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1985-03-29 第102回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十九日(金曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 粕谷  茂君    理事 浦野 烋興君 理事 田原  隆君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 後藤  茂君 理事 城地 豊司君    理事 長田 武士君 理事 宮田 早苗君       甘利  明君    尾身 幸次君       加藤 卓二君    梶山 静六君       佐藤 信二君    椎名 素夫君       仲村 正治君    野上  徹君       野田  毅君    林  大幹君       奥野 一雄君    浜西 鉄雄君       水田  稔君    横江 金夫君       渡辺 嘉藏君    木内 良明君       西中  清君    福岡 康夫君       横手 文雄君    工藤  晃君       野間 友一君  出席政府委員        通商産業省産業        政策局長     福川 伸次君        工業技術院長   等々力 達君        工業技術院総務        部長       荒尾 保一君  委員外出席者        参  考  人        (東京大学名誉        教授財団法人        工業開発研究所        副理事長))   大島 惠一君        参  考  人        (東京大学工学        部教授)     石井 威望君        参  考  人        (読売新聞社論        説副委員長)   河野 光雄君        参  考  人        (東レ株式会社        取締役研究開        発本部担当研究        開発企画部長)  湯木 和男君        商工委員会調査        室長       朴木  正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  基盤技術研究円滑化法案内閣提出第三八号)      ————◇—————
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  内閣提出基盤技術研究円滑化法案を議題といたします。  本日は、参考人として、東京大学名誉教授財団法人工業開発研究所理事長大島恵一君、東京大学工学部教授石井威望君、読売新聞社論説委員長河野光雄君及び東レ株式会社取締役研究開発本部担当研究開発企画部長湯木和男君、以上の四名の方々の御出席を願っております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位におきましては、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、目下、基盤技術研究円滑化法案について審査を行っておりますが、参考人各位におかれましては、本案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いします。  なお、議事の順序でございますが、最初に御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただき、次に、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  まず、大島参考人にお願いをいたします。
  3. 大島惠一

    大島参考人 私、大島でございますが、この基盤技術円滑化法案について私の考えを述べさせていただきたいと思います。  私は、今御紹介にありました工業開発研究所ということで、産学官共同研究いろいろお世話をしておりますと同時に、今まで産業技術に関しましては通産省その他の政策についてもいろいろ携わっておったわけでございますが、今回のこの基盤技術円滑化法案というのは、私は大変重要な法案であるというふうに思う次第でございます。  その理由は、私の考えとしては二つございまして、一つは、技術開発と申しますか、こういった基盤技術というものを含めての技術開発あり方あるいは技術革新あり方というのが最近非常に大きく変わってきているということが言えると思います。これに即応しますためには、こういった法案というものについても、いわゆる革新的な考え方を取り入れた法案が必要であると思っている次第でございますが、その意味においてこれは大変重要であるということでございます。  それからもう一つ、第二点は、私が考えますのに、科学技術と申しますか技術開発というものが、今まで、例えば産業におきます技術というのは、資本であるとか労働であるとか、そういうようなものもございますが、それに関して幾分補助的と申しますか、考えられていたのが、国際的にも国内的にも、これが将来を決定する非常に重要な要素であるということで、例えば国際的に申しますと、サミットでもって国際的な技術協力というものが課題として取り上げられたわけでございます。これは今までに例のないことでございまして、経済協力とかあるいは軍事協力とか、そういうようなことは政治の場であるいは国際的な場で重要課題になっていたわけでございますが、技術協力がこういう中心課題になってきたのはごく最近のことでございます。  そういう意味におきまして、この技術に対する取り扱い、例えば今回の法案の中において、国際的な特許の問題において非常に新しい考え方で進んできているわけですが、これは過去において国際的な技術協力における日本との協力が、各国が非常に難しいと言われていた点でございます。  そういうような意味で、私は、前に申しました、技術革新が新しい展開をしているということ、それから第二の点は 国際的な技術協力というものが非常に中心的な国際間の課題になってきている、この二点から申しまして、この法案が極めて重要であると思う次第でございます。  もう少し具体的に申しますと、技術革新が非常に変わってきているという点については、今までは、例えば大学基礎研究を行っておりまして、それが開発研究になり応用研究になって実用化するというような形で、どちらかというと、基礎的な部分で非常に先端的と申しますか、独創的な研究が出て、それが技術になっていくという形が産業革命以後と申しますか、今までの形であったわけですが、最近の技術革新を見てみますと、生産技術と、基礎工学と申しますか基礎的な研究とが極めて密着しているということが言えるわけでございます。  例えば、私、低温の研究をやっていたわけですが、ジョセフソン効果というのがございまして、これは非常に低い温度での超電導という現象がございますけれども、細かいことは省略いたしまして、その研究でイギリスの理論物理先生ノーベル賞をもらったわけですが、現在それを通産省などでも、いわゆるジョセフソン結合素子といって非常に速いコンピューター素子として使うわけですが、これが開発が進んでいる。ところが、それが本当に実用化するか、また、極めて新しい素子ができるかどうかというのは、実は非常に細かい加工ができるかどうかという、そういう生産技術のところに非常に重要な飛躍原因があるわけでございます。  そう申しますと、大学とかあるいは基礎研究だけで、頭で考えているというようなことでは実際には開発ができないわけで、そういった生産の場に非常に直結した生産技術というものと結びついていないと新しい技術革新が出てこない。その意味におきまして、こういった今まで民間での基礎研究と申しますか、あるいは生産技術研究大学その他でのいわゆる学理的な研究というものは、少なくとも工学部門において、工学というのはエンジニアリングでございますが、その部面においては、非常に密着して一緒になって仕事をやらなければいけない。また、逆の言い方を申しますと、非常にニーズに近いところで基礎研究が行われていなければならない。  この法案一つの要点は、そういった民間でのいわば目的基礎研究あるいは実用化研究活力促進するということでございまして、これは日本におきましては、今までいわば基礎研究がおくれているというようなことが言われていたわけですが、その基礎研究がおくれているというのは、ただ大学とか国立研究機関だけではやっていけないことで、もちろんその重要性は非常に大きいわけでございますけれども、民間との結合と申しますか、提携、連携という形が非常に重要である、その点が一つ言えると思うわけでございます。  それから、もう一つの点は、先ほどちょっと触れました国際化の問題に関しましては、日本国際的な場において技術の貢献というものが最近非常に問題になっているわけでございます。例えば、貿易摩擦その他の一番大きな非難をこうむっている原因一つに、日本外国基礎技術を持ってきて実用化して、今の生産技術で非常に強いために世界のマーケットを席巻したというようなことが言われるわけでございますが、そうなりますと、今技術国際的に重要な課題になっているだけに、日本基礎研究、この基礎研究は今申しました、いわば純粋の学理の基礎研究ではなくて、産業技術に直結した基礎研究というもので世界に貢献するということが今後非常に重要な日本役割であり、また、国際社会の中に生きていくための日本にとっての非常に重要な政策課題であると思うわけでございます・  その場合に、先ほどちょっと申しました、私、国際協力の問題に関して幾分、パリのOECDにおりまして、科学技術工業局という局のお世話をしていたことがあるわけですが、そのときに、国際協力の場で大変問題になりますのは、日本との国際協力情報交換ということでは大変うまくいくけれども、日本と特に政府間の、政府のかかわり合っている研究協力する場合に特許の問題が非常に困る。アメリカあたり特許は全部自由に民間に渡すわけでございますが、日本は今までは法律上どうしてもそういうことはできない、ですから必ず対価をもらって、そして国の特許としてそれを相手に売るなりなんなりしなければいけないというようなことで、特許制度といいますか、特許の帰属の問題について非常に壁がございまして、なかなか本格的な共同研究ができないということを二、三の国から言われたことがございますけれども、事実日本は、今国際協力を進めようとしているわけでございますが、それについてこれが今まで障害になっていたわけでございます。それで、私はその点で今新しい一歩を踏み出したということで本法案に大いに期待するわけでございます。  それから、最後にちょっと申し上げたいのは、この法案の中に基盤技術促進センターの構想がございますが、その一つの大きな目的として、いわゆる新しい技術に対する出資あるいは融資をするということがございます。この点はとかく今まで、例えばアメリカあたりでございますと、御承知のとおりベンチャービジネスというのが非常に新しい技術革新促進の中核になっているわけでございますが、その背後にはいわゆるベンチャーキャピタルと申しますか、そういうものにお金を出す人たちがたくさんいるわけでございます。日本の場合におきますと、こういったリスクの大きい投資というものがなかなか行かないために、とかく新しい技術革新はほとんど大企業から出てくるという形がとられているわけです。実際にはいろいろ新しい発想、新しい技術が生まれてきておるにもかかわらず、本当にこれを実用化しようとすると、資本とかそういうような問題のためにどうしても大きな企業の中でなければできない、この点は非常に技術革新をおくらせるということが一つと、それからもう一つは、先ほども申しました、国際的に見ても日本に生まれた種を外国共同するというような場合にも、こういういわゆるベンチャーと申しますか、企業家精神に富んだグループというのは非常に大事でございまして、これに対して今この新しいセンターがそういう道を開くということは、日本の今までの投資環境その他から見まして非常に重要な役割を果たすのではないかと私は思う次第でございます。また、国際交流に関しましてもこのセンターが活発にそれを進めたい。  それからさらに、最後に、センターがいわゆる今までの公務員の身分、あるいは大学の場合に民間協力いたしますのは日本では非常に難しいわけでございます。アメリカですと私立大学が多いものですから、大学先生、大体自分の会社ぐらい持って、そこでその技術をどんどん民間協力できるわけですが、日本は、多くの場合大学先生公務員でございますし、まして国立研究機関の人はもっと制約が強くて、なかなか本当に民間協力して研究ができないということがございます。もしこのセンターがそういうことに対して道を開くきっかけとなれば、これは非常に画期的な新しい関係を開くのではないかと思うわけです。  最後に、そういう意味で私は、本法案が今までの明治以来の、どちらかというと官と民とあるいは学というようなものが非常に歴然と分かれていた日本技術開発に、円滑化法案という名前が示すように一つの潤滑油的な役割で壁を低めてやる、また、日本外国との関係においてもそういうことの役割を果たすとすれば、新しい時代において大変重要な役割を果たす法案ではないかと思う次第でございます。
  4. 粕谷茂

