○大久保
委員 それでは、
条約の
中身に大ざっぱに触れさせてもらいたいと思いますけれ
ども、この
条約にざっと目を通しますと、大きく十のカテゴリーといいますか、範疇に分けられるのだと思うのです。
一つは、
憲法その他法制的に
男女の平等の原則がうたわれているかどうか、
法律上の問題。それから政治活動の平等の問題、国際活動の問題、
国籍関係の平等、教育の平等、雇用の平等、
婚姻または母性を
理由とする
女子差別の禁止の問題、家族給付についての
権利の問題、農村の
女子に対する
措置の問題、
法律の前の平等の問題、これは前後重複しますけれ
ども、大きく十に分けられている中で、大体
我が国としてはほとんどクリアできているのではないか。しかし、雇用の問題、それから偏見、慣習、その他慣行の
撤廃実現のために
男女の社会的、文化的
行動様式修正云々、これは一体何なのか、ちょっと後で聞いてみたいと思うのですが、さらに教育の問題、
女子の専門教育をすることは
差別につながるからけしからぬ、学校でも家庭科の教育をやってはいけないのだ、こういうことの
ようでございますが、この国際的な
条約でその国々のいわゆる慣行なり風俗習慣にまで口を挟んでくる
条約というのは、非常に珍しい
条約だと思います。
雇用の問題につきましては、先ほど赤松さんの御
答弁もありましたけれ
ども、いわゆる雇用の機会均等法で大変な努力をされたことはよく
承知をしておりますし、私たちもそれについてはいろいろな意見がございますし、今回の均等法については極めて不十分という立場をとっておるわけでございますが、しかし、
日本の歴史なり伝統なり今までの慣習ということを考えますと、これはなかなか一朝一夕にでき上がる問題ではない。
これは
一つの意見でございますけれ
ども、
日本の大変有名な雑誌に、
日本の一流の学者が集まって「
男女平等とはなにか」という論議を、討論会をされております。「社会・文化と女性」というこの論議の中でこんなことを述べておる。
概論で長たらしくしゃべるとうまくないから簡単に申します。たとえば
男女平等ということで、同一
労働、同一賃金が主張されていますね。ところが、他方では、女は生理上違うから、生理休暇はよこせ、出産するから出産手当、出産休暇をよこせ、そういうことをいっているわけです。そういう点で私は非常に疑問を持つのです。なぜかというと、企業は何も子供を産ませるために人を雇っているわけではない。だから、子供が産まれるからといって、産まれる子供の面倒をみなければならない
理由は、企業にはないわけです。要するに企業は、人を雇って働かして、働いた者にそれ相当の給料を払う、そしてその中から利潤を生み
出していく、そういったてまえで企業はできている。その企業に何か社会事業みたいなものを背負わせ
ようということになるわけです。それはちょっと無理ではないか。片一方では同一
労働、同一賃金といって、片方では生理休暇をよこせ、出産休暇をよこせ、そしてそれを有給休暇にしろ、こういうわけです。それだったら、企業の側から見て、当然劣った
労働力よりも、それと同じ
労働力であるならば、なるべく女はとらない
ようにし
よう、そういうことになる。すると、これは
男女平等に反するから男と同じにとれ、というのでまた要求するわけです。
これ自体むちゃくちゃな要求です云々。
これは私の意見ではありませんけれ
ども、こういうことを言う人がおる。これが今の社会の中で、第一線のいわゆる情報社会の中でこういう論理がまかり通っておる。こういう状況の中で、赤松
局長の御努力もなかなか大変だと思いますけれ
ども、私は今、社会的にも歴史的にも民族的にも風土的にも、
日本の
労働問題
一つをとりましても、雇用問題をとっても、こういうことが前面に
一つの大きな障害となって、この
条約の
趣旨とは別次元の問題が多くあるのではないかということを考えますと、この
条約を
批准し、この
条約の締約国になろうとしていることについて、外務
大臣は外務
大臣のお立場から、やはり
日本の
国内法について何かもう少し御意見があっていいのじゃないかな、こんなことを思いますけれ
ども、いかがでしょうか。