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1984-12-13 第102回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年十二月十三日(木曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 戸井田三郎君    理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君    理事 小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君    理事 池端 清一君 理事 村山 富市君    理事 大橋 敏雄君 理事 塩田  晋君       有馬 元治君    伊吹 文明君       古賀  誠君    斉藤滋与史君       自見庄三郎君    谷垣 禎一君       友納 武人君    中島  衛君       中野 四郎君    長野 祐也君       西山敬次郎君    野呂 昭彦君       浜田卓二郎君    林  義郎君       藤本 孝雄君    箕輪  登君       網岡  雄君    金子 みつ君       河野  正君    多賀谷眞稔君       竹村 泰子君    永井 孝信君       森井 忠良君    新井 彬之君       沼川 洋一君    森田 景一君       森本 晃司君    塚田 延充君       梅田  勝君    小沢 和秋君       菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 増岡 博之君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      工藤 敦夫君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘仲君         厚生省年金局長 吉原 健二君         社会保険庁年金         保険部長    長尾 立子君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局計画官  佐藤 隆三君         大蔵省主計局共         済課長     坂本 導聰君         大蔵省主計局主         計官      小村  武君         大蔵省主税局調         査課長     薄井 信明君         大蔵省理財局資         金第一課長   寺村 信行君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         厚生省年金局数         理課長     田村 正雄君         自治省行政局公         務員部福利課長 松本 英昭君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十二日  辞任          補欠選任   浦井  洋君      梅田  勝君 同日  辞任          補欠選任   梅田  勝君      浦井  洋君 同月十三日  辞任          補欠選任   稲村 利幸君      中島  衛君   河野  正君      金子 みつ君   浦井  洋君      梅田  勝君 同日  辞任          補欠選任   中島  衛君      稲村 利幸君   金子 みつ君      河野  正君   梅田  勝君      浦井  洋君     ――――――――――――― 十二月十三日  国民年金法改悪反対等に関する請願梅田勝君  紹介)(第一二号)  同(小沢和秋紹介)(第一三号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一四号)  同(柴田睦夫紹介)(第一五号)  同(田中美智子紹介)(第一六号)  同(辻第一君紹介)(第一七号)  同(東中光雄紹介)(第一八号)  同(藤木洋子紹介)(第一九号)  同(松本善明紹介)(第二〇号)  同(簑輪幸代紹介)(第二一号)  老人福祉充実等に関する請願梅田勝紹介  )(第二二号)  同(浦井洋紹介)(第二三号)  同(小沢和秋紹介)(第二四号)  同(工藤晃紹介)(第二五号)  同(田中美智子紹介)(第二六号)  同(辻第一君紹介)(第二七号)  同(中島武敏紹介)(第二八号)  同(林百郎君紹介)(第二九号)  同(山原健二郎紹介)(第三〇号)  保育所制度充実に関する請願鹿野道彦君紹  介)(第三一号)  同(古賀誠紹介)(第一一五号)  同(櫻内義雄紹介)(第一一六号)  民間保育事業振興に関する請願工藤晃紹介  )(第三二号)  同(瀬崎博義紹介)(第三三号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第三四号)  同(不破哲三紹介)(第三五号)  同(藤井勝志紹介)(第三六号)  同(堀之内久男紹介)(第三七号)  同(正森成二君紹介)(第三八号)  同(松本善明紹介)(第三九号)  同(石原慎太郎紹介)(第七二号)  同(大塚雄司紹介)(第七三号)  同(大野潔紹介)(第七四号)  同外二件(田中慶秋紹介)(第七五号)  同(藤原哲太郎紹介)(第七六号)  同(山本幸雄紹介)(第七七号)  同(吉田之久君紹介)(第七八号)  同外一件(上村千一郎紹介)(第一一七号)  同(古賀誠紹介)(第一一八号)  同(櫻内義雄紹介)(第一一九号)  同(浜野剛紹介)(第一二〇号)  同(船田元紹介)(第一二一号)  同(武藤嘉文紹介)(第一二二号)  同(石川要三紹介)(第一四七号)  同外一件(佐藤一郎紹介)(第一四八号)  同(中村靖紹介)(第一四九号)  同(仲村正治紹介)(第一五〇号)  同(細田吉藏紹介)(第一五一号)  健康保険本人十割給付復活等に関する請願(田  中美智子紹介)(第四〇号)  同(田中美智子紹介)(第七九号)  同(田中美智子紹介)(第一二三号)  国民健康保険国庫補助増額等に関する請願  (浦井洋紹介)(第一一一号)  同(中川利三郎紹介)(第一一二号)  労働基準法改悪反対、実効ある男女雇用機会均  等法制定に関する請願工藤晃紹介)(第一  一三号)  児童扶養手当削減反対に関する請願中林佳子  君紹介)(第一一四号)  医療費負担の軽減に関する請願北口博紹介  )(第一四五号)  心身障害者雇用制度充実に関する請願(志賀  節君紹介)(第一四六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第百一回国会閣法第三六号)  国民年金法及び特別児童扶養手当等支給に関  する法律の一部を改正する法律案多賀谷眞稔  君外四名提出、第百一回国会衆法第四四号)      ――――◇―――――
  2. 戸井田三郎

    戸井田委員長 これより会議を開きます。  第百一回国会内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案及び第百一回国会賀谷興稔君外四名提出国民年金法及び特別児童扶養手当等支給に関する法律の一部を改正する法律案の両件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷眞稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今度の年金の改定は、四十年後の日本経済を見通して、その間の過程を展望しながらつくられたものであります。それだけに、今後の日本経済がどうなるかということは非常に大きな問題が潜んでおるわけです。  そこで、まず経済企画庁に、二十一世紀にわたる日本経済展望、その成長をどう見ておるのか、その際の国民所得はどうなるのか、これらをお聞かせ願いたい。
  4. 佐藤隆三

    佐藤説明員 ただいま御質問ございました二十一世紀経済展望ということにつきましては、政府といたしましてはその時期までの長期展望というものは行っていないわけでございますが、昨年八月に決定されました「経済社会展望指針」におきましては、六十五年度までの展望を行っているわけでございます。そこにおきましては、対象期間中の年平均実質成長率を四%程度ということで見込んでいるところでございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政府としては、物価についてはなかなか見通し困難でありますけれども、これらを含めて名目成長率はどのくらいに見ておるのか。
  6. 佐藤隆三

    佐藤説明員 「展望指針」におきましては、これも六十五年度まででございますが、名目成長率は六%程度から七%程度、それから消費者物価でございますが、年平均上昇率三%程度、このように見込んでいるわけでございます。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現在の社会保障国民所得に占める割合、これをひとつ各国別に、主要な国で結構ですからお聞かせ願いたい。これは厚生省でもよろしいし、企画庁でもいいです。
  8. 吉原健二

    吉原政府委員 国民所得社会保障給付費の占める割合でございますが、昭和五十七年度におきましては、国民所得に対する我が国の社会保障給付費割合は一四・五%程度でございます。  諸外国でございますが、一九八〇年で比較をいたしますと、アメリカの場合は一六・四、それから西ドイツの場合は二九・九、フランスの場合には三三・四、スウェーデンの場合には三九・六、イギリスは一九七九年のデータでございますが二一・二。ちなみに日本の一九八一年、五十六年は一三・五でございます。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今、老齢年金受給者はどのぐらいいて、その水準はどのぐらいになっているのですか。もう少し具体的に聞きますと、約千二百万人ぐらいの老齢年金受給者のうちで、拠出した国民年金並びに福祉年金、そういう金額はどの程度になり、そうして受給者のうちにどのぐらい占めているのか。
  10. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。  最初に、厚生年金の現在の年金額を申し上げます。老齢年金でございますが、五十九年の三月末現在の数字を申し上げます。老齢年金受給者数でございますが、これは総数で……(多賀谷委員「全部ですよ。船員保険共済も含めて全部ですよ」と呼ぶ)共済を含めて全部でございますね。ちょっとお待ちください。
  11. 多賀谷真稔

  12. 長尾立子

    長尾政府委員 まず、受給者の数を申し上げれはよろしいわけですわ、全体の数字で申し上げますと、五十九年の六月現在の大まかな数字で申し上げますが、厚生年金が全受給者を含めまして六百十四万人。
  13. 多賀谷真稔

  14. 長尾立子

    長尾政府委員 老齢年金はそのうち二百七十九万六千人でございます。それから、国民年金は全体の受給者が七百八十三万七千人、そのうち老齢年金受給者が六百二十八万九千人でございます。船員保険が十一万六千人、そのうち老齢年金受給者が五万九千人でございます。福祉年金受給者が二百九十二万人、共済が百九十万九千人ということでございますので、全体を合計いたしまして、福祉年金部分を含めまして全体を申し上げますと、千八百九十二万三千人が受給者数でございます。  具体的な金額を申し上げますと、一人当たりの年金額を申し上げればよろしゅうございましょうか。(多賀谷委員老齢年金だけでいいですよ」と呼ぶ)  厚生年金老齢年金の月額でございますが、十一万三千円でございます。国家公務員共済組合が十四万八千円、地方公務員共済組合が十六万六千円、公共企業体共済組合が十六万三千円、私学共済が十二万六千円、農林共済が十万七千円でございます。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 肝心な拠出制福祉年金福祉年金はわかりますが、拠出制は
  16. 長尾立子

    長尾政府委員 国民年金年金額は、制度的な金額を申し上げてよろしゅうございましょうか。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いや、実際は幾らか。
  18. 長尾立子

    長尾政府委員 繰り上げとかそういうものがございますので、現実の金額になりますと若干違うのでございますが、十年年金金額を申し上げますと、五十八年度の金額で二万九千七百九十二円でございます。福祉年金は二万五千百円でございます。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ベテランの長尾さんでも、受給者総数を言ったかと思うと今度は老齢年金者数を言われましていささか整合性に欠けるわけですが、要するに、高度成長を遂げて自由社会の第二位のGNPを誇っておる、そうして世界のGNPの約一〇%台になっておる、こういう国が、国民の千二百万人の老齢年金受給者のうちで三万円以下がまだ四分の三いるのですよ。ですから、問題は、現在の年寄りをどうするかというのがまず緊急なんです。  最近の論調もそうですし、あなた方の話を聞いていても、高齢者社会到来をする、しかも急ピッチに来ると言うが、急ピッチに来るというのは余り意味がないのですよ。というのは、諸外国では既に財源を持っていて、そうして十分な積み立てがあってそれを徐々に崩しておるというならば、日本には積み立てが少ないから急ピッチに来れば大変だということがある。ところが、とこもみんなインフレで空ですよ。ほとんどの国がいわば賦課方式をとっておるのでしょう。ですから、急ピッチに来るということは何ら意味をなさないのです。それを急ピッチ高齢化社会が来る、こう言う。それは意識の問題としてはありますよ。ところが財政上から見ると、急ピッチに来るということは何ら意味がない。ところが、このことがどうもあなた方のPRに使われておる。  そうして、先般からお話があるように、次の世代国民負担が、後代の国民負担が多くなるから今のままではいけません、給付水準を下げなければならぬ、こう言う。ところが、現在の老齢者に対して極めて冷淡であり冷酷ですよ。それを放置しておいて四十年後の話をしておるのです。この姿勢に私は一番問題があると思うのです。後から私は具体的に質問を展開いたしますが、一体これをどうするか。現在無年金者もおるでしょう。今無年金者はどのくらいと把握されておるのですか。それから、時間を節約する意味において、厚生年金脱退一時金をもらった人はどのくらいいるのか。
  20. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。先生承知のとおり、無年金者が、いかなる年金権にも結びつかない形の無年金者が潜在的、顕在的にどれくらいいるかということになりますと、他の被用者年金各法におきます加入状況でございますとか受給権有無等について確実なものを市町村が持っておりませんので、正確に無年金者がどのくらいおるかということを、市町村を通じまして国民年金適用漏れという形で調査をいたすのは大変困難であるわけでございますが、現在、国民年金保険料徴収状況、いわゆる検認率で見ますと、五・四%程度の方が保険料をいわば滞納しておられるという実態がございます。これは、免除者数を除きました全被保険者数に対しましての比率で考えますと大体百二十万弱になるのではないかと思うわけでございます。しかし、国民年金の場合には、二十から六十歳までの四十年間のうち二十五年間の保険料納入がございますと、後の期間は滞納がございましても年金権に結びつくわけでございますので、百二十万を最大限といたしまして無年金可能性を持っておるというふうに考えられるわけでございます。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それから脱退の方は。
  22. 長尾立子

    長尾政府委員 脱退手当金受給者数につきましては、ちょっと調べましてからお答えさせていただきます。先生の御質問は今までの累積ということでございますね。ちょっと調べさせていただきます。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その脱退一時金をもらっておった人、これは大部分が無年金者になっておるのですが、そのほかに無年金者がなぜおるかという、そういう点を考えてみますると、一つは公的年金への不信感です。なぜかというか、厚生年金ができて四十年でしょう。それから、労働者年金ができて四十二年ですよ。四十二年もたって、まだ二百七十万しか老齢年金受給者がいないということは、これが問題なんですよ。昭和十九年には加入者が八百三十万いたのですよ。八百三十万いたりに、今日四十年たってもまだ受給者が二百七十万しかいないというのは、これは大変大きな制度的な欠陥があったからです。どこに欠陥があったかというと、これは公的年金要素を欠いておったのです。  第一には、公的年金強制加入でしょう。第二の要件は、物価スライドです。第三の要件は、過去勤務を見るということです。第四の要件は、ハンドペンション、要するに次の企業に行ってもつながる。そのうちで実行をしたのは、第一と第四ですよ。強制加入、まあ任意の人もありますけれども。それから、いわゆる次の企業に行っても年金がつながる。制度として最も大きいスライド制は御存じのように今までなかった、そうして四十八年の改正で入った。ところが、いまだに過去勤務については何らないのです。もちろん、厚生年金あるいは労働者年金ができたときは、戦費調達購買力を抑制するというのが目的です。ですから、私はそのことは言わないのだけれども昭和二十九年に厚生年金改正したときに、これらの手当てが全然なかった。  では、日本にはそういう制度がなかったかというと、そういう制度があった。大正九年に国鉄年金に移るとき、国鉄共済は、国有鉄道になってからの十三年間を過去勤務として見たのです。それは、床次竹二郎さんが鉄道院総裁のときに、過去勤務を全部、国有鉄道になってからずっと見たのです。そうして、ほかの共済も皆、過去勤務を見たのですよ。ところが、その後にできた厚生年金は、過去勤務については全然見なかった。そうして、二十年間掛けなければ資格がありませんよと言ったものですから、二十年たたなければ資格ができない。そういう中で脱落をしていった。ですから、今の無年金者というのは、決して全然払ったこともないというのじゃない、やっぱり納付しているわけですよ。それがいまだに放置をされておるというところに非常な欠陥がある。  そこで、今さらその話はできないのですけれども、この無年金者の取り扱いをどうするかということは、今一番大きい問題でなきゃならぬでしはう。大臣、どうですか。  第一の大臣に対する質問は、高齢化社会到来と言いながら、現在の高齢者に対しては極めて冷たい。一体、今の福祉年金や五年年金で生活ができますか。さらに、この無年金者をいつまで放置しておくのですか。これらに対して大臣はどういうようにお考えですか。
  24. 増岡博之

    増岡国務大臣 現在のお年寄りを大事にするということも大変大事なことでございますので、財政事情の許す限り拡大してまいりたいと思っております。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現在の社会保障国民所得に対する比率は一四・五ですよ。これが一体福祉国家を目指す政府の態度ですか。しかも、財政こそ赤字になっておるけれども貿易収支は三百五十億ドルも黒字になっている。そうして海外にどんどん進出する。資本収支は逆に四百億ドル赤字になっている。こういう日本経済の中で一四・五%、一番低いじゃないですか。よその国で、日本は二万数千円が年金ですよと言ったら、一けた間違っているのじゃないですかと質問されますよ。ですから、今の足元の高齢者の対策がまず第一に肝心です。そうしなければ、意識的に言っても、おじいちゃんを粗末にして、おれのときは大事にしてくれなんて言ったって、それは意識的に孫はそう思いませんよ。ですから、今の年寄りを大事にしないでおいて、おれのときはひとつ大事にしてくれと孫に言ってもだめですよ。ですから自然に高負担になる。それでなくても、あなた方は言っているでしょう。次の世代は高負担になるんだと言っているのですよ。高負担になるから、これは改正案が要るのだ。今から、将来は大変だということを盛んに言っているわけでしょう。大臣、どう思われますか。
  26. 増岡博之

    増岡国務大臣 今後、数十年経過しますうちに高齢化社会が進み、今のままでは相当な高負担になることは間違いないと思います。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 高齢化社会というのは、どういう意味ですか。
  28. 増岡博之

    増岡国務大臣 現在の年齢構成より、将来高齢者人数がふえるということでございます。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 なるほど現役といわば高齢者との対比、しかし、私は、この物差しだけでは社会保障は成り立たぬと思うのですよ。現役が少なくても、日本経済は伸びているのでしょう。今、経済企画庁は、実質四%、名目で六ないし七とおっしゃっている。日本経済は伸びているのですよ。現役が少なくても日本経済は伸びておるのに、なぜ高齢者を冷遇するのですか。ただ現役高齢者人口対比だけで物を論じておるところに、本質的な解決をしない道があるのです。どうもそのPRが効き過ぎたね。あなた方は意識的にそれをやったのですね。だから、こういう物の考え方をやっていれば、みずから厚生省は自滅をしますよ。日本経済生産力が伸びて、財力が伸びて、経済力が伸びておるのに、それになぜ財源を求めないのか。
  30. 吉原健二

    吉原政府委員 これからも昭和三十年あるいは四十年代のような高度成長はなかなか期待できないと思いますが、先ほど来御議論のございましたように、やはりある程度日本経済なり社会というものは伸びていくと思います。しかし、それ以上に高齢化程度高齢化のスピードというものは速いわけでございまして、先ほど諸外国社会保障給付費国民所得に対する割合日本はまだ低いではないかという御指摘がございましたけれども、これはもう十分多賀谷先生承知の上での御質問だと思いますけれども、諸外国高齢化比率というのは、日本とは比較にならないほどもう既に高いわけでございます。日本の場合にはまだ一割になるかならないかという率でございますけれども、先ほど引用いたしました諸外国高齢化比率というのは、もう一五、六%から二〇%のところでございます。したがって、それに対する年金給付費というのを中心にした社会保障費というのが低いのは、向こうが、諸外国が高くて、日本の場合が相対的に低くなっているのは当然なんでございます。  これからがどうなるかということが大変問題でございまして、日本の場合には、高齢化とともに、今の制度のままにしておきますと、大変な勢いで年金給付費を初めとして社会保障費がふえていく。その点について私ども大変心配をしているわけでございます。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あなた方の全体的な、文書でも何でもそうですけれども、このパンフレットを見ても、負担が大変だ、大変だということはかり書いておるのですよ。しかし、経済はどれだけ伸びておるということも書いておりますよ。そして給付費は五%ずつ上げるのだと書いてある。書いてあるけれども、それは小さい。どこにあるか、老眼鏡で見なければならぬように小さく書いてある。大きいのは、一万三千円になるということだけは大きく書いてある。どうも発想がそもそも基本的に間違っておるのじゃないかと私は思うのですね。  僕は大臣にもう一回聞きますけれども人数が少なくても日本経済は伸びておる、ロボットも使っておるというのに、なぜ給付水準を下げなければならぬのですか。私は不思議だと思うのですよ。日本経済現役が少ないからだんだん縮小していくというならば、確かに給付水準を下げなきゃならぬ。ところが、日本経済が伸びておるのになぜ給付水準を下げなきゃならぬのですか。私はそのことを聞きたいのです。
  32. 吉原健二

    吉原政府委員 もちろん日本経済は伸びておりますし、これからも伸びると思います。ただ、年金の問題で申し上げますと、年金というのは、働いている世代というものが退職をした老後の世代を扶養する社会的な仕組みであるわけでございます。その働いている世代、いわば現役世代引退をした高齢者世代、そういったものの比率がどうなるかによって、年金の運営の難しさというものが生じてくるわけでございます。  よく言われますように、今は大体六人ないし七人の人で一人の老人を扶養している関係にあるわけでございます。これが将来は三人なりあるいは二・五人で一人を扶養する、これはもう厳然としたはっきりした事実なんでございます。日本経済が伸びるか伸びないか、それはある程度不透明な要素もございますが、人口の構造だけは、そういった現役世代引退世代との割合だけは、これはもうはっきりした冷厳たる事実として明らかなわけでございます。そういったことに対応した年金制度に今から準備をしておきたいというのが私ども考え方でございます。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし、少ない現役生産が伸びておるというのですから、人口比だけで負担のことを考える必要はないでしょう。私は、現役の諸君に負担を全然かけないと言っているんじゃないのです。しかし、今は無人化したFAの工場なんかに人は要りませんよね。そうして、人が要らなければこれは保険料を納める必要はないでしょう。そういうことが今後行われることが予想されておるのに、ただ現役の労働者とそれを雇用しておる経営者、同じような比率で取るというところに間違いがあるのじゃないですか。もうここまで人口比が変わってくる、経済は伸びてくるなら、発想を転換しなきゃだめですよ。労働者に対して同じ負担を経営者はするのだという発想を変えなければ、いつまでたってもこの問題は解決しないのです。そうでしょう。人間だけで負担をしようとするからいかぬのです。どうなんですか。これは大臣答弁だ。
  34. 吉原健二

    吉原政府委員 なかなか考え方の基本に触れるような問題だと思いますけれども、私どもはそうは思いませんで、日本経済は伸びていくと思います。これから伸ばさなくちゃいけないとも思いますけれども年金との関連で言えば、それは、生じた国民所得というものを現役世代とそれから現役引退した世代にどう公平に配分をするかという問題だと私は思うのでございます。そのときに、国民所得を生むのはもちろん働いている現役世代が生むわけでございますから、その働いている世代の生んだ国民所得をどう現役世代引退した世代に配分をしていくか、その配分がまた公平でなければならない。老齢世代に対する配分度が過剰に大きくなりますと、現役世代との非常な不公平が生ずるわけでございます。その辺も十分巨視的といいますか、将来どういった姿になるだろうか、現行年金制度のままにしておきますとどういった不公平、矛盾が生ずるであろうかということなど十分考えて年金の設計を変えていかなければならない、私どもはこういう考え方をしているわけでございます。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あなたは労働者の話だけしておるでしょう。なぜ労働者の話だけしかしないのですか。まず経営者からでしょう。それからさらに、日本経済全体が負担をしなければならぬ問題もあります。それは財政を通じてですよ。そのことを考えないで、現役の労働者、それを雇っている雇用主というだけの対比で論議をしているから間違いがあると言うのです。  だから、これは厚生省でもいいです、企画庁でもいいですが、国及び市町村でもいいですが、国庫及び自治体負担、事業主負担、それから被保険者である労働者の負担、この負担率をお示し願いたい。――それはILOにあるでしょう。八一年版の社会保障コスト、一九七七年度の資料が一番新しい。そこにあるでしょう。
  36. 佐藤隆三

    佐藤説明員 先ほど申し上げました「展望指針」の中におきまして、社会保障負担でございますが、国民負担率につきまして述べておるところがございまして、その中におきましては租税負担社会保障負担を合わせた国民負担率ということで、これにつきまして、現在のヨーロッパの水準よりかなり低いところにとどめることが望ましい、そのように「展望指針」の中では述べているところでございます。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 企画庁ではちょっと無理でしたかね。これはILOの社会保障コストで、何年かに一回調査が出てくるのですけれども、私が申し上げましょう。  収入財源別の構成は、これは一九七七年の資料が一番新しいのですけれども、拠出分について日本の場合は被保険者、労働者が二五・○%、事業主が二八・八%、国庫は二七・九%です。それに対して、よくフィフティー・フィフティーと言われます西ドイツは、被保険者は二九・五ですが事業主は四一・一です。国庫負担は二六・○。それからフランス等を挙げましても、これは被保険者は一九・四、それに対して事業主は五五・七。事業主が非常に高いですね、ヨーロッパ大陸は。それから国庫負担は一九・七。それからイギリスとスウェーデン、要するにイギリスと北欧はおのおのちょっと違うのですけれども、イギリスの方は国庫負担が四三・四、非常に高い。スウェーデンは経営者が高いです、四四・一。こういうようになっているのですよ。そうして、日本は経営者負担が非常に低いですね。経営者の低いところは国庫負担が多いのですよ。こういう形をとっているのです。  ですから問題は、単に今までの方式のフィフティー・フィフティー方式で高い、高い、余計負担がかかるというのじゃなくて、経営者の分をどういうように見るのか、国庫負担をどういうように見るのかということが一番重要なんですよ。今経済企画庁でお話しになったのは、これは全部トータルしてお話しになったのであって、法人税も入っておるのですから、社会保険料と税金が入っておるのですから、私は別にどうこう言いませんけれども、こういうように発想を転換しなければならぬと思うのですよ、四十年後を見るのだったら。それでしかも現役が少ないのですから。そういう観点が全然欠如しておるでしょう。  ですから、私は、そういう点についてどういうメスを入れられたのか。ほかの方は改正になったけれども、労使の負担、そうして議論がありますけれども国庫負担は削減する、こういう形では、まさに労働者の負担が多くなる、多くなるという宣伝に乗るわけですね。その改正をなぜやろうとしないのか。
  38. 吉原健二

    吉原政府委員 将来、大変大きくなる社会保障財源を一体どういうふうに負担をしていくか。今いろいろ御質問の中にもございましたように、大きく分けまして国を中心とした公の負担、事業主の負担、それから労働者本人の保険料負担、大まかにこういった負担の仕方、負担者があるわけでございますけれども、将来今までのような形で我が国の場合にも行っていいかどうか、それは確かにこれからの一つの検討課題だとは思いますけれども、しかし、その問題よりも先に、負担の総量全体が大変なものになる。国民負担限度、それは労働者本人でありましょうと、事業主の負担でありましょうと、あるいはさらに国庫の負担でありましょうと、全体としての負担が大変大きくなる。現在の制度のままでは将来の年金給付を賄い切れなくなるおそれがある。端的に申しまして、こういうところから今度の改革案は出発しているわけでございます。  それで、具体的に例えば保険料についての現在の事業主・本人のフィフティー・フィフティーの負担を今変えるのがいいかどうか。それは諸外国でも若干事業主の負担が高いところはございます。若干高いところはございますけれども、西ドイツもそうだったと思いますけれども、大体フィフティー・フィフティーの国が多いわけでございます。同時に、日本の場合に今フィフティー・フィフティーの負担割合を変えることができるかといいますと、なかなかそういったことについての合意というものが得られるかどうか。長い間、今までフィフティー・フィフティーで来ておりますし、これからもずっと将来絶対そうでないといげないとは私ども考えませんけれども、今の時点でそういった負担割合というものを変えることができるかといいますと、なかなか難しいのではないか、こう思うわけでございます。  確かに将来の検討課題といいますか、フィフティー・フィフティーの負担、あるいは国の負担もあわせて負担の仕方についてはいろいろこれからも御議論のあるところだろうと思います。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今、西ドイツのお話がありましたが、私が言いましたように、西ドイツだって被用者は二九・五に対して事業主は四一・一ですよ、全体の社会保障コストは。ですからやはり、経営者の問題を取り上げるか、国庫負担金の問題を取り上げるかということになるのです、どういうようにするかとなると。だから、ただ労働者負担だけが高くなるから給付を下げるということは間違っておるのではないか、こう言っているのです。  そこで大臣、こういうような状態になって保険料が高くなるという、それで給付は下がるという。そこで、盛んに先般から質問がありました私的保険の問題ですが、もう十月一日から、生命保険はどんどん家庭に入って、奥さん、もう病気をしても今までのように政府は見てくれませんよ、今度は一割負担しなければならぬのですよ、そのほかに差額ベッドだって、付き添いたって要るんですよ、やがて二割になるんですよ、だから安心しておれませんよ、だから私的保険、傷病保険に入ってくださいというので、物すごく勧誘が行われているんですね。もう年金もそうですよ。政府金額ではとても生活できませんよ、だから我が社の保険に入ってください、こういう宣伝がどんどん行われておるわけですね。  そこで、私はこの前の放送討論会を聞いておったわけですけれども、我が党の村山さんがお話しになりました。すなわち、女子の余命年数六十五歳以上で十八年、これは最大です。八十三歳まで生きるのです。そうするとその金額は原資として千八十万円である。ところが、生命保険会社はこれに対して、月三千九百二十円出せば私の方は四十年後からは十八年間、亡くなられるまで五万円保障しますよという保険の勧誘が来ておる。これは間違いですか。あなたは賛意を表されなかったのです。これは間違いですかどうなんですか。
  40. 戸井田三郎

  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いや、大臣が答弁したのですよ。大臣がテレビに出て、あなたはテレビに出てないじゃないですか。だめだよ。大臣が答えたことを聞いているんだよ。
  42. 戸井田三郎

    戸井田委員長 政府委員の方を先に聞いてください。
  43. 吉原健二

    吉原政府委員 今の数字、初めてここでお伺いいたしましたので、そういったことが本当に正しいかどうか、あるいは可能かどうかというのは、私、今すぐここで即答できないのです。(多賀谷委員大臣が言ったんだよ、賛意を表さなかったのですよ」と呼ぶ)
  44. 増岡博之

    増岡国務大臣 私的保険のことにつきましては、政府年金制度以外に自助努力によってやっていこう、こういうことにつきましては私は決して異議を差し挟むものではございません。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私も、私的保険については異議を挟むなんて言ってないのですよ。しかし、政府の方は一万三千円、昭和八十二年から払わなければ出しませんよ、こう言っている。ところが、生命保険が勧誘に来るときは、三千九百二十円出していただけば十八年間、六十五歳から亡くなるまで五万円保障します、こう言っているんですよ。これは間違いですか。これは誇大広告として一体独禁法にかかりますか。
  46. 吉原健二

    吉原政府委員 計算上そういうことになるのかどうか、あるいは生命保険でそういったことが本当にできるのかどうか、それは、先ほども申し上げましたように今ここですぐ御即答いたしかねるわけでございますけれども公的年金といいますか国の年金制度との違いは、四十年後も五万ということの約束ではないわけでございます。四十年後は四十年後の生活水準といいますか、物価なり賃金の水準に応じた給付をいわばお約束をしているわけですね。そういったことでございまして、生命保険の場合には四十年後も恐らく五万。四十年後になりますと、恐らくその五万の実質価値というのは大変小さくなるだろうと私は思うのです。ところが、公的年金の場合には、今の五万ですけれども、四十年後、五十年後には、そのときの名目の貨幣価値でどのくらいになりましょうか、仮に五%ずつ上がっていくとしますと、あるいは十倍以上、五十万くらいには恐らくなるんだろうと思うのです。そのときの貨幣価値では、物価あるいは賃金の上昇によっては、四十年後あるいは五十年後には十倍以上の額になっているだろうと思うのです。ところが、生命保険とか個人保険の場合にはあくまでもそのときの貨幣価値での約束でございますので、公的年金の場合と私保険の場合とはなかなか比較が難しい、またなじまない性質のものだというふうに私は思います。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私が聞いておりますのは、生命保険がこういう勧誘に来るのは誇大広告ですか、間違いですかどうなんですかと聞いておるのですよ。数理課長、すぐ計算できるね。これはぼんとやればすぐできるよ。これは間違ですかと聞いておるのです。けしからぬ、生命保険会社は我々公的年金を破壊するものだ、こう言えますかと言っているんですよ。そういう勧誘があれば事実上公的年金は崩れてくるよ。国民不信感を持つ。
  48. 吉原健二

    吉原政府委員 同じことを繰り返すようでございますが、計算の前提がもう少しはっきりあれしていただけませんと、今の御質問だけではなかなかすぐ、そういったことが可能かどうか……(多賀谷委員「いいです。じゃ、はっきりしましょう」と呼ぶ)
  49. 戸井田三郎

    戸井田委員長 発言を求めてから言ってください、混雑しちゃいますから。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 四十年、四百八十カ月拠出されると、余命年数が女子の場合六十五歳から十八年、そうして年額六十万円、これを我が社で支給するとすれば、割引率を五%にして毎月の掛金は三千九百二十円で結構です、こういう宣伝ビラや加入募集の書類が来た場合に、これは間違いと言えるかどうか聞いておるのです。
  51. 吉原健二

    吉原政府委員 少し時間をかしていただいて検討さしていただきたいと思います。(発言する者あり)
  52. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 運用利子は七・三九です。
  53. 吉原健二

    吉原政府委員 今御質問のそういった保険というものが既に商品として認可されているものかどうか、大蔵省の認可を受けているものなのかわかりませんが、そういうものであれば、仮に大蔵省の認可を受けているものであれば、私はその計算も間違いはないと思います。思いますが、先ほども申し上げましたように、公的年金とはあくまでも性格なりねらいなり考え方が違うわけでございます。物価スライドがあるかどうか、あるいは賃金に応じた実質価値の維持というような機能を果たし得るかどうか、そういう点の違いがあるわけでございますから、同列には論じ得ないというふうに思います。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はよく理解しています。同列には論じられないことを理解しています。しかし、一般の大衆は理解していないのですよ。だから、正確に言いますと、後から申しました運用利回りは七・三九、そうして、これは四十年掛金をしていただきますと十八年間、月五万円を支給いたします、それには三千九百二十円で結構ですという勧誘がされれば、これは不当な誇大広告、インチキである、こう言うのかどうか。ですから、これは問題が起こるのですよ。つまり公的年金に対する不信感が出るから、私は言っているのですよ。政府は一万三千円と言っているのに、普通の保険会社では三千九百円でいいと言っておる。そうすると、みんな国年には入るな、入るなという空気になるでしょう。ですから私は、この点ははっきりして、どこに違いがあって、そしてどういうようになるのだということをはっきり国民の前に明示をしておかないと、公的年金に対する不信感が出ると言うのですよ。私は公的年金がどういうものであるか、局長と同じように知っていますよ。そのときの給付がどのくらいであるかも知っている。しかし、現実にそういう勧誘や宣伝が行われたら、公的年金の基礎は崩壊するのですよ。だから私は、それについてどうですかと聞いているのです。まずこれを確かめたい。これはうそですか、どうですか。この計算はインチキですか。
  55. 吉原健二

    吉原政府委員 やはり繰り返しになりますが、公的保険と個人保険、私保険との違いというものを十分認識といいますか、前提に置いた上での比較でないと、大変国民に誤解を与えるおそれがある。たとえこの計算自体が間違いがない、正しいものでありましても、やはり公的年金との比較に当たってはそういった物価スライド等の問題を十分認識をされた上でのことでないと、私どもとしては大変困るということでございます。
  56. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はそう思って、心配をして質問をしているのですよ。それを明らかにしてもらいたい。それは計算ではそうですけれども公的年金は実はこういうようになっています、その説明が足らないから、国民は惑わされるでしょう。国会の審議においてこの法律改正になるときに、我々は、いや、そうは言うても公的年金はこういう保障があるのですと言わなければならぬでしょう。それで、これは正しいですかどうですか、まずこう聞いている。そうして、どこに違いがあるのか、公的年金の場合はどういうようになるのか、それをはっきりしないと国民不信感が出ますよ。そのまず前提として、数理課長から、計算すればどうなるかを……。
  57. 田村正雄

    ○田村説明員 ただいまの点、お答えいたします。  先ほど来局長が申し上げておりますように、公的年金はスライドがございます。それが個人年金と大変違うところだと思うわけでございます。先ほど先生お話しの五万円といいますのは、契約したときに五万円、もらうときも五万円という名目価値である、こういうことだと思います。  公的年金の方で私どもが計算しておりますのは、動態的な年金を考えておりまして、確かに現在の価格で五万円と申し上げておりますけれども、受給する段になりますと、五%の改定を前提といたしますと四十年後には約三十五万円、こういうことになるわけでございます。そういうことですから、保険料一万三千円と三千九百二十円でございますでしょうか、そのくらいの違いの説明は十分できる、こういうふうに思っております。
  58. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず、あなたの方はそういう宣伝をしてないでしょう。あなたの方は、僕は虫眼鏡という話をしたのは、一万三千円の負担増になることはかり言ってきたでしょう。そこに問題があるというのですよ。負担増になることだけを言ってきた。そのときには給付はこのくらいになるのですよということを、今初めて言ったでしょう。昭和八十二年から一万三千円になりますよ、そのときにはこうなると、政府の言うのは間違っているとは言いませんが、しかし国民に、公的年金と私保険とのこれだけの食い違いは解明しておかなければならぬでしょう。そこで、まず第一にこの問題をはっきりしてもらいたい。  それからもう一つ、私が言いたいのは、あなたは四十年後の話をされているけれども、八十二年から一万三千円になるでしょう。二十三年後になるでしょう。そうでしょう。これはそうなっている。そうすると、昭和八十二年には給付は、五万円は一体幾らになるのですか。
  59. 田村正雄

    ○田村説明員 お答えいたします。  五十九年価格で五万円の年金額は、八十一年までに約十五万円ということになると思います。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 十五万円もらうんですよという宣伝は全然してないでしょう。一万三千円だけの宣伝をしておるでしょう、あなた方は。十五万円もらえるんですよという宣伝はしてないのですよ。これがまた一つ問題なんですよ。それは、あなたの方は一貫して、国民負担が多くなることはかり宣伝してきたのです。だから給付を下げる、これは非常に大きな問題なんですよ。極めて意図があるからですよ。だから、保険料がそんなに上がるんならひとつ給付が下がるのを我慢しようというような、そういうPRを徹底的にやってきたでしょう。しかし、十五万円もらえるんなら一万三千円ぐらい我慢しようかという気持ちも起こらぬこともないのですが、そういうことは全然おやりになっていないのですね。国民には何か、五万円もらうためには一万三千円にやがて上がるんだという印象しか与えてないでしょう。(発言する者あり)
  61. 戸井田三郎

    戸井田委員長 私語はやめていただいて、許可を求めて発言してください。
  62. 田村正雄

    ○田村説明員 申しわけございません。  両方ともパラレルに上がりますので、掛金の方も三倍になりますので、三万九千円ぐらいには上がると思います。
  63. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それなら同じことじゃないですか、パラレルに上がるんなら同じことじゃないですか。それならさっき言うたように、やっぱり実質五万円じゃないですか。パラレルに上がるんならば同じことじゃないですか。僕も誤解しておったが、八十二年に一万三千円納めれば今度は十五万円もらえるというのなら、ああ、これはそうかなと思ったら、今度はこのベースが違うというのなら、これはもう全然話にならぬ。これはもう、これこそペテンですよ。何のために四十年後の保険料はこんなに上がりますと書くのですか。これは全然違う。保険料のべースが違うでしょう。
  64. 田村正雄

