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1985-04-17 第102回国会 衆議院 商工委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十七日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 粕谷  茂君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 後藤  茂君 理事 城地 豊司君    理事 長田 武士君 理事 宮田 早苗君       甘利  明君    尾身 幸次君       奥田 敬和君    奥田 幹生君       加藤 卓二君    梶山 静六君       高村 正彦君    佐藤 信二君       椎名 素夫君    関谷 勝嗣君       仲村 正治君    二階 俊博君       野上  徹君    野田  毅君       原田昇左右君    松野 幸泰君       水野  清君    奥野 一雄君       上坂  昇君    佐藤 徳雄君       浜西 鉄雄希    水田  稔君       横江 金夫君    和田 貞夫君       渡辺 嘉藏君    木内 良明君       草野  威君    西中  清君       福岡 康夫君    青山  丘君       伊藤 昌弘君    工藤  晃君       野間 友一君 出席国務大臣        通商産業大臣   村田敬次郎出席政府委員        通商産業大臣官        房総務審議官   児玉 幸治君        通商産業省立地        公害局長     平河喜美男君        通商産業省機械        情報産業局長   木下 博生君        通商産業省機械        情報産業局次長  棚橋 祐治君        中小企業庁長官  石井 賢吾君 委員外出席者        環境庁水質保全        局水質管理課長  小林 康彦君        文化庁文化部著        作権課長     岡村  豊君        商工委員会調査        室長       朴木  正君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十七日  辞任        補欠選任   佐藤 信二君     二階 俊博君   林  大幹君     関谷 勝嗣君   横江 金夫君     佐藤 徳雄君   横手 文雄君     伊藤 昌弘君 同日  辞任        補欠選任   関谷 勝嗣君     林  大幹君   二階 俊博君     佐藤 信二君   佐藤 徳雄君     横江 金夫君   伊藤 昌弘君     横手 文雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  半導体集積回路回路配置に関する法律案(内  閣提出第六三号)  中小企業技術開発促進臨時措置法案内閣提出  第六四号)      ――――◇―――――
  2. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため出席がおくれますので、委員長の指定により私が委員長の職務を行います。  内閣提出半導体集積回路回路配置に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城地豊司君。
  3. 城地豊司

    城地委員 半導体集積回路の出現はわずか二十五年前の一九五九年の集積回路の発明に端を発しました。そして、その後の目覚ましい技術革新の結果、高集積化が急速に進み、現在ではコンピューターOA機器家庭電器製品自動車等産業経済国民生活のあらゆる面でその利用が図られており、まさしく情報化時代における産業の米としての役割を果たしています。また、半導体集積回路を供給する半導体集積回路産業は、今後とも急速な発展が見込まれる極めて有望な産業でございます。  そういう我が国集積回路産業状況は、この資料にもありますが、昭和四十四年から今日までの経過を見ましても、例えば昭和四十四年には事業所数が三、そして従業員数が千四百名、製造品出荷額が五十億ということでありました。それから十三年後、昭和五十七年には事業所数で百六十、そして従業員数が七万二千人、製造品出荷額で一兆六千七百二十億という状態になっているのでございます。非常に目まぐるしい発展を遂げておりますし、年間の成長率も二〇%を超えるという状況になっておるわけでございますが、これらのいわゆる集積回路産業現況の中で、五十七年までの状況しかこの資料でとらまえておりませんが、五十八年、五十九年、できれば六十年の見通しというものも含めてこの集積回路産業現況について伺いたい。  さらに、各種資料では、今後十年間を展望していろいろな資料も出されております。これからも年率二〇%以上の発展を遂げるのじゃないかということも言われておりますが、今後の展望も含めて、この集積回路産業現況と今後の見通しについて最初に伺いたいと思います。
  4. 木下博生

    木下政府委員 今、城地先生指摘数字は、工業統計表のベースの数字を御指摘になったと思いますが、通産省の方の調べでIC売上高ということで統計をとっておりますが、それによりますと、一九七五年、昭和五十年には千八十二億円の売上高であったものが、一九八四年、昨年は一兆九千六百八億円ということで、九年間に約十八倍になっておるわけでございます。特に昨年の伸びは非常に大きいものがございまして、一昨年に比べまして七割以上の伸びを示したということでございます。  そのように急速に伸びた理由は、集積回路技術が、今御指摘のように急速に進みまして、例えばメモリーチップで言いますと、十年前には千とか四千とかというものしか一つ半導体の中に入っていなかったものが、現在は六万四千とか二十五万六千とか、あるいは近く百万の記憶素子が入るようなものが出ようというようなことで、技術進歩が激しいためにまたコストも大幅に下がっておるわけでございまして、メモリーチップコスト記憶素子ピット当たり計算しますと、十年の間に百分の一から二百分の一に下がったのではないかというような感じがいたしますが、そのような状況で急速にいろいろな機器類にこういうものが使われるようなことになってまいりまして、そのために半導体産業は急速にそのマーケットを広げ、成長を続けてきておるわけでございます。  ただ、昨年の秋以降、それまでの過熱的な需要伸びの反動もございまして、需要家側在庫調整を行い、需要一服ぎみであるということが言えようかと思います。これは、日本もそうでございますが、アメリカもそうでございまして、ことしに限って言えば、一けた台ぐらいの成長にとどまるのではないかという感じがしております。  ただ、中長期に見ますと、今先生指摘のように、年率二〇%ぐらいの割合で今後も成長を続けていくのではないだろうかというふうに考えておりますし、半導体技術も、現在の水準にとどまることを知らず、まだ大幅にその技術伸びていくということも予想されるわけでございます。
  5. 城地豊司

    城地委員 日本状況についてはわかりましたが、世界全体の、このIC関係ではアメリカが非常に大きなシェアを占めているわけでありますが、アメリカ現況、さらには、アメリカ日本が全体の九割を占めているというふうに言われておりますが、それらの状況について説明をいただきたいと思います。
  6. 木下博生

    木下政府委員 アメリカにおきましても、半導体需要伸びは過去ずっと非常に大きな伸びを示してきておったわけでございます。ただ、昨年は、コンピューターあるいはパソコン、そういうようなもの、あるいはOA機器等需要の大幅な拡大需要が急速に伸びたわけですけれども、後半にわたって需要伸び悩んだことがございまして、八四年秋以来、アメリカの方においても受注が急減している状況でございます。日本の場合には、一応在庫調整もそろそろ終わったかという感じがいたしますが、アメリカの場合にはまだ在庫調整が続いているという状況でございます。  それで、米国市場におきましては、注文を受ける数字出荷する数字比率が、八三年十二月ごろは注文を受ける方がはるかに多くて一・六六というような数字であったわけですが、昨年の十二月にはそれが〇・六四ということで、出荷の量に対して注文を受ける量の方が非常に少なくなるという状況になったわけでございますが、最近は幾らか改善いたしまして〇・七八ぐらいまで戻ってきているというような状況でございます。しかし、年を通じて見ますと、日本の場合には一けた成長ぐらいでございますけれどもアメリカの場合には、ことしに限って言えばマイナス成長になるのではないかというふうに思われております。ただ、中長期的に見ますと、先ほど日本の例で申し上げましたと同じように、二〇%台の成長が今後も続き得るというふうにアメリカ側関係者も見ておるようでございます。
  7. 城地豊司

    城地委員 状況は大体わかりましたけれどもアメリカが現在世界全体の六割、日本が大体三割、その他で一割、概括的にそういう状況でございますけれども、これは私の独断かもしれませんが、日本電子工業会なんかでの一部の人の意見等を伺いますと、これからの七年後の一九九二年にはこのIC関係は大体五兆円を超えるのではないかというふうに言われておりますし、二十一世紀に入る直前には二十二兆円にもなるという推定すらあるわけでございます。  それともう一つは、アメリカが現在のところまだ生産額が多いわけでありますけれども、現在のところだんだん日本生産額が接近しているという状況で、ここ十年以内に日本の方が、集積回路産業だけを見ますとアメリカを追い越すのじゃないか、ただ単に生産額というだけでなくて、いろいろな新しいものの開発も含めてでありますけれども、そういうような考え方を持っているのですが、それについてどのようにお考えになりますか。
  8. 木下博生

    木下政府委員 先生が今おっしゃいましたように、確かに日本半導体産業伸びの方がアメリカ半導体産業伸びよりも速いという面があるのは確かなことでございます。今御指摘のように、マーケットシェアで見ますと、アメリカ系企業が約六割ぐらいを占め、日系企業が三割ぐらいを占めているという状況でございますが、最近の半導体企業設備投資動向等を見ますと、日本の方が新しい集積度の高い半導体を生産するための設備投資を積極的にやっておりますので、その設備投資の結果が出てまいりますと、生産量伸び日本の方がはるかに高くなるということもあろうかと思います。一時的に世界半導体需要が若干停滞しておりますので、そのために日本企業設備投資をし過ぎるのではないかという懸念をアメリカ関係者は持っておるようでございますが、ただ、長期的に見れば、それだけの設備投資をしても十分に需要とマッチすることができるというふうに我々は考えております。  ただ、半導体の場合に日本側企業が割合有利な立場にありますのは記憶素子メモリー関係半導体でございますが、アメリカの方は計算をする機能を持ったマイクロプロセッサーとかロジックとか、そういうものについて比較的強いということがございます。技術的に見ますとそういう計算をする機能を持った半導体の方が非常に難しいというようなことがございまして、過去からの技術蓄積を考えますとまだアメリカの方が高いということは言えようかと思います。ただ、今後徐々に日本側生産額におきましても技術水準につきましてもアメリカに追いついてくるというような形になるのではないかと我々は半分期待を持って考えておるわけでございます。
  9. 城地豊司

    城地委員 これは見解の相違ですから、それからまた事実が立証するので、そのことについては静かにその情勢を見守りたいと思いますが、日本集積回路製造業関係では、通産省が五十九年十一月に調べました我が国半導体集積回路売上高研究開発設備投資関係についての資料がございます。これで見ますと、半導体集積回路産業というのは日本産業の中でも非常に特殊な分野に属するのではないかというように考えますのは、要するに売上高伸びることは伸びておりますけれども、それに対して研究開発支出、そしてさらには設備投資というようなものが非常に多いというのが特徴だろうと思うのです。一般産業でこれだけ研究開発、さらには設備投資をする産業はないというふうに私は考えております。  一九七五年、十年前ですら研究開発支出売上の約二〇%、そして設備投資は一〇%、そして年々その傾向は変わらず来ておりまして、一九八四年の資料によりますと、研究開発比率では一一%、そして設備投資は三五・八%ということでございますけれども、金額的に見ると、例えば八四年であっても研究開発が二千百六十四億、そして設備投資が七千十二億、両方含めて九千億以上の研究開発設備投資をやっている。そして売上高先ほど説明がありました一兆九千億ということでございますから、五〇%に近いものを研究開発設備投資でやっている。産業として見ると非常に特殊なものである。それだけ技術が日進月歩しているという性格もあるし、回転が非常に速いという面もあるし、また、ちょっとおろそかにしているとおくれてしまうという点もある、需要もまたどんどんふえていくという、まさにIC革命といいますか、そういう産業ではないかと思うのです。  そういう産業なんですが、その産業を構成しているものを見てみますと、この事業所の数でいきますと、通産省統計でいきましても、当初昭和四十四年、三つの事業所であったのが、五十七年で百六十事業所事業所がふえております。これは事業所という表示であるので、私たちは事業所よりもむしろICでいくとIC十二社とかいうようなことで一般に世間で言われているということでありますが、この百六十事業所内訳、さらにはIC十二社という中に大企業中規模企業、小企業と分類してどういうような形で存在しているのか。存在というよりも、大企業、中企業、小企業に分類してどういうような形になるのか、お知らせいただきたいと思います。
  10. 木下博生

    木下政府委員 半導体集積回路技術進歩については今先生がおっしゃったとおりでございまして、どんどんその集積度が高まっていくために、新しい設備を導入して新しい集積度の高いものをつくっていかないと競争に追いつけない、ある意味では非常に激しい、苦しい立場に各企業置かれながらその競争を行っているというような状況でございます。ただ、幸いにしてコストがどんどん下がっていきますためにマーケットが非常に広がっていくということで、全体としては急速な拡大を続けておるわけでございます。  現在、半導体集積回路製造業におきまして、日本において製造を行っている企業の数でございますが、私どもは主要二十八社ということを言っておりますけれども、二十八社ございます。その二十八社を資本金によって内訳を見てみますと、資本金百億円以上のものが十五社、それから十億円から九十九億円までが九社、それから一億円から九億円までが四社ということでございまして、半導体をつくりますためにはその高度の技術を有した莫大な設備投資を行わなければいけないというようなことで、半導体製造企業自身はすべて大手によって占められているというようなことでございまして、中小企業はそういう企業の完全な子会社が、あるいは関連企業下請企業という格好で存在しているというのが現状でございます。
  11. 城地豊司

    城地委員 一億円以上が大企業というわけではないので、中小企業と言ったのはちょっとあれですが、申規模企業といいますか、そういう関係企業も入っているのではないかと思います。ですが、その問題はまた後ほど全体との関連で触れたいと思います。  次に、今回この法律案提案するに至った経緯についてでございますが、アメリカにおいて、一昨年の五月に半導体チップ保護法案アメリカ議会提案をされた、そして昨年の四月、五月いろいろな過程は経ましたが、最終的には五十九年十月にこの半導体チップ保護法案アメリカ議会で成立をした。そして、十一月にレーガン大統領が署名をして発効したということでありますが、それらを受けて日本においても、それに対応するために半導体チップに関する法制問題小委員会が昨年の十月に発足をして、七回の会合を経て、本年の一月に半導体チップに関する法制問題小委員会報告というのをまとめられたと思うのです。そして、アメリカがそういうことで法制化したのを受けて、今回の閣議決定をして本法案提出ということになったのだと思うのですね。  そういう経緯があるわけでありますけれども、それらの経緯の中で、私は前からいろいろな資料をいただいてその資料を見ているのですが、その資料によりますと、アメリカの方でいろいろな形で保護法案半導体チップ保護するという意味保護法という名称が使われておりまして、私どもも、本法案審議に入る以前に提案をされた提案の概況を見ますと、それらは半導体チップ保護に関する法律案仮称ということになっておったのでございます。今回正式に出てきました法律案を見ますと、保護という字はないわけでありますが、半導体集積回路回路配置に関する法律案ということになったので、非常に温かい「保護」という言葉がないのですが、これらはどういう形で、当初、仮称であってもとにかくチップ保護チップ保護ということで呼ばれていたものをこういう正式な形の「回路配置」というような関係で出てきたのか、その辺に何か特別な立法の過程での問題点があったのかどうかということが一つでございます。  それからもう一つは、これは通産大臣にお伺いをしたいのですが、この法案閣議で決定する際に、今回の場合にはどのように大きく考えているのか、大きく考えていないのか、昨日の同僚議員質問の中でもありましたが、結局、新しい法律をつくる、日本には余り例のない法律、しかもアメリカ法律をつくった、しかも、そういう意味相互主義であるから日本でも法律をつくらなければ日本産業保護もできない、そういうような意味合いを含めてこの法律提案されているわけでありますが、これらの提案をされた際に、恐らく閣議の中では、新しい法律だから通産大臣、しっかりやってくれよというぐらい中曽根総理大臣あたりが言ったのか、それとも他の大臣が、外務大臣あたり外国との、アメリカとの特に問題があるからしっかりとやってもらいたいぐらいなことを言つたのか。とすれば後からいろいろ意見を出したいと思いますけれども、それぐらいのことは言ったんじゃないかという類推をするわけでありますが、その辺については大臣から、事実関係だけで結構ですから、あったのかどうかということを伺いたいと思います。
  12. 村田敬次郎

    村田国務大臣 半導体集積回路回路配置に関する法律案閣議経過についてでございますが、実はこの法律案のことにつきましてはっとに必要性が言われておりまして、私がブロックさんとお会いしたりした際にも既にこの話が出て、アメリカでは既に制定をしているのだから日本ではぜひやってくれというお話がありました。エレクトロニクス分野日米の会談に関連をして、これについては必ず措置をいたしましょうという約束もいたしておりまして、担当の関係各省ともいろいろ根回しをし、次官会議を経て上がったわけでございます。  したがって、これが閣議に上ってまいります前に、総理やあるいは外務大臣やそういった関係方面には私から十分御了解をとっておったわけでございまして、したがって、閣議の席上でこの問題に対する質問などはもう出なかったわけでございます。というのは、根回し事務当局を通じ、また私自身を通じて十分に行われており、御理解をいただいておったからでございますが、この法律重要性というものは内閣全体を通じてよく認識をしていただいておると思っております。
  13. 木下博生

    木下政府委員 最初に御質問のあった二点についてちょっと申し上げたいと思いますが、本法案をつくりましたときの経緯でございますが、今大臣の方からも御説明がございましたけれども、もう少し古くさかのほってみますと、通産省とそれからアメリカ通商代表部アメリカの商務省との間でつくっております日米先端技術産業作業部会というのがありまして、八〇年代の初めごろから通産省の場合には機械情報産業局次長がヘッドになりまして、その作業部会でいろいろと先端技術産業問題についての議論を行っておったわけでございますが、その中で取り上げましたテーマがこの半導体集積回路でございまして、例えば一九八三年十一月にその作業部会提言を行いましたのに伴いまして、例えば日米両国間で半導体集積回路関税率をゼロにしようというような提言を行ったということがございます。その提言を行ったときに同じく半導体集積回路回路についての権利保護する法律知的所有権法的観点からつくる必要があるのではないかという点の日米両方の合意ができておったわけでございます。  アメリカの方が法律制定作業は早く進みまして、今先生指摘のように昨年十月に議会で成立し、十一月に法律になったわけでございますが、日本の方も八三年十一月にその作業部会提言を行って以降いろいろと検討を行っておりまして、検討を行ってきました結果、昨年の秋から産業構造審議会に小委員会を設けて外部の先生方にいろいろと検討いただいたというようなことでございます。その結果今回の法律提案ということになってきたわけでございますが、これは世界の九割を占めております日米両国において半導体集積回路権利保護することが必要だということで、その保護する必要性については日米ともに同じような事情があるということでその法律をつくるに至ったわけでございます。  それで、この法律名前について御質問がございましたが、当初私どもは、御指摘のように半導体集積回路保護法というような名前法律を考えておりました。ただ、法制局法律審議をやっております過程で、この法律目的二つあるわけでございます。この法律最初目的の条文に書いてございますけれども半導体集積回路回路配置の適正な利用を確保するための制度を創設するということでございまして、適正な利用内容二つございまして、回路配置の摸倣の防止により開発者の利益が適切に保障されること、それからもう一つは、集積回路利用者取引の安定が確保されるなど集積回路取引上のルールを確立する、この二つを総合して適正な利用という言葉で表現しておるわけでございますが、そのようなことで、単に回路配置保護を行うだけのものではないということもありまして、法律名前半導体集積回路回路配置に関する法律ということに最終的になったわけでございます。  ちなみに、同じように権利保護をしております法律特許法にいたしましても著作権法にいたしましても、日本の場合には法律名称には保護という言葉を使っておりません。そういう前例にも従いながら、私ども法律名前を最終的にそのような形で決めさせていただいたわけでございます。
  14. 城地豊司

    城地委員 新聞等の報ずるところによりますと、日本半導体回路保護についてはアメリカ半導体チップ保護法案とほぼ内容は同じであるということも聞いておりますけれども、昨日からの同僚議員質問の中で、アメリカ半導体チップ保護法案の中には相互主義というものがある、日本法案にはそれがない、非常に大きな違いではないかと思うのですが、その相互主義という件について御説明をいただきたいと思います。
  15. 木下博生