    粕谷委員長 大変どうもありがとうございました。  次に、石井参考人から御意見を御発表願いたいと思います。
  5. 石井威望

    石井参考人 私は、東京大学工学部におきまして産業機械工学科というところに所属しております。  産業機械工学科といいますのは、わかりやすく申し上げますと、最近のロボットとかあるいはオートメーション、工作機械自動車、さらに生産技術あるいは管理工学システム工学コンピューター応用というような、現在、産業の中で非常に重要なしかも成長している部門の関連の研究、教育をしているところでございます。そういう立場から本日の基盤技術研究円滑化法案に関する考え方を申し上げたいと思います。  まず、この法案がこういう時期に出てまいりましたことは極めてタイミングがよろしいというふうに存じます。  現在、技術革新が非常に活発な時期であることは新聞とかの報道で御存じだと思いますが、今後二十一世紀にかけましては、この技術変化がさらに大幅な飛躍をする時期ではないかと私は思います。したがいまして、予測といいましょうか、長期的に安定した、固定した考え方でいくことは非常に難しいわけでございますが、少し以前、既に技術革新がないというような悲観論が強かった時期がございますが、それは現在全く逆になったと申し上げていいと思います。  特に我が国がそういうことを今後本当にできるエネルギーといいましょうか活力を持っておるかということでございますが、これはいろいろの面で十分その活力を持っておる、これをいかにうまく引き出していくかということが非常に重要だと思います。この意味で、この法案はその国民の活力基盤技術の面で引き出す非常に重要な役割を果たすだろうと考えられます。  現在までの日本技術の主たる大きな枠組みといいましょうか特色は、後進国が急速に近代化を行うという、追いつき型の技術体系になっており、そういう追いつき型ではいわば世界のチャンピオンだったというような言い方もできるかと思います。ところが、今申し上げました今後の技術革新におきましては、そういう追いつき型では不十分でございまして、かつて先進国がやったように、もっとみずから創造的に、新しいものを自分でつくり出していくというタイプに体質改善しなければならない時期だと思います。  我が国技術は今のところはまだまだ、オールラウンドといいましょうか、すべての面ですぐれているというわけではございませんが、幾つかの面で非常に特色がある。しかも世界トップレベルというものがたくさん出てまいりました。全部を御紹介するわけにいきませんので二、三の特色的な点だけの性格を申し上げますと、例えば民生技術といいましょうか、生活に密着したような耐久消費財とか、あるいは民間産業で使うような生産財とか、こういうものを大量生産し、それをきちんと故障なく動かし、メンテナンスし、かつそれを流通するというようなことにかけましては恐らく世界最高水準になったわけであります。ほかの国のような政府主導の大プロジェクト、例えばアメリカなんかが典型でございますが、そういうような点では日本はむしろおくれておりますけれども、こういう民間民生中心技術分野では、特に生産技術がすぐれておりまして、現在では世界で最も信頼されている国であろうと思います。  今後もその特色は、先ほど申し上げました技術の革新的な時代に非常に重要な役割を果たすだろうと思いますが、いろいろな分野の間で、従来の体系から外れた思わぬことが起こっているわけであります。二、三の例を言いますと、例えば皆さんの身の回りで申し上げますと、電卓というものがありますが、日本がつくり出しました小型の、ポータブルの電卓というようなものは最近では時計とほとんど同じになっておりまして、時計電卓技術と融合しております。メカトロニクスと言われるように、機械工学分野エレクトロニクスと融合した、電卓時計がわからないような複合物が出てまいりまして、これがたちまち世界を席巻するというような、技術分野のかつての古い分け方が現在急速に乱れております。これが一つでございます。  それからもう一つの大きな変化というのは、技術の中で一般には序列意識がございまして、例えばメンテナンス、保守をする技術というのは一般に低く見られておりました。ところが現在、日本世界で一番ロボットをたくさん動かしておるなんという場合には、実はこのメンテナンス抜きにしては考えられません。十数年前に我が国が初めてロボットを輸入したときには、ロボットというのは一日にたかだか一時間も動けばいいくらいだったと言われております。もちろんロボット技術自身の向上もございますが、日本現場におけるメンテナンス力が非常にいいために、現在ではロボットが何百台もほとんど故障しないで動く。仮に故障してもすぐに修理して復旧できるというようなメンテナンスのよさというのが非常に重要になりまして、これを抜きにしては将来の高度な技術自身稼働率というのが経済的に非常に下がってきて問題になるということでございますから、こういう技術上下関係考え方も現在大いに変わってきております。これは、例えば軍事技術の方が民生技術よりもすぐれているというような従来の常識なんかも、部分的に現在幾つかの分野で逆になっているようなところもございます。  それから次に、産業革命以来と言われている非常に大きな生産のやり方の変化が現在起こっております。  これは、例えばロボットと言われますけれども、さらに自動化された工作機械NC工作機械とかあるいは多機能を持ちましたマシニングセンターと言われているような工作機械、つまりエレクトロニクスが従来の工作機械技術結合したものですが、そういうものを我が国世界で最もたくさん生産し、かつ現場に動いております。この結果どういうことが起こったかといいますと、従来、多品種少量生産というのは機械工業においてはできなかったわけでございますが、これが可能になったわけであります。  一例を言いますと、数万台をつくっております自動車工場自動車工場というと昔は下型フォードの例で、全く同じ下型を何万台もつくるのが自動車組み立てラインだとお考えかもしれませんが、最近では、五万台ぐらいつくりましても一万二千種類ぐらい違う自動車を一カ月間につくっているので現状でございます。多品種で、しかも大量生産の場合もございますし、もちろん中小企業等は多品種で少量生産が必要でございます。これが可能になりましたのは、今申し上げましたNC工作機械とかマシニングセンターの導入でございますが、日本の場合、これが他国に比べましてけた違いといいましょうか、非常に進んでおります。さらに設計等におきましても、最近は図面を製図板の上でかくということよりも、むしろブラウン管の上で、コンピューター工ーデッド・デザインといいまして、CADでかくのが非常に普及いたしまして、生産面における技術的な重要な設計からロボットに至るまで本質的な変化が起こっております。さらに、将来予想されるもっと大きないくつかの変化といいますのは、バイオテクノロジーというような二十一世紀派のものは別にのけましても、エレクトロニクスの中でも人工知知能と言われているような研究が現在なされております。これは専ら純粋科学といいましょうか、非常に基礎的な研究でございますが、これが恐らく予想よりも早く応用分野に入ってくるんじゃないかということが最近予測されております。  そういたしますと、恐らく一九九〇年代の中ごろかあるいは後半が、その辺になりますと、現在の情報化と言っておりますものよりは何けたも大きい情報機能が出てまいりまして、情報化社会というかけ声がございますけれども、今までの情報化とはまたけた違いな変化が出てくる。これに対しましても十分対応した、産業構造はもちろんのこと、人材の供給それから各種の法制の問題その他一連のことが行われなければならないわけであります。そういう意味でも、そこをにらみましてこの基盤技術円滑化法案が準備されていくというのは、まことに時期的にもタイミングがよろしい、結構なことだと存じます。  それから、国際化の問題、先ほど大島先生もお触れになりましたけれども、我が国のそういう変化が当然国際的な反響を呼ぶことは十分考慮しなければならないわけであります。従来、国際化といいますのは、むしろ受け身考えておりましたけれども、これからは本格的に技術国際戦略というもので日本世界の中でどういう役割を果たすべきかということを考え、かつ実行していくという段階に入ったと思います。これはいわば従来のといいましょうか、日本開国以来の受け身から積極的な前向きな方向への変換でございますから、天動説から地動説へ変わったぐらいの大きな政策方向変化だというふうに考えます。  こういうことも従来なかなかやりにくい仕組みが社会の中にあったと思いますが、特に技術開発でキャッチアップしよう、追いつき型の場合にはむしろ我が国の中で、どちらかというと閉鎖的に排他的に技術を育成してそれを輸出競争力に向けようということが基本的方向であったかと思いますが、今日では諸般の情勢、例えば貿易摩擦等からいいまして、当然世界のために我が国が与えるたくさんのものをこれからどういうふうに考えていくか、技術につきましては、特に先端技術等につきましては世界各国から、先進国だけでございませんで発展途上国、周辺の新興国等から非常に強い技術移転の要望がございます。  あるいは人づくりの面でも留学生等が参りまして、そういうことを積極的にやりたい。ここで、この法案の中に国際化ということが積極的に出ております点はまことに結構だと思います。これは単にそれがある成果を生むばかりでなくて、そういう姿勢を世界に知らせるということに非常に役立つだろうと思います。この点ではどちらかといいますと、今までは日本は非常に自己中心的な天動説的に技術というのを、自分だけの利益の輸出競争力に集中しておったという非難を今までは受けておったように思います。  それから、政府における研究開発民間研究開発役割分担といいましょうか、性格の差等につきまして申し上げたいと思います。  この法案の御趣旨は、専ら民間の自主的な動きというのを、基盤技術に関する試験研究促進ということを明示しておられまして、この点もかつての、例えば昭和三十年代の初めごろの日本産業技術の状況とは現在非常に違うと思います。当時は、御承知のように、民間というのは海外からの追いつき型の時代でございますから、どんどん技術を輸入いたしまして現業にすぐに役立つようなところに集中いたしておりました。輸入技術依存民間企業の体質でございましたけれども、自前の技術を国が分担してやらなければならないというのが当時のロジックだったと思います。  ところが、最近はようやく民間にも実力が出てまいりまして、みずからもここで言う基盤技術とか基礎研究とかを始めるというゆとりといいましょうか、自覚といいましょうか、意欲が出てまいりました。これを後押しするという形で、この法案機能することはまことに時代の流れをうまくとらえているという点ではいいことだと思います。したがって、民間の自主性とか、特にこのセンターを設けられたときに、その運営に関して自主性を尊重するという点は非常に結構だと存じます。  最後に、民間基礎研究等をなぜ重視し始めたかということを一言申し上げますと、先ほどから申し上げておりますように、我が国技術は相当自信が出てまいりましたが、一点だけ、非常にアキレス腱といいましょうか、危機感を持っておるところがございます。それは何かといいますと、非常に大きな抜本的な変化が起こったときに、どうも追いつけない可能性があるのではないか。これはどういうことかといいますと、ちょっと古い例になりますが、例えば繊維産業におきまして生糸とか天然繊維の技術がございました。これがナイロンというような合成繊維の技術にはっと切りかわるわけでございますけれども、こういう抜本的な、従来の生糸とか天然繊維の中での競争であれば我が国は十分自信があるけれども、急にとんでもないナイロンというような原理的に違うものに切りかわったときにはこれは逆目に出まして、今までの努力とか投入したものが全然だめになってしまうわけでございますから、その点の危機感というのは相当各企業においても強いというふうに見受けられます。  したがって、先ほど言いました基礎研究とか基盤的な部分はぜひやっておかなければそういうスイッチングが、大きな変化が起こったときに対応できないということでございますから、基盤をしっかりしていく。開発その他につきましては、これは民間の実力が十分出てまいりましたので、この政府民間役割というのはそういうような役割分担になるのが適当かと存じます。  以上でございます。
  6. 粕谷茂

    粕谷委員長 石井参考人、大変ありがとうございました。  次に、河野参考人から御意見をお願いいたします。
  7. 河野光雄

    河野参考人 私は、法案といいますか政策の評価の問題と、それから具体的な法案の内容について二、三、ちょっとこういう点が問題ではなかろうか、ないしはそこに不安があるのではなかろうかということについて要点だけをお話ししたいと思います。  私の視点というのは少し変わっていまして、五十年代から六十年代の日本の政治家なり官僚なりが後世に何を残すかということになって考えてみますと、今の状態で、いろいろな理由があるのですけれども、膨大な借金をツケとして残すということになっているわけですね。これは六十年で国債を返済するのですが、今だんだんふえていく状態にあります。もちろんその中には建設公債のものがありますから、これはある程度物になって残りますけれども、赤字公債というのは飲み食いのツケを残すようなものだと思うのですね。そういうことを一体、今の我々の同世代が際限もなくやっていていいのかといつも思っているのです。  これは財政再建ということでそれを直そうという方向に今少しずつ動いておりますけれども、しかし、これはなかなか簡単ではないのですね。そこで、それはそれで努力をしなければなりませんけれども、そういうマイナスの遺産だけを残すのではなくて、少しプラスの遺産も残そうじゃないかというのが、この法案の基本的なねらいだと私は了解しているわけです。  今確かに日本産業界というのはハイテクを中心に大変な輸出ブームの中にあって、それが日本経済をわずかに支えているわけですけれども、しかしそれは、その種は恐らく一九五〇年代アメリカで発見されたものを日本が導入して、それを日本人の労使の見事な、それから研究者の見事な開発努力によって製品化したということに一番のポイントがあると思いますが、しかし、それは結局、技術導入が割合と簡単にできた時代の産物であって、これからは恐らくそういかないのではないかという気がするのですね。もっとも、基礎技術開発というのは大変長い時間がかかるそうですから簡単ではありませんけれども、それならなおのこと、乏しい予算の中からでもそちらに金を重点的に割くということがなければならないと思うのです。そういう意味で、この法案というのはなかなか立派な意図を持っていると思っています。  そもそも、財政の再建のために歳出をカットする方法として、今政府がとっているのは一律カットという方式をとっておりますけれども、これはみそもくそもカットする方法で、本来伸ばすべきものも伸びない、本来もっと削るべきものもよう削れないという非常にジレンマを基本的には抱えていると思うのですね。その中にあって、そうではあるけれども何か前向きの政策を打たなければならぬ、将来にいい遺産を残したいというのがこの法案の趣旨だろうと思うのです。そういう意味で私は、この法案の作成過程で勉強会に加わっていた者として、こういう姿にでき上がるとは実は勉強の過程では思っておりませんでしたけれども、でき上がってみればなかなかいいできになっているというふうに思います。  これは総論です。  各論に入りますけれども、この法案は、そういう基礎技術開発に今障害になっているものがたくさんありますけれども、いわゆる民間活用論という線に沿った規制の緩和というのが一つの柱になっているわけです。それが産官学の提携ということを進める上にどうしても必要だということで、具体的内容についてはもうお二人の先生方から具体的なことを提起されましたけれども、どうもこの法案に盛り込まれている規制緩和というのは、まだ本来あるべき姿から見ればちょっと足らないのではないかという気がしております。特に、既に指摘されましたけれども、大学先生研究所の研究員の方が民間に出て仕事を共同でやるということについては、それでもなおかつ制約が多過ぎるという気がします。  産官学の提携について、よく大企業に対する補助だとか癒着だとかいう言葉がありますけれども、そもそもこの法案というのは、大企業はもちろんそうです。すぐれている中小企業もそれから外国企業についても平等に資金援助をし、出資をするということが原則ですから、そういう非難はこの政策を正しく進めていけばなくなるのではないかと私は考えております。  二番目に、このセンターというのはリスクマネーを供給するというのが最大の眼目でありますけれども、ここに、六十年度予算で盛られているのは量的に極めて限られておるのですね。こんなもので一体この壮大な法案がうたうような基礎技術開発に国が貢献をし、もちろん民間活力が中心ですけれども、将来に遺産を残すということになっても、法案の趣旨なり総論は立派だけれども、用意された資金量というのは極めて微々たるものであるということはこれまた事実であろうと思うのです。  そこで、今の財政の状況下で一般会計から膨大な資金をここにつき込むということは、状況があと一年、もうちょっと好転しないとなかなか難しいだろうと思います。そうすれば、今現実的にできることというのは、民間の、特に金融機関からもう少し積極的な協力を仰ぐことではないかと私は思うのです。  こういうことを言いますと、それは、民間活力論というのは御用金調達の思想と裏腹ではないか、一般会計が足らないものだから民間活力と言いながら大企業から金を取ることばかり考えているではないかという批判があるのですね。しかし、私が申し上げた、都市銀行を中心にしてもう少し協力を仰いだらどうかという趣旨は、今都市銀行はそういう将来の、例えば二十年代から生まれたソニーその他という企業を育て上げていくものをたくさん持っているわけですよ。しかし自分では、それを通常の融資ペースで融資するのはリスクが多過ぎてなかなか難しいというジレンマを抱えているわけですから、それならばここにひとつ金を出してもらって、そこでその金が生きた場合にはそれはいずれ自分のところの商売の種になる。成功すれば膨大な資金需要がそこで発生するはずですから。ですから、もう少しそういう意味民間協力を仰げないものか、当面はそう思うのです。もちろんこれはだんだん軌道に乗っていけば産投会計から毎年配当金が入ってくるわけですから、電電会社はだんだん膨れるとは思いますけれども、どうも全体のニーズをカバーするにはどうしても小さいのではないかという気がします。  それから、これは事の性格上、郵政省と通産省政策が一本になったというのがこの法案のいきさつなんですが、そこから発生する問題は、だれが考えてもわかることですけれども、縄張りの問題というのは、いいも悪いも含めてどうしても起こるのですね。縄張りというのは各省間が切蹉琢磨するという意味で非常に結構なことなんですが、この中で限られた資金の中をどう配分するかということについて非常に機械的な割り方をするようなことをやると、一体どこに本当に優先順位を与えて金を配分するかということがおざなりになってしまって、二義的になってしまって、郵政関係のあれに半分、通産関係に半分というふうな割り方にどうしてもならざるを得ない。初年度は実質そうなっておりますけれども、初年度は事のいきさつ上しようがないと思いますが、先はそういうふうな機械的な割り方というのは余り好ましくないのではないかという気がするのです。  ですから、そこのところでの各省間の協調ということが特に重要なことではないかと思います。そのことを実現するためには、この法案にも書いてありますけれども、民間の知恵を出して民間の人材を登用して、それで民間的なセンスで事をさばいていくことがどうしても必要だと思います。そのことについてこの法案に用意されていることだけで十分なのかどうか、それはこれからさらに国会で検討していただければありがたいと思います。  最後に、この法案のもう一つのねらいは、我が国はこれからは基礎技術研究に重点を置いて、将来は世界のためになるような、日本経済のためにもちろんなるのですが、さらに世界に貢献するようなものを生み出していきたいという大きな野心と野望を持っているわけですけれども、そのためには、もちろん民間が中心になることは当然なんですが、やはり国際的な研究者との交流というのが一つの大きな眼目だろうと思うのです。それはここに書いてありますけれども、ただし、それは書いてあるだけであって、そのための資金をどうするのですかということを読んでみれば、民間から資金を集めてそれを信託して、その信託報酬でやろうということなんです。ということは実際はほとんど大したことが行われないだろうと思うのですよ。といって、これまた財政の制約がありますから余りそこから離れた議論をしたくありませんけれども、何かもうちょっとここには工夫が必要なのではないかという気がどうしてもいたします。それをやらないと国際社会に貢献するということは、法案で高々とうたっているけれども、現実はなかなかそうじゃないのじゃないかということを批判されるのではないかという気がするのです。  まだ、細かいことになると申し上げたいことがありますけれども、持ち時間がいっぱいですから、私の意見はこれで終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  8. 粕谷茂