    ○田村説明員 お答えいたします。  六千八百円から一万三千円まで保険料が上がりますけれども、この主たる原因は、受給者の増と、それから期間が長くなってまいりますにつれて年金額が平均的に上がってまいります。そういうことで上がってくるわけでございまして、そこが民間の保険とちょっと違うところではないかと思います。(多賀谷委員「民間の保険はいいですよ」と呼ぶ)はい。民間の保険で掛金が割安に見えますのは、先ほどお話し申し上げましたように、あくまでも現在時点の名目価格が将来もそのまま維持されるという形で、現時点で見ますと大変安く見える。その大きな理由は、一つは実は積立金から得られます利息ですね。利息が大変効いているということだと思います。ところが、公的年金ではスライドを完全にいたしますので、物価と賃金に応じて完全なスライドをやっておりますので、利息の効いてまいります余地が大変少ない。そういうことで、今申し上げましたように両方、掛金と給付とを同じぐらいのベースで上げないとバランスをしない、こういうことになっておるわけでございます。
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 利息が非常に安いということはよくわかりますので、これは後から、私はこの運用について質問をしたいと思います。  この保険料が上がるということは、これは私、気がつかなかったな。これだけぴしっと書いておるので、保険料はやはり将来を見通して計算ができておるものだと思っておった。ところが、保険料も上がるというなら、これは何もあなたの方が十五万円とか三十五万円を言うことはないよ。それは保険料もどんどん上がる。そうすると、実質的にはやはり五万円じゃないですか。それはわからぬですよ、僕の理解が違っておったら。しかしそうだとすると、それは公的年金としてもおかしいじゃないですか。何のために計算したのですか。あなたの方で全部将来の収支を計算されておるでしょう。収支計算をしておるのは、利子は七%利回りとして、そうして給付水準は五%上がるという名目でしているのですよ、そして保険料は一万三千円だ、そう我々は理解しておったのだ。今度は保険料が上がるということになると、これは一体どういうことになるのですか。  じゃ、今度は保険料を計算してごらんなさい。一万三千円じゃなくて、保険料の計算をしたら保険料は幾らになるのか。これは前提条件があるのですから、給付水準は五%、利子は七%で計算をしました、そのときの保険料は、昭和八十二年から以降は一万三千円ずつ、こう書いてある。我々は、なるほど給付水準は、給付水準というか名目金額は上がるのだろうと思う。ところが、保険料まで変動するというなら、一体何のために我々は審議しておるのか。これはちょっと整理をしてもらいたい。質問できないよ。
  66. 吉原健二

    吉原政府委員 私どもの将来の年金財政見通しというのは、あくまでも現在価値、五十九年度の価格で、年金給付にしても保険料の額にしても申し上げているわけでございます。  で、仮に一方だけを、給付の方だけを、将来上がった名目価値で申し上げますと、これは大変おかしなことになるわけでございまして、名目価値で申し上げるなら、あるいは両方同じように、保険料の方も名目で申し上げないといけませんし、給付の方も名目で申し上げないといかぬわけでございます。そういったことがございますので、あくまでも五十九年度価格で六千八百円で基礎年金保険料は出発して、四十年納めて五万円、こういった給付水準。その関係は将来ずっと維持されるわけでございます。年金がもしそのときの名目価値で上がりますれば、当然その保険料も、ずっと四十年後も六千八百円とか一万三千円ということじゃございません、当然上がってくるわけでございます。いわば当然なことなんでございます。
  67. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 当然のことながら理解できないよ。何のためにここにわざわざ、給付改定年率五%、利率は何%と仮定して、保険料の見通しは昭和八十二年から一万三千円ですと、何のためにこれを書いてきておるのか。私はそういうのを総合して計算ができていると思ったのです。それで、私的保険を言うけれども、私的保険の方は給付水準について触れていないから、これはうそではないかと。ですから公的年金にお入りください、僕らそういうように説明したいと思ったのだ。ところがあなたの方は、その前提である保険料もパラレルで上がるというなら、これは要らないですよ。何のためにこんなことを書くのですか。給付水準五%、利率はどうのと。要するに利子の問題というのは一番重要ですよ。七%上がるなら、十年間たてば二倍になるのですよ。二十年たてば四倍になるでしょう七三十年たてば八倍になるでしょう。そうして四十年たてば十六倍になるのですよ。この前、大臣は、利子のない話だけされておったけれども、利子を考えないで長期給付は考えられないのですよ。この利子は四十年後には十六倍になるのですよ。ですから、数理課長が言っているように、利率というものが問題になると言ったでしょう。  私は、これ以上質問する勇気はない。僕は、保険料だけコンスタントにいって、一応この事情は違うかもしれないけれども、これでいって、そうして給付水準は変わるのだ、こう思ったのだ。ここに書いてあるからね。保険料が変わると書いてない。そうして、さっきからの年金局長のお話になると、なるほど私的保険はそうだろうけれども、これは給付水準も上がるのだ、だから保険料の一万三千円の説明がつくのだと思ったのだ。そこが、一万三千円も上がるなら、一体何のためにこんな表を出したのかわからぬでしょう。これはもう一回答弁の整理をしてもらいたい。
  68. 田村正雄

    ○田村説明員 では、もう一度お答えさせていただきます。  まず、私どもの計算した中身の説明からさせていただきますけれども、私どもの計算の中身は、先生お話しのように、まず受給者数あるいは給付表、五十九年度価格で計算しております。それはスライドとか給付改善とかを見込まない数字を計算しているわけでございます。そういたしまして、その次の段階といたしまして、スライドが行われた場合一体どういう給付になるか、こういう計算をやっておるわけでございます。  そういたしますとどういうことになるかといいますと、給付の方だけ膨らみます。それは既裁定も含めて当然のことながら膨らむわけでございます。既裁定のものだけ考えていただきますと、その方のために用意された積立金というのはふえませんから、相対的に改定された額に比べて積立金が小さくなる、こういう関係になってまいります。  そうすると、その足りなくなった分はどうするかというと、それはもう御存じのように後代の方に負担していただく、こういうことになるわけです。そういうものが積み重なりますと、どうしても保険料の引き上げをせざるを得ない、こういうことになるわけでございます。  そういうような状態を全部ひっくるめまして、一体保険料がどうなるかという計算をいたしましたのが、そこにお示ししております数字なのでございます。  それで、その表の中の数字は、五%というようなスライド率を見込みましても名目効果は大変大きなものになってしまうということで、保険料だけは実際の感覚に近い額で示した方がよろしいだろうということで、もう一度五十九年度価格に割り戻した額ということで表示してあるわけでございます。  そういうわけでございますので、保険料給付の五万円でございますか、というものが対応できる形で表示さしていただいた、こういう事情でございます。  それなら、両方ともスライドするのだったら何もこんな計算をしなければいいのじゃないかというようなお話があったと思うのでございますけれども、それは先ほど来申し上げておりますように、給付費それから保険料が同時に上がるのでございますけれども、一つだけ上がらない要素がございます。それは何かといいますと積立金でございます。積立金だけは、賃金が上がりましても給付が改定されましてもそれだけは上がらない。それで、積立金がふえますのはあくまでも利回りでございますね。利回りが、今申し上げました改定率以上に得られますと積立金もそれなりにふえるのでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、積立金の方は改定率を上回って実質の利回りが相当稼げるというような状態でございませんので、相対的には小さくなる、そういうことでわざわざそういう計算をしてみた、こういうことでございます。
  69. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 積立金の利回り、これが一番大きく変動する。変動するというか上がるのですよ。上がらなければ大変ですよ。利子よりも物価が余計上がったり給与が余計上がれば、これは大変なことですから、これが一番上がる。ですから、これも変わらないのではなくて利回りによって積立金は変わっていく、こういうことになるのですがね。  どうもパラレルで上がるというお話を聞くと、先ほどの長い間の年金局長の説明は全部御破算になる。あなたの話は全部御破算になる。ですから、我々は、私的保険よりも公的保険の有利さを説明できなくなる。これを整理してもらいたい。
  70. 吉原健二

    吉原政府委員 御破算になるという御指摘のあれがよくわからないのですけれども公的年金と私的年金、私的保険の違いは、あくまでも私的保険というのは現在の価格で将来もいく。それは保険料の額もそうでありますし給付の額もそうであります。今の五万円というのは、私保険の場合には将来も五万円、保険料の額も一定でございます。(「スライドなしか」と呼ぶ者あり)スライドはございません。保険料についても給付についてもないわけです。公的年金については、保険料についても給付についても、物価水準あるいは賃金水準に応じて上げていくわけでございますから、その点がもう基本的に違うのです。  先ほどは給付のことだけを申し上げましたけれども、当然保険料についても、向こうは現在価値といいますか名目の今の価値でずっといく。こちらの方はそうじゃないわけでございますから、そういった意味で本質的に違うということです。
  71. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いや、私が言っておるのは……(発言する者あり)小沢さんは立派な年金を、国民年金をつくるときもおられたのですけれども、随分欠陥のあるのをつくられたから今日こういうように悩んでおるわけですよ。  そこで、私的年金公的年金の本質的な差は私も十分理解をしておりますけれども、どうも私的保険の、三千九百二十円出せば十八年間にわたって五万円を保障しますということに、なかなか公的年金が対応できないのです。残念ながら対応できない。そうすると国民は大変な不信感を抱く。そこで、これを解決する道は何かというと、一つは、相対的に言うと労働者の負担率を抑制する、あるいは事業主から余計取る、あるいは国庫負担を増額する、これ以外にはないのですよ。従来の長い間の方法を踏襲してやろうとするから無理がある。私はそのことを言おうとしておるのですよ。これは無理があるのです。無理があるからこういうことになるのです。もう私的保険にかき回されますよ。随分パンフレットを出して宣伝しなければならぬでしょう。あなた方は一片の法律で、強制適用だから大丈夫だなんて言っておるが、そうはいかないですよ。だから、そういううわさやPRが充満すると、公的年金に対する不信感が起こり、そのことがひいては多くの脱落者を出し、そして滞納を生み、ひいては政治に対する不信感にまで発展する。ですから、先ほどから大臣のお話しになったことについて私はもうとやかく今は言いませんけれども、やっぱり大臣にもよく考えてもらいたいのです。  そこで、一体今のような事業主・被保険者と同じような負担率でいいのかどうか。改正をするならこの時期ですよ。やっぱりこの時期です。  それから、日本経済が伸びておるのですから、しかも日本経済の雇用者の構造が変わっておる。すなわち、最も伸びるところは人を使わないのです。オートメーション、ロボットあるいはFA、無人工場、そういうのが現実にどんどん建設中である。そういう中における保険料を一体どう取るのか。これは一番困るのは中小企業なんかは困るのですよ。労働者を余計雇うところが一番困る、保険料が上がるのですから。それに対する対応が全然ないでしょう、日本のは急ピッチにそういう方向に進んでいるのですから。これについてどういうようにお考えであるか。――大臣、これは大臣が考えることですよ。もう厚生省では無理なんだな。政治的判断が要る。これをお聞かせ願いたい。
  72. 増岡博之

    増岡国務大臣 これまで我が国の年金制度は、人に着目をしてやってきた制度だろうと思います。先生おっしゃるような社会情勢の変化が今後どのような姿であらわれてくるかということは、一応の予測はできましても、どの程度かという限界あるいはどういう種類の業種にどの程度、大中小も合わせでいろいろな要素があると思いますので、それは将来の問題として検討させていただきたいと思います。
  73. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 社会保障制度審議会でいろいろそういう点が論議になって、所得型付加価値税、これは今やれとは言いませんけれども、そういう発想が出ておるのですね。それは、包括的にその企業がどれだけの付加価値を生んだかというのがわかるわけでしょう。そういう型に対してはどういうようにお考えですか。大臣から御答弁を願いたい。
  74. 吉原健二

    吉原政府委員 社会保障制度審議会の基本年舎というのは、所得型付加価値税を創設をしてということでございましたが、所得型にしろ、消費税、消費型にしろ、付加価値税を新たに設けることについては当時もなかなか大変な御議論があったことは御承知のとおりでございますが、現在の時点においても、そういった新しい税なり目的税をつくることについては、まだまだ国民的なコンセンサスといいますか、合意が得られるような時期、段階には来てないと思うわけでございます。今、あくまでも増税をしない、新税を創設しないということで行政改革なり財政再建を一生懸命やっている時期でございますので、将来はいろいろそういう御議論は出てくる可能性は私は十分あると思いますけれども、将来の問題としてひとつ検討をさせていただきたいと思います。
  75. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、今の行革路線の中でこの年金の将来改革をやることは、本当は時期が悪いと思うのですよ。それは、高齢化に向かうということについては早くやった方がいいということはわかるのです。しかし、今の行革路線の中で、財政が窮迫しておるという中で、それを前提に将来展望をやるというのは、財政面からいうと大変悪い時期に出したなという感じを持っているのです。しかし、船は乗り出したのですからそういうわけにいかないけれども、やはりこれについては本当の検討事項で、どうしてもそういうようにしなければ必ず行き詰まる、そのことを申し上げておきたいと思います。  そこで、さっき局長が話しましたね、将来考えなければならぬ問題だと。大臣、よろしいですか。ちょっと御答弁を願いたい。
  76. 増岡博之

    増岡国務大臣 先ほど申し上げましたような、社会経済情勢がどのような変化を遂げるかということは、今後しっかり実際の姿を見きわめてやらなければならないという意味で、将来の検討にさせていただきたい、そういうふうに申し上げたわけであります。
  77. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がかなりとられましたので、少し具体的に質問したいと思います。  そこで、まず基礎年金の五万円の根拠というのは極めてあいまいなもので、あなた方、言うならば今の国民年金が五万円に二十五年でなる、その人が全部資格ができるのが六十一年、いよいよ支給開始が六十五年だ、それに合わせたということで、事務的に言うと極めて簡単だ、それに合わせたのだ。そこに摩擦が起きぬように、国民年金が二十五年で今五万円になるからそれに合わせたんだ。これ以外にない。あとは理屈をくっつけただけだ。僕は正直に言うと、役人らしいなと思うのです。  そこで、夫婦世帯と単身者世帯と同じというのは、やはり基礎年金といえどもおかしいのじゃないですか。どこの国だって基礎年金でも基本年金でも大抵一・六ですね。一・六ないし一・六五か一・七。これはもうどこでも通則的なものですよ。原則ですよ。それはそうでしょう。ですから、今度逆に言うと、遺族年金も今度二分の一から上げたでしょう。上げだというのは、単身者世帯はやはり二分の一ではいかぬからで、それは当然です。ですから、上げたことは結構、結構だけれども、やはり単身者と夫婦世帯が同じようにただ五万円、プラス五万円で十万円、これはやはり基礎年金として根拠がない、私はかように思いますが、どうですか。
  78. 吉原健二

    吉原政府委員 そういう御議論もわかるわけでございますが、ただ、私どもが単純に五万円、それに五万円で夫婦十万円といたしましたのは、一方で、従来の年金というものを保険料の額にしてもあるいは年金の額にしても夫婦単位で考えるか、あるいは一人一人の個人単位で考えるか、その辺から実はそういった違いが出てくるわけでございまして、あくまでも将来とも夫婦単位、世帯単位で考えたらいいじゃないかという御議論も十分ございましたけれども国民一人一人が年をとった場合に年金受給権を持つようにできる、与えるということにしますためにはやはり個人単位の方が望ましい、御婦人一人一人、無業の方にも年金権が与えられるようにするためには個人単位の年金にすることがむしろ望ましいんじゃないかというところから一人で五万円、夫婦の場合には十万円という考え方が出てきたわけでございます。  従来も、国民年金についてまさしく単身者五万円、夫婦で十万円ということで来たわけでございまして、基礎年金は、今度国民年金を全国民に拡大適用するという格好をとっておりますけれども、そういった従来の国民年金考え方を引き継いで五万円、プラス五万円で十万円、こういうことにしたわけでございます。  ただ、サラリーマンの世帯につきましては、あくまでもその上に報酬比例部分というものがあるわけでございますから、夫婦の場合と単身者の場合とでは厚生年金については少なくとも妥当なバランスになっている、今まで以上に妥当なバランスになっているというふうに私は思っているわけでございます。
  79. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 僕は国民年金の基礎年金の話をしているのですよ。厚生年金の話を聞いてない、基礎年金の話を聞いている。これはやはり無理じゃないかということです。  それから、基本がないですね。本当に、日本厚生年金はもうできたときから基本がないのだ。いや、できたときはそうでもないですよ。たしか二十年について三カ月でしたかね、二十年について三カ月の給与。それから、たしか一年について四日かな。やはり給与に比例しておるのですよ。厚生年金ができた昭和十九年にはその給与の三カ月分、それからそれに対して一年について四日。私の記憶に間違いがなければそういうような発足をしておるのですよ。リンクしているのですよ。ところが、こちらはリンクしてないのですよ。二千五十円だとか、かつては千円だとか、ベースがしょっちゅう変わるのですよ。自由自在に変わっていく。シビルミニマムとして考えるならば、要するに基礎的なものが全然ない。生活保護は生活保護、全部別々ですね。ですから厚生省は、そういう意味においては、やはり基本的な金額はどういう金額だ、それにどういうように対応するかということが必要ではないか。  そこで、この前から盛んに各党から御議論がありまして、我が党も出しております国民年金の基礎年金について、非常に額が少ないではないかという点については、じゃ具体的にどういう二階建てを設けるのかということについて政府はどう考えておるのか、これをお答え願いたい。
  80. 吉原健二

    吉原政府委員 国民年金の二階建て、つまり恐らく所得比例保険料、所得比例の年金ということかと思いますけれども、その具体的な構想は現在の時点ではまだ持っておりません。将来の検討といいますか研究課題にさせていただきたいと思います。
  81. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国民健康保険税もまさに所得を把握しておるわけですね。それから、市町村にいくと保育料も把握していますよ。それでなぜできないのか。そして、逆に言いますと、税制についてなかなかアンバランスがあるというならば、むしろ国民年金の基礎年金をそういう所得割にすることによって税制の方が適正になるでしょう、物の考え方からすれば。それは隣近所を見て、あれはおかしいなとだれでも言いますよ。保険料があんなに安くていいんだろうかとこう言う。ですから、これはどっちが早くやるかというのは別として、ここまで来たら、むしろ国民年金に要するに所得割を加味することによって、税制の方が極めて公正になる、適正になる、そういう役割を今日の段階にはするわけですね。ですから、そういう点もひとつ考え、当面は段階というかランクをつけてそれを選ばすという方法も便宜的にはあるでしょうけれども、やはりこれだけ社会保険料がいろいろな面からいって所得の増大にリンクするような状態になってくると、税制の適正化もまた国民年金の比例分を入れることによってより推進する、こういう考え方もできるわけですから、これはひとつ早急に出発をするようにしてもらいたい。大臣、御答弁を。
  82. 増岡博之

    増岡国務大臣 ただいま先生の御見解はまことに傾聴に値するものと受けとめております。
  83. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで、スライドと財政再計算の問題ですけれども、これは既裁定者も全部物価スライドをするわけですか。それから、財政再計算も今までどおり少なくとも五年間にするわけですか。
  84. 吉原健二

    吉原政府委員 物価スライドにつきましては、既裁定者の方についても当然するわけでございます。それから、過去の賃金の再評価、これも再計算の際にいたしたいと思っております。
  85. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 じゃ、同じように既裁定者も物価スライドも賃金の再計算、再評価もやるんだということですね。そこをちょっと確認しておかぬとね。
  86. 吉原健二

    吉原政府委員 そういうふうに政策的にいたしたいと思っております。
  87. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 日本の場合は、所得代替率という観念が余りないのですね。要するに、年金というのは所得の代替率だという観念が非常に乏しい。そこで、私どもは、やはり西欧並みにポイント方式、年金点数制というものを厚生年金の比例分については行うべきではないか。あなたの方は、スライドをして五年後には再計算するから大体変わりません、こう言うけれども国民はそう思っていないのですよ。第一、計算がわからないですよ。今度は幸いにして五万円というのが出ますから、それに足して、自分の生涯の賃金のポイントでいけば計算できるわけですよ。今から自分はどれくらい昇給するのだろうとわかる。そうすると、全国の労働者の平均に、自分は入社したときには〇・七であった、しかし、中堅のときは〇・五だ、だんだん老齢化して平均よりも下がって〇・九になった、しかし自分は生涯を通じて一・二だ、ちゃんと計算できるのですよ。今までの分を、既に標準報酬があるから、それを見直してもできるのですよ。やはりこれを入れるべきでしょうね。とにかく、これだけ四十年も払っているのに、自分は幾らもらえるだろうというのがわからぬような年金というのは不親切ですよ。そうすると、あなたの方はそこに政策的と言うが、政策的意図が入って再評価のときも少しごまかしているのじゃないか、こういう不信感も事実上出てくるわけだ。なぜ点数制をおやりにならないのか。ちゅうちょすることないでしょう。この際、こういう大改正をするのですから、年金点数制を厚生年金の比例部分については入れる、こういうようにすれば自分の年金計算が自分でできるのですね。しかも、基礎年金が今度は五万円と言っているのですから、はっきりするわけですよ、比例部分だけですから。この点についてはどういうようにお考えか。
  88. 吉原健二

    吉原政府委員 今回の改正では、基礎年金部分については非常に単純な計算方式になっておりますし、報酬比例部分につきましても、そう自分の年金額の計算が難しいというほど困難なあれでもないように私は思いますけれども、ただ、ポイント方式というのは本当にわかりやすいものかどうか、必ずしも、一般の方についてポイント方式といいましても、なかなか御理解願いにくい面もあるのじゃないかということもあります。それから、実際に今私どもが、年々物価スライドをし、あるいは再計算のときに賃金の再評価をする場合、実質的にはおっしゃいますポイント方式の考え方とそれほど私は違いは出てこない、違いはない、むしろこちらの方がいろいろな意味で政策的な判断を、あるいはそれを下げるんじゃないかという悪いように御理解いただく面もあるのかもしれませんが、そうじゃなしに、いろいろな面で機動的な対応、政策的な対応がやりやすいということも率直に言ってございますし、それからやはり、ポイント制を入れることについて大変事務的にも煩雑で難しいという面もあるわけでございますので、これも、今すぐと言われましてもなかなか難しいのでございまして、そういうことを将来ひとつ研究をさせていただきたいと思います。
  89. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは厚生省も長い間検討しているのですよね。簡単じゃないですか。自分が入社したときの前年なら前年度の全国平均の賃金を公示すればいいのですから。そして、自分の賃金を比べれば〇・六とか七とか出るでしょう。そして、自分が最も給与が全国平均よりも高かったときは一・八とか出るでしょう。それからずっと下がって、今から年功序列賃金という形態がなくなるとすれば、最後のときは第二会社へ行ってそして〇・八だった。これを年度ごとに計算すれば、単純ですよ。今あなたのところは標準報酬日額というものが毎年出ておるのだから、それをぼんと切りかえてやれば簡単ですよ、既往の分についても。  それはあなたはわからぬでしょう、あなたは共済だから。あなたは二十年たったら四〇%もらって、あとは一年について一・五もらっておるんだから、それはあなたはわからぬにしても、みんなはよくわかるのですよ。(「それはポイント方式の方がわかりいい」と呼ぶ者あり)わかりいいよ。だから、こんなことぐらいは今度の改正に、あれだけ言われておるのですから、出したらどうですか。問題提起をしておきます。  次に、今度の基礎年金及び国民年金は、ILO条約百三十五号の水準まで一体達しておるのですか。というのは、もう少し敷衍して言うならば、国際比較に達しておるのですか。国際比較をして、水準に達しておるのですか。
  90. 吉原健二

    吉原政府委員 水準に達しているというふうに思っております。(多賀谷委員「幾らになる」と呼ぶ)  ILOの水準は少し、――ILOの考え方といいますか、従前所得のとらえ方、賃金のとらえ方、それを日本の場合にどう当てはめていいかというところで若干の計算の比較の難しさがあるわけでございますが、大まかに言いますと、ILOの水準というのは三十年加入で総報酬の四五%がILOの水準でございますが、改正後の我が国の年金水準を計算いたしますと、私どもの基本は四十年で標準報酬賃金の六九%を将来維持するという考え方ですが、これを三十年ということで計算をしてみますと五七・六%という数字になるわけでございまして、ILOの四五%の水準には十分達しているというふうに思います。
  91. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私の計算では三十年、三九・九二%だ。計算の根拠を言いましょう。あなたの方は一年について、今度は厚生年金も千分の七・五、四十年。これが四十年で三〇%ですね。四十年で給与の三〇%、いいですか。そして、今五万円ということであなた方は出しております。これは男子ですからね、妻を有する男子の比率を言っているのですから、二十五万四千円で割ると一九・六。それを今度は、奥さんの分を含めて一九・六をさらに足す。これが六九・二だ。そしてここに、あなたがくしくも言われたように、これは総報酬、ILOは総報酬であるとおっしゃいましたから、大体ボーナスを入れると、これはいろいろなとり方があるのですけれども、私は控え目にして一・三と見た。ボーナスを入れると決まった賃金の一・三、こう見ると、所定内給与の六九・二%を総収入に換算すると、一・三で除し五三・二三%。これは四十年ですから、四十年を三十年に直すと、四分の三の三九・九二%になります。ラウンドで三十年で四〇%です。それは低併発国を含めての百二号条約にはあるいはすれすれでいくかもしれぬ。しかし、ILOの百三十五号勧告は一〇%増しですから、四五%でなくて五五%ですから、これにももちろん達していないし、百二十八号条約の水準にははるかに遠いものです。少なくとも国際水準に達していないのですよ。達しておる、達しておると、あなたの方は非常に都合のいい使い方をするわけです。なぜかというと、討論会なんかを聞いておってもそうですけれども、六九%ですよ、こう言うのです。働いている人の六九%の年金ですよと、いかにも高いように言う。ところが、みんなボーナスは生活費なんですよ。日本の風習から言うと、期末手当というものは生活給ですよ。そうすると一体幾らになるのか。何か現役には高いように印象を与えるけれども、そこにそもそもの間違いがある。ですから、決まった賃金のとり方というのは本来おかしいのですよ。総収入であなたがおっしゃるならば、これはまさに四〇%。ボーナスをとったのだからしようがないと言うけれども、とったのが悪いのですよ。もともとを言えば、僕はそれを批判しているのだ。ですから四〇%、三十年で三九・九二。私は金額で言っておるのじゃない、あなた方の比率で言っておるのです。千分の七・五に四十年をお掛けになる。ですから比例部分は最大が三〇%である。その四分の三である。そうしてボーナスを入れると一・三、こういう数字を示しておきます。どうなんですか。
  92. 山口剛彦

    ○山口説明員 お答えいたします。  ILO条約の解釈でございますが、国際条約でございますのでいろいろな解釈がございます。しかし、これにはILOとも連絡をとっております公定的な解釈がございますので、その解釈に従って一応私ども判断をしておるということでございます。  恐縮ですがちょっと申し上げますと、ILOの百二十八号条約で申し上げますと、基準は、三十年拠出した標準受給者について従前の勤労所得の四五%ということでございます。そして、この標準受給者というのは年金受給年齢に達した妻を有する男子、それから従前の勤労所得、これは各国により異なるけれども、それぞれの国の解釈で、また制度的な基準で考えてよろしいということで、我が国の場合は、男子労働者のうち最大多数を有する業種に従事する者の所定内給与、これは実際は電気機械、器具製造業がそれに当たりますので、それをILOに登録しておるわけでございます。これが、賃金構造基本統計調査によりますと、五十七年、二十万四千七百五円でございます。五十八年のベア後を推計をいたしますと二十一万四千円程度になります。これを基準にいたしまして、私どもが今回御提出をしております年金改正後の水準を、先生の前提と大体同じだと思いますが、成熟時における三十年加入のケース、これは四十年加入のうち三十年加入していただく、通常はぴしっと加入していただくのが勤労者の場合普通だと思いますけれども、一応三十年で計算をいたしますと、月額にして十二万三千円ほどになります。先ほどの二十一万四千円と比較をいたしますと、これは五七・六%ということでございます。これをもちまして、一応ILOの基準は満たしておると私どもは判断をしているわけです。
  93. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国内法で従前所得の解釈は任されておる。ですから、私は二段階で聞いたのですよ、ILO基準と国際比較と。ILO基準には形式的には違反していないのです。日本政府は従前所得とは決まった賃金ですと、こう言っている。自分で解釈をしている。そもそもそこにごまかしがあるのですよ。期末手当は見てやらないということで支給していると言ったら、大変な騒動が起こる。国際的な通念からいうと、どこも期末手当を含めて、要するに総収入で言っているのですからね。日本だけが決まった賃金、所定内賃金、こういうふうに分けている。だから、形式的にはILO条約に違反はしていないだろうけれども、国際比較から見ると水準に達していませんよと言っているのは、そういうことです。わずか四〇%なんですよ。厚生省はそういう認識がなければだめですね。低くすればいいというなら、厚生省は業務怠慢ですよ。国際比較からいうと、残念ながらILOが最初に想定をしたものとは違う。ただ、日本では、解釈として、従前所得とは国内法で任されているからそういう解釈をしたということですから、これも私は非常に低いということが言えると思います。  そこで、何かというと、高い、高いと言う。六九%という数字を出してそれを盛んに言うでしょう。だけれども現役の諸君は、ああ、私どもはローンも払っておる、子供もおる、しかし年寄りの皆様は、出費が要らぬ者がそんなに高いのかという不信感を持つ。大体総所得ということがILOの水準なんですよ。ですから、そういう点を考えてもらいたい、こういうように思うわけであります。  そこで、時間がありませんから、少し具体的に入ってまいりたいと思います。  まず第一に、今度の厚生年金にしても、若干変わっておるけれども、残念ながら、従来指摘しておったことで十分な処置がなされていない問題が多くあるわけです。その一つは、業種によって差別をしておる。僕はこれは許されないと思うのですよ。クリーニングだとか料飲食とかは強制加入じゃないですね。労働災害にしても雇用保険にしても、雇用者を雇っておる全事業所になっておる。ところが、厚生省だけが、健康保険にしても厚生年金にしても産業別で区分しておる。今日、こんな法律はないと僕は思うのですね。これは従来から指摘されている。五名未満の話じゃないですよ。業種によって差別をしておる。一体これはどういうことなのか。政策ですからということはわかっているのだけれども、業種によって差をつける。これなんか直したらいいですよ。雇用保険とか労災は業種によって差をつけていない。雇用する全事業所です。これは健康保険法以来のものを残しているのですよ。大正の終わりにできた片仮名の法律をそのまま残しておるのですよ。局長、この点についてはどう考えるのか。
  94. 吉原健二

    吉原政府委員 五人以上でそういった業種、確かに今適用業種でないものが残されているわけでございますが、今回、法人である事業所につきましては厚生年金の適用事業所にするということにいたしましたので、実質的には、おっしゃるような業種による適用、不適用の問題というのは解消し得るというふうに考えております。
  95. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法人でない五人以上の企業は随分ありますよ。これを一体どういうふうに扱うのか。こんな改正ぐらいは簡単ですよ、労働省がやっているのだから。厚生省がなぜできないのですか。法人と法人でないのを区別するという。区別する必要はないのですよ。まず業種を取っ払う。五名以下のはまた段階的というのはわかるのだけれども、業種そのものを区別して、この業種は要りませんなんというのは、実に古い殻から一つも脱皮しようとしない、これはどうなんですか。
  96. 長尾立子

    長尾政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、現在、厚生年金保険の場合に、飲食業等の個人サービス的な事業が適用対象となっておらないわけでございますが、これらの業種につきましては、いわば適用対象といたします点につきまして、従業員の移動性が非常に激しいというようなこと等から、技術的な問題点がありまして適用ができなかったという事情があるわけでございます。  先生御指摘のように、労働保険においてはこういった業種も適用しているではないかという御指摘は私どもも大変反省をいたすところでございますが、厚生年金の場合また健康保険の場合には、保険料の納入をいわば納入告知をやりまして納入をさせております。労働保険の場合は申告納付という形をとっておりますので、その面におきましても違いがあるわけでございます。  御指摘のように、雇用者であります以上、厚生年金保険、健康保険の適用を及ぼしていくということが方向であることは御指摘のとおりだと思っております。  ただいま局長からもお答えいたしましたように、今回の改正法におきまして、法人の事業所につきましては、こういった未適用事業所も適用いたしまして、六十四年四月から拡大をいたすわけでございますが、先生御指摘の個人のこういった業種、これは確かにおっしゃるとおり、大体半数が個人のものではないかと思うわけでございますが、この法人の分の適用を済ましました後で、その点につきましては、具体的にどういった形でやれば実効が上がるかという点を含めまして、検討させていただきたいと思います。
  97. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今機械化が進んでおるのですからね、年金手帳というものを大事にするという習慣をつけさせればいいのです。そうすると、どこへ勤めようと、その年金手帳を大事にして、経営者に話をして、保険料を経営者にも払ってもらう。何か依然として、煩雑なことはやりたくないという厚生省の伝統かどうかわかりませんけれども、僕は、これはぜひひとつ至急に、皆さんが修正されるときには入れてもらいたい。法人だけの問題じゃないですよ、これで現実に泣いておるわけだから。ですから私は、そういう点を、労災保険法なんかは、労働者を使用する全事業所に適用すると書いておる、労働省の法律は。厚生省だけですよ。こんな長い間に業種を並べて、条文の体裁からいけば一行で済むものを、何号、何号、何号事業なんて。そんな必要はないのですよ、今の時期に。  それから、私は不思議なのは、適用事業以外の業種で一人でも加入できるのがある。十条の規定があって、長々と書いてある。ところが、これは九州なんかは絶対認めませんよ。どこの社会保険事務所に行っても、一人なんか認めませんよ。しかし、条文には書いてあって、解釈本には三ページも長々と書いてある。全然適用がないのですよ。第一、いろいろ聞いてみると、一人でもできるじゃないかと言っても、いや、それはやりませんと、こう言う。こういうのが今度の改正にも依然として消されていない、現行法で残っておる。既得権は別としても、実際にどのくらいやっておるのかといったら、たしか労働者の数にして百七十名ですかね。それで、これをやっている都道府県は非常に少ない。--調べるのは後でいいです。こういう条文を残しておいて、そして実際には全適用が行われていない。ですから私は、五名未満もさることながら、まず全適用をするということを先にやるべきだ、こういうように思いますが、どうですか。
  98. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えをいたします。  先ほども申し上げましたように、雇用者につきまして、できる限り雇用保険の体系の中に組み入れていくべきであるという先生の御指摘は、そのとおりと考えております。  これを、現在ございます事務的な問題点を検討いたしまして、具体的にどういった形で適用していくかということにつきましては、さしあたり法人の事業所につきましての適用を六十四年までやらしていただきまして、その過程の中で検討させていただきたいと思います。
  99. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 むしろ、僕は、法人かあるいは法人でないかを区別する方が難しいと思うのです。ですから、まず第一に業種の差をなくする、これが第一です。そうすると、その後、今度は五名から以下のものは、それが法人であるかないかを探せばいいのです。私は、余りにも適用除外をしておるということは許されないと思うのですよ。これはひとつ統一した見解をお願いしたい。後でもいいです。  それでは、午後の再開のときに二点、一つは、生命保険会社が十月一日の施行日に私的年金の勧誘に来たのは、それは間違いであるかどうか。それからもう一つは、今私がお話ししました、具外的に適用除外の事務所を今度は全適用にするという点について、二点御答弁を統一してお願いしたい。午後の劈頭で結構ですから。
  100. 戸井田三郎

    戸井田委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時十一分開議
  101. 戸井田三郎

    戸井田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。多賀谷眞稔君。
  102. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 午前中の質問で特に求めた点について、御答弁願いたい。
  103. 吉原健二

    吉原政府委員 まず第一点の個人年金に関するお示しの資料につきましては、一定の前提を置いた計算としては間違いないものと思います。  第二点の厚生年金保険の適用を分業種に拡大することにつきましての御質問でございますが、飲食業その他のサービス業につきましては、事業所や従業員の変動が著しいなどの適用技術上の難しい問題があるので、今直ちに分業種を厚生年金保険の適用対象とすることは困難でございますが、現在御審議をお願いをしております法人の事業所への適用が円滑に行われた後の重要な課題として、研究をさせていただきたいと思います。当面、任意包括適用の計画的推進など、今後ともサービス業等への適用の拡大に努めてまいりたいと存じます。  以上でございます。
  104. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 第二点の分業種に適用すべきという問題については、遺憾ながら了承できません。いつまでたっても百年河清を待つような状態です。しかも法人のみ適用するというならば、法人から個人企業に移ったらどうしますか。そうでなくて、やはり個人が年金手帳を大事にする、だれでも二十になったら年金手帳があるんだということを把握して、むしろ法人の方は後からの話でして、そういう考え方を改めないと無年金者が依然として解消できない、これは今後の折衝にまちたい、こういうように思います。  時間が割合にとられましたので、簡単に今から質問をしておきたい。  まず、遺族年金の「遺族」という言葉は、いろいろ法律的に範囲が違います。第一、今の厚生年金共済は違う。それから共済と労災は違う。労災の中でも、公務による補償の問題はまた違う。こういうように全部ばらばらであります。私は少なくとも、公務上の疾病であるとかあるいは労災と厚生年金とかいうのが違うのはわかるような気がする。しかし、厚生年金共済はどこが違うのか、こう言うとなかなか判断が難しいと思います。やはり恩給時代の権利、共済としての特殊な権利ということが違うのじゃないかと思いますが、そういう点と、殊に父母、祖父母、孫、兄弟、これが違うのですね。それから、今問題になっておりますけれども、六十歳以上でないと父母にももらえない。それは、亡くなったその時点においてというのが非常に問題だと思います。それから転給ができない。すなわち共済とか労災とかいうのは転給できる。要するに、妻が今まで遺族年金をもらっておっても、それが再婚した場合には父母、兄弟に転給ができる。この転給制度厚生年金はない。もう失権をするわけです。そういう点が違うわけであります。  そこで、共済の方は今度は遺族については触れないというように聞いておるのですが、どうなんですか。
  105. 坂本導聰

    ○坂本説明員 お答えいたします。  実は、私ども共済年金につきましては、去る二月二十四日の閣議決定がございまして、明年抜本改正法を御提案申し上げるという段階でございまして、いわば各省の事務当局で勉強会をやっている段階でございますので、まだ成案には至っていないということでございますが、今のところの私ども事務当局の感じでは、大体現行制度の延長線で考えていくのかなという感じは持ってございます。  これは、共済の場合には年金と医療保険と両方の制度を同一の形で抱えておりますので、そういったような点も考えて、今後、延長線ではありますが、どういう形で成案を得るかはまだ確定してはおりません。  今のところの状況はそういうところでございます。
  106. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで、本人が死亡時において、六十歳以上でないとその支給がないというのはやはり改正をすべきではないか、こういうふうに思うのです。やがて六十になったときから支給する、それまでは停止するということは私は理解できる。この点についてどういう考え方であるか。  それから、子なしの妻は四十歳未満の場合はないというのも、これも過酷ではないかと思うのです。じゃ、五万円もらえるかといったら、実際は二十五年の資格はあるかもしれませんが、しかし二十五年の資格がありましても、それから就職をしても四十分の二十五ですからね。ですから、私は、そういう点はどういうようにお考えであるか。これはひとつぜひ修正をしてもらいたい。
  107. 吉原健二

    吉原政府委員 遺族年金の対象となる父母の年齢につきましては御指摘の問題があるということも私ども十分わかりますので、早急な検討をさせていただきたいと思います。  それから、第二点の子のない配偶者、未亡人に対する遺族年金、遺族厚生年金につきましても、年齢を四十歳といわばワンポイントで切っておりますけれども、この点につきましても、四十歳以前、特に直前で亡くなられた場合とのバランス等を考えまして、早急に是正をしなければならないかと思っております。
  108. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ひとつ努力を願いたいと思いますが、もう一つは本人年金と遺族年金の関係ですね。本人の老齢年金と遺族年金との併給関係の問題です。今度の改正では従来の厚生年金考え方よりも水準が低くなる、こういうことになるわけですね。と申しますのは、――もう時間がないから私が説明しましょう。  この遺族年金というのは、厚生年金で何転もしておるのですよ。最初は両方併給でありました。そして、昭和四十四年になっていずれか一方を選べということになった。そうしたら、これは厳し過ぎるじゃないかといって、四十六年にすぐに改正したのです。この改正が現行法なんです。  現行法とはどういうことかというと、要するに、夫の遺族年金よりも妻の老齢年金が低かった場合は、今は両方もらえるのです。ところがそうではなくて、夫の遺族年金の方が妻の老齢年金より高かった場合に遺族年金を選んだ場合には、夫の基本年金額、すなわち遺族年金の二倍もらえるのです。こういう考え方になっておるのですね。ところが、今度の改正の場合は、本人の基礎年金厚生年金の比例分の四分の三ということになっておるわけなんです。そうすると、比例分の四分の一だけ現行法よりも少ないことになるのです。これは一体どういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  109. 山口剛彦

