○
難波参考人 ただいま御
紹介いただきました
難波でございます。きょうは、こういう晴れがましいところで
お話をする機会を与えられまして、非常に光栄に存じておる次第でございます。
レーザー科学の進歩というものは最近非常に目覚ましいものがあるわけでございますが、私は
レーザー科学というより
レーザー技術という方が専門でありまして、話はむしろそちらの方になるかと思います。
今世紀の
エレクトロニクスの
分野での二大
発明ということでございますが、よく言われるのが
トランジスタの
発明と
レーザーの
発明というわけであります。
戦時中非常に強力に進められた
レーダーの
研究成果、それの
発展上に
トランジスタあるいは
レーザー、そういうものの
発明があったわけであります。御承知のように
戦時中
レーダーの
研究というものが非常に強力に進められまして、これは主として
米国を
中心に行われたわけでありますが、ここに
史上例を見ないような頭脳の
集中と
研究費の
集中といいますか、それも時間的な制約を伴っての、いわゆる今の言葉で言う非常に大きな
プロジェクト研究というのが行われたわけであります。それに伴って当然
レーダーは非常に進歩したわけでありますが、それの基礎としていろいろな
研究が行われまして、その
発展上に
トランジスタの
発明と
レーザーの
発明、そういう大きな
成果が出ておるということが言えるかと思います。
それで、
最初に私ごとで恐縮なんですが、
戦時中の
原体験といいますか、そういうものをちょっと話しておきたいと思っております。
私は
戦時中十六から十七ぐらいにかけて
海軍兵学校へ行っておりまして、そこで二年間ほど教育を受けたわけでありますが、その
教官連中が前線から帰ってきまして異口同音に言っていたのが
レーダーにやられたということで、それをいつも聞いておったわけであります。第二次
世界大戦の決定的な敗北は、
最後は原爆で行われたわけでありますが、その前に
海軍が壊滅したのは、飛行機の差もありますが、主として伝統的な
海軍の戦術で言いますと測距儀と
レーダーの戦いで、
レーダーの方が当然すぐれておったということが言えるわけであります。そういうことがあってかどうか知りませんが、我々のクラスメートで戦後
大学へ行った
連中の中には、
通信工学へ行った
連中が非常に多かったわけであります。最近、教育問題が非常に注目されていろいろ臨調なんかで取り上げられておりますが、そういう
少年時代の
原体験というものがその後の人生にかなり大きな影響を及ぼすと思えるわけであります。
それで、ちょうど
大学へ行っておりますときに、
昭和二十二年でありますが
トランジスタの
発明がありまして、そのすぐ直後に、
昭和二十四年でしたか、その当時東北
大学の
渡辺教授が全国を行脚されて
トランジスタなるものを解説して回られたわけであります。二十四年にその話を聞いて非常に感激したわけでありますが、その後二十五年に
大学を出てすぐ理化学
研究所へ入りまして、
研究に入ったわけであります。
研究を始めてしばらくして、
昭和二十八年ですか、
ノーベル賞をもらったタウンズという
先生、これはメーザーから
レーザーの
研究で
ノーベル賞をもらった方でありますが、その講演がありまして、そこで初めて分子を使った
発振器というアイデアが示されたわけであります。
私は、その後
昭和三十年ごろから、
原体験があったせいかもしれませんが、
光変調という
研究に入っていきまして、
光変調に有効な
結晶の製作とか、光を変調するのにとうやったら一番有効に変調できるかというふうな
研究をやっておったわけでありますが、三、四年
研究しておりましたころ、
トランジスタの
延長線上にある
マイクロエレクトロニクスという
分野が非常に活発に
研究をされ始めたわけであります。これは
人工衛星が上げられたこととも非常に関連が深いわけでありますが、あるいは
アメリカのミサイルなんかの
研究と関連してでありますが、そういうものに搭載する
電子機器を非常に小型化しなければいかぬというので、
マイクロエレクトロニクスの
研究が非常に強力に取り上げられたわけであります。私は
光変調の
研究をやっておったわけでありますが、それが一段落しましてちょっと行き詰まっておるときにちょうど
マイクロエレクトロニクスの
研究というものが出たものですから、そちらに方向転換いたしまして、その後
マイクロエレクトロニクスの基礎的な
研究ということで、
電子ビームによる
微細加工とか、あるいはそれに関連して、しばらくしてまた
レーザーが出た後
レーザー加工なんかもやってまいりましたが、いわゆる
電子ビームとか
イオンビームとか
レーザー、そういう
ビームを使った
半導体の
プロセスというのを
中心に
研究を進めてきておるわけであります。
ちょうど
光変調の
研究から
マイクロエレクトロニクスの
研究に切りかえたころ、
昭和三十五年に
レーザーの
発明があったわけであります。これは私にとって非常に残念なことで、
光変調の
研究を続けておりましたらすぐ
レーザーの
研究に結びつけたわけでありますが、ちょうど中断して
マイクロエレクトロニクスの
研究がスタートしたときに
レーザーの
発見が報ぜられたものでありますから、すぐにそちらに
研究を進めることができなくて、二年ほどおくれて
研究がスタートするようになったのであります。いずれにしましても、何らかの意味で
エレクトロニクスの二大
発明である
