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1985-04-16 第102回国会 衆議院 科学技術委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十六日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 鳥居 一雄君   理事 小宮山重四郎君 理事 笹山 登生君    理事 塚原 俊平君 理事 平沼 赳夫君    理事 大原  亨君 理事 渡部 行雄君    理事 矢追 秀彦君       伊東 正義君    若林 正俊君       五十嵐広三君    小澤 克介君       関  晴正君    辻  一彦君       村山 喜一君    遠藤 和良君       伊藤 英成君    山原健二郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹内 黎一君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     宇賀 道郎君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         科学技術庁原子         力安全局長   辻  栄一君  委員外出席者         国土庁防災局震         災対策課長   定道 成美君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  上村 雅一君         郵政省電気通信         局電波部周波数         課長      神崎 慶治君         消防庁危険物規         制課長     志村 哲也君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事長)     吉田  登君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事)      植松 邦彦君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団核         燃料部長)   渡辺 昌介君         科学技術委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ————————————— 委員の異動 四月十六日  辞任         補欠選任   村山 喜一君     五十嵐広三君   佐々木良作君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   五十嵐広三君     村山 喜一君   伊藤 英成君     佐々木良作君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 鳥居一雄

    鳥居委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として動力炉・核燃料開発事業団理事長吉田登君、同理事植松邦彦君及び同核燃料部長渡辺昌介君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鳥居一雄

    鳥居委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 鳥居一雄

    鳥居委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻一彦君。
  5. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私、きょうは、全般の原子力発電状況と、それから最近のスリーマイル島の発表の問題と、今問題になっております軽水炉のプルサーマルの問題、ほか一、二点についてお尋ねしたいと思います。  まず第一に、我が国原子力発電利用度稼働率かなり高くなっておるということが過日の新聞にも発表されております。また私も、この間三日間開かれた第十八回の原産会議国会の合間を縫ってずっと行ってみまして、そこでいろいろな報告も聞きまして、我が国状況かなり高くなっておるということも聞きましたので、その実態についてどういう状況であるか、またそれがほかの国と対比してどうであるか、こういうことについてまず御報告をいただきたいと思います。
  6. 中村守孝

    中村(守)政府委員 我が国原子力発電所運転は最近極めて順調に行われておりまして、昭和五十九年度における我が国設備利用率は七三・九%という数字になっております。この数字につきましては、従来からいろいろな過去の経験等を生かしまして、定期検査等で十分念入りな点検等を行うということを初めといたしまして、各般にわたりまして改善努力を続けてきておりまして、定期検査の実情を考えますと、先ほどの七三・九%というのはほとんどフル稼働に近い数字でございます。  ちなみに外国の例で比較いたしますと、五十九年ということで先ほどの数字と若干異なりますが、米国が設備利用率で五七・二%、フランスが七二・六%、英国は五八%、西ドイツが七九・一%、五十九年ということでいきますと日本は七二・三%、こういう数字でございまして、フランス西ドイツと並んで非常に高稼働率を示しておるということでございます。
  7. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大臣にひとつお伺いしたいのですが、我が国には、原子力発電の当初から数え上げてみると幾多の事故故障もあり、それらの経験かなり踏まえてきたと思うのですが、そういうように利用度が国際的に見てかなり高くなっておるという事情といいますか理由というものをどういうふうにお考えになっておるか、若干お聞きしたい。
  8. 竹内黎一

    竹内国務大臣 お答えいたします。  先生お尋ね利用率初期は低かったわけでございますが、その後順調に推移いたしまして、現状についてはただいま政府委員からお話し申し上げたような数字になっておるわけでございます。この利用率向上原因としては、何としてもまず初期トラブルに対する所要改善がなされ、その教訓を生かしての事故未然防止対策の徹底が図られてきたことが考えられると思いますが、あわせて定期検査効率化等による検査期間の短縮もまた一つ要因ではなかったかと私は考えております。
  9. 辻一彦

    ○辻(一)委員 初期におけるいろいろな故障事故に対しての改善策がいろいろとられたと思いますが、その後の方の定期検査は、これは例えばドイツあたりは一カ月か一カ月半、我が国は最低二カ月やっておる。だから、定期検査日数を短くすれば稼働率が上がるのは当然でありますが、しかしまた定検の日数を短くすることによって後でトラブルが出れば何にもならないということになりますから、その点で定検の厳密度ということはただ日を短くすればいいというものではないと思いますが、その点の見解はいかがですか。
  10. 中村守孝

    中村(守)政府委員 最初のころは、先生御案内のように応力腐食割れとか蒸気発生器細管のひびとかそういったもので、そういうものを定期検査のときにいろいろあわせて修理をしておったということで定期検査が非常に長くなっていたこともあるわけでございますが、そういう応力腐食割れ補修ということがそういう意味でもうほとんどなくなりまして、そういうことでも定期検査期間が短くなった。  それから、先生御懸念なされました定期検査期間を短くすることによって検査がおろそかになるのじゃないか、こういうことじゃございませんで、検査方法そのものを効率的に行うということで、実質的な内容がおろそかになるということでは決してございません。そういうことで、通産省の方で定期検査としての厳重な検査が行われておると私どもは了承しておる次第でございます。
  11. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私の経験でも、国内と国外に幾つも問題があったと思うのですが、その一つ蒸気発生器、いわゆる加圧型にはどうしても蒸気発生器細管の腐食問題が出ておりますし、それから燃料棒の曲がりの問題もありました。また、日本原電における第一次冷却水環境への放射能漏れ、こういう問題、それからもう一つ応力腐食割れ幾つかの問題があったのですが、それらをいろいろと検討して、いろいろな経験として生かしておると思うのですが、具体的にそういうかつての事故故障等々がどういう形で安全度を高めるように生かされておるか、このことをちょっとお尋ねしたいと思います。
  12. 辻栄一

    辻政府委員 御指摘のいろいろな事故経験につきましては、国の内外の事故をそれぞれその時点において原子力委員会等中心といたしまして検討を続けてきておるわけでございまして、先生指摘のようにいろいろな対策をとりました。そういうトラブルが発見されたような場合には、再びこれを起こさないために品質保証であるとか運転員資質向上等、その他安全対策を講じてきたところでございます。現在我が国発電所安全性が高度の水準に達してきた背景の一つには、こうした努力の結果、これまでの事故故障教訓を生かしてきたことが大きく貢献してきたというのは先生指摘のとおりでございまして、今後もこういうたぐいの努力を引き続き続けていきたいと考えておるところでございます。  御指摘幾つかのトラブルに対する対応策を一々述べますと非常に時間がかかりますので、先生指摘の中から、一つの例といたしまして応力腐食割れの問題を取り上げてみたいと思いますけれども、この問題につきましては、既に昭和四十九年の九月にアメリカドレスデン号炉でこういう問題が提起されておる。しかも、その後、我が国におきましても浜岡の一号炉等におきまして同様な現象が出るということを踏まえまして、いろいろな原因検討が行われたわけでございます。  そのための対策といたしまして、一つには材料の問題、耐食性のすぐれている炭素含有量が従来に比べて低いステンレス鋼管の採用が有効であるという問題が一つ、それから溶接施工方法の問題が一つということで、溶接施工による残留応力、これをできるだけ少なくすることが非常に有効であるということのために新しい溶接方法を採用する、そうして残留応力の低減を図る。あるいは冷却水の水の性質、これが一つ影響しますので、運転開始をいたします前に冷却水を十分に脱気いたしまして冷却水中溶存酸素の濃度を低減させる、こういったような方策が有効であるという結論が出されまして、新しい炉につきましてはすべてそういった方策対応されているところでございます。  さらに古い炉につきましては、五十年代の初めごろから通産省指導のもとに電力業界におきまして定期的に補修が行われておりまして、主要な部材から順次定期検査等を利用いたしまして、先ほど申しましたような新しい材料、新しい施工法による施設の修理改修が行われてきたわけでございます。こういった結果が、その後の日本における原子力発電所運転中に応力腐食割れが起こるケースが非常に少なくなってきたということの原因であろうかと思います。  昨年の秋に、OECDのNEAにおきましてこの問題についての検討会が行われました。その原因一つは、アメリカにおいてこの問題が最近よく発生いたしまして、そのために原子力発電所を停止させて所要改修を行うということのためにアメリカ発電炉稼働率が悪くなっているというような状況を反映いたしまして国際会議が持たれたわけでございますけれども、その時点におきまして既に我が国におきましては、先ほど申し上げましたような対応が済んでおりますので、逆にここで日本対応を諸外国に教えてあげた、こういうようなことでございます。この例などは、ただいまの御指摘の件のよい例ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  13. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そういうようにして技術的ないろいろの対応がなされたということは、今の御報告とか原子力安全委員会の出している報告書等を見れば詳しく出ているわけであります。  私はそれはわかりますが、ただ過去幾つかの事故経験等を見ると、原子力平和利用三原則、自主、民主、公開という観点から、みずからの公開によってそういう問題が明らかにされてきたというのは必ずしもそう多くない感じがします。例えば今お話のあった応力腐食、これはアメリカドレスデンアメリカ規制当局発表して、急遽我が国がこれに対応した一つの例であろうと思うのですね。それから、日本原電放射能漏れ敦賀で起こしましたが、これも海上にある環境測定場所から何回か測定値が出てくる、これは放任をしておけないというところからこれを公にせざるを得なかったという経過があったと思うのです。また蒸気発生器の方は四十八年六月に国会で取り上げた経緯がありますし、あるいは燃料棒曲がり問題は四十九年三月の国会予算委員会においても取り上げておるというように、これらを考えると、政府原子力規制当局あるいは電力企業のそれぞれの努力に負うところも向上した一因として大きいとは思います。また一面では、いろんな住民運動があっていろんな問題を指摘をする、またそれらを受けての国会での指摘等々、やはりそれらに負うところも大きかったというように思いますが、この点について大臣見解をひとつお願いしたいと思います。
  14. 辻栄一

    辻政府委員 先生指摘のような過去の実例も幾つかあったと承知しておりますが、例のスリーマイル事故以降、原子力安全委員会が設立されましていろいろ検討しておる現在の段階におきましては、こういった事故故障報告制度を見直す。例えば原電敦賀の場合でも同様の問題がありましたので、報告制度改善等を行いまして、現段階ではできるだけ早期に発表するという基本的な方針をとって、できるだけ公開に努めるという努力をしているところでございます。
  15. 竹内黎一

    竹内国務大臣 国民皆様原子力発電安全性について非常に強い関心を持っており、また時として危惧の念を持つというのは、私はうなずけるところでございます。そういう意味で私としては、いやしくも起こった事故を隠ぺいするというようなことがあっては絶対にならないと思いますので、今後もそういう面での指導を強めてまいりたいと思います。
  16. 辻一彦

    ○辻(一)委員 住民運動もいろんな運動がありますが、やはり原子力安全性について心配をし、そして住民の立場からより安全度を求めたいという声も随分あると私は思うのですね。そういう意味で、住民運動の声にはこれから後も謙虚に耳を傾けていく。そういう意味公開ヒアリング等をやりましても、それらの意見を十分にくみ入れることが必ずしもまだ十分ではないというような感じがします。余り警戒をせずに、こういう声を十分に聞き入れていくということが安全度を高める一つの大きな要因になると思いますが、その点大臣どうお考えになりますか。
  17. 辻栄一

    辻政府委員 御指摘の点につきましては、私ども原子力委員会で一生懸命努力しているつもりでございます。公開ヒアリングの成果につきましても、そこで出されました意見につきましてはそれぞれ安全委員会で、その意見をどういうふうに安全審査にしんしゃくし反映したかということを文書にしてつくり、これをまたパンフレットにして地元に配るというような努力もしているところでございまして、今後とも引き続き御指摘のような努力を続けていきたいと思っております。
  18. 辻一彦

