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1984-03-19 第101回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月十九日(月曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員の異動  三月十七日     辞任         補欠選任      中野 鉄造君     高桑 栄松君      田渕 哲也君     抜山 映子君  三月十九日     辞任         補欠選任      田沢 智治君     成相 善十君      真鍋 賢二君    大河原太一郎君      杉山 令肇君     水谷  力君      土屋 義彦君     松岡満寿男君      神谷信之助君     近藤 忠孝君      宇都宮徳馬君     野末 陳平君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                大河原太一郎君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 田代由紀男君                 田中 正已君                 竹内  潔君                 土屋 義彦君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 増岡 康治君                 松岡満寿男君                 水谷  力君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 高桑 栄松君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 抜山 映子君                 喜屋武眞榮君                 秦   豊君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  住  栄作君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        労 働 大 臣  坂本三十次君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)             (沖縄開発庁長        官)       中西 一郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官) 稻村佐近四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君    政府委員        内閣参事官    中村  徹君        内閣官房内閣審        議室長内閣総        理大臣官房審        議室長      禿河 徹映君        内閣官房内閣調        査室長      谷口 守正君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        内閣総理大臣官        房会計課長兼内        閣参事官     渡辺  尚君        内閣総理大臣官        房管理室長    菊池 貞二君        北方対策本部審        議官内閣総理        大臣官房総務審        議官       橋本  豊君        総理府人事局長  藤井 良二君        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁刑事局保        安部長      鈴木 良一君        警察庁交通局長  久本 禮一君        警察庁警備局長  山田 英雄君        行政管理庁長官        官房総務審議官  古橋源六郎君        行政管理庁長官        官房審議官    佐々木晴夫君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        経済企画庁国民        生活局長     及川 昭伍君        経済企画庁総合        計画局長     大竹 宏繁君        科学技術庁原子        力局長      中村 守孝君        科学技術庁原子        力安全局長    辻  栄一君        国土庁長官官房        長        石川  周君        国土庁長官官房        会計課長     安達 五郎君        国土庁土地局長  永田 良雄君        法務省民事局長  枇杷田泰助君        法務省訟務局長  藤井 俊彦君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        小野 博義君        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  西垣  昭君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君        国税庁次長    岸田 俊輔君        国税庁調査査察        部長       冨尾 一郎君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省体育局長  古村 澄一君        厚生大臣官房審        議官内閣審議        官        古賀 章介君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省児童家庭        局長       吉原 健二君        社会保険庁年金        保険部長内閣        審議官      朝本 信明君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        通商産業大臣官        房審議官     棚橋 祐治君        通商産業大臣官        房会計課長    山本 雅司君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    参考人        日本銀行総裁   前川 春雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十九年度総予算審査のため、本日の委員会日本銀行総裁前川春雄君及び評論家海原治君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 西村尚治

    委員長西村尚治君) これより鈴木一弘君の総括質疑を行います。鈴木君。
  7. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 初めに委員長にお伺いをいたしたいのです。というのは、本予算委員会予算審議を拘束する問題そのほかになってまいりますので、審議の公正を期したいために、また院の権威を守るためにもお伺いしたいのですが、例の暫定予算に対して委員長は適当な時期に善処したいということを前回和田委員質問に対して答えております。この適当な時期、既に十三日に付託されましてから六日以上、一週間になんなんとしております。もはやその時期に到達をしているのではないかというふうに、また本委員会審議状況を見ても感じるわけでありますが、どう判断をされておりますか。
  8. 西村尚治

