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1985-03-27 第102回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十七日(水曜日)     午前十時三十一分開議 出席委員   委員長 森下 元晴君    理事 小渕 恵三君 理事 椎名 素夫君    理事 三原 朝雄君 理事 上田  哲君    理事 前川  旦君 理事 渡部 一郎君    理事 吉田 之久君       石原慎太郎君    海部 俊樹君       箕輪  登君    森   清君       天野  等君    奥野 一雄君       左近 正男君    神崎 武法君       山田 英介君    藤原哲太郎君       東中 光雄君  委員外出席者         参  考  人         (軍事評論家) 青木日出雄君         参  考  人         (外交評論家) 田久保忠衛君         特別委員会第三         調査室長    鎌田  昇君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件(核軍縮問題)      ――――◇―――――
  2. 森下元晴

    森下委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人といたしまして軍事評論家青木日出雄君及び外交評論家田久保忠衛君に御出席を願っております。  この際、委員会を代表いたしまして、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。当委員会におきましては、国の安全保障に関する件について調査を行っておりますが、本日は、特に核軍縮問題について、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、御意見は初めにそれぞれ三十分程度お述べいただきまして、次に、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。また、発言は着席のままで結構でございますから、よろしくお願いいたします。  それでは、順次御意見をお述べいただきたいと思います。まず、青木参考人からお願いいたします。
  3. 青木日出雄

    青木参考人 青木であります。  いささか変な格好をしておりますが、実は首の手術の直後でありまして、まだ傷が治っていないのでネクタイが結べないのであります。ひとつ御勘弁を願います。  きょうお話し申し上げる要旨は、ただいまコピーをつくっていただいておりますのでお手元に行くと思います。といいますのは、一番初めにちょっと細かい数を書いてありますので、これはコピーの方を御参照願いたいと思うのであります。  申し上げたいことは、今世界には約五万個の核弾頭があると言われておりますが、現在世界で一番関心のある、一番我々が恐れなければならぬのは、核戦争の発生であり、核弾頭使用であると思うのであります。  御存じのように、今月からジュネーブ米ソ間の軍縮交渉が始まっております。確かに核軍縮交渉は始まっておりますけれども、米ソ間の軍縮交渉というのは、第一は戦略核の問題でありまして、二番目が欧州戦域核戦力INFについての問題であります。ところが、これは後でプリントを見ていただければわかると思いますが、現在世界にあります核弾頭のうちで主とするものは、戦場用あるいは戦術用小型核弾頭であります。戦域核あるいは戦略核というのはそれほど大きな数ではない。現在、東西間といいますか地球上をある意味で支配しておるのは米ソ戦略核でありますから、この点では我々も十分な関心を持たなければいけないわけでありますが、極端な言い方をいたしますと、それは米ソ間だけの問題でありまして、日本人を含めまして世界じゅう人間がもっと関心を持たなければならないのは、局地であるいは戦域で使われる戦術用核弾頭ではないか。少なくともそれについては現在いかなる交渉も行われていないということを指摘したいのであります。  二番目には、現在、戦略兵器戦域兵器についての交渉米ソ間で行われております。御存じのように、現在世界核兵器を持っている国は五つであります。そのうちでこの会議に参加していないイギリス、これはアメリカと協議もし合意もしておりますが、そのほかのフランス中国につきましては核軍縮交渉もその動きも全くないということです。特に我々が関心を持たなければならぬと思いますのは、この二カ国は核拡散防止条約にも加入しておりません。中国につきましては幾らがその動きもあるようでありますが、少なくとも現在のところ、フランス中国核拡散防止条約には入っていない。  それで、御存じのように、核拡散防止条約に伴いまして非核兵器国安全保障に関する国連安保理事会決議もございます。アメリカソ連イギリスの三国は、それに基づく宣言もしております。ところが、フランス及び中国の二国については、それらの行為が全く行われていない。少なくとも法的には、国際的にはこの二カ国については野放しになっている状態と考えていいわけです。  現在交渉を行っておりますアメリカソ連以外の三カ国、先ほどイギリスアメリカ合意しておると申しましたが、少なくとも今、会議には入っておりませんので、この三カ国の持っておる核弾頭の量は一九六〇年代初期における米ソの持っている量とほとんど同じであります。ですから、国際的にはこれを規制する手段もなければ、言ってみれば使われる可能性もあるではないか。これらについて何らかの措置をとらなければ、現在、世界じゅう人間が考えております核戦争恐怖から逃れる手段はないと思います。特に一番先に申し上げました戦術核、あるいは戦場核と言ってもいいわけですが、これらの小さな核兵器について、現在我々の知っているところでは、アメリカソ連戦術核については通常兵器化が進んでおりまして、どこを移動する部隊にも、どこを走っております艦船にも搭載されていると考えております。  そういたしますと、これが使用される可能性は一番大きいわけでありますし、また、その使用規制について方法は極めて難しい。拡散しているだけ、それを規制する方法は難しくなります。どこかの偶発によってでもそれが使用されないとは限らないということです。  ただ、小型戦術核戦場核と申しますが、その爆発力は、原子爆弾そのものの原理から言ってもそうなんですけれども、通常原子爆弾をつくりますとほぼ自動的に二十キロトン程度爆発力になってしまいます。二十キロトンより下げるためには、逆に何かの手段方法が要るわけであります。二十キロトンというのは、概略でありますが、一九四五年に広島長崎に投下されたと同じだけの爆発力であります。ですから、我々が広島長崎災厄を考えますと、現在の戦術核あるいは戦場核使用されましても同じだけの被害を生ずるということです。それが膨大な数に上っているということは、それについての何らかの規制措置安全保障措置、そして軍縮措置がとられなければならぬということを意味すると思います。  二番目には、核拡散防止条約についてであります。  日本を含めまして世界の多数の国が核拡散防止条約に署名し、批准をしております。核拡散防止条約を批准した核保有五カ国以外の国は、核兵器を持たないということを宣言したと同じであります。核を持たない国は核を持っている国に対しまして軍事的には明らかに不利になりますので、それについての幾つかの措置はとられております。  ただ、核拡散防止条約を見ますと、核保有五カ国以外の国は核兵器で武装しないことを決めると同時に、その反対の条件といいますか対面する方式として、核を持っている五カ国については核軍備縮小について努力することになっております。現在の米ソ間の交渉というのもその努力の一つと言えないことはないと思うのですが、とにかく努力することを決めていて、それで核拡散防止条約が成立いたしました一九七〇年以来現在に至るまで、世界核兵器保有量は一発も減っておりません、言い方はちょっと極端でありますが。それは月により年により幾らかの変動はございますが、全体の傾向としてはふえ続ける傾向にある。おかしい話であります。核拡散防止条約が成立をすると同時に、核保有国には核軍備縮小の責任が課せられているのでありますから、核を保有していない国はそれを要求する権利を持っているわけであります。  御存じのように、核拡散防止条約というのは五年ごとに見直すことになっております。ことしがその見直しの年であります。ここで内容をもう一度考え直しまして、少なくとも核を保有していない国は、現在世界じゅうが誠実に核を保有しないという約束を守っているわけでありますから、保有している国に対して核軍備縮小するという約束を守るよう要求する権利が当然あるというふうに考えます。  三番目は、では核拡散防止条約核軍備を持たず、将来も核による軍備をしないという宣言をした国、国連では非核兵器国というふうに呼んでおりますが、この非核兵器国安全保障についてであります。  核拡散防止条約ができる直前、一九六八年に非核兵器国安全保障に関する国連安保理事会決議がございます。これによって、核拡散防止条約に加入をした非核兵器国核兵器を保有している国から核による攻撃及び核による脅迫を受けないということを明記しております。現在、世界で非核兵器国の安全を保障している条項はこれ一つだったと記憶しております。  巷間よく、日本日米安全保障条約によってアメリカの核の傘のもとに入っているというふうに言われますが、安全保障条約そのものは、どこを読みましてもアメリカの核の傘が日本にかかっているとは書いていないわけであります。というよりも、核兵器使用についてはアメリカ大統領の権限であります。また、アメリカの法律によりまして、アメリカ戦争をすることに対して承認するかどうかはアメリカ議会決議によります。ですからどこの条約によっても、自動的にそこで参戦をし戦争を継続するんだということは決まっていないわけです。ましてそこで起こり得ますのは、非常に大きな災厄を伴います核戦争でありますから、安全保障条約によって核戦争が自動的に誘起されるということはあり得ないのではないかと思います。  ですから、ヨーロッパ諸国でもそのあたりはいろいろ論議がございまして、NATO諸国は何とかしてアメリカ核兵器とリンクするように、もしヨーロッパ核戦争が勃発いたしましたら、それがすぐにアメリカ戦略核兵器使用につながるという保証がないと、ヨーロッパ核戦争に対する抑止力核戦争からの安全というのは保障されませんので、そこで何とかリンクするようにということを考えております。  ただ、これはNATO諸国だけの問題でありまして、NATOに加入していない国も世界じゅうにはいっぱいございます。NATOに加入していない、同時にアメリカまたはソ連との二国間の安全保障条約も持っていないといういわゆる中立国、これに至っては何の保障もないはずだということであります。では、何の保障もない例えばスウェーデンとかスイスといった中立国は何によって核戦争恐怖から逃れ得るかというと、これは一九六八年の国連安保理事会における決議しかないわけであります。ただこれは、お読みいただければわかると思うのですが、それ自体も今から十数年前にできたものでありますし、そのときの核の技術核兵器技術戦争技術等が現在に適用されるものかどうか、随分問題がございます。核兵器の状況も随分変わってきた。そこで、ことしが核拡散防止条約を見直す年であれば、それと同時に、国連安保理事会決議というものはある意味核拡散防止条約と一体化してできたものでありますから、これを見直すべきだ、そうでないと非核保有国の安全は保障されない、できるならばこれを国際条約にでもするべきだと考えます。  また、安全保障理事会決議と並んで出た核保有国宣言、これは核拡散防止条約安全保障理事会決議を踏まえまして、それを誠実に履行するというような宣言をしているわけでありますが、この宣言をしたのはまたアメリカソ連イギリスの三国だけです。フランス中国は抜けております。これも含めた何らかの措置をとらなければ世界じゅうの核を保有していない国の人間は常に核戦争恐怖におびえなければならないということになります。また、逆の言い方をいたしますと、日本を含めまして現在の世界がかぶっております核戦争から逃れる傘というのは、不十分ながらこの安全保障理事会決議によるものだと考えるべきではないかと思います。  四番目には、ジュネーブにおきます米ソ間の戦略核兵器戦域核戦力交渉についてであります。  現在進んでおります交渉の前提になっておりますのは、米ソ外相による一月八日の共同声明であります。この共同声明の中には核兵器廃絶を期待するというふうに書いてあります。実際に実現するかどうかは別として、核兵器廃絶を目指す交渉というのはまことに結構なことであります。  また、この交渉の中で、戦略核兵器につきましては、すぐ妥結するかどうかはわかりませんが、恐らく米ソ合意に達するのではないかというふうに考えております。これは、一九八三年のSTART戦略核兵器削減交渉でありますが、これについての提案とか両国の反応とかを考えましても、ほぼ行き着く数というのは見えておりまして、交渉妥結の可。能性は極めて強いと考えます。また、ヨーロッパ戦域核戦力についての交渉で、一番の難点はイギリス及びフランスの持つ核兵器をどう数えるか、それを交渉の対象にするかという問題でありますけれども、微妙な言い方でありますが、イギリスは現在それを両国の計算の中に入れることについて合意をしているような形をとっております。ただ、フランスだけは絶対反対でありますが……。この交渉で、戦略核兵器戦域核兵器とを並行して進めて、両方の交渉をリンクさせるというやり方をとっているのは極めて賢明な方法であります。前のヨーロッパINF交渉イギリスフランスアメリカに同調しなかった理由というのは、ヨーロッパ戦域核として数えられるのを非常に嫌ったという経緯がございますので、形の上では米ソ戦略核と同様に扱うという形をとりますと何とか交渉は妥結する可能性があるのではないか。あとヨーロッパの中での核兵器のバランスをどうとるかという問題でありますから、このあたりについては交渉が進展する可能性というのも十分あると考えます。  ところが、この交渉の中で非常に難しいのは、第三分科会にありますSDI宇宙軍縮問題についての会議であります。これは現在まだ行われていない将来の問題を討議するわけでありますから、話としては非常にまとまりにくいであろう。まとまりにくいと同時に、それがほかの第一分科会、第二分科会交渉に、リンクをさせると言っておりますので、影響して、今度の交渉では妥結点までに行くはずである戦略兵器交渉とかヨーロッパ戦域核兵器交渉まで紛糾する可能性がある、そちらの方まで逆にまとまらなくなる可能性があると思います。ですから、SDIについての交渉というのは相当注意して考えないと、米ソ間の核軍縮あるいはヨーロッパ核軍縮、またこれに附帯してアジア核軍縮についても幾らかは話し合われる予定でございますので、これらの軍縮方向に向かうはずのものを壊してしまう可能性がある。ですから、SDIについては相当慎重に扱う必要があるのではないかと考えるのであります。  私、個人的には現在の軍備宇宙まで拡張することは反対でありますが、それは別にいたしまして、今進んでおります交渉とか現在の世界における核軍縮方向から考えても、SDIについては慎重に扱うべきだと考えております。ただ、これは誤解を避けるために特に申し上げておきますが、SDIがスターウォーズなどと呼ばれるように、これは一九九〇年代を目指している計画でありますから夢のような、絵そらごとととられることが多いのでありますが、そうではございません。現在アメリカが主唱しておりますSDIの各項目は、それぞれが既に技術的な基礎をある程度持っておりまして、ある程度の開発も行われているものであります。ですから、現在レーガン大統領が言うように、それがMAD戦略にかわるようなものであるかどうかということには非常に疑問があります。ただ、あれが全く絵そらごとで何の実現可能性もないものと考えるのは間違いだと思います。一九九〇年代にはそれが何らかの形で使用可能なものになる。戦略兵器にはならなくても、あるいは戦術兵器になるかもしれない。宇宙に配置ができなくても、あるいは地上で使うことができるようなものになるかもしれないという可能性はございます。ただ、それがレーガン大統領が言われるように、現在の大量破壊によります相互実証破壊戦略MAD戦略でありますが、これにかわり得るものになるかどうかという点では非常に疑問があります。  技術的にもいろいろな問題があるのですが、一番大きい問題は、現在米ソ間にありますABM条約SDI構想とがどう考えても一致しないということであります。昨年以来レーガン大統領記者会見では、常にSDI構想とその研究ABM条約に違反しないということを言明しております。ことしの一月九日の記者会見では、記者から質問もされないのにレーガン大統領はそれを二回も言っております。これはどちらかといいますと、アメリカ政府も、SDI構想がもし実現をいたしますとABM条約に触れるところが非常に大きいと考えている証拠だと思うのであります。確かにABM条約自体米ソ間の条約でありますので、我々が関知をするところではないわけですけれども、またその附属書の中に新しいABM研究についてはそれを制約しないという条項があるのだそうでありますが、少なくともABM条約の本文の中では、これを配置することは、全く違った形であってもミサイルに対抗する何かの手段を配置することはそれ自体ABM条約に違反をするだろう。二国間条約でありますから、それは二国間が合意をして条約を変えればいいのですけれども、少なくとも現在のところABM条約にこれが違反しないというのは、考え方としては少しおかしいのではないかと思います。特にそのSDIが、実現するかどうか、実際に配置できるかどうかは多大な疑問があるのですが、そのSDIヨーロッパアジア同盟国に対する、というのはNATO諸国日本に対する安全保障にも役に立つということを現在NATO理事会ワインバーガー国防長官が言っておりますけれども、これについてはまことに大きな疑問がある。技術的に考えても、例えばソ連のSS20あるいはそれよりも射程の短い核ミサイルについてSDIが有効であるかどうかというような点で非常に大きな疑問があります。現在のNATO理事会ワインバーガー国防長官が、同盟国SDI研究に参加するかどうか、また参加をするとすれば、何が得意な部門であるかを六十日以内に回答してほしいということを言明しておりますが、これは日本にも関連することでありますので、これについては大きな疑問があり、それをどう扱うべきなのかというのは慎重に当たる必要があると考えます。  あと、いろいろ細かい点もあると思いますが、何をお話ししていいかわかりませんので、一番初めの御説明はこれだけにしておきます。
  4. 森下元晴

