう十時、十一時過ぎてから家に帰るという早出晩退という伝統があるのです。私も、昭和二十一年から昭和三十五年まで十五年間、第一線の税務官吏をやっていました。一生懸命やりました。そのときは、待遇とかそういうこともさることながら、国家財政再建のためにおれたちが一生懸命公平な税を執行するんだと、国会の権威によって定められた税法を執行することに無上の光栄と生きがいを感じて仕事をしておりました。恐らく現在の後輩諸君もその気持ちでやってくれていると私は信じます。そのためには待遇をもっと改善してやってください、実態をもっとよく見てやってください。  そして、大変言いにくいことですが、安倍先生は恐らくエリート官僚御出身じゃないですか。つまり、エリート官僚の方は三十代前で税務署長ですね。そうでない方は、どんなに努力しても、税務署長にもなれるかなれないかなんです。この点は残念です。これがどれだけ日本財政再建を妨げているか。つまり、言葉は悪いですが、官庁制度ですね、官僚制度といいますか、実力のある人は、税務大学校の出身でも中央大学の出身でも、堂々と局長や長官になれるような実力主義を導入していただくことが大事です。自由競争のないところは滅亡があります。これがどれだけ税務官吏の意欲とモラールを向上するかわかりません。ぜひ国会はこれをやってください。  次に税理士制度。私の中央大学からはたくさんの税理士、公認会計士が出てます。きょう後ろにも私の弟子がたくさん聴講しています。大蔵省、国税庁にも要所要所お世話になっています。この税理士もやはり国税庁長官の監督下にあるというのが制度的に問題ですね。弁護士と同じように独立した機能を持つべきです。プロフェッションとして、知的、頭脳的、専門的職業ですから。主体性の確立ですね。問題のある人が出たらば自分でそれを処理するというセルフコントロールシステムが、やはり民主主義の根源なんです。そういう面では、弁護士に比べて税理士はまだまだ改善の余地があります。税理士法につきましても、法人化だけしてもだめです。中身に問題があるのです。試験制度の改善もございます。国税庁長官の監督下から外して独立自在の生き方をし、自覚を持たせるようにして、税理士の社会的地位の向上についてやっていただくことを、国会先生方にお願いします。  それから承継税制。これは待ってましたといわんばかりです。これは私が言い出したのです。小倉先生にも御協力いただきまして、承継税制をやったのは私です。五十五年から通産省の研究会をつくってやりました。  問題は、株式評価と土地の評価なんです。企業というのはゴーイングコンサーンで、永続的生命を持つのです。人間は有限の生命です。長生きしても八十、九十で死ぬのです。オーナー経営者が死んだときに、その持ち株を時価で計算するのです。その時価が処分可能価額というのですか譲渡価額ですね、譲渡性時価なんです。ばらして売るものでないものを、今売ったならば幾らかという値段を、基本とする値段に近づけながら評価するという、財産課税における租税原理の誤りが問題の根源なんです。つまり、取引相場のない株式とか事業用資産、土地等につきましては、収益性評価によって計算するシステムを導入しませんと、小手先の手直しをしても中小企業の世代交代問題は解決しません。  このことを、五十八年でしたか、一部株式評価は通達で、それから措置法の改正でやっていただきましたが、甚だ失礼でございますが不十分です。根本的に事業承継を円滑ならしめるような承継税制のために、株式評価の抜本改革、土地評価問題――土地評価問題は固定資産税の評価に通じます。これらを至急検討しませんと、中小企業は壊滅します。今からではもうかなり遅いのですが、今からでも遅くない、至急やっていただきたいことをお願いして、終わります。
  104. 小倉武一

    小倉参考人 承継税制のことにつきましては、ただいま先生からお話がございましたように、税制調査会では五十七年小委員会を設けまして、相当長い間の討議をいたしました。その結果、五十八年に改正をいたしまして、ただいまお話しになりましたように、株式評価についての合理化と、それから事業者の宅地でしたかの一部について、評価の適正化を期するという趣旨で、若干の改善措置を講じたところであります。
  105. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 飯塚参考人、何かお話ししたいような、発言したいような感じでございますが、簡単にどうぞ。
  106. 飯塚毅

