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1985-02-26 第102回国会 衆議院 環境委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月二十六日(火曜日)     午前十時二十六分開議 出席委員   委員長 辻  英雄君    理事 柿澤 弘治君 理事 國場 幸昌君    理事 戸塚 進也君 理事 福島 譲二君    理事 岩垂寿喜男君 理事 和田 貞夫君    理事 大野  潔君 理事 中井  洽君       平泉  渉君    竹内  猛君       中村  茂君    馬場  昇君       小川新一郎君    岡本 富夫君       草川 昭三君    永末 英一君       藤田 スミ君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石本  茂君  出席政府委員         公害等調整委員         会事務局長   菊池 貞二君         環境政務次官  中馬 弘毅君         環境庁長官官房         長       岡崎  洋君         環境庁企画調整         局長      山崎  圭君         環境庁企画調整         局環境保健部長 長谷川慧重君         環境庁自然保護         局長      加藤 陸美君         環境庁大気保全         局長      林部  弘君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君  委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   安藤 忠夫君         法務省刑事局刑         事課長     東條伸一郎君         外務大臣官房外         務参事官    瀬崎 克己君         厚生省保健医療         局感染症対策課         長       野崎 貞彦君         厚生省生活衛生         局指導課長   瀬田 公和君         厚生省生活衛星         局食品保健課長 玉木  武君         農林水産省構造         改善局建設部開         発課長     吉川  汎君         農林水産省畜産         局畜産経営課長 香川 荘一君         通商産業省貿易         局輸入課長   奈須 俊和君         通商産業省立地         公害局工業用水         課長      合田宏四郎君         通商産業省基礎         産業局基礎化学         品課長     高島  章君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      松井  司君         工業技術院総務         部産業公害研究         調整官     中島 邦雄君         工業技術院標準         部標準課長   平野 達郎君         工業技術院標準         部繊維化学規格         課長      大久保和夫君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      林   暉君         資源エネルギー         庁公益事業部火         力課長     吉沢  均君         運輸省地域交通         局陸上技術安全         部技術企画課長 福田 安孝君         建設省都市局部         市計画課長   鈴木 政徳君         建設省河川局治         水課長     萩原 兼脩君         建設省河川局開         発課長     志水 茂明君         建設省河川局部         市河川室長   斉藤 尚久君         建設省道路局道         路防災対策室長 寺田 章次君         建設省住宅局建         築指導課長   立石  真君         自治大臣官房地         域政策課長   今泉 浩紀君         環境委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   岡本 富夫君     矢野 絢也君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境保全基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 辻英雄

    辻委員長 これはり会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柿澤弘治君。
  3. 柿澤弘治

    柿澤委員 先日、石本長官から所信をお伺いしたわけですが、環境庁長官初め環境庁一体となって、公害防止日本の、我が国の良好な環境保全のために努力をされておりますことを心から敬意を表したいと思います。  その中で、環境行政一つの曲がり角に立っていると思うのですが、従来のような公害防止するという立場に加えて、快適な環境を積極的に創造していくという点に向かってさらに新しい分野を開いておりますことは、大変結構なことだと思うわけです。その意味で、昭和五十九年度の予算におきまして、快適環境整備事業、いわゆるアメニティータウン予算が盛り込まれましたことは一歩前進だと高く評価をしたいと思います。そういう意味での快適環境整備事業は五十九年度予算においてどういう形で執行されているか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。  特に、アメニティータウン予算が、これからの都市快適環境づくり都市の衰退とかインナーシティーの崩壊とかいうことが言われているわけですが、そういう点についてどのように取り組もうとしているのか、快適環境整備事業対象地域、例えば大都市型とか地方都市型とか農村型とかに分けてどういう配分になっているか、その辺を伺いたいと思います。
  4. 岡崎洋

    岡崎政府委員 今お話のございました快適環境づくりでございますが、五十九年度の予算に認められまして、現在、五十九年度の助成の対象といたしました全国の二十市町村において、着実に市町村の当局あるいは住民事業者等、広範な関係者創意工夫を集めながら計画を立てておるところでございます。  それで、アメニティータウン計画の策定につきましてはどういうパターンがあるかということでございますけれども、これは私ども、できるだけ地域自然的あるいは歴史的な条件に応じて特性のあるものとしていきたいというような気持ちを持っておりまして、アメニティータウン指定に当たりましては、市町村の規模、形態あるいは環境特性などの違いに着目いたしまして、都市型と田園型、それから内陸型と臨海型、あるいは自然型と歴史型といったようなさまざまのタイプ市町村指定できるように配慮をいたしているところでございます。
  5. 柿澤弘治

    柿澤委員 今、快適環境整備事業について都市型、田園型、また臨海型、内陸型というお話がありましたけれども、先ほど私が指摘しましたように、日本の、我が国における大都市環境破壊といいますか、環境問題というのはいろいろな意味で深刻でございます。  そういう意味で、五十九年度予算の中で今おっしゃった都市型、その中で特に大都市型というのがあるかどうか、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  6. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 お答え申し上げます。  五十九年度におきましては、ただいま官房長からも御答弁申し上げたと思いますが、いろいろなタイプのものがございまして、都市型につきましても、例えば横浜市の金沢区でございますとか、あるいは大阪市、あるいは福岡市、こういう大都市におきましても、その一部を限りまして、大都市特有の快適な都市景観の形成というようなものに重点を置きながら、同時に住民生活行動ルール、こういったものも志向するようなタイプのものが見られるわけでございます。
  7. 柿澤弘治

    柿澤委員 そうしますと局長、五十九年度は東京対象になっていないわけですか。
  8. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 五十九年度におきましては東京対象になっておりません。
  9. 柿澤弘治

    柿澤委員 それは、東京快適環境といいますか都市環境は特に問題がない、こういう認識で御採択をされていないわけでございますか。
  10. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 そういうことではございませんで、東京都におきましても、精神的な、区におきましてはいろいろそういうものを志向する動きがございました。ただしかし、何せ五十九年度が初年度でございまして、全国で二十市町村だけを対象にしか予算が認められておりませんので、そういうことで、計画熟度といいますか、そういうものを総合的に考えまして地域決定をした、こういう経緯でございます。
  11. 柿澤弘治

    柿澤委員 実は私もいろいろ都内の二十二区等と御相談をしているのですけれども、特に東京都心部、先ほどお話ししましたように、高度成長過程人口が流出をし、そして工場地方へ移転をする、そういう中で都心部空洞化というものが目立っております。特に、江戸時代以来の古い町並みを残している下町地域というものが、ある意味では、これからのアメニティーという意味で大事な要素を残しながら、しかし高度成長産業発展過程でその再編成がうまく新しい時代に適合できないで、地域社会にいろいろな問題を生じているということが現実にあるわけでございます。  そういう点を何とか改善をして、下町といいますか、古い伝統的な地域社会町並み都市景観というものを残しながら、潤いのある、しかも活気のある都市づくりをしていかなければいけないという機運が近年非常に高まってきておりまして、そういう意味では、特に隅田川周辺地域といいますか、荒川区、墨田区、江東区、また台東区、中央区等、大川端再現しよう、そして江戸時代以来の伝統のある町並みを維持しながら二十一世紀的な都市をつくっていこうという動きが出てきておるわけでございます。  そういう意味では、ぜひその地域にも環境庁快適環境整備事業のいろいろな御援助をいただきたい、こういう要望も出てきております。そういう点で、今私が申しましたような大都市における伝統的な景観と新しい都市施設の併存というものを考える、それがこれからの快適環境という意味では大きなポイントだと思いますし、六十年度の予算の中にも快適環境整備事業政府原案に盛り込まれているわけでございますので、その点ぜひ執行の段階で十分配慮してもらいたい、こうお願いをしたいと思いますが、その辺いかがでしょうか。
  12. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 御指摘のとおり、巨大都市といいますか、そういう中におけるさまざまな意味での変化、その中においてもいわゆる下町というようなところにおけるアメニティーの増進、こういう点についての先生の御指摘、まことにごもっともだと思いますし、アメニティータウンの典型の一つとして意義深いことだとも思っております。  とりわけて、御引用になりました隅田川問題でございますか、水辺の問題でございますか、そういうものについては、例えばこれは隅田川じゃございませんが、全国各地におきましても、河川公園でございますとか、あるいは親水公園という名前のものもございますし、あるいはまたホタルを増殖をしていくというような、水との関連において深いものもあるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、地域特性が何といっても重要なファクターになりまするけれども地域水辺というようなものに視点を合わせた環境特性、こういうものを十分に生かした地域づくり、これは大変結構なことだ、こういうふうに思っておるわけであります。  そして、そういう視点に立ちますと、六十年度の予算、幸いに確保することができました。現在、各自治体からの要望を踏まえまして、せっかくその選定を急いでいる状況でありますが、指定に際しましては、本日伺いました先生の具体的な御提案あるいはお考えを十分配慮してまいりたい、かように考えております。
  13. 柿澤弘治

    柿澤委員 企画調整局長、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。  また、今引用しました隅田川問題ですけれども地域自治体等で、隅田川浄化して東京の顔ともなるべき河川として整備をしていきたい、そして都民全体の憩いの場にしていきたいという意欲と要望が非常に最近高まっているわけです。そういう意味では、一つの問題は隅田川水質浄化の問題でございまして、その点水質保全局長にちょっと伺いたいと思うのですが、隅田川水質、今どうなっておりますでしょうか。
  14. 佐竹五六

    佐竹政府委員 隅田川につきましては、現在、環境基準Dランクが適用になっているわけでございますが、現在の水質現状を申し上げますと、二個所で測定しておるわけでございますが、小台橋で七・一ppm、両国橋で四・〇ppm、いずれも現在の環境基準達成している段階でございます。
  15. 柿澤弘治

    柿澤委員 Dランクというと、隅田川にもサケをさかのぼらせようという夢といいますか、希望地域にあるわけですけれどもサケがさかのぼってこられる状態ですか。
  16. 佐竹五六

    佐竹政府委員 水質現状サケの遡上につきまして一義的な関係があるかどうか、多摩川等にもさかのぼってまいっているようでございますので一概には申せませんが、原則的に現在のD級という環境基準利用目的は、工業用水二級、それから農業用水及び環境保全一般に役立つという程度でございまして、不快の念は与えないという程度水質現状でございまして、サケのさかのぼってくる環境として適当であるかどうかということになれば、さらに高いC級というようなランクが望ましいのではないかというふうに考えております。
  17. 柿澤弘治

    柿澤委員 まさに地元では隅田川水質基準を、Dランク達成をしているわけですので、この際Cランク引き上げて、そしてさらに快適な環境整備に資してほしい、そういう形での環境庁に対する要望もあるわけですが、水質基準引き上げというものは検討していただけるでしょうか。
  18. 佐竹五六

    佐竹政府委員 水質環境基準の当てはめにつきましては、その水域の利用目的、それからその達成のために必要な施策等を考慮して、総合的に勘案いたしまして、各都道府県知事に原則的に委任しているわけでございます。隅田川につきましては、かつてEの類型の当てはめがあったわけでございますが、関係者の御努力によって下水道の整備等が進みEランク達成いたしたために、五十一年にDランクに格上げを図ったということでございまして、私どもも、単に達成したからいいというものでなくて、さらによりよい環境を目指して関係者努力すべきであって、その意味ではこれの引き上げを図っていくということは原則的に正しい方向であろうというふうに考えておるわけでございます。  ただ、先ほど御答弁申し上げましたけれども、これは当然、達成可能性ということで投入し得る公共投資財源等も勘案しながらやらなければならないわけでございます。特に隅田川につきましては、上流部、埼玉県に近い部分の水質に問題がございまして、当然のことながら関係県の協力も必要になるわけでございます。そのような意味で、東京都から御相談がございましたならば、それぞれ御相談に応じて私どもからも関係の方面へ前向きにお口添えするというようなこともいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  19. 柿澤弘治

    柿澤委員 そういう意味では、都道府県にお任せをしているという態度でなくて、都道府県をまたがる問題でもございますので、環境庁指導的な立場での助言とか行政的な指導をぜひお願い申し上げたいと思います。  都市にはそれぞれ顔になる川があるわけでして、ロンドンのテムズ川、ニューヨークのハドソン川、パリセーヌ川、そして東京隅田川、この顔になるべき川の整備が行われて、初めて本当の意味でその都市の快適な環境をつくることができるわけだと思います。セーヌ川に行きますと、いまだに釣り糸を垂れている人がパリの市内にいるわけでして、そういう意味では、ぜひ隅田川多摩川荒川釣り糸を垂れる人がいるような、そういう絵になるような風景をこれからつくっていってほしいと思いますし、私ども努力をしたいと思います。  その意味では、都市河川のあり方というものも大変いろいろな問題を含んでいるんじゃないかと思います。きょうは建設省の方にもおいでいただいているわけですが、隅田川地域住民東京都民とを断絶することになってしまったのは、実は昭和二十年代、三十年代におけるかみそり堤防建設だったわけです。かみそり堤防建設は、治水それから災害防止という意味で必要なことだというふうに言われておりました。しかし、あのかみそり堤防建設によって完全に大川端の情緒がなくなりまして、隅田川全体がふたのされていない下水という状態になってしまいました。これは地域社会にとっては大問題だったわけです。  私も十年来、何とかならないかということでいろいろと知恵を出したり提案もしてまいりましたが、昭和六十年度予算におきましては、かみそり堤防を削って、川べりまでおりていける緩傾斜親水型の堤防予算が初めて政府案の中に盛り込まれたわけでございます。その点私も努力をさせていただいたのですが、隅田川におけるこの親水型の堤防工事、いわゆるスーパー堤防工事と言われておりますけれども、その事業の内容について御説明をいただきたいと思います。
  20. 斉藤尚久

    斉藤説明員 今お話しのスーパー堤防事業でございますが、対象考えておりますのは、人口なり資産なりが非常に集積しております大都市の、しかも低地部を流れておる河川沿い考えておるわけでございます。  そういう地域におきまして、治水対策あるいは地震対策というものを強化すると同時に水辺環境改善を図っていこうということで、河川の沿線の再開発事業等一体となりまして、河川沿い計画的な盛り土を行う、そして今までにない高規格堤防ハイグレード堤防整備していこうという事業でございまして、六十年度の予算案の中に盛り込ませていただいておるところでございます。
  21. 柿澤弘治

    柿澤委員 実はここに建設省からいただいたリバーサイド・ルネッサンスという絵がございます。これを見ると、隅田川べり遊歩道ができて、しかも緑の植栽豊かな大川端再現をする。そして、かつての墨堤と言われるような桜並木ができることになっているわけですね。  しかし、これを絵にかいたもちにしてしまってはいけないわけでして、そういう意味では、これだけの公共的なスペース遊歩道等がとれるような形のスーパー堤防工事計画していただかなければいけないわけですが、後背地の再開発と絡んだ問題になるわけです。このような遊歩道というのは期待できるのでしょうか。ぜひお願いをしたいと思いますが、その点の見通しはどうでしょうか。
  22. 斉藤尚久

    斉藤説明員 ただいま申し上げましたスーパー堤防事業中心にいたしまして、必要なところでは、例えば公園とかあるいは街路事業等もあわせ行いまして、非常に魅力のある空間をつくりたいと思っております。場所によりましてスペースが広かったり狭かったりする場合があると思いますが、できる限りスペースをとるようにいたしまして、魅力ある空間再現させたいと考えております。
  23. 柿澤弘治

    柿澤委員 今、必要があるところについてはというお話がありましたけれども、必要がないところというのはあるのでしょうか。
  24. 斉藤尚久

    斉藤説明員 水辺環境を魅力あるものにするという点からしますとスペースは広い方が望ましいわけでございますが、現実的に広いスペースがとれるかどうかということは個々の場所によって違うだろうと思います。しかし、できる限り広いスペースをとるようにということでやってまいりたいと思っております。
  25. 柿澤弘治

    柿澤委員 私ども地域から選出されている議員の立場周辺地権者にも呼びかけて、できるだけ広い地域の再開発協力をしていただくようにお願いもしていきたいと思いますので、隅田川沿いとか大きな都市河川沿いにずっとこうした堤防が、例えば八丁桜並木というようなものができるようにぜひ努力をしていただきたいと思うわけです。  その点で、いろいろ地元からも要望の声が出ておりまして、今計画をされておりますのは中央区の隅田川沿い新川の一部というふうに聞いておりますけれども、同時に、江東区の清洲橋の近辺の工場倉庫街、それから墨田区では吾妻橋のアサヒビールの跡地、ここに墨田区の総合庁舎住宅都市整備公団の再開発事業が行われることになっております。この前面の隅田川沿い、それから荒川区の白髪西防災拠点団地の再開発事業、その他幾つかの地点についてスーパー堤防工事希望なり期待なりがあるわけですけれども、それの実現可能性というようなものはどう見ておられますか。
  26. 斉藤尚久

    斉藤説明員 まず、先生指摘になりました隅田川下流部中央区の新川箱崎地区倉庫群でございますが、これにつきましては、六十年度から予算案が認められれば実施したいというふうに考えております。  それから、荒川区の白鬚西地区あるいは墨田区の白鬚東地区につきましては、市街地再開発事業として、ついたて型のパラペットの堤防を緩傾斜堤防にするという事業を既に別途始めております。この事業を推進していきたいというふうに考えております。  それから、隅田川中流部吾妻橋の付近の工場跡地でございますが、これは、スーパー堤防事業を導入する可能性につきまして、区あるいは都、それから地権者の方々と検討が始められておるというふうに聞いております。この結果を待ちまして我々としましても対処してまいりたいというふうに考えております。
  27. 柿澤弘治

    柿澤委員 ことしは両国に新しい国技館ができまして、そこで先日「第九」の大演奏会が開かれました。そのときにドイツの大使もおいでになって、ラインのほとりで活躍したといいますか、べートーベンの歌が隅田川沿いに響く、これはライン川と隅田川姉妹河川というような関係になったのではないか、こういうお話がありました。スーパー堤防工事、また、都市快適環境整備事業等の組み合わせによって隅田の桜並木再現をされれば、これはまたポトマック川の河畔の桜の名所とも姉妹関係ができると私は思っておりますし、そういう意味では、尾崎市長ポトマックに贈った桜を東京都に里帰りをさせてもらいたい、こんな計画もあるわけでございます。  そういう意味では、先ほど申しましたように、都市にとって川はその都市の顔であるということを考えて、今後とも都市における快適環境整備の根幹としてぜひ位置づけていただいて、建設省河川事業においても積極的に取り組んでいただきたい。  そういう意味では、従来の公共事業における河川予算というのは治水防災という面に重点が置かれていたように思うわけですが、その河川予算というものをもっと河川浄化とか河川周辺環境整備という点に使えないだろうか、こういう考え方もあるわけですが、そういう点についての建設省のお考えを伺って、大臣おいでになりましたので、その後、大臣に少しお聞きをしたいと思います。
  28. 斉藤尚久

    斉藤説明員 先生指摘のように、河川関係予算というのは治水中心投資でございます。しかしながら、最近特に都市化の進展その他によりまして河川を取り巻く環境が大きく変わってきております。国民は、貴重な自然空間、それから水との触れ合いというものを河川に対して求めてきておるわけでございます。  このような状況に対しまして、建設省といたしましては、河川環境整備事業という事業を行っております。具体的に申し上げますと、ヘドロ等のしゅんせつ、あるいはきれいな水を導水いたしまして浄化用水として使う、浄化用水導入等河川水質浄化を図る河川浄化事業というのがその中に含まれております。それともう一つは、河川高水敷等整備いたしまして、その上をオープンスペースあるいはレクリェーションの空間として使っていくという河道整備事業という二つの事業を既にかなり前から行っておるわけでございます。これらの事業につきましては、その河川環境必要性河川によってもまた河川場所によってもいろいろ必要性が違ってくるだろうと思いますので、その必要性の高い箇所から、計画的に、重点的にこれらの予算を使っていきたいというふうに考えております。  それから、治水対策を主にやっておるわけでございますが、その治水対策をやるに伴いまして、例えば先ほどのスーパー堤防事業のように河川環境に資する事業はたくさんあるわけでございまして、これらもあわせて積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  29. 柿澤弘治

    柿澤委員 石本大臣、お忙しいところを御出席をいただきまして、ありがとうございます。  先日、大臣の所信を伺いまして、石本大臣環境庁事務当局と一体になって我が国環境行政を推進される御決意を表明されましたことを、心から敬意を表したいと思っております。  昨年、私も政務次官を務めさせていただきましたが、我が国環境行政の中で、公害の防除という従来の環境行政に加えて、快適な環境をつくる、それによって潤いのある社会を形成していくということが新しい施策として盛り込まれました。その一つ快適環境整備事業であろうと思っているわけでございます。  五十九年度の実施状況につきましては先ほど山崎局長からお話を伺いましたが、その中で、巨大都市快適環境づくりという点が抜けていた、東京がその施策の対象になっていないという点があったわけですけれども、六十年度にも同じ予算が盛り込まれておりますので、六十年度予算において巨大都市における快適環境整備事業にも環境庁としてこれから大いに取り組んでいくんだという姿勢をぜひ見せていただきたいと思いますし、そういう意味で、私ども地元といいますか下町地域社会の中で、江戸時代以来の古い歴史と伝統、その町並みやさまざまな記念物を残しながら、しかも若者に魅力のある活気のある町をつくろうという意欲が地元地方自治体の中に芽生えてきておりますので、そういう点、ぜひ大臣の御高配を煩わして、環境庁としても積極的、前向きに取り上げていただくようにひとつ大臣お願いを申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
  30. 石本茂

    石本国務大臣 お答えいたします。  ただいま先生指摘をいただきましたように、良好な環境というのは私たちにさまざまな恵みを与えてくれるものでございます。このような環境を確保して将来に伝えていくということが環境行政の重要な使命であるというふうに考えておるところでございます。  このためには、公害防止自然環境の保全を図ることはもちろんでございますが、さらに潤いと安らぎを与えていくということになるわけですが、今先生申されました、先生のお住まいあそばします東京下町でございますが、現在、環境庁としましてはアメニティータウン指定ということをしておるわけでございまして、現在、各自治体からいろいろな要請が出ておりますので、そうした御要望を踏まえまして昭和六十年度の対象市区町村の選定を急いでいるところでございますが、指定に際しましては、本日伺いました先生の具体的な御提案、お考えを十分に考慮させていただきまして、そして考えさせていただきたいというふうに考えております。ありがとうございました。
  31. 柿澤弘治

    柿澤委員 これで終わりにしたいと思いますが、今建設省の方にも申し上げましたように、これからの快適環境づくりという意味では、公共事業の面での協力といいますか、公共事業快適環境整備への誘導というのも、これから政府全体として大きな課題になろうかと思うわけです。  そういう意味では、具体的な事業の実施というのがどうしても建設省中心になりますので、環境庁長官におかれましても、そういう意味でぜひ各省庁との連絡を密にしていただきまして、環境庁の理念が政府の各省庁の施策の中に十分取り入れられ、生かされるように指導力を発揮していただきたい、この点をぜひお願いしたいと思いますが、御決意を伺って、終わりにいたします。
  32. 石本茂

    石本国務大臣 先生の御要望の御意思は十二分にわきまえまして、今後関係省庁としっかり緊密な連携を保ちながら目的を達成してまいりたいと考えております。ありがとうございました。
  33. 柿澤弘治

    柿澤委員 終わります。
  34. 辻英雄

    辻委員長 次に、岩垂寿喜男君。
  35. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 環境庁長官、大変御苦労さまでございます。  最近の環境庁、率直に申し上げてかなり地盤沈下が指摘をされています。それは、環境問題というのは山を越したというふうな意見も一面でありますけれども、私は決してそうではないというふうに考えています。それは所信表明の中で御指摘をいただいておりますけれども、大気汚染問題というのは、SOxなどについては一定の改善措置が見られるものの、NOxなどについてまだまだ、いや、まだまだどころかより深刻な状態というものがありますし、浮遊粉じんその他の問題を含めて、人間の健康をむしばんでいるという実態が現実にあるわけです。あるいは、新しい化学物質とでもいいましょうか、そういうものが人体にかなり影響を及ぼしているという点でさまざまな指摘があるわけですけれども、対応というものが十分でない。十分でないところか、その対応というものに手もついていない、こういう状態も一面にございます。  それだけではなくて、自然保護の問題も率直に申し上げて新しい課題をやはり提起しているように思われてなりません。ことしは実は国際森林年だと言われていますけれども、緑や自然の問題というのは、市民感覚から新しい角度で注目をされてきているということも、長官御理解のとおりだろうと思うのであります。私自身は、数年前から、単に日本の緑や自然だけではなしに、国際的な、つまり地球的な規模での緑の確保ということを訴えまして、緑の地球防衛基金などの設立のお手伝いをしながら、それらの運動に取り組んできています。  環境行政というものが国際的にも非常に高い評価を受けているだけに、これから一層責任を果たさなければならない課題を背負っているというふうに思うのであります。そういう点で、長官に就任をされまして、そういう重たい責任をしっかりひとつ押さえていただきたいし、頑張っていただきたいと思うのですけれども、この所信表明に従ってちょっとお尋ねをしていきたいと思うのです。  長官は、「二十一世紀をも見通した長期的な展望のもとに、環境汚染の未然防止対策を初めとして、諸施策を総合的に進め、環境保全型社会の形成に努めてまいる所存であります。」というふうに述べられているわけですが、この「環境保全型社会」というのは、前の長官もその種の言葉遣いをなさったわけですけれども一体どういう社会を想定してそういう施策を進められようとしておられるのか、まず最初に伺っておきたいと思います。
  36. 石本茂

    石本国務大臣 ただいま先生の申されておりますことを私はしっかり胸に受けとめておるところでございますが、今申されました、環境保全型社会とは一体どういう社会なのか、これは言葉足らずになるかわかりませんけれども環境保全の配慮が隅々にまで行き渡った社会であるということが前提でございまして、事業者とか国民などいろいろな立場の人々がそれぞれ環境の保全に努めることによって、全体として環境に与える影響を効果的に少なくしていくということをねらいとしているものでございまして、例えば、工場が積極的に緑化を行うとかあるいはまた国民が自主的に生活の雑排水対策を行うというようなことなどをいたしまして、環境保全型社会をつくるための努力を一人一人が、国だけではなく、自治体だけではなく、国民全部がしていくことだというふうに私は思っております。そうした暁においてのみ今申されました環境保全型社会というものが現出できるのではないだろうかというふうに考えているところでございます。
  37. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 国民が一人一人努力をしていくということは、ある種のモラルとして非常に重要であることは言うまでもありませんが、現実には、そのモラルというものは必ずしも十分に発揮されていない状況のもとで、公害の現象というものは今私が申し上げた指摘を含めてあるわけでございます。問題は、そういう対応を、法律だけでと言うつもりはございませんが、行政が非常に大きな責任を担わなきゃならぬ、この点の認識というのは共通だと思いますが、そのように考えてよろしゅうございますか。
  38. 石本茂

    石本国務大臣 今先生申されましたように、例えばアセスメント法をつくろうということで、環境庁中心先生方のいろんなお力添えをいただいてきたわけでございましたが、この法律は現在ただいまでき上がっておりません。ただ、当面、閣議決定の円滑な実施に努めてまいりたいという念願を込めておるところでございまして、環境影響評価の法制化につきましては引き続き検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。  なお、この法制化につきましては、閣議決定の実施状況などを見ながら今後引き続き検討していくわけでございますが、閣議決定されましたことを各省庁が確実に守っていっていただけるかどうか、これを我々が見きわめながら見守っていくというのが現在の任務であるというふうに考えております。
  39. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私がお尋ねする前にお答えいただいてしまったのですが、アセスメント法、つまり環境影響評価法というのは法律として提出をしますということは、歴代の環境庁長官が、そして総理が国民に公約をしてきたことなんです。法律として提案をするということなんです。この前の国会では、それは野党だけでなしに皆さんそのようにお感じになっていらっしゃると思いますが、公約をしておいて国会に出なかったのです。どこかでつっかえてしまったんです。  その法制化というものができなかったから行政指導で肩がわりをいたします、ここまで行く論理の中には、環境庁のきちんとした反省が必要だと私は思うのです。そこのところの区切りのないままに、いろんな障害がございまして法制化がだめでございましたから行政指導でまいります、これは自然の成り行きじゃないです。国会に、国民に公約をしたことが守られないで、行政指導を、もちろんそれは次善の策というふうに皆さんもお考えになるでしょう。しかし、物事のけじめは、少なくても法律を出すと言って公約をし、これはもう何遍も、環境委員会が開かれるたびに前の上田長官はそのことを問われ続けてきたのです。そして答弁をしてきたのです。それを、行政指導でございますからということでは余りイージー過ぎるのではないだろうかという感じが私はします。  顧みれば、昭和五十二年から環境庁はこの問題について全力を挙げてきたはずであります。そして、各省庁の説得だけでなしに、関係業界の説得にも努めてきたことを私も承知しています。刀折れ矢尽きたのですか。その点について環境庁自身の努力の不十分さあるいはその成果の不十分さの反省の言葉をいただかないと、私たちはこの問題は、そうでございますか、それでよろしゅうございますと言うわけにいきませんので、御答弁を煩わしたいと思います。
  40. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、昭和五十二年以来この法案のためにいろいろな努力を重ねてまいりましたけれども、先国会、いろいろな事情の上に見送りというようなことになりましたことにつきましては、私どもとして大変残念に思っております。ただ、先ほども長官申しましたように、当面は、次善の策として閣議決定という形での関係省庁相寄りましての決定を行ったわけでございますし、これの円滑な実施に全力を挙げさせていただきたい、かように考えておるところであります。
  41. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 残念に思っていますということじゃ済まないのですよ。これは国民に対しておわびをすべきですよ。  まあその点はその点にしても、一応官房長官と当時の上田環境庁長官が、法制化を断念したわけではなく、今後とも引き続きその努力を続けていくと言明されています。しかし、長官、行政指導方式というものに切りかえれば、これが定着するには時間がかかるのですよ。それだけでなしに、関係省庁との調整というような仕事もずっと続いてくるわけです。そういう意味で私は法制化は遠のいたというふうに判断をします。  ここ数年、アセスメント法案というものが国会に提案をされてくる、今国会、次の国会を含めてということを確言できますか、公約できますか。難しいでしょう、率直に言って。それをお答えください、あなたの判断を、努力の目標を。
  42. 石本茂

    石本国務大臣 お答えいたしますが、法制化につきましては、先ほど申し述べましたように、閣議決定の実施状況を見ながら今後検討してまいるという私どもは決意をしているところでございまして、諸般の情勢から見まして、今国会に再提出するということは困難ではないかというふうに考えております。
  43. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今国会どころか、行政指導が出てきてそれが定着をしていくプロセスというのは、それを二、三年で全くペケにしてまた出してきますということはできなくなるのですよ、事実上。だから、事実上、私はアセスメント法案というのはお蔵入りかな、法案という形では、というふうに判断をせざるを得ないのです。率直に、この法案提出というもの自身が遠のいたなという実感を長官もお感じになっていらっしゃると思うし、恐らく事務の引き継ぎをなさったときにそういう判断を持たざるを得なかったと私は思うのです。――いいですよ、それは。  それでは、行政指導といいますけれども、この行政指導と各自治体の条例との関係、それから各省庁間の関係、例えば発電所立地でひとついきましょうか。  これは上物とそれから埋め立てなどのこととは食い違ってくるわけです。通産は通産のベースで自分の指導要綱を持っていますよ。それでやりますね。環境庁は建物についていろいろ議論をしても、そういう点で、行政指導の整合性というのは必ずトラブルが起きてくるのです。これは発電のことを申し上げただけですけれども、あらゆる意味で、そういうまちまちな各省庁ごとに自分の縄張りとして持っている指導要綱と環境庁と――私随分読ましてもらいました、あの細かい、いろいろな文章を。そういう矛盾が出てきています。必ずトラブルが出てくると思う。  こういうような問題というのは、やはりアセスメント法という形で網をかけなければ、実際問題としてその適用においてさまざまな問題と矛盾が出る、だから私は法制化を何とかひとつ目指していただきたいということを重ねて強調しておきたいのです。この点いかがですか。これは長官です。
  44. 石本茂

    石本国務大臣 今、御言葉にございましたように、法律というものと閣議決定というものは、これはもう行政指導とそれからきちっとした法律制度によりまして取り締まりをしていくということと、これは大変な相違がございます。  私どもこの法案ができなかった時点を考えますときに、本当にはらわたが煮えくり返るくらいに残念至極だと思っておりますので、決して三年後です、四年後ですという言葉を使いませんけれども、早急に、できるだけ早い時期に再び提案できるよう心がけながら頑張ってまいりたいと思っております。
  45. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この問題だけやっているわけにいきませんが、願わくはやはり法律としてきちんとしないと、さまざまな問題ができますよ。各省庁間の問題、トラブルや手続上のさまざまな問題が既にもう今予想されますよということを私申し上げたわけでございますから、今、長官が御答弁のように、できるだけ早く法律として提案をできるように御努力を願いたい、このことをお願いをしておきたいと思います。  実は、これも私この前のこのときにかかわっているものですから申し上げたいのですが、「二酸化窒素に係る環境基準について」という環境庁の方針がございます。これは昭和六十年三月三十一日までに環境基準をクリアしたい、そういう前提に立って、そして各都道府県中心になって総量規制計画というものをつくって努力をしてきたわけです。  ところが、御存じのように、これは東京はだめです。大阪もだめです。川崎もだめです。横浜もだめです。大都市中心部は全部だめです。これはもちろんいろいろな原因がございます。つまり、固定発生源の部分では確かに減少の傾向があるけれども、移動発生源の方で総量規制がお手上げということになってしまいました。一応みずからが期日を決めたのです。しかし実現できない。これに対して環境庁はどのようにお考えになっていらっしゃるか、御答弁を煩わしたいと思います。
  46. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えをいたします。  御指摘の点は、総量削減計画に基づく窒素酸化物の環境基準達成の問題と存じますが、御指摘のように、この総量削減計画達成するための期間は六十年三月三十一日ということになっております。ということは、四月一日以降も計画自体は有効なわけでございまして、計画目標量を維持いたしまして、定められております特定の工場等についての削減目標量を何とかして担保いたしますように努力を続けてまいる、こういうことになるのではないかというふうに考えております。
  47. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 あなたはそうおっしゃるけれども、六十年四月一日には短期的な評価は出てしまうわけですよ。それはわかるでしょう。しかも私はこの問題で当時の大気保全局長、個人的には大変尊敬申し上げていましたけれども、かなり論争はしました。橋本さんとやりとりしたときに、橋本さんはこうおっしゃっているのですよ。NOxの改定のときですよ。沿道、これは自動車測定局のことですよ、を含めて〇・〇六を達成すると公言しておられるわけです。できていないじゃないですか。そういうことを一体どのようにお考えになって、これからどのようになさろうとしているのか、つまり目標を延ばすとか手法をどうかするとか、どうも窒素酸化物の量だけでなしに、やや気象の関係もあるのかななどという議論もあるようですけれども、それはそれとして、これからのお取り組みに対する方針を明らかにしていただきたい、三月三十一日はもうすぐ来ますから。
  48. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えをいたします。  三月三十一日というのは、達成のために予定されております削減計画を具体的に実施に移すということになっておるわけでございまして、今先生指摘のように、固定発生源につきましては全面的に総量規制基準というものが適用になりますし、そういう方向で進んでいくと思います。  それから、そのことに基づきまして、もちろん道路の問題もあるわけでございますが、達成状況の評価は、それからの一年間を通じて観察をいたしました結果評価をするというふうに理解をいたしておりますので、当然経過を見ていくということが一つございます。  それから、御指摘のように、私どもはまだ五十八年度のデータしか手元にはございませんが、自治体はもう自動測定をいたしておりますから、毎日データは出てまいります。その意味では、三月三十一日あるいは七月といった期限を踏まえては毎日毎日の一般局並びに沿道局のデータというものを深刻に受けとめなければいけないというようなことも部分的には出てくるかと思いますが、私ども今の考えといたしましては、一応評価というのは、従来からの建前で申し上げれば、評価の期間というものは一年ございますので、その期間ただ待っているということではなしに、自治体その他関係省庁とも十分話し合いをして、実現のできるようなものを少しでも前に進めていくべきではないか、特に自治体とのすり合わせということについては特に意を用いていこうということで、少しずつそういうことの話し合いは自治体と始めております。
  49. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 自治体と話をするのはいいですよ。すり合わせをするのもいいですよ。だけれども事実上自治体はお手上げなんですよ。とすると、具体的に削減をしていくための努力をどういう手法を含めてやるかということで検討をしないとどうもならぬでしょう。そのことを尋ねているわけですが、どうもまだその辺のところが、自治体の側も率直に言ってお手上げという状態だけでありまして、その後の措置などについてどうするかという手段を持ち得ない、これが実態ではないのでしょうか。  それはあなたの答弁ではどうもちょっと私も十分な理解をすることはできませんけれども、それはそれとして、それに関連して、ディーゼルの窒素酸化物などの規制というのはこれからは余り考えない、そういう方向ですか。
  50. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  先生御案内のように、ディーゼル車につきましては段階的に規制を進めてきておりまして、第二段階規制まで、特に大型車等につきましてはスケジュールの中に取り込まれておりましたものはおおむね規制を実施いたしております。  ただ問題は、それが環境の現場で具体的にいい影響をあらわしてくるためには、低公害状態になっている規制車が十分に普及してまいりませんと効果が出てこないといううらみがございます。現在の段階では、予定されておりました規制そのものは実現をしておりまして、ディーゼル乗用車の一部が残っておるという状況でございますから、その意味では、私どもが審議会の答申に基づいて段階的にやってきた規制そのものはスケジュールとしては終わっておる。  しかし、それが具体的に、都市内を走るすべての車がそういう規制に適応したものに、規制強化したものに全部かわるというのにはまだ時間がかかるということがございますので、さらに規制を強化するということになりますれば、そういった実態を見きわめながら、またもう一つは、技術開発の問題が伴わないとなかなかできない問題もございますし、ディーゼルの問題は、よく御存じかと思いますが、ディーゼル黒煙とNO、との問題にかかわりまして、技術的には難しいハードルを一つ越えなければいかぬということもございます。そういうこともございますので、そういう技術開発の促進を図りながら、少しでも前に進めていくという努力は続けていきたい。  ただ、今まで規制を行ったものをさらに追いかけてすぐにNOxの規制をやるということにはなかなかいかないかもしれない。と申しますのは、ディーゼル黒煙の問題をもう少し進めなければいけないという問題もございますので、NO、につきましては一定のレベルのところまで規制をしてきた、次の問題としては、特に大型のディーゼル等を踏まえますと、やはり黒煙問題をもう少し進めていくという方向が大事なんではないかというふうに考えております。
  51. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 黒煙だけじゃなくて、やはりNOxも大事なことだと私は思うのですよ、呼吸器系を侵す毒性だけでなしに。例えば、酸性雨の問題一つをとらえてもそうでしょう、あるいは光化学スモッグなどの問題を含めて考えてみて、今私が総量規制の問題を質問したのですけれども、そういう具体的な手だてを並行的にやっていきませんと、実は排ガス規制のときもそうでしたけれども、やはり行政がそういう努力を先頭に立って業界に対して求めていく、そういう努力がないと、成り行きだと申し上げているつもりはございませんが、やはりそれではどうもならぬだろうと思いますので、その点については十分御配慮を賜りたいと思います。  嫌な質問かもしれませんが、メタノールについて環境庁はどういう見解を持っていらっしゃいますか。
  52. 林部弘