    ○山口説明員 ちょっと技術的な問題でございますので私から答弁させていただきますが、御指摘ございましたように、現在の厚生年金老齢年金と遺族年金につきましては併給制限がございまして、遺族年金を選択いたした場合には、夫の基本年金額までは老齢年金を併給するという特別の措置を講じておるのが現状でございます。  改正案におきましては、基本的には一人一年金、一つの年金を選択をしていただくというのを原則にいたしておりますが、今御指摘のように遺族年金給付の中で大変特殊なものでございますので、老齢基礎年金と遺族厚生年金は併給をするということにいたしております。したがいまして、併給調整との関係では、改正案では特に制限なく、老齢基礎年金と遺族厚生年金を併給するということになります。  ただし、先生御指摘のように、今回、遺族年金につきましては、遺族の態様、子供がある、なし等につきまして給付の面で合理化を図っておりますので、具体的なケースについて、改正前の併給される場合のケースと改正後の併給されるケースを比べた場合に、年金額の高低が確かにございます。これは、子供のない寡婦につきましては先ほど問題点の御指摘がありましたけれども、合理化をしていこうという考え方でございますので、改正案の方が従来の考え方よりは額の面ではやや高低がケースによってはございます。
  110. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まあ普通の場合は、老夫婦ですから金額が下がる。ですから言うならば掛け捨てになる、と言ったら少し言葉が過ぎるかもしれませんけれども、そういう感じを持つわけです。厚生年金の遺族年金ですら現行法に対していろいろ批判があるのに、現行法よりも下がるというのは、これはやはり調整規定を設けて、少なくとも現行法並みには水準を置くべきではないか。ですから、四分の三ではなくて、その場合はあとの四分の一は自分の厚生年金の比例分の範囲内、限度において補てんをすべきではないかと考えるのですが、これもぜひひとつ検討してもらいたいと思います。少し技術的でありますけれども、関係者にとりましては非常に重要な問題であります。
  111. 吉原健二

    吉原政府委員 検討させていただきます。
  112. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次は、国民年金における学生の問題も一つありましょう。それから二十歳未満の被用者、働いている人の問題もある。  二十歳未満で、十五歳で就職をする、しかしこの人は国民年金に入らないのですね。二十歳未満は国民年金に入らないのです。入らないけれども厚生年金保険料は同じように取られるのです。ですから、言うならばこれは非常に不公平ですよ。早くから就職して賃金の低い人が同じ率で取られていて、そして自分の国民年金には加入がないのです。二十歳にならなければ加入資格がないですから。十五歳から十九歳までは、幾ら先輩と同じように厚生年金を同額払っても、国民年金には入っていないのです。この問題はどういうように見るのか。  続いて、今の学生の問題であります。学生が二十歳になってけがをした場合には何も障害年金はないではないか、これをどう手当てをするのか。  この二点をお聞かせ願いたい。
  113. 山口剛彦

    ○山口説明員 前半の厚生年金の二十歳未満の被保険者につきましては、新しい国民年金に二重に適用になるということでございます。(多賀谷委員国民年金に十五、十六からでも入れるの。」と呼ぶ)はい、適用になるということでございます。  ただし、基礎年金財政計算、拠出金の持ち寄り等の計算をいたします場合には、二十から六十までの方々の頭数で合わせませんと財政計算が非常に不公平になってまいりますので、その点ではきちっと合わせることにいたしておりますけれども厚生年金の被保険者につきましては、新しい国民年金に二重加入していただく。その部分につきましても、例えば資格期間等を見る場合につきましても、つながって計算をされるようになっております。  それから学生の取り扱いでございますが、学生については任意加入になっておりますので、任意加入されないで障害等になりました場合には、障害年金支給をされないということになります。
  114. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、二十歳以上の国民ではなくても被用者保険に入れば国民年金は自動的に入る。しかし、その人は四十年勤めても、四十年を超えても基礎年金は加算がないわけですね。金額は五万円で決まっておるのですから。これまた矛盾しておるじゃないですか。どっちかが矛盾しておるよ。
  115. 山口剛彦

    ○山口説明員 先ほど申し上げましたように、二重加入していただくわけですけれども、拠出金の持ち寄り等の対象につきましては二十から六十までの方で限定をいたしておりますので、当面基礎年金の計算につきましてはその期間で計算をいたしますけれども厚生年金に加入しております期間につきましては、その期間厚生年金の方の独自の給付として上乗せをして支給をするということで、その部分が切れてしまうということは実際上ないように手当てをするつもりでございます。
  116. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと、わかりましたけれども、拠出金の話をされても本人とは関係ないんですよ。それは厚生年金の基金の話であって本人には関係ない。本人に関係があるのは、要するに五十四でもう四十年になった、そうすると後のあるいは五年間ぐらいは今度は厚生年金国民年金の上積みしてくれる、こういうふうに理解していいんですね。
  117. 山口剛彦

    ○山口説明員 将来の姿といたしましては、四十年加入が一般的になりましたときに、その基礎年金の上限をどうするかというのは、確かに御指摘のようなケースはございますけれども、当面は基礎年金資格期間、年齢に応じて計算をしてまいりますので、二十五年から始まりまして、三十年、三十五年、四十年ということにだんだん延びてまいります。したがいまして、今のようなケースにつきましては、例えば年齢によって違いますけれども、本人の加入可能期間を二十歳から六十の間に満たせば五万円が支給をされ、残余の部分につきましては、これは経過的でございますけれども、当分の間は厚生年金の独自の給付として支給をさせていただくというふうに当面整理をいたしております。
  118. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは四十年たってから議論をすべきであるということですけれども、しかし、それはもう制度をつくるときにはっきりしておかなければいかぬですよ。そうして、要するに厚生年金の拠出金の話はこれは本人とは関係ないのです。それは財政的な調整問題であって、本人がどうなるかというのが一番問題なんですよ。  とにかく、日本法律は読んでも全くわからないんだよ。大事なことは附則で書いて本則にはないとか、もう本当にこの厚生年金の方、国民年金もそうですけれども、あれだけ大きな問題になった妻の任意加入なんというのは、もうどこを見ても妻は強制加入の対象にならない、入ってはならぬと書いてある、そうして附則の六条で、希望する者は入ってよろしいという、大体こんな法律はない。今度はひとつ変えたというけれどもね。(「今度はみんな直した」と呼ぶ者あり)いや、そんなことはない。今度は、任意加入のところは違うんだ。それはスライドだけ、スライドが本則になった。――まあそれは別にいたしまして、国民がわかるような法律を書いてもらいたい。  そこで、今の学生の問題をどうされますか。現実に学生がけがをした。ところが、二十歳未満でけがをしても今度は障害年金をもらえるんでしょう。学生はどうしますか。これもはっきり現実の問題として考えなければいかぬ。  時間がありませんから、続いて申しますが、例えば厚生年金に長い間入っておった、そうして失業した。ところが国民年金には、厚生年金のときは二重加入ですからいいが、入ってない。そうしてちょうど失業期間中で雇用保険をもらっておった、そうして亡くなった。ところが、今までならば妻が国民年金に入っておれば母子福祉年金をもらえたけれども、妻はこれは厚生年金に入っておったという場合には、これは夫の遺族年金もないし、妻の母子年金もないのです。そうなっているでしょう。国民年金に入っていないんですから母子年金もない。こういう問題は解決されたんですかどうですか。  もう少し言うならば、保険料の三分の二というのはこれは被保険者である間の問題ですか。被保険者でなくなっても、過去において三分の二入っておれば資格があるんですか。
  119. 吉原健二

    吉原政府委員 学生の問題につきましては、おっしゃるように今の学生は現在の制度で任意加入になっておるわけでございますが、いろいろ議論があるわけでございます。どうしたらいいかというのを私どもよく検討いたしましたし、審議会等でも御議論いただいたのですが、もう緒論だけ申し上げますと、現時点ではどうもうまい緒論が出ませんので、ひとつ今後の宿題にさせていただきたい、こういうことでございます。
  120. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 さっきの後の問題、失業中に死亡した場合……。
  121. 山口剛彦

    ○山口説明員 現行制度におきまして御指摘のケースが無年金になるというのは、御指摘のとおりでございます。今度の改正案におきましては、サラリーマンの奥さん、扶養されておる奥さんですね、これが国民年金強制加入になるのと逆の立場になりますので、条件等綿密に言えばあれですけれども、奥様の扶養家族ということになるわけですね、無収入で。その辺の扶養関係を見ないとあれですけれども、扶養関係が出てまいると、通常の場合……(多賀谷委員「夫は失業保険をもらっておるんだ」と呼ぶ)そのときの認定その他ございますけれども、扶養家族でなければ、今度は必ず国民年金に入っていただかなければなりませんので、入っていただけませんと無年金になるケースがございますが、扶養されております場合には、先ほど言いましたサラリーマンの奥さんとちょうど逆の立場で、その夫の方が奥さんに扶養されておる夫ということで、保険料の個別の拠出がなく国民年金強制加入になるということで、年金保障の面でも前進をするということではなかろうかと思います。
  122. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働省、いいですか。雇用保険給付期間中で国民年金に入っていなかった、そういう場合に扶養家族になれますか。これは大蔵省でも、税制でもいい。――答弁できないんならば、もう後から答弁をしてもらいたい。それは理想から言えば、労働省は奨励をして、失業保険、雇用保険をもらっておる人に、あなたは国民年金に入っていますかと指導すればいいけれども、そんなことはしない。そうして賃金は、今まで期末手当を含めて総収入の六割であったのを、今度は一定賃金のその六割にして四十数%に下げたのですよ。そういう状態の中でどうして保険料が払えますか。そういうようにして、保険料が払えぬ、そして無資格になっておる、その間に事故が起きた、こういう状態ですよ。それが扶養家族というわけにいかぬでしょう、これは税金は取るんだから。ですから、今までもこれは、そういう国年、厚年の両方とも、厚生年金に入っておってその方が失業した場合には無年金になるというので、大変な論議になっておるのです。僕も大原さんと一緒に本を書いたときに、失業中の年金問題というのは書いておるのです。これは論議としては大変大きな論議です。ですからそういう点が解決していない。これはひとつ後から答弁を願いたい、こういうように思います。  それから次に、時間がありませんが、在日外国人、なかんずく朝鮮の方々ですね。これは、難民条約批准とともに日本国民年金の条件が変わって、従来は日本国籍を持っている人ということになっておりましたのが、日本に在住する人ということになった。なったのはいいのですけれども、それが遡及しない。言うならば、三十五歳以上の人は二十五年掛けてももらえないんですから、全くもらえなかった。今度の改正では空期間として認めましょうということになったわけです。  しかし、私は、こういう制度の問題というのは、少なくとも沖縄の場合は日本人だということを言っておるのですけれども、そう国籍に差をつける必要はない。沖縄の場合は過去においていわゆる三分の一、すなわち免除者と同じように扱ったのですよ。ですから、免除者と同じように扱ってあげるべきだ。ことに、私のおる筑豊炭田なんというのは強制的にこの人たちを坑内労働に入れたわけですよ。日本の炭鉱の労務屋というのは、みんな朝鮮に行って人を連れてくるのが仕事だった。そういうような状態の中にあって、私はやはりこれは今度の改正で考えるべきではないか、こういうように思うわけですね。それから、これは孤児の問題も同じでありますが、こういう配慮をすべきではないか。  それから、もう一つ関連をして言うならば、障害年金の問題も同じです。やはり障害年金についても過去の分を考えてやるべきではないか、こういうように思うのですが、その点はどういうふうにお考えであるか。
  123. 吉原健二

    吉原政府委員 在日外国人の取り扱いでございますが、五十七年一月難民条約の批准に伴う措置といたしましては、加入を認める道を開いたわけでございますが、今御指摘のございましたような過去の期間をどうするかということについては特別な措置をとらなかったわけでございます。  今回の改正案におきましては、在日外国人だけではございませんけれども昭和三十六年四月一日の国民年金が発足後の期間につきましては資格期間の中に算入をする、年金に結びつくという措置をとったわけでございまして、その免除期間といいますか笑納期間と同じ扱いというのは、社会保険の場合に、過去にさかのぼって保険料を預かったと同じ期間というのは、これはなかなか難しいといいますか実際問題としてできない問題でございまして、資格期間の中に算入するということでひとつ特別な配慮を加えたというふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、在日外国人で従来障害福祉年金を受けられなかった方にも、障害基礎年金支給すべきであるということでございますが、やはりこの障害基礎年金にいたしましても、過去にさかのぼっていわば権利の抱き起こしというのは、なかなか社会保険の場合には難しいわけでございます。もう既に権利がないという人を、後からさかのぼって一定の権利の発生を認めるということが、なかなか社会保険制度のもとでは難しいということはひとつ御理解いただきたいと思います。
  124. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、私は、その財源を全部社会保険に求めるというのが難しいなら、国が国庫負担をその分だけ見てやるとか、これだけ国際的な大きな問題になっているときに、そして日本経済がこんなに伸びておるというときにもう少し配慮があっていいのじゃないかと思いますよ。これは本当は外務大臣に来てもらいたいのですけれども、その程度のことができないはずがないのですよ、日本経済が、どんなに赤字であっても。その程度のことをなぜやらないか。厚生大臣、どうですか、あなたから主張していただきたい。
  125. 吉原健二

    吉原政府委員 やはり外国人だけの問題じゃございませんで、もしやるとすれば、いろいろな意味で、過去にさかのぼっていわば権利のない人を救済するというようなことに議論が当然発展してまいりますので、なかなか部分的に踏み切るということができない事柄なんでございます。
  126. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 広がりますと言っているけれども、広がってしかるべきものもあるのです。ですから、国の政策で本来日本は国籍主義をとったわけです。ですから、在地主義をとらなかったわけですね。しかし、厚生年金はとっているわけですよ、雇用関係があれば外国人であろうとだれであろうと。ひとり国民年金がやらなかったわけですよ。そして国民健康保険はやっているのですよ。現実にどうにもならなくて国民健康保険はやっている。生活保護も現実にやっているのですよ。それなのに、国民年金だけがそれは除外をしてきたという経過なんですよ。(「それはちょっと違うのだ」と呼ぶ者あり)小沢理事はそう言うけれども、違わないのですよ。こういう人が長い間やっていて、差をつけておったんです。ですから、私はやはり考慮すべきじゃないかと思うのです。大臣、どうですか。
  127. 増岡博之

    増岡国務大臣 今後に向かってはそのようなことになるんだろうと思いますけれども、この際、過去にさかのぼってまでそれを救済するかどうかということにつきましてはかなり問題があるのではないかと思います。
  128. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 問題はありますよ。問題はありますけれども、検討してもらいたいと思うのです。どうですか。検討を約束してくださいよ。
  129. 増岡博之

    増岡国務大臣 今後の問題として検討してまいります。
  130. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国際的な問題になっているんですからね。過去の日本が、口先で反省をしますとかなんとか言っても、外国人の方に個人的に実のあるような施策をしないで、国において反省をしますなんと言ったって、それは通用しないのですよ。やはり、その点はひとつぜひ厚生大臣も十分考えていただきたい。税金は納めているのですよ。義務だけは当然課しているのですよ。どうなんですか、もう一度。
  131. 吉原健二

    吉原政府委員 ですから、税金を納めている、そういったことも考慮に入れまして、難民条約が批准されたときに、将来に向けて外国人にも適用したわけでございますが、繰り返すようでございますが、過去にさかのぼってそういう扱いというのは、今の社会保険制度のもとではなかなか無理があるのじゃないかと私は思います。
  132. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今外国から入ってくるというのなら私はわかるのです。しかし、過去におって税金を払っておるのでしょう。ですから、やはりそれは遡及すべきですよ。私は、どうもその考え方が非常におかしい、厚生省というのは情も何もないんだなあと思う。私は役人は冷たいと思いませんけれども、しかしこういうことができない、これを問題点として論議をぜひしてもらいたい。  大臣、それは外務大臣と話をして、これは国の過去を償う一つの政策ですよ。日本経済としてはそのくらいのことができないはずはない。
  133. 増岡博之

    増岡国務大臣 今後いかような対応ができるのか、政府内部で研究してみたいと思います。
  134. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 例の障害年金は、今度非常に上がったということで障害者は喜んでいるのですけれども、かねて指摘がありましたように、今の国民年金は一級、二級しかないんですね。そうすると、厚生年金は三級があるわけですね。そこで、厚生年金の比例分はもらえるけれども、今度は基礎年金部分は三級には該当しない。もっとも範囲が少し違うのですけれども。従来はどうかというと、従来は基礎年金部分を含めてトータルで三級の厚生年金の該当者はもらえた。これは私は後退じゃないかと思うのですよ。それは割合に重い人はよくなるけれども、三級の人は、いわば昔で言えば定額分ですね、基礎年金分はもらえないということですから、これについてはどういう配慮をされるつもりであるか、お答え願いたい。
  135. 吉原健二

    吉原政府委員 障害年金全体といたしましては、できるだけ本当に障害の重い方に対する年金を厚くするという考え方に立って、改正案を作成しているわけでございまして、三級障害、障害程度が五本の指のうち二本ないし三本ない程度の障害の方でございますが、そういった方々については、今もらっている方は従来どおりでございますが、これからの方については今までより若干低い年金額で御辛抱いただくということにしているわけでございます。  それにいたしましても、この三級障害者に対する年金は従来に比べて差があり過ぎるではないかという御指摘を今いただいておりますので、少しでも是正できる方法がないか検討をいたしております。
  136. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 少しでも是正できる方法はないかというならば、ひとつ修正でも考えようかという気持ちですか。そういうふうに受けとってよろしいですね。
  137. 吉原健二

    吉原政府委員 そういうことも念頭に置いて検討しております。
  138. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、問題の三種であります。  三種年金については五十五歳は据え置きということであります。しかし、三分の四について期間算入は撤廃するということでございます。そこで、まず第一にお尋ねしたいのですけれども、これは六十一年四月一日にもらっておらないと、その後もらうと一万五千円ぐらい、がたっと下がるのです。だんだん下がるのです。こういう形になっておるわけです。その理由はもう言うまでもなく、あなた方のこの表ですね。すなわち、施行日に五十九歳以上は二千四百円で定額部分についてはこれで計算する。そうすると、施行日に五十五歳の人は今度は二千百六円、五十四歳の人は二千三十九円、それから比例部分の乗率がまた変わるのですね。これは、さきに申しました五十五歳の人は千分の十が九・四四、五十四歳の人が九・三一、この下がるというのが私はどうも合点がいかない。それは今言うとおり六十歳を中心とする経過措置なら下がるのです。ですからそれは不親切じゃないか。今坑内におる人は、炭鉱とか金属鉱山とかいろいろありますけれども、みんなやめますよ。船員だってそうです。一回やめるのです。これらの人は、なかなか過重な労働ですから炭鉱をやめたいという人もあるでしょうけれども、非常に今技術的に不足しておるので、そういう人をぜひ置きたいという場合もある。本人も希望するという場合もある。それを、一回は全部やめなければ損をするなんという年金制度はおかしいですよ。これはどういうようにお考えですか。
  139. 山口剛彦

    ○山口説明員 今回の改正の大変大きな柱にしておりますのは、将来に向かって年金水準負担とのバランスをとって適正化していくことにございます。その場合の基本的な考え方ですけれども、期待権はできるだけ尊重するということで、一般的な支給開始年齢であります六十歳、施行日に六十歳以上の方々については従来どおりのルールでいく、六十歳未満の方から徐々に二十年程度時間をかけて、年金水準を将来に向かって適正化していこうという考え方でございます。そのときに、もう一つのルールといたしまして私どもは既得権、現に年金をもらっておられる方の年金については尊重しなければならないということで、これも古いルールでいくということでございます。  したがいまして、支給開始年齢が六十歳の一般の方々については今御指摘のような問題はないわけですけれども、第三種の被保険者につきましては、二つの特例のうち、審議会等では御議論いただいたわけですけれども支給開始年齢にっきましては現行と同じように五十五歳で据え置けということでございまして、私どももそういう措置をとりましたために、第三種の被保険者に限りまして六十歳前で既裁定という方がおられるわけです。これは五十五歳を残しましたために既裁定の方が出てくるということで、その既裁定の方々の年金水準については、同年代の方については本来なら千分の十でありますのを、千分の九・幾つということでおろさなければいけないわけです。既裁定だということで従来どおりのルールでやるということで、いわば期待権を尊重した結果今御指摘のようなことが出てくるということで、私どもといたしましては、既裁定の尊重というルールと第三種の方々の支給開始年齢を今回いじることはできないという御要請から出てくるこの問題、--御指摘の点はよくわかりますけれども、御理解をいただかなければならない問題ではないかと思っております。
  140. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 せっかく五十五歳にしてもらったけれども、だんだん下がるんだというお話。これは経過措置としてこんな矛盾したものはありませんよ。一回全部もらっておかぬと損するよという制度はないですよ、今定年も延長しようかというときに。頭のいい厚生省の役人がつくる経過措置としてはおかしい。支給開始年齢が五十五歳になる人については全然経過措置をつくらぬわけです。経過措置の表をつくりなさいよ。そんなことはわけないでしょう。あなた方は得意なんでしょう。ばっとつくるべきじゃないですか。そうすればそれは矛盾はないのです。  局長、こんな矛盾を起こしたらいかぬですよ。本当に産業政策に影響する。通産省はいない、運輸省もいないけれども、海員だって船員だって同じだ。せっかく五十五歳というのを残してくれておるんだけれども、だんだん年金額が下がるというこんなばかな話はないでしょう。全部首にして再雇用すればいいというたら、退職金から何から皆影響するのですよ。これは大至急経過措置の表をつくって、そういう矛盾のないようにしてもらいたい。どうですか。
  141. 吉原健二

    吉原政府委員 実は坑内夫の方、つまり第三種被保険者グループの方たちからの御議論としては本当によくわかるわけでございますけれども、第三種被保険者のグループとほかの被保険者グループ、通常の一般の被保険者グループの方たちから見ますと、もしその経過措置を御指摘のような問題がないようにしますと、逆に一般の労働者、被保険者とのアンバランスがまた非常に目立った格好で出てくるのでございます。そういうことがありますために、本来ならば年齢も合わせるべきであるという議論があったのですが、五十五歳に残したために、同じ年齢属ですと坑内夫の方たちから見ると若干経過措置で激しい面が出てまいりますけれども、どこで年齢の問題と経過措置の問題、既にやめた人とまだ働いている人とのバランスをとるか、技術的にも考え方としても非常に難しい。その難しい結果、いろいろ検討した結果今のような案になっているわけでございますので、その点の御議論としてはわかりますけれども、全体のもっと高い、広い立場から見ますとなかなか一挙にうまいこと直せないということもありますので、御理解をいただきたいと思います。
  142. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 僅少の差じゃないのですよ。坑内で三十年勤続で標準報酬月額が十八万円の人が、六十一年四月一日までにやめれば妻の加給金を含めて十八万三千円もらえるけれども、今度は一万五千円下がるのですよ、四月二日以降にやめれば。だんだんだんだん下がってくるのです。産業政策からいっても僕はこんな話はない、かように思うのですよ。これはやはりそれだけ差があるのですから、私はもう本当に検討すべきだと思う。  三分の四だってそうでしょう。私も余り知らなかったのですけれども厚生省が出しております資料を見ると、採鉱採石というのは随分早死にをするのですね。これはあなたの方の出した資料ですよ。あなたの方の出した資料を見ると、随分早死にをして、そして僕は余り言いたくないのですけれども、死亡率でいきますと、とれは厚生省の官房統計情報部編でだいだい色の本がありますね、そして財団法人の厚生省統計協会というのが出しているのですね。それを見ると、就業者男子人口十万人に対して次の数字が出ておる。一般の人が七百二十二人、これに対して採鉱採石者は千二百八十四・二という数字が出ている。三十五年、四十年と高いのですよ。どういう数字が全部出ているのです。四十年の数字は、一般が六百三十九に対して千百五十二。これは過去十年間そういう仕事をしておった人、そういう統計で出しておるのです。ですからやはり根拠があっておるわけですよ。そういう根拠のもとにおいて、いわゆる加入年数の算定基礎を一般の人に対して三分の四、こういうようにしたのです。これは一体どうするつもりですか。やはり根拠があっておるわけでしょう。  それから、今言われるように、せっかく五十五歳にしたけれども、段階的にだんだん下がるなんというのは、行政としても僕は非常に不合理だと思うのですよ。それならばやはりスムーズに経過措置がいくようにやるべきじゃないですか。
  143. 吉原健二

    吉原政府委員 採石山、坑内夫の方たちの死亡率の問題は、働いている間のいわば災害等の事故による死亡率、それは高いわけでございますけれども、平均寿命が短いとか、あるいは年金の受給期間が短いということには必ずしも私はなっていないというふうに聞いております。  それから特例措置でございますけれども、先ほどの経過措置の問題にも関連をいたしますが、一般の被保険者も六十歳、五十九歳から徐々に年金の計算の基礎となる定額単価と乗率が五十九、五十八、五十七とだんだんと下がっていって四十歳までぐっと下がる、傾斜的に下がっていく、こういうことになっているわけでございます。年齢的に一定の率、それが決められているわけでございます。坑内夫の方たちにつきましても、同じ年齢で同じ逓減の度合いで下がっていくということになっているわけでございます。  ただ、支給開始年齢を五十五歳にとどめたために、やめている人とこれからやめる人とやめない人との間にかなり差が出てまいりますが、被保険者全体として見れば、普通の被保険者と同じような定額単価なり乗率が適用されるということになっているわけでございまして、やはりもうちょっと被保険者全体の中の公平、バランスということをお考えいただいて、その辺はひとつ坑内夫の方に御理解をいただきたいと私は思うわけでございます。
  144. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし、現実に下がるのは困りますよ、下がるのは。早くやめた方がいいなんということになると困るでしょう。しかも一日の差で一万五千円も違うのです。こんなばかな話はないです。それならみんな辞表を出して全部やめればいいですよ。そうでしょう。みすみす将来にわたっての年金が一日の違いで一万五千円も下がる。それは、ベースは下がっても勤続年数が長くなればというのならばいいけれども、とにかく一日違いでベースが下がる、六十一年四月一日を境にして。こんな政策は少しみんなであなた方も考えて、それの経過措置をスローにしておやりになればいいと思うのだ。こんなことは簡単ですよ。せっかく五十五にとどめたのなら、それをやるべきでしょう。これはそう頑張ることはないのですよ。金が要るのなら保険料を上げればいいじゃないですか。三種は保険料が違うのですから。そうでしょう。三種は一種とは保険料が違うのですよ。違うのですから、それで余分に取っているのですから。だから足らなければ上げる。保険料は現に上げておって、そうしてそういう段差を置いておる。こんなことはすべきでない。どうなんですか、それは。これは役所の頭で考えたことですか。どうなんだ、そういう圧力が加わったのですか。そうじゃないのですか。役所としては、これだけ何でも経過措置でスムーズにいくようにされておるのに、この点だけは、画竜点睛を欠くの比じゃないですよ、これは九仭の功を一簣に欠くと言ったら余り言い過ぎかもしれぬが、そういう感じだな。
  145. 吉原健二

    吉原政府委員 先ほどから申し上げておりますように、坑内夫の方たちの御議論としては私もよくわかりますが、それ以外の一般の方たちに納得をいただけるかどうかということになりますと、その議論がなかなか一般の方たちにはすぐには納得していただけない。むしろ、今までの特例措置を何で残すのだという……。  今、保険料が若干高いというお話がございましたけれども保険料の高い割合は一割程度確かに高いわけでございますが、坑内夫の方たちに対する給付を行うためには、それよりも実ははるかに高い保険料をもっといただかないと計算上も合わない。かなりの部分を一般の被保険者の方たちが持っている、こういうことも実はあるわけでございまして、保険料が高いのですよと言われますと、またいろいろな新しい議論が出てくるという心配があるわけでございますので、その支給開始年齢五十五を残すことだけでもいろいろ議論があったところをそういうことにしたわけでございますので、なかなか経過措置、確かにもうちょっときめ細かい措置がうまくできればいいのですけれども、そういう一般の方とのバランスの問題が新たな問題として出てまいりますので、御辛抱いただけないかなというふうに思うわけでございます。
  146. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはひとつ、やはり考慮願いたい。政治をやっている者が、だんだん低くなるという、これは私ども政治家としては納得できない。僕は保険料の話をしたけれども、それでは、金が要るのですというならば、その分について保険料を上げる以外にないでしょう。ですから、これはひとつ考慮願いたい。  これはやはり、労働省や通産省でもそうですよ。あなた方はよその年金だと思って知らぬ顔をしているけれども、これは労務行政上非常に困るのだよ。五十五歳になったら一斉に辞表を出してやめなければならぬということになる。そうしたら、せっかく休んでおるなら失業保険をもらおうなんというのが出てくる。その間に災害が起こるなんということになる。要するに、言うならば今は技術職員や保安職員が足らないのです。かつて大整理をしたので足らないのです。そして熟練の鉱員も足らないのです。そういうところに災害が起こる原因をなしておるのです。ですから、これはひとつ通産省とも労働省とも話し合って、これはメタルマインもそうでしょう。運輸省だってそうでしょう。私はぜひひとつ御協議を願いたいと思う。  この問題はやはり厚生省の感覚だけじゃ無理かもしれぬですね、年金会計の感覚だけでは。ですから、労働省、通産省並びに運輸省、ひとつ協議をして決めてもらいたい。段差がつくなんというのは、政治家としては私どもは納得できない。  次に、繰り上げ支給の率ですね。これは政令にゆだねているのですが、なぜこんな重要なことを政令にゆだねているのですか。これは一番重要ですよ。国民としては、一体六十歳からもらったら幾ら今度は引かれるのかというのは、一番重要なんだ。これによって、ではひとつ早くもらおうかというのが出てくるのですよ。こういう重要なことが書いてないのです。国民にわからぬような手続ばかり書いてあって、肝心かなめのことが書いてない、その一つの例です。一体幾らにするつもりですか。
  147. 吉原健二

    吉原政府委員 原則六十五歳からもらえる年金支給というものを五年間早く繰り上げてもらう、当然同じ額ですと計算が合わない、大変遊離するということになるわけで、どうしても六十歳から繰り上げて欲しいという方については、大体平均的に、六十五歳からもらえる場合と六十歳から繰り上げてもらう場合のもらえる年金の総額というものが同じになるような計算でいわば減額をする、こういうことになっているわけでございます。  その減額率は、これは単に事務的といいますか数理的な計算でおのずと出てくる数字でございますので、年齢ごとに減額率を政令で決めさせていただいているわけでございます。
  148. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これが極めて重要であるということは、共済の減額年率を見てください。共済の減額年率が、今日、五十五歳でもらう場合は〇・三五、五十六歳は〇・二九、五十七歳は〇・二三、五十八歳は〇・一六、五十九歳は〇・〇八五、ところが経過特例があって、五歳前は〇・二で、四歳前は〇・一六、三歳未満は〇・一二、二歳前は〇・〇八、一歳は〇・〇四、こういうように特例措置があるのです。  ところが、国民年金は五年早くもらうと、実に減額率が四二%です。そしてそれは永久に続くんだな。それで、認めないなら認めないでまた話はわかるんだけれども、認める。ですから、私ども本当に困るのです、この扱いは。  皆さんにお話をするとき、なるべく繰り上げ支給をもらわないようにしてもらいたい、そうしないと六十五になったら困りますよ、こう言うのです。これは家庭の事情でいろいろ事情が違うのですね。息子さんたちが健在で十分扶養の義務を果たすような人の場合は、それは早くもらわなくてもいいだろう。ところが、今減額年金をもらっている人はどのくらいですか、長尾部長。かなり多いと思うのですが、こういう重要なことをなぜ法律事項にしないのですか。それは、やがて情勢が変われば変えるというなら変えていいのです。一回出して、やがて金利の問題その他があるから変えます。変更されることは結構ですよ。しかし、国民に一番肝心なことをなぜ法律に書かないのか、これをお聞かせ願いたい。そして、今度現実にはどうするのですか。
  149. 長尾立子

    長尾政府委員 お答え申し上げます。  現在繰り上げ支給を受けておりますのは、五十八年の数字で申し上げますと、六十歳で繰り上げ支給をお受けになりました方は全体の五〇%になっております。これはある一時点でとりましたのでこういう数字になるわけでございますが、全体といたしまして、ある年齢階層の方が六十から六十五の間に何%繰り上げを受けられるかという形で考えてみなくてはならないかと思うのでございますが、六十から六十五の間に繰り上げて支給を受けられる方は現在のところ七〇%を超えているのではないかと思われます。
  150. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今、七〇%が繰り上げ支給を受けているというのでしょう。それだけ対象者が多いわけでしょう。その対象者が多い肝心な問題をなぜ政令にゆだねるのですか。法律に書くべきですよ、こんな重要なことは。
  151. 吉原健二

    吉原政府委員 理屈を言うようでございますが、法律に書く書かないというのは、対象者が多い少ないということもあるかもしれませんが、それよりも、この減額率というのは一定の生命表といいますか数理計算でおのずと出てくる率でございまして、政府が勝手に鉛筆をなめてどうこうというようなことができないわけでございます。そういったことで、法律ではなしに当然政令事項として当時立法されたんだと私は思います。今、ただ希望者が多いということだけで法律にしなくてはいかぬというふうには、私ども必ずしも考えないのでございます。当分現在のような減額率のままでいきたい。  ただ、この減額繰り上げ支給につきましては、私どもから言いますと、今の制度のままでいいかどうかという問題意識も実はあるわけでございます。本来六十五歳、で、六十歳というものが希望者が非常に多いということは一体どうなんだろうかというようなことをもうちょっと考えまして、この制度のあり方についてはまだ考え直す必要があるんじゃないかという気もしているわけでございます。
  152. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法律の条文の考え方が僕は基本的に間違っておると思うのです。これは国民がわかるように書かなければだめなんですよ。役所内部の問題は一生懸命法律で書いておるでしょう。あんなものはいいのですよ。役人的発想じゃだめなんですよ。だれが見ても、自分の年金は幾らであるか、そしてこれだけ早くもらえば幾ら下がるのか、これが一番肝心なんですよ。それを、見てごらんなさい、法律の大部分が手続ですよ。こんなものは役所間の問題です。権利、義務ですよ。ですから、権利、義務に一番大きい問題は金額や減額率です。それをなぜ法律に書かないのですか。日本法律の体系がそもそもそういう意味においては間違っておる。一番国民が知りたいことが法律にない。これによって国民は選別をするわけです、もらおうか、もらうまいかと。その肝心なことが法律になくて、これらの法律は、専門家だけに通用するような法律をつくってもだめですよ。法制局、見えてないかな。大体、法律をつくる場合に、国民の権利、義務を書く場合に、法制局は一体どういう感覚で立法しているんだ。まだ時間があるから呼んできてよ。  実は私がいろいろ調べてみると、本当に大事なことが法律にないのですよ。探すのに大変なんです。例えば、さっきちょっと言いましたように、サラリーマンの妻が入れるか入れないかということは重要なことでしょう、七百数十万も入っているのですから。そういうことが法律の条文の本則には全然ないのです。本則は入ってはならぬと書いてある。そして、今度は附則で、希望する者は入ってもいい。その附則を探すのがまた大変。そしてスライド制だってそうですよ。今度初めて本則に入れたんですから。スライド制は実に昭和四十八年の附則にあるのです。そんな法律、ないですよ。法制局は本当になまけてきておると思うのです。肝心かなめのことが法律にない。やはりそういう感覚がいかぬと思うのです。政令で決めて当然だ、それは計算して違うことがないからと。しかし、国民に公布するのでしょう、この法律は。国民が知って選択をするのでしょう。私は、そういう点が全然なっていないし、一体今までのような減額率でいくのか、他の制度から比べると非常に減額率が高いではないか、こういうように思うのですが、法制的な問題は法制局から御答弁を願うことにして、今の減額率、どういう考えか。
  153. 吉原健二

    吉原政府委員 減額率は、先ほども申し上げましたように現行どおりで当分いかせていただきたい。今これを変えるという考え方は持っておりません。  法律をできるだけわかりやすくというのは、私どもよくそういうことを、同感の点も多々ございますので、今後できるだけわかりやすくということで、いろいろ私どもとしても努力をさせていただきたいと思います。
  154. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、若年老齢年金は残るのですか残らぬのですか。若年老齢年金というのは障害者の場合に適用されるわけです。そして、本来まだ年金資格がないけれども、若いときにけがをした場合に若年老齢年金というのがあるのです。それが規定されておりますが、これは残るのですか残らぬのですか。現行ではどうなんですか。これをお聞かせ願いたい。
  155. 山口剛彦

    ○山口説明員 若齢の老齢年金制度につきましては、今回の改正でそれはなくなります。すべて障害年金制度的に必ず出るということになりますので、そういう整理をさせていただいております。
  156. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし、既裁定のものは残るのでしょう。
  157. 山口剛彦

    ○山口説明員 先ほども触れましたけれども、既裁定については従来のルールでいくということです。残るということです。
  158. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで大蔵省にお聞きしますが、年金に対する課税、どういう方針ですか。
  159. 薄井信明

    ○薄井説明員 お答え申し上げます。年金課税につきましては、人口高齢化あるいは年金制度が徐々に改善されていくという中におきまして、私どもも何らかの手当てをしていかなければならないというような考えを持っておりまして、政府の税制調査会におきましては、昨年十一月の中期答申におきまして、年金課税制度については制度の改変と並行して議論していくべきであるという答申をいただいております。  以上でございます。
  160. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 さっぱりわからぬね、改変と言うけれども。  では、現行を変えるのですか。どういう方向で変えようとしているのですか。
  161. 薄井信明

    ○薄井説明員 お答えいたします。  現行の年金課税制度と申しますのは、まず掛金につきましては社会保険料控除ですべて引いてしまう、また支給される年金につきましては、いろいろな制度で助成といいますか配慮しているという制度になっております。この辺につきましてどうあるべきかということを根本にさかのぼって議論する必要があるのではないかというのが、中期答申といいますか税制調査会の議論でございまして、例えば七十八万の老齢者年金特別控除というのがございますが、こういったものが今回の基礎年金制度の中でどうあるべきかということは十分議論する必要があるというふうに答申をいただいております。
  162. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 質問を進めるためにもう少し私の方から補足質問をしますが、現行法というのは要するに事故があった場合、失業保険だとかあるいは障害年金とか配偶者が死亡した場合の遺族年金には無税ですね。ところが、老齢年金は付加年金を含めて税金の対象になるというのが今の制度ですよ。その制度について変えようとしているのかどうか。
  163. 薄井信明

    ○薄井説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、現在の制度は、まず掛金についてはすべて社会保険料控除で引き去る、支給される年金につきましてはそれぞれの配慮を行っている、この基本的なことはそう簡単には直る話ではないと思います。したがって、この基本的な考え方は考慮に入れながら、今後の年金制度の改変、これからもうちょっと見ていかないといけませんが、全体を見て税制面も考えていくということを申し上げたわけでございます。
  164. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 わかりました。私がなぜ若年老齢年金を出したかというと、老齢年金ですけれども、本来これは障害年金なんですよ。障害を受けた者がもらうのです。ですからこれは障害の性格なんです、名前は老齢年金でも。ですから私は、既裁定の若年老齢年金については非課税にすべきではないか、それを開かんとしているのです。  というのは、今度障害年金になりますとこれは無税になる。そうすると、今まで既裁定の人は、名前が若年老齢年金と書いてあるために税金がかかる、所得の対象になる。だから私は、今の障害年金と同じように、名前こそ老齢年金であるけれども、性格は障害年金については無税にすべきではないか、こういう主張をしている。
  165. 薄井信明

