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1985-05-15 第102回国会 衆議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月十五日(水曜日)     午前十時三分開議 出席委員   委員長 粕谷  茂君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 城地 豊司君 理事 長田 武士君       甘利  明君    尾身 幸次君       奥田 敬和君    奥田 幹生君       加藤 卓二君    梶山 静六君       高村 正彦君    佐藤 信二君       椎名 素夫君    仲村 正治君       野田  毅君    原田昇左右君       水野  清君    奥野 一雄君       上坂  昇君    水田  稔君       横江 金夫君    和田 貞夫君       渡辺 嘉藏君    草野  威君       西中  清君    福岡 康夫君       青山  丘君    横手 文雄君       工藤  晃君    野間 友一君  出席国務大臣         通商産業大臣  村田敬次郎君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局経済部長 厚谷 襄児君         通商産業政務次         官       与謝野 馨君         通商産業省立地         公害局長    平河喜美男君         特許庁長官   志賀  学君         特許庁特許技監 梅田  勝君         特許庁総務部長 小川 邦夫君         特許庁審査第一         部長      廣重 博一君  委員外出席者         特許庁審判部長 小花 弘路君         商工委員会調査         室長      朴木  正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  四六号)(参議院送付)  地方自治法第百五十六条第六項の規定基づ  き、関東東北鉱山保安監督部及び同部東京支部  の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承  認第三号)      ————◇—————
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  参議院送付内閣提出特許法等の一部を改正する法律案並びに内閣提出地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、関東東北鉱山保安監督部及び同部東京支部設置に関し承認を求めるの件の両案件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仲村正治君。
  3. 仲村正治

    仲村委員 今回の特許法等の一部を改正する法律案は、昨年二月、特許協力条約いわゆるPCT条約及び規則が改正されたことに伴う国内法整備を図るためとされております。我が国においては、ことしは工業所有権制度いわゆる特許制度明治十八年に制定されてから百年という記念すべき年でありますが、私はこの記念すべき年における法律改正に当たって質問に立つことができまして、まことに光栄であります。  そして、この百年間の我が国産業経済の目覚ましい発展を考えるとき、もちろんそのためには外国からの技術導入も少なくありませんが、国内においても、新技術発明技術革新に対する政府の施策や国民の積極的な研究、そしてその意欲の成果が今日の先進工業国としての地位を築き上げたものだと考えるとき、今回の法律改正も、特許制度百年の歴史的節目として技術革新や新技術発明に対する国民意欲認識をさらに高めるよい機会であると考えるものでございます。私は、政府としてもこれを契機として、通産省や特許庁国民技術革新研究発明意欲を促す一大キャンペーン等を行われるべきではなかろうかと思うのであります。  もちろん、四月十八日に国立劇場において、天皇陛下の御臨席のもとに工業所有権制度百周年記念式典も行われ、私も出席いたしましたが、これと並行して、さきに申し上げましたような記念事業等が計画されているのかどうかという点について、まずお尋ねをするものでございます。  私は、特に技術革新発明を奨励する上で、まず通産大臣並びに特許庁長官の御所見や抱負をお伺いしたいと思うのであります。
  4. 村田敬次郎

    村田国務大臣 仲村委員お答えを申し上げます。  今、委員の御指摘になられましたように、ことしの四月十八日で我が国工業所有権制度が百周年を迎えたわけでございまして、この間、工業所有権制度は首尾一貫して我が国技術導入及び自主技術開発基盤として支え、我が国経済社会発展に貢献してまいったところであります。  しかしながら、今や御指摘のとおり工業所有権制度一つの転換期を迎えているものと考えられます。すなわち、近特技術開発高度化、複雑化いたしまして、ますます重要性を増しております。また、先端技術を初め国際的な技術交流が一段と活発化しつつありまして、これに対し工業所有権行政をいかに適合させ、技術立国としての我が国立場を確保していくかという課題があると考えます。  今回のこの法律改正は、こうした認識の上に立ちまして、当面の諸課題に対応して制度改善を図るということを目的として御提案申し上げた次第でございます。今後とも、二十一世紀に向けて工業所有権制度基盤整備に向け努力してまいる所存でございます。
  5. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  お答え申し上げる前に、仲村委員が四月十八日の式典お忙しいところを御出席いただきましたことを厚く御礼を申し上げたいと存じます。  おかげをもちまして、四月十八日に天皇陛下の御臨席をいただき、また中曽根総理両院議長最高裁判所長官、それぞれお出ましいただきまして式典を行うことができました。  私ども、この式典のほかに百年史の編集であるとか作成であるとか、小中学生を対象とする作文コンクール、パンフレットの作成あるいは一般の方たち対象とする特許についての啓蒙書の出版、いろいろな事業を行ったわけでございまして、この百周年を一つの大きな契機として、国民皆様方工業所有権制度重要性について御認識をいただく上において大きな役割を果たし得たと思っております。特に海外からいろいろな方がおいでになったわけでありますけれども、日本の場合に、先ほど申し上げましたように天皇陛下の御臨席、それから三権の長がそれぞれ出られたということについて大変深い感銘を受けて帰っていったと思っております。  そこで、先生お話がございましたように、明治十八年以来、日本特許制度工業所有権制度日本産業経済発展の上に大きな役割を果たしてきたわけでありますけれども、これからの日本の将来を見渡してみますと、技術重要性というのがますます深まっているわけであります。そういうことから申しまして、技術開発を円滑に実施していただく上において工業所有権制度重要性というのは、権利保護の上において、あるいは技術関係の情報を提供していく上において大きな意義を持つと思っているわけでございます。私ども、そういった点においてできるだけ工業所有権制度権利付与を円滑に行っていくべく、大臣からも申し上げましたようにペーパーレス計画の実現であるとか等々のいろいろな対策を講じていかなければいけないと思っておりますし、あるいは国際的ないろいろな要請がございます。そういった国際的な要請にも積極的にこたえていかなければいけないと思っているわけでございます。  従来とかく特許庁登録官庁としての性格が非常に強かったわけでありますけれども、さまざまな政策的な要請に積極的にこたえていくような、そういう特許庁にしてまいりたいと私は思っているわけでございます。
  6. 仲村正治

    仲村委員 今まさに大臣からお言葉がありましたように、二十一世紀に向けて技術革新の一層の強化を図っていかなければならない、こういうことでございましたけれども、私たちは何かにつけて二十一世紀に向けての心構えを新たにする、こういうことでございますけれども、私は、工業立国としての我が国立場から一層その思想を高めていくということが一番大事である、こういうふうに考えているわけでございます。  今回の法律改正は、一つには、国際出願制度利用拡大技術開発を図るために出願手続改善、つまり簡素化であり、二つには、特許出願等に関して優先権制度導入すること、また三つには、国際出願について特許庁以外の他の国際調査機関等による国際調査等を受けられる制度を採用するものとされておりますが、改正後の国際出願制度利用せんとする場合の利点というものは何なのか、また、国内法優先権制度を取り入れられたことや、その他改正内容についていま一度御説明をいただければ幸いと思います。
  7. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  改正内容等についてお答えを申し上げます前に、PCTについて若干御説明をまず申し上げさせていただきたいと思います。  PCTと申しますのは、一九七〇年にワシントン作成されました特許協力条約のことでございまして、一九七八年に日本はこの条約加盟をしているわけでございます。日本について効力が発生をしているわけでございます。  PCT条約と申しますのは、一言で申しますと、統一的な手続によりまして多数の国々の特許を得やすくしていこう、こういう考え方のもとにできた条約でございます。従来から、そのPCTができる前からパリ条約がございまして、パリ条約において優先権制度というのがございました。例えば、日本企業日本特許庁出願をいたします。同時にアメリカ特許も欲しいという場合にアメリカに対しても出願をするわけでありますけれども、そのときに、まず日本特許庁出願した出願、それを基礎にいたしまして、アメリカ特許庁に優先権づきで出願ができるということでございます。  ただ、その場合に、日本特許庁出願してから一年以内にアメリカ特許庁出願しなければいけないという形になるわけであります。そういうバリ条約基づ優先権制度がございまして、それによりまして外国特許も取れるように、そういう国際的な手当てがされているわけでありますけれども、ただ、それだけでは必ずしも十分ではない、もっと外国特許も取りやすくしていこう、こういう趣旨からPCT条約ができたわけでございます。  PCT条約の場合には、例えば日本特許庁日本企業国際出願をいたします。それは日本語でいたします。そういう国際出願が行われますと、その後二十カ月以内に、例えばアメリカ特許あるいはヨーロッパ特許庁特許というものが欲しいということになりますと、日本特許庁出願する際にそういった国の特許も欲しいというふうに指定をするわけでありますけれども、その指定国に対して二十カ月以内にそれぞれの国の言葉出願をする、翻訳文提出すればいい、こういうことになっているわけでありまして、そこのところでまず、パリ条約の場合には十二カ月の猶予期間しかなかったわけでありますけれども、PCT条約の場合には二十カ月の猶予期間があるということで、かなり有利になるわけであります。  同時に、PCT出願の場合には、日本特許庁が受け付けたものにつきまして、従来は日本特許庁先行技術があるかどうかという国際調査というものをいたします。その国際調査の結果を出願人に対して渡しますし、あるいは先ほど申し上げました指定国にも国際調査の結果を回付するわけでありますけれども、そういうことによりまして、出願人はそういう国際調査の結果を踏まえまして、そういうことであればさらに手続を進めていくのは意味がないということでやめるとか、手続進行を打ち切るとか、あるいは手続が進んでいった場合に、ほかの指定国特許庁日本特許庁がいたしました国際調査の結果を利用できるとか、そういった利便があるわけでございます。  さらに出願人が希望する場合には、国際予備審査というものも要求できるということになっております。国際予備審査と申しますのは、特許性があるかどうかということについての極めてラフな審査であります。  国際予備審査が行われますと、その結果についても出願人に送付されますし、各国特許庁にも送付されるわけでありまして、そこでももう一度出願人は判断をする機会が得られるわけであります。  そういうことで、PCT条約の場合にはパリ条約と違いまして、先ほど申し上げましたように翻訳文提出猶予期間というのがかなり長いということ、さらに手続の過程でいろいろな国際調査あるいは国際予備審査というものを利用することによってむだな手続進行をやらないで済むというような、そういう利便があるわけでございます。  そういうことで、このPCT条約は国際的な特許の取得ということについて大きな意義があるというふうに思っておるわけでありますけれども、ただ何分ややその手続が複雑でございます。そういうことから、昨年の二月にこの特許協力条約につきまして幾つかの点について手続簡素化が行われたわけでございます。  例えば願書翻訳文提出につきまして、先ほど二十カ月ということを申し上げたわけでありますけれども、例外的にそれよりも短い場合があったわけでありますけれども、そういった例外はやめてしまう、一律に二十カ月にしてしまうとか、あるいは翻訳文提出の場合に、願書といったようなごく簡単なものについては翻訳文提出をしなくてもいいとか、幾つかの手続簡素化が行われたわけであります。そういうことによりまして、このPCT利用というのはさらに進むというふうに思っているわけであります。  さらに今回の改正内容について申し上げますと、今回の改正内容一つといたしまして、先ほど先生からお話がございましたように、日本特許庁国際出願をしたものについて日本特許庁にかわってヨーロッパ特許庁国際調査をすることができるような改正をするというふうにおっしゃいましたけれども、まさにそういう改正をしようとしているわけでありまして、ヨーロッパ特許庁日本特許庁との間でそういう話し合いがついたわけでございます。それを受けての改正でございます。それによりまして、ヨーロッパにおける特許を取りたいという企業にとりまして、やはりヨーロッパ特許庁国際調査というのは権威がございます。そういうことからいって、意義が大変あるというふうに思っているわけであります。  さらに三番目の改正内容といたしまして、国内優先権制度導入というのがあるわけであります。国内優先権制度導入と申しますのは、パリ条約優先権制度とかなり似通った制度であります。例えば日本のある企業特許庁に対して出願をいたします。ところが最近の技術開発実態を申しますと、基本的な発明というのが行われた後、さらに企業はその技術開発研究開発を進めてまいります。それによって付加的な発明あるいは改良発明、追加的な発明が次々に行われてまいります。それが技術開発実態であるわけでありますけれども、今回の国内優先権制度のねらいというのは、そういった最近の技術開発実態に合わせて、網羅的に特許制度が得やすくなるようにしようというのがねらいであるわけであります。  そういうことでございますので、この国内優先権制度導入によりまして、一つには現在の企業におきます研究開発実態に即して特許が取りやすくなるという意味において、現在の研究開発を推進していく上において大きな効果があるだろうというふうに私ども思っているわけでありますけれども、同時にこの制度というのはPCT出願についても適用がされるわけでありまして、そういうことによりましてPCT利用の促進にも貢献していくだろうというふうに思っているわけであります。
  8. 仲村正治

    仲村委員 工業所有権保護に関するパリ条約は一八八三年に制定されて、我が国明治三十二年に加盟をしているわけでございますので、まさに百年の歴史を持つ条約でございますが、その後、一九七〇年にワシントン条約作成をされて、一九七八年に効力を発した、こういうことでございますので、まさにこのPCT条約は新しい国際取り決めであるというふうに考えますけれども、なぜそのワシントン条約作成しなくてはならなかったのかということについていささか疑問を持つわけでございます。  話を聞きますと、二階建てみたいな感じである、こういうふうな説明もあったわけでございます。それは手続簡素化を図るという意味ならまずわかるわけでございますが、我が国昭和五十九年度の国際出願状況を見てみますと、パリ条約を経て手続をしたものが三万件、PCT条約を経て手続をしたものが六百二十一件、こういうことでございますので、何となくやはり手続面で敬遠をしているような感じがいたしますけれども、そのパリ条約PCT条約関係が一体どういう状態になっているのか、いま一度御説明をいただきたいと思います。
  9. 小花弘路

    小花説明員 お答え申し上げます。  今先生指摘のとおり、工業所有権制度に関する重要な国際条約としてパリ条約PCTという条約二つがございます。それで、パリ条約は御指摘のとおり一八八三年に締結されました条約でございますが、これは世界じゅう国民がそれぞれの国に出願ができる、他の国で特許が取れるという、まず特許というのが普通は自国にのみ取れるというのが大原則であったのを、世界じゅうどの国でも特許が取れる、お互い特許が取れるという内外人平等ということを原則として発足した条約でございます。したがいまして、パリ条約のもとでは、出願人の方は特許を取りたい国それぞれに全部出願をしなければならないというのが大原則になっております。そのために、その便宜を図るために、先ほど志賀長官から御説明申し上げましたように、第一国に出してから一定期間の間に出せばその出願日を認めてくれるというふうな便宜的な制度がつくられてはおりますけれども、必ずしも外国特許を取るのに十分な状況ではなかったわけでございます。その辺を改善しようという機運が高まりました。それは、技術が重要視されるにつれて、世界じゅうお互い特許を取りたい、技術交流を図りたいという技術志向の結果と理解されるわけでございますが、それが一九七〇年にワシントンPCTという形で締約されたわけでございます。  このPCTによりますと、先ほど長官から御説明申し上げましたように、出願方式を統一しまして、一国にその国際条約基づ出願をすると、その出願をもって各国出願したと同じ効果が生ずる、一国に出願をすれば自分が欲しい国に出願したと同じ効果が生ずる、それでその後にいろいろな必要な手続をとればよい、例えば二十カ月以内に翻訳文提出したりする、そういうことが可能になったわけでございます。  一方、先ほど先生指摘の二重ではないかという点に関しましては、方式を統一して、一定方式でどこへも出せるというメリットのほかに、先ほど御説明申し上げましたように、国際調査という先行技術調査をこの条約のもとでは行うことになっております。その先行技術調査が行われますと、出願人はそれを見て自分出願特許になるかならないかある程度判断することができます。したがいまして、さらに手続を継続するかどうかという点で経費の節減その他が図れるというメリット一つございます。  それからもう一方、審査をする各国特許庁にとりましては、先行技術の文献がついた形で各国出願がされたと同じことになりますので、重複して審査をするというロードが軽減されるというメリットがございます。  そういう点で必ずしも二重構造ではないわけでございますけれども、確かに工業所有権という重大な権利を設定するために非常に慎重な手続が決められておるので、やや手続的に面倒くさいという問題がないわけでないので、今後こういう点の改善を図っていく方向で現在改正を考えておるわけでございます。  以上でございます。
  10. 仲村正治

    仲村委員 私がその質問をいたしましたのは、このレクチャーをしたときにやっぱりパリ条約の方が出願件数が多い、PCT条約はまだ六百件そこらだということでございましたので、むしろ新しくできた条約はより簡素化された、便利に手続ができるということでなければならないけれども、なぜそういうふうになっているのかという疑問があったからでございます。  そこで、このPCT条約への加盟国我が国を含めて米国あるいは欧州各国ソ連など三十七カ国だと言っておりますけれども、この特許制度についての自由主義経済圏共産主義経済圏認識がどういうふうなものであるかということをまず私疑問に思うわけでございます。  そこで、PCT条約国際出願をする件数、それが自由主義経済圏共産主義経済圏件数においてどういう状態になっておるのか。なぜ私がこれをお尋ねするかと申しますと、まず特許登録をするということは新技術世界に公表するということで、そういう観点から、統制経済国家においてそういった新技術を公表することにいささからゅうちょするような面もありはしないかという点からこれをお尋ねするわけでございますが、もし御説明できたらよろしくお願いしたいと思います。
  11. 小花弘路

    小花説明員 お答え申し上げます。  まず最初に、現在PCT条約加盟国の中でソ連等の国においてどの程度PCT利用されておるかという数についてまず御紹介申し上げたいと思います。  現在PCT出願されております件数は、全世界的に見ますと約五千件強というところでございます。その中で先ほど先生指摘社会主義諸国出願件数は、ソ連ハンガリー等現在加盟している国はそう多くないわけでございますけれども、ソ連等においては約六十件程度、それからハンガリー等においては五十六件程度でございまして、自由諸国出願件数に比べて少ないというのは事実でございます。  なぜそうかという点につきましては、確かなところは私どもわかりかねるわけでございますけれども、現在社会主義諸国におきます特許制度というのは、いわゆる自由主義諸国における特許制度とあわせて発明者証制度というのがございます。それで現実に社会主義諸国の中で使われておりますのは、発明者証制度の方が利用率が高いというふうに理解しております。発明者証制度ももちろんこのPCTに乗り得るわけではございますけれども、そういう点が一つ問題点となっているのではないかというふうに理解しております。     〔委員長退席渡辺(秀)委員長代理着席
  12. 仲村正治

    仲村委員 私がまさに指摘したような状態が今PCT条約国際出願をする実績としてあらわれているんじゃないかというふうなことを感ずるわけでございます。五十八年、五十九年大体五千件くらい出ている中で、もう八〇%以上、約九〇%くらい自由主義経済圏からの出願でなかろうかと思うわけでございます。そういう意味で、社会主義経済圏自由主義経済圏において特許制度ということについての認識の差があるのではないかというような感じを持ってお尋ねをしたわけでございます。  そこで、世界特許制度が百年という中で、中国では去る四月一日、初めて特許法が制定されたと報道されておりますけれども、もちろんこれは共産革命後の初めてだということだと私は思います。革命以前はあったかもしれません。中国でこのたび特許制度ができたということで、私たち隣国としても今後技術提携など進めていく上で非常に画期的なことである。また、中国は今、開放経済に向けていろいろ積極的な政策転換をするという点からも、全く今回の特許制度制定ということは無関係でない、こういうふうに考えますけれども、今回中国で初めて特許制度が制定されたということについて、大臣どのようなお感じであるのか、御所見をいただきたいと思っております。
  13. 志賀学

    志賀政府委員 私から先に、やや事実関係を申し上げさせていただきたいと思います。  中国におきまして、先生お話しがございましたように、ことしの四月一日に専利法日本で申しますと特許法でございますけれども、専利法を施行したわけでございます。中国におきましてはソビエトと違いまして発明者報償制度というのではなくて、いわゆる特許法を施行したわけでございまして、内容的には非常に我が国制度と近い制度でございます。いずれにいたしましても、私どもといたしまして、日本の経験に徴しましても、国の産業経済発展の上において特許制度役割というのは大変大きな重要な役割を果たすというふうに認識しているわけでございまして、そういう意味において、中国においてこの専利法を実施したということについて大変評価をしております。  そのことは、中国にとって、中国の経済の発展の上において大変意義が大きいということに加えまして、日本中国との経済交流技術交流を進めていく上におきましても大変大きな意義があるだろうというふうに思っているわけでございまして、私どもといたしまして、従来から、この中国専利法の準備の段階からさまざまな形で中国に対して積極的に協力を実はしてまいっております。例えば、研修生の受け入れであるとか、あるいは専門家の派遣であるとか、さまざまな形態によりまして中国専利法作成、施行に協力をしてまいったわけでございまして、さらに、これからも中国専利法が適切に実施されていくように協力をしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  14. 村田敬次郎

    村田国務大臣 私からもお答え申し上げます。  今、特許庁長官からお答え申し上げたとおりでございますが、最近日中交流ということが非常にあらゆる意味で進んでおるわけでございます。中国からの日本訪問も非常に多くなっておりますし、それから貿易量も年とともに非常に増加をしておる。私は、現在の状態では恐らくアメリカに次いで中国日本との経済交流の最も大きな国になる日が近いのではないかということすら予想されるわけでございまして、そういった情勢の中にあって、今、特許庁長官からも申し上げましたように、特許制度が円滑に運営をされていくということは両国の交流のために大変重要なことであると認識をしておりまして、日中交流もそういった面でさらに強化をされる、このように考えておる次第でございます。
  15. 仲村正治

