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1985-04-08 第102回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月八日(月曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 森下 元晴君    理事 小渕 恵三君 理事 椎名 素夫君    理事 玉沢徳一郎君 理事 上田  哲君    理事 前川  旦君 理事 渡部 一郎君    理事 吉田 之久君       石原慎太郎君    大村 襄治君       中川 昭一君    丹羽 雄哉君       箕輪  登君    森   清君       渡部 恒三君    天野  等君       奥野 一雄君    加藤 万吉君       神崎 武法君    山田 英介君       藤原哲太郎君    東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  池田 久克君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      大内 雄二君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君  委員外出席者         警察庁交通局交         通規制課長   越智 俊典君         運輸省航空局官         制保安部保安企         画課長     土井 勝二君         海上保安庁警備         救難部航行安全         課長      玉置 佑介君         特別委員会第三         調査室長    鎌田  昇君     ――――――――――――― 委員の異動 四月八日  辞任         補欠選任   三塚  博君     中川 昭一君 同日  辞任         補欠選任   中川 昭一君     三塚  博君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 森下元晴

    森下委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川昭一君。
  3. 中川昭一

    中川(昭)委員 私は、国の安全保障に関する若干の問題につきまして、防衛庁長官並びに関係各省庁にお伺いをいたします。  一月の十五日から十七日まで加藤長官北海道視察に行かれました。北海道というのは非常に冬の厳しいところであると同時に、地理的に見ましても日本の安全にとって非常に大事なところであると私は思います。  そういう意味で、長官が一の時期に北海道を選んで視察をなさったという意味と御感想についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  4. 加藤紘一

    加藤国務大臣 一月の中旬、北海道に行ってまいりました。私は防衛庁長官になる前まで防衛問題につきまして十分なる経験のある人間でございませんでしたので、東京で勉強することとともにまず現地を見なければならぬだろう。その意味で一番重要なのは、私たちの場合数も多い陸上でありますし、陸上自衛隊が一番多く、そしてその精強な部分の三分の一がおりますのが北海道でございますので、北海道の一番前線に行ってみたいという気持ちで名寄駐屯地を選んで行ってまいりました。行くとなる以上、夏行っては全く意味がございませんので、各行かなければならないという気持ちでああいう時期になったわけでございます。  行ってみました感じは、隊員は非常に厳しい中でよく訓練していると思っております。もちろん私たちが見に行った状況では、一〇〇%隊員の最も厳しいところを見られるわけはございませんでしたけれども、ある程度の厳しいところまでは見えたのではないかなと思っております。例えば、隊員夜間零下二十五度から三十度のところで立哨といいますかパトロールしたり立ち番したりするわけですが、そういうところなどは、もう長官視察では及びもつかないような厳しさがあるんではないか、こう思ってまいりました。  いずれにしましても、かなり士気が上がっていることを見取ることができましたし、また、地元協力体制が、北海道では自衛隊との関係が非常にうまくいっているということに感銘し、感謝しながら帰ってまいったような次第でございます。
  5. 中川昭一

    中川(昭)委員 長官が冬の一番厳しい時期に、しかも野営をしながら、あるいはスキーを履きながら視察をしていただいたということに、北海道におる五万五千自衛隊の全職員はもちろんでありますけれども、五百七十万人という大多数の北海道民が心から感謝申し上げておるということを長官にお伝えいたしたいと思います。  北海道というのは御存じのように面積八万平方キロメートルありまして、四万を海に囲まれておる。しかも北海道に存在する三つの海峡のうち二つは日本統治権の及ばない国と接しておる。もう一つが津軽海峡でありますけれども、これは国際海峡であるということで、地理的にもすぐ隣一番近いところは七キロちょっとしか離れていない、我が国固有の領土に脅威のある軍事力が存在しておるというこの現実を一億二千万日本国民が厳しく認めていただかなければならないというふうに思います。そういう意味で、新聞にも書かれておりましたけれども長官のなお一層の防衛力充実にぜひとも御期待をいたしたいところでございます。  それでは次に、最近三沢米軍基地F1戦闘機配備になりましたが、この戦略的意味ということについてお伺いいたしたいと思います。
  6. 加藤紘一

    加藤国務大臣 最近の極東地域におけるソ連軍軍事力の増強は、五十年代初頭からかなり厳しいものがあったと思います。そういう意味で、米政府の方から、余りにも差がついては抑止効果がなくなる、また安定度がなくなるという意味軍事力バランス回復を図り、また同時にアメリカ日本防衛についてのコミットメントを確認するという意味においても配備したいという申し出がありまして、私たちも十分検討した上、それは歓迎すべきことだと言って協力することになったわけでございます。  私たちとしても、このバランス回復、それから日米安全保障条約に基づく抑止力信頼性のより一層の向上という意味で、我が国の安全及び極東の安全、アジアの安全にとりましていい効果をもたらすものと考えております。
  7. 中川昭一

    中川(昭)委員 F16の配備につきましては、関係市町村並びに県から昨年要望書が出ておりましたけれども、この関係市町村に対するいわゆる基地周辺整備に関する施策について十分に関係市町村の御希望に沿えるようになさっているかどうかについてお伺いいたしたいと思います。
  8. 佐々淳行

    佐々政府委員 お答えいたします。  昭和五十八年十二月に青森県知事関係市町村長の方々が防衛施設庁にお見えになりまして、F1配備に伴う周辺対策として要望がなされております。  要望ポイントは、航空機の安全、基地公害防止対策強化騒音対策予算の増額と補助対象施設の拡大、地元負担軽減、民生安定諸施策の推進、こういうことでございました。財政事情厳しい時期ではございますけれども三沢につきましては、ただいま防衛庁長官が御答弁申し上げましたように、F1配備に伴う重点施策一つでございますので、この周辺対策等につきましては十分地元の御要望を承りまして、できる限りの努力をいたしたい、かように考えております。
  9. 中川昭一

    中川(昭)委員 F16並びに基地周辺対策についてはぜひよろしくお願いしたいと思います。  それでは次に、道東の帯広市に対戦車ヘリコプター配備ということが決定をいたしました。これにつきましても同じように防衛的な意味日本の安全にとってどのような効果があるのかということと基地周辺対策事業についての具体的な施策についてお伺いをいたしたいと思います。
  10. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たち抑止力維持向上ということを非常に重要視いたしておるわけでございますけれども帯広にあります施設を今度使わせていただき、私たちヘリ部隊創設につきまして御協力を願いたいと思っております。帯広市民皆さんから大変御議論いただいておることも私たち十分に承知いたしておりますけれども北海道全体における防衛力整備バランス、訓練する場所が近くにあるかどうか、それから既存施設をできるだけ有効に使わせていただきまして、ただでも厳しい財政上から見ましても有効に使わせていただきたいという気持ちもありますので、ぜひ帯広皆様には御理解いただきたいと思っております。いろいろな御議論があろうかと思いますが、しっかりとした抑止力を持つことが国全体の安全に資するという観点をぜひ御理解いただければと思う次第でございます。
  11. 佐々淳行

    佐々政府委員 周辺対策について私からお答えいたします。  十勝飛行場設置運用によって生じます障害防止等周辺対策につきましては、具体的に申し上げますと、障害防止工事助成排水路、それから民生安定施設助成といたしまして、下水道、第二南帯橋及び南七線、西線、そのほか二線の周辺道路整備等を実施いたす予定でございます。  それから騒音問題でございますが、御承知のようにこれはヘリコプター部隊でございまして、ジェット騒音の問題は生じませんが、騒音軽減等につきましてはその運用、コースの問題、飛び方、飛ぶ時間帯について十分軽減努力をいたす所存でございます。  防衛施設設置をされましたので、それの運用に伴ういろいろな問題が生じた場合には、帯広市長要望を踏まえまして、防衛施設周辺生活環境整備等に関する法律の三条、四条、八条、九条でもって障害防止とか民生安定助成とか、いろいろなことが可能でございますので、騒音防止を含みます各種施策を広範に実施いたしたいと考えております。
  12. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ただいま政府委員が申しましたように、対戦車ヘリ部隊創設によりいろいろ障害が出てまいる部分が仮にあったとするならば、長官としても十分に目を配って帯広皆さん要望にこたえられるものはできるだけこたえたい、そういう気持ちで今後進めてまいりたいと思いますので、ぜひ市民皆様には御理解いただきたいということを先生からもお伝えいただければありがたいと思います。
  13. 中川昭一

    中川(昭)委員 対戦車ヘリ配備につきましては、何万人の反対の署名があったということも一方であるようでありますけれども、それにまさるとも劣らない、ヘリ、ぜひ来てくださいという声があることも私は聞いております。要は、配備になっていかに防衛に資するかということと、地元対策に十分な配慮をしていただければ、私はこのことに関して積極的にやっていきたいと思いますので、今の長官のお言葉に心から敬意を表する次第でございます。  それでは、財政関連した問題について若干御質問をしたいと思います。  限られた防衛予算の中でいかに有効に日本防衛をやっていくかということのまず第一点としてお伺いいたします。今、日本には三百五十機ほどの戦闘機がありますが、そのうちシェルターが用意されている分は何機分ぐらいあるのでしょうか。
  14. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいま御指摘シェルターにつきましては、ここ数年来整備を進めてきているわけでございまして、六十年度の予算で計画をしております分が完成をいたしましたいわゆる六十年度完成時勢力ということで申し上げますと、三十三機になる見込みでございます。
  15. 中川昭一

    中川(昭)委員 戦闘機というのは一機百億円前後するわけでございまして、三十三機以外の何百機かについては、雨を辛うじて防いでおるぐらいで、万が一のときには格好のえじきになる可能性もある。そういう意味防衛予算を有効に使い、しかも継戦能力充実するためには飛行機一機配備するごとに、それに最初から標準装備としてシェルターをつけるぐらいの考え方があった方が財政的にも、また日本防衛にも資する有効な考えではないかと思いますけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
  16. 矢崎新二

    矢崎政府委員 御指摘のように戦闘機F15ですと百億円以上もする非常に高価な航空機でございますので、そういったものが被害から守られるための施設ということについて私どもも十分に配慮しなければいけないというふうに思っております。そういう観点から現在北方の基地中心としてこの整備を進めているわけでございますし、今後ともそういった努力は続けていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  17. 中川昭一

    中川(昭)委員 一機百億円の戦闘機シェルターが大体二億円から三億円というふうに聞いておりますけれども、そのぐらいのものをつけてやるということは継戦能力からいっても、また予算の有効的な使い方からいっても非常にいいと私は思いますので、長官、ひとつぜひ御検討をお願いいたしたいと思います。  それでは、最近非常に問題になっております日米貿易摩擦との関連についてお伺いいたしたいと思います。  戦闘機というのはほとんどがアメリカ製であります。戦闘機に限らず兵器というのはアメリカ製中心でございますが、今、日本ライセンス生産をやっておる兵器というものが幾つかあります。アメリカでつくっておる戦闘機値段日本ライセンス生産をしておる同じものの値段との違いというのはどのくらいあるのでしょうか。
  18. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 先生のおっしゃいますようにP3C対潜哨戒機でございますとか要撃戦闘機F15ですとか、これらはアメリカからのライセンスをもって我が国生産をいたしております。当初これが決定されましたときはかなりの格差がございましたけれども、その後のアメリカ日本との生産格差あるいはインフレの度合い等によりまして、昨今では大分格差が縮まっております。例えばF15で申し上げますと、先般成立いたしました六十年度予算におきましてとりましたところの格差でございますけれどもアメリカから輸入をいたします場合には約百億円でございます。それに対しましてライセンス生産の場合には百五億円から百七億円でございますので、五、六%の差と承知いたしております。
  19. 中川昭一

    中川(昭)委員 最近日米貿易摩擦に対しましてアメリカの議会を中心としてこれだけ厳しい対日要求というものがあるわけでありますが、その中で、今百億円と百五億円、差がないというお話もございましたが、もっと広い意味日米関係を考えた場合に、例えば木材なんかの輸入云々で強く言われるということであれば、アメリカ製兵器について日本で当初これだけ必要だという場合に、ことしや来年ぐらいはアメリカから緊急にその兵器を買うということが日米貿易摩擦の解消に役立つのではないかというふうに思いますが、長官並びに外務省の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  20. 加藤紘一

    加藤国務大臣 貿易摩擦問題が今非常に大きくなっていることは存じておりまして、例えばこの間も経済関係閣僚会議がありまして、その中でいろいろ方策はないかと、かなりフリーディスカッションのような会が行われました。それを終わって、ある党の有力な方から、防衛庁なんか何か考えられないのかということを言われましたけれども、しかし、この私たち装備というものは、確かに貿易面のことも考えなければならぬとは思いますけれども、やはりどうしても防衛上の観点というのを一番重視いたしまして、例えばF15の問題でありましても、ライセンス生産になっておるわけですけれども、やはり私たち航空自衛隊のパイロットは日本ライセンス生産されたものの方が、彼らにしてみれば使いやすく安定性があり、そして乗っていて安全性で大丈夫だという信頼感がその方が強いということを現場で言うわけでございますね。したがって、その辺は長い間の彼らのいろいろな悩みとか、それからどちらが効率的か、どちらが経済的かという長い議論があって現在決まっている仕組みだと思いますので、やはり私たちとしては装備品の調達の問題につきましては、防衛観点中心に、我が国防衛がいかにあるべきか、装備はどうあるべきか、その観点中心に考えさせていただきたいという気持ちでございます。
  21. 栗山尚一

    栗山政府委員 武器購入貿易面に関する効果から言えば、まさに委員指摘のような側面があろうかと思います。しかしながら、武器購入につきましては、単に貿易面効果という観点からではなくて、やはり総合的に日本防衛体制というものとの関連検討せざるを得ないと思います。  そういう観点からすれば、外務省といたしましても、先ほどの防衛庁長官から御答弁がありましたような種々の観点から、主要武器についてはライセンス生産を行っていくという方向で進めていくということにつきまして、同じような認識を持っております。
  22. 中川昭一

    中川(昭)委員 それでは次に、陸上自衛隊隊員充足の問題についてお伺いをいたします。  我が国では、今十三個師団、十八万人という定員でございますけれども、実際の充足率はどのようになっているのか、お伺いいたします。
  23. 矢崎新二

    矢崎政府委員 陸上自衛隊の定数は十八万人でございますが、現在の充足率は年間を通じて平均しますと、大体八六%強というような状況になっております。
  24. 中川昭一

    中川(昭)委員 この八六%強という数字というのは、必要最小限な、日本防衛にとって必要なものなのかどうか。また、過去充足率がどのような経緯で推移をしていたのかについて、お伺いをいたします。
  25. 矢崎新二

    矢崎政府委員 充足率につきましては、これは有事即応という意味から申しますと、できるだけ高い充足率を維持することが好ましいわけでございます。しかしながら、他方におきまして、毎年度の防衛力整備をやっていくプロセスにおきまして、いろいろな実施を要する問題がございます。そういったいろいろな事項について、その年々の財源を配分していくときの選択の問題になるわけでございますが、そういう場合におきまして、私どもが現在当面しております問題は、装備整備をしていくこととか、あるいは隊員施策充実していくこととか、いろいろな問題がございます。そういうものを総合勘案した結果として、現在八六%強という充足率になっておるわけでございます。  この点は、そういった事情を考えますと、平時におきましての体制として考えた場合に、有事においてできるだけ早急に充足しやすい職域であるとかという分野につきましては、平時においては教育訓練に支障の生じない限度におきまして、ある程度我慢をしておかざるを得ないという面があるわけでございます。そういったような事情がございまして、現在のような水準に置かれておるわけでございますけれども、これは過去において九割程度充足率であった時代もございます。しかしながら、高度成長期におきまして、隊員充足といいますか、募集がある程度困難な事情もあったというようなこともありまして、若干低下をいたしまして、その後ここ数年の状況で申しますと、八六%程度というふうな水準になっているのが現状でございます。今後の問題として考えますと、やはり防衛庁有事即応態勢を強化するという観点からこの充足率の問題についても重要な問題として検討をしていかなければならないという認識を持っております。
  26. 中川昭一

    中川(昭)委員 財政上の問題があることは重々承知しておりますが、今もお話がありましたように、全体として八六%でありますから、例えばホーク部隊でありますとかあるいは地方連絡部あるいは司令部関係、どうしても一〇〇%必要なところには一〇〇%今でもやっておる。その結果それが実際の師団なり、それがまた下におりていって連隊なり中隊なりとおりていきますと、実際の実戦部隊である中隊単位ではもう半分ぐらいの、充足率しかないという話も聞いております。一方、今局長お話がありましたが、私の地元北海道あたりでは、自衛隊員になりたくてしようがないという若い人たちもいっぱいおりますので、財政上の理由ということはよくわかりますが、日本防衛即応態勢という意味からも、なお一層の御努力をお願いいたしたいと思います。  それでは、これは最後の質問になるかと思いますが、日本の安全と平和ということになりますと、長官外務大臣の御答弁にもありますように、諸外国と仲よくしていく、これが第一だと思います。そしてまた日米安全保障条約を有効に運用していく、そして日本にとりまして必要最小限度防衛力整備していく、この三本柱で日本の安全が成り立っていくわけでありますが、その根底にはやはり日本国民の、自分の国は自分で守るのだというしっかりとした意識、これが当然必要だと思います。そしてその上に成り立って隊員皆さん士気というものが実際の日本の安全に非常に大きなポイントを占めてくると思います。  そういう中で、長官はことしの六十年度予算編成におきましても、隊員生活向上のために、例えば九・五坪住宅の改善でありますとか、二段ベッド改善でありますとか、予算委員会でおっしゃっていましたが、蚊取り線香をふやしたとか、そういう本当に地道な御努力をなさったことに心から敬意を表するわけでございますが、まず隊員というのは非常に若い人たち中心の社会でございますので、この若い人たち生活に対してどのような配慮をなさっているかということについてお伺いいたしたいと思います。
  27. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  御質問にございましたように、やはり自衛隊有事即応で精強なことが必要でございますので、常時やはり隊員営舎内に置いておくというような必要もございますので、環境等につきましては十分配慮をいたしております。隊舎、営舎整備はもとよりでございますが、中におきましても、若い隊員皆さんが余暇を十分楽しむことができるように配慮をいたしております。これは昼間課業活動をいたして、仕事をいたしておりますけれども夜間等におきましても、やはり隊務必要上外に出ないで、中で待機をしておるというような実情でございますので、従来から各種厚生施設等充実をしてきておるところでございます。ともすれば最近やはりこういった需要というものも多様化をしてきておりますので、私どもといたしましては、厚生施設整備につきましては、世間一般状況におくれをとりませんように、従来から具体的にはいろいろ隊員要望を踏まえまして充実をしてきておりますが、今後とも努力をいたしていきたいと思います。
  28. 加藤紘一

    加藤国務大臣 最近、隊員を集める際にも私たち心しなければならないのは、やはり十九歳、二十歳の隊員を集めるわけでございますので、生活もしっかりできるところでなければいけない、二段ベッドではラジカセも置けないような状況になりますので、これではやはりどこか地方電子工場に優秀な若手をとられてしまうということは事実だと思いますね。したがって、一人一人の隊員に立派な士気を持っていただくと同時に、私たちもそれにこたえるだけの施策をしなければならない。そういう意味では、先日通過させていただきました予算の中では現在最大限の努力をしたつもりですけれども、今後とも来年度予算に向けても頑張ってまいりたいと思いますので、御理解いただければと思います。
  29. 中川昭一

    中川(昭)委員 今申し上げましたようなことのほかにも、現場で、北海道隊員皆さんと話をしておりますと、冬の時期、訓練に外に出ると雪道ですから車両や兵器が泥だらけになる、それで訓練から帰ってきたときに水で洗うわけですけれども、零下十度、二十度、三十度の中で水で洗う、その整備工場に全然暖房がなくて手がかじかんでしまうとか、あるいは冬の訓練のときに特別の靴、オーバーシューズみたいなものの数が足りないとか、いろいろな話を聞くわけであります。予算のときに生活関連費あるいはそういう装備について当然計上されておるわけでありますが、万が一にもそれが年度末まで使われない、しかも何か突発的な、例えば国家賠償の発生したときにあるいは燃料代が急に高騰したときにそっちの方に回されてしまって生活関連予算が執行されないということになりますと、先ほど申し上げた意味から大変なことになりますので、そのようなことのないよう、生活関連予算効果的な、その目的に沿った運用ができますように長官の御決意をお伺いいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  30. 加藤紘一

    加藤国務大臣 戦車の修理工場に私もこの間行ってみましたけれども、確かに零下三十度ぐらいになりますと、冷えた鉄板に手を当てたらもう手がとれなくなって皮膚がおかしくなってしまう、これは北海道ならではの事情があろうと思いますが、そういうところに、ほぼ屋外と同じ条件でやっているわけですから、十分心しなければならないと思っております。ともすれば六本木、私たちも檜町というところで政策を考えますとすぐ正面装備ばかり考えたりしますし、また六本木に上ってきた人も、現場にいるときには確かにそういう面を考えるのですが、檜町に上がってきますとつい正面のことばかり論じたがるところがあります。したがって、そこは地域、各末端の部隊のことをよく考えながら予算要求も概算要求も考えていかなければならぬ、そういうことも心してまいりたいと思います。
  31. 中川昭一

    中川(昭)委員 どうもありがとうございました。
  32. 森下元晴

    森下委員長 天野寺君。
  33. 天野等

    ○天野(等)委員 私は、昨年の十月でございましたか、第二次の中間報告が出されました有事法制の問題について若干の質問をしてみたいと思います。  まず長官にお尋ねしたいのでございますが、この時期に有事法制の第二次中間報告というものを出されたことについて特段の意味をお持ちになっておられるのか、あるいは単に、たまたま前回の第一次中間報告から三年程度たったということで、まとめられたということでお考えになっておられるのか、この点はいかがでしょうか。
  34. 西廣整輝

    西廣政府委員 加藤長官が御着任前の話でございますので、私の方から御返答申し上げます。  有事法制の研究は、御承知のように昭和五十二年に当時の防衛庁長官が総理のお許しを得まして序として勉強したいということで始めた作業でありまして、五十六年に自衛隊の行動に直接かかわる自衛隊の法律関係の報告をさせていただいたわけであります。引き続いて第二分類、いわゆる他省庁の法制と自衛隊の行動との関連についての問題点の摘出、この作業にかかりまして、たまたま昨年一応作業が終わりましたので御報告をさせていただきました。
  35. 天野等

    ○天野(等)委員 そうしますと、第一次中間報告をなされた時点と第二次中間報告が出された時点とでは、状況認識としては変わっていない、そういうふうに考えてよろしいのでしょうか。この有事法制を出す意味について、やはり国際状況その他から見てこういう有事法制の研究が緊急に必要になってきているというような状況が出てきておるのでしょうか。この点はいかがですか。
  36. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生御案内のように、有事法制と申しますのは、私ども自衛隊法を中心としまして有事自衛隊が行動するためのもろもろの法制の骨格というものは。自衛隊法がつくられた当時にできておるという認識に一応立っております。ただその後、自衛隊ができてから何十年かたちまして状況も少し変わってきているかもしれない、あるいは自衛隊法制定当時に見落としたものもあるかもしれないということで、この際もう一度見直してみようじゃないかというのがそもそも有事法制の研究を始めた要因でございます。したがいまして、どうしてもこの時期にこういうものをつくっておかなくちゃということになりますと、前に有事法制研究を始めたときに御報告申し上げたように、やはりこの種の研究はできるだけまだ平時の時代、平穏な時代から準備をしておくといいますか、研究をしておかないと、そのときになってばたばたやったのでは間違ったことをしてしまうということもありますので、できるだけ早い機会に研究を終わらせておきたいというのが我々の考え方であります。
  37. 天野等

    ○天野(等)委員 一応そういう考え方に立たれて御答弁をされてきているということは私もわかるのですが、ただ、今の御答弁の中でも有事法制の研究が単に自衛隊法に穴があるのかないのかというようなことから始められたのではないということは、かなり国民の中でも常識としてあるのではないか。まず三矢研究というようなことが国会で大きな問題になり、あるいは緊急有事といいますか、緊急時の問題、武器使用の問題というようなものも含めて有事の法制に問題がないかどうかということは、かなり具体的な事柄を背景にしてこの有事法制の研究というものが進められてきたものであろうというふうに国民としては理解をしているのではないかと思うわけです。  ただ、そこで私の方では質問をするわけですけれども、この第一次、第二次中間報告というようなものを踏まえて、さらに一歩進んだ立法化、有事法制の研究ではなしに有事立法というようなものに踏み込んでいかれるおつもりが今あるのかどうか、この点で、これは大臣にお尋ねしたいと思います。
  38. 加藤紘一

    加藤国務大臣 法制化の問題につきましては、防衛庁といたしましては一般的に、今回それから前回の問題点指摘指摘された問題点については法制が整備されることは望ましいと考えておりますけれども、しかし高度の政治判断にかかわるものでございますので、今後これにつきましてどういたしますかにつきましては、この国会における種々の御議論、それから国民の世論、国民の皆さんの御意見等を踏まえまして慎重に対処してまいりたい、こう思っております。
  39. 天野等

    ○天野(等)委員 この有事法制の研究というのは、本来的には立法化というようなことを目指してなされたものではないんでしょうか。いかがですか。
  40. 西廣整輝

    西廣政府委員 今回の有事法制研究は、そもそもが問題点の摘出、整理ということを直接の目的といたしておりますので、立法そのものは研究の目的には入っておりません。しかしながら、ただいま防衛庁長官答弁申し上げたように、我々としてはそういった法制の問題点等がはっきりすれば法制化されることが一般論としては望ましいということは当然でございますし、先ほど私御答弁申し上げたように、現行自衛隊法でもその種有事法制が既に立法化されておるものもあるということは御理解いただきたいと思います。
  41. 天野等

    ○天野(等)委員 この有事法制の調査研究のプロジェクトチーム、特に第二次中間報告に出されております第二分類というようなことになりますと、防衛庁の中だけではなくて他省庁との関係があったというふうに思うわけでございますけれども、これはどういうふうな編成で調査研究を進められておったのでしょうか。
  42. 西廣整輝

    西廣政府委員 第一分類、第二分類いずれもそうでございますが、特段この研究のために特別のプロジェクトチームをつくるというようなことではございませんで、私ども防衛庁内では内局、統合幕僚会議あるいは各幕の法制担当者、これが寄り寄り機会を見て会議をいたしまして問題点をまとめた。そうして問題点をある程度整理をいたしまして、例えば今御質問の第二分類、いわゆる他省庁の所管にかかわる法令との問題につきましては、その法令を有権的に解釈できる関係省庁の部局に対して御相談申し上げ、協議、調整をしたということであります。
  43. 天野等

    ○天野(等)委員 防衛庁側ではこの問題についての担当の責任者というのはどこでおやりになっておられたのか、それから関係各省庁ではどのレベルに対して共同の研究なり検討なりを申し入れをなさったのか、その辺をお尋ねをしておきたいと思うのです。
  44. 西廣整輝

    西廣政府委員 庁内では、この担当の部局の責任者としては長官官房、私が責任者になりまして、その下に、当時としましては法制調査官室という課に相当するものがございますが、現在法規課ということになっておりますが、そこが中心になって作業を進めたということであります。なお他省庁につきましては、先ほど申し上げたように、その事案、事案ごとにそれぞれの法律を所管されておる部局がございます。そこの担当の方と私の方が御相談申し上げ、当該部局では当然のことながらそこの責任の方まで御相談になったということになろうかと思います。
  45. 天野等

    ○天野(等)委員 この問題点の摘出といいますか、第一分類、第二分類通しましてこの問題点を提起したのは防衛庁側ということになるんでしょうか。
  46. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問のとおり私ども自衛隊にかかわる行動と現行の各省庁の法制とのかかわりでございますので、私どもの方から問題点を整理し、提起をしたということになります。
  47. 天野等

    ○天野(等)委員 それでは、この第一分類、第二分類を通じまして防衛庁として検討すべきものとして挙げた項目については、既にすべて検討が終えられたのか。検討を始めたけれどもまだ終わらないというもの、あるいは項目としては挙げたけれどもまだ未検討だというような事項がございましたら、お尋ねしたいと思います。
  48. 西廣整輝

    西廣政府委員 現在までに御報告申し上げた検討内容につきましては、第一と第二に分かれておりますが、いわゆる第一分類、防衛庁所管の法令につきましての検討としては、主として自衛隊法第百三条に基づきます政令がまだ未制定であるといったような問題、あるいはまた自衛隊法の七十条の規定に基づきます予備自衛官の招集時期の問題等々、十一の問題点を指摘し、整理をしたわけであります。さらに昨年十月の第二回の報告、いわゆる他省庁所管の法令につきましては、部隊の移動であるとかあるいは輸送、土地の使用であるとか、そういった問題につきまして、自衛隊の行動態様ごとに区分をいたして種々検討したわけであります。その結果、十一の法令につきまして問題点の指摘をいたしております。その結果、我々といたしましては第一分類、第二分類それぞれ問題点をおおむね指摘し得たというように考えておりますけれども、第一分類のときに、報告書でも書いておきましたが、防衛庁職員給与法というのがございまして、これは第三十条の関連でございますが、出動を命ぜられた職員の出動手当の支給といったことが給与法で決められておりまして、それをどういう形にするかということがございますが、本件につきましては、自衛隊のみならず、いずれにしろ防衛行動というのは国土で行われますので、国内の他の公務員なりあるいは一般国民の方の問題、そういったことも絡みがありまして、どう処理するかということについて今後さらに検討するということで、いまだ検討が終わっていないという問題であります。  さらにつけ加えますと、自衛隊法第百三条のいわゆる業務命令という規定がございますが、この命令に従わなかった者に対する罰則規定を設けるか設けないかという問題、これは非常に重要な問題でありますので、引き続き検討いたしたいということで今後の検討事項として残っております。
  49. 天野等

    ○天野(等)委員 全く取り上げなかった問題、検討しなかった問題というのはないんですか。
  50. 西廣整輝

    西廣政府委員 我々としてはできるだけ問題点を広く、取りこぼしのないようにということで取り上げたつもりでありますし、取り上げた結果、問題がなかったというふうに考えたものもございますが、全く落ちがないかと言われれば我々として自信が完全にあるわけではございませんけれども、できる限りのものは検討の対象にしたということであります。
  51. 天野等

    ○天野(等)委員 そうしますと、ちょっと今各論に少し入りますけれども、部隊の移動、輸送というようなものについての関係する法令の整備というようなことが項目としては挙げられており、その点について、例えば陸上の移動については現行法の解釈、運用で処理可能だというような形に今回の報告でもなっているかと思いますけれども、例えば有事に日米共同対処ということが問題になってきたときに、米軍の行動、米軍の部隊移動というようなことについては何ら問題とする余地がないのかどうか、この点はいかがでございますか。
  52. 西廣整輝

    西廣政府委員 最初に申し上げましたとおり、今回の研究は自衛隊の行動にかかわる有事法制の研究でございますし、私ども防衛庁自衛隊を管理し、自衛隊運用する立場にございますので、米軍の問題については研究いたしておりません。
  53. 天野等

    ○天野(等)委員 ということは、今後も研究の課題にするつもりはないという意味でございましょうか。
  54. 栗山尚一

    栗山政府委員 まず一般論を申し上げますと、安保条約五条事態、すなわち我が国有事の場合の米軍の行動に関連する国内法上の諸問題については、先ほど防衛庁の方から御答弁がありましたように、これまでの段階におきましては政府の内部でこの問題について具体的に検討したということはございません。  今後の問題といたしましては、これもあくまで一般論でございますが、そういう側面についても研究を行って、万一五条事態になりました場合にも、米軍の共同対処のための有効な行動というものが確保されることが安保体制の平素における抑止力維持という観点からも重要なことであると外務省といたしましても認識しておりますので、今後の問題といたしましてはそういうような研究も行う必要があろうかと一般論として考えておりますが、現在のところは、先ほど防衛庁の方から御答弁ありましたように、具体的な研究は行っておりません。
  55. 天野等

    ○天野(等)委員 私たち伝え聞くところによりますと、日米共同作戦計画というようなものが既に成案を得たと聞いておるわけでございます。この共同の作戦計画の中に、日本の法制が入っておらないのかどうか、それについては全く何の顧慮もしておられないのかどうか、いかがでございますか。
  56. 矢崎新二

    矢崎政府委員 日米共同作戦計画の研究を今しているわけでございますが、この作戦計画の研究というのは、日本に対する武力攻撃がなされた場合に、安保条約五条に基づきまして、自衛隊と米軍が日本防衛のための整合のとれた作戦を円滑、効果的に共同して実施し得るようにしようということで研究をしているものでございます。研究の内容としては、ただいま申し上げたような観点からのオペレーションの考え方、そういうものを検討をしておるわけでございます。したがいまして、我が国の法制をどうするかといったことをそこで直接研究の対象にしておるものではないわけでございます。  ただ、先ほど外務省からも御答弁ありましたように、今後そういった日米共同対処を有効に確保していくという面から考えた場合に、我が国の法制上の問題点というものがあるかどうかというような点を一般論として検討をしておくことは必要な問題ではなかろうかという認識は持っております。ただ、現在のところそういうことまでやっておるわけではございませんで、今後の検討課題ではないかと考えておる次第でございます。
  57. 天野等

    ○天野(等)委員 米軍が日本の領陸内で行動をするのに、日本の法的な問題については全く考えることなしに図上での研究を進められているというように聞こえるのですけれども、そういうふうにお聞きしてよろしいのでございますか。
  58. 矢崎新二

    矢崎政府委員 日米両国間のいわゆる日米防衛協力の問題につきましては、御承知のようにガイドライン、「日米防衛協力のための指針」というものが定められておりまして、それに基づきましていろいろなことをやっておるわけでございます。そのガイドラインの中にありますいろいろな研究作業の一つとして日米共同作戦計画の研究というものも実施しておるわけでございまして、その中で一つの設想に基づくものがようやく昨年末に一区切りがついたというのが現状でございます。  こういったガイドラインに基づく研究は、いろいろ研究しなければならない問題が非常にたくさんございますので、これからいろいろな面での検討を進めていきたいと考えているのが現状でございまして、先生がおっしゃったような法制面の問題といったようなものを我々一般的な政府の立場で検討するというふうなところまではまだ至っていないわけでございます。私どもは、これから共同作戦計画の研究の内容の充実とかあるいはそのほかのガイドラインに基づく研究項目を逐次充実させていきたいというふうに現在考えているところでございます。
  59. 天野等

