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1984-03-21 第101回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十一日(水曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月十九日     辞任         補欠選任      抜山 映子君     栗林 卓司君  三月二十一日     辞任         補欠選任     大河原太一郎君     真鍋 賢二君      松岡満寿男君     土屋 義彦君      水谷  力君     杉山 令肇君      長田 裕二君     竹山  裕君      近藤 忠孝君     吉川 春子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 竹山  裕君                 土屋 義彦君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 高桑 栄松君                 和田 教美君                 吉川 春子君                 栗林 卓司君                 喜屋武眞榮君                 秦   豊君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  住  栄作君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        労 働 大 臣  坂本三十次君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       中西 一郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官) 稻村佐近四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁刑事局保        安部長      鈴木 良一君        警察庁警備局長  山田 英雄君        行政管理庁長官        官房総務審議官  古橋源六郎君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁次長  小谷  久君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        経済企画庁調整        局審議官     丸茂 明則君        科学技術庁原子        力安全局長    辻  栄一君        国土庁長官官房        長        石川  周君        国土庁長官官房        会計課長     安達 五郎君        法務省刑事局長  筧  榮一君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済局長  村田 良平君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        小野 博義君        大蔵大臣官房審        議官       行天 豊雄君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省理財局長  西垣  昭君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君        文部省大学局長  宮地 貫一君        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        通商産業省貿易        局長       杉山  弘君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省航空局長  山本  長君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  台   健君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省税務局長  関根 則之君        消防庁長官    砂子田 隆君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        日本専売公社総        裁        長岡  實君        日本国有鉄道総        裁        仁杉  巖君    参考人        評 論 家    海原  治君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ―――――――――――――
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十九年度総予算審査のため、本日の委員会評論家海原治君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 西村尚治

    委員長西村尚治君) この際、申し上げます。  先般の委員会で、暫定予算の問題について、委員長といたしまして、理事会で協議の上、適当な時期に善処いたしたいと申し上げましたが、この件に関し大蔵大臣より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  7. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま本委員会におきまして五十九年度予算の御審議をお願いしているところであります。政府といたしましては、予算の一日も早い成立を期待し、御審議が円滑に進みますよう最大限の協力をしてまいりたいと考えておりますが、ただいままでの本委員会におけるいろいろな御議論の経緯等十分念頭に置きまして、とりあえず暫定予算準備作業に入ることといたしたいと思いますので、御報告いたします。     ―――――――――――――
  8. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、これより秦豊君の残余の総括質疑を行います。秦君。
  9. 秦豊

    秦豊君 最初に、中曽根総理のいわゆる大局観を伺っておきたい。  総理大局観としては、米ソを主軸とした緊張対立は双方の努力にもかかわらず高まっていく、こういうふうなお考えでしょうか。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは時により時代によって高まったり、あるいはまた緩和されたりいろいろしておる状況でございます。現在の状況はどうであるかと言えば、アフガニスタン問題以来やはり緊張している状態にある、そう考えます。
  11. 秦豊

    秦豊君 今後いかがでしょう。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何とも言えませんけれども、世界的な世論が緊張緩和方向に力強く推し進めております。また、アメリカレーガン大統領チェルネンコ政権に対してしばしば呼びかけをやって、緊張緩和話し合いに積極的に最近顕著に乗り出してきております。チェルネンコ政権がどういう反応を示すか、今政策形成期でもありまして、じっと見ておる状態、特にアメリカ大統領選挙の帰趨を見ておる状態でしょう。また、ヨーロッパの国々は、一応該当国はパーシングⅡあるいはグラウンドミサイルの展開が終わって、あるいは既に行われつつありまして、そういう場所に立ってやはり対ソ緊張緩和に積極的に乗り出しつつある情勢であります。ソ連も中欧における通常兵力削減交渉を久しぷりにやろうというようなことをやってきておりますが、これらが何らかの前兆であるかどうか、それらの点につきましても我々は深甚なる注意をしていく必要があると考えております。
  13. 秦豊

    秦豊君 今、総理お話のとおりだと思います。さまざまなシグナルが交わされている。私も、ドラマチックではなくても、緩やかに新たなデタントの構築に向かって進んでいくのじゃないかと思っていますが、重ねて、いかがでしょう。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 向かうか向かわないかはまだ予断はできないと思います。しかし、そういう方向アメリカヨーロッパ努力しつつあり、チェルネンコ政権も様子をうかがっているという状態ですから、ある転機が来ればそういう方向に来る可能性もなしとしない。ただ問題は、中近東における情勢が、特にイランイラク戦争の動向が非常に心配でございまして、これがかなり重大なる影響力を持つ危険性を憂えておるものでございます。
  15. 秦豊

    秦豊君 米ソ関係の中間的なゴール、目標としては、やはり首脳会談でしょうか。
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 端的に言えばそういうことでありまして、実りのある首脳会談を用意するために努力しつつあるのではないかと思っております。
  17. 秦豊

    秦豊君 今度のロンドンサミットでは、総理レーガン大統領と個別の会談を御予定ですか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ロンドンサミットにつきましては、まだそういう個別会談であるとか、あるいは一般的な問題であるとか、何ら決定しておりません。ただ、この前のウィリアムズバーグサミットにおきましても個別会談をやりましたから、そういうチャンスがあるいはあるのではないかと思います。
  19. 秦豊

    秦豊君 その場では、総理からぜひ盟友たる大統領に対して米ソ首脳会談開催促進方を要請されるお考えはございませんか。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、国会でも御報告申し上げましたように、首脳会談を開くべきであるということを主張してきておりまして、そういうチャンスがある場合には内的にもいろいろ話し合ってきておるわけであります。首脳会談がただ会ったというだけでは意味がないので、実りあるということの確信を得る準備をいろいろ苦労しやっている、その確信を得るための協力を我々も周囲にいていろいろやるべきである、そういう場をつくるべきである、そういう努力をしておるということを申し上げる次第であります。
  21. 秦豊

    秦豊君 日本中心とした北東アジア全域での軍事的な脅威に変化や切迫性を、総理、お感じでしょうか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、大韓航空機撃墜事件がありました当座はかなりの緊張度が、一時瞬間風速が強まったという気がいたしますが、その後は次第に鎮静化しつつあるように思います。ただ、ノボロシスクのような航空母艦がなぜ今来る心要があるのか、私らには疑問に思えます。あるいはSS20が百四十四にまでふえるとか、あるいはバックファイアがまた非常に数が増強されている。そういうような情報を聞くにつけましても、なぜそのように増強する必要があるのだろうかという気がいたしまして、できるだけそれはレベルダウンをする方向お互い努力していくのが適当ではないかと思います。
  23. 秦豊

    秦豊君 総理、いよいよ二十三日、訪中されますが、中ソ両国関係改善の今後についてはどのような展望をお持ちでしょう。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国ソ連独立主権国家であります。したがって、独自の外交政策近隣諸国に対してやっておるので、日本に対しても中国は独自の見解を持っておやりになり、ソ連に対しても独自の見解を持っておやりになっておる。中国の場合は割合にそういう独立性というものが強いと思っております。中国は、何と申しますか、毛沢東の第三世界理論というものは捨てていないと思います。そういうような基本的立場を持ちながらバンドンの十原則というものをやはり堅持しておる。平和共存ということも唱え、あるいは内政不干渉とか、あるいは平等互恵であるとか、独立主権の尊重であるとか、そういう立場を堅持しておる、そう思います。  それで、ソ連との関係におきましても、中国が今一番必要としているのは環境の平和であると思います。やはり二十一世紀に至るまでに近代化をやって、そして鉱工業生産みるいは国民所得等を四倍に持っていくという非常に雄大な計画を推進中で、ひたむきにこれをおやりになっておられる。それができるかできないかは、環境が静ひつであるかどうかという点にもかかっている。そういう意味において、一番平和を欲しているのは中国ではないかと私は思っております。  そういう情勢下にあると判断をしながら私は中国外交というものを進め、ですから日中不戦の誓いというようなものすら私はあえて申し上げ、向こうも了承したわけでありますが、ソ連に対しても中国平和共存を求めておりまして、独立国家相互としての普通のつき合いはもちろんおやりになる。ですから、貿易量もふえるであろうと日本人に中国首脳部は言っております。私もそういうふうになるであろうと思っております。ただしかし、国家安全保障上の重要問題については譲るべからざる一線を持っておりますから、そういう点についてはやはり毅然たるものは内面的に堅持しつつ行っていくというふうに考えますが、普通の貿易やあるいは人材交流とかそういうものは進むのは当たり前であろう、そう思っております。
  25. 秦豊

    秦豊君 じゃ、かなり中ソ問題についても首脳会談で時間をお割きになると。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり先進国首脳が集まるとなれば、最大の関心事は軍縮の問題であり、平和の確保の問題であり、そのためには核軍縮という問題が大きな中心的議題一つであると思います。去年のINFあるいはSTARTの問題のいろいろのまだ大きな課題が残されてもおります。それからやはり中近東についても、この前ウィリアムズバーグいろいろ話をしました。やっぱり一番大きな問題は、イランイラク戦争を早く停戦あるいは休戦というところまで持っていきたい。そういう意味におきましては、中近東問題も当然話し合いの対象になると考えております。
  27. 秦豊

    秦豊君 総理日中間にはいよいよ二十一世紀委員会もやがて発足いたします。大変結構だと思います。まさに二十一世紀を見据えた中曽根総理日中関係についての大局観、ぜひ伺いたいと思います。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本も平和を欲し、中国も平和を欲し、そしてアジア文化系統を同じくする隣人同士であり、過去のいろいろな不幸ないきさつについては日本も反省をし、中国友好の手を差し伸べて、そしてお互いにこれから平和共存、ともに繁栄していこうという考えで手をつないでおる、これは自然の姿であると思います。しかし一面、共産主義という国、また片方は資本主義という国、おのおの数千年の長い伝統を持っておる両国がこういうことで手をつないで緊密に協力し合っていくということは、今まで歴史上余りそう例はないのではないか。ドイツ、フランスあるいはECも過去を捨てて非常に大きな協調の中へ乗り出しておりますが、日中関係というものはそういう意味におきましては歴史的にも非常に後世評価される国家関係一つのモデル、模範、イデオロギーや体制が違っても共存できるという、そういうあかしを後世に残すいい一つのものであると私考えておるのです。  そういう歴史観を持ってこの日中関係というものを長く長く平和友好に持っていきたい。それには我々の時代は我々が一生懸命努力する、我々の後継者時代にはその人がまた一生懸命努力し合う、その次もまた努力し合う、そういう常に常に誠意と熱意を傾けていくことが必要であろうという意味で二十一世紀委員会という発想を持ったわけで、そこへ相互信頼ということをつけ加えさしていただいたのもそういう趣旨にのっとるのでございまして、今後も誠意を尽くしてまいりたいと思っております。
  29. 秦豊

    秦豊君 安倍外務大臣安倍外交二期目の最重要課題というのは何ですか。
  30. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 昨年からやってまいりました基本的な外交路線、これを踏襲して発展させる、こういうことであります。日本の場合は、今さら申し上げるまでもなく、日本外交の規範は日米をいわゆる基軸としまして自由主義陣営一員としての連帯を深め、さらにアジア一員としての積極的な姿勢を進めていく、世界の平和に積極的に貢献をしていくということであろうと思います。
  31. 秦豊

    秦豊君 もう少しめり張り、明確さが欲しいんですが、日ソ問題の位置づけはいかがです。
  32. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはり外交というのは、継続性一貫性がなきゃならぬと思うわけです。そういう意味において、めり張りといいますか、やはり私は一つの地味な一貫性のあるスタンスというものが日本のあるいはまた世界の平和に貢献する場合において必要じゃないか、こういう信念を持っております。  日ソにつきましては、我々はいわゆる隣国の大国として日ソ関係改善を図っていきたいということで終始発力をしておりますが、残念ながら領土問題という基本的に大きな対立が存在をしておりまして、この領土問題を超えて真の友好関係は確立てきないという情勢にあるわけで、私たちは目標としてはあくまでも領土、北方四島の返還を図って、そして日ソ間に平和条約を結ぶということでございます。いろいろと努力しておりますが、基本的にそこを乗り越えることができない。さらに、最近にはソ連の極東における軍事増強というものが非常に顕著であります。大変残念な状況にあるわけでありますが、しかし何としても隣国でありますし、先ほどのお話のように、日中間という体制の違う国といえども協力関係友好関係を進めておるわけですから、我々は日ソ関係におきましても基本的なこの領土問題、あるいはまた軍事増強といった問題についての認識の差、対立はありますけれども、やはりその間に米ソ関係でもあるいは雪解けが始まるかもしれない、こういう状況の中で日本としても対話はできる限り進めていきたい。大変困難な細い道でありますが、この対話を進め、そして拡大をしていきたい、こういうふうに考えております。
  33. 秦豊

    秦豊君 グロムイコ外相訪日ですが、これは今後の日ソ打開考える場合の譲るべからざる前提条件ですか。
  34. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 譲るとか譲らないとかいう問題でなくて、これは日ソのいわゆる定期外相会談という形で発足しまして、そして日本は何回か外務大臣が訪問しております。それに対してソ連外相は三回ばかりということで非常に少ないわけでございます。やはり日ソ間の対等の関係を進めていくという上からいきますと、グロムイコ外相が今度は日本にやってくる番でありますから、我々としては当然グロムイコ外相訪日されることを要望いたしておるわけであります。これができなければ何もできないということじゃないですけれども、我々はやはり定期外相会談という立場からいけばグロムイコ外相訪日がその大前提である、こういうふうな認識を持っているわけです。
  35. 秦豊

    秦豊君 特定の第三国、これは全く考えられませんか。
  36. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 九月の国連総会では、日ソ外相会談がこれまでも行われておりますし、昨年は残念ながら大韓航空機撃墜事件で実現ができなかったわけでございますが、今まで行われておりますし、そういうことは今後とも続けてまいる必要がある。基本的にはグロムイコ外相日本への来訪を待っておりますが、しかし外交ですからいろいろな面で弾力性を持っていかなきゃならない。ニューヨークにおける会談等は今からも期待をいたしておるわけであります。
  37. 秦豊

    秦豊君 特定の第三国、例えば東ヨーロッパのある国で会談をという提案があったらお受けになりますか。
  38. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今そういうふうな提案のあるような状況ではない、こういうふうに思っておりますが、ニューヨークでこの九月に会うということは一つの方針として考えておりますし、それまでにそういうふうな第三国で会うというふうなチャンスというものは両方都合のいい状況でないとできないでしょうから、ちょっと難しいのじゃないかと判断しております。
  39. 秦豊

    秦豊君 総理も日ソ打開には積極的と受けとめてよろしゅうございますか。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本基本的立場を堅持しつつ積極的と、そのように御理解願いたいと思います。
  41. 秦豊

    秦豊君 じゃ、今後どういう具体的なアプローチ、手順で打開をお図りになりますか。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはみんな国益を踏まえて両国がやり合っていることでありますから、片思いだけでもだめなわけなのであって、相手の出方がどう出てきているか、それを秤量しながら一歩一歩着実にやっていくということであり、積極的に打開したいと基本的に考えていることはしばしばここでも表明しておるところであります。
  43. 秦豊

    秦豊君 外務大臣は何からお始めになりますか。
  44. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日ソについて言えば、先般アンドロポフ書記長の葬儀で私が参りまして、その際グロムイコ外相との間で対話を進めよう、そういうことで最近、御案内のように十二、十三日の両日にわたりまして日ソの高級事務レベル会談を持ちました。これは大変有益な会談であったと私は思います。  その中で、御承知のように日ソ政府間の貿易協議を始めようということは合意をいたしました。あるいはまた、文化の交流という面での日ソ映画祭も進めようということで合意をいたしたわけでございます。あるいはまた、対話を進めるということで、国連の問題あるいはまた中東の問題について特に二国間での事務レベルの会談を設定したい、こういうことについても両国の合意を見たわけでございます。そういうところからさしずめ始めていきたいと、こういうふうに思っております。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕
  45. 秦豊

    秦豊君 対ソ経済措置ですね。去年の私に対する答弁でも出ておりますけれども、対ソ経済措置の緩和を私には示唆されたが、十二月二十八日の外務委員会です。何から緩めていかれますか。
  46. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 対ソ経済措置につきましては、これは日本だけが行っておるわけではありませんで、いわゆる西側の結束の中で一致した方針としてとられてきておるわけでございます。そして、この対ソ措置を講ずるに当たっての原因は、御承知のようにアフガニスタンに対するソ連軍の侵入、あるいはまたポーランドに対するソ連の非常な圧力、そういうものが対ソ措置につながっていったわけでございます。基本的には、その状況というものが変化していないということですから、その対ソ措置を全体的に今廃止するという状況には西側の諸国の方向は向いておりません。  これは日本だけでやれることではないわけで、やはり西側と一致した中で進めていかなきゃなりませんが、基本的には、そういう廃止するという方向にはないわけですが、しかしまた東西関係あるいは米ソ関係を見ますと徐々に明るさというものも出てきておる、対話の動きというのも出てきておるわけでございますから、さらにこれを強化するということはありませんで、むしろこれを緩和するという全体的には方向に動いておる、そういうふうに私は判断をしております。その中の一環として、日本も西側の一員としての立場の中でこれに取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。私は、方向としては決してこれを強化するということじゃなくて、むしろ緩和する方向に今後動いていくのではないか、そしてこれは日本としてもそれに対応して取り組んでいかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  47. 秦豊

    秦豊君 少しわかりましたけれども、じゃ、段階的に緩和と、すると何から具体化されますか。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 具体的にはまだいわゆる西側諸国と対ソ措置の問題について話し合う段階にはないわけでございますが、例えば公的信用供与の問題についてこれはケース・バイ・ケースでやっておるわけでございますが、こうしたケース・バイ・ケースという対応の中に日本日本なりの全体の情勢を見た、そして西側との話し合いの中での日本の姿勢というものあるいは態度というものは、今後いろいろと変化し、あるいは進んでいく可能性は私はあるのではないか。ケース・バイ・ケースという基本姿勢は変わらないとしても、その中でやっぱり情勢に適応した動きというものは当然日本としてもとらなければならない、そういうふうに思うわけですが、西側全体の動きを見ながらこれは判断をしていきたい、また西側の中で話し合いをしながら進めていきたいと考えております。
  49. 秦豊

    秦豊君 西側はわかるんですが、日本としては何から緩めやすいですか。じゃ具体的に。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今さしずめ、先ほど、申し上げましたように、日ソ政府間の経済問題についての会談をやることになっておりますから、その中でいろいろと日ソ間でソ連が何を求めておるのか、日本は何ができるかという面、あるいはまた西側全体としてどういう認識を持っているか、そういうことも踏まえながら十分話し合ってみて、そしてできることからやっていこうと、こういうふうに思います。
  51. 秦豊

    秦豊君 アメリカはむしろココム強化の方向ですよね。日本はどうされますか。
  52. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ココムについては、これはただアメリカとか日本だけじゃなくて、ココムに参加している国々の合意というものがなければいけませんし、そういう中で日本も対処するというのがこれは筋でありまして、アメリカが言っているからといって、それがそのまま実現するわけではありませんで、やはりココムの中で論議が進んでおりますから、そういう中で日本情勢を見ながら取り組んでいかなきゃならない、こういうふうに思います。
  53. 秦豊

    秦豊君 総理は、ココムは緩めるべきか、強めるべきか、どうお考えですか。
  54. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは経済協力問題については、アフガニスタン問題とかポーランド問題だとか東西関係とか、そういういろんな問題を見て西欧自由主義の国々が一つの申し合わせを行ってやっておるものでございますから、だから一概に緩めるとかあるいは強めるとか言うべき問題ではなくして、国際情勢全般をよく話し合いつつケース・バイ・ケースで相談し合う、そういう問題になるだろうと思います。
  55. 秦豊

    秦豊君 政府はフィリピンに対する援助の方針を今週中にも決定しますか。
  56. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはフィリピン政府からは日本が五十八年度の円借です。これは基本的にはフィリピンとの間で話し合いができておるわけでございますが、この円借を実現してほしい、円借の中で特に商品借款を中心にして実現してほしいという強い要請がございます。日本も現在のフィリピンの置かれておるところの非常に困難な経済の状況等を見ますと、フィリピン経済の再建のためにはこの五十八年度の円借、その中で商品借款を中心としたこの円借はこれを実行しなきゃならない、こういうふうに思っておるわけでございます。  ただ、今IMF等がいろいろと調査をしております。その辺の状況も今見ておるわけでございますが、IMF等が結論に近づいておる、大体煮詰まってきておる、こういう状況と我々は判断をしておりまして、そういう面も踏まえながら基本的には円借を実行する、経済協力を実行するという姿勢で取り組んでいきたいと、こういうふうに考えておるわけでございまして、今週とかなんとかということにつきましては、まだ話し合いの段階でございますから申し上げる状況にありません。
  57. 秦豊

    秦豊君 当初は二十三日決める予定じゃなかったんですか。
  58. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それは別にそういう方向を決めておったわけではありません。今月の二十三日ですか。
  59. 秦豊

    秦豊君 ええ。
  60. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 何もそういうことは聞いておりませんし、そういう方向で決まっておるわけではありません。
  61. 秦豊

    秦豊君 どうも政府部内に方針の差があるような感じが私するのですが、総理が北京から帰られた翌日の閣議ぐらいは決定のタイミングでしょうか。
  62. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどから申し上げましたように、基本的にはフィリピンに対する五十八年度の経済協力は、これを実行するということについては政府部内は統一しております。ただ、中身の問題、時期の問題等につきまして、あるいはIMF等の関係につきまして関係省庁間で今詰めておる段階でございまして、まだ私はこれが詰まったということも聞いておりませんし、あるいはまた、いつ実行するということについてもまだ私自身が承知しておるわけではございません。しかし、いずれにしても近い時期に何とかこの経済協力は実施しようと、そういう方向は、認識は一致しておるわけであります。
  63. 秦豊

    秦豊君 どうもよくわかりません。外務大臣は元来この問題に対しては慎重じゃなかったんですか。
  64. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) このフィリピンの経済協力につきましては、これは毎年日本がやってきておるわけでありますし、ですから五十八年度も大体五十六年度、五十七年度と同じような経済協力はしなければならない、これは今までの日本とフィリピンとの関係からしなきゃならぬ、こういう基本姿勢ははっきりしておるわけですね。そしてそのことは既にフィリピン側にも伝えておるわけでございますが、その円借款の中身について商品借款を中心にしてほしいというフィリピン側の要請があります。  これは、今のフィリピンの経済の増勢からすればこれもやむを得ないのじゃないかというのも日本政府全体としての合意になっておるわけでございますが、しかしそれをいつやるかということにつきましては、実はIMFの関係、調査の状況等を見ておりまして、IMFがだんだん一つの結論に近づいておるということでございますので、我々はその状況も踏まえながら日本としても決定をするということで、今その状況について各省間で調整をしながらそのタイミングを見ておる、こういうことでございます。しかし、今の状況からいきますと、やっぱり私はフィリピンの経済の苦境を救うために日本がこの際協力をしなきゃならぬのじゃないか、そしてその時期も近く行わなければならないと、こういうふうに大局的には判断をいたしておるわけであります。
  65. 秦豊

    秦豊君 この問題について、総理は基本的にどういうお考えですか。
  66. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国際協調のもとに、事情の許す限りなるたけ早くやってあげた方がいい、そう思っております。これは五十八年度分として既に約束した分なのでありまして、五十八年度というのも三月三十一日で年度が切れるわけであります。それで、衆議院段階におきましてアキノ事件があったからこれを差し控えたらどうかという質問がございましたが、アキノ事件はアキノ事件、フィリピンの経済的困難というのはフィリピンの国民が苦しんでおることなのであって、フィリピンの国家あるいはフィリピンの国民というものを対象にして考えた方が両国及びASEAN全般に関する日本の政策として長続きのする考え方になるのだと。それで私はASEAN諸国も回りまして、日本の経済協力、各国の福祉やあるいは民生の安定のために協力するということを言ってきておるわけでありまして、アメリカや何かが、アキノ事件でアメリカの国会あたりで一部慎重論もあるようでありますが、アメリカアメリカアジアの国である日本日本、ASEANと特殊的関係にある日本アメリカとは立場が違う、そういう考えを私は持っております。  それで、日本総理大臣が言ったことをASEANのほかの国も自分の国が困った場合にやってくれるのかどうかという心配をやっぱり持っておると思うのです。そういう意味におきまして、アジアにおける日本立場アメリカ立場と違うのであるから、したがって事情の許す限りできるだけ早くやってあげたい。しかし、やはり国際的協調と申し上げたのは、IMFの所見とか、あるいはフィリピン当局自体がいかに財政再建のための努力をするかとか、そういう面もよく見きわめつつ私は行う必要がある。できるだけ早くやった方が、どうせやるならありがたいと思って受け取っていただく方が国家の政策としても賢明ですから、私はそういう考えを持っておるわけです。
  67. 秦豊

    秦豊君 これは昨年のレーガン大統領訪日の際の合意ですね、それがそもそもの発端でございますか。
  68. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのときに合意とかなんとかということはありません。ただ、アジア情勢を話し合った中にフィリピンの財政問題あるいはアジアにおけるASEAN諸国の動向等についても話し合いをいたしました。これにつきましてはお互い協力し合って福祉及び民生の安定のために努力しよう、そういう話もいたしました。特に南北問題という問題を私が取り上げまして、我々は特恵関税もシーリングを五〇%上げたのだと、そういう話をいたしましたときにいろいろ話したわけであります。
  69. 秦豊

    秦豊君 今度も特に大統領からは要請がございましたか。
  70. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別にございません。
  71. 秦豊

    秦豊君 マルコス政権というのは民主的で清潔な政権とお考えですか。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外国、しかも友邦の政権の性格について一国の総理大臣として論評することは差し控えさしていただきます。
  73. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、いかがです。
  74. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは今総理の言われたような判断を私も持っております。
  75. 秦豊

    秦豊君 総理、これならいいでしょう。じゃ、マルコス政権は国民から信頼を博しておりましょうか。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それも論評の中に入ります。
  77. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、いかがです。
  78. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アキノ事件がありまして、マルコス政権自体としては相当やはり国の内外においていろいろ不信な空気にさらされておる、政治が不安定な状況が続いておるということは客観的に言えるのではないか、こういうふうに思っておるわけでございますが、そういう中でマルコス政権自体もいろいろと努力をされてアキノ事件の真相等につきましても公正な委員会等も発足をいたしまして鋭意真相究明が行われております。そういう状況の中でマルコス政権自体も今は安定を徐々に取り戻しつつある、こういうふうな判断も出ておることもまた事実であります。
  79. 秦豊

    秦豊君 これは総理、いいでしょう。じゃ、安定している政権ですか。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安定、不安定ということも評価の中に入りますから、それも差し控えさしていただきます。
  81. 秦豊

    秦豊君 それは大変おかしいですよ。安定もしていない政権に、じゃ、なぜこの財政難のときに緊急援助をするのか。論理整合しませんよ。
  82. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、安定しているとかしていないとかということの判断を申し上げることは差し控えさしていただきますというわけです。
  83. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、あなた直接の担当だが、安定度には自信があるんですか、今後の。
  84. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今少なくともマルコス政権という中でフィリピンの政治が進められておることは事実でありまして、そしてまた、アキノ氏暗殺当時の騒然たる状況から今平穏さを取り戻しておることは、これまた事実であろうと思います。これからどうなるかということは、これはフィリピンの問題でございますから私たちがコメントする立場にはないわけですが、しかし、少なくとも日本とフィリピンとの間にはこれまでの長い友好関係がありますし、そしてフィリピン政府日本政府との間には、これまでの長期間にわたっての毎年の経済協力、円借款が続けられてきております。そして、そういう状況でございますから、やはり五十六年、五十七年に続いて五十八年度も同じ程度の円借款、経済協力をフィリピンに行うということは、私は、日比の今日の関係、これからの日本とフィリピンの関係、国家としての協力関係、親善関係を思うと当然のことではないかと、こういうふうに思っておるわけであります。
  85. 秦豊

    秦豊君 外務省、フィリピンの外貨準備高は幾らですか。
  86. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 一番新しい統計としましては、フィリピンの中央銀行が発表した十二月の数字がございますが、これによりますと、約八億ドル余りでございます。
  87. 秦豊

    秦豊君 八億。かつてフィリピン政府は外貨準備の水増しをやって厳しく批判されたんですよ。あなたの数字、大丈夫ですか。
  88. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 昨年秋以来、IMFとフィリピン政府との間で経済、財政問題につきまして非常にしばしば協議が行われておりまして、したがいまして、私は先ほど八億ドル余りと申し上げましたけれども、    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕 この数字につきましては、フィリピンの中央銀行がIMFの厳しい勧告あるいは助言、こういう状況のもとで発表した数字だと、こういうふうに理解しております。
  89. 秦豊

    秦豊君 じゃ、日本のフィリピンに対する債権残高は幾らか。外務省知っているでしょう、援助を実行するんだから。初歩的な数字じゃないのか。
  90. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お尋ねは海外経済協力基金からの円借款の残高だと思いますが、これは経済企画庁の方で正確に把握していると思いますので、経済企画庁の方から御答弁いたします。
  91. 秦豊

    秦豊君 どちらでも。
  92. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 経企庁、だれか答弁できますか。経企庁の関係者はいないですか。
  93. 秦豊

    秦豊君 その程度は政府にデータがあるでしょう。
  94. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  95. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  96. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お答え申し上げます。  私どもが承知しておりますところでは、五十八年十二月末現在で千九百三十四億円となっております。
  97. 秦豊

    秦豊君 公的債務は、じゃ繰り延べるのですか。
  98. 柳健一

    政府委員(柳健一君) その前に、ちょっと間違えました。十二月末現在ではなくて二月二十九日現在でございます。
  99. 秦豊

    秦豊君 今年二月。
  100. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 本年二月二十九日現在でございます、千九百三十四億円というのは。
  101. 秦豊

    秦豊君 正確に答えてくださいよ。
  102. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 申しわけございません。  それで、御質問でございますが、繰り延べの計画でございます。
  103. 秦豊

    秦豊君 外務省、援助の第一回分としては幾らですか。
  104. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 第一回分という御質問の趣旨がちょっとよくわからないのでございますが……
  105. 秦豊

    秦豊君 例えば五百とか、いろいろあるでしょう、五百億とか。
  106. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 十二次の円借款のことでございますか。
  107. 秦豊

    秦豊君 はい。
  108. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 昭和五十八年度の第十二次の円借款の総額につきましてはまだ確定しておりませんが、ただいまの段階では大体昨年程度のレベル、つまり五百五十億円ぐらいの円借款を念頭に置いて検討しておる段階でございます。
  109. 秦豊

    秦豊君 それじゃ、総額で幾らになるんですか。
  110. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 総額と申しますのは円借款の総額でございますか。――ですから、大体今申し上げましたとおりでございます。
  111. 秦豊

    秦豊君 五億ドルという金額は、じゃどういうものを積算した金額ですか。
  112. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 五億ドルという数字は、私は新聞等では見ましたけれども、これは恐らく公的債務、円借款以外のものもすべて含まれている数字じゃないかと思います。
  113. 秦豊

    秦豊君 総理日米両国政府が五億ドルずつ、つまり例えば十億ドル、緊急融資はもう決めたんですか。
  114. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 緊急融資という意味がどういう意味か十分把握できないのでございますけれども、フィリピンから各国、特にアメリカ日本に対して緊急に援助をしてほしいという要請が出されているということは私どもも承知いたしております。これに対しましてアメリカは、現在まで政府援助あるいはアメリカの輸出入銀行、CCC等から融資を行っているというふうに聞いております。しかし、国際的協調のもとでの緊急融資を行う、例えばつなぎ融資も含めてそういうことが行われているというふうには私どもは理解いたしておりません。
  115. 秦豊

