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1985-03-27 第102回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十七日(水曜日)     午前十時十分開議 出席委員   委員長 戸井田三郎君    理事 稲垣 実男君 理事 小沢 辰男君    理事 丹羽 雄哉君 理事 浜田卓二郎君    理事 村山 富市君 理事 大橋 敏雄君    理事 塩田  晋君       伊吹 文明君    稲村 利幸君       古賀  誠君    自見庄三郎君       谷垣 禎一君    友納 武人君       中野 四郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    箕輪  登君       湯川  宏君    網岡  雄君       河野  正君    多賀谷眞稔君       竹村 泰子君    永井 孝信君       森井 忠良君    沼川 洋一君       橋本 文彦君    森田 景一君       森本 晃司君    浦井  洋君       小沢 和秋君    菅  直人君  出席国務大臣         労 働 大 臣 山口 敏夫君  出席政府委員         労働政務次官  浜野  剛君         労働大臣官房審         議官      野見山眞之君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       加藤  孝君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       小野 進一君         労働省職業能力         開発局長    宮川 知雄君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      菊川  浩君         文部省高等教育         局私学部私学行         放課長     奥田與志清君         労働大臣官房政         策調査部長   岡部 晃三君         労働省職業能力         開発局管理課長 石川 俊信君         労働省職業能力         開発局能力開発         課長      石岡愼太郎君         労働省職業能力         開発局企画室長 菅間 忠男君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ———————————— 本日の会議に付した案件  職業訓練法の一部を改正する法律案内閣提出  第三一号)      ————◇—————
  2. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出職業訓練法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。網岡雄君。
  3. 網岡雄

    網岡委員 職業訓練法の一部改正審議するに当たりまして、私はまず基本的な問題につきまして若干御質問を申し上げてまいりたいと思います。  言うまでもなく、今日職業訓練教育を取り巻きます環境というものは、その条件が非常に激しい変化をいたしておることは御案内のとおりでございます。現に、目まぐるしい技術革新進展高齢化社会への進展、さらに女子労働者の増大、こういったような問題が職場中心に取り巻いておるというのが今日の状況でございます。  まず、技術革新進展状況についてでございますが、去る三月十六日に科学万博の開会式出席をして、若干万博を見たのでございますが、私、あれを見て、まさに技術革新のテンポというものが本当に目まぐるしいものだということを痛感したわけでございます。例えばアメリカ館に陳列してありましたコンピューターの展示を見ましたが、従来のコンピューターというのは数字の計算をするというような程度のものでございましたけれども、これが四次元、五次元というようなところまでその機能が発展をいたしまして、見ますと、そのコンピューター一つの自主的な判断をしながら絵をかいている。その絵は何枚かかかれますけれども、一枚として同じものがかかれない。人間の頭脳とまさに同じように四次元、五次元の世界まで入っていくようなコンピューター開発が行われている。バイオテクノロジーあるいはファインセラミックスというような先進技術進展というものが非常に目覚ましいものがあるということを痛感をいたしたわけでございますが、こういう状況から見ましたときに、職場での変化というものは、単に生産部門だけではなくて、OA機器の発達によりまして事務部門に働く労働者にも大きな影響を与えている、あるいは技術革新の波というものが中高年齢者のところに非常に強く影響を与えつつあるというような状況一つございます。  それからもう一つは、高齢化社会進展という点では、もう昭和生まれが一億人を突破した、そして六十五歳以上の人口はまさに十人に一人、こういうような高齢化社会進展をしておるわけでございますが、こういう状況判断をいたしまするときに、中高年齢対策というものは非常な急務になってきているということでございまして、特に定年退職者などに対するきめの細かい対策というものが従来にも増して必要になってきているという状況にございます。  そして第三には、女子労働者の増加に当たりまして、今は大半の女性がパートだけしか労働市場に入っていないわけでございますけれども女性の子育てを終了してから労働市場に入ってくる可能性というものが今までよりも非常に高くなっているということは労働省統計数字から見ましても明らかでございまして、これらに対応します職業訓練というものも大事な要素になってきていると思うのでございます。  こういうような職場環境をめぐる変化というものを一体労働省はどういうふうに御認識になっているか。その認識の上に立って一体どう職訓をやっていこうとしておられるのかという点につきまして、基本的な問題でございますので、まず大臣からお答えをいただきたい。
  4. 山口敏夫

    山口国務大臣 今日の我が国雇用をめぐる諸条件、もろもろの環境につきまして、網岡先生からるる御指摘をいただいたわけでございますが、私どもも全く先生と同じ問題認識の上に立ってこれからの雇用の問題を中心とした労働問題あるいはそれに伴う行政推進していかなければならない、かように考えておるところでございます。  特に高齢化時代ということでございますが、人生八十年時代が七十年に逆戻りするということはあり得ないわけでございまして、さらに二十一世紀までには日本民族人生世紀時代というものも手にすることも可能なのではないか。そういうことから来ることを考えますと、やはり健康な高齢化時代というものをつくらなければならない、そのためには雇用の問題が非常に大事な問題になってくる。そういう意味におきまして、特にこれからはよく働き、よく学び、よく英気を養う、こういう一つ労働環境というものが求められておるのではないか、こういう認識でございます。  そういう高齢化時代に伴う高齢者労働人口増先生指摘のように女子職場進出の問題、さらに技術革新時代における労働の質的な変化というものに勤労者の方々が十分対応でき得るような環境整備を図りまして、そして健康に恵まれ、まだ働く意欲のある方には職場が提供されるような、そういう一つ労働環境整備を図っていきたい、こういう気持ちを持ちまして、今回の訓練法改正もそうした時代に適応すべく一つのステップとしてこの国会での御論議を今お願いをしておるところでございます。  こういう技術革新時代でございますから、職業訓練段階的体系的な形で職業能力開発していきませんと、特に高齢者の方も技術革新時代にも十分職場が確保されるような、そういう一つのことも念頭に入れて、今度の法改正を御審議いただいておるということでございますので、よろしく御理解のほどをお願い申し上げたいと思う次第でございます。
  5. 網岡雄

    網岡委員 一応基本的な概念としての御説明がございましたが、それでは重ねてお尋ねをいたします。  職業訓練法は三十三年に制定された後、四十四年に改正、そして昭和五十三年には非常に大きな改正がされまして今日に至っているわけでございますが、大臣もおっしゃいました条件変化というものは私ども現状認識とそう変わっていないわけでございます。そういう認識の上に立って今回の法改正主要点というものは一体どういうものであるのか、明らかにしていただきたい。
  6. 宮川知雄

    宮川政府委員 先生今お話ございましたように、昭和三十三年にそれまでの技能者養成、それから職業補導、これを一つにいたしまして職業訓練法の制定を見たところでございます。その後いわゆる高度成長下にあります技能労働力の不足ということを受けまして、職業訓練のための団体、それから技能検定協会、それから公共職業訓練施設整備するということで四十四年に改正があったわけでございますが、その後四十九年に小改正がございました。失業保険法雇用保険法ということで、能力開発事業ということで大々的に職業訓練が行われるようになり、そのために職業訓練短期学校あるいは技能開発センターもつくれるようになりました。  それから御指摘のように五十三年に大きな改正がございまして、それが現行法でございます。そこでは職業能力開発という思想を取り入れるとともに、中央技能検定協会とそれから職業訓練法人中央会とを一つにいたしまして職業能力開発協会をつくるといったようなところでございますが、特に五十三年の場合には学卒の状況変動等を踏まえまして、国と都道府県のいわゆる公共職業訓練校役割分担、こういうものを取り上げたわけでございます。  それで、その後、今大臣がお答えいたしましたように、技術革新進展というのはますます激しいものがございます。それから女性職場進出も激しゅうございますし、特にまた中高年齢者、高年齢者の問題もございますので、単に現在までの、どちらかといいますと二次産業、現場ないしは工場労働技能労働者養成というところ、これからそれも大変大事でございますが、それから始まりまして、もっと幅広く、いわば全方位の労働者について入り口から出口まで職業生涯の全域にわたって能力開発段階的体系的にやる必要がぜひある。そうした思想は五十三年法、つまり現行法でもないわけではございませんが、それをさらに進め、そうした民間企業の行う教育訓練環境づくりを進めるとともに、どうしても硬直化しやすいということでとかくの批評のあります公共職業訓練につきまして、特に都道府県に対する助成制度を弾力化することによって公共職業訓練も一層その活性化を図りたい、こういうようなところが主なねらいでございまして、新しい時代に積極的に対応してまいるための法改正をお願いしているわけでございます。
  7. 網岡雄

    網岡委員 それじゃ確認をしますけれども労働者職業生活の全期間にわたるまさに入り口から出口までの職業能力開発をやる、それから二つ目には民間職業能力開発推進を行う、それから三つ目の点としては公共部門職業能力開発活性化、こういうことが法改正のねらいであるというふうに確認してよろしゅうございますか。
  8. 宮川知雄

    宮川政府委員 今、先生指摘のように、特に公共職業訓練活性化を図るということ、それから民間のそれをより有効に発揮するということ、しかもそれが全職業生涯にわたって展開されるようにするということ、そういうことでございます。
  9. 網岡雄

    網岡委員 そして、さらにちょっと質問をさしていただきたいと思うのでございますが、状況を取り巻くものの中に、一つは今度の改正法案内容を見ますと、従来よりも少し節をつけた形で盛り込まれている点として、労働者意思あるいは意見というものがある意味で尊重される、こういう形の芽がある程度出てきたという点では私ども評価をするところでございます。子細については若干後で御質問申し上げたいと思うのでございます。  そこで、この点はもっと今度の改正法案の中で積極的にやっていただきたいという意見を私どもは持っているわけでございますが、その意見の基本となりますものは、御案内のように憲法二十七条の規定によりますと、国民のすべては、勤労権利を有し、義務を負う、つまり勤労権利というものがあるということで憲法によって勤労権は保障されているわけでございます。それから二十六条においては、教育を受ける権利を有するという教育権規定されているわけでございますが、職業教育というものは広義に見た場合の一つ教育権であろうと思いますので、こういう点の二つ国民が持っている権利というものを具体的に保障することがやはり今度の改正法案の中にも出ておらなければならないわけでございます。  その点では若干の芽があるわけでございますが、こういう点での認識というものは、労働省において一体この法改正の中のどういうところでそれを取り入れたかという具体的な内容について労働省の見解を示していただきたいと思います。
  10. 宮川知雄

    宮川政府委員 国民教育を受ける権利というのは今御指摘のとおりでございますが、それにつきましては、どちらかといいますと学校教育、そうしたものをきちんと受ける権利があるというふうに私ども理解しておりますが、少なくとも高度経済成長を遂げる社会を考えてみますと、従業員教育訓練というものが企業経営にとっても不可欠のものであることはもう当然のことでありまして、広義におきましては先生指摘のような理解ができるかと思います。  具体的には、新しい法律におきまして事業主労働者職業能力開発向上のために各種の施策をするように努めなければならない、努力義務ではございますが、一つ社会的な責務として規定してございます。それを受けまして、具体的に例えば企業の中での訓練企業の外での訓練、あるいは民間各種の機関に委託しての訓練、あるいは有給教育訓練休暇、そうしたものが例示されているわけでございまして、いわば労働者の側におきましては使用者努力義務に対応する形で一つ社会的な当然受け取っておかしくないものとして教育訓練を受けるということが行われるものであると思っております。  それで、その場合に労働側意見を聞くということは、これはもう本来教育訓練を受けるのは労働者でございまして、仮に事業主がいかに逆立ちをして努力いたしましても、労働者にその気がなければどうもなるものではございません。そうした意味では、この法律でも自主的な努力を助長する方向努力するようにという規定がございますが、そうした意味も込めましていろいろ事業所の中で教育訓練のための計画をつくってもらう、これがいろいろな仕事前提になっておりますが、法律ではございませんが省令段階になろうかと思いますが、当然労働組合ないしそれに準ずる者の意見をよく聞いて、それに基づいて計画がつくられなければならない。現在予算措置でもう既に行われておりますいろいろな各種助成措置におきましても、労働組合意向を聞いて計画をつくるということをすべて前提としているわけでございまして、この新しい法律のもとにおきましてはそうした方向をさらに強めてまいりたいと思います。  それから、この法律におきましては訓練基準あるいは指導員資格等、大事な事項が政省令に任されておりますが、そうしたものにつきましてもすべて公労使者構成でございます審議会におきまして十分御審議をいただくわけでございます。したがいまして、使用者側はもちろんでございますが、労働側意向も十分に組み入れられるものと考えております。
  11. 網岡雄

    網岡委員 それでは若干具体的にちょっとお尋ねしたいと思うのですが、改正法案の十一条に「事業主は、その雇用する労働者に係る職業能力開発及び向上段階的かつ体系的に行われることを促進するため、前二条に定める措置に関する計画を作成するように努めなければならない。」こうありまして、前二条というのは、有給教育訓練休暇とかそういうものが一応入っています。  そこで、この十一条の計画的な職業能力開発の促進というところの計画ですね、これは例えば有給教育訓練計画を組むあるいは生涯訓練計画を組む、こういうものだけではなくて、いわゆる企業の中で行う全ラウンドの職業訓練全般を指しているというふうに十一条の規定はあると思うのでございます。  そこで、さっき局長が御答弁なさったように、労働者意思の反映が行われている、こういう御答弁があったわけでございますが、確かに有給教育訓練休暇とかあるいは生涯職業訓練給付金とか、こういうことをやる場合の計画段階では労働者労働組合などの意見も聞くということになっておりまして、労働組合のない場合はその代表ということで意見を聞くということが、一応制度としてといいますか、担保としてとられているわけでございますけれども、しかし、この十一条の場合は、それよりももう少し広い部分になるわけでございますから、したがって、この十一条の計画の際にも、これは労働組合などの意見を聞くということで運営されるようになるのかどうか、そして、それをやるということは、法律上の規定の中でどこにその法的根拠を持つ担保があるのかということについて御答弁をいただきたいと思います。
  12. 宮川知雄

    宮川政府委員 ただいま御指摘がありましたように、この十一条は、九条、十条を受けまして、単に有給教育訓練休暇、あるいはちょっと今御指摘がございましたが、生涯にわたる職業訓練奨励給付金制度というのがございますが、そうしたものだけではなくて、九条、十条をお読みいただければおわかりになりますが、およそ企業の中におけるすべての、あるいは企業の外におけるものまで含めまして、企業として行わなければならない計画をつくるようにということでございます。  これはもう当然のことながら、教育というものは労働者理解と積極的な関与といいましょうか、前向きの姿勢があって初めて十全に行われるものでございますから、当然その意向を十分確かめてもらわなければならない。計画の作成につきましては、省令の定めるところよってというようなこともございますので、そうしたものにつきまして十分私どもも考えてまいりたいと思います。
  13. 網岡雄

    網岡委員 確認をしておきますが、局長、これは省令で定めるときに、その省令の中に労働組合などの意見を聞くということを明記していただくことになるわけでございますね。
  14. 宮川知雄

    宮川政府委員 今の段階でそういうことを考えております。
  15. 網岡雄

    網岡委員 明確にお答えいただいて、結構です。  それから十二条の問題でございますが、これは今回の法律改正でも一つの大きな目玉になっている、つまり企業側努力義務の履行の一つのあらわれとして職業能力開発推進者選任をする、こういうことになっておるわけでございますから、極めて重要でございますが、これもやはり後にあります一、二、三の職業能力開発推進者が具体的に行う業務というものを見ますと、どれ一つとりましても、これは労働者関係のないものは一つもないわけでございます。  したがって、本来ならば、私どもの主張とすれば、単数ではなしに労使それぞれから選ばれて選任者が出る、そして絶えずこの三つ業務を行うに当たってはその都度話し合いをし、そして決めていくということが最も望ましいわけでございますが、それが無理であるとするならば、その選任に当たっては、少なくとも、これも労働組合などの意見を聞いて、そして企業側使用者側の方が選定をする、こういうような点が保障されておらないと、私は、ちょっと今までの状況からいいまして片手落ちのような気がいたすわけでございますが、この点について労働省としてはどういうお考えを持っていて、具体的にどういう処置をされるのか、お聞かせをいただきたい。
  16. 宮川知雄

    宮川政府委員 開発推進者が実際に仕事をいたします場合には、先ほど来申し上げておりますように、労働者側自覚と申しましょうか、技能を習得することによって職業上の自立を図ろうという、そうした自覚というものがまずなければ効果が上がらない。そうした意味では、労働側意向を十分酌むということは大変大事なことでございます。特に計画のように全体にわたるものにつきましては、あらかじめ意向を聞いてもらいたい。そうした手続もとるようにしたいと思いますが、この推進者選任につきましては、この訓練法姉妹法であります雇用対策法におきましても、労働者職業選択の自由の尊重とともに、事業主雇用管理自主性というものも尊重されなければならないということもございます。  これはやはり一つ選任行為でございますので、性格を考えますと、使用者側としては、事業主側としては十分労働側といろいろ連絡をとり、その納得を得てもらいたいものだと思いますが、最終ぎりぎり、形式的には事業主選任ということで、それについて直ちに形式的に労働側意向をかかわらしめるということはちょっと難しいのではないかと思いますが、御指摘趣旨はよくわかりますので、私どもはこの推進者はこれからの本当の目玉、中核でございますので、これを進めるに当たって事業主側ともよく話をして、御趣旨が生きるような形を考えていきたいと思います。
  17. 網岡雄

    網岡委員 重ねてでありますが、ぜひひとつ、これは最低的な担保でございますけれども、少なくとも行政指導段階でもいいですから、もうそこが最後のとりでになってくるわけでございますが、その段階十分企業側使用者側にそのことが徹底するようにかなり強力な行政指導をやっていただきたい。  それはやはりボールを投げる方と受ける方が信頼関係でつながりませんと、どんな計画を組んでもそれはそこでとんざをするわけでございますから、したがって、行政効果を上げる意味におきましても、これはどうしても基本的に必要な条件でございますので、これは労働者側だけでもないわけでございますので、その点を踏まえてひとつ強力な行政指導をやっていただきたいということを要望しておきます。  次に、具体的な問題についての質問に入っていきたいというふうに思いますが、ここ一、二年の状況を見ますと、やや経済成長は持ち直したような感はございますけれども、しかし労働情勢といいますか、雇用情勢というものは依然として厳しいものがございます。  私どもの手元の資料によりますと、完全失業者の数は百五十万台、五十九年の十月時点では百五十九万でございますから、もう一万で百六十万になってしまうという大変な失業者を抱えておりまして、しかも失業率に至りましては二・六、二・五と、依然として二%を上回っておるということでございますから、これは諸外国の例から見ましても、かなり高い水準のものだということが言えますし、我が国失業者率状況から見ますと、これは戦後ずっと見まして、大変大きい数字を示しているものだ、統計をとられてからは、これは最高の数値を依然として示していることになるのではないかと思うのでございますが、そういう厳しい状況にございます。したがって、こういう状況でございますだけに、国や都道府県は何としても失業者あるいは求職者に対して職業訓練の充実を図っていくということが、どうしても必要な条件だと思うのでございます。  そこで、まずお尋ねをいたしますけれども離転職者に対する職業訓練定員は、現在とのように確保されているのかという点をお尋ねをいたします。
  18. 宮川知雄

    宮川政府委員 御指摘のように、なかなかの数字失業者がいるわけでございますが、離転職者対象にする公共職業訓練と申しますと、能力開発訓練ということになります。これにつきまして、御質問の数からまいりますと、五十七年で能力開発訓練実施規模は八万六千、五十八年八万一千、ちょっと減っております。五十九年八万七百、これも減っておりますが、六十年におきましては八万八千と、かなり定員の枠を広げてきているところでございます。
  19. 網岡雄

    網岡委員 それでは、定員に対する充足状況というのはどうなっておるのでしようか。
  20. 宮川知雄

    宮川政府委員 離転職者対象といたします能力開発訓練についての入校率でございますが、昭和五十五年には七七%、五十六年に八五%、五十七年八七%と年々増加してまいりまして、五十八年には八九・五%、ほぼ九割の入校率となっております。  以上でございます。
  21. 網岡雄

    網岡委員 それでは方向を変えまして、求職者の中でもとりわけ身体障害者の状況というのは非常に厳しいものがございます、身体障害でございますから。そこで、身体障害者に対する職業訓練状況というものはどうなっておるのでございましようか。
  22. 宮川知雄

    宮川政府委員 身体障害者に対します職業訓練といたしましては、健常者、普通の人と一緒にできる方については、極力一般の訓練校に入っていただく、これが大原則でございます。したがいまして、一般校の設備、例えばスロープをつくるとか、自動扉、あるいはお手洗いを改良するとかいうようなことを十分注意いたしておりますが、そうはなかなかいかない重度障害者、特に心の方でございますね、精神薄弱者等につきましては、別に身体障害者職業訓練校を設けているところでございます。それで、身障校は現在国立で十二校、都道府県立で六校、計十八校ございます。国立の一つは中央身体障害者職業訓練校でございまして、所沢の職業リハビリテーションセンターの中にできております。残りの十一校はすべて都道府県に運営を委託しております。したがいまして、十七校までは都道府県営のような形で運営されているということでございます。  特に、身体障害者の職業訓練校につきましては、どうした訓練科目が適当か、あるいは訓練期間はどのくらいが適当かというようなことで導入訓練期間を設けまして、その後も、例えば作業用の補装具とか訓練技法とか、十分それぞれの特性に応ずる形で訓練を展開しているわけでございます。  数量的には、六十年の定員でまいりますと、国立、都道府県営と今申し上げましたが、これが全員で二千九十名、それからリハビリテーションセンター、中央でございます、これが二百名、それから都道府県立のそれが三百四十名、計二千六百三十名の定員で現在やっております。これは身障校だけでございまして、このほか一般の訓練校にも相当数の身体障害者の方々が入校しておられるということでございます。
  23. 網岡雄

    網岡委員 わかりました。  そこで、次に、離職者が職業訓練を受けます場合に一つ阻害になっている点があります。この点について質問をさせていただきたいと思うのでございます。  昨年の八月、雇用保険法改正をされました。これは内容的に見ますと改悪をされたというふうに私ども認識をいたしているところでございますが、その改正点の中に、従来、自己都合退職の場合は一カ月の給付制限があったわけでございます。これが改正になって三カ月、こういうことになったことによりまして、実際職業訓練校に入って訓練教育を受けたい、こう思っておりましても、三カ月というのは大体九十日という日数でございますから、職を失った人が百日近く何の給与もなくてそのままじっとしておらなければならぬということは、これは大変なことでございまして、そのことが結局、自分には向かない職業だけれども、やむを得ず目の前の職についてしまう、こういうような点がかなり見受けられると思うのでございます。そういう点で、実際に今ここらでひとつ腰を据えて本格的な職業教育を受けて自分の技術、職能を上げたい、こういう気持ちになっても、なかなかそういう機会に入れないという点がかなりございます。  そこでお尋ねをしたいわけでございますけれども、いわゆる自己都合退職者が三カ月の給付制限を受けることによっていろいろ阻害を受けておるわけでございますが、現行の運用のといいますか、中で、一定の正当な理由があると認められる場合には給付制限がされないという制度がございます。  たしか二十一項目にわたってあると聞いておりますけれども、この二十一項目の中に、自己都合退職者であるといっても退職者の状況によりまして、例えばさっきの話ではございませんが、非常にめまぐるしい技術革新の波が職場に訪れた。自分では一生懸命努力をしたけれどもついていけない。したがって、その職場で荷物になることは男の恥だ。だから新しい職を求めてこの際その職をやめる、こういうことで退職をしても、雇用保険法規定でいけばこれは自己都合退職者、こういうことになるわけであります。こういう人はそれだけの決意をして外へ出たわけでございますから、訓練校というところへ行って、そして一つの職をつけて、技能をつけて、そして新しい職の新天地を開拓する、こういうつもりでいるわけでございます。そういう人たちに対する、これは運用をいたします際には、何か二十一項目にわたる制限緩和の項目の中に当てはめることはできないのか。  この二十一項目をずっと見ますと、例えば(10)のところを見ますと「新技術が導入された場合において、自己の有する専門の知識又は技能を十分に発揮する機会が失われ当該新技術へ適応することが困難であることによって退職した場合」、そして、退職しただけではなしに、この種の場合は職業訓練校に行く、こういうはっきりした本人の意思表示と行動が明確にあらわれている、こういう場合にはこれは給付制限から除外する、こういう処置があってしかるべきではないか。そういうことの配慮がなければ、幾ら三項目の法の改正を目指してやるということを言いましても、なかなか職業訓練の場にありつけないという客観的な条件というものがそこにあるわけでございます。  そういうことを見ましたときに、もっと運用の妙でそういう人たちを救っていくということが必要でないかと思うのでございますが、この点について労働省としての御見解をお聞きしたいわけでございます。
  24. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 先般の法改正によりまして、正当な理由のない自己都合退職者は三カ月の給付制限を受けることになったわけでございます。この給付制限を受けた方が給付制限期間中に訓練校へ行くとか行かないとか、そういうことでこの給付制限が解けるものでない、この点は御理解を賜りたいわけでございます。  しかしながら、先生今御指摘ございましたように、新技術に対応することができずに職種の転換を余儀なくされて退職する場合、これは正当な理由のある自己都合退職、こういうことになるわけでございまして、そういう改正法後の新基準によりまして、制度の運用の中で給付制限を受けない扱いということにできるものについては、ひとつ私どもも実情に即して配慮していきたい、そういう形で訓練受講のチャンスというものをできる限りふやすというように制度の運用の中でひとつ配慮をさせていただきたいという考えております。
  25. 網岡雄

    網岡委員 重ねて確認という意味で、これは労働省の運用に当たる基本的な姿勢としての確認をさせていただきたいと思うのでございますが、職業訓練校へ行くということが一つ条件でございます。これは遊んでいて、そして給付制限を解除してもらいたいというのは横着ですからできないわけですが、はっきりと職業訓練校へ行って職業訓練を受ける、そして新しい新天地を見つけて自分の技能を研さんする、こういう姿勢に入っている者については、退職する動機なども見ていただいて、そしてやめたところの企業なんかの一定の確認をしていただくなどの処置をしながら、職業訓練教育を受ける人については運用の中でできるだけ幅広く制限緩和の項目をはめていただくように、ぜひひとつ実のある運用をやっていただくように配慮をしてもらいたいということを思うわけでございます。  その点について、運用の基本として姿勢をお尋ねいたしますけれども、改めてもう一度基本姿勢を明らかにしていただけませんか。
  26. 加藤孝

    ○加藤(孝)政府委員 訓練を受けたいということで実際にそういう訓練校へ通われる、そういう行為の中にいわば退職の動機といいますか、そういったものが類推をされるという面はいろいろあろうかと思うわけでございます。そういう意味で、この退職後の行為についてどうこうというのではなくて、まさに離職理由についての判断というものの中で、そういったこともいわば参考といいますか考慮に入れる、こういうようなことになろうかと思うわけでございます。  そういう意味で、自己都合退職の中でも正当な理由のある自己都合退職というものとして、新技術導入等に絡んでこの規定がございますので、この規定の実情を配慮した運用の中で、訓練を本当に受けられる方が、希望される方が受け得るような、そういう面でのこの運用についての実情配慮というものについて私どもも十分考慮していきたい、こんなふうに考えております。
  27. 網岡雄

    網岡委員 それでは、運用の中で十分考える、こういう姿勢での御答弁があったものと確認をいたしまして、次に移りたいというふうに思います。  能力開発訓練を受けた人が就職をしていくわけでございますが、再就職の状況というのは一体どうなっておるのでございましょうか。そして、特に訓練を受けた職種に就職をしている、こういうところが職業訓練効果を見る場合の一つの重要なファクターになると思うのでございますが、そういう訓練を受けた職種に就職をしている者の割合というのは、就職の中の実数から見てどんな割合になっているか、明らかにしていただきたいと思います。
  28. 石川俊信

