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1985-04-17 第102回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十七日(水曜日)     午後一時一分開議 出席委員   委員長 森下 元晴君    理事 小渕 恵三君 理事 椎名 素夫君    理事 三原 朝雄君 理事 上田  哲君    理事 前川  旦君 理事 渡部 一郎君    理事 吉田 之久君       大村 襄治君    海部 俊樹君       中川 昭一君    森   清君       奥野 一雄君    左近 正男君       神崎 武法君    山田 英介君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         外務大臣官房外         務参事官    渡辺  允君         外務省北米局長 栗山 尚一君  委員外出席者         特別委員会第三         調査室長    鎌田  昇君     ————————————— 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     中川 昭一君 同日  辞任         補欠選任   中川 昭一君     石原慎太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 森下元晴

    森下委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森清君。
  3. 森清

    ○森(清)委員 私は国の安全保障、最も大切な国の任務でありますが、その中で広い意味安全保障から国の防衛ということに絞りましてきょうは御質問を申し上げたいと思うわけであります。  国を防衛するということは、もちろん軍事力、これは基本でありますが、そのもとには国民的な合意、どうしても我が国国民が守るのだ、こういう決意が国民になければ、いかに精強なる自衛隊、国防軍を持ってもそれはなかなか守れない、また、そういう国民的合意がなければ精強なる防衛軍はつくることはできない、このように考えるのであります。それでは、この国民に国を守る、そして外敵に対しては断固として戦うのだ、この国民的合意を得るには、我が国が置かれている国際情勢、そうしてまた、我が国脅威であると考える国々の情勢、そしてまた我が国の置かれた現状、そして、それに対応して我が国がどのような方針のもとにこれに対処していくかということが十二分に国民に理解され、そして支持をされておらなければならない、このように考えるのであります。そのためには、先ほど言ったようなことが国民にそのまま素直な形で情報が与えられておらなければならない、このように考えるのでありますが、従来の我が国防衛については、そのような意味での正しい情報、これが国民に与えられておったかどうか、私は大変疑問に思っているのであります。特に、国会でいろいろ議論がなされておりますが、国会議論そのものも、本当にそういう意味日本防衛のために何をすべきかということを正面からとらえた論議が果たしてどの程度あっただろうかということを深く私は反省するものでございます。  そこで大事なことは、民主主義国家にとっては防衛戦争をやるかやらないかどうかということはすべて民意によって、最終的には国民の意思によって決めるわけであります。ところが、残念なことに、国家が危急に立つときに、情報の伝達の手段によれば国民の意識あるいは国民の意見というものは非常に一方に偏る傾向があるわけであります。したがって、そういう意味からいっても、平常のときにおいてやはり正確な情報認識国民が持っておらなければならない。そうしなければ、いざというときに国家を大きく過たせるのではないか、このように思うのであります。戦前の我が国状態考えてみましても、軍事についてはほとんど一般の人は関与しない、そうして余り知らされてなかった。そういうときに、いざとなったときに軍部が独走をいたしますし、また、それにこたえて新聞はもとより、国民も歓呼をもってこれを支援してきた。それがあの悲惨な、最終的には大東亜戦争に突っ込んでいって、そして敗戦の憂き目を見るようになった。そういうことを考えましても、私はふだんから我が国の置かれている情勢というもの、そして、それに対応する防衛力は、あるいは防衛力の整備はいかにあるべきかということを国民に知らせる必要がある、私はそういう意味できょうは質問に立ったわけでございます。  それを申し上げますと、例えば最近の新聞世論調査を見ますと、防衛費GNPの一%以内がいいかどうかとか、そのようなアンケート調査をする、そうすると大多数の人はそれでいい、したがって、国民はそれを支持しているんだ、こういう新聞報道になるわけであります。しかし、それは非常におかしな情報を与えられての判断ではないか。というのは、国の防衛の最終的な責任者である内閣総理大臣、それから防衛庁長官が一%でやれます、こう言っているわけですね、国会で。一%でやれます、もしかしたらちょっとどうかもわからぬが、一%でやれますということを国会で繰り返して言っている。そういう中にあって、一%を突破していいか、こういう質問国民にすれば、防衛責任者が一%で何とかやれますと言っているのに、いや、それ以上必要なんだと言う人は、総理大臣の言っていることや防衛庁長官の言っていることは怪しいぞ、本当はもっときつい情勢にあるんだということを知っている人、この人があんなことを言っているぞ、それじゃ到底だめだと非常に防衛について政府と異なる見解を持っている人、この人が一%を突破してもいい、また突破すべきだ、こう答えるのであります。私はこういう人が何%もおる、一〇%近くもいるということ自体が大変な問題であると思うのであります。防衛責任者があるいはアメリカ国防報告のように実は足りないんです、足りないんですと言い続けて、さあどうしますかということを聞けば、もっともっと国民世論というのは正確に出るんじゃないか。一%でやれるんですと防衛責任者が言っている。にもかかわらずそれを突破しなければ危ないですよという国民がいるということ一つをとりましても、私は国民が本当に突破しなければならないかどうかはそれは判断したらいいと思うのであります。しかし、そういう意味において本当に国民に今私が申し上げたような情報が正確に伝わっているかどうか、これは非常に疑問なんであります。そこで、防衛現状についてもう少し率直に国民に知らせる必要がある、私はこのように考えるのであります。  私は、国会論議を聞いておりまして、例えば大分前でありますが、日本の購入した戦闘機、これに空中給油機構をつけるかどうか、こういう議論があって、とうとう最初は外された。そのときの議論はどういうことかというと、あの戦闘機は大体航続距離一千キロあるんです。そうすると、日本から中国あるいはウラジボストクへ届くじゃないか、そういうものを持つとはけしからぬ、こういうことであります。ところが、例えば青森県の三沢、ここからウラジボストク距離というのは約一千キロでありましょう。しかし、それを内地へ向ければ京都と大阪あたりです。千歳からウラジボストク距離は千歳から東京距離と同じです。九州の北から上海距離東京と同じです。九州北部から上海へ行くのと、東京へ行くのとは同じ距離です。沖縄から行けば、上海へ行く距離がせいぜい九州です。九州の北端にも届かない。そうすると、日本が攻められて、あるいは東京が空襲され、あるいはそのほかの基地ですね、そういうときに残っている基地から救援に行くあるいは戦闘に行くのにそれだけの航続距離が要るわけです。飛行機は西にばかり飛ぶわけじゃないです。北にも西にも飛ばなければいけない、東にも飛ばなければいけない。ところが、それが上海ウラジボストクへ届くからこれはいけないというふうな、こういう議論が堂々と国会で行われて、そうして政府もそうですかと言って給油機構を外す、こういうもう今から考えればばかげた議論が行われてそうなっている。それは最近撤回されて、まあまあ正常化しているわけであります。  そのほか言いたいことがいっぱいあるわけでありますが、例えばこういう議論が行われている。我が国は憲法の制約があるから必要な自衛力を持たぬでもしようがない、それはアメリカにおんぶしておきます、そして孜々営々として経済繁栄をすればいい、そうして、それだけでは国際的責務は果たせませんから、後進国援助その他をやればそれで日本責任は果たせるんです、したがって、防衛力増強よりか海外経済援助をすればいい、こういうことを言っておられるという人がおるわけです。国民はなるほどそうかと思います。我が国だけの中で考えればあるいはそれは通用する議論かもわかりません。しかし、防衛を金で買うことができましょうか。我が国が攻められたら日米安保条約によってアメリカ救援してくれる、これは条約であります。みずからの国を守るのにみずからの国民は血は流すのは嫌です、アメリカ国民税金と血によって日本を守ってくれ、おれたちはそうは血は流さない、税金も出しません、そのかわり金はあるのだから、金はひとつ後進国援助に幾らでも出します、こういうことは国内の一部の人には通用する議論かもわからないが、これが世界的に、あるいは世界じゃなくて、要するに普通の人が考えてそういうことが通用しましょうか。ところが、その通用しそうもない議論国内で堂々と行われている。そして、それが通用したかのごとき——これは単にここにおられる野党の方だけじゃない、自民党の中にもそういう考え方の人がいる、こういう状況なんです。  さらに、例えば吉田路線というのがあるのかどうか知りませんが、それにのっとって、軽武装で、そして経済繁栄をやっておればいいんだ、これが日本の今までやってきた正しい道であったし、今後続けていくんだという人がまた我が自民党の中にもおる。こういうことが通用するでしょうか。吉田路線というのは、我が国敗戦によって占領されておるとき、そして経済もむちゃくちゃになっておったとき、ようやっと占領解除になって二、三年しか吉田内閣はないわけであります。そういうときにつくった路線。監獄の中に入れられて、そこでどうこうしようといった人間がちゃんと出てきて、そして、いざ日本の国をどうしようか、こういう状態のときに、それが続くと思うのかどうか。仮にその背景は除くとしましても、経済繁栄を追い求めればいいんだ、それには軽武装軍事費は使わないのが正しい選択であった、これはそのとおりでありましょう。  例え話をいたします。子供大学を出るまでは親の仕送りを受けて勉強した、したがって、非常に学問も進んだ、世の中に出て働く知識も得た、非常によかった、生活も楽であった。それはその限り正しいと思うのです。ところが、その大学を出た人が社会へ出て、結婚をし、子供を持っても、学生時代までにやってくれておった選択が正しかったから、独立をして妻子を持ってもそのままやっていきたい、どうぞひとつそういう難しいことは、親御さん、これはアメリカでありましょう、やってください、私はもっともっと生活をエンジョイし、学問だけしたいのです、こういうことを言っているに等しいわけであります。そういうことがまかり通っている。これもこの議論をするとき問題があるわけであります。  例えば、これは後でまた詳しく触れますが、先ほど言ったGNP一%問題。一%を突破したら軍事大国になる、他の国に脅威を与える、したがって、GNP一%は軍事大国になる歯どめの意義がある。これを言っているのは恐らく日本のある特定の人だけだろうと思うのです。外国人でそんなことを思う人はないと思うのです。ところが、我が国責任者やあるいは政治家が、一%を突破したら軍事大国になって他国脅威を与えるんだ、こういうふうに言うから外国の人はそうかと思う。東南アジアの人やなんかは日本のそんな国内情勢軍備情勢を余り知らない。日本責任者が一%を突破したら軍事大国になってあなた方に脅威を与えるんですよということを言うからそう思うだけの話で、何で一%を突破したら軍事大国になって他国脅威を与えるのですか。御存じのとおり、軍事大国というのはアメリカソ連のことを言う。アメリカソ連日本軍事費の何十倍という金を何十年使ってきておるわけです。そして軍備をつくっておるわけです。日本はせいぜい一%か、昔は二、三%だ。ちっぽけな軍隊です。イギリスフランスドイツ軍隊と比べたってちっぽけな軍隊なんです。今でこそようやっと軍事費は相当使ったといっても、今使っている軍事費というのはイギリスフランスドイツの半分以下だ。そんなものが何%ふえたからどれぐらい、軍事大国になるの、他国脅威を与えるの。駆逐艦しかないじゃないですか。航空母艦おろか巡洋艦すら持っていない。そんなものが他国脅威を与えるの何の、およそ夢物語みたいなことを言っている。普通のサラリーマンが、大金持ちになったら東京に大邸宅構え別荘を構えなければいかぬ、それが大金持ちのことである、今度ベースアップが三%あったらひとつ東京に大邸宅を構えたり別荘を買うなんということを考えなければいかぬということを言っているのと同じなんで、軍事小国日本が何%、あるいは一割、二割、あるいは二倍、三倍の軍事費を使ったところで軍事大国とかなんとかということとおよそ関係のない話なんです。普通のサラリーマンが月給が二倍になったところでそんな大富豪になるわけがない。ところが、そうなるのだなるのだということを言って、そして人を驚かして——人というのは要するに国民とそれから近隣の諸外国を指している。  いろいろこういうことを言い始めると、例えば通信衛星を使うのは平和利用であるかどうかとか、宇宙はどうであるとか。平和というのは、これは、どう定義したって戦争のない状態を平和というのであって、積極的に定義することはできない。そうすると、平和を維持するには戦争をなくする以外にない。戦争をなくするには、広い言葉でいう抑止力戦争をなくしているのです。また、抑止力のための利用平和目的であると言ったって構わない。またそうあるべきである。だが、そういう議論も行われない。  これは国是みたいに言っておりますが、私がここで発言すると問題になるかもわからない。しかし、私はあえて言います。非核原則というものがある。初めのつくらず、持たずは、それは結構でしょう。しかし、持ち込まない、——核を持ち込んだら日本核攻撃を受けるということがはっきりする、持ち込んだら核攻撃を受ける、この原則、図式というものが確定的であってだれも疑うことのないものであれば、それは私は賛成いたします。しかし、日本国内アメリカの核があるかないかということが本当に日本核攻撃を受けるかどうかということについて、あるから攻撃を受けるという考え方もあれば、世界の大勢からいえば、あるから受けないということの方が私は軍事常識だと思うのであります。ところが、アメリカの核が国内にあれば核攻撃を受けるという一方的な見解のもとに非核原則ができておると思うのです。そういうことを突っ込んで議論をしない。ああ非核原則非核原則、だれ言うともなく言い始めて、そうしてこういうものができ上がってきたのじゃないか。本当に日本防衛ということを考えて、その中から非核原則というものが出てきたのかどうか、私は非常に疑問に思っているところであります。  以上申し上げたようなことは、例えばそれについては武器禁輸原則にも触れなければならない。アメリカ日本を守ってくれているのです。軍事同盟を縮んでアメリカ日本を守ってくれている。そのアメリカ日本を守るための武器、この技術を輸出するのがいいの悪いのと議論する。ナンセンスじゃないか。当たり前じゃないか。その分についてはアメリカ軍隊といえども日本を守るための軍隊、それについて武器輸出をするのがいいのかどうかということが議論の対象になる。私は本当に防衛というものを考えてやっているかどうかということについて大変疑問に思う。  そういうことを前提にいたしましていざ御質問を申し上げますので、ひとつ国民にわかりやすく、我々議員にもわかりやすく、そうして、本当に国民的合意——私は非核原則がよければいい、守ります。しかし、それは本当に日本防衛のために役立つかどうかという議論を経た後に決めていただきたい、こういう考え方でありますので、それについて御質問を申し上げたいと思うわけであります。  まず、私は我が国防衛基本方針というものについて考える。先ほど申し上げましたように、戦争を防止するのは、残念ながら現在の人類、これは将来にわたって直ることはないと思います。これはほっておけば必ず戦争が起こります。これは正義というものが一義的に決まらない。自分の正義があれば相手の正義もある。正義正義衝突は必ずするのであります。あるいは利害の衝突は必ずする。そのときに、個人の争いは裁判所が解決してくれます。そして、実力をもってそれを実現していただきます。しかし、国際間にはそれがないのであります。したがって、最後には戦争に訴える以外に解決の方法がない。これは人類の長い歴史であります。  そこで、そういう戦争をなくするにはどうしたらいいか。これは単に軍縮をするとか宣言をするとかということによって戦争がなくなるわけじゃない。やはり現時点では、残念ながら抑止力を持つ以外に戦争をなくすることはできないのであります。核超大国アメリカソ連については、MAD、相互確証破壊、これによって、一方がやれば必ずつぶれるぞ、両方ともつぶれるぞ、こういう核の恐怖のもとにおける平和が維持されている。これは残念でありますが、現実であります。また、恐らくこういうことは、そう簡単には解消しないだろうと思う。そうするならば、我々非核国、そしてアメリカ軍事同盟を結んでいる国、この国が戦争をさせないようにするためにはどうすべきか、これは、その敵対国日本への通常兵力によっての侵攻の意図を起こさせないだけの通常兵力を持つ、これが我が国防衛基本方針でなければならない。そういうふうに私は考えるのでありますが、長官、そういう考え方についてどう思われますか。
  4. 加藤紘一

    加藤国務大臣 森委員からの防衛についての基本的なお考えをお聞きいたしたわけでございますが、防衛論議につきましては、国民により情報を提供し、また国際情勢についての情報を提供し、そして実質的な内容について高度の判断をしながら、議論しながら防衛論争をしていくべきだということは、御説のとおりだと思います。私たちも、できる限り率直に国民の皆さんに、この国会の場を通じて考え方を述べ、論議をしながら防衛政策考えていきたい、その意味でもこの委員会において私たちが答弁することの責務は大きいだろう、こう思っております。  御質問の、現在の国際情勢の中において、また軍事情勢の中において諸外国防衛基本的な部分をどう見るかということでございますが、それぞれの国がお互いに、完全に一〇〇%の信頼関係がまだ存在していないこの世の中において、そしてまた、森委員も御指摘なさいますように、それぞれの国が正義というものに一義的な基準が完璧に備わっていない現在の社会において、紛争というものは絶えないし、また、戦後幾つかの通常兵力による紛争が数多く多発している中において、やはり私たちはしっかりとした抑止力を持たなければならないというのは、残念ながら厳しい国際社会現実だと思っております。その意味において、抑止力というものの考え方については私たちも同感でございます。
  5. 森清

    ○森(清)委員 そこで、そういう観点から現在の防衛計画についてお尋ねしたいと思います。  まず、「防衛計画の大綱」というのですか、これが五十一年に決定されたわけでありますが、まず前提となるそのときの世界情勢認識は、緊張緩和、デタントに向かいつつあるということ、したがって、我が国は平常時においていわゆる基盤的防衛力を備えておけばよろしいと考える、そして、その基盤的防衛力というのは、大体今現状においては、軍艦の数とか飛行機の数とかでは——師団の数は大体達しています、質的には向上していかなければなりません、こういう認識が一つあったと思います。そう書いてあります。  そして、そういう防衛力ではどういう事態に対応ができるかというと、小規模かつ限定的な侵攻に対して、これは独力で排除することができます、しかしながら、それ以上のものであればできる限り抗戦をして、時間を稼いで、そしてアメリカ救援を待ちます、こういう認識であったと思うのでありますが、その当時の認識はそのとおりであったかどうか、お伺いしたい。
  6. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今の委員御指摘の点につきましては、細かい点を申せば、数多くの論点を申されましたので、幾つかの点については若干修正といいますか、考えが違うところがございます。  昭和五十一年当時と現在の国際軍事情勢を見たならば、どういうふうに比較されるだろうかといいましたならば、後ほど政府委員からもお答えいたしますけれども、軍事情勢につきましてはかなり厳しくなっているのではないか。当時から現在までの間ソ連の方が継続的に続けてきました軍事力増強の蓄積的な効果は、現在顕著にあらわれておりまして、また、その力を背景に、やはり周辺諸国、第三勢力ベの伸長を図っていると言わざるを得ません。また、私たちの極東における情勢も厳しいものがあろうということは、累次私たちが申し上げているとおりでございます。  ただ、国際情勢の大きな骨組みといった部分は、当時どういうことを考えていて、そして現在とどう変わっていたかという問題につきまして言うならば、当時大きな面では、米ソは相対立しているけれども、大きな武力衝突には至らないであろうといった部分は同じだと思いますね。それから日本をめぐりまして、韓半島におきましていろいろ対立がああ等の問題はあるけれども、日米安全保障条約があるので日本が大きな武力衝突に見舞われるようなことはないという当時の発想は、現在でも日米安保条約がしっかりしていまして同じであろうというような幾つかの点が指摘されるだろう、こう私たちは思っております。また、その点については細かく政府委員からお答えいたしたいと思います。
  7. 森清

    ○森(清)委員 私もそういう認識については長官と同じでございますが、これは通常言われておりますとおり、策定当時から大きく変わったことは、中東の政治情勢が非常に不安定になったということ、イランイラク戦争等にあらわれておりますが、イランの革命以来でございますが、そういう問題、それからソ連がアフガンに侵入をしておるという問題、それから、ソ連東南アジアの、特にカムラン湾等に大規模な軍事基地をつくっておるのではないかという問題、あるいはまた、ソ連軍がインド洋、中近東の方向に進出する可能性があるのじゃないか、そういうことから、我が国周辺防衛に当たってもらっておった第七艦隊があるいはそちらの方向にスイングをしなければならないのではないか。そうするならば、我が国が生存するためにどうしても確保しておかなければならないシーレーン、これの防衛が非常に手薄になる、その点はどうしても我が国自衛力でカバーしていかなければならない、こういう問題が新たに起こったと思うのでありますが、そういう変化を踏まえなければならないのであります。  それでは、せっかく御用意いただいておりますので、五十一年当時と現在のソ連軍事力増強、あるいはそれに対してアメリカがどの程度であるか、それからソ連全体、アメリカ全体もさることながら、日本周辺、極東においてどのような軍事バランスになっておるか、こういうことについてひとつ政府委員の方から御説明を願いたいと思います。
  8. 古川清

    ○古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  米ソいずれも軍事的に大きな国でございますが、七六年と現在をグローバルなベースで考えてみますと、例えば陸上兵力をとってみますと、七六年で米国は十四個師団、七十九万人あったわけでございますが、現在は十六個師団の七十八万人、師団の数はふえておりますけれども、実際の兵力の数は若干減少しておるという傾向であります。これに対しましてソ連の方は、世界的な規模で七六年の際には百六十六個師団の百八十三万人という規模でございましたが、現在は百九十四個師団の百九十一万人というぐあいに相当な比率で増加をしておるわけであります。  海を見てみますと、アメリカの方は、七六年の時点におきましては七百七十隻の五百五十二万トンという船腹量でございましたが、現在は八百六十隻、五百七十六万トン、若干ふえておるという程度でございます。これに対しましてソ連の方は、七六年が四百二十四万トンの二千五百二十隻、現在が二千九百九十隻で六百八十七万トンというわけで、既にトン数におきまして、また総数におきましてもアメリカを抜いておるという点が非常に特徴的でございます。  さらに空を見てみますと、アメリカは七六年時点において五千八百機の作戦機を持っておったわけでありますが、現在は減少いたしまして四千七百九十機にとどまっております。これに反しましてソ連の方は、七六年に七千九百機あったのが現在は八千七百七十機を持っておるというのが私どもの分析でございます。  さて、身近な極東という地点において考えてみますると、極東におきます米ソ軍事バランスを「防衛計画の大綱」の七六年と現在を比べてみますると、まず同様に陸海空という順序で申し上げてみたいと思うのでありますが、陸につきましては、米国が二個師団の六・二万人から同じ二個師団の五・六万人、これは海兵隊の勢力も入っての話でございます。それからソ連の方は、七六年が三十一個師団三十万人から現在四十個師団三十七万人に大きく増強されておるわけでございます。  それから海につきましては、米国が七六年が六十隻六十万トンという規模が現在では七十隻七十万トンというぐあいに増加しておりますが、ソ連の方は七六年の七百五十五隻の百二十五万トンから八百二十五隻、百七十万トンというふうに増加をしておるわけでございます。約三割強の増加と言ってもよろしかろうと存じます。  それから航空機につきましては、アメリカの方が四百八十機から六百二十機になっておりますけれども、ソ連の方は二千三十機から二千二百二十機というぐあいに増強されておりまして、グローバルに見ましても、また我が国の周辺をとってみましても、ソ連軍事力増強というものにつきましては極めて顕著なものがあるというのが私どもの判断でございます。
  9. 森清

    ○森(清)委員 そのようなグローバルな通常兵力軍事バランス、それから我が国周辺における軍事バランスでありますが、特に指摘しておきたいことは、そういう中にあって、いわゆる我が国固有の領土である北方領土に新たに相当数の地上部隊が展開され、一個師団あるいはその他大変なものが新たに展開しておりますし、航空部隊もミグ17が更新されてミグ23が約四十機来ておる、あるいは国境警備隊も相当数来ておるということ、あるいは先ほども触れましたが、ベトナムのカムラン湾にベアが四機、バジャーが九機、さらに七機来ているのじゃないか。それからさらに、ミグ23が十四機おる。常時ここに海軍の艦艇が出入りをしておる、こういうふうな状況になっておるわけであります。  そういうことを考えましても、我が国の周辺の軍事情勢、これは非常に差しさわりがあるかもわかりませんが、ソ連がなぜ極東地域に一陸はあるいは中国との関係があるかもわかりません、陸あるいは空。その空と海軍をこのように多数極東に展開しておるということの意味はおよそ見当がつくのではないか、私はこう思うのでありますが、そういう軍事情勢の中にあって、我が国防衛のために軍事同盟を結んでいるアメリカ我が国の安全はほとんどアメリカに依存しておるわけでありますから、この依存しているアメリカがどのような考え方軍事認識を持ち、あるいはどのようなことをしようとしているか、あるいは軍事情勢をどう判断しているかということは、我が国防衛考える上についても一番大事なことであろうと思う。  そこで、最近アメリカ国防報告がなされたのでありますが、その概要について、どのような認識のもとにどのようなことをしようとしているということが報告されたか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  10. 古川清