    ○辻(一)委員 公開ヒアリングの問題は別の機会にまた少し触れたいと思いますから、きょうはこれにとどめておきます。  そこで、これはひとつ大臣所信を伺いたいのですが、中国には御存じのとおり反面教師という言葉がありますね。いろんな事故故障等があったときに、それはいろんなところから指摘をされるでしょう。また国会でも今までかなりこれを衆参両院で取り上げてまいったと思うのですが、国会安全論議が厳しければ厳しいほど、やはり基準がある程度引き上げられ強化をされる。そうすれば電力企業はそれに応じた対応を迫られる。私は経費はかかると思うのです。しかし長い目で見るならば、やはり経費をかけても安全度が高まるということによって安定度が高まり、そういうことが今の利用度稼働率向上一つの大きな原因にもなっているのじゃないか、こういうように私は思うのですが、そういう意味安全性論議はこれから後も国会で厳しく論議をしていくということが非常に大事じゃないか、これは長期的に見れば極めて必要なことじゃないかと思いますが、これらについて大臣所信というかお考えを伺いたいと思います。
  19. 竹内黎一

    竹内国務大臣 先ほども申し上げましたように、国民皆様原子力発電安全性について強い関心を有しているもの、こう私は判断をいたします。まして国会は国権の最高機関でございますから、この国会におきまして安全の問題について種々の御論議があることをむしろ私どもは歓迎すべきものであろうかと考えます。
  20. 辻一彦

    ○辻(一)委員 歓迎していただけるならばまたこれから大いにやりますから、よくひとつ聞いておっていただきたいと思います。  そこで、第二として、スリーマイル島原発事故調査の結果が中間報告として四月十日にアメリカ発表されております。一部新聞も既に報じているところですが、その実態についてはどうか、これをひとつお伺いしたい。
  21. 辻栄一

    辻政府委員 アメリカエネルギー省アイダホ国立研究所がありますが、そこの委託を受けておりますEG&Gという会社が、四月十日にスリーマイル島二号炉事故に関しまする新たな情報といたしまして、最近の調査研究によって炉心構造材の恐らく一〇ないし二〇%が溶融して、原子炉圧力容器底部へ流動したのではないか、こういう仮説アイダホ国立研究所科学者が立てたということを発表したようでございます。この調査は、アメリカエネルギー省が進めておりまするTMI号炉に関します研究計画一環として行われたものでございます。先生御承知のように、この計画には我が国からも多額の経費をかけまして参加しているものでございますが、その一環で行われたものでございます。しかしながら、今回の発表が最終の調査結果でございますのか、あるいは検討途上でございますのか等細かい問題については現在情報の入手に努めておりますが、まだ入ってきておりませんので、今後資料を取り寄せ次第検討してまいりたい、かように思っているところでございます。
  22. 辻一彦

    ○辻(一)委員 仮説とおっしゃるけれども、既に「原子力工業」という雑誌では五十九年の四月号、十月号にかなり詳しい報告がなされておるし、それからことしの五月に科学朝日かなりいろいろなところから状況を伝えておると思うのです。例えば小型のテレビカメラを胃の中に突っ込むような形でつるして、内部かなり詳しくいろいろな角度から見ておる。それから第二は、高性能の音波を使って、音波によってどの程度損傷、どの程度溶融があったかということを調べておる。さらに、瓦解したと言われる内部材料をはさみで挟み取って、それでもって材料溶融点等の分析をやっている。これらを見ると単なる仮説でなされているというふうには見られないのですが、科技庁としては少なくとも四十二億も出して一緒参加をして代表を出しておる以上、もっと詳しい事情はわかっておるはずであると思います。今の程度では非常に不十分だと思いますが、いかがですか。
  23. 辻栄一

    辻政府委員 おっしゃるとおり、TMIに関連いたしましてはいろいろ調査団も派遣して調査をしてきたことでございます。それまでの時点における調査検討結果を原子力安全委員会特別調査委員会報告書としてまとめたものが同委員会報告書として出ておるわけでございますが、その報告書の中におきましても、炉心損傷部においてかなりの高温のために相当の燃料の重大な損傷があるということは予測しております。そういったようなことから今回のような計算結果といいますか、そういったものが出る可能性については従来から予測していたことでございますけれども、いずれにしろ、この報告については四月十日に新聞情報等で知ったのが初めでございますので、今後さらに調査を進めてまいりたいと思いますし、これらの研究計画全体につきましても、先ほど申し上げましたように我が国はこの全体の研究計画参加をしておりますので、そういったルートからも漸次いろいろな報告が上がってくると思います。これまでも先生指摘のような原子炉内部状況等についての資料は入手しておるわけでございますが、いずれにしろ今後、炉のふたもあけ、中身も取り外しというような調査が漸次進んでくると思います。この研究計画は一九八四年から一九八九年の間にかけて研究が行われる予定になっておりますので、その過程において得られました資料を漸次安全委員会中心といたしまして検討してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  24. 辻一彦

    ○辻(一)委員 最終的には、ふたをあけて中身を取り出すとか、もっともっと調査しなければこれは言えないことだと思います。それはわかります。しかし、この四月十日に発表された英文とその翻訳文の要旨を見ると「TMI−2事故時、TMI−2炉心の上半分の温度燃料構成材料溶融温度に達し、」これは二千八百六度がたしか燃料溶融点であると思いますが、二千八百十六度と言えばもう既にその溶融点を超えているということになります。「残存する被覆の大部分温度上昇に伴い酸化し脆い状態となった。炉心構造材および燃料物質を含む溶融物の多くは下方へ流れ出し、炉心の下部で凝固した。冷却水が導入された時、脆化した状態で残存していた燃料棒の大部分は破砕され、凝固した炉心材料溶融物上部表面瓦礫層を形成した。事故が進展するに従い、一度固化した溶融物は効果的に冷却されず再び溶融し、溶融物の多くが原子炉圧力容器底部へ流出し、原子炉安全系冷却水により冷却され固化した。」云々とありますが、一遍溶けたのがまた固まって冷やされて、燃料棒等溶融して上部の一・五メートル等に及ぶ空洞がてきたのではないか、こういうように言われております。これらから見て新聞は二〇%までの炉心溶融ありというように報道しておりますが、二〇%といえどもこれは大変なことなので、考え得られる炉心溶融が起こったと考えざるを得ませんが、この点どんな見解を持っておりますか。
  25. 辻栄一

    辻政府委員 先生のおっしゃった点は、私どもEGG社から入手しました報告書に書いてあるとおりでございます。  先ほど私、仮説と申しましたけれども、今の現状は炉内についての状況をきちっと分解して調べたわけではございませんから、そういう意味で、そういったシナリオを描くと、これまでに得られた温度条件その他のものがいろいろな電算機解析コードにうまくのるということではなかろうかと思います。そういうことであるとすれば、将来そういった調査が進みました場合に、それが事実であったかどうかということが次第にわかってくると思います。今私はそのことについて否定するつもりは全然ないわけでございますけれども、先ほど私が申し上げました原子力安全委員会報告書におきましても、温度条件はその時点におきましては二千四、五百度ぐらいというふうに想定されておりまして、UO2の溶融点である二千八百度Cよりは若干低いかもしれないという報告がなされております。しかしながら、ジルコニウムの被覆材ウラン一緒になりますとそこで共晶体ができる。そうすると、その共晶体溶融温度というのは二酸化ウランの融点よりもやや低いわけでございまして、そういう点から共晶体をつくって液化することもあるかもしれないということは考えていたわけでございます。  それで、対応策の問題でございますけれども、いずれにしろ原子炉安全対策といたしましては、何といっても炉心溶融を起こさないための対策ということが最も肝心であるということでございまして、それまでのいろいろなデータを検討いたしました結果、そのための所要対策幾つかとってきたわけでございます。これは日本のみならず、ヨーロッパ諸国あるいはアメリカにおける対策もほぼ同様のものでございますけれども、そういったような対策によりまして、将来このTMIのような事故が起こらないようにという施策を講じておるというところでございます。
  26. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今までの発表を見ると、事故が起こった直後は炉心は二千度ぐらいになったのではないか、こう言われたんですね。それから去年の十一月には二千六百四十八度という発表がなされておる。そして六十年の四月十日には二千八百十六度と言っておるのですが、この数字仮説でこういう数字が出ているのか。何百度程度というのは別として、二千八百十六度ということがはっきり出ているならば、これは単なる仮説や推測ではなしに、かなりこれを裏づける根拠があってこういう発表がされておりますが、この見解はどうなんですか。
  27. 辻栄一

    辻政府委員 先ほど申し上げましたようなTMIのRアンドD、研究開発計画、それの作業が漸次進んできておりますので、御指摘のように新しい事実が次第に発見されてきておりまして、御指摘の点につきましても、炉心から取りました燃料の粒子、デブリと言っているわけでございますが、これを実際に引っ張り出しまして分析した結果から、炉心温度が五千百度F、これは華氏でそういう数値が出ておりますけれども、すなわち二酸化ウラン燃料の一部の溶融意味する温度に達していたことを示す根拠が見出されたという報告が本年二月に同じ会社からなされておるということでございます。
  28. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その二月の発表をもとにいろいろな文献で状況が出ておりますが、当時既に炉心の一部が溶融したのではないかという見方がなされておった。それがこの四月十日の発表によって、二千八百十六度という燃料棒の二千八百六度を上回る温度によって溶融があったということを私は裏づけておると思うんですね。だから、二〇%は一〇〇%じゃないという言い方がありますが、二〇%中心部が溶けて流れたということは、これはそのときの対応によってそこで食いとめられたのが偶然にもよかったと思いますが、もしその対処を誤れば、圧力容器の底を溶かして、格納容器をも溶かして外にも流れ出かねない、そういう内容を可能性としては含んでおったと思うのです。こういう意味で、今まで炉心溶融というものはないという言い方がずっとされてきたのですが、これらの具体的な事実からするとなかなかそういうようには言い切れない。  そういう点でひとつ伺いたいのは、科技庁は、原子力安全委員会等において当初からこういう炉心溶融はないと考えておったのか、あると考えておったのか、その点はどうなんですか。
  29. 辻栄一

    辻政府委員 先ほど申し上げましたように、原子力安全委員会事故報告書の第三次報告書では、かなり温度の高まりというものを想定しておりまして、炉心損傷部に重大な損傷があるものと考えられるという報告をしておるわけでございまして、その時点におきましては溶融があったかないかということを判断するまでには至っておりませんけれども、そういうことがある程度あったかもしれないということは予想しておったわけでございます。
  30. 辻一彦

    ○辻(一)委員 第三次の報告書はちょっと前ですね。四月十日はついこの間ですからね。しかも、それは非常に具体的な温度数字を挙げている。これは見れば、それが何%であるかということは後の解明にまたなければならないけれども、やはり炉心溶融は事実として起こっておるというように考えざるを得ないと思うのですね。そういうことで、工学的に言えば二〇%炉心溶融があれば、やはりメルトダウン、炉心溶融があったというふうに見ざるを得ないのですが、こういうことを考えると、我が国安全審査等においても炉心溶融は絶対起こり得ない、仮想事故というものを想定する中で、いつもまくら言葉は、そういう事故は実際はないんだが、こう書いて、しかし解析するとこうこうというようにやっておりますが、このスリーマイルでは現実に炉心溶融が起こっているという厳然たる事実がある以上、これからの我が国安全審査においてこれらに対する対処はどういうふうに考えるのか。それはいかがですか。
  31. 辻栄一

    辻政府委員 いずれにいたしましても、原子炉安全審査をやる場合には、炉心溶融を起こす前の防護対策が最も重要であるというのが基本的な従来の考え方でございまして、TMIのときも報告において、あるいはそういう炉心溶融があるかもしれないという予想はしておったわけでございますけれども、問題はそういうことを起こさないような対応策ということで、いろいろ検討して対策考えてきたということでございます。  今回の報告書の結果につきましては、先ほど申し上げましたRアンドD計画でさらにいろいろ検討が進んでまいると思いますし、それに関連するいろいろなデータもこれから豊富に入ってくると思いますので、それらのデータが出てきました段階でいろいろまた安全委員会中心にして、対応策が必要であるかどうかを含めまして検討を進めていきたいというふうに考えております。
  32. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、我が国安全審査等も随分と厳しくやって、なかなか努力はしておるというふうには思いますよ。しかし溶融はない、起こらないようにするのだということであるが、スリーマイルでは燃料溶融点が二千八百六度、その材料を取り出して調べて分析をした結果二千八百十六度まで上がった、こういうふうに言っておれば、これは溶融はあったと事実として見ざるを得ないですね。そうしますと、我が国安全審査ではそんなことは起こり得ないのだといつも言っておったことが、いつも起こると言えば大変ですが、起こる可能性があり得るということですね。そうすればそれに対する安全審査の解析ということが必要であると思いますが、これはどう考えますか。
  33. 辻栄一