    ○薄井説明員 基本的には現行制度考え方を申し上げればよいかと思いますが、現在、若年老齢年金につきましては、私ども税の立場から見れば、これは老齢年金をお払いしているという制度の中で税は考えなければいけない。もう一つさかのぼって申し上げれば、税制といいますのは、年金制度なり何なりの制度の上に立って考えなければなりませんから、私どもとしましては、障害年金とそれから老齢年金を若年でお払いするものとは、年金制度上違っているというのが現行制度でございますので、そのような税制上の措置になっているということでございます。
  166. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 余り繰り返しませんけれども、これは実質が障害年金ですよ。今度は、今からの人は障害年金になるのですよ。今までの人は、既裁定のものは若年の老齢年金でいくわけです。ですから、非常に矛盾しておるではないか、こう言っておるのですよ。ですから、実質が障害年金だから障害年金のような、現行をそのまま生かすとすれば無税の適用をされたらどうか、こういうことを質問しているのですが、これはひとつ考えてください。
  167. 薄井信明

    ○薄井説明員 現行制度を、これまでずっとやってきた制度でございまして、老齢年金の前倒しといいますか、事前にお払いする若年老齢年金につきましては、私ども老齢年金制度上見ざるを得ない、税制から見たときは。したがいまして、現在これは老齢年金と同じように取り扱いをさせていただいておるわけでございまして、この点は御理解いただきたいと思います。  年金制度が変わっていけば、先ほど最初に申し上げましたように、そういう制度を前提として税制がどうあるべきかを考えさせていただきたいということを申し上げたいと思います。
  168. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、障害年金に若年老齢年金が今後は変わる。しかし既裁定は変わりませんから、ひとつ障害年金の扱いをしてもらいたい。それだけを申し上げておきます。いいでしょう、検討するのだから。
  169. 薄井信明

    ○薄井説明員 年金制度が変わってそのようになった際には、私ども年金制度自体がそうなってきた際には、税制としては、年金制度は基本的に変わっていくようですから考え直す必要は出てくるだろう、このことを勉強しるということを中期答申、税制調査会から私ども申しつかっておりますということを申し上げます。
  170. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、どうも金がない、金がないと厚生省は盛んに言うけれども、なぜこんな矛盾を平気で許しておるのか。というのは、労災と厚生年金との調整関係です。公務員共済は全面的に、公務員の災害補償が前面に出るのです。そして、この災害補償で年金を払うのです。そして、その調整を一般の共済でやるのです。ところが厚生年金は逆ですね。厚生年金は全額払う。そして、その調整を労災がする。こんなことでは金が足らなくなるでしょう。なぜそういう点を厚生省は、もっとしっかりして、これは本来労災であるから、労災が全額払ってその調整を厚生年金がやりますよとやらないのか。金がだんだん足らなくなるじゃないですか。そのくらいのことがなぜできないのですか。いいですか、基準法のときは逆に、労災で一時金をもらったら、厚生年金は六年間停止したのですよ。このことは、要するに労災が先に出た、全面的に引き受けますと。その後改正になって、今月では、全部厚生年金が出します、残りを労災で見てくださいという。これは主客逆転しておるじゃないですか。どういうふうにお考えですか。
  171. 吉原健二

    吉原政府委員 私も、そういった御指摘、御質問を受けますと、確かに現行制度について問題があるなというふうに率直に思うわけでございまして、これから同じような事故、同じような障害に対していろんな制度からいろんな給付が出る場合に、どの給付を優先的に考えるか、あるいはどういうふうに調整するかというのは、現行は少し煩雑にも過ぎますし、決まった一つの考え方で整理をされていないような面がややございますので、その点はこれからの課題として、現行は従来どおり御指摘の点がなっておりますのは、ある意味で率直に申し上げまして残念な点でございますけれども、ひとつ今後よく労働省とも相談をさせていただきまして、考え方としては多賀谷先生のおっしゃる方向で調整すべきではないかという気が私はいたしますので、今後労働省とも意見の調整をさせていただきたいと思います。
  172. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働省も引っ込む方は余り答弁したくないだろう。しかし、労働省も考えなければならぬのですよ。基準法と労災の立て方が違うのです。そして共済の方はどうかというと、共済の方は公務員の死亡その他は補償の方が前面に出ている。足らない分を一般共済で出しておるでしょう。それなのに、同じ日本政府のもとにおいて、労災の方が調整用に回って厚生年金は全額出すなんて、これは今、厚生年金給付を引き下げよう、保険金が高くなろうという時期に、まさにこういう点こそメスを入れるべきではないですか。私はそういうふうに思いますが、大臣、どうですか。
  173. 増岡博之

    増岡国務大臣 御指摘の点は、今後政府内部で協議をしてまいりたいと思います。
  174. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先ほど数理課長が、利率ということを盛んにおっしゃった。利子の運用利率というのが収支計算に大変影響があるという話をされた。まさにそのとおりですね。  そこで、これは長い間の論争なんですけれども、肝心なときに小沢理事はいないのですけれども厚生年金ができたときは、これは戦費調達購買力の抑制で出たのですから、いわば強制貯金ですから私は言いません。しかし、これは二十九年の厚生年金改正の場合も、三十四年の国民年金のいわば制定の場合にも大変議論になったのですね。要するに、積立金の実質価値を維持するかどうかということですよ。そこでこれは大変な議論になりまして、今のように資金運用部資金の財投に全部振り向けるという方法がいいかどうかというのが議論になった。このときに政府は、とにかく国の方針として重点的に日本経済再建のために使います、そうして、日本経済が伸びた場合にはいわば国民にその金の運用によって出た利益は還付します、こういうことを言って今日の制度を維持してきたのですよ。  ところが、今日、簡易保険を見ても、それから他の共済の積立金を見ても、残念ながら厚生年金の利率が低い。今各共済の話をされるけれども共済は大部分住宅資金に貸しておるのですから、これは低くてもやむを得ない問題があると私は思うけれども、しかしそれだけ還付しておるのです。それに対して国年、厚年の積立金は依然として全部運用部資金に入っているじゃないですか。今、簡易保険だって外国の債券を買おうということで法律が通過をした、こういう時代になっても、依然として一番肝心なこの利子運用について今までどおりされるのかどうか、これをひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  175. 吉原健二

    吉原政府委員 私ども、基本的には、この積立金につきましては、安全であることはもちろん第一でございますが、安全であると同時に有利にということ、それからもう一つは、できるだけ保険料の拠出者の意向が反映されるような使途に使うというような考え方で、大蔵省とも折衝をしてきているわけでございます。  積立金の持つ意味というのは、将来財政方式というものが漸次賦課方式に移行していくというようなことでもございますので違ってくるわけでございますけれども、将来の年金財政は、この保険料負担、それから積立金の運用による利子、これが大きな原資になりますので、やはりこれからも、積立金につきましてはできるだけ少しでもより有利な運用ということを考えていかなければならない、こう思っております。  それにつきまして具体的に申し上げますと、今の預託利子が七・一%ということになっておりますけれども、これを何とかもう少し上げられないだろうかというようなことで、大蔵省ともいろいろ折衝し、申し入れをしているわけでございます。大蔵省が来ておりますけれども、大蔵省のサイドから言いますと、国家資金、郵便貯金や何かの資金どこの年金の資金というものはあくまでも統一的な運用をさせてもらわないと困る、そして、財政投融資の原資として国の政策金融その他、公共的な方面に使用させてもらわないと困るんだ、こういう御主張であるわけでございます。  それはそれとして、長い沿革も歴史もございますしあれでございますけれども、私どもは、先ほど申し上げましたように、その中でより有利に、より我々の意向が反映できるようなことで、今後とも強く大蔵省とやってまいりたいと思います。
  176. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは極めて重要な問題です。とにかく、財投という制度は世界にないですね。幸いにして日本にはある、第二予算。郵便貯金というのも、外国ではイギリスを除いてはどこもそうたまっていないのです。これだけの郵便貯金がある。しかも年金が、厚生年金は二十年間給付しなかったのですから。こんな残酷な年金制度の中で日本経済は伸びたのですよ。でありますから、このことを十分考えて、この運用、それからこれに対して掛金を納めた被保険者に運用について参加をさせる、これをひとつ御答弁願いたい。  そこで、時間がありませんから、最後に法制局に、せっかく来ていただいているので質問します。今、私は例として、繰り上げ支給の減額率が法律にないではないか、政令にゆだねておるではないか、こういう国民に一番大事なことを法律に書かないとは何事か。みんな六十になったら悩むのですよ、六十五になってもらうか、あるいは六十になってもらうか悩むのです、この重大なことが法律にないというのは極めて不親切ではないか、こう言ったのですが、法制局はどういう見解であるか、これをお聞かせ願いたい。
  177. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答え申し上げます。法律の規定におきまして政令に委任するという事項につきましては、これまでもしばしばほかの委員会でもお答え申し上げているところでございますが、原則といたしまして私どもは幾つかの基準を立てて考えているわけでございます。第一には、これは当然のことながら、非常に技術的な事項、こういうものは政令にお任せいただくのも許されるのではないかと考える。第二に、事態に応じて非常に流動的に変化するというふうな事項もまた政令にお任せいただいてよろしいのではないか。それから第三に、ほかの諸要因からいろいろ客観的に決まってくる事項、こういうものもお任せいただいてもいいのではないか。大体そういうふうな基準を立てておりまして、今回の今御指摘の問題につきましても、比較的ほかの諸事項から客観的に決まってくる、その基準に当てはまるのではなかろうか、かように考えております。
  178. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 技術的な問題という考え方がそもそも間違っているし、それから、変動があると言うけれども、変動がないんですよ。昭和三十六年から全然変動がないんだ。いまだに二十三年も四年も、四二%減額というのは初めから同じです。それから、ほかの要因というのは確かにあるのですけれども、それによって変動したかというと、変動してない。しかし、これは国民にとっては一番肝心なことなんですよ。ですから、実は国民年金老齢年金の七割がいわゆる減額年金をもらっているというような重要問題、これを法律に書かないで政令に書くなどという感覚がおかしいじゃないですか。それは事情変更で修正すればいいんですよ。そのために国会があるのですからね。ですから、そういう点を法制局は一体どう考えておるのか。役所の縄張りのようなことばかり法律で書いておるけれども国民にとっては、この会計がこちらの会計に移るなどということは大したことじゃないのです。問題は、国民に直接どれだけの利害関係があるかということを法律に書くべきでしょう。もう一回答弁を願いたい。
  179. 工藤敦夫

    工藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御指摘の点でございますが、現行の国民年金法におきまして、二十八条の三項でございますが、二十八条の二項によって「支給する老齢年金の額は、」「同条に定める額から政令で定める額を減じた額とする。」こういうふうなことにはなっているわけでございます。
  180. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ありがとうございました。まだ問題点がありますけれども、ひとつ後から皆さん精査をしてもらいたいと思います。  以上です。
  181. 戸井田三郎

    戸井田委員長 網岡雄君。
  182. 網岡雄

    ○網岡委員 ただいま、先輩であります多賀谷委員から積立金の自主有利運用について御質問がございましたが、それに関連をして若干御覧間を申し上げたいと思います。  大体、厚生年金にいたしましても、国民年金にいたしましても、日本年金のあり方というのは積立方式をとられているわけでございますから、積立方式をとっている限りにおきましては、その積まれている積立金の運用をできるだけ高く有利に運用していくということは、我が国の年金財政を考えていく場合には非常に重要な問題だと思うのでございます。  まず、最初にお尋ねをしたいのでございますけれども、積立方式をとっていく以上、それは一体どういう運用というものが必要なのか、その運用原則というものを厚生省としてこの際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  183. 吉原健二

    吉原政府委員 年金積立金の運用の基本的な考え方は、まず安全であるということが大事でございますし、同時に、それは将来の年金原資として給付に当てられるものでございますから、その恵一湾できるだけ有利化運用されなければならない、この二つが基本だというふうに考えております。
  184. 網岡雄

    ○網岡委員 今の原則はわかりましたが、それでは一体具体的に、有利に運用した場合に年金というものがどれぐらい影響を持ってくるかということで一つお尋ねをしたいと思うのでございますが、今度の年金統合法案でやりました際に、利子の運用を七%と積算をいたしまして出されておる表がございます。その原案と比較をして、七%の利子運用をさらに一%高めた八%で運用した場合に一体どういう影響を持ってくるか、こういうことを二つを比較して御説明をいただきたいと思います。
  185. 吉原健二

    吉原政府委員 年金積立金を七%の運用から八%の運用に引き上げるということにしました場合には、当然年々の積立金の運用から生ずる利子が全体として大きくなるわけでございますから、積立金全体が毎年毎年積み重なるような形で増加をしていくということになるわけでございます。  これが年金財政に対して、特に保険料負担というものに対してどういう影響を与えるかということで申し上げますと、現在七%で将来財政収支の推計をしておりますが、その際における保険料の限度額、上限の額は、厚生年金については二八・九%まで上がるという予想をしておりますけれども、仮に将来にわたって一%高い八%で回せるということにいたしますと、これが二七・九という仁とになるわけでございます。  それから、国民年金について申し上げますと、現在の七%の運用という前提ではピークが一万三千円ということでございますが、八%にいたしますと一万二千二百円というような水準になろうかと思います。
  186. 網岡雄

    ○網岡委員 今の御説明によりますと、一%高い利子の運用を行うことによって保険料に影響が出るものは、年金統合法案の率の二八・九%よりも一%低い二七・九%ということになって、厚生年金保険料は一%ダウンすることができる。それから、国民年金の場合には、昭和八十五年から昭和百二十五年までの四十五年間にわたって統合法案の政府提案よりも八百円少ない保険料で済む、今こういう御答弁があったわけでございますが、一%高い利子によって非常に効果の大きい影響を年金財政に与えるということは、とりもなおさず、積立金の自主有利運用というものが年金財政にとって非常に大きなファクターを持っているということが言えると私は思うのでございます。  昨年の三月三日の衆議院社労委員会で大原亨議員の質問に答えて、当時の林厚生大臣は、近く年金改革案を提案しようと思っているけれども、その際には保険料、そして給付などの適正化をどうしても強いなければならない、その場合には積立金の有利運用というものについて厚生省が長年の宿題を抱えているのだけれども、これを解決しなければ到底国民に納得してもらうことができない、したがって、厚生省としては、積立金の有利運用については、これは八月までにその改革案をまとめて、その際、各種の審議会を通じてこれらの問題について前向きに取り組んでいきたい、こういう御答弁をなさっておるわけでございます。大臣がかわりましてもこの厚生省の方針は変わっていないと思うのでございますが、去年の衆議院社労委員会の答弁後、今日に至るまでのこの問題についての厚生省の取り組みは一体どういう取り組みをしてきたのか。そして、現在この問題についてはどういう進行状態にあるのか、お聞かせをいただきたい。  それからもう一つは、きょう大蔵省の資金運用部の方がお見えになっていると思いますが、大蔵省資金運用部は、厚生省から投げられたこのボールを受けて一体どういう対応を示されようとしておるのか、どういう検討をなさっているのか、この辺について御答弁をいただきたいと思います。
  187. 吉原健二

    吉原政府委員 厚生省といたしましては、先ほど申し上げましたたうな基本的な考え方に立ち、また林大臣がおっしゃいましたような御趣旨に沿って、大蔵省と鋭意折衝を続けてきたわけでございます。現在のところ、まだ改善についての具体案がまとまるところまで率直に言って来ておりませんが、私どもの主張をもう一度整理して申し上げますと、まず第一に、年金積立金の本来の機能は、できるだけ安全で有利な運用を行って将来の保険料水準の抑制に寄与するようなことにしたい、そのようなことに有効な資金運用をお願いしたいということ、そのためには何らかの形で現在よりも資金運用部の預託金利を上げていただくか、あるいは資金運用部の中でこの年金資金というものをほかの資金とは区別した形で何か運用してもらえないだろうか、そのことが年金資金についての預託利子の引き上げにつながるのではないかというようなことでございます。  それからもう一つが、年金積立金というのは、郵便貯金等と違いまして、国の法律で強制的に徴収された保険料の集積でございますので、いわば任意の郵便貯金とは違うではないか、そういった意味におきまして、その運用について保険料拠出者の意向、気持ち、意見というものがもっと反映されるような仕組み、場というものを考えていただきたい、こういうことを強く大蔵省にお願いもし、折衝してきているわけでございます。  私どもの今の考え方はそういうことでございます。
  188. 寺村信行

    ○寺村説明員 年金資金は、郵便貯金などのほかの公的な資金と統合されまして、現在資金運用部で一元的に管理運用されております。これば、国の制度や信用を通じまして集められた資金というのはやはり公共的な目的に運用されてしかるべきではないかという考え方であり、かつ、非常に大量な資金でございますので財政金融政策との整合性も確保しなければいけない、そういうような考え方から現在統合運用が行われておりまして、臨調の最終答申におきましても、統合運用の現状は維持されるべきだという御答申をいただいております。大蔵省といたしましては、引き続きこの統合運用の原則を維持してまいりたいと考えております。  ただ一方、こうした資金は資金運用部資金法でもございますが、預託者の利益にも配慮しなければいけないという観点がございます。先ほど年金局の方から御答弁がございましたが、厚生省からもそういった点で昨年以来お申し出をいただきまして、いろいろ協議をしております。また、先ほどの臨調の答申でも、資金運用部資金の運用に当たりましては公共性の観点も重要であるとした上で、なおかつ、これまで以上に有利な運用を図らなければいけないというふうにも述べられておりますので、今後公共性とのバランスを配慮しつつできるだけ有利運用に努めてまいりたいと考えております。
  189. 網岡雄

    ○網岡委員 まず厚生省の方ですが、区別をして運用したい、金利を上げてもらえればいい、上げてもらえない場合には資金運用部のうちの厚生年金なり年金積立金については区別して運用さしてもらう、こういうことの御答弁がございましたが、これは具体的に言うと、入れ物は資金運用部の金庫で結構です、しかし年金積立金の分についてはもう一つ箱をつくってもらって、その箱の中に入っている積立金の金は厚生省が自由に有利に運用し得るようにしてもらいたい、こういう意味なんですか。
  190. 吉原健二

    吉原政府委員 いわゆる自主運用というのは、資金運用部に預託しないで、別に自主的に厚生省で運用するというのが自主運用の考え方でございますが、現実問題として、今の大蔵省の御答弁からも察せられますように非常に難しいということがあるわけでございます。せめてそれでは、資金運用部の中でいろいろな資金と一緒に運用する統合運用という原則の中で、何とか年金資金だけは大きな箱の中に別な仕切りをつくって、年金資金については特別に、一般の他の資金の預託金利よりも何か有利な方向に運用して、預託利子も上がるような方法は考えられないだろうかというようなことを念頭に置いて、いわば区分運用といいますか、そういったことを大蔵省に検討をお願いしているわけでございます。
  191. 網岡雄

    ○網岡委員 今度は大蔵省に質問させてもらいますが、まず一つは、資金運用部がおっしゃった、国の信用で集まった金だから国が公共的な立場で統合的に使わなければいかぬ、こういう考え方を示されたわけでございますが、それは大蔵省資金運用部の言い分としては一つの響きを持っているかわかりませんけれども年金の積立金でございますから、それはやはり被保険者の保険料によって集まった金が大半なんですね、ほとんど九九%近くがそういうことだと思うのでございますが、そういう金であれば、それは当然、冒頭の年金局長の御答弁にもありましたように、一つの厚生省の立場からいけば、その金は、年金財政を姓がにしてそしてそれを被保険者の保険料なり年金受給者に還元をしていく、そういうことをしていかなければならない責務がこっちにあるわけです。これは政府という一つの大きな建物の中で、二つの考え方を同時にやっていかなければならぬことになっているわけでございます。  先ほども冒頭に御答弁がありましたように、たった一%の利子の効率運用によって保険料が最終的に一%下がる、これは今まで厚生省がずっと考えてきた中でいけば大変な変革だと私は思うのでございます。それくらいの影響を持つわけですね。したがって、そういう国家的な年金の見地に立つならば、大蔵省も政府の一環でございますから、その金を運用するに当たっては、やはり年金財政を助けていくための有利な運用あるいは、厚生省が別皿でというような表現をなさっていますが、私はこれは手ぬるいと思うのです。はっきり堂々と自主運用さしてもらいたい、こういうことを厚生省は言うべきだ、そう言う根拠もあるはずなんでございます、私は後で言うつもりでございますが。そういう中にあって、資金運用部がかたくなに自分の論理だけで進めているということはいかがなものだろうかという気がいたします。  それから、二つ目は、おっしゃるように臨調の第五次答申が出たことは事実でございます。しかし、もう少し中身を突っ込んで言えば、これは同じ答申案の中でも、財政投融資、資金運用部のあり方についても、その効果なり運用の問題が相対的に低下してきているということが、はっきり臨調の答申案の中にも出ているわけでございます。理由としては、郵便貯金が非常に減退をしていく。それからもう一つは、さっきの答申によれば、年金が八五年ごろになると大体事実上積立方式からやむを得ず賦課方式に切りかわらずを得ない、こういうところに年金財政は落ち込んでくるわけでございます。そうなると、預託はしたいけれども預託はできない、完全にはできない、とは言えないかもわかりませんが、非常に苦しいときが来る。そうなると、資金運用部というものが、年金財政としては非常に困っている状況の中で、それを吸い上げて公共のために投資をしていくということが果たしてできるだろうかということを、いみじくも臨調は第五次答申の中で言及しているところでございます。しかし、当分の間、やはりあなたが言われたように、国の信用のもとで集めた金なんだから、それは公共的な運営をしたらよろしい、こういうことになっておるわけでございますが、問題は、賦課方式まで落ち込んでいく年金財政は、今は五十九年ですが、勘定をしやすく六十年とすると、あと二十五年くらいで来るわけですよ。そうすると、年金財政にとってみれば、年金の本体といいますか、持っているレベルが五年なり四年なり三年なり、そういう資金量を持っているときに有利運用をして、そしてその資金を膨らまして年金被保険者に還元をしていくということにしていかなければ、ゼロになってから、賦課方式に陥らざるを得ないところまで来たときにぽっと放してもらっても、それはもう短期利用しかできないということですから、利子の運用の効果というのは非常に少なくなってくる。そうすると、それは大蔵省だけではいいかもわかりませんけれども、国全体の福祉を中心とした行政としては、そこで非常な落ち込みをすることになるわけでございまして、まさに臨調が言っている答申の内容というものは、行政の質や将来の展望というものを踏まえながら考えなければいかぬよ、こういうことを答申していると思うのでございます。  そういう長期の展望や先の見通しをつけた上で、大蔵省資金運用部としても考えるべきときに来ていると思うのでございますが、その辺はどうでしょうか。  それから三つ口は、あなたもおっしゃったように、運用部資金法の法律の第一条を見ると、預託者に対して可能な限り有利に運用しなければならない、有利性を確保しなければいかぬということが出ているわけでございます。それはこちらが出せる金、ただで預かってただで渡すということではない。とにかく一分にしろ二分にしろ利子はついているのだ、だから有利なのだ、こういう解釈も成り立つかもわかりませんけれども、それはやはり一般金融市場における金利やそういうものと照らし合わせた場合に、可能な限りの有利性というものを持つんだ、こういうことがその法律の中の法文解釈の精神だと私は思うのでございます。  そういうことからいきますと、今までの長い一つの期間を見た場合に、例えば国債や債券というものの率よりも確かに資金運用部の利子というものは低い、こういうことでやられていたということは大きな問題じゃないだろうかと私は思うわけですが、その点いかがでしょう。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  192. 寺村信行

    ○寺村説明員 現在、資金運用部の資金が百四十兆円でございまして、その内訳を申し上げますと、郵便貯金が八十五兆円でございます。それから年金資金が、国民年金船員保険合わせまして四十三兆円でございます。残り各種の特別会計、例えば自動車損害賠償責任保険ですとか、労働保険特別会計等々相当数多くの特別会計の預託金の合計が十一兆円になっております。  先ほどの第一点の御質問でございますけれども、確かに年金資金の観点から言えば、より有利であることが望ましいということは全く御指摘のとおりでございますが、これはそれぞれ各預託者、ただいま申し上げました八十五兆円の郵便貯金のサイドからも、それから十一兆円の各特別会計の預託のサイドからも全く同じような御議論が出ておりまして、やはりそれぞれの立場から、より有利なために分離運用をさせてほしいという御要請が私どもの方に出ておるわけでございます。  ただ、こういった資金は、実は百四十兆円という非常に巨額な資金でございます。それから、現在、財政投融資の総額が二十一兆一千億円でございまして、一般会計の五十一兆六千億の約五割、財政投融資が果たしております機能は、例えば住宅対策でございますとか中小企業対策でございますとか、生活環境整備でございますとか、あるいは都道府県、市町村に対します資金の供給とか、今の我が国の財政制度の基本的な枠組みに組み込まれている制度でございまして、その機能は、財政的にも国民全体の福祉の向上のためにも大きく寄与をしていることではないかと思っております。そういった中で、全体的な財政金融政策との整合性あるいは政策的な資金の配分のウエートの置き方ということを考えていくためには、やはり現状の統合運用ということを維持していくことが現段階におきましては適切ではないかと考えているわけでございます。  それから、第二点の御質問でございますが、この点につきましては全く先生の御指摘のとおりのような状況がございます。確かに、今後金利の自由化が進展してまいりますときに郵便貯金の帰趨がどうなるか、それから年金の長期的な財政状況の見通しから考えまして、今後とも財政投融資が今果たしておりますような機能がずっと中長期的に果たせるかというのは、いろいろ問題があるところではないかと思います。そういった面から、例えば現在の財政投融資をもう少し見直していく必要があるのではないか。例えば現在、財政投融資では一番住宅部門に重点的な資金配分が行われております。これは主として住宅金融公庫に対して、五十九年度におきましても五十万戸の融資のための資金配分が行われておりますが、将来こういった原資が枯渇していった場合にそういった政策が維持できなくなる。じゃ、そういうものにかわるような何か手だて、住宅対策なりあるいは地方公共団体に対する資金供与につきましても、何かそれにかわるような手だてを将来考えていかなければいけないのじゃないか。意外にこういったことは、今後の金利の自由化の進展が割と早く進むということも考えられないわけでございませんので、その辺は今後私ども真剣に検討してまいらなければならない課題ではないかと思っております。  それから第三点の、それにしても可能な限りに有利な運用というものが図れないだろうかということでございます。  年金改正のたびもそうでございますが、いろいろそういった議論が出て。おりまして、一方では、先ほど申し上げましたけれども、資金運用部はお預かりしているお金をその金利で同時に例えば地方公共団体にお貸ししている、そういう仕組みになっておりますものですから、その辺のバランスをとることが非常に難しい問題がございます。例えば中小企業金融公庫にその金利でお貸しします、その金利が上がれば中小企業金融公庫の貸出金利が上がるというような問題もございます。ただ、そういったところを十分配慮しまして、預託者の利益にも配慮できますように今後とも努めてまいりたいと考えております。
  193. 網岡雄

    ○網岡委員 続いてですが、でありますから、臨調の答申案は、はっきり言えば、もう財政投融資、資金運用部の運用のあり方というものは限界に来ている、したがって、今おっしゃったようにむしろ一般会計の中でそういうことをやっていくように、今これは難しいということがあるかもわかりませんが、基本的に言うとそういうことでやっていかざるを得ないようになるのじゃないか、こういうことを臨調は言っておるわけなんでございます。  それから、言葉を返すようですが、厚生省年金の金というのは、今御説明があったような形で大変なウエートを持って資金運用部へ金が入っているわけでございます。入って、あなたの言葉を一〇〇%そのままとって、国の経済の発展のために大きく貢献したことは事実でございます。そうであるとするならば、今いみじくもあなたがおっしゃったように、住宅をやるためには利子を高くしたらこれはパンクをする、受ける人がなくなる。したがってどうしても低利にせざるを得ない、低利にしているから効果があるのでございます、それは認めます。しかし、逆に言えば、そういう低利の運用を図るからこそ、年金の立場でいけば年金財政の伸びが頭打ちをする、こういう関係に入ってしまうわけでございます。それが一つの金庫の中で起こるということになるわけでございますから、私は別のことを申し上げるならば、長年にわたって低利で運用されてきた、その運用されたことを年金会計としてはじっと我慢をして辛抱してきた。そのことによって国の経済は伸びた。こういうことであるならば、その伸びたことによる貢献率といいますか、そういうものは一般会計で、国庫補助なら国庫補助という形で年金財政に国が何らかの形で援助をしていかなければならぬじゃないか。もらうものはもらって運用はするけれども、しかしそれはやらない、こういうことでは、一体、年金会計というのは何に頼ってどうやって運用したらいいかということになると、結局、今までの審議の中で明らかなように、保険料を上げる、そして年金受給額を三分の一削る、被保険者に対して徹底的に犠牲を強いる中で帳じりを合わせる、こういうことしか逃げ道がないというところに私は問題があると思うのでございます。  したがって、私が申し上げたように、国の経済に貢献をした年金積立金に対する国の価値判断というものが何らこれは出ていないというところに問題があるのでございます。その点についてどういう御見識を持っているのですか。
  194. 寺村信行

    ○寺村説明員 現在、住宅金融公庫は五・五%でお貸しをしておりますけれども、実は資金運用部の金利は七・一%でございますから、その差額の一・六%は一般会計から利子補給が行われております。(「全部やっているか」と呼ぶ者あり)全部でございます。これは国会法律でお諮りをいたしまして、最近は一部繰り延べがございますけれども、原則として預託金利との差額は一般会計から繰り入れという状況になっております。  ざっと長い時系列で申し上げますと、実は運用部の預託金利あるいは年金にお返しする金利というのは最近かなり上がってきておりまして、三十年代、四十年代に比べますと五十年代は上がってきておりまして、逆にその結果、一般会計からの利子補給のお金でございますけれども、例えば中小企業金融公庫とか国民金融公庫、今まで利子補給がございませんでしたけれども、五十九年度から利子補給が行われるようになったり、いろいろな会計でそういった利子補給がだんだんふえてきているというような現状になっております。  一般会計も非常に厳しい財政状況にございます。その辺のバランスをどう考えながら預託金利をできるだけ有利運用という御要請にこたえていくかというのは大変難しい問題でございますが、今後ともそういった御指摘を踏まえまして検討してまいりたいと思っております。
  195. 網岡雄

    ○網岡委員 最後にもう一つだけ私、申し上げたいと思いますが、結局、今御説明になった関係だということはよくわかるのです、しかし、だからこそ、逆に言うと預託の利子というものは低いところで大蔵省は決めざるを得ない。つまり、住宅なら住宅にしても五・五の利子ですから、運用利率は七・一ですよ、足らぬ分は一・六%、一般会計から、これは建設省から補てんだということになれば、打ち出の小づちを持っておれば別ですが、これはない。だから結局、そんなことは毎年毎年需要に応じていくということはできない。そうすると、どこで調整をするかというと資金運用部の預託利子でこれはやっていく。その差によってその財源を調整していく、こういう力学がやはり働くことになりますよ。だから結局、非常に低い率、低い率で抑えられているというのが今までの歴史じゃないですか。  これを私は、こういう犠牲を強いられてじっと我慢をしてきたんだから、そして貢献をしてきたんだから、その貢献率についてはやはり国が面倒を見る必要がある。そしてこれからは、さっき厚生省も言ったように、これは有利運用――私は自主有利運用までやらなければだめだと思いますけれども、何らかの形での処置をやらないといけないと思うのですよ。  それから、時間が来ていますから、これは厚生省にも一つ申し上げますけれども、聞くところによりますと、社会保険審議会、社会保障審議会、それから国民年金審議会、この三つの審議会はいずれも政府の正式な諮問機関ですよ。その諮問機関が、積立金の自主運用と有利運用というものを速やかに図れということは今回の答申にも出ているわけでございますが、繰り返し繰り返し言っておるところであるがと言っておるくらい、何遍かやったそうでございます。聞くところによると、三つの審議会で出した答申案はそのことを言っているのですよ。積立金の自主有利運用というものを要求したその答申案というものはおよそ三十回を数える。細かく勘定をしなければならぬですが、大体そのくらいの答申案が出ているということのようでございます。これは資金運用部も同じでございますが、政府の正式な諮問機関でしょう。その正式な諮問機関がこれだけ数多く答申をしておるにもかかわらず、政府がその意見を聞き行政に活用しようということでつくられたその審議会が、三十回も答申をしているのに、一遍もそれが実行に移っていない。これじゃ応援団は疲れちゃいますよ。だから、審議会の答申を受けた以上は、厚生省もふんどしを締めて、まなじりを決してそのことの実現をするように努力をしないとこれは大変なことですよ。これは明らかに審議会の軽視です。厚生省、今後その決意はどうですか。
  196. 増岡博之

    増岡国務大臣 ただいまの先生の御指摘は私どもも十分ごもっともなことだと思っておるわけでございます。  御指摘のように、今後も、まあこれまでもいろいろ協議いたしておるわけでありますけれども、今後も年金財政のために長期にわたってやっていかなくてはならない問題だと、再び意を決して折衝に当たりたいと思います。
  197. 網岡雄

    ○網岡委員 それでは次に移ります。  今度は積立金の運用の中の福祉運用について、私は一つ注文をつけていきたいと思うのでございます。積立金の運用の中で福祉の運用というのは、これは私の個人の意見でございますが、こういうこともあった方がいいというふうに思います。しかし、それは運用の仕方でございます。厚生省が「二十一世紀年金に関する有識者調査」というのをやられたようでございますが、この有識者調査によりますと、有利、福祉のバランスをとれという意見は三四・八%、この数字よりも多少少ないのですけれども年金財政が非常に危ないからこの際有利一本やりで運用すべきだ、こういう意見を持った方が二六・六%、学識者の中でもかなりの高い率でこれを支持なさっている面がございます。  そこで、私は、有利と福祉とがバランスをとれた運用をするということの賛成論者の一人でございますけれども、しかし、今日までやっている厚生省の福祉運用というものは余りにもいい子になり過ぎている、こういうところがなきにしもあらずだと私は思うのでございます。その考え方の中には、一般会計からの税金だと大蔵省の締めつけが非常にきつい、しかし還元融資という形で三分の一もらえば、それはもともと税金ではなくて被保険者の保険料だから、したがって振る舞っていく、こういう形の福祉運用というものがやられてきた嫌いが私は非常に感じられるわけでございます。  その一つの例といたしまして、大規模年金保養基地でございますけれども、これを一つ質問いたします。これは資料をいただきましたが、それを見ますと、大沼の場合は剰余金が出ていますから健全運営ということに一応なるでしょう。しかし、五十五年から運用に入った三木大規模年金保養基地の場合は、十三億五千六百万近くの収支の中で六千八百三十四万円の赤ですね。これは一体どういう運用をやっているかというと、聞いたところによりますと、この三木大規模年金保養基地の土地購入費、それから建物、これは全部積立金を使っておみえになりますね。積立金は別ですか、保険の特別会計の中でお使いになっている。厚生年金特別会計、国民年金特別会計の中で使われて、そしてそれが福祉事業団のところへ来てやられておる。こういう状況ですね。要るのは光熱費とかそういうものだけなんです。それであって六千八百三十四万円の赤、こういうことになっておるわけでございます。聞くところによりますと、十一基地十三カ所という大規模基地が今からつくられようとしておるそうですけれども、三木、大沼、津南など四カ所は福祉事業団が事業主となって、そして外郭団体に運営を任す、こういうやり方のようでございますが、あとの九つについては全部各県が責任を持って運営をしていく、こういうことのようでございます。  そこで私、将来の見通しについて若干お尋ねをしたいと思うのでございます。三木大規模保養基地の場合は六千八百万近くの赤が出ているのです。これは私の推測ですけれども、この六千八百万近くの赤字がことしの決算で急にゼロになったということは到底考えられないわけでございまして、この程度赤字というものはかなり長期にわたって続けられていくことになるんじゃないかと思います。大沼の場合は若干のプラスのようでございますけれども、後から出発をしていく各基地は一体どういう財政収支になるのか。これが赤字になっていくということになりますと、例が悪いですけれども、福祉事業団の中での国鉄要素を持つわけですよ。ずっと蔓延していって、結局トカゲのしっぽのように切らざるを得ない、こういうところに入ってしまうと思うのでございますが、こういう心配はないか。この六千八百万円は何か銀行から借りて一応のやりくりをしてやっておるようでございますが、しかし借金は借金で残っていくわけですから、これはマイナス要因なんですよ。どんどんマイナス要因ができてくるわけてす。基本的に収支は赤の状況なんですから、それだけのものを返せるわけがないのです。そうするとどんどんこの赤がふくらんでくるわけです。そういうことになっていく心配があるのですが、これはどうなりますか。それからまた、その十三の基地については収支の見通しは一体どうなりますか。
  198. 吉原健二

    吉原政府委員 大規模保養基地、今建設中のものも相当あるわけでございますが、今御指摘のございました三木の基地は、ほかの基地に比べまして立地条件として大都市にも近いところにございますし、運営がもう少しうまくいくかもしれないという見込みがあったわけでございますけれども、実際に出発をしてみますと、これは五十五年度の発足でございますけれども、初年度から二千万近い赤字になっておりますし、五十六、五十七と少しずつ赤字がふえて、五十八年度は六千八百万程度赤字になっておるわけでございまして、確かに私どもにとりましても、率直に言って非常に頭の痛い問題でございます。経営のやり方を基本から反省といいますか考え直していかないと、現状のまま推移しますと、御指摘のような御心配が私は当然あると思います。利用料金の面あるいは支出の面におきましては、人件費を初めとするいろいろな支出の節約、そういったものを基本から考え直してみる必要があるというふうに考えておりますし、あと、大沼は若干の黒字になっておりますけれども、直営委託方式でやる予定にしております指宿、それから津南等につきましては、それぞれ近いうちに施設が完成をいたしまして出発をすることになるわけですけれども、こういった三木の轍を踏まないようなやり方でぜひ出発をしなければならないと思っています。  その他の施設につきましては、もう建設から財源はこちらで負担をいたしますが、運営はすべて県にお任せをする、県の責任でやっていただくということにしておりますので、十分県にもそういった考え方でやっていただくように改めて指導したいと思います。
  199. 網岡雄

    ○網岡委員 これは十分気をつけて、途中で再検討して整理をしなければならぬ、こういうこともあるんじゃないかというぐらい私は心配をしております。これが単なる警鐘に終わればいいわけでございますが、これが事実にならないように、厚生省当局の鋭意な御努力をひとつ要望しておきます。  あと、時間がございませんので要点だけ申し上げていきますが、大規模年金保養基地が最も代表的なものですね、象徴的なものでございます。あとずっと細かいものを見ていきますと、本来、福祉運用というものは、冒頭年金局長がおっしゃったように、被保険者それから受給者の福祉の向上のために直接影響を持つ、かかわりを持つ、そういうものに融資をする、やはり私はこれが一番原則だと思うのでございます。やられている住宅融資なんかは、厚生省がやられている中ではこれはもう非常に大衆の要望にこたえた福祉運用だと私は思います。これはいいことだと思うのでございます。  ただ、内容をずっと見ていきますと、例えば一般廃棄物処理、それから簡易水道、それから下水、上水、これは本来年金には関係ないですよ。ここがやはり、保険料だからという考えがあるからなんですね。これは結局、こういうところに使っていくということは被保険者の積立金が減っていくのですからね。返ってくるということもあるかもわかりませんが。それから公害防止事業団、これは安いものですから利子補給していくわけですよ。これも長年いくとそれだけのものは減っていくわけですよ。  こういうものは、それこそさっきの話じゃございませんが、第五次臨調が答申をしておりますように、直接関係のある一般会計の中で処理すべきだ。そうすればその運用が極めて明確なんですよ。金庫をたくさんつくると監視がうまくいかぬことになりますよ。単純明快にしていくこと、これが大事なんです。私どもは、臨調をやっていく場合にこういうことをきちっとやってもらいたいということを望んでいるわけですが、そういう意味からいくと、ありもしないお金の中で非常に大盤振る舞いをしている。こういうあり方というものは、回り回っていきますと、これは被保険者や年金受給者にそのツケが返ってくることになるわけでございますから、これはこの時期において、福祉運用について検討をしていく時期に来ていると私は思うのでございますが、この点について、厚生省の御答弁をいただきたい。
  200. 吉原健二