    ○古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  米国の国防白書におきましては、アメリカ基本的な防衛政策というのが記されてあるわけでありまして、私どももこの文書を非常に重視しておるわけでございますが、この八六会計年度、アメリカの会計年度は十月から始まりますので、本年の十月からの会計年度の予算要求の基本資料として提出されましたことしの米国の国防報告によりますと、かいつまんで申し上げますと、次のような点が特徴的に書かれていると思います。  基本的にはレーガン大統領の第一期の四年間の成果というものを強調しておりまして、国防努力を引き続きアメリカが継続をしていくということを記しております。この引き続き国防努力を継続していく大きな理由は、ソ連が非常な急テンポで軍事力を展開しておるということがこの理由となっておるわけでございまして、この国防報告の中にも、ソ連はグローバルな軍事バランスの重要な分野において、既に自己の優位を達成したというぐあいの記述がございます。  さらに個々の点で申し上げますと、ソ連の方はバックファイアという長距離の爆撃機を既に二百五十機もつくっておる。さらには新型の大きなブラックジャックという名前、コードネームで呼んでおります新鋭のジェット爆撃機がございますけれども、これを現在開発中でございまして、八〇年代の末までにはこれを配備する可能性がある。さらには新しい型のICBMを開発中でございまして、コードネームがSSX24及びSSX25という数字であらわしておりますけれども、これは移動可能、列車ないしはトレーラーによって動かすことが可能でございます。さらにはコールド方式と申しまして、一つのローンチャーから複数のICBMを撃つことができる。アメリカの場合にはすべてサイロでございますので、一発撃ったらおしまいでございますけれども、このソ連の新しいタイプが完成をいたしますと、一つのローンチャーから複数のICBMが撃ち出される。しかも動き回りますから、抑止理論の第二撃でやっつけるというときに、相手がどこにいるかわからないという意味で、抑止理論にも大きな影響を与える新兵器の開発が行われておるという点が強調されております。  さらには、通常戦力においても全般的な量的な優位の位置並びに質的な改善も急テンポで行われておる。  さらに海を見ますると、特にカムラン湾を国防報告では強調しておりますけれども、カムラン湾が既にソ連の海空補給兵たん作戦基地になっておる。つまりきちんとした一人前の立派な基地になっておる。これは初めての表現であると私ども思っておりますけれども、そういう記述がございます。  こういったことから、ソ連の指導者たち軍事力のみならず、政治、経済、イデオロギーの各分野においても、これらの点が自己に有利な方向に推移していると信じておるという判断国防報告は述べておるわけでございます。米国はこういったソ連の急激なる軍備増強に対応するために、しかも米国及び同盟国を侵略と威嚇から守るために、引き続き軍備を充実させていくということを述べておるわけでございます。  その結果といたしまして、本年のアメリカの予算要求は名目で一・五%アップ、実質的にはマイナスの二・六%という本当に久しぶりでのアメリカのマイナス成長の緊縮予算の中にありまして、国防予算の方は、支出額だけをとってみますると、伸び率が名目で一二・七%という高い伸びを示しておりまして、レーガン政権の国防力充実にかける並み並みならぬ決意がこの国防報告においても表明されておるわけでございます。  さらに極東の方に、日本周辺について見ますると、米国は、東アジア・太平洋地域に死活的な利益を有する太平洋国家であるという表現がございまして、アメリカはアジア・太平洋地域に引き続き非常に大きな関心を持っていくということをここで表明をしております。  なお、日本につきましては、思いやり予算についての評価、さらには対米武器技術供与のシステムができたことについての評価、さらには相互運用性、インターオペラビリティー達成に向けての日本との協力ぶり等々の記述がございますし、シーレーンにつきましては、これも特段新しくはなくて、昨年の国防報告にも述べられている点ではございますけれども、一九八〇年代中に一千マイルのシーレーンの防衛を含む自衛任務を十分に遂行するに必要な能力を向上させるよう日本に対してこれからも促し続けるであろうというふうな記述がございます。  ざっとかいつまんで申し上げますと、以上のような点ではないかと思います。
  11. 森清

    ○森(清)委員 以上のような軍事情勢背景にいたしまして、五十一年に作成をした「防衛計画の大綱」は、その情勢認識において、またその整備方針において、早晩、当然に見直さなければならない、私はこのように考えるのであります。  自由民主党においては、国防関係部会において「防衛力整備に関する提言」をまとめました。政務調査会の政調審議会で昨年末了承されました。その中に「防衛計画の大綱」の再検討に着手するということを提言いたしておりまして、現に関係部会においてこの計画大綱の見直し作業を今からやるわけでありますが、今のような軍事情勢考えながら、そして「防衛計画の大綱」に示された平常時における基盤的防衛力の水準というものを一応頭に置いて考えている。個々の兵器については性能の向上その他あるでありましょうが、艦艇の数にしろ飛行機の数にしろほど遠いものがある。五六中業が完成したとしてもほど遠いものがある。しかも五六中業というのは発注のときの考えてありますから、それが完成して引き渡されるには、例えば最後の年に発注すれば軍艦など五年間かかるわけであります。飛行機も物によってはそれくらいかかるものもある。二、三年はかかるわけであります。そういうことを考えると、大綱水準を達することすら今のようなペースでいくと相当先の話になるんじゃないか。  こういうことを考えますと、「防衛計画の大綱」の見直しとともに、この五六中業、近く五九中業を策定されるわけでありますが、これにおいては大綱水準は当然に、あのとき考えても今ごろはもう完成しておらなければならなかった、それがいまだほど遠い状況にある、こういう認識をお持ちになっているのか。それを達成するにはどのようにしようとしているのか。これについて、もう時間が余りありませんから、抽象的な言葉でいいですから、ひとつ長官からお答え願いたいと思います。
  12. 加藤紘一

    加藤国務大臣 委員御指摘のとおり、国際情勢日本を取り巻く軍事情勢等は厳しくなっております。したがいまして、私たちはできるだけ早くこの「防衛計画の大綱」の水準の達成を期したい、こう思っております。五九中業でその達成を期するといっても、最後に注文するのが昭和六十五年になるわけだから、そこから先また数年かかるではないかということは委員御指摘のとおりであろうと思います。「防衛計画の大綱」を策定しましたとき、当時の策定関係者は大体十年ぐらいにと、こう思っていたと思います。そしてまた、その後の歴代の内閣も、早く達成したいということを総理大臣も言ってきておるわけですから、この厳しい国際情勢の中でとにかく早くこの達成を期するために私たちは精いっぱいやりたい、こう思っております。
  13. 森清

    ○森(清)委員 それでは次に、GNP一%が何か防衛費のめどだとかなんとかいう議論がございます。議論だけじゃなくて、これは政府も閣議決定をしたようでありますが、防衛費を決めるのに国民総生産の何%で決めるということはおよそナンセンスである、私はそう思っておるのであります。  日本防衛するためにどの程度の軍事力が要るか、そういうことが国民的な合意が得られるかどうか、あるいは財政的負担ができるかどうか、あるいは防衛のためにはどうしてもこれをしなければならないかということの結果防衛費は何兆円必要とする、こういうことが政策意思として決定されるはずであり、そして国会においても論議をしていただいて最終的に国家意思として決定をしていく。そしてその金額が幾らかになったら、あと学者、評論家のたぐいあるいは統計屋のたぐいが、それは国民総生産の何%になっておりましたといって学術論文に書いたり新聞記事に書いたりするときに使うのがGNP一%比であって、全く本末転倒した議論をしておるのではないかという気がするわけであります。そうしてまた、ことしの予算委員会その他でも、一%がどうだこうだということがまじめくさって議論されている。私は非常にこっけいな感じがしておったわけであります。  そこで、国民の中で私と同じような感覚の人がある。ちょっと読み上げてみます。   防衛費一パーセント以内というのが、今日の内外情勢から見て適当であるかどうか、わが国の将来にとってどうなのかということは、充分審議してもらわねばならないことなのである。国民の人がそう言っている。政治家でも何でもありません。  しかしそういうことについての討議は一向に行われないで、十年前の閣議決定とかいうもので、一パーセント以内がさし当りのめどに定められたとかいうことで、政府は今日においてもそれを何が何でも守らなければならないというようなことが、一種の大義名分として前面に押し出され、ほかのことはあまり考えられていないようである。私は、これは国民の率直な感想であろうと思うのです。  そこで、途中略しますが、   だから、議会の論争家たち防衛費一パーセント以内とか、増税なき財政再建とか、非核原則とか、はては現行憲法を守るというようなことまで持ち出して、これの確認や確約を求めるのに躍起となり、そのためにストライキ戦法を取るわけである。一旦それについての約束を取りつければ、後はそれの違反をきびしく攻めたてればいいことになる。これは簡単で、思考力がなくても、感覚だけで嗅ぎつけることができるものなのである。議会はこれによってたちまち約束違反があるかないかを裁くだけの法廷みたいなものとなり、法廷の駆引を得意とする人たちの独壇場となる。しかし議会はそういう場所ではないはずである。与えられた法規その他の約束事によって事務処理をするのは事務官債の仕事であり、ことの合法性、違法性を法文解釈によって明らかにするのが法律家の任務であるが、政治家はこれとは異なり、定められている法律その他の約束事そのものの是非善悪を検討し、国家国民のために、これらを改廃したりこれに代る良案を考え出すという重責を担っているのである。この任務に耐えないような政治家、単なる論争家に過ぎないような似非政治家は議員をやめて総会屋にでもなった方がよさそうである。 これが国民の率直な感覚であろうと私は思うのであります。これは国民といいますが、高名なギリシャ哲学の大碩学、京都大学名誉教授田中美知太郎先生の文章であります。  そういうことを考えますと——私も先ほど、きょうは国民にわかりやすくということを言いましたので、例えをもってこのことを言いたいと思います。  国家の秩序が非常に安定をしている、ずっと続いた。したがって、警察費は国民総生産の何%以内くらいでずっと来ておった。まあ、そういうことで大体いけるでしょう、したがって、警察費は国民総生産の何%しか使えません、それ以上は使えません、こういうことを決めた。決めるような人はおらないだろうと思いますが、防衛費を決めるくらいな国家でありますから、決めるかもわからない。ところが、交通事故がいっぱい起こるから交通警察を充実しなければいけない、麻薬がどんどん入ってくる、これを鎮圧しなければならないあるいは暴力団がはびこるあるいは治安状態がよくない、したがって、警察力を充実しなければならないが、警察費はGNPの何%以内と決めたんだから、それ以上やるのはいいか悪いかということを議論する国会政府があるでありましょうか。それと同じことを防衛費はやっている。  個人の問題に置きかえてみます。個人が病気になったらいかぬから保健医療費を使っそおります。しかし、大体家族全員健康であった。余り保健医療費は使っておらなかった。したがって、これだけでやっていけるだろうということで、家計費の何%しか医療費に使いません、それ以上は使えないという家訓をつくった。ところが、やっているうちに伝染病がいっぱい発生したとか家族に病人が出た。しかし、家訓として家計費の何%しか使わぬことにしているんだから、それ以上使うことはまかりならぬといって、おやじを病院に入院させることができない。こういうことになってもやむを得ないと考えるかどうか。こういう個人もおらないだろう。警察や医療費について、そういうことを考え政府も地方自治体も、個人もいない。  ところが、我が国政府だけはそういうことをやっている。世界じゅうにないと思うのですね。自分のところの国の防衛力国民総生産の何%以内でやらなければいかぬなどということは世界じゅうにない。日本国内にもない。ほかのことにもない。防衛費について、日本政府だけがそういうことを言っている。ここに私は問題があると思うのであります。それを支持する人もおれば、そんなことはいかぬという人もおるわけであります。  これをさらに物事に例えますと、体を維持するのに防衛費というのは私は薬だと思います。危なくなったときは薬を飲まなければいけない。したがって、私は病気が治る、すなわち防衛をするために必要なだけは薬は飲むつもりであります。ところが一%ぐらいでいいのではないかという人の考え方は、考え基本が違うのです。これは酒だと思っているわけです。酒はほどほどに飲むのはいいが、それ以上飲んだら体に害がある、経済的にも大変だ、だからお父さんほどほどに飲みなさいよということになっている。それで、あなた一合しか飲んではいけませんよという基準ならまだわかる。家計費の何%しかお酒を飲んではいけませんよということですから、これは基準としては非常におかしいのでありますが、一合なら一合ですよ、こういうことを決めるのが一%論者なのか。ところが非武装論者は……(発言する者あり)だから適当な薬を飲む。そういう不規則発言があるぐらい低調なわけであります。非武装論者は何と思っているかというと、防衛費はどこか麻薬だと思っているわけですね、なければいいんだ。しかし、今飲んでいるから、急にやめたら禁断症状を起こす。社会党なんかも言っている。急にやめるのはいかぬ、禁断症状を起こすから、少しずつ飲みながら治していくのだ、したがって、飲まない方がいいのだ、防衛力はない方がいいのだということですから、一%枠を論ずることがおかしいと思いますが、そういう三つに分かれると思うのです。日本防衛力というものは、自分の体にとって必要不可欠な薬であると考えるか、楽しみのための酒、余計飲んだら毒になる、害になる、こういうものと考えるか、もともと毒であるかと考えるかの、日本防衛に対する基本的な考え方がそこで食い違っているわけです。これは薬だと思うか、酒だと思うか、麻薬だと思うか、この認識の一致しない限り、一%がいいの悪いのということは非常に枝葉末節の議論なんです。しかし、我が国を守り、国民を守るためには絶対に薬は飲まなければならない。良薬は口に苦しと言う。いかに苦くともこの良薬を飲んで体を健全にしなければならない、これが私の防衛に対する基本的な考え方でありますから、一%で限ろう、そういうようなことはおよそナンセンスであるということを申し上げたのはそういう意味でございます。  そこで、そういうことから踏み込んで申し上げると、例え話は非常に冗談みたいになりましたので今度はもとへ返しますが、今から五九中業をつくっていかれるわけでありまして、それについては継戦能力の問題とか、即応態勢の問題とか、抗堪性とか、あるいはC3Iというようなものを非常にバランスをとって、日本の限られた財政力の中で最も能率的、効率的な防衛体制をつくっていかなければならない、こういうことになるわけであります。そういうことをやっていくために五九中業をつくって、その総額を一応五九中業で決めるわけでありますが、これを策定して、その達成期間の中にそういうことをやっていくには、ばかげた基準でありますが、当面一%以内をめどとするような閣議決定を一応しておりますから、そういうことからいって、五九中業を完成することができると考えているかどうか、長官お答え願いたい。
  14. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五九中業の作業は、予算も成立しまして、私たち防衛庁内局、各幕とも比較的今熱心に作業いたしているところでございます。作業いたしておりますけれども、まだ基本的な部分についての議論も終わっていないところもございまして、現在のところ経費、規模等について、ここでGNP一%との関係でどの程度の数字になるのかというようなことを申し上げられる段階にはまだ至っておりません。
  15. 森清

    ○森(清)委員 しかし五六中業もやりその前もやり、一次防、二次防、三次防、四次防とやって、何兆何千億というようなことはすぐ頭に浮かばぬかもわかりませんが、我々は大蔵省の主計官じゃありませんから、こういう税金を取ったら大体どれくらいになるとか、これを取ったらどういう財政になるかということをそんなに細かく計算して判断じて財政政策を我々は決めているわけではない。あるいは将来計画を見るときも、これは政治家としてそういう大綱さえつかめばいいのであって、そういう中で今言ったようなことを言いますが、政治問題になっていることですから長官もなかなかお答えにくいことはよくわかります。私は、長官、今言われたことはよくわかります。しかし、一%でまあまあ何とかスムーズに容易にやっていける、このようにお考えですか。
  16. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五九中業におきまして「防衛計画の大綱」の水準に到達することを期するようにという前栗原長官の指示のもとに今作業をやっているわけでございます。その指示の精神を守ってやってまいりますと、正面と後方と十分なバランスをとっていかなければなりませんし、それから特に作戦用航空機の機数なんかは「防衛計画の大綱」の別表の数とかなり乖離がございます。そういった作業をこれから詰めてやっていくわけでございますし、またこういう財政の厳しい世の中でございますので、防衛の分野だけが聖域と私たち考えておりませんので、今後とも精いっぱい懸命の努力をしてまいりたいと考えて作業いたしておりますけれども、直観的に今の作業の様子を見ますと、一%の範囲内でやるということは容易なことではないな、そういうことになるのではないかなというような感じがいたす次第でございます。
  17. 森清

    ○森(清)委員 現実政治の中にあって大変困難なことであろうと思いますが、問題は、そういう数字遊びではなくして、我が国防衛するためにどのような手段方法があるかという問題であります。私はまたそういう観点から御質問を申し上げたわけであります。ひとつ政府におかれてもそういう観点をしっかりして、そして、最初に申し上げましたように、防衛の問題は専門家だけではいけない。必ずそれは国民に知らせることが大事だろうと思うのです。  戦前の我が国の不幸な歴史を考えましても、我が国には日露戦争を勝利するまでは完全なシビリアンコントロールが効いておったわけであります。というのはなぜか。そのときの総理大臣以下各閣僚、文民は出身は武士であります。したがって、戦争ということについて深い認識があった、したがって、シビリアンコントロールができたわけであります。憲法とかなんとかそういうことではありません。そういう見識があったからシビリアンコントロールができた。国民一般に知らされたかどうかということについては問題がありますが、少なくともシビリアンコントロールは効いておった。ところが、日露戦争後、大勝したかのごとく錯覚をして、その後に起こっている事態というのはもちろん第一次大戦後の軍縮時代、そのときに軍人というものは非常に惨めな思いをした。そういう中にあって国民軍事の勉強をするということはなかった。大学軍事学の講義のないのは日本だけであります。我々も軍事学の講義は受けなかった。軍事学の講義、軍事情勢認識なくして、なぜシビリアンコントロールができましょうか。私はそういう点について、例えば、これも孫引きになるから引用はやめますが、旧軍人からの率直な意見、要するにシビリアン、政党、政府がどのような方針で国を守るのだということを明示してもらいたい、そうしてそれをするにはどのような手段、方法があるかを我々に任せてくれ、しかしそれにはこういう金がかかります、こうしなければならないということを我々申し上げます、それを採用することができるかどうかはまたシビリアンで決定してくれ、こういうことをはっきり言っている。それは正常なる軍人のあり方であり、そうしてまた、政治にかかわらないというのが軍人のあり方であります。  ところが、我が国ではそのような判断をするだけの政治がない。これは今だけじゃないのです。昭和になってから考えましても、政党政治がようやく根づこうと思ったときに、政党が、軍事面の余り知識もないにもかかわらず、自分の党派のためにこれを利用した。一番いい例はロンドン軍縮会議、補助艦の削減の軍縮会議。  これは海軍軍令部の総反対を押し切って調印をいたしました。そうしてその批准に至る間に軍令部は非常に反対をした。軍令部全体じゃありません、軍令部次長であります。そうしてそれが政治家に働きかける。濱口内閣であります。それを取り上げたのが政友会であります。  政友会はどういう論理を用いたか。政友会は濱口民政党内閣を攻撃するために——憲法で統帥権の独立などということは、そのときは解釈としても余り確立していなかった。ところが、海軍あるいは陸軍が統帥権の独立という憲法解釈を持ち出し始めた。そうして、これは軍令部が反対する軍備縮小に賛成する政府は何事であるか、これは統帥権の干犯である、こういう議論を政友会が用いた。それは本当にそう思ったのじゃなくして、民政党をいじめるためだけに言ったかと思います。  ところが、それを国会で堂々と論議し、そういうために大混乱も起こっております。これは一党派のためにそういう統帥権の独立というような問題を持ち出してまで、相手政党をやっつけるためにやる。本当の国防ということに知識があれば、そういうことを言うはずがない。そういうことが行われた。それで軍人もだんだん、こういう政党に国家の安全を任しておいたらいいのだろうか、これは大変なことだ、こんな政治家に任しておられるか、こういう気持ちになったことも私は一つの歴史的な事実だろうと思います。  そういうことのないように、軍人というのは純粋に日本国家を守ろうと思っているのだ、その軍人をちゃんと使えるだけの政治的見識がない限り、私はシビリアンコントロールというものは貫徹をしない、このように考えるのでありますが、それをも含めて要望いたしまして、ひとつ若い防衛庁長官に今までのありきたりの、先ほど私が読み上げたような、昔こう言ったから、解釈でそのとおりやるのだとか、これは今言ったように、裁判官か事務屋に任しておいたらいいんです。我々政治家は、いいことなれば、きのう言ったことでも改める必要があれば改めたらいいんです。昔にこう決めたからやらなければいかぬというようなことは裁判官だとか役人がやればいいことだ。我々は、政治家国家のために何をすべきかということを考えて、勇断を持って、そして国民に問いかけ、国民的合意を得ながら前進をしていく、こういう姿勢がなければならない。そういうことを要望いたしまして、一応防衛庁に対する質問はこれで終わりまして、あと法制局にお尋ねしたいことがございます。
  18. 加藤紘一

    加藤国務大臣 森委員から防衛政策のあり方、内容それからそれの進め方についての御意見の開陳がございました。  私たちも、防衛基本政策、幾つかございますけれども、その中の最も重要なものの一つに文民統制ということがあろうと思っております。このシビリアンコントロールというのはいろいろな広い意味を持つと思いますけれども、私たちは、それぞれの経過を経ながらも最終的に一番重要なのはこの国会におけるシビリアンコントロールであると思いますし、その背後には国民による防衛政策のコントロールだと思っております。国民が納得できない防衛政策は、それはいかなる装備を行っても無力なものだと思いますので、そういう意味での国会における防衛政策論議には、私たちはしっかりとした資料を出さなければならないと思います。  そうしますと、例えば予算委員会なんかでも何度も言われたのでございますが、いろいろ防衛庁は、その点は秘密であるとか軍事上のことだから申し上げられませんということを申しているではないかというおしかりがあるのかと思います。しかし、もちろん防衛庁の中にはそういうものが数多くありまして、そしてそれは性格上、やはり公開することはお許しいただかなければならないものだと思います。したがって、その際に私たちが、何でもかんでも、防衛政策基本にかかわるような部分でも、これは機密上だといってやってはいけないのであって、どこまでが国会で御論議いただく部分で、どこまでが私たちは一般に公開できないものとお許しをいただくものか、その区別をするときには、私たちは惰性に流れずに、強靱な精神力をもって一つ一つを判断しながら、できるだけ御議論をいただくということであろうと思います。  私たち、最終的にはシビリアンコントロールの最後の場は国会だと思っておりますので、その場面での質疑の質が下がったならば、多分それはまた制服組の方も納得できないことになるだろうと思いますので、そういう議論の質的向上のために私たちは精いっぱいの努力をしていかなければならないのではないか。その意味では、森委員の御質疑は全くそのとおりだと感ずる次第でございます。
  19. 森清

