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1985-04-17 第102回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十七日(水曜日)     午前十時五分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 井上 普方君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       鯨岡 兵輔君    仲村 正治君       西山敬次郎君    山下 元利君       岡田 春夫君    河上 民雄君       小林  進君    八木  昇君       木下敬之助君    岡崎万寿秀君       田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      有馬 龍夫君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君  委員外出席者         防衛庁防衛局運         用課長     大野 琢也君         外務大臣官房審         議官      木幡 昭七君         厚生省保健医療         局国立病院課長 目黒 克己君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      神谷 拓雄君         海上保安庁警備         救難部救難課長 草薙 博文君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ————————————— 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   田中美智子君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   浦井  洋君     田中美智子君     ————————————— 四月十七日  万国郵便連合憲章の第三追加議定書締結につ  いて承認を求めるの件(条約第七号)(参議院  送付)  万国郵便連合一般規則及び万国郵便条約締結  について承認を求めるの件(条約第八号)(参  議院送付)  小包郵便物に関する協定の締結について承認を  求めるの件(条約第九号)(参議院送付)  郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定の締  結について承認を求めるの件(条約第一〇号)  (参議院送付)  郵便小切手業務に関する約定締結について承  認を求めるの件(条約第一一号)(参議院送付  ) 同日  ILO未批准条約批准に関する請願(池端清  一君紹介)(第三一〇一号)  同(横江金夫紹介)(第三一〇二号)  同(渡辺三郎紹介)(第三一〇三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣安倍晋太郎君。
  3. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、今般国会のお許しを得て、四月十一日、十二日両日、パリで開催された第二十四回OECD閣僚理事会金子経済企画庁長官とともに出席し、引き続き米国を訪問しシュルツ国務長官等と会談し、四月十五日帰国しました。ここにその概要を御報告申し上げます。  OECD閣僚理事会においては、例年どおり開発途上国との関係貿易及びマクロ経済の三議題をめぐって討議が行われ、最後にコミュニケが採択されました。  本年は、回復基調にある世界経済がインフレなき持続的成長へ向かう一方、財政赤字失業経常収支均衡等の懸念が生じておりましたところ、これに対してOECD加盟国が全体としていかなる態度で対処するかが大きな論点でありました。この点に関して各国が、自国の経済活動を高めるための国内政策をとるとともに、国際的な調和を促進し、開放的な多角的経済体制を強化するような政策を追求することが合意され、協調の精神が確認されたことは、有意義でありました。  特に問題となりましたのは、米国財政赤字、高金利、ドル高、欧州における失業及び経済硬直性我が国大幅貿易黒字扱い等でありました。中でも我が国大幅貿易黒字が、世界経済の主要な不均衡要因であるとの批判が強く出され、これに対する対処ぶりに苦心したところであります。私より、我が国が去る九日発表した対外経済対策を初め、我が国としては大幅黒字の解消を目指して真摯な努力を続けていることを説明する一方、コミュニケ策定作業においても、我が国に関する記述がバランスを失してはならない旨強く主張しました結果、極端な形の対日批判は避けることができました。  貿易分野では、新ラウンド保護措置緩和撤廃等主要論点でありましたが、新ラウンドについては、我が国を初め米、加等その具体的な開始時期を合意すべきであるとした国と、時期の確定は尚早であるとの立場の国があり、長時間にわたり議論が行われました。結局、これを早期開始すべきことに合意するとともに、幾つかの国が八六年早期開始を希望している旨が明記されることになりました。保護措置緩和撤廃については、従来からの巻き返しの努力を受けつつ、改めて整理し直した結果、今後新たな保護措置をとらないこと、及び現存する保護措置緩和撤廃を目指して各国が十月中旬までに計画を提出することに合意しました。  開発途上国との関係についての議論において、我が国は一九八六年以降も、政府開発援助に関する新たな中期目標を設定し、引き続きODAの着実な拡充に努めるとの姿勢を明らかにし、これに対して各国から積極的な評価が得られたものと考えます。  私は、引き続き十三日及び十四日ワシントンを訪問し、シュルツ国務長官と十七回目の日米外相会談を行ったほか、ブッシュ副大統領を表敬訪問し、有意義な意見交換を行いました。  今次訪米は、一月の日米首脳会談の結果、両国外相間で日米経済関係に係る作業を総覧することとなったことを受けて行われたものでありますが、この機会をとらえ、朝鮮半島、東西関係、新ラウンドボンサミット等日米両国が共通の関心を有する諸問題についても幅広く意見交換を行い得ました。  今次訪米は、米国議会中心に対日経済関係をめぐり保護主義的、対日報復的な空気が高まっている中で行われましたところ、私としましては、四分野日米協議の最近の進展、なかんずく電気通信分野における成果を強調し、また、エレクトロニクス及び医薬品、医療機器分野における協議も進展しており、木材製品に関しても、四月九日の決定の結果、協議を進展させる環境ができたことを述べ、総じてよい方向に向かっており、今後も引き続き努力する方針である旨述べました。  シュルツ長官は、四月九日の決定総理談話を含む我が方努方を高く評価しつつ、最近の米国における厳しい情勢にかんがみ、四分野をめぐる一層の具体的成果の達成を期待するとともに、日米間の貿易均衡のより抜本的是正のためには、我が国における消費、投資の一層の活発化が必要なる旨述べました。  これに対し私は、日米貿易均衡ドル高等我が国のみの努力では対処し得ない側面もあることを指摘し、現下の困難を乗り越えていくためには、日米双方努力協調が不可欠であることを強調し、シュルツ長官もこれに理解を示し、米としても同様に考えているということでした。  新ラウンド推進に関する両国間の協力についても話し合いましたところ、この時点で日米経済関係の今後の取り進めぶりにつき意見一致を見ましたことは、ボンサミットに向けての地ならしという意味でも有益であったと考えます。  以上のごとく、日米外相間では今後の努力方向につき意見一致を見たものの、今後の米国議会等の厳しさにかんがみ、先行き楽観は許されず、四分野協議はもとより、四月九日の決定に基づく個別品目関税の引き下げ、アクションプログラム策定に当たっては、特に積極的な内容が盛り込まれるよう関係各位の御協力をお願いを申し上げる次第でございます。  以上です。     —————————————
  4. 愛野興一郎

    愛野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田春夫君。
  5. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ただいまの安倍外務大臣の御報告については、後で土井さんから詳しく御質問をいただくとして、私は、事前協議の問題だけに絞って、ひとつ質問をしてみたいと思います。     〔委員長退席野上委員長代理着席〕  まず第一に、去る十日でございますが、中国胡耀邦書記記者会見において、中国寄港する米艦船核兵器を搭載せぬことを条件としてこれを認める、これについてはアメリカ側合意を行っている、こういう発言がありました。これは、大変その後も大きな波紋を呼んでいるわけでございますが、日本としても、この点について無関心ではおられない問題だと思いますので、この点に対する大臣の御所見をまず伺いたいと思います。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 胡耀邦書記のそうした発言につきましては、まだ日本としてもはっきりした確認政府としていたしておるわけではございませんが、これに対しましては米国としましては、核の有無を明らかにしないことが米国基本方針であると発表しておるということを承っておるわけでありまして、私はまだ、中国側胡耀邦書記記者会見ということでございますけれどもアメリカ政府との間でどういう話があったかということについては承知をしておりませんから、この点に関して日本政府としてコメントするということは、今の段階においては差し控えた方がいいんじゃないか、こういうふうに考えております。
  7. 岡田春夫

    岡田(春)委員 というのは、これは記者会見であったからというお話ですが、その後において中国外務省当局もこれについてコメントをしている。したがって、この点については日本側として何らかの情報をおとりになる必要があると思うのだが、この点についてはどういうようにされるのですか。アジア問題だからアジア局長。     〔野上委員長代理退席委員長着席
  8. 愛野興一郎

    愛野委員長 アジア局長、出席していますか。——アジア局長代理ですか。有馬審議官
  9. 有馬龍夫

    有馬政府委員 お答え申し上げます。  米国政府は、先生が御指摘になられましたことについて、中国との間で昨年原則的に合意した米国艦船中国寄港の詳細につき引き続き検討しているところである、艦船中国訪問に関する発表中国側とのアレンジメントが完了した後に行われる、米国艦船における核兵器有無について確認も否定もしないという米国政策は不変であると、米国政府は説明いたしております。これは、基本的に米国中国との間のことでございまして、米国がこのように申しておりますので確認する必要はないと考えております。
  10. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の御答弁は、アメリカ見解をあなたが言われたのであって、アジア局長に殊さら求めたのは、中国見解はどうなっているか、こういうことをさっきから聞いているのです。特にその後における新聞報道では、中国新聞社という華僑向け新聞の中で一問一答の要旨まで出ている。例えば、それを読んでみると、記者の方で「訪問するのが通常艦ということは、核兵器を積載してない艦艇理解してよいか。」これに対して胡耀邦書記は「そのように理解すべきだ。」記者中国側米側に、艦艇核兵器を積載しないよう要求したのか。」朱という外務次官「これは双方合意をみたことだ。」はっきり合意を見たことだ。記者米国は同意したのか。」総書記中国領海に入るなら同意しなければだめだ。これは主権の問題だ。」ここまではっきり言っているので、今の御答弁によると、アメリカ見解はこうでございますと言うが、アメリカ見解は私は聞いてやしない。中国はどうなんだと聞いている。
  11. 有馬龍夫

    有馬政府委員 お答え申し上げます。  十五日の中国の新華社電が、在オーストラリアの中国大使館スポークスマンが申したこととして、米国通常推進型軍艦中国非公式儀礼訪問をする可能性があること、右は専ら中米間の事柄であって、双方の間には解決すべき問題が残っていることを述べる権限が在豪の中国大使館スポークスマンに与えられているということが報じられているということでございまして、私どもがここで理解しておりますのは、米国通常推進型軍艦中国に立ち寄るという含みで今その可能性が話し合われているというふうに承知いたしております。
  12. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の答弁は、新聞報道のことをただあなたが言っているだけであって、私がさっきから言っているのは、日本外務省として、向こうに出先があるのですから、中国外務省とそういう問題について接触をして話し合いをしているのですかということを聞いているので、今までこれをやってないならば、やはり外務大臣が指示をしてやらせる必要があると思うのです。外務大臣、いかがですか。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この件につきまして、私もこちらに帰りましてきのう聞いたのですけれども中国中国立場があると思います。新聞報道では今議論されたようなことが発表されておりますが、しかし中国中国立場がありますし、また日本日本立場がある、アメリカアメリカ見解があるわけでありますし、殊さらに中国にその見解をただす必要はないのではないか。日本立場はこれによって微動だもするわけではありませんから、私はその必要はないのではないか、こういうふうに考えております。
  14. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたと私は見解が違う。こういう点はやはり調べておくことが、どういう態度をとるにしても日本政府態度でなければならない。やはりお調べになることが必要だと思いますので、重ねてこの点を強く要求をしておきます。  しかし、この問題ばかり余りやっておれませんので続いて入りますが、外務大臣も今お答えになったように、最近、アメリカ政府関係者が再三にわたって核の問題について語っている。特にワインバーガーが去る四日に、次のようにサンフランシスコで講演をしている。それは、アメリカが核の存在を明らかにせぬことは全世界にまたがる根本政策であり、同盟国はこれを受け入れてきた、我々はこの政策について妥協もできないし、妥協する意思もない、また、この点については特別の例外はないと言い切っている。ところが外務大臣、あなたは今まで、核の持ち込みに当たってアメリカ日本に対して必ず事前協議を申し入れる義務がある、これは日米間の強い信頼関係に基づいているから間違いないと再三言明している。この二つの発言を比べてみると、明らかにこれは食い違っていると思う。あなたはこの点について矛盾を感じませんか、どうですか。この点をまず伺いたい。
  15. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、おととしでありますか、三沢のF16の駐留の問題あるいはまたエンタープライズの寄港の問題が起こりましたときに、マンスフィールド大使とこの点につきまして懇談をしたことがございます。そのとき私から、日本の非核三原則について申し述べました。そして同時に、安保条約、その関連規定お互いに遵守しなければならない、これが日米信頼関係の上においては絶対に必要なことであるということを言ったわけでございますが、これに対しましてマンスフィールド大使から、米国としては、核政策については核の存在は明らかにしない、核の有無については明らかにしないというのがアメリカの基本的な考え方である、しかしアメリカ日米安保条約、その関連規定は遵守してまいります、また核問題についての日本の国民の感情についても、我々は十分これを理解しております、こういう意味の回答がありました。  そういうことで、私は、安保条約存在し、また事前協議条項がある以上は、アメリカのそうした一般的な核の存在を明らかにしないという言明があったとしても、日本については、核の持ち込みについて日本に相談せずにこれを行うことはあり得ないという確信を持ったような次第であります。
  16. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると大臣日本の場合だけは例外を認めるのだという確信を持っているというあなたのお考えですか。
  17. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の場合は既に安保条約によって、これは岡田委員も御承知のとおり、事前協議条項というものがあるわけでございまして、これは条約上の義務規定でございますから、この条約を効果的に運用していく上においては、事前協議条項を守るというのが双方義務であり責任である、こういうふうに思います。
  18. 岡田春夫

    岡田(春)委員 最近のように、アメリカ日本に対する態度を見ていると、あなたは信ずる信ずるとおっしゃるが、本当に信用できますか。ワインバーガーがここまで言っているのに、そういう例外があるということは間違いないとあなたはここではっきり言明されますか。この点ははっきりさしておきましょう。もし、そういう例外なしに事前協議が行われなかった場合にはどういう方法をおとりになるのか、こういう点を含めて重ねて見解を伺っておきたい。
  19. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国アメリカとの間に安保条約があり、そして事前協議というものがある以上はこれは必ず遵守される、これが条約というものの信頼性であるし、またそれが日米のかたい義務である、あるいはまた責任である、こういうふうに思っております。そういう前提が崩れれば条約存在の意義はなくなってしまう、私はそういうふうに思っております。
  20. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もし、この条約に反するという場合にはどうされるかということを伺っているのですが、どうですか。
  21. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この安保条約というのは、お互い両国議会を経て批准をされたわけでございますし、条約を守るというのは両国の当然の義務でございますから、その義務に違反するというふうなことは、条約を結んだ両国関係からいってあり得ないというのが我々の確信であります。
  22. 岡田春夫

    岡田(春)委員 確信だけ聞いていてもしようがない。もっとこれに関連して話を進めてまいりましょう。  この点に関連して、核の持ち込み解釈が再び問題になってきます。持ち込みイントロダクション、このイントロダクションの中には、貯蔵、配備だけではなくて一時通過も含まれるというのが、政府の今までの再三の答弁です。ところが、それにもかかわらず何度かこれが問題になっている。例えば、昭和五十六年にかつてのライシャワー駐日大使がこれについて問題を提起したという事実もある。どうもそういう点を考えてまいりますと、一時通過というのは日本政府の一方的な解釈ではないのか、この点は日米間に合意されているとはどうも考えられない、こういう点があるのですが、イントロダクションには一時通過も含むという解釈日米間で合意されているのかどうか。合意されているとするならば、いつ、どこで、だれとの間で、どういう方法合意されているのか。これは局長に御答弁いただきたいと思います。
  23. 栗山尚一

    栗山政府委員 事前協議の核の持ち込み解釈につきましては、従来から政府が申し上げているところでありますが、合意されている内容は、安保条約締結のときの岸・ハーター交換公文に基づく藤山マッカーサー口頭了解、これによって明らかであるということを従来から政府は申し上げておる次第でございます。
  24. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の局長の御答弁では、条約当初のときからこれが入っていると言うのですが、一時通過というものが入っているという確認はされているのですか。
  25. 栗山尚一

    栗山政府委員 従来から申し上げていることの繰り返してございますが、岸・ハーター交換公文に基づきます藤山マッカーサー口頭了解、まず岸・ハーター交換公文は、「合衆国軍隊装備における重要な変更」ということを明記しておるわけでございます。それで、この「合衆国軍隊装備における重要な変更」の「合衆国軍隊」とは何かということにつきまして、岡田委員承知のとおり、従来から何度も御質問がありまして、政府が申し上げていることは、この「合衆国軍隊」というのは、単に我が国に配置された軍隊ばかりではなくて、施設、区域を一時的に使用している軍隊、あるいは領海、領空を通過する、すなわち我が国の領域内にある米軍というものすべてを含んでおるものである。これは岸・ハーター交換公文の、ただいま私が読み上げました文章からいって当然明確なことであるということを、従来から政府は御説明申し上げておる次第でございます。
  26. 岡田春夫

    岡田(春)委員 昭和四十七年ですが、ベトナム戦争が激化されているとき、当時の福田外務大臣は、この持ち込み問題に関連をして事前協議の全面的な洗い直しをやりますということを参議院予算委員会答弁をしている。それに対してその後洗い直しが進められたわけでございますが、洗い直しの経過については翌年の二月、当時の大平外務大臣がこの点について予算委員会で次のように語っている。それをそのまま引用いたしますと、「現在のワク組みがどのように運用されているか、それにつきまして日米間に理解の違いがあるかないか、そういった点を洗い直してみるという趣旨のものであったと思います。」「その後鋭意米国側協議をしてまいったわけでございまして、一月二十三日の安保協議委員会にその協議の結果を持ち寄りまして、両国政府共同発表をいたしておいたわけでございます。」このように答弁している。そして、この共同発表調べてみますと、これは第十四回日米安保協議委員会共同発表ですが、この共同発表には次のような文言がある。すなわち、「双方は、同制度の運用上の基本的枠組みについての双方合意を再確認する」云々と、こうなっておる。  そこで栗山局長に伺いたいんだが、この「双方合意を再確認する」という中には当然、その当時の洗い直しが行われたわけですから、一時通過の問題が洗い直しをされておらなければならない。この点を含んでいるのかどうなのか、この点についての御意見を伺いたい。
  27. 栗山尚一

    栗山政府委員 第十四回日米安保協議委員会における事前協議運用についての委員指摘のいわゆる洗い直し問題についてでございますが、当時の経緯は御指摘のように、戦闘作戦行動の定義の問題について国会において種々御質問がありまして、この安保協議委員会における洗い直しの主たる観点は戦闘作戦行動、核の持ち込みと同時に事前協議の対象になります戦闘作戦行動の問題を主としてアメリカ側と話し合ったということが、この洗い直し問題の中心でございます。  ただいま御指摘の一時通過の問題につきましては、一般的な話し合いは当時あったと思いますが、いずれにいたしましても先ほど私から御答弁申し上げましたとおりに、一時通過の問題につきましては、当初から岸・ハーター交換公文の文脈からいって明らかであるというのが私ども政府考え方でございまして、この洗い直しの機会に特にこの問題についてアメリカ側と話し合ったというようなことはなかったであろうというふうに私は記憶しております。
  28. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは調べてみてください、その前後においても一時寄港の問題は再三問題になっているのですから。この点については合意をされているのかどうか、この点は重要な点なんで、それは後で結構ですからぜひひとつお調べをいただきたい。いいですね。どうも今の答弁を聞いていると、なかったように思いますと、こういうような答弁ですから明確ではない。これは調べてください。恐らくこれは話し合いがあったはずだ。  そこで、その次の問題に入りますが、これは私がこの間予算委員会でも取り上げた問題ですけれども核攻撃指令通信基地、これを日本に持ち込むというわけです。あなたが今言った岸・ハーターあるいは藤山マッカーサー、この話し合いの中で、いわゆる藤山マッカーサーの口頭了解ですね、これの対象になるのかどうか、通信基地というものの日本持ち込みは。もう一度言うと、藤山マッカーサーの口頭了解の対象になるかどうか。もっと簡単に言うと、事前協議の対象になるか。
  29. 栗山尚一

    栗山政府委員 藤山マッカーサー口頭了解内容につきましては、核の持ち込みとの関連で、これは「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」であるということは、委員承知のとおり累次政府が御説明申し上げておりまして、文書の形においても国会に提出されておる次第でございます。  それで、委員が先般予算委員会で御質問になられましたアメリカの各種の通信施設の問題につきましては、私ども我が国にございますアメリカの通信施設の一部が、先生の御指摘のような核兵器の使用に関連しての米軍の命令を伝達する機能を果たしている可能性は、これは私どもあり得るというふうに思っておりますが、この種の通信施設というものが、先ほど私が申し上げました藤山マッカーサー口頭了解で申し上げている「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」というものには、これは当然のことながら該当しないというふうに理解をいたしております。
  30. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の答弁は全く間違っています。正反対。これは該当するんです。  ここに速記録があるが、昭和四十六年十一月十七日の沖縄返還協定特別委員会の議事録です。これについて楢崎君と上原君と二人が質問している。これに対して佐藤総理大臣は、「核に関する事柄、これはもう一切私どもは持ち込まない。」とはっきり言っている。しかも、重ねてこれに対する上原委員質問に対する答弁の中でこう言っている。「外務大臣や総理の御答弁からすると、当然、沖縄の核基地の撤去——核の撤去ということは核基地の撤去だということですから、核装備をしている部隊や弾薬貯蔵庫、あるいはそれと関連のある通信施設を含めて撤去さるべきだというのが、私たちの核抜きの主張なんです。これに対してはどうお考えですか。  ○佐藤内閣総理大臣 核に関連するものは一切なくなる、これが私どもの願いでもあります。」はっきり言っている。これは当然、核攻撃を指令する通信の施設というのはこの中に入る。入らないというのは間違っている。この点どうですか。  これ以外にもまだありますよ。その当時の久保防衛局長が、この点については「核弾頭を発射するに緊要な関連施設、いわばファシリティーズということばが適当だと思いますけれども、」これは含むと言っている。今のあなたの答弁と正反対じゃないか。あなたは含まないと言ったが、含むのです。
  31. 栗山尚一

    栗山政府委員 委員指摘の佐藤総理の御答弁については、私も承知をしております。ただ、当時の経緯、それから、その質疑に関連しての佐藤総理大臣のその他の答弁等もごらんいただけばおわかりだと思いますが、これは私から委員に申し上げるのは釈迦に説法でございますが、当時、沖縄返還前に、沖縄にメースBというようなことを言われましたが、核兵器が置かれておるということが一般的に言われておりました。沖縄返還に際してそういう核兵器は撤去をしてもらう、したがって、核抜き、本土並みでもって沖縄の返還を実現するのであるというのが日本政府の基本的な立場でございまして、それに基づいてアメリカ側に核抜きを要求したわけでございます。  その核抜きという場合に、これは単にメースBならメースBの核弾頭、あるいは核ミサイルということだけではなくて、その核ミサイルの発射基地、すなわち事前協議の対象になる弾道ミサイル及びその発射基地としての関連施設をすべて撤去してほしいということが日本政府立場でございまして、その後の交渉結果によりまして、核ミサイルのみならず、その関連施設を含めて全部撤去するという形で沖縄の返還が実現したということが当時の経緯でございますし、佐藤総理の答弁、それから福田外務大臣答弁におきましても、ただいま私が申し上げました政府立場というものは明確に答弁されておるわけでございます。  したがいまして、私の申し上げたいポイントは、あくまでも核兵器というものが日本の中に存在をし、そして核兵器を発射するための関連施設、すなわち事前協議の対象になるミサイルの発射基地というものを構成するような関連施設、その中にはあるいは通信的な機能を果たす施設もあるかもしれません、そういうミサイルの発射基地の関連施設を全部撤去してくれというのが政府立場であるということを、佐藤総理大臣が御答弁になられておるわけでございます。
  32. 岡田春夫

