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野々内政府委員 基礎産業局長でございます。
お
手元に「
主要基礎素材産業の
現状」という横長の
資料がお配りいたしてございますので、これに基づきまして、
鉄鋼、
石油化学、
アルミという主要な
素材産業につきまして最近の事情を御
説明させていただきます。
まず
鉄鋼でございますが、
粗鋼生産は、五十九年度はやや
回復ぎみでございまして、右の備考にございますように、一億六百四十六万トンの
生産が行われました。最近
鉄鋼は引き続き不況でございまして、五十七、五十八暦年が一億トン割れでございましたので、三年ぶりに一億トンを超える
状態でございます。
輸出は大体三千万トン
程度で、横ばいか微増という
状態でございます。
国内が
公共事業、
土木関係が落ち込んでおりますが、
機械、
設備投資がふえているということで、
国内の
鋼材消費は緩やかな
伸びでございます。
輸出は、従来
アメリカ向けがトップでございましたが、後ほど御
説明申し上げますように、
アメリカ向けは自主規制を本年から行いますのでかなり落ち込んでおりまして、現在では三千万トン中九百万トン近いものが中国向けでございまして、中国が
我が国にとりましての
鉄鋼の第一のマーケットになったという
状態でございます。ただ、
アメリカ向けはかなり値の高いものが売れておりますので、量といたしましては中国向けで
伸びてはおりますが、収益への寄与から申しますとマイナスであるという
状態でございます。
問題は
輸入でございまして、近年鋼材
輸入が相当
増加をいたしております。備考②にございますように、普通鋼鋼材で見ますと、五十七年度百九十万トンから五十八年度三百二十四万トン、急増いたしております。五十九年度三百一万トンで若干落ちついておりますが、これは為替が円安になったという事情及び
国内における競合商品の値が下がっているということで、
輸入をしてもメリットがないという
状態で落ちております。
相手国といたしましては、韓国、台湾、ブラジル、これが御三家と言っております大口でございますが、そのほかルーマニア等の東欧圏、あるいはヨーロッパですとギリシャ、スペインなどからの
輸入もございます。
我が国は製品の
輸入が少ないということで諸外国から非難を受けておりますが、この
日本の鋼材
輸入の中は厚板、ホットコイルに集中いたしておりまして、
国内の総消費の三割近いものがこの二つの品目で
輸入されております。
アメリカは
日本が韓国からの
輸入を制限しているのではないかという非難をいたしておりますが、韓国の
アメリカ向けの
輸出は半分が
石油用のパイプでございまして、御承知のように
我が国では
石油の掘削が非常に少のうございまして、そういう
需要がないというのがその原因でございます。
こういう事情をOECDにおける
鉄鋼委員会その他に
説明をいたしまして了解を求めておりますが、また円高にでもなりますと再び
輸入が増大をする、特に厚板、ホットコイルを
中心として
輸入がふえるというおそれがございます。
次に、対米
鉄鋼輸出自主規制問題でございますが、昨年の九月に
アメリカは、大統領決定によりまして、
輸入鋼材の
国内消費に占める比率を一八・五%まで減らすということを決定いたしました。昨年末の段階では三〇%近い
シェアにまでふえております。その後交渉いたしておりまして、昨年末に
日本の
シェアを五・八%に規制をする、昨年の
日本の
シェアが六・七%でございましたので、比率といたしましては〇・九%の減になります。
それから、中身としましては、六つのカテゴリー、それからその中に七つのサブカテゴリーを置くということで
シェアの上限を設定をするということで、ことしの五月十四日に交換公文に署名をいたしております。
それで、六月一日、先週の土曜日から、
アメリカ向けの
鉄鋼輸出につきましては
輸出入取引法に基づく取引承認制に移行をいたしております。この
輸出商品に当たりましては、
国内のメーカーに対しましては、
輸出入取引法五条の三によりまして、
輸出向けの
国内販売につきまして
生産業者協定を締結させ、それに通産省から販売数量を品種別に指示をいたしております。これによりまして
アメリカの独禁法から適用が除外されるという
状態になっております。
八四年の
我が国から
アメリカ向けの
