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薮仲委員 私は、
国土庁長官に、国土防災の見地から何点かお伺いをしたいと思うのでございます。
長官も、
国土庁に防災局ができましてから鋭意国土保全、防災、さらには
生命、財産を守るために日夜
努力していらっしゃる、その点を十分踏まえた上で問題提起をさせていただきたいと思うのでございます。
私は、
昭和五十七年にこの
委員会でちょうど長崎の集中豪雨の問題を質問させていただきました。あのとき百名を超すとうとい人命が失われたわけでございますが、土石流の恐しさというものはそこでも指摘し、その
対策については
国土庁初め
建設省、
消防庁、
関係省庁に私はお願いをいたしておきました。きょうはそのことも踏まえながら御質問させていただきます。
五十九年十二月に総務庁が都市河川に関する行政監察というものを行っております。この指摘は、私がちょうど五十七年当時に指摘したこと、それがもしも
消防庁も
建設省も本気になって取り組んだのであればある程度改善されていたのかなという思いを込めながら私は質問させていただきます。
ここで、我が国は都市への人口の集中化ということによってどうしても浸水や土石流の被害が
発生しやすい状態になっておる、特に山間部の開発が進んでおるので、土石流による被害も非常に拡大しておるということが指摘されております。こういう中で、じゃ治水
事業の
計画はどうかといいますと、大臣も御
承知のように、治水
計画の五次五計、最終年度は
昭和五十六年度、治水の
事業の達成率は三八%、また土石流の
整備は五次五計でどこまでいっているかといいますと、土砂害
対策施設の
整備率は二一%、これは非常に低いわけであります。さらに、それが六次の
計画で作業が進められていきましても、
昭和六十一年度達成時で大体四七%と推測されておりますし、土石流
対策では三一%、全体の目標の三割程度しか進まないだろう、こういう点が指摘されているわけでございます。
このような
状況の中で、どうやったら浸水もしくは土石流の被害というものを最小限に食いとめるか。あのときちょうど
国土庁長官は松野さんでした。
消防庁長官は砂子田さんでした。
消防庁は地域防災
計画を所掌している官庁であるけれども、地域防災
計画にはいろいろ書いてあっても実際に人が死んではしようがないだろう、人命を守れるような地域防災
計画に見直しなさいということを私指摘しました。松野長官は、
関係省庁と
協議をして、少なくとも現在のような治水
対策の
進捗率からいくとやはり住民に対する
生命の安全を確保するためにどうしたらいいかを鋭意研究し、
対策を立てたいと申されたし、
消防庁長官もそういう話でございました。きょうはその
会議録も私は持っておるわけでございますから後ほど読み上げたいと思いますが、何が大事かということがここに指摘されております。「浸水が予想される区域、土石流危険渓流及び土石流の危険が予想される区域についての情報を、
関係行政機関及び住民に提供することによって
関係行政機関及び住民が」水害を防止するための
対策を行うことができるであろう、こういう指摘がなされているわけでございます。あのとき私が指摘したのは、土石流の
発生の要因は多岐にわたっておって、例えば雨という一つのファクターだけで結論は出せません、過去において山間部、源流の地域がどうであるかといういろいろな条件を加味しながら土石流の原因究明はしなければならぬだろう、でも一つの情報あるいは条件を住民にわかりやすく提供すれば人命を損なうことはないのではないかということで、そのマニュアルをつくってほしい、研究してほしい、技術的に非常に困難であるかもしれないけれどもやるべきだということを私はお願いしたのです。
ところが、この総務庁の指摘、私がきょうなぜ取り上げたかといいますと、
災害対策基本法の四十二条には
市町村で地域防災
計画を作成することが義務づけられております。そこの中で、浸水が予想される区域あるいは土石流危険渓流だけではなくて、土石流の危険が予想される区域を地域防災
計画の中に組み込んでおくことは必要ですよという指摘がなされておりますが、これはまさに私もそのとおりだと思うし、私が地域防災
計画を見直しなさいと言ったのはこういうことなんです。
ところが、現状はどうかといいますと、ここにありますように、「浸水が予想される区域及び土石流の危険が予想される区域の土地利用について、」きちっと情報提供が行われているのは土石流危険渓流だけてあります。なぜ徹底できないかというと、「
市町村等の
関係行政機関が地域防災
計画への組込み、
災害危険区域の指定あるいは住民への周知を行おうとしても、河川
管理者又は砂防担当部局でなければ浸水が予想される区域、土石流危険渓流及び土石流の危険が予想される区域を把握することが困難である」、いわゆる
国土庁あるいは
建設省の
関係省庁が持っているすぐれた資料を提供されておらないから地域防災
計画に組み込めないのです、また住民にも周知徹底できないのです、情報の提供が
災害を防止する上で非常に大事ですよということがここで指摘されているのです。
もう少しいきますと、ならば土石流あるいは浸水を防止するためにどういうことが必要かということが最終的に指摘されてくるわけでございますが、その前にこういうことが書いてあるのです。浸水が予想される区域について、その