    吉原政府委員 還元融資や福祉運用のあり方についくも、御指摘のございますように、検討すべき時期に来ていると私、思います。一挙に変えるということはなかなか難しいかもしれませんが、本来の年金積立金のあり方はどういうものが一番望ましいか、あるべき姿というものを十分考えながら考え直していきたいというふうに思います。
  201. 網岡雄

    ○網岡委員 これで質問を終わりますけれども、いみじくも先ほど年金局長がおっしゃったように保険料給付の適正、これは適正という言葉を使われていますが、実際は目減りです。そして保険料の場合は値上げなんでございますが、そういうことの検討と同時に、資金運用、積立金の運用というものを有利に運用するということは、まさに三位一体として考えていかなければ、これは百年の大計を決める年金改正、改革法案にはならぬのだということを、厚生省は歴代責任者がずっと言ってみえたわけでございます。今日もその方針は変わっていないわけでございます。だといたしますならば、今御提案になったこの年金統合法案の中で、一本矢が抜けているわけですよ。宿題のままで、さっきも議論をいたしましたが、大蔵省と厚生省は全く並行線、どこで交わるかわからないのです。そういう状況で宿題にしながら年金統合法案を出してきたということは、私は一番肝心な被保険者や年金受給者に対する配慮というものがない。そういうことを私は痛感せざるを得ません。  したがって、本統合法案はそういう条件にあるわけでございますから、もっとゆっくり審議をしながら、この宿題の問題も同時に解決をした中で、我々はよりよい法案をつくっていくようにすべきだということを要求をして、質問を終わります。
  202. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 森田景一君。
  203. 森田景一

    ○森田(景)委員 私は、最初に、物価スライド二%分の年内支給ということについてお尋ねしたいと思います。  こういうことを私が申し上げる必要はないと思いますけれども制度改革と物価スライド分の支給、これは本来性格が違うものでありまして、既に恩給とかあるいは共済年金はその上乗せ分が支給されておりますが、国民年金厚生年金についてはこれからどうしようかという、今こういう状況になっているわけでございます。  既に本年も年末になりまして、官庁やあるいは民間の各会社も期末手当やあるいは賞与等の支給がなされて、今この厚生年金国民年金受給者、一千七百万人と言われておるようでございますが、この方々は一日も早く、せめて二%でもいいから年内に支給してほしい、こういう強い要望を持って、受給者あるいは加入者の方々、団体あるいは個人からも、いろいろと私ども要諦を受けているところでございます。  私どもは、以前から、スライド分と制度改革を分離して、一日も早く上乗せ分を支給すべきである、こういう主張をしてまいりました。今もって年内に支給できるかどうかという目安が立っていないわけであります。早く支給するためにはスライド分を分離して審議すべきである、こういう主張をずっと続けてきたところでありますけれども、今もって実現しないというのは、これは一体政府がそういう方針でいるのか、あるいは自民党の圧力によって政府が動けないでいるのか、あるいは、はたまた政府と自民党が一緒になってこういうふうに分離しないでいるのか、この辺のところ、まあ答弁しにくい面もあるかもしれませんけれども、まずお答えいただきたいと思います。
  204. 増岡博之

    増岡国務大臣 私どもといたしましては、二%分も年内にぜひとも支給したいと思っておるわけでございます。と同時に、制度改革の方もこれだけ熱心に御審議をいただいておるわけでございますので、どうか御一緒に議了していただきたいということでございまして、決して二%分をおくらせようという意図的なことを考えておるわけではございません。
  205. 森田景一

    ○森田(景)委員 その前に、二%を年内支給するためにはどういう手続がこれから必要ですか。
  206. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。  スライド分の支給をする対象によりまして事務上の手続が違っておりますので、分けまして御説明をさせていただきます。  福祉年金でございますが、福祉年金につきましては都道府県、市町村が準備をいたしておるわけでございますが、特別証書を作成いたしまして、この証書を御本人にお送りいたしまして、郵便局でお受け取りをいただくということになるわけでございます。  また、拠出制国民年金、それから厚生年金受給者につきましては、私どもの庁の業務課で実施をいたすわけでございますが、これは御本人に年金額の引き上げ、つまり年金額が改定されたということのお知らせと、それぞれの受給者の方の銀行口座、郵便局の口座等へ振り込みまして、振り込んだ旨のお知らせを差し上げるというような手続が要るわけでございます。  これらの準備につきましては、衆議院の社会労働委員会の十月十七日の理事会におきまして、準備を進めておくようにというような御指示をいただいておりますので、今申し上げましたような準備を進めさせていただいております。
  207. 森田景一

    ○森田(景)委員 ですから、準備はそれで結構なんですけれども、そういう手続をするための日数、これは最低との辺でどうなんだという、こういう日程までひとつ御答弁いただきたいと思います。
  208. 長尾立子

    長尾政府委員 先ほど申し上げました福祉年金につきましてはおおむね七十日、拠出部分につきましてはおおむね一月というような日数を要するわけでございまして、その意味で準備をもう既にやらしていただいておるというところでございます。
  209. 森田景一

    ○森田(景)委員 実際に受給者の手元まで届くには一カ月以上かかる、こういう御答弁だと思う。そうじゃないですか。もう少しわかるように説明してください。
  210. 長尾立子

    長尾政府委員 失礼をいたしました。  十月十七日の社会労働委員会理事会の御指示は、年内に受給者の方のお手元に届くようにという前提で準備をしろというふうな御指示と伺っておりますので、先ほど申しました七十日ということは、この十月十七日のほぼ直後に始めさせていただいておりまして、今、年内にお手元に届くようなという前提で準術をいたしております。
  211. 森田景一

    ○森田(景)委員 それで、年内に描くためにはこの法律改正が通らなければならないわけですね。そのリミットといいますか、それはいつごろならば年内支給になるのですか。
  212. 長尾立子

    長尾政府委員 お答え申し上げます。  国会でお決めいただきますことでございますが、私どもとしては、二十八日というのが通常のすべての国及び地方公共団体の仕事をおさめる日でございますので、その日を目途に考えておるわけでございますが、受給者の方のお手元に届くというためには、最後に郵送というような事務があるわけでございます。私どもといたしましては、十二月二十一日前後にこの法律を上げていただきますと、公布等の日にちがございますので、そのための公布の必要日数を考えますと、その程度法律の御決定をいただければ十分間に合うのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  213. 森田景一

    ○森田(景)委員 大体十二月二十一日ごろに国会を通過すれば二十八日、年内ぎりぎりまでには支給ができる、こういう御答弁だと思うのです。今現在通るのか通らないか私もわかりませんけれども大臣は二十一日までに国会を通過すると思っていらっしゃるのですか。
  214. 増岡博之

    増岡国務大臣 私ども政府側といたしましては、二%部分制度改正と両方お願いしておるわけでありますけれども、既に与野党の間でその分離についてお話し合いがございますので、その結果を見守ってまいりたいと思います。
  215. 森田景一

    ○森田(景)委員 非常に年金受給者、先ほど来申し上げましたようにわずか二%の値上げです。しかし、二%といいながら、やはり受給している人たちは首を長くして待っている、こういう現状でございます。こういうぎりぎり決着まで本体と両方一緒に通してもらうんだ、こういう考え方は、大臣はこの間就任なさったばっかりですから、余り強い言い方もできないかもしれませんけれども、やはり前任の大臣の後を受けて、本来ならば大臣就任と同時に私はこういうふうにして分離して、この一千七百万人の受給者の方々に年内に間違いなく支給できるようにするんだ、こうおっしゃっていただきたかったなと私は思うのですね。残念でございますが、今後のこともありますからひとつ十分御留意いただきたいと思うのです。本当に年内にお手元に渡るようにぜひ御努力いただきたいと思うのです。  ただ、私は、この二%という問題について、後のことがありますから少し申し上げておきたいのですけれども物価スライド二%、こう決めたのは根拠は何だったのですか。
  216. 吉原健二

    吉原政府委員 年金額のスライドというのは、法律では前年の消費者物価が五%以上上がったときにその率でもってスライドアップする、こういうことになっているわけでございまして、物価が五%上がらなかったときには政策的にどうするかということになるわけでございます。  それで、本年度は五十七年、五十八年の消費者物価をもとにいたしまして、その上昇率は四・四%であったわけでございますけれども、したがって法律上スライドアップしなければならないという状況ではなかったわけでございますが、公務員のベースアップに伴いまして共済、恩給等が本年度二%引き上げられるという措置がとられましたので、それに倣って、一般の民間の国民の方に対する年金額も同じ率で引き上げることにさせていただいたわけでございます。
  217. 森田景一

    ○森田(景)委員 この国民年金物価スライドは附則に定められているわけです。先ほども御答弁がありましたように、恩給とかあるいは共済年金は給与スライドになっているんですね。厚生年金国民年金物価スライド、こうなっております。それで、恩給とか共済年金が二%アップになったというのは、五十七年の人事院勧告が凍結になった後、五十八年に公務員給与が勧告の三分の一でしたか、二・〇三%ということで支給になりました。五十八年は恩給も共済年金もスライドがなかったわけですけれども、五十九年、本年度にその給与分として二%、こうなったわけですね。これは間違いないですね。それで、それに合わせて国民年金の方も厚生年金も二%アップだという、物価は四・四%上昇だ、こういうことで、私は、厚生省なのか年金局なのか、都合のいい方に合わせるような、そういう感じがしてならないわけです。物価で合わせるなら四・四%にすればいいのであって、五%いかなければ考える必要もないなんて、まあそういうことにはなっておりますけれども、今お話がありましたように今までもスライドをやってきているわけですね。そういう点で都合のいい方向に合わせる。これは物価スライドなら物価スライドで決めてあれば、それでやっていけばいいのです。それよりも給与スライドの方は低いからそっちでやる、こういうことのないように、今回の法律改正では、基礎年金について附則ではなくして法律の中に物価スライド、こういうふうになるわけですね。そういうことで、都合のいい方にやらないように、あくまでも受給者の立場に立ってひとつ対応していただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。  それで、私ども公明党は、国民年金法等改正案における基礎年金導入ということにつきましては、昭和五十一年に福祉社会トータルフランというものを発表しました。その中に年金部分が入っておりまして、そこでは国民基本年金という構想を打ち出しまして、私たち通常二階建て年金、こういうふうに言っておりましたが、今回の基礎年金導入にほぼ内客の一致するような構想を発表してあったわけです。  ところが、政府案を見ますと、無年金者をなくする、あるいは国民がひとしく老後において健康で文化的な最低生活を営むための恒久的な年金制度を確立する、こういう基礎年金導入の基本理念が十分に反映されていない、こういうことで甚だ遺憾だと私たちは思っております。  そこで、こういうことを皆さん方に申し上げるのは失礼かもしれませんけれども政府年金制度の基本的考えというものをどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、その辺のところをひとつお答えいただきたいと思います。
  218. 吉原健二

    吉原政府委員 年金制度は、改めて申し上げるまでもないと思いますが、国民の老後の生活の有力な支え、しっかりとした支えになるものでございますし、健康保険、医療保障制度と並んで年金制度、所得保障というのがこれからの高齢化社会における社会保障の基本となるものでございますから、今後ますます充実強化しなくてはいけないわけでございますけれども、今の年金制度の持っている問題点というのは、現行制度のままですと、果たして二十一世紀高齢化社会のピークを迎える時点において、本当に国民の期待なり信頼を受けるに値するような年金制度として機能し得るかどうかという心配が率直に言ってあるわけでございます。そういった不安あるいは制度間の格差、そういったものを是正いたしまして将来にわたって揺るぎない制度の基盤をつくる、長期的に安定した制度にする、それが今回の改革のねらいでございます。
  219. 森田景一

    ○森田(景)委員 やはり基本的な考え方といいますか、これは私ども同僚がかねがね申し上げておりましたように、私どもはあくまでも憲法に原点を置くべきである。このことについては、厚生省も当然それを踏まえて年金制度をつくられた、こういうことでございますが、やはり目標をきちんとした上でそれが実現できるような方法を考えていかなければ、本当の年金制度、先ほど局長お答えになりましたような、国民の老後の生活を支える年金制度の確立というのは非常に困難になってくるのじゃないか。今回は今までにない大改革であるわけでありますけれども、これも将来、そう長い期間を経ずして改定しなければならないのじゃないか、こういう危惧さえ私は持っているわけでございます。  それはそれといたしまして、いろいろと問題点がございますのでお尋ねしたいわけですけれども、基本的に私ども公明党が考えている政府案に対する問題点というものを申し上げてみますと、一つは、基礎年金の額五万円、これは最低生活も維持できない水準であるということ、二番目が、老齢福祉年金受給者に基礎年金導入のメリットを全く与えていないということ、三番目が、従前の国民年金からの脱落者、すなわち保険料滞納者等の年金資格の欠落による脱落者、こういう方に対する救済措置が講じられていないこと、四番目が、国庫負担が現行制度に比して低額に過ぎるということ、五番目が、基礎年金の定額保険料が高過ぎて国民負担にたえ得ず脱落者が続出することが予想されるということ、こういう五つの大きな問題点を公明党は指摘しているわけでございますが、そういう立場に立ちまして、細かい点について一つ一つお尋ねしていきたいと思います。  それで、けさほど担当者の方に質問の内容をいろいろと御説明したわけでございますが、時間の関係でちょっと順序が入れかわるかもしれません。その点ひとつ、あらかじめ御承知おきいただきたいと思います。  最初に、今度の基礎年金制度によりまして国民は全部強制加入者になる、こういうことになるわけでございます。ところが、その中で二十歳以上の学生については任意加入者、こういうことになっているわけでございます。この任意加入の学生が障害者となりますと無年金者になってしまうわけでございます。そういうことも勘案しまして、やはり学生も強制被保険者にすべきではないか。ただ、いろいろ今までも答弁がありまして、とても親元から離れてこれからの保険料は払い切れないというお話もございましたけれども、その保険料の半分、二分の一程度保険料で対応して強制被保険者にすべきではないか、このように考えるわけでございますが、この点についてはどうお考えでございましょう。
  220. 吉原健二

    吉原政府委員 なかなか、学生の適用の問題についてはいろいろ議論、考え方がございますし、果たして本当に、強制適用に形の上だけでやって保険料を払ってもらえるのだろうかという心配もあるわけでございます。したがいまして、確かにその間に障害者になった場合の障害年金の問題もございますので、そういった学生の適用問題につきましては、その保険料負担、あり方、そういった問題も含めまして、ひとつこの法律、新制度の実施後早急に検討さして、できるだけ早く結論を出させていただきたい、こう思っているわけでございます。
  221. 森田景一

    ○森田(景)委員 それでは、学生の任意加入については後日十分検討する、こういうことで理解してよろしいのですね。
  222. 吉原健二

    吉原政府委員 今後の問題として検討さしていただきたいということでございます。
  223. 森田景一

    ○森田(景)委員 私の手元に「無年金者救済に関する要望書」というのが横浜の全国脊髄損傷者連合会会長から届いております。この内容を拝見しますと大変お気の毒な状況です。決して好んで無年金者になったわけではない、こういうことが実例をもってるると述べられておりまして、あるいは大臣局長も既に御存じかと思いますけれども、決してこの無年金者の方々は故意に国民年金へ加入しないで拠出を怠ったわけではない。一つは、年金制度を知らなかった。二つは、サラリーマンの奥さんが脊髄損傷になって離婚させられた。三番目が、障害者になって早い時期に国民年金への加入を申し込むと、窓口で加入を拒否された。第四点が、任意加入の大学生が国民年金への加入を申し込むと、あなたは学生だから加入しなくてもよいと断られた。あるいは五番目として、大学生が任意加入だったので国民年金に加入しなかった。こういう方々が障害に遣われて無年金者として、今非常に困難な毎日を送っているわけでございますから、今答弁もございましたように、今後早急にこの学生の任意加入という問題、全部が全部ではありませんけれども、特に障害者になって無年金者となる、こういう悲劇は避けなければならないと思います。ひとつ十分な対応をお願いしておきたいと思います。  今回の年金のスライドの問題につきまして、先ほど少し申し上げましたけれども、今度の改革案の中には物価スライド制ということが法案の中にはっきり明記されるようになってきたわけでございますね。それで、基礎年金の導入に当たりましては、年金水準を勤労者の賃金に対してどの程度にセットするかが重視されてきたはずだったと思うのです。そういう点で、今後とも年金額現役勤労者の賃金に対して一定の水準を維持するためには、賃金スライド制にする必要がある、こう私は思います。物価スライドよりも賃金スライドにした方がベターである、このように私は考えているわけでございます。こういう方向に将来変える考え方があるかないか、お聞かせいただきたいと思います。
  224. 吉原健二

    吉原政府委員 年金は、今までもそうでございましたけれども、五年ごとに給付水準保険料負担水準について見直すということになってきているわけでございます。過去も、建前、原則は五年でございますけれども、大体四年置き、時によっては三年目にそういった水準の見直しが行われて今日まで来ておりますけれども、これからも原則五年ごとに年金水準保険料負担水準を見直すことになっておりますが、その間の四年間のスライドをどうするかにつきましては、物価でスライドするかあるいは賃金でスライドするか、いろいろな議論があったわけでございますけれども、これにつきましては、これからも財政再計算、基本的な見直しの間の各年のスライドについては物価にスライドすることにしよう、こういうことになったわけでございまして、ただ、その間は物価ですけれども、五年ごとの基本的な水準の見直しの際に、その五年間の賃金の上昇の程度水準の推移、そういったものを見て、いわば年金水準全体について見直すということになっておりますので、私は、何も毎年毎年賃金にスライドするやり方よりも、むしろその方が、年金水準の見直しの際に賃金だけではなしに、そのほかのいろいろな国民の生活水準なり国民経済の状態を見て水準の見直しができるわけですから、かえってその方がいいのではないかという気もするわけでございます。それから同時に、やはり賃金ということになりますと、厚生年金国民年金、被保険者の賃金体系が非常にさまざまでございますし、国民年金につきましては特に所得の水準や態様が被保険者ごとにさまざまでございます。そういった違いもございますし、景気変動によって賃金のなかなか上がらないような業種も中に含まれているわけでございますから、必ずしも賃金スライドがいいということにもならぬだろうと思いますし、賃金スライドする場合に一体どういった賃金の指標でもってスライドするか、いろいろな細かい議論もあるわけでございます。いろいろ考えました結果、原則物価スライド、そして五年ごとに賃金の水準の変化も見て全体を見直すということの方が私はいいと思います。
  225. 森田景一

    ○森田(景)委員 たびたび申し上げるようですけれども、恩給とかあるいは共済年金、これは賃金スライドになっておるわけですね。厚生年金国民年金物価スライド、この辺にやはりいろいろと割り切れない問題があるわけです、賃金スライドというのははっきりパーセントが出てくるわけですから。  いずれにしても、このことだけで時間をとるわけにはまいりませんので、まあ、五年ごとに現行物価スライドに合わせて賃金スライドを加味していきます、こういう御答弁でございますから、その方向に沿って受給者を優遇といいますか、納得できるようなスライド方式をとっていただきたい。これは要望として申し上げておきます。  それで、今度の改正案の大きな柱の一つが、今までもいろいろと論議されております老齢基礎年金の額の問題でございます。政府案は五万円、こうなっておりまして、これは局長もいろいろとお話しになっておりましたんですが、この五万円という金額を決めた基礎についてどういう算定方式をなさったのか、お答えいただきたいと思います。
  226. 吉原健二

    吉原政府委員 五万円の考え方の基礎でございますが、基本的な考え方が、老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたいという考え方が基本にあるわけでございます。  具体的に、老後の生活の基礎的な部分というのは一体どのくらいな額になるだろうか、しなければならないだろうかという一つの参考、めどといたしまして、私どもがいろいろ調べましたのが、もとにいたしましたのが、一つが、六十五歳の単身者の老人の方の月々の生活費がどのくらいになっているだろうか、消費支出額で調べた場合に一体どのくらいになっているだろうかというのを、全国の消費実態調査というのを総理府が、現在の総務庁でございますがやっておりますけれども、それをもとにして調べてみたわけでございます。それによりますと、五十四年の数字でございますが、六十五歳以上の単身者の方の消費支出額が月額にいたしまして約七万二千円でございますが、そのうちの雑費を除いた主な支出項目、基本的な支出項目、食料費でありますとか、住居費でありますとか、光熱費でありますとか、被服費、そういった基本的な支出項目に充てられているお金が、七万二千五百円の中から約三万二千円程度除いたものがそういった額になっているわけでございまして、それに五十四年から五十九年までの物価の上昇等を勘案をいたしまして、大体五万円という金額を考えたわけでございます。  それからもう一つが、生活保護の水準といたしまして、一体老人の単身者世帯の生活扶助の基準がどのくらいだろうかということももとにしたわけでございますが、この生活扶助の基準、いろいろ御議論もございますけれども、級地によって、それから世帯の構成によって、それから年齢によっていろいろ差があるわけでございますが、大体、単身者一人、それから老人夫婦の場合の二分の一相当額、そういったものも五万円前後の金額になっておりますので、そういったものも十分見て五万円という金額に基礎年金水準を決めたわけでございます。  もう一つ、やはりこれからの年金水準の額を決めるに当たりましては、保険料負担との関連というものを考えないわけにはまいりません。現在の保険料負担そのままですと、将来は一万九千円にもなるということになっておるわけでございまして、そういった将来の保険料負担というものを、被保険者の方々が十分負担できるという範囲内におさめるということも考え合わせまして、四十年で月額五万円という基礎年金の額を決めたわけでございます。
  227. 森田景一

    ○森田(景)委員 今、局長の方から生活保護の問題も出ましたけれども、この問題につきましては、同僚の沼川委員がるると細かい質問をしておりまして、要するに、いずれにしても五万円というのは生活保護基準の中級地にも満たない金額だという、これは局長も御認識いただいていると思うのです。どうですか。
  228. 吉原健二

    吉原政府委員 先ほども御答弁の中で申し上げましたが、生活保護も級地によって実はかなりの差があるわけでございます。それから住宅扶助といいまして、自分の家がない場合に、借家に住む場合のいわば家賃相当額を入れるかどうかによって生活扶助の基準というのはかなり違ってくるわけでございまして、私ども二級地の場合でいいますと、夫六十八歳、妻六十五歳の場合の二級地の生活扶助の基準、二人の場合を二分の一いたしますと四万一千円、一級地で四万六千円ということになりますし、少し年齢構成が違いますが、夫七十二歳、妻六十七歳の場合の二分の一相当額、一人分は二級地の場合は四万九千円、一級地の場合は五万三千円、こういうことになるわけでございまして、生活扶助だけをもとにしておりまして、住宅扶助等は入っておりませんけれども、私は、生活保護の中級地よりも五万円が一概に低いとは言い切れないというふうに思っているわけでございます。
  229. 森田景一

    ○森田(景)委員 局長は、年とったら住居費は要らない、こういう認識じゃないかと思うのですね。そんなことはありません。そうでしょう。その辺の考え方の違いがありますけれども、いずれにしても、私どもの試算によりますと、少なくとも生活保護、中級地では夫七十二歳、妻六十七蔵の老人世帯で、老齢加算が七十歳以上一人一万四千八百円ついているものとして十万七千五百四十円、こういう計算があるわけでございまして、したがって、今度の基礎年金五万円というのは生活保護の基準にも合わない、合わないというよりも下になっている、こういうふうに私ども理解しているわけなんです。そういうことならば、いろいろ無年金者の問題も出ておりますけれども、もう無年金者年金なんか入らないで、それで生活に困ったら生活保護を受けた方が、掛金を払って安い基礎年金をもらうよりも、払わないで生活保護を受けた方がいい、こういうことになりかねないですね。だから、少なくともこの基礎年金は五万五千円、生活保護基準を上回る金額にすべきであるというのが私どもの主張でございます。この点について大臣、どうですか。
  230. 吉原健二

    吉原政府委員 基礎年金金額考え方については、もう再三私どもお答え申し上げておりますし、お考えも伺っているわけでございますけれども、生活保護以上でなければならないという考え方まで、なかなか私どもとしてはそう言い切れないわけでございます。やはり老後の生活の基礎的部分--生活費の一切をこの基礎年金で賄うに足りるものでなければならないという考え方まではなかなかとりがたい。しかもサラリーマンの場合には基礎年金以外に上に報酬比例部分金額があるわけでございまして、夫婦の場合には合わせて十七万円という水準というものを想定しているわけでございまして、生活保護の基準と比べましてもまあまあの水準ではないかと思いますし、基礎年金だけというのは、農業でありますとか自営業でありますとか、年をとってもある程度の収入なり資産を持っておられる場合が多いわけでございまして、そういった方々に対する基礎年金年金の額としてはまずまずの金額ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  231. 森田景一

    ○森田(景)委員 今の局長の考えは、前から私も感じているのですけれども、要するに二階建てを持っている人を基本に考えているわけです。二階建ての方の二階部分のある人は、それは基礎年金額が低くても上乗せできるから生活保護基準を上回る、十分と言えないかもしれませんけれども、そのような金額にはなります。だけれども国民年金部分だけの人、この人たちはそれしかないわけですから。それでも局長考え方ですと、貯金もあるでしょう、何もあるでしょうと言いますけれども、それはある人もいらっしゃいますよ。しかし、年金と言うからには、先ほど御答弁になったように、国民の全部の方々が老後の生活を安定させるための制度なんだ、こういう御答弁なんです。だから、いい人のことばかり考えないで、やっぱり悪いといいますか、悪いという表現は悪いのですけれども、そういう基礎年金部分で生活する人、これはかなり出てくるはずです。そういう人のことをまず基本に置く、それが基本じゃないですか。それを基本に置いて後を設定していくというのが、これが本当の生活を守る、こういう趣旨だと思うのです。そういう点について、今ここへ来て法律が通らないうちから改正というわけにいかないということになろうかと思うのですけれども、将来の重要な検討事項にするとかなんとか、これは大臣にはっきり答えてもらいたいと思う。
  232. 増岡博之

    増岡国務大臣 生活というものが社会情勢の変化によっていろいろ変わってくることも考えられますし、将来そういう情勢ということになりますと、水準ということをもう一回見直すことになるかもわからない、まあそう申し上げるよりか現時点では申し上げようがないと思います。
  233. 森田景一

    ○森田(景)委員 近い将来、この基礎年金金額については見直さざるを得ない状況になるかもしれない、こういうふうに理解してよろしいわけですね。  では、次に進みます。  今度は障害年金でございますが、障害の程度によります等級というのが障害年金の重要な給付要件でありまして、厚生年金は一級、二級、三級、こうなっております。国民年金は一級、二級、こういうふうになっているわけでございます。重要な給付要件でございますから、政令によらず、現行どおり法律の別表とする、こういうことを私どもは要求しているわけでございますが、この点についてお考えをお聞かせいただきたい。
  234. 吉原健二

    吉原政府委員 障害等級につきましては、障害基礎年金の導入に伴いまして障害等級の考え方を各制度ごと統一をしたものにしたい、整合性のとれたものにしたいという考え方を持っておるわけでございまして、具体的には厚生年金の現在の一、二級と、それから国民年金の一、二級、これを一本にしたいというふうに思っておるわけでございます。これを、この法律の成立後、新制度の出発の前に、専門家の御意見も聞いて新たな等級表というものをつくりたい、こう考えておるわけでございます。そういったことで、法律ではなしに政令でお願いをしているわけでございます。  それから同時に、今後、障害等級の考え方というのは、リハビリテーションあるいは医学医術の進歩、発展、変化、そういったものに応じまして等級の一つのランクづけというものも時代によって変わってくる、こういう面もあるわけでございますので、そういった変化というものに、何といいますか、柔軟な対応ができるようなことにするためにも、むしろ法律よりか政令で決めさせていただく方が望ましいのではないかと思います。  なお、ちなみに、こういった障害の程度につきましては、法律ではなしに政令で決めさせていただいている立法例も数多くあるわけでございまして、政令ではなしにさらにその下の省令で決めているような立法例もあるわけでございますので、政令でやらせていただくことについては問題はないように私どもは思っておるわけでございます。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  235. 森田景一

    ○森田(景)委員 等級というのは大事な受給要件になるわけですね。ですから、これは政令ではなくて法律に含めるべきであるというのが私たちの主張でございます。今、両方の制度を合わせて適正にしよう、こういう段階だから一応政令という形にしたいということですが、将来そういう構想がまとまりました段階では法律の中に入れることも可能ですね。そうですね。
  236. 吉原健二

    吉原政府委員 将来、再び法律ということも不可能ではないと思います。
  237. 森田景一

    ○森田(景)委員 将来、そういう方向でひとつ検討していただきたいと思います。  特に、今までも何回も話が出たと思いますけれども、一、二級の障害の程度、これは厚生年金国民年金とでは若干の違いがあるわけですが、それは国民年金の等級に合わせる、こういうことでよろしいですね。
  238. 吉原健二

    吉原政府委員 基本的には現在の国民年金の等級、それから考え方――考え方といいますのは日常生活能力を基本に置いた考え方、そういったものをもとにして統一的なものにしたいというふうに思っております。
  239. 森田景一

    ○森田(景)委員 これに、今度は厚生年金の三級障害、これが厚生年金の報酬比例部分として、対象として残るわけですね。ところが、原案を見ますと、この年金金額が現行から比べると非常に落ち込むことになるわけです。この点の改定の意思はおありかどうか、お答えいただきたい。
  240. 吉原健二

    吉原政府委員 従来より障審年金全体としては大幅な改善を図っているつもりでございますけれども、御指摘の点については従来とかなり差が出てくる、これからの新規に障害になられる方についてはかなりの差があるということもございますので、その是正といいますか、それほどの差がないような具体的な方法について考えておるわけでございます。
  241. 森田景一

    ○森田(景)委員 余り差がないような方向で考えていきたい、こういう御答弁でございますから、了承いたします。  ちなみに、御参考に申し上げますと、現在の三級の方を試算しますと、平均標準報酬二十万、加入期間二十年、妻と子供二人、こう計算しますと、現在の三級は九万一千円もらえることになっているわけですね。今度の改正案では、これが基礎年金なしでございますから三万七千五百円、こうなってしまうわけです。半分以下になるわけでございまして、私どもは、基礎年金をプラスするというのはできませんので、報酬比例部分に基礎年金相当分を入れてもらえれば今までの水準を維持できるんじゃないか、こういうふうに考えておりますので、これは一つの案でございますから、十分検討していただきたいと思います。  次は、やはり今回の改正の大きな柱の一つであります年金保険料の問題について、お尋ねしておきたいと思います。  私どもは、基礎年金保険料は均等割保険料と所得割保険料の二つに分けて、そしてすべての被保険者から徴収することとするべきである、こういうふうに考えているわけでございますが、この点について当局のお考えを聞かしていただきたい。
  242. 吉原健二

    吉原政府委員 現在の基礎年金、つまり国民年金保険料を所得に応じて分けるということについては、今すぐは、率直に言ってなかなか難しいと私ども思うわけでございます。国民年金の適用対象者は所得のない方も大変たくさんおられますし、所得がある方につきましても、所得の態様なり水準というものがさまざまでございます。全体としては、被用者、サラリーマン階層に比べて低所得者の方が多いわけでございますので、そういったような状況の中で、一体どういうふうにその所得に段階をつけて低い保険料と高い保険料に分けるのか、果たして御納得のいくような、またすぐ実務的にも乗れるような適切な案というものができるかどうか、これはなかなか難しい問題だと思いますので、ひとつ今後の課題、宿題として検討さしていただきたい、こう思っておるわけでございます。
  243. 森田景一

    ○森田(景)委員 国民健康保険は均等割と所得割という方式をとっていますね。国民健康保険の所管庁はどこなんでしょう。
  244. 吉原健二

    吉原政府委員 もちろん厚生省でございますけれども、やはり国民健康保険年金制度というのは、本質的にと言いますと、少し大げさかもしれませんが、私は違うと思うのでございます。国民健康保険というのは市町村が単位といいますか中心になって、いわば健康保険という短期の保険、病気になったときの保険を扱っているわけでございますから、いわば市町村の中で、所得の把握の仕方あるいは保険料の取り方、保険税の取り方、そういったものの公平性が保たれていれば、それはそれでいいと思うのでございますけれども国民年金は全国一律の制度でございますし、四十年、五十年、さらに給付を受ける間を勘定いたしますと、いわば二十歳から亡くなるまで、六十年、七十年という長い期間についての保険科と給付の約束でございますので、国民健康保険で所得に応じた保険料の取り方をしているではないか、それと同じようにやればいいじゃないか、実はそういう御議論もあることはありますけれども、私どもはそんな簡単な問題ではないようにも思うわけでございます。やはりそういったことにつきましてはいろいろ議論もございますので、関係者の意見も聞きながら、果たしてどういうやり方が一番いいかということを少しお時間をいただいて研究をさせていただきたい、こういうことでございます。
  245. 森田景一

    ○森田(景)委員 私は何も健康保険のことだけでお話をしようとは思ってなかったのですが、所管庁が厚生省ですから、同じ厚生省で、健康保険の方は市町村単位とはいいながら所得比例方式をとっている、こちらはできません、こういう考え方もおかしいな、こう実は思っていたわけです。  それと、そのほかに、所得の捕捉が難しい難しいと言いながら、クロヨンとか何とかいろいろありますけれども、農業者とかあるいは自営業者、こういう方々もきちんと所得税は納めているのですよね。そうでしょう。だから、どこでどう把握するかは、やはり所得税を納める、そういうところで把握すれば所得比例部分だって算出できるはずなんです。それが公平かどうかというのはまたいろいろと問題があろうかと思うのですけれども。  まあ、いずれにしても近い将来これも十分検討するという答弁ですから、いつごろまでに検討するのか、今からちょっと無理だと思いますけれども、検討するということですから本当に早急に検討してもらいたいと思います。  なぜこういうことを言っているかといいますと、この前からも、きょうも論議になりましたけれども保険料の掛けられない人たちがたくさんふえてきているわけですね。これは将来--今の厚生省数字は法定で免除になっているとかあるいは申請で免除になっている、こういう方々の数字だけしか出ておりませんけれども、そのほかに、全然加入もしてなかったあるいは届けないで掛金を掛けてない、こういう人たちはもう無年金者になる可能性というのは非常に大きいわけですから。この数だって正確に捕捉できてないわけでしょう。だから、そういう無年金者をなくすというためには掛金をやはり安くしてあげなきゃいけない。そのためには、国民健康保険税とかあるいは県民税、市民税みたいな形の世帯割、平均割とかあるいは均等割とか、こういう制度で均等割保険料と所得割保険料をやっておけば、そうすれば無年金者を大幅に救済できるのじゃないだろうか、こういう考え方に基づいて均等割保険料、所得割保険料という提案をしているわけでございます。  また将来検討するということでございますから、その際には均等割保険料というのは原則としてすべての被保険者が負担して、そして負担にたえない低所得者には負担免除等の措置を講ずる、こういうことも十分考慮をしていただきたいと思うわけでございます。これは要望にしておきます。  それから、もう一つ無年金者対策についてお話ししたいのですけれども、今までの国民年金の強制被保険者の保険料滞納期間、これは今度、この大改正があるのを機会に、今回限りの特例ということで、サラリーマンの妻が任意加入しなかった場合と同じように資格期間として通算してあける、そして年金権が確保できるようにしてあげたらいいじゃないか、こう思いますけれども、いかがでしょう。
  246. 吉原健二

    吉原政府委員 そういったお気持ちも心情としてわからないわけではないのでございますけれども、やはり過去の滞納期間の救済で、概に三回の特例納付のいわば救済措置をとってきている経緯がございます。そういった救済措置というのはいわばもうこれが最後だ、最後の救済措置であるというようなことで第三回目はやったわけでございます。  実は、そういった措置をとることについて、毎月毎月あるいは毎年保険料をまじめに納めてきた人たちから見れば大変おかしな制度でございますし、やはり社会保険制度全体として見ましても、いわば滞納期間は滞納期間としてそのままにしておいて、納めた期間に応じて年金を出すという仕組みは、いわば資格期間制度の否定、そういったものをなくすという考え方につながってくる。つまり、保険制度の基本にかかわってくるような措置でもございますので、もう既にそういった措置は十分とっておりますし、これからは無年金者の生じないようないろいろな制度的な措置というものを十分とっております。  例えば、外国におられた期間の救済でありますとか、あるいは国内におられた外国人、在日外国人の期間の通算でありますとか、そういった制度的にはいわばさかのぼって、無年金者ができるだけ少なくなるような措置というものは講じてきておりますので、それ以上の手当てというのはもう私どもとしてはなかなか難しいなということでございます。
  247. 森田景一

    ○森田(景)委員 特例納付を三回やったことは承知しております。しかし、それで加入者もたくさんふえたことも事実ですね。けれども、第三回目の特例納付、これは納付した方々は非常に大変な思いをしたわけです。あのとき、夫婦二人で標準的に納めた金額というのは幾らになりますか。
  248. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えをいたします。  正確な数字を持ち合わせませんので恐縮でございますが、第三回目の特例納付で、年金権に結びつけるために最長の期間を納めなければならない方というのは十一年分ということではなかったかと思います。そのときの特例納付の保険料が四千円ということでお願いをいたしましたので、大ざっぱに申しまして五十数万円という金額であったように思います。
  249. 森田景一

    ○森田(景)委員 今答弁がありましたように、四千円というのは一人だと思いますよ。ですから、二人分で百万前後のお金が必要だったのです。それで、入りたいけれども、とてもそのお金が用意できないということで断念した方も大勢おりました。中には、こういう名前を申し上げていいのかどうかあれですけれども、こういう機会ですから申し上げますが、市川市みたいなところは福祉事業団体の方でそれを立てかえて払ったわけです、そして年金権を獲得してあげた、こういうところもあったのですが、そういう余裕のあるところはともかくとして、ない方は断念した。そういうことで非常につらいといいますか、苦しい思いをなさった方々があの当時も残っているのです。だから、サラリーマンの奥さんは納めなくても空期間として認める、こういうことになっているわけですね。要するに空期間ですからその部分年金は出ないわけですが、空期間としては認める、要するに資格を満たす条件としては認める、こういうことになっているのでしょう。だから、今まで納めたかったけれども納められなかったのだ、その期間を空期間と見てくれればこれから保険料はちゃんと納めていきます、保険料はまじめに納めていきます。だけれども、そう言っていて途中で申請もしないで滞納するとか、そういうことになったのではこれはそれこそ相互間の信頼を損なうのですから、それはそれで資格がなくなってもこれはやむを得ないと思うのですが、そういう非常にお金がなくて困っていた方々を救済するために、空期間として本当に恩赦みたいな気持ちでこれは認めてあげるべきだろう、こう思うのですよ。刑事犯だって恩赦という制度があるのですから。これは恩赦じゃありません、これから払いますというのですから。そういう人たちはこれから未来永劫に資格がなくなってしまうのです。ここで恩赦的に大きな立場に立ってぜひこれは認めてもらいたいと思うのですが、大臣、いかがですか。
  250. 増岡博之