    岡田(春)委員 一体、それは何を言っているんですか。それは何のこと。関連施設の中に核攻撃の通信施設があるのでしょう。通信基地は撤去するというのでしょう。それならあなたの答弁、全然違うじゃないか。これは入っているのならば事前協議の対象になる。撤去するときだけは全部撤去するが、持ち込みはいいんだ、こういう意味ですか。
  33. 栗山尚一

    栗山政府委員 私の御説明があるいは十分明確でなかったのかもしれませんが、私が申し上げております趣旨は、事前協議というのは、当然のことながら日本核兵器を持ち込ませないための歯どめとしての制度でございます。沖縄の場合には、当時返還前でございましたが、そこに核兵器が配備されておるということが一般的に言われておりまして、したがって、その核兵器をどけてほしいというお話でございます。核兵器をどけるときには、核兵器の本体そのものばかりではなくて、その核兵器を発射するための施設も一緒にどけてほしい、なぜならば、そういうものは事前協議の対象になるものだから、こういうことでございます。委員予算委員会等で御指摘になりました通信施設というものは、別に我が国の中に核兵器があって、その核兵器を使うための施設ではないわけでございます。  それで、私ども申し上げましたことは、それはそういう日本の国内にあるアメリカの通信施設が、日本の領域外にあるアメリカの核戦力というものと通信をする機能を持っておるかもわからない。しかし、これは事前協議の対象になる核兵器持ち込みという問題とは全く別個のものであるということを累次御説明さしていただいておるわけでございますし、ただいまの私の答弁もそういう趣旨を委員に御説明申し上げておる、そういうつもりでございます。
  34. 岡田春夫

    岡田(春)委員 依然としてわからない。あなた、それじゃ核攻撃の通信基地があることは、日本の国内に核さえなければ構わないんだ、こういうことですか。
  35. 栗山尚一

    栗山政府委員 政府が従来から申し上げておりますことは二つございまして、一つは、我が国は非核三原則を堅持しているのであって、したがって、我が国の中に核兵器を持ち込むことはこれは政府は認めない。したがって、事前協議があればノーを言う、こういうことが第一点でございます。  第二点は、通信基地との関連で申し上げれば、それは米軍日本にあります通信基地というものはいろいろな機能を果たすであろう。その中には、日本の領域外にあるアメリカの核戦力、そういうものとの通信連絡を行う機能を有しておるかもわからない。しかし、そのことは核兵器持ち込みということとは全く別個の問題であるということを従来から申し上げておるわけでございます。したがいまして、後者の通信施設につきましては、これは事前協議の対象にはならない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  36. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私、さっきから繰り返して言っているのですよ。佐藤総理は、「核に関する事柄、これはもう一切私どもは持ち込まない。」そう言っている。持ち込まないというのは、撤去する、あともう一度持ち込まないということを含めて言っているんですよ。持ち込まないというなら、核攻撃指令の基地がある、C3Iというものがあるということについて、当然持ち込み藤山マッカーサーの口頭了解、その持ち込みということと基地の建設という、これに該当するのは当たり前じゃありませんか。どうしてあなたは入らないと言うのですか。日本に核さえなければ核の攻撃の基地があってもいいのだ、指令基地があってもいいのだ、こういう意味ですか。それならそれだとはっきり答えてください。
  37. 栗山尚一

    栗山政府委員 繰り返しになりますが、二つのことを申し上げておるわけでございます。  一つは、事前協議の対象になるものは、先ほども申し上げましたが、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」でございます。それらの基地というのは、まさに核兵器、核弾頭、中長距離ミサイルを発射する基地ということを従来から政府は何度も申し上げておるわけでございます。したがって、それはあくまでも核兵器我が国の中に持ち込まれる、それを前提として、それに関連する施設ということで、そういうものが事前協議の対象になるということを従来から政府は何度も申し上げておるわけでございます。  それから、第二点のアメリカ通信基地につきましては、そういう通信機能、高度の通信機能というものを米軍我が国の中において維持しているということは、他方において我が国は、日本の中に核兵器は持ち込ませないけれどもアメリカの核抑止力に我が国の究極的な安全を依存している以上、そういうアメリカの核の抑止力というものに関係がある、そういう日本の領域外にある米軍とのいろんな連絡通信機能を日本の国内にある米軍の施設が持つ、これは安保条約上いわば当然のことであり、そのこと自体は問題にならないということを累次申し上げておるわけでございます。
  38. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の答弁じゃ納得しません。大臣、どうです、この問題。あなた、今の話を聞いていると、事前協議の対象には核攻撃の指令基地はならない、したがって日本に持ち込んでいいんだ、そういう答弁ですか、それでよろしいのですか、大臣
  39. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから北米局長答弁をした趣旨が、日本政府の公式的な見解であります。  非核三原則の堅持及び安保条約により、核を含む米国の抑止力によりまして我が国の安全保障を依存しておるということが我が国の基本政策でありまして、政府としては、我が国にあるところの米軍の個々の通信施設の機能につきまして、今現実に、詳細に我々が承知しているわけではありませんが、しかし、こうした通信施設の一部が、国外に存在しているところの米国の核戦力部隊との間の各種の通信機能を有していても、御質問の趣旨はそういうことだと思いますが、それは何ら問題ではない、事前協議の対象とはならないということであって、事前協議そのものは核兵器自体、先ほどから局長答弁しましたような中長距離ミサイルの発射基地の建設を含むわけでありますが、この核兵器自体を対象とするものでありまして、通信施設はこの対象となっていない。また、政府として、こうした通信施設を新たに対象とするように事前協議制度を改めるというふうなことももちろん考えていない、こういうふうに考えております。
  40. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは極めて重大な問題ですから、はっきりさしておきましょう。  核攻撃の指令の通信基地、これは事前協議の対象にならない、したがって、日本の国は核攻撃の通信基地を置いてもいいんだ、これが政府見解である、この点は佐藤総理がかつて答えたのと全く反するのだが、それだということを確認していいですね。この点はっきりしましょう、大臣
  41. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから北米局長が申し上げましたように、当時の沖縄の返還の際においては、いわゆる核抜き返還というのが佐藤内閣の基本方針で、それに基づいて実は沖縄が返還をされたわけであります。その際の総理大臣の、あるいは外務大臣答弁が、今おっしゃいました議事録であろうと思いますが、これはやはり、当時は沖縄には核があるのじゃないか、あるいは核基地に関連するいろいろな施設があるのじゃないかという疑惑があった。そうした国民の疑惑を一掃して、はっきり核抜き返還ということをきちっとしなければならない、こういうことが政府の基本的な考えで、そういう基本的な立場を強調するという考えで、今の総理大臣あるいはまた外務大臣発言に連なっていったものである、私はそういうふうに見ておるわけでございます。  したがって、現在の段階においては、日本において核基地あるいは核自体は、核の関連施設というものはあり得ないわけでございまして、事前協議の対象となる施設というものはないわけでございますから、したがって、この通信施設がいろいろの役割を果たすと思います。しかし通信施設は、確かにおっしゃるように、あるいはアメリカの核部隊、日本の領域外の核部隊との間の通信連絡をする機能を有しているかもしれませんが、それだけでもってこの通信施設が事前協議の対象となるものではないというのが今の我々の見解であります。  沖縄には当時、核があるかもしれない、こういう疑惑があった。そういう際の総理大臣答弁でありますが、現在において日本には核はないわけでありますから、ただ通信施設というものがあって、それがアメリカの核部隊と連絡をする、通信をするということ自体でもって、これを事前協議の対象とするということは日本政府としては考えていないし、またこれは事前協議の対象ではない、こういうふうに私は考えております。
  42. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは非常に重要ですよ。後々、これは問題になって残りますよ。もう少し検討をされる必要があると思うのだが、核攻撃の指令の通信基地というものが、例えば日本に核の持ち込みがなくとも、通信の指令基地が日本に置かれるということは事前協議の対象にならない、したがって置いてもいいんだ、そうしたらどうですか。この前、予算委員会で私が取り上げたように、ワインバーガーが昨年のアメリカ国会で言っているじゃないか。核戦争になった場合に一番先の目標になるのは、ソ連としては核の通信の基地を目標にするんだ、はっきりワインバーガーが言っているじゃないですか。それでもいいんですね。  事前協議の対象にならないんだから日本に置いてもいいんだ。その場合、核戦争になった場合、ソ連はワインバーガーの言葉をもってすれば、それが第一の目標になるんだと言っているんだから、そういうことは、あえて日本の国はそうなっても仕方がないんだというのが安倍外務大臣見解である、こういうふうに理解してもいいんですね。
  43. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本的に安保条約というのが、結局我が国の安全を図るための、いわゆる米国の抑止力というものに依存をして、その前提の上に立って安保条約存在しておるわけであります。したがって、米軍がこうした抑止力の効果的な維持のために、例えば今おっしゃいますような国外の核戦力部隊との通信機能も含めて、高度の知識あるいはまた統制、通信能力の保持に必要な施設を我が国に置くということについては当然あり得てもいいことであって、我が国アメリカとの間の事前協議の対象になり得るものではないということを申し上げておるわけであります。
  44. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題は、国民にとっては重大問題ですよ。核攻撃の通信基地があるために日本が対象になる、攻撃される、そういうことを国民が聞いた場合に、安倍外務大臣の今の答弁で国民が納得するかどうか。外務大臣日本の国のためにやるのなら、そこは冷静にお考えいただく必要があると思う。どうですか、この問題についてはもう少し検討してみるというような御意見でもあるのならば私はこれ以上やりませんけれども、あなた、こういう問題については事前協議の対象でないから入ってもいいんだ、そうおっしゃるのならはっきりしてください。我々としては、これはこのままで了解するわけには絶対いかないのだから。
  45. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題については、残念ながら岡田さんと私の認識が基本的に違うわけであります。安保条約及びこれに基づく我が国における米軍存在というのは、そもそも我が国が巻き込まれ得るような紛争の発生そのものの抑止というものを目的としておるものでありまして、政府としましては、米軍米軍通信施設等の存在ゆえに、核戦争であると否とを問わず我が国が戦争に巻き込まれるという認識は持ってないわけでございます。したがって、私が申し上げましたとおりの認識が我が政府としての公式な考え方であります。
  46. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この問題については、私はもう絶対に了解しません。あなたと見解が違うという程度で済ます問題ではない。日本の一億の国民の命にかかわる問題ですから、これは了解しません。この点を留保しておいて、今後も重ねてやってまいります。  しかし、少なくともきょう明らかになったのは、核攻撃の通信基地というものは事前協議の対象にならない、したがって日本に持ち込んでもいいんだということだけはあなたが公式に御答弁になったのですから、それは間違いないですね、いいですね。これは確認しておきましょう。間違いないのなら、間違いないとお話しください。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今どういう通信施設が我が国にあるのか、その実態というのは私はよく承知しておりませんが、しかし、今通信施設が日本の領域外にあるアメリカの核戦力部隊との間で機能する、通信を行うということがあったとしても、その通信施設そのものは日本アメリカとの間の事前協議の対象にはなり得ないというのが我が政府考え方であります。
  48. 岡田春夫

    岡田(春)委員 こればかりやっておると進みませんから進めますが、これは重大問題ですよ。再度、重大ということを申し上げて次に入ります。しかし、この問題は留保いたしておきます。  先ほど北米局長答弁等を聞いておりますと、昭和四十七年から八年にかけていわゆる事前協議の問題の洗い直しを行う、しかしこの洗い直しは、基本的枠組みと言われている藤山・マッカー・サーの三項目の運用についていろいろ話し合ったということは、大平外務大臣がさっき私が読んだように答弁している。そこで、運用の問題を鋭意アメリカ側協議をしてきた、大平外務大臣がそう答えているのですが、それならば運用の根本問題である日本アメリカとの発議権の問題はそのときにどういうように討議をされたのか。例えば安倍外務大臣は、我が国事前協議することを義務づけております、こういうように言っていますね、事前協議について。この義務づけているということは、運用の洗い直しの場合に、当然発議権の問題としてこれが協議をされていなければならないと思うのだが、そういう点について協議をされているのかどうか。
  49. 栗山尚一

    栗山政府委員 突然な御質問でございますので、当時のアメリカ側との話し合いの詳細な記録は私、持ち合わせておりませんので、その点について直截にお答えすることはちょっとできませんけれども、しかしながら、当時のいわゆる洗い直し問題についてのアメリカ側との話し合いの中核は、さっき申し上げましたような戦闘作戦行動との関連の問題でございました。  それから、事前協議の発議権の問題につきましては、これはもう政府が安保国会以来累次御答弁申し上げておることでございまして、アメリカ側義務であるということは、何もアメリカと話し合うまでもなく、交換公文の規定ぶりからいって明確であるということは、もう何遍となく従来から政府が申し上げていることでございますので、この問題について、当時の事前協議運用の枠組みとの関連でのアメリカ側との話し合いで特に話題になった、あるいはなるべき性質のものであったというふうには、私は認識しておりません。
  50. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは伺いますが、日本の発議権というものは法的にあるのですか、ないのですか。
  51. 小和田恒

    ○小和田政府委員 この問題につきましては、従来から政府が何度かお答えしているわけでございますけれども安保条約の第六条の実施に関する交換公文というものは、先ほど北米局長から御答弁をいたしましたように、基本的にはアメリカが特定の行動をとるに当たって、日本に対して相談をしてこなければならない性格のものであるということを定めたものでございます。したがいまして、そういう義務を履行する立場にある米国側がそれを言い出してくるという性格のものである、別な言い方をいたしますならばアメリカ側がそれを言い出してくるものであって、日本側から言い出す性格のものではないということでございます。
  52. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたが今巧みにおっしゃったとおり、筋合いのものではない、こういう意見ですね。これは運用論です。そういう義務があるから、アメリカからそういうものは発議するのであって、日本はそういうことは発議する筋合いのものではない。しかし、その筋合いというのは、これは運用論の問題でしょう。法律的に日本に発議権があるのかないのかということをはっきり聞いているのです。あるのですか、ないのですか。
  53. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま岡田委員は、私が御説明申し上げましたところを運用論であるというふうにおっしゃいましたけれども、私は運用論として申し上げたわけではございません。第六条の実施に関する交換公文の仕組みから出てくる当然の解釈として、それはアメリカ側にそういうことを言ってくる義務があるということを申し上げたわけでございます。これは法律的な問題、交換公文の解釈の問題として申し上げているわけで、運用論として申し上げているわけではございません。  それから、一言補足させていただきたいと思いますが、岡田委員は、日本側に発議権があるのかという御質問でございますけれども、そもそも事前協議の制度の本質は権利の問題ではなくて、事前協議をしてこなければならないという義務の問題でございます。したがって、第六条の実施に関する交換公文上の事前協議の制度の問題として日本側から提起するということは、この第六条実施の交換公文からは出てこないということを申し上げているわけでございます。
  54. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、はっきりさしておきましょう。この交換公文からは、日本から提起をするという発議権は法律的にないのだということですね。これははっきりさしておきましょう。  しかも、あなたの答弁をいろいろ調べてみると、去年の八月一日の外務委員会においても大体同様趣旨のことを言っているが、最後は逃げている部分がある。例えば、これは土井さんの質問に答えているのですが、「明確にその義務違反があったというようなケースにつきましては、日本側としては当然この義務違反あるいは義務の不履行ということを問題にできると思います。」こういう権利があるじゃないか、日本に。あなた、ここまで言っているじゃないですか。六条の義務違反に対して、日本から発議することはできるじゃないですか。できないのですか、これも。
  55. 小和田恒

    ○小和田政府委員 今、岡田委員から御指摘のありました私の答弁は、そのとおりでございます。  私が申し上げておりますのは、安保条約第六条の実施に関する交換公文のもとで規定されております事前協議という制度は、そこに列記されておりますような三つの事柄については、アメリカ側からそれを日本側事前に相談をしてくる義務があるということを申し上げているわけでございます。したがいまして、そこに列記されているような事項について、日本側からそれを提起するということが本来制度上想定されているようなものではないという条約の規定の解釈として、条約上の仕組みがどうなっているかということを申し上げているわけでございます。  他方、先ほど岡田委員が御指摘になった私の答弁の趣旨はこういうことでございます。つまり、第六条の実施に関する交換公文に従ってアメリカは一定の義務を負っているわけでございますが、仮に全く理論上の問題としてそういう義務アメリカが違反した場合にはどういうことになるかということでありますならば、それは条約義務違反という問題が生ずるであろうということを申し上げたわけでございまして、それは、日本が第六条の実施に関する交換公文の規定に従って事前協議日本側から提起するという問題とは、一応法律的には別な問題として区別して私は御答弁を申し上げたわけでございます。  ただ、そのときにもつけ加えたと私は記憶しておりますが、これは純粋に法律論ではございませんけれども、本来、日米安保条約の建前、日米安保条約というものがよって立っておる基礎というものは、日米が基本的な信頼関係に立って日本の防衛、日本の安全保障のために協力をする、こういうことが条約の基本になっております基礎でございますから、そういう考え方から申しまして、そういう信頼関係というものから申しまして、かりそめにもアメリカ条約に違反するというような事態を想定して政府が行動することは、適当ではないと考えるということも申し上げたわけでございます。
  56. 岡田春夫

    岡田(春)委員 全然話になりません。信頼関係云々などという運用問題を出してきたり政策問題を出してきたり、それじゃ問題になりません。  安倍外務大臣に伺いましょう。今言ったように日本に発議権はないというのは、法律的に発議権がないという国際法上そのような日本政府見解なのですか。この点はっきりしましょう。
  57. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この点は、今政府委員から答弁いたしましたように、事前協議制度の枠組みからいって日本が発議権というものは持っておらない、条約解釈日本には発議権はない。米軍の行動に一定の規制を加えるということを目的として設けられたのが事前協議でございますから、事前協議というものは、米国がこれらの行動をとろうとする場合には、事前我が国に対して協議を行わなければならないことを義務づけておるわけでございます。ですから、米国から提起をするということが建前でありますし、我が方から米国に対して事前協議を行うという筋合いの問題でないということを答弁もしておりますし、これが事前協議制度の条約の枠組みとしての解釈である、こういうことであります。
  58. 岡田春夫

    岡田(春)委員 一言で言うと法的には発議権がない、こういうことですか。今まで歴代の外務大臣は、法的に発議権がないということは一度も言っていないのですよ。それでいいのですね。それには意味がある。——いや、外務大臣外務大臣、お答えください。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 発議権というよりは、今の条約の仕組みから、米側事前協議をかけてこなければならない義務があるというのが条約そのものの解釈である、こういうふうに認識しています。
  60. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから、法的に発議権がないのかと言っている。法的にあるのですか、ないのですか。歴代の外務大臣は、発議権がないとは言っていないですよ。今まで一度もないですよ。それならそれではっきりしてください。
  61. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 発議権というものが、そもそもそういう今の事前協議制度の中で想定されておるということではない、こういうふうに思っております。制度上は全く想定されていないこうした要請を行うことが、我が国条約上の権利として位置づけられていることではないというのがこれまでの日本政府の考えでありますし、また私の考えでもあります。
  62. 岡田春夫

    岡田(春)委員 どうもあなたの答弁、すっきりしないね。なかなかすっきりしないが、それじゃ去年の八月三日、安全保障特別委員会で上田哲君の質問に答えて、「○安倍国務大臣 その辺が私と違うところでして、要するに確かに六条の発議権はない、」はっきり言っているじゃないですか。あなた、言っているよ。私、遠慮して言わなかったのだ。言っているじゃないですか。これは間違いないのですか。発議権はないということと今の答弁とちょっと違いますよ。発議権があるのですか、ないのですか。法的に言っているのですよ。——大臣に。大臣質問しているのです。条約局長が今出る場ではない。またしゃべらせるから、あなたに幾らでも。大臣、どうですか。
  63. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 条約解釈上発議権というものは考えられない、こういう趣旨のことを言っておるわけです。
  64. 岡田春夫

    岡田(春)委員 法的にはどうなのですか。
  65. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 条約解釈上というのが、いわゆる法的であるということであります。
  66. 岡田春夫

    岡田(春)委員 安倍外務大臣になって、初めてこれを言っているのです。今まで、例を幾つ挙げてもいいのです。ついこの間、愛知外務大臣の当時にもはっきり言っている。その前は大平外務大臣その他、全部言っている。これは理由があるからなのです。なぜ法的に発議権があるということを言っているかというと、理由がある。時間がないから、私進めますけれども、それじゃいつ言っているか。日本には法的に見て発議権があるということは、日米安保条約締結されたとき、あなたのお父さんだ、岸総理がみずからはっきり言って書いている。こういう事実があるから言えないのです、歴代の外務大臣は。  それじゃ、具体的に言いましょう。これを大臣、出してみてください。いいですか。これの安全保障協議委員会の設置に関する往復書簡、これをごらんなさい。この文章の、時間がないから要点だけ読むが、ちょっと長くなるから御了解いただきたいけれども、「両政府は、同条約第四条の規定に基づいて、条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の政府の要請により協議することになっています。」その次、「条約第六条の規定に基づく交換公文は、日本政府との事前協議の主題として一定の事項を掲げています。」いいですか。「このような協議は、両政府が適当な諸経路を通じて行なうことになります。しかしながら、同時に、本大臣は、」岸総理は、ですよ。「両政府間のこれらの協議のために時宜により使用することができる特別の委員会を設置することが非常に有益であろうと思います。」その次、「この委員会は、いずれか一方の要請があるときはいつでも会合するものとし、」云々になっている。これですよ。  いいですか。「このような協議」とか「これらの協議」、これは英文で対照してみると、「コンサルテーションズ」という複数になっている。複数になっているというのは、先ほど読んだ四条に基づく随時協議、それから日本とアジアにおける、極東における平和のための協議並びに六条の協議、この三つを意味している、「コンサルテーションズ」というのは。しかも、この「コンサルテーションズ」に対していずれか一方が要請するとき、「リクエステッドバイアイザーサイド」こうなっている。日本アメリカのいずれか一方がこれを要請するときに、「両国政府間のこれらの協議のために」、六条の協議も含むこれにおいて、特別の委員会を設置することができるということを言っている。「いずれか一方」というのは発議権があるということだ。違いますか、これは。大臣、あなたのお父さんがここまではっきり言っているのだ。どうです。局長、答えますか。
  67. 栗山尚一