    ○石川説明員 能力開発訓練修了者の就職状況でございますが、五十八年度におきましては、修了者の方で修了後直ちに就職した者が全体の六四%となっております。それから中高年齢者の再就職が困難な状況下にあって、職業訓練修了者は、生産現場等で直接役立つ知識、技能を習得しているため有利となっておるというふうに考えておるわけでございます。  また御指摘の、受講した訓練科目に直接関連のある職種にどの程度就職しておるかというお尋ねでございますが、職種によって若干ばらつきございますけれども、全体的に見ますと、八割から九割が受講した科目に関連のある職種に就職しているという状況になってございます。
  29. 網岡雄

    網岡委員 八割から九割ということですから、一定の数字になっていると思うのでございますが、ならして今までの質問の中で見ますと、いずれもこれはさっきの質問訓練教育を受けている人の人数とか、あるいは再就職の状況とかいうものを見ますと、大体八割あるいは七割というような状況、今九割というお答えがございましたけれども、しかし、大体そういう状況にあるということでございます。これは一定の努力をなさっていることの結果だと思うのでございますが、しかし、いずれにしても一〇〇%の就職にはなっていない。こういうところは若干今後努力をしていただかなければならないと思っております。その点をまず御指摘を申し上げたい。  そしてもう一つの要素としては、いろいろな職業訓練の職種があるのですけれども時代のニーズに合った職種というものが実際の教科を見ますと少ない。こういうところが、一つはある意味でいくと敬遠をされている中身もあるんじゃないかなというふうに思います。したがって、今後の課題としては、離転職者に対する職業訓練一つの課題としては、新しい時代のニーズにこたえるような対応が必要だというふうに思うわけでございます。  そこでお尋ねをいたしますが、ME化などの技術革新進展に対応して、公共職業訓練施設においては必要な機器は整備されているのか、またそういう時代のニーズに合うような新しい職種の開拓が一体どのように努力をされているのか、これらについて少し具体的にお示しをいただきたいと思うのでございます。  で、私ちょっと愛知県の職業訓練所の機械設備の状況を県を通じて資料を出してもらいました。愛知県は全国的に見ましても東京、神奈川に続きまして職業訓練についての行政はトップの位置にあるところでございます。そういうところでも、例えば機械科のところで見ますと、NC旋盤は岡崎の職業訓練校に一つだけ、そして機械科があるところは一宮の学校と東三河の訓練学校三つあるわけでございますが、その三つある中でNC旋盤は一つしかない。あとはNC旋盤を操作するもとになるテープをつくる、こういうことで終わってしまっているわけでございます。  これは具体的なことを余り聞く時間がなかったので漏らしたのですけれども、テープをつくっても、そのテープをNC旋盤にセットをしてそのプログラムのテープのとおりにNC旋盤が動くかどうかを生徒が実際に実習する機会はないんじゃないだろうかと思うのでございます。行っても一遍ぐらいだろうと思うのでございます。そういうことになりますと、本当にNC旋盤の操作を十分できるということにはならないと思うのでございます。これは愛知県でこういう状況でございますから、全国的に見たときには大変なおくれが決定的にあるんじゃないだろうかと思います。  第三次職業訓練基本計画一つの大きな柱は、先ほども局長がおっしゃいましたように、技術革新時代の流れに即応して職業訓練の教科の内容技術革新のテンポに合わせていく、そういう施設にしなければならぬということに基本計画は定められているわけでございます。ところが、その定められている第三次職業訓練基本計画の現実の進捗状況は、愛知県でこういう状況であるので、私、非常にお寒い感じがするわけでございますが、この点についてまず労働省はどういう反省をしておみえになるのか。  それから、こういう状況を踏まえて今後具体的に一つの年次をもって、例えば第四次訓練基本計画にいくわけでございますから、その中で前半ではこの位置にいく、後半ではここまでいくというふうなはっきりした具体的な目標を定めていくことが必要でございます。第三次基本計画一つの問題点は、漫然とお題目を並べただけで具体的な到達点というものが明確に示されなかったという点ではないかと私は思うのでございますが、そういう点を踏まえて第四次職業訓練基本計画を作成するに当たってどういうことをこれからやっていこうとされているのか。  それから第三には、新しい設備を入れていくための労働省としての指導は一体どうされるのか、その点をお尋ねいたします。
  30. 宮川知雄

    宮川政府委員 これだけの激しい技術革新に対応じていきますためには、労働者が入職から退職までその職業生涯の全期間にわたって有効適切な追加的な訓練を受ける必要がある、これは当然のことでございます。特に最近のような技術革新、ME、新素材、バイオテクノロシー、いろいろございますが、特にME関係でまいりますと、単にNC工作機械、MC工作機械あるいは事務職場での0A機器の単なる操作だけでなくて、プログラミングから故障の予知、段取り、さらにはいわゆるハード面と申しましょうか、メンテナンスまでやれるような、いろいろ幅広い能力が求められていることは確かでございます。  愛知県の例をお引きになりまして、公共職業訓練、まだまだ不足じゃないかというお話ございました。私ども、いえ、そんなことは一切ございませんと申し上げられないのが大変残念でございますが、御指摘のような面があることは確かでございます。  まだまだこれからでございますが、私どもといたしましては、今申し上げたような点をいろいろ検討する中で、産業用ロボットあるいはNC工作機械等のME機器に関連した職業訓練あるいは情報処理関係訓練を特に充実させていくために努力しているところでございます。特に、そうした面での機器の整備につきましては、逐年、例えば今までのような買い取りではなくてリース制でやるというようなことで都道府県にも指導しておりますし、そうした意味では台数も相当ふえてきているわけでございます。  例えば、全く例えばでございますが、都道府県立の職業訓練校の五十八年と五十九年、一年半ほどの間の比較をしてみますと、コンピューター、特にオフィス用では二百六台、これが三百四十九台になっております。それからNC工作機械は変動ございませんが、ワードプロセッサーは十九台が四十二台というような形で、それからシークェンスコントローラー、これが九台が九十二台ということで、全体といたしまして五十八年の四月三百十台が五十九年の十二月には五百六十三台になる。それから身体障害者職業訓練校につきましても、同様のものにつきまして五十七台が六十四台、それから雇用促進事業団立の職業訓練施設、つまり国の施設でございますが、これが同じ期間に九百九台から千六百八台までと、全体といたしまして千二百七十六台から二千二百三十五台。余り数字を挙げても自慢になりませんが、かなりの努力を払って新しい施設の導入に努めているところでございます。  それから、今、三次計画がこの六十年度で終わるところでございます。確かに、御指摘のように到達する段階での数字的な目標というのはなかなか挙げにくうございます。新しい法律では職業能力開発のための基本計画ということで、六十年、今年度かあるいは六十一年度か作成することになるわけでございます。到達目標を数字的に挙げることは今申し上げましたように大変困難ではございますが、少なくとも新しい法律をつくって活性化を図りたい、よりわかりやすい体制にしたい、そういうことを私ども念願しておりますから、計画もお題目ではなくて、あるいはトーンとしては下がることがあっても、極力数字等も出しまして、国民の皆さんにわかりやすい計画をつくっていきたい、かように考えております。
  31. 網岡雄

    網岡委員 率直に不十分な点についての御答弁がございました。私は、労働省が今まで努力をなさったその努力については一定の理解をしております。したがって、今後とも努力をしていただきたいわけでございますが、局長から御答弁の中でありましたように、第四次の計画の際には、おっしゃったように公共訓練活性化を図っていくということが大きな法改正点の一つでございますから、それを具体的にやるためには、局長のお言葉をかりれば、国民にわかりやすい、こういう御答弁がございましたが、まさにそのとおりでございます。  非常に労働省としてはつらいことかもわかりませんけれども、はっきり数字を示して一つの目標を明確にしませんと、仕事というものは目標を掲げてもそのとおりにいくということはほとんどないわけでございまして、その目標よりも若干下回るというのが常でございます。それが全然目標がなしということになれば、これはあってもないがごときになってしまうので、基本計画でございますからその辺は明確に筋道を立てて職業訓練推進のために頑張っていただきたいということを要請しておきます。  次に、ME化の技術革新進展の問題に関連いたしまして、技術革新の結果から生まれてくる新しい機械を使って生産を向上する、ともすればこういうことだけに目がいっておりますけれども、大事なことは身障者の職域を広げていく、例えば職業訓練の教科の内容などを見ましても、身体障害者であるという観点から職種の内容が私どもから見ればかなり限定されたものになっておるわけでございます。  これは私、今までの状況からいけばある意味でやむを得ない点もあろうかと思うのでございますが、この際、労働省が音頭を取って研究開発をする一つ方向としてやっていただきたいことは、中高年齢者あるいは身体障害者などがこれだけしか労働能力がない、それを発展した機械を駆使することによって普通の人間と全然変わらないという労働能力職業能力を伸ばすための機械、こういうものを労働省開発していく、こういうことは労働人口をふやしていくため、あるいは労働の質を高めていくためにも大きく役立っていくことでありますから、こういう方面での努力が必要だと思うわけでございます。この点について労働省としてはどういう御見解をお持ちになっているのか、今後どういう努力をなさろうとしておるのか、具体的なものがあれば、この際お示しをいただきたい。
  32. 岡部晃三

    ○岡部説明員 技術革新も究極的には国民生活の向上に役立てるということでございますので、先生お示しのようにME機器が労働者の福祉に役立つような形でなければならないということは当然と考える次第でございます。これまでのところME機器というのは、品質、精度の向上でありますとか省力化というふうなことを主眼として開発されてきた嫌いがございまして、一方におきまして中高年あるいは身体障害者というふうなものにとってのこれを見ました場合に、新しい技術への適応は必ずしも容易ではない、あるいはまたそれらの方々の職場を狭めるおそれなしとせずという傾向があったことは問題であったと思うのでございます。  労働省といたしましては、このような問題をできる限り克服するという観点から、昭和六十年から高年齢者あるいは身体障害者向けのME機器の開発研究ということを推進しようということを計画をいたしておりまして、方法といたしましては、各研究機関を総動員いたしまして、また産業界と連携をとりながらハード面及びソフト面の両面にわたりまして開発していく、約五年間を予定しておりますが、二十億の予算をもちまして開発を進めていく、試作品の作製まで臨むという考え方でございます。
  33. 網岡雄

    網岡委員 せっかく予算を計上されたわけでございますから、これはぜひ開発努力をしていただきまして、身障者あるいは中高年齢者に対する職域の拡大のために努力をしていただきたい。それが身体障害者対策の新しい夜明けをつくるものにもなると私は思いますので、ぜひ御努力をいただきたいと思います。  次に、技術開発の問題に関連をいたしまして、技術革新進展に伴う問題といたしまして御覧間を申し上げてまいりたいのは、受ける生徒の方ばかりではなくて訓練指導員のME化を初めといたします技術革新に対する習得が今日どうなっているかという点でございますが、これは現状なかなか難しい状況にあるのではないかと思います。現場の状況ども聞きますと、ME化、技術革新に応じてやっていきたいと思うけれども、なかなかそれについていけない一面もある、こういうようなことを聞くわけでございます。そういう意味からいきまして、指導員の研修実施状況は一体今どうなっているかという点につきまして御説明をいただきたいと思います。
  34. 石岡愼太郎

    ○石岡説明員 先生指摘のように、最近の技術革新進展に対処いたしまして職業訓練指導員の方々の資質の向上が極めて大切な時代になってきているわけでございますが、私どもといたしましては、このため従来から職業訓練学校におきまして年間約千二百名以上に上りますオーダーで長期、短期の指導員研修を実施してきております。また、都道府県におきましても年間七千名を超えるオーダーで独自の指導員研修を実施してきていただいているところでございます。
  35. 網岡雄

    網岡委員 これはさらに研修の機会を持っていただいて、ぜひ指導員の育成強化を図っていただきたいと思います。  次に、ME化に対応いたしましてこれから新しく必要な指導員を確保していくために一体どういう対策をお持ちになっているのか。特に訓練学校における教科などについて新しく採用していくような例えば情報関係の教科とか、そういうものが新設をされるようにならないといけないと思うのでございますが、その辺のところはどうなっているか、お尋ねします。
  36. 宮川知雄

    宮川政府委員 技術革新進展についてはもう再三申し上げているところでございますが、やはりこれに的確に対処するためには施設の改善、新しい機器の導入とともに、もちろん中心になるのは指導員、人でございます。新しい技術の導入をどんどん行わなければなりません。そのためには職業訓練学校で長期、短期の研修を盛んにやっているということを申し上げました。また、都道府県におきましても独自の研修をやっているところでございます。昭和六十年度におきましては、従来やっておりませんでしたが、都道府県の指導員研修についても何がしかの助成をするようにしたいと思っておりますし、職業訓練学校におきましては、研修に出てまいりました指導員を自分のところで研修するだけではなくて最先端機器を実際に使っている企業の現場に派遣する、こういうこともしていきたいと思います。  それから、先生から特に御指摘ございましたが、職業訓練学校訓練各科はそれぞれME関連の機器の導入を図っておりますが、まとめて専門にこれを講究するという科がございませんでした。情報工学科ということで六十年度予算政府原案の中には盛り込まれております。順調にまいりますならば来年の四月には新一年生を採用し、情報工学科ということで国及び都道府県職業訓練校の情報関連の指導員あるいは企業におけるその関連の指導員の養成を積極的に進めていきたい、かように考えております。
  37. 網岡雄

    網岡委員 この問題について最後に大臣から御答弁をいただきたいと思います。  今後の離転職者の発生に対して公共職業訓練をどのように充実していくかという点について大臣の所信を承りたいと思います。
  38. 山口敏夫

    山口国務大臣 先ほどの離転職の方の再就職の問題につきましては、労働市場状況を十分踏まえまして、また経済動向、経済社会のニーズに即応した形でこれを実施していくということが大事なことと思います。特にそういう意味におきましてME化等の技術革新進展に即応できる訓練科の設定でございますとか、そのための必要な指導員の確保等々を充実いたしまして離転職者訓練の充実を図っていきたい、かように考えておる次第でございます。  特に、網岡先生が先ほど私に御指摘ございました、事務当局が答えましたけれども、いわゆる高齢者の方でありますとか身障者の方のそういうME化、0A化に伴う技術開発の問題、これは民間の産業界でもそれぞれ工夫はしていると思いますけれども、やはり実用向きということが優先されるわけでございまして、そういう点は労働省が研究開発の問題については十分予算を確保して、そういう機器の開発については労働省がある程度責任を持てるような、そういう努力をしなければならない。  特に労働省なんかでも、今ある方は、全盲の方がいわゆるパソコン等の機器をマスターしましてILOや何かの海外文書や何かを皆報告書を作成しておる。そういう姿といいますか実績を見ておりまして、これは相当そういう部分の機器開発をすれば、さらに職業訓練を積めば、身障者の方、さらには高齢者の方はもちろんでございますけれども、そういう新技術時代にも十分雇用の場が確保できるということで、先ほど先生の御指摘の部分を非常に傾聴しながら、大臣としても率先してこの課題には取り組んでいきたいということを申し上げさせていただきたいと存じます。
  39. 網岡雄

    網岡委員 それでは次に移ります。  その次は、今度の法律改正によりまして新しく入りました交付金の問題につきまして若干御質問を申し上げてまいりたいというふうに思います。  これは私ども認識によりますと、一つは臨調の答申に基づいて、交付金に移行されるねらいというものは個別的な補助金制度から丸めの交付金制度にすることによって全体的な国の支出というものを節減して、その減った部分は地方自治体に財政の転嫁をして、そして職業訓練教育を国の立場からいけば安上がりの運営をしていこう、こういうねらいが非常に色濃く出ているというふうに私は感ずる次第でございます。  そこで、まず交付金問題の質問をいたしていきます場合に、従来の補助金ということでやっていった場合と、これは臨調とかそういう関係のことは別ですよ、純粋に補助金ということで計算を積み上げていった場合の国の支出金と事業交付金、後でいろいろ質問をしてまいりますけれども、事業交付金という形でいった場合の、一つは差がどういうぐあいに出るのか、これは具体的にわかっておれば出していただきたい。そして補助金と交付金の基本的な性格の違いというものはどこが違うのか、こういう点をまずお尋ねをいたします。
  40. 宮川知雄

    宮川政府委員 今度の法律一つの眼目は補助制度都道府県に対します補助制度改正することによりましてその活性化を図るということでございます。  補助金と交付金とどう違うかという御覧間からでございますが、国から都道府県あるいはいろいろな民間の団体等に財政的な援助を行うための支出をする、そういう意味では、広い意味ですべて補助金と呼ばれているようでございます。交付金も当然その性格になるわけでございますが、一般に補助金、特に現行職業訓練法で負担金と言っておりますが、これも補助金の一種でございまして、この負担金というのは、一般の補助金が本来補助対象者が行うべきところを国が奨励的な意味でやるというのが狭い意味での補助金のようでございます。それに対しまして負担金の場合には割り動的に双方に責任がある、そういう形で負担金という名の補助金が出ているわけでございます。それに対しまして交付金となりますと、どちらかといいますと国の色彩が強くなりまして、それを都道府県にやってもらうというような形が強い形の補助金でございますが、そこに厳格な線が引かれているわけではございません。  ただ、補助金とまいりますと、定率といいましていろいろ積み上げていきまして、それの何割ということになりますが、交付金ですと、全体一括いたしまして、例えば訓練校の運営に使うということでお金が出ていくわけでございます。したがって、当面は、最近はやりのマイナスシーリングなんということがございますが、定額の場合にはそういうことはなかなかやりにくい、定率の場合にはそういうことが行われやすい。しかし、逆に定率の場合には人件費、物価等の値上げをそれぞれに反映させやすいのに対して、定額の場合にはそういうものを反映させにくいというマイナス面もあります。それぞれにメリット、デメリットがあると思っております。
  41. 網岡雄

    網岡委員 それではもう少し先へ移ってまいりますけれども、次に、交付金の場合に、地方交付税交付金どこの九十九条の事業交付金と二つございますけれども、地方交付税交付金と事業交付金というものとの違いは一体どういうところがございますか。
  42. 宮川知雄

    宮川政府委員 地方交付税交付金と申しますと、都道府県の自主的な財政を確立するために国がいわゆる国税三税の大体三二%と承知しておりますが、都道府県の収入と支出の差、基準財政需要額と基準財政収入額と二つございますが、その二つの差、いわば赤字の補てんという意味で交付される。したがって、当然のことながら地方交付税法では使途に制限をつけてはならない都道府県の自主的な判断で使えるお金が地方交付税交付金でございます。  これに対しまして、特定事業に対する交付金というのは、使途を例えば職業訓練校の運営、そういうふうに限って支給されるお金でございますから、都道府県はそれ以外に使うことはできない。そういう意味で、使途に制限といいましょうか、目的がはっきりしているかしていないか、ここが地方交付税交付金と特別事業に対する交付金との大きな差でございます。
  43. 網岡雄

    網岡委員 一般交付税の場合は一般的に出されるものだ、事業交付金の場合は特定の事業に対して交付するものだ、こういうことの御説明を受けたわけですが、これを確認しておきますけれども、と申しますことは、事業交付金の場合には他への流用というものはできない、こういう認識をいたしてよろしゅうございますか。  それから、もし流用ができない代物であるとするならば、それはこの法律によって一つの根拠が示されておらなければならぬと思うのでございますが、その法律的根拠はどこに示されておりますか、その点を明らかにしていただきたい。
  44. 宮川知雄

    宮川政府委員 ただいま地方交付税交付金とそれから特定事業に対する交付金との差ということで、一方は使途に制限がなく、一方ははっきり制限があると申し上げました。そういう意味で、私どもの出します事業交付金は訓練校の運営に要するそれでございますので、ほかに流用することは全く不可、できないことでございます。根拠といたしましては、新法の九十九条に「国は、前条に定めるもののほか、」これは設備、施設についての経費の負担で従来どおりのものでございますが、九十八条の二の、「前条に定めるもののほか、」「職業訓練校及び身体障害者職業訓練校の運営に要する経費の財源に充てるため、都道府県に対し、交付金を交付する。」と明記されてございます。  それともう一つ根拠となると私どもは思っておりますが、地方財政法ではその十条で、いわゆる負担金、国が負担金を出す仕事をたくさん列記してございまして、その中に「職業訓練校及び身体障害者職業訓練校に要する経費」というのがございます。この法律では、附則におきましてそれを修正いたしまして、「職業訓練校及び身体障害者職業訓練校の施設及び設備に要する経費」、これが国が今後負担するものとして挙げられているわけでございますが、逆に言いますと、都道府県の運営いたします職業訓練校、身体障害者職業訓練校は、地方財政法上も、その仕事自体はっきり都道府県が行い、国がその一部の経費をそこに流し込む施設である、そういうことを地方財政法ははっきり宣言しておるわけでございます。  したがいまして、私どもの新しい法律の九十九条とそれと両方勘案いたしますと、法律的にも非常に明確に流用の禁止、あるいは職業訓練校、身体障害者職業訓練校にだけその金を使う、そういうことは非常にはっきりしていると思っております。
  45. 網岡雄

    網岡委員 それじゃ、今の御答弁で、流用の道はない、こういうふうに確認をさしていただきます。  そこで、次の質問に移っていきたいと思うのでございますが、まず、先ほど局長の御説明によりますと、交付金の場合であると、国の責任において国が一定の交付金を渡すことによって、国の一つ行政の指示によって地方自治体がその事業をやるんだ。ところが補助金の場合には、これは本来仕事事業主体は県にあって、国から補助金をもらって、それを助けにしていく、そして事業をやっていく、こういうことになるというさっき御答弁でございました、そういうふうに私ども理解をしました。  そうすると、実際のお金の動きというものは、これは例えば五十九年と六十年とを比較した場合に、この場合は百十億一千四百万、六十年度の予算は百十億二千四百万ということですから、これは約一千万ぐらい多い勘定になっております。だから、これは一応つじつまが合うわけでございますが、しかし、今、各県を通じて心配をされておりますことは、これは出発点でありますから、多少一千万ぐらい多く盛られておるけれども、しかし補助金の個別の積み上げの方式よりも、実際は交付金によるやり方をされると、これは下がることが間違いない、大体下がる方向にある、こういうふうな認識が一般的でございます。  そうすると、さっき御答弁になりましたむしろ交付金ということに運用が変わるとするならば、本来国がやらなければいけない仕事を、国の責任で行うべき仕事を交付金を出すことによって地方自治体にやらせる、こういうことであれば、国の負担というものは、一般的な概念からいきますならば、補助金の場合よりもその負担は高くなる。つまり、国の出し分が多くなければならないのじゃないか、私はこういう論理が成り立つと思うのでございますけれども、現実の流れとしてはむしろ削られていく、こういう格好になるということは私は主客転倒だという感じがするわけでございますけれども、この点について労働省はどういう御見解をお持ちになっておりましょうか。
  46. 宮川知雄

    宮川政府委員 この法律の非常に大事な柱として、都道府県に対する補助金の交付金化があるということでございますが、これはお金を節約するためのものではございません。臨調の三次答申も、特に地方に対する人件費を中心とした補助金は一般財源化するようにというそれがあったわけでございますが、その臨調の答申も、補助対象職員が担当している事務事業、これが的確に運営されるように、そうした配慮を十分した上で一般財源化するように、これはその仕事そのものを否定するということでは決してございません。まして私どもの担当しております職業訓練都道府県にやっていただいております職業訓練は、今までの御質問の中にもございました社会の基本として大変大事なものでございます。これからも強化することはあっても、ゆるがせにできるものではございません。  ただ、地方の時代あるいは地方の自主性というものを尊重しなければならないということもこれは大変大事なことでございまして、これが臨調の基本的な精神だと思います。そういうことでまいりますと、今の補助金方式、負担金と法律上は書いてございまして、国と都道府県の両方の負担ということでございますが、積み上げでございますから、積み上げた段階業務がどうしても固定化しやすいという面がございます。これに対しまして、事業交付金ということになりますと、職業訓練の経営という大きな枠はございますが、その枠内ではかなり自由にお金を使ってもらえる、そういうことで、特に最近は都道府県ごとに、人口の態様、工場の配置、それから農村地帯であるか工業地帯であるか、特にハイテクが入っているかというようなことで随分違っておりまして、それぞれの都道府県が大変工夫をされているわけでございます。その工夫が少しでもやりやすいようにということでやるわけでございまして、決してこの事業そのものを否定するために、あるいはこれからもまた問題になるわけでございますが、経費を節約するためにやるものではないと思います。  ただ、問題は、先生も御指摘がございましたように、どうしても削られにくい面と同時にふやされにくい面がございますので、そうした意味では、一定の事業量を確保するためには、私どもといたしましても財政当局その他に対しまして十分実情を訴え、話をして、その実態といいましょうか、実際に仕事ができる力を蓄えなければならない。特に昨年の六月に、公共職業訓練のあり方等研究会というのがございましてそこからの報告もございましたが、これからの公共職業訓練は地域社会教育訓練、特に能力開発のための中核として位置づけられなければならないし、そのための努力をすべきだ、そういうことで御意見をいただいておりまして、私ども全くそう思っております。したがいまして、くどいようでございますが、財政当局ともよく話をいたしまして、実質を確保し、さらに拡大する、そういう形をとってまいりたいと思っております。
  47. 網岡雄

    網岡委員 そうすると、確認をしておきますが、今の局長の御答弁によりますと、これは減らすものではなく、交付金というものは補助金と違って個別に限定されるものではなく職業訓練事業の全般に効率的な財政運用ができる、こういうことであって、いやしくも前年よりも減るということはない、こういうことになるんだということで御確認してよろしゅうございますか。
  48. 宮川知雄

    宮川政府委員 法律上、制度上前年より減るものではないというわけではございませんが、私ども公共職業訓練をこの仕事の中核として最も大事なものとして考えておりますので、いやしくも減ることなどのないよう、むしろ積極的にふやすよう財政当局その他との折衝をきちんとやってまいりたい、そういう意味でございます。
  49. 網岡雄

    網岡委員 それでは重ねてお尋ねをいたしますけれども、九十九条の二項でこの交付金の算定の基準というものが示されております。これによりますと、一つの要素は、各都道府県雇用労働者数及び求職者数というものを基礎にして、これをベースにして、「職業訓練を緊急に行うことの必要性その他各都道府県における前条に規定する職業訓練校及び身体障害者職業訓練校の運営に関する特別の事情を考慮して、政令で定める基準に従って決定しなければならない。」こうあります。この「特別の事情を考慮して、政令で定める基準」というものは、労働省は一体どういうことを想定なさっておみえになりますか、政令の中で定めるものについては。
  50. 宮川知雄

    宮川政府委員 政令につきましては、これから正確にいろいろ検討するところでございますが、単に求職者数あるいは学校卒業者数、これは客観的な指標として出てまいりますが、現実には都道府県ごとに緊急に失業者が多発する、例えば特定不況地域とか不況業種という問題もございます。炭鉱の閉山問題というようなこともございました。そういう緊急な事態もございます。  また、それぞれの訓練校につきましても、特にそうした人々を受け入れるために緊急に施設を整備しなければいけない、あるいは新しく指導員も配置しなければいけないということもございましょう。それから、最近はいわゆるハイテク団地というようなものが急激に膨らむというようなこともございます。そうした意味での緊急の必要性というものもございますので、客観的な指標としては労働者人口、新規学卒者、失業者、そういうもめでございますが、今申し上げましたようなものにもさらに検討を加えまして、各都道府県の実情もいろいろ加味し、従来の行政の水準を落とすことのないように考えていきたい、このように考えております。
  51. 網岡雄

    網岡委員 今おっしゃったもの以外に、例えば職業訓練事業をやっていく職員の人件費、それから職業訓練を行っていくに当たって実習原材料の経費、こういうものも交付金算定の基準の一つにはまるものじゃないですか。
  52. 宮川知雄

