運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1985-03-26 第102回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十六日(火曜日)     午前十時三十二分開議 出席委員   委員長 愛野興一郎君    理事 野上  徹君 理事 浜田卓二郎君    理事 山下 元利君 理事 井上 普方君    理事 土井たか子君 理事 玉城 栄一君    理事 渡辺  朗君       鍵田忠三郎君    北川 石松君       鯨岡 兵輔君    佐藤 一郎君       中山 正暉君    仲村 正治君       西山敬次郎君    町村 信孝君       綿貫 民輔君    岡田 春夫君       河上 民雄君    小林  進君       八木  昇君    大久保直彦君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君       田中美智子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 北村  汎君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君  委員外出席者         経済企画庁調整         局調整課長   西藤  冲君         運輸省国際運         輸・観光局国際         航空課長    平野 忠邦君         外務委員会調査         室長      高橋 文雄君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   石川 要三君     海部 俊樹君   鍵田忠三郎君     倉成  正君   北川 石松君     石原慎太郎君   仲村 正治君    小此木彦三郎君   木下敬之助君     小平  忠君 同日  辞任       補欠選任   石原慎太郎君     北川 石松君  小此木彦三郎君     仲村 正治君   海部 俊樹君     石川 要三君   倉成  正君     鍵田忠三郎君   小平  忠君     木下敬之助君 三月二十五日  辞任       補欠選任   石川 要三君     金丸  信君   鍵田忠三郎君     浜田 幸一君   北川 石松君     渡辺美智雄君   仲村 正治君     田澤 吉郎君   岡崎万寿秀君     中島 武敏君 同日  辞任       補欠選任   金丸  信君     石川 要三君   田澤 吉郎君     仲村 正治君   浜田 幸一君     鍵田忠三郎君   渡辺美智雄君     北川 石松君   中島 武敏君     岡崎万寿秀君     ――――――――――――― 三月二十五日  国際原子力機関憲章第六条の改正の受諾につい  て承認を求めるの件(条約第二号)  千九百七十九年の海上における捜索及び救助に  関する国際条約締結について承認を求めるの  件(条約第三号)  大西洋のまぐろ類保存のための国際条約の締  約国の全権委員会議(千九百八十四年七月九日  から十日までパリ)の最終文書に附属する議定  書の締結について承認を求めるの件(条約第四  号)  北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約  を改正する千九百八十四年の議定書締結につ  いて承認を求めるの件(条約第五号) 同月六日  ILO条約百五十三号の即時批准等に関する請  願(兒玉末男紹介)(第一七八九号)  同(吉原米治紹介)(第一七九〇号)  同(兒玉末男紹介)(第一八〇三号)  同(田並胤明君紹介)(第一八〇四号)  同(左近正男紹介)(第一八八三号)  同(関山信之紹介)(第一八八四号)  核巡航ミサイル・トマホーク米太平洋艦隊艦  船への配備、日本寄港反対等に関する請願(中  川和三郎紹介)(第一八〇二号)  核兵器全面禁止等に関する請願中川利三郎君  紹介)(第一八一七号)  同(不破哲三紹介)(第一八一八号) 同月十九日  核巡航ミサイル・トマホーク積載艦船日本寄  港反対等に関する請願大出俊紹介)(第二  三一五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 愛野興一郎

    愛野委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 久しぶりで、当外務委員会国際情勢についての質問の機会がきょうあるわけでありますが、前回当委員会を開きまして以後、外務大臣は、故コンスタンチン・チェルネンコ・ソ連共産党書記長の国葬に参列をされました。三月十四日の日に外務大臣中曽根総理とともに、クレムリンでミハイル・ゴルバチョフ書記長会談をされているわけでありますが、その節の新書記長に対する印象と申しますか、ソビエトの対日外交、対日政策というものに対して、どのような感触を得られたかという表現で聞いた方がいいかもしれません、その辺をまず大まかになるかもしれませんが、聞かせていただきたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回、故チェルネンコ書記長の葬儀に参列いたしまして、新しいゴルバチョフ書記長に二度にわたりましてお目にかかりまして、一度は表敬でありますが、二度目は首脳会談でございまして、これは一時間近くあったわけでありますが、やはり五十四歳という若さがあふれておるというふうな非常にエネルギッシュな感じも受けましたし、また考え方も、相当柔軟性を持っておるというふうな感じも率直に受けたわけでございますし、これからのソ連を背負って立つ、非常に長期的な安定政権がここから生まれてくるんじゃないだろうかという感じも率直に持ったわけであります。  しかし、日ソ間の問題につきましては、グロムイコ外相もそばにおりましたし、また同時にゴルバチョフ書記長も、どちらかというと極東問題特に日本問題については、それほど知識が深いというふうな感じは率直に受けませんで、多くの会談が行われた中の一環でしたが、日本との二国間の問題については、いわば、グロムイコ外相と私たちがこれまでやってまいりましたその基本というものの上に乗ったゴルバチョフ書記長発言でありました。しかし最終的には、グロムイコ外相訪日の件につきましては、ゴルバチョフ書記長みずからが積極的な意欲を示されたという点は特徴的に思いますが、全体的に見ると、米ソの軍縮問題、軍備管理の問題については意欲がありありと見えたわけですが、日ソ関係全体につきましては、これでもって大きな変化とかあるいはまた前進がある、そういうことを印象づけるような感じは、率直に言って持たなかったわけでございます。  しかし、何といいましても、新しい政権ができ、そして新しい若い指導者が生まれたわけでございますから、これを機会日ソ関係というものの対話を進めようということについてはもちろん一致しておりますし、グロムイコ外相訪日というものを何とか実現をして、ひとつ何とか対ソ改善といいますか、そういう方向の糸口をつくらなければならぬということを率直に感じた次第であります。
  5. 土井たか子

    土井委員 今回の若い新書記長に対して、各国がいろいろな論評を即刻出しているのは当然のことなんですが、例えばフランスのル・モンド紙なんかを見ますと、ソビエト平和共存デタント必要性というのをずっと見ていくと、従来方針どおり共存パートナーとしては、その軍備の質や重要性からいって、ソビエトと同格の米国に相手を限るというふうに考えるというふうな一つの視点と、もう一つでは、いや、そうじゃないのだ、変化をつけたデタント政策アメリカという障害を迂回して、欧州諸国やそれから特に日本にもパートナーとして相手を求めていくべきだというふうに考え考え方があって、後で申し上げたような方向に新書記長は進むであろうという予測を含めて記事を出しております。  当初は、新書記長とお会いになることがなかなか難しいといういきさつがあったやに、私も承っているわけでありますけれども、突然と言ったら語弊があるかもしれませんが、首脳会談が時間をとってなされたといういきさつには、新書記長が自身でそれだけ考えて、そういう方向が出てきたのであるかどうか、そのあたりとかみ合わせながら少しお話を承らしてください。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この点につきまして、最初は二十分間という会談予定が一時間にも延びたわけでございますし、あるいはまた、最初向こうからのオファーチーホノフ首相と会っていただく、こういうオファーであったのがその後変更になりまして、ゴルバチョフ書記長みずから会ったということにつきまして、ソ連の内部においてどういう変化がその間にあったのか、わずかな時間ですが、まだ憶測の域を出ませんで、いろいろと外務省でも分析をしておりますし、またいろいろの国にも問い合わせもしておるわけでありますが、真相は明らかではありません。  しかし、少なくともチェルネンコ書記長の際に会った国々と比較をいたしますと、ゴルバチョフ書記長の場合はずっと範囲を広げまして、例えばカナダとかあるいはまたイタリーとかフィリピンのイメルダ大統領特使等にまで会っているというふうに、大変幅を広げて非常に精力的に各国首脳と会っております。これは、やはり新しい書記長で非常に健康であるし、十分な時間に耐えられるということもあって、ゴルバチョフ書記長意欲的な外交活動といいますか、そういうものが大前提にあるのじゃないだろうか、こういうふうに私は思っております。したがって、特に日本だけを選んでゴルバチョフ書記長が会ったというふうにとることは、これからの日ソ関係あるいはこれまでの日ソ関係というものから考えますと少し早計じゃないだろうか、また、こういうことを考えることは、これからの将来を考えるときも非常に問題を残すことになるのじゃないか、こういうふうに私は思います。
  7. 土井たか子

    土井委員 早々と今どうのこうのと言い切ることは、それは当然のことながらできないと思いますけれども、十二年ぶりの日ソ首脳会談の中でいろいろ話があった、それを要約して言うと、両国関係改善の時期に来ているのではないかという方向での話し合いであったというふうに私たちは受けとめているのですが、その中でゴルバチョフ書記長が、日本国際的役割の中で評価できる部分もあるというふうに述べられているというふうなことが新聞で伝えられております。  そこで、そういう発言の中のこの評価できる部分というのは、何というふうに外務大臣としてはお考えになりますか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは冒頭の部分で、日本国際的役割につきましてはそれなり評価をしておるというふうな発言であったように思います。これはやはり、最近における日本国際社会における存在が非常に重くなったといいますか、国際社会における活動というものが世界の中でだんだんと評価をされてきているということ、これは外交面における日本活動はもとよりでございますが、経済の面における日本の実力というものが世界の中でも非常に突出をしてきておるというふうなことが、ソ連としても隣国の単なる日本というよりは、隣国の力を持った国として一定の評価を加えなければならぬし、あるいはまた世界活動日本のやっていることについてもそれなり評価はしなければならぬ、こういうふうな意味が込められておるのじゃないだろうか、私はそのことを聞いたときそういうふうに思ったわけでございます。
  9. 土井たか子

    土井委員 経済的な評価ということでそういう発言があったように、一言で言うと今の外務大臣の御答弁は受けとめられるわけですが、先日来のいろいろな新聞記事、それから書物その他を見ておりますと、特に新書記長にかわってから後のソビエトに対して自分の見解はこうだ、考え方としてこういうふうに思っているということを披瀝されている方々がどんどん出てまいっております。  その中に、大臣も御承知の青山学院大学の教授である猪木正道教授、元防衛大学の学長でありますし、元京大の教授なんですが、この猪木正道氏が新聞に寄せられている御意見を見ますと、ソビエトとの取引関係から考えていくと今後日本科学技術が物を言うのじゃないかということが重点に置かれて、しかし、そのためにも考えていかなければならない要件が幾つかある、その中で、北方領土問題の解決がなければ対話はあり得ないというふうな姿勢では日ソ間の話し合いは進展しない、したがって、北方領土問題の解決がなければ対話はあり得ないという姿勢があるとしたらそれを脱却しなければならない、ただ、国境問題の未解決というものを常にソビエト認識させておくことも必要である、こういうことを一つ言われているのですね。また一つは、ソ連に対し必要以上の脅威感を与えない、これは非常に大切な問題だ、こういうふうに言われているのですが、これに対して外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本対ソ外交基本姿勢は、やはり北方領土を解決して平和条約を結ぶということでありますし、これはしばしばこれまでの日ソ会談においても日本立場を明らかにしてまいりましたし、今回の首脳会談でも中曽根総理からも明快に言っておるわけでございます。しかし、同時にまた隣国であるソ連との間では、これまでにも長い歴史を持っておりますし、この関係改善していくということも、これは同時に日ソ間という立場だけではなくて、アジアの安定のためにも必要であることは言うまでもないわけであります。したがって、いろいろな不幸な事件等もありましたけれども、日本としましては、こうした領土問題は領土問題としてあくまでも主張し続けるとともに、日ソ対話をあらゆる角度から改善をしていこうということで対話を進めてまいりました。やはりこの姿勢は今後とも続けていかなければならない。  そして、対話の中でも、対話を通じて改善しなければならぬいろいろの面がまだまだたくさんあるんじゃないか、その一つの大きなスタートは、まさにグロムイコ外相訪日じゃないだろうか、そういうふうに私は思っております。そういうことで今積み重ねてきておるわけでございます。  そういうことですから、日ソ関係、領土問題というのは、たとえグロムイコ外相がお見えになっても、日本としてはやはり日本基本的な主張として述べなければなりませんが、しかし、その他経済協力の問題だとかあるいはまた文化協定の問題であるとかあるいはまた租税協定の問題であるとか、いろいろとまだこれから道を開かなければならぬ面があると思います。あるいはまた、今までやってまいりました中東問題についての協議だとかあるいは国連についての協議だとか、そうした協議をこれまで続けてきたということが、これはやはりソ連首脳部日本それなり役割というものにもつながっていったんじゃないかと私は思いますし、そうした面での対話というものもこれから進めてまいらなければならぬ、そういうふうに思っております。
  11. 土井たか子

    土井委員 それは総括的な御答弁ですから、個々の問題に対して注釈を加えていただくという御答弁では今はなかったわけです。  例えば、猪木先生科学技術に対してソビエト側が期待するというふうに言われても、ココム規制が現にありますね。そういう問題に対して今後どのように取り扱いを進めていくかということは、当面の問題に恐らくはなってくるでしょう。しかし、それにつけても話し合いにいつも出てくるのは、ソビエト側にとって日本側アメリカ極東戦略の道具になっているという一つ脅威であります。この問題をどのように今後動かしていくかということによって、話し合いというのはスムーズにいったり話し合いにならなかったりするということが決せられるわけでありまして、そういうことからすると、今のココム規制それから後で申し上げた問題は、当面、四月二日から青森県の三沢にF16が配備されるという予定にもなっておりますから、これはソビエト側から見ると大変な脅威でありましょう。こういうことに対して外務大臣は、今総括的なお答えですから、さらに具体的に私は申し上げました。どのようにお考えですか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 科学技術につきましては、これからの日ソ関係貿易関係を進めていく、あるいは経済協力関係を進める場合においてココムという大きな障壁があるわけで、これは日本だけじゃなくて、アメリカあるいはヨーロッパ自由国家群それぞれの約束事としてあるわけでございますから、そういう大きな枠組みの中で日本としても動かなければならぬわけでございますし、これは国際情勢変化によっていろいろと変化もしてきておるわけでございます。最近の米ソ関係核軍縮交渉の再開に伴う緊張緩和という状況が出ておりますから、そういう中で関係諸国と話し合って決めていかなければならぬ、日本だけで動いていくというわけにはいかないのじゃないか、こういうふうに思います。  それからソ連の対日認識につきましては、首脳会談におきましても中曽根総理から日本防衛政策基本あるいは安保政策基本について申し述べたわけでございますが、これに対してゴルバチョフ書記長考え方は、これまで私がグロムイコ外相からしばしば聞いておりますような認識と全く一緒でありまして、例えば、最近の日本NATO戦略に組み込まれているというふうなこと、あるいは沖縄に核があるんじゃないか、こういう情報もありますよ、日本の港には核を積載したアメリカの軍艦が入ってきているのではないか、そういう発言がありました。日本の今の防衛政策あるいは非核三原則というものに対して決して信頼できない、日本アメリカNATOの大きな戦略一環に組み込まれているのではないかというソ連認識は、グロムイコさんが私に言ったときとゴルバチョフさんの今の認識と全く変わっていないということは、はっきり言えるんじゃないかと思います。  十分な時間がなかったから論争までに至らなかったわけでございますが、こうした点等については、日ソ基本的な認識の問題でありますから、領土問題とともに日ソ間で十分論議を尽くさなければならぬ課題であるということを痛感した次第です。
  13. 土井たか子

    土井委員 向こう認識が変わらないと言うが、それはこっちの姿勢が変わらなかったら当然のことだと思うのです。いつまで行ったって平行線のレールのようなものだというふうにしか言いようがないのです。しかし、日ソ間の話し合い、歩み寄りということを考えるならば、その辺は状況を変えていかなければどうにもならないという問題が、現実に我々にも問われているということをはっきりさせなければならないなと思うのです。  ところで、ソビエトに対しての例のアフガン侵攻制裁措置というのは、現在でも有効に働いているのですか、いかがなんですか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アフガン問題というのは風化させてはならない、やはり他国の領土に外国が進駐するということは、世界の平和のためには許されるべきことではないということで、このアフガンに対するソ連侵入というものに対しては、我々は非難をし続けておりますし、その措置も続けておるというわけであります。
  15. 土井たか子

    土井委員 そうすると、グロムイコ外相の来日を懇請された、来ていただくことに非常に期待をかけておられる、これはアフガン制裁措置の中に人物往来というのが一つあるわけですから、それからすると、も竹やこれは制裁措置そのものがおかしくなってきているという格好にもなるわけです。この節、グロムイコ外相訪日要請ということで、制裁措置をおやめになるという格好になるのですか、いかがですか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 制裁措置をやめるということは言えませんけれども、時代は移っておりますし、日ソ関係の空気も、アフガン大韓航空機撃墜事件以後ずっと好転しているわけでございます。日本としても、そういうものは現実的に対処して、そして改善への道を開いていかなければならない。日本として言うべきことは言わなければなりません。しかし、道は開いていかなければならぬのではないか。ですから今回も、デミチェフという文化相日本に招待をいたしましたし、あるいは科学万博でソ連閣僚日本に来られるということであります。グロムイコさんの場合は、日本から懇請しているわけではなくて、グロムイコさんが日本に来られる順番ですよということを言って、グロムイコ外相もそれはそのとおりですということで、今その段取りが進んでおるということであります。
  17. 土井たか子

    土井委員 そうすると、今外務大臣がおっしゃったとおりに、人物往来も単にグロムイコ外相だけでなくてもう既に現実にあるわけですから、制裁措置は形骸化していっているというふうに考えてよろしゅうございますね。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 形骸化しているといいますか、具体的に現実的に、世界情勢変化の中で日ソ対話あるいは人物交流というものも進んできておるということではないかと思います。
  19. 土井たか子

    土井委員 それは非常に示唆に富んだ御答弁だと思うのです。制裁だ、制裁だと言って手を振り上げたけれども、だんだん情勢はそうでない方向に進んで、現実は今制裁措置ということを言ってみても、そんなものがあったんだなと少し思い出させられるような状況になってきておるという格好ではないかというふうに、今の御答弁を受けとめるわけですが、そのように考えておいてよろしゅうございますね。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アフガニスタンに対するソ連侵入というものは、これは今現在も行われておるわけですから、我々はあくまでも非難し続けておるわけでございます。これはもう、国連の場においてもあらゆる場におきましても、あるいは日ソ会談においても、我々としてははっきり言っておるわけでございます。しかし、今の日ソ間の対話あるいは関係改善というものは、状況が最近ずっと進んできておりますから、それはそれなりにやはり現実的に対応していくのが日本外交でもあろうか。  そういう点ではもう既にアメリカも、経済閣僚会議まで開くという状況になってきておりますし、またヨーロッパにおいてはざらに進んだ協力関係が行われておる。こういう情勢ですから、アフガニスタンの問題はアフガニスタンの問題として我々はこれを忘れるわけではないし、依然として世界世論を喚起していかなければならぬわけですけれども、具体的には現実的な対応をとらなければならぬ。これは、日本としてそれなりにやらなければならぬことであって、この点はひとつ理解していただきたいと思います。
  21. 土井たか子

    土井委員 さて、ソビエト問題については、引き続き聞く機会がこれからどんどんあるわけですから、当面、大変過熱をいたしまして、場合によったら日米関係が怪しくなるとまで言われているただいまの貿易問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  私ども超党派日米議員連盟で、今ここにも自民党の浜田議員がおられますし、民社党の渡辺議員がいらっしゃるのですが、ともに二月にアメリカに参りました。アメリカ側日本に対しての、関税の引き下げであるとか門戸開放であるとかいうふうな問題に対する物の言い方というのは大変なものであります。今までにこんな状況はなかったと申し上げていいくらいに、共和党、民主党を問わず議会のどの議員に会いましても、ただいまそれしかない。国を挙げてと申しますか、議会がそのことに尽きているような感じがただいまするわけです。  ことしのこの日米通商摩擦問題に対してアメリカ側から、特に議会を中心とした輸入課徴金の問題であるとか報復的立法の動きであるとかが伝えられてまいりますけれども、そういうアメリカ側の大変強硬な姿勢について、なぜこうなってきたかという原因、それからなぜここまでアメリカ側がこれに対して強くこだわって言われるかという、このあたりをひとつ聞かせていただきたいと思います。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全体的には、いわばアメリカの焦りというものでもあろうかと思います。  最近六回にわたりまして、日本が市場開放措置をとって、続けてきたわけですが、日米貿易を見ますと、その効果が具体的にあらわれていないというのがアメリカ認識でありまして、貿易黒字がどんどんふえておる、三百数十億ドルになって、ことしは四百億ドルになるかもしれない。アメリカ全体の黒字もふえて、千二百億ドルというようなことであります。その中で占めるウエートは、日本の場合は三分の一か四分の一というようなことに少し減っておりますけれども、量は膨大になってきておる。ですから、日本のそうした改善措置はとられたけれども、ちっともその成果があらわれないで黒字だけがどんどんふえておる。一方においては、財政赤字が非常に深刻な状況になってきておる。  こういう状況の中で、選挙中は日米関係を安定していかなければならぬということで、政府も議員もどちらかというと黙っておった。抑えておった。しかし、選挙が終わったらそういうことも言えないような空気になってしまって、特に議会方面ては、日本のやったことは口先ばかりで何にも成果が上がらないんじゃないかとか、あるいはまた、日本はまだまだどこかに大きな貿易障害を持っておる、アンフェアだということを盛んに言っておりました。  これはただ、我々としましては相当な誤解もありますけれども、しかしそれなりに、アメリカ議員の心理としてそういうふうに追い込まれていくという面もわからないわけでもありませんし、日本もまたそうしたアメリカの要請にこたえて、日本なりにまだやらなければならぬ面も残っておる。ですから、今農水委員会等で努力を続けておるわけでございますが、基本的にはアメリカのそうしたいたたまれない焦燥感といいますか、アメリカ経済、特に自信を持っておったアメリカの産業がどんどん日本に侵食をされておるというこの焦りというものが、ああした議会の、私から言わせるとエキセントリックとも言えるような動きになっておる。アメリカで非常に穏健的なことを発言をしておりましたダンフォースであるとかチェーフィーであるとか、そういう議員までが日本に対して強硬な姿勢を打ち出してきておる、こういう始末でありまして、この空気というものは我々としては看過できないのではないかと思っておるわけであります。  今、アメリカの中で一番強硬なのは議会であろうと思います。政府の方は、やはり自由貿易を存続をしていく、日本日本なりの努力をしていることはそれなりに私は評価しておると思いますし、何とかアメリカ議会の空気を抑えたい。それには、日本にある程度の、さらに一歩進んだ市場開放措置をとってもらいたいという政府の考えでありますから、政府はその点についてまだまだ何とかこの事態を乗り切っていきたいという考えがある。  また、マスコミは比較的今まだ冷静じゃないか。今は日米関係で、そういう面で非常に緊迫した空気の中で、アメリカのマスコミはどちらかというといわば中立的な姿勢といいますか、非常に客観的な目で日米関係、特に貿易関係を見ておる。そして、むしろ日本だけを責任者として追い込めるということではなくて、アメリカ自体に問題があるのじゃないかということをアメリカのマスコミもはっきり指摘をいたしておりますから、その点は一つの救いではないかと思っておるわけでありますが、アメリカ議会の方は、先生方がアメリカに行かれて直接身をもって感じられたような非常に危険な空気に今あるということは、我々もはっきり見てとっておるわけであります。
  23. 土井たか子

    土井委員 アメリカ側に問題があるという点は、これももっとはっきり日本側から物を言わないといけないと私は思っています。アメリカ自身が、アメリカの有識者に会うと、イエス、ノーはきっぱり言わないと言っていることにならない、日本側は常に遠慮ぎみである、本当に何を考えているかよくわからない、わからないうちに事が悪く進む、そういうことを指摘されているくらいであります。  だから、そういうことからすると、よっぽどはっきり日本側としたら物を言うべきだと思いますが、ただ、アメリカ側が異常とも言えるくらいに過熱ぎみにこの問題に迫ってきているのは、どうも一月のロサンゼルスでのロン・ヤス会談の中で、三月いっぱいにこの分野に対して日本側が設定したことに対してめどをつけたいという約束をされている、この約束は守ってもらわなければ困ると。これは強い責めでありますよ、向こう側はこれはロン・ヤスのヤスさんの方でありますが、これは約束されているのですね。いかがでございますか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはあそこの首脳会談におきましては、日米がこの貿易摩擦の問題を解決するためにお互いに努力しましょう、こういう約束をしたわけです。ですから、そういう中でアメリカにも問題はありますよということも指摘をしております。これはアメリカの高金利あるいはまたドル高、そういうところに大きな黒字の要因があるので、その点はやはりアメリカ側もいろいろとやってもらわなければならぬ、日本も、日本なりにいろいろと問題があることも我々は認識をしておるので、その点については日本としてできるだけのことをしましょう、サミットもありますし、その前にできるだけのことはしましょう、こういうことを言ってきておるわけでありまして、一方的にアメリカから、日本が約束した、約束したということを迫られるというのも、ちょっと私も納得ができない。  やはりお互いにやろうということですから、アメリカもドル問題あるいはまた高金利の問題等につきましては、何らか考えてもらわなければいけないのじゃないかということを私は思うわけでございますが、しかし今の空気は、とにかく今の四分野に限っての日本側の努力、改善を非常に強く求めてきておるということでございます。日本も、日本なりに努力をしております。  しかし、できないことは今おっしゃるようにできないわけですから、例えば木材問題等につきましては、首脳会談においても私からも、これはそう簡単に言われたって日本の国内情勢があってできないのですよということは、はっきり言っておるわけでございます。ただ日本だけが責められる、そしてあのロサンゼルス会談が確かに一つの糸口になったことは客観的に事実でしょう、それからずっと起こってきているわけですから。しかし、ただ日本だけの問題ではなくて、やはりアメリカにも問題があるということについては私も言っておりますし、今後も問題を解決する中で、日本アメリカに対してそれなりの主張はしていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  25. 土井たか子