    ○天野(等)委員 私は、今防衛局長が御答弁になったそこのところに軍事という問題の一つの特殊性があるのだろうというふうにお聞きをしたわけですが、それは、この日本の国内でどういうふうに行動をしていくかということを公の場で考えるとしたら、当然これは、日本の法律がどういうふうになっているのかということの枠組みの中でしか本来は考えられないはずだろうと思うのです、これは法治国家でございますから。ところが、そのことは後で検討をしていくのだというのは、恐らく軍事というもの、有事と言っても軍事と言っても私は同じだと思いますが、特に戦時というような状況になってきたときには今の法制度の中では到底運用しきれるものではないという一つの観念があって、それでまず作戦計画というものが立てられ、その中で法制度というものが逆に考えられてくるのじゃないかという気がするのです。恐らく今防衛庁が進めておられる日米共同作戦計画というものも、まず作戦計画というものがあり、その後で障害になる日本の法制度があるならそれは変えていけばいいじゃないかという形のものではなかろうかと思うわけですが、私は、そこの中に、口ではシビリアンコントロールその他云々言いながら、やはり軍事というものが、一般的な憲法秩序というようなもの、その枠の中で動き得るものなのかどうかという点で非常に疑問も感じ、また危機感も持つわけでございます。  そういう点で、先ほど官房長は米軍の行動については目下検討の項目に挙げておらないんだというお話でございましたけれども、日米共同作戦計画というものを考慮した上においても当面米軍の行動について有事法制という形での研究は検討項目に挙げていかないのかどうか、いかがでございますか、官房長。
  60. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来防衛局長も御答弁申し上げておりますように、私ども国防の任に当たる者としましては、アメリカとの安保体制、いわゆる日米共同作戦が有効に行われることは非常に重要でありますので、米側の行動に関して法制上の問題があるかないかということは非常に重要な問題であると考えております。ただ、先ほど申しましたように、私ども防衛庁の立場としては自衛隊の管理運営をやっておるところでありますので、自衛隊の行動に関する法制問題は主体的にこれを検討することができますけれども、米軍のことになりますと所管は外務省になりますので、私どもとしては御協力をするという立場になろうかと考えているわけであります。
  61. 矢崎新二

    矢崎政府委員 先ほど申し上げましたように共同作戦計画の研究を現在進めているわけでございますが、これはしばしば国会でも御説明申し上げておりますように、この研究の過程において法制上の問題点というものが指摘される場合ももちろんあり得ないわけではないと思います。ただ、これはガイドラインの基本的な枠組みでも明確にいたしておりますように、このガイドラインに基づく研究の成果というものは両国政府を拘束するものではないわけでございまして、仮にそういう問題があった場合でも、どのような措置をとるかはそれぞれ各国の判断にゆだねられるということになっているわけでございます。したがって、今後の将来の問題としてそういった問題をどう考えるべきかという問題はもちろんあろうかと思いますけれども、それはあくまでも日本日本政府の立場で自主的に判断をしていくべき問題ではないかと考えておるわけでございます。
  62. 天野等

    ○天野(等)委員 その問題についてはまだ各論の中で少し触れさせていただきたいと思いますけれども、この有事法制あるいは有事立法というものについて、私たち基本的にはっきりさせておいていただかなければならない点があると思うのです。その第一は、これも当委員会を初め国会でも問題になっておりますけれども有事における徴兵制の問題。それからもう一つは、徴用制といいますか強制労役に服させる、そういう徴用制の問題。こういう形で強制的に兵員を充足させるための制度を有事に必要としないのかどうか、あるいは必要とすると考えた場合に、それは現行憲法の中で可能なのかどうかという問題があるわけでございますが、まず、現行憲法の中で徴兵制度というものが可能かどうかについては法制局の見解を一応お伺いをしておきたいと思います。
  63. 前田正道

    ○前田政府委員 結論だけを申し上げますと、政府はこれまでいわゆる徴兵制度につきましては、平時であると有事であるとを問いませず、憲法第十三条、第十八条などの規定の趣旨からいたしまして許容されるものでないことは明らかであるとお答えしてきておりますが、この考え方は現在でも変わっておりません。
  64. 天野等

    ○天野(等)委員 ところで、有事の際における緊急の兵員の充足という観点から、徴兵制の必要性という問題について、防衛庁はいかがでございましょう。
  65. 西廣整輝

    西廣政府委員 私どもは、有事といえ平時といえ、徴兵制というものは全く念頭に置かずにもろもろの考え方を進めております。
  66. 天野等

    ○天野(等)委員 有事の際でも徴兵制度は必要がないというふうに防衛庁としては共通の見解を持っていらっしゃる、そういうふうにお聞きをしてよろしいわけでございましょうか。
  67. 矢崎新二

    矢崎政府委員 我が国におきます防衛力整備の基本的な考え方は、御承知のように「防衛計画の大綱」に示されているわけでございますが、その基本的な考え方は、有事におきまして日本が武力攻撃を受けた場合には限定的かつ小規模な侵略には原則として独力で対処し得る防衛力を持とうということにしておるわけでございます。そういたしまして、それを実施するための陸上自衛隊体制といたしまして、「防衛計画の大綱」の中で十八万人という枠組み、それから十三個師団等という編成、そういったものを基本的な枠組みとして定めておるわけでございます。  したがいまして、私どもは、有事におきまして限定的かつ小規模な侵略が起こりました場合には、原則としてこういった陸上自衛隊の力でもって対抗すると同時に、独力で対処し得ない場合は米軍の支援を待って侵略を排除していく、こういう基本的な考え方に立っておるわけでございます。そういう基本的な考え方で私ども防衛力整備をやっておるわけでございまして、御指摘のような徴兵制をとって対処するという考え方はとっていないわけでございます。
  68. 天野等

    ○天野(等)委員 徴兵については一応承っておきまして、徴用制、これは非常に幅広い概念だと思いますから、とりあえず自衛隊法百三条の従事命令について、これに罰則をつける形で強制力を持たせるという場合に憲法との関係がどういうふうであるかという点で法制局の見解をお伺いいたします。
  69. 前田正道

    ○前田政府委員 自衛隊法第百三条の規定によります従事命令に違反した者に対しまして罰則を設けることとすることの可否につきましては、これまで政府は、要約して申し上げますが、同条第一項の「自衛隊の行動に係る地域」は危険な地域であるから、そのような地域での命令については国民の基本的人権との調整ということは当然問題になる、そういう点については慎重な上にも慎重な検討が必要であろうということ、また罰則を科すべきかどうかということにつきましては、非常に慎重な見解を防衛庁はとっておるというふうに答弁してきておりますが、このような考え方は現在でも変わっておりません。
  70. 天野等

    ○天野(等)委員 防衛庁でもこの罰則の問題については、従事命令について、あるいは有事というようなときに罰則で強制をしなければならないような状況では心もとないので、国民の積極的な協力を求めるのだから罰則ということは考えなくてもいいのだというような御答弁もあったように思いますけれども、この点につきましての防衛庁の見解はいかがでございましょうか。
  71. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま先生が申されましたとおり、この罰則を設ける件について、それが直ちに憲法に違反するかどうかということにつきましては、私どもよくわからないわけでありますけれども、そうではないんじゃないかと考えておりますが、いずれにしましても、法制局の方でお答えになったように、国民の権利義務に関係する問題でありますので、慎重の上にも慎重にという考え方であります。特にこの業務従事命令といいますのは、防衛出動が下令された時点で出されるものでありますので、まさに国家危急存亡のときでありますので、当然国民の御協力がいただけるものと我々考えておりますし、また、罰則がなければ協力をしないというようなことではとても役に立たないと申しますか、困るということもございますので、罰則をつくることがいいのかどうかということについては、私どももいろいろな意見があるわけでございますが、さらに引き続いて検討いたしたいということであります。
  72. 天野等

    ○天野(等)委員 今の御答弁の中にも、有事というのは国家危急存亡のときなんだというお話がございました。それで、少し各論に入ろうかと思うのでございます。  先ほどもちょっと質問いたしました部隊の移動、輸送、有事における速やかな部隊の移動あるいは必要物資の輸送等については現行法のままで、これの解釈、運用で処理可能だというようなことが今回の第二分類についての報告の中で出されております。  ところで、この問題について具体的に検討されたのは恐らく警察庁、公安委員会という方だろうと思うのですが、これは警察庁の方にお尋ねをしてみたいのですが、防衛庁の方からは、どういう状況の中で部隊の移動あるいは物資の輸送というようなものについて支障があるかどうかという点について尋ねられたのか。警察庁の方が検討をして、恐らく現行の解釈、運用でということだったのだろうと思いますけれども、その前提として、どういう状況認識を持っておられたのか、この辺でいかがでございますか。
  73. 越智俊典

    ○越智説明員 警察庁は、所管法律の規定の解釈について照会を受けただけでありまして、有事についての具体的な状況について説明を受けた上で協議を受けたわけではございません。
  74. 天野等

    ○天野(等)委員 具体的にどういう問い合わせを受けたわけですか、もう一度。
  75. 越智俊典

    ○越智説明員 防衛庁より当庁に対しましては、自衛隊の移動、輸送等に関する道路交通法令等の解釈について照会がありました。これに対しまして当庁では、道路交通法令の解釈については、次のような回答を行っております。  交通規制は道路交通法の規定に基づいて公安委員会等が行うことになること、自衛隊用自動車を緊急自動車に指定する場合の手続等は道路交通法令の規定により行われるものであること。  以上でございます。
  76. 天野等

    ○天野(等)委員 そうすると、防衛庁の方から具体的に、有事というようなものについて状況が設定された上での問い合わせではなかったということだと思いますけれども、この点、海上移動の問題について、これは海上保安庁でございましょうか、いかがでございますか。どういうような状況の上で検討がなされたのか。
  77. 玉置佑介

    ○玉置説明員 お答えいたします。  海上保安庁といたしましては、防衛庁より、有事の際の部隊の移動等に関する当庁所管の法令の運用について個別に協議を受けただけでございまして、有事についての具体的な状況について説明を受けた上で協議を受けたわけではございません。
  78. 天野等

    ○天野(等)委員 個別に協議をしたというのはどういうことですか。
  79. 玉置佑介

    ○玉置説明員 お答えいたします。  当庁所管の法令といたしましては、港則法それから海上交通安全法がございます、そういう意味において、それぞれそれについてということでございます。
  80. 天野等

    ○天野(等)委員 港則法の六条、「夜間入港の制限」ですか、これが有事の際に部隊移動の障害になるかどうかというような形での検討を依頼されたわけですか。
  81. 玉置佑介

    ○玉置説明員 お答えいたします。  港則法の「夜間入港の制限」に関しましては、港長による夜間入港の許可の迅速な処理について協議があったものでございまして、特段、有事についての具体的な状況について説明を受けたわけではございません。
  82. 天野等

    ○天野(等)委員 陸上、海上の移動の問題についての各省庁の対応から考えますと、どうも国家危急存亡のときというような状況設定の上でこの問題について各省庁が検討をされたようには到底思えないわけでございますけれども、航空法の関係ではいかがでございますか。
  83. 土井勝二

    ○土井説明員 お答え申し上げます。  ただいま海上保安庁の方からお答えがあったのと同様でございまして、有事の際の部隊の移動等に関連する私ども所管の法令、具体的には航空法でございますが、その運用について協議を受けただけでございまして、有事についての具体的な状況について説明を受けた上で協議を受けたわけではございません。
  84. 天野等

    ○天野(等)委員 ここに「国防」という雑誌、この中に「シビル・ディフェンスー12講」という連載がございまして、防衛研修所研究部第三研究室長の郷田さんとおっしゃるのでしょうか、この方の書かれた文章の中に、例えば太平洋戦争時に「日本はこの戦略・戦術爆撃によって、都市、輸送網、重要産業に壊滅的な打撃を受けた。被害都市は九十八都市であったが、そのうち七十二都市」、これは軍事施設のないと十二都市が約六〇%以上を焼かれた。また、輸送網の被害で、従来「約六百六十万トンの商船隊を保有していたが、終戦時には約百五十万トンに減少していた。損失船舶の約三四%は、航空機による爆撃と投下機雷によるものであった。」「青函連絡船十二隻が艦載機の攻撃を受け、十隻が完全に撃破され、北海道と本土間の輸送能力は一八%に落ちた。」というような事柄が書かれております。この数字の真否を私はどうこう申し上げているわけではないのですが、有事というのはいわば戦時であって、こういう状況になってきているとき、日本の船舶の三分の一が失われているというような状況の中で、部隊移動なり物資の輸送なりがどうなるのかという問いかけが出されて、それに対する検討がなされたのかどうか。防衛庁としては、この有事法制の研究というときに、どういう状況設定を各省庁に投げかけられたのか。平時有事というものの違いを考えた上でこの検討の依頼をされたのか、これは防衛庁にお尋ねしたいと思います。
  85. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答え申し上げます。  有事状況というものは、具体的に申せばまさに千差万別でございまして、個々の状況というもの、侵攻の態様とか規模あるいは地域によって状況が変わってくるわけでありまして、それについて各省庁に状況を御説明して御相談するということではございませんで、私どもとしましては、例えば陸上部隊であれば、駐屯地から戦場地域への人員等を迅速に移動させるためにどういう問題があるか、あるいは艦艇等であれば、艦艇の出入港を迅速に行うためにはどうすればいいのか、そういったことについて現行法との関係で問題がありやなしやという御相談を申し上げたわけであります。
  86. 天野等

    ○天野(等)委員 その上で、現行法規で処理可能だという結論が出された部分があるわけだと思いますが、特に部隊移動について。例えば、今警察庁の方からの御答弁にもありましたけれども、いわゆる有事の際でも交通整理といいますか、そういうものは各公安委員会というようなものの所管で行われるのだ、そういうふうなお答えだったと思うのですが、その上で部隊の移動が可能だというふうにお考えになっておられるわけですね。
  87. 西廣整輝

    西廣政府委員 御案内のように、道路交通法によりまして交通についてのさまざまな規制があるわけでございますが、私どもは。同法に基づきます公安委員会等によります交通規制を実施する、あるいは公安委員会の指定に係る緊急自動車というものの制度を運用することによって、自衛隊の任務遂行に支障がないというように判断をいたしたわけであります、
  88. 天野等

    ○天野(等)委員 今の道路交通法の緊急自動車というのは、例えば消防自動車あるいは救難用の救急車というようなものがまず一応該当するわけです。自衛隊の行動についても、緊急の必要がある場合には指定を受けて行っているようでございますけれども、しかし、今官房長がいみじくもおっしゃった国家危急存亡のときというような状況と、消防自動車あるいは救急車というようなものが道路を通過していく、その際の信号について無視をしていいあるいは道路をはみ出して追い越しをしてもいいという程度の緊急車の行動の問題と同一視して考えてよろしいものかどうか、また、防衛庁としてはその程度のものとしてこの有事というものを考えていらっしゃるということになると思うのですが、特に緊急車の行動というようなものは、ほかの自動車も当然道路上を運行しておるわけです、その際に優先的に救急車なり消防自動車というようなものが道路を通行できるにすぎない。しかし、有事というのはそういう状況とは全く違う状況ではないのかということは、私たち、多少太平洋戦争末期に戦争を経験したといいますかそういう者にとっては、到底考えられないことなんでございますけれども、同じような、消防自動車の運行と有事における自衛隊の車両の運行というようなものを同じ次元でとらえてそれで足りるということでございますか。
  89. 西廣整輝

    西廣政府委員 道路交通法の施行令で、緊急自動車につきまして、例えば自衛隊の車両につきましては自衛隊の行動あるいは自衛隊運用のためにそういったものを指定するというような格好になっておりますので、私どもとしては自衛隊の行動なり移動に際して緊急自動車というものの制度を活用することによって対応可能だというように判断いたしました。
  90. 天野等

    ○天野(等)委員 この有事法制の中間報告というようなものを読んでおりましてどうにも、いわゆる有事というようなものの姿がちっとも浮かんでこない。この陸上移動についてもそうですし、海上移動にしても、夜間入港制限、これは港長の権限だと思いますが、通常これはどういう場合に、夜間入港の制限に対して夜間入港の許可が与えられるのか、これは運輸省の方にちょっとお尋ねいたしたいと思います。
  91. 玉置佑介

    ○玉置説明員 お答えいたします。  港則法では、一定の特定港につきましては夜間入港を原則として禁止しております。しかしながら、同法の第六条によりまして、港長が安全上支障がないと判断した場合には許可をいたしまして夜間入港を認めることができることとなっております。
  92. 天野等

    ○天野(等)委員 その場合に、優先的に自衛隊の艦船を入港させる、他の艦船を港外に出すとかあるいは入港の順序を変えさせる、いわば優先的に自衛隊の艦船を入港させるというようなことが可能なんでしょうか、今の法規で。
  93. 玉置佑介

    ○玉置説明員 先ほど御答弁いたしましたとおり、港則法の「夜間入港の制限」に関しましては、これはあくまでも船舶交通の安全等を目的としている法律でございますので、一般の船舶あるいは自衛隊の使用する船艇等を含めまして、原則として一律の観点から行われるべきものではないかというふうに考えております。
  94. 天野等

    ○天野(等)委員 今の憲法秩序が自衛隊だけを優先させるというような権利関係になっていないことは明らかでございますから、例えば緊急自動車にいたしましても他の緊急自動車と全く同じ扱いを受けるにすぎないでしょうし、また港則法の問題にしても他の船舶と全く同じ扱いを受けるにすぎない、これは今の憲法の一つの法秩序の中では当然過ぎるくらい当然のことであります。その中で、有事というようなもので具体的に部隊の移動なりあるいは戦闘行為なり、あるいは陣地を構築していくというような問題が処理可能だというふうにお考えなのか。自衛隊の優先使用という問題を考えることなしに、他のものとの平等の権利関係の中で有事に対処していけるとお考えなのかどうか。
  95. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来申し上げておりますように、私ども自衛隊の行動に関して現行法上ぐあいが悪いという問題点があればできる限りそれを摘出して問題点を指摘し、将来でき得ればそういったものについての法制上の改善措置をとっていただきたいということで現在進めておるわけでございます。現在までの検討結果では、第一分類、第二分類につきましては現在御報告したところが問題点として摘出され明らかになったというものでございます。
  96. 天野等

    ○天野(等)委員 それではこういう問題はどういうことになるでしょうか。自衛隊法の百二十二条ですが、防衛出動命令を受けた場合に、「上官の職務上の命令に反抗し、又はこれに服従しない者」とか「正当な権限がなくて又は上官の職務上の命令に違反して自衛隊の部隊を指揮した者」について「七年以下の懲役又は禁こに処する。」という罰則規定がございますけれども、こういう有事の際においても通常の刑事訴訟法上の手続にのっとってこの処理が進められるというふうにお考えになられるかどうか。いかがでございましょう。
  97. 西廣整輝

    西廣政府委員 そのとおりと考えております。
  98. 天野等

    ○天野(等)委員 上官の職務上の命令に対する反抗あるいは不服従というようなものは、現に戦闘が行われているその場で行われるわけだと考えますが、この場合に例えば逮捕、勾留というような問題が当然出てくるとしまして、勾留は裁判所の司法的な命令でなければできない、逮捕もまた逮捕状を請求しなければできないという関係になってまいりますけれども、これもそういうような通常の刑事手続で有事の際でも足りるというふうに考えるわけでございますか。
  99. 西廣整輝

    西廣政府委員 御承知のように自衛隊には警務隊というものがございまして、これが自衛隊内におけるその種任務につくことになるわけでありまして、当然のことながら警察官職務執行法等の規定に基づいてそれらの職務を執行するということになります。
  100. 天野等

    ○天野(等)委員 当然のことながら司法的チェックを受けるということだと思いますけれども、時間がなくなってまいりましたので少し先を急ぎます。  私は、この有事立法について、実際の有事の恐ろしさというものがこの報告書の中では全く隠されているのじゃないかという気がするわけです。これを幾ら読んでみたって国家危急存亡のときというようなイメージはこの中に全く浮かび上がってまいりません。  ところで第三分類について、新聞等でもこれの検討が急がれているというような新聞報道もございましたけれども、この点の検討はどういうふうになっておりますでしょうか。
  101. 西廣整輝

    西廣政府委員 第三分類に属する事項といたしましては、例えば住民の保護であるとか避難、誘導を適切に行う、そういったような措置などいろいろ考えられるわけでありますけれども、これに関連する法制というものは現在全く存在をしないわけであります。しかも、そのいずれもが幾つかの省庁にまたがるような問題であるとか、あるいは所管する省庁がはっきりしないといったような問題でございますので、これらのものにつきましては政府全体といたしましてより広い立場で研究を進めていくことが必要だと前々から申し上げているわけであります。したがいまして、防衛庁が直接この問題を担当するというものではないわけでありますが、しかし何といっても防衛出動が下令された時点における問題でありますので、法制上どうするかといったような研究以前の問題といたしまして、問題提起と申しますか、あるいは防衛庁からこんなことも考えておかなければいけないんじゃないかといったようなことが言える程度のことは勉強したいということで、現在勉強にとりかかったところであるということであります。
  102. 天野等

    ○天野(等)委員 昨年、中西国務相の私的諮問機関ということで危機管理問題懇談会が報告書を出しているようでございますけれども、これなども防衛庁としてはこれからの第三分類というようなものを検討する上でのたたき台になさるおつもりがございますか。
  103. 西廣整輝

    西廣政府委員 御指摘の中西国務大臣の私的な諮問機関でその種の御研究をされたことは私どもも承知しておりますし、御報告を読ませていただきました。そういう意味では防衛庁としても今後勉強していく際の参考ということで考えさせていただきたいと思っております。
  104. 天野等

    ○天野(等)委員 最後にこれは長官にお尋ねしたいと思いますが、今後の有事法制の研究についても、今の憲法秩序というものを動かさないものとして、その上で研究をし、あるいは立法化をしていくというように、今の憲法秩序を動かさないという考えがおありになるか。もう一点でございますが、しかし、動かさないというときに、単に言葉の上で動かさないということで、解釈、運用によって憲法を空洞化していってしまうということがこれは非常に恐ろしいわけでございまして、現にそういうことがこの防衛法全体について私は考えなければならない点だと思いますけれども、今後とも憲法秩序の中で考えていくというふうにお考えなのかどうか、この辺の基本的な考えをお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。
  105. 加藤紘一

    加藤国務大臣 有事のときに国民の権利関係防衛とをどう考えるべきかというのは大変重要な問題であろうと思います。その際に、私たちは、常に憲法に従ってその事態を考え、その事態に対処する法制を考えておかなければならない、こう思っております。したがって、あくまでも憲法に従って有事法制の研究も行うべきであり、また天野委員指摘のように、それは単に言葉の意味だけではなく、実態でもそうあるようにしなければならない、こう思っております。だからこそ、有事法制の研究はどういう状況でやるべきかというのは一つの大きな議論だと思うのですけれども、やはり国家危急存亡のときというのは、国民全体もともすればバランスを欠く可能性のあるときだろうと思います。したがって、私は平時において、平時というのはより国民が国民の権利と福祉、それから国家の利益とを冷静に考えられるときでありますから、平時において、有事についてどうあるべきか、その法制の問題はじっくりと検討すべきであろうと思います。法制化がどうかは国民の皆さんの御議論をまたいただくといたしまして、どういう問題点があるかにつきましては常に議論しておかなければならない点ではなかろうかと思います。その意味で、委員のおっしゃいました本日の問題点の指摘は、よりそういう状況をしっかりと踏まえてすべての面について考えておけという意味で非常に深い御議論をいただいたのでないだろうかなと思っております。  それから二番目に、委員が御指摘日本有事の際の日米共同対処の際の、かつ米軍が日本の主権下にある際における日本の法制と米軍の行動、その法規制の問題につきましては非常に重要な問題であろうと思います。これは本質的には外務大臣のところの所管でございますので、一般国際法上どう解釈すべきか、それから日米安保条約との関係及び地位協定においてどう読むべきなのか、その辺は外務省からのまた御意見をお伺いしたいと思いますけれども、しかし、一般的にこの問題をしっかりと考えておかなければならないということは大変重要な点ではなかろうかと思います。委員から御指摘いただきました質問主意書を見まして、私たちも、過去この問題がどう国会で議論されているかということを議事録も繰ってみましたけれども、ある意味では、きょう御指摘いただいた御議論が一番詳細にわたっておる御議論ではなかろうかな、こう思っております。したがって、委員指摘のように、その際どうあるべきかということを私たちはしっかり頭に入れて、これをきっかけにまた外務省とも御相談申し上げて一そしてこの対処をどうすべきか、少なくともしっかりとした問題点の洗い出し、指摘は手をつけてみたいと思う次第でございます。
  106. 天野等

    ○天野(等)委員 終わります。
  107. 森下元晴

    森下委員長 奥野一雄君。
  108. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私もこの委員会初めてでありますし、きょうは時間も相当少なくなっておりますので、すべてについてお尋ねするというわけにもまいらないと思いますが、せんだって防衛庁長官の方から、最近の国際軍事情勢及び我が国防衛政策についての御説明がございました。拝聴いたしておりましていろいろな疑問点がたくさん出てきたわけでございまして、きょうはその中から幾つかの問題について見解をお聞きしたいというふうに思っているわけであります。もちろん短い時間の中でのやりとりでありますから、私と防衛庁の幹部の皆さん方と意見が一致するということは非常に難しいというふうに思っておりますが、対立した見解であっても結構だと思うわけであります。今後また時間をかけて具体的な問題でお尋ねしていきたいと思っておりますので、きょうは原則的な問題についての防衛庁の見解をさらに詳細にお伺いしていきたいというふうに思っているわけであります。  まず、せんだって大臣の方から述べられました中で、一ページの中に、ソ連は、一九六〇年代から一貫して軍事力の増強を図っている、こういう表現があるわけであります。なぜソ連は軍事力を増強するのだろう、こう実は考えるわけでありまして、恐らくそれは、ソ連にとっては対峙する相手の国がある、その相手の国も軍備を増強していく、だからソ連もまた軍備を増強していくのではないだろうか、こう思っているのです。私はそういうふうに受け取るわけなんです。ソ連が一貫して軍事力を増強してきているということは、アメリカも当然軍事力の増強を図ってきているからではないのだろうか、こう思われるわけでありまして、その点について、ソ連だけが何か特別に軍備の増強をしているような印象を受けるわけでありまして、そういう面ではどうなんでしょう。
  109. 加藤紘一

    加藤国務大臣 世界の中でそれぞれが防衛力軍事力を増強する発端は何かというのは、防衛論争、外交論争の中で常に基本にある問題であろうと思っております。しかし私たちとしては、ソ連は党の綱領やいろいろな場面におきまして、帝国主義が存在する限り戦争の危機は回避されないというしっかりとした認識のもとに軍事力の増強を国家の最優先課題の一つとして取り上げておるのだと思っております。したがって、ソ連の軍事力の増強は、例えば一九七〇年代のデタントの時期、つまりアメリカ軍事力を増強しなかった時期、特にカーター政権のとき、軍事力の増強をストップしている時期においても軍事力の増強があったということは否定できない事実なのではないかと思います。したがって、その防衛力軍事力を背景にして対外、外交政策の一つの基盤にするという政策はソ連の一貫した方針なのではないだろうか。そういうこともありまして、その増強の累積的な効果が非常に顕著に見えて第三勢力等に対する拡張の動きにもなったので、どうしてもここでアメリカ側は、自由主義陣営側も軍事力バランス回復をしなければならない、そういうことでここ数年の政策が追求されたのではないだろうかと思っております。したがって、私たちとしては、自由主義陣営の防衛力整備はあくまでも防衛的なものであるということは、この過去の経緯から見てもわかるのではないだろうかなと思っております。
  110. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 これは次の疑問点にも引き継がれていくわけでありますけれども、この一ページの後段から二ページにかけて「このような軍事力を背景に、アフガニスタンへの軍事介入」云々、こういうような文章もあるわけであります。私は、この軍事力というものの増強ということをどこの国であっても認めたくないという考え方を持っているわけであります。それは、軍事力というものの増強というものを認めていきますと、これは際限なく続く、決して歯どめのかかるものだというふうには考えられないのですね。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕  そういう面から考えていきますと、例えばこういう軍事力の増強によってソ連がアフガニスタンへ侵攻した、そういう見方というのは非常に皮相的な見方ではないのかなという感じがしてならないわけなんです。例えば、西側陣営と言われるところ、そういうところでそれではないのか、これは今までの歴史の経過を見ると必ずしもそうではない、結局はお互いに自分の陣営、その中でその体制が覆されようというときに大国が軍事的な圧力をかけてくる、こういうようなことをたどってきているのではないだろうか、こういうふうに思われるのですね。  したがって、例えば資本主義国家の中で何かがあったときに社会主義国家がそれに入り込むということ、あるいはまた、逆に社会主義国家の中で何かがあってそれに対して資本主義国家が入り込む、こういうケースというのはほとんどないような感じがするわけですね。お互いに自分体制ということを守ろうという立場の中からそういう軍事行動などが行われてきているのではないだろうか、こういうふうに思われるわけです。  したがって、それではこの西側陣営でそういうような事態が起きてきたときに、日本としてはそれに対して一言も何か言わないのか、そういうことになると私はおかしいというふうに思うのですね。我々の立場にいたしますと、これはどんな国であっても軍事力というものを背景にして他国に介入するということについては認められない、こういう立場というものを当然とるべきではないか、そのことがこの軍事力の増強ということに対して歯どめをかけていくというものになっていくんではないだろうか、こう私は思うのですが、これは日本防衛庁としては、今日本は西側の一員ということになっているのですか、この西側ではそういうことが起きたときには何も言わない、東側がそういう行動を起こしたときには批判をする、こういう態度であるのか、今申し上げましたように、軍事力によって他国に介入するということはいかなる国でも認められない、こういう立場をとられるのか、御見解をお示しいただきたいと思うのです。
  111. 古川清

    古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入は、一九七九年の十二月二十七日に行われたわけでございますけれども、これがいかに世界の非難を浴びたかといいますことは、その後いろんな国がこのソ連の介入を批判したということによってもはっきりしているわけでございます。何よりも明確なことは、その当時アフガニスタンには明確に同国を支配する正統政府というものが存在しておったわけでございますけれども、ソ連が同国に侵入をいたしまして、この大統領、アミン議長でございますけれども、これを殺害いたしました。このときソ連の特殊部隊が入ったのではないかということもよく言われておるわけでありますが、これを殺害をいたしまして、軍事介入をしてカルマル政権というものをつくり上げてしまったわけでございます。しかも、その後五年近くたっておりますけれども、今日においても十一万人という大変多くの軍隊を同国に駐留させておるわけでございまして、今もって軍事力を残存しておりまして撤退をしていない、依然として抵抗運動が続いておる、こういうことから見ましても、やはりアフガニスタンに対するソ連の軍事介入というものは許しがたい事実であるというふうに考えておる次第でございます。
  112. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 アフガン侵攻の際には私どももソ連に対しては重大な警告を発したということについては御承知だと思うのです。私が今言いたかったのは、こういうふうに書いておりますけれども、例えばそれではベトナム戦争なんかのようなときに日本はどういう態度をとってきたのか、こういうことなんです。私の真意というのは、軍事力というものを背景にして他国に対して介入をしていくということは、どんな国であっても我々としては認めるという態度をとるべきではないのじゃないのか、こういう点を言いたかったわけであります。そういう点はどうなんですか。
  113. 古川清

    古川(清)政府委員 例えば一つの例がグレナダのケースがあるかと存じますけれども、このグレナダの場合におきましては正統政府のビショップ首相が殺害されまして非常に国家の秩序が乱れたわけでございますけれども、スクーンという総管がおりまして、この総督の要請を受けた東カリフ海の諸国機構の加盟国からの要請に基づいて入っていって秩序を回復した。それでそもそも入りますときに早期撤退という方針をアメリカははっきりとさせておりました。既にほとんどの軍隊は撤退を完了しておるわけでございます。したがいまして、国家存亡のときに秩序を維持するために他国の、友好国の援助を求めるというようなことは当然あり得ることではないかというふうに考えておる次第でございます。
  114. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 その辺になると、私は大変危険だと思うのです。国家存亡の危機のときには入っていいんだ、こういうことになっていきますと、じゃ一体何がその国家存亡の危機なのかということは、これは定義をつけることは非常に難しいと思うのです。戦争が起こった場合、いや私の方が悪くて戦争を起こしたなんと言う国というのはほとんどないわけでしょう。それは自国の主張がいかに正義感に基づいているのかということをお互いに表明し合うわけですよ。そういうことになっていきますから、世界は軍縮の方向に向かわないでむしろ軍拡の方向に進むという傾向を持つのではないかと思うのです。だから、この国家存亡の危機の場合に、ある大国が、これは要請を受けたという形は当然とると思うのです、そういうことによってほかの国に軍事的に介入をしていくということは、日本の持っている憲法の精神からいってもそれは認めるべきではない、やはりこういう方針をとるべきだというふうに私は思っているわけであります。そのことについて今議論する気はございませんし、そういう考え方であるということはわかりましたから、これは当然お互いに見解が違うわけでありまして、次の方へ進ませていただきます。  それから二ページの中に、北方領土にソビエトが軍事力を増強していることは遺憾であります、こういうような書き方があるわけであります。これも今の疑義の点と関連をしていくわけでありますけれども日本としてどこの国でも軍事力を増強するということは好ましいことではないんだ、こういう基盤に立つかどうかによって非常に大きく分かれていくと思うのです。私どもは、やはりどこの国であっても軍事力というものを増強するということは好ましくないことだ、まずそういう観点に立つということが大事でないかと思うのです。アメリカなどの場合だと、それは日米安保条約などがあるにいたしましても、沖縄はほとんど基地の島になっているし、日本国内にだってたくさんの基地があるわけであげます。なぜそういうようなことになるのかということが私は一番大事なことだと思うのですね。ソビエトにしたって、日本の国内にソビエトに向けたいろいろな米軍の基地がある、その中にいろいろな兵器も増備されてくる、そういう面を考えると、ソビエトもまたそのことによってそういう日本米軍基地をにらみながらの軍備配置をしてくる、これはエスカレートしていくと思うのですね。ですから、私どもはもちろんソビエトが北方領土に軍備を増強するということについては好ましいというふうには思っておらないわけであります。しかし、それにはやはり一つの原因があるのだ、こういう点を考えていきますと、私どもは、やはり日本の国内における米軍基地という問題についても考えていかなければならないのではないだろうか、こう思っているわけでありますが、その辺の見解についてお示しをいただきたいと思うのです。
  115. 古川清