トランジスタの
延長線上にある
マイクロエレクトロニクス、現在で言うと
LSI、超
LSIという
分野と、それから
レーザーの
延長線上にある
レーザー加工とか
レーザープロセスあるいは
レーザーによる
レーザー誘起化学とか、そういう
分野の
研究の両者に携わることができたことは非常にラッキーだったというふうに考えております。
それで、年代的に言いますと一九六五年、
昭和四十年ころがし
SIの
研究が始まったころでありますが、ちょうど
昭和三十年から
昭和四十年ごろにかけて、我々が若い
研究者であったころの
米国のその方面における圧倒的な強さというのは非常にかけ離れておりまして、
日本からたまに
アメリカへ行ってみると驚くようなことはかり見聞きしたのでありますが、それから十数年たった
昭和五十年代になってきますと割合に
米国の
技術と
日本の
技術が接近してまいりまして、現在ではそんなに離れてないという感じが非常に強いわけであります。
分野によっては、例えば軍需とかそういう
分野では、
日本では
研究する体制ができてないものですから依然として
かなり差は大きいわけでありますが、民需に関係するような問題ではかなり接近しておる。あるいはある面では多少
日本の方が
米国をリードしておる面もあるという状況でありますが、
昭和三十年代に
研究をやっておったころから見ますと、非常に今昔の感があるわけであります。
現代は
情報化社会になるわけでありますが、それは
コンピューターテクノロジー、
コンピューターと
光通信といいますか、そういうものの二本の柱で支えられておるということが言われておりますが、その
コンピューターの
もとになっておるのが、
トランジスタの
発明からし
SI、超
LSIと進んできた
半導体技術であります。また
光通信に結びつく
もとが
レーザーの
発明にあるわけでありまして、まさしく
現代の
情報化社会というのは、そういう終戦直後にありました二大
発明によって方向づけられておるというふうに言ってもいいかと思います。
資料をお配りしておりますので、それによって
レーザー科学の
研究開発の概略を
お話しいたします。
最初に、
レーザーがなぜそんなにいいかということを説明していかなければいかぬわけでありますが、これは既にこの前、
霜田先生からの
お話もあったと思いますが、
レーザー光の非常に
特徴的な
性質にかかわっておるわけであります。その
一つは、非常に可
干渉性が大きい。可
干渉性がよくて、それはとりもなおさず
単色性がいいということになるわけでありますが、そういう
レーザー光の一番大きな
特徴があるわけであります。
気体レーザーでは、同一
位相で光を放出する時間、といいますから、光が波として続いておる時間でありますが、それが最も長い場合で〇・一秒くらい続いておる。〇・一秒といいますと、光の進む
速度が毎秒3かける10の10乗
センチメートルでありますから、3かける10の7乗
メーターでも
干渉し得るというわけであります。これに対しまして従来のこういう
螢光灯なんかの光ですと、同一
位相で
発振する時間というのはせいぜい10の
マイナス9乗
秒程度でありますから、
干渉する
距離もせいぜい数十
センチを出ないというものであります。そういう
レーザーでは可
干渉時間が長いということは、当然
スペクトル線幅も非常に狭く、非常にシャープな
単一波長の光を出しておるということが言えるわけであります。
レーザー光の
一つの大きな
特徴が
単色性ということにあるわけでありますが、その
特徴を生かした
応用がいろいろまた
発展しておるわけであります。
それからもう
一つは、非常にいい
指向性を持っておるということが言えるわけであります。
平行度が非常によいということで、光の
開き角は
気体レーザーでは10の
マイナス4乗
ラジアンから10の
マイナス3乗
ラジアン、
固体レーザーで10の
マイナス3乗
ラジアンから10の
マイナス2乗
ラジアンといいますから、
気体レーザーでは大体何秒という
オーダー、
固体レーザーで分の
オーダー波になるわけであります。
太陽光線はどのくらいかといいますと、今までは
太陽光線は
平行光線だと言われておったわけでありますが、その
開き角は10の
マイナス2乗
ラジアンでありますから、
固体レーザーの悪い方と大体似たようなところであります。すなわち、この
指向性を使ったいろいろな
応用が出てきている。例えばお月さんまで行っても余り広がらないとか、したがってお月さんに鏡を置いてきて、
地球上でその鏡の
反射光をとらえるということも可能になるわけであります。
それから、三番目に高
出力性というのが言われております。これは、
パルス発振の
固体レーザーでいいますと非常に大きい10の13乗
ワット、もっとそれ以上にも達しておるというわけで、これは後ですぐ
応用に出てまいりますが、
レーザー核融合なんかには非常に高
出力であるということを
応用するわけであります。それから、
連続発振の
気体レーザーで
最高五十キロ
ワット程度の
出力が出ております。これは
レーザー加工とか、そういうものに
応用としてはつながるわけであります。
比較のために、
太陽光線が
地球表面でどのくらいの
照射量がといいますと、一
平方センチ当たり〇・一
ワットですね。それに比べて
レーザーがいかに大きな
パワーかということがわかるかと思います。したがって、こういう高
出力で
指向性のよい
レーザー光を