    ○林部政府委員 お尋ねの件は、低公害車として評価が高まってまいりましたメタノール車の導入の問題かと思いますが、特に大都市圏での道路沿道の問題というのは、ただいま先生指摘のように、いろいろな解決のための手だてを新たにつけ加えていかなければならぬということは御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、電気自動車とかメタノール車といったような、低公害車として対策を進める上でメリットのあるものはできるだけ推進していくべきではないだろうかというのが基本的な考え方でございます。
  53. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは実は環境庁の宿題でお願いをしたいのですけれども、私個人の問題も多少あるわけですが、私、多摩川の沿線に住んでいるのです。オートバイ、しかも集団的なオートバイ、暴走族という言葉を使っていいかどうかは別として、夜中に、本当に赤ちゃんなら引きつけを起こすような状態というのがこれから夏場にかけてずっと続きます。  私は、オートバイの騒音規制という問題は、騒音規制というのはマフラーを外しちゃいかぬという規制などを含めてさまざまな方法があるのだろうと思うのですけれども、やはりある程度政策的な取り組みが行われることが必要だ。警察なんかの取り締まりを考えてみても、スピード違反でということはやり得ても、なかなか騒音問題だけでという議論にはなじまない点があるようでございます。  私は、オートバイの騒音規制というのはある種の人道問題だと思う。私なんかでも、例えば夜中の二時とか三時に物すごい地響きを立てて走る、そういうオートバイの騒音で思わず目が覚めてしまうことが何回かございます。これは私の地域だけじゃないのです。私の選挙区の鎌倉なんかは、文字どおりその諸君が集団的に集まる場所でございまして、安眠を妨害されるだけでなしに、ある意味で赤ちゃんなどの健康には大変なことだという心配をお母さん方から訴えられますけれども環境庁、こんなことを少し考えたことがありますか。
  54. 林部弘

    ○林部政府委員 暴走族と申しましょうか、違法マフラー等を取りつけた二輪車をこのまま放置してよいのか、こういう御指摘かと思います。  この問題につきましては環境庁がもっと音頭をとって推進すればよいわけでございますけれども現状は必ずしもそうまいりませんで、道路交通法あるいは道路運送車両法に基づきまして、警察庁あるいは運輸省におきまして整備不良車両の取り締まりとか検査が行われているというのが現状であるのは御案内のとおりでございます。  ただ、不正改造によって不当に大きな音を出すようになっている、これは全部使用過程車ということになるわけでございますが、一口で申しますと、いわゆるスピード違反のネズミ取りのようなことはなかなか技術的に難しい。と申しますのは、音の測定方法がああいうわけにはいかぬ。どうしても、かなりこれはうるさいぞということで捕まえて、それから一定の方法ではかるとかというようなことにいたしませんと、なかなかいろいろな規制を及ぼすのは難しいのじゃないかということがございまして、特にこの測定の方法など実施上の問題がいろいろあるということを中心にして、私どもも運輸省等ともこの一年間がない協議もいたしましたし、具体的には、運輸省サイドの方で使用過程車についての測定方法の検討会を五十九年の十月に発足させてもらいました。実は私どもの自動車公害の担当課長がそこのメンバーに参加いたしまして、私どもが主導権を持ってということではございませんが、何らかの方法で現在よりは対策を前進できないかということの検討は行っております。
  55. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これはこの際長官に特にお願いをしておきますけれども、今やりとりがございましたように、各省庁が競合して議論しておったのではまともな結論が早く出てくるとは限らないのです。どこかがイニシアチブをとらな号やいけません。それには、騒音という観点からいえば環境庁だと思うのです。ただ、警察の問題がございます。それにしても、今これだけ国民生活、市民生活にとって深刻な問題を及ぼしていることについて、環境庁あたりが騒音という観点から、警察などとも十分な連絡をとった上である程度イニシアチブをとるくらいな気持ちでお取り組みをいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  56. 石本茂

    石本国務大臣 今申されましたように、主務官庁と連携をとることももちろん必要でございますが、何らかの方法を早急に考えまして、そして、取り締まりという言葉よりも、そういうことをしない人の心というものを呼び戻す方策を考えたいということを前々から言い合っているところでございますので、何らか結論を出しまして、またお答えをさせていただきたいと思います。
  57. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 モラルだけでなしに、ある種の型式規制みたいなことを考えることも技術的に可能だと私は思うのです。使用過程車のことは、今保全局長から言われたようにさまざまな問題がございますけれども、やはりこれからできてくるものの型式の規制みたいなことを考える余地は十分ある。私なりに勉強してみたけれども、あります。そんなことを含めてぜひ御検討を煩わせたい、このことをお願いしておきたいと思います。  長官は、御就任以来、池子弾薬庫や環七ですか、その他琵琶湖などを含めて随分御視察をなさったそうですけれども、意地の悪い質問をするつもりはございませんけれども、長官が現場をお踏みになるということが一番大事なことだと思います。しかし、余りお忍びで行かれることはないと思うので、環境行政の最高の責任者なんですから、その視点で堂々と胸を張って現場の人たちの意見を聞く、そして御自身で持っている悩みについて自問自答していただきたい、こんな気持ちで新聞報道などを私は拝見させていただいておりました。  実は、池子は私の選挙区でございまして、この前の市長さんが池子弾薬庫の跡地に米軍住宅を受け入れるという条件闘争の方針をお決めになって、リコール運動が起こって、リコールが成立する前におやめになって、選挙になった。そして絶対反対の富野君が当選する、こういうことになったわけですが、そういう政治的ないきさつはこっちに置いておいて、私、この際申し上げておきたいし、長官、恐らくお感じになったと思うのですけれども昭和の初めから人跡未踏なんですよ。余り人が入っていないところがあるのです。その意味では原生林というふうな部分も残っていると私は思います。そしてその生態系というのは全体として守られてきたものだと私は思うのです。そういう点では、自然保護という観点で長官にぜひひとつ御努力をいただきたいと思うが、率直な御感想をお聞かせくださいませんか。
  58. 石本茂

    石本国務大臣 就任いたしましてから、騒音問題では環七、それから湖沼の問題では相模湖などを見てまいりました。それから今お話のありました池子の弾薬庫跡などにつきましても、中に入っては見ておりませんけれども、周りをぐるっと回っては見たわけでございます。このまま住宅を建てる、建てないの問題は、防衛庁が所管をしておりますので、防衛庁に対しましては、十分にアセスの問題を検討して考慮に入れて、そして実現の運びにするならやむを得ないと思っておりますが、私どもの方としましては、環境保全ということを十分に検討してくれということは申し入れをしておるところでございます。  以上でございます。
  59. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 仕方がないというふうにおっしゃらないで、自然はどんなにお金をかけても何年かかっても復元できないものでございますから、そういうものを大事にしていく。私は中へ入ったことがございまして、よくそれなりに勉強させてもらいましたけれども、関東一円を見渡してみても数少ない非常に自然度の高いエリアである、地域である。例えばそこに住宅を建てるとかがけを崩すとか、そういうことをやっていけば全体としての自然度が損なわれてしまうことは言うまでもないわけでありまして、そういう点をぜひ御配慮賜りたいと思うわけでございます。  環七の自動車公害の現場を恐らくごらんになったと思うわけですが、この間も公害健康被害補償法の提案理由を御説明になりましたけれども、自動車との因果関係ですね、NO、がやはり大きな問題になっていることは言うまでもないと思うのです。だから恐らく今の中公審の議論を踏まえて、法案の審議の過程で申し上げるつもりですけれども、あの地域指定地域にする、あるいは浮遊粉じんも含めてNOx自身を対象にする、そういうことがやはり必要だなということを長官、別に誘導尋問をするわけじゃございませんが、率直に言ってお感じになったと思うのですが、いかがですか。
  60. 石本茂

    石本国務大臣 環状七号線につきましては、沿道法などの指定を受けておるところでございますのでいろいろな対策が講じられておりますけれども、あそこに立って、見て、聞いておりますと、やはりただごとではございません。そうしたことなどを含めまして、沿道住民の方々の御苦労を考えましたりいたしますと、これはもうとにかく、どうしてこのままほっておいてあるのかということは、悪うございますけれども、どういう法律ができまして、どういう制度ができましても、これは簡単には解決できないなと。そして、今おっしゃいましたNO2の問題にしましても、これはあの沿道でそれを毎日測定をしているわけでございますから、先ほど先生が申されましたように、期限が来ましたから、はいきれいになりました、変わりましたというわけにはとてもいかないなということを現地に参りまして一層強く私なりに受けとめて帰ったところでございます。  そうしたことを基盤にいたしまして、今後の対策のあり方等にも私なりにまた気をつけながら、関係当事者、当局者とともに努力をしてまいりたいという気持ちでいっぱいでございます。
  61. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 あっちこっち飛んで恐縮ですが、私、実は沖縄の石垣島の白保の飛行場建設の反対にかかわっておりまして、国会でも何回かお願いをしてまいったことがございます。私は、できればあのサンゴ礁の価値というものをぜひひとつ守り抜いていただきたい、客観的に環境庁あたりもひとつぜひ調べてほしいということを申し上げてまいりました。かなり大詰めの状態になっておりますのであえて申し上げるわけです。  長官、御存じだと思いますけれども、クストー・ソサエティーというのがございまして、海洋調査を行う民間団体としては全世界にネットワーク持っております。そのクストー協会のリチャード・マーフィ、という人が現場を調べまして、ここは浅いので外海に比べてサンゴの種類が少ないが、それでも――あそこで海洋調査をしていらっしゃるキャサリン・ミュージックという博士がおりますが、その人の調査によると六十種類で、カリブ海に匹敵する、私の見た中では白保のサンゴ礁が一番美しく健全であるということを指摘されて、その調査報告書を環境庁と沖縄県に提出をしてきた。しかし、これまでのところ何の回答も受け取っていない。この間フランスの人気投票かなんかでクストーさん、私もお目にかかりましたけれども、一番票を集めているような、フランスなどでも有名な方でございますが、国際的に白保の問題が課題になっています。私はあの現場へ行ってまいりましたけれども、白保のサンゴ礁を守っていきたい、そのために環境庁も御協力を願いたい、このことをひとつぜひお願いをします。  もう一つ、前長官からウトナイ湖の放水路の問題について御発言をいただきました。恐らくお引き継ぎになっていらっしゃると思うのですけれども、あそこには野鳥のサンクチュアリーもございまして、その意味では、放水路計画というのはかなりむちゃな計画だなと。実際、放水路をつくって現実に機能し得るだろうかという点でも、技術的にもさまざまな問題が提起されております。できれば源流部分を守り抜いていく、そしてウトナイ湖の野鳥のいわばサンクチュアリーを守っていく、こういう点についても前長官同様に御努力をいただきたいと思いますが、その二点について御答弁をあえていただきたいと思います。
  62. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 大臣のお答えの前にいささか事務的で恐縮でございますが、クストー協会の件について先生から御質問いただきまして、相当詳しい御説明もいただいたわけですが、それは先生おっしゃるとおりでございまして、クストー協会が有名であることはもちろんのことでございますが、白保地区に各種のサンゴ礁があることも事実でございます。ただ、先生も百も御承知と存じますが、日本で、沖縄地区のうちでも特に石垣島近辺にサンゴ礁が非常に豊富であることは言うまでございませんが、白保地区だけではないのでございまして、石垣島から西表島にわたる海域等々に相当数ございまして、実は国立公園の中にも相当な地域が海中公園などとして指定されていることもちょっと御理解いただきたいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても国際的な話題になっておるところでございます。その辺は十分認識いたしながら、全体的な問題といたしまして、先生も先般来再三御質問いただいておりますのでもうるるは申し上げませんけれども自然だけの問題ではない問題も含んでおるようでございますので、非常に広い視点から今後とも留意はしてまいりたいと思っております。  それから、ウトナイ湖の点につきましては、余り時間もあれでございますのでるるは申し上げませんが、前大臣のときに私もお供をして参りましたのであえて申し上げますが、あのウトナイ湖の状況は、地域の方々の御協力も得て大変よく保全され、また利用されておるところでございます。これは、いろいろな計画があり得るかとは思いますけれども、何とか円満な形で保全されるように努めてまいりたいということで、現地でも前大臣が記者会見をしたところでございます。時間の関係もございますので、これ以上るるは申し上げません。
  63. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それでは、まだ時間がかなりあるようですから、ワシントン条約の問題に絞って御質問を申し上げたいと思います。  と申しますのは、実はこのワシントン条約の調印、批准に当たって、正直なところ、国会の議事録をごらんいただければおわかりになりますように、私だけとは言いませんけれども、私、この問題について取り組んできた一人でございます。それから、関係方面との調整のお手伝いをもさせていただいた経過がございます。  そういう立場から御質問を申し上げるわけですが、一九八〇年十一月のこの批准に当たって、附属書Ⅰの方から九種、その後二種を加えて留保をしているわけです。この留保について、私は当時、速記録に残っておりますけれども、国際的な責任もあるのでだんだん減らしていきたいということをお約束いただいているわけです。ところが、批准の後留保がふえてきているのです。今では十四種に上っています。これは公約違反ですよ。こういうことについて、これは環境庁になるのか外務省になるのかわかりませんが、経過は細かいことは言わなくても結構です。一体それはいいことか悪いことか、減らすという約束とあわせて簡単に御答弁いただきたいと思います。
  64. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 なるべく簡単にお答えいたしますが、いいことか悪いことかという点になりますと、そのこと自身が決していいことであるというふうにはなかなか申せないと思いますが、ただ、それにはいろいろな事情があったかと存じます。その辺のつまびらかなことは、また必要に応じて御説明し、また直接的には通商産業省の方の関係あるいは外務省さんのお考え等もあると思いますので、るるはあれでございますが、ただ、留保というのはいろいろな条約の場合にあることでございます。それは、それぞれの国の事情もありまして、条約の場合当然なことかとは存じます。ただ、それが非常に多いということは、姿として余り好ましい姿ではないと率直に申し上げます。
  65. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 文字どおりジャパン・アズ・ナンバーワンなんです。しかもふえているのです。よそは減っているのです。こんなばかなことをいつまでも続けているという状態は決して好ましいことではないぐらいのことは、明確に御答弁をいただければそれで結構です。  この条約は、例えばアジアでセミナーをやる、わざわざワシントン条約事務局のライポイント事務局長が来て関係方面に御出席をお願いをした。ところが、これはさんざん頼んだけれども、外務省の方からマレーシアの大使さんが一週間ぐらいの会議の中で頭とけつだけお出になった。締約国会議は別として、その他の会議、いろいろな意味で熱心でないということを指摘されています。その事務局長の言葉によれば、大変嫌なことですけれども日本はワシントン条約の施行に当たってのフィロソフィーが欠けているというふうに指摘をされています。私は、こういう状態というのは、世界の中の日本という立場から言うならば、多くの問題点を含んでいると思います。  それに関連して、私はジャコウジカのことだけに絞って少し質問したいと思うのですが、これは外務省ですか通産省ですか、どちらでも結構ですが、日本はヒマラヤから、特にネパールからじゃ香を輸入しております。これは役所の統計ですが、「日本貿易月報」の統計によれば、一九七三年から一九八二年までの十年間に、ネパールからだけでも千三百六十五キログラムのじゃ香を輸入している。これはお認めになりますか、通産省。
  66. 奈須俊和

    ○奈須説明員 ジャコウジカにつきましてお答えいたします。  留保品目ジャコウジカの輸入でございますが……(岩垂委員「数字を言っているだけなんです。そのとおりかどうかと答えてください」と呼ぶ)私どもの手元にあるデータを申し上げますと、五十八年一月から十二月で三百八十七キログラム、五十九年、これは一月から十月でございますが、二百八十キログラム……(岩垂委員「一九七三年から一九八二年のトータルです」と呼ぶ)まことに恐縮でございますが、突然のことでございまして、手元に持っておりません。
  67. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 結構です。私がトータルをしました。  ネパール政府のワシントン条約管理当局というのは、一九七三年にじゃ香の輸出を禁止しているのです。輸出許可は一件も出してないと言っています。そうすると、一九七三年以降日本が輸入したじゃ香は何らかの違法な手段によって取引されたものというふうに言わざるを得ないけれども、その点はいかがですか。
  68. 奈須俊和

    ○奈須説明員 ジャコウジカにつきましては、先生御承知のようにワシントン条約を留保しておりますので、ワシントン条約上の規制は一切いたしておりません。
  69. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ネパールの政府がそういう輸出をしないと言っている。許可書を一件も出していないと言っている。にもかかわらず入ってきている。これは正当な取引かと言っているのです。
  70. 奈須俊和

    ○奈須説明員 先ほど申しましたように、ワシントン条約上これは留保しております。
  71. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 我が国は留保ですよ。しかし向こうは出してないと言っているのです。それじゃ、どこかから回ってきたのでしょう。
  72. 奈須俊和

    ○奈須説明員 私どもワシントン条約を留保しておりますので、何ら規制の対象になっていない、したがって十分にその実態を把握しておりませんが、一つあえて申し上げさせていただけますれば、あのじゃ香というものは、我が国におきまして古来から医薬品、強心剤……
  73. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それを聞いているのじゃないです。もういいです。質問に答えてください。  ネパール自身は輸出を禁止して、輸出許可書を一件も出してないというのが公式な声明なんです。だけれども入ってきているのです。ということは、まともな形ではないということだけはおわかりいただけると私は思うのです。御照会いただければ、必ずネパール政府からそういう答弁が返ってきます。  実は、IUCN、国際自然保護連合あるいはWWFのジャコウジカの研究調査に携わってきたマイケル・J・B・グリーンという人がいるのですが、これは実は私が直接会ったわけじゃないのですけれども、会った人に尋ねてみました。じゃ香というのは成長した確からしかとれないというのです。だけれども、狩猟というものは、現実にネパールでやっているのですが、無差別で殺されているというのです。雌もあるいは亜成獣も、結局わなにひっかかったり射殺されたりするというわけです。このグリーンという人によれば、殺されたジャコウジカ四頭のうち成長した雄というものは一頭くらいだ、四分の一だというのです。  それで、これは計算なんですけれども、じゃ香一キログラムを採取するためには四十個の香のうが要る。つまり、成長した雄の四十頭が要るというわけです。ジャコウジカは、四十の四倍になるわけですから、一キロとるために百六十頭も殺されるという勘定になるわけです。この計算によりますと、過去十年間日本に輸出された、日本に輸入されたというふうに言ってもいいでしょう、千三百六十五キログラムのじゃ香をとるためには、何と二十二万頭ほど殺された勘定になる。これは計算ですよ。ところが、専門家に言わせるとそれより多いだろうと言われている。  実は、このような問題に対処するために、これは長官よく聞いておいてください。一九八三年四月の締約国会議で、私は経過は言いませんが、取引する場合に、附属書1の種、これを日本は留保していますから、輸出国からの輸出許可書を必要とするということが決議されたんです。日本はこの決議を守るということを内外に公約をいただきたい、そのことの御答弁をいただきたいと思います。
  74. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 お答えいたします。  ただいまのジャコウジカの件でございますが、先ほど通産省から御説明したとおり、本件につきましては日本は留保しているわけでございます。したがいまして、当該ジャコウジカにつきましては条約の規制の対象外であるというのが日本立場でございます。したがいまして、その決議を守るということは今の時点ではお約束できかねる事情にあるわけでございます。
  75. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 こういうことなんですよ、長官。国際的に決議されたことを、しかも違法な方法を含めて輸入している状態をそのまま続けていこうとしているのです。だから国際的な非難を受けるのです。  例えばもう一つ、これは細かくは言いませんが、ライオンタマリンというのがあるのです。これだってそうです。このライオンタマリンというのは、全個体数は地球上に二百ぐらいしかいないだろう。それを日本は、一昨年ですけれども十四匹輸入したのです。ところがこれを入れるときに、飼育繁殖、つまり人工的に繁殖したものだということで入れたのです。ところがこの飼育繁殖というのは真っ赤なうそなんです。これはガイアナというところから入れたのですけれども、そんなところで飼育繁殖はしてないし、またできないというのです。そして、十四匹入ってきて、そのうちの三匹が香港へ再輸出されているのです。実はあっちこっちに配られました。三匹が香港で、二匹がモンキーセンター、三匹が日本平動物園、これで八匹です。あと六匹はどこかへ行っちゃった。これに対して、通産も外務もあるいは環境も、言ってしまえば輸出許可書があったから信用してやりましたと言うのです。  ライオンタマリンというものが絶滅に瀕しつつある最も貴重なものだということは、多少の専門家がいればわかるはずです。ここらのところをビジネスでやってしまうのです。こういうことについても環境庁あるいは関係当局に反省を求めなければいけません。この点についてぜひ長官の御判断を仰ぎたいと思います。こういうことでいいのか、悪いのか。
  76. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 長官の御答弁の前に、大変細部にわたるお話がございましたので、一言申し上げておきます。  まず、基本的には先生の御指摘になったとおりと承知いたしております。ただし、この輸入される段階で、どうも誤りであった、にせであったということが後でわかったようでございますが、きちんとした許可書がついておったことも事実のようでございます。なおるるは申し上げませんが、先生おっしゃったとおりの経過でございます。  ただ、こういうようなことは、環境庁を初め関係省庁、あってはならぬではないかとおっしゃいました点はまさにそのとおりと思っておりまして、特に、ライオンタマリンというのは相当有名なものでございますのですぐわかってしかるべきだという点は、科学当局でございます環境庁としても本当にそのとおりだと思いますので、今後このような事態がないように努力することは当然でございますが、その前提として、法律制度もさることながら、良識といいますか、自然を愛する心といいますか、それが国民の中に浸透しておらないと、税関の方であろうとあるいはその業に携わっておられる業者の方であろうと、そういうベースが心にありませんといかなることもなかなか確保できない。それは先生が先ほど御指摘になりました関係の方の御発言、つまりフィロソフィーがないのではないかという、非常に厳しい御指摘だと思いますし、また大事なことだと思いますが、その辺にもつながっていくことだと思いますので、一言申し上げさせていただいておきます。
  77. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 加藤さん、WWFのディレクトリiには、これは英文ですけれども日本の場合にはマネージメントオーソリティー、つまり管理当局というのが入っていますよ。だけれども、科学当局はないのです。WWFの正式な文書にないのです。科学当局が登録されていなければ、やはりWWFの側から見ると、日本は取引だけで科学的な検討はないのだなということになってしまう。こういうところに既に問題があるのです。きちんと登録して役割を果たしていくということが重要なんです。これは一番新しいディレクトリーです。だから、やはり正式に科学当局という形で登録をして機能をしていく、このことが私は非常に重要だと思います。  さて、それはきょうはやめておこうと思ったのですが、外務省がそういう答弁をするなら、申しわけないけれども私はやります。  実は、日本のそういうワシントン条約の批准に際して、トカゲの草履やかばんという生業を営んでいました人たちの生活も守らなければならぬということで、日本はバングラデシュのトカゲの養殖のためのプロジェクトにお金を出してまいりました。一九八〇年から八十三万ドルです。私は頭が悪いからちょっと計算ができませんが、八十三万ドルというのは二億に近くなります。何にも使われていません。そのまま四年たっているのです。これからどうするかというそれに対する具体的な方針も持ち合わせてないのです。私の判断は、これはできないと思います。  私は、現地でそういう養殖の努力をする、そうすればワシントン条約にひっかからないからということを含めて生業を営んでいる人のためのお手伝いをすることは、間違ったことだとは言いません。しかし、八十三万ドルものお金を預託をしながら、現地で何にもできない。これはFAOがかんでいるのですけれども、今後の見通しもない。  私は外務省は怠慢だと思うのです。こんな怠慢なことをやっておいて、法律がそうですからやむを得ません。何のかんばせあって締約国会議に出ますか。ことしの四月にあるでしょう。こういう姿勢が問題なんです。幾ら日本が国際的な信用を確保しようといったって、一番プリミティブなところから問題がずれているのです。  だから、私もお目にかかったけれども、エジンバラさんが日本にお見えになったときに、中曽根さんにこれらの問題について非常に強い要望をいたしました。例えば、さっき言った原産地証明の問題でも、日本の法律は正直なところワシントン条約にずれているのです。知っているでしょう。特に附属書Ⅱ、Ⅲについて言えば、ワシントン条約は輸出許可書または再輸出証明書が必要だと書いてある。日本のは、輸出許可書または原産地証明書だというのです。しかも、その証明書を出す当局それ自身も極めて厳格にワシントン条約には決められているのです。ところが、私がさっき申し上げたライオンタマリンでもそうですが、結局、政府が書いたからいい。その政府は、ワシントン条約に登録している政府じゃないのです。そういうやり方をしているから日本が責められるのです。  私は、これらの問題は、ワシントン条約を批准した以上はやはり守っていくという国際的な義務があるだけでなしに、国民総生産が世界で第二番目だという経済大国になった日本のモラルの問題として、商取引のモラルの問題としてどうしても考える必要があると強調しなければならぬ。  確かに通産省は輸入貿易管理令を改正すると言っている。そこらについても御答弁をいただきたいと思いますが、実はそれだけではだめなのです。それは輸入貿易管理令というのは取引のことですから、それだけでない、やはりきちんとした法律をつくらなければいけないと私は思います。罰則規定を含む国内法の立法を考えるということを中曽根総理も言っているのですが、それらがどんなふうになっているのか、通産省に聞きたいと思います。つまり、輸入貿易管理令をどのように直そうとなさっていらっしゃるか、それから罰則規定を含む国内法の立法をどのように進められておられるか。  それから、環境庁長官は、この際税関職員を訓練するとおっしゃいました。それらのことが予算措置を伴って進められようとしているかどうか、これらのことぜひまとめて御答弁をいただきたいと思います。
  78. 瀬崎克己

    ○瀬崎説明員 先生指摘のとおり、日本政府が批准いたしました条約を遵守するということは当然のことでございまして、私どもとして、諸般の国際的な批判があるわけでございますが、今後一層努力していきたいということで、特に、四月二十二日から五月三日までブエノスアイレスで開催されます第五回目の締約国会議におきましては、日本の今後とる措置につきまして国際会議の場で発表させていただきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、先ほど先生の御指摘のございましたFAOに対する八十三万ドルの拠出でございますが、これは私どもとしても、日本政府が拠出した二億円近い金が数年間にわたってたなざらしになっているということはまことに遺憾でございまして、今後とも、このプロジェクトが実現する方向でバングラデシュ、FAO寺とも話を詰めていきたい、かように考えておりますが、いかんせん、バングラデシュの農業大臣がこのプロジェクトを推進することに一度合意したわけでございますけれども、その後、バングラデシュ政府の中でいろいろ優先度の高い事業を先に推進するということで、これが必ずしも今日まで実現に至ってないわけでございます。  私どもといたしましては、今後バングラデシュと引き続き話し合いを続けますが、最終的には、バングラデシュ政府の了承が得られない場合には、このプロジェクトを、もちろんFAOを通じてやるわけでございますが、ほかの国、すなわちインドオオトカゲ、アカオオトカゲ等が繁殖する地域でこのプロジェクトを実施し得るのであれば、バングラデシュにこだわることなくその対象地域を探してみたい、かように考えておるわけでございます。
  79. 奈須俊和

    ○奈須説明員 ただいま御質問のございました原産地証明書の取り扱いについてお答えをさせていただきます。  先生指摘のように、諸般の事情によりまして原産地証明書による輸入を認めておるところでありますが、これを条約どおりの制度に改めるということにしまして、現在諸般の準備を進めております。今最終段階でございます。遅くとも本年度じゅうには制度を改正したいと考えております。  国内法制、輸入貿易管理令で十分かという御質問がと思いますが、ワシントン条約は絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約でございまして、したがって輸出入の管理がございます。そういった輸出入の管理につきましては、すべて外国為替及び外国貿易管理法に基づいて行っております。そういう法律の建前でやっておるわけでございます。したがって、輸出入に関してはこの法体系でやってまいりたいと思います。
  80. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最後に、長官に御答弁いただく前に、お伺いするところによると、フィリピンとの経済協力でそういうことに取り組もうというふうに考えていらっしゃるようですけれども、私は、そういうことも大事かもしらぬけれども、例えばWWFなんかの権威ある専門家やあるいは科学者、そういう人たちが中心になった人工養殖やら繁殖やら、そういう形に対する取り組みに協力をしていくということの方が国際的にも実際的にもかなりプラスになるだろうと思いますので、その点を長官、頭に置いていただきたいと思うのです。  それで、これは日本にも問題があるのですよ。例えばツキノワグマというのがありますね。あれは附属書Ⅰなんです。商業取引は禁じられているのです。ところが日本では有害獣として捕殺されているわけですね。しかし附属書Ⅰですから、条約では外国へ輸出はできないはずなんです。ところが、これを人工繁殖をしたという名目で実は輸出しているのです。八一年に三十八頭、八二年に八十二頭、八三年に八十三頭と、韓国が中心ですけれども、そういうふうにやられていることなどについても、実は国際的には、一体ワシントン条約を批准しておいて日本は何を考えているんだろうかということがあるのです。  その場合に、私がさっき申し上げた、通産省は輸出、輸入の問題ですから、それは専門的な知識を持てと言ってもなかなか無理なのかもしれません。しかし、今申し上げた科学当局というのがあって、それは環境庁が果たさなければならぬ責任があるのです。だから、通産省に助言をしたり、あるいは通産の相談を受けたり、そういう仕組みをやっていかないことには、役所の縦割りで、こっちは法律でもってこれだけやっていけばいいんだ、そういうわけにはいかないのです。ワシントン条約の精神というのは、管理当局と同時に科学当局、この車の両輪がチェックし合って守り抜いていくというのが条約の精神ですから、環境庁もぜひ頑張っていただきたいなというふうに思います。  私、この間オーストラリアヘ行きまして、エリマキトカゲのことで随分言われました。学術研究用で入れたのでしょう。あれはワシントン条約に直接関係ありませんけれども、入れて、聞いてみたら、あれ一日百万円です。三匹やったら三百万円。そうやって回して見せ物にしているわけですね。オーストラリアの人たちにしてみたら、テレビのコマーシャルに出ているものなどかいま見て、一体日本はどうなっているのだ、あれは学術研究用で出しているのだけれども、どうも人寄せ興行みたいなものでコマーシャルに使われている。しかも一日百万円で借りてきて、使用料というのですか、そういう状態というのは、これは諸外国から見たら、日本はどういう国なんだろうかと言われてもしようがないと思うのです。  そういう問題を含めて、もう時間が来ましたからやめますけれども環境行政はさまざまな面を持っておりますが、生きとし生き続けているものに対する温かい人間としてのいたわりや思いやりというものがなければ、この国の環境行政というのは国際的な評価をから得ることはできない、こんなふうに思いますので、どうぞ最後の御答弁をいただいて、終わりたいと思います。
  81. 石本茂

    石本国務大臣 いろいろと何か胸の中に詰まるような御提言をたくさんちょうだいいたしました。  各省庁との連絡会議が昨年の十月に設置されまして、本年四月のワシントン条約締約国会議を目の前にいたしておりまして、この連絡会議の議長を環境庁局長が務めておりますので、いただきました御提言の数々を十分考慮しながら、関係省庁等も含めましてよい結論が出る方向に向かって努力いたします。  ありがとうございました。
  82. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうもありがとうございました。
  83. 辻英雄

    辻委員長 次に、竹内猛君。
  84. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、先般石本長官が施政方針を説明されましたが、それに関連をして、湖沼法の問題それから画定公園の問題、悪臭の問題、さらに筑波研究学園で開かれる科学技術博覧会に関連をすること、並びに昨年の暮れに二点ほど質問注意書を提出をしましたが、これの答弁に関係をして、なお不十分な点を質問したいと思います。  まず最初に、お久しぶりに御婦人から大臣が出たということは大変おめでたいことでありまして、ひとつしっかり頑張っていただきたいと思うのです。幸いに環境という、快適な生活をするため、快適な生活環境をつくるために大変大事な役所でございますから、ぜひこれからも頑張っていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、昨年成立したところの湖沼法について、現を進行している全国の各湖沼の富栄養化状況、こういうものに対してどのように対応できたと長官はお考えですか、そのことについてお伺いします。
  85. 石本茂