    古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  私どもは、北方領土に対するソ連軍の増強ということについては、単に好ましくないということのみにとどまらず一極めて遺憾なことであるというふうに判断をしておるわけでございます。そもそも北方領土と申しますのは、我が国固有の領土でございまして、ソ連はこれを不法に占拠をして返しておらない。しかもそこを軍事的な基地として使っておりまして、極めて急ピッチな増強があるわけでございます。例えば、一つの例で申し上げますと、一九八三年まではミグ21という古いタイプの飛行機がおったわけでございますけれども、八三年の八月以降、ソ連の最新鋭のミグ23、フロッカーと呼ばれておる戦闘機、これを配置いたしまして、現在その数が四十機にも上っておるという次第でございます。そういった点からいたしましても、私どもは、この北方領土におけるソ連軍の増強というものは極めて遺憾なことであるというふうに考えておるわけでございます。このように、ソ連軍極東における軍事力増強というのは近年目をみはるものがあるわけでございまして、昔はソ連軍全体のウエートの中で極東の占める割合というものはそれほど多くなかったわけでございますが、現在は四分の一ないし三分の一が極東配備されておる。これは、戦略・通常兵器等々を加えましても大体そういう数になるわけでございまして、いわばソ連軍極東シフトというものが行われておるわけでございます。さらに、もともとソ連軍軍事力全体がふえておるわけでありまして、そのうち極東に対するソ連軍配備が強化されておるということは、これはどうしても座視し得ない事実でございます。こういったことを踏まえまして、米国は、軍事バランス改善という見地から、さらには日米安保条約に基づくアメリカ抑止力信頼性の維持強化という観点から対応策を立てておるわけでございまして、こういったアメリカ努力は、私どもの国日本の安全及び極東の平和と安定に寄与するものである、防衛の迫られた対応策であるとしてこれを評価しておる次第でございます。
  116. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 お互いに、どちらの国が先にある地点に軍備を配置をしたということについて決めるというのは、非常に難しいと思うのですね。今のお答えでは、何かソビエトの方が極東の方に軍事力を増強したからアメリカも心配になってきて日本中心にした極東方面にまた軍備を増強する、こういうふうに聞こえるわけであります。それは私もソビエトの方から意見を聞いているわけじゃありませんからわかりませんが、恐らくソビエトの方に説明を求めたら、いやそれはアメリカの方が軍備増強をやるからだ、こういう答えになってくると思うのですね。私は、軍事力をふやす考え方というのは、当然そういうようなところから来るだろうと思うのですよ。私は、そういう面では、米ソ二大国の間に挟まって、日本国民こそいい迷惑だと思うのです。そういうようなことを続けていっている限りにおいては、お互いに軍事力を縮減をしていくというようなことにはなかなかつながっていかないと思うのですよ。ですから、本来でありますと、日本という国は、憲法の趣旨からいきますとどちらの陣営にも加担をしないというのが一番いいことだと思うのですね。そういうふうにしてやっていかないと、どちらかの側に立っている限りにおいては、国内における米軍の基地だって減るということにはなっていきませんし、あるいは数が減ったって武器そのものについてはもっともっと強化されたものが配置をされていく、こういうことになっていく。ですから、そうなっていきますとソビエトの方でも、日本に一番近いようなところ、極東における米軍の基地に一番近いところに軍備を増強してくるということは当然考えられてくることだと思うのですね。これは皆さん方の方がそういう面では専門家でありますから、そういうことになっていったらどういうふうにエスカレートをしていくのかということについては百も承知だと思うのですね。私は、そういう百も承知のことをしておりながら一方だけを責めるわけにはいかない、必ずそこには一つの原因というものが存在をするからこういう結果になってくるのだと思う。そういうことになっていきますと、むしろ我々の場合には、そういうことの方の脅威というのですか、そっちの方がむしろ大きくなるわけですね。北海道なんか随分、北方脅威論なんかによって逆に私どもは迷惑を受けているという感じさえ持っているわけなんです。そういう面について、これも見解の相違でございますからいいと思うのでありますが、私も、やはり立場とすれば、どこの国だって軍備の増強をしていくということについては、これは人類の平和という点から考えたら好ましいことではないのだというような考え方というものをとっていかなければならないと思っているわけであります。  また、これと関連をしていきますが、三ページの方に「抑止力信頼性の維持強化を図る」、あるいはまた「抑止力信頼性を維持強化することを目的として」云々、こういうくだりがあるわけでありますが、これは私もよくわからないのでありますけれども抑止力というものについて本来信頼性というものがあるのだろうかと思うのです。ある一つのものをつくって、そしてそれによって相手を、悪い言葉で言えば威嚇ですね、こっちの方にはこういうすぐれた武器を持っているんだ、何かあったらそれで直ちにやっつける、これが抑止力になるのだろうと思うのですね。しかしそのことが、果たして抑止力というのは信頼性を持っているのだろうか、大変疑問に思うわけなのです。相手がそれよりもすぐれたものを持った場合には抑止力効果というものはなくなっていく。そうすると、また当然相手よりもすぐれたものを持たなければならないということになっていく。そうならなければ抑止力効果というものは生まれてこないということになるわけです。そのことは何を意味するかというと、先ほどから言っておりますように、軍事力というものはどんどんエスカレートしていく、こういうことになってくると私は思うわけでありますが、その辺はどうなんでしょう。
  117. 古川清

    古川(清)政府委員 まさしく先生がおっしゃいますとおり、抑止力がアンバラになって穴があくということ、こういう事態になることが大変危険なことでございまして、ソ連が一貫して軍事力の強化を続けておる。どうしてもここでバランスをとりませんと、この恫喝に屈しざるを得ないというふうな状況が実は生まれてくるわけでございます。そういう観点からアメリカが必要な対応策をとっておるわけでございます。例えば、核兵器を持ったのはアメリカが先でございますけれども、戦略核兵器、大陸間弾道弾、これにつきましては既に六〇年代の後半に数の上ではソ連がアメリカを上回っておりますし、七〇年代に入りましてから、潜水艦から発射いたしますSLBMと称される弾道弾、これもソ連がアメリカを抜いてしまうという状況ができ上がってしまっている状況でございます。こういった点から、抑止力という問題は当然相対性があるわけでございまして、相手が上がってこちらが上げないとアンバラになる、そこで危険が生ずるというわけでございますから、アメリカがソ連に対応するような抑止力の強化に努力をしておるということは、むしろ我々としては大変ありがたいというふうに思っている実情でございます。  そのように、この抑止力というものは放置して、つまりソ連がどんどんと軍事力を削減していってくれればよろしいわけでございますけれども、実態は逆でございまして、世界の学者が言っておりますのは、現在では大体GNPの一五%も使って軍備増強を続けておる。最近発刊されましたアメリカの「ソ連の軍事力」という英文の資料によりますと、これが一七%というぐあいに上がっております。そういうふうに、普通の民主主義の国家、世論があり議会があり、そういったオープンなソサエティーでは、平時においてGNPの一五%以上も使うということはもう大変に難しい状況でございますけれども、ソ連のような閉鎖国家におきましてはそのような国家資源というものを軍事に振り向けるということもまた可能なわけでございまして、私どもとしてはこのソ連の一貫した軍事力増強というものをどうしても注視せざるを得ないということでございます。
  118. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 これは私が質問したことには直接的には答えになっていないわけでありまして、私はソビエトだとかアメリカだとかということを今言っているのではないのですね。この防衛庁長官の演説の中で、抑止力信頼性を高めるとか、こう言われているわけなのでありますけれども、この抑止力というものを高めようとすれば際限なく続くでしょう。これで絶対大丈夫な抑止力というのはあるのですかということなんですね。私は、これはないと思うのですね。抑止力というものは、いつまでたったって信頼性なんというものはできっこない。そうすると、出てくるのは莫大な予算を使ってそういうものを開発していく以外に安心できない。私は、これは人間にとって非常に悲しいことだと思うのですね。実際には抑止力というものの裏には何があるのか。これは相手に対する疑念とか疑惑ですね。実際にはそのことが発動されるのかどうかわからないのですよ。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕しかし、わからないけれども一抹の不安があるということで、何とか相手よりもすぐれた武器というものを持っておかなければ安心できないという、そのことによってこれは莫大な軍事予算というものを、今ソビエトでは随分使われていると言っております。日本の場合だって、相対的にはまだ少ないじゃないかと言われているけれども、ここ数年間いわゆる突出という言葉を使われるぐらいやらなければ間に合わないということになっている。アメリカの今の経済、景気を支えてきたのも一つは軍事産業、軍事予算だというふうに言われているわけです。私は、そういう面ではそれは非常に悲しいことではないのか、だからこの抑止力というものについてはそういうふうにして信頼性というものを、これで絶対大丈夫という信頼性というものを確保することができるのですかということをお尋ねしたわけです。
  119. 加藤紘一

    加藤国務大臣 それぞれがお互いの軍事的な力量をどう見るか、それはなかなか計算できないことであって、そこから来る不安定度がだんだんまたエスカレーションを引き起こしていくのではないかという御指摘であろうと思いますけれども、確かにそういう面はあろうかと思います。数えられない、難しいという、その辺については大変な議論があることは私たちも承知しておりますけれども、しかし戦後四十年の東西関係、それから国際情勢の厳しい現状を見れば、抑止力というものが機能してお互いに大がかりな紛争がなかったということも私は否定できない事実であろうと思います。だから、それでは軍事力があるこの世界がいいかといえば、それは総理大臣も数度申し上げておりますように、できればすべての核が廃絶され、そして軍備が完全に撤廃される世の中が早くできればいいのだけれども、しかしそこは人間の業みたいなもので、なかなか相手を信用し切れないところにこの問題があるということは、数度総理大臣も申し上げているとおりでございます。  そういう意味で、私たちは、核につきましてもほかの軍備につきましてもそういった完全廃絶ができればいいし、そしてジュネーブにおきます軍縮交渉でもそれがしっかりとした実りあるものになってほしいと願うことは、本当にその気持ちいっぱいでございますけれども、しかしそれが必ずしも楽観できないという状況であれば、私たちもそれなりの防衛力整備をしていかなければならないことも事実であろうと思っております。
  120. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私は、抑止力というものを考えている間は本当の意味での軍縮ということに到達をするということはまず困難だろう、こういうふうに思っております。これも見解の対立てございますから、そういう点だけ申し上げておきたいと思うのです。  きょう大体十項目ぐらいお聞きをしようと思っておったのですが、時間が余りありませんので、残った分はまた次回ということにさせていただきたいと思いますが、もう一つは、この四ページの中に「米国は自国の国防努力のみでは十分でないとの認識から、我が国を含む同盟諸国に対しても」云々、日本の場合にもそういう「我が国防衛に関心を有し、期待を表明することは当然のことと存じます」、そういう「期待を念頭に置きつつ、自主的に防衛力整備を進めることとしている」、こういうくだりがあるわけでありますが、私はこの点は矛盾するのではないかというように思うのですね。これは、アメリカが自国の防衛力のみでは十分ではないという認識ということに立って日本にその肩がわりをしてもらいたいということになった場合には、日本の場合には今のところまだ専守防衛ということになっているはずだと思うのでありますが、アメリカが自国の防衛力だけでは不十分だという点を日本に肩がわりをさせるということになった場合には、専守防衛ということからはみ出していかなければアメリカの期待にこたえるというわけにはいかなくなっていくんじゃないか、そういうふうに私は感ずるわけなんでありまして、そうなっていくというと矛盾してくるのではないかと思うのですが、その辺はいかがですか。
  121. 矢崎新二

    矢崎政府委員 米国の現在やっております努力でございますが、これはただいま政府委員からもるる申し上げましたように、ソ連の一貫した軍事力増強などの厳しい国際軍事情勢に対処するためにみずからの防衛力を強化いたしまして、ソ連との軍事バランス改善を図るということが一つございますし、それからもう一つは、やはり同盟国に対しましても、それぞれの地域におきます防衛力の強化ということにぜひ自主的な努力を払ってもらいたいということを言っておるわけでございます。我が国に対しましても、我が国自身の防衛のための防衛努力をぜひ続けてもらいたいということを要請をしておるわけでございます。日本の立場というものは、日米安保体制とそれから我が国自身の防衛力でもって安全の確保を図っておるわけでございますから、そういう意味からいきまして、アメリカ側のそういった期待を念頭に置くことは、これは当然であるわけでございます。  ただしかしながら、我が国自身はあくまでも自主的に防衛政策を推進をしてきておるわけでございまして、平和憲法のもとで専守防衛に徹し、非核三原則を堅持をする、さらには他国に侵略的脅威を与えないといったような基本的な防衛政策に従って我が国防衛のための必要最小限防衛力整備をしていることはるる申し上げているとおりでございます。こういった我が国防衛努力のあり方というものにつきましては、米国も十分理解をしておるわけでございます。  例えば昭和五十六年五月八日の鈴木・レーガン会談におきます共同声明の中におきましても、このようなことが言われております。「総理大臣」、これは鈴木総理でありますが、「総理大臣は、日本は、自主的にかつその憲法及び基本的な防衛政策に従って、日本の領域及び周辺海・空域における防衛力改善し、並びに在日米軍の財政的負担をさらに軽減するため、なお一層の努力を行うよう努める旨述べた。大統領はこれはレーガン大統領ですが、「大統領は、総理大臣の発言に理解を示した。」というふうに言っておるわけであります。それからまた、アメリカとして、決して米国が自分の責任の肩がわりを求めるものではないということは、日米防衛首脳会談でも述べられているわけでございます。  そういったようなことから申しまして、ただいま御指摘のような米側の期待というものと我が国防衛政策というものとの間に、矛盾があるというようなことは決してないというふうに理解をいたしている次第でございます。
  122. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そうすると、この前の大臣の演説の中では、今私申し上げましたように、アメリカは「自国の国防努力のみでは十分でない」、そういう面から日本防衛力増強ということについて期待をしている、日本はそういうアメリカの期待を念頭に置きながら防衛力整備を進める、こうなっているわけですね。これは私は決して難しいことを聞いているのではなくて、そういう演説を聞いて、私、疑問に思いましたのは、今も申し上げましたが、例えばアメリカが自国の防衛努力だけでは不十分なんだ、その肩がわりを日本に何とかしてもらいたい、そういう点を考えますと、何かあって、アメリカとあるいはどこかの国が仮に戦闘状態にでもなったとか、そういう緊迫した状況になったときに、極東方面における分について日本は何とか肩がわりをしてもらいたい、しかし、日本の場合には専守防衛というのが基本になっておりますから、方々へ飛行機を飛ばしていってアメリカを攻撃するであろう他国の艦船、飛行機などを攻撃するというわけにはいかないわけだと思うのですね。そうした場合には、アメリカの実際の肩がわりの役にも立たないだろう、だから、それを立てさせようとすれば、専守防衛という枠をはみ出さざるを得なくなっていく段階に追い込められるのでないだろうか、こういう疑問が生じたということなんですよ。だから、そういう面について、いや、全くそういうことはないのだということであれば、それでいいわけですが、どうなんでしょうか。
  123. 加藤紘一

    加藤国務大臣 全くそういうことはございません。それは、憲法からも許されないことだと思っております。アメリカの方が自国の努力だけでは不十分であると考えて、日本防衛努力を期待すると申しますのは、日本極東の場面において、従来の専守防衛とか憲法上の制約をはみ出してまでもやってくれということではなくて、現在の日本の憲法の制約、それぞれの防衛についての基本原則の中で、日本がもっとできることはやっていただきたい、そうすれば、その分だけアメリカ自分の力が、負担が軽減されるからというのが期待であろうと思います。私たちはそこは十分わかって念頭に入れていきますけれども、あとは自主的に自分たちの判断することでありますが、いずれにいたしましても、私たちが期待されているのは、我々の原則の範囲で我々のこの国の問題、自国の問題についての防衛努力であるということは、そこは明確にしておきたいと思いますし、そういった例えば極東のほかの地域に、専守防衛の原則を破ってどこかに出ていくとか、特別の装備をするとか、憲法の原則に反するとかそういうことは、さらさら毛頭考えておりませんし、許されることではないと思っております。
  124. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 もう時間が来ましたので、ちょうど予定した半分だけきょうはお尋ねをいたしましたが、あとまたGNP一%枠と「防衛計画の大綱」あるいはフリートサット衛星の利用などの問題がございますが、次の機会に譲らしていただきまして、終わりたいと思います。
  125. 森下元晴

    森下委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時六分開議
  126. 森下元晴

    森下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田哲君。
  127. 上田哲

    ○上田(哲)委員 貿易摩擦問題についてお伺いいたしたいと思います。  伝えられるところによりますと、外務省の手島審議官がアメリカを訪問されておるようでありまして、アメリカ側からは、アメリカと同じ形の政府特使ではないか、こういう受け取り方もあったようでございます。現地での記者会見を予定を中止するとか、いろいろな問題の雑音も含まれておるようでありますが、その辺の立場、そして御報告、アメリカの感触はどのように受け取られておるか、外務大臣からまず承りたいと思います。
  128. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 手島外審を派遣いたしましたのは、アメリカのシグール特使が来られたということと直接連関しているわけじゃないんですが、しかし貿易摩擦という点では連関しているわけであります。アメリカの政府はそれなりに日本の立場に対してある程度の理解はできておりますけれども、しかしアメリカの議会が非常な激しい日本に対する批判を繰り返しておりますし、対日制裁法律案まで出しておるという状況であります。この際、日本としてもベストを尽くしているわけですから、アメリカのそうした日本に対する誤解とか無理解とか、そういう点について、日本側が今日まで作業をしている状況等について十分説明をして、アメリカ側に日本に対する理解を求めさせよう、こういうことで派遣をしたわけでありまして、非常に短時日でしたから、非常に精力的に動いてはおりましたけれどもなかなか日程が取れない面もありまして、アメリカの新聞社全部と記者会見するというようなことも――議会人に随分精力的に会っておりますし、政府の関係者にも会っておりますし、またアメリカ側の新聞社ではワシントン・ポストとかニューヨーク・タイムズとかそういう有力紙とは会っておるわけです、もちろん日本人の記者会見はしておりますけれども、まとまった記者会見はそういう時間がなかったということで多少雑音的なものが出ておって残念に思いますが、しかし私は、手島外審は、与えられた非常に短い時間の中で最大限の活動をしておるというふうに思っておりますし、その努力というものはアメリカ側もそれなりに評価をしておるのじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  129. 上田哲

    ○上田(哲)委員 この日米貿易摩擦、これは一種のパターン化しているというふうに見られるのでございますね。今回も、今お話に出ましたように議会筋と、議会筋にもいろいろありましょうけれども、ジャーナリズム、世論、また違ったところがあるようであります。特に議会筋について言うと、どうも議会筋が行政府とは別にひとり歩きを始めておるというふうな論評もあるようですし、確かに私もそういうふうに思えるわけです。今申し上げたように非常にパターン化している部分もあるのですが、そういう中であっても、今回の動きといいましょうか特徴といいましょうか、これは日米貿易戦争開戦前夜であるというふうな言い方も伝えられているわけでありまして、非常にパターン化されている部分と、今回はよほどこういうふうに見なければならぬという部分といろいろあると思うのですね。大臣は、どのように受けとめていらっしゃるでしょうか。
  130. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカの議会の動きは、私も貿易摩擦を長い間担当しまして、それなりにいつも注目をしてきたわけですが、今回のアメリカの議会の動きは今までと違った非常な激しいものであるというか、むしろ感情的とも言える状況が出ておるのじゃないかと率直に思っております。特に、今回の議会の動きの特徴は、これまで日本の立場をそれなりに評価しておりました、また、日本努力をそれなりに理解もしておりましたアメリカの議会内におけるいわば対日理解グループというのが全部批判派に回ったといいますか、対日報復を行うべきというような論者に変わってしまったというふうな状況で、アメリカの上院でも九十二対ゼロというようなことで決議案が採択をされるということはこれまでにアメリカの議会になかったような空気でございます。  これはいろいろな原因があると思います。もちろん政府とは全く独立した議会でありますけれども、政府の動きも敏感に反映したと思いますし、あるいはまたアメリカの国内のいろいろな産業界等の動きだとか、あるいはまたアメリカの選挙区それぞれの動きだとか、そういうものがいろいろと組み合わさって、とにかく日本というのは幾ら話をしても解決がつかない、やはりそれなりの措置を講ずる以外にない、行動に出る以外にないという空気がアメリカの議会をほとんど制してしまったということではないかと思って、これは、そういう意味では、議会の空気は今までとはすっかり変わってしまったと言ってもいいのじゃないかと思うのです。そしてまた、これを抑える議会の指導者が今まであったのでしょうけれども、そういう指導的な立場の人もこれを抑えるような動きもしていないということで、このままいけば、対日制裁法案も非常な多数でもって上下両院において通る可能性があると心配をしております。
  131. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これまでにない要素が加わっているという御認識は当たっているだろうと私も思うのですね。大体今までのパターンで言うと、サミットと言えばその前に必ずこういう問題が出てくる。そして、アメリカ議会から火の手が上がって、これを行政府が受けて日米交渉に圧力をかけてくる。あとは防衛費問題なんかにくるというのが大体一つのパターンでありますけれども、今回、その中でもやはり違うというのは、いつもはレーガン政権に対立する民主党下院の保護主義者から火の手が上がる。今度は、自由貿易を唱えているはずの共和党上院のレーガンに近い筋から出てきている。これだけでも随分違うと思うのですね。こういう問題を含めて、アメリカ議会筋がひとり歩きを始めておるのだという点、そして、こういう議会の中での色分けの違いもあるのだなどなどを加えて、今大臣の言われた、どうもこれまでのパターンだけではなくて、これまでにない大変な問題、危機とでもいいましょうか、そういうものだというふうな御認識ではないかと私は受け取るのですが、そういうことでよろしいでしょうか、
  132. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私も同じような見解を持っております。確かにお話がありましたように、今アメリカの議会で旗振りをしているのが野党でなくてむしろ与党の共和党の議員だというところに、我々はこの動きを非常に危惧いたしておるわけでございます。それは今までのようなパターンで、確かにこれまでもサミットの前には議会の突き上げというのはありましたけれども、しかし、それはそれなりにサミットを控えての日米協力というような形の線が打ち出されるにつれて鎮静化しておったわけでありますが、今回の場合は、今のこの噴き上げた空気というのはなかなか容易ではない。日本が九日に対外経済対策を発表しますけれども、そういうことでまたアメリカの議会が鎮静化するかどうか。今ちょうどイースターの休暇に入っておりますから、実はあのままの勢いでいったらどうなるかという心配はありましたけれども、今は休暇でほとんど休んでおるということでございます。その辺でアメリカの議員の皆さんもいろいろと頭を冷やして、日本努力とかまた日米間の動きとか、そういうものを見てひとつ冷静に判断をしていただけばありがたい、こういうふうに思うわけです。
  133. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これまでのパターンとそれだけでないものがあって、今回は大変危機的であるという御認識は結構でありまして、そういう上に立って、今お話がありましたように明日政府の対策が発表される。これが効果を発揮しなければならないということが一つと、さあこれでうまくいくのかどうかという問題が二つここで問題になってくると思うのですね。その問題に入るのですが、さっき大臣のお話の中に、理解されている部分とされない部分があるというお話でありまして、これはじっくり伺わなければなりませんが、日本側の立場として、もとはと言ったら深いところになるのですが、当面のきっかけというのは、この一月の日米首脳会談、いわゆるロン・ヤス会談の中で中曽根総理が約束されたことを実行しないじゃないかという雰囲気がどうも向こうに具体的にあるのじゃないかという指摘についてはどうお考えでしょうか。
  134. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 一月の首脳会談におきまして、私も出席しておったわけですが、アメリカの四分野に分けてのこれからの交渉という大統領みずからの提案が行われまして、これを中曽根首相も受け入れたわけでありますが、その際に、とにかくこれらの分野についての話し合いもお互いに努力をして成果が上がるように持っていこう、また、日本の問題については私もみずからチェックすべきことはチェックしてひとつ最大の努力をしたい、こういうことを言われたわけで、私自身会談に参加しておりまして、これでもって四分野について全部やりますよとみずから胸をたたいて約束したということじゃなくて、やはりこの貿易問題は日本努力しなければならぬがアメリカ努力しなければならぬ、そういうことでお互いにこれまでの分野、セクターに分けてやるという交渉については、竹下・リーガン、大場・スプリンケルというあれを総理も言っておりましたけれども、この金融自由化の方式が非常に成果を上げたので、こういう方式でやることには賛成だ、しかしこれはお互いに努力しなければならぬ、こういうことを前提としておりますから、確かにその首脳会談以後、アメリカ日本に対しまして、この首脳会談で日本側は大きく前進するということを約束しているじゃないか、こういう言い方をして詰めてきたわけでありますし、またそれなりに日本もこたえて、通信機器の問題等は大変な、今までアメリカは十年かかるところを三年間でなし遂げるような努力をしたわけです。  それはそれなりにやったわけですが、そういうことで、あそこで約束したからすべてがここで大きくなった、火の手が消しようがなくなったということじゃなくて、問題は、恐らく首脳会談が行われなくても、今のこの黒字の状況、それからまたアメリカの輸出が彼らが考えておるほど日本に対して伸びない、あるいはまた日本の市場開放が改善改善と言いながらちっとも進んでない、こういううっせきした気持ちが相当アメリカの中にはあったわけですから。それが大統領選挙のときは抑えられておった、ところが今度はみずから中間選挙を控えておりますから、そういうところで我々も予想しておりましたが、出てきたことは間違いない。いずれにしても日米間でこの動きが高まってきたことは間違いないのじゃないか。  しかし、四分野においてある程度の成果を上げることができていれば、アメリカのその動きというものに対しても、日本がやったということになるわけですから、またそれなりの鎮静化の動きが出てくることを期待しておるわけでございます。しかし、これからの問題だと思っております。
  135. 上田哲

    ○上田(哲)委員 おっしゃることはよくわかるのです。わかるのですが、相手があって交渉するという範囲の問題でありますから、向こう側としては一月のロン・ヤス会談というものの約束が守られていないじゃないか、こういう言い方をしているというところがやはり一つ無視できないことになるのではないか。逆に言いますと、じゃ、そのロン・ヤス会談で約束をした部分というのが四分野だったとすれば、この四分野を確実に実行すればこの摩擦は解消するということになるのかどうかというところがひっかかってくるわけです。  三月二十九日と三十日にワシントンで在米総領事会議を開かれた。ここではちょっとそこまでの認識が薄かったのじゃないのかというふうに思うのですけれども、そのあたりを絡めて、具体的に言えば一月の、総理の責任を問うなんて言っているんじゃないのですが、交渉を円滑にさせる見通しを得るためには、一月の会談というところがやはり引き金になったのではあるまいか、少なくとも向こうはそう思っているのではないか、そしてそれに対してこちらの対応というのが少し甘かったというところがあるのではないか。その辺の御感想はいかがですか。
  136. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに四分野についてはアメリカは非常に期待していると思います。ですから、今四分野について努力を重ねて、九日に一応のめどといいますか、一応の四分野についての総括をすることになっておるわけであります。この中では、御承知のようにテレコム等については非常な努力の結果、ほとんどアメリカも満足するといいますか、評価するような状況になっておりますし、またエレクトロニクスとかあるいはまた医薬品、医療器具の交渉についても相当な前進を見ております。問題は木材製品が一つ大変難しい問題として残っておりますが、その他についてはアメリカ側の大体の期待にこたえるほどの努力日本はした、こういうふうに思っております。  しかし同時に、これは四分野だけでそれじゃ日米摩擦が解消するかというと、私はそうは思いません。今の日米の八百六十億ドル以上に上る、日本の貿易の四分の一を占めるこの膨大な貿易経済の交流、まあ投資なんかを含めたら大変なことになるわけですが、これは膨大な経済の交流がこれからも続いていくわけですから、そういう中には、膨大な経済の交流であるだけに、自由主義国家の一位と二位の国家間の貿易経済の交流ですから、どこかでやはりこれからだって摩擦的なものは出てくるであろうし、四分野が解決したとしてもまた新しい問題が生まれてくることは当然予想しなければならないと思います。そういう中で一番大事なのは、やはり日本自身も自由貿易体制というものがあって初めて日本の繁栄というものがあるわけですから、自由貿易体制というものを守っていくということが大事ではないかと思うし、アメリカ側からすれば、アメリカから見てアンフェアな姿というものが日本でなくなったということをアメリカ側に理解をさせることが必要じゃないか。  黒字の問題はアメリカとは議論になるわけですけれども、ただ、市場開放で解決されるわけじゃなくて、やはり為替の問題が大きな問題でありますから、このことはやはりアメリカ側も知ってもらわなければなりませんし、私もOECDの閣僚会議に十日出ていきますけれども、こうした点は、特に日本の黒字問題がクローズアップされて各国から批判を受けるということになるならば、日本の市場開放も問題であるかもしれないけれども、しかし、もっと根本的な問題は、やはり世界の為替、通貨の問題に大きな原因があるんじゃないかということを言わざるを得ない、こういうふうに思っております。
  137. 上田哲

    ○上田(哲)委員 方向としての御見解は私もよくわかります。  そこで、アメリカの議会からこうやって火の手が上がる、それが対日圧力になるということであれば、私は、この外交問題、対立てはなくて、ぜひ一致してひとつ摩擦解消に励んでもらいたいという基本的な立場でありますが、そういう意味アメリカに向かっては、アメリカの議会からこういう形で火の手が上がり、プレッシャーがかかるということになれば、日本の議会でもしっかりした見解というものを行政府からも伺い、我々の意見も述べておかなければならぬだろうと思うわけであります。  したがって、先ほどもお話が出ましたように、明日の政策発表に非常に大きな注目を向けているわけでありますが、その明日の発表を待つのでありますが、この対外経済政策の骨子は、市場開放に向けての行動計画、電気通信その他四分野のアメリカ向けの開放の処置、三番目に関税の引き下げなどその他の対策、この三つだというふうに理解してよろしいですか。
  138. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 大体以上、その中に例えば内需の振興であるとか対外的な経済協力の推進といった点も全体的な政策の中に含まれると思います、
  139. 上田哲

    ○上田(哲)委員 この中の行動計画であります。アクションプログラム。これは対象期間が三年である。これは経済の国際化を進めるに当たって基本的考え方を市場アクセスの改善のためにということで、いわゆる原則自由ということをしっかりうたわれるということでよろしいわけですね。
  140. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 基本的にはそういう方向で、まだ最終的な対策案が決まっているわけでございませんで、今相当まだ各省間の調整も残っておりますが、基本的にはそういう方向で取り組もうということでございます。原則として三年以内。しかし、アクションプログラムの策定はできるだけ早く、早急に行う、必ずしも三年以内にはこだわらない、そういうことであります。
  141. 上田哲

    ○上田(哲)委員 結構です。つまり、原則自由というのは、当たり前と言えば大変当たり前なことなので、四分野とかそうした問題を超える基本的な問題なんですが、保護貿易的な障壁とか制限とかを少しずつ排除するというんじゃなくて、つまり切り売り政策じゃなくて、原則の転換である、こういう点で非常に意味を持つと私は思うのです。こういうことであるとすると、原則自由ということは、すなわち日本の貿易政策の基本の転換である、方針の決定である、こういうふうに理解すべきだと思いますが、御認識、それでよろしいですか。
  142. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本が国際社会の中でこれからますます信頼される立場に立つためには原則自由という基本路線ははっきり打ち出していかざるを得ない、こういうふうに考えております。
  143. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。  そこで、そうなりますと、原則自由、例外制限、こういうことになるわけで、その例外制限というのはどういうものになるでありましょうか。
  144. 恩田宗

    ○恩田政府委員 これは対外経済問題諮問委員会が政府に対して明日出す答申の中に、報告の中に原則自由、例外制限ということを盛り込まれるであろうということになっておりまして、それは、できれば私どもも政府の方針として確定していただきたいと考えているわけでございますが、制限されるものがどのようなものかということは、その具体的な問題を個々に検討してみないとまだわからないというのが現在のところの状況ではないかと思います。しかし、できるだけ自由に、制限するものはできるだけ少なくというふうな考え方であろうかと思います。
  145. 上田哲

    ○上田(哲)委員 国家の安全とか環境保全とか国民生活の維持、安全にかかわるもの、大変抽象的には規定されているわけであります。しかし、国際的に十分に説明し得るもの、こういう大網がかけられているのでありますけれども、原則と例外という関係は、例外がめちゃくちゃに多くては話にならないわけですから、原則自由という大方針を、さっき外務大臣が宣明されたように打ち出されるということは非常に大きな転換だと私は思うが、それは打ち出せばそうなることでありますが、問題は、例外との関係が具体論になる。したがって、これは原則をぽんと花火のように打ち上げるだけではなくて、じゃ例外制限というものが具体的にどんなものかということを、これは六十一年度予算にすぐ連なってくるのでありますから、これを早くやっていただかなければならぬ、どんなプログラムで行動計画をおつくりになるのかというところでお尋ねいたします。
  146. 恩田宗

    ○恩田政府委員 実はまだ明日これが対外経済対策として閣僚会議で採択していただかないとどうなるかわからないわけでございますが、現在検討されているところということで、アクションプログラムを策定するようにという議論の内容を申し上げますと、先ほど大臣がお答えになりましたように、原則としては三年以内であるけれども、できるだけ早く、できれば今年早い時期に、こういうことでございまして、その具体的なアクションプログラムに盛られる内容によって、長くかかるものもあればあるいはできるだけ早く決めなければならぬものもあるか、こういうことになるのじゃないかと思います。
  147. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それでいいと思うのですが、ここまで来て、とにかくあした出してすぐ決まるわけだし、我々はその前日に大きな風圧の中で議論しているわけですから、できるだけ鮮明に出していただくといいと思うので、わかり切っていることですから確認をしますが、七月までに行動計画の骨格をつくって、年末の関税率審議会を考えて十一月中に最終計画を作成する、大体そういうふうに理解して間違いないのだと私は思うのですが、よろしいですか。
  148. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 七月ごろまでにアクションプログラムをつくる必要があるのじゃないか。概算要求の時期が八月でありまして、それから十二月には本予算の編成にかかるわけですし、それから関税率審議会等もありますから、そういう形でできるだけ早くアクションプログラムの骨格をつくる必要がある。  特に関税の問題につきましては、これはやはり十二月か一月の関税率審議会、年に一回開くということになっておりますし、それにしても大体関税の問題は、これは対米関係だけでなくてECの関係もありますし、特にASEANの関係を我々非常に注目して、注意しているわけでありまして、ASEANの経済閣僚会議も六月に行われる予定でございますから、関税の問題等につきましても非常に困難を伴うことは御承知のとおりでありますが、およその方向を七月ごろまでには固めなければならないのじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  149. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうすると、十一月中には大体最終計画ということでいいわけですね。
  150. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アクションプログラムということになりますと、三年以内ということですからなるべく早くということには言っておりますが、骨格は早く固めるとしても、具体的な成案ということになりますと、必ずしもその辺のところに焦点を合わせているわけじゃありませんが、しかし数字だけはやはり早くつくっておく必要があるのじゃないかというふうに考えるわけです。これは一概にアクションプログラムといいましてもなかなか大変な問題ですから、各省間の調整とかあるいはまたこれからの日本経済の動向とかあるいは財政状況とかあるいは経済の見通しとかそういうものを踏まえていかなければなりませんから、なかなかそう簡単にはいかない、非常に議論を要することだと思います。しかし、日本の政府としての強い意思を、とにかくつくっていくんだ、もう約束した以上はやらなければならぬ、そういう強い意思を内外に対して表明する、こういうことでございます。
  151. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大体お尋ねしたところが確認されているというふうに理解ができます。  そこで次に、当然、内需を拡大して経済成長率を高めて輸入を増進させよう、これは当たり前な道筋だと思うのですね。そういう具体論としては、例えば週休二日、労働時間の短縮、民間活力の導入、税制の見直しというようなことになると思うのですけれども、そのあたりはどうなんでしょうか。ぜひその辺が盛り込まれるべきだと思いますが……。
  152. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは私が政府全体を代表する立場にないのですけれど、しかし、今のような基本的な方向は諮問委員会の答申に含まれておるわけでありまして、この諮問委員会の答申を最大限尊重していくということが政府としての基本的な立場でございまして、そういうことを踏まえてこれからも議論をしていかなければならない、こういう課題だろうと思います。
  153. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そのとおりだと思うのですが、主要閣僚、対外責任者、そういう重い立場の大臣として、出される報告書、決定される政府案、これは確かにあすから以降の問題ではありますけれども、基本的な政策の構えとして、内需拡大ということの中に、例えば税制の見直しとか金利の引き下げとか労働時間の短縮とか、そうした問題を含めていくべきだという点についてはいかがですか。
  154. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まさにそういう点を含めて今お話の点が大体諮問委員会の答申に盛られておると思いますが、そういうものを十分踏まえて議論を詰めていかなければならない、こういうふうに思います。
  155. 上田哲

