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1984-03-27 第101回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十七日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月二十六日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     黒柳  明君      中西 珠子君     和田 教美君      山中 郁子君     上田耕一郎君      三治 重信君     柄谷 道一君      野末 陳平君     田  英夫君  三月二十七日     辞任         補欠選任      山東 昭子君     志村 哲良君      長田 裕二君     吉村 真事君      竹内  潔君     出口 廣光君      柄谷 道一君     小西 博行君      前島英三郎君     喜屋武眞榮君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 出口 廣光君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 松岡満寿男君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 吉村 真事君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 鈴木 一弘君                 中野 鉄造君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 柄谷 道一君                 小西 博行君                 秦   豊君                 田  英夫君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君    政府委員        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房  佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育  上野 隆史君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        外務省アジア局  橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君        厚生省援護局長  入江  慧君     事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、お手元の質疑通告表のとおり、外交防衛に関する集中審議を行います。     ―――――――――――――
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 質疑に先立ち、理事会の決定によりまして、この際、中曽根内閣総理大臣から中国訪問に関する報告を聴取いたしたいと存じます。中曽根内閣総理大臣
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三月二十三日から二十六日まで中国を公式訪問してまいりました。お忙しいところ留守をいたしまして、まことに恐縮に存じます。  訪問中、趙紫陽総理胡耀邦書記鄧小平主任等中国側指導者会談をいたしましたほか、北京大学において講演を行い、中国の青年と直接語り合う機会を得ました。  私は、総理に就任して以来、昨年十一月の胡耀邦書記訪日等一連機会を通じて、日中両国が体制の相違を乗り越え、二十一世紀に向かって堅固な平和友好関係維持発展させることは、両国のみならず、アジアひいては世界の平和と繁栄にとっても極めて緊要であるとの考えを申し述べてまいりました。一昨年訪日された趙紫陽総理が提起されました平和友好平等互恵長期安定の三つの原則に、来日されました胡耀邦書記賛同を得まして相互信頼を加えまして四原則とすることにしたのもいまさにかかる考えに立ってのことであります。  今次訪中の最大の眼目は、このような基本的考え方をいかなる施策によって具体化していくかという課題にこたえることであり、幸いにして趙総理を初め、中国指導者方々との一連会談により、このための大きな一歩をしるし得たものと確信をいたしております。  今次訪中機会に、胡耀邦書記御来日の際御賛同を得ていました日中友好二十一世紀委員会が正式に発足する運びとなりました。同委員会には日中双方の青壮者の代表が参加し、四つの原則のもとに日中関係長期にわたり発展強化させていくための方途につき、政治、経済、文化、科学技術等広範な角度から検討し、両国政府に提言を行うこととなります。日中友好協力関係を確固たるものとする上で本委員会の貢献が大いに期待されております。  私は、中国対外開放政策長期にわたって堅持する方針であること及び我が国との諸般交流協力強化拡大に積極的な姿勢で臨んでいることを評価し、我が国中国のかかる方針及び対日姿勢に積極的にこたえることは両国関係の発展のため不可欠であるとともに、アジア世界の平和と繁栄にとつて緊要であるとの認識のもと、中国近代化努力に対して引き続きできるだけの協力を行うとの我が国の対中基本政策を再確認いたしました。  このような考えに立って、新規円借款につきましては、中国経済開発に資するべく、運輸、通信エネルギーの各分野における重点プロジェクト七件に対し、八四年度以降我が国財政事情等を勘案の上、各年できる限り協力を行うとの基本方針を明らかにいたしました。中国側よりは、我が国のかかる姿勢及び協力に対し深甚な謝意表明がありました。  私はまた、中国残留日本人孤児問題につき、中国政府関係者及び養父母に対し感謝の意を表するとともに、今後とも親族捜しの一層の促進につき協力方を要請いたしました。  国際情勢につきましては、日中両国共通関心を有する主要な国際問題につきまして率直な意見交換を行いました。中国側要人との会談を通じ、私は日中両国世界の平和と安定を希求しており、またかかる観点から多くの問題につき共通立場を有していること及び今後両国が種々の問題につき可能な協力、協調を進めていくことは国際社会の平和と安定にとってますます重要な意義を持つに至っていることを改めて痛感した次第であります。  今次訪中により、日中両国の成熟した関係を目指し、両国間の相互信頼を深めるとともに、両国関係強化拡大の礎を強固にするという目的及び意義は十分達成されたと考えており、今後は今次訪問の成果を十分に踏まえ、揺るぎない日中関係の構築のために一層の努力を続けていきたいと考えておる次第であります。     ―――――――――――――
  5. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、これより志苫裕君の質疑を行います。志苫君。
  6. 志苫裕

    志苫裕君 総理、あちらでは大変熱烈歓迎を受けたようでありまして、総理の言動にも大きな評価が与えられているようであります。しかし、日中間の真の友好訪問期間中のわずかな期間リップサービスだけで築かれるものでないことはもう当然でありまして、まさに問題はこれからだと思います。日本外交スタンスが日中のみならず国際社会でのあらゆる分野で平和と友好を貫くかどうか、それによって顕証されていくだろう、このように存じます。  そこで、順次お伺いいたしますが、今度の首脳会談で取り上げられたもの、そのテーマの多くは去年の十一月に胡耀邦書記おいでの際の会談の延長線上にあるようには思われますが、なお改めて新たに提起をされたものであるとか、特に進展の大きかったものであるとかなどなどについて簡単に承りたいと思います。
  7. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日中友好につきまして、私が今回中国訪問いたしまして、中国政府から、また中国の全人民から非常に熱烈な御歓迎をいただきまして、ここに重ねて深甚なる謝意を表する次第でございます。  政府のみならず、中国人民から非常な熱烈な温かい御歓迎を各地でいただきましたことは、これは一中曽根や一自民党政府に与えられたものではなくして、日本令国民に対して与えられたものであると感じますと、このようにもお答えしてまいりましたが、まさにそのようなことであると思っております。なお、このことは、歴代野党諸君及び与党諸君及び政府が営々として中国政府及び人民と積み重ねてまいりました友好努力の上にこれが行われたということであり、一歩をさらに前進させることができたと考えております。歴代の各野党及び与党の皆さん及び政府の御努力に対して厚く感謝を表したいと思います。  さて、新しいことは何かということでございますが、まず日中再び戦わず、日中不再戦ということを私は北京大学講演で強く強調いたしまして、非常な万雷の拍手をいただきました。このことは、中国人民に対する私の直接の呼びかけであり、テレビで中国に全講演が放映されました。これは中国政府が全中国人民にこれを伝えたいという意向表明ではないかと思っております。  それから二十一世紀委員会につきまして、そのメンバー及び運営要領、それから第一回の会議等について相談が成り立ちました。たしか第一回の会議は九月ごろ日本で行おう、こういうことになりました。運営要領におきましても、この二十一世紀委員会は二十一世紀を目指して四原則、特に相互信頼長期安定を実現していくために政府の諮問の上に立って政府に勧告を行い、あるいは助言を行うということで、既存のいろいろな日中関係の諸団体がありますが、それらの機能を阻害しないように、これらの機能調和の上に立って今までの諸団体がますます活発に動いていただく、そういう配慮のもとに適切な調和、調整を行いつつ行おうと、そういうことでございます。  それから第三番目は円借款の問題でございまして、中国交通関係、特に鉄道、それから港湾、それから通信関係、それからエネルギー、こういうような七つのプロジェクトについて長期的協力意思表明いたしてまいりました。ただ、日本財政法長期にわたる全体的なコミットメントというのができません。そこで、毎年度毎年度予算のことに実行していくということになっておりますので、その点も理解をいただいたわけであります。大体の見当とめどは申し上げてまいりました。  それからもう一つ無償援助の問題がございます。無償援助の問題につきましては、大平総理のときにお始めになった日中友好病院がようやく竣工の運びに至りまして、この秋、九月ごろいよいよ開院をする予定だそうであります。私は現場を参観してまいりましたが、ほとんど建物はできておりました。これに次いで、今度はさらに無償援助プロジェクトにつきまして、向こう電信電話関係の改革の研究研修センター、あるいは食肉関係研究センター等々の要望があり、それにおこたえしてきた次第でございます。しれば無償援助でございます。  そのほか、いわゆるバンクローンという問題がございます。これにつきましては今両国調査研究をやっておりまして、この調査研究ができ次第、両国でまた協議しましょう、我々も十分協力する用意があり、民間の協力もお願いしたいと思っておりますと、そういうことを言ってきた次第でございます。  それから国際関係につきましては、諸般の問題について討議を行いました。アジアにおける平和及び安定の維持については両国とも重大なる関心を持っております。それで、極東における最近のソ連軍増強ぶりという問題については両国とも関心を持っておったところでございます。朝鮮半島の平和及び安定の長期的維持につきましても同じような関心を持っておった次第でございます。これらにつきましても、いろいろ向こう意見も聞いてまいり、日本側意見も言ってまいった。これはこの前、胡耀邦さんと話したことと大体似たようなことであります。  また、韓国政府から頼まれておりました在中国韓国人の里帰りの問題、こういう問題についても積極的にお願いをいたしまして、これは大きな進展があったと思って喜んでおります。これは人道上の措置として考えていただいたわけであります。在中国韓国人あるいは在韓国中国人等近親交流等につきまして中国政府が特別の人道上の処置を意思表示していただきまして、感謝にたえないところでございます。  日本人の残留同胞の問題につきましても、私は深甚なる謝意表明してまいった次第でございます。しかし、国会におけるいろいろな御質問等も踏まえまして、日本国会ではこういう質問がありますということも紹介をいたしまして、国民の重大なる関心をお伝えいたしました。まだ八百人余に及ぶ方々が残っておられる由であり、毎年六十人とか七十人ではなかなか消化しにくい、もっと思い切って多量のことをぜひお考えいただければ幸いであると、そういう意思表示もしてまいってきた次第でございます。  新しいことといえば大体以上のことでないかと思っております。
  8. 志苫裕

    志苫裕君 報道を通じてあらましは伺っておるのですが、円借款について大体の見当は述べてきたという大体の見当は、どれぐらいで申し上げてきたんですか。
  9. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政法関係継続費というものは認められておりませんから、幾らという正式の金額は申し述べられません。なお、大まか、円に直して四千七百億円程度をめどに努力していきたいということであります。
  10. 志苫裕

    志苫裕君 輸銀融資については前回のものよりも上積みをしたいという表明をされたようですが、それはどうですか。
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 輸銀融資前回はたしか二十億ドルでありましたが、我々の方の気持ちとしては前回を下回らざる額について努力したいと思いますと、そういう程度表明をいたしました。
  12. 志苫裕

    志苫裕君 朝鮮半島緊張緩和の問題、特に南北対話環境づくりの問題などについて突っ込んだ意見交換がなされたように伺っております。  それで、まずこれからお伺いしますが、南北対話についての総理発言報道によれば事実上の四者会談総理発言を紙上で見れば両当事者、場合によったらその周りの大もという、そういうニュアンスのようでありますが、この発言韓国の主張ないしアメリカ見解として出されておるものでありますが、これは韓国アメリカ立場を紹介したのか、あるいは日本総理としての判断を述べたのか、その点はいかがですか。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四者会談ということを的確に明示して話したわけではありません。これはアメリカ韓国考えを紹介したということでなくして、私の考え表明したというものであります。  その中心は、朝鮮半島の諸問題は南北当事者がまず話し合うべき問題であります。いかなる関係が将来構築されようとも、それは南北両方当事者が賛成し承認するということがすべての前提であって、それが承認されないということで行われるということはあり得ない、またあってはならぬことである、そういうことであります。それからやはり日本朝鮮半島の平和及び安定の維持については重大な関心を持っております。また、それがアジアの平和及び安定に、全人類にとって大事なことであると思っております。そういう観点からその平和及び安定維持に寄与するように関係の国々が環境をつくっていく、そういうことは極めて適切であると思うと、そういう言葉を用いて私の考えを申し述べた次第であります。
  14. 志苫裕

    志苫裕君 その今のお話のような、まあこれは総理判断で述べたと言うんですが、この問題についての中国側対応について総理は何かの期待をしておったんですか。相手の対応から見ますと、何といいますか、当て外れというような感じもしないわけではありませんが、その辺の総理感じは、事前にどのような情報をお持ちになったのでしょうか。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一つ私が伝えましたのは、ビルマラングーン爆破事件というものによって韓国要人が、ビルマ政府公式発表によれば北鮮工作員によって爆殺された、ああいう事件が起こったので韓国側状況は非常に変化した、これは想像以上に変化した、そう考えざるを得ない状態だと自分は思っておりますと、そういうことも一つ伝えました。  それから、中国側北朝鮮が主張している三者会談を支持しておりました。また、日本北朝鮮交流することを希望するということで、自分の方で必要あらば仲介しても結構だというような意味の話もありました。私は、当面お願いするようなことはありません、しかし人道上の問題という問題がある場合にはお願いする可能性も出てまいりましょうと、そういうことも申し上げた次第であります。  三者会談につきましては、今のところ、なかなかそれが行われる可能性は今の状況では少ない、特にビルマラングーン爆発事件以降状況はかなり変わってきているように思うと、そういうことを私は申し上げ、かつまた北朝鮮アメリカといろいろ交流対話をしたいようであるが、韓国の方は中国交流対話をしたいようである、そういうような点もこの緊張緩和措置という面から我々は検討に値する問題ではないかと、そういうような私の情勢分析も話した次第であります。
  16. 志苫裕

    志苫裕君 総理、ちょっと今の最初の発言北鮮という言葉があったようですが、この間の委員会でも、北朝鮮というように統一をして話をしようという御答弁があったようですから、そのような言葉遣いの方がよろしいのじゃないか。  そこで、いろいろと情報それなりに、伊東さんも事前向こうへ行かれたわけだし、この問題について総理がどういう見解を述べればどのくらいの返事はくるだろうということぐらいはわかっていたのじゃないかなというふうに思いましてあれですが、この訪中に際して韓国大統領からのメッセージが寄せられたということなんですが、恐らくそれらは総理発言それなり影響力を持ったのじゃないかと思うんですけれども、差し支えなければその内容を御披露いただけませんか。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 韓国の全斗換大統領からメッセージが寄せられたということはございません。
  18. 志苫裕

    志苫裕君 外務大臣、今の点はどうですか。日本の各新聞には全部出ているんですが、違うんですか。
  19. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはメッセージということではなくて、韓国から韓日議連李会長がお見えになりました際に、大統領韓国で会った際に、日本総理大臣あるいは外務大臣に会ったとき韓国考えておることについて一応君の方から説明しておいてくれということで、その概要を説明いたしますということで、直接のメッセージの形とかそういうものじゃないのですか、李議連会長大統領と会ったときの話の内容を私は聞いたわけであります。それをいわば大統領のこれは日本に対する、総理中国へ行かれるものですから、その前のことですから、韓国立場を間接的に日本に伝えた、そういうふうに私は判断をしているわけであります。
  20. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、その中身について、項目的に言うとこういうことだったというのはお話しできませんか。
  21. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 項目的ということではありませんが、韓国北朝鮮といろいろな接触がありましたですね。その間の問題について、今の状況では北朝鮮誠意というものが認められないということでありまして、韓国としてはやはりビルマ事件についての北朝鮮のこれに対する誠意というものが表明されることが必要であるということとか、あるいはまた朝鮮半島問題についての緊張緩和について、あるいはまた朝鮮半島の統一問題についてはやはり両当事者が会うということが現在の状況においては韓国としては正しいのじゃないか、こういうふうに自分判断していると、こういうふうなことが伝わったわけであります。
  22. 志苫裕

    志苫裕君 総理発言は、韓国側から伝えられたメッセージではない、言づけだそうですが、これがそれなりに頭の中にあったというふうに理解していいんですか。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは前から、朝鮮半島の問題は両当事者で話し合うべきであるというのは韓国政府の一貫した態度でありまして、我々もその点はもっともな話である、同じ民族が北と南に分かれておるわけですから、民族同士で話し合うという、それが正しい道であろうと、そういうふうに判断をしておりましたからその立場を支持してまいりました。今回も同じようなペースでやったものであります。
  24. 志苫裕

    志苫裕君 そこで、胡耀邦書記が、私見としながらも、北朝鮮日本との交流をやることはいいことじゃないか、何なら仲介の労をとってもいいというニュアンスお話があったと。総理はそのお話を、同総書記私見とは断っておるけれども、前後の事情あるいは北朝鮮中国とのいろんな交流のかかわりから見て、この総書記私見には北朝鮮意向も含まれておるなというふうに御判断なさいましたか。
  25. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国政府は、一連の前からの会談を通じてみましても、北朝鮮立場を非常に尊重しておるような態度で一貫しておりました。今回も同じであると思います。北朝鮮が提起している三者会談を支持しているというのもやはり北朝鮮立場を尊重しての発言であり、かつまた中国政府はそれを妥当である、適切であると認めて発言されたものであると考えております。
  26. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと総理、さっきの答弁から混乱をしているんですが、日本と朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮との交流お話胡耀邦さんのときに出たわけでしょう。それから南北対話ですね、両当事者があるいは三者かというような。これは趙紫陽さんのときに出ているわけで、前段私がお伺いしておりましたのは趙紫陽首相とのお話のことをお伺いしてこれは終わったのですが、胡耀邦さんとのお話はそれではなくて、日本と北がもっと接触したら、交流したらどうか。日本総理も中継ぎをして南と中国との交流、いろんな仲介役もなさっておるわけですから、それと同じような意味で胡耀邦書記はあなたに提言をしたのではないんですか。それは胡耀邦さんが自分で勝手に、どう、北朝鮮と話をしたらと言うには、北朝鮮側の意向というようなものもそれなりに踏まえて言っておるというふうにおとりになったかどうかということを聞いているわけです。
  27. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 胡耀邦さんもやはりいわゆる三者会談というものを支持されておったわけで、その点は趙紫陽総理とも同じで、そういう話も出ました。しかし、湖耀邦さんの場合には、今、志苫さんがおっしゃったような、もし日本が要望すれば北朝鮮との間の仲介の労をとってもよろしいという発言も、これは胡耀邦さんの席に出てきたということです。私は、その中国政府の好意については感謝はいたしましたけれども、しかし政治経済問題について今それを当面やるということはありません、ただ人道上の問題についてはそういう可能性もなきにしもあらずかもしれません、そのときはまたお願いいたしますと、そういうふうにお答えしたわけです。
  28. 志苫裕

    志苫裕君 今お話がありましたように、当面、政治経済などの問題ではそのようなことをお願いする問題もないようだ、人道上の問題についてはお願いするかもしれない、人道上の問題ならそうしようかな、政治経済の問題なら今のところそんな必要はないという、これはどのような判断に基づくものでしょうか、総理のそのような所見は。
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一つには、やはりビルマ爆発事件後、日本政府一連北朝鮮に対する対策をとっております。それから第二番口には、やはり韓国政府が今言ったように北と南で話し合うべき問題である、そしてあのビルマ爆発事件以降北朝鮮に対する猜疑心、不信感というものを非常に強めておる、そういう情勢から判断しておるものであります。
  30. 志苫裕

    志苫裕君 今、北朝鮮には不信感がある、あるいはラングーン事件で対朝制裁措置と言ってもいいような、今そういうものをやっているさなかだというお話なんですが、しかし日本北朝鮮との交流のみならず、これは朝鮮半島の平和と安定に寄与できるという性質の問題じゃないですか、仲介してもらうかどうかは別といたしまして。その点はどうなんですか。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今のような情勢のもとに、一面においては韓国政府立場も考慮し、かつまた日本が既にとっている政策というものも考慮して、その上で発言しているわけであります。
  32. 志苫裕

    志苫裕君 韓国政府立場韓国朝鮮半島における唯一合法政府という立場、日韓基本条約ございますから、そのような立場がある限り、韓国政府がそういう問題についてどう考えるか、どのような反応を示すかというものを抜きにしては判断できないという総理立場が強かったのだろうと思うんですが、しかしそういう既存の枠組みというものを全体として見直す、そして朝鮮半島の全体の平和、環境の整備というようなものに向かって、日中の話も、この周辺の事情も動き始めておるという位置づけをされたらどうなんですか。
  33. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮半島緊張緩和及び平和、長期安定について、周辺の国々あるいはアメリカ等が非常に大きな関心を持ってきていることは非常に結構なことであるだろうと思います。しかし、やはりこの問題は第一義的には不幸にして分かれておる北と南の同一の民族が話し合うべき問題である、その間の十分な理解ができずしてほかの政策が進むということはちょっと考えられないと私は思うのです。むしろまた、それを強制するといったって、それは独立主権国家のことでありますから、なかなかそういうことは適切であるとも限らない。  しかし、韓国の全斗換大統領は北に対して話し合いを提起しておったのであります。話し合いをしようとか、あるいは近親の手紙の交換とか、あるいはいろいろな面会や何かも考えたらどうかという人道的な措置等については話し合いをしようということもたしかやっておったのであって、そういうような立場韓国政府もまたとってくるのではないか。この間、板門店で北と南の書類の交換ですか、あるいは南側から書類を北に差し上げたということがあったと記憶しております。要するに、北と南がそういうように次第に話し合う機会をつくるということがまず第一に大事ではないか、そう思っております。
  34. 志苫裕