    石本国務大臣 湖沼法が成立いたしましたが、まだ具体的に湖沼法そのものの実施が行われておらないところだと私は考えております。     〔委員長退席、福島委員長代理着席〕  水質汚濁防止に関することは、排水規制の対策に加えまして、水質環境基準の確保が緊急な、しかも非常に重要な問題でございまして、指定の湖沼につきまして、下水道整備などの水質保全に資する事業と各種汚濁源に対するきめ細かな規制等の措置を、地方公共団体あるいは関係省庁などとの協力のもとに総合的な計画の中で進めていかなければならないものだというふうに考えております。  さっき申しましたように、湖沼法の施行とあわせまして、湖沼の富栄養化を防止するため、水質汚濁防止法に基づき、全国の富栄養化しやすい湖沼を広く対象として窒素及び燐の排水規制を実施する予定でございます。  なお、富栄養化の防止等湖沼の水質保全のためにはかなりの時期を要するものだと考えておりますが、これらの対策によりまして湖沼の着実な水質改善が図られるよう最善の努力を払ってまいりたいという決意をいたしております。
  86. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は茨城県の霞ケ浦の近くに住んでおる者として常に本項の問題については深い関心を持っています。その周辺もそうですけれども。  昨年の湖沼法の問題に関連をして、今もお話がありましたが、窒素と燐というものの規制が不十分である、だから私たちはこれに対して注文をつけた。この法律によってのみでは完全なものにはならないであろう、こう思っておりますが、これに対して長官のお考えはどうですか。現在の法律だけでうまくいくと思いますか。
  87. 佐竹五六

    佐竹政府委員 一応事務的な御答弁を申し上げて、後刻長官からお答えいただきます。  確かに、水質汚濁防止法は規制を目的とする法律でございまして、これだけでは湖沼、特に富栄養化の著しい湖沼等の浄化を図るには不十分であるというところから、新しくいわゆる湖沼法を制定いたしました。規制と事業一体として施行されるようにしたわけでございますが、いずれにいたしましても法律は形を整えたわけでございまして、いわば仏をつくったわけでございますが、これに魂を入れることが必要でございまして、それには関係各省の御協力もいただかなければならないわけでございます。私ども、湖沼法に基づく水質保全計画の策定を通じて各省の御協力もいただくようにお願いしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  88. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 長官はどうですか。
  89. 石本茂

    石本国務大臣 ただいま局長が申しましたとおりだと考えております。
  90. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 水質を汚濁している原因というものを明確に、つまり人間の病気に例えれば、どういう原因でこの人が病気になったのかということを明らかにしない限り、処方せん、治療の方式は出てこない、こういうふうに思います。そこで、根本の原因はどこにあるのかということについてどのように考えられているかお聞きしたい。
  91. 佐竹五六

    佐竹政府委員 湖沼等の富栄養化の原因でございますが、汚濁負荷の原因は、広く申し上げますと、事業系の汚濁負荷、生活系の汚濁負荷、それから自然による汚濁負荷の三種類に分けられるわけでございます。この中で、生活系による汚濁負荷、具体的に申し上げますと、し尿あるいは雑排水、こういうものによる汚濁負荷の影響が一般的に言えばかなりウエートがある、さように認識しておるわけでございます。
  92. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今三つに分けられましたが、そういうような認識ではちょっと困ると思うのです。これは後で議論しますけれども、やがて中国地方の中海・宍道湖の埋め立てが問題になる。既に現地では大変問題になっている。霞ケ浦は、中海・宍道湖から見れば、汚濁の、アオコあるいは富栄養化の兄貴分だ、実際。  もともと常陸川の水門を閉める前まではああいう状態は起こっていなかったのですね。ところが昭和三十八年に常陸川の水門をつくって、ある意味においては産業対策、洪水対策というものがあったけれども、やがてそれが四十五年に鹿島の工業用水という形になる。そうすると、常陸川の水門はほとんど閉め切り、つまり閉鎖水域ですよ。出るところがなくて入る一方で水が多くなってくる。それは今言うように三つに分類したすべてのものがそこに入ってきて、さらにもう一つのものが閉鎖水域という状況。つまり自然の生態系が壊されてしまった。そこからこの問題が出ておるというように認識しなければ問題は解決しない。どうですか。
  93. 佐竹五六

    佐竹政府委員 ただいま御指摘のございましたように、富栄養化の起きているところはいずれも水が滞留しやすいところでございます。そのような意味で、これは霞ケ浦という意味ではございませんけれども、一般的に、水の回転が遅くなれば確かに富栄養化しやすい条件が出るということは間違いなく申せます。  それから、ただいま霞ケ浦について具体的に御指摘がございましたので申し上げますが、私ども、常陸川水門の建設、その維持管理が霞ケ浦水質にどういう影響を及ぼしているかについて具体的知見を持っておりません。建設省の方から御答弁があるかと思いますが、ちょうど今御指摘のございました三十八年からその後というのは、霞ケ浦周辺が非常に大きく変化した時期でございまして、人口一つとりましても、三十五年から約三割ぐらい伸びているわけでございます。宅地も大体二倍ぐらいにふえている。このような条件もまた霞ケ浦水質に非常に大きく影響を及ぼしていることは否定できないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  94. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題については後でまた改めて議論をします。  今度は長官にお伺いするわけですが、霞ケ浦は全国でも一、二を争う汚濁のところです。それで代々環境庁長官に就任をされた方々は必ずあそこに来ていただいていて、大変感謝をしているわけです。最近では原長官、鯨岡長官、それから梶木長官もそうだったかな。引き続いて、ついこの間は上田長官、こういうふうにおいでいただいておりますね。汚い水だという認識だけは間違いない。間違いない認識だけれども、お帰りになってみて何にもできない。これでは、せっかく時間を費やして来ていただいて、激励していただくのは結構だが、さてその後はどうかというと、依然としてより悪くなることはあってもよくなることはない。こういうことでは大変困るわけでありまして、そのようなことを前提にされて、長官、霞ケ浦の方に出向いていくという御日程はおありでしょうか。
  95. 石本茂

    石本国務大臣 近いところでございますのにまだ行っておりません。近くまで参りましたが、雨がどしゃ降りでございまして湖の方には行けませんでしたが、アオコがたくさん出ているところですから、七月ごろにでもなりましたらぜひ一度寄せていただきたいと考えております。  それから、今先生が申されますように、どうしたらよくなるのか。結局下水設備の問題が十分ではないのじゃないかということと、地域住民といいますか、人々がもう少し、自分の湖、自分の水資源でございますから大切にしようという気持ちで、お一人一人が自分の台所から流れます雑排水について心を使ってほしいなというようなことを今考えておりますが、また見ました上で地域の皆様とも十分にお話し合いをできる機会をいただきたいというふうに考えております。
  96. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大変前向きで結構なことだと思うのですが、ちょうど七月、八月というのは一番アオコが発生をして大変なときですね。この間ある新聞にも出ていたように、土浦駅のプラットホームに立ったときに非常ににおいがする。肥だめをひっくり返したような、あるいは豚が死んで腐ったような、こういうにおいがするのですね。一体これはどうしたことなんだという投書が来ました。それだけではない。その周辺の人たちはそのために眠れないこともあるということも聞いていました。現に現地を見て、これはどうにもならない状態だな。  それで、この地域には無数の湖をきれいにしようという団体がある。まずその代表が、こういう「桜川」あるいは「清流はどこへ行った」というような、既に何号かの調査資料を出しておりますが、長官、この皆さんとひとつゆっくりひざを交えて話すくらいの時間をおとりになれるかどうか。これをとっていただいて、本当にひざを交えてこの人たちと話をする。そしてその中で今まで悩んできたことを、こういうパンフレットだけではなくて、実際の仕事をする皆さん、行政の皆さんに、県も、心を割って話ができるように、お互いにそれぞれの持ち場持ち場でこの問題を処理していくというようなことにしたい、この点はいかがでしょう。
  97. 佐竹五六

    佐竹政府委員 若干事務的に御答弁申し上げまして、最後に長官から。  私ども、霞ケ浦に何回か伺いまして、周辺住民団体の方々の活動ぶりにつきましては国公研等から十分に伺っております。大変着実なお仕事を進められ、特に国公研等ともよく接触をされておるようでございました。何せ第一次的には、行政責任を持っておりますのはやはり茨城県でございますので、茨城県の担当局長ともできるだけ前向きによく相談いたしたいと思います。長官自身もそのような機会をできるだけつくることを御希望になっておられますので、そのような機会もつくるようにいたしたいというふうに思います。
  98. 石本茂

    石本国務大臣 今局長も申しておられましたが、私といたしましては一日かけまして、そして一地区だけではなくて周辺の地区の幾つかのところの皆様方とも十分に話し合っていきたいというふうに希望しております。
  99. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それだけお聞きすれば地元に正確に伝えて、そして地元の皆さんとしっかり話ができるように――それはすぐきれいになるとは思いません。長い間かかって汚したことだから、きょう、あすにもきれいになるなんということは考えられない。考えられないが、ぜひそれをしていただきたい。  そこで、地元環境局長といいますか、茨城県の環境局長と大分議論したけれども、重要なときになると逃げてしまう。こういうことでは実際は困るのです。そこで建設省にお尋ねしますが、建設省は霞ケ浦の総合開発のために今日までトータル幾らのお金を使ったかということを、今すぐでなくてもいいが、わかるだけトータル出して、内訳は後にしてもらいたい、これが第一。  第二は、霞ケ浦の漁業補償というもの、常に何かあれば補償を要求する漁民がいますね。漁業権というものは無限に補償すべきものなのか、それとも作業中にちょっと魚がとれなくなるからやるのか。ともかく漁業補償というものは莫大に補償しているのですね。何百億という補償をしている。しかし、その漁業補償の内訳、基準、だれが幾らもらったかということについては全くわからない。これは水産庁、農林水産省だ。これをここですぐ出せとは申し上げません。申し上げませんが、委員長、この資料はぜひ出してもらわなければ困る。何百億という補償金を出して、だれがどこでもらったのか、だれが漁業権者であるのかわからない、こんなばかなことはないのです。  そこで、トータルとして何ぼかということについて、時間の関係からわかるだけ建設省に話してもらって、細かい資料については、委員長の方から、漁業権あるいはどういうふうに配分をしているのか、だれがもらったのか、漁業権者というものは何人いてどうなったのかということについて明らかにしていってもらわないことにはやりようがない。どうです。
  100. 志水茂明

    ○志水説明員 先生のただいまの御質問でございますが、まず第一の、今までに霞ケ浦開発事業に投じました事業費は五十九年度末までに約一千三百八十億円でございます。大体これで六五・一%の進捗率でございます。  それから、漁業補償の関連につきましては、四十九年の十二月以来交渉妥結を順次行ってまいりました。五十九年三月末までに本事業にかかります漁業補償はすべて終了いたしました。総額二百八億円でございます。  細かい資料はまた後ほど水公団の方で用意をさせますが、現在わかっております数量を申し上げますと、補償対象は霞ケ浦漁業協同組合連合会傘下の組合を初め三十七の漁協等に対しまして、組合員全部で五千百名余りでございますが、この皆様方に対しまして二百八億円の補償をいたしております。  以上でございます。
  101. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 三十七の漁業組合に五千百余名の漁業権者がいる、そして二百八億円の補償を払った、こういうのですね。補償の配分は水産庁になるのかな、建設省がやっていますか、この問題について極めて不明朗なものがある。配分の基準、一体魚というものはどれぐらい漁獲があるのか。中にはパチンコを経営している者が漁業権者として金をもらっている。そういう人がいっぱいいる。釣りをやっている者が漁業権者として金をもらっている。だから、その資格というものが明らかでない。これは農林水産省と建設省がやっているわけだからね。しかも、補償金というのは税金ですからね。何か騒げば金をくれるという風潮が今でもある。これはひとつ厳に整理をしてもらいたい。こういうことについては正当であればいいですよ。世間からいろいろなことを言われないようにしなければいけないので、きょうここですぐ答弁を求めませんが、関係省庁で集めて、やがていずれの日にかこの問題は名簿を出して、基準を出して明らかにしてもらいたいということだけは注文をしておきます。もちろんこれは県も入っていることでしょうから、県の方にも要求をしなければいけない。  そこで、次に移りますが、常陸川の水門の問題について非常に軽く見ているように思いますが、これは軽く見てはいけない。これから中海・宍道湖についても淡水化しよう、二千八百町歩の農地をつくろう、こういうことを計画しておられる。農林水産省は既にそれを日程に上せている。しかし、現地の方々、島根県や鳥取県の皆さんは、これについて今ごろ何をやるんだ。八郎潟の干潟を見ても、十五町歩の水田をつくって、減反をして何人かが自殺をしなければならないほど悩んでいる。あるいは岡山県の児島湾、それから新潟県の鳥屋野潟、あらゆる自然の水域が埋め立てをされて、食糧増産、水田あるいは酪農、野菜、こういうようなことに使うということでやっているけれども、決してそこには笑顔はないですね。自然を壊されて、そうして今や悩み抜いている。  霞ケ浦は既にこの常陸川水門の閉鎖によってこれだけの汚濁の状態ができた。そして今度は宍道湖や中海がまた霞ケ浦のようになるではないか。日本のシジミの六五%を生産するヤマトシジミの産地がなくなってしまうではないか。シジミをとっている漁民は二億四千万の補償金を返すと言っている。ところが役所はもらわないと言うから、供託をしようじゃないか、こういうことになっているでしょう。だから、そのようなことからいって、この常陸川水門というものが霞ケ浦の汚濁に大きな役割を果たしてしまったということについて、これは建設省だな、どうですか、認めますか。
  102. 萩原兼脩

    ○萩原説明員 お答えをいたします。  常陸川の水門の開閉状況が湖水の水質にどんな影響を与えるかというお話かと思います。先生は断定的に水門が悪いんだとおっしゃるわけでございますが、まず湖全体の平均的な水質に関しまして水門の操作がどんな影響があるかということでございます。  確かに設置当時に比べますと水門を閉めておる時間が相当長くなっております。しかしながら、一年間を通じて見ますと、年によっていろいろ違うわけでございますが、大体平均しますと百日以上水門をあけまして湖の水を流しているわけでございます。したがいまして、まあ八億立方メートルたまるようになっておりますところに大体年間平均で十四億立方メートルの水が入ってくるわけでございまして、この水がやはり常陸川を通じまして流れているという基本的な状況は変わってないわけでございますので、そういう湖の全体の平均水質に関しまして水門の操作が悪影響を与えている、そういうことはないと私ども考えておるわけでございます。  ただ、入退潮がございますときに、最近できるだけ逆流のときは閉めておりますので、恐らく常陸川の川そのものの水質に関しましてはいろいろ影響が出ていると思いますが、これは御存じのように平常時の操作といいますのは両県の知事さんからの御要請で私ども操作をさせていただいておるわけでございます。したがいまして、農業用水の問題だとか都市用水の問題とかあるいは漁業等につきまして総合的に判断できる立場の方が閉めた方がいいと言うときに閉めろ、こういうお話をしておられますので、総合的に評価しまして、いろいろな水質の指標がございますが、総合的に見まして悪くしているということはないのではないかというふうに私ども信じております。
  103. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それがだめなんだよ。それが誤りなんだ。  では、もう一遍聞くけれども、五十八年、五十七年、どれぐらい開閉をしたかということについてちょっと教えてくれないかね。何回ぐらい、何時ごろに、一日のうちですよ、二十四時間の中で一体どういうような開閉をしているかということについてちょっと教えてもらいたい。
  104. 萩原兼脩

    ○萩原説明員 ちょっと細かい実績を持ち合わせておりませんが、年間で申しますと、日数にいたしまして五十七年の場合は百四十四日、五十八年の場合は百二十一日ゲートの操作をいたしておる記録がございます。大体引き潮のときにあけておることが多いのではないかと思います。     〔福島委員長代理退席、委員長着席〕
  105. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ではこちらからひとつ教えてやりましょう。これはもう現地はとても我慢ができないのですよ。建設省が知事に言う。千葉県と茨城県の知事が代行してやっている。知事だってそこへ行っているわけではない。  四十八年のころに、ちょうど夏に渇水があって、日照りがよくてアオコが出て、そしてコイが死ぬ、魚が死ぬ、どうしようもない。漁業協同組合の若い諸君が集会をやる。僕はそのころ農林水産委員会の委員だった。来てくれ。当時は岩上というのが知事をやっていた。今は参議院議員。これを見てくれ。岩上知事はそうっと眺めて、ひでえなと言って帰った。ところが、若い諸君は今度は漁業協同組合に集まって、竹内さん、この常陸川の水門を爆破したいんだがどうだ、こう言う。いや、その気持ちはわかる。しかし、国会議員としてやれとは言えないからね。気持ちはわかると言ったら、その諸君は次の日に死んだコイを県庁の前に持っていってぶちあけた。そうしたら新聞で全国に報道された。それ以来この常陸川水門というのは霞ケ浦の汚濁の一つの大きな、これが犯人と言うと言葉は悪いけれども、そうみんなが言っている。  確かにそれは工業用水もあるだろう、あるいは家庭の雑排水もあるだろう。それから畜産でも、あの周辺全国でも有数の豚の産地です。だから、豚の汚水も流れるだろう。さらには細いけすもあります。それからレンコン、こういうものもそのうちの一つには違いはない。だけれども、入るものはそういうものが入ってきても、流れ出すところはあそこしかないんだよ。従来、海水が入っていると非常に水はきれいだった。その海水を抑え込んでしまって、汚れたものが入ってくれば、それはそこが腐るに決まっている。幾ら環境庁が頑張ってもこれは無理なんだ。  それはなぜかというと、鹿島の工場にきれいな水を送らなければ、住友金属や化学や、あるいはあそこのところへ誘致した工場がとまってしまう。塩分のある水が入ったんでは困る。工場のために農業や水産やあの地元が、ましてそこに生活している家庭の飲料水までだめになってしまった。幸い最近日本で初めて水から生物を抜くという装置ができて、飲む水は幾らかきれいになったけれども、しかし根源はちっとも直っていない。  そこで、一体どうかというと、これは開閉の時間、五十七年においては七百七十三・五時間というものが開いているわけですね。どういう時間にあけてあるかというと、夜中の三時から四時、四時から五時、五時から六時、六時から七時、七時から八時。これは真夜中ですよ。あとはほとんど一時間ぐらいしかあけてないんだよ。だから、暖かい太陽がきらきらするときにあけてないんだから、真夜中は太陽は照っていないですよ。みんなが寝静まっているときに幾らかあけたって、それは幾らかきれいになるでしょう。なるけれども、やはりこれは根本的なあれにはならない。何といってもこれはならない。  だからこの際、建設省にはこれ以上言ってもしようがない、通産省だ。通産省はこの工場を誘致したわけだから、通産省としては一体この問題についてどう考えているのかということについて聞きたい。
  106. 合田宏四郎

    ○合田説明員 お答えいたします。  先生御質問の霞ケ浦の水質浄化対策といたしましては、排出規制あるいは下水道整備あるいは霞ケ浦導水事業等の対策が現在実施されているところでございますが、このうち最後に申し上げました霞ケ浦導水事業は那珂川と利根川の水を、流況調整河川、一種の導水トンネルでございますが、それを建設いたしまして、霞ケ浦の方へ導水する、こういう計画でございますので、私どもといたしましては、工業用水取水の立場とそれから先生が御指摘の霞ケ浦の水質浄化が促進されるという観点から、この導水事業の促進につきましては積極的に協力してまいりたい、こういう構えでございます。  具体的に申し上げますと、この霞ケ浦導水事業に共同参加する茨城県の水源費補助事業というのをこの六十年度から新規の補助対象として採択をいたしまして、霞ケ浦の水質浄化に取り組んでまいりたい、こういう考えでございます。
  107. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今、霞ケ浦の総合開発に関連をして、確かに県西用水事業という大きな国営土地改良事業が進められている。これに対する那珂川導水あるいは利根導水、この二つの導水事業が行われていることは承知をしております。一昨年くらいから始まった。これがいつごろ完成をするのか、その間は一体周辺の漁民、農民あるいは市民が我慢をしなければならないのか、こういうことになるわけだ。やがてこうなるから、おしんじゃないけれども我慢しろということになるのか。それとももう少し手の打ちようがあるのかどうなのか。これは環境庁の責任じゃないですよ、実際は。環境庁はいい迷惑なんだ、本当に。だからこの際、いや別に工場をつぶしてしまえというわけじゃない。やはり工場は、これはもうできた以上はしようがない。本来ならば霞ケ浦の水をくみ上げて浄化して工場に送らなければならない、こういう提案もしたい、実際は。ところが、金がかかるとおっしゃる。だけれども、そうでもしなければしようがないでしょう。  もう一つは、常陸川の水門の開閉だ。これは両県知事が建設省の委任を受けてやるというけれども、漁民や農民や市民やあるいはそこの地区の行政、中小の工場、こういうものの代表によってその霞ケ浦の水門の管理委員というようなものをつくって、これは公共のものですからね、偉い人ばかりが集まっていてもこれはだめなんだよ。やはり大衆が集まって、霞ケ浦というものを本当にみんなできれいにしようということで何やらその管理委員会をつくって、それで工場にもよろしい、点もとれる、農業をやっていける、そういうふうにしていかなければ霞ケ浦というものは大衆のものにならないし、その地域、国民のものにならないと思うのですけれども、この辺についてはどうですか。
  108. 萩原兼脩

    ○萩原説明員 全体の出し入れの関係お話は、私、答弁する立場にはないのかと思いますが、先ほど来のおしかりを受けております常陸川の水門でございます。  先生御存じのように、両知事からの要請で私どもがゲートを動かしておるわけでございますが、実際、この流域には常陸川の水流対策協議会というものができております。これには先生ただいまおっしゃいました農業用水あるいは上水道、工業用水関係者、あるいは漁業の関係者、それから市長、流域の市町村の町長さんを初め代表の方、それから県のそれぞれの部局の方、そういう方が入られまして、申しました常陸川水流対策協議会というものをつくって、それが動いておるわけでございまして、ゲートの操作等に対していろいろ要請をできる立場の組織として活動しておられるわけでございます。  先ほど来先生がおっしゃいますように、常陸川の水門がそうでございますように、大体ああいうところに位置しますああいう施設の操作というものは大変難しいわけでございまして、百人関係者がおられたら百人の方がみんな褒めてくださる操作というものはなかなかできないわけでございますが、ただ関係の方を全部集めれば必ず皆さんの意見を取り入れられるいい操作ができるということになるのかどうか、やはり慎重に考える必要があると思いますので、私どもは当面その常陸川水流対策協議会というものの場を通じまして、また両県の知事部局と十分連絡をとりながら最善の操作をしてまいろうというふうに考えております。
  109. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 総論的に今申し上げて、これ以上やると次の時間がなくなるから、次の方へ移ります。  今度は自然公園の問題にちょっと入りますが、水郷筑波国定公園、これが決まったときには、既に南筑波の方には採石が許可をされていた。採石の工場が三地域にありまして、七社ないし八社がそこには関係をしていたと思います。いよいよ来年ごろはこの期限が切れる時期になっているわけですね。  ところが、この中で許可基準というものに関連をして、誠実に行っている者と、全く石さえとればいいのだ、こういう業者があります。大変不届きだと思うのです。騒音それからじんあい、道路を占有する。あるいは雨が降れば土砂が流出をする。地元の集落、特に東城寺という集落は大変迷惑をしている。そこで村ではもうこの際やめてもらいたい、こういうふうに要請をしている。ところがまた、中にはそこで働いている人もいますから、なお継続をしてくれというような請願も出ていますが、問題は自然公園というものを、国定公園があれほど荒されてしまって、なおこれをほっておくわけにはいかないですね。だから緑化計画というようなものがあって、石はとるけれどもとった後はこのように植樹をしてきれいにするのだというようなことがない限りこれを継続してもらったら困る、こういうふうに思うのですね。  そこで、これは通産省に関連をするし、あるいは自然公園法にも関連しますから、それぞれの立場から、この問題についての最終許可責任者といいますか、そういうものの立場もあると思いますが、そういうものを踏まえてひとつ御答弁をいただきたい。
  110. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 まず、環境庁自然保護の面からの御答弁を申し上げます。  先生地元でいらっしゃいますので十分御承知のことでございますが、水郷筑波国定公園指定されておる地域内でただいまおっしゃいました採石の問題、これは約十年ぐらい前からのことと聞いております。一応は十年間というようなめども何か持ちながら施業されておるやに承っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、まずお断りしておかなければなりませんのは、国定公園内のことでございまして、これは基本的には都道府県知事さんにお願いしておる事項でございます。権限的には都道府県知事の許認可、指導ということになるわけでございます。しかし必要に応じまして県当局とも十分連絡をとる機会は従来からあったわけでございますので、御指摘の点は十分踏まえまして指導助言してまいりたいと基本的には思っております。  なお、先生実情を非常に御承知の上でお話しになっておるところでございますので、るる申し上げるのもいかがと思いますが、なかなか難しい問題でございます。特に先生が御指摘になりましたように、きちんとやるところはいいんだけれどもというのが、またこれ、現実に指導していくにはなかなか難しい問題がございます。ただいずれにしましても、基本はある計画に基づいて施業といいますか採石を実施することを許可しておるわけでございますので、その一定の計画に従ってとり方等についても条件をつけておるはずでございます。  なお、それが終わった後は、緑化といいますか、形によっていろいろあると思いますけれども跡地整理といいますか、それを厳しく行わせるようにいたしておるはずでございます。環境庁もそのように都道府県と連絡をとっておりますので、そうなっておるはずでございますが、環境庁としても今後とも適切な指導は引き続きいたしていきたい、県と協力して、県の方とも連絡をとりながら指導をいたしていきたいと思っております。
  111. 林暉

    ○林説明員 御説明いたします。  先生指摘のございました採石法の運用でございますが、岩石の採取に伴う土地の崩壊等の災害の防止につきましては、採石業者の登録制度それから岩石の採取計画等の認可によりまして、一定の技術的、施設的な要因を踏まえまして認可をしているわけでございます。認可に関しましては、御高承のとおり、都道府県が岩石の採取計画を認可するようになっておりまして、その認可の基準といたしましては、資源エネルギー庁が作成いたします採石技術指導基準によりまして、採石方法あるいはその採石の跡地の処理等につきまして具体的に判断をされて、また地元市町村の意見を聞いて認可をしているものでございます。  それから、この認可に際しましては、先ほど先生指摘のございました緑化の問題もございますが、緑化につきましても基準に従いまして原則として緑化をするということが決まっておりまして、特に御指摘の京城寺地区に関しましては、現に私どもの理解では緑化を段階的にやっていると承知いたしております。
  112. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大変結構な説明だけれども、そうはなってない。だから、またこれも現地を見てもらわないと困る。石はとればよろしい、そして騒げばその企業は今度はやめます、やめて、その権利をだれかにまた引き続いて渡していこう、そういうような、石だけとればいいということで、よそへ行っても行った先で今度また同じことをやられたら困るから、これは行った先でも仕事ができなくなるぐらいのお仕置きをしなければよろしくない。そういう悪徳業者、悪徳業者と言ってはちょっと言葉が悪いかもしれないが、それに類する、と思われるものについてはやはりけじめをつけなければいけない、こういうふうに思いますね。  だから、これも全部ではありませんよ、私は年じゅうそこへ行っているからよく山を見るのですが、青年の家とか老人憩いの家とか山岳公園とか跡地の利用は幾らでもある。そういうふうに石をとることであれば別に山から追い出すという必要はないので、ぜひそのような指導をしてもらいたいし、今言うその基準を一遍見せてもらいたい。私はそこまでよく承知してないから、それに照らしてもう一遍この目で点検をしたいと思います。  続いて、悪臭という問題について質問をします。  これは環境庁の管轄だけれども、悪臭防止法が出て、悪臭問題で、一番の中心になっているのは大気汚染、続いて家畜だ、こういうふうになっていて、それからまあいろいろありますけれども公害の中の七つのうちでは、四つは何といっても騒音、悪臭、大気汚染それから水質汚濁。こうなってくると、やはり騒音は大都市に多いわけで、さっきの岩垂さんのところが騒音の産地だけれども、私のところはそういうものじゃなくて、悪臭それから水質汚濁、こういうところが中心になっていますね。これも並大抵のものじゃない。  そこで、この悪臭というものの規定ですね。何をもって悪臭と断定するのか。これはどうですか。
  113. 林部弘

    ○林部政府委員 悪臭防止法におきましては「不快なにおいの原因になり、生活環境をそこなうおそれのある物質」を政令で定めております。アンモニア、メチルメルカプタンなど八物質が定められておりまして、その排出の規制を行うという悪臭防止法上では、今申し上げましたような「不快なにおいの原因となり、生活環境をそこなうおそれのある物質」というものを法令で定めておるということでございます。
  114. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大変抽象的で、悪臭といったら何もかも悪臭で、これは大変不快になってしまうから、悪臭というのは非常に幅が広くてつかみにくい。  そこで、悪臭問題に関連をして、これは産業と関係があるのですね。特に農村においては畜産、豚あるいは鶏、それから酪農、これは大事な産業ですよ。それが悪臭源なんだ。しかも最近は鶏が一億七千万羽ほど日本にはいると言われている。実際は一億二千四百万羽だけれども、やみ養鶏というのがこのごろはやってきて、そうなっている。これはまた別な問題でぐあいが悪いけれども。そして、その中で五千羽以上鶏を飼っている農家というのは二・一%ですよ。これが七四%の鶏を経営しているわけだ。そうなると、これは集中的に経営しているから企業が大きいですね、だからそこからにおいが出るわけです。あるいは豚にしても酪農にしても、最近は損益分岐点というものがあるから、そう一頭二頭で楽しんでいるわけにいかない、何といっても集団。そうすると悪臭を出すというものは企業で本当に集中的なものだから少数ですよ。それに対して批判をするのは多数なんだ。だから少数、多数で世論からいえば負けちゃうんだよ、これは。そして追い出されちゃうわけですよ、投書されたり電話がけられたりして。  そこで、悪臭というものによって、例えばにおいによって死んだことがあるのか。あるいは病気になってどうにもならなくなっちゃったことがあるのかどうなのか。後で馬場委員が質問するけれども、水俣病というのは明確にあの工場から出るもので死んだり病気になったりしてしまう。農村の中の例えば養豚、養鶏あるいは酪農、こういうところでそのような事態があるのかどうか、それをちょっと教えてもらいたい。
  115. 林部弘

    ○林部政府委員 直接のお答えになるかどうかとも思いますが、悪臭に関する苦情を私ども把握いたしております数字は、五十八年度において一万二千七百四十一件でございます。そのうち先生のおっしゃいました畜産農業による苦情が全体の二八%でございますから、かなり大きなウエートを占めております。それから公調委の方を調べましても、悪臭というのはかなりウエー十が大きくて一九%ということでございますが、先ほど私、悪臭というのは不快なにおいによって生活環境を損なうというおそれのある物質を定めておるのだと申しましたけれども、この不快なにおいというのは感覚的な被害を与えるものでございますし、感覚的な被害ということになりますと、極めて低い濃度であっても耐えられないにおいがするというようなものが悪臭として取り上げられておるということを考えますと、においの原因になっている物質の存在する濃度レベルといのは非常に低いというふうに一般的には考えられますので、そのことだけで今先生がおっしゃるような非常に重大な人命にかかわるような事故が起こるかということになりますと、直ちにそういうことにはなかなかつながらないのではないだろうか。ただ、そういうにおいを長い間かがされていて死にたくなるというような人があるいは出てくるかもしれませんけれども、直接健康が損なわれるというような例はまだ聞いておりません。
  116. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 つまり、人命にそう影響がないということで、不愉快だけれどもという説明だから、大体そんなところだろう。  問題はこういうことなんだ。今専業的に畜産をやっている者は、専業の優秀ななくてはならない農家ですから、本来なら、前には農村で一軒に一頭の家畜がいて、堆肥をつくり、し尿をため池に入れてみんなが発散したから、お互いににおいを出したから我慢したわけです。今度はそうじゃないのだな。混住住宅だから、そこへ後から入ってきて文句を言うのが多くなった。それも一つの権利だから、言って悪いということではない。  そこのところをうまくやるために、今度は農林省だ。畜産の公害を何とか防止しようじゃないかということで、豚を飼う場合には公害の施設をつくる、あるいは悪臭を防ぐためにいろいろな努力をしますね。おがくずを入れたりいろいろな努力をする。それは金がかかるのですよ。これが畜産物の価格に余り盛り込まれていない。いつも抑えて、本来値段が上がらないのだからね。それで畜産審議会、三月にあるけれども、いろいろ来れば、つかみ金でちょっと金貸すから我慢しろ、これで値段が上がるのを抑える。来月も恐らくそんなことだろう。それでは農家は困るから、だから垂れ流ししてしまうのだよ。それは行政の責任なんだよ。ちゃんと見合うように、公害施設に対しても融資をしたり税金でまけてやったり、価格にちょっと織り込んでやったりすれば、それは農家は喜んでやる、そういうことをしないからだめだ。  それから、今度は建設省建設省都市計画をやるときに、あるところではもう既に前々から酪農家があった、豚を飼っていた、鶏があった、そういうことを知っていてその先の方に市街化地域をつくるから、それはそうだね、さっきの山じゃないけれども、先にやっている人たちはそこへ資本を投資しているんだからそう簡単に逃げていくわけにいかない。そこへ風が吹いてくればにおいが来たということで、今度は市街化区域から耐えられないと大きな文句が来る、みんな悩んでいますよ。そういう事態について都市づくりの中でこの公害問題というのを考えてもらわなければ困る。どうですか、この二つ。
  117. 香川荘一

    ○香川説明員 畜産問題につきましてお答えいたします。  おっしゃられますように畜産の家畜のふん尿の処理というのは確かにコストがかかります。そのため垂れ流しをするというふうなこともあったわけでございます。最近私どもの方もこういう畜産対策の予算等につきまして充実いたしておりまして、特に五十九年度、六十年度厳しい予算の中から公害対策の方を予算をふやすというふうな措置をとっております。特に五十九年度につきましては湖沼法の施行というふうなこともございまして、霞ケ浦とか琵琶湖等を中心といたしましたそういう主要湖沼周辺の対策というものを充実いたしておるわけでございます。  それと、あと融資の方につきましても、低利融資というふうなことで農林漁業金融公庫等から融資をいたして対応しておるところでございます。  ただ、環境問題につきましては、畜産の側にもやはりそういうふうな環境整備をいたしませんと畜産経営を健全に続けていくというふうなことからも問題がありますので、現在では主といたしまして土地還元というふうなことを重点に処理をいたしております。これは農業の方も地力保全ということから重要性が見直されておりますし、そういたしますことが周辺に対する影響も少なくするということと、それから比較的今度は堆肥としての価値が出てまいりますので、畜産経営にとりましてもプラスであるというふうなこともございまして、そういう対応をしながら今後とも畜産の経営の発展に努めていきたいというふうに思っております。
  118. 鈴木政徳

    ○鈴木説明員 先生指摘都市計画におきます市街化区域及び市街化調整区域、御承知のとおり市街化区域は既に市街地になっているところ、それから将来を見越しまして、将来の人口、産業を吸収できるだけの面積、そういうものを市街化区域として設定するわけでございます。  この市街化区域と市街化調整区域の区分、いわゆる線引きにつきましては、地元で区画整理等をやるということで住民の方々の多くが賛成しているような地域、将来確実に計画的な市街化が図られるような区域をとりまして、この区域について農林漁業との調整ということをまず行います。さらに、公聴会であるとかあるいは案の公告、縦覧を行いまして、そうした手続の中で住民の方々の意見が反映できるような仕組みになっているところでございます。  ただいま御指摘のありましたような問題、大変難しい問題ではございますが、こうした問題はただいま申しましたような手続の中で調整されるように期待し、また指導しているところでございます。いずれにいたしましても、調整区域の環境保全の問題あるいは市街化区域での住環境の保全の問題は非常に重要な問題だと認識しております。
  119. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それぞれ御答弁がありましたが、結局責任というか苦情は環境庁に来るわけだが、環境庁だけではなかなか解決できない。それぞれの地元関係する省庁が今言ったようなことをしっかり指導してもらわないことにはだめだということだけは申し上げておいて、次に移ります。  次は、科学技術博覧会が三月十七日から九月十六日まで筑波で開かれます。これについて、私の地元ですからたくさん質問をしてきたけれども、最後に一点残ったのは保健衛生上の問題があるわけです。  というのは、二千万の観客がおいでになる。外国からもお見えになりますね。国内からもたくさんの方々がお見えになるし、時期はちょうど暖かいときでありますから、食中毒あるいは伝染病、こういうものが発生しやすい条件。ところで、保健所というのは谷田部町の保健所があります。それに最寄りには土浦の保健所がある。これだけでは到底対応し切れない。もし万一食中毒なり伝染病がそこにびまんしたときには、これは本当に人ごとになりますから、これだけは起こってからその手当てをするのじゃなしに、あらかじめ初めから防疫の処置あるいは最終責任者、地元の保健所の所長とかそういう出先に責任を持たせるのか、それとも県の知事が地元ですからやるのか、そこら辺のことに対する体制はどうなっているのか、これについて第一点。  第二点は、ホテルの問題です。今旅館が足りないと言っている。足りないからと言って、将来アパートにするのだということでさしずめこれは旅館にしよう、民宿、民泊も兼ねてやろう、だから施設は決して十分でない。そこで食事を持ち込みをするとこれがまたいろいろなことになるのじゃないか。そこでいろいろと抑えています。それは保健所と土木の方でいろいろ意見が違っているようだけれども、隠して泊めればかえって害が起こるだろう。だから、大っぴらに届け出をして注意をさせて、この宿泊については一定の保証を認めてやらなければかえって害が起こるのじゃないか、こういうふうに私は思います。この二点について、厚生省になりますか、お答えをいただきたい。
  120. 玉木武