    辻政府委員 先ほどの報告書の内容については、先ほどから何遍も申し上げておりますように、もう少し詳細なデータをもらってみないと何とも言えないわけでございますけれども、私ども段階といたしましては、原子力発電所安全審査の基本は、炉心溶融に至らないような対策というところが基本であろうかと思っておりますし、これについての諸般の対策が現在のところはとられておると承知しているわけでございます。そういったスリーマイル研究成果の結果によりましては、これから検討の対象としていくということであろうかと思います。
  34. 辻一彦

    ○辻(一)委員 溶融は起こらないようにするということ、これが一番大事ですよ。しかし起こった事実があれば、いざというときにはそういうこともあり得るという前提に立った解析が今後必要であると思うのです。これは最終報告を待って、ぜひ検討いただきたいと思います。  そこで、四月十日に発表された向こうの調査報告は、科技庁では要旨はプレス発表で入手されておるのですが、アメリカから手に入れようとすれば、調査員も行っておるし科技庁のスタッフも皆アメリカにおるはずなんだから、それらを動員すればそんなのは一、二日で直ちに入手し得るはずであるけれども、今まで入手できないというのはどういうことなんですか。
  35. 辻栄一

    辻政府委員 四月十日の発表は、あくまでもDOEから委託を受けました会社、EG&Gが発表したレベルの段階でございます。もちろん発表の直後、直ちにワシントンのアタッシェに打電をいたしまして資料収集に努めるように指示しておりますけれども、現在の段階ではそれはまだリリースされていないという返事でございます。いずれにしろ、このRアンドD計画には日本参加しておりますので、DOEを通じて詳細データが入手できるものというふうに考えておりますが、なお現地を督促いたしまして、できるだけ早い機会に入手できるように努めたいと思います。
  36. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それじゃ資料を入手次第、本委員会資料として提出をしていただきたい。委員長、これをひとつちょっと確認いただきたいと思います。
  37. 辻栄一

    辻政府委員 これは、アメリカ研究計画におきましていろいろ資料公開等については取り決めがなされておりますが、基本的にはアメリカ資料でございますので、発表するにつきましては向こう側の同意も要るというようなことになろうかと思いますので、どういう性格の取り扱いの文書になるのか、それによってであろうかと思います。
  38. 鳥居一雄

    鳥居委員長 申し上げますが、理事会において協議したいと思いますので、御了解いただきたいと思います。
  39. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私、資料提出については大分前ですがやったことがありますから、なかなか簡単には政府の方は出したくないのはわかりますが、さっき確認したように、やはり国会の厳しい論議が長い目で見れば日本原子力の安全と安定に寄与するという点から、これはぜひひとつきちっと出して、我々も一緒に勉強してまた論議をいたしたいと思うわけです。その点については、委員長いいですか。
  40. 鳥居一雄

    鳥居委員長 はい、結構です。理事会において協議をいたしたいと思います。
  41. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それでは時間の点から、次にプルサーマルの問題について一、二お尋ねしたいと思います。  何か本会議の関係で時間が削られてきたので簡単にやりますが、プルサーマルがどういう必要から最近特にやかましく取り上げられ出したのか、要点で結構ですから、それをひとつ御説明いただきたいと思います。
  42. 中村守孝

    中村(守)政府委員 我が国原子力開発に当たりましては、当然ながら資源小国の我が国として、原子力というものはウラン燃料として燃やすわけでございますが、その結果としてプルトニウムというものが生産されて、そのプルトニウムがいわば準国産的な性格のものになるわけでございまして、このプルトニウムの利用ということが非常に重要であり、かつ長期的には高速増殖炉という燃えた燃料以上の新しいプルトニウムが出てくるということで、究極的にはこの高速増殖炉を開発して我が国のエネルギーの供給安定に資する、こういうことから我が国原子力開発が考えられておりまして、軽水炉から高速増殖炉に至るというのが我が国原子力開発の基本路線になっておるわけでございます。  その過程におきまして、前から原子力委員会のナショナルプロジェクトとして推進してまいりました新型転換炉、これは当初は天然ウランにプルトニウムを付加するということで燃料として使用できるというものを計画しましたが、その後いろいろ研究開発の結果、濃縮したウランにプルトニウムを付加するということで燃やすという炉として開発してまいりまして、高速増殖炉につなぐプルトニウムの利用ということでこの新型転換炉の開発も進めてまいったわけでございます。それから諸外国におきましても、西ドイツを初めといたしましてプルトニウムの軽水炉での利用というものはいろいろ研究開発が進められ、既に実証的な段階に入っておるわけでもございます。  我が国でも、プルトニウムを熱中性子炉で燃やすということを急に始めたわけではございませんで、前々からそういう意味で新型転換炉において燃やすという計画でもあり、その後諸外国の例から軽水炉でも有効に利用できるということで、軽水炉での利用ということにも真剣に取り組んでまいりまして、早くから美浜一号炉において少数体によるプルトニウムのMOX燃料を燃やしてみる、これはたしか昭和四十七年に既にMOX燃料を燃やすということを計画いたしまして、その設置許可までいただいたのでありますが、残念ながら美浜一号炉にその後いろいろ事故がございまして燃やすところまで至らなかったということでございます。原電敦賀炉におきましても前々から計画があったわけでございまして、今回ようやく二体でございますがMOX燃料を燃やす計画が実行に移されるという段階になってまいったわけでございまして、決してにわかに始めたというわけではございませんで、前々から計画的に進めてきておるものでございます。
  43. 辻一彦

    ○辻(一)委員 新型転換炉は敦賀にありますが、これは重水を使っておりますから軽水炉とちょっと性格が違うと思うのですね。  そこで、よその国もいろいろやっておるようでありますが、軽水炉にこれを使うについての安全審査は既に随分前になされて、P型は許可がされている。B型は去年の暮れかに審査の結果が出ておりますが、安全性について心配ないのかどうか、このことをちょっとお尋ねしたいと思います。
  44. 辻栄一

    辻政府委員 先ほど原子力局長から御説明したとおりでございまして、敦賀については安全審査はもう既に済んでおるところでございますが、プルトニウム燃料を軽水炉において装荷いたします際の安全性につきましては、現在使用されておりますウラン燃料と比べて熱水力的な特性、核的特性につきまして十分安全を確保できるという見通しがあることが必要であろうということでございまして、この点について審査が行われたわけでございますが、MOX燃料の構造がウラン燃料と同一のものである、それからMOX燃料の濃縮度がウラン燃料と等価であるということ、それからMOX燃料棒の配置に工夫がなされているということによりまして、MOX燃料の熱水力的特性、核的特性がウラン燃料とほぼ同等であるということを審査したわけでございます。したがいまして、炉心特性への影響であるとか事故の解析につきましても、ウラン燃料を使用する場合と比べて変わらないというのが安全審査の結論でございます。MOX燃料の使用は、海外での照射実験、ATRの「ふげん」炉、それから西独等の軽水炉におきます装荷運転の実績から見ましても安全性は十分確保し得るというのが原子力安全委員会の現在の判断でございます。
  45. 辻一彦

    ○辻(一)委員 混合燃料、MOX燃料のそういう審査の結果が出ておるようでありますが、福井県の敦賀市へ通産当局が二回ほど説明に行かれておりますね。それはそれで結構ですが、地元の敦賀市の市長さんから、初めて軽水炉でこういうプルトニウム係を使うことなのでいろんな心配がある、住民がそういう点についてよくわからないといけないという点で原子力安全委員会の説明を求めたはずなんですが、それはどうしても受け入れられなかった、こういうことを私は新聞紙上で聞いておりますが、なぜそれができなかったのか、その経緯はどうなんですか。
  46. 辻栄一

    辻政府委員 県当局とのお話し合いでございますけれども、決して私どもが説明を拒否したということはございませんで、いろいろ地元の諸般の状況を勘案しまして、県当局としては通産省の説明で十分であるという御判断だというふうに聞いております。
  47. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その点はいろいろな立場があると思いますから、なお確かめてまた論議したいと思います。  そこで、MOX燃料の経済性というものは、これは実験段階で何とも言えないとは思うのですが、プルトニウムが今のような形で再処理されて一体一キロ幾らぐらいの価格になるのか、そういうものを原料にしてMOX燃料をつくった場合にどれくらいの濃縮ウランとの経済対比になるのか、そういう試算はできませんか。
  48. 中村守孝

    中村(守)政府委員 プルトニウムにつきましては、現在まだ市場が形成されないような状況でございます。試験的に使っているというようなことでございますので、そういうことで価格が幾らかという客観的なものがないわけでございます。どういう勘定の仕方をするかということによって値段がいろいろ変わってきます。  まず、再処理のコストを全部プルトニウムの価格であるとするのか、あるいはプルトニウムはウランの中にある湖と同じようなエネルギーを出すわけでありますから、そこら辺はエネルギー等価とした場合のウランの値段との比較において決めるとか、あるいはもう最終的な使用済み燃料の処理ということを考えれば、再処理費用とは別に、再処理費用は前の原子力発電所の掛かりとしてプルトニウムの価格は考えないとか、いろいろな考え方がございますので、そういう意味で今のところプルトニウムを幾らとして云々ということは言えないわけでございます。現在までのところ、前にOECDのNEAという機関で検討したことがございますが、そこのところでもプルトニウムの一グラム当たりの価格が二千円から五千四百円という非常に幅のある間で評価をされたというようなこともございまして、そういう意味で私どもまだプルトニウムが幾らだから軽水炉と比較して経済性がある云々ということを現段階でははじいておるわけじゃございませんで、むしろ我々は、先ほど申しましたように、究極的には高速増殖炉というものを開発して我が国のエネルギーの供給安定に資するという過程におきまして、プルトニウムの取り扱い技術の習熟等々も含めましてこのプルトニウムの利用を図っていく、こういう考え方に立っておるわけでございます。
  49. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ちょっと時間不足で余り論議ができないのですが、これはいろいろと試算を、できれば一遍やっていただきたいと思います。プルサーマルで軽水炉にプルトニウムを使うとなれば、これから高速増殖炉が開発されるのは実際としては随分先のようでございますから、その間をつなぐのはそう短い時間じゃない。したがって、大量にプルトニウムがこれに使われる可能性が生まれてくるんじゃないかと私は思う。だから、それらについては安全性と経済性等々の十分な検討は必要であろうと思うのです。そういう点でなお試算等が可能であるならば努力していただきたい、こう思います。  それから、最後に一つ伺いたいのですが、時間があれば軽水炉から新型転換炉、高速増殖炉、核融合に至る一連の中で、プルサーマルを含めてどういうふうに日本の電力を確保するためにそれぞれを位置づけるのかということを少しお尋ねしたい、こう思ったのですが、その時間がありませんから次回に譲りたいと思います。  ただ一つお尋ねしたいのは、新型転換炉の原型炉を今「ふげん」で動燃がやっております。その次に計画を聞くと、実証炉六十万キロワット程度を電源開発がやるというようにも聞いておるのですが、日本原電というのもそういう新しいパイオニア的な役割を原子力開発の分野で果たす性格を持って生まれた会社であるし、電源開発も法律に基づいてつくられた、そういうねらいを持っておると思います。しかし原子力開発という観点からいけば、日本原電がそういう役割を果たさなければ余り存在意義がないように思いますが、電発と日本原電原子力開発という分野においてどのような役割と分担を果たすべきか、これについてひとつお伺いしたい。
  50. 上村雅一