    宮川政府委員 この法律では、施設、設備につきましてはその前の条文がございます。ちょっとごらんいただきたいと思います。読み上げさせていただきますが、「国は、政令で定めるところにより、都道府県が設置する職業訓練校及び身体障害者職業訓練校の施設及び設備に要する経費の一部を負担する。」こういうように設備面につきましては従来どおり補助金でございます。臨調の御答申にもございましたし、都道府県が動きやすいという意味からいきますと、人件費を中心とする運営費が交付金化されなければならないということでございます。したがいまして、九十九条の方は人件費を中心とする運営費、ほぼ人件費とお考えいただいてよろしいわけでございまして、そちらの方は今御説明申し上げましたような基準に従って交付したい、かように考えておるところでございます。
  53. 網岡雄

    網岡委員 人件費の点については、これは運営費の一部ということは今御答弁ありましたので確認します。  ただし、運営の経費の中の一つとして、実習をやっていく場合の材料、これは施設じゃないんですね。旋盤の機械は設備ですけれども、旋盤を使っていく場合の材料、こういうものは実習の一つの経費です。これはやはり運営の経費の中に入るというふうに私どもは考えますが、そうならないのですか。
  54. 宮川知雄

    宮川政府委員 事業交付金化いたしますものは人件費を中心とする運営費でございます。お説のように、その前にあります施設、設備ではございません。当然要るお金でございますので、それは九十九条で言う事業交付金の対象、その範囲に入るものでございます。
  55. 網岡雄

    網岡委員 そこでさらに質問をさせていただきたいのでございますが、これからのところが実は重要だと思いますけれども、先ほども局長がおっしゃったように、九十九条の二項の前段のところはもう基本的な数字ですね。これはそう変わりません。一応これは言われておりますけれどもそんなに変化がないところでございます。  問題は、事業交付金と言う以上はその事業に対する交付金でございますから、したがって、今、事業を運営するに当たって必要な経費というものは何かということを言ったときに、それは人件費プラス実習に要した諸経費、こういうものが運営に要した経費だ、こういうことになりますね。  そうすると、例えば人件費というものを一つ例にとりますと、人事院勧告によって人件費が上がった、こういうことになれば、それは当然事業交付金の算定の基準にはまってくるわけでございますから、当然交付金が翌年ふえていかなければならないと思うのでございます。それから実習の材料、これは主に材料でございますが、そういうものは御案内のように物価が上がってきます。したがって、五十九年よりも六十年が、六十年よりも六十一年がという形で物価は上がっていくわけでございますから、当然その経費はやはり物価上昇、これは明確な数字が出るわけでございます。どんぶり勘定じゃございません、明確に出ます。そういうものは事業交付金のいわゆる加算の部分として、はっきりした要素として当然加算されるべきものでございます。そういうことはこの事業交付金の算定の基準の中に入りますかどうか、ちゃんと大蔵省はそういうことは認めてくれるように話はついているんですかどうですかということがまず一つ。  それから二つ目は、離島、それから人口の少ない県、僻地、こういったところは第一の積算の基礎である雇用労働者数とかあるいは求職者数というものは非常に少ないのですね。そうすると、こういうところはもう大変な激減をすると思うのですよ。補助金の制度時代から、今度は交付金になればがくっと落ちるわけですね。こういうものに対する激変緩和というものが、これはどうしても必要だというふうに思います。しかもそれは激変緩和という短期のものではなしに、職業訓練事業をやっていくために長期にわたってやはり必要な考慮をされていくものであるというふうに思うわけでございますが、二つ目には、その点がこの交付金の算定基準の中にどう配慮をされていくのかということについて、労働省としての見解を示していただきたい。
  56. 宮川知雄

    宮川政府委員 第一点でございますが、先ほど補助金と交付金との特質ということを申し上げました。一般の補助金ですとシーリングの対象としてカットされやすい、しかし定額の場合にはそれがされにくい、それがメリットである、しかし一方、物価等の変動の場合に、それが直ちに反映するという制度的な保証がないという意味で、交付金の場合にはそれがマイナスという面がないではないと申し上げました。先生の御指摘まことにごもっともで、当然物価の変動もございます。それから職員のベースアップもございますから、その限りにおいては、そうしたものをきちっと毎年必要に応じて見なければ実際の仕事がされにくいという面はございますが、そこは私どもが財政当局と十分話し合いをして話を進めていかなければならないところで、極力都道府県に御迷惑をおかけすることがないように、公共職業訓練の一定の水準が確保されるように最善の努力をすると申し上げさせていただきたいと思います。  第二点の面でございますが、確かに、比較的人口の少ない地域あるいは農村地域等にありましては、単に学校の卒業生というようなもので割り振りますと、都会地帯あるいはいわゆる太平洋ベルト地帯に集中しやすい面がございますが、人口の少ない土地であっても、それなりに公共職業訓練社会的な大変な意義を背負って行われているわけでございます。それが後退するというようなことがあってはなりませんので、激変緩和というよりも、むしろ従来の線はきちっとそれぞれの府県について確保されるように、そういうように政令で定めるいろいろな基準を考えてまいりたい、決して人口等で割り振って特定地域だけ交付金が集中することなどのないように十分配慮してまいる所存でございます。
  57. 網岡雄

    網岡委員 労働省としての姿勢について御答弁がありましたので、ある部分では評価すべきものだと私は思います。  この際、くどいようですが、もう一度申し上げておきたいわけでございますけれども、今後努力をするということで御答弁になったのでございますが、これは人件費の伸びや物価の上昇というものは毎年上がっていきますし、待ったなしでございますね。いろんな活性化というような理屈をつけて交付金制度を採用なさったわけでございますが、そういうものに対しての処置がきちっとされなければ、これは結局地方自治体の財源を食っていくことになっていくわけでございます。これは明確でございます。これでは、さっきの局長が御答弁になったのとはまさに逆の方向になるわけでございまして、私はその一般財源化の方向の臨調指示を労働省がかなり努力をされて事業交付金にしたという点については、これは不満でございますけれども、一定の評価はいたします。  しかし、そこまでの努力をなさった以上は、やはりこれは事業交付金である以上、明確に一つの筋の通った理由で伸びていくものについてはふやすのが当たり前のことなんでございますから、それをふやさない方の財政当局、大蔵省の方がこれは筋が違っているわけでございますから、もう明確に労働省がこれから財政当局と折衝して、そして必ずふえるような方向で鋭意努力していただきたいということを重ねて要望しておきます。交付金の問題についてはこの程度で終わっておきたいと思います。  それから次に、今度の改正では訓練基準を弾力運用する、こういう改正がされておるわけでございます。これは養成訓練の例をとれば百七十七、能力開発訓練では百八十七というふうにかなり多い数が行われておるわけでございますが、いずれも、この内容を見ますと、第二次産業が華やかな時代に照らしてつくられたものがかなりあるわけでございます。実際に今日の社会情勢、社会経済環境というものを見た場合には、これは全部とは申し上げませんけれども、一部の中にやや時代おくれになるという嫌いのものがなしとしないわけでございます。したがって、こういう情勢を踏まえながら、職業訓練の基準について今後どのような方針で労働省は臨んでいこうとされているのかという点につきまして御答弁をいただきたいと思います。
  58. 宮川知雄

    宮川政府委員 現行では、準則訓練のうち、訓練課程ごとに教科あるいは時間その他が労働省令で非常に精ちに決められております。それはそれで大変意味のあった時代もありますし、また現在意味のあるものもあるわけでございますが、お説のように、世の中はどんどん動いておりまして、必ずしも従来の教科で一つの職種というものをとらえることができない時代になってまいりました。  例えば今は職種に対応しての教科という考えがございます。例えば機械工というのがございます。旋盤とかフライス盤を使って金属の切削加工をする業務ということでございまして、そのための教科といたしましては、例えば学科としては機械工学概論、電気工学概論というようなものも高卒の生徒に対して十分行っているわけでございますが、実際の社会の工場でのそれを見てみますと、最近は機械といいましても非常に多能工化しています。例えば、単に工作機械を使って切削するだけでなしに、溶接というようなこともございます。あるいは塗装その他の表面処理という問題もございます。あるいはNC、MCが入ってきておりますので、いろいろプログラミングあるいはコンピューターの操作というような問題もございます。そういった点もございますので、一つの職種に対応する教科という概念では理解できなくなってきている面がございます。  そこで、今度の新しい法律の中では、そうしたものが柔軟にいろいろ必要なものが取り込めるように教科、訓練時間等についても必要に応じてソフトなものが組めるようにしていきたい、こういうのが訓練基準の見直しの問題でございます。
  59. 網岡雄

    網岡委員 職業訓練の基準の弾力化はある程度私ども認めるわけでございます。しかし、例えば今もお話がございました機械科の職練教科の中で見ますと、例えば安全衛生というような一般教科がございます。これは労働をやっていく場合にはもうどうしても守ってもらわなければなりませんことでございますから、こういう安全衛生というようなものについては、それが弾力運用によって削り取られるということにはならないように、ぜひひとつ、必要欠くべからざる教科についてはきちっと維持してもらう、こういう配慮が必要じゃないだろうかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  それから二つ目に、各種の資格の乗り入れ、この点については、その労働者にとりましてはまさに死活問題でございまして、資格というのはその人の労働の格づけにもなるわけでございますから、そういう点については恩恵が受けられるように十分配慮をして、それを省略するようなことはないように配慮をすべきじゃないかと思いますが、そういう点について労働省はどういう御見解でございましょう。
  60. 宮川知雄

    宮川政府委員 まさに安全第一でございまして、安全のないところに生産はないわけでございます。したがいまして、教科をある程度自由化するといいましても、安全衛生を含めまして基本的なものをないがしろにするという意味では決してございません。隅から隅まで全部きっちり決めてしまうと動きがつかない、それを反省しようということでございます。安全衛生のような基本的な問題についてはないがしろにする意図は毛頭ございません。これは一層強力に教育もし、また公共訓練施設の設備そのものもそういった方向で改善を図ってまいりたいと思います。  それから、資格の取得についてはおっしゃるとおりでございます。そのために、例えば一般には二年のところを特定の資格を取るためにそれを延ばして三年にするというようなこともございますが、いずれにいたしましても、外の資格でございます。私どもの方で勝手に年限を短縮したり、あるいは教科を簡略化することは許されません。資格の取得の関係については、もう従来どおり精密といいましょうか、きっちりやって、何か批判を受けることのないように十分考えてまいりたいと思います。
  61. 網岡雄

    網岡委員 もうあと五十分くらいしかなくなってきましたので、私の方も質問をできるだけ絞ってまいりますから、答弁の方も要点をまとめてひとつよろしくお願いを申し上げます。  次に、中卒訓練に対するいわゆる養成訓練の実施状況について御質問申し上げていきたいというふうに思います。  まず、私、提起をしたいわけでございますが、五十三年の法改正の際には、一つ改正趣旨は、高学歴社会に入る、したがって高校全入というようなことを踏まえながら中卒卒業者については国での訓練機関は県に移していくということで、事実上の縮小をというような格好に移った改正が行われだというのは御案内のとおりでございます。  ところが、実際は、私どもの調査によりますと、例えば愛知県の例をとりますと、高学歴によって用がなくなったと思われていた中卒卒業者の職業訓練状況というものは、例えば三十、百二十、百六十、百二十といったような定員がございますが、これに対して、三十のところは三十八、百二十の定員に対して百八十五、高浜は百六十が二百三、東三河の百二十が百七十二、いずれも定数を上回る応募があるというような状況でございます。これは当初労働省が想定をされました事態とはまさに逆を向いております。  一方、普通訓練、これは高卒の訓練でございますが、普通訓練の場合は定員数百五十に対して応募者は百二十九、これは二十一減でございます。実際に入校したのが定員百五十に対して百十九という状況でございます。六十のところは五十しか入ってないという状況でございます。ある訓練校では普通訓練の定数八十に対して実際に入校しているのは五十一ということでございまして、この数字が示していますように、私ども判断によりますと、かなりの減でございます。これは相当な数字でございます。そうすると、改正当時から判断をしていたものとは事態は全く逆になっているという状況にございます。  そこで質問をさしていただきたいわけでございますが、五十三年の改正の際に「一定時期に、画一的に切り替えることなく、現に行われている養成訓練の実施について、新規学卒者及び若年労働者など養成訓練希望者が不当に受講機会を失うことのないよう運営上、予算上の措置を講ずること。」という附帯決議がなされておるわけでございます。その附帯決議を踏まえながら、現に今までこの附帯決議を守ってやってきていただいているということは私も承知をいたしておるところでございますが、今後この中卒訓練についてはどういう措置をされるおつもりなのかということをまず基本的な姿勢としてお伺いをしたいと思います。
  62. 宮川知雄

    宮川政府委員 五十三年改正法、現行法でございますが、この法律によりまして雇用促進事業団立の総合高等職業訓練校を技能開発センターと短期大学校に振り分けるということは先生御承知のとおりでございます。そして特に養成訓練の普通課程については都道府県立のそれにやってもらう、特に五十三年のときには中卒一年、高卒六カ月のいわゆる専修課程は順次これを廃止する、当時といたしましては、何と申しましょうか九四%まで高校に進学するというような事態になりまして需要が減ってきた、しかも技術革新の世の中に対処するためには期間が短過ぎる、いろいろな事情がございまして専修訓練課程は廃止するということでございました。しかし、確かに、御指摘のように五十三年法の附帯決議においては中卒者の養成訓練の機会が不当に失われてはいけない、全くそのとおりでございます。  それから、職業訓練そのものはもうまさに生き物でございまして、地域によって非常な差がございます。先生指摘のように、それが逆転するようなこともございます。これからも、特に専修課程とか普通課程というのは法律上のそれではございません、行政部内でいろいろ考えていくことのできるものでもございます、そういうこともありますので、特に中卒の訓練については今後とも機会が不当に失われることなどのないよう、むしろ積極的にそうした教育訓練の機会が与えられるように十分考えてまいりたい、かように考えております。
  63. 網岡雄

    網岡委員 これからも引き続いて力を入れてやっていくということの御答弁でございますから、それを確認して次の質問に移りたいと思います。  先ほど申しましたように、中卒者の訓練というのは非常に定員を超えるぐらいの状況にございます。そこでひとつ労働省の御見解を賜りたいわけでございますが、中卒の訓練、専修訓練というものの職域教科、職能教科は新しいニーズにこたえた職業訓練課程をつくろうと思っても全然つくられないわけですね、これは五十三年法改正の流れがございますから。ところが、実際は今言いましたような状況にある。しかも、入ってくる生徒の中にはこういう教科でなしにもっと時代のニーズに合うような、ME化にこたえる新しい職業訓練を受けたい、こういうことを思っている中学の卒業生というのはかなりあるわけでございまして、そういう者には今の専修訓練というものは合ってないわけでございます。  そこで御質問申し上げますが、時代のニーズに合った新しい職能訓練の課程をつくる、こういうことについて労働省がお考えになる、あるいは検討する、こういうお考えがあるかどうか、お尋ねをしておきます。
  64. 宮川知雄

    宮川政府委員 専修訓練につきましては、都道府県立の職業訓練校で今までやってもらっておりました。それから、暫定的にしばらくの期間残すということでやってまいりましたが、先生指摘のとおり地域によって実情が大変違います。むしろ中卒がふえるというようなケースもございます。今私どもが考えておりますのは、総合高等職業訓練校を二つに振り分け、都道府県と国との役割分担をしたということの基本的な姿勢は今でも大体正しかったと思います。その方向で引き続きやっていきたいと思いますが、細かく見た場合は、これは生き物でございます。地域によって非常に差がある、活性化を図りたい、そういうことでございますから、当然のことながら専修課程に対応するような課程につきましても短期間で特にこれをやりたいというようなことが都道府県にございますれば、都道府県とも十分御相談して、実際に短期の新しいニーズに応じたものが仕組まれるようにこれからも十分検討してまいりたい、かように考えます。
  65. 網岡雄

    網岡委員 今、局長が御答弁になりました新規の職種についての訓練の対応については、ぜひひとつ都道府県にも十分労働省が指導をいただきまして、その局長答弁方向に向かうように鋭意努力をしていただきたいということをお願い申し上げる次第でございます。  次に向上訓練についてお尋ねをいたします。  向上訓練には公共の訓練所が扱うものと事業、企業の側が扱う生涯訓練二つございますけれども、きょうは公共訓練所が扱う向上訓練についてひとつ要約して御質問をさせていただきたいと思うのでございます。  都道府県でやっている訓練所の向上訓練というものは、これは労働省の資料でございますが、私どもが勝手に探してきた資料ではないわけでございます。権威ある政府の資料によると、都道府県立の職業訓練学校向上訓練は、入校者で見ますと五十五年は七万四千六百八十一でございます。それが五十六年では七万四百八十七、五十七年では六万七千五百四十一、五十八年では百人ばかり多くなりまして六万七千六百四十六、こういうことでございます。これはその数字の推移をお聞きいただければおわかりでございますが、だんだん減ってきておるのでございます。  この原因は一体どこにあるかということを私ども調査をいたしましたところ、特に各都道府県状況を調べていきました場合に、西地区と東地区の二つに分けまして、東地区は比較的向上訓練都道府県段階で行われております。ところが西半分は、一部の地域はいいのですけれども向上訓練が東に比べて非常に少ない、減っているというような状況でございまして、そのトータルがこういう格好で減っている数字になってあらわれてきているわけでございます。  その原因というのは、その向上訓練を扱う場所であります人材センター、こういうものが東ブロックは、例えば岩手にもあり、宮城にもあり、秋田にもあり、山形にもあり、埼玉にもあり、東京にもあり、神奈川にもあり、長野にもあり、愛知にもあり、静岡にもあり、そして三重県にもある、こういう状況でございまして、ない方がむしろ少ない状況になっております。ところが、西半分の方は、この資料によりますと高知県が成人訓練センターを六十二年四月に設置するということですから二年後でございます。今はないのですね。あとは、調べられなかったところもあるのでございますが、しかし、この調査によりますと、人材センターは絶無という状況にございます。このことが結局西日本地区の向上訓練が減っているということの大きな原因であると思うわけでございます。  でありますから、これまた御案内のように、労働省計画をしていた第三次職業訓練基本計画の中の向上訓練は最も重要な訓練目標だ、こういうことで設定されていたものでございます。それがいわゆる事業内の訓練は行っておりますけれども都道府県段階のものは減っているということでは、公共訓練活性化にこれから向かおうというときには大きな問題点ではないかと思うわけでございますが、こういう点について労働省はこの状況を踏まえて一体どういう措置をし、今後どういうふうにやっていかれようとするかということについて労働省の見解と対策について御答弁いただきたいと思います。
  66. 宮川知雄

    宮川政府委員 お説のように、向上訓練は在職労働者に対する教育訓練、在職労働者公共職業訓練施設に来てもらいまして、そこで公共職業訓練施設の指導員あるいは企業からついてきた指導員の先生が施設を使ってやる、こういう在職労働者訓練でございまして、生涯にわたる能力開発段階的体系的な開発、そうした仕組みをつくりたいという中では御指摘のように最も大切な訓練でございます。  それで、これも御指摘ございましたが、確かに都道府県立の向上訓練は多少減少ぎみでございますが、在職労働者訓練ということでございますので、多少景気の変動等影響もあるようでございます。現に、これも今お話がございましたが、団立、国立の訓練施設におきましては向上訓練はかなりの勢いで伸びているところでございます。ただ、地域的な偏在という点はこれがなかなか問題でございますが、今申し上げましたように、私どもは、公共職業訓練の中核として向上訓練を考えるという建前からまいりますと、やはりもっともっと積極的に利用してもらいたい。そのためには都道府県ともいろいろ何が問題になっているのか相談もしたいと思いますが、一つにはサービス機能といいましょうか、相談機能の不足もあろうかと思われますので、そうした点も新法のもとでもっと強化いたしまして、この中核としての向上訓練が全体としてバランスよく発展するように十分考えてまいりたい、そのためには県ともよく御相談してまいりたい、かように考えます。
  67. 網岡雄

    網岡委員 それでは、質問を次に移ります。  次は委託訓練についてお尋ねをいたします。  今度の改正一つ目玉、委託訓練を拡充していって弾力運用をやっていくというところが一つ改正点のねらいでもございます。私はこういう活用の必要性というものを全面的に否定するものではございませんが、しかし、これは運用を過ちますと職業訓練の安上がりということにつながっていくわけでございますから、この運用については私は十分慎重な配慮をしていただきたいということを質問の前に要請をしておきたいと思います。  そこで、委託訓練について今後どのような点を改善をしようとしているのか、この中身についてお尋ねをしていきたいと思います。  それから二つ目は、委託訓練については機動性の名をかりて手抜きの安上がり訓練を行うという点が先ほど述べましたように最も大きな心配点でございます。そこで一つは委託先の訓練強化カリキュラム、これを労働省の方で一定の基準をつくっていただいて、その下敷きに合うかどうかということを県なり国がちゃんと指導していく。そういうことをやって、極端なでこぼこがないようにこれは運用をしていただかないと、さっき言ったように、質的にも安上がりのお粗末な職業訓練、こういうことになりかねない内客を持ちますわけですから、ぜひひとつそこの歯どめはそういうような形でやってもらいたいと思いますが、この歯どめについて具体的にどういう考えを持っているか。  それから二つ目には、例えば公共訓練の場合でいきますならば、例を端的に事務教科、事務の職業コースといたします。これを公共の場合は六カ月ですね。たしかこれは今度のあれによって、民間へ委託するということになれば三カ月ということになるようでございますから、そうすると、同じ事務課程が三カ月と公共は六カ月、こういうことになるわけでございます。  そこで、具体的に私ども心配している点は、早く送って失業保険の金が安く済む、使われずに済むわけですから、そういうことにするためにこれが使われていくということになると、どこが先になるかというと、これは民間委託へ先へ行く、こういうことになるんじゃないかという心配が実はございます。  そこで、運用の基本として、労働省の見解をお尋ねしたいわけでございますが、先ほども公共訓練活性化というものが大きな柱だということをおっしゃっているわけですから、順序は公共が先で民間委託が後、こういうことにならなければならぬと思うのでございますが、その点について労働省は一体どういうお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
  68. 宮川知雄

    宮川政府委員 委託訓練公共職業訓練、さらには広く能力開発のための施策を幅広く展開したい、そのためには可能な手段をすべて動員したい、そういうことで考えたものでございます。  したがいまして、今までですと、雇用保険の受給者のうち、特に特定不況業種からの離職者というような人に限りまして、委託先、しかも公共職業訓練がない場合にその委託先を考えたわけでございますが、今度の新しい法律におきましては、迅速かつ効果的な職業訓練を実施するために、必要があるときには適切な機関を探すということでございまして、今までとは姿勢を変えまして、使えるものはもうどしどし使う。したがって、特定不況業種から出た人だけでなくて、雇用保険の受給者一般、さらには安定所長が必要と認めるような人についてもやっていきたいと思いますが、しかし、それはあくまで公共職業訓練施設に余裕といいましょうか、入れ物がない場合に積極的に探すということでございます。  先生、ちょっと例として事務部門の御指摘がございましたが、いわば競争相手的なものは余りあってほしくございませんが、もし仮にあるとすれば、公共職業訓練施設にその能力があれば、また収容の能力があれば当然それを使うということでございまして、まず安上がりの方を使うというようなことは一切考えておりません。  それから、基準につきましても、あくまで適切な機関でございます。訓練カリキュラムを弾力化するといっても、これはいいかげんにするという意味では決してございません。それなりにきちっと国と都道府県よく相談いたしまして、内容等につきましても一つの物差しもつくり、十分公共からの委託にたえる機関を探す、そういうことでは、基準等をおろそかにするというようなことは一切ございません。あくまで公共職業訓練の大きな意味での一環として委託先を積極的に使いたい、そういうことでございます。
  69. 網岡雄

    網岡委員 それでは残念ですが、次に移ります。  情報提供について質問をさせていただきたいというふうに思います。  これは今度の法律改正の中で、先ほども局長がちょっとおっしゃったわけでございますが、要するに情報提供というものが職業訓練の場合非常に少ないということが言われております。これは労働省が調査をなさったところに、教育訓練に関するノーハウの不足、こういうことが、これは百人に対してのあれですが、四二・一、こういうふうにあるということが労働省統計数字の中にあるわけでございまして、それが示しておりますように、これはかなりノーハウに対して一般的に知られていない、こういう点がございます。そういうものを埋めるためだと私は認識をしておりますけれども、今度の法改正で、訓練を受ける人間とそれから訓練をする側、その両方の中間に立って職業訓練の情報を提供していくというパイプ役を今度の法律でつくられました。これは行政効果としては非常に大きなものであるというふうに私は思うわけでございますが、その具体的なものは職業能力開発サービスセンターというものを今度つくられることになっているようでございます。  まずお尋ねをいたしますけれども、この職業能力開発サービスセンターというものは一体どういうねらいで、どういう機能を持って業務をやろうとされるのか、その点についてお答えをいただきます。
  70. 宮川知雄

    宮川政府委員 職業能力開発、そのための職業訓練あるいは技能検定、社内検定といるいろございますが、国にも都道府県にも、それからさらには企業事業所の中にも大変なノーハウ、経験が蓄積されているわけでございます。  ところが、今お話もございましたが、これを統計的に、体系的に取り出して加工し、それをバックにして相談に乗る、あるいはそれをさらにまた民間に戻すというような機能、仕組みというものがこれまた大変不足している。公共職業訓練は自分のところでやっておる、事業所は事業の中で自分だけでこれは秘密だというようなことでやっておるというようなことでございまして、ある程度やむを得ない面があるかもしれませんが、もっともっとお互いにオープンにして情報交換をする。それから相談に乗る。特に中堅以下の中小企業につきましては教育訓練の必要性は痛いほどわかっていながら、どこでどういうふうにやればいいかわからない。短期間なら教えてもらいたいんだけれども、長期間、訓練校といったら何か六カ月来いというような話だというようなことでなかなかうまくまいりません。そうした意味では、情報を加工し、提供し、それをバックに相談するという機能は絶対に必要だと思います。  そうした点で私どもが考えましたのが職業能力開発サービスセンターでございます。プランナーとか相談員を置きまして、企業の中で計画をつくるときの相談に乗り、また、特に中堅以下の中小企業対象にいたしまして巡回して相談員がいろいろ相談に乗る。それで国、都道府県あるいは民間のそれぞれの教育訓練機関を紹介するとか、いろいろな資料を差し上げるとか、そういうことをこのセンターを中心にして積極的に進めていきたい、そういうことでございます。
  71. 網岡雄

    網岡委員 それでこの職業能力開発サービスセンターは、今年度の予算で——予算はまだ通りませんけれども、全国何カ所設置されることになっているのか。それから職業サービスセンターに配置される陣容は一体どれだけのものを想定なさっているのか。それからこの職業サービスセンターの業務の守備範囲といいますか、そういうものはブロックを想定なさっているのか、あるいは県ぐらいを一つの単位とする地域性というものに力点を置いて設置の判断をなさっているのか。その三点についてお尋ねをいたします。
  72. 宮川知雄

    宮川政府委員 六十年度政府予算原案で認められております職業能力開発サービスセンターは四カ所でございます。人員につきましては、一カ所にプランナー三名、相談員二名、計五名を置いて仕事を進めていきたいと思っております。  それから、守備範囲でございますが、守備範囲は、実際にはその職員が、何といいましょうか、足で回って稼げるぐらいの範囲が実際適当であろう、そういう意味では、私どもはまさに全国に何百とこれをつくりたいと思いますが、それがまだたった四カ所でございます。ただ、これはいわば小さく生んで大きく育てるといいましょうか、育て方、人の選び方で全く成否が左右されます。そうした点では、むしろ四カ所であってもこれを丁寧に育てていきたい。  置かれる場所といたしましては、やはり順序としてまいりますと、工場、事業場の多いところ、人口の多いところということでまいりますので、大体側想像がつくような地域でございます。
  73. 網岡雄