    森下委員長 どうもありがとうございました。  次に、田久保参考人にお願いいたします。
  5. 田久保忠衛

    田久保参考人 田久保でございます。  事務の方から核軍縮に関して自由にしゃべるようにというお話がございましたのですが、どういうふうに私の意見を申し上げるか大変困ったわけでございます。  私の申し上げたいことは、まず当面のジュネーブにおける米ソ包括軍縮交渉がどうして再開されるに至ったかということ、次にこの軍縮交渉から私がどういう教訓を得たかということを申し上げてみたい、三番目に日本とのかかわり合い、我々はこれをどういうふうに解釈して日本としてどうしたらいいかというようなことに最後に触れてみたい、こう思うのであります。  まず、ジュネーブ軍縮交渉でございますが、私、外交問題を専門にしておりまして、特に米ソ関係を調べているわけでございます。  細かいことは省きますけれども、まずレーガン大統領でございますが、第一期の任期四年の三年間は、一般的な言葉で申しますと大変タカ派的な色彩が目立ったと思うのでございます。ところが、去年の一月でございますけれども、一月から今日に至るまでがらっと彼は態度が変わってしまった。つまり、俗な言葉で申しますと鬼のレーガンから仏のレーガンに変わったのではないかということなのでございます。  レーガン大統領がホワイトハウス入りいたしましたのは八一年一月二十日であります。大統領になりましてから初の記者会見が一月二十九日に行われた。そのときにはソ連に向かって、裏切り者、うそつきという大変ひどい言葉を使ったわけであります。八三年には悪魔の帝国という表現を使った。このレーガンの口から去年の一月以降こういう激しい言葉はふっつり出てこなくなったということでございます。これは後ほど申し上げます。力を背景にしたレーガン対ソ政策というのは変わっていないわけでありますけれども、アプローチの仕方ががらりと変わったということでございます。  まず、去年の一月十六日でございます。十七日が米ソ外相会談。この一日前に全国向けテレビ放送レーガン大統領ソ連に、ジュネーブ交渉テーブルに戻ってきてくれということを言うわけであります。START交渉INF、もう一つMBFR中部欧州相互均衡兵力削減交渉、これはウィーン交渉でありますけれども、三つの交渉ソ連がボイコットした。これに対してレーガン交渉テーブルに戻ってこいというふうに呼びかけたわけであります。翌日の米ソ外務大臣会議の雰囲気をよくするためにという政治的ねらいもございましたでしょうし、これはかなり真剣な提案であったというふうに私は判断するわけであります。  それから、去年の二月の九日でございますが、アンドロポフが亡くなりました。二月の十四日にブッシュ大統領が今回と何様にレーガン大統領のかわりとして葬儀に出席するわけであります。そのときにチェルネンコ書記長と会った。このときのブッシュチェルネンコ会談は大変和やかな会談であった。その内容に触れることは避けますけれども、チェルネンコの方からなかなかやわらかい提案が二つばかりあったようでございます。  その後でございますけれども、例のロンドンサミットの少し前でありますが、六月四日、レーガン大統領ナンシー夫人を伴いましてアイルランドに行ってダブリンの国会で演説をした。これも対ソ呼びかけ、交渉テーブルに戻ってこいという呼びかけでございます。  ロンドンサミットでは、例の東西関係軍備管理に関する声明が出ております。これも西側七カ国首脳の署名入りの対ソ呼びかけ、交渉再開の呼びかけであります。  それから、まだ細かいことを言うとたくさんございますが、九月二十四日の国連におけるレーガン演説であります。これは一般に言われておりますアンブレラ方式提案であります。レーガンはトウェンティーイヤーズ、二十年間ということを言っております。かなり長期にこの交渉を見ているんだろうと思います。二十年間かかってロードマップ道路地図のようなものを米ソ間でつくるんだというようなことを提案した。これはソ連にとって大変魅力のある提案だったんではないかと私は思うのであります。  御案内のように、九月二十九日、グロムイコ外務大臣がニューヨークからワシントンに参りまして、ホワイトハウスでレーガングロムイコ会談が開かれる。その後、ことしの一月のジュネーブ交渉再開、三月十二日からまた交渉が続いたという大きな流れがここでセットされたと思うのであります。  以上申しましたように、レーガンのピースオフェンシブと言ってもいいと思いますが、ソ連に大変柔軟な路線を続けているということははっきり言えると思うのであります。ただし、この背景でありますけれども、私は幾つかの理由があってそういうことができるようになったというふうに判断するわけであります。どういうことか。  まず第一でございますけれども、昨年の十一月六日レーガン大統領が再選された。これは大変大きな要因ではないかというふうに思うのであります。現在に至るまででございますけれども、レーガン大統領が軍事費をふやしたのではなくて、七九年十二月のアフガニスタン事件をきっかけに前の民主党のカーター大統領が軍事費を大幅にふやした、それをレーガン大統領が継承するような感じで現在に至っているということだと思うのであります。そこで、八〇年度と八五年度のアメリカの軍事費でありますけれども、インフレ率を差し引いて三二%の増になっている。これは見逃してはならぬと思うのであります。具体的に申しますと、M1戦車二千三百六十両、海空ジェット戦闘機八百四機、戦闘艦四十六隻、B1、これは今開発中の戦略爆撃機であります。それからMX、これもレーガンはゴーサインを出した。ただし、これは現在米議会で審議中であります。こういったような、つまりインフレ率を差し引いて三二%と申し上げたのですが、八〇年の十一月は二けたのインフレ率でございますから、ただならぬ軍事費の増を計上している、こういうことが背景になっていると思うのであります。これではソ連交渉の場に出てこざるを得ないだろうというふうに私は判断するわけであります。  二番目でございますけれども、欧州アメリカの中距離核ミサイルを予定どおり配備したということでございます。八三年の十二月から西ドイツ、イギリス、イタリア、最近はベルギーが配備を決定いたしました。ベルギーでは決定の数時間後に搬入されたということでございます。パーシングⅡ・巡航ミサイル、これは確かな数字は持っておりませんが、去年の十一月の末でございます。NATOの発表で百基以上がもう展開されているということでございます。  このパーシングⅡと巡航ミサイルでございますけれども、これを配備する前と後でかなりアメリカ交渉の立場が違うのではないかなというふうに思うのであります。私が例えばソ連の共産党書記長である、それで日本に対して恫喝と言ってはおかしいのですけれども、背景に、例えばシベリアに百三十五基のSS20がある、ゼロ対百三十五、これは私はよほどしっかりした精神の持ち主でないとソ連の前で無力化すると思うのであります。これに対しまして、私は西側諸国の首脳は数字の持つマジックというのをよく知っているのではないかと思うのであります。百三十五基のSS20を百基に減らしてやるから、例えば三沢のF16の基地はやめろと言われた場合に、向こうが三十五譲歩した、よって日本も何らかの譲歩をしなければならぬというふうに考えてしまうのではないかと思うのであります。極端な例でございますけれども、百三十五全部廃止してやる、したがっておまえたちは日米安保条約を廃棄しろと言われた場合に我々はどういうメンタリティーになるか。欧州に中距離ミサイルを配備してしまった、これは私は大変なことだと思うのであります。今百基以上展開されているわけでありますが、このスピードを若干緩めるということも大きなカードになるであろう。凍結は大変なカードになる。減らす、これも大変なカードになる。あるいは全廃というか展開以前の状態に戻す、よってSS20は全廃しろ、こういう要求もできるようになるのではないか。よって、パーシングⅡ・巡航ミサイルの配備を開始する前後、これは劇的な交渉の立場の相違ではないかというふうに考えます。  三番目でございますが、これはSDIでございます。これはただいま青木先生がいろいろこのSDIにお触れになったわけであります。私はSDIは後からちょっと触れてみたいと思うのでありますが、SDIソ連交渉の場に引き出す一つのカードになった、これが西側の大変有力な意見でございます。これがなかった場合に果たしてソ連交渉の場に出てきたかどうか、この中距離ミサイルの配備を計画どおりにやったにせよ、私は大変疑問だと思うのであります。レーガン大統領SDI計画を公表いたしましたのは、御存じのように、八三年三月二十二日であります。これが具体的にどういうことになるか、技術的に非常に難しい点もございますので私は確たることは申し上げられません。これは賛否両論がアメリカにもある状況であります。ただし、これに対するソ連の反応をじっと見ておりますと、大変気にしておる、これは確実に言えると思うのであります。気にしている以上は交渉の場に出てくる。気にしているからこそ交渉の場に出てくるんだということではないかと私は思うのであります。このSDIが三番目の大きな切り札になったということを私は言っていいと思うのであります。  四番目でございますけれども、これは大きな切り札ではない。大きな切り札ではないけれども、極東においては大変重要なファクターというのが米中関係でございます。一九八二年の九月一日でございますけれども、胡耀邦主席が中国外交は独立自主の路線をとると第十二回党大会で明言したわけであります。従来アメリカと接近していた、これを少し離す、ソ連との距離を縮めるという意味合いを持っていたと私は思うのでありますけれども、事実上はそういうことになっているのかどうかということでございます。過去一年ちょっとの間の米中並びに中ソの接触を見ておりますと、どうも軍事的な面の接触が米中間に大変頻繁に行われ始めだということが言えるのではないかと思うのであります。  これはいろいろ申し上げたいのでありますが、一九八三年でございますか、冬、二月にアメリカのシュルツ国務長官が訪中した。夏にはボルドリッジ商務長官が訪中した。それから秋でございますが、ワインバーガー国防長官が訪中しております。去年の一月、超紫陽首相が訪米した。四月にはレーガン大統領が訪中した。それから六月でございますけれども、張愛萍中国国防大臣が訪米しております。それから七月にはアメリカのレーマン海軍長官が訪中している。それから去る一月の十二日から十九日でございますが、ベッシー統合参謀本部議長、クロウ太平洋司令官、その他制服の幹部とともに訪中している。中国人民解放海軍にアメリカの武器を提供する話がついた模様でございます。それから四月には上海にアメリカの駆逐艦三隻が入港する、こういうことになっておる。  私が、日本は直接かかわり合いはございませんが、アメリカの対ソ戦略を見る場合、あるいは中国の対ソ戦略を見る場合に、中米間の軍人同士の接触、こういう接触が中ソ間にあるかどうか、これも眺めてみる必要があるのではないか、かように思うわけでございます。  そういたしますと、今まで申し上げた三つのカードのような大きな力はないかもしれないけれども、アメリカは明らかに中国の軍事力、あるいは中国アメリカの軍事力、これを利用しようとしている。これは歴然たることだろう、こう思うのであります。  以上、いろいろなカードがございまして、アメリカソ連ジュネーブ交渉に引き戻したということは言えると思うのであります。  ソ連側はソ連側で内部の事情がたくさんございましょう。経済がうまくいかない。それから指導者が当時チェルネンコ書記長でありますけれども、病弱であった。それから汚職。これも大変なことである。それからアル中も無視できない状態になってきている。石油の生産がピークに達してしまった、天井をついてしまったということでございますか。それから農産物、六年間の不作である。それから労働人口の不足が目立ち始めた。それから対外的にはアンゴラ、エチオピア、つまり今まで影響力を伸ばしたところがどうもうまくいかない。今回もキューバのカストロ首相がモスクワに行かなかった。何かあるのではないかという憶測が行われている、こういうことでございます。以上から、ソ連はどうしても軍縮交渉の場に出ざるを得なかったのではないかというふうに私は考えているわけであります。  次に、このジュネーブ交渉再開までのプロセスを考えておりまして、私が感じている、これは参考にしなければいかぬなということを二、三申し上げてみたいのであります。  第一は、抑止と均衡でございます。  現在の国際情勢、いろいろな分析の仕方があるわけでありますが、私はどうもこの抑止と均衡というものをきちっと頭に入れておかないと理解できないのではないかなというふうに考えております。つまり、今申し上げました幾つかのカード、これは西側のやはり力の強さでございます。これがあるからこそ、ソ連交渉の場に出てきたのではないかというふうに思うのであります。  私は大変おもしろいなと思いましたのは、二月二十日にサッチャー英首相がアメリカに参りまして、上下両院で演説をふった。そのとき彼女がソ連ジュネーブ交渉の場に出てきたのは我々の善意によるためではない、我々の力によるためだ、これは民主党を含めた上下両院議員の盛んな拍手を受けたわけであります。恐らくチャーチル以後上下両院で演説したイギリスの首相はサッチャーさんが初めてだと思うのであります。このサッチャーの演説には、実に二十四回の拍手が鳴った。二十四回の拍手で遮られたとAP通信はワシントンから打電しているわけであります。私はサッチャーの考え方、これはやはりジュネーブ軍縮交渉を再開させたその理由を雄弁に物語るものではないかなというふうに思うのであります。  二番目に、SDIについて我々も真剣に考える時期が来ているのではないかなということでございます。  ただいま青木参考人、大変御専門でございまして、詳細な説明があったわけでございますが、アメリカでも賛否両論がございます。例えばフォーリン・アフェアーズなんかには、詳しい賛成論と反対論が載っているわけでございます。それから民主党、共和党の間にも意見の相違があるであろう。これは海のものとも山のものとも本当の内容はわからぬと私は思うのであります。ただし、私は最近読みました論文でございますが、今の米ソ交渉の首席代表であるカンベルマンとブレジンスキー、前のカーター政権の大統領補佐官であります。それからロバート・ジャストローというダートマス大学の教授であります。ジャストローはゴダード宇宙研究所の創設者であります。この三人は、申し上げるまでもなく、民主党系の人物であります。この三人がニューヨーク・タイムズ・マガジン、一九八五年一月二十七日号に書いた「宇宙防衛の新時代へ」という論文がございます。これは内調、時事通信の内外情勢調査会で全訳したものを私は手に入れたわけでございます。原文でも読んでみましたけれども、どうも私の主観でございますから、これはお聞き流しいただきたいのでありますけれども、これがどうも賛否両論の中の決定版のような気がするわけであります。  SDI賛成、反対を言う前に、今のMADがこれでいいかどうか、この核抑止の理論でございます、相互確証破壊の理論でございますけれども、現在の均衡した状態でどんどん精度がよくなっていく。こういう状況でしかも検証不能な部分が大変多い。これを放置しておいていいのかどうかというところから、この発想は始まっているわけであります。つまりSDIは今の抑止を高めるものだということをここで盛んに言っておりまして、これがとにかく軍縮のきっかけになりはしないか、軍縮のきっかけとする重要な材料になりはしないかというところから、この考え方が始まっているわけであります。  いろいろ研究、開発、展開と三つに分けまして、研究の段階でございますけれども、これに対して公に反対している国はだんだんなくなってきているように私は観察するわけであります。もっとも最近イギリスのハウ外務大臣が反対表明した、これは反対を表明したのではなくて問題点を指摘したわけでありますが、なぜか報道によりますと反対した、こういうふうになってしまっている。それからゲンシャー西独外相も若干トーンが変わっているわけでありますが、私はここにゲンシャーの発言の原文を持ってきているわけであります。つまりSDIに対する問題点はかなり多い、ただし研究反対する理由はないではないかということでございます。  サッチャー首相が、去年の十二月二十二日だったと思うのでありますが、キャンプ・デービッドでレーガン大統領会談した。その後アンドリュース空港で記者団に配ったステートメントがございます。これはレーガンに伝えたものでありますけれども、研究は支持するということでございます。ただし四点ぐらい縛りをつけている。特に最も重要なのは、展開についてはソ連と十分な協議をしなければいけないのではないか、これは私も大変真っ当な意見だと思うのであります。研究でございますけれども、これはABM条約に違反しないと私は思っているわけであります。  それからもう一つソ連でございますけれども、ソ連ABM条約の違反あるいはアメリカでも報告書が出ているのでありますけれども、これは新聞報道でありますから信憑性は余りないと思うのでありますけれども、イギリスのオブザーバー、これは三月四日付、大変詳しく、ソ連がどういうところで何をやっているか、このレーダーも単なるABMのレーダーではないのじゃないかというようなことが書いてあるわけであります。  いずれにいたしましても、SDI反対するには、ソ連の方に何か文句を言わないでアメリカにだけ言っていいのであろうかという、ここのところも私は非常に疑問に思うということでございます、私は中曽根首相が理解という表現をお使いになった。これは支持でもよかったのではないかなというふうに考えているわけでございます。サッチャー首相が支持、それからコール首相、これは二月のミュンヘンの会議ではっきり支持を打ち出したわけであります。それからイタリアのクラクシ首相でありますが、彼がつい最近訪米いたしまして研究支持ということを言っております。問題はフランスでありますけれども、建前は大変強いことを言っているわけでございますが、フランスも内心は支持の方にかなり近寄ってきている。これはイギリスの新聞あるいはアメリカの新聞の新聞報道でございますが、かなり初めとは態度が変わってきている。そういたしますと、日本といたしましても西側の一員として研究反対するというような態度はとれないのではないかなというふうに私は考えるわけであります。  それから、三番目の交渉に至るプロセスを見ておりましたときの私の教訓でございますが、抑止力、これはかなり、具体的に言ってソ連に真意をわからせるというようなことが大変必要なのではないかなというふうに思うのであります。これはロジャーズNATO司令官なんかがしばしば言っていることでございます。こういうシナリオがわかる。これは別に戦争をしようというのではなくて、ウォー・ファイティング・ケーパビリティー、これを相手に知らせることによって残念ながら緊張の中でつかの間の――つかの間と言うのはおかしいのでありますが、平和を求めざるを得ない、こういうふうに考えなければいけないのではないかと私は思うのであります。  時間がございませんのではしょって申し上げますが、最後に日本のアプローチでございます。これは自由民主主義国、最近西側の一員という表現をお使いにならないというようになったわけでありますが、どういういきさつがあったかは存じませんが、自由民主主義国の一員としての自覚というものは大変必要なのではないかと私は思うのであります。広島長崎の感傷は大変我々は大切にしなければならないのですが、現実の国際政治で日本が何をしているか、X軸、Y軸の中のどの点に我々が位置しているかということをはっきり認識しないと、アメリカそれからソ連、両方の全然外側で評論家――私も評論家でありますが、アンパイア面よろしく右も悪いが左も悪いと言っている勝手な態度に受け取られかねないというふうに思うのであります。民主主義諸国の一員としての自覚が必要ではないかなと私はつくづく思うわけであります。  私、七九年から八〇年までアメリカのウッドロー・ウィルソン研究所におりましたときに、後で私は知ったわけでありますが、たまたま私のすぐそばの研究室にエドワード・ローニー将軍、今のSTART交渉の、ちょっと前まで首席代表であったわけでありますが、彼は浪人中でございまして、私その研究所に一緒におったわけであります。ローニー将軍がしょっちゅう言うのは、米ソソ連側とアメリカの側で野球の試合をしている、アメリカが往年の球威は薄れたが主戦投手、ただピッチャー、キャッチャー、バッテリーをアメリカ側がやっておるので、往年の球威が薄れたので凡フライ、凡ゴロが飛ぶかもしれないけれども、そのときに内外野、友好国、同盟諸国に手伝ってもらわなければいけないということを言っていたわけであります。そのときにたしかローニー将軍は、日本はショートストップだ、ただしこのショートストップはなかなかうまくやってくれないのだ、バッターがバッターボックスに入ってきそうになるとどうもグラブをとって寝たふりをしたがる、その寝たふりをしたがる日本を見てみると筋肉隆々として色つやがいい、ポケットかられがはみ出している、パーキャピタで申し上げますとGNPはアメリカに匹敵するじゃないか、それなのにやはりショートストップの役割を果たしていただけない、大変残念だというようなことを彼が言っていたわけであります。私は、核軍縮に関しましても日本が少なくともピッチャーの足を引っ張らないという努力が必要ではないか、要するに、このポジションをぴしゃっと決めておかないといかぬのではないかなというふうに思うのであります。  それから、第二の私の考え方でありますが、核の全面禁止あるいは廃絶、これは言うことは大変いいと私は思うのであります。大変いいと思うのでありますが、ただし、この軍事力全体の中で核兵器通常兵力を画然と分けて核だけ全廃した場合に後に何が残るか、マイナスした場合に何が残るか。ピストルをお互いにやめようといったときに、やめた相手は日本刀を持っておる、おれはナイフっきり持っていなかったということになりはしないかなというふうに思うのであります。議論を単純化いたしましてまことに恐縮でございますけれども、例えばミリタリー・バランス、IISSが出しておりますミリタリー・バランスであります。アメリカが今総兵員数二百十三万、ソ連が五百十一万、核以外の陸上兵力でございますが、師団数アメリカ十六、ソ連が百九十三、兵員数アメリカが七十八万人、ソ連が百八十四万人、戦車数アメリカは一万二千二十三、ソ連約五万一千、こういうことになっておる。海上兵力も、主要水上艦数アメリカが二百六隻、ソ連が二百九十三隻、これはもう申し上げるまでもないわけでありますが、つまり戦力、核だけを取り去った場合の通常兵力の比較になりますと、アメリカ日本イギリス、それからドイツ、イタリー、こういうところを全部合わせてもソ連に劣るということになってしまいはしないか。そういうところで、これは理想を言うのは大変結構でございますけれども、その結果を少し考えないといけないのではないかなというふうに思うのであります。  これに関連いたしますけれども、核をなくす、この検証はどうか。検証は可能なのかどうか。日本には例えば衛星から写真を撮る技術があるのかどうか、私はよくわかりません。在野の一評論家でございますからよくわかりませんが、この技術があるかどうか、写真を撮った場合にそれをきちっと分析する専門家がいるのか、いればだれなのかというようなことをきちっと詰めた上で主張をすべきではないかなというふうに思うのであります。  それからもう一つ、二つ、急いで申し上げます。  ジュネーブ交渉が始まってからでございますが、どうも日本のマスコミ、これは週刊誌、月刊誌などがこれまで盛んに防衛論争に関心を示していたのですが、こういういわゆる〝デタント〟という言葉でありますが、どうもデタントムードを反映して防衛論争が下火になってきてしまった。注意しなければいけないのは、ジュネーブ交渉というのは宇宙兵器と戦略核戦域核の三つでございまして、通常兵力に関しては何ら交渉のテーマにもなっていない。そこで、日本は自衛の努力を怠っていいのかなというところに大変大きな疑問を抱いておるということを申し上げたいわけであります。  それからもう一つでございますが、このデタントと何らかの関係があるのかもしれませんが、どうもソ連に対する日本のアプローチがおかしいのではないかなというふうに思うのであります。これは政府批判になるかもしれませんが、私は去年の十月に日ソ円卓会議に行ったわけでございますが、日本から言うことは、グロムイコさん来てください、来てくださいのこればっかりであります。秋の国連総会の場でも安倍外務大臣からグロムイコ外相に、東京においでくださいという招待を持ちかけている。それから、ガンジー・インド首相の葬儀のときにも中曽根首相が、チーホノフ首相でございますか、お会いになって、そのときもこういうことを言っておられる。今回のチェルネンコの葬儀にも中曽根総理がゴルバチョフと会ってこの問題を持ち出しておる。来てください、来てくださいと言うことは、だんだんだんだん、向こうからいたしますと、行ってやろうか、じゃこれをやれという条件をつけられるのではないか。私は、対ソ・アプローチというものは自然体でいいのではないか。私は、何もソ連をけしからぬ、ソ連を目のかたきにしているわけではございませんが、外交の本質というものは、みずから値を下げるということはいかがなものかなということを考えておるわけであります。  それから、核軍縮に関しまして、ニュージーランドについても少し申し上げたいわけでございますが、時間を超過したので、後の質疑応答のときに私の意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。  大変乱暴なことも申し上げましたけれども、御勘弁願いたいと思います。以上で、私の発言を終わらせていただきます。
  6. 森下元晴