    木下政府委員 今御指摘のように、アメリカ半導体チップ保護法には相互主義的内容規定がございます。  これはアメリカ法律の九百二条でございますけれども、私どもの方で言っております回路配置のことをアメリカではマスクワークと言っておりますが、マスクワーク権利者が、第一に「合衆国国民もしくは居住者、」第二に「合衆国当事国であるマスクワーク保護に関する条約の一当事国である外国国民居住者もしくは主権者これも条約はまだできておらないわけでございますけれども、もしできた場合のことを想定してそういう規定一つ入っております。それから三番目に「その者の居住地の如何を問わず無国籍者である場合。」ということが書いてありまして、それでその法律のいわゆる二項に当たるもので「外国が、合衆国国民もしくは居住者権利者であるマスクワークに対して、その国の国民ならびに居住者マスクワークおよびその国において最初に商業的に利用されたマスクワークに、その国が保護を与えるのと実質的に同じ基準こということを言っておりまして、合衆国国民保護を与えている場合には、そういう国の回路配置に対して保護を与えるという意味での規定が入っております。それを私ども相互主義と言っておるわけでございます。  したがって、アメリカ法律立場に立ちますと、日本アメリカ企業に対して保護を与えるような法律をつくった場合に、しかもその法律の中身が実質的に同じような場合にアメリカにおいて日本企業回路配置保護することができるということになっておりますので、そういう意味アメリカ相互主義法律をとっているわけでございます。  ただ、日本の場合には、いろいろと検討しました結果、すべての外国回路配置につきましても、それが創作者であればその保護を認めようという形にしたわけでございます。
  16. 城地豊司

    城地委員 日本アメリカとの関係についてはわかりましたが、全体の今一割と言われておりますがヨーロッパ各国、さらには新興工業国家群、最近はチップは韓国で非常に多くやられている。これは韓国資本だけではなくてアメリカ資本、技術というようなものをもって韓国で非常に多くやられておる。さらには台湾、香港、シンガポールの新興工業国家群でもいろいろやられてきておりますし、また将来を考えますと、日本がかつてそうであったように、これらの新しい国が技術を体得して、そして俗な言葉で言うと日本を追いかける、追いつき追い越すということにならないとも限らないわけでありますが、これらのいわゆる新興工業国家群やヨーロッパにおけるこれらの法律に関する立法化とか、さらにはそれに類似したような動きがないのかどうか、伺いたいと思います。
  17. 木下博生

    木下政府委員 ただいまの段階ではアメリカでそういう法律ができておりますし、ここで御審議いただいて日本法律が成立すれば二番目の国になるわけでございますが、それで本来世界の九割を占めておりますけれども、残り一割を占めております国においても半導体の生産が行われておりますし、世界的にそれが流通するということでございますから、私どもとしては、できるだけ早く同じような法律がほかの国でもできた方が望ましいと考えておりますが、ヨーロッパあるいは韓国等において同じような法律を立法化しようという動きは今のところ出てきておりません。
  18. 城地豊司

    城地委員 それらとの関連で先ほどもちょっと御説明がありましたが、いわゆる世界知的所有権機関、WIPOで国際条約の動きがある。伝えられるところによると、本年の九月ころから具体的に動くという情報があるのですが、それらについてはどのようにお考えですか。
  19. 木下博生

    木下政府委員 一昨年の六月に開催されました世界知的所有権機関、WIPOの委員会におきまして、半導体集積回路保護必要性がますます増大している点について議論がなされたわけでございます。それでこの問題についての検討を優先的な課題として行おうという提言がその際なされております。  これを受けましてWIPOにおきましては、我が国において本法案が成立した場合には日米両国回路配置保護法を参考としつつモデル法案、国際条約等の検討に入る予定と聞いておりまして、この秋ごろからその検討が始まるのではないかというふうに聞いております。
  20. 城地豊司

    城地委員 本法案の条文の中で特に非常に大きい重要な要素を占め、昨日も同僚議員からいろいろ質問がありました今回のこの法案は、回路配置利用権を設定するのには創作者が設定登録をする、そしてそれを認可する、しかも、その申請書を提出する過程では手続が非常に簡便にできるというような話がありました。そして、その設定登録が終われば回路配置利用権が発生をする。これは本法第三条、第十二条等々との関係でそういう利用権が発生をする。そして、それを手がけるといいますか具体的に行うのは指定登録機関、第二十八条に載っておるわけで、この指定登録機関は通産大臣の認可である。新しくこういうような制度を発足させるわけでありますから、先ほども私は閣議内容も伺いました。通産大臣からもお答えがございました。  昨日の同僚議員との質疑の中でもこの問題がはっきりしなかったのでありますが、こういう新しい法律をつくって、事始めですから一番最初が肝心なわけであって、指定登録機関がどこにやらせるのか、だれにやらせるのかというような構想その他もはっきりしないままに法律をつくって、登録機関はその後の省令だとか政令だとかいうようなことではまずいのではないかという感じを持つのですが、それらについては現在どのように構想しておられるのか、はっきりとお答えをいただきたいと思います、
  21. 木下博生

    木下政府委員 本法におきます回路配置の登録は、第一義的には通産大臣がそれを行うことになっておりますが、今先生指摘のように二十八条以下の規定によりまして指定登録機関を指定しまして、そこの機関に事務の全部または一部を行わせることができるというようなことになっております。それで私どもは今部内で、今後どのくらい登録の需要見込みがあるのかという点もまだはっきりいたしませんけれども通産大臣が直接登録をする形にするか、指定登録機関に委託する形にするかということを検討しておりますけれども、年間数千件、場合によっては五十件くらいの登録の申請もあり得るということでございますと、私どもとしては現在の段階ではむしろ指定登録機関に全部または一部を委託するというようなことで考えた方がよろしいのではないだろうかという感じにはなっております。  ただ、まだそこまで最終的に結論を得ておるわけではございませんが、指定登録機関にやらせることにした場合にどういう機関にやらせたらいいかという問題もございます。それは全体としての仕事の量がどのくらいになるかということ、あるいはやらせた場合にその事業自身が独立採算でやれるようなものになるかどうかというようなことを考えていかないといけませんので、最終的にはその点も含め考えながら、既存の機関にやらせるのか、ほかの事業も一緒にやるような新設の機関にやらせるのか、そういう点について少し詰めてみたいというふうな感じを持っておるわけであります。
  22. 城地豊司

    城地委員 そういうふうに言われると、きのうとまた同じ論議になるのですが、いろいろな経過があったけれどもアメリカでも法律ができた。日本でもこういう新しい法律をつくる。そして回路配置利用権を守る等々非常に前向きに法案提出される。しかもこの小委員会で答申が出たのは一月二十二日です。それから、前々からあったこととはいいながら、早急に検討して法案を今国会に出して今審査しているというようなことから考えますと、件数がどうであるとか独立採算がどうであるとかいうようなことは言っているべきことではないのじゃないかと思うのです。  しかも二兆円の産業である、その産業は将来大変なことになる、だからこの法律を今やるのだと言っておいて、だれにやらせるのだ、どこがやるのだと言うと、いや今検討中だ、件数が二千件になるか五千件になるかわからない、極端に言うと一件になるかわからないというようなことではまずいわけです。いずれにしても、これだけの産業なんですから、こういうような制度を実施して一件、五件、十件というようなことではないことはだれが考えても常識なんです。二千件になるか五千件になるかでは人の配置も何も違うでしょう。しかし、仮に少なくて二千件であっても、多くて一万件であっても、それに対してどういうところで、どういう人に、どういうふうにやらせるかということをぴっしりやっておかなければ、法律を通したって、実際上先につくって後から何かするのだと言っても困るわけです。そういう意味では、指定登録機関にやらせるのか、通産省でやるのかまだわからないというようなことを言っていたのでは困るのじゃないかと私は思うのです。  その辺のところは、通産大臣は最高の責任者ですから、この法律を提起したときに恐らく頭の中に構想があると思うのですが、この法律が通ると日本全国から出てくる。きのうの同僚議員質問でも、一つのものでやらせたいということでしょう。それが二千件出てきたときにはそれを処理してやっていく。そうでなければ次から次へと安心して出してこられない。さらに後ほど触れますけれども、今度登録しますとそれが登録原簿に載る。そうすると、原簿を見せてくれとかどういうものが登録されているんだとか、要するに特許と同じですね。それぞれのやろうとする人が現在の状況を把握しながら今までよりもっと活発に新しいものを生み出していくためにこういうようなことにするわけであります。それなのにどこでやるかわからない、何人でやるかわからない、どんな人がやるかわからないということで果たしていいのかどうか、私は疑問に思うのです。  これは通産大臣、この法案提案するときに、構想としてどんな形でだれにやらせるか、どういうようにお考えになったか、はっきりとしていただきたいと思うのです。
  23. 木下博生

    木下政府委員 私どもといたしましては、昨日来御説明申し上げているように、申請の件数が毎年数千件程度になるのではないかという一応の予想を立てておりますので、それに基づきましてどのような登録体制が一番適当なのかという検討は十分詰めておるわけでございます。ただ、今の段階においてこの案でいきたいというところまで最終的に決まってないということはございます。その点あいまいな感じをお与えしたのはまことに私の御説明の仕方が悪かったということで申しわけないと思っておるわけでございますが、数千件程度の申請があった場合、現在の役所の体制で通産大臣自身がその仕事をやるという形にいたしますと、どうしても新たな仕事になるし、人員の増加の問題等も出てくることがございますので、むしろ私どもは指定登録機関に事務の全部または一部をやってもらった方がいいのではないだろうかというような感じを持っておるわけでございます。  それで、まずアメリカの場合をちょっと御説明申し上げますと、アメリカの場合には議会の著作権局で仕事をすることになっておりますけれども、パートタイムを含めて六名程度で現在一応出発しております。  それで、今回の登録が一応書面審査というか書面を見るだけで、実体の模倣かどうかというような内容にわたる判断をしないというような仕事でございますので、それほど大きな規模のもので、たくさんの人を抱えてその仕事をやっていく必要はないのではなかろうかなというような感じがしておるわけでございます。  ただ、そのような小規模のものについて、それだけのことをやるために特別に新たな法人をつくってやるというのは必ずしも適当ではないのじゃなかろうかなという感じがしておりますので、ほかの事業をやることになっている機関の一部の部門においてその仕事をやってもらうというような形が適当ではないのかなという感じになっておりますが、最終的にどの機関でやるかという点については、まだ私どもとしても態度が決まっておりませんから、こういう形で御説明しておるわけでございます。
  24. 村田敬次郎

    村田国務大臣 今、木下局長から詳細御説明申し上げたとおりでございます。昨日も水田委員から非常に御親切な御質問があり、また城地委員の御質問も今後のことをおもんぱかっての御質問でございますから大変重要だと思います。  この法律案を上程いたしますまでに、この処理の問題についてはたびたび事務当局では議論いたしております。ただしかし、きのうも水田先生にお答えしましたように、白地に初めて絵をかくということでございまして、世界的に見ましてもまだアメリカ法律があるだけでございます。しかし、この法律自体の必要性はもうつとに認識をせられておるところであって、どうしてもこれをこの国会で早く成立をさせていただきたい。それによって、施行期日は一年以内に政令で定める日となっておりまして、余裕期間を設けております。そして、新しいこうした事務を始める。しかも世界的に要請された極めて重要な事務であるということで、準備、勉強その他は十分にやっておるつもりでございますが、いよいよ法律を通していただきまして、登録件数であるとかいろいろな状況を踏まえて対応していきたいということでございますので、ぜひひとつそういった形で御支援をいただきたいと思うのであります。
  25. 城地豊司

    城地委員 私はかつて、この指定登録機関とは若干規模も違いますし非常に大きいのですが、新エネルギー開発機構の審議を本委員会でやったことがございます。あれは非常に規模も大きいし、全日本的な課題、新エネルギーということでやったので、事前に、その組織とか人員配置とか、そういうことが提案されたと思うのです。大きい小さいの問題は別にしても、とにかくスタートするということは大変なことですから、しかも未知の世界のことをやる。  きのうも同僚議員から質問ありましたように、具体的にやるのに、例えば指定登録をするのに高度の知識が必要ないといっても、ある程度の知識が必要だ。そうでなければそういうものの指定登録というものはできないわけであります。そういうことから考えていきますと、当然事前の準備が相当必要である。ですから、新しい制度を、たとえ二兆円規模の産業であってもそれを保護するために、将来また伸びるということを考えてやるんだとすれば、事前に人員配置をする。事前にこういうようなことでやる。そしてそれをやってみた結果、おおむね平均的には五千件くらいを予定した。実際には初年度二千件しかなかったとしたってそれでいいじゃないですか。  人員の配置が、例えばアメリカで六名でやっておるというのが、我々は六名や五名じゃ日本の場合はできないと思いますし、スタートですから二十人とか三十人とかで仮にやるとしますね。二十人を配置して本当は五千件くらいあればおおむねいい仕事量だと思って始まった。しかし二千件しか初年度なかった。少し遊ぶようになるとしたって、それはそれとして、スタートした仕事がうまくいくわけですからいいんであって、それを数年間見た結果、そして長い目で見ても毎年二千件だとすればそれに対応するようにやっていくというのが、これがいわゆる一般の民間企業とか、私は民間の出身者だからいつも言うのですが、スタートで万全を期してやっていく。そしていろいろな変動に対応する。それが柔軟性ですから、五人でいいということになれば五人にすればいいし、二十人が五十人必要だとすればそうすればいいのであって、少なくとも最初の心構えということについてはそういうことでスタートするという構えを見せなければ、幾ら説明聞いたって、いや、こういうことで通産省でやるのは何ですから指定登録機関を設けたいと思う、仕事がどうもあいまいだからどこかの機関と一緒にやらせてみたいと思う、先ほど局長は構想を発表されましたが、そういうことでなくて、これならこれでいきたいと思う、業務が多かったら変更したらいいのじゃないですか。変更することは考えないから、やはり私はまずいんじゃないかと思うんです。  最初のスタートでやるときにはそういう勇気を持ってやるということがいわゆる民間の活力であり、それから柔軟性を持つことが法律を生かし、そしてこれらの産業保護することになるんじゃないかと思うんですね。そういう意味では今この法案審議している重要なあれなんですから、おおむねこれぐらいでやりたい、こういう機関にやらせたらどうかと今案を考えている、構想として第一案、第二案と、これぐらいあるぐらいのことを言ったっていいんじゃないですか。私はそういうことが非常におかしいと思うんですよ。構想ならいいんじゃないですか。局長の構想で第一案、第二案、まあ第三案でもいいですが、この案があってどれかでやりたいぐらい言うのが当たり前だと思うんですね。
  26. 木下博生

    木下政府委員 私どもの方でいろいろな構想を考えているということは先ほども申し上げたわけでございますが、最終的に固まった構想でないために非常に奥歯に物の挟まったような物の言い方をしてまことに申しわけなく思っております。私どもとしては、先ほどもアメリカの例を申し上げましたけれども、当面は五、六名程度の小規模なもので足りるんではないのかなという感じがしておりますので、そのような規模であるとすると、独立の機関でそういうものをつくっていくのは必ずしも適当ではないだろうという感じを持っております。  それから、予算規模にいたしましても、先ほど数千件ぐらいの申請が予想されるということを申し上げましたが、例えば手数料を一件当たり一万円程度のものを取るといたしますと、全体として数千万円の予算規模になるわけでございますので、その程度の事業規模のもので指定登録機関を考えていったらいいのではないかというふうに考えておるわけでございますが、その場合にこれは全く一つの案でございまして、最終的に固まった案ではございませんが、私どもが一応内部で議論しております案といたしましては、特許庁がペーパーレス化をやるためにそのペーパーレス計画に沿って過去の資料等を加工するような団体をつくりたいということを考えておるわけでございます。  それで、そのような団体がもしできますれば、そちらの方は相当規模の大きなものになるかとは思いますけれども、その規模の大きなものの団体ができましたときには、同じような権利関係の仕事をやるわけでございますので、そういう機構に今申し上げましたような人たちを付置して、しかも、その人たちは中立、公平でなくてはいけませんので、業界で今まで仕事をしていたというような人ばかりを直ちに持ってくるというわけにいきませんので、そういう中立、公平な、しかも半導体集積回路について知識のある人を集めてくるというようなことでやる案はどうだろうかなということを考えておりますが、ただ、これはまだ最終的なものになっておりませんで、私どもが、ただ事務的に内部で検討している案でございます。
  27. 城地豊司

    城地委員 今局長から言われてアウトラインがだんだんわかってきた。ですから国会で法案審議して、しかも初めてやるのですから、その程度のことは最初から、こういう案でいく、こういう構想だ、構想が三つあるのでどれにするかは決まらないというぐらいのことは言わないとまずいんじゃないかと思います。  それから、もう一つだけ要望しておきますが、先ほど局長は独立採算ということを言われました。私は独立採算という言葉は非常に嫌なんです。独立採算というのは、ある意味でちゃんと動くようになったときには独立採算もいいんですが、物を始めるときには大体マイナスになるのが当たりまえなんですね。企業でも店を開いて何か商売やるにしても、最初はマイナスからスタートして、どこかで採算分岐点があって、それでプラスになっていくということなんで、仮にこういう仕事であっても、独立採算だって最初は恩恵を受けてやっても何も人に金をくれてやるわけではないのであって、余りそういう独立採算を考えて、これから質問しますが、これからの登録手数料なんかの問題も余り独立採算を考える必要はないんだと私は思うのです。  そういう意味で、この指定登録機関を考えるときには余り独立採算、海のものとも山のものともわからないのに独立採算ということは普通あり得ないのであって、最初は投資は多くたっていいんですよ。むだに金を使うわけじゃないのですから。その人たち、こっちが損をしたというときは向こうがもうかったということになるわけであって、だんだんバランスをとっていけばいいわけであって、独立採算なんということは余り考えないで、とにかく仕事がどうやったらうまくいくのかというようなことを中心に考えてスタートしてもらいたいということは、指定登録機関に関して要望しておきたいと思います。  それから次に、登録手数料の問題ですが、今一つの例で言われましたけれどもアメリカは非常にそういう意味で安くやっているという話を私ども情報として聞きました。日本の場合には今考えているのが非常に高い。アメリカは何か二十ドルでやっている。日本の特許なんかの関係と比較しますと、今度は特許とは若干違いますけれども、どうも高いことを考えているようだという、仄聞するところの情報なんですが、その登録手数料はどの辺のところを考えていらっしゃるのですか。
  28. 木下博生

    木下政府委員 登録手数料につきましては、先ほどもちょっと一つの案として一万円程度ということを申し上げたわけでございますが、この法律の中で登録税のことが一番最後に挙がっておりますが、これはたしか一万八千円でございますけれども、登録事務を行うためにはいろいろな資料を出してもらって、それを閲覧簿をつくって保存しておくというようなことでコストがかかるわけでございます。アメリカの場合には著作権局で仕事をやっているので二十ドルという比較的安い金額で登録を受け付けていると思いますが、私どもとしては、先ほど申し上げましたように、その事業が独立して運営されるために必要にして十分な額ということを考えておりまして、全体の登録件数、事業に必要なコスト等を考えて決めたいと思っておりますが、一つの考え方として一万円程度のものがあり得るのではなかろうかというふうに考えております。  それから、先ほどの私の御説明、不十分だった点で追加させていただきたいと思いますが、独立採算ということは申し上げましたけれども、確かにおっしゃいますように、最初のうちは特に事業の規模がはっきりしなくて不安定であるというようなこともありますので、民間の出捐を得るというようなことも十分考えて、もし指定登録機関を指定しました場合には、その事業の運営基盤が確実になるような形でやっていきたいということは考えております。
  29. 城地豊司

    城地委員 次に、時間が余りありませんので、具体的な問題点について伺いたいと思います。  法の第十二条の「回路配置利用権の効力が及ばない範囲」という中に、第二項に「回路配置利用権の効力は、解析又は評価のために登録回路配置を用いて半導体集積回路製造する行為には、及ばない。」この「解析又は評価のために登録回路配置を用いて」云々、これはどういう意味ですか。
  30. 木下博生