    ○上村説明員 先生お尋ね日本原子力発電株式会社とそれから電源開発会社の大きな違いは、日本原子力発電会社は民間会社でございます。電源開発会社は国策会社でございます。  日本原子力発電株式会社は、民間会社としまして実用発電炉の導入等についての先駆的な役割を果たしてきております。民間会社としてこのような先駆的な役割を果たすという観点から、日本原子力発電会社は先生御案内のとおり、我が国初の商業用発電炉であります東海一号炉を初めとしまして、敦賀号炉それから東海二号炉運転しておりますほか、現在敦賀号炉を建設中でございます。  電源開発株式会社は、国策会社といたしまして技術開発的性格を有する炉型を中心として開発を進めることにしておりまして、国及び電力業界の依頼によって、現在ナショナルプロジェクトとして進めておりますATR実証炉の建設の準備を進めておるところでございます。
  51. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これで終わりますが、国策会社と民間会社の違いといいますが、過日の新聞では、通産省が電発を民間形態に切りかえるというために法案の固めに入ったということを言われておるのです。そうすれば国策、民間の差はまたなくなるのですが、その点をひとつ検討しておいてください、問題点ですから。  時間の点で御協力いたしますから、これで終わります。
  52. 鳥居一雄

    鳥居委員長 次に、山原健二郎君。
  53. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっと最初に、昨日発言の通告をしていなかったのですが、竹内長官に前回のこの委員会で、三月二十六日ですが、SDIへの研究協力はすべきでないという考え方で御質問申し上げたのです。それに対しまして長官は、宇宙開発についてはアメリカの方が日本よりはるかに先を行っておるので、アメリカから協力を求められるという事態は予想していない、大体そういう旨の御答弁をいただいたのです。ところがその翌日、アメリカよりSDIへの研究参加要請が正式に日本に寄せられました。日本が協力すべきものが何もないというならば、やはりきっぱりとお断りしていいんじゃないかという考えを持つわけで、改めてこの点をもう一回お伺いしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  54. 竹内黎一

    竹内国務大臣 私、先生のお尋ねを受けてお答えいたしました趣旨は、宇宙開発の技術の中でも特に先端的なものを比較しますと米国ははるかに我が方の先を行っておる、そういう意味ではそういうものをよもや求めてくることはないのじゃなかろうか、私はこういうような判断をしておりましたのでそういうお答えをいたしたわけでございますが、先生今御指摘のとおり、ワインバーガー国防長官から我が国に対して、もしいわば日本が自主的に参加しようという分野があったらそれを知らせてほしいという手紙を受け取ったのは、また事実でございます。
  55. 山原健二郎

    ○山原委員 その事実に基づきまして、SDI構想というのが核爆発をエネルギー源とするエックス線レーザー兵器などが重要な構成要素となっておることは明らかでありまして、そのSD墓への研究協力、参加ということになりますと、我が国原子力平和利用の原則やあるいは非核三原則あるいは非核・非軍事を旨とする昭和四十四年の国会決議に相反するのではないかという感じがするのですが、これは総理にお尋ねすべきことかもしれません。総理は理解を示す、理解を示す次には協力するということになりかねないわけでございまして、科学技術庁長官としては、その辺をどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  56. 竹内黎一

    竹内国務大臣 いわゆるSDIにつきましては、中曽根総理がしばしばこの国会でお答えしているとおりに、これは極めて長期にわたる構想であり、現段階はそのごく端緒の状況だ。したがって、SDIの詳細について我が国としてもまだ承知しているわけではありません。そういう意味で、今回ワインバーガー国防長官からの書簡に対して、政府としてはまず米側から説明を受けたい、できればそのチームを派遣してほしい、こういう旨の返書を外務大臣から行ったというぐあいに私は連絡を受けておりますが、その説明、そういうものをよく詳細に検討しなければ政府としての次の対応は立ち得ないと思います。しかしながら、政府対応検討する際には、これまでの我が国がとってきた諸原則あるいは諸政策、そういうものを中心に自主的に判断されるべきものであろうかと私は考えております。
  57. 山原健二郎

    ○山原委員 長官がそういうふうにおっしゃることは一面当然だと思うわけでございますが、例えばレーガン大統領のスターウォーズ計画発表した演説が行われたのが一九八三年三月二十三日でございますけれども、その同日、ランパーソン中将・空軍エネルギー兵器担当補佐官、この人が上院軍事委員会で、エックス線レーザーとしばしば呼ばれているシステムは実際には核兵器、第三世代の核兵器である、したがって核兵器が関係するすべての制限に該当するだろうという言明をいたしております。それからさらに、SDI本部長、これは最高責任者でありますエイブラハムソン氏でありますが、これが昨年五月九日に下院の歳出委員会におきましてやはり同じ趣旨の説明をいたしておりまして、これらアメリカ側の諸関係の人々の発言を見ますと、SDIがやはり核兵器体系であることは明確であるというふうに私は考えるわけでございます。  これに研究参加を要請されて、それに理解を示し、あるいは協力していくということになりますと、これはまさに宇宙開発の非核・非軍事を決めました国会の決議、さらには長官は外務委員長もされておりましたから外務関係のことはおわかりと思いますが、同じく昭和四十四年に日本国と米国との宇宙開発協力の交換公文がございまして、それを見ますと、通信衛星などの開発に関し、米国より「日本国に移転された技術又は機器は、平和目的のためにのみ使用されることを確保すること。」と取り決めております。これは日米両国政府の取り決めてございますから、アメリカ側もこれに従わなければならぬわけですね。したがって、これにはアメリカから移転されて日本へ来た機器については平和利用しなければならぬ、こう言っているわけです。ところが、今度日本側から協力するものについては、アメリカ側はこれをいわゆる軍事兵器としてのSDIに使うということは、交換公文の趣旨からいっても非常に矛盾している。むしろ日本に対する乱暴な押しつけではないかというふうに思われるわけでございますが、その辺について何か御見解がございましたら伺っておきたいのです。
  58. 竹内黎一

    竹内国務大臣 SDIというのは、私の想像では、種々の兵器ないしは種々の兵器システムの組み合わせなるものだろうと想像いたしますけれども先生御承知のように、私どもはその詳細についてまだ何も承知していないわけでございます。したがいまして、まず何よりも当面は米側から説明を受けるということが第一であろうかと思いますし、その説明を受けた後の対応ぶりは、先ほど申し上げたような立場から十分なおかつ慎重に検討されていくものだろうと私は思っております。  なお、交換公文のことは政府委員の方から……。
  59. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 日米交換公文の問題につきましては、先生御承知のように米国側から日本に技術あるいは部品を購入する場合の条件として、両国の約束として取り決められたものでございます。これは私どものロケットあるいは衛星の開発につきましての取り決めてございまして、これが直接SDIの問題と関連してくるというふうには考えておりません。これはまた一つ別の問題ではないかというふうに考えております。
  60. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題についてはこれからいろいろ論議されることと思いますので、きょうは時間の関係でこれでおきますけれども、なお長官のおっしゃいましたお話もわからぬわけではございませんが、この点については明確な態度をとるように要請をしまして、次へ移りたいと思います。  二つ目の問題は、去る四月九日取りまとめられました対外経済対策の中に通信衛星の購入促進が盛り込まれていることはもとよりでございます。しかし、我が国の宇宙開発の基本方針として自主性の確保が重要な柱に据えられております。すなわち、我が国の宇宙開発の自主的開発路線と今回の四月九日の通信衛星の購入との関係を見ますと、これは矛盾するのではないかというふうに考えるわけですが、どういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  61. 竹内黎一

    竹内国務大臣 先生既に御承知かと思いますけれども、日米間の貿易摩擦に関連しまして、通信衛星の購入問題につきましては、昨年四月二十七日の経済対策閣僚会議において一つの方針を定めております。その内容は、民間企業による外国衛星の購入については、電気通信事業法の成立により道が開かれることになり、政府としてはこれに必要な措置を講ずる、金融等その他の措置でございます。第二番目は、日本電信電話株式会社いわゆる新電電につきましては、宇宙開発政策との整合性を確保しつつ、同社独自の判断による内外からの購入の道を開く。そして第三番目に、政府等がいわば需要者となる衛星については、宇宙開発政策上自主技術開発を必要としないものについては内外を問わず購入の道を開く、一応こういう対外経済対策を既に決定しておるわけでございます。  今お話しのように、四月九日に決定いたしました今回のいわゆる貿易摩擦対策の中で、米国からの通信衛星購入の問題がいわば一つのシンボル的に登場してきたというわけでございますが、私どもとしては、先生も御指摘のとおり、これから日本の宇宙開発技術を国産技術、自主技術で進めることを中心考えてまいりたいと思いますので、そういう方針を損なわない範囲ではあるいは外国から購入の道もあるかと思います。ただ、まだ通信衛星購入の道を開いてはどうかという程度段階でございまして、はっきり購入と決めたわけでもございませんし、また今申し上げましたように新電電がどういう対応をするか、まだまだ不分明の分野も多いわけでございますが、私としては今申し上げましたように、我が国の自主技術の開発、国産技術の開発を損なわないということを基本にこれに対処してまいりたいと考えております。
  62. 山原健二郎

    ○山原委員 長官が宇宙開発の政策大綱あるいは基本方針に基づいておっしゃっておられることはわかるわけでございますが、現在CS2、さくら二号、CS3の計画があるわけですが、この国産化の率といいますか、これがどの程度になっておりますか、御説明いただきたいのです。
  63. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 CS3の国産化率でございますが、衛星につきまして私ども大体八二%ぐらいの国産化率で考えております。
  64. 山原健二郎

    ○山原委員 私のお聞きしたところでも、さくら二号で大体六〇%の国産化率、CS3で今おっしゃっておるのは八二%、そしてCS4で一〇〇%を目指しているというふうにお聞きしておりますが、そういうふうに理解してよろしいですか。
  65. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 そのとおりでございます。
  66. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、CS2を運用しまして、今度はCS3の開発に当たっている現在の段階というものを考えてみますと、いわゆる自主技術確立の道のりをマラソンに例えるならば一番の勝負どころ、言うならば三十五キロメートル付近と言われているわけですが、そういう非常に大事なところへ差しかかっている。いわゆる自主開発、そして国産化率を高めていく一番大事なところにかかっておるわけですが、そのときに外国技術一〇〇%の通信衛星の購入促進を図るということになりますと、政府が決めた自主開発路線の前途をみずから危うくするものではないかという心配が出てまいりますが、そういう心配はお持ちではありませんか。
  67. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 お答えいたします。  先ほど大臣がお答えいたしましたように、政府の方針と申しますのは宇宙政策大網、日本の自主技術の開発というものを基本といたしまして、それと整合性を保ちつつ純民間企業におきましては衛星の購入を認めるということでございまして、私どもといたしましては、この両者の整合性というものは非常に重要でございますし、またそのように進めていくものというふうに考えております。
  68. 山原健二郎

    ○山原委員 そういうお答えだと思いますけれども、例えば通信衛星の開発に伴っていわゆる実利用の可能性も拡大してくるわけです。その開発経費というのは、直接開発に当たる宇宙開発事業団の負担だけでなくて、実利用の度合いによっていわゆるユーザーも応分の負担をするのが当然だと思われますが、その点は例えばさくら二号の場合あるいはCS3の場合、その辺事業団の経費負担の割合とユーザー側の割合とは大体どんなふうになっておりますか。
  69. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 通信衛星二号、CS2の場合でございますと、事業団の持ち分が四〇%、それからユーザー、この場合は当時でございますと電電公社でございますが、これが六〇%でございます。CS3の場合は、事業団が三〇%、日本電信電話株式会社が七〇%ということになっております。
  70. 山原健二郎

    ○山原委員 いわゆる新電電、NTTが六〇%あるいは七〇%の負担をしているということになるわけでございます。そうしますと、通信衛星の開発は予算上かなり部分をユーザーに支えられているのが現状だということになるわけです。そこで、米国の通信衛星が輸入されました場合に、そのユーザーがそちらの方に走って、我が国の通信衛星の開発計画経費の見積もりも含めまして支障を来すという心配が起こるのは当然でございますが、そんな心配はないというふうにお考えでしょうか。
  71. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 ただいま通信衛星三号のお話がございましたので、通信衛星三号に例をとって申し上げますと、これは日本電信電話株式会社を主体とする通信の需要及び通信衛星に関する自主技術確立を行うという要請を日本電信電話株式会社の方から受けまして、通信衛星二号に引き続いて事業団が開発を進めておるものでございます。したがいまして、この衛星は日本電信電話株式会社が従来から行っておりましたミッション機器等の研究の成果を事業団が引き継ぎまして、先ほど申し上げましたように日本電信電話株式会社の経費の負担もいただきまして昭和五十八年度からその開発をしているものでございまして、昭和六十二年度及び六十三年度にHIロケットでこれを打ち上げるということで鋭意開発を進めているところでございます。  日本電信電話株式会社の方におかれましても、将来の通信の自在性、自主技術というものの重要性を非常に認識しておられまして、今後ともそういう方向で私ども一緒に開発を進めていきたいというふうに考えております。
  72. 山原健二郎