    森下委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。  午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十分休憩      ――――◇―――――     午後零時三十一分開議
  7. 森下元晴

    森下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑は自席から御自由に行っていただくことといたしますが、議事整理のため、委員長の許可を得てお答えを願う参考人を指名してから御発言をお願いいたします。  なお、発言時間につきましては、答弁を含めまして一回十分程度にお願いいたします。  また、念のために申し上げますが、参考人からは委員に対する質問はできないことになっておりますので、お含みおき願いたいと思います。  それでは、発言希望のある方は挙手を願いたいと思いますが、私から一応御指名をさせていただきたいと思います。まず、上田哲委員からお願いいたします。
  8. 上田哲

    ○上田(哲)委員 両参考人には、お忙しいところどうもありがとうございます。  簡単に一つ意見を伺うことにいたしますが、非常に素朴に、核戦争というものが一体起きるのか。ここまで年間の軍事費が特に核を中心にして八千億ドルともあるいは一兆ドルとも言われるような状態の中では、かえってそのことがくびきとなって実際にはボタンが押せないのではないかという見方というものも一種の自然律とでも言いましょうか、そういうメカニズムというのがあるようにも私は思うのですが、そういう議論では議論になりません。お伺いする形としては、もし核戦争があり得るとすればどういう場合にあり得るのか。青木さんのお話で、言うなれば核競争というのは二つの超大国の戦いである。これは、お話では戦術核戦域核戦略核の区分として出たのでありますけれども、私なりに翻訳をすればそういう言い方もあるのではないかと思いますが、そういうふうに限定した場合に、少なくとも第三国、超大国でないところが引き金を引く要素となることは余り考えられないわけですから、その意味ではどういう場合に核戦争というのが起き得るのか、要因と背景という立場でひとつお伺いしたい。これが一点でございます。  それから、問題のSDIでありますが、これは田久保さんの御指摘のように最初に出てきたのが八三年三月ですから、今回急に出てきたという話ではないわけですね。結局、日本のかかわり合いとしては、この一月のロン・ヤス会談で中曽根さんの発言が出てきたところからにわかに脚光を浴びたということになると思うのですが、そういう意味では、どうしてこの二年の間こういう経過であったものがにわかに脚光を浴びるようになったのか。それは技術論的にSDIというものがそれなりの研究が進んで、実用性とか可能性というものが出てきたというよりも、もっとそれ以上の政治的な背景、要因といいましょうか、そういうものであるようにも思えるわけです。先ほどお二人から、SDI研究可能性というものはスターウォーズという名前で言われているよりももう少し実質的なものがあるというような御指摘があったように思うのですけれども、では、それほど確たるものになっていないという現状と巨大な費用がかかるんだという感覚からすれば、今そんなに具体化すべきものではないように思うわけです。  したがって、繰り返すようですけれども、どうしてここへ来てこんなに注目されねばならなくなったのか。裏返して言えば、それは中曽根発言あるいは日米関係というようなものが他の国々の反応と違って強調されているからであるのかなとなど、その辺御整理いただければありがたいと思います。  最後に、これは田久保参考人にお尋ねしたいのであります。今までのは御両所からお答えいただければありがたいと思いますが、田久保参考人にお伺いしたいのは、サッチャーさんがゴルバチョフ氏に会ったときには、かなりこれについては否定的な見解を表明されたと思います。先ほどのお話で、アメリカに行かれたときの見解としては百八十度違ったような御発言だったというふうにお話があったと思うのですが、どの辺に真意があるのか、あるいは誤報であるのかあたりもお話ししていただければありがたいと思います。以上でございます。
  9. 青木日出雄

    青木参考人 まず核戦争可能性なんでありますが、歴史的に考えまして、大量殺人兵器とかあるいは残虐兵器の使用停止というものは、通常はその兵器ができて、使われて、結果がわかったときにすぐ行われているわけです。  古くはダムダム弾の使用停止。これはまだイギリス植民地時代のインドのダムダムで使ったときに、直後に使用禁止の決議が行われている。それから毒ガスについても、第一次大戦でドイツが使いまして、これも直後、約一年で禁止決議ができたと思うのです。ところが、不思議なことに核兵器についてだけは、一九四五年に二発使われまして、その結果どこからも禁止の決議が行われなかった。それからもう四十年たっておりまして、その間禁止をするような協定も条約も何もないわけですね。ですから、今までの兵器の歴史からいいますと、こういう途中ではっきりした禁止決議のないものは使われる可能性があるものと考えでいいのではないか。  その次は、毒ガスにつきましても第二次大戦の終末期ごろには相当の貯蔵量があったのですが、それに比べましても核兵器の貯蔵量は非常にふえておる。これだけふえたものが使われないで済むであろうか。これは数の上からいうと、どうも使われそうだということになると思うのです。  三番目には、現在核兵器は使われない兵器になるのではないか。それは余りにも大きな被害を及ぼすので、もし米ソ間で核戦争が戦われれば両方とも共倒れになってしまう。  確かにそうなんですが、そういう理屈で使われない兵器と言われるのは戦略核兵器でありまして、戦域核兵器とか戦術核兵器はそうではあるまい。どちらかといえば、アメリカソ連もそうなのですけれども、通常兵器化をねらっておりますし、それから各部隊とも装備の中に核兵器は含まれてしまっている。例えば、アメリカ海兵隊の上陸作戦のマニュアルで核兵器の携行量をはっきり示してあるわけです。例えば、核砲弾が幾ら、核地雷を幾ら持っていくということをマニュアルの中で示してあるくらいです。これはアメリカのマニュアルを見たからアメリカの例を引くのですけれども、そのほかの国でも、核を持っている国は戦術核兵器についてはやはり同じ扱いをしているのじゃないか。そうしますと、局部的には使われる可能性というのはふえこそすれ減ってはいないと思うのです。  それで、先ほど言いましたように米ソ間で全面核戦争が起こる確率というのは極めて少ないだろう。特に、その中でも核戦争が起こって一番耐えられない国はアメリカであります。核を保有していない国では恐らく日本だろうと思うのですけれども、アメリカが一番弱味がある。それだけに逆にソ連に対する優位を求めてそれを抑止力にしようとするわけですが、そういう状態からいうとアメリカソ連の間の全面核戦争というのは起こらないかもしれない。ところが、両者の戦略核兵器と切り離された状態、今のヨーロッパで非常に心配しているのは、アメリカソ連の本土には関係ないという状態で、地域的にとか前線にとかで使われる可能性というのは逆にふえているだろうと思うのです。  小説とか映画を例に引くのは余り好ましくないのですが、「ザ・デイ・アフター」という映画があった。あの映画の中で、割に初めの方ですが、あれは西ドイツで核戦争が起きたときから始まるわけです。そのときにあの画面の中でテレビが出てまいりまして、テレビの解説者が、これが全面核戦争になることはないだろう、これは表現が余りよろしくないのですけれども、アメリカはハンブルクとシカゴを置きかえるつもりはない、そういう説明をしているのです。ですから、たとえハンブルクがあるいはフランクフルトが核兵器で壊滅をしても、それとリンクしてアメリカが立ち上がって、結果としてシカゴを壊滅させるつもりはないという言い方です。では、アメリカはどうしたかというと、いわゆるカウンターフォースという形なのですけれども、両方の核基地をたたき合うということであの映画は終わっているわけです。それは一般的な感情だと思います。そういうことで全面核戦争が起こる確率は非常に少ないけれども、局地あるいは前線での核使用というのは起こり得る可能性が高いだろう、それは特に米ソ両国とも、艦船にしろ部隊にしろ核兵器を分散し過ぎてしまっているということにあると思うのです。  それから、次に起こり得ますのが今の核拡散防止条約に違反をしましてどこかの国が核兵器を持ったとき。よく例示として挙げられますのがイスラエルとか南アフリカであるわけですが、実際に疑いもあるわけですね。これも御存じだと思いますが、SDIが出ました一番初め、一九八二年にヘリテージ財団から出た「ハイフロンティア」という本であります。これに書いてあるのです。それから、八三年にフュージョン研究所から出ました「ビームディフェンス」という本にも出てくるのですが、その当時はまだSDIという言葉はございませんでバリスティック・ミサイル・ディフェンス、BMDという言葉だった。それをビーム兵器とか高エネルギー、高速度兵器を使ってディフェンスしなければならないのは、米ソ間の核戦争を考えているからではない、第三国から不正規に飛んでくる核ミサイルがあったときにそれをとめなければならないのだという書き方をしているわけです。これは米ソともに利益になることだという説明です。というので、一つは現在核防条約にも入っていないフランスとか中国の核が使われる可能性というのを少なくともアメリカソ連は大分恐れているようです。  それから、それ以外の国で核の敷居に達している入り口国というのが世界で九カ国とか十一カ国とかと言われますけれども、可能性のある国が随分ございますので、それが持ったとき、それが持って非常に不利府立場に追い詰められたとき。イスラエルとか南アフリカが例に出るのはそのためなのですが、このときに何かを使おうとするかもしれない。それも単に自分の生存を守るためというだけではなく、それを国際的に問題にするためで、本当はイスラエルや南アフリカにアメリカが核攻撃されるというのは理論的にはない、国際情勢からいってもないのですけれども、逆にそれを引き込むためにそういう核の使われ方をするかもしれないというのが「ハイフロンティア」や「ビームディフェンス」に書いてあることなのです。  ですから、そういうことでいろいろな形で核兵器が使われる可能性は、現在もあるし逆にふえつつあるのではないかと考えます。
  10. 田久保忠衛

    田久保参考人 二つございまして、第一点、米ソ絡みの核戦争が起こり得るか。これは非常に起こりにくいだろう、可能性は非常に小さいだろうと思います。ただいま青木先生のおっしゃったとおりだと私は思うのであります。その場合に、今の米ソの核がバランスしている、このバランスを崩すようなことはまずい、軍縮も相互にレベルを下げていく、片方だけを下げるのではなくて、両方バランスのとれた下げ方をしないといけないのではないかと思います。  青木先生のおっしゃったもう一つの点なのでございますけれども、アメリカが非常に使いにくいというのは、民主主義国家と共産主義国家、全体主義国家の違いというものがあると思うのであります。アメリカが何かやろうとしても、フリープレス、自由な新聞、その他世論が見張っていて、例えば反核運動、実は非常におもしろいあれがあったのですけれども、後で申し上げます。  今フランスでベストセラーズになっているのですが、これは英語にも訳されているジャン・フランソワ・レベルという政治評論家が書いた「民主主義はいかに消滅するか」という題の水なのですけれども、民主主義国家においては反核運動というものは非常に英雄視されて、こっちの方が声が大きく聞こえる。民主主義国家というのは、民主主義国家そのものを否定する勢力に関しても寛大である、したがって民主主義そのものを否定しようという勢力が行動に及ばない限りはこれを認めているわけでありますから大変不利な状態にあるのではないか。そういう意味から私は、民主主義国家と全体主義国家を比べますと、民主主義国家というのはかなり弱い点があるのではないか、核の問題もそこから現実的によく考えていかなければいけないのじゃないかなという気がいたします。  二番目の米ソ絡みではない問題でございますけれども、さっきちょっと申し上げようと思ったのですが、去年の二月十四日アンドロポフ元書記長の葬儀のときにチェルネンコ前書記長がブッシュ大統領に会ったときに、三十分会談したのでありますが、二点提案しているわけであります。  そのうちの一点は、米ソ以外の国、例えばイスラエル、南アフリカ、パキスタン、ブラジル、アルゼンチン、具体的にこういった名前は挙げなかったようでありますが、この辺に核が拡散した場合に米ソがよく目配りをしなければならぬ、ここのところを非常に強調したようであります。中国核戦争を求めているなどということは考えられないのですけれども、パキスタンが中国からノーハウをもらって核の開発に努めようとしていることは周知の事実であります。こういうところから、米ソのコントロールがきかないところでひょっとしたらひょっとした戦争が起こるのではないか、この懸念を私は非常に強く持っております。
  11. 上田哲