    木下政府委員 半導体集積回路産業におきましては、既に開発され利用されております半導体集積回路をいろいろ解析、評価いたしまして、どのような形でつくっているかということを研究する、その解析、評価した結果に基づいて今度新しい半導体集積回路をつくるときに、そのようなやり方についての知識を十分参考にしながら新しいものをつくっていくというような慣行ができておるわけでございます。それを英語ではリバースエンジニアリングというような言葉を使って言っておるわけでございますけれども、そのようなことをやること自身で、全体としての半導体集積回路技術の向上が図られるというようなことはございますので、この法律において半導体集積回路の模倣を防止するということは一方では考えながらも、実際に使われております半導体集積回路を解析または評価いたしまして新たなものをつくっていくための、その基礎としますために、登録回路配置を用いて半導体集積回路をそのようなリバースエンジニアリングにおいて製造する行為には及ばない。しかし、つくったものを、たくさんつくっていって販売するということになれば、しかもそれが同一の、模倣したものであるというふうに判定されるものであれば、それは当然この法律において認められないものになるわけでございます。
  31. 城地豊司

    城地委員 今度の回路配置関係での第三条に「回路配置利用権の設定の登録」というところがありまして、この関係で見ますと昨日も同僚議員がいろいろ質疑をした内容で、要するに創作者が設定登録をする、申請書を提出する、しかも「回路配置を記載した図面又は当該回路配置を現した写真及び申請者が」云々というふうに書いてあるわけであります。その後段に「その他通商産業省令で定める資料を添付」ということになっておるのですが、きのうの説明では非常に簡単な書類で審査をする、審査というよりも登録してそのまま認めるという形で、余り審査という内容は入っていないのですが、この省令で定める資料というのはどういうものを指しているのですか。
  32. 木下博生

    木下政府委員 資料といたしまして具体的に私ども考えておりますのは、製品自身もその一つになろうかと思います。それ以外に回路配置開発に当たった開発者あるいは開発期間というようなことを説明した資料等も提出していただこうかというふうに考えております。
  33. 城地豊司

    城地委員 そうすると、資料というのはそんなに難しいものではないという感じで受け取っていいわけですね。
  34. 木下博生

    木下政府委員 それほど難しいものではないというふうに受け取っていただいてよろしいかと思いますし、それからまた企業秘密にわたるようなものも余り無理に出していただくことは考えておりません。
  35. 城地豊司

    城地委員 第二十四条の関係で「善意者に対する特例」のところで、私は法律の専門家ではないので非常にわかりにくいのですが、この善意者という言葉そのものが法律で使っているのかどうか。概念として非常にわかりにくいのですが、けさちょっと法律の専門家に聞いたら、善意者という言葉はないが、善意という言葉と悪意という言葉法律用語にはしょっちゅう出てくると言うのですが、今回の場合、これは要するに、模倣しようとしたのではなくて何もわからないで使った人を善意者と言うとここに書いてあるわけですね。そうすると、善意者という言葉ではなくて、何かもっと適当な言葉はないのかどうかという点ではどのように考えられたのでしょう。
  36. 木下博生

    木下政府委員 法律の中では先生今おっしゃったように、「模倣した回路配置を用いて製造されたものであることを知らず、かつ、知らないことにつき過失がない者」を善意者という言葉を使って表現しておるわけでございます。ちょっと私ここへ、手元に民法を持っておりませんが、民法や何かにも善意無過失とかということで善意という言葉を、こういう知らないことに関連して使った言葉がたしか法律としてもあったのではないかというふうに考えております。
  37. 城地豊司

    城地委員 ほかに言葉がなければ善意者でも仕方ないのですが、善意者というと今度は悪意と善意と二つあるわけですね。善意という言葉は確かに法律の専門家はあると言うのですが、どうも善意者に対する特例というのはちょっとなじまないが、どうしてもそれに相当する言葉が見当たらないということであればいたし方ないです。  次に第四十八条、回路配置原簿の関係で伺いたいと思うのですが、結局設定登録されますと、原簿に保管される。そしてその原簿の謄本や抄本は自由に、例えば第百号、ちょっと私はそれを参考にしたいのだということであれば、その原簿から磁気テープや何かに写して幾らでも、お金は当然払うでしょうが、来るわけですね。そういう中に一つだけただし書きがありまして、「通商産業大臣が秘密を保持する必要があると認めるものを除く。」ということが書かれております。この「通商産業大臣が秘密を保持する必要があると認めるもの」というのはどういう判断でやられるお考えなのか、伺いたいと思います。
  38. 木下博生

    木下政府委員 先ほど登録の申請のときに、企業秘密にわたるようなものまでは必ずしも申請添付資料としてはお願いしないことにしているということは申し上げましたけれども、この四十八条で書いてございますのは、企業秘密にわたるようなものを除くという意味でございまして、提出されたものの中に、企業としては、指定登録機関は中立、公平な機関でございますけれども、そこには出すが一般の人たちには見せてほしくないというようなものがあり得るものでございますから、そういう種類のものはこの閲覧の対象からは外すということでございます。
  39. 城地豊司

    城地委員 それの判断は、これは通商産業大臣が判断するのですが、具体的にはだれが判断するのですか。
  40. 木下博生

    木下政府委員 通商産業自身で登録をする場合には、もちろん内部の基準をつくってそれで判断することになるわけでございますが、指定登録機関にそれを依頼する場合には、指定登録機関に対して一定の基準をはっきり示しまして、その基準に従って閲覧するかしないかをはっきりさせていきたいと思っております。
  41. 城地豊司

    城地委員 いや、基準じゃなくて、最後に判断する人は、その指定登録機関の長ですか、具体的に事務をやる人ですか。
  42. 木下博生

    木下政府委員 判断する人は、その指定登録機関の長に当たる責任者が判断するということになるわけでございます。それで、指定登録機関の人たちについては、いろいろと欠格条項とか、三十八条で秘密保持義務というようなものがかかっておりますので、そういうような人たちがそういう義務を守りながら、しかし、責任はあくまでもその指定登録機関の最高責任者が判断していくということになると思います。
  43. 城地豊司

    城地委員 最初質問と若干ダブりますが、昨日の読売新聞に、アメリカ半導体不況が深刻になっているということで「七カ月需要低迷 相次いで減産 日本にもかげり」という見出しで出ているわけでありますが、これについてはどういうふうな御判断になりますか。
  44. 木下博生

    木下政府委員 確かに今おっしゃったような事態が起こっておりまして、一つは、その需要が急速に伸びておりましたのが、踊り場というか、一時的な停滞を起こしているということがございますし、それに加えまして、昨年非常に需要伸びが激しかったために、各企業とも増産体制に入ったということで、供給の方も非常にふえてきた。その両方から、供給がふえ需要が停滞しているということで、価格的にも非常に下がっておりますし、そのような事態になりますと、物がなくなるのではないかと思ってどんどん在庫補充をしていた企業が在庫補充をやめてしまうというようなことがあるので、一時的に市場には物がたくさんあり余るというような状況が現出するわけでございます。そういう事態がアメリカにおいても起こっておりますし、その程度はひどくなくても、日本においても似たような事態が起こっているということでございます。
  45. 城地豊司

    城地委員 時間が参ったようでございますので、先ほどからのいろいろな質疑を通じて大臣も十分御承知だと思いますけれども、私は先ほど考え方のほとんどを言ってしまったのですが、新しいことを始めるのにはそれなりの準備が必要だ、準備の体制の若干むだがあってもいいじゃないか、スタートする時点で、むだというのはそれだけ充実するということですから、そういうことで万遺漏なきを期していかなければならないのではないかというふうに考えていることが一つ。  それから、一方、この集積回路関係は、報道機関の報ずるところでもおわかりのように、将来は百メガビットの開発もできるということになるし、二十一世紀にはこの集積回路産業だけでも、ある調査によると、二十二兆円になるのではないかというような予測もあるわけでございます。そういう点から考えて、そういう産業保護する集積回路回路配置に関して登録をさせ、そしてそれらを活用させ、そして保護し、産業を育成するという今回の法律でございますが、そういう意味ではまだまだ未知の部分も多い、それから、いろいろなことにぶつかっていくと思うのですね。  私は先ほど二、三の質問をいたしましたけれども、例えば今度、登録した原簿の活用などというようなものも、そういう意味では非常に広く公開され、それが産業全体に、ある意味では別な意味の活力を与えていく。今までは内々にいろいろなところから情報を収集するというのも、今度はある意味でチップの関係の情報はそこで一括してわかるわけでありますから、そういう意味で、産業の育成に非常に役立つのではないかという面があるわけであります。  ただ、一方では、先ほども質疑の中で明らかにしたように、この集積回路産業は、設備投資、研究投資というのが非常に多く必要である。そのために、先ほど二十八社の内容説明もございましたが、要するに、大企業はある意味では自分の力がありますから自分の力で進んでいくことができますが、中規模企業といいますか、先ほど言われた、そんなに小さくありませんが、一億から九億くらいの資本金というような企業は、やはり相当やりくりが大変じゃないかと思うのです。そういう意味で考えますと、そういう点の企業の育成というような面も、この法律だけではありませんけれども産業政策全体としてやっていく必要があるのじゃないかというふうにも考えます。そういうことで、できれば、こういう新しい法律をつくるのですから、運用もスムーズにいってほしい、それがこの産業のますますの発展に寄与してもらいたいというように考えておるわけでございます。  最後に大臣から、この新しい法律をつくり、新しい制度をつくるに当たっての決意のほどをお伺いして、締めくくりにしたいと思います。
  46. 村田敬次郎

    村田国務大臣 城地委員の先ほど来の御質疑、それからまた、昨日来のこの委員会における御質疑を通じまして、私も御趣旨はよく理解ができたと思います。  通産省で昨年の四月に取りまとめました日米先端技術産業作業部会提言というのがございまして、この中には、貿易、投資、技術、その他というような各項目にわたって日米間でこの問題についてこれからやっていかなければならないという中長期的なビジョンが示されております。  それからまた、先ほど来城地委員の御質問にもありましたように、いわゆる半導体チップ、この業界の投資それから収益、いろいろな国際的な動き等がだんだん明らかになっておるわけでございまして、通産省といたしましては、この分野が非常に前向きの、しかも白地的な部分でありますところから、この法律施行に伴う先生方の御要望あるいはいろいろな御質疑というものを踏まえまして、この法律施行が、国際的にも、また日本産業発展させるためにも大きな効果を発揮することができるように心して進めてまいりたいと存じます。
  47. 城地豊司

    城地委員 終わります。
  48. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 城地豊司君の質疑は終わりました。  続いて、木内良明君の質疑に入ります。木内良明君。
  49. 木内良明

    ○木内委員 本法案につきましては昨日来審議が続いているわけであります。私は、限られた時間でありますので、ポイントに絞りながらお尋ねをしてまいりたい、こういうふうに思います。  今や産業経済国民生活に不可欠なものとなり、かつあらゆる分野に浸透している半導体集積回路については、その開発に莫大なコストと時間がかかる反面、レイアウトの模倣が容易であり、既存の法体系ではレイアウト等の保護が不十分である。このため、模倣の防止と同時に取引上のルールを確立することにより、適切な利用の確保を行うことは極めて重要であると私は考えるわけであります。あわせて、半導体集積回路世界の主要生産国としての我が国の国際的立場からも、具体的、積極的な対応が現今必要になっている、こういう視点に立ちまして質疑を行いたいと思います。  日米両国世界半導体チップの九割を生産しており、本法案が成立すれば、昨年十月に制定された米国半導体チップ保護法とあわせ両国の回路配置保護されることになります。いわば国際的なルールづくりの必要性という一面もこれあり本法案提出となっているわけでありますけれども、この問題における日米間の経緯についてまずお尋ねします。
  50. 木下博生

    木下政府委員 日米間で先端技術問題を話し合う政府間の会議といたしまして日米先端技術産業作業部会というものがあるわけでございますが、そこで従来から先端技術産業、特に半導体分野についていろいろと、日米間でどういうふうに持っていって全体をうまくスムーズに発展させていったらいいかという議論を行ってきたわけでございます。  その半導体に関する作業部会提言が一昨年十一月に出されたわけでございますが、その提言の中の一つとして、半導体企業に対する知的所有権についての保護必要性を述べているわけでございます。今先生指摘のように、世界アメリカが六割、日本が三割というような形で生産を占めております半導体集積回路につきまして、模倣が非常に容易であるということで模倣が進むために、かえって真正の開発者開発意欲が失われるおそれがあるというような認識が日米両国に高まったために、そのような提言が行われたわけでございます。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕  それで、アメリカとしてはそのころから既に立法化の動きが上院、下院にございましたけれども日本の場合には通産省の中で内部的にずっと検討を続けてまいりまして、昨年十月にアメリカ半導体チップ保護法という法律を通しましたときに、同時に私どもとしては産業構造審議会半導体チップ保護に関する小委員会を設けまして、そこで検討をして今回の案のベースとなる提言を得るに至ったわけでございます。  それで同時に、アメリカとしては昨年十月に法律制定されましたので、そのころから、アメリカとしては法律ができるので日本としても早くつくってほしいというようなことがありまして、昨年の秋に開かれました、先ほど申し上げました作業部会においても、日本における法律制定を期待するという旨の発言がございましたし、また、本年三月の日米エレクトロニクス次官レベル会合におきましても、我が国に対しそのような希望が再び寄せられたということもありますし、我が国としてはそのころ法案の準備を既にやっておりましたので、今国会に提出する旨説明いたしまして、アメリカとしても、その日本側の態度について十分な満足の意を表したということでございます。
  51. 木内良明

    ○木内委員 先日、業界の人との懇談の機会を得ました。そのとき出た話ですけれども、数億、数年かけて、莫大な時間とコストを費やして開発した集積回路がいとも簡単に模倣されてしまう、こういうことではもう開発をやめようじゃないかというような冗談の話も出るくらい、この問題については大変な意見がいろいろあったわけであります。  今局長の方から自由世界における国別生産動向についての答弁がありました。アメリカで六割、日本で三割、欧州その他で残余一割ということです。今、日米間の問題については種々答弁をいただきました。しかし、今後のこの国際環境の中での半導体集積回路保護という問題を考えますと、いわば残余の生産国のこの問題に対する取り組みというものを的確につかむ必要がある、こういうふうに思うのです。この点はどういう見通し、あるいは認識を持っておられますか。
  52. 木下博生

    木下政府委員 知的所有権問題を議論する機関としてWIPO、私どもはワイポというようなことを言っておりますが、世界知的所有権機関というのがございまして、そこで一昨年来半導体集積回路保護に関する問題についての議論が行われておるわけでございます。日本アメリカでこの法律ができました暁には、当然そのような法律の中身を考慮に入れながらWIPOの場で世界的な話し合いをどうやっていったらいいかという議論がこの秋以来進められることになろうかと思います。その場合に私どもとしては、アメリカも同じ意見だと思いますが、国際的な条約、我々が今保護しようとしている中身と実質的に同じような中身の保護世界各国で行われ得るような条約が早くできることを望んでおるわけでございまして、そういう意味でそれの条約づくり、各国における同様の立法措置を今後働きかけていきたいというふうに思っておりますが、現在のところはまだヨーロッパあるいはアジアの半導体生産国において直ちに同じような立法をしようという動きは起こってきておりません。
  53. 木内良明

    ○木内委員 近未来的な見通しというものは不確定要素が多いためになかなか確たる情報が得られないという嫌いがあるわけですけれども、例えば保護をするということは、逆に言えば縛りに通じてしまう面も実は懸念されるわけです。特に我が国はメモリーの分野では国際的に見て非常に強いと言われている。しかし、マイクロプロセッサー等の分野ではまだおくれが実はあるわけであります。いわば経済の活性化といいますか、我が国半導体産業の今後という観点から見ますと、国際的に見て、この法律が逆に進歩の足かせになる懸念はないのか、こういう意見が実は一部ございました。この点はどうでしょう。
  54. 木下博生

    木下政府委員 確かに先生おっしゃいますように、マイクロプロセッサーというような分野においては技術的にアメリカの方がまだ高い水準にあるということは言えようかと思います。ただ、日本技術水準は急速に向上しておりまして、それを反映して、日米間の半導体の貿易の動きを見てもそれがよくわかるわけでございますが、七〇年代におきましては、アメリカから日本が輸入している半導体の方が多かったわけでございますが、最近はそれが逆転して、しかも昨年は日本からアメリカへの半導体の輸出の伸びは約二倍、アメリカから日本への半導体の輸出の伸びは五割増というような感じになって、輸出と輸入とのバランスが日本に有利に展開しているということでございます。  これは一方では貿易摩擦の原因ということにもなるわけでございますが、ただ半導体分野について言えばそういうようなことになっておりまして、日本企業も単に日本だけではなくて、アメリカにおいてみずからが開発した半導体集積回路権利保護してほしいという気持ちを非常に強く持つくらいまで技術水準が上がってきたわけでございます。そのようなことを考えますと、中長期的に見て、日本及び米国で同じような法律でお互いに権利保護するということは、結局は全体としての半導体集積回路技術向上に資することになるというふうに考えております。  それから、この法律自身は、単に権利者保護を図って模倣を防止するということだけではなくて、回路配置利用が適正に行われるような取引上のルールをつくっていくという面もございますので、そのような見地からいえば、これだけ大量に取引がなされるようになってきた半導体集積回路について、そのようなルールをつくるための法律を持つということは極めて重要だということでございまして、我が国半導体産業もこの法律をつくることを強く望んでいるというふうに私どもは理解しております。
  55. 木内良明

    ○木内委員 後ほど触れることでありますけれども、今後の運用の段階にまつべきものがかなり多くあるわけでありまして、今局長の方からは本法律案のメリットについて強調される内容のものがありました。これは弾力的な対応というものを踏まえながら進んでいきたい、こういうふうに思います。  回路配置権利保護と同時に、先端技術に関する激しい国際競争の中でレイアウト開発を支えるCADでありますとかあるいはコンピューターグラフィックスといった点の育成にも力を注ぎつつ、いわば我が国産業の体力をつけていくべきではないか、こういうふうに主張するわけですが、どうでしょう。
  56. 木下博生

    木下政府委員 半導体技術は一九五〇年代の終わりにアメリカ開発され実用に移されたものでございまして、日本半導体集積回路産業は、確かに先生おっしゃるように後発国であるわけでございます。ただ、このような法律権利保護することによって、創作者と利用者との間の利益のバランスを考慮しながら適正な権利保護を図って、全体としての技術水準を向上させていくということは必要なことでございまして、通産省といたしましては、半導体集積回路産業が今後も世界の中で技術開発競争に負けないように、その技術開発力を磨いていくことに対しては大いに助成をやっていきたいと考えております。  先生御承知のように、通産省といたしましては超LSIの開発ということで、もう大分前から通産省の大きなプロジェクトとしてそのような開発事業をやってきておったわけでございますが、そのような成果が最近の日本半導体集積回路の生産技術の向上に非常に役立ってきておりまして、従来はそのほとんどを輸入品で賄っていた半導体集積回路製造設備も相当部分が日本でつくられるものによって十分になったし、また日本でつくられる製造設備の方が内容的にも高いというものができてきているわけでございます。今後、そのようなことで製造設備自身いいものをつくっていくということについて力を入れていく必要があると同時に、今先生がおっしゃいましたように、半導体開発するに当たってのコンピューターを使ったいろいろなソフトの充実というようなものも当然必要になってくるわけでございまして、業界においてもそれについての努力は大いにやっておりますが、私どもとしては、広い意味での情報産業の育成というような見地から、半導体集積回路をつくるに当たってのCADあるいはコンピューターグラフィックスというようなものについての技術の向上にもできるだけの力を尽くしていきたいと考えております。
  57. 木内良明