    ○上田(哲)委員 結構です。答申の中に含まれているはずだということであります。  そこで、内需を拡大するとしても、経企庁の試算でも、成長率を一%アップしても年間の輸入拡大が六億ドル程度だという数字になるわけでありまして、必ずしもそれで一件落着、全面解消、解決ということにはならないという根本の問題があるわけですね。  ちょっと横にずれるのですが、そういう中で、アメリカからの輸入拡大ではアラスカ原油問題がございますね。これは安全保障上の理由等々の問題で輸出禁止ということになっているのだけれども、商務省の省令改正の可能性であるとかアラスカ州知事からの書簡が総理に届いたとか、法律的に、法制的に可能になればこれはまたひとつ問題になるのじゃないかというふうにも言われておりますけれども、これはどんなような感触をお持ちでしょうか。
  156. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アラスカ石油を日本に輸出すべきだということは、私も実は通産大臣のときから強く主張しておりまして、アメリカとも何回か折衝した経緯があります。外務大臣になりましてからも引き続いてアメリカ政府に要請を繰り返したわけです。やはり日本の石油の輸入の安定化を図っていくためには、中東からも、九割とまではいかなくても、六割か七割そういうところからも入っているわけですから、そうした一つの地域だけに集中して日本の石油の需給関係を安定させるというわけにいきませんし、どうしても各地に多様化していくのが非常に必要でございます。そういう意味においても、ただ貿易の黒字を多少改善していくというだけではなくて、石油政策の上からも必要だということで私は主張してまいりましたけれども、なかなかアメリカは、大統領はそうした気持ちを持っておりますが、議会がなかなかこれを承知しないということであります。今も恐らく議会は承知するような状況、今の空気から言うとなかなかそういうところまで至らないと思いますが、今はとにかくアメリカのアラスカの知事の責任において輸出できる石油だけは輸出しようということで総理大臣に対する親書が来たわけで、私もそれを拝見をいたしました。しかしその量は、聞いてみますと大体五、六億ドルというぐらいのことだというふうに聞いております。大きなものではありませんけれども、しかしそういうところから突破口を開いていく必要があるんではないか、こういうふうに思っております。  具体的には輸入する民間の問題ですけれども、民間は今は石油がだぶついておりますから、民間の需給関係でどこまで乗り切れるか。価格の問題もありましょうし、質の問題もありましょうし、そういう点はあるようでありますが、全体としては我々は、アメリカのこうしたアラスカ石油の輸入については何とか民間側にひとつ努力してもらいたいものだ、こういうふうに思っておるわけであります。
  157. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大変前向きの御発言のようです。問題は、どうも油の質が悪いんじゃないかとかというような意見もございますね。ただ、法制上の問題は、クックインレット石油というのが商務省の省令改正で可能になるんだというような話も聞いております。そこらも含めた上で、大臣は今のようにできれば入れたいという前向きの御意見でございますか。
  158. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 詳細に承知しておりませんけれども、今の場合は、アラスカ州知事の権限においてできるあれは日本に出そうということで、これは日本の民間にもお願いしてできるだけこれを受け入れるということを我々としては念願をしておるわけでありますが、アラスカ州全体の石油を輸出するということに対しては、商務省というよりはむしろ議会の法律改正の問題にひっかかってきているのではないか、こういうふうに承知をしております。ところが今の議会はこういうふうに燃え盛っておるものですから、こうした問題でそれでは輸出がふえるということで、アメリカ安全保障の問題とかいろいろあるわけでしょうから、そう簡単に踏み切るというふうなことになるかどうか、なかなかこの辺は見通しが難しいと私は思っておるわけです。
  159. 上田哲

    ○上田(哲)委員 アメリカの石炭はどうですか。
  160. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 石炭につきましても、アメリカ側は非常に石炭の輸出、特に西部炭の輸出を日本に対して要請しておりますが、これもあくまでも民間ベースの問題で、アメリカの石炭の質の問題、それからコストが、西部海岸に持って出るまでの運賃等もありまして、どうもオーストラリアなんかと比べると競争力で問題があるようであります。この前オーストラリアに総理と一緒に参りましたときは、オーストラリアは石炭問題について非常に神経質になっておりまして、日本の政府がみずから先頭に立って対米重視ということでそうしたアメリカの石炭の輸入を思い切って拡大をする、その結果、オーストラリアにしわ寄せが行くんじゃないかということを非常に心配した発言がホーク首相からあったわけでございます。  我々としては、今の石炭の需給の状況が緩んでおるわけですし、それからアメリカ以外にも石炭を輸出しようという国々も多いわけですから、これを受ける側はあくまで民間で、民間の採算ベースに乗らなければなかなか輸入できないわけですから、政府としてこれに対して強制的にどうだこうだと言える筋合いにない。我々としては、アメリカ側が何とかみずから改善して、質の問題だとかあるいはまたコストの問題だとか、そういう点についてアメリカ側の輸出努力というものを非常に期待をいたしておるわけであります。民間側としてもアメリカとのつき合いということで、民間ベースにおける多少の配慮が行われておるようでありますが、しかし、採算を度外視してまでは買わないというのが民間の姿勢のようでございます。
  161. 上田哲

    ○上田(哲)委員 あわせて木材ですね。先ほども大臣に非常に強い要望が出ておりましたけれども、木材の問題についての御見解を。
  162. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 木材も、これは日本の農林漁業、特に林業、今非常に構造的にも、あるいはまた景気の面においても問題を抱えております合板だとか、あるいは木材製品といいましてもアメリカは紙パルプ製品等もこれに含めておるようでありますが、そうした業界の現在の不振の状況等から考えますと、そう簡単にアメリカの要求を受け入れることはできないということで、実は私も、アメリカの強い要求があるたびにこれは極めて困難であるということを主張し続けてまいったわけであります。世界貿易の自由化の中で、先ほど例外制限という言葉がありましたけれども、ガットなんかでもそうですが、農産物とかセーフガードといった問題はガットでもなかなか結論が出ていないということで、特に農産物については日本だけではなくてアメリカもECも保護政策をとっているわけですから、原則自由ということでこれを一概に律することはなかかできない、こういうふうに思っておるわけでありまして、そういう中で今日本も、木材製品についてアメリカの言うように関税を思い切って引き下げるというようなことはそう簡単にできるものではないということを主張し続けております。  しかしアメリカ側としましては、これだけの貿易の赤字、そして日本に対する輸出が思うように伸びない、こういうこともあって、木材製品あるいはその他農産物等については非常に強い姿勢をもって日本に当たってきておりまして、これがこれからどうなりますか、日本日本として努力していかなければなりません。しかし日本も、ただアメリカが言うからといって簡単に関税を下げたら、今度は日本の産業界とかあるいはまた農業界等に非常に甚大な影響が出てくるわけですから、国内対策をせずに簡単に下げるというわけにもいきませんし、そこのところを今政府は大変苦慮いたしまして、あしたの会議にどういう形で盛り込むかということがまさに今ペンディングになっているという状況でございます。
  163. 上田哲

    ○上田(哲)委員 明日の大方針の決定に先立って外務大臣からその骨子となる、あるいは基本となるところが宣明されたことは大変結構でありまして、原則自由という、当然であるにしても貿易政策の基本の転換を明らかにし、また木材その他の問題についての日本の国内の利益をどう守っていくかという具体的な方針、展望が出てきたということはそれで結構だと思うのですが、問題は、先ほどもお話があったように、この基本の貿易摩擦には去年一年間で三百六十八億ドルという大変なうずたかい数字があるわけでありますから、四分野の完全開放というようなことを仮にしても、このことによって解決しないというところに問題があるわけですね。例えば今回こういうことで一定の了解点に達したとしても、同じような形で三百六十八億ドルというふうな膨大なものは大きく減らないのだから、減らない以上は次に幾つかの分野が浮かび上がってくるということにすぎないわけでありますし、そこのところを根本的に考えなければならない。  これは確認するまでもないわけですが、こうした三百六十八億ドルという大きな山を今回のことだけで完全解決できないのだという認識一つ。しからばどこに問題があるかということになれば、当然ドル高、高金利という問題、アメリカ財政赤字というところにつながっていく。ここのところをどうするか、どうするかと言っては言葉としては大変大ざっぱな言い方でありますけれども、問題はそこだという点ですね。このままではこれだけで解決するということにはなりにくいだろう、したがって問題はそこだ。この二つの問題について御認識を確認しておきたいと思うのです。
  164. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ちょっとその前に原則自由、例外制限という問題について、これは諮問委員会の答申でははっきりうたっておりまして、政府に対してそういう方向で対処するようにということを求めております。政府としてもそういう趣旨を踏まえて答申を最大限尊重するという形で対策をつくるわけでございまして、対策の中に原則自由というものを具体的に文字で盛り込むということについてはまだ決まっておりません。しかし、基本的には原則は自由……(上田(哲)委員「役人の言うことを聞かなくていいですよ」と呼ぶ)いや、そういうことなんですよ、まだあした開くわけですから。  それから、確かに仮にこれで四分野でうまくいったとしてもそう多くの輸入が増大するということは、アメリカの言うように百億ドルなんということはちょっと困難ではないか。この辺のところはどこまでいけるか、やはりアメリカも売り込む努力をしなければできないわけでありますし、これからの日米間の努力によるのじゃないかと私は思っております。  黒字の問題は、これもOECD等でいろいろとほかの先進国から日本に注文をつけようということでしょう。しかし、彼らも自由貿易というものは基本でなければならぬと思っているでしょうし、自由貿易を進める以上は競争力によって決まっていくわけですから、その競争力による自由な競争ができないという貿易障害があるならばこれは排除しなければならないということであって、決してそうした自由貿易の本体、本旨を覆すようなことであってはならない。ですから、日本の市場が閉鎖的であるから日本の黒字がここまでふえたという指摘は我々としては絶対に納得ができないわけです。市場開放をもっとやれということなら我々としても努力しますが、しかし、貿易の里一字の実態についてはもっと大きな原因があるということをその際は我々としては何としても主張せざるを得ないわけでございます。その点について議論がこれから出てくみと思いますが、日本の立場を明確にしたいと考えております。
  165. 上田哲

    ○上田(哲)委員 議会が非常に燃えている、議会の中も今までと様相が違う。しかし、例えばアメリカの言論界は非常に冷静なわけですね。ニューヨーク・タイムズにしてもワシントン・ポストその他にしても、悪いのは日本だとは言い切れない、それは根本的にアメリカ財政赤字、それから高金利でありドル高であるという問題はちゃんと指摘しているわけです。そういう点では、今おっしゃるように日本は言うべきことはちゃんと言わなければならない。だから、向こうが求めるものは数字とか勝ち負けという問題ではなくて市場開放、自由競争がしっかりできればいいというところであるなら、この話はすっきりいけると思うのです。そういう展望をお持ちであるのか。つまり、そういう立場で議論をしていけばいいじゃないか、大丈夫じゃないかということになるのかどうか、その辺の方針なり御決意なりですね。
  166. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 基本的にはフェアな貿易のアクセスが確保されることが原則であろうと思いますし、日本はこの点を特に強く訴え、日本努力を説明しなければならぬと思っております。  しかし、自由貿易だからといって無制限にどしゃ降り的な輸出をするということになれば、世界経済に与える影響も深刻に出てくるわけですから、その辺は節度もなければならぬでしょう。また、黒字問題も為替の問題からとらえるとともに、そういった黒字を控えて日本の国際的な協力といった面も強調しておく、あるいは資本なんかでも日本協力、そうした日本の輸出とか産業協力、経済協力あるいはODAも含めた全体の中で日本を正当に見てもらいたい。  その中で一番大事なのは、彼らが不公平だと言っている日本の市場のアクセスという問題、日本の市場開放の問題を積極的にやっておることを、今までもやってきましたが、これからもやっていくのだということをこれからのアクションプログラムの中ではっきりしていくことであろうと思っております。  アメリカの議会なんかでも、今まで六度やりましたが、その六度やった日本の市場開放措置が全く役に立たなかった、何も成果が上がらなかったと言っておりますけれども、私から言わせれば、恐らくこれほどまでにドル高にならないで円とドルの関係がもっと正常な姿であったならば、日本のこれまでの貿易改善措置は相当生きておったのではないか、余りにもアメリカ経済の上昇のスピードが高い、その中でドル高がどんどん強くなったということで今までの努力が吹き消されてしまったというところにあるので、今までの日本努力が全く無意味であった、日本はやった、やったと言うけれども何もやらなかったという議論は到底納得できないわけであります。
  167. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大臣の後段の部分は私は全く同意見で賛成です。そこなんです。  ただ、前段の部分で若干の修正が必要だと思うのは、過去六回のものが役に立たなかったことは事実なんです。今回出てくるものも何も新味はないです。今、隣から一生懸命になって、余り言い過ぎないようにと知恵をつける部分があるようだけれども、少なくとも総理をねらう大臣が、特に対米関係の責任者として、あした出てくるものを原則自由なんということがしっかり方針としてあるべきだと言われるのは当然のことなんでありまして、まだ手続上の問題がなんということを、どうか役人の言うことなんか聞かないで堂々とやってもらいたい。  その堂々とやってもらいたいということの中に、おっしゃるように明らかに高金利、ドル高、アメリカは強いアメリカという方針の中にはドル高、高金利――ドル高で困るものは何もないのです。消費は上がるのだし、ただ、この後はそのデフレ効果が出てくるわけですからそう簡単にはいかなくなるだろうということはもう一つあるけれども、これはきょうの議論にはいたしませんが、確かに向こうの責任なんだけれども、六回やったものが効果を発揮していないことは認めざるを得ないし、そして今度出てくるものも、このことによってトラスチックな効果は図りがたい、期しがたいことははっきりしているのです。この点はお認めになっているわけですから、そうすると、私は日本が堂々として開放すべき市場はどんどん開放し、自由貿易主義を守っていくのだという形の中で、もちろん国内産業を守るなんということは当たり前のことですが、そういう形の中で言うべきことを言うというところが今抜けているところの問題の解決はない。  十四日にシュルツ国務長官とお会いになるわけですが、今大臣も言われ私も賛成したそうした見解、そこをアメリカは考えなければならぬ。具体的に財政赤字を減らす。こんなことは経済政策上幾らでも手はあるわけでありまして、私どもは軍備の問題、その他の問題を申し上げたいが、そういう各論に今入ることをあえて避けますけれども、根本的に財政赤字を転換し、そして高金利、ドル高の体制というものを変えていくのでなければ、日本が幾ら努力してもしようがないのだから、そこに向かって努力をしなさいということを十四日のシュルツ会談ですっきり言っていただくということを私は求めておきたいと思います。
  168. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 シュルツ国務長官との会談では、経済問題だけでなくて政治問題ももちろん出てくるわけですが、経済問題については特に二国間の問題として日本の九日の経済対策を十分説明して、また四分野における日本努力というものも説明してアメリカ側の理解を求める、日本がこんなにベストを尽くしておる、これからも尽くそうという日本のこれほどの決意を評価してもらいたいと思います。同時にまた、アメリカ側に対しても、こういう日本に対する注文はわかるけれども、しかし根本的な問題については、やはり日本だけに問題があるのじゃなくてアメリカにも大きな問題があるのじゃないかということを率直に指摘をしなければならぬと思いますし、同時に議会のああした動きがあります。こうした一種の感情的な動きで日米関係の基本を崩してはならない、我々は冷静にこれらの問題に対処すべきだということを大いに強調したい、こういうふうに思っています。
  169. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大いにそこを強調していただきたい。アメリカ議会に対する日本議会の見解も、そういう部分をしっかり支えておるというところは踏まえていただき、御発言もいただきたい。  こういう質問はちょっと無理がとも思うのだが、貿易戦争という言葉がささやかれるものは、輸入課徴金みたいなそうした制裁措置に出てくる次元のことを言うのだろうと思います。これは避けなければならない。両国にとっても非常に不幸なことになる。そういう立場でおやりになるシュルツ国務長官との話し合いがそうした貿易戦争というものを防ぐ大きな意味合いがある。また、そうしてみせるとでもいいましょうか、その辺の御展望や御決意を承っておきたいのです。
  170. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まず、日本がこれほど努力しております四分野の成果に対してアメリカ政府、議会がどういうふうに評価するかということ、それから九日の経済開放対策について、これまたアメリカ政府あるいは議会がどういうふうに評価するかということがこれからのアメリカ政府、議会の対日政策の大きな流れを決めると私は思っております。イースター明けに、法律は審議しないで抑えております。これは上下両院のリーダーが様子を見るということを言っておりますから、そういう状況にあるわけですが、しかしこの評価次第によってイースター明けがどうなるかということは我々としてもまだ心配は残っておるわけです。しかし、これだけの日本努力というものはぜひともアメリカの政府、議会に評価してもらわなければならぬし、また私もシュルツさんと会って――シュルツ国務長官アメリカ政府の中では非常に冷静に物を見ておる人だと思います。そうして、アメリカの議会の行き過ぎというものを大変憂えておる立場の人であろうと思います。何とかこの火を消して、そしてもっと具体的にアメリカ日本努力を求めていこう、こういう人でありますから、シュルツさんともその点について、日本側がどういう形でこれからやるべきか、あるいはアメリカに対しても率直にアメリカ努力も、我々としてもどういう点を期待するかといったようなことも話し合って、何とか十五、六日に議会が再開される中で日本努力が認められて、評価されて、そうして貿易摩擦が貿易戦争になって課徴金法案が国会で通る、恐らく大統領はこれに拒否権を発動するとしても、これはいわば表決の票数の問題もあるわけですから、そういうことにならないように我々としてもひとつ力を尽くしてまいりたい、こういうふうに思います。
  171. 上田哲

    ○上田(哲)委員 問題をちょっと変えてお伺いいたします。  SDIでありますが、アメリカが同盟関係国を相手に例の六十日期限で参加要請を申し入れてきた。これについては非常にショッキングなことでありまして、こうなってくると、理解と支持という言葉の違いもまた微妙になってくるのだろうと思うのであります。私はこんなものには参加すべきではないという立場を根本的に持っておりますが、理解という総理のレーガン大統領に表明された見解の中では、こういう研究体制に参加するなどということはできないものだと思っておるのですが、一体その理解というものの中にはこういうものは含まれているのですか。
  172. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 理解というのは、レーガン大統領のSDIについての基本的な説明があって、この説明に対して理解をしたということであって、SDIそのものの最終的な評価といいますか判断について理解をした、そこまで言っていないわけですね。ですから、今の我々としてはそこまでわかっていないわけですから、大統領の説明であるし、そうしてSDIが非核兵器である、防御兵器である、あるいは弾道ミサイルを無力化し、最終的には核の廃絶につながっていくのだ、こういう簡単な説明ですね。それに対して理解を示したわけであって、最終的にこれからどうなっていく、こうなっていくということについては、日本も知識がないわけですから情報を得なければわかりません。あるいは協議してもらいたいということを総理大臣から説明をいたしました。したがって、この理解ということの中にはSDIに対する最終判断というものは含まれてないということであります。
  173. 上田哲

    ○上田(哲)委員 アメリカ側の要請を受けるか受けないかはこれから第一歩である、白紙である、白紙の立場から検討することである、こういうことになりますね。もしそこで踏み込むというようなことがあるとしても、それは八三年十一月の武器技術供与の取り決めの範囲から出るものではない、逆に言うと、やるとすればそこしかないということになりますか。
  174. 栗山尚一

    栗山政府委員 アメリカが要求するものがいわゆる日本の定義で申します武器技術というものであれば、おっしゃるとおりでございます。
  175. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ちょっと意味がわからない。私が聞いているのは、もしアメリカのオファーを受けるということになるとすれば、受けるチャンネルというか範囲はこの武器技術取り決めしかないということ、やるとすればこれを通してやることになるのですかということです。
  176. 栗山尚一

    栗山政府委員 SDIの関連でどういう技術をアメリカ日本に対して期待するかということは今全くわかりませんので、私からはあくまでも一般的な形でしか御答弁できないわけでございますが、先ほど申し上げましたことは、一般的に日本の対外技術供与の分類としまして、いわゆる武器専用のための武器技術と武器にも使われるけれども一般民生用にも使われる汎用技術というものがあって、武器技術供与の取り決めというのは御案内のように武器技術に該当するものについての処理の枠組みをつくったものでございまして、一般的な先ほど申しました汎用技術については原則として規制を受けないというのが現在の日本の国内の制度でございますから、そのような意味におきましては、汎用技術に該当するものについては現行体制のままで原則として格別の規制はない、武器技術に該当するものであれば、委員指摘の枠組みの中でケース・バイ・ケースで処理をする、こういうことでございます。
  177. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。そうすると、武器技術供与の取り決めにかかわらずでもSDIの技術協力をする道もあるという解釈ですか。
  178. 栗山尚一

    栗山政府委員 先ほどの御答弁で申し上げましたことの繰り返してございますが、アメリカが具体的に今どういう技術に関心があるかということは、今後時間をかけてアメリカから聞いてみなければわからないものでございますので、あくまでも一般論としてお答えしたわけでございますが、汎用技術については現行法令上、原則的には格別の規制はございません。アメリカが個々の企業と話をして、仮に商業ベースで話がつくものであれば、そういうものについては技術の対外供与が行われる、これが現行の我が国の制度でございますので、その制度による限り、何らかの形で武器にも使われ得る民生用の技術がアメリカに移転されるという可能性は、制度としては道が開けている、こういうことでございます。
  179. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大変重大なことを言われましたね。商業ベースということを言われた。汎用品、汎用技術であれば当然商業ベースであり得る、こういうことですね。
  180. 栗山尚一

    栗山政府委員 私が申し上げましたことはあくまでも一般的、理論的な制度の問題として申し上げたわけでございます。
  181. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大臣にちょっと伺うのですが、アメリカから、ワインバーガーさんから来ているのは政府へ来ているのですね。民間企業へ来ているわけじゃないのです。政府へ来ているということは、政府間の問題というふうに理解するのが当然なんだが、今の話を聞くと、汎用品であるなら政府が知らないところで商業ベースで行われることもあり得るということになってしまうのですか。この辺は大変おかしな話なんですが、大臣いかがですか。
  182. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃるようにアメリカから日本政府に対して来ているわけですから、日本政府としてはSDIというものに関するアメリカの要請に対してどういうふうに答えるかということを決めていくわけです。ただ、一般の汎用品については、今局長答弁しましたように、これは一般的に言えば武器でもありませんし、また汎用技術は武器技術でもないわけですから、今でもアメリカに輸出されているわけでしょうし、それがアメリカ武器に使われるということも恐らくあり得るわけです。制度としてはそれはそのとおりでございます。ただ重大なことは、アメリカ政府が日本政府にSDIについての協力を求めてきた、これに対してどうするかということは政府自体の大きな決定にかかることであろう、こういうふうに思います。
  183. 上田哲

    ○上田(哲)委員 SDIというのは世界注視の、日本国民も核とのかかわりだけでなくても大変注目している兵器ですね。これをアメリカが六十日以内にやるかやらぬかはっきりしろと言ってくるのも外交手法としては乱暴だと私は思っているけれども、それを、場合によっては汎用品というカテゴリーにおいてなら商業ベースでやることもあるだろうということは、私はこれは大変なことだと思うのですよ。これはひとつ、そういうものでなくて、政府が国民にちゃんと責任を負える範囲というのはどういうことなんだということを決めていただくという解釈、その解釈を後に向かってやってください。  大臣、問題は、ジュネーブであの問題が出て、日本政府に届いたのは二十八日の夕方ですか、大変遅いと思うのですね。同盟国云々という形からするとどうもパターンが少しおかしいような気もする。これが一つひっかかっています。いずれにしても六十日の期限を切ってイエスかノーかはっきりしろみたいな形は外交手法として大変荒っぽいものであるという印象を私は持っていますが、大臣はどうなのかということと、それから、一月の会談で総理が理解を示されたときについている話は、まだよくわからぬからひとつ情報を伝えてくれ、こういうことになっていたはずなんです。どうも情報を伝えるにしては、来るか来ないかはっきりせよというやり方というのは、総理がコミットしたニュアンスや範囲とは違うと思うのですね。私はこれは非常にノーマルじゃないと思うのですが、その辺はいかがですか。
  184. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 率直に言いますと私もひっかかっています。私の方は、政府としては理解を示したということでありまして、それ以上のことを言っているわけでは決してありません。ですから、これからのSDIの研究の段階、あるいはまた実験の段階、そういう中でひとつ情報が欲しい、それでないと日本は何も判断できない、あるいはまた協議する場合もあり得るでしょう、そのときは協議しましょうということで、アメリカの大統領もこれを認めているわけですから、今の日本の基本的な態度としてはそこまでですね。それ以上ではないわけでございます。  これは日米の首脳間の話し合いですから、アメリカの大統領も十分承知しておられる、そういう中でああいう手紙が来ましたけれども、これはいろいろな判断があると思います。NATO諸国に出された、日本アメリカにとっては同盟国である、日本もSDIに対して理解を示している、だから日本にも一緒に出そうということで出されたのかもしれません。ですから、ワインバーガーさんはそう深く考えて出されたのではなくて、日本も同盟国の一環として出しておこうということで出されたのかもしれません。しかし、受け取った日本としましては、私としましては、シュルツさんからいただいたわけではなくてワインバーガーさんからいただいたわけですから、これはどういうことかな、六十日と今期限をつけられてもちょっと困ったなという気持ちが出るのは、これは突然のことですから当たり前だと思うのです。ですから私も、六十日と言われてもそう簡単にいきませんよということは言っているわけで、その点についてはその後ワインバーガーさんも別に六十日にこだわるわけではありませんということを言っておられますから、乱そう今こだわっているわけではありませんけれども、当初はけげんな気持ちを持ったことは偽らざる心境でございます。  しかし、それはそれとして、とにかくワインバーガーさんから手紙が来たものですから、最近手紙を出しまして、よく出していただきましてそれは感謝します、しかし、日本としてもこの問題については十分勉強したいので、ひとつ技術者を日本に送っていただきたい、こういうことを回答いたしました。いわゆる六十日以内の回答ではないわけですが、技術者派遣を求める回答をいたしました。近くアメリカから、SDIの恐らく最高レベルの専門家が日本にやってくる、こういうことになっておりますので、十分話を聞きたいと思っております。
  185. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そのけげんな、ひっかかったところをシュルツ会談でしっかり解明されますか。
  186. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 別にそれほど解明とかなんとかいう必要もないのではないかと思います。日本側のそうした気持ちはいろいろな面で向こう側には通じているのではないかと思っておりますし、一々言挙げする必要はない。シュルツさんとの会談で果たしてSDIの問題が出るかどうか、これも今のところは全くわかっていない、こういう状況であります。
  187. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大臣もひっかかられたというところは国民はもっと大きくひっかかっているわけですね。私どもはもう最大にひっかかっているわけですけれども、それはそれとして、日米関係という側面から考えてやはりちょっとノーマルではないという点は、せっかく外務大臣として国務長官に会われるのですから、そしてまた特にこの申し出に対しては、今サッチャーもちょっと後退ぎみだし、フランスも反対、西ドイツも消極的、こういうことになっておるわけです。シュルツさんとの会談の中でどういう形でもいいからぜひ出していただいて、アメリカともう少し滑らかなやりとりといいましょうか、そういうものができるようにしていただきたいと思うのです。
  188. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 六十日ということにはちょっとけげんな気持ちを持ったのですが、しかし日米間では滑らかにやっておりますから、その辺は御心配は要らないと思います。
  189. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私どもはやはりこれは断るべきだということをはっきり申し上げておくわけで、立場はどうおありになるか知りませんけれども、ぜひそうした外交交渉の場というものを十分にお使いをいただきたいと思うのです。  そこで、六十日ということがどれほど限定的なものであるかという認識の問題もありますが、今後この問題に関するアメリカ側の申し入れに対してどういう段取りで向かっていくのか、六十日以内にはどういう段取りをお考えになるのかということをお伺いしたいのです。
  190. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 こちらでまず専門家の意見を十分聞きまして、そしてもちろん外務省防衛庁関係省庁、政府部内で十分相談をいたしまして、それからどうするこうするということを判断をしていく、その間に、日本の基本的な立場もありますし、あるいはまた国際情勢、そういう中でSDIというものがどういうふうに動いていくのか、そういうことも見きわめなければなりませんし、また六十日といいましても、SDI構想そのものが非常に長期的だ、二十一世紀の構想だというふうにも聞いておりますし、その辺のところもいろいろと聞いているうちには一つの見通しといいますか判断もできてくるのじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  191. 上田哲

    ○上田(哲)委員 六十日にはこだわりませんか。
  192. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 六十日はこちらが約束したわけではありませんから、こだわりません。
  193. 上田哲

    ○上田(哲)委員 最後に、ニュージーランドのロンギ首相が核問題について頑張っているわけですけれども、これについての評価はともかくといたしまして、多分違うでしょうけれどもアメリカのこれに対する対応が、例えば二月五日のアメリカ下院軍事委員会でのワインバーガー証言等々からきて、非常にとがってきている。私が注目しなければならぬと思いますのは、アメリカ艦艇に核を搭載しているかどうかを全く明らかにしないということを再強調しているわけです。そして、それを強調するゆえにニュージーランドの港にはアメリカの艦艇は入らないぞという言い方になっておる、さらに侵略時にもアメリカ側からの救援は期待できないぞという恫喝的な表現も出ていると思うのです。これを裏返しますと、アメリカ側の立場からいっても、核の有無を言われるのであれば、アメリカの艦艇は一隻といえども差し向けるわけにはいかぬのだということがはっきりしてきたと思います、ニュージーランドとANZUSの問題にとりあえず限って言うのですけれども、その範囲であって、やはりアメリカアメリカの全艦艇の核の有無を明らかにしないということである以上、ニュージーランドとの軍事関係というのは持てないということになる。こういうふうに理解するのですが。
  194. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 その後のアメリカとニュージーランドの関係を見ておりますと、私も一時はどうなることかと心配をしておったわけですけれどもアメリカも全体的に見れば冷静に対応しておるというふうに私は見ております。例えばANZUSを破棄するとか、そういうことは全く考えてない、ニュージーランドとの間の同盟関係というものも基本的には維持していくという方針を貫いておるということでありますから、いろいろと個々では波風が立つ問題もあるでしょうが、全体的には今申し上げましたようなこれまでのアメリカとニュージーランドの大きな同盟関係の枠組みはこれからも維持していこうというふうに見受けられまして、そういう意味では、今までアメリカはそういうときはいつもがんと出ていたわけですけれども、その点で落ちついた、非常に現実的な対応をするようになってきたのだな、こういうふうな印象を私は持っております。
  195. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もしそういう態度をアメリカ側に持たせたのだとすれば、それはニュージーランドの断固たる姿勢がそうさせたのだと私は理解するわけです。  そこで、日本の場合ですけれども、そうであれば、一切明らかにしないのだということをこうまで確認されていれば、事前協議制というのは、幾らこの制度を活用するといってもこの制度自体が無意味であるということをこの問題は明証をしたということになりませんか。
  196. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 事前協議制度というのは実にすばらしい制度だと私は思っております。これがあるから非核三原則が守っていかれるわけでありまして、そしてこのことによって日米安保条約というものが日本の平和と安全を確保するという意味において極めて決定的な役割を果たすことになるということで、その点について御意見が違いますが、事前協議制がなかったら恐らくニュージーランドのような形になっていくでしょうが、これがあるからしっかり歯どめができて日本は非常に安全だ、こういうふうに思っております。
  197. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは後の議論にいたしましょう、あと一、二問しかできませんから。  アメリカ側のかなりはっきりした情報として、例のGNPの一%を突破することをこの一月のロン・ヤス会談で総理がレーガン大統領に伝えておる、こういう話がありますけれども、これはいかがですか。
  198. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いや、そういう話はありません。
  199. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは時間のあるときにまたじっくり詰めたいと思います。  これはいよいよ最後ですが、三月の末に外交文書の八回目の公開がありました。これは行政協定その他が結ばれたときの、二十六年から三年間の外交活動ということで、非常に重要な節目であったのでありますが、何とこの部分がすっぽり抜けておる。これは日本の外交姿勢として非常に間違っているんだろうと私は思うのですね。かつては膨大なものだったものが、十万ページあったものが今回は二万ページにすぎない。大事なところは全部抜かしているということであれば、外交は三十年目にはそれを明らかにして後世の教訓とするということをそもそも抑えているということになるだろうと思います。これは外交姿勢として非常に清明を欠くことだと私は思います。三十年たったならば後世の批判に十分に応ずるという立場での外交文書の公開について、大臣、こういう目、鼻、耳を全部ふさぐという形じゃない態度を今後おとりになるように私は強く求めておきたいと思うのですが、そのお約束をしていただきたいと思います。
  200. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 外交記録の公開につきましては、国民もまた非常に関心を持っていると私どもも思います。そういう中で、この公開は、三十年たったら広く公開するということを明らかにしておりますし、これは基本的な原則であろうと思うわけです。ただ、その公開によりまして国の重大な利益が害される場合及び個人の利益が害される場合は、当該記録は例外として解除は行わず、公開はしない、こういうことにいたしておるわけでございます。これは日本自身の立場から見ましても当然なことではないかと思います。  国の重大な利益が害される場合と言えば、例えば国の安全が害されるか、そのおそれがある場合、あるいは相手国との信頼関係が損なわれるか、そのおそれがある場合、あるいは交渉上重大な不利益をこうむるか、そのおそれがある場合が含まれている、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。  今回公開した記録は確かに三十年前の記録ですが、その間ちょうど日本が独立期に入った前後ですから外交文書も大変膨大なものになっておるわけで、またその中で非常に重要な、行政協定あるいは日華条約とか、いろいろのものがあるわけでございます。この点は国民も非常に関心を持たれていることは当然であろうと思うわけでありますが、日米行政協定及び日華平和条約につきましては今回の審査の対象となっておったわけですが、まだ審査作業が終わっていないということで今回の公開には含まれてないわけであります。その点を御指摘だろうと思いますけれども、私は、その中でやはり出せるものは出すべきじゃないか、審査作業が進むにつれて出せるものが出てくると思いますが、その際は出すべきじゃないか、例外に及ばない限りにおいては出すべきだ、こういうふうに言っているわけであります。
  201. 上田哲