    土井委員 アメリカ側にその主張をしていくことは、これは当然だと思うのです。しかし、アメリカの高金利やドル高、財政赤字の問題について、我々もこれは意のあるところをそれぞれアメリカ側に伝える努力を最大限やったのでありますけれども、向こうは四つの品目の、特に木材であったり通信機器であったりするところに重点を置きまして、責めの一手でこれをどうしてくれる、どうしてくれる、約束だ、約束だ、こう来るわけなんです。  そこで、四月十一日から十二日のOECDの閣僚理事会に外務大臣は御出席なさいますね。そこでシュルツ国務長官との間で会談予定されているでしょう。そうすると、四月十一、十二日のOECDで、恐らくその問題がここでは取り上げられて討議の中心課題になることは必定だというふうに見られておりますが、それまでにアメリカに対して何らかの物を言う、日本としてこういう姿勢で臨む、そういうことの決着をきちっと持っておいきになる見通しなんですか、いかがですか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは見通しを持っていく考えでありまして、四月九日までに対外経済対策閣僚会議を開きまして、その会議で、四分野について今交渉をずっと続けております、そのめどがはっきりつくわけでありまして、その中では、アメリカの要請にこたえられるものとこたえられない分野があるわけでございます。それを整理して、日本としては四分野についてはこういうことまでしました、しかしこれ以上のことはできませんということではっきり姿勢を、日本政府としての四分野についての考え方をきっちり整理をいたしまして、シュルツさんにもお目にかかりたい、こういうふうに思っておりますし、そして日本がこれまで努力をしている成果については、評価をしていただかなければならないというふうに思っておりますが、まだ、とにかく四分野の交渉が続行中でございますから、この結果どうなりますか情勢を見なければなりませんが、今は総理大臣も陣頭指揮に立ちまして、この四分野の日本の努力をさらに実りあるものにしようということで、懸命にやっておるということであります。
  27. 土井たか子

    土井委員 その陣頭指揮に立っておられる中曽根総理姿勢を見ますと、高金利の問題やドル高、財政赤字について物を言うよりも先に、決めた四分野に対してアメリカの注文を聞いて何とか解決したいという姿勢が目に余るくらい見えるのですよ。そんなことで一時しのぎはできるかもしれないけれども、日本の国内市場においても国民生活にとっても、それが今後プラスなのかマイナスなのかを考えていくと、とても看過して済む問題ではなさそうです。大変大きな問題です。  特に、今外務大臣おっしゃいましたけれども、木材の問題一つを取り上げても、省庁間でもこれは意見が調整できかねるでしょう。非常に難しいだろうと思いますよ。非常に難航している。三年くらいを見て、それに対しての手当てをしたいなんておっしゃいますけれども、木材というのは三年であんなに大きく育つわけじゃないのです。三十年、四十年、場合によったら百年の大計なのですよ。そういうことからすると、これはその場しのぎでやっていく問題でもどうもなさそうなことをその場しのぎの問題に転化をして、何とかアメリカの注文聞きをしさえすれば済むという問題ではどうしてもない。これを私たちはもう執拗に考えています。  特に気にかかるのは、アメリカの方ばかり向いて、今そういう問題を取り上げてやっている最中であるような印象がございますが、第七次対外経済対策の具体化の見通しというのが片や進みつつありますけれども、その中に開発途上国対策というのを含められるのですか、どうなのですか。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、もちろんアメリカとの関係だけじゃなくて、日本の対外政策、貿易摩擦に対する政策は、世界、ECも開発途上国も含めたものでなければならない。これまでもそういうふうにやってきましたし、今後もそうなければならぬわけでありまして、通信機器とかそういう技術、そうしたハイテクの分野については、アメリカそれからECなんかとの関係が中心になりますけれども、農産物関係につきましては、これはもうアメリカだけの問題ではなくて、同時にまたASEAN諸国との関係考えながら、全体的にこの問題を処理していくということであろうと思います。  いずれにいたしましても、特にアメリカとの問題は非常に深刻になっておるわけですから、アメリカとの関係におきましては大変な黒字が存在していることは事実でありますし、同時にまたある意味においては、アメリカの高金利だとかあるいはドル高に大きな問題があることは、これはアメリカも言っておるし、我々も指摘しておるわけでございます。世界が指摘しておるわけですけれども、しかし同時に日本も、自由貿易体制というものを堅持していかない限りは、これから将来にかけて日本の生きる道はないのじゃないか、そういう中で日本としてまだまだ国の中で、産業で、相当痛みが出てくる面も出てくるわけでしょうが、これはそれなりに国内措置として処理しながら、日本もやはり世界からアンフェアと言われないような、これはやはり市場開放というものがもし残っておるとすれば、それをやっていかなければならないのじゃないか、私はそういうふうに思っております。  非常に困難な点があるわけですが、しかし、日本がこれから世界の中で信頼をつないで生きていく上には、それなりにやはり一つの痛みは伴うものでありますけれども、それなりにやっていかなければならない日本一つの宿命じゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。
  29. 土井たか子

    土井委員 日本の宿命である、世界からアンフェアと言われない努力と言われましたけれども、昨年の十二月十四日に決定されました第六次対外経済対策の中では、ASEAN諸国の中の特に強い関心品目があったはずであります。例えばタイからは骨なし鶏肉ですね、それからインドネシアの広葉樹の合板、この問題に対しては、どうも強い関心品目について十分に考えられている向きというのがないように受けとめております。だんだんアメリカとの間の関税の差というのは広がる一方。当然のことながら、ASEAN諸国からは強い要求が出てくるでしょう。現状からしたら、何とかこれは措置を講じなければならない、アンフェアでないと言われることのためには。そうすると、関税の格差拡大に対して、ASEAN重視政策に転換していかなければならないということが問われているように私は思われるのです。外務大臣はどのようにお思いになります。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、ASEAN諸国で残っている大きな問題と言えば、骨なし鶏肉あるいはまた合板あるいはパームオイル等があるわけでございます。これは長い間の懸案になっております。特に最近では、ASEANに対する日本の輸出がふえておるという関係もあって、非常にASEAN側からは厳しく改善を求められている。  ただ、アメリカを優先してASEANを非常に低く扱っておる、確かに関税の上ではそうなっておりますが、しかし、アメリカからは骨なし鶏肉じゃなくて骨つき鶏肉を輸入しておるし、また合板についても、ASEANの合板とそれからアメリカの材木とでは質も違うわけでありまして、そうした面で、ASEAN側が一方的に不公平だと言うのはちょっと筋の通らぬ面がありまして、これはASEANにも説明しておるわけでございます。しかしそうは言っても、全体的にそれでは日本がASEANの主張に今直ちに応ぜられるかというと、今の日本の国内環境から見まして、これは農林省が担当しておるわけでございますが、これはなかなか困難であるということで、日本政府も非常に頭を抱えております。  この六月には、ASEANとの間の経済閣僚会議が行われるわけであります。恐らくASEANは、この問題を真っ向にかざして日本に乗り込んでくると思っております。そういうことで、まあASEANとの全体の空気を悪くしないように、我々としてはいろいろの面で努力をしていかなければならぬし、また、この具体的な問題も何とか改善の道があれば改善すべく、これからもひとつ各省との関係を詰めてみたい、こういうふうに思っております。
  31. 土井たか子

    土井委員 ASEANそれぞれの国からすると、付加価値の高い商品、そしてさらに貿易でそれは活路を開くということで、経済発展ということを考えるというのは当然の問題でありまして、それに対して今外務大臣は、関税の上ではそれはいろいろこちらにも言い分があると言われますけれども、現に数字の上からいうと、これは明らかにアメリカとの間の開きというものは歴然たるものです。合板についても、アメリカの方に対して現に関税の引き下げをやっていく、しかしASEAN諸国に対しては据え置きにする。  それから、骨つき鶏肉と骨なし鶏肉との、骨があるかないかというので違うということをおっしゃるかもしれませんけれども、しかし、これはやはり関税からすると、アメリカに対しては骨つき鶏肉の関税を引き下げながら、タイについてはこれを引き上げているというふうな関係がありますから、これはやはり言われない方が不思議だと思うのです。どのように六月までにこれに対応するかということが深刻な問題であると同時に、基本的に日本のこういうことを通じて外交姿勢というものが問われるわけですから、そのパーセンテージを一%引き上げたから、引き下げだからという数字上の問題じゃなくて、基本姿勢いかんということが問われているということをやはりしょっちゅう忘れずに、こういうものに対する対応をやっていただかないと、日本アジアの孤児になるであろうというふうに私は思います。外務大臣のそれに対する御決意のほどはよろしゅうございますか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはおっしゃるとおりだと思います。やはり我々がアメリカのみを重視して、ASEANを軽んずるというふうな感じをASEAN側に持たれるということは、日本アジアの一国でありますし、ASEAN諸国、アジア諸国というものを最重視しておる日本外交のあり方からすると、これは全く論外のことでありますから、我々としてはいろいろと理屈がありますから、そういう理屈につきましてはASEAN側にもそれなりの説明をして、そして納得してもらわなければならぬと思いますが、しかし、ASEAN側の少なくともそうした非常に不公平だという認識は除去するように、これは努力していくのが外交基本じゃないかと思っておりますし、今後ともひとつ最大の努力は重ねてまいりたい、こういうふうに思います。
  33. 土井たか子

    土井委員 特に木材の問題なんかは、アメリカの政府の調査報告の中に、二〇〇〇年の地球なんというのが出ておりますが、森林はどんどん減っていくということが現に出ております。今、東南アジアの木を切っているのは日本なんですよ。木を切って、それを日本に持ち込んできているという格好になって、しかもそれは日本の林業を退廃せしめていっているという格好にもなるわけなんです。その木を切った後、どういうふうに手だてを講ずるかという後の世話の面についても、これは非常にいいかげんなものでありまして、そういうことからすると、今三年、四年の時間的な範囲で考えることでも、きょうの新聞あたりにも、向こう三年間林業に対する対策を思い切って講ずるのだからと書いてありますが、三年くらいで思い切ってと言われるのだったら、これはもう林業問題について考えていないにも等しいと私は思うので、やはり三十年、四十年、五十年、場合によっては百年を考えていかなければ、これは取り返しのつかない問題になっていくであろうと思います。  そのときには、失礼ながら安倍外務大臣は、もはや三十年たって安倍外務大臣かというとそうじゃない。今は総理候補ですから、しかも総裁候補ですから、三十年たつうちには安倍内閣総理大臣時代が日本にはあったという時代をつくりたいと、外務大臣自身もお考えでしょう。そういうことになってくると、余計にこういうことに対しては、外務大臣自身の御所信というのがこういうふうにしっかりしている、はっきりあるということを、やはり木材問題なんかについても出していただかなければならないという気が私たちはいたします。今回のこの木材について、いろいろとやかく言われていることに対して外務省は、農林水産省、それから音頭を取っておられる中曽根総理との間で緊密な連絡があるのですか、ないのですか。後追いみたいになって、外務省には後でお知らせします、外務大臣にはどうぞ後始末をこういうことでお願いしますという程度の連絡しかないんじゃありませんか。いかがでございますか。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この木材製品に対する日本政府としての方向、方針というものにつきましては、これまでアメリカに対して、木材製品についてあなた方関税を引き下げろと言っているけれどもそう簡単にいきませんよ、非常に困難ですよということは何回も説明もしておりますが、しかし同時に、アメリカもまた依然として強くその問題を押し込んできていることも事実であります。そういう中で、日本政府としても何らかの対応はしていかなければならぬという大局的な立場で、総理の三年間の構造改善という発言もあったと思いますが、政府としてまだこれを具体的に決めておるわけじゃないので、これは総理大臣が言ったからといってそれで全部決まるわけじゃありません。ですから、これは政府あるいは党、そして最終的には経済対策閣僚会議で、政府としてのこの木材製、品に対する考え方は四月九日までにははっきりさせる、そのはっきりした路線というのはもう政府全体としての対策でありまして、それまでこれからいろいろと議論を続けていくわけであります。  ただ、林業の問題については、林業は百年の計でありますけれども、問題は木材製品ということでありますから、それに従事しているいろいろな産業の問題が非常に深刻な状況になるわけです。今構造改善と言っているのは、林業そのものについては百年の計として取り組んでいかなければなりませんが、今アメリカとの間の関係は木材製品、合板とか単板とか、そういう製品に従事している産業の問題ですから、これはそれなりの構造改善である程度のことはできないわけではないと私は思っておりますが、あくまでも農林省を中心にして、これらの問題はひとつこれから十分論議を尽くして、そして国内対策も踏まえた中で方針を決めなければならぬ、こういうふうに思います。
  35. 土井たか子

    土井委員 経済摩擦の問題は、言い始めますと何時間あったってそれは尽きないわけでありますけれども、もう一つ大変気にかかるのは、同じ一月の、外務大臣がロサンゼルスにいらっしゃったときにシュルツ国務長官との会談の中で、西側戦略上の重要地域に対して重点的に経済援助をやっていこうということに対して要請を受けて、そして日米間で事務レベルの協議を進める。日米協議は、アメリカ側はアマコスト国務次官であり、日本側は浅尾審議官ということになったわけでありますけれども、戦略的援助はしないというのが日本政府の立場であります。アメリカ側の援助は、今は真っ向から戦略的援助と申し上げても過言ではない、間違っていないと私は思いますが、この辺はまるで、経済援助に対してのよって立つ、中身はどのように受けとめられているかはちょっとおきますよ、だけれども、正面切っての看板は、今まで日本戦略的援助はしないということを看板の中に書いてきたのです。これはアメリカ側立場が違うのですから、どういう協議をこれからしようとするのですか。  例えばフィリピンに対して、アメリカ側が援助をこれだけやってもらいたい、はい、かしこまりました。日本がやるときに、これは戦略的援助でないという言いわけはききませんよ。どれだけそれに対して、戦略的援助じゃないと百方言費やして言ったって、一番よく知っているのはフィリピンの国民だと私は思います。だから、そういうことからすると、アメリカと殊さら協議をやって、経済援助に対してどういうふうに決めていこうかという中身についてまで協議をする必要がどこにあるかということを私は言いたいわけですが、いかがですか。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはシュルツさんと会った中で、経済協力問題につきましては、お互いに話し合っていきましょうということはこれまでも言っておりますし、また具体的にも実施しておりますが、今後もやっていこうということについての大きな基本路線としての一致を見たわけです。しかし、そのとき私もはっきり言っておるわけです。日本の援助というものは、あくまでも日本基本方針に基づいて人道的でなければならないし、あるいは相互依存という基本がなければならない、この二つの路線に従って日本経済援助をしているわけで、この路線を日本ははみ出すわけにはいきません、そういう中でのアメリカとやれる範囲内での協力はこれからいたしましょう、日米間で話し合って、そして、それによって大きな効果を生むということならばお互いにやりましょう、こういうことも言っておるわけです。  それは、日米間でやっておるタイだとかあるいはフィリピンだとか、そういうもののこれまでの努力もそれなりの成果を上げているわけでございますし、あるいはまたアフリカの問題もあります、あるいは中米の問題もありますが、そうした問題でいわゆる日本の路線を踏み外さない中でやろうということでありますから、これはあくまでもアメリカ戦略援助ですか、そういうものに組み込まれているわけでは全くないということは、はっきり明言できるわけなんです。  フィリピンに対する援助は、十二次にわたりまして賠償以来、日本アジアの一国として、そして日本とフィリピンとの関係でASEAN諸国との関連もみながらずっと続けてきておるわけですから、これはあくまでもアメリカに言われてやっておることじゃないし、今後とも日本とフィリピンとの関係、あるいは日本とASEANとの関係の中で援助を続けていくわけでございまして、これがアメリカ戦略援助とか、あるいはアメリカの圧力によって日本がフィリピン援助をやっておるという状況ではこれまた全くないということは、はっきり言えるわけであります。
  37. 土井たか子

    土井委員 協議を現に日米間でし、それもフィリピンの問題を具体的に取り上げて協議をしているのに、アメリカとの間で相談をした上でやっていることではないと言われても通用しないと思います。  今まで日本からフィリピンに対して、第十二次までの援助は総額どれぐらいなんですか。
  38. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 御質問は全部、累計でございましょうか。――新しい順に申し上げますと、八四年四百二十五億、八三年が五百五十五億、八二年十次円借款五百億、八一年四百二十億、七九年三百六十億、七八年が三百二十五億、それから七七年が二百七十五億、七六年が二百三十三億、七四年二百二十三億、それから七三年が二百二十六億、七二年が百二十三億、七一年二百三十四億円。その前に日比友好道路借款、円借款が六七年に出ておりまして、これが百八億円ということになっております。  今までに供与した全部の累計、これは交換公文ベースでございますけれども、四千百七十二億になっております。
  39. 土井たか子

    土井委員 これは大変な額なんですよ。そしてその中で、有償、無償を含めてそれぞれのプロジェクトというものを経済協力実績というので外務省に要求すると、大体こういう刷り物を出してこられるのですが、ただ、こういうことが本当に有効に使われているかどうか、経済協力経済援助ということで効果を上げ得ているかどうか、そういう問題を見てまいりますと、これがまた心もとないのです。外務省として、一体何をやっているかという質問も国会でたびたびございまして、ことしの予算委員会の席では、我が党からは井上一成議員が質問をいたしておりますけれども、自民党側からも質問がございまして、やはり民間の有識者などにも集まってもらって経済援助全体についてもう一回根本的に見直す懇談会が必要だということを外務大臣がお答えになるくらいに、外務大臣自身も今までどおりのやり方ではだめだということはお気づきなんですよね。  外務大臣、この懇談会ということをおっしゃったのは、今準備中ということをそのときには答弁なさいましたけれども、その後どのようにこれの手だてを講じられておるのですか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり、フィリピンの援助も有償、無償で、今大半が有償であろうと思いますけれども、そういう中で、やはり援助は援助ですし、そしてまた日本のとうとい血税が使われておるわけですから、これは効果的に、日本経済援助の趣旨に従った人道的なもの、あるいは相互依存的なものでなければならぬわけですから、その辺はずっと見届ける必要があるわけです。特に、今のフィリピンのようなああいう政治情勢の中では、いろいろと国会でも指摘がありますから、この点についてはとことんまでフォローアップしていく必要がある。これはフィリピンだけじゃありませんし、そういう地域もあります。いろいろと批判も出ておりますから、そういう点を全体的に総括して、そしてやはり改めるべき点があるならば改めていこう、それはもう外務省だけじゃなくて、ひとつ民間の有識者も含めた懇談会で指摘をしていただくのがいいのじゃないかということで、今準備を進めておりますし、近いうちにこれは発足させたい、こういうふうに思っております。
  41. 土井たか子

    土井委員 それは、外務省が音頭を取ってそれをおやりになるのですか。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私の発議、発想でございますから、いわば外務大臣の私的な懇談会といいますか、そういうことでやろうと思っております。
  43. 土井たか子

    土井委員 それは、よっぽどしっかりしたものをつくってもらわないと、実は有名無実にまたなるのじゃないかなという気がいたします。  外務省は、今まで「経済協力評価報告書」というのを年々出しておられるのですが、五十八年の十一月に出て終わりでございまして、それ以前は、五十七年もそう、五十六年もそう、五十五年もそう、大抵はその年のうちの九月とか十一月に出ているのですが、五十九年はいまだに出ないのです。どないなっておるのですか。
  44. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま御指摘ございましたように、五十七年及び五十八年の年末に、それぞれ前年度に行いました経済協力評価報告書を発表いたしております。ちなみに、こういう評価報告書を公表しているという国は、実は日本が数少ない例でございますが、五十九年度分の評価報告書につきましては、現在最終印刷中でございまして、御指摘のように年末発刊予定でございましたが、相手国との調整ですとか、いろいろなことに若干手間取りまして、三、四カ月ばかりおくれておるというのが現状でございます。
  45. 土井たか子

    土井委員 こんなことをしているのは日本ばかりとおっしゃいますけれども、何を言われるかと言わんばかりの気が私はいたします。これは、さっき外務大臣がおっしゃったとおり国民の血税ですよ。政府は国民に対して責任があるのです。したがって、経済援助の中身に対してこういうことだという報告は、逐一するのが当たり前なんです。日本だけと、さも自慢顔して言われるいわれはございません。ところが、またこの報告書を見てまいりますと、フィリピンのあたりなんかでも、これは何だか知らぬけれども、いろいろなプロジェクト全体について報告がなされているのではなくて、それぞれピックアップされているのです。いいところだけのつまみ食いですわ。読んでみると、何のことはない、中身はいいことずくめを書いてあるだけにしかすぎない。こういう経済協力の報告書では、これは事実に即応した報告書とは言えないのですよ。こういうことのために、外務省は予算のたびごとに、調査員の数をふやしたいとか調査の中身を充実したいとおっしゃいます。ことしも予算の中身を見ると、調査員は昨年に比べるといささかふえたようでありますけれども、同じような作業のために調査員の数をふやしてみたところてしょうがないのですよ。  これは中身が問題です。フィリピンの方から聞こえてきているのは、もはや経済援助は要らないという声ですよ。こんなことをやってもらいたくないという声だって民間の間ではだんだん強まっていっているという中で、いや日本はやってあげているのだ、やってあげている中身はこのようにうまくいっておりますという、いかに事実と遊離した、向こうの国民の気持ちに対して逆なでするような報告書であるかという格好にもこれはなってくるのですが、外務大臣、やはりこういう報告書というのは、形だけ出せばいいという問題じゃないので、今私的諮問機関をつくりたいと熱を持って外務大臣言われるいわれは、私はこの辺にもあるのじゃないかなと思ったりもいたします。その新しい諮問機関というのが、これからおつくりになるわけですから、どういうふうにつくられて活動を開始されるかというのは注目の的になりますが、フィリピンの事情に対してどういう調べ方をしたいとお思いになりますか。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 外務省も、これまでも外務省なりにやはり経済協力の実態を調べまして報告をしておるわけでありますが、しかし外務省だけでやるということになりますと、もっと客観性というものが必要になってきますし、そういう意味で、やっぱり私的諮問機関でもつくって、そしてもっと公平な角度から見てもらわなければいけない、こういうことでやるわけでありますが、フィリピンにつきましては、今局長が説明しましたようにずうっと毎年経済協力を続けておるわけでございますし、フィリピン政府としても、これまでも各ASEAN諸国とともに日本に対して経済協力は強く要請しておりますから、これはこたえていかなければならぬと私は思っております。  特にフィリピンの今回の援助にしましても、いろいろと国会で議論がありましたから、私も、今度は商品借款がほかの国と違って多いですから、それなりにまた注意をしなければならぬ、そして援助した行き先までもきちっと調査をしなければならぬ、そしてやはり我々が納得ができるものでなければならぬということで、ほかの国以上に援助の行方につきましては厳重に注意をする、フォローアップするということで事務当局にも指示をいたしておりまして、そういう面でフィリピン政府とも十分連絡をとりながらやっておる、こういうふうに思っております。
  47. 土井たか子

    土井委員 フィリピンというのは、現にもうだれが何と言おうと軍事独裁政権なんですよね。軍事独裁政権に対して援助でてこ入れをやるというのは、どうしても、その国民のために援助自身が使われるか使われないかということからしたら、常識上判断した限りでも、使われる部面は非常に薄いということだけははっきり言い切れると思うのです。したがって、やはりそういうことに対して援助している側の日本というのが、向こうの国民からすると、援助のためにむしろ反日感情や新たな日本に対しての警戒心というものをつくり出していくような中身ということになってはならない。だから、本来は、独裁政権に対する援助というものは慎むべきだというふうに私どもは思っております。ところが、今までフィリピンに対しては、とかく援助の中身を見ると官僚と業者ベースで進められるのですよ、万事が万事。  そして、しかもそれは独裁政権のてこ入れという格好になっているし、しかも昨年は、もう当外務委員会でもこれに対しては何回取り上げたかわかりません。商品借款に対しては火がついたような取り上げ方をされて、そして、私たちはそれはまかりならぬと言うのに三百五十二億の供与枠というものがあったわけですが、消化率を見てみると三分の一ありやなしやですよね。これは一体何事でありますか。藤田さん今手を挙げておられますが、あなたが答弁席に立たれますと、既に予算委員会答弁されたと同じように、向こう経済事情であるとかいろいろ金利がどうなっているかとか、そんな説明ばかりが出てくると思うのです。それを言いたいのでしょう。ぶんぶんと首を縦に振っていられるからそうだろうと思う。恐らくは商品借款については、ことしは経済の見通しが去年に比べるとよろしくなるであろうから、引き続き、あれは二年ですからね、認め続けたいと思うという、そういう結論を出したい答弁を持ってここに出てこられるであろうと私はにらんでいるのです。にやりとお笑いになるからそうだろうと思う。そんなものは要りません。  商品借款に対して三分の一しかまだ消化してない。これに対しては見直す必要があると私は思うのです。経済的な見通しなんて狂ってばかりじゃないですか、日本なんて。GNPに対してどう考えるかといったら、当初見込みから狂ってはかり。これは狂うのが当たり前なんです。同じように、特に日本のことを狂いながら、外国の問題に対してはきちっと見通しをつけて、間違いなくこの見通しどおりに事は運びますなんて大言高語したって、そうはいかないですよ。だから、そういうことからすると、外務大臣どうです、商品借款については見直すということをひとつはっきり考えていただきたい。これはやはり、懇談会をわざわざつくってやろうというお気持ちの外務大臣からすると、ゆめおろそかに軽く考える問題じゃなさそうです。いかがですか。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん商品借款についても、やはり懇談会で、今まで出しました商品借款のあり方等について検討していく必要があると私も思います。ですからこれは、議論していただきたいと思っておりますが、フィリピンの商品借款が三割しか消化していないというのは、聞いてみますと、商品借款、ほかの国でも進度がフィリピンと比べてそう早いかというと、そうでもないわけですね。また、同時にフィリピンにつきましては、我々としては慎重の上にも慎重を期すという政府の慎重な姿勢がありますから、やはり全体の計画が実施される面においても多少のおくれがあるのはやむを得ないし、それなり日本が慎重な姿勢でフィリピンに対する借款は取り組んでおる、こういうことであります。
  49. 土井たか子

    土井委員 言い方もいろいろあるものだと思って承りましたがね。諸外国でも、商品借款を一〇〇%消化するというのは一年目は難しいと言われながら、大体見ていきますと三割以下にとどまっているところはないですよ。そして、現にフィリピンの方の国際銀行団のリーダーをやっておられる方々なんかは、フィリピン経済の役に立ってないとはっきり言われています、日本の商品借款というのは。そういうことからすると、これは洗い直しがどうしても必要だと私は思いますよ。フィリピンの事情に対して特に注目しながら、経済援助のあり方というものをひとつしっかりやっていきたいということを言われている安倍外務大臣のお言葉をもう一つ進めて考えると、経済援助は是か非かというところから出発をして、これは洗い直しが必要だというふうに私は思います。そのように外務大臣考えになりませんか、いかがですか。それをちょっと承って、あと一問して私は終わります。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに経済援助につきまして、例えばアフリカなんかにつきましてはヨーロッパ諸国はほとんど無償ですね。日本の場合は、幅広く経済援助するために有償で円借でやっておるわけですが、アフリカの今の最貧国的な立場からすると、そうした有償援助にしてもこれは返せない。元金も返せないという状況が生まれてきておりますから、そうした援助なんかも私は本当に効果的にやるなら、むしろ無償というものをふやす必要がある。  ただしかし、日本の財政の立場あるいは国際的な日本役割の広がりというものから見てなかなか困難な点もありますが、そうした無償と有償の比率あるいは各国別についてのそうした分野の調整とか、また援助の金利の問題とかあるいはフォローアップの体制とか、いろいろな面で再検討といいますか、いろいろと論議し直さなければならぬ時期にちょうど来ていることは、私は事実だと思っております。ですから、そういう点も含めて委員会等で活発な議論をしていただく、外務省外務省なりに各省と協議をして、そういう問題についてもいろいろと検討を加える点は検討を加えていくということは、確かに大事であろうと私は思っております。     〔委員長退席、野上委員長代理着席〕
  51. 土井たか子

