○岩垂
委員 ここには「処罰すること。」というふうに書いてあるわけですから、当然のことながら、適当な措置をとるということの中には処罰を前提にしていろいろなことをやっていただかなければならない。それには取り締まりが必要であります。取り締まりということになりますと、例えばアメリカなどでは、管理当局である内務省の魚類・野生生物局に法執行部というものがあって、専門の捜査官が取り締まりに当たっています。ところが日本では、これはトラフィックが調べたのですが、今申し上げたような違法な取引について捜査を
お願いしても、通産省は、今御答弁いただいたように、今の輸入貿易管理令あるいは関税法では事実上手だてがないわけです。そういう
状態が続いているということは私は問題だというふうに思うのです。
それだけではございません。例えば、「処罰」ということが載っているわけですけれ
ども、これも、これまで輸入されまして、密輸ですけれ
ども、税関で発覚し、ほとんどの場合はそこで任意放棄しなさいということになるわけですね。これは
一つの例でございますが、一九八三年九月七日、成田で、タイから帰国した日本人の手荷物の中からシロテテナガザルを含む十一頭の猿が見つかった。そのうち五頭は既に死んでいた。この場合も任意放棄で済んでしまった。現在トラフィックで知る範囲では、一九八三年十一月七日にシンガポールから帰国した二人の男性が、ウイスキーの瓶に七十四匹のアロワナを隠し持っていた。それは関税法百十条違反、虚偽申告に問われて五十万円の罰金を取られたわけです。これは罰金を取られた唯一の例なんです。ところが、私もよくは知らなかったのですけれ
ども、このアロワナというのは小売
価格が一匹三万円から五万円なんです。七十四匹の小売
価格は最低でも二百二十二万円であります。発覚しないでうまくいけば大変利益が大きいわけですので、何回も虚偽記載をやっている業者もいる。これが実態なんです。こういう
状態というものが現実にあることをぜひ頭に置いていただきたい。さらにつけ加えれば、小売
価格に相当する金額を罰金として科するようにしなければ、罰金覚悟でやってしまうという意味もありますので、その点も頭に置いていただきたいと思うのです。
そこでもう
一つ、先ほど申し上げた返還に関する規定でございます。第八条四項(b)、没収した国の管理当局は輸出国との協議の後、当該標本を輸出国の
負担する費用で輸出国に返送する、つまり輸出した国の費用でそこへ送り返すというのがこの規定なんですが、その後、その実態を踏まえた上で、それだけでは十分でないということで、ボツワナの締約国
会議で、一九八三年附属書Iの生きた標本の没収、収容及び返還にかかる費用を業者及び輸送会社に
負担させるという決議が採択されているのです。日本の場合、これまでに生きた標本が返送されたケースというのは、日本人の船員が持ち帰ったオランウータン一頭が一九八四年三月にインドネシア政府の
負担でインドネシアに返還されたというのが
一つだけあるそうです。
〔福島
委員長代理退席、
委員長着席〕
附属書Ⅱの没収されたものについては業者が飼育及び返送にかかる費用を
負担したケースというのは全くないそうであります。しかし、ボツワナの
会議で決議をされているわけですから、その業者に返送する費用を
負担させるということも必要であります。これも実は法律が必要なんであります。
それから、この条約の締約国のとるべき措置ということの中には、生きた動物を一時的に
保護するためのレスキューセンターを規定してございます。十分に世話がされるようなレスキューセンターの
基準まで決めてあるわけであります。こういう点も、日本には国内法がございませんから何もないわけであります。
先ほど申し上げた検討結果報告を拝見いたしますと、最後のところの「中長期的課題」の中で「国内法制については、当面の対応策による効果を踏まえつつ、引き続きワシントン条約関係省庁連絡
会議において検討する。」と書いてございます。しかし、私は率直に申しますけれ
ども、「当面の対応策による効果を踏まえつつ、」では、今私が
一つ一つ指摘したことはどうにもならぬわけです。どうにも手だてがないわけです。「締約国のとる措置」ということの中に明確に規定されている、つまり条約を批准した国はそういう措置をとらなければいかぬというふうになっている条件から考えて、ぜひ国内法の制定を急ぐべきだと私は考えますけれ
ども、
環境庁長官のその点に関する御答弁をいただきたいと思います。