    委員長西村尚治君) その点につきましては、審議状況を見ながら理事会相談をして適宜適切な措置を講じたいということを申し上げておったわけでございますが、もうそろそろあるいはその時期か、もうそろそろと申しまするか、明後日あたりがそろそろ時期ではなかろうかという感じもしますので、理事会相談をいたしまして抜かりのないように善処いたしたいと存じます。
  9. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 また大蔵大臣答弁も踏まえながらということがそのときの答弁にございますので、大蔵大臣いかがでございますか。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 既に三月十九日でございます。かねて御議論のあったところでございますが、基本的には今予算委員長からお答えがございましたように、審議状況等を見守りながら必要が生じた段階、これで準備に入るよう私は行政府としては事務当局に指示をする、これが限界的な答弁だと思いますが、これは鈴木委員百も御承知のことでございますけれども、私どもとしては期待権を持って絶えず対応し、誠実にお答えをし審議に御協力をしていく、がしかしながら、それらの状況の中で事務的にきちんと整えるべきものは整えておかなければいかぬという行政府側としての責任もございますので、したがって必要が生じた段階、表現としてはそのようにさしていただいた方が適切ではなかろうか、このように考えます。
  11. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしても、財政の空白と院の審議権の問題と両面を拘束する問題でもありますので、十分な配慮をしていただきたいと思います。  それでは、財政改革について最初まず総理からお伺いしたいんですが、昭和五十九年度予算編成に当たりまして、総理は従来の財政に対する公約二つございますが、それをお破りになりました。一つは、増税なき財政再建増税ありという予算編成に変えてきたこと、いま一つは、赤字国債現金償還借りかえに変更したということであります。これは国民が抱いていた期待、これを大きく裏切るというふうに考えられるんですが、こういう重大な政策変更をした政治責任についてどうお考えになっておられますか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 増税なき財政再建につきましては、臨時行政調査会答申というものをいただきまして、できるだけその線に沿ってこれを実現しようと思って努力いたしました。あの瀬島委員が本院におきまして説明しました臨調答申趣旨を踏まえてやったつもりでございます。  それから借りかえの問題は、膨大な国債を抱えておりまして、これが償還等につきまして財界あるいは経済界に急激なショックを与えない、やっぱり財政運営経済運営につきましては漸進的に、いわゆるソフトランディングの形でやるのが適当であるという考えに基づきましてやりましたまことにやむを得ざる処置ではございますけれども、従来の言明に対しましては甚だ遺憾であり、申しわけないと思っております。
  13. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 財政再建国会で取り上げられたのは昭和五十年十一月四日のこの予算委員会でわが党の三木委員質問したこと、これが最初でございました。あのときに初めて財政再建の言葉が使われた。それから既に九年たっております。もう財政再建の言われないときはないわけでございますが、とにかくその増税の問題に絡んでですが、十二月の選挙期間中、総理は十項目の五十九年度予算構想を出され、そのうち第一項目増税しない、こう言われておりますが、私どもにとってはどう見てもこれは増税したとしか見られない。やはりこれは公約違反である。増税と相殺されておれば結局減税ではない。増税はしていない、こうおっしゃるかもしれませんけれども増税しないということは、やはり国民の側から見ると、減税だけあって相殺されるような増税はないというふうに普通受け取るのだろうと思うんです。こういう点で、国民の信頼がなくなってしまうという公約違反を犯したのじゃないかというふうに思うんですが、もう一度総理にお願いしたいと思います。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、臨調答申を守りますと申し上げてまいりまして、臨調答申解釈につきましては瀬島委員が申されました解釈を私はここでも述べておりまして、この趣旨にのっとってやるつもりであるということも、直接あるいは間接表現してきておるわけでございます。こういうような技術的な面は、国民皆様方一般の方々にはよくわかりませんし、理解しにくい点であるかもしれませんが、そういう点からは大方の御期待を裏切ったと言われてもやむを得ぬと思いますが、臨時行政調査会答申許容量範囲内で我々はやっているというふうに考えておりますが、いずれにせよ、こういう措置をとらざるを得なかったことは甚だ残念であり、遺憾でございます。
  15. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大蔵大臣、同様のことは赤字国債借りかえの問題でも、昨年のこの予算委員会大蔵大臣みずから赤字国債借りかえはしないと我が党の馬場委員質問に答えておりますが、今回は借りかえの法案が出ております。どう責任をお感じになりますか。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、従来特例公債借りかえは行わない、また五十九年度までの特例公債依存から脱却すること、これが政府方針でありました。これは本来特例公債というものは発行することは望ましくない、残高もできるだけ早く減少させることが望ましいという基本的な考え方によったものであります。しかしながら、第二次石油危機というまさに予期せざる事態の発生を契機としまして、我が国経済成長率が大幅にダウンいたしました。税収の伸びも急激に鈍化いたしました。我が国経済財政を取り巻く環境が大変変化したということで、まずは五十九年度脱却の実現は不可能となりました。このように申し上げたわけです。しかしなお、その際の御質問に対して、私どもとしては特例公債借りかえは行わないという従来の方針を貫きたいという意思を持ち、またそれの願望も持っておりました。当時の議論を思い出してみましても、そんなことを言ったって、借りかえせざるを得ないようになるじゃないか、その御提案があったから踏み切りましたと言うわけではございませんが、したがってその方法も含めてしかるべきところで、結果としては財政制度審議会で勉強していただきましょうと、そして結論を出しますというところへこの問答の経過が移動をいたしまして、そしてその結果、今日借りかえをお願いせざるを得ないことに至った、こういうことであります。  したがって、私個人から見ても、私は五十四年、五年にも借りかえをしないということを言明しております。法律もそうしてお願いをしております。去年もそういう法律をお願いしております。それがことし変わったということにつきましては、私はやはり財政担当者といたしまして、そうならざるを得なかったとしても、みずから責任は、これは痛感をもとよりいたしております。したがって、やはりこの線に沿って、まずは借りかえしつつも赤字公債発行そのものを六十五年を努力目標として減らしていく、そしてその第二段階として残高そのものを言ってみれば対GNP比等に対して減らしていくという二段構えのことで、財政改革のあり方を今日新たにして御議論をお願いしておる、こういう段階でございます。
  17. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは私は二つの大きな公約が破られたこの責任は大変重いと思いますが、今、遺憾であるという、また残念であるという御答弁がありました。しかし、財政再建ができないでしわ寄せがきた。はっきり申し上げれば、一度国債が完全になくなることができる時期に国債火種論というのを残して、それがその後に赤字債暴発という引き金をつくっていった。超均衡から建設国債発行、そして特例公債発行ということになって、とめどがなくなって、このままでいくというと、先進諸国中第一の現在国債依存度があります。次に予想されるのは、国債の転がし政策しかないということになってまいります。こういうふうになっていくというふうになるということは、大変な困ったことになると思うんですが、この辺の見通しはどうおつけになっておられますか。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、鈴木さんおっしゃいました国債火種論というのは、確かに昭和四十四、五年に議論されたことがございます。これは御案内のように、最初国債発行いたしましたのは昭和四十年、これはだれしもいろいろ初めてのことでありますだけに議論をいたしましたが、要は三十九年のオリンピックの翌年の戦後最大の不況と言われた時期において発行したわけであります。そうして、それは私は成果を上げたと思います。国債政策が、言ってみれば効率的に機能した政策の遂行の時期ではなかったかというふうに思います。そういたしまして、四十五年度決算で見ますと、まさに五%の水準を割るというところまで、その後の高度成長に伴って税収がふえてきたわけであります。したがって、今おっしゃいました火種論というのは、四十四、五年当時、このまま推移すると発行の必要がなくなる状態もあり得ようが、将来公債をまた発行しなければならないような事態に直面したときの便宜のためにも若干程度の公債火種を残してはどうか、こういった議論があったこともこれは事実でございますが、私はそれは火種としてわざわざ残したものではなく、逐次減らしていこうという考え方で、無理してゼロにはしなかったということであったと思うのであります。  したがって、要するにやっぱりそれは四十四、五年でありまして、日本経済全体を見ますと、四十六年の、私は当時内閣官房長官でございましたが、いわゆるドルの兌換制停止、俗に言うニクソンショック、あのときから新たに国債増加傾向が出てきました。しかし、まだ国会議論の中でも許容される範囲であったと思うのでありますが、結局は四十八年暮れからの第一次石油危機というものが一つ発火点になって、そうして第二次石油ショックというものにつながれていった。しかしそのとき、いわば建設国債から、そうして第二次石油ショックに至りますと、この赤字国債に踏み切ったということが、ある意味においては今日世界の中において経済そのものは優等生であると言われる要因は、それなりに公債政策というものがその効果をあらわした証拠ではないか。これは私なりに思いますと、いささか私見になりますが、四十四、五年というのがまた第二回目の公債政策効果があらわれた時期ではなかったか、こういうような感じがいたします。  それで、第二次石油ショックでございますから、したがってやはりそういう推移だけの対応をしておってはならぬということで、財政再建というものが掲げられ、五十九年度赤字国債脱却というものが掲げられ、そして世界同時不況の中で、それをも先ほど来御議論、御指摘、御批判をいただいておるような現状に今日なった。したがって、私どもは、それは世界経済でございますから、将来どういうことが起こるかということは容易に予測できないにいたしましても、そういうドルショックから見ると、三度のいわゆるそういう危機に対して対応してきた日本国民あるいは日本国経済でございますから、このような建設的な議論を重ねつつこれに対応していくならば、私は世界に比してやはり良好なファンダメンタルズというものを維持しながら今後とも対応できるものだ、それにはやはりかつての高度経済成長の時代が当たり前だという認識から、むしろいわゆる今度掲げております四%程度のインフレなき持続的成長というものが、これが普通だというある種の意識転換を私どももまた国民皆様方にもお願いしなければならないというのが今日の時点の認識ではなかろうかと、いささか答えが長くなりましたが、平素思っていることを言わしていただいたわけであります。
  19. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今、五十九年度の財政再建目標ができなかったことについて話がありましたけれども、私は政府がずっと毎年度出しております中期展望、これに即して申し上げると、増税なき財政再建という公約は五十七年度の予算から実施されている。五十六年七月の第一次臨調を受けてやっておりますけれども、五十七年度で一般歳出の予定より実績の方が減りまして二兆七千七百億円、五十八年度が二兆六千五百億円、五十九年度が一兆七千百四十三億円と、今年度を除くというと中期展望に見合う要調整額の相当額が削減されている。これは歳出に限り政府が努力した、そしてその見込みどおりの、見通しどおりの予算ができた、こういうふうに認識してよろしゅうございますか。
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは今鈴木委員御指摘になりましたように、五十二年十月の税制調査会の中期答申を踏まえて一般消費税(仮称)の導入をお願いしたが、御承知のようなことでこれは実現を見なかったわけでございます。したがって、私どもはそれ以外の手法で、やはりいわばいろいろな意味で歳出のみでなく歳入両面にわたっての見直しを今日まで継続してきておるというふうには私ども自己認識はいたしております。が、この一般消費税(仮称)というものがあのような議論の中でこの手法をとらないという国会決議をいただいて、そして政府の志向するところが歳出カットに重点が置かれて、歳入面というものがマスコミ等で大きくクローズアップをむしろしなかったというような印象はお与えしておるではなかろうか。しかし、私どもといたしましては、その都度現行税制の枠内での増収措置ということは例年お願いをいたしました。それから五十六年度の税制改正におきましても、税制の抜本見直しによる一兆五千三百十億円に上る増税というものもお願いをしてきた。だから、ネグっておってひたすら歳出のみに視点を合わしておったということではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  21. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは歳出削減の方は確かに中期展望をずっと見ていきますと、さっき申し上げたように要調整額を十分やるだけのものは出ているというような、その削減に寄与してきていますよ。しかし、それなれば歳出削減による増税なき財政再建というのは進むわけですね、本当ならば。ところが、歳入では国債依存度は目立って低下をしてこない。これは中期展望の税収見通しに対して実際の税収が大きく下回ったというのが大きな原因ですね。ですけれども、それがどうして起こったのか、これは大変大事な問題だと思うんですが、その辺どういうお考えでございますか。
  22. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、鈴木さんと問答しておりますと、例の中期展望とか仮定計算とかそういうものを見れば、確かに歳出面では現行制度、施策をそのままにおいたカーブというものよりも減らしていく努力が数字の上では見えてくる。しかし、歳入面じゃそうじゃないじゃないか、そうしてその原因はどこにあるかと、こういうことであろうと思うのであります。私は、ちょうど五十四年、五十五年、たまたま大蔵大臣を務めさしていただいておりましたが、先ほども申し上げましたように、ある種の公債政策効果が出たという状態が税収等々におきましても出てきまして、例えば五十四年の下期における公共事業をできるだけ後ろ倒ししなければいかぬようになった、あるいは公定歩合もお願いして国会審議中にも上げさしていただかなくちゃいかぬようになった。むしろ過熱ぎみを抑えようと、こういうことでありました。そして五十五年も何だかんだ言いながらも四百八十四億でございましたか、剰余金が出てラーメン減税という、言葉は余り適切でないにしても、そういうところができるような比較的順調な推移じゃなかったかと。  それで、やはり私は五十六年度税収からが一番大きな問題だと思います。これは第二次石油ショックに伴いまして世界経済の停滞、俗称世界同時不況と、これがそれこそ予想以上に長期化した結果でなかったではなかろうか、だから我が国の企業の生産活動や消費も予期した以上に伸び悩んだ。そういうことでございますので、それこそ普通では考えられない減額補正をさしていただいたということでございますだけに、今後ともやはり適正なものとするようにその税収そのものは絶えず努力をしていかなきゃなりません。が、あの五十六年、五十七年というものは私はやはり異例の状態であったという認識の上に立つべきではなかろうかと、このように思っております。
  23. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは経済成長率の変化を見ても五十一年から五十三年の計画によれば一三・三、それが一〇・九になる。また、その次の四年間五十七年までを見ても一〇・五が六・六になる。前のときに計画を下回っている成長なんですからそれは当然考慮してよかったのではないかと思うのですが、そういう点に原因はありませんか。
  24. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、五十六年の見通しの際にそのようなことが考えられなかったかということは、私も一人のいわば国民として財政を見た場合にそういう印象を受けます。要するに五十五年の暮れに五十六年度予算編成はするわけですが、当時のいわゆる対GNP比に対する弾性値等からのものはいろいろな数値としては使えますものの、やはり各税目の積み上げというものを各企業等々を調査した場合に、そこまでの落ち込みの予測をする者はなかった、したがって積み上げてみましたものはそれなりの整合性のある数字であった。が、結果がそういう状態にいくには著しく世界同時不況我が国の企業収益、消費の伸び悩み等の乖離が余計にあった。これはたまたま私はそのときに大蔵大臣でなかったからという意味じゃございませんが、やっぱりあのときの予測というものはだれもそこまで立ち得なかったほどの大きなものであったなあと、こういう印象は今でも持っております。だから、作為的に成長率を上げて税収を伸ばそうという考え方のものではやはりなかった、あくまでも基本は積み上げというものにあったと思っております。
  25. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、今の増税なき財政再建、いわゆる予算編成、これがつぶされてきたのですけれども、現在六十五年度赤字公債発行をなくすということでやっておられます。しかし成長率の低下、税収の鈍化の中でやるのは大変だと思うんですが、当面の問題として六十年の予算編成が次には問題になってきます。そのときには増税なき予算編成というのは可能になるんでしょうか、どうでしょうか。
  26. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私はあくまでも行財政の守備範囲を見直す等の見地から制度の根本にまで踏み込んだ改革を行うという基本姿勢を崩してはならないと思います。そして、増税なき財政再建というのは、まさに私どもとしてこれは予算編成というもの自体を考えれば、これをてことして念頭に置くべきものである。したがって、各種公共サービスの確保というものはこれは国民の負担によって裏づけられるものでありますから、歳入面におきましても社会経済情勢の変化を踏まえながら、公平適正な税制のあり方についてはこれまた不断の検討を続けていかなければならぬ。でございますから、最終的にはこうした国会の問答等を通じながら、まさに国民が選択するその合意はどこにあるかという方向を見定めて対応しなければならぬ。しかし、基本的に増税なき財政再建というものをてことして認識していなければならないことは事実であります。
  27. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは総理、やはりそういうお考えでございますか。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大蔵大臣が申し上げた考えに立っております。
  29. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ことし出された財政の中期展望で試算すると、六十年度の税の税収増が二兆五千四十億、これに対して国債費と地方交付税の増加額だけで三兆四千六百八十五億円で、九千六百四十五億円が不足になってまいります。これをどう手当てするか。
  30. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさにお示しなすった数字、そのとおりでございます。六十年度の財政事情についてはもとより今確たることを申し上げる段階にはございませんが、いずれにしても厳しい財政事情が続くであろうということは考えられます。しかしながら、財政改革は緊要な国民的な課題でございますので、六十年度予算編成においてもやはり歳出歳入両面ぎりぎりの努力を行って公債減額に最大限の努力を続ける、この基本方針でもって臨まなければならないというふうな、現在具体的にどうこう申し上げる段階ではございませんが、基本認識としてはそのように認識をいたしております。
  31. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今の答弁から、増税なしでぎりぎりやりたいということですから、ほかから計算しても大体できるのじゃないかということで、百歩譲ってそうできたとします。しかしその次の六十一年になると、もう定率繰り入れをしないでいけば国債整理基金の残高は六千億円弱となる。それに対して現金償還が一兆六千億円ぐらいですから、一兆円ぐらいはどうしても予算繰り入れが必要になってきます。そうすると、政府の中期展望どおり一兆八百億円の赤字公債を減額し、さらに一兆円程度の国債償還の予算の繰り入れをするということになれば、六十一年度の税収増二兆六千六百億円に対して国債費は、定率を除いて、交付税の増加額で一兆四千三百億、余裕額は一兆二千三百億しかない。それで一兆八百億円の赤字公債の減額と一兆円の予算繰り入れと、この二つができるかどうか。こうなると、これは黙っていて私は収入を得るための何らかの方法を考えていくのじゃないかというふうに思うんですが、これでも増税なき財政再建をやっていけますか。
  32. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいつも御指摘を受けながら思うのでございますが、いろんな御指摘を受ける中でもっともだなと我々思うこともたくさんございます。しかし、今私どもとして増税なき財政再建というそのてこが外れたら、一体、内に対する厳しさも外に対する厳しさもその瞬間にして失われてしまうではないかと、こういうことを考えますと、まさに私ども増税なき財政再建というものはこれはてことしてあくまでも念頭に置くべき課題である。が、具体的に六十一年度のことについて御指摘がございました。それは確かに一定の仮定を置いてつくったものでございますが、中期展望にしても仮定計算にしても、それを下敷きにして御議論なすっておる数字はすべてそのとおりです。だから、そのようなものを下敷きにして議論しながらそのまた矛盾も考えながら、場合によっては鈴木委員の持論に基づくこのような前提で仮定計算をつくってみると、そういう御指摘をいただければそれに応ずると。そういういわば国会議論等を通じながらの問答の中で、六十一年度まさにその時点において決すべきことではございますが、展望しながら我々は進んでいかなければならない課題だと。が、毎年度の税収見積もりということになりますと、いわば仮定計算では七ないし六の名目成長率の中間値の六・五をとって十年間の平均値の一・一をこの弾性値として計算をしておりますので、本来その時点における予算編成の一環としての課税実績、そしてこの諸指標等を基礎にした個別税目ごとの積み上げでやってみなければ正確にはお答えすることはできないというふうに考えております。
  33. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どんなに甘く見積もっても、六十一年度では今大蔵大臣答弁したように、増税なき財政再建をてことしてとおっしゃるけれども、何らかの増収策を考えなけりゃならない。そうでなければ、国債費あるいは地方交付税というような大きい大どころを削ることを考えなければならない。一体どういう方向に行くかということは大変な問題だと思う。それでやっていけるかどうかということですが、その点、これは総理にもお伺いをしたいと思うのであります。
  34. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国債費の重圧がますます深まってくる情勢でございますので、非常に苦しい状態ではあると思います。しかし、増税なき財政再建というかんぬきを外しますと、やはりこれは財政的な乱費とかいろんな問題も出てまいりまして、ともかく政府は必死になってその枠の中で今後も努力していきたいと考えております。歳出歳入全般の見直しとかあるいは税外収入の増大であるとかそのほか景気の動向等々も勘案いたしまして、これからもじっくりよく考えていきたいと、そう思っております。
  35. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 現在の歳入構造、これは御承知のように、私が見ているとどうしても資本蓄積型の歳入構造じゃないかという感じがしてなりません。この点について伺いたいのですが、今増税なき財政再建、これは外さないと言われたが、六十一年は大変きついです。もうこれは本当にどうするのかということは、先ほどの大蔵大臣答弁だと、考えようによっては言われたら増税にできるものも考えますというふうな感じに聞こえるのですが、一言言うとすぐ直間比率の見直しというように大型間接税ということが出てきます。そこで私は、従来の既存税制の中で制度改革を行う必要があるんじゃないか。今までの租税特別措置の縮小というのはやってこられたようですけれども、その点を含めて考えるべきじゃないかと思います。個人所得について見ても、利子配当の分離課税、有価証券譲渡益課税の不徹底等によって総合課税にはっきり申し上げればひずみを起こさしている。一方、企業について言えば各種引当金、準備金の損金算入、それから受取配当金の益金不算入、株式の時価発行利益の非課税という、いわば企業基盤の育成というように、戦後の資本蓄積等に活用されてきた税制がそのまま残っております。戦後の経済の中で一部にやむを得ないものもあったと思いますけれども、今や資金過剰と言われるほどになってきているときであります。こういう日本経済になったときに資本蓄積促進型税制は必要ないのじゃないか。だから、今ある税制の中で、従来政策的配慮から公平を犠牲にしてやってきたようなものについて、これは徹底的にメスを入れるべきじゃないかと思うんですが、この点いかがにお考えでございますか。