    ○上田(哲)委員 SDI
  12. 田久保忠衛

    田久保参考人 私、先に申し上げてよろしいです小。
  13. 上田哲

    ○上田(哲)委員 簡単でいいですから。
  14. 田久保忠衛

    田久保参考人 それじゃ簡単に、続けて申し上げます。  上田先生は、なぜSDIがにわかに脚光を浴びてきたか、そのとおりだと思うのであります。一月二日の中曽根・レーガンのロサンゼルス会談、ここでSDIの問題が出てきた。恐らく外務省、防衛庁なんかは前からやっていたと思うのでありますが、どうも日本は気づくのが遅過ぎるんじゃないかと私は思うのです。八三年の三月のレーガンの発表のときの新聞記事をよく見まして、全部チェックしてみたわけでありますが、なかなか問題の核心をついた記事はございません。政府その他でも、あるいは世論だけではなくて、国会も言論界も財界も官界も要するにわっとこれに飛びつけなかったのではないかというふうに思います。そういうところから考えますと、SDIに関してはもっともっと早くから気がついて研究に着手すべきだった。ただし、これは日本だけではございません。ドイツ、イタリア、フランスイギリスその他も大変おくれをとっている。はっきり申しますと、これはアメリカのプレゼンテーションの仕方が非常にまずかったのではないか。つまりスターウォーズなどという表現をいつの間にか政府も否定しないで使い始めた。スターウォーズはSDI反対する人々が使い始めた表現なんであります。レーガン大統領は、一月の九日だと思ったのですが、記者団の一人がスターウォーズ云々と言ったら、スターウォーズという使い方はやめてください、我々は初めからスターウォーズという言葉は使ったことがないんだということを言ったんでありますが、つまりレッテルの張り方が非常にまずい。それから、研究だけは、ABM条約に違反しないというんであれば、黙ってやればいいじゃないかと私は思うのです。それを何だか知らないけれども鐘や太鼓入りでわあわあ騒いで、恐らく内心しまったと思っているのがレーガン大統領じゃないかと思うわけです。  私が申し上げたいのはいろいろあるのですが、もう一つつけ加えたいのは、軍事上の観点からではなくて、科学の進歩からいったらどういうことになるかなということを考えるのです。実はフランスとドイツの軍縮局長が相次いで日本に来られた。私ちょっとお会いしたんでありますが、そのときにそのお二方の片方の方が言っておられたんですけれども、欧州はハイテクに関しては日本アメリカに完全におくれをとったと思っている、二十一世紀、科学の進歩は何が出てくるかわからない、その状況でSDIにつばをつけないとどんなことになるか、軍事以外の科学の進歩でまた決定的なおくれをとった場合にどうしようか、これが大変心配であるということを言っていたわけであります。私はSDIは別の科学的な見地から研究までを拒絶する理由はないんではないかというふうに思っております。
  15. 上田哲

    ○上田(哲)委員 サッチャーさん……。
  16. 田久保忠衛

    田久保参考人 サッチャー首相の件でございますけれども、事実関係から申しますと、サッチャーはアメリカに対して二回はっきりしたことを言っておるわけであります。一回は去年の十二月、二回目はことしの一月であります。それからゴルバチョフ書記長就任の際、チェルネンコの葬儀でありますが、これは三月の十三日であります。このときの会談では、サッチャー女史は前の表現を全部撤回したのではなくて、疑問点は確かにあるということをゴルバチョフとの間で話し合ったというふうに私は理解しておりますので、前の方針の変更ではないというふうに思っております。
  17. 上田哲

    ○上田(哲)委員 最終的には賛成なんですか。
  18. 田久保忠衛

    田久保参考人 賛成なんです。
  19. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ありがとうございました。
  20. 神崎武法

    ○神崎委員 三点ほどお尋ねをいたします。  一点は、先ほどの核戦争可能性に関連いたしまして、アメリカでもカーター政権の時代からいわゆる核のハード面というものとソフトの面ですが、C3Iシステムについて、そういうテーマの研究、システムがどうということをやってきているという気がしますけれども、そういうことからいたしますと、先ほどのお話ですと、戦略核については使われない、そういう可能性があると言われるのですけれども、一応そういうソフト面を重視する動きというのがアメリカにおいてあるということは、むしろ戦略核を用いた核戦争可能性というものを否定できないのじゃないだろうかというような気がするわけでありますけれども、特にアメリカにおいてそういうソフト面が重視されるに至った背景と申しましょうか、どういうふうにそれを見たらいいのかというのが第一点。  第二点は、SDIの問題でございますけれども、レーガン大統領は非核兵器だということを言っておるわけでありますけれども、エックス線レーザーの核励起というのですかね、原爆なり水爆なりそれによって進めていくだろう。そういうシステムを考えられているようでありますが、今後の米ソ軍縮交渉の中にあって、このSDIなり宇宙兵器というものが核兵器として位置づけられるのかあるいは非核兵器として位置づけられるのか、その辺の見通しと核についての考え方。そういう兵器について、これは核兵器と考えるのか、あくまでもこれは非核兵器と考えるのか、それについてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。  三点目は、ワインバーガー国防長官の発言に関連いたしまして、我が国が得意とする技術と申しましょうか米国が期待するであろう技術というのはどういう技術が考えられるのか、その技術協力に対して我が国として協力すべきかどうか、この点についてはお二方の御意見が分かれているように思われるわけでございますけれども、それについて簡単な理由をちょっとお示しください。
  21. 青木日出雄

    青木参考人 まず、核戦争におけるC3I等の措置を重視する問題なのでありますが、これがはっきりした形であらわれましたのはレーガン大統領大統領になりまして次の年、ですから八一年の国防報告に伴う演説であります。そのときから出てきたのですが、アメリカにいたしますと、あれだけの核装備を持ち、それから核戦略というのはアメリカの基本戦略でございますから、これがつかまれない形で維持をするということではできなかったろうと思う。ですから、実際に核戦争が行われた場合にアメリカで一番弱みがあるのは核爆発に伴うC3Iの途絶であるということで新しい防護措置等を進めることにいたしまして、それから戦略空軍の通信装置とかB52の通信装置とか、これについての核防護システムの予算をつけ始めたわけであります。ですから、アメリカにすれば核戦争が行われないという前提でやっているのではない、行われることがあるという前提でやっているということが事実だろうと思います。  その次はSDIの問題で、先ほどの上田先生からの御質問にも関連するのですが、SDIは私どもが問題にし始めたのは一九八三年からだったのですが、これはちょっと言い方として極端に走るかもしれませんが、我々が当時から非常に疑問に思っていたことに日米の軍事技術協力の問題があったわけです。どうしてあの時期に軍事技術協力を言い出し、それからその後の日米間の話し合いを見ましてもさっぱり品目がはっきりしない。どちらかというと我々は民生用、一般用として開発をした技術について向こう側は言い出しているのではないかという疑問を持ちました。あの段階では実際に協力できるものがあるのだろうかという疑問があったわけです。ただ、先ほどから申し上げておりますように、今のSDIの基礎技術につきましてはずっと開発が行われておりまして、アメリカで、まだそのときはSDIではなくてBMDという名前をつけておりましたけれども、三軍を統合してこれの研究開発をやる予算がついたのが一九八四年予算からであります。ですから、この予算審議をやったのは八三年であります。ちょうどそのころに出たものではないかと思う。といいますのは、ことしの一月にレーガン・中曽根会談があった直後に、アメリカSDIの開発担当者から日本に協力してもらいたい技術ということでぼろっと出たのがガリウム砒素と光通信だったわけです。どういうわけでこのときにもう一つ日本に要請してくるであろうマイクロ波の問題が抜けたのかなという疑問はございますが、とにかく例示として挙げましたのがガリウム砒素と光通信だった。先ほど田久保先生も言われましたように、実はこれらに関する高度技術ヨーロッパにはそれほどない。日本アメリカにはいろいろな技術がありまして、その中で日本アメリカで開発をしている技術で随分違っているものがある。その中でも大きく違っておりますのが光通信の技術ともう一つがスーパーコンピューターに関連をするガリウム砒素素子、それからジョセフソン接合素子、この二つについては日本が今トップレベルなのです。前から言ってきた防衛技術協力の中にやはりその項目があり、アメリカから調査団が来たときもその関連施設を見ておりますので。そうしますと、今までアメリカが開発してきたもので、開発を進めている段階で日本アメリカで非常に技術的に相違があり、日本から欲しいという技術がある意味ではSDIに関連のあった技術だった。といいますのは、ガリウム砒素素子というのはほかの面にも随分使われるのですけれども、一番大きいのは、計算速度が速くて核爆発にも耐えられるということでこのあたりが一番ねらわれやすいわけです。御存じのようにガリウム砒素の結晶をつくる技術、その生産量も現在世界のシェアの六〇%は日本が占めておりますので{一番欲しい。それから同じガリウム砒素素子を使う技術も現在日本世界一であります。ですから、そういう関連で言っているのじゃないかと思います。  それから、どちらかと言えば一九九〇年代になって本当にSDIができるのかどうかわからないけれども、今基礎研究をやっておく、研究開発をやっておくというのは、それによっていろいろな利益ができるからだ。極端な言い方をしますと、アメリカの中で先端産業をやっているメーカーが日本との競争力をこれでまた押し上げることができるというようなある意味での下心があるのではないか。といいますのは、昨年参りましたアメリカからの防衛技術協力に関する調査団もヒューズの副社長が団長であります。ヒューズ社は御存じのようにアメリカでは軍事技術のトップメーカーであります。その中で、ヒューズ社でも足りなくて欲しいと言っているのが日本のスーパーコンピューターに関連する技術だったということから言うと、そのあたりにも関連があるのではないかと思います。  それから、最後に核兵器かどうかの問題なんですが、それは、ヘリテージ財団から出ている「ハイフロンティア」でも推奨している兵器はKEW(運動エネルギー兵器)と言います高速射出体、レールガンと我々呼んでいますが、これは非核兵器です。爆発力もない、衝突で壊すというような兵器だ。もう一つ、今度はDEWという指向性エネルギー兵器というのがありますが、これがレーザーとか中性子とかを使うものなのです。八四年予算からアメリカでは予算配分をしておりますが、八四年、八五年と続きましておのおのの技術についてほとんど同じような金額の割り当てをしております。ただ、その中でも一番金額が大きいのがエックス線レーザーの兵器についてです。それから八三年に先ほどのフュージョン・エネルギー財団から出ました「ビームディフェンス」でも、これははっきりエックス線レーザーが究極のビーム兵器であって、これをやらなければいけないという書き方をしています。  それから、レーガンが諮問委員会をつくりましてそれに諮問した結果では、二つの答えが出ました。一つ委員会ではエックス線レーザーを最良というふうに出しております。もう一つ委員会は、これはワインバーガー国防長官が議長になりました政府の各局間委員会というものですね。こちらの方はエックス線レーザーを抜いております。抜いたというのは、エックス線レーザーが一番効果があることはわかっておりますけれども、これを励起いたしますのは水爆しかございません。そういたしますと、エックス線レーザーは重量は非常に小さいものですから衛星搭載で回すことができるんですが、最小限度四十三個と言っておりますので、四十三個の水爆を地球の軌道に回すとすればやはり核兵器と認めざるを得ないだろうし、そうすると現在の宇宙天体条約にはっきりひっかかる、とするとだめだという、その配慮で各局間委員会では落としたんではないかと思うのです。  ただ、先ほども申し上げましたように、現在でも予算はほとんど均等に配分されておりますけれども、その中でも多いのはエックス線レーザーの開発についてであります。それから、その中でも幾らか少ないのは中性子のビーム兵器でありまして、これは今までの開発の結果で収束するのは難しい。ですから、あるいは数年中に開発の目標がら除かれるのではないかと思います。ただ、今はわかりません。化学レーザー、それから中性子等の粒子兵器、パーティクルウエポン、それとエックス線レーザーと三つ並んでいて、そのうちのエックス線レーザーははっきり核兵器と認めるしかないだろうというのが現状であります。
  22. 田久保忠衛

    田久保参考人 二つばかり申し上げたいと思います。  私は科学技術の知識は非常に乏しゅうございましてお恥ずかしい次第でありますが、まず最初の日米の科学技術の協力でありますけれども、これは内容が今のところ漠としてわからないものではないか、である以上、日本としても欧米、特に欧州諸国の動向を見守る必要があるのではないかと思います。  そこで、まず私が気になりますのは西ドイツであります。今のコール政権のもとに、実は去年の九月でございますが、総理府、恐らく首相直属だと思うのでありますが、ここにSDI関係の機関ができた。しっかりした機関ができまして、科学者、物理学者、それから戦略家、政治学者、その他たくさんまじっているわけでありますが、本格的な研究機関が政府として確立した。こういう機関をつくって日本もしっかりした検討を進めるべきではないか、こう思うわけであります。  もう一つ、二月のミュンヘンの会議でございますが、コール首相がSDI関係についてアメリカとの共同研究に西ドイツは参加したい、こう言ったわけであります。ところが、相前後するのでありますが、リチャード・バート国務省国務次官補はほかの会議でこの発言に関連して、これは大いに結構だ、しかしこれをやっているうちに情報がソ連に漏れるおそれがあるというようなことをちょっと言ったわけであります。実際に共同研究に参加しても情報が漏れるかどうか、ここのところが非常に問題になってくるのではないかな、私は問題点として申し上げたいわけであります。ただ、科学技術の進歩でありますけれども、人類発生以来科学の進歩をとめられた例があるかどうか、私は大変疑問だと思うのであります。そこで、二十一世紀、これは単なる一視点から見るのではなくて、二十一世紀の大きな科学の進歩に我が国みずから鎖国をする必要はないのではないかなというふうに私は考えております。これが第一点であります。  第二点、SDI核兵器かどうか、これが米ソ交渉で問題になるのではないか、どういうふうに位置づけたらよろしいかという先生の御質問であります。  青木先生がおっしゃったとおりと思われますが、私はこの交渉で問題になるのは、核兵器核兵器でないかということではなくて、研究段階でこれを認めるかどうか。今アメリカ側はあくまでも研究、それ以上の何物でもないという言い方をしているわけであります。研究段階で、これが開発の段階になる。開発ができますと今度は展開になる。この真ん中の開発のところがアメリカソ連側もイギリスを先頭にした欧州も何となくぼやけていて、研究と展開、ここのところが問題になっているようでありますが、開発の部分がむしろジュネーブ交渉では米ソ間で大きな問題になってくるのではないかなと思うのであります。研究に関しましてはソ連ももうやっているわけでありまして、どっち側も懐の中を見るわけにいかないけれども、検証不能でありますから、ただソ連側が一切研究をやっていなくてアメリカ研究だけを非難しているというふうには信じがたいというふうに思っております。したがって、ジュネーブ交渉の焦点は、核兵器かどうかという定義もさることながら、研究を一歩進めるのかどうか、その次の段階が米ソ間で大きな問題になるのじゃないかというふうに理解しております。
  23. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 青木先生、田久保先生、貴重な御意見を承りまして、どうもありがとうございました。  私はずぶの素人でありまするが、素人なりに感じたことでひとつお教えをいただきたいというふうに思うわけであります。  よく核を検証するということが言われるのでありますが、検証の仕方というのは衛星システムでやるような場合もあるし水中システムで核を検証するという場合もあると思うのですが、実際具体的にこういうことが可能かどうかということもちょっと素人なりに思うのですが、この辺のことについて御見解があればお示しをいただきたいと思うことが一つであります。  それから、日本にとりまして、米ソがいわゆる雪解け時代と申しまするか、緊張緩和の一つ傾向があるということは大変望ましいことであるわけでありますが、そういう中にあって最大の関心事は、今ジュネーブ会議その他でようやくテーブルに着いているのですけれども、米ソの首脳会談というものが具体的に持たれるであろうか、あるいは持たれるとしたら両先生方のお見通しとしてはいつごろだろうというようなところまで、これは見通しの問題でございまするので、その辺の見解を伺いたいと思います。  それから、これからは北極中心の米ソ戦略ということが大変新しい、私どもは余り知らない面というのが出てきておりまするけれども、こういうものに対してどのような、今どういう状況になっているのかということでございます。もしそういうことをお教えいただいたらありがたいと思います。  それからもう一つは、いわゆる米ソ二大大国、世界の中がどちらかといえば真っ二つに分かれているような形なんですが、やはり今度のジュネーブ会議なりこういうテーブルに着くような段階になったということは、米国を中心としたいわゆるNATO勢力を初めとしたそういうものの軍事勢力というか、そういう勢力がやや強くなってきたというか、優位になってきたというか、そういう状況のもとでこういう会談が開かれるようなことになったのか、この辺のところも大変関心のあるところでございますので、ひとつ御見解があればお示しいただきたいと思います。  以上の四点、恐れ入りますが、よろしくどうぞお願いします。
  24. 青木日出雄

    青木参考人 まず核兵器の検証の問題でございますが、現在検証可能なのは前のSALTの、米ソ間の核兵器制限交渉以来の戦略核兵器の検証でございます。戦略核兵器の検証につきましては、条約条文上は技術手段とだけ書いてありますが、技術手段というのは両者の偵察衛星であります。ここの話し合いでまとまっておりますのは、両方とも今までの戦略核兵器はサイロに収納してあるので、あるいは潜水艦に搭載してあるので、サイロの数を数えることと潜水艦の数を数えること、ここまでは偵察衛星で可能なわけでございます。ただ、逆に最近それが問題になってまいりましたのは、移動可能なミサイルをどう数えるか。実は数える手段がないわけですよね。その辺で問題になっているのですが、とにかく今までの検証というのはそれだった。次が両者の行います、今地下核実験しか認めてませんが、地下核実験の回数であります。これによってどれぐらいのものを開発しているかが大体わかってくるということで、この二つしか検証――これは地震の測定器のようなものを使いまして地中波を測定することによって地下核実験を探知できるということ、この二点であります。それで、私どももこういういろいろな数字を書いたりしておりますが、一番やっておりますのがスウェーデンのSIPRI研究所でございまして、ここでやっております核兵器の推定というのは核兵器の材料の使用量からの推定であります。特にその中で核兵器の材料になるウラニウムやプルトニウムではございませんで、これの発火、着火に使うためのものでございます。これの使用量の推定によりまして核兵器の毎年の生産量を出すというようなことで推定しております。ただ、これは検証の方法がないのでそういう希少金属がどれぐらい移動しているかということで見るしかないというような現状でございます。  それから二番目は、米ソの首脳会談ですね。実はジュネーブ会談にも非常に関係すると思うのですが、現在ソ連側が言っているジュネーブ会談の会期は八週であります。主要な会談は一週二回、今度は第三部会が始まりますので少し変わりますが、少なくとも戦略兵器に関する会談は一週二回でありますから、八週間で十六回、従来の交渉の経緯を見ますと、INF交渉にしろ前のSALTⅡの交渉にしろ非常に時間はかかっておりますが、第一会期の末に両方から提案を出し終わりまして、そこで第一会期が終わって休会になって、両方の代表がそれを持ち帰って、そこで、合意するものは合意する、話がまとまらないものはどうするかとも決めております。有名なジュネーブの森の中の合意というものがINF交渉でございますが、これもやはり第一会期から第二会期に入るときであります。ですから、今までの交渉は非常に長くかかっているように見えますけれども、割に大事なところは第一会期で提案は終わっておる。第二会期で両方がそれをどうするかという案を出し尽くし終わっておる。そうしますと、第一会期から後ろに休みがありまして第二会期が同じぐらいにあるとしますと、ことしの夏か秋には大体出尽くしているということです。そうしますと、やはりことしの九月ごろに、秋の国連総会というものが非常にいい機会でございまして、もしこれにソ連の共産党書記長が出席をいたしますと、そこで、はっきり話し合う材料はございますので、これは首脳会談になる可能性は非常に高いと思うのです。もしそれが行われますと、最終的な妥結はできるかどうかはわかりません、まだ手続上の問題は非常にいっぱいございますから妥結はできるかどうかわからないけれども、戦略兵器とか欧州の核戦力の問題についてはほぼ見通しが決まってしまうというふうに私は考えております。
  25. 田久保忠衛