    秦豊君 まず、円借款五百五十億、これはまあ伝えられておる。日米両国政府は共同の方向として十億ドル、これは内定しているんじゃありませんか。
  116. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 国際通貨基金がフィリピンの一九八四年いっぱいまでの資金的な不足がどのくらいと見込まれるか調査を行っております。そういう調査を行った後、例えばその資金不足を国際金融機関がどの程度供与をし、あるいは二国間でどの程度供与をし、さらには民間銀行がどの程度供与するかという話は固まっていくかと思いますが、現在IMFが調査中でございまして、金額等についても、民間、公的部門いずれもまだ固まっていない状況でございます。
  117. 秦豊

    秦豊君 それじゃ、外務省、第一回の円借款、いつ実行する予定ですか。
  118. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先ほど安倍大臣からお答え申し上げましたとおり、まだ決定いたしておりません。
  119. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、そんなに悠長なテンポなんですか。
  120. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 悠長にしているわけではありませんで、できるだけ早く今総理も言いましたようにこれは決定をしたい、こういうことでフィリピンとも話し合っておりますし、我が政府内におきましても今調整を急いでおる、こういう段階であります。
  121. 秦豊

    秦豊君 じゃ、内定している円借款援助案の具体的な項目と金額をここで例示してください。
  122. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先ほど安倍大臣から申し上げましたが、商品借款が中心となって、それ以外にプロジェクト、それから債務救済と、三つから構成されることになっておりますが、その内容はただいま検討中でございますので、差し控えさしていただぎたいと存じます。
  123. 秦豊

    秦豊君 おかしいね、それは。大変奇妙な答弁だと思いませんか。なるべく急ぎたい、そこまではわかるとする、百歩譲って。この段階でまだそんなゆるゆるしたテンポとずさんな内容ですか。納得できない、そういう答弁は。早く決めたがっているにしてはおかしいじゃないですか。
  124. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 通常このような、どこの国に対しましても円借款案件で決定していない場合、先方政府と交渉したりあるいは日本政府部内で検討中の案件につきましては公表を差し控えさしていただいておりますので、御了承願いたいと存じます。
  125. 秦豊

    秦豊君 財政難のときの巨額の援助について基本的に国会がもっと承知すべきだと、私はそう思うんだが、総理どうですか。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たしか今まで円借につきましては、数字が決まると、それは閣僚協あるいは閣議でやはり了承するとか何か手続があったと記憶しております。そのときに初めて数字というのは内部的に決まり、それでも数字を公表するかどうか、先方に伝えるまでの間どういう手続をとるか、私まだその辺のことはよくわかりませんが、ともかく内部で決定するまでは外には出さない、内部で決定するまでには先方ともろもろの問題についていろいろ詰めをやる、そういうことで、まだそういうふうに内部で、我々閣僚の間においても正式に決定していないのですから、これは外には出せる問題ではありません。
  127. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、三月十四日付の毎日新聞、「フィリピン救済」内定、これですね。これはほぼ私は事実に非常に近いと思うんだが、どうです、まず。
  128. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだそこら辺までは何も決まっていないので、これは事務当局が申し上げたとおりであります。ただ、私が承知しておりますのは、今度の五百億は昨年並みの、五百億の円借の主力部門がはっきりしていないですが、三百億以上がいわゆる商品借款で協力する、こういう基本方針だけを私は承知いたしておるわけでございます。そして、その詰めは今各省事務当局間でやっておるわけでございますし、まだ閣僚段階に上がっておりませんで、正式な今決定した数字というものを申し上げる段階にはないということも御理解をいただきたいと思います。
  129. 秦豊

    秦豊君 いやしくも媒体が二面トップで書く記事というのは非常に裏づけをとっている。じゃ、これは当たらずといえども遠からずとは答えられるでしょう。
  130. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) その五億ドルというのは、私も今いろいろと質疑がありましたけれども何も聞いておりません。これは恐らくIMFとの関連でこれからいろいろと論議される問題じゃないかと、こういうふうに思います。円借については大体の規模が決まっております。ほとんど今申し上げましたような粗筋が決まっておるわけで、それじゃ具体的に詳細な数字に至ってはまだ詰めの段階で申し上げる段階ではないと、こういうことでありまして、円借は三百億以上が円借款だという大きな数字でいくわけであります。
  131. 秦豊

    秦豊君 いやしくもこれはあなた、出身の新聞社ですよ。しかも円借款はぴたりピンポイントではさっと報道している、全体的に非常にリアルでしょう。
  132. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) リアルかどうかは決まってからでないと判断できないと思うわけでありますが、今私がその記事を見た範囲ではまだまだ相当な推測を交えた記事ではないかと。特に五億ドルというようなことは何も私は聞いておりませんし、そういうところへいくかどうかはこれから先の問題でありまして、何も日米間で相談しておる問題でもないということは、これははっきり申し上げられるわけであります。
  133. 秦豊

    秦豊君 それじゃ角度を変えて、商品借款自体がもともと変則的なのに、なぜ今回それが突き出していますか。
  134. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お答えいたします。  商品借款というものは、開発途上国の国際収支状況が非常に悪くなりまして、当該国の経済の安定にとって緊急に必要とされる物資を輸入する必要が起きた場合に、そういうものに対して供与するのが商品借款でございます。わが国の援助は原則としてプロジェクト借款、プロジェクトを中心といたしておりますが、そのような状況になった国に対しては、従来ともほかの国に対しましてもそういうような商品借款を出して、国際収支の危機に際して緊急輸入物資というものを輸入するための資金を供与して経済の安定に資する、こういうことをしているわけでございます。
  135. 秦豊

    秦豊君 じゃ、使い道ですね。どの程度タイドなのか、どの程度拘束するのか、縛るのか。タイドかアンタイドかを含めて。
  136. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 商品借款は一般アンタイドにいたしております。現在の原則といたしましては一般アンタイドでやっております。
  137. 秦豊

    秦豊君 それじゃ、商品借款に関連する日系企業は何社ありますか。
  138. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 申しわけございませんが、その数は私はちょっと承知しておりません。
  139. 秦豊

    秦豊君 借款を実行しようという対象の数もわかりませんか、本当に。借款をこれから実行する対象の数もわかりませんか。
  140. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 商品借款の供与は物資の輸入のために出すのでございまして、対象の会社とかなんとかというのはそもそも対象に入っておりません。
  141. 秦豊

    秦豊君 じゃ、日系企業の主な業種と数、社名、これは明らかですか、商品借款を使うんだから。
  142. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今の企業の数とか、どういう企業が出ているかということは説明させますが、しかし商品借款を、今局長が言いますように、これはフィリピンに与えるわけですが、これがすべて日本の民間企業に、進出した企業にこれが行くわけでは決してないわけで、最終的には、部分的にはそういう面も出てくるかもしれませんけれども、しかし物資で行くわけでございますから、フィリピン経済の再建というものにこれを充てるわけでございますから、日本の企業にこれが中心に当てはまるということではないわけでございますから、その辺は御理解をいただきたいと思います。
  143. 秦豊

    秦豊君 だが、外務大臣、かなりなウエートは日系企業が使う部分に充てられるんでしょう。
  144. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私もその具体的に詳細には今申し上げるほどの知識はないわけですが、私の聞いている範囲では、部分的には日系企業が潤うという面は出てくると、こういうふうに聞いておりますが、しかし商品借款の性格からして、これが日系企業ばかりに行くものではないということであります。
  145. 秦豊

    秦豊君 その答弁は納得できませんね。部分的とおっしゃるが、大きいのですよ、規模が。
  146. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先ほど申し上げましたように、商品借款と出しますのは、フィリピンの経済の安定のために緊急に輸入を必要とする物資をフィリピンが購入するために、例えばフィリピン政府に我が国から資金を供与する、貸すわけでございます。その中身は、具体的にどの企業に結果として行くかということは、これは前もってはかることはできないわけでございまして、これはフィリピン政府日本政府で相談いたしまして、どういう物資が現在のフィリピンの経済の安定にとって緊急性が高いかということを相談して決めて、そこから先はフィリピン政府がそれを調達するということになるわけでございまして、出す方の私どもといたしましては、その物資のどの部分がどこの会社に行って、どこの会社がその結果受益をするかというようなことを前もってはかることはほとんど不可能に近いぐらい難しいわけでございます。
  147. 秦豊

    秦豊君 当然、業種ぐらいはつかんでいらっしゃいましょうな。
  148. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) フィリピンに進出しております我が国の企業の詳細につきましては、現在私ここに資料を持ち合わせておりませんので、正確を期するために、詳細に調査いたしまして、後刻御提出申し上げたいということで御理解を賜りたいと思います。
  149. 秦豊

    秦豊君 その程度ですかね、外務省の把握は。
  150. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  151. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  152. 秦豊

    秦豊君 それじゃ外務省、いまこの場で答えられる範囲の日系企業の業種等々についてデータを述べてください。
  153. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 我が国のフィリピンに進出しております企業の総数でございますが、純然たる日本企業が八十三、これはすべてジェトロの調査でございます。それから日比の合弁企業が六百五十八でございます。これはジェトロがたしか昨年の九月現在で調査した数字だと承っております。業種でございますが、日本人企業八十三のうち製造業が二十八、それから商業が三十七というのが主要なものでございまして、あとはその他でございます。それから日比合弁企業は、これもやっぱり製造業が一番多くて二百四十三、これはちょっと数字が必ずしも明確ではありません。それからその次に多いのが商業でございまして百九十五、あと残りはその他ということでございます。  ただ、念のために申し上げますと、先ほど経協局長が答弁申し上げましたとおりに、日本からの円借款をどのように、特に商品借款でございますが、使用するかという問題は、これはフィリピン内部の、特にフィリピン政府とそれぞれの国内関係との問題でございまして、日本政府がどうこうと言う問題ではないという点は改めて申し上げたいと思います。
  154. 秦豊

    秦豊君 じゃ橋本さん、その製造業二十八がいまどういう状態に追い込まれているかぐらいは御存じでしょうな。
  155. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 先ほど申し上げました数が非常に多いものですから、一つ一つの企業についてどういう状況にあるか、私全部は承知しておりませんが、ただ、私が一般的に聞いておりますのは、外貨事情がだんだん悪くなりまして、そこで重要原材料を輸入する外貨がだんだん苦しくなってきたと。したがいまして、レイオフでございますとかあるいは操業停止という工場も現に出ているというふうに聞いております。
  156. 秦豊

    秦豊君 ようやく率直な答弁が出ました。すると、今度の緊急援助で一番助かるのは、まさにアジア局長が裏づけたとおり、ああいう現地の日系企業なんですよ、総理。民衆じゃないんです。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日系企業のみでなく、フィリピンの民族資本、民族工場も非常に多くあると思いますし、またそれによって雇用されているのはフィリピン人が非常に多いと思うんです。そういう人の失業問題とか、それに関連する事業、下請とか全部影響してくるだろう。それで、しかもそれは日系企業だけじゃなくて、フィリピンの民族資本による企業もたくさんあるんだろうと思います。
  158. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、もう乾いたときの干天の慈雨、こう感ずるのは日系企業なんです。そうお思いになりませんか。
  159. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは先ほどからしばしば答弁しましたように、果たしてどういうふうに商品借款がこれから効果的に使われるかということはフィリピン政府の判断によるところが大きいわけでございますから、我々としては、そういう中でこれがあるいはまた日系企業の方にも部分的に回されるということになれば、それなりに日系企業が助かるという面も出てくるんじゃないかと思いますが、しかしこれは日系企業といいましても、フィリピンとの間で合弁をしたり、あるいはフィリピン人を雇用したりしてやっております企業でございますから、ただ日本の企業だけが助かるとかそういう状況のものではなくて、フィリピンの経済にやっぱり寄与するものである、そういうふうに私は思います。
  160. 秦豊

    秦豊君 質問は一語で続けますけれども、詳細なデータ、進出企業、日系企業の数、業種、状態、規模等を含めた全リストは正確に提出をしていただけますね。それは委員長から計らっていただけますね。
  161. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  162. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  163. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 先ほど御答弁申し上げました日系企業あるいは合弁企業の数字その他につきましては、これはジェトロの調査に基づく報告でございますので、通産省初め関係方面と協議いたしまして、御要望の資料をできる限り、別途、後刻御提出申し上げたいと思います。
  164. 秦豊

    秦豊君 その場合に、関連している商社の名前も含めていただけますか。
  165. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 関係各省と協議いたしまして、それから大臣の御了承を得てから御提出申し上げたいと思います。
  166. 秦豊

    秦豊君 いや、一秒答えればいいんですよ。商社の名前も含んでくださいねと言っている。
  167. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 結構です。
  168. 秦豊

    秦豊君 ならば、質問を続けます。  IMF、国際通貨基金がいまフィリピンの現状に対してどういう不安を持っているか、大臣、御存じですか。
  169. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 詳細はまた事務当局からお話をさせますが、私が聞いている範囲では、IMFがフィリピンの経済について分析をし、調査をしておるわけでありますが、今のフィリピン経済はなかなか重症だというふうな判断を持っておるようであります。そして、そのためには相当思い切った経済再建の方策、方途を講じなければならぬということで、今その経済再建策等についてIMFがフィリピン政府との間で話し合いをしておる、またIMF自身がその方途について検討を進めておる、そうして大体これは煮詰まりつつある、こういうふうに聞いておるわけであります。
  170. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、昨年の秋以来、IMFが真剣にフィリピン経済再建に取り組んでおりまして、取り組んでおると申します意味は、フィリピン政府と密接に協力あるいは協議しながらIMFが昨年秋以来真剣にこのフィリピン政府協力し、フィリピン経済再建に向けてフィリピン政府とともに努力しているというふうに承知しております。
  171. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、IMFの調査は綿密だから慎重になる、外務省並びに日本政府の調査はずさんだから急ぎたがる、そうは思いませんか。
  172. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我々は、政府として、先ほど総理が言いましたように、フィリピンの経済協力については基本的な考え方を持っておるわけです。その基本的な考え方によってこれは進めるという方針でやっておるわけでございます。同時に、一方では、IMFの調査というものも我々は同時並行的にこれを見ておるわけでございますが、そのIMF調査は慎重にやっておりますし、そしてまた相当思い切った再建策等も考えておるようであります。そして、それは煮詰まっておるというふうに我々は今判断をしておるわけでございます。それを総合してこの時期等については決めたいと、こういうふうに思うわけであります。
  173. 秦豊

    秦豊君 それじゃ、カントリーリスクの観点から見ると、フィリピンはどんな状況でしょう。
  174. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) このカントリーリスクと申しますのは、政治、経済、社会、あるいはその国の置かれた国際情勢、さまざまの要素があろうかと思いますので、一概に断定的に言えないのでございますが、私どもといたしましては、先ほど安倍外務大臣も御答弁申し上げましたとおりに、内政問題につきましては、いわゆるアキノ事件という悲惨な事件がございまして、多少動揺した時期がございましたけれども、その後、小康状態と申しますか、安定の方向に向かって現に動いているという判断でございまして、なおこういったカントリーリスクを国際関係の、あるいは国際環境という面から見ますと、フィリピンは現在、周囲、周辺に特に戦争あるいは敵対関係にあるような国は私はないという意味におきまして、国際的にはフィリピンはASEANの一国でもございますし、また日本中国その他の国とも友好関係がございまして、私は国際環境におきましては問題なかるべしと、かように考えております。
  175. 秦豊

    秦豊君 あんなのは答弁とは言えないんですよね。饒舌と言うんです。日系とかアメリカの民間機関のデータはお持ちでしょうね。
  176. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 何を御指摘か、私……
  177. 秦豊

    秦豊君 カントリーリスクの判定を聞いているんです。日系やなんかのデータがありますね、それを聞いているんです。
  178. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 日系と申しますと……
  179. 秦豊

    秦豊君 質問の趣旨がおわかりになりませんか。
  180. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) いや、そうではございませんで、アメリカ政府あるいはその他の公式の資料というものは、私は承知しておりません。
  181. 秦豊

    秦豊君 いや、私、日系とかアメリカの民間機関と前提を置いて聞いている。
  182. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 現在ただいま資料として持っておりません。ここに持っていないという意味でございます。
  183. 秦豊

    秦豊君 わかりました。その程度でしょうかね、外務省の把握というのは、いつもこうなんですか。
  184. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) どうも御満足いただけなくて恐縮なんですが、いつもこうということではございませんで、いつもは一生懸命やっております。
  185. 秦豊

    秦豊君 資料を提示したいが、協議願えますか。
  186. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  187. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  188. 秦豊

    秦豊君 同じ問題について、通産大臣はいかがですか。
  189. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 政府委員を呼んで、これは答弁させます。
  190. 秦豊

    秦豊君 それじゃ、政府委員を待ちながら質問を続けましょう。  総理、この問題はまだまだ私諦めるべき問題がたくさん残されていると思いますが、まず少なくとも総理に伺う基本的な質問は、やはり五月の向こうの選挙、国民議会選挙がありますが、その前には援助の、第一回分を実行すべきではない、マルコス政権への端的なてこ入れはなすべきではない、フィリピン民衆の怨嗟の的になってはならない、こういう観点を私持っていますが、時期の問題についてはどのように御配慮があり得ますか。
  191. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、その相手側の選挙の時期とか、そういうものにかかわらず、やはり日本政府の方針に基づいて国際的な協調のもとにやるべきときが来たらやっていいと、そう思っております。フィリピンの内政に日本が巻き込まれることを御心配でそういうことをおっしゃっておるかもしれませんが、選挙を待つとかなんとかということになるとかえって内政に巻き込まれる危険性があるので、いままでのペースで事務的に流してきたように実行していきたい、そう思っております。
  192. 秦豊

    秦豊君 安倍さんはそれでよろしいんですか。
  193. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、日本政府としては、総理が申しましたような方針で進んでおります。
  194. 秦豊

    秦豊君 フィリピンは政府委員を待ちますが、対韓援助の問題について、三月早々に日韓双方の実務者会議が終わったと聞きますけれども、そこでは対韓援助については何が決まったんですか。
  195. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 昭和五十八年度の、つまり第二年目の韓国に対する円借款の内容が決まったわけでございます。
  196. 秦豊

    秦豊君 だから、その内容を明らかにしてください。
  197. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お答え申し上げます。  昭和五十八年度分は昨年の十二月にプレッジをいたしまして、総額四百九十五億円、その内容は住岩多目的ダム、廃棄物処理場等七つの事業に及んでおります。
  198. 秦豊

    秦豊君 対韓援助については、これですべて煮詰まっておりますか。
  199. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 昭和五十八年度の分は全部決まりました。
  200. 秦豊

    秦豊君 その資料も当委員会に提出をしていただけませんか、全容を。
  201. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 提出申し上げます。
  202. 秦豊

    秦豊君 総理、少し観点変わります。  総理は、朝鮮民主主義人民共和国のことを日ごろは何とお呼びですか。
  203. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 北朝鮮と呼んでおるのではないかと思います。
  204. 秦豊

    秦豊君 盟友レーガン大統領は正式国名で呼んでおります。朝鮮半島のことは何とお呼びですか。
  205. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮半島のことは大体朝鮮半島と呼んでいます。韓国人と会うときに韓半島と呼んだこともあります。
  206. 秦豊

    秦豊君 ことし一月十三日の日本記者クラブでの講演では韓半島と呼んでいらっしゃいますね。御記憶ですか。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あったかもしれません。
  208. 秦豊

    秦豊君 日韓基本条約では呼称はどうなっていますか。
  209. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) お答え申し上げます。  日韓基本条約におきましては、第三条で大韓民国の基本的立場についての規定はございます。
  210. 秦豊

    秦豊君 だから、朝鮮とかそれからハンバンドとか。
  211. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 朝鮮でございます。
  212. 秦豊

    秦豊君 韓国政府は韓半島と呼んでほしいらしいです。しかし、実際は朝鮮半島。一国の総理が講演される場合は公的ですから、やはり言の葉では済みませんので、なるべく正式、正式を出された方がよろしいかと思います。  ところで外務省、韓国は朝鮮半島における唯一の合法的政権ですか。
  213. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、日韓基本条約の第三条という規定が委員御承知のとおりございまして、その中で次のような規定が置かれております。「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(Ⅲ)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される」、この意味のとおりでございます。
  214. 秦豊

    秦豊君 今日ではアメリカも韓国も朝鮮半島には二つの国家が現存している、存在しているということを認めていますね。
  215. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) いわゆる国際法で言うところの独立国家、主権国家という、そういう法律的な概念ではなくて政治的な概念といたしまして、休戦ライン以北にそういう朝鮮民主主義人民共和国と称する国が、これは法律上のものじゃなく政治上の意味でございますが、存在するということは、アメリカも韓国も双方認めております。
  216. 秦豊

    秦豊君 北朝鮮、いわゆる朝鮮民上主義人民共和国、この承認国は何カ国になっていますか。
  217. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 朝鮮民主主義人民共和国を承認し、外交関係を持つ国は現在百二でございます。
  218. 秦豊

    秦豊君 それでは例の国連決議第百九十五号のときの臨時委員会、この構成メンバーのうちではどんな国が承認しておりますか。
  219. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) ソビエト社会主義共和国、ウクライナ、シリア、インドの四カ国でございます。
  220. 秦豊

    秦豊君 外務省はたしか五年前に、カーター前大統領が三者会談を北側に提唱したときにはそれを積極的に支持された。今回は反対していらっしゃる。どんな理由ですか。
  221. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 御指摘のとおりに、確かにカーター大統領はいわゆる三者会談を呼びかけた経緯がございます。それにつきまして私の理解するところは、当時の外務省、日本政府は、平和的な話し合いによって朝鮮半島の緊張緩和がもたらされることを期待して、話し合いによる、つまりその場合は三者でございますが、問題の解決を期待する、こういうことでございました。現在は御承知のとおりに北は三者会談を呼びかけ、それから韓国及びアメリカは南北二者会談、またこれと並行して南北朝鮮プラスアメリカ中国の四者会談、それからその四者会談のほかに、また世上六者会談などなどの動きがございますが、日本政府は一貫してこの問題につきましては、朝鮮半島の将来を決定するような重要な問題はあくまでも南北当事者、朝鮮半島に住んでおられる方々の話し合いによって解決すべきであるということを一貫して言っておりまして、現在も新聞報道はいろいろございますが、政府が公式の発言といたしまして、三者でなければならぬ、四者であるべきだとか、あるいはそういうことを言ったことはございません。
  222. 秦豊

    秦豊君 それから六者会談支持から四者会談方向に変わっているんじゃありませんか。
  223. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 六者会談につきましても、政府が公式に六者会談でなければならぬと言ったことはございませんで、私の理解では、外務省首脳が新聞記者の質問にお答えになりまして、四者会談のほかに六者会談という動きがあるがどうかということに対しまして、これは現にそうでもございますが、韓国政府、それからアメリカ政府が、ソ連がもしこの会談に参加するような場合には日本にも入ってくださいよと言っているという趣旨のことを説明されたのが新聞に報道された、このように承知しておりまして、再々御答弁申し上げましたとおりに、政府が六者会談でなければならないというような、あるいは六者会談を希望するというような、そういう公式発言は全くなかったというふうに承知しております。
  224. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、あなたは北の三者会談については真意を疑っていたが、真剣な気持ちがわかってきたと先日衆議院で答弁されています。疑っていたというのは何をお指しになりますか。
  225. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 三者会談について北朝鮮の真意を疑っておったというのは、御承知のように三者会談の提案があのビルマ・ラングーン事件に前後して行われたわけでございます。そしてラングーン事件は、御承知のようにビルマが正式に、これは北朝鮮の行為であると、こういうふうに非難をしておるわけで、ですから一方においてはああした事件を起こす、一方においては三者会談を提案する、どういうところに北朝鮮の真意があるんだろうか、こういう点でわからない、こういうふうに言ったわけでございます。しかし、その後の状況を見てみますと、特に中国と北朝鮮との話し合い、また中国アメリカとの話し合い中国と我々との話し合い、そういう中国側とのいろいろ話し合いを通じて見ますと、北朝鮮は真剣にこの問題に取り組んでおるのではないかという節も見えないわけではない、こういうことを申し上げたわけであります。
  226. 秦豊

    秦豊君 それから、真剣さがわかってきたというのは、何かアメリカサイドから感触がもたらされたわけですか。
  227. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今申し上げましたように、中国と北朝鮮との関係で、我々中国とは非常に深い接触を持っておるわけですが、そうした主として中国との話し合いの中で、北朝鮮も真剣に考えておるのじゃないかというふうな感触を得たわけでございますが、しかしそれはあくまでも感触であって、これが事実かどうかということについては、今後の事態を見なければわからないわけであります。
  228. 秦豊

    秦豊君 総理、去年十一月の米韓共同声明では、アメリカは韓国の完全かつ平等な参加なしには北側と対話しないと述べて、それに対してたしか総理は評価されましたですね。
  229. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いや、私は評価したことはありません。私は、基本的には朝鮮半島の問題は南北両当事者が話すべき問題である、これは基本、大原則であります。南北両当事者が反対したり嫌がったり異議を差し挟んでおるようなことを、周りの者が賛成したりすべき問題ではないと、これが基本的立場です。  それで、最近の情勢を見ますと、ビルマのラングーン事件というものが大きな一つの変化を呼び起こした。韓国の要人が、ビルマ政府の発表によればああいうようなテロによって謀殺されたという大きな事件、外務大臣もやられるというような大きな事件が起きたわけですから、韓国の身になってみれば、これは重大なる衝撃を受けた国家的大事件に発展してきた。そういうような状況から変化が起きてきた、私はそう思っておるのであります。
  230. 秦豊

    秦豊君 やっぱり筋からしますと三者会談、北朝鮮はまさに今回、韓国の完全な対等のあれをのんでいるわけですから、日本としても三者会談推進の方向の方が合理性がありませんか。
  231. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三者会談とか四者会談とか、当事国が余り賛成しないことを日本がしゃしゃり出てやるべきではない。我々は、朝鮮半島の平和と安定には重大関心を持っておりますけれども、しかし日本の憲法や我々がとってきている外交、安全保障政策、つまり個別的自衛権以外にないという、そういうことを考えてみますと、やはり慎重にこれは対処しなければいかぬと一貫して私は申し上げております。
  232. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、あなたは外交演説で北側との文化、経済の交流はずっとやっていくと。北側は最近とみに対日態度をかたくしている。こういう状況でそれが可能ですか。
  233. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、基本的には我々は北朝鮮は承認しておりませんけれども、しかしこれまで続いてまいりましたいわゆる文化あるいは民間の経済交流あるいはまた人的往来等はこれは進めていこうということが基本的な政府の方針としてこれまでも打ち出されており、そして私もそれを継承して取り組んでおるわけでございます。ただ、残念ながらラングーン事件がありまして、そしてあのラングーン事件が北朝鮮自身が介入したと、こういうこともありまして、日本と北朝鮮との関係は非常に冷たい状況になってきておる。民間の漁業協定も締結されないまま今日に至っておるということでございます。残念でありますが、しかしこれは日本の問題でなくて、いわゆるラングーン事件というものが大きな原因となって今日に至っておるわけでございます。
  234. 秦豊

    秦豊君 北朝鮮に対する貿易制裁ですね、これは現在も続いていますか。
  235. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) お言葉ではございますが、貿易制裁ということは政府はやっておりません。
  236. 秦豊

    秦豊君 どういう措置をとっていますか、今ブレーキになっている北側との関係では。
  237. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 昨年の十月九日にラングーン事件が起こりました後、種々の調査の結果、ビルマ政府が北の犯行であると断定をしたことは御承知のとおりでございます。それを受けまして日本政府としては、官房長官談話という形で、人の往来、具体的には外交官の接触を第三国であろうともやらない、あるいは日本の国家公務員の北朝鮮渡航は原則として見合わせる。それから北朝鮮から日本に入国される方々についても、公務員、特に地位の高い公務員の方々については制限を課す。それから飛行機の往来につきまして、たとえ第三国の飛行機でありましょうとも、北朝鮮から日本に直接飛んでくるということは認めない、こういうことが骨子でございます。
  238. 秦豊

    秦豊君 外務大臣、今、局長が言われたことは今後ともずっとお続けですか。
  239. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 現在の情勢の中においては、今の対北朝鮮措置は続けていきたい、こういうふうに考えております。
  240. 秦豊

    秦豊君 かなり長期にわたりますか。
  241. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 北朝鮮に対する措置と申しますのは、先ほど来御答弁申し上げましたとおりに、テロというものはどんなことがあっても許せない、特に第三国の主権下において、国際的なテロ、しかも一国の大統領それから閣僚を多数爆破して抹殺するというような政治テロはどんなことがあっても許しがたいという、そういう観点から発したものでございますので、この点につきまして何らかの政府としてはこの措置を変えるにつきましては、それなりの国際情勢環境の変化でございますとか、あるいはそれなりの対応を北側においてなされるというような状況がございませんと、私はこれを変えることは難しかろうと存じます。
  242. 秦豊

    秦豊君 総理、それにしましても、やはり全体的な北東アジアの枠組みを考えた場合に、日本とピョンヤンとの関係が冷たくかたい、これは好ましくはありませんね。
  243. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 関係改善ということは、私は特に民間レベルにおけるものは当然だろうと思っておりますが、しかしそれも相手の出方がどう出るかということにもよると思います。
  244. 秦豊

    秦豊君 総理は、朝鮮半島安定には北の軍事力削減が先決という御認識をあるいはお持ちでしょうか。
  245. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 南北両方で話し合って、そうして両方でよく理解に達した措置が起こることが望ましいと思います。
  246. 秦豊

    秦豊君 しかし、南は駐韓米軍を初め、ラロック氏ではないが、一千発の戦術核弾頭の配備という中で、なおかつ北側優位というふうな御認識はおありですか。
  247. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、北は余り優位でないと言い、あるいは中国の指導者もそれほど心配することはないと言っていらっしゃる。南はしかし向こうの戦車師団やあるいは陸軍兵力の展開ぶり、あるいはゲリラその他を見てまだ非常に心配しておる、そういう状態で、情報こもごもありまして、確としてこれだという段階ではない。私は両方ともその情勢全般については注意深く見守っておる、それが正しいと思っています。
  248. 秦豊

    秦豊君 外務省、この北朝鮮が三者会談で提唱をしている南北連邦制構想、客観的にどういうふうに見ていらっしゃいますか。
  249. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 朝鮮半島に住んでおられる方々が一体になりたいというお気持ちはこれは痛いほどよくわかります。ただ北朝鮮、つまり朝鮮民主主義人民共和国が現在まで提唱しております連邦の案は、これ、大前提といたしましてあくまでも在韓米軍の撤退、それから現在の休戦協定を平和協定に格上げするという、その大前提がついておるということに私どもは注目しております。
  250. 秦豊

    秦豊君 今、橋本さん言われたまさに朝鮮休戦協定を平和協定に変える、これがすべての第一歩ではないでしょうか、外務大臣
  251. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) こうした休戦協定の問題、あるいは将来の統一政府については、いわゆる両当事国が話し合って、そしてその中で円満な両当事国の合意が出れば、それは韓国、朝鮮半島全体の民族の一致した結論としてこれは国際的にも認められなければならない、日本もこれを認めなければならない、こういうふうに私は思うわけです。
  252. 秦豊

    秦豊君 総理、朝鮮半島がいかなる外国の軍事基地や作戦基地、あるいは衛星国にもならない、ブロックにも加盟しない、中立国家になる、その地帯になるというふうな方向については歓迎されますか。
  253. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現実の問題として、そういう形にいくことは非常に難しい状態にあるだろうと思います。
  254. 秦豊

    秦豊君 確かに難しいと私も認識します。しかし、大方向としてはいかがでしょう。
  255. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうものの現実性について私は非常に疑い深い考えを持っておりまして、そういう方向が果たして妥当であるや否や、冷厳なる国際情勢から見て、現実性がないという面から見ても疑問に思っております。
  256. 秦豊