  36. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 原則的に、徹底的メスというお言葉をお使いになりましたが、たゆまざる見直しを行うということに対しては私どもに対する鞭撻であり、私どももそうあらねばならぬと思っております、まず原則的に申し上げますと。  今の資本蓄積型税制ということでございますが、これは例えて申しますと、まさに資本蓄積を図る趣旨で設けられました租税特別措置でございます。そうして、例えば利子配当所得課税の特例とか企業の内部留保、あるいは企業関係租税特別措置、まさに私は御指摘のとおりだと思うのであります。租税特別措置につきましては、従来から社会経済情勢の推移に応じて見直しを行ってきておりますが、さらにこの問題では、もろもろの具体例として今御指摘になりましたような問題は、これで済んだというものは、私は総じて言えはないと思うのであります。だから、たゆまざるそういう方向は御鞭撻と受けとめて、姿勢として持ち続けて対応していかなきゃならぬ。ただ、総体的に見ますと、企業関係の租税特別措置というものは、概して五十年代に入りますと、まさに三十年代からはこれは企業の体質強化だと、そうして現在では中小企業対策と資源エネルギー対策等に重点が移っておる。全般的にはそういうことが言えるではないかというふうには思えますが、まさに公平確保の観点から、社会経済情勢の推移に応じて絶えず必要な見直しを行っていかなければならぬということは認識を等しくいたしております。
  37. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 塩出啓典君の関連質疑を許します。塩出君。
  38. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いわゆるグリーンカード制に関しまして、五十九年度の税制改正に当たりまして、政府税調と自民党税制調査会に対しまして大蔵省は利子配当課税の回復について幾つかの案を示したようであります。三五%の税率を上げろとかあるいは全廃論とか、あるいはまた対象者に所得制限を設けろとかいろいろな案があったようでありますが、どういう案を示したのか、その後の経過はどうなっているのか、お伺いをいたします。
  39. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 五十九年度の税制改正に当たりまして、利子配当課税につきまして政府の税制調査会なり与党の税制調査会に大蔵省として案を示したということはございません。ただ、従来の議論を整理していただく意味で、利子課税あるいは配当課税の課税方式のあり方について、あるいはマル優等少額貯蓄制度についていろんな考え方を、いわば税制改正を行います場合のパターンを網羅的に示したということでございまして、どういう案を税制当局として考えておるという形でお示ししたものではございません。
  40. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 本来のこの非課税貯蓄制度というものが最近非常に悪用されておる、こういうことがいろいろ指摘をされてきておるわけであります。また、ただいまの鈴木委員質問にもありましたように、やはり資本蓄積を促進する税制の検討をしなければならない。こういうときに当たりまして、この我々が国会で成立いたしましたマル優、グリーンカード制度も、実は二千億円の増収のできる制度でもあったわけですけれども、これが延期をされておるわけでありますが、この問題についてどう対処するのか。グリーンカードを復活させるのか、あるいは改革するとするならば、もう六十年の税制改正にのせなければ間に合わないと思うんですけれども、その点はどうでしょうか。
  41. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは塩出委員の御指摘、そのとおりでありまして、一体どうするんだと。事実、今日私どもの反省としては、グリーンカード問題というのが一応世論のある種の支持を受けながら国会の中で議論をされて、そうしてこれは一つの政党を除く賛成で通ったわけです。それがその後の世論の推移から国民の理解になかなかなじめなかったというので、言ってみれば暫時凍結と、こういう形。それでやはり今期限を付しての御質問でありますが、関係者が多ければ多いだけに慎重であらねばならぬという一つ考え方を持ちながらも、まあ夏ごろまでには一通りの結論を税制調査会でもいただかなきゃならぬだろうと思って、今税制調査会での鋭意御議論を見守っておるというところでございます。したがって、先ほど梅澤局長からも答弁いたしましたように、先般来いろいろな御議論が行われておりました国会で行われた議論とか、あるいは有力な商業誌等に載った議論とかというようなものすべてを網羅して資料として提出したり、そういうことはしておりますが、大蔵省案を持っておるわけではございませんし、せっかく専門家の皆さん方で国会議論等を踏まえながら話を詰めていただいておる今日でございますので、まあ予見を持ってこのようなとは申すのは適当ではなかろうと思うのでありますが、夏ごろに結論を出していただけるであろうという前提の上に立って期待をし、これを見守っておるというのが現状でございます。
  42. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは最後に、中曽根総理は、こういう一連の動きの中で、こういうグリーンカード制度についてどういう考えを持っておるのか、これを伺っておきます。
  43. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この制度については、実施をやる、これをやろうとお決めになったときには公平感という面からお取り上げになったのだろうと思いますし、私はそういう善意については疑いを持ちません。しかし、いよいよ実施、やってみますというと、あるいはやらんとするという状態になりますというと、資本そのほかの流出であるとか、あるいは換金運動であるとか、あるいは実際のいろいろな困難な問題が予見される状態になってきました。これは経済や人心の微妙な点もあったように思います。そういう意味から、自由民主党の内部におきましてこれを見直そうと、そういう議もあり、また野党の一部におきましてもそういう議が起こりました。そういう面からこれを一時サスペンドするといいますか、凍結するという状態にしておいて、そしてこの善後策を講じようと、そういうことになったので、これはある意味における政策の見直しということになりまして、自由民主党内閣といたしましては、ちょっとじくじたるものもあるわけでございますけれども、しかし経済の現実を直視するということも大事でございますので、そういう措置をとったわけでございます。いずれこの凍結期間というものは来ますから、なるたけ早晩のうちにはこれに対する正式の対策を決めて処理していかなければならぬと、そう思っております。
  44. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今、御指摘がありましたように、グリーンカードのような、不公平を直すというのもいいかげんにしておいて、大衆間接税の増税ということは選択を誤ったことになりはしないかという心配があります。この点、やっぱり総理はいかがお考えでございますか。
  45. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) グリーンカード制につきましては今申し上げたような反省を申し上げたつもりでございます。将来のいろいろの収入措置につきましては、臨調答申を守りながら最大限の努力を、血のにじむような努力を今後もしていかなければならない、そのように感じて、税制調査会でもいろいろ御議論をしていただいておりますが、それらの議論もよく拝聴してまいりたいと思っておるところでございます。
  46. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 税収面の見直しの一方、歳出面についても、歳出構造であらゆる経費に対して聖域があってはならぬと、こう思うんです。その点で、五十九年度予算で、従来一般歳出計上の臨時特例交付金を交付税の中に含めて一般歳出分を狭める、こういったやり方は余りよくないと思うんですね。そうじゃなくて、国債費を除くあらゆる経費について徹底したメスを入れるべきじゃないか、こういうふうに思うんですが、この点はいかがでございますか。
  47. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、今度のいわゆる地方交付税を含めた地方財政対策の抜本的な改革を行いましたので、今、鈴木さんおっしゃった御指摘は、数字の上では率直に申しまして私はそういう批判はあると思います。しかし、私どもの方としてはまさに抜本的改革の一つであったというふうに思っておるわけでございますので、その意味におきましては、今後とも、これがこっちへ移しかえられれば、言ってみれば聖域の枠内に入るとかいうような考えは持ってはならぬという御指摘はそのままいただきたいと私どもも思っております。
  48. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは総理に伺いたいんですが、西ドイツが一九六六年第一回、一九七三年第二回、現在第三回目の財政再建に取り組んでおります。それに対して、第一回が予算均衡保持法と中期財政計画の発足、第二回が財政構造改善法によるすべての歳出に聖域を設けないで削減をしております。州への財政交付金まで抑え込んでいるというのはそういうことでありますけれども、これについて、この西独の行き方がいいとか悪いとかということじゃなくて、我が国もやはり財政改革法なりをつくる意思があっていいんじゃないか、これが一つです。そうして、こういうようにその法律に基づいて歳出の切り込みをする、そうでなければイギリスのように大増税をやる以外にないということになりますので、この考えについてはどうお考えでございますか。
  49. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 西ドイツでは、ドイツ人らしく非常にきちょうめんに、ちゃんと法的手段を明確にしつつそういう政策をおやりになりました。我が国でも、行革の発足に際しまして行革関連特例法をつくりまして、一部若干それに似た政策も取り上げたのでございます。将来の問題といたしまして、鈴木さんのお考えもひとつ検討してみたいと思っております。ただ、これが増税につながるという印象を与えるということは増税なき財政再建という趣旨に反します。それから、いろいろなことをやるについて野党の御協力がなければ行革や財政再建というのはなかなか難しいことでもありますので、その内容につきまして野党や世論の反応というものもよく見きわめた上で考えをまとめていかなければならないと、そのように思っております。
  50. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 企画庁長官に伺いたいんですが、「新経済社会七カ年計画」では財政計画の必要性をうたっております。ところが「一九八〇年代経済社会の展望と指針」では、財政体質の改善はうたっておりますが、計画のことは何も言っていない。どうして後退したのでしょう。
  51. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今お話のとおりでありますが、「展望と指針」では、やはりある程度のことは言及をしておるわけです。例えば、対象期間中に特例公債依存体質からの脱却公債依存度の引き下げに努める、これを努力目標にしておる、こういうことでございます。
  52. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 計画の必要性と努力目標とどう違うんでしょうか。
  53. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) この問題につきましては、今総理からお答えになったとおりだと思います。
  54. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 では、日銀総裁も見えられたようでありますから、国債借りかえの問題について伺いたいと思います。  今回、赤字国債現金償還から借りかえにする、こうすれば確かに六十年度以降の急激な負担増というものは減りますけれども、その反面、従来から予想されていた国債発行額に借りかえ分の上乗せという問題が起きてきます。金融資本市場で国債が円滑に償還できるかどうかという問題が必ず提起されてくると思いますが、日銀総裁と大蔵大臣と、ともに見解を伺いたいと思うんです。
  55. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 借換債が大量に発行されるということになりますると、新発債とともに金融市場に対するそれだけの問題が出るわけでございます。ただ、借換債の方は借りかえされる国債の償還金がございまするから、その部分は資金がプラス・マイナス・ゼロになるわけでございます。したがいまして、資金の総量といたしましては、借換債は新発債と違って金融市場に与える影響は少ないということになります。しかし、それは総量だけの問題でございまして、借換債を持っておられる方が新規の借りかえをする国債にそのまま乗りかえられるということにならない。したがいまして、資金の偏在的な影響が出るということは避けられないというふうに思います。そういう点から申しますると、金融市場に対する影響が決して少なくないということは申すことができまするが、そういう事態に対処いたしまして、金融面でこれは十分の対応をしていく必要がある、つまり資金の偏在に対しましては金融面で十分の対応をしていく必要があるというふうに思います。
  56. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の問題につきまして、国債借換問題懇談会というものでいろんな先生方にお集まりいただいて議論をいたしておるところでございますが、原則的に、日銀総裁から今お答えがございましたように、一度、今日まで蓄積された企業、国民の貯蓄、それを対象にして既発債は発行され、言ってみれば現在の資金量の中に借換債の問題というのは埋め込まれていく。新発債というのはまさに今後伸びるであろう国民の貯蓄性向を期待しておるわけでございますから、その辺の性格の相違はございます。しかしながら、日銀総裁からも今お答えがありましたように、すべてが単純な乗りかえで終わるものではもちろんございません。現金償還に対する一つの手段としての借換債でございますから、資金の移動というものはもとよりあるわけでありますから、基本的にはやはりこれが減っていくというのが好ましい問題でございますが、今日の日本の金融情勢その他、いわゆる貯蓄性向その他から見ますならば、それは経済情勢の推移等によっていろいろその都度変化が出てまいりますものの、これが非常に困難な施策であるというふうには思いません。これこそ専門家の意見を聞きながら弾力的に対応していく問題であろうというふうに考えております。
  57. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 赤字国債借りかえたとすると、新発債と合わせて六十年度以降六十五年度までの各年度ごとの国債発行額はどのぐらいになるんでしょう。
  58. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 前提の置き方で違うわけでございますが、さきにお示しいたしました仮定計算例に即して申し上げますと、そのうちの借換債を発行するケースと、それから発行しないケースとで違うわけでございますが、借換債を発行するケースで申し上げます。  五十九年度は新発債が十二兆六千八百億でございます。借換債が五兆三千六百億、合わせて十八兆四百億でございますが、六十年以降借換債の増大、それから新規財源債は、これは減らすという前提に立っておりますので減っていくわけでございますが、六十五年には新規財源債が六兆二千三百億になり、借換債が十七兆二千二百億になって、合わせて二十三兆四千五百億、十八兆が二十三兆になると、こういう計算になっております。
  59. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今の答弁からもわかりますが、借りかえをしなければ、これは、しない場合と、する場合とありますけれども、する場合で二十三兆円、こういうことではこれは大変な発行を余儀なくされるということでございますが、これは民間資金と競合しないで発行ができるでしょうか。これは大蔵大臣、日銀総裁、どういうことになりますか。
  60. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 民間資金の方は、現在のところはそれほどまだ民間資金需要が強くございませんので、この状態が続けばそれほど大きな問題にはならないで済むわけでございまするが、景気の変動に伴いまして民間資金需要というのはふえる可能性がある。そういう場合には民間資金需要との間の競合関係というのは起こり得るわけでございまして、ことしの一月の財政制度審議会の中間報告にもその問題が指摘されておるわけでございます。そういう意味で、今後の推移によるわけでございまするけれども、そういう民間資金との間の競合問題というのは十分にこれから金融の当局者としては対応していかなければならない問題だと思います。
  61. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 総じて言えば、これは国債管理政策全体の問題になるだろうと思うのであります。でございますから、確かに今日までの貯蓄性向等からいたしますならば、これは新発債がだんだん減っていきますだけに、民間需要との競合もまあなだらかな程度ではなかろうかという期待感もそれはございます。しかしながら、やはり経済の情勢等に応じていわば民間資金需要等が非常に大きなウエートを占めることとて、それはもとよりあり得るわけであります。そういう際には、それは借換問題懇談会等いろいろ我々も議論 しておりますが、弾力的にと申しましょうか、すなわち資金運用部でお引き受けする比率があるいは多くなるとか少なくなるとか、そういうのもやはり一つの調整の方法としては弾力的運用の中に組み込んでおかなければならぬ問題だというふうに考えております。
  62. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今、一部大蔵大臣から答弁がありましたけれども借りかえをした場合、とにかく二十五兆円近い国債発行をされるわけですけれども、現在、日銀と資金運用部、この保有の国債を乗りかえるだけということであれば、これは問題ありません。しかし、その保有している比率は全体の三割、直接資本市場に影響してくるのはやはり七割ということになるわけです。その七割は市中で消化をしなければならない新発債とそうして借換債ということになるわけですが、新規国債は従来のシンジケート団の方式を中心に継続していくだろうと思うんですけれども、借換債はどうするか。これはやっぱり国債管理政策として大変なものなんですが、いかがお考えでしょうか。
  63. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 今、御質問がありましたように、六十年代になりまして借りかえがふえてくるという状況のもとで、いかに円滑に新規債、借換債を消化していただくかということは大変重要な国債管理政策の問題でございます。私どもといたしましては、六十年度に間に合うようにということで今検討をしているところでございまして、今の段階では、具体案があるというわけではございません。しかし、何とか円滑に市中で消化するという方向で検討したいというふうに考えております。
  64. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは先ほど日銀総裁が、引き受けないのが出てきたときどうするかというのがありましたから次に移りたいと思いますが、大蔵大臣国債の消化で大変大事なことは、特定の日に償還が来るということがあるわけですよ。その集中する資金繰りです。たとえば六十年度でも、五月二十日に一兆六百七十六億円、十一月二十日に二兆二千五百九十四億円、六十一年の二月二十日に一兆九千六十五億円、六十三年の五月二十日なんか、一日でもって期限が来るのが三兆五千百五十四億円という償還にぶつかってくる。こういう大量の償還についての資金繰りをどうするかということをお伺いしたいと思います。
  65. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいまお答えいたしました理財局長の私的諮問機関として国債借換問題懇談会というものをつくっておるわけでありますが、この借換問題懇談会というのはいわば赤字国債借りかえ問題以前からあった懇談会ではございます。新たにつくったものではございませんが、御指摘ありましたように、特定月に集中する傾向が見られるといった問題がございます、本格化した場合。したがって、今後これはどうしていくかということになりますと、今、借換懇のお話をいたしましたが、今後この借換懇で議論していただいて、市場の動向とか投資家のニーズとかそういうことを勘案して、国債の多様化、こういうことなど、いわば国債管理政策の適時適切な運営によって対応して円滑な消化でいかなければならぬだろう。だから、今まさに多様化と申しましてもどういうものが考えられるかというところまでの議論には至っておりませんが、そういうことで対応していかなければならぬ課題だろうというふうに理解をいたしておるところであります。
  66. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どうもその日に限って償還が集まる、私は、その前にやってしまうとか、また後ろになるのか、いろいろ考えていらっしゃるんだろうと思うんですけれども、まあこれは答えが後ということですね、今の御答弁は。  では、次に移りますが、期間一年未満の短期国債発行がうわさされている。その上、昭和五十七年五月の省令改正で行い得る状況に現在あります。そこで、年度内償還を前提とする短期国債発行するお考えがあるんですかどうなんですか。
  67. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいわば先を見越しての御質問だと思います。私の考えにも今委員のおっしゃったような考えが皆無ではもちろんございませんが、今議論を進めていただいておる最中でございますので、この議論の方向について現段階で申し上げる段階にはございませんが、検討の一環として短期国債につきましても意見が出されておることは事実でございます。そして、いかに認識しておるかと問われるならば、一つの検討課題としての認識は私にもございます、財政面、金融面等さまざまの観点から。そうした認識でいろいろ議論をして、御意見をちょうだいできるものだろうというふうに期待をしておるところであります。
  68. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは大蔵大臣、年度を繰り越しの発行も含んでおりますか、念頭には。
  69. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 議論の中にはございますが、今まだ、念頭にそれがあるかと言われるところまでは私も詰めておりません。
  70. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 短期国債発行によって日銀の金融政策上障害とか難点とかこういうものが生じてくると思いますが、どういうような影響が出てくるというふうに予測をされておられますか。
  71. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 短期国債発行されるのかどうか、今大蔵大臣からもお話がございました。まだ決まっていないということでございまするので、具体的な問題ではなくて、一般論としてお答えを申し上げたいと思うんですが、短期の金融資産というのはほかにたくさんございます。預金を初めいろいろあるわけでございまするので、そういう短期の金融資産との競合関係がもし起こりますると、それは金融面への影響があるというふうに言わざるを得ないというふうに思います。
  72. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、タイトになってくるしコールは上がるという、そういうことで市中金利への影響は出てくるんじゃないか、こういうことを考えるんですけれども、そういうことをおっしゃっているわけですね。
  73. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 借りかえの場合におきましては、それに相当する資金の放出がございまするから、短期の金融市場に量的に影響を及ぼすということは理屈の上から申しまするとないわけでございまするが、今私が申しましたのは、そういうものが出ることによってほかの短期の金融資産との間の競合関係が起こるということが、たとえば金融機関の預金であるとかあるいはその他の金融資産ございますが、それとの競合関係が起こりますれば影響があると言わざるを得ないというふうに申しております。
  74. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 借りかえのルールに短期債ということも大蔵省、懇談会で詰めを急ぐと報道もされておりますけれども、いずれにしても短期国債を出す場合、必ず市中消化で行って日銀引き受けは絶対に行わないということが言えますかどうか、お約束をしていただければありがたいんですが。
  75. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国債を日銀引き受けさせるということは、これは財政法五条でございますか、原則禁止と、こういうことになっております。これは当然のこととして、国民経済及び財政の健全性、すなわちインフレ防止という観点からであると考えられております。したがって、まだ今、いわゆる短期国債がどういう形でという具体的な議論が詰まっておるわけではございませんけれども一般的にいわゆる国庫の資金繰りのための今大蔵証券、これは日銀で引き受けが認められておるわけでございますけれども、言ってみれば市中消化ということを原則にいたしまして投資家のニーズに合ったさまざまな国債というようなものを発行していく必要があるというようなことについては、我々が考えておる新しい手法でございますので、今そういうもので日銀引き受けのものを考えておるということは全くございません。
  76. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 短期国債発行するとすると、今大蔵大臣から答弁ありましたが、蔵券等のTBと競合して調整の必要が出てくるんじゃないか。今の御答弁にもありましたが、蔵券等、TBを日銀が大部分引き受けている現行方式でいきますと、市中公募された短期国債との間に金利差が生まれてくる、これに金利の二重構造が起きるということになるんですが、これはそういうおそれはどうお考えでしょうか。これは大蔵大臣と日銀総裁どお伺いしたいんです。
  77. 前川春雄