    志苫裕君 総理韓国から頼まれて中国との仲を取り持つ、それも従来の枠組みをそれなりに緩めて朝鮮半島における平和と安定に寄与することだと私は思います。と同じように、中国側も、ひとつ韓国中国との関係と同じように北の方と日本の間でも仲よくしたらどうか、これはきわめてバランスのとれた話だと思うのです。  しかし、今の総理お話は随分かたくななようでありまして、日中両国首脳がせっかく朝鮮半島の問題は大きな関心事だ、これの平和と安定は何としてでもやらなきゃならぬということを確認した後にしては何ともかたくなな返事だと私思いますが、ともあれ、中国から仲介をしてもらうかどうかのことは別にいたしましても、日本北朝鮮の間には戦後処理の問題も含めて、いつかは果たさなければならない課題があることは事実でありまして、それは広い意味で日本のあり方が問われてくる問題でもありますが、いつかは手をつけなければならない、逃れることができない課題でありますだけに、この緊張緩和への動きが何らかの形で出たこういう時期に積極的にアクションを起こすべきではないか、こう考えるのが朝鮮問題について関心を持っておる人たちのごく普通の考え方じゃないでしょうか。どうでしょう。
  35. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮半島の平和及び安定の長期的維持については私も重大関心を持ち、緊張緩和あるいは南北交流が自然に両国政府の同意のもとに増進していくことを希望しておるものであります。ただ、不幸にしてラングーン事件という、韓国外務大臣以下の要人ビルマで公式訪問のときに爆殺される、ああいうような不幸な事件が起きまして、韓国側の感情というものは非常に今の北朝鮮に対していら立っております。国家約面目というものもあるでしょう。あるいは韓国国民に対するいろいろな政府立場というのもあるのでございましょう。そういう意味において、韓国が持っておる北朝鮮に対する不信感というものは我々の想像以上のものが最近はあるわけであります。そういう立場もやはり理解できる。どっちかといえば、韓国の方が被害者意識を非常に持っておるわけですから、日本韓国と非常に友好関係にあって、そしてそういう被害者の立場にあるその国民感情や政府の感情というものもやはり尊重せざるを得ないと私は思うのであります。  しかし、中国韓国との間にはスポーツの交流とか、いま言った近親交流であるとか、非政治的なものについては非常に前向きの姿勢をとってきておられる。安倍外務大臣が記者会見でも言いましたように、アジア・オリンピック大会等についても中国側は参加するのではないかと推測される、自分はそういう感触を持ったということを外務大臣は記者会見で言っていましたが、そういうような情勢でもあると私は思います。これは我々がそういう推測をした範囲で、向こうから正式にそんな話があったわけではないのでわかりませんが、そういうような立場でもあります。いずれにせよ私は胡耀邦さんと話しまして、朝鮮半島の平和及び安定の維持については日本中国も重大な関心を持っておるので、今後ともいろいろ話をしましょう、それから関係の推移をお互いに注意深く見守っていきましょう、時間というものは神様になる可能性もあるんですと。時間は神様であると私は考えておるところもあるので、推移を見守ってまいりましょうということで私は話を閉じたのであります。
  36. 志苫裕

    志苫裕君 随分総理のガードが固いなという感じはぬぐえませんが、しかしやらなきゃいけない。政府がそういう態度であれば、せめて民間の交流ももう少しそれを推進するとか、今出ている問題で記者の交流であるとか、あるいは通商代表部云々の話もあるようですが、あるいは漁業協定の問題も宙に浮いたままになっていますが、こういう民間の交流でも、こういう時期にやっぱり今までよりはもっと積極的に進めるという点についてはどうですか。
  37. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 北朝鮮ともちろん外交関係にないわけですから、民間の交流がこれまでも行われておりまして、これは経済、漁業あるいはまた人的交流、文化、そういった面で交流が行われておりまして、特に漁業問題なんかについては与野党挙げてのいろいろの御心配もありましてある程度進んでおったわけでございますが、残念ながらラングーン事件が起こってしまって、そして一挙に冷たくなった、緊張したということで、ビルマが正式に北朝鮮政府がこれに関与しておるという声明といいますか、事件の発表をした。そうである以上は、やはり日本としても、国際テロといったものに反対しておる日本立場から何らかの措置はとらなければならぬということで、北朝鮮に対して御承知のような措置をとったわけでございます。それに対してまた北朝鮮措置をとる、こういうことで、今のところは冷たいといいますか、水を差したような形になっておるわけでありますし、今直ちにここで北朝鮮に対する措置日本が緩和するという状況にはないわけでございますけれども、しかし日本北朝鮮との間ではこれまでもやはり民間の交流があったわけでございますし、朝鮮半島の情勢の特に緊張緩和といった面を進める上からは、これは今後の一つの課題として、我々としても情勢の変化を見ながら適宜対応をしていかなければならないのじゃないかと、こういうふうに思っております。
  38. 志苫裕

    志苫裕君 朝鮮半島緊張緩和あるいは対話環境づくりというものについて、日中間でも相当詰めてお話をされた。それで、私も少し時間をかけてお伺いしたのですが、歴史的にもなかなか緊張の解けそうもない状況が続いておるわけでして、しかしそれをそのまま永続をさせることはもう断じてそろそろ終わりにしなければならない。そういう状況のもとで、北を悪者にする、あるいは南を悪者にする、一方どれかを孤立化させておくという状況では解決に近づかないわけであって、でありますから、周りの方から人道上の問題などを手始めに、その辺、がちがちに凍っておるところを少しずつ溶かし始めておるという状況なわけであって、どうも私は総理のガードが少し固いなあということに不満を持ちますが、これはひとつ強い希望を伝えておきます。  なお、ちょっとこれに関連しますが、人道上の問題はこういうぎすぎすした政治経済の話の外だと。せっかくそういう問題について韓国中国の中継ぎまでされた人道主義者中曽根さんのことですから、一番つき合いのある韓国の中における人道問題、詰めて言えば在日韓国人の政治犯とその家族の問題、これはしばしば日本国会でも議論をされておることでありますし、この問題は国連の場でもしばしば取り上げられておるし、また日本の宗教団体、市民あるいは弁護士会などでも取り上げておるんですが、ひとつこれは早急に韓国政府に対して、人道と人権の立場から目に見える解決がとられるように取り組んだらどうか。外務大臣、どうですか。
  39. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは韓国のいわば内政上の問題ですから、韓国の主権の問題でもありますし、日本がそういう問題に対していろいろとやかく言うということは、国際常識、慣例という面から見ましてもどうかと思っておるわけでございます。韓国の政体あるいは韓国の内政については韓国自身が決める問題であると、私はそういうふうに思っております。
  40. 志苫裕

    志苫裕君 それは内政問題のようでいて、このいわば人権問題というのは、南北の分裂と対立というはざまで政治的につくり出されておるといいますか、幾つかの事例を挙げる余裕を持ちませんけれども、それに日本がかかわっているケースもあるわけですね。でありますので、これはそういうふうに内政問題だというふうに片づけてだけはおけない。南北対立のはざまで日本も何らかの形ではまり込んでいるし、そういう政治犯の問題が出たりしておるわけで、また日本の人間が証言台に立ったりしたものもあるわけであって、ちょっとそれだけで突っ放すのもどうか。  特に、去年からことしにかけて全斗煥政権は数回の特赦なども行いまして民主主義的な装いをつくっておるようでありますが、なぜか在日韓国人政治犯はこの中には含まれておらない。この理由について何か韓国から政府は説明を聞いたりしていますか。何か説明を受けたりしていますか。日本政府だって何らかの形で関心を従来表明しておったんですから、どうですか。
  41. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) ただいま御質問の点につきましては、政府政府の公式の関係では説明を受けておりません。ただ、先ほど外務大臣が御答弁されましたその前の質問に関連いたしますが、昨年の八月に日中外相会談が行われましたときに、安倍外務大臣から、御指摘の問題につきましてはこれは先ほど大臣が答弁されましたとおりに、第一義的、基本的に、あくまでも在日朝鮮人で逮捕されあるいは裁判にかけられているという方々は、これは先ほど安倍大臣が御答弁されましたように、第一義的には韓国の内政問題であり、司法上の問題でありますけれども、人道立場から御配慮をぜひお願いしたいということを、これは亡くなりましたけれども韓国の李範錫外務大臣に申し入れまして、その後差し入れでございますとか、あるいは面会でございますとか、そういうことにつきましても韓国側は多少の配慮をしてくれているというのが現状でございます。
  42. 志苫裕

    志苫裕君 いずれこれはもう少し具体的なケースに基づいて今後取り上げてまいりますが、人権問題、人道問題を手始めに、少しでも緊張の構図を解いていくということについてのもう少し積極的な取り組みをこの機会に求めておきます。  そこで総理、いろいろ少しやりとりしましたが、改めて朝鮮問題についての中曽根内閣の外交スタンスをこの機会に問うておきたいと思うんですが、三者会談、四者会談あるいは二者会談、そういう言葉を使った使わぬは別といたしまして、いずれにしてもそこの動向は日本にとっても大事な関心事でありまして、その中に北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国と日本政府が認知しようとしまいと、現実にあって、人道問題という問題だろうと、そこの国の出来事についていろいろやりとりが行われておるという現実があるわけでして、どうも日本北朝鮮に対する立場、先ほど来ありましたけれども、これをはっきりさせないでおいて、あるいは従来のようにかたくなな立場をとっておいたままでアメリカと北が接触をしたらどうかというふうな意見中曽根さん、あなた述べたというのでしょう。おまえのところ何しているんだということになるんじゃないですか。米、北朝鮮ということについては、総理も、韓国中国アメリカ北朝鮮、これは大いに交流をしたらというふうな御意見も述べておるわけで、日本は北をどうするんだということについてやっぱりはっきりさせないでは事が進まない。朝鮮半島緊張緩和策についてひとつもう少し視点の大きい、どういう構図を描いておりますか、総理は。
  43. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは北朝鮮が、韓国アメリカ北朝鮮の三者会談を要望される提案を正式になすっておる、アメリカがちゃんと対象に入っておる、そういうことから私は申し上げたので、三者会談の中に日本を入れて四者会談にしようという、特に北朝鮮がメンションしたわけでもありません。三者会談の相手の名指しの中にアメリカが入っている、だからそのことを申し上げた。しかし私は、胡耀邦さんとの話の中で、大体朝鮮戦争の休戦協定の当事者というのは片方では韓国アメリカ、庁方では北朝鮮中国だったと思う、だから休戦協定の当事者というものは何らかの関係がありますなと、そういうこともまた申し上げたので、別にだから四者会談をやれというようなことを言ったわけではありません。この問題は、朝鮮半島の平和及び安定の将来にわたる維持強化については、ではまあきょうはこの辺で継続審議にしましょう、時は神様になることがしばしばありますと、そう言って終わったというのが中身の話であります。
  44. 志苫裕

    志苫裕君 済みません。私が不勉強ですかね。中国は休戦協定に調印していますか、外務大臣
  45. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 休戦協定の調印者は三人おりまして、一人は金日成、当時主席だったと思いますが、北朝鮮の。
  46. 志苫裕

    志苫裕君 中国も仲間がどうか。
  47. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 中国は、中国から朝鮮戦争に参加しました義勇軍の代表として彭徳懐元帥が調印しております。それからもう一つ、第三番目にアメリカ軍の司令官、アメリカ軍の司令官というよりか、これは国連軍司令官の肩書で調印しております。つまり、正確には国連軍でございますが、国連軍司令官としての米軍の司令官、たしかクラークさんという名前だったと思います。それから北朝鮮の金日成さん、それからもう一人は中国人民義勇軍の代表としての彭徳懐元帥と、三者でございます。
  48. 志苫裕

    志苫裕君 それで、今の総理お話、くどいんですがわかりました。あなたの言っていることはわかるんですが、日本も重大な立場におるし関心も持っているわけで、何かあれば朝鮮半島のことは我が国にとっても重大なことだと、こういつも言っているわけです。日本は、あなたはこれは両当事者、人のことであって、おれは頼まれもせぬのにしゃしゃり出ることはせぬよと二十一日の記者会見でおっしゃっていたけれども、何もしゃべらぬのかと思ったらイの一番に両当事者がどうとか四人がどうとかということを言っているから、これはやっぱり重大な関心をあなたは持っているわけだ。しゃしゃり出ぬどころか、しゃしゃり出ているわけでね。だから、日本はこれにどういう役割を果たすべきなんだろうかということについてはどうです。朝鮮半島緊張緩和あるいは南北対話環境づくりについてどのような役割を持つべきだろうかということです。
  49. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはやはり南北の両当事者がそういう人道的問題から始めて交流を促進していく、対話を促進していく、それがすべての基本にあると考えております。そうして、やっぱり南北当事者の了解、承認なくして物は一切進まないし進めるべきではないということも第二に大事なことであります。それから、関係している国々が緊張緩和及び長期の平和及び安定の維持のために環境醸成を促進していくように協力し合う、これが大事であると思っています。
  50. 志苫裕

    志苫裕君 結局何も考えていないという感じだな。アメリカ韓国のいろいろな立場や言い分は言うけれども、日本が何するということはどうもお伺い、できないので残念です。  次に、これは超紫陽さんとのお話、鄧小平さんとのお話も出てきているようですが、外務大臣発言に答える形で、ソ連のSS20の配備も含む軍事力増強の問題で情報交換を行うことで合意をした、こういう報道がありますが、これは事実ですか。事実かどうか、簡潔に答えてもらえばいいです。
  51. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは総理の指名で私からSS20の極東における配備の状況について説明をして、これは日中双方について重大な関心事である、そこで呉学謙外相と去年の国連総会でその点について話し合って、情報交換をしていこうということに合意をしたけれども、今後ともそうした今の増強状況を踏まえて日中間で共同の関心事として情報交換をしていきましょう、こういう話をいたしまして、これは超首相から賛成であるというお答えがございました。
  52. 志苫裕

    志苫裕君 このことは軍事面での協力を意味しますか。
  53. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは去年の暮れの総会のときも呉学謙外相と話をしたわけですが、日中間には軍事面の協力というものは存在しない、ただ、お互いにこうした政治、軍事、経済、いろいろな極東の情勢が変化する。そういう中で、特にSS20の配備といったものは日中双方にとっては非常に重大な関心であるし、特に日本は、SS20問題については、御承知のようにゼロオプション支持であるとかグローバルな立場世界に対して主張をしてサミットの声明にも参加している。こういうことがあって日本も大変な関心を持っているので、こうした今後のいろいろの動きについてやはり日本としても知りたいことがあるし、また中国にとっても日本としてお話ししたらいいと思うことがあるので、そういう点についてはお話をしましょうということで、軍事面の協議ということではないわけでありまして、むしろ政治の面を通じての対話の推進といいますか、意見交換という点が重点であります。
  54. 志苫裕

    志苫裕君 この間KALのときも問題になりましたが、情報戦争と言うぐらいでありまして、軍事面には非常に情報は重要な意味を持つのですが、どうも今の外務大臣の話を聞いておったのでは、軍事面ではないが、軍事問題について政治面で情報交換するのはやっぱり軍事協力じゃないんですか。日中関係はいかなる意味においても軍事的な協力を含まないというのは、まさに人類普遍の原理を説いた日中平和条約の締結の際にしばしば政府が答弁しています。今のお話、軍事問題ではあるが政治問題として協力をするというのはこれは何かわかりにくい。総理、どうですか。
  55. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それがやっぱり外交というものだろうと思います。外交の中には、政治も入れば、文化も入れば、科学技術も入れば、経済も入れば、あるいは防衛問題も入ると。それ全体を総括して判定を下していくのが外交というものだろうと思います。そういう意味におきまして、我々は去年のウィリアムズバーグのサミットにおきましても、SS20問題等につきまして、やはりこれは全地球的規模で解決すべきである。アジアの犠牲においてこれが解決されてはならないということを強く主張して、共同声明の中にもそれを入れてもらった経緯があります。これはやっぱり軍縮、核軍縮の一環でもあります。そういう意味におきまして、核軍縮、軍縮について私も話しましたけれども、中国政府も非常に強い関心を同じように持っておる、核軍縮をやるべきである、軍縮をやるべきである。中国はかなり大胆な発言をしておりました。ともかく世界中の国が核兵器をまず半分に減らしましょうと、それをやった次に今度は次の第二段階を相談しようと。具体的に半分に減らそうということを言っておる。もちろんこの中にはSS20も当然入るわけでしょう。そういう意味におきまして、アジアの犠牲においてやってはならぬという点においては、同じアジア人である中国人も同じように関心を持っていると思うのです、日本発言については。そういうような世界的核軍縮の問題の一環としてお互いが知っていることを言い合い、またそれを踏まえていろいろ情報交換するということは、これは外交の中の一つの重要な内容であると私は考えます。
  56. 志苫裕

    志苫裕君 それはあなた、一人でそこでしゃべっておるからあれだけれども、では、いかなる意味でも軍事協力はないと確認できますね、総理
  57. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 軍事協力はありません。
  58. 志苫裕

    志苫裕君 防衛庁長官中国の軍事力をどのように評価しますか。
  59. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 中国の軍事力をどう評価するかと。これは詳細なことは政府委員から答弁をさせますけれども、ソビエトと比べてみれば中国の軍事力は非常に劣っておると、こういうふうに考えております。
  60. 志苫裕

    志苫裕君 中国の軍事力は日本に対する脅威を構成していませんか。
  61. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 中国の軍事力というのは、詳細につきましてはただいま申しましたとおり政府委員の方から申し述べさせますが、確かに中国も大陸間弾道弾等いろいろ開発をしております。その射程というものが周辺のみならず米ソ両国にも進んでおる、カバーしておるということは認めますけれども、それが直ちに日本に対する脅威というふうには考えておりません。むしろ中国日本との関係、あるいはアメリカ中国との関係、こういうものを考えてみますと、中国我が国に対する脅威、そういうふうには全くいまのところ考えておりません。
  62. 志苫裕

    志苫裕君 中国の軍事力は脅威を構成しない。北朝鮮の軍事力は日本に対する脅威を構成しますか。簡単でいいです。
  63. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 韓国北朝鮮の軍事力を脅威と考えているというふうに私どもは了解していると、こういうことでございまして、直接日本に対する軍事的脅威ということではなくて、間接に朝鮮半島情勢に影響を及ぼすという意味において我が国にも影響が、関係があり得る、こういう考え方が一貫した政府考え方でございます。
  64. 志苫裕

    志苫裕君 総理、ちょっととんでもない質問を払いたしましたが、中国の方が圧倒的に軍事力は大きいのです。しかし、今のお話のように、中国の軍事力は脅威を構成しない、北朝鮮の軍事力は間接的であるが日本に脅威を構成する、要は国と国のつき合いの問題ですね。こうなりますと、私は、その中国とのまさに友好関係、こういうふうなものを周辺の国々に徐々に全般につくっていけば脅威は消えていくわけですね。そういうことを言いたいわけでありますが、だからあなたは体制の違いを乗り越えて、二十一世紀に向けて平和な友好関係を発展をさせていくこと、朝鮮半島問題で再び半島に戦争が起きてはならぬという認識を双方が分かち合ったということなんで高く評価をします。しかし、それは中国のみならず周辺の国々、朝鮮民主主義人民共和国に対してもそのような子々孫々にわたる友好を分かち合う条件はある、ソビエトしかり。こういう外交スタンスを、やっぱりせめて中国へ行ってあれだけの歓迎を受けて、それだけの高い評価を受けたら、日本外交スタンスもそれくらいきちっとおとりになったらどうですか。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前から申し上げますように、日本はいわゆる自由世界の一員でございまして、自由世界と連帯と協調の上に抑止力を構成し、また均衡が維持されるように努力している。そういう情勢から見まして、日本の独立と平和と安全を確保する方策については、国によっていろいろまた考え方も違うわけでございます。ある国については、我々は北方領土を占領され、一個師団も増強されてきているという情勢もあります。あるいはある国については友邦と不幸な戦争が行われて、そして不信感が絶えない、そういうような不幸な事態もございます。そういうような現実を踏まえて、一歩一歩着実に我が国の国益を守り、独立と安全を保障するということが日本外交日本の政治の一つの基軸でありますから、そういう基礎の上に立ちつつ一歩一歩事態を改善するように努力していく。それについては相手方のいろいろな環境やら、置かれている情勢から見てみんなニュアンスがあるだろうと、差異があるのは当然であると、そう考えております。
  66. 志苫裕