    網岡委員 局長の決意は非常に壮たるものがあるのでございますが、何百というふうに地域におつくりになるという壮大な御計画の発表がございました。ことしの予算によれば、聞くところによると四カ所、こういうことになると、要する年月は百二十五年、こういうことになるわけでございまして、二十一世紀、二十一世紀と言っておりますけれども、これは二十二世紀半ばを過ぎないとできない、こういう格好になるわけでございますが、まず一つは、これはことし口を出す、顔を出すスタートのところでございますから、四カ所というものは、私どもはこんな数でいいのかなと思うのでございますが、努力をされた一定の成果かもしれません。  しかし、私どもが思いますことは、何百というような、地域にまさに密着をした、本当に知りたい人に知らしていく情報のパイプ役をする、この局長の御判断は私はやはり正しいと思うのですね。そういうふうにできていかなければいけないと私は思うのでございます。だから、その方向労働省がこれは積極的に努力をしていただきたいということをまず思いますけれども、それにしては一年四カ所というのは、これはもう気の遠くなるような話でございますから、来年度に向けてはひとつ努力をしていただきたいというふうに思います。  それから人の配置の問題でございますが、これは常駐二人、非常勤三人、こういうことでございまして、労働省の御説明を聞きますと、最初の段階はややブロック的な感覚でスタートをする、そしてこの行政効果国民的に知られてくる段階で地域へどんどんふえていく、こういう一つの戦略的なねらいを持ってスタートをされたと、これは善意に理解をいたしますけれども、そうなると、最初はやはりブロック的な機能というものを持つわけでございます。そうなると、先ほど局長が自転車で走るなんということをおっしゃったわけですが、ブロックを指導するにしては、自転車ではこれはとても追いつかないわけでございますから、したがって、人の配置も機能もブロックを対象とするにふさわしい組織を持たなければならないわけでございます。  予算を見ますと、大体五千五百万ぐらいということでございますから、四カ所ということになれば、平均でいくと大体千三百七十万から八十万ぐらいということになるわけでございまして、そういうお金では、それから人の数からいって、これで果たして十分な機能を発揮できるかなということが実は心配をされるところでございます。でありますから、これは今後労働省が鋭意努力をなさいまして、ぜひひとつ実のある、十分実効性を持った機能が発揮できるように努力をしていただきたいということを、これは要請をしておきます。  それから、これは具体的に御覧間申し上げますが、聞くところによりますと、愛知県が労働省にこの職業能力開発サービスセンターの設置について要請といいますか、要望を既にしているようでございます。  私は地元であるからということだけではございません。先ほども申しましたように、これは労働省が十分御承知だと思いますが、愛知県の労働行政というものは、神奈川県などの先進県と比較をいたしまして何ら遜色のない仕事を実はやっております。したがって、設置をしていただいた場合に、御心配になるような事態というものはまあまあないんではないか、十分その機能を発揮するというふうに思うわけでございますが、全国で四カ所ということになればおよそ範疇にあるとも考えられるわけでございますけれども、中部圏の一つ職業訓練のパイプ役ということのセンターとしての役割を果たしていくための方法として、中部圏の中核愛知、愛知の中核都市の名古屋に設置するということに恐らくなろうかと思うのでございますが、これについて労働省はどういう御見解をお持ちになっているのか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  74. 宮川知雄

    宮川政府委員 職業能力開発サービスセンターについては、二十二世紀までいってしまうのではないかというようなお話がございました。まことに恐縮な申し上げようでございましたが、私どもといたしましては、こうした機能を公共の側が持たなければ、公共職業訓練も事業内の訓練もなかなか成果を発揮しにくい、情報の交換、相談というものがもっともっと親身に、肌身に接したものとして行われなければならないという意味で、いわば例えとして申し上げたわけでございます。  それで、当然このサービスセンターは大変な注目を受けておりまして、ここ四カ所での成否というものが、将来本当にたくさんにふえるかだめになってしまうか、それの分かれ目でございます。そうした意味では、私ども大変真剣にこの配置を考えておりますが、当然のことながら、ブロック的なものではないにせよ、たくさんの注目を受けるという意味では、工場、事業場の集積している地域、例えば東京、大阪、それから御指摘のように愛知もいわゆる中部九県の中心地域でございますので、今直ちに私、どういうふうに決定いたしますという政府原案が——政府原案といいましょうか、政府の予算がまだ国会で成立を見ていない段階でございますので正確には申し上げられませんが、成立の暁には、当然愛知県にもむしろ積極的にお願いしなくてはならないものではないか、かように考えております。
  75. 網岡雄

    網岡委員 それでは積極的にいたしていただくようにひとつお願いを申し上げたいと思います。  それでは、あともう五分で有給教育訓練休暇制度並びに生涯訓練などの点について、これは一括質問をしていきますので、ひとつ簡潔、要領を得た御答弁をいただきたいというふうに思います。  まず、今度の法改正で一番大きな特徴は、冒頭の質問でも御答弁をいただきましたように、労働者訓練を受ける権利として有給教育訓練休暇制度というものがつくられたということが一つの大きな特徴でございます。これはまず原則的に、理念としてお尋ね一つこれだけしていきたいと思いますが、これは労働者の自発性、自主性というものを尊重しているものだというふうに理解しているのでございますが、その点について理念の輪郭というものをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  76. 宮川知雄

    宮川政府委員 生涯にわたる能力開発体制、こうしたものを社会的に仕組みとしてつくりたい、これが新法の基本的理念でございます。その一つとして、国の行う訓練事業主の行う訓練がございますが、さらには何と申しましても労働者自身が積極的にみずから学び取ろう、これを通じて自立しようという意識がなければとてもうまくまいりません。そうした意味で、有給教育訓練休暇というのは、事業主としてはその付与について十分配慮しなければならないものでございますが、当然労働者がみずからそれを請求するという性格の、両者の意見の一致するところにあるところでございまして、有給教育訓練休暇については、職業に関する能力あるいはその周辺の一般的な能力を高めるためにみずから学び取る、そういうことで事業主もこれに協力するという仕組みでございます。
  77. 網岡雄

    網岡委員 ちょっと私わかりにくかったわけでございますが、もう少し突っ込んで言いますと、有給教育訓練というものの制度は、昔でいくとマル有、マル職、こういうものが今一本になっておりますね。そこで今のような御答弁があったのかなと思いますけれども、本来の有給教育訓練休暇制度というものは、労働者の側からこういう訓練を受けたいという自発的な発露に基づいてそれがやられたら企業の方は許可をして出すということが本来の趣旨なんでございますね。もう時間がないから、私質問ができませんのであれでございますが、例えばフランスにおきます生涯教育労働法典で見ますと、これは明確に労働者の方から要求があって、それに基づいて使用者が許可をする、こういうふうにその位置づけは明確にされておるわけでございます。現行の制度の中にもこのフランスの労働法典のいわゆる権利としての教育制度というものは、一部的ではございますけれども、踏襲しているわけでございます。  私が聞いたのは、その二つの要素が、マル職、マル有があるけれども、本来のものはマル有の性格というものがやっぱり軸でなければなりませんよ、こういうことを私聞いておるわけでございますので、その辺はひとつ労働省として明確な御答弁をいただきたい。  それから二つ目は、マル職、マル有というものの二つがあるわけですが、現行の数字の中でマル職とマル有との比率というものは一体どういうものになっているのか。これは細かい数字は別として、大体のアウトラインで言っていただけばいいです。それを明確にしてください。
  78. 宮川知雄

    宮川政府委員 有給教育訓練休暇労働基準法三十九条で言う有給休暇とは全く別枠のものでございます。したがいまして、現行では事業主労働組合等とよく相談をいたしまして計画をつくり、その計画にのっとって有給教育訓練休暇を付与する、労働者もそれを請求する、そういうところに成り立つものでございます。現段階ではまだまだその利用度が全体として大変低調でございますので、フランスのように事業主のストレートの義務あるいは労働者側のストレートの権利として表現するまでには至っておりませんが、一番最初に御答弁申し上げましたように、事業主能力開発のためのいろいろな措置を講ずる努力義務がございまして、その一つとしてこの制度も入っているわけでございます。そういう意味に御理解いただきたいと思います。
  79. 石岡愼太郎

    ○石岡説明員 有給教育訓練休暇事業主が付与した場合に労働省は給付金を支給いたしておりますが、五十八年度の実績を申し上げますと、対象人員が約五千人、対象事業所数が約千二百社、こうなっております。一方、事業主労働者を有給以外の手段で事業内あるいは事業外に派遣いたしまして教育訓練を行った場合にも同様に労働省の方から給付金を出してこれを奨励いたしておりますが、この生涯職業訓練奨励給付金の五十八年度の実績を申し上げますと、対象人員が約七万五千人、対象事業所数が約二千、以上のような状況になっております。
  80. 網岡雄

    網岡委員 それでは、有給教育訓練休暇制度についてはもう少し本当は掘り下げて私質問をしたいわけでございますが、時間的に制約がございますのでこの程度でとどめますけれども、これはかなり問題がございます。  例えば生涯訓練の場合でいきますと、その審査の中身は書類審査に事実上終わっている、こういうことでございまして、これは疑ってはいけませんけれども、場合によれば、入社の際のオリエンテーションの教育でもそれは生涯教育に化けているかもしれない、こういう嫌いがないとは言えないわけでございます。そういうことからいきますと、その運用、審査の中身というものを見ますと、かなり問題があるわけでございますが、これは、企業サイドの訓練ではなくて、十分労働者の立場に立った訓練ということの実のあるような訓練の運用というものをやっていくためには審査のチェックをこれからも厳格にやっていただきたいということを要請をしておきます。  それから、次に質問をいたします点は、海外協力問題についてお尋ねをいたします。いろいろ御質問を申し上げていきたいわけでございますが、時間がこれまたございませんので、二、三点にわたって御質問をさせていただきたいと思うのでございます。  一つは、今回の職業訓練法改正案には、御案内のように、国際協力に関連する条文が入っております。労働省は技術協力に対する体制として昨年海外協力課を新設された、こういう点では一つの意欲をうかがうものとして私ども一定の評価をするわけでございます。しかし、その内容をつぶさに検討してまいりますと、これはやはりちょっと問題があるような気がいたします。それは、まだまだ力が入っておらない、こういう評価をせざるを得ない幾つかの問題点がございます。  それは、例えば海外協力の一つの大きな柱であります国際協力事業団というものがつくられておるわけでございますが、この国際協力事業団に派遣をいたしております職員、これは現在外務省、大蔵省、厚生省、農林水産省、通産省、労働省、こういったところが派遣をされておるわけでございますが、管理職員は全体で三十六名、この内訳は外務省が五人、大蔵省が五人、厚生省が五名、農林水産省が十二名、通産省は六名、我が労働省は残念ながら一名だけ、こういう状況にございます。これも法改正の、たしか五つの中の一つだったと記憶をいたしておりますが、非常に重要だ。特に貿易摩擦から出発をいたしました国際協力の内容というものは、日本の国全体の立場から見ましても極めて重要な施策であるべきはずにもかかわりませず、労働省の派遣人員は一名だということは非常に私はお粗末に過ぎるのではないかということを感じます。  海外協力をしていく場合に、私はこの間OVTAを視察をする機会がございました。あそこに東南アジアの職業訓練の指導者の人たちが集まっておるわけでございますが、こういう人たちは日本のまさに、先ほどのお話ではございませんが、生きた技術革新のいわゆる技術をまさに両目を輝かして生き生きとやっている姿を私は拝見をしまして、本当にこのことは日本が先進国の一つとして後進開発途上国に貢献をしている、外交的な面から見ましても非常に大きなものであり、同時にこれはその国の人づくりに大きな貢献をしているんじゃないか、やがてこれは感謝をされて日本に非常な大きな好感を持たれるという、そういうことになると私は思うのでございます。  したがいまして、そういう観点から見ますならば、先ほども言いましたような数字からいって、労働省が一人しか派遣されていないということは非常に、心構えはいいんですけれども、実際にやられているものはそれに伴っていないという気が私はするわけでございまして、これはもっと職員を派遣して、そして実のあるものにしていかなければならぬと思うわけでございますが、この点について今後労働省は一体どういう対応をされるか、この点についてまずお答えをいただきたいと思います。
  81. 宮川知雄

    宮川政府委員 職業訓練を通じましての海外技術協力の重要性につきましては、もう先生指摘のとおりでございます。繰り返すところではございませんが、ただ、私どもの海外技術協力というのは外務省、JICA、国際協力事業団を通じてのそれと、それから労働省独自でやっておりますAPSDEPというのがございます。アジア・太平洋二十七カ国を打って一丸とした機構でございます。そうしたものとか、日本ILO協会とか、それから御指摘のOVTAとか、多方面にわたって技術協力をやっております。JICAはその中の一部のそれでございます。また、JICAを通しまして、現地には六十名近い私どもの職員を派遣しておるところでございまして、JICA本部、国際協力事業団本部における管理職がふえることは大変好ましいことではございますが、そうした意味では先生指摘の点も十分踏まえて、JICA、外務省とも相談してまいりたいと思いますが、当面は何よりもまず優秀な指導員を現地に送り込むこと、そうした意味で海外諸国、外務省、JICAの協力といいましょうか、共感を得るということ、こういうことが当面は大事ではないか、かように考えております。
  82. 網岡雄

    網岡委員 ぜひひとつ、これは一名派遣というような状況ではお粗末でございますから、早く他の省とほぼ匹敵するような人的配置というものを、これはぜひ早急にやっていただきたいというふうに思います。  それから、二つ目にはOVTAの問題でございますが、これは非常に立派な業績をされておみえになります。ぜひひとつ技術協力を積極的に推進していくために、民間技術協力の果たす役割の一つとして、また、その場としてOVTAの機能が十分これからもやっていけるように、これは政府ももう一つ力を入れて援助体制を強化していっていただきたいということを思っているわけでございますが、この点についても労働省はどういう御見解をお持ちになっているか、明らかにしていただきたいと思います。
  83. 宮川知雄

    宮川政府委員 労働省の海外技術協力といたしましては、国がJICAを通して行いますもののほか、今御指摘のございましたOVTAがございます。海外職業訓練協会、OVTAがその略称でございますが、ここには国といたしましては、例えば幕張に施設をつくりましてその運営を委託し、その運営について相当程度助成する。それから、OVTAの活動につきましても一般的な助成、相談その他事実上の援助、こうしたものを積極的に進めてまいりたい、かように考えております。
  84. 網岡雄

    網岡委員 非常に国際的な大きな話をした後で、極めて地域性の深い小さな話をいたしますが、最後でございますので、時間に協力をする意味一つ質問で終わりたいと思うのでございますが、全建総連という組合がございます。これは大工さんとか左官屋さんが集合なさっている組合でございますが、ここが後継者を育成をいたしますために認定訓練をおやりになっております。ですが、ここはかなり共同で職業訓練をおやりになっておるわけでございますけれども、最近は人数が大分少なくなってきているようでございます。  聞くところによりますと、認定訓練一つの単位は十名が単位だ、こういうことをお聞きしております。場合によりますと、六人ぐらいになれば切り上げて運用してもらっているというようなことを聞くわけでございますが、零細な中小企業の集まりでありますこういうところの認定訓練につきましては、それこそ特殊な事情があるわけでございますから、ぜひひとつ思いやりのある運用というものをやっていただきたい。  したがって、例えばの話でございますが、Aというところに三人、Bというところに三人、Cというところに四人、こういうことになると、一つ一つをはめていきますとこれは全部資格に合わないわけでございます。だからゼロになってしまうわけであります。ところが、このA、B、Cを合計をいたしますと十名ということになって合格点に達するわけでございますから、その辺はひとつ運用の妙の中でそういうふうに認定訓練所として認定ができるようなそういう配慮をぜひやってもらいたいというふうに思うわけでございますが、この辺について労働省の御見解はどうでしょう。
  85. 宮川知雄

    宮川政府委員 認定職業訓練は全体としての能力開発向上のために大変大事なものであると思います。特に、中小企業ということで国、都道府県の助成を受けておりますものは、小規模零細企業の皆さんがお集まりのもので能力開発のいわば底辺的なものとして大変意義のあるものと考えております。  そうした中で考えてみますと、一定規模を確保していただきたいというのは補助対象として当然のことではありますが、特に建設関係は大変地味といいましょうか、本当に大事な仕事であるのにもかかわらずなかなか人が集まりにくい、そういうような面もございます。したがって、集まった人々を養成するということは大変社会的にも大事な意義のあることでございますので、一定規模を下回りました場合におきましても、同じ場所で何回かは訓練をやっていただくことが必要かなというようなことは考えますが、都道府県ともよく相談をいたしまして、そうしたものを集約して助成の対象になるように十分考えてまいりたいと思います。
  86. 網岡雄

    網岡委員 最後でございますが、職業訓練法の一部改正について質問をさしていただきましたが、部分的に言えばかなりの前進が見られる点につきましては私ども一定の評価をいたします。  しかし、個々のものにつきましては、やはり質問の中でも明らかにいたしましたように、かなり問題もあるわけでございます。きょうはまだ三つほどの質問点を残して、時間が参りましたので、私は残念ながら終わりますけれども、しかし、今度の改正で画期的な点を挙げられた点につきましては、これはお題目になるのではなくて、そこに魂の入っていくような職業訓練というものを労働省としてはぜひひとつ推進をしていただくようにやってもらいたいということを要請をいたしまして、質問を終わります。
  87. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  88. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。森田景一君。
  89. 森田景一

    ○森田(景)委員 職業訓練法改正趣旨につきましては先般山口労働大臣から趣旨説明がございまして、その中にこういうことが述べられております。   近年、技術革新進展高齢化社会の到来等経済社会変化は著しいものがあり、これに伴って労働者職業生活を取り巻く環境条件も大きく変化しつつあります。今後、このような環境条件変化に対応して労働者職業生活の充実と産業社会の一層の発展を図るためには、労働者職業能力開発及び向上がその職業生活の全期間を通じて段階的かつ体系的に行われる必要があります。  このような状況にかんがみ、事業主の行う多様な職業能力開発及び向上を促進する施策を充実するとともに、公共職業訓練について、地域の経済社会の実情及び環境条件変化に即応して弾力的な訓練を実施することができるようにする。 こういう説明がございました。非常に立派な趣旨説明でございますが、内容につきましては余り大した変化がないように私は感じておるわけでございます。  御説明にありましたように、大要三つについて改正しよう、こういうわけでございます。その一つが、法律の名称を「職業訓練法」という名前から「職業能力開発促進法」に改める。第二番目が企業における職業能力開発の促進、言いかえれば企業自身でもっと努力しなさいという意味だろうと思います。第三点が補助金を交付金に変更して国庫負担を地方に転嫁する、この三点だと思うのです。  この法律の名前を変えるということは、実は大変な問題だと思っているわけでございます。なぜかといいますと、例えばきょうは浜野副大臣が御出席でございますが、浜野剛という名前が森田景一に変わる、こういうことだと思うのです。呼び捨てで失礼ですが、浜野剛がそのまま森田景一になるならこれは何らかの事情があるんだと思います。浜野剛から全然違う森田景一に変わるのなら、これは法律が全部変わらなければならないわけですね。けれども、浜野剛がそのまま実体があって名前だけ変わる、こういうことは何かそこに重大な問題があるんだろうということを考えるわけでございます。  先ほど指摘しました三点の改正では、法律の名前を変える必要はないのではないか。今まで職業訓練局という局がございました。昨年職業能力開発局に改組といいましょうか改編されまして、局の名前が変わったから、どうも局が変わって法律の名前が同じでないのはやりにくいから名前を変えよう、こういうふうに考えられて今回の法改正になったのではないかと私は考えているわけでございます。  労働省は今までにも本格的高齢化社会への移行とか急速な技術革新進展に伴う労働者職業生涯を通じた能力開発の必要性の増大、また厳しい雇用失業情勢の中で中高年齢者を初めとする離職者に対する職業訓練効果的に行っている、こういうふうに報告をなさっていらっしゃるわけでございます。今さら法律名を変えないでも十分対応できるはずだと私は思っているわけでございます。  したがいまして、この技術革新進展あるいは高齢化社会に対応する具体的な対応策というのが、この法律名称が変わったことによってどのように変わっていくのか、まずその辺のところを最初に御説明いただきたいと思います。
  90. 宮川知雄

    宮川政府委員 技術革新進展高齢化社会の到来あるいは女子職場進出、どれ一つをとりましても産業・就業構造の変革をもたらすものでございますが、その中で技術立国、資源の乏しい我が国が世界に伍して高い生活水準を維持していくためには、国民一人一人の能力を目いっぱい引き出すということが大変大事である。これはもう釈迦に説法で申し上げるまでもないことでございます。  そうした観点から、単に工場労働者、二次産業の労働者だけでなくて全方位の労働者についてその職業生涯の全域にわたって適時適切な教育訓練を受けられるような社会的なシステムを確立したい、これが今回のねらいでございますが、残念ながら、現行の職業訓練法はその手段といたしましていわゆる職業訓練あるいは技能検定、この二つを両輪としてやっております。職業訓練自体は職業に関する教育訓練ということでございますから大変幅広いものだと思いますが、現実にはそのイメージといたしましては、長年の間今日に至るまで二次産業、工場労働者の、それもいわゆる技能労働者に手に職をつける、腕に職をつけるというような観点からイメージされてきたことは否めないところだろうと思います。  現に昨年十一月に企業教育研究会、私どもの方の職業訓練研究センターにそうした勉強会がございまして、学者先生とかかなり有力な企業のそちらの専門家のお集まりでございますが、そこでのお話でもいろいろな御意見をいただきましたが、職業訓練というのはこれからも大変大事な手段ではあるが、今申し上げたような形で非常に狭くイメージされてきてしまっている、これを打破してもっと学習社会社会全体として学習するような社会をつくらなければならない、そういうことを大変強く言われているわけでございます。  これだけではございませんで、職業訓練あるいは技能検定だけでなくて、これからは特に有給教育訓練休暇を積極的に活用するとか、各種学校を使うとか、その他もろもろの民間教育機関もございますし、あるいは公共訓練校から企業へ、特に新しい事業をやっておられる企業へ受講生を派遣してそこで一時勉強してもらうとか、従来の職業訓練という概念ではなかなか捕捉できないことまで含めて幅広く能力開発をやりたい。それが今回のもろもろの考え方でございます。  昨年七月、政府中央省庁一斉に機構改編がございました。そのとき私ども職業訓練局から職業能力開発局と名称を変えましたが、今申し上げたようなことを全部勘案して、法律もぜひ変えたい、公共職業訓練あるいは民間教育訓練の仕組みもすべて幅広く転換したいということで名前も機構も法律も打って一丸となったものでございます。ただ、組織の改編につきましては政府全体の都合がありましていささか先行いたしましたが、今申し上げましたように、本来は打って一丸となって行われるものであり、単に法律の名称だけを変えるとか、局の名称を変えれば済むというものではございません。ただ、そう申し上げましても、御指摘ございましたが、公共職業訓練にせよ民間のそれにせよ、まだまだ十分とは言えない状況にございます。御質問におこたえする道はそうしたものをもっともっとしっかりさせることだろうと思います。  具体例で申し上げますと、例えば公共職業訓練につきましてはその活性化を図るために補助金の問題もございます。それから訓練基準あるいは指導員資格の見直し等による活性化、これも法律に手をつけなければなかなかしにくいことでございます。それから民間教育訓練活性化あるいは有効化につきましても推進者を設けてもらう、あるいは法律上は単なる施設と書いてございますが、サービスセンターを設けて積極的に指導、相談に乗りたい、これもやはり法律に手を加えなければできないことでございます。  一つ一つはあるいは小さいかもしれませんが、たくさんの事象を取り上げまして、全体として能力開発段階的体系的に進めていきたい。例えば、新しく考えておりますこの法律では労働者の自主的な努力を助長する、これも大変大事な考えだと思いますが、今まで法律的には欠落していたものでございます。  それから国、都道府県がいろいろ指導する場合には、事業主自主性というものを十分尊重しなければいけない。これも当然言われており、実行されてこなかったわけではございませんが、法律上それを明言し、制度として、仕組みとしてそれを内外に宣明するというのは今回が初めてでございます。そういうことで職業能力開発、すべて一連のものでございまして、一部を直したから平仄合わせにやるというものではございません。そのところは十分御理解を賜りたいところでございます。
  91. 森田景一

    ○森田(景)委員 今の局長答弁のとおり、また例に出しまして恐縮でございますが、森田景一が浜野剛副大臣に変わった、これだけでは何もならない、こういうことです。私は職業訓練能力開発という事業が決していいかげんであってはならないと思いますから、今おっしゃったような趣旨で、せっかくこの法律の名前も変えよう、局の名前も変えよう、局の名前は変えたわけですね、そしてこの新しい時代に対応する労働者の前進を図っていこう、こういう趣旨であるように私も承りました。ぜひその方向で、せっかく題名を変えるならばなお一層御努力をされたい、このように希望したいと思います。  それで次に、労働行政の基本というのは雇用の安定である、このように思うわけでございます。良好な雇用関係というのは一体どういう状況を指すのか、これは浜野副大臣にお答えいただきたい。
  92. 浜野剛

    ○浜野政府委員 お答えいたします。  我が国では、先生御存じのように労働者を採用した後、企業内でお互いに話し合いの問題その他親密な教育訓練を行っております。そしてそれを通じてお互いの能力向上を図ろうじゃないか、しかも長年、定年まで雇用についてはお互い安定した形でやっておる、これが一つのいい条件だと思います。しかも世界じゅうどこでも労働事情は非常に厳しゅうございます。先生御存じのように、ヨーロッパではもう既に失業率一〇%、アメリカでも七ないし八、我が国は三切れる、切れない、とり方はいろいろあると思いますが、一応こうした長年のいい雇用慣行の上で実績を上げておると思います。こういうふうに労使双方のすぐれた適応力と雇用安定ということを今後とも努力していきたい、そのように考えております。  しかし、そうは言うものの、先般来、現状については高齢化社会だ、どうするか、それから技術刷新における産業構造の変化が来ているじゃないか、あるいは女子職業職場への進出、この変化が大変強く見込まれております。ですから、なお今後とも我が国の今後のあり方については、長年の雇用慣行の長所を参考にして生かして変化に対応していきたい、そしてなお雇用対策推進に努めては大事なポイントを固めながら正確な形で努力していきたいと考えております。
  93. 森田景一

    ○森田(景)委員 私がわかり切ったようなことをお尋ねしましたのは、この職業訓練のあり方が日本のいわゆる終身雇用制というものに非常に大きな関係があると私は考えているのです。これは後でまた申し上げたいと思います。そういうことで確認をさせていただいたわけでございます。  それと、今度は雇用の安定というのと、また職業訓練というのが非常に密接不離な関係にあるわけでございます。そういう点で最近における雇用と失業の状況についてお知らせいただきたいと思います。
  94. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 最近の雇用失業情勢について見ますと、景気の拡大の中でおおむね緩やかな改善をしておりますけれども、求人求職の状況について見ますと、求人はかなり大幅な増加を続けておりまして、求職者も一方ではやや減少してきているということで、求人倍率は昨年は〇・六四倍ぐらいを進んでおりましたけれども、ことしの一月に入りまして〇・六九倍ということで上昇しております。  また完全失業者につきましても、昨年も三%近いときもございましたけれども、ことしの一月は二・四%ということで完全失業率も下がってきておりますし、また、雇用者も製造業、サービス業等で伸びてきておるという状況でございます。  また、中長期的には、先ほど政務次官からお話がございましたような構造変化がかなり進んでいくという中で、年齢ですとか、あるいはまた特に企業が求める技能、技術を持つ求職者が少ないというようなことで、技能面のミスマッチ等が今後予想されるところでございまして、そういう技能面のミスマッチがなかなか解消されないとすれば、失業率が下がりにくいというようなことも将来的には予想されるという状況でございまして、そういう意味で、今後の雇用失業情勢から見ますると、そういった構造変化に対応する雇用対策能力開発対策との連携、これが特に重要ではないかというふうに考えております。
  95. 森田景一