    ○森(清)委員 それでは法制局にお願いします。  そのような我が国防衛のために根幹的な力である、現在、自衛隊でありますが、これが合憲であるのか違憲であるのかということが争われている。そうして国会においても、野党第一党は違憲である。大変なことであります。世界じゅうの国で、自分の国を守る軍隊が憲法違反の存在だなどという主張が国内にあるということは日本だけです。大変なことだと私は思うのです。  そこで自衛隊が、私はもちろん合憲であると思っておるわけでありますが、裁判例を見ますと、御存じのとおり、これは簡単に言いますが、長沼訴訟では札幌地裁は学界の多数説に従って違憲。それから札幌高裁は憲法判断をせず。それから百里基地の水戸地裁は大体政府説に従って、そうして統治行為論なんて多少入れておりますが、これは合憲。そして東京高裁は憲法判断を回避。細かい内容は別であります。  そこで、司法判断はそういうふうであるということをまず申し上げておきたい。その中にあって、いろいろな高裁判決の中にも、合憲論もちゃんと一理がある、違憲論もちゃんと一理ある、どっちか言えない、せいぜい言っているのはどっちか言えない、しかし単純明快に違憲だと言えないんだからいいじゃないか、こういう程度の司法判断が大体その四つの、まあ三つになりますか、裁判所の意見、それ以上の判断は出ておらないわけでありますが、その程度の判断しか司法判断としては出ておらない。  御存じのとおり、学界は圧倒的にこれは違憲説であります。  私は、自衛隊、これが憲法に違反するかどうかということを解釈する基準は四つに分類しておるわけでありますが、その一つは、これは後でまた申し上げますが、高柳という東大の教授がやっている説であります。これは後で申し上げましょう。それからもう一つは芦田元議員が主張した説であり、それからもう一つは政府の説、これが合憲論、三つになる。それから大多数の学説、そして社会党がおとりになっている違憲説であります。  そこで、学者がどういう感覚でそれを受けとめているかということを申しますと、これは学者自身の調査もありますが、私自身も調査をいたしましたら、もちろん違憲説が圧倒的でありますが、合憲説も、政府説を支持する人はほとんどいない。高柳説、芦田説というのが多いわけであります。  それから自民党国会議員に私はこれをアンケートを出しましたところ、高柳説を支持する人が一七%、芦田説を支持する人が五〇%、それから違憲説が五%ありますが、政府説は二八%しか支持してない。自民党国会議員です。  これほどさように政府のとっている解釈というのは支持がないんです。支持がないということは、非常に奇妙な論理を使っている。憲法に書いてある、あの条文どおり書いてある精神、我々の生存と安全をとこか他国民、諸国民ですか、諸国民の善意と何かに、信頼に依存して生きようと決心したのですが、自分で何かやってやるのじゃない、人様を盾にいきましょうと前文に書いてある。それから九条には、陸海空軍その他の戦力は保持してはいかぬと書いてある。これをそのまま素直に読めば、これは明らかに自衛隊は憲法違反だ。どうしようもない。  そこで、私の説は高柳先生と同じです。およそ国家としてそのようなことはあり得ないことを憲法に書いてあるんだ。ということは、憲法というのは一般の民法だ刑法だという法律と違って、政治宣言をすることも憲法の一つの考え方なんだ。したがって、これは百年、千年とは書いてありませんが、私の説によれば、百年か千年、一万年先に実現する目標としてそういうことを掲げてあるにすぎない。したがって、現実のいわゆる法規としての適用はない。憲法九条のようなこういうことはないんだ。これは高柳説であります。私はそれをとるわけであります。  ところが芦田説というのは、これは簡単明瞭でありますが、そして自民党にもあるいは学界にも支持者がありまして、自民党には圧倒的支持を得ている考え方でありますが、一項では、これは国際紛争を解決するための戦争はしてはいかぬということですが、これは侵略戦争だ、自衛戦争は構わない。大体これは多数説でありますからいいんであります。二項で、前項の目的を達するため陸海空軍その他の戦力は保持してはならぬと書いてあるんだから、侵略戦争のための軍隊は持ってはいけないが、自衛のための軍隊は持ってもいいんだというのが芦田説であり、先ほど言ったように自民党議員の半分はこれを支持している、こういうことであります。  ところが、政府の解釈はそれと全く違って、自衛のためといえども陸海空軍その他の戦力は持ってはいけないんだ。条文どおり解釈している、そのとおりだと思うのです。それじゃ現状の自衛隊はどうだと言われますから、苦し紛れに珍妙なる解釈をしておる。これは私はどうしてもわからない。だから学者の中にも支持する人はおらない。自民党の中にもほとんど支持する人がいない。珍妙なる解釈をして合憲だと言っているわけです。その珍妙なるゆえんを今から申し上げます。こういう珍妙なことをずっと続けてきたんですから、よっぽど頭のいい人がやったのか、我々とは論理構造の全然違う人が解釈しているんだろうと私は思うのですが、私の方が間違っているか政府が間違っているか、今から質問をしたいと思うのです。  まず、憲法では陸海空軍その他の戦力は禁止されております。これは認めるわけですね。したがって、今の自衛隊は陸海空軍その他の戦力じゃありません。その禁止している陸海空軍その他の戦力というのは、自衛権はあるんだから、自衛のために必要最小限度以下のものであるからいいんです、こう言っているんです。逆に言えば、自衛のための必要最小限度を超えたら憲法違反ですと言っている。いいですか。自衛のための必要最小限度は超えてないからいいんです、こういうことを言っている。これはどうなんですか。自衛のために必要な限度というものは少々幅があると思う。その一番最低の幅を下回ったら自衛はできないんです。自衛のために欠陥がある。自衛のための必要最小限度を超えては憲法違反、下回ってもおりませんというのは、これは法制局じゃないかもしれませんが、政府はそういう解釈をしておる。これを、私は先ほど酒だ薬だと言ってこっちから冷やかされましたが、またひとつ薬で例を出します。  ある薬を開発して、そうしてその病気を治すには、その人のために必要最小限度の薬の投与量あるいは注射量が何グラムであります。それ以下なら効きません。必要最小限度の薬でありますからそれ以下なら効きません。しかし、それを超えたら致死量です。憲法違反です。死んでしまう。これが政府の解釈する、自衛隊がいかなる戦力を持っていいかについての、憲法はそう命じているんだということを政府——政府がというか法制局がそういうことを言っている、そのことが論理的に可能なのか。私は不可能であると思うのですが、その点について法制局の見解を求めます。
  20. 前田正道

    ○前田政府委員 ただいま御指摘の点は、憲法第九条第二項にございます「前項の目的を達するため、」という文言をどのように読むかということによりまして解釈が分かれるのではなかろうかと思います。憲法第九条第一項では自衛権は否定されておりませんし、自衛権の行使も否定されていないわけでございますが、それを前提といたしますならば、自衛戦争というものもそこでは直ちには否定されてないという議論も出てまいると存じます。しかしながら、政府といたしましては、その「前項の目的を達するため、」という文言を、一項全体を受ける趣旨、つまり憲法第九条第一項では、国際紛争を解決する手段といたしましての戦争、武力による威嚇、それから武力の行使を放棄しておりますけれども、先ほど申し上げましたように、自衛権は否定されておりませんし、自衛のための必要最小限度の武力の行使は認められているということを受けまして、必要最小限度のものは認められる。つまり、憲法第九条第二項が戦力は保持しないと言っているのは、第一項を受けまして、自衛のために必要最小限度を超えるものが違反である。つまり、憲法の法規範といたしましては、抽象的に申し上げますならば、自衛のための必要最小限度を超える実力である、こういうふうに解釈しておりますので、先ほど森議員が御指摘になったような考え方になるものでございます。
  21. 森清

    ○森(清)委員 なるということは、およそ不可能な基準を政府は続けておる。これは大体昭和三十年ごろからやっている。昭和二十九年には必要相当量の武力を持つことは構わないという解釈をしておった。鳩山内閣だ。ところが、その後変えて、必要最小限という、およそ実行不可能な基準を政府は今まで何十年言い続けている。こういう不誠実がある。まだほかにもあります。幾らでもあります。きょうはあと十五分くらいしかないのであれですが、これを一時間くらいやったら、今まで政府が憲法九条解釈についてやっていることはいかに常識外れであるかということがよくわかります。  もう一つ常識外れをやります。自衛権発動の三原則というのがあります。これは日本が、防衛出動をしたりあるいはその他いろんなときに外敵に向かって大砲を撃ったり、ミサイルを攻撃したり、飛行機で襲撃したり、こういうような自衛権の発動、武力の行使であります。これをやるには、これを発動するには急迫不正の侵害があること、それから国民生活が根底から覆される、幸福追求の権利とかなんとかいろいろ憲法で保障されている国民基本的権利というものが根底から覆されるような急迫不正の侵害がある、こういうときは必要やむを得ない。それ相応の手段でやる。こういう自衛権発動の三原則があるのでございます。したがって、海外派兵はできませんの、あれはできませんの、これはできませんのと言っておる。あるいは集団的自衛権はできませんの、こういうことを言っているわけです。  さてこの三原則、本当にそうでしょうか。きょうは時間がありませんから、また端的な例を一つ出します。我が国昭和十六年当時、アメリカと非常に緊迫した国際関係にありました。そして十二月八日を期して開戦通告をすると同時に真珠湾に襲いかかるつもりであったが、手違いによってそれは前後いたしました。我が国はそういうことをやったわけです。したがって、よその国がそういうことをやるであろうということは覚悟しておかなければならない。そうするとどういうことになるか。ある国が日本に対して非常に緊迫した状態であって、防衛出動を発令するということは——いや、そういう状態になったらもう一カ月、二カ月前から防衛出動を発動しておくということなら、それは問題ありません、これは日本で言う開戦通告と同じことになりますから。向こうからやるかやらぬかわからぬのに、こっちが防衛出動を発動するというのはなかなか政治的に難しいんじゃないかと思いますが、防衛出動の発動がないという状態で敵の飛行機が例えば最初にレーダーサイトをつぶしに襲撃をしてきた。今の戦闘爆撃機は大体マッハ二であります。そうすると、マッハ一というのは秒速で三百四十メートル、一分間に二十キロ、一時間に千二百キロ走る。マッハ二ならその二倍走るわけです。そういうものがレーダーサイトに襲撃してきた。仮に対岸から来たって二、三十分で来るわけです。それで襲撃してきた。そうすると、レーダーサイトを防衛している短SAMなんかあるんでしょうが——今ないですね、レーダーサイトは防衛してない。短SAMやなんかやったとする。そしてそれは発射できる。これは自衛隊法九十五条というものがあって、武器が、レーダーサイトも武器考えて、武器がやられるときには反撃していい、こう書いてあるから、それはできる。ところが、さあ、そら来たと言って、ほかの航空基地から戦闘機を発進させて、それを追い払うとか追撃するとか、こういうことは防衛出動を発動しておらなければできない。防衛出動を発動して初めてできる。そうすると、防衛出動を発動するためには国会の承認が要りますが、緊急のときは国会の承認が要らない。しかしながら、そういう事態を知って内閣総理大臣が国防会議にかけて、そうして防衛出動を発令して防衛庁長官に命ずるというようなことには、どう考えても、そこで会議をしておっても数分かかると私は思うのですね。数分というのは今の戦闘機においては今の板付の基地、そこから飛んでいく時間なんです、数分というのは。普通考えれば小一時間かかるんじゃないか、どんな手続をしても。そうすると、悠々と全部爆撃して悠々と引き揚げていく、それから後発進しても到底間に合わない。しかし、そうなるんだがどうかといったら、そうなってもやむを得ませんというのが要するに自衛権発動の三原則、あるいは自衛隊法の解釈からもうそうなるのはやむを得ませんというのが法制局の見解のようでありますが、それに間違いないかどうか答えてもらいたい。
  22. 前田正道

    ○前田政府委員 ただいま御指摘になりました問題は、先年問題になりました奇襲対処の問題の一環かと存じます。  奇襲対処につきましては、防衛庁の方で法的側面を含め、慎重に検討することとしたいとされているところでございますので、その結果を待っているところでございます。
  23. 森清

    ○森(清)委員 私も役人をやりましたので、ああいう答弁の仕方というのは先輩から大いに訓練を受けまして、難しいことをやられるとああいうふうにはぐらかし答弁をして延ばすという訓練技術は私もよく受けております。したがって、それは私には通用しません。私が聞いていることに答えてもらいたい。防衛庁がどう検討しようと、防衛出動発令前に反撃ができるかどうかと聞いている。
  24. 前田正道

    ○前田政府委員 防衛出動下令前におきましては、武力の行使ができることにはなりません。
  25. 森清

    ○森(清)委員 そうすると、いかに防衛庁で検討しようと何しようと、私は憲法なんて改正しないでもできると思うが、法制局の今の頭のいい人の解釈では、憲法がそうだと言っているわけですから憲法を改正しなければそれは対応できない、防衛庁で何ぼ研究して——防衛庁が研究したから憲法なんかどうでもいいというなら、これは軍部独裁ですからそうはいかない。何ぼ研究してもそういうことには対応できない。我が国はそういう状態に対応——これは今非常にわかりやすいから奇襲問題だけやったのですが、これは現実防衛出動発動しても、あといろんな問題がある。今の法制局の見解に従っては私の解釈ではほとんど戦闘不能です。  いろんな問題、きょうはそれだけで一時間でも二時間でも私は問いただしたいのですが、きょうはそれ以上もう——あと時間四、五分ありますからやりますが、そういう解釈を長年やってきて、そして、これはなぜやったかというと、こういう闘士がおられるから、こういう闘士に突っ込まれるとぱっと後退する……(「紳士だ」と呼ぶ者あり)紳士の方が、日本は非武装であり、戦争よ起こるな起こるなど神さんにお願いしておれば戦争は絶対起こらない、こういう信条、信念の持ち主が、あるいは日本を非武装にしておればどっかの国に早く占領されて簡単に制圧されるからその方がいいと思っているのか、そのどちらか知りませんが、そういう人たちかどうか知りませんよ、それは相手の心の中ですから知りませんが、そういう人たちに押されて、そして、要するに日本が実際上、先ほど言ったように、自衛力も私は非常に不備だと思いますが、それはハードと言えばソフトの方、いわゆる法制面でもほとんど今の法制局のような憲法解釈をする限り、現実には戦争は行えない。  そこで、私は問題を一つ指摘しておきたい。こういう問題について現職の法制局の人はああいう答えしかできません。OBの人、やめた人、こういう人たちに話しすると、それはそう言っているだけで、いざとなればいざですよ、こういうことを言う。これが私は最も危険な考え方であると思う。ヒトラーです、独裁政権をつくり上げた。彼、ワイマール憲法の規定に従って解釈を変えながらやったのです。いざとなればいざよでやったのです。ワイマール憲法というのは世界に冠たる民主主義憲法であった。憲法をいざとなれば破ってもいいんだ、こういうことがあって憲法は守れますか。刑法だとかそういうものは、人を殺したら死刑に処すという規定があれば、警察官が捕まえ、検察官が起訴し、裁判官が死刑を宣告して、そして刑の執行吏がちゃんと死刑にしてくれる、こういう担保があるからいいのです。憲法などというものはそういう担保がないのです。担保は何か。国民はすべて憲法を守ろう、政府はもとより守ろう、国会はもとより守ろう、この意思のみが憲法秩序というものを支えているのです。これを破ろうとしたら幾らでも破れる。  ところが、いざとなれば憲法なんかどちらを向いておってもよろしい、やりますよ、これは昔の、戦前の軍部の思想であります。そういう危険な思想が一般の国民の中にもあるのじゃないか。これは私は憲法論をすると音の一番心配している点であります。しかも、それが正常なときに議論すればまだいい。非常な危急存亡のときになってそういうことを起こせば、今のようにいざとなればいざよ、憲法なんかどっち向いておったってやることはやるんだ、こういうことに政府国民もなったときに、我が国の秩序というのはどうなるんですか。このせっかく築き上げた民主主義体制というのはどうなっていくのですか。そういう意味において、憲法が悪ければ憲法を改正して、そうして有事立法が整備をされていなければ有事立法を整備する、そうして整然として憲法秩序に従って戦争も行う、防衛も行う、こうでなければならないと思うのであります。法律はどっちを向いておってもやることはやるんだ、こういう思想がある限り民主主義というものは成り立たない。独裁国家なら成り立ちます。民主主義というのは、国民全体がその秩序を守ろうという意思の上において初めて成立するのであります。  大戦後に多数のB、C級戦犯が処刑をされました。この人たちは捕虜を虐待したかどで処刑されたんです。そのとき帝国陸軍、帝国海軍は国際法というものを余り教えてなかった。捕虜というものはどのように扱わなければならぬか、国際法で決まっております。それを教えない。したがって、そのときはそのときよで憎らしければ殺してもいい、こういう気持ちになったのも、私は戦争から出たやむを得ぬことだと思います。しかし、法律は厳として守らなげればならないのです、憲法は守らなければいけませんよ、国際法は守らなければいけない、国内法は守らなければいけない、こういうことがあってこそ整然とした国家体制ができるのじゃないか。いざとなったらいつでも破ってもいいような憲法、いざとなったらいつでも破ってもいいような法律、こういうもののもとにおける社会というものがいかに脆弱なものであるかということを私は非常に心配をするのであります。  そこで、例えば有事法制についても防衛庁はなかなが遅々として進まない。平静のときに、どのような事態になったらどのように法規に従って行動するか、そうして戦争のときといえども——昔は大体日本国外で戦争をやったんです。国内が戦場になるということはほとんど考えてなかった。ところが、今や日本戦争をするということは全部国内でやるわけです。そういうときにどういう形で、そしてどういうものになればどういう手続でどうなって、しかも戦争は遂行できるように、こういうことを今からルールを平静なときにつくって、そしてそれを防衛庁以下その職員、職員というのは要するにユニホーム、これに周知徹底さしておく、これが非常に必要なことであります。例えば、法制局では、日本国には交戦権が認められておりません、したがって日本自衛隊は軍隊であるかどうかはどっちとも言えますというようないいかげんなことを言っている。したがって、それじゃ戦時国際法は日本軍には、日本陸軍というか自衛隊には適用になるかどうか、適用のあるのもありますし、ないのもあります。こんなことを言っている。  私は、これは答弁は要りませんが、そうしたら自衛隊において交戦法規の中でこれは自衛隊には適用になっている権利としてあるいは義務があります、この国際法は適用はありませんというようなことを教えているかどうか、少なくとも将校には教えているかどうか。教えてないだろうと思う。ということは、どの国際法が適用になるかどうかを法制局自体がわからないというのです。私が質問してもわからないから勘弁してくれ。そんなことで今度は第一線に立った将校がどうしてわかりますか。国際法がどうなっているか、それをわからずに戦争に突っ込む、防衛戦争をやるということはいかに危険なことであるか、B、C級戦犯を出す原因だと私は思うのですね。  そういうことを考えて、私は、前半に申し上げた防衛力の整備、これは非常に緊急の課題である、もう少しやってもらいたい。それとともに、今の政府のようなわけのわからない憲法解釈でなくして、すきっとした憲法解釈、それが不可能なら憲法改正、有事法制の整備、それから今言った国際法が適用になる、ならないということをはっきりして、第一線の将校に至るまでそれを周知徹底、教育する。あるいは国民も、ジュネーブ四協定などは条約の中にそういうことは国民に周知徹底させる義務があると書いてある。それをほとんどやっておらない、我々はそういう状態にあるんだ。これをもう少し積極的に我が国を本当に守るその体制があってこそ他国の侵害を受けない。自衛力をちゃんと持つ、そして体制をきちっと整える。日本は攻めたってだめなんだ、こういう気持ちを相手方に起こさせることのみが戦争抑止力であり、それは平和を求める現時点における唯一の道であるということを強調いたしまして、御答弁は要りませんから、私の質問を終わります。
  26. 森下元晴

    森下委員長 上田哲君。
  27. 上田哲

    ○上田(哲)委員 防衛庁長官、中国へはいつ行かれますか。
  28. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私自身が中国に行くことは、まだそういう計画が現在ございません。夏目事務次官に来月五月に中国を訪れて中国側と意見交換をしてもらいたい、こう思っております。
  29. 上田哲

    ○上田(哲)委員 安保委員会ですから、いらっしゃる計画があるのなら、七月ごろとも言われているわけですから、あるならはっきり言ってください、議論がどうも二回しなければならぬことになりますから。行かれるのでしょう。まだ行くか行かないか本当に決まっていない、決まっているけれども言えない段階なのか、決まっていないのか、その辺はひとつ皮をはいでやってください。
  30. 加藤紘一

    加藤国務大臣 非公式に中国側から一度長官としておいでなさったらということは言われておりますけれども、私自身の訪中は、皮をはいで申しましてもまだそのことを決めておりません。夏目次官の訪中を終わった段階で次官の報告を待っていろいろ検討してみたい、こう思っております。
  31. 上田哲

    ○上田(哲)委員 招待があってお受けになったんじゃないのですか。
  32. 加藤紘一

    加藤国務大臣 受諾はいたしておりません。
  33. 上田哲

    ○上田(哲)委員 できれば行きたいという意向があるわけですね。
  34. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私は、国交の樹立のある、そして、最近友好関係が増進しております中国と防衛面につきましての情報交換とかそれから意見の交換をしておくこと、国際情勢についての話し合いをしておくことは有益だと思っております。そういう意味で、まず夏目次官に行っていただきたいと思っております。夏目次官は戦後の防衛政策をずっと三十年ほど担当した人でございますので、その次官が、事務当局であれ事務の最高責任者が行くということは非常に有益なことだと思って、私から行ってもらうことを夏目次官に指示いたし、中国側が招待もございましたので行くことになりました。
  35. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ということは、夏目次官を前ぶれといいましょうか前段として、できれば長官自身の訪中ということは気持ちの中にあるということでいいのですね。
  36. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たち防衛庁とそれから中国側の防衛責任者と話し合うことは、私は有益だと思っております。そこで、私が行くかどうかにつきましては夏目次官が帰ってきてから判断する。そのためにも行ってもらうというつもりでございますので、ここでそういうお答えをすることは夏目次官の訪中の意味がなくなってしまいます。
  37. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは随分官僚的なもので、せっかく若くて抜てきされたのだからもう少し政治的にはっきり方向を出されないと、夏目次官が行く意味がなくなるというか、行くか行かないかわからないのじゃ夏目次官の行く意味がなくなっちゃうじゃないですか。だから、まあ行くのでしょう。私たちは、警戒しないでいいのです、打っちゃいかぬという議論を今展開しようと思っているわけじゃないのだから。(「行きなさい」と呼ぶ者あり)行きなさいと言っているわけじゃないのだ。しかしそれは、行くだろうというみんなの推定がある中で、わしは行くか行かないかわからぬよなんていうことを——ほかでは言っていても、国会へ来て言いにくいということだと、これは先ほど来の議論が死んでしまいますよ。やはり安保委員会というのは国民に開かれているわけですから……。  もう一遍整理し直して言いますが、夏目次官が行かれる、それは当然中国側としては防衛庁長官の訪中を前提としての招待であるということはあなたにわからないわけがないし、できれば夏目次官の訪中によって機が熟せば行こう、行った方がいいなというふうに思っているということなんでしょう。
  38. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私は中国との話し合いをやった方がいいと思いますし、私自身も中国の仕事をかつてやったこともあるものですから、できれば防衛庁長官として中国を訪れるということができればいいなと思っておりますが、いずれにしても最終的な判断は夏目次官が行ってからのことにしたいと思っております。
  39. 上田哲

    ○上田(哲)委員 まあそれでいいでしょう。  行くとなると、初めてのことです。まあ次官が行くのでも初めてですから、これは意味を持ってくるわけですね。これは、できれば行きたいという気持ちもあっての話だから、その仮定の上でもいいのですが、今日まで日中の防衛関係というものは、医療とか人事とかというレベルであった。やはり防衛庁長官、これは次官が行くだけでもそうですけれども、当然に軍事面での協力関係というものがより緊密になっていく、こういうふうに考えられると思います。そういうふうな御見解ですか。
  40. 加藤紘一

    加藤国務大臣 軍事面の協力というような意味ではなくて、国際情勢、それからお互いの防衛政策考え方について意見の交換をするという範囲のものに限られると思います。
  41. 上田哲

    ○上田(哲)委員 限られるということは、非常に大事なんですが、限るのですか。私は当然そうした事態が展開されれば、普通にいけばそうした面への拡大になる。防衛次官なりあるいは防衛庁長官なりが向こうの招待を受けてあちらへ行かれるということになれば、自然の流れとしては当然医療、人事の関係というものにはならない。制服を含めた軍事面の協力体制というものが進んでいくというのは、これは国際的な常識なのであります。国際関係というものであります。だから、限るということになると、であるけれどもそこまでにとめておくという積極的な意思になるわけですが、そういう御意思ですか。
  42. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちの国が中国と防衛面についての情報交換、意見交換をするとしても、それは例えば私たちの国とアメリカとのそういった関係等から比べるとおのずと限界があることだと思っております。
  43. 上田哲

    ○上田(哲)委員 比較をしてくれと言っているのじゃないのです。あなたが行かれるということになる、あるいは夏目次官が行かれるということになることの意味は、当然軍事面の協力関係というものが一歩進むことは当たり前なわけなんですね。そうなっていくのは当たり前なんだと思っているのだが、そうはさせないという意味をお持ちなんですか。
  44. 加藤紘一

    加藤国務大臣 軍事面の関係の強化という言葉で上田委員がどういう概念をお持ちなのか、ちょっとわかりにくいところがあります。ありますけれども、私たちが今考えておりますのは、当面防衛政策面における意見の交換、情報の交換、見方の交換、そういうところに限られるべきものだと思っております。
  45. 上田哲