    増岡国務大臣 やはり現在の世の中、公平ということも非常に重視しなければならないのでございます。したがって、これまでまじめにお掛けになった方々との関連を考えますと、お言葉ではございますが、容易にそのとおり実行いたしにくいと思います。
  251. 森田景一

    ○森田(景)委員 大臣、随分不穏当な言葉を使いますよ。まじめに払った方のためにできない。じゃ、払わなかった人はふまじめなのか。そうじゃないのですよ。それはお金がありながら納めなかった人もあるかもしれない。けれども、払いたくても払えない人たち、この人をふまじめだと言う。局長もよく覚えておいてください。こういう考え方が皆さんにある限りこの無年金者の解消はできないです。無年金者を解消するというなら、あとはチャンスがないかもしれません、本当に大きな大改革をしようとするこのときに、恩赦的な精神で無年金者をなくする対応をするということが非常に大事だと私は思うのですけれども、どうですか。もう一遍その点について答えてもらえませんか。
  252. 吉原健二

    吉原政府委員 心情としては私どもそのとおりだと思いますが、制度論としては、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、非常に難しいなという感じがするわけでございます。心情としてはよくわかりますし、何とかそういうことが制度論としても、また今まで納めてきた人とのバランス論としても十分御納得のいただけるような措置が、うまい方法があれば別ですけれども、なかなかないのじゃなかろうかというような今は気がいたしているわけでございます。
  253. 森田景一

    ○森田(景)委員 どうしてもやろうとしないみたいですけれども、心情としてはわかるというのですから、私の言っていることはわかるのだと思うのですね。それで、心情としてわかっていただくだけではだめなんですね。昔の話ですけれども、川中島の戦いというのがありました。あのときに、あれは武田信玄の方が塩がなくなった。そのときに上杉謙信が塩を贈ったという。これは心情だけではなくて実行したというエピソードとして、今でも我々語り受け継いでいるわけです。心情だけではだめなんです。塩を贈るのです。これは、この制度をここで空期間を認めて無年金者解消のために断行するという、これがあって名実ともに立派な行政となるのだと私は思うのですね。いかがでしょうか。
  254. 吉原健二

    吉原政府委員 これ以上ここで同じような答弁をさせていただくのは本当に恐縮でございますけれども、本当にまじめな意味で、何かいい方法があるかどうかさらに研究させていただきたいと思います。
  255. 森田景一

    ○森田(景)委員 本当にいい方法があれば考慮する、考えてみたい、これは非常にいい御答弁だと思います。厚生省は優秀な方々がそろっていらっしゃるわけですから、こういう年金制度も出すわけですから、それがここの部分だけが欠落している、そういうことで、十分今後の検討を、余り遅くなっても困るのですけれども、いい方法をぜひ考えて、実行に移していただきたい。これは要望いたしておきたいと思います。  持ち時間が余りなくなってきましたので、簡単に申し上げます。  今回の改正では、障害福祉年金は基礎年金の導入で現行よりもかなり改善される、こういう改革案でございます。また母子福祉年金もやはり、今までに比べますとかなり大幅に増額される内容になっているわけでございます。この三本ある福祉年金の中で、老齢福祉年金だけが取り残されているわけです。そういうことで、老齢福祉年金はぜひ引き上げてもらいたい。少なくとも基礎年金程度金額に引き上げてもらいたいというのが我々の要望でございます。そういっても一気には難しいことでございましょうから、老齢福祉年金につきましては、自動改定によるほか、今後十五年間にわたりまして毎年千五百円ずつ、これは五十九年度価格でございますが、国庫負担によって引き上げまして、そして基礎年金の額に近づけていただきたい。また、老齢福祉年金を受給するための所得制限につぎましては、五十一年以来据え置かれていることでございますから、これも引き上げてもらいたいわけでございます。こういう点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  256. 吉原健二

    吉原政府委員 老齢福祉年金につきましても、従来の毎年のスライド以外に、そのときどきの財政の許す範囲内で、できるだけ今後とも引き上げていくようにいたしたいと思います。具体的にどの程度金額というようなことは今の段階でなかなかお答えできないわけでございますけれども、できるだけの努力はする必要があると思っております。
  257. 森田景一

    ○森田(景)委員 できるだけ引き上げるということですが、できるだけやるのはだれでもできるわけでございまして、やはりそれ以上に努力する、こういう姿勢をぜひお願いしたいと思います。  次に厚生年金関係でございますけれども、法人以外の五人未満の事業所、これらにつきましては、一定の帳簿を備える等実績のあるものにつきましては厚生年金保険の適用に入れてもらいたい、こういうことですが、いかがでしょう。
  258. 長尾立子

    長尾政府委員 お答え申し上げます。  五人未満事業所の適用問題につきましては、今回の法律におきまして、法人の事業所、事務所に関しまして適用をするということでお願いをいたしておるわけでございます。  先生のお話は、その他の法人以外の個人が経営しております事業所につきまして適用を考えるべきではないかという御質問と承りましたが、私どもは、今回の法人の事務所、事業所の適用、これは六十四年まで三年計画でやらしていただくわけでございますが、そのような中で、次の課題といたしまして検討させていただきたいと思っております。
  259. 森田景一

    ○森田(景)委員 次の課題として考えるということですが、現在でも任意包括適用ということが行われているわけですね。この任意包括適用の趣旨が徹底されてないのです。だからきめ細かい指導が必要なんですよ。さっきの無年金の問題についても同じなんですけれども法律を決めただけでは大多数の方はよくわかりません。こういう時期ですからどうなのかよくわかりませんけれども、せめて新聞等の広告で、こういう制度がありますよという紹介をするとか、最近国民年金はやっているんですね。週刊誌にまで大きく載っている。そういう中に入れてあげるとかあるいは、テレビで政府の番組があるわけですから、そういうものの中に、こういう制度がありますよということできめ細かな指導といいますか、対応が必要だと思うのですが、そういうことについてはどうお考えになりますか。
  260. 長尾立子

    長尾政府委員 先生のおっしゃるとおりだと思っております。任意包括の適用につきましては、その促進に、今いただきました御注意を踏まえて努力させていただきたいと思います。
  261. 森田景一

    ○森田(景)委員 また問題があるわけですけれども、在職老齢年金という制度、これは高齢就業者の賃金が上昇してまいりますと、年金額のカット率が累進していくわけです。六十五歳以上は全然カットがないわけですけれども、六十歳から六十四歳までの方が就職いたしますと、それぞれ金額に応じて年金支給額が減ることになっているわけです。そういうことが、今後就業時間とかあるいは賃金の抑制ということに作用しまして、高齢者の就業機会を阻害するおそれが大きいわけでございます。したがいまして、賃金の上昇に伴い、賃金と在職老齢年金の受給額と合わせた額が漸増するように改めるべきではないか、こう思いますが、いかがでございましょう。
  262. 吉原健二

    吉原政府委員 六十歳から六十四歳までの在職老齢年金、賃金の類とそれから年金のいわば支給率が現在三段階になっておりますけれども、この制度につきましては、今御指摘のような問題でほかにもいろいろ御指摘を受けておりまして、何とかうまい方法はないかということは審議会でも御議論をいただいたわけでございますけれども、非常に難しいわけでございます。  特に、今御提案のございましたように、賃金が上がっても年金は下がらない、合わせてもらえる額が下がらないというようなやり方をするためには、もっともっと複雑な制度にしなければなりませんし、賃金の変動と同時に、年金額もそれに伴ってしょっちゅう変えていくというような仕組みが恐らく必要になってくるのだろうと思います。事務的にもかなり厄介、煩雑な事務処理になってくるわけでございまして、果たしてうまく実務に乗るかどうか、どういう方法をすれば実務に乗るのかというようなこともございますので、今すぐこういうふうにしたらうまくいくという案ができなかったわけでございます。したがいまして、この問題につきましては、これもいろいろたくさんあって恐縮でございますけれども、これからの一つの宿題として検討させていただきたい、こう思っておるわけでございます。
  263. 森田景一

    ○森田(景)委員 とにかく八〇%、五〇%、二〇%、所得に応じてカットされるわけです。そうすると、その境目のところは非常な格差が出てきまして、給料は余計もらったけれども総体の額は年金の方から考えていくと下がりますよ、そういう仕組みになっているわけですね。のこぎりのぎざぎざみたいになっているわけです。このぎざぎざをひとつ皆さんの優秀な頭脳でなくして、平らに、なだらかにといいますか、こういう方向でやっていかないと、先ほど申し上げましたような問題が起こりかねないということで、ひとつ十分な検討をお願いしたいと思います。
  264. 吉原健二

    吉原政府委員 検討をいたします。
  265. 森田景一

    ○森田(景)委員 それから、今度は遺族の問題でございますけれども、被保険者が死亡の際、扶養されていた父母等がその後六十歳に達した場合に、遺族厚生年金支給するようにならないかということでございます。共済年金は既にそういう制度がとられているわけでございます。
  266. 吉原健二

    吉原政府委員 厚生年金の遺族年金支給対象となる父母の方の年齢でございますけれども、今六十歳以上の方でないと支給が受けられないわけでございますが、この問題につきましても御指摘をいただいておりますので、この際改善できないか、合いろいろ研究させていただいております。
  267. 森田景一

    ○森田(景)委員 では最後の質問になりますけれども、子供のいない妻に対する遺族厚生年金の特別加算でございます。  これは、法案では、夫死亡時四十歳以上の妻に対して月額一律三万七千五百円を支給する、こういう内容でございます。これは四十歳を境に段差が顕著でありまして、中高年の妻に対する配慮が十分ではないわけでございます。したがって、夫の死亡当時におきます妻の年齢によって加算額に段階を設けるようにはならないか、ぜひそうしてもらいたいということでございますが、この点についての見解をお聞かせいただきたいと思います。
  268. 吉原健二

    吉原政府委員 現在御審議をいただいています案では、四十歳以前の死亡の場合と四十歳以後の死亡の場合とでかなり大きな段差がある、それがかなり続く、ずっと続くという問題点があることは確かでございまして、その段差を埋める方法として、今御提案の、年齢によって例えば年金額が違うような仕組みがいいかどうか、もうちょっと何かすっきりしたような格好がとれないかどうか、研究させていただきたいと思います。
  269. 森田景一

    ○森田(景)委員 サラリーマンの遺族年金については、子供のいない妻は現在最低保障が四万六千九百円になっているわけですね。そして、寡婦加算として六十歳以上になりますと一万円加算されるわけです。今度の改正法案では、基礎年金からは出ませんで、厚生年金部分からいろいろ出てまいりまして、四十歳以上の場合が加算が三万七千五百円、こうなっているわけでございます。  私どもは、これを三十六歳以上から年齢に応じて加算を積み重ねて、四十五歳以上になれば四万円以上になるように、こういうふうにすべきであるというふうにいろいろと提言もしてきたところでございますので、この辺のところは、どうですか、改善できる見通しはありませんか。
  270. 吉原健二

    吉原政府委員 今御提案のような形にはならないかと思いますけれども、何らかの形で段差を、いわば四十歳ワンポイントというような形での段差はなくすような格好を考えたいと思っております。
  271. 森田景一

    ○森田(景)委員 では終わります。  ありがとうございました。
  272. 戸井田三郎

    戸井田委員長 塚田延充君。
  273. 塚田延充

    ○塚田委員 国民が、老後の経済保障として公的年金に大きな期待を寄せていることは事実であり、それゆえに、前の国会においても、また閉会中の一部審議、そして現在の審議に対して重大な関心を抱いて見守っているわけでございます。  ほとんどの国民が、年金制度そのものについて、と同時に、このたびの改正そのものに関して持っております初歩的といいましょうか、基本的といいましょうか、疑問点及び要望は、次のような点に要約されるのじゃないかと私は思います。  まず、制度間の格差であります。不利と思われる制度の加入グループの方々にとっては、まさに貧しきを憂うということよりも、等しからざることに対して憤りを持っている。一方、今の時点でほかの制度と比べて有利であり、恵まれているのじゃないかと感じ、そう自覚しておる制度に加入している方々は、今回の改正を改悪である、だから認めるな、このような主張をしているわけでございます。  次に、受給する年金額水準が、老後の保障として最低限度の満足または納得がいくものかどうかという点でございます。被用者に係る年金グループにおいては、年金額現役勤労者の所得の六九%の水準ということで今審議がされておりますので、それが妥当かどうかということでございますし、また、国民年金の方に所属する自営の方々にとっては、夫婦で十万円、単身で五万円という額が老後の経済保障の最低水準と言えるかどうか、これが問題となっているわけでございます。  三番目には、かなり高い保険料を、しかも今後はさらに高くなっていくにもかかわらず、受け取る年金額というのが案外割損じゃないかというような素朴な疑問をちまたでは抱いている向きがございます。運用利率が政府の見通しによりますと六%ないし七%ということですと、現在出回っております長期貯蓄、これらの金融商品の金利レベルと比べるとおかしいぞと思ったり、また、今の審議において国庫負担実質的に減るということがだんだんと明らかになってきておるというと、やっぱりそうかなというような疑問が国民の間にかなりの程度あるのじゃないかと推察いたします。  最後の疑問点としてもしくは要望として、今回の改正で、移行に伴う矛盾であるとか、また不利になるケースがないようにするという大原則が打ち立てられていますものの、例えば第三種被保険者の方々が声を上げて泣くようないわゆる落差が起きておるケースもあるわけでございます。  そこで、今述べてきましたこの四点につきまして、順不同でございますが質問させていただきたいと思います。  まず、厚生年金、第三種被保険者にかかわる事項でございます。これは、坑内労働者であるとか船員とかいうような、作業環境が極めて厳しく、他の産業に比べましても高い死亡率となっていることは否めない事実だと思われます。このような第三種被保険者について、現行の制度ではいろいろな特例が認められているわけですが、そのうちの期間計算の特例が今度の改正では廃止されようとしているわけでございます。この第三種被保険者の年金額が三分の四倍になるという期間計算の特例が廃止されますと、結局高い保険料を掛けていても、余計に払った分だけ掛け捨てとなってしまうのではないかという疑問が多くこのような方方にあるわけでございますが、この件について御答弁いただきたいと思います。
  274. 吉原健二

    吉原政府委員 今度の年金改革のねらいの一つに、いろいろな制度間の格差の是正解消ということがあるわけでございますが、制度間ではなしに制度内にも大変大きな給付要件等の違いがあるわけでございます。  その一つがこの坑内夫、第三種の被保険者と一般の被保険者との違いでございまして、支給開始年齢についても坑内夫の方については大変有利になっておりますし、それから期間計算についても一年が三分の四倍されて計算される、早く資格期間がつくという措置がとられているわけでございます。  これは、制度ができましたときはいろいろな事情、沿革があったわけでございますけれども、現在の時点で考えてみますと、こういった第三種の方々に今後もこういった特別の優遇措置というものを存続しておく必要ありやなしや、いろいろ御議論ございましたけれども、最終的な結論といたしましては、支給開始年齢はともかく、期間計算の特例については見直しをすべきである、率直に言いまして今後とも今までどおり残しておく必要はないのではないか、こういう御議論、御意見をいただいたわけでございます。  私どもは、やはりそういった面の是正解消ということも、今度の年金改正の中では大変大切でございますので、期間計算の特例については将来に向けて廃止をさせていただくということにしているわけでございます。
  275. 塚田延充

    ○塚田委員 この期間計算の特例を将来に向けて是正していくということでございますけれども、ずばっとやめるのは非常に厳しいものでございますから、六十一年の四月以降も当分の間は、この特例をせめて十分の十一ぐらいの程度として残していただけたらと強く要望したいのですが、いかがでございましょうか。
  276. 吉原健二

    吉原政府委員 いろいろ御議論がございました上で、私ども、一般の方々とのバランス、公平ということから、支給開始年齢はそのまま、期間計算だけはずばっとということになったと私も聞いておりますので、その点については関係者の方の大変な御議論、御検討の上での結論ということのようでございますので、ひとつそれに従って措置をさせていただきたいと思っております。
  277. 塚田延充

    ○塚田委員 坑内労働者及び船員の方々の泣き声が聞こえてくるような感じなんですけれども、今申し上げたように十分の十一程度でもいいですから、何とか御検討の余地を残していただけたらということを要望しておきまして、次に、この第三種は五十五歳から支給されますので、昭和六年四月一日までに生まれた方は現行法どおりになるわけです。ところが、たった一日違いの四月二日生まれの者については年金額の圧縮が五年分まとめて消えてしまうことになりますので、年金額に大きな段差が生じることになるわけです。このような段差を解消するため、これまた何らかの緩和措置をとるべきではないかと考えるのですが、いかがでしょう。
  278. 吉原健二

    吉原政府委員 この点も、坑内夫の中だけの年齢差による段差ということにつきましては、確かに御指摘のような問題があるわけでございますけれども、なぜそういうことになったかといいますと、一つには、これからだんだん給付水準の適正化を将来に向けて図っていくために、年金額の計算の基礎となる定額単価でありますとかあるいは乗率というものを、法律施行日の年齢で五十九歳から四十歳までの方に掛けて、一歳刻みで乗率を低下させていくという措置を経過措置でとっているわけでございます。坑内夫の方は支給開始年齢を六十歳ということにすれば全く今おっしゃったような問題がないわけですが、どうしても支給開始年齢だけは五十五歳のままにしておこうじゃないかという結論になりましたために、五十五歳ちょっと超える人と五十五歳まだ働いている人との間に、仮にその方がおやめになった場合に、大きな適用される乗率なり単価の差というものが出てきてしまったわけでございまして、これも一般の被保険者の方とのバランスとか公平とかいうことを考えますと、それじゃそういう面でも何か特別な経過措置を新たにつくれ、こうおっしゃいましても、一般の方のグループの人たちから見ますと、なぜそこまでしてというような御議論が当然出てくるわけでございます。この点も、先ほどの期間計算の特例じゃございませんが、坑内夫の方も恐らく十分御意見を聞いていると思うのですけれども、関係者の中で十分御議論の上先ほどの審議会の結論も出、今回の法律の提案まで来たと私も聞いておりますので、ひとつ何とか御理解をいただけないかと思っているわけでございます。
  279. 塚田延充

    ○塚田委員 一般の被保険者との比較において御勘弁願いたいということもわからないではございませんが、一方においては、新制度に移行することによって特に苦しむ者が出ないような措置をしなければいけないということは、これまた大事な原則だと思うのです。これも加味しなければいけないわけでございまして、その後段のことに重きを置いてこの第三種問題を考えなければいけないと思いますが、厚生大臣の御見解はいかがでございましよう。
  280. 増岡博之

    増岡国務大臣 先ほどからお尋ねに対して御説明申し上げておりますように、これまで持っておられた有利な条件のうちそのすべてを残すということは、先生おっしゃるとおり制度間の格差をそのままということでございますので、その選択をせざるを得なかったということであろうかと思います。もちろん一目違いとかいろいろなことで不利をこうむられる方々に対するお気持ちは私どもよくわからないではございませんけれども、やむを得ないことと御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  281. 塚田延充

    ○塚田委員 次に、案外政府公的年金は割損じゃないかということでございますけれども、これは特に基礎年金、すなわち国民年金にかかわる事項でございます。  そこで、私は、あるケースを想定して、保険料の支払い状況とか、それに基づく受給年金額について試算をしてみたのです。年金局の方、ちょっとメモしていただけたらと思います。想定ではございますけれども、六十一年四月に三十五歳の方が国民年金に加入して、六十歳までに納める保険料の累計額は、私の計算によると六百六十一万五千円、そしてこの月平均保険料額は二万二千五十円でございます。この方がもし七十歳で死亡したと仮定いたしますと、それまでに受け取る基礎年金の累計額は九百八十七万三千円でございます。この試算は、昭和五十九年年金財政再計算結果という政府資料における、いわゆるケース五の七・〇によるもの、すなわち物価上昇スライド率が五%であり、多分運用利率を七%だとしたときのものだと思います。  一方、ある金融機関がやっております私的な個人年金に同一条件の方が加入したとすると、月掛け保険料が三万円の場合、七十歳で死亡しても二千百二十万円も累計額で受け取ることができる、そんな仕組みになっております。これは月掛け保険料が違いますから、比較計算をするために比例計算をして、私的個人年金の方も国民年金と同額の保険料制度があったとして、掛金を支払い、そして同様の率で私的金融機関が払ってくれたとすると、七十歳死亡時までに受け取る累計額は千五百五十八万円になります。すなわち、民間個人年金の方が五百七十万円も割がよいということになります。  ついでに、六十一年四月に四十歳の方の例で同じような計算をしてみますと、国民年金の方は月平均の保険料が一万七千五百八十円ぐらいになるであろう。そして二十年間の累計保険料は四百二十二万円、そして七十歳で仮に死亡した場合の受け取り累計年金額は六百十八万九千円。同じような私的個人年金の方で比例計算をしていわば理論値を推定してみると、個人年金ならば受け取り累計額は七百六十一万八千円です。  以上につきまして、特に国民年金について、私は五の七・〇のケースに基づいて計算してみたわけですけれども、大きな間違いがあるかどうか確認いただきたいのと同時に、私的な個人年金と比べて分が悪そうだというこの事実をどうお受けとめになるのか、厚生省としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  282. 田村正雄

    ○田村説明員 お答えいたします。  先生御指摘の数字について大急ぎでチェックさしていただきましたけれども、前提がいろいろ違いますのでそのまま直接比較できないわけでございます。特に私、気になりましたのは、見まして、利息の計算がどうも入ってないようなのでございますね。それで、ちょっとそのままストレートに比べるというわけにはいかないのではないかという感想を持っております。  それからもう一つ、今、先生御指摘の七十歳までの受給の状況のところで見ますと、民間の方が多いという御指摘がございました。それは六十五歳から七十歳までの五年間だけの受給でございますから当然そういうことになってしまうので、実は公的年金の方はそれ以後ももっともらうことが予定されておりまして、平均余命が十八年ぐらいございますから、まさに十年以上もらうということになります。その間さらにスライドも行われるということで、後になりますと公的年金はスライドもかかりまして大変多くもらえるということですから、この時点で比べるのはちょっと問題がありますので、もう少し長い目で比べていただくということが必要なのではないかと思います。
  283. 塚田延充

    ○塚田委員 確かに国民年金の場合はたった五年しかもらえないところで計算をしましたので、今御答弁のような言いわけは通用すると思います。しかしながら、やっぱり明らかに、こういう特殊ケースかもしらぬけれども、これは計算の仕方がちょっとぐらい動いたとしても、明らかに不利じゃないかということはどうも言えるんじゃないかという気がするのです。今の御答弁のように、年金も一種の保険みたいなものですから早く死んだ方が不利になるのは仕方がない。むしろこういうケースがあるから、逆に長く生き延びられる方々を支えることができるんだという保険理論もそれは確かにあるでしょう。  そこでお尋ねしますが、平均余命の推計をお願いしたいと思います。今私が前提として立てた三十五歳及び四十歳の方々がそれぞれ七十歳までに死亡する確率、これはいかがなものでしょうか。
  284. 田村正雄

    ○田村説明員 お答えします。  直近の生命表でございます昭和五十八年簡易生命表を見ていただきますと、三十五歳の方が七十歳までの間に亡くなる割合でございますけれども、男の方で二六・三%、女の方で一四・三%でございます。  それから四十歳の方になりますと、ちょっと五年、年が上がっておりますから少なくなりまして、男の方で二五・七%、女の方で一三・九%の方が七十歳までに亡くなる、こういうことでございます。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  285. 塚田延充

    ○塚田委員 男性の場合で言えば、四人に一人くらいの方が五年しか受け取らないでいわゆる非常に割が悪いということが起きるのですが、この二五%、六%という数字は私は非常に大きな数字だと思うのですよ。四人に一人がこんな目に遭ってしまう、割損を受けてしまう。そして問題は、国民年金というのはいわば強制加入でございます。それは保険料の免除制度があるとか滞納しても罰則がないとかいうことはありましょうけれども国民の義務であるということを前提としている制度ですから、その方がこんな割損な目に遭うというのは、私は何らかの救済措置を考えなければいけないんじゃないか、このように考えます。  そこでお尋ねしますが、この余りにも大きな割損を救済する意味で、死亡一時金を大幅に増額するとか、そこに年金受け取り期間が五年とか三年とか短い方について最低支払い保障額、こんな制度を設けて、国民の、いわゆる公的年金は意外と割損だよというような感じを払拭する、補う、こんなつもりはございませんでしょうか。
  286. 吉原健二

    吉原政府委員 死亡一時金、つまり保険料を長年納めておられながら年金を受け取る前に亡くなられた方に対する、まあ遺族に支給されるわけでございますが、死亡一時金につきましては、今回の改正案では今までに比べてかなり実は増額をしたわけでございます。最高の場合に、例えば三十五年以上四十年保険料を納めた方につきましては、現行は五万二千円でございますけれども改正案では二十万円ということになっておりますし、一番短い場合でも、三年以上納めた方につきましては十万円は死亡一時金として支給をするということにしたわけでございます。  実は、今のようなお話もわかりますけれども社会保険の中で、途中で年金を受け取るまでに死んでしまったから払った保険料を返すというような考え方というのは、もともと非常になじまないわけでございます。しかしながら、そうはいいましても、恐らく先生のお気持ちもそうだろうと思いますけれども国民年金のような、いわば厚生年金と違いまして自主的に保険料を納めていただくというような形でやっております制度におきましては、実際に年金をもらう前にだれももらわないで亡くなられたという場合に、多少でも一時金としてもらえないだろうかという声、お気持ちもまた大変強いわけでございます。そういったことで、理屈としてはいろいろ議論があるわけでございますけれども、私どもも今の死亡一時金の額では少しどうだろうかということで増額をした、改善をしたということでございますけれども、これ以上さらにどうかということにつきましては、私どもとしては、やはり制度のねらいといいますか、私保険と違いますし、これ以上死亡一時金を充実するよりか、年金そのもの、老齢にしても障害にしても遺族にしても、年金そのものの額というものを充実していく方向で考えなければならないのじゃないかと思っております。
  287. 塚田延充

    ○塚田委員 年金そのものをもっと充実してできるだけ保障の任に当たらせたいということ自体は結構でございます。そして、先ほどの私の、特殊ケースを挙げて厚生省を突っついたわけでございますが、その御答弁の中で、長くなればそんなことないのじゃないかというようなことなんですが、それならば国民の平均余命、男女差がありますけれども、大ざっぱに人生八十年と言われております。だから、八十歳までということで、私は私的な個人年金国民年金比較をモデルケースにしてみました。よろしいですか。三十五歳でこの例で見ますと、国民年金での受け取り累計額は三千八百五十五万八千円、一方、ある特定かもしれませんけれども、同じ掛金を私的会社の個人年金でやった場合、四千三百三十一万円も受け取れるという仕組みになっております。そういう商品になっております。四十歳の例で見ますと、国民年金側の受け取りが二千四百十六万九千円であるのに対して、民間側は、これはちょっと低くなっておりますが、二千百十七万八千円となるわけです。どちらもちょぼちょぼということでもって、特別に公的年金制度が長いからいいのだというような先ほどの御説明は当たらないということになるわけです。  私が今示しました計算がどういうことを意味するのかといいますと、個人年金の場合、これは国庫の補助もございません。事務費も丸々負担しておる。一部利益すら内蔵しているかもしらない。そうやっておる仕組みの年金制度比較してみた場合、やはり国民年金の方、何かおかしいのじゃないかというような素朴な疑問を国民は持たざるを得ないわけです。なぜそうなるのかということでございますけれども、私はこれは保険料積立金の運用利息の差が出ているのじゃないかと考えざるを得ないのです。確かに、個人年金の方で計算しました例は八%ということですから、これが保証されるとは思っておりません。だから、今私が説明したように、個人年金の率がいい、割がいいよということは丸々は当てはまらぬかもしらぬけれども、一生懸命に八%に近くなるように努力した運営をすると思う。となると、政府としては、国民のために有利運用をもっともっと考える義務があるんじゃないでしょうか。  かねてから、厚生年金であるとか国民年金について被保険者の代表も加えて、例えばそういうような運用のセクターでもつくったりしながらとにかく自主運用しなければいけない、その方がいいんじゃないか。今の厚年、国年はすべて財投に入れて割が悪過ぎるんじゃないか、このような意見と同時に提言があるわけでございまして、この機会に厚生省及び大蔵省として、国民に対する義務として、もっともっと有利運用するためにはどうしたらいいか、その一方法として指摘されておる自主運用についてどう考えるのか。両省から御見解を賜りたいと思います。
  288. 吉原健二

    吉原政府委員 国民年金厚生年金と積立金の運用につきましては、安全であると同時に、これからは、やはりお話のございますように、できるだけ有利に運用していくということがますます必要になってきていると思います。この点につきまして、大蔵省の資金運用部に全部を預託している現状におきましては、なかなか有利運用ということが難しいわけでございますが、ただ、大蔵省の方からいいますと、いずれ御答弁があるかと思いますけれども、なかなか公的な資金、国の制度なり信用で集めた資金の統合運用という原則は崩せないという非常に強い主張がございます。私どもは、仮に、その資金運用部の預託ではなしに、自主的に全然別個に運用したいという気持ちは持っておりますけれども、そうはいいましても、なかなか現実問題としてそういったことがすぐにできるかどうかといいますと、大変難しいという考え方もございますので、とりあえず、資金運用部の預託の中で何か年金の資金だけはほかの資金と区別、仕切りをつけた形でもう少し有利に預託利子を上げる、高い預託利子をということができないかどうかということで、今も実は大蔵省とやっているわけでございますけれども、なかなかこれといったはっきりとした結論というものが、納得のいく結論が現在の時点ではまだ得られないというのが率直なところでございます。  今後とも、やはりおっしゃったような御趣旨もよくわかりますので、そういったことで努力をしてまいりたいと思いますし、同時にやはり、保険料の拠出者の方の意向というものがもう少し資金運用の中に反映されるようなことも考えなければならない、こう思っておるわけでございます。
  289. 小村武

    ○小村説明員 担当の理財局が参っておりませんので、私、主計局の主計官でございますが、かわりにお答えを申し上げます。  私ども、大蔵省がかねがね御説明申し上げておりますのは、国の責任において集めたお金は一元的にそれを管理運用するという大原則がございまして、これに基づいて厚生年金等の積立金の運用を一元的に資金運用部において行っているところでございまして、原資の立場から申し上げますと、やはりそれは有利に運用するということであろうと思います。一方、財政投融資の使命としましては、住宅その他いろいろな政策金融の分野がございまして、これまたできるだけ低利でお貸しをしなければいかぬ面もございます。こうした面で、原資と運用面の調和を図っていくということではないかと思います。  なお、御趣旨につきましては、帰りまして担当の方にもその先生の御趣旨を十分お伝えしたいと思っております。
  290. 塚田延充

    ○塚田委員 国民年金というのは、いわゆる国民皆保険の基礎そのものであるわけです。ところが、今までの安いと言ってはなんですけれども物価水準どもございましたけれども比較的絶対値の低い保険料のときはもちろん、今の水準保険料でもその保険料が払えないで滞納しているとか、または免除の申請をしている方々がかなりの数に上っているはずでございます。  お伺いいたしますが、昭和五十二年、五十六年、五十九年という時点をとりあえず区切って、このような方々の人数、そして本来加入すべき人数との比率を示していただきたいと思います。
  291. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。  先生の御指示は昭和五十二年度、昭和五十六年度、昭和五十九年度という御指示でございますが、五十九年度の実績が出ておりませんので五十八年度で申し上げさせていただきます。  五十二年度でございますが、免除を受けております数は百八十二万六千人でございまして、免除率、全被保険者に対しますこれらの者の比率は九・一%でございます。それから、保険料を滞納しておる者ということでございますが、実は保険料の滞納といたしましては、納めるべき保険料の延べ月数に対する納まってない保険料の延べ月数ということで出させていただいておるわけでございますが、この検認率がこの時点で九六・三%でございます。逆算いたしますと三・七%の滞納があるということになるわけでございますが、これをいわばそのときの被保険者免除者数を除きました者から推察いたしますと八十七万人に該当すると思います。両者合わせますと、この五十二年度は二百六十九万人というような数字になるかと思います。  昭和五十六年度でございますが、このときは免除者が二百五十三万七千人でございまして、免除率は一三・一%でございます。検認率は九五・七%でございまして、滞納しておられます方は四・三%でございます。これは先ほど申し上げましたような観点から数に直しますと百一万人に該当いたしますので、両方合計いたしまして三百五十四万七千人ということになるかと思います。  五十八年度でございますが、免除者数は三百九万三千人で、免除率は一六・七%でございます。検認率は九四・六%でございますので、滞納者は五・四%ということで、これが百十六万人でございます。合計いたしますと四百二十五万三千人というような数字になるわけでございます。
  292. 塚田延充

    ○塚田委員 年を追ってこういう免除者及び滞納者の絶対数及び率が上がっているわけでございまして、これはちょうど保険料が高くなったからそれにつれてこういう比率、絶対数が増してきたのかどうかはわかりませんけれども、やはり脱落する方がふえておるということは傾向として今立証されたような形でございます。  免除者の場合基礎年金額は三分の一となってしまい、全期間免除の場合には年金額は一万七千円程度となってしまって、現行の老齢福祉年金よりも低額となってしまいます。これでは老後の経済保障の役割を全然果たせない、このように考えられるんですが、この件についてどうお考えになるのか。また、このような方々が今後保険料が五十九年度価格で六千八百円から一万三千円というふうに上がっていき、さらに物価スライドなどを考えると非常に高額とも思えるような保険料になっていくわけでございます。となると、さらに免除であるとか滞納者率がふえてくると考えざるを得ないわけでございます。国民皆保険をうたい文句としておるこの基礎年金としては何らかの対策を考えなければいけない。このような状況を政府はどう考え、どう対策しようと考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  293. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。  保険料免除者数の推移、検認率の推移等を制度発足以来現在まで見ますと、制度発足時におきましては実は免除率はある程度高く、また検認率は低いというような状況がございました。その後、制度充実等に伴いまして免除率が下がりまして、かつ、検認率が上がった、つまり先生お話しのような保険料の免除を受ける者、滞納する者が少なくなったという事態があったわけでございます。  全体的に見ますと、免除者数とこういった滞納者の動きといいますのは、保険料の引き上げとは確かに無関係であるとは申し上げられないと思うのでございますが、所得状況でございますとか年金制度それ自体の水準の問題ですとか、さまざまな状況に左右されるということが大きいのではないかと考えておるわけでございます。  しかしながら、先生御指摘のように、このように免除者数がふえてくること、それから滞納者がおりますこと自体は、皆年金という理想からいいまして問題であることは事実であると思います。現在の国民年金保険料は三カ月分をまとめて納付していただくことが原則になっておるわけでございますが、三カ月分納付ということになりますと、御夫婦お二人となりますと相当な金額になってくることは事実でございます。被保険者の方が納めやすいような環境づくりと申しますか、そういうことを努力いたさなければならないと思っておるわけでございますが、このためには毎月納付の実施、口座振替の推進ということをやっていっておるわけでございますけれども、現在のところ、全体の市町村でそれぞれ約二割程度の推進にしかなっておらないわけでございます。  今回の改正におきましては、六十四年度に全国的に毎月納付に法的に移行することとなっておるわけでございますが、こういった措置を通じまして保険料の納付が円滑にいくように、また先生御指摘いただきましたように、各被保険者の方におかれましても、国民年金の納付についての御認識を高めていただくような努力を私どももさせていただきたいと思っております。
  294. 塚田延充

    ○塚田委員 保険料の納付率を上げるために、いろいろなテクニックをこれから考えていくということでございますが、それ自体は必要ですけれども、やはり根本的な問題として指摘したいのは、所得に比べて保険料水準そのものが高いんじゃないか、これを改善する必要があると私は考えるわけでございます。  そこで、昭和五十九年年金財政再計算結果を見てみますと、国民年金の年度末積立金は、かなり年金制度が成熟したと思われる昭和九十年において、五十九年度価格で見て七兆八千億円にも上っているわけです。この再計算結果というのは、物価上昇率を五%、運用利率を七%としての試算だと思われるのですけれども、もしも物価平均上昇率が四%であり、運用利率を現行で一番うまく運用されておると言われております農林共済並みの利率で有利運用ができた場合、昭和九十年において積立金はどのくらいに変わるのか。そしてそうなった場合、もしその積立金を、現時点で残高が大体三兆五千億ぐらいですから、その程度1にまで、将来の危険性はあるかもしらぬけれども、分配の方に回して減らしてもいいんだというようなことで、いわば保険料の額とか何かを落とすことが可能かどうか。そうした場合、最高保険料及び平準月額保険料がどのくらいになり得るのかという試算をお願いしたいと思います。  あわせて大臣にお聞きしたいのですけれども、もしこのようにいわゆる物価上昇が落ちついておるとか、もしも有利運用が自主運用によって可能になったという場合、それを最高保険料の引き下げに持っていく意思があるのかどうか。これが国民皆保険の趣旨に合うと私は思うのですが、それについての御見解を伺いたいと思います。
  295. 田村正雄

    ○田村説明員 それでは、前半の分についてお答え申し上げます。  まず、年金の改定率を四%にいたしまして、積立金の利回りを七・五ということで、私どもが作成いたしました収支見通しよりやや高目に見積もるとどうなるかということでございますけれども先生御指摘のように、昭和九十年度の時点で、私どもの試算では五十九年度価格で七兆八千億円ほどの積立金になっておりますが、それが一兆四千億円ほどふえまして九兆二千億円ほどになります。これだけの差が出てまいります。  そして、先生が後の方で御指摘になりました保険料へのはね返りはどうなるかということでございますけれども、私どもの試算でございますと、たびたび申し上げておりますように最高で一万三千円まで上がるということでございますが、今のように運用利回りを〇・五%引き上げまして試算いたしてみますと、約九百円下がりまして、一万二千百円で最高保険料をとどめることができるという結果になっております。
  296. 吉原健二

    吉原政府委員 そういったことは現実的に可能性があったときのいわば仮定の話でございますので、今お答えするのが適当かどうかわかりませんが、そういったことが将来とも確実な見通しとして十分成り立ち得るという段階におきましては、今の給付水準のままで保険料を下げるか、それも一つの選択でございますし、逆に、今の保険料水準でいろいろ御議論のございます年金給付水準を上げるかといった選択も可能かと思います。その時点でいろいろ各方面の御意見を聞いて、国民的な合意の上での判断になるのではないかと思います。
  297. 塚田延充

    ○塚田委員 それでは、次の質問に移ります。それは今審議しておりますこれからの年金支給水準というのが、いわば老後の経済的な最低保障になり得るのかどうかということでございます。特に、基礎年金の方がたびたび各委員から指摘されて問題になっているようでございます。  今、改正案が予定しております基礎年金額は、現行二十五年加入で四万八千円のはずなんですが、これが今度の改正案になると、十五年も長く保険料を支払って、なおかつ、同水準と言えるような五万円である。一方、厚生年金の方でございますけれども、これは現行三十二年加入で十七万三千円になっているのが、改正案ではこれより八年長く加入する形でやはり同水準の十七万六千円である。この二つだけを比較してみますと、どうも基礎年金の方は割が悪いのじゃないかというように思われるわけですが、いかがでございましょう。
  298. 吉原健二

