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宮間参考人 千葉県
市長会の
会長を仰せつかっておりまする
松戸市長の
宮間満寿雄でございます。
松戸市は、
投票価値の最も不平等な
千葉県四区に属する
人口急増
都市でございます。
昭和五十八年十二月十八日に執行されました
衆議院議員選挙につきまして、
千葉県第一区及び
千葉県第四区の化民が、当該
選挙は
投票価値の平等を求める憲法の要請に反しているので無効とするよう出訴いたしました。御案内のとおりでありますが、既に御承知のとおり七月十七日、
最高裁判所大法廷
判決が下されたところであります。これによりますと、
選挙そのものは事情
判決の法理により無効とはされませんでしたが、当時の衆議院
議員定数配分規定は
違憲とされております。
私は、本日、この席で
意見等を述べる機会を与えられましたので、まず
千葉県の
人口動態、
現状等について申し上げたいと存じます。
まず、
千葉県の
人口でございますが、
昭和四十年代は、いわゆる高度成長期にあって
都市及びその周辺への
人口の集中化が見られたところでありまして、その傾向は
東京都に隣接する
地域が特に顕著でありました。四十年代後半の県の
人口は、四十五年国勢
調査人口の三百二十六万六千六百二十四人から五十年国勢
調査人口四百十四万九千百四十七人と二三・二四%
増加しております。これを
千葉県第一区と四区で比較してみたいと存じます。なお、四十五年当時は現行の
千葉県第四区は存在しておりませんでしたので、便宜上現行の
千葉県第一区と四区の
地域の
人口で置きかえてみますと、
千葉県第一区は、四十五年百十二万一千九百四人から五十年百四十九万四千九百二十七人と三三・二五%増、
千葉県第四区は、四十五年九十三万二千八百七十四人から五十年百二十三万五千五百三十四人と三二・四四%増となっておりまして、
人口集中の激しい
都市部を区域に持つ第一区及び第四区の伸びが県平均二三・二四%を大きく上回っております。
次に、五十年代前半について見ますと、県
人口は、五十年国勢
調査人口四百十四万九千百四十七人から五十五年四百七十三万五千四百二十四人と、四十年代後半には及びませんでしたが一四・一%の
増加となっております。このうち、
千葉県第一区と第四区がどうなっているかと申しますと、第一区は、五十年百四十九万四千九百二十七人から五十五年百六十八万四千九十八人と一二・六五%増、第四区は、五十年百二十三万五千五百三十四人から五十五年百四十九万九千二百九十人と二一・三五%増となっておりまして、第一区の
人口増加率は県全体の
増加率をやや下回るものの、第四区は二〇%台という高い
増加率を維持しています。
この傾向は、五十年代後半においても継続しております。六十年
国調人口はまだデータがありませんので
住民基本台帳人口で比較してみますと、県全体の五十五年三月末の
住民基本台帳人口は四百六十七万二千百四十七人でしたが、六十年三月末には五百九万二千二百十七人となり、八・九九%
増加しております。第一区は、五十五年三月末百六十五万一千四百十一人から六十年三月末百七十六万二千七百三十八人と六・七四%増、第四区は、五十五年三月末百四十五万九千三百八十二人から六十年三月末百六十四万八千五百二人と一二・九六%増となっております。
五年間のスパンで見た
人口動態は以上のとおりですが、直近の数値として五十九年三月末と六十年三月末の
住民基本台帳人口を比較してみますと、県全体で五百二万五千十五人から五百九万二千二百十七人と一・三四%増、第一区で百七十四万七千七百六人から百七十六万二千七百三十八人と〇・八六%増、第四区では百六十一万六千二百八十二人から百六十四万八千五百二人と一・九九%増となっております。ちなみに、同時期の都道府県別人旧動態を見ますと、
増加人口は九万三千七百二十五人増の
神奈川県以下
埼玉、
東京、
千葉と続き、
増加率では一・四四%増の沖縄県以下
千葉、
神奈川、
埼玉と続いておりまして、平均年齢が若く、自然
増加の
割合が高い沖縄を除きますと、いずれも
首都圏近郊が上位を占めているところであります。視点を変えて
東京都庁中心五十キロ圏の対前年比
人口を見ますと、
千葉県は一・五%増となっておりまして、
千葉県第一区、第四区を含む
地域が高い
増加率であることがわかります。
次に、
千葉県の
選挙区
定数ですが、
昭和五十年の
公職選挙法の
改正により、従前の
千葉県一区が第一区と第四区に分区されたところですが、その後は変わっておりません。この
定数のもとでの
議員一人
当たり人口を見ますと、
全国で一番高い
千葉県第四区は、五十年国調では四十一万一千八百四十五人、五十五年国調では四十九万九千七百六十三人であり、
全国最低の
兵庫県第五区に比較し、五十年で三・七二倍、五十五年で四・五四倍の
格差となっております。
格差の拡大は続いており、本年三月末の
住民基本台帳人口で比較しますと、
千葉県第四区は四・九一倍、また第一区でも三・九四倍の
格差となっております。
ちなみに、
千葉県第四区の
議員一人
当たり人口は、五十年国調の四十一万一千八百四十五人から六十年三月末
住民基本台帳人口五十四万九千五百一人となり、十三万七千六百五十六人もふえております。この
増加人口分が、
兵庫県第五区の
昭和六十年三月末