    ○森田(景)委員 この失業率といいますか、これもなかなか改善されない、失業者が減らないわけでございますが、この失業者と、それから新学卒者の就職といういろいろな問題がまた今後起こってくるわけでございます。  そういう点で、文部省からおいでいただいていると思いますが、中学校卒業生の高校進学率について御説明いただきたいと思います。
  96. 菊川浩

    ○菊川説明員 お答え申し上げます。  高校進学率は、昭和四十年には七〇・七%でございましたが、その後上がってまいりまして、四十九年には九〇%を超えることになりまして、五十年には九一・九%、五十七年には九四・三%、昨年の五十九年には九四・一%になっている状況でございます。
  97. 森田景一

    ○森田(景)委員 高校進学率が大変上がってきているとはいいながら、なおかつ約六%ぐらいの人が進学してないことになるわけでございます。五十七年の人数を見ますと、約八万八千人の人が高校へ進学してない。それから五十八年では約十一万人ぐらいが進学してないわけです。こういう状況でございますが、その中で、専修学校とかあるいは各種学校、こういうところへ進学している人もかなりいるわけでございますが、この専修学校各種学校の現況について御説明をいただきたいと思います。
  98. 奥田與志清

    ○奥田説明員 お答え申し上げます。  先生今お話しの専修学校につきましては、昭和五十一年に制度発足をいたしまして、社会の多様なニーズにこたえるということで今日まで着実な発展を遂げてまいっておりまして、五十九年の五月現在におきましては、学校数におきまして二千九百三十五校、生徒数約五十四万人ということになっております。  分野別に見ますと、生徒数の多い分野から申しまして、医療、工業、そして文化・教養といったような分野が多うございます。特に近年、コンピューターなどの情報処理関係の生徒数の増加が顕著になってきております。  また、各種学校につきまして、五十九年の五月現在で、学校数で四千四百七十六校、生徒数約五十八万人ということになっておりますが、これも主な分野を申し上げますと、予備校といったようなところが相当数を占めておりまして、あと自動車操縦だとか、あるいは商業実務関係というふうなものが中心でございます。
  99. 森田景一

    ○森田(景)委員 昭和五十八年の数字で見ますと、専修学校に——専修学校には高等課程とそれから専門課程とがあるわけでございますね。それで高等課程というのは中学校卒業者が入る、それから専門課程は高校卒業生が入る、こういうわけですね。それで五十八年の数字を見ますと、中卒者が二万三千四百四十七名この専修学校に入っている、こういう数字が出ているわけでございます。したがいまして、先ほどの高校に進学しなかった十一万一千人のうちの二万三千四百名からの人はこの専修学校に入っている。これは高校へ入ったと同じと見てよろしいと思うのですね。そういう状況でございます。  そのほかに、今度は、これは学校教育法ではない職業訓練校がある。職業訓練校の方の入学者もあるわけでございますが、それは後でまたお尋ねします。  それで問題は、中学を卒業して高校へ入らない——入らないのは、いろいろな条件があると思うのです。勉強が嫌だ、勉強しない、そのために入れなかった、こういう人たちを今まで何かいろいろな言い方といいますかしておりましたけれども、世間的にどういう言い方をされてきたか御存じでしょうか。
  100. 菊川浩

    ○菊川説明員 昭和五十九年度の学校基本調査によりますと、中卒者で高校、専修学校等へ進学していない者の進路状況は、就職者が五万一千三百十六人、無業者が一万五千三十八人、公共職業訓練施設等へ進んだ者が一万三千七百八人おられるという状況でございます。  それで、先生指摘の点は、各種学校とか公共職業訓練機関等へ進んだ者を一般的にどういうふうに呼んできたかという御指摘かと思うわけでございますが、それを今までは、教育訓練機関等へ進んだというふうな扱いでやってきたわけでございます。
  101. 森田景一

    ○森田(景)委員 これは別に通告してありませんでしたから戸惑われるかもしれませんが、要するに、何とかと呼んでいたでしょう、世間的に。わかりませんか。例えば積み木崩しとか、それに類する言葉でいろいろと言われてきた。御存じありませんか、文部省。
  102. 菊川浩

    ○菊川説明員 一般的に先生の御指摘のような「積み木くずし」という本も出たりして、そういう一般的な落ちこぼれといいましょうか、そういう場合にそういうふうに呼んでいる例もあったというふうには承知しております。
  103. 森田景一

    ○森田(景)委員 一般的には今お話しありましたように、落ちこぼれというふうに総括して呼ばれてきたと思うのです。しかし、そういう人たちが、これもまた後でお話しするつもりだったのですけれども各種学校は文部省の管轄ですから、少なくとも職業訓練校、ここでは非常にすばらしい成長を遂げているという姿を私は見てきているわけでございます。そういうわけで、いわゆる落ちこぼれという人たちに対して、文部省はどういう指導をなさってきたのか。もう学校を卒業したから、それでほかの学校へ入ってないから、私の管轄外だ、文部省の管轄外だというふうに対処なさってきたのか、あるいは具体的にはそういう人たちに対してどういうふうな社会生活をするように指導してこられたのか、その辺のところをお伺いしておきたいと思います。
  104. 菊川浩

    ○菊川説明員 先ほども申しましたように、中卒者で高校、専修学校等へ進学しない者につぎまして、就職する者が中卒者の二・七%、それから無業者が〇・八%、公共訓練施設等へ進む者が〇・七%おるわけでございますが、これらの生徒は中卒後直ちに社会生活に入っていくことになるわけでございまして、中学校におきまして望ましい職業観を身につけさせ、さらにその個々の生徒の能力、適性等に応じた進路選択ができるよう十分指導する必要があろうかというふうに思っておるわけでございます。  そのため、文部省としましても進路指導の手引の作成あるいは進路指導担当の教員の現職研修等におきまして、そういった進学しない者に対する進路指導につきまして適切に行うよう配慮しておりますとともに、都道府県教育委員会に対しましても、これらの生徒の進路指導に関する適切な取り組みを行いますように指導をしておるところでございます。今後とも、これらの事項を含みます進路指導の充実を図っていかなければならないと思っておるところでございます。
  105. 森田景一

    ○森田(景)委員 いろいろと文部省としても対応はしていらっしゃると思うのですけれども、これからどういうふうに変化するかわかりませんが、いずれにしても一〇〇%高校進学ということでない限り、中学校を卒業して就職をするなり、あるいは専修学校各種学校あるいは職業訓練校に入る、こういう人たちが出るわけでございますので、その辺の対応はこれからも十分やっていただきたいと思うわけでございます。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕  そこで、この専修学校各種学校職業訓練校との相違点について、これは文部省とそれから労働省、それぞれのお立場から御説明いただきたいと思います。
  106. 奥田與志清

    ○奥田説明員 お答え申し上げます。  専修学校学校教育法に基づくものでございまして、これは先生も御存じかと思いますけれども、従来各種学校であったもののうち一定の規模、水準を有するものを昭和五十一年度に制度化いたしましてできたものでございます。その目的は、「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図る」ということにございます。実態として見ますと、これらの学校のほとんどが学校法人など私人が社会のニーズにこたえまして自発的に設置している状況にございます。  一方、職業訓練施設は、職業訓練法に基づくものでございますし、その目的は、労働者職業に必要な能力開発向上を行うことにより職業の安定と労働者の地位向上を図ることであるというふうに理解をいたしております。実態としても、国や地方公共団体が計画的に設置する公共職業訓練施設整備されていると承知いたしております。  このように、両者はその目的、実態等を異にするものでございまして、両者がその特色をそれぞれ生かしながらその役割を果たし、発展していくことが今後とも期待されるのではないかというふうに考えております。
  107. 宮川知雄

    宮川政府委員 ただいま御答弁ございましたが、専修学校各種学校は、「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図る」ことをストレートに目的とされておりますが、職業訓練校の場合には、職場の実際必要な知識、技能、技術を伝授することによって職業人としての自立あるいはその社会的地位の向上を図ろうというものでございまして、訓練法、それから学校教育法、根拠法がそれぞれ違うように、内容的にも、どちらかといいますと専修学校等は職業教育といいましても一般教養の方から人格の陶冶というような面でアプローチしているのに対して、私ども訓練校の方は実際的な仕事の方からアプローチする。いずれにしましても人間としてのより成長を目指すという意味では同じでございますが、その目的、手段、かなり態様が異なっているのではないかと思っております。  ただし、公共職業訓練校といたしましては、専修学校各種学校の一部優秀なものにつきましては、文部省とも御相談しておりますが、これとの連携を十分とるようにいろいろ工夫しているところでございます。
  108. 森田景一

    ○森田(景)委員 学校教育の方は、今御説明ありましたようにとにかく学校という名前でいろいろと科目を設定してそれを履修すれば卒業だという、簡単に言いますとそういう姿勢が非常に強いと私は思うのです。ところが、職業訓練校は先ほど申し上げましたようにいわゆる落ちこぼれと言われる人たちがかなり大勢入ってくるのですね。人数の制限もあるのですけれども、大勢入ってきます。その人たちがとにかく今宮川局長から御説明ありましたように社会に出て実際に仕事のできる技術を身につけなければならない。そのために担当の先生は大変な苦労をしておるわけです。  訓練校に入ってすぐそういう実技に入れない。二月も三月も人間的な接触を深めて、それで先生と生徒といいますか、それの人間関係信頼関係ができ上がってやっと実技に入っていく、こういう状況で、私は非常に職業訓練校で指導に当たっていらっしゃる先生方——これは先生とお呼びするのがいいのか悪いのか、後でまたお尋ねしますけれども、公式的には職業訓練指導員ということになっているんだと思うのです。だから、この指導員の先生方の方が学校教育法で定められている学校より人間教育のためにはよほど真剣に対応しているんじゃないか、こう思っているわけです。  きょうは別に文部省の悪口を言うつもりでおいでいただいたんじゃないんですけれども、いずれにしても若い人を立派に育ててもらわなければならないのですから、労働省を褒めるわけでもありませんけれども、現場の先生は非常に苦労していらっしゃる。私は非常に感動しまして、そういう点で文部省も一遍、教育の専門は文部省だなんて思わないで、職業訓練校あたりの教育の仕方というのを見学なさるか研修なさるかした方がいいんじゃないかと率直に思ったわけです。人間形成ということで職業訓練指導員の先生方は非常に苦労しております。そういう点について宮川局長いかが感じておられますか。
  109. 宮川知雄

    宮川政府委員 学卒者、中卒、場合によっては高卒でございますが、これを訓練校に引き受けまして、これを養成訓練と言っております。特に専修課程は中卒者が大部分でございまして、それから養成訓練の普通課程は中卒、高卒大体半々ずつでございます。  落ちこぼれという言葉が適当かどうかわかりませんが、国民のニーズが大変多様化する、あるいは国民生活が豊かになる中でいろいろな生きざまというものが出てきたわけでございますが、その中で九四・一%という高校進学率、これはもう一〇〇%と同じような意味だろうと思いますが、一部にせよ職業に積極的に取り組みたい、そういう子供たちといいましょうか、若い人がいる以上は、これを何としても育てなければならないわけでございます。ただ、社会全体が自由といいましょうか、よく言えば自由でございますが、ちょっと悪く言えば気ままな雰囲気がございますので、訓練校に入りますと、そのかなり厳しい訓練、朝から晩までというようなことに、長い時間でございますのでそれになかなか耐えられない。  したがって、今先生指摘のように、言わば教育訓練の前に生活指導といいましょうか、指導員の先生と生徒との間のコミュニケーションをまず確立しなければ仕事に入れない、こういうことがある。一面、教育訓練でございますから、そういうことがあって当然よろしいわけですが、実際以上にそれに時間をかけていることも事実でございます。そうした中で苦労をしながらやっているわけでございますが、今申し上げましたように、教育訓練というものは本来人間的なつながりをつけることから始まるだろうと思いますので、私どもとしてはそれはむしろ当然のこと、ただ、もう少し効率よくできないかなと思っておりますが、と受けとめております。  ただ、ある程度の途中退校者と申しましょうか、そうした人たちがあることは、本人にとっても時間のロスでございますし、国家、公共の立場から見ましても大変なロスでございます。ただ、大体半分程度は進学、またさらに進学したいということでございますが、あるいは就職ということでございまして、退学者の半分について問題がある。どうしても厳しくてついていけない、どうも違う仕事を選んだようだというようなことでございますが、この辺につきましては、今申し上げましたように、いろんな意味での大変なロスでありますので、少しでもこれを減らすように、訓練校としても、また指導員の先生方のありようとしても、私どもとしても十分考えていかなければならないことと思っております。
  110. 森田景一

    ○森田(景)委員 学校教育法に言う学校の問題につきましては、いろいろと荒廃ということが問題になりまして、今臨教審でどういう方向にするかということを検討中でございますから、ここで私あえて云々申しませんけれども、そういういわゆる中学卒業者、産だ十五歳か六歳でしょうか、そういう人たちが片一方では荒廃しながら、片一方では立派に更生していく、更生という言葉は適当じゃないかもしれません、立派に成長していく、やはりこういうところからも教育というものをもっとしっかり考えなければいけないなということを私も痛切に感じているわけでございますので、今後とも文部省も格段の御努力をお願いしたいと思います。ありがとうございました。  それで、実は私、千葉県の出身でございますので、先般船橋高等職業訓練校というところを実際に見てまいりました。先ほどお話し申し上げましたように、担当の先生方は非常に御苦労されながら、立派な訓練生を社会に送り出していらっしゃる姿には非常に感動しました。もっともっとこの職業訓練校という、こういう施設といいますか、があるんだということを社会にPRしなければいけないんじゃないかなということを痛切に感じてきたわけでございます。  ただ、入学者に対しまして、やはり卒業生といいますか、訓練校では修了者と言っているようでございますが、卒業生がかなり減ってしまう、こういうことには非常に心が痛む思いでございました。これは、全体のことは私はお聞きしておりませんので、国全体のことはつかんでおりませんけれども、千葉県の状況でいいますと、例えば専修、普通一類訓練課程では、昭和五十七年には五百九人の入校で修了が三百六十五人である。五十八年には入校が五百八十六人に対して修了が四百二十九人である。普通二類訓練課程におきましては、五十七年の入校が三百六十一に対して修了が三百十四、五十八年の入校が三百七十一に対して修了が三百二十四、こういう状況でございまして、そういう中学を卒業したりあるいは高校を卒業してせっかく訓練校に入りながら、いろんな事情で修了できない、これは大変に心が痛む思いでございます。こういう点にもこれから十分な対応をしていただかなければならないと思います。これらの点について労働省としてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、御説明いただきたいと思います。
  111. 浜野剛

    ○浜野政府委員 お答えします。  ただいま森田先生のお話、御意見を聞いて、全く職業訓練校の存在の重要性を痛感しております。また社会的な意義については、国においても都道府県においても、職業能力開発協会等を通じてこの重要性、その大事な点についてもなおなお積極的にPRしていきたいと考えております。  また御指摘のように、二割から三割ドロップしていく、こういうことについては、いろいろ若い、子供たちといいますか、いろんな原因があると思いますが、何としても、先生指摘のような、途中で退校するというようなことは、理由は何であれ、本人にとっても大きな損失でございます。また、これからの経済社会のあり方にとっても大きな損失でございますので、御意見を尊重し、中身をよく検討して、そういうことのないように頑張ってまいります。
  112. 森田景一

    ○森田(景)委員 今までのPRの仕方はどんなふうにしていらっしゃるのかと思うのですが、私も非常にうかつといえばうかつでございまして、余り職業訓練校のPRしているのを見かけることはありません。少なくともこれは全国の中学校に対して、こういう立派な訓練校がありますよということをやはりPRする必要があると思いますし、企業に対しても、こういう立派な訓練をやっているところがありますから、採用のときにはぜひという、そんな形、既にやっていらっしゃるのかもしれませんけれども、一般の市民としては訓練校という認識が浅いんじゃないかと思うのです。  特に父兄なんかに対してもこういうPRをしておけば、うちの子供はどうも学校の勉強が嫌いで、高校も合格できそうもないけれども、それじゃ、職業訓練校へぜひ入れさせてもらって、あそこで立派な人格を形成させてもらおうかという、そういういろいろと明るい方向というのが父兄にも出てくると思うのですね。そういう点で、今までどんなふうにPRなさっているのか、これからまた新しい方向もお考えなさるのか、その辺のところを御説明いただきたい。
  113. 宮川知雄

    宮川政府委員 大変耳の痛いお話を伺わせていただいたところでございます。どうも役人というのは、お金はかけているのでございますが、PRが下手といいましょうか、そういう面は否めません。むしろただでやるPRの方がPR効果があるような感じがいたします。  まあ、冗談ではございませんが、いろいろパンフレット等を作成いたしまして、特に中学校でございますが、進路指導の先生方に差し上げる、あるいは各種教育委員会等の出しますパンフレット等にも訓練校の解説を載せてもらうということもやっておりますし、またこの制度行政全体としては職業訓練大会あるいは技能グランプリといいまして、一級技能士の競技大会、あるいはことしの秋には日本で国際技能オリンピックが開催されますが、そういうものもすべて技能の尊重といいましょうか、およそ職業訓練職業能力開発の宣伝ということでやっているところでございますが、今申し上げましたように、いろいろな機会、特に五十三年法では職業能力開発協会というものが民間団体を主体につくられまして、特にこれが宣伝を行うということで企業等にパンフレットを配っているわけでございますが、まだまだおっしゃるように、確かに至らない面がございます。  特に中卒者、落ちこぼれと言われかねない人たちを集めて指導員の先生が大変苦労している、しかもそれなりに成果を上げているというところはもっと見てもらわなければいけないと思いますが、そういうところまで含めまして、この新法は、およそ能力開発というものを官民挙げてもっとオープンに展開するように、地主の実情に応じて自由濶達にやれるように、そういうことで考えているわけでございまして、新しい法律ができましたならば、その中で従来の下手くそなPRに十分反省を加えまして、もっと思い切って実情を訴え、生徒さんにも集まっていただくように努力したいと思います。
  114. 森田景一

    ○森田(景)委員 ぜひひとつ一生懸命やっていただきたいと思うのです。余り一生懸命PRすると、受け入れが今度は大変だからやらない、そういうお考えもあるのかもしれませんけれども、やはり社会認識を高めるということが非常に大事だと思うのです。  私、考えたのは、まず中学校の校長先生方に、県なり市の教育委員会を通して一遍見学してもらったらいいんじゃないかと思うのです。それから企業なんかについてもそういう募集の担当の係がいらっしゃると思いますから、そういう方も案内して、一遍実際に見てもらう、そういうのを繰り返していきますと、認識は大きく変わると思うのですね。  それからPTAなんかにもお願いをして、代表の方々にも見ていただいて、PTAの人たちが、これは本当にすばらしいな、こういうのはやはり皆さんにも知らせておいた方がいい、特にPTAの会長さんなんかになる方は子供さんが比較的成績のいい方の親御さんがなる可能性が強いものですから、見ても余り感心しないかどうか、それはわかりませんけれども、問題を持っていらっしゃるお子さんの親、ぜひこういう方に見てもらったらいいと思うのです。本当に日本にはいい言葉がありまして、百聞は一見にしかずという言葉があります。ぜひそういう方向を考えていかれたらどうかな、これは私の提案でございますので、採用なさるかどうかはまたこれからずっと見せていただきたいと思っております。  職業訓練法に基づく職業訓練には準則訓練と指導員訓練があります。準則訓練のうち養成訓練としての課程は普通訓練課程、専門訓練課程、専修訓練課程があるということになっておりますが、ただ、この専修訓練課程は五十三年に廃止の方向が打ち出されたというように聞いているわけでございますが、まだかなり有効に機能しているようでございます。それぞれの現況と法改正案での対応について御説明をお願いしたいと思います。
  115. 宮川知雄

    宮川政府委員 ただいま御指摘ございましたように、養成訓練には専修訓練課程といいまして、中卒一年、高卒ならば六カ月というコースがございます。それから普通訓練課程、これは中卒二年、高卒一年でございます。それから専門訓練課程、これは高卒二年で五十三年以降、正確に言いますと四十九年から始まっておりますが、現在では職業訓練短期学校という方向へ転換を図りつつあるものでございます。  それで、内容的には専修訓練課程で大体七千人、普通訓練課程で三万弱、専門訓練課程で二千ちょっとというところが現行でございますが、特に今お話しございました専修訓練課程につきましては、どうも時間が短過ぎるとか、あるいは高度技能社会においてはどうしても必要な教育訓練をやりかねるというようないろんな事情がございまして、専修訓練課程を縮小しようという方向が五十三年に打ち出されたわけでございます。しかし、今大体七千前後あると申し上げましたように、それなりに社会的な意義を持って現在教育訓練が行われておりますので、新しい法律の中におきましても、直ちにこれを消滅させるのではなくて、十分都道府県とも相談しながらその実態を見きわめていきたい、かように考えます。  それで、養成訓練には、ものによりましてはごく短期間の訓練ニーズに対応するための訓練課程、こうしたものも、養成訓練というのは学卒者でございますから余り短期間は原則として考えられないわけでございますが、そうしたニーズがあるならば、都道府県段階で十分考えていくようにしたいと思っております。  それから、普通訓練課程と専門訓練課程につきましては、訓練科ごとの教科等に関し、従来と同様の基準に従った訓練、まあ通常の訓練でございます、これをやるのは当然といたしまして、省令等で考えたいと思いますが、訓練期間、訓練時間等に関する基準の範囲内で実施者が自由に教科等を定めて訓練を行うような訓練、こうしたものも考え、訓練基準の弾力化を図ってまいりたいと思います。  専修訓練課程には、今御説明申し上げましたように比較的短い期間の訓練のニーズというものがまた出てきております。現実にそこに子供たちがたくさんいるということになりますと、方針として廃止したから云々だけでは済まない実態があります。そうした意味で、都道府県ともよく相談し、実情を見ながら今後その取り扱いをもう一度よく考えていきたい、かように考えております。
  116. 森田景一

    ○森田(景)委員 そういうことで、先ほど説明もありましたけれども、国の行う総合高等職業訓練校といいますか、これは短期大学校あるいは技能センターと呼称を変えてしまう計画のようでございますが、その体系はどういうふうになるのか、またどういう意義があるのか、御説明いただきたいと思うのです。  例えば五十九年度の資料によりますと、国の施設、いわゆる雇用促進事業団立の総合高等職業訓練校は五十四校あるというふうに承っておりますけれども、これをどういうふうに職業訓練短期学校に転換するのか、技能開発センターへ転換するのか。昭和六十年度の計画では職業訓練短期学校への転換は四校やるというふうに聞いておるわけでございますし、そんなことで、この五十四校がいつごろまでに短期大学校になりあるいは技能センターになるのか、御説明をいただきたいと思います。
  117. 宮川知雄

    宮川政府委員 五十三年改正法、つまり現行法でございますが、特に中卒就職希望者が激減したというようなこともございまして国と都道府県との役割分担というのが打ち出されました。養成訓練の中の専修訓練課程は暫定的なもの、もう一度いろいろ考えたいと申し上げましたが、暫定的なものということで別に除きますと、養成訓練の中の普通訓練課程につきましては都道府県、それから専門訓練課程、つまり短期大学校でございますが、これにつきましては雇用促進事業団、つまり国、それから技能開発センターにつきましては向上訓練能力開発訓練、話が前後いたしましたが、都道府県立の職業訓練校につきましては養成訓練の中の普通訓練課程とともに向上訓練能力開発訓練をする、そういう形で割り振りが行われ、国の行っております総合高等職業訓練校は、今御指摘ございましたように技能開発センター職業訓練短期学校に振り分けるということで現在まで作業が行われてきたわけでございます。  それで、短期大学校につきましては現在十一校開校しておりますが、大体十五校ないし二十校程度職業訓練短期学校は考えたい。したがいまして、現在五十幾つあります総合高等職業訓練校は逐次切りかえまして大部分は技能開発センターということで発足させていきたい、かように考えております。
  118. 森田景一

    ○森田(景)委員 大変申しわけないのですけれども、そうしますと、千葉県には、今、総合高等職業訓練校がセンターも含めてだしか三校か四校あったと思うのです。千葉県には短期大学校をつくる計画がありますか。
  119. 宮川知雄

    宮川政府委員 千葉県には現在三カ所に総合高等職業訓練校がございますが、千葉、成田等につきまして合わせて短期大学校、そういう希望が強く千葉県から出ておりますので、現在それを検討している段階でございます。
  120. 森田景一

    ○森田(景)委員 六十年度は今の四校ということでこれは対象になっておりませんが、六十一年あたりにはそういう計画になりますか。
  121. 石川俊信

    ○石川説明員 ただいま局長が御答弁申し上げましたように、千葉県からは、現在あります千葉の総合高等訓練校と成田の訓練校合わせて短大にしてほしい、こういう要望が出ておるわけでございまして、現在十五校の短大への転換を図っておるわけでございますが、今そのほかとして何枚か俎上にのせて検討しておるところでございます。
  122. 森田景一

    ○森田(景)委員 これは俎上にのせるなんというのじゃなくてぜひやってもらいたいですね、これは予定外でございますが。  先ほど局長のお話にありましたが、中卒者の希望者が激減したといいますけれども最近は上昇しているんじゃないですか。私この間千葉県だけ調べてまいりましたら、千葉県では大体定員の倍ぐらいの申し込みがありまして、入校率は九十何%だったと思いますけれども、激減ということは最近はまた回復しているんじゃないかと思います。その辺どうでしょうか。
  123. 宮川知雄

    宮川政府委員 御指摘の点でございますが、高校進学者が五十八年、五十九年と大体百七十万人程度でございまして、先ほど文部省からも御答弁ありましたが、専修学校各種学校等が大体三万人、それから公共訓練施設の入学者が大体一万四千人から一万五千人程度でございまして、大体一万五千人程度の公共職業訓練施設入校者というのはこの数年余り変化がございません。高校への進学率が九四・三%までいき、昨年は九四・一%であるというお話もございましたが、かなり高い高校進学率はそのまま維持されているようでございます。  千葉県等につきましては、特定の地域につきましてはそれぞれ多少上がり下がりがあるということはございます。
  124. 森田景一

    ○森田(景)委員 先ほどもお話し申し上げましたけれども職業訓練校の使命というのは非常に大きいというふうに私も理解しております。そういう点で、高校進学しない中学卒業者を大事にしなければいけないと思うのですね。そういう点で、激減したというさっきの御説明のせいかもしれませんけれども、五十八年度では中卒者向けの訓練課程から高卒者向けの訓練に切りかわった課程もかなりあるようでございます。これはどういうお考えなんですか。  補足してもう少しお話ししますと、例えば専修課程、普通一類、これが中卒者を対象にしていますね。そうしますと、余り長い話をしてもしようがないですが、五十七年度は専修の科目が二百四十一、普通一類が五十二なんです。五十八年には専修が二百一、普通一類が六十七、五十九年が専修が百六十一科目、普通一類が八十科目というふうにだんだん減らされてきているのですね。この辺のところは一体どういうふうに御説明なさるのですか。
  125. 宮川知雄

    宮川政府委員 いわゆる専修訓練課程は中卒が圧倒的大部分でございます。ごく一部高卒もございますが、中卒一年、高卒六カ月ということでございますが、大部分は中卒者。それから普通訓練課程とおっしゃいました、それがいわゆる養成訓練の普通訓練課程でございますが、これは中卒者と高卒者が大体半々ぐらいずつの感じでございます。中卒で二年、高卒で一年という訓練でございますが、専修訓練課程は五十三年にこれを漸次廃止する方向へ持っていこう、こういうことに相なりましたのは、実際に中卒で就職する人たちが大幅に減ったという社会的なバックがございまして、その中でしかも需要といたしましてはやはりある程度高度の教育をする必要があるということで中卒二年、高卒一年のいわゆる普通訓練課程の方にだんだんシフトしてきた、そういう数字が今先生指摘数字の中に出ているわけでございます。  ただ、専修訓練課程は再々暫定的なものであると申し上げておりますが、実際にある分野ではかなり根強い需要といいましょうか、生きざまがございますので、そうしたものを無理に廃止するということは必ずしも私ども考えておりません。都道府県の実情に応じて今後専修訓練課程をどういうふうに持っていくか、もう一度よく考えてみたい、かように考えておるということを繰り返し申し上げておるところでございます。
  126. 森田景一