    仲村委員 中国はまさに大国でございますけれども、やはり技術面ではまだ開発途上国というような状態かと思いますけれども、今回中国特許制度ができて、国内技術開発を促進していくということにつきましては、我が国にとりましても今後のいろいろな交流の面で非常に大きな利益になるものだと信じているわけでございます。  そこで、先進工業国としての我が国立場を考えるとき、政府技術立国として国民に旺盛な技術開発意欲を促し、産業の発展にさらなる技術開発を図る意味から、特許制度の一層の拡充を図るべきであります。そして、特許制度技術立国基盤をなすものであることの意識高揚につきましても大変必要なことだと思うのであります。そのようなことが最近の特許、実用新案の出願件数からもあらわれているのじゃないかと思うのでございます。昭和五十九年度の出願件数は四十八万件で、全世界の四割強だと言われておりますが、いかに我が国が新技術開発や実用新案、発明に熱心であるかがうかがえるのであります。そしてその申請件数は毎年五%から一〇%の割で伸びていると言われておりますけれども、今後もそういう形で推移していくのか、その点についてお答えをいただきたいと思うのであります。
  16. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話しございましたように、日本特許、実用新案の出願件数というのは世界の中で大変大きなウエートを占めているわけでございます。約四割ぐらいのウエートを占めているわけでございまして、そういう出願件数ベースにおいて世界の中の特許大国というふうに言われているわけでございます。この特許と実用新案の出願件数は毎年ふえてまいっているわけでありますけれども、内容的に見ますと、特許出願に比べまして実用新案の出願の伸びというのは相対的に低くなってまいっております。昭和五十五年度までは実用新案の方が多かったわけでありますけれども、五十六年度以降、特許出願件数の方が実用新案よりも多くなってまいっております。そのこと自身は、恐らく日本技術開発内容高度化して研究開発内容高度化してきた、そういうことの反映であろうというふうに思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、これから日本といたしまして技術立国を志向していく、いかなければいけない、そういう意味において日本の産業界、経済界はこの技術開発について非常な意欲を持っているわけでございます。そういう意味から申しまして、現在のような高い伸びが今後も続くかどうかは別にいたしまして、今後もやはりかなりの出願件数の増ということは続いていくのではないかというふうに思っているわけであります。
  17. 仲村正治

    仲村委員 昭和五十九年度の申請件数が四十八万件、これは全世界出願件数の四〇%というふうに言われているわけでございますが、その中でPCT条約出願をした件数が五千七百件、そのうち三九%は米国、我が国は一〇・八%ということでございますけれども、世界の四割も国内出願があるにもかかわらず国際出願が低いということの理由は何でしょうか。
  18. 梅田勝

    ○梅田政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、国内出願、例えばこれは特許だけで見ますと大体二十万件強ということでございますが、そのうちで外国に出される出願というのが大体三万五千件から四万件という数でございます。ほとんどがパリルートで出ていっております。その割合をちょっと見てみますと、大体一五%から一九%、つまり国内出願に対して外国へ出していく分というのはそのくらいの割合でございます。ただ、最近の傾向を見ておりますと、例えばアメリカで取得される特許の数というものを考えてみますと、御承知のように外国関係では日本がトップでございます。アメリカで取得されます外国人の特許といたしましては日本がトップでございまして、大体八千件ぐらいというのを日本が取得しておりまして、あと西ドイツが五千四百、英国が二千百というような数になっております。これは五十七年の統計でちょっと古うございますけれども、大体そういう割合になっております。  ただ、二十万件に対しまして、いずれにしましても外へ出ていく、外国へ出ていく数が比較的少ないということはこれまた先生指摘のように事実でございまして、その辺は一つ考えられますのは、確かに、例えばアメリカでは外国勢としましてはトップの座を占めているのですけれども、やはり相対的に国内出願のものと外国へ出していく技術の差というのがあるんではなかろうかというふうな感じがいたします。つまり、国内では通用するけれども外国では通用しにくいというものが、数の上だけからいいますと、そういう問題が多少あるんではないかというふうな感じはいたします。  それからあといろいろ問題があるのですけれども、例えば費用が高いとか、はたまた外国制度というのはなかなか難しゅうございますから、そういう問題に精通してないとか等々ございますけれども、ただ、今申し上げましたように、例えばアメリカを例にとりますと、日本がトップの座に出ているということもまた事実でございます。確かに件数の上からだけ見ますと、国内出願がほぼ二十万件に対してアメリカ権利を取得するのは大体八千件ということで、数としては非常にギャップがございますけれども、非常に重要技術というものが最近はどんどん外国へ出ていっておる、こういうふうに理解しておる次第でございます。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  19. 仲村正治

    仲村委員 ただいまも御説明の中にありましたけれども、国際出願約四万件という中で大半がパリ条約基づ手続をしているということについていささかどういうわけなのかなという感じを持っているわけでございますが、それを今回改正をして簡素化を図っていくということでございますので、それはそれとして結構だと思っているわけでございます。  そこで、我が国の百年間に成し遂げた工業立国としての実績というものは世界の国々が評価をするというよりも本当に脅威の目で見ていると思うわけでございます。それは、ほとんど外国から導入した技術によって今までこれだけ発展してきたわけでございますけれども、これからさらに独自の技術開発ということが最も重要な段階に来ているんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。最近よく使われる言葉でございますが、産官学が一緒になって技術の開発を図る時期だ、こういうことを強調されておるわけでございますけれども、技術開発について大臣としてどういうお考えをお持ちか、御所見を承りたいと思います。
  20. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。ただ、私、特許庁長官でございますので、特許庁としての立場で、ややそういう立場お答えをさせていただきます。  先生からただいま御指摘がございましたように、日本といたしまして、外国からの導入技術ではなくて自主的な技術を開発していかなければいけないというのはまさに御指摘のとおりでございます。まさに私どもといたしましても、そういう自主技術の開発という観点から工業所有権制度の充実を図っていきたいというふうに思っているわけでございまして、今回改正をお願いしておりますこの法案の改正点の一つといたしまして国内優先権制度の問題があるわけでございまして、この国内優先権制度意義と申しますのは、現在の日本国内における技術開発実態に即して工業所有権特許権がとりやすくなるようにしていこう、こういう所思に出るものでございまして、こういうような制度を通じまして日本技術開発がさらに促進されるものというふうに思っております。  それから、やや直接のお答えになるかどうかあれでございますけれども、日本の場合に、先生から先般来お話がございましたように、非常に出願件数が多いわけです。ただ、その内容を見てみますと、日本技術開発実態を見てみますと、どちらかと申しますと、日本技術開発というのは、商品についてより便利にするにはどうしたらいいか、あるいはより故障が起きにくくするためにはどうしたらいいか、あるいはより安全にするためにはどうしたらいいか、そういった面での開発、発明というのが非常に多いわけでございまして、そのこと自身決して悪いことでもございませんし、日本の現在の産業界、経済界において非常に激しい競争が行われている、そのことの反映だろうというふうに思うわけでありますけれども、そういったことを背景にして非常に出願件数が多いということも事実だろうと思います。  ただ同時に、非常に基本となるような発明特許、そういうものが相対的に少ないということはこれまた否めないわけでありまして、これからの問題といたしまして、将来いろいろな実がなり葉が出る、そういうような太い幹になるような、そういう技術開発をし、そういう発明について特許を付与していけるように日本としてもなっていかなければいけないというふうに思っているわけであります。
  21. 村田敬次郎

    村田国務大臣 ただいま志賀特許庁長官から具体的にお答えを申し上げたとおりでありますが、技術開発全般について私から申し上げますと、近年の技術発展というのは非常に顕著でありまして、ますます高度化、複雑化しつつある、特に先端技術発展は目覚ましいわけでありまして、これらの先端技術研究開発がこれからの世の中を変えていこうとしておる、そういう時代だと私どもは認識をしております。ただ、こうした技術研究開発には膨大な投資やリスクを伴うものでございまして、産業界などから十分な法的保護についての要請が強いところでございます。  したがって、通産省といたしましても、先端技術を初めとする技術の開発は我が国産業経済の健全な発展にとって極めて重要である、こういうふうに受けとめておりまして、その促進のために法的保護の面から十分な政策的対応を図っていきたい、こういう意味で、現在御審議をいただいておる特許法等の一部改正法案もまさにこういった観点に立つものでありまして、最近の技術開発実態にかんがみ、技術開発の成果が漏れなく特許権として保護されるよう優先権制度導入するということがねらいの一つと、このように考えておるところであります。
  22. 仲村正治

    仲村委員 先ほど来お話がありますように、旺盛な技術開発に対する意欲、それと同時に熾烈な市場競争、そのために新商品開発、そういった点が現在の国内出願状況にあらわれていると思うわけでございます。これも毎年五%から一〇%増加していくという傾向であるようでございまして、こういった事務を処理するために、今まで二年五カ月くらいで処理をできていたものがあと十年もすればもう七、八年もかかるのじゃないか、こういうことが言われておるわけでございますけれども、そういった状況に対応するために、いろいろ御説明をお聞きいたしますとペーパーレスの事務処理計画が進められておるようでございますけれども、これについてどういう計画をお持ちであるのか。さらに、これだけの事務を処理していくためにはやはり予算が伴うことでございますので、そういったものも、今行財政改革という点から経費の節減というものもあわせて考えなくてはならない。  それで、たまたま昨年の第百一国会で特許特別会計が制定されたわけでございますけれども、今までの収支のバランス、あるいは特会をつくって後の収支の状況の見通しについて御説明をいただければと思っております。
  23. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  国内出願がふえてくる、それに対してできるだけ早く処理していかなければいけない、それに対してどうやっていくか、これは私どもといたしまして最も基本的な問題でございます。そのために、従来から特許庁の中のいろいろな事務処理についての機械化を図る、あるいは増員を図る、そういったさまざまな努力をやってまいっております。あるいは、これは五十一年度からやってまいっているわけでありますけれども、出願件数が多い企業に対しまして、出願あるいは審査請求などについてできるだけ十分に自己評価をして、その上でやってほしいという、適正化のための指導というようなこともやってまいっているわけであります。  ただ、なかなかそれだけで参らないわけでありまして、そこで、先ほど先生から御指摘がございましたように、先生方の御支援を得まして、前の国会において特許特別会計をつくっていただいたわけでございまして、この特許特別会計が昨年の七月に実施されたわけでございます。私どもといたしまして、この特許特別会計がつくられたということによって財政的な裏づけ、しかも長期的な見通しを持ち得る、そういう財政的な裏づけができたというふうに思っているわけでございまして、こういった特許特別会計を背景にいたしまして、これからいろいろな施策を展開していきたいというふうに思っているわけであります。  特に、私どもとして最大のポイントを置いておりますのが、ペーパーレス計画の実現であります。ペーパーレス計画と申しますのは、出願から審査、あるいは公報類の打ち出し、そういった一連の特許をめぐります事務、あるいは審査手続、そういったものについて、コンピューターを導入して全面的にエレクトロニクス化を図っていこう、こういうものでございまして、私どもといたしまして、五十九年度を初年度といたしまして、十年計画で実現をしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。  このペーパーレス計画の実現のためには、率直に言ってかなりのコストがかかるわけでございます。そういうことも含めまして、実は特別会計について出願料等の手数料の引き上げを昨年の八月に実施したところでございまして、それによりまして特許特別会計の財政基盤というものはかなり固まったというふうに思っております。ただ、今後ペーパーレス計画を実現してまいりますし、また特許庁の庁舎の新設ということもやっていかなければならないわけでございまして、そんなようなことを考えてまいりますと、これからある程度、将来には再度の料金の引き上げも必要かというふうに思っておりますけれども、ただ、いずれにいたしましても、現在のところ特許特別会計は順調な滑り出しを見せているというふうに思っているわけでございます。  そこで、ペーパーレス計画効果でございますけれども、ペーパーレス計画をやりませんと、現在の二年五カ月程度の要処理期間が、十年後には七年近くになってしまうのではないかというふうに思っているわけでありますけれども、このペーパーレス計画を実現するということによりまして、処理期間の長期化ということは防止し得るというふうに思っているわけでございます。  以上でございます、
  24. 仲村正治

    仲村委員 我が国が今日先進工業国として発展した裏には、やはり独自の技術開発ということも大きかったと思いますけれども、先ほど来お話がありますように、何といっても外国からの技術導入して、それを活用していったということが大きかったわけでございます。それはもう技術貿易の実績からしてはっきりしたことがあらわれているわけでございます。昭和五十七年度の技術貿易の実績を見ますと、輸出が千三百十三億、輸入が四千四百七十四億、こういう状態になっているわけでございます。二十年前は全体の一〇%であったものが現在では三〇%まで輸出をするようになった、こういうことでございます。  この状態が今後どういう形で推移していくのか。先ほど来、これはもう独自の技術開発をどんどん進めていかなければこれの改善を図れないわけでございますけれども、これについてどういう見通しを持っておられるのか。また、それを改善していくための措置としてどういうことを考えておられるのか御説明をいただきたいと思います。
  25. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から技術貿易の金額のお話がございました。私ども特許庁立場で、出願件数の出入りという観点から眺めてみますと、最近の日本から外国への出願件数というのは、この数年間大体三万五、六千件で推移をしております。やや増加傾向を持っているわけでございますが、それに対しまして外国から日本への出願件数、これはここ数年やはり三万件ぐらいで推移をしております。ただ、これはやや減少ぎみでございます。したがいまして、件数ベースで申しまして、日本から外国出願する件数の方が外国から日本出願してくる件数をかなり大きく上回っておりますし、また、その幅というのは拡大傾向にあるというふうに見られるわけでございます。  今申し上げましたのは出願の動きでございますけれども、そういった出願の動きが、先ほど先生がおっしゃいましたような金額の動きへ反映してきているのではないかというふうに思っているわけでございまして、いずれにしても、ただ金額と出願件数の動きでございますから、恐らく出願件数の動きの方がかなり先行指標的な性格のものではないかというふうに思います。そういう面から申しますと、技術貿易における出超傾向というのはこれからも続いていくというふうに見て差し支えないのではないか。特にまた実態的にいって現在の日本技術レベルが非常に高いということ、あるいは研究開発のレベルが高いというようなことを考えあわせますと、将来の技術貿易の出超幅というのはこれからも大体増大していくと見て差し支えないのではないかというふうに存じます。
  26. 仲村正治

    仲村委員 時間が参りましたので、最後の質問になろうかと思いますが、よろしくお願いいたします。  今、まさにバイオテクノロジーの時代到来ということで盛んにバイオ技術の開発がクローズアップされており、農作物を中心に植物新品種開発が推進されると思うのであります。  昨年二月、日本新薬がヨモギの新品種を開発し特許出願をしたところ、農林水産省は、特許権を与えるべきでないと言ったということを新聞報道で見た覚えがあります。これは、今後、バイオによる新しい育種技術によって、内外の企業が新種苗等の特許権を取り、ロイヤリティーによって農家経営を脅かすおそれがあると考えられるわけでございます。  今後、バイオテクノロジーを応用した特許出願にどのように対処していかれるおつもりか、その点をお尋ねしたいと思います。
  27. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  現在のバイオテクノロジーの現状から申しますと、私どもへ出願してまいりますのは、細胞融合あるいは遺伝子組みかえ、そういった先端的なバイオ技術の成果というものは、微生物などを利用した医薬品などの製造が中心となっているわけでございまして、恐らく植物の新品種というような問題にかかわってくるのは、今後将来の問題であろうというふうに思っております。ヨモギの問題というのはごくまれな一つのケースであるわけでありますけれども、一般的に言うならば、植物の新品種にかかわってくるようなことは将来の問題であろうというふうに思っております。  いずれにいたしましても、このバイオテクノロジーの保護をどうやっていくのかということについて、これは最近国際的に非常に関心が高まってまいっているわけでございまして、例えばOECDにおきましても議論が行われておりますし、あるいはWIPO、これは世界知的所有権機構という機関でございますけれども、WIPOというような場におきましても、昨年の十一月に専門家の会合が持たれまして、検討を始めているところでございます。  いずれにいたしましても、私どもといたしましてバイオテクノロジーといったような新しい技術分野について、いかにして権利を保護していくのか、それによって技術開発をいかに進めていくのかということは、非常に深い関心を持たなければいけない問題だというふうに思っておりますし、したがいまして、そういった国際的な場における検討に積極的に参加してまいりたいというふうに思っているわけであります。いずれにいたしましても、そういう植物というようなことになってまいりました場合に、農業行政とのかかわり合いというような問題も起こってくる可能性というのはあるわけでございまして、そういった問題につきましては、農林水産省とよく意見調整をしながら進めてまいりたいというふうに思っているわけであります。
  28. 仲村正治

    仲村委員 これは昨年は、薬草としての新ヨモギの特許登録によりまして、農林水産省と特許庁といろいろやりとりがあったようでございますが、しかし、今後将来の問題というふうに片づけられないと思うわけでございます。穀物にいたしましても、あるいは果樹にいたしましても、いつそういった新品種の登録申請が出てくるかわかりません。そういうときに、やはりそういう事態に十分対処していけるように、政府としてはそういう法的な措置をしておく必要がある、こういうように思いますけれども、その件について、将来の問題、こういう悠長なことで片づけられないと思いますので、いま一度ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  29. 志賀学

    志賀政府委員 どういう形で農業に対する影響があるかということについて、これはいろいろな意見があるわけであります。先生はただいまロイヤリティーというようなことをおっしゃいました。また、自家採取についての影響ということを言われる意見もあるわけであります。ただ、いずれにいたしましても、ロイヤリティーの問題について言うならば、種苗法におきましてもロイヤリティーという形であるかはともかくといたしまして、恐らくこの新しい苗を開発するに必要な投資を何らかの形で回収していかなければならないわけでありますから、そういう意味におきまして、この種苗法ベースの問題としても、そういった費用の負担、費用の転嫁の問題というのは同じ問題としてあるというふうに思っております。  また、自家採取の問題につきましても、現在の農業の実態から申しますと、現在の農業の方たちとして自家採取をまさにやっている方というのは、非常にウエートとして少ないのではないかというような見方があるわけでございまして、そういった点についてどの程度の影響があるかどうかということもあろうかと思いますし、あるいは特許権の権利がどこまで及ぶかという、その解釈論といたしまして、自家採取にまでは及ばないというふうな解釈も十分あり得るわけでありまして、そういったことをいろいろ総合的に考えまして、バイオテクノロジーについての権利保護の問題というのを考えていかなければならないというふうに思っております。
  30. 仲村正治

    仲村委員 時間が参りましたので終わります。
  31. 粕谷茂

    粕谷委員長 以上をもちまして仲村正治君の質疑は終わりました。  続きまして、水田稔君の質疑に入ります。
  32. 水田稔

    ○水田委員 ことしは我が国工業所有権制度が制定されて百年を迎えたわけであります。四月の十八日には記念式典が行われたわけです。  振り返ってみますと、資源のない日本明治以来今日、資本主義国の中でGNP第二位という大きな工業国に発展してきた中で、工業所有権制度が果たした役割というのは大変大きかったと思うわけであります。第二世紀目を迎えるに当たって、一つはこれから大変先端技術における技術発展、また貿易問題から絡んで考えてみますと、これは開発途上国への技術移転という問題など、我が国のいわゆる特許法だけじゃなくて、国際的な特許制度のあり方等について十分考えていかなければ対応できないのではないかと思うわけです。したがって、そういう立場で節目を迎えた段階での特許行政の今後の基本的なあり方なり展望について、まず長官から基本的な所信を伺いたいと思うわけです。
  33. 志賀学