    ○玉木説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、国際科学技術博覧会には内外から多数の入場者が見込まれておりますし、また多くの食品取扱施設が会場内に設けられることになっております。これに対しまして、我々といたしましても、飲食に起因する食中毒の発生を防止しまして食品の安全性を確保することは極めて重要なことと考えております。  このために、茨城県におきましては、昨年二月に「国際科学技術博覧会食品衛生監視実施要領」を作成しまして食品衛生確保の準備を進めるとともに、本年一月には、会場内にミニ保健所ともいえます食品衛生監視センターを開設しまして、専従の食品衛生監視員を配置して関係施設に対する現地指導、営業者、従業者に対する衛生教育、健康管理について指導しておるところでございます。  なお、期間中には同センターの中に所長以下常時十一名の職員を配置しまして指導取り締まりを実施することといたしておりますし、また休日等につきましては、茨城県の食品衛生機動班の投入によります実施体制の整備を図るなど、万全の体制を予定しております。  以上でございます。
  121. 野崎貞彦

    ○野崎説明員 伝染病防疫体制でございますが、これは大分前から開催に当たっての連絡調整をやっておりますが、先月の末に現地におきまして、厚生省それから茨城県それから検疫所、それから近接いたします都県、指定都市、博覧会協会、こういう防疫担当者が集まりまして、私も当然参加いたしまして、万全の措置をいたしておるところでございます。
  122. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ホテルの問題についてはまだお答えがありませんが、これはもう時間が来たからここでやめますけれども、せっかく法務省からも来ていただきました。  それは、去年の私の質問主意書に対する答弁の不十分なところを補う意味でここへ来ていただいたわけですが、境町に起きている開発公社のいわばでたらめな、事務局長に五十万という自由許可を与える、そして警察やその他と何遍も飲み食いをしているという事実が出て、告発をしているのに、これに対してほとんど捜査もしないという形で、時効になってしまうんじゃないか、こういう心配があった。ところが、この間検察庁の木村刑事部長に連絡したら、十三日に告発の関係者を呼んでいろいろ調べたけれども、これもまたもみ消される心配があるわけで、やはりこの際国会で取り上げてこういうものについては徹底的に追及をしなければためにならないということでお呼びをしたわけですが、もう時間がありませんから、残念ながらこれで終わります。  万博の問題は事故のないようにひとつお願いしたいということ、これは環境庁の長官としても今の私の話について一言何か述べていただいて、それで終わりたいと思います。
  123. 石本茂

    石本国務大臣 非常に幅広い、水の問題、大気の問題、においの問題あるいは緑化に関する問題、そして最後には、開かれます科学博覧会のことについての先生の御配慮、御心配を承りました。御心配になっております、御配慮をいただきます問題、絶対にそういうことが起きないように、起こさないように、また御提言いただきました環境庁に関する問題は今後の対策の中で十分に生かしてまいる所存でございます。  ありがとうございました。
  124. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 終わります。
  125. 辻英雄

    辻委員長 午後二時十五分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時十五分開議
  126. 辻英雄

    辻委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件について質疑を続行いたします。馬場昇君。
  127. 馬場昇

    ○馬場委員 久しぶりの女性の大臣でございまして、国民も非常に期待しておるのじゃないかと思います。ぜひひとつ女性の清潔な心で立派な環境行政をやっていただきますようにお願いをいたしておきたいと思います。  私は、きょうは水俣病関係に絞ってお尋ねいたしたいわけでございますが、大臣も御承知のとおりに、水俣病は昭和三十一年に公式に発見されましてからちょうど三十年たっておるわけでございます。にもかかわらず、幾多の大きい問題が残っておりまして、現地は、患者だけじゃなしに地域も含めまして、この水俣病の痛みとかうずきというのはまだたくさん残っておるわけでございますし、さらに、これは熊本県の行政の中で最も大きい行政の一つになっておるわけでございます。  そういう世界の公害の原点と言われる水俣病に対して大臣はどういう認識を持っておられるのか、最初でございますので、まず承っておきたいと思います。
  128. 石本茂

    石本国務大臣 ただいま先生、世界の公害の原点とも言われているとおっしゃいますように、これは我が国におきましても公害の原点でございます。それで、水俣病に悩まされておられます患者さんの迅速でかつ公正な救済ということは、環境行政の重要な課題であるというふうに考えております。  国といたしましても、この問題を解決しますべく今日まで最大限の努力を払ってきたと私は考えておるのでございますが、今後とも県、市と一体となりまして水俣病患者の認定業務の促進などに努めまして、この疾病対策の推進を図ってまいりたいと考えているものでございます。
  129. 馬場昇

    ○馬場委員 今大臣も言われたのですけれども日本だけではなしに世界の公害の原点と水俣病は言われておるわけでございますが、何で水俣病が世界の公害の原点と言われるのか、その辺をお尋ねしたかったわけでございます。これは、大臣御承知のとおりに、物すごい悲惨さ、その悲惨な状況の広さ、深さは世界の公害の中で例を見ないようなものでございまして、そういう意味で世界の公害の原点と言われておるわけでございます。  私は、そのこともですけれども、二十世紀の文明の発達というものが、地球規模において、世界規模において地球を病に侵したと言っていいのじゃないか。例えば、文明の発達によって病原菌が地球を侵して、その中で、特にがんと言ってもいいのじゃないかと私は思うのですけれども、地球のがんが水俣に出てきた、これが公害の原点と言われる水俣病ではないかとさえも考えていいのじゃないか、私はこういうぐあいに思うのです。  そういたしますと、この二十世紀において地球のがんにも例えられるこの水俣病を完全に手術して解決しておかなければ、至るところに転移して、そして二十一世紀の次の世界がどうなるかということさえも心配しなければならぬ問題だろう、そういう種類の問題でありますので、世界の公害の原点、こう言われるのじゃないか、また、私たちが反省を込めて言わなければならないのじゃないか、こう思うのですけれども大臣、こういう点について一言またお考えを伺いたいわけです。
  130. 石本茂

    石本国務大臣 私は、過去三回水俣に参りました。そして、被害をお受けになりました方のセンターにも二回行っております。景色はきれいでございますし、海の水は青うございますし、この中にどうしてこういう恐ろしいものがいつの間に蓄積されていったのであろうかということを、当時の科学の、どういいますか、日本のそれに対する状況もあったかと思うのでございますけれども、起きてしまってからどんなに努力をし頑張ってみましても、今先生申してくださいますように、これをきれいに払拭するということはなかなか時間もかかりますし、時を要するものではないだろうか。そうした意味におきまして、過ぎたことではございますが、なぜもっと早くにこういうことに気がつかなかったのかなということを、当時私は現場を見まして胸を痛めて帰ってきた一人でございます。  そうした意味におきまして、二十一世紀を展望し、現在ただいまを見詰めますときに、どうしてもこの公害に悩まされておられます水俣病患者の皆様を、お一人お一人健全に、完全にお救い申していかなければならないんだというふうに、私は我が胸にそれを言い聞かせております。
  131. 馬場昇

    ○馬場委員 私は、今大臣からちょっとお答えを聞けなかったのですけれども、やはりこれは水俣に矮小される問題ではなしに、これを放置しておったらどこでも起こる問題だし、だから、世界の、地球の痛み、病というものがここに出てきたのだ、そういうような気持ちでこれに対応していかなければいけないのじゃないか、こう思うのです。  今、対策のことも、本当に一人一人救われなければならぬと大臣はおっしゃいましたけれども大臣も病院で経験なさっておられたわけでございますが、やはり水俣病というもののいろいろ対策を立てる場合には、まず患者の心というものを知らなければどういう対策も余り成功しないのですね。それからまた、それを取り巻く地域の心というものをわからなければ対策は立てられない。こういう中で、私はたびたび、環境庁長官になられた方に、ぜひ水俣に行って、現地で患者さんたちの実情とその心を知って、見ていただきたいということを言っておるのですが、多くの大臣も行かれました。  だから、やはり石本大臣も初めてですから、ぜひ水俣に行って地域の心、患者の心、そして本当に病院で経験されたわけですから、患者を見なければ本当の診断というのはできないわけですから、そういう意味で現地に行っていただきたい。現地の者もまたそれを希望しているわけですけれども、これに対して大臣、いかがでございますか。
  132. 石本茂

    石本国務大臣 環境庁に参りましてからはまだ行っておりません。経過も長くたっておりますし、それから、先ほどちょっと申しましたように、現在ただいまは国も県も一体となりましてその救済方について全力を傾けておるところでございますので、私自身は、熟慮に熟慮を重ねまして、また現地と連携を保ちながら、折がありましたらというふうな気持ちでおります。
  133. 馬場昇

    ○馬場委員 申しわけございませんけれども、私もこの問題をこの委員会でもう十数年にわたって取り上げてきておりまして、第一回目の質問のときにそういう答弁をなさった方は、とうとうやめられるまで何もしておられないのですよ。そして、そのときすぐ、よし私が行こうと言われた方は、それなりに患者の心をつかんで仕事をしておられます。今、ちょっと大臣の言葉をお聞きして――実は熊本の人たちも、何か今度の大臣少し消極的じゃないか、積極さを欠くのじゃないかということを言っておられます。というのは、大臣が就任されましてから地元新聞とインタビューをなさっていますね。その中で、こういうことをおっしゃっているのです。地元の記者が、やっぱり水俣に行ってごらんにならないとわかりませんよ、行かれますかと言ったら、新聞ですから正確かどうか知りませんけれども、患者と会いたいということは非常に前向きにおっしゃっていますね。ところが、長官として行くかどうか、いろんな問題があり、ここではっきり行くと約束できないのが残念です、こういうことをおっしゃっておられるのですが、いろいろな問題がありとかというのはどういうことだろう、患者さんと会ってその悲惨な状況とか希望を聞くというのに、何のいろいろな問題があるのだろうか、おかしいじゃないかというのが地元の人たちの意見でございます。先ほどちょっと霞ケ浦の話を聞いておりましたら、七月には行きます、こういうことをおっしゃっていただいておって、何で水俣にはいろいろなことがあるからといって、行くということをきちんと、あるいはちらっと先ほど言われましたけれども、言えないのか、それが私にはわからないのです。  この辺について、環境行政の最高責任者というのは環境庁長官ですし、水俣病の行政の最高責任者というのは長官ですからね。熊本県は委任事務をたくさんやっておりますけれども、その最高責任者が自分の判断でやればいいことであって、それを、いろいろな問題があるからとおっしゃっておりますが、私は、そのいろいろな問題というのをここで聞き出せばまたもめると思いますが、そういうことを聞く前に、やはり長官、本当に最高責任者として行ってみたい、話し合いたい、心を知りたい、そして時期は、やはりいろいろ国会も今やっていることだしすぐには行けませんけれども。本当にそこが原点ですよ。私は、積極的に行きますとおっしゃったら、いろいろな問題は後から質問いたしますけれども、その辺で患者との信頼あるいは地元の信頼というのは出るんですよ。その辺の決意のほどをぜひさらにお尋ねしておきたいと思うのです。
  134. 石本茂

    石本国務大臣 今先生申されますように、私自身としましては、本当にこの疾病のために悩み、苦しみ、悲しみを持っておられます皆様にお会いしたいと思います。それからまた、現地の状況について全然知らないというわけじゃございませんけれども、どういうことがどういうふうな状況の中でどうなっていくのか、またなってきたのか、話は聞いておりますけれども、今先生が申されますように、行ってじかに聞けたらよいな、それは自分自身は思いますけれども、やはり熟慮を要する問題ではないのかなというふうに思うのです。  補償の問題は熊本県が今大きな肩がわりをしてやっていただいておりますし、チッソの会社にしましても、これがつぶれたんでは何にもなりませんけれども、再建のために頑張っておられるわけでございますので、そうしたこうした事情などを勘案いたしまして、十分検討しました上で行動したいというふうに思っているところでございます。
  135. 馬場昇

    ○馬場委員 今、熟慮と言われた中身もちょっとおっしゃいましたけれども、行くこととこれは全然関係ないですよ。行って、患者を見て、地域を見て、患者さんの心を聞くというのに何の熟慮が要るんですか。こうせいああせいということは、たくさんの問題が後からありますけれども、それは、今これはこうなっている、これはこうなって、こうやっているんだということを説明なさればいいわけであって、水俣へ行くと患者がうるさいとかあるいは地域がうるさいとか――痛みがひどいときは声が大きくなるのは当然のことでございまして、それは病院におられたから御存じでしょう。本当に痛みのひどい病人というのは、やはり痛みの軽い者よりも声は大きいしいろいろなことも言いますよね。そんなことを恐れておっては環境行政はできないわけですし、水俣の行政はできないわけです。  これは非常に残念ですけれども、後がございますから、ぜひ早急に水俣へ行って、現地の声を聞いていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  次に、水俣病について行政の責任というものがあると思います。それで、幾たびとなく、何人もの長官、歴代長官もこもごも行政に責任はあるということをおっしゃっておるわけでございますが、水俣病に対する行政の責任というものについてどうお考えになっておられますか。
  136. 石本茂

    石本国務大臣 これもやはり、もとをただしましても、そういうものの経過を考えましても、責任はあるというふうに私も思いをする。
  137. 馬場昇

    ○馬場委員 本当に、挙げれば切りはないと私は思うのですけれども、たくさんの責任があると思います。初めてでございますのでちょっと申し上げておきますが、私は、まず水俣病を発生させた責任、それから水俣病の被害を拡大した責任というものが行政にはあると思うのです。これは今までここでも何回も議論いたしたわけでございます。  実は、昭和二十一年、敗戦直後なんですよ、あのアセトアルデヒド酢酸設備の排水を海に流し始めたのは。このアセトアルデヒド製造の触媒に水銀を使っているわけですから、それを昭和二十一年に流し始めました。それから、二十六年ごろアセトアルデヒドの生産をどんどんふやしていきまして、このころ六千トンくらいつくっておりましたが、二十七年になりまして、漁民が、どうも海がおかしい、魚がおかしい、ちょっと調べてくださいということを県に申し入れて、県の水産課から調査に行って工場排水を調べておるのです。ところがそれが、正確な報告書というのもあったのですけれども、表にされずにそのまま握りつぶされました。  昭和二十八年にもう猫踊り病が発生しておるのです。そして、今わかっている患者の一号が二十八年に発生しておるわけでございます。三十一年が御承知のとおり公式発見でございます。その公式に水俣病が発見されたころは、そのアセトアルデヒドは、六千トンから、一万トンを超えて一万五千トンくらいつくっております。三十二年に、もうこれはおかしいというので、漁協が、とにかく魚介類が激減したわけですから、これは工場排水が原因だ、排水をとめてくれということを県に陳情に行っているわけであります。そのとき、昭和三十二年でございますけれども工場の排水を猫に飲ませて猫踊り病というのが発生した実験を行っている。しかし、発生しましたけれども実はこれを隠しておったわけでございます。  そういう中から、昭和三十四年、熊大研究班がチッソの排水が原因だ、有機水銀が原因だということを公式に発表いたしました。そのときもどんどんアセトアルデヒドの生産をふやしまして、三十四年が四万二千トンになっている。三十五年が四万五千トンになっている。そして、公式に発見され、公式に水銀だと言われてからもどんどん水銀を流し、途中、百間港というところから、今度は水俣の川の河口に流し始めたから、川の水でますます拡散していった。そういうことをやって、結局そういう中で四十年に新潟の水俣病が発見されまして、四十一年になってようやく水銀を外に出すのをとめたのです。そして四十三年に水俣病として、チッソの工場排水の中に含まれた水銀が原因だということを国が公式に認めて、公害病となったわけです。  こういういきさつを見てみますと、公害病と国が認めるまでに実に十二年かかっている。排水をとめるまでに十年かかっている。その間どんどん生産をふやしていって患者を拡散していった、この責任というのが非常にある、私はこういうぐあいに思います。こういう点について大臣、お考えはいかがでしょうか。
  138. 石本茂

    石本国務大臣 ただいま申しましたように、そうした責任意識の上に立ちまして、深く反省をして今日に至っていると思うのです。この事件を契機としまして、先生今申されましたように、法律制度も改正されまして、そして二度と再びこのような事態を招いてはならないということで、あらゆる公害の未然防止というところに全力を投入しているのが現状でございますので、その辺おわかりいただきたいと思います。
  139. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣もおわかりになって御答弁いただいておるのですが、時々私とかみ合わない点が実はあるわけでございます。ひとつ今から言うのにはよくわかるように答弁していただきたいと思うのですけれども、発生させた責任、被害を拡大させた責任がありますが、もう一つは、水俣病の原因究明をおくらせた責任が実はあるのですよ。  何かといいますと、例えば、二十七年に、さっき言いましたように工場排水が原因じゃないかといって調べてやったのをもみつぶしておるのです。それから三十二年に、さっき言いました猫の実験ではっきり出たのをつぶしておるのです。それから三十四年には、熊大が水銀が原因だと発表したときに、厚生省の食品衛生部会の小委員会というところでそれを出そうとして、これが解散させられておるのです。それから、三十四年に熊大が発表しました当時、東京工大の清浦教授を水俣にやって、工場排水は原因ではないのだという発表をさせておる。化学工業会の中島という理事が行って、戦争中ここに爆弾を落としたから、それが原因だ、こういうようなことがずっと続いて、原因の究明を妨害したという行政側の態度があるのです。こういう責任がございます。  もう一つは、これは後で質問しますけれども大臣もさっき言われましたように、被害者の救済をおくらせたという責任があるわけでございまして、これはとにかく昭和三十二年ですよ、猫踊り病で排水が原因とわかっているときに、それを知っている人たちが、見舞い金契約というのを――死者四十万円ですよ。そして、工場に原因があっても後もう何も要求はしないという条件づきで見舞い金契約を結ばせておる。  そういうことがあったり、厚生省の仲裁委員会というのがありまして、いろいろ申請をしましたところが、おれに一任したならば調停してやる、一任しない者は調停してやらぬ、そういう中で患者を分裂させまして四百万という調停を出しておる。そこで患者たちは裁判をやって、裁判で勝訴したのは御存じのとおりでございますが、そういうようなことを補償金でもその他の問題についてもいろいろやっておりますし、今日は、認定の問題で不作為違法の判決が出ておるわけです。認定のおくれは行政の怠慢だということが裁判所でも認められておる。こういうぐあいにして救済をおくらせたという責任が行政にはございます。  さらに、水俣病をもうやめにしてしまおう、圧殺というのですか、言葉は何というのですか、そういう種類のことであります。三十五年に水俣病終結宣言というのを出しておる。三十五年ですよ、終結も何もしていないのに。そういう状況があるわけでございます。それで、最近は患者切り捨てとか、にせ患者とかいろいろの攻撃が加わっておるわけでございますが、こういう点を考えますと、私はやはり行政――もちろん企業です、第一義的には。企業、行政、そういうものが、公害というよりも人間に対する犯罪を犯したのではないか、この問題はこういうぐあいに考える代物ではなかろうか。実はそうだと私は思うのです。  こういう、例えば原因究明をおくらせたとか被害の救済をおくらせたとか、あるいは患者、水俣病を圧殺しようとしたとか、こういう責任を今十分考えてこの後のことをやらなければ、この後の解決はできないと私は思うのですが、長官、これはいかがでございますか。
  140. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答え申し上げます。  先生からお話しございましたように、水俣病問題はいろいろな問題を抱えて、いろいろな経緯の後において現在の形になっているわけでございますが、特に水俣病の申請者の方々に対します認定問題につきましては、先生お話にございましたように五十一年の不作為違法判決がございまして、いろいろな事情があってその判決が確定されたわけでございます。それを受けて、それ以降におきましては、国としては五十二年六月の閣議了解事項というようなことで、認定業務をどういう形で進めるかについていろいろな対策を講ずるということを決めたわけでございます。  この内容については先生御案内のとおりでござ  いますので……
  141. 馬場昇

    ○馬場委員 私はそういうことを言っているのじゃないのです。それは、具体的なことは後で質問するのです。  ただ、例えば私が言いましたように、原因究明というのを事実妨害したわけですから、そういうものに対する責任とか、患者救済をおくらせておるという――不作為違法の判決が出ているのですから。そして進んでいないわけでしょう。おくらせておる責任とか、そういうのが行政にあるのじゃないか、それはいかがですかということを今環境庁長官に聞いているのです。だから、責任があるとかないとか言えばいい。
  142. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 認定業務をきちんと進めるということにつきましては、私ども責任を持って県と一体となって進めておるところでございます。そういうことで、私どもとしましては認定業務をきちっとやるということは当然責任があるわけでございますので、そういう点につきましては、いろいろな施策を講じながら、申請者の理解を得ながら検診、審査を進めておる段階にございます。  なお、お話の前段にございます発生等におきます責任につきましては、先ほど先生大臣お話の中にもございましたように、公害といいますものがああいう形で発生するということにつきましては、当時といたしましてはそういう知識が全然なかった時代でございまして、そういう面では学問的にもいろいろな御意見が分かれておったというような過程の中におきまして、先生からお話がございましたように、三十一年以降いろいろな形での意見が出されておって、そういう事実の積み重ねの上に、四十三年でございますか厚生省の正式見解が出ておったということでございますので、その間におきましては、国としてはやるべきことはそれぞれきちっと対応しておったと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、この問題につきましては現在御案内のとおり訴訟中の問題でございますので、これ以上につきましては御説明を差し控えさせていただきたいというぐあいに思っております。
  143. 馬場昇

    ○馬場委員 あなたの発言はさっきの長官の、行政責任があって反省しておるということと全然違うじゃないですか。少なくとも、排水を猫に飲ませて猫踊り病なんかが発生したわけです。排水に原因があっていわゆる水俣奇病というのが出てきた。水俣病が出てきたということは当時三十二年ごろわかっていた。それをちゃんと厚生省も知っていた。そういうことがいろいろの資料であるわけですよ。だから私はここで、裁判で勝ち負けを、そんなことを言質をとろうと思って質問しているのじゃないのですよ。あなた方が本当に行政がやるべきことをやらなかった。  これは前から、大石長官も四十七年に人間環境会議に行ったときに、世界じゅうの人たちに向かって大石環境庁長官は、原因を発生させたこと、被害救済がおくれておること、対策が十分でないこと、これは国に責任があります、全力を挙げてやりますということを世界人間環境会議でも言っているでしょう。三木さんはこの場所でも何回も言いましたよ。これを発生させたのは行政の責任、政治の責任にあるのだと。石原長官もここで言いましたでしょう。そういう責任の上に、本当に厳粛な気持ちでこれを完全に解決しなければ、二十一世紀の文明なんか語れませんと、そういう気持ちでやりますということをここで言ったでしょう。  そういうことを大臣が責任を持って言っているのに、あなたが、当時は何もわからなかったなんて。わかっていることはいっぱいあるじゃないですか。資料もありますよ。例えば、当時厚生大臣のときに、こういう資料がここに来て、これをもみ消しておったという証言者もおりますよ。そんな白々しい、そんなことだからあなた方の水俣行政はだめなんですよ。  だから長官、これは政治家としてあるいは行政の最高責任者として――今日認定がうまくいっているとだれも思っていないでしょう。だから、裁判所までも来てこれを控訴しておるのは間違いなんですよ。しかし、今控訴しているからそういうことを言うのでしょうけれども、三十年たってこれを解決していないというのは少なくとも政治の責任じゃありませんか、どうですか。
  144. 石本茂

    石本国務大臣 もう本当に先生から御指摘をいただいている一つ一つ、私は自分の胸に全部しっかり刻み込んでいるところでございますが、過ぎたことをこんなことを申したら怒られるかわかりませんが、そのときそのとき、その時点その時点で当事者は一生懸命にやってこられたのだろうと私は思うのです、これは過ぎてしまった過去でございますから。  そういうことで、このような御指摘いただいているような形になったことにつきましては、今ここでどういう言葉を使って申し上げていいか私わかりませんが、ただ残念至極という以外に言葉はございません。本当に現地の皆様には、どうした言葉でどうした状態でおわびしていいのかわかりませんけれども先生に対するお答えとしましては、こういう言葉で、残念でございますということを申し上げておきたいと思います。
  145. 馬場昇

    ○馬場委員 一生懸命やっていなかったと言うのです、私は。そのときそのとき一生懸命やったのなら責任はないでしょう。ところが全然一生懸命やらなかった、あるいは故意に妨害した、隠した、故意に広げた、そういう責任を問うているわけです。  とにかくちょっと大臣大臣という人は非常に清潔で純真でまじめだと思うのですが、官僚が答弁するとすぐそれに乗っちゃって、それじゃ行政できませんよ。そうしたらあなた、石本環境行政というのはないですよ。これはちょっと余計なことですけれども、この間新聞でこれまた心配したのは、まず最初何かおっしゃって、官僚が何か言ったら、いや経済との調和も考えなきゃいかぬと。環境庁長官というのは、環境のこと、公害のこと、それを考えればいい。経済のことだったら通産省が何とか考えればいいわけだ。それとの調整なんかはあるでしょう。しかし、一義的に環境や生命を守るのが長官の立場ですから、経済との調和条項なんかは、公害基本法をつくるときにそういうことが議論されまして外した問題ですよ。そういうことを考えてもらわなければ困ると思うのです。  そこで、そのことをお願いしてから次に移りたいと思うのですが、水俣病の県債について申し上げたいと思うのです。  御承知のとおり、昭和五十三年閣議了解事項でチッソに対する金融支援措置が決められまして、五十六年にまたこれが三年延長されました。そしてこの間、六十年度以降三年のことが五十九年度末に閣議了解事項になっているわけでございます。そこで、御存じのとおりですけれども、今はチッソの補償のための県債というのが五十九年末で三百十億四千八百万出ていますね。それからヘドロ処理のチッソ負担分を県債で立てかえておりますのが五十九年末で百十九億千七百万出ておるのです。五十九年末でチッソに対して熊本県が出している県債は、合計で四百二十九億六千五百万出ております。このような県債措置というのはいつぐらいまで続けるつもりで出しておられるのですか。
  146. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 今御指摘の数字はそのとおりでございます。  私どもは患者さんに対する補償金の支払いというものをどうしてもチッソの会社にやってもらわなければなりませんので、そのためにああいう手段で、ああいう便法をもってチッソをして責任を全うさせているというところでございます。これは十分先生も御案内のとおりでございます。  しからばこういう姿がいつまで続くのか、こういうお尋ねでございますが、私ども基本的には、チッソの経営状況が好転を重ねまして、十分自力で県債その他から借りているものを返すような力、今でも滞ってはおりませんけれども、なおそれをもって十分なところまでいくように、今見通しとしては申し上げかねるところでございますけれども、そういう気持ちでやっておるわけでございます。
  147. 馬場昇

    ○馬場委員 チッソが返済できるという見通しを立てて、患者補償が続く限り出さなければならないという気持ちのようでございまして、ではいつまで患者補償があるのか、いつまでチッソが補償金を返済できるのか、そういうのがはっきりしていないからいつまでということは言えないという意味のようでございますが、それはそれなりに私もわかります。  そこで、この県債の引き受け、まず第一期の五十四年、五十五年、五十六年、これまでは資金運用部資金で七〇%引き受けておりましたね。それが第二期のときには、資金運用部資金で六〇%に、一〇%減っております。そして、今度また六十年度からのやつは資金運用部資金で七〇%、その他を興銀を中心にした民間銀行、金融機関で消化しておるわけでございますが、これは何で資金運用部資金で一〇〇%引き受けないのですか。
  148. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 今御指摘の実績ベースでの話になりますと、五十二、五十四、五十五、この年度間では七割を超えた引受比率になっております。先生の御指摘のとおりです。しかし、その後は六〇%台に入りまして、ここ三年ばかりは六〇%そのものなんですが、これは極めて技術的な問題でございまして、まず資金運用部の引き受けというのは補償金総額の六割について行われてきたわけでございます。ところが一方、患者の県債は補償金支払い総額か資金不足額のいずれか低い額を基礎としてやっておる、こういうことでございます。つまり、この制度が始まった五十年代の当初におきましては、補償金支払い総額を県債の発行額が下回るというようなことになっておりました関係で出てきた数字だと御理解いただきたい、こういうふうに思うわけでございます。ところが、近年は県債発行額が上限をいっぱいに張りついておりますので、そういうことで六割になって実績値もそうなっている、こういうことなんでございます。  そういう意味で、それは前提のお話なんでございますが、なぜ一〇〇%引き受けられないかということでございますが、県債の方式というのは、私どもいろいろ考えた上こういうことでやってまいる必要があると思っておるのでございますけれども、要するに、この引受比率というのは民間もそれなりの役割を果たしてもらいたい、こんなような気持ちでございまして、この引受比率をどうするかというのは資金運用部のあり方の一つのあらわれ、こういうようなことになっておるわけでございます。
  149. 馬場昇

    ○馬場委員 わからないのですね。私は全部資料を持っておりますから経過の説明は要りませんけれども、資金運用部資金が今度また六十年度から七割になって民間金融機関が三割になるのですが、今の話を聞きますと、民間もそれなりにお願いしなければならぬから、それなりにというのはどういう意味ですか。熊本県議会等は、資金運用部資金が一〇〇%引き受けてくれということを皆さんに申し上げてきているはずなんです。それについて一〇〇%でいいじゃないですか。それが何でできないかという理由を簡単に言ってください。
  150. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 御説明が不足しているかと思いますけれども、県債を発行いたしまして、国と民間金融機関がこれを引き受ける、こういう形で国、県、銀行がそれぞれなし得る範囲内で三者一体となって協力を行うという方式をとってきたわけでございます。でございまして、このあり方というものは一〇〇%の保証問題とは直接リンクしない問題なのでございまして、県債のうちどこの部分をどう引き受けるか、こういう話の筋だというふうに考えております。
  151. 馬場昇

    ○馬場委員 これは関係閣僚会議とか各省庁間の覚書問題なんかでこうなってきたのですけれども、熊本県の方は一〇〇%資金運用部資金で引き受けてくれという要望を出しているのだから、これはいけないということではないわけです。あるいは、そういう関係閣僚会議だとか省庁間の連絡会議でそうしようと決めればそうなるわけですので、ぜひ県の要望に沿うような取り扱いをひとつお願いしておきたいと思います。  それから、これは通産の方にも含めてお伺いするのですが、私が数字を言いますから数字の説明は結構ですが、チッソには今大体累積赤字が八百億から九百億円ぐらいあるというぐあいに聞いておりますが、そのことと、それから、県債の発行は五年据え置きで三十年払いになっておりますから、もう既に返済期に来ておるものが大分ございます。  そこで、五十九年までにヘドロまで合わせましたらチッソは九十二億八千万円の返済をしなければならないようになっておりましたがこの返済はきちっと行われておるのかということを、環境庁からでもどちらからでも結構です。  それから、私が計算しましたら、六十五年までに、両県債合わせてチッソは五十九年度まで出したやつを返済するのにあと二百五十九億二千万返済しなければならないような予定になっておりますが、いずれにいたしましても、チッソに今返済能力はあると見ておられますかどうですか、返済能力についてお伺いいたします。
  152. 高島章

    ○高島説明員 通産省の部分につきまして御説明を申し上げます。  ただいま累積の赤でございますが、五十九年の上期末、去年の九月末で八百六十一億円でございます。  それから、今後返済能力があるかということは、とりもなおしませずチッソがどれだけ経営的に強固な基盤をつくることができるかということになるわけでございまして、この見通しにつきましては、非常に難しい問題でございますが、その主力というのは、御案内のように石油化学でございまして、この産業が国内でどうやって経済的に自立てきるかということとつながるわけでございます。現在設備処理等を中心にいたしました石油化学の構造改善を進めておりまして、これの効果が非常に出つつございます。したがいまして、その主力製品の分野における市況というのは今後、従来よりも明るく考えることができると思います。  また、チッソはみずから川下部分、新しい付加価値の部門に非常に今進出しておりまして、そこの成果が少しずつ上がりつつあります。これも先行き明るい芽であろうと思いますし、通産省といたしましては、この芽が大きく育ちますようにいろいろと支援をしてまいりたいと思っております。
  153. 馬場昇

    ○馬場委員 私たち素人ですけれども、常識的に――チッソは資本金が七十八億の会社ですけれども、累積赤字が今八百六十一億ですかある。そして六十五年までにはあと二百五十九億二千万県債を返さなければいかぬ。しかしチッソの再建計画を見てみますと、六十三年度までぐらいに二百八十七億円設備投資して、六十三年度に五十七億円の経常利益を上げるというような計算が出ているのですが、素人から見て、これだけの累積赤字、そして県債の返済、その中でこんなに設備投資ができてこんなに利益を上げるようになるか、ちょっと想像できないのです。しかし、だれだっていつ倒産するのか、返せるようになるのか、これは見通してございまして、返せるように一生懸命頑張っていると言われることはわかるわけです。  私はここでちょっと環境庁にお聞きしたいのですが、こういうことを研究なさっているということを仄聞しておるわけです。六十一年ごろはチッソは返済が物理的に不可能になるだろう、そのために、県債はこれだけ出しているわけですから、そういう意味で、とにかくそのときの法律の改正を含めて検討しなければならぬ、そういうことを政府で、環境庁かどこか知りませんけれども、非公式に検討されつつあるのだというようなことが伝わってくるのですが、これはそういうことをどこかで考えているのですか。
  154. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 お尋ねの趣旨がよくわからないのですけれども、いずれにしましても、チッソの関連におきまして、今までやってまいりましたことを考え直すようなことを今検討しているとか、そういう事実は環境庁内部ではございません。
  155. 馬場昇

    ○馬場委員 これは今の通産、環境からの答弁を聞いておりますと、先ほど言いましたように、県債が今は四百二十九億になった、どんどんふえていくわけですね。それが五百億になり六百億くらいになる。そうすると返すのもどんどんふえなければならぬ。そういう熊本県は県債を出しているわけですけれども、そういうのが見通しなしに、チッソはどうなるかわからぬですよ、このままだらだらいきましょうか、その日その日の暮らしで水俣病の返済対策をやっておる、本当にお先が全然わからないのですよ、しかし今やっていますよ、まさに無責任の行政じゃないかと私は思うのですよ。そういう面についてこれ以上質問したって、今検討しておらぬというならそれでしょうけれども、ちょっと返済能力の問題についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  それから、これは長官にお尋ねいたしますけれども、県債をして償還をしなければならぬわけですが、チッソの償還財源が困難になった場合、こういうときには閣議で了解事項がありますね。閣議了解では「国において所要の措置を講ずるものとする」、こういうぐあいになっております。そして、関係各省庁の次官クラスで構成しております省庁会議でこのことを裏づけるように、「国において十分の措置を講ずるよう配慮する」、だから、チッソが返せなくなった場合においては、熊本県が出した県債については「国において所要の措置を講ずるものとする」、こういうぐあいになっております。しかし、所要の措置というのはあいまいでわからないということが熊本県民ひとしく、五百億も六百億も県債がなるわけですから、心配しておるわけでございまして、そういう心配を環境庁にぶっつけ、関係閣僚会議にぶっつけましたところ、これは梶木前の環境庁長官ですが、昭和五十八年に関係閣僚会議で発言なさって、それが閣議で了承されたと聞いておるわけですけれども、「チッソ株式会社に万一不測の事態が発生したときにおいても、熊本県財政にいささかの支障をも来さないよう国側において十分な対応策を講ずる」、こういうことを当時の梶木環境庁長官関係閣僚会議で発言して、これで閣議で了承されておる、こういうことを聞いておるわけでございますが、このことを受けて、石本長官、あなたは昨年暮れに大臣になられましてからすぐこれと同じ言葉を熊本県知事にお伝えになった、こういうぐあいに聞いておるのですが、これと同じ言葉でお伝えになりましたか。
  156. 石本茂