    ○上田(哲)委員 例えば制服ということを言っているのですけれども、今おっしゃったのでは、防衛面における意見の交換というのは、これは医療、人事面の交流よりは進んでいるということになる。だから、まあうなずいていらっしゃるからそれでいいですが、そういうところに行くだろうと私は言っているわけです。  そうすると、その中で具体的に護衛艦の中国寄港ということもうわさされておりますけれども、それは計画の中にあるわけですか。
  46. 加藤紘一

    加藤国務大臣 一部の新聞にその記事がある朝ありまして、私も驚きましたし、幕の方も驚いたようでございます。
  47. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ないということですか。
  48. 加藤紘一

    加藤国務大臣 全くございません。
  49. 上田哲

    ○上田(哲)委員 全くないということですか。あるとなれば、寄港するということになれば、これはまた長官や次官の訪中とは全く次元の違う、具体的、物理的な軍事交流になる。練習艦隊が行く途中で寄るのだなんということをどう言ってみたって、これはスポーツの交流とは意味が違うのでありまして、開闢以来そういうことはないわけですし、当然それは、日本護衛艦の中国寄港ということになれば、これは極めて軍事的な意味を持つことになる。私はそういうふうに理解しています。ないとおっしゃるわけですから、ないならそういうことなんですが、あるとすればそういう意味を持つものだという意見については、いかがですか。
  50. 加藤紘一

    加藤国務大臣 現在その計画はございません。全くそれは新聞を見て私が驚いたような状況でございます。  将来そういう問題があった場合にどう考えるか、それはその寄港の仕方、その規模、どういう性格のものか、それによってケース・バイ・ケースに判断されるべきものであろうと思います。したがって、軍事面の協力とか、そういう言葉のいろいろな定義の問題にもなってくるのではないだろうかなと思います。
  51. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これはちょっと困るので、ケース・バイ・ケースと言ったって、軍艦が他国の港に入るというのは、ケース・バイ・ケースなんということはない。あるかないかということはゼロと百ほど違うわけですから。そういう寄港ということになってくれば、これは軍事協力面というのは百尺竿頭一歩を進めるということにならざるを得ない。ケース・バイ・ケースによってなんということは、それは航空母艦が大艦隊で入る場合と一隻の軍艦が入る場合は多少違うでしょうけれども、入らなかった場合と入る場合とは、これはケース・バイ・ケースと言うには余りにも量的な違い、質的な違いがあるわけですね。  だから、もう一遍聞きますけれども、日本の護衛艦が中国に寄港するということになれば、これは軍事意味は非常に大きい、これは当たり前のことじゃありませんか。
  52. 加藤紘一

    加藤国務大臣 たしか、詳しくは政府委員から申しますけれども、私たちの海上自衛隊が、例えば南米の国とかなんとかに友好訪問いたしておることもございます。それは別に軍事的な関係という意味ではないのだろうと思います。
  53. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは牽強付会でありまして、議論にならない、比較にならないことなので……。  では、もう少し視点を変えますけれども、ワインバーガー国防長官が昨年の五月に講演をされまして、米、中、日、韓、ここに非常に緊密な軍事協力体制があることが望ましいということを表明されておる。日米に安保条約があり、米韓に相互軍事同盟がある。その三角関係にもう一つ中国の軍事関係が加わるということを想定するとすれば、これは一つの対ソ包囲網的意味を持ってくることになる。長官は、そういうような対ソ包囲網的米、日、韓、中というような関係を希望されますか。
  54. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そういうものは全く考えておりません。
  55. 上田哲

    ○上田(哲)委員 アメリカにとっては、中国は同盟国ではないが大事な友好国である、こういう言葉ですね、日本と中国はそれに比べてどうでしょうか。
  56. 加藤紘一

    加藤国務大臣 友好国でございます。中国は、日本にとっての友好国でございます。
  57. 上田哲

    ○上田(哲)委員 アメリカとさっき比較がありましたね。アメリカは中国を、同盟国ではないが大事な友好国である、こう言っています。同じようなレベルの立場で、日本と中国の関係をごらんになるのですか。違うのですか。
  58. 加藤紘一

    加藤国務大臣 済みません、アメリカが中国についてどう言ったか、もう一回正確にお聞かせいただけますか。
  59. 上田哲

    ○上田(哲)委員 同盟国ではないが大事な友好国。
  60. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そういった言葉の定義の問題、これは実は外務省にお聞きいただいた方がいいと思うのですが、友好国であるけれども、特殊に、特別に大きな何か、同盟関係とか軍事同盟関係を持っておる国ではありませんから、私たちと中国は。だから友好国だけれども同盟関係の国ではないということでいいのじゃないかと思いますが、自信はございません。
  61. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それじゃ、自信がないから、今度アメリカへお出かけになったときに、ワインバーガーと会ったときにはその対中関係あるいは中国諮問問題を御議論、相談されますか。
  62. 加藤紘一

    加藤国務大臣 特にテーマとする考えはございません。
  63. 上田哲

    ○上田(哲)委員 アメリカ側の意向を打診する必要はありませんか。
  64. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちの外交政策、それから防衛庁長官としてどう行動するか、それから我が国防衛政策がどうあるべきか、近隣諸国との関係がどうあるべきか、私たち国が自主的に決めることでございます。
  65. 上田哲

    ○上田(哲)委員 当然だと思いますが、どうしてもつながってこなければならない問題が一つ、二つあるのは、先般、米艦が中国へ寄港する、この場合に非核が条件であるということを中国側の胡耀邦総書記が表明された。アメリカは依然として核、非核は言わないよということを訂正いたしましたけれども、この問題は日本の核、非核問題に大変大きな意味を持ってくる、つまり対米関係として非常に大きな意味を持ってくるわけですね。だから、私どもはそれに対して非常に大きな関心を持つわけでありますが、長官情報としては、中国へ入港するアメリカ軍艦は非核であることの確認は得ているのでしょうか。
  66. 古川清

    ○古川(清)政府委員 防衛庁としては、その点についての詳しい情報を得ておりませんので、答弁を差し控えさせていただきます。
  67. 上田哲

    ○上田(哲)委員 アメリカ側の立場に立つ限りは、核、非核についてはその存否を明らかにしないということになっておるわけですから、中国ならずともどこかの国に対してそのことを明らかにするということになるとすると、同盟国である日本としてはアメリカに対して大変物を言わなければなりませんね。したがって、まあ情報を得てないと言うのですから聞いてもしようがないが、近き将来訪米されて米国側と要談なさるわけですから、そうした問題については聞いていないということではなくて、その辺についてもしっかり確かめていただきたい。長官に確かめていただきたい、アメリカ側に。
  68. 加藤紘一

    加藤国務大臣 訪米の際のテーマとかなんとか、まだ訪米の時期も明確に決まっておりませんので、まだ考えておりません。そこで、その際にアメリカ側に——確かめるという意味がちょっとわからないのでありますけれども、私たちとしては、アメリカの核政策は、核を有しているか有していないか常に明らかにしないのが政策であるということを聞いておりますので、それを確かめる、それを中国に行くときには本当にどうなんですかということを聞いても、それはアメリカは当然明示しないことが従来のアメリカの政策であるということを言うにすぎないだろうと思っております。
  69. 上田哲

    ○上田(哲)委員 どう言うにすぎないかはわかりませんけれども、少なくとも中国に向かって、そういう話の情報が食い違ったわけですね。我々は隣国として非常に大きな関心を持っている、これは当たり前のことだ、日本国会として。それに対してどうだと聞いたら、わからぬと言うのだから、わからなければアメリカに行って確かめてくれと言うのは国会の行政府に対する当然な注文でありまして、これは向こうがどう言うだろうということを想定問答で聞いているわけじゃないのです。向こうへ行ってそのことを確かめていただきたい。確かめたくないと言われれば、これは重大問題になる。
  70. 加藤紘一

    加藤国務大臣 いずれにいたしましても、御質問意味は、アメリカに行ったときに、例えば中国側からそういう申し出がありましたかということを情報として確かめるということなのか、仮にそういう場合にアメリカはどうするかというような話なのだろうと思いますが、私たちはそれをテーマにするつもりはございません。会談の中で出てきたら、それは聞いてみたいとは思いますけれども、特に私たちがそれをテーマにするというより、この問題は日本では外務大臣がやっておるテーマでございますので、防衛庁長官として余り踏み込みたくないと思っております。関心は持っておりますけれども、どちらかというと外務大臣の話であろうと思っております。
  71. 上田哲

    ○上田(哲)委員 あなたが外務大臣でないだけではなくて、日本防衛庁長官であることを放棄しているという発言になりますね。大変残念であります。  時間が制約されていますから、むだな質問を省いて先に進みます。  五九中業について話を聞きたいんだが、前もって伺っておいたら何にも言わないと言うから、時間の省略をいたしますが、今回の貿易摩擦でワインバーガー国防長官が松永駐米大使に対して、日本防衛努力が目に見えるものでなければならぬということを強調されておるわけです。このことの中には、この貿易摩擦が防衛問題、つまり日本防衛費の増高であるとかあるいは米兵器の購入であるとか、こういう問題に波及するという問題の危険を感ずるというふうに報告されているやに承っています。渡辺北米局参事官等が総理等々にも御進講されたというふうに聞いているわけであります。私もそれを非常に懸念もするわけでありますが、それはいかがですか。
  72. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 外務省からお答えをいたします。  今月十五日に松永大使がワインバーガー国防長官に着任表敬をいたしましたときに、ワインバーガー長官の方から、確かに現在の日米の防衛協力関係は非常に強いけれども、現在の議会の情勢を見ました場合に若干の懸念を要する、そこで先ほど先生がおっしゃいましたように、議会との関係で目に見えるような努力を引き続きしてほしいということを先方から述べられたというふうに承知しております。
  73. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、それは日本防衛費問題に波及するのではないかとあなたが判断をされるなり情報を伝えたわけでしょう。その反応はどうなんですか。
  74. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 昨日の夕刊に私が申しましたことが若干報道されておりますけれども、私が申しましたことは、米国で行政府といたしましては防衛と貿易の問題は二つ分けて考えております、ただ、議会においては必ずしもそれを分けて考えない人たちもいるということを申し上げたわけでございます。
  75. 上田哲

    ○上田(哲)委員 では、ワインバーガー長官の発言等々ではないということですか。議会であっても、行政府の発言というものではないということですか。
  76. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 そういうことでございます。行政府の立場としては分けて考えたいという立場を従来からとっておりますし、今回もそういうことであろうと思います。ただ、行政府として、議会においてそういう空気があるということを懸念しておる、そういうふうに私どもは理解しております。
  77. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ワインバーガー発言ではないという意味ですか。
  78. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ワインバーガーは、議会においてそういう情勢があるということを懸念しているということを言ったと理解しております。
  79. 上田哲

    ○上田(哲)委員 防衛庁長官、ずっとここのところ装備調達におけるアメリカからの調達額等も調べてもらったのですが、今貿易摩擦の解消の一つとして、自民党内にも有力な発言として、武器購入しかないじゃないかという発言もあるようですけれども、五九中業策定を含みつつ、アメリカからの武器購入ということをふやすというふうなことを考えておられる面がありますか。
  80. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは、五九中業の策定、その中で正面装備の調達等いろいろの問題がこれからあろうかと思いますけれども、それはあくまでも我が国防衛政策の観点から判断してまいりたい、こう思っております。
  81. 上田哲

    ○上田(哲)委員 アメリカからの武器調達を、特にこの貿易摩擦に関して考慮することはないという理解でいいのですか。
  82. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちはそれは本質的に別個の問題であろう、また別個の問題であるべきだと思っておりますし、またその後私も調べてみましたけれども、日本防衛庁といいますか、正面装備の調達という分野は、私はそんなにも大きな外国のためのマーケットになっていない、規模の小さいものだと思っております。
  83. 上田哲

    ○上田(哲)委員 一方、経団連の防衛生産委員会が十二日に長官に、国産重点、もっとふやせということを言ってきていますね。これについてはどうですか。
  84. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その陳情を私は受けました。陳情書を受け取りましたけれども、特にコメントなしに受け取りましたけれども、私は恐らく国内のメーカーの人たちができるだけ生産は国内でというのは、経済家としては当然の要望だろうと思って聞いておりました。
  85. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そこで、五九中業の中に、一つ、空中給油機を配備しようという計画があるやに聞くわけですね。これは四十八年の四月十日の田中総理の国会答弁で「第一点、空中給油はいたしません。第二点、空中給油機は保持しません。第三点、空中給油に対する演習、訓練その他もいたしません。」というのがはっきり出ておるわけです。この三年後に防衛庁から統一見解なるものが出されました。私は大体統一見解というのは、国会答弁というレベルを超えて勝手に政府が統一見解を出せば——統一見解と呼ぼうが不統一見解と呼ぼうがそんなことは政府の勝手なんであって、それで国会答弁を勝手に変えるなんということは、国会軽視も甚だしいから、そういうパターンは許せないと思っていますが、百歩譲ってこれを認めるとしても、この中に書いてあることは、空中給油装置の問題でありまして、空中給油機を購入するなどということは、この場合にも書いてないのであります。したがって、私は、空中給油機というものの購入というのは、今日まで政府答弁の見解が依然として与野党ともに守られているのであるというふうに考えているのですが、それでよろしいですか。
  86. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたような経過が、ずっと過去においてあるわけでございますが、五十三年の三月に衆議院予算委員会におきまして、政府側から御説明を申し上げた中で、空中給油に関して書いてございます。このことは確かに、例えばF4の空中給油装置について、これは我が国の主力戦闘機である期間においては、同装置を必要とするとは判断しなかったので、給油装置を外すという改修を行ったというふうなことを一つ申し上げております。  と同時に、このときに問題になっておりましたF15の問題につきましては、「F−15が我が国の主力戦闘機となるであろう時期(一九八〇年代中期以降の時期)においては、有事の際に空中警戒待機の態勢をとるため空中給油装置が必要となることが十分予想されるところである。」したがって、これを残しておくというふうに御説明を申し上げた経緯がございます。したがいまして、基本的にこの空中給油の問題というのは、将来の航空情勢の推移というものを踏まえれば、必要性はあるということを申し上げていたわけでございます。  そうなりますと、ここに書いてございます空中給油装置を使うということは、他方において給油をするべき相手方である空中給油機というものが当然にその前提にあり得るわけでございます。したがって、この空中給油の問題と申しますのは、私どもは空中給油機能全体について今後どうするかということを今研究しているということを、昨年来申し上げているわけでございまして、したがって、ただいま先生が御指摘になりました空中給油機という問題も、その空中給油装置の相手方としての当然の一つの装備ということで、空中給油機能の検討と私どもが申し上げている中には、当然にそれは研究の対象として組入り得るものだというふうに考えて、現在もいろいろと研究をしておるというのが現状でございます。
  87. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、それを五九中業に配備するのですか。
  88. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 五九中業に具体的にどういった形でどんな装備がどういうふうにかかわってくるかということにつきましては、先ほど大臣からもお話がございましたように、まだ具体的に申し上げられる段階ではございません。  ただ、先般来申し上げておりますように、空中給油機能の問題についてはいろいろと研究は進めておるというのが現状でございます。まだ結論は得ておりません。
  89. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これはとんでもないことなんですよ。どんなに言葉をごまかして読んでも、さっきも一遍申し上げたけれども、国会答弁は総理大臣答弁としてちゃんと三点出ているわけですよ。空中給油訓練もしないし、空中給油機も持たない、空中給油装置は要らない。これを勝手に見解をどんどん変えていってやるということは非常に国会軽視であるということが一つあるのですが、そのことはそのこととしてしばらく置いておいて、極めて内容的にぴしっと詰めていくと、あなたの方で変えてきた意見を一〇〇%認めたとしても、空中給油装置ということを言っているのであって、その根底には、なぜ田中総理があれほど長い議論の末これをとめたかといえば、専守防衛にもとる、つまり憲法にもとるということでやったんだ。そうじゃなくて、あなた方がつけた理屈は、F4を主力戦闘機として使っている間はやらない。実にこれはこじつけなんだけれども、このこじつけも認めるとすれば、F15になったときは別だと、こう言う。F15になったときは別だというこじつけを認めるとしても、それは空中給油装置なんです。つまり受け取り側のことなんです。受け取り側があるということは入れる側があるんだなんて、これまためちゃくちゃな話であります。では今何でやっているかといったら、日本の空中給油機でやっているんじゃないじゃないですか。米軍の空中給油機でやっているんじゃないですか。できるじゃないですか。自前の空中給油機を持つかどうかということは、百尺竿頭一歩を進めることでありまして、大変な違いなんです。防衛戦略の違いになる。これはF4からF15に主力戦闘機が変わるという問題とは違うのです。こういうでたらめをやっちゃいけない。まあ力で押し切るというならやられちゃうからね、GNP一%だってやられちゃっているんだから。幾ら我々が言っても、何とか正論を通す限りにおいては、あなた方も正論で答えてこなければいかぬ。  だからその意味で、もう一遍整理するけれども、過去のいろいろな専守防衛、憲法にかかわるという問題の論理はめちゃくちゃに踏みにじっているんだから、言ってもしようがないから置いておくが、あなた方が立てた、あなた方が政府統一見解で出された文章をどんなに読んだって、空中給油装置のことを言っているのであって、空中給油機は、考えてみれば雄ねじと雌ねじだから、向こう側があって当たり前だみたいな話には相ならぬ。こういうでたらめなことを言ってもらっては困るということが一つ。  もう一つの問題は、これはCAP態勢をとるということですよ。CAP態勢をとらないということを当時の丸山防衛局長がはっきり言ったことから、この給油装置問題は当時なくなったのです。主力戦闘機がF4であるかどうかの問題じゃないのです。CAP態勢をいよいよとることになったんだということになれば、日本の防空体制は基本的に変わってくるのです。それに踏み込む必要があるんだということが妥当であるかどうかは、これは戦略構想論としての議論だから別に立てなければならないけれども、それを立ててくるなら話は一本筋道は通るが、こっちでは受け取り側があるんだから入れる方を考えるのも当たり前のことだ、だからこれは研究対象になるんだみたいななし崩しの議論は、私たちにとっても非常に不愉快であるだけではなくて、あなた方の論理の整合性のためにも私はとらない。もう少し筋道をすっきり立てた話をしてくるべきである。  もう一遍整理しますよ。どう言ったってこれまでの統一見解は空中給油装置までのことであって、空中給油機の問題は、どういう日本語で考えたってこの見解からは出てこない。  第二の問題は、CAP態勢をとるという段階に入りたいというなら、そこから議論をすべきで、F4であろうとF15であろうとも問題ではない。この問題をすっきりすべきであって、このことは理論的にはあなた方はわかると思うのです。そうであれば、五九中業中にはこれを入れるというところではなくて、現在日本防衛体制の中では空中給油機は持てないのだという論理の中にあると思います。きちっと答えてください。
  90. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 ただいまの二点、関連しておりますのであわせてお答え申し上げたいと思います。  これは先ほど申し上げました五十三年三月の政府からの御説明の中にもこういうふうに書いているわけでございます。「航空軍事技術の進歩は著しく、超低空侵入、高々度高速侵入等航空機による侵入能力は従前に比して更に高まるすう勢にある。このようなすう勢からみて、F−15が我が国の主力戦闘機となるであろう時期(一九八〇年代中期以降の時期)においては、有事の際に空中警戒待機の態勢をとるため空中給油装置が必要となることが十分予想されるところである。」というふうに言っておるわけでございますから、ただいま御指摘のように空中警戒待機の態勢をいずれとる必要があることは当時から申し上げていたわけでございますし、私どももそういう時期がいずれ来る可能性というものを認識をしておりますので、この問題を研究しているということでございます。  それから、第一点の空中給油機の方は含まれていないのではないかという先生の御指摘でございますが、まさに空中警戒待機の態勢をとって空中給油装置を必要とするような事態と申しますのは、これを空中で使うわけでございますから、当然に空中給油機というものをその相方としてはその時点では考えていかないと、意味をなさないということであろうかと私どもは考えているわけでございます。  そういう意味で、こういうものを含めまして、今の時点では全体としての研究をしておるということを申し上げているわけでございます。
  91. 上田哲

    ○上田(哲)委員 話を逆さまにしたらどんな言い方でもできるのですよ。一点と二点というのは順序が逆だ。時間がないから私は一点、二点一緒に言っているのです。一九七三年の段階でCAP態勢というのは必要なのかと聞いているんだから。いいですか、こっちはそういう態勢が欲しいだろうということはわかった上で聞いているのです、当時から、十年以上も前に。そのとき防衛庁は、その態勢の必要はないと言ったんだ。その態勢をとらないと言ったのはそっちじゃないですか。とらないと言ったんだから、それならば空中給油装置も空中給油機も当然要らないということになった。F4とF15の問題じゃない。F4だってCAP態勢はとれるんだから。それをF4の、F15のという理屈をつけて、今ここでCAP態勢をとるんだ、とらなければならないんだという段階の判断に立ったんだというなら、空中給油装置も空中給油機も欲しいというのは当たり前の話ですよ。だから、そういう判断に立ったのかと聞いているのです。いいですか。それを逆さまに言ったら何だって言えますよ。二つ一遍に言っているものだからごまかされちゃ困るんだが、時間がもう大変ないから、急いで結論だけ聞くのです。あなた方が答えてきた今までの答弁の論理では、空中給油機は持てないのですよ。しかし、今ここでCAP態勢をとるんだ、CAP態勢をとるんなら要るに決まっているんだから、話をひっくり返しちゃ困りますよ、ここでCAP態勢をとる段階に達したのだと判断をしたというなら空中給油機を持ちたいということになるんだ。今までそう言ってこなかったけれども、こういうふうにしたいと思うのだということを論理的にきちっとして出すべきではないか。前々からそういうことを言っているつもりなので、そろそろその時期が来たかもしれないみたいなことを言って、まだ決まってませんと言いながら、ある段階に来たら五九中業に入っていたなんてことをやって、国民の理解も得られないだろうし、私たちはそうなれば断固として反対をしますよ。断固として反対するという意味は、そうでなければ反対しないと言っているんじゃないが、そういうごまかしをしなさんな。これは十何年の議論の経過があるんだから、そんなごまかしをしちゃいけない。逆から攻めていったらどんな言い方でもできる。  もう一遍、時間があと五分というんだから、急いで言うんだから、時間延ばしをしなさんなよ。いいですか。長官もきちっと答えてもらうから。CAP態勢というのがあるんだろう、だから空中給油装置及び空中給油機は必要なのではないのかという質問。しなさいと言ったのではなくて、そういう段階になろうとしているんじゃないかという質問を十二年前にやって、それは今そのようなことは考えておりませんというのが防衛庁の答弁であった。したがって、これは専守防衛論その他の問題があってやめたのです。その後政府から出てきた答弁は、空中給油装置は云々ということはあったが、空中給油装置の中にはF4の背中につくかF15の背中につくかのねじの問題であって、向こうから飛んでくる飛行機の話まで入っていたなんてことは、それは無理だと言うのだ、言葉として。CAP態勢なら当然入ってくるのだから、今そのCAP態勢をとりたいという判断に立ったのだと言うならそうい至言い方で理解を求めるべきだ。結論だけ聞くのですよ。その段階に至ったという判断に今、五九中業では立とうとしようとしておるのかどうか、その点をすっきり言ってください。その段階が今言えないのだったら、こんなものは当然、今持てないという論理に戻るだけだ。ついこの間はそう言いましたけれどもという逃げ方でなくて、ちゃんと答えてください。
  92. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 これは先ほど申し上げましたが、一九八〇年代中期以降の時期になれば、そういった空中警戒待機の態勢をとる必要性が出てくるというようなことを五十三年当時から言っていたわけでありますから、そういう時期も今や近くなっていることでもありますので、私どもはそういった状況を踏まえてこの問題に真剣に取り組みたいと今考えておるわけであります。
  93. 上田哲

    ○上田(哲)委員 五九中業で入れるのですか。
  94. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 五九中業で具体的にどうするかはまだ検討中でございますから、本件を具体的にこうするというふうにまでは申し上げられませんが、この空中給油機能の問題を今真剣に研究しているということは申し上げておきたいと思います。
  95. 上田哲