    志賀政府委員 大変大きな問題でございます。あるいは大臣からお答え申し上げた方がいいのではないかというふうに思うわけでございますけれども、とりあえず私からお答えをさせていただきます。  ただ、お答えを申し上げます前に、百周年の記念式典、四月十八日に行ったわけでありますけれども、大変お忙しいところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。お礼を申し上げたいと思います。  そこで、ただいま先生からお話がございましたように、明治十八年、一八八五年に日本において専売特許条例が実施された。現在まで百年間、日本産業経済発展において非常に大きな役割を果たしてきたというふうに私も思っております。ただ、時代の流れに伴いまして、その役割というのは逐次変わってまいりました。最初は海外からの技術導入を容易にするということを中心にして役割を果たしてきたと思いますし、それが逐次日本産業経済発展に伴って、自主技術の開発促進に寄与してきたというふうに思っているわけでございます。  これからの日本産業経済の姿を考えてみますと、これは申し上げるまでもなく、技術というものが極めて重要な、そういう時代にますます入ってくるというふうに思っているわけでございまして、そういう意味において、この工業所有権制度重要性というのは大変高まってきているというふうに思います。日本産業経済界からさまざまな要請、希望というものが特許庁に寄せられているというふうに思っているわけでございまして、それに対して私どもとして的確にこたえていかなければいけないというふうに思っております。  その基本的な課題といたしまして、適正に権利付与を行っていくということが一つ基本的な責務としてあるわけでありまして、それにこたえる長期的な基本的な対策といたしまして、私どもとしてはペーパーレス計画を五十九年度から実施に着手しているわけでございまして、これをぜひこれから十年計画で達成をしていきたいと思っております。このペーパーレス計画の実現と申しますのは、ひとり特許庁の行政の合理化という面において意味があるだけではなくて、ペーパーレス計画を実現することによりまして、非常に膨大な特許情報、技術情報を迅速に産業界、経済界に流していくことができるというふうになるわけでありまして、そのことは日本産業経済技術開発を促進していく上において大きな意味を持ってあろうと思っておるわけでございます。  同時にまた、そのほか最近工業所有権をめぐりまして国際的な動きが大変活発でございます。一つは先進国との間、もう一つ発展途上国との間の問題でございます。  先進国間の問題といたしましては、現在私どもとしてペーパーレス計画に着手しているということを申し上げましたけれども、こういったエレクトロニクス化の課題というのはひとり日本特許庁だけではなくて、アメリカ特許商標庁あるいはヨーロッパ特許庁も同じ課題を抱えておるわけであります。現在、ヨーロッパ特許庁アメリカ特許商標庁と日本特許庁との間で定期的な会合を持ちまして、お互いに協力しながら、情報交換をしながらペーパーレス計画を実施していこうということで動いているわけでございます。そういった先進国間の協力の問題ということについて私どもは積極的に進めてまいりたい。  なお、先進国間の問題といたしまして最近もう一つ浮かび上がって取り上げられてまいっておりますのが工業所有権制度のハーモナイゼーションの問題でございます。要するに工業所有権制度特許制度が国によって違いがあるわけであります。こういった違いというものをできるだけなくしていこう、これはそれぞれの国は長い伝統と歴史があるわけでありますから一朝一夕にはいかないわけでありますけれども、できるところからハーモナイゼーションを図っていこう、こういう動きが浮かび上がってまいっておるわけでございます。私どもとして、いわゆる特許摩擦というものをなくしていく基本的な対策として、このハーモナイゼーションにつきましても積極的に取り組んでまいりたいと思っております。  また、次の問題として発展途上国との問題がございます。先ほども御質問がございました中国におきましても、この四月一日から専利法を施行されたわけであります。私ども明治十八年に専売特許条例をつくりまして、その後、先進国からいろいろな援助を受けながら日本もこの日本工業所有権制度発展を図ってまいったわけでございます。そういう経験に徴しまして、私どもといたしまして、中国を含め発展途上国の工業所有権制度整備あるいは充実について積極的に協力をしてまいりたいと思っております。そのことは結局、発展途上国の産業経済発展のための基盤的な制度整備につながってまいりますし、日本にとりましてもプラスになってくるはずでございます。そういう意味におきまして、この発展途上国に対する協力をこれからさらに積極的に進めてまいりたいと思っております。  そのほか、先端技術がいろいろ発展をしてまいりますと、今までの考え方ではなかなか対応し切れない問題が出てくるだろうと思っておりますけれども、そういった問題につきましても特許庁特許庁立場として積極的に取り組んでいくことが必要ではないかと思っているわけでございます。  特許庁というものは、単に出願されてきたものを審査をし登録するというだけではなくて、やはりそういったいろいろな問題について積極的な気持ちで対応していくことがこれから必要ではないかと思っているわけでございまして、工業所有権制度、二世紀目に入ったわけでありますけれども、そういう心組みで施策を展開していきたいと思っております。
  34. 水田稔

    ○水田委員 そこで、現実の問題なんですが、先ほどの与党の質問にもありましたように、今どのくらいの出願が毎年され、そしてどれだけの未処理案件があって、そして昨年は特許特別会計に変えて出願料を五割値上げして、そして余計ふえてきた。そして審査官がどれだけおって、実際にはどれくらい審査の期間が今かかっておるのか、現実の問題を今度は答えていただきたいと思うのです。
  35. 梅田勝

    ○梅田政府委員 お答えいたします。  先生今御指摘のように、出願件数、請求件数等々についての数字でございますけれども、五十九年度の問題は後で触れまして、五十八年度で全部そろえて申し上げますと、五十八年度の出願件数は、特許と実用新案合わせまして四十六万八千件でございます。それから五十八年度の同じく審査請求件数というのはほぼ二十三万三千件ということでございます。したがいまして、それとの関係で申し上げますと、五十八年度の未処理案件が四十五万五千件ということに相なっております。  審査官の定員の問題でございますけれども、五十八年度の場合は八百七十四名、これは特許と実用新案に関する審査官でございます。  五十八年度の年間の処理といたしましては二十万二千六百件処理をしております。したがいまして、その処理の能力と、特に審査の請求の件数といいましょうか、たまっております審査請求されたものの関係で申し上げますと、いわゆる要処理期間というのが五十八年度で二年五カ月ということに相なっております。  五十九年度の場合は、御承知のように去年値上げをいたしました。大体五〇%くらいの値上げをいたしましたものですから、どうしてもこういう段階では、特に審査請求がその値上げ前に非常にたくさん出てまいります。  ちなみに去年の七月の例で申し上げますと、大体十万七千件くらいの審査請求が出てまいりました。これは平均で申し上げますと毎月の審査請求の数はほぼ二万件くらいでございますので、七月だけでほぼ五カ月分が出てきた、こういうことでございます。  そのかわりに、八月に値上げをいたしたわけでございますが、通常ペースで請求されるのがほぼ二万件、八月以降は、今のところは平均いたしますとそのうちのほぼ七〇%くらいで推移をしております。したがって、値上げをいたしますと、どうしても値上げ前に先行的に請求が出てまいりますので、それがどの程度で落ちつくかということはもう少し様子を見ないと正確にはわからないのですが、従前の例でございますと、大体一年くらいたちますとその前に出てきた分がもとへ戻るという感じになろうかと思います。  大体そんなところでございまして、一時的に十万七千件というのが一カ月で出てまいりましたけれども、それが八月以降大体七〇%くらいで推移しておりますので、これが大体一年くらいで二万件ペースに戻るのではないかと期待しておるわけでございます。  以上でございます。
  36. 水田稔

    ○水田委員 五十八年度審査官が八百七十四名で六十年度は八百六十六名ですね。出願件数は、統計のグラフを見ると急角度で上がっておるわけですね。そういう中で減しておるというのは一体どういうことだろうかと思うのです。  それから、先ほど長官の、これからの基本的な取り組みの中で、ペーパーレス計画というのが非常に大きな柱として答弁されたわけですが、これはでき上がるのは十年先ですね。それに対してこういうことで、実際に長官が言われるようにペーパーレス化を行えば、今約二年半くらいかかるこの処理期間が、出願者に十分こたえられるような、アメリカはこれも貿易摩擦だ、非関税障壁だ、特許を出してもとにかくアメリカでは一年半くういで取れるのに日本では二年半も三年もかかるじゃないか、こういうことになっています。これは単に十年先の問題じゃないわけです。たちまちの問題なんですが、そういう点では長官が先ほど答えられたようなことで、ペーパーレス計画が実現すれば例えば一年半に短縮できるという確たる見通しがあって先ほど御答弁なさったのか。今の答弁がありましたような未処理案件約五十万件、四十五万幾らですから六十年度で言えば恐らく五十万件でしょうね。人数は減していっておる、こういう形の中で、十年たたなければペーパーレス化は完成しない、その間どんどん出願件数はふえていく中で、先ほどの答弁のようなことで実際に効果を上げることができるとお考えになっているかどうか、お答えいただきたいと思います。
  37. 梅田勝

    ○梅田政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、確かに出願件数それから審査請求件数はふえてきております。残念ながら、先ほど先生指摘のように、審査官の数という問題ではやや減っておるわけなんでございますけれども、特に特許と実用新案関係の場合で申し上げますと、審判官の方はむしろふやしていただいておりまして、両方合わせますと最近はほぼバランスがとれているという状況でございます。  それではペーパーレスをやったら一年半になるのかという御質問で、これは非常に難しい御質問でございますけれども、ペーパーレスの効果として非常に期待しておりますのは、今の状況を申し上げますと、大体出願されましてそのうちの七〇%弱が審査請求がなされます。非常に簡単に申し上げますと、そのうちで特許になるのがほぼ半分でございます。したがって、百の出願がございますと、そのうちの七十ぐらいが審査請求され、そのうちの半分ぐらい、つまり三十五ぐらいが特許になるということでございます。そこがどこに問題があるのかということでございますけれども、やはり出願人の方でも十分事前のサーチをやっていただきますと、相当程度出願件数自体あるいは請求件数自体が減少するのではないかと期待しておるわけです。  ところが、現状で申し上げますと、年間百万件の特許情報が出ておりまして、それをいかに加工し、利用可能にするかという問題が非常に難しいわけでございます。我々はペーパーレス計画で、そういう意味での外部での利用による出願の厳選化を非常に期待しておるわけでございます。もちろんペーパーレス計画によりまして、例えば審査官の周辺業務でございます資料の整備に手間がかからなくなるとか、あるいは検索が比較的楽になるとかという効果も期待しておるのですけれども、そういう意味で両面から、いわゆる特許庁に入ってまいります出願自体を厳選していただくという問題と、審査官の業務を少しでも軽減させることによる能率アップという両方を期待しておるわけでございます。  ただ、ペーパーレスによってできるだけ短い審査期間を期待しておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても完成するのは十年後ということでございまして、それまでの間いろいろな手を打っていかなければならないと思っております。それは先ほど来お話が出ておりますように、できるだけ出願人出願を厳選して出してもらうということで出願適正化施策をもっと強力に進めていく必要があるのではないかと思いますし、できるだけ審査官のロードを軽減するために、審査官の周辺業務をできるだけ民間活力も利用いたしましてやっていく必要があるのではないかと思います。それと同時に、当然ながら増員問題については、我々としても、また先生方のお力をかりながら、ぜひ努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  38. 水田稔

    ○水田委員 ずばり答えてください。ぺーパーレス化をやるのは大変な柱として言われたのです。これは、例えば今二年半かかるのをこれを入れることによって一年半に短縮できる。今答弁があったようにいろいろなメリットがあります。例えば情報を業界に早く伝えることもできるだろうということはあるにしても、本来言えば、審査業務の一番の柱は、出願人に対してできるだけ早く特許が取れるか取れないかということを明らかにしてあげること、その点では、二年五カ月というのは余りにも長過ぎるというのが一番の柱なんですね。二千億の金をかけてやるのですから、そのメリットがあるのかないのかということが明らかでなければ、金を使ってやる意味がなくなるわけでしょう。その点はいかがなんです。その点だけ、答弁、一番大事なところが抜けておるわけですから、答えてください。
  39. 志賀学

    志賀政府委員 お答えを申し上げます。  現在、一九八三年の数字でございますけれども、日本が要処理期間二十九カ月でございます。これは二年五カ月という数字であります。それからアメリカが二十五カ月でございます。それから西ドイツが三十九カ月でございます。これが現状でございます。現時点において日本が飛び抜けて長いというわけでもないわけでありますけれども、ただ、いずれにいたしましても、できるだけ処理期間を短縮していかなければいけない。特に現在のような状況で放置してまいりますと、十年後には私どもの一つの見通しとして七年ぐらいになってしまうのではないかと思っているわけでございます。これに対してやはり私どもとしては手を打たなければいけないということでペーパーレス計画の実施に踏み切っているわけであります。  その場合に、ぺーパーレス計画をやれば一年半になるかという先生からのお尋ねでございますが、私どもは、希望は大きく持つにしくはないわけでありますけれども、率直に申しまして、一年半というのは難しいと思っております。私どもとしては、先ほど申し上げましたように、このまま放置いたしますと、十年先には七年くらいになってしまうということ、これは何としても防ぎたいということでございまして、要するに最低限現状程度に維持するようにしたいということで私どもとしては考えているわけでございます。
  40. 水田稔

    ○水田委員 そうすると、ペーパーレスシステムはこれからふえてくる出願に対応するためであって、今現に二年五カ月かかるのを短縮しようというのは主たる目標ではないと理解してよろしいですか。それなら、後でまた触れますけれども、例えば審査官は五十五年には九百六名おったわけです。六十年に八百六十六名、いわゆるペーパーレス化は十年先、それで現実に対応するのに審査官をどんどん減していって、片一方は、まだこれからのもの、これはサービス低下しておることは事実ですね。そういうことはお認めになりますね。後で大臣に、人の問題はまた聞かしていただきます。我々の方の理解だけそういう理解にしておきますから。  それから、このペーパーレス化で一番大事なのは検索のシステムだと思うのです。これはどういう形で、それをやることによって審査官のロードはどういうぐあいに軽減され、そして時間的に二年五カ月が減るという見通し、時間的には余り確たる答弁をもらえぬわけですから、本当を言えば、これだけの金をかけてやるのなら、ふえることに対応でき、そして時間短縮ができるという確たる見通しがなければならぬと思うのですが、それをやるについてのいわゆる検索のシステムは一体どういう形で、そしてそれは絶対心配ない、そういうことで今取り組んでおられるのかどうか伺いたいと思います。
  41. 志賀学

    志賀政府委員 検索システムの問題につきましては梅田技監からお答えさせていただきたいと思います。  先ほどの私の答弁に関連いたしまして若干補足をさせていただきたいわけでありますけれども、先ほどお答え申し上げましたように、私どもとして、このまま放置いたしますと出願件数がふえるというようなこともございまして、要処理期間が七年ぐらいになってしまう、これを防ぐ、そのために合理化をしていこう、エレクトロニクス化を図っていこうということで考えているわけでございます。その場合に、一年半にまでなれば、もちろんこれにこしたことはないわけでありますし、アメリカ特許庁の場合に、将来一年半ぐらいに持っていこうということでいろいろ考えておられるというのを私ども承知しております。  ただ、日本の場合に、現実の問題としてなかなか、実際問題としては、そこまでは難しいだろうというふうに私は思っているわけでありますけれども、ただ、だからといってペーパーレス計画をやらなくてもいいということにはならないわけでありまして、ペーパーレス計画は、私どもとしては何としても実現をしていかなければいけないというふうに思っております。  ただ、同時に人の話があるではないかという先生の御指摘でございます。審査官が現に減ってきているではないか、片や出願件数あるいは審査請求件数がふえている中で審査官が減っているというのは、これは問題ではないかという御指摘でございます。これは私どもといたしましても、やはり定員の確保ということは、これは極めて重要な問題だというふうに思っているわけであります。  ただ、あえて申し上げますと、確かに審査官としては減ってまいっているわけでありますけれども、審判官として見ますと、この一両年の間横ばいになっているわけでございます。私ども全体として、通産省全体としてあるいは特許庁全体として定員が非常に厳しい制約の中で減ってまいっているわけでありますけれども、その中で特許庁におきましては、できるだけ審査、審判官あるいは審査官の定員、人数というのはできるだけ確保していこうということで最大限の努力をやってまいっているところでございます。  ただ、いずれにいたしましても、今後の問題といたしましてこの定員の確保、増の問題につきましてはさらに特段の努力をしてまいりたいというふうに思っているわけであります。
  42. 梅田勝

    ○梅田政府委員 先ほどの先生のいわゆる検索システムのどういうところで効果があるのかという御質問がございましたので、簡単にお答えさせていただきます。  先生御承知のように、審査官の業務といいますのは、出てまいりました出願について、まずその技術内容を理解して、どういう発明であるかというのを調べるというのが第一のステージでございます。この段階はコンピューターシステムというのは全く役に立たないで、むしろ完全に人間の頭脳労働ということになろうかと思います。  第二のステージといたしまして、それじゃ、理解した中身について従来の技術に似たような技術があるのかないのか、あるいは同じものがあるのかないのかという検索という行為が次に行われるわけでございます。この段階では、今構築しておりますコンピューターシステムというのは効果を発揮するのではないかというふうに期待しております。  それから第三ステージといたしまして、それでは、その従来の技術と今審査しております技術との間の相関関係といいましょうか、対比判断、これも人間の頭脳労働でございまして、ここはやはりペーパーレスシステムというものは機能いたしません。  第四番目は、それに従いまして出願人に対してアクションを起こす。これはこういう理由でだめですよとか、これはこういう理由でいいですよというようなアクションを起こす。この段階ではある程度、起案、案を起こすと言っておるのですけれども、この段階ではある程度ペーパーレスシステムというのは使えるのではないかと思います。  そのほか、今、年間、審査部全体で大体百五十万件ぐらいの資料が審査部に参っておるのですけれども、これの資料整備ということもやはり審査官がやらされておるのですけれども、この辺の周辺業務というものは相当改善されるのではないかというふうに期待しております。  いずれにいたしましても、資料の検索という問題と、それから資料の整備という問題、この辺が一番、審査という業務で考えますと、効率化されるのではないかということを期待しておるわけでございます。
  43. 水田稔

    ○水田委員 私の質問にずばり答えていないのです。  今検索のシステムというのはFタームという検索のシステムをとろうとしておる。これは完成されたもので、これならもう絶対心配ないというようなものなのかどうか。  我々の理解では、これはIPCでやはり国際的に分類を統一してこのFタームでやろうということでやったけれども、結局できなかったわけでしょう。できたのは合金と触媒だけだったわけですね。その方式を今とろうとしておるのじゃないですか。そして今言われましたように、検索はして出てくる。しかし、例えば五十件ぐらいには絞れる。実際に審査官が五十をスクリーンに出してスクリーニングで判断するというのは、実際問題としては役に立たぬわけですね。少なくとも五件ぐらいに絞って、それで違いがあるかどうか、新規性があるかどうかという判断をする、そういうものでなければならぬわけですね。  システムとしては国際的にいっても、先ほど話があったように、それぞれ独自の独立した立場で伝統を持ってやってきていますから、それはなかなか国際的に統一するのは難しいにしても、その中でやっていこうとしてやってできなかった。二つで、あとは当分手がつかぬということになった。その方式を今、日本でもやろうとしておるわけでしょう。そして、今までソフトをどういう組み方をしたか知りませんけれども、とにかく五十件ぐらいには絞れるだろうというものにしかならぬわけでしょう。  そうすると、どれだけの効果があるのか私は疑問があるのですね。金をかけて、先ほど来言われるように期間を短縮して権利がちゃんと保障される、そして技術発展に役立つようなものにするのなら、期間も短縮するし、そしてロードも下がっていく、そういうものでなければならぬと思うのですが、そういう点ではどうも私は疑念がある。私は、いいものをつくったらいいと思いますよ、金をかけても。そういうものでなければならぬと思いますが、その点はどうなんですかということを実は聞いたわけですから。
  44. 梅田勝

    ○梅田政府委員 先生今おっしゃっています、いわゆる合金だとか触媒で一部しか使ってないではないかというお話でございました。これは確かにICIREPATシステムと言われているシステムを、今から二十年ぐらい前に国際的にやろうとしたことはございます。ただ、この場合は非常に精緻なシステムを組もうとしたわけでございます。  それで、我々が今Fタームシステムでねらっておりますのは、先生おっしゃるようにある程度ラフな段階で検索結果を出して、それで、あとはスクリーニングと言いまして、人間が目で見ながら判断をしていった方が速いということを考えておるわけでございます。  ICIREPATの場合にうまくいかなかった点は、いろいろ原因がございます。例えば絞り込みを非常に強くしようといたしますと、リスト作成自体が非常に難しくなってまいりますし、それから今度は資料を分類づけする場合に非常にまた作業ロードがかかるというような問題もございますし、それから先生おっしゃいましたように、国際的にやっていこうとしますと、いろいろまた解釈の違い等々もございます。  それから一番大きな違いではないかと思いますのは、今申し上げましたように、Fタームシステムでやろうとしているのは非常にラフなシステムを考えておるという点でございますが、それと同時に一次文献の取り出しの問題だとか等々の問題、つまりバックアップシステムというのはその当時は十分ではございません。一々番号が出てきて、それを書棚に当たって見るというようなことをやっておったわけでございます。そういう問題点を今回の場合はできるだけ解決しながらやっていきたいというのが今のシステムでございます。  いろいろな検索手法というのはございます。例えばフルテキストサーチ・システムだとか等々もございますけれども、日本語の特殊性等々の問題もございまして、どちらかといえば分類システムの方が今のところはいいのではないかということを考えております。もちろんフルテキストサーチシステムと分類システムというのは相矛盾したものではないというふうに我々は考えておりまして、そういうことで当面Fタームシステムというものを考えておるわけでございます。
  45. 水田稔

    ○水田委員 参議院の答弁では、このFタームシステムで五十件ぐらいに絞れるという答弁をされておるわけですね。そうすると、五十件では実際問題としてスクリーニングをやって判断するのにはとてもじゃないがそれほどの効率は上がらぬわけですよ。だからそれはもう少し金をかけても審査官にロードのかからぬ五件ぐらいに絞ればそれは十分役に立つわけですね。また、今のシステムというのは未完成のまま強引にやっていっておるのではないかという気がして仕方がないのです。その点はいかがなんですか。  それからもう一つ、最後に大臣にこの点は答弁いただきたいのですが、これの分類の作業というのは審査官がやっておるわけでしょう。これは全部をよそへ委託してやってないですね。分類という作業は審査官でないとできぬでしょう。そういうロードをかけながら人数は九百六人から八百六十六人へ減して、そして出願はどんどんふえて、それでなおこのFタームの検索のシステムをつくる。全部じゃない。委託していますから全部じゃない。一部をロードをかけながらやっておる。これはますます審査の年数は延びていく。しかも出願料は、去年特許特別会計をつくってサービスを向上するんだと言って五割上げておるのですよ。ペーパーレス計画が全部完成したらさらにまた五割ぐらい上げようとか考えておるのですよ。金だけ取って建物には設備だけして、そしてサービスが低下するようなことになるんです。その点はどうなんですか。  これで十分やれるということですが、私どもが聞いておる範囲では、なおこのシステムというのは不完全だ。やられるのなら、本当に成果の上がる金の使い方、成果の上がるシステムをつくってやるべきじゃないかと私どもは思うのです。私、さっきから言いますように、ペーパーレスは十年かかる。その間にそんな作業も持たされるわけですね。ですから、その点では、今まで総定員法の枠で絞られて、実際には仕事がふえてもなおかつ人は減らされたということがあるけれども、五割値上げして特許特別会計でやっておるわけでしょう。そして、例えば建物をつくり、機械を入れたら、五割値上げして件数はふえてくるんですから金はあるわけです。  だから、その点では大臣が腹をくくって、これは別枠だ。これだけの需要のふえるもの、そしてこのシステムをつくり、新しく二千万件をインプットするような大変な作業、そのためにほかの組織もつくろうとしておるのですが、そういう作業のために必要な人員というのはやはり大臣が腹をくくってとってもらわなければいけない。その点、人員の問題について、今までの私の質問も含めてお答えをいただきたい。Fタームの問題の問題点を納得できるように説明をいただきたいと思うのです。
  46. 梅田勝

