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安倍国務大臣 日本としましては、基本的には、自由
貿易体制を世界の中で維持
発展をしていくということが、世界の平和、経済の安定あるいは繁栄というものを続ける上に絶対不可欠な要件だ、同時にまた、
日本がこれから生存し、
発展をするためにも不可欠だということで
努力を重ねております。したがって、
輸出につきましても、集中豪雨的な
輸出ということは保護主義を招くことになりますから、
日本自身で節度のある
輸出を行うために、
アメリカあるいはヨーロッパ諸国等とも相談をする場合もありますし、相談しないで行う場合もあります。ヨーロッパ諸国等に対しては、天気予報と言われるような形で節度のある
輸出をしておりますし、対米
輸出では、今の
鉄鋼、
自動車等はこれまで
アメリカと相談して規制をしておる、あるいは電気製品その他いろいろとやっておるわけでございます。
これはあくまでも、
日本自身が自由
貿易体制というものを続けていかなければならぬ。これ以上、
日本の生産力あるいはまた精度の高い、競争力の強い製品がどんどん自由に出ていくと全く集中豪雨的になるということで、みずから節度を保ち、規制もしておる産品も随分あるわけでございます。これはあくまでも、自由
貿易体制というものを保っていきたいということでございます。
しかしそういう中で、
貿易は自由ですから、じわじわと
アメリカに対しましてもやはり力が強いという形で
黒字がふえておる。これは背景として、
アメリカ自身にも
ドル高という大きな
原因があるわけで、例えば
日本なんか恐らく円にしましても二百五十円前後と言われておりますが、もっともっと高くても、二百十円や二百二十円あるいは二百円でも、
日本は
輸出するだけの力を持っているんじゃないかと私は思っております。
アメリカの
ドル高によりまして、そうした点でさらに
日本に
輸出力というものをつけてしまった、これが大変大きな
貿易の
黒字になったわけでございますし、これはただ単に
日本が
市場の閉鎖をしておるということではない。
アメリカから製品の輸入がふえないじゃないかと言いますが、これは
ドル高が大きな
原因にあります。また先ほどいろいろとありましたが、
アメリカの
輸出努力にも問題もないわけではないと私は思っております。これはヨーロッパについても、そういうことが言えるのではないかとも思うわけでございます。
いずれにいたしましても、
日本外交の特に経済
外交の基本というものは、自由
貿易体制をいかに守っていくかということであります。それには
日本としても、
アメリカやその他の国々から
日本自身が
市場を閉鎖しているのではないかという批判を受けないように
努力をし、そういう
指摘があればこれに対して積極的に改善を図っていくということは当然ではないだろうか、こういうふうに思いますし、また各国との間の十分な
理解を深めて、各国、特に
アメリカの保護主義というものが今
議会を通じて翕然として起こっておりますが、この保護主義というものが具体的な法律となってこれが実行されるというようなことになりましたら、これはもう自由
貿易というものが、
アメリカが保護主義になってしまえばヨーロッパもさらに保護主義の勢いを加速するでしょうし、ブロック経済的なものになるかもしれない。あるいはまた、保護主義が蔓延した世界の経済の形ということになりますと、
日本自体の受ける
打撃というものもまたはかり知れないものがあるわけですから、そういう中で
日本としてもできるだけのことはしながら、しかし同時に、世界の
理解を求めて保護
貿易というものを排して自由
貿易を守っていく。ですから、ニューラウンド等を
日本が
主張しているのも、こうした観点に立っているわけでございます。
大変難しい
事態ですが、
日本としても自由
貿易体制を守るためにベストを尽くしていかなければならぬ、私はそういうふうに思っております。