レンズで集束いたしますと、非常に小さい部分に非常に大きな
レーザー出力を投入することができるということで、
種々の
加工あるいは
核融合等に使えるわけであります。
その四枚くらい後に表がございますが、表1というのにいろいろな
エネルギー源でどのくらいの
最小スポット面積が得られるかということをちょっと示しております。例えばよく
溶接なんかに使われております
アセチレンガスですね、それが
最小スポット面積が10の
マイナス2乗
平方センチ、したがって
強度といいますと10の4乗
ワット・
パー平方センチメーターということになるわけであります。
太陽光がそれより一けた
スポット面積が小さくて、したがって
強度が一けた大きいというぐあいになります。それから最近よく使われております
電子ビーム、
溶接なんかに非常によく使われておりますが、
電子ビームが
最小スポット面積が昨
平方センチ、
強度が10の9乗
ワット・
パー平方センチということになります。それに対して
レーザーは、
最小スポット面積は
電子ビームよりも少し劣って10の
マイナス5乗というふうに大きいわけでありますが、
レーザーの方が
強度は強いということで10の9乗
ワット・
パー平方センチぐらいになります。それから、
パルス発振ですと多少
スポット面積は大きくなりますが、
強度は瞬間的に非常に強い
強度が得られるので10の17乗
ワット・
パー平方センチメーターということになり、ほかの
方法では考えられないような大きな瞬間的な
レーザー出力強度が得られるわけであります。
それから、もう
一つの
レーザーの重要な
性質に、非常に短
パルスにできるということが言われます。
レーザーでは光の放出時間というのを非常に短く制御することができます。
パルス幅にして、今まで
最高が10の
マイナス14乗
秒程度の
レーザー光の
パルスを得ることに成功しております。10の
マイナス14乗秒といいますと、光の進む
距離にしまして約三マイクロ
メーターぐらいでありますから、千分の三ミリぐらいです。我々の
実験室でもこういう10の
マイナス14乗秒には行ってないわけでありますが、10の
マイナス12乗秒ぐらいの
実験はいつもやっておるわけでありまして、10の
マイナス12乗秒といたしますと、光の
距離にして約〇・三ミリくらいですね。そういう
実験をやっておりますと、光が3かける10の10乗
センチの非常に高速で
空間を飛んでおるわけでありますが、その約〇・三ミリの
板状の光が
空間をずっと流れていっておるというふうなことになるわけであります。
それで、なぜそんな短い光を必要としておるかといいますと、これはいろいろな
科学研究で非常に短時間に起こる
現象とか、
化学反応の一番初期の過程とか、あるいは
半導体なんかの中で起こっておるあの
電子現象の非常に速い
現象、そういうものを
研究しようというときに、こういう非常に短い
レーザーパルスで
固体あるいは液体を励起して
変化が起こるわけでありますが、その
変化をまた非常に短い
レーザー光線を照射して測定するというふうな
研究が最近非常に盛んになっておるわけであります。こういう
研究は、
レーザーを使う以外には
方法はないわけであります。
それからまた今の表に戻らしていただきまして表2というのがございますが、ここに、今出ておりますいろいろな
レーザーの
特性というものを書いております。一番左の端に
固体レーザー、
気体レーザー、
色素レーザー、
半導体レーザーというふうに書いておりますが、
特徴のあるところだけちょっと説明いたしますと、
固体レーザー、これは一番
最初に
昭和三十五年に
発振に成功したのが
ルビーでありますが、
ルビーの〇・六九四三の赤い光、これは
変換効率がマキシマム一%くらい、
開き角が10の
マイナス2乗から10の
マイナス3乗
ラジアンくらいの光であります。その後
ネオジウムガラスで
発振に成功いたしまして、最近では同じような
ネオジウムですが、YAGという
結晶の中に
ネオジウムを入れたものがよく使われております。しかし、
結晶では
ガラスのような大きなものはできないので、さっき言いましたような
核融合に使われるような十の十何乗
ワットというような大きな
出力になりますと、大
面積の
ガラスを使いまして
発振とか増幅とかをやらしておるようでございます。
それから
気体レーザーでは、下から二番目に書いてあります
ヘリウム・
ネオンレーザー、これは
昭和三十六年に
発振に成功いたしたわけでありますが、これも
ネオンの赤い光であります。それから、下から四番目に書いてありますがアルゴンイオン
レーザー、それから
窒素レーザー、そういうものが出てまいりまして、かなり
出力の大きな
レーザーが出てきておるわけであります。しかし
気体レーザーでは、
炭酸ガスレーザーというのが一番よく使われておるわけでありまして、これは
変換効率が極端にいいわけであります。一〇%ぐらいの
変換効率が見られる。
出力も五十キロ
ワットぐらいまで出ておるということで、
ガスレーザー、
気体レーザーとしては非常に重要な
レーザーでありまして、
ハイパワーを要求されるような
応用にはほとんど
炭酸ガスレーザーが使われておるというわけであります。それから、最近よく見られる
レーザーショーなんかで、スクリーンの上で
レーザーを飛ばしていろいろなことをやっておりますが、ああいうことによく使われておりますグリーンの光、これは