    ○山原委員 CS3の場合は計画はそうなっていると思いますが、CS4については一〇〇%国産化するという目標に向かって進んでいるわけですね。先日新聞を見ますと、新電電の真藤社長の記者会見の記事が載っておりましていろいろ報道されておりますけれども、国産を使うとか、あるいは時には民間衛星を使うとかいうような言い方なんですね。そうしますと、CS4の場合に一〇〇%国産化というものに影響が出てくるんではないかという心配もあるんではないかと思います。CS3の場合は今おっしゃったわけですけれども、ここらの影響の問題ですね。しかも、CS3の打ち上げと運用開始の予定時期及びその容量、それと今度ヒユーズ社が出しております通信衛星HS棚を見ますと、打ち上げが大体ほとんど同時期なんですね。しかも容量に至りましては、CS3が〇・五五トン以下、それに対してヒューズ社の通信衛星は一・三六トン、二倍以上の大きさを持っているわけでございまして、二倍以上の大きさを持っているものが同じ時期に打ち上げられてくる。CS3というのはそういう状況にあるわけですが、それが全く影響を受けないでいくのかということについての疑問を持つわけでございます。そのような疑問にはどういうふうにお答えになりますか。
  73. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 今回決定いたしました対外経済対策でございますが、これはいわゆる純反間の電気通信事業者が商業的に衛星を使用する、購入するという場合に、これを国内だけでなくて海外にも対等に開放するという基本的な考え方でつくられておるわけでございまして、そういうものに対して必要があれば資金的な援助というものも政府としては考える、基本的な考え方はそういうことであろうと考えております。  それで、CS3、4の需要のバランスの問題ということでございますが、需要のバランスにつきましては、今後それぞれの企業等におきまして十分に御検討になり、そして実質的にその衛星の容量等を決めていくことになるのではないかというふうに考えております。  CS4につきましては、私どももまだ具体的な設計を詰めておる段階ではございませんが、私ども日本電電株式会社と従来より打ち合わせをしております点から申しますと、この時期にこの衛星を使っての需要というものは一応バランスをしておるということでございますし、また、我が国の自主的かつ自在に宇宙活動を行う技術的能力を将来のために確立するという観点からいいましても、こういった大型の通信衛星を開発するということは非常に重要であるというふうに私どもも、またユーザー側も理解しておるというふうに思っております。
  74. 山原健二郎

    ○山原委員 まだ具体的設計の段階に入ってない問題だと思いますけれども、ことしの三月十三日に宇宙開発委員会が策定をしまして、政府の基本方針として閣議も了承しております宇宙開発計画の中で、通信衛星二号はどう位置づけられておるかといいますと、「増大かつ多様化する通信需要に対処する」というふうに目的が書かれているわけですね。「増大かつ多様化する通信需要に対処する」、これがCS3の位置づけなんです。  そこへ突然同じ時期に打ち上げる、しかもCS3の二倍以上の規模の米国製の通信衛星が入ってきましたら、実利用上はCS3の必要性はほとんどなくなってしまうくらいの影響が出てくるんではないか。そうしますと、さらに国産率一〇〇%を目指すCS4の開発計画にも大きな影響が出てくるんではありませんかというふうに考えざるを得ないので、これは素人考えだということでもないと私は思いますが、そのことをひとつ指摘をしておきたいと思います。  次に、周波数の割り当て問題が出ておるわけでございますが、これは郵政省の方にお伺いしたいと思います。これによりますと日本通信衛星、これはヒューズグループですね、これが申請してきた衛星使用電波の周波数帯はどうなっているでしょうか。
  75. 神崎慶治

    ○神崎説明員 現在、申請が一社ございまして、周波数はKuバンドということでございます。
  76. 山原健二郎

    ○山原委員 Kuバンドですね。今回の九日に発表されました対外経済対策の中で、「通信衛星の購入」の項で「周波数の割当てについては、可能な限り早期に対処する。」というふうに出ているわけでございますが、これは具体的にはどういうことでしょうか。Kuバンドを衛星通信用に割り当てるように対処するという意味でしょうか。
  77. 神崎慶治

    ○神崎説明員 現在、日本ではKuバンドといいますのは地上でマイクロ回線に広く利用されております。このバンドにつきまして衛星で使うとなりますと、地上系から混信を受けないといったような措置が必要でございます。そういった混信妨害に対する措置でございますが、例えば地球局を都会から離れたところに置くといったようなこと、あるいは衛星受信の地球局、この周りに電波を遮へいする、地上のマイクロ回線を遮へいするといったような措置が必要でございます。そういったような措置をとれば地上と衛星系とで共用が可能という場合も出てくると思われます。したがいまして、そういった措置がとられるのであればKuバンドも使えるということを先日、対外経済政策関係で申し上げたところでございます。
  78. 山原健二郎

    ○山原委員 今おっしゃったように、日本ではKuバンド、これは十一ないし十四ギガヘルツ帯でございますが、地上回線用に割り当てられているわけです。通信衛星用にはそれよりも周波数の高いKuバンド、二十ないし三十ギガヘルツが割り当ててあるはずでございます。もしKuバンドを衛星通信用に認めるとなりますと混信の危険が出てくる。だから、今おっしゃったように混信を避けるためにそういう遮へいの操作がなされたならばというお話になってくるわけでございまして、こういう格好になるわけですね。そうしますと、衛星通信の周波数をどうするかということは、我が国の電波政策にかかわることはもちろんでございますが、宇宙開発利用政策にも重要な関係を持つものだと私は思います。だから宇宙開発計画の中でも、例えば「将来の増大する通信需要に対処するため、ミリ波帯の電波を利用する通信衛星技術の研究を行う。」などと言及をいたしておりまして、ここでは宇宙開発計画の中に明確に出ているわけですね。それを、より高い周波数帯の方が帯域が広く、増大する需要に対処するには有利ではないかということで、わざわざ宇宙開発計画の中で具体的にその研究を決めている。政府はこれを閣議でも了承しているわけでしょう。それを今回、いわゆるKaバンドより低い周波数のKuバンドを通信衛星用に割り当てるというのは、これは宇宙開発計画の方向にまさに真っ向から逆行するものではないかという考えが出てまいりますが、それについてはどういうふうなお考えを持っていますか。
  79. 神崎慶治

    ○神崎説明員 Kuバンドの問題ですが、Kuバンドの周波数は今回先ほど申し上げましたような措置をとれば使えるというふうに申し上げたのですが、このKuバンドにつきましては、一九七九年の世界無線通信主管庁会議というのがございまして、ここでいろいろ世界的な周波数の分配というのを決めているわけでございますが、この会議におきまして通信衛星にも使えるというふうになったものでございまして、これを受けまして我が国におきましても、通信衛星用として利用できるというふうに措置しておりましたものでございます。したがいまして、このKuバンドが衛星には使えないといったようなことには、従来からそういうふうになっておらないところでございます。
  80. 山原健二郎

    ○山原委員 例えば外国の一企業が製作する中継器、これはヒューズ社の場合はKuバンドの中継器でありますが、これの周波数に合わせるために我が国の電波政策も宇宙政策も修正されるなどということになりましたら、これは全くやりきれない話でございまして、そういうことはすべきでないと私は思っているわけです。周波数割り当てというのは非常に大事な問題でございまして、この問題について宇宙開発委員会で十分に検討されたでしょうか。あるいは内閣は宇宙開発委員会にこういう決定をします前に審議をゆだねたかどうか。この点について、どなたがお答えになりますか。
  81. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 お答えいたします。  宇宙開発委員会といたしましては、先生指摘のように宇宙開発政策大綱あるいは宇宙開発計画を策定しておりますが、このときの考え方といたしましては、日本の増大する通信需要に対応いたしますために、従来使われていなかった周波数域を宇宙で使えるように開発していくという考え方から、周波数の高い領域のものを使えるような開発というものを計画として進めておるわけでございます。これは日本の長期的な通信需要あるいは宇宙の利用といった観点から開発を進めておるわけでございまして、当面の利用等につきましては、宇宙開発委員会というよりは電波通信政策という観点から郵政省がお決めになる問題ではないかと思います。
  82. 山原健二郎

    ○山原委員 宇宙開発委員会が存在しているわけでございますから、こういう重要な問題はやはり宇宙開発委員会において政策大網あるいは開発計画との関係で十分に検討し、また内閣総理大臣に対して意見を述べるなどの手だてをとるべきだと私は思うのです。しかも、宇宙開発委員会委員長竹内科学技術庁長官がなされているわけでございまして、こういう重大な政策上の、全面的変更であるかどうかは別にしまして、こういう変更が行われる場合に、せっかくできているこの委員会意見を十分に聞き、その討議を参酌する必要があるのではないかと思いますが、長官いかがでしょうか。
  83. 竹内黎一

    竹内国務大臣 宇宙開発委員会委員長としての答弁になろうかと思いますけれども先生今いろいろ御懸念を示されたわけでございます。私たちもこれからはその辺を十分頭に置いてやってまいらなければならぬと思いますけれども、少なくも宇宙開発委員会考えたことあるいは提示したことを受けて、政府はそのとおり今までは実行してきたと私は思っております。
  84. 山原健二郎

    ○山原委員 これでおきますけれども、宇宙開発委員会には所掌の仕事がちゃんと法律で決められておるわけでございまして、重要な機関としてこの意見を聞くということは全く大事なことでございますから、その点は今後の問題としてぜひ適切な運用を長官、しかも委員長としてお願いしたいのですが、よろしいですか。
  85. 竹内黎一

    竹内国務大臣 十分に心してまいります。
  86. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、国土庁、消防庁出ていただいておりますので、地震対策について一言お伺いをしたいと思います。  先日、これは四月の五、六、七の三日間、東大農学部を会場といたしまして地震学会が開かれております。ここでの報告や問題提起について少しお伺いしたいと思うのです。  相模湾北西部の大地震の繰り返し性について報告がなされておりまして、相模湾北西部、伊豆半島北東部小田原付近の地域で約七十年の間隔でマグニチュード七ないし八級の地震が発生しているとの研究発表がございました。この研究発表は、お一人だけなら、私はいろいろ見解があるというようなことになると思いますけれども、これは建設省建築研究所の石橋克彦氏、また科学技術庁所管の国立防災科学技術センターの笠原敬司氏から発表されまして、さらに東大地震研の松田時彦氏もそれに関連すると思われる研究発表を行っておるのでございます。  そこで、ちょっと笠原さんの論稿の一部を読み上げますと、「小田原付近の地震は、七十年の再来周期を認識すると、次の発生が一九九〇年代にも予想される。すでにみたこの地域の地震発生様式(三つの異った断層域が二百年の繰り返し周期を持つ)から、来たるべき地震の断層域はb(天明地震一七八二、M七・三)が予想される」、こう述べております。これは個人の研究発表だと思いますけれども、科学技術庁としましても、この点については、科学技術庁のセンターの笠原氏の発言でもございますが、何らかの検討をされておるのでしょうか。見解を持っておるのでしょうか。
  87. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 ただいま先生お話ございました小田原付近における地震に関して、国立防災科学技術センターの研究者等が四月七日に地震学会で発表いたしたことにつきまして、私ども研究者等からも十分その内容を聞きまして、承知をいたしております。  今回の学会の発表は、小田原付近における過去に発生した地震の震源域と周期との関係について分析を行ったものでございまして、その内容につきましては今後専門家による検討が行われるべきであると考えております。近く開催される地震予知連絡会に対しましても、この論文の内容が報告される予定というふうに承知しております。  こういった専門家からの御検討をいただきまして、地震予知連絡会からのお話等がございました場合には、私どもそういうものを受けてさらに研究を進めるようにいたしたいと思います。
  88. 山原健二郎