    栗山政府委員 御指摘安保協議委員会の設置に関する往復書簡、内容は今委員がお読み上げになったとおりでございます。そこから出てきますことは、要するに安保協議委員会というものは、もちろん四条の随時協議、それから六条の問題も議論ができる。委員会の会合については、日本側アメリカ側、どっちが要請しても協議委員会を開くことができる、こういう趣旨でございます。  それで、先ほどまさに岡田委員が御指摘になりました、例の事前協議運用について、いわゆる洗い直しの話し合いというものも、究極的にこの安保協議委員会で行われたということでございます。したがいまして、岡田委員のおっしゃられたとおりに、この安保協議委員会の付託事項としましては、四条の随時協議と同時に六条の問題も、それは当然協議委員会の議題にすることができる、こういうことでございます。  しかし、事前協議の発議権すなわちどっちから事前協議を持ち出すことが法律上できるかという問題と、安保協議委員会事前協議の問題を議題にすることができる、その安保協議委員会というものはどっちが要求しても開くことができる問題とは、私はこれは全く別個の問題であろうと思います。  事前協議の発議権につきましては、先ほど来外務大臣条約局長より御答弁申し上げたことでありまして、この往復書簡から事前協議の発議権が日本側にもあるということは、全く出てこないところだろうと思います。
  68. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは、一体あなた何を言っているの。安保協議委員会の中で六条をやれるのでしょう。六条をやれるのに、日本からも発議できるのでしょう。そうしたら違うの。発議できないの、六条で。六条の協議はできないのですか、外務大臣大臣の方がいいよ、今のようなああいう答弁じゃ。レトリックだけ使ってごまかしてしまう外務省官僚なんというのは。そういうやり方をしてはいかぬです。外務大臣
  69. 愛野興一郎

    愛野委員長 まず局長答弁してから……。
  70. 栗山尚一

    栗山政府委員 私が申し上げていることは極めてはっきりしていると思います。  安保協議委員会の議題といたしまして、事前協議の問題を話すことができる、これは往復書簡に書いてあるとおりでございます。事前協議を発議するということと事前協議の問題を話題にすることができるということとは、私はおのずと別個の問題であろうと思います。事前協議を提起する義務アメリカ側にあって、その義務に基づいて事前協議日本政府との間に行うということについて、安保協議委員会は何ら触れていないわけでございまして、安保協議委員会というものは日米どっちが要求しても開くことができる、その場合に四条の随時協議の問題ばかりでなくて、事前協議一般の問題を話題にすることができる、これはこの書簡に書いてあるとおり当たり前のことでございまして、まさに先ほど申し上げました洗い直しの問題なんかも、この往復書簡の趣旨に基づいて安保協議委員会の場で行われたということでございます。
  71. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ一般の人が聞いていてわかりますか。六条の協議についてやるのだという、日本から発議できるのだと言っているじゃないの。四条の問題も同じようになりますよ、それじゃ。四条だけ違うというの。今までやっているからね、二十回近くもね。六条の問題で協議すると言っているのじゃないの。この協議の中へ全部入っているじゃないの。入っているのにあなた、これだけは違うのですなんて言えますか。外務大臣、これは中でやはり責任ある答弁をしてもらわないと、今のような答弁では話にならないよ。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府委員が、北米局長が言っていることも、ちゃんと筋が通っているのじゃないかと思うのです。安保協議委員会は、六条だけでなくて四条協議等ももちろんやるわけですから、いわゆる「コンサルテーションズ」になっているわけでしょうが、その中で事前協議についてはもちろん協議ができるわけでありますが、それはやはり六条によるところの事前協議米国の申し出によって協議を行うということでありますし、そもそも事前協議というのは、米軍の一定の行動というものに規制を加えるための制度として存在するわけでありますから、日本が申し入れるという立場ではありませんし、アメリカが申し入れるのがこれは筋合いであるし、それがまた条約上のきちっとした解釈として私は十分正当に成り立つものである、こういうふうに思っております。
  73. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ安倍外務大臣、全然わからぬよ。あなた、もっと一般的にわかりやすい話をしましょうや。  例えばこういう例で私はお話ししよう。ある家の部屋を借りる。その場合、家主さんとそれを借りる借り主、たな子との関係が出てくる。その場合に、家主さんがこの部屋を貸しますよ。しかしそのときに、六条の交換公文に該当することは、貸すが、この部屋を貸すときに動物を飼ってはいけませんよ、動物を飼うときには先に連絡してください、こういう条件で部屋を貸した。たな子はそれを守る。あなたが言うように、猫を飼いたいというときには事前協議するのだ。いいですか。事前協議をして猫を飼ってもいいですかと言って相談をすれば、家主はこれは反対するというのはわかっている。それで、その場合に家主の方で、そういう相談がないけれども、近ごろどうも猫の声があの部屋から聞こえる、そのときに、猫の声が聞こえるのに猫を飼っているのじゃないかと言って聞く発議権はないの、家主に。これは国民の常識よ。家主は、たな子から猫を飼ってもいいですかと言って相談に来るまで、あくまで黙っていなければならないの。常識としてそんなことありますか、あなた。  あなたは、安倍個人としては今の話よくわかるはずなんです。しかし、外務省という官僚機構の中で、今まで局長クラスがいろいろ答えているものだから言いにくい。たな子の立場でなくて、あなた、家主になった立場わかるでしょう。あなたも、家でも持っているのじゃないですか。家を持っている場合のたな子の気持ちとの関係、どうですか。あなたはそれに対して、猫を飼っているのじゃないのと言って家主は聞く権利はないと言うの。ないというならないとおっしゃいよ。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはちょっと例え話が悪いのじゃないかと思いますね、家主とたな子という。アメリカ日本の場合は、家主とたな子という立場じゃないと私は思うのですね。やはり平等な国家としての主権に基づいて、そういうもとで結ばれた安保条約でありますから、そしてその安保条約というものは、基本的にはやはり日米間の強固な信頼関係の上に立った条約、それに基づく事前協議でありますし、そして事前協議においてはアメリカの行為というもの、米軍の一定の行為というものを制限する、そのために行われる協議でありますから、その米軍日米安保条約に基づく信頼性のもとで申し入れるというのが米軍の筋でありまして、信頼関係という上から日本が申し入れる筋合いではない、これがやはり条約の平等性あるいはまた条約信頼性、それに基づく条約上の正当な解釈ではないか、私はそういうように思います。
  75. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、信頼関係というのは家主とたな子にもあるのですよ。だから貸すのですよ。私は、なぜこういう例を使ったかというと、日本に基地がある、第六条で基地を提供した場合に、交換公文という条件をつけるのだ。ですから、日本アメリカとは対等なんですよ。しかし、今のたな子と家主との関係も対等なんですよ。あなたが、たな子が権利が上で家主はないのだと言うなら発議する権利もない、家主は。権利はあるの。そんなばかな話はないでしょう。対等なんですよ。対等の場合の条件なんですよ。だから、日本の方で発議する権利があるのです。発議する権利があるのに、今までの経過の中で権利がないと言っている。今のその猫を飼う話をしてもはっきりしています。あなた、どうですか。そこら辺について、あなた自身の御意見について、もう一度今の例を引いてお考えいただいたらどうですか。もう一度御答弁いただきたい。
  76. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは日本が基地を貸す、かわりにアメリカ日本を守る、こういう立場安保条約の基本的な趣旨なんですね。そういう中で事前協議制度というのがあって、これは米軍の行為について一定の制限を加えるというための協議ですから、アメリカ側はこれを義務としてどうしても出さなければならない。これは責任があるわけでありますから、それでもってこの事前協議制度というものは信頼関係に基づいてすらっと運営されていく。事前協議を運営する上においてアメリカがそういう義務を持つ、発動するときには事前協議を申し入れなければならないという義務アメリカ側存在するだけで、事前協議というものは非常に効果的にそして円滑に運用される、それだけで十分じゃないだろうか、私はこういうふうに思っております。それが条約の、あるいはまた事前協議制度の一つの解釈の筋じゃないだろうか、私はそういうふうに思っておるわけでございます。事前協議制度は、日本が権利云々を言わなければ円滑に運用されないというなら別ですけれども、一方の当事国のアメリカ義務というものがある以上は、この辺はちっとも差し支えないんじゃないか、こういうふうに思っております。
  77. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ到底説得できませんね。これは国内法であろうと国際法であろうと、少なくとも二つの対等な関係の契約の中で条件をつけた場合、相手側が発議する権利がないなんという例はないですよ。そんな例ありますか。法律的にそういうようになっているんだなんて、そんなことは話になりません。もし、そのことをあなたがあくまでも主張されるなら、あなたみずから主権放棄をしているんです。日本の主権放棄です。当たり前じゃないの。常識的に見て、二つの契約の関係の中で条件をつけた、その条件に対して異議の申し立てを片一方が出すことができないだなんというのは、これはあなた常識に反しますよ。そんなことでは問題になりません。もし、みずからないとおっしゃるなら、あなたは主権放棄をみずから認めたんだ。そういう点では私は絶対了解しません。こういう点は今後議論を続けましょう。  さっきから言った家主とたな子の関係を考えたら、だれでもわかる問題です。国内法であろうと国際法であろうと、権利義務の問題です。義務だけ規定していると言っても、権利がないということにはならないです。権利がないなんと言ったら、それこそ日本に権利がないなら主権放棄じゃないですか。明らかじゃないですか。だから私は、もうこれ以上余り時間を使って進めませんので、またこれは留保しておきますが、外務大臣、少し静かに考えてみてください。そういう点は法律的に権利義務の問題として、あなただって東大を出て法律が専門なのに、そんなことで世の中通ると思いますか。国際関係だから、日米関係だから別だなんというなら、この条約は不平等な条約であるということを意味するんですよ。ともかく、私はこれで留保してあれしますが、安倍外務大臣、少し冷静にお考えください。  だから、昭和三十五年に安保条約締結したときに、岸総理が文書においてこれを明言している。こういう経過があるから、歴代の外務大臣は法律的に発議権はないとは言っていないんです。言えないのです。だから、あなたが後ろの方のちょろちょろしている人たちに言われて、発議権は法律的にありませんなんて言っていると、とんでもない間違いを起こす。三十五年のころには、今の後ろにいる人たちは外務省におったかどうかわからないのです。あなたはそれこそ生き証人でしょう。そのときに戻って、あのときはどうだったか、そういうことを十分お考えいただきたいと思う。場合によっては、この前も言ったのだが、御殿場へ行ってお父さんに相談して話を聞いてみたらよくわかりますから、それだけを申し上げて、私は終わります。
  78. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、土井たか子君。
  79. 土井たか子

    土井委員 大臣、五分ばかり後ろの方で時間をとっていただいて結構です。その間、質問を始めることを待ちます。
  80. 愛野興一郎

    愛野委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  81. 愛野興一郎

    愛野委員長 速記を起こして。  土井たか子君。
  82. 土井たか子

    土井委員 前回の外務委員会後、外務大臣は、パリでのOECD閣僚理事会の御出席、そして引き続いてアメリカのワシントンでのシュルツ国務長官、ブッシュ副大統領との会談などで、大変御苦労なすってきたわけであります。  けさの新聞を見ますと、サミット経済宣言の素案の中には、日本を名指しにして批判をすることを避けるということがニュースとして報道されております。これは考えてみると、安倍外務大臣の功績であったということも言えると私は思うのです。しかし、外務大臣、これは考えてまいりますと、どうも日米間の貿易摩擦問題、特に戦後の外交というのは、日米外交に尽きると日本立場からいったら言えるこの関係の中で、摩擦が起きますと、先進国、ヨーロッパから日本を応援する国はただの一国もなくて、みんな日本に対して悪い、悪い、悪い、悪いと迫ってこられるような情勢であります。これは一体、どこに原因があると大臣はお考えですか。味方がただの一人もないのですよ。日本を応援してくれる国は一国もないのですよ。先進国、開発途上国を問わず、地域からいったらアジア、ヨーロッパを問わず、どこに行っても、日本に対して応援しましょう、日本、頑張ってください、私は日本立場もわかりますと言う国は一国もないのですよ。大臣はどういうふうにお考えですか。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もOECDの閣僚理事会で、これで通産大臣のときを含めまして四回出たわけですが、一回目と二回目は各国が不況、失業、インフレということで、各国とも大変な状況でありますから、お互いに傷をなめ合うといいますか同情し合う、そして世界経済、特に先進国経済を何とかよくしていかなければならない、そういう暗い空気の中でも一種の連帯感的なものがあったように思います。  しかし、その後、日本が急激によくなっていく、そしてアメリカ経済も徐々に復活する、あるいはまた、EC諸国もインフレだけは何とか抑えるという状況になって、去年の段階ではむしろ日本各国から称賛をされた。その中で立ち上がって一番安定したのが日本だ、そういう意味での日本経済のパフォーマンスあるいは経済政策というのは非常にすばらしいものがあった、あるいはまた先端技術等の日本努力というのは目覚ましいものがあった、むしろ去年は相当の国から日本礼賛という声を聞いたわけであります。  ことしは、一面においては依然として日本に対するそういう称賛の声もありましたけれども、反面、また日本経済がよくて、その結果むしろ黒字が非常に増大したということについて、相当の国からその黒字問題をとらえての日本批判というものがあったわけでございまして、この点はやはり全体として相当空気が変わったなというふうな印象を率直に受けましたし、また、閣僚理事会でコミュニケを採択するに当たっては、日本の黒字が国際貿易の緊張をもたらす、こういう字句を各国が挿入しよう、日本だけをひとつ取り上げて、日本に対する反省を促す、あるいはまた日本に対して改善を求める、日本を取り上げてのそういう議論が随分なされました。  これに対して我々は、これは承服できない、黒字の原因は日本だけでなくて、アメリカの高金利だとかドル高だとかにおるし、あるいはまた、ヨーロッパで依然として続いている不況あるいは失業というところにも問題があるのではないかということを力説いたしましたところ、そうした日本だけを言挙げをするというような空気が一応変わりまして、日本にも問題がある、しかし同時にアメリカにも問題がある、またECにも問題があるということで、三者並列してコミュニケでそれぞれの国の努力を求めるという形に案文がなったわけでございます。  そうした空気を私は見まして、確かにおっしゃるように、ヨーロッパ諸国においても、これまでと違って日本に対する批判が相当強くなったなという感じを身をもって強く感じたわけでありますし、また日米関係は御承知のとおりで、日米政府間においては一応の筋道はついたと思いますけれどもアメリカ議会は、あるいはまた一部の世論は、日本に対してこれまでとは相当違った形での批判というものが集まりつつある、こういう情勢日本としてなかなかなおざりにはできない事態ではないかということで、私自身も非常な緊張感を持って日本に帰ったわけでございます。  どういうところに原因があったか、これはいろいろあると思いますが、いずれの国もそれぞれの問題を抱えております。日本も、財政赤字というような大きな問題があるわけですが、しかし、日本だけが経済が非常にいいということ、そして膨大な黒字が、何といいましても世界の、特に先進国の神経を逆なでしている。私は極端に言えば、黒字問題というのが結局世界のそうした世論といいますか、国々の大きな反発を買ったゆえんではないか、そして、その黒字のゆえんは、確かにその他にも要因があるけれども日本の市場アクセスに大きな問題がある、日本はどんどん金ばかりもうけて、日本自身の市場の開放というものをやらない、自由貿易を高々と叫びながら、市場は依然として閉鎖性が多いというような印象が各国の間にいつの間にか植えつけられて、それが一つの反発となり感情となって日本に対する批判につながっていったのじゃないか、こういうふうに思います。  したがって、我々はそうした議論をそのまま受けとめるわけにはいきません。日本日本立場があるし、黒字は黒字についての原因があるし、また市場アクセスの問題についても日本努力しておりますし、関税等についても、EC諸国などと比べると日本の方がいい体制にあるわけですし、農産物についても、それはアメリカ日本に対していろいろと注文をつけておりますが、ECの農産物に対する保護政策というものは日本以上のものがあるわけですから、そういう点では大いに議論しなければなりませんが、そういう日本の正当な立場というものが諸外国になかなか理解をされてない。これは日本政府としましても、これから大いに考えて、こうした世界に対する日本の正当な立場というものを理解をさせるように努力していかなければならぬということも、また痛感をしたような次第であります。  いずれにしても、原因の最たるものは日本大幅黒字、そして日本の市場アクセスというところに焦点が置かれたということが、はっきり言えるのじゃないかと思います。
  84. 土井たか子

    土井委員 今日本のその黒字を、何回か外務大臣はその理由も挙げながら御説明になったわけですが、そこまで経済日本は膨れ上がりまして、世界で最大の黒字を抱えている国であるというのは、みずからもってはっきり知っている現実の問題なのですね。ところが、アメリカからどやされていろいろ言われるまでは腰を上げない、アメリカから注文を受けて、さてどうするかという姿勢しかない、これが世界各国の目に映っている日本の姿ではないかと私は思うのです。三カ月ぐらい前にせめて日本側から声を上げてアメリカに、我が国としたらこう考えるが、あなたはどう思うかということを言ったら事態はもっと違っていたよ、こう言う人たちが識者の中にありますよ。外務大臣、どうお思いになりますか。
  85. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の黒字問題は、かねがねいろいろと問題になるということは政府としても認識もしておりましたし、そのための市場開放とかあるいはまた輸入促進等いろいろとやってきたわけです。  私はOECDでも言ったのですが、日本は自由貿易体制をとっておるので、そういう中で例えばアメリカが非常に経済が成長すれば、自然に日本の商品が競争力を持てば出ていくことは当然な話であって、国が黒字問題というのを統制できない。それはソ連のような国なら、黒字、赤字という問題をみずからの国の意思でもって統制できるかもしれぬ。自由貿易体制ではそういうことはできない。ですから、問題は黒字が大きいとか小さいとかということよりも、貿易が公正に行われているかどうかということの方が問題じゃないか、黒字を日本だけの政府責任にしてあげつらうというのは、自由貿易体制という立場から見て、少し筋が違うのじゃないだろうかということを言ったわけです。  日本の場合も今大きな黒字がありますけれども、しかしその黒字は、いつ世界経済の変化によってまた縮小するとか、あるいは赤字に転ずるかわからない。これは日本経済の歴史を見れば明らかでありますし、日本は原料を各国に依存しておりますし、油の値段が倍にでもなれば今の黒字は一遍に帳消しになるわけでありますし、また、ドルがどんと下がってくれば黒字は大きく減少するわけでありますから、ただ、これ、日本責任というだけで問題をあげつらわれることについては、どうも我々としては納得ができない。しかし、今日、黒字があることは事実でございますから、それに応じた、やはり日本として市場アクセスの改善と同時に、輸入の拡大であるとかあるいは内需の振興であるとかそういう改善措置というものは、国の経済政策としてとっていかなければならないということは、これはもう日本の国際的責任であろう、こういうふうに思うわけであります。
  86. 土井たか子

    土井委員 今のお答えでは、外務大臣はお答えになっていらっしゃられないですね。  対日貿易ということからすると、相手各国は赤字を持っているのです。日本の側は黒字を持っているのです。どんどんその額はふえていっているのです。額が問題でないとおっしゃいますけれども、不均衡であるということだけははっきりしていますよ。片やどんと赤字がふえていく、日本はどんと黒字がふえていく。どういうふうに解消するかということは、赤字のヒイヒイ言っている国がこうせい、ああせいということを、黒字を抱えている日本に迫ってきて初めて腰を上げるという、この姿勢が問題だと私は言っているのです。よろしいですか。三カ月も前に日本側からむしろアメリカに対して、あなたのところにはこういう問題がある、これを解決しなさいよ、日本としてはこういう努力をしたいとむしろ積極的に問いかけていく、対応するということがあったら、世界日本を見る目がもっと違っていたのじゃないか、こういうことを言う国もあるし、こういうことを言っている日本の識者もあります。それをどうお思いになりますかと私は聞いている。どうです、外務大臣
  87. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 黒字の問題については、それはアメリカとの間でもいろいろと話をしたことがありますよ。黒字解消の一つの手段として、例えばアラスカ石油を日本に売りなさい、アメリカで禁輸して日本に売らない。もしアラスカ石油を開放すれば、それだけで例えば二、三十億ドルなら二、三十億ドルというのが日本に入ってくるわけでありますし、あるいはまた、日本は市場アクセスというものを改善しておるから、結局、もっとアメリカが輸出努力をすれば、いろいろな面でアメリカの輸出がもっとふえるじゃないか、それだけ日米間の黒字は縮小するのじゃないだろうか、そういうことも言っておるわけであります。  黒字の責任日本だけに求められても困るので、アメリカドル高の問題、高金利の問題もそのとおりで、やはりアメリカが高金利を是正し、ドル高が是正されれば、今度はそれだけアメリカの商品が競争力がつくわけですから、日本に対する輸出がふえる、あるいはまた、円がそれだけ強くなれば輸出にブレーキがかかっていくわけですから、その点はアメリカに対しても我々は注文をつけてきておるわけで、何もしてないということではないわけですね。  ですから、その辺は日米間でも話し合っておりますし、あるいはヨーロッパとの間でもその辺のことは話し合っておるわけでございますが、依然として日本の黒字の相当大きな部分を占めるアメリカの高金利、ドル高というものが是正されていないところに、今日の大きな事態があるということをアメリカにも知ってもらわなければならぬし、我々もだからといって日本責任を、何も責任がないと言うわけではありませんけれども、しかし、日本としても、それはそれなりに応じてやっているということを言わざるを得ないわけでありますから、何カ月か前か日本が黒字だ、黒字だと言って大騒ぎをして、日本責任でやれ、やれと言われても、日本だけで黒字の解消はできるものではないということは、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  88. 土井たか子

    土井委員 ちょっと私の質問に対してのお答えのニュアンスが違っているのですよ、取り上げ方が。だから、日本のそれに対する姿勢ということを、私は問いただしの中で意味として持ち出しているわけです。  今、御答弁の中でアラスカの石油問題を取り上げて言われましたが、今回、シュルツさんとの会談の中ではこれは具体的なテーマになったのですか。アメリカでは、これを日本に輸出をするのには、アメリカの国内法に問題があるのでしょう。だから、アメリカの国内法で石油輸出禁止をしている点を解除しないと、これはアラスカから日本に石油を売るわけにはいかない事情を抱えているのでしょう。具体的にはお話しになったのですか、どうなんですか。新聞では、これは何か打開しそうな記事も見えるのですが、事実はどうなんですか。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私からシュルツさんに正式に、例えば黒字解消の一つの方法としてアメリカのアラスカ石油ですね、これは日本は中東からほとんど買っておるので、やはり石油の輸入の安定化を図っていくためにはアメリカの石油が求められるのだ、日本の業界もそれを求めておるし、ぜひともその道を開いてもらいたい、州知事の方が何か少し日本に道を開くということだけれども、それだけでは非常に少ないので、やはりもっと議会に働きかけて、議会日本を非難されるなら、日本に対する輸出の道も開いてもらいたいということはシュルツさんにも言いました。  あるいはまた貨物航空の問題についても、アメリカが路線を認めようとしない。これは、日本は貨物航空を出発させることによって、三億ドルのアメリカの飛行機を輸入するわけです。したがって、そういう道も早く開いてもらえば、飛行機輸入の三億ドルという大きな道も開かれるのだから、そういう問題もてきぱきと処理していただきたいということも、あわせて申し上げた次第であります。
  90. 土井たか子