    ○梅田政府委員 お答えいたします。  Fタームの問題は、今いろいろな分野につきましていろいろなやり方でテスト的にやっております。したがいまして、将来にわたりましてむだ遣いのないように我々としては最善の努力をしたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、一種の分類システムでございますので、そのためにはやはりコーディング、分類づけという作業が入るわけなんですけれども、審査官に一番ロードがかかっておりますのは、今Fタームの分類表をつくるというところでございます。これはあくまで基本的には審査官が使うというのが一番大きな目的でございますので、その辺で審査官の知識経験というものが非常に有用だということで、その辺は審査官にロードをかけております。ただ、そのできました分類表につきまして、それをいろいろな文献に振っていくという作業はできるだけ外部の民間活力というものを利用しようということで、今でも相当部分外に出しておりますし、今後もさらにそれは外部の力を利用いたしましてやっていこうというふうに考えておりまして、できるだけその辺で審査官のロードをより以上にかけないようにしたいというふうに考えております。  以上でございます。
  47. 村田敬次郎

    村田国務大臣 水田委員、参議院の審議録その他もお調べをいただいておるようでございまして、非常に的確な御質問をいただいております。感謝を申し上げます。  審査処理期間の長期化という問題は、工業所有権行政の根幹にかかわる問題でありまして、特許庁ではペーパーレス計画の推進などを中心とする総合的な施策を展開中でございまして、この問題は先ほど来政府委員からお答えを申し上げておるとおりでございます。  特に御指摘のありました増員面での問題でございますが、これは私は最大限努力をいたしまして、審査期間の短縮等について努力をしてまいる所存であります。
  48. 水田稔

    ○水田委員 ぜひそのようにお願いしたいのです。先ほど答弁がありましたように、アメリカも一九八二年から機械化の検討もするし、同時に四年間で七百五十人新規に審査官を入れる、こういうことをやっておるわけですね。日本審査官というのはアメリカ審査官の三倍の能力があるのですよ。それでなおかつこれだけの未処理案件が残るわけですから、そういう点ではぜひ大臣特許行政の重要性認識していただいて、ぜひ実現のために努力していただきたいと思うわけです。  さてそこで、先ほど長官から答弁があったように、人をふやさずにとにかく能率を上げるためにいろいろなことを考えておるようです。一つは昨日、新審査処理方針、これを出したわけですね。これは審査のやり方を変えようという意図があるのかどうかわかりませんけれども、審査官というのは特許法の四十七条にありまして、裁判官と同じような機能を持っておる。特許庁長官特許のあれを与えるわけじゃない、審査官が与えるわけですね。そういう人たちなんですが、それをグループ化していこう、こういう考え方のようなんですが、この審査官の独立した機能を侵すことになるのではないか、私はそういう疑念を持つわけですが、その点いかがですか。
  49. 梅田勝

    ○梅田政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、審査官は独立して審査をするということが特許法にも書いてございますし、現実にもそういうふうに運用しております。  ただ、先ほど御質問にありましたグループ化の問題でございますけれども、これは何もそういう独立権限を侵そうというつもりは全くございません。実はこういうことでございます。非常に出願もふえてまいりますと、ある技術について大勢の審査官がどうしてもそこを担当せざるを得ないという結果に相なっております。非常に出願件数の少ない段階ですと、一人の審査官がある分野を持っておるということで事足りるのですけれども、非常に集中的に出てまいりますと、そこの分野、例えば光ファイバーなら光ファイバーという分野について大勢の審査官がそこを担当するということに相なるわけでございます。例えばそういう設例の場合にお互い審査レベルを合わしていくというのがやはり外部に対しましても非常に望まれることでございまして、特に外部の、外の方の要望といたしましても、できるだけ審査レベルを合わしてほしいというような問題が提起されておるわけでございます。したがいまして、そこで適当な技術グループを組むことによってお互いに相談をし合いながら、やりやすい雰囲気というものをつくってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  で、特に外から要望されておりますのは、例えば審査の基準の統一だとか、ばらつきを少なくしてくれというような要望が非常に強うございまして、そういう意味で、グループを組んでお互いに相談し合う、個々の案件につきます最終的なジャッジというものは審査官の独立権限でやるということでございますが、その前提といたしまして、そういうグループを組んでやっていくのが便利がよかろう、こういうことでございます。  そのほかにいろいろ細かい問題がございます。例えば着手の時期を統一してほしいとか、同じ分野でいろいろなばらつきがあっては困るとか、等々の問題がございます。そういうことでグループを組んでやってはどうかということを言っておるわけでございまして、個々の案件について審査官の独立を侵すというような意図は全くございません。  以上でございます。
  50. 水田稔

    ○水田委員 グループ化して、審査官のだれが判を押すことになるのですか。ですから、それはこういうことだと思いますよ。今この問題だけじゃなくて、これから高度技術がどんどん出てくる、民間の研究は相当進んでおる、審査だけやっておるのでは、優秀な人が、上級甲を通られた皆さん優秀な技術者がおられる、しかし、それだけの業務に追われるわけですから全体的なレベルを——研修制度をつくって、例えばある期間、五年なら五年やったらその業務から離して、それは一遍にはたくさんできぬでしょうが、例えば研究機関で研究するとか、そういう研修の機会を十分つくっていく、あるいは内部の研修でそういう統一をする。あくまでも法律のたてりにはちゃんとあるわけですから、処理方針なんかで機能を侵すようなことをすべきではないと私は思うのですよ。  ですから、グループ化してみんなで相談してやるんだ、だれが判を押すか、この法律からいえば特定の審査官が判を押すんですよ。そういうことになるでしょう。むしろ研修なりあるいは内部的な研修を十分やるということが今求められておるんじゃないか。一つは、技術高度化するということ、あるいは今言われたような基準を合わすとか審査の時期を合わすとかいうようなことは全体の研修でやればいいのであって、部門ごとのあれでもいいですよ。あるいはもう一つは、学際的な問題というのはたくさん出てきますね。学問でもそうです。同じようなことがあると思うのですが、それは今答弁になったようなグループ化ではなくて、別のことで考えるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  51. 梅田勝

    ○梅田政府委員 先生指摘のように、判こはだれが押すのかということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、個々の案件については個々の審査官がそれぞれの責任と権限でもって処分をするということでございます。  研修をもっと充実したらどうかという先生の御意見でございますけれども、我々としてもその研修制度の充実ということは図ってまいりたいと思っております。ただ、最近の発明というのは、企業発明に非常に典型的にあらわれるのですが、やはり共同発明的な形で出てまいる場合も非常に多うございます。結局ある分野につきまして、先ほども申し上げましたように、相当の出願件数が固まって出てくるという傾向がありまして、その間のオン・ザ・ジョブ・トレーニングといいましょうか、いわゆる仕事をしながらのお互いの相談事というのがやはり審査基準を保ち、かつまたその着手時期を統一していくということのために必要ではないかと思います。  したがいまして、研修ももちろん先生指摘のように重視していかなければいかぬと私も思いますけれども、と同時に、やはりそういうグループをつくって研さんを図っていくということも必要ではないかというのがそういう考え方を出した趣旨でございます。
  52. 水田稔

    ○水田委員 共同開発であろうと単独の開発であろうと、違った分野のものが複合して出る出願というのがふえてくると思うのですね。だから、共同出願だからグループでということにならぬと思うのですね。私は、例えば違った分野のものがあって、一人の審査官が判断して、こっちの意見を聞いて、そしてこれが判を押したら、片一方はわからぬのに判を押しておるわけですよ。そういうことも起こる。そういうことなら、裁判官の合議制のような法的ないわゆる審査官の機能というのを明確にすべきだと思うのですね。例えば、単にグループをつくって、その主任みたいなものをつくって、それで何人か寄ってやりなさいというようなことを行政的に、内部のいわゆる通達のようなことでやるというのは私は好ましくない。意見として申し上げておきます。というのは、時間が相当オーバーしまして、あとたくさん項目があるものですから。  それでは次には、先ほど長官からも答弁の中にありましたように、とにかく人をふやさずに必要なものだけ審査を進めるということで、従来の優先審査というのは公害防止技術等紛争関連、これを優先的に扱ってきたのですが、新たにいわゆる実施化技術についても優先的に審査しよう、こういう考え方のようです。しかし、これはやろうと思えば、おれのところを早くやってもらおうと思えば、いろんな書類をつけて、これは実際実施化計画がなくてもあるんだと書類上整えば優先的に扱うということになってしまう。むしろこれを扱う場合には、例えば四十八条の六を修正してやるのか、あるいはよほど厳密な基準をつくる、あるいはさらに地方へ行きますと、こんな情報なかなか入ってこぬわけですから、そういうことをやるのならそういう周知徹底が図られる、そういうことがやられなければならぬと思うのですね。まとめて質問いたしますから、今そのことについてお答えいただきたいと思います。
  53. 志賀学

    志賀政府委員 実施関連案件についての早期審査導入の問題について御質問がございました。先ほど先生から御指摘がございまして、新しい処理方針というのを昨日特許庁として決めた、それに関連してそういうことをやるのではないか、こういう御質問でございます。  先ほど梅田技監からもお答え申し上げましたけれども、要するに分野によりましていろいろなニーズ、工業所有権制度の運用についてのいろいろなニーズがあるわけであります。その中に、その一つとしてこの実施関連の案件について早く審査をしてほしい、こういうようなニーズもあるわけでございます。それに対してどうこたえていくかという問題であるわけでございます。  私どもとしてそういう問題についてやはり特許庁としてこたえていくのが適当ではないかというふうに思っております。そういうことで現在いろいろ細部の詰め、検討をしているわけでありますけれども、ただその場合に、先生からも御指摘がございましたように、その制度、枠組みというものはやはり明確なものでなければいけない、それから公平にやっていかなければいけない、それからそういう一部のものについて早期審査導入した場合に、ほかの案件を逆に引き延ばしてしまうというようなことがあってはこれはまたいけないわけでありまして、やはりおのずからその限界というものがあるはずでございます。そういったいろいろな要素というものをよく考えてやっていかなければいけないということでございまして、私どもといたしましてそういうことをよく頭に入れて検討を現在しているところでございます。  ただ、いずれにいたしましても、先生からもよく地方にまで行き渡らしてやらないといけないという御指摘がございました。私どももまさにそう思っているわけでございまして、これは地方のみならず、例えば中小企業方たちにも公平に、もしこういう制度を発足さした場合にフェイバー、恩恵が行き渡るようにしていかなければいけませんし、あるいは海外の方たちとの関係でも同じ問題があるわけでございまして、十分にそのPRを徹底させた上で実施していかなければいけないというふうに思っているわけでございます。  同時に、その場合に先生の御質問一つといたしまして、特許法の四十八条の六という優先審査規定があるわけでありますけれども、ひとつその条文を改正してそこに入れてやるようにすべきではないかという御指摘がございました。一つの考え方ではあろうかと思いますけれども、私どもの理解といたしまして、この特許法の四十八条の六というのは、これは一つ審査についての例示をしているということであって、特許法の四十八条の六に規定しなければ優先審査ということはできないというふうには私どもは解釈してないわけでございまして、現に公害関係案件についての優先審査制度というものも、昭和四十六年でございましたか、導入をしているわけでございまして、私どもとしては必ずしもこの特許法の四十八条の六を改正して加えなければいけないというふうには思っておらないわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、先生が御指摘になりました趣旨、明確なものでなければいけない、公平なものでなければいけない、厳密なものでなければいけない、そこはまさにおっしゃるとおりでございまして、私どもはそういう趣旨を踏まえて現在検討しているという状況でございます。
  54. 水田稔

    ○水田委員 もう一つ審査を促進するために実施化計画のないものについては取り下げを指導する、こういうことのようでありますが、これは審査官がそういうことをやって、そしてその後列の人が実施化計画を持っているんだと言って同じ内容出願をした場合、これは大変な権利の侵害になるわけですが、そういうおそれもあるわけでしょう。審査官が、そういう場合に、おまえが取り下げいと言うたがら取り下げた、ところがよそへとられた、責任とれ、こういうことになるのですが、そういう心配はどうなるのですか。
  55. 志賀学

    志賀政府委員 企業において出願をしたもの、あるいは審査請求をしたものについて、改めて企業の中でよく自己審査をして、余りみずから意味がないというふうに判断したものについては取り下げてほしいというような、あるいはむだな出願をしないでほしい、あるいは審査をしないでほしい、こういったいわゆる適正化のための指導というか、お願いというのは昭和五十一年度以降すっとやってきているわけでございます。私どもとしては、関係業界に対する適正化の指導というのはこれからも引き続いて行っていかなければいけないし、むしろ今まで余りお願いしていなかったところにまでお願いをしていかなければいけないのではないかというふうに思っているわけでございます。  したがいまして、先生から今御指摘がございました取り下げの指導というのは、優先審査とは、早期審査とは関係がない、そういうものでございます。いずれにいたしましても、私ども、取り下げのお願いというのは個別の案件についてはやっておりません。一般的なお願いをしているわけでございます。そういうやり方というのは今後も当然のことながら私どもはそういう一般的なお願いという形でやっていこうというふうに思っているわけでございます。したがいまして、審査官がそういう取り下げ指導をやるというようなことになった場合に審査官に非常に大きな責任を課してしまうのではないかという御指摘でございますけれども、そのようなことは私どもは考えておらないわけでございます。
  56. 水田稔

    ○水田委員 時間がもうなくなりましたからこれ以上詰めませんが、そういう心配が残ることは事実ですし、それからもう一つは、本当に将来に花開く基本的な技術というのは、そのときにはこんなものが実用化なるかというものが多いのですね。例えば我が国で言えば八木アンテナというのも実用化されるまでには数十年の年数がかかったでしょうし、あるいは電話にしてもそうだと思うのですね、あるいは電灯にしても。そういう歴史的な技術発展のあれがあるわけですから、そう簡単に取り下げを指導するというのも考えものだということを意見として申し上げておきます。  それから、法案に関連いたしまして、今度の改正の中で三点ほどある中で、一つ優先権制度導入ということがあるわけです。これは問題点だけ質問いたしますが、出願して、あと一年以内にさらに研究して追加して出せば、もとの、原出願のときに出願した、いわゆる優先権を認める、こういう趣旨なんですね、ところが、考え方によったら、原出願に後で追加しなければならぬというのは、この原出願というのは未完成であったかもしれぬ、こういう疑いもある。ところが、それと一年以内の次の追加が出る間に全体を含めた出願があった場合一体どうなるのか。これは、後から出たものを含めて、こっちが先願だから優先権があるということになると、未完成なものが権利を認められて、本当に完成して出願をしたものは権利を認められないという矛盾したことが起こる可能性があるわけですね。その点はいかがお考えでしょうか。     〔委員長退席渡辺(秀)委員長代理着席
  57. 小花弘路

    小花説明員 今先生の御指摘の点についてでございますけれども、国内優先権制度というもの自体、今先生おっしゃられるように、後から出願したものが先に繰り上がるという部分があるわけでございますけれども、これは中身はこういうことでございます。  まず最初に出願をしたときに、発明がそこに書いてある部分があります。次に、日にちがずれてまた研究を開発した部分をそこへつけ足して新しい出願をしたときに、最初に書いてあった部分は最初の出願日まで繰り上がります。後から足した部分はその日からしか効果がない。したがいまして、今先生が御設例になられましたように、最初の発明が空っぽだったじゃないかというような場合には、出願自体はあるのですけれども、優先権主張の効果というもの自体を認めないように考えております。  したがいまして、その中間に実質的に技術の裏づけのある発明出願があったとしますと、そちらの方にむしろ権利を与えることになって、実際に空っぽの出願を先にしておいて後から内容を埋め合わせていけばいいではないかという、その埋め合わせた部分は、もしそれが実際に後であれば権利が取れない、中間にそれより早く出した人がいればそちらに権利を与えるという考え方をとっておりますので、細かい技術的なところでのいろいろな詰めはあろうかと思いますけれども、基本的には先生の御心配のような事態は起こらないというふうに考えております。
  58. 水田稔

    ○水田委員 お願いだけしておきます。こういう判断をするのは、やはり第一線の審査官がやるわけですから、そういうところで問題が起きないような明確な判断基準というのはちゃんと出しておいていただきたいということをお願いしておきます。  それから、これはもう既に特許庁でも御検討なさっておると思うのですが、医薬品の研究開発というのは大変な金がかかるわけです。これは特許を申請して受理されても、医薬品として——ほかの商品はそれで売ろうと思えばすぐ売れるわけです。その前からでも売れるわけですけれども、医薬品というのは、その上でさらに厚生省の医薬品としての認可を受けなければならぬ。この年数が莫大にかかるわけですね。ですから、特許期間が十五年あっても実際に使えるのは、ひどいのは二、三年、あるいは五年ぐらいと一般に言われているわけですね。それからもう一つは、この業界の独特のあれで、ゾロ商品、ゾロゾロ商品というのが出て、大変な金をかけてもそれが回収できないというようなことになるわけです。  そういう点で、実際に特許を取った工業所有権権利特許法で言うくらい生かしてほしいという意見というのは業界にもあるわけですね。そういう点で、これはアメリカでも検討されて法案として出したけれども、二遍か三遍つぶれたという経過もあるようですが、特許庁でも何か御検討のようですが、一体どういうぐあいにされようとお考えになっておるのか、聞かしていただきたいと思います。
  59. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  医薬品の特許問題について先生から御指摘があったような問題があるということは、私どもも業界からもいろいろ話を聞いて承知しております。  私どもが承知しておりますところによりますと、これは業界の調査でありますけれども、昭和五十八年の発売の新薬の場合に平均の特許の残存期間というのが六年二カ月になっておるということでございます。これは昭和四十九年発売のころには十年八カ月であったということで、これは恐らく健康に対するいろいろな配慮が非常に厚くなったということもあると思いますが、逐次その臨床試験期間あるいは厚生省における審査期間が長期化してまいりまして、逐次平均の特許権残存期間というのが少なくなってきているというのが実態でございます。  そういうことから申しまして、新薬の開発に障害が出てくるのではないかということから、私どもに対しましても薬品業界の方たちからいろいろ陳情がございます。特許期間の回復ということを考えてくれという要望があるわけでございます。現在まで私どもといたしましては、東京医薬品工業協会あるいは大阪医薬品協会、そういった関係方たちからいろいろ状況を伺って、私どもなりにいろいろ検討しているところでございます。  また、片や特許協会というのがございまして、これは出願人方たちの集まりでありますけれども、いろいろな業界の方がおられるわけですが、この特許協会におきましてもこの問題についていろいろ検討されております。と申しますのは、これは薬品の問題だけではなくて、ほかにもいろいろあって、それのバランスをどうするかというような問題がございます。また同時に、私どもが聞いているところでは、薬品業界の中でも必ずしも全面的に意見が一致しておるわけでもないような感じもございます。  そこで、私どもそういう業界から直接意見を聞き、私どもなりに検討し、あるいは関係業界のいろいろな検討の推移というのを見ているわけでございまして、また、私ども、いずれ厚生省の方からもいろいろ話を聞かなければいけない。例えば回復するにしてもどのくらい回復するのかとか、いろいろの問題があるはずでございます。そういうことで厚生省あるいは関係業界の方たちとよく意見を調整いたしまして、そういったコンセンサスができた段階において私どもとして工業所有権審議会の意見を聞きながら検討してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  60. 水田稔

    ○水田委員 それから、特許庁が音頭を取って特許協力センターというのを今準備を進めておるようで、財団でやるわけでありますが、これは新聞報道で見ると、いわゆるFタームの分類、付与業務というのが大きな柱なんですね。ペーパーレス化を進める中での入力なんか民間委託、民間活力——民間活力というのはおかしな話ですが、民間に委託してやっておる。私がさっきから言うように、特許庁自身の分類業務なんというのは審査官が一番詳しいのですよ。技術的には大変進んだ人がたくさんおっても、どこかから引っ張ってきてもそう簡単にできるわけじゃない。それでこういうものをつくる。一方ではJAPATICというものが特許情報センターとして存在しておる、これは情報のサービスということ。もう一つ発明協会がある。発明協会と特許情報センターというのは、統合しろとかするなとかいう話をしている。これは行革で、片方で人はふやしてくれぬからこっちでつくるのかどうか知りませんけれども、財団をまた一つつくるといったら同じことなんですね。  時間がありませんから、この問題についても一遍、いかにあるべきかという、いわゆる特許庁の人の問題、そして周辺のサービス業務を進めるあり方を、短兵急じゃなくて、そして、Fタームの検索システムのような完成されたものではない、そういう点を本当に対応できるきちっとしたものにする、そういう検討を、特許庁を含めて全体で論議をして、間違いのない方向で——短兵急に、とにかく三月三十一日までにJAPATICと発明協会を統合さすといった、そういう要請書を出した。今できていないですね。今になって慌ててやる、そういうことじゃなくて、だから、特許庁の人をふやせばこういう財団をつくらなくてもいいかもわからぬ。あるいは、いわゆる新規性の調査機関としては、国会ごとに、参議院でも附帯決議の中にJAPATICの充実というのは出ておるわけですね。そういう点を含めて慎重に考えていただきたいと思う。これは大臣、今までの論議をずっと聞いていただいて、大臣からお答えいただいた方がいいと思いますので、お願いしたいと思います。
  61. 志賀学