    ○山原委員 もちろん単純な判断は戒めなければなりませんけれども、こういう周期性に関する研究が相次いで示されている点から考えましても、この地域の地震予知対策、さらに東京も含めました南関東を中心とした地域の地震防災対策を抜本的に強化することが、東海地震対策とともに急がれていると私は思います。  ところが、六十年度の地震予知関係予算を見ますと、科学技術庁所管では、昨年度の九億四千八百万円から今年度八億九千六百万円と五・五%削減。さらに、特に今回の研究発表に関連する首都圏南部における地震活動に関する研究につきましては、三億七千七百万円から二億七千二百万円と二八%も削られておるわけでございます。確かにここだけを見て予算が削られておるというふうなことも速断に過ぎると思います。しかし、これに関係する予算として科学技術庁所管でも減っているわけでございますが、これについては今おっしゃいましたように抜本的対策強化を図る必要があると思います。まずその予知について科学技術庁としても対策検討されたい、これが科学技術庁に対する最後の質問でございます。  さらに国土庁に対しまして、定道さんお見えになっていますが、東京、首都圏を含めた地震予防対策現状はどうなっているか。また、私はこういう幾つかの論文から見まして強化策を急ぐ必要があると思いますが、簡単で結構ですけれども、国土庁の見解を伺いたいのでございます。  さらに消防庁の方に対しまして、長周期地震について昨年一月に消防庁消防研究所から「日本海中部地震による危険物施設の挙動に関する調査報告書」が出ております。これを見てみますと、長周期波によるところの地震の影響は、例えば長大な橋、大型のビルあるいは巨大なタンク、そういうものが大きく揺れていく可能性を消防庁も指摘されているわけでございまして、特に東京周辺におきましては、南部の工場地帯には実に一万八千本の石油タンクが林立しているという状態から考えまして、今までの耐震基準だけでいいのか、こういう長周期地震については耐震基準を見直す必要があるのではないかという感じがいたしますが、これについて簡単にお答えいただきたい。  以上、三つの質問をまとめて申し上げましたので、よろしくお願いします。
  89. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 私ども、国立防災科学技術センターにおける地震予知の研究につきましては、従来から首都圏南部における地震活動に関する研究を初めといたしまして、その充実を図ってきておるところでございます。  昭和六十年度の国立防災科学技術センターの地震予知関係の予算につきましては、ただいま先生指摘のように現金で約五千万ほど減っておるわけでございますが、これは首都圏における深層観測井の大型観測機器の整備等が昭和五十九年度で完了したため、その設備の費用が減少したということでございまして、その他特別研究等の研究費につきましては、予算的に充実を図っておるところでございます。また設備につきましても、深井戸の設備更新が明年度必要になってまいりますので、その準備のために約二億円の国庫債務負担行為限度額を計上しておるところでございます。
  90. 定道成美

    ○定道説明員 政府の震災対策につきましては、昭和四十六年に中央防災会議で決定されました大都市震災対策推進要網に基づいて、特に三つの柱で推進しております。一つは都市防災化の推進、二番目は防災体制の強化及び防災意識の高揚、三番目は地震予知の推進でございます。さらに、五十八年五月でございますけれども、中央防災会議におきまして、三本の柱を基本としまして、当面の震災対策として特に「情報の収集・伝達体制の強化」「都市防災構造化対策の充実、強化」等九項目の施策を重点として掲げまして、現在これらの施策を推進しているところでございます。今後とも関係省庁と緊密な連携をとりつつ、その推進を図っていくように考えております。
  91. 志村哲也

    ○志村説明員 お話のございました地震動の周期の長い成分によります石油タンクの液面揺動によりまして大きな波高が生ずるいわゆるスロッシング現象が問題になるわけでございますけれども、これに対する防止対策といたしまして、消防法におきましては、タンク上部に空間容積をとらせることによって対処することと現在いたしておるわけでございます。現在の対策昭和五十八年四月に規制基準の強化を図ったものでございまして、この規制基準の強化につきましては、関係専門家によりますところの技術委員会を設けまして、この技術委員会による結論を得ましたものによりまして規制基準の強化を図ったところでございます。  この液面揺動による最大波高の推定方法というのは種々のものが現在学会では提案をされているところでございますけれども、消防法におきましては、五十八年四月に一応技術基準を関係者の結論を得て定めたということもございまして、現時点におきましては、当面現在の規制基準で対処してまいりたい、かように考えているところでございます。
  92. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、消防庁が出されております「日本海中部地震による危険物施設の挙動に関する調査報告書」の4、「一九八三年日本海中部地震による石油タンクのスロッシングとその被害について」というところで、例えば、あのとき新潟では震度三であっても貯液が四・五メートルぐらいはね上がるということが出ているわけです。これだけのことで基準を変えるかどうかということは別にいたしまして、安全基準というものについてはさらに安全性の点検をしていくとか、場合によっては基準の見直しということも出てくるのではないかと私は思いますので、その点もよろしくお願いを申し上げまして質問を終わります。ありがとうございました。
  93. 鳥居一雄

    鳥居委員長 次に、五十嵐広三君。
  94. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 高レベルの放射性廃棄物の問題についていろいろお伺い申し上げたいと思います。  今、例の動燃の東海事業所で固化プラントの設計が完了していよいよ建設にかかる。以前は六十二年から運転開始というようなことを計画なされていたようでありますが、最近の計画を見ると六十二年から建設開始というようなことなんかも資料では拝見できるのでありますが、それぞれ各段階の設計はいずれも終了したかどうか、建設はいつごろから取りかかる予定であるのか。安全審査はもう出たのではないかと思うのですが、これは出されているのかどうか、これらのことについてお答えいただきたいと思います。
  95. 植松邦彦

    植松参考人 今の先生の御質問に対してお答えいたしますが、ガラス固化のプラントは詳細設計が一応終わりまして、現在調整設計というものを実施中でございます。先生指摘のように、六十二年から着工したいというふうに考えております。  もう一つ御質問のありました安全審査はもう出したかということにつきましては、これはまだこれからでございます。
  96. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 しかし、動燃の年報なんか見ますと、五十八年の年報ですかに翌年安全審査を出す、その資料を全部整備するんだというようなことをずっと記述しているのですけれども、まだ出していないのですか。
  97. 植松邦彦

    植松参考人 安全審査の申請書はまだ提出をいたしておりません。
  98. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 安全審査はいつ出す予定ですか。
  99. 渡辺昌介

    渡辺参考人 先ほど理事が申し上げましたように、現在調整設計を行っております。調整設計が終わってからということになりますが、今の計画では昭和六十一年の春に出したいと思っております。ただ、これは計画でございます。
  100. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 もう四年も五年も前に概念設計であるとか基本設計であるとか、そんなものは大体できているようなのであります。原子力委員会等にもいろいろ御説明の機会を持っているようですが、どうも私ども資料を要求いたしましてもちっとも出てこないのですね。だから、そう詳しいものは要りませんけれども、やや基本的な設計の概要のようなものは出していただいた方がお互いに論議しやすいのじゃないかというふうに思うのですね。余り細かいことはいいですから、できるだけ国会でもオープンに議論のできるように、資料の提出について要望しておきたいというふうに思います。  そこで、設計はそこまでできてしまっているわけですから、もう明らかになっておることであろうというふうに思うのですが、固化プラントは大体東海事業所のどの辺の位置に建てることになるのか、そのレイアウトについて御説明いただきたいと思います。
  101. 渡辺昌介

    渡辺参考人 ただいま固化プラントの設置場所について御質問ございましたが、私ども今希望している地点は東海の再処理工場の近くでございます。そこに置きたいと考えております。ただ、まだ正式に申請をしたわけではございませんので、実際に地方自治体へお願いするのは、安全審査資料の提出時期と同じ時期に提出をして御承認をいただく準備をしたいと思っております。  以上でございます。
  102. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 物の性質の上からいいましても、再処理工場に隣接して、そして固化プラントがあるということになるものであろうというふうに思います。  この間私ども現地視察したのですが、工事仮設物であろうと思いますが仮設物がありまして、そこを予定しているというふうなお話もちょっと聞いたのですが、今の計画ではそういうことと受け取ってよろしゅうございますか。
  103. 渡辺昌介

    渡辺参考人 現在いろいろな仮設物が建っておりますが、その跡に建てさしていただきたいと希望しております。
  104. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そこで、茨城県だとか東海村には、つまり地元にはこの辺のところはどうなのですか。何かちょっとこの間聞きますと、去年の今ごろですか、四月の村議会の全員協議会で、そんなもの知らないぞ、一体どういうことなんだということでかなり問題になったようです。ところが動燃の説明が、いやそれは誤報のようであります、北海道の方でいろいろな問題があるものですから、何かそんなことが誤って伝えられたようでありますという説明があったというのですが、そんな説明をしているのですか。
  105. 渡辺昌介

    渡辺参考人 ただいま五十嵐先生の御質問で、誤って伝えられたというようなお答えはしてないと思います。  今御説明したように、東海事業所にはガラス固化の施設をぜひ置かしていただきたいという希望は持っておりますけれども、まだ確定したわけではございません。したがって、希望を持っているというだけで、実際に東海村あるいは茨城県の方には申請書を出しておりませんので、計画としてはまだ地方自治体にはお知らせをしてないという段階であります。実際に置かしてほしいという申請をお出しするのは、予算をいただいて、そして安全審査をお願いするときに申請をすることになります。  以上でございます。
  106. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これは県議会で問題になったようですけれども、去年の「四月二十七日の東海村村議会の全員協議会で、動燃は北海道・幌延町に高レベル放射性廃棄物の研究・貯蔵施設をつくり、ガラス固化施設は、東海再処理工場の隣に建てるとの報道が問題になった。動燃側は、貯蔵施設を早く建ててほしいという北海道の住民の願望から誤報された、と答えたという。」こういう報道がなされているのです。今これ以上のことは言いませんけれども、一方では、北海道ではもうどんどん連日のようにあの周辺地域の説明会を開催してやっている。こっちの方では、そんなことは誤報でございますというようなことでは、やはり非常に不信感が出てくるのではないかというふうに思うからこの際指摘しておきたい、こういうぐあいに思いますから、また後ほど機会がありましたら説明をしてください。  そこで、再処理工場の隣に固化プラントをつくる。その固化プラントには当然短期的に保管庫が必要になってくるということになります。ある程度冷やして、それから一時貯蔵施設に運ぶということになろうというふうに思うのですが、この固化プラントに附属する短期の保管庫は何本ぐらい収容する規模になっているのか。私も従前、設計上のことで若干仄聞している面もあるのですが、あるいは当初の計画はこうであったが後に変わったとかということであれば、そこら辺も若干説明をいただきたいというふうに思います。
  107. 植松邦彦

    植松参考人 五十嵐先生の御質問のございましたガラス固化プラントに一時保管庫をつくるということは、御説のとおりでございます。  ガラス固化プラントにつくります一時保管庫は、初期に設計をいたしましたときは、約五百本程度の貯蔵を予定するということで考えておりましたが、現在調整設計の段階では、プラント全体の経済性、コスト低減化ということも勘案いたしまして、約二百本程度考えております。
  108. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 当初設計といったって、最近の詳細設計の段階ぐらいまでやはり五百本の計画でずっと来ていたんじゃないですか。
  109. 植松邦彦

    植松参考人 おっしゃるとおりでございます。詳細設計の段階までは五百本ということで来ておりました。
  110. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そこで五百本、今二百本、調整設計の段階というのは、今ちょうど話をしているのはそんな話をしているんだということだろうと思うのですが、この間まで概念設計があり、基本設計があり、詳細設計があり、それはずっと五百本で来た、そんなもので一応きちんと設計はできているわけですからね。その五百本保管設計の段階で、その保管庫に必要な建物面積といいますか、そんなものを大体どのくらいの規模で見ていたものですか。
  111. 植松邦彦