    土井委員 アメリカ側からブロック農務長官が例の穀物一千万トン買い付けを日本に対して持ち出されたことに対しては、外務大臣はどう答えられているのですか。
  91. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは正式な会談ではなかったわけで、コーヒーブレークというのか、ちょっと外に出たとき、ブロック長官が私に一つの考えとして、日本が一千万トンの小麦を買って、そしてアメリカに貯蔵して、これを日本が食糧不足の国に援助するとき使ってもらいたい、一千万トンじゃなくても結構だけれども、それに近い数字を日本に買ってもらえば黒字解消にも大きく寄与できるし、また、アメリカの困っている農産物の処理もできるので一挙両得だから、その辺のところを考えてもらいたい、こういう話がありました。  これは何といっても膨大な話でありまして、日本が今開発途上国等に食糧援助しているのは年間三十万トンぐらいの話ですから、そして、それも大半は開発途上国から買い付けた食糧を援助しているわけですから、一千万トンと言われても、それはなかなかそう簡単に受け入れられる問題ではないし、あなたの方のアイデアとしてそれは受けとめておきましょうということでお話ししたわけであります。交渉の材料、交渉の正式な議題になったわけではありません。
  92. 土井たか子

    土井委員 やがて交渉の議題になっていくであろうという予見ができるのですね。そういうことに対してのお心づもりはどうですか。
  93. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもう言われても、一千万トンというとどれだけの金額になるか知りませんが、膨大な金額だと思いますね。これは、一千万トンを日本が備蓄したところでこれをどこに出していくか。今世界で、私が聞いている範囲では、食糧援助に使われている穀物は大体七、八百万トンじゃないかと思うのですね。その中で、アメリカが大体四百五十万トンぐらい外に援助しておりますが、日本は三十万トン。三十万トンの中で、アメリカの小麦なんかをことしは七万七千トンぐらい買っておるわけです。  そうした点から見ても、これは日本の一年分の援助、ODAの援助を皆ぶち込んでも一千万トンを確保できるかどうか、計算しておらないのですけれども、肝心の日本のほかの方の援助がそれだけできなくなるということになりますから、新しい財政措置をすれば別ですけれども、また、アメリカが求めているのは新しい財政措置かもしれぬけれどもアメリカはいわば黒字解消ということで、農務長官は自分のところの農業も苦しいし、補助金は全部切ってしまって農民から失業者も大変出ておる、農産物は余っておる、こういうことで思いついたアイデアじゃないかと思いまして、日本立場もそう簡単にこの交渉に応ずるという状況じゃないと思いますので、一応アイデアとしては聞いておきましたけれども、今は政府の中でこれを真剣に検討しなければならぬというような状況ではないわけであります。  アメリカがこれからどうしてくるか、これだけの膨大な赤字があるわけですから、それはそれなりにアメリカとしても、農務長官がわざわざ言ったのですから、それは茶飲み話のとき言ったとはいっても、ただ単なる茶飲み話の話題ではないと思いますから、これからアメリカの出方もあると思いますけれども日本が今あらゆる面でこれをそう簡単に受け入れられるような状況ではないということは、はっきり申し上げておかなければならぬと思います。
  94. 土井たか子

    土井委員 それは、一つ一つの問題にどう対応するかということもさることながら、膨大な黒字を抱えている日本としては、この黒字をどのようにこれから解消していくか、その基本には、先ほど大臣がおっしゃいましたけれども、黒字がふえればふえるほど国際的な緊張というものを巻き起こす、これが国際不安の原因になっていくという側面があることも事実なんですね。だからこそOECDのコミュニケの中にも、日本を名指しで、国際環境の改善に貢献すべくというように明記してあるわけです。  日本は、何かというとアメリカ追随の立場をとっておりまして、アメリカから言われるとやる、言われたことだけやる、言われなければ、何にも自主的に緊張緩和のための貢献をしていないじゃないかというのが、恐らくは外国から見たときの日本に対する率直な物の見方であろうと私は思っているのですよ。外務大臣も首を振っていらっしゃいますから、それは少なくとも同調してくださる問題であると私は思いますがね。  そこで、OECDのコミュニケというのが、引き続きサミットでの宣言のたたき台になるということは周知の事実であります。やがてサミット外務大臣もいらっしゃる。このサミットでは、今度行かれるのは、やはり国際環境の改善に対して政治的にどういうふうな対応を自国はとるかという問題だと思うのですが、私はいつもこのときに思い出すのは、例のウィリアムズバーグのサミットです。中曽根さんがヨーロッパに対しての核配備を旗振りされまして、それが政治宣言の中に——アメリカ側はありがとう、ありがとうと言った。全世界に、ロン・ヤス関係が樹立したのはあの瞬間であると言われているのですよ。  今回、ボンサミットに行かれて、SDIの問題でアメリカに同調する立場をとる政治宣言なんかにくみすることは、日本は絶対やるべきじゃないと思っていますし、外務大臣はそれに対して一見識おありですから、もし中曽根さんがそういう姿勢で走ろうとなさるときにはそれを抑えて、そんなことをやっちゃいかぬとおっしゃるに違いないと確信しておりますが、いかがですか。
  95. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中曽根総理は総理大臣でありますし、私は外務大臣でありますし、首脳会議だけというのがありますし、外務大臣もまじった会議もありますけれども、しかし、SDIというのは、やはり日本の将来の根幹に関する非常に大きな問題だと私は思っております。ですから、この問題に対しては、あくまで慎重に対応していかなければならぬというのが私の基本的な考えであります。  私もシュルツ長官と今回お目にかかりましたときに、SDIについての意見の交換をしました。そして、ヨーロッパのOECDのとき、各外相に会いましてSDIについての感触を聞いておりますが、その感触も実は率直に伝えたわけでありますし、そしてまた、日本の基本的態度は、あのロサンゼルスの首脳会議以来変わっておりません、ただ、アメリカから専門家に来ていただいてお話を聞くということはいたしたいと思いますけれども、またそれ以上に何らの態度変更はありませんということは申し上げておきました。  SDIについては、大統領は非常な道徳的な情熱を持ってこれを推進したいのだ、これでもって世界から核がなくなるという一つの情熱を持って、これを推進していきたいのだということをシュルツ長官は言っておられたわけでありますが、全体的に見まして、私もヨーロッパの外相の話も聞き、また日本でも今いろいろ議論のあったところでありますし、大統領がどういうことをサミットで言われるか、それは我々の関知するところでありませんけれどもサミットで何かSDIで一つにまとまるということは今の状況ではまだ熟してない、熟してないといいますか、そういう状況ではないように私は推測はいたしておりますけれども、これからどういうふうになってくるか、それはこれからの状況を見なければわかりません。
  96. 土井たか子

    土井委員 客観情勢についてはそういう読みを外務大臣は持っていらっしゃるでしょうが、時期が熟している、熟してないじゃなくて、えたいの知れぬものに日本はくみして手をかしましょうなんと言ったら、物笑いの種だと私は思っています。そこは毅然としていただきたい。だから、外務大臣外務大臣のお考えがあることは私承知しておりますから、それをサミットの場所でも貫き通していただくことが、この節問われている大事な問題と私は思います。それはよろしゅうございますね。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、もちろん私自身の考え方も持っておりますし、どういうふうな状況になってくるか、そういう中で私自身が発言をしなければならないときは、これはきちっと述べなければならぬ、そういうふうに思っておりますが、今は全体の空気から見て、そういうふうな状況になるとは私は思っておりません。
  98. 土井たか子

    土井委員 国際環境の改善、緊張緩和という点からすると、日本の果たす役割は非常に大きいのに、それに対しては、積極的な役割をなかなか果たしてきていないというのが私の見る実感です。特にアジアでは、朝鮮半島の緊張緩和、朝鮮半島の南北の統一問題、これについて日本は他国に比べると、比ぶべくもなく積極的な役割を果たす場所にあるし、地位にあるし、そういう外交関係にあると私は言わなければならないと思っているのですよ。  きょう、この外務委員会が始まる直前に、大臣からの御報告をいただきました。その中で、アメリカにおいてシュルツさんとの話の中で、朝鮮問題に対する話し合いをなすったという御報告をいただきました。その中では、もう既に発表されております朝鮮民主主義人民共和国の方の最高人民会議が四月九日に出しました、北と南の間の民族的和解と信頼を図ることのための国の緊張を緩和する実際的な措置を講ずるという中身がございますが、これは具体的にもう大臣承知のとおりなのですけれども、このことも話題になったかどうか。  最近は、緊張緩和方向に向けて北側からの努力、南の努力というのも具体的にいろいろと伝えられてまいっております。その中で、中国が果たしている役割は非常に積極的であります。このこともあわせて、どういう話し合いがなされたかということをまず大臣からお聞かせいただきたいと思います。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 朝鮮半島情勢については、シュルツさんとの間で話をしました。私から、今朝鮮半島は一時停滞しておりました南北の対話がまたぼつぼつ進みそうな感じになっておる、これは朝鮮半島の緊張緩和を進める上においても、またアジアの安定を確保する上においても非常に大事なことじゃないか、ですから、日本日本なりに努力しているけれどもアメリカもともに南北の対話を進めるためにお互い努力していきましょう、こういう話をしたわけであります。  今朝鮮半島の情勢は、おっしゃるように中国そして日本、そういうものも関連した中で、相当、表に立った動きだけじゃなくていろいろな面でじわじわと進んでおるのじゃないか、一挙にというわけにはいきませんけれどもじわじわと進んでおる、いい傾向にあるのじゃないか、こういうふうに思っておりますし、今度全斗煥大統領もアメリカを正式に今月末に訪問されるわけでございますし、そういう中でやはり南北対話が推進されるように、アメリカ側もいろいろな面で努力をするのではないだろうかというふうに見ております。
  100. 土井たか子

    土井委員 この二月に、私も一員として訪米いたしました節に国務次官と会いまして、いろいろ話の途次、国務次官が言われるには、私どもは韓国側と秘密会議を幾たびも幾たびも重ねて持っています、全斗煥大統領の訪米に当たって、いろいろと韓国に対しても物を言ってきておりますというふうな話を率直にされました。だから、その後、アメリカ側のその努力が、水面下でなされたことが具体的に水面にあらわれ、水上に姿形をはっきり出してきていると私は思うのですが、朝鮮民主主義人民共和国に対しては、中国を介してアメリカの接近は最近は非常に積極的になってきているという具体的事実も耳に入ってまいります。具体的に目に映ってまいります。  で、今までどおりのことを、従来のような繰り返しで日本政府がやっていたのじゃだめだという気がいたします。外務大臣とされては、歴代の外務大臣の中でも、外国にいらっしゃるということの努力たるや大変な外務大臣でいらっしゃいますし、また、朝鮮民主主義人民共和国の方も金永南さんがよく外に出かけられる機会があるわけですから、外でお互い話し合い機会を持つということが努力次第でできるはずなのであります。単に、パーティーで会ってやあやあと手を握るだけじゃなくて、具体的にひとつ話を進めてみましょうというふうな努力だってできるはずです。そういう努力外務大臣いかがです、なさるお気持ちがおありになるかどうか。そういう努力というのは、大臣の肩にかかっている問題だと私は思いますよ。いかがですか。
  101. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本と北朝鮮との間でまだ外交関係がありませんし、外交官はそれなりにいろいろなところで接触はしているわけですけれども外務大臣がみずから北朝鮮との間で接触を持つとかパイプを持つとか、まだそういう時期ではないだろう、こういうふうに思っておりますが、いずれにしても、南北の対話が進むためにいろいろと環境をつくるための努力はしていかなければならぬということでやっておりますし、これは直接我々が北朝鮮とは接触しておりませんけれども、しかし、いろいろの角度から水面下での動きというのは相当あるのじゃないだろうかというふうに私は見ております。
  102. 土井たか子

    土井委員 具体的にどういう努力をされているかが、一向にわからぬのですね。それなりの努力をいたしておりますからじゃ、それなりというのは一体どういう努力なのであるかということがさっぱりわからぬのです。アメリカ努力をしているということがわかるのですよ。肝心の我々日本努力をしておりますと口先で言われるけれども、どんな努力なのか。それなりの努力と今おっしゃるが、中身は一向にようわからぬのです。  ただしかし、北京に対してアメリカ日本の頭の上を越えて、頭越しの外交を展開されてしまったということの二の舞を、朝鮮に対してやられちゃ困るという心配ばかりが先立つ姿勢が日本外務省にあることは、私はよく承知しておるのですよ。心配ばかりやったって始まらない。果たすべき役割を果たさないでいて心配をやったって、その心配は心配として生きません。今何をやるか、非常に大事な時期だと思うのですね。今から二年半後にはソウルでオリンピックであります。このオリンピックに向けてどういうふうになっていくか。今大臣言われたとおり、緊張緩和方向にここ数カ月の間は非常な動きがありますよ。  具体的に、それじゃ大臣の御所見をお聞かせいただきたいのですが、朝鮮民主主義人民共和国の最高人民会議が出してまいりました南北国会会談の提案について、どのように評価なさいますか。
  103. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 初めの御質問ですが、日本を抜きにして、頭越しに例えばアメリカと北朝鮮との間で何かが起こるとか何かが始まるとか、そういうことは絶対にあり得ないということは断言しておきます。日本アメリカそして中国、やはり中国が絡まないと南北問題は推進されないということは御承知のとおりでありますし、その間には南北問題を推進していくという密接な協力関係が私はあると思います。ただ、アメリカと北朝鮮との間が例えば中国を介してどうだというようなことは、日本を抜きにしてはあり得ないということははっきり言えると思うわけです。それほどそういう面では今緊密な連絡関係、あるいは情報の交換等をしております。  それから、南北の国会議員の会談とかということは、私は大変結構だと思います。そういうことがこれからいろいろの角度で、国会だけでなくて政府の首脳関係という段階でも進むことを期待しているわけです。そのための南北会談が、今ずっと進んでいるのではないだろうかと判断しております。
  104. 土井たか子

    土井委員 そうすると、この提案について大臣としては、現状からするとさらに南北の対話を前進させるものであるという位置づけをされた今の御答弁だと私は受けとめます。  そこで、かつて朝鮮民主主義人民共和国側が提案した例の三者会談なんですが、この三者会談に対して米国は今日に至るまで否定はしておりません。米国自身が、これに対して応ずる、応じないということの意思表示はしておりませんけれども、三者会談の提案そのものを否定したことはただの一度もないのですね。ただ、この三者会談が具体的に動くときの条件は、アメリカ側が在韓米軍撤退を前提条件にしないとか、南北間の信頼醸成措置が具体的にされるときとか、いろいろ提案はされてきたという事実がございます。そういうことからすると、三者会談に対してアメリカ側が今まで言ってきた内容に、一歩一歩前進して物事が運んできていると考えてよろしゅうございますか。つまり、三者会談をするというふうな方向可能性がそれだけ強まってきていると理解していいのですか、どうなんです。大臣自身はどう御理解なさいますか。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 三者会談とか四者会談とか、いろいろと構想はあると思いますし、それはそれなりに一つの意味を持ったものであろうと思いますけれども、今それよりも大事なことは南北が直接の対話を進めるということで、この点について今回もシュルツさんとの間で話をしたわけです。いろいろなことが行われる前に、まず南北の対話が大きく前進することが大前提であるということについては、日米の間では認識は完全に一致をしておるわけです。
  106. 土井たか子

    土井委員 中国は、その問題に対しては非常に積極的なんですね。そして、日本が自分で何かをやったらどうかということに対しても、中国は非常に応援の立場で行方を今までも見てこられたし、これからも見守られるだろうということは、私も確信しております。  ただ大臣、今の問題は南北間の話ですから、南北で自主的にお互いに対話を促進していくということが具体的に大事な問題、これは言うまでもない話ですけれども、それを促進することに対して日本が、それなりの努力と先ほど言われたが、どういうそれなりの努力があるのですか、役割があるのですか。アメリカと話をするだけなんですか。アメリカは最近中国を通して、朝鮮民主主義人民共和国に対する接近に非常な努力を払ってきていますよ。それに対して、どうぞやってくださいと言うだけなんですか。日本として何があるのです、何をこれからやるのです。これをひとつ聞かせていただきます。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカ中国を通して積極的に北朝鮮と接触を図っておると言われますけれども、私は決してそうじゃないと思います。日米間ではそういう問題については、十分連絡をしながら足並みをそろえてやっておるということでありますし、アメリカだけが南北問題に対して先行しているということではないわけです。これははっきり言えるわけですね。  それから南北の対話については、日本と韓国とは非常に深い関係にあるわけですから、そうした日本と韓国との間のいろいろな関係も通じて我々としては推進しておるわけですし、あるいは中国日本との関係も踏まえながら、中国との間でいろいろと相談しながらやっておるわけですし、日本が何もしないということではありません。日本は、この中で相当な役割をしておるし、また、これからまさに大きな役割をしなければならぬ時期が来るのではないか、日本はそういう役割をしなければならない最終的には責任があるのではないか、私はこういう気持ちを持っておるわけでございますが、これからどういうふうな事態になってきますか、いずれにしても今の関係は、緊張緩和方向に少しずつでも前進しているということは我々は見てとっておりますし、そういう中で日本の役割も徐々に生まれてくるのではないだろうかと思います。
  108. 土井たか子

    土井委員 時間ですから、残念ながらこれで終わりたいと思います。  ただ、この問題は懸案の問題であると同時に、日本として払うべき努力を十分に払ってきていない問題でもあります。外交の問題として、一番問われるアジアにおいて日本の最重要課題と私は言わなければならないことに対して、今までそうそう積極的役割を果たしてきていない。  特に、これはだれに遠慮しているのですか。日本は、韓国から全斗煥大統領を迎えるに当たって、民主主義国であるならばその国の大統領を迎えるときに、あんな戒厳令同然の警戒態勢をしくはずはないと思うのです。異常でしたよ。国民の目に映ったのは、何だこれは、戒厳令のありさまではないか、こんなことをしてまで何で呼ぶ必要があるかというのが、率直な国民の実感です。しかも、韓国においては今どういうことが展開されているかといったら、政治犯に対してどういう取り扱いがありますか。従来と何の変わりもありません。特に、先日報道された徐兄弟に対する対応なんというのは、もってのほかとしか私は言いようがない。  そういう情勢の中で、緊張緩和というのは上で動いていても韓国に対する対応が従前どおりならば、日本は、従来と変わって南北に対しての統一の方向に一定の役割を果たす方向を打ち出すということには絶対にならない。この韓国に遠慮なさっているのじゃないですか。外務大臣、いかがです。これは姿勢として全然間違っていると私は思います。
  109. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 一番大事なことは、南北の対話を進める上においても緊張緩和をこれから進める上においても大事なことは、韓国と日本との間の信頼関係をがっちり保つということではないかと思います。これが崩れると、これからの緊張緩和に対して日本の役割を果たすことはなかなか困難になるのではないかというのが私の認識であります。  もちろん、韓国の言うとおりに日本がやっているというわけでもありません。日本としては、例えばラングーン事件の問題にいたしましても、日本自身の処置をことしの一月一日からも取ったわけですし、また人物の往来等につきましても、日本はそれなりの自主的な立場でやっておりますし、日本と北朝鮮との関係も非常に細い時代があったわけですけれども、しかし、戦後の相当幅広い民間交流が行われた時代もあったので、そうした民間交流は徐々に広げていくことが、それなりにまたこれからの南北対話を進める上においてもいいのじゃないかと私は思って、それは日本なりの独自な立場でやっております。しかし基本的には、日韓の信頼関係がその基礎にあって、これが揺らいでは、本当の意味でのこれからの日本の役割を果たすことにはならないというのが私の考えてあります。
  110. 土井たか子

    土井委員 外務大臣とは私は理解立場がまるで違いますが、時間が参りましたので、質問をきょうのところはこれで終えます。ありがとうございました。
  111. 愛野興一郎