    土井委員 最後に、やはり外交というのは公正でなければならない。アンフェアと言われることは、日本にとっては非常に致命的であります。外務大臣は、そういう基本姿勢というのを常にここでも問題にされて、答弁の中で繰り返し繰り返し述べられるわけでありますけれども、外務省自身が、七五年ですから今から十年前に、三木内閣のときに、原則として三十年経過した外交記録というのは――外交問題ですからどうしても極秘で、何年たとうが、百年たとうが二百年たとうがこれだけはというのはあるかもしれない。しかし、例外を除いてマル秘を解除して公開するということを決められたのですね。どうなんです、今回これをやめるつもりなんですか、続けてやらなければならないとお考えになっていらっしゃるのですか、いかがですか。
  52. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 情報公開というのはこれは原則でありますから、今後にわたって原則は貫いていかなければならぬと思います。ですから、外務省としましても、これまで累次にわたりまして三十年たった文書を明らかにしておるわけでありまして、今回もいよいよ昭和二十五、六、七年ですか、ちょうど日本が独立をする、あるいは朝鮮事変が始まる、そういうときの、日本が一人前になるときの外交関係の文書ですから、これまでと違って占領下を脱したころからですから大変膨大な文書になっておるわけで、これを整理するのに、外務省担当者が少ない人員で、本当に一生懸命に夜も徹してやっておるわけで、やっと今回発表の運びになったわけであります。  しかし文書は、だんだんと時代がそういうふうな状況になってきておりますから、国益という立場から見るとなかなか表に出せない、あるいはまたプライバシーという問題もあるということで、なかなか表に出せない面もあるわけでございます。その点は、やはり日本の国家の存立という面から、これは今後ともなかなかできないのじゃないか。原則としては、あくまでも外交文書は明らかにしていくという姿勢は貫いていきたい、こういうふうに思っております。
  53. 土井たか子

    土井委員 それでは最後に一問だけ聞いて、私は後、小林先輩にこの場所を明け渡さなければいけません。時間が少し経過しました。  大臣、それでは今おっしゃったことからすると、今度みんなが注目をいたしておりました外交案件の中に、安保条約に伴う日米行政協定交渉であるとか日韓会談であるとか日台平和条約交渉など、見送られたのが十一件あるのですね。これはやがては必ずお出しになりますな。今おっしゃったことからすれば、これはあきらめるわけじゃないというのが前提になっているのですから。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今三十年たっておりますが、やはり生々しい国益に関する問題も含まれておりますからなかなか出せないわけでありますし、これは今後とも審査を続けて、そういう中で出せるものは出していくということでございます。
  55. 土井たか子

    土井委員 秘密外交は暗黒政治の始まりと言われているのです。戦前の日本のあり方からすると、外交がどうなっているかさっぱりわからぬうちにハワイのパールハーバーになっちゃった。これは愚の骨頂ですよ。再びこういうことを繰り返してはならぬというのがこの問題の始まりであったと思います。それからすると、外務省がこれは出していい、これは出して悪いというのを一存でお決めになることに究極的にはなるのですから、その出して悪いという方向にまず押し込めることを原則として、出していいものだけは特例としてちょろちょろ出すようなことを資料公開とは申しません。出すことを原則にするのが資料公開なんです。したがって、今の外務大臣の御答弁というのはいただけないと私は思います。出すことを努力すると一言おっしゃってください。それで私はやめます。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 公開はあくまでも原則であります。ただ、先ほどから申し上げましたように国益に関する、出した場合に国益を損なうような文書、あるいはまたプライバシーを甚だ傷つけるというふうな文書については、これは出さないということもまた公開の一つの趣旨になっております。我々としては、できるだけのものは出したい。ですから、今出せないものでも、審査をしてそういう点について必要がないということになれば、これはどんどんお出しいたします。
  57. 土井たか子

    土井委員 私はこれでやめますけれども、そういうことを聞いていると一言また言わざるを得なくなってくるのです。なぜかというと、恐らくそういう問題についてはアメリカと相談ずくで、出していいか悪いか判断なさるのでしょうが、日本では出してくれない資料を、アメリカに行ったら現に図書館あたりで出しますよ。研究室あたりで出していますよ。したがって、日本の研究者は、わざわざ高い旅費を払ってアメリカに行って資料に当たるという活動をしなければならない、そういうことをやらなければならない。愚の骨頂だと言われます。アメリカで出している資料をどうして日本で隠すのですか。日米間の問題について、これは国益に反するというふうに日本外務省が隠すものをアメリカが出している例は多いですよ。しかもそれは、アメリカとの間で相談ずくでそうなっているといういきさつがあるんでしょうけれども、これは非常におかしいとしか言いようがありません。いかがですか。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 小さいところまでアメリカと打ち合わせするわけではなくて、基本的な点については打ち合わせをいたしますが、日本日本立場があります、アメリカアメリカ立場があるのですから、それはお互いに何もかも全部詳細に至るまで話し合ってやるという問題では私はないと思います。それぞれの主権国家としての立場で、出せるものと出せないものがあるということであります。
  59. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  60. 野上徹

    ○野上委員長代理 小林進君。
  61. 小林進

    ○小林(進)委員 何か十二時でやめるのだそうだけれども、十二時では話にならないね。  いずれにしましても、久しぶりで外務大臣あれですけれども、あなたの論議に対するもの、私は全部用意してきた。アメリカ日本とのいわゆる軍事条約の差や、その対応の仕方とかあるいはSDI、スターウオーズに対する中曽根さんの答弁なんか、私は非常に気になっております。けれども、これはひとつ午後にゆっくりお伺いすることにして、さしあたりあなたにお伺いしたいのは、あなたのおっしゃるいわゆる創造的外交だ。この創造的外交という問題は、私どもは非常に期待しましたよ。それは、中曽根外交に私どもは非常に期待を裏切られたということがあるものだから、その中曽根外交に相対抗して安倍外交の創造的外交というものは非常に期待した。非常に期待したのですけれども、その後の進展が一体どうなっているか。  あなたはこの前、一月に中曽根総理についてオーストラリアにおいでになった。これはあったかどうか知りませんけれども、そのときにオーストラリアのヘイドン外務大臣があなたに向かって、どうしてあなたは首相の外国訪問に同行するのか、首相が行くなら外相が一緒に行くのはむだだ、私はホーク首相とは同行しない、ホークがアメリカに行くなら私はヨーロッパへ行く、こういうことを言って、あなたにそれとなしに見解をなにしたというのでありまするが、これに対してあなたはどうお答えになったのか、それをひとつ聞いてみたいと思います。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 率直な話をしますと、これは別に会議の席で言っているわけではありませんで、食事のときにヘイドンさんは、あなたよく来ましたね、一人で来てくださいよというような話がありましたけれども、日本は、総理大臣が出るときは外務大臣も一緒に行くというのはこれまでの慣例になっておりますということで、オーストラリアはそうでないようですが、しかし日本の場合はそういう慣例があります、日本日本、オーストラリアはオーストラリアでしょう、こういうふうに言っておいたのです。
  63. 小林進

    ○小林(進)委員 先ほどから、アメリカアメリカ日本日本ということであなたは答弁を逃げていらっしゃるけれども、特に次期総裁をねらおうなどという人物が総理の後からちゃらちょつついて歩いたって、日本の国民の側から見てもいい姿勢ではない、外国から見てもいい姿勢ではない、おやめになったらどうかと思うのです。こんなことを言ったら時間がありませんから、ひとつまとめてやります。  あなたの言われる創造外交というものについて、私は幾つか具体的にチェックした。一つは、チェルネンコの葬式に行かれた。これは重大問題ですから午後にします。  いま一つは、あなたがしばしば言われるとおり、安倍外交が創造外交と言われるには、やはりイ・イ問題だ、中近東の問題だ。あなたは、イランとイラクとの問題については日本が一番いい立場だ、情熱を傾けてこれを解決するとおっしゃった。ところが、今最悪の状態だ。三宅君なんか、どうもあなたの指導を受けてイランあたりに飛んでいったり、大分苦労しておる。あなたが努力されたことはわかるけれども、現在の最悪の事態を見ると、効果はあらわれずしてむしろ逆の状態になっている。これに対して安倍外交は、創造外交は一体どうこれを処置せられるのか。時間がないからこれは率直に言います。  いま一つは、ついに危険で民間人を皆イランからお引き揚げになりましたけれども、将来このままでいいのか、在外公館あたりも引き揚げる必要がないのかどうか、今の引き揚げ状態が一体どういうことになっているのか。くどいようでありますが、これに対する今までのあなたのイラン・イラク外交というものは確かに成功していないんだから、今後どういう新しい手をお打ちになるのか。これが一つです。  いま一つは、これも僕は非常にあなたに期待したんだ。安倍外交はいいなと思ったのは、何回も繰り返して言いますけれども、例のジュネーブの軍縮会議で、世界は核の拡大競争で膨れ上がっているのだが、世界の軍縮と平和は米ソ指導者の掌中にあるのだ、この人たちがテーブルに着いて平和の話し合いをすみことが一番望ましいという意味のあの演説に敬服したのだ。安倍さんという人は非常にいいことを言うね、これは人物だね、総裁の器だなという感じを受けた。その具体的方策としてあなたは、いわゆる段階的核実験の禁止ということを主張せられたのです。これも、非常にスローではあるけれども確実な一つの新提案として、私は非常に敬意を表した。ところが、その後一体この状況はどうなったのか。また国内においても、中曽根さんがあなたの言われた段階的な核実験禁止に対して賛意を表するともなんとも、意見は一つも出していない。一体総理はどう考えているのか、これが一つ。  それからいま一つは、あなたの提案に対して、アメリカは非常に軽視をしたということの非公式な情報を得ている。いやしくも世界の大国にまで昇格して、日本は国際的にも非常に大きな発言力を持っていると言われている中に、我が日本を代表して、公式の場で我が日本外務大臣が平和のための厳粛なる提案をしたことに対して、アメリカはこれを軽視したとか、あるいは間接的に拒否したとかというようなことを聞いて、私自身非常に不愉快に感じた。一体アメリカがどういう反応を示したか、相手ソ連があなたのおっしゃる段階的な実験禁止にどういう反応を示されたのか、私はこれをひとつ明確にお聞きしておきたい。  先ほどの土井先生の質問のときに私は後ろからやじったが、アメリカはまだ日本を、属国じゃないですよ、ハワイと同じようなアメリカ国の日本州ぐらいに考えている、第五十一州ぐらいに考えているということがあらゆる場面に感知できるのであります。外務官僚なんというのは頭が悪いから、何もそういうアメリカのにおいを感知する力はない。何でもアメリカさえ見て、アメリカの言うことさえ聞いていれば、いい官僚で出世していくと思っているけれども、我々外野から見ると、まだアメリカのやっていることは全部ハワイ州の次の日本州ぐらいだ。そして、日本外務大臣の厳粛なる提案に対しても、これを軽くいなしているとしか我々は受け取れない。この問題に対して、安倍外務大臣はどうやられるのか。私はなお注文をつけますけれども、一たん外務大臣が口に出された以上は、継続して執拗に米ソ両国に追求してもらわなくちゃならない。これは安倍創造外交の二番目の問題だ。     〔野上委員長代理退席、委員長着席〕  安倍創造外交として私は、次にやはりあなたのおやりになることに非常に興味を持っている問題というのは、朝鮮半島の問題です。あなたは朝鮮半島の問題に対しては、非常に関心をお持ちになっているということを私は知っている。余りしゃべっていると時間がありませんから、かいつまんで申し上げてあなたの答弁を求めますけれども、あなたの外交方針の中にも、日米は運命共同体というようなことを言いながらも、アジア・太平洋外交に重点を置くということをあなたは繰り返し言っておられる。私は、アジア外交に重点を置くという、この点で非常に安倍外交を買っているのです。アジアの一員ですから、対中国、対朝鮮半島、対ソ連、そして台湾の問題も含めて、ひとつアジアの基盤をあなたの力できちっと築き上げれば、アジアから世界の平和が来る。  私は特にあなたに申し上げますけれども、日本と朝鮮と中国、この三つがアジアできちっと三本柱で締まってごらんなさい。韓国だって、南が四千万、北が一千七百万、合わせれば朝鮮半島は六千万人に近い大国ですよ。この朝鮮半島に平和と統一を来して、日本と朝鮮半島と中国が三つ、平和軍縮のために手をつないでごらんなさい。これが安倍外交の仕上げですよ。これを仕上げなければ、あなたは総理の道は遠くなりますよ。このためにも、私は、今朝鮮問題にこそあなたの情熱を傾けるときだと思っている。  時間がありませんから、私は余り言いませんけれども、あなたは、中国と朝鮮問題については、常に連絡をとりながら問題を処理していきたいということをしばしば言っておられる。具体的に私は申し上げます。提案です。四月に全斗煥大統領がアメリカにいらっしゃいますね。これは一体どんな用件を持って行かれるか、内容はわかりませんけれども、あなたは御存じになっているかどうか。知らなければ中国等を通じて、こういうことはやはり情報を早くキャッチしてもらいたい。これをまだキャッチしていないとすれば、一体外務官僚は何をやっているか。今、北はいわゆる三者会談アメリカを含めた南北の三者会談をどうしても実現したいという強力な要望を出している。南はそれに対して、当事者同士でまだ話をしようという条件を出している。そこへアメリカは、かすかに聞けば、日本も入れて四者会談でひとつこの南北問題を話をしようというふうなことをアメリカが言っているということも聞いている。その重大なさなかに全斗煥大統領が、今言ったようにアメリカへ飛んでいかれるのだから、一体彼の腹の中に何が含まれているか、重大な問題です。日本にとっても重大な問題です。こういうことをとらえなくちゃいけない。  そこで外務大臣、時間が来ましたからもう一つ伺いますが、全斗煥大統領は今まで、八一年から八二年、二、三年前を通じて、金日成主席に対していわゆる私信を送っていられる。あなたも朝鮮人、私も朝鮮人、二人の間には通訳は要らないのだ、言葉はみんな通じるのだ、この南北統一の問題について二人で話し合いをしようじゃないか、首脳会談もやろうじゃないかということに対して、金日成さんから返事がなかった。ないので、また全斗煥大統領は言葉を継いで、どうか金日成さん、あなたの適当な場所と期日を指定してくれ、私はそこへ出かけていきます、そこへ出かけていって、あなたと二人で平和と統一問題の話し合いをしよう、あなたがいるがためにやるのだから、これに応じてくれという書簡をお出しになった。  ところが、それに対して返事がないので、私どもははるかにその成功を祈っておりましたら、ことしの一月一日、今度は金日成主席が年頭所感において、いわゆる首脳会談をやってもいい、これは書類を出していると時間がありませんが、やってもいい、こういう一つの反応を示してきた。こういうようなチャンスをとらえて、そして南北統一のために動くというのが、日本外交の重大なポイントではないかと私は思うんですよ。そこで外務大臣、ひとつ中国とあなたとよく話をして、中国は今非常に韓国との関係はいいのです。二、三日前に魚雷艇か何か来て、六人死んだの、八人死んだのと言うけれども、これは内部闘争であって、余り韓国には関係がない、台湾に亡命するというような問題じゃないということで、問題が小さくおさまりそうでありまするけれども、できればこういう問題もチャンスがあるならあなたが仲介の労をとって、韓国と中国との間に立って、おさまるように動いていただきたいと私は思うけれども、これはまあ動くほどのことじゃないと思っている。  ただ、中国をして、今の金日成氏の動きと全斗煥氏が繰り返して要望しているこの問題を、両国でひとつ話し合いをして、中国から金日成さんの意向を聞いていただき、あなたがいま一度全斗煥大統領にその意向を確かめて、そして中国、日本が仲介の労をとって、朝鮮半島両国、朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国とのその首脳会談が成立するようにひとつ努力をしていただく、そういう行動に出ていただくことができるかどうか。これも安倍創造外交の重大なポイントだと私は考えておりますから、私はお願いする。これで三点ですよ。もう時間がないのであれですが、まだ幾つもあるんですよ。  創造外交は幾つもあるのですが、いま一つだけ言いますが、さっき土井さんが言った。それはまあいいや。チェルネンコの葬式に行ったと言うのだけれども、あなたはのこのこ総理の後についていったはいいけれども、行かない方がいいなと思ったが、ついていかれた。中曽根さんは、とにかく一時間首脳会談をやられて満足して帰ってこられたようだけれども、あなたは一体何をおやりになったか。グロムイコとお話しになった、何もない。中曽根さんのそばへ侍従長のように立っていただけの話です。これはみっともなくてしようがないのだが、そのときにゴルバチョフは、日本に対して信頼を置けないと言ったというのです。中曽根さんは、いや非核三原則がありますの、専守防衛でございますの、他国を攻略する兵器はないの、平和憲法はあると言ったけれども、ゴルバチョフは、いや、だめだ、信用できないと言ったことは、先ほどの答弁にあったとおりだ。それをあなたが言われたとおりですよ。  我々が見たところで、日本はいわゆる不信感になりますもの。いや、スターウオーズに協力いたしますの、やれ沖縄に核を置きますの、何を置きますの、やれ核積載艦の寄港を許すか許さないか、あいまいな態度をしておれば、受けるソ連側は、そういう中曽根総理姿勢に安心してつき合いができますと言い得る立場はありませんよ。そのときにあなたは、グロムイコと話をしたり、あなたのおっしゃる段階的な核軍縮の問題ぐらいは、やはりあの弔問外交のときに当然出してしかるべきじゃないか。そこでこそ私は、一点の星の光があると思って非常に期待したけれども、あなたの段階的核実験禁止の話もグロムイコと話したこともない、それで終わっているのでありますが、この問題についてひとつあなたの所信を承りたいと思います。まだあるんですよ。
  64. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 簡単に述べさせていただきます。  イラン・イラクにつきましては、日本として努力を続けておりますけれども、残念ながら今戦争が拡大しておるという状況であります。しかし、イランもイラクもまだ日本に非常に期待をしているということで、最近はイランの特使が日本にやってまいりましたことは御承知のとおりであります。また、イラクの外務大臣も、これは一日トンボ返りでイラクに帰るわけですが、あの戦火の中で外務大臣がわざわざ日本にやってきまして、私と二回にわたって会談をしたいということでございますし、イラクもやはり戦争の問題については、日本に、解決に大きな期待をかけておるということは明らかであろうと思います。しかし、問題はなかなか複雑で、これまで努力してまいりましたけれども、日本だけでなかなか大きな成果が上がらないということも事実でありますが、せっかく両国とも日本に対する期待をまだつないでいろいろと要請もありますから、そういうものを踏まえて今後とも努力は重ねていかなければならぬ、こういうふうに思っております。  それから、在留邦人は一番気をかけておりまして、脱出のときもトルコ航空が大変援助してくれました。大変ありがたいことだと思っておりますが、また戦火が拡大して、婦女子の方はテヘランは引き揚げておりますが、まだ残っておりますし、それからバクダッドの方は、日本人が千人ぐらいおりますし、そういうことも我々十分注意しながら、いざという場合の対策は立てておるわけであります。  それから、ジュネーブの軍縮会議の私の提案につきましては、各国からいろいろな反響がありました。確かにアメリカは積極的ではありませんでした。しかし、これは日本の主張ですから、何とかこれをひとつ論議してもらいたいということで、ことしも引き続いてやりますし、ことしもぜひとも取り上げてもらって、そうして話し合いをしてもらいたいということで、精力的に今ジュネーブで動いております。  それから朝鮮半島につきましては、また対話が再スタートするという兆しが出ておりまして、大変喜ばしいと思っております。恐らく全斗煥大統領のアメリカの訪問も、この朝鮮半島情勢をめぐってのアメリカと韓国との打ち合わせであろうと思うわけでありますが、それが中心になると思いますが、何といいましても、今お話しのように両国の首脳会談が開かれることが一番いいわけでありますし、その南北会談は、これから行われるいろいろの南北会談がその首脳会談に向かっての一つのステップであれば大変いいというふうに我々も見ております。日本も、そうした環境をつくるためにできるだけ努力をしていかなきゃならぬ。中国との間では、朝鮮半島の問題についても十分連絡をとり、打ち合わせをしております。また、韓国とも打ち合わせをいたしておりますし、我々としてもこの緊張緩和がさらに一歩進んでいって、首脳会談からまさに朝鮮の統一という方向へ動いていくことを心から念願をいたしておるわけであります。  チェルネンコさんのとき一緒についていきましたが、インドのガンジーさんのときも一緒に参りましたし、これは総理大臣が行くときは一緒に行くわけです。首脳会談ではグロムイコさんも一言も発言はしませんで、首脳発言をして、補足的にもし指名があれば外務大臣発言するというわけですが、外務大臣発言のチャンスもありませんし、またグロムイコさんの発言のチャンスもありませんでした。これは、首脳間の会談ですから当然のことだと思っております。日本に来られたら十分やり合いますから。
  65. 小林進

    ○小林(進)委員 あとは午後からひとつ……。
  66. 愛野興一郎

    愛野委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十分開議
  67. 愛野興一郎

    愛野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林進君。
  68. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、ロンギ・ニュージーランド首相の行動に心から敬意を表しています。しかし、あそこでは労働党という党がきちっとした決定をいたしますから、党議に基づいて首相が動いているということはわかりますけれども、世界の平和、軍拡の人殺しのような競争に冷静なる反省を求めるためには、世界に及ぼす彼の影響は実に莫大だと思っているのです。私は、願わくは日本外務大臣にも、世界の世論に訴えるような思い切った主張を出していただきたいという気はあるのでありますが、ロンギさんのことまで論じていると時間がありません。  スターウオーズも似ていますね。本当にスターウオーズも、時間がないから後にしますけれども、安倍さん、あなたは参議院の予算委員会においてスターウオーズは防衛兵器だという答弁をしているが、私はそれが非常に気に入らぬのです。防衛兵器なら軍事拡大につながらぬのか、防衛兵器なら何をつくってもいいのか。これは、軍縮を進めていくなどという理論構成にはならない。ましてや中曽根さんのように、スターウオーズができて宇宙から戦略核兵器を粉砕することによって、ソ連から発射する大陸間弾道兵器をその瞬間においてさっと粉砕するから、ここで初めて軍縮と世界平和が成り立つなどという恐るべき答弁を国会の中でしているということは、天人ともに許されぬことで、暴言であると私は思って、これをやろうと思ったけれども、時間がないからこれも後回しにいたしまして、当面する問題について伺いたい。  あなたは弔問外交にも行かれた。去年もそうだ。繰り返しグロムイコに、今度はあなたが日本へ来る番だからいらっしゃい、いらっしゃいと、ともかく対ソ外交グロムイコ日本に呼ぶことによって物が決まるようにあなたは繰り返し言っておられるが、一体グロムイコ日本に呼んで何の話をされるお考えなのか、それをお聞かせ願いたいと思います。そこから話に入る。
  69. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日ソの間には御承知のように外相定期会談というのがありまして、これは順調に来たこともあるけれども、最近はお互いに機能していないということで、特に日本外務大臣は何回か行っていますが、ソ連外務大臣はやってきていないわけです。国と国との外交は、何といいましても外務大臣同士が話し合うのが基本ですから、そこで今度は私の方から出かけていく順番じゃないので、グロムイコさんにも来てください。確かにグロムイコさんに来てもらっても、日ソがこれでもって直ちに大きく変わるということではないと思います、領土問題一つとってみても日ソ間では対立は大きいわけですから。そうは思いますが、しかし、グロムイコさんが来ることによって、今まで対話を積み重ねてある程度問題が進んでおる課題について見通しをつけることもできますし、ソ連外務大臣が来れば日本外務大臣も行けるわけであります。ですから、基本的な対立はあるとしても、日ソ関係改善の非常に大きな糸口になるのではないかということで、私は期待をいたしておるわけなんです。
  70. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたが、こっちが行ったから今度はソ連外務大臣訪日する順番だという形式的な主張は、私はいかにも古手官僚の物の考え方だと思って、何か非常にかんにさわるのです。タカ派と言われたニクソンだって、おまえが来る番だ、だれが来る番だと言わないで、必要があればウラジオストクへもモスクワへもさっさと飛んでいる。トップの外交というのは、平和のため、世界のため、日本のためならば、そういう形式論だけで物を処理している時代ではないという考えが私はあるものですから、安倍外交が本当に創造的であるならば、ともかく今日本国民も関係者も挙げて日本の将来を――総理・総裁になる人の重点は、対ソ連外交をどう仕上げるかがその人の政治家としての生涯を律する重大問題だ、これにだれがどれだけ真剣に取り組むかということが中心議題だと私は思っている。  今あなたがおっしゃったように、こっちが行ったから今度は向こうが来る番だ、これは官僚外交ですから、こんなものは捨ててください。問題は内容だ。その内容の中には、あなたがいろいろおっしゃったように北方領土の問題がある。日本外交は、口を開けば対ソ関係は北方領土。中曽根さんもあそこへ行かれて、今度の弔問外交でもゴルバチョフにこれを申し上げて、これは済んだ問題だとあっさり言われた。グロムイコからあなたがしばしば聞いているのと同じような答弁が、ゴルバチョフからもはね返ってきた。問題はこれなんです。これが一番難しい問題だから、私はきょうは真っ先にこの問題を出した。時間が来るまでやります。  サンフランシスコ条約において、吉田さんも当時の西村条約局長も、あの千島列島の中における国後、択捉を一体放棄したのですか、しなかったのですか。問題はこれから解明して、いま一歩この問題を切り詰めていかなければ、対ソ外交の本当に腹を割った次の発展にいかないと私は思う。繰り返し申し上げますが、グロムイコゴルバチョフも領土問題は終わりました、終わりましたと言う根拠は、一体どこなんですか。向こうの言い分の内容をお聞かせいただきたいと思います。
  71. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 サンフランシスコ平和条約には、ソ連は参加していないわけです。そういう中で日本は固有の領土であるということで、国後、択捉、歯舞、色丹は日本の領土であるということはこれまで日本の歴史上、条約上もはっきりしておるわけで、これが今度は鳩山さんのときの交渉の際に浮かび上がったわけですが、これは解決がつかないで継続案件といたしまして、共同声明で国交回復した。領土問題を盛り込むという目的を持った平和条約は後回しになったといういきさつで今日に至っておるわけですから、名実ともに歯舞、色丹、国後、択捉は日本の固有の領土であるという考え方が、日本の一貫した思想であります。
  72. 小林進