    秦豊君 同じ問題について安倍さんはいかがですか。
  257. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今お話しのように、確かに現実的には極めて困難であろう、冷厳な国際情勢のもとでは困難であろうと思います。ただ、両国、両当事国が完全な合意に達してどういう国家形態を選んでいくかということは、私は朝鮮民族の自主的な判断にゆだねられるべきものであろう、こういうふうに思います。
  258. 秦豊

    秦豊君 総理とお親しいはずのキッシンジャー氏がかねがね言われておりますが、ソウルでも述べておられますが、中ソのいずれかが韓国を承認すれば、アメリカは北を承認できる、つまりクロス承認方式ですね。いろいろ考えたが、これが朝鮮問題解決の唯一の方法だと方々で述べておられます。総理はこれに対しては。
  259. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 南北の両方の国がそれに賛成すれば、それは一つの前進であろうと思います。問題は北と南の国が賛成するかどうかということだろうと思います。
  260. 秦豊

    秦豊君 今度の訪中、日中の首脳会談ではこの種の問題、クロス承認問題等々もお出しになるお気持ちがおありですか。
  261. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 余りそういう立ち入った難しい問題にはさわらぬ方が朝鮮半島の問題については賢明ではないかと。今の北と南の両国の主張の状況環境の厳しさ、そういう問題を考えてみると、余り現実離れすることを申し上げることもどうかと思います。
  262. 秦豊

    秦豊君 外務省、今ヨーロッパのNATO側とワルシャワ側はどんな信頼醸成措置を実行しているか承知していますね。
  263. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) お答え申し上げます。  御承知のとおり、一九七五年に欧州安全保障協力会議というものが開催されまして、それのフォローアップという形でこの三月十六日までいわゆる欧州軍縮会議というものが開催され、その中でいわゆるその信頼醸成摘置という問題が討議されてきたということは存じております。
  264. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  265. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十九年度総予算三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き秦豊君の質疑を続けます。秦君。
  266. 秦豊

    秦豊君 午前中の通産省に伺ったカントリーリスク間願、あれはどうなりましたか。
  267. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 通産省といたしましては、輸出保険等のこともあり、いろいろ勉強はいたしておりますけれども、しかし特定の国に対して申し上げることはこの際差し控えさしていただきたいと存じます。
  268. 秦豊

    秦豊君 私がデータをしゃべると幾分も費しますから、残念ながらやめますが、一言、総理に申し上げておきます。  日米の民間調査機関のランクでは、フィリピンはDランク、投資や援助は差し控える、こういう認定です。十分に御参照あられたいと思います。いかがですか。
  269. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 秦議員の御発言として拝聴いたしておきます。
  270. 秦豊

    秦豊君 栗原さん、五九中業の長官指示はちょっとおくれぎみと思いますが、どんな内容を考えられておりますか。
  271. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) まだ五九中業についていつ長官指示を出すかということは決めておりません。したがって、その内容をどうするかということも決めておりませんが、私が今考えておりますことは、国際情勢が非常に厳しい、そういう現実を踏まえまして、各国間の技術水準、そういうようなものは十分に考慮しなければならぬ、あるいは正面と後方のバランスもとらなければならぬ、また掲上すべき事業につきましては、その必要性とか優先度とか緊急度、そういうものを勘案してやらなければならぬなと思っておりますけれども、最初申し上げましたとおり、まだ五九中業について具体的にどうするということは考えておりません。
  272. 秦豊

    秦豊君 結局、五六中業の何を見直すのですか。
  273. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) したがいまして、五九中業についてはまだ考えていない、五六中業のどこをというよりも、まだ考えていない、そういうことでございます。
  274. 秦豊

    秦豊君 国防長官も来日されるようだが、長官指示は、四月は無理で五月にずれ込みの感触はいかがです。
  275. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 正直言いまして、この国会で予算を通していただいた後いろいろと考えたいと思っておりますので、時期につきましては、今のところ四月とか五月とか、いつだとかいうようなことは考えておりません。
  276. 秦豊

    秦豊君 だが、常識的に五月が甚だ近いのではありませんか。
  277. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 秦さんの常識はそういうことかもしれませんが、私といたしましては、そんなに今までと、けた外れて時期がずれるというようなことはないと思っております。
  278. 秦豊

    秦豊君 総理、安全保障関係の例の諮問機関ですね。高坂委員会で最終的なものでしょうか。
  279. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 平和問題懇談会は先般各委員の意見を取りまとめまして中間報告みたいにいただきましたが、これは主として経済安全保障関係の観点からの貴重な御意見でございました。いずれ次の段階に差しかかるという話であります。
  280. 秦豊

    秦豊君 教育臨調の次は安保臨調というふうな構想をそろそろお持ちではありませんか。
  281. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう構想は今持っておりません。
  282. 秦豊

    秦豊君 高坂委員会の全部のリポートがそろったら、総合安全保障関係閣僚会議等で議案にするというふうなお考えはおありですか。
  283. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは一つの資料としてお配りしたりあるいは紹介するということはあり得ると思いますが、それが議案になるということはあり得ないと思います。
  284. 秦豊

    秦豊君 防衛庁、横須賀を母港とするアメリカ第七艦隊の平時編成を知りたい。
  285. 古川清

    政府委員(古川清君) お答え申し上げます。  第七艦隊の平時編成につきましては、大まかに分けまして、空母打撃部隊、水上戦闘部隊、潜水艦部隊、それから後方支援部隊等々により成立しておるわけでございますけれども、この第七艦隊の担当区域というのは大変広うございまして、東経十七度から東経百六十度、北はオホーツク海から南は南極までというふうに、地球全体の約五分の一というふうな大変広い水域をカバーしておるわけでございまして、実際上の問題としましては、このアメリカの軍艦が今私が申し上げましたところに入ってまいりますと、自動的にこれは第七艦隊所属と。勝手に入ってくるわけはございませんで、当然命令によって動くわけでございますけれども、そういったやり方をアメリカがとっておりますので、現時点において、どの船がどこにどう属しているかということはちょっとお答えにくいわけでございますけれども、大まかな編成は今市申上げたとおりでございます。
  286. 秦豊

    秦豊君 太平洋艦隊に配備されているSSN、原潜の数を御存じでしょうね。
  287. 古川清

    政府委員(古川清君) お答え申し上げます。  第七艦隊に入っております潜水艦がおおむね八隻、これはSSN及びSS、つまり原子力及び通常の潜水艦を含めて約八隻ということは私どもつかんでおるのでございますけれども、太平洋艦隊全域としてどれだけあるか、原子力潜水艦がどれだけあるかということは、残念ながら私ども把握しておりません。
  288. 秦豊

    秦豊君 四十一隻です。しかし、いずれにせよ、横須賀、佐世保に入ってくる原潜のうちかなりなものがトマホーク装着可能であることはお認めになりますか。
  289. 古川清

    政府委員(古川清君) アメリカの国防省の発表によりますと、潜水艦の中ではスタージョンクラス及びもう一つクラスがございましたけれども、ロサンゼルス級、この二つのクラス、いずれも原子力推進の攻撃型の潜水艦でございますけれども、この二つのクラスにはトマホークを積載し得る、そういう予定であるというふうなことの発表を我々も承知しております、
  290. 秦豊

    秦豊君 七艦所属の水上艦艇も同様ですね。
  291. 古川清

    政府委員(古川清君) 水上艦艇につきましては、アメリカ政府がトマホーク搭載を予定しておるものといたしましては、若干詳しくなりますけれども、アイオア級の戦艦、それから原子力型の巡洋艦でございますけれどもカリフォルニアクラス、それからバージニアグラス、それからまだ一隻しかでき上がっておりませんけれどもロングビーチ、それから通常型の巡洋艦でございますタイコンデロカ、それからさらに駆逐艦といたしましてはスプルーアンスクラス、それから未建造でございますけれどもバーク級の駆逐艦、こういったものに搭載をする予定があるということは我々も承知しております。
  292. 秦豊

    秦豊君 そこで総理、お聞きのとおりです。日本に寄港する艦船のほとんどにトマホーク装着可能という軍事情勢の中で、政府アメリカにせいぜい確認したいと言っているのは改装戦艦ニュージャージーに限定されている。それはなぜですか。
  293. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前からお答え申し上げますように、我々は非核三原則を堅持しております。そして岸・ハーター交換公文、藤山・マッカーサー口頭了解、そういうものの基礎の上に立ち、しかも安保条約を効果的に運用するという基本的立場相互信頼の上でこれをやろうと言ってきているわけであります。そういうわけですから、一々の船についてこれをチェックしたり事前に問い合わしたりするということはやりません。先方は十分承知の上であると確認しておるわけであります。ただ、ニュージャージーにつきましてはいろいろ国会でも御論議があり、いろんな報道もなされて国民的関心も強いものでございますから、以上の基礎に立って念のために、こういう国会やあるいは日本国内の論議があると念を押す、そういうことでやりたいと思っておるわけであります。
  294. 秦豊

    秦豊君 信頼は結構ですが、世論調査を見ても圧倒的に、核は持ち込まれたまま、これは圧倒的な世論調査なんですよ。だから、あなたはアメリカ政府を信頼する、そのあなた方は国民からはこの問題については信頼されていない、永遠の裸の王様論なんです。しかし、おかしいじゃありませんか。同じ性能を持った艦艇でなぜニュージャージーだけに限定するか。いまの御答弁だけでは納得がいきません。
  295. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ニュージャージーは巨大な戦艦でありまして、いろいろまた新聞やテレビや雑誌等でも注目を引いた船であり、国民的関心も強いわけです。戦艦というものが我が国の港に入ってくるということも例が少ないことでもあります。そういうようないろんな面から念を押しておこうと、そういうことでございます。
  296. 秦豊

    秦豊君 古川さん、トマホークの性能諸元、もう一度ここで改めて皆さんに御説明ください。
  297. 古川清

    政府委員(古川清君) それではお答え申し上げます。  トマホークは、そもそもは潜水艦から発射するということを基本的な設計として出発したわけでございますけれども、非常な開発の成功をおさめまして、現在ではプラットホーム、つまりどこに載せるかという点につきましては、陸上から撃つもの、それから船から撃つものと、この二つが既に開発に成功いたしまして実戦配備にかかり、あるいはかかろうとしておるわけでございます。唯一残っておりますのは空からでございますけれども、これは会社の方では、ゼネラル・ダイナミックスの方ではいろいろ開発を進めておるというような情報もございますけれども、これは実戦配備あるいは制式採用というふうには至っておらないようでございます。  ところで、陸から撃つものは、これは既に昨年の十二月に西独に配備になりましたGLCM、こういう形で既に整備が始まっておるわけでございます。それから海から撃つものにつきましては、一部は潜水艦の魚雷発射管から、それから水上艦艇につきましては、ボックスランチャーと申しまして、四本ずつ束ねまして、通常は横に入れておきますけれども、発射の段階にはこれを斜めに上げて撃ち出す、こういうランチャーを設けて既にニュージャージー等には配備されておるわけでございます。  ところで、その性能でございますけれども、このトマホークには、船に限って申しますと、三つのいわば種類がございます。一つは対艦、それから対地、この対地の中に核と非核と二つございます。対艦、これはアンチ・シップ・ミサイルと略称しておりますけれども、これにつきましては足の長さが四百五十キロ程度、これは非核でございます。これはアクチブレーダー。ホーミングで見ながら船を捜して、そこに特攻隊的にどんとぶつかっていくという方式のようでございます。それから対地攻撃につきましては、これは非核の方は一千百キロ程度と言われておりますけれども、実戦配備はちょっと先のことになるようでございます。ただ、試験的にニュージャージーには既に搭載されておるということを我々聞いております。  それから核につきまして、つまり核は対地しかないわけでございますけれども、これは足の長さが二千五百キロございまして、これは慣性誘導に加えまして地形照合方式、つまり地面を低くなめるようにはいながら、あらかじめ一種の小型コンピュータの中にインプットされました地形のでこぼこを見ながら、自分の進路をきちんと修正しながら飛んでいく。特性といいますのは、目標に到達する命中精度が非常に高いということが言えるかと思います。なお、同じ特性としましては、スピードが時速八百八十キロ、つまり音速以下でございますので、この点が見つけられた場合には非常に撃ち落とされやすいということもあるいは一つの特徴かも存じません。
  298. 秦豊

    秦豊君 あなたが言われたのは対地攻撃用BGM109Aのことですか。
  299. 古川清

    政府委員(古川清君) このトマホーク全体をBGM109という一つの略称でくくっておるということは私も承知しております。ただ、ABCの方は私詳しく存じておりません。秦豊君 総理、トマホークは中距離核戦力の一種という御認識でしょうね。
  300. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 二千キロに及ぶと中距離の中へ入るのじゃないかと思いますが、防衛庁から正確に答弁させます。
  301. 古川清

    政府委員(古川清君) 中距離核戦力がどうかということにつきましては、実はSALTの交渉のときに一つの定義がございまして、五千五百キロ以上は戦略とするということになりますと、それ以下が恐らく非戦略、つまり中距離ということになるんだろうと思いますけれども、トマホークと申しますのは、今私が御説明申し上げたとおり核もあれば非核もある、これを全体としてやはり見る必要があるだろうと私は考えております。
  302. 秦豊

    秦豊君 しかし古川さんね、あなたは専門家でしょう。アメリカは戦略予備兵力と定義づけているんですよ。中距離は含まれるでしょう。
  303. 古川清

    政府委員(古川清君) トマホークの一つの種類が核兵器を搭載し得る、その足が二千五百キロということで中距離戦力の中に入るという点では確かにそうでございます。
  304. 秦豊

    秦豊君 政府アメリカからトマホークの陸上配備を求められたらどうされますか。
  305. 北村汎

    政府委員(北村汎君) お答え申し上げます。  トマホークは、先ほどから御説明いたしておりますように、核、非核両用の兵器でございます。核のトマホークというものをもし陸上に配備するというようなことをアメリカ側が申してまいりましたら、これは当然のことながら、政府といたしましては、これは核の持ち込みということで拒否をいたすわけでございます。
  306. 秦豊

    秦豊君 陸上は断るわ、海はフリーパス、どうぞというのは一体どういう諭理なんですか。
  307. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 海上艦艇にあるいは潜水艦に積載されておる核つきのトマホークでありましても、日本の領海あるいは港に入ってまいります場合にはこれは当然事前協議の対象でございまして、その事前協議を受けた際は、政府は必ずこれを拒否するということでございますので、陸上の場合と同様でございます。
  308. 秦豊

    秦豊君 事前協議に言うこれは中長距離ミサイルの持ち込みに当たりますよ。
  309. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) お答えいたします。  藤山・マッカーサー口頭了解にありますように、「装備における重要な変更」と申しますのは、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」ということになっておりますが、他方、同時に安保国会以来政府が一貫して御説明しておりますように、ここで申します中長距離ミサイルというのは、核弾頭のための兵器としての中長距離ミサイルということでございます。
  310. 秦豊

    秦豊君 総理、アンデルセンの「裸の王様」じゃありませんが、国民の皆さんは王様は裸だと見抜いているんですよ。ところが政府は、さっきのように、エンドレステープのように、事前協議と信頼の美しい衣装をまとっていると言い続けているんです。そういう図式じゃありませんか。
  311. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そうとは思いません。日米安保条約は正確に守られている、それに伴う諸般の話し合いも守られていると思っております。
  312. 秦豊

    秦豊君 ちなみに総理、このアンデルセンのいわゆる「裸の王様」というのは、正式な題名は「皇帝の新しい衣装」と言うんですよ。だから、トマホークがさしずめアメリカ核戦略、つまり皇帝の新しい衣装だと私は思っていますが、まあいいでしょう。この問題は別な機会にまたあれしましょう。  総理は、たしか衆議院の答弁でトマホークのこの配備、評価しておられましたね。
  313. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いや、別に評価しておるわけではございません。たしか質問があったので、それは世界的レベルにおける戦争防止のための一つの均衡維持、核抑止力維持、そういう意味においてそれは展開されているんでしょうと、そういう意味の答弁をいたしました。
  314. 秦豊

    秦豊君 つまり肯定的な認識でしょう。
  315. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう限りにおいては肯定的であります。
  316. 秦豊

    秦豊君 この前のサミットではヨーロッパへのパーシング等の配備を支持し、今回はアジアへのトマホークに肯定的である。このあなたの基本姿勢とあなたの持論たる核軍縮というのは一体どう整合するんですか。
  317. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この核軍縮が実行されていくためには双方が安心できる措置を伴わないと有名無実になります。そういう意味において検証の伴う核軍縮がやはり安心のできるやり方なので、その点についてアメリカ側が提議しておるけれども、ソ連側は消極的のようであります。やはり現場まで行ってお互いが見せ合う、そういう形が安心のできるやり方なのであります。そういうことを私は現実論として言っておるのであります。そういうことで、レベルダウンをし、そして最終的には地球上からなくしていくようにみんなが安心できるやり方でやってくださいと、そういうことで主張しておるわけです。ところが、最近はSS20であるとか、あるいはバックファイアであるとか、極東方面にかなりのソ連の軍力の増強が行われておる。それで、極東方面におけるバランスが崩れつつある。そういうことでアメリカ側が慌てていろんな諸般の均衡を回復する措置をやっていると思うのです。そういう意味において、均衡が回復され、平和が維持されるならば、それは平和維持のために役立っていると考えておるわけです。
  318. 秦豊

    秦豊君 現在は凍結中ですが、ヨーロッパでは御存じの核軍備削減交渉の場があります。アジアにはそれがない。だから米ソがもろにぶつかる、エスカレーションが直接ぶつかる、アジアはこういう極めて危険な好ましくない場ではないでしょうか。
  319. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 地域的にみんな歴史的因縁と特性があると思います。最近、アジアにおいては北東アジア方面におけるソ連軍の増強が非常に顕著になってきておる。ベーリング海峡からシベリアから、ああいう方面ですね。そういう意味においてこの均衡を回復しようという努力アメリカ側から行われておる、そういう現象であると思っております。しかし、アジアの場合はアメリカソ連というものが主ですけれども、ヨーロッパの場合には一国だけじゃなくて、フランスもあれば英国もあればドイツもある。そういう要するにNATOとそれからワルシャワ条約体制の均衡という形でものが出てきておるわけです。したがって、そういうネゴが集団的に行われておる。それはINFということで象徴されて、米ソで主として行われておりますけれども、しかし中央の兵力削減交渉もあればヘルシンキ会議もある、いろいろあるわけであります。そういうふうに、これは片方の方は非常にマルチプルというか、多元的な集合体としての性格があるからそういうことになってきておる、ばらばらではできないから。アジアの場合はそういう性格がありませんから、今アメリカソ連という形でやっております。そういう意味においては、全世界的レベルにおける均衡あるいは軍縮というものが望ましいので、このように移動可能であると、SS20のように極東からまたヨーロッパヘ持っていける、ヨーロッパからまた極東へ移動できるという状態では安定性がないので、そういう意味においてグローバルベースでこういうような協定が行われるということを非常に熱望しておるわけであります。
  320. 秦豊

    秦豊君 念のためですが、トマホークを初めとするINFの北東アジアへの増強というのは、ソ連側からのどんな態度を誘発するでしょう、対応を。
  321. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはソ連側の態度を見ないとわかりませんが、我々の今までの判断では、まずソ連がSS20を極東地帯に、恐らく百四十四ぐらいになる。既に百三十五基来ておる。あるいはバックファイアが数十機、まあいろいろな数字が言われておりますが、かなりの数が増強されておる。そういうような不均衡がここで出てきておるという事実に基づいて、アメリカが劣勢を補おうというので、そういう態度に出てきたのであると私は思っております。そういう意味において、トマホークが展開しても、ソ連の方は力を先に十分蓄えておるわけでありますから、それでもまだいろんなものを持ち出してくるのかなという感じがいたしますが、いずれにせよ、そういう疑心暗鬼を持つことはやっぱりよくない。そういう意味で、米ソ首脳会談あるいはその他のいろんな機会によってこれを解消していくように希望いたしておりますし、我々も側面から努力したいと思っております。
  322. 秦豊

    秦豊君 いずれにしましても、政治家中曽根康弘氏を先頭にして、望ましい方向は言うまでもなく核軍縮である。北東アジアにおいてそれを実現するためには、まずどの辺から手をおつけになりたいですか。
  323. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) つまり、先ほどから申し上げているように、我が国はINFの問題についても、これは一ヨーロッパの問題ではない、もう極東が同時に運命のもとに支配される情勢になってきておる。だから、極東の問題はまた一極東の問題ではない、ヨーロッパの問題にもすぐ飛び火する問題でもあります。そういう意味において、全世界的規模において核軍縮なり軍縮が行われる方向に積極的に努力すべきであると、そう思っております。
  324. 秦豊

    秦豊君 安倍外務大臣、トマホーク配備は六月予定です。それ以前にアメリカに対するアプローチは全く考えていらっしゃいませんか、国民の不安を解消するための。
  325. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどから総理を初め答弁をいたしましたように、我々、日米間には安保条約、その関連取り決めがございますから、それをお互いに厳粛に誠実に守っていけばいいんだという確信を持っております。したがって、アメリカに対して、トマホークを太平洋にどういうふうな形で配備するとかしないとか、そういうことを我々がとやかく言う筋合いではない、こういうふうに思っております。
  326. 秦豊

    秦豊君 駐日大使を呼ぶだけですか。
  327. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 何らのまだ通告がないのですが、もしニュージャージーが日本の港に入港すると、こういうことになれば、先ほどから答弁もいたしておりますように、外務大臣としてあるいは駐日大使を呼んで、そして日本の非核三原則を堅持するという立場、そしてまた安保条約を相互に誠実に遵守するということを確認したいと、こういうふうに考えております。
  328. 秦豊

    秦豊君 いや、ニュージャージーだけじゃないんですよ、さっきからの論議のように。六月というタイミングを控えて、もっと能動的な外交が打ち出せないかということを聞いているんです。
  329. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは核の問題につきましては、日本には非核三原則があるわけでございますし、そして我々は今日まで安保条約をお互いに守ってきておる信頼関係にあるわけですから、トマホークが配備されるあるいは配備されないということについて、改めてアメリカとの間にそうした話し合いをするという必要はないと私は考えております。
  330. 秦豊

    秦豊君 では、あなたから国務長官への特別申し入れ、書簡等の形式はとりませんか。
  331. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全く考えておりません。
  332. 秦豊

    秦豊君 では、総理ロンドンサミット個別会談があり得れば、米ソじゃなくて、日本への核、トマホーク持ち込みに対するアプローチ、話し合いは全くお考えになっていませんか。
  333. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今まで申し上げたとおり、日米安保条約の効果的運用と、そういうことで相互信頼の上に立っておるわけでありますから、特別の措置はいたしません。
  334. 秦豊

    秦豊君 官房長官昭和五十七年四月二十三日の閣議で私に対する答弁のシーレーン防衛に関して決めていらっしゃいますが、内容は把握していらっしゃいますか。
  335. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 昭和五十七年三月二十日に秦議員から御質問がございまして、その質問主意書に対して四月二十三日に閣議決定をして御答弁を申し上げております。その内容は、一つは、「我が国の海上交通の安全が脅かされるような事態における」 「海上輸送の実施体制の在り方については、」「総合的な観点から、政府全体として研究を行うべき事項である」こと。それから第二に、「海上交通の保護のためにいかなるシステムが必要であるかについては、各国それぞれの事情によって異なる」ので、一般論として考えることは適当ではない、こういう二点にわたっておると心得ております。
  336. 秦豊

    秦豊君 まさにそうだと思います。それから二年近いが、では政府全体としてこの研究はどのように深まっていますか。
  337. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 御質問をいただきました中で、御指摘をいただいておりますこの海上交通の安全確保の問題は、一たん不測の事態が起こった場合にはということはあってはなりませんし、またそのためにあらゆる努力を日常いたしておるのでございますけれども、そういった不測の事態が起こった場合にどうするか、これは国民生活や経済活動等に大きな影響をもたらすことでございますので、総合的な観点から検討を進めてきておりますが、何分にも非常に複雑かつ多岐にわたっております。また、政府を挙げて検討を進めておるというような問題でもございますので、今日なお成案を得るに至っておりません。しかし、事柄の重要性にかんがみましてさらに精力的に検討を進めるようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  338. 秦豊

    秦豊君 総理、あなたはシーレーン防衛は国策とおっしゃいましたが、これは私はトータルシステムだと思うんです。シーレーン防衛の全体像をどうつかんでいらっしゃいますか。
  339. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) シーレーン防衛というのは、要するに海上防衛活動と、そういう一言で言い得ると思うので、これは偵察も入ればあるいは護衛も入れば港湾防備も入れば、いざというときの海峡コントロールも入る。すべてのそういうものの総合的な複合的な成果として海上交通を安全にするということが目的で、つまり海上交通安全の防備活動であると、そういうふうにお考え願いたいと思っております。
  340. 秦豊

    秦豊君 ハードじゃなくてソフトの面にはどんな手段があり得ると思いますか。
  341. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今のようなそういう総合的な体系のもとに諸般の防衛力を動員し、あるいは運用していく、それに関するいろいろな計画あるいは備え、そういうようなものがやっぱりソフトであろうと思っております。
  342. 秦豊

    秦豊君 私、ソフトの範囲が少し違うと思いますね。あなたのはハードに直結し過ぎていますから、情報システム、備蓄、船舶の運航統制、法制上の整備、これは含まれませんか。
  343. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはもう侵略でも行われるという有事の際におきましては当然入ってくるだろうと思います。
  344. 秦豊

    秦豊君 しかも、平時から考える場合はそれぞれの政策手段の費用対効果、その重点と優先度など緻密な作業で膨大な検討をこなさねばならぬ、そういう認識はおありですか。
  345. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 終局的にはそういう検討も一朝有事に備えて必要であるだろうとは思います。
  346. 秦豊

    秦豊君 それにしては政府の対応はハードに傾き過ぎているという内省はお持ちではありませんか。
  347. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう不安、懸念は私も持っておりました。今でも多少持っております。
  348. 秦豊

    秦豊君 大変率直な御答弁だと思います。そのような総合的な政策を練り上げる場としてはどのようなものを考えていらっしゃいますか。
  349. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは総合安全保障の閣僚協もございますし、あるいは事によっては総理大臣が諮問すれば国防会議でも行われ得るものでありましょう。そういう諸般のものが考えられると思います。
  350. 秦豊

    秦豊君 私もつとに提案をしているところでありまして、では今後も総合安保関係閣僚会議等で、シーレーン防衛をまさに檜町マターではなくて政府マターとして膨大な作業に取り組む、こういう決意と受けとめてよろしゅうございますか。
  351. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今のところはそういう考えを持っておりません。
  352. 秦豊

    秦豊君 しかし、将来方向としてはいかがですか。
  353. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、防衛庁がやっておりまする研究をよく見まして、いずれ上がってくるでありましょうから、その検討をした上でこれを閣僚レベルで取り上ぐべきか取り上ぐべからざるか、その研究の広さあるいは熟練度、内容等を見た上で考えたいと思います。
  354. 秦豊

    秦豊君 総理は、シーレーン防衛、まあ国策と言われているわけですが、そのための防衛力としてはどの程度の規模と水準をお考えですか。
  355. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛計画の大綱の水準に到達することを目下のところ一生懸命努力する、それが当面の努力であります。
  356. 秦豊

    秦豊君 アメリカサイドは専ら一つの声ですね。大綱水準の戦力ではシーレーン防衛は達成できない、こういう声に対してはどうおっしゃりたいですか。
  357. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかくこれは閣議決定をして、年時をかけて営々として努力していることであり、かつ日本の防衛の問題は、日本主権のもとに日本政府が決定すべき問題でありますから、アメリカ側がどう言っておりますか、それは一つの参考として聞きますけれども、決定は日本政府自身においてやっていくべきものであると思っております。
  358. 秦豊

    秦豊君 ハワイの定期協議ですね、栗原長官、どういう内容になりそうですか。
  359. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) ハワイの定期協議というのは事務レベルですか。事務レベルについてはまだ決まっておりませんけれども、どういうふうな心持ちでいるか、政府委員から一応答弁をさせます。
  360. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。  ただいま大臣からもお答えがございましたように、まだハワイ協議の日程も固まっておりませんし、どういったことがその内容になるか今の時点では予測をしがたいわけでございますけれども、一般的に申し上げまして、やはり国際情勢についての意見の交換あるいは日米双方の防衛努力の問題等々が話し合われるということは予想されないわけではございません。ただ、具体的なことは現在まだ何も決まっておりません。
  361. 秦豊

    秦豊君 当然独立日本が決めるべきことでありますが、総理としてはシーレーン防衛に絡んでできることというのはどういう範囲ですか。
  362. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは防衛計画の大綱の水準に近づくということが目標でございますが、やはり偵察能力、例えば一つの例は、P3Cの導入であるとか、あるいはそのほかの護衛艦の整備であるとか、潜水艦の整備であるとか、あるいはレーダー網の更新であるとか、そういう諸般の今とっておる対策が考えられると思います。
  363. 秦豊

    秦豊君 ならば、できないこととしては、大綱水準以上の要求がきても断り続ける、これが政府の基本姿勢だと理解してよろしいですか。
  364. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は、ともかく大綱の水準にまず第一に到着するということが今我々の目標でございますから、そのために全力を注いでいこうとするので、それ以上の大きなものがもし万一出てきた場合でも、我々は今大綱の水準に到着することに全力を尽くしているので、そこまで今の段階で考える余裕はない、まず大綱の水準だと、これが我々のスタンスであります。
  365. 秦豊

    秦豊君 まずではなくて、総理、備えるべきシーレーン防衛力の上限が大綱水準と、ではありませんか。
  366. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは大綱の水準というものはある前提のもとにできておるわけでありまして、その前提のもとに我々はまた一生懸命努力をしておると、こういうことであります。また、時間が非常に将来五年、十年、二十年と経過もし、客観情勢がまた変化してくるということになれば、そのときの内閣がまた適当な措置をとるでしょう。我々は、既に決められて営々と努力してきている現在の大綱の水準に早く到達するように全力を尽くすのみであります。
  367. 秦豊

    秦豊君 ならば、総理、重ねて一問。効果的なシーレーン防衛をするためには、仮に大綱水準の戦力を超えることがあってもそれは許容されるであろう、将来としては。こういうことですか。
  368. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 許容するとかしないとかという問題じゃない、ともかく大綱の水準にたどりつくことが今我々が全力を傾倒しておることなのであって、それ以外は考えていないと、そういうことであります。
  369. 秦豊

    秦豊君 だから、総理の脳中には、大綱水準はあくまで相対的な定義づけである、絶対的ではないと、こうですね。
  370. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは防衛の本質上そういうことになってくると思うんです。
  371. 秦豊

    秦豊君 法制局長官、現行法制、また専守防衛の立場を総合した場合に、我が国が持てる地対地あるいは地対艦、艦対艦ミサイルのレンジ、射程上の限界をどうお考えか。
  372. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  自衛隊が保有することができる兵器と憲法との関係についての御質問と思いますが、これまでも繰り返し申し述べてまいりましたとおり、その兵器を保有することによって、全体としての我が国の実力が自衛のための必要最小限度を超えるかどうかということによって判断すべきであると思うのでございます。今、委員お挙げになりました非常に具体的な兵器あるいはその性能、そういったものについては私、実は軍事的な知識を余り持ち合わせておりませんので、大変申しわけなく思いますけれども、防衛庁の政府委員の方から御答弁させるようにいたしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  373. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいま法制局長官からもお話がございましたように、自衛力の限界の問題に絡む問題でございますけれども、要するに自衛のための必要最小限度の実力ということが許されるわけでございまして、この憲法上の考え方におきまして保持を許されます自衛力の具体的な限度という問題につきましては、そのときどきの国際情勢とかあるいは軍事技術の水準その他の諸条件により変わり得る相対的な面を有することは否定し得ないということは、前々からお答え申し上げているところでございます。もっとも、性能上専ら他国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる兵器、例えばICBMでございますとか長距離戦略爆撃機等、こういったものについては、これは保有することが許されないというふうな考え方を従来から一貫してとってきているわけでございます。
  374. 秦豊

