○
竹下国務大臣 何をゆがみと
考えるか、こういうことになりますと、それはさまざまな見方もあろうと思いますが、どうしても私どもとしては
税調答申で
議論されたことが一番土台になるわけでございます。
そういたしますと、
検討課題として指摘されておりますのを正確に申し上げてみると、
所得再配分機能だな。「
所得水準の平準化の動向等にかんがみ、中堅
所得階層の負担の緩和にも配慮しつつ、全体として、若干なだらかな累進構造とする方向で見直しを行うことが適当である。」というのも、
言葉ではございますが、一言で言えば
所得再配分機能の問題が一つだな。
それから次の二番目はやっぱり
所得の捕捉です。これは「
所得課税については、これまで、執行面で把握差が生じやすく実質的公平確保の面で問題があるとの批判が少なからず見受けられ、」まあクロヨンだとか、ああいう
言葉ができたのもそういう
感じからかもしれません。「とりわけ、個人が稼得した
所得に対して直接に負担を求める
所得税」「においては、制度及び執行の両面にわたり実質的公平確保のための工夫が強く要請されてきている」のが、
所得の捕捉という
言葉の中に入ると思います。それから法人の場合でいきますと、「全法人の約五〇%が赤字申告を打っている。これらの法人についても公共サービスを享受していること等から何らかの」応能的じゃなく「応益的負担を求めてもよいのではないか」というような意見、これが二番目のいわゆる
所得の捕捉の個人の分と法人の分ということが言えるのじゃないでしょうか。
それから、
課税ベースの浸食として抽象的に言われておりますのは、これも二つに分けますといわゆる租税
特別措置でございます。「特定の政策目的を実現するため税負担の公平その他の
税制の基本
原則をある程度犠牲にして」講ずるわけでございます。そのときには政策
税制として一つの仕組みを犠牲にするわけでございますから、したがって、これは常時見詰めて基本
原則との調和を図るようにしなさいよという指摘でございます。
それから、
課税ベースの浸食としての次の二番目の問題は、いわゆる非課税貯蓄残高の総額がとにかく個人貯蓄の六割を占めておる。利子・配当のあり方等はやはり大変重要な問題ですよという指摘があります。
それから四番目に、
間接税の
課税ベースと税率構造、こういうのが指摘されております。これも一、二に分けて申しますと「我が国の
間接税は、酒、たばこ、自動車、揮発油等の特定の物品に対する課税が大宗を占めており、しかも、従量税率によるものが多いため、
消費態様の
変化や物価の上昇に伴って
課税ベースの相対的縮小や税負担水準の低下が生じやすく、また、サービスについては近年その
消費が急増しているが、国税としてはほとんど課税対象になっていないという問題がある。」すなわち
消費に着目した税の問題でございます。
それからもう一つ、その
課税ベースと税率構造の問題の二番目は、酒税について、「近年、
所得水準の上昇、平準化等を背景に酒類
消費が多様化、均質化するに伴い、これまでのいわゆる「高級酒」、「大衆酒」といった分け方のもつ
意味は弱まり、現実にも、低価格酒の伸びが相対的に大きくなる傾向がみられる。このような
事情等を考慮すれば、」「税負担格差の縮小を図ることが適当である。」これは五十九年度
税制でもやらせてもらったわけでございますが、そういう指摘もやはり正確に記録に残った指摘でございます。
その上に、今度は若干また感覚的に申し上げますけれども、フィーリングでございますかインプレッションでございますかは別といたしまして、我が国の税体系が、結果的ではございますが、近年直接税に偏り過ぎているのではないかといった指摘も確かにございます。
いずれにいたしましても、このような問題点ないしは
検討課題についてどう対処していくかを含めて、我が国
税制のあり方というものは、究極的には
国民の選択によって決められるべき問題でありますが、今は
税制調査会から指摘されたことを申し上げましたから、私の予見ではございませんが、
税調等を中心にこの
国会の
論議等を参考にしながら、幅広い角度から
検討されていく課題だ。少し長くなりましたが、ゆがみの例は、どれがねじりでどれがよじりでどれがひずみか、どれがゆがみかということになるとわかりませんが、抽象的に今のようなことを申し上げたわけであります。