    ○小林(進)委員 この問題は、歯舞、色丹はちょっと置いておきましょう。国後、択捉に対しては、我が社会党の中にも、サンフランシスコ条約において吉田はちゃんと放棄してきたのだという説を唱える者が今でもずっとおります。これは単に社会党の中だけではありません。国民世論や学者の中にもこの意見は実に強いのです。多年の間、私もこの点は非常に疑問を持っていた。あのサンフランシスコ条約第二条(C)項に、クリル諸島はこれを放棄するということがちゃんと書いてある。そのクリル諸島の中に国後、択捉が一体入っているのかいないのかという、問題の中心はここに来ているのでありまして、私はその点を疑問に思っておりました。  時間を節約する意味で申し上げますけれども、最近、私は雑誌を見た。この中に「北方領土返還の切り札」と称して、上智大学の教授のグレゴリー・クラーク、この人が論文をお書きになっている。この論文を私は四回も五回も繰り返し読んでみた。これは多年私が考えていることとぴたっと合っている。この中には、いわゆるサンフランシスコ講和条約の第二条(C)項の中に明らかに、日本はクリル列島を放棄すると書いてある。そのクリル列島というのは、日本語で訳せば千島列島ということなんだな。千島列島を放棄するということになっているのです。  この問題を日本は、ちゃんと放棄をしておりながら、その放棄をする問題の前段としてアメリカから、サンフランシスコ講和条約が開かれる前に大変強く、この放棄の問題で示唆をされた。そこで時の吉田総理大臣が、千島列島の国後、択捉は日本の固有の領土だから、これを放棄することだけは何とかやめてくれということを、文書で三十二回にわたってアメリカ政府に送ったという、そういうことがちゃんと記載されている。これは歴史上厳然たる事実なのです。その三十二回の往復文書、日本政府がクリル、千島列島に対してアメリカ政府に渡したという、その文書をひとつ私に見せていただきたい、これが第一の注文です。いいですか。  けれども、アメリカ政府は了承をしないで、サンフランシスコ条約には、この千島列島を日本に放棄せしめるように条約を結んでしまった。そこで吉田さんが条約を結んで帰ってきて、九月十一日ですか、日本の本会議場の中で、私は最後まで抵抗いたしました、これは不当な条約だから、今後この問題でも私はあくまでも闘い抜くぞということを本会議場で証言をしておりますからね。こういうような現実の歴史がずっとあるのですが、それをいつの間にやら日本政府自体がごまかしてしまった。いいですか。外務大臣、これがあなたの運命を決する重大問題ですから、これをやらなくちゃいけませんよ。  千島列島のクリル・アイランド、これは英語が使われている。講和条約でのダレスの発言なのです。これは五一年の九月五日です。サンフランシスコの講和条約「第二条(C)に記載された千島列島という地理的名称が歯舞諸島を含むかどうかについて若干の質問がありました。歯舞を含まないというのが合衆国の見解であります。」講和条約のときにはダレスは歯舞だけを突出して、これは千島列島に入っていない、クリル・アイランドに入っていない、彼はこう言っている。国後、択捉には何にも言わないのです。千島列島の放棄について、ただグロムイコが、これはサンフランシスコの会議でですよ、日本国は云々とあって、「千島列島に対するソヴィエト社会主義共和国連邦の完全なる主権を認め、これら地域に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」との修正意見を執拗にやってきたわけですね、サンフランシスコ条約で。ただ、これに対しては、どこの国も発言する者はなかった。無視してしまった。それでグロムイコの修正意見はそこでは通らなかった。不明のままに放棄された。これが日本にとっては一つの救いでありましょう。  こういうようなことの条約が終わって、その九月八日です。講和条約が九月五日ですから、八日、吉田全権がサンフランシスコで発言しているのです。いいですか。そこで、千島列島及び南樺太の地域は日本の侵略によって奪取されたものとのソ連全権の主張は承服いたしかねます、これは、吉田さんにしては大変立派な発言でしたよ。これは、武力や権力によって剥奪したものではない、こう言っている。  それからまた、日本の本土たる北海道の一部を構成する色丹島及び歯舞諸島も、終戦当時たまたま日本兵営が存在したためにソ連軍に占領されたままであります、ソ連軍に占領されたが、しかし色丹島と歯舞諸島は北海道の一部でございます、これは、吉田さんは明確に論じている。歯舞、色丹は出てくるけれども、国後、択捉はさっぱり出てこない。以上について異議を申し立てる国は、四十八カ国のうち一国もなかった。そこで、日ソ共同宣言のときに歯舞、色丹だけはやはり千島列島の中に入らないということを確認せられて、そしてソ連もこれを引き渡すというような結果になった、こういうことになった、いいですか。  ところが、今度、そのサンフランシスコの講和条約が終わった昭和二十六年の十月十五日です。一月もたたないわけです。鈴木正文という当時社会党の、これは国務大臣をおやりになった方ですが、この方が吉田総理大臣に質問しておられる。歯舞、色丹だけは北海道の一部である、これを放棄したのはよろしくない、こう吉田さんに追及しているわけです。北海道の一部だと言いながら、あなた、これを放棄してきたじゃないか、どういうわけなんだと鈴木正文が言っている。私の先輩ですよ。そして吉田総理はこれに答えて、歯舞、色丹については、しばしば北海道の一部であると主張してはばからないのであります、私は、北海道の一部であるということをしばしば主張してまいりました、こう本会議場で答弁をしていた。  これに対しまして、今度は鈴木義雄氏です。歯舞、色丹等のソ連による不当な占領について指摘したところだが、条約ができてから一方的に捨てぜりふを言って去るとは、政府は責任がなさ過ぎるじゃないか、こう言って吉田さんを追及しているのであります。あなたは捨ててきちゃって、それで日本の国会へ来て、日本の固有の領土だなんてそんな捨てぜりふを言ったって、それは負け犬がしっぽを動かしているようなものだ、話にならぬ、こう言って追及されたことに対して吉田総理はこう言った。歯舞、色丹を含めて、無条件降伏した日本としては、連合国の決めた領土条項を甘受する、これを受け入れるというのは条約上の義務である、条約上の義務を投げ出してとやかく言うのは甚だ当を得たものではありません、こういうふうに日本の国会で答弁しているのです。いいですか。条約で放棄してきたんだから、それをとやかく言うのは無条件降伏したことにならぬじゃありませんか、こういうことを言っている。これは本会議答弁です。  同じく昭和二十六年十月十九日、これは当時の高倉定助という北海道から出ている代議士でありました。私はよく知っております。我が親友でございまして、この人がこういう質問をしているんですね。千島の中に歯舞、色丹を含むのか、こう質問した。それに対して吉田さんは、アメリカにも申し入れている、それを報告させると言い、そのことについて答弁をさせます、こう言って後ろを振り返った。そうしたら当時の西村条約局長、立派な人でしたよ、ちょっとそこら辺にいるのとは違いましたよ。これはよく知っている。その西村条約局長が答えていわく、千島列島には北千島も南千島も含みますと答えている。「現在に立って判定すべきだと考えます。」歴史上の問題なんかだめです、こういう意味なんです。「従って先刻申し上げましたように、この條約に千島とあるのは、北千島及び南千島を含む意味であると解釈しております。」千島全域を含むんだと言っている。  その次には、小川原政信という人の質問に草葉隆圓さん、これは自民党の代護士でなかなか立派な人でした。当時外務省の政務次官でした。この政務次官が立って答えていわく、北千島、中千島と南千島ということになっております、現在千島というと、北、中、南を総称いたしております、その中に国後、択捉もちゃんと含まれているということを、草葉隆圓も西村条約局長もちゃんと答弁をしているのです。いいですか。ここに非常に問題があるのでありますが、一体日本の政府がいつごろ変わったかというと、途中で変わっちゃったんだ。変身をしたのです。  だから、ソ連側から言わせれば、ちょっと話がくどくなりますけれども、ともかくヤルタ協定でアメリカとイギリスとソ連と会ったときに、日本への参戦、これを受けなければ、アメリカは百五十万から二百万余計に本土決戦でやらなくちゃならないから、どうしてもソ連が参戦する必要があるということで、そこで国後、択捉でなく、千島列島をスターリンにやることをアメリカが提案したんですよ。それをソ連が受けて、しからばよろしい、それではおまえの言うとおりひとつ日本に参戦してやろうや、ドイツを解決した後にはひとつやりましょうやという契りができた。これがグロムイコをして、国際条約の上では領土問題はもう終わったのですと言わしめた。  だから、この論文を読んでいただければわかるように、日本の領土である国後、択捉を含めて千島を放棄せしめたのはソ連じゃないんですよ、アメリカなんですよ。何で一体日本外務省は、その本体のアメリカに真実の追及をしないのか、ピントが外れているじゃないですかということをこの論文は言っておる。これはそのとおりなんです。ひとつ原点に返って考えてもらわなくちゃいけない。これを追及しなくちゃいけない。だから、この中には、なぜしからば一体アメリカソ連にそういう日本の固有の領土をやって、そして参戦せしめたか。参戦した直後のサンフランシスコ条約にも、歯舞、色丹だけは北海道の一部だけれども、国後、択捉に対してはだれ一人として触れてない。触れられるわけがないのですから、それはもうアメリカはちゃんと先にソ連にやってしまったんだから。  そのときにはまだソ連の力というものが、ヨーロッパにはまだ東欧圏だの西欧圏だのといって、ソ連がぐぐっと言うとヨーロッパの方ががらがらっとソ連圏に入るという危険があったから、まだサンフランシスコ条約のころには、アメリカソ連ヨーロッパにおける力を恐れて日本の味方をすることができなかったから、百分が日本の領土をソ連にやって知らぬ顔をしておいて、そうして国後、択捉だけは日本の領土だというようなことを言ってごまかしてきた。この問題を明らかにしなければ、外務大臣、対グロムイコとの交渉において、それは腹の底から真実をもって通そうなんというのでは交渉になりませんよ。  日本がいつ一体変わったかといったら、鳩山さんの日ソ交渉だ。一九五六年です。サンフランシスコ条約が済んで五年もたって行ったときに、当時の重光外務大臣、重光全権いわく、国後、択捉は日本国有の領土である、こういうことを言い出したのです。その日突然変身してしまうわけだ。どうしてこういうことを五年も後に言い出したかわからない。五六年七月三十一日に言ったのだが、それから一カ月余おくれてようやくアメリカが、重光さんがこう言った後にこういうことを言ってきた。歴史上の事実を詳しく研究した結果、国後、択捉は日本の固有の領土の一部をなしてきたものである、こういう摩訶不思議な文章だね。サンフランシスコ条約の一番大事な舞台でみんな口をぬぐって一つも言わない。歯舞だけは日本だと言っていながら、五年も六年もたって突然こういうようなことを言い出してきた。  何で言い出してきたか。これは鳩山さんが日ソ国交回復条約に行ったとき、こんなことでうっかり手を握られて日本と仲よくされてはいけないから、むしろ日ソ関係を悪くするためにはこういう文章でもよこして、いやいや、国後、択捉は本来は日本のものだといって日ソ交渉に水をひっかけるために言ったのではないかという一つの意見をなす者もある。また、今考えてみたら、この領土問題で今日に至ってもなお日ソ関係ががたがたしているということは、もしアメリカ日本ソ連との関係を円滑にやらせたくないという陰謀があったとすれば成功しているわけだ。こういうようなこともひとつ明確にやってもらわなければならない。  結論を急ぎますけれども、この問題を受けて、昭和三十六年から日本の政府の意見が変わってきた。そして、三十六年十月三日の予算委員会で、当時の総理大臣の池田勇人が、西村条約局長の言っておることは間違いだ、こういうことをぴたっと言い出した。そこで我が社会党の横路君が、これは関連質問と言って立って、おかしいじゃないかということで質問をいたしますと、そこで池田さんは何と言ったか。千島に北千島、中千島、南千島などあろうはずがない、西村局長の言っていることはうそだ、こういうことを予算委員会答弁をして、今まで吉田さんも西村さんも千島は放棄した、択捉も国後も放棄したんですということをここで百八十度転換をした。こういう歴史上の事実をあなたはきちっと整理をしてこなければ、グロムイコとの交渉なんかできません。  そこで、やめろという紙ばかり持ってくるからやめますけれども、結論として、一体どこの国に日本は千島列島を放棄したのか、これがまだ明らかでない。これをひとつ聞かせていただきたい。グロムイコとの交渉のときに言ってもらいたい。  第二番目は、千島の範囲というのは今なお日ソの間に明らかになっていない。歯舞、色丹は北海道の一部だと、ちゃんとアメリカのダレスも言っている。そのときに国後、択捉には、一つアメリカ発言していない。それはスターリンにやってしまった張本人だから、それはあなた、国後、択捉は日本のものだなんと言えないから発言していない。そして、米ソ関係が冷却時代に入って、五年も六年もたって、そろそろ日本ソビエトと仲よくしようかというときに、いや国後、択捉は、あれもどうも調べてみたら日本の固有の領土らしいということの文書を日本によこして、日本ソ連とのけんかをあおるようなことをやっている。いいか。こういうことを、どうぞひとつ外務大臣、明確に腹の中におさめていただきまして、こういうことからきちっと整理をして対ソ交渉、グロムイコ交渉に当たらなければ、まず日本国民を納得させることができません。対ソ連じゃありません。国民の中でも、こういう歴史的事実を全部知っておりますから。  そこで、私はもう時間が来ましたからなんでありますが、まず外務省の官僚に言っておきます。これは売っている本だ。この本を見ていただいて、これには私が今概略指摘した問題がもっと詳しく書いてあるから、文書でひとつ回答してもらいたい。これは歴史的文献であるし、歴史的事実ですから、ごまかしができる問題じゃありません。これをひとつ読んでいただいて、これに基づく答弁書を文書で出してくれ。それを得て、私はさらにこの論陣を張っていきます。それは、決して日本の政府を追い込もうというのじゃありません。対ソ連交渉において確信を持って我々の主張を通すためには、これをやってもらわなければいけません。  結論として私申し上げますけれども、アメリカ日本の固有の領土を自分たち戦略のためにソ連にやったというこの不当な国際条約は、これは認めるわけにはいきません。これは不当なる条約です。この不当な条約国際条約上認めるということになれば、世界の正義はありません、国際上の正義はありません。その意味において日本はこういう不当な、日本国有の領土を勝手に大国がやったり引っ張ったりしていることは了承できないというこの原点に返りて、千島列島の返還を要求するように理論構成を改めるべきだというのが私の結論です。大臣、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  73. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 さすがに、長い議会生活を続けておられる先輩だけに、非常に歴史的な事実とか議事録を踏まえた貴重な御意見であると思います。しかし、政府は政府としての一貫した見解がございます。そしてまた、これはあくまでも平和条約あるいはまた日ソ共同宣言等に準拠するわけでありまして、この点につきましては条約の解釈も含めての御質問でございましたので、条約局長から答弁をいたさせます。
  74. 小和田恒

    ○小和田政府委員 小林委員から大変詳細な御意見の開陳がございましたが、時間の関係もありますので、できるだけ手短に提起されたポイントについてお答えしたいと思います。  まず第一に、グレゴリー・クラーク教授の論文でございますが、私もこの論文を拝見させていただきました。ここにコピーを持っておりますが、非常に慎重に中をよく読ませていただきました。  それで、まず小林委員が御指摘になりました第一の点、桑港条約において日本は千島列島を放棄しておるけれども、それはどこに対して放棄したのかという御質問でございますが、御承知のようにソ連はこの条約の当事国ではございませんで、条約の第二条には、だれに対して放棄するということは書いてないわけでございます。したがいまして、これは日本のものではなくなります、日本はこれに対してもう領有権は主張いたしませんというのが、この条約で言っているすべてのことでございます。それ以上は条約の解釈の問題になりますけれども、解釈の問題としては、日本の放棄した相手は、日本が戦争を行った相手である連合国に対して放棄をしたものである、したがってこれの最終的な処分をどうするかということについては、日本は関知しないというのが政府の考え方でございます。  第二に、そこで放棄されている千島列島の範囲というものは何であるかということでございますが、その問題にお答えする前に一言だけ申し上げたいのでございますが、御承知のようにソ連は桑港条約の当事国ではございません。そこで桑港条約第二条で言っております千島列島の範囲が何であるかという問題と、日本ソ連との間の領土問題の対象になっている地域がどこであるかという問題は、法律的に申しますと二つの問題であるわけでございます。ソ連との関係におきましては、二国間の領土問題としては、日ソの間で平和条約締結の交渉が御承知のように一九五五年から行われまして、五六年に日ソ共同宣言ができ上がったわけでございますが、その日ソ共同宣言の第九項によって日ソ間の領土問題については規定が置かれた、こういう経緯になるわけでございます。  そこで、さっきも申しましたように、ソ連は桑港条約の当事国ではございませんので、日ソの共同宣言の背景となっております日ソ間の領土問題としてはどういうことが議論されたかと申しますと、日本は、歯舞、色丹のみならず国後、択捉も含めて、歴史的な経緯、それから地理的、文化的その他あらゆる事情を考慮して、これは日本の固有の領土であるから日本に返してもらいたい、これは日本の領有に属するものである、こういう主張を行いました結果、そこについては折り合いがつかないままに一九五六年の共同宣言の第九項で、ソ連としては歯舞、色丹は日本に引き渡す、ただし、現実の引き渡しは平和条約ができたときであるということを申しますとともに、松本・グロムイコ書簡によりまして、領土問題の交渉を含めて平和条約締結の交渉をさらに継続する、こういうことになったわけでございます。したがいまして、五六年の日ソ間の合意といたしましては、歯舞、色丹は日本に返します、国後、択捉については日本ソ連立場が違うから、さらに交渉して平和条約の交渉の主題にしよう、こういうことになったわけでございます。(小林(進)委員「それはわかっている、今はどうだ」と呼ぶ)  他方、現状におきましては、御承知のように日本側としては、歯舞、色丹、国後、択捉を全部日本に返してくれ、こういう主張に対してソ連側は、一連の国際的な取り決めによって日本ソ連との間にはおよそ領土問題なるものは存在しない、こういうことを言っているわけであります。そこで、そういうことで平和条約の交渉をこれから続けていく場合には、当然この問題が交渉の主題になるということでございます。  平和条約ということは、御承知のように戦争の後始末をするのが目的でございますので、賠償の問題でございますとかいろいろな問題があり得ますけれども、その中心になるのは領土問題なわけです。それ以外の戦争状態の終結とか賠償の問題とかいうような問題は、全部五六年の日ソ共同宣言で片づいておりますので、残っているのは、領土問題だけが平和条約の交渉の主題になる、こういうことです。  それからソ連は、一連の国際的な取り決めによって日ソ間には領土問題なるものは存在しない、こういう立場をとっておるわけでございますが、これは国際法上認められる立場ではございませんので、日本としては、それはあくまでも拒否をしてこの領土問題の交渉を続けていく、こういう立場でございます。
  75. 小林進

    ○小林(進)委員 問題は、ポイントはそこにあるんです。時間ですからやめますけれども、今ソ連は、国際法上領土問題はないと言っているんです。国際法上領土問題はもう解決したと言っている、その理由をなぜ一体明らかにしないかというのです。それを聞いているんです。それを聞くと、日本の方だって、吉田さんは国会の本会議の中で、歯舞、色丹は日本の固有の領土だけれども、千島についてはこれは放棄をしたと言っているじゃないか、当時の条約局長もこれは千島の一部なんですと言って、条約を結んだ日本の責任者は皆言っているじゃないかという、その問題を一体どう解決するんですか。日本みずからの、当時サンフランシスコ条約に出席した人がこれは放棄したんですと言っている問題を、五六年のいわゆる日ソ共同宣言の場所で初めて国後、択捉も日本の固有の領土だ、五年も六年もたってそれを言い直したところで、相手を説得する力にはならぬじゃないか。もし説得するなら、いま少し掘り下げて、なぜ日本の固有の領土である千島をヤルタの協定でスターリンにやったのかという、アメリカにいま少しこの問題を掘り下げて追及してみてくれ、これが私の質問の趣旨です。アメリカにいま一つ明らかにしてもらいたい。  そして、そのサンフランシスコ条約で千島問題がちゃんと出ている。出ているときに、吉田さんが血を吐く思いでアメリカに、この千島だけは日本の固有の領土だからやらぬでくれと三十二回も公文書を出しているというから、その公文書の控えを僕に見せてくれ。にもかかわらず、サンフランシスコ講和条約に行ったら、千島はちゃんと放棄するようにやられてしまった。そのやられる前の三十二回も日本の吉田さんが頼んだことが、一つもサンフランシスコの条約で生きていないじゃないか、その点を明らかにしてくれと私は言っている。それを何も明らかにしないで三十一年、その日突然に重光何がし、鳩山何がしが、いや国後、択捉も日本の領土でございますと言って、吉田さんや西村さんの言ったことをくるっと百八十度転換してみたところで、それはソ連に対する説得にはならない。ソ連国際条約上と言うのは、私は恐らくヤルタ協定だと思う。そのヤルタ協定で、アメリカは何で一体日本の領土をソ連にやったのですか。そこから問題を解明してくれと私は言っているのです。もう時間が来ましたから、何かしゃべることがあったら、私は聞きますよ。
  76. 愛野興一郎

    愛野委員長 簡潔に答弁願います。
  77. 小和田恒

    ○小和田政府委員 一言、法律的な関係だけ御説明しておきたいと思います。  ヤルタ協定は、日本は当事国ではございませんので、これには拘束されないわけです。で、カイロ宣言、ポツダム宣言を通じて、国後、択捉がソ連にいくべきであるということを規定したものは何もないわけです。日本側はそういう立場から、ソ連が一連の国際協定によって解決したと言うのは国際法上認められないことである、こういうことを言っているわけです。
  78. 小林進

    ○小林(進)委員 ソ連国際条約上問題がないと言っているのです。その国際条約というのは、ソ連が何を指しているのかと私は言っているのです。それがヤルタではないかと言ったら、あなたはヤルタでないと言うなら、じゃあ何の条約だ。ソ連が言っている、国際条約上の問題は解決したという、その国際条約というのは何を言っているのかと聞いているのです。あなた、それを答えないで、そして人の足を引っ張るようなことはかり言っている。そんなのは条約局長としてだめだ。これで終わります。
  79. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は条約は詳しくない。簡単に申し上げますが、ヤルタ協定については日本は本来認めているわけではないのです。それはもう認めないという立場で、今日来ているわけです。それから日ソ間には、歯舞、色丹は日本に返すという合意が一時成立したわけで、国後、択捉については継続案件ということになっているわけです。鳩山・フルシチョフのときになっているわけですね。また、田中・ブレジネフ会談でも、未解決の問題ということになっているわけです。ですからソ連側も、今日までの過程において、歯舞、色丹だけではなく、国後、択捉も日ソ間の継続した領土問題というのを認めておった時期があったわけです。  それが、今日においてはソ連側が態度を変えて、もう領土問題はありません、それでゴルバチョフさんは、今度は、この問題はソ連がこれまでにしばしば言ってきているとおりだ、もうこれ以上つけ加えることは何もありませんと、こういうことを言っているわけですが、私から言わせますと、鳩山さんの共同宣言のときの交渉、それから田中・ブレジネフ会談の共同声明、そういうものから見てソ連側自身が態度を変えたんだ。ソ連側も、領土問題については継続だ、国後、択捉も継続案件だということを認めているわけですから、そこに我々は到底納得できない面がある。もちろん、その前提としては、国後、択捉、歯舞、色丹が名実ともに、歴史上も条約上も、これは千島樺太交換条約のとき以来のいわば日本の固有の領土というのは、はっきりしているじゃないかということを我々は主張しておるわけであります。
  80. 小林進

    ○小林(進)委員 吉田さんと西村さんは、国後と択捉を放棄したと言っているが、言ったか言わないのか、これだけを後で文書で聞かしてもらえばよろしい、問題はこれを言っているのですから。
  81. 愛野興一郎

    愛野委員長 玉城栄一君。
  82. 玉城栄一

    ○玉城委員 私も、日ソ関係の問題についてお伺いをいたしたいわけであります。  私は率直に申し上げまして、隣国ソ連は近くて極めて遠いなという感じもするわけであります。今もいろいろ御質疑がありました、領土問題という非常に難しい問題が存在しているし、東西関係という問題、国民的悲願であります北方領土の返還を早く実現して、平和条約締結されることが望ましいわけでありますが、私はぜひこの機会に指摘しておきたいと思いますことは、中曽根内閣が誕生しまして、日ソ関係が前進あるいは促進されていたかというとむしろ逆の方に行っている、これもまた私は事実だと思うわけです。ソ連側を逆なでするような、例えば日本列島不沈空母であるとか、あるいは海峡封鎖であるとか、非常に物騒な発言を総理御自身が大変勇ましくしてこられた。外交的にも日本防衛政策の面でも、日ソ友好というものが促進されるよりもむしろ逆の方に来たと思うわけです。  したがいまして、私、今回の日ソ首脳会談については大変意義があるし、また大きく評価もするわけでありますが、午前中もいろいろこの問題について御質疑がありましたので、この機会にぜひ確認の意味で安倍外務大臣にお伺いしておきたいと思いますことは、ゴルバチョフ書記長が誕生されて各国首脳と非常に意欲的に会談をしておる、日ソ首脳会談、さらに将来もまた会談をしようという約束、あるいはグロムイコ外相訪日についても肯定的、積極的であった、あるいは米ソ首脳会談についても意欲的であるとか、国連総会に出席して演説するのではないかということ、あるいはフランス訪問とか西ドイツ訪問とか、そういうことからしまして、大臣も午前中おっしゃっておられましたけれども、新しい政権対話路線を踏み出してきているというような印象を非常に強く私たちは抱くわけでありますが、大臣、いかがでしょうか。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 午前中申し上げましたように、新しいゴルバチョフ政権ができまして、まだ政権として完全に固まっておるかどうかということは我々としても見通すことは困難ですが、少なくともゴルバチョフさんが非常に若い、そして、あの発言等から見ると非常に弾力性に富んでおられるように見えますし、各国との会談等を見ておりますと、確かにフランスにも行くということも約束しておられるようであります。また、米ソ会談に対しても意欲的であるという点から見ますと、これから世界の中で対話を進めて、この困難な対立を克服していきたいという意欲は十分持っておられるように私は思いました。     〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
  84. 玉城栄一