    石本国務大臣 昨年十二月の関係閣僚会議で申し合わせをいたしまして、そして従来の申し合わせの趣旨を再確認しております。それと同じことを、熊本県知事にお目にかかりまして、これまでの政府の考えにいささかも変わりはありませんということを確かに申し上げております。
  157. 馬場昇

    ○馬場委員 そうしたら、今までの考え方に変わりはないということを細川知事におっしゃったということですが、それは、梶木さんが言いましたこの文書そのままだということだ、これが変わっていないとおっしゃったわけですね。
  158. 石本茂

    石本国務大臣 そのとおりでございます。
  159. 馬場昇

    ○馬場委員 そこで、これは熊本県は非常に心配しているのですが、この閣僚会議と閣議の了解事項、それから今石本長官が細川知事に口頭でおっしゃったこと、これはもう事務局でいいですけれども、これは何か法律的な拘束力があるのですか。
  160. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 関係閣僚会議並びに閣議においてその旨を申し合わせている――関係閣僚会議において申し合わせを行い、閣議においてそれを確認しておる、こういう手順でございます。そういうことでございまして、法律問題というよりは、万一そういう場合が起こった場合における関係各省庁の対応する、とるべき措置を確認した、こういうふうに理解しておりますので、その時点においてさような線に沿って具体的な点が詰められる、かように考えております。
  161. 馬場昇

    ○馬場委員 そこで、ちょっと今のもひっかかりますから、もう少しまとめて質問いたします。  環境庁長官石本長官はどうお考えになっているのですか。例えばここに、熊本県財政にいささかの支障も来さないよう国において十分措置する、これは熊本が県債を出していますが、この一〇〇%を保証するという意味ですか、この「いささかの」というのは。
  162. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 梶木大臣の御発言の趣旨は、県の財政にいささかも支障が起きないようにと、こういうことで、それは言葉どおりそういうことになると思うのでございまして、それが直ちに一〇〇%に結びつくかどうか、そのときにおける条件でいろいろ考えていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  163. 馬場昇

    ○馬場委員 ではお尋ねしますが、「いささかも」というのは、日本語で言いますと、少しもとか、わずかでもという意味ですよね。「支障を来さぬ」というのは困ることはさせない、こういうことですが、では、そのときの条件で違うとおっしゃいますと、熊本県財政が今五千億なんですよ、予算が。例えばこの問題で、あなたのところで百億くらいを出しなさいよ、あとは残りはみんな国で見ますよ、これはいささかも迷惑をかけたうちに入るのですか、入らぬのですか、どうですか、この辺は。
  164. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 従来から一〇〇%保証を県の方々が御要望されている事情はよくわかります。さればこそ、熊本県の地方債にかかる元利の償還財源につきましては、仮に万一そういう不測の事態が発生した場合に、国において所要の対応策を講ずるというのが基本線でございまして、それを受けまして梶木元大臣が、いささかの支障も来さないように国側において十分な対応策を講ずる、こういういわば相当はっきりしたことを申し上げたと、こういう関係になっておるわけでございます。  でございますから、先生お尋ねのように、こういう条件の場合はどうか、ああいう条件の場合はどうかというところまで真実詰めているところではありません。そういう事態が起こらぬように私ども努力する以外にない、かように考えております。
  165. 馬場昇

    ○馬場委員 私が質問しているのは、そういう事態が起こった場合にこうすると書いてあるから、起こった場合のことを聞いているのですよ。起こらない場合というのは当然のことじゃないですか。  そこで、実はこういうことを約束するときは、普通の場合、長官、あなた大体、口で細川さんにおっしゃったと言うけれども、こういうときはあなたと細川知事と覚書くらい書くのが当たり前じゃないですか。なぜ覚書をお書きにならなかったのですか、口でおっしゃって。
  166. 石本茂

    石本国務大臣 今年度に限ったことではございませんので、梶木長官のときもそうだったと思うのですが、立会人といいますか、関係閣僚全部立ち会っておりまして、その場で確約をしたことでございますから、これは証人が皆それぞれおるというふうに私は考えております。
  167. 馬場昇

    ○馬場委員 熊本県はすぐ県会を開くのですよ。だから一〇〇%保証がなければ、これは引き受けないというような意見も非常に強いのです。そういう中で今聞いてみますと、やはり一〇〇%という意味は全然入っていないようで、そのときそのときに考えればいい、これは法的拘束力もなくて行政措置だと、こういうような意味のことをおっしゃいますと、非常に大きい問題になりますが、この辺は、いささかもとかなんとかと言わなくて、一〇〇%なら一〇〇%だと、それはいろいろの状況の中で手続方法はあると思いますよ、何か事前に約束をするのがどうだこうだ、いろいろなことがありますけれども、でも熊本県側に通用するように、一〇〇%だという裏づけをしなければ、今後この問題は熊本でスムーズにいかない、こういうことを申し上げておきたいと思います。  そこで、時間も余りありませんが、認定促進の問題についてひとつ長官にお尋ねをいたしたいと思います。  実際、現在、申請しました者は熊本、鹿児島で一万三千百六十七名おります。そして新潟も含めますと、いわゆる水俣病と言われるものでは申請した者は一万五千百五十七名おります。認定されましたのが、熊本水俣関係におきまして、水俣チッソの原因によって認定された者が二千三十四名、これは一月三十一日現在です。そしてそのうちの六百五十三名が死んでいる。新潟は六百八十九名、日本じゅうに現在のところ合計二千七百二十三名の水俣病患者が認定されておる。そのほかに大切なのは、未処分者が何と熊本に五千百二十七名おります。鹿児島に七百五十九名おります。新潟に三十七名おるのです。その中で未審査というのが三千九百四十名。この中に死亡者が百二十名もおるのです。答申保留が熊本で千百八十七名、鹿児島の未審査が五百五十名、答申保留が二百九名、現在五、六千名も実は認定を待たされておる者がおるのですが、このことを裁判所は不作為違法で行政の怠慢だということを指摘しておるわけでございます。  そこで、熊本県の前の知事は、もう認定制度はこういう状況で破綻しておるということさえ患者に申し上げておるわけでございまして、ここで、患者が検診拒否をしているからだ、こういうことをおっしゃる人もおられますけれども、検診を受けると切り捨てられるというようなことで、五十五年九月から患者は検診拒否を確かにやっております。しかし、検診することが切り捨ての道具だと患者が思っているから検診拒否をしているのです。そういう意味において、検診拒否をして五年になりますけれども、この五年間、検診拒否を解決しようと環境庁が出ていったことがございますか、そして熊本県と、患者と真剣に話したことがありますか、実はこれがないのです。そういう中で五年間も放置されておる。こういうことで、基本的には患者との信頼関係なのです。  その次は、現行の認定制度が破綻しておるという問題に実はなっておるわけでございまして、やはり問題はこういうことがある。例えば、認定保留者というのは、どうもわからぬ人がおる。四十九年からずっと十年も二十年も引っ張られておる者がおるわけでございますから、わからないと言うんだったら知事が認定すべきだ、法律上は行政が認定することになっているのですから。そういうことをやらせるとか、死亡認定者が非常にふえているのですよ。生きておるときは棄却されておいて、死んで解剖したら認定だと言う。死亡認定者がふえているということは、現在切り捨てが多くなっているということになりますし、東大の元教授の白木さんという人は、脳神経だけじゃないんだ、これはやはり水銀によって血管が全部侵されて、臓器も侵される、そういう全身病だ、こういうようなこともおっしゃっておるわけですから、この認定の基準という問題にもいろいろございます。  それから、疫学で全部落がほとんど認定されておるのに、そこの中の同じ生活歴を持った人が認定されていないということもありますし、疫学の重視の問題とか、患者が死んだような場合は、今民間のカルテも使うことになりましたけれども、民間の医師のカルテを使うとか、いろいろなことを含めながら、今の例ですけれども、認定制度を患者の意見を聞いて抜本的に解決をする、検討をする、そういう腹を持って患者に接していったならば、検診拒否はおきまるのではないか。  さらに、例えば四十六年に次官通達を出した、これは非常に患者は信頼しておる。五十三年に次官通達が出し直された、これは切り捨てたと反発しておる。じゃ、これをどういうぐあいに整合性を持たせていくか。いろいろなことがあるわけですから、そういう点について、やはり本当に患者の心になって、この行き詰まっておる認定を促進するということに抜本的な姿勢を持ちながら、環境庁長官、話し合いをするという気持ちはないのですか。
  168. 石本茂

    石本国務大臣 環境庁といたしましては、やはり現行制度を忠実に実行することが最も肝要であるという考え方は一応持っております。今後とも国と県が一体となりまして、十分な関係者の理解を得ながら、きめの細かな配慮をしながら認定業務の促進を図っていきたい。  そのためには、地元もいたしますし国もすることになっていると私は考えておるわけでございますが、先生のおっしゃること、何か一つ一つ本当にどうしてこんなことになったのか、これを早く解決するためにはどうしたらいいのか、今お話を聞きながら自分の胸で行ったり来たりしながら考えている最中でございますが、うんと促進させる努力をしてまいりますことをお約束いたします。
  169. 馬場昇

    ○馬場委員 時間が来ました。あと一つで終わらせていただきたいと思います。  水俣・芦北地域振興計画というのは、これも閣議了解事項になっているわけでございますが、今までずっと来て、あの辺、福島先生も選挙区ですが、私も選挙区です。熊本県の場合、熊本中心の北の方と比べて南の方は非常に落ち込んでいるのです。これは水俣病があったから、高度経済成長、あれがいいか悪いかは別として、余り施策が行われなかったということはありますが、何としても今までの地域振興計画を、閣議で了解しておりながら従来の省庁別の寄せ集めのような格好ですから――私は、これは一つの仮定、一つの例ですけれども、あそこは世界の公害の原点というのだから、あの不知火海の周辺を国際的な環境都市あるいは福祉都市、教育都市、そういうものにつくり上げるというような青写真でもつくって、これに向かって地域を振興していこう、そして公害の原点の忌まわしかったものを希望の持てる都市にしたい、そういうような計画というものを国も県と一緒になって指導してつくり上げていただいてはどうだろうか、こういうことが一つです。  それからもう一つは、私は、その一環として水俣に国際環境大学をつくれということを実は要求して、鯨岡長官は、実は環境問題は人類のために学問として定着していかねばならぬ問題であり、それを専門とする学校が国の手によってできることは、時代の趨勢として当然起こり得る問題であり、前向きに文部省などと考えてみたい、設立するとすれば公害の原点水俣・芦北地域が適当だろう、こういうことを言って、歴代環境庁長官も、文部省と話をして、そういう前向きで対処したいと言っておられますので、石本長官もこれを継承していただけるかどうかということでございます。  もう一つ、これは事務局の方で、初めてですが、実は朝鮮の方々があの戦争中、戦後もいっぱい水俣で生活し、働いておって、その人たちが五十九年六月までずっと毎年毎年、ここにございますけれども、三十四年から五十年まで朝鮮の方に帰っておられるのです。私の調べでは北朝鮮に百十三人、韓国に十七人、計百三十名の方が帰っておられますが、こういう人たちも、ずっと今あそこに住んでおる者で水銀に暴露されたのと同じような条件で住んでおられたわけでございます。それで、現在あそこに住んでおられる人もおりますが、関西方面に行かれた朝鮮人の方もおられます。こういう方がやはり水俣病にかかっておられるのではないかと私は思うのですが、政府においても、北朝鮮と国交がないと言われるかもしれませんが、人道的にも赤十字等を通じて調査する必要があるのではないか。調査した段階で本当に水俣病であれば、やはり補償すべきではないかと私は思いますが、以上、三点についてお答えいただきたいと思います。
  170. 石本茂

    石本国務大臣 地域開発の問題でございますが、熊本県が策定されました計画に沿いまして所要の事業が進められますように、国土庁を窓口といたしまして関係省庁の協力のもとに推進が図られてきているものと承知をしておりますが、今後とも地元開発の動向などを踏まえながら、地域の振興が図られますよう全力を挙げて努力をしてまいります。  それからもう一つ、馬場先生御提言の環境大学の件でございますが、これは我が省としても同調しておりますので、昨年五月に文部省の方に申し入れをしております。  以上でございます。
  171. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 最後の三点目のお話でございますが、きょう初めてお聞きしたことでございますので、すぐにお答えできないのでございますが、現在、先生も御案内のとおり、そういう、その地区にいて疫学条件を持っておられる方々が、自分が水俣病にかかったと思われる方々につきましては、それを申請をしていただくという形になっておるわけでございますので、日本におられる方はよろしいのかもしれませんけれども、お帰りになられた方々について、そういうお話は、私。初めて聞いたところでございますので、少し調べさせていただきたいというふうに思っております。
  172. 馬場昇

    ○馬場委員 石本長官、一生懸命ひとつ頑張ってください。  終わります。
  173. 辻英雄

    辻委員長 草川昭三君。
  174. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  まず最初に公害健康被害補償法の一部を改正する件について、二番目に公害防止事業団、三番目にスパイクタイヤの粉じんの問題を取り上げます。ですから、スパイク粉じんの政府側の方々は最後でございますので、前半は結構でございますからよろしくお願いします。  まず最初に、長官が真ん中お見えにならないと思いますので、二、三聞いておきたいと思うのです。  公害健康被害補償法について、過日の予算委員会で中曽根総理が、意味のなくなった公害地域指定はどんどん解除していく弾力的な姿勢が必要だというような答弁をなすっておみえになるわけです。私は実はその問題は非常に重要な問題だと思うので、今回ゆっくりと議論をしなければいけない問題だと思っておるのです。また同時に、中公審の方でもそのことについて慎重な御検討がなされておるやに聞いておるわけですね。そういうときに総理がどのような意味で――非常に簡潔におっしゃっておられますが、私はそういう態度に非常に疑問があるし、かえって混乱をさせることになるのではないかということをまず最初に、苦言というよりは、これは当委員会としてもひとつ基本的な問題として踏まえておいていただきたいと思うわけです。  これは私どもが先走って考えるのもいかがかと思いますが、中曽根総理は昨年から民間活力の導入とか規制緩和ということを盛んに言っておみえになるわけです。それとこれとは違うと私は思うのですが、それがもし同じ立場で言われたとするならば、この法案の審議がかえって変な方向へ行ってしまって、本来の問題点の解決にはつながらぬと私は思うのです。これは基本的な哲学の問題でもあり姿勢の問題ですから、まず長官に一言、基本的な考え方についてお伺いをしておきたいと思います。
  175. 石本茂

    石本国務大臣 原田議員に対します総理の答弁でございますが、私はこういうふうに理解したのです。やるべきものはやり改めるべきものは改めていくという意味で、常に制度の運用の適正化に心がけるべきであろうというふうな趣旨に受けとめたわけでございます。  それから、民間活力の問題でございますが、河本長官が財界人との対話をされました後に閣議で報告がございました。その折に私は、環境庁の持っている問題、特に公害の問題は、関係ないと思うのですが、そういう民間活力を導入するということとは違いますということをはっきりと申し上げ、メモも差し上げたわけでございます。  以上でございます。
  176. 草川昭三

    ○草川委員 今、総理の御発言について、弾力的な運営というのはそういう意味ではないやにおっしゃっておられますけれども公害問題については、高度成長経済の落とし子という意味昭和三十九年前後から非常に大きな話題になっておるわけでございますが、ここ最近は余り大きな社会的な問題になっていない。それは、非常に規制が行われて成績が上がったということももちろんあるわけでございますけれども環境破壊というのは本質的には結局不経済なことなんだ、そういうことは財界も十分考えられておると思うのですね。でございますから、社会全体としての不経済な結果にならないように規制緩和ということはやっていかなければならない。特に民間活力の導入というのはそういうものの総体的な中であるわけでございますので、十分注意して、今長官がメモを回したとおっしゃられますが、もっと大きな場所できちっと環境庁の姿勢としてただすべきものはただす、そしてそれこそ直すべきものは直すということをしておいていただきたい。そういう姿勢がないと国民全体に環境庁に対する信頼が薄れていくわけであります。先ほど来もアセスの問題等でいろいろな御意見が出ておりますが、同様な疑問点というのは我々も持っているわけでございますので、その姿勢をひとつ明確にしていただきたいと思うわけです。  それだけ十分に承知をしておいていただいて、予算委員会に出席されるならされて結構でございますので、最初に苦言を申し上げておきたいと思います。そのことについて、もう一回決意を表明して行ってください。
  177. 石本茂

    石本国務大臣 先生の申されました一つ一つを肝に銘じまして、機会がありますごとに、できるだけ早い時期に環境庁の意思としてきちっと表明しておきたいと思っております。頑張ってまいります。
  178. 草川昭三

    ○草川委員 私は今から公健法の経過等について少しお伺いしたいと思うのです。  私自身の個人の経験を申し上げるわけでございますが、私は、公害が非常に多発した昭和四十年代の前半、名古屋の南部の方で、ちょうど公害指定地域になっておるわけでございますけれども、ここで労働組合の委員長をやっておりまして、名古屋南部の重化学工業の労働組合の委員長懇談会をつくろうということを提唱いたしまして、これは全国的に見ても珍しかったと思うのですが、公害に関する労使会議というのを提唱いたしました。そこに経営のトップの方々にも集まっていただき、そして行政の県知事、市長にも出席を願い、あるいは地域住民の代表の方々も御参加を願いました。  当初は経営側の方々も地域住民の方々と直接お話をすることを非常に嫌われたわけでございますが、それぞれの組合の委員長が説得いたしまして、経営側にも出ていただく、あるいは県知事、市長にも出ていただく、労働組合もそういう企業で働く組合の立場公害の原因を除去するために少し努力しようというので労使会議を開きまして、そこで公害被害者救済基金制度というのをローカル的に、わずかではございますけれどもつくりまして、子供さんたちを林間学校に行かせるとか入院されてみえる方々に見舞いをする、あるいはその地域、名古屋では初めてでございますが、名古屋南部の柴田という地域にオオムラサキツツジを我々組合が植えるというような非常に新しい運動をした経験がございます。もちろん組合員自身が被害者の方々というよりは地域住民の方々にアンケート調査をして、柴田ぜんそくという名を私どもがつけたわけでございますが、そういう経験があるわけであります。でございますから、患者の方々の苦しみもそれなりに、私どももおつき合いをさせていただいていろいろな強い怒り、本当に苦しい生活も目の前に見てまいりまして、公害発生源に働く労働者として、少なくとも組合の責任として公害防除をしなければならない、こういうことをやってきた立場があるわけです。  そういう立場があるだけに、私は現在の大気汚染の現状あるいは患者の方々が今日なおたくさん多発していること、あるいは私は今回の質問の中にも、公害患者の方々にも直接お話をしてきたこともあるわけでございますが、公害健康被害補償法の一部改正について患者切り捨てになるのではないかというような御心配も非常にあるわけでございまして、私どもはそうではない、とにかく現在の認定患者の方々が一日も早く治っていただけるように国にただすべき点はただしながら、そして早く治っていただくように努力する、あるいはまた従来の大気汚染の発生源の内容が異なるとするならば、その原因を明らかにしながら新しい患者の方々の発生を食いとめていく、そういう努力こそが今回の法律の目的ではないだろうか、こういうことを申し上げながら来ておるわけです。そういう立場できょうは少し御質問をさせていただきたい。まず最初に私のスタンスを申し上げながら質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  そこで、この法律ができましてからもう既に十年半になるわけでございますけれども、いろいろな問題点が出てきております。私ひとつ、日本医師会が昭和五十九年三月に環境保健委員会の活動の取りまとめをやっておるわけでございますが、これは環境庁の方も御存じかもわかりませんし、既に国民医療年鑑にも出ておりますので、ちょっとそこのところを読んでいきたいと思うのでございます。「公害については学問だけでは割り切れない問題も多いので、現実面での追求と対応をおろそかにせず問題を検討していただきたいという執行部の要請を受けて発足した。」云々というのがあるのでございますけれども、このことについては当局は御承知をなすっておみえになりますか、お伺いをしたいと思います。
  179. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  日本医師会においてそのような委員会をつくりまして、提言といいますか答えをまとめたということは承知いたしております。
  180. 草川昭三

    ○草川委員 これは一言で言うならば「冷静な客観的な科学的知見と、社会的な良識のある政治や行政の公正な判断に基づいて、」適切な見直しが必要な時期に来ていることも確かである、こういうことを言っております。これは、医者がそういうことを言うというのは一体どういうことか、これは何を言いたいのかということは、私は一遍よく聞いてみなければいかぬことだと思うのでございますが、ここは医師会の場ではございませんから……。環境庁としても、何を実際御指摘になっておられるのかということは一回十分考えておかなければいかぬのではないか、私はこういうように思います。  同時にもう一つ、これは私の議論を進める中で、筑波大学の橋本という教授がこういうことを言っているのでございます。たしか環境庁の当時の部長か局長をやられた方でございますけれども、「ジュリスト」という法律雑誌の中で「公害健康被害補償法の問題点」というところで議論してみえるわけです。   この制度は、全く特異な異例な立法だということをまず念頭において論ずる必要があります。それは、不確定性の極めて高い科学的知見のもとで、判決を基礎として政治と行政が社会的政治的な危機的状況のもとでいかに粗く割り切ったかを冷静に詳細に明らかにしたうえで、正常化を政治と行政の責任で決断すべきものなのです。 こう言っておみえになるわけです。  これはこれからの議論の中で非常に重要な提言だと思って、私は過去今のような運動をしてきた経過がございますから、私なりに真摯に受けとめてこれから議論したいと思うのですが、このことは一体何を指しておみえになるのか、環境庁にお伺いしたいと思います。
  181. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  公害健康被害補償法は四十八年に制定されたわけでございますが、その当時におきます社会的な環境がいろいろあったわけでございまして、私ども聞いておるところ、あるいは先生からお話がございました「ジュリスト」も私も読ませていただいたわけでございますが、当時そういう面で、お話がございました三十年後半から四十年前半にかけまして大気汚染による公害問題が非常に大きな問題になっておった、そういう状況の中におきまして、それに対する対策を政府なり汚染物を排出する企業なりが何らか講じなければならないというような社会的情勢が非常に強まっておった。その中におきまして四十七年でございますか、四日市ぜんそくの判決があったというような社会的情勢を踏まえまして、医学的にはかなり難しい理論ではあったけれども、かなりの割り切りをやった上でこの制度を組み立ててまいったということをおっしゃっておられるのだろう、私どもそういう過程においてこの公害健康被害補償法がつくられたということを聞いておるところでございます。
  182. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると、現在の環境庁考え方をお伺いしますけれども、もう十何年前ですからそういう時期が十何年間あるわけですね、その時期から今になっているわけですが。そういう非常に粗っぽい割り切り方をしたんだ、だから、今改めてその粗っぽい割り切り方をやめるとおっしゃるのか、修正をするとおっしゃるのか、それは今どういうお考えになっておるのですか。
  183. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えします。  制度を組み立てる過程におきましてはいろいろなところでかなりの割り切りをせざるを得なかったという経緯があったわけでございますが、先生お話しございましたように、それから十年余たっているわけでございます。その間に一番大きな変化をいたしましたのは大気汚染の態様であろうというぐあいに思うわけでございます。そうなりますと、この制度をつくりました時点におきましては、いわゆるSOxによる汚染が非常に著しいということで、それに着目するといいますか、それにウエートを置いて制度を組み立てておったという経緯があるわけでございますが、それ以降におきまして大気汚染の態様が変わってきたということを踏まえまして、現在私ども、その基本となります地域指定指定要件なり解除要件という地域指定のあり方が一番基本的に大事な問題であり、それについては現時点におきます評価といいますか、それをきちっと踏まえた上であり方をきちっと整理すべきであろうというような考え方をいたしているわけでございます。そんなようなことで、現在中公審の方に御審議いただいている段階でございます。
  184. 草川昭三

    ○草川委員 そういうことで中公審が今現在審議をされておると思うのでございますけれども、中公審の現在の討議の内容というのがどの程度進んでおるのか、あるいはまた、いずれどこかで中公審の内容というのが報告はされるわけでございますけれども、その見通し等についてはまだ後で御質問を申し上げます。  今たまたまおっしゃいました地域指定でございますけれども、全部で今四十一でございますか、現状地域指定は特にこの二条におきます著しい汚染と指定疾病の多発ということから地域指定が行われておるのでございますが、現在の地域指定にさらに追加要望市町村はあるのかないのか、お伺いしたいと思います。
  185. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 新しく公健法によります地域指定お願いしたいという要望はございます。はっきり申し上げますと、東京都におきましては二十三区のうち十九区が指定されておるわけでございますが、残りの四区がまだ指定されておらないというようなこともございまして、従来からそういう要望が私どもの方に出されております。
  186. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると、今たまたま東京都という話が出たのですけれども、特に地域指定を行う際に著しい大気汚染を測定する指標は、ただいまも出ておりますが、SO2ということになるわけです。その態様が変わったとおっしゃっていますが、東京都の場合は従来からのSO2というのですか、大気汚染の態様というのは変わっていないのですか。
  187. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 東京都の場合におきましてもそれぞれの場所によって多少変わる点があるわけでございますが、総体的に申し上げますと余り変わっていないというぐあいに申し上げてよろしいかと思います。総体的に申し上げますと、SOxは多少減じてはおりますけれども、NOxあるいはSPMについては余り変わりがないというぐあいに御理解いただいて結構だと思います。
  188. 草川昭三

    ○草川委員 私どもに若干資料があるのでございますけれども東京都の場合、昭和四十九年十一月ですか、中公審の答申がございますね。その中公審の答申のいわゆる環境基準を下回っておるのではないかというような意見もあるのですが、その点はどのように御判断なすっておみえになるのですか。
  189. 岡崎洋

    岡崎政府委員 今先生がおっしゃいましたのは、希望をされているところの基準が下回っているかどうか、こういう御質問でございますか。――私、その点具体的にはつまびらかに存じておりませんけれども、SOx、について言えば、測定局によって基準を下回っているところは十分に生じているのであろうというふうに推定をいたします。
  190. 草川昭三

    ○草川委員 そこらの点は、ひとつ一番最初に申し上げましたように、ぜひ客観的な測定局の報告とか問題点というのをやはり明らかにしていきませんと、東京都の方といろいろとお話をしますと、隣の区で子供さんが小児ぜんそくになった、それが認定される、隣の区でぜんそくになった場合に認定されない、その差が著しく不均衡ではないかというのでたくさんの要望が出てくる。だから追加要求をしなければいけないんだと。だからどうしてもこれから患者の地域分布についてもお伺いをしたいと思いますけれども、この制度が今はかえって混乱を起こしつつある。これは新しく発生する方々ですよ。既存の患者の方々は別にして私は今議論をしておりますけれども、特に子供さんの態様について悩んでおみえになるという話があるわけですよ。そういう問題点というのは、この中公審でどのように議論になっておられるのか、お伺いしたいと思います。
  191. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  先生の御質問に直接お答えすることになるかどうか、ちょっとはっきりわかりませんけれども、中公審の四十九年答申におきましては、地域指定をやるに当たりましては、大気汚染の程度といいますものとその地域におきます有症率といいますものを相互に調査いたしまして、それらの状況について総合的に判断した上で指定をするという考え方をいたしておるわけでございます。したがいまして、そういう面では、個々の事例をとりますと、中公審答申にございますような大気汚染の程度が三度以上になっていなかった地域というところもあろうかと思うわけでございますが、大気汚染の程度といいますものと疾病の有症率の割合といいますものを総合的に判断をして個々の地域ごとに指定をしておったという経緯があるわけでございます。そういう中で地域指定をそれぞれ四十一してまいったという経緯がございます。  なお、子供さんの病気の問題でございますけれども地域指定をする場合におきましては、ある程度どこかの行政区域で線を引かざるを得ないという制度的な割り切りもあるわけでございますので、その点は御理解いただきたいというふうに思っています。
  192. 草川昭三

    ○草川委員 それで今、地域的には大都市に患者がどうしても集中していく。私ども、かつて四日市公害とか、私ども愛知県の場合は東海市とか名古屋南部というところでやってきたわけですが、ここでは患者の数というのは減ってきておるわけですよね。ところが、東京のようなところで患者の数というのはふえてくる。大都市に集中する理由というのは、どういう患者の層なのか。あれは一級、二級というのですか特級というのですか、グレードがありますね。どういうような内容になってその認定患者というのがふえているのか、お伺いしたいと思います。
  193. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答え申し上げます。  指定地域におきます患者の認定状況に関するお尋ねかと存じますけれども、御案内のとおり、四十九年に法施行されましてから五十三年度までにおきましてそれぞれ指定地域をふやしてまいった経緯があるわけでございます。そういうことでそれぞれの地域ごとに指定地域になった年が差があるというような経緯もございますし、またそれぞれの地域ごとに大気汚染の態様の変化もあり得るというようなことで、必ずしも一律に各指定地域がそれぞれ同じような割合で患者さんが出ておるということにはなっていない状況にあるわけでございます。  なお、大都市あるいは中小都市というぐあいに患者さんの障害の程度でございますか、それがどうなっているかというお尋ねでございますが、ちょっと手元に資料を持ち合わせておりませんけれども、総体的に申し上げますと、当初の四十年代におきましてはかなり特級なり一級の患者さんの割合が高かったわけでございますが、近年におきましてはむしろ特級、一級というように症状の重い方々が減ってまいりまして、三級とかあるいは級外というような比較的症状の軽い方々がふえておるという傾向にあるわけでございます。
  194. 草川昭三

    ○草川委員 今御答弁もありましたけれども、いわゆる障害等級を見ていくと、五十年の三月末で全体の患者の方々の数の〇・五%あった特級が、五十九年の三月、これは一番新しいところですけれども、〇・〇一という形で減ってきているんですね。それからまた、一級も四・八から〇・九へ減ってきております。これに対して、三級という軽い方が四四・三%から五二・四%へ上がってきている。また級外が二二・四%から三二%へ上がってきている。こういう推移をどのように眺めたらいいのか。大気汚染の態様が変わったとおっしゃるのですか。この変わり方と患者の変化、これをどう見たらいいのですか。     〔委員長退席、柿澤委員長代理着席〕
  195. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 非常に難しい御質問で答えに窮するわけでございますが、その法律がつくられました時点あるいはその前の時点におきましては、いわゆるSOxによる汚染が非常に著しかったというような経緯から、非常に重篤な方々が多く出ておられたというような経緯があるわけでございますので、そういう面では法律の制定当時、その前後におきましてはかなり重い患者さんも多くおられました。その後そういう患者さん方につきましてはそれぞれ治療等行われておるわけでございますので、症状が軽くなるということも当然あり得る話であろうというぐあいに思うわけでございます。  そのようなこともありますし、それ以降の新しい患者さんの発生におきまして、そういうぐあいに重い患者さんが多かったか少なかったかについてはちょっと数字を持ち合わせておりませんので正確に申し上げられないわけでございますが、一般的に申し上げますと、都の四十年当時みたいな重篤な大気汚染というものがなくなっているわけでございますので、そういう意味におきましては、そういう激烈な非常に重いというような患者さんの発生というのは比較的少なくなってまいっておる。それから重い方々につきましては治療等を行いますことによって軽くなっておるというようなことがそれぞれ相まちまして、先生からお話がございましたように、五十九年の後半になりますと、全体的に見た場合に重い方々が少なくなりまして、比較的軽い方々の割合が多くなっておるというぐあいに理解いたしております。
  196. 草川昭三

    ○草川委員 結局、新規の認定患者というのは、今、年間約九千人くらいみえるんですか。  もう一回私質問し直しますけれども、その新しい認定患者の方々は一体どういう地域でなるのか、こういう質問をしたら、さっきは大都市というような答弁がありましたね。それは間違いないですか。いわゆる新しい認定患者というのはどういう地域で出ておるのかということをもう一回お伺いします。
  197. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答え申し上げます。  新しく認定される患者さんの方々というのは東京都が非常に多い形になってございます。
  198. 草川昭三

    ○草川委員 さっきも申し上げたように、結局若い子供さんたちが多いわけですよ。子供さんたちの申請が多いわけですね。それで、ドクターなんかにお話をしても、やはりドクターも地域指定の差というのが非常に困るのだ、隣で認定される、こちらでは認定されないということは困る、こういう議論になっているのですよ。だから、ふやせばいいじゃないかということになるのか、ここが非常に問題です。では、地域指定というのはどんどん広げていけばいいのかということになると、日本じゅう広がっていくのかどうかという問題を、今中公審でそういうことも含めて議論になっているのですか。
  199. 岡崎洋

    岡崎政府委員 確かに今先生おっしゃいましたような地域、道一本隔てて区が違うから、片方は認定になり片方は対象にならないというような話をいろいろ聞いておりまして、これは先ほど来部長が説明しておりますように、制度発足時のある種の割り切りからスタートしてきている点も原因になっておると思います。したがいまして、そういう点は私ども問題点の一つだというふうに頭には置いておりますが、現在の中公審の議論ではまだそこまでいっておりませんで、中公審ではさらに科学的な見地から今専門部会を設けて、かなり医学的、科学的な分野で検討していただいておりますので、先生指摘のような問題は、さらに次のステップでどういう形で私どもも含めて勉強していけばいいのか、そういう段階での問題であろうと思います。
  200. 草川昭三

    ○草川委員 客観的なことでございますが、現在の認定はBMRCというのですか、その質問票ですね、BMRCというので問題点をそれぞれ取り出してデータをつくって一つの基準にする、こういうことですけれども、これはせきやたんの訴えを調査することが中心になるわけでございます。今、アメリカにATS調査方法というのがあるんだそうですね。これは胸部疾患学会というのですか、そちらの方がより現状に合うのではないかという意見がございますが、その点はどのように考えておられますか。
  201. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  先生お話のBMRC方式はイギリスで開発されたものでございまして、慢性気管支炎等の疾病を持つ方々についての面接調査方式でございます。それから、先生お話にございましたように、ATS、アメリカで開発された方式でございますが、この方式はどちらかというと子供を対象として自己記入方式によるアンケート調査という形になっておるわけでございます。したがいまして、大気汚染との関係においてそういう有症の状況を調べる場合におきましては、BMRC方式でございますと、どうしても慢性気管支炎ということになりますとかなり長期にわたっての蓄積された、あるいは累積された汚染といいますか、あるいはそういうあつみのある患者さんというか有症者を把握する形になろうかと思いますし、ATS方式になりますと、そういう面では子供さんが対象でございますので、比較的短い期間の影響を把握できるというように、それぞれの方式によりましてメリットあるいはデメリットと申しますか、そういうものがあるわけでございます。  なお、BMRC方式につきましては、公健法をつくりました四十九年当時におきましてはBMRC方式によりましてそれぞれの地域におきます有症率の状況を調べてまいっておるわけでございますが、ただいま私ども中公審でお願いしております疫学調査におきましては、ATS方式を使いましてそれぞれの地域におきます子供さんの有症状況調査をしたものを審議会に報告いたしまして、それに基づいて審議が進められておるという段階にございます。
  202. 草川昭三

    ○草川委員 それでは、今のBMRCの過去の実績のデータというのは出るのですか。調査の方法というのか、一般に公開はされているのですか。されていないのでしょう。
  203. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  四十九年の法施行以降におきまして地域指定を行うために調査を行ったものでございますので、そういう面におきましては、そのデータは公表されておりません。
  204. 草川昭三