    飯塚参考人 一つ言い残してしまったのですが、実は税理士法の改正が五十五年に行われまして、そこで税理士は助言義務というのをかぶせられたわけであります。義務をかぶせられた以上は、実はそれに対応する権利がなければいかぬ。その権利としては、税理士は証言拒否権を持っていなければならない。ドイツの税理士法の百二条には、税理士も計理士も公認会計士も全部証言拒否権がある。つまり、プライバシーに関することまでは証言しないということは、弁護士もできるわけです。ところが税理士と会計士だけはそれがない、与えられていない。これは不公平そのものだから、先生方は大蔵委員ではございますけれども、当時大蔵委員会で税理士法改正をやったのですから、したがってその助言義務を与えた以上は、それに対応する証言拒否権を与えよ、これを叫んでいただきたい。特に、産婆さんでも歯医者さんでも神主さんでも証言拒否権を持っている。なぜ税理士と公認会計士だけはくれないのか、そこが問題だと思うのです。  終わります。
  107. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私に与えられた時間が非常に短いので、最後の質問をさせていただきます。  小倉参考人、今行政改革が、中央は大分進んできた、地方もしなければいかぬ。そこでいわゆる中央、地方のいわば事務配分をもう少し考えなければいかぬということと同時に、税源の配分というものを考えなくてはいけないと思っています。  実はこの前私、自治省の人間を呼びまして、一体地方税収入の中において東京都のメトロポリスにおける、いわば二十三区あるいは市といったのを含んだのが、全体の地方税の中でどのくらいのパーセントを得ているのかと言いましたら、人口としては日本国民の約一割と思われますけれども、一七%の収入をメトロポリスだけで得ているというような話も聞きました。非常に増税、増税とやって、国税三税の三二%が地方交付金でいく。これは私どもの地方では非常に貧乏なところもありますけれども、メトロポリスに非常に収益が集中している。その辺は本当に最近サンケイ新聞あたりでも書いておりますけれども、やりたいほうだいやっている。でございますから、地方自治の名に隠れて非常にルーズな地方自治体もある。ここで税源をもう一遍再配分というか、考え直さなくてはいけないと私は考えておりますが、こういった点につきまして税制調査会議論をされておるのかどうか、あるいはこれから議論される方針があるのかどうか、小倉会長にお聞きしたいと思います。
  108. 小倉武一

    小倉参考人 地方税につきましては、税源の強化拡充という御主張は絶えずございます。税源については、国税と地方税についての配分という問題もその間において議論をされましたけれども、地方間の税源の再配分をすべきだという議論は、これまでは余り聞いたことはございません。恐らく国税から地方税に税源を譲るとか交付税をどうするとかいうようなことは、地方団体全体としてある程度意見の一致を見ることですから、意見がおのずから出やすいのでしょうけれども、ほかの地方団体からこちらの地方団体へ税源を譲るということは、利害関係が対立するようなことでなかなか意見が出にくい問題で、しかし、そういうところに問題があるということは十分承知しなければならぬと思っております。     〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕
  109. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう時間が来ておりますが、私は、ある地方団体から片方へ移せという意味ではなくて、国税、地方税の税源の見直しの過程で、メトロポリスに集中するような税源を外すとか、そういう種類の考え方もできるのではないかという考えでございますので、A地区からB地区へ税源を回せというのではなくて、国税、地方税のもともとのどれが地方税として適当であるか、どれが国税として適当であるか、もう一遍洗い直して、非常にメトロポリスに集中するような税はむしろ国税にするとかいうようなことを言っているのでございまして、その点についてあるいは誤解があるかと思いますけれども、私の考えにつきまして小倉会長の御意見をお聞きして、最後の質問にしたいと思います。
  110. 小倉武一