    志苫裕君 趙紫陽さんとの会見の際に、朝鮮半島の緊張を激化させるいかなる行動にも、またそれがどのような方面から来るものでも反対だと、総理もそれに同意を示したようでありますが、私らが察するに、どの方面からとなりますと、朝鮮の周りの今の騒々しい雰囲気のことを指して言うんでしょう。私は一例を引きますが、例えばチームスピリットの問題であるとか、あるいは世上しきりに言われておる米韓の軍事演習に日本も入ったらどうかとか、あるいは日米の軍事演習に韓国も仲間にさしてもらうというようなことを、日本は言いはしませんが、韓国国会外務大臣が言うとか、こういうやたらと刺激材料等を意味するのではないかと思うんですが、その点についてひとつ総理の確たる御返事をお願いしたい。
  67. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮半島における平和及び安定の維持につきましては、我々も重大な関心を持っておるわけであります。そういう善意の上に立ちまして、今後も着実な外交を進めてまいるつもりでおります。しかし、日本アメリカと安全保障条約を結んでおりますが、それ以上にいわゆる集団的自衛権とか、第三国との間にそういう同盟やら軍事的関係を結ぶということはやらないということをやっておるのでございまして、それはそっくりそのまま今後も堅持していく。憲法及び今まで政府が宣明いたしました日本の国策のもとに、我々は今後も外交政策なり安全保障政策を進めていくというわけであります、ただ、外国がやっているということは、そのおのおのの主権の範囲内で独自の国策に基づき、あるいは情勢判断に基づいてやっておることでございまして、我々がとやかく言うべき筋合いのものではない、内政干渉にわたることは避けなければならないと考えております。
  68. 志苫裕

    志苫裕君 防衛庁長官、念を押しますが、在韓米軍と日本の自衛隊との共同訓練であるとか、あるいはましてや韓国を含めた日米韓の軍事演習であるとか、あるいは日米の軍事演習に韓国の軍隊を加えるとか、そういうことはございませんね。
  69. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 共同訓練というのは、御案内のとおり法的にはどこの国のどこの軍隊のどこの部隊の、またどこに配属されていると、そういうことを問わず法的には可能でございますが、しかしそういうことをやるかやらないかということは、今総理からもお話のありましたとおり、高度の政治判断状況等を考えながらやるべきでございまして、ただいまいろいろ御指摘のあるようなことについては、私どもはやる考えはございません。
  70. 志苫裕

    志苫裕君 総理北京大学講演で、日本の政治責任者として再び軍国主義の復活を許すことは断じてないと明言された。それからまた外務大臣は趙紫陽さんとの会談で、中曽根内閣の防衛政策は歴代内閣の政策と同じものだと、このように述べております。しかし、日本では必ずしもそのように受けとめられておらない。歴代内閣の防衛政策と中曽根内閣の防衛政策はやっぱり何かひと味違う。大体歴代の内閣で運命共同体だの不沈空母だのと言った総理大臣もおりませんしね。そういう意味において、総理が新たな決意を中国で述べられた、しかも中国の民衆、国民に向かって述べられたということはそれなりに高く評価をしますが、総理に改めて問いますが、やっぱりやることと言うことを一致さしてくださいよ。その点はいかがです。
  71. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やることと言うことは一致しております。  日本防衛政策につきましては、やはり憲法のもとに非核三原則を守って個別的自衛権の範囲内でやっておるので、議会側からいろいろ質問がありましたから、この範囲はやれる、ここはガードレールですよと、これ以上はやってはいけない、しかしこの範囲はやれると、そういう点を明らかにしたところはありますが、これは今までの政策の中でやれる範囲を明らかにした、そういうことにすぎません。
  72. 志苫裕

    志苫裕君 外務大臣にちょっとお伺いしますが、いろいろソ連の軍事力増強などに触れましてあなたが言い、また鄧小平さんも答えたようだが、後に言ったようです、極東におけるソ連の軍事力増強は日中共通関心事であるということについて合意をしたと。日中共通関心事、昔、日中共同の敵という言葉もあったがね、言葉は似ているんだけれども、これどういうニュアンスですか。
  73. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私が言いましたのは、たしかソ連軍事力の増強はもちろん言いましたけれども、日中が共通のやはり関心事ということで焦点を絞ったのはSS20の展開の問題でありまして、これは先ほど総理も言いましたように、日本が軍縮を推進するという立場からゼロオプションを支持しておるわけでありますし、そしてまたこれはグローバルな立場考えなければならぬということでもありまして、ヨーロッパサイドでこれは解決される問題ではないわけですから、そういう意味において、やはり極東で日本中国がそうしたSS20の配備の状況等については共通関心を持っておることはもう事実でありまして、日本は先ほど申し上げましたような観点から持っておりますし、中国中国でやはりこの展開というものが脅威であるということははっきり言っておるわけでございますので、そういう意味での共通関心事と、そして同時にこれはやはり全世界的な規模でこの問題を処理するということが必要ではないかということでこれからもいろいろとお互いに情報交換等をしていって、そして軍縮、特に核軍縮に向かって、場合によってはやはり歩調を合わして進んでいこうじゃないですかと、こういうふうなことを言っておるわけであります。
  74. 志苫裕

    志苫裕君 総理のこの日中問題、日中関係、まさに普遍的な原理であり、子々孫々にわたる平和と友好だと、こう言うんですが、日中関係改善の足跡を少しなぞってみますと、中ソ対立というものを背景にした多分に抑止戦略に基づく安全保障観点というものがあったことは否めません。また、中国外交戦略にも中ソ対立を背景にしてそのようなニュアンスが強かった。西側との接触というのは多分にそういうものを背景にして出てきたという歴史があるわけです。それで総理のいわば中国との関係というものは、そういう抑止理論であるとか、あるいは安保観点であるとか対ソ関係であるとか、そういうふうなものはどの程度織り込まれておるのですか。
  75. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本はどの国をも仮想敵国としてとらえて外交政策はやらない方針をとっております。我々は、中国との間におきましては、隣同士の国として長期にわたる平和、安定をこいねがい、そしてともに繁栄を分かち合い、相互補完の関係日本はまた近代化協力する、過去の戦争におきまして大きな甚大なる被害も相手方に与えておるというそういう立場もあります。そういうようないろんな反省等も加えまして日本外交政策というものは行われておるのでありまして、ソ連を敵にしてそのためにいろいろやるというような考えは毛頭ありません。
  76. 志苫裕

    志苫裕君 だって現に総理は、去年のあれは行革特別委員会の席ではなかったかと思うんですが、質問者と抑止論についてやりとりをしたときに、米中の接近も日中関係の選択も大きい意味では抑止論の立場だということを述べた記憶があるわけで、しかし今、総理お話ではそうではない、まさに日中相互間の子々孫々にわたる平和のためを論じているんだ、友好を論じているんだということで、それはそれなりに承知をいたしますが、総理が大好きな西側の一員論でいきますと、どういう関係に立つのですか。
  77. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、中国の皆さんにも申し上げ、また中国要人にも申し上げたのですけれども、日本は資本主義、中国は共産主義、体制は違うけれども、こうやって二十一世紀まで仲よくやっていこう、そういうような約束ができ、そうして今度は相互信頼も入れて長期安定を願っていこうということができた。我々はこれを必ず実現したいと思って、我々の子供たちや青年の諸君にも伝えていく、あなた方もおやりになってくださるということだと。こういうことがもしできたとすれば、これは今の世界の歴史の中の一つの模範になるでしょう、見本になるでしょう。そういう関係をぜひ残していきたい、歴史の上でという願望を相手方に申し上げ、相手方も全く同感であるというお考えを申し述べたのでございます。私はそういう心情をもって今後もつき合っていきたいと思っておるのであります。
  78. 志苫裕

    志苫裕君 防衛庁長官日中関係はソビエトを頭に描いたいわば安保観点ではない、こういう総理お話があった。防衛白書は、もう時間がないから、あなたが読んでもこちらが読んでも同じだから私が読みますけど、必ずしもそうなっておらないでしょう。防衛白書はどうなっているかというと、「大規模な陸軍を中心とする中国軍は、極東ソ連軍を牽制し得るものとなっている。」と、こういう安保観点防衛観点。それからアメリカの軍事情勢報告は、「中国軍の規模がソ連とベトナムを警戒させ、中国からの緊急事態に対応する戦力を維持せざるを得ない状況をつくり出している」と、こうなっているわけですね。さすがにアメリカの軍事情勢報告みたいに、「中国からの緊急事態」というんだから中国から何かアクションを起こすという意味だが、そこまで日本防衛白書は書いておらないけれども、しかし中国に対する見方というのは、全体としてはページ数も少ないし、穏健な響き方ですけれども、結びは、膨大な、大規模な中国軍が極東ソ連軍を牽制していると。これは先ほどの総理の答弁とどういうかかわりを持ちますか、長官、あなた答えてください。
  79. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私は、一つ防衛白書の記述としてはある程度客観的な書き方だと思うんです。中国軍はどこに向かって警戒をしているかという場合に、今申し述べたような体制になっておる。これは客観的であって、それにどういう意味を持たせるかどうかはまた別問題でございます。
  80. 志苫裕

    志苫裕君 これは問題の指摘ですが、総理中国問題について、体制の違いを乗り越えて、まさに世界でも冠たる友好関係をつくるんだということを力説されておるのですが、そのことを私は否定するのじゃない。しかし、どうも総理がそのときどきに言葉を使い分けるというのが気になるので、紹介をしておきますと、例えば月刊自由民主の五十八年十月号にはどうなっておるかといいますと、自由民主党の外交政策、外交面では自由世界を中心にして平和を維持する方策を考え、安保面では抑止と均衡を基本哲学とした政策を進める。これは普通言っていることです。アメリカを中心とする自由世界と提携していくんだ。その次なんです。これに対して、共産圏の国々も自由世界の国と同じように取り扱って、日本の安全を維持していこうという考えがあるといって非難をしているわけですね。これは体制の違いを乗り越えてつき合いもしていこう、平和の基盤を広げていこうということとはやっぱりニュアンスの違う言葉だと。どうもところどころで、その場の雰囲気でぶちたがる癖があるので、これはやっぱり論旨を一貫さしておいてもらいたいということを希望として申し上げ、時間が来ましたので最後の方にひとつ入りますが、総理、私先ほど言いましたように、訪中においていろいろな成果を上げられた部分も多いようだし、それは多としますが、この時期に訪中というのは疑問が残りました。  そこで、中国との友好関係を不動なものとし、子々孫々にわたる不再戦の関係を確立をするためにも、あえてちょっと聞いておきましょう。予算成立後、例えば四月の中旬ごろでもよかったということになるわけで、そうすれば今のように慌ただしく予算成立なども気にしながら飛んで行って、飛んで帰ってくるということよりも、もう少し余裕を持って中国民衆との接触の機会も多く持てただろうし、あなた、武漢で二百万人で大分、これで選挙だったらなあということを言ったそうですが、二百万といわず、あるいは一千万ぐらいお会いできたかもしれないという感じは率直に言って私らに残っていますね。しかも、予算は暫定になるのかあるいは年度内に上がるのかということで、いろいろな意味で気のもめる状況でもあります。これに対して二つの憶測がありまして、まあ一つは憶測じゃないが、あなたも言ったんですな。レーガンの訪中前に行くことにとにかく意義があるんだという一つ立場。もう一つは、秋の自民党の総裁選に臨む中曽根さんの再選戦略だと、こういうふらちなことを言っている者もおるのでありますが、なぜこの時期にということにお答えできますか。
  81. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その前に外交問題でちょっとお答えしたいと思うのですが、私は一貫して同じことを言っておるのです。  それは、私は全方位外交というものはとりませんということを言って、つまりどの国とも同じように等距離でつき合うというようなことはやらないと。それは、今世界の情勢から見れば、また日本の国益というものを考えてみれば、まず自由世界にあって、そしてその自由世界の中で協力し合って日本立場も認められ、かつ繁栄もしてきておる。そういう意味において、まず自由世界の一員であるということがまず基本で、そして安全保障上も均衡と抑止という形で世界の平和が維持されておる。この均衡と抑止で、過去三十八年間、第二次大戦後大きな戦争がなくして平和が維持されてきたという事実は、やはり自由世界というものの連帯と協調というものが大きな力を持っておる。したがって、つき合いについても、そういう基本的観点から考えてみればニュアンスがありますということを前から言ってきておる。そういう意味で、韓国あるいはアメリカ、あるいはヨーロッパ、ASEAN、ある意味におきましては今度中国も含めまして、日本外交の重点政策というものもちゃんと出してきておるので、いわゆるどの国とも等距離でつき合うというようなやり方は外交としてはやっていないということをここで重ねて申し上げたいのです。それは志苫さんの方と違うところだろうと思うんです。  それから、なぜ今行ったかということですが、それはまあ新聞がいろいろ憶測を書いておりますが、おもしろおかしく書いているんだろうと私は思います。今行ったことは、御迷惑をかけて大変恐縮ではございますけれども、一つには、先方の方からもうできるだけ早く来てくれと。胡耀邦さんがおいでになったときも、早くいらっしゃいと。また、先方から要人あるいは政府関係の方が来ると、いつ来てくれますかと大分言われました。やはり胡耀邦書記が初めて外国へ出かけるというときにも日本を選んで来てくだすった。これは我々は非常に恩義に感じておる。総書記といえば、言ってみればやっぱり一番偉いそういう人がともかく外国へ行く、共産圏や社会主義圏へは行かないで、まあほかは行ったかどうか知りませんが、自由世界ではともかく日本へ最初に来られたということを非常に高く評価したのです。だからなるたけ早く、答礼の意味もあって、行った方がいいと。ついては、円借款の問題でいままでずっと過去一年間作業しておりましたから、円借款がまとまったころが一番適当だろうと、どうせ行くについては。そういうことから見まして、ちょうど円借款問題も詰めが終わりましたそういう観点考えまして、この忙しいときでございますけれども、お許しをいただいて、早口に行ったということでございます。  なお、四月になりますと、連休にかけて若干の国から来てくれという話が実はあるのです。連休をやっぱり何か活用しなければ、忙しいときだけれども、考えなければいかぬなと思うと。四月という形になると外務省当局が忙しくてとてももうさばき切れないということもあります。そういう幾つかの面がございまして、この時期に選はしていただいたのでございます。
  82. 志苫裕

    志苫裕君 いや、これは今、総理自身四月にいろいろ日程があるという話ですが、胡耀邦さんは五月までの時期ならいつでもいらっしゃいと。それから、三月の半ば、二十日ごろに訪中というのは、あなた去年の十一月の何か選挙のさなかに秋田かどこその記者会見でおっしゃっておられるわけです。そのときにも言ってますが、とにかくレーガンの訪中前が意味があるんだということを言っているわけですね。このレーガン訪中前に行くということは、レーガンの訪中がスムーズに行くように、しかるべく地ならしを、露払いをと、合意点の得るものは合意をと、アメリカ情報として伝えられるものは伝えると、そういうことを意味したのじゃないんですか。どういうことですか。
  83. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカ大統領訪中というものを頭に考えて今度の時期を選んだわけではございません。しかし、今から考えれば、後から行くより先に行った方が話は新鮮でいいんじゃないかと思いますね。
  84. 志苫裕

    志苫裕君 いや、結局、私言いたいのは、やっぱり日米関係は大事ですが、日中関係日中関係、日米関係は日米関係であって、やっぱりそれぞれ自主的な外交をと。実は我々にとっては、アメリカに対する日本の追随外交というものが戦後久しきにわたって、日中関係に不幸な時代を築いたと思っているんです。これはもう少し日本が自主的な立場に立ち、自主的な外交をやれば、もう少し早い時期に、昭和四十七年と言わずに、あったのになということを歴史のほぞをかむような思いがする。今度もまた、その日中関係を自主的な立場ではなくて、何かアメリカ大統領訪中とのかかわりにおいてしか考えることができない。また、そのかかわりであれば予算の最中でも構わず出かけていく、こういう外交の自主性のなさについていささか感ずるところがあったので、失礼だけれども、あなたに聞いてみたわけです。その点はどうですか。
  85. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカ情報を提供しようとか、そんな小さな根性で日本外交をやるものじゃありません。そういうことは絶対ありません。日本日本の自立性において独自の外交をやるのでありまして、対中国政策等についても、仮にもしそういう機会があれば、日本日本としての所見と、そしてまたアメリカに対して、このようなことをやった方がいいという善意の助言をやるべきときには堂々とやるつもりです。決してアメリカの顔色を見ながらやるなんという、そういうけちくさい考えは一切ありません。
  86. 志苫裕

    志苫裕君 秋の自民党総裁選再選戦略、これはあなたに聞いても、もうそんなことありませんと言うだけでしょうから、聞く方がやぼかもしらぬが、これで株が上がったと思いますか。(笑声)
  87. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに聞く方がやぼです。(笑声)
  88. 志苫裕

    志苫裕君 要望をつけておけば、あなたが月刊自由民主に書きましたように、内政を外交に悪用するなかれというあなたのお言葉がありますので、念のために紹介をしておきます。  あれでしょうか、外務大臣。金融資本市場の開放問題で、この間リーガン財務長官いろいろ日本と話をして、その後、日本対応はもうなっとらぬと大変非難しまして、満足できる回答がなければ対抗措置もとると、何か随分報復手段までにおわしていますが、どういう状況ですか。
  89. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) リーガン財務長官と私の会談は、あらまし申し上げますと、円の国際化、金融市場の自由化についての考え方、それから哲学が述べられると同時に、急いで結論を出してもらいたいという強い要請がありました。  日本側としましては、アドホック会合の作業部会を重ねて米側の考え方を聞くとともに、我が国の実情を踏まえて鋭意最大限の努力を傾け、五月にまとまる報告書を実りあるものにしたいという考え方を説明をいたしました。リーガン長官は、とにかく日本は自由世界第二位の経済力を持っておるから、そしてしかも国際収支もよい、したがって円の国際化が進みさえすれば本来もっと円高になるはずだと。これについては、ドルは既に国際化しておりますが、例えば円建て貿易をしようと思いましても、貿易は相手がございますからなかなか難しいということ等の意見交換をお互い行ったわけであります。  今、御指摘がありましたが、双方の間で実施のスピードの認識の差がございます。これは率直にございます。私の方はどちらかといえばステップ・バイ・ステップとでも申しましょうか、作業部会を三回重ねて報告書をまとめよう。向こうの方は、もっと一回一回で一つずつの結論が出ていく方が好ましいじゃないか、私どもは三回重ねて総合した結論を出そう。その兼は、確かに私は会談しておってもそういう認識を持ちました。したがいまして、今度は四月十六、十七、ワシントンでやりますので、何とかより積極的に事が進んでいくことを期待をしております。  新聞記者会見等でいろいろなことをリーガンさん言っております。その後もまたお会いをいたしまして、双方の立場それなりに理解のできる問題でございますが、なおもう一つ感じましたのは、いわゆるアドホックグループの財務次官と私の方の財務官との間では、これはまさに専門家同士でございますから、割に話が、まあテンポがやや合うが、リーガン財務長官と私は、向こうが非常に急いでおられて、どうも私の国会の答弁でも少し回りくどいから、それでかなというような反省もしながら、しかし自主的に積極的に進めていかなければいかぬという相互認識は持っております。
  90. 志苫裕

    志苫裕君 最後に、総理外交から一転内政に戻りますけれども、あなたがちょうど訪中期間中に、二十四日の当委員会で、実は福島交通、福島不動産の問題がこの委員会でやりとりがございまして、有力新聞の記事に織っておることでもあるから、政治家の名誉のためにもお伺いしておいた方がよかろうというので、和田委員から、総理にかかわることについて質問がありました。官房長官からは、総理によくそれを伝えまして御返事ができるようにしておきましょうというので、お帰りになって聞いたと思いますが、念のために記事を読みますと、小針社長いわく、中曽根総理との関係は、「四十二、三年ごろ、福島交通で労働争議があった。私も大株主の一人で米国を旅行中だったが、当時運輸大臣をしていた中曽根さんから帰国要請があった。中曽根さんや大株主の関係企業からぜひ社長を引き受けてほしい、といわれ、就任した。首相になってからは」云々、こういうことですが、ひとつ小鉢社長とのかかわりについてお話しいただけますか。
  91. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昭和四十二年であったと思いますが、私が運輸大臣をしているときに、福島交通という会社がもうにっちもさっちも動きがとれなくなりまして、たしかあれは織田大藏さんという方が社長で、労働組合との関係が全く悪くなって、そして地方のバスの運行すらとまるという状況で、それで地方民はバスがとめられて非常に難渋しておった、そういう交通政策の上からも非常に困った事態になりました。  それで、福島交通につきましては、いろいろなそういう問題もありまして、このままほうってはいかぬと議会でも随分質問を受けまして、労働組合と協調できるような体制に変えるという強い質問がございました。運輸省の事務当局にいろいろ調査もさせ、検討もさせまして、そしてこのままほうっておいては地方の交通が途絶するという危険もあるし、会社の電車自体が動かなくなる危険がある、そういうことで交通政策上もほうっておけないという形で、株主が集まっていろいろ相談もして、たしかあれは三菱自工でしたか、あれが大株主だったと思うんです。それと小針氏とかそのほか株主が集まって、そしてこの状態を変えようというような話になって、それで株主同士の話し合いで小針氏を社長にしたいと、たしか三菱自工の代表の方が私のところへそんな話を言ってきたような記憶があります。私は、今の事態が改善されるなら株主の意思でお決めになることはこれは結構だ、政府からどうこうということは余り言わぬけれども、しかし政府も今のような交通上の問題から見て協力もしましょうと、たしか言ったことはあると思います。  織田大藏さんを私のところへ二回ほど呼びまして、今の事態を改善しなさいと、私からも運輸省の監督権に基づいて話をしたことはありますが、なかなか頑固な人でありました。しかし、その後株主同士の話し合いで事態が解決して、小針氏を社長に推薦してきたものですから、それなら結構だというので、小針さんが社長に就任した、そういういきさつがございます。
  92. 志苫裕