    ○上田(哲)委員 アメリカではこの行政協定を出しているのですよ。アメリカが出していて日本が出せないというのはおかしいから、今最後のお言葉を大事にしますから、ぜひひとつ積極的に出す方向でやっていただきたいということを要望し、最後に、シュルツ長官との会談を貿易摩擦問題の節目として私は非常に注視をいたします。アメリカ議会に対する日本議会の意向も十分お含みおきの上でしっかり臨んでいただくことを申し上げて、御決意をいただいて終わりたいと思います。
  202. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 シュルツ国務長官との会談では、日本の立場はしっかり踏まえて主張すべきは主張してまいりたいと思っております。何とかこの日米間の貿易摩擦を、一応この辺で燃え盛った火を消すという方向で処理したいものだ、こういうふうに思っております。また、アメリカの議会の動きもそれなりに今表に出ておるわけですが、日本にも議会があるわけですから、アメリカの議会の動きが出れば日本の議会の動きも率直に伝えたいと思います。
  203. 上田哲

    ○上田(哲)委員 終わります。
  204. 森下元晴

    森下委員長 山田英介君。
  205. 山田英介

    山田委員 私は、対米武器技術供与とSDIのかかわりで何点か質問をさせていただきたいと思っております。  まず、我が国の憲法の精神あるいは宇宙の利用というのは平和目的に限るという国会決議あるいはまた非核三原則など我が国の平和諸原則、国是、あるいはまた日米安全保障条約あるいは日米相互防衛援助協定の枠組みの中で五十八年に交換公文、覚書に署名をされたわけでありますが、その武器技術供与の趣旨などから見て、私は、SDIに関連をした技術というものは出すべきではないし、ましてやSDIの共同研究に我が国として参加の意思表示はすべきではないという立場から質問をさせていただくわけでございます。  冒頭お伺いいたしたいことは、上田委員の御質問にもありましたけれども、まず外務大臣は今月の十一日、十二日、パリで開催をされるOECDの閣僚理事会に日本政府を代表して出席をなさると伺っております。このOECDの閣僚理事会というのは、一つにはサミットに向けての西側の意見調整の場ともなっておるわけでございます。それから、このOECD閣僚理事会を終えまして、十三、十四の二日間アメリカを訪ねましてシュルツ長官と会談をなさる予定だ、このように承知をしておるわけでございます。私はいずれの会議にしても会談にしても、SDI関係お話が出るのではないだろうかというふうに予想しているわけでありますが、仮に出た場合に外務大臣におかれてはどのようなスタンスで臨まれるのか、どのような対応をなさるのか。これは外務省の現時点におけるSDI研究参加に対する御方針ということになろうかと思いますが、伺っておきたいと思います。
  206. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 OECDの閣僚理事会は経済問題が中心で、開発途上国に対する先進国側の努力あるいはまた貿易の自由化をいかに推進するか、ニューラウンドの問題、そういう点が中心になると思いまして、SDIといったような政治的な問題はもちろんOECDの閣僚理事会では話は出ないということははっきりしていると思います。ただいろいろと閣僚間で接触がありますから、そういう中でどういう形で出てくるか、雑談の中で出てくるか、その可能性は決して否定されるものではないと思います。  それから日米外相会談におきましても、これはまだ議題もはっきり決まっておりません。日米経済摩擦の問題ははっきりこれは中心になるわけでしょうが、その他の議題は決まっておりません。これが出るか出ないか、これからの状況次第じゃないだろうか、こういうふうに思っております。  いずれにいたしましても、SDIは非常に長期的な構想でありますし、日本としても、ただ大統領の説明を聞いて、SDIのそうした構想の趣旨が非核であり防御的なものであり、そして核の廃絶につながるというものであるならばこれは理解をしますという程度でありまして、それ以上の過程においては情報も得なければなりませんしあるいはまた協議もしなければならぬということで、もちろん日本政府としての最終的な判断を下しておらないわけであります。当面我々がやらなければならないのは、ワインバーガー長官の手紙にありましたように、専門家の意見を聞くことをまずやろうということで、今その準備を進めておる段階であります。
  207. 山田英介

    山田委員 OECD閣僚理事会等そういう機会を通じまして、例えばアメリカからSDIの最高権威、軍事専門家といいますか、そういう方々を招聘していろいろと全貌について知るという方針はそのとおりだろうと思いますが、アメリカのそういうSDIは必要であるあるいは極めて有効であるというような立場の方々だけの意見を聞くのではなくて、あらゆる機会をとらえて、外務大臣におかれては、例えば我が国と同じように非核経済大国といいますか、西ドイツとか、あるいはまた昨年の九月でございましたか、国連総会に外務大臣が御出席の折に中国の呉学謙外相と会談をなされまして、ソ連の極東配備SS20の削減問題などは今後ひとつ緊密に連携をとっていろいろと情報交換とか話し合いをしていこうではないかというような点で合意を見たとされているわけでありますが、そのように米ソにSDIが、仮に二十一世紀の話で先の話でございますが、それが配備されたなんということになれば、あるいはまたそういう極めて実現可能性の強まった時点において独自の核体系といいますか、核兵器というものを所有しておる中国の存在、出方あるいはその受けとめ方というのは極めて重大な問題、焦点になってくるであろうというような点から、SS20の削減問題だけではなくて、中国の外相ともSDIのこの問題にまで情報交換なり話し合いなりの枠を広げましていろいろと意見交換などをしていくことも必要であろうかと私は思っておりますが、この点大臣いかがでしょうか。
  208. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 SDIに対する政府の最終判断は日本国としての非常に重要な決定でございますから、ただアメリカから話を聞くというだけではなくて、世界のSDIをめぐる各国のいろいろの動きであるとかあるいは各国のこれに対する反応であるとか、またその他各方面のSDIに関する説明、情報等も十分収集いたしまして、その上に立って行わなければならない、こういうふうに思います。
  209. 山田英介

    山田委員 一部伝えられるところによりますと、現時点における外務省のSDI研究参加問題につきましてこんなふうに言われております。SDI専門家を日本に招き、戦略技術を詳細に聞く、それからこれを踏まえ、外務、通産、防衛、科学技術庁の各省を中心協力可能な技術分野があるかどうかを検討する、こういうような言い方をされておりますけれども、そういうことでございますか。
  210. 栗山尚一

    栗山政府委員 関係政府部内での検討は専門家の派遣を待たずとも始めるつもりにしておりますが、いずれにしましても、先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおりに、私どもの知識は文献等から得ている知識の範囲を出ませんので、やはりアメリカからそれなりの担当責任者の専門家に来てもらって、これは外務省だけが話を伺うというつもりではございませんで、関心のある政府部内のほかの関係省庁にも参加をしていただきまして、一緒に話を聞きたいというふうに考えております。
  211. 山田英介

    山田委員 私が心配をしておりますのは、また申し上げている点は、専門家からSDIについてのいろいろな知識を、あるいはまた講義を受ける、その後の段階について、要するに外務省はこういうスタンスなのですかと聞いているわけです。といいますのは、協力可能な技術分野があるかどうかなんということを次の段階で検討するということになれば、現時点でもうそれに参加しようという方向に姿勢が向いているのじゃないか、そういう危惧を私は持っておるものですから、もう一度北米局長から御答弁を願いたいと思います。
  212. 栗山尚一

    栗山政府委員 仮に技術的に協力可能な分野がある場合にいたしましても、それに国として、政府として協力するかどうかというのは新たな政策問題でございますので、その点につきましては政府部内において十分慎重に判断をいたしたい。現段階で、これは協力をするというふうに外務省として基本的に考えているというようなことはございません。
  213. 山田英介

    山田委員 対米武器技術供与につきましては、昨年、一昨年、特に予算委員会等でも国会で大変な議論がなされたところでございます。  それで、問題の一つは、確かに外務大臣局長もおっしゃるように、将来の二十一世紀にかかるようなそういう極めて長期的な計画であって、現時点においてその全貌など当然わかるわけはない、したがって先の話である、これはわかるわけでありますが、それはそれとして、日本アメリカとの二国間における武器の共同研究開発、これはできるのですか。
  214. 栗山尚一

    栗山政府委員 御質問の趣旨が、日米二国間で武器の開発についての共同研究が現行制度上できるかという御質問であれば、別にそれを禁止するような制度はないということだろうと思います。
  215. 山田英介

    山田委員 そうしますと、日米以外の国が参加をして、すなわち日米と加えてそれ以外の国が参加しての武器の共同研究開発というのはできるのですか。
  216. 栗山尚一

    栗山政府委員 一昨年、政府といたしまして対米武器技術供与に関しまして方針の決定をいたしました場合に、これはあくまでもアメリカに限りまして従来の武器輸出三原則、そのうちの対外技術供与、武器技術の供与に関する部分につきまして修正をした、過去における政府の政策の修正を行ったということでございまして、あくまでもアメリカに対して、日米安保体制効果運用という観点から技術供与の道を開いたということでございますので、その他の第三国との関連におきましては従来どおり武器輸出三原則を堅持するということを政府として申し上げているところでございますので、そのような政策に照らしまして、第三国との関係は今後とも従来の方針どおりということでございます。
  217. 山田英介

    山田委員 結論として言えば、日米そしてそれ以外の国との武器の共同研究開発はできない、こういう御答弁でありまして、その意味では政府の今日までの対応というのは一貫している、その延長線上にある今の局長答弁である、こういうことでございます。  そうしますと、このSDIの共同研究計画というものに我が国が参加できるのかといえば、私は、今局長答弁なさった趣旨から言ってできないのだということになるわけです。書簡は、私は要旨しか拝見しておりませんけれども、今回のSDIの共同研究計画というのは、同盟諸国と共同して研究するこの計画に日本政府として参加する意思があるかどうか知らしてもらいたい、しかも関心のある技術分野を示唆を賜りたい、こういうような構成といいますか内容になっておるわけでございます。それで、現実にNATO諸国十六カ国にも同じ書簡が出されているし、日本にもオーストラリアにもあるいはまたイスラエルにもという形で来ているわけでございまして、この共同研究計画というのは、少なくとも日米二国間における武器の共同研究ではないというふうに見ざるを得ないわけでありまして、そうなりますと、私は、SDI共同研究計画に我が国は参加できないのだ、このように思っているわけでございますが、これはいかがですか。
  218. 栗山尚一

    栗山政府委員 政府としての基本的な第三国との関係につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。アメリカの考え方につきましては、これも今後向こうの考え方を聞いてみないとわかりませんが、現段階でワインバーガーの書簡その他折に触れて私どもの承知しておる情報から判断します限り、別に同盟国全体を含めての共同研究というようなことを必ずしも考えているわけではないと思います。ヨーロッパの方では、ヨーロッパの方の事情からヨーロッパの関係国がまとまってアメリカと共同研究をというようなプロジェクトをつくってそれに参加するかというような話も一部に行われているやに承知しておりますが、これもまた海のものとも山のものともわからない状況だろうと思います。  いずれにしても、基本的には、アメリカは別に現段階でそういう多数国間の研究開発というようなことを考えているということでは必ずしもないと思いますが、今後アメリカの話を十分聞いてみないと、そこら辺のことはわかりません。
  219. 山田英介

    山田委員 結局、日米のほか、第三国も加えた共同研究開発計画であるとも断定はできないし、ないとも断定はできないということだろうと思います。もし、これからアメリカ側といろいろ話し合って、あるいはSDI、今回の共同研究計画への参加の実態というものをずっと明らかにしていく中で、仮に、日米のほか第三国も交えた形の共同研究開発計画であるということであれば、これは日本は参加できませんね。
  220. 栗山尚一

    栗山政府委員 委員の想定しておられるような共同開発研究というものがどのような形のものかというのは、必ずしも私、つまびらかにいたしませんが、今後どういう態様の研究があり得るかということも私どもとしてはわかりません。しかしながら、一般的な武器輸出三原則に関する政府の基本方針は先ほど申し上げたとおりでございますので、何か具体的に共同研究なり何なりという話が仮に将来出てきました場合には、そういう政府の基本方針というものに照らしまして、それに反しないように処置してまいる、対応してまいる、こういうことだろうと思います。
  221. 山田英介

    山田委員 私、ここに議事録を持っておりますが、五十八年二月十九日衆議院予算委員会における我が党の坂井弘一委員と安倍外務大臣とのやりとりの部分でございます。坂井委員から「日米以外のもう一つの国、三つ以上の国が集まりまして共同研究開発、これは可能でしょうか。」これに対して安倍国務大臣は「そういうことはあり得ません。」あり得ないと言っておられます。「そうしますと、いまアメリカとNATO諸国の間において共同研究開発あるいは共回生産まで踏み込んでおる。そこに日本が参加をする、仲間入りをする、そういうことはあり得ない、こういうことでしょうか。」再び坂井委員です。安倍大臣は「今回の武器技術供与の趣旨から見まして、そういうことはあり得ないわけであります。」と明確にあり得ないと再三にわたり御答弁なされておるわけでございます。したがいまして、大臣、SDIというのがこれだけ世界じゅうの関心を集め、我が国においても御案内のとおりでありますが、このSDI研究計画に参加するかしないかなどという――参加すると政府として回答してからこういう問題を議論したって始まらないわけであります。したがって、今後参加するのかしないのかということを真剣に検討されるわけでありますが、その前提としてこの部分は極めて重要な部分であると私は認識をいたしております。  安倍大臣、こういうみずからの御答弁を踏まえまして、慎重の上にも慎重に、そういう言い方よりか、これはできないのだ、日米のほかに第三国を加えた形でSDIの共同研究開発計画が予定されているとすれば、それは日本は参加できないのだというふうに御答弁をいただきたいと思います。これは答弁の趣旨からいってそういうことになりますので……。
  222. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 武器技術の協力につきましては日米間でだけ行われる、これは御承知のとおりでございます。その他の国との間では、日本の場合は武器輸出三原則によってこれは行わないということでございます。したがって、先ほどから局長答弁をいたしましたように、日米以外のその他の諸国が入りたいわゆる武器あるいは武器技術共同研究というものは行えないというのが国の基本的な立場でございます。したがって、SDIに対する協力につきましても、今協力するとかしないとかということを決めているわけではありませんが、SDIに対する日本の態度としても、あくまでも日本の基本的な立場というものを踏まえて日本自身が決定するわけでございますから、日本のそうした基本原則に反することは日本としてはできない、こういうことであります。
  223. 山田英介

    山田委員 基本原則からして、そしてまた外務大臣の御答弁からしてもこれはできませんですね。もう一遍確認をさせてもらいます。  そういうSDIの共同研究というものが予定されているとすれば、日本アメリカとNATO諸国など第三国が加わった形でSDI共同研究というものがなされるということであれば参加できないということですね。
  224. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほど答弁いたしましたことが日本の基本的な方針でございます。
  225. 山田英介

    山田委員 これは極めて重要な問題であります。対米武器技術供与、これは武器輸出三原則の例外的措置としてアメリカにのみ武器技術相互交流を図る、供与ができる、そういう枠組みを決めたものであります。その武器技術供与のいろいろな解釈の中から武器の共同研究開発はあり得ません、でき得ません、こういうことになっておるわけでありますので、この点を政府部内におかれましても十二分に踏まえてSDI共同研究開発計画に対応していただきたい、これは重ねて申し上げておきたいと思うわけでございます。  それから、せっかく防衛庁長官にも御出席いただいておりますので何点かお伺いしたいと思っておりますが、四月三日にアメリカの国防総省の技術調査団が日本に来ております。調査対象分野は一つはミリ波もう一つはオプトエレクトロニクス、光電子工学、この二つの分野であると伝え聞いておるわけでありますが、その中で技術開発での官と民の分担、装備調達体制についても話し合われたと聞いておるわけでありますが、実際にはいかがだったのでございましょうか。
  226. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま先生指摘のように、四月三日から五日にかけましてアメリカ国防総省の研究技術担当国防次官室の専門家でございますジョン・M・マッカラム博士など六名が来日をいたしまして、防衛庁。通産省及び二つの民間企業を訪問いたしております。  この調査団は、昨年七月にもうちょっと人数が多く十二名ほどで同じマッカラム博士を団長とする調査団が参りまして、約二週間にわたりましてただいま御指摘の光電子工学とミリ波の二分野について我が国関係企業等の技術力あるいは技術開発状況等を調査した、今回はその補完的あるいはその調査内容を補足する意味で参ったものでございます。したがいまして、一般的な防衛庁におきます研究開発体制でございますとか通産省におきます民間との技術開発政策、そういったものを補完的に調べに来たというのが実情でございます。
  227. 山田英介

    山田委員 ちょっと細かい聞き方のようで恐縮でありますがあわせて、防衛庁と話し合いをしてその後民間企業、ここではミリ波と光電子工学の先端技術を所有しているとされている民間企業を二つ回っておりますね。そういうときには防衛庁調査団の日程の調整あるいは実際に同行するというか案内する、そういうことはあり得るのですか。
  228. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいま御指摘のように三菱電機と日本航空電子の二社へ五日に参っております。この日程につきましては防衛庁でアレンジをし、また事務官等が同行をいたしております。
  229. 山田英介

    山田委員 対米武器技術供与の枠組みというのは、具体的に言えば日米武器技術共同委員会、JMTCが一つの大きな中核的な機能を果たすわけでございます。従来から政府の答弁は、民間企業が持っている先端技術、汎用技術については、アメリカからどうしても欲しいという希望があったとしてもあるいはそういうふうに見受けられたとしても、政府としては一切民間企業には介入しない、防衛分野における技術をアメリカに移転させるその部分においてプレッシャーあるいはそう感じるかもしれないような言動、介入はとらないという姿勢であったわけでございます。したがいまして、日程の調整もなさる、そこにしかるべき幹部の方が同行なさるということも、細かく言えばその問題と絡めてどうなのかなという心配が私としてはあるわけでございます。  それはそれとして懸念を表明しておくだけにとどめますが、今度は、実際にSDI絡みでアメリカがぜひ日本の技術が欲しいんだというふうに将来――今までもあったのかもしれませんが、将来というふうに申し上げておきますけれども、その技術が民間にしかなかった場合、JMTCの武器技術供与の趣旨からいきまして、アメリカに関心のある技術分野として示唆をするなんということはこれはでき得る話ではない、全然次元の違う話である、私はこのように理解をいたしておりますが、いかがですか。
  230. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 やや分類上のお話からさせていただきますが、先ほど来北米局長も御答弁しておりますように、武器技術と、それから武器にもあるいは一般の民間にも使われ得る汎用技術と、この二つがございます。私どもが構成しております日米武器技術共同委員会、JMTCでございますけれども、これは武器技術供与、つまり武器技術の面に関しているわけでございます。では、この武器技術はだれが所有をし、あるいはそういう技術を持っているかといいますと、私ども防衛庁のような政府機関である場合もありますし、また民間である場合もございます。したがいまして、もしも民間の所有する技術でありましても、これが武器技術だということに相なりますれば、それは当然このJMTCの枠の中で処理をされることに相なります。
  231. 山田英介

    山田委員 民間が所有している技術についてアメリカが欲しいと言われても、政府は防衛庁にしても通産省にしてもその移転、供与を促進するような働きかけはしない、できない、これは従来から変わっておりませんですね。したがいまして、このSDI研究参加問題に関連して言えば、民間にある技術について政府がアメリカに示唆するなんという余地は全くないですね。確認です、これは。
  232. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 ただいまのようなSDIあるいはその他の武器関係技術に関することは、将来のことでございます。ただいままでアメリカ側から具体的な要請というものはございません。しかし、このJMTCの場面というのは、日米間の意思の疎通ということを図る場でございますので、アメリカ側からかくかくしかじかのような武器技術が欲しいのだがどうだろうかということがありますれば、それはその場で議論され、また関係各省とも相談をし、場合によりますれば、それを所有しているところが民間でございますればそれとのまた意思の疎通、情報交換ということは行うことになろうかと思います。
  233. 山田英介

    山田委員 民間の軍事技術が移転する場合には全く民間の発意に基づくんだ、それはいわゆる商業ベースとか技術の対価としての問題であるとか、こういう御説明がずっと今日までなされてきているわけですが、今までの民間技術の部分について何か微妙に御答弁が変わってきているのじゃないかなという心配をちょっと抱いております。これはその点だけ申し上げるにとどめます。  それからもう一つは、防衛庁が今、軍事用のミリ波というのを民間企業の二社か三社の協力を得て研究開発をされておるということですが、これは事実でしょうか。そして仮にそれが事実として、軍事用ミリ波が開発に成功した場合、その工業所有権というのでしょうか、特許権というのでしょうか、それは防衛庁の所有になりますか。
  234. 筒井良三

    ○筒井政府委員 ミリ波と申します技術は、在来我が国におきましては、主として民間において局地的な通信等にいろいろ使われているものと聞いております。近来、しかしながら防衛関係におきましても、例えば米国でありますと、多数の戦車に対して親爆弾から子爆弾を誘導させる装置といった近距離の誘導装置等にミリ波の実用化を図っております。そういったミサイルの誘導というような格好におきまして、私どももミリ波の技術の研究の必要性を感じておりますので、それなりの研究を続けております。  先ほど御質問のございました防衛庁における研究開発の民間に対する技術の所有権の問題になりますけれども、民間の技術力を活用してやっております、例えば試作品の製造でありますとか調査委託の民間企業等の発注に関しましては、これに係る企業との契約におきまして、当該試作等から得られましたところの技術上の成果についての特許等を受ける権利は国に承継されること、あるいはその技術的内容につきましての利用及び処分に関する権利は国へ帰属するといったことを契約上明記してございます。ただ、もちろん会社が固有に持っている技術というものは除くのは当然のことでございます。
  235. 山田英介

    山田委員 その場合、ミリ波の技術につきましては、八六アメリカ国防報告等にも、我が国の技術の中で極めて関心を寄せている二つの分野の中の一つであるとされておりますし、アメリカ当局者が明かしたところによればというようなことで、SDIについて極めてこれは有用な、あるいはまた必須の技術であるというような報道もなされているわけでございます。そういう背景がありますものですから、これは加藤長官、仮にアメリカから、防衛庁が将来所有することになります軍事用ミリ波について、その技術をアメリカに移転してもらいたい、供与してもらいたい、こういう形で申し入れが出てきた場合にはどのように対応なさいますか。
  236. 山田勝久

    山田(勝)政府委員 まず今回の調査団の話し合いの中ではSDI関係の話は出ませんでした。また将来、SDI関係でどういうことに相なるか。先ほど外務省からも御答弁がございましたように、専門家の派遣を求めてその話を聞いていくということでございますので、個々具体的な案件に即しまして、この対米武器技術供与の枠組みの中で私どもの政府が自主的に判断していくことになろうかと思います。
  237. 山田英介

    山田委員 時間でありますので、終わります。
  238. 森下元晴

    森下委員長 神崎武法君。
  239. 神崎武法

    ○神崎委員 引き続きSDIの問題につきまして質問をいたします。  この技術協力要請問題の議論の前提といたしまして、SDIの極東の安全とのかかわり、なかんずく日本の安全とのかかわりという問題につきまして、最初に確認をいたしたいと思います。  本年初頭の日米首脳会談の席上、レーガン大統領から、SDIの極東あるいは日本へのかかわりについての説明がなされたのかどうか。もしなされたとするならば、どのような説明があったのか、お伺いいたします。
  240. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先般の日米首脳会談においては、SDIの極東へのかかわり合いといったことについては特に説明はなかったわけでありますが、一般的にSDIの目的は、米国のみならず我が国を含む米国の同盟国の安全保障をもより確実にするため抑止力信頼性向上することにあり、究極的には核兵器の廃絶を目指すものである、こういう説明を受けた次第であります。  また米国は、研究の進展に伴い、我が国に対しても随時情報を提供しあるいは協議する旨を明らかにしておりますし、政府としてもこれらの場において、SDIが我が国を含む自由主義諸国の抑止の信頼性向上させるものであるとの点をも確認していく所存であります。
  241. 神崎武法

    ○神崎委員 在日米国大使館のつくりましたSDIについてのオフィシャルテキストによりますと、SDI計画というのは、ICBMだけではなくて射程距離のより短い弾道ミサイルに対しましても潜在的に有効な技術についても慎重に検討するとしているのであります。そしてソ連のSS20に対する効果防衛についても触れまして、ヨーロッパでの侵略防止に大きな影響を持ち得るとしているのでありますけれども、在日米大使館がつくったテキストでありながら、ソ連のSS20に対する極東での効果防衛、こういう考え方には全く触れられていないわけであります。そういたしますと、我が国防衛上SDIというものが関係のないようなシステムに思われるわけですが、いかがでしょうか。
  242. 栗山尚一

    栗山政府委員 委員指摘アメリカ大使館が配付いたしました資料、これは実はアメリカ政府の一般的な広報資料でございまして、在日アメリカ大使館以外でも、恐らくヨーロッパにおきますアメリカ大使館等におきましても一般的に配付されているものだろうと思います。その内容はまさに今のレーガン米国大統領の戦略防衛構想、こういうことでございまして、アメリカの現政権が持っておりますSDIに対する基本的な考え方というものを明らかにしておるものであるというふうに私ども理解しておりますが、当然のことながら、アメリカの同盟国という場合にアメリカとしてはNATO諸国のみならず我が国も念頭に置いて考えているということ、これは間違いないことであろうというふうに我々は考えております。
  243. 神崎武法

    ○神崎委員 しかしながら、先ほどの外務大臣答弁によりますと、特に極東我が国に対するかかわりあいということでの説明はなかったということでよろしいわけですな。
  244. 栗山尚一

    栗山政府委員 日米首脳会談におきますレーガン大統領あるいはシュルツ国務長官の総理あるいは外務大臣に対する説明は、さっき累次外務大臣からも御説明申し上げておりますように、SDI構想の基本的な性格というものについての説明があったわけでございますが、これは要するに基本的にアメリカ防衛だけのことを考えているわけではなくて、同盟国を含みます、西側あるいは自由主義諸国全般の安全保障、そのためのアメリカ抑止力維持向上、そういう観点から考えられているものであるということは、これは累次の公表資料その他によって明らかでございますし、レーガン大統領の御説明も当然そういう前提に立って行われたものであろうというふうに私どもは理解いたしております。     〔委員長退席、椎名委員長代理着席〕
  245. 神崎武法

    ○神崎委員 最近の米国上院外交委員会の公聴会におきますパール国防次官補の証言あるいはブラウン元国防長官のセミナーにおける発言等によりますと、SDIは巡航ミサイルなどの小型核兵器に対しては有効ではない、こういうことが言われているのであります。そうであるならば、この構想は極東の安全あるいは我が国防衛という観点からはメリットがないように思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  246. 栗山尚一

    栗山政府委員 ただいま委員質問の点につきましては、三つのことが申し上げられると思います。  一つは、ICBMそのものに対する防御手段としてのSDIの価値、これは必ずそうなるということではございませんで、前提としてそういう技術が開発されて可能であるという前提での議論でございますが、そういうものが開発をされればアメリカの全般的な核抑止力の維持というものに役立つであろう。究極的な核の廃絶という目標、これはまた別途ありますが、当面の問題といたしましてアメリカの核抑止、全般的な核抑止力の維持に役立つであろうということが第一点。それから第二点といたしまして、そういうことがあればこれは当然同盟国の安全保障を含めまして、そういう同盟国を含みますアメリカ抑止力全般の維持向上に役立つであろうということが第二点。それから第三点といたしまして、先ほどまさに委員指摘のような、SS20のような中距離の弾道ミサイル、そういうものに対する防衛手段としても有用なものであるということがアメリカ側の念頭にあるということ、以上三点が同盟国との関係では申し上げられると思います。  委員指摘のように、もちろんこれは巡航ミサイルでありますとか爆撃機でありますとかそういうものに対しては全く有効性を欠くシステムでございますので、そういう点につきまして、これはまた別途考える必要があるということはアメリカ政府は申しておる次第でございます。
  247. 神崎武法

    ○神崎委員 我が国から見てSS20等に対しても有効な抑止力になり得る、こういうふうに考えられるとおっしゃるのですけれども、そうなりますと、専門家によりますと、一九九〇年代にもこのSDIの一部の実戦配備が可能であるということも言われているわけでありますが、極東の安全にSDIが関係があるとするならば、在日米軍基地にビーム兵器等の地上配備ということも将来起こり得ると思います。そうでなければ、そういう極東なかんずく我が国に対する中距離核等に対する抑止力という議論は出てこないだろうと思いますけれども、そういった在日米軍基地への配備というものも将来あり得る、そういう見通しに立った上での御議論でしょうか。
  248. 栗山尚一

    栗山政府委員 これは率直に申し上げて、アメリカが今後どういうシステムを研究をして、いかなるシステムについてそれが実効性があるものとして配備の対象となり得るかということでございますので、現段階では全く仮定の議論しかできない状況でございますので、政府として今の段階におきまして我が国に将来配備可能性があるとかないとかということを申し上げるのは適当ではないというふうに考えます。
  249. 神崎武法

    ○神崎委員 しかしながら、我が国にとってSDIが核の攻撃に対する抑止力になり得るというのは、どういう意味においてなり得るというふうに判断されるのでしょうか。
  250. 栗山尚一

    栗山政府委員 先ほども申し上げましたように、仮にSDIでアメリカが考えておりますような、弾道ミサイルを発射後目標地点に到達するまでの間においてこれを捕捉、撃破するという目的のための有効なシステムが開発されるのであれば、それはアメリカの全体的な核の抑止力というものを維持をするのに役立つであろうということが第一点、これは一般論として第一点で申し上げられると思います。  さらにもう一つ、前提を申し上げないと非常に誤解を招きやすいと思いますが、アメリカの言っておりますことは、これは当然攻撃兵器でありますところの弾道ミサイルそのものを大幅に削減をしていく、究極的には核の廃絶を目指すわけでありますが、その途中の過程において、一方におきまして攻撃兵器の大幅な削減、それとの組み合わせにおきましての防御システムの開発、配備、こういうことを一応前提とした構想であるというふうに御理解いただかないと若干議論が混乱すると思いますが、そういう前提のもとにおきまして、アメリカのそういう防御システムが開発されれば、アメリカの核の抑止力の維持というものに貢献し得る可能性があるということが第一点でございます。  それから第二点といたしまして、アメリカは、これは技術的な詳細は私どもまだわかりませんが、アメリカの本土を攻撃するICBMだけではなくて、同盟国を目標とするICBM、すなわち長距離のICBM以外にもSS20のようなものが典型的なものとしてあろうかと思いますが、そういうSS20に対しても効果的なシステムとして開発しなければいけないということをアメリカが言っておるわけでございますので、そういう前提に立ては、これは同盟国、一般的には我が国をも含めまして同盟国の安全保障に貢献し得る――あくまでもこれは仮定の問題でございますが、そういうものが可能になれば、貢献し得る可能性がある、こういうこと・だろうと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、そういうシステムが具体的にどこにどういうものを配備しなければならないかということについては、今アメリカの文献等から見ます限り全くわかりません。これは今後研究が進むに従いましてアメリカの話を聞いてみないと全くわからないということでございますので、先ほど申し上げましたような御答弁をいたした次第でございます。
  251. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいま米国のSDIというものを念頭に置いて議論をしたわけでありますけれども、これとは別に、いわゆる日本版のSDIと申しましょうか、ビーム兵器等によりまして我が国防衛するというようなことも将来起こり得るのだ、そういうことを議論の前提にされているのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  252. 栗山尚一

    栗山政府委員 御質問は、我が国自身がそういうシステムを自分で保有するということであるとすれば、今、政府としてはそういう構想は全く持ち合わせていないということだろうと思います。
  253. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、このSDIの問題については果たしてこれが米国を守るシステムなのか、米国とNATOを守るシステムなのか、あるいは極東、なかんずく日本を含めて守るシステムとして構想されているのか、その点を明確にしなければこの問題についての我が国の関与の度合いというものが決まらない、おのずからまた違ってくるのではないかと思うわけであります。そういう意味におきまして、この点について政府部内でも慎重に御検討をいただきたいと思うわけであります。  続きまして、技術協力要請問題でございますが、我が国がこの研究への共同参加を検討する際の原則、基準は何かという点でありますけれども、総理は衆議院本会議におきまして、「平和国家としての基本的な理念を踏まえて、政府としての対応を自主的に検討していく」こういう答弁をされておりますし、衆議院の予算委員会におきましては、日本の憲法及び国是あるいは政策の範囲内において行う、こういう答弁をされております。また、参議院の予算委員会では、憲法や非核三原則、それに宇宙の平和利用を規定した昭和四十四年の国会決議の範囲内で行われなければならない、こういう答弁がされたということも新聞報道で伝えられているわけでございます。  もう一度確認をいたしたいと思いますけれども、こういう憲法、それから国是、それから宇宙の平和利用等の我が国の政策、これを基準にして判断する、このように考えてよろしいでしょうか。
  254. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃるような立場であります。
  255. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、憲法との関係でこのSDIの研究参加に何か問題がある点が一体あるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  256. 栗山尚一

    栗山政府委員 憲法の特定の具体的な規定を念頭に置かれて総理がおっしゃったものではないというふうに理解いたしておりますが、いずれにいたしましても、憲法のもとでの日本国としての基本的な平和主義の精神、それからそこから出てきております我が国の基本的な防衛政策、専守防衛ということを基本といたしました防衛政策、そういうものを念頭に置かれて総理が憲法ということを言われたというふうに私ども理解いたしております。
  257. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいま答弁にありました専守防衛の問題でありますけれども我が国を守るという観点からのみ防衛力の行使が許されるという専守防衛という考え方からいたしますと、このSDI構想については、やはり主として米国をソ連からの核ミサイル攻撃から防御するための兵器システムである、こういうふうに言われているわけであります。そういった兵器システムを開発、配備するために我が国がこの研究に共同参加するということ、これは米国本土への日米共同防衛体制ということになるのではないか、憲法上問題が生じないか、この点についてはいかがでしょうか。
  258. 栗山尚一

    栗山政府委員 SDI構想というものがそもそもアメリカの本土だけを守って同盟国の安全には寄与しないのではないかとか、あるいはアメリカは同盟国の安全保障を全く考えないでいわばアメリカだけを要塞にして同盟国を犠牲にする可能性があるのではないかというような議論が、例えばヨーロッパなんかでは一部民間の評論家等の間で行われておるようでありますが、これは先ほどから申し上げておりますように、少なくともアメリカの政府の立場はそのようなものではありませんで、同盟国を含めたアメリカの全般的な防衛力あるいは抑止力というものを守っていく、そのための可能性を探求するものとしてのSDI、こういうことでございますので、それはそういうものとして一応理解をして我が国の対応ぶりを検討する、こういうことだろうと思います。
  259. 神崎武法