    ○玉城委員 ソ連グロムイコ外相訪日、年内にぜひ実現をさせたい、安倍外務大臣もモスクワ大使館に、相手方の日程の詰めも指示しておられるというふうに承っておるわけでありますが、それはどれぐらいまで進展しているのでしょうか。
  85. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだ、具体的な進展はないわけでありますが、五月の末にカピッツァ次官が日本にやってまいります。この際に、日ソ間で日ソ両国の問題、さらに国際情勢等について、次官級レベルでの広範な会談が行われるわけでありますが、その際グロムイコ外相訪日問題も詰めたい、こういうふうに思っております。
  86. 玉城栄一

    ○玉城委員 見通しとして、やはり年内に実現するということが考えられるわけですね。
  87. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私としては、せっかくですから、年内にグロムイコさんが来ることを歓迎したいと思いますし、期待をいたしております。
  88. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、安倍外務大臣にお伺いしたいのですけれども、総理と御一緒に故チェルネンコ書記長の葬儀に参列され、それからゴルバチョフ書記長との会談にも同席をされたわけでありますが、大臣も午前中ちょっとおっしゃっておられたわけでありますが、新しい書記長が、沖縄に核が配備されているということ、またそういう指摘があったという話もあったわけですが、それは正確にはどういう表現でおっしゃったのか、改めてお伺いいたします。
  89. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このくだりは、私も注意して正確に頭の中へたたき込んでおるわけですが、日本に関する発言につきましては、その内容は、グロムイコさんがかつて私に言われた内容とほとんど一致しておるということであります。ゴルバチョフさんは、沖縄に関する部分については、沖縄に核があるという情報がある、こういうことで沖縄の核問題に触れられたわけであります。沖縄に核があるという情報がある、こういうことで、ソ連が断定したとかいうことではありません。
  90. 玉城栄一

    ○玉城委員 実は、私なりにこの問題、非常に重要視するわけでありますが、沖縄には核があるという情報があるということ、これは一昨年もこの外務委員会大臣からも、当時大臣、全面的に否定されて、これは事実無根だということです。ところが、今回の日ソ首脳会談、中曽根さんにゴルバチョフ書記長も初めて会うわけですが、わざわざまたそのことを言っているということから、いわゆるソ連の指導部の認識というものが、沖縄には核がある、情報があるいはどうかよくわかりませんけれども、そういう認識が一貫している。そういう認識に基づいて、ソ連という国が国の最高方針というものを決めて、あるいはSS20とか我が国を壊滅できるという破壊力を持つそういう核兵器を配備していることからしますと、これはいかなる情報なのか、あるいはグロムイコ外相は当時どういう根拠に基づいてそういう発言をしたのか、その辺安倍外務大臣、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  91. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 グロムイコさんも私に対しまして、沖縄には核があるのじゃないか、こういうことを指摘されまして、私から沖縄に核はありませんということを明快に説明したわけですが、グロムイコ外相がこれを信じたかどうか別にして、今回もゴルバチョフさんは同じように、沖縄に核があるという情報があるということを言われましたから、ソ連としては、終始一貫して日本に対してはそういう認識を持っておる、こういうふうに思うわけです。
  92. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから外務大臣、総理と同席されて、首脳会談ということで双方、外務大臣発言するという場ではない、やはりソ連の最高指導者である書記長が改めてそういうことを言った。ソ連、あなたの国はどういう根拠に基づいて、例えば沖縄に核があるかということをその場で聞く時間的な余裕がある、ないは別ですけれども、そういうことについてこちら側から問いただしたというのはなかったわけですか。
  93. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはグロムイコさんとよく論争いたしました。今回も中曽根首相が、今あなたはそういうことを言われましたけれども、日本に、特に沖縄に核があるなどということは、全くあり得ないことだということを明快に言ったわけであります。
  94. 玉城栄一

    ○玉城委員 そのことはよく、総理自身が帰られて参議院の予算委員会で、私テレビを見ておったわけですが、その場で事実無根である、それは誤解だと反論したということを総理、報告しておられたわけですけれども、誤解がどうかは別にして、どういう根拠に基づいてソ連はそういう認識を持っておるのかというその根拠も、こちらがそういうことはあり得ないとただ言う、向こうは、いやそうじゃない、あるんだということで、これはそういうことが、もう既に大臣はモスクワの日本大使館にグロムイコ外相訪日についての詰めを指示されているわけですから、外務省当局とされて外交チャンネルで、ソ連は一体どういう根拠に基づいて、そういうことを最高指導者が我が国に対して発言しているのかということを問いただす必要が当然あると思うのですが、いかがでしょうか。
  95. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは問いただすまでもなく、誤解であるというふうに我々も信じておりますし、そのとおりだと思いますし、ソ連がどういう情報でこれを入手しているかということまで言う必要もないほど、沖縄に関しては日本立場からすれば明快である、こういうことから、ソ連に対してそれは全くの誤解ですよと、沖縄に核はありませんということははっきり言っているわけで、それで十分じゃないか、こういうふうに思います。
  96. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは問いただす必要もない、ないことは明快だからそれで十分だということでは、私はちょっと納得しかねるわけです。しつこいようでありますけれども、前回のときもそんな感じのお答え、今回はさらに最高指導者が、我が国の最高指導者である総理に対してそのような指摘があったわけですから、その根拠は一体、どういう根拠であなた方はそんなことを言うのか、そういう認識を持つのかという問いただしは当然あってしかるべき、これはまさに外交努力だと思うのですが、いかがでしょうか。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、言ってもお互いに平行線になるに決まっておりますし、ソ連がどういう根拠で言っているのか、これまでもソ連は口を開けばそういうことを言っているわけですから、その際に、そんなものは誤解だということを言い続けてきておるわけでありますし、ソ連としては、ソ連なりの恐らく判断か情報かに基づいてやっている。それは問いただしても、それがどこから出たのだということを、そこまでソ連がはっきり言うかどうかわかりません。わかりませんし、また今の日本からすれば、全くの誤解と言わざるを得ないし、今の日本の実情というものを知らない、沖縄の実態というものを知らない発言であるというふうに思うわけですから、時間的にも非常に制限がありまして、そういうところに立ち入って論争するとなると相当な時間をとらなければなりません。お互いに基本姿勢を述べ合ったわけですから、これからのこうした論争点については、今度グロムイコさんが来られたときでも、会ったときにじっくりいろいろと十分問いただしてみたいし、また日本立場も、十分もっとこれまで以上に詳しく説明をしたいものだ、こういうふうに思っております。
  98. 玉城栄一

    ○玉城委員 今大臣は、グロムイコ外相訪日したときに問いただしてみたいということですが、むしろ私は、向こうの外相が日本に来るまでにはこういう問題を、ちゃんと疑惑を解消しておかないといけないと思うのですね。     〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、大臣の今のお答えからはっきりしていますことは、前回も問いただしはしていない、いわゆるグロムイコ発言あるいは今回についてもそんな感じです。  そこで、私、非常に疑問に思いますのは、やはりそういう状態で平行線のまま、向こうはあるのだと言う、これは誤解だと言う。しかし、我が国としてはそれを積極的に、あなた方、一体どういう根拠でそんなことを言うのですかと言うことをしようとはしない。言ったって、向こうは言わないだろうと、お互いに思い込みみたいに、向こうはあるだろうと思い込む。こっちは言ったって、そんなことは言わないだろう、そういう状態で置いておくことが、いわゆる我が国の安全保障上好ましいということなんですか。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはなかなか、向こう側も、相当全体的に考え情報があるということで言っているわけですから、日本もこれに対して、日本基本的な非核三原則の説明、さらに沖縄には到底そういうものはありっこないし、あり得ないということを明快に言っているわけですから、これはこれなりに平行線であるかもしれませんけれども、しかし私は、そのことだけでお互いに突っ張り合っていくよりは、お互いの立場をもっともっと詳しく説明するという機会もあると思いますし、また日ソ間には、対立問題も領土問題を初めとしていろいろありますけれども、そういう問題は問題として、さらに発展させなければならない改善問題もありますから、そういう問題もやはり取り組んでいかなければならない。  ただ、お互いに論争し合って、対立し合っているだけでは、これはもう意味のないことになるわけで、グロムイコ外相も去年の国連総会で言ったのは、私が日本に行っても、あなたとけんか、対立しただけでは全く不毛の訪日ということになるじゃないか、こういうことを言ったわけでありまして、私も、ただそれは対立だけじゃないのだ、お互いに基本的には譲れない面があるけれども、しかし同時に、これから進めなければならない問題もあるのだから、そういうものもやはり話し合うということが大事だ、それが将来に向かっての関係をよくしていく上に大事なことだということを言っているわけで、お互いにただ一つの問題点だけを徹底的に詰めても、それはソ連ソ連立場日本日本立場があるわけですから、ここでもって際立った対立だけを表に出すということは、これからの将来を考えるときにいろいろと考えるべきことじゃないか。  ソ連も、そういうところは相当配慮して言っておる。しかし、領土問題については、先ほどから論争がありましたようにはっきりしておるわけでありまして、そうしてまた、ソ連情報という言葉で言っているわけですから、そして日本もはっきりそれに対して答えているわけですから、これはお互いの言い分であって、とことん詰めてそこで何か実りがあるというふうなものではない。これは、やはり日本現実の姿として、そうした沖縄に核はないんだということを世界にこれから明らかにしていく。明らかにしていくというか、それはもう明らかなんですから、そういうことが証明されれば、こういう問題は自然に氷解していくのじゃないだろうか、こういうふうに思います。
  100. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣のお言葉ですけれども、確かに日ソ間に領土問題、イデオロギーの違いとか、いろいろな複雑な要因があることもまた承知の上なんですね。ところが、核の問題につきましては、我が国は非核三原則だと向こうもよく知っているわけですから、そういうことを前提にして、あるいは今の情報に基づいて核があるんだということをさらに今度の日ソ首脳会談向こう側が指摘をしたということからしますと、せめて、それはそんなに詰めるとか詰めないとかという問題じゃなくて、大臣、もう既にグロムイコ外相訪日については日程は指示されていらっしゃるわけですから、当局からいわゆる外交チャンネルを通して、あなた方は再三そういうことを言っているけれども、情報と言うけれども一体どういう根拠なのかということを問いたださせるということは、当然の外交努力としてされていいと私は思うのですが、いかがですか。
  101. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 なかなかそういうことをやったところで、それじゃということで問題が氷解されるというふうにも私も思いません。ソ連は、そういう情報というものを背景にして疑ってかかっているわけですから、この疑いが晴れるというのには、日本自体がそういうことをはっきりするということの方がむしろ大事じゃないか。ですから、日本については核はないんだということを天下に表明しておりますし、そしてまた、我々自身も信念を持ってそれを進めておるわけですから、やはりこの日本の積み重ねの努力、あるいは日本がしばしば国会や内外を通じて明らかにした日本立場というものがだんだんと明らかになれば、ソ連それなりの理解が進んでくるのじゃないだろうか。ですから、今ここで外交チャンネルを通じてそういう問題を一々追及するというふうなことは、決して得るべきものは何もないのじゃないか、こういうふうに思います。
  102. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは、日ソ間で平行線のように、大臣と私の話も何か平行線。といいますのは、沖縄が返還されたとき、核抜き本土並み返還ということで、ところが現時点においてもいろいろな小型な戦術核だとか、そういう核が沖縄には存在しているんじゃないかという疑惑が常につきまとっているわけですね。私たちもこの前アンケートしたときに、七〇%くらいの方々がやはり核のある疑いはあるという、そういう回答もあるわけですね。さらに、大臣もこの前の委員会でおっしゃっておられたわけですけれども、ソ連側はあれだけの偵察衛星という、地上のいろいろなものをキャッチできるくらいの衛星を持っている国ですから、その国の最高指導者がそういうことを再三にわたって言うということ、今度はまた大臣は、いや、問いただしたって意味がないんだということからしますと、これはますます疑惑が深まる。これはやはり何か核があるのかなということに結果として。なっていくわけですが、いかがですか。
  103. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは日本政府の発言といいますか、姿勢を信用するかどうかということにかかっているわけで、それはもうそういう情報で疑問を持っているのはソ連だけじゃない、日本の国内にもそういう議論があることは国会の論議を通じても明らかでありますから、これに対しまして日本は、日米安保条約あるいはまた沖縄返還のときの取り決め、そういうものから極めて明快なことであるということを言い続けてきておるわけでありまして、それ以上もう言う必要もないのじゃないか。これは日本の政府の明白な責任を持った発言でありますし、事実、沖縄に核はないわけですから、ないものをあると言われても、それ以上言いようはないわけですね。
  104. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは、ないわけですとおっしゃるから、じゃ一体、ソ連はどういう根拠に基づいてそんなことを言うのか問いただしなさいと言うと、いや、そんなことを言う必要はない。これまた言っても平行線ですから、私の要求としまして、グロムイコ外相訪日するまでの間にこの問題については何らかの問い合わせをするなりして、誤解と言うなら誤解らしく、誤解とこっちで一方的に言ったって、何が誤解なのかよくわからぬわけです。ソ連の言うのが正しいのか、向こうが誤解しているのか、よくわからないわけですから、ぜひともその根拠を問いただしていただきたい。要望をしておきます。  先ほど大臣もおっしゃられましたゴルバチョフ書記長、米ソ首脳会談についても意欲的であるということでありますが、三月十二日、米ソ包括軍縮交渉が開始されているわけです。その絡みで米ソ首脳会談の今後の見通し、どのように大臣感じていらっしゃいますか。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その前に、核の問題は、玉城さんも沖縄出身の議員ですから、それだけに非常に真剣に関心を持っておられると思いますから、日本政府としての立場は明確に申し上げますが、沖縄には核はないということであります。これは日米間の取り決めで明快であるということ、また事実上そういうことはあり得ないということを、はっきりとこの際申し上げておきます。  それから、米ソの軍縮、軍備管理についての交渉については、スタートしたばかりでございますから、これからどうなるかはなかなか予見しがたい面がありますが、そうしてまた、今は米ソ間には大きな隔たりがありますから、この隔たりがそう簡単に解消するといいますか解明されるということはない、これから交渉を続けていく上において、困難な事態も生まれてくる可能性があるのじゃないかというふうに私は見ております。しかし、米ソ首脳とも、何とかこの会談軍備管理、軍縮問題を前進させたいという意欲を持っておりますから、開きは非常に大きいですけれども、これは辛抱強くここで交渉を続けていけば、今の世界情勢米ソ姿勢、東西関係、そういうところから見れば、可能性としては道は開ける可能性はあるんじゃないか、こういうふうに私は見ております。
  106. 玉城栄一

    ○玉城委員 核超大国両国の最高指導者会談するということ、これは世界平和にとって極めて有意義なことでもあるわけですから、我が国の外務大臣とされてもぜひ促進をしていただきたい、このように御要望を申し上げておきます。  それでは次に、五月の二、三、四ですね、西ドイツのボンでサミットが開催されるわけですが、これは既にそのテーマ、主要議題というのは決まっていると思うのですが、我が国としてはこのボン・サミットにどういう点を最重点、いわゆるポイントを置いて臨むか、その点をお伺いいたします。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ボン・サミットの具体的な話し合いの内容については、今個人代表がドイツへ集まりましていろいろと具体的な詰めをしております。今回で恐らく大体の詰めができるんじゃないかと思います。基本は何といいましても、現在の国際経済情勢をどういうふうに打開していくかということがこのサミットの主題でございます。しかし同時に、政治問題もこれに関連して種々議論されるんじゃないか。大まかにはそういうことでありますが、内容についてはまだ固まってないというところであります。
  108. 玉城栄一

    ○玉城委員 実は、午前中に日米経済問題の議論があったわけでありますが、アメリカのいわゆる高金利あるいはドル高とアメリカの赤字政策等について、各国からサミットにおいても当然是正要求が出ると思うのです。大臣、いかがですか。
  109. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、これまでも出てまいりましたし、国際情勢経済情勢をいろいろ検討する中で、インフレなき持続的な経済成長を行っていくというのが今、サミットの参加国の合意になって、前回のロンドン・サミットを終わっております。これは依然として続いておりますし、その他南北問題も出るでありましょう。そういう中で、発言としては、あるいは今のそうしたアメリカのドル高問題あるいは高金利の問題、あるいは反面、日本の貿易黒字の問題といったものも、お互いの議論の中では出てくる可能性もあるのじゃないか。しかし、こういう点を議題として取り上げるかどうかということについては、今回の個人代表で整理をしておるということであります。
  110. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、私が非常に懸念いたしますのは、今大臣がおっしゃいました我が国の大幅な貿易黒字ですね。あるいは下手をすると、我が国がサミットで集中攻撃を各国から受けかねないと思うのですが、そういう懸念はないでしょうか。
  111. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、日本だけがそうした批判を受けなければならないという立場ではないと思います。アメリカにおきましても、アメリカの抱えておる高金利だとか赤字の問題もありますし、あるいはEC諸国の抱えておる保護主義的な傾向の問題もありますし、産業構造の問題もありますし、いろいろな問題を総合してサミットで議論されて、そういう中でこれから世界経済はどういうふうに持っていくかという、むしろ建設的な面を打ち出していかなければならぬ、そういう点については今個人代表が話し合いをしている。お互いにお互いを責め合うだけでは、決してこれからの世界経済をよくする道につながりませんし、そしてそれはサミットの意味というものもむしろ逆になってくるわけでありますから、むしろ建設的な面をお互いに強調していくようにしていかなければならぬと思います。
  112. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、大臣とされて、午前中もお話がありましたが、世界の中で我が国が孤立化でもなったらこれはまた大変なことになりますし、アメリカは例によって日本の黒字問題、あるいはECもそう、あるいはASEANもということになると、この五月のボン・サミットで我が国が集中攻撃を受けかねない。ですから、それについてどう対応するか。五月というのはもうすぐ目の前ですから、大臣としては、そういうのんきなことでもこれはいかないと思うのですが、その対応策あるいは対抗をどうしていくかということはどのようにお考えでしょう。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 サミットの議題はまだ整理されておりませんが、確かにおっしゃるように、日本が集中攻撃を受けるとかあるいは孤立するとか、そういう事態は避けなければならぬわけですから、その点については農水委員会で今、日米間の経済摩擦の問題を解消するために詰めておりますし、同時にまた、ECとの関係もいろいろと協議もしております。さらにまた、OECDの閣僚理事会も開かれるわけでございますから、そういう席を通じて、サミットを何とか実りあるものにするための努力をこれから重ねてまいらなければならぬ。全体としては、今の状況で行きますと、ほっておけば日本がいわばスケープゴートにされるおそれが全然ないわけではない。そういう点について、私たち一つの心配な危機感を持っていることは事実でございます。
  114. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、我が国の大幅な貿易黒字というもの、これは一つにはアメリカの高金利、いわゆるドル高、アメリカの赤字政策にも大きな原因があるわけですから、我が国としても市場開放のいろいろな問題があるでしょうけれども、強くアメリカのそういう現在の経済政策のあり方の是正を、我が国としても当然サミットの場で主張すべきだと思うのです。いかがでしょうか。
  115. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん日本としても、現在の国際経済状況あるいは保護主義の台頭、そういうものを踏まえて日本なりの考えておる意見を堂々と述べるということは、当然のことであろうと思います。
  116. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、去年の新ラウンドの問題、たしかフランスなどの反対でEC各国も留保した。ところが、三月十九日のEC外相理事会で、日本の市場開放を前提に一応参加するということが決まったと伺っているわけでありますけれども、これで当面のボン・サミットにおける交渉開始の合意が得られるという見通しに立っていいのかどうか、その辺いかがでしょうか。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これもOECDの閣僚会議、さらにサミット等の実際的な議論を経ないと、確固として言えるわけではございませんが、ECがニューラウンドに対して今までの否定的な態度から肯定的な姿勢に転じてきたということは、ニューラウンドの準備を進める、そうして来年から交渉を開始するという点については非常に明るい見通しが出てきた、こういうことは言えるのではないかと思います。しかし、それでは簡単に間違いなしにいよいよニューラウンドが始まるということをここで断定する決定的な状況ではまだない、こういうふうに思います。努力していかなければならぬ。努力して一つの道が開く雰囲気といいますか、空気が出てきたということは言えると思います。
  118. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、ニューラウンドについては先進国主導で進められるということについては、ASEAN諸国あるいは開発途上国は非常に警戒心を持っておるわけですね。したがって、当然新ラウンドの提唱国であります我が国としては、今後発展途上国が参加できる環境づくり、責任を果たす必要があると思います。いかがでしょうか。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全くそのとおりです。日本もこれまでアジアの諸国との話の中で、このニューラウンドに対してこれらの国々の協力といいますか、賛成を求めてまいりました。反響は、完全に支持するということではないとしても、全体の空気としては、このニューラウンドを進めるということに対しては見通しとして出てきたと言える、今のところ全体的にはそういうふうに空気として私はつかんでおりますから、これはOECDの閣僚会議で議題となると思いますし、そういう二十数カ国集まっての議論を経てさらにサミットということになれば、相当の理解が得られるのではないか。しかし、発展途上国に対する日本あるいは先進国のニューラウンド支持の努力は、これからも続けていかなければならないと思います。
  120. 玉城栄一

    ○玉城委員 我が国にとって日米関係というのは極めて重要ですし、日米関係が非常に良好な状態であることは当然望ましいわけですが、それと同じ比重あるいはそれよりもさらに二十一世紀に向かつて我が国は、ASEAN諸国との関係は重要だと思うのです。ですから大臣も、午前中からも経済援助についてもいろいろなことをおっしゃっておられたわけですが、今そういうASEAN諸国からの反発を我が国がこういうことで招くというようなことになったら、これまた将来に大変な悔いを残すということで、環境づくりということで午前中も出ましたけれども、例えばタイだとかインドネシアの鶏肉問題とかあるいは合板の問題とかいろいろおっしゃいましたが、関税問題というのは今のうちに手を打つべきだと私は思いますが、いかがでしょう。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、なかなか日本も困難な事情を抱えておるわけでございます。そして、長い間の懸案でもあったわけでございますが、それだけにASEANの日本に対する要請も非常に厳しくなってきた。日本とASEANとの友好と安定した関係をさらに発展させていくためには、これらの残された問題についても何とか解決の道を図るために努力していかなければならない。それも、ASEANとの経済閣僚会議等もありますし、そうした辺を一つのめどとしてできるだけの努力を続けていく必要がある、こういうふうに思っております。ただ、問題は、アメリカの木材問題とともに、これは日本にとりましても極めて困難な問題であるということは御承知のとおりであります。
  122. 玉城栄一

    ○玉城委員 サミットにオーストラリアの参加、これは継続審議ということになっているように伺っているわけですが、このボン・サミットにオーストラリアを参加させるべきだという要求が非常に強いわけですが、大臣とされては、そのためにどういう動きと申しますか根回しと申しますか、やっていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは去年もサミットの会議で出ましたけれども、メンバーシップを拡大するということに対しては、どちらかといいますと各国とも消極的でございます。したがって、懸案の一つとしてはあると思います。しかし、これは全体の国の了承を得られなければなりませんし、今の状況からいえばこれもなかなか困難な問題であろう、こういうふうに思います。
  124. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、五月のボン・サミットではオーストラリアの参加は難しい。来年は我が国で行われるわけですが、いかがでしょうか、来年あたりは。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 来年のことまでは、まだ何も予定できませんけれども、来年は日本がホスト国でありますから、そのときの日本政府がどういうふうに対応するかは、そのときの政府の考え方というものもあると思います。しかし、同時に今のサミット参加国の状況、空気がそう大きく変化するという事態にはならないのじゃないか。今回、オーストラリアに総理とともに行きましたときの首脳会談でも、この問題は出なかったというふうに承知しております。
  126. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題、安倍外務大臣とされては、大洋州、オーストラリアはサミットに参加した方がいい、しない方がいい、あるいは自然な流れでいい、どのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本のこれまでの姿勢は、どちらかというとオーストラリアに対しては好意的、こういう姿勢で対処をしております。
  128. 玉城栄一

    ○玉城委員 好意的ということは、できるだけ参加させた方がいいというお考えだと思うのですけれども、そこで、来年七年目、二回目のサミットが我が国で行われるわけであります。ホスト国ということで、開催地はどこを予定していらっしゃるのですか。
  129. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは東京と決まったわけじゃありませんけれども、そういうことになるのじゃないか、順番で回り持ちですから。これは、ことしのボン・サミットが終わって後に日本政府が主唱して各国の了承を求める、こういうことになると思います。今、決定的に日本ということになっておるわけじゃありませんから、東京でやるとか京都でやるとか、そういうところまで表に出ておりませんし、日本政府としても何も検討していない、全く白紙である、こういうことでございます。
  130. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、我が国でサミットを、これは順番からしてぜひやるべきである。また、外務大臣とされても、これは非常に重要な課題として位置づけられて、その準備体制というのは、今のうちから万全にやっておくのが当然だと思うのです。来年どこになるかわからぬ、そういうことでは説得力もないし、このサミットを通して我が国の立場、あるいは世界経済、平和というものをつくり上げようという意欲を当然持っていらっしゃるならば、今から開催地もこの辺はどうか、あの辺はどうかとか腹案も持ちながら、各国に呼びかけるということが必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
  131. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私どもとしましては、当然来年は日本で行うべきだ、こういうふうに思っておりますし、恐らく今回のサミットでもその点が最終的に決まっていく。そして日本も、ぜひ日本ということを主張していくことは当然でありますが、ことしのボン・サミットは決まっておりますが、来年のことについては、各国との話し合い各国の了承を得ないうちから、今日本がどこでやりますとかあそこでやります、こういうことを言うのは、外交儀礼、外交の慣習から見てもどうかと思います。しかし、日本としましては、あくまでも来年は日本でやりたいという強い決意は持っておりますし、このボン・サミットが終わったら、そして日本ということが決まれば、精力的に日本でやることについての準備を始めなければならぬ、こういうふうに思います。
  132. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣御自身としては個人的に、来年やる場合に東京、あるいはどういうところがいいとお考えなのですか。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは全く考えておりませんが、なかなか沖縄というわけにいかないのじゃないかと思いますけれども……。
  134. 玉城栄一

