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安倍国務大臣 私もOECDの閣僚
理事会で、これで通産
大臣のときを含めまして四回出たわけですが、一回目と二回目は
各国が不況、
失業、インフレということで、
各国とも大変な状況でありますから、
お互いに傷をなめ合うといいますか同情し合う、そして
世界経済、特に先進国
経済を何とかよくしていかなければならない、そういう暗い空気の中でも一種の連帯感的なものがあったように思います。
しかし、その後、
日本が急激によくなっていく、そして
アメリカの
経済も徐々に復活する、あるいはまた、EC諸国もインフレだけは何とか抑えるという状況になって、去年の段階ではむしろ
日本が
各国から称賛をされた。その中で立ち上がって一番安定したのが
日本だ、そういう
意味での
日本経済のパフォーマンスあるいは
経済政策というのは非常にすばらしいものがあった、あるいはまた先端技術等の
日本の
努力というのは目覚ましいものがあった、むしろ去年は相当の国から
日本礼賛という声を聞いたわけであります。
ことしは、一面においては依然として
日本に対するそういう称賛の声もありましたけれ
ども、反面、また
日本の
経済がよくて、その結果むしろ黒字が非常に増大したということについて、相当の国からその黒字問題をとらえての
日本批判というものがあったわけでございまして、この点はやはり全体として相当空気が変わったなというふうな印象を率直に受けましたし、また、閣僚
理事会で
コミュニケを採択するに当たっては、
日本の黒字が国際
貿易の緊張をもたらす、こういう字句を
各国が挿入しよう、
日本だけをひとつ取り上げて、
日本に対する反省を促す、あるいはまた
日本に対して改善を求める、
日本を取り上げてのそういう
議論が随分なされました。
これに対して我々は、これは承服できない、黒字の原因は
日本だけでなくて、
アメリカの高金利だとか
ドル高だとかにおるし、あるいはまた、ヨーロッパで依然として続いている不況あるいは
失業というところにも問題があるのではないかということを力説いたしましたところ、そうした
日本だけを言挙げをするというような空気が一応変わりまして、
日本にも問題がある、しかし同時に
アメリカにも問題がある、またECにも問題があるということで、三者並列して
コミュニケでそれぞれの国の
努力を求めるという形に案文がなったわけでございます。
そうした空気を私は見まして、確かにおっしゃるように、ヨーロッパ諸国においても、これまでと違って
日本に対する
批判が相当強くなったなという感じを身をもって強く感じたわけでありますし、また
日米関係は御
承知のとおりで、
日米の
政府間においては一応の筋道はついたと思いますけれ
ども、
アメリカの
議会は、あるいはまた一部の世論は、
日本に対してこれまでとは相当違った形での
批判というものが集まりつつある、こういう
情勢は
日本としてなかなかなおざりにはできない事態ではないかということで、私自身も非常な緊張感を持って
日本に帰ったわけでございます。
どういうところに原因があったか、これはいろいろあると思いますが、いずれの国もそれぞれの問題を抱えております。
日本も、
財政赤字というような大きな問題があるわけですが、しかし、
日本だけが
経済が非常にいいということ、そして膨大な黒字が、何といいましても
世界の、特に先進国の神経を逆なでしている。私は極端に言えば、黒字問題というのが結局
世界のそうした世論といいますか、国々の大きな反発を買ったゆえんではないか、そして、その黒字のゆえんは、確かにその他にも要因があるけれ
ども、
日本の市場アクセスに大きな問題がある、
日本はどんどん金ばかりもうけて、
日本自身の市場の開放というものをやらない、自由
貿易を高々と叫びながら、市場は依然として閉鎖性が多いというような印象が
各国の間にいつの間にか植えつけられて、それが一つの反発となり感情となって
日本に対する
批判につながっていったのじゃないか、こういうふうに思います。
したがって、我々はそうした
議論をそのまま受けとめるわけにはいきません。
日本は
日本の
立場があるし、黒字は黒字についての原因があるし、また市場アクセスの問題についても
日本は
努力しておりますし、関税等についても、EC諸国などと比べると
日本の方がいい体制にあるわけですし、農産物についても、それは
アメリカは
日本に対していろいろと注文をつけておりますが、ECの農産物に対する保護
政策というものは
日本以上のものがあるわけですから、そういう点では大いに
議論しなければなりませんが、そういう
日本の正当な
立場というものが諸外国になかなか
理解をされてない。これは
日本政府としましても、これから大いに考えて、こうした
世界に対する
日本の正当な
立場というものを
理解をさせるように
努力していかなければならぬということも、また痛感をしたような次第であります。
いずれにしても、原因の最たるものは
日本の
大幅黒字、そして
日本の市場アクセスというところに焦点が置かれたということが、はっきり言えるのじゃないかと思います。