    植松参考人 建物全体の面積はわかっておりますけれども、御指摘のような保管庫そのものがどの程度かということはちょっと今詳細には数字を持っておりません。
  112. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今おわかりにならなければ仕方がないというふうに思いますが、他の諸外国状況なんかを見ましても相当な規模のものを持っているんですね。二千本ぐらいの規模のものを持っているところもフランスではあるようであります。ですからかなりの規模のものが要るんじゃないかな。最近になって、にわかに今二百本に縮小というのは、どんな意味かちょっとわからないのですが、少しおかしいなという感じはいたします。しかし、今聞きたい主たるものはその先のことですから、そのことはそのままにして先に進んでいきたいというふうに思います。  いつも僕は、今までも機会を見て御質問申し上げてきたのですが、一体なぜ一時貯蔵を切り離すことなのか、ここがよくわからないところなんです。時々御返事はいただくのですが、いまだにしっくりこない。我々素人なりに考えまして、合理的なのは、再処理工場がある、固化プラントはそこにつくる、この固化プラントの横に一時貯蔵施設をつくる、これが実は一番無理のない合理的な体系でないかと思うんですね。したがって、電事連は、今度下北半島につくる再処理工場については、同じ敷地内に再処理工場と固化プラントと一時貯蔵施設とを一緒につくるよ、こういうことになっているわけですね。東海村だけなぜそうするのか。総合エネルギー調査会ですかのレポートなんかを見ましても、やはりそういう方向をきちんと出しているわけですね。  これは今度出ている電事連の「原子燃料サイクルコンセンサス」というパンフレットです。広く出されているわけですが、これなんかを見ましても、「高レベル放射性廃棄物はどうするのですか。」ということの中で、こういうぐあいに書いてありますね。「ガラス固化体は「半減期」によって放射能レベルが低減して処分に適する状態になるまで再処理工場で一定期間安全に保管し貯蔵されます。そして最終的な処分を待つことになります。」こう言っているんですね。この場合の一定期間安全に保管し貯蔵するというのは、三十年ないし五十年の一時貯蔵を言うわけでしょう。どうですか。
  113. 植松邦彦

    植松参考人 電事連でお考えの一時貯蔵という期間は多分三十年ないし五十年をお考えになっておられるんだろうと想像をいたします。
  114. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 下北の計画はそういう計画でいけということで、それは原子力委員会も電事連もそういう方向で方針が出ている、国の指導のもとにそういう作業が進んでいるわけですね。それはやはり同じサイト内にやるのがいいことだという考え方でやっているんでしょう。それから外に出して最終処分をやるときには国の責任だよということにきちんとしているわけですね。なぜ一体東海村だけそんなことをするんですか。それはだれが考えたって、一つの体系として同じ敷地内に置くことの方が合理的じゃないですか。それを無理に一時貯蔵だけこの東海村に関してだけ遠隔地に持っていこうという理由は何ですか。
  115. 植松邦彦

    植松参考人 先生指摘のように、もし再処理工場に固化体を置くことができるような施設を当初から計画できておれば一貫性があってよろしい考え方だと拝察いたしますが、東海事業所は先に再処理工場が運転をしておりまして、その後各種施設も建設をされておりますので、東海事業所内部は非常に手狭になってきております。したがいまして、東海事業所の敷地内に大きな貯蔵施設をつくるということは非常に困難かと考えます。  また同時に、この前、八月、五十嵐先生の御質問に対してお答えしたと思いますが、我々が貯蔵工学センターにおいて考えておりますのは、廃棄物の貯蔵だけではなくて、それに関連する研究開発も前広に幅広くやりたいと思っておりますので、東海事業所内の敷地では十分な面積がとれないというふうに我々は考えておるわけでございます。
  116. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いろいろ研究施設なんかもあわせて建てたい、こういうぐあいに思っているから手狭だという御説明ですね。今までもそうであった。しかし、研究施設という意味からいうと今の東海事業所くらい、しかも隣には原研もあるわけですからね。あの地域にはこれに関する専門的な高度な研究機関が今もずらっと並んでいるわけだ。そういうところにあってこそ研究の上では極めて適切ということが言えるんじゃないですか。僕はそこのところも全然わからないのですよ。だからこそあそこに置かなければいけないんじゃないですか。そうすると余分な研究棟なんかを、層は幾つか建てなければいかぬとか何だとかということだって、余り要らないのじゃないか。それは多少は要るかもしれませんが、せっかくある高度な研究機関というものを一体なぜ有効に活用しようとしないのか、そこもわからないのです。御説明の趣旨が我々には非常に腑に落ちないのであります。  そこで、問題は敷地だ。一体どのくらいの敷地が必要なのか、それに対してあの東海事業所はそれだけの余裕がないのかということですね。私は、実はこの間改めてその敷地を中心に見るために東海事業所に行ってまいりました。御案内いただいてつぶさに見てまいりまして、あるいは資料なんかもいただいたのですが、東海事業所の敷地面積というのは今どのくらいの面積ですか。
  117. 植松邦彦

    植松参考人 現在の東海事業所の敷地面積は、前回もお答えしてあると思いますが、約八十三万平方メートルぐらいになるかと思います。
  118. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そこで、今あれに隣接している水戸の射爆場跡地、これを譲り受けたりあるいはさらに譲り受ける話を進めているわけですね。これは今までどのくらいの面積を譲り受けて、あとどれだけの面積を譲り受ける予定になっていますか。
  119. 渡辺昌介

    渡辺参考人 お答えいたします。  射爆場の跡地につきましては、現在およそ七万平方メートルを譲り受けております。さらにその後、計画としてはおよそ二十六万平方メートルを譲り受けたいと私たちは希望しております。二十六万平方メートルでございます。
  120. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 譲り受ける見通しはもちろんあるわけでしょう。
  121. 渡辺昌介

    渡辺参考人 いずれは譲り受けるつもりでございます。ぜひ譲り受けさせていただきたいと希望しております。
  122. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 私ども調査でもそのとおりなんですね。今まで七・五万平方メートルぐらい譲り受けている。残りあと二十六万五千平方メートルぐらい、合わせて三十四万ぐらいの購入ということになるようであります。これは従前の今御説明がありました約五十三万平方メートルというものに、さらにこれからの射爆地跡の購入の部分が上積みになるという面積になるわけであります。しかし、この中に道路なんかもある。この前の答弁によりますと、道路面積は約十一万平方メートルという御説明がありましたね。ところが、またその後もちょっと僕が聞いてみたら、そのうちの一万五千平方メートルは駐車場が含まれているということのようですね。だから、やはり答弁のときは正確にお話をいただかなくてはいかぬと思いますよ。そこのところに従前の建物が建っている。建っている建物の建坪はどのくらいですか。
  123. 渡辺昌介

    渡辺参考人 建物につきましては、およそ十一万平方メートルだと聞いております。
  124. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 なるほどね。これは従前の答弁と少し違うが、タンクであるとかあるいは工事仮設物なんかがあるから、きっとそれを引いて十一万というお答えがあったのだろうというふうに思います。  そうなりますと、これは一体建ぺい率の面でどんなことになるのか。何が一体窮屈なのか。それはこういうような施設ですから、通常とは違いまして多少の余裕がなくてはならぬということもわかりますよ。わかるが、これは計算したら一体敷地に対して建坪の率はどのぐらいになるか。とてもそれは話にならないわけですよ。僕の計算で一五%ぐらいのものですよ。これで敷地が足りないとか足りるとかというのはおかしいのじゃないですか。  それで、幌延につくろうと思っておられるいろいろな施設、貯蔵工学センターですね、この建物の面積はどのくらいの面積を予定していますか。
  125. 渡辺昌介

    渡辺参考人 現在予定しているのは、建物の敷地面積としてはおよそ三万六千平方メートルぐらいになると思います。もちろんこの数字は確定したわけじゃございませんで、今私たちが計画しているものをいろいろ足し合わせますとおよそ三万六千、この建物の中にはいろいろな研究開発施設もございますけれども、厚生施設もございますし、水のための施設もございます。いろいろな施設を合わせておよそ三万六千平方メートルという計画を持っております。
  126. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 私の調査では、これはおたくの方の資料です、計画概要の中から引っ張り出したものなんですが、ガラス固化体貯蔵プラントが四千平方メートル、その管理棟が二千平方メートル、アスファルト固化体貯蔵施設が二千五百平方メートル、低レベル固化体貯蔵施設が千五百平方メートル、その管理棟が二千平方メートル、研究開発棟が九千平方メートル、それから深地層試験場、地上の施設が千二百平方メートル、地下が二百平方メートル、環境工学試験施設が二千平方メートル、これだけで合わせて二万四千四百平方メートルですよ。おたくから出ているものの全部でですよ。そのほかに、今の説明では一万二千くらいふえているのはちょっとわからないなと思うが、しかし、それは後にしましょう、大したものでないから。  そこで、これは平均して仮に二層の建物だとしましょうか。一階なんということはないですからね。一階のもあるかもしれぬが三階のもあるでしょう。平均二層と考える。おたくの方の説明からいきましても三万六千だ。だから二分の一で建坪としては一万八千ということになる。それから、おたくの方の計画概要で言うと二万四千四百だから、それを二分の一してみると一万二千二百ぐらいの建坪ということになる。こんなものはあの敷地の中でわけもないことだ。  それにしても、適当なところが本当にやるとすればどこだろうということで、この間行きましたときに皆さんとも、御案内していただいた人とも話をしながら、あすこら辺をずっと見てみました。そして後から資料もいただいたのですが、あの中でだれが考えてもこれはまことに適地だというのはグラウンド周辺です。あの再処理工場があって、それから今おたくの方が固化プラントをつくろうという、その固化プラントの極めて近くのところにグラウンドがあるわけですよ。ここの周辺、グラウンドを含めてこの部分が二万五千平方メートルですよ。その周辺にはまたずっと緑だとか随分用地がありますけれども、それからちょっと離れて、安全管理棟の南側で一万三千平方メートルくらいのこれまた固まった使えるなと思うところがある。その他もいろいろありますよ。しかし、一番流れからいって一体的な体系的な状況でそこに建てるとするのに、これはもううってつけだなと思われるのは、僕はやはりグラウンド周辺だと思う。この二万五千平方メートル。敷地の上からいって建てられないなんということはないですよ。グラウンドが困る、駐車場が困るというのなら、それは今射爆場で膨大なものをまた譲り受けるのですから、もっと国民に納得のいく説明をしてもらわなければいけぬと思う。いかがですか。
  127. 渡辺昌介

    渡辺参考人 確かに先生がおっしゃるように、グラウンド及びグラウンドわきの用地を入れますと、およそ二万五千平方メートルございます。現在、私ども事業団が考えております貯蔵工学センターは、高レベルのガラス固化体の貯蔵施設のほかに、研究開発棟あるいは深地層試験場あるいは環境工学試験施設あるいは放射線管理施設その他の施設をいろいろ計画しております。したがって、グラウンドあるいはグラウンドのわきの用地だけではとても立地はできないと考えております。  以上でございます。
  128. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 とにかくいろいろなおたくの方で計画している研究棟なんか全部入れたって、さっき言うような二万四千四百平方メートルという面積なんですよ。お間違いなく。それのほかに研究施設があるというのじゃないのですよ。そういうものを全部入れてですよ。これはもっと御検討いただかなくては、全く理屈が合わないと思うのです。今申し上げましたようにほかのものじゃないですからね。今のお話にもあったように物が物ですから、したがってできるならばそれは遠くのところに一々持っていったり何なりしないで、東海村から北海道のところまで運んでいってなんということを考えないで、同じ敷地内で順序よく隣、隣と整理していけば一番いいこと。だから、下北はそういう計画をしている。しかし、初めからそういうことをやるというのは、下北だから計画を立てられる。初めてやるからかもしれぬが、今の説明では、東海の場合は既存のものがあるからそういうわけにはいかぬ、こういうわけだ。しかし、そんなことないですよ。今言ったように、それは今でも十分に可能だ。それだけの敷地というものは十分にある。何もとんでもないところに持っていかなければだめだということにはならぬ。それが一番自然なやり方だし、危険性のないやり方だ。安全なやり方だ。しかも、さまざまな研究施設があるところにやるんだから、こんなにいいことはないんじゃないか。それで、今の敷地の上でも検討するとそれは十分に余裕があるということでありますから、ぜひ再検討を願いたい、こういうぐあいに要望を申し上げておきたいと思います。  ところで、北海道の幌延に高レベルの一時貯蔵を中心とする貯蔵工学センターをつくろうという計画があるようでありますが、この幌延の地域に関連して、文部省の昭和五十年度自然災害特別研究「北海道北部および東部の突発的群発地震の地震活動の調査」による「豊富群発地震(一九七五年十二月)の調査」というレポートが出ているのです。御存じですか。
  129. 渡辺昌介