    愛野委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後一時十六分開議
  112. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  113. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、先ほど沖特にも御出席されて大変だと思いますが、去る十日に日本を出発されて十一、十二、OECD閣僚理事会、それから十三、十四、アメリカシュルツ国務長官、ブッシュ副大統領と会談をされて、大変御苦労してこられたわけであります。また、間もなくボンサミットも開かれるわけでございまして、どうかひとつ、御健闘をお祈りいたします。  そこで、この日米貿易摩擦の問題に絡みまして、きのうの本会議でも一部そういうニュアンスが出ておったわけでありますが、大臣シュルツ国務長官と会われた際、日本は内需拡大を積極的にやるべきである、そういうことを言われたようであります。そのことで、十六日の閣議後の記者会見で河本大臣は、やはり内需拡大は積極的に検討する必要があるというような趣旨の発表をしておられるわけであります。あるいは、宮澤総務会長も同様なお考えのようであります。ところが、中曽根総理は、それよりは九日に発表した対外経済政策の実行をむしろ先にすべきである、ある意味では内需拡大については消極的、むしろそっちの方を重視すべきではないかというお考えのようであるわけであります。  そこで、安倍外務大臣とされては、いわゆる内需拡大策を積極的にすべきなのか、大臣御自身はどういうお考えなんでしょうか。その点をまずお伺いいたします。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 諸外国を回ってみますと、日本の黒字問題が大きな焦点になっております。やはり黒字を縮小してバランスをとっていくには、ただ日本の市場アクセスを改善するだけでは不十分である、どうしても外需依存型から内需依存型に日本経済を転換すべきである、こういうふうな議論があることも事実でございます。日本としましても、そうした諸外国の考え方等も十分参考にしなければならぬ。同時にまた、日本自身が国際的な批判にこたえてこれからバランスのとれた発展をしていくには、やはり内需にも力を入れていかなければならぬということは当然のことであろうと私は思うわけでございますが、ただ内需振興と一口に言いましても、日本の場合は財政が大変厳しい状況でございまして、例えば今ここで内需振興のために大型の公債等を発行するというふうな状況にはないのではないだろうか、私はこういうふうに考えております。  したがって、日本として現在とるべき方向としましては、四月九日に発表をされました我が国対外経済対策、その中には内需振興も含まれておるわけでございます。そして、内需振興を行うための民間活力の推進であるとか、あるいはまたデレギュレーションの推進であるとか、あるいは週休二日制であるとか、そうした諸政策を推進する、進めるというものが一つの方策として具体的に諮問委員会でも出ておりますし、対策の中にも盛られておるわけでございますので、内需振興ということについては私も異存はないわけでございますが、このやり方については、やはりいろいろと、日本の財政の立場とか日本全体の経済運営、金融政策、そういうものを踏まえて、限られた厳しい財政の中で知恵を出しての、工夫を出しての努力でなければならない、こういうふうに思っておるわけでございまして、七月までに政府全体としてそういう問題も含めて検討を進めたい、こういうふうに思っております。
  115. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、我が国の財政運営、経済運営という、極めて重要な基本的な政策についての考え方の違いというものが閣内にあり、あるいは与党の首脳の中にもある。簡単な言葉で言うと、いわゆる閣内不統一ということですね。そういう感じでいるわけで、しかも、外圧によってそういう国内の重要な政策が、ああでもない、こうでもない。ですから、私が安倍大臣にお伺いしたいのは、この前シュルツ国務長官と会談され、日本の内需拡大策については大臣とされては見解を異にする、これも大事、これも大事、大臣のお話を伺っていますと両方非常に大事だと言う。あいまいなんですよ。その点いかがでしょうか。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題は、すぱっと割り切ってやれるような状況じゃないのじゃないかと私は思います。  シュルツ長官は演説で、日本の貯蓄率が非常に高い、そしてその貯蓄率が過剰投資、それが外需ということに結びついており、むしろ内需拡大の方に投資が向けられていかなければならぬ、そういうふうな趣旨ではないかと思うわけでございまして、それはそれなりに一つの議論であろうと思うわけでおります。確かに、市場開放をやるだけでは黒字が解消できないわけでございますから、黒字解消を図っていくには、やはり基本的には米国の高金利とかあるいはドル高の是正というものがあると私は思います。  反面また、国内における内需を振興して輸入を促進するということも必要な面もあるわけでございますが、そういう政策を進める場合においても、やはり今の日本の財政には限界があるわけですから、それの限界を超えてやるということは財政再建を大変おくらせることにもなるわけでありますし、今思い切ったことをやるというふうな状況にあるかどうかということになりますと、私はちょっと疑問を持たざるを得ないわけでありまして、もっとその他のやり方で民間活力の応用であるとか、あるいはまた金融政策の機動的な展開であるとか、そういうものによって内需の振興を図っていくということもまだでき得る余地もあるのじゃなかろうか、こういうふうに思っております。  最近の日本経済を見ますと、国内における設備投資も順調に進んでおるという状況でありますし、世界経済の中では日本経済の成長率は割合に高いということが言えるわけでありますし、そんなことを全体的に見ながらやはりこれから政策を進めていかなければならない。その中でいろいろの施策を講ずるとともに、内需を振興するというところにもいろいろな面で知恵を出してウエートを置いていくことはもちろん必要である、こういうふうに思います。
  117. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、双方大事、どっちも積極的あるいはどっちも消極的。ですから、非常にあいまいな点が大臣のお考え方であるという印象が強いわけです。私たち公明党の場合は、こういうときには内需拡大策を非常に積極的に打ち出すべきであるという考え方であるわけです。  それで、実はけさ一斉に、電車のつり広告に中曽根総理の顔写真入りのポスターが出て、みんなお気づきだと思うのですが、何ですか、いろいろせりふも書いてあります。実は、けさのテレビのニュースでそのことをやっていましたので、私も初めてわかったのです。「手を結べ輸入で世界の国々と 私たちひとりひとりが進んで外国製品を愛用し、諸外国からの輸入の拡大に努めようではありませんか。」というせりふがあるわけです。これは総理の顔写真入りです。  ところが、テレビの方々の国民の皆さんへのいろいろなインタビューでは、非常に不評ですね。あなたは外国製品買いますか、いや、買いません、どうしてですか、高い、国内のもので間に合っています、大体そんな感じですね。ですから、そういう国民から遊離したひとり歩きする政策というのは、国民から支持されるわけもないし、もちろん信頼されるわけはない。といいますのは、やはり買いなさいと言って買えるような、そういう政策が伴っていない。ただ買え、買えと言いましても、一人当たり平均百ドルとかなんとか、そんなことを言われてもちょっと内需拡大——いろいろな税制の問題、いろいろなことが伴った上でそういうキャンペーンを張られるならば、一応話はわからないでもないわけであります。ところが総理のお考えは、何か内需拡大策よりもという考えで、消極的なんですね。いかがでしょうか。
  118. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、まだそのポスターを見ておりませんので何とも解釈ができないわけですが、中曽根総理も非常にアイデアマンですから、いろいろなことを考えられてやっておられるのじゃないか、こういうふうに思います。
  119. 玉城栄一

    ○玉城委員 いずれにしましても、率直に申し上げて、こういう非常に大事な問題について閣内が不統一であり、しかも、きのうの本会議等を見ますと、やはり大臣考え方はいろいろ違っておる。しかも、これからまたサミット問題もある。こういう状況は、私はそばから見ていまして、一体この内閣はどういうことになっておるのだろうと非常に危惧をするわけでありますが、ひとつしっかりと頑張っていただきたい。  それともう一つは、今度ブッシュ副大統領とお会いになったときに、会談のときに向こうさんの方から、日本の官僚体制に問題があるという指摘があったようでありますが、その見解について大臣はいかがでしょうか。
  120. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ブッシュさんから、日本の市場開放が積極的に行われないのはどうも日本の今の官僚機構に問題があるのじゃないか、中曽根さんが幾ら頑張ってもなかなか官僚体制というものは動かない、そういうところにアメリカがいらいらする根源があるんじゃないか、こういうふうな指摘がありました。  私はそれに対しまして、確かに日本は、官僚体制というものは世界一優秀であろうと私は思っておりますし、その官僚体制とともに政党政治によって日本の今日の発展があり得たと思っているというふうに申し述べまして、また、日本の今の官僚体制にいろいろと批判はあるけれども、しかし、やはり官僚をリードするものは政党政治であるし、議会政治であるし、その上に議院内閣制度というものがあるんで、これは大臣がしっかりしておれば幾らでもリーダーシップを発揮して、官僚と一緒になっていろいろなことをやってのけるし、また今までもやってきているし、そう心配されるほどの問題ではないのじゃないか。今の四月九日に我々がとった措置も、こうした官僚とともに議院内閣制度のもとに内閣が一体となって努力をした結果打ち出した政策であって、これは日本の行政組織の中で隅から隅まできちっと実行されるから御心配は要りません、こういうふうなことを言ったわけでございます。  しかし、このブッシュさんのそうした発言は、決してブッシュさん一人の発言でなくて、ブッシュさんも上院議長をしておりますから議会のことを一番よく承知しておられます。そして、九十二対ゼロというあの決議が行われた、その議員の日本に対する不信感の底には、今のブッシュさんの言われたような、そうした日本に対する見方というものが存在をしているのじゃないかということを私は感じたわけでありまして、ただブッシュさんだけの個人的な意見ではない。ですから、それなりに日本もいろいろとまた考える必要があるなという感じを率直に持った次第であります。
  121. 玉城栄一

    ○玉城委員 日本の官僚体制につきましては、極めて優秀であることは世界的にも認められているわけでありますが、その官僚体制のあり方についてもいろいろと考え方があります。しかも、そういう中で、副大統領という立場の方が日本の官僚体制までやり玉に上げつつある。我が国の防衛問題についてもそうですね。いわゆる経済問題、財政問題、今の官僚問題、いろいろな意味で最近米国我が国に対する極めて内政干渉的な、強い印象を受けるような考え方、要求が非常に強く出てきているのですが、いかがでしょうか。
  122. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 要求というよりは考え方といいますか、日本に対する考え方を述べたのじゃないか。また、日本日本なりに、アメリカのあり方に対してもそれなりの発言もし、また批判もしておるわけであります。お互いにそうした批判もし、お互い議論もするということは、問題を解決する上においてはいいことじゃないだろうか。ただ黙ってはっさりやるということじゃなくて、お互いに言い合って、その辺のところがお互いに問題点が明らかになるということは、民主主義国家のいいあり方じゃないだろうかと思うわけであります。  そういうことを聞けば聞くで、日本はそれなりに判断もし、あるいはまた場合によっては反省もし、またアメリカに対して我々が率直に言えば、アメリカもそれなりにいろいろと考え直すということもあるんじゃないかと思いますし、私は、お互いに言い合うということはそれなりに一つの意味はあるんじゃないか、こういうふうに思います。
  123. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういうことで、さっきも申し上げましたとおり、閣内の考え方がいろいろ、ばらばらが出てくる。ひとり中曽根さんは自分の顔写真入りで、さあ国民の皆さん買ってくれぬか、こういう非常に奇妙な、おかしな状況があるわけですから、ひとつ何とかしっかりやっていただけないか、そのことを要望いたして、次の質問に移らせていただきます。  実はこの問題、ちょっと緊急性がありますので、海上保安庁の方にお伺いをいたしたいわけでありますが、今月の七日に、船体が二つに割れて発見され、しかも乗組員五名が行方不明という第一豊漁丸の事件について、その状況を詳細に御報告をいただきたいと思います。
  124. 草薙博文

    ○草薙説明員 お答えします。  海上保安庁では、四月七日午後零時五分ごろ、通航中の漁船から、第一豊漁丸が船首部を水面上に出し、直立状態で漂流しておるという通報を受けております。場所は、那覇の北西約百五マイルのところでございますが、直ちに巡視船艇、航空機それから特救隊を出動させるとともに、海上自衛隊の協力も得て乗組員五名の捜索を行っておりますが、現在まで発見に至っておりません。  本日までの出動勢力は、巡視船艇延べ四十六隻、航空機延べ二十一機、海上自衛隊機延べ八機でありまして、捜索は、沖縄県先島群島周辺海域から鹿児島県のトカラ列島海域にかけての広大な海域について実施しております。  なお、発見された該船の船体は、八日から巡視船、特殊救難隊等により回収、曳航作業が行われまして、十五日に那覇に到着しております。
  125. 玉城栄一

    ○玉城委員 破損した船体の写真ですが、今、ごらんになっていただきたい。大変むごたらしい姿で、大臣もぜひごらんになっていただきたいわけであります。この写真でごらんになっても大臣もおわかりだと思うのですが、この船体の破損状況からしまして、これは私たち素人が見ても——この船みずからの事故によってのそういう破損なのか、あるいは他の船による、他の原因によってこういう状況になったのか、海上保安庁、どういう見方をしていらっしゃいますか。
  126. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 お答え申し上げます。  私どもの出先機関でございます第十一管区海上保安本部におきまして、現在この事件につきまして捜査本部を設置いたしまして、全力を挙げて捜査を実施しているところでございます。  現在までの捜査状況でございますけれども、先ほど救難課長からお答え申し上げましたように、この漂流しておる船体の揚収に大変手間取りまして遅くなっておるわけでございます。揚収後の船体を検分した結果によりますと、同船の後部左舷、今写真で皆さんごらんになっているとおりでありますけれども、ここが大きく脱落しておりまして、明らかな当て逃げ事件と考えられますので、捜査本部では全国の各海上保安部署に対しまして、付近海域をどのような船舶が通航しただろうかというようなことを照会いたしますとともに、揚収いたしました船体にペイントが付着しております。このペイントは、当然衝突時に相手船からつけられたものというふうに考えられております。それから、この船体を詳細に検分いたしますことによって、大体どんなような船によってぶつけられたか、あるいは衝突時の角度はどうであったとか、いろいろなことがわかるわけでございますけれども、そういう検分を詳細に実施すべく手配中でございます。
  127. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、今、ペイントが付着していたということですね。それは、付着していたから、皆さんそのペイントを採取して分析か何かやって、その結果は今どういうふうになっているのですか。
  128. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 ペイントにつきましては、まず、揚収いたしました第一豊漁丸の方からそのペイントを採取いたしまして、これを専門機関でございますところの私どもの海上保安試験研究センターというのがございますけれども、そこで多方面から鑑定することにしております。ただ、このペイントの鑑定と申しますのは、そのペイントがどのような種類、成分でつくられているかというようなことが大体わかるということでございまして、そのペイントの鑑定だけでは、ある程度どんな船であったかというような絞り込みということは可能になろうかと思いますけれども、最終的にこの船であるというような特定というものは、相手船側のペイントも採取いたしまして、それと比較対照する以外に方法がないということになろうかと思います。  そういうことでございますので、この意味においても、容疑船と思われる、先ほど船舶手配していると申し上げましたけれども、そういうものの早期発見、こういうところに全力を挙げているような次第でございます。
  129. 玉城栄一

    ○玉城委員 例えば自動車のひき逃げとかありますね。今の警察の方々は、付着しているもので加害車といいますか、その車種まで大体わかるわけですよ。それで皆さん、付着塗料の分析によって、大体どういう船であるかということの見当はつくんじゃないですか。その見当もつかないまま、ただ分析してということじゃ、これはおかしな話ですから。
  130. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 先生御承知のとおり、船と申しますのはいわゆる注文生産でございまして、造船所ごとに生産して、それぞれ好きなペイントを塗るというような形になっております。自動車の場合は、御承知のとおり大量生産でございますから、どの工場でどういうペイントを使っておるかというようなことから車種の絞り込みは非常に簡単でございますけれども、こちらの場合、ペイントの成分だけからどういうものであるかというようなことの特定はなかなか難しゅうございます。
  131. 玉城栄一

    ○玉城委員 さっきあなたでしたか、これは明らかに当て逃げであるということもおっしゃられたわけです。その写真を見ても、船体の破損状況からして、同じクラスの船がぶつかったということはちょっと考えられませんね。そうであれば、その加害船ですか、当て逃げ船も当然同じようにつぶれると思うのです。この当て逃げした船は相当大きいものだ。素人考えなんですが、いかがでしょうか。
  132. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 おっしゃるとおりでございまして、この船よりは相当大きい船だろうと思っております。
  133. 玉城栄一

    ○玉城委員 捜査本部を設置してということですが、あの海域をあの期間中通航した船をリストアップしているわけですね。そして、現在のところそれはどういう状況なのですか。
  134. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 現在までに七十五の海上保安部署から回答がございまして、一応三百二十一隻が現場付近を航行したとの回答があります。ただ、この三百二十一隻は、日本を出港地または入港地のいずれか一方にしていて、かつ、そこら辺を通航した船ということでございます。
  135. 玉城栄一

    ○玉城委員 今リストアップした三百二十一隻、いろいろなケースがあるでしょうけれども、しかし、あの海域をあの期間中通航したということでしょうね。ですから、この三百二十一隻の中には、例えば軍艦は含まれていますか。
  136. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 この三百二十一隻は、先ほど申し上げましたとおり、我が国の港を入出港のいずれかとする船舶でございまして、この中にはいわゆる三国間運送船あるいはまた軍艦は含まれておりません。そのため捜査本部におきましては、特に現場海域は三国間輸送の場合韓国との入出港も考えられますので、韓国海洋警備隊にも依頼いたしまして、その当該海域の通航状況について照会しているところでございますし、また軍艦に関しましては、防衛庁にもいろいろ問い合わせをしているところでございます。
  137. 玉城栄一

    ○玉城委員 その三百二十一隻の中には軍艦は含まれていない。しかし、この破損状況からすると大きな船である、そういうことからしますと、軍艦ということも可能性としては当然考えられるのですね。
  138. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 軍艦が含まれますか否かというようなことにつきましては、先ほど申し上げましたペイント、船体の鑑定、それからその他いろいろな聞き込み等によりまして、いろいろな資料が収集されてくるわけでございますけれども、そういうあらゆる資料をもとに判断する問題でございまして、現在において軍艦であるとか、大型の貨物船であるとか、あるいは漁船であるとかということを断定することはできませんけれども、いろいろな情報を判断いたしますと、軍艦の可能性はかなり少ないのじゃないかと判断しております。
  139. 玉城栄一

    ○玉城委員 少ない、多いのことでなくて、三百二十一隻はリストアップして捜査している、しかし、その三百二十一隻の中には軍艦は含まれていない。しかし、軍艦の可能性も否定はできないわけでしょう。
  140. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 ゼロとは申し上げられませんけれども、非常に少ないのではないかと判断しております。
  141. 玉城栄一

    ○玉城委員 少ないとかなんとかじゃなくて、とにかくその可能性としてはあるわけですから、当時あの海域を通航した、軍艦には潜水艦もあれば駆逐艦もあるいは巡洋艦もあるでしょう、いろいろなものがこの可能性の中に含まれるわけですね。ですから、そういうものは除外して、三百二十一隻だけだと限定して捜査するというのは……。
  142. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 三百二十一隻に限定してやっているということではございません。船舶手配をした結果、三百二十一隻がリストアップされたということで、その他の可能性についても、あらゆる角度からつぶしにかかっております。
  143. 玉城栄一

    ○玉城委員 ということは、軍艦等についても海上保安庁としては、可能性を持って当然捜査はするということですね。
  144. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 あらゆる可能性につきまして捜査するのは、捜査の常道でございますのでそういうふうにしておりますけれども、現在までにいろいろ寄せられました情報から、先生の先ほど来の御質問につきまして、非常に少ないのではなかろうかということを申し上げておるわけであります。
  145. 玉城栄一

    ○玉城委員 あなた、少ない少ないと言いますけれども、どういう根拠で少ないと言うの。それは破損の状況からですか、その付着塗料の分析の結果からですか。
  146. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 そういうものを全部含めての結果でございます。
  147. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうすると、塗料の分析結果というのはわかっておるわけですね。
  148. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 失礼しました。色の状態その他についてはわかっておるような状況でございまして、新聞等でも報道されておりますけれども、赤い色の塗料がついておる、茶色っぽい赤色でございますけれども、そういうものがついておるというようなこともございまして、いわゆる軍艦というのは赤色というのは余り使ってないものですから、そこら辺から判断いたしましてもそういうことは言えると思います。
  149. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは、私も船のことはよくわかりませんけれども、赤い塗料を軍艦が使ってないというのを、あなた断言できないでしょう。こういうむごい当て逃げですよ。五名も行方不明ですよ。大体、普通言われている海の男というのは、そういうとき救助するべきですよ。それをほったらかして逃げていく。こんなのは許しがたい。ですから、当時あの海域、あの期間中、自衛艦は通航してませんか。
  150. 大野琢也

    ○大野説明員 お答えいたします。  海上自衛隊の船の行動につきましては、本件が起こりましてから一応すべて調べてみたわけでございますが、関係があると思われる行動について報告を受けておりません。
  151. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、防衛庁の方はこの当て逃げについては一応除外されるということは、海上保安庁、言えますか。
  152. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 大体そのように考えております。
  153. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、軍艦の可能性も、少ないとおっしゃいましたけれども、これは否定はできないわけですから、あるいはアメリカの軍艦かもしれぬし、ソ連の潜水艦かもしれませんよ。これはわからないわけですから。そのことを海上保安庁として、外務省か何かに問い合わせしてみましたか。
  154. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 外務省に対してはやっておりません。
  155. 玉城栄一

    ○玉城委員 何でやらないのですか。
  156. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 米軍の情報につきましては、一応私どもとして、軍艦行動ということについて情報をなかなか得られないというふうに聞いておりますので、独自の収集網、そういうものをいろいろ総合して判断してやっておりまして、外務省を通じての問い合わせはしておりません。
  157. 玉城栄一

    ○玉城委員 あなた方は、最初から軍艦、いわゆるアメリカかソ連かよくわかりませんけれども、そういうふうなものは除外してかかっておるわけでしょう。これは例があるから私はしつこく聞いているのですよ。五十六年四月に例の日昇丸事件があったでしょう。どうしてあなた方は除外して、外務省に対して問い合わせをやらないのですか。
  158. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 潜水艦につきましては、損体状況からほとんど可能性がございません。したがいまして、潜水艦以外の軍艦ということになろうかと思いますが、新聞等でも報道されておりますけれども、あの海域はわりかし軍艦がよく通るというようなことは知っております。そして事実、この船が行方不明になりましたのは三月二十九日でございますけれども、それ以降海域を通った船があることも知っております。ただ、そこら辺につきましては、ソ連あるいは米国外務省を通じてお願いしても、当てたとか当てないとかというような情報は基本的に入ってこないというふうに聞いておりますものですから、そういうふうにやっておりますけれども……。
  159. 玉城栄一

    ○玉城委員 その可能性もあるのにもかかわらず、もうそういう軍艦については不可能だから捜査も必要ない、したがって外務省にも問い合わせしない、そういうことです。  では、外務省の方はいかがでしょうか。アメリカに問い合わせをし、あるいはソ連に問い合わせをし——前の例がありますから、いかがでしょうか。
  160. 栗山尚一

    栗山政府委員 私どもとしましては、保安庁の方の御調査の結果、米軍との関係可能性があるということで海上保安庁のそういう御判断がもしあって、照会をしてほしいという御要望があれば、アメリカに対しては私ども調査を依頼するという意思はございます。ただ、これまでのお話では、そういう可能性が極めて少ないということで、調査結果に基づいてアメリカ側に照会してほしいという御要望がございませんので、一応私どもの方としてはアメリカに照会をするということは行っておりません。
  161. 玉城栄一

    ○玉城委員 海上保安庁、あの海域は相当軍艦が通っているということは、あなたさっきおっしゃったでしょう。そのとおりですよ。アメリカだけじゃないんです。ソ連もあるのです。上から下からですね。それは認めていらっしゃるわけですから。そういういわゆる可能性のあるものについて、すべて捜査をするというのは当然だとあなたおっしゃったわけですから、当然軍艦という問題、前に例があるから申し上げている。あのときには、とうとい二人の方が亡くなりました。今度は五名、一日も早く救助されることを願うわけですけれども、どうですか海上保安庁、外務省は今そうおっしゃっているのですから、全く否定はできないということであれば協議をして……。
  162. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 先ほど来何回かお答え申し上げておりますように、現時点では非常に可能性は少ないというふうに判断しておりますので、その可能性が先ほど北米局長の方からも御答弁ございましたように仮に少しでもあるというようなことになれば、照会してみたいと思います。
  163. 玉城栄一

    ○玉城委員 少ないとか多いとかと今あなた勝手に言っていますけれども、何を根拠にそう言っているのですか。ですから、何回も申し上げますけれども、前の例があるから重ねてこれは栗山局長、海上保安庁は協議したいということでありますので、いかがでしょうか。
  164. 栗山尚一

    栗山政府委員 保安庁の方の御判断で、調査結果に基づいてそういう可能性が多少なりともあるということで照会してほしいという御要望があれば、私どもの方はその用意がございます。
  165. 玉城栄一