    吉原政府委員 私ども、そういう見方は必ずしも適当というか妥当な見方ではないのではないかと思うわけでございまして、国民年金厚生年金の歴史や沿革の違いがございます。背景にそういうものがあるということをまず申し上げたいわけでございます。  確かにその点だけ見るとおっしゃることに間違いございませんが、国民年金というのは発足がおくれましたために、いわば意識的にかなり成熟化対策をとってきているのです。成熟化対策ということは、もっと具体的に言いますと、五年年金とか十年年金とか、いわば非常に短い期間納めた方についてもそれなりの、いわば払った保険料比較いたしまして相対的に高い年金額を早く出そうという措置を講じてきたわけなんです。それとのバランスで二十五年の年金額が決まりあるいは四十年の年金額が決まる、そういったことで、四十年納めた場合の年金額国民年金の場合には今かなり高い水準になってきているわけでございます。  そういったことで、現在の制度ですと二十五年でほぼ五万円に近い水準になっているわけですが、四十年では七万八千円程度水準になっているわけですけれども、これが四十年で月額五万円ということになったわけでございまして、二十五年が四十年、ところが、厚生年金については三十二年が四十年という比較にもともとなじまないわけでございます。  それからもう一つは、やはり現行の年金水準をできるだけ落とさない、それを出発点として将来に向けて給付水準を適正化していく考え方をとりましたために、たまたま期間年金額との関係においては御指摘のような事実があることは確かでございますけれども、決して考え方に不公平があるとかアンバランスであるというふうには私どもは考えてないわけでございます。
  299. 塚田延充

    ○塚田委員 国民の立場に立ちまして、素朴な質問をさせていただきます。  よく一人口では食えないけれども人口なら食えるということ、まあその逆が本当なのかどうか知りませんけれども、ということから、単身者と夫婦者の間で、いわゆる五プラス五イコール十というのと、一人の場合はそれならば六ぐらい欲しいとかというような、これはそのくらい生計費がかかるんじゃないかという素朴な感情を持っているわけでございますが、これを心情的にどう理解し、それを大岡裁きみたいな形で実行に移す意思があるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  300. 吉原健二

    吉原政府委員 年金制度というものを夫婦単位で考えるかあるいは個人単位で考えるかによって実は違いが出てくるわけでございまして、国民年金というのは、従来からも個人単位で、一人一人が保険料を納めて一人一人が年金をもらう、夫婦ですとそれぞれ別に保険料を納めて別に年金をもらう、こういう個人単位で来ている。厚生年金はそうじやございませんで、働いている御主人が納めて、奥さんの分の保険料も納めた形になって、給付としては御夫婦の年金として御主人に出される、こういうことになっていたわけでございます。これを両方合わせても、個人単位の年金に分化といいますか、原則個人単位の年金にしようというのが今度の年金改正の一つの特徴なんでございますけれども、その結果として、御指摘のような問題があることはあるんです。あることはあるんですが、厚生年金につきましては、年金というものは基礎年金だけじゃございませんで、基礎年金の上に報酬比例の部分がつく、そうしますと、夫婦で考えた場合には、今までとそれほどアンバランスなような事態は生じないわけでございます。あくまでも基本は個人単位でございますけれども給付水準としては、厚生年金についても今まで以上に夫婦二人世帯の場合と単身の場合とのバランスはとることができたというふうに思っておりますが、国民年金の場合に一体どうかということになりますと、なかなか国民年金の場合に、これを世帯単位に給付設計をし直すということは実際問題として難しいわけでございます。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕 奥様も一人一人毎月保険料を納める、御主人も納めるというときに、もらう年金の額が、夫婦でもらう場合と単身でもらう場合、一体年金額に差をつけるということがまたどうかという御議論がいろいろあるところだと思いますので、どうしても保険料を個人単位にいたしますと、年金の方も同額が個人単位でつく、こういう構成にせざるを得なかったわけでございます。
  301. 塚田延充

    ○塚田委員 では、制度間格差について質問させていただきます。  本年二月二十四日の閣議決定のとおり、共済年金についても昭和六十年に現在の厚生年金と同様の制度改革を行って、従来指摘されているようないわゆる官民格差について是正すると言われているわけでございますが、その官民格差の主要なポイントとしては、まず併給条件、二番目に年金額の算定方法、三番目に年金支給開始年齢などについて民間サラリーマンと同じになる、このように考えてよろしいでしょうか。確認させてください。
  302. 坂本導聰

    ○坂本説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、二月二十四日の政府の閣議決定におきまして、共済年金につきましても、ただいま御審議をいただいております厚生年金国民年金等の基礎年金導入の改正に合わせた改正を行うという決定を受けているわけでございます。  ただ、一言申し上げたいのは、共済と申しましても、私ども大蔵省所管の共済、自治省所管あるいは文部省、農林省所管の共済に分かれてございます。そこで、私どもといたしましては、各共済所管省庁が集まりまして、学識経験者も含めまして、去る三月末から半年以上かけまして検討したレポートをまとめたわけでございます。したがって、このレポートをもとに、今後、国共審等関係審議会あるいは関係方面の御意見を踏まえながら成案を得ていくという性格のものでございます。そういう性格のものでございますが、その共同の検討の場で行われた議論としては、ただいま御指摘のような問題が議論の一つになりまして、大きな議論といたしましては、他の公的年金と同様、将来の給付負担のバランスあるいは公務員制度の一環としての側面をどう考えるか、と同時に、各公的年金制度間における著しい格差というような問題、ただいま御指摘の併給調整の問題、あるいは支給開始年齢の問題、あるいは年金額算定方法の問題、こういった問題につきまして、共同の事務的な検討の場では厚生年金等に合わせていこうという考えでございますが、まだ成案には至っておりません。  以上でございます。
  303. 塚田延充

    ○塚田委員 その検討委員会での試案を見ますと、職域年金部分が二〇%の上乗せとなっておりますが、企業年金は三〇%以上、三・四倍もの年金給付も行っているようでございます。この二〇%とした根拠は何でございましょう。
  304. 坂本導聰

    ○坂本説明員 ただいまの御指摘の職域年金相当部分につきまして、先ほどのような、まだ成案ではございませんけれども厚生年金相当部分の二〇%程度のものを考えておりました。これは実は、ただいま民間の企業年金というお話がございましたけれども、民間の企業年金はその態様、形でございますね。それから水準、費用負担の方法等千差万別でございまして、共済年金の公務員等の部分の職域部分としてこれが比準すべき基準だというようなものは必ずしも明瞭ではございませんでした。したがいまして、私どもといたしましては、公務員制度等の一環として当然職域部分を考えるべきであるが、同時に、現役公務員と卒業された方々の生活の均衡という観点から、二〇%程度が限度ではなかろうかというふうに考えたわけでございます。
  305. 塚田延充

    ○塚田委員 また、年金額計算基礎となります標準報酬月額は、厚生年金の場合家族手当などの各種手当を含んでおりますが、共済年金では含んでおりません。これを厚生年金並みとした場合、年金給付額への影響、また保険料への影響は現行と比較した場合どうなるのでしょうか。
  306. 坂本導聰

    ○坂本説明員 ただいまの御指摘の点は、一概に一定の結論を出すという性格ではございません。と申しますのは、私どもが今とっております方式は、最終一年間の本俸という形をとっております。そこで、厚生年金の平均標準報酬との比較で申しますと、標準報酬の場合は御指摘のように諸手当が込みになっております。ですから、本俸と標準報酬であれば標準報酬の方が高いということになろうかと存じます。しかしながら、一方、最終一年間の本俸ということでございますので、給与は一般的に年を経るに従って上がっていくということでございますから、全期間をとる平均標準報酬よりも最終一年の方が高いということになるわけでございます。  したがって、公務員個々の方々がどういう等級号俸を、どういう経緯で歩んできたかという歩み方によって差があろうかと存じます。一般的に申し上げますと、所得の高い方々について言えば、現在の最終一年間の本俸方式の方が有利である、所得の低い方々にとっては平均標準報酬の方が総体的に有利であるということは言えるのではないかと存じます。
  307. 塚田延充

    ○塚田委員 質問のポイントを変えさせていただきます。  行政改革関連特例法によりまして、厚生年金保険などの保険給付費の国庫負担昭和五十七年度から五十九年度の三年間にわたって減額する措置をとっているわけですけれども厚生年金であるとか各種共済年金とかいうような制度ごとの減額がどうなっているのか、元利を合わせてそれぞれ数字を示していただきたいと思います。
  308. 長尾立子

    長尾政府委員 お答えを申し上げます。  まず、厚生年金保険の国庫負担の繰り延べ額でございますが、昭和五十七年度千八百三十億円、昭和五十八年度二千百七十億円、昭和五十九年度二千四百二十億円、合計いたしまして六千四百二十億円でございます。船員保険の国庫負担の繰り延べ額は、これに相当するものは六十七億円でございます。  他の共済等については承知をいたしておりません。
  309. 坂本導聰

    ○坂本説明員 お答えいたします。  私どもの所管は国共済でございますので、国共済について申し上げます。  五十七年度はカット類が八十五億円でございます。五十八年度が九十三億円でございます。そして五十九年度、これはまだ見込みでございますが、恐らく百九億円程度になるのではないか。したがいまして、合計二百八十七億円程度になろうかと存じます。一方、利息でございますけれども、五十七年度では十二億円、五十八年度では約八億円、五十九年度では約三億円、合計では約二十三億円ということで、元利合計で三カ年分を考えますと三百十億円程度になろうかと考えております。
  310. 塚田延充

    ○塚田委員 その返済計画はどうなっているか。大蔵省、お答えください。
  311. 小村武

    ○小村説明員 行革特例法に基づく年金共済の国庫負担の減額分については、ただいま関係省庁から御説明のあった額でございますが、これにつきましては、積立金運用収入の減額分も含めまして、将来の年金財政の安定を損わないよう、かつまた、国の財政状況を勘案しながら、特例期間経過後においてできるだけ速やかに御返済を申し上げたいということを従来から御答弁しているとおりでございます。
  312. 松本英昭

    松本説明員 地方公務員の共済組合について申し上げますと、減額分は五十七年度が四百二十四億二千二百万円、五十八年度が四百三十六億八千九百万円、五十九年度の見込みで五百十億九千三百万円、合計が千三百七十二億四百万円でございます。これらの利息分は、五十七年度が十一億六千七百万円、五十八年度が三十五億九千九百万円、五十九年度が六十四億三百万円、計百十一億六千九百万円で、総計は千四百八十三億七千三百万と相なっております。  地共済に対します公経済負担の削減分の措置につきましては、行革特例法におきまして、特例期間経過後において、国が講じる措置に準じて、差額に相当する金額の払い込みその他、適切な措置を講じるものとするとされておりますので、国の措置に準じてまいりたいと考えております。
  313. 塚田延充

    ○塚田委員 これらのいわば大蔵省側の借金になるわけでございますが、本来ならばこれは五十九年度末に返すはずだと思うのです。それを一年間だけ延長する方針があるやに一部報道されておりますが、そのとおりなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  314. 小村武

    ○小村説明員 現在の行革特例法は、先生御指摘のとおり、五十七年度から五十九年度までの特例適用期間中のものでございます。したがいまして、六十年度以降期限が来るわけでございますが、この法律の制定の際には、五十九年度赤字公債脱却という一つの目標がございました。その後、残念ながらその目的が達せられなかったということでございますが、六十年度以降どうするかという問題につきましては、ただいまの財政状況等を勘案しながら、予算編成の過程においてその一環として検討してまいりたいということでございます。
  315. 塚田延充

    ○塚田委員 借り主としての大蔵省、いわゆる親方日の丸ということでございまして、もしもこれが民間の金融機関とかなんかでしたならば、借りたものを期限に、払えなかったらこれは大変なことになってくる。貸し主に対してペナルティーを払わなければいけない、こういうはずでございますけれども、どうも今の見通しで言うと、ああの、こうのという理由のもとに、結局は返さないことになってしまうのではなかろうかと推測されるわけでございます。やはり一種の政治責任みたいなものがあるような気がするのですけれども、この辺、いかがお考えでしょうか。
  316. 小村武

    ○小村説明員 繰り返し御答弁申し上げますが、行革特例法に基づきました国庫負担繰り入れ減額につきましては、将来、その運用利息を含めまして、特例期間経過後、国の財政状況あるいは年金財政の安定を損なわないよう配慮いたしまして、これはできるだけ速やかにお返しをいたしたいということでございます。
  317. 塚田延充

    ○塚田委員 いよいよ時間がなくなってまいりましたので、付加的な質問をさせていただきます。すなわち国民年金における付加年金のことでございます。  国民年金につきましては、五万円という給付水準がどうも低いのじゃないかというような議論もありますし、しかしながらそれを支える保険料の方、これは高くて支払い切れないのじゃないか、だから免除者であるとか滞納者がふえてきておるという二律相反する面があるわけでございますが、となると、自営業者の方々でも厚生年金と同じくらいの年金が欲しいんだ、そのような制度をぜひつくって、入ってみたいというような希望があるわけですが、それを今の制度ではかなえてやることがほとんどできない。なぜそのように、いわば所得比例のような形での年金が、基礎年金と申しましょうか国民年金でできないのかというと、これまた何回か御答弁がございましたが、所得の捕捉が難しいからであるという御答弁のようでございます。そこまでは私も理解できます。それならば、いわば任意と申しましょうか、ちょうど今までの国民年金には付加年金制度というのがあるんだから、その制度を拡充して、任意に選ばせるようなことができないだろうか。今は一口四百円でございますか、これしか入れないわけでございます。しかしながら、もっと掛金を掛けてもいいから厚生年金とか共済年金と同じくらいの水準のものを欲しいんだという要望にこたえるために、所得に比例して取るとかいう、初めからできない相談である、捕捉が難しい、そのために滞納が出てしまうとかいうことでなしに、逆に任意制にして、それを最高五口までだったらば認めるとかとなりますと、やはり払うのが大変だからという人はそういう付加年金には入らないでございましょうし、所得に自信があってたくさんの年金が欲しいという方は、その付加年金にたくさん入るという選択の余地が出てくると思うのです。このようなことについてぜひお考えいただきたいと思うのですが、厚生省の御見解、いかがでございましょう。
  318. 吉原健二

    吉原政府委員 現在の付加年金制度も、実はそういった考え方に基づきまして発足したわけでございます。  ところが、その付加年金制度の実施状況を見てみますと、付加年金加入者は五十八年で三百七十一万でございますけれども強制加入の方で付加年金に入っておられる人は九十一万、これは農業者年金の適用を受ける方は強制的に入らなければいけないわけでございます。任意加入ということで二百八十一万入っておられますけれども、サラリーマンの奥さんの方、もともと国民年金に任意加入になっておられる方の付加年金加入者が大変多いわけでございます。  ところが、付加年金にっきましては月額四百円の保険料をいわば付加的に払っていただいて、月額二百円単位の付加年金支給されることになっているわけですが、この年金につきましては物価スライドというものが行われないということになっております。いわば完全積み立てで運営していくことになっておるわけでございまして、社会保険の年金としてはそういった意味での魅力は乏しいということもございまして、実は加入者がそれほど多く伸びないわけでございます。現在までに加入をされた方も、果たして続けていっていいかどうか、むしろこれからは加入者が減ってくるんじゃないかという気もいたしておるわけでございます。  ただ、確かにもうちょっと保険料を払って高い年金をというお気持ちの方が、これはそれほど多くはないかもしれませんが、そういう御希望、御意思をお持ちの方があるということは確かだと思いますので、国民年金のいわば二階建て年金の一つの種類として、これからもっと別なやり方があるのかどうか、今の付加年金と別な形があるのかどうか、あるいはこれをもう少し工夫したらいいのかどうか、所得比例保険料は強制を前提にした考え方でございますけれども、それと並行的に、この付加年金制度の現在のあり方も工夫してみたいと思っております。
  319. 塚田延充

    ○塚田委員 終わります。
  320. 戸井田三郎

  321. 梅田勝

    梅田委員 私は、日本共産党・革新共同の梅田勝でございます。  いよいよ年金の一元化法案が重大な問題になってまいりましたが、これは政府・自民党がいわゆる軍拡臨調路線として打ち出しました教育や福祉の切り捨てというもので、厚生省の関係におきましては一番大きな被害を受けてきたわけでありまして、老人医療の有料化、それから健康保険本人負担の導入による健康保険の改悪に続きまして、第三弾の年金制度の改悪でありまして、まことに重大な国民生活に対する攻撃だということで、私ども反対いたしております。  今日、年金老人問題といいますものは非常に大きな全国的課題であります。一つは、寿命が長くなってきて老後の生活が非常に長い、その暮らしをどうするか、食える年金にしろという点で、お年寄り自身の問題であります。第二は、そのお年寄りを抱えている若い者を含めました家族全体の問題であります。第三に、その若い者につきましても保険料負担が現実の問題として出てくるわけであります。そして、将来は自分たちも老齢生活に入るわけでございますから、自分自身の問題でもある。さらに年金制度におきましては、障害者対策あるいは寡婦年金に見られますような、そういう方々の暮らしを守るということもございます。  このように考えてみますと、年金老人問題というのはまさに全国民的な課題である。そういう点で、この抜本的な制度改悪と言われるようなものにつきましては十分慎重に検討して、これらの万々の広い国民的合意を得ることが必要だと思うわけでありますが、大臣は、国民的合意の必要性の問題についてどのようにお考えになっているかということをまず承りたいと思います。
  322. 増岡博之

    増岡国務大臣 今度の改正案につきましては、長年にわたって審議会、学識経験者その他の方々の意見を承りまして、その結果としてこのような改正案を出しておるわけでありまして、私どもは改悪案ではなくして改善案だと考えておるわけでございます。また、本委員会で御熱心な御審議をいただいておりますことは、この法案に対しましてのある程度の御評価をいただいておるものと考えております。
  323. 梅田勝

    梅田委員 前国会は既に終わったわけでございまして、本来ならば廃案になるべき性質のものだ。前国会は健康保険の改悪を強行した。これは相当国民の憤激が高まって、たくさんの請願も寄せられてきたということであります。健康保険の制度改悪もやるし、一方で年金の改悪もやる。こんな大事なことを二つ一遍に出してきて、片っ方は十分に審議ができないのは当然で、本来ならば出直して今国会に出すべきものでありますが、いわゆる継続審査ということにした。しかし、今国会はまだ始まりましてわずかしかたってないわけでありまして、十分な議論が尽くされていないと思うのです。閉会中に地方公聴会をやりましたが、中央におきましては中央公聴会というものをやってない。確かに連合審査会も昨日はやりましたけれども、大体五つの委員会と連合審査をやるようなときには、昔は二日も三日もかけてやったものです。それをたった一日でさっさとやるようなことで、十分に審議を尽くしたとは言えない。  ですから、自由民主党の方も、いわゆる物価スライド部分につきましては切り離して別件にしたいということでございますが、本体は本体でやってほしいということでありますから、私は、四・四%の物価上昇率をスライドとして確認をする。それから、事後重症など障害者給付にっきまして改善を加えられたものにつきましては、これを通すということを速やかにやって、そして本体の改悪部分につきましてはもう撤回して、もう一度出直すというのが至当だと思いますが、どうですか。
  324. 増岡博之

    増岡国務大臣 今度の改正案は、先生もおっしゃいましたように、将来の給付負担ということをあわせ考えて、年金制度の永続的な安定のためにはこのようなことをいたさなければならぬ、そういう考えのもとに提出いたしておるわけでございますから、これを撤回いたすことはいたしませんし、またスライド問題につきましても、五%以上になりますと自動的に物価スライドということでありますが、そこまで至っておりませんので、ほかの給与、年金等に比例して二%ベースアップすることにいたしたわけでございます。
  325. 梅田勝

    梅田委員 この改悪案の実施時期が六十一年四月ということになっておりますね。それで、法案が実施時期を決めておるという関係で、いろいろ反対の声があっても、これはどうしてもそこに合わせなければいかぬということでやっておられるのじゃないかと思うのでありますが、どうですか。これは国民的合意を得られないときには延ばしたってどうもないのじゃないですか。いかがですか。
  326. 増岡博之

    増岡国務大臣 私どもは、年金財政の将来を考えますときには、腹の中では六十一年四月よりももっと早くやりたい、そういう気持ちでございますけれども、準備その他の都合がございますので、六十一年四月という日にちを考えておるわけでございます。したがいまして、この法律案国会にお願いしましたのはことしの三月でございますので、それ以降いろいろな御審議の御都合で今日まで延びておるわけでございますから、どうか一日も早く御可決いただきますようにお願い申し上げます。
  327. 梅田勝

    梅田委員 いや、それは政府側が間違いなので、健康保険の大きな制度改悪と年金の大きな制度改悪を一緒くたに出してきて、これを一緒にできるはずがないのですよ。そもそもあなたの方が無計画にやった話であって、それが破綻したわけですから。まして、たくさんの反対の声があって、まだ委員会におきましても審議が尽くされていない。今までずっとたくさん出ましたけれども、あそこにも問題がある、ここにも問題があると言ってたくさん問題点が出ている。そういう問題点、年金というのは長期を見渡した制度問題でありますから、これだけ問題が出てきたらもう一度出直してくるべきだと思うのですよ。  しかし、どうしてもあかんというように言われるあなた方の根拠に、やはり基礎年金五万円という問題が関連しているのじゃないかと私は思うのですが、一年延びますと、つまり実施が昭和六十二年になりますと、国民年金加入者におきまして二十六年加入の人が出てきますね。現行制度で計算をいたしますというと、五十九年度価格で幾らになりますか。
  328. 山口剛彦

    ○山口説明員 概算で約五万一千円程度かと思われます。
  329. 梅田勝

    梅田委員 六十一年四月実施の場合でいきますと、ちょうど二十五年の人が出てくる。資格を取得した人が出てくる。このときに計算すると四万九千百四十円だ、だからこれに合わせて五万円という考え方が出てきたのじゃないですか。一年延びたら五万一千百何ぼになるわけでしょう。同じような率でいったら五万二千円にしなければならぬね。どうですか。
  330. 増岡博之

    増岡国務大臣 現行保険のままですと、そういうふうに累積して莫大な年金給付になるというおそれがありますので、一日も急いでおるわけでございます。
  331. 梅田勝

    梅田委員 だから、あなたの考えは間違っておると言うのだ。大臣、五万円が五万二千円になったら国民は非常に結構じゃないですか。そうでしょう。年金がパンクする、パンクすると言っておるけれども、これはやりようによっては何ぼでも対策があるわけで、後で申し上げますが、慎重に審議をして、そしてこれでもう将来ともに安心してやっていける、こういう体制ができた場合には、少々一年ぐらいおくれたって構わないじゃないですか。どうしてもこだわるのは、二千円ほど余計に出さなければいけないということですか。
  332. 吉原健二

    吉原政府委員 今度の年金改正案は、やはり将来に向けて給付水準というものを適正にしたいということで、それを原点にして改正案がつくられているわけでございます。それで、将来に向けての年金給付水準というのは、現行の制度のままですと、将来の給付水準が大変サラリーマンの現役の方に比べても高くなる。同時に、保険料負担も非常に大きなものになってしまう。そういうことから出発をしているわけでございまして、改革に着手することがおくれればおくれるほど将来の負担も大きくなる、あるいは適正化も困難になるということがあるわけでございます。  そういった意味におきまして、各方面、臨調の答申もそうでございますけれども、各方面から、年金改革は早く案をつくって実施に移すべきだ、こういう世論があったわけでございます。そういう世論を踏まえまして、過去三年間にわたって十分いろいろ議論をして、ようやく国会に出させていただいたわけでございます。  これの実施のスケジュールも、準備その他を考えまして六十一年四月というふうに予定をさせていただいておりますので、ぜひそういったことで、六十一年四月からの実施をお願いしたいわけでございます。
  333. 梅田勝

    梅田委員 国民的合意ということを先ほど申し上げましたけれども、あなた方は学識経験者を呼んでいろいろ検討して、長い間かけてきた、審議会もやってきたとおっしゃいますが、なお国民的な規模で言うとたくさんの反対の声があるし、ちょっと審議しただけでもたくさんの矛盾が出てきている。到底十分に慎重に案をつくられたとは私どもは思えないわけですよ。だから一年ぐらいおくれても、二千円ほど基礎年金を上げるなんという問題はあなた方の案では発生をいたしますが、そんなことはもう問題ではない。いい案をつくることが先決だということで、今日までの討議を踏まえて出直してくるのが私は筋だと思うのでありますが、これ以上の議論はやめまして、次の問題に移ります。  加入期間が非常に長い、それから高齢化社会で先が長い、こういう年金制度でございますから、年金を管理する問題、それから経済が安定して進むのかインフレになるのかという場合によりまして非常に違ってくるのですね。最も警戒しなければなりませんのはインフレの問題でございますが、「保険と年金の動向」という本に、戦後のインフレの問題で反省した文章が出ておりますが、「戦後の経済社会の混乱によって年金制度が蒙った打撃は、医療保険よりも大きかった。」というようにまず述べていますね。そして年金支給が始まったわけでありますが、インフレで購買力を失っている、そればかりでなく「将来の給付に倣えての保険料の積立てを行うことも無意味となった。」ということで、戦後のインフレの問題の混乱を総括している。そういう文章がございますが、この問題で、年金制度につきましてのどこに問題があったかと思われますか。
  334. 吉原健二

    吉原政府委員 年金制度の安定的な運営ということに関しましては、やはりおっしゃるとおり、経済そのものが長期にわたって将来安定的な発展を遂げていくということが大事だと思います。そのときに、やはり一番問題はインフレということだろうと思います。それは戦争直後のインフレもございましたし、昭和四十年代のオイルショック後のあのインフレ、そういったものが年金制度に大きな影響を与えたことは事実でございますし、何といいましても、積立金の実質価値というものを大きく減殺した結果になったということは言えるかと思います。  やはり、年金制度の運営にとりましては、長期にわたる経済の安定的な運営、物価の安定といったことが大変大切なことだと思います。
  335. 梅田勝

    梅田委員 ところが、現在の年金の積立金が大蔵省の資金運用部で運用されておるわけでありますが、その運用状況を見ますと、最近は大変心配する声が出てきているわけですね。ちょっと調べますと、朝日新聞も書いていますが、「六十年度になると、国は赤字国債の借り換えが始まるため、二十兆円強の巨額な国債発行を迫られており、金融市場に過度な負担をかけないため、運用部資金の国債引き受けは、さらに増える見込みだ。」というように、非常に警戒をしておるわけでございます。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕 実際に、五十年度に国債を資金運用部の資金で四千二百億円買うております。これは、資金運用部全体のその年度におきます比率を申し上げますと、五・一%に相当する。ことしの予算におきましては三兆六千億円、全体の比率で一九%相当を買うておるわけですね。五十四年以降はこれはずっと急速にふえてきて、そして今、朝日新聞も書いておりますように非常に危機感を持ってきている。これはどういうことになりますか。厚生省は大蔵省と違うからそんなことは一々知りませんと言われるかしれませんが、これは年金制度を考える場合、将来の経済見通しはどうなっていくか、せっかく積んである積立金がどうなっていくかということで、無関心にはおれないわけです。国の政策が赤字国債をどんどん発行していく、そして、これが返済できぬということになってくると今度は借換債を考える、これがうまく銀行で引き受けてくれない場合にはもう日本銀行に引き受けをさせよう、こうなりますと、先ほど言いましたような、戦争によるあの戦後のインフレの二の轍を踏む可能性があるのですね。そういった場合に、勤労者が毎月毎月月収の中から積んでいく保険料が積立金に積まれて、それがかつて大企業に奉仕するための支出をやって借金をつくってきた、軍事費をふやすために借金してきた。そのための国債の元利償還のために、また政府が発行する国債を買うために勤労者の金が使われていくことになったらどうなるのです。そういう状況を放置するならば、まさに放漫財政のインフレ政策というものがますます激化することになるわけでありまして、私は、年金の積立金というものは、今日のようなインフレ政策を進めようとしているような大蔵省の資金運用部に預けておることが非常に危ないのじゃないかと思うのでありますが、いかがですか。
  336. 吉原健二

    吉原政府委員 必ずしもそういう御意見には賛成できないわけでございますが、先ほどから申し上げておりますように、年金積立金というのは、安全かつ有利に、しかも将来の年金の原資でございますから、そういった年金積立金の機能なり目的にできるだけふさわしい運用、資金運用部に預託する中で、できるだけそういった考え方で運用、活用していきたい、いくべきであると思っております。
  337. 梅田勝

    梅田委員 それはおかしいね。国は破産せぬから安全だというあなたのお考えがあるかもしれぬけれども、国債でしょう。国債はなるほど七・一%、利息を余計出しておる。これは有利運用の一つだ、国は破産せぬから大丈夫だ、国家的な意味もある、公共的な意味もある、安全、有利あるいは公共性という資金運用の大原則から外れてないというようにお考えかもしれぬ。しかし、国債の利息はだれが払うのですか。厚生大臣、国債の利息はだれが払うのですか。
  338. 増岡博之

    増岡国務大臣 政府でございます。
  339. 梅田勝

    梅田委員 国家予算で払うとしたら、それは結局は国民が払うということになる。そうでしょう。国債は言うまでもなく税金の先取りであり、国債をどんどん乱発するということは、将来におきまして結局増税とインフレを招くということは過去の経験じゃないですか。どうですか、これはやめるべきじゃないですか。
  340. 増岡博之

    増岡国務大臣 国債発行は必ずしもそのことのみに通ずるわけではございませんで、その発行によって生じた資金によって、国民生活がかなりの分野上昇するとかあるいは停滞を招くことを防いできた、その有効な面にも着目しなければならないと思います。ただし、それでも限度というものがありますから、政府においてもいろいろそのことについて対策を講じておるところでございます。
  341. 梅田勝

    梅田委員 昭和四十年の補正予算を組んだときに初めて特例公債を出した。あのときの議論を思い起こしてみなさいよ。あのときは政府は、戦争中の経験からして赤字公債というものを絶対発行してはならぬ、これは軽々にやるべきことではないが、今回だけはということでお願いしてあれをやったのです、我々は反対しましたが。しかし、これはサラ金財政と一緒で、一遍手をつけたらもう何ぼでも行く。最初は二千億。今はもう膨大じゃないですか。しかも、その国債の返済ができないというので借りかえをやる、その借りかえの国債を年金の基金で買わせている。五年以上のあれで運用するわけですから、長期運用ですから、積み立てがだんだん取り崩されてなくなる、最低一年ぐらいでなくなると言われているけれども、五年や十年の長期の国債を買うていたらどないなりますのや。積立金を引き続きふやし続けるという政策をとらなければやっていけないじゃないですか。昭和六十一年には積立金が、この資料にもございますように、六十兆円を超えていきますね。年々ふえ続けますね。しかし、実質価格で言えば、昭和七十年以降は減っていくということになっている。だから多くの方が、もう積立金の管理運用については有効にやってもらいたいという心配の声がいっぱい出てきているわけです。今の運用部のあり方については厚生省としてどうするか、はっきり言うべきじゃないですか。あなたは最前、まあ努力するようなことは言われました。しかし、ここは重大な問題になっているという点で、きっぱりと自主管理といいますか民主的な管理というか、そういう方向に切りかえていくということについて意見を出してください。見解を伺います。
  342. 増岡博之

    増岡国務大臣 厚生年金の積立金は、御承知のように七・一%で資金運用部に使っていただいておるわけでございます。これが高ければ高いほどよろしいという御意見もあるかもしれません。しかし、現在の市中の長期金利あるいは長期プライムレート等を考えますと、ほぼその中間にあると思われるわけでございます。  私どもといたしましては、もっと有利な方策がないかということで模索をしておりますし、大蔵省とも引き続き協議をしてまいりたいと思います。
  343. 梅田勝

    梅田委員 使われ方が今非常に危険な方向に進んでおりますので、厚生年金のことですから、私はもっと労働者のために使っていく、あるいは高齢者の施設に使っていくという方向に使い方を変えていくべきだと思うのですよ。  例えば、高齢者対策のために私は還元融資のあり方というものを考えていきたいと思うのでありますが、昭和五十九年の還元融資は一兆七千億円でございますね。どうですか。
  344. 吉原健二

    吉原政府委員 一兆七千六百七十四億円でございます。
  345. 梅田勝

    梅田委員 ところが、この計画によりますと、年金福祉事業団、大規模年金保養基地、住宅、療養施設、あるいは地方公共団体に特別地方債として割り当てて、住宅とか病院あるいは一般廃棄物処理、簡易水道と、いろいろな使い方がなされているわけでありますけれども、大体、住宅とか病院とかお年寄りの施設などは、確かに今勤労者が使うということもございますが、国の一般的な施策としてもやらなければならぬ問題でもあります。厚生年金の場合は勤労者が一生懸命積んだわけでありますから、国民年金も含めまして、老齢になった場合の我々の施設に積立金を有利に使ってほしい、老齢の所得保障とともに当然そういう施設を十分にやってほしい。特別養護老人施設なんか非常に少ないわけですよ。あっちこっちにつくってほしい、ポストの数ほど老人ホームをつくれという声もあるわけですから、そういう声に十分こたえていく必要があるだろうと思うのです。  この年金の積立金の中から利子補給もしておりますね、年金福祉事業団施設事業借入金利息及び貸付事業利子補給金という形で、五十九年の予算におきましても約二百四十億ほど出していますね。いかがですか。
  346. 吉原健二

    吉原政府委員 厚年特会から利子補給をいたしております。
  347. 梅田勝

    梅田委員 特別会計の方から利子補給をしておるわけですよ。いわば自分たちが積み立てた中から利子補給までしてやらせている。そういう貴重なお金でありますから、本当にお年寄りが求めているようなところに使うべきであって、幾ら公共施設といいましても、下水道だとか一般廃棄物処理というところまで積立金が使われていくということは、それはもともと政府がやらなければならぬ仕事、地方公共団体がやる仕事であります。資金があり余るほどあれば別でありますけれども老人ホームなどが少ないという声が強いわけでありますから、そういうところに重点的に配置するようにやるべきだと思うのでありますが、いかがですか。
  348. 吉原健二

    吉原政府委員 どうも、おっしゃることがよく理解できませんので、お答えしかねております。
  349. 梅田勝

    梅田委員 いや、私の言っているのは、還元融資計画が非常に多岐にわたっておりますが、今最も勤労者が求めている老後施設などに重点的に使うように、運用方法を考えるべきじゃないかということを言っているのです。今そうはなっておらぬということを申し上げておるのです。いかがですか。
  350. 吉原健二

    吉原政府委員 保険料を納めておられる現役の勤労者の方々、一般の国民の方々、年金受給者たる高齢者の方々、そういった方々の福祉のために、一番適切な方法で今の還元融資は使われていると私どもは思っております。
  351. 梅田勝

    梅田委員 先ほど全国民的合意と言ったからそういうぐあいに言い返したか知らぬけれども、確かに掛金を払っている者は現役労働者だし、そして将来は給付を受ける老人になる。しかし、全体を見渡して、高齢者の施設というのは非常に弱い。そこへもっと重点的にやるべきじゃないかという声が強いから、そういう方向に使い方を考えるべきじゃないかということですよ。運用部資金全体を見ると国債なんかを買っておる、こういうような問題は考えるべきじゃないかということを申し上げているのですよ。積立金全体の使い方です。還元融資はこれだけでありますけれども、積立金はこれだけじゃないですから。ことしは何ぼ回していますか。三兆六千億ほど運用部に回しているのでしょう。どうですか。
  352. 吉原健二

    吉原政府委員 金額はおっしゃるとおりでございますが、還元融資の使い方につきましては、高齢者に対する福祉施設ももちろんでございますが、現実には住宅貸し付けに対する要望が非常に大きいということもありまして、住宅資金への貸し付けが金額的に非常に大きくなっているということでございます。高齢者に対する福祉施設につきましては、還元融資の資金以外にも、一般会計からの負担で相当量の整備を年々図ってきているわけでございます。
  353. 梅田勝

    梅田委員 そうしたら、もうちょっと細かく聞きますけれども老人ホームなどに対する融資、これは年金福祉事業団、社会福祉事業振興会を通じて融資していますね。老人ホームに関してはどれぐらいの金額になりますか。
  354. 吉原健二

    吉原政府委員 還元融資において各種老人ホームに対する融資を行っておりますけれども、一つは地方公共団体を通じての特別地方債、一つは社会福祉事業振興会、一つが年金福祉事業団でございますが、これらの昭和五十八年度における各種老人ホームヘの融資金額の合計は百六十三億でございます。五十八年度の還元融資計画額に対する割合は一%でございます。それから、各種老人ホームを含めまして社会福祉施設について見ますと、還元融資の中では四%ということでございます。こういった老人ホームに対する公的な資金手当てとしては、還元融資よりもむしろ一般会計での手当てというものが非常に大きいわけでございます。
  355. 梅田勝

    梅田委員 年金の積立金の関係からいったらわずか一%ということでしょう。お年寄りは介護施設つきの特別製の住宅を望んでおられるわけですが、なかなかそういう住宅はないわけです。だから、老人ホームが欲しいという声が強いわけですよ。今や国債にそんなに使うような時代になっておるのだから、それはもうちょっと規制して、そして、本当に切実な声として出ているお年寄りの施設に対して、一%じゃなしに、もっともっと手当てをしていくということを年金制度を考える場合には当然考えなければいかぬと私は思うのですよ。大臣、いかがですか。
  356. 増岡博之

    増岡国務大臣 年金の将来を考えますと、やはり基本的には有利な運用ということを念頭から離すわけにはいかないと思います。したがいまして、その中でも、そういう保険料を払っておられる方とか年金を受け取っておられる方のことも配慮をしなければならぬというのが今申し上げたパーセンテージでございまして、先生のおっしゃるような施策につきましては、そういう有利な運用を求める必要のない資金である一般会計その他から支払われるべき性質のものではないかというふうに思います。
  357. 梅田勝

    梅田委員 一般会計、一般会計とあなたは言うけれども、来年は、地方自治体に対する国の補助率が二分の一を超えるものについては全部一割一律カット、生活保護費もカットするし、それから今言っている老人施設、そういうものをどんどんカットしようとしているのじゃないですか。国の方がそういう施設に対する予算を今後減らしていこうということを考えているわけです。だから、今のところ年金の積立金がだんだんふえていっているのだから、もっとそういうところに手厚く考えていくべきだ。もちろん一般会計からそういう施設は手当てをしていく、こういう施策をとらなければいかぬと思いますよ、これは前提ですが。しかし、年金年金として積立金があるのだから、これをどのように有効に使っていくかということは全国民が関心を抱いている問題です。とりわけその中で今一番施策が弱いと思われているところに対して手当てをする、これは当然じゃないですか。  そこで、積立金の資金が十分に労働者の声、全体の声を反映できるような民主的な運営機構というものを、制度全体を変革しようと考えておられるのでありますから、ぜひこの際考えていただきたいのであります。  私どもの提言の中におきましても、「年金制度を民主的に管理、運営するため、被保険者代表が過半数をしめる労働者年金管理運営委員会国民年金管理運営委員会を設けて、年金積立金の管理と運用のあり方を国民生活と福祉の向上に役立つよう抜本的にあらためる。」ということを要求しているのですが、いかがでございましょうか。
  358. 吉原健二

    吉原政府委員 せっかくの御提案でございますけれども、そういった形での運用の組織といいますか考え方というのは、実現はなかなか難しいのじゃないかと思います。
  359. 梅田勝

    梅田委員 大臣、なぜできないのですか。これはやろうと思えばできるじゃないですか。
  360. 吉原健二

    吉原政府委員 そういった御提案のような形での考え方の実現性というのは、なかなか難しいように思います。
  361. 梅田勝

    梅田委員 私は、なぜできないかという理由を聞いているのです。あなたは年金局長だから、局長の立場としてもうそれ以上は言えないというのであれば、大臣が政治家として、基金の運用、管理についてこういう機構を考えたらどうだという提案に対して、どういう理由でできないのか言ってくださいよ。
  362. 増岡博之

    増岡国務大臣 年金の積立金のみならず、ほかのいろいろな資金につきましてもこれまで適切な方法で運営されてきておると思いますので、それを今直ちに変更する必要はないと思います。
  363. 梅田勝