    ○木内委員 昭和四十四年、集積回路製造業事業所数はわずか三社であったものが、その後年々増加してきまして、現在では既に二百近くに及んでいます。いわば大手と中堅の分布というものがあるわけです。この法律は、従来特許法等では保護されていなかった分野を新たに権利化するものでありますから、大規模な開発能力に欠ける中堅企業に不利となったり、あるいは中堅企業における技術の進歩を阻害したり、さらには経営基盤の悪化をもたらすようなことがあっては断じてならないということをまず私は主張いたします。同時に、半導体集積回路産業というのは経済動向や需給の変動に極めて左右されやすい一面を特徴として持っておりますし、今後この傾向はさらに大きくなるのではないかと思います。  半導体集積回路のプロセス技術は、技術革新のスピードが速いため技術が急速に陳腐化し、この結果、設備の使用期間が非常に短く、早期に投資を回収した上で新規設備への切りかえを行わなければならないこともあるわけであります。同時に、その投資効率は技術革新が進展するほど低下する傾向にあることも指摘されておりますし、製品のサイクルも短命であることなどから、投下資本の回収の困難性も増大してきているのが現状です。こうした推移を考えると、近い将来メーカー間の淘汰が生じて、上位メーカーへの生産の集約化がなされるのではないかと私は心配します。こうした問題に対する具体的な対応も今から検討する必要があると思いますし、例えば中堅企業を対象とした投資減税や製造設備の法定償却年数の短縮など、こうした中堅企業に対する支援策も必要になってくるのではないか。時間の関係で、簡単にお答え願いたいと思います。
  58. 木下博生

    木下政府委員 おっしゃるように昨年の場合でとってみますと、IC売上高は一兆九千億、二兆円になったわけでございますけれども設備投資支出額は七千億円ということで、鉄鋼業の設備投資額とほぼ肩を並べるところまで設備投資が行われるということで、設備投資をどんどん進めていかないとその産業競争に追いつかないというような面があるわけでございます。そのようなことでございますので、技術的にも非常に高い水準のものと、それから設備投資額がたくさん要るということで、中小規模の企業としては競争が非常に苦しくなるというようなことでございますが、産業全体が活性化されて進むためには、中堅、中小、まあこの分野では中堅企業と言った方がよろしいかもしれませんが、中堅企業の活躍の余地を残していく必要があるだろうというふうに考えておりますので、私どもといたしましては、中小企業技術体化投資促進税制、あるいは六十年度に始まりました中小企業技術基盤強化税制、それから基盤技術研究開発促進税制等、税制面においてそのような企業の活性化、企業基盤の充実を図っていきたいと考えておりますし、製造設備の耐用年数につきましても非常に陳腐化が速いということでございますので、耐用年数を五年に短縮する暫定的な税制を六十年度にも延長したということでございます。
  59. 木内良明

    ○木内委員 今御説明いただいた措置に加えて、本法の運用の段階で必要が生ずれば申し上げた投資減税であるとか償却年数の短縮といった具体的な検討もぜひ行っていただきたい、こういうふうに思います。この点、簡単にお答え願います。
  60. 木下博生

    木下政府委員 先端技術分野におきましては、技術開発あるいは新しい投資というのが非常に重要でございまして、特に半導体集積回路分野というのはその中でも先端的な部分を担当しているわけでございますので、今おっしゃったような税制についても十分今後検討したいと思っております。
  61. 木内良明

    ○木内委員 非常に前向きの答弁をいただきましたので次に移ります。  具体的な問題ですが、回路配置利用権の設定登録の問題、指定登録機関に対する登録の事務的な点について聞きます。昨日来るる質疑が行われてまいりましたので、必要な部分だけお聞きをしてまいりたいと思います。  法案第三十五条「指定登録機関は、毎事業年度開始前に、その事業年度の事業計画及び収支予算を作成し、通商産業大臣の認可を受けなければならない。」こういうことがあります。特に事業計画については今の段階で確たるものがまだない、明確に答弁できないということでございますので、これは譲るとして、収支予算の問題、これは恐らく手数料収入等が実はかなりの部分を占めると思います。そこで第四十九条の手数料との関係もあるわけでありまして聞くのですが、こちらでは第四十九条「実費を勘案して政令で定める額の手数料を国に納付しなければならない。」こういうことになっています。  まず、この件数は、業界等への調査によると五千件程度という、きょうの午前中の答弁がありました。この登録手数料の設定基準ですけれども、いかなる計算によるものか。  それからもう一つは、実費ということですけれども、事業計画及び収支状況などとの関係で相対的に手数料が設定されることになるかどうか、この点、お聞きします。
  62. 木下博生

    木下政府委員 指定登録機関に指定してその登録の事務を行わせる、その方向で現在考えておりますけれども、その場合に、指定登録機関としての事業の基盤というのが確立されている必要があるということで、純粋に独立採算でいくよりも、ある程度財政的基盤を持った上で、しかし、事業自身はその手数料によって独立採算的な形で運用するような形にするのが好ましいのではないかというようなことを考えております。独立して運営するために必要にして十分な額というものを考えていきたいということでございますので、全体としての登録申請件数がどのくらいあるかということと、それから、そういう機関を運営するためにどのくらいのコストがあるのかという両方から登録料が決まってくることになろうかと思いますが、一応私どもは数千件、最高五千件くらいの申請があると考えた場合の手数料としては一万円程度になるのではないかというふうなことを考えております。
  63. 木内良明

    ○木内委員 これは民間出資と手数料収入等によって財政が賄われるということです。  この四十九条は「実費を勘案して」というのがあるわけで、相対的にこれは変わってくるというわけです。天井はないですね、今の答弁ですと。
  64. 木下博生

    木下政府委員 実費を勘案してやるわけでございますので、当然不当にもうけになるような額というのは適当ではないわけでございます。実費が賄えるような程度の、できるだけ低い水準でやるということになろうかと思います。
  65. 木内良明

    ○木内委員 これについては、るる議論したいところでありますけれども、時間の関係で今後見守っていきたい、こういうふうに思います。  基本的な財政ですけれども、民間出資、加えて手数料等の収入、この二本だけで貯えますか。必要に応じて国からの財政的支援というものは考えていないですか。  というのは、やはり件数が多いので、天井知らずに手数料がウナギ登りになるようなことがあっては逆効果になるという点の懸念から申し上げるわけです。明確な答弁を願いたい。
  66. 木下博生

    木下政府委員 先ほど申し上げましたように、できるだけ手数料を収入とする独立採算で運営を行っていくことが適切であるとは考えておりますが、将来の事業運営のことでございますので、その運営全体に恒常的に支障が生ずるような事態が発生した場合には、御指摘の点も含めて種々の措置検討していきたいというふうに考えております。今のところ、まだ将来どのような事業の内容になってくるかというところは確定できませんので、国の財政的支援をどうするかという点については、まだ考えるにはやや時間的に早いのではないかというふうに考えております。
  67. 木内良明

    ○木内委員 登録に当たり、特許法にあるような厳密な実質審査は行わないというふうになっています。これは理論的な、いわゆる図面上の審査ということになるわけですね。この申請書のみによる審査、これで回路配置の同一性あるいは模倣性の有無といったものが十分チェックできるのかどうか、その理論的根拠とあわせてお尋ねをします。  あわせて、実質審査を行わないとすると、模倣者による登録があり得るわけで、逆に言えば、妨害登録といったような心配も出てくるわけです。事前の御説明によると、一定規模以上の企業でありますから、海賊版を製造するような業者は、恐らくこのマーケットに参入できないであろう。したがって、一定のモラルというものを業界に期待をする、もっと言いかえれば、本来破られないルールとして、紳士的な対応というものを想定してこの法律が考えられたということも聞いているわけですけれども、この点、あわせてお聞きします。  それから、ある業者の方の話ですと、まずつばをつけよう、登録だけしてしまおうじゃないかということで、製品化する前の段階で図面だけ提出してしまう。すると、仮にその後、十分なテストを行わないで実際の製品化を行って、完成後トラブルが起きたような場合にミスポイントが見つかる、修正を行う、一カ所修正するのに数千万円かかるということなんですね。いわば欠陥商品を登録して、それを商品化した後、トラブルが発生したようなケースではどのような対応が考えられるのか。仮に製品そのものを登録時に出したとしても、この回路配置についての十分なチェックが行われ得ないわけですから、類似したケースが発生する可能性もあるわけであります。  先ほどの本委員会での質疑を聞いておりますと、登録の際に必要な図面に加えて、通産大臣が指定する資料提出させるという。局長の先ほどの答弁は、資料の中に製品も含まれるという答えがありました。これは実際にチェックができないでしょう、製品が出ても。  いろいろ含めて時間の関係で申し上げたわけですけれども、御答弁願います。
  68. 木下博生

    木下政府委員 この法律に基づく登録及び権利発生の点につきましては、従来の特許法的な考え方、あるいは著作権法的な考え方とは違う別のやり方でやっておるわけでございます。  それで設定登録に当たりましては、今先生指摘ありましたように、書類審査のみでその設定登録を行うということにしておるわけでございますが、そういうふうにいたしましたのは、申請者が権利者たる資格を有しているかどうかにつき、事前に実質審査を行うことは極めて困難であるし、また、そのような実質審査を行わなくても特段の弊害は生じないのではないかということを考えたわけでございます。  なぜ特段の弊害が生ずるとは考えられないかと申しますと、特許と異なりまして、この十二条にもありますように、同一回路配置でも独立に開発されたものであれば登録が許されるわけでございまして、いわゆる先願主義的なものは考えられていない。したがって、模倣者の登録の存在自身が真の権利者に及ぼす悪影響は比較的小さい。といいますのは、模倣者が登録を先にいたしましても、真の申請者は当然のことながら、登録をして権利を得ることができるということになるわけでございます。  むしろ模倣者と真の権利者との間の権利関係につきましては、裁判で決着をするという方が適当であろうという考え方に基づきまして、また、そういうような形で模倣者であると主張する人と、そうじゃないと主張する人自身が争う形によって判断を行うことが、現実的に本当の権利者を見つけ出すということが容易であるということに基づいて、そのような考え方をとっておるわけでございます。  したがいまして、例えば模倣者の方が先に、先ほど先生がおっしゃいましたように、妨害登録みたいな意味で登録をするということが観念的にはあり得るわけでございますけれども、ただ、この登録の制度自身が今申し上げたような登録の制度でございますので、模倣者自身が先に登録をしてみてもそれによって独占的な権利は取得し得ない。それから逆に、侵害の意思を権利者にはっきり示してしまうことになってしまうということで、むしろ真正の権利者から差しとめや損害賠償請求の危険に身をさらすというようなことになってしまう。それからまた、詐欺による登録に対しましては罰則が設けられておるというようなことがあって、むしろ模倣者が先にどんどん登録していくことはかえってみずからの立場を悪くするという可能性がありますので、私どもとしては、模倣者が妨害登録的な意味で先に登録するというようなことは余り起こり得ないのではなかろうかという感じを持っております。  それから、この登録につきましては、二年間の、みずからが開発して商業的に利用し始めてから二年以内に登録すれば権利者となり得るということになっておりまして、そのような規定を置きましたのは、つくりましたらすぐに登録をするよりも、むしろそれが商業的に十分利用されて商業的に価値のあるものだということがはっきりわかってから登録をする方が、より本当の意味での重要な回路配置だけが登録されるということになってくるのではないかということで、そのような規定をこの法律の中に置いておるわけでございます。  最後の御質問にありました、理論的図面のみで登録できるかということにつきましては、理論的な図面のみでは、この法律に書いてありますような「半導体集積回路における回路素子及びこれらを接続する導線の配置」という回路配置の定義には該当しないのではないかというような感じがいたします。また、現実に回路配置を創作するに当たりましては、試作品を製造してみて、それを手直ししていくという過程が不可欠でございまして、全く理論のみで回路配置を創作するということは不可能だと思われます。そのような意味で、製品がないのに回路配置を登録するということはあり得ないだろうというふうに考えております。したがって、申請を出しますときには、製品も含めてその資料提出してもらうというようなことまで考えておるわけでございます。
  69. 木内良明

    ○木内委員 答弁を聞いて安心しておりますので、ぜひひとつその方向で願いたいと思います。  最後になりますけれども回路配置原簿の扱いについて二点。そして、最後に大臣にお聞きします。  四十八条のこの原簿の扱いですけれども、原簿、申告書類等の閲覧方法、これは特定のものだけ申請に基づいて閲覧をさせるのか、それとも委託登録機関の機能として、いわゆる図書館方式をとって自由に閲覧が可能なのかということが一点。  それから、非公開の決定というのが権利者の申請に基づいて行われるのか、非公開の申請却下に対して異議申し立ての方法があるかどうか。例えば意匠法の第十四条なんかですと、「意匠登録出願人は、意匠権の設定の登録の日から三年以内の期間を指定して、その期間その意匠を秘密にすることを請求することができる。」という条文がありますけれども、これに準ずるかどうか。  最後に、冒頭申し上げましたように、我が国の国際的役割を考えるならば、条約の締結等環境の整備が今迫られているわけでありまして、これに対する大臣の御決意を伺いたいと思います。
  70. 木下博生

    木下政府委員 まず最初の、回路配置原簿の閲覧方法についての御質問でございますが、閲覧方法といたしましては、請求があったもののみについて一件ずつ閲覧させるということを考えております。法律の中では公示の規定がございますので、公報による公示を行うために、閲覧対象がどういうものかということは、その公示の内容を見ればわかるわけでございますので、今先生がおっしゃいましたような図書館方式による閲覧は今のところ考えておりません。  それから、非公開の決定は権利者の申請によるのかどうかというような点についての御質問でございます。これは第四十八条二項の閲覧、謄写の制限についての基本的な考え方に関連するものでございますが、具体的には、この規定の適用を認めるか否かの判断に当たりましては、個々のケースについて権利者の申請に基づき通産大臣が、登録申請時に、あらかじめ定めた基準に合致するか否かを判断することとなると考えられます。  なお、権利者の閲覧、謄写の制限を条件とする設定登録の申請が通産大臣により却下されたときは、権利者はこれに対して異議申し立てを行うことができるというふうに考えております。  最後の点は大臣の方からお答え願います。
  71. 村田敬次郎

    村田国務大臣 お答え申し上げます。  半導体集積回路のこの関係法律案と国際的な使命遂行への決意ということであろうかと思います。  日米関係につきましては、日米先端技術産業作業部会提言がありまして、これが非常によくまとまっておりますので、ずっとこれを参照しながらいろいろな作業を進めておるところでございますが、現在のところでは、日米両国以外で具体的に回路配置保護のために立法措置を講じようとしている国があるとは聞いていないわけでございます。これは、日米両国系のメーカーで、先ほど来お話がありましたように、半導体集積回路の全生産量の九〇%を占めておるということも一因だろうと思います。  さて、世界知的所有権機関、いわゆるWIPOでございますが、ジュネーブにございますこのWIPOにおきましては、日米両国回路配置保護法を参考としながら国際条約及びモデル法案検討に入る予定と聞いておりまして、我が国としてもこれに積極的に協力をして今後の国際的な対応を進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  72. 木内良明

    ○木内委員 以上で終わります。
  73. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 これをもちまして木内良明君の質疑は終わりました。  引き続いて、福岡康夫君の質疑に入ります。
  74. 福岡康夫

    ○福岡委員 私、先日、半導体とは一体何か、また何が問題点であるか、こういうことに関心を持ちまして、ある半導体製造工場を訪ねてみたわけでございますが、案内していただいた部長さん及び課長さんのお話では、半導体集積回路産業は高価な機械を必要とする装置産業である、それから、この製造機器への投資効果は、技術進歩によって数年で陳腐化してしまう、したがって、この工場では三交代勤務制をとって終夜機械を動かしているとのことでございました。  私、これらのことを踏まえて考えてみますと、模倣を防止することを第一義とする本法律案制定は、米国との関係から考えてみましても緊急を要する問題だと考えるものでございます。本法律案内容や施行後の運用面について疑義があるとしましても、基本的には、国益面から考えてみて速やかに本法律案審議を進めなければならないものと思うわけでございます。  その意味から、本法律案の附則第一条の「公布の日から起算して一年」及び「公布の日から起算して六月」の規定は少々悠長過ぎるというような感じがいたすわけでございます。  そこで、通産大臣にお伺いいたしますが、本法律案制定に向けての基本的取り組み姿勢及び決意について、まず大臣の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  75. 村田敬次郎

    村田国務大臣 福岡委員にお答え申し上げます。  この法律案につきまして非常に理解を賜る発言を冒頭にいただいたわけでございまして、大変感謝をいたします。  この法律案は、新しい産業社会を形成する半導体チップというものについての保護をまず日米間の関係において定めるものでありまして、したがって、委員指摘のように、これは非常に重要な問題であり、これを猶予しておくことはできないということから、まず日米間にいろいろな協議が始まりまして、そして将来は日米以外のWIPOのいろいろな審議にも対応をして、国際的に早くこれを準備をし、進め、法律案制定をしてやっていかなければならぬ、こういうふうな決意をいたしております。  この法律案の施行の問題でございますが、施行の前に事前に十分な期間を置いて、そして本法案の意義及び制度の内容について周知徹底を図る、そして制度運用のための政省令などを定めまして、指定登録機関の準備を整えておくことが必要である、このように考えております。  こういったことから、本法案の施行日は「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」ということで準備期間を置かせていただいたということでございますが、もちろん一年いっぱい施行を猶予するという前提ではございません。準備ができれば、それ以内であっても施行したいと考えておるわけでございますが、可能な限り速やかに本法案が施行されるように最大限の努力をしていきたい。そして、この法律案によって関係のいろいろな権利保護も定め、そして国際的な対応も進めていきたい、このように考えております。
  76. 福岡康夫

    ○福岡委員 今の通産大臣の答弁によりまして、通産事務当局にお尋ねいたしますが、アメリカは去年の十月に本法を制定しております。登録開始はことしの一月上旬から実施しておる、こういうように聞いておりますが、附則の条項の問題でアメリカとの経済摩擦の問題についての心配はないかどうか、この点について御説明をお願いしたいと思います。
  77. 木下博生

    木下政府委員 半導体につきましては、従来から通産省アメリカ通商代表部あるいは商務省との間で先端技術産業作業部会でいろいろ議論をしてきておりますので、今のところ、この半導体集積回路分野について経済摩擦というような問題は起こっておりません。ただ、最近アメリカ及び日本における半導体需要がやや停滞しているのに対しまして、設備投資が急速に進んで生産能力が日本において高まっているということで、短期的にやや半導体の販売競争が起こるのではないかというような懸念をアメリカは持っておりますけれども、まだ具体的にそれが非常に深刻な問題とはなってきていないわけでございます。
  78. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、本法律案と米国の半導体チップ保護法との異同の概略及び半導体チップに関する法制問題小委員会というのですか、この報告書に、米国の半導体チップ保護法との整合性に配慮する必要性があるとの提言がこの小委員会の報告書の中に書いてあるわけでございますが、しかしながら、異なった部分を含んだものが本法の場合にはあるのじゃないかと思うわけでございますが、その背景や理由について事務当局の御説明をお願いしたいと思います。
  79. 木下博生

    木下政府委員 アメリカ半導体チップ保護法がいわゆる相互主義というのを採用しておりまして、そういう保護を行っている国で、しかも実質的に同一内容保護を行っている国の半導体チップに対しては保護を与えるというような形になっておりますし、それから、半導体自身の基本的な性格からいって、保護を与えるとすると、当然アメリカ保護の与え方と似たような形で保護を与えるのが一番適当だということになるわけでございますので、私どもはそういう点を考慮しながら立案をやってきたわけでございますが、具体的な点につきましては幾つかアメリカ法律と違うところはございますけれども保護対象、保護期間、権利内容等、基本的な枠組みにおいてはアメリカ法律と本法案はほぼ同じであるというふうに考えております。  それで、相違点について申し上げますと、まず第一点は、アメリカ法律が今申し上げましたように相互主義的な考え方をとっているということに対しまして、私どものこの法律案におきましては、すべての国の国民回路配置について我が国国民回路配置と同様の条件により保護を与えるということになっている点が一つ。それから第二番目には、アメリカでは商業的販売があるいは登録いずれか早い時点に権利が発生するというような形になっているのに対しまして、日本では登録により権利が発生するということにした点が第二番目でございます。三番目は、アメリカ法律では罰則の規定がございませんが、我が国の場合にはほかの知的所有権の関係法律がすべて罰則がございますので、罰則の規定を置いているということでございます。  それで、なぜそのような違いが生じたかという点でございますが、まず相互主義を採用しなかった点につきましては、米国以外に回路配置保護法を持つ国がない現状で、日本アメリカと同じように相互主義をとる必要は必ずしもないという考え方をとったという点が第一点でございます。それからもう一つ、登録によって権利を発生するということにいたしましたのは、権利関係を明確にするためには登録により一律に権利を発生するということにすることが、このような半導体集積回路という目に見えない抽象物であるものの権利保護としては必要であろうという考え方をとったわけでございまして、日本法律の物の考え方にもアメリカ的な考え方はなじまないということでそのような違いが出てきたわけでございます。  それから罰則の点につきましては、アメリカでは損害賠償請求というものが罰則的な意味を持った形でやれるわけでございますけれども日本の場合には民法上の損害賠償請求というのは制裁的な意味がないというようなこともありますので、罰則規定を設けまして模倣という行為をできるだけ抑えるようにした方がベターだという考え方に基づいて罰則規定を入れたわけでございます。
  80. 福岡康夫