    粕谷委員長 河野参考人、大変ありがとうございました。  次に、湯木参考人から御意見をお願い申し上げます。
  9. 湯木和男

    湯木参考人 私は、現在研究関係にずっと携っておりまして、歴史といいましては入社以来若いときには探索とか基礎研究、それからだんだんと開発研究、それから最後には事業というように持っていくような経験をしております。そういう点でいちずに研究をやっておったのでありますが、この基盤技術研究円滑化法案につきましての私の考えを述べさせていただきます。  私の所属しております会社では、化学というサイエンスに立脚した事業を行っております。化学というサイエンスは物質の根本であります分子というものを取り扱いまして、それによって新しいものをつくり上げる、あるいはそのものに新しい機能をつけ加えるなどといったことを可能にするサイエンスでございます。最近は非常に時代が変わりまして、見直しもありまして、だんだんと技術が進みましてニューケミストリー、ニューというのがつくような時代と言われるようになりました。これはどういうことかといいますと、一番小さい単位の分子の組み立てとか配列を変えて今までになかったような新しい機能をどんどん見つけ出すというような基礎研究が進んでおるからであります。  したがいまして、そうしたものを、新しい機能といったものをつくることによりまして、今後世界のニーズあるいは人類のニーズに幅広く対応していくことを可能とするものでございます。これは全分野に使われますので、情報通信の分野、食料、医療、環境問題といった人間の生活に関する分野におきましても、また省エネルギー、省資源といった地球の資源を大切にする分野におきましても化学の重要性はますます増大しております。  こういう新しいものをつくる、また新しい機能を与えるという点で基礎研究は非常に重要であります。基礎研究なくして新しいものは全く生まれない、こういうように申し上げても過言ではないと存じます。また、基礎研究はその会社の将来のためにも重要なものであります。もちろん国の将来のためにも必要なことは言うまでもありません。  私の経験ですが、私どもの会社は大正十五年レーヨンの製造会社として生まれ、以来、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの合成繊維の事業をやってまいりました。ところが、その当時、会社のトップは、合成繊維の成長期、一番これから伸びるという時期に心配をいたしまして、昭和三十七年に、東レの将来のために、十年後、二十年後のために基礎研究が重要であると判断し、基礎研究所を設立いたしました。その基礎研究所から生まれた種が非常に時間がかかりまして東レの体質改善、ハイテク化に大きく貢献するようになってきました。非常に時間がかかるということです。  現在の東レを支えている事業の一つでございます炭素繊維事業一つをとりましても、これのもとは基礎研究所で全然別な研究をしておりました硫黄化合物の合成研究者が、たまたまと言うとおかしいですけれども、新しいモノマーを合成しました。これが世の中では新規物質であったわけです。そのものの使い道がなかなかわからないのを全員が検討しました結果、これが炭素繊維の焼成に非常に役に立つ、非常に均一に速く焼けるという技術に展開しました。ここまでは繊維をつくる会社でしたけれども、それをきっかけに、そういう基盤的な技術が出た以上はそれを応用して後ろの事業まで入れようということで当社の体質が変わりました。  そういうことで、基礎研究所からはそのほかにも体の血液の凝集を防ぐような生体に適合した材料、これはいろいろな部分に使われます。もちろん人工腎臓とかいう面でもそうですし、あるいは私らで言いますソフトコンタクトレンズ、含水させて涙が通るので装用が非常に長く続けられるというような材料にも展開できるということであります。さらに耐熱性で、しかも非常に光に反応する、この光の形態も最後は紫外線からエックス線というところまで展開する光に対してどういうように対応していくかというような材料などの基礎研究基礎研究所で出つつあるわけです。  このように基礎研究から生まれたものは、成功しますと世界に貢献するところが非常に大きく、思いがけないようなものが生まれることがあります。  しかしながら、我々は長年基礎研究を見てきましたけれども、非常に難しいテーマに挑戦するということでありますから、その状態では全く成功しないという場合もありますし、成功の確率が非常に低いという心配があります。これは企業にとりましては非常に問題にされるわけです。といいますのは、企業、会社というものはあるものを開発してそれで成果を出し、我々の方も社会に貢献するというようなことでございますから、その途中の過程を見ていくことにはなかなか耐えられない。会社の製造とかいろいろなところの声が研究者の自律性とか熱意に反映するわけです。そういう点が非常にあるわけですけれども、成功すれば非常に大きい。そういうことで基礎研究というものは花が咲いてくるまでには十年から十五年の時間がかかるわけです。したがいまして、今出た成果は十五年前に基礎研究で得られた技術がもとになっているわけです。  そういう点で、これはリスクが大きいからといいまして、もし基礎研究をやらないと、その企業は将来を閉ざすことになります。また、基礎研究を行うことによって生まれたオリジナリティーの高いものを日本がつくり出すことによって世界の尊敬を集め、日本国際社会に仲間入りすることができるようになります。こうでなければ、日本は過去のように物まね研究が多いとか、生産技術で品質管理は非常にいいわけですけれども、金もうけだけを考えているというような国際的な非難を浴びることにもなりかねません。そういうことで世界的にどうかということになるわけです。  私らは、高分子同友会という高分子学会に属する民間企業で構成された会がございますが、その高分子同友会が私どもの伊藤社長をリーダーとするミッションを欧米諸国に送りまして、欧米の先端企業のリーダーと技術開発について論議する機会がございました。もう既に二回、六年前と昨年秋であります。  その間を比較しますと、社長の感想によれば、六年前に比べて昨年は、欧米の先端企業は二十一世紀に向けて先端技術において必ず勝つという姿勢をより一層強めているということをひしひしと感じました。彼らのバイオテクノロジー、新素材、情報通信分野に対する先行投資には目をみはるものがございます。また基礎研究を重視し、人まね主義を排する姿勢をさらに強めております。それから注目すべきことは、基礎研究を中心に政府主導による積極的な研究投資が行われているということでございます。民間の知恵、活力を生かし、政府民間が一緒になってオリジナリティーの高いものを生み出そうという努力がなされております。  これに比べまして日本では会社の規模が小さく、基礎研究にかける金が欧米に比べて非常に小さい上に、これは非常に大事なことだと我々は思うのですけれども、各社が小さいにもかかわらず重複研究をやっているという問題点があります。全日本の化学会社の研究開発投資額が欧米の先端企業のそれに比べましても、大きな会社、デュポンとかモンサントとかいろいろありますけれども、そういう一番大きな会社一社に対応するくらいが化学会社の実力、日本の実力ということも言えます。それは規模だけの話です。頭はまた別の問題になりますけれども、そういうことでマーケットに近いところでは各社が各様に競い合って物にしていくという企業姿勢は必要ですけれども、基礎研究分野ではもうお互いに共同でやるべき時代に来ておるのではないかと考えます。  既に通産省の始められた次世代産業基盤研究制度や科学技術庁の創造科学技術推進制度がすぐれた成果を生み出しつつあります。これは業界が今まで非常に仲の悪かったコンペティター同士、研究者とかが非常に仲がよくなる。それと同時に、いろいろ接触しディスカッションし、全体として力を強め合うというような傾向が出てきているためであります。そういう点で、日本では官あるいは学と産の連携がまだ不十分と見られます。これは欧米ではお互いの知恵、技術を尊重し合い、平等な立場で一緒に研究しようという姿勢であるのに対し、日本では昔からしきたりとか制度とかというものにずるずる押されまして、なかなか共同研究ができにくい。また、民が国の資産を活用させていただこうとする場合にもなかなか難しい、そういったところがございます。  一方、大企業は別にしましても、中小企業にはアイデアはいっぱいある、知恵はいっぱいあるが金がない、研究を進める能力がないところが多くございます。これらの中小企業はよくベンチャービジネスと言われ、メンバーとしては活力は持っておるわけですけれども、これの非常にいいアイデアを実行に移すための研究を、研究開発能力の高い会社と共同して進めるとか、それを政府が援助するということは非常に大切なことだと思います。  最後に、政府の出す研究開発に対する補助金について一言申し上げます。  この補助金と言われるものは、お願いしていただく補助金ではなく、国が民間活力を利用する民間との共同研究のために出費する共同研究費であるというお考えに立っていただきたいと存じます。民間の知恵、能力を活用する共同研究をさらに拡大すべきではなかろうかと考えております。これからの時代は官民の総力を挙げて日本国際社会に仲間入りする、そして国際競争力を上げることが重要になった時代と思います。  私どものこのような考え方が、十分とは言えないまでも、本法案には盛り込まれており、非常に前進したのではないか、むしろ大きい一歩を踏み出していただいたことに対して高く評価しております。  どうもありがとうございました。
  10. 粕谷茂

    粕谷委員長 湯木参考人、大変ありがとうございました。  以上をもちまして参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。     —————————————
  11. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑者にあらかじめ申し上げますが、質問にお答えをいただく参考人のお名前を初めに御指名の上、質疑をお願いいたします。  なお、念のため参考人に申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、時間の制約がございますので、お答えはなるべく簡潔にお願いをいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野一雄君。     〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕
  12. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 参考人の諸先生方には大変お忙しいところを貴重な御意見をお聞かせをいただきまして、本当にありがとうございます。  私、日本社会党・護憲共同に所属しております奥野と申しますが、今御意見を伺っておりまして、その御意見の中で、ああ、こういう御意見についてもう少し突っ込んで実はお聞きをしたいというのが何項目があるわけでありますけれども、与えられました時間がほんのわずかでございまして、そういうことについては不可能だというふうに実は思っておるわけでございます。それで、大変申しわけございませんけれども、それぞれの参考人の諸先生方に共通する問題ということでひとつお尋ねをしてまいりたいというふうに思っておりますので、それぞれのお立場からぜひ御意見をお伺いをしたいというふうに思っているわけであります。  最初に、大島先生それから石井先生にはこれは共通の項目でございまして、一つは、今度の法案は御案内のとおりに通産省と郵政省の所管にかかわるものだけが対象になっているわけでございます。したがって、業種も、鉱工業あるいは電気通信業、放送業、こういうふうに限られているわけでございますが、これは私ども、国民生活の上で大きな影響を与えていくということになりました場合には、農水省の所管の問題であるとか、あるいは厚生省の所管の問題、こういうものなどについてもこういう形の中で進めるべきではないのか、こう実は考えておるわけでありますが、もちろん農水省なり厚生省の方ではそれぞれ独自でまた研究は進めておりますけれども、せっかく国の方でこういうようなものをつくるわけでありますから、そういうものも含めるべきではなかったのかな、こう思っておるわけでありますが、先生方のお立場からこの点についてはどういうような御判断をされているか、これが一点でございます。  もう一点、これも両先生には共通でございますけれども、今御指摘になられました問題の中でも政府としても解決をしなければならない問題がたくさんあるわけでありますが、その中でこれから一応基礎的な研究ということになりますと、どうしても学者の皆さん方、いわゆる研究者の皆さん方が非常に大きな牽引力というのでしょうか、これが必要になってくるのではないか、こう私は思うわけでありますが、現在の我が国研究者の研究環境と申しましょうか、処遇の問題も含め、あるいは研究設備などの問題も含め、特に私は、若い研究者の皆さん方が意欲を持って我が国技術発展のために努力をするというものがなければうまくいかないのではないだろうか、実はこう思っておる一人でございますが、このあたりについてどういう御意見をお持ちになっておられますか、これを一つはお伺いをしたいと思っておるわけであります。  それから河野先生なり湯木先生の方には、最初に申し上げました郵政と通産の所管の分だけに限られているということについての御意見と、それからもう一つは、それぞれの諸先生方からのお話の中で、こういう問題について解決をしなければならないというのがたくさん出てきたように今存じておるわけでありますが、一つ一つ取り上げておりますというとこれは大変な問題になるわけでありまして、端的に、これからの基盤技術開発促進のためにはこの点はぜひ強化をしなければならないというようなことがございましたら、ひとつ御指摘をいただきたいというふうに思っているわけでございます。これは河野先生湯木先生に共通する問題としてお願いをいたしたいというふうに思っております。よろしくお願いしたいと思います。
  13. 大島惠一

    大島参考人 それでは二点について私の意見を述べさせていただきたいと思います。  今、この法案通産省と郵政省に限られたということについては、いろいろ経緯もあると思いますが、ほかの分野におきましても、もちろん活力を高める必要があるという点においては全く同等ではないかと私は思う次第でございます。ただ、ちょっと条件が違う点がございますというか、逆に言いますと、通産、郵政の問題において非常に緊急性が高いと感じます点は、この分野におきましては実は民間研究開発力というのが最近非常に国際的に比較いたしましても強まって、大いに貢献をしなければならないという点でそれを促進するということと同時に、官民の円滑な協力という条件をつくっていくということで、もう法律の限界が来て、新しい制度を導入しなければならないということが非常に緊急になっているんだと思うわけでございます。  その点で私は、農水省、厚生省の研究については実は余り十分に存じ上げないのですけれども、私思いますのは、やはりこれと同じような見方で、いかに農水省の研究、厚生省に関連する研究、例えば私は農業なんかには非常に革新的な新しい技術が入ってくるんだと思うのですが、今の体制がどちらかというと非常に官主導型になっているために、なかなかそうなってない点があるのではないかと外から第三者的に見ているわけで、その意味で同じような見方でぜひ問題を整理というか、見る必要があるのではないかと思う次第でございます。ただ、今申しました点で通産、郵政はもう実はおしりに火がついていると申しますか、このままでいくと国際的にも国内的にも非常に大きな問題がもう来ているという点で先駆けをすることが必要だというふうに思う次第です。  それから先ほどの若い研究者と申しますか、基礎研究、殊に大学研究について私申しますと、国立研究機関も同様かと思いますが、全く御指摘のとおり、私は今若い研究者の研究意欲がある意味で非常に減退するような条件がかなり多いんじゃないかと思う次第です。それは一つは定員が、大学というのは、国立大学ですが、非常に限られておるために、あるいは国立研究機関も同様だと思うのですが、本当にそこに飛び込んでいってやろうということがなかなかいかない、それが一つですね。  それからもう一つは、研究費の問題で、基礎研究費はかなりふえているのですけれども、かなり大型の研究に対して大型設備にはつくのですが、一般的な研究費というのが、自由に若い人がやるようなそういう研究費というのはなかなかつかないわけです。これは何か目的が非常にはっきりしていると、例えば大きな加速器をつくるというようなことになりますとかなり大がかりな金がつきますけれども、だれかが自分のアイデアをやろうとすると、ちょうど今のベンチャーと同じでして、なかなかつかない。この点はこういう民間活力を大いに高めるということの裏腹として国立研究機関大学研究、特に今おっしゃった創造的な、まあ大きなチームの研究じゃなくて個人の能力を伸ばす意欲を与えるということは、今日本にとって非常に緊急な問題だと私は思います。これはむしろもっと広い問題に関連すると思いますが、そういう気がいたします。
  14. 石井威望