    ○玉城委員 いずれにしましても、一昨日那覇に曳航されてきたわけですが、関係者の方々の憤慨といいますか、その気持ちというのは大変ですよね。ですから海上保安庁とされては、一日も早くこの行方不明の方々を捜索をしていただきたい。そして、このようなひきょうな当て逃げをした船に対して、その責任は厳しく追及されなければなりません。それは民間船あるいは軍艦の可能性もあり得るということですから、当然外務省協議をされて——これはアメリカだけではないのですよ、ソ連もあり得る。向こうはよく潜水艦が通っていますからね。いかがですか、もう一回その点を確認しておきますが。
  166. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 先生の御趣旨を体しまして、帰りましてよく検討してみたいと思います。
  167. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、最後に。この問題はお聞きになったとおりであります。五名の乗組員の方々、まあ、さっきも写真をごらんになったとおりであります。いずれにしても、軍艦の可能性も全く否定できないということからして、あの海域、あの期間中、いわゆる軍艦が相当通航していることは海上保安庁は認めているわけですから、大臣とされても協議の上、それぞれ関係する国々の軍艦についても問い合わせをぜひしていただくべきだと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  168. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まことにお気の毒な事件であったと思います。今、海上保安庁も外務省答弁いたしましたように、今いろいろと捜索をしているようですが、真相究明に政府としても努力を続けたいと思います。
  169. 玉城栄一

    ○玉城委員 次は、また質問を変えますが、武器禁輸政策についてお伺いをいたします。  我が国の武器禁輸政策について、その政策の柱である武器輸出三原則は、武器技術の対米供与だけが例外として一応認めたということになっておるわけであります。しかし私は、そのことについても認めるわけにはいかないという立場であります。しかし、それにしても、そのことはあくまでも例外措置であって、原則はちゃんと堅持されていると理解しておいていいのかどうか、大臣の御見解をお聞きします。
  170. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 武器輸出三原則の中で、武器技術につきましてはアメリカとの間で相互交流をする、こういう例外を設けたわけであります。
  171. 玉城栄一

    ○玉城委員 したがいまして、我が国の武器禁輸政策は、専守防衛、非核三原則、自衛隊の海外派兵禁止と並ぶ、戦後日本の防衛政策の根幹をなすものであることに変わりはないと私は理解をしておりますけれども、その点も重ねて確認をいたしておきたいと思います。
  172. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 武器禁輸政策は、我が国の基本的な方針としてこれからも続けていかなければならないと考えています。
  173. 玉城栄一

    ○玉城委員 さらに、この問題でお伺いしておきたいわけでありますが、たとえ我が国が西側の一員であっても、イギリス、フランスから武器技術供与の要請があっても我が国としては応じない、また、西ドイツとのミサイル共同開発もあり得ないという過去の御答弁があるわけでありますけれども、現在でも変わりはないと確認しておいてよろしいでしょうか。
  174. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いずれにいたしましても武器輸出三原則は守っていく、こういうことです。
  175. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、これも確認でありますけれども、対米武器技術供与を認めた五十八年一月の当時の後藤田官房長官談話では、「国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則のよって立つ平和国家としての基本理念は確保されることとなる。」と述べていらっしゃるわけでありますけれども、この見解は、現在でもなお維持されていると理解しておいてよろしいでしょうか。
  176. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府見解のとおりです。
  177. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、世界の武器貿易の総額は現在、一千億ドルを超えているとも言われております。世界全体の軍事費八千億ドルに比べても、この額は巨大なものになっておるわけでありますけれども、特に最近の傾向は、ブラジルとかあるいはイスラエル、アルゼンチンなど、有数の債務国が兵器生産を債務対策の輸出用として考えているようでもあります。第三世界諸国にとってこういう兵器輸出がある意味では非常に魅力的なのは、性能が劣っていても、価格の安い兵器に根強い需要があるからだとも言われておるわけであります。  私は、こうした国家そのもののまさに死の商人的態度は、局地紛争を激化させるとか軍拡に一層の拍車をかけることになると思うわけであります。こういう武器輸出をめぐる国際情勢に対して、安倍外務大臣はどのように思われますか、御認識をお伺いいたします。
  178. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今日の複雑な国際状況の中で、いろいろと国家のあり方というのはあると思うわけでございますが、その中にあって日本は、少なくとも平和国家として今の武器禁輸三原則は堅持をしていきたい、こういうふうに考えております。
  179. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういうことはけしからぬとかなんとかおっしゃらないと、話が進まないのですよ。我が国のことじゃなくして大事な……。そこで、最近、米国の軍事用ヘリコプターが非合法ルートで一部は横浜を経由して北朝鮮に売られたという報道がありましたが、当然、同じ米国の軍事用ヘリは韓国にも行っておるわけでありますから、一朝有事の際は同じヘリが三十八度線をまたいで戦うということになるわけです。私は、こういう事態になればまさにこれは悲劇の最たるものの一つだと思うのですが、この事実関係について外務省御当局はどのように把握していらっしゃるのか、お伺いいたします。
  180. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 たしかこの二月にアメリカ新聞に、米国製のヘリが北朝鮮にいわゆる違法輸出されたという報道がありましたことを私ども承知しております。この点の事実関係につきまして、私ども米国から今説明を受けておるところでは、現在まだ米国政府としては、事実関係調査中であるというように承知しております。また米国としましては、米国製ヘリが北朝鮮に対し違法に輸出されたという報道について、深い懸念を表明いたしております。それで、現在事実関係調査しておるし、再発防止に万全を期すという立場をとっております。  他方韓国も、御指摘のように若干同じようなヘリが使われているという点について、今回の事件については深い懸念を表明しているというように承知しております。
  181. 玉城栄一

    ○玉城委員 今のことについて我が国の企業が関係していたのかいないのか、その辺はいかがでしょうか。
  182. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 今の報道がなされましたときに、韓国政府の方から、どうも本件のヘリのうち二機が日本を経由して北朝鮮に送られたのではないだろうかという情報がある、ついては事実調査をしてほしいという依頼があったことは事実でございます。これにつきまして、私どもいろいろ調査をいたしました結果、本件ヘリ機が二機横浜にて積みかえられて送られたという事実はどうもあるようでございます。しかし、これはあくまでも積みかえでございますので、私ども日本の法令との関係がどうだという関係はないわけでございますけれども、私どもが現在調査した限りでは、そういう二機が積みかえられて送られたという事実はあるというように承知しております。
  183. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、我が国の企業がその二機については関与はしていないというお立場ですか。
  184. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 そのとおりでございます。
  185. 玉城栄一

    ○玉城委員 積みかえとかということにしましても、それが事実であったにしましても、先ほどから武器禁輸政策というお話をさせていただいておるわけでありますけれども我が国を経由して非合法にそういう軍用ヘリが北朝鮮に持っていかれるという事実については、どのようにお考えですか。
  186. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 私ども承知する限り、このヘリ機は、いわゆる民生用のカテゴリーに入るヘリ機であるというように承知しておりますし、全く横浜で積みかえられたというだけの事実だと承知しております。
  187. 玉城栄一

    ○玉城委員 いずれにしましても、そういう非合法な形で我が国を経由してそういうものが北朝鮮に持ち込まれる、また同じようなものが韓国にも行っている。一朝有事の際は、それはまた軍用に転用されていくわけですから、こういうことは絶対にさせないように厳重に外務省とされても監視をしていただきたい。このことを要望を申し上げておく次第であります。  それから次に、これは外務大臣にお伺いいたしますが、イラン・イラク戦争の調停に対して我が国が大変期待されている。そのことは、我が国両国と友好関係を保っているということ、また我が国が武器禁輸政策を堅持しているということも、大きな要因になっていることと思うわけであります。フランスやソ連、北朝鮮など、戦争をあおり立てるようにイラン、イラクに武器供与を続けている、そういう中で日本の調停努力に対して世界が注目を集めているわけであります。まさに、我が国が手を汚していないという点にあるとも思うわけであります。  安倍外務大臣が、そういうお立場からイラン・イラク戦争の調停に大変御努力をしておられることに心から敬意を表するとともに、この問題は安倍外務大臣のおっしゃる創造的外交のまさに一つの試金石でもあると私は思うわけであります。そこで、この我が国の武器禁輸政策をてことして、イラン・イラク戦争調停に対し安倍外務大臣は今後どういう御努力をなされるおつもりか、お伺いをいたします。
  188. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 イラン、イラクが我が国に対してある程度の信頼感を持っているというのは、日本が平和国家であるし、あるいはイラン、イラク両国に対しても武器を輸出していない、またそういうことは認めない、こういうことが両国日本に対する信頼の一つにつながっておるのではないかというふうにも私は思っておるわけであります。  戦争は一進一退であります。しかし、最近の状況を見ますと、アジズ・イラク外相が日本に来ましたが、この四月三日に離日をして以来テヘラン攻撃も行われていない、あるいはバグダッド攻撃も行われていない。正確に言えば、六日以来テヘラン攻撃、五日以来バグダッド攻撃というものが行われていないということで、都市攻撃が今自重されておる。我が国もこの点については、直接イランの特使、イラクの外務大臣にも強く要請したわけです。直接、日本が言ったからストップしたということでもないでしょうが、そういういろいろな角度から進めておる努力というものは、それなりに実を結びつつあると思います。  しかし、依然として予断は許されない。軍隊お互いに国境に集結しているという情報もあるわけですから、これからどうなるかわからぬわけでありますが、我が国とそうしたイラン、イラクとのいい関係をこれからも我が国としても大いに活用いたしまして、何とか戦争がこれ以上拡大をしないように、そして最終的には平和的に解決するように全力を尽くしてまいりたいと思っております。国連事務総長も大いに努力しておるようでありますし、国連と日本との間でも非常に密接な連絡をとって、この問題に対応いたしておるところであります。
  189. 玉城栄一

    ○玉城委員 特に具体的に、イラン・イラク戦争調停に対する大臣の御努力につきましては、国民の中にも大変大きな評価もあるわけですし、さっき申し上げましたとおり、世界的にも大変注目を集めておるわけであります。歴代、いろいろな外務大臣がおられたわけでありますが、そういう中でも秀でて大臣が御努力しておられるということについては、本当に敬意を表するわけです。  こういうことで、余計なことを言ってもなんですが、私、先ほどの総理の写真入りのポスターの話ではありませんけれども、やはりもっと平和的に、世界平和について我が国が果たすべき役割というものを、我が国としても真剣に積極的にやるべきだと思いますし、その先頭に立って大臣が御努力しておられること、さらに頑張っていただきたいと御要望を申し上げまして、次に、これは外務省御当局にお伺いいたします。  昨年九月、イラン・イラク戦争終結のための国連への武器禁輸決議案提出を断念した理由について、お伺いをいたします。
  190. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お互いに、武器を抑制するというような方向でやることは確かに望ましいわけでございますが、同時に複雑な国際関係も絡んでおります。したがいまして、その当時の状況におきましても、また現在でもそうでございますが、日本日本側立場からいってたちどころにこれを提案するというようなことは必ずしも現実的でないという判断のもとで、実際にはしなかったわけでございます。
  191. 玉城栄一

    ○玉城委員 理由を伺っているのですよ。複雑な国際関係とか現実的でないとか、そういうことを伺っているんじゃない。そんなことはもうよくわかるわけですよ。せっかく決議案を用意されて、なぜ提出を断念したのかという理由を伺っているわけです。
  192. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  イラン・イラク紛争の拡大の一つの原因に、武器の供給がその役割を果たしておるのではないかという問題意識を昨年の国連総会の前に持っておったことは事実でございますが、今先生おっしゃいましたように、そういうものを決議案の形で国連に出すということを準備いたした事実はございません。
  193. 玉城栄一

    ○玉城委員 いわゆるそういう決議案を、具体的な準備とか作業とか、そういう決議案を我が国として国連に出そうという考えを持ったこともないわけですね。
  194. 山田中正

    ○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申しましたように、紛争拡大の一つの要因である、検討の対象にすべきであるというふうな考えで省内で検討しておったことは事実でございますが、これを国連の場に持ち出すというふうな検討及び準備をいたしたことはございません。
  195. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、さっき複雑な国際情勢がどうのこうのということで、それを今出すのは現実的ではないということで断念したとおっしゃったじゃないですか。
  196. 三宅和助

    ○三宅政府委員 私が申し上げましたのは、言葉足らずでございましたので正確に申し上げますと、その当時の状況において、確かに武器を多少抑制することが望ましいのではないかという考え方がありまして、非公式ながらそういう意見の交換が確かに意見としてはあり得たということでございますが、複雑な国際情勢下におきまして、具体的な準備として決議案を出すというところまで行ってなかったということでございまして、国連局長は当時おりまして、説明したとおりでございます。
  197. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、ですから、そのいきさつはいろいろおありでしょうからなにですが、いわゆるイラン、イラク両国に対する武器供与を何とかやめさせる方法は、具体的にどういう方法があるかということを検討されたことはないのですか、外務省とされて。大臣が一生懸命になっていらっしゃるわけですから、そういうことも全体として考えるのは当然でしょう、どうすればそういうことをやめさせることができるかと。
  198. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も外務省の事務当局と一緒になって、戦争の拡大防止をしていくというためには、とにかくイラクにも相当多くの国から武器が入っている、イランにも相当入っている、他国製の武器で戦っているという面があるわけですから、日本の武器禁輸と同じように他国からの武器の輸出がストップされれば自動的に戦争の拡大は防げるのじゃないか、そういうふうにも思いましたし、日本は何らかのことをやらなければならぬと思いまして、実は我々外相会議等におきましてもそうした問題を提起したわけでございます。  しかし、現実の姿としては、依然として武器はどんどん送られておるという状況で、ただ日本が提案したといっても、訴えてはおっても、それが現実的に拡大防止にはつながっていかない。たとえ国連に決議案を提案したとしても、これは現実的でない提案として葬り去られる可能性もある。そういうことで全体的に見て、日本のそういう基本的な考え方というものは、事に応じて他国に対して、特に自由国家群に対して進めなければならぬ、西側の国々に対しては事あるごとに主張する必要がある、こういうふうには思って今日でもそういうことを言っておるわけであります。  しかし、現実問題としては、なかなか日本の思うようにはいかない。こういうことで、理想として持ちながら、なかなか現実としてはそういう方向に進んでないのを私は残念に思っているわけであります。日本は、そうした考え方を進めるということも一つの方法ですが、それよりももっと具体的に何らかひとつ拡大防止につながらないかということで、昨年はむしろ三提案ということで、ペルシャ湾の安全航行とか、港湾の攻撃の禁止であるとか、化学兵器の使用禁止であるとか、そういう具体的な縮小、拡大防止の提案をいたした、こういう次第であります。
  199. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、重ねて大臣にお伺いしておきますが、安倍外務大臣は昨年十一月の本委員会土井先生に御答弁されて、防衛費一%枠は、我が国が軍事大国にならないという日本国民の選んだ道であると御答弁しておられるわけですが、今でもそのとおりでございますか。確認をいたしておきます。
  200. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、外務大臣として各国を回って、特に東南アジアの諸国は、日本が軍事大国化するのじゃないかという依然としたおそれを持っているということを強く感じたわけでございます。したがって、日本はそういう中で平和国家として各国の信頼、特にアジアの国々の信頼を得ていくには、やはり軍事大国にならないという一つの保障というものが必要じゃないか。そういう中に一%という三木内閣のときに決められた、これは防衛政策の軍事大国にならないという一つの歯どめでありますけれども、そうした決定が行われた、今日これが守られておる。これはやはり、一%というものは守っていくべきじゃないかということを考えたわけであります。  私は、他国から見てそうした軍事大国にならないという何らかの一つの歯どめといいますか、いろいろな歯どめがもちろんあるわけですが、その中の一環として何らかの原則というものがあってしかるべきじゃないだろうか、こういうふうに思っております。現在でも、一%は守るべきであるという中曽根内閣の考え方に立っておるわけです。
  201. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、ちょっとあっちへ行ったりこっちへ行ったり——まあ一%枠は、さっきも申し上げましたとおり、昨年十一月の答弁と現在でも変わりがないというふうに受け取ります。  もう一つ、今の点で、武器禁輸政策も私は全く同じだと思うのです。武器禁輸政策も、軍事大国にならないという日本国民の選んだ道である、こう思いますが、大臣いかがでしょうか。
  202. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これも、日本の平和国家としての一つの特質でありますから守っていかなければならない、こういうように思います。
  203. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、外務省当局に伺いますが、この武器禁輸政策について、アメリカについては例外だと言っても、それはあくまでも武器技術のことであって武器そのものではない、武器そのものは禁止である、そのとおりですね。
  204. 栗山尚一

    栗山政府委員 これは、五十八年一月十四日の官房長官談話というものがございまして、基本的には今玉城委員のおっしゃられたように、これは武器技術についてのみ対米供与の道を開いた、武器そのものについては従前どおり三原則による、こういうことでございますが、ただ官房長官談話にございますように、技術の「供与を実効あらしめるため必要な物品であって武器に該当するものを含む。」ということが官房長官談話に出ておりますので、その限りにおいて、これに該当するような武器は武器技術と同様に対米供与の道が開かれておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  205. 玉城栄一

    ○玉城委員 私がお伺いしていますのは、武器そのものは禁止でしょう。例えば具体的に言いますと、戦車を我が国アメリカに供与する、こういうことはどうですか。
  206. 栗山尚一

    栗山政府委員 あくまでも対米供与の主眼は武器技術でございまして、武器技術の「供与を実効あらしめるため必要な物品であって武器に該当するものを含む。」こういうことでございます。
  207. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、戦車はだめですね、禁止ですね。それを確認しているのですよ。
  208. 栗山尚一

    栗山政府委員 常識的に考えれば、そういうことだろうと思いますけれども、技術の「供与を実効あらしめるため必要な物品であって武器に該当するもの」、いわゆるプロトタイプでございますね、そういうものとしてどういうものがあるかということを一般的に、断定的にちょっと申し上げるだけの知識は私は持っておりません。
  209. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは、その辺からあなた方どんどん崩していくというのは、もうちょっと時間が——この問題、また後で機会を見てお伺いします。  そこで、今大きな問題になっているアメリカのSDIについてでありますけれども、このSDIは軍縮あるいは軍拡の眼目として世界が注目している。しかし、このSDI自体がどんなものなのか、海のものとも山のものともつかないのが現状ですね、そういう中で我が国アメリカ協力要請に盲目的に協力することは、たとえ武器技術の対米供与という建前があったとしても、おいそれと協力することはできないと私は思うのですね。それは、日本世界にアピールする武器禁輸国としてのイメージを根底から覆すことになりかねないことを懸念するからであります。あくまでも米国への武器技術供与の約束は例外であって、原則は原則としてきちっと守るべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  210. 栗山尚一

    栗山政府委員 SDIにつきましては、累次政府より御答弁申し上げているとおりでございまして、技術供与と申しますか技術参加と申しますか、そういうものにつきましては、今後アメリカからの情報提供も踏まえて慎重に、自主的に判断をするということでございます。  ただ、最後に玉城委員がおっしゃいました、対米武器技術供与は例外であるというお話でございましたが、これはほかの国に対しましては三原則を堅持する、アメリカに対しては例外的にその道を開く、こういうことでございまして、アメリカに対する供与そのものが原則禁止で例外があり得る、そういうようなものだというふうに委員が御質問になられたのだとすればそういう趣旨ではございませんので、ちょっと念のため申し上げておきます。
  211. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、とにかく時間が来てしまいましたので、あとの先生方に御迷惑をおかけしても——また、ゆっくり、勉強しながらいろいろさせていただくことにしまして、きょうはこれで終わります。
  212. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、木下敬之助君。
  213. 木下敬之助

    ○木下委員 外務大臣が、OECD閣僚理事会に出席及び米国訪問からの帰国報告をされて、お伺いいたしたわけですが、一連の会議の中身についてどういう雰囲気のものであったか、幾つかの点についてお伺いいたしたいと思います。  まず、この理事会に出席した大臣は、我が国大幅貿易黒字を欧米先進国はどのように受けとめているとお感じになったか、お伺いいたします。
  214. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 各国がそれぞれ赤字に悩んでいる中で、日本の突出した大幅黒字というのが世界貿易の秩序を危険に陥れる、これは自由貿易体制そのものもやはり危険な状況に陥れる、そういうふうな認識を持っておるのじゃないか、こういうような感じを持ったわけです。
  215. 木下敬之助

    ○木下委員 市場開放を中心とする我が国の対外経済政策、これは九日に発表されたものですが、これに対して欧米諸国はどのような反応を示していると思われましたか。
  216. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカにつきましては、私も参りまして、少なくとも政府の間には十分な理解ができた、こういうふうに思っております。ただ、アメリカ議会筋等はこれから動きが出てくるであろう、政府間の理解ができたといっても、アメリカの状況は全体的に見れば、決してそう生易しいものではないと思います。  ヨーロッパにおきましては、まず私がOECDに行った段階においては、EC諸国は、まだまだ日本の対外政策について十分な理解もないように思いました。しかし、ヨーロッパとしては、むしろこれはアメリカ中心にやったのじゃないかというふうな感じを持っている向きもあるようにも見受けられた次第です。  さらにASEAN諸国は、この措置に対しましては、ASEAN諸国のことについて十分積極的な姿勢が出ていないというふうな、むしろ消極的な判断をしておるような感じでございました。
  217. 木下敬之助

    ○木下委員 大臣は、今回の閣僚理事会で我が国に対する偏った黒字国批判に反論し、我が国立場と主張を明確にされたにもかかわらず、今回の共同声明によれば、我が国が名指しで黒字削減について注文がつけられております。これは極めて異例なことと思うのですが、どういうことなのか。我が国が置かれている国際的立場を深刻に受けとめるべきなのか、お伺いいたします。
  218. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回のコミュニケで、我が国につきましても黒字問題が挙げられたわけでありますし、同時にまた、アメリカも名指しでもってアメリカドル高、高金利等が指摘をされた。さらに、その他の国々といいますか、これはヨーロッパ諸国でございますが、ヨーロッパ諸国につきましても構造調整の問題が取り上げられたということで、三者並列でそれぞれ努力目標がここで指摘されたということであります。私は、特にその中で、我が国の問題を取り上げられた、アメリカそれからECとともに取り上げられるということについては、我々としてもこれはやむを得ないことであろうと思ったわけでありますが、我が国の問題を取り上げる中にあって、特に黒字問題が国際緊張をもたらす、こういう字句については納得ができないということで反論を加えて、この点を削除せしめたということであります。
  219. 木下敬之助

    ○木下委員 会議の雰囲気をできるだけ知りたいのでございますが、大臣として、行かれる前とそこで感じたもので、行く前以上に深刻だった、こういう感じですか。その辺が一番知りたいところなのです。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 大体出るだろうと思った問題が出されたという全体的の感想であります。
  221. 木下敬之助

    ○木下委員 今大臣も言われましたが、報道によりましても、我が国の大幅な貿易黒字に対し、名指しで日本が国際的な経済緊張を高めている、そのように欧米諸国が対日批判を集中した、こういうことでございますが、これに対して、我が国の黒字解消の努力や市場開放政策理解を示し、我が国立場を支持してくれるような参加国の閣僚はいなかったのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  222. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 残念ながらほとんどいなかった。具体的な名前を挙げて言うのもどうかと思いますけれども、ドイツのバンゲマン経済相は、ドイツも黒字であるということもありますし、また自由貿易を信奉している国でもあると思います、そういう中でこのコミュニケの草案に対して一つの妥協案といったものを出されたということもありまして、そういう妥協案等を中心にして論議が重ねられた事実もあったわけであります。
  223. 木下敬之助

