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佐藤三吾君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
昭和五十九年度予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
我が党は、
政府の国民生活犠牲、生活不安を増加させる経済財政政策を転換し、国民生活の
向上、内外経済の不均衡の是正及び財政再建に展望を持てる予算を編成することが必要と考え、本予算を軍拡と国民生活圧迫の予算とすることなく、生活安定、平和保障の経済財政改革の予算として編成するよう、本
委員会において
政府予算の
問題点を摘出し、その根本的見直しを求めてきたのであります。
しかし、
政府予算の審議の中で、中曽根内閣の本質が明白となり、強者は生き残り、弱者を切り捨てる国内政策が進められる一方、対外政策は
アメリカの
軍備増強路線、対ソ戦略の一翼を担う危険な軍事優先政策が推し進められているのは明らかであります。このような予算は絶対に認めることはできないのであります。
以下、反対の主な理由を五点にわたって申し上げます。
第一の反対理由は、不公平な税制改正が行われ、低所得者に実質増税、高所得者に大きな減税効果が与えられていることであります。
国民が所得の伸び悩む中で、切実に求めてきた所得税減税が七年ぶりに実施されますが、その実態は所得税、住民税の最低税率を引き上げる一方で、所得税の最高税率を七五%から七〇%に引き下げるといったように、低所得者冷遇、高所得者優遇の不公平の拡大となっているのであります。しかも、所得税減税と増税上が一体となっており、その増税には酒税、物品税、自動車税等の大衆増税が含まれているのであります。さらに第二、第三の税金とも言うべき社会保険料、各種公共料金、手数料の値上げが伴うことによって、低所得者の家計の実質所得はマイナスとなる事態も招きかねません。これでは税に対する国民の不満は一向に解消されないのであります。
第二の反対理由は、行政改革と歳出
削減が福祉と教育に集中して、弱者しわ寄せの予算となっていることであります。
健康保険法の改革により被用者本人の給付率の切り下げ、高額医療費の自己負担限度額の引き上げ、児童扶養手当制度の改悪、雇用保険法の改悪等々弱い者泣かせの行革予算と断ぜざるを得ません。医療費の膨張の元凶となっている不当な薬価基準、人権無視の医療法人の存在、政治献金と癒着した民間企業への補助金支出等、行政改革の対象とされるべき分野にメスが入れられないままに、本来削るべきでない予算を削る非情な措置は許されません。しかも、民生行政に直接かかわる地方自治体財政の負担にツケ回しをすることは、まさに時代に逆行するものであります。
第三の反対理由は、内需主導、国民生活充実の政策による
景気浮揚策が欠落していることであります。
最近のマクロ経済での
景気の動向は良好と言われますが、それは依然として外需依存、輸出の増大によってもたらされており、これでは対外経済摩擦の打開は困難であります。その上、マクロ経済の好況は、企業別、職種別、地域別の格差の拡大を内包しており、国民生活のレベルでの格差は縮小するどころではありません。個人消費増大のための所得税減税等も税負担の軽減効果はなく、人勧、仲裁裁定による公務員賃金等の完全実施にも消極的、その王公共投資も実質マイナスの伸び率という予算では、内需主導、国民生活
向上につながる経済成長を期待することはできないのであります。
第四の反対理由は、財政再建の具体策、方法が示されず、財政改革の展望の見出せないことであります。
国債整理基金特別会計への繰り入れ公約一兆六千百二十七億円を取りやめ、電電公社、専売公社からの納付金をふやしてなお前年度当初予算比で一兆円の特例公債の減額ができず、五千二百五十億円の減額にとどまったのであります。大型間接税の導入をしないと中曽根内閣は公約しますが、いかなる手だてを講じて特例公債依存財政からの脱却を図り、国債依存率二五%の財政赤字を改善していくのか、展望を示されないのであります。年度末の国債残高は約百二十二兆円に達し、特例公債の全額現金償還の約束をほごにして、どこに打開策を求めるのか明らかにできない財政音痴の予算となっているのであります。
第五の反対理由は、
軍備優先、軍事大国化につながり、
世界の
軍縮要求に逆行する予算となっていることであります。
一般会計の伸び率が前一年度当初予算比で〇・五%増という超緊縮予算の中で、防衛関係費は四年連続の特別扱いで、前年度比六・五五%という突出を認めているのであります。防衛関係費の増加額千八百四億円は社会福祉費の増加額八百八億円を大きく超えるまさに大砲型予算であります。レーガン政権の対ソ戦略に積極的に加担し、防衛白書が北の脅威をあおり、核を積んだ米戦艦、航空機の寄港、通過問題が国民に解明されない現状を見るとき、
平和憲法を持ち、
世界平和に貢献すべき我が国のとるべき政策では到底あり得ないのであります。
以上、五十九年度予算に反対する主な理由を申し述べましたが、最後に政治倫理問題に関連して付言いたしたいのであります。
国民の負託にこたえるべき政治家、とりわけ閣僚たる者は、職を利用した財産の増大は許されず、そのために中曽根内閣は閣僚の資産公開に踏み切ったことは
一つの進歩と見るものでありますが、まことに残念なことに、公開の基準が不十分で不鮮明な部分が多いのであります。しかも、閣僚内部でも意思の一致が見られず、極めて消極的な御仁もおられるのであります。政治倫理を確立し、国民の政治に対する信頼を回復する一方策として、資産公開法の制定が必要でありますが、中曽根内閣にその意欲が見られません。我が国の民主政治の前進のために政治的英断を求めて、私の反対討論を終わります。(拍手)