    参考人前川春雄君) ただいま、現在のところ、短期の政府証券、蔵券というお話がございましたが、蔵券は日銀引き受けをしております。しかし、この蔵券をもって市中に金融調節をいたしまするときは、たとえばこれを売却するあるいは買い上げるというようなときには市中金利で、市場金利でやっておるわけでございます。したがいまして、短期国債、これは公募ということでございますれば市場金利ということでございまするから、その点では同じような金利になるのではないかというふうに思っておりますが、この短期国債の問題はもう全く仮定の話でございまするので、もしそういうことが起こればという一般論でお答え申し上げました。
  78. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やっぱり鈴木委員の御質問にやや誘導されて踏み込んだかの感がございますが、そういう意見があったことは事実でありますということを素直に紹介をいたしました。そして、検討の課題となろうということも申しましたが、現在、具体的な検討が、それが、それそのものがいわば詰められた対象となっての検討が行われておるというわけじゃございません。大きなこの借換懇の課題として意見が出たことがあるという段階でございますので、やはり現段階では何とも申し上げられませんが、一般論として申し上げるならば、今、日銀総裁からお答えがあったと同じようなことだなと、こういうふうに理解しております。
  79. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今の大蔵大臣答弁でも、金利等のことを言って、おそれがある、議論されたということですが、それならば大蔵省証券等の蔵券等も、初めから市中公募に切りかえる時期にもう来ているというふうにお考えになりませんか。
  80. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そこまで議論が行っているわけじゃございませんが、これはその借換懇の中ではなくして、いわゆる今のような議論は金融の専門筋では間々議論される問題でございます。しかしながら、私どもといたしましては、国は国庫金の出納に必要があるときは、大蔵証券を発行し、または日本銀行から一時借入金をなすことを規定いたしておりますので、いわば国庫の資金繰りに直ちに効率的に機動的に対処するという観点からいたしますと、私は、いわゆる大蔵証券あるいは食糧証券、そうしたものは現行の制度が適切であろうというふうに考えております。
  81. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 国庫資金繰りの観点から立って、国債の償還の方は、借りかえの方は短期国債で、そして一般会計の歳入歳出のずれは蔵券とTBでというように区別されている。これは金融政策上一本化した方がいいんじゃないか。具体的に言えば蔵券についても現行の年度越しをしないように縛りをかけるとか、あるいは発行は市中消化を行うという縛りをかける、こうすれば短期国債発行しないで蔵券一本でいくということになって、金融政策上大変都合がいいのじゃないかというように思うんですが、そうすればその方が財政紊乱を避けられるのじゃないかと思うんですが、これは日銀の総裁と大蔵大臣と両方にお伺いをしたいと思います。
  82. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 短期の政府証券につきましてこの消化をどうするかということでございまするが、今、財政法上では日銀引き受けが特に第五条で認められておるわけでございます。国庫の一時的な資金需要というのはそのときどきの状況に応じまして急に起こるということもございまするので、そういう日銀引き受けの必要性というのはあると思います。ただ、だんだん政府資金が金融市場における影響が非常に強くなってきている。したがいまして、金融調節上は政府資金の繁閑に応じてこれを行っていくという必要が出てくるわけでございまするので、現在私どもは、そういう事態に応じまして短期政府証券の蔵券の市中売却、市中のオペレーションということをやっておるわけでございます。そういう必要はこれからさらにふえるであろうというふうに思っております。
  83. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やはり私は、原則的に国庫の資金繰りに効率的、機動的に対処するという立場から、今の大蔵証券というものは日銀引き受けというものができるという姿の中でこれは定着してきた。そしてそういうことから考えますと、いわゆる金融調節の手段としては、同じようなそういうものが仮にできたら、同じようなものだから同一的に運用した方が、蔵券の星もかなりふえておりますから、したがって今日、金融調節の手段だけから考えればそれが適当ではないか、こういう議論は私はあり得る議論だと思っておりますが、私どもといたしましては、いわゆる国庫の資金繰りにまさに効率的に機動的に今すぐという形で対応できるというものはそういう姿で残しておいた方がより安心感がある、こういうふうな理解をしております。
  84. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 短期国債と一本化しろということについては答弁が少なかったんですが、財政法七条の規定で一般会計の資金繰りにしか蔵券は使えないということは承知しております。ですから、そういったことの見直しを含めて、国債管理政策、金融政策、これは一体として動いていかなければなりませんので、この点はそういう点の調節をすべきだと思うんですが、どうですか。
  85. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは金融政策全般あるいは金融調整全般の問題としての勉強課題ではあるという認識は私も持っております。ただ、合いわば短期国債というものを借りかえの手段に使う、使わないという議論の以前の議論段階で断定できませんが、今、鈴木委員議論されたような問題が勉強の課題としてはあり得るという認識は私も持っております。
  86. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは勉強の課題としてあり得るということですが、具体的にはどう取り組んでいくようになりそうですか。
  87. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはやっぱり金融調節の手段と今の場合私がお答えしておりますのは、さしむきの政府の資金繰りの機動的な問題とはおのずから別個の問題でありますし、そしていま一つは、やはりいわゆる短期国債というものの発行そのものが前提となった議論でございますので、したがって今どのような時期にどのような方法で勉強すべきものだということをお答えする時期ではない。ただ、いわゆる財政通なりマネタリストの人の中にそういう議論が多いということを承知しておりますので、いわば財政金融等を預かる我々としてはいつでも勉強の課題であるという認識は持っていなければならぬということが今日お答えする限界かなと、こういう認識であります。
  88. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、金融問題ですが、経企庁長官は十六日の記者会見で、公定歩合の問題についてその引き下げの時期が来ているというふうに伝えられておりますけれども、この真相をひとつお伺いしたい。
  89. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 若干ニュアンスが違うわけでございまして、もし円高がこのままずっと定着をいたしますと金融政策を機動的に行う、具体的に言いますと公定歩合が引き下げられるような一つの条件が整うであろう、こういう趣旨のことを言ったわけであります。
  90. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 政府がこれまで言っていたのは、金融施策について適切な機動的対処をすると、こう言っていながら、前回公定歩合を下げたのが昨年の十月、ようやく下げたわけです。今のように国際的経済の変動の激しいときにこそ適切な機動的な金融政策というのが重要なはずでございますけれども、今後の金融施策について大蔵大臣と日銀総裁はどうお考えになっておるか伺いたい。
  91. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 金融政策を機動的、弾力的に運用するという方針は私どもも堅持しておるつもりでございます。これからもそういうふうに運用してまいります。今お話がございましたように、物価が安定しており、また円相場がもし円高方向へ定着するということでございますれば、国内面から見まして、今、経企庁長官が言われましたように、一つの要素がそこで生まれてくるということでございます。ただ、公定歩合政策、その他金融政策につきましては、国内の事情だけではなかなか行い得ない環境にございます。特に海外の金融政策あるいは金利状況、そういうものをどうしても考えなければいけない。  最近、ここ一両日、アメリカの金利がまた上がってまいりました。そういうことを反映いたしまして、円相場もきょうぐらいは二百二十六円までまだ円安の方に振れておるわけでございまして、非常にそういう意味ではまだ不安定な状態が続いておるということでございます。こういうふうに相場観というのが市場でまだ固まらないうちに軽々に金融政策を発動することによってまた円安を招来するというようなことがございますると、ゆえなき非難ということもあり得るわけでございまするので、そういう点につきましては十分注意を払いながら、もちろん機動性、弾力性の範囲内で対応してまいりたいというふうに思っております。
  92. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、市中貸出金利は御案内のように総じて順調に低下をしております。もう一つは、マネーサプライが名目成長率を上回る伸びを続けておりまして、こうした状況のもとでは企業金融段階でもいわゆる緩和感が浸透してきております。  金融政策の問題は、日銀総裁からもお答えがありましたが、景気、金融動向、そして内外金利関係あるいは外為相場の状況等を見ながら機動的に対処していくという、原則的には私どもはそのとおりであるというふうに今考えておるわけであります。
  93. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今、日銀総裁から二百二十六円という話がございましたけれども、大体あの二百二十円に落ちてから一進一退を続けて、円高基調に僕はあるような感じがしてならないんですけれども、その辺の外為相場については今どういう評価をしておられますか。
  94. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 円相場がもう少し円高の方向に推移するのが当然だろうというふうにかねがね思っておりましたが、なかなかそういうふうにならなかったわけでございます。ところが、今月の初めから円相場が円高の方向に振れてきたわけでございまするが、きっかけといたしましては、ヨーロッパ通貨がドイツ・マルク、スイス・フラン等を中心にいたしましてドルに対して強くなってきたという状況がございまして、それに比べると円が割安であるという感じが出てきましたのが今度の円高の一つのきっかけでございます。  そういう意味で、日本の経済のいわゆる基礎的条件である物価の安定あるいは国際収支の黒字等のそういう基礎的条件が再認識されてきたということが大きな要素だろうと思います。ただ、もう一つの柱でございまする内外金利差というものは依然として変わっておらない。しかも、先ほど申し上げましたように、アメリカの金利がここのところまた上昇ぎみであるということもございまするので、そういう意味で為替相場市場に対しましてはまだ非常な不安定の要素が残っておるというふうに思います。もう少し相場観が固まるのを待たなければいけない段階ではないかというふうに思っております。
  95. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 鈴木委員も私も、今日いわば円高基調が定着していくことを期待しておるという点においては一緒だと思います。したがって、小心者でございますので、どっちかといえば一喜一憂する嫌いがございます。いろいろ言われておりますけれども、このところの問題につきましては、今お答えがありましたが、一喜一憂の分で申しますならば、一つの例示として申し上げますならば、連銀が金融引き締めに向かうとの懸念から金利が上昇するという一つの見通しと、それからまたレーガン大統領が共和党指導者と財政赤字削減に合意したということが信認を高める方向に作用した。しかし、大変額としては薄商でございますが、私どもは引き続き円高基調というものが、我が国のファンダメンタルズはいいわけでございますから、定着することを期待をしておるという認識であります。
  96. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは市場関係者の間から話が出ていることでありますが、日銀総裁、伺っているかどうかでありますが、今回あった円高傾向というのは、特定の国がドル等の諸外国の外貨を売ってそうして円買いをした、その動きが激しいというような話が伝わっているんですれども、その事実はどういうふうに御認識なさっておられますか。
  97. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 三月二日の金曜日でございまするけれども、ニューヨーク市場で円高にかなり強く振れまして、それ以降相場が円高の方向で推移しておるわけでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、一つのきっかけといたしましては円の割安感ということから円買いが起きたということでございます。その特定の国あるいは人というのはいろいろ言われておりまするけれども、なかなかこれは証拠もないことでございまして、また仮にそういうことがあっても、市場の相場観というものがそういうふうに動いておりませんとその相場は維持できないということもございまするので、そういうふうな特定のあるいはきっかけということを離れて、日本の経済のファンダメンタルズ、基礎的諸条件に対する再認識があって円の割安感が修正されておるというふうに見るべきではないかというふうに思っております。
  98. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理は、現在の公定歩合についてどうお考えでございましょうか。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公定歩合につきまして行政の最高責任者としてとかく論評することはできるだけ避けたいと思っております。これらは世界経済状況やらあるいは国内的諸経済の情勢から決まってきておるものでありまして、私がどうこうするというべき問題でもないし、この問題については日銀総裁に一任しておる問題でございますから、私が申し上げることは差し控えたいと思います。
  100. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 日銀総裁、ありがとうございました。
  101. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 総裁、ありがとうございました。もう結構だそうですから、長時間ありがとうございました。
  102. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 行政改革について次は伺いたいんですが、中曽根総理は当初から中曽根内閣は行革内閣だと、こう言っておられました。第二臨調も解散をし、総理は次は教育改革だということで次々と花火をお上げになっていらっしゃる。今現在の中曽根内閣における行政改革の位置づけはどういうのかといえば、そういう教育改革のような花火を上げて行政改革というのを薄めているのではないかという感じ国民の間にはありますので、この点この行政改革についての位置づけについて伺いたい。
  103. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行政改革につきましては、不退転の決意で最重要課題としてこれを推進してまいりたいと思っていることは今でもいささかも変わっておりません。行政改革もおかげさまで大体軌道に乗りまして、今度は最も重要な正念場にかかっていると思っております。昨年の臨時国会で解散ということになりましたが、行革七法案というものを全部成立させるということが私の念頭にもありまして、その熱意もありましてああいう政局の状態にもなってきておるわけであります。  それから今回は約二十三にわたる行革法案を提出いたしまして、特に電電やら専売公社の改革案やら年金問題やら地方事務官制度やら、そのほか最も重要な問題に差しかかったわけであります。大体軌道に乗ってきておりまして、この軌道をひたむきに推進していけば行革の目的を達することができるという情勢が展望し始めましたので、今、国民が最も心配もし、まず喫緊の要務として受験生も親も考えておる教育問題に政治もいよいよ手をつけるべき時期であるとそう思いまして、行革を妨げないという認識のもとにもちろん教育改革というものに入らんとしておるものなのでございます。
  104. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 不退転の決意はいささかも変わらない、熱意が変わらないと御自身で確認をされて意を強くしたんですけれども、やはりこれからやることは、第二臨調が出した答申をどうやってフォローし、チェックしていくかということだろ うと思います。それについてのお考えを伺いたい。
  105. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第二臨調は五回にわたりまして答申を出していただきました。その都度これも実行もしつつあり、あるいは実行方針を閣議決定で決めまして、いわゆる行革大綱というもので軌道を設定してきでおるわけでございます。その線に沿いまして、うまずたゆまず実行してまいらんとしておるものでございます。  総務庁設置というようなものは、むしろ臨調答申以上の踏み込んだ改革まで実は実行しておるのであります。しかし、あの臨調答申の中には抽象的な文章もございまして、政府は具体的にさらに足を踏み込んで実行すべき点もあります。そういう問題につきましては、今後も臨調答申の精神にのっとりまして、さらに足を突っ込んで具体的にさらに進めていきたいと思っておるわけでございます。
  106. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 すべてがよくわかりました。  現在、行革推進委員会が設置されておりますが、中曽根内閣自身で行革はきちんきちんとチェックをされていくと、こう認識してよろしゅうございますね。
  107. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) もちろん一つ一つきちょうめんにチェックしつつ前進していきたいと思っております。
  108. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そこで問題は、行革内閣とまで言われてこられたこの成果を総理大臣は国民に周知徹底さして、どうやって見てもらい、知らせていくかということが非常に大事だと思います。国民はそれを期待していると思います。どういうふうにおやりになる御予定でございますか。
  109. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は国会でいろいろ御審議もいただき、答弁も申し上げまして、テレビ、新聞あるいはラジオ等も通じまして国民にお知らせも申し上げておるところでございますが、区切り区切りで適当なときに行革に関する報告みたいな形で考えてみてもいいと思っております。行政管理庁におきまして白書を出しております。私のときから出しまして既に二回出しておりますが、この白書を利用するというのも一つ考え方でありますが、あれは行管庁全体の仕事がカバーされておりますから、行革に関して国民に報告するていのそういうものも将来考えていいと、そう思っております。
  110. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 熱意のほど、よくわかりました。  そこで、臨調の答申及び答申を受けての実施方針がこれまでどの程度実施されてきたか、これは五十八年度までの実績です。そして五十九年度の実施予定はどうなっているのか、それから今後一体どういうようにやっていくかという予定がございます。この三つに分けて、具体的に国民にわかるように資料を提出していただきたい。今、総理のお手元にこれを差し上げたいと思います。ちょっと見ていただきたいんです。  今、総理のお手元に差し上げた資料に沿って申し上げれば、その臨調答申で示されたもの、それからいま一つ別にございます一月二十五日の実施方針の内容について書かれたものもあります。そういうことについて、その右の方に空欄がありますけれども、そこを埋める形でひとつ出していただければと思うんです。そういうことを具体的に書いていただきたい。枠が小さいですから大きくしていただかなければならぬと思いますが、各省庁ばらばらに出されますと受け取る方も、それからチェックする方も非常に困りますので、私はまとめてみたのでございますが、内閣官房でそれを取りまとめて提出するようにしていただけないでしょうか。私が一般質問でまた取り上げるつもりでございますので、それまでに間に合うようにひとつ出していただければと思いますが、お約束していただけないでしょうか。
  111. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この内容を点検さしていただきまして、できるだけ御趣旨に沿うように提出いたしたいと思います。
  112. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今の中身に入れば、一月二十五日の実施方針の内容では、学術会議事務局の内部組織を簡素化する、具体的にどうするのか。北海道開発局の支所、出張所を五十九年度末に五カ所整理するというけれども、どことどこをどうするのか。こういうことが出てこなければならないわけでありますので、よろしくお願いをしたいと思います。本当は、一次答申から最終答申に至るまでということでどう実現してきたのか、これを一つ一つずっと追跡、フォローしなくてはならないと思うんです。行革を指示した総理にはそういう責任が私はおありになると思います。国民もみんなそう思っております。軽量政府というわけじゃありませんけれども、ぜひ実現をしていただきたいとだれもが考えていることだと思うんです。  そこで、総理大臣にお願いでありますし、また伺いたいんですが、今後毎年度、予算委員会が始まるまでに、こういうふうにやってきたという実績と本年度のやる計画とそれからの予定ということで、この予算委員会に今までの実績、次年度の予定というふうにして表を御提出いただけないかと思うんです。そういう将来計画まで入れたものを出していただくということをお約束していただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  113. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 結構でございます。ただ、将来計画等につきましてはまだ未定の面もございますし、将来決まっていくという面もございますから、そういう点につきましてはいろいろまた御容赦を願う面もあると思いますが、できるだけ御期待に沿うように調整して提出するようにいたしたいと思います。
  114. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 さらに、第一次答申で指摘をされております特殊法人の役職員でございます。それの定数削減のことが第一次答申では既に指摘をされておりますけれども、その実績と計画を、各法人ごとに五十八年度実績、五十九年度計画というのを示していただきたいんですが、これはやっぱり内閣官房でまとめなければできないだろうと思います。いかがでございましょうか。
  115. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今の点もできるだけ調整して提出いたしたいと思います。
  116. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それから、今後民間法人化、統合される特殊法人、こういうのが出ております。年度等もきちっとしておりますけれども、これは本当にきちっとやっていただきたいというのが心からの念願でございます。随分各方面に公庫であるとか基金であるとかあるいは株式会社とかございますけれども、こういう民間法人化及び統合ということについては、これは六十年度、六十一年度というふうに年度がありますけれども、もっと早目にできるという方法はないかどうか。これは総理、この促進方についてはどうお考えでございましょうか。
  117. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点につきましては、行管長官から答弁していただきます。
  118. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) お答え申し上げます。  臨調で、民間法人化ということで二十法人につきまして一応指摘をいたしておりまして、これにつきまして新々行革大綱の中で六十年度においてこれは極カ所要の措置をすると、こういうことを申しております。臨調の指摘しました中で容易なものにつきましてはできるだけこれを推進するつもりでございます。しかしながら、実は例えば検査、検定、その他いわば民間に団体をつくってそちらの方に移譲していく、ないし、そうしたものにしていくというものにつきましては、いささか民間業界との関係その他でもって条件の整備が必要でございます。そうした間の事情がございますものですから、私どもの方では一応関係省庁と論議をしまして、六十年度が一応一つ努力目標としてぎりぎりの線でなかろうか、このように思っておるわけでございます。できるだけ御趣旨に沿うように推進方は努力をいたします。
  119. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 終わります。  あとの時間は、私の方の次の方に譲ります。どうもありがとうございました。(拍手)
  120. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で鈴木君の質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこれまでとし、午後一時委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午前十一時四十五分休憩      —————・—————    午後二時五十三分開会
  121. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十九年度総予算三案を一括して議題とし、佐藤三吾君の残余の総括質疑を行います。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。小此木通産大臣。
  122. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 私が、資産公開は与野党ともに国会議員たる者すべて行うべきだと申し上げた真意は、政権の交代を迫る野党も、客観的に見て与野党伯仲であり、もしあした解散になれば与野党逆転する可能性もある。そういうときにおいて、野党の国会議員も資産の公開をしろと迫られたときに、その準備をおやりになるべきではないかということが真意でございます。  さらにいま一つ、そのようなことについて質問する権利があるかどうかという疑問は、確かに議員のプライバシーに関する問題は法的には規制はございませんけれども、しかし聞く権利ということがあるとすれば、やはり答える義務もあるということになるわけでございます。このようなプライバシーの問題に関して答える義務があるのかなということも一つの疑問ではないかと。そこで、これは国会永遠の問題として議論されてしかるべきではないかと、かようなことが真意でございまして、御理解願いたいと存じます。
  123. 西村尚治