    ○神崎委員 今北米局長がおっしゃったように、議論の中にはこれはアメリカ本土を守るシステムだ、あるいはアメリカとNATOを守るシステムだとか、そういう議論もあるわけであります。仮にその議論のように、アメリカ本土あるいはアメリカとNATOのみを守るような防衛構想であるということであるとすれば、これに共同参加することは専守防衛の考え方からいって許されない、このように理解してよろしいでしょうか。
  260. 栗山尚一

    栗山政府委員 全くの理論上の問題として、アメリカだけを守るものに日本協力できるかというようなお話になれば、神崎委員指摘のような面があろうかと思いますが、基本的前提といたしましては、私どもはそのように理解をいたしておりません。  それから、アメリカが何かNATOだけを優先して考えて、同盟国の中でNATOと日本を差別をして考えるというような向きがありはしないかという御懸念かと思いますが、そういう点につきましては、従来からアメリカはそのような考えは持っておりませんので、その点一言つけ加えさせていただきたいと思います。
  261. 神崎武法

    ○神崎委員 北米局長は、こういう質問に対しては大変詳しい御説明をなさるわけでありますけれども、そもそもSDIについては、これは非核兵器である、防御兵器である、核廃絶を目指すものであるというだけで、ともかく具体的な説明を受けていないからわからないのだというのがこれまでの外務省のお立場であったはずであります。そうであるとするならば、この構想の内容が、いやアメリカ本土を守る構想ではないとか、アメリカとNATOを守る構想ではない、日本も守る構想なんだ、そこまでこういう問題についてはよく知っているんだというのは、私は矛盾しているだろうと思うのですね。ですから、この点も含めて、果たして、一体どこを守る構想なのか、専守防衛との関係で問題がないのか、これは政府部内においても十分御検討をいただきたいと思うわけであります。いかがでしょうか。
  262. 栗山尚一

    栗山政府委員 今後アメリカ側と種々意見交換を行う機会があろうと思いますので、その機会には、もちろん十分そのようなことについてはアメリカ側にも確認をしていきたい、またいくべきであろうというふうに考えております。
  263. 神崎武法

    ○神崎委員 同じく憲法上の要請であります集団的自衛権の行使の禁止とSDIとの関係の問題でございますけれども、先ほど山田委員の方から質問がございました。日本、NATO、米国、この三国以上の国でSDIを研究、開発、配備するということは集団的自衛権の行使につながるのではないか、このように考えますが、いかがでしょうか。
  264. 小和田恒

    ○小和田政府委員 基本的には、先ほど北米局長からお答えしておりますとおり、SDIというのはまだ具体的にどういうことを、どういう武器体系を使って、どういうふうにやるのかというようなことについて技術的な説明を十分受けておりませんので、一般的な形でお答えすることは適当ではないというふうに考えますけれども、全くの一般論として申し上げますならば、御承知のように国際法上、集団的自衛権という考え方は、自国が直接攻撃されていないときに、自国と非常に密接な関係にある外国に対して武力攻撃が行われた、そういうときに、それに一緒になって協力をして、実力をもって阻止する行為、これを集団的自衛権と言うわけでございますので、今問題になっておりますような研究ということでございますれば、その内容が必ずしも明確でないということは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、一応別な問題として考えてよいのではないかというふうに考えます。
  265. 神崎武法

    ○神崎委員 今の条約局長答弁は開発、配備の段階でも同じですか。
  266. 小和田恒

    ○小和田政府委員 私が今申し上げましたのは、研究の段階についてでございます。
  267. 神崎武法

    ○神崎委員 先ほどの山田委員質問に対しまして、日米以外の第三国が参加した共同研究開発、これについては我が国は参加できない、こういう御答弁でございました。ただし、SDIについては基本的には多数国間の研究開発を考えておるとは限らないということでお答えになっているわけでありますけれども、この武器の共同研究開発につきましては、昭和五十七年二月二十二日に予算委員会で政府の統一見解が出されております。     〔椎名委員長代理退席、委員長着席〕  これによりますと、「武器の共同研究開発という用語は、法令上の定義があるわけではございませんが、一般的に言えば、二つ以上のものが特定の武器の研究開発について、必要な構想、技術、技術者、運用者、資金、試験設備等の面で協力して実施する活動を言い、協力の態様により種々の形態がございます。すなわち、双方の技術をプールし、責任分担を調整し、かつ必要資金を分担するといった本格的とも言える形態のものから、協力がごく一部に限られるといった形態のものまでございます。」これが一つ、定義として言われているわけでございますが、先ほどの一連の御答弁、これはこの政府の統一見解、武器の共同研究開発という統一見解に基づいた御答弁、このように承ってよろしいですね。
  268. 栗山尚一

    栗山政府委員 そのとおりでございます。
  269. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、SDIの共同研究開発、いろいろな態様があろうかと思うわけでありますけれども、米国にNATOあるいは日本全部が集まって共同研究開発をする態様もあろうし、あるいはそれぞれが分担をして、このSDI構想の兵器のシステムの一部を分担してやる、そういった形態も十分考えられるわけでありますけれども、「協力がごく一部に限られるといった形態のものまで」あるというこの定義からいきますと、そういったシステムの一部を分担して研究開発をするという場合も、政府のいうところの、統一見解でいうところの武器の共同研究開発に当たる、このように考えてよろしいですね。
  270. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど山田委員の御質問に対して、北米局長から御答弁申し上げたわけでございますけれども、全体のこの枠組みをはっきりさせるために、ちょっと私から補足して申し上げたいと思いますが、北米局長答弁は、御承知のとおり、対米武器技術供与という問題に関して、政府の考え方を申し上げたわけでございます。すなわち、対米武器技術供与の取り決めに該当するような武器技術を米国に対して供与することは、あの取り決めによって可能になったわけでございますけれども、他の国々、ヨーロッパ、NATOの国を含めまして、他の国に対してそこに該当するような武器技術を供与するということは、別途の取り決めもございませんし、武器輸出三原則の適用がある。その意味においてNATO諸国に対してそういうことを行うことはできない、こういうことを申し上げたわけでございますので、あくまでも具体的な特定の武器技術が供与される場合において、それは米国との間においては可能であるけれども、NATO諸国に対してそういうものを供与することはできない、こういう意味で申し上げているわけでございますので、その点だけちょっと補足して申し上げます。
  271. 神崎武法

    ○神崎委員 よく意味がわからないのですけれども、それはどういうことでしょうか。何かもう一度、ちょっとわかりませんからわかるように……。
  272. 小和田恒

    ○小和田政府委員 失礼いたしました。実は委員の御質問に対しては別途北米局長から答弁してもらうつもりでおりましたので、私は前提だけを申し上げたのですが、その後を続けて申し上げますれば、したがって、具体的な特定の武器技術、例えば一つの計画の中の一部に関してある武器技術の供与というものが行われるということがありました場合に、それが日本アメリカとの協力関係にとどまっております限りにおきましては、これは対米武器技術供与の取り決め上許される、その大きいシステムの中の別な部分に関してNATO諸国と米国との間で協力関係がありましょうとも、日本アメリカとの協力関係が、その特定の武器技術の供与に関連して、二国間で行われるということは、協定の建前上は、理論的な問題としては、そういうことはあり得るということを申し上げたわけでございます。
  273. 神崎武法

    ○神崎委員 まだまだよくわからないのですけれども、要するにあれですか、今の答弁からいたしますと、SDIというシステムの中の一部分について、これはその部分についてだけは日米間の共同研究開発ということは、それはやれば、それはそれで可能なのだ、こういう言い方なのですか。そこに、要するにNATO等が入ってなければ、その部分についての共同研究開発は可能なのだ、こういうことでしょうか。
  274. 小和田恒

    ○小和田政府委員 言い方が必ずしも適切でなかったかもしれませんので、おわびいたしますが、あくまでも特定の武器技術というものに着目をいたしまして、それが全体の枠組みの中、あるいは大きな構想の中のどの部分であるかということを一応別にいたしまして、日本からアメリカに対して対米武器技術供与の取り決めに従って行われるものというのは、非常に具体的な特定された武器技術の供与という問題でございますので、その限りにおいては、その問題が日米間の二国間の問題として限定されるのであれば、それは理論的にはあり得る、協定上はそういうものはあり得るということを申し上げたわけでございます。したがって、そういう武器技術が今度はその全体の構想の中でNATO諸国に対して移転されるとか、そういう問題になってまいりますと、これはまた別途の問題として、武器技術供与の取り決めの中に別途の規定があることは委員御承知のとおりでございます。
  275. 神崎武法

    ○神崎委員 大変納得がいかない点でございますが、これは時間がございませんので、引き続き今後また議論をしたいと思います。ありがとうございました。
  276. 森下元晴

    森下委員長 渡部一郎君。
  277. 渡部一郎

    渡部(一)委員 お疲れのところ恐縮でございますが、今度はGNPの一%問題についてお尋ねをいたします。  今国会におきまして、GNP一%問題は随分詳細な論議が尽くされまして、政府の答弁は、右へ行ったり左へ行ったり、縦に行ったり横に行ったり、いろいろ揺れたわけでございます。ところが、どうやら防衛庁長官は、GNP一%枠の閣議決定の変更要求というような画期的な御発言を新聞社にリークされた御様子でございますし、これはひとつもう一回ちゃんとお尋ねしなければならぬと思いまして初めから聞き直しをしたい、こう思っているわけでございます。  まず、防衛費のGNP一%枠を堅持するという点におきまして総理大臣の所信表明は、前国会においては所信表明で行われましたけれども、今国会では聞かれるまでは言わないという態度で終始されました。そして予算委員会でも何回か揺れました。ところが今国会におきまして、結局は、これは堅持するよう努力するということになっておるわけでございます。外務大臣防衛庁長官もその点でどういうふうに決意を持っておられるか、GNP一%の堅持についてどういう決意を持っておられるか、また何を行うべきと思っておられるか、その辺からまず両大臣にお尋ねをしたいと存じます。お願いいたします。
  278. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 GNP一%の問題につきましては、結論的には、政府としての統一見解、中曽根総理大臣から出ております。政府としては一%を守りたい、これが政府全体としての考えでございます。
  279. 加藤紘一

    加藤国務大臣 GNP一%につきましては、予算委員会等でお答えいたしておりますように、守りたいと思っております。ただ、施政方針演説にことしから消えたということでございますが、ことしの表現は去年の施政方針演説と同じであったと今聞いておりますけれども
  280. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理の部分は違うのです。それは防衛庁長官部分でしょう。  ここに一般紙の切り抜きがあるのです。閣議決定の変更要求を防衛庁がした。「防衛庁は六日までに、」「三木内閣当時の閣議決定の変更を、七月に予定されている次期防衛力整備計画の策定と併せて求めていくとの方針を固めた。」と記事が出ておりますが、本当ですか、うそですか。見たことないですか。――ちょっとごらんに入れましょう。
  281. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そのような決定をいたしたことはございません。これは四月七日の新聞のようでございますが、そのように決定して内閣の方に申し出たということはございません、
  282. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしますと、今回の予算のときに、先ほどから、参議院の方でも質疑が行われている際に、最終的に積み上げられた防衛費のうち約四割、二百十一億円はつかみ金的な追加であったということが――つかみ金と申しますのは、必要経費を積み上げて査定した数字をはじき出すというのが予算編成のやり方でございますのに、最初にお金を決めておいて、トイレットペーパーにしょうなどということを後から相談して決めたというので、話があべこべであるという非難を浴びておる最中であります。GNP比一%枠を汗を流してでも守る努力を総理がなさるおつもりならばそれもできたはずなのに、むしろそのすき間をほとんどなくそうとした。そして、要するに人事院勧告で防衛庁の職員の給与を上げるという形でこの八十九億の最後のところを突破して一%を突破しようという作戦に見える。これは余りにも卑劣な作戦ではないかと見えますけれども長官はその点についてどういう感じを持っておられますか、伺いたいと存じます。
  283. 加藤紘一

    加藤国務大臣 最後の党四役折衝で積み上げられました二百十一億円というものが何の根拠もないつかみ金であったような印象をいろいろな方がお持ちのようでございますが、その点はぜひ御理解いただきたいと思いますけれども、そういうでたらめな積み重ねではございませんで、それぞれ防衛庁の方が要求いたしておりまして、ぜひ復活をお願いしたいという中の項目が二百十一億の中で復活されたということでございます。それによって九・五坪の住宅の解消とかいろいろな隊員施策の方ができるようになったということでございます。
  284. 渡部一郎

    渡部(一)委員 昭和五十一年のときに、当時の三木内閣の決定は確かに二つあったわけであります。それは防衛費のGNP一%を守ることとそれから防衛大綱水準の達成というのと、この二つが一週間置いて決定された。この両方を守って頑張るのだということが決議され、そしてそれが方針となって今日まで来ているように思うわけでございます。さて、この双方を守っていくということは現在もまた基本的な方針であるのかどうか、承りたいと思います。
  285. 加藤紘一

    加藤国務大臣 渡部委員指摘のとおり、当時大綱が決定され、それから一週間後、十一月の五日であったと思いますが、一%のめどが決定されたわけでございます。それ以来、政府の歴代の防衛庁長官、それからかなりの内閣においては総理みずからが発言いたしておりますが、一%を守りたいということと、それから「防衛計画の大綱」はできるだけ早期に達成したい、この両方を公約いたしてきたわけでございます。したがいまして、ここに苦しいところがあるのだろうと私たちは思っております。前はこの二つの公約は実は一三・三%ぐらいのGNPの伸びを予想すれば必ず矛盾しないで達成できるという余裕があったのだろうと思いますし、そういう見通しであったと思いますけれども、現在の場合、過去十年間のGNPの伸びが当時予想された一三・三から約半分に減りまして六%台になっているということで、いろいろGNP一%と大綱達成の問題が出てきたのだ、こう思っております。
  286. 渡部一郎

    渡部(一)委員 長官、危険な話を一生懸命なさっているわけでありますが、そうしますと、この大綱水準の達成はここのところ当分見合わせで後ろへ下がる、こういうことを今言おうとされているんだろうと思います。どれくらい下がって達成されるとお思いですか。
  287. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛庁としては「防衛計画の大綱」をぜひ達成したいと思っております。
  288. 渡部一郎

    渡部(一)委員 何年ぐらいのうちに達成される見込みですか。
  289. 加藤紘一

    加藤国務大臣 昨年五月、前栗原長官が五九中業の作成の方針を示したときに、五九中業によって、つまり六十五年までの中期業務計画でございますが、その五九中業においてこの達成を期するように、それをめどに作業をするように言いましたので、したがって五九中業でそのレベルに持ち込みたい、こう思っております。
  290. 渡部一郎

    渡部(一)委員 先ほどからおっしゃっているように、あれ以来景気はますます沈んでいるわけですし、五九中業じゃとても無理だということはもう自明ですね、そうですね。
  291. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五九中業で無理だという意味は、ちょっとわからなかったところがあるのですが。
  292. 渡部一郎

    渡部(一)委員 六十五年に達成するというようなことはとても無理だ、こういうふうに理解してよろしいわけでしょう。
  293. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは五九中業で達成できるように五九中業を今作業をさせてみているところでございますし、五九中業でぜひ達成したい、こう思っております。
  294. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしますと、GNP一%をまた突破しそうになる、こういうわけですね。
  295. 加藤紘一

    加藤国務大臣 一%の問題がどうなるかは作業させてみないと数字はわからないことでなかろうか。とりあえず今作業をさせております。
  296. 渡部一郎

    渡部(一)委員 防衛庁の暗算によりますと、六十一年から六十五年までの間、毎年GNP一%を超えないとこの達成は無理だと言っているのではありませんか。
  297. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛庁は正面装備等を含めた五九中業の作業を、やはり暗算ではやりませんで、かなり正確にやりますので、その数字はまだ出ておりません。
  298. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、数字が出ていないなどというようなことを言われることは信じられない。なぜ信じられないかというと、あれほど大きなコンピューターを持ち、朝から晩まで計算尺を持って計算している人がその後ろにずらりそろっているのに、それほどの数字も教えないで長官をこのような席に出席させるというはずがない。考えられることは、予想答弁としてそういうことは答えてはいけませんよ、渡部議員というのは人の話を釣り出すのがうまいから気をつけるようにというメモが事前に回っているとしか考えられない。それはともかくとして、大綱水準を達成すると我が国防衛政策は何か非常にうまくいくみたいなニュアンスに聞こえるのですね、先ほどから伺っていると。大綱水準というのを眺めていて、特に別表などを見ると、何か恐るべきことが書いてあるのですね。私は、これでいいのかと思わざるを得ない。例えて言えば、この大綱水準で決定されている装備の内容というようなものは非常に古いものである、明らかに昭和五十一年に策定したのだから昭和六十年から見れば九年前の考え方ですね。中身の一部はすりかえる、あるいはある意味の費用を転用するというようなことは考えられるとしても、九年前の安全保障政策をもって今日の安全保障政策を考えるということはとても無理ではないかと思わざるを得ない。我が党がこういうことを言うのは奇異に感じられるかもしれないけれども、事実聞いて驚いたのですけれども、戦車にしても有効射程距離が、例えば日本とソビエトとを比べてみると全く違っておって、長さが日本の方が全然届かないというようなことを聞いたのですけれども、どうでしょうか。
  299. 加藤紘一

    加藤国務大臣 五十一年に「防衛計画の大綱」が設定されたときに、別表において種々の装備の数を入れてございます。しかし、同時に大綱の本文の方にこの装備整備に当たっては今後の諸外国の技術水準の進歩、そういうものの動向によく注目を払いながら、それに対応した装備をやっていくという精神を書いてございますので、それに従って、いわゆる戦闘機にいたしましてもときどきの状況で、最近はF15を入れるようにしているというふうに、質的な向上を図っていると思っていただきたいと思います。  一方、五十一年の「防衛計画の大綱」におどろおどろしいものというような感じが最近どうも持たれております。一%の関係で「防衛計画の大綱」の達成という言葉を言うものですから、それとの関係で論じられるものですから、何かこの大綱自体が大変膨大な防衛力のようなイメージを与えておりますけれども、私たちは決してそうは思っておりません。節度のある日本防衛力はこういうものであるということを一つのたたき台として提示した、そういうものと思っていただきたい。平時からもこの程度のものは持たなければならないというものが「防衛計画の大綱」でございますので、これにつきましてはぜひ御理解いただき、早く達成させていただきたい、こう思っております。
  300. 渡部一郎

    渡部(一)委員 GNP一%の問題で大事なことは、明らかに決められているのが予算の中に占める防衛費の数値であります。質が論じられていない。質は大綱の中で論じられている。したがって、量と質の両面を議論する必要があると私は思うわけであります。ところが、弾を撃って届かない戦車などというものは、幾らつくってみても意味がない。絶対に負けるに決まっているのですから、意味がない。そしてそのようなものはむしろ先方の政府に対して、侵略しょうがな、かわいい戦車がいるな、攻めてみようかなというとんでもない期待感を抱かせ、誘惑を抱かせるものになる。したがって、そのような計画を堂々として表示するということは、おいでなさい、いつでも侵略しなさい、待ってますよというような言葉に聞こえるではありませんか。  先ほど同僚議員の御質問の中で、飛行機三百五十機のうちシェルターのあるものは三十三機と言われた。三十三機のシェルターしかないということは、地上に三百二十機ばかりが並んでいるわけであって、それは近代の戦闘を考えるならば、もう全く意味がない。飛行機といっても意味がない。これはもう飛ぶことが想定されてない、爆破されるために並べてある、おもちゃ以下の存在であるということが言える。シェルターの代金を節約すると、こういうことになる。そうすると、この大綱というのは一体何なのか。大綱というのは要するに後ろへ下がっていく、一%を突破しろと叫ぶ声を聞いていると、全く質の悪いものをともかく数だけそろえてみせるという数合わせの論理、数字合わせの論理にすぎないことを示しているではありませんか。  だから、悪いけれども、そう露骨に言って非常に御気分を害されるでしょうけれども、あなたは量だけを頑張られて質を頑張らない希有な防衛庁長官として歴史に名を残されるだろう、このままほっておくと。これは問題ではないですか。こういう議論では、私、ちょっと聞くにたえないですね。甚だお気の毒にも存じているし、そういうときに長官におなりになったというのをどうお考えになっているか、ちょっと御説明いただきたい。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕
  301. 加藤紘一

    加藤国務大臣 「防衛計画の大綱」に定められております数というものを達成したいと思っておりますし、五十一年当時書かれておりますように、「諸外国の技術的水準の動向」に応じた質の向上、質の面と数の面と両方を達成したい、こう考えております。
  302. 渡部一郎

    渡部(一)委員 さっきからあなたが同じことを言われているのはもうそのお立場上やむを得ないでしょう。だけれども、大綱というものは直さなければならないほど時代におくれ、そしてお金ばかりかかって中身がないということを私は申し上げているわけであります。これは今度の国会の議論の中ではまだ余り追及されておりませんけれども、この次あたりもっと詳しいことを申し上げますよ。これは明らかに長官にとって一時はつらい質問かもしれませんけれども、少なくとも我が国の安全を考えるためには非常に大事な質問だと私は思うからです。  今度は私、申し上げますが、GNP一%といいますけれども、各国のGNP一%の数値を並べてみると、もう甚だ不愉快なほど中身が違っておる。例えばNATO定義で日本防衛関係費を試算すればどの程度になるか、対GNP比はどのぐらいになるか、その辺からまず聞かしていただけるならばお聞かせいただきたい。
  303. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 NATO定義の話がよくあるわけでございますが、NATO定義の中身につきましては、これをちゃんと申し上げますとわからないと申し上げざるを得ないわけであります。わからないと申し上げざるを得ないといいますのは、そのNATO方式というものがNATOで恥の扱いになっているからであります。したがいまして、そのNATO方式の定義がわからないものですから、中身を、NATO方式で日本防衛費を計算してみると幾らになるかということについても積算が正確な意味でできない、こういうお答えをせざるを得ないわけであります。ただ、今私が申し上げましたのは、今まで申し上げました公式的な話でございますが、さらにもう少し何かわからないだろうかということでかねてより勉強はいたしてございます。勉強いたしてはおりますけれども、多分に、何と申しますか、全部が解明できない面もございます。  ただ、多少どうもそういうことではないだろうかということで考えられますことは、問題点が二つばかりあるかと思いますが、一つは軍人恩給の取り扱いでありますし、一つは海上保安庁の取り扱いでございます。軍人恩給の取り扱いにつきましては、NATO方式では、職業軍人とそれから軍属である文官につきましての政府が直接支払う恩給につきましては、どうもNATO定義の国防費の中に入れているやに思えます。ただ、日本の軍人恩給費の中で大変に大きな額になっております戦争被害の補償でございますとか、それからいわゆる徴兵になった人に対します恩給といったものについては、どうもこれはNATO定義の中に含まれておらないようでございます。でございますので、日本におきます軍人恩給の金額をそのまま全部加算して計算しますと過大になるようでございます。でございますので、各国におきます恩給制度というのがそれぞれ違いますから、恩給制度の詳細について分析ができませんと正確な計算ができない、こういうことになろうかと思っております。海上保安庁の経費につきましては、日本の海上保安庁の性格上どうもこれはNATO方式の中には入らないようであります。でございますので、仮に恩給を含めるといたしましても、軍人恩給の中の職業軍人の分、それから文官恩給費の中の軍属の分、こういうことでございますが、これが日本の恩給の中ではただいま分計不能な状況でございますのではっきりとした数字は申し上げられませんが、一・五まではいかない。一・五といいますのは、軍人恩給全部含めますと一・五ぐらいになりますが、そこまではいかない。一・二台の数字になるというようなところなのかなという感じもいたしますが、これはなおもう少し勉強さしていただきましてから、結果がもう少し出ましてから、また御報告を申し上げたいと思います。本日のところは中間的な報告というようなことでお聞き取りいただければありがたいと思います。
  304. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私がかねがねGNP一%の一%というのは過小に過ぎるのではないかということで、我が国ではこの防衛関係費から枠をはみ出して防衛関係する費用というものが散らばっているという主張を繰り返し申し上げたわけでございますが、きょう初めてそれらしいお答えが出まして、旧軍人遺族等恩給費の一部を加えることによって一・二前後というお話が出ましたから、これは非常に明快な数字ではないかと評価しているわけでございます。  ただ私は、これに加えまして、NATOを回ってみますと非常に妙な感じがいたしますのは、私どもが知らないでいたことですけれども、例えば西独におきましては国鉄の一部が明らかに軍事費の中に含まれておる。これはなぜかというと、山岳地帯のところに走っている列車、この部分というものが軍隊の費用に含まれておりまして、防衛に非常に役に立つからというので赤字の部分を補てんしておるわけでありますが、こういうものが補てんされておる。また、アメリカにおいてはいわゆる文教予算、科学技術振興予算、こうしたものが大々的に防衛費の中に取り入れられておる。また宇宙開発の費用がほとんど全額と言っていいほど防衛予算の中に吸収されておる。また私立大学に対する補助金というものが、これは全額入れられておる。またNATOの一部においては高速道路の費用というものがほとんど防衛費の中に勘定されておる、こうしたふうに見えるわけであります。向こうの勘定の仕方が正しいかこっちの勘定の仕方が正しいか別にして、それにそろえて言いますならば、私は幾つかの案が出るのではないかと思うわけであります、  例えば今年の防衛関係予算をGNP比で割りますと、〇・九九七、三兆一千三百七十一億でありますが、ただいまの旧軍人遺族等恩給費が一兆五千七百八十七億、海上保安庁費が千百七十二億、合わせまして四兆八千三百三十億で、GNP比で一・五四%であります。しかし、今申しましたように、科学技術振興費、経済協力費、エネルギー対策費等、我が国でも総合安全保障という立場から論じます際にはこうしたものが経費の中で取り上げられているわけであります。そうしますと、広げて総合安全保障費という観点でこれらの費用をこの場合全額入れてみますと六兆四千二百九十七億、GNP比二・〇四%であります。また、道路整備事業費、港湾整備事業費、空港整備事業費、日本国有鉄道事業助成費、日本鉄道建設公団事業助成費、海運助成費、災害対策総合推進助成費、内閣官房の情報の収集及び調査に必要な経費、公安調査庁、またこのほかに警察の機動隊などは入れてもいいのではないかと私は個人的には思っておりますが、機動隊までいくのはやめまして、これだけを加えますと九兆三千三十八億、GNP比二・九六、大体三%、GNP比三%という数字が出てくるわけであります。  私は、こうした今私が述べ立てたことは防衛庁から答えてもらうようにさんざん交渉したのでございますが、防衛庁は口が裂けてもそういうことを自分の口から申し上げるわけにいきませんとおっしゃいましたので、私が代読させていただきました。ただし、NATOと対比するときにはこういう数値で議論しなければ対比にならないということは御理解いただけるだろうと思います。そうすると、私は、一%が必要だ、一%堅持が要らぬとか要るとか言う前に、一%というと二%の二分の一だとどうしても思う、そしてアメリカと比べて、西ドイツと比べて幾らだというふうになってしまう、これは非常に不穏当なものではないか、こう思っているわけであります。  また逆に、妙だなと思いますのは、今回防衛庁自衛隊の下士官たちを退職させるお金がないからという理由で退職を延期されました。これはどういう費用であるかというと、防衛庁の費用として入るのは不穏当です、むしろこれは失業対策費の中に入れるべきでありましょう。あるいはこういう費用を考えますと、GNP一%というものを名目的に守りながら、防衛関係費をその他の費用に押しつけながら、過大な防衛費を小さく見せかけて平和国家のように見せかけてきた。これは防衛庁の戦術ではないか。中を大きくして外側を小さくしてみせる。そして哀れな小さい軍隊でございますと言い続けることによって対外的な影響にある種の効果を発揮するというように見えるのでありますが、長官、いかがでございますか。
  305. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛費、防衛関係費、こういう言葉でどこまでを指すかというのは諸外国でいろいろな議論があろうと思いますし、また、我が国とNATOは違うかもしれません。それから国によってはいろいろな、技術関係、教育関係、今委員指摘のように土木関係の数値まで含めている国があるかと思いますが、一応私たちの基準で世界で通常言われておりますのが、ミリタリー・バランスなんかに出てくる数値はどうだろうかということだと思います。その数値でいきますと、いろいろの御議論もありましょうけれども、私たちのところは格段に低いのではないでしょうか。アメリカが六・五%、イギリスが五・三、西ドイツが四・一か四・二ぐらいであろうかと思いますので、私たちは、仮に先ほどのNATO方式でいろいろなものを入れても一%台であるということは、やはり私たちの低さを示しているのではないだろうかと思います。いずれにいたしましても、対GNP比のいろいろな数値につきましては、今委員指摘のところを踏まえて私たちも計算してみたいとは思いますけれども、しかし、それは定義が違うということであればなかなか議論の土台にはならないのではないだろうかなと思います。  それから、先ほど退職者の問題もというお話でありましたが、これにつきましては私たちは、隊員生活等も考えながら五十九年度までの、ことしてはなくて五十九年度までの措置であるということを御理解いただければと思います。
  306. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この辺はじっくり議論させていただきますが、少なくとも、GNP一%の一%だから少ないという議論にはなじまない。日本に駐在するアメリカ大使はアメリカの議員たちを前にして、日本のGNP比というものは我々の直観的な観測によると一・五である、こう説明され、テレビでもそれを述べられました。このようなふうに、日本に駐在するアメリカ大使ですらそう述べた。その上にアメリカは、今や科学技術とか文教予算を大々的に軍事費に繰り込むという形で誤りを犯していると私は思いますけれどもアメリカ流に、アメリカの感覚から言いますならば、日本の私学振興費のごとくはことごとくこの中に計上すべきテーマでございまして、そういうアメリカ議論するときは、我が方は三%前後と言うのが適切だろうと思います。こういう状況についてもう少し克明な研究と御調査が要るのではないかと私は思うわけでございまして、この一%の議論をするときにいつも本当に妙な感じがするわけでございます。結局我が国のGNP比一%というのは、枠の中に防衛費が小さくなり過ぎておる。あれも向こう、これもこっち、文部省にも厚生省にも、あるいは建設省にも運輸省にも全部押しつけてある、そして、小さくかわいく見せておる。そして、ある特定の効果を発揮しようとする。私は、それでは正確な議論にはなり得ないなと思うわけであります。  まだたくさん議論があるのですけれども、時間がだんだんなくなってまいりましたから、この続き、もっとしつこい克明な議論は後でさせていただきますが、今回の予算ではGNP一%以内にともかくおさまっておりますし、そういうように努力するという御答弁が続いております。  ここで両大臣にお尋ねいたしますが、今回人事院勧告が出て、補正予算で八十九億の差というのは突破するだろうというふうに言われているわけでございますが、そういうことにならないように努力をしようとされているのかいないのか。また、経企庁長官が今期の景気の見通しを予想されましてあの予算委員会の途中で述べられたことでございますが、現在の状況では名目成長率の見通しは六・五%であると考えて結構だと述べられて、政府見通しの六・一%を上方修正する可能性を明らかにされました。これは後に間違いだというふうに内々で取リ消されたいきさつがございます。取り消されたのです。心配なく。ところが、六十年度の経済見通しにつきまして、国民経済研究協会では六・〇%、三菱総研では三・八%、東海銀行では三・六%。どうやらこの数値は、だんだん国民経済研究協会の六・〇の方に推移しているように指標が見えるわけでございます。もしそうでございますと、GNP一%は、人事院勧告丸のみにいたしましても楽々カバーするというような数字になってくるわけでございまして、その辺は何らかの見通しを持っておられるのか持っておられないのか。また逆の場合、今度はそんなに見通しがよくならなくなった場合、どんなことをしても、人勧を抑えてもGNP一%を守るために努力する、そういうふうに頑張るというふうにお決めになっておられるのか、両国務大臣にひとつこの辺御答弁をいただきたいと思います。
  307. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今年度につきましての政府のGNP見通しが仮に現在の数値のとおり推移いたして、そしてまた五十九年度並みのベースアップが行われ、それがそのとおり閣議決定されたとするならばというような幾つかの前提に立ては、委員指摘のようにことしのGNP比が一%を数字的には超えざるを得ないということは、そのとおりであろうかと思います、しかし、GNPが具体的にどういう確定数値になるのか、それからまた、ベースアップにつきまして人事院がどういう勧告を出し、それに政府がどう対処するのか、この点はまだ不確定要素でございますので、現在の段階では確たることを申し上げられる段階にはないと思っております。  しかしいずれにいたしましても、私たちも、例えば予算の成立した段階でございますので、その後の執行に当たりましてはできる限り節約をしていかなければならないというのは事実でございまして、自分たち気持ちとしましては、昨年努力いたしましたと同じような汗はかかなければならないというふうには思っております。しかし、それがどの程度の限界までであるのかということは確たることは申し上げられることではございません。一%を超えたときに、仮に超えるような事態になったらどうするかということは、私たちまだ考えておりません。そしてまた、仮に万が一そういう事態になりましたらどうするかということにつきましては、その時点におきます国会における御議論、それから従来の政府答弁等を十分踏まえて慎重に決定していかなければならないと思っておりますけれども、いずれにいたしてもこの点につきましては、GNPの一%に関する国会における御論議がこれほど全国民的な話題になり御関心を持っておることでございますので、節度ある防衛費というものについての国民の理解をしっかりいただけるように、本当に誠心誠意を持って国会の場で御議論をしていただかなければならないことになるだろうと思っております。
  308. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 防衛庁長官と同じ見解でございまして、いろいろな要素が未確定でございますから、そういう要素がはっきりした段階で十分政府として慎重に対処しなければならぬと思います。
  309. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そういう要素がはっきりするのは何月ごろと考えてよろしいのですか。
  310. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今後のGNPの見通しや経済の動き、それぞれの数値の発表のされ方、それから政府内の作業等、いろいろな要素がありますので、今ここで確たることを申し上げられる段階にはないと思います。
  311. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この間国会開会中にやりますとあなたの言われたのはどういう意味ですか、あれは会期を膨大に延長するぞという意味ですか、それとも急いでやるという意味ですか。
  312. 加藤紘一