    田久保参考人 最初に検証の問題ですが、青木先生のおっしゃったことに余りつけ加えることはございませんが、例えば検証と言った場合に、米ソ両国の検証あるいは二番目は第三国が検証をするのかということでございます。米ソの場合もいろいろやっているようであります。ただ、地下核爆発実験、地下の実験でありますけれども、これもいろいろ問題があるのではないかと思うのです。岩盤の強さ、強弱によってなかなか判定が難しい、極めて難しい状態ではないか。米ソ以外の、例えば日本は、先ほど申し上げましたように、口では幾らでも言えるのですけれども、技術的に、写真を撮る技術があるのか、それを鑑定する技術があるのか大変難しいのではないかというふうに思います。軍縮にこの辺から手がかりをというのは大いに結構なんですけれども、これはもう少し詰めないと難しい問題ではないかなというふうに思います。  それから二番目でございますが、首脳会談の問題であります。  この首脳会談は、少し申し上げますと、去年の六月十四日にロンドンサミットから帰ってきたレーガン大統領に、当時のベーカー上院院内総務、共和党であります、それから共和党のパーシー上院外交委員長の二人がホワイトハウスに駆けつけまして、どうも大統領、大変だ、民主党のモンデールが、前のカーター、フォード、ニクソンはすべてソ連の首脳と会談しているじゃないか、レーガンだけが会談をやらない唯一の人間だと言っているが、これは困ったことだ、あなたは何とかしないとと言ったら、さすがレーガンであります。翌日、十四日にホワイトハウスで全米向けテレビ放送の中継をさせて、いつでもいい、場所はどこでもいい、議題は何でもいい、無条件の首脳会談提案したわけであります。これが去年の六月十四日です。ところが、その後ソ連からは余り色よい返事がなかったわけです。  二度目は、今回の三月十三日の葬儀にブッシュ大統領レーガン大統領の親書を持っていったわけであります。これは異例な丁重な親書で、三ページにわたるものであった。首脳会談だったら一行でいいのじゃないかと私なんか思うのでありますが、非常に丁重なものであった。これは西側の首脳が全部葬儀に出席しているのに、レーガン大統領だけが欠席したわけであります。これはセキュリティーそれからロジスティックスなどいろいろな問題があったようでありますが、それで行かなかったのだろうと思うのであります。そのかわりに大変丁重な提案を出した。ゴルバチョフ書記長はフランスの招待は受けた、西ドイツの招待も受けた。ところがブッシュの招待だけは受けていない。これは拒絶したのではなくて、イエスともノーともまだ言っていないわけであります。  そこで、この問題はどういうことになるのかということでございますけれども、先ほど私が申し上げましたように、ソ連ジュネーブ交渉に出ざるを得ない、そういう理由がたくさんあるわけであります。したがって、ジュネーブ交渉の中身が詰まろうと詰まるまいと、レーガンと会いたいとゴルバチョフは内心思っておるのではないかと私は考えているわけであります。  そこで、首脳会談としてはいつがタイミングがいいかということでございますが、第一は五月説、第二は八月説、三番目は九月説なのであります。  五月というのはどういうことかといいますと、五月の初めにボンでサミットが行われます。この後側のVEデー、ビクトリー・イン・ヨーロッパ・デー、第二次世界大戦で、日本はまだやっていたわけでありますけれども、欧州が勝った、この戦勝記念日、これがボン・サミットの直後に開かれるわけであります。ここに、第二次世界大戦をともに戦った米ソですから、ゴルバチョフを呼んではどうか、これが一つのチャンスになるぞという考え方があるわけであります。  二番目の八月説というのはどうか。これは、全欧安保協力会議が閉幕したのがちょうど十年前であります。東西関係があの当時大変よくなったと言われたわけでありますが、ちょうど十周年で記念の行事が行われる。ここに東西関係のシンボルであるレーガンとゴルバチョフを出席させて首脳会談をやったらどうか、これが第二の案であります。  三番目は、秋の国連総会でありますから、九月になりますね。これは、ゴルバチョフが書記長になりまして、まだ五十四歳でありますから、世界に顔見せする絶好のチャンスである。恐らくゴルバチョフが行くであろうと私は思うわけであります。そうすると、レーガンも、去年も行きましたから、行って、ちょうどいいチャンスになるのではないか。実は、おとといでありますけれども、リーガン大統領首席補佐官が記者会見でこの問題を聞かれまして、九月はいい機会だというようなことを言っておるわけであります。きのうはレーガン大統領が、九月がもしゴルバチョフ書記長にとって都合がよければ自分はこれを受け入れるのだというようなことを言っております。  五月説、八月説、九月説の中で、私がたれが考えてもごく自然だなと思うのは九月説ということでございます。
  26. 藤原哲太郎

    ○藤原委員 簡単で結構でございますが、先ほどのあと二点は、北極中心の米ソ戦略の問題と、例のいわゆる米ソの軍事バランス、この二つについてお聞かせいただきたいと思います。
  27. 青木日出雄

    青木参考人 最近言われるようになったのですが、実際には米ソの対抗している場所は北極中心でありまして、両方とも、防衛網にしろ戦略ミサイルの攻撃基地にしろ北極を挟んでおります。ただ、従来幾らか違っておりましたのは、潜水艦発射の弾道ミサイルは北極を越えて飛ぶ能力がございませんでしたので、両方とも太平洋及び大西洋に展開していた。それが今また射程が延びてまいりましたので、北極中心あるいは北極に非常に近いところ、ソ連の場合はオホーツク海から、それからアメリカの場合にはワシントン州、一番北ですが、アメリカとカナダの国境になりますが、その付近の沿岸から発射できるようになった。それで全部の戦略体制が北極中心になったというのが現状でございます。  二番目のバランスの問題なんですが、正直に言いまして、現在アメリカソ連も事戦略核兵器についてはオーバーをしておりまして、必要量をはるかに超えてしまっているのです。これは、両方が競争をやった結果そうなったと思うのですが、今の戦略核兵器で注目していいと思いますのは、ソ連の方でいいますと、SS13それからSS11の両ミサイルでございます。その中でも特にSS13に至っては、配置をしてから既に二十年近くになっておりますが、その間わずか六十基を配置をしただけで一回も交換をしていない。要するに、これはもう余っている兵器ということなんですね。アメリカでいいますと、ICBMですが、現在一千三十七基あったと思いますが、そのうちの一千基がミニットマンでございます。ミニットマンは、これはいろいろ経緯がございますけれども、ミニットマンのⅡ型四百五十基、Ⅲ型万百五十基というのはここ十年間がわっていないわけでございます。八三年に弾頭をかえた新しいⅢ型を配置いたしました。そのときに古いⅢ型、同じⅢ型同士で交換をいたしまして、前からあるミニットマンⅡ型、これはずっと古いわけでございますが、これの四百五十基には手をつけなかった。要するにこれもジュネーブ米ソ交渉で――いずれにしろレベルが下がることはわかっておりますので、それの削りしろだと思うのでございます。両方ともそういう削りしろを既に準備をしておりますから、それが一番初めに申し上げたジュネーブ交渉で、戦略核兵器交渉というのはまとまる公算が非常に高いだろうというのはそのためであります。  こういう交渉、SALT、START、今度のジュネーブ交渉というふうに交渉が続いてまいりましたのも、両方ともあるバランスをとれる量というのは既に充足をいたしまして、その上の数というのは両方とも余った数だ、だから削減をする、縮小をするという交渉が成立しているのだというふうに考えます。
  28. 東中光雄

    ○東中委員 共産党の東中でございます。  青木参考人にお伺いしたいのですけれども、レーガン政権になって核戦力が非常に増強されてきた、そういう状態。特に戦域核戦術核が増強され、配備が非常に進んでおりますが、日本との関係で言えば、F16の攻撃機の配備がいよいよ始まってまいります。カール・ビンソン、トマホークの配備がやられて、核積載可能艦がどんどん寄港してきている。こういう状態で日本の、アメリカ戦域核などの根拠地化が進んでいるということが言えると思うのです。そういう点で、アメリカの核戦力増強と日本の立場、特にF16なんかの配備の関係などについて、御造詣の深い参考人の方からお考えを聞かせていただきたい、こう思うわけであります。  それから青木先生、田久保先生の両方にお伺いしたいのですが、SDIについて、今非核かどうかということについてお話を承ったわけでありますが、中曽根首相は、レーガン大統領から聞いたのだということで、三つのことを盛んに言われておるわけであります。非核の問題が一つと、それから防御兵器であるということ、もう一つは、核廃絶に向かって役立つものなんだ、こういう点でその研究に理解を示してきたのだ、こう言われておるわけでありますが、非核のことはお伺いしたわけですけれども、防御兵器というふうに言えるようなものなのかどうか、それから兵器の性格からいってそういうことがあるかどうかという問題もありますし、とりわけ廃絶に役立つ兵器というのは、どうも私たちはむしろ宇宙への核拡大というふうに見ざるを得ないわけなんですが、御意見をお聞かせ願いたいと思うわけであります。  田久保先生にもう一つお聞きしたいのは、抑止と均衡論を言われたわけですが、私たちは抑止と均衡論というのはむしろ核軍拡競争をあおっていく、そういう論理だ、事実が示しているというふうに考えておるわけでありますが、それで国連事務総長だったワルトハイムの「核兵器の包括的研究」で言っているあの有名な見解、「抑止の過程を通じての世界の平和、安定、均衡の維持という概念は恐らく存在する最も危険な集団的誤謬である」という批判を最後のところでやっていますけれども、そういう見解についての御意見をお聞かせいただきたい、こう思うわけであります。
  29. 青木日出雄

    青木参考人 アメリカの核戦略日本との関係なんでございますが、非核三原則を持っている日本アメリカ核兵器を陸上配置あるいは陸上に配置をする航空機に積載しようとするかどうか、これについては今のところ何とも言えないわけで、ただアメリカ軍が今まで公表しております範囲では、極東におけるアメリカの核戦力は海上配置であるということを言っておりますので、核を積載している艦船についての取り扱いはどうかということと、陸上に配置をされるF16の取り扱いはどうかということでは幾らか相違があるのではないか。  それから、二番目は、これもまだはっきりした、公表されたことではございませんけれども、三沢にF16二個飛行隊参りますが、二個飛行隊のうちの二分の一個飛行隊を韓国の群山に移動させる、現在沖縄からF15の二分の一個飛行隊が韓国の鳥山に行っておりますが、それと同じ形でローテーションをさせて配置をするということを非公式にアメリカ軍側は言っております。そうしますと、三沢のF16というのは極東のアメリカの空軍戦略の一部として考える、そちらの方が強いのではないかと思うのです。ただ、場所が三沢でございますので、日本の中で、北海道を除きまして、本州から沿海州、それから南千島、樺太、この三沢の地域まで戦闘機が航続力を持てる限界は三沢であります。それよりも南側では戦闘機自体では航続力を持てない、そうすると、やはり北東アジアでのアメリカの戦力バランスを考えた配置というふうにも考えられるわけです。そのときの戦力バランスとなりますと、空軍の場合にはやはり核戦力が中心になりますので、そうすると三沢の陸上配置をしたものについても核を考える必要があるのかなという疑問も出てまいります。ただ、これについてはアメリカ側からは何の説明もない。  両者に関連をいたしまして、午前中にお話をしたときにちょっと落としてしまったのですが、いわゆる安全保障理事会決議の中にあります非核兵器国について定義がはっきりしないのです。一九六八年に安保理事会決議をした当時、海上配置の核兵器というのもほとんど空母に限られていたのです。ですから、空母だけを問題にすればよかったわけです。現在のように潜水艦にも駆逐艦にも巡洋艦にもというふうに非常に核兵器の配置数がふえた場合に、拡散していった場合に、外国軍隊の艦船が入港することが核兵器の持ち込みに当たるかどうか。それが持ち込みに当たるとすれば、ある意味では非核兵器国権利なわけですね。核攻撃を受けない、核脅迫を受けないというのは権利なんですが、それが守られるのかどうかが、今は当時の決議を見ただけでは何とも言えないわけでございます。  これは世界的にもいろいろな議論もございまして、ラテンアメリカのように非核地帯の条約がある場所は問題ないのですが、そのほかの場所では、例えばNATOの国の中でもデンマークとノルウェー、この二国は平時における外国軍隊の核兵器の持ち込み禁止であります。ですからアメリカも巡航ミサイルもこの二カ国には配置しようとしない。それから現在まで核を積載している艦船が入港しているという疑いを持たれたこともございません。それからANZUSの諸国、オーストラリア、ニュージーランドでは以前は核を陸上配置することだけを禁止していた、外国軍隊が陸上に配置することを禁止していたのです。根拠は、入港している艦船、特に当時は空母でしたから、空母が入港しているときはそこから飛行機が発進できませんので、核戦力を発揮することができない、だから問題ないんだというのが解釈だったわけです。それが現在のロンギ政権になりまして、今事情が変わってきて、例えば巡航ミサイルならば入港している艦船からも、発射することができる、そうしますと入港についても陸上配置と同様な核持ち込みになるということで入港も拒否をしたわけです。ですから、一番初めのもとは皆同じような考え方なんですが、現在の核兵器の配置とそれの状況に応じて各国の解釈がばらばらになってきたのです。  そこで、ことしは五年ごとの見直しの時期なんで、非核兵器国、これは日本広島長崎の災害だとか非核三原則だという考え方を全然抜きにいたしまして、現在の非核兵器国安全保障理事会決議と核防条約を誠実に履行するという点からも、非核兵器国というのは何で、それは艦船の入港も非核兵器国権利を失うもとになるのかならないのかというものをはっきりすべきだ、そのあたりがないと、現在でも世界じゅうで揺れております核の持ち込みについての解釈が統一できないというふうに私は考えております。
  30. 田久保忠衛

    田久保参考人 簡単にお答えいたします。  SDIは防御用の兵器かどうか、攻撃用の兵器なのではないか、これは実は海のものとも山のものとも本当にわからないのであります。少なくともレーガン政権から公式に発表されるものを読む限り、これを攻撃用兵器とは認めにくいのではないかというふうに思うのです。このことも釈迦に説法でございますけれども、ブーストの段階からねらっていく、要するに向こうで上げなければ、先制攻撃はもちろんできないわけでありまして、向こうの攻撃用の兵器に対してこれを防御するということでございますから、これが無限に軍拡をもたらすというふうには私はどうしても解釈できないわけでございます。これは先生とちょっと見解が違うかもしれません。  それから、これはイギリスもそうでございます、西ドイツ、イタリア、フランスもそうでございますけれども、このSDIに対する不安は、SDIが攻撃用の兵器がではなくて、SDIがだんだんできていくとSDIをペネトレートつまり貫通していく、この兵器をソ連がつくり出していくのではないか、それに対してまた新しい兵器をつくるのではないか、ここで軍拡が起こる可能性がある。したがって、スタートのところでこれが攻撃用の兵器であるからという議論はちょっと西側では見当たらないのではないかなというふうに思っております。  それから抑止と均衡の議論でございますが、これはやはり戦後アイク、ダレス時代のニュールックあたりから相互確証破壊の理論がずうっと続いてきて現在に至っているわけでありますが、現実の問題としてこれ以外にはどうも、今の国際情勢はこの理論をやめて成り立つような国際情勢ではないのじゃないかというふうに私は考えております。しからば今のMADはいいのか。このSDIはそこのところが今の相互確証破壊の理論の中で、どうもどんどん相手がいろいろな兵器をつくっていく、SALTのときにはローンチャーを制限した。その後すぐ多弾頭の兵器ができてしまった。これは抜け道であります。今どうもそこの抜け道をどんどんつくっていく。相手の兵器をカウントできない。それから移動する。これがどんどん続いていくと、やはりどうしても防御用のSDI方向世界の体制が徐々に向かっていくのはやむを得ないのではないかというふうに、最初の御質問の関連でございますが、そう思うのであります。  それから、ソ連も実はSDIに真っ向から反対しているというふうには思わない。私は、ソ連もずっと続けていくであろうと思うのです。  先ほどちょっと御紹介申し上げました、これは賛成論で恐縮なんでございますが、民主党の三人組なんでいいだろうと思うのですが、ニューヨーク・タイムズ・マガジンに出たカンベルマン、それから例のジャストロー、ブレジンスキー、三人の議論なんであります。彼がここで言っていることは、   米国の戦略宇宙防衛が拡大すれば、攻撃力の規模を漸減することが現実的に可能となる。最初米国、そしてやがてはソ連にも訪れるこのような過渡期には、本当に防衛に専念した姿勢をとることになり、双方とも相手に第一撃を加える脅しをかけず、したがって安定した状態が生まれるだけでなく、もっと広範な軍縮協定を追求する上で最大の助けとなるだろう。何とか新しい軍縮の局面を、きっかけをつかもうということでこのSDIができたというふうに私は理解しておるところであります。抑止と均衡の議論に関連してちょっと申し上げました。
  31. 森下元晴