    渡辺参考人 私は存じておりません。
  130. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これによりますと、一九六八年七月には幌延町問寒別に震度五が四回、一九七五年十二月には幌延町の隣接の豊富に震度四を含む有感地震八回。札幌管区気象台の資料では、幌延周辺、道北地域で昭和三年から五十年までに大きな地震が十九回記録されておる。しかし専門家の話によりますと、これは道北の常設の観測点が非常に少なくて、あすこでは最寄りはやはり稚内ということでありますために、しかも地震計の倍率が大変に低いというようなことで、記録されている地震は実際のわずかな部分であろう、こういうことが言われているわけであります。それによっても今のようなことが調査で明らかになっている。殊にこのレポートは北大の先生方が中心になって文部省に出した資料でありますが、このレポートによると、豊富群発地震のような規模の大きいものは、北海道からサハリンにかけての全般的な地震活動から見ると約十年に一度は発生するものだというふうに述べている。この報告書の最後には、「特にサロベツ原野とその周辺部は地震時には震度が増大する軟弱地盤であることが予想されるので注意が必要である。」と、わざわざ書き加えられているわけであります。このレポートというのは一九七六年三月に文部省に出されたものでありますから、今度の幌延町の廃棄物の施設の誘致だとかどうとかいうこととは全くかかわりのない時点のレポートなのであります。理事長、これらのことは御存じでありましたか。
  131. 吉田登

    吉田参考人 今言われたような細かいことまでは知っておりませんけれども、いろいろな町の調査資料等もありまして、その中であの周辺の地盤の構成だとか地震の発生しそうないろいろな断層地点があるとか、そういうようなことは聞いております。
  132. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 あなた、細かいことというのは——大きいことですよ。つまり詳細なという意味でしょうね、今のお話は。  しかも、この予定地は、御案内のように大曲断層だとか幌延断層など第一級の大断層が南北に走っておるというようなところであることも、今までも多くの指摘をされているところなわけですね。こういうような地震の群発地帯にこの種施設を特に好んでやるというのは全く納得がいかないのでありますが、こういう点は慎重を要すると思うのですが、長官いかがですか。
  133. 中村守孝

    中村(守)政府委員 幌延地区についての工学センターの設置につきましては、立地可能性調査ということで本年度予算にも経費に計上しておるところでございますが、そういったことで十分いろいろ調査の上検討してまいりたい、こういうぐあいに考えておりまして、前々から地元から強い御要望もございまして、幌延地域に原子力施設を立地するということについて地元幌延町との間でもいろいろ話をしてきた経緯もございます。そういう意味で、動燃事業団の工学センターの有力な候補地として従来から考えてまいっておるわけでございますが、本年度予算には調査費を計上させていただいております。そういう調査を踏まえて慎重に検討してまいる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  134. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 質問の趣旨には関係のない答弁ですよ。僕の質問は別ですよ。もう一遍言わなければいけないですか。どうですか、大臣
  135. 植松邦彦

    植松参考人 確かに道北地区に御指摘のような大曲断層、幌延断層というのが存在しておるということは各種文献から明らかであります。しかしながら、断層というものと活断層というものは必ずしも一致するものではございませんで、先般参議院で対馬先生から御質問がありましたように、活断層分布についてはどうかということは、東大出版会の日本の活断層分布にもございます。それから判断いたしますと、地震の原因になるべき活断層というものの確実度、その活動度というものは必ずしも確実ではないという表現になっております。したがいまして、今、原子力局長からもお話がありましたように、動燃事業団といたしましては、今年度可能性調査ということで断層などについても詳細に調べさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。
  136. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり、北大の先生方が中心になって昭和五十年にこういう報告が出ている。それには震度五が四回あるいは震度四を含めて八回とか、そういう群発地震があそこであった。しかも、それはそのとき限りでなくてどうもしょっちゅうありそうだ。地盤は極めて軟弱だ。そして今お話しのように大きな断層も走っているということについて、現にこういう報告で事実があるわけです。可能性がどうとかじゃないのですよ。そういう地震の群発しているようなところにこの種の施設を好んで建てるというものではないのではないかということを聞いているわけです。
  137. 植松邦彦

    植松参考人 断層というのは、私も必ずしも専門でもございませんが、地震の原因になるものでありますし、したがって、よく調査をしますと、その断層に起因すべき地震の予想される規模というのが明らかになると考えております。したがいまして、各施設を設置する場合には、予想され得る地震規模というものに対して施設そのものが対応できるような設計ができるかどうかということをもって安全であるかどうかを判断されるのではないかと思います。そのためにも、可能性調査ということで断層をよく調査しまして、この断層から起こり得る可能性のある地震というのはこういうものだということを確実につかんで、その上で立地を決めさせていただきたいと考えておるわけでございます。
  138. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 こういう調査というのは、何も何千万の調査費をつけなければだめだとか、ボーリングを打ち込まなければいかぬとか、どうしなければいかぬなどというものではないのです。我々こういう資料を手に入れたりいろいろなことを勉強するといっても、別に金一円かけてやっているわけではないのですよ。私が今お話を聞くと、そんなものは御存じないということでしょう。立地調査なんというものに入る以前に、この種の問題というのは当然——あなた方今大変な仕事をやろうとしているときに御存じないで、そうして幌延を対象としてどうするこうするなんということは、私は全くおかしいと思います。大体、幌延一カ所を、現地からそういう要望があったことだからといって乗っていっちゃっているということも、事柄の性質上どうかという感じを私は持っています。どうもお仕事のやり方に、今のお話を聞いても、これだけの群発地震の事実がありながら掌握してないなんということでは、もう話にならないと思います。  そこで、この前も少し質問したところなのですけれども、今の話に関連してお聞きしますが、この間「原子力工業」に出ていた天沼僚さんの論文なんです。天沼さんは、放射性部会の部会長をやっておられる、今の我が国の放射性廃棄物の処理処分については非常に指導的なお方として科学技術庁としても常に御協議をいただいている方でありますが、この論文ではこう解説されているわけです。お手元にもあろうと思いますが、これは一時貯蔵でなくて地層処分のことですよ。今度の幌延にということで皆さんがおっしゃっておられるこの貯蔵工学センターの中の深地層実験場というのは、これは地層処分に関係しての施設になるわけですからね。ですから、その面でお伺いをすることになるわけです。  ちょっと読んでみます。これは深地層処分の進め方ですね。「一九八五〜八六年から始まる第二段階においては、複数の有効な地層での広域調査およびそれに続く精密調査を行なって、処分に適すると思われる深地層に深地層実験場を開設し、各種の原位置試験や施工技術開発を開始する一方、地上にも深地層環境を模擬した環境工学試験施設を設けて」云々ということになっているわけです。この「複数の有効な地層での広域調査およびそれに続く精密調査」というものはどう行われて、その結果どうであったか、これをお知らせください。
  139. 中村守孝

    中村(守)政府委員 天沼先生が「原子力工業」に書かれたペーパーにつきまして先生が読み上げられたことはまさにそのとおりでございますが、この天沼先生に部会長をお願いしております放射性廃棄物対策専門部会の「放射性廃棄物処理処分方策について」の中間報告の中におきまして、「複数地点において、物理探査等の地表踏査を中心とする広域調査を行い、順次候補地点を選定し精密調査を行うとともに、深地層試験場を設け深地層での天然バリア及び人工バリアの試験を行い処分予定地の選定に資する。」ということになっておりまして、必ずしも精密調査を経た後、深地層試験場を設ける、こういうことにはなっておりませんで、ここは並行してやるという形になっておるわけでございます。順調に、非常に速やかにこの進展が進んで、広域調査とそれに続く精密調査がどんどん進むという状況であれば、あるいは理想的には天沼先生のおっしゃるようなやり方というのも一つの方法であろうかと思うわけでございますが、幌延で考えております工学試験センターで行いますものにつきましては、こういうシリーズにつながった形での深地層実験場というよりも、こういった広域調査、精密調査と並行していろいろな技術的な知見を得るための試験場、こういうぐあいに私どもは理解をしておるわけでございます。
  140. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 もう時間もありませんから、余分なことはいいです、今までも何回か論議していることですから。専門部会の部会長ですよ。この人がレポートを出しているわけですからね。その当の本人が、あそこに書かれていることはこういうことだという説明をここでしているわけですよ。あなたが何ぼあなたの解釈宣言ったってだめですよ。ここではっきり彼は、複数の有効な地層での広域調査をやるんだ、それに基づいて今度は精密調査を行うんだ、そうやった上で今度は幌延で今やろうとしている深地層実験場というものを決めるんだ、やるんだ、こう言っているわけでしょう。そんなことを何もやらないでおいて何で幌延なんですか。それはだれが考えたっておかしいじゃないですか。余分なことは要りませんよ。この論文についてどう思っておられますか。
  141. 中村守孝

    中村(守)政府委員 私、天沼先生にもお会いしてお話をお聞きしました。先生は専門家としての一つ意見として内容を紹介したもので、その報告書そのものがこのままであるという意味ではないということを先生からもお聞きしておりますし、報告書の中の技術開発スケジュールというのをごらんいただきますと、明らかに試験をやって知見を得るということが並行的に書かれておりますので、決して勝手に申し上げているということではない、勝手に解釈しておるわけではございません。
  142. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それはこういうぐあいに解釈していいですか。つまり、天沼さんはこのレポート、これは立派な論文です。ただ口でしゃべったっていうのじゃない、こういう活字になったものです。ここで、天沼さんはそう思った、思ったというか、そういう考えだ。しかし今の話は、そのことと行政の上でそのとおりいくかいかないかは、これはまた別だという意味ですか。
  143. 中村守孝

    中村(守)政府委員 先生一つの典型的な考え方を述べられたということでございまして、それがすべてではないということでございます。
  144. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それじゃ何のためにあなたは答申を受けているのですか。それは一つ考え方であってすべてでないから、答申にかかわらず何でもやるんですか。おかしいんじゃないですか。
  145. 中村守孝

    中村(守)政府委員 答申は幅の広い、要するに、ここは明らかに処分場の候補地であるという認定を行った後に実験場をつくる。実験場でやるということは報告書は何も言っておりませんで、それと並行して地下におけるいろいろなエンジニアリング的な知見を得る、こう言っておるわけでございます。ですから、処分場を目指す地点が容易に得られるのであれば、そこでやるというのも一つのやり方として考えられるし、それから実際に処分場候補地として設定してやっていく段階においては、単なるそういう調査だけでなくて、事前に予備的な、地下に持ち込んだり、いろいろなエンジニアリング的な調査も実際の処分場候補地においてもやることということは、それはそういうことで考えておるわけでございます。
  146. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 いいかげんなことを言われても困るんですよ。それはあのレポートには、表現上は意味不明なところがありますわ。意味不明だからこそ、専門部会長はこういう解説を出して、丁寧に言っているわけでしょう。やはりそういう答申書であるとか、あるいは答申した専門部会長の意思というものをもう少し酌んでやっていくべきじゃないですか。この種の施設をどこに決めるなんということを、そういう広域調査もしないで勝手に——それは、現地からそういう話があったからやるんだ。今までも動燃に何度も何度も聞いた。なぜ幌延か、幌延から誘致があったからだ、それ以外にないでしょう。この種のことを決めるのに、そんなことでいいんですか。それでは行政というものはどこにあるんですか。  四十五分までということのようで、きょうは本会議が引き続いてありますから、これで質問を終えたいと思いますが、最後に大臣、今いろんなことを指摘しました。また、地元からさまざまな意見もあるのは御承知だと思います。ぜひひとつ慎重な対応を願いたい。
  147. 竹内黎一

    竹内国務大臣 慎重に対応という先生の御注意、十分念頭に置いてまいります。
  148. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 終わります。
  149. 鳥居一雄

    鳥居委員長 次回は、来る二十三日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十七分散会