    ○上田(哲)委員 我々は反対だけれども、かなり現実的な研究段階に入ったということですか。
  96. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 これは真剣に検討をしておるということであります。
  97. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ごまかしてない言葉でもってすっきり説明をするということを、それだけでいいから長官、時間がないのです。ごまかしでなくて、ちゃんとした論理で、私が今ずっと言ったそれに対して説明をするということだけ、きっちり約束してください。時間がないのです、急いで。
  98. 加藤紘一

    加藤国務大臣 政府委員が答弁したとおりでございますけれども、それでよろしいですか。
  99. 上田哲

    ○上田(哲)委員 最後に、時間がちょっとしかありませんから、三宅島のことについて聞きます。  具体的なことを話すことを控えながら言いますけれども、例えば三月下旬に島で有力な人、ほかに公職を持っている人が東京へ来た。ほかの仕事で来たら、それが呼び出された。一人だけ呼び出されて、どこへ行ったかといったら車の中へ連れていかれた。そうしたらその中に前の東京調達局長の三條さんがいて、いろいろ身上の問題も言った。あなたは奥さんがいなくてどうだろうみたいな話まで全部出て、それでこの地図を見てくれないかといって三宅島の空港の設定地図というのが出された、こういうこと。あるいは、全然関係なく、噴火でもって流されてしまっている土地を売れないで困っている、家が建たない人々の借金を、賛成してくれたら、関係ないけれども、それもやってやるというような話も流れている。どこから出たかということを一々言っている暇はないのですけれども、どうもそれは不明朗であります。札束でほっぺたをぶん殴るようなやり方をするのは非常によくないことであります。一点だけでいいから、三條さんの名前がはっきり出ているのだから、そういうことは裏から言えば違った言い方もあるだろうが、その地図があるなら、その地図を私たちにも見せてもらいたい。
  100. 平晃

    ○平政府委員 三宅島のどこの位置が適地であるかという具体的な調査はいたしておりませんけれども、地図の上で大体この辺という一つの我々の想定はございます。ただ、それをいろいろな方に説明する際に、三宅島に決めたというわけではないけれども、もし三宅島につくらせていただけるならばこういう飛行パターンをとるという説明の地図として、ある位置に仮に滑走路を位置づけた、そういう図面は所持しております。
  101. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いや、だから見せてくれというのですよ。
  102. 平晃

    ○平政府委員 結構でございます。
  103. 上田哲

    ○上田(哲)委員 残念ながら時間が来ました。空中給油問題は、こんないいかげんな答弁では困ります。しっかりした、国会の権威をかけた論理的な詰めが、十年余り、十三年も続いているわけですから、その辺のところを牽強付会な言葉でもってごまかしたり、五九中業はアメリカの国防長官は会ってくるまでは話せないというようなことでごまかすことのないように、きっちりした説明を私たちに向けて、私たちが了解することはないでしょうけれども、その説明を貫徹することを厳しく要求して、この点は加藤さんひとつ、何か役人の上前をはねるような答弁ではなくて、政治家としてしっかり説明をする努力をするぐらいのことは言っていただいて、終わりにしましょう。
  104. 加藤紘一

    加藤国務大臣 いずれにしましても、空中給油機及びその機能の問題は、大変経過のある話だと承っております。したがいまして、今後CAP態勢の問題等も含めまして、ちゃんとつじつまの合う議論を、今までも政府委員はやってきたと思いますけれども、今後ともよりわかりやすくするように努力いたします。
  105. 森下元晴

    森下委員長 左近正男君。
  106. 左近正男

    ○左近委員 大臣は、昨年の十月三十一日、第二次中曽根内閣で大変な防衛庁長官を拝命されたわけですが、当時の新聞を見ますと、将来の首相候補の一人ではないかというような論評もされておる、大変優秀な方だと思っております。  長官に任命されて半年近くたったわけですが、当委員会でも三月二十五日に長官としての所信表明がございましたが、防衛に対する端的な所信をお伺いしたいと思います。
  107. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私は、私たち政治家として担当していきます政策分野というのは、いろいろな国内問題から国外問題まで広いと思いますけれども、防衛政策というのはその中でも非常に重要で、なおかつ一時の揺るぎも許されない厳しい政策分野であろうと思っております。したがいまして、これを扱うときには、任命されている期間中とにかく精神を緊張させながら、そして現在のことだけでなくて将来のこともいろいろ考えながらやっていかなければならない難しい、しかし重要な政策分野だと考えております。
  108. 左近正男

    ○左近委員 世間ではよくタカ派だとかハト派だとか、そういう言葉が使われるわけですが、長官御自身は、私はハト派であると思っておられるか、タカ派であると思っておられるか、どうですか。
  109. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私は、政治家それぞれレッテルを張られますけれども、自分自身、タカなのかハトなのかというようなことを特に意識したことはございません。したがって、特に防衛政策の面ではむやみやたらとハト、タカとレッテルを張り合うことは余り生産的ではないのじゃないだろうか、こんなふうに考えております。ただ、自分自身としては比較的国際関係については重要に考えている人間の一人だなという気はいたしております。
  110. 左近正男

    ○左近委員 フレッシュな感覚でこれからの防衛政策をやられることを強く期待いたします。そこで、長官はある月刊誌にいろいろ手記を書かれておるわけでございます。防衛全体の考え方として「相手国が長期にわたり準備をして侵略してくる場合。これに対抗できる軍事力をもとうとしても、それはとても無理である。」「我々のとりうる防衛構想は、相手国が現態勢で突然攻めてきたとき、つまり限定かつ小規模な侵略があったとき、それに充分対応できるだけの力をもたねばならないということだ。」こういうことを言っておられるわけですが、この考え方は、日本防衛に汚する基本的な考え方だ、こういう理解でよろしいですか。
  111. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そのとおりだと思います。限定、小規模に対処し得る力を持つというのが私たち防衛力整備の基本的な考えでございます。
  112. 左近正男

    ○左近委員 そこで、「相手国が長期にわたり準備をして侵略してくる場合。」というのは、どういう事態を長官としては想定されておるのか。また「相手国が現態勢で突然攻めてきたときことありますが、この「現態勢」とはどういう場合を想定されておるのか、お答え願いたい。
  113. 加藤紘一

    加藤国務大臣 専門的には政府委員よりお答えいたしたいと思いますけれども、例えば我が国を侵略する意図を持ちまして特定の国が師団をかなり数多く動かしたり、戦車師団を動かしたり、それから作戦用航空機等をある飛行場からより日本に近い飛行場に動かしたり、そういった大がかりな準備をし始めること、そういう形をしながら十分に準備してやってくるような場合、これは大がかりな準備のもとにおける相手側の行動だというふうに見ております。
  114. 左近正男

    ○左近委員 もう一つある、「現態勢」。
  115. 加藤紘一

    加藤国務大臣 「現態勢」というのは、そういうことなしで、今の現状の配備、配置等の中で、特に私たちがああ大きな準備を始めたなということを気がつかない形の中で、現態勢の中から動き出すことを言うものだと思っております。
  116. 左近正男

    ○左近委員 今の長官の言をかりれば、相手国がかなり戦車を動かしたり準備をした段階でもし仮に日本に攻めてきた場合は日本防衛力というのはお手上げである、こういう理解ですか。
  117. 加藤紘一

    加藤国務大臣 それに対応できるだけの十分な防衛力の整備が、現在の国情等からいって、また日本にはなかなか難しいところがあろうと思っております。したがって、そういうときには十分なる抵抗をしながら日米安保条約による米軍の支援にまつということでございます。
  118. 左近正男

    ○左近委員 そこで、日本がどのような状況のもとで日本自衛力が発揮されるのかということを考える場合、例えば本年の二月二十一日の予算委員会で、総理は一体、我が国はどういうときにどういう形の戦争に巻き込まれるおそれがあると判断をしているのかという質問に対して、「ある国が突如日本に侵略して上陸してくるという可能性は非常に少ないと思っておるのです。」「ややもすればある国が突如日本に来るであろうというような想定あるいは考え国民や当局者の中にあるとすれば、それは重大な間違いであって、むしろ総合戦略的にこれは考えていかなければならぬのじゃないかこういう答弁を総理がされておられます。  そこで、今長官が、日本防衛基本的な考え方として、突然攻めてきたとき、つまり限定かつ小規模な侵略があるとき、こういうときに自衛力を発揮する、こういう考え方と今総理が予算委員会で答弁された考え方とに日本防衛に対する基本的な考え方にかなりの違いがあるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  119. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この総理の御答弁、二月二十一日に衆議院予算委員会でされたものでございまして、私も聞いておりまして記憶いたしております。  引用するのは時間の関係もありますから省略いたしますが、この総理答弁の御趣旨というのは、これは一般的な一般論として申し上げられたことでございまして、現下の国際情勢のもとにおいて、その国際情勢の動向と全く無関係我が国が突如として侵略されるという可能性は非常に少ないというふうなことをお述べになったものというふうに私は理解をしているわけでございます。  他方、大綱で想定をしております限定的かつ小規模な侵略に対処し得る防衛力というのは、これは我が国が独自に持つ日本防衛力の水準についての基本的な考え方でございます。こういったもので、こういうものに対処し得る力を独力でまず持とうというのが基本であって、それを超えるようなことがもし仮にあるとすれば、それは米国の来援を待って排除する、日米安保体制はそのためにあるということを当然に前提にしているわけでございます。そういったことを総理も前提にしての一般的な考え方をお述べになったものというふうに私は理解をいたしたわけでございます。
  120. 左近正男

    ○左近委員 一般的なことではなしに、日本戦争に巻き込まれる場合、特定の相手国が日本を侵略する、こういう場合よりも、世界のどこかの地域でいわば紛争がある、そして米ソがそれに介入する、米ソ紛争になる、そのことによって日本がそういう戦争に巻き込まれるというような事態の方が多いということを総理は答弁されているのじゃないですか。どうですか。
  121. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 したがいまして、私申し上げましたように、国際情勢の変化というものと全く無関係にそういった突如とした侵略ということを考えることは非常にケースとしては少ないのではないだろうかというふうな意味を総理は言っておられるのだろうと思います。したがいまして、先生おっしゃいますように、そういった世界の他の地域における状況の影響というものを受けるようなケースというものがあり得るということは総理の御答弁の中にも含まれておりますけれども、そのことは当然に私どもの日本防衛力考え方というものが限定、小規模の侵略には独力で対処し得るものということを考えていることと特に矛盾をする考え方ではないと思います。
  122. 左近正男

    ○左近委員 私は、今長官が御答弁されました日本防衛基本的な考え方と、総理が予算委員会で答弁された考え方とは質的にかなり違う内容を含んでおる、このように思います。これはこれ以上やりませんが、その点だけを指摘しておきたいと思います。  そこで長官、同じ月刊誌でGNP一%問題について触れられておるわけですが、「一%枠があたかも軍事大国にならないためのシンボルであるかのように、マスコミを通じて世論に受けとめられ、かなり重い存在になってしまった。」ということ、もう一つは、「もっとも一%の枠をはめることで、国民の間に安心感を与え、防衛についてのコンセンサスをより高めてきた面は評価しなければならないと思う。」こういうことを述べられておるわけですが、GNP一%問題は予算委員会でもかなり時間をかけて論議がされてきたわけですけれども、この時点で長官としては、六十年度、GNP一%を必ず守っていくという御決意はございますか。
  123. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その雑誌に書きましたように、私は、GNP一%の閣議決定というのは昭和五十一年当時、ある種の財政面のめどということでスタートしたものだったと思います。そういう経緯だったと思います。しかし、だんだんやっておりますうちに、これがいろいろな意味で一種の防衛力についての歯どめというようなイメージでだんだんとらえられてきて、そしてそれが同時にまた国民にある種の効果を与えて、そして防衛についての理解をより深める効果を持ったということは、私は事実だと思います。だからこそ私は、この予算委員会、衆参この大変な重大な委員会で長い時間にわたって与野党の皆さんから御議論をいただき、今国会、今予算委員会の中で最大の焦点だと言われたのはその重さだろう、こう思っております。だからこの一%の問題は今後とも真剣に私たち考え、また御答弁も申し上げていかなければならない問題であろうと思っております。  じゃ六十年度、今後どうなるかということにつきましては、御承知のようにベースアップが今後どうなるかということも不確定要素でございますし、GNPの動き、それからベースアップを今後政府がどう処理いたすかという点がありますので不確定でございます。いずれにしても守りたい、こう思っておりますけれども、そういった不確定な要素があるということも否定できないところだと思います。
  124. 左近正男

    ○左近委員 「たい」では困るわけでして、「ます」じゃなかったら困るわけですよ。  そこで今長官、先ほど森先生の御質問に対していいことを言われておるわけですね。国民の納得できない防衛政策はいかなる装備を備えても無意味である。私はこのGNP一%というのは、長官がいみじくも書かれておりますように、やはり防衛に対する国民のコンセンサスの面から非常に大事なことだと思うのです。これは意味がないじゃないかという議論もありましたけれども、これを超えるということはやはり日本軍事大国になるのじゃないかというような危惧を多くの国民が持つのじゃないか、このように私は思いますので、「たい」ではなしに「ます」、これを長官として六十年度貫いていただく、このことを強く要望しておきたいと思うのです。  長官は予算委員会論議前にこの文章を書かれたと思いますが、この文章の中で、今答弁されましたように、「六十年度GNPが、現在の政府見通しどおりに進み、なおかつ五十九年程度のベースアップがあったと仮定すれば、一%以内に収まらなくなる。その場合には政府部内で何らかの措置が必要になる、」「枠を超えても、ごまかしごまかししていくのほかえって不信感を増す」こういうことも書いておられるわけですね。これは三月号ですから、予算委員会論議前に書かれたわけでありまして、予算委員会論議を通じてGNPの一%は最大努力して今度は守っていきますというような立場に心境の変化を来しておるのじゃないかという強い期待を持っておるわけですが、この点いかがですか。
  125. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その文章を書きましたときと現在と私の考え方は変わっておりません。その文章で書きましたように、いろいろな意味で、例えば仮に万が一将来一%を超えるようになったとき、そのときにはそれなりの政府なりの措置が必要であることは論をまたないことだと私は思いますし、国防会議、閣議等でその問題をどう扱うのかということはそのときになって大変問題になると思いますし、それは従来の国会における論議、また従来の政府の答弁等を踏まえながら慎重に決定していかなければならないことで、政府部内でアクションが必要になってくることは当然だろうと思っております。
  126. 左近正男

    ○左近委員 予算委員会論議を十分尊重されて、私どもも多くの国民の皆さんもやはりこの一%を守ってもらいたいという強い期待があることを申し添えておきたいと思います。  そこで、先ほど先輩の上田議員も触れられましたが、防衛庁は今五九中業の作業を積極的にやっておる。八月中に大体成案ができるのじゃないか、こういうことも報道されておるわけですが、五九中業を作成するに当たっての防衛庁の基本的な考え方ですね。これは一部新聞にも載っておったのですが、一%枠にとらわれない、中業は防衛庁内部資料で、一%は予算編成段階のもの、双方は直接関係ない、こういうような考え方で作業を進めておられるのですか。     〔委員長退席、椎名委員長代理着席〕
  127. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 これはもう毎々お答え申し上げておるわけでございますが、五九中業と申しますのは、中業の基本的な性格といたしまして、防衛庁が概算要求を行う場合などの参考資料にするという性格のものでございまして、防衛庁の内部資料ということでございます。それからまたそのつくり方も、六十一年から六十五年までの五年間全体を対象として考えるというものでございます。他方、GNP一%枠に関する閣議決定と申しますのは、毎年度の予算をつくる際の政府としての防衛力整備についての物差し、めどという性格のものでございます。つまり毎年度の単年度ごとの政府レベルの決定の際のめどである。こういう性格上の違いが両者に一はあるわけでございます。  したがいまして、私どもは、このGNP一%枠についての閣議決定といいますものは五九中業とは直接には関係はないというふうに従来から理解をしておるわけでございます。したがいまして、五九中業は、昨年五月の長官指示でもお示ししておりますように、「防衛計画の大綱」の水準の達成を期するということを考えまして、現在鋭意作業を進めておるところであります。
  128. 左近正男

    ○左近委員 今お答えがありましたように、去年の五月八日、国防会議で五九中業の作業に入るということを確認されているわけですね。こういう国防の基本的な大事な最高機関の中で確認された作業内容を防衛庁だけの参考資料だ、こういう位置づけはおかしいんじゃないか。防衛庁はこの五九中業をひとり歩きをさしておる。これは国防会議できちっと決められた、国のかなり重たい作業であるわけです。これを内部資料だ、内部資料だと言うようなことは、今もお話がございました防衛庁のシビリアンコントロール、こういうものがきっちりと守られておらないんじゃないか。一%と五十一年に閣議決定されているわけですよ。そういうものは全く関係ないんだ、こういうやり方については、防衛庁としてのひとり歩きというか、非常に危険性があるんじゃないかと私は思う。この点どうですか。
  129. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 中業につきましては、前回の五六中業の段階におきまして、先生が御指摘になりましたようなシビリアンコントロールの観点からの問題提起がございまして、五六中業の場合には、まず長官指示を発する際に、国防会議長官指示の内容についての報告をし、御了承を得て作業を始めておるということが一つございます。それからまた、五六中業がまとまりました五十七年の七月の段階におきましても、これを国防会議に御報告をして了承を得た、こういう手続をとっておるわけでございます。  今回の五九中業につきましても、昨年の五月に長官指示を発するに際しましては、国防会議にその長官指示の考え方を御報告をいたしまして、そのことの御了承を得ております。その中で、五九中業については「防衛計画の大綱」水準の達成を期するということでやりたいということを御報告を申し上げて、御了承を得た上で作業をしておるという経過をたどっているわけでございます。こういうことで現在作業をしておるわけでございますが、夏にはこれを取りまとめていきたいと思っておるわけでございまして、その際に国防会議にもそういった結果につきまして御報告をしていくということは、前例と同様なことで考えれば当然にあり得るというふうに現在は考えているところであります。
  130. 左近正男

    ○左近委員 過去は一%との間にかなりのすき間があったわけですが、今日の状況は非常に緊迫した状況なんです。したがって、五六中業の考え方で五九中業をとらえてもらっては困るんじゃないか、私はこのように思うのです。したがって、その点やはり防衛庁のひとり歩きがないような形をきっちりと長官としてはされることが必要ではないかと私思うのですが、いかがですか。
  131. 加藤紘一

    加藤国務大臣 政府委員からお答え申しましたように、これは概算要求の参考にするための一つの作業でございますけれども、国防会議にも御報告いたすわけでございますし、これを決定する際に政府内でのいろんな討議もありますので、防衛庁内でのひとり歩きということにはならないだろう、こう思います。いずれにいたしましても、政策を進める際にはシビリアンコントロールは重要な部分だと思います。非常に重要な、最も重要な防衛基本政策の一つであると私たちは思っておりますので、内局と各幕との話し合いを真剣に行い、そして私たちがしっかりとその作業を見守りながら進めてまいりたいと思います。
  132. 左近正男

    ○左近委員 次に、五十一年閣議決定をされた「防衛計画の大綱」では、「防衛の構想」としてアメリカとの安全保障体制の信頼性の維持、それと、核の脅威に対してはアメリカの核抑止力に依存する、こういうことが述べられているわけですが、このことは俗に日本日米安保条約によって核の傘で守られておる、こういうことがよく言われているわけです。  それでは、核の傘の保障とは具体的にどのようなものなのか。日本は専守防衛あるいは非核原則、これを国の大きな防衛の柱にしております。この立場を踏まえて、核の傘の保障について、アメリカから具体的に安保条約に基づいてこういうような核の傘の問題についてやっていますよというような説明が今までございましたか。
  133. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘になりましたいわゆる核の傘の問題でございますが、これはいわばアメリカの核による抑止力の問題であろうかと思います。これにつきましては、まず基本的にこれを先生も御指摘になりましたけれども、安保条約の第五条によりまして、米国が我が国防衛する条約上の義務を負っているということ自体がまず最も基本であろうかと思います。その後、米国政府はいろいろな機会にこの安保条約を堅持するという趣旨の政策を我が方に対しても述べております。例えば五十年の三木総理大臣訪米の際、その他最近では五十六年、鈴木総理訪米の際等々、その趣旨のことはアメリカ側が明確に述べているところでございます。
  134. 左近正男

    ○左近委員 安保条約を堅持する、こういうことははっきり言っておるけれども、それでは核の保障についての具体的な内容点については日本政府には全く今まで説明がないということですか。
  135. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 若干繰り返しになるかと思いますが、米国が我が国防衛するに当たっての米国の抑止力と申しますものは、核戦力及び通常戦力、両方から当然のことながら成り立っているわけでございまして、基本的には私どもは今までの保障によって先生のおっしゃる核の傘の保障というものははっきりしているというふうに考えております。
  136. 左近正男

    ○左近委員 結局アメリカ世界的な軍事戦略というのはかなり明らかになっていますね。そういう一般的な抑止論だけであって、日本に対して安保条約を結んでいる、そのために具体的にこのような核の傘の保障をしていますよということは全く説明が今までないということですな。そういう理解でよろしいか。
  137. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先生御質問の具体的な核の傘の保障という意味が必ずしも私理解いたしませんが、さらに若干具体的になるかと思いますけれども、昨年の六月にアメリカの国防省アーミテージ国防次官補が米国議会で証言をいたしております。その中で米国の北西太平洋における役割として核の傘を提供することというのを幾つかのほかの役割と並べて申しておりますけれども、これなんかもそういう意味でははっきりした核の傘の保障ではないかと考えます。
  138. 左近正男

    ○左近委員 そういう言葉は過去にも私ども何回か聞いているわけです。  それでは、核の傘の保障とは具体的に何か。戦術上、戦略上具体的にそれでは日本に対してどういうものを、例えば外国から攻めてきた場合、どういうような具体的な戦術をもって、戦略をもってやるんだという核の保障なんというのは今言葉だけであって、具体的な説明というのは日本政府にあったかどうかということを僕は聞いているわけですよ。この点どうですか、くどいようですが。
  139. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 恐らくいわゆる核の傘と申しますものは、最初に申し上げましたように核による抑止ということであろうかと思います。核による抑止と申しますれば、むしろその核をいわゆる核の傘の保障がはっきりしていることによって戦争を抑止するという意味での核の傘であろうかと思いますので、そういう意味での保障がはっきりしているということはたびたび申し上げたとおりでございますし、私どもはそういうことというふうに理解をいたしております。
  140. 左近正男

    ○左近委員 僕は素人でわからぬのですけれども、核の傘を着せてもらっているわけですね。どんな傘かというのを、これをわからぬで信頼関係が成り立ちますか。防衛庁長官どうですか。
  141. 加藤紘一

    加藤国務大臣 この問題は本質的に外務省で御所管いただく問題でございますが、委員御指摘の点は、例えば我が国非核原則を持ちながら核の抑止が効くのであろうかとか、それからどういうところに一そういう非核原則との関係であったとすれば、私たちは、我が国非核原則とは矛盾しない形で米国の核の抑止は効くものだと防衛庁としては考えております。
  142. 左近正男

    ○左近委員 ずっと今までの論議を、これはここだけの当委員会だけの論議じゃなしに、予算委員会等でもいろいろ論議を聞いてみても、やはり安保条約によって日本は核の傘で守られている、こういうことを信念を持って言っているわけですね。それはどういう傘なのか、傘の具体的内容については、政府は全くこれは知らされてないわけでしょう。一般的なアメリカの戦略上の配置の問題としては理解ができても、日本にかかっている核の傘というのはそれじゃ具体的にどういうような内容かということを日本は聞かされてないんでしょう。アメリカ信頼せい、信頼せいだけじゃないですか。どうなんですか。この傘は、傘自体どんな傘なんですか。
  143. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、基本にありますのは核の抑止であろうと思います。それで先生御指摘のように、当然一般的な意味での米国の核戦力の構成その他についてはある程度承知しているところもございますけれども、むしろ先生御案内のとおり、例えば具体的な艦船その他につきまして核の存否を明らかにしないというようなアメリカの政策がございますとおり、その辺のところはむしろそういう形であるというところに抑止の本質があるのではないかというふうに考えられるわけでございます。
  144. 左近正男