    ○福岡委員 ただいまの御説明の中に、米国には刑罰がある、我が方にはない、こういう形での御説明があったわけでございますが、あるものとないもの、こういう形でいろいろ今後この法案を処理する上において問題が起きますかどうですか、その点について。
  81. 木下博生

    木下政府委員 ちょっと私の御説明が悪かったのかもしれませんが、日本の方に罰則があるわけでございまして、アメリカの方に罰則がないわけでございます。それで、アメリカの方に罰則がない理由といたしましては、アメリカの場合には権利者が模倣者に対して損害賠償の請求ができる、その損害賠償の請求ができるという点は我が国法律と全く同じでございますが、懲罰的な形での損害賠償額の請求ができるということになっておるのに対しまして、日本の場合には、この法律の中にも損害賠償額の推定の規定があることからもおわかりのように、実際に損害を受けた額しか要求できないという意味で懲罰的な意味が入っておりませんので、したがって、国の罰則において模倣をできるだけ防止することを担保する必要があると考えたわけでございます。
  82. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、国際取引の問題にちょっと移りたいのでございますが、現在我が国は本格的な情報社会を迎えておるわけでございますけれども半導体集積回路の国際取引が今後盛んになると存じますが、これが適切な保護を行うために早急に新たな条約の締結の必要性があるかないか、条約締結に向けての我が国の準備態勢はどの程度進んでおるのか、この点について御説明願いたいと思います。
  83. 木下博生

    木下政府委員 先生指摘のように、今後国際取引がますます盛んになってくると思います。現在私どもの御提案申し上げておる法律では、日本集積回路回路配置を模倣したものが輸入される場合には差しとめ請求というようなことで押さえることができるわけでございますが、国際的に第三国間で流通するものは押えられないということもございますので、私どもとしてはできるだけアメリカと協力しながら国際条約ができるような方向に働きかけていきたいというふうに考えております。既に、世界知的所有権機関では半導体集積回路保護をどうしたらいいかという検討を始めておりますので、そういう場においてもそういう条約の早期成立を働きかけていきたいと考えております。
  84. 福岡康夫

    ○福岡委員 創作者など権利者と流通業者との利益の調和を図る目的から見て、本法律案に見られる善意者に対する二十四条第一項の規定でございますが、「侵害する行為でないものとみなす。」と書いてあるわけでございますが、やや、取引の安全を考慮することから流通業界の保護に偏重しているように思いますが、将来この規定が乱用されるおそれはないかどうか、この点について御説明願いたいと思います。
  85. 木下博生

    木下政府委員 この法律目的は、第一番目には当然のことながら真正の創作者の権利保護して、模倣者が出てくるのを防ぐということにあるわけでございますが、それと同時に、製造されました半導体集積回路の流通についてのルールづくりをして、それによってその全体としての半導体利用が適正に行われるということをまた目的としておるわけでございます。  この二十四条で「善意者に対する特例」が書いてございますけれども、御承知のように半導体集積回路というのは非常に小さなものでございまして、それがいろいろな機械器具の中に組み込まれて流通しております。したがいまして、模倣されたものが組み込まれている製品というものがたまたまあった場合に、それを取り扱う業者はそれが模倣されたものかどうかというのは非常にわかりにくいわけでございます。それで、それを知らずに、悪意でそれを取引した場合は別でございますけれども、知らないで、しかも知らないことにつき過失がないような人たちまで、それを権利を侵害したという形で押さえるのは、非常にスムーズな取引全体ができにくくなるということでございますので、権利者保護と、それから流通の円滑化というバランスを考えましてこの規定を置いたわけでございます。
  86. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、指定登録機関の処理の問題について御説明をお願いしたいのでございますが、私、この間半導体工場を視察しましたときに、幹部の方から、現在当工場では二百ぐらい登録する用意がある。大体、私の推察するところによると、国内の主要事業者は十二社ぐらいあると思うわけでございます。これを二百に対して十二社でございますので、受け付け開始当時二千四百件がどっと来るのじゃないかと思います。また、年間には大体私の調査によると二百ぐらい出てくるのじゃないかと思うわけでございますが、この事務処理いわゆる指定登録機関の問題につきまして、指定登録機関の設置個数、名称とか所在地、構成員総数、役員の種別及び人員の案があれば、当然これは政府提出法案でございますので、ある程度の案はお持ちだと思いますが、現在わかっている範囲内のことを御公表願いたいと思います。
  87. 木下博生

    木下政府委員 半導体集積回路回路配置の申請件数がどのくらいあるかという点は、今先生おっしゃいましたように、私どもの調査でも年間数千件、多い場合には五千件ぐらいの申請があるのではないかというふうに予想いたしております。  したがいまして、この申請を受け付けて仕事をする場合に、通産大臣自身がそれを行うか、指定登録機関にやらせるかという点についていろいろ検討しておりますが、今のような行革時代で人をふやせないという時代でありますれば、むしろそのような仕事は専門の指定登録機関に任せた方がよろしいのではないかというふうなことを今のところ考えております。  ただ、その場合にどのような機関にそれをやらせるかという点はまだ最終的に決まっておりませんが、一応私どもとしては日本全体で一カ所あればいいというふうに考えておりますし、一カ所置く場合には当然やはり東京に置いた方がよろしいだろうというふうに考えております。  それで、どのような機関に指定登録機関としてお願いするかという点はまだ決まっておりませんのですが、一応独立の機関でやるには、人員等は最初はせいぜい五、六人程度で出発すればいいのじゃないかと考えておりますので、一つの独立の機関でやるのは適当ではないのではないかという感じがありますので、ほかの事業を行いながらこの事業を行えるような機関ということで、一つどもは頭の中に置いておりますのは、特許の関係でペーパーレスの関係の補助をするような機関を今考えておりますので、そういう機関にこの登録事務をあわせて行ってもらうというようなことを考えたらどうかなということで検討しておりますが、まだ最終的な結論には至っておりません。  人数等は今申し上げましたように五、六名程度でスタートすればよろしいのではないか。といいますのは、アメリカの場合でも著作権局でこういう事務に当たっている人たちは六名程度でございますので、最初はその程度でいいのではないかと考えております。もちろん、そういう事務を行う人たちは半導体集積回路について相当の知識を持っている必要があろうと思いますので、そういう人で、しかも中立、公平な立場で仕事のできる人を選んでいきたいというふうに考えております。
  88. 福岡康夫

    ○福岡委員 これに関連してでございますが、登録事務実施者に、先ほど事務当局の御説明にもありましたように、特定企業のカラーのついた者をつけないようにとの産業界の要望があると思うわけでございますが、法律案の三十条の第一号に規定するような「知識経験を有する者」が一定数以上確保できる見通しは立っているのかどうか、また「省令で定める数」とありますが、基準として何名を予定しておられるのか、その点について御説明願いたいと思います。
  89. 木下博生

    木下政府委員 もし指定登録機関に委託して登録事務を行ってもらうということになりますと、当然、この登録機関は国にかわって仕事をするわけでございますから、公正、中立な立場で仕事をやる必要があろうかと思います。したがいまして、そういう事務に従事する人たちは、当然のことながら利害関係者が入っていたら好ましくないということがございますので、利害関係者以外の人たちの中で半導体集積回路について知識を持った人にお願いするというような必要が出てこようかと思います。  そういう人がいるのかという御質問ですが、日本は非常に広うございますので、いろいろなところで半導体集積回路関係のことをやっている方々がおられますから、そういう人たちの中から選んでいきたいと思っております。人数はそれほど多数の方が要るわけじゃございませんで、私どもは三十条の一号で言っております人数は、まだ今のところ最終的に決めておりませんが、四、五人程度を考えておりますので、そういう人数であれば、日本全国の中から適当な、適任の人を選ぶことは十分可能だと考えております。
  90. 福岡康夫

    ○福岡委員 その点につきましては十分御配慮していただきたい。公正、中立の立場でカラーの出ない人選をひとつよろしくお願い申し上げます。  次にお尋ねしたいのは、本法律案が予定している簡易迅速を旨とする登録制度は理解できるのでございますけれども、私は、登録したときは申請者に対し登録済み証を交付することが相当と思います。また、この登録済み証たる権利書を回路配置利用権の譲渡のときに譲り受け人に交付することにすれば、権利書を所持する譲り受け人の権利を確認することができて取引の安全に役立つと私は考えるわけでございますが、この点について通産当局の御見解はいかがでございましょうか。
  91. 木下博生

    木下政府委員 設定登録に当たりましては、登録番号を回路配置原簿に記載するとともに、それを何らかの形で公示するということを予定しております。したがいまして、取引を行うに当たりまして、登録番号により登録回路配置を特定することは可能でございますので、その権利者に対して証明書を発行しなくとも特段の不都合はないものと考えております。  それで、権利の移転あるいはその権利専用利用権とかいうものを設定いたしましたときには、これをまた登録することによって第三者に対する対抗要件を持たせるということにいたしておりますので、権利書を持っていてそれを渡すということでないと権利が渡らないということにはならないと考えますので、そのようなことは今のところ考えておりません。  特許につきましては特許証というのを渡すようなことになっておりますけれども、これもどちらかというと発明者の名誉の証明というような意味が強いと私どもは理解いたしております。
  92. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に回路配置原簿の問題でございますが、この回路配置原簿への記載と同時に迅速に公示が行われないと、メーカーの各特許間によるお互いの模倣チェックの牽制が有効かつ迅速に行われないことになる、権利保護手段をとるのがおくれることとなるわけでございますが、この点についての御配慮はいかになっておりますでしょうか。
  93. 木下博生

    木下政府委員 先生指摘のとおりでございまして、私どもとしては設定登録がなされた後、公示がおくれるために種々の問題が起こるという心配もありますので、設定登録後できるだけ早く公示を行うような手続をつくり上げたいと考えております。
  94. 福岡康夫

    ○福岡委員 公示の方法として、例えば回路配置利用公報といったものを発行するのか、その際の公示内容はどうなるのか、発行するとすれば土、日を除く毎日出すことになるのかどうか、この点についての御構想があればお示し願いたいと思うわけです。
  95. 木下博生

    木下政府委員 現在、登録の申請は年に数千件程度あるのではないかと考えておりますが、特にスタートした時点においては申請はたくさんあるのではないかと思いますけれども、登録したものの公示のやり方については、設定登録の内容等を知ろうとする人はメーカーだけではなくてユーザー企業まで及ぶということでもありますけれども、その範囲は非常に一定の専門性を有するものに限られるということでございますので、何か特別の公報、例えば特許公報と同じような形で公報に記載する形にする方が望ましいと考えております。  ただ、公報の発行の頻度でございますけれども、設定登録の件数や発行経費等を勘案して決めるわけでございますので、毎日出すということになるのか、あるいはある程度の期間を置いて公報を出すことになるのかは、全体の手続のやり方を決めてから決めてみたいと考えております。
  96. 福岡康夫

    ○福岡委員 我が国集積回路製造業の実態を見てみますと、事業所数昭和五十六年に八十五カ所であったものが昭和五十七年には倍近くの百六十カ所に増加しております。しかしながら、従業員数は五万八千四百七十九人から七万二千二十八人と一万三千五百四十九人増にとどまっておるわけでございます。この統計数字から見てみますと、いわゆる中堅企業のこの業界への積極的な参入が認められると思うわけでございます。  そこで、通産省にお尋ねいたしたいわけでございますが、今後ともこの半導体産業界への中堅企業の参入は増加し続けるかどうか、また半導体主要メーカー十二社がシェアを支配するこの業界において中堅企業の果たす役割と地位についてどういうお考えを持っておられるのか、ひとつお示し願いたいと思うわけです。
  97. 木下博生

    木下政府委員 半導体集積回路の市場というのは急速な勢いで広がってきております。それと同時に設備投資の額及びそのスピードも非常に速いということで、余り規模の小さな企業がその競争に追いつきながらやっていくというのはまた非常に難しい業界でございます。ただ全体の市場の規模が非常に広がっておりますし、需要の中身も非常に複雑なものから一律性を要するもの、あるいはカスタムメード的なものということで非常に広がりを見せてきておりますので、中堅企業につきましては例えばゲートアレーといったようなユーザーからの特別仕様にこたえるカスタム品の市場が広がることによって、一部の部品に加え、このような分野では小回りがきき、ユニークで、すぐれた技術能力を有する中堅企業の活躍の場所というのは開けてくるのではないかと考えております。したがって、そういう中堅企業が大いに技術力を伸ばして大企業に伍して活躍していくことを私どもは期待しておりますし、そのようなことが可能になるようにできるだけの施策を講じていきたいと考えております。
  98. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に環境庁にお尋ねしたいのでございますが、昭和六十年の四月四日の毎日新聞の記事によりますと、半導体工場も汚染源という見出しで「環境庁は五十七年度、大阪、東京など十五都市で地下水汚染調査をしたところ、トリクロロエチレンについてはWHOの基準値三OPPbを超えるところがあることが判明した。」こういう記事に基づいて個々の例がいろいろ報道されておるわけでございますが、この今私が読み上げました報道は事実であるかどうか、この点について御説明願いたいと思うわけです。
  99. 小林康彦

    ○小林説明員 昭和五十七年度に一般的に地下水の汚染が懸念をされましたので、札幌、仙台、川崎、横浜など十五都市の井戸から千三百六十検体を採取いたしまして検査をいたしました結果、そのうち四十検体よりWHOの暫定ガイドラインを超えるトリクロロエチレンが検出されております。ただいま先生の読み上げられました部分、おおむねそのとおりでございます。
  100. 福岡康夫

    ○福岡委員 事実であればどのような対策を環境庁はその後とっておられるのか、御説明願いたいと思います。
  101. 小林康彦

    ○小林説明員 地下水は一度汚染されますとその回復は非常に困難であることにかんがみまして、関係省庁と協力いたしまして、当面特に問題がありますトリクロロエチレンと三つの物質につきまして、行政指導によります汚染防止を図ることといたしまして、昨年八月二十二日付でこれらの物質を取り扱う工場、事業所からの排出抑制に関し暫定指導指針を設定いたしまして都道府県等に通知したところでございます。  さらに調査を引き続き行っておりまして、五十九年度から三カ年計画で汚染原因等の調査を実施し、今後必要な対策を検討していくことにしております。
  102. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、通産省にお尋ねしたいわけでございますが、具体的な例といたしましてこういう記事が載っておるわけでございます。発がん性の疑いのある有機塩素系溶剤、トリクロロエチレンによる地下水汚染が問題となっておりますが、このほど大阪大学の工学部の山田助手が、兵庫県、滋賀県及び東京都の地下水調査の結果分析から、クリーン産業と言われる半導体製造工場が最大の汚染源であると断定した、こう書いてあるわけでございますが、この地下水汚染防止対策について通産省は通産行政と環境行政とをどう調和させていく構想をお持ちなのか、この点について御説明をお願いしたいと思います。
  103. 平河喜美男

    ○平河政府委員 トリクロロエチレンなど塩素系の溶剤による地下水汚染の防止対策につきましては、先ほど環境庁からもお話がございましたけれども、当省といたしましても、五十九年二月に半導体業界を含めます関係業界にあてまして、当該物質の生産、使用及び貯蔵に関しまして漏出防止の徹底を図るように通知いたしているところでございます。さらに同年八月には当該物質に係る暫定排出濃度目標を定めまして、これを関係業界へ通知して指導の徹底を図っているところでございます。
  104. 福岡康夫

    ○福岡委員 通産省当局、環境庁当局もこの点について、通産行政と環境行政との調和を相互に十分御連絡をとって推進されることを望みます。  最後に、通産当局に御質問させていただくわけでございますが、本年一月に出された半導体チップ法制問題小委員会報告書によりますと、「半導体集積回路を供給する半導体集積回路産業は、今後とも急速な発展が見込まれる極めて有望な産業である。」と書かれておるわけでございます。集積回路の国内出荷における需要も一九八四年をピークとして下降ぎみであるとの声を私は聞いておるわけでございますが、民生機器用と産業機器用に分けて今後の需要推移についてどのような見通しを持っておられるのか、また我が国半導体産業界における生産調整はどのようになっておるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  105. 木下博生

    木下政府委員 半導体集積回路の生産は近年極めて急速に伸びたわけでございまして、昨年には一兆九千七百億円とほとんど二兆円に達する生産規模に達しまして、対前年比七割以上の伸びを示したわけでございます。ただ、昨年の秋ごろから需要が停滞する傾向が見られておりまして、今年におきましては生産は一けた程度の伸びにとどまるのではないかというような感じがいたしております。ただ、御承知のように半導体集積回路技術進歩が非常に早く、しかも、それに伴ってコストの低下が非常に著しいものがございまして、用途も非常に広い範囲に使われるようになってきております。  そのようなことでございますので、例えば昨年で見ますと、テレビやVTRのビデオテープレコーダーに約一七%くらい使われ、オーディオ関係で八%、その他の民生機器で八%、コンピュータ「で一五%、OA機器で三三%というような形で産業用、民生用両面にわたって使われております。最近は半導体集積回路を使ってクリスマスカードをつくる。クリスマスカードをあけてみれば音楽が出てくるというようなところまで使われるようになってきておりまして、今後も非常に広い範囲で半導体集積回路が使われることになると思います。したがいまして、私どもとしては民生部門、産業部門含めまして今後とも全体としての需要は着実に伸びていくと考えておりまして、年率二〇%くらいの伸びは中長期的に確保できるのではないかと考えております。したがって、現段階におきまして、一時的な需給関係から生産調整をやるという必要性は全くないと考えております。
  106. 福岡康夫

    ○福岡委員 時間が参りましたので、以上をもって質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  107. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 これをもちまして福岡康夫君の質疑は終わりました。  午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。     午後零時三十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十三分開議
  108. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。青山丘君。
  109. 青山丘

    ○青山委員 半導体集積回路回路配置に関する法律案、大変長い名前ですが、これは一口にチップ法案、あるいはアメリカで言う半導体チップ保護法、こういうふうに理解してよろしいかどうか、後でお答えいただくときに、ひとつちょっと触れていただきたいと思います。  この法案の考え方ということですが、半導体集積回路回路配置、これの権利を明確にしていこう、こういうことであろうと私は思います。そこで、これまでの回路配置技術を防衛していかなければいけない、こういうことで権利保護法律日本でもつくらなければいけない。今、日本でもつくらなければいけないと言いましたが、とりわけこの半導体の国際的な取引が増大してきておりますから、そういう意味でも国際的な観点に立った法案の成立がだんだんと望まれてきておる、こういうことで、私はまず二つの点でお尋ねをしていきたいと考えております。  一つは、半導体集積回路回路配置保護が必要になってきたという背景について、少しお尋ねをしていきたい。それから、この回路配置保護がなされることによって日本半導体集積回路回路配置の業界、これに与える影響について、少しずつ質問をしていきたいと思います。  そこで、まず回路配置保護が必要となってきておるという背景について、若干お尋ねをいたしたいと思いますが、保護必要性は、今年一月産構審の報告にも述べられておりますが、国内産業の実情に沿って、ひとつぜひわかりやすく説明していただきたい。  一つは、半導体集積回路開発費が増大してきているということでありますが、その実情はどのようになっているか。もう一つ、その点では開発に要する費用及びコスト配分についての動向をどう見ておるか、これがいま一点。  もう一つは、回路配置開発に必要な費用それから開発の期間、それから開発の要員数、こういうものについて少し詳しく説明をいただきたいと思います。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、田原委員長代理着席〕
  110. 木下博生