    秦豊君 いま自衛隊が開発中の国産巡航ミサイルSSM1の射程は。
  375. 冨田泉

    政府委員(冨田泉君) お答えいたします。このミサイルの射程につきましては、防衛上の秘密でございまして詳細お答えすることは差し控えさしていただきたいと思いますが、おおむね百キロ以上、百数十キロというところでございます。
  376. 秦豊

    秦豊君 百何キロですか。
  377. 冨田泉

    政府委員(冨田泉君) 百数十キロと答えさしていただきます。
  378. 秦豊

    秦豊君 北海道の知床からだと択捉の西部まで、稚内から北方に向かうとコルサコフ、大泊のすぐ南方亜庭湾が全部射程に入る、こういうミサイルが、法制局長官、保持可能ですか。
  379. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいま御指摘の開発中のSSMの問題でございますけれども、これは海上からの我が国に対します武力攻撃に従事します艦船、これを目標にいたしまして、これをできる限り水際以遠で撃破をして、国土に戦闘が及ぶのを最小限に食いとめようと、こういうための装備でございます。したがいまして、その運用のあり方といたしましては、今政府委員からもお答えしましたように、相当程度の射程は持たせたいと思っておりますけれども、これは航空機等の砲爆撃からの防御の点も考慮しなければいけませんので、内陸部の方から発射する、こういう運用構想を持っているわけでございまして、そういう内陸の奥の方から一定のプログラミングを持たせましてこれを海上における艦艇の目標にまで到達せしめる、そういうことのために長距離の射程を持たせようということでございまして、その機能といたしまして申し上げますと、この地対艦誘導弾が内蔵するレーダーと申しますのは、目標を識別しやすい洋上の艦船を攻撃目標とするということで開発をしているわけでございます。地上の目標を選別してそれに命中させるというふうな機能を持たせたものじゃございません。そういったような意味で、これは専守防衛に適した兵器であるというふうに私どもは考えている次第でございます。
  380. 秦豊

    秦豊君 水際以前というのは、領海十二海里ということですか。
  381. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 私どもの自衛隊が武力行使をいたします場合の限界というのは、決して領土領海内だけに限られるものじゃございませんで、公海及びその上空に及び得るということは従来からたびたび申し上げているとおりでございます。
  382. 秦豊

    秦豊君 じゃ、明らかに大泊南方亜庭湾に集締している仮にソ連の上陸船団の攻撃も可能か。
  383. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 特定の国を名指しでのお答えはいたしかねるわけでございますが……
  384. 秦豊

    秦豊君 ケースとして。
  385. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 一般論として申し上げまして、他国の領海内にまで当方の武力を及ぼすということは現在考えておりません。
  386. 秦豊

    秦豊君 SSM1の開発はいつ終わりますか。
  387. 冨田泉

    政府委員(冨田泉君) SSM1は五十七年度から開発に着手いたしまして、ただいまの予定では六十二年度に開発を完了する予定でございます。
  388. 秦豊

    秦豊君 五九中業用ですね。
  389. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五九中業におきましていかなる事業を選んでいくかということは、これはまだ何も検討いたしておりませんので、具体的なことは申し上げかねるわけでございます。  それからまた、このSSMを装備品として採用するか、それからまた調達をどうやってやっていくかという問題は、これは全くまた検討をしておりません。開発の結果を見てその上で判断をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  390. 秦豊

    秦豊君 法制局、明らかに日本領土への上陸を企図した公海上の相手船団に対する攻撃は法制上可能ですか。
  391. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいまのような御質問、かねがね何回か御質問を受けたわけでございますが、ただいまの御質問の趣旨は、恐らく我が国の自衛権の行使は我が国に対する武力攻撃が発生しなければできないのではないか、したがって外国艦艇がどこまで来たら武力攻撃が発生したと見ることができるかということであろうかと推察するのでございますが、現実の事態といたしましてどの時点で武力攻撃が発生したと見るべきかは、そのときの国際情勢、相手国の明示された意図あるいは攻撃の手段、態様等によるものでありまして、抽象的にまたは限られた与件のみ仮設しまして論ずるわけにはいかないという御答弁をその都度申し上げておる次第でございまして、ただいまの御質問につきましても、そのような御答弁で御了承をお願いいたしたいと思います。
  392. 秦豊

    秦豊君 我が国の部隊が現実に自衛権を発動し武力行使が許されるのはどういう段階なのか。領海十二海里の寸前なのか。
  393. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 我が国の自衛権の発動につきましては、これもかねがね申し上げておりますように、自衛権発動のいわゆる三要件というのがございまして、第一に、武力攻撃が発生したこと、第二番目には、その攻撃を排除するためには他に手段が求められないこと、第三番目には、その攻撃を排除するために必要最小限度にとどまるべきこと、この三要件によって我が自衛権の発動が行われるわけでございまして、その場合に、ただいま御質問にありましたように領海十二海里の中でしかできないのか、あるいは……
  394. 秦豊

    秦豊君 寸前。
  395. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 寸前と申しますと……
  396. 秦豊

    秦豊君 手前。
  397. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 当然私申し上げようと思っておりますのは、領海だけではなくて公海、公空に対しましても、これも従来からたびたび御答弁申し上げておりますように、自衛のために必要な限度においては自衛権の発動ができる、こういうことでございまして、別に領海に限られるという意味ではないわけでございます。
  398. 秦豊

    秦豊君 有事法制を聞いておきたいが、九十五条、百三条、七十条は、それぞれどうまとまっていますか。
  399. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  ただいまのお尋ねは、五十六年四月二十二日、中間報告をしたいわゆる第一分類に属する自衛隊所管の法令のうちの三つがどの程度進んだかというお尋ねかと了解いたしますが、その研究成果は四月二十二日に御説明をいたしましたように、例えば第七十条、予備自衛官の防衛招集でございますが、これは法律上は約十日間後に参集義務がございますことになっておりますが、実際は二週間以上かかる。こういうことから七十六条の防衛出動下今後招集では遅いのではないか、七十七条の防衛出動待機命令の段階で招集をする方がよいのではないかという結論を得ております。  九十五条でございますが、これは武器防護と呼ばれております条文でございまして、これは必ずしも七十六条下令後でもなく、平時におきましても武器あるいは車両、航空機、弾薬、燃料、こういうものに対する奪取その他が行われた場合には警備の任務に当たっておる自衛官が武器を行使できる。その武器の使用、これは警職法に与えられておりますところの範囲内で警察官的に使用するのだという条文でございます。この九十五条につきましては、でき上がりましたのが昭和二十九年でございまして、当時はレーダー施設であるとか通信、防衛マイクロ回線であるとか、あるいはさらには艦船。艦艇の方はこれは武器ということで解釈上読めますけれども、武器を搭載していない輸送船などがこの中に含まれていないではないか、こういうものも防護対象に加えた方がいいのではないかという結論が出ております。  百三条でございますが、これは再々御答弁申し上げておりますように、七十六条下令後、土地、建物の使用、あるいは防衛上必要な物資の収用等についての手続を政令でこれを定めるとなっていながら約三十年間まだ政令ができておらない。百三条につきましては、七項目にわたりまして収用の手続であるとか、あるいは都道府県知事の権限であるとか、都道府県知事の行いまするところの業務従事命令の対象者であるところの医療関係者、土木建築関係者あるいは輸送関係者とは一体どういうものをいうのか、こういう七項目につきまして政令に盛り込むべき事項はほぼまとまっております。  以上のようなことでこの中間報告をいたしたわけでございますが、その後はいわゆる第二分類、他省庁にかかわる法令、これは法律の数でもって約五十、関係省庁は十を超えますし、項目も七十項目ばかりになっておりますが、これに重点を志向いたしまして、現在、現行の法令の解釈でもってやれるのかどうか、あるいは手続の簡略化について何らかの特別のお考えがあるかどうか、除外規定、例外規定があるかどうか、こういう問題について関係省庁に問い合わせを行い、現時点まで五十七年の夏からかなり時間がかかったのでございますが、問い合わせ項目の約七〇%程度の回答に接しておるという段階でございます。したがいまして、お尋ねの第一分類につきましては、前回中間報告をいたしました後は第二分類に重点を志向してそのままの状態になっておる、これが現状でございます。
  400. 秦豊

    秦豊君 第一、第二あわせていつごろ終わるのですか。
  401. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  第二分類の回答がまだ残念ながら全部来ておりません。現在、この種の防衛出動下令後のいわゆる有事法制、これは決して御承知のように徴兵令をやろうとか軍事法廷をつくろうとか戒厳令をやろうとか、こういうものでは全くございませんで、現行の憲法、法令の枠内におきまして自衛隊が自衛隊法に定められたその任務を完遂するのに必要な法的な状況を整備しておこうと、備えあれば憂いなしということで平時のうちからそういう問題はできるだけ片づけておこうという趣旨でやっておりますので、私どもといたしましては、かなり時間も経過いたしましたので、まとめていきたいと考えております。
  402. 秦豊

    秦豊君 いつごろ。
  403. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 現在、督励に努め、各省庁にお願いをいたしておりますが、非常に調整に時間のかかっていることもございますので、残念ながら現時点においてはいつまでにこれがまとまるということをお答えできる状態にないことを御了解いただきたいと存じます。
  404. 秦豊

    秦豊君 自民党の国防部会は、有事法制はそろそろ急いだ方がいいという認識なようですが、総理はいかがです。
  405. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) できるだけ党で早くまとめて研究をしてもらいたいと思っております。
  406. 秦豊

    秦豊君 法務省、いわゆるサラ金問題を聞いておきたいが、捜査の関心は業務上横領の範囲に限定をされるのか。
  407. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) お答えいたします。  お尋ねの事件につきましては、遠藤悦三という者を二月二十二日でございますか、約五千万の業務上横領で公判請求をいたしました。その後、引き続き同人に対する業務上横領の嫌疑について捜査を継続中でございます。
  408. 秦豊

    秦豊君 捜査はすべて終わったんですか。
  409. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 目下捜査を継続中でございます。
  410. 秦豊

    秦豊君 継続中、全国組織たる上部団体もあなた方の関心の範囲内ですか。
  411. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 捜査継続中でございますので、その捜査の具体的内容にかかわりますことにつきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  412. 秦豊

    秦豊君 業務上横領だけであって、収賄、受託収賄、あっせん収賄等は今回の捜査ではらち外ですか。
  413. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) この点につきましても、捜査の内容にかかわりますことでございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  414. 秦豊

    秦豊君 原子力船「むつ」のことは政治力船とも言われていますが、これからどうされるおつもりですか、長官
  415. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 原子力船「むつ」につきましては、今日まで長い経過がございます。特に昭和四十九年には、残念ながらごく微量ではございましたけれども放射線漏れという事故を起こしました。したがいまして、これは早急に完全な遮へい工事をしなければいけないということで佐世保に回航いたしまして、大変な難儀でございましたけれども、これを完全に遮へい修理を行い、安全点検も行いました。その後「むつ」の定係港につきましてはいろいろな折衝を続けてまいりましたけれども、これにつきましてはとりあえず大湊に仮の停泊をして、そして地元と非常な折衝を重ねた結果、関根浜に港をつくって、そこで試験研究から実験、廃船に至るまでの基本的な合意もできたわけでございます。  しかしながら、予算編成の段階におきまして各方面からいろいろな御議論が出されました。したがいまして、私どもは舶用炉の研究開発は必要である、特に資源の少ない国、油が九九%も海外に依存しなければならない、また御案内のように、その大部分を中東に依存しなければならない、不安定な地域に依存する、こういうことから原子力エネルギーの平和利用、そしてまた舶用炉の研究ということは、二十一世紀へ向かって日本としては極めて大事な分野でございます。問題は、「むつ」による研究開発をどうするかということにつきましては、先ほど申したようないろんな経過がございまして、予算編成の段階におきまして、私どもは政府与党の話し合いにおきまして本年の八月末を目途として基本的にそのあり方を検討するということでございます。また、地元の御協力、御理解がなくしてはこのような原子力船の開発は進めてまいることができませんので、したがいまして地元と昭和五十七年には五者協定を結びまして、そして大湊から関根浜に港をつくるということになりまして、この地元と政府とのお約束はこれは守っていかなければならないということで、関根浜に港をつくり、そして大湊からそれを移す、こういうことで私どもは五十九年度の予算編成を進めてまいったところでございます。したがいまして、今後「むつ」による舶用炉の研究は、本年八月までに自由民主党の検討委員会等を通じ、また政府の意見も十分に反映させながら結論を出すと、こういうことに相なっているわけでございます。  このような状況で、今後、原子力の平和利用という基本理念に立って十分な検討をさしていただきたい、各方面の御意見は十分に謙虚にこれを受けとめてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  416. 秦豊

    秦豊君 仁杉さん、お待たせしました。  結局、きのうまでの東海道山陽新幹線のダイヤ乱れですね、徐行運転日数はどうなっています。
  417. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 本年度の東海道山陽では運休本数は三十二本でございまして、三十分以上の遅延列車の本数は二千十三本ということになっております。
  418. 秦豊

    秦豊君 国鉄自体がこうむった損失は。
  419. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 払い戻し金額が三億七千五百万円ということになっております。
  420. 秦豊

    秦豊君 影響を受けた客の数は。
  421. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 約五百万人というふうに推定しております。
  422. 秦豊

    秦豊君 この膨大な国民経済的損失はまだ積算していませんか、わかりませんか。しかし、繰り返さないための知恵はどう考えていますか、新幹線の雪対策。
  423. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 大変御迷惑をかけておりますので、実は昨年度からいろいろ少し実験を始めておりますが、ことしの雪で非常に大きな御迷惑をかけましたので、早速今いろいろな知恵を考えております。一つは、ただいまやっております散水の温度を上げる、あるいは量をふやすというような、これが一番やりやすい方法だと思いますが、ただ、上越新幹線と違いまして路盤に盛り土を使っておるというので量が非常に限定されるという問題がございます。したがいまして、この辺のところを今いろいろと計算をいたしておりますが、さらに実験を重ねていい方法を見出したい、これが原則でございますが、それ以外にもどうしてもぐあいが悪いというような場合にはルート変更であるとか、そのほかいろいろな方法について今検討を重ねている最中でございます。
  424. 秦豊

    秦豊君 ルート変更はあるんですか。あり得るんですか。
  425. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 散水の方法、あるいは電気の熱でもって解かすというような方法がもし不可能であれば考えますが、原則として非常に金がかかるということでございますので、ルート変更については今のところ、計画としては検討しておりますが、実際には使いたくないというのが私どもの考え方でございます。
  426. 秦豊

    秦豊君 運輸大臣、どうされますか。
  427. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 大変大きな御迷惑をおかけしておりまして、来年からこういうことがないようにしなければならぬと思っております。技術的には上越新幹線でもう解決を一応しているわけですけれども、前にできてしまっておるものですから今国鉄総裁が言われたように非常に困難だと。私は、ルート変更については研究の一つのテーマとして、一つの方法として考えられておるということであって、実際問題として国鉄の財政事情からいってルート変更のごときは今のところ考えられない、こう断言してもそう間違いではないと思っておりますし、私自身はそのような金はないだろうと思います。したがって、今の国鉄の財政状態で許す限り、しかし東海道山陽、何しろ大幹線でございますから、最小限度といいましてもこれ、このような御迷惑を大きくかけるということがないようにだけするのにはどの辺まで金を使ったらいいか、これだけは他の方から回してでもやってもらわなきゃならぬのじゃないかと、かように思っております。
  428. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 仁杉さん、御苦労さんでした。
  429. 秦豊

    秦豊君 委員長、ポスターよろしいですか。(資料を示す)  これは総理、香港政庁がつくったたばこの墓標です、これは。目の覚めるようなポスターだと思います、お疲れの皆さんにとっては。渡部さん、あなたは特に見なきゃいけない。渡部さん、いいですね。これに対して、最近の専売公社の最新のたばこのキャッチフレーズはどうなっていますか。
  430. 長岡實

    説明員(長岡實君) 一般的に申しまして、「軽さの中に、味がある。」ということをキャッチフレーズにいたしております。
  431. 秦豊

    秦豊君 もう一つあるでしょう、七月からの商品で。
  432. 長岡實

    説明員(長岡實君) まだ発売しておりませんけれども、四月からテストマーケットで発売を始めようと思っております「キャスター・スペシャル」というたばこのキャッチフレーズと申しますか、これは「うまけりゃ、いいんだ。」ということで、これは値段が高いことに対して言っておる意味でございます。
  433. 秦豊

    秦豊君 総理ね、たばこの墓標と、うまけりゃいいんだ、居直り、大違いなんです。各国では、アメリカ、イギリスなどで、たばこの広告はどう扱われていますか。
  434. 長岡實

    説明員(長岡實君) お答えします。  国によって違いますが、アメリカ等におきましては、ラジオ、テレビの広告は禁止、そのかわり新聞、雑誌等はいわば自由ということになっております。日本は、ラジオ、テレビまで含めまして、全体について自主規制を行っております。
  435. 秦豊

    秦豊君 それから、たばこの箱に表示してある文言、どうなっていますか。
  436. 長岡實

    説明員(長岡實君) 世界の例を申しますと、大体三種類ございますが、一つアメリカ方式で、喫煙が健康にとって有害であるということをはっきり言っております。
  437. 秦豊

    秦豊君 危険であると書いてある。
  438. 長岡實

    説明員(長岡實君) デインジャラスでございますね。それから二つ目が西ドイツ方式で、あなたの健康に害を及ぼすかもしれないという表現であります。三番目がフランスや日本でございまして、フランスの例は、過度の喫煙は危険、日本の場合は御承知のように、「吸いすぎに注意しましょう」という表示でございます。
  439. 秦豊

    秦豊君 総理の例の対がん十カ年戦略の中では、急増している肺がん等たばこ対策はどんな位置づけですか。
  440. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 対がん十カ年計画では、むしろ研究の促進というものが主眼でございまして、従来やっておる予防その他につきましては従来のとおりやっていただく。むしろそれよりも遺伝子組みかえ、あるいはそのほか実験、海外との交流、そういうような面における積極面をやっておるわけであります。
  441. 秦豊

    秦豊君 やっぱり対がん戦略の足を引っ張っちゃいけませんね。だから、例えばたばこの広告規制、文言を厳しくするというふうなことに踏み切る時期じゃないかと思いますが、総理としてはいかがです。
  442. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) よく検討してみます。
  443. 秦豊

    秦豊君 渡部さん、あなたはたばこについてはつとに一家言おありだから、前非は悔いなくてもいいから、関係省庁と連絡して、今言った文言を厳しくするとか広告規制とか、具体的に練ってみませんか。
  444. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) たばこの吸い過ぎが健康に好ましくない、また病人や子供たちの前でたばこを吸うことも好ましくない、また、たばこというのは健康に好ましくないということをわかっておっても、これはなかなかやめようとしてやめられないものなんで、せっかくたばこをやめたお方に邪魔になるようなことがあってはならない。こういうようなことから、国立病院では喫煙室をつくって、その他では吸わない、また地方自治体の病院等にもそういうことをお願いし、また保健所等を通じて地域ボランティア活動として、たばこが健康の害にならないように普及する。また、それぞれの熱心なボランティア団体等がありますので、そういうので、たばこを吸い過ぎないように、そういうもののPRを今努めておるところでありますが、きょうも先生からの御指摘がありましたが、今でも国鉄なんかではいろいろ協力していただいているわけですけれども、これからそういう方でも御協力をいただくように研究をしてみたいと思います。  それから、私の一言は、体がたまたま健康の調子がよいとぎたぱこがうまかったと、こういうことで、これは風邪を引いたりなんかしたときはたばこがまずいので、決してたばこがどうこうなんということでございませんから、これは間違った御認識をいただかないように、私は厚生大臣として国民の健康を守るためにこれからもたばこの吸い過ぎがないようにいろいろと工夫をしてまいることを申し上げたいと思います。  以上お答えいたします。
  445. 秦豊

    秦豊君 委員長、最後に一問よろしいでしょうか。
  446. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 時間がなくなりました。随分長くかかっておりますが、それでは、ごく簡潔に。
  447. 秦豊

    秦豊君 では、お許しをいただいて。  文部大臣、今もお話がありましたが、国立病院の待合室は確かに禁煙、大学の方がだめなんですね。あなたの在任中にいかがかという点が一つと、運輸大臣は、外人客の多い新幹線のグリーン車などに禁煙車をという提案についてはいかがかと伺って質問を終わります。
  448. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 大学病院あるいは診療室、治療室等におきましては、診療業務の必要性あるいは火災予防の観点から既に喫煙を制限したり、あるいはまたそういう必要な措置をいろいろと工夫を凝らしております。
  449. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) お答えいたします。  方向としてはふやす方向でございますが、新幹線につきましてはコンピューターに入っておりますので、次回のコンピューターの入れかえをするときに増車をする、禁煙車をふやすという方向考えております。そのほかにつきましてもなるべくふやしたいと、こういう方向でございます。
  450. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で秦君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  451. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、和田教美君の総括質疑を行います。和田君。
  452. 和田教美

    和田教美君 二月の初めにアメリカのワインバーガー国防長官が議会に提出いたしました八五年度国防報告の中で、次のようなくだりがございます。鈴木首相は八一年五月、日本の領土領空及び千マイルまでのシーレーン防衛は憲法で許されているものであり、事実上日本の国家政策になっていると言明した、こういうくだりでございます。  そこで、中曽根総理にまずお伺いしたいんですけれども、シーレーン防衛は国家政策と御認識になっているかどうか。
  453. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恐らく鈴木さんがナショナル・プレスクラブで外人記者団の質問に答えたそれを引用していらっしゃるのであろうと思います。一国の総理がああいう公の国際的な広場で申したことはそれなりの重みを持っておるわけです。しかし、いわゆる国と国との約束事ではない、日本の一方的政策意図の宣明である、そういうふうに御認識願いたいと思います。
  454. 和田教美

    和田教美君 鈴木さんの言葉がどうとかこうとかということじゃなくて、総理自身が今シーレーン防衛というのは国家政策とお考えになっているかどうか。
  455. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国はシーレーン防衛まで考えておりますから、そういう意味においては国の政策の一部に入っていると思います。しかし、それが今できているという意味ではありません。
  456. 和田教美

    和田教美君 私は、このシーレーン防衛というのは日本の国家政策とは言えないと思います。なぜかと申しますと、国家政策と言うなら、当然政府が正式に閣議なり国防会議なり、そういう手続を踏んでこれを決定して、そして国民、国会の了承を取りつけるということが必要だと思うんですが、そういう手続が踏まれておりますか。
  457. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たしか防衛計画の大綱をつくるときに、その前提としてシーレーンの防衛というものも含まれている、そして今日の大綱はつくられていると、そう考えております。しかし、そのシーレーンと言う場合には、海上防衛活動、そう訳すべきで、すなわち海上における交通保護、通商路の保護といいますか、海上交通の安全確保と、正式に言えばこういうことであろうと思います。
  458. 和田教美

    和田教美君 私は、国家政策というふうな、あるいは国策というふうな言い方は非常に危険だと思います。せいぜい政府の政策生言えばまず妥当だというふうに思いますけれども、その問題について論議をこれ以上いたしませんけれども、参考人がいらっしゃっていますから、海原参考人にひとつ御質問をいたしたいと思います。  この予算委員会で、千海里シーレーン防衛というものが、今お話のありました防衛計画の大綱の中に含まれているかどうかということが問題になっております。そこで、海原さんはその点はどうお考えになるか、お聞かせ願いたいと思います。
  459. 海原治

    参考人海原治君) お答えいたします。  防衛計画の大綱が制定されましたのが昭和五十一年十月でございますが、その翌年の五十二年七月、防衛庁は「日本の防衛」という、ここに持ってまいりましたが、いわゆる防衛白書、これを出しております。これの第二章に、防衛計画の大綱の具体的な説明がございます。ここではいわゆるシーレーンの防衛ということについては出ておりません。  この中では、ちょっと読んでみますると、海上交通の安全の確保につきましては、一応「この固定翼対潜機の部隊は、必要とする場合に、太平洋側は約三百海里、日本海側は約百ないし二百海里のわが国周辺海域について、一日一回は哨戒を実施しうるとともにこと、こう書いてあります。そしてその後で、「船舶の護衛が必要となった場合、最小限外航及びこれは海外の航路でございます。それと「内航」、これは国内の航路であります。「内航に各一個隊を当てうるためにはこということが書いてあります。すなわち、この防衛計画の大綱が制定されました翌年の防衛白書では、いわゆる一千海里のシーレーンということについては全く触れられておりません。
  460. 和田教美

    和田教美君 大綱の中に、海上自衛隊の体制について「周辺海域の監視哨戒及び海上護衛等の任務に当たり得る固定翼対潜機部隊を有していること。」というふうなことが書いてございますが、この表現をもって大綱の中にシーレーン防衛が入っておるという見解政府はとっておるのですけれども、その点はどうお考えになりますか。
  461. 海原治

    参考人海原治君) このいわゆるシーレーンの防衛につきましては、私、昨年でございますか、四月十一日に当参議院の安全保障特別委員会参考人の一人として参りました。そのときにも申したことでございますが、いわゆるシーレーンの安全の確保という言葉の内容が具体的にはわからないということをお答えいたしております。  一つの例としまして、これは五十六年版の防衛白書でございますが、日米の共同作戦についての白書の記述がございます。ここで見ますというと、日本の海上作戦につきましては、「海上自衛隊は、日本の重要な港湾や海峡の防備のための作戦、周辺海域における対潜作戦及び船舶保護のための作戦を主体となって行う。」と、こう書いてございますから、少なくともこの時点まではいわゆる一千海里のシーレーンの安全の確保、これは少なくともこういう文書の上では表に出ておりません。
  462. 和田教美

    和田教美君 三次防、四次防につきましても、このシーレーン防衛構想というものが入っているんだというふうに言っておられるわけですけれども、この点はどうですか。
  463. 海原治

    参考人海原治君) 今、三次防、四次防というお言葉がございましたが、もともと防衛庁の海上幕僚監部、ここにおきましては、前からいわゆる船団護衛あるいは航路帯を設定しましての海上交通の保護をやりたいと、こういう意見がございました。私が今の防衛庁の前身の保安庁に参りましたそのときに、既に、まだ当時は警備隊でございますが、その海上警備隊の幕僚の方では、ABCの航路帯、これは当時は航路帯と申しません。当時は、同じような言葉でございますが、日本語では航路帯になりましょう、シーレーンの安全の確保をやると、こういう一つの構想を持っておりました。したがいまして、一貫して海上自衛隊の中ではそういう有事の際の船舶の防護をやりたいという気持ちはございます。  例えば赤城構想というのがございました。これでは当時ヘリ空母と言っておりますが、これを設けるという構想がございましたが、これは二次計画の前の段階であります。当時の赤城防衛庁長官は、これは案の案のまた案だということを御説明になっておりますが、この赤城構想では既にヘリ空母、約一万トンの船を持つという構想がございます。しかし、これは二次計画の際にいろいろな問題点がありましたので、正式の政府の決定にはなっておりません。さらには、いわゆる四次防の前の段階でございますが、当時の防衛庁が用意しました新防衛力整備計画案、この中にも、いわゆる航路帯を二つつくって、そこに八千トンのヘリ空母、これが遊よくする、こういう構想がございました。しかし、このときもいろいろな問題点がございましたので、正式に決まりました四次防ではその構想はなくなっております。その後で防衛庁の久保防衛局長がこの航路帯構想による船団護衛と申しますか、それにかわる航路帯構想による海上交通の安全の確保、そういう構想は消えておるということを国会でも証言いたしております。
  464. 和田教美

    和田教美君 そうしますと、結局このシーレーン防衛という構想が政策として明確に出てきたのはいつごろからですか。
  465. 海原治

    参考人海原治君) 私はそのすべてを知っておるわけではございませんが、新聞報道等によりますと、大村防衛庁長官、塩田防衛局長のころに国会でそういう構想が出ております。さらにはこの航路帯の設定であるとか、あるいは船団護衛であるとか、さらには防衛海域と申しますか、シーコントロールと申しますか、そういう言葉がいろいろと使われておりまして、そのときそのときの説明でいろいろとニュアンスが違っておりますので、現在ただいまどういう状態にあるか私にはよくわかりません。
  466. 和田教美

    和田教美君 海原さんはもう結構でございます。
  467. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 海原参考人、御多用中ありがとうございました。
  468. 和田教美

    和田教美君 今の海原参考人の御意見にもございましたとおり、防衛計画の大綱の中にはシーレーン防衛というのは全く出ていない。それから三次防、四次防についてもそれは消えておるということを明確におっしゃったわけでございますけれども、総理及び防衛庁長官、いかがですか。
  469. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 確かにシーレーンという言葉は御説のとおりだと思います。しかし、シーレーンの思想ですね、すなわち私どもの言う海上交通の安全を確保するという、我々がこの委員会で申し上げておりますとおりですが、有事の際に国民の生存を維持し、そして継戦能力を確保する、そのために護衛をする、あるいは哨戒をする、あるいは港湾とか海峡の防備をする、そういういろいろの作戦を累積して、それによって海上交通の安全を確保するという、そういう意味を我々はシーレーン防衛と、こう言っておるわけでありますが、名前はなかったけれども、そういう思想は防衛計画の大綱をつくったとき、あるいはその以前にあったと、そういうように私どもは承知をしております。
  470. 和田教美

    和田教美君 今問題になっておりますのは、そういう思想があるとかないとかいうことよりも、具体的に一千海里防衛、シーレーン防衛というのが非常に問題なんです。ところが、今、海原さんの話によりますと、防衛計画の大綱の出た翌年の防衛白書にはせいぜい太平洋三百海里、日本海二百海里程度の哨戒というふうなことが書いてあるということなんですけれども、今の言われておる一千海里防衛、シーレーン防衛とは全く違うのではございませんか。
  471. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お尋ねでございますので若干過去の経緯の一部を御説明いたしますが、この航路帯を設ける場合に千マイル程度のものを念頭に置いてという考え方は、先般も御説明いたしましたとおり、大綱以前からそういう考え方をとっておるということを国会でもしばしば御説明しておるわけでございますが、例えば昭和四十七年九月十二日の衆議院内閣委員会におきまして、伊藤(惣)委員の御質問に対しまして、航路帯はどこまで行くのですかという御趣旨でございますが、久保説明員がこのように申し上げております。「現在の四次防の大綱の中では、周辺海域の防衛能力の向上、それから、海上交通保護能力の充実とかなんとか、その辺のことばが書いてありましたが、それで周辺海域というのはどのくらいかということについて、数百マイル、それから海上交通の保護ということについては明確な数字が出ておりませんが、大体私どもは数百マイルから千マイルくらいの程度という感じでおります。」というようなことを一例として申し上げますと述べているわけでございまして、これは国会でもしばしば明らかにしておるところでございます。この辺のことは、先般、さらにほかの問題ともあわせまして整理をして統一した見解を御提出するということになっておりますので、またその機会に譲りたいと思いますけれども、一例を申し上げればそういうこともございます。
  472. 和田教美