    森下委員長 よろしゅうございますね。大体一巡いたしました。  ちょっと私からよろしゅうございましょうか。実は、青木参考人だけに簡単にお答え願いたいと思うのです。いろいろ御意見開陳のほとんどがNPT、核拡散防止条約の件に触れられたように思います。二十年前に日本も調印しまして、十年余りかかりまして批准をした。国会でもいろいろ議論があったわけです。本会議場では共産党さんが反対に回ったと思います。自民党でもいろいろ御意見があったわけですが、保有五カ国のうちで先ほどもお話が出ておりましたようにフランス中国がまだこれについて加盟していない、これも非常におかしなことでございますし、国連条約における敵国条項にしても、核の問題についての日本に対する国際的な圧力、非常に警戒されておるように思います。その一つが、この核拡散防止条約についての日本に対する調印、また批准を迫ってきたというふうに実は私考えるわけですが、それについての御見解を簡単で結構ですからお答え願いたいと思います。
  32. 青木日出雄

    青木参考人 先生御指摘のように日本技術的にははっきり核兵器の入り口国になっておりまして、ですから確かに日本核拡散防止条約に加入しておりませんと、感情的な問題は別といたしまして、技術とかあるいは戦略理論からいえば持つ可能性は非常に高いわけであります。そういうことでいろいろな異論もあったことではありますが、日本は加入をし、それからそれを誠実に履行しているわけですが、誠実に履行しているのであれば同じ条約の中にある先ほど申し上げた核保有国の核縮小について、我々の方が向こうに迫る権利を持っているというふうに考えます。  それからもし、現在の核拡散防止条約がどうしても中国フランスが入らないのであれば、少なくとも国連安保理事会決議の中にはその二カ国を入れまして非核保有国、非核兵器国の安全を保障する体制をとってもらわなければいけない。ところが核拡散防止条約が見直されないと同じように、先ほど申し上げた安保理事会決議もそれからアメリカソ連イギリスの三国の宣言もその後見直しかないというのは不当だと思うのであります。これは何としてもやっていただかなければ、日本を含めまして現在核を持っていない国の安心を買うことはできないと思うのです。  また、何かの形でその二国を組み入れません。と、現在ジュネーブでも一部問題になっておりますソ連のSS20の極東の百三十五基の配備の問題、これについても今のジュネーブで話ができるかといいますと、ソ連に対抗していると考えられる中国に、我々の計算でも百十六基の核ミサイルがあります。それと百三十五基のSS20がバランスしているではないか、あるいは同じ百十六基に減らしますかと言われたときに方法はないということです。  非核兵器国の発言力はどこまでなのか、それから地域的におのおのの地域でそういう協議ができるかといえば問題はございますけれども、何とかして努力をしないと、現在の全般的な核軍縮というのは成立しないではないかというふうに私は考えております。
  33. 森下元晴

    森下委員長 ありがとうございました。  では、前川先生。
  34. 前川旦

    ○前川委員 一人当たり往復で十分くらいの制限がありますので、簡潔に質問をいたしますから簡潔にお答えをいただきたいと思います。  初め田久保参考人に、ちょっと意見が違いますので、なお見解をちょうだいしたいと思います。  一つは核の傘の問題でございますけれども、果たして日本アメリカの核の抑止力が働いているのかどうか、これを私は疑問に思いますが、先生いかがお思いですか。  例えば、核抑止力と言うからには、核攻撃をすれば同等かそれ以上の反撃を受ける、それが怖いから攻撃できないというふうなのが抑止力だと思いますが、仮にソ連が横須賀なら横須賀、あるいは沖縄を核攻撃した場合に、ではアメリカがウラジオストクを核報復するか。もしそれをやれば今度は逆にハワイを吹っ飛ばされますから、私はとてもそんなことはできないと思います。ということは、アメリカ日本に対する核抑止力というのは働いていると思えないのです。  それからもう一つは、仮に核抑止力の理論から言うと、第七艦隊の核戦力のことを言うだろうと思いますけれども、これはソ連の奥地には届きませんね。シベリアあたり。となると、シベリアの人口密度と日本の人口密度とは圧倒的に違います。例えば一平方キロメートル当たりで、シベリアでは二人に対して日本は四百人近い。しかも日本は半分近くの人口が都市圏に集中していますから。都市にしても規模が違います。シベリアの都市の一番大きいのはせいぜい四十万くらいです、ハバロフスクにしてもウラジオストクにしても。としますと、一発の核弾頭でも与える破壊力というのは効果は全然違うわけです。これからも対等の抑止力というのはとてもじゃないけれども考えられない。ですから私は、アメリカの核の傘のもとにあると言うけれども、日本アメリカの核の抑止力のもとにあるとはまず思えない。アメリカの核抑止力を信頼できないわけです。これが一つ。この点についてどうお考えか。  二つ目は、先ほどの御質問にもありましたが、抑止力と均衡論なんですが、均衡ということはあり得ないと思います。  例えば、何で判断するのか。弾頭の数で判断するのか、ベースで判断するのか。そうなりますと、例えば核弾頭の数が同じでも、精密度、あるいは可動率、これは軍の大変な秘密でしょう、わかりませんね。そういうことはわかりませんから、果たして核は均衡しているかどうかということはだれにも判断できない。となると結局、核均衡ではなくて、米ソ両方核優越を求めざるを得ない。ということは、核均衡理論による限り無限の核軍拡しかあり得ない。どこかで核抑止理論というのを断ち切る努力をしなければ核軍縮をから取れない。それはこれからの人類が生き残るための大変大きな課題であって、みんな必死になって新しい力によらない核抑止力というものを探していかなければいけない時代ではないかというふうに思うのです。  そういう意味では、例えば戦後ずっと見ますと、核兵器を使われようとしたことは幾らもあります。それは一回は朝鮮戦争、それから台湾海峡、金門・馬祖、それから第一次インドシナ戦争のときにベトミンにディエンビエンフーを囲まれたときにアメリカは使おうとしたわけですね。それから、第二次インドシナ戦争でケサンの攻防戦でも使おうとしたことは事実として今明らかになっているわけですが、いずれにしても、朝鮮戦争のときはソ連は原爆を持っていなかった。金門・馬祖のときは、アメリカは使っても中国はまだ核実験をしていなかった。それから、インドシナ半島で使っても、全部核報復を受ける危険はなかったわけです。ところが使えなかった。なぜかというと、イギリスや何かが一生懸命とめたわけですね。とめたのは、核兵器を使うことによって得る軍事的な成果よりも、使うことによって失う国際的な政治的なマイナスの方が大きい。だから、使ってはいかぬと言って必死になってとめて、当時の大統領がそれぞれ決断をしてとめたわけです。  そういう歴史を見てみますと、核戦争の危機をとめてきたのは、やはり国際世論、核を使うことは悪なんだという、つまり失う政治的マイナスということで世界の国際世論、それがとめてきたと言えるのではないだろうか、これが新しい抑止力と考えていいのではないだろうか、これが西側については確実に言えると私は思うのです。ただ、ソ連については、今までどういうことがあったか、歴史がよくわかりませんので何とも言えませんが、しかし、ソ連にしても、今アフガンで使うことは恐らくできないと思います。もし使ったら、国際的な世論が全部ソ連に対して反対に立ちますから、政治的なマイナスが怖くて使えないだろうと思うのです。僕は、そういうところに新しい抑止力の理論を求めていかないと核軍拡を防げないだろうと思いまして、その辺はもっと必死になって真剣に僕らは考えていかなければいかぬのじゃないだろうかと思うのです。  同時に、アメリカソ連も力だけに頼っていますね。力だけに頼っているから、やはり抑止と均衡理論、軍拡以外には安心することができないというようなことになってしまう。力でない平和というものをこれまた僕らは必死になって探らなければ、人類の生存がかかっていると思います。ですから、先生が抑止と均衡論によって好むと好まざるとにかかわらず事実上平和が保たれてきたとおっしゃるのですが、実際、ずっと核戦争はありませんでしたから、それはわかるような気もするのですが、その理論がこれからも正しいのだという立場を捨てなければいけない時期なんだと私は思うのです。その点、先生と意見が違うのですが、御意見を伺っておきたいと思います。  それから、青木参考人に、やはり新しい核の抑止論なんですが、中国は核実験をするたびに先に核兵器を使う国には絶対にならないということを宣言していますね。ソ連は、国連でもどこでも、先制的に核は使わない、そういう宣言をしようとか、あるいは日本に対してでも非核国家には先制的な使用はしないという協定をいつでもする、こういうことをしょっちゅう言っていますね。アメリカは、先制的に核攻撃をしないという意見に対して反対なんですね。反対なのはなぜかというと、さっき田久保参考人が言われましたように、核兵器をのけたら、通常兵器では東側が圧倒的に優勢だから、特にヨーロッパではそうですね。NATOとワルシャワ条約機構なり、特に西側の防衛には戦術核使用というのは絶対に組み込まれていますから、これをやめたら、通常兵器は東が圧倒的に上ですから、先制的核使用をしないということをアメリカは賛成しませんね。  アジアでは通常兵器は米ソの間で均衡していると私は思います。アジアという地域を限ったら、米ソ間で核兵器は先制的に使用しないあるいは核を持たない国には核兵器使用しないという協定、これを日本が探っていったら、非核三原則を遵守する限り可能ではないかという気が私はするのですが、そういう方向へ政治は考えるべきではないだろうかと思います。随分いろいろ言いましたけれども、大体三つの点で御意見を伺わせていただきたいと思います。
  35. 田久保忠衛

    田久保参考人 初めの、アメリカの核の傘の信頼度でありますけれども、今先生がおっしゃいましたように、私とのパーセプションといいますか、受け取り方の違いになってしまう。これは幾ら議論を重ねましても水かけ論になってしまうのではないかということを深く恐れるわけでございます。  まず、アメリカの核が全く効かないかどうか、これは我々の解釈、どういうふうに解釈しても、現実の問題としては、西側はやはりアメリカの核に対する信頼ということで同盟関係を結んでいると思いますね。今回盟関係を結んでいても、実際あれは全く核の傘はかかっていないのだという認識をもってすると、日本の防衛、外交政策は百八十度変えなければいけないのではないかなというふうに思うのであります。私はそういうふうには考えていないということを申し上げたいのであります。  それから、西側同盟国、西ドイツもイギリスもイタリーもオランダ、ベルギー、みんなそうでございますけれども、今問題は、アメリカがフォートレス・アメリカというか、アメリカの要塞に立てこもってSDIなどを考えて、自分のところだけにこもってしまうのではないか。つまり、今かかっている傘を引っ込めてしまうのではないか。これはいわゆるデカップリングの理論でございまして、やめてくれ、やめてくれ、何とか欧州にとどまっていてくれということが今当面最大の問題ではないか。我が国も、非常におくれているのでございますけれども、それをやらなければいけないのではないかなと思うのであります。  実は私、一九六九年に時事通信の沖縄の那覇の支局長で三十五のとき行きまして、ちょうど仕事のやり盛りだったわけでありますが、当時、一九六九年の七月にニクソン・ドクトリン、つまりアジア全域の地上戦闘部隊を引き揚げるといったときに、沖縄からもその後どんどん引き揚げていったわけでありますが、あのときに、私、大好きな人だったのですが、屋良朝苗さん、その他の方々が、ヤンキー・ゴー・ホームと盛んに言っておられた。どうもその辺が欧米、特にあのときは、七〇年にはマンスフィールド、今のマンスフィールド大使でありますけれども、民主党の上院院内総務で、ニクソン・ドクトリンの欧州版、欧州から米軍を引き揚げろということで欧州に大変なショックを与えた。どうも日本の感じ方と欧州の感じ方に大きな違いがありはしないかなというふうに思うのでございます。  結論的に申しあげますと、今のアメリカの核の傘を私は信用している。それから、先生がおっしゃったのは、私、そのとおりだと思いますが、パーシングⅡは日本にとって戦略ミサイルである。幾らトマホークその他が日本の周辺にあるにしても、ウラジオストクあるいはシベリア以外にたたけないではないか、モスクワはたたけないではないかという御議論がございます。ただ、ひょっとしてウラジオストクが一撃のもとに破壊されるぞということになった場合に、ソ連が大きな危険を冒して日本を核攻撃するであろうか。ここのところはまた非常にパーセプションの違いになってしまって恐縮なんでございますけれども、私は、そういう危険を冒せない、したがって、核は使えないけれども、今日本アメリカの核の信用性がある、日本アメリカの核を信用していいということであれば、これはやはり大変な抑止力になってくるのではないか、こういうふうに思うのであります。  それから、これは余計なことを申し上げて後でおしかりを受けるかもしれませんが、非核三原則であります。これは私は在野の人間でありますから言うのでありますけれども、ここで通過、寄港をアメリカがしていないはずはないのではないかと思うのであります。ソ連も非核三原則は守れと言っているのですけれども、これは建前はそうであるけれども、実際に核の通過、寄港があるから、これをソ連が知っているから核の抑止力が効いている、大変皮肉宣言い方になるのでありますが、それが現実ではなかろうかなというふうに私は考えているわけであります。  それから、これは私も何かいい知恵はないかと思って、先生の御指摘、そのとおりだと思うのでありますが、均衡でございますね。残念ながら、今の核の均衡、この上に立っている世界平和であるということを私は認めざるを得ないわけでございますが、これを何とか打開する方法はないだろうか、何かのきっかけで軍縮に進ませる方法はないだろうか。それが、また堂々めぐりするわけでありますけれども、SDIの理論ではなかろうか、そのSDI研究に我々が反対する理由はないのではないだろうかというふうに思うのであります。
  36. 青木日出雄

    青木参考人 先制使用の問題なんですが、先ほども出ましたように、戦略核兵器というのは実際には使用されない兵器ではないかというふうに考えられますけれども、これは政治的な問題でありまして、アメリカにしろソ連にしろ軍にすれば、それは使われる兵器として準備をし、それを使って戦争に勝てる戦略を立てるのが当然であります。これも先ほど申し上げましたように、現在もし戦略核兵器が使われて戦争が起こるとすれば、そこで戦略核攻撃に耐えられない国というのは第一アメリカでありますから、また計算をやっても、両方の交換比で言いまして損害率というのは必ずアメリカが大きくなる。それは、例えば核戦争がもしカウンターシティーで行われたら、都市攻撃戦略で行われたらということであります。そこで考えられますのは、ではカウンターシティーではなくてカウンターフォースの対兵力戦略になったらどうか。そして対兵力戦略になるのであれば、アメリカ核兵器を使ってソ連核戦争をやっても勝ち得る、アメリカに有利だという理屈が出てまいります。ただそこで、対兵力戦略核兵器を使う場合に、向こうが撃ってしまった後のあいているサイドをねらっても役に立ちませんので、必ず先制核使用というのを考えなければいけない。少なくともそれが一番有利な戦略でありますから、どうしても先制使用という問題を外すことができないということであります。また、ヨーロッパでの核の使用の場合には、ワルシャワ条約機構軍の地上軍が非常に大きいので、それが入ってきた場合にそれに耐えられないということを表示をするために核を使うというオプションがある。これはヘイグが国務長官のときに言っておりますね。  それに比べればアジアの条件というのは“陸続きの部分がほとんどありませんのでヨーロッパよりはいい。ここでの地域的な先制使用についての何かの申し合わせとか条約とかやる可能性がないとは言えません。ただ、アジアにもたった一カ所だけ、陸続きであって、もし先に向こうから突破されたときに防御の手段がないという場所がございます。三十八度線であります。これについては、非公式ではありますけれども、もし三十八度線を突破されることがあれば、ソウルまであと防御線がほとんどございませんので、議政府の防御線なんというのは非常に貧弱なものでありますから、そこであと防御ができる線はソウルの南側の漢江しかない。そうすると、前の朝鮮戦争と同じようにソウルを放棄することになる。そこでいろいろないきさつがございまして、例えばソウル遷都の問題とかなんとかあったわけですが、最終的にアメリカが非公式に約束をしたのは、三十八度線が突破をされそうになったときは、相手が核兵器を使うか使わないかにかかわらずアメリカ核兵器使用するということでございます。前に三十八度線でポプラ事件がございましたね。そのときに約束をいたしましたのは、一応アメリカは韓国に核兵器を持ち込んでいないということになっておりますので、使用する核兵器はグアムのB52ということであのB52が出動したわけでございます。それから、現在行われておりますチームスピリットの演習にも一回はB52を出すのは、それを保証するためであります。そうすると、アジアにも、核を先制使用する、相手が核を使わなくても使うという条件があり得るので、さあそれをどう考えるかという問題であります。  それから、先ほどの東中先生の御質問にもございましたSDIについて、これも考え方の問題でございまして、SDIというのはやり方によっては核の先制使用を楽にする。第一撃で先制使用いたしましても相手の報復力をそこで落とすことができますので、SDIそのものは攻撃兵器ではございませんけれども、そういうことで核の第一撃使用とか先制使用を逆に保証するものだという意見もあることは事実であります。
  37. 前川旦