    ○左近委員 結局政府としては、核については、どうですか、見ざる、聞かざる、言わざる、アメリカが安保条約によって守ってやると言っておるのだからそれを信頼しようという抽象的な抑止というか、そういうことにしか今の御答弁では私は理解できないのですが、そういうことですか。
  145. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ここに昭和五十年八月六日の三木・フォード日米共同新聞発表のコピーがございますけれども、これは三木総理大臣アメリカに行って首脳会談をやった後の新聞発表であろうと思います。  それで、日米安保条約でお互いに防衛についての非常に密接な関係あるこの両国の首脳が次のように述べております。「両者は、さらに、米国の核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行うものであることを認識した。これに関連して、大統領は、総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引続き守る旨確言した。」こう書いてありますね。したがって、この二つの国の総理大臣、大統領がここまで申すことが私は一番の抑止力であろう、こう考えております。
  146. 左近正男

    ○左近委員 今長官の言われたことを聞けば、大統領、総理がきっしりと言葉で確認している、だから信頼せい、しかし、日本自身はどんな核の傘が日本にかかっているかということについては具体的に知らないということですね。
  147. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 その点は、先ほども外務省からお答えをしたとおりだと私どもも考えておるわけでございまして、アメリカの核戦力というものが具体的にどういうところにどういうものを置いてあるかということを公にしないということが、まさに抑止力を発揮するゆえんでもあるというふうにアメリカ側が言っておるわけでありまして、私どももそれはそういうものではないかというふうに考えておりますから、具体的にどういう核兵器がどこにあるかということをアメリカが明らかにしていないからといってアメリカの核抑止力が働かないということでは全くないわけでございます。私どもは、アメリカの核抑止力というものがそういうことも含めて十分に機能をしておるというふうに理解をいたしております。
  148. 左近正男

    ○左近委員 いや、私は何も言葉で否定していないわけですよ。これは安保条約のそういう機能なり、また核の保障というか、そういうものはやはり有効に機能しているのだろうと思うのですけれども、それでは具体的にどんな傘がかかっているかということについては、アメリカのこの核政策、そういう関係日本は全く具体的にはあずかり知らないことだという理解でよろしいんですな。
  149. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 米国の国防政策の基本はあくまでも防衛的であり、かつ抑止力基本にするということをアメリカ側も従来から確言をしているわけでございまして、私どもはやはりそういった米国の全体としての抑止力というものが日米安保条約の基礎にあるというふうに理解をしておるわけでございまして、アメリカのそういった防衛力というものが全体として日本安全保障のためにも広い意味での傘の役割を果たしている、そういうふうに私どもは理解をしているわけであります。
  150. 左近正男

    ○左近委員 結局安保条約によって日本は守られている、これは確かに条約上はそうかもわかりませんけれども、日本政府としては具体的にその内容については全く知らないというようなことだと私は思うのです。これ以上やりませんが……。  そこで、先ほど上田先生も言われた貿易摩擦との関係で、またフリーライダーというか安保ただ乗り論というのがアメリカの議会筋から出てきている。この安保ただ乗り論に対して長官としてはどういうお考えをお持ちですか。
  151. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たち日本アメリカ日米安保条約を持って相互に防衛面の協力をしている国でございます。いろいろの意見がこの条約についてはございますけれども、私たちはこの日米安全保障条約は、私たちにとってももちろん、アメリカにとりましても相互に利益のある、防衛面についてお互いに利するところのある条約であろうと思っております。
  152. 左近正男

    ○左近委員 だからただ乗り論はとらないということですね。そういうことでしょう。
  153. 加藤紘一

    加藤国務大臣 はい、私たちは私たちなりに条約が双方の国に利益あるものと思っております。ただ、私たち日本も、経済力がつくに従って、また政治的な安定度を増すに従って、いろいろな意味での、単に防衛面だけではなく、広い意味での国際的な責任はだんだん強くなってきているということは否めない事実であろうと思っております。
  154. 左近正男

    ○左近委員 近年の日米安保条約の機能というのは、私は端的に言って、日本を守るためよりもアメリカを守るための、世界的なアメリカ世界戦略、それの何かとりでになっているような感じがしているわけですよ。したがって、先ほど核の保障の問題も、これは何か守ってやっているというような意識、守ってもらっているという意識があるかもわかりませんけれども、具体的に何かといえば、これは抽象論だけであって、こういうような形の傘がかかっているということをあなた方言えないわけですね。  そこで、これは新聞にも載っておりましたが、二十五万人いる自衛隊の住宅、隊舎の経費が四百四十二億円、五万人の米軍の住宅、隊舎の日本負担分六百十二億円、これは思いやり予算ですが、五十二年度は六十一億であったものが八年ぐらいでもう十倍にもなっているわけですね。これだけのお金を、アメリカ基地を提供してなおかつ日本政府は六百億円もの金を負担をしておる。これは私は異常ではないかと思うのです。  アメリカは他の国、世界各国にどれくらいの基地を持っているのですか。国数でよろしいです。
  155. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 我が国以外の国が米国に対してどのような基地をどのように提供しているかということにつきましては、実は基本的には米国とその第三国の関係でございますものですから、私どもとしても正確なところを詳細には承知しておりません。ただ、いろいろな公表資料等もございますので、それで例えば例を申し上げれば、我が国近辺でございますればフィリピンでございますとか……(左近委員「名前じゃない、何カ国ぐらいか」と呼ぶ)その数についてはちょっと、いろいろな公表資料でばらつきもございますようで、はっきり突きとめてはおりません。
  156. 左近正男

    ○左近委員 大体わかっておるでしょう。何仕事しているのですか。アメリカ基地を提供している国が、どうですか、日本の思いやり予算のようにこんなたくさんな費用を、基地を貸してなおかつお金を払っている。逆じゃないですか。逆な国が世界には何カ国かあるのじゃないですか。どうですか。
  157. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 我が国以外で米軍に基地を提供しております国、例えば非常に典型的な例としまして、西ヨーロッパ、NATOの西ドイツその他ございます。これらの国も、当然のことながら米軍が駐留することに伴います経費の一部を負担いたしておりますし、これは決して我が国だけのことではございません。
  158. 左近正男

    ○左近委員 予算規模的な問題を私は言っているのですよ。どうですか、逆な国はないですか。アメリカ基地を提供してもらっている、そのためにその国に対して何か応分の、交付金と言うたらおかしいですけれども、そんな国はないですか。
  159. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 私ども、各国の一々について詳細に承知しているわけではございませんが、先ほど申し上げましたように、例えばNATOの諸国でありますれば、むしろNATO諸国がそれなりの負担をいたしております。他方、これは基地の提供と必ずしも直接的に結びつくものであるかどうかということについては議論があるかと思いますが、開発途上国の一部のような場合には、それとの関連で別途経済協力を米国がしているというケースはあるかと思います。
  160. 左近正男

    ○左近委員 長官、どうですか。あなたは月刊誌に自衛隊の隊舎のことをかわいそうだと書いておられる。これは二十五万人で四百四十二億円、五万人の米軍に対して六百十三億円も負担していますよ。これは異常だと思いませんか。どうですか、長官
  161. 加藤紘一

    加藤国務大臣 アメリカは、日本有事のときに日本防衛するコミットをしている国でございますし、私たちは、大切な友好国であり、同盟国であると思っております。そして、確かに現在いろいろ施設整備のためにお金はかかっておりますけれども、私たちとしてはできる限りのことをアメリカにやってあげるということが必要であろう、また、日本もそういう力を備えてきた時期であろうと思っております。したがって、もちろんそれは日米安保条約及び地位協定上の条文の解釈の許される範囲内であるべきでございますけれども、私たちとしてはそういう部分の負担はできるだけやってあげるというのが思いやり予算であるわけですけれども、その精神は、私は長官としても引き継いでいきたい、こう思っております。  もちろん、これもアメリカの国防省の基準によりまして隊舎をつくっておるわけですけれども、しかし、日本の国情、土地の狭さもございますので、これでもアメリカの国防省の基準よりはずっと狭いものにし、かつ高層化をしながら経費を節約しているというところは、御理解いただければと思います。
  162. 左近正男

    ○左近委員 自衛隊は、我が党は憲法上認めていないわけですけれども、視察をさせていただいたりして見るときに、余りにも米軍と自衛隊との待遇上の格差、これは物すごいですよ。答弁は要りません。だから、そこらをやらぬと、自衛隊は働くときに働きませんよ。それだけ言っておきます。それで、外国の問題は、私もまた勉強させてもらって、かなりの国が、アメリカ基地を提供してもらっておるので、応分の負担をアメリカ自身がしているのではないかと私は思いますので、これはまたいずれかの機会に質問をさせていただきます。  そこで、米軍機の公共用飛行場の着陸が近年非常に多いのではないかと思うのですが、この実情はどうですか。
  163. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ただいま先生の御質問には、あるいは航空当局からお答えいただくことが適当かとは思いますけれども……(左近委員「公共用飛行場を使うときに、外務省に連絡があるんでしょう」と呼ぶ)そこで、御説明申し上げますと、外務省といたしましてはと申しますか、むしろ米軍機の公共用飛行場の使用につきましては、御承知のとおり地位協定上自由に使われることになっておるものでございますから、私どもといたしましては、一々の米軍機の公共用飛行場の使用回数については、特に把握をしておらないわけでございます。ただ、実際に発着をいたします場合に、発着についての調整で航空当局が関与しておられますので、航空当局はその辺の数字を把握しておられるというふうに承知いたしております。
  164. 左近正男

    ○左近委員 米軍機が公共用飛行場を使用する場合、まず外務省に対して通告があるわけでしょう、安保条約に基づいて。それで外務省は運輸省の航空局に対して通告をされる。航空局は米軍の飛行機からフライトプランをとって許可を与えている、こういう手順ではないのですか。まず外務省が日本の窓口になっておるのではないですか。
  165. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘の点につきましては、先ほどちょっと申し上げましたように地位協定の五条で、いわば包括的に米軍機は我が国の公共用飛行場を使用できることになっておりますので、一々につきまして実は私どもに通告をする義務を課してはおりません。
  166. 左近正男

    ○左近委員 私、航空局に聞きましたら、やはり米軍機が直接航空局に対して、いついつかどこの飛行場へ米軍機が来るからと言って通告——そんな形になっておるのですか、今の御答弁では。
  167. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ちょっと言葉が足りませんで恐縮でございましたが、先ほど申し上げましたように、米軍機につきましては飛行計画を事前に航空管制の機関に通報させるということで承知をいたしております。
  168. 左近正男

    ○左近委員 それなら外務省は、この種問題に対しては全く接点になっておらないということですね。
  169. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 何と申しますか、原則上は先ほど申し上げましたような制度で現在運用をいたしております。ただ、航空当局と問題によりまして御協議をするというような場合はございます。
  170. 左近正男

    ○左近委員 それなら私の理解の間違いでしたね。私は、米軍機が公共用飛行場を使う場合、まず外務省に対して通告があって、それを航空局に言って、管制等々のフライトプランを出させてやっていく、こういう理解をしていましたが、そうではない。これは米軍機は勝手に管制官に対して直接通告をするのだ、こういう御答弁でしたね。それで間違いないですね。  そこで、年間千回を超える——超えない年もありますが、それぐらいの米軍機が民間の飛行機の発着する公共用飛行場に離着陸しているわけですね。私は、これは異常に多い回数だと思うのです。これについて、安保条約の地位協定等に基づいて米軍の機能としてどうしてもそこへ着陸しなければならぬというのであればまた別ですけれども、そうでないような場合もこの件数の中にはかなりあるように思います。私は千件という数字を申し上げましたが、これを見て異常に高いとは思われませんか。どうですか。
  171. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 私どもといたしましては、米軍機が公共用飛行場を使用いたしますのは、米軍として必要不可欠な場合にそれを行っているというふうに考えておりますので、特にその数字が多い少ないということを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  172. 左近正男

    ○左近委員 五十七年は六百二十五回、五十八年は千二百六回、五十九年は九百二十二回、これだけの回数あるわけです。私は大阪ですので、もう時間がありませんから問題点だけ言っておきますが、例えばこの三月八日、九日、伊丹空港、大阪空港に対して米軍機が来たわけです。その用務は何かといったら、これはアメリカの在日米軍の司令官が奥さんと一緒に会議に出席するために飛行機を飛ばしてきているわけですよ。地元はこういうのはやめてほしいということをかなり要望したけれども、外務省は、これは安保条約関係でいいんだ、こういう住民感情を逆なでするようなことを今やられておるわけです。そして、積もり積もって回数は千回を超えるような回数になっているわけです。私は、これはもう少し政府としても考えてもらいたい。また、九日の日にはかなり大きなH53型という五十八人乗りのヘリコプター、H46型といったらこれは三十二人乗りの大型ヘリコプターが緊急に大阪空港に着陸したわけですね。これは燃料切れだということです。風が強かった。私は気象庁へその日の天気を聞きましたら、東京も晴れ、愛知も晴れ、大阪も晴れ、太平洋沿岸は全般的によい天気であった。本当にこれは人命にかかわるような場合はしようがないですよ。何のためにこういうことをやられるのか。これは一遍調査をしてもらって、きょうは結構ですから、ひとつ回答をしていただきたい。委員長、よろしくお願いします。
  173. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先生今御指摘の件につきましては、事情を調べてみたいと思います。  ただ、繰り返しになりますが、地位協定上、米軍機は公共用飛行場に自由に出入りできる権利を持っておりますので、そのことだけは御理解をいただきたいと思います。
  174. 左近正男

    ○左近委員 私は条約上の問題を言っているわけではないのですよ。住民感情として、やはりアメリカ基地があるわけですよ。また、飛行場によっては米軍と自衛隊と民間飛行機と三者が乗り入れている空港もあるわけでして、だから民間空港の公共用飛行場専門の、専用の飛行場に対して、これだけ千回も年間離着陸しなければならないような必要性というのがあるのかどうか、これについて、もう時間がございませんので、特に私要望をしておきたいと思います。  そこで、最後ですが、長官自民党はスパイ防止法案を今国会にも提出するやの党内の論議がいろいろされておるということが新聞報道されておるのです。私はこういうことは憲法違反だと思いますが、防衛庁の長官としてスパイ防止法は必要であると思っているのか不必要であると思っているのか、このどちらか、見解はどうですか。
  175. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛庁の秘密の保護のため、新たな立法措置を講ずるかどうかにつきましては、守るべき秘密の範囲、それから一般国民との関係、それから自衛隊員と他の国家公務員とのバランスの問題など種々の問題点があり、防衛庁としては国会を初め各界の論議を踏まえて、なお慎重に対処していく問題だと考えております。
  176. 左近正男

    ○左近委員 長官の具体的な見解ないですか。防衛庁としてはこんなものは必要ない、そう思われないですか。
  177. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私としては各界の御論議を踏まえて慎重に対処していくべき問題であろうと思っております。
  178. 左近正男

    ○左近委員 煮え切れませんね。  これで終わります。
  179. 椎名素夫

    ○椎名委員長代理 神崎武法君。
  180. 神崎武法

    ○神崎委員 私は本年二月六日の国会決議の平和の目的と自衛隊による衛星利用についての政府見解、これに関連してお尋ねをいたしたいと思います。  昭和四十四年五月の宇宙の平和利用に関する国会決議を、汎用性の理論をもとになし崩しにしたというこの手法につきましては、私自身は納得ができないわけでありますけれども、それはさておきまして、今回の政府見解意味、内容につきまして、何点か確認をいたしたいと思います。  軍事衛星につきましては、これはいろいろな分類がございますけれども、「最新防衛技術大成」というものによりますと、大きく分けて三分類できる。監視警戒それから支援、攻撃、そのうちで監視警戒の範囲に入るものといたしまして、戦略ミサイルの発射探知、宇宙飛行物体の探知、追跡、核爆発探知を目的とする早期警戒衛星。それから核爆発探知を内容とする核爆発探知衛星。それから軍事施設、部隊等の探知を内容とする写真偵察衛星。それから電磁波の探知及び解析を内容とする電子偵察衛星。それから水上艦艇、潜水艦の探知、追跡、海洋気象の観測を内容といたします海洋監視衛星があるというふうに分類されております。それから支援の分類として気象衛星、通信衛星、それから車両、艦船、航空機の自己位置測定及び航法を内容とする航法衛星、それから正確な地図作成を内容とする測地衛星。それから攻撃衛星としてFOBS、これは核弾頭の地球周回軌道からの地球攻撃を任務とする。それからキラー衛星、これは地球周回衛星の接近による他衛星攻撃。こういうふうに軍事衛星に限りましても、三分類十一種類があるということが専門の雑誌において分類されているわけでございます。  まず、政府見解は第一の要件として、一つは、自衛隊が衛星を直接、殺傷力、破壊力として利用することを認めない趣旨だ、こういうことを言っているのでありますけれども、ここで言うところの直接、殺傷力、破壊力として利用することは認めないに当たる、いわゆる利用できない、否定される軍事衛星というものは、今私が申し上げた衛星のうちでどういうものでしょうか。
  181. 加藤紘一

    加藤国務大臣 例えば今お挙げになった衛星の中で、キラー衛星みたいなものは、そういうものに属するのではないかと思っております。
  182. 神崎武法

    ○神崎委員 要するに、三分類のうち、攻撃の分類に所属するものというふうに理解してよろしいでしょうか。FOBSですか、核弾頭の地球周回軌道からの攻撃、こういうものですね。当然これも含んでいるのでしょう。
  183. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 いろいろな分類の仕方、いろいろな属性があると思いますけれども、私ども先般の政府の統一見解で申し上げました直接、殺傷力、破壊力と申しますと、先ほど大臣も御答弁いたしましたようにキラー衛星——例えばキラー衛星にもいろいろあるかと思います。ぐっと近づいてきて衛星それ自体が破壊力となって他の衛星を破壊するというものもあるでしょうし、あるいはその中からミサイルが発射されるものもあろうかと思いますけれども、直接衛星が衛星を破壊する、こういうようなものを殺傷力、破壊力というふうに理解をいたしておるわけでございます。
  184. 神崎武法

    ○神崎委員 これは衛星が衛星を破壊するのだけを否定しているのですか。要するにこれは他の物体、衛星に限らずミサイルも含めて殺傷力、破壊力として衛星を利用することを認めない、こういう趣旨じゃないのでしょうか。
  185. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 キラー衛星の中にもいろいろあるかと思います。ただいま私申し上げましたように、一つは衛星自体が他の衛星を追尾して破壊するというものもございましょう。それから、衛星の中にいろいろな攻撃兵器を積みましてその中から直接ミサイルのようなものが発射されて直接、破壊力、殺傷力となるものもございましょう。こういったものを私どもは直接、破壊力、殺傷力と呼んでいるわけでございます。
  186. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、今軍事衛星について申し上げたのですけれども、民間の衛星でこの要件上否定されるものがありますか。
  187. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 今民間の衛星で多く使われておりますのは通信衛星あるいは放送衛星という分類もございましょう。それから気象衛星などございます。今申し上げましたのは、直接、殺傷力、破壊力というようなキラー衛星のようなものを民間の衛星で使っているという事実はどうも私ども承知をいたしておりません。
  188. 神崎武法

    ○神崎委員 キラー衛星以外は否定されていないということになりますと、この政府見解の解釈上は我が国軍事衛星の利用、保有ということが将来考え得るわけですね。そういたしますと、軍事衛星ということになりますとこれは衛星防御という概念が当然出てくるだろうと思うのです。敵からの軍事衛星に対する攻撃がある、それをどうやって防御するか、衛星防御ということですね。これについては、例えば米国では積極防御という観点から、防御しようとする重要軍事衛星の周囲に多くの小型ミサイルを搭載したASAT兵器、迎撃の衛星を配置するという積極防御の衛星防衛構想があるわけでありますけれども、ただいまの御答弁からいたしますと、当然こういった積極防御の考え方、これは否定されるわけですね。
  189. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 現在防衛庁といたしましては、通信衛星あるいは偵察衛星などの衛星の保有についての構想あるいは計画はございませんので、衛星防御のためのシステムというような問題につきましても全く検討はしていないわけでございます。ただ、一般的に各国の衛星の利用の動向等については今後とも注意深く見守っていきたいと考えておるわけであります。
  190. 神崎武法

    ○神崎委員 防衛庁は今どうかということはこれからお尋ねをするわけで、要するに政府見解意味内容はどうなのかという点を尋ねているわけです。ですから、軍事衛星は必ずしも否定されない、キラー衛星だけは否定されるのだということになると、軍事衛星があり得るということは、じゃ衛星防御ということをどう考えるのかという問題が当然出てくるだろう。そこで、積極防御という構想は否定されるのかどうか、この点を政府見解の解釈上お尋ねしているわけです。
  191. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 この間の政府の統一見解は、どちらかといいますと一つは直接、破壊力、殺傷力のものは認められない、しかし一般的に汎用として使われているものはあるいはその使うことをお許しいただけるのではないか。それから真ん中の辺で一般化の段階にいまだないものはその使用については制約をされる、慎重にしなければいかぬ、こういうものでございます。したがいまして、軍事衛星という名前のもとでどうこうということではなくて、先生御指摘なさいましたように一般化というもので一般に使われてみればそれは自衛隊も使わせていただけるのではないか、こういうことなのでございますが、さて今その衛星を守るためにどうこうするというところまでの段階には至っておりませんし、そもそもいまだ自分の衛星を持とうとする具体的な構想ないし計画はございません。したがいまして、衛星防御のためのシステムというのまでちょっと念頭に置いておりませんので、そのようなことが果たして起こるのかどうか、そこまで念頭に置いてないわけでございます。
  192. 神崎武法

    ○神崎委員 政府見解軍事衛星の保有を認められないとはしていないというところからして、そうすると防御という問題が起こってくるのじゃないか、私はこういう質問をしているわけであります。要するに軍事衛星の保有が認められるということは、衛星の防御を考えなければいかぬということですから、そうしますと、衛星の防御を考えるということは、結局はある軍事衛星を防御するために殺傷力、破壊力ある衛星の利用、そういう構想に、つながってくるおそれがあるのじゃないか。したがって、政府解釈上、軍事衛星の保有が禁止されないということで、仮に軍事衛星を将来保有するということになるとしますと、この解釈でいきますと、要するに衛星防御ができなくなってしまう、したがって、再度また政府解釈を修正せざるを得ないというような事態が起こるのじゃないか、そこら辺のところは突き詰めてお考えになった上でこの政府見解考えられているのかどうか、その点はどうでしょうか。
  193. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま先生の御意見あるいは御懸念でございますと、衛星を防御する衛星を持たなければいけない、あるいはシステムを持たなければいけないのではないか、そういうことを念頭に置いた上でこれをつくったのかという御質問だと思いますけれども、今回の政府見解ではそこまでは考えておりません。しかし、具体的にそういうような事態に将来なってくれば、私どもの見解を中心にして具体的なプログラムに即して検討を重ねていくと思いますけれども、その場合にはここで申し上げました直接、殺傷力、破壊力は認めないという考え方が今の政府の、私どもの考え方の中には含まれておるような次第でございます。
  194. 神崎武法

    ○神崎委員 どうも私は、今の民間衛星を利用するあるいは米国の軍事衛星を利用する、そのための解釈として汎用性の理論とかいろいろやっているけれども、結局だんだんいくとまた将来問題が出てくる、そうしたらその段階でまた政府解釈をどうするかというようなことになってしまうのじゃないかというところを懸念しているわけでございますけれども、現在の政府見解考え方からいたしまして、我が国がミサイルを破壊するためのビーム兵器を衛星に搭載するということはできるんですか。
  195. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 政府見解で申し上げておりますように、それが直接、破壊力、殺傷力となるようなものであるならばそれは認められないと思います。
  196. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、今の御答弁の趣旨からいたしますと、衛星に限らず我が国としては宇宙空間で例えばミサイルを破壊する、こういったものを開発利用することはできない、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  197. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先般の政府見解は、六十年度予算におきまして我が海上自衛隊が派米訓練をする際にフリートサット衛星を通過する極超短波で一般放送を受信する、こういう目的のための受信装置をお願いいたしました。それとの関連におきまして、自衛隊が衛星を利用する場合の国会決議との関連につきましての政府見解でございます。
  198. 神崎武法

    ○神崎委員 しかし、衛星に限らず宇宙の平和利用についての国会決議の趣旨についての解釈をここで挙げているわけですから、その解釈は単に衛星に限ってないんじゃないですか。どうでしょうか。
  199. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 私ども、この際衛星利用についての政府見解ということで申し上げたわけでございますけれども、それとの関連におきまして平和の目的に限りということを考えてみたわけでございます。  ここでちょっと一部読ませていただきますと、「国会決議の「平和の目的に限り」とは、自衛隊が衛星を直接、殺傷力、破壊力として利用することを認めないことは言うまでもないといたしまして、」ということで、この場合には衛星の利用ということを中心にこの見解はつくったつもりでございます。
  200. 神崎武法