    ○木下委員 個別はと言われましたけれども、せっかく出されたのですから、西ドイツは幾らか理解的な姿勢で発言されたということですか。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 我が国の主張にもそれなりに耳を傾けてもらったのじゃないだろうか。しかし、全体的な雰囲気は決していいものではなかった、こういうふうに思います。
  225. 木下敬之助

    ○木下委員 従来のOECD閣僚理事会では、アメリカ財政赤字の是正要求については日欧が共同してその削減を求めたり、新ラウンド交渉のときは日米協調して推進役を果たすなど、均衡のとれた各国に対する政策の調整機能を発揮してきたわけでございます。ところが、今回の会議では、我が国の市場開放要求で欧米が結束して批判を集中し、日米欧の均衡した各国政策の調整力を発揮するということにならず、この会議の性格が変化してきているのではないか、このように思えるのですが、どうでしょうか、大臣の感触をお伺いいたします。
  226. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 最終的にはコミュニケ合意したわけでありますから、最終的にはいろいろと各国がOECDの精神に基づいて協調精神を発揮した、こういうふうに思います。その中で、確かに黒字問題については日本に対して批判も集中したわけでありますが、ニューラウンドについては日、米、カナダが相協力してこれを積極的に推進する、あるいはまた混合借款の問題については、むしろアメリカに対しまして日本とヨーロッパがどちらかというと足並みをそろえた、こういうこともあったわけでありまして、全体的に見れば日本問題も今までになく出たわけでありますが、とにかく協調の精神は貫かれたのじゃないか、こういうふうに思います。
  227. 木下敬之助

    ○木下委員 今大臣も話題にされました新ラウンド早期開始大臣が代表演説の中で訴えたわけですが、これに対する反応はどうでございましたか。
  228. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 早期開始、すなわち日本の場合は、具体的にことしの夏ごろには高級事務レベル会談を開いて準備をやる、来年早々に交渉を開始する、こういう具体案を示したわけでありまして、これはアメリカも示しましたし、また同様の趣旨をカナダも主張したわけでございます。これに対してECは、高級事務レベル会談を開くということについては賛意を表し、同時にまたニューラウンドそのものについても、早期に交渉を開始するということについてもこれを考え方として述べたわけでありますが、残念ながら、来年から交渉するということについてはECは最後までこれを支持しなかったということで、コミュニケには括弧つきで記述が「幾つかの国」ということによって明示されたという妥協が成立したわけです。
  229. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうことで、交渉開始の時期が合意なされなかった。その理由は、今のようにばらばらなだけですか。何かあって合意ができなかったと考えられますか。
  230. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはECは、実はOECDの閣僚理事会が開かれる前にEC自体の閣僚理事会が開かれて、そこで一つの枠がはめられておる。それは、ニューラウンド開始することには賛成だ、これは決定をするということであったけれども、時期を明示するということまで閣僚理事会が決定をしなかった。したがって、ECの代表が閣僚理事会で、ECの最終意思決定機関であるところの閣僚理事会の承諾を得ない以上は自分としてはその時期に同意することはできない、ただ、ニューラウンドを早急に開くということについて賛成であるということですから、来年開くということとできるだけ早く開くということとの間にそう大きな差はないのですが、ただ自分はそういう決定権を持ってないということで最後まで突っ張ったわけであります。
  231. 木下敬之助

    ○木下委員 ということは、開始の見通しとしてはもう立っておる、このように大臣は判断されましたか。
  232. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 高級事務レベル会談がことしの夏以後に開かれるわけでございますが、それで大方の合意ができれば、ECも、じゃことしじゅうに開始してもいいじゃないかということまで言ったわけでありますから、私は、全体的にOECD各国としてはできるだけ早く、それもできれば来年じゅうにでもスタートを切ることについては異存はないのじゃないだろうか、こういうふうに思うわけであります。OECDとしては、ただ開始の時期を今から予断するということ、これは自分たちとしては権限がないから認めるわけにはいかない、こういうことでございました。
  233. 木下敬之助

    ○木下委員 大臣はこの会議に出かけられる前に、これは新聞報道ですけれども、閣僚理事会で採択するコミュニケに来春までに新ラウンド開始することでの合意を盛り込むことが最大の目標、このように強調されていたということでございます。そのとおりだと思います。  で、今見通しは立ったといいながら、はっきりそういうことはできなかった。この結果をどのように評価しておるのか、お伺いいたします。
  234. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本としては、そういう強い姿勢で臨まなければならない、ただ、ECがそういう決定権を持ってないからなかなかこれは困難である、こういうふうにも思っておったわけでありますが、しかし何とかECを説得してこれを盛り込みたい。幸いにしてアメリカ、カナダの歩調が合っていますから、ここでひとつ押し込んでいかなければならぬ、こういう決意で臨んだわけですが、数時間にわたる議論でついにはっきり盛り込むことはできなかった。しかし、期限を括弧つきでも盛り込むことができたのは、全体的な合意が煮詰まりつつあるというふうな感じは持っておるわけで、私はニューラウンド開始については非常に明るい見通しを持つことができた、こういうふうに思っております。
  235. 木下敬之助

    ○木下委員 それをはっきりさせるためにも、交渉開始時期の合意ボンサミットで取りつけるべきではないかと考えますが、大臣のお考えと見通しと決意をお伺いいたしたいと思います。
  236. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 恐らくボンサミットでも、このニューラウンドが一つの議題になることは当然でありまして、その中でアメリカ日本、カナダは来年早々の開始を主張する、こういうふうに思っておるわけでございます。しかしヨーロッパ勢が、ECの決定というものがあるわけですから、なかなかそこまで進むかどうか、これはそのときの論議を見なければわからないと思います。今、保護主義のいろいろな動きも出ておるわけでございますから、ヨーロッパ諸国もニューラウンドを早くやるということについては異存はないわけでございますから、これは今後の努力次第であろう。大変微妙な、また難しい問題ではあります。しかし、これは全然できない相談でもないと思いますので、日本としてもアメリカともども最大の努力をする必要がある、こういうふうに思います。
  237. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、外務大臣とシュルツ米国務長官とのお話についてお伺いいたしたいと思います。  これはどういうものであったのか、その雰囲気をお聞かせいただきたいと思います。
  238. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 雰囲気は、私も十七回目のシュルツさんとの会談でございますから、非常に和やかな雰囲気の中で行われました。この二人の会談で、この厳しい状況の中で何とかひとつ日米関係に筋道をつけて、そしてサミットに向かって成功の路線を敷いていかなければならぬ、全体的にこういう雰囲気で会議が行われたわけでございます。  その中で私は、四分野の説明をし、日本対外経済対策についての説明をしました。日本としては、これだけの誠意を持って努力している、今後ともこれらの問題の解決には全力を尽くしたいということを主張しました。これに対してシュルツ長官は、日本努力は認めるにやぶさかではない、今後もそのフォローアップというものが大事であるということを大いに主張されまして、政府間では、日本のこれだけの努力は認めましょうということで話し合いがついたということであります。  また、黒字の問題につきましては、日本だけが責められても、これは日本責任だけとは言えません、アメリカドル高とか高金利の問題も考えてもらわなければならない問題だということにつきましても、シュルツ長官理解を示されました。  こういうことで、日本アメリカ政府間では、なかなか理解がつかないでどうなるかという一つの雰囲気があったわけですが、全体としては筋道だけはついたんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  239. 木下敬之助

    ○木下委員 その会談の中で、日本の大幅な貿易黒字是正に内需振興、景気拡大の抜本的な対策を公式に要請された、このように受けとめた報道がございますが、実際にはどういうニュアンスのものだったのでしょうか。これは不満として表明された、こういう感じだったのか、それともこうしてくれという、はっきりとした内政干渉とも言えるようなものであったのか、お伺いいたしたいと思います。
  240. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、要請されたとか要求されたとかということではないと思います。シュルツさんの考え方を述べられたものであるというふうに理解をしております。  といいますのは、私が参りましたら、早速シュルツ長官が先般プリンストン大学で行いました演説の草案を私に手渡しまして、そして、この中に日本問題についての自分の考えが述べてあるのでひとつ研究してもらいたい、こういうことでございました。そして会談の中では、日本は非常に貯蓄率が高くて、それが日本の国内投資とバランスがとれてない、そういうところに問題があると自分は認識しておる、しかしこれは、もちろん日本に押しつけようとかということではなくて、自分の考えを述べたものである、こういうことを言われたわけでございます。  ですから、押しつけたものであるということではないわけですが、シュルツさんの考えの中では、やはり日本の市場アクセスを改善するだけでこの黒字問題は解決できない、日本の内需振興というものが黒字問題を解決する一つの大きな筋ではないだろうかという認識があるように思ったわけです。私はそれに対して、それも一つの考えかもしれませんが、今の日本の高い貯蓄というものが、アメリカの高金利に引かれて、残念ながらいわゆる資金流出として流れてきておるところにも問題があるのじゃないでしょうかということを述べると同時に、内需振興については、日本がこれからやるところの中期的な経済対策の中でも我々は考えておりますということも説明をいたした次第であります。
  241. 木下敬之助

    ○木下委員 シュルツ長官のそういった話の中で、内需振興、景気拡大の具体的なものは何かはっきり出てきたのでしょうか。  先ほど貯蓄の問題等も出ましたが、大臣も言われましたプリンストン大学で行った講演の中で政府の規制緩和や資本自由化の一層の促進を求めているという新聞報道なんですが、それは大臣に口頭でも言われたのですか、それとも大臣は、演説の中身を読んでくれということでシュルツ国務長官の表明される中身だとおとりになったのか、お伺いいたしたい。
  242. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 シュルツさんのプリンストン大学での演説に日本問題が含まれておるわけでございまして、この日本問題の中で、要するに日本は非常に高貯蓄である、高貯蓄でありながら低消費であるし、また低消費の結果、余剰資源は国内投資でなく輸出に向けられておる、そこでこの余剰資源を活用して輸出圧力を弱める方途の一つが日本国内の投資機会の開放ではないか、こういうふうなことを述べておられますが、高貯蓄であるし、それが今の日本の国内投資とバランスを欠いておるのでその点が今後の問題ではないだろうかということで、具体的にああしたらいいとかこうしたらいいとか、そういう注文をつけられたわけではありません。
  243. 木下敬之助

    ○木下委員 注文をつけられたわけではありませんけれども新聞に書かれておるように高貯蓄を国内の投資に回すよう、その方法としては政府の規制緩和や資本自由化の一層の促進を求める、こういうことがシュルツさんの言いたいことの中身だと受け取ってよろしゅうございますか。
  244. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 さらなる市場開放、あるいはまた金融の自由化、そういうものが背景にあるということは、これはシュルツさんの持論でありますから、こういうことも演説の中には含まれておると思いますが、具体的にそういうことを述べられたわけではありません。
  245. 木下敬之助

    ○木下委員 市場開放の方は今お伺いしましたが、政府の規制緩和ということもプリンストン大学で述べられたということでございますが、この政府の規制緩和というのは、シュルツさんは具体的にどういったことを指して言われておると思われましたか。
  246. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も今演説の要約を手にしたばかりですし、まだ詳細に点検したわけでありませんので、規制緩和ということはシュルツさんの口からも出ませんし、そこまで書いてあるかどうかわかりませんが、デレギュレーションあるいは民間活力の推進、そういうようなことは私の口から言ったわけであります。
  247. 愛野興一郎

    愛野委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時五十分休憩      ————◇—————     午後四時四分開議
  248. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木下敬之助君。
  249. 木下敬之助

    ○木下委員 安倍外務大臣は、日米外相会談の中でシュルツ米国務長官から、日本の大幅な貿易黒字是正に内需振興、景気拡大の対策を求められた。これに対して外務大臣は、内需拡大策の何か具体的なものを挙げて検討を表明されたわけですか。
  250. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは求められたわけではなくて、シュルツさんもその辺は非常に慎重な言い方でしたけれども日本に対してこれを求めるというわけじゃないが自分の意見を言わしてもらう、これはプリンストン大学で私が演説した内容の一部であるという前置きで、日本世界の中で大変貯蓄率が高い、貯蓄率が高いにもかかわらず消費は非常に低い、あるいはまた投資と貯蓄率との間にアンバランスが非常にある、だから貯蓄率が消費につながる、あるいはまた国内投資につながっていくということが必要なのじゃないか、そうすればまた輸入の拡大につながる、やはり日本の黒字はただ単に市場アクセスの是正だけでは直らない、こういう趣旨のお話がありました。  私は、確かに貯蓄率が高いことは事実であるけれども、肝心の貯蓄が残念ながら今アメリカの高金利に引かれて、アメリカの方に流れていっているというところに大きな問題があるのじゃないでしょうか、もちろん、内需振興についても我々としては決してなおざりにしておるのではなくて、今度の九日の対策におきましても、例えば民間活力の推進であるとか、あるいはデレギュレーションを進めるとか、週休二日制を確立して消費をふやしていくとか、そういうことで今努力を傾けよう、こういう最中であります、こういう説明をいたした次第であります。
  251. 木下敬之助

    ○木下委員 それに対してシュルツ長官の方は、今内需振興のアドバイスはしないが、次の機会意見を交わしたい、このように言われたと報道されておりますが、その次の機会というのはいつのことですか、サミットのことですか。
  252. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その次に会う機会だという話ですから、サミットのときだろうと思います。自分の論文もひとつよく検討してくれ、こういうふうなことでありました。
  253. 木下敬之助

    ○木下委員 そのサミットのときにそういった中身についてのアドバイスがあった場合、そのアドバイスを受けるのですか、それともそういったアドバイスは内政干渉だと言って突っぱねるおつもりですか。
  254. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アドバイスといいますか意見お互いに言い合うというのは、OECDでもあるいはその他日米の会談でもよくあることでありまして、決して内政干渉的なものでないし、これをやる、やらぬというのは日本の問題ですから、シュルツさんも財政学者でもありますし、そういう点について意見を聞いたりまた私の意見を述べたりすることも大事なことであろう、こういうふうに思っております。
  255. 木下敬之助

    ○木下委員 来月のボンサミットでは、この問題についてシュルツ国務長官と話し合うだけでなく、我が国経済政策問題が重要な議題となるのではないかと考えますが、どうでしょう。
  256. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このボンサミットでは、まだ議題がきっちり決まっておるわけじゃございませんが、日本の黒字責任論というのはないと思いますけれども、しかしやはり日本の内需振興を求めるような空気はアメリカだけではなくてヨーロッパサイドにもありますから、恐らくそうした観点からの議論が出されるのではないだろうか、こういうふうに私も思っております。
  257. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう観測のもとにこのボンサミット日本経済政策問題が主要議題の一つとして取り上げられることになれば、我が国の個別分野の市場開放政策のみにとどまらず、我が国経済運営の基本的なあり方にまで踏み込んだ政策転換を迫られることになるおそれが強いのではないかと考えますが、この点はどうでしょう。
  258. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本的な転換ということはあり得ないと思います。例えば、機関車論というようなことはこれまでのサミットで行われまして、これは否定された事実がありましたから、インフレなき持続的成長というのがいわゆるサミット合意になっておりますから、そういう観点からのお互い議論の展開であろう、こういうふうに思っておるわけです。
  259. 木下敬之助

    ○木下委員 今までいろいろとお伺いしてまいったのですが、私は、そういうニュアンス等も、新聞報道のことも踏まえながら総合的に判断してみますと、我が国は、対外経済対策発表政策運営を明確にしているにもかかわらず、OECDの閣僚理事会では欧米諸国から標的にされ、さらに日米外相会談では米側から我が国経済の構造要因についてまで直接言及されるなど、新たな認識をせざるを得ない局面を迎えたということを意味するのではないかと考えますが、外務大臣はどう受けとめておられますか。
  260. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はこれからもそうした議論が先進国間で出てくると思いますし、日本の黒字がさらに伸びていけばもっと強い、例えば内需振興に対する圧力も加わらないでもないと思います。反面、我々としても、日本、EC、アメリカ間においてもECの構造調整の問題、アメリカの高金利あるいはドル高の問題などが、あわせて論議されていくのだろうと思います。しかし、最終的には、自由貿易体制を堅持しながらインフレなき持続的成長、安定成長を図っていくというのが、サミットの基本目標として今回も合意される見通しといいますか、そういう方向になることを我々も期待しておりますし、そうなるであろうと判断しております。
  261. 木下敬之助

    ○木下委員 今までと違って、欧米諸国と認識に少しずれがあるような感じを受けるのでございます。こういう状態でいくと、孤立していくのじゃないかという感じもしないでもないのですが、これからのことはおいておいて、まずOECDの閣僚理事会の中身でお伺いします。  世界経済の緊張要因、テンションという言葉に随分こだわって、削除を言ったけれどもなかなか削除できなくて、一時間以上応酬してやっと削除できたという報道でありますけれども、これはどういうことでしょうか。そういう世界経済のテンションは存在しないということで合意を見てそれを削除することができたのか、逆に言うとそれは存在しながら、日本が一生懸命頑張ってそれを書かせることだけは外すことができたという認識のずれが出てきておるのかどうか、確認させていただきたいと思います。
  262. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私の認識では、日本だけが大幅黒字国である、そしてまた市場アクセスに問題がある、そのことが世界経済を非常に緊張させておるということは、どうも納得できないわけです。世界経済を緊張させておるとすれば、それはアメリカの高金利、ドル高も大きな要因であるし、あるいは欧州の依然として続いておる不況、失業というのも大きな要因であるし、そういうものが並列して書かれて、その上で世界経済が非常に緊張的な状況にあるというならわかるけれども日本だけが緊張、あとはそういうことが書かれてないということでは、日本だけ突出して批判されることになるからこれは認めるわけにはいかない、こういう趣旨で反駁をしたわけでございます。この点については、最終的には各国とも日本の主張を認めたということであります。
  263. 木下敬之助

    ○木下委員 もう一点お伺いしたいのです。  日本の国際的な責任の重さということが言われて、これは当然なんですが、この問題についても、これまでは世界の一〇%という大きな経済力の経済大国としての前向きに果たしていく責任、そうしたものが日本責任という感じであったのが、いささか角度が変わって、今の状態の原因としての日本責任のようなものが追及されてきているのではないか、こういう感覚を受けるのですが、どうでしょう。
  264. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろと見方もありますし、それから誤解とか無理解に基づく発言も相当あるのじゃないかと思っております。  日本の黒字が急速に膨大になったことが彼らに、それは日本貿易障害がそれだけひどいのじゃないかという非常な誤解を生んだわけで、日本はECなんかと比べて決して保護政策がきついわけでもありませんし、あるいはアメリカとの間におきましても、市場開放措置は着々と進んでおるわけですから、その辺の黒字問題、貿易障害が何かごっちゃにされて日本が悪者扱いされるといいますか、それは理屈抜きで、ある意味においては、自分たちが赤字で苦しんでいるときに日本だけが大幅黒字を持っているという一つのやっかみといいますか、そういうものが感情的、気分的に多少あるのではないかと思っております。そういう点は、今回のOECD閣僚理事会でも十分に議論いたしましたし、また発言もして、日本に対する正確な理解を求めたわけであります。
  265. 木下敬之助

    ○木下委員 大臣は、ブッシュ副大統領ともお会いになったと聞いております。新聞報道では、ホワイトハウスで会談するというような報道もございましたが、結局どこでお会いになって、その内容はどんなものであったのか、お伺いいたします。
  266. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは表敬で、三十分間でありますが、ブッシュ副大統領の公邸に行ったわけであります。  私から、シュルツさんとの間の会談がうまくいった、我々としては誠意を持って四分野を初め市場開放に努力しておる、政府間では大体大筋の了解ができたので、ブッシュ副大統領は同時に上院議長を兼ねておられるので、大事なのは議会であるから議会の鎮静化をお願いしたい、こういう趣旨のことを言ったわけでありまして、ブッシュさんからは、今の議会は大変な、それこそテンション状況にあって、日本に対しては非常に厳しい態度で臨んでおる、その空気は我々も抑え切れる状況ではないというお話がありました。また、日本のこうした市場アクセスの問題には、日本の官僚制度の問題があるのではないかという指摘もされました。  私は、責任を回避するわけではないけれども議会の一部には誤解に基づく日本批判があるが、黒字問題がすべて日本責任だと言われても日本は納得できない、アメリカドル高、高金利政策が黒字の大きな要因であることもアメリカの議員には十分知っていただきたい、そういう点でひとつ冷静に対応していただきたいということを主張した次第でございます。  ブッシュさんの全体的な感想としては、今非常に難しい事態になってきた、しかし、日米間が相協力してこれから進んでいかなければならないということは自分もしっかり認識しておる、こういうことでございました。
  267. 木下敬之助

    ○木下委員 この会談は、ブッシュ副大統領はレーガン大統領の指示で急遽会うことになったという報道があるのですが、実際はどういういきさつでお会いになるようになったのか、また、レーガン大統領が急遽指示したとしたら、どういう意図で指示されたとお思いですか。
  268. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その辺のことはよく承知しておりません。ただ、ブッシュ副大統領も会いたい、私もお目にかかりたいということで会ったわけです。
  269. 木下敬之助

    ○木下委員 ボンサミットの開催に先立って、中曽根総理はコール西独首相と首脳会談を行うことを決定した旨伝えられておりますが、これは事実でしょうか。
  270. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ボンサミットの前に、中曽根総理は西ドイツをコール首相の招待により訪問することに相なりましたので、首脳会談が行われることはそのとおりであります。
  271. 木下敬之助

    ○木下委員 ことしは、第二次大戦終戦からちょうど四十周年に当たるのですが、平和の維持発展を確保するための立場から、この首脳会談で日本・西独間で新たな協力関係を構築しようという考えでやられるのでしょうか。
  272. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本と西ドイツの関係は非常に安定した関係にありますし、コール首相も日本を訪問しております。今度はコール首相が中曽根総理を招待して、その招待に基づいて訪問するわけでございますが、経済的な自由貿易体制あるいは自由国家群の一員としての両国関係、そういうものをさらに強化したいというのが日本の考えでもありますし、恐らく西ドイツのコール首相の考えでもあろう、こういうふうに思います。
  273. 木下敬之助