鉄鋼輸出はショートトンで六百六十万トンでございまして、これが五・八%になりますと、多分五百三十万トン前後になるのではないかと思います。したがいまして、ショートトンで百三十万トン
程度の減少になります。
我が国の総
輸出が三千万トン強でございますので、ロングトンで言いますと百万トン強のものが減るということになります。
ことしの中国の
景気状況いかんによりましてはかなり中国でカバーされるかと思いますが、中国も最近外貨事情等問題がありそうな情報もございますので、ことしの
鉄鋼の
輸出というものは余り楽観を許さないのではないかと考えます。
次に、二枚目をごらんいただきたいと思いますが、
石油化学でございます。
業況は、五十八年の後半以降
アメリカの
景気の
回復を背景といたしまして、
日本向けの
輸入が減少ぎみでございます。また
国内の
需要が
増加しているということで、業況は
回復ぎみでございます。
この備考①にございますように、五十九年にエチレンで四百三十九万トンの
生産が行われました。一九%の増ということで、現在エチレンの設備はフル操業という
状態でございます。この原因は、何といいましても
アメリカの
景気を
中心とします
世界の
景気回復によりまして、
日本の
輸入が減り
輸出がふえるという
状態でございます。
備考②にありますように、エチレン換算の
輸入量は五十九年が四十二万トンでございますが、
輸出が四十一万トンで、現在
石油化学製品につきましては
輸出入がほぼバランスをいたしております。従来は圧倒的に
日本の
輸出が多かったわけですが、
輸出が減り
輸入がふえるという
状態で、ことしはほぼバランスをいたしております。しかし、この
内容の方の②にございますように、本年に入りましてサウジアラビア、カナダ等の新規プラントが本格的に稼働を始めまして、これが
世界の
輸出市場あるいは
我が国に対してどういう影響があるかというのが大きな問題になっております。
備考の③にございますように、カナダは昨年稼働いたしまして、エチレンが六十八万トンでございます。サウジアラビアは六十年五月完成ということで、百六十万トンでございます。そのほかにまだシンガポールが稼働を始めておりまして、これら三つのプラントから
日本に入ってまいります量、これは今後の取引いかんによりますが、製品で六十万トン近いものが入ってくる可能性がある、あるいは
日本がそれを他のマーケットに売るという可能性がございます。
そういたしますと、現在
我が国に入っております約四十万トンの
石油製品にプラスしてこの六十万トン
程度、
我が国が
輸入しあるいは他のマーケットで販売をするという必要が生ずるわけでございますので、現在の
石油化学のよい
状況というのはつかの間の
状況ではないかという危惧がございます。
③にございますように、今後はむしろ非
価格競争力の強化に努め、あるいは積極的な市場開拓、特に
技術開発が必要ではないかと考えております。今後は大量
生産の汎用品から技術力を駆使いたしましたファインケミカルヘというふうに、各企業の経営も移行していくのではないかと考えます。
この(2)にございますように、中国との
石油化学協力が最近クローズアップされてまいっております。本年一月基礎局から審議官が中国に参りまして、
石油化学の
協力について議論をいたしておりまして、五月末にこの③にありますように第一回日中
石油化学協力実務レベル協議が行われました。これは東京で行われましたが、先方との協議で
中心を要員研修――技術研修でございますが、それから樹脂研究所の設立あるいは
改善、この二点を
中心として今後
協力を進めたいということになっておりまして、現在康世恩国務
委員が
日本にお見えになっておりますが、昨日も村田通産大臣との会談におきましてこの問題を確認いたしております。
研修につきましては先方は二年間延べ二百人の研修を希望いたしておりますし、樹脂研究所につきましては北京の近くにございます燕山のコンビナートの研究所をぜひよいものにしたいということを言っておりますので、七月に
日本からミッションを派遣をいたしまして、このあたりの詰めを行いたいと考えております。
中国のプラスチックの消費量は現在年間一人当たり約二キログラムでございます。
日本は五十四キログラムでございまして、
日本は中国の二十七倍の消費をいたしております。もし中国がこの二キログラムを十キログラムまでふやしますと、それだけで樹脂の
需要量が一千万トン