    石井参考人 お答え申し上げます。  まず第一点の、二つの省が所管しているということでございますが、原理的にはおっしゃるように農水省、厚生省とをそれぞれこの際一括できればというふうなことを考えますけれども、一番初めに申し上げましたけれども、それぞれの学問分野、専門の発展の度合いというのが大分ずれてございまして、例えば先ほど農水省、厚生省と、将来バイオテクノロジーというのは、先端技術で非常に有望な分野がございまして、これはぜひ将来何らかの大きな施策が必要だと思いますけれども、今問題になっております工業、それから電気通信関係というのに比べますとまだまだ産業からは大分先の方の、遠い出番でございます。したがいまして、タイミングからいうと、先ほど大島先生もおっしゃいましたように、当面は現在の二つの省の所管の対象でスタートするのも妥当であろうというふうにも考えております。  第二の、政府として研究者、特に若い研究者の問題でございますが、これは第一点は、研究というのは本来、お金があって環境がよければできるというものではもちろんございませんで、むしろハングリーで、従来の大発明とか創造的なものは必ずしも環境とは一致いたしませんけれども、そういたしましても、やはりある最低限とか、ある非常に大事な部分では若い人たちの意欲を喚起し、いい環境が必要であることはもちろんでございまして、特に最近問題になりますのは、技術の陳腐化でございます。例えばある大電機メーカーで調べますと、入社してしばらくたちますと自分技術はもう陳腐化してしまったということを感じる技術者が半分以上いるというようなデータが出ております。案外、中高年はその辺の認識がおくれているというようなデータもございますが、少なくとも若いところでは技術の最先端にフォローしていくためには、生涯学習といいましょうか、常にリカレントで自分の勉強をしていく、そういうシステムをこういう人たちに与えていく必要があろうと思います。  第三番目に、もう一つの問題としては、定員等の非常に硬直した縛りがかかっておって、若い人が例えばなかなか昇進ができないとか、この点は確かに外国に比べますと我が国での伝統的な人事制度の関連もございますので、この辺をもっとフレキシブルに、弾力的に、特に産学なんかの交流等を考えますと、もっともっと弾力的にしなければ若い人の意欲がそがれるということがございますので、その辺の対策を十分やる必要があると考えております。
  15. 湯木和男

    湯木参考人 それでは二点についてお答えいたします。  一点の農水、厚生省の問題ですけれども、私ずっと従事しておりましたのは、どっちかといいますと基盤技術の方でも高分子ということでありまして、機能材料というようなことで、この方については専門家ではございませんし、余りよくあれしませんけれども、ただ、現在提出されている法案自体が我々企業としても非常に、いいことですし、いいことはできるだけ早い段階から実施して、それをたんたんと完全なものにしていく、時間をかけてもいいじゃないか。そういう点で、ぜひそういう考え方でスタートすることは始めてほしい、こういうお願いでございます。それが一点です。  それからもう一つ国立研究所についてのいろいろな問題についてどう考えるかという点でありますけれども、私としては、民間主導型といいますか民間活力をできるだけ国立研究所などにも反映するということで、むしろ民間に、そういう予算とか政策はいろいろ共通で立てられましても、そのメンバーの中に担当重役とかそういう民間企業技術担当を入れて審議されて、それをできるだけ政策として反映していただきたい。  そういう点で一つ参考になりますのは、アメリカ国立科学財団NSFというシステムがございまして、これはボードのメンバーは民間企業の担当重役、大学の経営者、上級研究者などで構成されて、大学研究をどういうふうにしていくかという考えで進めているのが一つございます。  それからもう一つは、やはりアメリカですけれども、政府出資の研究所というのがございまして、これはFFRDC、このシステムというのは、政府研究機関には、政府自身が運営する研究所と、それからその資金、費用というものは出されますけれども、運営というのは、政府資金ですけれども、建設された研究所ではそれを請け負って任されて運営するというような分野で、積極的に民間を活用しておられるあれがあります。最近、電電公社とかいろいろ民間移管のときに、それに付随して研究所も民間に持っていかれる、そういう傾向がありますけれども、それは我々は非常にいいことだ、そういうふうに考えております。  以上でございます。
  16. 河野光雄

    河野参考人 簡単に申し上げますけれども、まず各省がこれに相乗りしたいということについての考え方ですけれども、結局これは通産省にそういう産業政策という長い歴史があって、その中のこの技術政策を非常に大きなスケールで構想する力がほかの省よりもあったということなんです。ほかの省は、その点でそういう構想力を持っていなかったということなんですよ、スタートの差は。僕はそうだろうと思います。ですから、何も創業者利得というわけではありませんけれども、通産省の本来の分野で、長年の蓄積の上でこういう構想力を持ったということが、事態をここまで持ってきたのですから、ほかの省はそれほど力がなかったということがまず基本だと思うのです。  しかし、さはさりながらいずれは、先生もおっしゃったみたいに、国レベルで考えれば、ほかの省の所管のものをこの中へ、それが効率的ならば、統合していけるものならいっても構わないと思うのです。ただ一本にするということが絶対だというふうには思わないのです。ただしかし、さらにもしそういうものを吸収するとするならば、別途財源措置をそのときには考えなければならないのではないかという気がします。  それから後の方の問題ですけれども、何が一番ポイントかということなんです。先ほど私は三つぐらいのことを既に申し上げましたので、一つだけさらに敷衍したいのですけれども、限られた金を幾つかのテーマについてある場合に出資し、ある場合には融資をするわけですが、一体どういう種をどういう基準で選ぶかということは我々素人には全くわからないことなんです。しかし、これを間違うと、せっかくの限られた資金を有効に生かして使うことにならない可能性もある。もちろんリスクマネーですけれども、本来全然成果が出ないということもあり得るだろうと思いますけれども、それにしてもやはり専門家の高度の御判断があれば、その失敗の率というのを少しは少なくする可能性があるのではないかと思うので、そこにどういうふうなシステムを導入できるのか、この法案では明らかではありませんけれども、それはひとつ重要なことだと思うのです。  もう一つ、先ほどちょっと私最後に、国際的な貢献の問題を申し上げたのですが、それをやるために、これは財源的に全然足らないということを申し上げたのですけれども、アメリカ産業政策を論ずる学者がよく言われる言葉の中に、アメリカの今のハイテク関係のあれは、若干、一部分日本におくれているかないし並ばれたということはあるかもしれないけれども、しかし我々は絶対の自信を持っている、なぜならば、資金とかなんとかということとは別に、我が国には寛大な移住政策がある。どこでも世界の人は全部いらっしゃい、移住する人は全部受け入れますよ、今現実にそうなっていますね、前からそうですけれども。さらに、移住はしないまでも、研究者が行く場合には、それだけのすぐれた環境、待遇その他が用意されているわけですね。  これから日本世界に向かって貢献するということを言うならば、そのことをこちらはやらなければいかぬわけですね。移住政策とは言いませんけれども、せっかく優秀な研究者にこちらに来ていただくならば、それにふさわしいような環境等を与えなければならないと思うのですけれども、その点がどうも、少なくとも今の段階では、まだアイデアがあるだけで裏づけるものが余りないのではないかという気がします。しかし、これはすぐにできる話でもないと思いますけれども、何かそこにもうちょっと強い政策をさらに付随的に打ち出す必要があるのではないかと思っています。  以上です。
  17. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 実は今、その点にちょっと関連しまして、大島先生の方にお伺いしたいと思っておったのでありますけれども、国際協力ということになっていきますと、日本の場合、一つの例として、特許の方の関係もちょっと先ほど先生の方からお述べになられたわけでありますが、今、河野先生の方からもちょっとお触れになりました、海外との技術協力をするという場合に、私もやはりその点を一つ考える必要があるのではないかということがあるわけでありまして、どういう対応を日本としてはやっていかなければならないのだろうか、こういう点が一つあるわけであります。  それともう一つは、私も技術関係については全くの素人でございまして、よくわからないのでありますけれども、技術ということについて、例えば日本人の考え方アメリカ人ならアメリカ人の考え方、これは技術だから共通しているのではないかという気もするわけでありますけれども、少し違っている面がありはしないか、そういう面が協力をする上においてのネックにならないのだろうか。こういう面は、むしろ学者の皆さん方の方がよく御承知でないのかなと思って、そういう面の心配というものはないのだろうかという点、何かもしありましたら、ひとつ御指摘をいただきたいと思います。  それから、河野先生の方にもう一つ。先ほど、規制緩和を若干今度の法案の中でやられているけれども、まだまだ足りないという御指摘があったわけでありますが、その点についてもうちょっと詳しく御指摘いただけないだろうか、こう思うわけであります。
  18. 大島惠一

    大島参考人 最初の、国際協力といいますか、国際化の問題について一言申しますと、今河野さんも言われたのですが、日本は明治以来の考え方が、外国技術を導入するという取り入れ型なんですが、実は先進国どこへ行っても、どこの研究所でも、これはアメリカはもちろんのことですが、ドイツでもフランスでも、例えばフランスの研究所にドイツ人が来ていてもだれも不思議に思わないわけです。それで、有能な人は世界じゅうから必ず連れてくるという形で、実は、そもそも研究所とか、大学もそうなんですけれども、そこの国の人でなければ国立研究機関なんかでも、まあ軍事研究なんかは別ですが、研究者を入れないというのは、日本の極めて昔からの伝統による特徴でありまして、人間に関する国際交流というのは、ヨーロッパでもアメリカでも、わざわざやらなくても初めからそういうふうにでき上がっているわけです。ところが、今、日本の場合には、それが非常に条件が難しくなっていると申しますか、例えば大学でも、やっと最近外国籍の人が教授になるとか、あるいは国立研究機関でもそういうことは非常にまだ難しいというようなことがあって、国籍ということに対するこだわりは日本は非常に強い。  もう一つは、それと同じ観点からいきますと、今度はでき上がった成果としての特許という問題なんですけれども、この特許というものはやはり、研究して成果を、国立あるいは大学研究機関であればそれは広く外に使わせるということでありまして、日本のように、それは国が金を出したんだから国有財産だという考え方は大変研究者にはなじまないわけでございまして、金を出したからそれを国が取るというのではなくて、知恵を出して研究をした人たちがその成果を取るということ、特許法の精神も私はそうだと思うのです。ところが日本では、何か昔からのそういう傾向がございまして、これがやはり国際的に見て非常に障害になっている。これらの点が今回の法案では、少なくともこういう通産に関するといいますか、あるいはこの関係特許については外国にも無償で出せるということになっているということであると思います。  それから、技術に対する考え方ということで、これはある意味日本は改良的といいますか、非常に細かいことを精緻にやるという点においては、これはもう伝統的に、明治以前の技術を見ましても、芸術、技術すべてにおいて極めてすぐれているわけですね。ですから、どっちかというと、日本における技術に対する考え方というのは、そういう非常に具体的なものに即しているのですが、外国においての考え方の違いは、やはり独創性ということを非常に向こうは高く評価するわけですね。ですから、日本ともし障害が生ずるとすれば、外国人というのはもう本当に非常に神経質なまで、いわゆるオリジナリティー、だれが最初に考えたのか、だれがつくったのかという、その創造性、独創性という飛躍のところを一生懸命考えている。この点が日本の人は、人のアイデアをふっと持ってきて自分がやっても何とも後ろめたさを感じないのですね。これがある。  ところが、逆にそういう点では、今うまく持っていけば、両方の違いから日本の貢献するところも多いし、共同する上ではむしろ非常に補完的な意味でプラスになると私は思うのですが、ただ、今申しましたように、そういう両方が共同する場合に、今の意識の違いというのが障害になるという点があるとすればそういうのが一つじゃないか、ほかにもいろいろあるかもしれませんが、そういうことでございます。
  19. 河野光雄

    河野参考人 先ほどちょっと言いかけたのですけれども、今、国立の試験研究機関研究員の方が民間研究所に赴いて民間の方と共同でやることが事実上できないのですね。この新しい法案では、たしか今度できるセンターに出向する形をとれば幾らかそれが可能になるということになっていると思います。余り細かいことを知らないのですが……。  しかし、それでも十分ではなくて、今、日本の国家公務員の方が外国民間研究所に行って研究されることはちゃんとできるようになっているのですね。何で国内で、国内の大企業なり中小企業なり何なりの中央研究所に日本の国家公務員の方が行って、もっとストレートに、もっと伸びやかに仕事ができないのだろうか。何が制約があるのかよくわからないのですけれどもね。そこに、従来こういうことを言う場合に出てくるいわゆる癒着論というのが裏にあって、ないしほかに理由がいろいろ、伝統があってそういうことを潔しとしないという研究者もいらっしゃると思いますけれども、まあいろいろの障害があるのでしょう。  しかし、どちらにしても、制度的にはその点をもうちょっとすっきりとさせた方がいいのではないかと思うのです。ただし、これは通産省だけでできる話ではないと思いますけれども、文部省その他、ほかに関連するあれがあると思いますが、しかし、何かその点をもうちょっとすっきりさせることも必要なのではないかと思っているのです。
  20. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 どうもありがとうございました。では終わります。
  21. 浦野烋興

    ○浦野委員長代理 以上で奥野一雄君の質疑は終了しました。  続いて、浜西鉄雄君。
  22. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 先生方、大変本日はありがとうございます。続いて大変御苦労でございますが、私の質問に、どうか学識者の立場からお答え願いたいと思うのです}  私は大変疑問を持っていることがあるのですが、まず、国際的な問題で、河野先生はどのように見ておられるか、ちょっとお聞きしたいのです。  実は、御承知のとおり、昭和五十七年のIBM事件でおどり捜査にかかったということになっておるのですが、日立、三菱は、これらの関係でいろいろ国際的にもめまして、結果はIBMに対してかなりの賠償を払うというふうになったわけでして、日立は今後五年間、新製品については事前の検査の権利をIBM側に与えておるわけです。  とかく国際間で新しい技術開発をする場合には、機械のある接続部分で例をとれば、それを隠してしまう、つまりブラックボックス化してしまって、その価値というか、権利を確保する。国際的にお互いが技術交流をして発展するということは大変いいことなんですが、現実にはそう生易しいことではないのです。そういうことがこれからも起こってくるのではないかという心配、懸念が私はあるわけであります。  したがって、日本の国益という立場から、国際的にすべて開発したものをオープンにということになることが果たしていいのだろうかどうだろうかという、これは全く私個人の心配なんですが、その辺、広い視野で今までの経過を眺めてみて、これからかくあるべきだというお考えをお持ちでしたら、その点をひとつお願いしたいと思うのです。
  23. 河野光雄