  124. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私の答弁を申し上げました趣旨を申し上げます。  あの際、官房長官から御発言がございましたように、中曽根内閣としては閣僚の資産公開をやろうと。しかし、それは各大臣の自主的な判断でやってもらう。ただ、ばらばらになっちゃいけませんから、そこで内閣として一定の基準をつくったと。その基準に沿って自主的に発表してもらいたいと。こういうことでございましたので、私は基準どおり正確に誠意を持って私の責任において発表をしたわけでございます。  それから二番目の問題は、佐藤さんの御質問の御通告は、その資産をどういう動機で得たのかとか、あるいはそれの財源はどうした、つまり原資はどうであったかといったようなのを私どもの役所の人間から聞いておりました。私は昭和十四年に大学を卒業したのでございます。今日まで四十五年でございます。過去いろんなことがございました。したがって、その発表は四十五年の集積でございます。それを一々ここで説明することも実際問題としては不可能。私はそこまでまたお答えするのもいかがかと思います。  ところで、今回のようなこの資産の公開というのは私にとっては初めてでございますから、そこで問題は、資産公開の意味合いからいうならば、仮にですよ、仮に中曽根内閣が毎年報告をするということになった場合、あるいはまた全国会議員が発表することになったという場合ということになれば、一年たって私が閣僚におれば二回目になる。閣僚をやめておっても議員としての発表になりますから二回目になります。そうすると、その一年間にいかにもこれは説明がつかぬではないかといったようなことがあれば、これは私はお答えしなければならぬと思いますけれども、過去四十五年間の私の集積の結果について一々ここでお答えするのはいかがかと、こういうことで私はあのような答弁をした次第でございます。御了承願いたいと思います。
  125. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 栗原防衛庁長官
  126. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私は、結論的に後藤田行管庁長官と同じだということを申し上げました。  その際にコメントしたのは、今度の資産公開に関しまして記者会見をしましたときに、私はもう率直に考えておるんだけれども、こういう問題はマスコミの方々の取り上げ方いかんによっては興味本位になると、そこら辺は御注意いただきたいものだと、そういうことを申し上げたわけでございます。  そういう観点から申し上げますと、佐藤さんがこういう席で善意でいろいろお尋ねをいただきましても、こういう席での発言というのが、全部とは申しませんが、マスコミの取り上げ方いかんによりましてはいかにも興味本位になってしまうのではないかと。そういうおそれもないわけじゃないじゃないかと。佐藤さんの真意とされること、あるいは資産公開の真意というのは、要するに継続性ですね。いま大臣をやっている、その大臣の在任中にどうしたかと、こういうことで継続性を、資産公開というのは非常に重要な要素としておると思うんです。そういうことからいたしますると、その趣旨から申し上げましても、この際にここでお答えをすることはいかがなものかと、そういうことで申し上げたわけでございまして、御理解を賜りたいと思います。
  127. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 藤波官房長官
  128. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 一昨日の閣僚の資産公開に対する質疑をいただいております中で、佐藤委員の御質問に対し、閣僚の答弁の中でともすると誤解を与えかねまじき表現がありまして、特にこの種の問題について質問をする権利があるかどうかとか、あるいはそれに対してお答えをする義務があるかどうかとかといったような感じで受け取られかねまじき表現がありましたのでございますが、それは真意ではございませんで、今それぞれ閣僚から御答弁を申し上げたとおりでございます。  今回の資産公開につきましては、一昨日もお答えをいたしましたように、総理の指示によりまして閣僚が申し合わせをいたしまして、内閣官房で基準をつくりまして、その基準に基づきまして資産を公開することにいたした次第でございますが、その後もこの公開の基準につきましていろいろと御批判や御指摘をいただいておる向きもございます。また、一昨日は佐藤委員からもいろいろ御質疑をいただいたところでございますが、今後この基準を検討いたします際には、十分それらの御意見を参考にさせていただきまして検討をしなければなるまい、こんなふうに考えておる次第でございますが、今後ともどうぞ御指導を賜りますように、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。
  129. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  130. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  小此木通産大臣。
  131. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 私が申し上げたことが、野党が政権をとる気がないんだというような解釈をされたとすれば、これは大変残念なことでございまして、この点は取り消します。
  132. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 一昨日の小此木通産大臣の発言につきましては、速記録を調査の上、適当な措置をとることといたします。  佐藤君。
  133. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 今、小此木答弁の中で、答える義務はない、答える義務じゃない、私に質問をする権利がない、こういった問題については永遠の議論だと、こういうことで委員長理事会に先ほど答弁の中で付託しておりますが、委員長、この見解を聞きたいと思うんです。私は質問の権利がないわけですか。
  134. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  135. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  136. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 質問権ということを中心に考えられると少し誤解を招くと思うんですが、要するにプライバシーに関する質問というものはやはり答える方でも考えなけりゃならないと思うんです。ですから、事プライバシーに関する問題は限度があるのではないかなあという疑問があるわけです。そのことをやはり国会永遠の問題として議論する必要があるのではないかと、率直に私は自分の疑問点を申し上げているわけでございまして、質問なさる権利があるとかなんとか、そんな大それたことを言っているわけではご ざいません。
  137. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 小此木さんはそう言っておるわけだ。しかし、この問題については委員長並びに理事の方で議論してください、結論を出してくださいと、こう言っている。だから、委員長とうなったのかと、こう聞いておるわけです。
  138. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 小此木通産大臣も質問権があるとかないとか断定をされたわけじゃない。非常に大事な問題だから今後の研究課題として相談をしてくださいということだと思いますが、私はここで佐藤委員にこの問題を質問していただいて結構だと、まだ質問が残っておりますればどうぞ続行していただきたい、かように考えるのでございます。
  139. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 よろしいですか。
  140. 西村尚治

