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杉山令肇君 次は、幼保一元化の問題について
お尋ねをいたします。
文部大臣は
教育制度の
改革について、幼保一元化が望ましいとの御
意見だと承っておりますが、現場の状況等々を考えますと、いろいろと幾つかの大きな問題を抱えているように思います。もちろん表面的には同じ年齢児を対象にした施設である、所管は厚生省、児童福祉法の施設である、片や文部省の
教育事業の施設であるという。所管は違いましても、同じ三歳、四歳、五歳、もちろん保育所は零歳児からでありますが、同じような年齢児を対象にした保育、
教育を行っている。しかも保育内容につきましては、六領域を中心として幼稚園も保育園も遊びを導入しながら
教育、保育をしているということも実情であります。
したがいまして、表面から眺めますと、いとも一元化でよいのではないかという考え方も浮かぶとは思いますけれ
ども、それじゃ具体的に、例えて申し上げますと、現在設置主体の問題も大変な難しい問題に突入をいたしております。幼稚園におきましては
学校法人立あるいは個人立、宗教法人立、また保育所におきましては
社会福祉法人立と個人立という色合いでございます。しかも、幼稚園につきましては御承知のとおり公共性を持たせなければいけない、憲法上の疑義があるのだということも含めまして、現在、私学振興助成法の法人化促進の期間でありまして、来年の三月三十一日が再延長の最終期限であります。これに対しまして、現在の状況を伺いますと、
全国で私立幼稚園というのは八千九百十五園ございまして、現在までに文部省の指導に従って個人の財産を寄附いたしまして、公益性でありますから、
学校法人に寄附をいたしますと再び個人の財産に戻ってこないというルールであります。したがいまして、寄附をされる立場になりますと、非常ないろんな心配の要素も含めまして、勇気と決断を持って公共性に臨んで対応しているのが実情であります。そういう御指導を受けまして、現在は五千六百二十八園が法人化の設立をしているという
状況下にございまして、来年の三月三十一日を控えて、今残っております三千二百有余の個人立幼稚園が懸命になって法人化の作業に取り組んでいる最中であります。
さて、このような準備段階のある中で、
文部大臣から幼保一元化の望ましい方向の御発言がありました。これにつきまして幼保
関係者に非常に一面では不安と動揺を与えているのが事実であります。一体全体どうなるのか、せっかくいろいろと先祖から預かった財産を公共性によって寄附をしてしまった、文部省の指導によってやってきた、また保育所の方にいたしますと、
社会福祉法人化をしませんと、やはりいろいろと助成の道がない、融資の道がない、個人は不可能でありますから、そういう背景のもとにこれまた努力をしている最中であります。そういうふうな状況をまずひとつ御
理解をちょうだいをいたしたいと思うのであります。
また、資格の問題も当然のことでありまして、教諭と保母、もちろん資格取得のそれなりの学経歴も資格要件も違うわけであります。保育時間の問題は、先般すでに
お話が出ておりますように、原則的には
教育事業の幼稚園の四時間、
社会福祉事業の保育の八時間、これは原則でありますけれ
ども、確かに現在
日本国内を眺めておりますと、幼稚園の保育園化、保育園の幼稚園化という動きがあります。御父兄の強い要望もありまして、少しでも家庭の内職の手助けをしてもらいたい、そのような要請もあって、若干幼稚園が保育園寄りの、保育時間の四時間を多少延長している実情もあると思います。そのようなこともございますけれ
ども、基本的には資格の問題、またそれぞれの目的が全く相反するという実情もございます。家庭で保育に欠ける
子供たちのための保育という
一つの責任を伴いながらの保育の八時間、
教育を主体に置く幼稚園の実態等々もあろうと思います。
また、経理の取り扱いの問題を眺めてみますと、御承知だと思いますが、保育所の場合は厚生省の強い行政指導がございまして、措置費というルールによって各現場の方に金が流れていくわけでありますけれ
ども、措置費の支出内容につきましては厳密に事務費と事業費と分かれております。事務費につきましては人件費、管理費。ところがここで問題なのは、大規模修理の問題あるいは減価償却の