住民基本台帳人口による
議員一人
当たり人口十一万一千九百三十人を軽く超えているのでございます。
以上のような
現状でありますが、今後の見通しもおよそが予測されます。本県の第一区、第四区とも
住民基本台帳の直近一年の伸び〇・八六%、一・九九%から見ましても、また
東京都庁中心五十キロ圏の
千葉県の区域の伸び一・五%を見ましても、同時期の
全国平均〇・五八%増を上回っておりまして、今後ともこの傾向が続くものと予想されるところでありますので、
議員一人
当たり人目はさらに
増加し、
格差も拡大することは明らかであります。
ところで、五十八年十二月十八日に執行されました
衆議院議員総
選挙に係る
定数訴訟
判決が七月十七日に
最高裁判所大法廷で下されたところでございますが、それによりますと、憲法十四条第一項の規定は、
国会を構成する衆議院及び参議院の
議員を
選挙する
国民固有の権利につき、
選挙人資格における差別の禁止にとどまらず、
選挙権の
内容の平等、すなわち
議員の選出における各
選挙人の
投票の有する影響力の平等をも要求するものと解すべきとしていますし、一方、
国会が定めた具体的な
選挙制度のもとにおいて
投票価値の不平等が存する場合に、それが憲法上の
投票価値の平等の要求に反することとなるかどうかは、その不平等が
国会の裁量権の行使として合理性を是認し得る範囲内にとどまるものであるかどうかによって決するほかないとしておりますし、さらに、制定または
改正の当時合憲であった
定数配分規定のもとにおける
選挙区間の
議員一人
当たりの
選挙人数または
人口の
格差がその後の
人口の異動によって拡大し、憲法の
選挙権の平等に反する
程度に至った場合には、そのことによって直ちに当該
定数配分規定が憲法に違反するとすべきものではなく、憲法上要求される合理的期間内の是正が行われないとき初めてその規定が憲法に違反するものというべきとされております。
こうした考えのもとに、当該
選挙について具体的に判断され、当該
選挙当時において
選挙区間に存した
投票価値の不平等状態は、
国会において通常考慮し得る諸般の
要素をしんしゃくしてもなお、一般に合理性を有するものとは考えられない
程度に達していて、憲法の
選挙権の平等の要求に反する
程度に至っていたものというべきと明言しております。また、憲法上要求される合理的期間内の是正が行われなかったものと評価せざるを得ず、当該
定数配分規定は、当該
選挙当時、憲法の
選挙権の平等の要求に反し、
違憲と断定するほかはないとしております。
この
判決により、マスコミ等の報道もあり、
選挙民の間に
定数是正の機運が一気に盛り上がったものと存じます。例えば、
千葉県第四区では、十三万余の得票がありながら次点となった
候補者が存在し、この半分の得票で当選した者も
全国的には相当の数に上っておりまして、一票の価値の不平等感はぬぐい切れないものがございます。
選挙区の
有権者から不満の声が出、早急にこの不平等を是正してほしいとの声が高まるのは当然でございまして、この
定数問題をこのまま放置いたしますと
政治不信にもつながりかねないのであります。
千葉県第一区並びに第四区は
人口の急増
都市であり、過密
都市であります。それだけにたくさんのひずみがあります。それを
国政の場で反映をしていただかなければなりません。そのためには
定数是正がどうしても必要であると私は思います。最近、各種の
選挙における
投票率の低下傾向が見られますが、一票の重みの軽さも一要因ではないかと思われるのでございます。
判決では、
選挙を無効とする結果余儀なくされる不都合を回避するため、
行政事件訴訟法第三十一条一項のいわゆる事情
判決の制度により、当該
選挙は無効とはされませんでしたが、補足
意見では、同一の
違憲の
定数配分規定に基づき
選挙が行われたときは、もはやその
選挙につき重ねて事情
判決的処理を繰り返すことは相当でなく、
選挙無効とすべきであると述べられております。
議会制民主主義のもとにおける
選挙制度は、
国民の利害や
意見を公正かつ効果的に
国政に反映させることを目的としており、憲法は
国会の両議院の
議員を
選挙する制度の具体的決定を
国会の裁量にゆだねているところであります。
衆議院議員定数の是正は
昭和三十九年及び
昭和五十年に
定数増により行われたところでございますが、その後の
人口異動に伴い十分なものでなくなっており、今日の事態となったところでございます。
行政改革の折、
議員の総
定数の増による
定数是正は
国民感情からも許されない
状況にあると存じます。総枠内の調整がなかなか困難であることは十分予想されるところでございますが、避けることはできない最優先課題であると存じます。
いわゆる六・六増減案が現在
国会で継続審議となっておりますが、これは
投票価値の不平等を是正するには十分とは申せません。しかし、
千葉県第一区及び第四区の
選挙民の多くは、現実的な問題として抜本的
定数是正への過程的措置としてこれを望んでいるのも事実であると存じます。この案について各党間において十分
意見調整を行っていただき、対処されるよう望むものであります。そして、
さきの
最高裁判決の趣旨を踏まえて
衆議院議員定数の抜本的是正に速やかに取り組まれ、
投票の価値の平等を達成されますよう強く要望いたしまして、終わらせていただきます。