○渡部(行)
委員 一応組織の上といいますか、機関の仕組みの中では科学
技術会議というものが最高に位置づけられて、しかもその議長に内閣総理大臣がなっておるわけです。そのほか大蔵、文部、経済企画庁、
科学技術庁、こういう大臣クラスが入って、さらに日本学術
会議の
会長、その他財界やあるいは専門家も若干入って組織されておるようでありますが、これは一般に私は政治
会議じゃないかと思うのです。本当の
意味で科学
技術全般にわたって日本が今当面しておる問題は何か、そういうものをえぐり出すほどの
会議にはなっていないのじゃないか。むしろこれは非常に形式的で、内閣総理大臣が科学
技術会議の議長に諮問する、その議長がまた内閣総理大臣に答申する、その人間は同じ人間で、本人が本人に聞いたり、本人が本人に答えたりしておるような格好をつくっているわけです。そんなことをやるなら、もっと科学者を
中心とした
会議をつくって、そこに内閣総理大臣が諮問をする、そして答申はそこから受けて、そこで初めて閣僚
会議とかそういうところで政治的にやっていくとか、議会を入れてまた政治的な
判断をしていく、そういうふうにした方がいいと思うのですよ。アメリカでは五年に一回議会に対してアカデミーから
報告を受けることになっているそうですが、そういうシステムは全然日本にはないわけですね。今、長官は諮問第十一号によって総合的な基本方針を立てておると言われましたが、私もこれを読んで非常に落胆したのです。というのは中身がないのですよ。飾りばかりで、デコレーションばかり多くて中身がないのです。
ところが、それと引きかえに米国科学アカデミー編「これからの科学・
技術 十年後をめざす米国の戦略」という訳本を読んで、私は本当に感服したのです。というのは学問のとらえる視点が違う。日本の全く表面的なものばかり、今業界をにぎわしているようなものばかりをとって、さあ、それ先端
技術、セラミックスだとかなんとかと言っているけれども、アメリカの場合の科学
技術のとらえ方というのは、非常に基礎的な、基本的な問題から物を見でおる。例えば、こういうのは日本の学界では聞いたことがない。「表面科学とその応用」とか「流体の乱流」とか、こういう問題と取り組みながら、しかも流体の乱流などというものを一つの統計上の定式化をして、そこから経済現象にまで類推適用しようじゃないかという動きさえ出ておると言われております。そういうふうなもっと根本的な物のとらえ方というものをしないで、日本の場合は本当にこれだけですよ、日本の諮問十一号というのは。こんな大きな字でこればかりの薄いもので、それで日本の科学
技術の大綱が示されたような考え方では、私は本当に情けないと思うのです。
そして、そのとらえ方も「科学
技術の推進」というところで、物質・材料系科学
技術、情報・電子系科学
技術、ライフサイエンス、ソフト系科学
技術、宇宙科学
技術、海洋科学
技術、地球科学
技術、こんなふうなとらえ方しかされていないのです。全く学問のレベルが違っているんじゃないか。しかもこれには、今日本の水準はどのくらいであって、今後何が問題になっているのか、そういう問題に触れられていないのですよ。アメリカのは全部それがきちっと書かれておる。そして、今のレベルはこういうレベルで、がんはこれから五年後にどのくらい制圧されるだろうとか、いろいろな問題がここで総括されているのです。そして、その未来についての展望を明らかにしておる。こういうものでなければ読んでも役に立たないと思うのです。私、これを読んだって何が何だかさっぱり頭に入らないのですよ。まるで中身のない、絵にかいたようなものじゃないかというふうにしか受け取れないのです。ですから、こういう根本的なところからメスを入れて考えてもらわなくちゃならぬと思うのです。
これは
科学技術庁長官も今まで見ていると大体一年くらいでやめてしまうから問題が出ているんだと思いますけれども、そういう点ではこれを根本的に改めて、そして科学
技術陣容というものを強化拡大しなきゃならぬのじゃないか。そのためには、もう庁などという名前をやめて、今度は省に格上げしたらどうですか。一々長官だの大臣だのって紛らわしい
言葉を重ねて言う必要はないから、省に格上げする、そしてもっと科学
技術体制を強化拡大する、そういう点でひとつ大臣のお考えをお聞かせください。