○
上田耕一郎君 確かに一九七〇年代十年間に
アメリカ側の、特に七五年以後軍事予算も削減するし、核弾頭も若干削減するし、その間にソ連が軍備拡張の
努力を大きくしたために差が縮まったということはこれは事実です。しかし現状は、これはどの資料を見ても、
アメリカ側がまだ軍事優位はかなり高いということだということは、大まかな
判断として首相は知っていただきたい。
ここに最も権威あると言われておりますストックホルムの国際平和研究所、SIPRIの最も新しい
世界の軍事力がありますが、例えば核弾頭の数では一九六〇年代末は四対一だったと。
アメリカ四、ソ連一と。その後ソ連が頑張って、
アメリカは一定水準でやや減少し、現在二対一弱だと。つまり四対一が二対一に縮まっていると。けれども、大体核弾頭二倍ということが書かれている。いわゆるソ連の脅威論というのをいっぱい言われているのでこの問題少し時間をとって本当はやりたいんですけれども、もうきょうは余り時間がないので、しかし大まかな
判断を首相が余り間違いないようにしていただきたい。
今第七艦隊のことを言われましたけれども、例えば航空母艦を見てみましても、ソ連はミンスクあるいはキエフ、今度ノボロシスクが来ますけれども、たった四隻しかない。あの四隻、しかもヘリコプターと重面離着陸の飛行機しか載ってないんです。それで朝日新聞は、これは横綱と子供の相撲だと、
アメリカの原子力空母とソ連の空母を比べると。しかも
アメリカは三十数隻、ソ連はたった四隻なんですね。それから海兵隊でも
アメリカは二十万、それに緊急展開部隊も加わったと。ソ連はたった一万二千です。それから強襲揚陸艦、
アメリカは八千トン級以上が七十一隻ある。ソ連はたった一隻しかないというように、非常にやっぱり海空については、これは外務省の一番専門家と言われる岡崎氏でさえ、海空については
アメリカが優位だということを述べておられるようなそういう
状況だという点で、私は何もソ連を弁護するわけではないけれども、ソ連が先にやっているから
アメリカが余儀なくというのではなくて、
アメリカが優位のままソ連が追いついてくるということを口実にして、レーガン政権のもとで物すごい軍備拡張をやっている。
日本の
状況についてもそうです。カールビンソンが来る、ニュージャージーが来る、トマホークが配備される、ソ連は巡航ミサイルというのはまだ実験中でできてもいないんですね。そういう
状況であるということをやはり全体として頭に置いていただきたい。それを単にソ連の脅威、ソ連の脅威ということを大いに言われるという
状況では、これは国の進路をも誤るし、
国民の認識をも誤ると思うんです。
いかに誇大なことが行われているかというのは去年のこの
防衛白書、これは閣議了解で決まったものですけれども、明らかです。「わが国周辺の軍
事情勢」、「ソ連の軍事態勢」のところは写真から図版からいっぱい並んで十六ページあります。
アメリカはそれに
対応していると言ったって、たった二ページです。八対一です。第七艦隊についてはわずか四行しか書いてない。こういうふうないいかげんなことでソ連の脅威なるものを誇大に言うということで実は
日本の束術増強をますます要求する、
アメリカの言うとおりに軍事費を突出させているというところに私は
日本の大きな危険があると思うんですが、そこでひとつ首相にお伺いしたい。
昨年のウィリアムズバーグ・サミットの政治宣言で、冒頭こうあります。「我々は、いかなる攻撃をも抑止し、いかなる脅威にも対抗し、更に平和を確保するために十分な軍事力を
維持する。」とあるんですね。今
黒柳委員との間で、もし敵が核兵器を使って攻めてきたときどうするかということで、非常に緊迫した討論が行われましたけれども、こういう、いかなる攻撃をも抑止し、いかなる脅威にも対抗する十分な軍事力を
維持するということになりますと、これはとめどない軍事大国になると、そういう約束以外にないんじゃないでしょうか。