    志苫裕君 時間がなくなりましたから、いずれやります。(拍手)
  93. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で志苫君の質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこれまでとし、午後零時四十五分に委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午前十一時四十五分休憩      ―――――・―――――    午後零時四十六分開会
  94. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  これより黒柳明君質疑を行います。黒柳君。
  95. 黒柳明

    黒柳明君 総理大臣、本当に御苦労さまでございました。お疲れのところ、また国内問題で相当頭が痛いことだと思いますけれども、なかんずく安倍外務大臣、もう外務大臣就任以来もう席の暖まる暇もなく、文字どおり七面八臂の外交の先頭に立っての御活躍、あわせて心からの敬意、評価をするものでございます。  けさの新華社も、総理もお読みになったと思いますが、今回の中曽根日本総理大臣訪中は、中日の友好の歴史の中に大きな足跡を残したと、こう伝えておりましたが、懸案がないないと、こう言われながらの訪中、そして御帰国でございますけれども、一言で正常化十三年、総理として訪中されたこの位置づけといいますか、意味合いというのを一言で言うとどういうことになりましょうか。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 長い間、日中両国の政治家、民間、先輩方が築き上げられた友好の基礎の上に、その後また政治家あるいは民間の皆さんが築かれていかれまして、そして恐らくこのまま両国の政治家、政府が、また人民が今の考えで進んでいくならば、この資本主義、社会主義の体制を乗り越えてアジア日本中国という国が長期にわたって友好、提携していくと、珍しい歴史上の実績を残すことになり得るのではないか、またつくらなければならないと、歴史の見本になるような心がけで我々子々孫々に伝えていきたいと思っております。これは全く今までの先策や与野党を通ずる日本国民中国人民の皆さんの努力のたまものであり、この努力こそとうといのだと。私たち今回参りましたのはその上に一つの石を置いたにすぎない。が、しかし、次々にその石を積み上げていくべきであると、そのように感じた次第であります。
  97. 黒柳明

    黒柳明君 総理、本作の年頭にいろいろ所見をお述べになった中に、特に冒頭に核軍縮の推進をしたいと、こうおっしゃっていたわけでありますが、その核軍縮、どういう構想をお持ちだったのか、持っているのか、あるいは今までどういうそれについての行動をし、またこれからしていくつもりなのか、お述べいただきたい。
  98. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は前から申し上げているように、核兵器というものは業の兵器であると。一たんこういうものが戦争のこの激甚の中に狂奔して、相手よりも一歩有利な兵器をつくろうというところから核兵器というものが一たん出現してしまうと、そうすると相手もまた負けたくないという形になって増殖する危険が出てくる。そういう意味において一たん持った人は業を背負う、そういう感じを持っておったわけであります。日本が非核三原則を堅持していることは、その業の世界に入らないという意味において賢明なことであると私は考えておるわけなのであります。そういう観点からも、この業の兵器を地上から絶滅させるということは、現代の我々世界国民の大きな責任でもあり、また目標でなければならぬ。業ですから、なかなかこの業は尽きないものがあると思うのですけれども、しかし人間がつくったものである以上は人間がやめさせることもできないはずはない。そういうことについて努力していきたい。  それには、単に抽象的にその訴え、理念を言っているだけではだめなので、そういうものを次第に縮小させ、またやめさしていく国際的な仕組みというものをつくっていかなければそれは政治にはならない。演説だけではこれは評論家になってしまう。そういう意味において一歩一歩着実にそれを実現していく仕組み、過程というものをつくっていく必要がある。それは両方が安心してやめさせられる体制をつくることだ、安心してやめさせられる体制とは何ぞやというのが今の我々の大きな課題ではないか。ある国は検証を伴うというようなことも言っております。それも一つの大事な方法であるに違いない。そのほかまだいろんなものもあり得ると思いますが、みんなで検討していくべき課題であると思っております。
  99. 黒柳明

    黒柳明君 中国へ行きまして、いろんな新聞、テレビを通じまして総理あるいは両国間の発言というものをフォローさしていただいておりますが、その中には核軍縮、桜についての話し合いはなかったと、こういうふうに理解していいですか。
  100. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ありました。私自体も核兵器の廃絶及び軍縮について日本は熱意を持っておるし、今後も推進していく、そういう話をいたしました。安倍外務大臣からも公式会談の席上そういう話をいたしました。中国側も核軍縮、核兵器の廃絶については熱意を持っておるので、さっきも申し上げましたように、まず持っている国が半分に減らせと、そこから始めようじゃないかというような具体案も持っておられるわけであります。
  101. 黒柳明

    黒柳明君 ゴールデンウイークにインドとパキスタンに行かれるという新聞記事が出ておりましたが、先ほどもちょっとそういうスケジュールに触れたのかわかりません。インドに行かれるとなりますと、これはもう当然非同盟の中心の国でありますし、潜在核保有国、第六番目に核を持つという非常に力もある国でありますし、アジアの非核地帯をつくれと、こういうことは、日本野党だけではありませんで、世界の良識のある学者、専門家からもそういう提案が各方面からなされております。中国中国なりの情勢があるかと思いますが、今度はもし総理がインドに訪問する際には、当然この本年の大きな総理の決意と申しますか、目標であります核軍縮について、なかんずく双方ともアジアのそれぞれの核をなす大国でありますから、何か発言し、何かその年頭に述べた核軍縮についての考えを話し合ってくると、こういう意図はございますでしょうか。
  102. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、四月、五月の連休にどこへ行くか決まっておりません。インド、パキスタンに行くという御前提でお話しになりましたが、まだ決まってはおりません。私は、仮にインド、パキスタンへもし万一行くという場合が起きた場合には、もとより核拡散防止条約に我々は入っておりまして、これを堅持して広げていくという基本方針我が国の国策として持っているわけでございますから、その線に沿って努力をしていきたいと思っております。
  103. 黒柳明

    黒柳明君 対ソの問題ですけれども、先ほど外務大臣がSS20の点についてだけ理解があった、こういうことです。そうすると、新聞では外務大臣からミンスクのこともあるいはバックファイアのことも述べた、いわゆる軍事力増強、それについてはどういうふうな中国の反応があったんでしょうか。
  104. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私から一般的にソ連の極東における軍事力の最近の増強ぶりにつきまして説明をいたしました。そういう中で、例えば日本の固有の領土である北方四島に対しても、ソ連が軍事基地を構築して、そして戦闘機が常駐しておる、こういうふうな情勢でもあるし、あるいはまたノボロシスクが今度ウラジオストクに向かって入っておる、これはミンスクとともに配備されるかどうかわからないけれども、しかしとにかく海軍においてもそうした大きな増強が行われておる。同時に、SS20につきましては、これはもう今さら申し上げるまでもないのですが、私と兵学謙外相が国連で会ったときは百八というのを私が申し上げたわけであるけれども、その後の日本の知るところ、キャッチした確実な情報によれば百三十五基、そしてそれが百四十四基にまで今増強されつつある。こういうのが実情であって、全体的に見れば、このソ連の軍事力の増強は非常に我々として重大な関心を持たざるを得ない。特にこのSS20については、前回も話し合ったけれども、これは特に共通関心事項としていろいろと状況情報等について連絡し合おう、こういうことになっておったので、この際その状況、実情を申し上げた次第であるけれども、中国もこれに対しては非常に重大な関心を持っておられるので、今後ともこの点についてはひとつ話し合いを進めていきたい、こういうことを申し上げまして、趙紫陽総理から、中国もこのSS20については非常にこれは脅威に感じておる、これは確かに日本との間に共通関心事である、こういう説明、お話がありました。そういうことで、私はこのSS20問題は共通の特に関心事としてこれから情報の提供をし合うということについて日中間一つの合意ができた、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  105. 黒柳明

    黒柳明君 総理大臣、まあ日本国なものですから日本をめぐる生言った方がいいかと思いますが、アジア周辺の核、なかんずく米ソについて、ヨーロッパの場合には東西が相対峙しておりまして、大体もう核がどこに何発ある、これがわかっておるわけであります。と同時に、中断はしておりますけれども、話し合いのパイプも何本もある。ところが、アジアの場合には、SS20の極東向け配置も、ずっと昔からあったわけじゃありません。最近になってこれが配置された。なかんずくソ連の太平洋艦隊の増強ということも最近とみに増してきた。その中には核搭載艦船が相当入っている。さらに第七艦隊も言うまでもなく六月のトマホークの配置、ですから、アジア諸国は島国が点在しておりますから、ヨーロッパみたいに陸と陸と対峙して数が明瞭になっていない。これは歴史の関係もあるかと思います、古い歴史と新しいアジアと。そうにせよ、このまま放置しているわけじゃないと思います、関心を示し、あるいは潜在的脅威を何とか排除しようと総理大臣なりに努力をしているわけでありますが、その努力にもかかわらず、現実にアジア日本を囲むこの太平洋付近の米ソの核の配置というのは、陸上そして海上、ぐんぐん急速にふえているわけであります。これはやっぱり何とかしませんと、数年前までアジアに非核地帯つくる、こう言ってもあんまりぴんとこないような客観的な情勢があったかと思いますけれども、今日はそんなわけにいかないと思いますね。  もう現実的に、やっぱりアジアにおける非核、核軍縮というものを、どこがリーダーシップをとって、どういうパイプをつくって、そしてどういうテンポでやっていくのか、これがないと、いつの間にか目に見えないものが、今度はヨーロッパと比べてそれ以上の脅威になってくる、こういう可能性が現状ではあるんじゃないか、こう思うんですが、ひとつアジアの、あるいは日本を取り巻く、なかんずく六月のトマホークも含めて、ソ連の太平洋艦隊の核積載艦数、これは防衛庁から報告をもらえればいいんですが、聞きましたら非常に多くなっているんです。こういうことも含めてひとつ日本をめぐる核認識、もうちょっと具体的に。だから政治的にそういう要素を構築していくんだと、総理発言は何か具体的に乏しいんじゃないか、こんな感じがするんです、失礼ですが。本年、そういう核軍縮に対しての構想をお持ちならば、年頭の決意をお示しならば、もうちょっと具体的にこういうふうなテーマを持ってしかるべきだと思うんですが、今言いました日本をめぐる米ソの急速に増強した核の配備と、それから総理考えた本年特に核軍縮のテーマ、これは中長期的な将来も含めていると思いますが、それとの何か抽象的なギャップ、ここらあたりはどう感じますでしょうか。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一番基本的な観点は米ソの関係だろうと思うのです。米ソの核に関する政策が合意ができて、これが削減あるいは廃絶の方向に向かっていけば世界の緊張が非常に緩和されますし、またほかの国々もそれに倣う可能性も十分出てくる。一番中心は何といったって米ソだと思います。それで、じゃ米ソ、具体的に何が出てくるかと考えると、これはINFとSTARTというもので核の問題は現実的には話をしておったと。全欧安保という問題がありますが、これはそう直接的ではありません。また、ヨーロッパ中部における兵力削減交渉も、これは核、非核で、むしろ通常戦力の性格が強かったです。そうなるとやっぱりINFとSTARTにおいて米ソがいかに早く合意を見出し得るかという点に政治の現実としては焦点がくるのであり、ここから解きほぐしていけば可能になる。それをやるには何が大事か。これはやはりソ連のチェルネンコ政権あるいはアメリカにおけるレーガン政権というものの間にその糸口を見出してもらって、そしてある程度の準備が要るでしょうけれども、準備をやっているというときは大体アヒルの水かきで、見えないところでやっているものです。だから、我々の見えないところでやってもらっても結構なんだから、なるたけそういうようなアヒルの水かきをやってもらう空気をつくり、そして場所をつくるように客観的な環境づくりをやるということが我々の政治家としての現実的なやり方である、そういう面において努力してまいりたい。  最近、アメリカのレーガン政権は、新しいチェルネンコ政権の出現に伴って、できるだけそういう緊張緩和やろうじゃないか、話し合いやろうじゃないかと、そういう意味の積極的な構えを示しておる。私は結構なことだと思うんです。しかし、チェルネンコ政権の方も今政策形成期で微妙な段階にあるだろうと私思っております。そういう意味において、それをできるだけ促進する方向に持っていく一つのチャンスであるだろう。ただ、チェルネンコ政権の方は、アメリカ大統領選挙はどうなるか、レーガンさんが絶対勝つという見通しがつけばレーガンさんと話し合いを始めるかもしれませんが、負けるかもしれぬというときには、それはちゅうちょするかもしれません。そういう生きている政治の現実の中でこの問題がどう動くかという点もあるわけでありますから、この辺は慎重に情報を我々はまず収集して、そして表であるいは裏でできるだけ助言したり協力するということはあり得ると思うのであります。
  107. 黒柳明

    黒柳明君 ミッテラン大統領が、NBCですか、インタビューに答えている。いわゆる核交渉がヨーロッパで中断しているけれども、米ソ両方とも譲歩の姿勢がないからだ、譲歩すべきだと。こういうことで早速タスの方からミッテラン大統領発言を評価すると、こう言われる。何も私はタスに評価される必要もないと思います。やっぱり日本日本です。しかしながら、日本の位置というのは、言うまでもなく核に対しては非常に世界から注目されている位置であることは間違いない。どこにも遠慮せず、日本独自の、総理の信念をもって核軍縮に対して年頭の決意を述べた、それを今度は実行に移す、そういう段階であるならば、ちょっと中国に行っても、あるいはこれからどこかへ行っても遠慮があるのかなというような感じも、あるいは慎重である、賢明でありスマートである、こうなのかなと、こういう評価もしているのですが、まあこれは結構でしょう。  それから日中経済協力ですけれども、中国の方から大型企業の進出を望む、総理は法整備が足らないじゃないかと、こんなことが活字になっておりましたが、中国側としては法整備をした後来てもらいたいと、こういうのか、あるいは日本側は、法整備早くやれ、それじゃなきゃ企業進出はできないと、こういうことなんでしょうか。それからもう一つ、当然、御帰国、きのうきょうですから、まあ中国の要望と言えるかどうかわかりませんが、財界方面にこの意向を伝えるか、伝えることになるんでしょうか、いかがでしょう。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 特に胡耀邦書記及び鄧小平主任からそういう日中間経済協力を促進してほしい、日本の企業が進出してほしい、技術的にもいろいろ我々おくれているから教えてほしいと、そういう非常に謙虚な要請がありました。私はそれに対して、もちろん我々は善意を持ってやるつもりであるけれども、問題はあなた方の方にもあるんですよと。それはどういうことかといえば、やっぱり企業が出ていくためには安心して安全であるというところがなければ行けるものじゃない。政府間の問題は、円借款であるとかバンクローンであるとかという大型プロジェクトについて我々は今後も努力していくつもりである、しかしこれは島をつくるようなものであって、大事なのは海原である、これは中小企業、中堅企業が大量に出ていって初めてそれはできるんだ。大きな宝山の製鉄所もいいけれども、しかし日本のトヨタなんかの場合は五百、六百、八百という下請企業があって、それが技術的に水準が高くなって今のような効率的な日本の産業というのはできておる。必ずあなた方も中小企業、中堅企業というものの重要性を認識してくると私は思う。そういうものが出ていくために、ASEANにはかなり出ている、中国になぜ出てこないかといえば、やっぱり法制の整備が足らぬ。一緒にやっていく場合でも、一体原価計算というのはどの程度になるんだろうか、価格はどうして決められるんだろうかと。一方的に上の方から価格が決められていくようです。あるいは利潤というものはどういうふうになるんだろうかと、そういうようなさまざまな安全性、安心感を与えるような体制ができなければなかなか動くものじゃない。  だから私は、政府間の協力も大事だけれども、もっと実際に民衆の生活向上につながって失業問題を解決するのは中小企業が全面的に出ていくことなので、その流れをつくりなさい、流れをつくるには、資本というものは安全なところに流れていくんだから、安心感を与えるという方が先ですよ、いろいろ経済特区をおつくりになるというけれど、あれは流れがたどり着く河口にしなけりゃだめだと、そういう点で幾つか私の助言を申し上げた次第でございます。私は、いずれそういうことが非常に重要になるときが来るだろうと思いますし、善意を持って、また日本の企業に対してもできるだけ中国には民間が力をかしてあげるようにと、そういうことも帰ったらお伝えいたしますと、そう申し上げましたから、伝えるつもりでおります。
  109. 黒柳明

    黒柳明君 謙虚といえば、わざわざということになりますか、中国側から北朝鮮とのパイプのあっせんということで、外務大臣、先ほどニュースで、けさの閣議の後に記者会見したと。総理、いわゆる経済、政治問題じゃなくて人道的問題はお世話になる可能性があると。我々考えますと、せっかくあそこで中国が善意の発言をしてくれたんですから、あの場でよろしくお願いすると、これなぜ言わなかったのか、言えなかったのか。あるいは韓国に配慮したのか、しなきゃならないのかなと、こんなふうにも考えるのですが、向こうは非常に善意の仲介を申し出た。その場で心よく受け取って、懸案問題というのは既に羅列されているわけですから、ぜひよろしくお願いしたいと、こういうことで、できればその場である程度詰める、こういう雰囲気はなかったのかなと、これは私、野党立場で、政府姿勢、長年の考え方わかりません。しかしそういう疑問があります。それが一つ。  と同時に、これは外務大臣が御答弁いただくことなんでしょうか、人道問題ではこれ要請するつもりだと記者会見をしたと、こう言われておりますが、外務大臣中国でおっしゃって活字になっていたのは抑留漁民の問題、それからいわゆる日本人妻の問題、それから今度は日本人の墓参の問題もあるでしょうか、ソ連と同じような問題。総理、この三つぐらいに絞られるかと思うんですけれども、これについては、はっきりと人道問題であるから要請するんだと、こういう決意で会談に臨まれ、お帰りになって、すぐ事務レベルで煮詰めて正式要請するんだと、こういう考えなんでしょうか。
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国側から善意のある、好意のある仲介のお申し出をいただいて、我々も非常にありがたく思いました。しかし、今の状況考えてみますと、特にビルマにおけるランゲーンの韓国要人の爆殺事件というもので韓国の国内情勢は我々以上に緊張もしておるし、北朝鮮に対してある種の感情を持っております。それは友好国である我々日本としても無視できないのでありまして、そういう雨によって我々政府一連措置北朝鮮に対してやっておるわけであります。そういう状況下にどういう答えができるかということを見ると、やはり政府が行う行為というものには限度があるし、韓国の気分、韓国立場というものも十分考えてあげるのが礼儀である、そういうように考えて、しかしそれも当面という言葉を加えまして、当面、政治経済問題についてはないけれども、人道上の問題については十分あり得る、その節はよろしくお願いすると、こういうふうに答えたわけなのであります。
  111. 黒柳明

    黒柳明君 外務大臣、いろんな配慮をしなきゃならないことも私は当然だと思います。しかしながら、中国側も相当検討を重ねての最高責任者の発言ですし、外務大臣が今言った人道上の問題、外務大臣総理の間にちょっとギャップがあるとは私思いません。同じ考えだと思うのですけれども、やっぱりこれは具体的に要請するのかしないのか。その要請のテーマは、私の頭では、今言いましたように、日本人妻のことと、それから墓参のことと、それから抑留漁民、これは二人ですか、とにかく日本人妻というのは千七、八百人おりますか、墓参したい方はいっぱいいる。私、話を聞いている。ここらあたり記者会見の内容を私じかに聞いたわけじゃありませんし、ちょっとテレビでかじっただけですが、外務大臣のお考えを聞かせてください。
  112. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 基本的な考え方は今総理がお述べになったとおりでありますが、せっかくの中国の最高首脳の好意ある発言でございますし、これに対しては人道問題ということに限って中国にもしお願いをするということならしたいと、こういうことで今事務当局にその内容について検討させております。今お話しのようなことを実は検討しておるわけでございまして、私としましては、例えば北朝鮮との関係日本政府が直接北朝鮮政府に言えないと。そこで国際赤十字等を通じて今まで人道上の問題で話してきた、あるいはまた第三国を通じて話をしてきた。こういうような、これは人道問題に大体限っておるわけなんですが、そういう点について、中国北朝鮮とあれだけ深い強力な関係にあるわけですから、それだけ中国が言ってくれておりますし、また中国からそれを言えばそれだけの効果というものも期待されるわけでございますから、人道問題に限っては今申し上げましたような基準で具体的に検討を開始したところであります。
  113. 黒柳明