    木下政府委員 半導体集積回路は、近年技術が極めて複雑かつ高度化してきておりますけれども、そのために開発費というのは極めて増大してきておるわけでございます。開発に当たりましては、設計段階が幾つかに分かれ、それでまた製造段階でもいろいろの技術開発を行っていく必要があるわけでございます。  開発工程といたしましては、システム設計、論理回路設計、トランジスタ回路設計、レイアウト設計等があるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、半導体集積回路が高集積化し、高速化し、高性能化が進んでおる現状におきましては、その開発費は近年極めて高くなってきております。物によりましては、投入資金数億円、それから開発期間も二、三年を要するものがあるというふうに言われておりますけれども、その開発費の中でも特にコストがかかりますのは、レイアウト設計と言われます回路配置自身を設計する部分の費用でございまして、全体の開発費に占める割合が、通常五〇%を超えるというふうに言われております。     〔田原委員長代理退席、浦野委員長代理着席〕  それから開発期間につきましては、先ほど一つの例として二、三年を要するということを申し上げましたけれども、物によりましては、簡単なものについてはもっと短い期間でできるというようなこともございます。ですけれども種類が非常に多うございますので、平均値をとることは非常に困難であります。しかし、あえて申し上げますと、開発期間一年程度というのが平均的な数字ではないかと考えております。
  111. 青山丘

    ○青山委員 報告によりますと、この回路配置コストが五〇%以上を超える、あるいは数億円かかるものもある。この開発期間が二、三年もかかる、こういうことのようですが、しかし、それは幾らか特殊なものではないでしょうかね。一般的に、平均的な製品としたら、どういうふうに理解していくのがよろしいのでしょうか。
  112. 木下博生

    木下政府委員 平均的に申し上げますと、先ほども申し上げましたように、開発に大体一年ぐらいを要する。それでやはり開発費用は数千万円というオーダーではなかなか難しくて、億円単位になってくるというようなことのようでございます。
  113. 青山丘

    ○青山委員 長ったらしい法律名、別に正確であればそれはいいのですが、アメリカでも半導体チップ保護法日本では、正確であることが先なものですから、通常、私は、回路配置権利保護法、これもちょっと長いかなと考えていたのですが、チップ法みたいなわかりやすい名前で本法案を言うのもいいかもしれませんが、理解してよろしいかどうか、これが一点。  時間がありませんので、先へちょっと進ましてください。  それから、この開発の現状について少しお尋ねをいたしたい。  回路配置の登録申請を行う可能性のあるメーカーというのは一体どれくらいの数だと受けとめておられますか。
  114. 木下博生

    木下政府委員 確かに先生おっしゃいますように、半導体集積回路回路配置に関する法律というのは非常に長い名前でございますが、半導体チップ保護法と我々も俗称で言っておりますけれども、通常はそういうような名前で我々も考えていってよろしいかと思っております。  ただ、半導体チップといいますと、何となく集積回路自身、製品自身という感じもちょっといたしますし、私どもがあくまでも保護しようとして考えておりますのは、回路配置というレイアウト自身の抽象的なものを頭に置いておるわけでございまして、もちろんそれが具現化された集積回路自身保護の対象となっておるわけでございますから、私ども法律として書くにはどうしてもこういう名前になってまいりますが、当然いわゆる俗称的な形で使っていくことは可能かと思います。  ただ、保護という言葉につきましては、特許法とか著作権法もいずれにしても保護という言葉を使っておらないわけでございますし、単に摸倣を防止するという意味での保護だけではなくて、取引のルールをつくるという意味も含めた法律でございますので、特に保護という言葉法律の中では使ってないわけでございます。  それから、設定登録の申請を行う可能性のあるメーカーの数は、日本国内にはメーカーの数、二十八社ありますけれども、輸入をしてそれを販売するという会社も出てくると思いますので、合計いたしまして、三十数社ぐらいが設定登録の申請を行う可能性のある会社だと考えております。     〔浦野委員長代理退席、田原委員長代理着席〕
  115. 青山丘

    ○青山委員 回路配置開発ですけれども、これまでなかなかその実情、実態を把握するというのは困難だとは思いますが、例えば年間これくらいの開発がなされているというような理解をしておられるのかどうか。
  116. 木下博生

    木下政府委員 半導体の生産がふえてくるに伴い、当然半導体の種類も各種のものができてきておるわけでございまして、私どもは、この法案提出するに当たりまして、メーカー各社に問い合わせて、どのくらいのものが申請の可能性があるだろうかということを問い合わせましたところ、数千件、多くて五千件ぐらいのものになるのではないだろうかというような調査結果が出ております。実際にそういう数字がすぐに出てくるのかどうかは施行してみないとわかりませんが、大体そんな程度ではないかと我々は考えております。
  117. 青山丘

    ○青山委員 回路配置の模倣がだんだん広がってきている可能性が強いということなんですけれども、実際、その模倣がなされる状況というのをどのように理解しておられるのか。この海賊版、大体、いろいろ他の分野でもこういう言葉を使うのですが、海賊版の出回っている状況、流通の経過、理解しておられる範囲でひとつ御説明いただきたいと思います。
  118. 木下博生

    木下政府委員 回路配置は、先ほど申し上げましたように、多額の金額とそれから期間を開発のために要するわけでございますが、まねすることは比較的安く、しかも短期間にできるということでございまして、その可能性は非常に高いわけでございます。過去におきましては、半導体業界において、まだ集積回路集積度が低い段階では、その日米両国の業界で広く模倣行為が行われた歴史はございますけれども、現時点におきまして、我が国の国内で実際に回路配置の模倣が行われ、問題が発生しているという事実はないと私どもは承知いたしております。  しかし、今後集積回路集積度の向上に伴いまして、一方、開発のためにコストはますますかかるようになりますし、模倣の可能性が、先ほど申し上げるように技術的可能性が高いということなんで、今後模倣が行われる可能性は十分あろうかと考えております。
  119. 青山丘

    ○青山委員 通産省で把握しておられるのかどうか、日本の国内のメーカーと外国のメーカーとの間の係争、紛争についてはどんな状況なのでしょうか。
  120. 木下博生

    木下政府委員 国内のメーカーと海外メーカーとの間の紛争が現在でも幾つかあるわけでございます。その紛争が回路配置に関する紛争という形で、はっきり出てきているかというと、必ずしもそういうものではなくて、半導体関連する技術に関する紛争だと我々は考えておりますが、その回路配置を含めた回路技術、ソフト技術、それから生産技術のバランスのとれた技術が重視されるマイクロプロセッサー、こういう分野ではアメリカが非常に技術水準が高いわけでございますけれども、そういう分野回路技術とかソフト技術での紛争が幾つか発生しております。具体的に日本のある企業アメリカ企業との間でお互いに、アメリカが訴訟を起こしたり、それから日本企業の方が予防的な意味で相手の企業に対して訴訟を提起したりというようなケースがあるわけでございます。
  121. 青山丘

    ○青山委員 回路配置権利保護、これは利用面では大変な広い産業分野にわたるものでありますが、ただ、権利保護となってくると、これは極めて専門的で限られた産業分野ですね。これを法律権利関係を明確にしていくというのが一体妥当なのか。これは限られた産業分野の中で自主的な運用というか、自主的な対応といいますか、こういうものだけではやはりできないものでしょうか。どうなんでしょう。
  122. 木下博生

    木下政府委員 過去におきましては、半導体集積回路回路配置につきましては、各企業がそれぞれ開発して製品化し、それを販売するという状況であったわけでございますけれども集積度が高まり、開発に莫大な費用を要する、しかも高度の技術力を要するというような事態に至った最近におきましては、企業間で、一つの会社から他社に製造を許諾し、あるいは製造権限を移転するというような取引が増加して、取引全体の形態が複雑化してきておるわけでございます。また、この分野産業としての将来性が高まりますと、半導体集積回路製造する企業の数がふえて、当事者間の慣行や契約ということだけでは十分対応することができないということになってきております。  それから、この法律の中にもその規定がございますが、いわゆるリバースエンジニアリングということで、既に開発されて使われております半導体を解析することによって、それを見て新たな半導体開発し、あるいはそれと同一のものをつくるというようなことも非常に簡単になってきておりますので、やはり業界の自主規制だけで対応するというのは、なかなかこういう問題は難しいのではないかと考えております。
  123. 青山丘

    ○青山委員 一々後ろから出ていただくのは大変申しわけないけれども、コミュニケーションを図るというような意味で私はお尋ねするので、特に細かくお尋ねすることをひとつぜひ許していただきたい。  日本法律案に対して、アメリカ側は一体どういうふうに評価しておるのか、通産省の方でどういうふうに理解しておられるか、アメリカ側の評価についてどのように理解しておられますか。
  124. 木下博生

    木下政府委員 アメリカ日本との間で、世界半導体の生産の約九割を占めているという状況でございまして、アメリカにおいては、既に昨年、半導体チップ保護法ができたわけでございます。我が国においても、そういう回路配置保護する必要性に対する認識が高まってきておりまして、産業界もそういう要請を非常に強くしてきておったわけでございますが、この法案を御審議いただいて成立させていただいた暁には、日本の業界は当然、それによって半導体全体の適正な取引が確立されるということで歓迎されると思いますし、それからアメリカの業界も日本に相当投資をして工場をつくっているところもございますし、それから日米両国間で取引が行われておりますので、当然アメリカ産業界の方も我が国のこのような立法化の動きに対しては、前向きで歓迎の姿勢を示すものと私どもは考えております。
  125. 青山丘

    ○青山委員 日本のメーカーだけではなくて、外国のメーカーが登録申請の手続をいたしますが、これについてはどうなんでしょう。どんな手続の仕方を考えておるか、それはどんな構想なんでしょうか。
  126. 木下博生

    木下政府委員 アメリカ法律と違いまして、我が国法律の場合には相互主義をとっておりませんから、単に日本国民あるいは日本国法人であるにとどまらず、外国法人であればいずれの法人、個人であっても申請ができるわけでございますので、所定の手続に従って直接通産大臣あるいは指定登録機関に登録の申請をしていただくということになると思います。
  127. 青山丘

    ○青山委員 外国メーカーの登録の動向を現在どんなふうに予測をしておられますか。
  128. 木下博生

    木下政府委員 先生お尋ねの外国メーカーというものの場合に、外国メーカー自身日本に工場を持っている場合もあるわけでございまして、そういうメーカーは当然、日本の工場の生産分について、あるいは本国で生産しているものについての登録を行ってくるだろうと思います。  件数がどのぐらいかというお問い合わせですが、私どもちょっとまだはっきり把握しかねているところでございます。アメリカ法律は、登録を効力発生の要件としておりませんので、ことし一月に法律が施行されてから七十件ぐらいの登録だというふうに聞いておりますけれども日本の場合には権利の発生要件になっておりますので、登録の数はアメリカよりはずっと多くなるだろうと思います。ただ、具体的にどのくらいの数を外国のメーカーが登録申請してくるかは、まだ今のところはっきり予測はできません。
  129. 青山丘

    ○青山委員 登録申請件数と手数料のことで、後でまた時間があればちょっとお尋ねしたいと思いますが、この日本のチップ法、これに対するアメリカ半導体業界はどんなふうに受けとめているのでしょうか。
  130. 木下博生

    木下政府委員 我が国の業界が歓迎していると同時に、アメリカの業界においてもこの動向を非常に関心を持って見ておりまして、私どもの受けとめているところでは大いに歓迎するという態度であると思います。私ども産業構造審議会審議に当たりましても、アメリカ系企業日本における法人の代表者もメンバーに加えていろいろ議論をしておりますけれども、そういう場においてもその代表の人たちは十分に日本法律必要性を認識しておったわけでございます。
  131. 青山丘

    ○青山委員 立法の趣旨が、アメリカ半導体チップ保護法に対応していこう、こういうことであろうから、それなりの評価をしていただけるものだと私は思います。  さて、この半導体集積回路回路配置権利保護、これが我が国半導体産業に与える影響について少しお尋ねしたいと思います。  我が国半導体集積回路のこういった面での産業においては、技術革新の急速な進展を背景として、これまで権利保護に関する規定というのが未整備であった。未整備であったけれども、そのことからと言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、比較的相互の技術利用が容認されてきた、そういうことで市場の競争というのが比較的積極的に展開されてきた一面があると私は理解します。これも業界の実態の一面だというふうに実は私は伝え聞いておるわけですが、現在の業界の受けとめ方ですね、対応の仕方、業界において、日本の業界はどのように受けとめて、どのように対応していかなければいけないと理解しているのか、お尋ねしたいと思います。
  132. 木下博生

    木下政府委員 半導体集積回路開発のために多額の資金と期間を要するという状況になっておるわけでございますから、当然、開発されたものが適切な期間の間に回収されて、それがまた次の開発に回されるという必要があるわけでございまして、模倣によってそういう開発努力が無に帰するということは産業界にとっても非常に耐えられないことであるわけでございます。その意味で、このような立法措置で正当に開発を行った人たちの権利保護されるということは、業界にとって非常に喜ばれる、また歓迎される事態であると考えますし、それによって半導体集積回路産業全体の発展が図られるものというふうに考えております。
  133. 青山丘

    ○青山委員 この業界の動向ですけれども集積回路開発をした、回路配置開発をしたこの権利が守られるということは、業界の秩序を保っていく上で極めて重要だと思います。ただしかし、今まで未整備であったために比較的活発であったという一面があったと伝え聞いておりますから、そうしますと、今度はやはり独自の開発をやっていかなければいけない、これは当然のことです。当然のことですけれども、この権利関係が明確になってまいりますと、開発されていく力というのがいささか鈍化していくのではないかというようなことも少し懸念されますが、この辺はいかがでしょうか。
  134. 木下博生

    木下政府委員 この法律が施行されることによりまして回路配置開発者の利益が適切に保護され、回路配置取引上のルールが確立するということは、むしろ開発者開発意欲を刺激し、技術発展につながるというふうなものであると考えております。これに対しまして、もしこういう法律がなくて十分な保護がなされず、模倣が放置されるというようなことであれば、むしろ技術開発の意欲が失われてしまうというおそれがあるわけでございまして、そのような意味技術発展のためにはプラスの要素になるというふうに考えております。
  135. 青山丘

    ○青山委員 次に、半導体における日米通商問題についてお尋ねしたいと思います。  アメリカにおける半導体チップ保護法の立法化のねらいの一つ日本企業に対する対策である。アメリカ半導体チップ保護法というのは日本企業対策であった、一面そんな面もあったというふうに聞いておるわけです。ただ、今回我が国がこうして立法化してまいりますと、アメリカの方ではきっと一定の評価をしてくれる、技術の模倣を排除することができる、そのことによって公正な競争が確保される、こういうことになって日米間の半導体分野におけるいたずらな紛争、摩擦は未然に防止することができる、こういうふうに理解できて私は日本のこの立法化について実は評価をしております。しかし、半導体分野においては日米間で常に摩擦の火種が存在するのだというようなことが言われておりますので、その点についてこれからお尋ねをしていきたいと思います。  半導体日米貿易は一九八一年ごろはほぼ均衡を保っていた。しかし、その後は日本が輸出超過、アメリカにとっては輸入超過という状況になってきて、貿易の不均衡がさらに拡大しつつある。こういう状況の中で半導体の対米輸出入の動向をどのように受けとめておられるのか、日米両国半導体市場の規模をどのように理解しておられるか、またその特徴について少し御説明をいただきたい。それぞれ相手国における製品シェアはどのようになっているのか、現状を御説明いただきたいと思います。
  136. 木下博生

    木下政府委員 先生おっしゃいましたように、七〇年代の終わりまではアメリカから日本が購入する半導体の方が輸出する金額よりも大きかったわけでございますけれども、八〇年代に入りまして日本の輸出が伸びてまいりまして、昨年は日本からアメリカ向けの輸出が三千七百二十二億円で前年の約二倍にふえておりますし、アメリカからの輸入は千六百三十六億円で五二%の増になっておりまして、若干日本の輸出の方が伸びて差が広がっている傾向が出てきております。ただ、いずれも貿易量は輸出入とも非常に高い伸び伸びているというのが特徴であろうかと思います。  アメリカの市場と日本の市場の規模でございますが、日本の市場はドルに直しまして約六十二億ドル程度、世界市場に占める割合が三〇%ぐらい、アメリカの市場はドルに直しまして九十八億ドル程度、世界市場に占める割合が四七%程度だと大体推定されます。それで日系メーカー、アメリカ系メーカーの世界における生産のシェアは三割、六割程度になっておるわけでございます。それで、アメリカ市場における日系メーカー、日本市場におけるアメリカ系メーカーのシェアはそれぞれが約一五、六%程度ではないかと推定されております。
  137. 青山丘

    ○青山委員 昨年の半ばごろまではアメリカの市場は比較的好調であった。IC関係は不足が伝えられていたと聞いております。ところが、最近はそうでもなさそうなニュースが入っているのですが、アメリカの需給の現状をどういうふうに理解しておられますか。それから、アメリカの需給動向の見通しと、同時にアメリカの動きに対して我が国はどんな影響を受けてくるのか御説明いただきたいと思います。
  138. 木下博生

    木下政府委員 アメリカにおきましては、昨年前半はOA機器需要の予想外の大幅な伸びということで、半導体集積回路に対する需要は大きく伸びたわけでございますが、昨年の秋以降、在庫調整というような動きも起こって日米両国企業に対する半導体集積回路の受注が減ってきております。それで受注と出荷との金額を比較する比率がございますけれども、八三年十二月に受注の方が出荷の一・六六倍くらいだったものが昨年の十二月には〇・六四というところまで落ち込んだわけでございます。ただ、最近に至って若干また戻ってきておりまして、そろそろアメリカ在庫調整が終わって再び注文が出始めたのではないかと言われておりますけれども、ただ全体として見ますと、アメリカ半導体集積回路の市場は昨年に比べて今年度はマイナス成長になるのではないかと考えられます。  ただし、中長期で見ますと、当然大きく需要伸びることが期待されておりまして、十数%、二〇%くらいの伸びになるだろうと考えられます。そのようなアメリカ市場でございますので、当面日本からアメリカに対する半導体の輸出にも影響が出てくるだろうと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、在庫調整が終わってそろそろアメリカでも需要がまた回復し始めたというようなことでございますので、再び日本からアメリカ向けの輸出も成長軌道に乗っていくのではないかという感じがしております。  いずれにいたしましても、日米摩擦問題がこういう半導体分野においても起こって深刻化することは好ましいことではございませんので、そのようなことにならないよう適切に処置してまいりたいと考えております。
  139. 青山丘

    ○青山委員 ぜひ慎重に取り組んでいただかなければならない。今後の需給の動き次第ではせっかく鎮静化していた対日批判も再びかと懸念されるわけであります。  そこで、日本アメリカとの間に常に貿易摩擦が起きかねない、火種と先ほど申し上げたのですが、問題点というのは一体どのように理解しておられるか。常にこれはいろいろと言われてきておることなんですけれども通産省としてはどのように理解しておられますか。
  140. 村田敬次郎