    河野参考人 お答えします。  私、そういう問題についてきちっとしたお答えができるあれを持っておりませんのですが、基本的には、純血主義で国益ないしは企業益の利益の観点だけからやった場合には、これから日本がこれだけの政策を擁し、だんだんに資金的にも充実していくでしょうから、そのことがまた外からの批判を猛烈に招くのではないかという気がどうもするんですね。さっきも大島先生がおっしゃったと思いますけれども、日本外国技術をうまいこと、しかもかなり安い対価で基礎的なものを持ってきて、それを製品化することについてすぐれた才能を発揮し、実績を上げたということで、ある程度やっかみ半分ではありますけれども、若干批判もされていることも事実なんです。それを考えますと、先生が国益という観点を持ち出されて、それはもうそのとおりだと思いまして、企業だってもちろん企業独自の利益を追求するのですけれども、この国際的な場で、あるテーマについて研究するということを腹を決めるには、それによってもたらされるいろいろなマイナスその他もあるかもしれませんけれども、やはりもっと大局的な大きな見地から判断を下すということがどうしても必要なのではないかという気がするのです。それが若干、小さな意味での国益なり企業の利益に反することになるかもしれませんけれども、大きな意味では、大きくカウントすれば、それはむしろ国益に大きくプラスになるというふうに考えたらどうなんでしょうかと私は思うのです。  ただ、この問題については、私は冒頭申し上げたようにお答えするあれがありませんので、大島先生その他の方がもっとしっかりした御見解をお持ちだと私は思います。
  24. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 ありがとうございました。無理な注文をどうも恐れ入りました。  湯木先生にお願いいたします。  研究を随分やってこられた過程を通じてお伺いいたしますが、今の奥野先生考え方と共通した面があるのですけれども、今回の法案は、通信と通産との関係に絞られて基盤技術あるいは基盤をこれからつくっていくのだということになっておりますけれども、やはり金へんの鉱業も含め、それから医薬品、医療技術、あらゆる面で、この基盤というものはこれから総合的に考えるべきだ、私は日ごろそういうふうに考えてきておるのです。特に先端技術関係でいきますと、今さっき先生の説明がありましたような基礎研究なくして発展なし、言ってみれば分子の組み立ての話などをされましたが、新しい素子というものがこれからどんどん出てくると思います。既に研究段階に入っているというふうに私は聞いております。  例えば、どういう品物なのか私はよく知りませんが、ジョセフソン素子、HEMT半導体素子、ガリウム砒素半導体素子、これらの集積化がどんどん進められておる。そういうことによって超LSIがどんどんこれからできていくだろう。富士通が既にHEMT素子については成功を見たというふうに報道されております。それからまたガリウム砒素についても、かなり試作品としても完成されておるのではないかというふうなことなども報道されておるわけですが、我々の想像を超えてあらゆる分野でそういった基本的な分子の組み立て、配列というか、そういうものが進んでおると思うのです。したがって、通信、言ってみれば郵政の分野と通産の分野だけでそういうものをつくるということでは、どうしても規模が小さい、片手落ちだというふうに私は考えるわけですが、予算的なことを抜きにして、本来あるべき基盤技術というものはどういうものだというお考えがありましたら、その点お願いいたしたいと思います。
  25. 湯木和男

    湯木参考人 ただいま先生の方から非常に規模の大きい、難しい問題を提案されましたわけですが、素子という点で新しい素子をいろいろおっしゃいましたけれども、この素子というものはいろいろなものでこれからは非常に大事な分野であるというふうに、まず私は認識をしております。生体現象でも、いろいろな点でそういう触覚というのか、あるもののいろいろな機能をキャッチするというようなものと、そういうキャッチしたものをあるものに変換する、またそれを戻すとか、そういうようなことは、これからますますいろいろな分野研究開発は進むと思っています。  しかし、いろいろ新聞とか世間で言われているように非常に現実のものとして、例えばバイオ素子が進んでいるかというと、そういうものではなくて、やはりその考え方とかそういう夢的な要素があるようなことを含めた状態もまだ含んでいるのじゃないか、そういうように考えております。その中で出ておりましたガリウム砒素、これも十年来ずっと研究されておりますけれども、このガリウム砒素での素子が今工業的に現実に売り物になって成功しているかというと、まだこれからの開発とかこれからの研究課題であるというような状況でもある。そういう意味で、先端技術の理想は非常に高いわけですけれども、現実はやはり非常にステディーに進まざるを得ぬというのか、進んでいるというようなことで、表現が多少オーバーに、いろいろ夢が言われているということは御理解いただきたいと思います。  そういうような時代が来ましたら、これはやはりその分子構造、分子の問題になっておりまして、その配列とか、分子をつなげていくいろいろな過程というものの進歩があるわけですけれども、これを今すぐ総合的に、政策としてこの運営を全部一括して進めるというのは、私としては、やはりこれは非常に大き過ぎて、かなり難しい問題があるのではないかと思います。したがいまして、先ほど申しましたように、できるところから着実に進んでいくという意味でステディーということで、答えは余り変わらないかもしれませんが、お答えしたいと思います。
  26. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 どうもありがとうございました。  石井先生にお願いしたいのですが、今先生がおっしゃいましたメンテナンスの問題、メカトロニクスの結合の問題、人工頭脳の関係などを聞いておりまして頭に浮かび上がってきますのは、第五世代コンピューターと言われる、言ってみれば人間の頭脳に近い、そういうものの実用化がもう目の前に来ているのではないか。そうなってくると、ソフトの面と申しますか、記憶させていく段階で手間がかなり省けて大変便利になるというふうなことがいろいろ報道されておるのですが、現在、これが実用的なところまで来ておるのかどうなのか。言葉で覚え込ませるとすれば、それは日本語なのか英語なのか、エスペラント語の方が非常に覚えやすいとか、いろいろな話があるわけですが、専門的なことで大変恐縮ですが、どこまでいっておるのか、その辺私どもよくわかりませんので、ある意味では将来を見通す意味で知っておきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
  27. 石井威望

    石井参考人 お答え申し上げます。  第五世代につきましては、これは世界に先駆けまして我が国が大きなプロジェクトとして特に政府がリードしてやったという意味では、むしろ諸外国がおくれをとったというふうに申し上げていいと思います。実は二十年近く前に一度人工知能のブームが学問的にございまして、このときは専らアメリカがリードをとっておりました。しかし、それは不幸にしてといいましょうか、例えば当時の半導体の技術一つをとりましても、今から比べれば非常に低い程度でございましたので、当時の人工知能の研究は実用化というところまでとてもまいりませんでした。辛うじて一つだけ、そのときに実用化として現在残っておると言われておりますのが日本の郵便の自動数字読み取り機でございます。これだけが、どうしたことかというとちょっと語弊がございますが、日本がうまく実をとったと言われております。諸外国ではその点研究はしたのでございますけれども、実質的には残らなかったと言われております。いわばその失敗に懲りてというのでございましょうか、第二回目のLSIあるいは超LSIの時代が来ようというときに第五世代へのスタートがよその国はおくれてしまったのではないかと言われております。我が国の場合はそういう形で第五世代へのスタートがうまく切れたということでございますが、おっしゃるようにソフトの面、それから人間とコンピューターのインターフェースの面というのは、今後こういう新しいコンピューターでも一番ポイントになることは明らかでございます。  実用化がどのくらいされているかといいますと、第五世代でやっております中でもかなり低いレベルのものがございまして、例えばエキスパートシステム等、もう既に半ば商業的に出ている部分もございます。こういうものは将来どういうところに一番初めに使われるかという予想は、例えばスリーマイルアイランドの原子炉の事故がございましたけれども、ああいうようなところでは人間の問題も重要でございますが、エキスパートシステム、第五世代なんかのごく初期の部分の応用を早く実用化していくのがいいというふうに考えられております。したがいまして、なし崩しにといいましょうか、第五世代全体の中でできるところから実用化が着実に進んでいくと思います。  特に、最後におっしゃいました言葉の問題でございますが、私自身も大分前から音声入力の問題ということもやっておったのでございますが、翻訳というのが非常に大きな応用分野でございます。既に日本語から英語、英語から日本語というのは実用化して使っているものもございますし、それから技術分野に限って相当効果を上げているというものも既にございます。  一例を言いますと、ことし日本経済新聞社で優秀製品賞というのを出したのでございますが、その中にも日英の自動翻訳の賞をもらったところが二社ございます。そういう意味では、言葉の意味をうまく翻訳するというようなことも、その程度の技術的に限ったあるレベルでのことはできております。音声入力自身は一部試作的なものとか振られた分野での応用がございますけれども、まだ決め手になるような非常に大きな分野が出ておりません。ですから、技術としてはかなりよくなっていると思うのでございますけれども、大抵指で、ボタンで押せるところと競合になりますと、ボタンで押す方が確実でございますのでこの点は無理でございますが、将来を考えますといずれ、かつてカメラが操作が非常に難しかったのが今はちょんと押すとすぐに自動的にできるような程度に非常に自動化されて、音声で入力できるコンピューターというのが長期的には可能であろうというのが私ども研究者の大体の合意になっておりますので、その点は見通しとして申し上げられるのではないかと思います。
  28. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 どうもありがとうございました。大変参考になりました。  最後大島先生にお願いしたいのですが、これは話が少し国際的になって恐縮でありますが、けさの新聞でもスターウオーズ計画にかなり日本のこういう先端技術が要望されておるのじゃないか、そういった点での協力要請がアメリカ側からあるのではないかという感じがするわけです。これは大変難しい判断、見通しの話でありますが、なぜかというと、既に十六の分野についてアメリカ側が日本に対してペンタゴンレポートという格好で明らかになっておるのです。ガリウム砒素素子、マイクロウエーブ、集積回路あるいは光ファイバー通信、これは当然ですが、ミリ波、それから超LSI配線、画像認識、こういったものがずっと並んで十六ほどに分類されておるわけですが、そのうちマイクロウエーブあたりは当然スターウオーズ計画、SDIの中心をなすものだというふうに言われておるわけですが、それ以外にも今私が申し上げようとしたいろいろな先端技術が、日本技術評価が高いだけにそういう協力を要請されてくるのではないか。けさの新聞だけではわかりません。中曽根総理の態度も、向こうで一定の協力をするというふうな程度の抽象的な態度であったということですから、具体的にそれじゃ何をどのように協力するということはありませんから、ここで言うのは少し先走っておるような気がいたしますが、これから日本基盤技術をどんどん開発を進めていくということと並行して、その種のことが要請され、協力をしていくようなことになりはしないだろうか。日本研究陣の先頭に立っておられる大島先生から、今日まで全くそういうことはなかったのか、私はそういうことについてはちょっと心配なわけですが、これから先の見通し、お考えがありましたらお願いしたいと思います。
  29. 大島惠一

    大島参考人 ただいまの点について、実はこういった問題、なかなか複雑な面がございまして、私のごく最近の経験を申しますと、アメリカ大学教授が、アメリカ大学で、この軍備並びに軍縮に関する技術問題についていろいろ、これはMITの教授でございますけれども、長年そのセンターがあってそういう研究をしているわけですが、この間私のところに参りまして、今お話しのスターウオーズの問題などで国際協力の問題がいろいろ出ているわけですが、アメリガの見解は、スターウオーズというのは、実はあれは原子爆弾といった核兵器をなくしていく方向なんで、非常にディフェンシブというか、防護的なシステムであるということを言っているわけですね。  一方、ヨーロッパなどに参りますと、ああいうスターウオーズという形で宇宙を使っての軍備計画ができますと、いわゆるアメリカとソ連という二大臣大パワーだけが世界を完全に支配して、ヨーロッパの国々が実際に自分の国の防衛あるいは自分の国に対してもほとんど力がなくなってくる、いわゆる二大国支配の一つの横暴だというような意見もあるわけです。  それで、その私のところへ来ました教授は、どうも技術の内容についてヨーロッパ、日本人たちは余りよく知らないんじゃないか、今のMITの計画は、今の技術者で実際にそのスターウオーズだけではないと思いますが、今言った軍事技術並びに軍縮の技術についての内容についていろいろそこで、どっちかというとアメリカの方の技術を教えるというか、セミナーみたいなものをやろうということを言ってきたわけです。彼は、これは実はアメリカの国防省の方から見ると必ずしも賛成ではないんだけれども、自分たちは長い目で見ればそういうことは非常に大事だと思っているという話があるわけです。  それで、何を私申し上げたいと思ったのかと申しますと、現在のところ、そういう軍事計画そのものに対して先端技術に対する協力というものは、私が知る限り余りないわけでございまして、むしろ個々の協力、例えば日本の先端技術を日米で協力しようという話はありますけれども、その場合には技術そのものに向かって協力していく、それが軍事的なものと関係があるかないかということになりますと、今お話し申し上げたような例でわかるように、どうもこちら側ではよくわかってないというところがあるのです。  それで、私は、これはかなりデリケートな問題がございまして、それじゃ日本側も一緒になって軍事技術全体のシステムを、協力しながら研究するということがプラスなのかマイナスなのか、実際にその内容を知って、日本の先端技術というものがどういうふうに使われるのかということを知るためには、実はそういったMITの計画などと一緒に知ることはいいわけですけれども、しかし一方、そういうことが今後の、今申しました単に技術の問題を超えた政治的な問題あるいは国際間の問題になってまいりますと、非常にデリケートな問題が出てくるということでございます。  結論的に申しますと、私は日本技術が非常にすぐれてくれば、これは平和的にも軍事的にもいろんなところへどう使われるかということは、技術というものはそれなりでそれだけの力を持っているわけですから、盾の両面になるわけでございますが、それが個々の問題について、現在、少なくとも私の関係している限りにおいては、そういったむしろ日本技術を規制しようという形でのコントロールがあるわけですが、積極的に協力を要請されているということは現在のところはないと思います。     〔浦野委員長代理退席、委員長着席〕
  30. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 どうもありがとうございました。  いよいよ最後なんですが、これは湯木先生は少し気兼ねをして、やれる範囲内から規模は小さくとも将来拡充していくという意味で、現在の出発規模を大体了解されたような発言でございましたが、河野先生は、赤字国債のツケの問題を初めとして、いいものを子孫に残すという意味では、もっと民間の知恵もかりるし、予算的にもこれは小さいんじゃないかというふうに言われました。  そこで、私も河野先生意見に同感なんですが、さっき申し上げましたIBMあたりは年間の研究費が五千億円というわけですから、とてもじゃないが比較にならぬわけですね。したがって、将来日本基盤技術というものを本当に向上し、国際競争に打ちかつ、技術立国として生きていくためには、かなり大規模な基盤整備が必要だと私は思うのです。  その点、最後に、河野先生意見が同じなんですから、ひとつそういう立場で予算上の問題についてお話を一言お願いしたいと思います。
  31. 河野光雄

