○増岡国務大臣
社会労働委員会の御審議に先立ち、厚生行政について所信の一端を申し述べたいと存じます。
我が国の社会保障制度は、時代の要請を踏まえながら着実に整備され、今や
国民の生涯設計に不可欠のものとして
国民生活に深く定着してきております。人生八十年時代の到来は、その大きな成果の一つであります。
この人生八十年時代を真に豊かで輝かしいものにしていくためには、長くなったライフサイクルに適合するようにさまざまな社会システムを見直していく必要があります。
私は、先般、労働大臣と話し合い、
高齢者雇用問題等に関する両省の連絡会議を設置いたしました。また、近々、各界の有識者の方々にお集まりいただき、人生八十年型社会のあり方等について御意見を伺い、広く
国民の英知を結集したいと考えております。
そして、すべての
国民が長くなった人生を豊かで幸せなものとし、本当に長生きしてよかったと言えるような、明るく活力のある福祉社会を築いてまいりたいと考えております。
昭和六十年度予算編成に当たりましては、既存の施策の合理化、効率化を進め、社会保障の実質的水準は低下させないことを基本として取り組み、健康対策や福祉対策などについては重点的に配慮することといたしました。
以下、
昭和六十年度における主要な施策について申し述べます。
人生八十年時代において、明るく活力ある社会を築いていくためには、健康が基本であります。このため、疾病の予防や健康づくり対策を特に重視し、四十歳からの健康づくりを目指す保健事業をさらに
充実するとともに、心の健康づくりや職域における健康づくりにも積極的に取り組むこととしております。がん対策につきましても、「対がん十カ年総合戦略」に基づき、重点的に配慮しております。
医療
制度改革の第一歩として、地域医療計画の策定等を内容とする医療法改正案が現在継続審査となっておりますが、その早期成立をお願いする次第であります。さらに、家庭医制度、医療と福祉、施設と家庭の中間的機能を有するいわゆる中間施設について検討を進めてまいります。
また、国立病院、療養所につきましては、計画的に再編成を進めてまいる所存であります。
医療保険制度につきましては、一昨年、老人保健制度が創設され、また、昨年、
健康保険法等の改正が行われましたが、今般の改正の趣旨に沿い、医療保険制度の円滑な運営に全力を尽くすとともに、今後とも、医療費の適正化、効率化を進めてまいる所存であります。
公的
年金制度につきましては、昨年、
年金改正法案を提出し、今国会冒頭にも御審議いただき、一部修正の上、可決いただいたところであります。現在、参議院で御審議いただいておりますが、来年四月に新しい
年金制度をスタートさせたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
なお、
昭和六十年度においては、三・四パーセントの特例スライドを実施することとしております。
社会福祉につきましては、すべての人ができる限り住みなれた地域で家族や顔なじみの人々とともに、誇りと生きがいを持って暮らせるようにしていくことが基本であると考えております。
その意味からも、家庭奉仕員の大幅な増員等老人、障害児・者の在宅福祉対策の
充実に特に意を用いたところであります。また、町ぐるみのボランティア活動の基盤づくり、精神薄弱者福祉工場の制度を創設することとしております。
また、母子保健対策、保育対策の
充実、児童館の増設などを進めるほか、特に本年が国際青年年であることから、記念事業を行い、これを契機として児童福祉の一属の推進を図ってまいります。
児童扶養手当改正法案が継続審査となっておりますが、本年八月から新制度を実施できるようお願いいたします。
児童手当制度につきましては、昨年末に中央児童福祉審議会から意見書をいただいたところであり、これを参考として早急に
制度改革の成案を取りまとめるよう努めてまいる所存であります。
援護施策につきましては、戦傷病者戦没者遺族等に対する
年金の額の引き上げ及び戦没者等の遺族に対する特別弔慰金の継続・増額
支給を行うほか、中国残留孤児対策を推進するなどその一層の
充実強化に努める所存であります。
また、社会保険関係地方事務官制度につきましては、行革大綱に基づき、これを廃止し、国においてその事務を処理することとするための所要の
法律案を前国会に引き続き再提出することといたしております。
このほか、
原子爆弾被爆者対策、難病対策、水道・廃棄物に関する施設整備、環境衛生関係営業の振興、医薬品・食品・家庭用品の安全確保対策など厚生行政は、ひとときもゆるがせにできない施策ばかりであります。
本格的な高齢化社会の到来を控え、ここ数年は社会保障の再構築期ともいうべき非常に重要な時期であります。
私は、皆様の御理解と御協力を得ながら諸問題の解決に全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。何とぞよろしくお願いをいたします。(拍手)