    志賀政府委員 大臣からお答え申し上げます前に、ちょっと事務的に私から幾つお話をさせていただきたいと思います。  先生からただいま御指摘ございましたように、発明協会と特許情報センターとの情報提供業務についての一元化の問題がある、それから片やFターム付与のための特別の公益法人の設立の問題がある、その辺についてどうか、そもそも特許庁審査官の定員がふえれば、Fターム付与のための公益法人をつくる必要はないではないか、こんなようないろいろなお話がございました。  このFターム付与のための法人の設立につきましては、これは現に特許情報の電子化というのは既にかなり進んでまいっているわけでございます。そういうものについて、業界の方からできるだけ早く円滑に提供してもらうようにしてほしいという要望もあるわけでございます。  そういうことから申しまして、まず発明協会と特許情報センターの統合問題につきましては、この統合の趣旨というのは、今両団体がやや競合する形で特許情報サービスというのが行われているわけでありますけれども、これを調整をして、できるだけ一元的な、充実した情報供給機関というものをつくっていった方がいいではないか、こういう考え方で出ているわけでございまして、片や先ほど申し上げたように、できつつあるデータベースの早期開放という要望があるということを踏まえまして、無理をするつもりはございません。現に三月末までに統合してほしいという要望をしておったわけでありますけれども、そこはなお現在両団体で、関係者よりより検討してもらっているわけでありますけれども、やはりできるだけ早くその体制というものを充実させるようにしてまいりたい、それが関係ユーザーの要望にこたえる道であるというふうに私どもは思っております。  ただ、いずれにしても両団体、関係者がよく理解をしてもらわなければいけないということで、そこの点につきましては、私どもは十分関係者の理解を得ながらやってまいりたいというふうに思っております。  それから、Fターム付与の新団体の問題でございますけれども、これは審査官の人数をふやすということは私どもできるだけ努力はいたします。けれども、実際の問題としてなかなか難しい面もあるわけでございまして、そういうことからいって、やはり新団体の設立というのは私どもとしてはぜひ実現していかなければならない問題ではないかというふうに思っております。そういう新団体をつくり、Fターム付与をそこに委託し、そういうことを通じまして審査官の負担を軽減していきたいというふうに思っておるわけでございます。
  62. 水田稔

    ○水田委員 Fターム付与というのは今二千万件ある。これは大変な作業ですが、役員五十人、職員五百人の団体なんですが、結局、それが終わってしまえばやることがなくなるわけですよ。もちろん、全くないわけじゃないでしょう。それから出てくるものをやっていく。事業が非常に縮小されるわけですね。いわゆるペーパーレス化を進めるときには、その作業というのは大変なあれが一時的に要るわけです。そういうものと将来を考えたら、例えば今考えておる新しい財団、これは結局またJAPATICと競合する、新規性の判断というようなことになってしまうのではないか。今二つあるものでも、いろいろ歴史もあるし、仕事の分担を決めるのが難しい、それはいろいろ利害も絡むから。そこへもってきてまたそういうものをつくるのがいいのかどうか。私は、その三つを含めてあり方を慎重に検討していただきたいということを要望として申し上げておきたいと思います。  それから最後に、庁舎、これも値上げして金を浮かせて建てるわけです。立派な庁舎を建てるのですが、新しい庁舎が六十三年秋にはできるということですが、一つは、スペースの問題が十分なのか。私どもが聞いておるのでは、今の計画ではどうも二万平米ぐらい足らぬのではないか。これはどんどんふえるわけですし、六十三年秋に建ったときにはペーパーレス化はまだ途中ですから、いわゆる紙の資料というのは全部あるわけですからね。そして、今これは三カ所に分散しておるわけですけれども、作業能率からいえば一つにまとめる方が一番いいわけで、そういう点でスペースの問題は大丈夫なのか。  もう一つは、これは大変重要な権利を保障する原資料がたくさんあるわけです。そういう点では、磁気テープなりディスクにとった場合の電気的な問題、あるいは情報のネットワークの、これはこの前火災事故がありましたが、安全性という点では、金がかかっても二重にするとか、三重にするとか、そういうような十分な配慮をしてやるべきだと思うのですが、その二点についてお伺いしたいと思います。
  63. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  私ども、現在三カ所にある庁舎を一カ所に統合して新庁舎をつくろうということで、今年度からその設計に入ることにしております。六十三年秋完成ということを目標につくろうとしておるわけでありますが、その床面積は八万平米でございまして、現在特許庁が使っております床面積の倍近い面積になるわけでございます。  そういうことで、私どもとしてスペース的には十分なものを確保し得るというふうに思っておるわけでありますけれども、ただ、先生指摘のように、工業所有権制度というものはずっと続くわけでございますから、私ども、これから長い将来まで見渡して悔いのない、そういうビルをつくってまいりたいというふうに思っております。同時に、コンピューターを導入してまいります場合にセキュリティー問題というのは極めて重要でございます。NTTの例とかいろいろあるわけでございまして、そういうことを踏まえ、また、ただいま先生から御指摘をいただきましたいろいろな問題を十分踏まえまして対応をしてまいりたいというふうに思っております。
  64. 水田稔

    ○水田委員 終わります。
  65. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 水田君の質疑は終わりました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ————◇—————     午後一時七分開議
  66. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草野威君。
  67. 草野威

    ○草野委員 初めに、政務次官にひとつ御意見を聞かせていただきたいと思います。  ただいま審議されております特許法等の一部改正案でございますが、これは千九百七十年六月十九日にワシントン作成された特許協力条約の一層の利用拡大のため昨年の二月PCT条約及び同規則が改正されたことに伴いまして、国内法整備を図る、こういうことで本改正案が提出されたわけでございます。  そこでお尋ねしたいことは、このPCT条約改正でございますけれども、これは国会の方に提出をされていないというふうに私聞いております。通常、政府としては外交案件については積極的に国会に提出をする、このように我々は認識しているわけでございますけれども、この条約改正については国会の方に提出されていなかった、どういうような理由があるのか、その点についてまず御意見をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  68. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  PCT条約日本加盟するときに、これは当然のことながら外務省の方から国会にもお諮りをして所定の手続を踏んだ上で入っているわけでございます。ところで、昨年の二月にいろいろ手続面改正が行われたわけでありますけれども、それは条約改正にわたるものではなくて、その実際上のいろいろ細かい手続面における修正、改正でございまして、条約改正には至らない、そういう範囲の改正でございます。したがいまして、国会の方にお諮りするということはなかったというふうに理解をしております。
  69. 草野威

    ○草野委員 PCT条約の中でそういうことがどこに書かれているのですか。
  70. 志賀学

    志賀政府委員 お答えいたします。  PCT条約の四十七条に期間についての規定がございます。期間につきましては、「締約国の決定によっても変更することができる。」というようなことになっているわけでございまして、今回の改正内容というのはここに当たるということでございまして、条約改正には至っていない、こういうことでございます。
  71. 草野威

    ○草野委員 今長官がおっしゃったことは、この第四十七条の第二項の中で「締約国の決定によっても変更することができる。」ここのところだろうと思いますけれども、しかし第六十条のところを見ていただきますと、この条約改正のところでございますけれども、六十条を受けて六十一条のこの改正のところで、第三項の(a)のところで「それぞれの憲法上の手続に従って行われた受諾についての書面による通告を事務局長が受領した後一箇月で効力を生ずる。」各加盟国ですね、このようになっておりますが……。
  72. 志賀学

    志賀政府委員 お答えいたします。  ただいま先生お引きになりました六十一条でございますけれども、この六十一条の一項にいろいろ項目が書いてあるわけでございます。この中には期間が含まれていないということでございまして、六十一条とは別の問題というふうに理解をしております。
  73. 草野威

    ○草野委員 たとえ期間の変更といえども、条約改正には間違いないと思うのです。  そうすると、昭和四十九年の第七十二国会でいわゆる大平三原則というものがございます。この中で当時の大平外務大臣がこのように言っております。「憲法第四十一条は、国会は国の唯一の立法機関である旨定めております。」途中省略しますが、「新たな立法措置の必要があるか、あるいは既存の国内法の維持の必要があるという意味において、国会の審議をお願いし承認を得ておく必要があるものをさすものであり、」云々と書いてあります。ということは、冒頭申し上げましたように、条約改正については積極的に国会に提出をする、これは政府の方針だろう、私どもはそのように認識しているわけでございます。しかし、この条約についてはそういう手続は行われなかった、こういう点についてお尋ねをしているわけでございます。  政務次官、御意見をひとつ聞かしてください。
  74. 志賀学

    志賀政府委員 やや突然の御質問なので、はっきりした御答弁ができなくて申しわけないわけでありますけれども、ただいまの先生の御質問につきましては、本来外務省の方からお答えをしなければいけない問題ではないかというふうに思います。ただいずれにいたしましても、特許庁立場といたしまして、先ほど申し上げましたように、特許協力条約の条文に照るしまして、要するに条約改正という問題ではなくて、昨年の二月に手続の改定が行われたということでございまして、それを受けて法律の改正をお願い申し上げている、こういうことでございます。
  75. 草野威

    ○草野委員 この問題ばかりやっていると前へ進まないからやめますけれども、長官条約改正ではないから云々とおっしゃっていますけれども、これは訂正してもらいたいと思うのです。条約改正を受けて国内法整備を図っているわけですから、改正は行われているわけなんです。条約改正を行っていないというのは間違いだと思うのです。これは訂正していただきたい。それから、この問題につきましては外務省に関係する問題でもございますので、後ほどよく調べてまだ御回答いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  本題に入らせていただきます。  先ほど来御質問の中でございましたように、明治十八年の工業所有権制度の創設以来、ことしは百年目を迎える、こういう年に当たりまして、長官自身も、今や我が国特許大国になった、こういうお話をされておりまして、いろいろな国内の問題、また国際化の問題につきまして、さまざまな問題点が先ほどから浮かび上がっているわけでございます。  私も同様でございまして、そういう中で、きょうまず冒頭にお尋ねしたいことは、我が国工業所有権制度は、その歴史発展経過と現状から見て、世界に誇るべき内容とその実績を持っておりますが、世界的に見て、工業先進国における技術革新のスピードは目覚ましく、現在の制度によって果たして制度が目指している機能を十分に発揮しているかどうかといういろいろな問題があろうと思います。その中で、現在非常にハイスピードで進む技術革新にどのように対処するか、具体的にはどのような内容について特許庁として検討をされているのか、どのように工業所有権制度の改革を意図されているのか、まず冒頭に、こういう問題につきましてお尋ねをしたいわけでございます。  先月の参議院の商工委員会におきまして附帯決議がなされておりますけれども、その中で、我が国工業所有権制度全般にわたる検討、こういうふうなことが出ていたわけでございますけれども、これは具体的にどのような内容をお考えになっていらっしゃいますか。
  76. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  技術革新のテンポが非常に速いわけでございまして、それに対して、特許庁として、あるいは工業所有権制度としてどのような対応をしようとしているのかというお尋ねでございます。一つは具体的な問題として、現在この委員会に御審議をお願いしております特許法等の一部改正内容といたしまして、国内における優先権制度の創設をお願いしております。この国内優先権制度の創設自身、最近の技術開発実態に合わせて工業所有権制度を直していこう、こういうことのあらわれでございます。  具体的に申し上げますと、最近の技術開発というのは非常に大規模な開発が行われているわけでございます。その企業研究開発実態から申しますと、まず基本的な発明が行われる、それで研究開発が終わってしまうのではなくて、さらに引き続いて研究開発が行われる、そこでいろいろな付加的な発明とかあるいは改良された発明であるとか、いろいろな発明が行われてくるわけでございます。それが最近の研究開発実態であるわけでございますけれども、そういった場合に網羅的に工業所有権を付与していく、あるいは特許権を取っていくということが現在の特許法ではなかなか難しい、そういう実態がございます。その点を手当でいたしまして、網羅的な研究実態に合わせた形で特許権の付与ができるような形にしようということでございまして、そういうことを通じて、民間における技術開発をさらに促進していこう、こういうことであるわけでございます。  そのほか、いろいろ新しい技術分野、新しい技術発展に伴いまして、いろいろな問題が実は出てまいります。これは午前中の御質問にもあったわけでありますけれども、例えばバイオテクノロジーの保護の問題がございます。このバイオテクノロジーは、まだ発展の緒についたところでございまして、これから非常に大きな発展が期待できる、そういう分野でございます。現在のところ、遺伝子組みかえであるとか細胞融合であるとか、バイオテクノロジーに関する出願というのはそういったいわゆる微生物を利用した分野にとどまっているわけでありますけれども、さらに将来いろいろな問題にまで進んでまいる、そういう可能性が秘められているわけでございます。  そういうことを踏まえまして、最近、このバイオテクノロジーの権利保護についてどうあるべきかという議論が国際的に非常に活発に行われてまいっているわけでございます。OECDでも検討がされておりますし、あるいはWIPOと申しまして世界知的所有権機関という国際機関がございますけれども、そういうところで国際的に、専門家が大勢集まりまして検討が開始されているわけでございます。我々特許庁といたしまして、そういう国際的な検討の場に積極的に入って、どのような権利保護のあり方がいいかということについて私どもの考え方を国際的にハーモナイズされた形でまとめていきたいと思っているわけでございます。  また、そのほかの問題といたしまして見てみますと、最近、国際的に特許制度工業所有権制度のハーモナイゼーションを図るべきであるという議論が非常に高まってまいっているわけでございます。工業所有権制度というのは、それぞれの国において長い伝統と歴史の上に組み立てられているわけでございまして、それだけにいろいろな違いが微妙にあるわけでございます。そういった点について、技術というものが非常に国際的なものでございます。特に、最近のような状況になりますと、国際的な技術交流というのが非常に活発になってきておる。そういう実態を踏まえまして、各国特許制度のハーモナイゼーションを積極的に進めていくべきである、こういう議論が持ち上がっているわけでございまして、具体的には日本特許庁アメリカ特許商標庁、それからヨーロッパ特許庁、この三つの特許庁の間においてこのハーモナイゼーションのためにこれからどういうふうに取り組んでいくべきかという議論を進めつつあるわけでございまして、そういった面におきましても、このハーモナイゼーションという観点から、私どもも積極的に取り組んでいきたい。そういうことを通じまして、技術開発あるいは新しい技術分野の発展というものに取り組んでまいりたいと思っているわけでございます。
  77. 草野威

    ○草野委員 国際化の問題を含めましていろいろと御説明いただいたわけでございますけれども、特許行政の現状から見ますと、増大の一途をたどる出願件数、それに伴う審査期間の長期化、特許情報利用の困難化、こういう問題が挙げられているわけでございますけれども、この問題に対処するために、午前中にもお話がございましたように、例えば特許出願の適正化、こういう問題につきましてもいろいろと御努力をいただいているわけでございます。このまま放置いたしますと、審査期間が将来は七年にも及ぶ、こういう問題も指摘されたわけでございますが、そういう中で現在ペーパーレス計画、こういうものもスタートしているわけでございますが、先ほどの御答弁を伺っておりますと、いずれにしてもそれは十年後の問題である、その間の一つの解決策としてこの適正化をこれからさらに強力に進めていきたい、こういうお話もあったわけでございます。  そこで、出願の適正化という問題につきましてお尋ねをするわけでございますが、既にもう数年を経過しているわけでございますが、現在までこの施策を進めた結果、どのような成果があったのか、また、その内容について御説明をいただきたいと思います。
  78. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘ございましたように、日本の場合に出願件数それから審査請求件数が非常に多いわけでございます。それに対して適切な対応をとっていきませんと処理期間が非常に長引いてしまうということでございまして、現在二年五カ月というようなことになっているわけでありますけれども、それが十年後には七年にも及んでしまうというようなことが予想されるわけでございまして、そのための対策といたしましては、ペーパーレス計画を五十九年度から着手に入っているわけでございます。ただ、ペーパーレス計画だけではもちろんなかなかカバーし得ないわけでございます。他方において適正化のための指導というものを昭和五十一年度から実施をしてまいっているわけでございます。  日本の場合に、そういうことで出願件数審査請求件数が非常に多いわけでございますけれども、率直に言って、かなり玉石混交の傾向がございます。例えば、その出願件数のうち審査請求が行われますのが三分の二でございます。それから実際に権利が付与されますのがその半分、したがって全体の約三分の一ということでございます。さらに、その権利が付与された後、本当に実施されているもの、これはいろいろな数字があるわけでございますけれども、一説にはその半分であるとかあるいは三分の一であるとか、いろいろなことが言われているわけでございまして、そういういろいろな数字から考えまして、今申し上げましたように、審査請求、出願件数の中にかなり玉石混交のものがあるというふうに考えられるわけでございます。私どもといたしまして、そういう出願なり審査請求に際して、できるだけ社内で事前によく自己審査をして、その上で審査請求あるいは出願をやってほしい、こういうお願いをしているわけでございます。それを適正化の指導と言っているわけでございまして、五十一年度以来やってまいっているわけでございます。  これについてどのくらいの効果があるかということでございますけれども、私どもが適正化指導をいたしました五十社と、やらなかった各社との審査請求率の推移を対比して見てみますと、これは御案内のように、審査請求というのは出願後七年間できるということになっているわけでございまして、ごく最近の出願というのは、まだこれから審査請求が行われるということから、はっきりした数字は申し上げられないわけでございまして、そういう意味で最終的な審査請求率ということで考えてみますと、現在手元にございますのが五十一年出願の数字まででございますが、適正化指導をした企業の五十一年出願分における最終の審査請求率というのは特許では五九・六%ということで、六〇%弱ということになっているわけでございますけれども、それに対して適正化指導をしないその他の企業の平均では、同じく五十一年の最終審査請求率で申しまして六八・七%ということになっているわけでございます。そういうことから申しまして、私どもとしてはそれなりの効果というものが上がってまいってはいるというふうに思っております。  ただ、この点について、なお私どもとしては適正化指導を引き続ききめ細かくやっていかなければならないというふうに思っているわけでございます。実はペーパーレス計画も、この適正化指導と申しますか、企業内における自己審査の徹底ということに深くかかわってくる問題でございます。ペーパーレス計画ができますと、将来の問題といたしまして、いろいろな特許情報というものが各企業にオンラインで流れていくわけでございます。そうしますと、企業においては当然その自己審査をする場合に自己審査がやりやすくなるわけでございまして、そういう意味において、この適正化指導の趣旨というのはさらに徹底していくだろうというふうに思っているわけでございます。
  79. 草野威

    ○草野委員 特許庁としては、この適正化のために各企業に対しまして、特にコンタクト五十社に対しましてはいろいろな角度から指導してきた。その結果、五十一年分については審査請求率が五九・六%まで下がってきたといいますか、これは一つの成果だ、こういうことであろうと思います。  そこで、先日特許庁から資料をいただきました。昭和五十一年度の出願件数上位二十社、この資料でございます。この資料をいろいろと拝見させていただきました。そうしますと、例えばこういうような結果があらわれているわけでございます。この二十社のうちで、例えば審査請求率が最高の数字は九一・六%、こういう企業がございます。また、最低の企業は三一・三%。この二十社の中でこれだけの大きな開きがあるわけでございます。今お話を伺っておりますと、適正化ということについていろいろな角度から指導を行ってきた結果、平均すると五九・六%まで来たんだ、こういうことでございます。しかし、上位の二十社を見ただけでも、審査請求率が片や三一%、片や九一%、こういう約三倍もの開きがある。こういう企業がこの中で混在しておるわけなんですね。  そうすると、我々としてはこの九一%、三一%について一体どのように評価したらいいのだろうか。例えばこの九一%の企業を見ますと、五十一年だけではなくて、五十年も四十九年も九〇%台の数字です。三一%のこの企業につきましても、三年連続三〇%台の数字なんです。こういうところから見てくると、こういう点をどういうふうに評価したらいいのか。例えば先ほどお話があったように、企業に対して事前のいろいろな調査をきちっとやっておくように、ある企業は一生懸命やって、その結果出願件数が非常に少なかったかもしれない、したがって請求率がふえたかもしれない。その反対の場合もあろうかと思います。こういう点をどのように評価したらいいのか。まずその点をひとつお聞かせください。
  80. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  私は全体のマクロの数字でお答えをしたわけでございますが、別途先生の方に個別の数字をお示ししてあるわけでございます。  個別に見てみますと、この上位二十社の中身を見てみますと、審査請求率についてただいま先生おっしゃいましたように会社によってかなりばらつきがございます。そこのばらつきの意味というのは、私の見るところでは、やはりその会社が出願するときに既に非常に慎重に審査をした上でやっているかどうか、そういったところに一つ大きく影響されている向きがあるのではないかというふうに思います。したがいまして、恐らく会社によって特許管理についての会社としての方針、やり方というのはいろいろ差があるだろうと思います。そういうところからそういう違いが出てきているのではないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、数字について評価する場合にそういう点を頭に入れて評価しないと、単に数字が、審査請求率が高いからいかぬということにはならないというふうに私は思います。  ただ、同じ会社の中で、例えば九〇%近い審査請求率を五十一年において示している会社においても、時系列で見てみるとやや下がっているという向きがあるのではないかというふうに思います。したがって、そういう意味においては、その会社なりに審査請求についてより慎重な態度をとり始めているのではないかということもうかがえるのではないかというふうに思います。  いずれにいたしましても、いろいろな会社におけるそういった特許管理についてのポリシーの違いというのがあるわけでございますから、一概にこの数字云々だけで評価をするということは必ずしもできないのではないか。ただ、トータルとして足してしまった場合、マクロ的に見た場合にはある程度の傾向として言えるのではないかというように思います。なお、個別の会社の審査請求率の動きというのを個別に時系列で追ってまいりますと、かなりの会社において審査請求率はダウンの傾向を示しているというふうに言えるのではないかと思っております。
  81. 草野威