    ○玉城委員 ちょっとごまかされたようで……。東京もあれば京都もある、いろいろありますでしょう。必ずしも東京に限定されているわけじゃないですね。
  135. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度のサミットで日本ということが決まれば、それから日本の政府の中で十分協議をして、そしてどこが一番適当であろうかということを決めればいいのじゃないか、こういうふうに思います。
  136. 玉城栄一

    ○玉城委員 準備態勢は早目に万全にとっていただいて、各国に要請をしていただきたいと思います。  次は例の日米航空協議なのですが、これまた交渉開始、中断、そして再開、さらにまた中断、そしてまた再開ですか、あさって二十八日から。その辺の経過と、一体何が問題になって難航しているのか、御説明いただきたいと思います。
  137. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 日米の航空交渉につきましては、委員御承知のように、現存の日米航空協定の基本的な見直し、特に従来から存在しております日本側の権益が、ともすればアメリカ側の権益と比べて均衡がとれていないという問題がございまして、そういう背景のもとで日米間の航空権益を拡大均衡の枠の中で見直していこう、こういうことで従来から交渉が行われておるわけでございまして、現在米国との間に行われております話し合いもそういうことで、八三年の暮れにことしの九月をめどとしまして、先ほど申し上げましたような方向で航空協定の見直しをするということで行われておるわけでございます。  他方、その過程におきまして、日本貨物航空という会社が、日本からアメリカに貨物輸送のために乗り入れるということで申請がございまして、この航空協定上の指定航空企業としてアメリカに通告をいたしまして、アメリカの国内法に基づきまして免許申請の手続がとられておって、これに対してアメリカ側の免許が今日に至るもまだ出ないという問題がございました。これにつきまして我が方から、航空協定上の所要の要件を満たしておる企業であるので早急に免許をおろしてほしい、日米間の運航に従事できるようにしてほしいという申し入れを行いまして、この問題をめぐって日米間で話し合いが行われておる、基本的に申し上げますとこういう状況でございます。
  138. 玉城栄一

    ○玉城委員 運輸省の方いらっしゃっていると思うのですが、今の日米航空協議の中断、再開、中断、再開、具体的にどういうことで中断し、あさってからですか開かれる、この合意見通し、そのことについて御説明いただきたいのです。
  139. 平野忠邦

    ○平野説明員 お答えいたします。  ただいま栗山局長の方から御説明がございましたように、今私ども二つの交渉を並行的に行っておりまして、一つは日米の航空協定を全面的に改定する交渉でございます。これは一昨年の十二月に合意いたしまして、昨年の三月、九月、それからことしの二月にそれぞれ交渉を行っております。この過程におきまして日本貨物航空、NCAの米国乗り入れ問題が起こりまして、これにつきましてはつい最近も、二月の二十五日から三月二日まで東京におきまして、三月の十二日から三月の十五日までワシントンにおきまして開催されました。これは日本貨物航空が四月一日から米国乗り入れをしたいということでございまして、私どもの方もぜひその希望がかなえられるよう、今全力を挙げているところでございます。
  140. 玉城栄一

    ○玉城委員 運輸省の方、したがってその二十八日から再々開といいますか、これの見通しはどうなんですか。
  141. 平野忠邦

    ○平野説明員 三月の二十八日からでございますが、米側とは仮に三月二十八日から開こうということで、まだ最終決定いたしておりません。ただいま外交チャネルを通じまして、三月の二十八日に開くかどうか、向こう側と連絡中でございます。
  142. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務省、それはどうなんでしょうか。
  143. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 現在、交渉と申しますか話し合いと申しますか、ぎりぎりまで詰まってきておりまして、したがいまして詳細について申し上げられる状況にございませんが、私どもといたしましては、日本貨物航空の乗り入れにつきましては、何とか企業が希望しております四月一日からの運航が実現できるように、全力を挙げてやっていきたいというふうに考えております。
  144. 玉城栄一

    ○玉城委員 全力を挙げてやっていただくということでありますが、先ほど現行の日米航空協定について不均衡であるという、いわゆる不平等な協定、条約であるということなんですね。これは、やはりそのとおり外務省も認めていらっしゃるというふうに理解してよろしいですか。
  145. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 基本的な認識といたしまして、日本側の航空権益というものが、現在の我が国の国際的な地位、国力というものに照らしまして、必ずしもアメリカが現在有しております権益との対比におきまして十分に均衡がとれたものではないだろうということは、政府として認識をいたしておるわけでございます。ただ、具体的にどういうふうに均衡がとれてないかということになりますと、これは物の見方、何を物差しにして見るかということによっていろいろ違いがありまして、アメリカアメリカで、アメリカ立場から見れば、これは必ずしも不均衡ということが言えないのではないかというような主張を従来交渉の過程で展開しておりますが、私どもといたしましては先ほど申し上げましたようなことで、我が方の航空権益というものをより伸ばすべきであるというふうに考えております。
  146. 玉城栄一

    ○玉城委員 ぜひ現行日米航空協定の改定につきましては、相互主義という立場から、我が国の権益が十分守られるという立場からの改定を希望しておきたいと思います。  運輸省の方にこの際お伺いしておきたいのですが、国際線への進出、例えば全日空あるいは東亜国内航空その他の航空会社、これはどのように理解しておけばよろしいでしょうか。
  147. 平野忠邦

    ○平野説明員 この問題につきましては、先生御承知のとおり、昭和四十五年の閣議了解、四十七年の運輸大臣通達、これで我が国航空企業の運営体制の基本的あり方というのが決まっております。したがいまして、今後の国際線を複数体制にするか否かという問題につきましては、我が国の中長期的な航空政策がいかにあるべきかという総合的判断から、今後慎重に決めていきたいと考えております。
  148. 玉城栄一

    ○玉城委員 今申し上げました航空会社の国際線進出という問題について中長期的に検討していきたいということは、将来の問題としては国際線への進出ということも否定はされないということですね。
  149. 平野忠邦

    ○平野説明員 この問題につきましては、一つは我が国の国内航空体制をどうするかという問題、あるいは今後の我が国の国民の利便の向上をいかに図っていくか、あるいは我が国企業の国際競争力の向上をいかに図るか、あるいは国益の確保という総合的な判断をした上で今後判断してまいりたいと考えております。
  150. 玉城栄一

    ○玉城委員 将来、全面的にそういうことはあり得ないということではないという意味だと思うわけでありますが、時間がなくなりましたので……。  実は、これは外務省の方に伺いたいわけですが、ことしの一月十六日だったと思います。いわゆる米兵による住民の殺害事件がありまして、結局逮捕されても身柄が拘束されないということで非常に住民感情が、ただ殺人事件というだけではなくて、地位協定の十七条五項というものはぜひ改正をしなくてはいかぬということで、沖縄の県議会でも与野党を含めて全会一致で改定決議をしているわけですね。それについては当然外務省は御存じだと思うのですが、そのことについてどのようにお考えになりますか。
  151. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 金武町の事件につきましては、政府といたしましても極めて遺憾な事件と存じておりまして、起訴されました容疑者が日本側の当局に引き渡しをされましたので、今後司法当局により厳正な処断が行われるということであろうというふうに考えておるわけでございますが、ただいま委員御指摘の地位協定の十七条の規定そのものにつきましては、地元の協定の見直しの御要望は私どもとして存じておる次第ではございますが、この地位協定の規定そのものは私ども必ずしも不平等なものというふうには考えておりませんし、また例えばNATOの地位協定と全く同様の規定でございますので、これによって我が国の権利が不当に制限されておるということではないというふうに認識しておりますので、御指摘の地位協定の十七条の規定の改定そのものにつきましては、政府といたしましてはこれを行う考えは持ち合わせておりません。
  152. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、栗山さん、今犯人は起訴されているわけですけれども、その犯人の身分上の地位ですね、身分上はどうなっているのか、いわゆる軍人さんですか、それとも軍籍はもうないということでしょうか。
  153. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 米軍人としての地位はそのまま保有をしておるというふうに理解をしております。
  154. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは起訴中そのまま米軍籍を持っている。判決がおりた場合、有罪が確定した場合はどうなるのですか。
  155. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 どういう判決が出るかということをこの段階で予想するわけにはいきませんが、判決が出ました後で米軍側が内部でどういう手続をとって、また米軍内部の規律上本人に対してどういう措置をとるかということについては、私ども現在何も承知いたしておりません。
  156. 玉城栄一

    ○玉城委員 有罪が確定しました場合に、その犯人の身分というものは、非常にいろんな補償問題に関係してくるわけですね。ですから私は伺っておるわけです。有罪であっても軍人であるのか、あるいは有罪になればもう軍籍を離れるのか、いわゆる民間人となるのか、それをはっきりしておいていただかないと、殺害された遺族の補償問題、本人が責任を持つのかあるいはアメリカという国家が、軍隊が責任を持つのか、その辺をはっきりしていただきたいですね。
  157. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 民事の問題につきましては、これは地位協定の十八条でございましたか、ちょっと今手元に条文を持ち合わせておりませんが、当然地位協定に従って処理が行われるということになります。  犯人の軍隊上の身分がどうなるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、過去でも同じように日本の裁判権に基づきまして裁判が行われて、有罪になって服役した例が幾つかございます。そのような場合に、アメリカ側がその犯人につきましていかなる身分上の処置をとったかということは、ちょっと私、手元に資料を持ち合わせておりませんので責任持って御答弁できませんが、今回の場合もどうなるかということにつきましては、ちょっと現段階でどういうふうになるかについて予想を申し上げることはできません。
  158. 玉城栄一

    ○玉城委員 その問題はまた後で調べて御回答いただきますが、もう一点最後に、在日米軍の特殊車両が基地外を通行する場合、日本の国内法の適用はあるのか。
  159. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 一般的には地位協定の五条と合意議事録に基づきまして、日本国の法令の適用がございます。
  160. 玉城栄一

    ○玉城委員 適用があるわけですね。米軍の特殊車両は、道路法に基づく車両制限令十四条で除外されておりますね。その理由。
  161. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 昭和四十七年に御承知のように、相模原の補給廠の戦車の搬出問題というのがございまして、そのときに政府が諸般の考慮から、米軍の車両につきましては今委員御指摘の車両制限令の適用を除外するというのが、地位協定に基づいてアメリカに与えられております米軍の車両の原則的な通行の自由というものを保障するために適当であろう、こういう判断のもとに車両制限令の適用除外というものを決定いたしました経緯がございます。
  162. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、したがって米軍の特殊車両は、いわゆる無法のまま基地外を走り回っているということになるわけですか。
  163. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま申し上げましたような経緯で、道路法に基づきます政令としての車両制限令そのものは一応原則的に適用除外になっておりますが、しかしながら他方、道路の保全というものに対して全く拘束されることなく自由にやれるということにもまいりませんので、日米合同委員会を通じまして、車両制限令に基づきます制限の適用があるような車両につきましては、車両制限令の適用除外ではございますが、別途日米間におきまして、アメリカ側から通報を受けましてそういうような車両の通行についてはあらかじめ協議をして問題が生じないようにする、そういう仕組みを一応日米合同委員会のもとで合意をしておるということがございます。
  164. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、そういうふうに特殊車両については、戦車なども含めましてちゃんと三日前に、事前に道路管理者に届け出をするようになっておるわけですけれども、沖縄の場合はこういうことも全然されないで自由に、いわゆる無法の状態で、しかもそれが大きな事故を起こしているわけですね。そういう状態はそれで許されるわけですか、栗山さん。
  165. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 委員の御念頭にありますのは三月六日の事故だろうと思いますが、私どももこれは非常に、米軍側の不注意による事故であろうと承知をいたしております。つい最近、外務省といたしましてその事実を知るに至ったことでございまして、まだ詳細は十分承知をいたしておりませんが、とりあえず米軍側に対しましては、事前に合同委員会で了解されているような仕組みに基づいた連絡調整というものが行われなかったのではないかということで注意の喚起をいたしまして、アメリカ側もその非を認めて、今後この種のことが起こらないように、合同委員会の手続については十分これに従ってやっていくつもりであると申しておるわけでございますが、事実関係につきましてはなお調査を必要とする点がございますので、まだ十分詳細につきまして判明するに至っておりません。
  166. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が参りましたので、十分その取り決めどおり米軍に徹底をしてもらいたいし、また、道路も破損して相当の被害を出しているわけですから、その補償を一体どこがするのか、その辺もきちっとやっていただきたいと思います。  以上です。
  167. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、渡辺朗君。
  168. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 きょうは限られた時間ではありますけれども、四つぐらいの問題点、そこに焦点を置いてお聞きをしたいと思っております。一つはサミットであります。それからもう一つは日米貿易摩擦。三番目にイラン・イラク紛争、そして今日の情勢日本の対応策。さらには四番目に、カンボジア問題についても聞きたいなと思っております。  お聞きする前に一つ、けさほど新聞を見てびっくりしたのですけれども、東ドイツのポツダムにある米軍の連絡事務所の将校がソ連兵に射殺される、公務中射殺されるという事件が報道されておりました。冷やっといたしました。大変壊れやすい今日の東西関係の中で、これは一体どういうことになっていくのかな、今後の軍縮交渉にも影響していくのではあるまいか、こういうことを感じたわけですが、今の時点でもしわかっておりましたらその後の進展状態、経緯、こういったものをちょっと教えていただきたいと思います。
  169. 西山健彦