アルゴンレーザーから出ておる光でありまして、また赤い光は
ヘリウム・
ネオンレーザーを使っておるわけであります。
それから、その次に
色素レーザーと書いてありますが、これは
波長を変えられるということに非常に大きな
特徴がありまして、そういう用途にいろいろ使われておるわけであります。
それから一番下に
半導体レーザー、これは
昭和三十七年、
レーザーの
発見の二年後、
半導体レーザーが
発振に成功しまして、これは非常に小さい
半導体から強い光が出るということで、強いといっても
もとが小さいのですからそんなに強い光は出ないわけでありますが、
レーザー発振ができるということで、
光通信なんかの光源に非常によく使われておる
レーザーであります。それから最近ではコマーシャルに
レーザーディスクなんかの関係で
半導体レーザーの
大量生産がぼつぼつ始まりかけておるわけであります。
次に、
レーザーの
応用ということについて
お話しいたしますと、今のような
レーザー光の非常にすぐれた
特性である
単色性とか
指向性とか高
出力性とかあるいは短
パルス性、そういうものを使って、あるいはそういうものを制御して
各種の
応用が考えられておるわけであります。
一番
最後のページに図1というのがありまして
レーザーの木を書いておりますが、
レーザー科学というものが一番根っこの幹のところにありまして、
種々の
レーザーが開発されておりますが、その上の方にいろいろな
応用が出ております。一番右の方が
光強度の
応用で、
レーザー加工とか
医療技術とか
核融合、そういう
応用があります。また、その中に
光線兵器なんかも入るかと思います。それから、周波数の制御ということで、
単色性の非常にいいということを利用した
レーザーの
分光学というのが非常に進んでおりまして、それを
もとにして
同位体分離、そういうものも進んでおります。それからまた、長さの標準にするというふうなことも行われております。また
干渉性が非常にいいということを使った、あるいは
直進性が非常によろしいということを使ったような
レーザー計測の
分野があります。これは
各種の
干渉計測とかあるいは測量とか、そういうものにいろいろ使われておるわけであります。それから、
レーザー光線を時間的に制御する。これはいわゆる
光変調でありますが、そういうことをして
光通信に使うという
研究は、最近では
実用化の段階に達しておるわけであります。その中に
レーザーレーダー、いわゆる
通信ですね、それと
高速度写真とか、あるいはさっき言いました
ピコ秋分光、非常に短
パルスにできるということを利用した
ピコ秋分光というのもあるわけであります。
そういう中から幾つかの例を多少詳しく御
紹介しておきたいと思います。私の関係しておりますのは
レーザーパワーの
応用としまして
レーザー加工とかそういう
分野が主でありますので、その方が
中心になるかと思いますが、少し詳しく説明いたします。
それで、二ページ目に
レーザー加工ということが入っていますが、我々子供のときから
太陽光を
レンズで集めて紙を焦がすとかあるいはたばこに火をつけるというのがよくあったわけであります。それと同じことでありますが、高
出力の
レーザー光を集束してやりますと、非常な高
融点材料も溶かしてやるとか蒸発させてやるとか、そういうことができるわけであります。これは
レーザーが
発明された途端にこういうことが言われておりまして、我々も
昭和三十七年に
レーザー研究を始めたとき、まず
電子ビームによる
微細加工というものをやっておりましたものですから、
レーザーによる
微細加工をそれと
比較しながらやろうという計画をやっていたわけでありますが、
昭和三十八年ごろ
レーザー加工装置というものを試作しまして、これは
日本では
最初の
加工装置だったかと思いますが、それでかみそりの刃に穴をあけたりあるいはステンレスの薄い板に穴をあけたりという
実験をしておったわけであります。その当時はまだ
日本では
レーザー加工というのは珍しくて、たしかこれは理研に
皇太子殿下が来られたときに
レーザー加工の実演をした覚えがあります。それから
溶接とかあるいは
切断とか、いろいろなことができるわけであります。そういう
レーザー加工の例を五ページ目の表3に示しております。
まず、穴あけというのは、
ダイヤモンドとか
ルビーとかプラスチックとか、いろいろなものに小さい穴をあける。これは
加工の一番
最初にだれもが手がけるところであります。特に
ダイヤモンドとか
ルビーとか、普通の
方法ではなかなか穴があけにくいものに
レーザーでやるとすぐ穴があくということで、非常に有効に使われておったわけであります。
それから、いろいろな
切断ですね、
金属とか木材、
繊維、
ガラスとか皮、いろいろなものに使われておりますが、
金属の
切断というとかなり
パワーが要るので多少後になるのですが、例えば
繊維の
切断。
洋服のデザインなんか型に沿って
洋服生地を何枚も重ねておいて、それをずっと
レーザーで型どおりに
切断していく、そういうことは随分昔から
レーザー加工の
応用としてやられておるわけであります。これは、多数重ねた布をはさみで切るというのは非常に難しいようでありまして、
レーザーで切ると非常によろしいというので前からやられております。それでその
切断でありますが、ちょっと数値を示さないとどのくらい有効かということがよくおわかりにならないと思いますが、表4と表5に、