    ○草野委員 長官がおっしゃったとおりだと思いますが、確かに数字だけでは云々されないと思います。その点で、約五十社についていろいろコンタクトされた、そういうわけでございますので、その中身を十分におつかみの上での御答弁をいただけると私は思ったのでございますけれども、どうもそれはちはっと違ったようでございます。  この二十社だけを見ても、例えば出願件数におきまして五十一年で一番多いところは二万一千五百十七件、一番低いところは一千四十五件、二十分の一なんですね。これだけの違いがあるわけですよ、一位から二十位を見ただけでも。ですから、そういうきめ細かな指導をされるならば、そこまで一つ一つきちっと把握をされた上でのひとつ指導をしていただきたい、お願いでございます。  それからもう一つは、五十一年の時点だけで今申し上げているわけでございますけれども、では五十二年以降現在まで、毎年それぞれの企業からどれだけの審査件数が出ているのか、この傾向もやはり一つの判断の材料になると私は思うのです。残念でございますけれども、この資料をいただいておりませんので私は言うことはできませんけれども。ただ全体から見た場合には、昭和五十八年度で二十三万四千件、五十九年度は約三十万件、このように審査請求の件数は伸びているわけです。その内容を把握した上で御説明いただけると我々もよく理解できるのですけれども、それはおわかりでしょうか。
  82. 梅田勝

    ○梅田政府委員 お答えいたします。  実は、先生御存じのように、先ほど来五十一年ということを申し上げておりますが、審査請求期間というのは七年ございまして、したがいまして、五十一年という出願につきましてだけ最終結果が出ている、こういうことでございます。例えば五十二年の出願あるいは五十三年の出願につきましては、まだこれからも審査請求ができるという状況でございまして、したがいまして、最終的な数字にはなっていない、こういうことでございます。  ただ、特に適正化との関係で我々調べてみたのでございますけれども、もちろんこれからもまだ請求が出るという意味では中間的でございますけれども、五十二年から五十七年の出願それぞれにつきまして、全体の出願と、それからコンタクトいたしております会社の審査請求というものをそれぞれ比較してみますと、やはり請求率という点においては中間ではございますけれども、ある程度の差がある。つまり、コンタクトしているところの方が審査請求が少ないという結果が出ております。例えば五十二年の出願で申し上げますと、全体が五二・五%という請求率でございますが、コンタクト企業二十社につきましては四〇・二%という結果になっております。もちろん、先ほど申し上げましたように、これから多少まだ期間がございますので五十二年出願につきまして請求が出てまいりますけれども、そういう状況になっております。  ただ問題は、請求率がそういうことで特にコンタクト企業につきましては減ってはいるのですが、全体の母数、つまり出願件数、分母の方が非常にふえてきておりますので、結果的には請求されている件数というものがコンタクト企業につきましてもやや増加してきているという問題がございます。ただ、これも個別に見てみますと、特に大手の企業につきましては請求してくる件数自体、パーセンテージじゃなくて件数自体も減ってきているという企業が結構見られる、こういう状況でございます。
  83. 草野威

    ○草野委員 数字のやりとりをしていると、これだけで時間がかかるからやめますけれども、今あなたが最後におっしゃった、大手の企業の場合の出願件数それ自体も減ってきているというのは間違いです。例えばここにいただいた五十一年の資料によりますと、二十件の合計が十万六千です。例えば五十七年の数字を合計してみますと、これはそれを上回っております。約十四万四千、四万件も上回っておるわけです。我々はこういうことを聞いているのじゃなくて、その傾向がどうなっているかということを知りたいから数字を示してくれとお願いしているのです。これは後で結構ですからひとつ数字を出してください。  それから、長官にひとつお願い申し上げたいのですが、このようなことで特許庁の指導によりまして大手の企業も非常に協力し、努力もしておる、こういうことでございますけれども、私どもがいただいた資料では、五十一年の出願順位第一位から二十位までの資料でございますが、これの企業名は書いてありません。もしそのように努力しているという企業がございましたら、これから毎年一回、例えば出願件数審査請求率、公告率、こういうものを含めて、上位二十社とか三十社とか五十社とか、こういうものを公表することをお考えになったらいかがですか。提案でございますけれども、どうでしょう。
  84. 志賀学

    志賀政府委員 具体的な固有名詞を役所が申し上げるというのはなかなか難しい面がございまして、先生にも申し上げてないわけでありますが、いずれにいたしましても、適正化指導の効果というものをより高めていくために、要するに優等生の名前を張り出したらどうか、成績も張り出したらどうか、こういう御提案でございます。そういう個別の会社について具体的な数字まで示していいかどうかという点についてはなお検討を要するかと思いますけれども、ただ、いずれにいたしましても、特許管理を非常によくやっていただいており、適正化指導に御協力いただいている会社について何らかの表彰制度と申しましょうか、そういうようなことも考えてみたらどうかというのは、実は私もそんな気持ちがございます。御提案の趣旨なども踏まえまして、これからなお検討させていただきたいというふうに存じます。
  85. 草野威

    ○草野委員 ぜひともひとつ検討をしていただきたいと思います。  時間もなくなりましたので、最後にもう一問だけ質問させていただきます。  先日の日刊工業新聞の記事でございますけれども、特許庁出願滞貨の解消へ決断ということで実施化技術を優先的に審査する方針である、こういうような記事があったわけでございます。私もこの新聞記事を読んでみまして、これはこれなりの一つの方法かなと思っておりますけれども、この内容について伺いたいのですが、現在特許庁としてはこのような計画を実施するという方向で検討をなされているのかどうか、これが一点です。それから、もし実施する場合は優先審査、早期審査といいますか、これの基準というものはどういうところに置いてやろうとしておるのか、これが二点目です。もう一つは、現在の滞貨が六十数万件と言われておるわけでございますけれども、そのうち既に実施または実施化を進めているところ、これは三〇%ぐらいあるのではないかということもちょっと伺っております。そうしますと約二十万件にもなるわけでございまして、現在特許庁が一年間で処理している件数に当たると思うわけですね。この辺の膨大なものを抱えて、どういう基準を定めてこういう計画を進めていこうとされているのか。もう一つは、この計画は早ければ年内にも実施するのではないかということも伺っておりますが、そこら辺等を含めて最後に御答弁をいただきたいと思います。
  86. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  日刊工業新聞に実施関連の案件について早期審査をするということで特許庁が決めたというふうに報道されたわけでございます。あの報道自身幾つか不正確な面があるわけでございますけれども、ただ私どもといたしまして、要するに実施をしようとしている、あるいはもう実施が確実である、あるいは実施を計画しておる、そういったような案件について、これはひとつ早く審査をするということを考えてみるべきではないか。これは業界の方からもいろいろ要望がございます。そういうこともございますので、現在実施の方向で検討しております。  ただ、その場合に問題は、やはり明確な基準をつくって、それを大企業、中小企業あるいは中央、地方あるいは国内、海外を含めまして十分に周知徹底させてやっていかなければいけない。そうしませんと不公平になります。そういうことでございますので、現在私どもとしては、その具体的な細目と申しましょうか、そういうものをできるだけ明確に決めていくように作業中でございます。  同時に、それを決めた後どういうふうに周知徹底させていくのか。これは、もう一つその前に私どもとして業界なり関係者の意向というのをよく聞いてまいっているわけでございますけれども、その関係者の意向というものもさらによく聴取していかなければいけない、その上で細目を決め、PRをし、実施に入っていく、こういうことにすべきだというふうに思っております。  三割ということを先生はおっしゃいました。この三割と申しますのは、私の記憶では権利化されたもののうちの三割ぐらい、これは実は五割という数字もあるし、いろいろな数字、調査があるわけですけれども、権利付与されたもののうち三割ぐらいが実際に実施されているという数字でございまして、必ずしも実施関連のものが三割あるということではございません。  ただ、私どもこういう対策を講ずる場合にもう一つ考えておかなければいけないのは、早期審査ということで実施関連を何でも取り上げていくということになりますと、それ以外のものにしわが寄る可能性がございます。したがって、その辺のバランスの問題もよく考えていかなければいけないというふうに思っております。  それで、いつ実施するかというお尋ねでございます。私どもは、できるだけ早い方がいい。ただ、先ほど申し上げたようにいろいろな問題がございます。したがって、そういった必要な内部的な検討あるいは対外的な対応というものを十分やった上で、できるだけ早くやってまいりたいというふうに思っております。
  87. 草野威

    ○草野委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、最後の問題につきましては、どうかひとつ公平さを欠かないように十分に議論をしていただいて進めていただきたい、このようにお願いいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  88. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 草野君の質疑は終了いたしました。  続いて、福岡君の質疑に入ります。福岡康夫君。
  89. 福岡康夫

    ○福岡委員 私は、技術立国を標榜する我が国が今後力を入れなければならないことは、発展途上国を含めた世界各国との技術交流を促進することによって、我が国のみならず世界経済全体の活性化を図ることにあると思っておるわけでございます。技術交流の促進には、何よりも関係国間の工業所有権制度手続の調和の確保が肝要であり、特許先進国である我が国としてはこの面での積極的な貢献が期待されていると考えております。  いま一つのポイントは、自由かつ公正な技術取引が行われるような環境を整備することであり、この意味で独占禁止政策当局の役割は極めて重要であると考えておる者の一人であります。  以上の観点から、公正取引委員会に対して独占禁止法と国際的な技術取引の関係についてお尋ねいたしたいと思うわけでございます。公正取引委員会は、独占禁止法第六条に基づいて技術提携契約についての審査を行っておりますが、最近のこの届け出及び審査状況はどうなっているのか、御報告をお願いしたいと思います。
  90. 厚谷襄児

    厚谷政府委員 お答えいたします。  独占禁止法第六条の規定基づきまして昭和五十九年度に届け出のございました技術の提携契約の件数は二千五百五十一件に上っております。その内訳は二つに分けることができまして、一つは、外国企業から我が国企業技術導入する契約でございまして、この件数が千六百七十六件、それから、我が国企業外国企業技術を提供する契約、技術援助契約と申しますが、これが八百七十五件になっております。  この状況を数年間対比して見ますと、技術導入する契約は若干増減はございますが、ほぼ横ばいということになっておりますが、技術を提供する契約の方は増加の傾向にある、このようになっております。  それで、その契約の内容を見てみますと、幾つかの特徴が挙げられるかと思いますが、一つ先端技術分野におけるクロスライセンス契約が増加しておることであります。二番目は、先進国を相手といたしまして特許紛争を回避する、あるいはその和解に基づきまして技術導入契約を締結するというのが若干増加してございます。それから、中進国、発展途上国に向けました技術援助契約が増加の傾向にある、このように言えるかと思います。  それで公正取引委員会としましては、技術提携契約につきまして既にガイドラインを発表しておりまして、独占禁止法上問題となるおそれのあるものにつきましては、修正指導ということをお願いしているところではございますが、その件数昭和五十九年度におきまして百七十四件、届け出件数との割合で見ますと約七%となっております。  それで、指導いたします項目としましては、改良技術に関するものが多うございます。それから競争品の取り扱いを制限するとか、あるいは契約期間終了後に技術の使用制限を課するというようなものが多くなっておりまして、このような傾向というのは特に最近多くなったということではございませんで、傾向としては、このような内容のものというのはかねてからとほぼ同じである、こういうふうに申し上げてよろしいかと思います。
  91. 福岡康夫

    ○福岡委員 ただいまの答弁をお伺いしておりますと、最近の技術提携契約の内容が極めて複雑化しているという感じを私は受けたわけでございますが、公正取引委員会は、技術提携契約の審査に当たっては国際的技術導入契約に関する認定基準をよりどころとしておると思うわけでございますが、私は、最近の複雑化、高度化しつつある技術取引の動向を踏まえて、絶えずこの認定基準の検討を行っていくことが重要ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。公正取引委員会の御見解をお聞きしたいと思います。
  92. 厚谷襄児

    厚谷政府委員 公正取引委員会といたしましては、技術提携契約の届け出を受けましたときには、独占禁止法上おそれのあるものに対しましては指導するということになっておりまして、それの基準というものをあらかじめ公表しておるわけでございます。それがただいま先生指摘になりました国際的技術導入契約に関する認定基準でございます。  最近の国際的な技術提携契約というようなものの動きを見てまいりますと、技術革新の進展を背景としましたハイテク分野を中心としたクロスライセンス契約あるいは共同開発契約というようなものが一つの特徴としてふえておるのじゃないかということが指摘できると思います。  このような国際的な技術の取引に対しましては、先進国におきましては開発者の利益を保護しようという動きというのもございますし、他方におきましては、UNCTADにおきましてそのような技術取引においての国際ルールをつくろう、こういう動きもあるわけでございます。そのような実態の動き、あるいは国際的な動きを背景にいたしまして、公正取引委員会としましてどのようにするかという先生の御質問でございますが、これは私どもは技術取引をめぐる環境の変化というものに対して適切に対処しなければいけない、このように考えております。  そこで、かねてから技術開発技術取引の動向に関する検討を行ってきておるところではございますので、今後ともに引き続きそういうものについての調査研究をして適切に対応できるようにしていきたい、このように考えておるところでございます。
  93. 福岡康夫

    ○福岡委員 やはり行政の要請は時代との対話ではないか、かように考えております。今の公正取引委員会の御見解のように、行政の要請は時代との対話であるということを御認識の上、ひとつ対応していただきたい、かように思っておりますので、よろしくお願いいたします。  では、特許庁長官にお伺いいたしますが、長官の経歴を見ますと、入省以来三十年余、あらゆる通産行政を経験されております。まことに視野の広い長官として私、敬意を表する者の一人でありますが、特許制度百周年を迎え、特許庁登録官庁から工業所有権政策官庁へ脱皮したいという御希望を持っておられるとのこと、今後の長官の御活躍を期待しておる一人でございます。  そこで私、長官二つのことを確認しておきたいと思いますが、一つは、昭和六十三年十月完成予定の新総合庁舎の建設及びペーパーレス計画を予定どおり実施していくことを確約していただけるかどうか、いかがでございますか。これをひとつお聞きしたい。  それから二つ目は、出願件数の増加に伴う審査、審判期間の長期化を防止するため、審査官、審判官の人員の確保及び待遇の改善を確約していただきたい。  以上の二点について長官の御決意をお伺いしたいと思います。
  94. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げる前に、私につきましてお褒めのお言葉をいただきましたことを厚く御礼を申し上げます。  ただいま先生から、特許庁として特許庁をこれから政策官庁に脱皮させていきたいという抱負を持っているようだけれども、そういうことからいっても、ペーパーレス計画の実現あるいは新庁舎の完成について予定どおり実現していくということについて決意を表明してほしいというお話がございました。私ども、このペーパーレス計画は、五十九年度から十年計画で完成するということで計画を進めているわけでございます。また、新庁舎につきましては、現在三カ所に分かれております庁舎を一カ所にまとめる、それによってより合理的な特許行政の遂行あるいはエレクトロニクス化を図っていくに際しても、あるいはコンピューターを導入するに際しても、一カ所にオフィスをまとめるということによってより効率化ができるわけでございまして、そういう意味合いから予定どおり六十三年秋に完成させたいというふうに、私ども自身かたくそういうふうに心に誓っているわけでございます。  幸い、昨年国会の先生方の御支援をいただきまして、特許特別会計ができたわけでございます。そういうことで、長期にわたる財政的な裏づけというものをいただいたわけでございまして、そういった財政的な裏づけを背景にして、このペーパーレス計画あるいは庁舎の建設について、予定どおり実現をぜひさせていきたいと私は思っております。  このペーパーレス計画にしろ、あるいは庁舎の問題にしろ、これは特許庁にしてみますとハードの側面でございます。申し上げるまでもなく、特許の事務、特許行政というものを的確に果たしていくというためには、そういったハード面での整備も当然必要であるわけでありますけれども、そこに働く職員、言ってみますとソフトでございますけれども、そういったソフト面に対する十分な配慮ということもこれまた必要であるわけでございます。率直に申しまして、特許庁審査官の数というのは、最近の厳しい財政事情からいいまして削減を余儀なくされてまいっているわけでございます。ただ、もちろん審査、審判官を合わせますと、ここ一、二年の間横ばいの数字を確保しているわけでございますが、それにしても横ばいということで、ふえていないわけであります。もちろん、通産省全体の中で、あるいは特許庁としても、全体として人員の削減というのはかなり行われているわけであります。その中において、相対的には審査、審判官の人員の確保のために最大限の努力を行っているわけでありますけれども、なお十分でないというふうに私は思っているわけでありまして、今後必要な人員の確保、定員の増のために全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。  ただ、同時にもう一つの問題として処遇の問題がございます。これは、過去におきまして特許庁は定員を大幅にふやしました。そういったことに関連いたしまして、処遇の面でかなり無理がきているわけでございます。そういった処遇の面につきましても、その改善のために、これは通産省職員の士気の問題にかかわってまいるわけでございます。そういった処遇の改善のためにも、定員確保と並びまして、私といたしましては全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  95. 福岡康夫