    西山政府委員 二十六日午後二時半現在、判明しております事件の概要を申し上げます。  二十四日午後三時五十分、現地時間でございますけれども、東独領内のソ連軍事施設があるルートヴィッヒスルストというところがございますが、これはベルリンから北西百六十キロ、西独国境から四十八キロという地点でございます。そこで米陸軍少佐アーサー・ドナルド・ニコルソン・ジュニアがソ連軍警備兵によって射殺されました。ポツダムにございます米軍連絡事務所に所属する同少佐は、部下であるシャッツ軍曹とともにルーチンとしての巡回視察中、ソ連軍の立入禁止区域から三百ないし五百ヤード離れた地点で、全く何の事前警告もなく発砲され、射殺されたというふうに伝えられております。  銃撃は、当初、車の中に残っておりましたシャッツ軍曹に対して行われましたけれども、その後ニコルソン少佐が胸に狙撃弾を受けた。シャッツ軍曹は、応急手当てをニコルソン少佐に施そうとしたわけでございますけれども、ソ連兵に実力で阻止されたと言われております。ニコルソン少佐は、約一時間ばかり放置されたままその後死亡した、こういうことでございます。  なお、ちなみに、この連絡事務所と申しますのは、第二次大戦でドイツを占領いたしましたソ連軍と米、英、仏三カ国軍が一九四七年取り決めを結びまして、東西両独に、お互いに相手側の占領軍司令部との連絡事務所を置くことにしたことに発しております。米、英、仏は、それぞれポツダムに各一カ所の事務所を持っておりまして、ソ連は西独に三カ所の事務所を有しておるということでございます。  ただいまの現状は、これは我が方の在米大使館からの報告でございますけれども、二十五日朝からワシントン、ポツダム両方におきまして、この事件について米国はソ連側に厳重な抗議を申し入れております。ソ連側は、米国駐在官がソ連でスパイ活動をするのは許されない、そういう反応を示しておりましたけれども、ワシントン時間の正午、在米ソ連大使館は、ニコルソン少佐の死に対して遺憾の意を米国政府に伝えてきたということでございます。二十五日午後、ホワイトハウスの定例記者会見でスピークス報道官は、すべての米国民はこの事件に衝撃を受け悲しんでいるというレーガン大統領のステートメントを発表いたしますと同時に、ソ連側に抗議し、完全な説明を要求している、こういうふうに述べております。  以上のとおりでございます。
  170. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ありがとうございました。本当にこういう事件が起こると、たちまち何か東西関係に大きく響くのではあるまいかという懸念を持っております。前にも、バレンツ海から発射されたミサイルが誤ってフィンランドの方に飛ぶとか、いろいろなこともありました。外務大臣、こういうことはやはり軍縮だとかそういうものにも響くような事件というふうにお感じになりますか、どうでしょう。
  171. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 不幸な事件でありますし、しかも同時に、一人の将校が射殺されるというふうなショッキングな内容でもありますので、これは受けとめ方によっては米ソの国民感情を非常にあおり立てる。特に、アメリカという国はああいう民主主義の国でありますし、生命を大事にしておる国でありますから、場合によっては、米ソのせっかく始まった核軍縮交渉にも大きな影響が出てくる可能性もあります。これまでもよくそうした例はあるわけでございますから、私も事件を受けたときに冷やりといたしましたし、行方を心配しておるわけでございますが、しかし今の状況から見ますと、何とかこれは米ソともローキーといいますか控え目にこの問題をおさめていこう、慎重にこの問題をおさめていこう、米ソの大きな流れといいますか、交渉の流れをこれでもって変えてはならないという配慮が背後に働いておるようでございますし、私としましても、大変不幸でありますし、この点についてはやはりきちっと結末をしなければならぬと思いますが、これでもってせっかく世界が期待しておる米ソ交渉の行方に大きなひびが入らないように、期待をいたしておるわけであります。
  172. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それではサミットの問題に入らしていただきます。  五月上旬にボン・サミットが行われるわけでありますが、もう既にいろいろうわさされております。政治宣言が採択されるのではあるまいか、それからまた、その政治宣言のあり方というもの、内容をめぐっても論議が行われております。例えば、SDIに対する支持声明をそこで発表するようなアメリカの意向もあるというような報道が行われておりました。それからまた別の報道では、ホスト国の西ドイツの提案で、民主主義の価値を大きくうたい込んだ宣言を発表する、こういうようなことも言われております。どうなんでしょう。実際そういう宣言の作成、発表、その動きはございますか。そしてまた、それに対する日本側の態度、方針というものは、どのようなものでございましょう。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今、ちょうど個人代表がドイツに集まりまして、ボン・サミットをどういう方向で運営していこうか、その議題はどういうふうに整理していくかということで、会合をやっておる最中であります。最終的には整理されてないと思っておりますが、いずれにいたしましてもサミットは経済問題が中心でありますし、現在の世界経済情勢、そういうものを踏まえた議論が行われると思います。先ほどから議論になっております例えばニューラウンドの問題も、大きな議題であろうと思います。あるいは、債務累積問題等南北問題も出てくるでありましょうし、今の世界経済、景気をどうするか、あるいは、その中でアメリカの抱えておるところのドル高の問題とか高金利の問題、あるいは日本世界から注目を浴びておるところの貿易黒字の問題、こういう問題等も場合によっては議論されるのではないだろうか。  まあ政治の問題としては、SDIが議論されるかどうか、私はちょっと疑問に思いますが、ドイツがホスト国ですから、ドイツがどういうふうに政治問題をリードしていくかということにもかかってきているかと思いますが、少なくとも、戦後ちょうど四十年たったけじめでありますから、この際やはりサミット参加国初め自由国家群の結束を固めて、そしてさらに世界の民主主義を前進させるという意味の何らかの動きが表面化してくるのじゃないだろうか、こういう予測はいたしておりますが、まだそういう方向で取りまとめをするという具体的なことまで煮詰まっておるとは聞いておりません。
  174. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 もうそろそろ予測ではなくて対応をちゃんと決めなければ、時間切れになるぐらいな私は問題ではなかろうかと思います。その際に、今外務大臣はどのようにお考えでございましょう。今度は予測ではなくて、今ここで戦後四十年、一つのけじめだ、したがって、伝えられるような宣言を発表する、特に民主主義の側の価値をうたった宣言でございますが、どのようにお考えでございますか。
  175. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 四十年ということで、ソ連も大々的に四十年の戦勝記念をやるということも言われておりますし、ヨーロッパにもそういう動きがないわけではないと思うわけでございますが、確かに四十年、サミット参加国は相分かれて戦ったわけでございますが、四十年たった今日においては、お互いに民主主義国家、自由主義国家として結束して、世界の平和と安定のためにサミットを進めてきておるわけですから、やはりこの辺で、さらに将来に向かってサミット参加国が一つの連帯をして民主主義と自由と平和を守っていくという、この四十年を機会にした何らかの宣言といいますか声明といいますか、そういうものが生まれる可能性は十分にある、そういうふうに思います。  これは、遅過ぎるのじゃないかというお話ですが、まだ今度の個人代表の結果を見ないとこの点はわかりません。この点についても、多少まだサミット参加国でも議論のある点も聞いております。あるいはまた同時に、そうした政治問題としては、イラン・イラク戦争あるいは中東問題、そうした問題も場合によっては議論の対象にもなり得るのじゃないだろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。
  176. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 今の宣言問題ですが、もうちょっと突っ込んでお聞きします。  そういう宣言を出すということと、先ほどちょっと触れられましたSDIに対する支持声明をつくるということは、これは同次元の、いわば並列的に同じ方向のものとして考えられますか。それとも、むしろ今おっしゃったように、SDI支持声明というのは、これはどっちかというと対決色を強めるものになるから、そういうものでない、いわば東西間の対話というようなものを強調した西側の姿勢、民主主義陣営の姿勢、こういうものをうたった方がよろしいとお考えでございますか。ここら辺について。
  177. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これからの問題ですが、これはやはりちょっと次元が違うのじゃないかと思いますね。やはり四十年たった一つのけじめの時期としての声明というのは、むしろもっと基本的な課題、自由と平和、民主主義といった基本的な課題についての、サミット参加国あるいはまた自由主義国家群の連帯と結束というものをうたうことになるのじゃないだろうか。具体的にSDIをどうするか、こうするかということじゃなくて、そういう平和と民主主義とか自由だとか、そういうものに対して、四十年たってみんなで苦労してつくり上げた今日の価値というものを再びうたいとげて、そして連帯と結束を固めていこう、こういうことになっていくのじゃないだろうか。四十年たって過去を振り返って、そしてその上に立って、分裂ということじゃなくてむしろ結束という方向、建設的な方向にこの声明を持っていくというのがねらいではないだろうかと思います。  思いますけれども、この点については果たしてどこまでいくか、これもサミットが開かれてみないと言えない。やはり世界首脳の集まりですから、サミットを開いた段階で、どういうふうに移っていくかというのは首脳の議論によって左右されますから、そのときにならないとはっきりわからないと思いますが、方向はそういうことだろうと思います。
  178. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 非常に慎重にお答えでございますが、これも仮定の問題ですけれども、SDI支持声明が出されるというようなことになった場合、外務大臣は否定的なお立場でございますか。
  179. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私は、いわば西側の陣営の中でこの問題についてはいろいろと落差がありますから、ここで一本化して一つの形を出すということにはならないと思うし、また、こういう問題は本来的にサミットで扱うべきかどうかは、私は疑問を持っております。日本は、御承知のとおりSDIの研究に対して理解を示したわけでございまして、SDIそのものを支持するといったような前提については、まだいろいろと留保をつけておるということでございます。
  180. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 サミットというのは、当初はもちろん経済問題が中心でありましたが、だんだん政治色を持ってきた、政治的性格を持つものであることは、もう言うまでもないと思います。そうすると、今度のサミットの場合、政治的な側面での一番大きな問題点というのは、ソ連の新政権に対する対応の姿勢だろうと思うのですが、これに対して外務大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。つまり、これから柔軟な路線というものが出てくる新政権であろうと思うか、あるいはまたそうではなくて、当面はやはり集団指導が続くであろうし、そんな一遍に簡単に変化は出てきまい、あるいは若いから逆に思い切ったことをやるという期待感、他方また、若いからこそ、あるいはまた戦前戦後の経験といいますか、戦時中の経験といいますか、そういうものも持たないから危険な冒険もするかもわからぬ、こういうふうな見方もあり得る。これは二者択一でお聞きすると変ですけれども、判断の場合、今安倍大臣はどのようなところに重点を置いて御判断をして新政権を見ていらっしゃるのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  181. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 各国首脳ゴルバチョフ書記長との会談等の内容を見ておりますと、そしてその後の各国首脳ゴルバチョフ書記長に対する評価等を見ておりますと、概して評価が高いように思います。非常に期待感というものが出ておりますし、ゴルバチョフ氏が若くて非常にフレキシブルで、そして非常に現実的であって、そして米ソ交渉に対して積極的な意欲を示しておる、そこで何らかの展開があるのじゃないかというふうな、むしろ押しなべての評価があるようでございますが、しかし、ソ連という国の実態、これまでの歴史というものを見てみますと、それじゃゴルバチョフさんになって大きく時代が変わっていくだろうかということになりますと、今すぐここで、今までのソ連が築き上げてきた路線を大きく変更をするというふうなことは到底私は考えられないし、またゴルバチョフ書記長の権力体制というものも、現在の時点で完全に確立したとも私は到底思えない。  いわば集団的な指導体制といいますか、外交面においては、私の見る限りにおいては、グロムイコ外相のイニシアチブというものは非常に強いように思うわけでございます。したがって、今ここで大きな変化といいますか、そういうものは期待はできないわけですが、しかし、やはり若い指導者で、そして長期安定政権という一つ状況でありますから、また、確かに我々が会談した中でも非常に現実的な指向というものがあるように思いますし、そして今の国際情勢の流れというものを見ると、私は、決して方向というものは悪い方には動かないのじゃないかと、そういう期待を持っておるわけです。しかし、それで大きく変わっていく、大転換をするというようなことも、ちょっと今までのソ連の歴史上の実態という面から見て、判断するのは早いのじゃないか、こういうふうに思います。
  182. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 わかりました。  ところで、一つだけちょっとサミット問題に関連して外務大臣にお聞きしたいのですけれども、サミット以降に大臣は外遊の予定もお持ちですね。中曽根総理も何か外遊日程をお持ちのようでございますが、いつごろ、どこに行かれる御予定でございますか。
  183. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、国会との関係がありますし、国会のお許しを得られればという大前提でございますが、サミット前後に、北欧諸国等がかねてから、北欧諸国の首脳あるいはまた外務大臣等が盛んに日本に来ておりますが、日本から外相も首脳も訪問をしてないというふうなことで、強く要請がありますので、北欧もやはり回ってこなければならない、こういうふうに思いますし、同時にまた、機会を見て東独を初めとして東欧諸国、これはこれからの東西問題あるいは米ソ関係さらに日ソ関係、そういうものをいろいろと占っていく上において東側の国々の意見を聞く、意見の交換をするということも、日本外交にとっては非常に有意義じゃないかと思っておりまして、その辺のところも可能性があれば参りたい、こういうふうにも思います。  あるいは、イラン・イラク戦争も火を噴いておりますが、イラン、イラクも日本に非常に期待を続けておりますし、その周辺の国々、シリアとかアルジェリアとかサウジアラビア、そういう国々の招請もありますし、場合によってはそういう国も回ってみたい、そしてともにイラン、イラクの平和的環境をつくるために、あるいはまたイラン、イラクの平和回復のために何らか手をつないで努力ができればしたいものだ、こういうふうに思っております。
  184. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 今お聞きすると、私、大変結構なことだと思っております。特に、日ソ間の話し合い緊張緩和をつくり出す、あるいは信頼醸成を進める、そういうからめ手からの行動日程でもあるやに感じられまして、これから注目をさしていただきたいと思っております。  さて、お話がたまたま出ましたので、先にイラン、イラクの問題についてちょっとお聞きしたいのです。  現在の紛争の激化の様相というものは、私どもまた何か心痛むものがあります。当初は一カ月ももつまいと言われたのが五年以上にもなってしまうし、しかもそれが泥沼になっていくというような情勢、まずその情勢を一体どう見たらいいのか、まだまだずっと続くという深刻な情勢なのか、あるいは平和への何か少しでも窓でもあきそうなのかどうなのか、現状をひとつ私は聞かしていただきたい。それからその後で、これからの政府の対応をちょっと聞かしていただこうと思っておりますが、まずは戦局及びこれからの見通し、ひとつ聞かしてください。
  185. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まず、戦況につき御説明さしていただきます。  既に御承知だと思いますが、三月四日に実はイラク軍機が、アフワズというパイプ工場を攻撃したというところから戦争が始まったわけでございます。それから、やがて報復が報復を呼ぶという形で、実はバグダッド攻撃も既に六回、イラクによるイランの首都テヘランに対する攻撃が既に八回、イランの都市四十都市、イラクの都市三十都市が現在、攻撃を今まで受けてきたということで、相互の都市攻撃が残念ながら続いておるということが第一点でございます。  それから地工作戦につきましては、まず南部で十一日夜からイラン軍が攻撃を開始したわけでございます。これは、イラク領に三十キロぐらい入ったとか正確なところはわかりませんが、かなりイラク領に入った。それをイラク軍が十四、十五日ごろかも、これは航空兵力その他ヘリコプターを使いまして反撃に転じまして、十八日ぐらいまでには追い返したということに報じられておりまして、現在ほぼ膠着状態に地工作戦の面ではなっております。北部と南部地区では、イラク軍が小規模な限定の地工作戦を別途やっているというのが第二の地工作戦の面でございます。  イランとイラクの基本的な差がどこにあるかと申しますと、イランはいわば都市攻撃という事務総長の提案に戻れという点でございます。で、それ以上、これから和平交渉にさらに進んでいくという気配は、現在のところイランは見せていない。それに対しましてイラク側は、イランの地上攻撃というものに何らかの歯どめをかける。したがって、もう少し何か従来よりも確かなスキームというものができないと、またもとのもくあみになるということで、この機会にもう少し和平の手がかりをつかみたいというところで、両者の間ではまだ基本的な食い違いがございます。  したがいまして、非同盟とか国連その他いろいろなところで、日本も含めまして強くアピールを両国にしておりますが、現在のところ、容易に戦火をおさめるというような気配を残念ながら見せていないわけでございまして、現在の状況では、いつ、どこまで続くかということは、なかなか予想困難でございます。
  186. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 今、まだイラクの方には数千人も邦人がおられる、また何百人かがまだイランの方にも残っておられる、こういうような情勢の中で、特に私どもも非常に深刻な関心を持っております。今まで外務大臣は、特に紛争の平和解決のために種々の努力をしてこられました。これは私どもも知っております。が、現下の情勢にかんがみて、何かいまひとつ積極的なそういうものを行うべきではあるまいか。先般もイランの特使が日本に来られたようでありますが、一体全体、これで何か。日本ができることというのは本当にあるだろうか、あるならば、最大限のことをしなければいかぬと思うのですが、外務大臣、これからどのような対策を講じていくというふうにお考えでいらっしゃいますか。
  187. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本がイラン、イラク両国とも友好関係にある、こういう利点を生かして何とか、イラン・イラク戦争の解決とまではいかなくても、戦争不拡大あるいはまた平和環境の醸成といったものに貢献をしたいということで努力を重ね続けてまいりました。残念ながら、戦争の方は依然として一進一退を続けて、むしろ広がっておるというような状況でございます。しかし、日本が努力したのは決してむだなことではなかった、イラン、イラク両国とも日本との間で、大きなチャンネルを両国に対して日本は持つことができた、こういうふうに思っております。ですから、イラン、イラク両国とも、事あるごとに日本に対して状況の説明もしておりますし、今回も両国の態度というものを説明するために、日本に特使をイランがよこしましたし、またイラクの外務大臣も戦火の中を日本に、たった一日だけの滞在で日本訪問を今回されるわけでございます。そういうことで、やはりイラン、イラク両国とも日本との間をつないでおって、何らか日本に動いてもらいたいという気持ちはまだまだ十分あるのじゃないか。  それから国連におきましても、事務総長が黒田大使を二十日に呼びまして、日本の今日までの努力を非常に多とすると同時に、これからも国連とともにこの日本に努力してほしい、積極的に動いてほしいということを要請いたしております。情勢は、今局長が申し上げましたように、イランとイラクの戦争が激しいわけですし、なかなか両方とも四つに組んで考え方を変えていないということでありますから、そう簡単に解決できるとは思いませんけれども、この今までのつながりというものをやはり我々は大きく活用して、辛抱強くこれからも両国との話し合いをひとつ進めて、日本考え方も十分これから話し合ってみたい、こういうふうに思っております。  幸いにイラクの外務大臣もやってきますので、これらの点もひとつ腹を打ち割って話し合いたい。私も何回か会っておりまして、したがって、両国のそうした責任者とも十分話し合うだけのそういう分野というものは、大きくできてきていることは非常にありがたいと思っておりますが、これはひとつ腰を据えて頑張らなければならないと思います。
  188. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 昨年の九月、国連総会において、大臣はいわゆる三提案を行われた。これは不拡大のための三提案ということで評価できると思いますが、それ自身が、残念ながら、不拡大のための努力であったけれども拡大をストップさせることができなかった。しかも、同時に、公正かつ名誉ある解決に向けて、その環境をつくるのだということを大臣言っておられるのですが、今度イラクの外務大臣が来られた場合、従来の提案だけを繰り返されるのではこれは足らぬのじゃないですか。もうちょっと一歩進んだ、もっと具体的なことを何か言っていかないといけないのではなかろうかと思うのですが、まず、いつイラク外相は来られますか、それから、新たにどのような提案をしようと考えておられますか、そこら辺、もし発表できるものがあれば言ってください。
  189. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 イラクのアジズ副首相兼外相は、来週早々にやってくることになっております。ただ、日本に一泊してそのまま帰るわけでございますが、その間に二回にわたって外相会談も開きますし、総理との会談もありますし、今戦局では非常に優位に立っておるというイラクが、そうした戦局を背景にして、これからの戦争の将来に対してどういうふうな見通しを持っているか、これは改めて十分聞かなければならぬと思っております。これまで私が接触した限りにおいては、イラクは日本の提案についても積極的に評価するという姿勢であったわけです。しかし、最近では、戦局が非常に有利だということで、むしろ包括的な和平ということをフセイン大統領等も言っておりますから、その辺、真意がどういうところにあるか、これは、会って十分話をしないとイラクの真意はわかりません。そういう中で、日本はこれまで三提案を出しておりますから、国連の事務総長の提案ともあわせて、日本がどれだけ動けるかというものを判断してみたいと思います。
  190. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間がだんだんなくなりましたので、それではイラン、イラクの問題はひとつ積極的な御努力をさらにしていただくことを期待いたしまして、次の問題に移りたいと思います。  それはカンボジア問題であります。ことしに入ってから、カンボジアのソン・サン派の拠点であるとかポル・ポト派の拠点であるとかが、ベトナム軍の攻撃のもとに次々と陥落をいたしました。それと同時に、中国側の方は、何か第二次の懲罰行動をにおわせるような発言もございました。あるいはまた、このような情勢を受けて、ASEANの中でもいろいろな変化が出てきつつあるやに感じられます。こういうカンボジア情勢について、外務大臣は今どのようにお考えなのか。特に、いわゆる反ベトナムの戦力といいますか、そういうカンボジア内における戦力が分散をしていくような状態、あるいは弱まってきてしまったというふうに見てよろしいのか、そこら辺のことがよくわかりませんが、どのようなお考えを持っていらっしゃるのか、ひとつ教えていただきたいと思います。
  191. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生が御指摘のように、去年の十一月、乾期になりましてから、カンボジアにおりますベトナム軍が例年になく早くかつ大規模な乾期攻勢を開始いたしまして、御指摘のようにことしになりまして一月、二月、三月、民主カンボジア三派のそれぞれの拠点を制圧したということでございます。これに対しまして民主カンボジア勢力は、いわゆるゲリラという形で、ゲリラ戦を現在も継続中であるというのが現状でございます。  他方、御指摘のありました中越国境につきましても、第二の懲罰というようなことで、中越国境で何らかの紛争が起きるのではないかというようにうわさされておりましたけれども、現状においては、私どもの予想するよりも低いレベルでのいわゆる中越の国境の紛争が若干散発的に起きている、こういう現状でございます。  他方、外交面におきましても、ことしになりましてから国連事務総長がベトナムあるいはASEAN諸国を歴訪する、あるいは三月、ヘイドン・オーストラリア外務大臣がベトナムを訪問する、他方また、インドネシアのモフタル外務大臣がベトナムを訪問するというような形で、一連の会談も続けております。四月の半ばになりますと、またいわゆる雨期になりますので、その後の情勢が一体どういうことになるだろうかという点では、必ずしも予断は許さないわけでございますけれども、私どもとしては、いわゆるASEAN側の言うところの平和的かつ包括的な政治解決ということを通じて、このカンボジア問題が一刻も早く解決方向に向かうように切願している現状でございます。
  192. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これも昨年の国連総会で、外務大臣から三項目の提案が行われております。これは、全外国軍隊の撤退、民族自決権、そして、それを柱として包括的な政治解決をねらった、第一番目は、たしか平和維持活動への資金協力、第二番目が、自由選挙がカンボジアで行われる場合、要員派遣などに関する協力を日本はする、三番目は、カンボジア平和回復の後にインドシナ復興援助を行う、こういう三項目であったと思います。このような基本的な態度は今もなお変わらない、これが日本姿勢なんでしょうか。それとも、その発表をされたときとは随分情勢が変わってきたように思いますが、むしろASEAN諸国の動きを見ながら日本も対応していくというような立場をとられるのでしょうか。そこら辺のところ、基本姿勢についてお答えをいただきたいと思います。
  193. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本政府のカンボジア問題に対する基本的な姿勢は、カンボジアからベトナム軍の撤兵を強く求め続けていく、同時に、ASEAN諸国が支持しておる三派、これに対してもASEANとともに支援を与えていく、そういうことによって最終的に、先ほど局長が言いましたような、カンボジア問題については包括的な平和が生まれることを日本は念願をしておる、これを基本方針としておるわけでございます。  そのための日本のいわゆるカンボジアの平和回復への側面的な一つの協力として、三提案を打ち出しておるわけでございまして、この三提案については、カンボジアのグエン・コ・タク外相が日本に来られるときも十分話し合っておるわけでございます。直ちに評価ということにはつながっておりませんけれども、しかし、ASEAN諸国は日本のそうした提案を評価しておるわけでございますし、こういうことが積み重なることによって、このカンボジアからのベトナムの軍隊の撤兵が早まることを我々は念願しておるし、また、ベトナムとの関係もそれによって回復していくわけでございますが、いずれにしても、情勢はなかなか厳しくなってきている。三派の拠点がベトナム軍によって砲撃を受けて、非常に大きな打撃を受けたということでありますが、しかし、軍事的なこうした争いは、これは雨期に入れば一転して外交面の舞台に転じていくわけでありますから、これからそろそろカンボジア問題をめぐっての外交的な動きがいろいろと出てくるのじゃないか。  日本もそういう中で、基本方針は堅持しながら、具体的な状況変化を見て、今までの基本方針のもとに外交活動を進めてまいりたい。ちょうどバンドン会議も四月の末にあるわけです。ここへは恐らくカンボジア、ベトナム代表もやってくるでしょうし、あるいはまた、中国の代表も久しぶりにインドネシアに姿をあらわすでしょうし、こういうこともやはりこれからカンボジア問題が展開していく上で、一つの注目すべき動きになるのではないかと思っております。日本からも伊東特使が行かれますが、こうした情勢も踏まえて、いろいろと各国の代表と会ってカンボジア問題の包括的な解決のために努力していただきたい、こういうふうに思います。
  194. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間もなくなりました、そろそろ終わりに近づきましたが、どうしても聞いておかなければいけないことがあります。サミットの問題を私は聞いたのですけれども、サミットが成功するためにも、日米関係が揺らいでいたり、ぎくしゃくしていたのではこれは困ります。その一番の問題点が貿易摩擦だと思うのです。ある人の発言によれば、開戦前夜、こういうような言葉すら使われている。私も先般行ってまいりまして、開戦前夜とまではいきませんけれども、本当に会う人会う人が、非常に感情的な不満あるいは批判というものを日本にぶつけているのを聞きました。それを肌で感じました。  そこで外務大臣にお聞きしたいのです。細かいことをいろいろ聞きたいと思ったのでずがそれはやめて、従来ならば、一遍摩擦問題が起こったときは一項目なりあるいは一つの品目という問題であったのですけれども、今はいろいろなものがうわっと並んでしまってどこから手をつけていいかわからない、こういう状態になっています。しかも、ロジックでけんかしたってどうにもならない、これはもう感情的なものになってしまった。こういう状況というものに対して、基本的な解決策は一体何だろうかということ。これについて、ひとつ外務大臣の個人的なお考えで結構です。こういうことをやったら一番解決策に近づけるんではないかというような、時間もありませんしテクニカルな問題はもう結構ですかる、交渉がどうのこうのということではなくて、もっと基本的なところです。何か日本そのものがイメージとして悪者になってしまっている、こういう問題を解決するには一体どうしたらいいんだろうかという問題についての、外務大臣のお考えをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  195. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカの不信感の行き着くところは、結局日本がアンフェアだ、こういうことではないかと思うのです。日本がアンフェアだという彼らの気持ちじゃないかと思います。日本は、これまでも何回か市場開放措置をとっております。それなりに努力をしたと私は思っておるわけですが、依然として貿易の黒字はますます拡大をしているという状況でありますし、例えばアメリカの地に生まれ育った自動車産業一つをとってみても、日本から膨大な輸出が行われて、アメリカからの自動車の輸出がほとんど皆無に近いという状況でありますし、いらいらが高じておる。その背景には、日本がまだまだアンフェアだという考え方があるんじゃないか、そういうふうに思っております。  日本としては、自由貿易の根幹が失われたら日本の将来というのはないわけですから、したがって、やはり日本としてもアンフェアと言われることだけは何としても防がなければならぬと思っております。ですから、当面の課題としては、四分野において日本ができるだけ市場開放を進めていくということじゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。しかし、なかなかアメリカの言うようにできるというわけでもありません。しかし、日本が誠意を尽くして、できるだけのことをやるということが今大事な課題であろうと思います。今の貿易黒字を一遍に解消するというふうなことは、これはだれがどうしようと到底不可能なことでございます。これは、いわば構造的な面も私はあるんじゃないかと思いますし、また貿易黒字がこれだけ出たという背景には、日本の輸入がふえない、製品輸入がふえないというだけじゃなくて、根本的にアメリカの高金利だとかドル高というところに大きな要因があることは、アメリカ人も認めておるところでございます。  いろいろと理屈を言い合っても仕方がないので、やはり日本としては自由貿易体制というものを堅持をして、アメリカからとうとうとして起ころうとしている保護主義に待ったをかけなければなりませんから、それには日本も相当痛い思いをしなければなりませんが、アンフェアと言われる点をいろいろと振り返ってみて、そしてできるだけ市場開放措置を進める以外にないのじゃないか。そうしたときに、ドル問題あるいは金利の問題等について、逆にアメリカに対して日本も胸を張って強い主張ができると私は思うわけでございます。なかなか即効薬というのはないわけですが、そういう点が非常に大事な点じゃないか、こういうふうに思います。
  196. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ありがとうございました。それではひとつ今おっしゃったような姿勢で、せっかくの御努力をお願い申し上げたいと思います。  では、終わります。
  197. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、田中美智子君。
  198. 田中美智子

    ○田中(美)委員 外相にお聞きしたいと思います。アフリカの飢餓をめぐる問題について、まず質問いたします。  昨年の六月にマドリードでありましたアフリカ大使会議、これには安倍外相も出席しておられましたが、ここで話し合われたことの中で、従来東側と言われていた国でも、経済に困って西側寄りの姿勢をとり始めている国にはさらにかかる動きを助長していくんだ、東寄りでも、国と国との関係を保つためにミニマムな援助は行っていきたいというような意見が出たということが、これは「国際協力特別情報」というのに出ているわけです。こういう中から国民は、やはり日本の援助というものが非常に政治的であったり、戦略的であったり、偏っているんではないかというような疑いを持つわけです。  それで質問の本題に入りたいと思いますが、三月二十三日の次官級会議、これはアマコスト米国務次官と浅尾外務審議官などの出席なさった会議ですが、これに対していろいろな新聞が報道しております。まず、予告記事として一月に日本経済新聞に出ましたのでは、外務省首脳は「米国からみれば対象国が経済不安などによって共産主義化するのを防ぐようなものが戦略援助」と位置づけて、そして戦略援助で日米が協議をするのではないかという、こういう報道がなされていたわけです。それでいよいよ二十三日の協議が行われまして、各紙一斉に報道されているのを見ますと、やはり戦略援助をめぐる日米の共同歩調はさらに進展するのではないかと、毎日、朝日、東京、新聞各紙がこのような報道をしております。こういうことは、アメリカの言うような偏った戦略援助というようなものを今後ともやっていけというふうに、アメリカから日本が約束させられたのでしょうか。
  199. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回のアマコスト・浅尾会談は、ことし初めのロサンゼルスにおきまして私とシュルツさんとの間で約束したことを実行したものであります。その際シュルツさんから、これまで日本との間で経済協力問題について打ち合わせをしてきているけれども、やはり次官レベルでやりたいということがございまして、それに対して私から、これは今さら申し上げるまでもないけれども、日本日本の援助の方針というのがある、その枠組みの中でアメリカと協力できるものは協力してやりましょう、そういう立場で話し合うのは結構です、実はこういうことで実現を見るに至ったわけです。今回のアマコスト・浅尾会談は次官級ですから、一般的な問題とともに援助問題についても広範な立場で意見の交換が行われたということで、私は非常に大きな実りがあったんじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  その中で、今お話がありましたような、アメリカ戦略援助を押しつける、あるいはまたアメリカ戦略援助の中に日本が組み込まれたのではないか、こういう議論は初めからずっとあるわけでございます。しかし、今回私自身もアマコスト次官にお会いして言ったわけですけれども、日本日本基本方針というのがあります、そういう中で協力できるものはやりましょうということをはっきり言っておるわけでございますし、次官会談においてもそういう基本路線で、しかし同時に日米は、お互いに経済的に非常に大きな援助ができるわけですから、これは世界の平和と安定のために使っていくという面で、各国の枠組みの中で協力できるものはしようということで意見が一致したわけでございます。決して今お話しのような戦略援助というものではないし、日本経済援助の路線を踏み外したものでもないということは、はっきり申し上げることができるわけです。
  200. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうしますと、戦略援助ではない、決してアメリカの言われるままに追随していくという約束をしたのではないというふうに理解してよろしいわけですね。  そうしますと、今非常に小さな子供たちの心まで痛めておりますアフリカの飢餓問題に対しても、安倍外相はあくまでも日本立場として、人道的な立場でこの援助を今後とも行っていくという意思が十分おありかと思いますが、そうでしょうか。
  201. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アフリカの飢餓状況というのは、まさに筆舌に尽くしがたいものでありまして、これはその国の体制がどうだこうだというものを超えた、人間としての悲惨さというものを私は強く感じたわけでございます。そういう意味におきまして、日本としてもできるだけのことをしなければならぬということで努力を重ねております。先ほどのお話の立場からいえば、エチオピアはソ連と非常に近い関係にあるわけで、いわば東側ということも言えるわけでありますけれども、そんなことを言っておる状況ではありません。とにかく飢餓の状況に対して、日本が何か力をかさなければならぬということでやっておるわけでございますし、アフリカ全域にわたって日本は今まで以上に大きな力を注いでおります。そして、今後とも重点的に進めてまいりたいと思っております。
  202. 田中美智子

    ○田中(美)委員 安倍外相が、人道的な見地から重点的にこうした国に援助をしていきたいと言われましたことは、大変結構なことだと思います。  それで次の質問に移りますが、今資料をお渡ししておりますので、ごらんになっていただきたいと思います。  一九八二年と一九八三年の日本の援助の数字、これはOECDの資料や外交青書など、公的に発表されましたものの数字を並べまして私がつくりかえたものです。ですから、私の数字ではないわけですが、これで見ていただきますと、まず外交青書による十三カ国、いわゆる戦略重点国と言われる国です。この国は、八二年には一人当たり一・六九ドルだったものがその翌年の八三年には一・七四にふえているわけです。ところがLLDC、国連基準による三十六カ国、最貧国と言われている国ですが、ここに対しては、一人当たり一・三七ドルであったものが〇・八八と非常に減っているわけですね。それから今お話しになりました、子供たちにまで非常に心を痛めさせておりますアフリカ飢餓国十五カ国、これも〇・八三であったものが〇・六四というふうに減らされているわけです。  これは、中曽根内閣の誕生からこのようになっているというところを見ましても、中曽根内閣の特徴ではないかというふうな感じがするのですが、このように減っているということは、今外相が言われましたように、どういうということではなく困ったところにきちんとした援助をしていくのだ、日本の独自の立場でやるのだということとは少し違うように思うのです。この点はどのようにお考えになりますか、簡潔にお答え願います。
  203. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 お答え申し上げます。  今先生からいただきましたこの数字でございますが、まず、戦略重点国という言葉は政府としては使っておりません。恐らく外交青書の中で……
  204. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は、「いわゆる」とちゃんと言っています。外交青書と。
  205. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 失礼いたしました。  外交青書で重点的に国名を挙げておりますのは、このほかに中国が入っております。  それからLLDCにつきましては、一つ申し上げられるのは、バングラデシュに対します援助が円借の関係で八三年非常に減りまして、それが恐らく影響したのではないかと思われます。私も今いただいたものでございますから、とっさにお答えするとりあえずのコメントはそういうことでございます。  アフリカ飢餓国については、年によって支出の状況が違うことがございますので、これがどういう原因でこういう形になっているのかということは、調べてみまして、原因として思い当たるところを後ほど御報告申し上げることにしたいと思います。
  206. 田中美智子

    ○田中(美)委員 その原因を御報告くださるということですので、後に回します。  委員長にお願いしたいと思いますが、私の持ち時間は非常に少ないわけですので、政府の方も簡潔に答えていただくようにお願いします。  今申しましたように、この数字ではこのように減っているということです。そして、次の表を見ていただきたいと思います。これの中ごろの日本のところを見ていただきますと、ODAの援助というものは、日本世界で四位、三位、三位というふうに順位としては非常に高くなっております。これは結構なことだと思うのです。ところがLLDC、最貧国の方を見ますと全部十二位、十三位、そして中曽根内閣になりましてからは十四位というふうに、むしろ順位が下がっているわけですね。これは金額ではありません、各国との相対的なものですけれども、順位が下がっているということです。これは八三年の話ですので、過去のことをとやかく今ここで攻撃しようというつもりはありませんが、今安倍外相が言われましたように、人道的に日本の独自の立場で、困っているところにきちっとした援助をしたいということならば、今後LLDCのところが五位、四位、三位というふうに、順位が上がるような努力をぜひしていただきたいと思います。大臣の御努力の決意を聞かせていただきたい。大臣の決意で簡単にお答え願います。
  207. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 どうもこの数字、私も初めて見ますから今すぐ分析することはできないのですけれども、しかし、少なくともアフリカなんかに対する援助は、去年私行きましたときに一億ドル、さらに五千万ドルをこれに追加しているということですから、これまでのアフリカの援助というのはずっと飛躍的に伸びております。そしてまた、確かにGNPにおける比率からいきますとまだ各国が随分高いところがありますけれども、量からいけば日本は相当な援助をしておる、こういうふうに思いますし、特にエチオピア等につきましては急激に八四年、八五年については伸びておる。実際に伸びておるわけですから、数字にどういうふうな形であらわれるかと思うわけですが、全体的に見て先ほどから私が言っていることはそう間違ったことを言っていない。全体的にアフリカの援助も伸ばしておりますし、特に飢餓対策については非常に力を入れている。これは、予算の中でも明らかにいたしておるわけであります。  そして、全体の援助の予算も、毎年毎年非常に厳しい財政の中でふやしておる。ことしもODA予算は、一〇%以上という大変な伸びでございます。そしてそれが、あくまでも中心はLDCといいますか、ODA予算ですからそういうところにつき込まれるわけでございますので、日本のそうした努力というものは世界評価しているのではないか、私はこういうように思っております。
  208. 田中美智子

    ○田中(美)委員 全体の金額がふえていることは確かですので、これが非常に偏っておりますと、今新聞報道にありましたように、アメリカから戦略的なことを言われてそのままに動いているのではないか、こういう疑いを持たれますので、日本世界の信頼を得るためには金額をふやすと同時にそれを日本の独自の立場で、外相の言われるように人道的な立場でこれをやっていただきたい。今度の第三次計画にもそれをぜひ明記していただきたいと思います。  時間がありませんので、次のユネスコの問題に移りたいと思います。  ユネスコ憲章を見ましても平和という言葉が非常に出ておりますが、ユネスコが教育、科学、文化を進めていく、これを高めていくためにはやはり平和がなければ進めないということで、軍縮をこの中で話し合われていくということは当然なことだと思いますが、外相はどのように思われますか。
  209. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ユネスコについて、教育、科学、文化、そういう中で、教育という形の中で軍縮問題を取り上げるということは、それなりにユネスコ憲章に違反しているものではないだろうと思うわけですが、ただ問題は取り上げ方があるんじゃないか。国連で決議されたというふうなことは、これはそれなりに取り上げる教育的な意味というのはあるわけですが、決議される過程のいろいろの各国の主張等についてユネスコ等でいろいろと議論するということはいかがか、こういうふうに思う点もあるわけであります。
  210. 田中美智子