    河野参考人 今の先生の御意見に私、全く同じなんですけれども、それを実現するためには、ここ三年間か四年間とっている政府のマイナスシーリングによる予算編成という一律カット方式というのを、風穴をあけなければだめだと思うのですね。それをあげれば、やはり相当の効果があるだろうと僕は思うのです。それはやはり政策の優先順位をそろそろ決めて、一律全部ぶった切るというやり方は余りにも哲学がなさ過ぎると思うのですね。  今、先生おっしゃったみたいに、これこそ日本の将来のためにやらなければならぬ仕事だとするならば、それはつらくても、ほかを少し切っても、ないしは別の増収効果のあることを考えても、何かこれだけは別枠だということをやらなければいかぬ。今のところは、やっぱり聖域ではないけれども、防衛その他というのは幾つかの項目が別枠みたいなことになっていますね。それはそれでまた別の理由があって、その議論はおきますけれども、この基礎技術関係は、もっと堂々と正面切って別枠にするということが必要だと思うのです。よく自民党の幹部の方が、めり張りのある予算だとかという表現を使われますけれども、それは気持ちは同じだろうと思うのです。  ただし、その場合にどこにめり張りをつけるかということは一人一人の政策判断の問題ですから、何もすべてが基礎技術のことに集中するという議論をしようとは思いませんけれども、しかし冒頭、私申し上げたように、マイナスの百数十兆円の遺産を残すのならば、ちっとはプラスの遺産も残しましょうという発想で、もし御同意いただけるならば、今のマイナスシーリングというのはいかにも機械的過ぎる、少なくとも六十一年度からはそれにきちっとした政策をもとにして風穴をあける必要があるのではないかと私は考えます。
  32. 浜西鉄雄

    ○浜西委員 大変どうもありがとうございました。終わります。
  33. 粕谷茂

    粕谷委員長 浜西鉄雄君の質疑は終わりました。  続きまして、福岡康夫君の質疑に入ります。福岡康夫君。
  34. 福岡康夫

    ○福岡委員 きょうは大変お忙しい中、御苦労さまでございます。ありがとうございます。  まず、私、現在置かれております研究行政の問題について、総括的なことからちょっとお尋ねしたいのでございますが、まず最初に、大島参考人及び湯木参考人にお尋ねしたいのでございます。  昭和三十五年から四十八年までの我が国は、海外から技術を買ったり、またそれに改良を加えたりして技術の向上を図ってまいったわけでございますが、その結果、今日では、我が国としては海外の技術レベルに追いつき、技術面において現在海外から学ぶべきものがなくなると同時に、海外からは逆に警戒されて、我が国技術を出したがらなくなっておる。もし出したとしても、とても値段が高くて採算がとれない状況となっておると私は思うわけでございます。  このように開発研究費が突出して、基礎研究及び応用研究に余りお金が使用されていないということは、基礎研究応用研究にはリスクが大きくリードしている、時間が長いことから営利追求を目的とする民間企業にとっては経営管理上重荷を感じておるのではないかと思うわけでございます。  このようなことを考慮いたしますと、この基礎研究応用研究にはやはり国が本腰を入れて取り組む必要があると考えるのでございますが、この点についてどのようにお考えになっておるのかお伺いしたいと思うわけでございます。
  35. 大島惠一

    大島参考人 私も今の点に関しては全く同感でございます。  ちょっと私、西暦で申し上げて恐縮ですが、実は一九六〇年代の終わりごろに技術革新が大分停滞しておるという議論がございました。そして事実各国研究開発投資を見ますと、その辺から七〇年代の初めにかけて頭打ちになって、日本だけは着実に伸びております。ところが、最近起こっている非常に顕著な傾向は、一九八〇年代から急速に各国、特にアメリカ研究開発投資は伸びております。それでまた、設備に関してもアメリカの設備が大変新しくなりつつあるというような、新しい技術に対する設備投資も行われている。それで、御承知のとおり、日本は全体の研究投資に対する政府の割合は二五%程度でございますけれども、ほかの各国は大体五〇%を超しております。これは軍事研究だけじゃなくて一般研究という形でそういうことになっておるわけです。  今おっしゃったとおりの世界の情勢の中から見ますと、一つは、最初申しましたように、日本世界に貢献しなければ向こうもこっちに技術をよごさない。技術というのはお金だけじゃなくて人間の頭であるということにもなりますけれども、数からいきましても、日本人だけでアメリカ、ヨーロッパ全体と比べましても、これは数が少ないわけでございます。  その点では全くおっしゃったとおり、この法案とともに、基礎に対しては民間活力あるいは国立研究機関大学なども含めて国は相当研究開発投資をしないと、今の状況から見て非常に憂慮すべきことが起こる可能性があると私は思います。
  36. 湯木和男

    湯木参考人 私も、先生のおっしゃいましたこととほぼ同感でありまして、この研究開発それから技術競争が最近非常に熾烈になってきておるということを実感しております。  確かに日本の場合は、研究開発費自体がアメリカなどに比べまして非常に少ないという点と同時に、やはり政府から援助してもらったり政府が出しておられる研究開発費というのは比較的少ない、そういうふうに判断をしているわけです。  そういう場合に、国家の財政もあることですが、どういうふうにして競争力を上げていくかということになるわけですけれども、まず民間としましては、外国研究開発のやり方が非常に規模が大きいだけじゃなくて、割に整然としている。日本の場合ですと、これは比較的小さな企業が単独であるいは個別に同じ基礎研究、同じ研究をやっているというのが非常に見られるわけです。そういう点から見ますと、今度の法案の趣旨からしまして、行政指導とは言いませんけれども、そういういろいろな民間への援助をやられるとかそういう面を受けますと、業界としましては、国自体が基礎研究を非常に重要に考えているという意識、そういうような刺激というのは、この法案スタートでさらに追加されていくと思います。したがいまして、これは企業研究者に対しても基礎研究重要性というのが非常に伝わって活性化するということは間違いないと私は確信しているわけです。  ただ、全体の研究規模の大きさから見ますと、確かにこれが不足していまして、その点では、民間に対する援助と同じように国立研究所または大学研究に対して政府はいろいろ配慮しないといかぬような危機感を感じております。  最近、確かに技術の交流というものは完全なギブ・アンド・テークでありまして、むしろそういう点でもなかなか厳しいということになってきております。そういう点では、やはりその研究開発についての予算措置をさらにふやすという方向を希望したいと思います。
  37. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、河野参考人にお尋ねしたいわけでございますが、先日開かれました商工委員会において私、公正取引委員会に競争行政の件につきましてお尋ねをしましたところ、この法案施行後の運用面において競争阻害的影響を排除し、競争促進効果が維持されるべく見守っていく、こういうような御回答を公正取引委員会から得たのでございますが、これらの競争政策上の問題についてどのようなお考えをお持ちなのか、ひとつお伺いしたいと思います。  第二には、先日開かれました同じく商工委員会において村田通産大臣にお伺いしたわけでございますが、この法案の提案理由は私は説得力を持っておると思うわけでございます。要はこの法施行後の運用がいかに適切になされるかである、特に中小企業の保護育成面から、企業の大小を問わず公正かつ公平に法の運用がなされるのかどうかという点が今後の問題ではないかと思うわけでございますが、この点について御意見をお伺いしたいと思います。
  38. 河野光雄

    河野参考人 後の方の、中小企業関連のことから申し上げたいのですけれども、この法案は、法案にもたしかにきちっと書いてあるんだと思いますが、大企業だけを優先し、それだけを区別して特定の出資、融資を行うわけではありませんから、それはこれからできるセンターをどう運営するかということにかかわる問題ですけれども、そこで、そのセンターのトップに民間のしっかりした見識のある人を置いて、評議員会がきちっとした構成でできれば、今先生のおっしゃったような懸念はそこでほとんど解消されるのではないかと思うのです。抽象的に、大企業に対して集中的にというふうなことは好ましくないということは、それはそれでわかるのですけれども、それをどう実行するかということは、実際このセンターの任に当たる人がお決めになるわけですから、それにそういうことをしっかりやるような注文をきちっと国会の方でつけられるということが一番有効なのではないかと思うのです。  それから、私、独禁法絡みのことはよく存じませんのでちょっとお答えができかねますけれども、ごく常識的な考え方からすれば、基礎的なことについてこういう官民共同の、学も加わって共同研究をやって、その結果出てくるものが応用段階、開発段階と生かされていくわけですが、それはそんなに独禁法上競争条件を阻害するようなことにならない方向でその成果が民間の中で競われるという道は今でもあるんじゃないでしょうかね。私は、冒頭申し上げたように、独禁法絡みのことでこのごろ余り考えたことないものですから、適切なお答えができないで申しわけありません。
  39. 福岡康夫

    ○福岡委員 石井参考人にお尋ねしたいわけでございますが、現在、我が国の優秀な研究者が何名ぐらいおるのか、また、海外において研究活動にどのくらい携わっておられるのか、その数を把握しておられるのかどうかということをこの間の委員会において通産省当局にお尋ねしたわけでございますが、現在のところ把握しておらない、こういうことでございます。頭脳の海外流出を食いとめるにはどうすればよいのか、また、我が国研究者がとどまって研究活動を続けるための環境条件の整備等を国はどういうように考えていけばいいのか、その点のお教えを願いたいと思うわけでございます。  第二には、国立、公立、私立、各大学工学部及び大学院に基盤技術研究者養成コースを設置するなど、本格的に研究者養成に力を入れるべきときに我が国は現在来ているのではないかと思うわけでございますが、この点についていかがお考えがあるのか、ひとつ御見解をお教え願いたい、かように思うわけでございます。
  40. 石井威望

    石井参考人 お答え申し上げます。  まず第一の、研究者の優秀な頭脳が流出するという点でございますが、確かに、特に基礎になればなるほど海外で才能を伸ばすという例が多うございます。これは、先ほども御質問がございました若い人の意欲との関連、それから我が国研究における人事の問題で非常に伝統的にかたいということがございまして、年功序列と言いましょうか、そういうことが研究面でも、研究体制でも出ておりますので、例えばアメリカのような抜てきするとか思い切ったことをやるというような点での、若い人が海外へ出て大いに才能を伸ばすという実例はかなりございます。  ただ、国際比較ということになりますと、例えば隣の国の韓国等ではけた違いにまた海外流出をしておりまして、私どもが聞いてびっくりするぐらいの、海外へのむしろ定着をしております。それに比べますと、我が国の場合には、むしろ韓国の方なんかがうらやましがるぐらいよく日本に帰ってきているという評価もあるわけでございます。  いずれにしましても、先ほどから、特に若い世代の研究環境あるいは人事的な弾力化というようなことはぜひやらないと、先生の御指摘のような海外に優秀な頭脳が出まして、そこで創造的な仕事をする、したがって、ある意味では国家性からかもしれませんが、我が国のこういう基礎面における充実がおくれるということがございますので、全くその点は我が国における環境をよくしなければならないというふうに考えます。  第二の、大学工学部あるいは大学院等においていかんということでございますが、特に、私は大学のレベルというのを相当重視すべきだと考えております。戦後、文科系と理工系を比べますと、理工系では非常に大学院が充実してきてまいりまして、現在は修士卒業者というのが理工系ではほとんど我が国技術者の中心になっております。しかし、まだまだ不十分だと思います。特に、先ほどから申し上げております現場の技能者レベルあるいは保守をやるようなレベルでは日本は非常に優秀でございますけれども、創造力が非常に高い高度な技術者ということになりますと、もっと充実させる必要があると思います。  したがいまして、福岡先生の御指摘のように、特に大学院等におきまして基礎関係研究者をふやすような、あるいは内容ももっともっと高くするような方向が必要かと思いますが、ただ、これは単に大学だけの問題ではございませんで、むしろ産学といいましょうか、社会全体との関連が強いと思います。例えばアメリカの例で申し上げますと、ベル電話研究所というのがございますが、このベル研究所は大学以上にノーベル賞の学者を何人も出すくらいの高い水準を誇っておるわけでございまして、我が国の場合でも研究者という点で大学大学外のまた高い研究レベルということをうまくリンクさせまして連係プレーをしてやっていくのが将来の理想かというふうに考えております。
  41. 福岡康夫

    ○福岡委員 次に、湯木参考人にお尋ねしたいのですが、先ほど参考人の御意見をお聞きしていましたところ、御意見の中に企業のリスクの問題を御指摘になっておったわけでございますが、私、先日ある大手企業研究所に行ってまいったわけでございます。そこでいろいろお聞きしたのですが、この会社では、現在年商売上高の約三%を研究開発投資開発費として使用しており、約九百人の研究員がおられるということでございます。この方は全部大学院の修士課程以上の学歴を有しているということでございましたが、利潤の追求を第一とする営利会社の性格上、どうしても懐妊期間の長い、それから成功率が五〇%と言われている不確実性を伴う研究開発投資することは経営のトップとしては頭の痛い課題であろうということはお察しできるわけでございます。  そこでお伺いしたいのでございますが、現在我が国の経営者の方々は、この研究開発のための投資についてどのようにお考えになっておられるのか、それからまた、売上高の何%ぐらいを研究開発のために支出するケースが会社の経営上妥当なのか、いろいろケース・バイ・ケースもありますが、平均的なもので、抽象的で結構でございますが、御意見をお伺いしたいと思うわけでございます。
  42. 湯木和男