    ○福岡委員 このたびの特許法等の一部改正における一つの柱として、優先権制度の採用がございますが、私、考えてみますに、国際出願制度の需要拡大に資するための今回の法改正と、この優先権制度の採用とは必然的不可分の関係にないのじゃないかと思うのですが、すなわち、さきの昭和五十三年におけるPCT基づ国際出願等に関する特許法等改正の際採用することが可能かつ適当であったと私は思うわけでございます。優先権制度の趣旨がすぐれたものであることは疑いのないところですから、なぜ昭和五十三年のとき採用しなかったのか。  また、先日、特許庁長官は新聞紙上等で、登録官庁から政策官庁へ特許庁を飛躍させたいと抱負を述べておられましたが、特許庁としては、今後は、すぐれた制度と認めた場合は他の特許権先進国におくれをとることなく採用に踏み切るといった決断力を持つべきではないかと私は思うわけでございますが、長官、この点の御見解をひとつお伺いしたいと思います。
  96. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  今回のPCTの改定に伴う特許法改正国内優先権制度導入というのは必ずしも関係がないではないか、こういう御指摘でございます。これはおっしゃるとおりでございます。ただ、私どもといたしまして、国内優先権制度をつくりますとPCT利用価値というものがもっと高まるというふうに思っておりまして、そういう意味においてはかかわり合いがあるというふうに思っておりますけれども、ただ、必然的な関係というのは、おっしゃるとおり、ございません。  それなら、もっと早く国内優先権制度導入すべきではなかったのか、こういう御指摘でございます。これは確かに、前回特許協力条約加盟に際しまして、その当時当庁としても、国内優先権制度導入について、当時のことをいろいろ聞いてみますと検討したようでございます。ただ、当時、各国国内優先権制度利用状況制度の創設状況というのは必ずしも明確でなかったということもこれあり、その当時見送ってしまったというのが実態のようでございます。そこで、その後のいろいろな国際的な動きをにらみまして、今回の改正のお願い、こういうことに相なっているということでございます。  いずれにいたしましても、いい制度については他国におくれをとることなく日本もどんどん積極的にそれを取り入れるように対応すべきではないかという御指摘でございます。これも私といたしまして、おっしゃるとおりだろうと思います。もちろん、工業所有権制度という非常に国際的な制度でございますし、特に最近、国際的なハーモナイゼーションの要請というのが非常に強まってまいっているわけでございます。したがって、日本だけがいい制度だと思っても、なかなかとり得ない場合というのは逆の意味においてあり得るわけでありますけれども、いずれにしても、国際的なそういったハーモナイゼーションの動きということについても十分に頭に置きながら、いい制度につきましては私どもとしては積極的に対応してまいりたいというふうに思っております。
  97. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、出願公開制度について長官お尋ねしたいのでございます。  公開制度のとられた理由として、研究の重複のむだを省くということがあると思うわけでございますが、現在のように、先端技術の分野、日進月歩のごとく技術革新のうねりの中にあります。その中での出願問題、これと絡んで、出願日より一年六カ月経過したものについての公開は、本制度の趣旨からして余りにも長いのではないか、せめて一年経過に短縮する必要があると私は考えておりますが、公開制度をとる特許先進国の場合はどうなっているのか、審査期間の長短とどのようにかかわるのか、またペーパーレスシステム達成の暁にはこの一年六カ月経過の規定はどのようになるのか、あわせて御見解をお伺いしたいと思います。
  98. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  日本におきまして出願公開制度をとりましたのは昭和四十五年の法改正のときでございます。そのときに審査請求制度導入いたしました。審査請求制度というのは、それまでは出願されたものについて全部審査をやっていたわけですけれども、それに対して、請求があったものだけについて審査をする、こういう制度でございます。そういうことから、その審査請求制度導入したこととの関連において実は出願の公開制度というものを導入したわけでございます。要するに、そういう審査請求制度導入いたしますと、審査請求をするかどうかというのは個々の企業の判断になってしまうわけです。したがいまして、特許制度本来の技術の公開の時期というのは企業の判断によってずっとおくれてしまうことになりかねないということで、そこで一年六カ月後にとにかく全部出願公開をしてしまう、こういう制度を入れまして、そこでこの審査請求制度導入しながら同時に技術をできるだけ早く公開させていくという、その工業特許制度本来の趣旨というものとの調整を図ったわけでございます。  そこで、なぜ一年六カ月にしたのかということでございますけれども、これは先生御案内のように、工業所有権制度の基本的な条約としてパリ条約がございます。パリ条約というのは、要するに、ある出願をした後一年間その前の出願を基礎にしてほかの国に優先権を主張して出願ができる、そういうことを決めている条約でございます。したがいまして、例えばアメリカ企業アメリカ特許庁出願をいたします。その出願を基礎にしてパリ条約基づいて一年後に日本出願してくることがあり得るわけでございます。そうしますと、当然、この出願をしてまいりましたものについて公開をするにしても、その書類のチェックであるとか、いろいろな印刷の手配であるとか、その準備期間というものが要るわけでございます。したがいまして、外国パリ条約基づいて優先権主張を出願してきたものについては一年以内に公開することは不可能でございます。大体その準備期間というのは六カ月ぐらい要るわけでございます。そうすると、どうしても一年半ぐらいになってしまう。日本国内出願についてだけ一年ということになりますと、日本出願だけが一年、ほかの外国バリ条約基づ出願というのが一年半なら一年半ということになってしまう、これは非常にアンバランスになってまいります。そういうことで、両方のバランスを合わせまして一年半というふうに決めたのが当時のいきさつのようでございます。  そういうようなことはほかの国も大体同じでございまして、現にヨーロッパ審査請求制度出願公開制度をとっております国というのは押しなべて大体一年半ということで公開をしているわけでございます。典型的な例を申し上げれば特許協力条約PCTについても国際公開というのをやるわけでございますけれども、これも一年半でございます。それから、ヨーロッパ特許庁も欧州特許協力条約基づいて公開制度をとっておりますけれども、これも同じように一年半でございます。したがって、大体国際的には一年半ということになっているわけです。その理由というのは、さっき申し上げたようにパリ条約との関係ということからそうなっているということでございます。  いずれにいたしましても、この公開の時期を一年半にするということが審査をおくらせないか、審査にどういう影響を及ぼすのかという点が二番目の先生の御指摘だろうと思います。  この点については、率直に申しますと、審査というのは公開前でも審査請求があれば現にやっておるわけでございます。したがって、公開制度が一年半だからといって審査がおくれる、審査をおくらせているということはないというふうに存じます。いずれにいたしましても、そういう意味から申しますと、将来ペーパーレス計画が実現いたしまして審査処理が進んできたというふうな場合も、そこのところは、だからといってこの一年半を短くしなければならないということにはならないというふうに思います。
  99. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、弁理士制度について特許庁事務当局及び政務次官にちょっとお尋ねしたいと思います。  不動産の鑑定評価に関する法律第二十三条によると、株式会社等の法人格を有する不動産鑑定業者の登録が認められております。弁理士業界にあっても、最近不動産鑑定士の場合に倣って株式会社○○特許事務所なるものを認めるべきであるとの要望を持っている弁理士がおられるやに聞いておりますが、このような考え方は、弁理士という資格は、困難な国家試験をパスして一身専属権として個人に与えたものであることを考慮してみますときに問題があるのではないかと思いますが、いわゆる資本力等によって弁理士業の公正競争が壊されることとなるおそれのある制度の際には弁理士会との十分な協議によってまとめるべきだと思いますが、この点について、先に事務当局のお話をお聞きした後、政務次官に政策問題なのでお考えをお聞きしたいと思います。
  100. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  不動産の鑑定評価に関する法律に基づいて不動産鑑定業について法人形態で営むことが認められているという御指摘でございました。そのとおりでございます。そういったこともこれあり、弁理士についても同じような声があるようだが、こういう御指摘でございます。弁理士の中にはそういう御意見をお持ちの方があるやに私も聞いております。この弁理士業務の協業化を進めていかなければいけない、あるいは出願手続の代理業務を弁理士さんはやられるわけでございますけれども、やはり突発的な事故とかいろいろある、それを継続性を維持していかなければいけない、あるいはこれから情報化に向かって弁理士さんも資本を投資したりいろいろなことをやっていかなければいけない、そんなことを踏まえて法人化を進めていくべきではないか、こういうような御意見があるというふうに伺っているわけであります。  この点については、いずれにいたしましても弁理士法をどうするかという問題が実はもう一つございまして、この点について弁理士会と私どもの特許庁との間で委員会を持ちましてずっといろいろな検討を進めてまいっております。その中にもこの法人化問題が一つ入っているわけでございます。いずれにしましても、弁理士会の中でもこの問題をいろいろ議論されているやに伺っておりまして、私どもが承知しておりますところでは、弁理士会の中で甲論乙駁でまだ議論がまとまっていないというふうに承っております。その場合の反対論というのは、先生がただいまおっしゃいましたような観点からの反対論というものがかなり強くあるというふうに聞いているわけでございます。  この問題についての扱いでございますが、いずれにいたしましても私どもとしては、さっき申し上げましたように、この弁理士会との間で委員会も持っているわけでございまして、そういったような場で、また弁理士会の中でどのように議論が向かっていくかということも踏まえながら検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  101. 与謝野馨

    ○与謝野政府委員 ただいま先生の御指摘がございました法人化の問題でございますが、諸外国の例をとりましても、米国あるいは英国等では法人化が認められる、一方では西独ではこれが認められないというふうに、外国でも制度が必ずしも統一をされていないという状況でございます。  一方、弁理士会内部で、ただいま長官より御説明申し上げましたように必ずしも賛成の意見が多いということではなくて、むしろ現時点で法人化ということを推進するには疑問を呈する方が非常に多いと伺っているわけでございます。それには、大きな企業が弁理士業務に参入するのではないか、あるいは現在あります弁理士の事務所の大きなものがさらに大きくなっていくのではないかというようなもろもろの点がございます。しかしながら、法人化ということも一つの考え方でございますので、今後通産省といたしましては弁理士会とも勉強を重ね、検討を重ねてまいりたいと考えております。
  102. 福岡康夫

    ○福岡委員 特許庁お尋ねしたいのですが、最近外国人弁護士の日本国内における活動自由化を求める米国や欧州共同体諸国の要望があるわけでございます。もし、この活動自由化が認められた場合、技術交流の国際化の中で我が国企業技術部門に深くかかわり合いを持つ外国人弁護士の弁理士活動が活発化することが予想されますが、その反面、我が国弁理士の活動の範囲が狭められる、こういう状況になるのではないかと私は思うわけでございますが、この点についてひとつ御見解をお伺いしたいと思います。
  103. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  外国人の弁護士の進出問題につきまして昨年の四月経済対策閣僚会議が開かれまして、そこにおいて「日本弁護士連合会の自主性を尊重しつつ、可及的速やかに適切な解決が図られるよう努力する。」旨決定されたということになっております。その後、日本弁護士連合会の中で検討が行われたようでございまして、その結果、昨年十二月に外国弁護士対策委員会の構想試案がまとまったというふうに承知しております。これを受けまして、ことしの三月になりまして日本弁護士連合会としては相互主義の原則のもとに外国弁護士を受け入れる基本方針を固めたというふうに聞いているわけでございます。  そういうことで、外国人弁護士の問題についていろいろな検討が進められているわけでありますけれども、いずれにいたしましても、日本の場合には弁理士法上弁護士は自動的に弁理士活動をする資格を有する、こういうことになっているわけでございまして、そういう面からいって、仮に外国弁護士の問題について決定が行われた場合に、その決定の内容いかんによっては日本の弁理士に対していろいろな影響が出てくるのではないか、こういう点について弁理士会としてはいろいろ心配をされているところでございます。  弁理士さんというのは工業所有権制度を運営していく上において潤滑油的な役割をしていただいておりますし、特許庁のいろいろな政策、施策に協力をしていただいているわけでございます。私どもとしては、そういう意味合いからこの問題について大変深い関心を持っているわけでございます。  ただ、何分どういう形でどうなるかというところが明確でございません。外国人弁護士の活動を認めるにしてもどういう形で認めるのか、そのやり方次第で影響というのは非常に変わってくるわけでございます。したがいまして、私どもとしては弁護士問題についての今後の成り行きについて弁理士会とも十分密接な連絡をとりながら、また日弁連と弁理士会との間で緊密な連絡をとるようにお願いをしながら、あるいは必要に応じて法務省とも連絡をとりながら対応を考えてまいりたいと思っております。
  104. 福岡康夫

    ○福岡委員 今の御答弁をお聞きしまして、特許庁長官この問題に非常に関心を持っておることがうかがわれて私も喜ばしく思っております。十分この点について御留意願いたいと思いまして、時間が参りましたので私の質問を終わらせていただきます。
  105. 粕谷茂

    粕谷委員長 以上をもちまして福岡康夫君の質疑は終わりました。  続きまして、横手文雄君の質疑に入ります。
  106. 横手文雄

    ○横手委員 私は、今議題となっております特許法の一部改正について御質問を申し上げます。  我が国特許制度が生まれて百年、先日盛大な式典等が開かれたところであります。この制度我が国の近代的工業立国技術発展にはかり知れない影響を与えてまいりました。また、近年技術革新の国際交流が進む中で、国際的統一的取り決めも行われ、我が国もこれに積極的に参画しているところであり、本改正もそれに沿って行われるものであるとしております。通産省は、本法の改正提出に当たって、国際的に統一された方式により特許等の出願を認める千九百七十年六月十九日にワシントン作成された特許協力条約PCTの一層の利用拡大のため対策を講ずる必要があると述べておられます。つまり、我が国の国際的窓口をPCTに重点を置く方針と理解をしておりますが、国際的にはパリ条約もあり、この方が歴史も古い、したがって、現状ではパリ条約基づ出願の方が圧倒的に多いと聞いておりますが、その件数はどうなっておりましょうか。また、今後PCTへ移行させるためにその拡大策をどのようにとろうとしておられるのかお伺いをいたします。
  107. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  技術の国際交流が非常に活発になっているわけでございますが、それに関連いたしまして、各国特許お互いにできるだけスムーズに取っていけるようにしていくことが必要である、こういうことから古くはパリ条約ができ、新しくはPCTができたわけでございます、統一的な手続外国出願が取りやすい、取れるということ、また国際調査であるとか、あるいは国際予備審査であるとか、そういった幾つかの手続を経ながら具体的に出願人として次のステップを踏むべきかどうかということが判断できるということから、PCTというのはパリ条約優先権制度に比べていろいろな面におきましてすぐれた側面があるわけでございます。ただ、何分手続がやや複雑である、なじみがない、あるいは国際機関が真ん中に介在しておるということもございまして、パリ条約ルートの出願に比べてやや数が少ないわけでございます。  そういったようなことを踏まえまして、昨年の二月にPCT基づ国際出願がより使いやすくなるように改正しようということが決まりまして、その結果を受けての今回の法改正のお願い、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、この改正によりましてPCT出願はさらに進められるだろうと思いますし、また同時にお願いしております国内優先権制度にいたしましても、これは直接には国際出願制度関係がございませんけれども、ただこの国内優先権制度をつくることによってPCT利用価値というものが日本企業にとってより高まるということも事実でございまして、そういう面からもこの国際出願利用というのはこれからさらに進むであろうというふうに私どもは思っております。  ただ、現状を申しますと、このPCTルートによる国際出願とパリルートによる国際出願と比べてみますと、圧倒的にパリルートの方が多いわけでございます。ちなみにPCT出願の数字、要するに日本特許庁が受理いたしました国際出願件数の推移を見てみますと、最初の一九七八年、これは発足の年でありますけれども、このときにはわずかに五十二件であったわけですが、その後逐次ふえてまいりまして、八四年には六百二十一件ということになったわけでございます。そういうことで非常に急速にふえてはまいっているわけでございますが、それにしてもそのようなオーダーでございます。  それに対してパリルートの出願件数というのは、一九八三年で申しますと約三万三千四百件というような形になっているわけですが、それと比べると非常に少ないわけでございます。ただ、正確に申しますと、六百二十一件と三万三千数百件と比べるというのは必ずしも適当でないわけでありまして、実は指定国の数というものと、このパリルートの出願件数と比べなければ正確でないというふうに思います。いずれにしても、そういうふうに比べてもなおかつ圧倒的にパリ条約出願の方が多いことは事実でございます。  そういうことから申しまして、私どもとしてなおこのPCTルートの積極的な活用というものをさらに進めてまいりたいというふうに思っております。そういう観点から私どもとして、やや複雑でわかりにくいPCT手続につきまして解説書をつくり、PR書をつくり、関係者に積極的にPRをしてまいりましたし、これからもやっていかなければいけないと思っております。  同時にまた、もう一つの問題としてことしの一月四日からこのPCT出願につきましてはファクシミリによる出願というものを受け付けるということに決定をいたしまして、遠隔地の人たち国際出願利用について便宜を図るという手当てをやってまいっております。  また、これはこれからの問題になりますけれども、このPCT出願の場合には国際調査あるいは国際予備審査が行われます。したがって、その国際調査あるいは国際予備審査の結果というのはそれぞれの、日本特許庁もほかの機関がやったそういった審査資料、調査資料を審査に当たって利用できるわけでございます。そういうことから、このPCT出願基づ国内審査の手数料というものを割り引いていくということも考えてしかるべきではないかというふうに思っておりまして、そういうような手当てを通じてさらにPCTの活用というものを積極的に進めてまいりたいというふうに思っております。
  108. 横手文雄

    ○横手委員 それぞれの歴史の違いがあるとはいうものの、今お示しいただいたように我が国で進めようとしておるものは数百件、片方は数万件、圧倒的に数が違うわけでございまして、これから積極的に努力をしていただきたいと思う次第であります。  次に、改正では、基本的な発明出願から後の改良発明等を取り込んだ十分な権利内容出願へと円滑に乗りかえることを可能とする優先権制度導入しようとしておるのであります。この件について二、三お伺いをいたします。  最近、技術開発は組織的、計画的に行われる傾向がありますが、この点に関連して、本制度はどのような効果が期待できるのかということが第一点。それから、本制度導入に伴い技術内容が不十分のまま出願する傾向を生み出しはしないか。それから、本制度導入により出願がふえ、審査官の負担がふえることになりはしないか。こういった点についていかがでございますか。
  109. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  今回、この国内優先権制度導入について御審議をお願いしているわけでございますが、この国内優先権制度をなぜ導入するかという点についてまずお話を申し上げたいと思います。  最近の技術開発実態から申しますと、基本的な発明が行われた後、さらに研究開発が進められて付加的な発明であるとか改良発明が行われる、そういうのが技術開発実態でございます。  ところが、企業立場に立って申し上げますと、最初に基本的な発明が行われる、するとそれは早く出願しないといかぬわけですので、出願をいたします。その後、研究開発がさらに継続されます。そこで改良発明などが行われるということになって、それについても当然特許を取りたいわけでございます。すると、最初にAという出願をいたします。その次に改良発明、付加的な発明を含めまして、仮にBという出願をするといたします。するとその場合に、多くの場合、Aという出願との関係におきまして、後から出てまいりますB出願というのは、拒絶される可能性というのは非常に高いわけでございます。これは進歩性がないとかというような観点から拒絶される可能性がございます。  それでは、前の出願について補正したらどうだろうかという考え方があるわけでございますが、前の出願を補正して改良発明、付加的な発明を加えようということになりますと、これは前の出願の要旨変更になるということで、そういったような補正は認められないということになってしまう可能性が非常に高いわけであります。  それでは、前の出願を取り下げてしまって、全部まとめて後から出願を出し直したらどうかという考え方があるわけでありますけれども、それをやりますと、だれかほかの人がその間に入っていると、そこでだめになってしまうリスクがあるということで、従来の特許制度の仕掛けというのは、技術開発実態からいって、その技術開発の中から出てくる発明について網羅的に権利を取っていくということから申しますと、非常に難しい点があったわけでございます。それを直していこう、手当てしていこうというのが今回の国内優先権制度の趣旨でございます。  要するに、基本的な出願をまずいたします。その後、付加的な発明あるいは改良発明が行われる、そういった場合に、全部合わせて出願をして、前の第一の出願と重複する部分については、前の出願を基礎にして優先権を主張しながら後から出願をしていくということによって手当てをしていこう、こういうことでございます。そういうことから申しまして、この国内優先権制度効果という点について申し上げますと、最近の技術開発実態工業所有権制度を合わせるということでございまして、これからの日本技術開発について、それを促進する意味において大きな効果があるであろうというふうに思っているわけでございます。  そうすると、今度は逆の面からいって、この制度導入すると、一つは、技術内容が不十分のままで第一の出願をしてしまう、そこで席だけとってしまうということにならないか、こういう御指摘先生からございました。この点については、いずれにしても出願というのは特許法上あるいは特許法の運用上、明確に書いて出さなければいけない、こういうことになっておりますし、私どももそういう指導をずっとやってきているわけです。同時にまた、もし仮に最初の出願発明として完成してないということになりますと、そもそもそれは発明ではないわけでございます。出願は仮にあったとしても、実際にそれを基礎にして優先権制度を仮に後から主張したとしても、その発明が完成しないということになれば、その部分については優先権の効果というものは発生し得ない、こういうことになるわけでございまして、そういう面からいって私は御指摘のような心配というのはないと思います。  ただ、実際の運用上、そういうことがないように、余り適当でない出願が行われないように、これは十分になお指導をしていかなければいけない、国内優先権制度というものが正しく使われていくように指導していかなければいけない、そういうふうに思います。  それから、こういう国内優先権制度導入すると、出願がふえて審査官の負担がふえることにならないか、こういう御指摘でございます。  この点について申し上げますと、国内優先権制度導入いたしました場合に、私どもがある程度関係者からヒアリングした結果では、複数の出願を基礎にして、一つ優先権制度を主張した出願が行われることになるというふうに予想されるわけでありまして、そういう面から申しますと、むしろこの国内優先権制度を主張して一つ出願が行われますと、その基礎になった前の複数の出願というのは自動取り下げになってしまいます。したがって、それは審査しなくて済むわけであります。したがって、審査官の負担というのはふえるどころかむしろ減るのではないかというふうに私どもは思っております。  同時にまた、やや複雑な制度だから実際これを運用するに際して、当面の問題かもしれませんけれども、いろいろ審査官がなれないから負担がふえないかという問題がもう一つ実はあるのです。ただ、この点について申し上げますと、これはパリ条約基づ優先権制度とごく類似の制度でございまして、パリ条約基づ優先権制度の運用を私どもの審査官がずっとやってまいっておりますので、そういう面からいっても、この制度の運用については既にある程度熟達しておるというふうに私どもは考えております。
  110. 横手文雄

    ○横手委員 次に、我が国特許手続は、その審査期間が長過ぎるという不評を聞きます。  私は五十八年五月、本委員会においてこの問題に触れて当時の山中通産大臣質問いたしました。そのときはちょうど出願手数料が約二倍に引き上げられようとしていたときでもあります。そのとき大臣は、今回の料金引き上げは審査処理を早めるためのものであるという答弁をなされました。現状はどうなっておりますか。さらにその答弁の中で大臣から特許特別会計の設置をしたいという意向が示されまして、昨年ようやくそのことが実現をしたのでありますが、その効果のほどはいかがでありましょうか、また今後の見通しについてあわせてお伺いを申し上げます。  さらに、我が国特許出願件数は昨年四十八万件にも達し、それは全世界の四割を占めております。それだけ我が国技術開発に対する意欲が旺盛であるということのあかしでもありましょうけれども、一方では玉石混交であり、出願者に対する適正化の指導を行う必要があるという声もありますが、これに対する見解はいかがでございましょうか。もしそうだとすれば、その指導の具体的対策をお示しをいただきたいと存じます。
  111. 志賀学