    ○草川委員 公表されていないので、改めてそういうデータを公表し、それからさらに、子供さんたちを対象にするATSの調査方法等についてもやはり公表しながら地域指定の、対応がどうなるのかわかりませんけれども、理解ができるような形で進められたらどうでしょう。今後とも報告される、公表される気持ちはあるのかないのか、お伺いしたいと思います。
  205. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 ただいま中公審に諮問をいたしまして審議をお願いしておりますときにおいて、私ども従前からいろいろ国内外の文献を集めておったという、国内外の文献のリストと申しますか要約したものを本にまとめたものが一つ。それから、国保の受診状況調査というものも調査したわけでございますが、それの概要のもの。それから先生お話しございましたATSについてのアンケート調査をまとめた資料。その三つの資料を取りそろえまして、それを中公審に報告いたし、それに基づいて、あるいはそれ以外に先生方の知識経験も加えられるわけでございますが、そういうものをベースというか、たたき台にいたしまして先生方の方で御意見を賜りたいというぐあいにお願いしているわけでございます。  そのような観点で、環境庁の方で集めました先ほど申し上げた三つの資料は、それぞれ公表という形でやらせていただいております。
  206. 草川昭三

    ○草川委員 私の言っているのはそういうことではなくて、過去のいろいろな実績の中から、十年の間に随分変化があったわけですよ。その変化があり、そしてまた新しいいろいろな、子供さんたちに対する調査の仕方も変えてきた。言うならばそういうものを、すべての資料をとにかく公表しながら、そしてまた一般の地域の方々に了解を得ながら、真の原因がどこにあるのか、なぜ新しい患者の方々が生まれるのか、それはNOxなのかSOxなのか浮遊粉じんなのか、そういうものを追求をしていかない限り、この問題は簡単に線引きだけがどうだこうだ言ったって始まらぬわけですよ。またこの後に、いわゆる原資の問題もありますからね。  だから、今私がお伺いしておる範囲内では、私は、環境庁の対応というのは、何か一番最初にできた当時から比べて、十何年間の間に科学的に詳しい調査をしながら、原因がこのように変化があるということを把握しておみえにならないのじゃないかという気がしてしようがないのですよ。  とにかく一番最初に私が質問したのは、当時のあの公害状況というのは、まず行政的にも割り切らざるを得なかった、こういうお話ですよ。そのとおりだと思うのです。だからこそこの十何年間、ほったらかしてはなくて、大気汚染の規制というのをがんがんやってきたわけですね。あるいはまたエネルギーの転換ということもやってきたわけですよ。にもかかわらず、子供さんたちを中心とする――子供さんとは環境庁はまだ言っていないけれども、そういう新しいところで患者が出てくる。それも、しかし地域的には非常に問題がある。行政的にも物すごく困っている、ドクターも困っている。そして親も、実際いろいろなお話を聞くと、隣の市ではいいがこちらではだめだというような話がある。それは中曽根さんがおっしゃるような簡単な形の見直しではなくて、それこそもっと冷静に科学的に、そしてそれを判断しながら行政も立法府も検討しなければいかぬということを私は言いたいわけですよ。そうしないと、これは非常にトラブルが起きますよ。  そういうつもりで私は質問しておるのですが、質問の仕方もうまくないので議論が余りかみ合っていませんけれども、少なくとも今の環境庁の対応では不十分だと私は思うのです。ですから、まず大気汚染が本当になくなったのか、今なお大気汚染は厳然としてあるのか。あるとするならばSOxなのか、NOxなのか、浮遊粉じんなのかきちっと分けて、そして子供さんたちにこういう害があるよ、子供さんたちに害があるというのは一体何か。それだけなのか。生活環境の変化によるところの問題点もあるのじゃないか。例えばNHKのテレビを見るとじゅうたんからどんどんほこりが出るじゃないかとか、生活環境もあるのじゃないかというならば、そういうことにも我々は気をつけていかなければいかぬわけですよね。自動車公害というものがあるならば、その自動車公害に対してどのような対応をすべきなのか、これが全然今明らかになっていないわけですよ。それで地域指定の問題だけがひょこんと予算委員会で総理の発言から出てくるということは、これはとてもじゃないけれども議論がかみ合っていきませんよ、こういうことを私は言いたいわけですよ。その点についてはどうですか。
  207. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 舌足らずの答弁で先生に誤解をお与えいたしましたことにつきまして申しわけないと思っております。  先生お話しのように、現在の公健法の地域指定の要件といいますのは、SOx、SO2によりまして地域指定が定められておるわけでございます。当時SO2は非常に高い濃度であったわけでございますが、その後いろいろなところの努力によりまして現在は非常に軽減してまいりまして、いわゆる環境基準もほとんどのところでそれを下回るという状況になっているわけでございます。一方におきまして、NOxあるいはSPM、浮遊粉じん等につきましては従前からの状態がほぼ横ばいという形に推移してまいっているわけでございます。  そのような大気汚染の態様が変わってまいりましたことに絡みまして、しからば、この大気汚染と健康被害との関係を、法の制定当時におきましてはSOxに着目して組み立てておったわけでございますが、それ以降の大気汚染の態様が変化したことにかんがみまして、いわゆるNOx、SPMに関して健康被害との関係がどうなるかというのをきちんと科学的に解明しなければならないというようなことから、環境庁といたしましては従前からNOx、SPMに関する国内外の文献をいろいろ集めてまいりました。さらにあわ甘まして、五十二年度以降におきまして国民健康保険の受診率調査とか、あるいは五十六年度以降におきましてはそれぞれの地域におきます学童を対象といたしましたATSを使ったアンケート調査、そういうようなものにおきまして年次ごとにそれぞれ調査をしてまいりまして、一応そういう文献なりあるいは調査項目が大体まとまったというようなことから、そういう資料を束ねまして、環境庁としてはこういう大気汚染の態様の変化を踏まえて、これらのデータに基づきまして大気汚染と健康被害の関係をどう評価したらよろしいのか、さらにその評価の上に立ちまして今後の地域指定のあり方についてどう考えたらよろしいのかということを諮問いたしたところでございます。  そのようなことで、先生お話にございましたようなことにつきまして私どもそれぞれ準備をしながら進めてまいっておるということで御理解いただきたいと思っております。
  208. 草川昭三

    ○草川委員 それは、いずれはいわゆる基金制度というのですか、それの原資にも当然のことながら及んでくることにもなるわけでございますし、医療給付等あるいは公害保健福祉事業の対応の仕方等にもかかわってくるのではないか、こう思うのでございます。  とりあえず医療給付の方にいきますけれども、現在公害疾患の特掲診療という形で医療給付が行われておりますが、こういうものについては変化が将来予測をされるのか、変わりがないのか、お伺いしておきたいと思います。
  209. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 公害の診療報酬についてのお尋ねでございますが、先生御案内かと存じますけれども公害診療報酬につきましてはその公害診療報酬の特殊性というものがあるわけでございます。先生お話しございましたように、特にその技術料といいますか、特掲診療といいますものは、特に健保点数より高く設定いたしております理由といたしましては、公害の患者さんにつきましては診察の時間が一般患者さんに比べまして長くかかる、あるいは家庭における療法なり日常生活等についての指導を要することが多いとか、あるいは公害という特殊なものによります関係から特殊な検査なり治療を要することが多いというようなことを考えまして、このような公害医療の特殊性を踏まえまして新しく公害特有の診療点数を定めておるというところでございます。  このような公害医療の特殊性を踏まえまして今後どうするかという先生のお尋ねでございますが、この公害医療の特殊性というものにつきましては基本的には変更がないというぐあいに考えておるところでございますが、前回の、五十八年六月の改定の際におきましては、従来の考え方を一部改めまして、項目の統合だとかあるいは従前点数をそのまま据え置くとか、あるいは従来の健康保険の二倍であった点数を一・五倍に直すというような適正化をそれぞれ行ったところでございます。今後ともそういう面での診療報酬点数の適正化という問題につきましては私ども心がけていかなければならない問題であろうというぐあいに思うわけでございまして、今後とも中公審の意見を聞きながらさらに適正化を進めてまいりたいというぐあいに考えております。
  210. 草川昭三

    ○草川委員 私が言いたいのは、実は、こういう認定患者の方々についてはぜひ手厚い医療給付をしなければいけない、こういうわけでございます。ただ時間がかかるから点数が高いというのではなくて、もう少しリハビリだとか環境の、場所改善する。これは、どちらかといえば医療の問題ではなくて福祉事業の方になるのですけれども、そういう療養指導というものがこの日本の医療の中で、公害をなくす医療の中で定着していないのではないかと思うのです。  私ども地元にも入院をされてみえる病院がございますけれども、全く一般病院と同じですよ。一般病院と同じでいいのかもわかりませんけれども、もう少し環境を変えてみて、落ちついた相談なり、あるいはまた非常に空気のきれいな場所等を選んでそういうところで一定期間療養をするということを考えることがどうかとか、そういう知恵を少し出していくことがこの十年間の行政の本来の責任ではないだろうか、私はこう思うのですが、この十年間全く一般の医療とほとんど同じ施設で同じ診療内容で過ごしてきたのではないか、こう思うのです。  特に今子供さんのぜんそくの問題等については、私ども地元にも久徳先生という有名な小児ぜんそくの先生がおみえになりまして、私もよくお話を聞くのですが、この小児ぜんそくの対応というのは従来の母親の対応だとかあるいは従来のお医者さんの対応ではなかなか治りませんよ、もっとさまざまな複合要因があるのだからそれを解決する以外にはないのだというようなことをおっしゃっておられますが、そういう医療と公害保健の福祉事業とをミックスした何か改善策というものは考えられないのかどうか、お伺いしたいと思います。
  211. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 先生からお話ございました公害保健福祉事業につきましては、私どもそれぞれの地域要望を聞きながら改善をしてまいっておるところでございます。先生お話の中にございましたように、空気のきれいなところにおいて一週間ぐらい療養するというような制度、あるいは子供さんに対しましてはキャンプをやってその間に体を鍛えながら、なおかつ治療といいますか、ぜんそく体操を覚えるとか、そういうようなことについての教育訓練というようなものも心がけておるところでございますし、それ以外に新しく一泊二日、個々の患者さんにとりましてはなかなか一週間という長い期間を転地療養等できない場合もあるわけでございますので、一泊二日という短い期間におきますリハビリテーションのテクニックといいますか、そういうものを指導を受ける会をつくるとかいうような形で、できるだけ細かな点に配慮いたしながら、できるだけその地域要望に応じました公害保健福祉事業を進めてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  212. 草川昭三

    ○草川委員 時間がこのことでどんどん過ぎていきますので、この程度でまた次の機会に残された質問をやらせていただきたいと思います。とりあえずこの公健法の問題についてはこれで終わります。  公害防止事業団のことについて次に触れていきたいと思います。  公害防止事業団について実は臨調が最終答申の中で問題提起をしておるわけです。この臨調の最終答申の中では、公害防止事業団等については「地方公共団体等との役割分担の実態を勘案し、建設譲渡業務について、国家的見地からみて緊急性が高くかつ大規模な事業重点的に行う等業務内容の転換を図る。」融資業務についても「公害防止計画等を推進するために特に必要なものに限定する。」そしてさらに「組織の整理・再編成を行う。」ということを言っておるわけですが、これを受けて現実に環境庁としてはどのような形でこの事業団の運営をなされるのか、あるいは既に実施をされている問題点があればお伺いしたい、こう思います。
  213. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 御指摘のとおり、五十八年の三月十四日に臨調からさような最終答申をいただきまして、さらにまた五十九年十二月二十九日には閣議決定をもちまして「行政改革の推進に関する当面の実施方針について」の態度を決めておるわけでございます。  これは、長期的に検討をしなければならない分野ととりあえずやっていかなければならない分野といろいろあると思うのでございまするけれども、さしあたり臨調の五十八年の答申を受けましてまず手をつけましたことは、臨調答申にもありますような「地方公共団体等との役割分担の実態を勘案し、」云々とあります。その線を酌み取りまして、五十九年度におきましては、貸付業務について原則として一件当たり三千万円の融資額のすそ切り、つまりそれ以下の問題につきましては地方公共団体の融資等に期待したい、こういうような対応を図ったところであります。  さらに、六十年度におきましては、建設譲渡業務につきましては、例えば交通公害の問題とかアメニティーの確保、増進、具体的にはなかなか個別事業として成熟しがたいものもありますが、そういうものに重点的に取り組む方針を打ち出しておる、このようなことでございます。  ただ、より根本的に私どもがこういう認識を持っていることを御披露申し上げたいと思うのでございますが、御案内のように、公害防止事業団は昭和四十年、環境庁発足前に発足しております機関でございまして、あの四十年当時の産業公害の大変激しかった時代でございますので、産業公害防止を第一義的に図るということを中心的な目的とした機関でございます。そして、それなりの実績を上げてきたと私ども思っておるわけでありますが、近年これまた先生十分御案内のように、環境問題が、産業活動に起因する公害に加えまして、交通公害でございますとか、あるいは閉鎖性水域における水質汚濁というようなものに典型的に見られますように、生活型公害あるいは都市公害、そういう様相に転化してきている、あるいは多様化してきておる、こういうものに対応しなければ今日的な意味での時代の趨勢にも合いませんし、また本来的な公害防止という、そういう役割の機能を十分に果たし得ない、こういうことでございますので、我々この臨調答申も踏まえながら、現在、業務のあり方につきまして総合的にあるいは抜本的に検討を行っている過程でございます。
  214. 草川昭三

    ○草川委員 共同公害防止施設というのは非常にうまく利用された時期がありますけれども、中小企業の方々等のお話によりますと、もう共同でするよりは個別でという要求の方が実際は強くなりつつあるわけです。それから、共同利用工場についても、それはさまざまな工場がございますけれども、やはり申請をしてそれを利用するということについてはなじまないという場合もございますし、それから協同組合をつくるということについても大変作業が難しいわけですね。困難なことがございまして、ついついうまく利用ができないというわけでございます。共同福祉施設等は、市町村公園なんかをつくった意味ではこれは非常にうまく利用されているところもございますが、これもそれだけの余力というのですか、地元の力がございませんとこの融資が受けられないというように、少しずつ問題点があるわけです。金利等についてはそれなりの助成があるわけでございますけれども、もう一歩何か知恵を出すことについて柔軟な対応が望まれるのではないか。ですから、個別の公害防除施設等については中小企業金融公庫なりあるいは大きく言えば開銀融資等があるわけですから、そちらを利用してしまうというわけで、この公害防止事業団の運用等については、きょうは時間が余りございませんので触れませんが、ぜひひとつ新しい、今日的なこの要望にこたえられる対応を立てていただきたいということを要望をいたしまして、この件は終わりたいと思います。  その次は、スパイク粉じん公害を各省庁にお伺いをしながら環境庁の対応を聞いていきたい、こういうように思います。  このスパイクタイヤというのが市販をされるようになりましたのは、たしか昭和三十八年ぐらいではないかと言われております。その後各県等におきましても条例だとかいろいろな取り締まりの規制だとか認可だとか、いろいろな対応があったと思うのでございますが、これは後で通産省にまず数をお聞きしたいと思いますけれども、最近ではこの販売本数が非常にふえてきておりまして、これが雪国では粉じん公害になって住民の苦情が非常に大きいということになっております。そのことについてお伺いをしたいと思うのでございますが、まずスパイクタイヤの生産量というのがどの程度になっておるのか、通産省にお伺いをしたいと思うのです。
  215. 松井司

    ○松井説明員 スパイクタイヤの販売量というのは、政府で定められました統計というものは特にございませんので正確な数字はわかりませんが、社団法人日本自動車タイヤ協会が卸の段階、ディーラーの段階調査、把握した数字によりますと、ちょうど十年ぐらい前の昭和四十九年は百六十万本ぐらいでございました。五十五年が二百九十三万本ぐらい、最近、五十八年は三百四十四万本という数字になっておりまして、この十年間二倍強の数字になっていると思います。
  216. 草川昭三

    ○草川委員 このスパイクタイヤは、タイヤにいわゆるスパイクが打ち込まれているわけですが、これは一回通産省に正確に答弁をしていただきたいのでございますが、タイヤに何本ぐらいスパイクが打ち込まれているのか、あるいはそのスパイクというのは通産省の一つの基準があるわけですが、JISマークによって認知をされたというのですか、一種の格付、グレードというのですか、そういうものが表示をされて売られているタイヤであるかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  217. 松井司

    ○松井説明員 現在スパイクタイヤのスパイクの本数でございますが、これは自動車の車種によって違いますが、乗用車でございますと現在百二十二本というのが業界の基準になっております。JIS関係でこういうものが何本であるかというようなことは決まっておりません。
  218. 草川昭三

    ○草川委員 スパイクタイヤはJISでは認知されていないのですね。それで今大体百二十本というお話がございましたが、こういうデータがあるのです。これは矢貫さんという交通問題の評論家というのですか、いろいろ調べている方が調べてきた数字でございますけれども、実際、自動車のタイヤを売る小売店と言うと言葉は悪いのでありますが、タイヤ屋さんですが、そこでスノータイヤにスパイクを打ち込む例もあると言うんですね。ですから、そういうことをずっと調べていくと、スパイクの本数というのは年間四億本ほど生産をされておると言うのです。ですから、それを一本のスノータイヤに百本くらいずつ打ったと仮定します、今百二十本というお話ですから百二十本打つかもわかりません。そうしますと、今、協会が発表をしております例えば五十八年度の乗用車三百四十万ですか、それよりももっと、倍くらいにふえていくんじゃないか。その三百何万本というのは、本当に小売店で打っているものが含まれているのかどうかということですが、その点お伺いいたします。
  219. 松井司

    ○松井説明員 先ほど申し上げました三百四十四万本というのは、いわゆるディーラーの段階でとらえたものでございまして、あとサブディーラーと申しますか、そういうところでも過去は打ってきておりますが、その辺の数字は入っておりません。今先生お話がございましたように四億本ということでございますので、平均百本としますと四百万本、こんな数字も出るかと思いますが、従来はそういうディーラーのところでスパイクを打っていたわけでございますが、今後は、昨年の中ごろから品質を安定するためにもタイヤメーカーの方でスパイクを打つ、こういうことに変わってきております。
  220. 草川昭三

    ○草川委員 ですから、かなりの本数が出回っておるわけでございますが、どの程度因果関係があるかわかりませんが、スパイクですから道路を削るわけですね。ですから、当然のことながら粉じんが残る。雪解けになりますとそれが舞う。大変な被害があるわけでございます。  環境庁にお伺いしますが、このスパイクタイヤによる粉じん公害というものの実態をどの程度つかんでおみえになるのか、お伺いをしたいと思います。
  221. 林部弘

    ○林部政府委員 私ども環境汚染の実態につきまして調査をいたしました昭和五十七年度の札幌市の結果、それから昭和五十八年度の仙台市の結果から見ますと、交通量の多い幹線道路の沿道におきまして、スパイクタイヤの装着期におきます降下ばいじん、これは非常に粒子の大きいものもみんな入っておりますが、降下ばいじんの量が非装着期に対しまして札幌市におきまして約三倍、仙台市におきましては約九倍になっております。それから、粒子の小さい十ミクロンカットの浮遊粒子状物質の濃度で比較しますと、装着期と非装着期では両市とも約四倍くらいの差になっておるところでございます。
  222. 草川昭三

    ○草川委員 大変な粉じんになると思うのですが、たまたま北里大学の山科教授という方がラットを使った実験のデータがあるのでございますけれども、この粉じんを吸い続けたラットは気管支炎やぜんそく、心臓障害を起こす、じん肺になることがわかるということを言っておみえになるわけです。たまたまこの教授が五十七年の秋に仙台市で捕獲をいたしました野犬を調べて、その肺を分析したわけでございますが、普通は犬の肺はピンク色をしているはずなんですが、真っ黒だった。しかもこぶのような塊であったということがわかった。さらに詳しく肺の細胞を調査した結果、神奈川県の犬からはほとんど検出をされなかった鉄分が見つかった、こういうデータを出しておみえになるわけです。  それから、さらにスパイクタイヤの因果関係を調べていきますと、八匹のラットにスパイクタイヤによる粉じんを朝晩送風機で拡散をして飼育をしてみますと、その飼育をしたのを解剖していくわけでございますが、やはり肺の細胞内には小さな黒い斑点が出てくる。アルミニウム、珪素、鉄が検出をされるということになるわけで、いわゆるじん肺の初期の症状、肺に突き刺さるという感じになるのですが、そういうようなデータをこれも発表しておみえになるわけです。  ですから、これは今お話がございましたように、単なるばいじんとして認識をしていいのかどうか、非常にこれは私問題だと思うのです。そういう意味では、実は安全性という問題と環境保全という問題、非常に相矛盾する問題になっていくわけでございますが、これは各省庁は一体どのように取り組んでおられるのか、お伺いをしていきたいと思うのです。まず建設省は、道路管理あるいは道路舗装という面もあるわけですが、どのようにお考えになっておられるのか、お伺いをします。
  223. 寺田章次

    ○寺田説明員 お答えいたします。  スパイクタイヤの普及に伴いまして道路の舗装の摩耗が著しく、道路管理上大きな問題となっております。また粉じんの生活環境への影響も問題となっているところでございます。  このような事態に対処いたしますために、建設省におきましては、昭和五十七年、五十八年度の二カ年にわたりまして調査を行いました。そして、その結果等を踏まえまして、スパイクタイヤ装着の適正化等を内容といたします当面の対策につきまして、昭和五十九年十一月に道路局長より関係道路管理者に対しまして通達したところでございます。今後ともこの通達の趣旨を各道路管理者に周知徹底させるとともに、関係省庁と十分連絡をとり、道路の適正な管理、道路交通の安全確保等の観点からこの問題に取り組んでまいりたいと考えております。  以上でございます。
  224. 草川昭三

    ○草川委員 では、続いて運輸省、それから自治省、ひとつ答弁してください。
  225. 福田安孝

    ○福田説明員 御説明させていただきます。  運輸省といたしましては、自動車の装置ということからタイヤの構造のあり方というものを検討を進めておりますが、五十八年度から各種スパイクタイヤの粉じん、騒音の発生状況、走行性能、いわゆる制動距離等を含めまして、そういう走行性能及びこれらの評価法というものの調査を実施しておるわけでございます。また当面運輸関係団体に対しまして、スパイクタイヤの使用の自制に協力するよう指導をいたしておるわけでございます。
  226. 今泉浩紀

    ○今泉説明員 自治省でございますが、スパイクタイヤに伴います粉じん問題等につきまして、自治体が非常に苦労していることにつきましては私どもも重大な関心を持っているところでございます。現在北海道初め一道八県及び札幌市の指定市におきまして、環境庁から出されました通達、五十八年の九月でございますが、スパイクタイヤの使用期間制限等を内容とする当面の対策につきまして出されました通達に呼応いたしまして、スパイクタイヤの使用期間の自粛制限でございますが、指導要綱を策定しておるところでございますが、その基本的な問題の解決につきましては非常に苦慮するというふうに聞いております。私ども自治省といたしましては、こういった問題につきましては、単に地方公共団体の努力のみでは解決できない問題ということでございまして、国のレベルにおきまして具体的な防止策が検討されるべきだというふうに考えておりまして、私ども自治省といたしましても、関係省庁と連絡を密にいたしましてその問題に対処しているところでございます。     〔柿澤委員長代理退席、委員長着席〕
  227. 草川昭三

    ○草川委員 では、ここで警察庁の見解を受けたいと思うのですが、警察庁の場合は当然ながら、交通安全という立場があるわけですから安全性ということが中心になると思うのですけれども、スパイクタイヤを装着した場合としない場合の交通事故に与える影響というのはどのように判断をしてみえるか、お伺いしたいと思います。
  228. 安藤忠夫

    ○安藤説明員 昨年一月から二月にかけまして積雪地帯の冬季のスリップ事故だけ調査いたしまして、スノータイヤであったかスパイクタイヤであったか比較調査をいたしましたところ、スパイクタイヤのスリップ事故というのはスノータイヤのスリップ事故の約半分ということで、やはりスパイクタイヤの装着というのは交通事故防止上相当効果があるというデータがあります。
  229. 草川昭三

    ○草川委員 そこでもう一つお伺いをしますが、スパイクタイヤによって、道路のラインだとかいろいろな標示があるわけですが、これを消却というのですか削り取っていくわけですから、当然のことながら、これはまた雪解けになりますと新しくやらなければいけませんね。そういう意味では、逆に言うと、ブレーキをかけるという意味では効果があったかもわからないけれども、センターラインを消してしまってわからなくなってしまったという意味でのまた不安全上のポテンシャルというものが出てくるのじゃないかと思うのですが、その点についてはどのように考えられるのですか。
  230. 安藤忠夫

    ○安藤説明員 やはりスパイクタイヤで積雪あるいは凍結していない道路を走りますと、わだち掘れといいますか削り取った跡、あるいは道路標示等が摩耗してまいりますので、交通安全上大変好ましくない面があるかというふうに考えます。
  231. 草川昭三

    ○草川委員 そこで警察庁の対応を聞きたいと思うのですが、実はヨーロッパでは、当然のことながら非常に寒い国が多いわけでございますけれども、西ドイツではこのスパイクタイヤは全面禁止だそうですね。それから、今も費用の話が出ましたが、北海道ではスパイクタイヤによる道路の損耗補修費というのは全道で一年間百億かかるのだそうです。札幌市だけでも十二億円かかるということが言われておるわけです。非常に費用がかかる。安全性を優先させれば逆の意味での不経済、そしてまた不安全な結果が生まれる。  そこでどういうような対応を立てたらいいのかというわけで、今西ドイツでは全面禁止あるいはフィンランドだとかノルウェーだとかスウェーデンだとかスイス等においても、高速道路はだめだとかあるいはスパイクタイヤの本数というものは二〇%以下に落とさなければいけないとか、打ち込みの本数の制限があるとか、あるいは装着期間を非常に厳格に指示をするとか、あるいは雪のないところでは外すとか、非常に厳しい対応がなされているわけですが、警察庁としての対応はどのように考えられておるのか、お伺いします。
  232. 安藤忠夫

    ○安藤説明員 スパイクタイヤの問題、御指摘いただきましたように、交通の安全の確保の問題と粉じん問題、これも道路の交通に起因する障害ということで、両面の調整の問題かと思います。  このスパイクタイヤ問題を考えていく場合、単なる法的な措置以前に、道路の除雪とかあるいはタイヤの改善の問題であるとか、あるいは山間部から来る車両に対するタイヤの着脱場所の確保とか、冬季の自動車利用のあり方の全体の問題を総合的に考えた上でどうあるべきかということにつきまして、まだコンセンサスが得られていない状況かというふうに考えます。したがって、当面は、凍結していない道路の、いわゆる不必要な期間においてのスパイクタイヤ使用の自粛というのは街頭指導等を通じて行っているわけでございます。
  233. 草川昭三

    ○草川委員 じゃここでもう一回通産省に答弁をしていただきたいのですが、通産省として、当面一体どういうようなところに力点を置いてスパイクタイヤの対策を検討なされているのか。いわゆる低公害型のスパイクタイヤの研究推進というのもなされているやに聞いておりますが、その現状はどうなっているのか、お伺いしたいと思います。
  234. 松井司

    ○松井説明員 通産省といたしましては、現在、関係業界のタイヤの技術的な改善、こういうものに対しまして指導あるいは支援というのを過去やってまいっております以外に、工業技術院みずからがスノースパイクタイヤの低公害化技術の研究に取り組んでおります。これにつきましては、後で工業技術院の方から内容を御説明申し上げます。  また、通産省といたしましては、昨年の七月からスパイクタイヤ問題対策検討委員会というものを設けまして、いわゆるタイヤの面からこの問題にどう対応できるかということについて検討中でございます。
  235. 中島邦雄

    ○中島説明員 御説明いたします。  通商産業省工業技術院では、スパイクタイヤによる粉じん公害の発生防止に資するため、本年度、五十九年度からでございますが、四年計画でスノースパイクタイヤの低公害化技術の研究を進めてきております。  その研究内容につきましては、温度によって形状が変化いたします、そういったような機能性を有する合金を使いまして、凍結路面においてのみスパイクが作用する、そういった低公害性のスパイクタイヤの研究開発をしよう、そういったような研究でございます。
  236. 草川昭三

    ○草川委員 今度は、じゃもう一回建設省にお伺いしますが、先ほど建設省としては、特にスパイクタイヤという意味じゃなくて、耐摩耗性舗装の活用ということで検討しているというお話がございましたが、骨材の配合比率だとか何か特別な研究をしてみえるというのですけれども、そういう点があればお伺いしたいと思います。
  237. 寺田章次

    ○寺田説明員 お答えいたします。  現在スパイクタイヤによる舗装摩耗が問題となっているわけでございますが、建設省におきましては、従前よりタイヤチェーンによります舗装の摩耗問題等がございまして、従前からすり減りにくい舗装の研究開発を行ってきているわけでございます。  それで、舗装の耐摩耗性を向上させますためには、アスファルト混合物の配合でございますとか適切な骨材の選択など、幾つかの方策があるわけでございますが、現在のところ、研究の面からは舗装の耐摩耗性を大幅に向上させるということは難しいと考えております。  以上でございます。
  238. 草川昭三

    ○草川委員 今各省庁のそれぞれの対応を聞いたわけでございますが、直ちに大気汚染に影響するスパイクタイヤを禁止するというわけではなく、現状を認めていく、まあしかしそれなりの対応は大切だから研究をする、こういうことでございます。  ここで環境庁にお伺いをいたしますけれども、これは非常に各省庁にまたがる問題です。タイヤを製造するのは通産省でございますし、あるいは車の走行性能等についてはやはりこれは運輸省ということになりますし、あるいは道路という面では建設省、あるいはまた交通事故等については警察庁、それぞれ非常に多方面にわたるわけでございますが、それをまとめてやはり環境庁が責任を持って関係省庁との連絡を密にしていただいて対応を立てていただかなければいかぬことは言うまでもありません。  そこで、環境庁の中には連絡会議というのを五十八年からやっておみえになるようでございますけれども一体具体的にどのような会議で、あるいはどのような予算を立てられて対応を立てておみえになるのか、お伺いしたいと思います。
  239. 林部弘

    ○林部政府委員 初めに予算の方から申し上げたいと思います。  予算に関しましてはそれぞれの省庁の立場予算を立てておりますので、私どもは、今先生指摘のございました五十八年三月以来関係省庁連絡会議の事務局の立場でいろいろと事務を取り扱わせていただいておりますほか、先ほど自治省の方から御答弁ございましたように、五十八年三月に連絡会議設置、その半年後でございますが、五十八年九月に大気保全局長通達によりまして関係の道府県知事にスパイクタイヤの使用自粛を中心といたしました当面の対策の御要請をいたしまして、宮城県、北海道、その他九カ所の自治体で要綱が制定、施行されておるわけでございます。  私ども予算といたしましては、五十九年度について申しますと、先ほど申しました環境汚染の実態調査が約七百余万円、それから先生指摘のございました精密な条件を設定いたしまして小動物による実験が必要になりますので、これは当然私どもがやらなければならない問題ということで、五十九年度に千四百九十余万円、合計二千百九十余万円を現在執行中でございますが、六十年度の新年度予算におきまして、実態調査の方は数年続けておりますので若干減額をいたしまして五百十七万円余を計上いたしておりますが、生態影響調査の方は若干スケールを大きくいたしますので千八百四十四万円余ということで、合計二千三百六十二万円余を計上いたしまして取り組んでおるという状況でございます。その他の予算につきましては、それぞれの省庁のお立場予算を計上して、いろいろな施策に取り組んでおられるという現状でございます。
  240. 草川昭三

    ○草川委員 時間が最後になってきました。もう少し前向きで、何か総合的にこの予算を集中してスパイクタイヤの粉じん公害を早急に措置しなければいかぬと思うのです。  先ほど自治省の方からは、各県にそれなりの通知を出されておるということを言っておみえになりますが、宮城県の場合等を聞いてまいりますと、宮城県、特に仙台の市民の方々が非常にきちっと、目の前で被害というのはわかるものですから協力をしていただいておる。だけれども、他府県からお見えになる方々、特にスキー地区、長野県なんかもそうですけれども、雪国でないところから若い方々がお見えになる、ところがそういう方々は面倒だものですから自分の家からスパイクタイヤで来る、こういうようなこともあるわけでございます。  自治省にお伺いするのですが、スパイクタイヤの使用制限に関する通達を、現在出されております自治体以外の他の地区にも出されることが必要だと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  241. 今泉浩紀

    ○今泉説明員 ただいま御質問の点でございますけれども、現在北海道初め宮城県等で行われておりますものは環境庁の通達によりましてなされているものでございます。ただいま先生の御指摘にございました他府県につきましてこういったことをやったらどうかというお話でございますが、先ほども申し上げましたが、これは全国的なレベルでスパイクタイヤをどうするかという問題につながるわけでございまして、そういった意味ではやはり国のレベルで何らかの具体的な防止策といったものをつくっていただくというのが適当ではないかと私ども考えております。
  242. 草川昭三

    ○草川委員 結局これは環境庁の問題になると思うのです、今のお話を聞かれても。それで、これは環境庁長官の姿勢にもまたなりますが、安全か環境がという二者択一の問題だと仮定をするならば、長官はどちらをとられるわけでございますか、お伺いします。
  243. 石本茂

    石本国務大臣 安全も大切でございますが、健康被害の方がもっと問題が大きいと思います。
  244. 草川昭三

    ○草川委員 非常に明快な答弁でございます。  そこで、安全か環境がというものをもっと突き詰めてやるには、私は先ほど来言っておりますように、技術的には知恵を出さざるを得ないと思うのです。それで通産省の方でもいろいろと検討をなされておられるようで、例えばタイヤの質を研究し、寒いときにはつめが出るようにし、それで雪が解ける温度になればつめが引っ込むように、非常にわかりやすい議論ですが、それが技術的に可能かどうか、それを今御検討なすっておみえになるようでございますけれども、そういうのも一つの方法であると思いますし、あるいはもう少し、便利きだけを追うのではなくて、いま一度昔のように、車を運転する場合はチェーンを巻いてやればいいじゃないか、雪がなくなればチェーンを外すのはどうだ。大変な努力が要りますけれども、そういう努力があってこそ初めて、それは遊びに行くばかりに使うわけじゃありませんけれども、若い人は例えばスキーに行くという場合だったら、それの中に初めて喜びがあると思うのです。雪国の人にそんなお話をすると大変不謹慎なお話になりますけれども、チェーンをつける、外す、チェーンは非常に弱いかもわかりませんけれども一つの方法ではないか。あるいはまたスパイクではなくてスノータイヤというもの、スパイクとスノータイヤと比べてみると、スパイクの方が安全性にまさることは言うまでもございませんけれども、スノータイヤとチェーンを交互に利用するというようなこともあってもいいのではないか。そういうようないわゆる安全と環境、どちらがいいのかという議論ではなくて、人間生活の中で環境を守るためにはそれぞれがもう一回自分の立場を見直してみるというような議論もあってもいいと思うのです。  そういう議論を行うのはやはり環境庁であり、あるいはまたそういう機会に世論喚起をするのもまたしかりだと私は思うのです。そういう立場をぜひ今後とも長官に貫いていただきたいことを私は要望したいと思うのでございますが、以上の点を申し上げて、最後に長官からの見解をお受けして終わりたい、こう思います。
  245. 石本茂

    石本国務大臣 今御提言くださいました御要望の件でございますが、本当にごもっともだと私は考えます。  また、環境庁の大気局におきましては、それぞれ目下いろいろと思案をしておりまして、既に検討もし、研究の結果も出しておるわけでございますけれども、危険を防止する、両方とも生命に関係する問題かもわかりませんが、今先生申されましたようにチェーンを外したりつけたりするということも、人間として生きていく条件の中では自然というものに対する一つの心といいますか、そういうものとの兼ね合いだと考えますので、お言葉どおりに、私ども環境という立場、そして健康をどう守るかという立場、二面の立場から研究さしていただきます。ありがとうございました。
  246. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  247. 辻英雄