    加藤国務大臣 国会の会期につきましての見通しを政府の立場にいる人間が申してはいけないことだろうと思います。いずれにいたしましても私たちとしては、国会においてしっかりと御議論いただくということはぜひ必要であろう、こう考えております。
  313. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は最後に申し上げますけれども、この一%問題を議論するに当たって、量的な一%の問題だけでなく、大綱の中に規定されているのだからというので、殊さらに中古兵器とか、現状からいって役に立たない装備群一式をそろえることは慎んでいただくように、それはなるべく後にすればいいじゃありませんか。むしろそんなものは捨ててしまう方が私は賢明であると思います、そういう配慮がないで一%をいきなり議論すれば、我が国防衛にとって多大の禍根を残すだけになるのではないか、これを最後に特につけ加えまして、一%堅持のために今後とも汗をかいて努力していただくようにお願いしたいと思います。
  314. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛力整備に関して具体的にどうあるべきかにつきましての御指摘をいただいたわけですけれども、その点も含めまして防衛論議につきまして今後ともいろいろ当委員会等で御議論いただければありがたいと思っております。
  315. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 藤原哲太郎君。
  316. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 まず安倍外務大臣にお伺いいたしたいと思います。  安倍外務大臣の百二国会におきまする発言、外交方針、また今回安全保障特別委員会におきますお話等をお伺いいたしておりまして、日本が戦後四十年間平和憲法のもと平和国家として今日の繁栄を見てきたその足跡について外務大臣一つの方向づけというのは私も理解をするところでございます。世界の平和と繁栄に積極的に取り組み、貢献をする外交を展開するんだ、こういうことでございまして、やはり今平和国家である以上その外交の持つ重要性というのは私は非常に重きをなしておるというように思うのであります。そういう点で、安倍外務大臣が機会あるごとに各国を歴訪されて、そして日本の顔として大いなる努力をされておることについて敬意を表したいと思います。  ところで、安倍外務大臣の所信表明なり今回のお話の中でも、いわゆる創造的外交、これはなかなか耳新しい言葉でございまして、これから二十一世紀に向けて日本が経済大国としてあるいはアジアの指導国として、あるいは世界の中の日本としての立場を考えたときに、この創造的外交の一つの考え方がやはり何かにじみ出てくるような感じもいたすわけでありますが、この機会に、外務大臣のこの創造的外交の考え方につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  317. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私も外務大臣をやっておりまして非常に痛感いたしておりますのは、今お話しのように、日本外交というのが世界の中で非常に重い存在になってきた、また日本外交に対する信頼というものが世界各国の中で大変定着をしてきたということでありまして、これはやはり我々の先輩の外交の積み上げというものが今日のそうした世界の信頼につながっておるのではないか、こういうふうに思っております。  そういう中で、世界は激動いたしております。我が国としましては、今までの日本の外交の基本を踏まえて、激動する世界情勢の中にあって日本でなければできない役割というものを果たすときが来たんだ、そういう立場に立って積極的に自主的にやらなければならない、世界のために貢献しなければならぬ努力というものが今大きく存在をしている、私はそういうふうに認識しております。  例えば、ソ連でもできないあるいはアメリカでもできないというふうな平和への外交が、平和への貢献が日本にも期待をされておる時代じゃないだろうか、そういう点で、私どもは、今までの日本の外交を踏まえて、積極的にそうして自主的に、そうして日本でなければできない平和外交を進めなければならないというふうに私は思っておるわけです。
  318. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 ありがとうございました。  ところで、私ども平和を論ずるときに、アメリカとソ連の二つの大きな二超大国というものが核を初め大きな軍事力を持ちながらそこに相対峙をしておるという感じのものが率直にして感じられるわけであります。そういう中にあって、やはりこの米ソ両超大国というものが同じ平和のテーブルに着くあるいは軍備の管理であるとかあるいは核軍縮であるとかというそういうテーブルに着かせる努力というものが日本の立場からいっても大切であるというように私は考えておったところであります。幸い今度ソ連におきましても、新政権ということでゴルバチョフ書記長が就任をすることになりました。国際感覚を持ち合わせた人物だということの評価でございまして、まあああいう国の体制ですからなかなか一挙に変わるとは思いませんけれども、少なくともそういう新体制のもとで、けさほどのニュースによりましても、アメリカとの首脳会談についての承知をしたというニュースを伺いました。私は非常にすばらしいことであるというように感じておるわけでありますが、少なくともこういうことを踏んまえながら、前には米ソのジュネーブにおきます核の問題についての話し合いが進み、今日ここに米ソの首脳会談というものが開かれるということは、冷戦を緩和し世界の平和の一つの大きな兆しをつくり上げるという立場からいって非常に意義深いものだというように考えるわけであります。  したがいまして、この米ソの首脳会談に日本が直接的に関係することはないわけでございますけれども、この時期は、大体専門家的な考え方――これは外務大臣と違っておったら訂正をいたしますけれども、秋の軍縮会議にゴルバチョフ書記長が出席をしていわゆる核の問題を初めとして今日SS20の配置その他の問題についてのソ連としての立場を主張されるのではないかというように考えるのであります。  こういうような一つの時代的な背景が大きく動く中で、私ども日本としても、例えば日本を取り巻く問題としては朝鮮半島の問題がございます。やはり一番きな臭いと申しますか、アジアの平和維持の上に大きな問題と申しますか、戦争の危険があるとするならば、この朝鮮半島の問題も危険度の一つだ、こう言われておるところでありますが、ここ朝鮮半島におきましても韓国と北朝鮮との間の首脳会談の兆しというものも見られるところでございまして、こういう点ではアメリカ、中国等々と諮りながら朝鮮半島の平和的な首脳会談の促進なりあるいは南北の統一なり、そういうものが促進をできるような、余り内政干渉しますとまたおしかりを受けることになりますけれども、やはり日本アジアの指導的役割というこの立場からいいまして、これらの任務というのは非常に重い、そういう任務があるのではなかろうかというように私は考えるところであります。これら米ソの首脳会議あるいはまた韓国と北朝鮮との関係、そうしてそういうことが日本を取り巻く中国、朝鮮半島、アメリカ、ソ連、これらの国々の中での冷戦を緩和し、そして平和への方向を着実に一歩一歩前進せしめるという一つの一里塚になると思うのでありますけれども、このことについて外務大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  319. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 けさのニュースを私も聞きましたが、米ソ首脳会談が行われる可能性が出てきたということは世界の平和のために極めて好ましいことであると思います。米ソ両国だけではなくて世界の各国がこれを期待しておりますし、日本もこれを強く望むものであります。何とかことしじゅうに米ソの首脳会談が行われることを念願をするわけであります。  その前提として今米ソ間で核軍縮あるいは軍備管理についてのジュネーブの会談が持たれております。この米ソの間には依然として大きな核軍縮、軍備管理をめぐっての意見の対立があるわけでありますが、これらがだんだんと歩み寄りが出てきて首脳会談が開かれるということになればなおさら世界は安定の方向へ進んでいくであろう。今までの世界の不安は何といいましても米ソ間の対立というものが大きな軸となって出てきたわけでございますから、この米ソ間対立というものが首脳会談によって大きく緩和されるということになりますれば、東西間にもいい動きが出てくるでしょうし、そしてまた、これはアジアにおきましてもいい影響が出てくることは間違いない、こういうふうに思っております。日ソ間も、そうした中にあってそれなりの前進が見られることを我々としては期待もいたしております。朝鮮半島の南北の問題も、やはりこうした大きな世界の米ソの動きというものがまさに影響をしてきておるわけでありまして、今南北の対話がこれから再開されるという見通しもついてきたことは、こうした世界的な一つの緊張緩和がここにも微妙に反映されておるのじゃないかというふうにも見ておるわけでありますが、我々としても、やはりこの機会に南北の対話が進んで、最終的には南北におきましても首脳会談が行われて、民族統一という朝鮮民族の悲願が達成されることは、まさにアジアの安定のために最も喜ばしいことであろうと思います。  日本としましても、こうした南北の対話を促進するためにひとつできるだけの努力をしていかなければならぬ、平和環境づくりに協力していかなければならぬと思っております。この問題につきましては、中国が北朝鮮と特に深い関係にあります。また、日本と韓国とは友好親善関係がより緊密になってまいりました。そして日本と中国もまたこれまでにない安定した関係にあります。こうした関係等も十分踏まえながら、日本としての外交努力もいろいろとやりようがあるのじゃないか、こういうふうに考えておりまして、今そういう点で、いろいろと外交のことですから表立った動きというのはないとしても、いわゆるアヒルの水かきといいますか、こうした流れの中でいろいろな胎動というものがあるわけですから、日本としても、そういう中でのこれからの努力を辛抱強く進めてまいる考えであります。
  320. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 どうぞひとつ、日本の出番というものが何か来ておるような感じでございますので、外務大臣としての御検討を賜りたいと思います。  それから次は、やはり貿易立国であります日本として関心のありますのは、中東情勢の事柄でございます。特にイラン・イラク戦争について、少し鎮静化したのではないか、こう見ておりましたところ、またこの一カ月あたりからはますます激化の一途をたどっておる傾向でございまして、このままでは日本の経済にも大きく影響を及ぼさないとは断言できない、そういう事態も生まれてこようといたしておるわけでございます。したがいまして、聞くところによれば、イランからも特使、あるいはイラクからも外務大臣といったようなことで、それぞれの国の関係者も我が国を訪れ、また我が国もこのイラン、イラクの情勢を把握するために外務省局長さんを派遣しておるようでございますけれども、今の関心事は、一つは、今のイラン・イラク戦争というものの実態というものは一体どうなっているのであろうか、例えば陸上の戦闘の状況あるいは各都市の攻撃の現状、あるいはまたペルシャ湾内における船舶の航行等についての被害状況日本の国の船が攻撃を受けまして死傷者を出すというような忌まわしい事件がございまして、日本の船も五隻ぐらいは何か被害を受けておるというようなことでございますが、まずそういう戦闘の状況について、ひとつ御報告を願いたいと思います。
  321. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まず戦闘の状況でございますが、先生指摘のとおり、三月四日イラク軍機がまずアフワズというパイプ工場を爆撃いたしまして、それから一挙に戦火が拡大した。これに対する報復爆撃といたしましてイラン側がイラク第二の都市であるバスラを砲撃したわけでございまして、残念ながらそれから一挙に都市攻撃に拡大したという状況でございます。今までのところ、イランによりますイラクの首都のバグダッド攻撃は既に九回でございます。それからイランの首都テヘラン攻撃が既に十四回でございます。イラクのバグダッドに対する攻撃は、これは爆撃なのかあるいは砲撃なのかあるいはミサイルを使ったものなのかといういろいろな情報はございますけれども、最近の情報ではミサイル攻撃ではなかろうかと言われております。  以上、そういうようなことでございまして、首都攻撃というのが最近非常に激化しておりますし、また、イランの都市は約五十都市が攻撃されております。また、イラクの都市は約三十都市が攻撃を受けるというようなことで、残念ながら相互の都市攻撃というものが現在繰り返されている状況にございます。  それから地上攻撃でございますが、南部戦線で、実は三月十一日の夜からイラン側が数個師団をもちましてハウィーザの地帯に対する大攻勢をかけたということがございます。それに対しましてイラク側は、十四日、十五日大反撃、これは主に航空機を使いまして大反撃いたしまして、双方に相当の死傷者を出しまして、一説によりますとイラン側が約二、三万の死傷者を出した、それからイラク側でも、正確な数字はわかりませんけれども、一方に近い死傷者を出したというようなことが言われておりますが、イラク側は少なくともイラン側の攻撃を撃退しまして、大体現在ではもとの国境のラインに戻って、現在そこで膠着状態というのが地上戦闘の状況でございます。  その次に、ペルシャ湾における船舶攻撃でございますが、これも十二月の末から一月にかけまして相当あったわけですが、一時若干鎮静化しておりますが、にもかかわらず、再び三月末には船舶攻撃が行われておりまして、計十隻がイラン、イラクそれぞれの攻撃を受けているということで、先生指摘のとおり、戦闘は残念ながら激化の状況を依然としてたどっている。  その原因でございますが、イラン側といたしましては少なくとももとの線に戻るということを主張しておりますのに対しまして、イラク側はこの際一挙に全面的な停戦、和平に持っていきたいということで、それぞれの立場が相当食い違っているということもございます。したがいまして、なかなか両者の妥協による解決というめどが現在のところ残念ながら立ってないという状況でございます。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕
  322. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 御説明をいただきまして、どうもありがとうございました。  今御説明を承っておりますと、どうも戦争そのものは勝負がつきにくいという感じ、しかも長期化の傾向を呈するのではないかというように一般的には見られるわけでありまするけれども、しかし、今まで長い年月をかけて、初めは紛争と言っておりましたけれども、今では戦争というようなことにもなっておるわけでありまして、そんなようなことを考えますと、やはり周りから何とか調停をする勢力というものが拡大をしないと、けんかをやっている同士ではなかなか片づくわけではございませんので、国連のデクエヤル事務総長も現地へ飛んで、イラン、イラクに対する調停工作に新たな努力を払うようでございます。また、インド等も外務大臣その他を派遣をいたしまして現地での折衝も積み重ねておるようでございまするけれども、私は今のような現状の中で、このイラン、イラクに対して日本は経済的な関係は持っておるわけでありまするので、そういう面で何とか調停に入ってこれを解決をしていくめどをつけていく、そういう努力もやはり日本がなさなければならないことではないかというように思います。  と申しまするのは、通常ですとアメリカとかソ連とか二超大国が入り込みまして調停役をするのでありまするけれども、実はこの調停役をする二超大国は裏では武器を供与したりいろいろのことをしておるわけでありまして、そういう連中がこの停戦の調停の中に割り入るということはなかなか常識的には考えられないことでございますが、そんなようなことを考え合わせてまいりますると、今いわゆる両国の特使なり外務大臣が来て、その辺の調停への模索ということでお話し合いを進めておられたのではないかと想像するわけでありまするけれども外務大臣としてこのイラン、イラクの調停、これは非常に難しい問題で宗教戦争的なものでもございまするし、非常に難しいものでありまするけれども我が国とのかかわり合いの深い中近東のこの紛争というものを可及的速やかに調停をするということは、私は日本としての一つの大きな役割、使命ではなかろうかというようにも考えるところでございまして、この機会に外務大臣の御所見を承っておきたいというように思います。
  323. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 イラン・イラク紛争は、御承知のようにもう四年半、五年近い歳月を経ておるわけでございます。いろいろの国が調停に入りましたけれども、ほとんど失敗をしている。それだけ両国の紛争の背景というのは根が深いということが言えるかもしれぬわけであります。我が国もその間にありまして、何とかこの戦争を調停して、全面的な平和回復ということまでいかなくても不拡大の方向へ持っていかなければならぬ、むしろ不拡大、縮小の方向に持っていかなければならぬ。我が国は幸いにいたしましてイラン、イラク両国とも非常な友好関係にあります、これは自由主義国家群の中では数少ない、両国とつながりを持った国でありますし、またイラン、イラク両国とも、日本がこれまで手の汚れてない国だ、あるいはまた政治的な野心のない国だということで非常に期待をかけております。私もこれまでイラン、イラク両国の外務大臣にも五回ずつぐらい会っておりまして、努力を重ねてきたわけでございますし、また日本なりの戦争の不拡大のための提案もしてきたわけでございます。いろいろと一進一退はあったわけでございますが、残念ながら今日の状況の中では依然として戦争が続き、またそれがむしろ拡大されるという方向に動いておりまして大変残念に思っております。両国ともまた日本に対していろいろと働きかけもしてきてまいっておりまして、今お話しのようなイランの特使も日本にやってまいりました。またイラクの外務大臣日本を訪問するというふうな動きが続いておるわけでございます。現在デクエヤル事務総長がイランに入っておりますが、どの程度事務総長の仲介というものが功を奏しますか、我々は、やはり国連が間に入ってこの戦争が不拡大、終結の方向へ向かうことが一番理想的じゃないか、国連という存在から見てもまさに最も適切であろうと思っておりまして、今かたずをのんで見ておるわけでございますが、しかしなかなか事態はそう簡単にいくかどうか、必ずしも楽観は許されないと思います。しかし、せっかく日本もここまでイラン、イラク両国との間の太いパイプを築いたわけでございますので、何とかひとつ国連にも協力しながら、また我が国自体の外交の中でこの戦争の不拡大あるいはまた終結に向かって最後まで望みを失わないで頑張っていきたいと思いますし、またこうした日本のこれまでの努力というものが何とかやはり実を結ぶ時期も必ず来るのではないか、そういうふうな一つの念願を持ってこれからも頑張ってまいりたいと思うのでございます。  私はイラクの外務大臣とも先般会ったのでありますが、イラン、イラク両国とも非常に厳しく対立しておりますけれども、聞いてみますと、イラン、イラク両国ともまだ大使館は両国に置いておる。イラクの大使館もイランに存在しておるし、あるいはイランの大使館もイラク、バグダッドに存在しておる。そして、代理大使を皆置いておるということでございます。ですから、両国とも長い戦争をやっておりますが、いつの日かやはり終結というものを両国とも想定をしていることは当然のことであろうと思いますし、私も両国の外務大臣にはしばしば言っておるわけですが、いつまでも戦争をしておってお互いに両国の国民を犠牲にして一体得るところがあるのか、日本だって長い間戦争をしてついにはあの敗戦という事態にぶつかった、したがって長い戦争の中でいつかやはり解決を目指さなければならぬ事態が来るのではないか、またそうしなければ両国の国民にとって不幸じゃないかということを力説しておるわけでございまして、日本もそういう立場でこれからも辛抱強くひとつ、どこまでやれるか、とにかく執念を持って取り組んでまいるという決意でこれからもひとついろいろなことをやってみたいと思っております。
  324. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 ただいま外務大臣からイラク・イラン戦争についての取り組みについて今日まで御努力を願ったお話を承りまして、敬意を表したいというように思います。こういう宗教的な対立をも含めた戦争でございますので、なかなか一挙に解決というのは難しゅうございましょうけれども、今外務大臣の言われましたように、どうぞひとつ粘り強く折衝を重ねていただきまして、そして何とかやはり国連その他の協力を得ながら、日本が平和解決に大いなる力を果たしたんだ、安倍外務大臣の大いなる努力が実を結んだというようになっていただきますることをこの機会にお願いを申し上げておきたいというように思います。  次は貿易摩擦の問題でございますが、先ほど上田委員から大変適切な御質問がございまして、私からまた重ねてということはもうないような形でございますが、ただ、今度の、明日発表するであろう四分野の市場開放を含めまして、今の現状ではこれはまあやむを得ない処置だというように私は思いますけれども、このことが、例えば今度のボンで開かれるサミットなどにおいては一体どうなるのだろうかというのがちょっとございます。例えば、日本政府としてはボン・サミットでは経済問題はできるだけ回避をして事を済まそうというお気持ちがあるようでございますが、この一両日のいろいろのニュースその他を拝見をいたしておりますると、何かこの問題をボンのサミット会議の中でもいわゆる宣言文の中に組み入れようとする、そういう動きもあるやに報道され、うかがうところでございまして、こういうことになりますると、せっかく今村アメリカとの関係では大変な努力をして、何とか貿易摩擦のそういうものを幾分でも緩和をし、そして日米関係に亀裂を起こさないような状態をつくり上げたいという努力日本にとってアメリカという国が非常に大切な国であるという立場で、痛みを分け合うという気持ちからこのような処置がとられたものだと私は思います。そういう意味におきまして、このアメリカ並びにEC諸国あるいはまたこれと関連をいたしまして、アメリカにそういうことならばASEAN諸国もこれは同じような平等な立場をとってほしいというのも、これまたそこの国の願いでもあるというふうに私は思うのですね。したがって、その辺のところを含めて対処せざるを得ないのではないかというように思うわけでございます。  米国の対日報復的な動きに対しましても、一部ワシントン・ポストなどでは米国の貿易赤字は日本の責任ではない、こういうことを言いながらも、日本は米国を助けていないというような見解を示して、いわゆる日本がただ悪いんだ、悪いんだということじゃないけれども、しかし日本もこういうときには助けてほしいというような意味合いのことをも論説をしておる様子でございまして、いろいろな角度から日本に対する理解なり、あるいはまたこういった過激な動きに対しても、それをチェックしようという機能も動いておるようでございます。そういうさなかではございまするけれども、先ほど私、前段申し上げましたような、少なくとも基本的な立場に立っての今回の日米貿易摩擦を解消をして、日米新時代をつくり上げ、そして痛みを分かち合う、そういう日米関係をつくり上げたい。そういう気持ちの上での今回の処置だというように伺うのでありますけれども、このことについての外務大臣の総括的なお考えを承っておきたいと思います。
  325. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まさに、基本的な考え方につきましては、藤原さんと私と全く一致しておるわけでありまして、貿易摩擦といった問題で日米間に大きな基本的な亀裂を生じてはならないと思いますし、あるいはまた日本とECとの関係の全体を損なってもならないし、さらにまたASEANとのせっかくのいい関係がここでまた逆戻りをするということになってもならないと思うわけでございます。そのためには日本としてもやるべきことはやらなければならない、また諸外国に対しても求めるべきことはきちんと求めていかなければならぬと思います、日本のやるべきこととしては市場開放をさらに進めていくということでありまして、市場アクセスというものを公平なものに持っていかないと諸外国は満足しない、これだけの貿易の黒字を持っておる日本が不公正な貿易をしたということではこれからの信頼関係を確保していくわけにいかないわけですから、できるだけの市場開放、市場アクセスの改善を図っていくということで、この九日に、日米関係については四分野が中心でございますが、その他のASEAN諸国との関係あるいはまたECとの関係も踏まえた総合的な経済対外政策を発表することにいたしております。そのことによって日本政府のいわゆる自由貿易への決意を明らかにするわけでありまして、これがアメリカからあるいはまたECからあるいはまたASEAN諸国から正確に評価されることを、私としては期待もいたしておるわけでございます。  特にアメリカとの関係におきましては、四分野が中心でございます。この四分野における交渉も大体めどもついてきております。もちろん中には難しい問題もあるわけですが、日本としてのできるだけのことはやってきた。例えば通信機器の問題については、アメリカの十年かかったものを日本は三年でやり遂げるというふうな、そしてECと比べると、日本は全面的に開放したとも言える措置を行うことにいたしたわけでございますし、こうした日本努力というものがアメリカ側に正確に伝わることを期待をしております。今アメリカは、御承知のように、アメリカ政府も日本に対して厳しい姿勢をとっておりますが、それ以上にいわば燃え上がっておるのが議会でございまして、議会はもうこれまで日本を擁護しておった議員たちまでが日本反対、日本批判という立場に回っておりまして、先般の上院においても九十二対ゼロというような、これまでないような形で日本に対する非難決議が可決をされるという状況に相なりまして、さらにまた、マスコミは比較的冷静でございますが、しかしまた、これがいつどうなるかわからないというふうな不安な空気もあるわけでございます。  こうした日米関係を見ると、大変不安でありまするけれども、しかし、日本あるいはまたアメリカにおいても、この経済の摩擦をもって日米両国関係を損なうことになってはならないという良識派も大きく存在をするわけでございますから、我々としてはこの経済対策を進めることによって、アメリカの随分誤解もあり、無理解な点もありますから、誤解、無理解を解いて、そして、とにかくこの貿易戦争を下火に持っていかなければならない。日米関係では非常に大きな、膨大な経済交流がありますから、これでもってすべてが、経済貿易問題で決着するというわけにいかないと思います。これからも続いていく問題であろうと思いますが、こうした問題をあくまでも経済貿易の分野に限った摩擦あるいは対立ということにとどめて、全体を損なわないような形に持っていきたい、こういうふうに思っております。とにかくベストを尽くさなければならぬし、またアメリカにもあるいはECにもあるいはまたASEAN諸国にも、日本はこれだけ貿易に努力をしておる、彼らもそれに対応した努力あるいはまた改善を、貿易あるいは経済の分野でやってもらいたいということを、私たちは強く主張したいと思います。
  326. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 どうも安倍外務大臣ありがとうございました。外務大臣に対する質疑は終わらさせていただきます。  次に、防衛庁長官並びに防衛庁関係について質疑をさせていただきとう存じます。  私は、一国が独立国家として存在する以上、そこに最小限の自衛なり備えということで、独立国家としての体制と申しまするかそういうものを備えることは、もう自由国家でもあるいは社会主義国家でもやっておるところでございまして、しかし日本は御案内のように、平和憲法のもとでの一つの制約の中で、どうして最低限の自衛の備えをし、その備えが国民的支持につながるかというところに、そういう努力をすることが私は必要であるというように思っておるところでございます。  そういうようなことを考え合わせてみますと、今この自衛隊隊員の募集の問題でも、先ほど中川委員からも御発言がございましたけれども、大体何か八六%程度充足率だ、こういうことでございます。しかし、このそれぞれの配置を考えたときに、今のような充足率で果たして本来の機能あるいは使命を果たすことができるかどうか、非常に危惧されるところでございまして、現状の充足率はどうなっているのか。今までの、少し五年ぐらいをこう見て、統計的にどんな状況になっておるかということを、まずお答えをいただきたいというように思います、
  327. 矢崎新二

    矢崎政府委員 お答え申し上げます。  予算上の年度を通じての充足率でございますが、陸上自衛隊の十八万人の定数に対しまして充足率、過去五年を申し上げますと、五十六年度が八六・〇でございます。それから五十七年度から八六・三三%になりまして、そのまま五十八、五十九、六十年度という四カ年間はこの八六・三三%になっておるわけでございます。  この充足の考え方でございますが、先ほども述べさせていただきましたが、基本的には有事における即応態勢充実するという観点から、できるだけ高い充足を確保しておくことが望ましいということは言うまでもないところだと思います。ただ、毎年の防衛力整備を実施するに当たりまして、防衛庁としてはやはり実施をしたいいろいろな事業がございます。例えば装備整備もありますし、後方部門の充実、例えば隊員の隊舎の改善とか宿舎の改善でございますとか訓練に必要な油の確保とか、そういったようないろいろな要請がございます。そこで、そこら辺を彼此勘案いたしまして、限られた財源をどういう優先順位で配分するかということを判断せざるを得なかったわけでございます。そういった判断の結果といたしまして、ここ数年間は八六%強というような状況で推移をしているということでございます。  こういった現状につきましては、私ども平時体制として考えた場合に、有事に緊急に充足しやすい職域、部隊等におきましては、ある程度充足を下げて、教育訓練の実施に支障のない範囲で何とか我慢をしていくこともやむを得ざる措置ではないか、そういう判断で実施をした結果がただいま申し上げましたような数字になってあらわれているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  328. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 今局長お話充足率八六%強、こういうことで平時の場合はやむを得ないというような、一面はあきらめのようなお話でございますが、この自衛官の募集について、やはり私は障害というか、なかなか募集が困難だという点があるのではないかというように思うわけなんですね。そういうものについてどういう把握をしておられるか。例えば八六%、充足率一〇〇%は難しいにしても、いま少し、あと一〇%ぐらいは確保されてもよいのじゃないかというように思うわけなのです。  昭和二十七、八年ごろ、これは私は人数が多いことを言っているわけじゃありませんけれどもアメリカとの話し合いの中で、陸上の勢力というものは三十三万程度というような話が行われたことがあって、これは池田特使がアメリカとの話の中で、今のような日本の制度上の条件、いろいろなことがあってそういうことは無理だ、こういうようなことで定数を決めた経緯もあるわけでございますけれども、やはり充足ということについては、何か具体的に障害があるのか、こういうことについて聞きたいのであります。  実は、私はある隊友会の会合に出させていただきました。その隊友会の会合の席上、隊員の募集の話が出てまいりました。そのときに何かいわゆる失業者を集めるような感じの募集のお話がございまして、私はそのときに非常に残念に思いましたし、同時に、この責任は政治を預かる我々にもあるのだなという気持ちで実はおったのであります。やはりそういう国を守る人に対する国民の評価が高まっていきますと――私は若い人たちでも自衛隊に批判する人もあると思いますけれども、やはり一般的な国民的な信頼やあるいはまたそういう後ろ盾というものがないと、なかなか自衛隊というこういう職種に志願する人たちというのは、私は縁故関係であるとかあるいは特殊の人に言われたから行くとかということでなければなかなか志願ができないような状況になっておるのではなかろうかと危惧をいたしておるのでありますが、そういうことについて、私は率直に感じたことを言っていただきたいというように思うのであります。そういう一つ一つを国民に知らしめることによって、国民のための自衛隊、国を守る自衛隊というものが、そしてしかも国民のとうとい税金を使っておるとうとい自衛隊であるという、そういう認識度というものが高まってくるのではないかというように私は思うわけでございまして、この辺の見解を伺っておきたいと思います。
  329. 矢崎新二

    矢崎政府委員 私からまず一般的な状況について御説明を申し上げたいと思います。  最近、近年の募集の状況と申しますのは、募集に対しまして二倍以上の応募があるというような状況でございまして、現在採用いたしております隊員の質は、非常に高い、良質の隊員を確保し得ているというのが現状のように認識をいたしております。  どうしてその充足率が八六%強でそのまま推移しているかという点につきましては、結局のところ、先ほども申し上げましたように毎年度の予算編成の過程におきまして、やはり優先順位の選択というようなことから、他にどうしても実施しなければならないと判断されるような項目が多々ございますので、やむを得ざる結果として充足率の方の引き上げまでに手が及んでいないということでございますので、その辺はぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。  なお、具体的な問題につきましては、担当の政府委員から御説明申し上げます。
  330. 友藤一隆

    友藤政府委員 それでは、私の方から募集の状況について御説明をいたします。  自衛官の採用者のうち最も大きな比重を占めますのが二士男子でございますが、毎年約二万人程度の募集をいたしておりますが、先ほどの答弁にもございましたように従来から二ないし二・五倍の応募者を得まして、常に所期の募集目標は達成をしておるところでございます。  募集の内容でございますが、私どもとしましてはやはり適応性と耐久性に富んだ優秀な若者を多数募集をするということが望ましいわけでございまして、できるだけ新規に高校を卒業する人の中から応募者が出ることが望ましいということで、これには在学中ということでございますので、学校に対する広報を行いまして、私どもとしては学校を通じて募集をしてまいるということにも大変重点を置きまして、学校にも積極的に協力をお願いし、広報も実施をいたしてきておるわけでございますけれども、残念ながら現在のところ十分な協力が得られておりません。現在、学校を通じまして高校の新卒で入ってまいります隊員は大体四、五%というような実情でございまして、ほとんどは今御指摘がございましたように、広報員の広報等によって応募してまいるというのが実情でございます。  この面では、確かに先ほどお話がございましたように、防衛についての認識なり御理解が進めば募集には相当改善を見るものと思われますけれども、ただ、募集が一般的に困難だという原因といたしましてはほかにもいろいろございまして、例えば二士の場合は任期制ということもございまして、短任期、二年ないし三年、これは継続はできるわけでございますけれども、やはり精強性という意味合いからそう長く勤めるというわけにもまいりませんので、終身雇用制度が大体一般的でございます日本の雇用状況の中では、職業選択の方法としてはなかなか若い方には難しい部分ではあろうかと思いますし、そのほか、大学の進学率はやや低くなっておりますけれども各種学校等においては非常に高くなってきておるというような問題。したがいまして、高枝を出ましてからもいろいろと勉強をしたい、あるいはその方向の仕事につきたいという方も多うございますし、さらには地方の方では地元志向と申しますか、できるだけ地元で就職をしたい、自衛官の場合はあちこち異動しなければならない、こういうような事情がございまして一概にはなかなか言えないところもあるわけでございますけれども、私どもとしてはできるだけ学校を通じた新卒者が自衛隊へたくさん応募していただけるように今後とも努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  331. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 わかりました。今問題点についてのお話がございましたが、改善をするように希望をいたしておきます。  それから、今もお話がございましたけれども、これからの時代というのはどちらかというと量から質への時代になってくるんじゃないかと思うのですね。私は、新進気鋭の新長官、大変すばらしいと思っておりますけれども、そういう点では新時代に合う、そういう体制の改革と申しますか、そういうものもひとつ長官時代にお考えをいただいたらよいというように思うのですね。やはり通信にしても情報にいたしましても近代兵器にいたしましても、日進月歩に物すごく進んでまいるわけですね。そうしますと、今までのような陸上の兵隊が数の上で必要かどうかということも再論議をしなければならぬ時期が来ると私は思うのですね。人そのものが少なくてもよい、それだけのものができる状態というものが実際はできてくるのではないかというように考えるわけでございまして、そういう量から質への転換の時代がまさに訪れてくるのではないか、そういう転換をしなければならぬのではないかというのが一つであります。  もう一つは、今いみじくも人事局長さんですかお話がございましたが、自衛官の高齢化の問題がございまして、終身雇用制をとっておられるわけですが、これは軍隊の経験者の方ならどなたも知っておるのですが、やはり五十歳を過ぎて本当の戦闘に役に立つかどうか。――これはもちろん戦争がないことが前提でございますが、自衛隊が存在し、国の最低の備えをするという建前で申し上げておるわけでありまして、そういう意味からいえば、やはりある一定の年齢のときに他の会社に移ったりいろいろすることができるような状態も、今のように非常に社会が流動的でございますと、多様化されておる社会では一生かかって自衛隊にいなければならぬということはないのではないか、こういうようにも考えるわけであります。  例えばイギリスとかドイツあたりでは十年とか十五年の中間の任用制をとっておるとか、そんなようなことを考えれば、これは新しい制度の改革の中で少なくとも選択的な任用制とか契約的な任用制、そういったようなものもあわせ検討をされてしかるべきではないか。例えば二十歳ぐらいで入って二十年で四十歳、四十歳になりますと中小企業やどこかで働いても今の年ですと二十年くらい働けますからある程度使いものになると思いますけれども、五十歳とか五十五歳で再就職ということになりますと、実際軍隊で、これは警察でも同じですけれども、物すごく訓練をして一生かけてやっていますと、もうその年代になりますと体そのものが衰えてしまうのですね。普通で、民間で働いているのと違いまして、軍隊で教育訓練を受けながらそれをやっていきますと、自由時間というものがありませんから、やはり人間はある程度自由時間を与えながらやると長生きをしますし、精力も保つことができますが、そういう訓練なりいろいろしていますと、人間には生命力の限界というものがあります、あるいは活力の限界というものがあります、そういうようなことで、この辺のところも私は新しいものとして考える必要があるのではないか。それで、二十歳なら四十で、二十年なら二十年でやめて、そうすると新しい人にどんどん切りかわってまいります。  ではやめた人たちは予備自衛官、いわゆる後方支援の予備軍として置いておく、これは平和時のことでございまするから、予備自衛官の制度というものを今までよりもより拡充して少なくとも現在の現役と同じくらいの予備軍を用意しておくということになれば、四十歳で予備軍に入りますから、一たん有事の場合ではこういう人たちは国のために使える、お願いができるということになるわけでありまして、この辺のことも私は新しい一つの問題としてお考えをいただきたい。  時間が参りましたので、引き続きちょっとこの予備自衛官の待遇の問題と関連してひとつお願いをしておきたいと思うのですが、私の仲間の中で退職をして予備自衛官になっている者がおりまして、小さい中小企業に勤めておる。その中小企業に勤めておりまして五日間の訓練が行われる。この訓練のときに会社に言って、断っていくのでありまするけれども、余りいい顔をしないわけですね。大きな企業なら一人や二人抜け出しても会社の仕事には差し支えありませんけれども、零細企業で一人抜けますと支障を来します。したがって、この辺の、企業者というか経営者に対する理解、またそういう点の待遇の改善の問題等々含めまして、そういう予備自衛官になった人たちが出やすい状態、そういうものをひとつ特段の配慮をしていただきたい。  それから、自分の私見でありまするけれども、今までずっと訓練をして一般のところ、民間の企業に働く、それで果たして五日間ぐらいの訓練で十分かなという感じを受けます。ある程度体をほぐして直したり訓練をするということになりますと、五日間じゃ少なくて十日ぐらいはどうかなという感じもいたしますが、これはともあれとしてこのような感じを受けておるわけであります。  今何点か申し上げましたけれども、それらの諸点にお答えをいただきまして、そして最後に、大変御苦労かけますけれども防衛庁長官隊員士気――長官はお若うございまするから、それぞれ現地に飛ばれての隊員士気を鼓舞するための行動を起こしていただいているお話も先ほどありましたけれども、どうぞひとつ常にそういう陣頭指揮をされるという、この気持ちを持ちまして我が国防衛の先頭に立ちます自衛隊のために御奮闘あらんことを御期待を申し上げまして、最後にそのことを防衛庁長官から御答弁をちょうだいいたしまして、また、細かい質問については各局長から御答弁をいただきたいと思います。以上です。
  332. 友藤一隆