    和田教美君 今のお話にございましたように、政府で今国会中に統一見解をつくられるということでございますから、私この席ではこれ以上追及はいたしません。その統一見解をお待ちして改めて論議をしたいと思っております。  さて、防衛計画の大綱と対となって出てきましたのが五十一年十一月に閣議決定いたしましたいわゆるGNP一%枠という問題、防衛費はGNPの一%以内をめどとするという歯どめでございます。そこで、当時はGNP一%の枠内で大綱の別表が示しております基盤的防衛力という構想、この水準が整備できると考えておったのではございませんか。
  473. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。  ただいまの御指摘の五十一年十一月の防衛力整備に関する閣議決定、これのできた経緯をちょっと御理解をいただきたいのでございますが、これは防衛計画の大綱というものが、それまでの三次防、四次防といったものとは姿を異にしておりまして、あるべき防衛力の水準を定めようということで大綱を作成した経緯がございまして、したがいまして一定の期間を定めての防衛力整備の計画という性格ではなくなったわけでございます。したがいまして、毎年度の防衛力の整備につきましては、これはそのときどきの経済財政事情でございますとか、あるいは他の諸施策とのバランスといったものを考慮して決めようと、こういうことまでが大綱に書いてあるということでございます。  そこで、そうは言っても、年々の防衛力の整備に当たっての財源、資源配分の一つの指標として何もないということが果たしてどうだろうかというふうな政府としての総合的な判断をいたしまして、そこで毎年度の防衛力整備に当たりましては、当面GNPの一%相当額を超えないことをめどとしてこれを実施していこうということを別途に決めたという経緯があるわけでございまして、ただいま申し上げました経緯から御理解いただけますように、大綱とただいまのGNP一%にかかわる閣議決定とが直接結ぴついているということではございませんで、別途の判断として決定をされた経緯があるというふうに理解をいたしております。
  474. 和田教美

    和田教美君 そうしますと、当時から一%枠を突破する可能性があるというふうに予定をしておったわけですか。
  475. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) この点は、今の閣議決定の内容をごらんいただきますとおわかりになりますように、「当面」ということが入っておりまして、その当時からその点は何回か御議論がございました。国会でも御答弁をしているのを見ますと、これはまあ未来永劫ということではない、ただ、その「当面」というのがいつまでかということは、これは一概には決めがたいというふうな感じで、当時の関係者の御理解があったように思います。
  476. 和田教美

    和田教美君 未来永劫ではない、あるいは変わるかもしれぬという時期がまさに今来ているのではございませんか。
  477. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) この点は衆議院の予算委員会以来、中曽根総理大臣からお答え申し上げておりますように、三木内閣で決定した閣議決定の方針はこれを守ってまいりたいと、こういうことで現在は対応をしているわけでございます。
  478. 和田教美

    和田教美君 総理、いかがですか。
  479. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいまのような考えに立ってやっております。
  480. 和田教美

    和田教美君 私はさっきからの参考人の意見も聞きまして、シーレーン防衛が防衛計画の大綱の中に入っていない、そういう考え方が前提になっていないということが全く明確になったと思います。私は、シーレーン防衛構想というものが本格的に予算だとかあるいは計画という形で具体化してきたのは五十八年度の予算からではないかというふうに思います。大体、大綱が決まりました五十一年度以来、防衛費はGNPの〇・九%水準でずっと来たわけでございます。ところが、五十八年度に〇・九八%、五十九年度で〇・九九一%、急速に一%の枠の上限に来てしまったわけでございます。これはなぜかといいますと、結局、五十八年度から五六中業、いわゆる昭和五十八年度から六十二年度までの五年間の正面装備調達計画、これが始まりまして、F15戦闘機、あるいはまたP3C対潜哨戒機、あるいは四百億円近い警備艦などという足の長いシーレーン防衛用の装備調達がどんどん進み出した。こういうものは非常に高いものですから、そういう費用に金が食われてしまって、防衛費が急速に上昇して一%枠に迫ったと、こういうことではないかと思うんですが、防衛当局あるいは大蔵大臣、いかがでございますか。
  481. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) これまでの防衛予算の編成に当たりましては、これは毎年度、予算編成過程を通じて決定されているわけでございますけれども、その際には経済財政事情等、それからその他の各種施策とのバランスというものを十分考慮いたしまして、政府全体として適切な結論を決めていただいているというふうに防衛庁としては理解をしておるわけでございます。  内容的に見ますと、ただいま先生御指摘のように、国庫債務負担行為あるいは継続費に基づきます装備品の調達等の関係のいわゆる後年度負担の歳出化という要因が徐々に比率を高めてきているということはもちろんございますけれども、他方におきまして、人件費のシェアというものがこの数年は少し下がってきているといったような実態もございます。要するに、防衛費の内容として申し上げますれば、人件費と装備費とのバランスとか、あるいは正面と後方のバランスとか、そういったようなものを十分総合勘案をいたしまして、厳しく優先度を見直しながら編成をしてきたつもりでございます。総体として申し上げますと、最初に申し上げましたように、予算編成過程において適切な判断をしてお決めいただいたということでございまして、その基本は防衛計画の大綱の水準をできるだけ早く達成をしたいという政府の方針に従って今日に至っているものというふうに理解をしている次第でございます。
  482. 和田教美

    和田教美君 防衛費はあと二百五十億円で一%枠を超えてしまいます。年度途中で人事院勧告三%以上になれば一%枠が突破されるということになっておりますが、その点は別といたしましても、この五六中業、この内容を見まして、これは五年間に大綱水準へ到達するということを目標にしているということでございますけれども、それにもかかわらず、五十八年度から始まったんですが、五十八年度、五十九年度を合わした中期業務見積もりの達成率は、計画では四〇%ということになっているのが、わずかに二七%程度でございます。もし五年間に大綱水準に到達するんだというこの計画といいますか目標を変えない限りは、あと三年間で七三%分を埋めなきゃいかぬということになる計算でございます。そうなりますと、いずれにいたしましても、六十年度以降、このGNP一%枠というものは突破どころか大幅に上回ってしまうということになるのではございませんか。
  483. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 今、政府委員から御答弁いたしましたけれども、それにまず最初に私がつけ加えたいと思います。それは、和田さんのお話の中で、シーレーン防衛をやるからもう一%を超えてしまうのじゃないか、防衛計画の大綱をつくったときにはそんなのはないのじゃないかと、こういうお話でございますけれども、防衛計画の大綱、その別表がございますね。その別表の中でいろいろと陣容が出ているわけです。書いてあるわけです。あの別表は大綱と一緒に出ておりますので、この点はそういう意味で御理解いただきたいと思います。  なお、五六中業におきまして、これが達成率が今までのところ五十八年、五十九年で二七%じゃないか、このままでいったらなかなかえらいじゃないかと、こういう御指摘でございます。私は非常に厳しくなっていることは認めます。ただ、この五十八年、五十九年の予算の中で、新契約額の中で、いわゆる五六中業の柱とする主要陣容につきましては重点を置いてやっておるわけでございます。そのために相当の装備の更新、近代化もできておると考えておりますので、そこら辺を頭の上に置きながら今後の五六中業の達成には全力を尽くしたいと、こう考えております。
  484. 和田教美

    和田教美君 五六中業の達成に全力を尽くす、しかもGNP一・%は何とか守っていきたいのだと、こんな軽わざ師みたいな綱渡りのようなことができますか。総理は当面防衛計画の大綱の見直しは考えないと言っておられるわけですけれども、私は、もう大綱の枠を甚だしく逸脱したシーレーン防衛というものを最重点としてやる限りは、この大綱の見直しは避けられないというふうに思うんですけれども、いかがですか。
  485. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今の栗原長官の御答弁のとおりでありますが、私はまた、たまたまF4の更新期とかあるいはP2Jの更新期というものが重なってきている、それも一つあると思うんです。しかし、ともかく大綱の水準に到達するだけでも容易でない。今お示しのとおりでございまして、ともかくそれに向かって一生懸命努力するというのが当面の考え方であります。
  486. 和田教美

    和田教美君 五十八年の防衛白書の説明によりますと、シーレーン防衛の範囲は当初言われておったよりも甚だしく拡大をしております。その定義によりますと、こういうふうに書いてございます。「一般的に、「シーレーン防衛」とは、わが国に対する武力攻撃が発生した際、広域哨戒、船舶の護衛、港湾・海峡の防備等、各種の作戦の組み合わせによる累積効果によって、海上交通の安全を確保することを指している。」と、こう書いておるわけです。つまり、最初に重点的に考えられました航路帯というふうなことだけではなくて、千海里以内の広大な海域の防衛、防衛分担、面的防衛ということを志向していることは、これは明らかでございます。この大綱の水準ぐらいのもので果たしてこんな膨大なシーレーン防衛ということが完全にできるとお考えですか。防衛庁長官いかがですか。
  487. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) これは先ほど申しましたとおり、シーレーンというもので海上交通の安全を確保する、そのための手段としていろいろのことがあるわけでございまして、これは線とか面とかというものを考えているのじゃない。例えば航路帯の問題がございますが、海上交通の安全を確保する、そうする場合に一つの手段として航路帯を設ける場合もあり得るわけです。そういう考え方でございます。したがいまして、これが線から面になったというような認識は私どもは持っていないわけでございます。なお、先ほどから申し上げておりますとおり、いろいろの作戦の累積効果ということがございまするし、有事の際にはアメリカの方の支援もございますので、そういった意味合いにおきましてシーレーン全体をとらえるべきである、こう考えております。
  488. 和田教美

    和田教美君 シーレーンの防衛に一体どの程度の金がかかるのだ、あるいはまた海空軍事力が必要なのかというふうなことについて政府の答弁はさっぱりはっきりしないわけでございます。しかし、例えば八一年のハワイ事務レベル協議でアメリカ側が提示いたしましたと伝えられるリストは、大綱の水準を大幅に上回っております。つまり、ミサイル護衛艦について見ますと七十隻、これは大綱では六十隻でございます。それから潜水艦は二十五隻、大綱では十六隻、P3Cなどの対潜哨戒機が百二十五機、大綱では百機でございます。こういうふうに大綱の水準を大きく上回った要求が出ているというふうに伝えられておるわけでございます。そしてアメリカの議論などを聞いておりますと、大体このための所要経費はGNP二%程度になるんじゃないかという見方が非常に多いわけでございますが、この点はどうでございますか。
  489. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいま御指摘の第十三回SSC、昭和五十六年に開かれたハワイ事務レベル協議の問題でございますが、日本の防衛力整備につきましてアメリカ日本に具体的な数字を挙げて要請をしてきているということはございません。ただいま先生が御指摘になりました第十三回SSCでの模様でございますけれども、これはもう当時以降しばしばお答え申し上げておりますが、そこで会議の性格がフリーディスカッションということになっておりますので、参加者の中で一部数字を交えての意見があった、そういう話が出たということはあるわけでございます。しかしながら、それはあくまでも要請とかなんとかいうものではございませんで、フリートーキングの過程の話題の一つとしてまあそういう幾つかの数字が出たということはあるわけでございます。ただし、そういったものがどんな数字であったかというようなことにつきましては、会議の性格上、またアメリカ側との約束もございまして非公開ということでございますから、これはどういう数字であったかということは申し上げることは差し控えさしていただきたいということを前々から繰り返し申し上げている次第でございます。
  490. 和田教美

    和田教美君 それでは、二%とか今私が挙げました個々の装備についての数字だとかそういうものは全くナンセンスだというふうにお考えなんですか。
  491. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) GNPの二%ないとシーレーンの防衛ができないのではないかというふうなことを米側から聞いているということはございません。
  492. 和田教美

    和田教美君 もう一つの問題は、五十九年度の防衛予算ではいわゆる正面ぴかぴか後方ぼろぼろという形が、さらにこのアンバランスが拡大をしてきていると思います。つまり、正面の装備ばかりが先走ってしまって後方の整備がおくれておるということでございます。例えば五十九年度の防衛予算伸び率は対前年度で六・五五%ですが、正面装備の方は対前年度の伸び率は九・五七%です。ところが後方の隊員施策、これは五十八年度予算より五十九年度予算案の方が減っております。また、衛生施策についてもこれまた五十八年度より五十九年度の方が減っておる。こういう極端なアンバランスが出ておるわけでございますが、この点はどうお考えですか。
  493. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 五十九年度の予算を見ますと、御指摘のような点があるわけでございます。実は私も予算編成につきまして非常に努力いたしましたことは、いわゆる後年度負担というものが来ますからね。そのため正面装備というものはどうしてもそれに基づいてやらなければならぬ。しかし、正面と後方とがバランスをとるようにはいかない。ですから、非常に財政事情が厳しい経済情勢もありまするし、他の施策との関係もございますが、これは何としてもある一定の防衛費の伸びはお願いせざるを得ないということでいろいろとお願いをしたわけでございます。その結果といたしまして、まあ十分とは言えませんけれども、後方の方につきましては、教育訓練あるいは油とか修繕費というのですか、そういった後方方面につきましてもぎりぎりのところを認めていただいたということでございます。確かに後方を重視しろということはそのとおりだと思いまして、今後そういったことを念頭に置きながら、これからの防衛予算については対処してまいりたいと、こう思います。
  494. 和田教美

    和田教美君 政府・自民党の中には、西側の一員としての責任分担というふうなことを強調いたしまして、日本の防衛費は安過ぎるという意見がございます。しかし、例えばNATO方式、これで見ますと、五十九年度の日本の防衛費の予算は大体GNP一・五七%ぐらいになっておるわけでございます。しかも、絶対額では決して国際的に見て安過ぎるということはないと思います。ワインバーガー長官が言っておりますように、ここ数年の伸び率はNATOを上回っているわけでございますが、大蔵大臣はこの安過ぎ論についてどうお考えですか。
  495. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まあ比較対照の問題でございますから、どうして比較するかということから、政策思想を別としてお答えするといたしますならば、これはなかなかむずかしい問題と思います。  ただ、和田さん御指摘のように、まず金額、これではまさに世界第八位でございます。しかしながら、これはいわば世界百六十八カ国の防衛費総額が全部統計でわかっておって申し上げるわけではございませんが、金額ではそうなります。それから次は一人当たり国防費で見ますと、これはまた一応八二年の統計を見て、アメリカ日本円に直して二十三万四千円、あるいはサウジアラビアが六十九万四千円、イギリス、フランス十万円台で、日本が二万二千円でございますから、そういう点から見れば、一人当たりの国防費から見れば非常に低いということが言えると思うわけであります。さらにどういうところから比較してみますか、世界の人口から言えば七番目でございます。GNPで言えば、まあソ連は正確にわからぬとしても、仮に三番といたしましょうか。一人当たり所得で見れば二十三番でございますけれども、これはいわば百万以下の弱小国が上位におりますから、総じたところで比較するとやはり対GNP比あるいは一人当たりと、こういうような言葉がいいのかなと思いますが、今、外務大臣から弱小国という言葉は適当でない、人口の少ない国、こういうふうに申し上げますが、ですから、比較してどのように言うべきかということは比較の基準によって異なろうと思っております。ただ、人口の大きい国、GNPの大きい国、そういうことで今度は一人当たり国民ということになればまた大変低いと、こういうことも言えるでございましょう。
  496. 和田教美

    和田教美君 あなた自身はどう考えておられますか。
  497. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは政策選択、まあ防衛庁長官がなさって内閣一体の責任で最後は決めるわけでございますので、私は財政を扱う者として金目だけから見た場合、ちょうど私が国会に出ました昭和三十二年度予算で見れば防衛費が社会保障をわずかに上回っておりますが、今日その後社会保障が約八十倍、防衛費が一七。八倍の伸びでございますので、そういう比較対照からすれば低いと、こういうことではないかなと思います。
  498. 和田教美

    和田教美君 総理はどうお考えですか。
  499. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まあ厳しい財政の中でやりくりをいたしまして、ほかの経費とのバランスも考えつつ、まずこの辺が国民的コンセンサスの範囲内であるということで毎年苦労して努力しておる。また、一面において国際情勢全般とのにらみにおいて対外協調という面もございます。日本世界的に孤立しないようにという配慮も、日本の自主性において調整しなければならぬところもあります。そういう面もまた一面に考慮しつつ、まずまずこの辺のバランスという意味でやっておるわけであります。
  500. 和田教美

    和田教美君 この四月から策定を開始すると言われております五九中業なんですけれども、これはシーレーン防衛という名の極東西太平洋における対ソ封じ込め政策を根幹に据える方針であると毎日新聞が書いております。防衛庁長官はこの五九中業はシーレーン防衛を超重点に進めるおつもりですか、いかがですか。
  501. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 先ほど来から申し上げておるとおり、五九中業というのにつきましてはまだ長官指示をいたしておりません。いつ出すか今のところわからぬわけでございますが、そういうことでシーレーンを優先的に取り扱うかどうかというふうなことはこれまた言えないわけでございます。今まで私が当委員会で申し上げてきましたことは、国際情勢が非常に厳しい中で質の高い防衛力というものを整備しなければならぬ、そのためには各国の技術水準というものをこれは見なければいかぬなと、それから正面と後方のバランスをとらなければならぬなと、また掲上をする事業についてはその必要度あるいは優先度、そういったようなものを勘案しながら決めていかなければならぬなと、そういう段階でございまして、今御指摘のようなことを具体的には考えておりません。
  502. 和田教美

    和田教美君 自民党の中には、GNP一%の歯どめというのは確たる軍事的な根拠はないという意見が強くなってきておりますが、総理はどうお考えでございますか。
  503. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まあ一言で言えば政治的歯どめだろうと思います。
  504. 和田教美

    和田教美君 しかし、安全保障政策にはどこの国でも単に軍事的な視点だけで軍事費を決めるということではなくて、国民的な合意を基礎に総合的、政治的に決めていくというのはどこでもそうだろうと思うんです。ところが、日本の場合にはどの世論調査を見ましても、一%程度以上にふやすべきではないというのが国民の圧倒的な合意ではないかというふうに思います。したがいまして、この国民の世論に従えば、私はあくまで一%の枠は厳守すべきである、そしてそれでとてもはまらないということであれば、一%枠を前提にして、そして防衛政策の大きい見直しを図っていくと、こういうことがぜひ必要ではないかというふうに思うんですが、いかがでございますか。
  505. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 国民の声というものは我々は尊重しなければならぬことはもとよりでございます。ただ、具体的に一%というものをひとつ固定をして、この以内で防衛予算を組めと、こういうような立論になりますと国民の皆さんかどういう反応を持たれるか、これまた未確定だと思います。ですから、国民の世論ということはそれは当然考えなければならぬことではございますが、一つには政府側の我々の方の問題提起によって国民の皆さんはそれぞれ賢明な御判断をいただけると思うわけでございます。したがいまして、一概に一%を決めてその枠の中で削減をしろという御議論は私どもとしてはどうも賛成しかねると、こういうことでございます。
  506. 和田教美

    和田教美君 次の問題に移りたいと思います。  対米武器技術供与の問題でございますけれども、私は国際法上は広義の条約等、これには条約、協定、議定書、交換公文と、名称のいかんにかかわらず国家間の文書による合意はすべて含むものと解釈しておりますけれども、総理はどうお考えでございますか。
  507. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法の解釈は法制局長官に譲りますが、中にはいわゆる行政協定という面で政府外交権の範囲内で処理できるいわゆるアグリーメントと言われるものもあると思います。
  508. 和田教美

    和田教美君 私もそのとおりだと思います。そこで、政府はこの広義の条約等を国会の承認を要する条約というものと、それから政府限りで締結して国会の承認を必要としないいわゆる行政取り決めに区分しているものだと思います。  そこで、外務省にお伺いしたいのですけれども、五十八年、暦年で結構ですけれども、五十八年中に署名された二国間条約、取り決めは一体何件で、このうち条約、行政取り決め、それぞれ何件か。また、その中で対米関係の条約、行政取り決めはそれぞれ幾つか、お答え願いたいと思います。
  509. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) お答えいたします。  五十八年に署名をされました二国間の条約は、署名ベースでとりますと七つでございます。それから行政取り決めとしてそれ以外に三百八十三件ございまして、合わせて三百九十件になります。それから多数国間につきましては、国会承認条約が五件、行政取り決めが三件、合わせて八件でございます。
  510. 和田教美

    和田教美君 私の質問に全部答えてございません。日米関係はそれぞれ幾つかということです。
  511. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 失礼いたしました。日米関係につきましては、国会承認条約では五十八年署名のものはございません。行政取り決めにつきましては正確な数字を今持ち合わせておりませんので、調べてすぐ御報告いたします。
  512. 和田教美

    和田教美君 大体どのくらいですか。
  513. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 一〇〇%確実というわけにはちょっと私まいりませんが、まず間違いないところでございますが、四件ございます。行政取り決めが四件でございます。
  514. 和田教美

    和田教美君 それでは、例えば贈与取り決めとか円借款取り決めとか債務救済措置の取り決めとか、こういう数の多い中には日米関係は全然入っていませんか。
  515. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 御指摘のとおりでございまして、行政取り決めにつきましては総数で昭和五十八年に三百八十六件ございますが、その大宗を占めておりますのは経済協力関係で三百六十三件でございます。アメリカとの関係におきましては、御承知のような理由から経済協力関係の取り決めがございませんのでさっきのような数字になっております。
  516. 和田教美

    和田教美君 今のお話のように、大体一年間に取り決めた二国間の取り決めというのは三百九十件もあるわけですが、このうち国会の承認を要する条約がわずかに七件、あとは全部国会の承認を必要としない行政取り決めというふうに扱われておるわけです。私ちょっと調べてみましたけれども、五十六年度ごろに比べますと提出条約の件数は余り変わらないんですけれども、行政取り決めは五十年ごろは九十件ぐらいでした。それに比べると最近は非常に増加が目立っておるというふうに思います。  それからまた私が非常に奇異に思いますのは、外交関係というのは日米関係が五〇%、六〇%がと思うんですけれども、今のお話のように五十八年では日米関係で国会の承認を必要とする条約はゼロだということでございます。つまり、全部政府間だけの行政取り決めに回っておる。これは五十八年だけの例外的なことですか。私の感じ方は間違っておるんでしょうか。総理、どうお考えですか。
  517. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 先ほどもお答えしましたように、昭和五十八年をとりますと確かに日米間に国会承認条約の対象となるような条約で署名されたものはございません。ただ、これは委員が今御指摘になりましたように、たまたまそういうことになったわけでございまして、最近の例で申し上げますと、例えば一九八二年、一昨年に署名され、昨年に発効いたしました米国との米国の沖合における漁業協定、これが国会承認条約でございます。それから七八年に署名されまして八〇年に発効をいたしました犯罪人引き渡し条約、あるいは七九年に署名され、同年に発効をいたしました教育交流計画協定というようなものがございます。  それから、先ほど申し上げたことにちょっと補足させていただきますが、確かに委員御指摘のように、昭和五十年と例えば昭和五十八年とを比較いたしますと、条約全体、つまり国際約束全体の数は非常にふえておりますが、その大部分は経済協力関係の行政取り決めてございまして、簡単に数字を申し上げますと、昭和五十年に締結されました行政取り決めが九十五件でありましたのに、昭和五十八年、昨年は暦年でとりますと三百八十六件に上っておりますが、そのうち経協関係昭和五十年については六十一件、昨年、昭和五十八年につきましては三百六十三件ということで、経協関係を別にいたしますと五十年に締結された行政取り決めは三十四件、五十八年に締結されました行政取り決めは二十三件ということでございまして、圧倒的多数を占めておりますのが経済協力関係の取り決め数、これが六十一件から三百六十三件にふえたというのが行政取り決めが圧倒的にふえた大きい理由でございます。
  518. 和田教美

    和田教美君 憲法第七十二条の三号によりますと、内閣は条約の締結に当たって、事前に、または時宜によっては事後に国会の承認を経なければならないと決めております。これが私は一つの原則だと思います。もちろん私も今お話しございましたように、すべて条約が国会の承認を必要とするというふうには考えません。一定の基準で国会の承認を必要としないいわゆる行政取り決めも内閣の権限で締結することができると考えております。しかし、近時、政府が承認を要する条約の範囲を極めて局限して、行政取り決めの範囲を最大限に広げてきておる、そういう傾向があると私は思うわけでございまして、その点は憲法が認めておりますこの国会の条約審議権、コントロール権というものを軽視ないし無視しているのではないかと思うのですが、総理及び外務大臣の御見解を聞きたいと思います。
  519. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 若干技術的にわたる点がございますので、私から御説明申し上げます。  まず第一に、先ほど委員が御指摘になりましたように、憲法第七十三条三号に基づいて国会の承認を経なければならない条約というものの範囲は、条約という名前、何々条約という名称を持っているものに限られないというのは御指摘のとおりでございます。他方、これも委員から先ほど御指摘がありましたように、政府が締結するあらゆる国際約束が国会の承認を経なければならないというものではないということもそのとおりでございます。そこで、これはどういうものがこの国会承認の対象になるべきかということにつきましては、従来から国会でも御議論がございまして、我が国の憲法上の学説、慣行、それから諸外国の憲法、学説、慣行等も御紹介をいたしました上で、昭和四十九年の二月に当時の大平外務大臣政府の統一見解なるものをお示ししていることは委員御承知のとおりでございます。  簡単にその内容を申し上げますと、我が国の憲法上、どういう国際約束が国会承認条約に該当するかということにつきましては、次の三つのカテゴリーのものが国会承認の対象になるべき条約であるということを申し上げているわけでございます。第一は、いわゆる法律事項を含む国際約束、つまり国会の立法権にかかわるような約束を内容として含む国際約束というものについては当然国会の承認が必要である。言いかえますと、新たな立法措置の必要があるとか、あるいは既存の国内法を維持しなければならない義務を負うというような条約につきましては国会の承認が必要であるというのが一つでございます。それから第二のカテゴリーとしては、いわゆる財政事項を含む国際約束ということでございまして、既に予算または法律で認められている以上に財政支出義務を負うような国際約束、これも国会の承認が必要であるということでございます。それから第三のカテゴリーとして、今申し上げたような法律事項あるいは財政事項を含まないものであっても、我が国と相手国との間あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規律するという立場から、批准が要件とされている条約というものがございます。こういう批准条約というものは国会の承認の対象になる。この三つのカテゴリーの条約につきましては国会の承認を必要とするというのが昭和四十九年に大平外務大臣からお答えした政府立場でございます。政府としてはその方針に従って従来から国会承認条約を国会の承認をお願いしておるということでございます。
  520. 和田教美

    和田教美君 その大平大臣の発言は承知しておりますけれども、それでは次に進みますが、去年の十一月八日に安倍外務大臣とマンスフィールド・アメリカ大使との間で交換、発効いたしました日米相互防衛援助協定に基つぐアメリカ合衆国に対する武器技術の供与に関する交換公文というのがございます。これも国会の承認を必要としない行政取り決めの一つとなっているのですか。
  521. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) この対米武器技術の供与に関する交換公文でございますが、これはこの交換公文の前文にも明記してございますように、日米間に既に締結されております日米MDA協定と呼ばれるもの、相互防衛援助協定、これの第一条一項に規定されておりますところの「細目取極」として締結されたものでございます。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕 国会の御承認をいただきましたそのMDA協定の「細目取極」として、国内法の範囲内で実施し得る内容を取り決めたものでございます。内容的に先ほど申し上げました三つのカテゴリーのいずれにも属さないということで、行政取り決めとして、憲法第七十三条第二号に言うところの外交関係の処理の一環として処理したものでございます。
  522. 和田教美

    和田教美君 しかし、この内容は、これまで政府がとってきました武器輸出三原則及び昭和五十一年二月の武器輸出に関する政府方針、これを日米安保体制の効果的運用を確保するために武器技術に関してはアメリカに対して適用しない、そしてアメリカに対する武器技術の供与する道を開く、内容的には非常に重要な政治的意味を持っている内容でございます。それをなぜ行政取り決めというふうな軽い扱いをしたのですか。どうも国民には納得がいきませんが、安倍外務大臣どうですか。
  523. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) この武器輸出三原則等は、御指摘のとおり政府としての非常に重要な政策がございます。ただ、この武器輸出三原則の実施がどういう形で行われておるかということを申しますと、法的に申しますと、これは御承知のとおり、外国為替及び外国貿易管理法に基づく輸出貿易管理令の運用基準として適用する形で行われているわけでございます。今度の取り決めは、この三原則等を修正する内容の政策決定ではございますけれども、この法令自体を修正するものではなくて、外為法を何ら修正することなしに、この運用基準の内容を主管の大臣が処理をするという形で実施されるものでございます。したがって、新たな立法措置あるいは既存の法律の維持というようなことを必要とするものではないわけでございます。ちなみに、このことは取り決めの第一項のところに、日本政府関係法令に従って承認をするということが書いてございまして、この関係法令というのは御承知のとおり、外国為替及び外国貿易管理法の第二十五条の規定ということで処理をされているわけでございます。
  524. 和田教美

    和田教美君 私はそういう技術的な細かいことを聞いているわけではないのです。武器輸出三原則というのは、これは政府がみずから決められた、いわばこれこそ国是とも言うべき重大な原則だと思います。しかも、これは対米武器技術供与についても交換公文が発効する前は適用されていたものです。ところが、発効後に三原則の枠外のこととして取り扱うということになったわけです。これは三原則の事実上の重大な変更だと思うわけですが、そういう重大な政府の公約の変更に当たって、取り扱い方が今申しましたような非常に技術的なことで片づけてしまうということが果たして正しいかどうか非常に疑問だと思いますが、外務大臣、これは外務大臣ひとつお答え願いたいと思います。
  525. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに武器輸出三原則はこれまで政府がとってまいりました重要な方針であります。そしてその中で対米武器技術に関しましては政策変更をしたわけでございます。それ自体におきましては重要な政策変更があったと、こういうことでございますが、こうした政府が行った重要な政策変更の当否について国会等で議論が行われることはこれは当然でありますし、政府としましても誠意をもって政府考え方を説明することは当然でありますが、しかしそのことと、先ほどから条約局長が答弁いたしましたように、憲法第七十三条に規定する、内閣が条約を締結するに当たっての法律的要件としての国会の承認という問題とは次元の異なる問題である、こういうふうに考えておるわけです。したがって、大いに議論もし、また我々も誠意をもって答えなきゃならない課題でございますけれど、本件につきましては、いわゆる法律事項とかあるいは財政事項を含む国際約束ではなく、また批准条約でもないわけで、同時に憲法七十三条第二号に言うところの外交関係の処理の一環として行政府限りで締結し得るものである、法律的にはそういう立場で我々はおるわけでございます。しかし、国会における御論議等については慎重に、十分誠意をもって我々はお答えをしなきゃならぬ、そういうふうに考えております。
  526. 和田教美

    和田教美君 しかし、これは単に政府の方針というだけではございません、この武器輸出三原則は。衆参両院でも国会決議が行われているわけです。昭和五十六年三月の両院で、近時、武器輸出三原則方針に反した事例を生じたことは遺憾だから、政府は武器輸出について厳正かつ慎重な態度をもって対処することと、わざわざ決議をしているわけでございます。この国会決議の重みをどうお考えになっているんですか。今の外務省の一連の見解を聞いておりますと、国会決議のことは全然もう考えていないと、そういうふうな感じがするわけでございますが、条約と行政取り決めを区分する際に、この外務省の基準があるわけですが、その中には、大体、三原則でございまして、国会決議との対応ということは何も書いていないわけです。したがって、これは新しい問題を私は提起しておるわけなんですけれども、国会決議とどちらを優先するめか、国会決議を優先するということであれば当然国会の意思を聞くということが必要だろうと思いますが、その点明確にお答え願いたいと思います。
  527. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 国会決議の問題につきましては、昨年もこの武器技術についての政策変更を行うときに非常に大きな議論になったわけでございます。そうして、その中にあって政府としては統一的な見解を明らかにしたわけでございますが、その政府見解は、国会決議の有権的な解釈は国会が行うべきものであるが、政府としては五十八年一月の政府の決定はいわゆる国会決議に反するものではないと考えておるわけでございまして、その限りにおいて国会決議との関係におきましては、私たちは先ほどから申し上げましたような政府考え方、方針でこれは十分説明ができるものであると、こういうふうに考えております。
  528. 和田教美