    ○前川委員 もう一つ田久保先生、新しい抑止理論というものを考えないと大変な時期になっていると思うのですよ。そこで、先生はSDI一つの希望だとおっしゃったというように思いますけれども、どう考えても先生がおっしゃるようになるためには、アメリカソ連、両方ともが完璧なSDIを持って、両方とも相互に相手の第一撃能力を殺してしまえるというふうになればまた言われるようなことが可能かもしれないけれども、今の状態はアメリカだけが実用性のあるSDIを持つということになりますと、結局、ソ連の側から見ると自分の第一撃能力だけは殺されてアメリカだけ生きているわけですから、これは核均衡が崩れるわけです。崩さないようにするためには核弾頭をふやしていくか突破できるものをつくるかということで、無限の核競争がこれによって始まるというふうに私たちは思うのです。先生が言われるようにするためには、両方が同じような力があるものを持って、そこで均衡しないといけないのじゃないだろうか。そこまでいく交渉であれば私は先生のおっしゃることもわかるような気がするのですけれども、その点いかがでしょうか。
  38. 田久保忠衛

    田久保参考人 SDIは、これは本当の話、中身はどういうことになるか全くわからない。今研究以上の何物でもないわけでございますね。私も仮定の問題として言っているわけでございまして、これがどうなっていくか、恐らくソ連もやっていく、アメリカもやっていく。アメリカは大っぴらにやったからやり方が非常に悪かった。随分頭の悪いやり方だなと私は思うのですけれども、ずっとやっていく。ともかくやっていく。その場合に、一つソ連も同じようなものを持つ。これは十年、二十年、三十年、五十年先のことでございましょうが、配備の展開の段階でABM条約を改定して、いろいろなプロセスがあると思うのですけれども、両方同じようなシステムを持つということになったならば、これは一応仮定の問題でございますが、一つ大きなブレークスルーができるのではないか。  もう一つは、これはどのくらいの金がかかるかわからない。アメリカも五カ年間二百六十億ドルですか。それからソ連は、今の国力でもって国家としてのGNPは日本以下でございますから、この中で物すごい核競争をやっていく。これは、金属疲労じゃありませんけれども、どこかのポイントでぼこんと耐えられなくなる場面が出てくるのじゃないかと思います。この前に一つ大きな話し合いのきっかけができるのではなかろうかというふうに思うのです。ソ連びいきの方というのはいらっしゃらないと思うのですけれども、ソ連びいきの方には何を言っているのだということになるのでありますが、アメリカだって今二千億ドル以上の赤字、日本の総予算に匹敵する五十兆円以上の赤字を出しているわけでございますから、やはりどんなに金がかかってもSDIをやるのだということはめちゃくちゃな話ではないかと思うのであります。これはポール・ニッツが繰り返し言っているわけでありますが、費用対効果を度外視しては我々は何もできない。どうもその点で話し合いのきっかけができるのではないかな、これは希望的観測でありますが、そういうことをきっかけにしなければ、先生がおっしゃるように力以外のノウハウがあってそっちの方に世界全体が動いていけばいいですけれども、現状ではなかなか、あくまでも希望にとどまってしまうのではないかな、そういう意味で私はSDIということを申し上げたわけでございます。
  39. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 両参考人に敬意を表します。  きょうは我々随分おとなしく質問しているわけでございますから、御発言もしやすいだろうと想像しているわけでございますが、私も先生方の御意見に賛同するところと反対するところと、かなり明確にございます。例えば、青木参考人のお話の中でNPT条約の見直し、ある意味非核保有国権利をこの際強烈に主張することによって、核防条約の性格というのをもう少し非核保有国にとって安全なものにするように努力するのは日本外交の一つの大きなポイントではないか、安全保障政策の柱になるのではないかと力説されましたが、甚だもって敬意を表します。立派な御意見だと、私賛同しているわけであります。また、田久保参考人が費用対効果を考えてSDIについていかがなものかとおっしゃった点についても、私は非常に敬意を表するわけであります。  さて私は、第一問、SDIから始めますが、まず、SDIは防衛的に効くのかということなんです。いつもテレビの解説の画面なんか見ると、宇宙高くミサイルが飛んできて、途中で四回ぱんぱんぱんとやられて全部吹っ飛んでなくなってアメリカは助かるというのでは、途中にある我が国はどうなってしまうのか、しかも直線距離だ、水平射撃で当たるような距離に日本の国はあるのです、おまけにソビエトの原子力潜水艦が目の前にいるじゃないか、こう言いたくなるわけであります。恐らくニューヨークでもワシントンでも直線距離で海面から撃たれると大問題になるのはわかっている。私がNORADに行きましたときにも、アメリカの東海岸と西海岸の外側に一個中隊ずつのソビエトの原子力潜水艦が存在していて、アメリカの政府が何か嫌なことを言うとそれがすっと接近してくる、いいことを言うとすっと下がるというような政治的な航海というのを常にやっているのを画面の上で見せてもらいました。  それで、思うのですけれども、SDIを実際につくった場合、日本のような近距離のところでは、宇宙空間を舞い上がってこないで水平状態で飛び込んでくるSDIに対して最高の能力を発揮するのはまず無理なのではないか。レーザー兵器を日本が一番先に開発して海岸線に並べる程度が精いっぱいなんです。しかもその効果は何十分の一かに減殺される。つまり抑止することはできないんだ。相互確証破壊戦略にかわるような戦略というのは我が国では持ち得ないのではないかというのが第一の疑問なんです。その点、どうお考えか。  第二番目、アメリカSDIというのは、関係諸国は全部六十日以内に参加するかどうか決めるということで、これは子供のころによくあった例でありますけれども、隣の組に殴り込みに行くからこん棒を持ってこい、言うことを聞かないものは後でひっぱたくぞと言う餓鬼大将がおって私も大変迷惑をしたことが少年時代にあったわけですが、あれと非常に似ている言い方である。ということは、殴り込みに後ろからくっついていくことはいいけれども、参加しないことによってぶん殴られるおそれというのは極めて高いという恐怖がこちらを支配するわけです。ところが、実際に東ドイツと西ドイツの正面で考えますと、西ドイツをSDIで完全にカバーしたとしても、東ドイツから野砲の攻撃があるだけで相当な大損害を受ける、核ミサイルを撃たれればもうとめようがないだろう、SDIのカバーがそこまで効くのかな、こういう感じがするのです。そうすると、これは防衛的なものになり得ないのではないか。少なくともアメリカ防衛にはある意味で役に立ったとしても、違うのではないか。もっと極端に言えば、アメリカ自身にもSDIというのは余り効き目はないのではないか。  三番目は費用の問題。今アメリカの経済を数値を挙げてここでは説明はいたしませんが、専門の委員会ではありませんから。アメリカの防衛費の上昇分というものはすごいものであります。特にバジェットの方だけではなくてオフバジェットの方で見ますと、その八〇%は軍事費であります。これは武器を海外に輸出する、贈与する、あるいは借款で与えるというものを含めますと大変な量ですね。それでアメリカの機械工業はカーター時代のときと比べまして実に四倍規模になっているのですが、やはりその八〇%というのは兵器産業です。  アメリカの兵器産業というものは日本の国と非常に違いまして、アメリカの景気を非常に大きく支配する有力産業であります。ところが、その兵器産業に対する政府の支出金というのは猛烈な勢いでふえておる。これをもって景気を引きずり上げてきたという形があるわけですね。そうすると、どういうことになるかというと、これで古いタイプの兵器というものはどんどん陳腐化してきますけれども、陳腐化のスピードよりはるかにすごいスピードで兵器は累積されておる。そうすると、SDIのような新しい軍事技術というものの開発は、軍需産業にとっては大変なプラスになるということが言われておるわけです。そういう大型の軍事投資、一説によりますと一兆ドルというようなレベルの費用がかかる、それは相当大幅に変動するものではございましょうけれども、そういう費用だといたしますと、世界経済に与える影響は並み並みならぬものである。しかもそれに対抗しようとするところでも非常に費用がかかる。ところが地球というものを考えてみると、難民は片づけなければならぬわ、飢饉は存在しているわ、南北問題は片づけなければならぬわ、もう前駆的に手を打たなければならぬ問題がたくさんあるわけですね。そのときにそういうことをどんどんやるというのは余り適切ではないのではないか。むしろソビエト側を威嚇して交渉に引きずり出すことによって、膨大な諸経費を要する先進的な軍事技術に対してブレーキをかけて何らかの形で費用を抑制するという方向戦略だけが唯一免責される現下の戦略と言えるのではないか、そんな考えを持っておるわけです。  そして、私は田久保さんに反対意見を申し述べますが、日本では科学技術を軍事技術に応用することに対してブレーキをかけたことは余りなかったのではないかどちらりとおっしゃった。そんなことを言いますと、世界がつぶれるのを容認するだけであって、極めてペシミスティックに我々を激励されたのだろうと思いますけれども、これはちょっとおかしいのではないかと私は思います。  それから第四点目ですが、今日本が恐れなければならないのは、アメリカは核を持っているからといって、決して同盟国を核で守っていないケースが何回もあるわけです。アフガニスタンでは同盟国ではなかったからしなかったのですけれども、ベトナムのときにも使用はついにしなかった。ソビエト側にも同じ事情がありまして、自分の同盟国がやられたときに核を使わないで見放すことはあり得る。したがって、日本は小じっかりした安全保障能力というものを持つことがすべての始めだと思っているわけです。そういった意味で、アメリカの核戦略にそのまま全部同調することがプラスとは思えない。  五番目に、これはマスコミなどに出ただけですから、私が確認したわけではありませんけれども、中国の奥地、ソビエト国境の近くにアメリカの方に情報を送る通信情報基地というものが存在しておると聞いておるわけです。また、同種の基地は両方で持ち合って、お互いに監視をし合っている。そういうネットが相互にある。これは核攻撃の前提になるそういう通信システムがなければ核攻撃というのは実際には実行できない状況にあることからして、そういう状況のあることはわかるわけですね。  ウォーヘッドの話ばかりが何となく出てしまうわけですけれども、一発でも物すごいことになるわけですね。せいぜい三十発か五十発もあれば、正確に命中するととんでもないことになる。先日、北アメリカ防衛軍総司令部の人の話がテレビにちらっと出ていましたけれども、今頭の上で弾頭が炸裂して耐え得るかと言ったのに対して、昔だったら耐え得た、正確に命中しなかったから、今は一発でもうだめだろう。我々は悲劇的な存在だということを彼は暗に言っているわけですね。だから核軍縮、あるいは戦争を食いとめるためのものとしてはそういう核兵器体系を支えるシステムについても交渉しなければいけない時期が来ているのではないか。  早口でいろいろなことを申し上げましてまことに恐縮でございますけれども、賛否両論ごちゃごちゃございますが、両先生、もしよろしければ御返事をいただきたいと思います。
  40. 田久保忠衛

    田久保参考人  大変紳士的に御質問くださってありがとうございます。私も努めて紳士的にお答えさせていただきたいと思います。  先生の最初の御質問のSDIでございますが、これは本当によくわからない。私が先ほどから繰り返し申し上げたいのは、SDIが仮に――これは理論的に隅から隅までわかっている人は今いないと思うのです。わからないけれども、いろいろ問題点がある、よって日本反対できるか。アメリカの要求、協力要請を一切拒否した方がいいか悪いかということでございますけれども、私は、日本アメリカ幾らけんかをしてもいいけれども、一定のフレームワークがあるのではないか。日本が長年とってきた、サンフランシスコ講和条約以来とってきた一つの国是がありはしないか。これははみ出してまで反対はできないのだということが第一点でございます。  もう一つソ連がこれをどんどん極秘のうちに進めていく。これに対してはどういうふうに解釈したらいいか。私の方からは御質問は禁じられているわけでありますから、これは疑問点を申し上げるだけにとどめておくわけでございます。  それからまだいろいろあるわけでございますが、これはいきなり裸でやりを持って戦っているわけでありまして、この裸の部分に何かつけようではないか、完全なよろいをつけるまでにはいろいのやりと盾のコンビネーションから進んでいくわけでございますね。まだやりだけの段階で研究だけの段階であるから、余り突っ走って仮定の問題にまで立ち至れないのではなかろうかと思うのであります。ただし、御指摘のようにアメリカが非常に頭の悪いPRのやり方と、同盟国にろくすっぽ、ろくすっぽといいますか何らの事前の情報を入れなかったのではないか。西ドイツあるいはイギリスからもそういう不満が聞かれたわけであります。フランスもそうであります。こういうことが非常にアメリカ側にとってマイナス、うんとアメリカにとって苦言を呈する材料になるのではないかな、こう思うのであります。  それから、いろいろおっしゃったわけでありますが、先生は日本だけは小ぢんまりした軍備が必要だ、この小ぢんまりというのはどの辺の規模かよくわかりませんが、やはり日本としては、私はとんでもないことを申し上げるようでございますが、いろいろのオプションがあると思うのであります。これは武装くらいは独自で核武装してSDI研究して、米ソいかなる支配力も排する独自の武装、武装中立論であります。こんなことができるかといえば、今GNPの一%でわあわあ騒いでいる段階でGNPの何十%を五十年も六十年も続ける、これはばか言ってはいけない、一笑に付されるのは当たり前だと思うのであります。これはオプションからいってできない。そうすると、どこかの保険屋にかからなければいけない。保険屋というのは最も信頼できて掛金が一番安いところがいい。ソ連アメリカ中国どこがいいかというと、私は日本国民の九九%はアメリカという保険屋が一番いいのではないか、GNPの一%以下でいいんじゃないか、こういうことになると思うのであります。したがいまして、このアメリカには文句は言うが、基本のところの日米関係というのは崩せないのではないかな、こういうふうに思うのであります。このフレームワークの上に立ってのSDIに対する発言であり、その他核軍縮に関する発言もそうだと思うのであります。  アメリカのかけている傘が信頼できるかどうか、これは先ほど申し上げましたようにパーセプションの問題でありますが、我々は同盟国としてこれを信頼する以外にないとすれば、そこに穴をあげるような、米、欧、それからアジア日本でありますが、穴をあけるようなことはやってはいけないのではないかなというふうに感じているわけであります。  具体的に先生がこの五つおっしゃったことに卵お答えにはなりませんが、以上のことを申し上げたいと思うのであります。  最後でございますが、この軍縮に対する努力をじゃ怠っていいのか、こういうことになってしまうと思うのであります。この軍縮日本の立場として幾ら声を大にして言ってもいいと私は思うのであります。ただ、その軍縮を声を大にして申す、その場合の手段方法、これをよく考えないと、結果的に米ソ両国の中の一方にくみするようなことになるわけでありますが、これを避けながら何とか知恵を出さなければいけない、これが私の考えでございます。御不満でございましょうけれども、ひとつよろしくお願いいたします。
  41. 青木日出雄