状況を的確に把握するとともに、把握した情報をまず行政機関に提供しなさい、また土石流の危険渓流については、地域防災
計画の中に組み込ませなさい、また土石流の危険を発見するためにそのメカニズムについて研究しなさい等々、重要な指摘がなされているわけでございますけれども、これを読んでみますと、実際にはその指摘が非常におくれておるわけでございます。
これはこうなっておるのですよ。まず、浸水の方からいきますと、「水害を防止するための
対策の現状」「
市町村地域防災
計画への浸水が予想される区域等の組込み
状況」、これについては、
建設省が時間雨量三十ミリ、五十ミリ、七十ミリの浸水予想区域の
調査を実施しております。ところが、その成果について
関係行政機関への情報提供は行われておりません。ですから、浸水区域の情報は
建設省は持っていらっしゃる、でも行政機関に情報を提供しておらぬのです。ですから、地域防災
計画に組み込まれない。「したがって、これらの浸水予想区域を地域防災
計画に組込んでいるところはない。」となっているのですよ。組み込んでいるところは一つもないというのです。市がその必要性から独自に把握した浸水予想区域を地域防災
計画に組み込んでおるところは、
調査した二十市の中で四市だけです。これは自分のところで予想して組み込んでいるわけです。
建設省の持っておるもっとすぐれたデータをもとにして組み込んでおるわけじゃないわけです。
ですから、私はきょう何を言いたいかと言いますと、
国土庁は防災局という立派な
調整官庁があるわけです。この防災というのは、単に
建設省が持っておる資料だけではないと思うのです。気象庁の持っておる雨量の状態あるいは台風の進路、あるいは環境庁の持っておる植生の状態であるとか、各
省庁がそれなりにみずからの
省庁ですぐれた資料を持っておるわけです。それを防災の観点から
国土庁がきちっと整理、系統立てて組み合わせて、どうしたらば被害を最小限に食いとめられるかということをやっていただきたいので私はこの質問をしておるわけなんです。ここにこう書いてあるのですよ。土石流危険渓流が市街化区域内に存在する
調査した二十市について見ると、地域防災
計画に組み込んでおるのは二十市のうち二市だけです、一部を組み込んでいるのは六市ですと。ほとんど危険渓流も地域防災
計画の中に組み込まれていないのですよ。私があの長崎
災害のときに
国土庁長官、
国土庁、そして
消防庁にお願いをしておいたのに、この
答弁を見ると、本気になって
関係省庁とやる、こう公式の場でお約束した。砂子田長官もこういうことをおっしゃっているのですよ。「地域防災
計画というのをやはり実態に合ったような見直しをしていくということがまず非常に大事だと思っております。しかも、これは厳しく見直しをしなければならぬだろう。さらには、避難体制をどうするか。いま
お話がありましたように、どういう点でだれが判断をしていくかということも大変大事ですし、住民自身もやはり判断ができるような体制を整え」、いわゆる自主防災が必要であるということを言っているのです。
それで、住民の
生命を守るために、防災
計画に関するそういう避難のマニュアルというものをもしも
国土庁が
中心になってやるのならば
消防庁も一緒になってやりますと言って、地域防災
計画を見直すと
消防庁もお約束したし、松野
国土庁長官も、この人命尊重の立場から安全な避難の手引き、マニュアルというものが必要であるということをお認めになっているのです。きょうは時間がありませんから全部読みませんけれども。
私は長官にお願いしたい。防災局をつくられた。ならば、こう総務庁などから指摘されるまでもなく、
建設省、
国土庁というものはこういう防災のプロであり、林野庁だってプロです。私は、この指摘を読んでみてなるほどと思うけれども、当然やっておかなければならないことが進んでいなかったという点で、私もこの当該
委員会の
委員として、反省を込めながら大臣にお願いしているわけです。こういう住民の不安をなくすのが我々の立場であり、行政の上では長官の大きな責任であろうかと思います。私は、そういう
意味合いにおいて、この地域防災
計画に土石流であるとか浸水危険区域が組み込まれていないとか、こういうことだけではないと思うのです。もっと、気象庁の持っていらっしゃる
津波の情報であるとかあるいは工業技術院が持っていらっしゃる活断層であるとか、それぞれの
省庁はすぐれた資料を持っております。それをもしも防災局できちんとした形で整理なされば、あの工業技術院が持っていらっしゃる活断層の資料も生きるでありましょうし、環境庁の持っている植生図だって生きると思うのです。どういうところにどういう植生をすれば山崩れやあるいはがけ崩れが防げるかということもあるいは立体的に究明ができるかもしれません。
そういう
意味合いを込めて、きょうは時間がないので一方的に
お話しをしましたけれども、大臣、今私が
関係省庁にどういう資料を持っているかをちょっと質問しますから、聞いていていただきたい。やはり日本の国の
関係省庁はすぐれた資料を持っていらっしゃる。それを
国土庁が有効適切に住民に提供できるように整理してやることがどれほど国土保全の立場から、人命尊重の上から大事かということです。
各
省庁、自分のところで防災上からどういう資料を集めていらっしゃるか、簡単に言っていただきたいのですが、気象庁言ってください。