    ○森田(景)委員 説明がありましたように、普通訓練課程は主として中学校または高等学校を新規に卒業した者及びこれらの者と同等以上の学力を有すると認められる者を対象としているわけですね。そして多能工の素地を付与することが目的だ、こうなっておるわけでございます。普通訓練課程の訓練科というのが百七十八科目あるわけでございますけれども技能労働者需給状況調査というのが労働省で行われておりますが、これとの関連、いわゆる需給ミスマッチというのがありますけれども、そういう問題の関連について御説明いただきたいと思います。
  127. 菅間忠男

    ○菅間説明員 お答えいたします。  現在、先生指摘のとおり普通訓練課程の訓練科は百七十八科目あるわけでございますが、毎年行っております技能労働者需給調査では六十職種前後について調査してございます。五十九年度におきましては六十一職種について調査いたしました。その結果技能労働者の不足数が全国的に五十八万人程度あるというような状況でございまして、それらを踏まえながら訓練科目等の設定に当たっているわけでございます。
  128. 森田景一

    ○森田(景)委員 特に先端技術関係というのが先ほどからずっと問題になっているわけでございますけれども、この辺の科目が非常に少ないと思うんですね。マイクロコンピューター制御システム科というのがことし昭和六十年二月加えられたようでございますけれども、科目として入ったけれども全国の職業訓練校に全部こういう科目ができたというわけじゃないんだろうと思うのです。そういう点で先端技術に対応する科目の設置ということについては今の需給調査との関連でどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  129. 石岡愼太郎

    ○石岡説明員 お答えいたします。  職業訓練時代の動きも見詰めましてそれに即応したもので行われなければならないと考えております。そういう意味で先端技術関係訓練科目の導入にいそしんでおるところでございます。  具体的には、先ほども指摘がございましたように、六十年度からはマイクロコンピューター制御システム科などの訓練科を設定いたしまして、一応都道府県で開始していただく予定にいたしております。その他法改正によりまして訓練基準の弾力化なども図りまして、先端技術関係訓練都道府県ないしは事業主の創意工夫によりまして行われるようにもいたしたいと考えております。また公共職業訓練施設におきましても先端技術関係の機械設備を従来からもリース制度等によりまして導入いたしておりますが、これにつきましては今後とも力を注いでまいりたいと考えているような次第でございます。  その他職業訓練におきましてこういう先端技術関係訓練を行う場合には、以上申しましたほかに何といいましても適切な指導員を得るということが非常に大事でございます。昭和六十年度におきましては職業訓練学校に情報工学科というものを新設いたしまして情報関係職業訓練指導員の養成も行う予定にいたしております。
  130. 森田景一

    ○森田(景)委員 確かに科目だけつくっても、先生がいなければこれは役目が果たせませんので、おっしゃるとおりだと思います。  職業訓練指導員の養成についてでございますけれども、すぐれた技能労働者の育成というのは、高度の指導力を持った練達した指導員の指導、それから設備、それから教材、これの良否にかかっていると私は思っているわけでございます。それで、今お話に出ました職業訓練学校でございますけれども、これは指導員養成機関として非常に重要な使命を持っているわけでございますが、職業訓練学校の現況について御説明をお願いしたいと思います。
  131. 宮川知雄

    宮川政府委員 指導員の養成機関として職業訓練学校があるわけでございますが、高度の専門知識と技能を有する指導員を養成するということで、現在、機械系、金属系、電気系、建築系、化学系、福祉系、計六系でございますが、大系十科設置されております。学生定員は各学年二百四十名でございますので、四学年で九百六十名ということに相なっております。
  132. 森田景一

    ○森田(景)委員 大系十科目ということでございまして、最近福祉工学科を設置されたということでございます。福祉工学科は、身体障害者職業訓練指導員の養成ということで、これから重要な役割を担うのではないかと大きな期待がされているわけでございます。ただし、先ほどもお話しありましたけれども、先端技術に対応する指導員養成という、こういう面で職業訓練学校の今の科目では十分ではないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。あるいは、科目はそれとしても、定員の拡大がなければならないんじゃないか、どちらかやらなければいけないと思うんです。この点についてはどうでしょう。
  133. 宮川知雄

    宮川政府委員 大系十科と申し上げましたが、例えば機械科でもNC工作機械、MC工作機械というようなものもどんどん入っておりますし、溶接科もロボットで溶接するような工夫、ロボット、つまりコンピューターが組み込まれております。それから、電子科は当然でございますし、塗装科もロボットによる塗装も行われております。それから、先生が今言及されました福祉工学科、これはもうマイクロエレクトロニクスが中心でございまして、これと機械、医学、心理学、そういうものを結びつけながら、身体障害者の職業訓練を効率的に行うための指導員を養成しようということで、まさにMEの権化のようなものでございますが、ただ御指摘のように、全体としてコンピューター、特にME、コンピューター中心として使うものとしては、情報処理というような問題があるわけでございますが、それがございませんでしたので、今年度、六十年度予算で政府原案として一応認められております情報工学科の設定、これが順調にまいりますと、六十一年、来年の四月には新入生を迎える、そうなりますと、ほぼ体制が整ってくるのではないかと思っております。
  134. 森田景一

    ○森田(景)委員 この職業訓練学校の教科は非常に過密であるというように私は思っておりますけれども、一般大学との比較で、労働省としてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  135. 宮川知雄

    宮川政府委員 一般大学との比較でどうかというお話でございますが、私どもが調べたところによりますと、一般大学の修得すべき単位数は、四年間で百二十八単位でありますのに対しまして、訓大の修得すべき単位数は百五十六単位で、約二割方多くなっております。同じ期間での二割でございますから、大変なものがあろうと思いますが、職業訓練学校は指導員の養成を行う最高機関でございます。一般大学と同程度の専門的知識、技術を付与するほか、実技指導も十分できるようにということで、指導員として必要な技能も付与しております。そのため、単位数が多くなっているという点はございますが、実際には、学生はよくこれにこたえまして、みんな立派な指導員になってくれているところでございます。
  136. 森田景一

    ○森田(景)委員 職業訓練指導員の養成という立場からいきますと、さっきの学校教育法との絡みがありまして、いろいろな制約があると思うんですね。しかし、今までずっと問題にされております日進月歩の技術革新時代ということから考えますと、やはり職業訓練校というのは、そこで学んだことがすぐ社会で役立つ訓練をするわけでございますから、やはりかなり進んだ技術を指導員が身につけていかなければいけないと思うのです。そういう点で制約はいろいろあろうかもしれませんけれども、せめて修業年限二年ぐらいの研究科、研究科と言ったら適当かどうかわかりませんが、普通の大学で言えば大学院の修士課程ぐらいですかね、例えばこういう研究科というようなものを設けて、この技術革新時代に対応できるように先生方の技術を高める、そういうことも必要じゃないかな、こう思いますけれども、その点についてはいかがでございましょう。
  137. 宮川知雄

    宮川政府委員 職場に入ってすぐ役立つものを身につけさせる必要がある、そのためには指導員がしっかりしなければいけない、もうお説のとおりでございまして、そのためには都道府県の指導員の研修のための予算も今年度組んでおりますし、それからこの訓練学校におきましては長期、短期の指導員の研修ということも行われているわけでございます。  それで科目といたしましても福祉工学科を設け、またこの後は情報工学科も設けるというように、大変苦労しながらより新しい時代に対応できるような工夫をしておるわけでございまして、その中で例えば研究科というような問題ももちろん当然出てくるわけでございますが、当面は私どもといたしましては福祉工学科あるいは情報工学科を十分内容のあるものにし、四年終わったところで社会に早く優秀な指導員として送り出したい、それで今の段階では正直手いっぱいでございまして、研究科等を設ける必要性は感じながらも、これは今後研究課題として検討してまいりたい、かように考えます。
  138. 森田景一

    ○森田(景)委員 山口労働大臣大臣は非常に積極的な大臣でございますから、局長はやはり大臣を差しおいてやるというように答弁できないと思うのです。ぜひ山口労働大臣のときに訓練学校に研究科を設置したぐらいの業績を残してよろしいんじゃないかと思うのですが、いかがですか、これは。
  139. 山口敏夫

    山口国務大臣 今の森田先生の御提案と局長答弁を聞いておりまして、もう少し前向きに取り組む必要があるんじゃないかということをちょっと助言をしておったわけでございますが、局長答弁答弁といたしまして、教育臨調やなんかの論議を聞いておりましても、いわゆる大学院構想というのは、まあ人生八十年時代といいますか、トータルの面からも、それから今先生指摘のように技術革新をより多くマスターする、修練するという意味からも、私は大変傾聴に値する、あるいは検討に値する御提案だというふうに受けとめて聞いておったわけでございます。  審議の最中でございますので、また予算等の関連もございますが、最大限こうした構想が同時に配備できるようにひとつ前向きに検討させていただきたいということをお答え申し上げたいと思います。
  140. 森田景一

    ○森田(景)委員 大臣は就任なさってすぐ国会が開会されましたのでいろいろお忙しかったと思うのですけれども、この職業訓練校、大学校も含めて現地をごらんになったことがありますか。
  141. 山口敏夫

    山口国務大臣 訓練校は、私、就任前に国会議員として視察をしたりした経験はございますが、この間も全国の訓練校のいろいろ作品展示ですね、あるいは訓練の実習等の展示会におきまして、秩父宮妃殿下を御案内したりしながら御説明申し上げた、こういう経過がございます。  いずれにいたしましても、こうした問題が、私、たまたま石田労働大臣のころの秘書官を務めておった経験もございまして、多年の因縁もございますので、今森田先生の御指摘いただいたような問題もぜひひとつ検討して実現への可能性を模索したい、かように考えております。
  142. 森田景一

    ○森田(景)委員 まだ、今のお話ですと、訓練学校はごらんになっていらっしゃらないように感じますが、ぜひ一度ごらんになった方がよろしいのじゃないかと思うのです。(「国会で余り縛らぬで、暇を与えてやれ」と呼ぶ者あり)ぜひごらんになっていただきまして、先ほどは専ら中卒者のいわゆる落ちこぼれと言われるような人たちを指導員の先生方が一体となってどれほど立派な教育をしているかという例を、大臣がいらっしゃる前に申し上げたのですけれども職業訓練学校でも同じようにやっておるわけでございますし、しかもこちらの校長先生は、東京工業大学の工学部長さんですか、やっていらっしゃったという方でございまして、浅枝先生という方が校長先生をやっていらっしゃるわけです。非常に御熱心でございまして、大臣がぜひそういう皆さんの御苦労を見ていただく、知っていただくだけでも大きな張り合いが出てくると思いますし、そしてごらんになれば、これはやはり研究科は必要だという実感が必ずできると思うのですね。知らないで論議するというのは非常に困るわけでございまして、ぜひごらんになっていただきたいと思います。  いろいろとやじも飛んでおりますけれども、これはやはりこれからの未来を担う若い人たちをどれほど立派にするかという問題ですから、そういう立場では、これはもう真剣に取り組んでいただきたいと要望しておきたいと思います。  それから、職業訓練学校の卒業生の就職状況なんです。実は大学の卒業生の方々、今までずっと統計していきますと、公共の職業訓練校に指導員として約五〇%の方が就職していらっしゃる。しかし、四〇%以上の方が民間企業に入っているんですね。これは非常に残念だ。一生懸命勉強していらっしゃる、また一生懸命教えていらっしゃる学校のああいう状況を拝見しますと、これは民間にみんな行ってしまうのは惜しいな、こういうふうに実は思うわけです。そのほかに官公庁四・五%あるいは自営に二・三%、大学院に二%、このくらいの状況になっているわけでございますが、四〇%以上が民間企業に行ってしまうというのは非常に残念だという気がするのですけれども、これは一面から考えますと、それだけ指導員を養成しても全国的な公共職業訓練校先生としての受け入れができかねるという状況もあるんじゃないかとその辺のところを心配しているわけでございます。いかがでしょう。
  143. 宮川知雄

    宮川政府委員 訓大の卒業生の四割近くが民間へ就職して残念であるというお話でございます。私どもといたしましても、公共職業訓練施設にどしどし受け入れたいところでございますが、先生今ちょっとお触れになりましたように、定員の削減その他結構厳しゅうございますので、そうした面のブレーキがないわけではございませんが、それよりも何よりも、お褒めいただいて大変恐縮でございましたが、訓大は大変優秀な——激しいといいましょうか、強い訓練をしておりますので、民間で非常に高く買われるという傾向がございます。  したがいまして、民間に行きましてもそこでの教育訓練に従事する人がやはり圧倒的でございますし、また一般の研究部門に入りましても、教育訓練技法というものを積極的に身につけておりますので、いろいろな機会に広い意味での能力開発に役立っている。一面、公共職業訓練施設に五割強しか入らないのは残念でございますが、一面、民間に行って職業能力開発行政の幅を広げている、そういう理解もできるわけでございまして、そういう理解をしながら今後少しでも公共職業訓練施設に誘引するように努めてまいりたいと考えております。
  144. 森田景一

    ○森田(景)委員 先ほどお話し申し上げましたように、一般大学の大学院にも進学しているわけでございますけれども、こういう人が今度は逆に職業訓練学校に戻ってきて、職業訓練学校先生として就職なさるという可能性、これはあるのかないのか。見込みで結構でございます、その可能性についてお答えいただきたいと思います。
  145. 宮川知雄

    宮川政府委員 訓大の卒業生のうち一般大学の大学院へ進学した人は四十三名でございます。今までずっと通して四十三名でございますが、そのうち卒業した者が三十四名、それから、そのうち訓大の教員ということで戻った人が、少のうございますが七名ございます。大学院へ行ってより高度の知識を身につけた人が七名も戻ったという見方もございますし、それから、大学院を出た人で一般の公共職業訓練施設に就職した人もございます。むだにはなっていないように私どもは感じております。
  146. 森田景一

    ○森田(景)委員 私は、職業訓練指導員の先生方の身分ということについて問題があるのじゃないだろうかというふうに考えているわけです。実は最初申し上げましたように、この先生方は労働省としては指導員というふうに全部呼んでいるわけでございますね。一般の高校あるいは中学等では、みんな先生、教諭ですか、というふうに、先生と呼んでいるわけでございます。やはり指導員という名称、その方が、さっき申し上げましたように生徒と一体になって勉強する立場からいえば、先生と言うよりは、教諭と言うよりは指導員の方がいいのだ、こういう考え方もあろうかと思うのですけれども、この辺に問題が若干あるのじゃないだろうか。  それから職業訓練学校では、これは先生は教授とかあるいは助教授というふうに呼ぶのですか。その辺のところをちょっとお願いしたいと思います。
  147. 宮川知雄

    宮川政府委員 訓大では、先生は助教授、教授制をとっております。指導員とは言っておりません。  それから一般の訓練校も、法律上の身分は指導員あるいは指導員免許を有する者という形になっておりますが、これは先生再々御指摘のとおり、まさに人生の師ということで生徒からは先生、当然また指導員の方も先生というつもりで仕事はしております。
  148. 森田景一

    ○森田(景)委員 もう少しお話ししたいのですが、だんだん時間が少なくなっているようでございますので、大学校の設備についてお聞きしておきたいと思うのです。  局長、いろいろと先ほどから先端技術に対応する機械がちゃんとあって、そういう学習もしている、こういうお話でございますけれども、実際は、私も機械の名称、全部わかりませんけれども、例えば専門家は旋盤なら旋盤あるいはフライス盤ならフライス盤、そういうものは機械を見ただけで、これは何年のものだというのはわかるのだそうです。大体職業訓練学校で持っているフライス盤なんというのは、全部二十年ぐらい前の機械じゃありませんか。だから、私さっき申し上げましたように、即戦力としての技術を身につけるわけですから、機械というのは一般の企業で使っている機械、いわゆる企業で使っているというのは最先端の機械ですから、そういうものをたくさん置いてそれで勉強するというのが一番いいのだと思うのですよ。  やはり聞きますと、局長なんかが一緒に行くともうみんな遠慮しちゃって本当のことを言わないんです。古い機械というのはちゃんと機械の歴史を勉強するには非常にいいんだなんて言っているんです。こんなばかな話はないんですよね。これは苦し紛れです。だれだってやっぱり一番新しい機械、それを使って覚えれば、会社へ入ってすぐ使える機械で学習した方が一番いいに決まっているのですよ。まあ予算の関係もあると思うのです。あの機械は非常に高いですからね。特にコンピューターなんかが組み込んである機械というのは大変な金額ですから、それを全部入れるというのは無理かもしれませんけれども、少なくともそういうのをだんだんふやしていって、ふやしているうちにまた今度それが古くなったら新しいものができるわけですから、新しいものがどうせできるのなら古いままでいようなんて、それじゃ技術革新にならないわけです。  だから、それには相当な金額が要ると思います。これは大学校だけじゃないんです。いわゆる職業訓練校は大学校よりもっと機械はひどいんです。やはり予算の厳しい中ですけれども、こういう機械設備を常に更新して、指導員を養成するところには三台とか四台とかある程度は用意しておくということも大事じゃないかと思うのですよ。それが一台だけあって、それはまるっきり大事な宝物で、そこの機械だけは部屋を別にして囲ってやるなんて、これじゃ本当の技術の研修といいますか訓練にならないと私は思うのですよ。  そういうことで、学校教育法と違った訓練教育をやっているところなんですから、それだけに、最初に申し上げましたように、優秀な指導員、優秀な機械、そして優秀な教材——教材のことについでもお尋ねしようと思ったんですけれども、これは時間がありませんから機会がありましたらまた質問させていただきますけれども、やはりこの三つがそろわなければいかぬ。それに、あとは先ほどから局長が言っております入ってくる生徒の問題だと思うのですが、生徒というのはこちらの対応いかんでは本当に優秀になっていくんですね。そういうことですから、それは指導員の先生の優秀さでカバーできるわけです。優秀な指導員、立派な機械設備、そして立派な教材、この三つが必要だと思うのです。  もう本当に時間がなくなってしまいましたので、機械設備についてはひとつ大臣の御答弁をいただいて終わらしていただきたいと思います。
  149. 山口敏夫

    山口国務大臣 産業分野の最前線の情報や現実を学問の世界に十分取り入れて訓練をする、こういう性格の大学校でございますから、森田先生指摘のように、日進月歩の技術革新時代にこうした諸施設といいますか、設備がおくれておったのでは学生の教育のためにも決して条件が整っておるというわけにはまいらないわけでございます。また予算も限られておるということも現実でございますけれども、そういう点でリース等の関係での機械設備導入という点でのやりくりをしながら、他の大学に決して引けをとらない、むしろ産業の第一線のものを学生たちが率先して身につけられるように、そういう意味における設備とか機械の新技術の導入等においても最善を尽くさなければならない、かように考えておるところでございます。
  150. 森田景一

    ○森田(景)委員 格段の御努力をお願いしまして、質問を終わります。
  151. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 塩田晋君。
  152. 塩田晋

    ○塩田委員 山口労働大臣にお伺いいたします。  山口労働大臣が若かりしころ仕えられましたもとの労働大臣の石田博英先生職業訓練につきまして非常に御熱心でおられました。  歴史的に申し上げますと、職業訓練法の前身は、職業安定法の中の職業補導、また基準法関係技能者養成、この両者を合わせまして職業補導という形のものでやってまいりました。それが昭和三十三年の法律によりまして職業訓練ということになって発展をしてきておるわけでございます。三十三年の後、まさに池田内閣の所得倍増という積極的な経済政策とマッチをいたしまして、この職業訓練法が以前の非常に消極的なといいますか後追い的な対策から、むしろ前進的積極的な前向きの経済政策の、または雇用政策の一環として職業訓練法ができ、また大きく発展をしてきたと思うのです。その果たした役割というのは非常に大きいと思うのです。石田労働大臣は、二回目の労働大臣のときに、まさに三十五年でございました、これに非常に力を入れられ、今日の経済発展の大きな原動力になったと思われるわけです。  そこで、昭和四十四年に至りまして、高度成長に伴う労働力不足に対応するために新しく職業訓練法を制定するということになりまして、労働者職業生活を通じて段階的かつ体系的に訓練を受けられるよう、訓練制度を生涯一貫した体系のものとして確立するとともに、事業内で自主的に養成訓練推進できる体制の整備とか技能検定の整備充実を図っているところであります。さらに昭和五十三年には、オイルショック後の雇用調整対策の一環としての観点から職業訓練法改正が行われた。そして現在に至っておるわけでございます。  そしてこの職業訓練という言葉が、今まで雇用政策の積極的な対策として大きな役割を果たしてきたこの言葉が今回山口労働大臣が提案されました法律案によりまして、長年使ってまいりました職業訓練という言葉が職業能力開発という言葉に衣がえをし、そしてこれから職業生活を通じ産業への貢献あるいは新しい時代技術革新あるいは情報化、こういったものに画期的に対応していくという新しい意味を持ってこの今回の改正が行われるものと認識しておるわけでございますが、こういった歴史的な経過を踏まえまして、今日この段階におきまして、今回の法律はどのような意義を持つものであるか、どのように御認識をしておられるのか、お伺いいたします。
  153. 山口敏夫

    山口国務大臣 塩田先生も多年労働行政あるいは労働問題の改善発展のために御尽力いただいておるわけでございますが、我が国における職業訓練の問題は、大変な歴史と一つの実績があろうと、私、確信をしておるわけでございまして、特に民間の経済のエネルギーというものが非常に爆発的なものがございますし、民間の非常に真剣な能力開発職業訓練に対する取り組みということからすると、公の職業訓練というのは、何か大海の中で一つの小さな役割しか果たさないのじゃないか、こういうことを言われる方もおりますけれども、しかし、早くから労働行政一つの中核として職業訓練というものに地道に一つ一つ取り組んできたということが、トータルとしてはこの日本の戦後国民経済の安定に非常に大きく貢献をしてきておるのではないかというふうに考えます。  また、現にこうした日本の職業訓練の問題が発展途上国とか後発の経済国からも非常に注目をされまして、各国から職業訓練のノーハウあるいはその機能、運営についての引き合いというものが後を絶たない、こういうことでもございますし、我が国の国際経済協力、予算は外務省マターでございますけれども、そのまた大きな部分を労働省職業訓練馬、いわゆる能力開発局でこれを分担をしておる、こういう実情からいいましても、先生にも御評価いただいたように、一つの非常に大きな意味をなしておるというふうに考えるわけでございます。  しかし、その後さらに、いろいろ雇用関係、経済環境変化しておるわけでございますし、そういう一つの新しい時代、特に技術革新時代に十分対応できるような職業訓練、特に能力開発というものを進めていかなければならない。また一面においては、高齢化時代ということで、高齢者雇用の安定確保ということも、大事な我が国の政策として、もう現実の問題として取り組んでいかなければならない。  こういういろいろな要素を考えましたときに、今回新しい一つの考え方の上に立った訓練法改正案を国会に御提示さしていただきまして、特に民間事業主の方々がともに行う職業能力開発の促進でございますとか、あるいは公共における職業訓練の弾力的な運用でございますとかというのが一つの新しい視点ということでもございますし、そうした中における新技術時代におけるこの職業能力開発、こういうことを一つの柱として、今回の法改正を通じてひとつ新事態に対応する能力開発訓練職業訓練を進めていきたいという考え方でございますので、国会の御論議もいただきながら、鋭意我が国雇用の安定と職業技術の開発のためにこの改正が大きく貢献でき得るようなまた御指導や御鞭撻もいただければ大変ありがたいと考える次第でございます。
  154. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、職業訓練我が国の産業経済の発展に大きな役割を果たしたという認識を持っておるものでございますけれども学校教育との関係におきましては、かなり見方がいろいろございまして、高度成長の担い手である雇用労働者が非常に多様な社会変化あるいは多様な技術革新、これに対応し得たのは、学校教育による非常に幅広い教育訓練を受けておったからだ、基礎があったからだ。むしろ外国のように、非常に特化した技能訓練を高めることだけやっておるものだから、新しい変化に対応がなかなかできない面が西欧先進諸国はあるというような議論もあるわけです。  そこで、我が国の場合は、公共の果たしてきた役割もさることながら、民間では、大企業もあるいは下請中小企業も含めまして、社内での技能者養成なりあるいはいろいろな向上訓練、再訓練、こういったものをそれぞれ工夫してやってきておる。それが功を奏しておるのだという見方もあるわけです。西欧先進国と言われるところを見まして、訓練は非常に、我が国よりももっともっと社会に定着し、そして一般化しておるわけですけれども、そうである諸外国、先進国の方がむしろ対応におくれておるという面は、今の段階我が国の場合、そういった問題をどういうふうにして評価しておられますでしょうか、お伺いいたします。
  155. 宮川知雄

    宮川政府委員 大変難しい問題でございますが、非常に歴史もあり、量的にも大きいものがある西欧先進諸国と比べて、まだまだ歴史も新しい、金額的にも取るに足りない我が国がより効果を上げているという面があるということについて、私どもは、一つには、やはり後期中等教育の普及、こういうことがあると思います。非常に教育訓練を受けやすい素地ができていることだと思います。  戦後の我が国の復興は、たくさん要因がございますが、一つには、いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニング、OJTと言っておりますが、企業の中で、職場において先輩に教わりながら、仕事をやりながら仕事を覚えていく。単に見よう見まねではございませんが、仕事をやりながら覚えていくという、このOJTが中心でございました。これが国民の間に非常に素直に浸透したというのは、一つには、今申し上げたように、後期中等教育の普及が高く、それを受け入れるだけの平均的なレベルがあったということと、もう一つは、最近は多少変わってきたかもしれませんが、職業仕事の中で人間としての価値観を向上させていく、そういったような勤労観が日本人には確かにあったと思います。仕事をやる中で人間として成長していく、そうしたもの、あるいは先輩が後輩の面倒を非常に丁寧に見るという習慣もございました。そうした中で公共の訓練あるいは民間のそれぞれの訓練がいろいろ絡み合ったわけでございますが、それ以上に大きな効果を発揮して今日の成果をもたらした、かように一応私どもは考えております。
  156. 塩田晋

    ○塩田委員 我が国の場合は、今局長が言われましたその考え方に私も賛成でございます。ただ、この職業訓練法におきましては、昭和三十三年以来一貫して法律制度としてあるものは、公共職業訓練がまずモデルであって、そして民間事業主等がそれに倣った訓練を行うことによって全体としての能力開発を行う、こういう考えであったように思うのです。したがって、法律の構成もこのような考えに従いまして公共職業訓練を先に規定しておるわけです。  今回民間事業主等の行う職業能力開発を先に規定するというようにしたのはなぜか、職業能力開発に対する官民の役割に変化があると認めてのことであるのかどうかお伺いいたします。
  157. 宮川知雄

