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志賀政府委員 まず、
特許摩擦の問題について
お答えを申し上げます。
最近、
工業所有権問題がいろいろな国際的な場、これはマルチの場、あるいはバイラテラルな場で取り上げられているわけでございます、これは、私どもの方にもいろいろ
外国から注文が飛び込んでくるわけでありますけれども、同時に私どもの方からも、例えば
アメリカの関税法三百三十七条の運用の問題、ITCの問題について
アメリカ側に注文をつけるというようなこともあって、
お互いにいろいろ議論をしておるわけでございます。
ただ、いずれにいたしましても、この
工業所有権制度の問題というのは、それぞれの国が長い伝統と
歴史の上にそれぞれ固有のものを持っておる。それで違いがある。そこのところからいろいろな問題が起こってくる傾向がございます。また、相手の
制度がよくわからぬということで、要するによく理解できないことに伴う誤解でおるとか、そういうことも間々あるわけでございます。
そこで、一番基本的な問題というのは、そういったそれぞれの国の
制度というもの、あるいは
工業所有権制度の運用というものをできるだけ統一化していく、これが
一つ基本的な対策として重要であるというふうに思います。
この点について申し上げますと、
日本、
アメリカ、
ヨーロッパ、三つの
特許庁との間で定期会合が持たれておりまして、ことしの秋には東京で第三回の定期会合が行われる予定でありますけれども、この三つの
特許庁との間での合意といたしまして、少なくともこの三つの
特許庁との間で、できるだけ、できるところからハーモナイゼーションを行っていこうという合意ができておるわけでございます。私どもはそういったハーモナイゼーションの合意に
基づきまして、
日本がむしろイニシアチブをとってそのハーモナイゼーションに向かって進んでいきたい。ことしの秋の東京におきますこの三つの
特許庁の間の定期会合においては、この辺についてさらに具体的な今後の進め方などについての合意というところまでやっていきたいというふうに思っているわけでございます。
もう
一つの問題は、ハーモナイゼーションと言うと少し先の話になるわけでありますけれども、現にいろいろな問題が起こってきている。それは、相互によく理解できないというところからいろいろな問題が起こってきているのが現状でございます。これについて私どもがやっておりますのは、例えば
アメリカの
出願人は、
日本の
特許制度についていろいろな注文を持っているわけであります。この注文は、かなり誤解に
基づくものがございます。いずれにしても、
アメリカの
出願人と
日本の
特許庁が直接対話をするということが
お互いの理解を深めていく上において非常に有効であろうというふうに考えまして、実は
アメリカの
出願人と
日本の
特許庁と直接対話をもう二回やっておるわけであります。その結果、
日本側がよく
説明しますと、彼らも
工業所有権制度の専門家でありますから、わかるものはわかってくれるわけです。逆にまた、彼らが言うことで、なるほどということがあれば、私どもは積極的に取り入れていこうという姿勢で臨んでいるわけでありまして、
アメリカの
出願人との間の相互理解というのはかなり深まってきたと思っております。
同様に、
ヨーロッパの
出願人との直接対話も、ことしになりまして二月にいたしました。
ヨーロッパの
出願人との間の対話も同じようにかなり深まったというふうに思っておりまして、こういった
外国出願人との直接対話というのは、これからも我々としては積極的にやっていきたいというふうに思っております。
日本の
特許庁がそういう動きをしたことを
契機にいたしまして、
アメリカの
特許庁あるいは
ヨーロッパの
特許庁も、例えば
日本の
出願人と直接対話をやろう、こういう動きが出てまいっているわけでありまして、これは
日本の
出願人の
立場から言っても、
アメリカの
工業所有権制度あるいは
ヨーロッパの
工業所有権制度あるいはその運用についていろいろ言いたいことがあるわけであります。
日本だけが言われているわけではないわけであります。したがって、そういった
機会を通じて、
日本の
出願人として
アメリカあるいは
ヨーロッパに対してよくこちら側の意見を言う。恐らくその中にこちら側の誤解というのも間々、多々あろうと思います。そこがまた解ければいい。こちらが言うことについて、理由があれば向こうで直してもらえばいいということで、そういう直接対話を通じて相互理解を深めて摩擦が起こらないようにしていきたいというふうに思っております。
次の国際的な問題といたしまして、
発展途上国との
関係がございます。おっしゃるように、
発展途上国における
工業所有権制度の
整備というのは、その国にとって重要であると同時に、
日本にとっても極めて
意義のあることでございます。そういう
意味におきまして、積極的にこの
発展途上国に対する協力ということをしていかなければいけないし、現にやってまいっているわけであります。
それで、
工業所有権制度というのは、法律ができれば直ちにワークするというものではないわけであります。
一つは、立派な
審査官なり何なり、要するに人材がいなければ動かないわけでございます。そういう
意味からいって、私どもとしては積極的に海外、
発展途上国からの研修生の受け入れ、あるいは
特許庁から専門家を派遣して、向こうに行って訓練するということ、これを積極的にやってまいっているわけでありまして、五十九年度までに研修生の受け入れというのは二百九十一人やっております。また、専門家の派遣というのは七十人やっております。この研修生の受け入れのうち、やはり一番大きなところは
中国でございまして、
中国におきましては、この四月一日から
専利法の施行に入ったわけでありますけれども、この
中国における
専利法の
整備、施行には、
日本としてかなり貢献をしたというふうに思っております。
また、もう
一つ、
発展途上国の
工業所有権制度の
整備を考える場合に重要なことは、資料の提供であります。これはやはり
審査をする、そのための資料がなければだめだということがございます。そういう面におきましても、我々はこちらから資料を提供してあげるということで協力をしておりますし、また
中国の場合に、現在
中国におきましてもコンピューター化、エレクトロニクス化を計画しているわけでありまして、要するに検索システムの構築をやろうとしているわけでありまして、そういう面につきましても我々は積極的に協力をしているというのが現状でございます。