    湯木参考人 それではお答えいたします。  研究開発の場合に一番基準になって経営者が考えますのは、やはり売上高に対して研究開発費を何%にするか、これは経営では基本的な方針になります。それから、それを継続していかなければいかぬわけですから、景気のいい、悪いにかかわらずあることを維持していく、そういうような点が非常に大事なわけです。売上高に対する研究開発費というのは業種によりまして非常に違うわけです。素材産業になるという方向の事業は比較的低いと考えて、一%のところもありますし、それから一・五%もある。これは比較的汎用的な、現在つくっている製品自体が非常に先端的というよりは汎用的になっているというような産業、そういう点はそれに対する投資は低いわけです。しかしながら、先端産業と言われる分野または成長産業と言われる線に乗っている、例えばエレクトロニクス分野、あるいはバイオ、医薬とか、そういう研究では非常に高くなりまして大体五%から一〇%というような点が出てくるわけです。平均的には大体二%から三%というのが標準ではないかと思います。  それからもう一つ、これは企業の中においてその研究投資の比率が各社とも変わっておりまして、既存の事業から、これが比較的将来性については、新しい事業に転換しなければいかぬ、革新的な分野に体質改善しなければいかぬというときには既存の方は非常に減らしまして新規の方に高く投資する。例えば私の東レの場合を見ましても、既存の方では非常に投資をしないという面では一%くらい、それから、投資をこれには集中的にしたいというのは五とか七%、平均三%、そういう感じになっている現状です。したがいまして、経営者から見ますと、これの研究開発投資は非常に大きなものになるわけです。  このために成功の確率ということになるわけですけれども、私の今までの経験からいいますと、研究開発をする種、内容が非常に左右している。研究開発をしている内容が非常にレベルが低いといいますか、ちょっとした延長のものであるならば、研究開発が進んだ後これを事業化したときに一遍に他社との競合ということと、それが売り値に対して需要供給の関係で足を引っ張るということで、事業としては非常に苦しい状態になるわけです。しかも、そういう状態の研究というのは、苦しみを克服する期間が、一番お金が要らない探索とか基礎研究のときじゃなくて、むしろそれを事業化する直前、量的にも一番お金のかかる時期、設備投資もそういう時期にずるずると苦しむわけです。  したがいまして、経営者の姿勢としましては、そういう研究開発の成功率という面は五〇とか三〇とか各会社によってあるでしょうけれども、非常に先に市場が確保できる、要するにプライスリーダーになれるような速度で開発をしていく、したがって、そのときには成功の確率が多少リスクであっても難しいものの研究に重点を置くという経営姿勢がとられているのじゃないかと推定いたします。  私の会社にいたしましても特にその点を強調いたしまして、特にそのものが開発された後では、単に世の中でリプレースマーケットにつながるということではもはや開発研究投資がペイしない、したがいまして、先端的とか、非常に創造的な、オリジナルの高い、できるだけそういう高い技術で勝負する時代になっていると痛感しております。  以上でございます。
  43. 福岡康夫

    ○福岡委員 まことに恐縮でございますが、河野参考人に重ねてお伺いしたいのでございます。  基盤技術研究円滑化法案が施行されまして、民間企業研究開発活動が活発化してまいりますと、他の企業共同研究を行ういわゆる共同研究開発、それから、他の企業から技術の供与を受けるいわゆる技術取引が市場における競争にいろいろ影響を及ぼすと思うわけでございますが、この点の問題につきまして何か御見解があればお聞きしたいのでございます。
  44. 河野光雄

    河野参考人 お答えいたします。  先生のお考えになっていらっしゃることがどこにあるのか、私ぴったりつかまえることができなかったかもしれませんですが、研究開発をやって、その成果が基本的にはそれを一生懸命やったところに帰属するのは当たり前なことだと思うのです。また、そのために競争するわけです。したがって、創業者としての利得がそこに入るのもまた当たり前な話だと思うのです。さっきちょっと競争条件の話もありましたけれども、そういうことをお互いが競い合いながらやっていくわけですから、今先生が問題提起されたことは、若干のマイナス面もあるかもしれないけれども、それに比較してはるかに大きなプラス面があるわけですから、そんなに疑問視することではないのではないかと思います。  どうも先生の言われていることを十分つかまえていないでしゃべっているおそれがありますので、的確なお答えかどうかわかりませんけれども……。
  45. 福岡康夫

    ○福岡委員 結構でございます。一般的な状況から見ての御判断で、法理的な問題ではございませんので、学識経験者の立場からいろいろ一般的に見てどうかという質問に対して忌憚なく御意見をいただきましたので、ありがとうございました。  以上をもちまして終わらしていただきます。
  46. 粕谷茂

    粕谷委員長 これをもちまして福岡康夫君の質疑は終わりました。  続いて、宮田早苗君の質疑に入ります、宮田君。
  47. 宮田早苗

    ○宮田委員 参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。  まず、大島先生石井先生にお聞きしておきたいことがございますのは、外国人の研究者を招聘なさるときに大変問題といいますか、不自由なことが多いと聞いておるわけでございますが、どういう点を不自由にお考えになっておるか、また是正するならばどういう点を是正した方がよろしいか、こういう点、ございましたら端的にお伺いしたいと思います。
  48. 大島惠一

    大島参考人 外国人の研究者、特にすぐれた研究者を招聘いたしますときに一番問題なのは、お客様としてなら呼ぶけれども、先ほど申しましたように日本において本格的に中に取り込まない、プロジェクトの中あるいは研究の組織の中、あるいは大学でも本当の正式な教授陣の中に入れないというところがあると私は思うのです。そのために、とかく来られる方は、これは日本のいい面もあるわけですけれども、歌舞伎がお好きだとか文化がお好きだとか、そういうことで日本に呼んでくれるなら私は行ってみたい、しかし、本当に日本に行って一丁研究してすぐれた業績を上げてやろうかというようなことがどうもないと思うのです。  これが例えばアメリカなんかの場合ですと、ヨーロッパのほかのところでも、そういうところへ行って自分は大いに仕事をやろうということになると思うのですね。最近は研究内容に関しては日本でも非常に魅力のあるグループがあるわけですから、その点ではかなり条件がよくなっておりますけれども、例えば生活にしましてもそれから組織の中の一員としての待遇にしましても、今申しましたように、本当に中へ取り込むということについて制度的にも周りの習慣的にも難しい。この点を急速に改善しないと、日本に来て本当にすぐれた仕事をやるということがなかなか難しいのじゃないか、私はそういうことを思っております。
  49. 宮田早苗

    ○宮田委員 石井先生、今、大島先生からも聞きましてそうであろうかと思いますが、私どもが聞いておる範囲内では住宅とか医療問題とか、子供さんをお連れになったときに学校の問題等々、大変問題があるやに聞いておるわけでございますが、その辺はどういうことなんでございますか。
  50. 石井威望

    石井参考人 むしろ一時、我が国が非常に経済レベルで特に先進国よりは低かったという時代におきましては、経済問題とか、住居あるいは例えば給料その他で非常に差があって御不自由だったという例もたくさんございますが、最近大分改善してきたことは事実でございますが、やはりまだまだ本格的にそれを、先ほど大島先生のおっしゃいましたように物質的な面でも本格的にちゃんと処遇する、例えば、官舎一つにいたしましても全く日本人の研究者なり教官と同じようにするという辺ではなかなか障害があるようでございます。したがいまして、そういう設備があっても量が非常に少ないために結局はそういう選に漏れるというような実情もございます。したがって、本格的にそういうことをするとすれば、量的にも十分それをやらなければいけないと思います。  それから重ねて、一番自尊心を傷つけ、大分心理的ダメージを与えるのは、身分上の問題が大きいと思いますし、手続等の問題につきましても、私なんかが逆に海外で非常に感じましたのは、私どもの常識では考えられないくらい、拍子抜けするくらい簡単にいろいろなことができる。したがって、外国研究者を受け入れるシステムが実によくできていて、スムーズにいっているという点が、我が国では例外的というのでしょうか、何かと難しくなっておりますので、この点は先ほどの国際化の関連ではぜひ改善していただきたい点でございます。
  51. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つ、両先生にお聞きをするわけですが、逆な場合、研究者といたしまして学会に出席されて情報交換をなさる、非常に重要なことと承っておるわけでございますが、その際いろいろまだ問題があるのではないかというふうに推測をするわけでございますが、一番何が問題であるかということを端的にひとつお聞きしたいわけでございますが、大島先生石井先生どちらでも結構でございますから。
  52. 大島惠一

    大島参考人 ちょっと御趣旨が十分理解していない点があるかと思いますが、もし外国日本研究者が出ていったときに一つ大きな問題というのは、最近起こっている現象についてちょっと申しますと、もちろん向こうの大学とかそういうところは依然として極めて情報交換についてはオープンでございますけれども、一方特に軍事研究といいますか、アメリカ国防省の関係とか、それからアメリカ研究の場合もそういう軍事的な問題に関連して日本技術を出さない、私の経験がございますが、ある国際会議に出ておりますと、あるところまで研究者が話していると、わきから、これ以上話しては困るというようなことを出席している人が言ったりするケースはございます。しかし、それは昔からなんですけれども、最近起こっておりますことは、やはり日本外国との、学会出席ということもさることながら、いろいろな向こうから文献をもらいたいとか、情報をもらいたいときにやはりただでは出さないというか、昔は非常に自由に出してくれたようなところもかなりそういう日本から一方的に情報をとるというようなことで制約をされるという話をたびたび聞いております。  基本的に、総括的に申しますと、だんだん技術の問題に関してそういう学会レベルの、純粋な学会は別として、かなり問題を絞った研究会その他になりますとやはり非常にギブ・アンド・テークの関係になっておりまして、昔は聞きに行ってただ黙って自分だけメモをとって帰ってくるということができたのですが、最近はそういうことについては向こうが非常に制限的になっているということがあると思います。お答えになったかどうかよくわかりませんが。
  53. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一度、大島先生にお聞きをするわけでございますが、産業構造審議会が中間報告として、人材の育成、教育と技術開発とが表裏一体の関係にあるということに着目をして、既存の大学研究機関の枠にとらわれない新しい高等教育、こういう機関の設立の必要性を強調しておるわけでございます。ところが、非常に幸いといいますか、私ども感心なことには、このたび大島先生の方が先端技術大学の構想をお持ちのようでございまして、産構審の答申と相マッチしてさらにこの法律ができるということ、大変時宜を得た、ちょうど当を得たときだと思っておりますので、この際お考えをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  54. 大島惠一

    大島参考人 冒頭での私の意見のときにも申し上げたのですが、私は、最近技術革新といいますか、技術研究というのは非常に大幅に変わってきていると思うわけです。そのためには大学の教育そのものも大幅に変わらなければいけない。  要点は、一つは、非常に独創的といいますか、すぐれた研究者が実際に大学といったアカデミックなものと同時に、非常に生産技術に近いところあるいはそういった大型設備の国の研究機関でやっているようなもの、そういうものに自由にアクセスできるというか、自由にそれと一緒に仕事ができるということをやらないと、結局抽象的なことだけをやっていたのではすぐれた独創的な研究ができないし、教育もできないということが一つあると思うのです。  それから第二の点は、先端技術大学で私がいろいろ考えておりますのは、筑波の地域に国立研究機関があるわけですが、筑波大学もございますけれども、今の大学の制度というのは、どうも国立大学は、私もずっと国立大学にいたわけでございますが、なかなか自由に、制度的に非常に融通無碍な運営ができにくいという点があるわけです。そういう点で、あれだけの国の投資研究機関、また人員を大学と一緒に結びつけるということが非常に大事じゃないか。例えば、外国ですと、私は、カールスルーエというところの原子力研究所なんか行きますと、実は原子力研究所の主な研究者はほとんどカールスルーエの工科大学教授を兼任して、兼任というか、どっちが兼任かということがわからないくらいでございまして、それで、これは大体外国でも定着している考えだと思うのですが、やはりそういう研究機関大学が一緒になっていないと研究機関は陳腐化する危険性があるし、大学の方はアップ・ツー・デートの、非常に先端的な技術問題をとらえられないということがあるということでありまして、そのためにそういった全く新しい構想での大学が必要なんじゃないか。  それからもう一つは、例えば若い学生が入ってきますが、大学に入るときは十八か十九でありますが、今の大学院の組織ですと、学部へ入って、それから大学院へ行って本当に研究をやるのはドクターになりますから、もう二十五ぐらいなんです。ところが御承知のとおり、ノーベル賞をもらっている人たちなんというのは、いろいろな人がありますが、基礎に近いとか物理学の方は大体二十代ぐらいのときに既にそういうアイデアが出て、それで先ほどのジョセフソンなんというのも大学院学生のときに書いた大学院の卒業論文がノーベル賞になっているわけです。今の日本の制度ですとそれは非常に難しいのです。なぜかと申しますと、例えば学生が、非常に数学ができるけれども英語ができないと、いつまでもやはり英語を一生懸命やらなければならないために、そういうところが伸びない。もし大学に入ったときに、すぐれた学生はもうどんどん大学院の講義も聞くし、大学院の研究に参加できれば非常に創造的な学生が出てくるのじゃないか。一方、それに対して今度、企業にいる人が、先ほど石井先生の話にもありましたが、自分が陳腐化していくことを避けるためにはやはり企業にいるときから大学に入っていく、すなわち縦にも横にも非常に融通無碍なものがないとこれからの非常に速い技術革新についていけないのじゃないか。  それで今構想を固めまして、そして実は東京大学のもともとは工部大学校と言いまして、工部省の下にあった、これは話が長くなりますので省略しますけれども、大学校で、非常にそのときの研究は電気の研究がイギリスのマクスウェルの研究所と同じくらいの設備があったと言われる時期があったわけでございまして、そういう意味でも、本当は大学というものはいろいろ各省の枠も超えていかなければいけないと私は思うのですが、その辺のところは制度上いろいろ問題がございますので、せめて私立大学というような形で先端技術大学一つの思い切った例をやってみたらどうかというのが私の構想でございまして、これはすべての大学がそうなるというわけではございませんが、そういうものがいろいろの中の一つとしてあるのは非常にいいんじゃないが。外国の例もそういうケースがございますので、そういうことを考えている次第でございます。
  55. 宮田早苗

    ○宮田委員 ぜひ実現するように頑張っていただきたいと思いますが、ここに通産省の皆さんもおいでになりますが、側面的に応援をする必要があるのじゃないかと思います。  そこで、湯木参考人にお聞きいたしますのは、共同研究の必要性ということを特に強調をなさっておいでになるわけでございます。もちろんこの法律は、国の研究機関を大いに民間に使用してもらおうということで共同研究と同じことなのでございますが、民間と言うなれば地方公務員とが合体をした形で研究するということになるのじゃないかと思うわけでございますが、そういうときに、やはりある程度、お互いに研究者ですから、その意味ではじっくり研究できると思いますが、民間でいろいろ経験なさったことと、それから公務員ということで経験なさった方との人間関係といいますか、なかなかうまいぐあいにいきかねる面も出てくるのじゃないかと思いますが、そういう点について、何か抽象的でございますけれども、うまいぐあいにいかせる方法をひとつお考えとしてありましたら、おっしゃっていただきたいと思います。
  56. 湯木和男