    ○神崎委員 しかし、これは衛星以外についても同じ考え方、解釈がとられるべきだろうと思いますけれども、どうなんでしょうか。
  201. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 従来この国会決議につきましてはいろいろの御見解がございました。先般の統一見解というものは、六十年度予算についてこれを御審議いただく場合の統一見解でございます。したがいまして、もっともろもろ、ロケットでございますとかいろいろあると思います。宇宙の平年利用あるいは開発利用、それは物事に応じまして、個々の案件が出てまいりましたときにでもあるいは御議論いただきまして処理することになるのではないかと思っております。
  202. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、衛星についてだけの見解である、衛星以外のものについては、例えば直接そのものを殺傷力、破壊力として宇宙で利用することがあったとしてもそれは禁止されてないんだ、こういうことでしょうか。
  203. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 国会決議の解釈をどうするか、国会に有権解釈があることはもとよりでございます。大臣もそのように答弁をしておりました。その場合に、行政上の措置をとるということで御予算をお願いいたしました関係から、私どもとしてこういう考え方でいかしていただけないだろうかということで衛星利用ということに関しまして出てきたものでございます。あるいは将来別の案件が出てまいりまして、その場合にはどうするかということは恐らく個々の案件に応じましてまた御議論をいただくことになるのではないかと思います。  この間の二月六日の件はそういう推移でございます。
  204. 神崎武法

    ○神崎委員 例えばSDI構想につきましては、宇宙空間で飛しょうしてきたミサイルを指向性エネルギー兵器で破壊するという構想が含まれているわけでございますけれども、では、防衛庁の国会決議の解釈からいたしましては、そういった構想について、少なくとも我が国としてその部分について開発利用ができないように思いますが、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  205. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 SDI構想につきましては、本委員会においても本院においてもるるいろいろ御議論がされてまいりました。その場合の御答弁にも申し上げましたように、アメリカの構想がまだ必ずしも全部よくわかっているわけではない。近くアメリカからその専門家が来て、私ども話を聞くことになろうかと思いますけれども、アメリカでの話でございますので、今回のこの国会決議に関しては我が国におけるということになっておりますので、当面この国会決議との関係はなかろうかなと私ども思っておる次第でございます。
  206. 神崎武法

    ○神崎委員 本年二月二十一日の予算委員会で我が党の渡部委員質問に対しまして防衛局長は、偵察衛星というものに非常に関心を持っておる、世界の各国の状況等について常時調査を進めている、こういうことを述べられておる。また、総理も「偵察あるいは調査というようなことがほかの衛星、民間用の衛星等を含めまして一般化したような場合には、これは自衛隊が使ってもいいものである。」こういう答弁をしているわけであります。  先ほど申し上げましたように、いろいろな分類はあろうかと思いますけれども、軍事衛星につきましては現在でも十一種類あるわけであります。政府の解釈からいたしますと、キラー衛星を除いて必ずしも否定はされないということでありますが、なぜ、その中でも特に偵察衛星に非常に関心をお持ちになっていらっしゃるのか。     〔椎名委員長代理退席、委員長着席〕
  207. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 我が国防衛政策基本は、申すまでもなく専守防衛を旨としているわけでございます。こういった専守防衛考え方から日本防衛考えていく場合に一番大事なことは、やはり各種の情報を速やかにキャッチをするということであります。そういう意味で、防衛庁も従来からいろいろな情報面の充実を図ってきたところでございます。そういう物の考え方からして、有力な情報収集手段の一つであります偵察衛星について、かねてから関心は持っておりますということをしばしばお答えをしているわけでございます。  ただ、では今具体的に何か考えているのかということでございますと、現在のところ我が国独自の偵察衛星の保有についての構想あるいは計画はないわけでございまして、各国の動向等について注意深く見守って調査はしているということでございます。
  208. 神崎武法

    ○神崎委員 ほかの軍事衛星、特に三分類の中での支援衛星、いわゆる気象、通信、航法、測地衛星、こういった衛星については、防衛庁としては余り軍事衛星の利用に御関心をお持ちになっていないようであります。そうしますと、こういった衛星については当面は民間の衛星を利用するという方法でいく、それができない、民間の衛星では目的を達せない場合は軍事衛星の利用考えたい、こういう基本的なお考えでしょうか。
  209. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 先ほども申し上げましたように、現在そういった問題を具体的に検討しているわけではございませんで、防衛庁としてこの偵察衛星のたぐいのものについて具体的な構想ないし計画というものは現在はございません。ただ、世界の状況を常に承知をしておるということが必要でございますので、そういった意味の一般的な調査をしておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  210. 神崎武法

    ○神崎委員 偵察衛星につきましては米ソのほかに中国も打ち上げていると言われておりますし、フランスも独自でシステムを開発中であるということが言われております。第五番目の国として日本が、恐らく一九八〇年代末までにこの打ち上げ能力を持つようになるだろうというのがヤサーニというストックホルム国際平和研究所研究員の「カウントダウン」という著の中でも指摘がなされているわけであります。防衛庁は、世界の偵察衛星開発の現状我が国保有の見通しについてのこういう専門家の分析について、どのように評価されますか。
  211. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 偵察衛星というものをもう一グループ大きい定義にいたしますと、地球観測衛星の一部ということに相なります。例えば気象衛星、海洋観測衛星も同じグループかもしれません。地球の表面を見るということでございます。  ただ、偵察衛星という名前あるいはこれを監視衛星と変えてもいいと思いますけれども、今のアメリカなりソ連なりが持っている偵察衛星というものは、用途にもよりますがかなり精密な、かなり精緻な分解能力を持っております。私ども、ランドサットでありますとか、今度通産省が上げる地球資源探査衛星ですとか、そういうようなものは恐らく二十メートルあるいは三十メートルぐらいの分解能力を持った地球観測衛星だと思います。それに対しまして、アメリカあるいはソ連が持っている偵察衛星、これは確たる情報はございませんけれども、数十センチあるいは一、二メートルというような一つのけたが違うぐらいのものになっているんではないか。そういう意味で、なかなか、そういった精密なものが果たして必要かどうか、あるいは持てるかどうか、技術的にもニーズからいっても。それは今いろいろ世界の動向を見ながら研究課題でありますけれども、現在のところ、私どもはいつどのくらいまでにというプランというものは持っておりません。
  212. 神崎武法

    ○神崎委員 新聞報道によりますと、五九中業でC3Iの強化を最重要課題としたいということが言われているわけであります。その一環として、六十三年打ち上げ予定の国産通信衛星CS3ですか、これの本格利用方針を固めだということが伝えられまして、参議院の予算委員会の方でも、これについての答弁が若干なされているようですが、もう一度改めて確認をいたしますが、こういう方針を固めたという点、これは事実でしょうか。
  213. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 まず、五九中業でございますけれども、これは、各種事業につきまして、現在庁内で検討いたしている段階でございます。したがいまして、具体的に計上させる事業についてここで確定的に申し上げる段階ではございません。が、この防衛通信あるいは情報通信というものにつきましては、いわゆる指揮、統制というものに必要なものでございまして、その通信体制を向上させるという意味については検討を行っているところでございます。この検討の内容といたしまして、あるいは通信体系全体をデジタル化しなければいかぬとか、あるいは抗堪性と申しますか、複数の通信系統を持つとかということになりますと、通信衛星利用というものが一つの有効な手段ではないかと考えております。しかし、それが、じゃ、例えば六十二年度でございますか、上げるCS3にしたとか、あるいはそれを活用するんだとかいうところまでまだ至っておりません。一般的に通信衛星というものの利用が必要だ、そのあり方はどうであろうかということを勉強している段階でございます。
  214. 神崎武法

    ○神崎委員 五九中業で、C3Iの機能を強化したい、最重要の課題としたい、この点はいかがですか。
  215. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 一般的に申し上げまして、こういったC3Iの機能を充実をしていく必要性はかねてから私どもが防衛力の整備の中で重視をしてきた問題でございまして、そういう考え方は従来と特に変わっていないと思います。
  216. 神崎武法

    ○神崎委員 この民間衛星の利用については、まだ御検討中だということでありますが、このC3I機能強化の一環として、民間衛星を使用するということになりますと、これは防衛出動時の武力行使の指揮、これも民間衛星を通じて行うということが可能になるということでよろしいでしょうか。
  217. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 衛星につきましては、専用の衛星もございますれば、汎用で、民間もあるいは防衛にも使うというものもございます。アメリカにおきましても、海軍は今この間のフリートサットを中心に使っておりますけれども、マリサット衛星という、民間と共通の衛星も使っておるわけでございます。私ども、衛星の利用ということに関しましては、その持つ機能というものに着目をいたして、いろいろ判断をさせていただいておるわけでございますので、専用あるいは共通、いろいろの態様があろうかと思います。そういうことも含めまして、目下勉強中でございます。
  218. 神崎武法

    ○神崎委員 私の質問にお答えになっていないのですが、要するに指揮に使われるということは、そういう防衛出動時の武力行使の指揮ということは、その民間衛星を通じてそういう指揮がなされるというふうに理解してよろしいでしょうかということです。
  219. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 私どもの持っております通信系統、防衛マイクロ回線もありますれば、無線もあります。また今後通信衛星の活用ということが有効かなということで勉強をしているわけでございます。いろいろな状況、場面に応じまして、その使われる通信手段というものはまた異なってこようかと思います。その状況、状況によって違ってくるかと思います。
  220. 神崎武法

    ○神崎委員 私が特にこの点を申し上げたのは、C3I機能の強化の一環としてこの民間衛星の利用ということが検討をなされますと、結局有事に際してはこの民間衛星が、これはもう敵から見れば、ここが指揮機能を持っているわけですから、これを当然破壊しなければいかぬということで、敵からの攻撃対象になってくるであろう。そうなると、有事の際に民間衛星の機能、通信機能等が結局果たせなくなってきてしまうのではないか、そういう危険性があるんじゃないか、そういう観点からお尋ねをしているわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  221. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 これは防衛力基本についての考え方とも関連があるかと思います。  私どもが現在考えておりますのは、何回も申し上げますように、大綱に定める考え方に沿いまして、限定、小規模の侵略には独力で原則として対処し得るものをつくろうということでありますし、その防衛力の構成要素としてはいろいろなものがございますが、直接の装備品の整備というもののみならず、C3I機能もこれは充実していかないと真の防衛力はできないというふうに考えてやっておるわけでございますけれども、そういったことをやること自体がまた抑止力を高めていくということになるわけでございまして、そういった抑止力としての性格を持った防衛力というものは、これは防衛力総体がそういった機能を果たすというふうに御理解をいただきたいわけでございまして、個々の装備が特別に何かほかのものと特異なステータスにあるというふうには私どもはなかなか考えにくいように思うわけでございまして、全体としての抑止力を高めるためのいろいろな着想の一つというふうに本件もお考えをいただきたいと思います。
  222. 神崎武法

    ○神崎委員 私が懸念いたしておりますのは、将来民間の衛星を保護しよう、こういういろいろな動きになってきたときに、結局、ただし、我が国の場合に民間衛星を軍用にも、いわゆる自衛隊も使っているということになると、これは要するに民間衛星の保護の対象にならないんじゃないかというような議論が出てこないかどうかですね。いわゆる本当に民間衛星として保護されるのかどうかですね。そこら辺のところがちょっと懸念されるわけなんですよ。それに軍用に使っているわけですね。防衛庁が通信機能を利用する、あるいはC3I機能の一環として民間の衛星を利用するというところで、本当にこれは民間衛星としての中に入れて保護されるという形になってくるのか、あるいは民間、軍用両用の衛星という範疇に入ってくるのか、そこら辺のところを懸念するわけですけれども、いかがでしょうか。
  223. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 個々のいろいろな防衛力の要素をとりまして、その個々の要素が相手国の攻撃の対象になる可能性があるがゆえに、その分野から撤退をすべきだというふうな議論をし出しますと、これは防衛力全体が個々のエレメントに分解されまして、全部が否定されてしまうということになると私は思いますので、これは先ほども申し上げましたように、いろいろなその要素が総合されて本当の防衛力になり、かつそれがまた全体としての抑止力になるものであるというふうな総体的な御理解をぜひいただきたいというふうに思うわけであります。
  224. 神崎武法

    ○神崎委員 それから五九中業では、先ほど申し上げました偵察衛星、これを我が国として保有する構想というのがあるのかないのか、その点いかがでしょうか。
  225. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 五九中業におきます個々の具体的な事業につきましては、先ほどからも申し上げておりますように、ここで具体的に申し上げられるような状況ではございません。  ただ偵察衛星の問題につきましては、先ほどから申し上げておりますように、現在のところ各国の状況を調査しておる段階でございまして、具体的な整備の構想あるいは計画というものは持っていないわけであります。
  226. 神崎武法

    ○神崎委員 以上で終わります。
  227. 森下元晴

    森下委員長 渡部一郎君。
  228. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 きょうも画期的なことをひとつ言わなければならぬと思っているのですが、一つはまず日本のハイテク企業に対してアメリカ側が目下調査団を派遣して、十六項目あるいは二項目というふうにいろいろ調査をなさっていると承っておるわけであります。その調査の内容、あるいはどういうアプローチをしておられるか、御説明を承りたい。言いにくいのでございましたら、資料として提出していただきたいのでもございますが、まず概略の御説明をいただけますでしょうか。
  229. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 まず最初に、カリーさんという、アメリカのヒューズ・エアクラフト社の副社長の方がおります。この方は数代前の研究技術担当の国防次官でございました。この人が団長となりまして、米国防衛技術審議会という民間の団体でございますが、この団体が一昨年の十月から十一月にかけまして我が国の技術水準を一般的に調査に参ったわけでございます。民間企業数社と防衛庁、通産省等を訪問いたしたわけでございます。その報告書が昨年の八月に出版、公開されてございます。ごくかいつまんでその内容を申し上げます。  一つは、技術というものが国民生活の向上と国家安全保障の両面からとってモメンタム、非常に重要なイニシアチブをとるものであるという認識でございます。  第二番目に、日本アメリカとの関係について見ますと、アメリカからはライセンス生産でございますとか、いろいろな技術が日本に輸出され、日本から見ればそれを導入して日本防衛に役立てている、そういう一方交通であった。しかし、日米安全保障という観点から見ると、ちょうど対米武器技術供与の道が開かれたのと軌を一にしてその報告書はでき上がっているわけでございますが、やはりツーウエー、アメリカからも流れるし日本からも流れるということが必要だという認識を第二にしているわけでございます。  第三番目に、日本の技術水準あるいは技術の動向を調べた結果、アメリカ側が国防関連技術として興味を持つものは、武器専用技術よりはむしろ汎用技術、英語でデュアルユースと言っておりますけれども、汎用技術の方により関心を持ちましたということが第三のポイントになっているわけでございます。  第四は、ただいま先生おっしゃいましたように、十六項目と申しますか十六分野というものを例示として挙げております。先方が汎用技術として関心を持つものの例示として、例えばガリウム砒素素子というもの、これはいろいろな半導体のベースとなるものでございます。それからセラミック技術、これは例えば戦車等の装甲に使われるものでございます。あるいは、極端に言いますと、日本は開発研究よりは生産技術がすぐれている、クオリティーコントロールあるいはコスト管理、そういった意味で生産管理の技術もまたアメリカが勉強すべき事項であろう。こういうことで十六項目を例示として挙げてございます。
  230. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 立て板に水でしゃべられるので、私が求めておりますのは、外国の出版物による御紹介はそれで結構でございますが、これはまた拝見させていただきます。  この調査団は、一回だけでなく今回もまたお越しになりましたし、それに対する正式な報告は私たちはいただいておらないわけでございます。その動向については国民としてはある種の心配を持っておるわけでございますし、当然私どもも審査をしなければならぬテーマでございますので、情報として提供していただきますようお願いをしたい。評価をつけて、どうした内容であるのか、この委員会に報告をしていただきたいと思うわけであります。よろしゅうございますか。
  231. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 少し長く御答弁申し上げて失礼申し上げました。  先生今おっしゃいましたように、第二回の調査団、これは簡単なものでございますけれども、先般三日間だけでございましたが、別のグループが参っております。今度は国防総省の方からマヅカラムさんという博士がグループになりまして昨年の八月でございましたか来ましたものの第二回目が先般参りました。三日でございます。この報告書はまだ発表されておりませんし、その報告の内容につきましてはこれからでございます。私どもの理解しているところでは、ミリ波とオプトエレクトロニクスについての調査だと思います。さらに日本において研究開発がどういう制度で行われているのかという一般的な内容を調査に来たものと考えております。
  232. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、これについて情報がわかり次第文書において提出されるよう、資料として提出されるようお願いしたいと思います。委員長、よろしくお願いいたします。  では次に、私はこの議論をするに当たりまして、いきなりここで思いつきで議論しても議論ができかねることが幾つがこの問題にはございますので、次回のためにぜひお願いしたいことがございます。  それは、日本防衛力整備計画その他を拝見いたしますと、陸海空の三軍の要員の比率がこれで適切かどうかについての議論は、かなり古い時点でないとございませんで、最近においてその比率が適切かどうかについての議論はないように見えるわけであります。そしてこれはしばしば考え直されなければならないし、現代の国際的な環境の中における日本の総合的な安全保障政策と関連づけて議論されなければいけないのではないかと思うわけでございます。よく言われることでありますが、朝鮮戦争の際に治安部隊の性格を持たされて、マッカーサー司令部の指導によりましてつくられましたとき、日本の陸上自衛隊については三十万人という要請があり、それについてさまざまな交渉があって十七万にしたといういきまつがございますけれども、戦前の陸海軍と比べますと、人数の上での陸上偏重が極めて強烈に出ていると思われるわけであります。その数字がこれでいいのか悪いのかまさに問題、ここについて十分討議が当委員会においても行われてよろしいのではないかと私は思っているわけであります。きょう今すぐ防衛庁長官の見識を問うことはいたしません。お勉強家であります長官は山ほどまたお勉強なさるのは明らかでありますから、次回の論争にさせていただきたい。  きょう時間も余りありませんから、三つの自衛隊のバランスはこれでいいのか、そしてそれが適切なのか、これは一つ議論の余地のあるところではないかと私は思うわけであります。私に言わせると、現在の陸上自衛隊は明らかにアメリカ軍式の海外出動型の米軍師団というものに準拠しているため、駐屯地を称してキャンプと言うぐらい、ちょっとしたハイキングに出かけたような感じでつくられているのでありまして、その規模というものは制式武装の場合には非常に大型につくられ過ぎておる。我が国の国土の中における自衛隊というものはもう少し軽便なシステムが考えられていいのではないかと常々思っていたわけでございますが、こうしたこともあわせて御考慮をいただいた方がいいのではないかと思うわけであります。  この辺、立論のいろいろなところがあるわけでありますが、要するにアメリカンスタイルの自衛隊ではなくて日本スタイルの自衛隊というものをつくる必要が今やある。その意味では見直す余地があるのではないか。私は、人件費にばかに食われているという点を考えても、陸上自衛隊の数は多過ぎるのではないかと思います。しかし私は陸上自衛隊に八つ当たりしているわけではなくて、この三軍の運用についてバランスがとれないで、従来のしきたりの中で、そのことについてはもう憲法で決められているみたいに思っていて、そしてやたらと同じような比率でふやし、同じような比率で減らすという形で予算編成が行われるようなニュアンスが残存しているとするならば問題ではないか、私はそういうふうに思うわけでありまして、今後御研究をいただきたい。それだけ言ったのですから、そちらからも何か言いたい前もおありでしょうから、そんな一方的なものではありませんと当然言いたいことでございましょうし、しかるべき御答弁をどうぞ。
  233. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 お答え申し上げます。  陸海空の要員のバランスという御指摘でございました。  御承知のように、陸上自衛隊は「防衛計画の大綱」で十八万人という枠組みを決めております。それに対して海空自衛隊は、装備の増強等に応じまして従来は原則として毎年予算で少しずつ増員を認めていただいて、それを自衛隊法の形で国会の御承認を得て、そして定数がつくられていくというふうな仕組みで動いてきておるわけでございます。私どもとしてはそれぞれ基本的に限定、小規模侵略に対処するだけの防衛力を持とうという大綱の考え方に沿ってこういった定員が定められているというふうに理解をしているわけでございます。そしてまた、特に陸上防衛力について申し上げますならば、これは我が国の地理的特性等を十分考慮いたしまして必要な師団等の数も決めてあるわけでございます。十三個師団というものが基幹になっておるわけでございます。その師団の編成の態様も、御承知のように九千人師団及び七千人師団という二種類ございますけれども、これは先生おっしゃいましたような外征型のものでございませんで、まさに専守防衛に適したものということでつくられているわけでございます。アメリカ等の場合はむしろ外国に出ていくというふうなグローバルな戦略構想のもとで軍を編成しておりますから、師団の規模も二万人前後とかというふうなものも多くございます。その点は日本の師団の編成は、後方の規模などはアメリカに比べてぐっと小さいわけでございまして、国内における自衛のための、専守防衛のための自衛力というふうな思想でつくられているというふうに私どもは考えているわけでございます。  基本的には以上のようなことで考えておりますが、また追って御質疑があるということでございますので、各論につきましてはここでは省略をさせていただきたいと思います。
  234. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 こうした議論については委員会の性格上ゆっくり議論ができる委員会ですから、私はこう申し上げておいて後でゆっくり議論したいと思います。私の見解によれば、だぶつき型の異常な形をした自衛隊、そして前後見境なしに前年度比で物を考えている自衛隊、今や奇形化した自衛隊だと思っているわけでありまして、これは今後十分修正をしていただきたいなと実は思っているわけであります。  次に、GNP一%の問題にまた戻るわけでありますが、私はこのGNP一%の問題を扱う場合に、GNPの数値というものそれ自体、これは大蔵委員会で何回も論争されているところでありますが、GNPという数字それ自体に各国に非常にばらつきがある。それからまた、私がこの間議論いたしましたのは、GNPの中に防衛費をいかにカウントするかという問題について、一%ではないぞ、既に相当大きいぞという議論をいたしまして、防衛庁は、NATOを参考にいたしますと、そのうち一・三%と考えていいぞという、そういうものかなという、NATOと比べると三%程度になっているぞという議論をなさいました。つまり第一段階、GNPとは何ぞやに非常に振れがある。今度はGNPの中にカウントする防衛費にひどい振れがある。そしてそれは我が国の場合、防衛費を小さく見せかけようとする政治的行政的意思というものがかなり働き続けていたんだ。日本防衛費はたから一%で呼称されるよりもかなり大きなものであるというのが私の議論であります。それについてはある程度お認めになりました。ただ、私はもっと大きなものだなという感じが最近はしているわけであります。  今度は三番目に、GNPに対してGDPで議論する国々がある、もっとひどいのは。そうすると、このGDPで議論いたしますと、例えばこれはイギリスでありますけれども、イギリスは特殊なGDPに対するカウントの仕方を持っておりまして、自分のこの数値が多くできないように、特殊に小さく見せかけるように、例えば石油の産出量によるところの行政経費に対する組み入れというものを非常に小さく下に見積もっておりますために、防衛費の支出は大きく出るような数値がとられているわけでありまして、これは議論するときにかなり議論に警戒しなければならぬという面がございます。もっとも、そこでGNPというものをこうした防衛費の基礎に使って議論しているところは一体どこにあるのかな、こういうふうにして調べてみますと、このような数値を公然と使って国内のいろいろな議論をするというのは比較的少のうございまして、西ドイツにおいてはこのGNP比というものを年金その他のカウントの中で対応して用いているということはわかりましたけれども、こうしたものは少ない。むしろ政府支出に対する割合で議論されている国が多いのだなということもわかってきたわけであります。  政府支出に対する割合で言いますと、これはたしかここで防衛庁の方からちょうだいした資料でありますが、政府支出に対する割合、一九八二年でとりますと、日本は五・二%、イタリアが五・九、東ドイツが八・四、オーストラリアが一〇・一、イギリスが一一・四、それからもう少し大きく言いますと、西ドイツが二八・二、フランスが一八・一、アメリカが二七・〇そんなような数値が出ているわけであります。すると、この政府支出に対する割合の方が防衛支出に対して的確なのかなどうなのかなというのはかなり論争のあるところだと思います。要するに実態をよりあらわす数値になり得るかどうか、その点どうお考えになっておられるか、その辺を私は承りたいなと思っているわけであります。つまり、いきなり申し上げておりますから、御準備の都合もあるだろうからもう一回申しますけれども、この間、防衛費について一%というのはNATO型を少し参照してやると一・三と既に言われましたから、それをここでぶり返そうとしているのではなくて、GNP比で議論するパーセンテージと政府支出に対して何%で議論する議論の仕方とその優劣をどう評価されておられるか承りたいと思います。
  235. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  最初に、先日、NATO方式で日本防衛費を仮に計算してみたらどのくらいになるかという御質問がございまして、それに対しまして、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、強いて推定をしてみますと一・二ぐらいということを申し上げたかと存じます。一・三でなくて一・二ぐらいと。それをお断りいたしておきます。  それからGNPとGDPのお話がございまして、確かにGNPとGDP、違うわけでございますし、私どもがミリタリー・バランスを基準にいたしましてGNP比ということを申し上げてはおりますが、その中にはかなりGNPじゃなくてGDP比で出してある国もあることは事実でございます。でございますから、日本の場合にGNPじゃなくてGDPでやったら数字は変わってくるんじゃないだろうかという心配もございます。  そこで、調べてみますと、日本の場合でございますと、ほとんどGNPとGDPの数字が変わらないようでございますので、年によってはGNPの方がやや大きい、年によってはGDPの方がやや大きいということはございますけれども、比で言いますと、五十四年から五十八年までで〇・九九九から一・〇〇二までの誤差範囲でございますので、ほとんど変わりはないんじゃないんだろうかな、こういうふうに思っております。  それから、GNP比で物を考えるのとそれから歳出の予算比で物を考えるのとどちらがいいんだろうか、こういうことでございますが、つまり、そこのところはどこへ違いが出てくるかと申しますと、その国、当該国におきます歳出のGNPに対する比率の違いが、今の違いに出てくるわけでございます。歳出のGNPに対する比率が違ってまいりますのは、基本的に言いますと、租税負担率などがそれぞれの国によって違っておるというようなことの反映が出てくるわけでございますので、一概にどちらがいいんだろうかということを申し上げることは難しいのではなかろうかと思います。  ただ、一般的に例えばGNPというものが割合と使われて議論をされているというようなこともあるということで、GNP比ということを私どもも申し上げているわけでございますが、それが何も絶対的なものだとは思いません。GNP比について、日本の場合には特に閣議決定がございまして、一%というのが、予算をつくりますときのめどになっているということで、この比率が重要視されてきたということはあろうかと思いますけれども、しかし、これが何も絶対的なものではないだろう、こう思っております。  それから、先ほど申し上げましたが、NATO方式でやりますと一・二ぐらいになるかなという感じもいたすわけでございますが、ただいま約一ちょっと弱でございますけれども、それが二割程度恩給の関係を加算すればしたというような形になるのかもしれないわけでありますが、一が一・二になるわけでございますから、そこのところは基本的に日本の国防費が相対的に小さいということの事実関係は変わらないのではなかろうかと思っております。
  236. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 質疑時間が終わりでございますので、まとめの発言を一言さしていただきますが、GNP一%の一というのに対して、諸外国が三とか四とか五とか、三倍、四倍、五倍だと見られがちであった数値に対して、政府支出に対する割合を見ても、そういうひどい格差のある数字ではないという感じがするわけですね。これはもう物事を考える場合に大事なことだと私は思います。むしろ実態的には現実の支出、実態的な支出比を、円で何ぼなのか、ドルで何ぼなのかという、その実際の支出比カウントしなきゃいけないときが来ているのではないかと私は思います。  というのは、既に防衛費の総額で世界の六番目ですし、このまま七%ずつの勢いで予算の中で上昇を続けますと、七年間に倍になりますし、四年たてば、世界米ソに次ぐ防衛大国になることは目に見えているわけでございますから、こうした数値に対して、少ないというだけで、過小であるというだけで議論を進めることは間違いではなかろうか、もう少し穏やかな安定した議論が必要なのではないかと私は思っているわけであります。  今の一・二%の分を述べられたのは、防衛庁の画期的な御見解でございまして、前回の委員会でさっと述べられましたが、余り喧伝もされていないようでございますけれども、実際には、今までNATOの方を例にとられてのお話ではございますし、それが日本政府の言う防衛費の中に属さないというのは、日本政府流の考え方として存在することはわかっているわけではございますけれども、そうして実態論についてもう少し議論を積み重ねた上で、安定した防衛費に対する国民的コンセンサスを得るということは大切なのではないか。  私は、そこで問題になりますのは、GNP一%を堅持するということで、東南アジアの国々に対して、平和という問題に対して、日本の平和的姿勢をわからせたいきさつがありますし、日本の平和憲法を堅持するという意味で、これを非常に大きな一つの原則として、非核原則であるとか武器禁輸原則であるとか、あるいはこのGNP一%堅持とかいわれる問題が、国民の平和に対する一つの原則となってきた今までのいきさつがあります。だからこそこのGNPの一%は、ある意味で、形、数値として堅持するということが政治的意味を持つ時代になったと思うのです。それと同時に、実態的には我々は、日本の平和的姿勢を世界に向かって保障し続けるだけの行動なり原則なりをますます組み立てていかなければならぬと思うのであります。その意味では、大臣にもっともっと御研究をいただいて、次の際にその問題についても話を詰めていきたい、こう思っているわけであります。  以上でございます。
  237. 加藤紘一