    宮川政府委員 先生指摘ございましたように、昭和三十三年に職業訓練法の成立を見、その場において公共職業訓練の施設というものが初めてその地位を確立したわけでございます。それで、四十四年、四十九年と−四十九年は特に雇用保険法改正でございますが、それを経まして五十三年法の改正、ここでは国と都道府県役割分担をはっきりさせるとともに、それまでのどちらかというといわゆる二次産業の技能労働者対象としていたものを、すべての労働者について全期間にわたるという能力開発を行うという考えが出てきたわけでございますが、四十九年の雇用保険法改正では、能力開発事業ということで事業主に対する助成援助というものが大幅に進み、そのときにやはり事業主にきっちりやってもらう、職業上の教育訓練というものは仕事をしっかりやるためのものである、事業主にしっかりやってもらう必要があるということで、この能力開発事業をイの一番に職業訓練の助成が取り上げられたわけでございます。そういう意味公共職業訓練施設整備から次第に民間整備環境づくりに視点が移ってきたような感じがいたします。  昭和五十三年改正法、つまり現行法でも職業訓練の章、第一節が「職業訓練の実施」でございますが、そこにはあと区別をしないで、多様な職業訓練から始まりまして、まず事業主職業訓練のやり方、それから公共職業訓練のやり方と、現行法でも必ずしもはっきりいたしません。多少ごちゃごちゃと並べてしまったところがございますが、民間訓練公共職業訓練というような形をとっておりまして、今回もいわばそれを整理し、踏襲し、さらに拡大したという感じでございます。  ただ、職業能力開発を全期間にわたってきっちりシステム化するということで、職業能力開発の中に事業主の行うもの、それから国、都道府県の行うものとよりはっきりさせた、そういうことでございますが、役割分担ということからいきますと、私ども現行法でもそうでございますが、公共職業訓練は大いに頑張らなくちゃなりませんが、一面事業主の行う職業訓練も、これも量的にも質的にも大変なものがございます。いずれにいたしましても、いわば車の両輪、それぞれの輪でございまして、一つが欠ければお互いに成り立ち行かない、力を合わせて真っすぐ走らなければならないもの、こういうような理解で五十三年法の規定整備させていただいた結果、事業主の行うもの、国、都道府県の行うもの、こういう形になった次第でございます。
  158. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣の提案理由説明にもありますように、近年の技術革新、高齢化あるいはまた情報化の進行は非常に激しいものがございます。最近の社会経済の変化は非常に急激でございます。これの変化に対しまして、今回の改正法はどのように対処しようとしておられますか、まずお伺いいたします。  そして民間教育訓練実態調査によりますと、昭和五十八年中全く教育訓練を実施しなかった事業所というものが、一千人以上の規模の場合にはわずか一・四%でございますけれども、百人から二百九十九人の規模におきましては二六・七%、これに対しまして三十人から九十九人、百人未満のところでは四九・六%ですから約半数、半分のものが何らの教育訓練も実施してない、こういう調査の結果が出ておるわけでございます。こういう状況でございますから、特に中小零細企業におきましてはなおもっと教育訓練がなされてないというふうに推測されます。今回の改正は、このような中小零細企業に対する対策としてどのような施策を考えておられますか。この二点をお伺いいたします。
  159. 山口敏夫

    山口国務大臣 塩田先生指摘のように、高齢化時代技術革新時代に今対応でき得るような職業能力開発、こういうことが改正の主眼でございますので、労働省といたしましても、この回の法改正の中で高齢化、技術革新進展をこなし得る、そういう意味におきまして職業生涯を通じての能力開発、そうしたことの必要性に適応すべき点が一つでございます。  それからいま一つは、職業能力開発推進者制度の新設、そして事業主に対する援助助成の充実、こうした中で事業主が行う多様な職業能力開発を一層促進すると同時に、職業訓練基準の弾力化、職業訓練施設の経費に対する補助方式の改正、こうした中に公共職業訓練についても弾力的な運営を可能ならしめるよう規定整備させていただいた次第でございます。  特に、先生指摘のように、大企業に比べまして職業訓練等が大変実施が立ちおくれております中小小規模企業に対する施設としては、能力開発に関する情報及び資料の提供、職業能力開発サービスセンターの設置、そしてさらには若年労働者への助成対象の拡大等を通じて生涯職業訓練促進給付金の充実、そして三番目といたしましては、それぞれの地方ブロックですね、地域職業訓練センターの増設、こうしたことを中心として新時代に対応できるような積極的な対応、中小小規模企業も大企業に負けないように、職業能力開発が促進されるような法改正を通じての環境づくり努力をさしていただきたい、こういう考え方に立っております。
  160. 塩田晋

    ○塩田委員 小規模事業所あるいは零細企業職業訓練をやってないというのは、これはやりたくてもやれない。やりたい希望、ニーズは随分あると思うのです。それがやれないというのは、一つは、不況時代はなかなか採算がとれない、教育訓練をやっている暇がないという、また労働力不足時代はこれはもう猫の子もかりたいぐらいだから訓練に出しておる余裕がない、こういうことですね。  それからもう一つは、中小零細企業になれば、せっかくその必要性があって訓練教育を受けさせるために外へ出すとしましても、出したままそのままやめていってしまう、こういうケースを事業主が非常に恐れているわけですね。そういったことも考えますと、そういったことの起こらない工夫をした公共訓練なりあるいはまた入りやすい、そういう教育訓練を受けやすい環境づくりをやはり公的な機関あるいは政府の政策としてやることが重要じゃないかと思うのです。これについては何かお考えございますか。
  161. 宮川知雄

    宮川政府委員 大臣から既にお答え申し上げたところでございますが、おっしゃるように、中小、特に零細企業におきましては、せっかく養成してもほかにとられやしないか、そういう心配がある。これも私ども現地でよく聞く話でございますが、だからといいまして、この技術革新の世の中にやはりその付加価値を高めなければならない。そういう中で、従来の労働力のままに推移するならばさらに一層衰退することは目に見えているわけでございますから、むしろ積極的に教育訓練を受けさせ、それから積極的に処遇するということこそ企業として生き残るために大事なことだろうと思います。大変口幅ったいことでございますが、そういうことを申し上げているわけでございます。  しかし、そうはいいましても、先生指摘のように環境づくりをやる必要がございます。したがいまして、今度、四カ所ではございますが職業能力開発サービスセンターをつくって、特に中小企業対象にして相談業務を丁寧にやりたい。それから、場合によっては公共職業訓練施設から人を派遣して企業の中でちょっとした講習をやる。中小零細企業の場合には長期間従業員を外に出すということは事実上大変難しい面がございます。そうしたわけで有給教育訓練休暇の取得などもどうしても大企業に偏りがちでございますので、そうした零細なところについてはそれなりの工夫も凝らさなければならないと思っております。  それから地域職業訓練センター、これも地域の実情に応じて、特にその地域の中小企業主が集まりまして、別に大企業でも悪くはないのですが、主としては中小企業事業主が集まりまして、お互いに教育訓練の情報を交換したり、またちょっとした教育訓練のための講習会をやったり、こうした設備としてセンターも設けておるわけでございます。  御提案の御趣旨はよくわかりますので、十分やってまいりたいと思いますが、話をもとに戻しまして、教育訓練をするとほかに行ってしまう、これはなかなか難しい問題ではあろうと思いますが、事業主の皆さんの自覚にまつというような面もあると思います。
  162. 塩田晋

    ○塩田委員 職業訓練の基本理念について、新たに労働者の自発的努力を助長するように配慮して行われるべきものとした規定を設けておられますが、その理由についてお伺いいたしたいと思います。  事業主が競争に負けないために新しい技術、技能労働者に対して身につけさせるというその必要性は今まで議論してきたところで明らかでございますし、またそのための施策をいろいろ考えられたと思いますが、やはり主体的に、労働者の立場からいいますと、みずからの社会的経済的地位の向上のために、また取得の向上のために、また日本人というのは非常に勤勉であり、勉強の意欲がもともとあると思うんですね、失われてないと思いますね。こういったところから、自発的に訓練をみずからやって、みずからを鍛えたい、こういう気持ちが相当あると思いますね。こういったところについてどのように今後考えておられるか、お伺いします。
  163. 宮川知雄

    宮川政府委員 これだけの技術革新時代になりますと、単に学校で勉強したからそれでいい、あるいは事業所に入って最初のうちやったから、ある程度覚えたから、それを十年一日のごとくやっていればいいという時代はまさに遠く去りつつあるわけでございまして、いろいろな段階で、段階的体系的に労働者能力開発が行われなければならないわけでございますが、どうしても程度が高くなり内容が密度が濃くなってまいりますと、事業主が経営の必要上からこれはぜひ覚えてもらわなくちゃいけないと思いまして、言葉は思うございますが、いかに労働者を督励いたしましても、内容が高度であるということからして、労働者側にそれを積極的にみずから受け入れようという意欲がなければ効果が上がらない、これはもう歴然としたものだと思います。  この法律は、雇用対策法と相まって施策を展開するものでございますが、その雇用対策法も、基本的な考え方として技能を習得し職業的に自立するという意欲を助長するような方向で施策というものが展開されなければいけないということを明言しております。これは当然私ども法律にも及ぶものでございまして、私どももまことにそのとおりと思っております。  そうした意味で、わざわざ法律に盛り込むというのはいろいろ議論のあるところかもしれませんが、これからの能力開発というものは、事業主が一生懸命に環境づくりをするとともに、労働者もみずからの立場の向上、そうしたもののために前向きに努力するいわば社会的な大きな責務が当然あろうかと私どもは思います。そうした意味合いを込めまして、そうした希望を込めまして労働者の自主的な努力を助長するような方向で、それを阻害しないようにこれが最も効果的である、そういうように考えてかような規定を設けた次第でございます。
  164. 塩田晋

    ○塩田委員 今回の改正法は、事業主等の職業能力開発の促進のための施策につきまして、事業主の行う多様な職業能力開発の促進というものを大きな柱としておるところでございますが、そのうち有給教育訓練休暇制度、これを特に取り上げて職業能力開発促進の方法として規定した理由は何でございますか。  また、フランスにおきましては有給教育訓練休暇労働者権利としておりますけれども、この点改正法はどのように考えておられますか。  さらに、現在有給教育訓練休暇制度はどのような普及度でありますか。今後これを普及し定着させることができるとお考えでございますか。
  165. 宮川知雄

    宮川政府委員 有給教育訓練休暇につきましては、四十九年の雇用保険法の成立時に能力開発事業の一環として取り上げられ、それが訓練法にも一部盛り込まれているわけでございます。現行三十条の四で事業主等に対する助成の中にこういうこと、つまり有給教育訓練休暇などをやる場合には国としても助成いたしましょうというのがございますが、今回の法律案におきましてはそれからさらに一歩出まして、事業主はさまざまな能力開発のための施策をとる、努力義務ではございますが、そうした社会的な責務があるという宣言を受けまして、一つとして事業内訓練、それから一つとして事業の外における訓練公共職業訓練の利用、あるいは有給教育訓練休暇の活用、こうしたものを改めて取り上げたわけでございます。  その趣旨とするところは、要するにこの技術革新の非常に勉強しなくてはいけない世の中になってまいりますと、事業所で一定の教育訓練をするだけでは、間に合うものもありますが、当然間に合わないものも出てまいります。特にこの有給教育訓練休暇がねらいとしておりますのは、大学、訓練学校あるいは高等専門学校各種学校労働大臣の指定するものという限定がございます、いわば学校ないし学校類似のところへ戻ってもう一度反省といいましょうか、学問的な反省をし、より確固としたものを身につけるようにしたい、そうした希望を労働者が持つ場合にやろうということでございますので、そうしたやり方をとらなければこれからの高度な技術社会労働者としてなかなか的確に対応できない、またそうした希望がある人には積極的に助成していこう、これが趣旨でございます。  それから、フランスにおいては権利としてこれが規定されているではないか。一つのお考えと思います。しかし、我が国では有給教育訓練休暇制度を利用している者はまさに一けた台も下の方でございまして、まだまだ社会的に定着するにははるかに遠い段階にございます。まだ啓蒙時代であるということを考えますと、これを使用者の責務、労働者権利という形で規定するのはいささか早いのではないか、もう少し事態を進めてからいろいろ考えていきたいと思います。  ただ、最初に申し上げましたように、職業能力開発のための各種措置をとる努力義務事業主にはございまして、それを受けて、その中には有給教育訓練休暇もありますよ、つまり努力義務とはいえ社会的な一つの責務として取り上げられたわけでございますから、責任というものにつきましてはそれに対置するいわば権利というものもおのずから社会的に生じてくる可能性があるのではないか。ただ、それを法制的にどうこうするのは時期が、もう一つ事業主の皆さん方の理解を得なければならないのではないか、かように考えているところでございます。  それから、実情といたしましては、この制度をやっております事業所は今申し上げました全体の四・三%でございます。普及が進んでいるとは言えない現状でございますが、規模でまいりますと、制度を有する事業所——まあ企業規模を問わず大体似たようなところでございまして、これからの状況だと思います。  対象人員でまいりまして、五十七年度が千七百六十一人、五十八年度が五千八十一人、五十九年度が五千三百五十五人と逐年増加の傾向にございます。  金額的にも、五十七年が四千八百万でございます。五十八年が二億五百万でございます。それから五十九年が三億七千九百万と、これもかなりの勢いで増加してきているところでございまして、これの普及徹底を強い気持ちを持って図ってまいりたい、かように考えております。
  166. 塩田晋

    ○塩田委員 ぜひともこれは早急に日本国じゅうに普及するように施策を強力に進めていただきたいと思います。  次に、職業能力開発サービスセンターについてでございますが、これは教育訓練の十分行われていない中小企業に対して教育訓練を普及振興する組織として今後重要な役割を果たすものと考えられるものでございますが、具体的にどのような運営を行っていくものか。例えば単に窓口に職員を置いて各種の相談を受ける、答えるというようなことだけでは十分機能しないというふうに思いますが、いかがでございますか。
  167. 宮川知雄

    宮川政府委員 職業能力開発サービスセンターと申しますのは、職業訓練についてのノーハウというものは、公共機関はもちろんでございますが、それぞれの企業の中にもたくさんございますし、あるいは事業主団体にもございますが、それぞれにいわば埋もれているのが現状でございます。こうした情報というものをもっと的確に拾い上げ、分析し、それをもとにして、特に中小企業等の相談に臨むならばはるかに効果が上がる。しかも中小零細企業がそれを求めているというのが実情でございますので、サービスセンターを設け、積極的にいろいろ情報を収集すると同時に、資料を提供し、相談にも乗りたい。  そのとき、お説のとおり、単にセンターにお客さんが来るのを待っていて相談に乗る、もちろんそういう面もございますが、それだけでは到底足りません。やはり積極的に近辺の特に中小企業対象として巡回しながら相談に乗る、そういうことも大変大事でございますので、プランナーープランナーというのは、事業所の中で計画をつくるときにその計画の作成の相談に乗るのを主任務といたしますが、それだけではなくていろんな各種の相談に応ずる、それと、情報提供でいろいろな問い合わせ等に応ずるための相談員、この二つを置きまして、中で相談に応ずるとともに積極的に巡回、こちらから場合によっては押しかけていく、そういうことまでこのセンターでは考えていきたいと思っております。
  168. 塩田晋

    ○塩田委員 今回の改正法によりますと、事業内において多様な職業能力開発の促進を行うということになっており、その具体的な方法といたしまして、事業内の職業能力開発計画というものを作成することになっております。この趣旨は結構だと思うのですが、この計画につきまして、事業主が一方的にこれを定めるというようなことではなくして労働者意見も十分反映するような措置が必要だと思いますが、いかがでございますか。
  169. 宮川知雄

    宮川政府委員 現在予算措置でもやっております生涯職業訓練促進給付金制度、これにつきましても、有給教育訓練休暇奨励給付金、それから職業訓練奨励給付金にせよ、すべて計画事業所の中でつくってもらうことを前提にしておりますが、さらにその前提として労働組合ないしはそれに準ずるものの意見を十分聞いてその計画をつくるようにとなっております。この法律でやります計画は、またそれとは別の、さらに事業所全体の大きな計画でございますが、趣旨はほぼ同じでございますので、当然こうした計画をつくるに際しては事業内で労働組合等の意見を十分聞くように制度的にも何か工夫してまいりたい、かように考えております。
  170. 塩田晋

    ○塩田委員 非常に的確な御答弁をいただきましたので、ぜひとも万遺憾なきを期して措置をしていただきたいと思います。  次に、今回の改正に際しまして、公共職業訓練につきまして、技術革新、ME化の進展あるいは新しい情報化時代と言われる情報化の進展、こういったものに対応するためにどのような施策を考えておられますか。
  171. 宮川知雄

    宮川政府委員 この激しい技術革新の世の中に労働者が的確に対応していくためには職業生涯の全期間にわたって段階的体系的にその追加的な教育訓練を適切に受けられるということが重要であります。それから、その内容につきましても、ME関連の機器や0A機器等の単なる操作だけではなくて、プログラミング、段取り、故障の予知、診断、場合によってはハード面でのいわゆるメンテナンス、そういうところまで幅広い能力を付与していく必要があろうと思います。  このため、公共職業訓練におきましては、産業用ロボット、NC工作機械等のME関連機器に関連する職業訓練とか、あるいは情報処理科等を設けまして情報処理技術者の養成のための訓練の充実に努めているところでございます。また、技術革新進展に対応し得る高度かつ専門的な知識、技能、技術というものを身につけた労働者養成を目的とする職業訓練短期学校、普通訓練課程の中の高卒二年の課程でございますが、この職業訓練短期学校計画的な展開を図り、現在十一校開校しているところでございます。  こうした公共職業訓練の中での技術革新関連の訓練推進に当たりましては、特にリース等を活用いたしまして、機器等も大変高価でございますので、しかも絶えず新しいものを使うというようなことからいきますならば、リース制度を活用して、ワードプロセッサー、シークェンスコントローラーなどの計画的な整備に努めなければならないということでやっているところでございます。  なお、昭和六十年度におきましては、職業訓練学校に、いまだ政府原案の段階でございますが、情報工学科をつくるための予算も組み込んでございます。これが順調に参りますならば、来年の四月には新一年生の入校も行われることでございまして、職業訓練施設における特にME関連の指導員の養成というものも軌道に乗ってくるものと、かように考えております。  以上のようなことであります。
  172. 塩田晋

    ○塩田委員 情報化に対する対策……。
  173. 宮川知雄

    宮川政府委員 情報化の関係でまいりましては、今申し上げましたように、職業訓練学校に情報工学科の新設を考えておりますが、そのほかにも、普通訓練課程で電子計算機科あるいは情報処理科、これの定員の増加も図っているところでございます。情報処理ということになりますとストレートにそういうことでございますが、ME関連ということでいきますならば、各科におきましてMEの組み込まれた機器の整備に努めているところでございます。
  174. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、委託訓練についてお伺いいたします。委託訓練趣旨、現況についてお伺いいたします。
  175. 宮川知雄

    宮川政府委員 現在の委託訓練は、雇用保険の失業給付の受給者のうち、特に特定不況地域から出てきた人など特定の人につきまして、公共職業訓練ではその人たちの訓練を引き受ける余地あるいは科目がないというときに限ってこれを実行するということでございますが、新しい今回の法律の中では、さらにその向きを変えまして、公共職業訓練にないというだけではなくて、迅速かつ効果的な職業訓練を実施するために必要がある場合、しかも適切な機関があるならば、雇用保険の失業給付の受給者はもちろんのこと、そうした受給者でなくても公共職業安定所長の特に指示があるような場合には、積極的に委託訓練に振り向けていきたい、かように考えております。  委託訓練は五十九年でまいりますと二万三千六百人、それから六十年の予算でまいりますと二万八千九百人と、多少でありますが、今ふやしつつあるところでございます。
  176. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、この委託訓練の実施の成否、これがこれからの職業訓練の成功か不成功が、これを分けるほど大きな意義を持ったものだと思います。従来は雇用保険と結びついた職業訓練というものは、非常にかた苦しいというか、長期の、しかもちゃんとした施設でちゃんとした指導員がちゃんとした訓練カリキュラムによってやらなければ認めない、雇用保険金を渡さないという、あるいは訓練手当を支給しないという、こういう非常に厳しい、それは厳しくするにはそれだけの理由はあったと思うのです。ですが、余りにも厳しいものですから、なかなか行こうと思った人が行けない、また場所的にも公共訓練というのは限られますから、兵庫県の場合でも、県下で人口五百万の中で十校ぐらいしかないわけですね。やはり最寄りのところに気軽に行けない。  今度は行く者については、本当はそう訓練を受けたくないけれども雇用保険金がもらえるとか、あるいは訓練手当がもらえるから、まあ半年ぐらいと思ったけれども、一年行かなければならぬというような、訓練手当なり雇用保険金目当てのと言うと語弊がございますけれども、そういう者もなきにしもあらず。その証拠には、延長給付というものがあるものだから、雇用保険の支給が間もなく終わるころに訓練を受ける、そのかわり一年間延長してもらうとか、そういうことも間々見られるわけですね。  そこで、私は、事業主ももちろん、雇用労働者も一般労働者も、訓練を受けたい、受けなければならぬという気持ちが非常にある、そのニーズに対する、需要に対する供給がもう少し弾力的でないと、いわゆる公共訓練のかた苦しい枠にはまったものだけ、枠にはまったものは手厚くやる、これだけではこれからの訓練というもの、能力開発というものはいけないと思うのですね。  そういった意味におきまして、この委託訓練をもっともっと基準を弾力化して、この程度のものはいわゆる公共訓練でなくても、委託訓練であっても、やはり今までのこの非常に厳しい公共訓練の基準でなくして、もっと弾力化したものであってもそれは雇用保険の支給の対象にするとか、あるいはもう一年とか半年とか、長期を言わないで、十日とか二十日、あるいは一カ月でも二カ月でも、そういった短い期間でもそれは委託訓練で各所でできるようにして、そして訓練手当あるいは雇用保険金の支給の対象とするということをどのように実施するか、これによって今後の技能開発能力開発が全国的に広がるかどうか、決め手になると思うのです。この点についていかがでございますか。
  177. 宮川知雄

    宮川政府委員 委託訓練につきましては、従来は先生指摘のように必要最小限、失業給付とか訓練手当をけちったわけではないと思いますが、必要最小限ということであったと思います。しかし、今後は公共職業訓練施設に同じものがあれば、これを使ってもらうのは当然でございますが、おっしゃるように、都道府県の中にそんなにたくさん施設があるわけでもございません。近くにより適切な機関があるならば、それを積極的に使って能力開発を図るあるいは再就職の促進に資するようにするということは大変大事なことでございます。  したがいまして、国のあるいは都道府県における訓練基準の弾力化を図るのと同じ趣旨におきまして、訓練基準も十分弾力化いたしまして、その限りにおいて適切な委託訓練先があるならば、まさに迅速かつ的確な委託訓練が行われる、能力開発が行われるということでございますならば、積極的に委託訓練先を開拓し、そこに人を出す、そういうことをやってまいりたいと思います。
  178. 塩田晋

    ○塩田委員 公共訓練そのものもそうですが、委託訓練の基準というものも恐らくつくられると思います。これは従来よりもかなり思い切って弾力化してもらいたいと思いますが、いかがでございますか。
  179. 宮川知雄

    宮川政府委員 今申し上げましたように、まさに向きを百八十度近く変えたわけでございます。決して内容のいいかげんなものをやるというわけではございませんで、適当な機関があるならば、訓練基準につきましても、国、都道府県における訓練基準を弾力化するのと同じ思想のもとに十分弾力化して、民間の施設を活用してまいりたい、かように考えます。
  180. 塩田晋

    ○塩田委員 ぜひともそういう方向でこの委託訓練を普及をしていただきたい。養成訓練向上訓練も再訓練能力開発、転職訓練も同じ思想でどんどん各地で行ってもらいたい。人数が何人以上でないとだめだとか、そういうことでなしに、イギリスなんか行ってみますと、本当にマン・ツー・マンでやっていますね。職業転換の技能開発能力訓練をやるのは、これはもう本当に一人の先生が一人の労働者に対して行っている。そういう状況も現に見てまいりましたが、それぐらいの考えでやるものでないと広がらないと思いますね。各地で行う、各地で本当に——技能は一年やる必要のあるものもありますけれども、特に情報化時代コンピューター等の関係を見ましても、そんなに長くなくてもいいというものもありますから、もっともっと期間も施設も指導員も人数も、皆ひとつ弾力化して、どんどん積極的にこれを推進をしていただきたいということを希望しておきます。  それから時間の関係で、あと三問ほど続けて申し上げますので、まとめてお答えをいただきたいと思います。  まず第一問は、交付金化によりまして、国が都道府県に交付する額が都道府県立の訓練校の運営に不十分なものとならないか、いわゆる交付金化によってこういう運営に支障を来さないか、このことをまず一つお伺いします。  第二問は、海外の開発途上地域における訓練担当者の訓練に関する規定が今回置かれましたが、その理由、どのように運営されようとしておられますか、お伺いいたします。  第三点は、地域職業訓練センター、これの趣旨、実施状況、今後の見通し、また、問題点があるとすればどんな問題点があり、それにどう対処していこうとされておるか、これが第三点。  もう一つ、余り時間がありませんが、資格試験の問題です。特に技能検定で、今いろいろ一級、二級やっておられますが、その一級、二級の中で、また社内で若干段階をつけたい、社内検定的なものですね、そういったものをつくりたいという職種が、あるいは希望があるわけですけれども、そういうものにはどういうふうに対処していこうとしておられるか、お伺いいたします。  以上四点、お願いいたします。
  181. 宮川知雄

    宮川政府委員 都道府県の行います職業訓練校の運営につきまして、補助金——負担金といっておりますが、その補助金を交付金化するということになると、事業交付金でいわばつかみとなりますから、不十分なものにはならないかというお話でございます。つかみといいましょうか、定額でございますから、物価の変動そのものを直ちにこれに反映させるのは大変むずかしゅうはございますが、職業訓練、特に都道府県の行う職業訓練の重要性を考えますと、私どもとしては財政当局とも十分話し合いをし、これが後退することのないよう、後退するどころか前に進むように十分努力したいと思います。  それから、海外協力につきまして新たに設けました理由は、海外協力の必要性についてはもう申すまでも狂いことと思いますが、今まで設置法で海外協力に関することということで各省持っているノーハウをそれぞれに発揮してきたわけでございますが、この際、私どもといたしましては——特に職業訓練を通じての技術協力、人づくり協力が量的にも大変ふえてまいりました。昨年七月には、機構改変の際に海外協力課も設けたところでございまして、それとの平仄も合わせまして、この際、法文上もはっきり海外に出る人たちの教育訓練、あるいは海外から来る人たちの教育訓練公共職業訓練施設で積極的に受けていこう、今までも一部、邪魔にならない程度についてはやるということでございましたが、そういうことではなくて、正面からやっていきたい、かような趣旨で設けたわけでございます。  それから、地域職業訓練センターは、現在まで四十一カ所開設してございます。これは、大企業はいけないということはございませんが、特に地域の中小企業事業主の皆さんが集まりまして、教育訓練のためにこの施設を使って講師を呼ぶとか、あるいはちょっとした講習会をやるとか、そういう形できめ細かく能力開発を図る、特に中小企業の皆さんが図るための施設として四十一カ所設けられたところでございます。これからもこれの増設に努めていきたいと思います。  ただ、問題点といたしましては、やはりこの運営に当たる人に人を得るということになりますと大変効果が上がりますが、それがございませんと、どうしても寂しくなるという面が否定できません。そうした意味では、これは県にも監督してもらっておりますが、県ともよく相談をいたしまして、運営の中心となる人に適切な人材が得られるように十分これからも工夫してこれの活性化を図ってまいりたい、かように考えます。  それから、技能検定につきましては、特に社内検定、現在百三十五種の技能検定が行われておりますが、特定の企業あるいは特定のグループにおいて一定の物差しが当てはめられるような技能があるんだけれども社会一般に普遍的とまではいかない、しかし、そうしたものを公が認めることによって全体の技能検定との連携あるいは処遇の改善、そうしたものにつながるというものがございまして、いわゆる社内検定の要請が出てきたわけでございます。  それで、昨年の秋に、これにつきましてのいろいろ規定を設けまして、近くこの社内検定の第一号を認定するような運びにしたい、かように考えているところでございます。  以上でございます。
  182. 塩田晋

    ○塩田委員 終わります。
  183. 浜田卓二郎

    ○浜田(卓)委員長代理 小沢和秋君。
  184. 小沢和秋

    小沢(和)委員 初めに大臣質問をいたしたいと思うのですが、今回の法改正の目的が、技術革新進展、それから高齢化社会の到来などの変化に対応して、生涯を通じての労働者職業能力開発向上を図ることだというふうにされております。一般的、抽象的にはこういうことは考えられると思うのですが、それでは具体的にこの改正によってどこがどういうふうに変わってくるのか、一番変わるのはどこかという点であります。  私なりに法律を勉強して理解をしたことは、これからは原則として、すべての事業主職業能力開発計画というのを立てさせて、その推進者を置いて、それを強力に推進していくことが中心になっていく、国や自治体はそれをいわば助けていく、こういうような関係になっていくというふうに理解をしたわけであります。  そうすると、国や自治体の役割というのは相対的には後退するということになるのではないかということを私はまず懸念をするわけでありますが、この点いかがでしょうか。
  185. 山口敏夫