    和田教美君 今の答えは非常におかしいわけで、国会決議に反するかどうかということは国会の有権的な解釈に任せるべきであるということをおっしゃっておりながら、それならなぜその材料であるこの交換公文を国会に出さなくて知らぬ顔をしているんですか。これは全く国会の審議権の軽視、無視ということではないかと私は思うんですが、その点、納得のいく御回答を願いたいと思います。
  529. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 国会決議の最終的な有権的な判断はこれは国会にお任せしなけりゃなちぬということですが、政府としては、武器輸出三原則の中にあって、いわゆるアメリカに対して武器技術を供与するという政策変更については、これはもう国会決議には反していないという、政府としてはそういう考え方を貫いておるわけです。そういう中で、行政権の範囲内でこの協定を結んだわけですから、この協定につきましては、これはここで十分御審議はいただくことは当然のことですが、しかし国会にかけるかけないという点については、これは先ほどから申し上げ律したように、いわゆる行政権の範囲内で処理することのできる案件であって、国会には承認を求める必要はないというのが我々の考え方、政府考え方であります。
  530. 和田教美

    和田教美君 有権解釈について国会で十分審議してくれということを言っておきながら、それで提出するしないについては政府が一方的に判断をするというのは全く矛盾しているんではないですか。まず、そういう判断を求めるのであれば、国会にそのものを出すのが本当じゃないですか。
  531. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ですから、国会の決議の最終的な有権的な解釈は、それは国会にお任せしなきゃならぬわけですが、政府としてはこの決議に反していないという考え方を終始一貫とっておるわけです。そして同時に、この取り決めというのは、いわゆる憲法第七十三条第二号に基づく外交案件の処理の一環として行政権に基づいて行われるものであって国会にかける必要はないというのが政府考えでございまして、そういう点で我々今まで説明をしておるわけですから、我々は国会の承認は求める必要はないと考えておりますが、しかし国会で十分論議していただくのはこれは当然のことでありまして、そういう意味において今いろいろと御質疑を賜り、そして我々が答弁をしているものであると、こういうふうに考えております。
  532. 和田教美

    和田教美君 どうも私は納得できません。国会で論議をしてくれと言っておきながら、出す必要はないという、この関係性は全く矛盾しているというふうに思うんですが、私はこの点についてはどうも納得できませんが、もう少し明確に答えていただきたいと思います。
  533. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは先ほど条約局長が詳しく答弁しましたように、昭和四十九年ですか、大平答弁というのがありまして、そして国会にかけるものであるかどうかという判断についても、第一カテゴリー、第二カテゴリー、第三カテゴリーということで十分説明をしております。そしてその説明が政府の基本方針として今日まで貫かれておる。先ほどからお話を聞いてみますと、何か政府が拡大解釈をして、政府が国会に出すべきものを国会に出しておらないんじゃないか、そういう傾向が強くなっているんじゃないかという御判断ですが、私はそうは思っていない。それは確かに案件が多くなっていることは事実でしょうが、大平答弁で説明をいたしました政府の解釈に基づいてこれは忠実にそれを守って、その路線の上に従って政府が決めておるわけでございますし、決して政府としては拡大解釈をしておるわけではない。そしてこの取り決めもその中で十分憲法上国会の承認を求める必要のない案件として処理すべきものである、処理できるものである、こういうことでこれは取り決めを結んだわけでございますかも、その辺は理解をしていただきたいと思います。
  534. 和田教美

    和田教美君 今説明がありました大平大臣の外務大臣当時の発言というのは、これは三原則でございますけれども、この中には、私がさっきから強調しておりますように、国会決議との関係というものは何もないわけです。初めから考慮の中に入っていないわけです。その考慮の中に入っていない原則を使って、これに合わないのだから、この中に入らないのだから、したがって国会承認を求める必要はないという言い分は全く独断的であるというふうに私は思います。これはやはり私は、少なくともこれだけの重大な政策変更であって、しかも国会が決議しているというふうなこういう重大な問題については、当然国会の承認を必要とするというふうに思うわけでございまして、この原則の中に当然つけ加えるべきであるというふうに考えるわけですけれども、この点についてどうお考えですか。
  535. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは先ほどから申し上げました、国会決議は大変重い存在だと私も思います。これは守っていかなきゃならない、これは尊重しなきゃならないと、こう思うわけですが、昨年からいろいろとこの武器技術に関する国会決議についての、武器輸出三原則に関する国会決議についてのいろいろと議論が国会内でも行われたわけですが、政府としましては、我々のとった措置というもの、いわゆる政策変更、これは国会決議には反していないと、こういう解釈をとっておるわけですから、国会決議との関係の面においては、これは政府のやっておることは国会決議とは関係ない、国会決議とは何ら違反するものではないという立場でこれは対処しておりますから、その限りにおきましては、我々のやっていることが今お話しのように国会決議に反していると、こういうことではないわけですから、それで結構じゃないかと、私はそういうふうに思うんです。
  536. 和田教美

    和田教美君 私は、これは国会決議に反しているというかどうか、とにかく少なくとも国会決議の重大な修正であるというふうに考えます。なぜかと申しますと、国会決議は政府に輸出三原則を忠実に守れということを言っているわけでございます。ところがアメリカに関しては、武器技術に関しては、あるいはまた武器技術と関連する武器に関しては輸出を認めるというわけですから、これは国会決議と相当違ったことを独断的にやっておるというわけでございます。それでどうしてこの案件を国会に全く語らなくていいのかというのは、どうしても納得できないわけでございます。
  537. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  538. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 速記を起こして。
  539. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 憲法七十三条に定める国会承認との関係につきましての政府の技術的な考え方については先ほど御説明したとおりでございますけれども、他方、大平答弁との関連について一言申し上げますと、従来、国会承認の手続を経た条約に関連して、その運用等に関して非常に重要であるというような取り決めにつきましては、行政取り決めであっても国会に対して御報告をする、こういうことが別途ございます。その件に関しましては、今回の対米武器技術取り決めはそういうカテゴリーに属する重要な取り決めであるというふうに政府としては判断いたしまして、これを国会承認手続との関連での所管の委員会であります外務委員会に対して御報告する手続をとっております。   〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕  事実関係について一言申し上げますと、衆議院の外務委員につきましては既にテキストをお配りして理事会に御報告をいたしました。参議院につきましてはまだその会合は開かれておりませんけれども、日は既に予定されておりまして、テキストを委員の皆様にお配りする、御説明をする、こういう手はずになっております。
  540. 和田教美

    和田教美君 今、答弁のございましたことは、この大平答弁の中にちゃんと書いてあることです。全然何にも前進はございません。しかも、私が調べましたところによりますと、この交換公文は官報で外務省告示という形で掲載をしているというだけにすぎないわけで、少なくとも参議院に関する限りは全く参考資料としての提出もないわけです。しかも、私が言いたいのは、仮に資料として提出をするということであれば、それをただ出すだけではなくて、長い経過のある問題ですから、その経過について当然報告をすべきであると思います。  それからもう一つ、個別の取り決めというのはこの包括取り決めに基づきまして行われておるわけですけれども、その内容が一体どうなっているのかというふうなことも全く秘密にされておるわけです。そういう点もできるだけ報告をするということが必要だと思いますが、いかがですか。
  541. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) ただいま委員が御指摘になりました二つの点のうち第一点につきましては、先ほど申し上げましたような事情で、参議院の外務委員会に対する参考としての提出が若干おくれておりますけれども、これは既に日も予定されておりますので、委員の皆さんにお配りした上で十分御説明をしたいというふうに考えております。  第二の点につきましては、北米局長から御説明します。
  542. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 委員の第二の御質問に対して私からお答えいたします。  ただいままでのところアメリカから具体的な武器技術の供与についての要請はございませんが、将来そういう要請がございまして、そして日本側で自主的にそれを検討しました結果武器技術を対米供与いたすということになりました場合には実施細目取り決めを結ぶことになっております。その実施細目取り決めというものにつきましては、これは防衛安全保障上の考慮から基本的には公表し得る性格のものではないと考えられますけれども、対米武器技術供与というものがどのように行われているかということにつきましては、アメリカ側とも協議の上、可能な範囲内で公表し得るように検討してまいりたいと考えております。
  543. 和田教美

    和田教美君 もう一つ、私がさっき提起いたしました、この国会決議までつけられておるような重要な原則の変更という問題は、当然行政取り決めなんということじゃなくて条約として国会に出すべきだという問題は、ひとつこれからも委員会としても、あるいはまた院としても、政府としても、検討事項として検討していただきたいということを申し上げまして、関連質問に移りたいと思います。
  544. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 峯山昭範君の関連質疑を許します。峯山君。
  545. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、先ほどから本委員会並びに先般から問題になっております有事法制の問題について二、三お伺いしておきたいと思います。  有事法制に関する基本的な考え方を初めに総理並びに防衛庁長官からお伺いしておきたいと思います。
  546. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) まず、事務当局からお答えさしていただきます。  いわゆる有事法制の考え方と申しますのは、現憲法と法令の枠内におきまして、自衛隊法上認められておる自衛隊の職務権限、あるいは任務遂行のために現行の関係諸法令その他に不備はないかどうかの研究でございまして、まさに平和なうちにこそこういう問題を勉強しておくことがしかるべきであるというお考えから、昭和五十三年、時の防衛庁長官からシビリアンコントロールに基づく御指示がございまして、鋭意研究をしておるところでございます。
  547. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) いま事務当局からお話がございましたけれども、自衛隊法そのものが有事法制でございますが、この自衛隊法ではカバーできないというものがある。そこで、それをカバーする意味合いにおきまして検討を進めていかなければならない。したがいまして、これは防衛庁の法令のみならず全般的な問題について検討しなければならぬと、そういうふうに考えて、第一分類につきましてはすでに中間報告し、第二分類については今各省に御協力いただいておる。それにつきましては、さらに各省の格段の協力を得てこの有事法制は進めていかなければならぬと、そういうふうに考えております。
  548. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 以上の御答弁のほかに、これは有事とはという意味で大事だと思いますが、これは侵略があった場合、あるいは侵略に値するような非常に緊急事態が起きた場合、そういうようなことを意味しているだろうと思います。
  549. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この有事法制という問題は、国民の権利義務にかかわる大変重大な問題でありますし、シビリアンコントロールという問題が十分発揮されなければならない問題であります。そういうふうな意味で、先ほどからちょっと大臣からも答弁ございましたが、第一分類につきましては五十六年の四月に中間答申があったわけでございますが、第二分類の方も相当今進んでいるようであります。そういうふうな意味で、もう第一回の答申からすでに三年を経過いたしておりますし、これは第二分類も含めまして、いわゆる国会に対しまして中間報告をぜひできたら今国会中ぐらいにまとめていただいてやっていただきたいと考えているわけですが、防衛庁、これはどうですかね。
  550. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答え申し上げます。  現在、いわゆる第二分類、すなわち他省庁の所管にかかわる法令につきまして、関係省庁約十省庁につきまして、五十ばかりの法令について約七十項目の照会を行っておるところでございますが、昨年の秋、国会に御答弁申し上げた段階では、その回答率が約三〇%というふうに申し上げました。その後努力をいたしまして、各省庁の御理解が次第に深まってまいりまして、回答率が約七〇%まで上がった段階でございます。しかしながら、大変進んだような新聞報道がなされましたが、実はこの約七〇%の回答もそれで問題が解決をしたということではございませんで、いろいろ有権解釈を求めた。すなわち、何らかの法律に非常事態と書いてある、その非常事態の中には自衛隊法七十六条防衛出動は入っておりますかという問い合わせに対する回答であるとか、例外規定、除外規定はございますかというのに対する回答でございまして、まだ本質的な問題が解決されたというわけではございません。現時点におきまして関係省庁と調整あるいは再調整が続いておる問題が多々ございます。また、法制局に対しましても、いろいろな御指導はいただいてはおりますが、まだ正式な御照会をしてその御意見をちょうだいするという段階に至っておりません。鋭意努力をいたしまして、三〇%の残りの分につきましても御回答を得るべく現在調整を続けておるところでございます。  国会に対しましては、有事法制研究の当初から、ある程度まとまった段階で御報告を申し上げる約束をいたしておりますので、ある程度まとまった段階で御報告をいたすことにやぶさかではございませんが、以上のような事情でございますので、なお、かすに時をもってしていただければ幸甚に存じます。
  551. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 防衛庁長官、これ、今の答弁のとおりでしょうけれども、五十六年四月からもう丸三年になりますね。有事法制ですから急ぐんでしょう。そういうふうな意味では、一つのめどというものをやっぱり大臣がきちっといつまでとやらないと、これは進みませんし、また中身がどういうことを検討しているかもわかりませんね。そういうふうな意味で、ぜひこれはめどをおっしゃっていただきたいと思うんです。
  552. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 時期といいますかめどといいますか、数字をもってお示しすることは今できませんけれども、私はこの有事法制の研究については漫然としておってはいけない、詰めるものは詰めていかなければならぬ、そういうふうに考えておりますので、今度は私の責任で官房長官等とも御相談を申し上げまして各省に御協力をいただくと、そういうことをいたしたいと思っております。
  553. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひ、大臣の責任でとおっしゃっておられますので、大臣が大臣のうちにということだと受けとめておきます。  それから有事法制の研究は憲法の枠内というのは当然だろうと思いますが、機密保護法という問題がありますね。この問題は、この今の有事法制の研究についてという防衛庁の見解の中にもこれは入っていないわけでありますが、当然この機密保護法は制定しないということが前提になると私は思っておりますが、この点についてどうですか。
  554. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  有事法制の研究という概念でございますが、五十三年に始めました時点において明らかにしておりますように、防衛出動下今後、すなわち自衛隊法第七十六条の侵略事態が起こった以後の自衛隊の行動にかかわる法制の研究ということでございまして、五十六年に中間報告をいたしました際にも担当政府委員より明確にお答えをしてございますように、この機密保護法の研究は有事法制の研究の対象外でございます。
  555. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今の問題ですね、これは総理、実は昨年の参議院の選挙のときにも、自民党の公約の中にスパイ防止法についての研究等がうたわれているわけでありますね。それからこの機密保護法の問題につきましては、自民党安全保障調査会というところで中間報告が行われておりますし、また有事立法研究の小委員会というのを設置されまして、その中にもこの問題が出てくるわけでありますが、この問題について、総理は今の有事法制との関係でこういう問題を入れないということが約束できるかどうか、この点どうですか。
  556. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛機密の保護という関係であったと思いますが、一般の国家機密の保護というものと防衛機密の保護と、二つカテゴリーがあると思います。今まで論ぜられてきたのは大体防衛機密の保護、そういうものであったと思います。それに限定してお答えを申し上げますと、私は今これを取り入れようという考えはありません。将来しかし検討する必要があるということが出てくるかもしれませんが、今のところこれを取り入れようという考えは持っておりません。
  557. 和田教美

    和田教美君 もう時間が大分たちましたけれども、核巡航ミサイル・トマホークの問題について少しお聞きしたいと思います。  最近の発表によりますと、六月からいよいよ核トマホークの配備が始まるということなんでございますけれども、今の秦委員とのやりとりを聞いておりますと、政府としては、ニュージャージーについては一応注意を喚起するということはやるけれども、しかしその他の例えば潜水艦だとかそういうものについては一切アメリカ側の今までの態度を信用して、もしアメリカ側から事前協議の相談がなければ核は積んでいないと信じるというふうな方針でいくんだという御答弁でございました。しかし、アメリカからの情報によりますと、今もお答えございましたように、核トマホークを積む船は非常に多いわけですね。戦艦、巡洋艦あるいは原子力潜水艦と非常に多い。しかも将来、ここ十年ぐらいの間には、横須賀に入ってくる船の八十隻ぐらいは核トマホークないしトマホークを積んでいるということになるんじゃないかという情報さえあるわけです。しかも、外から見れば核か非核であるかということは全然わからないわけでございます。今までのようなそういう向こうから言ってくればノーと言うというようなのんびりした態度で一体いけるんでしょうか。総理のお答えをお願いします。
  558. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもう政府の姿勢はこれまで答弁したとおりでありますし、今後ともこれ一員をしておりまして、ニュージャージーについては、これはいろいろと議論がありましたし、また非常に国民的にも関心が深い、そういう面もありますから、これは特に念には念を入れるということで、先ほどお話のような、注意を喚起すると。日本の非核三原則を明らかに確認をするとともに、日米安保条約、その関連規定は遵守するということをお互いに確認し合うということはやらなければならぬかなと考えておるわけですが、しかしその他の潜水艦等の入港については、これはこれまでどおり安保条約、その関連規定をお互いに遵守しておるわけですし、その強い信頼関係に基づいて、事前協議の申し入れがない限りにおいては核は搭載していないという信頼関係のもとにこれを認めるということであります。
  559. 和田教美

    和田教美君 非核三原則につきまして、自民党の一部ではこれを二・五原則にしろと。つまり、「持ち込ませず」の中で寄港とか領海通過だとかというふうなものは認めるべきだという考え方が大分出てきておりますけれども、この点について総理はどうお考えですか。
  560. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 従前どおり国会で御答弁申し上げている方針でまいりたいと思います。
  561. 和田教美

    和田教美君 トマホークについてもう一つ問題がございます。これは、もし米ソ間に戦争が起こるというふうな非常事態を考えた場合に、日本の周辺にトマホーク、核トマホークを積んでいる船がいっぱいおる。それは当然ソ連のウラジオストクなどをねらうということになるんでしょうから、日本の上空を飛んでいくということになります。そういう場合に、今までの方針ですと、領空を飛ぶ場合にもこれは事前協議の対象になって、核の場合にはノーと言うんだということを言っておりますけれども、実際問題としてそんなことはできるかどうか非常に疑問になるわけですが、この点は外務省の見解はいかがですか。
  562. 北村汎

    政府委員(北村汎君) ただいま委員が想定なさいましたようないわば仮定の問題でございますが、いろいろ仮定の問題は考えられるのでございますけれども、そういう仮定の問題について述べることはかえって誤解を招くということもあり得ますので、全くの一般論として述べさしていただきますと、米国が我が国の同意なくして核の弾頭を搭載したトマホークをして我が国領空を通過せしめるというようなことは、あり得ないと考えております。
  563. 和田教美

    和田教美君 問題は、ソ連がトマホークの配備をどう受け取るかということだと思います。さっき総理は、アメリカの抑止力を強めるために、歓迎するとまでは言えないけれども、好意的な態度をとるとおっしゃいましたけれども、アメリカがトマホークを配備するということになると、ソ連は当然SS20をさらに増強してくるという、核の悪い意味でのエスカレーションというものが起こってくる可能性があるわけです。日本政府としては、ただそういう状況を見て一方的にアメリカの抑止力の強化ということを喜んでばかりはいられないと思うんです。この辺について、やっぱり双方に対して核を減らすという核軍縮の呼びかけを、トマホークに関連してもやらなければいけないと思うんですけれども、その点はいかがでございますか。
  564. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 和田君、時間がなくなりましたから簡潔に願います。
  565. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全地球的規模で核兵器を減らしていく、そういう方針で今後とも力強く国際的に主張してまいりたいと思います。
  566. 和田教美

    和田教美君 では、終わります。(拍手)
  567. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で和田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  568. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、矢田部理君の総括質疑を行います。矢田部君。
  569. 矢田部理

    ○矢田部理君 最初に、政治姿勢、特に政治倫理問題について若干質問をしたいと思います。  田川さん、前国会では、田中元総理の政治的、道義的責任の問題が重要な政治課題になりましたが、あの問題は既に決着がついたというふうに受けとめられておりますか。
  570. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 決着がついたかつかないかというのは非常に難しい問題ですけれども、私どもは自由民主党との間に政策合意をしておりまして、その中に、最初の項に「政治倫理の確立」、という項目がございまして、その中で一審有罪の問題がございます。国会法を改正して、一審有罪を受けながらなお反省の色が見られないというような場合には何か政治的な制約を与える必要があるのではないだろうか、こういうことを検討すべきではないかという合意をしております。そういう意味からすれば、まだ決着はしていないというこども成り立つと思います。
  571. 矢田部理

    ○矢田部理君 前回に引き続き、他の野党から田中元総理辞職勧告決議案が出れば賛成をするという向きのお話もありましたが、その立場は、まだけじめ、決着がついていないという立場ではないでしょうか。
  572. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 田中辞任勧告決議案が出された場合どうするかと、こういう御質問でございますか。
  573. 矢田部理

    ○矢田部理君 いや、出た場合には賛成をするというお話があったように聞こえるわけです。
  574. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) それは御質問がありましたからそういうふうにお答えをしたわけでございます。まだ野党の各党は出されておりませんので、あるいは決着はついたのかというふうに見ておられるのかと思っている次第でございます。    〔矢田部理君「いやいや、質問に答えていないですよ」と述ぶ〕
  575. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 立って質問してください。誤解されているようだから。
  576. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう一回だけやりますね。  私が申し上げたのは、野党から田中元総理の辞職勧告決議案が再度出された場合には賛成をしたいという向きのお話がありました意味は、まだ田中問題に決着がついていないという立場ではないのでしょうかと伺ったのです。
  577. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 田中辞任勧告決議案が出たらおまえたちはどうするかという御質問がありましたから、上程された場合には賛成するであろうと、こういうことを申し上げたのでございます。ですから、田中問題が決着ついたかつかないかということは認識の違いがありまして、例えばあなたの方の党でも出されていないわけですね。ですからわからないんですよ。共産党だけしか出してないですからね。ですから、私どもにもなかなか判断が難しいということでございます。しかしながら、先ほど申し上げた自民党との間で政策協定をしたということから見れば、これは決着してないという見方も成り立つわけです。
  578. 矢田部理

    ○矢田部理君 全然違う、全然わからない。
  579. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) これほど客観的に申し上げていることはないと思うんです。田中問題が決着ついたかつかないかということは、自民党との間に政府協定を結ばれて、そうしてその中に一審有罪の問題があると、そういうことから見れば当然田中問題は決着していないからこういう問題が出てくるわけです。しかし今、決議案の問題でどうかと私どもに問われれば、皆さん方が決議案を出していないんだからわからないですよと申し上げているわけでございます。
  580. 矢田部理

    ○矢田部理君 違うな。
  581. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  582. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  583. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 田中辞任勧告決議案がいろいろ言われて、私どもは出れば賛成すると申し上げているんですよ。ところがこれに関連して、おまえたちは片づいているか片づいてないかといえば、総選挙が終わった後、田中辞任勧告決議案がまだ共産党しか出ていないから、私どもには判断がつかないということです。こんなはっきりしたことはないじゃありませんか。(「余計なことを言っている」と呼ぶ者あり)余計なことじゃないですよ。当たり前のことを私はお答えしているにすぎない。ですから判断のしようがないということです、決議案に関連しては判断できないと。しかし、私どもと自民党との間に結ばれている政策協定からすれば、先ほど申したとおりでございます。
  584. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうもまだおわかりになっていないようですね。けじめ、決着がついているなら、もう賛否の態度は要らないわけです。ついていないから出されれば賛成しますとか、画しますというんで、それはついていないという態度の表明ではありませんか。
  585. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 再三申し上げたように、決議案が出れば決着がついていようとついていまいと、私どもは態度が変わらないということを再三申し上げているんです。
  586. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、決議案を出したらどういう態度をとりますかなどという質問はしていないんですよ。中曽根内閣の姿勢いかんによっては、それを見きわめつつ決議案を出すという態度を明確にしているわけですから、そのときいかがするかということを聞いているのではなくて、田川さん御自身あるいは田川さんの政党は既にこの問題について決着がついたという立場なのか、まだついていないという立場なのかということを、けじめとしてお話を伺っているわけです。
  587. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) ついたと思っていれば、自民党との間に政策協定の中にあのような文言を書きません。
  588. 矢田部理

    ○矢田部理君 中曽根総理はどう受けとめていますか、総裁としていかがでしょうか。
  589. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、自民党としての考え、また私、総裁としての考えになると思いますが、あの決議案というものが臨時国会で大きな政治的な課題になりましてそれでとうとう解散というところへ参りました。やっぱりあの問題が大きな政治的イシューとして国民が判断をする対象として登場してきた、それでその選挙の結果がこういう結果になった。そういう意味においては国民の審判というのが最高であり、最終である。そういう意味においては決着がついていると、そう思っております。
  590. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこをお二人から聞きたかったんです。この間佐藤質問にも答えて、福田さんのところに伺ったときに、政治倫理の確立がすべての政策の前提、おろそかにはできない、特に田中元首相の政治的、道義的責任に決着をつけなければならない、こうおっしゃっておられたわけですね。したがって、両者は、総理は決着がついている、田川さんは決着がついていない、全く政策問題の大前提で食い違っている。どうして統一会派ができるのでしょうか、閣内的に問題はないのでしょうか。
  591. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただ、臨時国会及び選挙後の政局編成という点につきまして、新自由クラブと政策協定を結んで政治倫理という問題、大課題に対して両方が合意を形成した。これはやはり政治倫理を明確にするという意味において、それはある意味においては政治倫理に関する一つの決まりをつけるという意味もありましょう。そこで、一審有罪云々以下の政策協定が行われた。この問題は今野党との絡みにおいて、国会の政治倫理協議会等において審議する問題でもあり、また、しつつある問題でもありまして、そういう意味においてはこれは決着はしておりません。そういうように解釈しております。
  592. 矢田部理

    ○矢田部理君 田川さんの意見をちょっと。
  593. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) ちょっと御質問の趣旨がよくわからないんですけれども、田中問題の決着について意見が違うと見られるから連立内閣をつくるのはおかしいじゃないかと、こういう御質問ですか、よくわからないんですよ。さっきから私もまじめに聞いているんですよ。
  594. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  595. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  596. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) それほど違っていないと思うんです。自民党の中でさえも決着がついたと言う人もいらっしゃるし、ついていないと言う方もいらっしゃるんですよ。ですから、まして他党との問題で、その問題について決着がどの程度ついているとかついていないのかということが多少違うということは、そんなにどうということはないと思います。ただ私どもは一審有罪の問題についてこのままにしていくのは余りよくないではないか、国会法の改正でこういう問題はある程度解決できるのじゃないかということを自民党との間で政策合意をしたわけでございますから、ですから連立を組むのは決しておかしいことではないと思います。
  597. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 志苫裕君の関連質疑を許します。志苫君。
  598. 志苫裕

    志苫裕君 いろんな言い回しがありますが、田川さんはついていないと言うし、総理はついたと。総理と自治大臣の見解が違うわけですが、違う政党がやっておるんですから違って構いませんが、しかしそうなると、私は、実はそういう食い違いを持った連立政権の性格について本会議でただしました。改めてこの問題について少し中身に入りますが、総理総理としては自民党単独政権の方がいいと思っていらっしゃいますか。
  599. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今のことをもう一回申し上げますと、田中決議案という問題についてはこの前の臨時国会で大きな政治的イジューになって、そして解散にまで行った。これが大きな国民が判断をする主題になったと思う。そして我が自民党は負けた。これはもう国民の最高、最終審判が下った。そういう意味では私は決着はついた、そう思っておると。しかし、政局編成について、新自由クラブと連合するについて、この問題が政治倫理として両党でいろいろ話されて政策協定の対象になった。つまり一審有罪という形でなった。我々にすればこれは後始末みたいなもので、締まりをつける問題になるんでしょう。そういうような意味で両党が合意をして、いまこれが政治倫理協議会の対象になっておるんだと。そして各党がみんなこの問題をどういうふうに処理するかということを検討している最中です。まだ決着はついておりません。結論が出ておりません。各党党首の合意とか反対とか、そういう意味においては決着はついておりませんと、そう申し上げたわけであります。  単独政権がいいか何がいいかということはそのときの情勢によるのでありまして、私は今日は新自由クラブとこのような統一会派をつくったことは、国民も安心していただくし、国際信用はつくし、政局は安定するし、よかったと思っております。
  600. 志苫裕

    志苫裕君 総理、自民党の運動方針の原案のときは、政治的安定勢力の確保のため現時点における一つの選択ととらえて、あくまでも単独政権を目指すということじゃなかったんですか。
  601. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政党を編成している以上は、それは一般的課題としては単独政権をつくって純粋の政治をやりたいと思うのはどなただって、社会党だってそうでしょう、単独政権やりたいと思っていらっしゃるんでしょう。これは当たり前のことであって、そういう気概がなくなった政党はもうだめになる政党だと思います。
  602. 志苫裕

    志苫裕君 総理のは、現時点における一つの選択。一方、田川さん、あなたの方は連合の時代に新しい可能性を開く、こうおっしゃっておられるんですが、お考えを聞かしてください。
  603. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 可能性についてどう思うかということでございますか。ちょっと最後の話尾がよく……
  604. 志苫裕

    志苫裕君 連合の時代に新しい可能性を開くという選択でしょう。
  605. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) それをどうかということですか。
  606. 志苫裕

    志苫裕君 ええ、そうですね。そういう意味ですかと聞いている。
  607. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) そういう意味可能性を開いた、こういうことでございます。
  608. 志苫裕

    志苫裕君 そうしますと、これ、一方の方は現時点における政局安定の選択と言っている。言うならば数だ。一方の方は時代的背景を持って質を問おうとしておるわけだな。量と質の違いでしょう。これ、違うものがやっておるわけ。まさに時代認識やもうそういうものを全然別にしてやっているんですか。
  609. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は私は施政方針演説でも明確に申し上げたのでありまして、国民審判の結果がこういうことに出たら、何が最高の選択であるか、こういう新しい国民審判の結果に従って政治は運用さるべきである。それで、この多様性の時代にふさわしいような政局の編成を選んだ、そういうことを申し上げておるので、私はよき選択であると思っておるのです。
  610. 志苫裕

    志苫裕君 連立の性格を聞いたんですが、依然としてはっきりしません。食い違っています。  困るのは、中曽根内閣とこうとらえた場合に、それぞれ党首なんだけれども、閣僚の言い分が違ってくるわけ。戸迷っちゃうんだな、これは。その点どうですか。
  611. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別に戸迷っていることもないと思うんです。新自由クラブとは政策協定をやって、皆さんの見ている前でこれこれの政策をやることにおいて一致したと、そして政局を安定させ、国際信用を高めていく、そういうことに協力も願っておるのでありまして、これはヨーロッパにおける連合政権、連立政権の常道を行っている。日本でこういうものが出てきたからといって特に異とするに足りない。将来はまた何回か起こるかもしれぬと、そう思います。
  612. 志苫裕

    志苫裕君 田川さん、もう一遍聞きますが、中曽根さんの方はあくまでもこの時点における一つの選択で、できれば新自由クラブなんかの仲間にならぬで将来は単独政権を目指したいと、こう言っているわけです。あなたの方はそうじゃない。世の中の移り変わりは連合の時代に来たので、それに加わって新しい可能性を開こうというわけですね。大分違うでしょう。
  613. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) いや、違わないです。
  614. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ、ひとつもう一度。
  615. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 私の方でも独立した政党ですから、将来単独で政権をとりたいと。ただ、残念ながら今少数党であるということで、何も連合が自分のはまり役とは思っていないんですよ。やっぱり我々は我々なりに政権をとらなければいかぬといって自民党を離れて独立した政党をつくったんですから、連合がすべての目的じゃないですけれども、今の政治情勢から見て、今の私どもの立場から見て、これが最良の選択で、最良でもないけれども次善か三善の……、最良というのはちょっと訂正いたしますが、やらなければならないことであると、政党たる以上は政権に少しでも近づいて、そして自分の政策を少しでも生かしていかなければいかぬと、こういうつもりで連合をしたのでございます。
  616. 志苫裕