    ○田中(美)委員 軍縮のことをやるということは当然なことだ、ましてこれは七八年のSSD1、今国連決議と言われたのはこれでしょうか、この決議にこたえたものであるというふうに思うわけです。ですから軍縮の問題というのは、節度を持ってユネスコらしい軍縮の話し合いをするということは当然なことだと思うわけです。総予算の中で軍縮教育というのはわずか〇・三%だということは、決して多くはない、むしろ少ないのではないかと思うぐらいですので、これはそれほど大きなミスではないのではないか。軍縮の問題をするということは、ミスではなくて当然のことだと私は思いますし、外相も今そのようにお答えになったというふうに思います。  次に、発展途上国が新国際情報秩序の確立を求めているわけです。これも私は当然なことだと思うのです。といいますのは、日本のように新聞社もたくさんあり、通信社もたくさんある、情報がすぐれている国と違いまして、彼らは、自分の国のことさえその国の国民はよく知らされてない、そういう手段がない。まして、外国や国際的な問題はほとんど知るすべもないわけです。ましてや、自国のことを他国に知ってもらって、自分の国がどうなっているかということを知ってもらうという、文化においてもまた困っている問題においても教育のことにおいても訴えるすべもない。そういう国にとっては、自分の情報通信を持ちたいと思うのは当然なことだと思いますが、安倍さんはどのように思われますでしょうか。
  211. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 軍縮について取り上げるのは当然だということですが、やはり節度のある取り上げ方をされなければならぬと思います。したがって、この軍縮問題でちょっと言わせていただきますと、教育の分野において軍縮を一つの問題として取り上げることはユネスコの権限内のことでありますが、しかし軍縮の実質問題につきましては、国連機構の中に国連自体あるいはまた軍縮会議等それを扱うべき部門がありますので、ユネスコにおいてあえてこれを取り上げる必要はないという私は考えてあります。  なお、新世界情報秩序については、開発途上国側が、世界の報道が西側諸国の報道機関に大きく影響されているものとしてその是正を求めておるものであります。我が国としましても、これら開発途上国の懸念はそれなりに理解するところでありますが、その是正の方策として報道機関に対する政府の規制を求めんとする考え方は、我が国が信奉しております民主主義の重要原則であります報道の自由あるいは知る権利を否定するものでありまして、同意するわけにいきません。こうした試みをユネスコで行うということについて我が国が反対をするのはこれまた当然のことではないか、こういうふうに思っております。  むしろ、この問題の解決は、開発途上国の情報通信分野のインフラ整備だとか、あるいは人材養成等によって図るべきであると考えております。我が国はこのために、ユネスコ内に設置された国際情報開発計画に対しまして応分の協力を行っております。六十年度におきましても、三十万ドル拠出を予定している次第であります。
  212. 田中美智子

    ○田中(美)委員 自前の情報通信網を持ちたいということは、当然なことではないですか。それに反対したり、また軍縮はユネスコでやる必要はない、これは安倍さん、おかしいんじゃないでしょうか。SSD1のときにユネスコで軍縮をやってくれ、これにユネスコはこたえたわけですから、軍縮の特別総会で言われたものについてこたえているわけですから、これをやる必要はないというのは言いがかりではないかと私は思うのです。  それで、私は、今度アメリカがユネスコを脱退したについての原因の大きなものに、ほかのこともありますが、こういうものがなっているということはどう考えても納得いかない。それでいろいろな意見が出ておりますが、例えば、アメリカは戦後一貫して相当の期間国連を自分の思うとおりに操作できた。ですから、ユネスコにしてもFAOにしてもILOにしてもUNCTADにしても、こういうものについてほとんど自分の自由になったけれども、だんだん独立国がふえる中で自由にならない。そういうことから、嫌がらせとか言いがかりをつけているのではないか、こういうふうな意見も出ているわけです。ですから、たまたま今度はユネスコがそのいけにえになったんだ、こういう意見もあるわけです。私はその意見に賛成、そうではないかというふうに思うのです。  なぜ、そう思うのかといいますことは、アメリカのユネスコ国内委員会、レーガン政権のおひざ元でこれに対する批判が出ているわけです。例えば、八三年ですから脱退する前の年ですが、八十三の在外アメリカ大使館及び領事館などが自国の政府に反対をしておりますし、十三の国内関係団体もやはり脱退するということに対しては反対しているわけですね。  それから、アメリカのユネスコ国内委員会の出したもので、こういうことを書いているところがあります。八三年の十月から十一月にかけてありました第二十二回のユネスコ総会をアメリカ政府は高く評価していた。ジェラルド・ユネスコ大使は、「総会の諸決定は満足いくものである」と言っていた。それから、首席代表のヘナリー大使は、「最近の総会の中では、最も建設的で、最も政治的でなかった。」こう言っているというわけです。これは、アメリカのユネスコ国内委員会がこういうふうに言っているわけですね。そうだとしますと、八三年の総会は大変立派だったというのに、突然その翌年になって、幾ら言っても言うことを聞かない、ああ、これはめちゃくちゃやという形で脱退するということは非常に異様に感じますので、さっき申しましたような嫌がらせや言いがかりではないかというふうに感ずるわけです。  次に申したいことは、そういうレーガン政権に追随して、日本独自の立場というものを十分に検討せずに、二月十五日の予算委員会での中曽根総理大臣発言というのは、いざというときには異常な決意をするというようなことで、日本もユネスコを脱退するかもしれないというような脅迫的な感じの言葉があって、世界の人たちをびっくりさせたわけですね。これは私は日本の総理大臣として、アメリカがどうであろうと――さっき言いましたのはアメリカのことですから、別にそれをどうしようというふうに私は言っておりませんが、そうしたアメリカの態度にまるで追随するような中曽根総理発言というものに、日本の国民は大変残念に思っているのではないか。もちろん私も、これには大変残念に思っているわけです。  しかし、安倍外相は二月八日、三月十八日の予算委員会で、いろいろ言われる点はあるけれども、あくまでも残って、今のユネスコを少しでも改善して、アメリカが帰り、イギリスも脱退しないという方向に行くように全力を尽くしたい、こう言われておられますので、この点に力強さを感しておりますけれども、ぜひ安倍外相には残って、最善の努力をしていただきたいというふうにお願いしたいのですが、そのように努力していただけるでしょうか。時間ですので、簡単にお願いします。
  213. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカもイギリスも我慢できなくなって出ていくわけでありますが、日本は残って改革を行って、ぜひともかつてのILOのようにまたアメリカが復活することを念願をしております。しかし、改革はなかなか容易なものではありません。特に今のユネスコの状況を見ると、やはり相当人事の面でも偏っておりますし、あるいは日本は十分の一、一〇%以上の予算を担当しておるわけですが、予算の使い方等にもいろいろと問題があるように思います。あるいはまた、議論の内容が相当政治的に偏向している。例えば、自由主義国家群といわゆる第三世界との対立を際立ててユネスコ内に持ち込むというふうな面も随分具体的にあるようであります。  ユネスコは、本来科学とか文化とか教育とか中立的な問題を取り上げてやってきておるわけです。それなりに大きな成果を上げてきておるわけですから、むしろそういう原点に返ってユネスコが活動していかなければならぬ。そういうことで、今日本も改革案を出しております。そして、今度はムボウ事務局長も来ますから、私も会ってその点を十分説明をして改革の意思を確かめたい、こういうふうに思っております。現在ではとにかく改革をさせなければならぬ。日本は志を同じくする国々とともに、ユネスコ内の改革に立ち上がっておるわけであります。今のユネスコがどういうふうに動くか、これを見詰めながら努力は続けていきたい。しかし、香川大使もユネスコの総会で、日本が出しておる、あるいはまた国際的な一つの世論にもなっておる改革というものが行われないということになれば、日本も再検討をせざるを得ませんということを言っておるわけですが、まずその前に、とにかく改革を行っていくということに最重点を置いて努力をしたい、こういうことです。
  214. 愛野興一郎

    愛野委員長 浜田君の持ち時間がありますので、申しわけありませんが、次に、浜田卓二郎君。
  215. 田中美智子

    ○田中(美)委員 共産党だけそういうことをするというのはおかしいのじゃないですか、前の方も随分延ばしていらっしゃるのですから。もう一問ですので、ぜひ……。
  216. 愛野興一郎

    愛野委員長 それではあと一問、簡潔にお願いします。
  217. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今、香川大使の話が出ましたので、香川大使はこの一月の二十八日に日本のユネスコ国内委員会で、日本が西欧グループと変わらない態度をとっていると、日本はどっちを向いているのだとアジアの批判を呼ぶことにもなりかねないというふうに、アジアに対して非常に心配をしておられる発言をしているのですね。ところが、それから一カ月もたたない二月十三日に中曽根さんに似たような発言をしているということは、これは公然の秘密か公然かわかりませんが、言われておりますのは、今中曽根さんおりませんけれども、中曽根総理個人の強い意思で香川さんにこういうことを言わせた、こう言っておりますので、その香川さんの言葉をそのようにとられるのは少し問題があるのではないかというふうに思います。  それで、中に残って、ムボウさんも来られることですし、最善の努力をしていただくと同時に、その間アメリカが抜けているわけですから、日本が少しでも増額をしていただくということをして、少しでも改善していく中で日本姿勢を出して、世界の諸国から信頼されるような姿勢で臨んでいただきたいと思います。その点の外相の答弁をお聞きしまして、私の質問を終わりにしたいと思います。
  218. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 とにかく残って、改革のために日本としては力を尽くしていきたい、こういうふうに思います。  予算について増額するという考えはありません。
  219. 愛野興一郎

    愛野委員長 次に、浜田卓二郎君。
  220. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 大臣、大分日程がお忙しいようでありますし、予定された時間もわずかでございますので、私も簡潔に問題点をやってまいりますので、答弁の方も簡潔にお願いいたします。  日米経済摩擦の問題について二、三伺いたいわけでありますが、今回のMOSSアプローチに始まった日米間の折衝はかなり切迫した空気の中で行われているわけでありますけれども、今回の摩擦の背景、原因というものをどのようにお考えになっているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  221. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本的には、何といいましてもどんどんふえていきます貿易の黒字ですね、千二百億ドルの中で四百億ドルに近い黒字を日本が持っておるということが、大きな問題点として意識され始めている。そういう中で、アメリカ日本に対する輸出が伸びない、これはどうも日本に大きな貿易障害があるのじゃないか。日本改善した、改善したと言いながら、どうもこの成果がちっともアメリカの輸出となってあらわれてないということとも相まって一つは貿易の黒字、そして一つはそういう輸出が伸びないその背景には、日本の貿易の障害、それは日本のアンフェアな行き方だという不信感が増幅されて、特に議会におけるああした穏健派までが日本に対して非常に厳しい発言をするというふうな、大変な感情的な状況になってきているのじゃないか、こういうふうに認識しています。
  222. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 けさほど御質問になった土井たか子委員、あるいは先ほど渡辺委員からも日米関係について質問があったようでありますが、私も今回の超党派の議員外交でワシントンに行ってきたわけでありまして、私が感じたことは、二年前にもちょうどワシントンに同じ目的で行く機会がありまして、二年前と今回の雰囲気を比べて、かなり違うということを感じてきているわけです。つまり、二年前には当時流行語みたいになりましたけれども、パーセプションギャップとか、お互いに日本文化とアメリカ文化、歴史も伝統も違う、商慣行も違う、そういうことをお互いに議論し合いながら摩擦の問題を考えていく、若干そういう余裕のある取り組みが、やかましかったけれども、二年前の雰囲気ではなかったか。  今回の雰囲気は、そういう理屈はもうわかっているんだ、ただ圧倒的な収支差額といいますか、これが問題なんだということを、私はワシントンが口をそろえて言っているというふうな感じを受けて帰ってきたわけでありまして、今安倍大臣も正確に、貿易収支の輸出超過の問題であるということを御認識いただいているようでありますけれども、そういう背景の違いというのを、今回日米関係を解いていく上で私はよく認識をして、その上に立って対応策を組み立てていくということが必要だと思うわけであります。  そういう考えから、現在進んでおりますMOSSアプローチですね、四分野にわたってかなり詳細な議論が行われているようでありますけれども、これの決着といいますか、その見通しについて、どのように外務省考えか、伺いたいと思います。
  223. 国広道彦

    ○国広政府委員 MOSSアプローチは実は四つあって、それぞれ違うテンポで進んでおります。先ほど大臣からお話のありました木材製品などは、非常に我が方としても困難な問題を含んでおりますから、米側の希望はともかくとして、そうてきぱきとはいかないということはやむを得ないと思うのでございますが、今日米双方非常に大きな関心を持って、しかも将来の日米経済関係に大変影響が強い、アメリカも言っておりますのが電気通信市場の開放でございます。  これは幸い、双方の非常に……(浜田(卓)委員「中身は承知していますから見通しだけ」と呼ぶ)双方の努力の結果、今週もう大詰めに来ております。私どもとしては、ここで満足のいく結果が得られれば、かなりいい雰囲気で次に進むということができると思いますので、ここに最大の努力をしていることでございます。  その他につきましては、別に期限がございませんで、大いに精いっぱい努力するということでございましょうが、サミットのときに両首脳会談するときに、物事はうまくいっているな、若干の問題はあっても、全体としてはうまくいっているなということがお互いに認め得る状態に持ち込みたいと思っております。
  224. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 そのうまくいっているなという認識の中身でありますけれども、仮にこれが米側の言うような理想的な形で決着したとして、果たしてそれによって貿易収支の問題、具体的に言えばアメリカからの日本の輸入がどれだけふえるのか、輸出入のアンバランスの解消にどれだけ貢献するのか、そのあたりの御認識を聞かせていただきたいと思います。
  225. 国広道彦

    ○国広政府委員 一説によりますと、うまくいくと百億ドル、アメリカの輸出がふえるというようなことを言った人もおりますけれども、結局そういうお話はすべて推察にしかすぎないのでありまして、目に見えた輸出量のふえというものはそのためにはないと思います。しかしながら、市場が開放されたなという先ほど先生お話ししましたパーセプションの改善というものが、非常によい結果をもたらすということが期待されているわけでございます。
  226. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 もう一度質問いたしますけれども、じゃそれによってこの日米経済摩擦の原因になっていることはかなり解消し得る、除去し得ると御判断になっているわけですか。
  227. 国広道彦

    ○国広政府委員 ちょっと例を挙げて申しわけございませんが、我々はそういう話をまさにアメリカ側としているわけでございます。そのときに米側から、我々はドイツとの間で百億ドル、貿易の逆超があります、しかしながら、ドイツに行っているアメリカのビジネスマンは、ドイツの輸出が閉ざされている、ドイツの市場が閉ざされているということを苦情を言いません、日本の市場がそういうふうになれば、我々としてもそれ以上、日本側にいろいろな不平を言い得る立場にないと思っていますという話をしておりました。なかなかそういくのは難しいのかと思います。言葉も違います、習慣も違いますから、難しいのかと思いますが、そういうところが我々が探求し得る一番健全な方途であろうと思っております。
  228. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 私も、MOSSアプローチそのものを否定する考えは毛頭ないわけでありまして、いわばアメリカ側が少しでも不公正と感ずるような障害が現実にあるとすれば、それを除去していく努力は大いに結構だと思います。そういう意味で、中曽根総理が陣頭指揮に立って、外務省も努力しておられる、これは私は大いに敬意を表したいと思うわけでありますけれども、しかし同時に危険なことは、私ども訪米の間に、ウイリアム・ブロック通商代表を含めて向こうの代表者の言う言葉の中に、彼らは四月一日と言っておりますけれども、四月一日のこのMOSSアプローチの結論が出るまで待ってくれ、それをいきり立つ議会対策の口実にしている、そういうことがあるわけです。  ですから、私はむしろ、例えば電電の資材購入問題にしても、制度的な問題を解決したから、それじゃかつてのアメリカのATTの分割の後に見られたような向こう側の輸入の増大というふうなことが、我が国の民営化された電電において期待できるか。私は、これは現実にはなかなか難しいと思うわけであります。そこは、ただいま国広さんも顕著な改善というのはないというような御判断のようでありますけれども、本当にそうであれば、私は、過大な期待をこのMOSSアプローチに対してアメリカ側が持っている現状というのは、かなり危険な現状であるというふうに考えるわけですけれども、その点についてお考えを伺いたいと思います。
  229. 国広道彦

    ○国広政府委員 確かに先生おっしゃいますとおり、過大な期待を持っている向きもいるようでございます。ただ、行政府としましては、アメリカ議会の中で非常に保護主義が強まっているときに、つまり、もう日本話し合いをするよりもアメリカの市場の方を締めてしまえ、そうすれば日本が市場を開く努力をするであろう、こういう考え、議論がますます強くなっている折に、政府としては、この四つで日本側が大いに成果を上げてくれれば、そういう勢力と闘う武器になると言って日本に話しかけてきているわけでありますから、ここで我々としては、精いっぱいの努力をするというのがまず第一のことであろうと思います。
  230. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 そのお考えはわかりました。  それでは角度を変えまして、きょうは経済企画庁来ていただいていますけれども、最近の経済動向、特に内需中心の成長というような言い方を少し前は経企庁もなさっておられた。ところが、今度三月ですか、最近発表された数字によりますと、必ずしもそうはなっていないように思うわけであります。確かに設備投資はふえておりますけれども、それ以外の内需の項目の動向はどうか、そして、それらについて今後どういうふうな展望を持っておられるか、お聞かせいただきたい。
  231. 西藤冲

    ○西藤説明員 ただいま先生から御指摘がありましたように、簡単に申しますと、内需につきましては設備投資は順調に拡大している。これは三月に公表されました十-十二月期の設備投資でも、前期化四・一%、年率にしますと一六%を上回るような非常に高い伸びを示しておりまして、この傾向は今後もかなり続くだろうというふうに見ております。ただ、消費や設備投資は、家計の所得の伸びの回復が緩やかなものですから、期待していたよりはやや緩やかな伸びにとどまっている。しかし来年になりますと、家計所得の伸びがもう少し高まるということで、多少増加が強くなるだろうというふうに見ております。それから政府支出は、御案内のようにほぼ横ばいというふうに推移いたしております。十-十二月期の外需が一・九というふうに、非常に高い成長の寄与度、全体二・三の一・九だったのですが、これは石油の輸入が九月の石油税の引き上げということで、その前に駆け込み輸入があったということとか、OPEC絡みで石油の輸入の買い控えがあったというような一時的な要因もかなりあったように思われますので、トレンドとしては内需が次第に高まってきているというふうに見ております。
  232. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 それは、総括するとそういう言い方になろうかと思いますけれども、この数字を見てみますと、いわゆる内需の項目の中で、民間消費支出は伸び始めたといってもごくわずかである。その伸び率は極めて弱い。それから、設備投資は確かによくなってきております。しかし、住宅投資は依然として低調をきわめておるわけでありますし、それから今御指摘がありましたように、政府の消費支出あるいは固定資本形成、いずれも横ばいないし若干減ということであります。ですから、内需がよくなってきたといっても、よくなってきているのは唯一設備投資だけである。しかも、内需の過半を占める消費というのは依然として湿りがちである。これを別室言い方をすれば、我が国の経済は輸出ドライブがかかっているというふうに言ってもいいと私は思うわけであります。さらに、世界に誇る貯蓄率を我が国は有しているといっても、かなりの金額が国内の消費なり投資に向かうことなく、アメリカに向かって流出をしている、それが一つのドル高の原因にもなっているというふうに聞くわけであります。  それでは、私、総括をして、先ほど問題であると言われた貿易収支の黒字幅、このままの経済動向、経済運営であれば、今後我が国の輸出超過というものは解消に向かっていくのかどうか、その点について企画庁のお考えを伺いたいと思うのです。
  233. 西藤冲

    ○西藤説明員 輸出につきましては、アメリカ経済がかなり著しく鈍化いたしましたので、その点でアメリカへの日本の輸出は相当減るだろう、それからOPECの成長が低いものですからOPEC向けの輸出も鈍化している、それからECに対しては円が高くなっておりますので、その点でEC向けの輸出はそう伸びないというような点から、輸出についてはかなり鈍化していくだろうというふうに見ております。一方、輸入につきましては、内需がかなり拡大するというふうに政府としては期待しておりますので、その点、それから市場開放が進むことによって、輸入はことしに比べますとかなりふえるというふうに見ております。しかし、そうしたことが起こっても、なおかつ貿易インバランスは、例えば経常収支でとらえますと来年度三百四十億ドルというような水準、ことしと同じ程度の水準にならざるを得ないという見方をいたしております。
  234. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 要するに、結論的に言えば、今のような経済運営が続く以上、貿易収支の問題というのは解消に向かっていかないと私は判断するわけであります。ですから、これはMOSSアプローチも結構でありますし、大いにのどに刺さった小骨というのですか、これは抜いていかなければなりませんけれども、しかし、これで本当に日米関係の今問題にされていることが解決に向かっていくかということであります。  若干、私の意見もまじりますけれども、日本経済アメリカ経済というのは、ちょうど背中合わせで逆方向に走っているような感じが私はするわけです。アメリカにおける財政収支の赤字、金融の逼迫、そして金利高、ドル高、そして資本の流入、それがさらにドル高に拍車をかける、そして交易条件の悪化がアメリカの輸出を不利にして輸入をふやす。日本の場合には全く逆でありまして、財政は超緊縮でありますから国内の金融というのは全体的に緩んでおりますし、内需は盛り上がっていない、ですから資金余剰が海外に流出をしていく、輸出ドライブがかかるだけじゃなくて、さらに資本の流出によってドル高に拍車をかけている、交易条件は日本にとってはますます好転しているわけです。ですから、今、日米両国というのは、その意図にかかわらず、大変不幸な方向に走っていると私は思うのです。MOSSアプローチでいかに中曽根総理が号令をかけて抜本策を打ち出したとしても、この基本関係というものは変わらない。ここに今後の日米関係考えていく場合の重要な要素があるということを、外務省には客観的に認識をしていただきたいと私は思うのです。  もちろん、財政が非常に悪いわけでありますから、今国内拡大策なんかを言うと、外務省は大蔵省に怒られると思っておられるかもしれない。しかし、事はそういう国内だけの問題で済まない。全体に、この世界の中で我が国が生きていく上でどういう経済政策をとるかという問題であると考えるわけでありまして、私の結論を言えば、今我が国の経済政策というのは拡大策に転じなければならない、少なくとも財政が経済の足を引っ張っている、内需の盛り上がりを抑え込んでいるという姿は、どうしても今許されないのではないかという気がするわけです。  もちろん、これは日本だけで解決できる問題ではない。アメリカのドル高是正という問題が非常に大きな課題でありますし、要は今や日米関係――日米関係だけではないかもしれません。世界日本というものを、経済政策の側面ででもきちっととらえて議論を尽くしていく、そしていわばマクロ調整、言うは易しでなかなか難しい話であろうと思いますけれども、やっていることがMOSSアプローチだけであっては、問題の抜本解決にはなっていないのじゃないか。そこをひとつ、外務省はいろいろ情報も持っておられるわけでありますから、勇気を持って今何が必要かという点をお考えいただきたい。  そこで、もう時間であります。大臣に一言申し上げたいわけでありますが、私どもアメリカでいろいろな方に会いました。モンデールさんにも会ったわけであります。彼は今や批判者の立場でありますから、言うことはある程度割り引いて聞かなければいけないかも知れません。しかし、彼は率直に、アメリカ人というのは率直に物を言う人種なんだ、だからストレートに物を言う、相手もそうすると思っている、だからレーガンさんのところに来てみんな耳当たりのいい話ばかりして帰ったら、世界じゅうはレーガンを歓迎していると思ってしまうよ、だから本当に今、日米両国で何が必要かということは、ストレートに物を言うべきであるということを指摘されておりました。それは別にモンデールさんだけじゃなくて、私どもが日米関係を前向きに考える場合にはどうしても必要なことだと思うわけでありますけれども、ひとつ大臣の所信を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  235. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今まさにおっしゃるとおりであろうと思います。やはりアメリカ人だけじゃなくて、外国人とつき合う場合においては、日本人はどっちかというと引っ込み思案ですから、率直に物を言うということが非常に必要じゃないか、特にアメリカ人についてはそういうことははっきり言えるんじゃないかと思います。したがって、アメリカに対して注文をつけるところは率直につけていかなければならない。三百四十億ドルですか、あの貿易黒字というものは、ただ日本の市場開放がおくれたからこれだけ大きな黒字になったということだけじゃないんで、これは浜田さんなんかも指摘されたと思いますが、アメリカのドル高とか高金利だとかいうものが相当大きな要素を占めている。アメリカの識者もそれを認めているわけです。そういう点は、率直に言うべきことは言わなければならぬ。  しかし、日本もまたこれだけの黒字を抱えているわけです。これははっきりした現実の数字になって出ておるわけですし、これがまた大きないらいらの原因になっているわけですから、少なくとも日本としてはアメリカに対しまして、できないことはできないとしても、できるだけの貿易の自由化といいますか市場開放をやったんだ、アンフェアでないような努力をこんなにやったんだということだけは示さないと、この貿易の黒字がそう減るとは私は思いません、むしろふえるんじゃないか。例えば、今度自動車が解禁になるということになりますと、十万台で五億ドルまた輸出代金が入ってくるということですから、自動車だけの問題を見ても、決して現状で輸入が固定化されうようにも思いません、むしろふえるんじゃないかという心配すらあるわけでございます。  そういう中で日本がどれだけのことをやれるかということは、これからの課題として取り組んでいかなければなりません。今すぐ即効薬というのがあるわけではありませんから、まずMOSSについても、少なくともアメリカの政府が、日本はよくやったということを議会に対して言えるような立場に持っていかないと、アメリカ政府も議会と一緒になっていよいよ行動を開始するということになれば、日米関係はのっぴきならない状況に陥るんじゃないかということを私は心配して、日本としてもできるだけのことはやる、しかし同時にアメリカに対しましても、そういう中で言うべきことはきちっと言わなければならない、こういうふうに思っております。
  236. 浜田卓二郎

    浜田(卓)委員 終わりますけれども、大臣大臣は総理を目指しておられるわけでありまして、外交政策だけで所管が終わりとお考えにならずに、外交政策の背景にある我が国の経済政策、今これについてのお考えも私は大いに言っていっていただきたい。それがないと、今の日米関係というのはなかなか改善に向かえないということを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  237. 愛野興一郎

    愛野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会