    委員長西村尚治君) はい、どうぞ。
  141. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 質問権があるわけですね。
  142. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 私の見解と言われますから、私は今そう考えておると。ただ今後、大事な問題ですから引き続き研究することも必要であろうと思います。どうぞ発言してください。
  143. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 よろしいですね。
  144. 西村尚治

    委員長西村尚治君) はい。
  145. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 今、栗原、後藤田さんから真意という御答弁をいただいたんですけれども、あなたは一昨日の答弁の中では答える事柄でないと、こう言ったわけです。それは取り消したわけですか。
  146. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私がお答えしましたのは、先ほど補足してお答えした趣旨で一昨日ああいう御答弁を申し上げたと、かように御理解をしていただきたい。
  147. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 取り消すわけですね。
  148. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) いや、取り消しというわけではない、あの中身の説明を申し上げたと、こういうことでございます。
  149. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私の場合は、そういうことにお答えすることはいかがなものかと、こういうことで差し控えたいと、こういうことでございます。
  150. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 栗原さんは、お答えすることはいかがなものかということは、この問題、質問に対する疑問を持っておるわけですか。
  151. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) いや、御質問されることはこれは自由だと思います。しかし、私の立場からすると、それに対してお答えをすることはいかがなものかと、こういうことでございます。
  152. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 私は、おとといですか質問しましたのは、この問題は官房長官も明らかにしておりますように、また総理も明らかにしておりますように、選挙の公約として、そして国民の前に自主的に公開した、したがって申し合わせは最低線であって、これ以上については各閣僚の自由だという、こういう記者会見も官房長官はやっていますね。そういう内容に立って私は質問したわけでございますから、これに対して答えるべきかどうかとか、それからさらにさっきの小此木答弁のようなこういった態度、そのことの方がむしろ私は問題じゃないかと思う。そういう意味でひとつもう一遍、小此木、栗原答弁いただきたいと思うんです。
  153. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 基準をつくって基準を守れということで、私は資産公開したわけです。基準を守らずに資産公開をするということもどうかと思って、それを守ったということでございますので、それは御理解願いたいと思います。それ以上の、先ほどからの答弁は、私はもう、これで言い尽くしたと思っております。
  154. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 私も、そういう御質問をされることは御自由である、それはそれでよろしいと思いますよ。ただ、それに対して答弁を差し控えさせていただきたい、そういう私の考えも御理解いただきたい、こういうことでございます。
  155. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 官房長官にお尋ねしますが、あなた、先ほど釈明がございました。問題は、あなたがおとといの答弁で言っているように、この問題については一つの申し合わせをしたと、それ以上は閣僚の自由だ、それ以上発表するのは。こういう前提に立っているわけでしょう。
  156. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 何回も同じことを申し上げまして、大変くどくて申しわけありませんが、もう一回言わせていただきたいと思いますが、これは今回の資産公開につきましては、閣僚に御就任になる前に、総理から資産公開をしようと思う、こういう御指示が一人一人の閣僚にございまして、それを受けて閣僚が資産公開することにしよう、こういう申し合わせをしまして、そして、それぞれ資産公開しようとしたのでございますけれども、みんなばらばらではこれまた考え方の基準もとれない。したがって、内閣官房でよくいろんな海外の例、外国の例やこれまでの国内での例なども参考にしながら、一つの基準をつくることにしよう、こういうことになりまして、いろいろ資料を集めまして一つの基準をつくったわけでございます。したがいまして、申し合わせによって資産公開をする場合にこの基準でいきましょう、こういうことにそれぞれの閣僚に私の方から申し上げたところでございます。  ただ、その基準よりももっと違う基準で自分は考えているのでそれを公表するよという方がもしおありになるとしたら、それはその人一人一人の意思は自由でございます。法律に基づいて資産公開するというふうに決めてあるわけでもありませんし、公開の基準というのが法律で決められておるわけでもございませんので、それは一人一人の意思で、申し合わせはそうなったけれども、自分はさらにこういう公開をしようと思うということであれば、それは一人一人の自由な意思に基づいてあり得ることでございます。それを束縛するという権限は、基準をつくった内閣官房にもございません。みんなで申し合わせて公開しよう、基準をつくろう、基準をつくった、そしてそれによって公開をする。こういうことで私は申し上げておるわけでございまして、それ以上のことは一人一人の閣僚の意思という意味で申し上げてきたところでございます。ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  157. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 今、官房長官の御答弁のように、それ以上は自由だと。ところが、竹下大蔵大臣初め各大臣の中で、総理並びに官房長官の御答弁のとおりですとかいう、こういう答弁がずらっと並んだのですが、私はやっぱりそれは官房長官趣旨と違うと思うんで、そこら辺はひとつきょうはもう、聞きたいけれども時間がございませんから、一つ二つだけお聞きしておきたいと思うんです。  まず、稻村国土庁長官石川県の羽咋市、市の土地の所有の問題で随分問題が出ておりますが、その真意はどういう状態ですか。
  158. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村佐近四郎君) 佐藤さんに細かく申し上げますと時間がかかりますから、議事録それから市長の答弁、こういったことはここに全部きちっとしておるわけです。そういう意味から、後日はっきりと日時等々についても、あるいはその内容についても、経過について御報告を申し上げたいと思います。
  159. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 それは私に提出するんですか。
  160. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村佐近四郎君) 差し上げましょう。
  161. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 一昨日の答弁では答弁漏れがあるわけですね、渡部厚生大臣、それから水野さんはもう用意をしてきておるというので、用意した何かがあればお聞きしたいと思う。
  162. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) おとといは、委員長、宮中序列で示したようで、私は宮中序列はかなり上の方で、五番目ぐらいですから、もう来るのか来るのかと待っておりました、ちょうど森の石松のような心境で。ところが、最後まで来ませんので、この種の質問は私の方から求めてお答えするのもいかがかと思って、抜かされてしまいました、私は五番目ごろですから。  今、御質問がございましたが、私は中曽根内閣の一員として、内閣方針に従い、また内閣のあらかじめの取り決めに従い公開をいたしました。したがって、今後も内閣方針にすべて従ってまいる覚悟でございます。
  163. 水野清

    国務大臣(水野清君) 私の申し上げたのは、先ほど官房長官から答弁があったことでございます。ただ、私は出すのが嫌だということでなくて、用意はしております。しかし、官房長官から内閣一つの基準をつくって発表したわけでございますから、その範囲で、私はあえて細かく申し上げる必要はないと思っております。ただ、別に隠しておることでもございませんし、おおむね、土地もありますが、担保に入って借金をしておったりして、差し引きゼロでございますと、こういうことを申し上げたわけでございまして、その細かいことを、いつ、どこで担保に入れたなんというような話を、まあ個人の、全くこれ個人のことでございますし、不正に土地を取得したわけでもございませんし、そこまで自分の恥みたいなことを国会で、議事録へ残すようなところで公表をするのもいかがかと思って、私は差し控えましたし、きょうも差し控えさせていただきたいと思います。
  164. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 志苫裕君の関連質疑を許します。志苫君。
  165. 志苫裕

    志苫裕君 私もいささかプライバシーにわたる質問をしたいと思っているんですが、小此木さん、私には質問する権利がありますか。
  166. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) たびたび私は申し上げましておりますように、プライバシーに関する質問は底なしにやってもいいのかなという疑問があるということでございまして、私にはそういう疑問があるということなんです。ですから、今こうして委員質問なさることはどのようなことか、一切おやりになっていただいて当然かと思います。
  167. 志苫裕

    志苫裕君 総理、資産公開は政治倫理の上で非常に大事な問題でして、我々も意見も提案も持っているわけですよ。幸いせっかくあなた、この問題に手をつけて議会でも議論をしておるわけですから、できるだけいいものにした方がいい。そういう意味でいろいろとお伺いをしているのですが、公開の趣旨をめぐっては論議はありますけれども、政治家というのは大体余りいいことしていないので財産でもため込んだんだろうと、こういう不信感が一般にないわけではない。そういう意味ではガラス張りにした方がいいという総理の発言もあるわけで、そういう意味で私はやっぱり一つでも二つでも答えられるものは答えてもらって、その分だけこの公開制度の枠が広がるということはいいことじゃないかと思うんです。総理、官房長官は頭がかたい、答えぬようだから、次期の総理・総裁を目指しておる安倍さん、竹下さんに私一つ二つ聞くから答えてください。いいですね。  外務大臣、東京都渋谷区富ケ谷一の三十の二十九、一千百四十平米、評価額四千五百五十二万という、公開をなさいました。これの取得時期と取得の原因、お話しできますか。
  168. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 正確には覚えておりませんが、十年ぐらい前じゃないかと思います。前の家を売って買ったわけでございます。
  169. 志苫裕

    志苫裕君 そのときの値段なり公示価格なら覚えていますか。
  170. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それは調べればわかることですけれども、しかし、先ほどからいろいろと閣僚も答弁しておりましたように、別にないしょにしているわけじゃありませんし、表に出ていることですから調べればわかることなんですが、しかし一々そういうことを、内閣の基準にも従ってちゃんと出しているわけですから、そういうことまでこの席でお話をしなければならぬのでしょうか。どうしてもということなら、それはお調べになればおわかりになることじゃないかと思います。
  171. 志苫裕

    志苫裕君 安倍さんに聞いて恐縮ですけれども、五十年に売買で、その当時の地価公示額が五十万にちょっと欠けるぐらいのものになっているようで、お宅も売買になっています。こういう取得の時期なり価格なり、そのときの収入をちょっと念のために見ましたら、あなたは財産をお売りになったというので、四十九年の所得が五千七百万円ですね。ですから、それはちゃんと話は合うわけですよ。そうやって取得の時期なり取得の原因を公表なさっても全然支障がないじゃないですか。その分、ああやっぱり安倍さんというのはガラス張りの人なんだなあということで政治家一人信用が上がるわけ。こういうことをやったらどうかということを一々聞いているんですよ。  竹下さん、あなたは世田谷区代沢三の五の九、ここに面積三百十平米の土地と三百五十七平米のお宅を持っておられる。それが公表の中身ですが、これの取得原因と取得時期、それからその当時の値段など御記憶ございますか。
  172. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 土地が二十年前、建物が十年前ということはおおむね記憶しております。
  173. 志苫裕

    志苫裕君 質問時間が私ないのですが、これもあなたはそうここで頑張って、この間のように佐藤質問におれは答えられない、中曽根総理や藤波官房長官の言ったとおりだと言って頑張るほどのことはないんだ、これは。何でも島根の人が東京に大きい家を持っているそうだなあと言われるほどのものでもないようだね、してみると、ガラス張りにできるじゃないの。こうやって総理一つ一つ枠を広げていけば、その分だけ私は公開制度がやっぱり板張りだとか、それはうそを言っているんだろうとかいうようなことがなくなっていくという意味で、我々はこれを一つずつ詰めてきたわけで、その点いかがですか。
  174. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、とりあえず、ともかく基準をつくりまして、公表さしていただいたわけでございます。それにつきましていろいろな御議論が出てまいりまして、今の佐藤さんや志苫さんの御議論もそれに対する疑問やら、あるいは方法を教えていただいている議論でございまして、そういうことをすべて参考にして今後この基準をどういうふうにするか等も勉強して、もし必要あらば適切な改正を次の回にやっていきたい、そう思っております。
  175. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 私は一昨日からこの問題を取り上げてきて、総理、官房長官を含めて今後検討するということでございますが、やはり自主的に公開なさうたわけですから、法律で義務とか第三者が査定したとかいう問題じゃないわけですね。ですから、自主的に公開する以上何を聞いても結構です、どうぞという姿勢がなきやいかぬと思うんです。同時にまた、公開資産の中を見ても、例えば北海道や九州に土地を持っておる部分については全然入っていないわけですね、あるかないかわかりませんけれども。そういう点の名寄せをするとか、それからさらにまた評価証明をきちっとつけて出すとか、こうしないとせっかくの目的が私は薄らいでくるのじゃないかというふうな感じがするんですね。同時にまた、もし小此木さんが言うように、やっぱり法律でもないのだという前提に立つならば、私は、今我が党も出しておりますが、野党も出しておりますように、資産公開法でもつくって、そうしてこの問題に対してきちっとした継続的な考査ができるそういう真の公開というものをつくるべきだと思うんですが、総理答弁があればいただきたいと思います。
  176. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 法律をつくれという御議論もあることも知っておりますし、また政党によってはその案も用意されているところもあることも知っております。内閣といたしましては、先般とりあえず、ともかくああいう基準をつくりまして、公表に踏み切りまして、その後世論の動向や方法の適否等について国会内外におきましてもいろいろ御議論がありますから、今後改正、改良の際にいろいろ参考にさしていただきたいと思っております。また、立法の問題につきましては、それは政党間でぜひお話し合いを願えればありがたいと思っております。
  177. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 この問題いろいろございますが、また次の機会にしたいと思います。  そこで、地方財政の問題で二、三お聞きしておきたいと思うのです。  財源不足の算定問題でございますが、予算編成で地方の財源不足額がいつも不明ですね。今年度も約二兆円不足といったのが、いつの間にか一兆五千百億と、こういうことになっておりますが、これを私の方で積算してみますと、地方債と特例債で充当した中身の問題でございますが、既往の代替債の五十九年度償還が約一兆四千百六十二億ございますね。それに特会の借入地方負担利子分が三千六百三十八億、合わせると一兆七千八百億になる。こういう計算からいきますと、既往の借金返済を除外すれば地方財政は超過するということにもなる。さらに問題の地方の財政需要の算定に若干無理があるんじゃないかというような感じがする。ここら辺の問題について一体どういうお考えなのか、さらにまた地方独自の財政需要を見通した中期計画の見通しですね、これについてどういう見解を持っておるのか、三つです。
  178. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 前段につきましては少し専門的になりますので、政府委員からお答えさしていただきます。  中期見通しについては、過般衆議院でも御意見をいただきまして、大変有益な御意見だと承っておりまして、今準備をしつつございます。
  179. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) お答えいたします。  五十九年度の地方財政対策の前提となりました地方財源不足額について、その算定の基礎において歳出等が過小ではないかという御指摘かと思います。毎年度地方財政対策を立てるに当たりましては、その時点における経済見通しあるいは税制改正の内容などを踏まえて対策前の歳入の見積もりを行い、一方歳出につきましては、国の予算編成考え方と基本的には同一の基調に立ちまして各費目の積算を行っております。特に最近は国の方で徹底した歳出の見直しを行う、歳出の抑制を行うという基本方針に立っておりますので、地方財源不足の見込みを立てる場合におきましても同様の基調に立って積算を行っております。したがいまして、この点については、私どもも現実の地方財政の実態も勘案しながら最小必要限度のものは確保するという前提で積算を行っているところでございます。
  180. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 もう一つお伺いします。  地方債の補てん割合と交付税の増額割合を見ますと、これまで全部五割、五割、もしくは交付税が六割であったのが、今年度は地方債が七九・八、そうして交付税が二〇・二になっておる。この案分の根拠は一体どういうものか。さらに、元金二分の一、利子全額負担というこの特会借り入れの問題が大幅な国の負担減になっておるのじゃないか、こういう感じがします。この点どういうことなんですか。  それから、今回の特例措置は前向きであるという説明でございますが、実態を見ると、むしろ借金を地方に押しつけておると、こういうふうに思うんですが、いかがですか。
  181. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 今回の地方財政対策におきまして、地方財源不足額の補てん措置として、地方債一兆二千五十一億円、それから交付税の特例措置が三千四十九億円となっております。この点について、従来の財源対策に比べて地方債措置が多いじゃないか、交付税措置が少ないじゃないかという御指摘かと思います。この点については、従来から、財源不足が見込まれます場合には、まず投資的経費については国の方で建設国債一〇〇%発行しておる、こういうような事情もありまして、地方財政についてもまず建設地方債を可能な限り活用する、そうして残余について交付税の特例措置を講ずる、こういう方式をとっておりますので、財源不足の絶対額が非常に大きい場合、例えば昭和五十三年度あるいは昭和五十四年度のような場合にはむしろ交付税の特例措置の方がずっと大きくなっております。そして財源不足が小さくなりますと地方債措置の方が大きくなっております。これは基本的に、投資的経費についてまず建設地方債の活用をするという前提に立ちまして、その残余について交付税の特例措置を講ずる、こういう方式をとっているからでありまして、決して五十九年度交付税の措置を小さく抑え込むということをしたわけではございません。  それから、今回の特例措置の内容が地方財政にとってどのような意味を持つのかというお尋ねかと思いますが、基本的に交付税会計が十一兆五千億円もの借り入れをしておりまして、これ以上借り入れを続けるということは国にとってもまた地方財政にとっても決していいことではない。将来の地方財政考えますと、やはり借入金の依存から脱却することが必要である、このように考えて今回の措置をとったわけであります。私どもは長い目で見てこれは地方財政の健全化に貢献すると、このように考えております。  それから、今回の改正におきまして、借り入れ残高のうち約五兆八千億ほどのものを国の一般会計に引き取り、それから五兆七千億弱のものを地方交付税会計の負担として整理したわけでありますが、このように過去の借入金の帰属を明確に区分するということに関連して、元金、利子ともにそれぞれ国、地方の負担としたわけであります。この実質的な負担関係は五十八年度の場合と同様でありますが、この交付税会計の借入金を恒久的に処理するということとの関連においてそれぞれの負担関係を明確にしたわけでございまして、特に国の負担の軽減を図るという趣旨ではございません。国と地方の間の負担関係を明確にするという趣旨で今回の措置を講じたところでございます。
  182. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 であれば、これは特例措置というのは、大臣、まさに制度改正じゃないか。交付税六条三の二項をこの際発動すべきである、そういうふうに思うのですが、いかがですか。
  183. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 今回の措置は地方財政制度の見直しであるというふうに私どもは見ております。
  184. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 今回の地方財政措置につきましては、従来の借入金による補てん方式を改めまして、いわば一般会計の枠の中での特例措置方式に移行するということでございます。これにつきましては交付税法の附則、従来ですと第三条、四条、五条に関係規定があったわけでございますが、この関係規定を改めまして、今後当分の間、地方財政の健全性を図るために、必要がある場合には交付税の法定額について必要な特例措置を講ずるという旨の規定を交付税法附則第三条に置きまして、そしてその特例措置の具体的な内容については第四条において毎年度法律で定める、こういうような構成にいたしました。これは私どもは交付税法第六条の三第二項の規定による地方財政制度の改正と、このように理解しているところでございます。
  185. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 間違えました。制度改正でございます。衆議院で再三改革か改正かという議論をしたものですから間違えました。
  186. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 大蔵大臣、いかがですか。
  187. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは衆議院でも議論のあったところでございますが、私は制度の改正であるというふうに理解をしております。
  188. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 この問題はまた地行の中でも議論しますが、重大な問題だと思うのですね。  そこで次に、先ほどからお待ちいただいている人事院の総裁に人権問題でお尋ねしたいと思うのですが、総裁、あなた、国会承認に当たって異例の多数決となったわけでございますが、その感想をまずお聞きしたいと思います。
  189. 内海倫