    黒柳明君 あと二、三聞いて今度は防衛問題に移るんですけれども、大蔵大臣がお疲れのようで、ちょっと中間に一問御質問したいんですが、中曽根総理、今度の訪中で非常に御苦労なされて、一生懸命実のある成果を上げてきたと、こう思うのですが、一つだけ、これだけスマートな思慮深い中曽根訪中で、なぜこれをミスしたかなと思う点があるんです。  パンダ。アメリカの場合には、ナンシー夫人の呼びかけでパンダ救済の基金を集めて、レーガンさんがそれを持って訪中するのですね。総理の場合には、行ってそれを約束して後で集める、これはやっぱり非常にうまくないんです。レーガンより早く行くというならば、早くパンダ救済の基金を集めて持って行く、これは当然やるべきであって、これは総理考えたのだけれども周りの取り巻きが悪いと、こういうのか。政府が五千万、それから民間レベルで二億とこう言っている記事や報道を読んでおりますが、当然これは大蔵大臣、お金のことになるとどうしても竹下大蔵大臣が出てくるわけでありまして、当然これはもう閣僚ですから、私から言われるまでもなく、この次の閣議では閣僚もポケットマネーで何とかやろうよと、こういうお考えを持っていることは間違いないと思いますが、大蔵大臣いかがでしょうか。済みません、それじゃ外務大臣
  114. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 別に取り巻きが悪かったんじゃないと思いますが、実は今度行くに当たりまして、やはりパンダが非常に死滅の状況にある。何か孟宗竹に花が咲いた状況で大変な状況に追い込まれる。そこで、生息の場所を変えるというのが世界的な運動にもなっておりますし、日本は、特に日中国交回復におけるパンダの役割というのは日本国民には非常に印象づけられておるわけですから、これを救おうと。それには民間の運動をやらなければなりませんが、これは時間がかかるわけで、まずやはり政府の文化無償といいますか、それでもっていろいろと機材等を購入してもらおうということで五千万円、これは外務省から文化無償ということで実は持って行ったわけでございます。これは中国側にそのことを説明いたしまして、大変感謝をしていただいたわけでございます。寄附金を集める方は、これは国民、特に子供さん方を中心にやるわけですから、これからいろいろな団体、ボーイスカウトとか、その他いろいろな子供団体等に呼びかけて、大体二億円を見当に集めたいと、こういうふうに思っておるわけであります。
  115. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) どういう方法になりますのか、いずれ今のような調子で安倍外務大臣が閣議後の懇談の際にでも御発言があれば、だれもいいことだなと言うだろうと思います。
  116. 黒柳明

    黒柳明君 ひとつ発言してくださいよ。私党言い出しっぺですから出さなきゃならないですけれども、二億ぐらいは、閣議で了解すればその百分の一から十分の一はすぐ集まっちゃうんじゃないですか、そんな二億なんていうのは。  ということは、総理大臣ね、養父母に対するお手当は口上書に述べていますね、フィフティー・フィフティーであの場合、こちらでセンターが設けられたのは二月ですよ。今まで百七十名の帰国があって、それで四カ月の話学研修、それから就職のあっせん、これは全部ボランティアです。ですから、この実情というのは悲惨なもので、御存じのように殺人も一件あったでしょう。それから三人の方が要するにこちらに帰国したのだけれども肉親じゃなかった。それから、労働省から聞きましたら半分が今就職していない。これについてはやっぱり帰国すれば全部日本の法律が適用されるんです。だけど、そのままにほっておいてはだめだと思うんですよ。口上書の中には養父母の問題があるんです。今の二億、なぜ私言うかというと、財界、これ二億しか集まっていないじゃないですか。財界が十億の金を集めるということでつくったわけでしょう。だから財界に頼むのもいいですよ。だけど、日本政府は五十兆の金を持っているんですから、あるいは閣僚でも物すごく資産を持っている方、そのための資産公開をやられたんだと思うんですよ。そのうちの何千分の一、何万分の一を出したって、これは呼びかけるのも結構、国民のための日中友好パンダですからね。呼びかけるのも結構。だけど、現実に百七十名の、わずかというふうに言えるのか多いと言えるのか、帰国者に対して、向こうの養父母にしかるべく手当てしようというものだって、二億しか集まらないじゃないですか、財界が乗ってこないじゃないですか。乗ってこない財界が悪いとは言えませんよ。やっぱりこれはボランティアですから、ボランティアで一生懸命やっているんです。だから、帰国者の問題、もうちょっとやっぱり就職の問題についても政府が取り組まなきゃならないと同時に、いまの民間の二億、集まると思いますよ、二億ぐらいは。ですけど、中国の問題では十億が五分の一しか集まってないという現実があるんです。であるから、二億だったって、閣僚から率先してやれば五十分の一、三十分の一、二十分の一までも集めようと、こういう意欲、総理のあなた意欲ですよ。  だから私、老婆心ながら、欠礼なことかと存じますけれども、こういう発言、今のセンター、帰国者のアフターケアの問題にひっくるめて発言さしていただいたわけでありますが、一つ、テーマは帰国者のアフターケア、これ相当やらなきゃだめだ、困っているという問題。それから向こうに対して、養父母に対する財界の寄金が集まっていないじゃないかという問題。その前提、パンダに閣僚が率先したらどうでしょうかと、こういう至らない意見まで言ったんですが、総理、いかがですか。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、パンダに対しましては、閣僚の皆さんに御相談して、御協力を得て適切な金額をみんなで拠出するように申し合わせしたいと思います。趙紫陽さんの話だと、パンダというのは海抜二千四百メーターぐらいのところにすんでおるので、やっぱり非常にデリケートなもので、北京でも動物園で死んだのがいるとか言っていました。そういう意味で非常にデリケートな動物の由であります。  それから、あとの二つにつきましては、財界の皆さんにも御協力申し上げるようにせっかく努力したいと思いますし、また就職やそのほか、定着して生活できるようにするためには、厚生省、労働省等を督促いたしまして努力いたしたいと思います。
  118. 黒柳明

    黒柳明君 時間がありませんので防衛問題に移りますけれども、私、昭和五十七年一月十九日、鈴木内閣総理大臣に核に対する質問主意書、これ出しましたよね。五番目の質問に対するこれは答えです、政府答弁。「我が国は、核の脅威に対しては、その態様のいかんを問わず、米国の核抑止力に依存することとしており、我が国自ら核兵器を保有してこれに対処することは全く考えていないところである。」、これはもういつもの、当たり前です。「また、防衛庁を含め政府として、そのための研究、訓練等を打っているということもない。」、これも当たり前ですね。ただ、内閣がかわっておりますので、当然中曽根内閣もこの内閣の姿勢は変わりない、こう理解しておりますが、念のためひとつ御見解を。
  119. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 変わっておりません。
  120. 黒柳明

    黒柳明君 もう当然です。防衛庁長官、直接当事者、責任者でございますので、あの防衛大綱でも、大規模核戦争にはアメリカの核の抑止、小規模限定には自衛隊、こうなっておりますし、当然日本がこれから核を持って何かやろうなんということは考えられませんし、考えてもいませんし、また核部隊攻撃するために、何かやるための研究も訓練もしていないと、ここに書いてあるとおりだと、こう思いますので、一言念のため、直接の指揮官なもので、責任者なもので、御見解を。
  121. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 全く考えておりません。
  122. 黒柳明

    黒柳明君 ところが総理、済みません、その後がいつも嫌みで申しわけないんですけれども、これ、嫌みというよりも、私は政府のために物申すわけでありますから。ところがこれ、各所にあるんです。今、私読むより総理に見てもらった方が、防衛庁長官に見てもらった方が早い。各所にあるんです、そうじゃないということが。  これは陸上幕僚監部の教範です。教範が何であるかこうであるかというのは、見てもらえば一目瞭然ですからね。ここにいわゆる攻撃とか防御とか、いろいろ書いてあるんです。最後のところ、核武器の使用ということがあるんですよ。原子武器を使用する際云々で、いろいろありますね。原子武器使用に先立ち、特別防護衣服と装備が部隊に支給される、みずからの原子兵器による被害を避けるため制限距離まで部隊は後退する、原子発射砲兵のため、本陣地、予備陣地が部隊の移動に先立ち準備される、原子武器を使用する際、誘導弾部隊は前線から適当な位置に置くことが必要である、あるいは近距離目標に原子兵器を使用するときは、熱線及び閃光から味方を保護するために大規模な煙幕を使用しなければならぬ、これ、私が言うより読んでもらった方が早い。情報教範という陸上幕僚監部、これ。済みません。申しわけないですな。それで、しかもこれは冒頭に、陸上自衛隊の訓練に資するためにこれを配付すると、こう書いてあるんです。これ、訓練をやっているんじゃないですか。済みません、長官もひとつ見て。それだけじゃないんですよ、まだまだあるんだ、いろいろ。局長ちょっと見て。(資料を示す)
  123. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  今、先生のお示しの参考資料といいますか、これは米軍の教範の翻訳でございまして、特に私どもの方でつくったということではございません。  なお、自衛隊におきます核防護の関係の教育訓練でございますけれども、もちろん核を使用するというようなことは私どもありませんので、ただ個人の核防護の一般的なことは化学学校等で若干教えております。それは、例えば部隊装備の中に、線量計といいまして、どの程度の放射線が蓄積しているかとか、そういったことの取扱方法とか、そういったものについては若干教育をいたしております。
  124. 黒柳明

    黒柳明君 翻訳ですけれども、これを陸上幕僚監部で使っているんじゃないですか、使っていたのじゃないですか。翻訳であろうと何であろうと、これを使っていたことは間違いないんじゃないですか。研究、訓練、教育に使っていたことは間違いないんじゃないですか。
  125. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先生のおっしゃるとおり、教育訓練の参考資料として配付をいたしております。
  126. 黒柳明

    黒柳明君 いいですね、使っているんです、教育訓練として。  さらに私は、この野外令。こっちは情報幕僚が持つものです、情報幕僚が。こっちは、野外令というのは、私、戦争経験がないものですから、いまの自衛隊も知っているようで、これは専門家じゃありません、長官の方がよく知っていると思うんですけれども、この野外令、これにも出ているんです。これは、しかも攻撃が出ているんですよ、野外令には。その他の脅威に対する処置、百六十六、特殊武器に対する処置、そのa項、原子武器の脅威に対しては、これらの武器の発射地点等を探索してまずこれを破壊することが望ましい、これは長いので、総理、読んでもらった方がいいですよ。さらにまた、原子武器の脅威に対しては、指揮、通信及び兵たん支援の中断を避けるため、予備の施設を準備することが緊要である等々、これはいっぱいこの中に書いてあるんです。いいですか。これも翻訳ですか。まずそれから聞きましょう、これも翻訳ですか。
  127. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 野外令は陸上自衛隊の教範でございまして、第一部及び第二部から成っております。第一部におきましては、陸上自衛隊の……
  128. 黒柳明

    黒柳明君 知っている、そんなことは。翻訳かどうか聞いているんだ。
  129. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 翻訳じゃございません。
  130. 黒柳明

    黒柳明君 そうでしょう。書いてあるじゃないですか。実戦部隊の指揮官が使うんでしょう、これ。前のは翻訳、だけど訓練、勉強しております。今度のは翻訳じゃありません。実戦部隊の指揮官が使うものです。そこに出ているじゃないですか。しかも総理、これは連動して使いなさいと書いてあるんです、ここに。この情報教範は野外令と連動して使いなさいと。やっているんじゃないですか、訓練を。
  131. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の狭い知識でも当たり前のことだと思うんです。相手が原子兵器を使ったという場合に、味方の損害を少なくする、味方はもちろん原子兵器なんか使っていない、通常兵器でやっておる。そういう場合に、例えば向こうが撃っているロケットであるとか、あるいは百五ミリのりゅう弾砲であるとか、オネストジョンというのが昔ありましたが、相手がそういうものを使った場合に、その跳梁に任してしまったら悲惨な損害をこっちは受ける、だから、そのもとをたたいて、まずそれを破壊せよというのが防御の第一の要請ではないかと、そう思います。つまり、こっちが原子兵器を使って撃つというのじゃなくて、被害を食いとめるためにその源を断つというのでありまして、それが防衛に徹してやっているやり方なら私は文句ないと思います。
  132. 黒柳明

    黒柳明君 ところが、この答弁書の内容、今最初に確認しましたように、後にはちゃんと防護のことが書いてあるんです。総理はこのことを御存じないんで、あえて触れなかった。防護についてはちゃんと書いてあるんです。「放射能に汚染された状況の下における防護に関する教育訓練については、従来からある程度これを実施してきている。」と、そのほかは一切やっておりませんという、これは一貫して政府姿勢であります。総理がもしいいとなると、陸上において核戦争が起こることを想定してやっているんですよ。もう一カ所あると思います。幾らもあるんです。いいですか。私は、その意見は全面的に主観として間違いだと言いませんよ、そういう意見があったって私は構わないと思います。ただし、今の政府の一賛した姿勢の中では、そういう見解をとっておりません。しかも、これは何のときに使われるかといいますと、本書は、戦時における情報業務に関して一切の指針を与えることを目的としてここに記述すると。戦時です。この中を見ますと、全部これは陸上自衛隊ですよ。陸上自衛隊が日本本土の核戦争を想定してやっているんです。それでもいいという見解総理がとれば、これは私は何とも言えません。結構だと。日本が核戦争になる可能性がある、ありますね。否定しませんよ。まして、さっき私言ったように物騒ですよ。ああ、わかる、そのために自衛隊いるんだ、当たり前じゃないか、核戦争に本土がなるときには、自衛隊が向こうの核兵器を攻撃し、そのための情報を集め、戦時のための万全を期すことが当然だという総理見解をここでお述べになるとするなら、今までの全部の見解は覆ります。私は、覆ることについておかしいと言えるか言えないか、これは別です。終始一貫して、議事録なんか全部そうじゃありませんか。どうですか。いいですか、それ。今総理がそう言ったんだ。総理がこれについて、当たり前じゃないですか、核に対して、自衛隊がそれに対して攻撃し、何するんだって当たり前じゃないですかと、万全を期するために。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府の答弁書が歴代どういうふうに何回出されているか私は知りませんけれども、日本は専守防衛という本旨に基づいて防御本位で物をやっておる、それが貫かれておる。そして、相手がどんな兵器を持ってくるか、これはわかりません。一番最大の不幸は、相手がそういう今のようなロケットで原子兵器を使うというような場合もないとは言えない、今おっしゃったように。そういう場合に、手をこまねいていて味方の損害、惨害をそのまま拡大していくということは防御の本旨には連ならない。そういう意味において、防御行為をやることは正当防衛であり、また陸上自衛隊としてやることは当然のことであると思います。したがいまして、もしその答弁が欠陥があるとするならば、将来は直すようにしたいと思います。ただ、恐らく今まで答弁をしていた中においては、そういう相手の兵器まで、戦闘が行われた場合に攻撃してやるということを書くと、余り刺激的になり過ぎるから、だから放射能防御、そういう表現でそういうことも表現したのではないかと思います。
  134. 黒柳明

    黒柳明君 そうじゃないんです。これは総理の今ここの思いつきであります。放射能防御については、ちゃんとだから後段に書いてあるわけです。教育訓練をやっていますと。前段はそうじゃありません。核攻撃する意思もなければ、核部隊に対して攻撃をし、それに対しての防御のすべはありますか、それじゃ。しかも陸上自衛隊ですよ。日本の本土が核攻撃され、敵部隊が上がってきて、そして本土において核戦争が起こるという前提ですよ、これは。それでもなおかつそういうことをやるのは当たり前じゃないかと。そうなれば、くしくも先ほどおっしゃったように内閣の見解は全く変わります。自衛隊は核攻撃に対して予知されるものについて当然万全の体制を整える、情報を集める、訓練もする、教育もする、こうなるわけです。そうするということならば、そこで私は先ほどから何回も言うように、総理考えですから、それも一つの達見かと思います。そうすると、今までの政府考えは全部、核に対しての抑止、核の脅威に対しては、その態様のいかんを問わずですから。脅威ですよ、脅威というのは攻められるということですよ。だから、その後核兵器は持たないと書いてあるんです、これは当たり前です。攻められる核の脅威に対して、その態様のいかんにかかわらず教育訓練はやっていないと。これは陸海空含んででしょうね。ところが、これは陸幕がその脅威に対して対処すると、こういうことですよ。実戦の部隊の指揮官までも訓令としてそれを持っている、こういうことですよ。さらにもう一つ大きな問題があるんです、総理。それは言うのやめましょう、総理の答弁によって。
  135. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 仮に不幸にしてそういう敵の侵略が行われて、そしてロケット砲とかそういうものでやられるという場合に、今の話は戦闘のときの話のようですが、ですから侵略された場合に、やはり日本を守るためにそのもとであるものを断つということは、侵略が行われ戦闘が行われたときには、自衛権の発動としてやはりやっていいと私は思っております。
  136. 黒柳明

    黒柳明君 これは総理見解、私、二十年国会議員、総理の方が長いですから、総理の知識、防衛庁長官もやっていたから、私の知識があさはかなのかわからない。これ失礼ですけれども、役人さんとやりとりする問題じゃないと思います。ですから、そうなりますと、この政府見解は完全に変えると、こう私は認識いたします。「我が国は、核の脅威に対しては、その態様のいかんを問わず、米国の核抑止力に依存することとして」いたのが、依存しない可能性もある。核の脅威に対しては、自衛隊も日本国民の生命財産を守るために研究、訓練、情報入手、そして核部隊攻撃に対しての勉強、態勢、訓練も徹底的にやる、こういうこと、これは正確な文言、何々じゃなくてもね。それからもう一つ日本の本土核戦争も自衛隊は想定して、当然、訓練、研究をやることは何ら差し支えない、当たり前である、こういうことですな。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非常に極端な表現をお用いになりましたが、日本アメリカの核抑止力に依存し、日米安保条約を有効に適切に運用しながら防衛を全うせんとするものであります。これは一貫してはっきり申し上げているとおりである。しかし、日本が侵略されて、そしてもし相手が核兵器、今のようなものを使うという場合において、自衛権を発動して国を守るというそういう状態が続く限り、我々はやはり自衛隊がそのもとを断つ、そういうことをやることは、自衛権の発動としても防衛のためにも必要であると思うんです。ただし、政府答弁にどういうような表現でそれを書くかということは、これは法制局や関係方面でよく研究させる問題であると思っております。
  138. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、この政府答弁の、いかなる核の脅威に対して、その態様のいかんにかかわらず、全く防衛庁、政府は研究、訓練をやっていないという表現は変える、こういうことを前提としてこれから研究すると、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 研究、訓練という表現がいいかどうか知りませんが、もし万一そういう事態が起こった場合には、これは自衛権の発動、すなわち緊急避難、そういう意味においてもそれをやることは、それは悪いことではない、禁止されていることではない、そういう意味に解釈していただきたい。
  140. 黒柳明

    黒柳明君 だから、それは総理見解であるけれども、歴代内閣の見解とは違っているということであって、起こった場合、それを想定して事前に研究、訓練することはだめだと言っているわけです。起こったときやるのは当たり前じゃないかと、これをここで言っているのじゃないんです、政府の統一見解。起こることの可能性を想定して研究、訓練することはまかりならぬと、いかなる脅威に対しても、脅威ですから。脅威があったという事実、その脅威というのはやっぱり陰に陽に見えてきますから、それについて研究、訓練はいけない。ただ、核の汚染の防護に対しては、教育訓練については従来からある程度これを実施している。非常に控え目というか、私たちはこの認識できたし、政府もこういう認識ですよ。核汚染の防護については教育訓練をある程度これを実施している、ある程度。そうすると、今総理がおっしゃったあれは完全にこの見解を変える。あるいはまた、総理に極端と言われるか、日本本土の上陸における核戦争もあえて辞さない、それを想定して、今想定なんかしていないんですよ。もう一つ言いますと総理、驚くんだ。それじゃもう一回答弁してから言いましょう。
  141. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 黒柳さんの質問の中には誤解を与える要素がありまして、それはその場合に、もし相手の核の砲とか何かで撃ってくるというような場合があった場合に、それをやっつけることはいけないんだというような間違った印象を国民に与える。私は、正当防衛、緊急避難、あらゆる面から見てもそれをそのまま放置しておいていいということではないのだ、それを撃滅することは自衛隊の仕事として、侵略が行われ戦闘が行われている場合にはそれはあり得るという意味の判断を示したのであって、それに対してふだんどういうことを練習するのかしないのか、これは専門家、関係各省で勉強をさせます、そういう意味のことを申し上げたのであります。
  142. 黒柳明

    黒柳明君 総理の話が進んじゃっているわけです。私は現実に起こってドンパチやるなんということを想定していない。しかも、これは今までの見解だとそうじゃないんです。それを想定していかなる研究、訓練もまかりならぬ、核については一切アメリカに任すんだ、核抑止力に任すんだ、こういう議事録はもう何百とあるんです。一切やりません、できません、やらないのは当たり前です。大規模、アメリカですから、核戦争、アメリカですから、研究も勉強もしてませんと。残念ながら私は総理からそういう答弁が出るとは思わなかったから、その資料はここに積んでないんです。これの方はこんなにあるんです、これ、いままでの政府見解ですから。私はドンパチが起こったときのことを言っているんじゃない。これもそうなんですよ。それをやることは、いざとなったときやらなきゃならないだろう、それは私も何回も言うように、そういう見解があってもおかしくないと言える面もありますと私言っているんです。だけど、政府の統一見解はその前なんです、脅威に対してですから。一切研究、訓練はやりませんという統一で来ているんです。全部それは大規模核ですからアメリカの抑止力ですと。そしてわざわざそのために、汚染の防護については小規模な教育訓練だけやっています、それがこの後段なんです。いいですか総理、私は何も現場におけるドンパチなんて絶対想定していません。それがここに盛り込まれているなんということは言っておりません。私、言ったのは、この野外令に出ている、これが指揮者が持っているものだからと、こういうことを言っただけであります。これについてはそんなことは言っていません。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、野外令のその教範の中は、戦闘が行われ、侵略が行われたときにやっていい、そういうふうに書いていると私今お聞きしたわけです。ですから、それは権利はあると。我々は自衛権もあり、緊急避難もあるし、国民を守らなければならぬという意味でそれはやっていい場合があるんだ、しかしふだんからそれに対してどういう構えをするとか練習するとかなんとかということは別の問題であって、それについては研究させましょう、どういう表現で書くか書かないか、それは研究させましょう、そういうことを言っているわけです。
  144. 黒柳明