増加をするということでございます。中国側は特にこの
石油化学製品のダウンストリームの設備の改良について
日本の
協力を求めております。例えば農業用のポリエチレンフィルムというようなことを考えておりますので、今後積極的に
協力をしてまいりたいと思っております。
それから、OECDの工業
委員会の中に、
石油化学に関する専門家会合が行われておりまして、五月二十三、二十四日にこれの第一回会合が行われまして、
世界の
石油化学をめぐる情勢につきまして
先進国の中で情報交換をいたしております。私どもとしましては、今後こういう会合を定期的に開くことによって
世界の
石油情勢について間違いのない判断をするという手段にいたしたいと思っております。まだ必ずしも
先進国間では足並みがそろっておりませんが、今後そういう方向で働きかけていきたいと思っております。
それから、五月十三、十四日の両日、京都におきまして化学と化学工業に関する国際シンポジウムが開催されまして、千二、三百名が学界、業界、官界から参加いたしております。ノーベル賞をもらわれました福井博士あるいは英国のサー・ジョージ・ポーターなどがお見えになりまして、化学の将来についての議論が行われております。若い研究者の方たちが大変喜んでおりまして、今後ともこういう会合はぜひ続けていただきたいということでございます。
それからその次のページでございますが、
アルミニウムは
基礎素材産業の中でも残念ながら特に業況の悪い
状態でございます。製錬業につきましては地金の市況が大変悪うございまして、今トン当たり大体三十二万円ぐらいでございます。四十数万円ないとなかなか採算がとれない
状態でございますが、非常に低い業態でございます。これは
アルミの
需要自体は毎年二、三%
伸びておりますが、
供給が過剰であるということで、特にLDCにおきまして国家企業、あるいは
先進国の一部にも国家企業がございますが、こういうものがコストを無視して
生産をし出荷をするという
状態のために、どうしても
需給がバランスいたしませんで、値段が低くなっております。
アメリカではかなり撤退をいたしておりまして、既に百万トン近い工場の閉鎖が行われておりますが、まだ残念ながらバランスをする
状態に至っておりません。
我が国も
アルミニウムの
輸入がどんどんふえておりまして、五十九年度は百二十八万トンでございます。新地金の
需要が大体百七十六万トン、
生産二十九万トンと考えますと、八割以上が
輸入になってしまったという
状態でございます。現在
アルミの関税は、
日本が九%、製品が一一・五、
アメリカがゼロ、二・六、ECが
アルミの塊が六%で板が一〇%という
状態でございまして、今後このあたりが市場開放の絡みで問題になる可能性がございます。
こういう
状況を踏まえまして、(2)にございますように、昨年十二月の
産業構造審議会の答申で、現在ございます七十万トンの製錬設備を三十五万トンに削減をするということで、現在
構造改善の途中でございます。また圧延業につきましては、
需要は
伸びてはおりませんが、過当競争のために相当
程度の赤字になっております。このあたりは何とか安定的にいたしたいということで、近く
需給協議会を発足させたいと考えております。
それから次に、前向き対策の一つを申し上げたいと思いますが、新素材でございます。
最近、各素材メーカーが新素材に取り組んでおりますが、昨年の四月に基礎新素材研究会を設置し、その中間報告を受けて六十年度
予算の要求をし、成立をいたしておりますが、現在この新しくできた素材につきまして安心して使えるような試験・評価
機能というものを整備する必要があるということで、セラミックにつきましては既に名古屋で設立の動きになっております。金属につきましては現在大阪が
中心になりまして試験・評価センターの設立準備中でございます。プラスチック複合材料につきましては東京で化学業界が
中心になりまして設立の動きがございます。今後、私どもとしましては、この三つの試験・評価センターを育て、安心して使える新素材というものを発展させたいと思っております。
この備考のところにございますのは、新素材のうち新たに
政府として促進することになりました
予算が書いてございますが、省略をいたします。
最後のページは、主要な
基礎素材につきまして最近の
生産量、
価格推移の表でございますが、
説明を省略させていただきます。
以上でございます。