    小倉参考人 お話しのように、私多少誤解を申し上げて失礼いたしましたが、余り税源が偏在すると、税源の項目は各府県あるいは市町村共通でありましても、それによって上がる税金が地方によって非常に違う。要するに税収が偏在するというのは、地方税としては必ずしも適当でないというようなことが論議としてできると思います。全体の地方税制をどうするかということの中で、そういう一環としてそういうことは考えなければなりませんが、同時にそういうことは地方交付税の措置でもある程度還元できるかもしれませんが、それではできない部分もあるかと思います。お話しのことも今後検討課題だと存じます。  なお、先ほど坂口先生からの御質問でちょっと取り違えてお答えしましたが、恐縮しておわびしながら訂正させていただきます。  赤字法人についていろいろ研究した、随分長い時間をかけて税制調査会検討したことは先ほど申し上げましたとおりです。その結果、法人税という格好ではどうするという措置はとられないという結論でしたが、しかし、税制調査会では「当面、法人の申告状況実態等を踏まえ、新たに実質的に大きな負担を求めることとならないよう配慮しつつ、所要の措置を講ずることも検討されてよいものと考えられる。」と、ちょっとわけのわからぬことを書いておるわけですが、だからといって法人税は性格上適当でないからそのままでいいんだというふうにほっておくのもどうかという感じを出しておるわけです。政府でおつくりになりました税制改正の要綱には多分それを受けているのだろうと思いますが、法人税における所得税額控除の控除不足額の還付に関する特例、還付する場合にすぐに返さないで、四年ですか、五年ですか、少し延ばしてやるという措置が、今度の提案の法人税改正の中に入っておるようでございます。
  111. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 どうもありがとうございました。
  112. 越智伊平

    越智委員長 正森成二君。
  113. 正森成二

    ○正森委員 まず最初富岡先生に伺いたいと思います。  先生の論文は私も読ませていただきまして、特に先生は第二種法人というように区分けされておられるようですけれども、株式公開一定企業については、法人擬制説ではなしに法人実在説といいますか、独立課税主体説をとるのが妥当であるというような御見解をお述べになっていることには、私も基本的には同感でございます。  そこで、その上に立ってお伺いしたいと思うのですが、きょうお見せいただきました先生の「法人税制改革基本構想提案」の④というところに、「配当部分については、不完全ながら調整制度をもっているのに対し、留保部分については、キャピタル・ゲイン課税一般的に見送られている現状では、課税上何ら有効な措置が講じられていない。」と書いてあります。この御見解には私もかねがね同感でございまして、例えば企業に留保されている利益部分というのが、留保されないで企業外に配当等の形で出た場合にはそれに所得税がかかるわけですね。ところが、企業に留保されている限りは、その間そういう種類の税金はかかりません。だから、所得税が無限に延納されているような形になると言っても言い過ぎではありません。あるいは大きな企業の場合には留保部分がさまざまな形でふえますが、そうしますと、当然のこととして株価はそういうものを反映いたしますから、株価は上昇いたします。そういたしますと、株を持っておる個人その他が売却したときには当然キャピタルゲインが出るわけですけれども、我が国税制上、特殊の場合以外にはキャピタルゲインに課税されないということになっております。  これは非常に不公平な制度で、このキャピタルゲインに課税するということと、あるいは企業の中の留保部分について何らかの措置を考えるということは必要ではないかと思っておりますが、そういう点について宮岡先生の一層の詳しい御意見がございましたら御開陳を願います。
  114. 富岡幸雄

    富岡参考人 お答え申し上げます。  私のつたない論文の中身に立ち入りまして詳細な御質問をいただきまして、まことに光栄に思います。  日本税制問題点の大きなものとしてタックスエロージョンということを申し上げたのですが、キャピタルゲイン、有価証券の譲渡所得に対して課税されないということは、残念ながら問題点の最も大きなものの一つであると言わざるを得ません。税務執行との関連で困難であるということが、あれを廃止した理由として説明されておるわけでございますが、そのもとになったシャウプ勧告におきましては、利子配当、譲渡所得などの資産所得税及び富裕税の適正な執行を図るために、無記名、偽名預金の禁止、有価証券の強制登録、高額所得者の貸借対照表の提出などということもきちっと述べられているわけですね。そういうものの裏づけがあって、かのシャウプ税制は一つの完結的な税制として登場したわけなんですが、それをその後一年、二年たたないうちに何だかんだと理屈をこねながら廃止してしまっているというわけですね。ですから非常に空洞化しているわけです。この点が問題でありまして、私は税務執行のことをも慎重に配慮しながら、キャピタルゲインの課税、同時にキャピタルロスの控除、あわせてこれを認める方向をもぜひ取り上げていただくべきだと思っております。
  115. 正森成二