    黒柳明君 もう一回繰り返しますよ。時間ありません。野外令にあることはいいというんですね、総理。野外令に、現場の指揮官が原子力兵器に対して攻撃もする、それがもう当然だというようなものを現場の指揮官が持って、いざとなったときはそれに対処すべきだというものを持っていたっていいと。もう一回それじゃ確認します。
  145. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは侵略があって日本を守るために必要である、侵略があった場合、そういう場合にはどちらの通常兵器をもって、その原子兵器か何か知りませんが、そういうもので日本に惨害を与えているもとを攻撃するということは、これは自衛権あるいは緊急避難であって、それはやって悪いごとではないと、私はそう判断を下しましたということを言っているわけです。ただし、そのためにふだんどういう勉強をするか、訓練をするか、国会で答弁をするか、答弁書にどう書くかということは、今あなたからそういう質問が新しくありましたから、検討させます、そういうことを申しているわけです。
  146. 黒柳明

    黒柳明君 総理、私この場で残念ながらこんな答弁が返ってくるとは全く思いませんでした。ですから、総理のこの勇気に対して敬服しますよ。これを全く変えて、要するに核に対する思い切った政策の変更、これは私は総理の御見解ですから、これは構いません。それに対してこちらは、そんなことはとんでもないという資料、こんなに山ほどあります。今までの歴代内閣の核に対する国会議事録、全く食い違っております。結構、総理が変えるということでありますから。ですから、変えるということについて今ここで約束していただいたのは、これがそれじゃ検討します、こういうことですからね。いいですね、検討しますと、こういうことですから。
  147. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  148. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  149. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) いろいろと議論が熱してまいりましたが、事の起こりは、政府答弁に対して、一方では教範というものがあるじゃないか、だから核兵器は使わないとかなんとかいろいろ言っているけれども、一方では教範があってそれを教えているじゃないか、一体それはどういうことかということから起きたことでございます。したがって、その政府の答弁書と教範との関係、教範を教えているのは陸上自衛隊でやっているわけですから、それの関係で、どういうことでこれを、その答弁書との関連で教範がどうしてできているかということにつきましては、事務当局の方の説明をまず聞いていただきたい、こう思います。
  150. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えをいたしますが、政府質問主意書に対する答弁書は、核の脅威に対しては我が国みずからが核兵器を保有してこれに対処することは考えていない、アメリカの抑止力に依存をする、したがいまして我が国みずから核兵器を保有してこれに対処することは考えていないので、そのための研究、訓練は行っておりませんというふうに主意書は書いてございます。したがって、質問主意書のお答えは、政府の答弁は、あくまで我が国みずからが核兵器を保有してこれに対処することについての研究、訓練を行っていないというふうになっておりまして、それ以外の、私どもが現在やっております教育訓練は、後段の防護に関する教育訓練ということで私どもは考えております。
  151. 黒柳明

    黒柳明君 みずからが核を持って、そして攻撃するための訓練、研究はやってない、核の防御についての訓練、研究はやっているという見解ですな。そうすると、それは総理見解と同じで、今までの答弁、政府見解とは全く違います。もう時間ありません。私はもう最大のセントルマンシップで、これは論議は論議ですから、これを終わります。もうあんた方がびっくりしちまう。こんなばかなことありません。防御、攻撃。脅威といったら防御じゃないですか。攻撃じゃないじゃないですか。脅威が攻撃ですか、これが。防御じゃないですか。今この場だけ答弁を言いくるめたってこの後、大問題になりますよ。以上、ひとつ御忠告をさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  152. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で黒柳君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  153. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、上田耕一郎君の質疑を行います。上田君。
  154. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 平和五原則に基づく日中友好、これを私どもも心から望んでおります。  今度の日中会談について若干の質問をさせていただきたいと思いますが、午前中の答弁で、首相は、日本アメリカがどうあろうと自主的に日中友好を進める、必要な場合にはアメリカに勧告もすることがあるということをお述べになりました。今後そういうことでぜひやっていただきたいと思うんですけれども、戦後の日中関係考えてみますと、御存じのように七二年の日中国交回復までは台湾の蒋政権を中国を代表する政府として承認していた。七二年に初めて国交回復になったわけですね。ところが、これはやっぱりアメリカ追随だったわけですね。台湾を承認していたのもやはりアメリカ追随。七二年の日中国交回復もニクソン訪中の直接の影響のもとであったわけで、それで私、もしアメリカに追随しないで日本が自主的に日中国交回復をもっと早くやっていたら、アジアの平和のためにも日中友好のためにも大変よかったし、例えば残留孤児問題などももっと早く親族も見つかるという解決が早かっただろうと思うんです。首相は、戦後政治の総決算ということを大変お述べになっておられるけれども、戦後政治の総決算というあなたの見地から見て、戦後の日中関係、特に対米追随で国交回復が非常におくれたという点については、今どういう御感想をお持ちでしょうか。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国にはみんなそれぞれの理由があり、因縁があり、その相手国との関係というものがありまして、一概に律するわけにはいかないものがあります。アメリカにはアメリカ事情があり、日本には日本の固有の事情があり、日本日本として独自の考えを持って外交を進めてきたものであります。
  156. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 なかなかちゃんとした総決算、この問題についてはおやりにならないという意味にしか受け取れません。過去だけでなくて、今後にもやはり私はアメリカ追随の問題が日本外交全体に黒い影を落としていると思うんです。  あなたが総裁をやっておられる自民党の機関紙自由新報一月十七・二十四日の合併号には、今度の首相訪中、これをやはりレーガン米大統領の四月訪中と結びつけて、「日・中・米の提携強化のねらいもある。」、そう自由新報に書かれています。四月のレーガン訪中後、同行するシュルツ国務長官は韓国訪問して全斗煥大統領会談するという報道もありますけれども、今度の焦点ともなったと言われる朝鮮半島対話問題が日中米の枠組み、ここから動き出そうとしているのではないかという観測もいろいろあるわけですね。その点で首相、この朝鮮対話問題で日米協議、これを今後お進めになるつもりですか。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮半島の平和及び安定には日米ともに重大関心を持つということは、日本総理大臣アメリカ大統領との共同コミュニケに何回か書かれていると思います。その点は現在でも考えは変わりはないと思います。したがって、朝鮮半島の平和及び安定維持のために日本アメリカがいろいろ協議するということは今後もあり得ると思っております。
  158. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そうすると、レーガン大統領訪中前にも何らかの外務省あるいは大使館などで朝鮮対話問題で協議があり得るわけですね。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮半島の問題につきましては、随時意見交換し、話し合いもいたしておりますが、今後もいたすだろうと思います。
  160. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 安倍外務大臣にお伺いします。  先ほどソ連の軍事力脅威問題、特に焦点はSS20だと答弁されましたが、二十四日に安倍外務大臣は呉学謙外相と二時間半にわたって国際情勢について意見交換をされたと報道されています。安倍さんは訪中前に、呉学謙外相との会談ではSS20問題について、今回は今後の日中の対応についても話し合いたいとインタビューで述べておられる。今後SS20について日中の共同対処で合意を得たいという意味だと報道されていたんですが、共同対処についても情報交換だけでなくて、何らかの合意ができたんでしょうか。
  161. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは実は昨年の国連総会で呉学謙外相と会って、その際、SS20の問題については、これは日中の共通関心事であるし、お互いに意見交換をしていきましょうということを約束したわけであります。私がそうした呉学謙外相と話し合いをしたのは、その背景としてSS20の問題が実は日本はグローバルな問題としてこれは解決をされるべきである、そして最終的にはゼロオプションにすべきである、日本はこういう主張でございます。  ところが、どうもヨーロッパに問題が集中される、そしてヨーロッパのみで解決される。ヨーロッパの西側の諸国もSS20問題の解決は、これはやはりグローバルな形でやらなきゃいかぬということは言いながらも、どうしてもヨーロッパのSS20が対象になって、極東の方はどちらかというとなおざりにされるというふうな全体的にも向きがないわけでもないわけで、これは日本の主張だけではなくて、中国も甚大なやはり関心を持っておるわけですから、これはアジアの声を軍縮に向かって大きくしなきゃならぬ、イニシアチブをとるというところまでいかないとしても、やっぱり大きくしていかなきゃならぬと、そういうふうに思いまして、これは大事な問題じゃないですかと、日本だけの関心事じゃなくて、あなたの方もそうでしょうと言ったら、それは非常に我々としても脅威を感じておるので、それじゃ話し合いをして、お互いにいわゆる核軍縮、INF交渉に向かって日本中国もそれぞれ積極的に対応していきましょうと、こういう話になって、これを受けて今回も実は話し合いをいたしたわけでありますが、今回は、そのときが百八あったのが百三十五基にも増強されておりますし、またさらに百四十四というところまで増強される可能姓が確実でございますので、さらにやはり日本中国はこれに対して核軍縮を積極的に推進するという立場から、これは共同対処という形はちょっと具体的にそれぞれの立場がありますからそう簡単にできるわけじゃありませんが、日本日本立場で、そして中国中国立場で、力強くひとつ努力をしていきましょうと。しかし、その情勢判断はお互いに共通関心事であるし、大体我々としては同じ認識を持っておる、こういうことで意見交換をして、大体その点についてはお互いに確認をし合ったと、そういうふうに思っております。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕
  162. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは先ほどの日中米の接近問題に関係あるんですね。極東のソ連のSS20というのも、中国日本だけでなくて、アメリカにも関係がある。なぜなら、アラスカにも届くからなんですね、SS20というのは五千キロの射程を持っていますので。  そこで、ここでこういう問題が起きる。今の問題でタス通信は、直ちに二十五日、中曽根首相と超紫陽首相、鄧小平主任らの会談について論評、それでやっぱりソ連の軍事力増強問題、これは共通関心事だということについて批判的な論評をやって、ソ連のこういう措置アメリカの侵略的帝国主義政策に対しての措置なんだという論評をやっているわけですね。実は、ここに私は、軍備拡張の悪循環という問題があらわれていると思うんです。私ども共産党は、もちろんソ連が軍事力バランス論をとって、アメリカに何が何でも軍事力で追いつこうという立場を、社会主義園にふさわしくないと言って批判しているんですけれども、ヨーロッパもそうですが、アジアでもアメリカがいろいろ強化する、カールビンソンもニュージャージーも来るとか、フレキシブルオペレーションで空母機動軍が日本海にも来る、トマホークも来る。そうすると、ソ連側もそれに対応していろいろやる。そらソ連がやったというので、またアメリカもやる。こういう悪循環が進んでいるわけですね。  中曽根首相にお伺いしますけれども、そういう軍備拡張の悪循環、首相は均衡と抑止が大事だと言われるけれども、お互いにバランス、バランスと言い合いながら、それが軍備拡張の非常に危険な悪循環が進んでいるというこの事態に対しては、首相はどう認識されておられますか。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 悪循環を断つように、ぜひ我々も協力してまいりたいと思っております。しかし、最近の極東の情勢を見ますと、アメリカがベトナム戦争で非常に疲れて防衛力を怠ってきた間にソ連がぐっと増強して、今でもまだ増強は続いている。そしてSS20やあるいはバックファイアまで極東に増強されてきている。こういう状況から、これは大変だというので、アメリカの側はまたトマホークとかそういう考えが出てきつつあるんだろうと思うので、やはりソ連がこういうふうに増強してきたのが端緒になってきているので、ソ連の方も大いに自粛自戒して削減してもらう、アメリカも自粛自戒して削減してもらう、それがINFでありSALTである。それが実るようにぜひ実現に我々も側面から協力したいと思っています。
  164. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今、総理は、ソ連のバックファイアやSS20、これでアメリカの側の対応でトマホーク配備で出てくるということを答えられた。この間の委員会でも、総理がこのトマホーク配備について肯定的だということが問題になりました。  ひとつお伺いしたい。去年日の出山荘でレーガン大統領と懇談されましたね。これは「世界」のことしの一月号で高岡というジャーナリストが書いた論文です。冒頭にこう書いてある。「日の出山荘における「空白の二〇分間」に関心が集まっている。」「いったいなにが話し合われたのかは、依然不明のままである。八月下旬ワシントンで開かれた日米防衛首脳会談の直後、防衛庁の高官は、レーガン米大統領訪日のとき、同大統領日本の非核三原則を二・五原則にしてくれと要請するかもしれない」、こう述べた。ある外務省OBは、今回の会談で、日の出山荘でそういう種類の話が行われた可能性はあるとみている。証拠はどうもありませんけれども、前もっての予測とその後についてのコメントが載っているので一応お伺いしたい。このレーガン大統領とあなたの二人の空白の二〇分と言われる会談で、レーガン大統領から非核三原則問題、核持ち込み問題、トマホーク問題など出たのでしょうか、出なかったのでしょうか。
  165. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非核三原則を変えるとか、二・五にするとか、トマホークとか、そういう話は一切出ておりません。
  166. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうもちゃんちゃんこを着てホラガイを吹いて歓迎されたそうですが、その程度で済んだというお話なんですね。恐らく重大な話があっただろうと思いますけれども、これはあなたが否定されれば、そういうお言葉だったとして今後の問題にしておきたい。  中曽根さんは今、やはり極東については、悪循環はあるけれどもソ連の側のイニシアチブで事態が進んでいると、こう言われたんだが、ソ連脅威論にこれ関連するんですけれども、じゃ、米ソのいわゆる軍事バランス、アメリカがベトナム戦争以後縮んでいる間にソ連が大いにやったと、今ソ連側が有利になっているという御認識ですか。
  167. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛庁から答弁させます。
  168. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、防衛庁が数字をいろいろ言うんですけれどもね、数字を僕は知りたいのじゃないんです。あなたの大局的な首相としての政治判断、大体どういうバランスでどうなっているというふうにあなたは判断して日本の政治のかじをとっておられるのかという、大ざっぱなところで結構ですから。
  169. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第七艦隊の装備あるいは艦船、それからソ連の極東軍、陸海空を含めた力というものを見ますと、中近東が騒がしくなって、アメリカの空母はインド洋の西側、ホルムズ海峡の入口のところに張りついて、交代で行ったり来たりしている。それに伴って巡洋艦、駆逐艦以下の補助艦艇も一緒に随伴している。そういうような当直勤務の場所がふえてきて、しかも距離が非常に覆い。そういう情勢を見ると、アメリカの第七艦隊の日本周辺に対する配備というものは落ちてきているのではないか、それを私は心配しておる。アメリカもそれに気がついていろいろ、例えば三沢のF16であるとかそのほかのことを考慮しているのではないかと思っております。
  170. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 確かに一九七〇年代十年間にアメリカ側の、特に七五年以後軍事予算も削減するし、核弾頭も若干削減するし、その間にソ連が軍備拡張の努力を大きくしたために差が縮まったということはこれは事実です。しかし現状は、これはどの資料を見ても、アメリカ側がまだ軍事優位はかなり高いということだということは、大まかな判断として首相は知っていただきたい。  ここに最も権威あると言われておりますストックホルムの国際平和研究所、SIPRIの最も新しい世界の軍事力がありますが、例えば核弾頭の数では一九六〇年代末は四対一だったと。アメリカ四、ソ連一と。その後ソ連が頑張って、アメリカは一定水準でやや減少し、現在二対一弱だと。つまり四対一が二対一に縮まっていると。けれども、大体核弾頭二倍ということが書かれている。いわゆるソ連の脅威論というのをいっぱい言われているのでこの問題少し時間をとって本当はやりたいんですけれども、もうきょうは余り時間がないので、しかし大まかな判断を首相が余り間違いないようにしていただきたい。  今第七艦隊のことを言われましたけれども、例えば航空母艦を見てみましても、ソ連はミンスクあるいはキエフ、今度ノボロシスクが来ますけれども、たった四隻しかない。あの四隻、しかもヘリコプターと重面離着陸の飛行機しか載ってないんです。それで朝日新聞は、これは横綱と子供の相撲だと、アメリカの原子力空母とソ連の空母を比べると。しかもアメリカは三十数隻、ソ連はたった四隻なんですね。それから海兵隊でもアメリカは二十万、それに緊急展開部隊も加わったと。ソ連はたった一万二千です。それから強襲揚陸艦、アメリカは八千トン級以上が七十一隻ある。ソ連はたった一隻しかないというように、非常にやっぱり海空については、これは外務省の一番専門家と言われる岡崎氏でさえ、海空についてはアメリカが優位だということを述べておられるようなそういう状況だという点で、私は何もソ連を弁護するわけではないけれども、ソ連が先にやっているからアメリカが余儀なくというのではなくて、アメリカが優位のままソ連が追いついてくるということを口実にして、レーガン政権のもとで物すごい軍備拡張をやっている。日本状況についてもそうです。カールビンソンが来る、ニュージャージーが来る、トマホークが配備される、ソ連は巡航ミサイルというのはまだ実験中でできてもいないんですね。そういう状況であるということをやはり全体として頭に置いていただきたい。それを単にソ連の脅威、ソ連の脅威ということを大いに言われるという状況では、これは国の進路をも誤るし、国民の認識をも誤ると思うんです。  いかに誇大なことが行われているかというのは去年のこの防衛白書、これは閣議了解で決まったものですけれども、明らかです。「わが国周辺の軍事情勢」、「ソ連の軍事態勢」のところは写真から図版からいっぱい並んで十六ページあります。アメリカはそれに対応していると言ったって、たった二ページです。八対一です。第七艦隊についてはわずか四行しか書いてない。こういうふうないいかげんなことでソ連の脅威なるものを誇大に言うということで実は日本の束術増強をますます要求する、アメリカの言うとおりに軍事費を突出させているというところに私は日本の大きな危険があると思うんですが、そこでひとつ首相にお伺いしたい。  昨年のウィリアムズバーグ・サミットの政治宣言で、冒頭こうあります。「我々は、いかなる攻撃をも抑止し、いかなる脅威にも対抗し、更に平和を確保するために十分な軍事力を維持する。」とあるんですね。今黒柳委員との間で、もし敵が核兵器を使って攻めてきたときどうするかということで、非常に緊迫した討論が行われましたけれども、こういう、いかなる攻撃をも抑止し、いかなる脅威にも対抗する十分な軍事力を維持するということになりますと、これはとめどない軍事大国になると、そういう約束以外にないんじゃないでしょうか。
  171. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おのおのその憲法に従って、そして自己の国防政策に従って実行しておるのでありまして、日本の国防政策は、私が前から申し上げましたように、憲法、非核三原則及び日本防衛に必要最小限の専守防衛防衛力でやっていくと、こういう方針には変わりはございません。
  172. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それなら、なぜこういうウィリアムズバーグ・サミットの政治宣言にあなたは賛成して署名をされたんですか。
  173. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治的団結というものを象徴的に表現したのだろうと思います。
  174. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 先ほど挙げました岡崎久彦外務省調査企画部長は、最近の「日米関係を問いつめる」という著書の中で、このウィリアムズバーグ・サミットの政治宣言で、「今後の日米関係を裏表のないものにするし、アメリカ外交にとってもないへんありがたい」と、こういうことになったと言って、非常に高く外務省では評価しているんですね。  私は、このウィリアムズバーグ・サミットの政治宣言のこの表現、いかなる脅威にも抵抗できる十分な軍事力を維持するという問題は、いわゆる西側一員諭がどういうものかということをはっきりさせた重大な文書だと思う。  それで、この点でもう一つ首相にお伺いしたい。  今の防衛計画大綱、これは脅威に対抗した自衛隊増強は否定していたんですね。昭和五十二年の防衛白書では、明白に基盤的防衛力構想では、脅威の点だけを考え防衛力の量を算定するんじゃないと書いてある。もし、いかなる脅威にも対抗してということを言い出しますとね、防衛計画大綱と明らかに違うことになるんじゃないでしょうか。首相、どういう判断ですか。
  175. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは、政治声明と言われておりますように、西欧の結束、自由主義陣営の結束の象徴的な表現であって、私は、その意図するところは、要するにSS20のソ連の脅威に対してヨーロッパがパーシングⅡあるいはグラウンドミサイルの展開の意思を変えないと、そういう意味でたじろがないという結束の強さを示す表現であると考えております。
  176. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう時間がございませんので、最後に一つ。  総理は、武漢での記者団との懇談で、二階堂氏を副総裁に就任させる問題を検討してみたいと、いつかはわからぬということを言われた。それで、超党派で人材起用というふうに言われたんですけれども、これは明らかに総裁声明と違う。例えば、二階堂氏を副総裁にすれば、党四役のうち二人、金丸総務会長と二階堂副総裁と、四役のうち二人になると。しかも二階堂氏は、木曜会の会長で、田中一審判決では五百万円、ロッキードの金を伊藤宏からもらったと、明白な人じゃありませんか。あなたは、天をも恐れないようなこういう二階堂副総裁就任、これを強行されるおつもりですか。
  177. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人の党に対する内政干渉は断ります。
  178. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この間、立木議員がそういうことを言われたんですけれどもね、これは全くの逃げ口上です。あなたは、私どもの不破委員長との懇談の中で、総裁声明というのはどういうものかと言われて、党内外に向けてのものだとはっきり答えたじゃありませんか。都合が悪くなると党内問題だと。しかし、新聞にも社説が出始めておりますし、国民注視の問題です。あくまで党内問題といっておやりになるつもりですか。
  179. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大小は党内問題です。
  180. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  181. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 以上で上出君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  182. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 次に、伊藤郁男君の質疑を行います。伊藤君。
  183. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 今回の訪中、大変御苦労さまでございました。成果が大分上がったように評価されていることに敬意を表したいと思います。   〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕  そこで、先ほど来朝鮮半島問題につきましていろいろ議論がありました。総理は、緊張緩和のために第一義的には南北当事者間での話し合いがこれはまずぜひ必要だと、こういう考えを明らかにされておるわけでありますが、これについては異論を挟む余地はありません。しかし、ラングーン事件以後、現状から見て、この南北対話の前進が難しいとするならば、第二次的には四者会談といいますか、朝鮮戦争の休戦協定の当事国である中国アメリカの双方が糸口をつけるかあるいは環境を整えるということが緊張緩和前進のために非常に大切なことだと、こういう意見もまた総理は持っておられる。ところが、中国側はいわゆる三者会談、これを腕していないわけですね。この点について日中間意見調整をさらにやるべきだと私は思うのですが、この点についての御見解をまずお伺いをしておきます。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 午前中申し上げましたようないろんな話をいたしましたが、その問題、朝鮮半島の平和及び安定維持強化の問題については、今の三者会談とか私は四者会談という直接表理は用いませんでしたけれど、関係国がともかく平和と安定に環境づくりをつくっていくと、そういうような諸般の問題については、まあ時間というものが神様だから、時間という神様もひとつ尊重しようと。いわば継続審議で引き続いて相談しましょう、考えましょうと、そういう意味でお互い別れたと私は考えております。
  185. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そこで、問題につきましてはお互いに主張と立場を述べ合っただけでは意味がありませんので、継続的にやっていただきたい、こういうように思います。  第二点は、総理韓国の希望を仲介されまして、在中国韓国人の近親交流といいますか、これについて中国に希望を伝えられました。その点については非常に前進的な回答が得られているわけでありますが、この問題を今後どのような形で交流を実現されていくのか、あるいはこれをきっかけにいたしまして中国韓国との関係改善が今後どのようにさらに進んでいくとお思いなのか、感触をお伺いをしたいと思います。
  186. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国人道上の問題として近親者の交流についてそういう特別の計らいをしてくだすったものと評価し、大いにこれを感謝しておるところであります。中国は、一般的に韓国との関係につきましては、非政治的分野、つまり人道上の問題とかあるいはスポーツの交流とか、そういう問題につきましては今後韓国とも交流する場合が多々あると、そういうように私は判断をいたしております。
  187. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 そのスポーツその他の交流の問題ですけれども、これは総理訪中前に衆議院におきまして我が党の神田原議員が、訪中される場合には例の八八年のオリンピックに中国が参加するように要請をしてほしいと、こういうことを要望を申し上げましたら、総理はそのことをやってきましょうと、こういう御返事をいただいておったわけですが、この点の要請はしていただきましたでしょうか。
  188. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、安倍外務大臣会議の席上先方に要請をいたしました。私の感触及び安倍外務大臣の感触では、八八年のアジア・オリンピックには中国も参加する用意があると、現状が続く限り、大きな変化がない限り参加する用意がある、そういう姿勢にあるというように私は感触を得ましたし、安倍外務大臣も同じような感触を得たのではないかと思っております。別に中国がコミットしたわけではありません。
  189. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 これは今も議論がありましたけれども、中国はソ連の極東における最近の軍事力の増強につきまして、日本共通の最大の関心事であると、こういうこと、並びにそれに対する懸念を表明されているわけですが、このソ連の軍事力増強に中国側がどのように対処措置を講じようとしているのか、この点の議論はあったのでしょうか。特にSS20に対する対処方針について、日本側に何らかの要請が行われたのかどうか。この点は外務大臣にお聞きします。
  190. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私と中国の呉学謙外相との間で、時間をかけまして中ソ関係について話し合いをいたしました。もちろん首脳会談においても行われたわけでございますが、その中で、中ソの関係については残念ながら、同じ体制ではあるけれど、基本的に、よく中国が言うわけでございますが、三つの障害についてソ連側と意見の一致を見ないと。今回も中ソの高級事務レベル会談が行われた。これは時間をかけてやったようでございますが、三つの障害についてソ連の前進が見られなかったと。同時にまた、SS20の展開、増強の問題についても、中国はこれを議題にしたけれど、この点についてもソ連側の満足すべき対応を得ることができなかった。したがって、いろいろの面での改善というのは中ソ間で行われておるし、今後も行われなければならないと思うけれど、努力はするけれど、しかし中ソ閥はそういう状況で根本的な面で対立をしておって、そして特に中国としては、ソ連の軍事力の増強というのはやはり中国自身がこれは脅威であるということをはっきりと言っておるわけであります。特にまたSS20の展開は、日本のみではなくて中国にとりましてもこれは共通関心事であって、したがって核軍縮を強く主張している中国としては、日本との間で今後とも情報交換をしながら、お互いに核軍縮に向かって努力をしていきましょうと、こういうことを話し合った次第であります。
  191. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 外務大臣、そのSS20の問題についての日中間協力とそれから情報交換ですね。これは引き続きやっていこうということを確認されたということでございますが、今後具体的にどのようなことをやっていこうとしているのか。単に情報交換し合っても意味はないと思うのですが、この点について。
  192. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、日本日本中国中国立場でこれから努力をしていかなければならぬと思うわけでございますが、例えば日本は西側の方の一員として、INF交渉が中断しておりますが、これが再開されるように努力をし、求めていくということも日本一つの役割であろうと思うわけでございまして、既にアメリカに対しましても、米ソのやはり核軍縮の交渉の再開に向かってひとつ努力してほしいということを要請をしております。同時にまた中国としても、中ソの立場において、関係において、やはりソ連がINF交渉に応ずるように中国としての主張をこれからも重ねていくということであります。同時にまた、日本中国がやはりアジアにおいて声を大きくして、そして核軍縮の交渉を再開をすべきである。そしてまたINF交渉が、これはヨーロッパの問題だけではなくて極東の問題でもあるし、同時にこれは世界的な問題であって、世界的な規模においてこの問題というものは解決をすべきであるということを強く日本中国が打ち出すことが、私はINF交渉のグローバルな交渉を推進する上において大きな役割を果たしていくものであろう、こういうふうに思うわけでございます。そういう意味では、やはり核軍縮に向けての外交的な一つの大きなパンチといいますか、一つの声というものが、ここで中国日本が話し合うと、そして共通関心事である、そしてお互いに努力するということは、そういうことによって一つの成果というものが生まれてくる可能性は十分あると、こういうふうに思って努力を重ねていきたいと思うわけでございます。
  193. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 もう一つこれに関して、簡単で結構ですが、日中双方の制服組、制服同士での協議や情報交換、こういうものをやるおつもりがあるかどうか、簡単に。
  194. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回の会談ではもちろんそういう話は出ておりませんし、日本中国が、今私が言っております日本中国とINF交渉について、情報交換とかそういうことで話しておりません。これは一切軍事協力ということを前提にした問題ではありません。
  195. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それでは次に、総理にお伺いをしたいのですが、中国が核を持っていることは御承知のところですが、総理はこの中国の核戦力をどのように評価されておるのかということでございます。これだけではちょっと舌足らずでございますので、すなわちSS20などソ連の核戦力に対する一種の抑止力を持つ存在として日本を含むアジア太平洋諸国の安全にも役立つものであると積極的に評価されておるのか、あるいはそれとも逆に、日本を含むアジア・太平洋諸国にとって中国の核は脅威となり得る存在だと考えられておられるのか、この点についての見解をお尋ねいたします。
  196. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いずれの国を問わず、核兵器はやめてもらいたいと思います。アメリカであろうが、ソ連であろうが、中国であろうが同じでありまして、ともかく世界じゅうどの国も、いずれの国を問わず核兵器はやめてもらいたいと思っております。  それから、中国の核兵器の力がどの程度の能力を持っておるかということは、私にはよくまだわかりません。もし必要あらば防衛庁からお聞き願いたいと思います。
  197. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 総理は、鄧小平さんとの会談で、世界的規模における軍縮の必要性を話し合われました。この中で特に核軍縮に関する中国の認識というものはどのようなものであったのか、この点をお伺いをいたします。
  198. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国はやはり終局的には核兵器をやめるべきであると、そういう認識を持っておりました。ただ、自国の防衛上必要やむを得ず核兵器の開発をしているやに見受けられております。しかし、具体的に核兵器をやめる方法としては、米ソを中心にして今持っている国が半分みんな減らしてしまえと、特に米ソが半分に減らしてしまえと、それをやったら世界じゅうの核兵器を持っている国が集まって、そうしてこれを減らし、なくしていく相談をすると、こういうやり方が適当ではないかという見解を持っているように聞いております。
  199. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 もう一つ総理にお伺いをしておきたいのですが、これは感触で結構でございます。  この対ソ認識の問題でございます。チェルネンコ政権になりまして一体ソ連の対外政策がどのように変わっていくのか、あるいは変わらないのかということが、これが今世界関心事だと思います。中国の鄧小平さんを初め中国の首脳はこの点についてどう見ておるのかということでございます。例えば鄧小平さんは、総理質問されましたですね、チェルネンコというのはどういう人か知っているかとかいう質問をされたというのですが、鄧小平さんは何らの評価も与えなかったと、こういうことを新聞で知っているわけです。鄧小平さんが考えているのは、チェルネンコ政権というのは恐らく暫定的な政権ではないかとあるいは考えているのではないかと私は思うんです。そしてゴルバチョフやロマノフへの橋渡し政権、こういうようにあるいは鄧小平さんは認識しているのではないか、こういうように思っているのですが、その点どうですか。感触だけで結構です。
  200. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一言で言えば、わからぬということだろうと思います。チェルネンコ氏については面識はないような印象でありました。
  201. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それでは次に、シーレーン防衛に関連をいたしましてこれは防衛庁にお伺いをしたいのですが、シーレーンの洋上防空のため、日本アメリカのような攻撃空母を持つことは憲法上許されると思うか許されないと思うか、この点だけ。
  202. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。  御質問は、我が国が憲法上持ち得る自衛力の限界の問題でございまして、御承知のように憲法上我が国は自衛のための必要最小限度の実力を保持することができるということになっておるわけでございます。こういったような憲法上の考え方に従いまして保持を許されます自衛力の具体的な限度ということにつきましては、そのときどきの国際情勢でありますとか、あるいは軍事技術の水準その他のいろんな条件によって変わり得る相対的な面があるということは、これは否定し得ないことでございます。ただ、専ら性能上他国の国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる兵器、こういうものは保持することは許されないということが従来からの一貫した政府の解釈になっておるわけでございます。  じゃ、しからば専ら性能上他国の国土の壊滅的破壊のみに用いられている兵器というものは何かという場合に、従来ICBMとかあるいは長距離戦略爆撃機というようなものを言っておったわけでございますが、今御指摘の攻撃型空母というものもやはりそういう意味での憲法上保持を許されない部類に属するのではないかというふうに考えております。
  203. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 それでは、このイギリスのインビンシブルのようなヘリコプターとVTOL機、垂直上昇機ですね、これを搭載する軽空母、これを持つことは憲法上どう解釈しておられますか。今、中道胴ではこのような軽空母を持ち始めておるわけですね。スペインとかイタリアなどもつくり始めておる、こういうように聞いておるのですが、この点はいかがでしょう。
  204. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 同じ空母と申しましても、例えば対潜ヘリコプターを搭載するようなヘリ空母、こういったようなものは憲法上特に問題はないだろうということは、従来からもお答えを申し上げている締結がございます。ただいま御指摘のいろんな事例を挙げての御質問でございますけれども、もともと私どもといたしましては、現在空母そのものを持つ計画を持っておりませんので、この空母の問題については検討をしたことがございません。したがいまして、具体的な問題についてはこれはにわかにそのお答えをしがたいわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、一般的に申し上げますと、攻撃的な機能を持っている空母というものについてはこれは持ち得ないだろうということは申し上げられるわけでありますが、その他のことにつきましては現時点で具体的なイメージがございませんので、にわかに明確なお答えをいたすことはできないというふうに考えております。
  205. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 時間がなくなってまいりました。  それで、最後にこれも総理あるいは防衛庁長官にお伺いをしたいのですが、さきの予算委員会で我が党の旧劇委員から質問がありまして、正面装備ですね、いかに立派な正面装備を備えたところで、これを使うのは人なんだから、やっぱり人を大切にすることを十分に考えていただきたい。そしてバランスある防衛力の強化、これが必要なんだということを質問をされました。「人は石垣人は城」ですからね、何といったって国の守りは人にあると、こう思うんです。  ところが、自衛隊の隊員の使っている宿舎はまことにお粗末な状況にあるわけですね。例を申し上げますとよくわかるんですが、昨年九月常崎で台風が起こった。その夜、宮崎の航空自衛隊の宿舎はたちまちのうちに浸水して、隊員が命からがら逃げ出した。それは原因は簡単でございまして、河川敷の低いところに宿舎があって、そして水を防ぐ溝も掘ってない、こういうことですからまことにお粗末な限り。ところが、一方F15戦闘機、高台の飛行場の格納庫に、それは雨も水も絶対に入ってこないというところにあるわけですね。そういうような例もあります。あるいはまた、冬になると連日零下五度から十度になる宇都宮の陸上自衛隊の宿舎には暖房の施設がまだできていない。あるいは対馬の自衛隊の宿舎の窓枠は木製でつくってある、風が吹き始めるとそこからもう肌をさすすき間風が入ってくる。やむなくビニールでそこを、木枠をふさいでいる。ところが、周囲はもうスチールの窓枠が普及していますから、ビニールで窓枠をくくっているところ、あれは自衛隊だと、こういう評価ができ上がっている、こういうような状況ですね。そういうようなのが全国至るところにある。こういうような現状をやっぱり大いに直していただかないと、自衛隊の士気も上がってこないわけですね。  あるいはまた、これは三沢基地なんですけれども、航空自衛隊がここにありますけれども、隊員の宿舎が不足している、したがって民間の住宅を借りている。それはしかし一時間以上も行かなければ行けないところだと。そういうところに民間の住宅を借りている。これは借り上げの予算がわずかしかない、こういう状況だからそういう状況になっている。航空基地で一時間もかからなければ到着てきないというところに宿舎を持っていること自体がおかしいと思うんですがね、これでは有事の場合全く間に合わない、こういう現状です。さまざまいろいろ挙げたいんですが、そういうような現状にあるわけですね。こういうことでは真の整合性のとれた自衛力の強化にはならぬ、こういうように思うのでありますが、この点についてのお考え、お答えをいただきまして終わります。
  206. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 御指摘の点につきまして一々私は確認をしておりませんけれども、しかし全体として今御指摘がありましたとおり、隊員の隊舎あるいは宿舎ですね、そういうものが非常にお粗末であるということは御指摘のとおりでございます。  ことしの五十九年度の予算でも実はいろいろやりくりがございまして、まあ最終的には総理の御決断もございまして六・五五というふうになりましたが、これによって初めて正面に対する後方ですね、これがある程度確保できたわけですよ。もし六・五五にならなかったら、正面の方は削りようがないんです。いろいろの関係からいきまして。後方を削るということになりますと、今度は油を削るとか修繕費を削るとか、そういうことになりますね。ですから、もっと言うと、そういうものを確保することのほかに、宿舎とか隊舎とかそういったものをやりたいわけです。今回もそういう意味合いでは隊員の諸君に本当に我慢をしてもらったわけです。しかし、こういう我慢をいつまでもさせるということは、やはり教育訓練をするにいたしましても、一方では厳正なことをやらせなければいけませんが、同時に処遇改善ということについても配慮しませんと、本当の意味で精強な自衛隊はできないと、こう考えますので、御指摘のとおり今後正面と後方のバランスをとるという意味でいろいろと生かしていきたいと、こういうふうに考えております。
  207. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で伊藤君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  208. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、秦豊君の質疑を行います。秦君。
  209. 秦豊