    梅田委員 いや、適切に運営されてないから必要なところにわずかしかいってないのです。国債をいっぱい買って、将来そっちばかり買うようになるのです。そういうことではよくならぬということを繰り返し申し上げて、そして、この問題にっきましては、必ず国民の声が反映できるような機構というものをつくっていただきたいということを強く要求しておきたいと思います。  それから、きのうも議論があったわけでありますが、二十一世紀に向けての国民の暮らしというのはどうなっていくか、国民生産というものはどうなっていくか、いろいろ議論があったわけです。そして、以前に出した厚生省の見込みというものが全然伸びというものを計算していなかったとか、いろいろ議論がありました。  産業の部門におきましてOA機器とかロボット、こういったものをどんどん導入していって、いわゆる先端技術の発展による技術革新というものによって、労働者の生産性は今後ともずっと伸び続けるだろうと私は思うのですね。そうなると資本の収益率は必ず大きくなる。労働者にはどんどんもうけた分だけの賃金を上げてくれないんだから。そして、資本は資本を蓄積して、また拡大再生産なり、いろいろなことをやり出すということで、絶えず彼らは利益を増大していっているということでありますから、今回のように、ただもう保険料をどんどん上げる、あるいは給付を切り下げるという形ではなくて、現在の労働者の年金保険におきましての労使折半方式を三対七方式、これは中小企業もございますから、その際は大企業に対しましては修正保険料で不公平は是正するというような対策を講ずれば、僕は保険財政というものは非常に大きな変化を来すと思うのです。いかがでしょうか。
  364. 吉原健二

    吉原政府委員 我が国におきましては、健康保険にしても年金制度にいたしましても、保険料の労使折半方式というのが制度発足以来とられてきた方式でございまして、既にもう国民の中に十分定着をしておりますし、理解を得られておるわけでございます。これをなぜ、今おっしゃるような趣旨で事業主の負担分を重くしなければならないか、これは理由としても必ずしも明らかでもございませんし、国民的な合意はなかなか得られないのではないかと思います。
  365. 梅田勝

    梅田委員 それはおかしいですよ。今言ったように労働者の労働生産性は高まっているんだから、そして資本の収益率が大きいというわけでありますから、当然その割合に応じて資本家はもうけを吐き出す、そして社会的に所得の再配分をやる、これは当然じゃないですか。  試みに、大蔵省が出しました資本金規模別の「厚生年金保険料負担の対売り上げ高比率」というのがございますが、との十年間は資本金一千万円以下の中小企業では確かに六割ないし七割はふえていますが、資本金十億円以上の大企業におきましては二割ないし三割しかふえていない。大企業には十分に負担能力があると見なければならぬと思うのですね。  それから、いわゆる企業年金、大企業が上積みに考えているもの、これは現実には退職金の分割払いみたいな性格もございますが、こういうものをやっております。これは本年度末におきまして約十四兆円に達するというように言われていますね。それだけの力があるわけです。  総理大臣は、何か口を開いたら民間活力の導入を盛んに言われる。なぜいわゆる民間活力導入の理論で年金財政に大資本のもうけを吐き出させないのですか。大臣、いかがですか。
  366. 増岡博之

    増岡国務大臣 先生御指摘のような、利潤が上がる場合にはその半分近くは法人税、地方税の姿で国、地方に還元されておるわけでございますから、それが国民生活の間に配分されておるものと考えてよろしいのではないかというふうに思います。
  367. 梅田勝

    梅田委員 それでもなおかつ、もうけておるのだから。民間資金がだぶつくくらいになってきて、財投の資金が足らぬというので、民間の資金を政府保証債に入れているじゃないですか。それくらいの段階になっているんでしょう。なぜ民間というか大企業が、そんなごっつい力を持つようになってきたか。  年金制度基本構想懇談会から、昭和五十四年四月十八日に報告書が出ております。「わが国年金制度の改革の方向」という報告の中におきましても、今日、大企業においては、六割がこの企業年金を採用するようになっているという段階に来ているわけでありますから、中小企業に対しましては特別の手当てを講じながら、段階的な経過もたどりながら、諸外国がやっているように比率を三、七方式にずっと変えていく。これがなぜ悪いのですか。所得の再配分は税金だけじゃないですよ。いろいろな形で行うべきだと思うのですが、どうですか。
  368. 増岡博之

    増岡国務大臣 先ほどの民間活力活用の話でありますけれども、もちろん大企業にもそれだけの余力があると思いますが、その中でも見逃すことができないのは預貯金であろうと思います。そういうものが企業自体のものであるかどうか、国民のものではないかというふうに私は思うわけでございます。したがって、そういうものの活力を引き出すということで、もちろんそういう方向で持っていかなくてはならないと思いますけれども、ただいまお尋ねの、今日税金以外のものを何かとおっしゃいましても、今日までやってきたその他の施策以外に特別なものがあるとは、私は考えられないと思います。
  369. 梅田勝

    梅田委員 今日の国家財政におきます危機的な状態というものは、大企業の横暴の結果生まれたわけですから、やはり政府が、従来の施策の誤りというものに根本的にメスを入れまして、租税の面におきましても不公平がある、それを正していく。それから年金負担の問題におきましても、この際に、――諸外国だってあるじゃないですか。一対一ばかりじゃないですよ。我が国はずっとこれで定着しておると年金局長はおっしゃるかもしらぬけれども、先進諸国は資本家の比率の方が高いんだから、そういうふうになってきているんだから、世界の趨勢に我が国も当然行くべきだと思うのです。将来の問題としても検討できませんか。
  370. 吉原健二

    吉原政府委員 我が国の場合にはなかなか難しいだろうと思います。
  371. 梅田勝

    梅田委員 時間がなくなってまいりましたが、あと一つ二つほど、(発言する者あり)用意した論点がまだ二つほど残っておりますが、まだまだあるのですよ。持ち時間が五十四分。これは制限しておること自身が問題だ。  ところで、物価スライドの問題でございますが、今回は本則に入れるということになりましたが、五%でなければならぬという理由、これはもうたびたび議論がございましたけれども、確たる根拠というのはないですね、どうです。
  372. 吉原健二

    吉原政府委員 この物価スライドの五%というのは、四十八年にこの制度が導入をされたわけでございますけれども、そのときにいろいろ御議論がございまして、審議会の御意見におきましても最終的に五%ぐらいの水準でスライドするのが適当であろう、こういう御意見になったわけでございまして、その考え方を今後とも踏襲をしていきたいということでございます。
  373. 梅田勝

    梅田委員 昭和三十六年からの消費者物価指数を調べてみますというと、三十六年を一〇〇といたしますとこの二十二年間で上昇が四三〇ということになりますが、相当上がったわけですね。ただ、対前年度比におきますというとこれはいろいろ差があるのですね。いわゆるオイルショックが出ましたときには相当な率で上がるということでありますが、この間平均をいたしますと三・八三ということになるのですよ。だから、私はもっとこれを過去の平均に、まあ上下二%か三%変動があれば改正するというように、過去の実績から考えてみてやるべきではないか。公務員の給与にっきまして毎年人勧が勧告しているように、年金制度につきましても物価スライドという以上はそのような基準でやるべきではないかということが一つ。  それから、時間がございませんのでもう一つ申し上げておきますと、五十七年度分が二・四、そしてことし五十八年度分も入れますと四・四、当然これを上げるべきだということを要求したいのでありますが、いかがですか。
  374. 吉原健二

    吉原政府委員 過去におきましても、五%の水準に満たない場合でもスライドをしてきたことがあるわけでございます。法律上の義務づけとして五%ということになっているわけでございまして、必要があるときには今までも五%以下でもスライドをしてまいりましたし、これからもそういうことは十分あり得るということでございます。
  375. 梅田勝

    梅田委員 法律で五%以内、だから二%でも三%でもやるということですね。どうですか。
  376. 吉原健二

    吉原政府委員 やることがあり得るということでございます。
  377. 梅田勝

    梅田委員 そのほかたくさん言いたいことがあるわけでございますが、冒頭申し上げましたように、本委員会におきます審議はまだ十分に尽くされてない。私どもほんまに短い時間しかやることができなかったわけであります。  委員長にお願いを申し上げておきたいわけでありますが、まだ予定したのができませんので、私の質問を後日やらせていただきますということをお願いして、ここで私の質問を終わらせていただきます。
  378. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 菅直人君。
  379. 菅直人

    ○菅委員 この国民年金法等改正案につきまして、さきの国会でも質問に立ちましたけれども、この間各党の委員の皆さんがいろいろ問題点を指摘され、その中で、特に社会民主連合として、この法案に対する要求項目をまとめて理事会の方に提出をいたしております。それに沿って、さらに幾つかの点を大臣あるいは厚生省にお尋ねをしたいと思います。  何度も議論が出ておりますけれども、今回の全体の制度改正案の中で、大変片手落ちな面があると言わざるを得ないわけであります。それは、何をおいても二階建て年金という考え方そのものは私たちも基本的には賛成でありますけれども、実際には、二階建て年金と言いながら、一階建てと二階建ての併存である。つまり、現在の国民年金の対象者である自営業者等については二階建て部分というものが存在をしていない。しかも、今回の改正案の中でもこれについての創設という方向が打ち出されていないという問題が、一番大きな欠陥だと私は考えるわけであります。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕  そういう点で、この問題は一番大きな問題ですから、ぜひ大臣お答えをいただきたいのですけれども、この自営業者等についての二階建て部分公的年金制度の創設という方向について前向きに取り組まれるつもりであるのかどうか、その点について大臣の所見を伺いたいと思います。
  380. 増岡博之

    増岡国務大臣 国民年金に二階建て部分、すなわち所得比例方式を採用してはという御意見にっきましては、もっとな点があると私ども思っておるわけでございますけれども、たびたび申し上げておりますように、所得の把握が困難であるということ、したがって所得の把握が困難なままにスタートいたしますと、国民の間に本当に公平であるという感じ、公平であることができなくなるおそれもあると思いますので、その情勢ができましたならば考慮したいというふうに考えております。
  381. 菅直人

    ○菅委員 もう一つ私は今の大臣の回答に満足ができないんですね。つまり、確かに所得把握の問題あるいはその制度の仕組み等についていろいろな問題点があることはよく理解できます。しかし、基本的に二階建て年金と言いながら、実は一階建てと二階建ての併存であるという基本構造を何とかしようとして考えていく、その中で知恵を出す、その場合にはいろいろなやり方が考えられるでしょうけれども、知恵を出すのだという方向なのか、いや、何か方向が見えるまでは仕方がないのだ、いつになるかわからないけれども、見えればやるけれども見えなければ今だって仕方がないのだ、というふうにも聞こえかねないような返答だとすれば大変残念なわけです。あえてもう一度、少なくとも方向としてそういう方向で取り組むのだ、いろいろ知恵を出してやっていくのだということなのか、知恵がなければやらなくとも仕方がないと思っているのか、その点についてあえてもう一度お聞きしたいと思います。
  382. 増岡博之

    増岡国務大臣 私は、今の所得把握状態が正常だとは思えませんから、そのことも社会全体の反省として正常化されると思いますので、私どもも前向きで検討したいと思います。
  383. 菅直人

    ○菅委員 実はこの中身そのものにも踏み込んで議論をしたいと思うわけですけれども、そこまで踏み込む十分な時間がありませんが、二階建て年金をこの部分につくる場合に、先ほど大臣も言われたように、所得あるいは所得比例といった問題を考えなければならない、そのときには、現在出されている基礎年金部分負担の問題、現在は国庫補助が三分の一ということでありますけれども、これをナショナルミニマムとして全国民に保障するということになりますと、果たして今のような基礎年金部分に対する負担割合もこれでいいのかどうか、そういうことも根本からあわせて考えていく必要があるのではないか。これは、きょうの段階では問題の指摘ということで一応申し上げておきたいと思います。  もう一点、各党の質疑の中で余りダブっていない問題について、少し突っ込んで御質問をしたいと思います。  現在、国民年金、そして今回新しく創設される基礎年金資格要件として、二十五年の資格期間というものが設定をされております。まずお聞きしたいのは、この資格期間というものを設けた趣旨、あるいは諸外国のこういう資格期間というものを設けているところがあればどの程度資格期間を設けているのか、あるいはないのか。この趣旨と諸外国の事例について、知り得る範囲でお答えをいただきたいと思います。
  384. 吉原健二

    吉原政府委員 この拠出制年金をとります場合に、やはり一定の資格期間、つまり一定期間保険料を納めるということは、これはもうどこの制度でもいわば給付要件の基本の一つ、柱の一つでございます。一定期間保険料を納めるということがいわば給付要件の一番重要な柱になっているわけでございまして、無拠出年金をとっているところでは、そういった資格期間あるいは保険料の拠出ということはないわけでございますけれども拠出制年金を建前とするところではいわば当然のこととして考えられているわけでございます。
  385. 菅直人

    ○菅委員 局長、当然、当然と言われるけれども、だからその趣旨を、当然だから当然だというのは説明にならないわけで、例えば現在でも、空期間を設けて、実質的には拠出している期間が非常に短い人も資格要件としては認めるというようなこともやっているわけで、制度的にこれを設けなれけばこの制度が成り立たないという問題があるならば、どういう趣旨なのか。  それから、あわせてお尋ねした外国の事例で、当然のことだと言われるけれども、本当にこんな長い資格要件を設けているところが主要各国であるのか、どこにあるのか。  二つの問題ですけれども、もう一度、それはどういう趣旨で設けられているのかということを国民的な立場でわかりやすくお答えいただきたい。  なぜかというと、これは大臣もぜひお聞きいただきたいのですけれども、実際の国民の感情として、実際にいろいろな相談が来るわけですよ。やはり人生の中で仕事をかわったり失業したりいろいろな場面では、必ずしも不注意というだけではない理由で払えないときもあるわけですね。後で振り返ってみたら、しまったと思ってもなかなかできないときもある。そういう中で、極端に言えばそれが二十四年十一カ月であっても一切の権利がないという、あと一カ月あれば全部の権利があるというのは、普通の常識的感覚からいってかなり違和感があるというのは自然な感情だと私は思うんですね。それをあえて当然の措置だと言われるのだったら、それが納得できるだけの趣旨があるのであればもう一度説明をいただきたいと思います。
  386. 吉原健二

    吉原政府委員 一定期間保険料を納めて、初めてその保険料の納付に見合う年金額支給する、これが拠出制年金の当然の――私が当然と言いますのは、あるいはその点に御疑問を持たれているのかもしれませんが、厚生年金にいたしましても、当初二十年という期間、二十年保険料を納めている、これはいわば本当に文字どおり当然のこととして資格期間というものが設定をされて、その二十年納めた人に対して老齢年金支給する、もちろん老齢という要件は要りますけれども、そういうことで年金制度というものは構成をされてきている。それから国民年金につきましても、やはり二十五年という長期間保険料を納めて、初めて年をとったときに、老齢になったときに年金がもらえるという仕組み、これも、私が当然と言うのがあるいは間違っているのかもしれませんけれども拠出制年金については、むしろ一定の資格期間というのは……(菅委員「理由を言ってくださいよ、当然じゃなくて理由を」と呼ぶ)理由は、やはり一定期間保険料を納めるということが拠出制年金のいわば要件として(菅委員「なぜ」と呼ぶ)なぜと言われますと大変難しいわけでございますけれども、一定期間保険料の納付というものが要件になって支給されるのが拠出制年金、こういう考え方があるわけです。一方で、そういった要件を全く問わないで年金支給するのが無拠出年金、全額税金の年金と、二つの考え方があるわけでございまして、その資格期間の長さの決め方についてはいろいろな国によっていろいろな考え方がある。非常に短いところでは三年とか五年とかいうところもあるようでございます。これは年金の種類によっていろいろ違うようでございますけれども、しかしながら、基本的に資格期間を全く問わないで出す年金の仕組みと、一定の資格期間保険料を納めることを前提にして年金を出す拠出制年金の仕組みと、年金制度には大きく分けて二つあるということなのでございます。
  387. 菅直人

    ○菅委員 これは、大臣初めこの部屋におられる皆さんで、今の局長の答弁でなるほどと思われた方がおられたら、私はぜひお聞きしたいのですけれども、当然だ、当然だということを最初から最後まで言われるだけで、なぜそうあらねばならないかということについての説明は一切ないわけですね。例えば一年でも二年でもというのは、実務的に見てもそれは私もいろいろ問題があると思います。しかし、今、局長が言われたように三年とか五年というのと二十五年というのは、これは余りにも違うわけですよ。二十五年といえば人間の人生の、二十歳以降で言えば少なくとも半分ないしは六割の期間であって、五年とか六年というのはほんの一時期そこで仕事をしていればもう十分だということですから、そういう点では二十五年というのはかなり長い期間だ。その長い期間を一年でもあるいは半年でも欠落すれば一切だめだ。これが五年分、十年分で、十年が期限であったのが九年五カ月でだめだというならば、人生の三十年、四十年の中で言えばまだ一部でしょうけれども、二十四年掛けていた人がいたとして、人生のうちの半分なり六割は掛けたけれどもちょっと足らなかったから全くゼロだというのは、やはり国民感情的に見て、ちょっと素直には受け取れないというのが自然の感情だと思うのですね。  ですから、何らかの奨励措置として、二十五年以上あるいは全期間を入るように奨励することは大いにやられるべきだし、その奨励措置として一応のめどとして二十五年というものを設けたとしても、それが欠落した場合に全くゼロ回答というのではなくて、掛金に対して、基準が若干低くなるかもしれないけれども何らかの救済をするというか、給付を行うという制度を設けるべきではないか。あるいは他のやり方としては、資格期間そのものを、先ほど言われた外国の事例のように思い切って大幅に引き下げるというふうな方向でも考えるべきではないか。この点についての所見を伺いたいと思います。
  388. 吉原健二

    吉原政府委員 拠出制年金において資格期間というものを全くなくするとか、あるいは極端に短くするということになりますと現実にどういうことが起きるかといいますと、国民年金についていいますと、四十年納めて五万円という設計にしているわけですけれども、これを例えば一年ということにしますと、その四十分の一の年金ということになるわけでございます。五年ということになりますと、四十分の五という年金になるわけでございます。年金制度の設計、考え方としまして、五年納めて五万円の四十分の五で一体年金というものはいいのだろうか。  それから、老後に対する備えとしては収入がある、国民年金の対象者には免除対象者、収入のない方もあるわけでございますけれども、一定期間収入がある限りはその収入の中から保険料を納めていただく、そして老後になって年金らしい、それなりの金額年金が受けられるようにするためには、どうしても一定の資格期間というものが必要になってくるのではないか。その資格期間を非常にかたいものと考えるかあるいは奨励的なものに考えるかというのは、確かに将来あり得る一つの考え方かもしれませんけれども、今の日本の大方の、これまでの制度の経緯もいろいろあると思いますけれども、やはり一定の資格期間納めた方に対して老齢年金を出す、あるいは障害になった場合に障害年金を出す、これはやはり今後とも採用していっていい考え方ではないか、私どもはそう思うわけでございます。
  389. 菅直人

    ○菅委員 若干平行線ですけれども、どうも考え方が、ある意味での本質的なところではそう差がないと思うのです。私も別に十年でいいと言っているのじゃない、十年掛けたらもう後は掛けなくていいと言っているのじゃない。できるだけ掛けるべきだと思っている。また、そうあるべきだとも思っているのです。ただ、中にはいろいろな事情でそれができない人があったときに、一年でも足らなかったらそれでゼロだというのは、常識的に考えて余りにもきついのではないか。二十五年という非常に長期間ですから、例えば今のようにいろいろ職業を変わる場合に、あるとき会社勤めをしていた、これは厚生年金にほぼ強制的に入る。しかし、やめて自分でいろいろ仕事を始めたりした場合になかなか手続がとれないという実感はわかるわけですね。そういう期間が十年、十五年あったとしたときに非常にきつくなってくる。そうすると、合わせてみると二十年ぐらいは入っていたけれどもだめだったという事例がある場合に、その場合のことを何とかというのを言っているのに、局長の方は、制度そのもので二十五年入らない人ばかりがなったら困るからと言われるのは、わざとなのかどうかわかりませんが、ちょっとその趣旨が違うのではないか。  この点はいろいろな機会にぜひ検討いただきたいということに加えて、もう一点だけ、もう時間がありませんけれども、別の点を申し上げておきたいと思います。  それは、今回の中で、いわゆる厚生年金から今回の基礎年金という形に移るときに、例えば十七万円のモデル計算で言えば、今までは報酬を受けていた、多くの場合御主人でしょうが、御主人が十七万円受け取る。それが今度は五万円、五万円奥さんと本人が受け取って、あと厚生年金として七万円受け取る、そういう絵が厚生省の出されているものの中にたくさんあるわけです。しかし、いろいろ議論をしてみると、例えば五歳ほど奥さんが若い場合には、その奥さんの五万円が満額受け取れるのは、御主人が六十五じゃなくて七十になって、奥さんが六十五になったときにそのスタイルになる。今の形で言えば、世帯主といいましょうか報酬を受けている本人が六十五になれば一応全額が出たわけですけれども、少なくともその期間のギャップがあるということが明らかになってきたといいましょうか、多くの議論になってきているわけです。  今、いわゆる加給金として一万五千円ということになっておりますけれども、これで計算をしてみますと、五万円に全額になった場合に厚生省の計算では六九%というふうに現役の人たちの比較で言われていますけれども、これが一万五千円しか出ない期間について計算をしてみますと五四、五%しかいかない、予想よりもかなり少ないということになると思うわけです。私どもとしては、この加給年金額について、いろいろな経過措置がありますから、経過措置に逆に合わせて少しふやしていって、せめてトータルが現役世代の六〇%程度になる程度には、最終的な形でその穴埋めをすべきじゃないか。それを逆算してみますと、最終的な形としては少なくとも三万五千円程度の加給年金額が認められるべきではないか。これは現在よりもたくさんの年金支給するというのではなくて、その期間、現在に比べれば制度的にがたんと減るものを穴埋めするという意味で、その程度のことが必要ではないかと考えて提案をしているわけですけれども、これに対する見解を伺いたいと思います。
  390. 増岡博之

    増岡国務大臣 この点につきましては、各党間でお話し合いが進んでおるように聞いておりますので、その結果を尊重いたしたいと思います。
  391. 菅直人

    ○菅委員 まだまだ本質的な問題で多くの議論が残っていると思いますけれども、きょうの質疑時間の中では、特に議論の少ない部分あるいは多い部分かもしれませんけれども、本質的な部分について絞って御質問申し上げました。これらの問題についてさらに与野党間で十分な協議をして、全国民的に合意の得られるものにするように、政府の方も大いに努力をしていただきたいということを申し上げて、私の質問をこれで終わります。
  392. 戸井田三郎

    戸井田委員長 伊吹文明君。(小沢(辰)委員「ちょっと待て、締めくくりだから総理を呼べと言っているのに何だ」と呼び、その他発言する者多し)伊吹君。伊吹君。
  393. 伊吹文明

    ○伊吹委員 この年金の改革案にっきましては、七月十二日に当委員会で審議が始まって以来、既に七回、約四十時間の審議が行われております。またこの間、公聴会、合同審査も行われました。野党の方々の質問も御意見も十分に開陳されたと思います。むしろ審議は尽くされたという感がいたします。  これまでの審議の間で既に十分明らかなように、このままでは年金はパンクいたします。つまり、後の世代に著しい負担を強いなければ、もりと率直に言うならば、払う人の税、保険料を控除した後の所得の方が、年金をもらう人たちの所得よりも低いという状態でなければ私たちは年金をもらえない、期待していた年金が消える、これでは未来に安心正夢はございません。どうしてこうなったかを解明して、早急に答えを出さなければなりません。  このような不安をもたらしたのは、おいおい質問で明らかにいたしますが、まず第一に、オイルショックによる経済成長の低下であり、給付に比べ余りにも低い保険料を約束してしまった政治全体の責任であります。(発言する者あり)例を挙げましょう。四十八年、五十一年、五十五年の改定に際し、国会給付を引き上げて保険料を引き下げ、ツケを後世代に残す修正をしてしまいました。これは事実でございます。  政治の役割は何か。今を……(「国会がやったんだ」と呼ぶ者あり)国会がいたしました。政治の役割は何でしょうか。今を的確に見詰め、苦しくとも、未来をつくるために何をするかを率直に国民に訴え、実現していくことでありましょう。(「そうだ、そのとおり」と呼ぶ者あり)といたしますならば、国民の不安を取り除くことが第一でございます。  こう考えてまいりますと、この法改正はむしろ遅きに失したと私は思います。遅きに失した政府の責任は重大だと私は思います。何とか早期に成立を図りまして、年金が消えるという国民の不安を取り除くため、一刻も早くこの法案を成立させることが、現在政治をあずかる私たちの責任であると思います。  私は、自由民主党を代表いたしまして締めくくりの質問を行うに当たり、年金の現状に対する政府の率直な見解を伺いたいと思います。(「委員長、採決、採決」と呼び、その他発言する者多し)
  394. 増岡博之

    増岡国務大臣 御指摘のとおり、それぞれ先の年金のことを考えますとまことに暗たんたる思いでございます。したがって、過去は過去のことといたしましても、今後のことを現実的に処理をしていかなければならぬということが私どもの責任であろうと思います。そういう意味で今度の年金改正案を御提案申し上げておるわけでございますので、一日も早い御可決をお願い申し上げたいと思います。
  395. 伊吹文明

    ○伊吹委員 今、日本の退職をした方、仮にどういう名前にいたしましょうか、増岡さんという名前でもいいと思いますが、年齢は六十五歳。マイホームのローンは一応すべて払い終わった。退職金で清算を済ませた。借金はございません。在職中に保険料を払い込んでおります厚生年金と奥さんの国民年金で暮らしている。厚生年金が約十五万円程度ある。奥さんの国民年金が約三万円だ。これは悠々自適というには心もとないわけですが、つつましやかに暮らすには十分な金額でございましょう。そして、四十八年の改定で物価スライドということも決まっておりますから、老後は不安がない。忙しく働いていたときに握れなかった絵筆でもとってゆっくり老後を送りたい、これが平均的な日本の退職者の姿だろうと私は思います。しかしながら、このレベルがずっと維持されていけば、これは世界に冠たる日本年金制度ということになるわけでございますが、このままでは年金はパンクしてしまうという状態になっていることも事実でございます。どうしてこのような状態になったのか、その原因について御答弁をお願いいたしたいと思います。
  396. 吉原健二

    吉原政府委員 今の年金制度は、御案内のように人生五十年あるいは六十年時代につくられた制度でございまして、給付要件あるいは年金額、すべてそういった前提のもとで設計をされていたわけでございます。  ところが、その後、平均寿命の延長でありますとか、あるいは人口構造の高齢化でありますとか、あるいは産業構造なり就業構造の変化、そういった社会経済情勢の変化が大変進んでまいりました。そういった中で、現在の年金制度の仕組みといいますか給付の設計というものがそぐわなくなってきたということがございますし、今まで年金に対する国の政策といたしまして、できるだけ給付水準を上げる、制度の発足がおくれたということもございますけれども、成熟化対策といいますか給付の方をできるだけ早く上げる、負担との関係を考えずに実は上げてきた、そういったことも今日の年金制度の問題を引き起こした原因であろうと私どもは思っております。
  397. 伊吹文明

    ○伊吹委員 今、年金局長から御答弁があったように、給付負担の関係というものは、厚生年金国民年金を考えていく上で十分私たちは考えないといけない。安易に給付だけを引き上げて負担をなおざりにするということのツケが今来ていると私は思います。  これははっきり言えば、保険には二つの方法がある。一つは賦課方式と言われる方式でございます。これは言うならば税金で負担を取る、あるいはまた大家族の相互扶助のようなものですね。一方、積立方式というのは、貯金といいますか保険料というようなものでございましょう。そして、必要な保険料を取らずに給付だけを約束してしまった。私はこれが非常に大きな原因だと思うのですが、率直に言って、これはどうしてこういうことになったのですか。(発言する者あり)
  398. 吉原健二

    吉原政府委員 いろいろあると思いますけれども年金制度が成熟するためには、年金に対する国民の理解というものが必要でございます。特に、保険料を納めていただくためにはある程度給付というものが。実際に受給者が出て、年金の果たす役割というものを国民に御理解いただかないと、なかなか保険料というものは取れないというようなことがあるわけでございます。そういったことで、できるだけ早く給付の中身を上げていく、水準を上げていく。保険料の方は、当面はそれだけの財源が必要でないわけでございますから、受給者が非常に少ない、保険料を払う人が多いという人口構成の中では、当面の必要な保険料は少なくて済む。そういったこともあるものですから、給付水準にばかり少し目をとられまして、保険料負担との関係についてはだんだん後回しにされてきたというようなことがあったのではないかと思います。(小沢(辰)委員「静かにしろよ。十時から今まで、我が党は野党の質問を全部黙って聞いていたんだ」と呼び、その他発言する者多し)
  399. 伊吹文明

    ○伊吹委員 今の御答弁について伺いたいのですが、やや給付の方を考え過ぎた。そうすると将来パンクをするということは明らかなわけですね。その場合に、その当時は、政府としてはどういう方策でそれを埋めようと考えておられたのですか。
  400. 吉原健二

    吉原政府委員 将来についてそこまで深く十分考えていたかどうかについては、なお反省をすべき点があると思います。やはり今までのようなやり方ではいけない、現行制度のままではどうにも将来大変心配があるということを考え始めましたのが昭和五十年代の初めでございまして、それから、現行年金制度の将来のあり方につきまして各方面の御意見も聞きながら検討してきたわけでございます。
  401. 伊吹文明

    ○伊吹委員 私たち日本には二つの年金と六つの共済年金があって、そのもとで私たちは老後の保障を与えられておるわけですが、その中で厚生年金国民年金、これは九割を占めておることは明らかでございます。  そういたしますと、今のお話で、現在の制度のままにしておけばどうなるかということを、厚生省厚生省として試算をしておられますね。私の手元に来ておる資料では、現在の保険の料率は一〇・六%だ、だけれども、このままの制度でこのままの給付をしていくためには、昭和七十年には一六・〇、八十年には一九・六だ、八十五年にはなんと三〇・六%だ、こういう計算が出ておる。さらに、国民負担という意味で言えばこれ以外に税負担がありますね。そうなると、率直に言えば、この保険料とそして税金を払った後の可処分所得、将来に払う人の可処分所得と年金を受給する人のもらう年金給付額との間にむしろ逆転現象が生じてくるんじゃないか、これがヨーロッパなどでいろいろ困った問題だと言われておる。率直に言うならば、私は、今大変高い保険料を払っておったわけですけれども、将来私の保険、厚生年金が消えちゃうということすらあるわけですね。今私が申し上げた、保険料を払う人の可処分所得とそして保険料受給者の所得と、この間の関係を、厚生省の八十五年には三〇・六%だと言っておられる時点でどのように考えておられるのか、試算があったら教えてください。
  402. 吉原健二

    吉原政府委員 私ども、この年金改正案の前提となる試算といたしましては、現状のままですと年金額が四十年納付の場合に大体二十一万円程度になる、平均賃金に対して八○%を超えるようなことになってしまう。ところが、現役の勤労者の方の手取り額はそのときにどうなっているだろうかということを推計いたしますと、恐らく二割以上の租税負担なり社会保険料負担があるのではないかということになりますと、完全に手取りと手取り、年金には原則として保険料はかからないということになっておりますので、手取りと手取りで比較いたしますと、二人世帯の老後の年金額の方が四人世帯の働いている方の手取り額よりも高くなってしまうというようなことになるのではないか、それが大変問題ではないかというふうに思います。
  403. 伊吹文明

    ○伊吹委員 これは大臣、重大な問題なんですよ。こういうことになりますと勤労意欲というものは絶対なくなる。自由社会の本当のいいところは、みずから額に汗をして頑張れば何とかなるということなんですよ。頑張った途端にそれがみんな持っていかれちゃうというのじゃ、これはいけないですね。これをやはり直さないといけない。この現状について、政治家としての大臣の御意見をちょっと伺いたい。
  404. 増岡博之

    増岡国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、日本民族が若々しく生きていくためには、そのようなことが絶対にあってはならないと思います。  また、私、最近地方議会の議員から聞いた話でありますけれども、スウェーデンヘ最近行きまして社会保障制度のことを尋ねましたら、スウェーデンは完全に失敗したんだ、日本はそのまねをするのか、その人がそう言ったという話も聞いております。
  405. 伊吹文明

    ○伊吹委員 そういたしますと、今の問題は、支払い者とそして給付を受けている人の関係について伺ったんだけれども、実際に私たちは、賦課方式とそして積立方式とがあるが、積立方式であれば将来の給付については自分が完全に積み立てている。しかし、厚生省の今のお話を伺っていると、これは積立方式じゃなくて完全な賦課方式をとっておられる。賦課方式というのは、将来の世代が払ってくれるかどうかわからないけれども、ともかくそれを後の世代に回しておいて今だけいい顔をしよう、こういう制度なんですね、極端なことを言うと。これは私、非常に問題だと思うのですよ。  私が試算をしてみますと、厚生年金国民年金共済年金合わせて約四百五十兆円、この金額が後の世代に、払ってくれるかどうかわからないけれども、今約束だけしておいて、財源は子供や孫の時代に渡しておくよという金額だと思うのですが、この金額は私は大変なことだと思う。これはどうですか。
  406. 吉原健二

    吉原政府委員 年金財政方式、積立方式と賦課方式があるわけでございますが、我が国の年金制度の場合にも積立方式で発足をしてきたわけでございます。ところが、どこの国でも同じでございますけれども公的年金というものは、実質価値の保存と物価スライドあるいは賃金にスライドして上げていくというような機能を果たすためには、どうしても積立不足が生じてまいりまして、漸次実質的に、好むと好まざるとにかかわらず賦課方式的なものに移行していくということになるわけでございます。ちょうど日本年金制度はその中間的な段階に今あるわけでございますけれども、やはり基本は、いずれは完全に賦課方式に近い状態になりますけれども、現時点においては、現役の勤労者ができるだけの積み立てをしておいて、将来の後代の世代に余り過大な負担をかけないように、できるだけの努力はすべきであるというふうに思います。
  407. 伊吹文明

    ○伊吹委員 今の御答弁で政府の考えておることはよくわかるわけです。給付保険料のバランスを回復をしたい、そして基本的な年金はできるだけ公的部分できっちりと見ていきたい、必要があれば、もちろん私は必要があると思いますが、国民の税金、一般会計の繰り入れ、これは私、国庫負担という言葉は使わない方がいいと思いますが、国民の、庶民の税金による負担、これも入れていく必要があるかもわからない。今回の改正は、そういう意味で私は非常に高く評価をしたい。一刻も早くこの改正法案を通して、将来どうなるかわからないような約束事は早くやめちゃわないといけない。そして、みんなが勤労意欲を持って、連帯感を持って生きられる自由社会を確立しなくちゃいけない。そういう意味で、今回の改正をすれば将来の負担、この関係は一応安定的に推移をすると見ていいのですか。
  408. 吉原健二

    吉原政府委員 そういうことでございます。
  409. 伊吹文明

    ○伊吹委員 そうしますと、この改革は一日も早い方がいいですね。むしろ、今までこの法案を出すのがおくれたという責任があるくらいだと私は思っています。  そういたしますと六十一年、準備期間は大丈夫ですか。
  410. 吉原健二

    吉原政府委員 今通していただければ何とか間に合うようになると思います。
  411. 伊吹文明

    ○伊吹委員 私は、今のいろいろなやりとりで明らかだと思うのですが、おくれればおくれるほど傷口を大きくする問題だと思います。共倒れをしてしまって年金そのものがパンクをすれば、年金に頼らなくてもいい金持ちはいいですよ、けれども一般の人たちは、平均的なサラリーマンはそれでは困るので、これははっきりしていただかなくては庶民感情としては困る。ですから、私ども力を合わせて、一刻も早くこの法案を通したい、こう思います。  そして、もう一つ、私は今回の法案について大変いいと思っておる点があるのですが、従来の厚生年金は一定の定率補助、給付額の二〇%定率補助をしていましたね。そうすると、年金受給者は、受給額というのはやめたときの給料の何割という形で出してもらう。そういたしますと、高い給料をもらっていた人は、定率ですから、国民の、庶民の税金をたくさんもらうことになる。これは非常に不合理な制度であると私は思っている。今回この制度をやめておられますが、その理由は何ですか。
  412. 吉原健二

    吉原政府委員 まさしく、今の年金制度に対する国庫負担のあり方というものが、高額の年金をもらう人については高額の国庫負担がつく、こういう仕組みになっているわけでございますし、また厚生年金国民年金、各種の共済制度は皆その国庫負担割合や仕方が違うわけでございます。これではやはり今後の年金制度のあり方を考えます場合にいけないということで、今度、各制度を通じて共通につくりました基礎年金部分に国の負担、税金による負担というものは集中をして、公平化を図ったわけでございます。
  413. 伊吹文明

    ○伊吹委員 そして、この法案の中に年金の二%の物価スライドがございますが、同時に障害福祉年金制度があります。これは現在、一級の障害者について四万九千二百円だったと思いますが手取りがある。これを八万二千五百円に引き上げておられますね。本当の意味の福祉というものは、働ける者は額に汗をして働く、しかしどうしても働けない人、そして体の不自由な人、お気の毒な方にはうんと手厚い福祉の手を差し伸べる、これが私は本来の福祉のあり方だと思います。  そういう意味からいきますと、この障害福祉年金の改定は、私は本来の福祉のあり方に極めて沿ったものだと思いますが、厚生大臣、ひとつ政治家として、このあたり、将来さらに必要な部分についてはもっと手厚く福祉の手を差し伸べていくということを、日本の他国に誇るべき厚生省の福祉政策の基本にしていただきたいと思うのです。ひとつ御答弁をお願いいたします。
  414. 増岡博之

    増岡国務大臣 年金制度がこの改正によって安定するわけでございますから、一日も早くというよりも、一時間も早く御可決いただきたいと思うわけでございます。その暁には、おっしゃるような施策は十分とる余裕が出てまいると思います。
  415. 伊吹文明

    ○伊吹委員 それからもう一つ、これは厚生大臣というよりも年金担当大臣というか国務大臣としてお願いをしておきたいことですが、基本的な部分は公が面倒を見ながらやっていく、これは私は当然のことだと思います。しかし、さらにその上に、私たちが少しでも老後を楽しく、そして充実したものとして送っていくためには、やはり私的な保障あるいは自助努力による保障というものを考えていく、これが自由社会としては当然の姿だ。具体的に言いますと、貯蓄を優遇する、あるいはお年寄りを自分のうちで扶養しておられる方の扶養控除というものをどう考えていくか、あるいは自分のお父さん、お母さんを日本の家族制度の中で本当に温かく、その座る場所をきっちりとつくって、そして家庭の中で温かく老後を送らせてあげるという方についての相続税あるいは相続制度を考えていく、あるいは三世代一緒に住めるような住宅政策をも考えていく、そしてまたお年寄りの生きがい対策を考えていく。これと今のきっちりと考えていただいている基礎年金とが一体になって、私は本当の意味での物と心の調和のとれた豊かな老後というものが保障されると思うのですが、このあたりのことについて国務大臣としての御見解をひとつ伺いたい。
  416. 増岡博之

    増岡国務大臣 年金を基本にしながらも、なおみずからの努力で付加を加えていくということは全く賛成でございます。そうして、おっしゃるように家族と一緒に住むこと、それからさらに、地域社会で顔見知りの人と一緒に仲よく暮らすということも、大変大事なことだというふうに私は思っております。そのためには、おっしゃるように、税制、住宅その他の施策がぜひとも必要だろうと思います。私もそのように努めてまいりたいと思います。     〔発言する者多し〕
  417. 戸井田三郎

    戸井田委員長 この際、暫時休憩をいたします。     午後八時六分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