    村田国務大臣 根本的な問題だと思います。私は、日米間の通商摩擦というのは常にその可能性があると思っておるのです。なぜかといえば、もともとアメリカ世界一経済が発展をしたというドル体制から戦後出発したわけでございますが、日本は非常な国民の長い間の努力、勤勉といったものが実を結びましてアメリカに次ぐ第二の経済大国になった。しかし、基本は自由主義経済体制でありますから、これは両国間の企業の間に競争が存するのは当然でございます。したがって、そうやって相互に切磋琢磨しながら発展をしていくという非常に大きなプラスの面もあるわけでございます。  ところが、本来経済構造、産業構造が違っておりますので、そういった意味での発展の段階の差、その他いろいろの点について産業分野によって米、日の対応がいろいろ異なるわけでございます。ことしはいわゆる四分野の問題について非常に日米間の協議が進行しておりますが、またそれがほかの分野に及ぶということも全般的には十分考えられることでございまして、その間にあって日米世界の言うなれば自由主義経済体制のリーダーとしてお互いに世界のために尽くし合っていくというのが一番望ましい形であろう。したがって、そういった個々の貿易摩擦の分野はお互いの良識や努力によって解決をしていくというのが根本的な方向だろうと私は思います。  特に半導体分野でございますが、ハイテク産業、特にエレクトロニクス産業を支える重要な基盤をなすものがこの半導体でございまして、今後もますます発展をしていくものであるというふうに理解をしておりますが、日本としては一九八三年十一月の半導体についての日米ハイテク・ワーク・グループの提言でございますね。この提言が非常によくまとまっておりますので、これに基づいて本分野世界における主導的立場にある日米両国保護主義的対応をとることなく開放体制として貿易、資本、技術の交流を一層促進をしていくことが肝要であると考えておるわけでございます。このために三月一日からの半導体関税の日米相互同時撤廃を実施するなど同提言の着実な実施に努めておるところであります。  先ほど来の青山委員の御質問を承っておりまして私が思いますのは、言うなればこの分野における戦国時代からルールある競争に進んできたのである。これがまた世界のために半導体保護の大きな第一歩になるということを期待しておるわけでございます。
  141. 青山丘

    ○青山委員 その辺を冷静に見ながら、やはり日本アメリカとの関係をこれから友好的に、かつお互いに信頼の中でこの通商問題をぜひ解決していっていただきたいし、反面、私はこの間ヨーロッパへ行ってみたが、日本がハイテク分野アメリカに次いで非常に発展してきたことは、これからの日本の経済に対して相当期待できるのではないか。これまでもすばらしい発展をしてきた。特にアメリカ半導体分野における世界最大の市場でありまして、アメリカの動向というのが世界経済、特にこの分野における影響力を決定的に持っております。しかもまだ、日本も非常にアメリカに次いでの有望な市場でありまして、今御説明では日本アメリカで九割を占めている。日本アメリカ関係が非常に重要でありますので、相互に協力関係をきちっと確立していかなければならない。お互いに信頼関係を維持していかなければいけない。これらに対する御見解をいま一度大臣からひとつお聞かせいただきたいと思います。     〔田原委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 村田敬次郎

    村田国務大臣 青山委員の御質問にお答えいたします。  私は、言うなればハイテク分野における戦国時代からルールある競争に進歩をしてきた。そして日米関係はいわゆる競争の面もあり協調の面もあり、基本的には協調をして世界のために尽くしていくということでございまして、特にハイテク分野でございますとか情報産業分野でございますとか、そういう新しい時代を切り開いていく産業における協力というのは非常に重要である。したがって、基本的には日米グループで考えてまいりました提言をひとつしっかりフォローして進めていく、こういうことであろうか。そして、それは世界的な秩序においてWIPO等と相談をしてやっていかなければならぬ、そういうことであろうかと思っております。
  143. 青山丘

    ○青山委員 最後に、二点ばかり内容についてお尋ねをしたいと思います。     〔委員長退席、田原委員長代理着席〕  本法案の第二条「定義」についてでありますが、「半導体集積回路」、「回路配置」など法律保護対象は、紛争を未然に防止する見地から明確に定義しておくべきだと考えます。アメリカ半導体チップ保護法においては詳細な定義を置いておりますが、政府案ではわずか五行で述べられているだけであります。保護対象の定義をさらに詳細に規定する必要があるのではないか、これが第一点。  それから法案第十二条一項においては「回路配置利用権の効力は、他人が創作した回路配置利用には、及ばない。」こういうふうにしております。すなわち、他人が創作したものであれば、私が創作して手続をとったものと全く同じでも、私の利用権が侵されたというわけにはいかないというふうな理解だと思います。同じであればそれは効力を保つ、利用権を持つ、こういうことだろうと思いますが、さて創作によるものはこの法案保護対象にすることにしておりますが、創作かどうかを判定するのは容易ではないと思います。紛争を未然に防止するための施策が必要であろうと考えます。  その一つは、回路配置利用権の設定の登録申請があった場合にチェックをどのようにしていくのか、どのような基準で創作性を確認することができるのかという方針がおありかどうか。また創作の要件を法令で明確にすることはできないのかどうか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  144. 木下博生

    木下政府委員 アメリカ半導体チップ保護法で定義とされております半導体チップ製品及びマスクワークにつきましては、先生御承知のとおり長い定義をつくっておるわけでございます。ただ私どもがこの法律案検討いたします過程で、どのような定義をしたらよろしいかということをいろいろ検討したわけでございますが、その際にはアメリカ法律半導体チップ製品及びマスクワークの定義をも参考としつつ、関係者意見を十分踏まえた上で定めたものでございまして、御指摘のようなあいまいさがあるとは必ずしも考えておりません。したがいまして、私どもとしては、当分の間定義について問題が生ずるということはないと考えておりますけれども、将来、技術革新の結果等により必要が生ずれば、その時点で定義の変更、追加も検討していきたいとは思います。  ただ、アメリカの場合にはマスクワークというような概念を使っておりますが、本法案においては半導体集積回路上の、英語で言えばレイアウト、回路配置に限って権利の客体としているために定義が簡単なものとなっているわけでございますが、決して定義のあいまいさを招くものではないと私どもは考えております。  それから十二条で、独自につくった場合にはそれぞれが回路配置として保護されるという規定があることについてのお問い合わせがあったわけでございますけれども、創作か模倣が、あるいは模倣したものが創作したものに対して同一性があるかどうかというような問題が将来起こってくる可能性は十分にあるわけでございます。その点私どもとしては、裁判所において創作者と主張する人、あるいはそれに対し模倣したのではないかという人たちがお互いに証拠を出し合って、裁判において争うというような形で最終的には判断をする必要があろうかと考えております。その場合におきまして、具体的に自分の創作した回路配置を他人に模倣されたと主張する場合には、問題となっております他人の回路配置が自分が創作した回路配置と同一であり、しかも相手方が模倣し得る状況にあったことを証明していくというようなことになるわけでございますが、一方独立開発だと主張する人の方から見れば、なぜそれを独立開発したのかということを証明していく必要が出てくるわけでございまして、お互いに証明すべき材料、資料を出し合えば、おのずと独立して創作されたものかあるいは模倣して製作されたものかということは十分に証拠によってわかってくるのではないかと考えるわけでございます。したがって、このような法律条項であるために紛争が多発するということは必ずしも考えておりません。  それで、事前に厳密な内容の審査を行わない形になっておりまして、書面審査でやることになっておるわけでございますが、書面審査でやるために模倣者が横行するというようなことがあるのではないかという心配は当然出てくるわけでございますけれども、その点については特許法と違いまして先願主義を採用してないから、模倣者が真の権利者を排除して独占権を持つというようなことはない。また、登録をすることによって、もしその人が模倣者であるならば、むしろ侵害の意思を権利者に明らかにするというようなことになって、それによって真の創作者の方から訴えを起こされる可能性が出てくるというようなこともございますし、それから、虚偽による登録は罰則も適用されるということでございますので、私どもは、この法律規定の運用によりましても、模倣者が出てきて実質の創作者との間でいろいろと争いが起こるおそれは割合少ないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  145. 青山丘

    ○青山委員 本法案が、正当な権利が保障されていく、また国際的な観点から見ても公正で妥当であるという点については私は評価いたします。ただしかし、登録事務の機関の運営についても、手数料の問題あるいは実態としてどの程度の登録手続が可能なのか、その見通しについてもまだまだ流動的な部分が相当あると思います。したがって、法律の趣旨が適正に施行されますように、ぜひひとつその運用について十分御配慮くださいますようにお願いをいたしまして、質問を終わります。
  146. 田原隆

    ○田原委員長代理 工藤晃君。
  147. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 まず、半導体集積回路回路配置法案の立法化のいきさつについて伺います。  一つは、日米半導体摩擦の経過の中でどのように出てきたかという点であります。結論からいうと、こういう法律をつくるということはアメリカ側からの要求があったのではないか。経過を見ますと、ちょうど七七年三月にアメリカ半導体工業会、SIAが結成されて、日本に対するこの問題でのいろいろ批判が高まった。その当時は特に十六KDRAMの問題が中心であったけれども、八一年九月の関税引き下げで第一次摩擦はおさまったと見られた。しかし、すぐに続いて六十四KDRAMを中心にして、特にその日本シェアが高まったということからまた摩擦が大きくなり、その後日米先端技術作業部会が設けられ、八二年十月の提言、それから八三年十一月の半導体提言が出され、この提言の中で半導体企業の知的所有権について何らかの保護をということが出された。その後、昨年十月アメリカ半導体チップ保護法が成立したということで、日本でも似たような法律をつくることが急がれて、今度の四月九日発表した政府の対外経済対策の中にも、半導体チップ権利保護法案コンピュータープログラム権利保護法案を今国会での成立に全力を挙げるということが書き込まれたというので、この法律案を出すいきさつというのは、まさに日米半導体摩擦の落とし子みたいにして出てきた。大体そういうふうに理解していいかどうか、この点をまず伺います。     〔田原委員長代理退席、委員長着席〕
  148. 木下博生

    木下政府委員 半導体集積回路最初開発され、実用に移されましたのはアメリカでございまして、一九五〇年代の後半だったわけでございます。それ以降アメリカの国内において目覚ましい技術進歩を遂げまして、今御指摘がありましたように、半導体集積回路集積度も高まる、それから内容も非常に複雑なものができるというような形になってきたわけでございまして、アメリカ世界の中での半導体の先進国の位置を占めてきたわけでございます。  我が国も、当然のことながら、半導体集積回路重要性を考え、政府においても種々の技術開発の施策を進めてまいりましたし、それから日本のエレクトロニクス関係企業も、半導体集積回路の将来性を考えて積極的にその技術開発し、またアメリカから技術を取り入れて、半導体集積回路の生産をふやしてきたわけでございまして、過去十年間において生産の金額において十八倍というような非常に著しい伸びを示してきたわけでございます。現在、世界におきましては、六割がアメリカ企業の生産、三割が日本企業の生産ということになっておりまして、両国で九割の生産を占めておる状況でございます。  したがって、従来、半導体集積回路についてはアメリカ技術的には先進的な立場にあったわけでございますが、近年日本側においても急速に技術開発が進み、半導体製造設備についても従来はアメリカ製の設備を使っていたのが日本製の設備をどんどん使うようになってきて、むしろその日本製の設備の方がいいものができるようになってきたというような事態も起こってきたわけでございます。  したがいまして、半導体集積回路がそのような発展をたどって、まあアメリカの方がやや技術的には高い分野もございますけれども日本アメリカとがほぼ肩を並べるような形になってまいりまして、そして、その半導体集積回路開発に当たって非常にコストがかかるのに対し、それをまねすることは比較的容易だということで、その開発者、創作者の利益を保護する必要があるだろうという意識は日米双方で起こってきたわけでございます。  それで、半導体関連いたしまして、八〇年代の初めから日米間でいわゆる貿易問題、技術問題等に関連して話し合いを行ってきました過程で、今先生から御指摘がありましたように、一昨年の十一月に提言が出されまして、「両国政府は、半導体企業に対する知的所有権についての何らかの保護は、新たな半導体製品の開発に対する必要な誘因をそれらの企業に与えるために望ましいことを認識すべきである。」ということで、適切な対応策をここでうたっておるわけでございまして、そのような意味で、我が国としては独自の立場半導体回路配置保護の立法の必要性感じたわけでございます。
  149. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 木下局長にお願いしますが、限られた質問時間でありますから、集積度を高くして、速度を上げていただきたいと思います。  さて、それに続いての質問ですけれども、ともかく今回のこの法案でも、アメリカ法律でも共通しているのは、開発者マスクワークとか回路配置をまねされるようなことが起きないようにするということが目的なんです。先ほど来ちょっと質問に出ましたけれども、これをごく簡単に答えていただきたいのですが、かつては、マイコンについて言うと、日本のメーカーのすべてはインテル、モトローラ、ザイログなどの米国企業のセカンドソースなどと言われたことがあったのですが、少なくとも第二次摩擦という時代になってから、実際日本の方がそういうことをまねしてけしからぬということがあったのですか、ないのですか。  例えば、ザイログ社と日電の紛争というのも特許の侵害ということが問題であって、何か回路配置をコピーしたとかいうふうに聞いてないのですが、事実関係だけちょっとお答えください。
  150. 木下博生

    木下政府委員 過去において日本企業アメリカからそういう技術を導入いたしまして、同じようなものをつくったという経緯があるわけでございますが、最近は、日本企業自身で独自に開発した論理回路を含んだ集積回路をつくってきておるわけでございます。  今御指摘日本電気とザイログ社との紛争につきましては、私どもの考え方では、回路配置に関する紛争というものではなく、むしろ今先生おっしゃいましたように、回路技術、ソフト技術、生産技術分野においての紛争だということで考えております。
  151. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これはこの法案の評価にもかかわるのですが、実際にそういうことは余り起きてないというのに、法案だけつくろうということも一つ問題なんです。  その次の問題は、昨年十月、アメリカ半導体チップ保護法が成立しましたが、日本が似たような法律をつくらないと一体どういうことが起きると政府は予想しましたか、これも簡単にお答えください。
  152. 木下博生

    木下政府委員 アメリカ半導体チップ保護法は、相互主義的な考え方をとっておりまして、アメリカ法律と同じような内容保護している国の半導体でなければ、アメリカの国内において保護しないというような形になっております。  したがいまして、我が国といたしましては、アメリカに相当の量の半導体の輸出をしておりますので、輸出しております各企業アメリカにおいてまねされないように保護を受けるためには、同じような立法措置をすることはアメリカ法律の見地からは必要だということは言えると思います。
  153. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そこで、通産省としては産構審の半導体チップに関する法制問題小委員会を設けて、この法案のもとみたいなのがつくられたと思うのですが、私は小委員会委員の名簿を見て、非常に奇異に感じたことがあります。  それは、こういう点は重大なことだと思うのですが、東芝、富士通、日立製作所、シャープ、日本電気、ソニー、大体これは重立った半導体メーカーのすべてとは言えないけれども、少なくとも私の見たところ六七%くらい占めている、そういう企業の代表と、それから日産自動車初め、幾つかの大きなユーザーの代表のほかに、インテルジャパンの代表取締役の方と、日本テキサスインスツルメンツ代表取締役会長という、一〇〇%外資企業の代表がこの中に入っていることですね。少なくとも日本の立法をするとき、一つの新しい法律をつくろうとするとき、その素案をつくるような過程に、今までこういうことはあっただろうか。  今度の六十年四月九日の経済対策閣僚会議の対外経済政策を見まして、この中にはたしかある問題を限って、通信の端末機器の基準をどうするかということで、そういう外国企業日本人の代表ですか、それも入れてやるということが出されていたと思うわけなんですが、法律をつくる上で、そういうふうなことというのは今まであったのかどうか、それを伺いたいと思います。
  154. 木下博生

    木下政府委員 半導体集積回路というのは極めて高い国際商品的なものでございまして、日米間のみならず、各国との間で相当の取引が行われ、また技術も相互に移転し合っているものでございます。そのようなものでございますので、半導体集積回路保護を行うための法律審議いたします際には、十分に海外の動向、海外の企業の意向等も含めて聞く必要があろうというふうに考えたわけでございまして、産業構造審議会で立法措置についていろいろ検討いただく際には、広く各界の有識者に御参加いただくという考え方に立ちまして、委員の人選に当たりましては、外資系企業関係者にも入っていただくのが一番公平に広く意見を聞くことができるというふうに考えたからでございます。もちろん、一〇〇%外資企業であっても日本企業でございますし、それからメンバーになった方々は日本人であるということは当然でございまして、こういう内外無差別の考え方で今後行政を進めることが非常に重要かと考えております。
  155. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私が聞いたことに答えてないのです。これまで日本法律をつくるときに、一〇〇%外資の、それは日本法人になっているでしょうけれども、多国籍企業というのはまさに多国籍であるところが特徴的なのであって、そのテキサスインスツルメンツの代表者であることは変わりないわけなんで、そういう者を入れて法律をつくる準備をしたことがあるのかどうか。  さっき挙げましたのは、電気通信端末機器の基準をつくるときに「電気通信審議会への外資系企業日本人役職員の参加等により透明性の確保を図る。」といって、これは基準づくりですからね、法律づくりとちょっと違うと思うのですが。
  156. 木下博生

    木下政府委員 今まで日本制定されました法律を、案を審議するに当たっての審議会で一〇〇%外資の企業が入った例があるかどうかという点は、ちょっと確認できませんが、私が記憶しておる限りにおいては、余り今まではなかったのではないかと思います。  ただ、このような世の中になりまして、国際化している時代においては、当然のことながら、いろいろな行政を進めていくときに、単に日本企業ではなくて外資系企業の人たちの意見も聞いて、しかし、それはもちろん法律に基づく資格を持った人を入れるわけでございますけれども、そういう形で進めるのが今後の経済政策を進めるに当たって非常に重要なことだと考えております。
  157. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それは大変重大な発言だと思うのですね、後にも先にも初めてやったということで、この報告で今後やる方針かと思ったら、既に通産省法律づくりにまでそういうことを始めていたということ、極めて重大だと思います。  それで問題は、この通産省の産構審の小委員会審議がどのようにやられたかということで、これももう詳しくお答えいただく必要はないのですが、率直に言わしていただくと、これは中間答申もなければ何もなく、二カ月か三カ月ででっち上げたという感じですね。極めて内容がお粗末で、むしろ私はアメリカ議会のカステンマイヤーの報告なんかを読んだ方がいろいろ考え方がわかるぐらい、こちらの方がよくわからない点があります。  この中で、ただ一つ気になったのは、これは先ほどの議論とも関係あるのですが、この二十八ページのところ「半導体集積回路及びレイアウトの定義を法律上どのように表現するかは、今後の検討課題である。」として、そもそも保護すべき半導体集積回路及びレイアウトの定義を法律上どのように表現するかは今後の検討課題だとして、それさえも決まらないうちに、いろいろな話が出てしまった、そういうことなんです。  ですから、よくよく冷静に考えてみても、今度の知的財産所有権を保護するというけれども、特許権の保護でもない、著作権の保護でもない。いわば第三の男があらわれてきたわけですね。それで、しかもたった一つの工業製品のために、これをなぜつくらなければいけないのか、非常に異例なことをおやりになるのですから、もっともっといろいろ各方面から検討を加えてしかるべきではないか。この小委員会のメンバー、先ほど私いろいろ批判しましたけれども法律関係の人、入っていると言えば入っているけれども、極めて人数が少ないわけですね。本当に工業所有権との関係、著作権との関係とかいろいろ検討する必要があったのじゃないか。少なくとも、カステンマイヤーの報告なんかを見ますと、著作権からのアプローチと独自のアプローチ、それぞれどういう考えがあるかぶつけ合って、その中で少しはわかるようになっているのに比べると、大変お粗末過ぎるのじゃないか。そういう点で、お答えは時間も余りありませんので、この中にあるさっき言ったいわゆるレイアウトの定義、これは解決したのですか。
  158. 木下博生