    ○秦豊君 総理が再三答弁されております防衛費の一%は遵守するという総理御自身のお言葉にには、一国の総理としてのどの程度の政治責任が込められているんでしょう。
  210. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく一生懸命努力するという私の願い、意思表明した次第でございます。
  211. 秦豊

    ○秦豊君 仮に、よんどころなくその壁を突破したところで、さして重大な政治的なマイナスではない、責任ではないという御把握ですか。
  212. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一生懸命努力してやむを得ない、そういう状況ならばやむを得ないものとして御了承いただけるのではないかと思いますが、しかしそれにはよっぽど一生懸命努力しなければいかぬと思います。
  213. 秦豊

    ○秦豊君 守るための努力について遺憾はありませぬか。
  214. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは政策によって違うのです。政党によって政策が違いますし、個人によってまたニュアンスも違います。でありまするから、そのニュアンスの差、政策の差から必然的に出てくるところはあり得ると思います。
  215. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁長官、三月十七日の当委員会であなたは、一%は大綱とは別と答弁されていますけれども、別じゃなくて二律背反というとらえ方の方が正しいんじゃないですか。
  216. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 二十三日ですか。
  217. 秦豊

    ○秦豊君 十七。
  218. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) どなたに対する答弁ですか。
  219. 秦豊

    ○秦豊君 どなたでしたかね、まだ議事録を確認してませんが。
  220. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その問題についてはこういう問いがあったと思うんです。それは国民世論というのは一%というのをかたく支持していると、したがって国民が一%をかたく守れと、こう言っているんだから防衛費についても一%を守るべきだと。もしそれを超える部門があったらこれは削減すべきである、そういうような論理のお話だったと思うんです。それに対しまして私が、それはいかがなものか、というのは国民世論というのは設問の仕方によって変わり得る場合もあり得る、だから国民世論で一%だと、もうこれは絶対だというそういう世論が出て、それを超えたものについて削れというような御議論には私は賛成できない、こういう趣旨でお答えしたわけでございます。
  221. 秦豊

    ○秦豊君 総理、大綱水準の達成と一%枠の二者択一を、最高責任者たるあなたがぎりぎり迫られた場合には、いずれを優先しますか。
  222. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは共通一次テストのマークシートみたいなどっちかを選べというようなものでありますが、ともかく大綱水準を守り、一%を守る、そういうために両方実現するために努力してまいります。
  223. 秦豊

    ○秦豊君 これ以上は聞かない。  防衛庁、次期のSAM-X、地対空ミサイル、この選定について伺っておきたいんですが、ナイキハーキュリーズに新しいレーダーシステムをつける例のナイキフェニックス、これの国内開発案についてはどういう位置づけか。答弁簡潔。
  224. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 現在防衛庁が有しておりますSAMは、陸上自衛隊の……。
  225. 秦豊

    ○秦豊君 序論はいいですから、ぐさりと。
  226. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) これはナイキ及びホーク、空と陸が持っておりますが、これの後継システムの選定ということが大きな問題でございます。五十九年度予算におきましては、陸上についてはホークの改善型で引き続きやっていくということで一応決めましたが、航空自衛隊につきましてはまだ方針を決定をいたしておりません。
  227. 秦豊

    ○秦豊君 書いたもの全部読まなくていいから。局長、ナイキフェニックスの国内開発案は生きているのか、死んでいるのか、これを聞いている。
  228. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) これはアメリカで開発をされ、今、逐次実戦配備の段階に移りつつありますペトリオットというシステムと、それから今御指摘のナイキフェニックスという国産開発の構想とこの二つが候補になっていたわけでございます。従来これを研究をしてきまして、昨年の段階でほぼ検討が進んできまして、私どもは現在の時点ではペトリオットがかなり有力な機種であるというふうに判断しておりますが、まだ最終決定には至っておりません。
  229. 秦豊

    ○秦豊君 西ドイツが購入を決定しましたのは御存じだと思いますが、そうすると、開発費の分担額が下がりますから、あなた方としては選びやすくなったということは答えますね。
  230. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) NATO諸国が我が国と同様にナイキを持っていたわけでございますが、これの後継機種の選定に当たりまして、まずNATO諸国の最も有力な西ドイツが昨年の十二月に採用すること、ペトリオットにすることになったわけでございまして、それで日本がもし仮にこれを引き続き採用するということになった場合に、全体としての経費の分担というものがどうなるかということはこれからの読めの問題でございまして、今この時点で具体的にどうだということは申し上げる段階ではございません。
  231. 秦豊