    政府委員(内海倫君) ひとえに私の不徳のいたすところでございますので、国会で御承認をいただきました上は、今後はすべての方から御支持を受け得るように一生懸命勉強をし、努力もいたしたい、そういう気持ちでいっぱいでございます。
  190. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 人事院の勧告というのは、民間準拠をもとに行われておるわけでございますが、この勧告方法については従来どおり確認してよろしいのか。その場合に八三年の積み残しが四・四%、当然含まれると思うんですが、いかがですか。
  191. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 今後の給与勧告に関しまする調査につきましては、在来の方式を踏襲していきたいと思います。当然民間の給与との均衡を考えて調査をいたしたいと、こういうふうに思っております。  また、仰せの持ち越し云々の問題でございますが、本年、恐らくいろいろデータを集めまして、民間給与との比較対照をいたした場合、その較差の中にあるいはそういうものが当然含まれて出てくるのではなかろうか。ただ、四月の時点で民間給与を調査いたしますので、その上で数字というふうなものも明確になろうかと思いますが、今のところそういうふうな多分較差の中にあらわれてくるであろうというふうな形での御答弁を申し上げておきたいと思います。
  192. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 このような積み残しや、新たにまた抑制による積み残し、こういうのが行われることになりますと、これは人勧制度そのものが問われておる、こう私は思うのですが、いかがですか。
  193. 内海倫

    政府委員(内海倫君) お答えを申し上げます。  やはりもう先刻先生御存じのように、人事院の勧告制度というものは公務員の生活にかかわる給与というものを重視して、あるいはそれを的確に行うために勧告を行い、また勧告のための調査を行って、国会そして内閣に御報告申し上げ、それとともに勧告を申し上げるわけでございますから、もしそういうふうな制度が崩れるような条件がだんだんに熟してまいってくれば、それはまさしく非常に重要な問題であると私どもも感ずるところでございます。
  194. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 国公法六十四条では、俸給表は、生計費、民間賃金その他人事院の定める云々と、こうなっている。これに基づいて人事院が具体的に調査の工作成してきたのが今日までの経緯だと思うんですが、この規定から当然俸給表の作成権限は人事院にあると、そう思うんですが、いかがですか。
  195. 西村尚治

  196. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 いや、人事院総裁、総裁に聞いておるんだ。
  197. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 当然法律でございますから、今仰せのように、人事院でなければならないということについてはなお論議の余地があろうと思いますが、もとより俸給表というものも勧告の中の重要な要素でございますから、我々はどこまでもそれを尊重してもらわなければいけないという点は強く申し上げなければいけない。ただ、法律という問題につきましては、人事院でなければならないというものではないというふうに理解をいたしておりますが、なお、私、不勉強な点もございますので、給与局長から正確に答弁させます。
  198. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) 人事院が毎年勧告で俸給表を提出しておりますが、これは先生今おっしゃいましたように、生計費、民間賃金その他人事院の考慮する事情といたしまして、民間における職務段階別の配分状況とか、あるいは職員団体、各省その他の要望とか生計費の関係を見まして作成しております。そういう意味では私たちは公務員制度、公務員の給与制度にとって最適のものを勧告申し上げていると思っております。したがって、これの実現方についてしばしば国会初め各方面にお願いしているところでありますが、ぎりぎり人事院以外の政府機関が給与法を作成して国会に法案を提出する、それが違法であるかどうかということになりますと、これは必ずしも違法とは言えない、それを禁止する規定はどこにもないという意味で、そういうことであろうと考えております。
  199. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 いや、私は違法とかなんとかと言っておるんじゃない。国公法六十四条の趣旨からいって、この権限は人事院にあるんじゃないのかと、こう聞いておるわけです。
  200. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) 人事院は俸給表を作成しまして、これを勧告として国会及び内閣に提出しているわけでございます。公務員法の中では現在適用にはなっておりませんが、給与準則を定めました場合には、人事院は俸給表の改定が必要のある場合は遅滞なく国会及び内閣に勧告をすると、こういう規定もございまして、人事院が直接法案提出権を持っておるわけではございませんので、勧告という形で国会及び内閣に御提出している次第でございます。
  201. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 だから、この俸給表の作成権限は人事院にあるのかないのかと、こう言っているわけだ、勧告の。
  202. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) 人事院が勧告に当たりましての俸給表の作成権限は持っております。
  203. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 総理長官ね、我が党の大出議員が衆議段階質問した際にあなたは、今回の二・〇三%の八三年の賃金の水準については、これは数字は根拠はないということを認めていますね。したがって、人事院の権限を侵し、根拠のない数字で俸給表をつくるのはむちゃである、人勧制度の破壊に等しい、政府は人勧尊重をすると繰り返しているが、人勧尊重とは人事院の権限の尊重、人事院が固有の権限でつくった俸給表の尊重が前提である、こういうふうに思うんですが、いかがですか。
  204. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) お話、二つあると思うんですが、二・〇三%の数字的根拠については伺っていますし、一・八九%という勧告の差がございました、五十七年と八年で。それを二%ということにすると、その一・八九%の若干が埋まるのではないかという配慮をしたという説明も私は説明としてはできると思います。しかし、だからといってその二%というものを決めた論拠としてそれだけで説明するのは個人的には問題があると思いますと、こういう御説明をしたわけでございます。  なお、もう一つ法律の問題でございますが、これは政府が勧告を受けて、もちろん今お話しのように、人事院が俸給表を示してくださったわけですが、それをもとにして二・〇三%という結果に相なりましたが、そういった俸給表を内閣総理府でつくりまして、国会に提出をして国会の議決をいただいて成立をしたと、その過程につきましては合法的であるということを衆議院の予算委員会でも御答弁申し上げたところでございます。
  205. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 合法的とか、そういうことを私、今聞いているわけじゃない。衆議院の議事録を見ると、あなたがさっき言ったような答弁をしておる。したがって、その確認を求めると同時に、人勧の尊重を繰り返し言っておるわけだから、そういったことについての見解を求めたんですが、時間がございませんから、総理、今人事院総裁の御発言なり、さらにまた総務長官の御発言ございましたが、今年度の人事院勧告についてどういう対応をしようとしておるのか、見解を明らかにしていただきたい。
  206. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政府は、従来、人事院勧告に対しましてはこれを尊重して誠意を持って対処すると申し上げてまいりました。今後もその心構えで実行してまいりたいと思います。ただ、財政状況が非常に厳しい状況でございまして、勧告どおり政府が実行することができなかったことは大変申しわけなく遺憾に存じておる次第でございます。
  207. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  208. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。
  209. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 異例の事態が続いておりますが、人勧問題につきましても、ひとつ総理の今の誠意を持った措置をお願いしておきたいと思います。人事院総裁、結構です。  そこで、警察関係についてひとつお聞きしておきたいと思うんですが、行革の中で警察関係の定員状況を見ると、これだけが、警察庁の方は九名減っておる。しかし、地方負担の警察官の増については野放しになっておる。五十五年以降、一貫して三けたの増員が続けられておる。今年も五百五十六名の要求が出されております。この定員増の根拠、同時にまた、刑事警察、交通の定員増における分布、この五年間の各県の配分とその根拠をひとつ示していただきたい。
  210. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) 臨調の第一次答申におきまして、地方警察官につきましては配置の合理化等により厳しく増員を抑制するという御指摘をいただいております。したがいまして、警察庁におきましては、都道府県警察に対しまして極力派出所等の統廃合その他合理化を図っているところでございます。その結果、ただいまお話もちょっとございましたけれども、五十七年度におきましては前年に比べまして六百三十人、約三〇%減の千五百名、五十八年度におきましては同じく前年に比べまして三二%減の千二十人、今年度におきましては前年度に比べまして四五%減の五百五十六人という必要最小限度の増員をお願いしているわけでございます。これは全国の人口増加約八十万人に対しております。  それから犯罪の量的あるいは質的悪質化という傾向も非常に進んでいる現状でございます。したがいまして、今申し上げましたような人口急増地域の対策要員、これは外勤警察官が中心でございます。それから高速道路が新たに供用開始になりましてこれに対するパトロール強化等がどうしても必要でございます。そういう関係の交通警察官の増員というようなものがこの五百五十六名の内容になっているわけでございます。  ただいまお話がございました警察庁の関係は減っているではないかということでございますけれども、警察庁の国家公務員につきましては、第六次の定員削減計画に基づきまして、五十九年度におきましても五十六人削減予定になっております。しかし他方、増員要素として四十七人が認められまして、ネットでは九人の減ということになっているわけでございます。しかし、これらの削減につきましては、一般事務部門の合理化というようなことを極力推進いたしまして、第一線の警察業務に支障を来さないように努めているところでございます。  それから都道府県警察におきましても、ただいま申し上げましたような警察官については最小限度の増員をお願いしているところでございますが、それ以外の一般事務職員、これにつきましては毎年減員を図ってきているところでございます。五十九年度におきましても、地方財政計画上百四十八名の純減が予定されているところでございます。この場合も第一線の警察実務に直接支障を来さないよう極力事務の合理化等を図りまして、そういう削減計画を達成しようということで努めているところでございます。
  211. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 いや、刑事警察、交通の分布並びにこの五年間の各県配分とその根拠。
  212. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) 過去五年間の各県に対する配分状況でございますけれども、これは犯罪情勢あるいは交通事故の発生状況、人口の増加、そういう点を勘案いたしまして配分をいたしているところでございます。  それから最近五年間におきましては、今申し上げましたような観点から外勤警察官の増員が中心でございます。それから一部刑事警察官の増員、それから高速道路交通警察隊を中心にいたします交通関係の増員等になっております。
  213. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 それでは実態はわからないわけだけれども、時間がございませんから、ひとつその分布を出してくれますか。
  214. 太田壽郎

    政府委員(太田壽郎君) 後で提出さしていただきます。
  215. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 それでは、最後に一つだけお聞きしておきたいと思いますが、厚生省、昨年十二月に厚生省の局長名で全国一斉にフグを禁止する、こういう通達が出されました。これはフグ料理の中で特に肝を使ってはならないというところにねらいがあるようでございますが、私、食品衛生法、また附則等を見ましても、それを禁止できる通達の根拠というのが極めて不鮮明です。ですから、これまでは各都道府県の中では条例をつくって禁止をした県も多数ございます。しかし、広島、大分はその条例をつくらずに、肝を種としたフグ料理が有名で全国的に栄えてきたところなんです。そういう経緯等を考えてみますと、条例を飛び越えて、まあ条例というか、法令を飛び越えて通達が出されていいものなのかどうなのか。この点について大変私も疑問を持っているわけでございますが、この点に対する御見解をいただきたいと思います。
  216. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) フグの問題でございますが、実はフグの食中毒というのが大変多うございまして、最近十年間で約二百人ぐらいの人がフグ中毒で死亡しておるという現状でございます。その大半は、肝臓ないしは卵巣を食べることによって起こっておるということでございます。そこで、このフグの有毒部位の規制でございますけれども、食品衛生法第四条に有毒な食品について、あるいは健康を害するおそれのある食品について、販売、製造、調理等々をしてはならないと、そういう規定がございまして、フグのどの部分が有毒であるかということが今まで必ずしも明確に私ども示しておりませんで、各県でばらばらであったわけでございます。そこで、今回、食品衛生法四条で規定をしておるものの解釈通知といたしまして、昨年十二月、局長通知を出したわけでございます。
  217. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 それはわかるんです。この四条の二の中で、今あなたが前半読んだけれども、ただし、人の健康を損なう憂いかない場合は厚生大臣が定める場合においてこの限りでないと、こうなっておる。したがって、各県では、これではフグ禁止ができないということで条例化措置をとったんでしょう。とった県もあるわけです。大分の場合には条例化措置はとっていない。したがって、これを一挙に飛び越えた通達を、解釈で全面禁止ということについては私は承服できかねる。いかがですか。
  218. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 先ほども申し上げましたように、食品衛生法によりまして、有毒なあるいは健康に害のあるおそれのある食品を販売してはならないという規制がかかっておるわけでございます。その有害な部分、あるいは健康を害するおそれがあるというのは、フグの場合にどういうものであるかということを解釈通知として出したわけでございます。ちなみに大分県の場合でございますが、大分県も毎年シーズン初めに、これまでフグの肝臓等については販売してはならないということを衛生部長名で業界に通達を毎年いたしております。
  219. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 それは違う。それは注意事項だよ。大臣、ひとつ。
  220. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 私も大臣就任のときに、これは前の大臣の時代に決断したことですが、報告を聞きまして、フグの肝、実は私も食べたことありませんので、ことしあたり広島に行こうか、大分に行こうかと考えておりまして、これはどうかなと思って議論をしてみましたら、やはり人間の生命を守る食品衛生をつかさどる厚生省としては、過去の経験にちなんで、食中毒でフグ中毒が一番多いわけですから、やはりこのような処置をとらざるを得ないという判断でございました。これで私もフグの肝を一生食べられなくなるわけでありますけれども、これは生命の安全というのが食品行政を預かる私どもの前提でございますので、御了承を賜りたいと存じます。
  221. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 もう一つ。この解釈通達には罰則を伴うのですか。
  222. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 先ほども申し上げましたように、今回の通知は解釈通知で。ございまして、したがって、もともと食品衛生法四条の違反になると。四条の違反になるフグの場合はどういうものであるかという解釈通知でございますから、食品衛生法違反として必要な場合には行政処分をすることは可能だと思っております。
  223. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 時間がございませんからこの辺で質問はやめますが、私は最後に一言だけ言っておきたいと思います。  一昨日からいろいろ問題になりました資産公開法ですね。これはもう大変今政治状況の厳しい中で一つ国民の強いものが私はあると思うんですね。ですから総理もこの問題について公開に踏み切ったと思うんです。せっかく踏み切った以上は、やはり国民期待にこたえる内容でなければならぬと私は思うので、いたずらに覆い隠すとか、こういうような姿勢では、何のための公開法がと、こういうことになると思いますから、その点はひとつぜひ、さらにひとつ検討を深めて期待にこたえるような、そういう措置をお願いして質問を終わりたいと思います。(拍手)
  224. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で佐藤君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  225. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、糸久八重子君の総括質疑を行います。糸久君。
  226. 糸久八重子