    志苫裕君 ならば田川さん、自民党は既に時代の役割を終えたという認識で、政治改革を、新しい保守政治の創造をということが立党の精神でしょう。それと、選挙に負けて数が少なくなった自民党との連合というのはどういう意味を持つんですか。
  617. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 自民党が単独で政権をとることはもう終わったということで、まあずっと単独政権が三十数年続いたんですから、私どもが八年前に自民党を出て別れるときには、そのくらいの気概で言わなければ、それは自民党を批判して出ていかなければ力が出ないですよ。そういう意味で申し上げたわけでございます。
  618. 志苫裕

    志苫裕君 総理、自民党はもう既に役割を終えたと、そう思っていなさるでしょうか。あなたはどうですか。
  619. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新自由クラブができるときのあのときの客観的な世論等を見れば、党内の若手の諸君がああいうような気概に立ってああいう行動をおとりになったのもわからないことではない。また、あの程度のことを言わなければ、独立の政党として国民が信頼もしてくれないでしょうから、私がやったってもっと堂々たることを書くだろうと思いますよ。だから、一々そういうことを目くじら立ててやるのは、どうも政党の党人同士としてどうですかね、それは。お互いがそういう立場になればそういうようになる可能性もあるんですから。  それで、自民党はじゃ役割は終わったかといえば、去年の自民党とことしの自民党は違います。志苫さん、よく聞いてくださいよ。去年の自民党とことしの自民党は違う。なぜかといえば、国民審判という厳正なものをいただいて、おきゅうを据えられて、そして新しい政治の方式に乗り出してきたと、こういうことであります。
  620. 志苫裕

    志苫裕君 政党の内側のことをのぞくようで恐縮ですけれども、田川さんね、やっぱり一つの政党が政治改革を目指して、それが挫折をしたのか、あるいはまたもとの古巣に戻るのか、これはやっぱり国民にとっても政治改革上必要なことなんです。それで、のぞき趣味じゃない。そういう意味で私聞いているんで、自民党の中では田中派が三割に近い勢力ですね。中曽根さんがおやめになって、そういう勢力が自民党の主流を占めるようになったらどうします。
  621. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 自民党の中の派閥の勢力がどうこうということよりも、自民党の今の姿勢がどうなるかという方が重要な問題なんですよ。田中さんの派閥がうんとふえたとか減ったとかということよりも、やっぱり政党がどういう姿勢を示したかということが問題なんです。ですから私どもは、やっぱり自民党の行動する姿勢というものが問題で、その中に何人田中さんの派がいるとかいないとかということは、これは大体そういう代議士に対して失礼だと思うんです。そういうことで、派閥の数だとかなんとかということじゃないんです。自民党は二百何十名いる。私どもはたった八名なんです。じゃ、八名と二百何十名との差があるから、私どもの発言力はもうそれ分しかないといえば、そうじゃない、ごらんのとおり。私どもはたった八名でも、大変私はこの中曽根内閣で何かいい立場に置かれて、発言力もあるような立場に置かれているじゃありませんか。だから、数からいったら私どもは閣僚に入れないですよ、自民党の今までの勢力からいえば。派閥が十何人か二十なければ入れないんです。それがたった八名で連合を組んでいるというのは、数だけの問題じゃないということでございます。  それから、先ほど立党のときのあれが違うじゃないかとかなんとかおっしゃるけれども、社会党だって変わっているんですよ。社会党は、アメリカ帝国主義、アメリカは日中の敵だとおっしゃっていたでしょう。このごろはそうじゃないじゃないですか。そういうふうにいろいろと政党は変化がある。
  622. 矢田部理

    ○矢田部理君 問題の焦点が外れてしまってあれでありますが、先ほどの問題につきまして、最後に伺っておきたいのは、河本さんと安倍さん、田中問題にすでにけじめ、決着がついたと考えるかそうでないと考えるか、一言ずつお二人から。
  623. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) この問題は、昨年の十二月に総裁が声明を出されまして、ああいう内容でございますから、それから御判断願いたいと思います。
  624. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我々党内でグループは持っておりますけれども、しかし、党としての立場からいけば、今、河本長官お話がありましたように、総裁としての声明も出しておるし、党として政治倫理の問題等検討を始めているわけですから、そういうふうに考えております。
  625. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと最後のところを。
  626. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 始めておるという認識であります。
  627. 矢田部理

    ○矢田部理君 御両者とも余り鮮明なお答えでなかったように思うわけでありますが、次の問題に移りたいと思います。  きょうはどうもトマホークが大変評判、人気を呼んでおるようでありますが、私も、トマホークの日本寄港、それから地上配備、空中通過、三点にわたってトマホーク問題を全般的にお聞きをしていきたいと考えております。  核つきトマホークがこの六月にニュージャージー等に配備をされる、このことが明らかにされているわけでありますが、日本政府には何らかのお知らせがあったでしょうか。
  628. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 正式には日本政府に対して何らの説明もありません。
  629. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本政府としては、いつごろからどんな艦船にこれが配備をされるか、情報としてはつかんでおりますか。
  630. 北村汎

    政府委員(北村汎君) トマホーク・ミサイルの配備計画につきまして私どもが得ております情報は、これは米側から得ておるわけでございますが、海上あるいは海中発射のトマホークの運用能力というものが達成される、ないしは達成された時期というものは次のとおりと承知しております。  まず第一は、対艦攻撃用のトマホーク、これは通常弾頭でございますが、これは昨年に配備、その運用能力が達成された。それから対地攻撃用、これも通常弾頭の方でございますが、これは、戦艦ニュージャージーにつきましては、昨年の三月にこの運用能力が達成されておる。その他のものはこれは大分おくれまして、八六年の後半であるというふうに私どもは聞いております。それから対地攻撃用の核弾頭の方でございますが、これは八四年の半ば以降、最近では六月ということが言われております。以降ということでございます。
  631. 矢田部理

    ○矢田部理君 たしか三月十四日のアメリカの下院の軍事委員会だと思いますが、ここでホステットラーという巡航ミサイル計画部長が証言をしている内容が具体的にそれを示していると思うんですが、その状況はつかんでおりますね。
  632. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 承知いたしております。
  633. 矢田部理

    ○矢田部理君 この証言が、六月という時期と、それから艦船等はニュージャージー、それから攻撃型原潜等に配備をするということが決められておるわけでありますが、こういう核つきトマホークが第七艦隊等に配備をされるということは、アメリカの核を中心とした抑止力が高まって、日本にとってはプラスだという考えでしょうか。先ほどからお話がありましたが、総理及び外務大臣見解を伺っておきます。
  634. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは今日の国際情勢、特にソ連の極東における軍事力の増大、SS20の配備強化と、そういうふうな状況のもとにあって、いわゆる第七艦隊におけるトマホーク等の配備は、それなりに核抑止力を高めるものにつながっていくというふうに理解をしております。
  635. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近におきまして、中近東地帯、特にホルムズ海峡の辺が非常に騒がしくなってきて危険性を持ってきつつあるような情勢から、アメリカがあそこへ航空母艦を初めその附属艦艇等を常駐させて万一の際に備えている、こういう状況から東アジア、東北アジア方面における防衛力が非常に手薄になってきつつあると思います。アメリカはそういうことを心配して、最近ソ連のSS20やあるいはバックファイアの増強ぶりに対抗してやはり何らかの抑止力を持って均衡しなければバランスがとれない、そういうことからトマホーク等の配備に踏み切ってきつつあると思うのであります。我々は非核三原則を持っておりますが、しかし一般的に言って、やはりアメリカの核抑止力のもとにおるわけであります。そういう意味におきまして、一般的核抑止力によって均衡を維持しつつ戦争を防ごうという意味においてはこれは是認し得るところであります。
  636. 矢田部理

    ○矢田部理君 ソビエト側から言わせると、SS20等の配備は西太平洋におけるアメリカのさまざまな核に対応するものだと言い、アメリカ側から言わせると、ソビエトのSS20やバックファイアに対抗するものとしてトマホーク核つきを配備すると、こう言う。恐らくこれに対してまたソビエトは、西からSS20の増強に努める可能性が強い等々やっていきますと、結局、核軍拡を東北アジアでより一層熾烈なものにすることになりはしないのか。同時に、日本立場からいえば、核軍縮を積極的に進めるに当たって、アメリカのトマホークの配備は歓迎、SS20反対という立場ではそのイニシアをとれないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  637. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはり、世界の平和ということを考えると、核軍拡ということは何としても避けなければならない世界的な課題であろうと思うわけです。そういう中でいわゆる米ソ間でSTARTであるとかあるいはINFの交渉が進められてきたわけですが、これが中断をしておるわけで、そういう中でINF自体もソ連のSS20も増強されるという状況が今続いておるわけでございます。あるいはまた、抑止力としての第七艦隊のいわゆるトマホークの配備等も行われるという情勢になっておるわけでございますが、日本としましては、現実の問題としては、今日の世界の平和というものは、いわゆる核の抑止力あるいはまた軍事力のバランス、そういうものによって支えられておる、現実的には支えられておると思うわけですが、しかし将来の世界の平和というものを確立していくためには、今、中断をしておるところの核軍縮交渉が一日も早く再開をされて、そして米ソ間で少なくとも核のレベルダウンというところに合意が一日も早く進むことを我々は念願をしております。そのために、日本としてできるだけの努力を重ねていかなければ、国連においての日本努力ということもこれは当然のことになるわけでございますし、あるいはまた米ソ両国に対しましても、この核軍縮が具体的に実行されるような会談の再開というものを強く求めていかなければならないと、こういうふうに私は思うわけであります。
  638. 矢田部理

    ○矢田部理君 非核三原則を国是としている我が国が、米ソのいずれであっても我が国の周辺に核を配備する、核つきのトマホークなどを持ってくるということに対しては、それをプラスと見るのはやっぱりよくない。むしろ非核三原則の精神に反する、沿わないという立場で、両方ともそれに反対をしていくのが我が国の非核三原則をとる立場ではないのか、これを広げる立場ではないのかと思うのですが、もう一度だけ答弁をいただきたいと思います。
  639. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我々は非核三原則という立場ではいわゆる核廃絶が最も理想的な形であると思います。そのために、日本は声を大にして国連でも叫んでおるわけでございますし、米ソの核軍縮の成功を心から期待をしておるわけですが、しかし現実問題として、最近の特にベトナム戦争以来のソ連の軍事力の拡大というものは極東においても緊張感を非常に強めておるわけであります。特にSS20の配備というのは、非常な極東における、さらに安全保障の問題について危惧が出ておるわけでございますから、そういう中でやはり現実問題としての平和を維持していくためのアメリカがそれなりの抑止力としての核の装備を強化するということは、私は現実的にはそれなりに平和を維持する、現実的な平和を維持するという意味においては理解ができるわけであります。
  640. 矢田部理

    ○矢田部理君 この春以降にニュージャージーが寄港すると言われておりますが、いつごろか、情報を得ておりますか。
  641. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 昨年も実はニュージャージーが入ってくるんじゃないかということも言われておったわけでございますが、結論的には入りませんでした。ことしにつきましても、アメリカからは何ら通報も受けておりません。したがって、現在の段階においてはまだそういう計画はないと、そういう計画はないといいますか、そういうことは日本としては全く承知していないと、こういうことであります。
  642. 矢田部理

    ○矢田部理君 六月に核つきトマホークを搭載をするというわけでありますから、六月以降の寄港は核つきの寄港の可能性が極めて強い。したがってこれは拒否をすべきだと考えておりますが、いかがでしょうか。少なくとも核の有無を確認すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  643. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この問題につきましては、しばしば答弁もいたしておりますが、トマホークにつきましては御承知のように核、非核両用ということでございます。そういう中でニュージャージーがもし入ってくる、仮に入ってくるという通報を受けた場合におきましては、このニュージャージーの問題をめぐっての国会の論議等も非常に行われたわけでございますし、そして国民も大変この問題については、戦艦であるということで関心を去年以来持っておるわけでございますから、日本政府としましては、ニュージャージーが入るという段階においては、アメリカ政府に対しましてこれまでの日本政府の核についての基本的な考え方、すなわち非核三原則をアメリカ政府に対しまして明確に確認をすると同時に、日本立場を明確に打ち出すとともに、同時にまた、日米間においてこれまで遵守されてまいりました安保条約、そしてそれに伴うところの関連取り決め、こういうものについてもさらに誠実にこれを遵守し合う、遵守するということを確認をいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  644. 矢田部理

    ○矢田部理君 六月から核つきトマホークの配備が決まっておる、ニュージャージーはそれを搭載をしておるということになりますと、日本寄港に際してはどこかでおろしてきたという証明がない限り、具体的な方法なりが説明されない限り、それはやっぱり核つきのまま入ってくると見るのが常識なんでありまして、少なくともこれに対してチェックすることができなければ、核に対する不安、疑惑は一層強まってしまう。ここを考えるべきだというのが一つ。  もう一つ、ニュージャージーは、ここ一年ばかりの動きをずっと見ておりますと、カリブ海の軍事演習に参加をする。その後はレバノン沖に出向いていってベイルートのシリア軍の基地を砲撃する。砲艦外交の象徴みたいな戦艦なんですね。それが今度厚化粧して日本に向かってくるということになりますと、その立場から見てもこれは拒否をしてしかるべきではないか、遠慮を願うのが筋ではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  645. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ニュージャージーにしてもその他の艦船にしてもそうですが、アメリカが核を持って日本に入港する場合には、これは安保条約、さらにその関連取り決めにおいて事前協議の対象になるわけでございます。これはもう日米ともしっかり約束をいたしておるわけでございます。そうしてお互いにこれは遵守するということを確認し合っておるわけでございます。そうして事前協議が行われたときにおいては、日本がこれを拒否するということについでも、これはアメリカ側も十分日本立場は了承しておる、我々はそういうふうに確信をいたしておるわけでございます。したがって、ニュージャージーがいわゆる核をつけて日本に無断で入ってくるというふうなことは、日米の信頼関係、安保条約、その関連取り決めから全くあり得ないことである。核をつけて入ってくるときは必ず事前協議としてアメリカ日本に通告をする、そして日本はそれを拒否する、こういうことでございますから、それ以上のものではない。ですから我々は、これまでのアメリカの艦船の入港のごとく、核を持って日本に入るということは事前協議なしにはあり得ないということについて我々は確信を持っておるわけでございます。日米関係はそうした信頼関係日米安保条約を通ずるいわゆる信頼関係によって成り立っておる、私はそういうふうに存じております。
  646. 矢田部理

    ○矢田部理君 事前協議の問題は後で本格的に論議をいたしますが、攻撃型原潜の日本寄港の実情、昨年一年間で結構ですから、どんなふうになっておりますでしょう。
  647. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 昨年でございますか。
  648. 矢田部理

    ○矢田部理君 はい。
  649. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 昨年の実績はたしか三十三隻……、ちょっとお待ちください。昭和三十九年から五十九年二月九日までの実績はございます。昨年のあれは今資料を持ってまいりますから、ちょっとお待ちください。  昨年じゅうにトマホークの装備が予定されている米艦船で、日本の港に寄港した事例というものを調べますと、昨年一カ年では原子力潜水艦の本邦寄港回数は計二十五回でございます。そのうちトマホーク配備可能艦とされておるスタージョン級及びロサンゼルス級の原子力潜水艦の寄港回数は、それぞれ十二回及び五回でございます。  ここで申し上げておきたいことは、トマホークの配備が予定されておる艦船につきましては、アメリカ政府は、艦級でございますね、艦のクラスは明らかにしておりますけれども、具体的にどの艦が配備されるかということは必ずしも明らかにしていないということでございます。
  650. 矢田部理

    ○矢田部理君 昨年の実績は例年に比べて大変多いというふうに受け取られているわけですが、そうでしょうか。ここ五年ないし数年の状況をお知らせください。
  651. 北村汎

    政府委員(北村汎君) そうでございますね、昭和五十五年が、潜水艦、水上艦艇合わせまして、まあ今お尋ねが潜水艦のことだと思いますが十回でございます。五十六年が七回、五十七年が二十一回、それから五十八年が二十五回ということになっております。
  652. 矢田部理

    ○矢田部理君 ということで、原潜の入港が非常にふえておる。しかも攻撃型原潜も相当数来ておる。ベトナム戦争のときよりも多いという数値もあるわけでありますが、それが今度は核つきトマホークが配備されるということになりますれば、これは回数、隻数その他多いわけでありますから、ニュージャージー以上にこの問題に対するチェックを厳しくしなければならぬと思うんですが、いかがでしょう。
  653. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに多くなっております。これはいわゆる極東情勢といいますか、ソ連の軍事力が非常に強化されつつあるというのがその原因ではないかと、そういうふうに思うわけでございますが、そういう中にあって今後米艦船、特に潜水艦等の入港も行われると思うわけでございますが、それらに関しましては先ほどから申し上げましたように、我々は日米安保条約を守る、日米関連取り決めによってこれに対処していく。すなわち、核についてはこれが持ち込まれるという場合には必ずこれは事前協議の対象になる、それに対して我々はこれを認めない、こういう立場でこれを貫いてまいりたいと、こういうふうに思います。
  654. 矢田部理

    ○矢田部理君 トマホークの領空通過問題、先ほどもちょっと出ましたが、ニュージャージー等にトマホークが配備をされてそこから対ソ関係をにらむということになりますと、日本列島をまたいで西太平洋と日本海側で対峙をする。ここで戦争ということになりますと、当然にこのトマホークというのは弾道ミサイルと違って低空を飛ぶわけでありますから、トマホークの領空侵犯という問題が起こる、領空通過という問題が出てくる。これはどう対処しますか。
  655. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 先ほども御答弁をいたしたわけでございますが、これは全く仮定の問題につきましてあれこれ述べますことはかえって誤解を招くおそれがあるわけでございますが、全くの一般論として申し上げれば、米国が我が国の同意なくして核弾頭搭載のトマホークをして我が国領空を通過せしめるというようなことは、私どもはあり得ないと考えておるわけでございます。
  656. 矢田部理

    ○矢田部理君 核の領空通過についても事前協議の対象だということは、何かで確認されておりますか。
  657. 北村汎

    政府委員(北村汎君) いかなる核兵器の持ち込みというものも、それは事前協議の対象であるということを政府はたびたび申し上げております。
  658. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカとの間でそれは確認されているかと聞いているんです。
  659. 北村汎

    政府委員(北村汎君) これは安保条約第六条の実施に関する交換公文及びそれに基づいた藤山・マッカーサー口頭了解からして、アメリカ側も我々と同様に考えております。
  660. 矢田部理

    ○矢田部理君 領空は入っているか。
  661. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 藤山・マッカーサー口頭了解に、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込みというものが装備における重要な変更であるということになっておって、岸・ハーター交換公文によりまして、アメリカ軍隊の装備における重要な変更というものは事前協議の対象になるということでございます。そこで、「同軍隊の」というのは、これは安保条約の規定を受けるアメリカ軍隊ということでございますので、それは単に日本に配置されておる米軍だけではなくて、一時的に日本の領空あるいは領海を通過する軍隊あるいは寄港する軍隊、そういうものも含まれるということでございます。
  662. 矢田部理

    ○矢田部理君 ということでございますと言われても、そういうことは確認されているかと聞いているんです、領空通過を。
  663. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 核兵器の持ち込みというものが領空を含むものであるということについては、これはアメリカ側も同様の見解を持っておると我々は考えております。また、先ほどそれがトマホークの我が国の領海通過の問題ということで御引用されたのであるとするならば。トマホークのような、核つきのトマホークが我が国の領空を通過するということは、私先ほど申し上げましたように、これは事前協議などより以前の問題として、我が国の同意なくしてアメリカがそういうことをさせるということは考えられないということでございます。
  664. 矢田部理

    ○矢田部理君 全然答弁になっていない。全然答えになっていないでしょう。
  665. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  666. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  667. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 領空通過についての日本政府立場考え方というものは、これは何度もこの国会で申し上げているところでございまして、アメリカ側は私どものこの国会審議において述べた意見というものを常に十分認識して、承知しておるところであると思います。
  668. 矢田部理

    ○矢田部理君 したがってアメリカは知っているはずだというだけであって、直接確認はしていないということですね。
  669. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 先ほど来御説明をしておりますように、アメリカ軍隊の「装備における重要な変更」ということは、これは我が国の領空を一時的に通過する軍隊であっても、それが核を持ち込む場合には事前協議の対象になるというのは、これは岸・ハーター交換公文及び藤山・マッカーサー口頭了解の解釈からして当然出てくるわけでございまして、この点はアメリカ側も我々と異なった意見を持っておるとは考えておりません。  また、先ほど来御説明しましたように、この国会において私どもは核を搭載した飛行機が我が国領空を通過する場合、これも核の持ち込みに当たるという答弁を繰り返しいたしております。こういうこともアメリカ側は十分承知いたしておるところだと思います。
  670. 矢田部理

    ○矢田部理君 艦船の寄港とか通過についても、逐一今まで何回も問題になってきたわけでしょう。今度は核そのものの領空通過を問題にしているわけですね。これはアメリカは確認していないんですよ、全然。ただ日本でそう解釈している、あるいは国会で論議しているからわかっているはずだと。確認していないんじゃありませんか。
  671. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 御質問が核を搭載した航空機そのものが我が国の領空を通過する場合、これが核の持ち込みに当たるかどうかというこの解釈でございますけれども、これは先ほど来御説明しておりますように、安保条約第六条の実施に関する交換公文と藤山・マッカーサー口頭了解の文意からして極めて明らかなところでございます。繰り返しますと、「同軍隊の装備における重要な変更」の「同軍隊」とは、これは日本国の領域にある、配置されておる軍隊のみならず、それを一時的に使用し、あるいは一時的にそこを通過する軍隊を含むということは、これは条約の解釈上明らかなところでございます。
  672. 矢田部理

    ○矢田部理君 解釈上明らかかどうかを聞いているんじゃなくて、アメリカとの間でその点は確認しているか、艦船の通過とか寄港についても解釈上いろいろ問題があったわけでしょう、だから上空通過についてもそういうことを確認しているかと聞いているんです。解釈を聞いているんじゃない。
  673. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 答弁を繰り返すことになって恐縮でございますけれども、その領空を通過するアメリカの航空機が核を搭載しておる場合事前協議の対象になるということは、これは先ほど来御説明しております安保条約及びその関連取り決めの解釈からしてこれはもう極めて明らかなところでございまして、これはアメリカに特に確認する必要はないと考えております。
  674. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  675. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  676. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 核を搭載した航空機が日本の領空を通過する場合、それが核の持ち込みである、したがって事前協議の対象になるということにつきましては、先ほど来御説明しておりますように、これは私どもとしまして安保条約及びその関連取り決めの解釈からしてもう極めて明らかなところであるということでございますので、アメリカとその点だけを取り上げて確認したというようなことはございません。しかし、先ほどから申し上げておりますように、また、私ども政府がライシャワー発言のとき、あるいはその前のときにもるる御説明をいたしましたように、私どもの考え方は先ほど来説明しておりますように、これは核の持ち込みに当たり、事前協議の対象であるということは、この考えアメリカ側も十分承知しておるところでございます。
  677. 矢田部理

    ○矢田部理君 ライシャワーも、艦船についてでありますが、寄港、通過は持ち込みに含まないと言われておるし、それから藤山さんや岸さんもそういうところまでは話は詰めていなかったと言っているわけでありますから、解釈上明らかでは困るのでありまして、アメリカと詰めるべきだ、確認をすべきだと思います。特にトマホークということになれば、飛行機じゃなくて無人飛行機の上空通過ということになるわけでありますから、その点特に要請をしておきたいと思います。いかがでしょうか。
  678. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 先ほど来申し上げておりますように、いかなる核の持ち込み、それが空のものであれ海のものであれ、それは事前協議の対象になるというのが私ども政府の確固たる考え方でございまして、その点をアメリカ側との間で特に取り上げて確認するということは必要ないと考えております。
  679. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、局長も答弁をいたしましたように、トマホークであれ何であれ核である以上は、日本は非核三原則という立場において事前協議があった場合には、これを拒否するということはこれまでも明確にいたしておるわけでございます。そしてまた、アメリカ日本に対しまして安保条約、その関連取り決めはこれを誠実に守るということを言っておるわけでございますので、私は、今の日米安保条約が存在をし、日米間の信頼関係がある以上は、アメリカから一方的に日本に無断で核が持ち込まれるというふうなことは絶対にあり得ないというふうに信じておるわけであります。確信をいたしておるわけであります。
  680. 矢田部理

    ○矢田部理君 解釈と確信ではなくて、アメリカにそのことを確認しなさいと、こう言っているわけです。
  681. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、日本としては確信というよりは不動の日本政府の姿勢でございます。  それからアメリカとの間におきましては、昨年も実はF16の三沢配備あるいはまたエンタープライズの寄港等におきまして、私がマンスフィールドさんとお目にかかりましていろいろとお話をし、確認をいたしたわけですが、それは、日本は非核三原則をこれはもう厳守していく立場であると、同時にまた核に対して日本国民は非常に特別な感じを持っておるということはアメリカも十分承知していただかなければならぬ、同時にまた国会における論議等もアメリカとしては十分これは踏まえていらっしゃるはずだと。そういうものを踏まえて、今回のF16の配備あるいはまたエンタープライズの寄港等において、今の日本政府立場というものを十分踏まえた上で行っていただきたいということを申し上げまして、マンスフィールド大使は、日本立場については十分我々としては、アメリカ政府としてこれを承知しておると、そしてアメリカ政府としても日米間の信頼関係を守っていくと、そして日米安保条約、その関連規定を誠実に信頼関係を維持するためにこれを遵守していくというアメリカ政府立場は毫末も変わらないのだということをマンスフィールド大使もはっきりと申しておるわけでございます。そうした経過あるわけでございまして、我々はそういう意味におきましても、先ほどから申し上げましたように、藤山・マッカーサー口頭了解、岸・ハーター交換公文等の解釈というものは厳然として貫かれておると、こういうふうに存じております。
  682. 矢田部理

    ○矢田部理君 なぜ私がこういうことを提起するかといいますれば、核つきトマホークを搭載した第七艦隊が、仮に限定的な核戦争が発生した場合には日本海側に出なければ撃てないということなんです。しかし、そんなことで間に合うはずはないのでありまして、今のままだと太平洋側からやっぱり直接撃つ可能性危険性を持っているわけですね。スウェーデンのごときはそういう危険を察知して、例えばスウェーデン国防省は中立を守るために、巡航ミサイルがスウェーデン上空を通過する可能性があると、その場合には追跡をして撃ち落とすことを基本方針にしたんですね。そこまでやっぱり深刻に問題を考えているわけですよ。  だから、単に確信をしているとか、解釈上こうなるから間違いないんだということでは済まされない。特に、艦船の寄港や通過については持ち込みに当たらないんだという解釈がライシャワーを初め日本の人たちの中にも抜きがたくあるわけです。もう一度やっぱり念のためにも確認をしてしかるべきだ、こう思いますが、いかがでしょうか。
  683. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういう立場も踏まえて、いわゆる象徴的な日本の行為として、ニュージャージーの寄港に当たりましては念には念を入れるという立場、今のいろいろの御意見等も十分踏まえた上で日本政府として対応したいと、こういうふうに思うわけであります。
  684. 矢田部理

    ○矢田部理君 確認をすることも含んで対応すると。
  685. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどから申し上げましたように、日本立場あるいは国会の論議、あるいは日本の安保条約、関連規定に対する日本考え方というものをはっきりと申して、それに対してアメリカ側の確認を求めるということでございます。  これは、これまで私が、昨年もマンスフィールド大使との間で行いましたエンタープライズあるいはまたF16の三沢配備、そうした話し合いというものに準じてこのニュージャージーの寄港のときもこれは行わなければならないと、私はそういうふうに考えてこれを行う考えであります。
  686. 矢田部理

    ○矢田部理君 確認的に伺いますが、そうしますと、今私が申し上げた核の領空通過も持ち込みに当たるんだからだめですよということも含めて指摘をして確認をしたいと、こういうことですね。
  687. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これまでやってきた立場からいきますと、アメリカ日米安保条約、その関連取り決めはこれは守ると言っているわけです。そして、岸・ハーター交換公文あるいはまた藤山・マッカーサー口頭了解もこれはアメリカも守ると、こういうことを言っておるわけでございます。そういう中で日本の非核三原則という姿勢をはっきりとアメリカに念には念を押して伝える。同時にまた、国会の論議というものも、これは国会は最高機関でありまして、政府の発言はそれなりに内外に対して重きを持つものでございます。それはまた当然のことでございます。そういう国会の論議等もアメリカは十分これを承知しておると、こういうことについてもアメリカ政府もそれは何回も言ってきているわけでございますから、私は、今の領空、領海、それからまたいわゆる寄港ですね、これについては、政府委員も何回か申し上げておりますように、日米間におきましては、岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサーの口頭了解、それについての解釈においてはこれはお互いにはっぎりしていると、これはもう明快であるというふうに考えております。  したがって、ライシャワー発言等もありましたけれども、これに対しても、当時の園田外相等も、これらについて会談をいたしておるわけでございます。そうした記録等も読みましても、この間の、日米間の解釈ははっきりしておると、私はそういうふうに考えております。
  688. 矢田部理

    ○矢田部理君 国会の論議を踏まえてアメリカに確認をするという御趣旨は、今、私が指摘をした問題を伝えて確認をするというふうに伺ってよろしいですか。一言でいいです。
  689. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 国会の論議がこの問題については非常に深刻に行われておる。その国会で日本政府がどういうことを述べ、そしてまた日本政府に対してどういえ質疑があったかということについては、これはアメリカ側もはっきりと承知をしておるはずだと、こういう点はこの前も申し上げたところでございます。
  690. 矢田部理

    ○矢田部理君 全然違う。
  691. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  692. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  693. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今度アメリカ政府とニュージャージーの入港に当たって話し合いをする場合におきましては、これまでの日本立場、さらにまた国会の論議も踏まえまして、日本立場を明確にアメリカに伝えると、こういう考えてあります。
  694. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカに伝えて了解を求めると、確認をとると、こういうことですね。
  695. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本立場をはっきりとアメリカに伝えると、こういうことであります。
  696. 矢田部理

    ○矢田部理君 伝えて確認をとる、了解をとる。
  697. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはアメリカは、しばしば申し上げましたように、安保条約、その関連規定は誠実にこれを守るということを言っておるわけでございますが、ただ、核の存否については明らかにできないと、こういうことはアメリカも言っております。しかし、安保条約、その関連規定はこれを遵守するということはしばしば言ってきておるわけでありまして、その辺のところは矢田部委員は専門家でございますからよく御承知のとおりだと思うわけでございますが、日本立場は、国会の論議等も踏まえて明確に伝えたいと思います。
  698. 矢田部理

    ○矢田部理君 あとトマホークの地上配備問題があるんですが、アメリカの国防総省の国防核兵器局、ここが委託をした研究報告によりますと、ソ連の海軍に対抗するために艦載用のトマホークを海峡防御用に地上に転用配備する、こういう構想を検討した結果、トルコや日本への配備が極めて効果的である、候補地として佐世保と三沢を挙げているわけです。なお、地図が添付されておりまして、その地図によりますと、佐世保と三沢だけではなくて、北海道の知床付近、秋田県の男鹿半島、それから韓国の浦項などを予定して、それぞれ三海峡をねらって配備をするのが望ましいと。この配備は米軍自身がやる場合もあるし、同盟国の基地に求める場合もある、こういう報告があるわけでありますが、そこで、日本の自衛隊の基地に配備を求めてきた場合にどういたしますか。
  699. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。  自衛隊におきまして、トマホークを保有をしてそれを配備するという計画はございません。
  700. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本に求めてきたら断るということですか。
  701. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 自衛隊の装備をどういうものを持つかということは、我が国が自主的な判断に基づきまして決定することでございます。その意味におきまして、私どもはトマホークを現在装備して保有するという計画は持っておりません。
  702. 矢田部理