    辻委員長 中井洽君。
  248. 中井洽

    ○中井委員 環境庁長官にお尋ねいたします。  二月二十日の予算委員会で長官は、自民党の原田議員の御質問にこのようにお答えになっていらっしゃいます。「先生のお説ごもっともでございますので、そうしたことを踏まえて、今後一日も早く結果を出したいということで頑張っております」この中の「先生のお説ごもっともでございますので、」というのは、どういうことをごもっともとお考えになっておるのか、具体的に私どもに知らせていただきたい。
  249. 石本茂

    石本国務大臣 先般、原田議員にお答えいたしました。この中で私は言葉足らずであったということを反省しております。原田議員が申しておられましたのは、大気中の硫黄酸化物が減りましたので、大気の状態が変わったじゃないかという前段階の御説明がございました。それに対しまして「ごもっともでございます」ということは申し上げたわけでございますが、これは硫黄酸化物が多少減ったかもわかりませんけれども、大気中に飛び散っております物質、それからまた窒素酸化物などいろいろございますので、そのために、再審査を行うために審議を願っているのですということはつけ加えたつもりでございまして、私は決して先生の、第一種地域をどうかしろとか、ここをどうこうしろとかいうようなことを「ごもっとも」と言ったわけではございません。
  250. 中井洽

    ○中井委員 他党の議員のことでもありますし、私どももときどき勉強不足で質問するときがありますから余り申し上げたくはないのでありますが、先ほど草川議員からも総理の御発言に対して御質疑がございました。マスコミにも取り上げられ、原田委員の御質問、いわゆる大臣の「お説ごもっとも」というところはどこなのかということで私は見たのでありますが、少し勘違いが質問される方にもあられるし、答える方にも何か勉強不足と言っては失礼ではありますが、あるようなことがある。大事な問題でありますし、次の法案審議のことにも関係をしてまいりますのでちょっとお聞きをいただき、どなたか関係の方にお答えをいただきたいと思います。  まず、原田議員は、歳出の制度で公健法、公害健康被害補償制度を見直せということを主張されておるわけですね。その中で、公害病にかかった人に対して一〇〇%国が面倒を見てあげておる、こういう言い方をされております。しかし長官、この制度は国が面倒を見ているのじゃないのです。それはおわかりですか。ちょっとお答えください。
  251. 石本茂

    石本国務大臣 これは国が見ているのではございません。業界でございます。
  252. 中井洽

    ○中井委員 そうすると、予算の歳出面の削減ということではないということをおわかりいただけますか。
  253. 石本茂

    石本国務大臣 お説のとおりでございます。
  254. 中井洽

    ○中井委員 さらにその後「大気の環境基準を上回るいわゆるきれいな空気になっておる地域がほとんど大部分だということになっておるにもかかわらず、」こうおっしゃっておられるのです。この地域指定されております四十一のところは本当に大部分されいになって基準を下回っておるのですか、お答えください。
  255. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  SOxに関しましてはほとんどの地域環境基準といいますか、その基準を下回っておるという状況にございます。NOxあるいはSPMに関しましては、地域によって必ずしも基準を満たしておるというような状況にないわけでございます。ただ環境基準と申しますものも、年平均値であるとか九八%値というようなとり方はいろいろあるわけでございますので、多少そこら辺の違いもあるのかもしれませんけれども、おっしゃられる意味でほとんど全部がそれぞれの物質で環境基準をクリアしたという状況にはなっていないと理解をいたしております。
  256. 中井洽

    ○中井委員 そういう威勢のいい、まあまあ何にも知らない人が聞いたらなるほどなというような議論の中でぼんぼんとこられて、制度の改定をしなければならない、こういうふうにおっしゃっておられる。それに対して長官も中公審等に諮問をしておるというような意味のことを言われておるし、総理も言われておる。しかし、私どももいろいろな形で今日まで議論をしてきたのは、あの地域指定の法律の中に解除の要件というものが載っていないじゃないか、それじゃ地域指定されたところは未来永劫解除ということがないのか、一生懸命みんなで努力をして大気をきれいにして患者さんを減らして、どういうふうになったら地域指定解除になるのだ、その解除要件というものをつくったらどうだという議論を七年も八年もかかってしてまいりました。その間患者さんにも随分誤解を受けて、私どもなんかも随分嫌な電話がかかってきたことがあります。私は患者さんに、それじゃ患者さん、あなたは大気がきれいにならなくてもいいのですか、こういう失礼なことまで申し上げて反駁をしたことがございます。私どもは、患者さんをどうこうしようということじゃなしに、あるいは制度をなくしてしまおうということじゃなしに、この中で地域指定の解除要件というものを科学的につくったらどうだということを言ってきたわけであります。そして、環境庁が今、中公審に諮問をなさっておるということは、私は、この解除を書き入れるあるいは解除の要件というものをどう考えるのだということを諮問なさっておるように聞いておるのであって、補償の制度改革を中公審に諮問されてないと理解しているのですが、どうですか。
  257. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  公健法の指定地域につきましては、四十九年の中公審答申におきまして、SOxにつきまして指定の要件あるいは解除の要件というのは述べられてございます。ただ、NOx、SPMにつきましては、その当時におきましてまだ十分な知見がないということで引き続き検討課題であるということで答申におまとめいただいているわけでございます。そのような経緯もあるわけでございますので、SOxにつきましては指定要件なり解除要件はそれぞれ一応ある、ただNOx、SPMにつきましては、指定要件、解除要件いずれもないという状況にあると私ども理解いたしているところでございます。  そういうようなことで、大気汚染の態様がいろいろ変わってまいりました経緯もあるわけでございますので、環境庁におきましていろいろな文献等を集めまして資料をそろえまして、現在中公審におきましてそういう地域指定の要件及び解除の要件のあり方について御検討いただいておるという状況にございます。
  258. 中井洽

    ○中井委員 もう一度お尋ねをいたします。  それじゃ、SOxでクリアできたら解除できる、今の法律で地域指定を解除できるとあなたはお考えですか。
  259. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  四十九年中公審答申におきましては……(中井委員「答申じゃない、法律」と呼ぶ)いわゆる中公審答申に基づきまして法の制度が組み立てられておりまして、その指定なり解除につきましては、中公審の意見を聞きながら政令で指定をするという仕組みになっておるわけでございますから、仮に、例えばすぐにSOxによる地域解除を検討するということになった場合におきましては、法律の問題でなく政令で対処できると考えておるところでございます。  しかしながら、現実問題といたしましては、指定の場合におきましてはSOxにおいて指定をいたしておるわけでございますが、解除に当たりましては、SOxだけがきれいになったというようなことで大気汚染が改善されたというわけにはなかなかいかないだろう。大気汚染が改善されたということになりますと、四十九年中公審答申にもあるわけでございますが、大気汚染を起こす物質としてはSOx、NOx、SPMの三つがあるという指摘があるわけでございますので、その三つの物質がそれぞれ解除をしてもよいという条件になった場合におきまして解除ができるのではなかろうかというような考え方をいたしておるわけでございます。  そのようなことで、私どもといたしましては、従来から長い期間かけましてNOx、SPMにつきましての健康影響との関係につきましていろいろな資料を集めまして調査をしてまいったところでございまして、現在中公審にお願いをいたしているところでございます。
  260. 中井洽

    ○中井委員 もう一度確認をいたしますが、中公審に諮問をされておることは、公害健康の補償制度そのものを見直すということじゃなしに、地域指定の解除要件等についての御議論をいただきたい、こういうことで諮問をされている、これでいいわけですね。
  261. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  公健法を取り巻きますいろいろな問題が、いろいろなところでいろいろな先生方に御意見があるわけでございます。一番基本的に重要なところは、この地域指定のあり方の問題であろうと考えておりまして、そういうところに的を絞るといいますか、ウエートを置きまして中公審に諮問をいたしておるところでございます。  ただ、蛇足かもしれませんけれども、中公審の議論の中におきましては、それに絡んで他の問題等も議論されることもあるかもしれませんけれども、私どもといたしましては、一番基本的な問題は地域指定のあり方ということであるというぐあいに理解いたしておりますので、その点について諮問いたしておるということでございます。
  262. 中井洽

    ○中井委員 大臣、ごめんなさい、おわかりいただくのを大変失礼に念押しをいたしましたけれども、NOxの規制値を直すときにも大変な時間と実は努力があったわけでございます。いまだに、それを直したことをけしからぬ、環境行政の後退だとおっしゃる方もいらっしゃるわけでございます。環境の問題というのは、本当にいろいろな法律をおつくりをいただいたときに割り切りと決断でもってつくられた、そこに矛盾があるのも事実ですし、今大変な問題になっているのも事実であります。それをどう直すのかといっても、直すいい方法が実際はなかなかないのであります。勇ましいことだけで直るなら、こんな結構なことはないのでありますし、患者さんもそれで喜ぶなら、これまた結構なことだと私は思うのであります。大臣は何も予算委員会の議論に全部賛成をなすったわけじゃなしに、先ほどから質疑を聞かしていただいておりますと、大変お優しいお人柄でございますから、だれが言ってもお説ごもっともでと、こうおっしゃるから、つい「お説ごもっともで」こう言われたんだと理解はいたしますが、ひとつ慎重におやりをいただきたい。  ただ、中曽根総理大臣にひとつきちっと御理解を賜りたいと思います。あの方は、答弁の大変お上手な方でありますが、わからずにぼんぼこ答弁されたんじゃ大変迷惑なことであります。私、去年でしたか、たしかこの委員会でも湖沼法のときに、湖沼法の何やらは花と緑の何やらの精神でと、全然関係ないことを言うたのです、わからぬと。そのときもちょっと言うたのでありますが、これもわからずに答えたのだろう、そういうふうに好意的に解釈をしておきますが、ひとつ慎重な御発言をいただきますようにお願いを申し上げて、再度御答弁をいただきます。
  263. 石本茂

    石本国務大臣 先生のお説のとおりでございまして、先ほど部長も申しておりますが、硫黄酸化物が非常に減って汚染が著しくよくなったというふうには、私自身は考えてはおりません。やはり窒素酸化物もまだまだありますし、浮遊粒子状の物質も飛散されておりますし、そうした、こうしたものが複合的に総合されて、そして被害が出てきたものだというふうに考えておりますが、先ほども申しましたように、硫黄酸化物がなくなったじゃないか、空気が態様が変わったじゃないかと、その言葉をついごもっともですというふうに言いましたことと、それから総理のお言葉に対しまして、また今後機会もございますので、その真意を確かめてみるようにしたいというふうに考えておるところでございます。
  264. 中井洽

    ○中井委員 この公健法の問題が出たついでに一つお尋ねいたしますが、過般、環境庁公害病の認定患者さんの中に喫煙者がどのくらいおられるか、こういう数字を発表されて、そしてできるだけ控えていただくように、こういう通達ですか何かを出したと聞いております。  実は長官、この問題も私、この委員会で、あるいは環境庁をお呼びしてたびたび、公害患者さんの中に喫煙の常習者の人はどのくらいいるか数字を出してくれと言ったら、ずっと断られてきたのです。よくまあ本当に調査されてよく出された。また、ぜんそくで公害病の方が健康のためにたばこをおやめいただくなんということは当たり前のことだ、こう思うわけであります。しかし、それすらなかなか言えなかった、数字も出せなかった、そういう空気があったわけであります。それをひとつ御理解をいただくと同時に、この時期になぜこういうことを発表したのか。当たり前と言えば当たり前なんですが、今までは出さなかったのです。そこのところをひとつ御説明いただけたらありがたいと思います。
  265. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  環境庁といたしましては、先生の御指摘の問題につきましては、従前から各県市区を通じまして認定者の方々がたばこを吸うことは健康上よくないということでの指導をやってまいっておったわけでございますが、その後、国際的にも国内的にもこのたばこの害の問題につきましてはいろいろはっきりしてまいったというような状況もございますし、そういうことで、私どもといたしましてはさらにその認定者の方々がたばこを吸われないように指導を徹底する必要があるというような認識に立ちまして、そのためにはある程度実態を、少し古い状況でも構いませんけれども、実態を踏まえた上で、その上に立ってさらに個別の指導を徹底させる必要があるというような観点に立ちまして調査をいたしまして、各県市区からそれぞれ協力もいただきまして状況把握をいたしまして、それを踏まえて各県市区に、特に主治医との連携を密にして個別指導をきちんとやるようにという指導をいたしたところでございます。
  266. 中井洽

    ○中井委員 この法律そのものが随分、先ほども申し上げましたように割り切りがあったり矛盾があったりいたしますが、それはそれなりに議論をしながら、より合理的なものに変えていかなければならぬと思うわけであります。先ほども馬場先生の質疑にありましたチッソの問題なんかも、本当に議論をして、どういうふうにすれば制度そのものが存続をするか、真剣に考えなければならない時期にも来ている、このように思います。それを一つ一つ逆に、公害患者さんのことだからやってはだめなんだ、議論してはだめなんだと言ってふたをするのもおかしいし、矛盾があるからどんどこどんどこやり変えてしまえというような乱暴な議論もおかしいと思います。  そういう意味では、たばこの問題なんかも当たり前のことがようやくなされた、私どもはそのように判断をいたします。これからもいろいろな議論の中で、科学的に当然なことは直していく、そういった形で制度の有効運用を図っていただきたい、このことを要望しておきます。  次に、所信の中で鯨岡さんの時代から環境庁が使い出しました「地球的規模の環境」という言葉がございます。この地球的規模の環境保全といいますか、こういったことは予算で言えばどういう項目に入っておるのか、どういう予算を組んでおるのか、あるいはどういう中身を具体的にお考えになっていらっしゃるのか、御説明をいただきます。
  267. 岡崎洋

    岡崎政府委員 今御審議いただいております六十年度の予算に即して申し上げますと、環境庁予算の中で、地球的規模の環境保全に要する経費ということで、主として海洋汚染対策の調査等を内容といたしましたものを約九千四百万円計上しております。そのほか、地球的規模の環境問題に対応するためにはいろいろ国際会議等に出席いたします、そういう会議の経費等は別途ございます。なお、私ども予算ではございませんが、外務省にお願いをいたしまして、国連の環境特別委員会等に要する拠出金等は、外務省予算として計上さしていただいておりまして、国連特別委員会に対する拠出金が七十五万ドル等でございます。
  268. 中井洽

    ○中井委員 具体的に、そうしますと予算として地球的規模の環境保全というので、海洋の汚染調査ということで九千四百万が上がっているだけですか、会議は別にしまして。そういうことですね。
  269. 岡崎洋

    岡崎政府委員 環境庁といたしましてはそのとおりでございます。
  270. 中井洽

    ○中井委員 大臣としては、地球的規模の環境保全というのはどういうことだとお考えでございますか。
  271. 石本茂

    石本国務大臣 これは非常に幅の広い大問題だと思っておりますが、世界の人口の増加でございますとか、それから社会経済活動の拡大といいますか、そういうものを背景といたしまして、熱帯林の減少とか、それからまた地球的規模の環境問題に対する認識が高まってきているとはいいますものの、世界の資源に大きく依存して経済が活動を営んできたということも言えます。現にそうしておるわけでございますが、そうしたような観点から、環境政策の分野でも相当の経験を有しているところの我が国日本でございますが、この問題の解決に向けて積極的に協力をしていくべきではないだろうかというふうに考えている者の一人でございます。
  272. 中井洽

    ○中井委員 中国、韓国と、環境庁から人が派遣されて、それぞれの相手国と環境問題で交流をなさったと聞いておりますが、この中身を簡単に御説明いただけますか。
  273. 岡崎洋

    岡崎政府委員 中国との間の環境協力につきましては大きく分けまして二つございまして、一つはいわゆる渡り鳥保護協定関係の問題がございます。それからもう一つは、日中科学技術協力協定に基づく環境協力と申しますか、その交流がございますが、正直に申しまして後段の日中科学技術協力協定に基づく環境協力はそう実のある動きは合しておりません。したがいまして、実は私ども、中国も希望を特にしておりますので、昨年から、中国との間ではもっと交流を活発にしようじゃないかということで事務的に話を詰めておりまして、今年度は私ども中心にいたしまして中国にも調査団、ミッションを派遣して、今後の環境協力の具体的なあり方等をお互いに勉強し合おうというようなことを試みております。  韓国との間では日韓科学技術大臣会議というのがございまして、その中でやはり環境の項目が一項目あるのでございますけれども、これもはかばかしい中身は今のところございません。
  274. 中井洽

    ○中井委員 地球的規模の環境保全というのは、総理大臣の言葉にも出てきたり、なかなかスケールが大きくてだれしもが賛成する言葉で、私はそれ自体は大変結構なことだと思うのでありますが、それじゃ何をやるのかといえば、九千四百万円をかけて海洋汚染を考えるんだ、こういうことであります。しかし、海洋汚染といったって世界じゅうの海の汚染を考えるのじゃなしに、やはり日本近海の海洋汚染について研究したり調査したり、あるいは環境保全をやったりするということなのかなという感じがいたします。  少なくとも公害防止技術に関しては世界のトップクラスにある日本、あるいは科学的知見の集積も随分あります日本のこの知識を、少なくとも中国や韓国へ行って使ってくださいよ。おたくも大変失礼だけれども環境対策というものをお考えになった方がいいですよというようなことでもやってくれているのかと思うと、やってくれていない。まあ相手国の事情もおありでしょう。そうすると、地球的規模の環境保全というのは、言葉だけで何もやっていないのじゃないかととらざるを得ないのですね。私どもとしては大変いいことだと思います、日本も本当に苦しんだわけですから。  私ども、韓国へたびたび行きます。中国へももう何度も行きました。そのたびにいろいろなところを見せていただいて、いわゆる環境問題について質問しますと、ほとんど答えが返ってこない。あるいは何かとんちんかんな答えだけ返ってくる。現状を見ておると、空気とにおいだけで判断しては大変失礼だけれども、ほとんど無視された中で急激な工業化が行われておる。また東南アジア等の一部でも、日本の進出企業も含めてそういうことがあるやに聞いております。調査をすればかつての日本のような悲惨な公害病というのもあるんじゃないか、こう言われております。  よその国のことをとやかく暴き立てるつもりはありませんけれども日本だけがよりよい環境を求めても、なかなか大気から水から、そうはいかないのはおわかりのとおりでございます。そういう意味で、もっともっと日本が、恥を言うということではなしに、日本の持っておる公害防止に関するあるいは環境保全に関する知識というものを広めていく、そうしてそれぞれの国でも御努力をいただくということが私は大事なことだと考えます。  そういう意味で、国連関係の呼びかけでアジアの環境大臣会議というものが過般行われて、政務次官は御出席をなさったと思うのでありますが、どういう空気であったのか、あるいはどういう内容であったのか、少々自慢話をしていただいても結構であります、ひとつ御報告をいただければありがたい。
  275. 中馬弘毅

    ○中馬政府委員 お答え申し上げます。  この間、ちょうど予算委員会中でございまして大臣が御出席になれないということで、私がかわって行ってまいりました。二月十一日、十二日が会議でございました。  御存じのように国連の機関としてアジア太平洋経済社会委員会がございます。その中にはいろいろなセクションがございますが、それを環境的に調整する意味でのセクションとして環境ユニットがございます。その環境ユニットが呼びかけた形でのアジアの環境大臣会議でございます。また一方でUNEPというのがあるわけです。その調整の問題も少しありますので、今度の会議はそういう意味でESCAPの環境大臣会議だったということをまず御報告申し上げます。  ここでの趣旨は、アジアの環境管理に関する宣言及び行動計画の枠組みを決めるということでございまして、会議におきましては各国の代表から、環境状況環境問題への取り組み状況が紹介されますと同時に、活発な意見が交わされたわけでございます。  宣言の方でございますが、これは今おっしゃいましたように、環境という問題は地域の者がそれぞれ責任を持ってやっていかなければいかぬということでございまして、何か大きな理想的なことを言っておっても実際の問題には結びつかないわけでございますから、その地域レベルにおける国際協力をそれぞれやっていこうじゃないかということが宣言の中に一つうたわれております。  それから、今までのいろいろやってきた白書みたいなものですね。アジア・太平洋地域環境状況を定期的に把握して、それを改訂していこうということがもう一つでございます。  それから、国ごとの責任を持った行動計画の作成、実施へのそれぞれの支援等についてお互いに国際協力をしていこうといったような合意がなされたわけでございます。  会議自体はそういうことでございましたが、個々の、ロビー外交といいますか、それぞれの代表の方々とも何人かとお話しいたしました。今中井さんが御指摘になりましたような韓国の方とも、ちょっと今名前は失念いたしましたが、次官の方が来ておられまして、隣だからぜひ一緒にやっていこうじゃないか、それも、これから中国の問題もある、台湾の問題もある、フィリピンの問題もある、そこら辺で一遍同じテーブルに着くようなことができたらなというお話もございました。しかし実際、国際政治状況の問題で中国と台湾が、あるいはまた日本と台湾が同じテーブルに着くことは無理だろうから、だからお互いに一つの基本を合わせた上で、日本と中国、日本と韓国、あるいは場合によっては、台湾というのは難しいかもしれませんが、そういったことをお互いが、また韓国は韓国で台湾とといったようなことをちゃんとやりながら、一つの網の目にして、地域の、東アジアの方も日本中心になってやっていこうじゃないか、そんな話をしたようなことでございました。  それから、中国の代表の方とも話しました。中国には今度、一応五月ごろに事務次官にでも行っていただこうかと思っておりますが、環境問題での二国間の話し合いを始めたいと思っております。  そのような形でアジアの各国が、今まではともすれば途上国側は先進国側に、けしからぬとかこうしろとかいったようなことが多かったようでございますが、今回行った印象では、環境の問題は自分たちがそれぞれが責任を持っていかなければいかぬのだといった意識が強くなってきているように見受けられました。それは非常にいいことだと思いますので、こういうことを契機にしましてそれぞれの、地球全体のことではございますけれども、それがまたアジアであったり東アジアであったり、あるいはASEANの地域であったり、そういう形で具体的に積み重なっていくことが望ましいと思いますし、そういうきっかけができたということを喜んでおるような次第でございます。
  276. 中井洽

    ○中井委員 去年は世界湖沼会議が滋賀県で行われました。大変成功であったと僕らも喜んでいるわけであります。私どもは、韓国へ行っても中国へ行っても、ヨーロッパヘ行ってもアメリカへ行っても、環境の問題を言いますと、何か日本のかつての悲惨なところだけそれぞれの国々の人は覚えておって、いや自分の国はちゃんと環境対策をやっているから日本のような悲惨な病人は出さないよということが返ってくる。しかし、現実には、大変失礼だけれども、科学的知見の集積に基づいた対策をやっておられるとは到底思えない。それをあざ笑うとかなんとかいうのじゃなしに、日本から教えていく、教えていくという言い方も失礼かもしれませんが、御理解いただく、また、そういう国々の環境の担当富に研修にもお越しをいただく、そんなこともお考えをいただいて、それぞれの国で環境問題に取り組んでいただく、こういう空気をつくっていただくのが必要だ。  もう一つは、本当にそういう環境対策をきちっと経費としてお払いいただいて工業的な競争をやっていただかないと、日本の企業は大変な公害規制の中で大変な投資をして、当然のことですけれども、輸出をやっている、競争する。しかし、片一方の国はそんなことお構いなしだ、生産だけやればいいんだというような形で競争をするということでは到底日本は太刀打ちできない、当たり前のことであろうかと思います。そういった意味でも日本環境問題でどんどんと発言をしていっていただく、こういったこともお考えをいただきたい、このように思いますが、大臣いかがですか。
  277. 岡崎洋

    岡崎政府委員 大臣お話の前にちょっと事実だけ二つ御披露させていただきたいと思います。  一つは、私どものこれまでの経験なり知識というのは、国連のいろいろな会議あるいはOECDのいろいろな会議を通じまして、積極的に地球的な規模の環境問題については参加をし、貢献をしていきたいということで事実やらさせていただいております。  それから、特に開発途上国の環境問題につきましては、まさに先生今おっしゃいましたように、技術協力でございますとか研修でございますとか、そういう面では特にASEAN地域の方とは協力をし合っておりまして、そのお金はまた外務省のJICA、国際協力事業団の方と密接な連絡を保ってやっておりますので、そういう事実だけ御披露させていただきます。
  278. 石本茂

    石本国務大臣 ただいま官房長も御報告を申し上げましたように、かなり貢献をしていると思っておりますけれども、まだまだこれからだと思っておりますので、今後ともしっかり頑張っていきますので、よろしく御指導のほどお願いいたします。
  279. 中井洽

    ○中井委員 次に、所信表明の本の九ページの冒頭にボランティア活動の項目がございます。その中で「税制上の優遇措置」云々というようなことが国民環境基金活動について述べられております。これを少し御説明いただきたい。また、この基金活動等がどのような形で広げられておるのか、状況等も御説明をいただきたいと思います。
  280. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 お答えいたします。ナショナルトラスト、国民環境基金という言葉で呼ばせていただきますが、これにつきましては先生御承知のとおりだと存じますので、簡潔に説明させていただきます。  もともとはイギリスに先例をとっておるわけでございますけれども、これは国柄と、それから国立公園等の制度の前提が違ってきておりますので、そっくりそのままというわけではございません。日本の場合は、法律に基づく国立公園の制度が約五十年余り前から行われておるというような事情がございます。イギリスの場合は逆に、この種のナショナルトラスト活動が七、八十年ぐらいの歴史を持っておるというような差がございますけれども日本におきましてもこういう考え方を導入といいますか活用していきたいという動きは前からあったわけでございまして、研究会等も持たせていただきまして勉強してきたというのが従来の経緯でございました。  それに基づきまして、税制がまず大事といいますか、大事というだけじゃなしに、まず実現する手順としては一番重要なことではないかという御提言もいただいておりまして、これは中井先生を初め当委員会の先生方からもサゼスチョンをいただいておった点でございます。幸いにして、昨年末の予算折衝と並行いたしました税制の論議の中におきまして、これまた当委員会の各先生方の強力な御援助も得まして、おかげをもちまして、税制のうち三点ほど私ども強く要望しておったわけでございますが、国民環境基金と称することができるような公益法人の場合に、まず寄附金をいたしました場合に税制上の優遇点が一つございます。それから第二番目には、地方関係の問題になるわけでございますけれども、固定資産の税の扱い等の問題でございます。この二点につきましては、形はちょっと違いますが、第一点の方につきましては、法制上、政令で明定する方向で実現を見ることになっております。第二の地方税制関係につきましては、これは条例の関係になってまいります関係もございまして、自治省が指導していただけるという方向で実現を見ることになっております。  それから一つ、中身をまだ申し上げておりませんが、私ども希望しておりました点は相続税の問題でございます。国民環境基金というような対象としてふさわしいような不動産とかいうものを、死亡した際に寄贈といいますか遺贈といいますかいたしましたときの税制上の扱いについて、何とか相続税とかそういうことにならずに、相続税免除の形にならないかということを要望しておったわけでございますが、これについてはだめというわけではございませんで、引き続き検討ということになっております。るる長く申し上げて恐縮でございましたが、以上でございます。  最後に、これはちょっと先生の方からも言われたわけでございますが、どういう法人が対象になるかという点でございます。これは実は事務的に現在財政当局と検討を重ねておる段階でございますが、大体において方向はこういうことかと思われますので、それを御披露申し上げて答弁させていただきたいと思います。  まず、民法上の法律の根拠に基づいた法人でなければいけない。これはまあ当然のことかと思いますが、それから、そういう寄附金その他の方法で取得した資産がルーズに転用といいますか転売されるのでは全く困る。ただ、それをどういう形でコントロールするか、確保するかという点について今詰めておるというようなことでございます。  三番目には、これは形がなかなか難しゅうございますけれども、俗な言い方をさせていただいた方がいいと思いますが、信頼されるといいますか信用できる法人であること、そのための手段、方法は、なお基準といいますか、こういう考え方だというのは、さらに詰めさせていただきたいと思っております。  以上でございます。
  281. 中井洽

    ○中井委員 大変結構なことだと思いますが、一つだけ確認をさせてください。  そうしますと、将来そういう形で公益的な法人がつくられて、そこへ個人なり企業なりが税制上の優遇措置を受けてお金を寄附していく、それに基づいて本当に環境庁なら環境庁地方公共団体なら公共団体と相談して国では買えぬところを買い上げていく、こういうこと。その買い上げたときに持ち主がその売却の税金を払わなければならない、これを国、地方公共団体に公共用地として売るときのような税制上の特権、待遇というものをすることができるかどうかの議論はなさいましたか、あるいはそういうことの話し合いは、やったけれどもだめだったか、そんなところで一遍御確認をいただきたいと思います。
  282. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 まことにごもっともなポイントだと思います。ただ、その点は、これはいわゆる公共事業への強制収用対象のような場合には何千万円までの、もちろん限度はあるわけでございますが、税制上の何という表現をとりますか、優遇、基礎控除的なやり方というのはあるようでございますが、この場合にはそういう対象には残念ながらならない。ただ、その点につきまして、じゃどういうことでどうしていくかという細かい詰めをし切って申し上げているわけではございませんが、公共事業への強制収用と同じというわけにはそちらの方はまいらないという点、現時点ではそういう状況でございます。
  283. 中井洽

    ○中井委員 今議論する段階でないこともよく承知していますし、ここで大蔵省の方がおらないときに言っても仕方がないことですが、御出身の方はたくさんおられますのであえて申し上げますと、本当にきょうび、土地を売ってくれ、使わしてくれ、こういう形でお願いしたときに、まあ目的もいい、それでは手放しましょう、しかし、こういう公益法人でおやりになったら、そう高い金額でお買い上げいただけるわけではない、売ったけれども税金は勘弁してもらえるよ、せめてこれくらいのことがないとなかなか先祖伝来の土地というものを手放しにくい心理もある。このようにもお考えをいただいて、せっかくいい制度を日本で珍しく税制の優遇をしながらつくっていこうというわけでありますから、ひとつそういう方向もお考えをいただくことを強く要望しておきます。  次に、先ほど馬場議員からチッソの問題、御専門でありますからかなり詳しく論議が行われました。私、二つだけお尋ねをいたします。  昨年でしたか、一昨年でしたか、ちょっと失念をいたしましたけれども、この委員会で、大変認定業務がおくれておる、こういったことが議論になりまして、私はそのときに、まあわからないままで大変恐縮ではあったのですが、何でそんなにかかるんだ、どんどん出てこられないんなら次の人に繰り上げて認定を急いでくれ、こういうことを要望したわけでございます。その後も何か認定業務がなかなかはかばかしくいっていないというようなことも聞きますし、馬場議員の議論の中にも出てきたやに思います。現状御報告をいただき、どういう対策をとってきたか御報告もお願いいたします。
  284. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  水俣病の申請患者全体の数についての御説明の数字を持ち合わせておりませんので、熊本県におきます数字を御説明させていただきたいと思っております。  まず、熊本県におきます水俣病の認定申請者の数でございますが、少し歴史的に申しますと、四十八年度におきましては年間最高の千八百九十六人を数えておったわけでございますが、その後申請者の数は年々減少してまいりましたけれども、五十二年には千三百六十八人と再び千人を超えたところであったわけでございます。その後、また漸次減少してまいっておるわけでございます。五十八年度におきまして六百九十八人と申請者の数が増加いたしまして、五十九年度、今年度におきましては、一月末現在でございますが、五百四十二人というぐあいな形で申請者の数の推移があるわけでございます。  一方におきまして、処分数の方の関係でございますが、検診、審査体制の充実等によりまして昭和五十五年度には最高の九百三十八件を処分いたしたわけでございますが、その後いろいろございまして、検診拒否運動の影響等もあるわけでございますが、検診、審査体制が十分に機能しないということもありまして年々減少してまいったところでございます。このようなことから、処分が済んでいない方々につきましては五十五年度末におきまして四千八百人余、五十六年度末におきまして四千六百人余、五十七年度末におきまして四千五百八十人余、五十八年度に四千九百六十人、五十九年一月末におきまして五千百二十七人というぐあいになっているところでございます。  しかしながら、先生お話がございましたように、今年度におきましては申請者に対しましてきめ細かな配慮を行いながら検診を実施するというようなことで、私ども県とも相談いたしながら、申請者の方々に対しまして検診希望日を照会する、そして検診希望ありという方につきましては優先的にといいますか、早く検診を受けていただくというようなことの照会方式をとりまして検診の迅速化を図ってまいったところでございます。  この中身について若干御説明申し上げたいと思うわけでございますが、検診希望日を照会いたしまして検診希望ありとお答えになられた方の数でございますけれども、非常に古い方から順次照会を行っているところでございまして、現在のところ申請者の方々の中で約二千八百人余の方々に対しまして検診希望日の照会をいたしたところでございますが、そのうち検診希望ありと回答なさいました約八百七十人の方々につきましては検診を順次早目に済ませているところでございます。そのようなことで、今年度におきましてはこの検診が完了した方が前年よりも約二百名ほど多いというような形になっているところでございまして、そのようなことから、今年は前年と比べますと処分数が上回っておるというような状況にございます。  このようなことで、私どもといたしましては、できるだけきめ細かな配慮を行いながら、申請者の御都合を聞きながら検診を何とか進めてまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  285. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、この五千百二十七人の中で一度も検診を受けていらっしゃらない、申請だけして検診を受けていらっしゃらない人というのはあと何人ぐらいになりますか。
  286. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答え申し上げます。  先生の御質問に直接お答えできないのでございますけれども、熊本県の例で申し上げますと、現在未処分件数が五千百二十七件ございまして、このうち処分が保留になっておられる方が千百八十七名、未審査の方々、この中に先生おっしゃったように検診を受けてない方、あるいは検診を受けている方、検診を受けておってもまだ審査の順番待ちの方といらっしゃるわけでございますが、いわゆる未審査分ということで三千九百四十名ということになってございます。この三千九百四十名の中に全く検診を受けてない方がどのくらいおられるかにつきましては、ちょっと数字を持ち合わせておりませんので、お許しいただきたいと思います。
  287. 中井洽

    ○中井委員 前にも申し上げたわけでありますが、本当にチッソ自体も大変な経済状況にありますし、これから先どれぐらいその費用がかかるかという計算もできないし、また熊本の県債問題をどうするかという問題もあって、本当に大変な重荷をお互いが背負っているわけであります。そういう問題をとにかくみんなで解決をしていこうというときに、どのくらい患者さんというものがいるんだろう、どのくらいの数なんだろうという大まかな申請者、あるいはこういったものの数がきちっとつかめないと、なかなか新しい制度あるいはいろいろなものを助けていく制度というのは議論しようにもできないと思うのです。ところが、残念なことに検診を拒否するというような形が出て、手間取って、申請をしながら十年もかかってもまだ一度も検診を受けていない、それは、県や国が御努力いただいていることも知っておりますけれども、何か制度の欠陥があって受けていないという方もいらっしゃるわけであります。したがって、向こうさんが拒否されるならそれはもう仕方がないことでありますが、どんどんどんどんと、先へ先へとお進めいただいて、お医者さんの数の問題、能力の問題ございますから、一遍にはいかぬでしょうけれども、できるだけそういった意識的な停滞者を除いてどんどん申請業務の処理というものを進めていただく、こういったことを強く要望をしておきます。  もう一つは国立の水俣病研究センターの問題でございます。  たびたびこれも話に出ることでございます。去年でしたか、私初めてここを見せていただきました。大変すばらしいところに立派なセンターがございます。そこにおられます職員の方々も本当に一生懸命やろうという情熱に燃えておられるのを強く感銘を受けたわけでありますが、残念なことに、利用状況がはかばかしくないわけであります。現在の利用状況等、わかっている範囲でお答えをいただきます。
  288. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  水俣病研究センターに関するお尋ねでございますが、御案内のとおり五十三年十月に設立されたものでございまして、水俣病にかかわります総合的な医学研究を通じまして水俣病対策を推進する目的をもってつくられたものでございます。設立から六年を経て、順次組織等の充実に努めてまいっておるところでございまして、現在三部十一室の研究体制を整備いたしまして、臨床研究あるいは基礎医学研究あるいは疫学の各分野にわたります研究を進めているところでございます。  先生のお尋ねは臨床研究に関するお尋ねでございますが、臨床研究といたしましては、その施設にそれぞれの主治医さんからの紹介によります患者の治療といいますか、検査等を委託を受けてやる場合等もあるわけでございますが、主としてこの研究センターの近くにございます水俣病の患者さんを収容する施設のところと連携をとり合いまして、そちらの方で、入院患者あるいはそちらの退院患者さんを対象にリハビリあるいは薬剤の治療の経過というようなものについての研究を進めているところでございます。
  289. 中井洽