金属チタンを
切断した場合のほかの
方法とのコストの
比較あるいは
切断速度の
比較というのがあります。
表4をごらんいただきますと、
金属チタンを
切断した場合のコストですが、例えば
切断方法は、のこぎりとか
レーザーとか酸素
アセチレンガスあるいはプラズマ、そういういろいろな
方法があるわけでありますが、そういうもので
切断した場合に、板厚にもよるかと思いますが、一番右の端が十二・七ミリの板厚のチタンですが、それを切った場合に、のこぎりでやりますと
メーター当たり二千七百円もかかる。それを
レーザーでやると八百円ぐらいで済むとか、あるいは酸素アセチレンだと九百何十円、
レーザーの方がむしろ安い。装置価格はかなり高いわけでありますが、コストは装置価格の償却も入れてのコストだと思いますが、それはかえって安くなる。
それから
切断速度でありますが、表5に書いておりますが、例えばのこぎりの場合が十二・七ミリの厚さのチタンの板ですと毎分二十五ミリ
程度しか切れないというのに対して、
レーザーは一分間に一
メーターぐらいのスピードでかなり
切断速度も速いということで、こういう
分野にはかなり広範に
レーザーが使われておるというわけであります。
それから、いろいろありますが、例えば上から五番目に書いてありますトリミング、これは
レーザーならではの
応用でありまして、非常に細かいマイクロサーキットなんかの抵抗値とかあるいはコンデンサーの容量などを測定しながら
レーザーで切っていくということをしますと、ある所定の値にきちっと合わせてやることができるというわけであります。これは測定しながらできるという意味で非常に有効な
方法であります。例えば皆さんの時計の中にある水晶振動子、電子時計はみんな水晶振動子で時間を決めておるわけでありますが、それの振動数がばらばらだと時計の生産に困るわけでありまして、それを合わせるのに水晶振動子の振動数を測定しながら
レーザー光で削っていくと、厚みをきちっと所定の値にして振動数をきちっと合わせてやれる。こういう使い方を
レーザートリミングと言っておりますが、少しずつ削っていくというやり方であります。これは非常にいろいろなところに使われております。それからマーキング、いろいろな電子部品とか、あるいは最近では食品なんかにもいろいろなマークが入っておりますが、そういうマークをつけるのに
レーザーを使うと非常に能率がいいと言われております。それから
溶接、焼き入れ、こういうものはどうせ非常に強力な熱
加工になるわけでありますから、当然
溶接、焼き入れに使える。あるいはグレージング、表面をグラス状にして強くしてやろうということにも使える。
溶接には非常にたくさん使われておりますのでちょっと表を用意しましたが、表6というのがあります。
炭酸ガスレーザーによる
溶接のデータでありますが、
溶接速度をごらんいただきますと、例えば二十ミリの厚みのステンレスで二十キロ
ワットの
出力を使いますと百二十七
センチ・パー毎分ということで、毎分約一
メーターの
速度で
溶接できるというわけであります。ちょっと図をごらんいただきますと、突き合わせのところで
溶接した跡がこういうふうになるわけでありますが、こういう
溶接ができるわけであります。これは非常な
速度で
溶接ができるということで、
溶接なんかにはかなり広範に使われようとしております。まだ現在のところ装置が非常に高いものですから、実際にこれを入れるのにちゅうちょしておる企業もあるようでありますが、これから相当その方向へ伸びていくと思われます。ちなみに
米国のGM、ゼネラル・モーターズでどのくらい
レーザーのこういう
加工装置を使っておるかといいますと、どこの工場かちょっと忘れました、
一つの例でありますが、
溶接に三十七台使っておるとか、あるいは今の抵抗のトリミングに二十台使っておる、熱処理に二十一台使っておる、穴あけに十四台とかカッティング、
切断に十四台使っておる、その他いろいろ入れますと百二十台くらいの
レーザーが
一つの工場で動いておるということでありますが、まだ
日本の工場では大きな工場でそういうふうに使われておるというのは聞いていないわけであります。
それから、下から二番目に書いてあります
レーザー・エイデッド・マイクロ・ファブリケーションといいますのは、いわゆるマイクロサーキットとかそういうものの
加工に
レーザーが使えるということで、その
一つの例としてここにグレーティングというのがあります。これはこういうふうな鏡なんですが、この上に、一ミリの中に二千本くらい線を引いております。こういうものが、
レーザーを使った
干渉を使いまして非常に簡単にできるようになったわけであります。これは我々の
研究室で開発した
方法で、最近の分光器に乗せられて実用に供されておるわけであります。従来はこれを機械的に送りながら、
ダイヤモンドのカッターで線を引きながら一ミリに二千本くらい引くわけであります。非常に精密
加工でありまして、精密
加工の粋、
最高レベルと言われておったわけでありますが、
レーザーが出現しまして、我々のところの学生でもこういうものはすぐ簡単につくれるようになってきまして、名人は必要なくなっておるというふうに言えるわけであります。これはいわゆる分光器で使う、
太陽光線なんかをこれに当てますとにじになって出てくるというものです。興味のおありの方は、ここに置いておきますから、後でごらんになってください。
それから