    ○矢田部理君 現に計画がないことはわかりますが、求めてきた場合に、相談に乗る用意あるいは受け入れる用意はあるのか。
  703. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 繰り返してお答えするようでございますが、自衛隊としてはそういう考えは持っておりません。
  704. 矢田部理

    ○矢田部理君 米軍、アメリカ自身が在日米軍基地に持ち込むことについてはいかがでしょうか。
  705. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 委員御承知のように、トマホークは核、非核両用のミサイルでございますが、安保条約上、いかなる核兵器の我が国への持ち込みというのも、これは事前協議の対象でございます。そういう事前協議があった場合には、政府はこれを拒否するという立場には何ら変わりはございません。  それから、御指摘の仮定の問題でございますが、これが非核のトマホークであったらどうだというような御質問ではないかというふうに思いますが、そういう仮定の問題というのはいろいろ千差万別でございますので、わが国の対応を含めてあれこれ論じるということは適当でないのでございますけれども、そういうような話が今現在あるわけではございませんし、また御指摘になりました報告というのも、われわれは承知はしておりますけれども、それはやはり研究所の報告でございまして、アメリカ政府考えがそういうふうになったということではないので、私どもとしては、そういう仮定の問題についてはここで議論に立ち入ることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
  706. 矢田部理

    ○矢田部理君 一応、トマホークの核つき寄港あるいは領空通過、地上配備の問題等を問題に供してきたわけでありますが、問題は、核であれ非核であれ、トマホークという新しい兵器体系をどう認識するのかということが一つのポイントであろうかというふうに考えているわけです。  そこで、改めてこの事前協議、これらはやっぱりすべて事前協議の対象にすべきではないかという意見を私は持っているんですが、外務省いかがでしょうか。
  707. 北村汎

    政府委員(北村汎君) これはもう矢田部委員よく御承知のように、事前協議の対象というのは、これはあくまでも装備における変更という面では核の持ち込みということでございます。そのほかの事前協議の対象は、御承知のように、配置における重要な変更と、それから我が国の施設区域を使用しての戦闘作戦行動、この三つでございます。
  708. 矢田部理

    ○矢田部理君 岸・ハーター交換公文と藤山・マッカーサー口頭了解と、これはどういうつながりになっておりましょうか。
  709. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 御質問の意味を正確に私把握しておるかどうかわかりませんが、委員御承知のように、安保条約第六条の実施に関する交換公文、これがいわゆる岸・ハーター交換公文と言われるものでございますが、その中で事前協議の主題となる項目が挙げてございます。その内容につきまして、当時の交渉に携わった藤山、マッカーサー両者間の口頭了解としてその内容を確認したものという関係になると思います。
  710. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは法律的に見ると、交換公文はいわば両者間の契約、条約に類するものですね。つまり、その限りでは法的なものですが、口頭了解というのはその法的交換公文の解釈を示したというふうに受けとめてよろしいでしょうか。
  711. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 御指摘のとおり岸・ハーター交換公文は日米両国政府間の文書による国際約束でございます。その内容について両政府立場を確認する、したがって岸・ハーター交換公文の内容を補足してそれを明確にする趣旨の了解であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  712. 矢田部理

    ○矢田部理君 法的なものですか、それとも解釈の一つですか。
  713. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 岸・ハーター交換公文の内容、そこに規定されている事柄についてそれを明確にする両者間の了解でございます。
  714. 矢田部理

    ○矢田部理君 解釈か法的なものかと聞いている。
  715. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 両者間の意思の合致を示しておるという意味でその内容を解釈したものであると申してよいかと思います。
  716. 矢田部理

    ○矢田部理君 解釈ですね。
  717. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) はい。
  718. 矢田部理

    ○矢田部理君 解釈だと思うんですね。だから、これの解釈に限定される必要はない。交換公文では核に限定してはいませんが、その点はどう考えますか。
  719. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 先ほど来申し上げておりますように、岸・ハーター交換公文ができるに当たってそこで使われております、そこで規定されている事柄の内容についての両者の了解を確認したものでございます。その意味でそれが解釈だと言ってもよろしかろうということを申し上げたのでございまして、その岸・ハーター交換公文ができたときの両当事国間の一致した合意の内容を示しているものということでございますので、その内容をまた変更していくということになりますと、これはまた別途の問題になろうかと思います。
  720. 矢田部理

    ○矢田部理君 正式に法的なものとして交わされた交換公文では装備の重要な変更という規定をしているのであって、それは核というふうに限定をしていない。解釈上限定したとしても、それは一つの解釈であって、それにとらわれる必要はないのではないか。もう少し広い範囲で装備の重要な変更をとらえるべきではないかというふうに思うんですが、いかがですか。
  721. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) ただいま申し上げたことの繰り返しになって恐縮でございますけれども、藤山・マッカーサー口頭了解というものは、日米安保条約が交渉されましたときの交渉当時者が、その安保条約第六条の実施に関する交換公文という国際約束の内容について面当時国間の了解を口頭で確認したものでございます。したがって、これはその国際約束がつくられましたときの両当時国間の一致した合意、意思の一致を表現しているわけでございますので、したがってその内容は岸・ハーター交換公文に盛られていること、そこに盛られている両者の合意というものを示しているわけでございます。したがって、その限りにおいて両者の間の意思の一致というものを変更するということは、先ほど申し上げましたように新しい問題になってこようかというふうに考えます。
  722. 矢田部理

    ○矢田部理君 じゃ、こう聞きましょう。交換公文では核に限定をせず、口頭了解で初めてそのレベルで核に限定したのはどういうわけですか。
  723. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 当時の交渉経緯の事実関係の詳細については、私、今ここでつまびらかにいたしませんので、そこの点について申し上げることは差し控えたいと思いますが、ただ、「装備における重要な変更」という一般的な表現を用いて、その内容、意味するところはこれこれであるということが当時の交渉当事者であった藤山、マッカーサー両代表の間で確認されたということでございますので、その点については日米間の完全な意思の合致があるというふうに御理解いただきたいと思います。
  724. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこに私が限定をするのは、口頭了解を狭く解釈をしているんではないか、日本にとっては不利な解釈になっているんではないかということが一つ。それから、この口頭了解そのものの読み方ですが、これは核に限定されているんですか。そういう文章にこれはなっていますか。
  725. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 委員の御指摘の点は、「装備における重要な変更」との関連におきまして、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」ということに関連しての御質問かと思いますが、そこで言っておりますことは、要するに核の持ち込みは事前協議の対象であるということであり、したがって典型的には核弾頭、それからその核弾頭を不可分の一部としておるような、それを当然の前提にしているような武器としての中長距離ミサイル、それからそういうものの基地を建設すること自体は核の持ち込みを前提にしなければあり得ないことであるという意味において基地の建設ということが加わっておるというふうに了解しております。
  726. 矢田部理

    ○矢田部理君 この文章の読み方ですが、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み」、「持込み」というふうになっているわけですが、「核弾頭及び中・長距離ミサイル」ということになりますと、これは「and」で結ばれているわけですね。両方くっついたものを一緒に持ってくることがいかぬと、事前協議の対象になると、こういう意味じゃないんですか。
  727. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) そこで意味しておりますのは、核弾頭とそれから中長距離ミサイルと、それらの持ち込みということでございます。
  728. 矢田部理

    ○矢田部理君 核弾頭だけでもいかぬということですか。
  729. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) そのとおりでございます。
  730. 矢田部理

    ○矢田部理君 あわせて、中長距離ミサイルだけでもいかぬと、こういうことですか。
  731. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 先ほど御説明いたしましたように、この「装備における重要な変更」の主題になっておりますのは、核兵器の我が国への持ち込みということでございます。したがって、核弾頭そのものであればもちろんそのものずばりでございますので、これは当然事前協議の対象になる。それから、核弾頭を前提にしての核兵器の持ち込みということになるような中長距離ミサイルというものも同じくその対象になる。それから、そういうものを前提にしての基地の建設というものも事前協議の対象になるということで、考え方としては先ほど申し上げましたような、全体として核兵器の持ち込みというものが事前協議の対象になるということを明確にしたものでございます。
  732. 矢田部理

    ○矢田部理君 法制局長官、そう読めますか。
  733. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいま問題になっております藤山・マッカーサー口頭了解につきましては、長い長い歴史といいますか、いきさつがありまして、今、条約局長お話しになった見解というふうに私も記憶しております。
  734. 矢田部理

    ○矢田部理君 この文言は、外務省の説明したように読めるかと、こう言っているんです。まともに読んでごらんなさい。
  735. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) これは両者間の取り決めと申しますか、話し合いの結果でそういうことになっているということでございまして、言葉として読めるかということになれば、それは読めないことはない、当然読めると思います。
  736. 矢田部理

    ○矢田部理君 「and」で結ばれている場合には、両方込みにした場合はいかぬと、こういうんでしょう。「or」でつながれている場合にはどっちもいかぬと、それぞれだめだと、こういうことになる。ところが、極めて中途半端な読み方をこれはしているんですよ。
  737. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 中途半端な読み方という御質問の意味が私必ずしも正確に把握していないかもしれませんが、そこに書いてありますのは、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み」ということで、核弾頭の持ち込みもそれから中長距離ミサイルの持ち込みもいかぬと、こういうことになるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、この対象になっておりますのは核兵器の持ち込みということでございまして、そこで言っておる中長距離ミサイルというものは当然核兵器の使用を前提とした中長距離ミサイルということで、全体としてそのいずれの持ち込みもいけないと。それから第三番目に「並びに」で結びました第三のカテゴリーのものもいけない、いけないと申しますか、事前協議の対象になると、こういう趣旨でございます。
  738. 矢田部理

    ○矢田部理君 言葉はちょっと違うんですね。核弾頭そのものはいけないという立場はわかりました。「及び中・長距離ミサイル」というんだから、核弾頭を前提とした中長距離ミサイルというふうには全然読めませんよ。この文章そのものは中長距離ミサイルが独立したフレーズになっているわけです。そうすると、それもいかぬという文章じゃありませんか。
  739. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 文字そのものの解釈としては、先ほど法制局長官も御答弁になりましたように、どう読むかという問題はあるかもしれませんが、交渉の経緯、当事者間の了解、それからこの規定の条理から申しまして、ここで考えられておるのは、核兵器の持ち込みに当たるような行為、すなわち核弾頭そのものの持ち込み、それからその核弾頭の運搬手段としてのみ考えられる中長距離ミサイルの持ち込み、それからその核兵器を持ち込むということが大前提になって初めて可能であるところの基地の建設ということが事前協議の対象になるという考え方がそこに示されているわけでございます。
  740. 矢田部理

    ○矢田部理君 そんな一方的、主観的解釈はない。装備の重要な変更と言っているわけですね、交換公文が。それに基づいて口頭了解をつくっている。核弾頭はいけませんという立場を外務省がとるんならば、あわせて、核と関係なしに、同時にこの中長距離ミサイルもいけませんと、こういう文言ですよ。それが素直な読み方だし、それ以外の読み方はこれは主観主義で、勝手に解釈している。そう言えると思います。
  741. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) たびたび繰り返しになりますけれども、この藤山・マッカーサー口頭了解の意味するところにつきましては、従来から政府側が国会において御答弁申し上げておりますとおり、安保国会以来、つまり安保条約が締結されて以来、この規定がどういう意味であるかということについては交渉当事者の立場から御説明しているわけでございます。核弾頭というものと中長距離ミサイルというものを言葉として切り離すという、文字どおりに読んでそれを切り離すという考え方も文字そのものから言えば可能かと思いますけれども、しかし条理的にここで申し上げておりますのは、これはあくまでも核兵器の持ち込みということを念頭に置いてつくられた規定であって、条理上ここで言っておりますことは常に核兵器の問題との関連において規定されている事柄である。こういうのが従来からの政府立場でありますし、それからまた交渉当事者が安保国会以来御説明しているところでございます。
  742. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういう政府の説明がわからぬから聞いているわけです。おかしいから聞いているわけです。
  743. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) この日米間の合意の解釈につきましては、先ほど来他の政府委員が申し上げておりますように、日米間に意思の合致があるわけでございまして、そういう意思の一致した了解というものが、今、先ほど来私が申し上げている解釈であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  744. 矢田部理

    ○矢田部理君 あなたのような見解をとるんならば、核弾頭及び核弾頭つき中長距離ミサイルと書くべきなんだ、そうでしょう。それが正確な表現じゃありませんか。これは別個の表現ですよ。そして、重要な装備という交換公文との関係で解釈をするならば、あなたのような主観的、独断的な解釈は出てこない。言うならば、中長距離ミサイルの配備についてもやっぱり事前協議の対象にすべきと、そういう解釈が当然ここから出てくると私は思うんですが、いかがですか。
  745. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 先ほどの私の御説明が若干不十分であったとすれば御容赦をいただきたいのですが、今、委員がおっしゃいましたように、核弾頭と核弾頭つきの中長距離ミサイルということでありますならば、委員のおっしゃるとおりだろうと思います。私が申し上げておりますのは、核弾頭の持ち込み、これは事前協議の対象である。それから核弾頭の装着を当然の前提として、核弾頭なしには意味をなさないような中長距離ミサイルの導入は、それ自体が事前協議の対象であるということでございますので、したがって核弾頭というものと中長距離ミサイルというものは一応別なものであるということでございます。
  746. 矢田部理

    ○矢田部理君 余り同じ議論をしてもしようがないのですがね。核弾頭と中長距離ミサイルは別なものだと、私もその前提に立っておる。その別なものの中長距離ミサイルの上に核を当然前提とするようなという言葉は、この文言からはどこからも出てきませんよと、こう言っているのです。そうでしょう。
  747. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 委員の御指摘の点は私も理解しております。私が申し上げておりますのは、この了解というのは、あくまでも岸・ハーター交換公文という日米間の文書による合意がございまして、それの内容を確認するための交渉当事者の了解事項を述べたものであるということから出発いたしまして、この両者の了解の内容なるものは、私がさっき申し上げておるような核兵器の我が国への持ち込みということを対象にした了解である。そういう見地からこれを条理的に解釈いたしますと、先ほど申し上げたようなことになるということを繰り返して申し上げているわけでございます。
  748. 矢田部理

    ○矢田部理君 それじゃ口頭了解の下にもう一つ了解しなければならぬような仕掛けになっておるのですか。全然だめですよ、その議論は。文言がなっていない。
  749. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 同じようなことの繰り返しになって恐縮でございますけれども……
  750. 矢田部理

    ○矢田部理君 同じ話ならいいよ、聞かなくても。
  751. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 「中・長距離ミサイル」とそこで書いてありますのは、核兵器の持ち込みになるような中長距離ミサイルの持ち込みということで、あの項全体が我が国における我が国への核兵器の持ち込みというものを対象にした規定である。そういう枠の中においてあの了解がなされておるということを御了解いただきたいと思います。
  752. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと了解できませんね。これを解釈してごらんなさい、まともに。
  753. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記とめて。    〔速記中止〕
  754. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こしてください。  ただいまの矢田部委員の質問につきましてはいろいろ論議があるようですので、政府の方で後ほど統一見解を出させるということにいたしたいと思います。  では、あと次の質問に移っていただきます。
  755. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 政府側のこの問題についての考え方は、まとめてもう一度御説明いたしたいと思います。
  756. 矢田部理

    ○矢田部理君 統一見解を出すということでありますから、それを前提として質問は留保して次の質問をしたいと思います。  もう一つアメリカの核政策でありますが、安倍外務大臣は、アメリカは核の存在を明らかにしないのが基本政策だと。これはいつ何を根拠にこういう政策になったんでしょうか。
  757. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはアメリカの基本的な姿勢であるということでありまして、昨年もアメリカのマンスフィールド大使から、核の有無についてはアメリカとしてはこれを明らかにしないというのがアメリカの基本方針であるということを私もはっきりと言われたのであります。
  758. 矢田部理

    ○矢田部理君 いつ、何を根拠にそういうことになったのかということ。根拠と時期。
  759. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 少なくとも駐日のアメリカ大使がはっきりとそういうことを、アメリカの基本政策として私に核の存否を明らかにしないというのがアメリカの方針だということを言っている。それだけでもアメリカの方針は明確であると、こういうふうに思います。
  760. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、現にアメリカがそういう政策をとっているかどうかじゃなくて、いつごろそういう政策を、どういうことを理由にとったのかと聞いている。
  761. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 御指摘のアメリカの一般的な政策については、政府側からも国会で御答弁をしてきたわけでございますが、昭和四十九年十一月七日に、これはラロック証言との関連で、我が方の照会に対しましてアメリカの国務省からアメリカの公式見解ということで回答を私どもは得ております。  それによりますと、   合衆国政府は核兵器の所在を高度の機密性を有する国防情報と看做している。合衆国政府は、核兵器の所在を確認することも否定することもできないとの立場を種々の機会に明らかにしてきた。かかる合衆国政府立場は原子力法の規定を含め上記の情報を保護するための米国の国家安全上の要件と合致するものである。しかし、一九六四年十月に合衆国政府が明らかにした通り、合衆国の原子力法又はその他の如何なる国内法も、正当に権限を付与された合衆国政府の官吏が事前協議に関する約束を履行することを禁止し又はこれを妨げるものではない。 こういう回答を得ておるわけでございます。
  762. 矢田部理

    ○矢田部理君 いま一つはっきりしませんが、その政策はいかなる国の政府に対しても同様でしょうか。
  763. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 核の所在を明らかにしない、またその所在について肯定も否定もしないというアメリカ政府の政策は、これは一般的な政策でありまして、その点ではどの国に対しても通用するものでございます。
  764. 矢田部理

    ○矢田部理君 ところが、NATO諸国にはその情報を提供しておったという話がありますが、いかがですか。
  765. 北村汎

    政府委員(北村汎君) ただいま委員御指摘の点は、これは米国上院外交委員会用の資料として作成されました一九七三年十二月のものでございますが、その資料に、米国政府がNATO諸国に対して核の所在に対して通報を行っておるという趣旨の記述がございましたので、私どもは、この文書そのものは米国政府の文書ではないわけでございますので、アメリカ政府の意見を求めたわけでございます。それに対しまして、これは二月十三日に在京米国大使館から口頭で我々は説明を受けておるわけですが、それは米国政府からは、米国が、みずからの核兵器を配備しているNATO諸国に対して、米国政府とこれらNATO諸国との共通の核戦略の調整あるいは立案などに必要な範囲内において、これら諸国に配備されている米国の核弾頭の所在等について極秘ベースで情報を提供しているという説明を得ております。
  766. 矢田部理

    ○矢田部理君 とすると、従前日本政府が説明してきたことは間違っておったと、情報を知らなかったということですか。
  767. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 先ほど御説明いたしましたように、これは、米国がみずからの核兵器を一部のNATO諸国に配備をしておって、それら諸国と共通のNATOの核戦略の調整とか、あるいは立案を行うために、そういう必用な範囲内において極秘のベースでその情報を伝えておるわけでございます。したがいまして、このことは、アメリカ政府が一般的政策として核の所在を明らかにしない、その所在については肯定も否定もしないと、この一般的な政策とは矛盾しないものでございます。
  768. 矢田部理

    ○矢田部理君 すべての国に知らせない方針だというふうに言ってきた従来の政府見解はそれじゃ違う、間違っておったということじゃないですかと聞いている。
  769. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカとしては核の有無については、これは言わないということにしておるということをアメリカ政府はしばしば言明しております。そして、これは今、局長の答弁しましたように、一般的な基本方針としてそういうことを言い、そして貫いてきておるわけですが、先ほどからのお話のNATOとの関係においては、NATOにもやはり核配備、核政策があるわけで、そういう中でアメリカの核政策とのいわゆる調整を保つという意味において、それはいわゆる部分的に核の存在をNATO側に調整という意味で知らせるということは、それは部分的にはあり得るんじゃないかと。これはアメリカの議会でも証言されておるわけでございますから、私はやはり一般的な中の例外的な問題としてそれは出ておると、そういうこともまたあり得るであろうと、こういうふうに思うわけでございます。しかし、基本的にはあくまでもアメリカは核の存否は明らかにしないという一般的な政策というものは貫かれておると、こういうふうに思います。
  770. 矢田部理

    ○矢田部理君 このNATO諸国というのは、どことどこに知らしてるんですか。
  771. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 具体的には、NATOのどの国であるかということは私どもは承知しておりません。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕
  772. 矢田部理

    ○矢田部理君 核を配備している国だということは一つあるにしてもですね、これほどアメリカの核抑止力に頼っている日本、それを歓迎すらしている日本アメリカは一切日本には教えないんですか、どこにあるか、どこにいるか、どうしたかということは。
  773. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日本に対しても、またその他の国についてもそういうことであると思いますが、一般的にアメリカは核の存否は明らかにしないという政策は頂いておる。そして、これはアメリカの安全保障という立場から、それはそれなりの理屈はあることであろうと思うわけでございます。しかし同時に、安保条約あるいは関連規定を守るということではまたこれは別問題であると、こういうふうに我々は理解しております。
  774. 矢田部理

    ○矢田部理君 韓国には一千個ぐらいの戦術核が配備をされていると言われていますが、韓国政府にはいかがですか。
  775. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 一般的な情報として、韓国にアメリカの核があるのではないかというふうなことは私も聞いたことはありますけれど、しかし、これが事実かどうかについては、確たる我々として知識を持っておるわけではございません。
  776. 矢田部理

    ○矢田部理君 したがって韓国に情報を知らせているかどうかもはっきりしないということですか。
  777. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカが韓国に対して核の問題についてどういう姿勢で臨んでおるか、知らしておるかどうかということについてはもちろん知っておらないわけでございます。
  778. 矢田部理

    ○矢田部理君 最初の方でもお聞きをしたんですが、第七艦隊に核を配備する、核つきトマホークを装備するというようなことが公にされているわけですね、アメリカの軍事委員会において、下院でしたか上院でしたか。そういうことも日本政府には一切知らせてこないんですか。そういう知らせてこない核抑止力に日本は依拠しているんですか。
  779. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、アメリカ全体がどういう核の配備をしているかということについては、日本政府としては何ら知っておりませんし、アメリカからも連絡はないわけでございます。また、第七艦隊にどういう核が配備されておるかというふうなことについてもアメリカからは何らの連絡もありません。ただ、トマホークというものが核、非核両用のものがある今トマホークについて、これまで説明もありましたが、そういう日本としての情報は持っておりますけれど、正式にどういうふうになっておるのかと、どういうところに配備してあるかと、こういうふうな連絡は全く受けておらない。いわゆるアメリカはそういう点については核の存在を明らかにしないという姿勢を貫いておると、こういうふうに考えております。
  780. 矢田部理

    ○矢田部理君 ソビエトのSS20は何基あるとか、どこに配備されたとか、バックファイアはこうだという説明はするんですが、肝心の同盟国の方は全く皆目わからないんですか。
  781. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは少なくとも私の段階におきまして、そして、アメリカの軍事情勢アメリカのそうした核がどういうふうな状況で配備されておるかということについては何らの連絡もありませんし、話し合ったこともないわけでございます。ただ、日本日米安保条約によってアメリカの核抑止力というものに依存をしておるということは、これはもう明らかであります。
  782. 矢田部理

    ○矢田部理君 ひたすらそうすると御信頼を申し上げるしかないという、ちょっと話が逆なのではありませんか。ソビエト側の情報をどこからとるか知りませんが、最も身近で、同盟関係だとさえ言っておる国の核情報が全くない、知らせもないと、具体的にどの艦船に幾らということは別としても、大綱的な話もないというのは少しおかしいんじゃありませんか。
  783. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私がお答えするのは適当かどうか知りませんが、私は、少なくともアメリカの核戦力というものがソビエトと比較する場合においてはこれは優位な姿勢に立っておる、しかしその後中距離核等が、SS20等が相当ソ連においても配備されたという中で、米ソ関係で見れば微妙な段階に入っておると、こういう程度の知識は持っておりますし、今アメリカでどういう核が、長距離核、中距離核、そういうものが生産されそして配備されておるかという程度のことはもちろん承知しておるわけでございますが、実際にこれがどういうふうに運用されておるか、配備されておるかということについては何も知る立場にはないわけでございます。
  784. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理、その辺はどうも奇妙だとは思いませんか。個々の問題は別として、大綱的に知っていなければ、それで均衡が保っているとか保っていないというバランス論や抑止力論を言うのもちょっと根拠を欠くのではありませんか。
  785. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やっぱりアメリカ政府は一般政策というものを堅持しておると思います。それからNATOの一部の核を保有している国については、核戦略に対する協調という意味から、極秘でその協調のいろいろなすり合わせやらなんかの問題で知らすことは考えられますが、それ以外の一般の国に対してはやはりアメリカは固有のそういう政策を堅持していくだろうし、これは予想されるところであります。
  786. 矢田部理

    ○矢田部理君 事前協議の問題をもう少しやりたいのですが、あとの外務省の見解を待ってやりたいと思いますので、時間を少しとらせていただきます。  最後になりますが、これは本当はもう少し時間をかけてやりたいのですが、サラ金の問題です。  今でも金融機関から相当の金がサラ金業者に融資をされている。その実態を御報告いただきたいと思います。
  787. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) お答えいたします。  私ども三月と九月末に調査をいたしているわけでございます。昨年の九月末での数字は、金融機関が直接にサラ金業者に貸しております部分が合計で五千六億円でございます。それから、サラ金業者の関係会社を通じましてサラ金業者に流れている部分が五千二十六億円ということでございます。
  788. 矢田部理

    ○矢田部理君 大蔵省が通達を出したにもかかわらず余り減っていない。逆に外銀などはふえておる。信組では間接融資が急増しておるという状況が指摘をされていますが、いかがでしょう。
  789. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 先ほどの直接融資につきまして、五千六億円でございますが、その六カ月前の三月末には五千七十七億円でございまして、七十一億円減少いたしております。それから、間接融資につきましては三月が五千九百十八億円でございましたので、九月が五千二十六でございますから八百九十二億円減少いたしておるわけでございます。
  790. 矢田部理

    ○矢田部理君 信組が入っていない。
  791. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 信組については、調査は信用金庫以上を調査いたしたわけでございまして、これにつきましては三月、九月の調査ではございません。
  792. 矢田部理

    ○矢田部理君 自治省に伺いますが、各都道府県がサラ金業者に相当程度の補助金を出しているという事実がございますが、いかがでしょうか。
  793. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 自治省といたしましては、その点の調査はいたしておりません。
  794. 矢田部理

    ○矢田部理君 そういう業者団体に相当額の補助金を出すことの是非はいかがですか。
  795. 大林勝臣

    政府委員(大林勝臣君) 地方団体が公益目的のために補助金を出しておるケースがたくさんございます。サラ金に対して補助金を出すのが地方団体の公益に適するかどうかの判断であろうと思いますが、第一次的には、地方団体が地方自治の立場から自主的に御判断されておると存じます。それが適当であるかどうか、その都度その都度の御論議の結果地方団体で判断されておると思いますけれども、一般的に現在のような段階におきまして補助金を出すことが、私どもとしてはそれだけの切実性があるというふうな考え方には立っておりません。
  796. 矢田部理

    ○矢田部理君 大蔵省から相当数の人がサラ金業者なり業界に天下りをしておるようですが、その全貌をお知らせください。
  797. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 一部重役として行っておる者もおるようでございますが、今ちょっと確かな調査はできておりません。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕
  798. 矢田部理

    ○矢田部理君 一々指摘をしたいのでありますが、警察の方ではサラ金を原因とする自殺、心中、蒸発、家出あるいは犯罪、どのくらいの実態になっておりますでしょうか。
  799. 鈴木良一

    政府委員鈴木良一君) お答えいたします。  サラ金苦が原因と見られます犯罪につきましては、最近実態調査を実施いたしました。それによりますと、昨年の八月から本年の一月末の六カ月間に、これに係る犯罪は千百五十件、三百七十人でございます。なお、最も多いのは詐欺、窃盗でございますが、凶悪事件も検挙しておるところでございます。  今お尋ねの自殺、家出につきましては現在調査結果を集計中でございまして、手元にございません。
  800. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理、これは時間がありませんのでぽんぽんぽんと指摘をしたんですが、サラ金の問題は極めて深刻なんです。ところが、行政の対応が、実態を調査していない、そこはわからない。ということは、ほとんど手が打たれていない。一説によると、サラ金利用者六百万人、二百万人が苦しんでいるというんですね。逃げようか、心中しようか、家庭崩壊も含めて、失業者よりももっと数が上回っているという指摘すらあるわけであります。行政の対応としていかがですか。
  801. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) サラ金から起こる悲劇につきましては非常に胸を痛めておるところでございます。ただ、サラ金というものが生まれた背景を見ますと、ある意味においてやむを得ざるネセサリーイープルといいますか、そういう面もなきにしもあらずでありますが、しかしそのために議員立法等もやりまして届け出制等をやりまして規制もするという形で、また今までの目に余るような高金利を逐次是正しつつ、さらにこれを下降せしめようという段階的な措置に出ておるわけであります。今の状態で決して満足しておるわけではございませんけれども、これから一体この問題をどういうふうに扱うか、さらに検討を続けていきたいと思っております。
  802. 矢田部理

    ○矢田部理君 法務省に伺いますが、ことしの二月でしたか、東京都庶民金融業協会の元課長というのを逮捕しまして取り調べをしたと思うんですが、その捜査の経過について報告してください。
  803. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) お答えいたします。  お尋ねの事件につきましては、東京地検におきまして本年二月一日遠藤悦三という者を業務上横領の容疑で逮捕いたしまして、同月、つまり二月の二十二日に社団法人東京都庶民金融業協会のために業務上預かり保管中の庶民金融団体生命保険料など合計五千二百五十五万千三百十円を横領したという事実によりまして東京地方裁判所に起訴をいたしております。その後、東京地検におきましては同人に対する余罪の有無について捜査しているというふうに承知いたしております。
  804. 矢田部理

    ○矢田部理君 その捜査に関連して家宅捜索を何カ所かやったということでありますが、その捜索箇所は全国に及んでいますか。
  805. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) まだ継続捜査中でございますので、捜査の具体的な内容につきましてはお答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  806. 矢田部理

    ○矢田部理君 具体的な内容じゃなくて、起訴されているわけですから、それは複数の箇所ですか。複数の件、複数の箇所に及びますか。
  807. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 何カ所捜索いたしましたか、私、今ちょっと手元に資料を持っておりませんが、複数の箇所を捜索したというふうに承知しております。
  808. 矢田部理

    ○矢田部理君 捜査に際して幾つか世上言われておりますのは、この程度の横領事件、金額は確かに多いけれども、なぜ東京地検の特捜がやったのか。段ボール箱で三十数箱も証拠書類を押収していったということにもいろんな意見があるわけですが、その辺、さらに捜査は広がりを見せようとしているのか、継続中ということでありますが、いかがでしょう。
  809. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) まず、なぜ東京地検特捜部というお尋ねでございますが、東京地検特捜部におきまして本件についての捜査の端緒を得たわけでございます。端緒を得ましたので、東京地検がその後、独自捜査を続けたということでございます。  なお、今後の捜査が広がるとか、どうなるとかという見込みにつきましては、現在捜査中でございますので、お答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  810. 矢田部理

    ○矢田部理君 告訴した金額と横領額との間に大分差があるようでありますが、使途は全部解明できたでしょうか。
  811. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) まだ公判前でございますし、またこの業務上横領につきましても、今、委員御指摘のように、告訴状との間に金額の差があるようでございます。そこらの点を継続して捜査中でございますので、その詳細についてはお答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  812. 矢田部理

    ○矢田部理君 ついせんだって責任者の行動日誌なども押収をして捜査は新たな段階に入っているという見方をしている向きもありますが、いかがですか。
  813. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 繰り返すようでございますが、捜査の具体的内容につきましてはお答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  814. 矢田部理

    ○矢田部理君 その余の質問については留保して、きょうはこれで終わります。
  815. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  816. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  矢田部君の残余の質疑は後日に行うことといたします。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十三分散会