    志賀政府委員 お答え申し上げます。  日本特許、実用新案の出願件数あるいは審査請求件数というのは非常に多いわけでございまして、世界出願件数の中で四割強を占めてしまう、そのくらいの特許大国になっているわけでございます。そんなことがございまして、片やまた審査官の定員が減ってきておるというようなこともございまして、審査要処理期間が一時減ったわけでありますけれども、最近ややまた延びてまいる傾向が出てまいっているわけであります。五十八年度におきます要処理期間は二年五カ月というふうになっているわけでありまして、今後の出願件数あるいは審査請求件数の動向ということを踏まえて考えてまいりますと、何にもしないと、これから十年後ぐらいには七年ぐらいになってしまうのではないかというふうに一つの予測があるわけでございます。  いずれにいたしましても、こういう特に技術重要性ということが非常に指摘されている時代であり、特にまた技術開発のテンポがいわゆる先端技術分野を中心にいたしまして非常に速い、こういうことから考えてまいりますと、このように処理期間が延びてしまうということを拱手して見ているわけにはまいらぬということで、そこで、私どもとしては、ペーパーレス計画を五十九年度から十年計画で導入していこう、全面的なエレクトロニクス化を図ることによってその審査の効率アップを図っていこうというふうに考えているわけでございまして、私どもとしては、十年後には七年ぐらいになってしまうというのを、少なくともそういったような長期化は抑えていくということで、このペーパーレス計画をぜひ実現をさせていきたいというふうに思っているわけであります。  そこで、そのペーパーレス計画を進めるということになりますと、これは当然お金がかかるわけでございます。そこで、昨年特許特別会計をつくっていただいたわけでございまして、私どもとしては、この特許特別会計によって与えられた長期的な財政的な裏づけを背景にしてペーパーレス計画をぜひ実現をして、それによって処理期間の長期化を抑えていきたいというふうに思っているわけでございます。  なお、この特別会計をつくっていただいたわけでありますけれども、こういったペーパーレス計画の推進あるいは特許庁の庁舎の新設ということを考えますと、やはり特別会計の会計がかなり苦しいということもございまして、昨年の八月、料金の引き上げをやらせていただいたわけでございます。そういうことによって、当面、特別会計の収支は予想を上回る形で今動いているわけでありますけれども、ただ、先々を考えてみますと、いずれまたしかるべき時期に料金の値上げということもお願いをせざるを得ないかというふうに思っております。  ただ、いずれにいたしましても、そういう特別会計を背景にいたしまして、このペーパーレス計画の達成等、サービスの改善に努めていきたいというふうに思っているわけでございます。  もう一つの、出願件数が多いけれどそれは玉石混交ではないか、それについてどういう指導をやっておるかというお尋ねでございます。  冒頭、日本世界出願件数の四割強を占める特許大国ということで申し上げたわけでありますが、これは一面において、先生お話しのように、日本の産業のバイタリティーのあらわれということで喜ぶべき側面があるわけでありますけれども、ただ、反面において日本の産業の場合に特許管理が必ずしも十分行われていないという面の反映であるという側面もあるわけでございます。そういう点において私どもとして、特に大口の出願企業に対して、出願をするに際してあるいは審査請求をするに際して十分に社内における自己審査をした上で慎重に出してほしいというお願いをしているわけであります。これは五十一年度からこの適正化指導をやってまいっているわけでありますけれども、私どもの見るところではかなりの効果をそれなりに上げてきているというふうに思っております。ただ、もちろんまだ必ずしも十分でないというふうに思っておりますし、なおこの指導を続けてまいりたいというふうに思っております。  なお、ペーパーレス計画のことを先ほど申し上げましたけれども、実はこのペーパーレス計画の達成ということと各社の自己審査の徹底ということとは非常に深いかかわり合いがあるわけでありまして、ペーパーレス計画によってデータベースが構築されます。それをオンラインによって各企業に流していくということになれば、自己審査を各企業が行うに際して非常にやりやすくなるわけでございます。そういう意味において、特許出願の適正化、特許管理の適正化という面においてもこのペーパーレス計画の達成はぜひやっていかなければならないと思っております。
  112. 横手文雄

    ○横手委員 今お話ございましたように、政府特許行政の機能向上のためにペーパーレス化とあわせて、手狭になっております庁舎を新総合庁舎に建てかえるという計画を進められておると聞いておりますが、その新庁舎の計画の概要をお示しをいただきたいと思います。  次に、裁判所等へ行きますと、そこには弁護士と依頼人が相談するための部屋があります。今度の新庁舎において、依頼人等の便宜を図るため、裁判所と同じような弁理士の皆さんと相談できる部屋を設けるべきではないかと思いますが、その計画が入っておりましょうか。  次に、地方の体制についてでありますけれども、各都道府県には発明協会というようなものがありまして、それなりに活動しておられるわけであります。ところが特許情報の受け皿、つまり閲覧室の整備が整っておりません。これは情報が膨大であるという実情もあろうと思いますけれども、やはり地方には発明協会があってそれなりの活動をしておられるわけですから、地方における情報の整備はきちっと行うべきではないかと思いますが、いかがでございますか。
  113. 小川邦夫

    ○小川政府委員 三点の御質問と理解いたします。  まず庁舎の建設でございますが、御案内のとおり三カ所に分かれておる上にスペース狭隘ということで、今本部のございます三年町の場所に新庁舎を建てるということで、おかげさまで今年度予算で設計費を計上していただきましたので、本年度設計に当たりまして、来年度から現在の建物を壊して直ちに新庁舎建設に入る。そして完成は私どもの予定では六十二年の秋にいたしたい。それによって先ほど来御審議いただいておりますペーパーレス計画の電子出願というものが私どもの十年計画のスケジュールどおり始められるために、そのタイミングで庁舎完成が必要ということでございます。  なお庁舎の規模は、細かい数字はまだ変動があると思いますが、大ざっぱに申しまして八万平米という延べ面積を予定しておりまして、現在の五万強のスペースに対してはかなり拡大できると考えております。  第二の御質問の点でございますが、裁判所における弁護人と依頼人のスペースの問題につきましては、実は御指摘もありまして我々もよく勉強してみたところでございます。  ただ、裁判所の場合と特許のこういった審査、審判の場合とやはり性格が違うところがございます。それは、裁判の場合には弁護士と依頼人が裁判所に出頭して口頭審理を行う、これが裁判所の原則になっておりますが、私ども特許制度においては、押しなべて申しますと審査、審判は書面審理を原則としておる。つまり、必ずしも弁理士さんと出願人が出てこなければいけないということではないという点では裁判制度とはちょっと実態が違うということもございますので、裁判所と同じようにこういった設備を持たなければならないかというと、必ずしもそういうことにはならないと思います。  しかしながら、それでは弁理士、出願人特許庁に来ておってどこにも場所がないでは困るではないかというのが御質問の核であろうかと拝察しますが、そういった便宜の問題については、今後設計をやって具体化していく段階では十分考えていきたいと思っております。  第三の地方閲覧所の受け皿が十分ではないのではないかという点でございますが、確かに現在、御指摘発明協会支部のほかにも通産局あるいは公立図書館、公立試験所、商工会議所等にも閲覧所を設けておりまして、全国百八カ所ということでありまして、利用も非常に活発化しておりまして、年間に二十一万件程度利用されているということであります。  しかし、これだけ活発に使われている中で、それでは設備なりその資料なりが十分かという点は、御指摘のとおり、さらに充実を求める声も強うございますもので、私どもとしては通産局の閲覧所の拡充ということで、本年度予算で福岡、広島、名古屋という最も狭隘化の実態にございますところの拡充を現在いたしておりまして、以後ほかのところについても逐次そういったスペースの拡大ということもやってまいりたいと思っておりますし、また資料の充実という意味では、六十年度予算も五十九年度に比べて大幅増を行うなど資料の充実ということにも力を注いでおります。  それに、利用しやすさという意味で指導員という制度を現在設けておりますが、その指導員の活動の活発化ということも予算面を通じて充実するということでございまして、私どもこれで充実努力終われりとは思っておりませんので、御指摘を踏まえて今後ともその充実拡大に努力してまいりたいと考えております。
  114. 横手文雄

    ○横手委員 二つ目の質問のことですけれども、なるほどおっしゃるように、裁判所における弁護士と依頼人との関係とこの特許庁における弁理士と依頼人の関係は同一のものではないと思います。御指摘のような点もあろうと思いますが、計画も頭の中にはあるやに今お聞きいたしておりますが、これはぜひつくっていただきたいし、その内容等についても、弁理士会というりっぱな会もあるわけですから、そういったところと十分に意見交換しながら最大限の要望を受け入れていただきたいという希望を述べておきますけれども、いかがでございますか。
  115. 小川邦夫

    ○小川政府委員 どういう形での御指摘のような便宜を設けるかということは、今後十分検討してまいりたいと思いますし、またいろいろな庁舎の問題にいたしましても、弁理士会とはよく連絡をとっておりますので、その中でこういった問題についても弁理士会とは連絡をとって考えさせていただきたいと思っております。
  116. 横手文雄

    ○横手委員 相談と同時に、要望を受け入れるというような方向でぜひお願いを申し上げておきたいと思います。  先ほど来話に出ておりますが、さきに行われました特許法施行の百周年行事で、大臣はその式辞あるいはパーティーにおけるあいさつ等々で今後の方針を述べられました。その改革の中心にペーパーレス化を据えるという方針を繰り返し述べられて、今もそのことを重点的にするという御答弁があったわけでございますが、私も当然のことであろうと思います。  ただ、これを進める中で中小企業等が新しい機器を導入する必要が出てまいりますので、いろいろと問題が出てくると思われますけれども、そのための対応はお考えになっておりましょうか。  それともう一つば、ペーパーレス化の計画もおっしゃるように十年計画ということでございますし、一朝一夕でできるものではありません。審査官の人員確保、待遇改善等に積極的に努力すべきであると思いますが、その対応についてお伺いいたします。
  117. 梅田勝

    ○梅田政府委員 お答えいたします。特に先の点でございますけれども、中小企業問題という点でお答えさせていただきたいと思います。  先ほど来話が出ておりますように、将来ペーパーレスになった場合に、出願人サイドからしますと、それをいわゆる電子出願という形で出さなければいかぬという問題が一つございます。今度逆に情報サービスを受ける側からいたしますと、例えばターミナルで受ける、こういう二つの側面があろうかと思います。今どういう電子出願の形にするかというのは検討しておるところでございますけれども、例えば直接オンラインで出してもらう、あるいはフロッピーディスク、ワードプロセッサーなんかによくついておる円盤みたいなものなんですが、そういうものにする、あるいはマグネティックテープ、つまり磁気テープの形にする等々の手段があるわけです。それもいろいろな標準の問題がございます。できるだけ中小企業にも受け入れられやすいような形での標準というものを考えていきたいというのが一つの方策でございます。そのことによりまして、中小企業者の方にもできるだけそういう形で出していただければというのが私どもの希望でございます。ただ、それを一つの共同という形での使用ということも考えられるのではないかと思います。  いずれにいたしましても、やはり一部分につきましては従来どおり紙の形でお受けせざるを得ないという場面もあろうかということで我々は計画しておりまして、その場合には紙でお出しいただいて特許庁の方で電子化するということも考えております。そういうことで、できるだけ中小企業が不利にならないようにということを考えておる次第でございます。  それから、今度受ける方でございますが、情報を受ける方も今申し上げたのと同じようなことでございまして、ターミナルの値段等々にもよりけりだと思いますけれども、共同利用をしていただく、あるいは非常に安い機器が利用できるようにする等々のことを考えていきたい、場合によれば公共機関にそういうターミナルを置くということも含めて考えております。
  118. 志賀学

    志賀政府委員 この審査官の定員の確保あるいは処遇改善の問題についてお答えを申し上げます。  私どもといたしまして、ペーパーレス計画を進めたとしても、やはり最終的にその案件を判断するのは審査官であります。したがって、特許庁として立派な人材をいかに確保するか、それから審査官の士気を高めていくために処遇をいかにして改善していくかということは大変重要な問題でございます。そういうことから申しまして、ペーパーレス計画を進め、あるいは必ずしも審査官にやってもらわなくてもいいような関連するいろいろな業務、例えばFタームの付与の問題とか、いろいろあるわけでございますけれども、そういった業務について外注するとかいうことで審査官の負担を省くとか、これからいろいろな手だてを講じてまいるつもりでありますが、あわせまして、審査官の必要な人員確保のために定員を確保していくということについて私どもとしては最大限の努力を払ってまいりたいというふうに思っております。  また、処遇改善の問題についても、同様に、過去におきまして審査官を非常に大量に採用した時期があるわけであります。そういったことも関連いたしまして、特許庁審査官の処遇についてやや不十分な点があるのではないかというふうに思っているわけでありまして、そういった点についての改善ということにも最大限の努力を払ってまいりたいというふうに私は思っております。
  119. 横手文雄

    ○横手委員 次に、弁理士法の改正についてお伺いをいたします。  本問題につきましても私は五十八年五月の本委員会で質問をいたしました。つまり、本件につきましては昭和三十四年二月の特許法の一部改正の際に政府質問に答えて、今回は弁理士法の根本的な改正は間に合いませんでしたけれども、鋭意これを検討中でございます、と述べておられます。さらに、このとき、この際弁理士法の根本改正についても速やかに検討に入るべしという附帯決議がなされております。このことについて私は大臣にお伺いいたしましたが、大臣は附帯決議は政府にとって重いということで答弁をされたわけでございますが、その後の改正に向けての対応はいかがでございましょうか。特に、特許管理士の活動は弁理士法上問題があると思いますが、いかがでございますか。
  120. 志賀学

    志賀政府委員 弁理士法の改正問題につきまして先生から何度か御質問いただいておりますし、また国会の附帯決議もいただいておるということはよく承知しております。当然のことながら、私どもとしては大臣が当時お答え申し上げたとおり、附帯決議というものを非常に重く見ているわけでございます。  最近の検討状況について申し上げますと、実は弁理士会との間で弁理士制度検討懇談会というものを持っております。これは、メンバーは、弁理士会側は会長外数人の方が入っておられます。それから、特許庁側は総務部長がヘッドでございまして、これまた数人の者が参加しているわけでございます。そこで、懇談会でございますけれども、昨年二月十五日以来現在までに十回開催をしておりまして、いろろいろな問題について多面的な検討をしてまいっております。最近は弁理士会の方で役員の交代などがございましてちょっと途切れておりますけれども、またこの懇談会を再開して検討をさらに進めていきたいというふうに思っているわけでございます。  ただ、現在までのところ、いろいろな問題について多面的な検討、議論を行っておるわけでございますけれども、私どもが承知している限りにおきまして、弁理士会自体としてまだ明確なコンセンサスができてないというふうに理解をしております。いずれにいたしましても、この弁理士制度のあり方、要するに弁理士制度というのは工業所有権制度一つの大きな柱であるわけでありまして、この制度のあり方というのは特許庁にとりましても非常に重要な問題だというふうに理解しているわけでございまして、そういう意味合いからこの懇談会の検討をさらに深めていきたいというふうに思っているわけであります。  そこで、具体的な問題として特許管理士の問題について先生お触れになりました。特許管理士というのがある団体において行われているというふうに私承知しているわけでございますが、これが弁理士法の二十二条ノ二の規定に触れるのではないか。弁理士法の二十二条ノ二と申しますのは、弁理士でない者が報酬を得る目的をもって特許等に関して特許庁になすべき行為について代理等を業として行ってはいかぬという規定であるわけでありますけれども、これに触れるのではないか、あるいはこの規定を強化して特許管理士というようなものについて規制を行えるようにすべきではないか、こういう御趣旨の御質問ではないかというふうに承ったわけであります。いずれにいたしましても、実態によっていろいろかと思いますけれども、特許管理士というものが直ちにはこの二十二条ノ二の規定に触れるものではないというふうに私は理解をいたしております。  ただ、触れるような行為が行われないように、この二十二条ノ二の施行について、それが適正に行われるように、そこはよくウォッチしていかなければならないというふうに存じます。同時にまた、さらに進んでそれでは二十二条ノ二の規定改正して規制強化を図るべきではないかという点につきましては、これまたいろいろな考え方があろうかと思いますけれども、この辺になりますと恐らく職業選択の自由であるとか、いろいろな難しい問題が出てまいると思います。したがいまして、そういう問題を踏まえながら慎重な検討というものが必要なのではないかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、当面の問題として、二十二条ノ二の規定というのが的確に守られるように、そこはよくウォッチしていきたいというふうに思っているわけでございます。
  121. 横手文雄

    ○横手委員 十分に関係者相寄り相談をするということは大変大事なことだと思いますし、精力的に続けていただきたいと思いますが、ただ、先ほど申し上げましたように、本問題については国会で、政府の責任において先ほど申し上げたような答弁がなされているという事実はやはり重いというぐあいに考えておりますから、鋭意御努力をお願いを申し上げておきたいと存じます。  さらに、今日、工業技術の国際交流化が進む中で、いわゆる特許摩擦の問題が起こってきております。現実に係争中のものも幾つかあります。その原因には、国内法歴史やその内容、あるいは国民性的慣習等から来る相互理解の不足などがあろうと思いますが、今後もさらに複雑多岐にわたってくることが予想されます。これらに対する政府の対策をお示しをいただきたいと存じます。  時間が参りましたので、続けて御質問申し上げますが、我が国企業発展途上国に進出する度合いはますます高くなってまいります。そして、その国で生産活動が定着すればするほど、その地において新しい技術が開発をされましょう。しかし、せっかくの新技術開発もその国の特許法整備されていないために有効に保護されない事態が発生することが予想されます。これら理不尽な事態を防ぐために、これらの国々に対して我が国はその責任において特許法整備の協力をもっと積極的に行うべきだと思いますが、その実情と今後の対応策についてお伺いをいたします。
  122. 志賀学

    志賀政府委員 まず、特許摩擦の問題についてお答えを申し上げます。  最近、工業所有権問題がいろいろな国際的な場、これはマルチの場、あるいはバイラテラルな場で取り上げられているわけでございます、これは、私どもの方にもいろいろ外国から注文が飛び込んでくるわけでありますけれども、同時に私どもの方からも、例えばアメリカの関税法三百三十七条の運用の問題、ITCの問題についてアメリカ側に注文をつけるというようなこともあって、お互いにいろいろ議論をしておるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、この工業所有権制度の問題というのは、それぞれの国が長い伝統と歴史の上にそれぞれ固有のものを持っておる。それで違いがある。そこのところからいろいろな問題が起こってくる傾向がございます。また、相手の制度がよくわからぬということで、要するによく理解できないことに伴う誤解でおるとか、そういうことも間々あるわけでございます。  そこで、一番基本的な問題というのは、そういったそれぞれの国の制度というもの、あるいは工業所有権制度の運用というものをできるだけ統一化していく、これが一つ基本的な対策として重要であるというふうに思います。  この点について申し上げますと、日本アメリカヨーロッパ、三つの特許庁との間で定期会合が持たれておりまして、ことしの秋には東京で第三回の定期会合が行われる予定でありますけれども、この三つの特許庁との間での合意といたしまして、少なくともこの三つの特許庁との間で、できるだけ、できるところからハーモナイゼーションを行っていこうという合意ができておるわけでございます。私どもはそういったハーモナイゼーションの合意に基づきまして、日本がむしろイニシアチブをとってそのハーモナイゼーションに向かって進んでいきたい。ことしの秋の東京におきますこの三つの特許庁の間の定期会合においては、この辺についてさらに具体的な今後の進め方などについての合意というところまでやっていきたいというふうに思っているわけでございます。  もう一つの問題は、ハーモナイゼーションと言うと少し先の話になるわけでありますけれども、現にいろいろな問題が起こってきている。それは、相互によく理解できないというところからいろいろな問題が起こってきているのが現状でございます。これについて私どもがやっておりますのは、例えばアメリカ出願人は、日本特許制度についていろいろな注文を持っているわけであります。この注文は、かなり誤解に基づくものがございます。いずれにしても、アメリカ出願人日本特許庁が直接対話をするということがお互いの理解を深めていく上において非常に有効であろうというふうに考えまして、実はアメリカ出願人日本特許庁と直接対話をもう二回やっておるわけであります。その結果、日本側がよく説明しますと、彼らも工業所有権制度の専門家でありますから、わかるものはわかってくれるわけです。逆にまた、彼らが言うことで、なるほどということがあれば、私どもは積極的に取り入れていこうという姿勢で臨んでいるわけでありまして、アメリカ出願人との間の相互理解というのはかなり深まってきたと思っております。  同様に、ヨーロッパ出願人との直接対話も、ことしになりまして二月にいたしました。ヨーロッパ出願人との間の対話も同じようにかなり深まったというふうに思っておりまして、こういった外国出願人との直接対話というのは、これからも我々としては積極的にやっていきたいというふうに思っております。日本特許庁がそういう動きをしたことを契機にいたしまして、アメリカ特許庁あるいはヨーロッパ特許庁も、例えば日本出願人と直接対話をやろう、こういう動きが出てまいっているわけでありまして、これは日本出願人立場から言っても、アメリカ工業所有権制度あるいはヨーロッパ工業所有権制度あるいはその運用についていろいろ言いたいことがあるわけであります。日本だけが言われているわけではないわけであります。したがって、そういった機会を通じて、日本出願人としてアメリカあるいはヨーロッパに対してよくこちら側の意見を言う。恐らくその中にこちら側の誤解というのも間々、多々あろうと思います。そこがまた解ければいい。こちらが言うことについて、理由があれば向こうで直してもらえばいいということで、そういう直接対話を通じて相互理解を深めて摩擦が起こらないようにしていきたいというふうに思っております。  次の国際的な問題といたしまして、発展途上国との関係がございます。おっしゃるように、発展途上国における工業所有権制度整備というのは、その国にとって重要であると同時に、日本にとっても極めて意義のあることでございます。そういう意味におきまして、積極的にこの発展途上国に対する協力ということをしていかなければいけないし、現にやってまいっているわけであります。  それで、工業所有権制度というのは、法律ができれば直ちにワークするというものではないわけであります。一つは、立派な審査官なり何なり、要するに人材がいなければ動かないわけでございます。そういう意味からいって、私どもとしては積極的に海外、発展途上国からの研修生の受け入れ、あるいは特許庁から専門家を派遣して、向こうに行って訓練するということ、これを積極的にやってまいっているわけでありまして、五十九年度までに研修生の受け入れというのは二百九十一人やっております。また、専門家の派遣というのは七十人やっております。この研修生の受け入れのうち、やはり一番大きなところは中国でございまして、中国におきましては、この四月一日から専利法の施行に入ったわけでありますけれども、この中国における専利法整備、施行には、日本としてかなり貢献をしたというふうに思っております。  また、もう一つ発展途上国の工業所有権制度整備を考える場合に重要なことは、資料の提供であります。これはやはり審査をする、そのための資料がなければだめだということがございます。そういう面におきましても、我々はこちらから資料を提供してあげるということで協力をしておりますし、また中国の場合に、現在中国におきましてもコンピューター化、エレクトロニクス化を計画しているわけでありまして、要するに検索システムの構築をやろうとしているわけでありまして、そういう面につきましても我々は積極的に協力をしているというのが現状でございます。
  123. 横手文雄

    ○横手委員 終わります。どうもありがとうございました。
  124. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて横手文雄君の質疑は終わりました。  次回は、来る二十一日火曜日午前九時二十五分より理事会、午前九時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。     午後三時二十分散会