    加藤国務大臣 GNP比の問題は、委員会でも大変御議論いただきましたけれども、また今後とも御議論いただくと思いますが、私は、国内国民もかなり注目しているポイントでありますし、ある意味で諸外国も注目しているポイントであろうかと思っております。  ただ、若干御議論を広げてお答え申し上げると、私たちの国の防衛政策について、諸外国が一〇〇%とは言わなくても、最近はかなり理解もしてもらったと思います。その際に、私は、この一%も十分なる働きをしたと思いますと同時に、やはり憲法に基づき、専守防衛非核原則それからシビリアンコントロールをしっかりやっている。そういったほかの政策の運営の仕方、政策の基本部分も、私は諸外国からかなり評価されてきているのではないだろうかな。ある意味じゃパーセントだけではなくて、そういう面も私たちはしっかり今後やっていかなければならぬというような気がいたします。  しかし、いずれにしましても、この一%問題は大変大きな御議論をいただいているポイントでございますので、今先生御指摘いただいたこと、いろいろおもしろいポイントであろうかとも感じてお聞きいたしておりますけれども、また今後ともいろいろな形で御議論いただき、そしてそれとともに、おっしゃるようにかなりの注目されている日本防衛のあり方でございますから、その中身がどうあるべきなのか、先生が次の機会に御議論いただくというその実態面の中についてどう考えるべきかについても、またいろいろ御意見をいただきたいと思って期待いたしております。
  238. 森下元晴

    森下委員長 東中光雄君。
  239. 東中光雄

    ○東中委員 この前の当委員会で、F16の配備に関連しまして、天ケ森射爆場の米軍の核模擬爆弾投下訓練についてお聞きしたのですが、外務省来ていただいていると思うのです。  今まで、沖縄以外の本土で米軍が核模擬爆弾の投下訓練をやったことがあるかどうか。核兵器の積載可能なファントムが配備をされておる事態でも、本土では核模擬爆弾の投下訓練というのは一切やっていないと承知しているのですが、その点はどうでしょうか。
  240. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 本土におきます模擬爆弾の訓練状況につきましては、私ども具体的に詳細を承知しておりません。一方におきまして、核模擬爆弾を使った演習を行ったという事実は私ども把握しておりませんが、過去において全くなかったかということにつきましては、全くなかったというふうに申し上げるだけの情報は有しておりません。
  241. 東中光雄

    ○東中委員 沖縄においては、伊江島等で施政権返還前はやられておったことははっきりしておるわけですが、その後も少しやられたということですが、いつからやられないようになったのか。ファントムが撤収をされた後、F15にかわってからは沖縄ではあり得ないと思っているのですけれども、その点はどうでしょうか。
  242. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 沖縄におきましては、沖縄返還後若干の期間において、具体的にこれらの政府の答弁もございますが、核模擬爆弾を使っての演習を行った、訓練を行ったということは承知しておりますが、その後全くそういう訓練が行われていないかどうかということにつきましては、事実関係につきまして私ども必ずしもつまびらかにしておりません。
  243. 東中光雄

    ○東中委員 使っていないというふうに確認はしていないけれども、使ったということは確認はしていない、こういう関係のようですね。お聞きしておってそう思ったのですが、沖縄以外の本土では使っておったということは聞いていない。それから、返還後、沖縄はしばらくは使っておったことは承知しておるけれども、それ以後は使っておったとは承知していない、しかし使っていなかったというふうにも確認はしていない、こういう答弁だったと思うのです。  それで、天ケ森につきましては、前回お聞きしましたように、山上施設庁長官が四十四年当時に答弁をしましたように、あそこでの模擬爆弾の投下訓練という場合の模擬爆弾の中には核模擬爆弾は含まれていないという答弁だったと思うのですが、その点について、天ケ森の基地使用条件についてどういうふうになっておるか、お伺いをしたいと思います。
  244. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  先日お尋ねの山上施設庁長官答弁、早速調べてみましたところ、四十四年六月十七日衆議院の内閣委員会、淡谷議員に対するお答えでございました。私、その際にも申し上げたと思いますが、当時問題になりましたのがナパーム弾の訓練でございまして、ナパーム弾の訓練の議論の延長、つまり、ナパーム弾は非人道的だから中止するように、こういう議論の延長から抽象的な仮定の問題として核模擬爆弾はどうなっておるかという御質問に及んだようでございます。  三沢対地射爆場の使用につきましては、日米合同委員会で取り決められておりまして、その合意事項につきましては、実は防衛施設庁一存の解釈で御意見を申し上げることは必ずしも適当でないのでございましたが、淡谷議員から、施設の実態を知っておるのは防衛施設庁であろうからどうであるか、こういうさらに御質問がございまして、模擬爆弾であれば特別に態様は問わないという答弁を申し上げたはずでございます。さらにその後、実態を掌握しておるのは防衛施設庁であろうということでございましたので、四十四年当時、十六年前のことでございますが、三沢射爆場において核模擬爆弾の投下が行われているかどうかということを問い合わせましたところ、行われておらない、また行われる可能性もない、こういうところから、通例、模擬爆弾の場合には核模擬爆弾は入っておりませんと、実態に即した認識に基づいて四十四年当時の訓練の実態を申し上げた、こういうことでございます。  なお、先般の御質問でF16はどうなんだというお尋ねでございましたが、これは私先般お答えいたしましたとおり、まだ米側から具体的な提案がございませんし、これからその所管官庁におきまして日米間において話し合いがなされる問題であろうかと存じます。
  245. 東中光雄

    ○東中委員 ということだと、四十四年当時は三沢にはファントム、要するに核搭載可能のファントムですね、それが配備をされておったと思うのですが、しかし核模擬爆弾投下訓練というものはやっていないということがそのとき確認されたんだ、しかし一方、同じ時期に沖縄では伊江島で核模擬爆弾の投下訓練がやられておった、こういう関係になっているように今答弁をお聞きして思うのですが、そういうことでいいのかどうか。そして、特別に申し入れがない限り、今まで天ケ森では核模擬爆弾の投下訓練をやってこなかったし、このままであればやらない状態が続くということだと理解していいかどうかですね。
  246. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  四十四年は御承知のように沖縄の施政権がまだ返還になっておりませんので、沖縄における訓練の実態は当時の施設庁も掌握をいたしておりません。四十四年当時の問題につきましては、山上施設庁長官の答弁のとおり、三沢において行われておった訓練は通例模擬爆弾というものであって、核模擬爆弾の訓練は行われていなかった、こういう事実を具体的な事実認識について申し上げたものと存じます。
  247. 東中光雄

    ○東中委員 だから、F16が配備をされたからといってそういう状態が変わらないように、この間外務大臣は要請されたら最小限度ということでならば認めざるを得ないという趣旨のことも言われておりますけれども、私たちとしては、F16が配備されたということで、核模擬爆弾の訓練が天ケ森で改めてやられるというふうなことのないように、もしそういうことを認めるということになれば、防衛庁がF16の三沢配備の協力を決める前年、八一年のあの防衛白書で言った戦域核戦力としてのF16の配備というものを認めていくような方向に踏み出すことになるから、その点は特に強く要求をしておきたいと思うわけであります。次の質問に入りたいと思います。  今度の予算委員会で中曽根総理が、公海上での日米共同作戦あるいは共同対処の際に米軍が核兵器を先制使用することがあり得るという趣旨のことで、事実上それを容認するような発言をされました。そのことに関連をしまして私がいろいろ聞いたのについて、中曽根総理大臣は、「日本が侵略されているような場合については、共同の作戦協定みたいなものあるいは相談、そういうことはもう当然行われるでしょう。」だから、大局的に日米は相談をしてやるんだ、あるいは協議をするんだというふうなことも言われ、私が、「そうすると、核兵器の使用についても両方、双方が考えることだ、双方で決定をしていくことだということになるわけですか。そういう制度になっているのですか。」という質問をしたのに対して中曽根総理大臣は、「それは、そういう日本が侵略されているというようなときに、共同対処ということが決められておりますから、それを排除する、そういう意味において、日本日本アメリカアメリカで行動する。そのときに連絡調整という問題も出てくる。おのおのの指揮系統に従ってそういう打ち合わせというものは行われることは十分あり得ることであります。」と。要するに、連絡調整なりあるいは作戦協定なりというものがあって、そして核兵器使用というような問題があり得るんだという趣旨の答弁をされているのです。  それで、防衛庁長官に聞く前に、日米共同作戦計画が既にできましたですね。署名された、共同研究の計画案といいますか、これはできた。それからシーレーン共同研究もやられておる。こういう安保条約に基づく日米ガイドラインの枠内での有事の際の共同作戦協定づくりというものの中に、中曽根さんの発言でいくと、核兵器の使用に関連して、共同の作戦協定というようなものは当然そういうときはつくられているんだということを答弁しているわけですが、この共同作戦計画の研究の中で、米軍が核兵器を使う場合も含めて研究をされているのかどうか。
  248. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この点は先般も一度お答えをしたことがあったかと思いますが、共同作戦計画の研究におきましては、いわゆる核兵器の使用というものを研究の対象とはしていないわけであります。これは、日本アメリカの核抑止力に依存をしておるということで、その点はアメリカのグローバルな世界戦略の中での位置づけになる問題であろうと思いますし、したがって、非常に重要な政治マターでありますから、アメリカにおいてもアメリカの大統領の権限としてそれが保留されておるというふうに理解をしておるわけであります。そういうことが前提でございまして、この共同作戦計画の研究におきましては、核兵器の使用というものは研究の対象にはしていないわけでございます。  先ほど委員が御指摘になりました中曽根総理の御答弁というものは、そのこととは別に、一般的に米艦が公海上にある場合に、核使用をする可能性というものを一切排除することは、これは抑止力を保持するという観点から見て適当でないという趣旨を一般的に申し述べられたものだというふうに理解をいたしております。
  249. 東中光雄

    ○東中委員 いや、そういうことではなくて、そういうことも言われたのでしょうけれども、そのほかに、そういう核兵器の使用ということになれば、それは大局的に双方で判断するんだという発言を総理はして、それについてさらに、日本が侵略されているような場合については、共同の作戦協定みたいなものあるいは相談、そういうことはもう当然行われるでしょう、こういう発言をされているので、核兵器の使用についてはアメリカの大統領の直接の権限だから、作戦協定の研究の中では対象にしていない、それはそれで、そういう答弁ならそういう答弁で結構なんですけれども、それでは総理の言っているようなこういう話し合い、あるいは大局的に両国政府判断するというようなことを言っておられるのは、これは総理の勝手なことということになるのですか。
  250. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 この総理の御答弁の趣旨、私もこうやって読んでおりますし、そのときも聞いていたわけでございますが、この共同対処という場合の基本的な仕組みということをおっしゃっているようでありまして、共同対処をする場合に「日本日本アメリカアメリカで行動する。」ということで、「おのおのの指揮系統に従って」やるというのが基本だということがその中心であろうかと思います。ただ、これはガイドラインにもありますように、そのおのおのの指揮系統に従って自衛隊及び米軍が行動するということにつきましては密接な連絡協調が必要であるということで、そういう調整の問題というのが別途あるわけでございます。そういったような一般的な考え方をここで中曽根総理がおっしゃったものであるというふうに私は理解をいたしております。
  251. 東中光雄

    ○東中委員 いずれにしても、日米共同作戦といいますか、共同対処をやっておるときに、米軍が核兵器を使用することがあり得る、それは共同対処をしているのだ、もし使用するということになったら、離脱するかしないかということになったら、離脱する場合もあるし、離脱しない場合もあるという、上田さんの質問に対する答弁もあったわけですね。そういう状態における共同対処のときに相談し合うんだということを、中曽根さんはあるいは大局的に両国政府判断するんだということを言って答弁していることは、これはもう明白なので、それはどういう場所でやるのか、あるいはガイドラインの線でいけば。そういうことについての、この対処についての協議、研究の対象になるんでしょう。ガイドライン自体では、あなたも言われたように、核抑止力を保持するということが、あそこの第一の「未然に防止する」というところに載っていますからね。そういう角度から言えば、共同対処のテーマになるんでしょう。ならないのですか。
  252. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 これは問題を二つに分けて御理解をいただきたいわけでございます。  第一の問題は、日米共同作戦計画の研究の中で、これがどういうふうに扱われているかということでございまして、その点は、先ほども御説明申し上げましたように、日米共同作戦計画の研究というのは、通常兵器による戦闘を想定してやっておるわけでございまして、核兵器の使用の問題は対象にいたしておりません。したがって、それの使用の場合の調整の問題とかというふうなことについても、これはこの共同作戦計画の研究の中で取り上げるということはあり得ないわけでございます。  それから第二の問題は、一般論として、公海上における共同対処中の米艦艇の核使用の問題、これが先般来御議論があったところでございます。これにつきましては、これが安易に使用されてはならないということは言うまでもないことではございますけれども、しかしながら、一切その使用の可能性を排除するということは、抑止力の維持という観点から適当でないというふうに申し上げているわけであります。そういった場合に、共同対処中の自衛隊の艦艇がいかなる対応をとるかということはそのときの状況によることであって、一概に申し上げることはできないということもあわせて申し上げているわけであります。  で、そういったことでございますから、事態は個々のケースに応じて千差万別であるわけでございまして、あらかじめここでどういうふうなやり方、どうのこうのというふうなことを具体的に申し上げることはできないというふうに思うわけであります。
  253. 東中光雄

    ○東中委員 それは千差万別でしょうけれども、核兵器を使用するかしないかということについて言うならば、千差万別の中の一つのそういう対応をとるかとらぬかという、今世界じゅうで大問題になっている問題について聞いているわけですから、それについて共同対処の場合には連絡調整なり打ち合わせなり、もし使用というようなことになれば当然あるべきだということになっておって、そしてこれは五条条件ですから、日本防衛のための共同作戦ということで、共同対処というごとで、そのときに米軍が核兵器を使う。使うについて、日本の自衛隊として、あるいは日本政府として、共同対処についての相談なり協議なり、あるいは大局的な話し合いなり、何でもいいですけれども、そういうものがあった場合に、被爆国の日本の自衛隊、防衛庁長官として、核の先制使用を日本防衛のために米軍がするということについて、日本の態度をどういうふうにするのだ。これは認めるということになったら、今度は核戦争の性質からいって、当然報復で日本が核戦場になってしまうというのは明白な論理です。先制使用ということになれば特にそうです。そういう場合にどういう態度をとられるべきなのかという点について、防衛庁長官考え方というものをお伺いしたいと思います。
  254. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先般来、この問題は当委員会で大分議論されましたけれども、私はお聞きしておりまして、この論議はかなり理論的な論議であろうと思います、そして、この論議をすること自体、国民に与える影響とか、その点よく考えておくべきなんではないか。その意味で、すべての防衛政策論議せられることが必要でございますけれども、総理も質問されたから答えましたと言っておりますように、余り理論的な個々のケースを根掘り葉掘り論議すること自体が国民に与える影響というものは、私たち政治家が十分に考えておかなければいかぬポイントではないだろうかなという気がいたします。  そういう前提で、あくまでも理論的な問題でお答えするとすれば、私たちは、五条事態で、そして公海で、我が国を守るという目的のための共同対処のときにおいてという前提のもとで、総理がおっしゃったように、米軍の方が核を使用することの可能性をすべていかなる形であってもそれを排除することは、核抑止の理論には反するということは当然であろうと思っております。
  255. 東中光雄

    ○東中委員 核抑止の理論からいったら反する、それはそれで論理的にそうなるということなんでしょうけれども、私たちは、核抑止の理論をとるということが核をどんどん増強し、そして核戦争の危険を非常に高めてきた、五万発の、地球を何十回も死滅させるくらいの破壊力を持つまでに至った。そういう状態で核兵器の廃絶、核兵器の先制使用はもちろん、全面的な使用の禁止をしていくということこそが今非常に重要な問題だと考えておるわけであります。そういう立場からいって、現実に核兵器の廃絶に向かっての交渉の目標とするということで米ソの三部会に分かれてのジュネーブ交渉が三月十二日から始まっておる。こういう現実の事態で私たちはこの問題をどう見るかということでお伺いしているつもりなんです。単なる抑止力論に立ては論理的にそうなります。それはもう承知の上なんですよ。その抑止力論に立つことでいいのかどうかということをも含めて、安保条約の体制で日本防衛のためにアメリカ日本とが共同対処をする、そういう場合にアメリカが核兵器を使うということを排除する立場にない、先制使用することもあり得るんだというだけでは私はいかぬのじゃないか。先制使用はやるべきではない、核兵器の使用はすべきでない、できれば廃絶すべきなんだという立場をこそとるべきではないだろうか。日本が核前線基地になっておるんだったら、ソ連の側が、それならそれに対抗する措置をとるんだというようなことを言い出してきていますね。私たちは、そういう立場こそがエスカレートしていって核軍拡の悪循環をもたらすというふうに考えていますので、先制使用はすべきでない、むしろ廃絶すべきなんだという立場に立つべきではないか、そういう点でお聞きしているつもりなんです。その点どうでしょう。
  256. 加藤紘一

    加藤国務大臣 だからこそ、余りにもこの議論をすること自体相手に対しても、どこの国か存じませんが、意識させることになりまして、私たちは、理論上の問題としてはいいんですけれども、現実の問題としては余り論議すべきポイントではないんではないか、少なくともこの一、二回総理大臣の論点がわかり、お互いにポイントがわかったら余り何度も何度もやるべき筋合いのものではないと私は感じます。国民もこの点について新聞で読めば、それなりに不安感を持つんではないでしょうか。したがって、その論議をする前に、私たちはできる限り早く実質的な合意がジュネーブで達成されることを望む方が先決なんではないかと思います。
  257. 東中光雄

    ○東中委員 同じ問題について安倍外務大臣に岡崎議員がただしたところ、核兵器は世界どこでも使うべきではない、先制使用はやるべきではないという趣旨の答弁を安倍さんはやっておられます。長官も言われたようなそういう論理も言われておりますけれども、その論理は論理として。そういう点で私は、先制使用、使用禁止協定を結ぶべきだ、廃絶協定を結ぶべきだ、そういう立場でこの問題について聞いておるつもりなんで、核兵器の先制使用はやるべきじゃない、核戦争なんてのは絶対避けるべきだということを、抑止力論とは別に、そういう点についての長官考えをもう一回重ねてお聞きして、私、質問を終わりたいと思います。
  258. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私は、核は絶対になくさなければならない私たちの究極の目標であろうと思います。しかし現実に、現在核の抑止が働いている段階では、先制使用も含めてそれをすべて事前にアプリオリに認めないということは核の抑止の理論に反すると思っております。しかしこれは理論でありまして、そしてそういう中で現実的にどういう対処、どういう事態になるかというのはそれこそ千差万別であります。そしてアメリカも、私たちの国ももちろんでありますけれども、それがやすやすと使用されるような状況をできるだけもたらさないようにするでしょうし、また我が国を守るためそういう事態がないように精いっぱいの努力をするだろうと思います。そういう前提で私たち考えておりまして、繰り返しますけれども、その議論をなさるよりは、やはりジュネーブにおいてなるべく早くこの問題が解決できるよう祈る方が先であろうと思います。
  259. 森下元晴

    森下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十八分散会