予算は全く厚生省の方では認めていただけないわけであります。したがいまして、どういうことが起きるかといいますと、保育園の修理が大型修理になる、あるいは施設
改善を行う、あるいは
社会福祉法人で借財をいたしますと、財源が伴わないものでありますから、園長が一応帳面上は園長給与を幾ら幾らという受領をいたしますけれ
ども、そのお金はほとんど全額を園に寄附還元をいたしまして、その財源でその施設
改善なりあるいは借財の返済に充当しているのが実態であります。
また、事業費につきましては、給食費、保育材料、保健衛生、暖房費というようなことで、細かく
予算の細分化の執行について制限をいたして指示をいたしておりますので、なかなかもって大変な
状況下にあります。幼稚園の方は、
学校会計の基準に従いまして自主運営的な面がありますけれ
ども、近年の園児の減少の問題、あるいは多額な私学振興財団からの借り入れ等々の返済の状況もございまして、大変な状況にあろうかと思っておりますが、いずれにいたしましても先ほど申し上げましたように、幼稚園の場合には個人財産を法人に寄附をするという、懸命に文部省が指導していらっしゃる実情から考えますときに、
大臣の御発言が果たして今後どのようなスタイルになるのか、どのような幼児
教育の実態になるのか、大変不安感を持っているということを申し添えたいと思うわけであります。
また、保育所の措置費の保育単価の問題と幼稚園の保育料の問題と比較をいたしますと、保育単価、措置費の方が著しく高いのが各地域とも普通ではないかと思います。それなりに理由はありますけれ
ども、相当額の差がございます。
また、融資
制度の問題に触れてみますと、現在、私立幼稚園は私学振興財団にお世話になっております。保育園の方は
社会福祉事業振興会であります。ただし、いずれも法人体でなければ応対はしていただけないわけであります。
ここで、あえてその融資
制度の内容を若干申し上げますと、私学振興財団の幼稚園から
大学に至るまでの助成の中身であります。これは大変国の
政策としてありがたいことでありますけれ
ども、私は利子の問題については必ずしも現在の
時代に合っていない、このようなことを申し上げておきたいと思います。参考に申し上げますと、私学振興財団の融資に対する利子は、
昭和五十四年度あたりは八・〇%、五十五年度が一番高くて八・五%、また五十五年の十二月からは八%、現在はやや下がりまして七・一%という融資利息であります。これは現在の市中銀行から借り入れをいたそうとしますと、現実にはやはり安いところでは五%台、十年返済程度ですと五%程度、高くても六%何がしかで市中銀行で融資をしてくれるわけであります。しかるに、国の
政府機関であります
日本私学振興財団では、その
時代はそのような
社会情勢であったからいたし方ないという話でありますけれ
ども、現実的には全く合っていない。返そうということになりますといろいろと、まあ
与党でありますから言いにくいのでありますが、なかなか難しい御答弁がはね返ってくるものですから、各
学校は頭を抱えているのが率直な現状であります。何とかひとつ
改善の方向に御陳情もあわせ申し上げたいと思うわけであります。
それじゃ、一方の保育所の方は、
社会福祉事業振興会ではどうなっているのか。これは、現在利息が四・六%であります。四・六%でありまして、さらに各都道府県がこの利子に補助を出しているものですから、設置主体が借り入れをした利息は三%、また地元の市町村が援助しているところもあります。そういうところはさらに下がりまして二%程度という低率で貴重なお金を使わさしていただいている状況にございます。片や四・六%、片や八・五%から七・一%という高率の格差がございます。
いろんな比較
検討を申し上げましたが、いずれにいたしましても幼保一元化の問題につきましては、いろいろと行政の中身を
一つ一つ分析いたしますと、なかなかもって大変な問題を抱えていると思うわけであります。どうかこの際ひとつこのような状況を踏まえまして、
文部大臣の一元化の方向の御発言を承っておりますが、一体どの程度の一元化を考えていらっしゃるのか。中身すべての一元化なのか、あるいは部分的スタイルの一元化なのか、その辺のお気持ちのほどをお聞かせいただきたいと思います。