    木下政府委員 半導体チップ権利保護に関する問題は、先ほど申し上げましたように、一昨年来通産省の中で担当者がいろいろと勉強をずっと続けてきていたわけでございまして、審議会は昨年の秋から始まっておりますが、七回にわたって審議をいたしまして、非常に活発な御意見をいただいたわけでございますし、加藤一郎東大名誉教授を初めとして、北川京都大学教授は著作権審議会の委員でもございますし、それから中山東大教授は工業所有権に関する権威ということになっておりまして、そういう方々の御意見も入れながら法律をつくったわけで、短期間ではございましたが、非常に密度の濃い審議が行われたわけでございます。  先ほど御質問の定義の問題でございますが、この小委員会の報告でも、保護対象は、その①のところで極めて明確にこうすべきだということを書いておりまして、法律上どのように表現するかは今後の検討課題と言っているわけでございまして、この保護対象に関する審議会の意見を参考にして法制局と協議し、我々としては定義を定めたわけでございます。
  159. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 文化庁に来ていただいておりますね。著作権審議会での半導体チップ回路配置の法制問題の審議状況について伺いたいわけであります。  米国議会では初め著作権法として法案検討してきた、こういういきさつから、文化庁としても検討をかなり前からやられたと思うのですが、著作権審議会の第一小委員会ですか、そこで昨年の十月以来審議して三月まで続いたけれども、まとめまでいかなかったというふうに聞いておりますが、どうだったのか、それから、どういう意見があったのか、何が多数意見で何が少数意見が、簡単で結構でございますからお答えいただきたいと思います。
  160. 岡村豊

    ○岡村説明員 昨年の十月にアメリカ議会半導体チップ保護法が成立いたしました。これは著作権法の中に第九章をつけ加えるという格好での改正であったものでございます。そこで、私ども文化庁といたしまして、半導体集積回路著作権法による保護関係について著作権審議会の第一小委員会で御審議願ったところでございます。  その結果、回路配置の設計図面につきましては、これは著作権法に言う学術的性質を有する図面ということで著作権法保護の対象になることは明らかであるという結論を得たところでございます。  次に、チップ製品自体についてはどうかという問題につきましては、設計図面にあらわれました回路の配置が写真的手法によりましてチップ製品上に再生されてはおりますものの、チップ製品自体は工業製品でございますし、また、立体的構造を持ったものでございますので、これに著作権法による保護を及ぼすということについては問題のあるところでございますというようなことから、チップ製品自体に著作権法による保護を及ぼすべきではないというのが審議会の大方の御意見でございまして、したがいまして特段の報告等は作成していないという状況でございます。
  161. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私が事前に伺ったのだと、何が多数意見か何が少数意見か決まらないうちに済んでしまって時間切れになったということでしたが、そういうことではなかったのですか。要するに三月中ごろの法案提出日に間に合わなくなったので、それでうやむやで終わった、それで報告書も出なかった、そういうことじゃないのですか。
  162. 岡村豊

    ○岡村説明員 ただいまお答え申し上げましたように、チップ製品自体に著作権法による保護を及ぼすことにつきましては種々問題があり、チップ製品自体に著作権法による保護を及ぼすべきであるという結論には至りませんでしたものですから、したがいまして、著作権法によるカバーという問題にはなりませんものでしたから報告書等作成していないわけでございます。審議自身のおおよそのお考えとしては、私が今申し上げましたようなことがおおよそのお考えでございまして、したがいまして、時間切れといったようなたぐいのものではございません。
  163. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 おおよその意見ということで伺っておきますが、次の私の質問は、今度の法律で何が保護すべき知的財産になるのかという点で、要するに自分がつくったという回路配置なら何でも保護されるのか。それで、先ほど挙げましたアメリカ法律を見ても、例えば次のようなマスクワーク保護が適用されないという中で、何か平凡でありふれたデザインあるいはこれが変形されたようなものはだめだとか、そういうことがあるのですが、日本の場合は、先ほど来の質問を伺っていて、何でも出したものはいいということなんですか、これも本当に簡単な答弁をいただきたいと思います。
  164. 木下博生

    木下政府委員 アメリカ法律の中に御指摘のような規定があるのは確かでございますけれども、個々の要素が平凡でありふれたものであったとしても、全体としてオリジナルか否かが法律により保護されるか否かのポイントとなるとの趣旨でございまして、平凡でありふれたデザインは必ず保護されないとの趣旨ではないと我々は理解しております。回路配置につきましては、多くの資金と労力を投入した知的作業の結果物でございますので、創作物が保護に値するものとして所定の手続を経て登録を申請してきたものにつきましては、その登録を認め、保護することが適切だというふうに考えておる次第でございます。
  165. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の答弁の中にもありましたけれども通産省説明によると、回路配置開発は莫大なコストが要る、他人の回路配置を模倣した場合には十分の一以下のコストしか要らない、だからこの模倣を禁止するんだ。それからカステンマイヤー報告を見ても、背景と問題の性質を論じているところで、要するに新しいチップをつくる企業が数年かかるとか、技術者の数千時間の労働が要るとか、数百万ドルぐらいかかるとか、ところが競争者の場合は、それをまねすると五万ドル以下で数カ月でマスクワークを模倣できる、だからそういう性質があるから、それが中心問題だ、だから守らなければいけない、大体そういう考え、それが一番中心問題ですね。  それで、それを前提にして私は次の質問を進めるわけなんですが、そうすると、実際に最近どういうような模倣の例があったかということがこの委員会でずっと質問として出されたわけでありますが、集積度の低いときはお互いに、お互いにといいますか、要するに認め合っていた。しかし、今の段階では模倣していろいろつくっているという例は余りないんだ、ないというお答えですね。将来集積度が高くなるとそれが出てくるから、それに備えなければいけない、大体そういう趣旨だと私は伺ってきたわけです。それを前提にしてさらに質問を続けます。  私が非常に強く疑問を感じることは、例えばDRAMの例をとってみても二、三年でもう次の世代が出てくるわけですね。一キロビットが出てきたのが、出荷時期は一九七一年、四キロビットが七三年、十六キロビットが七六年、六十四キロビットが七九年、二百五十六キロビットが八三年として、本当に二、三年ごとに次々と出てくるということと同時に、ただこれはマスクワークだけの問題じゃなしに、次の世代に上がるときには生産技術上の進歩、特に微細加工技術が、最小回路線の幅、ミクロンで示すと一キロビットのときの十が二百五十六キロビットのときは二ないし一・五ミリミクロンになる、生産技術が絶えず上がっていかないとそれに伴わないということと、しかもこのチップ産業というのはまさに量産効果といいますか、大量生産をやらなければいけないので、一つが十ドルとか五ドルとかどうしても安くなってしまう。それでかなりの金額の設備投資をやらなければいけないことになりますね。だとすると、今簡単に模倣ができるんだと言うけれども、本当に模倣してつくろうと思えば、模倣される相手とそう変わらない生産技術でもって、しかもどんどん高度に高める力を持って、しかも百億とか二百億円の設備投資のやれるようなそういう企業でなければ模倣が第一できないわけでしょう。そういうことになってきていますね。将来のことを考えればますますそうなるわけですよ。  さらにもう一つ。新しいチップがあらわれて、その価格動向を見ると、非常に特徴的なのは、よく言われるラーニングカーブというのが最も典型的に出てきて、十六キロビットの場合だと、七七年以降三年間で、八〇年には三分の一になった、翌年にはまた三分の一になった。それから六十四キロビットの場合は七九年以降三年間で二十分の一まで低下したという、こういうことなんですから、このことを考えてみても、何か回路配置保護をしないと、競争者が出てきて簡単に安くつくって前の先発者が困るというのは大変おかしい、事実に反するんじゃないか。  むしろこの法案の出てくる問題というのは、かなり同じ水準の最も先端にあるもの同士の関係を調整するという意味はあるかもしれないけれども、少なくともよその回路配置をいわば一生懸命解析して、後から売り出そうとすると先発者はもうどんどん量産に入ってきて、しかも二年か三年が勝負ですからシェアを持って、しかも後発者が入ろうとすれば価格が下がっちゃっているときですからなかなか参入できない、こういう実態なんじゃないか。だからそういうことで、今まで通産省説明やカステンマイヤー報告の中にある、まねすることを防がないと先発者が非常に困る事態に陥るとか、あるいはイノベーションにマイナスになるというのは非常に誇張があると私は思っています。  だから結局、私がここで、この法案の中でこの法案が果たそうとしていることを理屈づけるために持ち出したのは、新しい形の知的財産である、知的所有であるというけれども、結局我々としてとらえられるのは、先発者はお金をうんと使いました、大勢の手間を使いました、それだけじゃありませんか。そうすると、お金を多く使ったらそれが知的財産なのか、手間をうんとかけたらそれが知的財産としてそのまま認められていいのか、非常に強く疑問に思いますが、その点、どうでしょうか。
  166. 木下博生

    木下政府委員 日本において半導体集積回路の生産に従事している企業は二十八社くらいあるわけでございまして、事業所の数はもっとたくさんあります。それで日本企業の場合にはお互いに切磋琢磨してよりよい製品をつくろうということで競争しておりますので、技術水準はほぼ大体肩を並べていると考えていただいてよろしいかと思います。  今先生指摘のありました点は生産技術等についての問題でございまして、例えば一・五ミクロンの微細加工の技術を持っている企業で、そういう技術を使ってある種の半導体をつくっている企業であれば、ほかの企業が独自に開発した半導体集積回路回路配置をまねて、それと同じようなものをつくっていくということは数カ月の差があればできるわけでございます。そういうことによって最初に莫大な期間と資金とを要して開発した人たちの努力が無になる、そのことによって公平な競争が阻害されるということを防止するためにこの法律必要性が出てきたわけでございまして、それによって技術開発がより進んでいくということを可能にするベースをつくっていこうというのがこの法律の考え方でございます。
  167. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 数カ月後には同じものをどんどん売り出せると言うけれども、さっき言いましたように、少なくとも問題になっている十六から六十四、六十四から二百五十六キロビットですね、それから一メガと上がっていくときに、それは本当につくって売り出してもうけるには負けない量産をしなければいけないわけでしょう、価格はどんどん下がっていくわけですから。だから私が言うのには、それから設備投資をしたり、それから同じような技術水準を持つことは容易じゃないわけですから、次が追いかけようとしている間にもう次の製品が出てきているわけでしょう、これが特徴でしょう。だから、このことによって保護しなければ先発者が非常に困った事態になったという例はまず第一に今までないと言っているのです。  それから、例えば日本が六十四KのDRAMで世界市場の七割を制したというけれども、今まではそういう法体系はアメリカにもなかったし、日本にもなかったわけですから……(私語する者あり)
  168. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 発言中ですから御静粛に願います。
  169. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 当然簡単に日本の六十四KDRAMがまねされてどんどん押されたという事実があってよさそうなものですが、そういうことも余り聞いてない、そういうことを言っているわけなんです。  それで時間も余りないのでもう一度だけやると、要するにお金をうんとかけて手間がかかったというだけで知的な財産と言えるのかどうかということなんです。私は言えないと思うのですが、どうですか。
  170. 木下博生

    木下政府委員 メモリーの半導体の場合には、たしか先生が今おっしゃったように技術進歩によって集積度が非常に高まって、そのテンポも非常に速いという実態がございますが、ロジックあるいはマイクロプロセッサーというような論理計算を行うようなものであれば一つ集積回路について非常に独自の回路配置ができて、それが非常に生命が長いというものもあるわけでございます。  それで今御指摘の点はむしろ生産技術、加工技術が進んできたことによって例えば集積度も高まってきたということでございますので、高まった集積度集積回路をつくれる企業であれば、ほかの企業開発したものをほかの企業のかけたコストよりはるかに少ないコストでそのまままねしてやるということは論理的にかつ技術的に十分可能でございますので、そういうことを防止しようというのがこの法律の趣旨でございます。
  171. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 もう一問伺いますけれども、先ほどアメリカ系企業日本企業世界の九割ということを言いましたが、企業の数で言いますと例えばアメリカで十社とか日本の十社で、それぞれの業界でどのくらいのシェアを持っているか、簡単に答えていただきたいと思います。
  172. 木下博生

    木下政府委員 日本の場合には上位十社のシェアが九割を超えておりますし、アメリカの場合には上位十社のシェアで七五%程度のシェアを持っております。
  173. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 この法案内容で非常に疑問に持たれるのは、たった一つの種類の工業製品のために、工業所有権でもないあるいは著作権でもない、まさに第三の男を独立してつくらせるということ、それでしかも内容的に言いますと、さっき言った日本の十社、アメリカの十社でほとんどを占めてしまう。そういう少数者のための立法という感じがしてならないわけであります。しかも、工業所有権とかあるいは著作権で守られるところは守られている、その上にそれぞれの企業は、資本力が強いとか立派な研究所を持っているとか、それから技術水準が高いとか、そういう点でほかの企業よりか優位な立場に立っていながら、なおかつこの回路配置のレイアウトということでなぜ保護をさらにかけられなければいけないのか。余りにも重ね重ねの保護ということになるのではないか。しかもレイアウトと漠然と言って、レイアウトのどの要素について守るか、これは全く漠然としているわけですね。レイアウトといったって、もちろんある機能を果たすのと密接不可分のレイアウトなんでしょうけれども、こういう要素が新しいからこれを客観的に取り出して社会的にも認めて保護しましょうというのでなしに、ともかく自分でつくりましたというレイアウトなら何でも持って煮なさいということになっているわけなんです。  ですから、もう一度言いますと、たった一つの工業製品のために、しかも日本の十社とかアメリカの十社でほとんど世界市場を押さえてしまうような、そういうもののためにさらに手厚い保護が要るのか。しかも、知的財産保護という点からいいましても極めて疑問に感じるわけですね。さっき言ったようにお金をうんとかけているから守らなければいけない、手間がかかっているから守らなければいけない、これはどこが知的財産に当たるのか、その分析もない、結論だけのものだ、こういうふうに私は考えるわけです。  そういう点でもう一つ大きな問題として、結局、日米半導体ICメーカーがこういう形で保護し合うことによって、ただ日米間の摩擦解消というだけでなしに、一つの事実上の国際カルテルみたいになって、ヨーロッパ系の企業に対し、あるいはよく言われるNICS系企業の追い上げを遮断するような批判も私聞いておりますが、そういう国際カルテル的な意味も出てくるのではないか。その点どうでしょうか。
  174. 木下博生

    木下政府委員 特定の工業製品だけを対象として、法律により保護することになった例はこの法案が初めだというふうに私どもも考えておりますけれども、ただ半導体集積回路といいますのは、機械器具に非常に広く使われるようになってきておりまして、私ども産業の米というふうに言っておるような重要な産品ということになってきているわけでございます。  それで、そういう重要な産品につきまして、しかも高度の先端技術を使ってつくられる製品につきまして、まねをすることによってまねをされた人たちの努力を無に帰すような取引が行われるということは、決して産業全体の発展に好ましいことではない。そういうようなことが行われるために技術開発が進まないというようなことになれば、それによって結局経済全体の発展にも悪影響を与えるというようなことになるわけでございまして、そういう見地から公正な取引ができる土台をつくろうというのがこの法律の趣旨でございます。したがってこの法律は、単に模倣者を防止するという趣旨だけではなくて、取引上のルールを確立するという面も持ち合わせているわけでございます。  それから発展途上国の追い上げ等についての御指摘ございましたけれども発展途上国において我が国の製品を模倣し、あるいはアメリカの製品を模倣してつくったものがどんどん伸びていくことが好ましいということではなくて、そういう発展途上国自身技術を磨いてみずからの独自の製品をつくってもらうということが非常に重要なわけでございまして、そういうものについては我が国法律我が国企業と同じように保護してやろうという考え方でございますので、むしろ非常に国際的な点にも留意した法律であると我々は考えております。
  175. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 時間が参りましたので、質問は終わります。  我が党も、知的財産の保護ということは大変大事なことだと思っておりますけれども、この法案に関して言えば、まさに日米経済摩擦の中で出され、十分な検討が各方面でなされないまま出されてしまったと感じざるを得ませんし、またこの法案の効果そのものが、余りにも日米ICの大手のメーカーの利益を裸で体現していて、さっき言いましたような国際カルテルのおそれも感じます。そういうことからどうしても賛成できないということで、私の質問は終わります。
  176. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 工藤晃君の質疑は終わりました。  これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  177. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  半導体集積回路回路配置に関する法律案につきまして採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  178. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)     ―――――――――――――
  179. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 この際、本案に対し、田原隆君外三名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。田原隆君。
  180. 田原隆

    ○田原委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     半導体集積回路回路配置に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 回路配置利用権の法的性格にかんがみ、回路配置創作者の適切な保護に留意するとともに、本制度の創設に伴い、事業者の積極的な独自技術による開発の促進を図ること。  二 指定登録機関への登録事務の委任に当たっては、その中立公平性を確保するとともに、登録申請件数等の的確な把握に努め、その事業運営が円滑に遂行されるよう万全を期すること。  三 半導体集積回路回路配置創作者の権利が国際的にも適切に保護されるよう、WIPO(世界知的所有権機関)における検討作業等において、新たな条約の締結に向けて積極的役割を果たすこと。 以上であります。  附帯決議案の内容につきましては、審議経過及び案文によって御理解いただけると存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  181. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本動議について採決いたします。  田原隆君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  182. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。村田通産大臣
  183. 村田敬次郎

    村田国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議については、その御趣旨を尊重して、遺憾なきを期してまいる所存でございます。     ―――――――――――――
  184. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  186. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 次に、内閣提出中小企業技術開発促進臨時措置法案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。村田通産大臣。     ―――――――――――――  中小企業技術開発促進臨時措置法案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  187. 村田敬次郎

    村田国務大臣 中小企業技術開発促進臨時措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  昨今の中小企業をめぐる環境を見ますと、技術革新が急速かつ広範に進展し、技術の細分化、複合化傾向が増大する一方で、国民ニーズの多様化、高度化、短サイクル化の傾向が強まっています。このような環境変化は、中小企業がみずから積極的に技術開発を行い、その技術力の飛躍的な向上を図るとともに、これを生かして新たな事業分野拡大や生産工程の合理化等を実現する機会を著しく増大させるものと言えます。しかしながら、依然として中小企業技術開発活動及びこれを支える基盤は脆弱であり、これを放置した場合には、せっかくの機会を逸することになるのみならず、我が国産業技術の調和ある発達が阻害されることとなりかねません。このため、技術開発の進展に即応した中小企業技術開発を促進し、その技術開発力を涵養することにより、我が国の今後の発展の牽引力となるべき活力ある中小企業を育成していくことを主眼として、本法案を立案したものであります。  まず、本法案目的は、最近における技術革新の急速な進展及び需要構造の著しい変化に対処して中小企業が行う技術開発を促進するための措置を講ずることにより、中小企業技術の向上を通じて、中小企業の振興と我が国産業技術の調和ある発達を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することであります。  次に、本法案においては、第一に中小企業者及び組合等に対して、本法で振興しようとする技術開発の対象とすべき技術内容中小企業者及び組合等がとるべき技術開発の実施方法等を示す中小企業技術開発指針を定めることとしております。  第二に、技術に関する研究開発を行おうとする中小企業者及び組合等は、それぞれ技術開発に関する事業についての計画を作成し、都道府県知事の認定を受けることができることとしております。  第三に、認定を受けた中小企業者及び組合等並びにその組合等の構成員たる中小企業者に対し、種々の助成措置を講ずることとしております。助成措置内容は、具体的には、技術開発事業の実施に必要な資金の確保、中小企業投資育成株式会社法の特例措置の適用、中小企業信用保険法の新技術企業化保険の付保限度額の拡大等の特例措置の適用であります。  また、これらの組合等及びその構成員たる中小企業者の行う技術開発事業のために税制上の特例措置を講ずることとしております。  第四に、中小企業者及び組合等が行う技術革新の進展に即応した技術開発を促進するため、情報の提供及び人材の養成等に努めるとともに、技術開発事業の的確な実施に必要な指導及び助言を行うこととしております。  以上が、この法案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  188. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ――――◇―――――
  189. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 この際、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  エネルギー、基礎素材及び鉱物資源に関する諸問題を調査するため小委員二十名よりなるエネルギー、基礎素材及び鉱物資源問題小委員会並びに流通に関する諸問題を調査するため小委員二十名よりなる流通問題小委員会を、それぞれ設置することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  両小委員会の小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  両小委員会の小委員及び小委員長委員長において指名し、追って公報をもってお知らせをいたします。  なお、小委員及び小委員長辞任補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  192. 粕谷茂

    ○粕谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る十九日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十四分散会      ――――◇―――――