○工藤(晃)
委員 今の答弁の中にもありましたけれ
ども、
通産省の
説明によると、
回路配置の
開発は莫大な
コストが要る、他人の
回路配置を模倣した場合には十分の一以下の
コストしか要らない、だからこの模倣を禁止するんだ。それからカステンマイヤー報告を見ても、背景と問題の性質を論じているところで、要するに新しいチップをつくる
企業が数年かかるとか、
技術者の数千時間の労働が要るとか、数百万ドルぐらいかかるとか、ところが
競争者の場合は、それをまねすると五万ドル以下で数カ月で
マスクワークを模倣できる、だからそういう性質があるから、それが中心問題だ、だから守らなければいけない、大体そういう考え、それが一番中心問題ですね。
それで、それを前提にして私は次の
質問を進めるわけなんですが、そうすると、実際に最近どういうような模倣の例があったかということがこの
委員会でずっと
質問として出されたわけでありますが、
集積度の低いときはお互いに、お互いにといいますか、要するに認め合っていた。しかし、今の段階では模倣していろいろつくっているという例は余りないんだ、ないというお答えですね。将来
集積度が高くなるとそれが出てくるから、それに備えなければいけない、大体そういう趣旨だと私は伺ってきたわけです。それを前提にしてさらに
質問を続けます。
私が非常に強く疑問を
感じることは、例えばDRAMの例をとってみても二、三年でもう次の世代が出てくるわけですね。一キロビットが出てきたのが、
出荷時期は一九七一年、四キロビットが七三年、十六キロビットが七六年、六十四キロビットが七九年、二百五十六キロビットが八三年として、本当に二、三年ごとに次々と出てくるということと同時に、ただこれは
マスクワークだけの問題じゃなしに、次の世代に上がるときには生産
技術上の進歩、特に微細加工
技術が、最小
回路線の幅、ミクロンで示すと一キロビットのときの十が二百五十六キロビットのときは二ないし一・五ミリミクロンになる、生産
技術が絶えず上がっていかないとそれに伴わないということと、しかもこのチップ
産業というのはまさに量産効果といいますか、大量生産をやらなければいけないので、
一つが十ドルとか五ドルとかどうしても安くなってしまう。それでかなりの金額の
設備投資をやらなければいけないことになりますね。だとすると、今簡単に模倣ができるんだと言うけれ
ども、本当に模倣してつくろうと思えば、模倣される相手とそう変わらない生産
技術でもって、しかもどんどん高度に高める力を持って、しかも百億とか二百億円の
設備投資のやれるようなそういう
企業でなければ模倣が第一できないわけでしょう。そういうことになってきていますね。将来のことを考えればますますそうなるわけですよ。
さらにもう
一つ。新しいチップがあらわれて、その価格動向を見ると、非常に特徴的なのは、よく言われるラーニングカーブというのが最も典型的に出てきて、十六キロビットの場合だと、七七年以降三年間で、八〇年には三分の一になった、翌年にはまた三分の一になった。それから六十四キロビットの場合は七九年以降三年間で二十分の一まで低下したという、こういうことなんですから、このことを考えてみても、何か
回路配置を
保護をしないと、
競争者が出てきて簡単に安くつくって前の先発者が困るというのは大変おかしい、事実に反するんじゃないか。
むしろこの
法案の出てくる問題というのは、かなり同じ
水準の最も先端にあるもの同士の
関係を調整するという
意味はあるかもしれないけれ
ども、少なくともよその
回路配置をいわば一生懸命解析して、後から売り出そうとすると先発者はもうどんどん量産に入ってきて、しかも二年か三年が勝負ですから
シェアを持って、しかも後発者が入ろうとすれば価格が下がっちゃっているときですからなかなか参入できない、こういう実態なんじゃないか。だからそういうことで、今まで
通産省の
説明やカステンマイヤー報告の中にある、まねすることを防がないと先発者が非常に困る事態に陥るとか、あるいはイノベーションにマイナスになるというのは非常に誇張があると私は思っています。
だから結局、私がここで、この
法案の中でこの
法案が果たそうとしていることを理屈づけるために持ち出したのは、新しい形の知的財産である、知的所有であるというけれ
ども、結局我々としてとらえられるのは、先発者はお金をうんと使いました、大勢の手間を使いました、それだけじゃありませんか。そうすると、お金を多く使ったらそれが知的財産なのか、手間をうんとかけたらそれが知的財産としてそのまま認められていいのか、非常に強く疑問に思いますが、その点、どうでしょうか。