    友藤政府委員 それでは、私の方から任期の問題、予備自衛官の問題等についてお答えをいたしたいと思います。  任期についてはもう少し考えたらどうかという御要望でございますが、御案内のとおり任期制の自衛官につきましては二年ないし三年ということで、この隊員にとりましては、在隊中のいろいろな規律ある行動でございますとか教育訓練等も非常に就職に役に立ちまして、再就職等については大変順調にいっておるわけでございまして、こういった任期については今後とも確保してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、それ以外の曹クラスないしは幹部クラスでございますが、これについては部内でもかっていろいろ議論がございました。確かに、私どもの都合だけで申し上げますれば、四十歳でございますとか四十五歳ぐらいで定年にするというようなことも、精強性という意味ではなるほど好ましいわけでございますけれども、やはり日本の現在の社会の一般的な雇用慣行というようなものを頭に置きませんと、優秀な方になかなかいらしていただけない、こういう問題がございまして、現在、定年延長に見られますように、後方部門も含めまして人材をできるだけ有効に活用していく、こういうことで対応しておるところでございまして、御理解を賜りたいと思っております。  それから、予備自衛官でございますが、訓練の出頭につきましては、各企業に雇用をされておる者が非常に多うございますので、御理解を賜りまして休暇等の取り扱いを受けておる者が多いのでございます。私どもといたしましては、調べましたところ、無給休暇でいらしておられる方もまだ若干いらっしゃるということも承知をいたしておりますので、こういった点につきましては、雇用主等の御理解ができるだけ進みますように、部隊等へ訓練招集時に雇用主等をお招きをして、できるだけ予備自衛官制度についての御理解をいただくというような努力もいたしておりまして、全体としての国防というようなことでございますので、国民各位の御理解の中でこういった制度を何とか維持してまいりたいと考えておるところであります。
  333. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今、各般にわたり、いろいろな深い問題について御質疑いただいたと思います。  量より質を重視すべきでないかという最初の問題点でございますが、これは、委員は人の面でも装備の面でも各般にわたってお考えであろうと思います。私たちの現在の防衛力整備の基盤にあります基盤的防衛力整備というのは、諸外国の状況が数量面においてかなり大きなものであっても、私たちの国はそれに対抗できるような数は必ずしも持てないかもしれぬ、しかし、コンパクトであっても、小さくても、それは少なくとも各般にわたった機能をしっかりと持った、きびきびした、言うならばサンショウは小粒でもぴりりと辛いというぐらいのしっかりとした装備を持とうではないか、そういう発想でございますので、「防衛計画の大綱」という考え方自体がコンパクトでもしっかりとしたものをという考えであったと思います。したがって、その「防衛計画の大綱」に従った防衛力整備は、まずその小さな数もしっかりやるとともに、また、質の面で諸外国の動向にかなりおくれをとるものであったら全く意味がないということは御指摘のとおりでございますので、その点については私たちも十分に配慮を払っていきたいと思っております。それぞれの装備で、どのような意味を持つのか、おくれているのではないか、先ほど渡部委員からもいろいろ御指摘いただきましたけれども、その点につきましてきょうは詳細に御議論する時間はございませんでしたけれども、今後ともこの委員会で御指摘いただければと思います。  それから、より精強性を持つために若い隊員をきびきびとというお話でございますが、一つは、任期制というものをとってその交流は進めているわけでございます。しかし、自衛隊にずっといたいという隊員につきましては、やはり志願制でやっておるわけでございますので、生活設計もありますので、まず五十三歳ぐらいまではということを、内部のいろいろな希望もありまして、精強性との絡みでいろいろ議論がありましたけれども、五十三歳まで延長したわけでございます。したがって、これに伴って、各部隊の運用を精強性が損なわれないようにしっかりとやりながら、これ以上の年齢延長は非常に問題があると思いますので、その辺のバランスを考えながらしっかりやってまいりたい、こう思っております。  予備自衛官につきましては局長が申したとおりでございますが、とりあえず今五日間ということでやっております。有給休暇をとってやってきてもらうものですから、これも余り長くするというのも企業との関係からもいろいろありまして、まず今の五日間をしっかりやること、そして、九〇%ぐらいの予備自衛官は招集に応じて自分で有給休暇をとってきてくだすっている、それも大した手当でもないのに来てくれるというのはありがたいことだと思います。各般にわたりまして私たちはこれからしっかりと隊員士気を鼓舞して、そして、独立と自由を守るというこの仕事に隊員が誇りを持ってやれるように今後とも一層の努力をしてまいりたいと思います。
  334. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 では、終わります。どうもありがとうございました。
  335. 森下元晴

    森下委員長 東中光雄君。     〔委員長退席、椎名委員長代理着席〕
  336. 東中光雄

    ○東中委員 F16の三沢配備関連をいたしまして、御承知のように、F16が核攻撃機であることは、これは八一年の防衛白書の中でも認められておった問題でありますが、今度のこの配備関連をしまして、F16が天ケ森射爆場で核模擬爆弾の投下訓練をやるようなことがあってはならないということで、先日も参議院の予算委員会外務大臣が、そういう模擬爆弾の投下訓練はやらないようにアメリカに慎重に扱うように要請する、こういうふうに答弁されたと聞いておるのでありますが、その点はそういう方向で現実に進めておられるということでよろしゅうございますか。
  337. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この問題につきまして、予算委員会で確かに答弁をいたしたわけでございますが、これらをまとめまして日本政府としての立場を明らかにしたいと思います。  一般的に、米軍があらゆる事態に対応して必要な訓練を実施することは当然であり、米軍が我が国施設、区域において仮に核模擬弾を用いる訓練を行うことがあっても、これはいわゆる核の持ち込みとは全く別個の問題でありますが、核模擬弾を使用しての訓練については、過去において国民の間にある核兵器に対する特別の感情にかんがみ、米軍に対し、そのような訓練に当たっては安全対策上十分な注意を払うこと及び任務の遂行上必要最小限度にとどめることを要請し、また、米側も右を了解した経緯があります。  現時点におきまして、三沢配備されるF16部隊の訓練内容の詳細は明らかではありません。また、現時点においては、米軍が核模擬弾を用いて何らかの訓練を行う希望を有しておるとは承知をしておりませんが、政府としましては、三沢におけるF1配備が円滑に行われるよう、今後必要があれば同様な立場から米側と話し合うことといたしたいのであります。
  338. 東中光雄

    ○東中委員 ちょっとよくわかりにくいのですけれども、要するに、そういうことはしないようにということの申し入れというか、日本政府の態度は変わっていないわけですね。何か最小限度は認めるというようなふうにも聞こえないでもなかったので、読まれたものですから、趣旨がよくわからなったのですけれども……。
  339. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、やはり核模擬弾というのはもちろん核爆弾そのものじゃないわけですから、条約上はもちろん問題はないわけです。ただ、核と名がつけば、それだけで国民の間にも非常にアレルギーがある、日本独特の感じとしてあるわですから、こうしたものを用いてどんどんやられるということになるとやはり無用な不信感というものが起こってくるわけでございますので、実はこの問題については、かつて沖縄返還の際の福田外務大臣答弁もありましたし、さらにその後、宮澤外務大臣のときの答弁あるいは米軍との折衝の経緯もありまして、我が国としましては、米国側に対してこの問題について話し合いをいたしておる、そして全面的にこれをやめろとかなんとかということじゃなくて、やはり米軍も日本の立場というものあるいは日本の国民感情を踏まえて最小限にこれはとどめてもらいたいということを日本側から要請したという経緯があるわけでございます。私としては、そういう経緯を踏まえまして、同時にしかし、今の国民感情というものを踏まえてアメリカ側が、米軍側が適切に対応されるということを期待している、これはこの前の参議院の予算委員会で述べたとおりでありまして、今もその気持ちは変わっておりません。
  340. 東中光雄

    ○東中委員 沖縄の特に伊江島の問題、そこでの核模擬爆弾の投下訓練に関連をして、沖縄返還の際に、今外務大臣言われましたように当時の福田外務大臣は、これは核兵器そのものではない、「しかしながら模擬爆弾といえどもこれは核だ、核の模擬爆弾だというようなことにつきましては、これはもう日本人はアレルギーを持っておる。そういうようなことから厳重にアメリカに申し入れをいたしたい、」それから、「五月十五日」要するに返還ですね、「の前に申し入れをする、それでアメリカに必ずやめるということを約束させる、そういうことをやるということですか。」という質問に対して「いまそういうことを警告を出そう、要請を出そう、こういうことを考えておる」、要請を出したらアメリカとの関係で言えばそれは実現するものだというふうに、今期待と言われましたけれども、あのときはそういうふうになるものだということを総理大臣佐藤さんも言われておるわけですね。その後にやはり投下訓練が続いたということがあって、引き続いて話し合いをするという問題が政府答弁書で出ておるわけであります。  そこで、これは伊江島に関してでありますが、その後、もうファントムは撤収をしました。核兵器の搭載機というのが在日米軍の中にはおらなくなったのでそれは問題がなかったわけですけれども、今度は改めてF16という核攻撃機、核兵器搭載機が配備をされる、しかもそれは沖縄じゃなくて三沢配備をされる、こういう条件で、私たちは二重に危惧を抱いておるわけです。沖縄じゃなくて今度は三沢だということであります。  それで、防衛庁に確かめておきたいのですが、F16はBDU12B、BDU38Bという核模擬弾を搭載できることになっておるということは御承知なんでしょうね。
  341. 古川清

    古川(清)政府委員 お答え申し上げます。  F16の核の訓練弾の詳細につきましては、私ども必ずしも詳細を実は承知してはおらないわけでございますけれども、例えばジェーン兵器年鑑等の公刊資料によりますと、F16というものは大体三つの種類の爆弾を搭載できる。B43、B57、B61という三種類の核爆弾を搭載できる。これに対応する訓練弾といいますものが、B43に対しましてはBDUの8、Bの57に対応する訓練弾がBDUの12、B61に対応する訓練弾がBDUの38、こういうふうに記載されておりますので、私どもは恐らくそのとおりではないかというふうに考えております。
  342. 東中光雄

    ○東中委員 この安保持でも一昨年でしたか一昨々年でしたか楢崎さんが問題にしてここで議論になりました。防衛庁は次期対地支援機としてF16を調査しているはずですね。TO、テクニカルオーダー、TO-1F-16A-1というマニュアルがありますね。これはノンニュークリア、要するに非核の技術指令書です。これは私も今ここに持ってきておりますけれども。これでいけば当然F16も核模擬弾を積載するということはそれ自体もうはっきりしているんじゃないですか。防衛庁、別にそんなことを隠す必要はないんじゃないかと思うのですが、どうなんですか。
  343. 矢崎新二

    矢崎政府委員 技術的な点を御説明申し上げる前に一言お答え申し上げますが、私どもは次期対地支援戦闘機についての機種選定の作業はまだ実施いたしておりません。しばしばお答え申し上げておりますように、国産の可能性が技術的にあるかないかという点についての検討を機種選定の前段階の作業としてやっているだけでございます。したがいまして、特定の機種を対象としての機種選定という意味での作業はしておりませんので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  344. 古川清

    古川(清)政府委員 F16のテクニカルオーダーの点につきましては、防衛庁はこれを入手はしておりますけれども、秘密指定ということになっておりまして、私どもその内容についてお答えはできないことになっております。
  345. 東中光雄

    ○東中委員 持っているけれども、秘密だから言わない、ジェーン年鑑でそれに似たことを言っておく、こういうことなんですか。それはそれでもいいですけれども。  それで、F16が核搭載機として核戦力として配備されたんじゃない、要するに通常任務として配備されたんだという建前ですわ、今三沢に対して。そういう場合でも、核模擬爆弾の訓練を例えば年一回はやるというようなことをアメリカ側では義務づけているんじゃないかというように私たち思うわけです。  それで、防衛施設庁長官は、この間、天ケ森の射爆場の使用条件について、模擬爆弾それから実弾射撃は二十ミリバルガン砲、こういうふうに述べられましたね。このF16は、模擬爆弾訓練をやろうとした場合に、この天ケ森の射爆場での使用条件から言って、核模擬爆弾を使って核模擬爆弾の投下訓練をやることができるのですかできないのですか。
  346. 佐々淳行

    佐々政府委員 お答えいたします。  天ケ森の射爆撃場の使用条件、これが今二十ミリ、ロケットというお話がございましたが、再々御答弁いたしておりますように、二千ポンド以下の爆弾、もちろんこれは模擬弾でございますけれども、これの二千ポンド以下のものならばよろしい、こういう条件になっております。ロケット弾、二十ミリも通常訓練の際は模擬弾使用、こういうことでございまして、実爆弾、実弾は余り使っておりません。  お尋ねの核模擬爆弾については、先般F16三機配備になりましたけれども防衛施設庁といたしましては、どういう訓練をやるかまだ承知をいたしておりません。
  347. 東中光雄

    ○東中委員 この射爆場は、二4(b)の日米共同使用になっていますわ。それについて米軍の使用条件というのが合同委員会の合意で決まっておるわけでしょう。その合意の中に模擬爆弾というのがあるけれども、この模擬爆弾の中には核模擬爆弾は含まないのだということを、昭和四十四年段階で天ケ森について防衛施設庁長官答弁をしていることがあります。それは今も生きておるのか、その後使用条件の変更があったのか、その点はいかがですか。
  348. 佐々淳行

    佐々政府委員 お答えいたします。  三沢の天ケ森射爆場は二4(b)ではございませんで、二4(a)でございました。むしろ自衛隊の方が共同使用させていただいておる、こういう性格のもので、第一義的には在日米軍に日本国政府が提供をいたしました米軍用の射爆場でございます。当時どういう経緯でそういう答弁が出たのか現時点で私つまびらかでございませんけれども、沖縄との関連でそういう質疑があったのではないかと推測いたしますが、先ほど御答弁申し上げましたように、本質的には二千ポンド以下の爆撃訓練、爆弾投下訓練、これは必ずしも模擬弾でなくてもよろしくて、実爆弾を使ってもよろしいわけでございますが、現時点においては二十五ポンドの訓練模擬爆弾を使用しておると承知をいたしております。  先ほど御答弁をいたしましたように、F16の訓練内容につきましては、まだ具体的な話が来ておりません。先般の予算委員会で御答弁申し上げました際も、本州でもって提供されておる米軍射爆撃場は天ケ森だけであり、配備の先が三沢でございますので、この天ケ森を使用することに相なろうかと思いますという御答弁を申し上げたはずでございまして、その訓練内容につきましてはまだ米側から何の話もございませんし、訓練内容そのものにつきましては、せっかくのお尋ねでございますが、実は防衛施設庁の直接の所管ではございませんで、施設を提供した後、日米合同委員会、私どもももちろん代表代理ということで出席はいたしておりますが、日米間の外交折衝によって決まった条件ということで使用をしておる、こういうことでございます。F16についてはまだわかりませんというのが現時点のお答えでございます。
  349. 東中光雄

    ○東中委員 F16についてではなくて、天ケ森の射爆場の使用条件について日米合同委員会での合意ができています。これは外務省の主たる所管のようでありますけれども、そのことについて、先ほど言いました昭和四十四年六月十九日の衆議院内閣委員会での答弁、当時の山上施設長官答弁をしていますので、これは外務省関係でもあるけれども、同時にこれは防衛庁関係でもあるわけです。この答弁によりますと、「三沢におきます演習の種目の中で、二千ポンド以下の模擬爆弾、これには態様について特別の制限がございませんということを申し上げた」、これは前々日ですが、「申し上げたのでございますが、その際、核の模擬爆弾は含まれるかという御質問がございましたのに対しまして、二千ポンド以下の模擬爆弾ということで、その他の制限はございませんということを申し上げましたが、私のことばが十分でございませんで、その後さらに調査いたしましたが、模擬爆弾と申しますときは、通例核の模擬爆弾は含まれないと解すべきであると存じますので、この際」前の答弁を正しく修正をいたしますと、わざわざ修正しますということで言っている答弁があるのです。  これは沖縄の模擬爆弾の問題が起こる前の段階ですね。ナパーム弾の実験に関連してこの模擬爆弾の問題が出ているのです。明白に、模擬爆弾の中には核模擬爆弾は含まないのだというふうに訂正をする、わざわざそこに問題点を置いて答えているのです。それがその当時からの合同委員会における射爆場使用についての使用条件だと、この経過から見ると理解できるのです。だから、沖縄の全面占領をやっていたときにそういう射爆訓練をやっておった、それの継続をどうするかということで先ほど来の福田外務大臣とか佐藤総理大臣の答弁があったわけですけれども、これはそれとは違った、本土における状態で言えば核模擬爆弾は入らないということをはっきり言ってますので、もしそれが変わったというのだったらいつ変わったのか、はっきりしてほしいのです、その点はどうなんですか。
  350. 佐々淳行

    佐々政府委員 お答えいたします。  確かにナパーム弾の使用の問題で議論が行われ、このコースも変わりましてございます。現在は西から東、海上に向かってのみ訓練実施の方向が決められておりますが、当時は南から北ヘナパーム弾の投下訓練が行われたことがございまして、この訓練種目がなくなったということは承知しております。  私どもの承知いたしておりますのは二千ボンド以下の通常爆弾の投下訓練ということで、先生指摘の当時の核模擬爆弾の答弁記録につきましては、現在ちょっと手元にございませんので、今先生がお読み上げのとおりだろうと思います。私どもの承知しておるところでは、三沢における訓練は二千ポンド以下の通常爆弾と理解をいたしております。
  351. 東中光雄

    ○東中委員 通常爆弾であって核模擬爆弾ではないということが使用条件になっておるということですね。それを確かめておけば、あと外務大臣の言われたことは、それをさらに変えていくというようなことがあったらそれはだめだ、最小限にすべきなんだからということになってくると思うのですが、現にそういう協定があるわけですから、合同委員会のそういう二千ポンド以下の爆弾、それは通常爆弾であって核模擬爆弾を含まない、そのほかにもありますけれども、そういう日米合同委員会の合意を変更することはないということを、これは外務省として、合同委員会の使用条件についての合意でありますから、はっきりしていただきたいと思います。
  352. 栗山尚一

    栗山政府委員 天ケ森の射爆場の具体的な提供条件につきましては、先ほど来施設長官の方から御答弁がありましたが、昭和四十四年当時の施設長官の御答弁の経緯等については、突然の御指摘でございますので、私どもも当時の経緯十分に知悉しておりませんので、なお調査をしてみたいと思います。  ただ、一般論としましては、まさに先ほど外務大臣の方から御答弁ありましたとおりでございますので、天ケ森の射爆場の使用条件につきましては、仮に過去において山上施設長官の御答弁申し上げましたような経緯があったといたしましても、今後どうするかという問題につきましては、さらにアメリカ側のそういう訓練の必要性、それからそういう訓練を許容し得るかどうかという射爆場の現実の状況等も十分勘案いたしまして検討すべき問題だろうというふうに存じます。
  353. 東中光雄

    ○東中委員 それだと、沖縄の伊江島等で行われた核模擬爆弾の訓練について政府は相当強い意向で、これは核兵器そのものではないけれども警告する、そこまで言った。その沖縄の問題を、今まで、沖縄返還までは否定していたものを、今度本土でF16が配備されてそういう訓練をすると言い出したら、日米合同委員会の合意書を変えていくことさえあり得るということを今北米局長は言われたように聞こえて、私は非常にゆゆしい問題だと思うのです。  外務大臣、経過はそういうことで、これは日米合同委員会の使用条件についての合意の問題に絡んでくるわけでありますから、趣旨からいってもそういうものは今さら変えることは許せぬという態度で臨みたいという意思表示をぜひしてほしいと思うのです。
  354. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は先般参議院の予算委員会答弁をしました後で、核模擬爆弾について当時の福田外務大臣答弁があって政府とアメリカ政府との間で折衝があったのかどうかいろいろと調べてみたのです。その点に関しまして、昭和五十年ですが、当時の宮澤外務大臣予算委員会で、「昨年の七月でありましたか、八月であったと聞いておりますが、米側から、日本国民の核兵器に対する特殊な感情はよく知っておる、しかし自分たちもいろいろな可能性、その中にはもちろん考え得るいろいろな可能性があると思いますけれども、それに対して常に訓練をしておかなければならないという立場は了解してくれるであろう。したがって、いわゆる模擬爆弾でございますか、その演習について、そういう日本国民気持ちも考えながら、最小限にこれをとどめることを考えたい、こういう答えがございました。」こういう答弁がございます。  これは、まあ米軍が軍隊としての性格上常日ごろからあらゆる演習をしなければならないということは当然であろうと私も思うわけであります。もちろん、日本で核爆弾そのものの演習をするというようなことになれば、核の持ち込みになって安保条約に反するわけですから、そういうことはあり得ないわけですが、しかし軍隊の性格上、核模擬爆弾において演習をするということはそれなりに理解ができるわけであります。しかし日本政府としては、やはり核模擬爆弾といえども核と名がつけば国民に非常にアレルギーが起こってくる可能性がある、だから福田外務大臣の言われるようにこれはやめてもらいたいというのが政府の本意であるということであります。やめてもらいたいというのが本意でありますけれども、しかし今の米軍の性格から言えば、アメリカ側が最小限にとどめたいということになるならばそれも理解できないわけではない、こういう答弁をいたしておるわけであります。  今度の三沢で核模擬爆弾の訓練をやるかどうかは私も聞いておりませんから、今ここで今日の問題について具体的に米軍に申し入れるとか申し入れないとか言う状況じゃないわけですけれども、しかし基本的には、国民感情を十分理解してほしいというのが依然として続いておる日本政府の気持ちでありますし、またこういう中でアメリカ軍が日本の立場も配慮して最小限にとどめたいということも理解をしておるということであります。
  355. 東中光雄

    ○東中委員 もともと核模擬爆弾の訓練が問題になったのは伊江島で、アメリカが全面占領し施政権を持っておったときにそういう訓練をやっておった。そこが問題になって、それをやめろということが五十年段階まで続いてきたのです。返還に際して先ほどの福田外務大臣や佐藤総理大臣がやめるように警告して必ず話し合いでつくのだと言われておったのが、返還に際して質問主意書を出したのに対して政府は、答弁書を簡単に読みますと、   政府はっとに米側に対し、米軍が伊江島で核模擬爆弾の投下訓練を行なっているか否か照会するとともに、仮りにかかる核模擬爆弾の投下訓練が行なわれているとした場合、復帰後は右訓練を差し控えるよう申入れを行なってきた。   これに対し、米側は、米軍要員については常に一定の技術的水準を維持させるため多種・多様の訓練を行なう必要がある旨述べるとともに、核攻撃を受けた場合の対処訓練、模擬弾を使用する訓練などは、安保条約及びその関連取極に照らし、禁止されるべきものではないと考えるとの一般的感触を示している。   しかしながら、政府としては、わが国国民の核兵器に対する感情に鑑み、本件に関し、なお、米側との話合いを続けている。これは政府の答弁書です。  これによりますと、伊江島でのものが日本側が警告をするといろいろ言ったけれども、なお事実上やっているということで、五十年段階ではそういう問題がまだ起こっておった。しかし、七〇年代の末になって撤退したわけです。それで、こういう問題が起こらなくなったわけです。  しかし、ずっと起こっておったのは、あくまで沖縄の施政権をとっておる状態でアメリカがやっていたことを引き続いておった。今度は、本土へ向かって、今までそういうものは全然なかった本土へF16が配備されるについて前の沖縄並みに持っていこうということになりかねないので、核廃絶に向かって、今核兵器の使用なんというのはとんでもないという大きな動きの中で、日本配備されるF16が核模擬爆弾を、核模擬爆弾というのは核爆弾そのものと同じ形をとった、同じ目方のものだと言われているわけですが、そういうものを投下する訓練、使用する訓練をやるということになれば、それを日本が認めるなんというのは断じて許されぬと私は思っているわけです。  そういう点で、三沢を沖縄の伊江島のような方向に行くことを認める発言は、私はどうしても承服するわけにはいきません。今、合同委員会の合意書があるわけですから、それを変更する申し入れがあった場合にはそれはだめだと言う方向で、現にある日米合同委員会の合意書を変えるようなことはやめるべきだと思うのですが、その点に絞って、そういう方向でいくというふうにぜひ明らかにしてほしいと思うのです。
  356. 栗山尚一

    栗山政府委員 先ほど大臣から累次にわたり御答弁申し上げましたのが政府の基本的な考え方であろうと思います。すなわち、一方においては、日本国民の核に対する感情があるので、そういう核爆弾ではないが模擬爆弾の訓練はできるだけ慎んでほしいという日本政府の立場があり、他方において、アメリカ側といたしましては、一般的な訓練の必要があって日本の国民感情を配慮しながら最小必要限度のことは行わざるを得ない、その点については日本政府の理解を欲しいというのが復帰後の今まさに委員指摘の伊江島の訓練問題について日米間に話し合いが行われた結論でございます、  これは沖縄に限りませず、一般的にアメリカの訓練というものに対する基本的な考えであろうと思いますし、これは三沢の場合におきましても、あるいは天ケ森射爆場の場合におきましても――これはまた、天ケ森については全く別の観点から考慮をするということでは必ずしもなかろうと思います。ただ、過去におきます先ほど委員指摘の当時の施設長官の御答弁につきましては、提供条件等につきましてさらに十分検討する必要があろうと思いますので、現段階この場で提供条件は全く変えないとか変えるとかいうことを申し上げることはできません。
  357. 東中光雄

    ○東中委員 とにかく当時の山上施設長官答弁は、今、佐々さんが言われたような二千ポンド以下の爆弾、模擬爆弾というふうに言っていたのを、質問者が違うのですけれども、その中には核模擬爆弾は含まないのですということをわざわざ訂正されているというふうな経過があってのことでありますから、そういう点については、天ケ森についての話ですからね、事は核の問題でありますし、F16は戦域核戦力というふうに八一年の防衛白書で防衛庁が規定した、それが入ってくるということになったときに核訓練を許すか許さないかというふうな問題は、原則的に国会で答弁してきたことでありますから、やはりきちっと追及してもらわないと困るということをはっきり申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので、SDIについて聞いておきたいのであります。SDIについては中曽根総理がさきの首脳会議で、レーガン大統領が非核である、防御兵器である、それから核兵器廃絶につながるものだということで、外務大臣もおられたわけでありますが、研究に理解を示したということでございますが、この間言ってきたワインバーガー書簡というのは、そういう大統領が言っておったSDIの三原則といいますか三つの性格といいますか、ということを当然前提にしてそれへの協力、研究計画への協力といいますか、そういうものを要請してきたというならそれなりにわかるのですけれども、ワインバーガー書簡というのはどういうものなのか。要旨は聞いておりますけれども、そのもの、内容自体がはっきり我々にはわかっていないのです。SDIというのは非核である、防御兵器である、そして核廃絶に向かうものであるということを前提にした書簡なんでしょうか。その点はどうなんでしょう。
  358. 栗山尚一

    栗山政府委員 ワインバーガー長官から外務大臣あての書簡の内容につきましては、従来から御説明申し上げておるとおりでございますが、その中で今おっしゃったような、非核で防御的手段で究極的に核兵器の廃絶を目指すものである、そういう意味におきましてのSDIの基本的な性格というものを改めて説明しておるということはございません。しかしながら、SDIにつきましては、累次政府の方から御答弁申し上げておるとおりに、先ほどの基本的な性格は、ロサンゼルスの首脳会談で大統領及び国務長官からそれぞれ中曽根総理、外務大臣に御説明があったところでございますので、当然そういうことを前提としたものであると理解いたしております。
  359. 東中光雄

    ○東中委員 この書簡要旨によると、一項では「防衛システムを配備するため、将来いかなる決定をする場合においても米国のみならず、同盟国への攻撃に対する安全が高まることを確保するため、」云々、いわゆる防衛だということは書いてあるのです。しかし、非核ということは全然書いてないですね。だから三つあるうちの一つだけ書いてあって、あとの核兵器廃絶ということにつながるのかどうか、つながる計画ということには触れない、非核であるということにも触れないできているということについてはどう思われるのですか。専門家を呼んでただすというのはそういう点をただすということですか。
  360. 栗山尚一

    栗山政府委員 非核で防御的手段であるということは、実は日米首脳会談におきましてレーガン大統領から明言があったところでございますが、その後のいろいろなアメリカ側の責任者の発言に徴しましても、その点は常にと申しますか機会あるごとにそういうものとして説明をしております。例えば、最近でございますと、委員も御承知のソ連の軍事力についてのアメリカ国防省の年次報告が出ましたときに、ワインバーガー国防長官が記者会見をいたしておりますが、その際にも種々SDIに関する質問がございまして、その際のワインバーガー長官のお答えの中にも再度にわたりまして、これは非核兵器による防御的手段というものを考えておるのだということをワインバーガー長官みずから述べておるくだりがございます。  それから、ICBMの無力化、究極的な核兵器の廃絶につながり得るものであるということにつきましては、例えば米ソの軍縮交渉のためのいわば最高顧問的な地位にありますニッツ顧問が方々で講演をしておりますが、その中でも同様の趣旨のことを言っております。したがいまして、日米首脳会談でレーガン大統領とシュルツ長官からありました御説明というものは、そういう機会におきましても累次アメリカ側が一般的に述べておるところと一致しておるものでございます。
  361. 東中光雄

    ○東中委員 SDIについてはエックス線レーザー兵器のようなものだ。アメリカ当局者自身が第三世代の核兵器だというようなことを言っているのもありますね。非核だと言っているのもあるし、はっきりとエックス線レーザー兵器中心になる、そして第三世代の核兵器だというふうに言っているものもある。だから、今度呼ぶというのは、専門家に一体何をただそうとされているのですか。こういう問題について、アメリカの当局者ではSDIが第三世代の核兵器だというふうなことを言っているのもあるけれども、非核であるかどうかということについてただすということですか。今専門家を呼んでSDI計画についてただすというのは、一体何をただすのですか。
  362. 栗山尚一

    栗山政府委員 従来から総理、外務大臣が御答弁申し上げておるとおりに、アメリカが考えておりますSDI構想の具体的な内容につきましては、私ども文献で承知しておる以上の域を出ませんから、我が方の参考に資するために専門家に来てもらって話を聞くということでございます。その過程におきまして、エックス線レーザー兵器というようなものも種々の文献に出ておりますから、そういうものの性格、あるいはそういうものがどの程度研究が進んでおるのかというようなことにつきましてもアメリカ側の説明を受けるということにはなろうかと思います。  ただこれは、アメリカ側の話もよく聞いてみないとわかりませんが、従来私どもが読んでおります文献等によりますと、あくまでもエックス線レーザー兵器というものは、アメリカが研究しておるいろいろな兵器システムの中の一つでございまして、必ずしもそれがSDIにおける中核的な地位を占めるようなものであるというふうにアメリカ政府が位置づけておるということではないと思いますし、また、そういうものが現段階において実際に技術的に実戦配備可能なものになるというところまで必ずしも研究が進んでいるものではない、あくまでも一つ可能性のある兵器システムとして研究されているというふうに承知しておりますので、今回専門家が来ます機会、あるいは今後ともいろいろな機会があろうと思いますが、アメリカ側のいろいろな兵器システムについてどういうふうに考えておるのかということの一環といたしましてエックス線レーザー兵器についても聞いてみたいというふうには考えております。
  363. 東中光雄

    ○東中委員 ワインバーガー書簡というのは本当にわけがわからぬのです。ここで言ってきているのは、三項目ですか、「貴国が関心があれば六十日以内にSDI研究計画への参加についての関心及び本計画にとってもっとも有望と考えられる研究分野へのご示唆をいただきたい。」何を要求してきているのか、何を要請してきているのか一向にわからぬわけです。北米局長答弁でも、求めてきているものは、各種技術分野での共同研究、同盟国の関心のある技術分野の通告というふうに答えられておりますね。そうすると、共同研究というのは、先ほど来言われている汎用技術の提供、これは武器技術じゃないから民間が自由にできるというふうなことを言われているが、そういうものは共同研究ということになるのかならぬのか、武器技術供与をやるということを求めてきているのか、それとは別個の意味の共同研究ということを言っておるのか。この要旨によれば「SDI研究計画への参加についての関心」こういう言い方になっているわけですね。共同研究の要請というふうに一般的に言われておるけれども、書いてあること自体は極めて内容のよくわからないことが書いてある。一体外務省はどういうふうに見ておるのですか。  このワインバーガー書簡という国防長官の書簡が防衛庁長官ではなくて外務大臣に送られてくるというのもおかしなことだし、その中身が一層わけがわからぬ。何を要請してきているのか、この点をひとつはっきりしておいていただきたい。
  364. 栗山尚一

    栗山政府委員 何を要請してきているかということがはっきりしないということはそのとおりでございまして、私どもも、書簡を読みました限りにおきまして、具体的にアメリカがどういう考え方に基づいてどういうことを要請しておるのかということは必ずしもはっきりしないわけです。したがいまして、そういうことも含めまして、今度専門家が来ました場合には十分アメリカ側の考え方を聴取したい。専門家が来ました場合の話題と申しますかそういうものにつきましては、単に技術的な面のみならず、全般の戦略的な意味合いというような大きな問題についてのアメリカの考え方もよく聞きたいと思っておりますが、同時に、書簡に出てきております。そういう技術的な協力可能性というものについてアメリカ側が具体的にどういう考えを持っておるかということにつきましても十分聴取をしたいというふうに考えております。
  365. 東中光雄

    ○東中委員 いずれにしましても、SDI自体が国際政治の中で非常に重要な問題になっておる。しかもそれは、私たちの立場からいえば、宇宙利用を平和目的に限定した国会決議の立場からいっても、あるいは宇宙空間での軍備競争防止の国連決議の立場からいっても、こういうものに、非核で防衛的で、そして廃絶に向かうというような抽象的なことで理解を示したこと自体が問題だと思っておるわけですが、それを今度は、何かわからぬけれども、どういう協力を求めてきておるのかもわからぬけれども、とにかく協力を求めるというような感じの書簡が国防長官から来る。こういうことに対してははっきりと、わからぬ、何を言っておるのかということであるべきだと私は思うのです。これは宇宙への核戦争の拡大にもなりかねない、核軍拡にもなりかねないという点で反対をすべきだということをはっきりと申し上げて、時間でございますので質問を終わります。
  366. 椎名素夫

    ○椎名委員長代理 次回は、来る十七日水曜日午後零時三十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十七分散会