レーザーCVDというのは、最近
半導体プロセスなどで非常に有望視されておる
方法でありまして、これも
レーザー加工の
一つの
応用例かと思います。御承知のように、最近の超
LSIとかいうものは非常にたくさんの
プロセスを一枚のシリコンウエハーの上に重ねて処理していきまして、一
センチ角に恐らく百万個くらいの
トランジスタを配線した形で乗せて機能を持たせようとしておるわけであります。その処理の過程で炉に入れて温度をかけるわけでありますが、その温度が高過ぎますと、せっかく前につくったものが壊れてしまうとかいう問題がありまして、その辺の工程の順序をどうするかとか非常に難しいところがあるわけでありますが、そういう
プロセスが多くなるにつれてそういう
プロセスを低温でやろう、低温といいましても二百度とか三百度とか、その
程度を低温と言うわけでありますが、
比較的低い温度でやろうという要望が非常に強いわけであります。それに
レーザーの光線を使って反応温度を下げようという試みが、最近
半導体メーカーで盛んに
研究されておるわけであります。これは
レーザー・アシステッド・ケミカル・ベーパー・デポジションというふうに言われて、
レーザーCVDということで呼ばれておるわけであります。
余り
加工の話ばかりしておりますとあれですから、次に(ロ)の
レーザー通信にちょっと触れておきたいと思います。これは最近ファイバーを使った
光通信というのが非常に盛んになってまいりましたので、皆さんよく耳にすることかと思いますが、この
技術ではファイバーにしても
半導体レーザーにしても
日本が今一番進んでいるというふうに言われている
分野であります。
レーザー光は
位相がそろっておるということで
通信に利用できるわけでありますが、現在使われておる
レーザー通信、
光通信というのは
位相がそろっておるということを使っておるわけではないのであります。これは
指向性が非常に鋭いということで、これは
通信の一種かと思いますが、計測の方ですか、
レーザーレーダーとかあるいは最近よく話題になっておりますのは、サブマリン
通信、潜水艦への
通信とかいうのが
レーザーを使ってやれないかということで、これは
アメリカなんかでかなり問題になっておるようであります。HgBr
レーザーで五百二ナノ
メーターという光が出るわけでありますが、その光を使って潜水艦への
通信に使おうというので、こういうふうにサテライトに潜水艦から送りますと、そこからまた海の中の潜水艦に送れるということになったわけであります。それからまた、地上局からサテライトに送りまして、そこから潜水艦に
通信を送るというふうなやり方もあるわけであります。これは水中でのロスが一番小さいのが四百八十ナノ
メーターにあるわけでありますが、そこら辺では強い
レーザー発振をするものがないのか、五百二ナノ
メーターのHgBrの光が
通信に使われております。
それからその次に、少し急ぎますが、計測への
応用というので、
レーザー光は
指向性が非常にいいので今言った
レーザーレーダーにも簡単に使えますし、
レーザー測距計、それからトンネル工事なんかで言いますと坑道が真っすぐ行っているかどうかというのを調べるのは
レーザーを一本通しておけばいいというように、非常に用途が広いわけであります。レーザの測距計といいますと、最近話題になりましたのが、
アメリカが月に鏡を上げておりますね。それを使って大陸の移動を測定しようというような
実験がなされまして、一年前にオーストラリアと南米との間で、一遍
地球上から月に光を当てまして、それから返ってきた光を測定してその時間差を見るわけです。どのくらい時間差があるかというのを見てその
距離をはかるわけでありますが、それが
地球表面上で一
センチメーターの誤差ではかれるというので、一年前そういう
方法ではかって、オーストラリアと南米が毎年四
センチメーター動いておるというふうなことが報じられております。それからまた、
レーザー光の非常に強いことと
単色性のいいことを使って、
レーザーを当てて散乱してくる光を測定してやりますと大気汚染なんかがそのままわかるというので、これはいろいろ環境問題として実用されております。
それから医学への
応用と書いてありますが、これは最近非常に盛んになってまいりまして、そもそもの始まりは網膜剥離の治療であります。従来、網膜剥離は、目を取り出して裏側から網膜剥離を治療しておったわけでありますが、非常に大変な治療で、時間と患者の方は非常に忍耐を要する治療だったわけでありますが、
レーザーをぼっと当てますと、目がそのまま
レンズ作用しますから、ちょうど網膜の上にうまく焦点を結んでくれまして、
レーザーを当てるだけでそこがいわゆる
溶接できるということで、これは入院しなくともすぐ治療できるわけでありまして、非常にたくさん使われております。これなんかが医療への
応用の一番
最初に
実用化した例であります。それからまた、細胞の一種の
切断加工です。これは最近
レーザーメスというふうに言われてテレビなんかでよくやられておりますが、出血の少ない手術というのでかなり使われ始めておるようであります。また、従来は出血が多くて手術が困難であった脳の手術とがそういうものは、
レーザーを使って出血を少なくして手術をするというふうなことも可能になっておる。あるいはまた、女性にとって非常に悩ましいことであった例のあざを