    ○木下委員 開発途上国に対する経済協力分野で、日本・西独間で援助政策の調整を図り、効率的な援助政策の推進を目指すようなことは考えていないのでしょうか。また、その援助実施の手法も改善の余地があると思いますが、そういったことを改善し、例えば既に実施したものへまたてこ入れをするとか、こういったことも考えて、両国で停滞する経済協力の打開策を協議する考えはないのか、お伺いいたします。
  274. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日独間でも、援助問題についてはこれまでも協議もしておるわけでございますし、今後も首相の訪問によりまして、それぞれの援助の基本姿勢というものはありますが、そういう枠内において協力し合うことができれば、援助を効率的に行うためにこれは有意義なことになろう、こういうふうに思っております。今回の訪問の結果、直接どこにどうするということじゃなくて、いろいろとまたこれから進めるかどうかということが決まっていくだろうと思います。
  275. 木下敬之助

    ○木下委員 終わります。
  276. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、田中美智子君。
  277. 田中美智子

    ○田中(美)委員 安倍外相に伺いますが、ヨーロッパに行った帰りにシュルツ国務長官にお会いになって、黒字のすべての原因を日本責任に押しつけるのは承服できない、ドル高、高金利を挙げて反論したというふうに報道されておりますが、これは私もその点では賛成をしております。こういう観点から四月九日の対外経済政策の中身を見ますと大変矛盾を感じますので、御質問をするわけです。  今、日本の関税率というのは一五%、アメリカの方は二〇%ということで日本の方が低いし、世界的にも最低と言われておりますが、そのとおりでしょうか。
  278. 恩田宗

    ○恩田政府委員 関税は品目によって違いますので、国際的に比較することは非常に難しゅうございますが、ならしまして平均をいたしますと、おっしゃるとおり、日本、EC、アメリカを比較しますと日本が一番低くなっております。
  279. 田中美智子

    ○田中(美)委員 日本が一番低いにもかかわらず、これをまださらにゼロにせよというようなことも、この間全米林産物協会副会長のジョン・ワード氏が記者会見で、こういう意見もあるのだ、ゼロにしなければ意味がないのだというようなことも言っておりますし、閣議決定の中でも、三年をめどに引き下げる方向で検討をするというようなことを言っているわけですが、こういうふうになりますと、日本の林業というのは非常に大きな打撃を受けるというふうに思います。  例えば、合板では二万五千世帯の人が百六十工場に関係しているし、また製材でも数万人の人、二万の工場というのに影響がありますし、素材関係でも六万六千企業、これは小さい企業ですが、そこで働く人たちの数というのは膨大です。また、森林の持ち主は二百二十万世帯、こういう大ざっぱな数字を時間がありませんので私の方が申し上げましたが、こういう方たちが全滅するのではないかというふうなことを言われています。  そういう中で、なぜこういう大きな犠牲を払ってまで、日本の関税が世界で最も低いにもかかわらず、これが黒字対策で出てきたのか。これに対しては非常に疑問があるというふうなことが、あちこちで報道されたり言われたりしています。  これは、NHKの十一日の「焦点」の「木材と市場開放」というところでの対談でキャスターが話していたことですが、自動車などと比べますと木材関係はまさに小錦三人と赤ん坊の比較なんだ、どうしてこんな小さな問題が国際問題、国と国との重大問題として黒字対策で出てきたのかがわからないというようなことを、NHKの「焦点」で言っていました。なぜこんなものが黒字対策に出てきたのですか、その点を安倍外相にお聞きしたい。
  280. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の関税は、確かに世界一低いということは間違いないと思います。しかし、その中で非常にでこぼこがありまして、高いものの中では、ほかの国と比べて非常に高いものもある。ほかの国も、また日本と比べて非常に高いものもあるわけですね。自動車なんかは日本はもうゼロですけれども、相手の国はそれぞれ関税を持っている。平均しての問題ですから、これは余り比較にならぬと思います。  また関税という問題は、二国間で論議するというよりも多国間で論議すべき問題で、そのために東京ラウンドとかこれからのニューラウンドというものがあるわけで、二国間の平均というよりは、世界全体の中でバランスがとれるというのが関税の本当のやり方じゃないだろうか。そこで、我が国としては、ニューラウンドというものを主張しておるわけでございます。  そういう中にあって、低い日本の関税の中では高い今の木材製品については、日本はこれだけの黒字を持っているので、アメリカの輸出力があるところの木材製品をもっと買ってほしい、それにはやはり関税を下げてほしいというアメリカの要請で、それはそれなりにアメリカの要請として我々も受けとめておるわけであります。しかし日本としても、下げろと言われても簡単に下げるわけにはいかないわけで、木材製品については日本の国内産業に大変大きな影響を与えるので、これは下げられませんということを今までも言い続けてきたわけでございます。  しかし、アメリカ議会で大変な対日批判が起こる、場合によっては日本の製品輸入を制限するという制限法案、報復法案までアメリカでかかりそうだ。そうすると、保護主義というものがアメリカに一斉に蔓延をして、日本貿易国家で立っているわけですから、日本の受けるダメージというものは大変大きなことになるわけでございますし、日本としてもやはり自由貿易を守って初めて日本の繁栄というものがあるわけで、できるだけのことはしなければならぬ。しかし、国内産業も守っていかなければならぬ。  こういうことで、いろいろと政府部内で苦心惨たんいたしまして、五年以内に日本の林業の体質を強化する、あるいはまた日本木材製品業界の体質を強化する、そういう段階に応じて三年以内に関税も引き下げていきましょう、こういうことを決定いたしたわけでございまして、そうした日本政府決定は、日本のいわゆる木材製品関係の業界さらに林業のあり方というものを十分踏まえた上での決定であった、こういうふうに思います。
  281. 愛野興一郎

    愛野委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時二十九分休憩      ————◇—————     午後四時五十一分開議
  282. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、政府に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、政府委員答弁は簡潔明瞭に願います。  質疑を続行いたします。田中美智子君。
  283. 田中美智子

    ○田中(美)委員 先ほど大臣は、木材の関税の問題についても保護主義になるかもしれない、制限されるかもしれないとかそういうことを言って、日本の林業を強化するというようなことを言われましたけれども、それは何の策もなく今林業界の常識として絶望的になっている。私は大分、何人かに当たってきましたけれども、もしこの関税が引き下げられれば壊滅である、日本の山も壊滅に近い状態になる、こういう大きな犠牲を払っている。これをなぜ黒字を取り除くものにするのかということで、先ほど言いましたNHKの「焦点」でも出ておりましたけれども、これは国際問題になるような問題ではないんだ、裏に政治献金が絡んでいるんだ、非常に個人的な問題ではないかというようなことを言われていたわけです。  それで、アメリカの選挙管理委員会の公表した資料ですけれども、八四年の大統領選挙に絡んで、レーガンを推しています共和党に政治献金が多額に贈られている。例えば、ウェアハウザー社などが何回かにわたって金を渡している。そのころの新聞によりますと、日本の輸入を拡大するということで選挙中に演説して、大拍手を受けたというようなことが書いてあるわけです。この政治献金をした大きな材木関係の企業というのは西部に相当限られておりまして、その西部の財界というのがカナダとか南部の方から押されて非常に苦しくなっている、こういうところの議員がレーガンを非常に押し上げていった。  そういう関係から、今度の問題は非常に個人的な、限られた企業に対する対策であって、本来の黒字対策ではないんじゃないかということで、四月七日のABCテレビでチャールズ・シュルツという方が言っていたのですが、アメリカは今日本をスケープゴートにしているんだ、いけにえにしているんだということをはっきり言っていたり、また日本新聞などでも、首相が親友ロンにしてやれる最大のプレゼントとなっても不思議ではないんではないかというふうに、ほとんどの新聞の報道にしてもまた財界、木材関係の方たちにしても、これはレーガンが公約を西部の材木の財界にした、これに対して中曽根さんがこたえているのではないか、実際にはこれによってほとんど黒字は解消しないというふうに言っているのですが、これに対する安倍外相のお答えを簡単にお願いしたいと思います。
  284. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカの事情は私よく知りませんが、内部事情は共産党さんが勝手にといいますか御判断なさっているんでしょうが、しかしアメリカ日本との関係は、貿易のアクセスの問題でいろいろと問題がある。農産物もその一つです。その中の一環として木材製品というのが出てきているわけですね。おっしゃるように、私もそう大きな黒字解消につながるとは思いませんけれどもアメリカからいえば、もっと公正な市場開放をしてほしいという要請で来ているわけですから、これを受けて、日本の木材業界とかあるいは日本の森林業界が大きな打撃を受けないように、今すぐやろうというわけじゃなくて、そういう体制をつくって、そして徐々に引き下げていこうということですから、これは日本としての姿勢は政府・与党の決定として、それなりにアメリカの要請にもこたえ、また自由貿易を守るという立場からも筋の通ったものである、こういうふうに思います。
  285. 田中美智子

    ○田中(美)委員 黒字は余り解消しないというふうに言われましたこと、私もそのとおりだと思いますので、これは全く必要ない。日本の林業を守るといっても、現実には守る具体策が何もないというふうに思いますので、関税を下げるということには私は絶対賛成することができません。  その次に伺いたいことは、医薬品や医療機器の問題です。特に医療機器の問題ですが、厚生省に事実をちょっと確認をしたいのです。安倍さん、ちゃんと聞いていていただきたいと思うのです。  五十三年度のドル高のときに、呼吸測定装置器というのをやはり黒字減らしという形で日本に輸入するという政策で、これは厚生省に圧力をかけたのか厚生省みずからなさったのかわかりませんけれども、千七百万円ぐらいするものを三十台から五十台ぐらい日本に輸入していると言われています。その当時、医者やこれを扱う技術者などは、アメリカの機械よりもイギリスやスイスの機械の方がいいというふうに言ったにもかかわらず、厚生省は通達まで出しまして、輸銀から金を貸してやるからというので民間の病院などにこの機械を買うことを勧め、また国立病院には相当の圧力がかけられたというふうに、国立病院に聞いたわけですが、答えています。  この機械をつくっているSRL社というところに、その当時ある国立病院から電話をかけたところが、これは製造中止になっている品物である、ですから、故障してもその部品はもはや後からは入らないし欠陥商品ではないかというふうに言われて、何カ所かの国立病院ではこれを買わなかった。イギリスのものを買いたいと申請したところが、一たんイギリスのものをアメリカが輸入して、そしてアメリカから日本に買わせるというような形でやったというようなことを言われています。  それで、このSRL社から買った呼吸測定装置器は、その後ほとんど役に立たず使われなかったということで、イギリスのものは今なお使っているけれども、これは使われなかったということになりますと、黒字対策のためにこうした莫大な金額の医療機器を厚生省に押しつけ、国立病院に押しつけて、実際にはほとんど役に立たない。私は、医療機器というものは、よそから買うなら人間の健康を守るために考えて選ぶことが本当の自由貿易と思いますけれども、こういうことが過去にあったということです。  この点で厚生省に伺いたいのですが、一体そのとき何台ぐらいを幾らで、そして製造中止になっていたことを知っていて輸入したのかどうか。簡単にお願いします。
  286. 目黒克己

    ○目黒説明員 御指摘の機器でございますが、それぞれの国立病院からの申請に基づきまして、医療機器整備計画といものをつくりまして整備したものでございます。その整備状況は、私どもの方、今の時点でわかっておりますのは、四つの病院に入れていることが今わかっておるところでございます。また、その使用状況につきましては、当然これは五十三年度の機械でございますので、耐用年数を既に経過いたしておりますけれども、現在、それぞれ月平均七十件程度の検査を毎月行っているものでございます。
  287. 田中美智子

    ○田中(美)委員 実際には今二カ所ですか、と言っていますけれども、全国では約三十台から五十台のものを買わせているということを言われています。今調査中で、厚生省はよくわからないというふうに私には言っておられましたけれども、これはぜひ厚生省として調べて、私に、どこの病院で現在製造中止になっているこの機械を買っているのか、耐用年数と言われますけれども、現場では耐用年数が切れてもなかなか買ってもらえないということで古いものをまだ使っているではないか、それなのに現在ではこの機械がほとんど役に立っていない。では、どこでどのように使われているのかということを、きょう伺ったところではまだ調査中だということですので、後をきっちりと調査してやっていただきたいと思うのです。  ですから、こういう形で医療機器がまた入ってくるのではないかという点で、私はこのことを中心に今責めているのではなくて、こういう不信感があるわけですから、医療機器の輸入についても黒字対策だけの考え方で、どんなものでも、アメリカの要らなくなった、また欠陥商品、製造中止になったものまでも買い込むようなことは、絶対しないようにしていただきたいと思うわけです。  それと同時に、医薬品についてもそうですが、外国の臨床データを受け入れることについては、国民の中に非常に不安が高まっています。これは、人種差のないものだけにするんだと言いますけれども、一体人種差というのはどこにあるのか、基礎医学的に言って一体どこに限界があるのかということは、非常に不明なわけです。  これとは直接関係ありませんけれどもアメリカの薬に対する不信感というのは、最近特にアメリカに住む人が多くなったということで、向こうの薬を飲んでいろいろな副作用が出たということは子供にも大人にもあります。それから、大臣御存じだと思いますが、血友病の人たちが使う血漿もほとんどアメリカからの輸入ですけけれども、こういう中からAIDSなどというふうな恐ろしい病気が日本に入ってくるということで、国民のアメリカの薬に対する不信感は今非常に高まっているときです。  こういうときに医薬品が、黒字減らしのためにいろいろな障壁が取り払われていくということでは、日本人としてはまずます不安になる。体格や食べ物も違いますし、医療慣行も違うわけですから、こういう点では十分の注意というよりも、こういうことを黒字減らしのために使うことには非常に問題があると思いますし、国民の不安というものを非常に高めていると思いますが、この国民の不安に対してどうこたえるか、この点について外相の御意見をお聞かせください。
  288. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、アメリカが四分野について要求してきておる。これに対して日本協議をして、日本がそれなりに努力を続けておりますのは、ただ単なる黒字減らしということでなくて、アメリカにとりましてはもっと公正な貿易をしよう、市場をもっと自由化しようということでありますし、その間の手続だとか認証制度だとか、アメリカにはない日本の障害がいろいろとあるからこれを取り除いてくれということでやっておるわけで、その中の一端として医薬品とか医療機器についてもアメリカからいろいろと要請が出ている。  日本としても、やはり自由市場あるいは自由貿易体制を守っていくためにはこのアメリカの要請に応じて、具体的にこれはできる、これはできないということで分けて、できるものはやっておるわけでありまして、今おっしゃるように、何もかものみ込んで日本の医療行政に混乱を起こさせようとかそういうことではないわけでして、最終的には自由な市場の中で消費者の選択に任せるということが公正な貿易ではないか、こう思っております。  今、医療あるいは医薬品の問題でも論議が進んでおります。そして、アメリカが要求したいろいろな項目の中でできるものはこれをやる、できない点もありますからそういう点はできませんということで整理をして、最終的なこれからの委員会の詰めに入るということですから、おっしゃるようにいろいろと問題が起こるということはあり得ないわけです。
  289. 田中美智子

    ○田中(美)委員 あり得ない、そういうことだけでは国民の不安はなくならないということは、御承知おきいただきたいと思います。国民は、中曽根内閣はアメリカにいちずに屈服しているというふうな感じが日に日に高まっているのではないかと思っているわけです。  大臣が中座されるそうですので最後のことを先に申し上げたいと思いますが、そもそも黒字の原因は、高金利が一つの大きな要因であるというのは安倍さんも認めていらっしゃるわけです。これはサッチャーさんでさえ、レーガンさんに直接言っているわけです。今度の五月二日から始まりますボンサミットに向けては、ヨーロッパ諸国と協力して、アメリカドル高、高金利、これが一番の黒字の原因であって、それは日本責任ではないんだという点で、腹を据えてしっかりと話し合いをしてきていただきたいという注文も一つつけたいと思います。  それからもう一つの注文は、安倍外相も内需拡大が大切だということを言っておられるわけです。この内需拡大は、やはり金がなければ国民は物が買えないわけですから、幾ら中曽根さんが二万五千円でアメリカのものを買え、舶来品を買えと言っても、金がなければ買えないわけです。アメリカと比べてみましても、日本の労働時間はアメリカよりも年間二百十時間長い、それから賃金はアメリカの半分です。私は、この問題はまさに黒字をつくっている日本の要因だと思うわけです。ですから、内需拡大をする——時間短縮、賃金を上げるということや、下請の工賃が非常に安い、こういうことをどのように改善するかをしっかり腹に入れて、日本もこういう努力をするからアメリカも高金利に対してもっと努力せよというふうに、腹を決めてボンサミットに出席していただきたいと思います。  この二つの点についての御見解をお願いしたたいと思います。
  290. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ボンサミットではいろいろと議題が出てきまして、お互いに率直な意見の交換が行われる予定になっておりますし、全体的には、やはり先進国の間の経済をよくして、開発途上国との間の協調関係をさらに推進していこうというのが目標でありますし、経済全体も、インフレのない持続的な安定成長に持っていこうというのがその基本的な姿勢であるわけです。  そういう中でいろいろと問題が起こっている。例えば、日本の非常に突出した黒字、これは何だかんだ言っても世界の中では非常に大きな黒字になっております。この辺につきましては、やはり世界も黒字解消というのをある程度求めておりますから、この期待にこたえるための内需の振興だとか市場アクセスの改善であるとか、そういうものを進めていかなければならぬわけです。また、黒字の原因がアメリカドル高、高金利に大きく依存していることは事実でありますから、こういう点もやはりアメリカに対して率直に指摘をしなければならぬ。あるいは、ヨーロッパでまだ依然として不況、失業が深刻でございますから、そういう点もヨーロッパ自体の努力としてこれを克服してもらわなければならぬ。  そういうお互いの問題点を出して論議をして、そして全体的な協調関係を確立して、お互い協力しながらこれからの世界経済の安定に向かっていこうということでなければならぬと思いますから、そういう意味では率直な議論が行われるのが当然であるし、今までもやってまいりましたし、これからも行われるであろう、私はこのように思っておるわけでございます。  内需拡大については、今財政再建の最中ですから、国家財政でもって内需を大きく拡大するといってもなかなか困難であろうと思います。ですからその中で、例えば今度の九日の決定で出されておりますような民間活力の推進であるとか、規制緩和によるところの活力の増大であるとか、週休二日制度なんかも実行していけば、やはりそれだけ国民の消費がふえてくるわけですし、あるいは金融政策の機動的な運営とか、そういう工夫をした努力というものがこれから行われなければならない、こう思っておるわけでございます。  日本経済は非常にいいし、我々は努力すればこれからも日本経済をさらに発展させることができるわけですから、その根幹にはやはり世界の中の日本としての自由貿易体制というものがなければ日本の発展はあり得ない、そういう意味で、日本日本なりの、ある意味においては犠牲も払っていかなければ世界の中で日本の信頼を保っていけないし、日本の発展はあり得ない、こう思いますし、そういう中での努力が今続けられている、こういうことであります。
  291. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大臣が退席なさいましたのは大変不服ですけれども質問を続けさせていただきます。  穀物の一千万トン輸入の問題ですが、日本政府は今のところこれに対しては否定しているようですが、この点については、あくまでも輸入しないということは確実なのでしょうか。この点をお聞きいたします。
  292. 木幡昭七

    ○木幡説明員 米国の穀物を我が国の食糧援助に充てるようにという要望に関連しての御質問でございますが、これは全然やらないということじゃございませんで、過去においても若干部分使用してきた実績はございます。ただ、今回のように一千万トンというような膨大な額でございますと、我が国の現在の食糧援助のスキームでは対応できる限界を超えておりますので、これはけさの委員会大臣も御答弁になられましたように、一つのアイデアとして大臣は承られた、こういうふうになっております。
  293. 田中美智子

    ○田中(美)委員 アイデアというのはどういうことですか。
  294. 木幡昭七

    ○木幡説明員 一千万トンを全部援助で買ってくれなければ困るというような、そういう一つの要求ということではなくて、できる範囲内で購入、使用してもらいたい、その場合の一つの大きなめどとして、一千万トンぐらいまでやってもらえばそれにこしたことはない、そういうことかと推測いたしております。
  295. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それは向こうのアイデアということですね。日本がそれを買うということではないわけですね。回答が非常に不鮮明な感じがいたします。時間がありませんので、もう結構です。  WFPからすれば、日本に米を現物で期待しているということがあります。これに対しては、もちろん日本はタイからお米を買って送っている、こういうものがアフリカの援助にもなるということで、これはそれなりにいいことだと思うのです。それは発展途上国を援助することになりますし、また、アフリカなど困ったところに対する援助にも回るわけですけれども、なぜ今アメリカに援助しなければならないのか。ですから、朝日新聞に出ておりました、アフリカ援助ならぬアメリカ援助だというようなことが書かれているわけですが、これに応ずるということがあればますます日本政府アメリカ政府に屈服するということですので、こういうことは非常に国民にわかりやすいだけに国民の怒りを非常に買うと思いますので、こういうことには絶対に応じないで、毅然とした態度日本政府は臨んでいただきたいと思います。安倍外相の意見を聞きたいのですが、それにかわる方の御意見をお聞かせください。
  296. 木幡昭七

    ○木幡説明員 ただいまタイ米のお話がございましたが、おっしゃるとおり、これは私ども食糧援助に使用いたしております。アメリカ産の穀物につきましては、過去におきましても、これも午前中の委員会大臣が数字を挙げて御答弁になられましたが、七万七千トンほど購入している実績がございます。そういうところを踏まえまして、総合的に食糧援助の枠組みでどういう対応ができるのか、そういうことを慎重に検討してまいる、こういうことでございます。
  297. 田中美智子

    ○田中(美)委員 最後に一つ質問いたしますが、アメリカの高金利はどうしてなったのでしょうか、その点、お答えください。
  298. 恩田宗

    ○恩田政府委員 いろいろな要因が考えられると思いますが、レーガン政権がとっております安定的通貨供給の維持とインフレ抑制的な金融政策というのが第一点じゃないかと思います。  第二点は、やはり米国の中における政府の大幅な財政赤字、それに反しての国内における盛んな投資需要の増大、こういういろいろな要因が絡まりましてこういうことになっている、かように理解しております。
  299. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それは、非常に基本的なことをきっちりと見てないのじゃないかというふうに思います。  ここに日米委員会の基調報告がありますが、ぜひ読んでいただきたいと思います。これの七十ページに、アメリカ財政赤字と高金利というのは、防衛費の支出の成長率の何らかの削減がない限りは、これはできないということを言っているわけですね。これは非常に大きな要因だというふうに思うわけですから、あくまでもアメリカ努力によって黒字を解消していくということと、日本の要因というのは、今ここで対外経済対策で出されたものではなくて、内需拡大、時間短縮とかこういうことが日本の方の要因である。アメリカの方では、防衛費に使い過ぎているということが、二千億ドルの国債を出しているわけですから、それだけ民間からドルを吸い上げているわけですね、借金をしているわけですね、こういうことがアメリカの金利が非常に上がっているということの一番の根本ではないかというふうに思っています。そういう意味での今の答弁は大変不十分だと思いますが、時間ですので、私の質問はこれで終わらせていただきます。
  300. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、来る十九日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十分散会