    湯木参考人 企業研究所または研究室の仕事と、それから官の、政府研究所またはそういう機関との仕事の内容については、私はある面は交錯というのか接触して同じ領域の研究が行われてもいいのじゃないか、こういうふうに基本的には思っております。  その理由の一つは、これは例えで申しますと、Aという金属とBというものをひっつけるときにAB親和性がある、Aにもひっつく、Bにもひっつくというのが接着剤でございます。そういう点で、民間と官の公立の研究所とが非常に仲よく仕事をするためにはそういう領域があってもいいのじゃないか。したがいまして、そういう領域では非常に話がいろいろ弾むことと思います。  基本的には、どちらかと言えば日本は全体として基本的な技術を重視しないといかぬということで、政府の機関もそれから民間の機関も基礎技術を非常に重視はしていますけれども、一つ考え方としては政府機関の方がより基礎的と、そういうことがあってもいいのじゃないか、そういうふうに思います。そのときにお互いにどういう点がメリットになるかといいますと、民間から見ますと政府研究所がこうあってほしいというのは、そこに一つの基礎の重要なキーになる技術を持っておられる。したがって、それを企業としてはできるだけ早い段階から研究で一緒になって応用研究、まあこの法案にも応用ということが入っておりますけれども、そういうところは一緒にやりまして非常に速く仕上げる。そういう点で過去を振り返りますと、私の会社でも炭素繊維というのは、実はこれについては大工試さんの技術を我々が非常に初期の段階から受けまして、共同開発する、それを非常に焼く速度が速いという別なものを見つけましたけれども、そういう点では非常に接触して成功している例でございます。  そういう点で見ますと、外国においてもいろいろ大学の方からオリジナルとか基本が出て、それを民間が受け継いでいるという例が非常に多うございます。そういう点で、人の頭の構造とか研究者の内容から言うと、人間的とか人間関係ではそうは違ってないのじゃないかと思いますし、こういうように今回政府の機関をいろいろ提供していただけるということですから、むしろ非常に喜んでいるわけです。  ただ一つ、こういう点でより交流を深めて積極的に共同研究をしていくためには、これは大学にしてもカラーを出していただくと非常にありがたい。例えば岐阜大学だったら岐阜大学ではこういうカラーを持ったところが非常に強いポテンシャル、それからどの研究機関にはこの分野については専門的に世界で一流である。東北大学の金属なんか非常に有名なレベルという昔からのあれもある。ああいう感じでありますと、企業サイドの研究所としても研究者を留学で派遣できますし、それからそこと一体に早くなれてそういうものを盛り立てられるというような希望と、それから企業としての意欲が非常にスムーズにいきますし、そういう点でそこからまた企業に帰ってくるということで、交流が非常にうまくいくというのが非常に理想的な姿ではないかと思います。
  57. 宮田早苗

    ○宮田委員 ありがとうございました。
  58. 粕谷茂

    粕谷委員長 これをもちまして宮田早苗君の質疑は終わりました。  続きまして、工藤晃君の質疑に入ります。工藤君。
  59. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 初めに大島参考人石井参考人に伺いますが、その場合お二人も参加されたというふうになっております技術開発の展望研究会の報告、五十九年八月の内容にもちょっと触れますから、あらかじめお断りしておきます。  それはこの中にもありますし、きょうのお話にもありましたけれども、戦後四十年たってみて、これまでの日本技術あるいはもっと広く科学技術の特徴として追いつき型であったとか、それから特に生産技術とか能率コストに結びつけるような技術面で非常に高度になったけれども、基礎的な面がおくれてきたということが広く指摘されているわけです。その指摘というのは私の記憶でも随分前からあったんですが、戦後四十年間たった今日でも依然としてそういうことが言われるのは、どこに一番大きな問題があるのか、その辺からまずお聞かせ願いたいと思います。大島参考人、お願いします。
  60. 大島惠一

    大島参考人 これは大変難しい問題でございます。確かに戦後私も通産省技術政策にかかわったときに大変な議論がございまして、実際に日本基礎研究をやってそれから日本技術立国をやるべきであるという考えと、外国から早く技術を導入しなければ間に合わないという議論と両方ございまして、結局、実際に企業化し国際競争において日本の国の経済を支えようとすると、やはり国際的な技術を導入しなければならないということになったわけでございます。  ただそのときにこういうことがございました。外国から技術を導入する場合でも、既に自分のところで研究をやっている企業を優先する。あるいは既にある程度開発段階に来ているものは、例えば東レさんの場合のナイロンの導入なんかは、ほとんど技術日本ででき上がっているものをパテントその他の関係から技術導入したというようなケースもございます。その点では日本が戦後これだけやってくるときに、日本の国をつくっていくといいますか成長させていくという大きな目的があって、そこにかなり国全体としての意向が向いていたために、研究者にしてもいい人がそっちへ行く、また実際にお金もそっちへ行ったということがあると私は思うのです。  これは明治以来の日本の伝統的な科学技術の発展の段階を見ても、向こうから先生を連れてきたということでありまして、ヨーロッパなどにおいては、科学技術というのは芸術とかと同じように基本的には役に立つ立たないよりも人間の営みとして努力すべきである、大学あたりでなまじっか応用なんということを考えるのはむしろ科学の冒涜であるというような考え方がごく最近まであったわけですし、今でもそう考えている方もあるかもしれません。しかし、日本では、一部の先生方にそこまでお考えになった方もいるかもしれませんが、そういう歴史的な伝統があると思うのです。しかし、その点でもう一つ、先ほどちょっと申しましたように、日本においては創造性とか独創性というものは必ずしも認められない。周りの人と協調する人の方が、一人ぬきんでて大いに仕事をする人よりは一般に望ましい人だ、これは教育もそうなっているかもしれませんが、そういうような背景があると思うのです。  ですから、そういう歴史的な問題が基礎にあると思いますけれども、しかし一つの大きな転換というものが、結局日本において基礎研究が栄えるためには、単にお金の問題じゃなくて、本当に基礎というものは大事だし、また人類の幸福に貢献するために基礎をどんどん外国にでもどこにでも出すのだというような国民全体の空気が出てこないとこれはなかなか難しいと思います。
  61. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 大島参考人に続いて伺いますけれども、今度基盤技術といって、技術という言葉がついて、技術というとどうしても生産とか人間のある目的に沿うということになるわけなんですが、基盤技術のおくれ、もっと広く基礎研究のおくれ、この中にもありますけれども、日本ではノーベル賞の学者の出方が人口の割には少ないのではないかというようなこともあるわけです。そこで、今度の法案について特に述べていただきたいわけですが、こういうやり方だけで基盤技術、広く基礎研究にまでわたってやれるのかどうかという問題が気になるわけです。要するにこういうやり方だけで基盤技術、基礎的研究まであれがいくであろうか、その辺どうでしょう。
  62. 大島惠一

    大島参考人 私はこのやり方では基礎研究というものはうまくいかないと思います。と申しますのは、今おっしゃったような本当の基礎というものは応用考えるとかいうことじゃなくて、純粋に基礎をやっている研究者が、私のものはこういうことに役立ちますから研究費を出してくださいと言わなければ研究費がつかない状況では、日本において本当の学術的な基礎研究はなかなかうまくいかない。  これは私の昔からの持論なんですが、基礎研究と今の基盤技術は非常に関係が深いものではあるけれども、研究者の側から見ればこれは態度としては全く違う態度であるわけです。例えば、芸術家が絵をかくときに、この絵が売れるということを考えてかく絵は売り絵と称して余り評価されないということは昔から明らかでございます。研究でもそうでありまして、基礎をやっている人が自分の本当の研究をやるのに、この研究が売れるということを言わないと研究ができないという状況は、その考え方は間違っている。これは日本の基礎学術の問題についてもどうもそういう傾向があるようでございまして、これは通産省とか郵政省の問題じゃなくて、日本全体がエコノミックに向かうものでないとお金がこないという点については、これはどうもちょっと脱線いたしましたけれども、私はこれは大変残念なことだと思います。
  63. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 石井参考人にお伺いします。  石井先生の御専門からいっても伺っておきたいのですが、いわゆる日本基盤技術あるいは基礎研究ということでコンピューター関係のソフトでも日本独自のOS、オペレーションシステムはまだできてないのじゃないかと思いますが、その辺の進行状態はどうなんでしょうか。それでそういうのは一体どこに問題があるのでしょうか。
  64. 石井威望

    石井参考人 お答え申し上げます。  今コンピューターの例が出ましたが、御承知のようにコンピューターは急速に進んだ分野でございます。特に、ソフトウエアということは結局人づくり、ソフトウェアの人材でございます。アメリカの場合、ソフトウェアが非常に強いというのは、膨大な人材を持っておる、またそれを生かすシステムも持っておる。御承知のように日本生産の体制は、ソフトウエアのような個人が自分の極めて知的な、かなりそういう意味では先ほどの基礎研究に近いような意欲でやらなければいけない作業に対して報いるシステムとしては必ずしも向かないのじゃないかという点もございます。つまり人事的な問題、伝統的な問題と、新しいこういうソフト生産との問題でギャップがあるということは前から言われておりますし、また、マーケットとしましても従来のソフトのマーケットに対する認識が非常に低うございます。  例えば、コンピューターを扱っておる会社でもハードをつくっている人が一番権力を持っておりまして、ソフトはこの間の例のIBMの問題が起こって非常に認識が高まったようなこともあるくらいでございますし、ソフトがソフトとして成立する土壌がなかなかございません。ここで悪循環が起こりまして、したがって、なかなか人材が充実しない、そういう点がございます。さらにもう少し進んでいきますと、先ほどから問題になっております基礎的な知識とか創造力とかそういうものに対する評価が一般に低い。つまり、実際にキログラムとかなんかではかれる物に対する売買とか、そういうことについては非常にきちんといくのでございますけれども、ソフトウェアに対してはどうも社会的にも評価が確立してないということがございましておくれてしまった。  しかし、最近、私は希望的な観測ではだんだん変わっていくと思います。こういう概念を持っておりましたのは比較的古い世代でございまして、子供のころからパソコンなんかいじっている、それで遊んでいる子供たちの世代になりますと、ソフトウエアというのはじかに肌で知っておりますから、だんだんこういう人たちが育ってくると、社会全体としてもソフトウエアに関する評価が高まりまして、したがって、先ほどのいろいろのソフトウエアを生産する場合の問題も変わってくると思いますし、いいソフトウェアも出てくると思います。特にソフトウエアは、御承知のように三十歳定年制と言われておりまして、若いところ、大体二十代の前半ぐらいのところがリーダーシップを持っております。したがって、かわるのも比較的早いんじゃないかというふうに私は感じております。  以上でございます。
  65. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 もう一度大島参考人に、これはちょっとまた話題が変わるのですが、やはり先生御参加のNIRAの「我が国技術政策国際的展開に関する研究」の中で、先ほどのお話にもちょっと関連するのでお聞きしたかったわけですが、私も問題にしてきたこととして、通産省が積極的に推進している先端技術分野の重点プロジェクトとアメリカの国防省の重点プロジェクトが非常に重なっているということと、最近は日米諮問委員会などでも、形は汎用であるけれども、軍事目的のための技術交流をもっと盛んにすべしというようなことが出ているときに、この提言の中では「このような環境の下で、わが国が軍事技術に対する態度に機会ある毎に明確な方向を提示していくことが必要であり、さらに軍事技術に代る環境、医学、都市開発、食糧などの社会技術分野に対する積極的な取組みが要請されている。」これは非軍事的な分野で、こういうところで大いに取り組もうという提言だとするなら私も大変賛成なんですけれども、態度を機会あるごとに明確にすべしというのは大体どういう意味なのか、その点についてちょっとお伺いしたいと思います。
  66. 大島惠一

    大島参考人 私は先ほどちょっと触れた点もございまして、今世界の現実の中で、日本が、国が特に一つ方向づけて研究というものを考えた場合に、国際的な環境の中でいけば当然国が持っている研究成果に対して、それがほかの国では、これは研究開発投資をごらんになってもわかりますように、軍事研究費というのは非常に大きな割合を占めているわけです。ですから、どうしても最初の部分の態度を明確にするというのは、日本としては明確にどういうためにこの技術をやっているのだということであって、技術というのは、先ほども申しましたように、同じものをやっていてもどういうふうに使われるのかということは、技術はニュートラルでございますから、先ほどちょっと、例えば日本では国のセキュリティーのためにこういう技術をやります、こういうような言葉があるわけですね。  日本でセキュリティーと言っているときは、安全というのは経済的に、例えば中東で動乱が起こって、もし石油が入ってこなかったら困るじゃないか、そういうふうにとるわけですけれども、セキュリティーという言葉を英語で言ったときには、これは完全に軍事的安全保障のため、こうとるわけですね。そういうような点で、私は軍事的な技術というものに対して、先ほども申しましたようにMITの教授が、それは自分たちがこれは核兵器のシステムをなくすためにやっているんだというスターウォーズですね。しかし、これは日本で受け取られているとかヨーロッパで受け取られていることとは非常に違うわけです。そういうようなものについて、やっぱり漠然とした形で技術を扱う場合には、かなりそれを明確に技術としてどういうふうに考えているかということを言わないと、これは常に玉虫色の、外で話しているのと中で話しているのと違うということになると、これは技術開発上非常にマイナスではないか。  特に後の方で申しましたように、しかしながら私は、政府はもっと研究開発投資を重点的に出すべきだというふうに考えておるわけですが、そのときにやっぱりただ単に日本産業を強くするために研究開発投資をふやすということは、もうこれ以上強くなってもらっては困ると世界じゅうは言っているわけですから、そういうことではなくて、やはり今言ったように福祉にしろ、あるいは国際的な貢献にしろ、あるいはそこに書いてありましたようなエネルギー問題なんかもその一つだと思うのですが、日本の国益という意味で何を目標にしてやるかということは、私はかなり明確にする必要があるんじゃないか、そういうことがそこに書いてあるんだというふうに御了解いただければと思います。
  67. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 どうもありがとうございました。
  68. 粕谷茂

    粕谷委員長 以上をもちまして工藤晃君の質疑は終わりました。  参考人に対する質疑はこれをもちまして終了いたしました。  参考人各位には、お忙しい中を長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。大変ありがとうございました。  委員各位に申し上げます。  次回は、来る四月三日水曜日午前十一時十五分理事会、午前十一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これをもちまして散会をいたします。御苦労さまでございました。     午後一時六分散会