レーザーを当ててとるということも、かなり広範囲に最近ではやられておるようでございます。また将来の問題としては、内視鏡を使って、その中に
レーザー光を入れて、胃を切らずに中から
レーザー光で腫瘍なんかを焼いてやろうというふうなことがぼつぼつ行われようとしておる段階であります。それからまた、
レーザーを使ったはり治療ということも言われておりまして、医学面でいろいろなところに
レーザーの
応用が出てきておるようであります。
それからその次に、
レーザーを使った
光線兵器というのが出ておりますが、これもいろいろなところで、
アメリカ、ソ連を
中心に使われております。
アメリカでは、ニューメキシコのカートランド空軍基地の兵器
研究所などでは非常に強力な
レーザーの
研究が進められておるということでありまして、既に
レーザー光線で無人の標的機を撃墜したというふうな報道もされております。化学
レーザーの
研究が非常に強力に進められておると聞いております。ソ連では、中央アジアのセミパラチンスクで非常に大規模な
レーザー兵器の開発が行われておるということを聞いておるわけでありますが、ソ連の様子は我々にはなかなかわからない、どこまで進んでおるかというのは全然未知であります。
それから
最後に、
レーザーによる
同位体分離という
研究がございます。これは我々今、理化学
研究所で
レーザーによる
同位体分離という
研究を、これは
科学技術庁の
プロジェクト研究としてやらしていただいておるわけでありますが、これはどういうことを利用するかといいますと、
レーザーが非常に強いということと非常に
単色性がいいという、その二つの
性質をうまく利用した
方法であります。
それで、ここの下の絵にちょっと書いておりますが、左と右で同位体Aと同位体Bとしておりますが、同位体Aと同位体Bの間でhf1と書いてありまして、横線を引いてあります。その横線の位置がちょっとずれておりますね。それを同位体シフトと言うわけですが、少し重さが違いますと吸収スペクトルの
波長がちょっとずれるのです。普通の分光器ではとてもこんなずれは見つからないのですが、
レーザーのように非常にシャープなスペクトルの線を使いますとそのずれをきちっと見分けて、しかもそのずれた一方だけに合った光を当ててやることができる。例えばこの図で言いますと、同位体Aの方だけが
レーザー光線を吸収して励起される。上の棒のところへ行くわけですね。そこへもう
一つの
レーザー光線を当ててやりますと、ちょうどそこへ来たものだけが励起されて、hf2という光を吸収して上に上がる。これで、例えばイオン化されるといたしますとイオンになりますから、それは電圧をかけてやれば同位体Aだけが電極に引きつけられるというふうなことで
同位体分離をしようということであります。この
方法の
特徴は、非常に高い分離比が得られるということ、あるいはエネルギー効率が非常に高い、あるいは装置が小型であるというふうなことで非常に有利なわけであります。
現在、
同位体分離についての基本的条件の検討がいろいろ行われて、何種類かの原子や分子については既に
実験が成功しておるというわけであります。これは
米国においても非常に熱心に
研究が行われておるわけでありますが、こういう
同位体分離の
研究というのはベールの奥に隠れて発表が全然ないわけであります。我々の方でも初めから全部データをとっていきまして、それで
同位体分離のできるデータを現在ウランについては大体そろえたという段階であります。それで去年、一九八四年の春ですか、それを一部発表いたしました。それが契・機になったのかどうか知りませんが、最近
米国の学術誌にもぼつぼつそういうウランのデータが出てまいりました。これは我々の方で発表したのがきっかけになっておるのか、向こうで秘密のベールを多少解きつつあるのかと思えるわけでありますが、そういうこともいろいろ
研究されておるわけであります。
それで、
レーザーの
特性から
応用について一連の
お話をしたわけでありますが、世界のレコードはどこまでいっておるかといいますと、例えばエックス線
レーザーですと現在十五ナノ
メーター、百五十オングストロームのエックス線を出すというところまでいっております。それから、今一番短い
パルスを出すというのでは、さっき10の
マイナス14乗と言いましたけれども、正確には1.6かける10の
マイナス14乗秒というわけてあります。それから
パワーでは、去年は
日本の大阪
大学の山中
研究室の
レーザー核融合用の
レーザーが一番
パワーが大きかったわけでありますが、ことしは
アメリカのローレンス・リバモアの装置ができて動き出したものですから、現在
パワーは大阪
大学のものよりもそちらの方が多少大きくなっておるということでありまして、大阪
大学のが一
パルス当たり二十五キロジュール・一ナノセックですから、10
マイナス9乗秒の中に二十五キロジュールの
レーザー光線を出しておる。これは去年では世界一だったわけであります。中性子の場合の4かける10の
マイナス10乗というのは、いまだに世界
最高というようであります。これは大阪
大学の例でありますが、
アメリカのローレンス・リバモア
研究所のは百キロジュール・パー・ナノセック、10の
マイナス9乗秒中百キロジュール出すというのが一九八四年末完成されて、今動いているのかどうかちょっとわからないのですが、動けばこれが世界
最高ということになるわけであります。
今の
レーザー技術の
最高のレベルというのは、
パワーではその辺でありまして、