    山口国務大臣 今回のこの法改正は、小沢先生指摘いただきましたように、新技術時代あるいは高齢化時代、そうした社会的な背景の中で十分対応できるような職業訓練のための法改正、こういうように御理解いただければ大変ありがたいわけでございますが、そうした中で特に具体的な問題といたしましては、大企業能力開発職業訓練に対しましてやや立ちおくれが現実目立っております中小企業における能力開発職業訓練、こういうことを進めていきたい。特に事業主に対する交付金等、運営が進めやすいような条件づくりということを考えておるわけでございます。  そういう民間における職業訓練能力開発を進めると同時に、いわゆる公的な面における職業訓練もさらに運営を拡大していこう、こういうことで、やや国や自治体の職業訓練に対する役割が後退をしているんじゃないか、こういう御指摘ございましたけれども、むしろそういうことではなくて、車の両輪として民間職業訓練、そしてまた公的な部門における職業訓練というものを同時並行的に進めることによって技術革新時代における職業訓練のあるべき姿というものを実際的に進めていきたい、かように考えておるところでございます。
  186. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、事業内で、そこで働いている労働者の人たちに一番がなったような職業訓練をするということは積極的にやらなければいけないと思うのですが、あくまで職業訓練というのは、全体としては国と自治体の責任において進めていくという立場でなければならないと思うのです。今大臣も、公的な部門も拡大をしていくという華言葉があったと思いますので、私は、今言ったような見地を大臣確認していただいたというふうにとりましたが、それでよろしゅうございますか。
  187. 山口敏夫

    山口国務大臣 よろしゅうございます。
  188. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それでは、次にお尋ねをしたいのですが、今度一番力を入れておられる事業内訓練、とりわけ中小企業が立ちおくれている状態を打開をしていこうということ、これはまさにそこには非常に力点を注ぐ必要があると私は思うのですが、昨年の六月に労働省職業訓練局が実施いたしました民間教育訓練実態調査報告書というものを拝見いたしました。これを見ますというと、千人以上の規模の事業所では、本来の職務を離れての訓練を、最近の一年間だったと思いますが、全然やっていないというのは一・四%にすぎない、それに対して三十人ないし九十九人の企業では四九・六%がそういうような本格的な教育訓練をやっていないという数字が出ているのです。  それから担当部門も、その犬小はあるけれども、千人以上のところでは六八・二%が置いているんですよ。それに対して三十人から九十九人というところは四・七%しか置いておらない。余りにも大きなこの面での格差があるわけであります。これは法律をこういうふうに改めたというくらいのことではこのギャップは簡単に埋まらないのじゃないか。むしろこの法律ができたということによって大企業などはさらにこれをばねにして進めていくでしようけれども、その面でも大企業と中小企業の格差が一層開いてしまったというようなことにならなければいいがというふうに懸念するのですが、この点いかがでしょうか。
  189. 宮川知雄

    宮川政府委員 職業能力開発社会全体として考えます場合に、特に中小企業の立ちおくれというのは今先生指摘のとおりでございます。相当な格差がございます。もちろんこの格差を拡大させてはならないと思います。そうした意味で、必ずしも中小企業向けと法律に書いてあるわけではございませんが、例えばサービスセンターなどは実際には中小企業の相談に乗ろうということでございます。  それから、各種助成措置も特に中小企業に全部手厚くなっております。例えば生涯職業訓練奨励給付金という、この新しい制度では生涯能力開発給付金ということで内容を充実いたしますが、一般には中高年齢者向けに三十五歳から四十五歳、それ以上のところを手厚くやっておるわけでございますが、中小企業に限っては二十五歳から三十五歳未満を今度新しくつけ加えるというように中小企業向けに特に手厚い対策を講じております。  それから、これは法律ではございません、予算上の措置でございますが、地域職業訓練センターもそのほとんどの利用は中小企業主でございまして、いろいろな機会に中小企業能力開発の促進のために努めてまいりたい。おっしゃるように格差が拡大しないように一生懸命努力したいと思います。
  190. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いや、制度的に中小企業向けを非常に手厚く拡充したということは、私も法律を見るとわかるのです。私が特に考えるのは、中小企業で働いている労働者企業主との間にこの職業訓練についての意識にかなり大きなギャップがあるのではないか。このことを尾高さんという一橋大学の教授の方も指摘をしておられるのですが、この方の調査によると、「従業員自身は、技術者であれ生産工程工であれ、半数以上がともに各種の集合訓練を第一位にあげ、OJTを選ぶ者は全体の四分の一程度にすぎない。ところが企業の人事担当者のみるところでは、集合訓練効果はそれほど大きくなく、とくにブルーカラー労働者の場合には最も重要な位置を占めるとされるのはOJTなのである。」というふうに書いてあるんですね。  だから、もともとそういうような訓練というのは職場で働いているうちに先輩などからひとりでにいろいろ伝授されていくものだというような先入観がある。だから、こういうような意識状態である限りは、あなた方がいろいろ助成策やらを講じてもなかなかそれが生きていかないんじゃないかということを感ずるわけです。だから、こういうような中小業者などに対してどのような啓発あるいはそのことの重要性を宣伝していったりされるのか、この辺は非常に重要じゃないかと私は思うのです。
  191. 宮川知雄

    宮川政府委員 大変重要な御指摘でございまして、確かに能力開発のためにはOJT、このOJTというのは職場での訓練ということで、まあ見よう見まねでやればいいじゃないか、そういうとり方もございますが、昨年十一月に企業教育研究会から出た報告によりますと、OJTはこれからも必要である、しかし、そのOJTというのは単なる見よう見まねではない、やはり合理的な方策に裏づけられたOJTでなければならない、そして、それに加えて集合訓練等も必要であるということでございます。  ところが、一部でございましょうが、中小事業主の中にはOJTというのを半分だけかじりまして、いや見よう見まねでやればいいんだ、そんなところへ出でいって金を使う必要はないというような意識があることも本当でございます。それからまた、余り教育訓練をするとほかの仕事がおもしろくなって、ほかの企業へ行ってしまうというようなことも冗談におっしゃる事業主がおりますが、これからの高度技術社会を考えますと、能力開発というのは、大企業でございましょうが中堅企業以下中小企業においても大変大事なことでございます。  そうした意味では科学的なOJT、そうしたものを十分踏まえて集合訓練も加えてやっていかなければならない。これを中小企業主にも十分理解していただかなくちゃなりませんが、私どもといたしましては、都道府県の公共訓練機関、さらには地方にあります能力開発協会、これはほとんど中小企業の集まりでございますが、こういうところを通じて啓蒙に努めたいと思いますし、先ほど申し上げましたサービスセンターもそういうような精神で特に中小企業主の啓蒙に努めていきたい、かように考えております。
  192. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それからいろいろ助成などの拡充にも努めたというふうに言っておられますけれども、今まで生涯職業訓練奨励給付金とかあるいは有給教育訓練休暇奨励給付金とか、いろいろなこういう制度がありました。私も地元で若干の関係者の方などからも伺ってみたんですけれども、今までのケースでいけば、受給できる事業主として生涯訓練の見地に立った段階的かつ体系的な事業内職業訓練計画を作成している雇用保険の適用事業主、こういうような資格の大前提があるわけですね。こんなものものしい計画をそういう小さな業者がつくれるかということで、まずこの辺からして敬遠。それからまた手続的にもいろいろ難しいというので、結局のところ、いろいろ手厚くしているというけれども、事務などががっちりできる大企業などの方が活用しておって、案外中小企業は活用できていないというような声も聞くわけであります。  今度この制度につきましては生涯能力開発給付金ですか、名前が変わったりいたしますけれども、こういうような点について本当に中小業者の人が実際の訓練をやっていさえすれば、実態に即して、こんないろいろ難しい要件や手続というのにかかわらず利用できるように改善されたんでしようか。     〔浜田(卓)委員長代理退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕
  193. 宮川知雄

    宮川政府委員 生涯能力開発給付金、おっしゃるような形で整理してまいりました。それから、特にそのうちの生涯職業訓練奨励給付金の流れを引くものにつきましては、四十五歳以上を特に手厚くしているわけでございますが、先ほど御説明いたしましたように、これは全部でございますが、中小企業のところだけに限って二十五歳から三十五歳未満を取り入れる。これは中小企業しか使えません。  そういう意味では中小企業の皆さん方にぜひ使っていただきたいところでございますが、いかに手厚くいたしましても、確かに御指摘のとおり四角四面の手続がいっぱいあって、計画労働組合意見を聞いて持ってこいというようなことでは、それだけでうんざりしてしまうというのもよくわかるところでございます。これは省令等でいろいろ工夫をいたしますが、少なくとも能力開発ということで全体の活性化、弾力化を図りたい、これが私どもの大きな願いでございますので、書類が不備だからだめ、書類をつくってこないからだめではなくて、公のお金が出ることでございますから、いいかげんでいいということにはとてもなりませんが、可能な限り、本当にやっているならば一緒になって相談に乗って、場合によってはこちらで資料をつくってあげる、そういうようなことがあってもいいのじゃないかと思っております。そうした意味で、書類をつくるのが大変だから行くのをやめたという中小企業主の方々が少しでも減るように制度的にもそれから実際面でも工夫してまいりたいと考えております。
  194. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それでは、その関係はそれぐらいにいたしまして、次に公共職業訓練の問題で少しお尋ねをしたいと思います。  今、職業訓練の中核になるのは、何といっても公共職業訓練でなければならないということを私も力説もしたし、大臣確認をしていただいたと思いますが、この公共職業訓練が現実に非常に複雑化し多様化しているニーズに真にこたえるようなものになっているかということです。この点でどういうような努力をされておりましょうか。
  195. 宮川知雄

    宮川政府委員 公共職業訓練能力開発の大黒柱でなければならないと大臣がはっきり申し上げたところでございます。昨年、公共職業訓練のあり方等研究会で学者先生方にお願いしたところでございますが、そこでの御指摘も、公共職業訓練というのは特に地域の能力開発の中核としてしっかりした立場をつくらなければならない、そういう御指摘がありました。私どもは、それを受けてのことでございまして、まさに車の両輪とはいいながら大黒柱だと思っております。  しかし、実際には御指摘のように新しいニーズに立ちおくれがちな面があることは否めません。労働者技術革新進展に対応していくためには、入職から退職までその全期間にわたって適切な教育訓練を受ける必要があるわけでございまして、先ほど来申し上げているところでございますが、例えばME機器とか0A機器といいましても、0A機器は別といたしまして、特に工場、事業場等におけるME機器につきましては、単なる操作だけではなくてプログラミング、段取り、それから故障の予知、診断、さらにはメンテナンス、そういうところまで幅広くこれを活用、利用できるような能力が求められているわけでございます。  したがいまして、公共職業訓練におきましては、産業用ロボット、NC工作機械等のME機器に関連した訓練あるいは情報処理技術者の養成のための情報処理科、こういうものも設けまして訓練を充実しているところでございますし、また機器等の整備につきましてはリース制を十分活用するように努力しているところでございます。また、技術革新に的確に対応するために養成訓練、高卒二年の訓練の中でこれは短期大学校として現在展開しつつあるところでございますが、高度の実践技術者、技能者、こうしたものをつくるために、今申し上げましたように短期大学校の全国的な展開を図っているところでございます。  それから、サービス経済化の進展等に対応しまして、第三次産業関連分野の職業訓練にも意を用いているところでございます。今後はこれらの施策を引き続き推進しますとともに、特に六十年度、職業訓練学校に情報工学科を新設するための手続を進めております。これによりまして情報処理の技術者、技能者を養成するための指導員の養成を積極的に図ってまいりたいと思っております。それから、全国主要都市に職業能力開発サービスセンター、これもいろいろ議論が出ておりますが、それを設けまして、特に中小企業主に対する相談業務、指導業務に努めてまいりたい、こうした中で幅広く能力開発を進めてまいりたい、かように考えております。
  196. 小沢和秋

    小沢(和)委員 この公共職業訓練には、私が言うまでもなく、養成訓練向上訓練能力開発訓練と三通りあるわけでありますけれども、この向上訓練能力開発訓練は、それでも定員に比べるというとかなり開きはありますけれども、入校者数は全体としてはふえているというふうに言えるのですが、養成訓練の方が定数も減り、入校者数はそれをさらに上回ってどんどん減っていっておるという状況ですね。これは一般的には、最近は子供の生まれる数も減ってきているとか、そういうようなことも関係が出ているのかもしれませんけれども、しかし、私は、専修校などに、この養成訓練のコースが十分にニーズにこたえていないために流れていっているというような問題もあるのではないかと思います。その点で、特に養成訓練についてどういう改善の努力をこれからも払おうとされるか。  それからもう一つは、能力開発訓練高齢者の再就職に必要なコースも拡充していくということが、私もう一つ特に大きな関心を持っているところなんですが、この辺で特にどういう努力をされているかということを重ねてもう一度お尋ねします。
  197. 宮川知雄

    宮川政府委員 各種学校、専修学校等と私ども格別中卒者を取り合うというようなことではございませんで、協力できるものは協力し、例えば委託できるものは委託して協力関係を密にしていきたいと思っておりますが、それはそれといたしまして、養成訓練自体は、先生御存じの専修課程は中卒一年、高卒六カ月、それから普通課程が中卒二年、高卒一年、それから専門課程が高卒二年、これが短期大学校となりまして、短期大学校の方は逐年強化されているところでございますが、特に専修訓練課程がだんだん縮小してきているところでございます。  これは余り短期に過ぎて最近の技能水準の向上になかなか追いつけないというような事情もございますが、一面短期の教育訓練の必要性がまた出てきているという面もございますので、専修訓練まで含めまして養成訓練そのものを、これは職業に入る入り口での大事な教育訓練でございますので、もう少し積極的に見直し、確かに人数的には随分減ってまいりました、これは子供が生まれるのが少なくなった、あるいは高校進学が九四・一%である、いろいろな事情が確かにございましたが、そうした中でこれからの養成訓練がどうあるべきか、新しく法律改正する中で十分考えていきたいと思います。  それから能力開発訓練中の中高年齢者向けのそれでございますが、どうしても就職が難しい年齢に入ってきております。したがいまして、本人も希望し、社会もこれを比較的受け入れやすいというやはり高齢者向けの訓練科目がございます。例えば造園とか、家電のサービスとか、ビルメンテナンスの一部であるとか、経理事務であるとか、そういうものは案外人気もございますし、それなりに就職もよろしゅうございますので、そうした高齢者向けの訓練科目への転換というものをこのところかなり積極的に図っているところでございますが、今後とも社会の動向、ニーズというものを見ながら転換を進めていきたい、かように考えております。
  198. 小沢和秋

    小沢(和)委員 先ほどから公共職業訓練が全体としての職業訓練のかなめだというふうに言われているわけですけれども、私一つ懸念をするのは、委託訓練が今度法律上位置づけられて、先ほどの御答弁などを伺っておりますと、これを非常に積極的に進めていくという考え方が示されていることです。私がいただいている資料では、五十九年度が二万三千六百二名委託訓練をした。先ほどのお話では、六十年度は二万八千九百人予定している。これはかなり大きく伸ばしていくわけですね。  そうすると、幾ら公共職業訓練を中核として今後も重視をしていくんだというふうに言われても、公共職業訓練の一部としてこの委託訓練というものの枠をぐっと広げていくということになりますと、特に公共職業訓練の新しいコースなどとして今後は拡充をしていくよりはどんどん紹介してそっちに人を流していくというようなことになるならば、新しいニーズに対応する部門というのはなくなっていく。言っては悪いけれども、昔からの古いものはそのまま残って細々とやって先細りしていくということになりかねない。私はその点でこれは非常に重要な問題じゃないかと思うのです。今言ったような懸念についてはどうお考えでしようか。
  199. 宮川知雄

    宮川政府委員 委託訓練公共職業訓練でどうしてもカバーできないというときに利用しようということでございます。現在の委託訓練はそれよりさらに狭く、雇用保険の失業給付の受給者中特に限定して、例えば不況地域からの輩出者等と限定しているわけでございますが、今度は雇用保険の失業給付を受給している者はもちろんのこと、安定所長が必要と思った人には訓練手当を支給することによってさらに広げていきたいということを申し上げたわけでございますが、それもこれもすべて公共職業訓練に変わりがない場合にはそうしたものを使おうということでございまして、公共職業訓練が地域の中核としてこれからも発展しなければいけないのはそのとおりでございます。  したがいまして、新しい科目等、公共職業訓練で工夫すればできるもの、あるいは当然工夫してやっていかなければならないものは公共職業訓練の中で強化する、外へ出したら中はもういいんだということでは決してございません。中で強化できるものは極力強化しますが、それと同時に並行して、働く人々あるいは受講している人々にそうした希望があり、我々としてもすぐそれに対応できないというときには今までのように限定された形でなくて利用しよう、そういうことを申し上げているわけでございまして、何でもかんでも全部下請に出して、はい、これでおしまいで公共職業訓練はなくなってしまうというようなものでは決してございません。
  200. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そうであるとすれば、例えば今まで私が聞いておるのでは、自動車運転であるとか造園であるとかいうようなものを委託に出しておったと聞いておるのですけれども、今までのそういう種目に大体今後も限定をして運営していく、ただ対象者を今のようなあなたの考え方に従って広げていくとか、そういう一定の歯どめみたいなものは私は必要ではないかと思うのです。それでないと、やはりコースを新しく設けるよりはその方が手っ取り早いという誘惑は、今のように行政改革、少しでも安上がりに民間活力の活用をといろいろ言われている中では、そちらに流れる危険は大きいのじゃないかと私は思うのですが、その点もう一度伺います。
  201. 宮川知雄

    宮川政府委員 委託訓練といたしましては、先生指摘のように自動車運転、造園、和文タイプ、和洋裁、調理、いろいろございます。しかし大部分は、これからやりますのはむしろこうした科目についての対象者の拡大ということで、対象科目の拡大ではないと私も思います。そうした意味ではおのずからなる歯どめはかかっているわけでございますが、公共職業訓練の中でどんなに努力してもそれはなかなかできない、あるいは公共職業訓練がやるのは必ずしも適切でないというものが仮にあるとすれば、絶対に今の科目だけでありますというようなことはなかなか申し上げられませんで、ただ基本的には先生の御指摘のような線で公共職業訓練をむしろ充実していく、そういうふうにおとりいただいて結構でございます。
  202. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それから、入所者の人たちに本当に安心して訓練に励めるような状況をどう保障していくかという点で一、二お尋ねをしたいと思うのです。  私が調べてびっくりしたんですけれども、せっかく職業訓練施設に入ることを認められても、現実には入校しないとかあるいは中途でやめていくとかいうような人がかなり多いんですね。東京都の資料をいただきましたら、これは五十八年度ですけれども、合格者が八千二百七十二名おって入校したのが七千七百六十三、ここでもう既に数百人落ちているでしょう。そして最終的に修了した人は六千百九十三ということで、また途中で随分たくさん中退しているんですね。こういうような人たちはやはり生活の不安といったような点が大きいのじゃないかと思うのですけれども、こういうような人たちがどうして入ってこなかったかあるいは中途退所したかというようなことについて調査もし、その改善のためにいろいろ努力をしたというようなことがあれば教えていただきたいんです。  先ほどからお話があっておって既に議論になっていますけれども、いわゆる自己都合退職の人が三カ月間お金をもらえない、そのために入校を認められても入っていないというケース、私もその訴えは聞いているんです。その点についても一言説明してください。
  203. 宮川知雄

    宮川政府委員 公共職業訓練施設にせっかく入校しながら卒業できない人たちがある程度あるということは、残念でございますがございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、就職してそのために退校するあるいは進学のために退校するという人が、外れる人の大体半分はございます。残り半分がどうも一つはっきりしないというようなことで出るわけでございまして、やはり生活指導等を積極的に進めなければならないと思っておりますが、この点について特に積極的にその意向まで調査したのがございません。なるべく早い機会に途中で退所といいましょうか退校した人たちの特にメンタルな面での調査というようなものも十分考えてみたいと思っております。
  204. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 正当な理由のない自己都合退職者に対する訓練期間中の問題でございますけれども、自己都合に基づいて行われる給付制限はあくまで離職理由に基づいて適用される問題でございますので、その後この離職者が訓練校に入りたいというような求職活動の理由によって給付制限を云々するということとは関係がございませんので、訓練校に入校したことをもって給付制限を行わないというような取り扱いをすることは困難だと考えております。しかしながら離職をされる際に新しい技術に適応できないがために離職をせざるを得なかったという方々につきましては、昨年の保険法の改正のときも申し上げましたように給付制限は適用しないということでございますので、したがって入校中の給付等は制限されないという仕組みになっているわけでございます。
  205. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それから、特に在職者で向上訓練に見える人たちは相当な重い負担に耐えてこの向上訓練を受けているというのが実態じゃないかと思います。私が地元の八幡の実態を調べた資料を見せていただきましたところ、この向上訓練には会社の勧めできたという人が七一%もおられるわけですが、有給で受講料会社負担で来ているという人は三八・四%だけで、あとは無給が、受講料は自分の負担か、どっちも自分の負担かというような形で来ている人が多いんです。しかもそういうような人たちが多いから、訓練は夜間あるいは土日というようなことにも集中している、一日ちゃんと働いてまた夜こういうようなものを受けなければならないということは非常に大変じゃないか、あるいは土日休みを自分の犠牲でつぶしてこういうのを受けなければならぬということは非常に大変だと思うのですね。  こういうような点などについても、もっと事業主などに対して啓発もし、先ほどもお話ししましたけれども、ああいういろいろなあなた方の助成の制度ども活用させるようなことによってこういう状況を改善させるための努力というのも非常に重要じゃないかと思うのですが、この点の努力、どういうふうにされているのでしょうか。
  206. 宮川知雄

    宮川政府委員 向上訓練は在職労働者でございます。したがって、そういう意味では大変熱心に勉強する人たちでございます。その人たちが来やすいようにということで、実際に希望もございますので、日曜日、土曜日の午後あるいは夜間九時くらいまで訓練校を使うというのは、これは訓練校の指導員にとっても大変なことでございますが、社会のニーズに積極的にこたえようということでそういうことをしているわけでございますが、実際に有給休暇をもらって来る人が三八%というようなところがあるとすれば、それ以外については恐らく夜間あるいは土曜、日曜ということで大変御苦労願うわけでございます。  そうした意味では、今先生指摘のように、私どもの生涯能力開発給付金、中には有給とそのほかとあるわけでございますが、こうしたものを特にまず中小企業事業主等にもっと積極的に使ってもらうように、PRが不足しているということが一つございますので、PRを兼ねて、向上訓練につきましてももっともっときちっとお給料をもらいながら通常の時間勉強に来られるように、そうしたものを考えていきたいと思います。
  207. 小沢和秋

    小沢(和)委員 入所者の人たちにとって何といっても心配なのは、それだけ努力をして一生懸命やって就職と結びつくことができるかどうかというのが養成訓練を受けたりあるいは能力開発訓練を受けたりしている人たちの気持ちだろうと思うのです。当局の方からいただいた資料を見ますと、非常に心配なのは、養成訓練を受けている人たちも能力開発訓練を受けている人たちも、どちらも就職率が低下する傾向が見られるということですね。  養成訓練の場合でいったら、五十三年度が九四・二%だったのが年ごとにずっと下がって、五十八年度には九一・三%になっている。それから能力開発訓練については、五十三年度は七一・九%だったのが五十八年度は六三・七%まで下がっているわけです。この間、概していわゆる低成長の時期だったというふうには言えるかもしれませんけれども、こういうふうにずっと下がっているというのは重視すべき傾向ではないかというふうに私は考えます。  特に、能力開発訓練の中でもいわゆる高齢者訓練を受けている高齢者の人たちの場合は、これは東京都のケースでいただいた資料があるのですが、例外的にビル管理科に入っている方が九九%というような好成績であるほかは大体五割台なんですね。一番悪いのは表具科、これはふすまなどの張りかえということでしょうか、四〇%というようなことで、せっかく一生懸命やっても、こういうようなことでは本人たちにとっても一生懸命やったかいがないということじゃないかと思うのですね。こういう就職がどうも厳しい傾向がはっきりあらわれてきているというような点についてはどういうように努力をしていただいているのでしよう。
  208. 宮川知雄

    宮川政府委員 御指摘のように特に能力開発訓練で見てみますと、五十三年の七一・九%の就職から五十八年には六三・七%に、そういう時期ではございましたが、落ちていることは確かでございます。養成訓練についても横ばいというふうに私どもは見ておりますが、それでも九四・二%が九一・三%でございますので、十分考えなければならないところでございます。  特に訓練校の場合には就職に結びついて初めて訓練校としての意味があるわけでございますので、特に今度の法律で、公共職業訓練校はその訓練生の就職について特に努力しなくちゃいけないという規定を設けましたのも、実際には職業安定機関と連携をとりまして就職のための活動をしておりますが、それを制度的にももっときちっとやろう、そういうことを内外に鮮明にした、そういう意味で新しく法律改正したところでございまして、今後この就職率を何とか挽回するように安定機関とも十分連携をとりながら考えていきたいと思います。
  209. 小沢和秋

    小沢(和)委員 これでやめます。——これでやめますというのは、今から一問してですよ。  ごく簡単にやります。この関係でいろいろ地元の調査をした中で、ぜひ聞いてほしいと言われた点をちょっとお尋ねします。  それは小倉の総合職業訓練所の短期大学昇格の問題が今起こっておりますけれども、この中で特に短大のコースに入らない訓練科目が出た場合にどうなるかということが関係者の不安を呼んでおりますので、この点についてどういうふうにするか。  それからもう一つは、やはり小倉の身体障害者訓練所というのがあるわけですが、これの若松移転という問題が起こっている。全員入寮が原則だが、今まで適所を認めてきたわけですね。ところが移転する若松は交通が不便なところになりますので、適所が困難になる。これは非常に困るのではないかという声も聞くわけですが、こういうような点についてどうお考えか、簡単に二点お答えください。これで終わります。
  210. 宮川知雄

    宮川政府委員 小倉の短大昇格問題につきましては、短大というのは先ほども御説明申し上げましたが、高度の実践技術者を養成する、社会に出て十分それだけの評価のできる高い知識、技術、技能を身につけた人を社会に送り出そうということでございます。したがって、短期大学ということでしっかりしたものをつくるためには、教育訓練科目につきましても何でもそのまま従来どおり横滑りさせるというわけには必ずしもいかない面がございます。しかし、一方で指導員の先生方の生活といいましょうか立場の保障あるいはこの人たちをさらに活用することは大変大事なことでございますので、そうした意向の中で全体をよく考えて、そのためには再研修その他のやり方もございましょうし、ただ、申し上げたいのは、あくまで短大は社会のニーズに十分こたえられるものをまずつくる必要がある、そういう前提があるということは御理解いただきたいと思います。(小沢(和)委員「その人たちに心配を与えるようなことをせぬというわけですな。」と呼ぶ)それも十分考えていきたいと思います。  それから第二番目の身障校の関係でございますが、近くに大きな道路が通ったそうでございまして、大変振動、騒音等がひどい、かえって身障者の人々には危ない、手狭である、校舎が老朽化しているということで移転、建てかえを考えたわけでございますが、今回は全員が入所できる宿舎も用意いたしますし、十分施設的には完備したものになりますので、御心配のような点は何とか解消できるのではないかと考えております。
  211. 小沢和秋

    小沢(和)委員 終わります。
  212. 丹羽雄哉

    ○丹羽(雄)委員長代理 次回は、明二十八日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十八分散会