    青木参考人 先ほどSDIが防衛兵器になるのかそれとも先制攻撃を助けるような兵器になるのかということがございましたけれども、大体兵器で防衛用あるいは攻撃用と専一のものというものはないわけでございます。それで常にそれをどう使用するかによる。どう使用するかを割合にはっきり決定づけるのはその配置をどうするかという問題。例えばレーザー兵器にしましても、それを宇宙に配置をした場合、これは攻撃用にも、直接地上をねらうということじゃなくて攻撃を補助するためにも使えるし防御にも使える。ところがこういう兵器を地上に設置をした場合、これはほとんど防御用にしか使えないという特色があります。レーザーの光がどこかの国へ届きましてもそれでは破壊力がございませんので、ですからその配置を考えることによって何とか可能だろう。現在あります、先ほどちょっと御説明申し上げましたSDIの中で、DEWの方ではエックス線レーザーのようなものを使うとこれは波長が非常に短いので大気圏を通過しませんので、これはだめですけれども、化学レーザーのようなものならばある程度高い山の上に置けば通過できるのではないか。現在のアメリカの「ビームディフェンス」や「ハイフロンティア」に出ております計画では、高度三千メートルの山の上に発振器を置いてそれをミラーに反射させようというようなやり方をしております。  それからKEWの方は宇宙に配置をするレールガンのようなものを使うか、それともアメリカ陸軍がここずっと研究をしておりました、地上から発射をしまして傘のような骨を広げてそれでミサイルを包み込むかというような二つの方法があるわけです。そのうちで地上から発射するものというのは昨年実験に成功しておりますので、まだやる可能性はあるのじゃないか。それ全部を含めてSDIと呼んでおりますので、そのうちの地上発射のものあるいは地上に基地を設けるものについては防御的な要素が非常に強いものというふうに言えるのではないかと思うのです。  そうしますと、例えばそういうものを日本で開発をしまして富士山の頂上か羊蹄山の上か何かに置くことができればそれはある程度の効果を発揮するかもしれない。それは今のSDIで言っておりますようなミサイルを発射したブーストフェーズの六分以内に撃墜をするという方法ではなく、真正面から向かえば、要するにそうすればターミナル地域を使えますので、昔のアメリカのセーフガード計画なんかにありましても、ターミナル地域に配置をすることであるいは有効かもしれない。アメリカでそれが有効でないということになりましたのは、非常に広い地域でありますから、そこで空中で爆発をされるとどこかアメリカの国土が被害を受けるわけです。ところが日本のような狭い地域ですと、それをうまく使えば海上でそれを爆発させることができ、日本の本土には影響させないかもしれない。ですから、一九九〇年代か二〇〇〇年代になれば、このSDIで考えているものの一部が日本を防御するような兵器になるかもしれないという可能性がございます。それが、きょう朝一番初めに申し上げたSDIについて全く可能性のない夢物語ではないという意味であります。  ところが、現在アメリカの進めている、主として考えているブーストフェーズで落とすということを考えますと、それはICBMならば撃破できる、ブーストフェーズは非常に長いですから。ICBMならほぼ三分ほど燃焼させて次の三分ほどで加速をいたします。SS20ならば燃焼時間が一分ちょっとになって次の加速時間も二分ぐらいになる。パーシングのようなもっと射程が短いミサイルですと、ブーストフェーズというのは一分から二分の間しかない。その間にそれを探知をして計算をいたしまして、だれかが攻撃をする意思を決定をしなければいけない。例えばアメリカまでそれを通信で持っていきまして大統領が攻撃をしろという命令を下してもとへ戻して、六分間でも難しいと思うのが一分とか二分では絶対できないわけです。だからSS20以下の射程を持っている戦域兵器について、ワインバーガー国防長官が何と言いましても、ヨーロッパアジア同盟国についても防衛する、役に立つという理屈は成り立たないはずであります。ただそこが持ってそういう使い方をするというのならば話は別です。そういう使い方というのは、向こうから来るものを真正面からとめるという方法なら話は別だということであります。ですから、そういう方法がないわけではないというふうにお考えいただいていいと思います。  次に、SDIの経費については、実際に配置をするに当たりましては五千億ドルとか一兆ドルとかいろいろな試算が出ております。ただ現在のところ問題になっておりますのは、この五カ年間での開発費二百六十億ドルであります。一九八五年予算からついておりますので、現在進行中でありますが、一九八五年予算で国防総省が要求したのが十八億ドル、議会が認めたのは十四億ドルでございます。約四億ドルそこで削られている。ことしの八六年度予算で今要求しておりますのは三十八億ドル、議会ではどこまで削るかというのはまだわかりませんが、ひょっとすると昨年並みに削るかもしれないという話もございます。何かの形ではつきますけれども、経費としては半額になってしまう。そうしますと、二百六十億ドルを五カ年間でやるということは全く不可能であります。ただ、兵器開発の方は一九八九年予算で、例えばレールガンならば秒速十キロのところまで上げるという計画はもう全部できております。それを達成するためにはどこかからその経費をひねり出すか、あるいは開発の一部をどこかに負わさなければいけない。それが今のワインバーガー発言にあります六十日以内というのは、その次に名乗りを上げたら、では、経費の一部を分担するのか、あるいは技術の一部を分担するのか、何かについては開発はそこでやってしまうのかというような何かの分担が必要になるのではないか、こういう疑いは十分あると思うのであります。  それから、これも先ほどちょっと話を落としたのですけれども、では核戦争で、先ほど戦術核を使う核戦争というのが非常に起こり得る可能性があるというふうに申し上げましたが、それが起こり得る可能性の一番高いところは何か。今までの核兵器使用しようかと考えたときの歴史を考えますと、少なくともアメリカで言えば、一番決心のしやすいのは自国民あるいは自国の軍隊の生命を守ることであります。だから、ケサンの攻防戦で包囲をされたときに、あそこの海兵隊の師団を失うよりは、そこで核兵器を、相手が使わなくても、自分で核兵器を先制使用してもいいのではないかと考えるのであります。ソ連がどう考えるかというのはわかりませんけれども、同じではないかという気もするのです。  例えば、どこかの島を占拠してそれが追い落とされそうになる、全滅しそうになったときに、ソ連も戦術核兵器ならば先制使用するかもしれない、そういう条件で使われる可能性というのは実際には一番高いので、そこで使われるのは決してICBMでもなければSLBMでもない、戦域兵器戦術兵器であるということを私が先ほど申し上げたかったのであります。
  42. 森下元晴

    森下委員長 ちょっと時間の関係で……。  それでは石原君。
  43. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 やむを得ない所用で、一分くらいで午前中のお話を聞きそびれまして、大変失礼いたしました。  御両人のおっしゃること、私、非常に興味深く聞いておったのですけれども、実は私、十七年前、行ってみたら日本の議員で初めてNORADとSAC、特にシャイアンマウンテンのウォーニングシステムの中へ入ってみた人間だと聞かされて、私は唖然としたのですが、以来私は、機能的にアメリカの核の日本に対する抑止力はないということを言っている非常に珍しい自民党の議員の一人なんです。しかし、同時に我々、どうもICBM中心に核戦略論をやるわけですけれども、そのときに、アメリカとソビエトも第一撃のターゲットがともに相手の報復を制圧するために、相手のICBMにフォーカスが合わされていることは周知のことでありますが、厄介なことにSS20に象徴される戦術核兵器なるものが登場してきて、私たちもそれに神経を悩ましているわけですね。ところが、SS20のような戦術核兵器に関する安心しろという論は、技術的なものじゃなくて、要するに均衡抑止論という、ほかにオールタナティブがないために今はまかり通っている論理でしかない。一方、ICBMに関して言いますと、とにかく両方ねらい合っているのはソビエトとアメリカなので、米ソの問題を私たちが。はるかに見上げた形で、要するに技術論、機能論になるわけです。  第一番にお聞きしたいのは、私は不明にして知りませんけれども、アメリカの核戦略の中にNORAD、つまりノースアメリカン・エアディフェンス、これが要するに日本を含めた西側のすべての同盟国に対するウォーニングシステムをコントロールしていると称しているのだけれども、名前はノースアメリカン・エアディフェンスで、連絡将校は、日本からも来てないし、どこからも来てなくて、カナダから来ているだけなんですね。それがホワイトハウスに伝達されて、今青木さんが言われたみたいにどれだけ時間がかかるかわからぬけれども、SLBMを含めて、戦略爆撃機を含めてSACに伝達されて、迎撃の発進をする。そうすると、つまり我々の日本に設置されてNORADにつながっているウォーニングシステムの第一段というのは、完全に一番のフロントラインですね、そこで一次の保険を掛けて、これは間違いなくアメリカに対する核攻撃である、それから太平洋の途中でやって、いよいよバンデンバーグあたりでさらに確認して、とにかくこれは間違いなくアメリカに対する攻撃であるということで初めてホワイトハウスが指令し、SACが始動するわけですけれども、日本の場合には、そんな時間を稼ぐ暇がないわけです。  では、一体、日本やドイツを含めた西側、ヨーロッパに対するほかのウォーニングシステムは、アメリカにあるのですか、ないのですか。私は不明にしてこれ以外のものを知らないのですけれども、それをお聞きしたいのと、それからSDIに関して、アメリカに非常に唐突に言われたとさっき田久保さんおっしゃったけれども、必ずしもそうでなくて、ブレジネフ、アンドロポフ、チェルネンコ、三代にわたって宇宙兵器の制限交渉をしようということを言ってきたけれども、アメリカはそれをけってきたわけですね。特に、さっき青木さんおっしゃったけれども、去年、クェゼリンで地上からミサイルを発射して、その赤外線レーザーでバンデンバーグから撃ったミサイルをあそこの上で撃ち落とす実験に成功した、アメリカは非常にSDIに自信を持ったわけで、そこで初めて、またチェルネンコが――チェルネンコは三度目に交渉を申し込んできたのはジュネーブ会談になったわけだけれども、その前に、アンドロポフの時代ですか、例のスペースシャトルのコロンビアが打ち上げられてソビエトは非常に得然とした。それからカーター時代の終わりでしたでしょうか、この計画がちょっと発表されて、ブレジネフのときも宇宙兵器交渉を持ちかけてきて、アメリカはけった。  お聞きしたいのは、ソビエトの、今宇宙兵器といいましょうか、ICBMを含めて重量物の打ち上げ能力というのは五トン未満だそうですけれども、コロンビアなどは二十五トンあるわけですね、これにソビエトは追いつかない限り、アメリカが説明した三段階にわたるSDIのシステムを対抗してつくることができないわけですけれども、これはアメリカ自身も、金も技術もかかるわけですが、特にソビエトは、これは金の面でも技術の面でもちょっとなかなか追いつかないのじゃないかと思うのですけれども、追いつくとしたらどれくらい先に可能性があるのか。さっき田久保さんがおっしゃったように、本当にソビエトの経済というのは曲がりに曲がり過ぎて、あと折れるだけだと思いますが、そのポテンツがどの程度のものと予測していらっしゃるか、お聞きしたいと思うのです。  それから第三は、一時期、歩兵が携帯して歩けるようなリチウムの系統のノンラジエーションの核兵器が、中性子爆弾の出てくる前しきりに言われていたのですけれども、あれがその後どうなっちゃったか。そして、ノンラジエーションの核兵器というものは大型化できるのかどうかということについてだれも説明してくれないので、その可能性技術的にあるのかどうかということをもし知っていらっしゃったらお聞きしたいと思うわけでございます。  それからもう一つ、さっき青木参考人から割と詳しくお話しになりましたけれども、地上だけでなしに潜水艦からの迎撃のSDIもあるようですが、アメリカ構想の中に。あれは五十キロ上空に達するまでは、マッハにICBMの場合には達しないので、その間に八〇、九〇%は撃ち落とすということのようです。つまり、二段階目を突破してターゲットに向かって一番接近して、マッハ二十以上ですかスピードを持った最後の三段階目の、つまりターゲットに一番近くなったICBMならICBMをレーザーで撃ち落とす技術的なプロバビリティーというのは、やはり遠ければ速いだけ非常にラフなものになるのでしょうか。  そんな点について、それぞれ御両人から伺いたいと思います。
  44. 青木日出雄

    青木参考人 わからない点も多いのですが、まず第一は警報システムについてでございますが、NORADで現在持っている警報システム、それからSACの司令部を通じて行うものも、現在ありますのは全米に対するもの及び全米軍基地に対するものであります。外国軍隊あるいは外国の政府に対する警報系統というのはないというふうにお考えいただきたいと思います。  ちょっと誤解を受けますのは、今の国連決議によりまして宇宙についての飛行物体の観測、それの追跡についてアメリカに委託をされて、それの実務をNORADが担当しておりますので、これについての情報はNORADから出るわけですよね。ですから、例えば衛星の何号がどう飛んでいるというようなことは知らせてまいりますので、それとICBM、ミサイル等に対する警告とが同じようにあるように思ってしまう。これについては全く責任もないしシステムもない、ですから警報も出ないものというように考えるべきじゃないか。  それから、現在アメリカの警報システムの中で近距離からのSLBM等に対する警告システムというのは、コブラデーンを初めといたしましてフェーズド・アレー・レーダーをアメリカの沿岸につけております。これはアメリカの沿岸に対する警戒をするものでございます。例えば極東とかヨーロッパに対する警戒には全く役に立たない。ですから、射程の短いものあるいは飛しょう高度の低いものについてはアメリカをねらっているもの以外は全くわからない。(石原(慎)委員「原則的にはそうでしょうね」と呼ぶ一はい。ですから、その辺警報とか探知のシステムからいいますと、探知のシステムは宇宙の赤外線を感知する衛星が現在ございますので、それもNORADに入って、系統はアメリカ大統領と、それから全アメリカ基地と、それから民防衛を必要とする場合にアメリカ全土へ通報する組織があるだけでございます。  その次が、理論的にはどこの国も自国を守るための基本はやはり自国での防衛だろうと思うのです。私も実は自主防衛論者でございますけれども、理論的には、今の状態からいえば日本が核装備をする行為というのはある意味では必要だ。これは石原先生が昔おっしゃられたように……(石原(慎)委員「核防衛論者じゃないですよ」と呼ぶ)ええ、そうですね。――非常に高くつくというものではないですよ。経費的に見れば逆にかえって安い。ただ、日本で核装備をするということは明らかに不適当でありますから、それを捨てるとしますとやはり日本独自の防衛システムというのは要るのではないか。それは自主防衛という考え方でいきましても非常に高い経費がかかるものであるかどうかということは疑問だと思うのです。それは知恵の使い方によってある程度の祖国に対する純粋の防御力を割に安い経費でつくることだって不可能ではないのではないか、それはもう一回考え直してみてもいいのではないかという気がいたします。  それから核兵器の問題ですね。核兵器小型化について従来やっておりました研究というのは、ほとんどが天然に存在をしない、原子炉の中に出てまいりますアメリシウムとかカリホルニウムとかを使って行うと非常に小型化ができますが、これは半減期が非常に短うございますので、半年とか三カ月なんですね。これはだめだということになりまして、現在アメリカで実用にされております一番小さい核兵器MADMであります。この前もちょっと新聞に出ておりましたが、背のう、ランドセルみたいなものに入っておりまして、しょって走ることができる。重量は約二十キロでございます。それが実用になっている一番小さいものです。これはプルトニウムを主原料にしております。
  45. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 リチウムのようなものですね、ノンラジエーションの兵器がノンラジエーションのままに大型化される技術可能性は。
  46. 青木日出雄

    青木参考人 これも半減期の問題があって、一体幾らで再生をするかということですね。現在アメリカの国営の核兵器を生産するための原子炉は現にあいておりますので、だから、やってできないことはないと思いますが、現にやっておりますのは従来の核弾頭を中性子弾頭化する、そのための再生をやっていて、新しいものをやっているという話は聞いたことはございません。だから、大型化の可能性は今のところないと思います。
  47. 森下元晴

    森下委員長 それでは、時間があと十五分ぐらいしかないわけです。参考人から五分程度で御意見か簡単な御質問をお聞きしたいと思います。
  48. 上田哲

    ○上田(哲)委員 締めくくりというのはおかしいのですけれども、さっきのヘリテージは八二年の何月ですか。
  49. 青木日出雄

    青木参考人 月は忘れました。ヘリテージ財団から「ハイフロンティア」という名前で出ています。
  50. 上田哲

    ○上田(哲)委員 八二年の月というのはわからぬですか。
  51. 青木日出雄

    青木参考人 夏だったような記憶がありますが……。
  52. 上田哲

    ○上田(哲)委員 簡単に一つだけ。  先ほど来両参考人の御見解は、いずれも戦略核による衝突はほとんど可能性がないだろう、そこで戦術核での問題があるのじゃないかということでどうも共通されているようでありますが、仮に戦術核の衝突の可能性が高いとすると、つまり万一の場合が起きたとすると、それは戦略核の衝突という部分につながる可能性はどういうふうにごらんになっているのでしょうか。それはそれで限定的な衝突ということになり得るのか。我々の見解からすると多少意外感であったのは、どうもそこらを含めて次元の問題はあるにしても核戦争不可避論の前提に立たれているような感じがいたします。いみじくも田久保参考人が言われた金属疲労的な意味からすると、これはやはりそういう可能性はなえているのではないか、大変厳しい競争が続いていることは事実だが、そのことは可能性を高めているとは言えないのだというふうに私どもは思っているものですから、その辺の御見解を簡単に両参考人からお伺いできればと思います。
  53. 田久保忠衛

    田久保参考人 どういうふうにして核戦争が起こるか、可能性がないなんてことはあらゆることについて言えないわけでございまして、可能性が少ないというふうに私も申し上げたのですけれども、米ソ絡みでは、全く私の感じでございますが、戦術核を使って、戦域核戦略核、全面戦争に、こういうチェーンリアクションを起こしてエスカレートしていく、地球が破滅するというようなことにはならないような仕組みが米ソ関係にはかなりあるのではないか。これは、今のジュネーブ交渉以外のいろいろなパイプがあるのではないかなというふうに思っています。ですから、これは余り危険視はしていないのであります。  ただ問題は、米ソ以外の、イスラエルとかパキスタンとか――イスラエルは、これは数年前でありますけれども、私がエイタンという参謀総長に会ったときに核を持っているかと言って質問したのに、非常にあいまいな返事をしたのですが、これは持っているのではないか、戦術核ぐらい持っているのではないかなという感じがしたわけです。イスラエルは建国以来、外交というよりも軍事であって、サバイブするためには手段を選ばない、サバイブするためにはしようがないじゃないかというようなことを聞きまして、ははあ、これはイスラエルが国家の生存をかけた戦いだと見たときには平気で戦術核でも使うのではないかなという印象を受けたわけであります。したがいまして、私が先ほど申し上げました答えが上田先生にははっきり伝わらなかったと思うのですが、そういう意味で非常に不気味だなという気がいたします。米ソ絡みでは私は余り心配しておりません。
  54. 青木日出雄

    青木参考人  私は、米ソ間でも先ほどの戦略核兵器戦争というのはほとんど可能性がないだろう、それは両方とも壊滅するだけでありますから。ただ、現在のアメリカソ連も戦術論としては、戦術核兵器を含めまして核兵器を使うということが基準になっている。問題はどうやってその戦域なりあるいは前戦なりで使う核兵器と、それから米ソ戦略核兵器とのカップリングを切るかということであります。それが限定戦争論であり、それの成立の可能性というものは現在高まっておるのではないか。それで、これは田久保先生とちょっと意見が違うのです。では、なぜサッチャーがSDI研究に積極的に参加をしようとしたかというと、イギリスとしてはそこのデカップリングを非常に恐れている。何としてでもその鎖に手をかけておきたい。そうでないとヨーロッパだけの戦域なり前線なりの核戦争が起こってしまうということを恐れているのではないかと思うのです。ですから、それらを含めまして、実際には現在核兵器を持っていない国、あるいは米ソ以外の地域にある国というのは独自の核戦略論を持つべきだ。それは核兵器を持たないというのも一つ戦略であります。それの中で我々はどう生きていくか、どうやって安全を守るかという戦略があっていいわけであります。それがアメリカソ連戦略核兵器とどういうふうに結びついていくか、そのためには外交的にどういう手段をとればいいのかというような、はっきりした戦略論を確立すべきだ。何か日本では、非核三原則があれば自分には核は関係がないと目をつぶっているから見えない、どこかにあっても見えないという感じが多いと思うのですが、それではいけないと思うのですね。ですから、この機会にひとつ先生方にもお考えを願いまして、ここで日本独自の戦略論というのを確立していただいていいのじゃないか、というのが、これが最後であります。
  55. 上田哲

    ○上田(哲)委員  ありがとうございました。
  56. 森下元晴

    森下委員長  以上をもちまして参考人に対する質疑は終わりました。  両参考人には、御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。ここに厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る四月八日月曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十一分散会