    ○中井委員 ちょっとごめんなさい、わからないのですけれども、要するに、下にある明水圏、あそこへ行って、あそこの患者さんのデータをもとに研究をしておるということですか。いわゆる入院をしておったり、あの園に入ってない方、普通の患者さんといいますか、家庭におられる患者さんが上へ来てデータを提供してくれたりあるいはリハビリをやってくれたりしていない、こういうことですか。
  290. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  先生からお話がございましたように、明水圏が入園施設でございますので、そちらに水俣病の患者さんが多く入院していらっしゃいますから、そちらの明水圏の施設と連携をとりながら、そちらに入院していらっしゃる方々あるいは退院した方々につきまして臨床研究をいろいろやっておられるということでございますし、それ以外に、地区の医師会と連携をとりながら、それぞれのお医者さんが患者さんを持っていらっしゃるわけでございますので、そういう患者さんを研究センターの研究機能を使っていろいろな検査とか調査等をおやりになっていただくというようなことで医師会と話し合いをしているわけでございまして、そういう面で、地区医師会、地区の開業医の先生方の紹介の患者さんといいます方々が年々六十名ないし百名というような形で推移しているところでございます。
  291. 中井洽

    ○中井委員 水俣病に認定をされた患者さんのデータというものはこの研究センターにすべて集められているのですか。
  292. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 五十三年にこのセンターが設立されまして、現在その内容の充実強化を図っているところでございます。それらのことで研究もようやく緒についた、これからますます中身が充実してくるというような段階にあるわけでございまして、そういう面で研究センターそのものの研究実績、あるいは先生お話ございましたように、この水俣病にかかわりますいろいろな文献、あるいはいろいろなところの報告書というのはそれぞれあるわけでございますが、これらは必ずしも全部センターにあるというわけにはなっていない状況にございます。できるだけ関連の文献等につきましては集める、あるいはセンターの方で収集するといいますか、そういうことについての配慮をしていく必要があるというぐあいに思っているところでございますが、それにつきましては、はっきりそういうものを全部センターに集めるというようなところまで方針が固まっているわけではございません。
  293. 中井洽

    ○中井委員 大変デリケートな問題でお答えにくいのもわかりますが、文献を集めるだけだったら国会図書館で集めてもらったらいいのでありまして、やはり患者さんのこういう特異な、世界にもまれな病気の研究をするわけであります。そのために大変な税金をお使いいただいておるわけであります。また、そこにも大変優秀な学者さんが行っていらっしゃるわけであります。地元の医師会、熊本大学、こういったところと、患者さんの団体ともお話し合いをいただいているとは思いますが、さらに御努力いただいて、患者さんのカルテあるいはデータ、こういったものは集められて科学的に分析がされる、そして治療に役立つ、こういう形で運用がされるようでなければおかしいと思うのですね。それは国だけの責任だとか県だけの責任じゃない。僕は、これは全体のかかわる人の責任だと思うのです。患者さんの団体も御協力をいただきたい。そうじゃないとおかしいと思うのです。そういったことを含めて御努力をいただきたい。このことをもう一度御答弁願います。
  294. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 先生のただいまのお話は非常に大事な話であるというぐあいに思っておりますし、その点におきまして、疫学調査をやる場合のデータの集め方あるいは各種の研究論文の集め方、あるいは個別症例のカルテをどのように集めるかというようないろいろな問題等があるわけでございますけれども先生お話、非常に大事な話であるというぐあいに思っておりますので、センターとも十分協議して、その趣旨を体して進めてまいりたいというふうに思っております。
  295. 中井洽

    ○中井委員 最後に、簡単に公害等調整委員会の方にお尋ねをいたします。  過般、委員長さんから事務の概要及び予算案についての説明というものをいただきました。ぱらぱらと読ましていただいておりましたら、四億円近い予算の御説明がございました。そのうち、経費として会議会議ということで八千万円ほど出ておりまして、最後の方に「その他は、主として人件費であります。」と、こう書いてあったものですから、ちょっとおかしな書き方だな、こういう委員会でありますから当然人件費が三億円ぐらいかかる、ほとんどが人件費だというので堂々とお出しになればいいのに、さも何かいろいろなことをやっておって、その他は人件費ですと。人件費が九〇%以上なんですから、書けばいいのになと考えながら、そういったことを言いながら質問をしようかと思って来たのでありますが、もう時間がございません。  このチッソの問題とそれから大阪空港の問題で公害紛争の御調停をいただいているわけでありますが、僕らほとんど中身を知りませんので、日常どういう形で運用をなさっておるか、どれくらいの調停の期間なのか、あるいは、ちょっと見せていただきますと、チッソなんかでも申請されてから一年以上調停にかかっておる。難しいことではありますけれども、どうしてそんなふうに時間がかかるのか、ここら辺を簡単に御説明をいただきたいと思います。
  296. 菊池貞二

    ○菊池(貞)政府委員 公害等調整委員会の仕事をちょっと御説明させていただいて、それからお話に入りたいと思うのですが、私ども委員会は公害等と名前が出ておりますように公害紛争の処理と、それから土地利用の調停、この二つの大きな柱の仕事をしております。  この仕事の中身でございますが、例えば公害関係では先生お話しのように水俣関係の仕事等がありまして、この間委員長からも、五十九年中に約四十件、患者の数について約五十人を超える方の調停をしておるわけですが、これを例に挙げますと、調停をしまして、この患者に対しては症状等に応じまして幾ら差し上げるというふうなことを定めるためには、現地に行きまして実際に患者に会ったりしまして症状をお聞きするとか、そういったことをやります。これが、例えば一回の調停のために約一週間かかるとか、それから帰りましてそれらを委員の間でこのランクをどうするかということ等討議をいたしまして、最終的に調停という形で患者さんにお伝えするということをしております。ですから、官報に公示いたしますときは……(中井委員「事務局の方が行くのですか、委員の方が行くわけですか」と呼ぶ)私ももちろんお供したりいたしますが、委員の方が行かれます。一回の水俣の調停ということのために今申し上げたような形のことをいたします。  そのほかに、土地の関係もこれは件数として非常に多くございまして、いわゆる期日といいますか、裁定のための申請者と被申請者を呼び集めて……(中井委員「土地の方の説明はいいです」と呼ぶ)  そういった回数等含めますと、いわゆる官報に公示しますのが約四十回ぐらいございます。そのほかに現地に行きますものとか庁内で調停委員会を開くとか、それから毎週定例の委員会議等がございますので、委員先生は結構忙しい状況でございます。  簡単でございますが、以上でございます。
  297. 中井洽

    ○中井委員 時間ですので終わります。ありがとうございました。
  298. 辻英雄

    辻委員長 藤田スミ君。     〔委員長退席、福島委員長代理着席〕
  299. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 二十二年ぶりの婦人の大臣です。長官は各方面からそういう点でも非常に注目をされていると思います。長官御自身も、琵琶湖だとかあるいは交通公害だとか逗子の池子の森だとか、そういうところに直接いらっしゃる、あるいはまた婦人団体との懇談も行われる、私は、その点では非常に意欲的な取り組みを見せておられる、こういうふうに思っています。しかも、長年にわたって、命を守る看護婦という大変大事な職業を経験されて、人間の今、健康が何よりも大切なんだ、それを信念にしていらっしゃる長官、そういう点でも私は、そういう長官が今後どういう公害環境行政を進めていらっしゃるだろうかと、多くの国民の注目を集めているところだと思うのです。  しかしながら、環境行政公害行政をめぐって、情勢は非常に厳しいものがある。財界などは、公害問題は終わった、こう言います。そして、ぜんそく患者とかあるいはまた大気系の公害患者など、まだ問題はたくさん残っておりますのに、輪をかけて、民間の活力だ、こう言う。その民間の活力だということで、開発の規制緩和なども現に進められていっております。私は、こういう問題に対して長官がどう考えておられるか、まず最初にお答えをいただきたいと思います。
  300. 石本茂

    石本国務大臣 先生から今、身に余るお言葉をいただいたわけでございますが、私、環境庁に参りまして、そして今申されましたように、公害、いわゆる被害者対加害者というような状況が今日まで環境庁の取り組んでいる問題であるというふうな認識を持っておったわけでございます。  もちろん、水俣病にしましても公健法にいたしましてもそれが主流になっておるわけでございますが、例えば公健法などを一つ見ましても、基本的には、これは非常に重要な第一種地域のあり方について、大気汚染の態様の変化を踏まえながらただいま中公審に再審議をいただいているというのが現状でございまして、そういう専門家の委員会等において目下懸命に取り組んでいただいておりますので、そうした結果を踏まえまして今後どういう対応をするかというのは、私どもに課せられた一つの任務であろうと思っております。  私は、今先生も申されましたように、民間活力をこの環境庁行政の一体どの部門に導入していくのか、どう考えましても導入でき得る分野はございません。これは全く別個なものでございますし、特に公健法等の見直しにつきましては、全くそれと関係のない時点であるというふうに考えて、現在ただいま、とにかくしっかり頑張っていかなければいけないのだ、とにかく私は弱い人々とともに歩いてきた人間でございますから、公害によって苦しむ人々とともに歩いていくのだという心構えでおるところでございます。
  301. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そういうふうにおっしゃるなら、私は、きょうも随分問題になりましたが、二十日の予算委員会のあの自民党委員に対する長官の御答弁というのは、舌足らずということじゃない、問題じゃないかというふうに思うわけなんです。  先ほども指摘ありましたけれども、大体あの方の質問の公害健康被害補償制度に対する認識というのは、歳出の問題として取り上げておられるところが、その入り口が第一問違っているわけなんです。これは、臨調答申が出たときに私もここで随分問題にいたしました。これはいわゆる補助制度ではない、これはまさに、基本的には民事責任を踏まえた損害賠償補償制度としてつくられているものなんだ、したがって、その補償金も国のお金を使っているのじゃない、このことは嫌になるほど確認されたわけです。  そういうことがあるにもかかわらず、あの原田議員の質問の出発が、まずそういう歳出の面でこの制度を見直すべきだという一つの例として挙げられた。そのときに、どうして大臣がそれは違うということを言ってくださらなかったのか。しかも、この原田議員は、大気汚染が改善しているのに公害患者がふえるのはおかしい、汚染がなくなったところはもう指定を解除すべきだと言うのに対して「お説ごもっとも」という言葉が出てくるから、原田議員は続けて、「大臣の非常に前向きな御答弁をいただきまして、大いにひとつ頑張っていただきたい」というような続きになっていくわけですね。そして総理の発言になっていくから、国民は非常に心配になるわけなんです。  そういう点では、環境庁というのは指定地域の解除を行うことを前提に中公審に諮問をしているのじゃない、現在環境庁はその指定地域を解除すべきだということを考えているものではないということを、私ははっきり確認をしておきたいわけです。     〔福島委員長代理退席、委員長着席〕
  302. 石本茂

    石本国務大臣 さっきもちょっと申しましたように、私の気配りが非常に足りなかったということを今反省しております。  午後からでございましたが、原田先生から、国が丸抱えのような発言をされたことに自分でも気づかれたのだと思うのですが、非常に公害患者が出るところと出ないところ、出ないところにある企業が非常にばからしい目に遭っているというようなお話をちょっと私にされましたから、それは、この法律ができるときにそういう御意見を何もおっしゃらなかったのかということが一つと、健康保険法と同じじゃございませんか、生涯病気をしなくても、ちゃんと自分の払うべきものは払って、そして病める人々がそれによって救われていく、それと同じ意味だと私は思っておりますよというような、これは後ほどの、関連のような話し合いだったわけでございます。  そういうことをちょっと申し上げたわけですが、本当に、先生指摘くださいますように、質問をいただきました時点で、私はもっと気配りをして、そして舌足らずなことを言わないできちっとお答えをするべきであった。大気の態様が変わったではないかというその部分について、「ごもっともでございます」と言ったことは本当に反省しておりますし後悔もしているのが現状でございます。本当に申しわけないと思っております。
  303. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 くどいようですが、専門委員会の先生方に対しても、言ってみれば失礼な発言でなかったかと思うわけです。  それで、はっきりしておきたいのです。長い御答弁をいただきましたけれども環境庁としては、現在、指定地域を解除すべきだということを考えているものじゃない、そのことをはっきり言っていただきたいわけです。
  304. 石本茂

    石本国務大臣 地域解除という建前に立って再審議をお願いしているわけではございません、私個人といたしましては。また環境庁長官といたしましても。それは専門委員会が、専門の皆様が知見を傾けて、そして正しい見解をお出しくださるであろうと考えております。
  305. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大気汚染による公害患者と同様に、公害の原点と言われる水俣病の問題、これもまたきょうはたくさん出されましたけれども、私もまた、原点の問題ですので一言だけお聞きをしておきたいわけです。  要するに、この新次官通知によりまして患者の認定というのは非常に厳しくなりました。宝くじに当たるようなものだ、こう言われているのです。しかも、死亡して、そしてそれを解剖して初めて認定されるというようなこと、これは、申請をし、そして検診を受けて却下された、却下されたけれどもやはりおかしいと思うということでまた申請をしていく、そして、結局亡くなってから解剖して、却下をしていたけれどもやはりこれは患者だったというような例も出てくる、こういうことで、もう長年にわたってこの問題が過ぎてまいりました。裁判も余儀なくされております。  私は、公害の原点と言われる水俣病が、発見以来四半世紀も経た今日までこういう状態に置かれていることについて、長官はどういう認識を持っておられるのかということをお伺いしたいわけです。  同時に、私は、長官にぜひとも水俣の現地を見ていただきたい、患者の声を直接聞いてほしいと思うのです。そうして、その実態を見て今後の行政に生かしていただきたいと考えるわけですが、二点です。
  306. 石本茂

    石本国務大臣 水俣病の審査の状況につきまして、先ほど来私もお話を聞いておりまして、何て手間取ることだな、そんなに二週間もかかっていろいろ調査をし、さらにまた、段階を決めるためにまた時間がかかるというような、これは何ということかというふうなことを考えながら話を聞いておりましたけれども、それは当然のことであろうというふうにも思います。それから、亡くなりましてからわかったというような事例もありますので、このことも私自身、これは素人考えでございますが、不思議だなというような見解を持つ者の一人でございます。  それからなお、申請をした人、申請をしない人というよりも、拒否する人があるわけでございますね。だから、受けてくださる方々も、拒否されることなく、全員がそういう審査に応じていただくというような方策がとれないものだろうか、円満に解決する方策がとれないものだろうかというようなことを、先ほど来お話を聞きながら、心の中でそういうことを考えておったわけでございます。  それから、現地に行くことでございますが、本当にお言葉どおり、環境庁に参りまして私は行っておりません。ただ、看護婦でございますから、現地に参ります都度、このセンターは訪問いたしました。患者さんを訪問するということも一つありますが、そこで働く同志、仲間の御苦労をねぎらうためにもそこに行ったわけでございます。ここに参りましてから、まだ行っておりません。ですから、先ほども申しておりましたように、機会を検討いたしまして、そしてよい機会に恵まれますならば私は行ってみたいという気持ちを持っております。  以上でございます。
  307. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私、この水俣病の問題を質問いたしますために――私もどうしてこんなに時間がかかるのか、どうして拒否をする方がおられるのか、大臣と同じような疑問を持っておりましたが、私は水俣に参りまして、公害患者の皆さんと懇談をしたり、あるいは却下されている方のおうちを訪ねたり、解剖された御家族の方にお会いをしたりして、水俣を歩いている中で、なるほどなということがよくわかったのです。  私は、きょうもう時間がありませんし、この水俣の問題については別途質問をしていきたいと思いますが、水俣の病院の方はお訪ねになった、医療施設はお訪ねになって、そして昔の仲間とお話し合いもされた、そういう点ではまるっきり水俣のことに足を踏み入れていないということじゃないと思いますが、ぜひともその患者に会いそして却下された人たちにも会い、検診を拒否するという人たちにも会ってみてください。そうすれば、何がひっかかっているのかということが非常によくわかりますし、少なくともこの水俣病の問題については、決してそれは終わったものじゃなしに、まさに今、今日のこの時点でも初めの地点にあるというふうに御理解をいただけると思うのです。  そういう点では、残念ながらここ数代の環境庁長官は水俣に行っておられません。実態をこの目で見、この耳で聞くことが必要だ、事実をつかめばなるほどそうなのかという結論が出てくると、かつて長官が言っておられるその言葉にこたえていただくためにも、ぜひとも水俣を訪ねていただきたいと考えるわけです。もう一言で結構です。
  308. 石本茂

    石本国務大臣 先生の御提言、身にしみて、心にしっかり抱き締めて考えさせていただきます。  ありがとうございました。
  309. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 次に、私は大阪の南港埋立地に建設計画されております関西電力のLNG火力発電所についてお尋ねをしていきたいと思います。  この発電所につきましては、長官就任早々の十一月二十日の電調審で認可ということになったわけですが、この地域は、改めて言うまでもありませんが、大気系公害患者が住む指定地域であります。大阪市内で二万人近い公害患者がいます。毎年二千数百人の新たな発生も出ております。しかも、この目と鼻の先に、南港ボードタウンといいまして、海と緑の触れ合いのある町ということで、将来四万人くらいの人口になるというでっかい団地がございます。  私は、この団地の五階の方に上がらしてもらって見渡しますと、東にも北にも、目と鼻の先に大阪発電所あるいは春日出発電所というのがございます。そして、直線で結べば本当に一キロくらいのところに新たに今回認可されました南港火力発電所をつくるということなのです。これでは住民が納得できないと言うのも当然のことじゃないかというふうに私も思っております。しかも、ことしを目標年度にいたしましたNO2の環境基準すらまだ達成のめどがはっきりしていないところで、大量の窒素酸化物を出すLNGの火力発電所を新たに認めるなどというのは全く許しがたいことだというふうに考えるわけですが、まず最初に、環境庁はこの点についてどう考えておられるのか。
  310. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 南港火力発電所につきましては、今御指摘のとおりに、電源開発調整審議会におきまして私どもが実質的な合意をしたわけでありますが、その合意に当たりまして主として私どもが検討しております問題点は、あの地域における環境基準の将来に向かっての達成にどういうかかわりがあるか、こういう目で見ておったわけであります。  そういうことでございまして、電調審におきましても、私どもは、まず第一に、窒素酸化物につきましては、既設の発電所も含めまして必要に応じましてその排出量を削減することがあり得るということ。それから硫黄酸化物、ばいじんにつきましても、既設の発電所からの排出量を極力抑制する。これは、LNGはこういうものは出ないと考えられますので、既設の発電所についてのコメントであります。また、地方自治体が本地域で実施いたします大気環境保全対策には協力をする。こういうような意見を私ども立場といたしまして述べまして、そして合意をした、こういう経緯でございます。
  311. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それでは、改めて窒素酸化物の問題についてお尋ねをいたします。  大阪は窒素酸化物の総量規制の対象地域にもなっております。昭和六十年、つまりことしなんですが、ことしがNO2の環境基準達成する目標年度になっておりますが、その達成の見込みはあるのでしょうか。
  312. 林部弘

    ○林部政府委員 環境基準達成の問題につきましては、総量削減計画の具体的な適用はこの四月からでございますが、窒素酸化物の環境基準達成期限は、現基準が定められましてから七年を経過いたしますことしの七月がたしか期限になっていたように記憶いたしております。  私どもといたしましては、削減計画の具体的な成果が上がっているかどうかということにつきましては、具体的な削減計画が適用になりましてから一年間の経緯を慎重に見守った上で評価をいたしたいというように考えておるところでございます。
  313. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 一年の経緯を見守った上でということで、お答えになっていないのですが、達成できると思っておられるわけですか。経緯を見なければ、今のところ見通しは全くわからないということですか。
  314. 林部弘

    ○林部政府委員 現在の時点ではまだはっきりと見通しを申し上げることはできないと思います。
  315. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 東京都の議会で大気保全部長が昨年の十一月に事実上の敗北宣言を行ったということが報道されておりました。自動車の排ガスの影響で環境基準達成は厳しいというふうに述べておられるわけですが、ディーゼル車が非常に増加をしている、しかもこれは非常に厄介な代物で、NOxの排出量が非常に多い、こういうことで、東京の場合は自動車排ガスによるものの影響というのが八割に近いと言われておりますが、大阪もそんなに変わった話じゃありませんので、そういう点では軒並み移動発生源の方も基準の達成は無理ということになるのじゃないでしょうか。
  316. 林部弘

    ○林部政府委員 今先生から御指摘がございました東京都の事例でございますが、そのようなニュアンスの報道のございました後、東京都の方から様子を伺いましたところ、自分たちとしては別に書かれていたようなことを言ったつもりではなかったのだけれども、交差点の近くの渋滞の起きやすいような道路の沿道の一部においては達成がなかなか厳しい状況にあるようなところがあります、そういうことを都議会において申し上げた事実がございますと、そういうように私どもは伺っております。
  317. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それをそのま言葉どおりにのまれているというふうに私は思いませんよ。  大阪でも自動車の測定局というのは大阪市内に十二局あります。その十二局が全部未達成なんです。まだ達成できてないのです。これは五十八年ですが、全部未達成なんです。その後、状況はよくなったのかというと、状況はよくなったとは言えません。私は、恐らく言えないだろうと思います。これは結果が出てこなければわかりませんがね。しかし、ディーゼル車なんかが非常に多くなってきているという状況の中で、私なんかが日ごろ高速を走っておりましても、ああこれはなかなか大変だなということをこのごろしみじみ思うようになってきました。ふえているわけですね。  しかも、一般測定局も大阪市内は十三局ありますが、未達成のところが二局あります。その一局が、今回南港の火力発電所ができましたら、そこから吐き出されるNOxの最高着地点というところに当たるところなんです。まあそういうことで、絶対に環境基準達成する見込みはないというふうに私は現状を見て言わざるを得ないわけです。  にもかかわらず、年間四百トンものNOxを出す発電所を認めるというのです。この四百トンという量は、現在大阪市内に二つ発電所があります。春日出と大阪という二つの発電所がありますが、この二つの発電所が五十七年に排出いたしましたNOxの量というのが四百八トンなんです。だから、その上に四百トンかぶせるというのでしょう。今でもこういう状態――こういう状態の中でと言うけれども、それは四百八トン、そこへ四百トンかぶせるというのです。私は、かつて公健法の制定当時に当時の三木長官が、この法律は免罪符ではないのだ、発生源は厳しく規制するのだとおっしゃったことを思わず思い出しております。そうした言明にも反するのじゃないでしょうか。
  318. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 確かに南港火力発電所の排出量は四百トンということでございます。また、先生指摘のように、大阪、春日出両発電所の五十七年度の合計値は四百十数トンになります。五十七年度は全体として非常に少なかった時期でございますが、それはともかくといたしまして、そういうことになっております。  ただ、いずれにしましてもこの南港発電所が実際に稼働してまいる時点が六十五年ということでございますので、その六十五年に向けての総量削減計画上のいろいろな考え方があるわけでございまして、六十五年度における大阪市あるいは堺市内の関西電力の総排出量は現在持っております。その総量削減計画上の数値よりも小さいということでございますので、環境基準達成に支障を及ぼさないだろうという考え方をとったわけであります。また、大阪市の行いましたシミュレーションにおきましても、南港発電所運開後の六十五年において、NO2にかかわる環境基準は確保されると予測されているということもございまして、こういう判断をいたしたわけであります。
  319. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私が比較に取り上げた五十七年というのは排出量が少なかったとおっしゃると、これはまた極めておもしろい話になってくるわけですわ。確かに五十七年というのは冷夏であり、そして景気も非常によくなくて稼働率は落ちてますよ。だったら、今度稼働率が上がったらそれはますます排出されて、そして景気がよくなればますます稼働率が高まっていって、環境基準達成はこれまた難しくなるという方向になるじゃありませんか。
  320. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 私が申し上げましたのは実績値を申し上げたわけでございまして、現在あります四つの発電所の五十五年、五十六年、五十七年、五十八年それぞれの合計を見ますると、五十五年が三千七百六十五トン、五十六年が二千七百七十七トン、五十七年が千八百八十二トン、五十八年がやや上向きまして千九百六十七トン、こういう傾向を示しておるということであります。
  321. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 今言われた数値は、四つの発電所で言っておられるわけでしょう。春日出と大阪と三宝と堺、そうでしょう。実績値でいったらそういう話で余計に疑問が出てくるわけですよ。  確かに、おっしゃったように、実績値は五十八年は千九百七十二トンでしたかね。四つで五十八年は千九百七十二トン。これ、大阪府が関電と結んだ防止協定を見ましたら二千五百十五トンにするというのですよ。ふえるんですわ。今でも、この千九百七十二トンでも公害患者は依然としておる、環境基準達成されていない、それなのに南港協定を見ますと二千五百十五トンでしょう。だから、よくなるはずはないじゃないかと申し上げているわけです。  余り数字があちこちにいきますから、長官、さっき私が言ったのはおわかりいただいたと思いますが、大阪市内に限って言えば、現在ある二つの発電所から排出してくる窒素酸化物は両方で四百八トン、しかも、そこには今言ったように被害者がたくさんいる、そこへ、あと五年後、五年後とはいいますけれども、わずかあと五年後に、ほぼそれに匹敵する四百トンもの窒素酸化物を排出する発電所を認めるというのです。これでは環境基準達成はますますほど遠くなるじゃないか、こんなことが許されていいのかということを私は言っているわけです。――長官にお答えいただきます。
  322. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 大変舌足らずで申しわけありませんでした。  おっしゃるとおりのことなんでありますが、現在の六十年度環境基準達成を目標といたします総量削減計画におきましては、五千百三十トンというトータルの数字をもって計画上の数値としておるわけであります。それを、今後の課題でありますが、少なくとも南港を加えまして、南港四百トンとおっしゃいましたこの四百トンも含めた二千五百十五トンを用いて、大阪市のシミュレーションにおいて用いた数字であります。したがいまして、これが将来の六十五年度に向けての守るべきところになるということでございます。
  323. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は環境庁からそんな話を聞くとは思いませんでした。確かに多奈二協定では五千百三十トンになっているのです。けれども、これは協定でしょう。そして、実績値の方は千九百七十二トンでしょう。現在のこの数値でも被害者がたくさんいるじゃないか、極めて汚れているじゃないか、それを二千五百十五トンになぜ認めるのだ、こういうことを言っているのです。  五千百三十トンのこの協定を結んでいたのを二千五百十五トンに減らす協定にしたから、だから半分ぐらいに引き下げてしまってすっかりきれいになるのだみたいな、そんなことを環境庁が言うとは私は思いませんでした。実績値で言っているのです。実績値で言うと、五十八年現在千九百七十二トン、それを二千五百十五トンという、防止協定では四百トンを含みますからそういうことになる。これはふえるじゃないかということを言っているわけなんです。そんなことが許されていいのか、それで責任が持てるのかということを言っているわけです。
  324. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 冒頭に申し上げましたように、環境基準達成ということに焦点を合わせまして私ども南港火力発電所の建設に合意したわけでございますが、その場合に、環境基準達成、これは数値については御議論がいろいろあろうと思いますけれども、これはあくまで環境基準達成という計画、総量削減計画の数値で私どもは判断したわけでございます。
  325. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それじゃ、通産省にお伺いいたします。  通産省が独自に決めております「発電所の立地に関する環境審査指針」を見ますと、「大気汚染」については「公害対策基本法に基づき定められた環境基準に照らし、支障を及ぼすものでないこと。」となっていると思いますが、南港火力についてもこのような判断をしたと考えてよいのでしょうか。
  326. 吉沢均

    ○吉沢説明員 御説明申し上げます。  私ども環境審査を行うときにおきまして、先生今おっしゃったような「環境基準に照らし、支障を及ぼすものでないこと。」という事項につきまして判断を行っていることは事実でございます。  今までのお話にございましたけれども、現在大阪地区におきまして、NOxにつきましては環境基準達成されていないということは事実でございます。このような環境基準達成していくためには、具体的には地方公共団体におかれまして総量排出基準を定めるとか公害防止に関する基本計画を定めるとか、そのようなことで、大枠といたしまして適切な施策が進められているところでございます。  私ども、このような審査の基準におきましてどのような判断をするかということでございますけれども、まず第一に、法律で決められております排出基準に適合していることはもちろんでございますけれども地方公共団体が進めておられます全体としての削減計画あるいは環境濃度の低減計画の内容に沿っているものであるかどうかということから判断をする、そのような方法をとっております。
  327. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 というふうになりましたら、発電所が運開する時点でもしNO2の環境基準達成されていなければ、当然運開を見合わせるのが筋じゃないでしょうか。
  328. 吉沢均

    ○吉沢説明員 南港発電所が運開いたします時点で仮にその地域環境基準達成されていないという状態の場合でございますが、この時点では、当然地方公共団体におかれましてその環境濃度の改善を目的としたいろいろな施策を講じておられるところかと考えます。例えば、先ほどの総量規制基準の強化とか公害防止に関する計画の改定等の施策が講じられるとか、そういうことが考えられるところでございますけれども、通産省といたしましては、このような地方公共団体が進められます施策に対しては積極的に協力するよう指導してまいるつもりでございます。
  329. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 環境庁にお尋ねします。  同様の質問なんですが、どうなんでしょうか。
  330. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 今通産省からお答えがありましたが、電調審の場において、窒素酸化物につきましては、必要に応じ、既設の発電所も含めその排出量を削減する、この趣旨は、「必要に応じ」というような表現を使っておりますが、環境基準達成のために地方自治体が実施いたします大気環境保全対策、こういうものに協力を要請されたというような場合には、これは排出量の削減というものにつながる、こういうふうに私ども考えております。そういう意味では通産省の答弁と同じ考え方であります。
  331. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 通産省の答弁と同じでは困るわけなんです。環境基準に照らして支障を及ぼすものではない、通産省でさえそう言っているのです。だから、運開する時点でもしNO2の環境基準達成されていなければ、環境庁としては当然運開を見合わせるという立場をとるべきじゃないか。通産省なら、さっきから言われております総量排出基準をもっと厳しくしてとか地方自治体指導してとか、ああいう答弁しかできないだろうと思うのです。少なくとも環境庁は、その時点で環境基準に照らし合わせて支障になるということが出てくれば、これははっきりと運開を見合わせてほしいと言うのが筋じゃないかというふうに考えるわけですが、どうなんでしょうか。
  332. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 私どもは、仮にその時点において環境基準達成されていない場合には、既設の発電所を含めましてその地域トータルの排出量の削減ということが必要なことだろうと考えるわけであります。そういう意味で、その意見もその線に沿って申し上げた、こういうことでございます。
  333. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 さっきから言っているように、移動発生源の方は非常に困難でしょう。ディーゼル車などの問題についてまた別の機会にぜひとも質問させてもらいたいと思いますが、非常に困難になってきているのです。この問題を解決しなければならない。移動発生源の問題、そして固定発生源の問題がもう一つあるわけです。  環境基準がその時点で達成されていない――環境基準というのは一般の測定局だけではないですよ。道路わきの測定局の方も、今のように十二局中十二局までオールだめだというような状態。ここもクリアされていかなければなりません。しかしそれは非常に難しくいだろうと私は思っています。そういうときに、四百トンも排出するような――たとえ建設されたとしても、その時点で環境基準達成されていなければ、その新たな固定発生源にちょっと待ったと言うのが筋じゃないですか。それはその時点でどうなるかわかりませんよ。どうなるかわかりませんが、今環境庁としてはそれくらいのことは言っておくべきじゃないが、こう思うわけです。
  334. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 何遍も繰り返しの答弁になって恐縮でありますけれども、確かにこれから運開までの時間相当ありますし、私ども環境基準達成につきまして、移動発生源も含めてさまざまな手を打っていかなければならない、また、自治体もそのための懸命の努力を払っていただかなければならない、こういうふうに思っておるわけであります。  そういう流れの中で、この固定発生源の新たな負荷という問題をどう考えるか、こういうことに尽きるわけでありますけれども、私どもは、関西電力トータルの排出量の削減ということで問題に対処してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  335. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私が何でこんなにくどくこの問題を取り上げているかというと、今この指定地域及びその近辺に六つの発電所が計画されているのです。LNG火力発電所、だからNOxです。NOxの排出負荷が非常に大きい発電所、新小倉、富津、四日市、東扇島、南港、そして川越。違いますか。
  336. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 今御指摘の点につきましては、指定地域の外、周辺部も含めまして御指摘のとおり計画中であるというふうに承知しております。
  337. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 公害患者がいる汚染地域の周りに、全国でこれだけ新たな発電所の計画が行われようとしているわけです。だから私はこの問題に非常にこだわらざるを得ないわけです。  しかも、環境基準というのは環境庁が決めたものでしょう。みずからその基準を決めながら、達成されていなくても運開は認めないと言わない、これはまさに自殺行為になるんじゃないでしょうか。
  338. 山崎圭

    山崎(圭)政府委員 環境基準は行政上の行政目標でございまするから、その実現に向かって私ども努力しなければならないことは明らかであります。ただ、その場合の手法といたしまして、こういう一度建設に同意したものの運開をとめるということが妥当であるのか、あるいはこの場合における関西電力トータルの削減ということが妥当であるのか、その辺は私どもは後者をとっておるわけでございます。  なお、先生指摘のように、移動発生源との絡みもございましょう、いろいろあると思いますが、六十五年度の環境基準の実現に向けましてさらに努力してまいりたい、こういうことでございます。
  339. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 六十五年の環境基準達成では困るわけで、六十年なんですよ。六十年の達成をまずやってもらわなければいかぬ。そして、ゆめゆめその達成をまた不可能にしてしまうというようなことが六十五年に起こってはならない、こういう話の筋になるんでして、六十五年の達成じゃ困るわけなんです。  最後に、大臣、今までどうしてこんなにたくさん患者が出てきたのか。どうしてこんなに空が汚れてきたのか。それは一見きれいですよ。かつてのように、子供が絵をかいたらネズミ色というような空じゃありません。しかし、NOxの濃度というのは依然として非常に大きいです。大阪あたりはもともと環境基準は〇・〇二というふうに決めていた。環境庁もかつてそうでした。それを〇・○四から〇・〇六に引き上げられた。その〇・〇六、三倍の基準もまだ達成されてないというような現状です。なぜそうなったのかというと、いつでも、こんな大きな火力発電所をつくる、しかも大阪の一番汚いところにつくる、そのときでも、将来は汚れません、将来は大してここに影響はありません、こういうことを言って、その影響は小さいんだ、小さいんだと言って認めてきて、積み重なって今日このようになったのです。  だから、私は、命と健康が何よりも大事だと大臣がおっしゃるなら、こうした問題のときこそ本当に毅然とした姿勢を見せてほしいわけです。私は、高濃度の汚染というものを速やかに解決するためにあらゆる努力を傾注しなければならない、そして同時に、少なくとも汚染地域に、公害認定患者がいるというような地域に新たな大発生源――火力発電所なんというのは大発生源です。こういう大発生源を設けるというようなことは許さない、それが本来の環境庁に求められている態度であり、命と健康が何よりも大事だとおっしゃるなら、そういう姿勢を貫かれることだというふうに思いますが、今の優先を説かれる大臣のその信念にかけて、最後の御答弁を求めたいと思います。
  340. 石本茂

    石本国務大臣 的確なお答えになるかどうかわかりませんけれども、先ほど来企画調整局長がたびたび申しておりましたように、電源開発調整審議会におきまして三つの申し入れをしておるわけでございます。この申し入れが達成できるという見込みのもとに、そういう電源開発といいますか、そういうものをつくるということであるというふうに現在私は受けとめておくしか手がないのでございますけれども、現在でもその地域には公害患者がいるんだ、それをさらに倍増していくということについては問題ではないかとおっしゃる先生のこの御提言、もっともだという気がいたしますので、また担当の企画調整局長ともどもにこの問題をもう一度十分に話し合いをしてみたいというふうに思います。
  341. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 終わります。
  342. 辻英雄

    辻委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十四分散会