    ○正森委員 小倉参考人に伺いたいと思いますが、たしかシャウプ税制ではいろいろ勧告がございましたが、その最後の部分で、キャピタルゲインに課税というのは私のこの勧告の核心をなす、これを離れては税制の公平というのは期し得られないという記述があったと記憶しております。今不公平税制の是正が言われておるときに、キャピタルゲインを捕捉して課税するという点について、もし政府税制調査会に何らかの御意見があれば承りたいと思います。
  116. 小倉武一

    小倉参考人 法人のキャピタルゲインについてのお尋ねだと思いますが、法人税につきましては基本的な問題としまして、三年にもなりますか、三年ぐらい前に特別の委員会をつくりまして、法人税のあり方について御検討願って結論をいただいたわけですが、簡単に申しますと、そう大幅に改正する必要はない、そういうような結論だったわけです。無論御意見としましては、その小委員会の中では余りそういう御主張はなかったようですが、今の実在説に基づきます法人税のあり方の主張もあるわけですから。だけれども、そういう御主張よりはむしろ、法人税というのはどうも二重課税になっているんじゃないか。配当にもかかる、法人にもかかるという意味では二重課税であろう。そこでむしろ二重課税を廃止する方向で検討すべきじゃないかという意見の方が、結論じゃありませんけれども、有力に主張された向きもありました。  そういうこともありまして、もう一つ大事なことは、財政が困難になってからの話ですから、税収がうんと減るというような措置はこの隊とりにくい。例えば今の二重課税を廃止するということになれば、税制財政収入が減ってくるということになりますし、そういうことを外国でやっているのもありますから、理屈はそれもそれなりにあるんでしょうが、日本はこれまでのいろいろな経過を経て少し複雑になっていますけれども、こういう法人税になっておるんだから、ほぼ現状のようなことでやむを得ないんではないかというのが結論だったかと思います。その中に、キャピタルゲインの問題を特に新しくどうこうするという際立った意見は、たしかなかったかと思います。そういうままで今日に至っておる、こういう次第でございます。
  117. 正森成二

    ○正森委員 キャピタルゲインの捕捉が非常に難しいというのは、例えば証券会社に株式売買人名簿がありますから、それを提出させるとかの方法で実効性のある措置をとることができるというように私どもは思っておりますし、国民の間にある不公平感からいいまして、やはり適切な措置をとるべきじゃないかということを申し上げておきたいと思います。  それで、その次に渡辺参考人に伺いたいと思います。  今渡辺参考人意見開陳あるいは質問に答えられて、税務職員が必ずしも国民に好まれていないというか、一部には蛇蝎のように思われているというような御見解もありましたが、私自身はそうは思っておりません。国税職員の大部分は極めてまじめに働いており、そして国税庁あるいは職員の御奮闘がなければ国家というものは成り立たない。いつの日か、私どもの民主連合政府ができても、やはり職員には働いてもらわなければならぬというように思っておるんですね。もし国民の間に理解が得られない点があるとすれば、それはごく一部の職員の不心得と、それから税制の中に国民に受け入れられない点が残っておるということからであろうというように思います。そこで、きょうは御遠慮されたのか、お触れになりませんでしたが、あなた方の処遇の問題について伺いたいと思います。  私どもの資料によりますと、国税職員は最近非常に激務で、健康破壊が進行しているんではないかと思われる点があります。私どもが持っている資料だけでも、昨年一年間に仙台局で現職での死亡者が九名に上っております。その中には、単身赴任中に死亡したという方が二、三名おられるようであります。そのほか、東京局でも、単身赴任の署長が死亡するとか、大阪局では統括官が署長室で復命中に倒れて死亡するというようなことが起こったと言われているんですね。あるいはビジュアル・ディスプレー・ターミナルというのですか、そういうものが税務署にも導入されているようですが、四国管内での調査によりますと、これを扱っている職員の中で、目が疲れるという者が五九%、何らかの症状ありという者が七三%というような数字が出ております。  そこで、こういう点について何か政府なり国会にぜひ措置してほしいとか聞いてほしいということがあれば、遠慮なくお述べいただきたいと思います。
  118. 渡辺康之