波長の方では、今エックス線
レーザーをねらって世界各国で競争が行われておるところであります。
核融合と一言に言いましても、これは非常に大変な
技術でありまして、大阪
大学の例ですと、
レーザー光線を増幅しながら約三百
メーター走らすわけです。いろんな増幅の段階に応じて
レーザーの大きさを変えながら、しかも波面をきちっとコントロールして三百
メーターずっと走らせるのです。一番
最後の段階では、三百
メーター走らせた十二本の
レーザー光線を百ミクロン、〇・一ミリのボールに全部
集中させるわけですね。それがちょっとでもずれると爆縮がうまくいかないというので、三百
メーター走ってきた
レーザー光線を数ミクロンの精度で百ミクロンの玉に当てる。しかもそのパスを全部そろえてやらなければいけないわけです。ちょっとでもずれると片一方が先に火がついたということになりますので、それも時間を合わせてきちっとそろえてやるということで、今の
レーザー核融合の
実験装置なんか見ますと、これはまさしく光の工場であります。ここにちょっと写真がありますが、こういう大きな工場で、光が三百メートルのパスをわっと走って、これは空中を走るといろんな擾乱が起こるので、走るところは真空ではないのですけれども全部保護しておるわけで、そういう装置であります。この
程度のことをやろうと思うと費用もかなりかかりまして、毎年大体二十億円くらいの金をつぎ込んでここ十年間くらいやってきておるところであります。
アメリカの例を見ますと、この
レーザー核融合に毎年五百億円くらい使っておりますけれども、
日本では大体二十億円くらいのところでしょうか。
それから、今のエックス線
レーザーで言いますと十五ナノ
メーター、百五十オングストロームというのがレコードだと言いましたけれども、現在世界各所でいろんな
方法でエックス線
レーザーを早く開発しようという
研究が進んでおります。
アメリカの場合ですとやはり軍需を優先しておりまして、例えば最近話題になっておりますSDIなんかで、
最初のフェーズはエックス線
レーザーを使おう。これで、そういうミサイルなんかのソフトキルと言っておりますが機能を麻痺させようというのにエックス線
レーザーを使おう。それからセカンド・フェーズとして、それの漏れてきたものには今度はハードキルと言って落とすわけでありますが、この両方のどっちかを使おうというので、これは化学レーザiを使ってやろうというような計画が出ておるようであります。それから一番
最後の段階サード・フェーズでは、粒子
ビームとかあるいは普通の化学
レーザーでハードキルといいますか撃ち落とすというような計画がつくられておるようでありまして、そういう一環としても、恐らくかなりの金を使ってエックス線
レーザーを進めておるところだろうと思います。
日本でもエックス線
レーザーの
研究を始めかけたところでありますが、
日本ではそういう十分な
プロジェクト研究としてはエックス線
レーザーというのはまだ出てない、これからの問題であります。
時間も来たようでありますが、私自身が
レーザーの
研究とそれから超
LSI関連の
マイクロエレクトロニクスの
研究というのをやってきておりますが、こういう超
LSI、
半導体素子というような最先端
技術の
研究というのは、既に一メガビットが売られようとしておるということで、こういうものは工業生産と商売がすぐに結びつくというようになっておるわけでありまして、
半導体素子というのはコンシューマーの方向に向けての最先端
技術を集約したものであると言えるわけであります。ところが一方
レーザーは、今
お話ししたような最先端
技術のエックス線
レーザーというものにいたしましても、すぐにはなかなか商売にならないということで、
日本では企業が大きな金を出して取り上げてくれないというふうな
研究になるわけであります。同じ最先端
技術といいましてもちょっと意味合いが違うわけでありまして、こういう
分野の最先端
技術を
アメリカなんかと競争して本当にこれから開発をしていくためには、やはり国の助成がさらにもう少し必要であろうかと思えるわけであります。
最後に、きょう
お話ししましたような
レーザーというのは、物質内の励起状態の反転分布を使いまして、誘導放出で光を増幅したりあるいは
発振させたりする
技術でありますが、まさしく
エレクトロニクスの
方法を原子や分子の世界に拡張した新しい
科学技術ということが言えるわけであります。こういうことで、
レーザーによって今までの電波の領域が光の
波長まで拡大されて、新しい
分野が開けようとしておるわけでありまして、これは
通信だけでなく計測、
加工あるいは医用とか
核融合、
同位体分離と多方面に
研究が進められておるわけであります。先ほど
エレクトロニクスにおける二大
発明と言いましたが、ある人に言わせますと、今世紀最大の
発明は原子力の開放と
レーザーであるというように言う人もあるくらいの今世紀最大の
発明の
一つでありますから、我々
技術者にとってこの開発は大きな目標の
一つでありまして、特に私の関心から言いますと、今のエックス線
レーザーなんかは早く開発して、
日本の場合は先ほどのSDIのソフトキラーというふうなことではなくて、むしろエックス線顕微鏡というふうなものを早く実現させて、いろんな
応用に供したいというふうに考えておるわけであります。
ちょっと時間を超過いたしましたが、どうもきょうは長時間ありがとうございました。(拍手)