    ○秦豊君 ニュアンスは若干こほれておるようであるが、防衛局長、ペトリオットが重点のようだが、今後さらに調査のための特別なチームをお組みになりますか。
  232. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) このSAM-Xの選定のためには、これまでも既に外国の調査もやっておりますし、国内の研究もしたわけでございまして、それを比較考量して検討が進んでおりますから、新たにまた外国にチームを派遣するという計画は現在持っておりません。
  233. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。そうすると局長、六十年度予算にも当初費用ぐらいは計上したい。すると、五十九年、今年の前半には内定したい、こういうテンポじゃありませんか。
  234. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 現在の段階は、昨年に引き続きまして諸外国の状況の調査、それから経費の詰めといったようなこともあわせて検討しておりますが、まだ日程を確定しているわけではございません。しかし、基本的には、できれば六十年度に、概算要求の時点で新機種を選定した上で織り込みたいという希望を持って今努力をしておる段階でございます。
  235. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。総理、お疲れでしょうが、あとしばしですから。総理は今回の訪中で得られた重要な感触、これはレーガン大統領訪中の前に何らかの方法で直接お伝えになると、さっき同僚委員に対しては、随時やっているからいいんだというニュアンスがちょっと出ていましたが、そんな簡単なものじゃなくて、例えばレーガン大統領訪中の前に、韓国を訪れるローマ法王パウロ六世とアンカレッジで会談が予定されているんです。だから、場所は問いませんけれども、訪中を控えた盟友レーガン大統領に重要な感触のすべては余すことなく伝えたいと願われるのは当然ですし、そういう特別な場と時間はお考えの余地がございますか。
  236. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恐らく国会開会中の重要な時期でもありましょう、そういうことを特別に考える余地はないと思います。
  237. 秦豊

    ○秦豊君 それから、総理が受けられました全体的な今回の印象としまして、朝鮮半島をめぐる外交的な変化には既に相当な加速、スピードが加わったという印象をお持ちでしょうか、それともそれは表面的、外形的であって、変化の兆しは明らかだが、テンポは伝えられているよりは緩やかであるという触感をお持ちになったでしょうか。
  238. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは朝鮮半島のみならず、世界的全体の環境、あるいは主要の国々の態度がどう動いてくるかという関数関係にある問題で、少数の国だけで朝鮮半島というものが変化するというものではないと私は思っておるのです。しかし、最近の情勢全般を観じてみますと、少しずつ前よりは変わってきつつあるかなと思っておりましたが、ビルマラングーン事件というものが非常に不幸な事件で、あれでちょっととんざを来したかなと、そういう感じでおります。
  239. 秦豊

    ○秦豊君 少し先を急いで、もし時間の余地あらばもう一回防衛に返りたいと思います。  外務省、マルコス氏の夢と言われている、マルコスドリームと言われておりますサンロケプロジェクトというのは御存じだと思うが、フィリピンに対する第十二次円借款の中に、申し上げたサンロケプロジェクトは含まれておりますか。
  240. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 含まれておりません。
  241. 秦豊

    ○秦豊君 計画内容は当然把握していらっしゃいますね。
  242. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 骨子だけ短かく申し上げますと、御存じのとおり多目的ダムでございまして、電力、それからかんがい、それから公害防止等々を目的とするところのダムでございます。
  243. 秦豊

    ○秦豊君 総理がフィリピンを訪問されましたのはたしか去年の五月六日から八日ではないかと思います。そのマルコス大統領との会談をされたときには、今申し上げたサンロケプロジェクトの問題は出ましたでしょうか。
  244. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 総理に対するお尋ねでございますが、去年のことでございますので、随行した私から申し上げますが、マルコス大統領からサンロケダムの計画を詳細説明されまして、非常に重要なプロジェクトであるからぜひ協力してほしいという要請がマルコス大統領から総理にございまして、それに対しまして総理から、そのサンロケダムのフィージビリティースタディーをまずしっかりやりましょう、この調査が先決でございます、その結果を待って将来の課題として御相談しましょうと、こういうお答えをされたということでございます。
  245. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、総理はそのフィージビリティースタディーには了解を与えられたと解釈してよろしゅうございますか。
  246. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 調査には了解を与えまして、たしかJICAの方で調査にもう協力しているのではないかと思います。
  247. 秦豊

    ○秦豊君 外務省は駐マニラ大川大使を通じて、このサンロケについては何回か再検討、慎重にというふうな役割を果たしていませんでしたか。
  248. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 先ほど総理が御答弁になりましたとおりに、フィージビリティースタディーを現在も続行中でございまして、これに対しまして外務省、大川大使を通じて、これはやめろとか早くやれとか、そういうことは一切申しておりません。
  249. 秦豊

    ○秦豊君 これは多目的ダムを公害防止というと、大変前向きの、何事も不思議なしみたいなプロジェクトに聞こえるかもしれませんが、大変いわくつきのプロジェクトでありましてね、かつてはイタリア政府が手を引き、IMFも、世界銀行も横を向いたままのプロジェクトなんです。いわくつきなんです。これを日本政府が一体どんな配慮とどんな観点に立って協力を約され、しかもフィージビリティースタディーに対する了解を与えられたのかについては、これは総理から伺いたいですな。
  250. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 円借款をフィリピンにも供与しておるわけであります。将来の円借款の対象に果たしてそれがなるのかならないのか、十分調査をしてから考える必要がある。フィリピン側の資料だけではなくして、日本自体で自分の目で見て自分判断をする必要がある。そういう意味も込めまして、JICAに調査をしてもらっているわけです。
  251. 秦豊

    ○秦豊君 去年の九月二十六日だと思うが、その調査団が行きましたね。
  252. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 九月二十六日であったかどうか正確に覚えておりませんが、十一月から調査を開始いたしております。
  253. 秦豊

    ○秦豊君 これは外務省、答弁できますね、フィリピンの役所の名前の一つですから。略称をMPWHという官庁はどんなことを所管していますか。
  254. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 日本語に訳しますと、MPWHは公共事業道路省と訳すべきと存じます。これは道路、橋梁、洪水防御施設、上下水道、かんがい、港湾、学校校舎、病院等のインフラ部門の建設を所管する官庁であると承知しております。
  255. 秦豊

    ○秦豊君 私もそのとおりだと思います。そのMPWHの役所の中に、俗にIOオフィスと言われておりまして、横文字ではインプルメントオフィスと呼んでいるようですが、そういう役所が所在をしていることは把握していらっしゃいますか。
  256. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 御指摘のIO、つまりインプルメントオフィサーでございますが、これは海外経済協力基金が円借款につきましてフィリピンと借款契約を締結した後に、フィリピン側はこの当該援助実施機関の長などを案件実施に係る有効な署名権者といたしまして指定をいたします。それらの者をインプルメンティングオフィサーと呼ぶというふうに了解をしております。ただ、このインプルメンティングオフィサーは、これはその借款契約そのものをどうこうするというそういう権限はございませんで、借款契約ができ上がりましたその後、窓口として作用する、こういうことでございます。
  257. 秦豊

    ○秦豊君 このオフィスの、事務所の責任者はマルコス大統領の腹心と言われておりますロドリゲス、副大臣相当の官職なんです。長年かわっていないので特に著名な人物であります。ところが、橋本局長が言われましたように、このIOオフィスには、例えば日本の東陽通商の子会社である日本フィリピンコーポレーションを初め、太平洋オーバーシーズ、三立コーポレーションといった三つの商社が、まさにその円借款、流れてくる円借款をとらえるべくそこに出入りをし、大商社を背景にしてまことに活発な、もう公然、隠然たる商業活動を展開し、しかも三つの商社しか出入りしていない。これはお調べになればすぐわかります。したがって、円借款に基づくさまざまなプロジェクトは大商を背景にした今申し上げた三つの商社がほとんど取り仕切っておる。そのことをマニラの心ある人々はどう言っているかというと、いずれも実質的なこれは談合とも言われており、しかもマルコス政権との癒着が批判されて久しいという存在です。  したがって、ここで、この部分で私が総理並びに外務省に申し上げたいことは一つしかありません。それは、なるほどしばしばの御答弁のように、もう交換公文を取り交わしたらその国の問題なんだよと、これは実態はそうですよ。慣例はそうです。ところが、やっぱり円借は与えたらもう使う方の御随意なんだと青うには余りにも問題が多いのではないか。特に竹下大蔵大臣は予算編成で十億二十億の資金繰りに苦労していらっしゃる。こういう中で極めておおような対外援助を、しかも極めて問題のあるフィリピン政府、これを民主的な政権と言うにはいささか牽強付会が過ぎると思うが、その議論はきょうはしない。したがって、これだけの財政難を押しての援助であるだけに、それがいかに使われ、それをめぐって日本商社がどのようにうごめいているか、動いているかなどの実態は、交換公文を三月か四月にしたらもうすべて終わっているんだと言うには余りにも事柄が大きいのではないだろうかということを申し上げたいのと、質問という形をかりれば、安倍外務大臣、やはり私が申し上げたこの三つの商社を含め、きょうは通産は呼んでいないけれども、一体どんなことをやっているのか、大商社を背景にして。これはお調べになればすぐわかります。もし現地の日本大使館のレーダーが曇っていなければ、故障がなければ、そういう声とデータはたちどころに集まってくるはずだと私は思うが、そういう実態調査も、国民の血税を使う以上、行政の最高の職にある外務大臣総理大臣としては、こういう実態調査も納税者への義務の範囲内と私は考えますけれども、どうお考えですか。
  258. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 大臣が御答弁になる前に一言だけ申し上げますが、先生御指摘のロドリゲスさんが先ほどのインプルメンティングオフィサーになるというお話でございますが、これはフィリピンとの今問題になっております円借款は現在交渉中でございまして、したがいまして、まだ何にも約束ができていないわけでございます。それができた後で窓口になるのがロドリゲスかどうかもまだわかっていないという事情はひとつ前提として申し上げておきます。
  259. 秦豊

    ○秦豊君 大臣、いかがですか。
  260. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 円借款等につきましてはやはり国と国との約束で交換公文を取り交わすわけですが、その約束が確実に守られておるかということについては日本政府としてもこれを見届けなければならぬわけで、それのところはこれまで円借款でやっておりますし、特に商品借款等につきましてもそういう約束がきちっと守られるということが大事であると思います。そしてそれは、やはりそれから後のもちろん円借款経済協力というものに非常に大きい影響があるわけですから、どうしてもそういうふうに見届けるということは日本の責任だと思います。  それから商社の問題は、これは商社は自由に活動しているんでしょうから、日本政府がこれに対してどうだこうだということではないと思います。何か法律違反とかそういうことが起こればこれはもう別であろうと思います。
  261. 秦豊

    ○秦豊君 ここに何通かの文書があります。これは恐らく外務省のフィリピン駐在大使をされた方ならばここに走り書きで割と伸びのある線で書いているこのサインがマルコス大統領の署名であることはすぐ特定できると思います。(資料を示す)ここに幾つかの文書がありまして、少なくともこれはフィリピン政府内の文書であって、マルコス大統領の署名がここに二カ所、二通の文書に二カ所、日にちも特定されています。去年の五月十八日と二十四日の署名で担当大臣に送り返しています。  ここで私が申し上げたいのは、総理がフィリピンを訪問された去年五月以前には、日本政府にも出ていた十六プロジェクトのどこにもさっき申し上げたサンロケプロジェクトは顔を出していなかった。ところがフィージビリティースタディーに了解が与えられたものだから俄然出てきて、十六あったさまざまなプロジェクトをマルコス大統領の独断と判断で押しのけて、矢印が上に来ちゃって一番トップに躍り出してきた。しかも予算の配分のパーセンテージまで書いている。その金を支えているのは日本の納税者のとうとい税金なんですね。したがって、私がここで申し上げたいのは、やはり今まで顔を出していなかったものが総理のフィリピン訪問以来急に出てきた。それはもちろんフィリピンの判断だよとおっしゃりたいかもしれないが、しかしあそこにも官僚社会があるんです。積み上げてこういうプロジェクトならばまあまあ日本政府の了解が得られそうだといってきた十六のプロジェクトを飛び越えて、フィリピンマルコス大統領の夢と言われている生まれ故郷のバギオにつくる大プロジェクトにこのような順位で合理性もなくいきなり躍り出す。こういうあり方は私は許されないのではないか、確かに内政の問題の領域ではあっても。したがって、この円借款というのは確かに一度渡してしまえばどんな問題のある事業、プロジェクトについても、その国が恣意的に権力者のほしいままに他国の納税者の金を使えるというあり方に多分に問題がありはしないかということの一端を生き生きと活写しているのがこの文書だと私は思います。  総理、したがって今後の対比援助のあり方を含めて、総理からやはりこの問題については最終的な御答弁をいただいておきたい。
  262. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) フィリピンの経済と民衆の福祉、厚生、生活安定のためにやるものでありますから、慎重に実行いたしたいと思います。
  263. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 時間がなくなりました。
  264. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、いたし方ない。
  265. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で秦君の質疑は終了いたしました。
  266. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、田英夫君の質疑を行います。田君。
  267. 田英夫

    ○田英夫君 総理外務大臣の今回の訪中によって日中の友好関係がさらに一歩前進をしたというこの御努力に敬意を表したいと思います。  特に、今回の訪中一つの大きなテーマになりました朝鮮問題について、既に朝からいろいろ御討議がありましたけれども、ずっと承っておりますと、三者会談あるいは二者会談、三者会談、四者会談、六者会談まで出てくるという中で、いささか整理を必要とするような気がいたしますので、短い時間でありますから、そういう意味を込めて伺っておきたいと思います。  今回、北朝鮮側から提起をされました三者会談、これ実は北側から提起をされておりますけれども、これにはかなり歴史がありまして、一九七九年にむしろアメリカ韓国の側から同じメンバーの三者会談を提案をしたといういきさつがあることは外務大臣はもう御存じのとおりだと思います。そこで、今回北側から提起をされた三者会談というのは一体何を話す三者会談なのか、どう受け取っておられるかをまず伺っておきたいと思います。
  268. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 簡単にお答えします。  まず、カーター政権の時代にアメリカが三者会談を提唱いたしましたことは先生御指摘のとおりでございますが、そのときには北朝鮮の側が拒否したわけでございます。今度は北朝鮮がまさに先生御指摘のとおりにやはり南北朝鮮プラスアメリカという、国名についてはカーター政権が提唱した数、国名と全く一緒でございますが、今回の北朝鮮の三者会談におきまして最も重要な点は、まず在韓米軍を撤退させる、さらに現在あるところの休戦協定を平和協定に格上げする、この二つについてはこれは韓国の出る幕じゃありませんよという趣旨のことを何度も言いまして、これは三者会談の中でアメリカと話すんですと、まずアメリカとそれを話して、在韓米軍撤退とそれからもう一つ休戦協定を平和協定に格上げする問題がこれが解決された後に、今度は韓国南北統一の問題について話し合おう、これが私の理解する北朝鮮の呼びかける三者会談の最も重要な点だと存じます。
  269. 田英夫

    ○田英夫君 今、アジア局長が言われたのは、去る三月七日に北朝鮮側から、北朝鮮の姜国務総理から韓国の陳国務総理あての返書という形で板門店で渡されたものの中にそのとおり書いてあるわけでありまして、北朝鮮側まさに休戦協定を平和協定にする、もう一つは在韓米軍の撤退、こういうことを話し合いたいということなんですね。したがって、この評価は別にいたしまして、さらにこの返書の中には非常に韓国に対しては厳しい内容がありまして、ちょっと読んでみますが、「現在もアメリカ軍が南朝鮮を占領しており、米軍司令官が「国軍」の統帥権を握っている状況の下で、いかにしてアメリカの承認なく南朝鮮当局独自でわれわれと向かい合い停戦協定を平和協定にかえて米軍を南朝鮮から撤収させ」るという、こういうことを話し合えるかと、こういうことを指摘をしているわけですね。これに対して、この返書が送られた数日後、去る三月十三日の韓国国会で、これは与党の民正党の李世基という議員が北朝鮮の三者会談の提案について関連をして質問をしているんですが、韓国軍の指揮権を米軍から取り戻し、かつ軍事停戦委員会の首席代表を米軍から韓国軍将校にかえることを米軍と交渉する用意はないかと、こういうことを韓国国会の中で議論をしております。まさに北側のそうした指摘を受けて、自分たちの主権を回復しようじゃないかということを韓国の中でも議論をするという状況の中で、今回の三者会談とか四者会談とか、こういうことが話されているということを私どもはやはり念頭に置いておかなければいけないんじゃないだろうかと。  さらにその同じ議員は、先ほど申しましたように、自分たちの側が、つまり韓国アメリカの側がかつて七九年に三者会談を提案しているが、今度の北の三者会談と我々の提案した三者会談はどう違うのかと、こういう質問もしているわけです。これはかなりお互いに整理をしてかかりませんとこの問題について間違った判断をするおそれがあると思いまして、今こういうことを申し上げるわけでして、まず外務大臣にお答えいただければいいと思いますが、北から三者会談がそういう前提のもとに提起された、これに対してレーガン大統領は四者会談ではどうかと、こう即座に答えています。そして今回、伊東正義さんが行かれ、また中曽根総理、安倍外務大臣も、四者会談ということではどうだろうかということを言われたというふうに伺っておりますが、これを整理してみますと、停戦協定を平和協定に変えるということが大きな目的であるならば、これは午前の話にもありましたように、停戦協定に調印しているのは韓国を除く、アメリカ北朝鮮――アメリカは実は国連軍ですけれども、アメリカ北朝鮮、そして中国なんですね。だから韓国は停戦協定の当事者じゃないわけです。しかし、もちろん戦争をやった当事者ですから、李承晩大統領が当時これを拒否しただけの話でありまして、四者というのが実はふさわしいのかもしれません。その意味では、私も四者ということの意味はよく理解できる。むしろ韓国が言っている南北当事者だけで話し合おうというのはその先の話じゃないでしょうか。それを今日本政府は、韓国政府の言われるとおりまず二者だと言っておられる根拠は一体どこにあるのか私には理解できませんので、これを御説明いただきたいと思います。
  270. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 大臣から御答弁申し上げる前に、事実関係について私から御報告させていただきます。  まず、けさも御質問が出ましたけれども、韓国が休戦協定の当事者になっていないことは事実でございますが、これはけさも申し上げましたけれども、クラーク大将は米軍司令官であると同時に国連軍司令官でございます。国連軍という形で韓国が戦ったのでございますから、彼は決して米軍司令官として調印したのでない、つまり米韓両方合わした司令官として、国連軍司令官として調印した。したがって、休戦協定に韓国が入ってないから、だからこれはもう韓国が言う資格がないというのもおかしいというのが一つです。これは事実関係でございます。  もう一つ、在韓米軍の問題につきましては、先ほど北朝鮮はああいう主張をしておりますが、米軍の駐留の問題は、これは米韓相互防衛条約という条約に基づいての駐留でございますから、したがいまして、この問題について韓国はおまえ一切口出す資格がないと北朝鮮韓国に断定するというのは、これは事実関係としておかしい。  それからもう一つアメリカでございますが、アメリカも、これはまず第一に、これは日本とその点では結果的に全く一緒でございますが、レーガンさんもシュルツさんも一貫して言っておりますのは、朝鮮半島の問題は朝鮮半島に住む南北の人々の話し合いによって解決すべきであるということをまずくどいほど頭に言っておるということでございまして、あとは四とか六とかいろいろございますが、ともかくあとは関係当事者が、まず南北当事者が了解のもとで、それで周辺の諸国が協力して緊張緩和に持っていけばいいので、その形は四であろうと六であろうとどうでもいいというのがアメリカが何度も何度も明らかにしている点だという、以工事実関係を申し上げます。
  271. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、局長の答弁で大体尽きておりますが、中国北朝鮮立場を踏まえて三者会談を強く主張しました。それに対して日本は、アジア局長も言いましたように、これまでの方針どおりやはり両当事国が話し合うことが必要だと。しかし最終的には両国ともやはり朝鮮半島緊張緩和に向かってお互いに努力をしていこう。方法論はいろいろとあるけれども努力をしていこうということで、日本につきましても、まず第一の基本は当事者間の会談でありますが、しかし三者会談にしても、四者会談にしても、六者会談にしても、これは頭から否定してかかっておるわけではなし、そういう状況が生まれればそれは大変結構なことであるということでございます。  しかし、その間にはいろいろと先ほどから申し上げましたような問題がありますし、私は中国にも指摘しておきましたが、やはりラングーン事件についての誠意を示すということがないとなかなか韓国が応じないのじゃないか。あるいはまた、在韓米軍の撤兵というのを頭から打ち出したんじゃ、これはやはり何といいますか、韓国にとってはこれは米韓の安保条約によってできておることであって、それに対して北朝鮮がそれをまず入り口としてとらえたのじゃこれはなかなか入れぬのじゃないかというような私の意見も述べておったわけですが、結局、最終的にはとにかく緊張緩和を進めるためにお互いにそれぞれ努力をしていこうということでお別れしたわけです。
  272. 田英夫

    ○田英夫君 もう時間がないんですが、要は、もう総理胡耀邦さん初め中国の首脳と話されたとおり、朝鮮半島の緊張を緩和しようと戦争が起こらないようにしようという、このことについて全く私も言うまでもなく同感でありまして、それに至る環境づくりについて、いたずらに北朝鮮というものの体制の違いとか、そういうことにとらわれないで、率直に現状あるいはこれに至る経過を見ていただきたい。そういう上で今後積極的に、中国は非常に積極的ですから、ぜひこの問題に取り組んでいっていただきたい、このことをお願いをして終わりたいと思います。
  273. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で田君の質疑は終了いたしました。  これをもちまして、外交防衛に関する集中審議質疑は終了いたしました。  明日は午前九時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時十七分散会