    渡辺参考人 正森先生から私ども国税職員に対して大変温かいお言葉をいただいたことをまず感謝申し上げます。  先ほどいろいろお話がありましたが、処遇の問題、確かに私どもの職場というのは、今の職員数ということからくる問題等々によりまして、仕事は大変きつうなっております。ただ調査だけではございません。問題になっておりますのは、還付申告の増大とか、いろいろな問題がございます。処遇の問題、いわゆる死亡者の問題と健康問題のことを先生おっしゃったんだろう、このように認識しております。この健康問題、いわゆる職員の健康管理については十分な配慮をしてほしいということは、事あるごとに私どもの組合といたしましても、国税庁を初めもろもろ訴えておるわけでございます。それも何が原因であるか等々も御賢察いただきまして、当委員会においても、私どもの健康管理の問題等をも含めまして温かい御配慮をいただければ幸いだ、かように思っております。
  119. 正森成二

    ○正森委員 それからもう一つは、国税職員の年齢構成が非常にひょうたん形になっておりまして、五十二歳以上の職員が全体の二三%ぐらいに達すると言われております。これは昭和二十一年に二万七千人であった職員数が、昭和二十五年には六万一千人に増員されておる。これはもちろん税収を増加するため等に必要だったからと思われますが、そのときにふやされた方が今そのくらいの年齢になっておるということから、どういうひずみが来ておるかといいますと、四十八歳以上の職員が約一万四、五千名おられるようですが、その方たちのうち約四千名近くの職員は税務三等級以下ということになっているようですね。これは実質的には平職員の処遇だ、こういうように言われております。そのために枠外号俸者というものが、他の官庁の行(一)の場合ではせいぜい一%ぐらいですが、税務職員の場合は三・二七%というように、三倍ないし四倍に上がっているということで、これはもちろん「人はパンのみにて生くるものにあらず」といいますけれども、幾ら使命感がありましても、待遇が非常に悪いという場合にはいろいろ問題がある。  そういう点では、三等級の上席専門官というのは、実質上の仕事は特三等級ポストに十分値する業務を遂行しているのだから、上席専門官の職務評価を引き上げて特三等級に格付するのが妥当ではないかという意見も職場にはあるようですが、これについてどう思われますか。
  120. 渡辺康之

    渡辺参考人 先生の御質問の年齢のひずみの問題、私ども大変憂えております。  御承知のとおり、税務職員というのは、戦後に新たに大量に増加したという歴史的な背景がございます。そのために、中高年の方というのはまだまだ逆ひょうなんというよりも、高い山として残っておることは事実でございます。  その問題について、三等級の問題、特三等級以上の格付の問題等々がございました。枠外につきましては確かに、どのような方法がベターであるのか、それはいろいろな議論があろうかと思います。例えば号俸をもっとふやす方法とか、または上位等級に紋別定数をとるという問題等がございます。その問題につきましては、紋別定数の認定は人事院で行っておりますので、私どもの職場の実情というものは、私ども国税会議といたしましても中高年対策要綱というものを確立いたしまして、過去からつくっております。それに基づきまして、当大蔵委員会先生方からもいろいろ御支援をいただきまして、処遇改善という問題について附帯決議もいただいております。ちょうどその問題につきましても十年目の附帯決議をいただいております。それによりまして各関係方面に訴えておりますが、現在の厳しい財政上の問題等によりましてなかなか進展しないというのが実情でございます。またその他、他省庁比較論という問題等もございまして、なかなか進展していないというのは事実でございます。  以上でございます。
  121. 正森成二

    ○正森委員 飯塚先生に伺います。  残念ながら私どもは持ち時間が少のうございますので、十分お聞きできないことを失礼に思いますが、先生がお見えになるということでして、昨年予算委員会の公聴会に先生が御出席になりました。二月二十四日に公述をしておられます。私はそのときに質問させていただきまして、先生の御見識及び声の大きいことに深く感銘を受けた記憶がございますので、そのときの意見書を持ってまいりました。  そのときの意見書でも私は非常に思ったわけですけれども、先生のこの意見書に、外国では税務について、例えば米国の内国歳入法第六千六百五十三条は脱税を詐欺罪と断定する明文を置いておるとか、先ほど言われました資料不提出を十ドルの過料に処するとか、そういうことが言われておるのですが、それにもかかわらず、同じ参考人の公述の中には、「米国の内国歳入庁の発表によれば、一九八一年には九六〇億ドルの脱税による税収漏れがあった」「これに対して、米国公認会計士協会は反論を発表し、脱税による税収漏れは米国の国家予算と略同額である、」という点があるのですね。私はこの前のときにもあるいは申し上げたかもしれませんが、これらを見ますと、やはり刑を重くするとかいうことだけでは解決できない問題があるのじゃないか、国民に受け入れられる、理解を得られる税制をつくることが、脱税を起こさないという点で一番大事なのではないかと思っておりますが、重ねて先生の御見解を承りたいと思います。
  122. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  ただいまの正森先生の御見解に私は同感であります。つまり、国民から信頼されるような税制でなかったらだめだということでございます。
  123. 正森成二

    ○正森委員 時間がなくなりましたので、最後に一問だけ渡辺さんに。  あなた方の御苦労には敬意を表するのですが、この間私は週刊現代を読んでおりましたら、そこに非常に遺憾な記事が載っておりました。  これは週刊現代の二月十六日号でありますが、その中にこういうのが載っております。「官公庁では、戦闘的な組合員に対するいやがらせが、これまたものすごい。なかでも国税庁の全国税所属組合員への風当たりの強さは有名である。」こういう前書きで、「愛知県の小牧税務署の所得税部門の忘年会で、職場のただ一人の全国税組合員であるAさんが、強引に十数人に胴上げされ、全員が手を引っ込めて落としたんです。Aさんは第一腰椎圧迫骨折で入院加療三カ月の大ケガをしました」、こういう記事が載っているのですね。  これは私、余りのことに、事実かというので全国税の組合へ問い合わせたら、まさに事実である、こう言うのですね。こういうことが行われるとすれば、普通の民間の組合でもよろしくないのに、いやしくも国家公務員である国税庁の内部で、しかも十数人で胴上げしたというからには、部長や課長だけでなしに、あなた方の組合の組合員も参加しておったと思うのですけれども、自分と見解を異にする、あるいは組合の所属を異にする者を胴上げして、それを手を放して三カ月の重傷を負わせるというのは、これはある意味では傷害罪なんです。そういうことはやったらいかぬということで、あなたはこの事実をあるいは知られないかもわかりませんが、職場の中でそういうことのないように希望しておきたいと思います。  もし、おっしゃることがあればおっしゃってください。私の質問を終わります。
  124. 渡辺康之

    渡辺参考人 私も、今のお話については若干聞いたことがございます。しかし、私は事実と違うように聞いております。この問題については、先生も両者の意見をやはり聞いていただきたいと思います。
  125. 正森成二

    ○正森委員 だから今聞いているわけじゃないですか。
  126. 渡辺康之

    渡辺参考人 私の方では、そのようなことはない。それは本人が先に言い出したのだと。先に胴上げされた職員は現におります。私どもは、その点はそれだけしか伺っておりませんので、この場でお答えしておきます。
  127. 正森成二

    ○正森委員 では、終わります。
  128. 越智伊平

    越智委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十七分散会