    糸久八重子君 私は、今日、政治的にも社会的にも大変大きな問題となっております婦人問題に絞りまして、総理並びに関係大臣に質問をさせていただきたいと存じます。  質問に入ります前に、個人的な見解で結構でございますから総理総理のお持ちになっていらっしゃいます女性観についてお伺いしたいと存じます。
  227. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 毛沢東は、女性は天の半分を支えていると、そういうことを言ったと記憶しておりますが、私は、女性はますます社会的にも、また個人的にも重要な役割を演じてきつつあり、またそうあってほしいと願っております。しかし、女性は男性と違いまして、生理的にも機能的にも非常にデリケートな面があるだろうと思います。そういう点につきましては男性もあるいは社会もよく理解をして、そして女性が十分に、家庭におきましてもあるいは社会におきましても十分働けるような環境をつくってあげるということが今日においては大事であると思っております。
  228. 糸久八重子

    糸久八重子君 外務大臣、いかがでございますか。
  229. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはり女性は我々にとりましても非常に大事な存在、これは人間社会において大事な存在でありますし、今総理が言われましたように、まさに地球で人間が生存している中で半分は女性が占めておるわけでありますし、そういう意味においても、社会的その他あらゆる面におきまして、やはり男性とともに平等に扱われなければならない。あるいは歴史的に、いろいろな今日までの男女をめぐる歴史的ないろいろの長い道のりはあったわけでありますけれども、しかし、やはり今後は地球の中で平等な存在として扱っていかなければならない。あらゆる面においてそういうふうな時代に入っているのじゃないか、そういうことを感じております。
  230. 糸久八重子

    糸久八重子君 労働大臣、お願いしたいのですが。
  231. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 非常に理想的に言えば、女性といってもいろいろありますけれども、「永遠の女性我を引きていかしむ」という言葉を高等学校のときに聞きましたが、かくあってほしいものだと念願をいたしております。
  232. 糸久八重子

    糸久八重子君 お三人方たち、ともに女性に対して非常に御理解を持っていらっしゃるようにお伺いいたしましたので、これからの質問の内容の中でもきっとすばらしい回答が返ってくるのではないかと期待したいと思います。  さて、総理は二月六日の施政方針演説の中で、婦人の地位向上に努力をするとおっしゃっておられます。ほんの一、二行ではありますけれども施政演説の中に婦人問題を一項加えられたことは私は評価をいたしますけれども、この婦人の地位向上を施政方針一つに挙げられた理由をお尋ねしたいのです。
  233. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前からそういう議論もあり、また婦人の運動家の皆さんが女権の拡張等につきまして苦労してこられたのでございますが、最近の情勢等を見ますと、御婦人で働きたいという人が非常にふえてきております。最近の失業統計を見ますと、失業という部分がかなりふえておるのは、今までは働きに出ることを考えておられなかった方々が働きたいと、そういって希望を持っておるが、現実的には適当な職がないというのがふえてきでおる。別に失業したというわけじゃなくて、働く意思を持っているが適切な職場がないというのが失業の中に入れられてきておる、そういうわけでふえたのだということを私聞いております。これは当然考えられることであります。そういうさまざまな問題が出てきておりまして、女性問題というものを今までのような目で見るのではいけない時代になりつつある。既に欧米におきましてはこういう経験をみんなしておるのでしょうが、日本は新しいそういう経験をし始めたというときであるだろうと思うのです。そういう意味において特別に注意をしていく必要がある。それから婦人差別撤廃条約の批准を六十年に行おうと考えております。そういう点からいたしましても、その準備行為をやる必要もございまして、私はその推進の本部長でございますから、特にそういう意欲をつけ加えさしていただいたわけであります。
  234. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、そういう現状認識に基づいて中曽根内閣が進めようとする婦人政策はどういうものがあるか、具体的にお話しいただけますか。
  235. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり一番基本の点は、婦人の権利あるいは社会的地位というものを正当に認め、そしてこれは政府におきましても民間におきましてもそういう環境をつくっていくということが大事ではないかと思います。  その一つのやり方といたしまして、婦人の経済的自立、経済的保障という問題が現実問題として大事だと思うのです。幾ら説教しても経済的に保障がないという場合にはどうしても男性に隷属したり、あるいは卑屈な存在になってまいります。そういう面においていろいろ考える必要がある。既に相続法を前に改正いたしまして未亡人に対する割り当てを非常にふやしたりいたしました。そういうような法的な面におきましても検討すべき点が今後もあるのではないかとも思いますし、あるいは社会的な進出や社会的貢献の評価の問題もあると思うのです。  私は、これは内部的な問題でありますが、栄典制度あるいは褒章制度等におきましても婦人の評価というのはいままで低かったのではないか。今、婦人をできるだけ雇用するように、また正当な地位につけて給料その他におきましても合理的な給与制度にするようにという問題がございますけれども、しかし貢献に関する評価において、日本の今までの目というものは少し曇っていたのではないかと、そういうことを考えまして、今、内閣等にも命じまして、春秋のいろいろな褒章、栄典の場合等についても御婦人の立派な人をうんと見つけ出して、そして今までの男性と女性との比率をもう少し考え直したらどうかということも今言っておるのです。例えば看護婦さんであるとかあるいは学校の先生であるとか、あるいは保母さんであるとか、いろいろな働きをしていらっしゃる方も多うございますが、そういう割合に目に見えない下積みの方々を初め、あるいはそれ以外の方々におきましても新しい目で見る必要があるということも言っておるのであります。
  236. 糸久八重子

    糸久八重子君 確かに、時代の要求に従って働く婦人が非常に多なってきているわけですが、働く婦人は実に多くの問題を抱えているわけです。職場では一人の一人前の労働者として男性と一緒に働いて、家庭に帰りますと家事や育児がやはり女性にかかってくる。さらには子供の教育もこれは母親任せであり、場合によっては老人の介護までもが婦人の背中にかかってくる。このような働く婦人の置かれている現状につきまして、総理はどう思われますか。
  237. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 社会の変化に伴いまして婦人の活動領域が広くなる、当然のことです。また、婦人の知的要求も非常に強まってくる、こういうさなかに今あると思います。その上に今、日本は教育熱心でございますから、子供たちを塾にやるとそのお金がどうしても必要である、あるいは自分も勉強したい、それでいろいろなカルチャーセンターやその他に入りたい、そういう方々もございましょう。そういうような面から経済的にも働きたいという方が出てまいります。そうなると子供をどうするかという問題が出てまいりまして、この辺は男性、女性おのおのが自分の人生観なり家庭観というものを固めて、そしてかかっていく問題でありましょう。しかし、そういう点においてその認識あるいは自覚というのが果たして十分徹底して行われているかどうか、これは教育の問題、社会問題も兼ねて我々が考えなければならぬ点でもあります。そういうさまざまな面に つきまして、新しい問題が提起されておるものでございますから、注意深く我々は政策を練っていかなければならぬと思っておる状態であります。
  238. 糸久八重子

    糸久八重子君 日本には古くから、男は社会、女は家庭という性別役割分業論が根強くありますけれども、このことについてはどうお考えですか。
  239. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは日本だけではなく、外国にもそういう考えもあります。特に東洋社会あるいはアラブ、中近東の社会、その他の社会においてはそういう面が強いです。アメリカあたりの非常に進んだ社会におきましても、女性は家庭で家庭を守ってくれたらどうかという思想がやはり一部にはまた強く今出てきつつあります。これは文明がいろいろ変遷していく過程において、女性の機能、男性の機能というものが再点検されつつあるというときに入ってきておると思うのです。  私は、古いと言われるかもしれませんが、やはり女性はまず母として一〇〇%立派な母になっていただきたい、それから妻として、これは一〇〇%とは言いませんけれども、男性の横暴になりますから、もういい妻になっていただきたい、それから社会的にも貢献できる婦人になっていただきたい、そう考えておりますが、やはり古いと言われるかもしれませんが、母としてまず一〇〇%立派な母になっていただきたいという希望を持っております。
  240. 糸久八重子

    糸久八重子君 一〇〇%いい母親となるということはわかるのですけれども、いい妻ということはどういうことですか。
  241. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いい妻といいますと、私は夫の方ですから、妻に要求し過ぎて少し男性横暴ではないかという批判を受けると思いましたから、一〇〇%要求するというのはちょっと申しわけないと思っていい妻と、そういうふうに申し上げておるので、それほど母としての女性というものを重視している、そういう意味でございます。
  242. 糸久八重子

    糸久八重子君 外務大臣にお伺いしたいと思います。  差別撤廃条約の基本理念をどう理解していらっしゃいますか。
  243. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 婦人が男性とともに、経済的にもあるいは社会的にも文化的にも、あらゆる面におきまして平等でなければならないと、こういうのが婦人差別撤廃条約の基本的な理念ではないかと思います。
  244. 糸久八重子

    糸久八重子君 外務大臣、条約の前文に見られる特色をどのように把握していらっしゃいますか。
  245. 山田中正

    政府委員山田中正君) 婦人差別撤廃条約の前文は、女子に対する差別が人間の尊厳の尊重に違反すること、したがいまして、あらゆる分野におきまして婦人が男子と同等の条件で最大限に参加することを必要としていること、また、家族の福祉、社会の発展に対する女子の大きな貢献、母性の社会的重要性に留意いたしまして、社会及び家庭における男女間の完全な平等が必要であることをうたっておるところに特色があると思います。この前文に盛られております理念は、国際的世論を集大成いたしました極めて意義深いものと認識いたしております。
  246. 糸久八重子

    糸久八重子君 今日、我が国の婦人労働者の数は、総理府の労働力調査によりますと、一九八二年現在で一千四百十八万人、総労働者に占める割合は三四・六%で、産業界にとりましては今や欠くことのできない労働力となっているわけですけれども、そこで労働大臣、労働省でしょうか、お伺いいたしますけれども、女性労働者の現状についてお伺いしたいのです。  まず、就職の募集の際に女性を募集しない企業がどのくらいありますか。また、採用において男子のみ採用している企業、女子のみ採用している企業、男女とも採用している企業、男女とも採用している企業で男女の採用条件が異なるものの割合はどのくらいあるか、お示しいただきたいんです。
  247. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) お答え申し上げます。  労働省といたしましては、雇用管理に関する調査を実施して、ただいま御質問のような点につきましては把握に努めているところでございますが、五十六年に実施した調査によりますと、高卒者を募集した企業のうち、男子のみ公募した企業は二二・四%、女子のみ公募した企業は一五・八%、男女とも公募した企業は六一・八%でございます。これが四年制大卒を公募した企業となりますと若干趣が変わりまして、男子のみ公募した企業は七三%、女子のみ公募した企業は一・〇%、男女とも公募した企業が二六%となるわけでございます。  また、採用実績は、新規学卒者につきましては、高卒者を採用した企業のうち、男子のみ採用した企業は二四・五%、女子のみ採用した企業は二一・五%、男女とも採用した企業は五四%でございます。四年制大卒を採用した企業のうち、男子のみ採用したのは七〇・九%、女子のみ採用した企業は五・〇%、男女ともに採用した企業は二四・一%でございます。  もう一点、募集採用を行う企業のうち、採用条件が男女どういうふうに違うかという御質問であったかと思いますが、採用条件は男女同じであるという企業の割合は、高卒では七五・七%、大卒では六二・二%でございます。
  248. 糸久八重子

    糸久八重子君 引き続きましてお伺いしたいんですけれども、賃金面におきまして男性と女性の賃金格差について、それから昇進についてですけれども、女子に昇進の機会のない企業、それから女性の役職への機会のある企業の中で、細かく言うと何ですから、部長相当まで昇進させる企業はどのくらいありますか。それから男女別定年制を決めている企業がどのくらいありますか。
  249. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) まず、賃金格差でございますが、全体を平均いたしまして、すべての男性の賃金の平均を一〇〇といたしますと、女性のそれは五二になるわけでございます。それから部長相当にまで昇格をさせる企業がどの程度あるかということでございますが、昇格をさせる企業はかなりございますが、部長ともなりますと非常に少なくなりまして、部長相当より上位の役職にも昇格させるという企業は一四・三%、これは先ほどの資料と同様の調査からでございます。
  250. 糸久八重子

    糸久八重子君 定年制を決めている企業というのは。
  251. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 失礼いたしました。  定年制につきましては、定めている企業が八七・九%でございますが、その中で、一律に定めているという企業も多いわけでございますが、女子の定年と男子の定年とが違うという企業もかなりございまして、男女別それぞれ一律にというのが二三・一%ございます。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕
  252. 糸久八重子

    糸久八重子君 賃金問題、賃金の格差はまだお答えいただいていない。
  253. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 最初に……。
  254. 糸久八重子

    糸久八重子君 失礼いたしました。  ただいまの説明でも明らかなように、その雇用実態は、募集、採用から始まりまして定年退職に至るまで、男性に比べて著しく差別をされた状況下に置かれているわけですけれども総理、この状況をどう思われますか。
  255. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはやはり歴史と社会的な固有の事情等が反映されておりまして、一朝一夕にしてなかなかすぐ改まることが難しいということを示していあと思います。できるだけ憲法の精神に基づきまして、男女平等、両方の基本的人権の尊重という精神で物事を運営していく必要があるように思います。
  256. 糸久八重子

    糸久八重子君 総理、働く婦人は入り口の募集の部分から大きな差別をされているわけですけれども、このことは既に調印いたしました着別撤廃条約の精神に反しているとはお思いになりませんか。
  257. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、ある意味におきましては能力の問題というものもあるだろうと思います。男性に適している仕事、女性に適している仕事もありますし、それからその本人が持っておる能力という面から見る面もありましょうし、それから割合に女性の場合は結婚するというときに家庭へ引っ込んでしまう場合がある。そういう面から採用する側からすると、非常に不安定である、四十、五十になるまで一緒に会社でやってくれるかという心配があるという面もあるのだろうと思います。そういういろんな問題が包蔵されていて今のような段階になっているのだろうと思いまして、必ずしも全部不当であるとばかりは言えないと思います。しかし、やはり憲法やあるいはそのほかの精神に基づいて、できるだけ女性が十分な機能を発揮できるように処置してあげるということが必要ではないかと思います。
  258. 糸久八重子

    糸久八重子君 雇用平等法等の法案の整備をしていらっしゃるということを先ほど申したようですけれども、差別撤廃条約批准に向けましてそのような条件整備をするということがどういう目的を持っているのか、どういうふうに認識なさいますか。
  259. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 婦人差別撤廃条約に入るという場合に、単に条約に入ったというだけでは意味がないので、入れるだけの社会的諸条件を整備するということが先決問題である、そういう考えに基づいて今のような諸般の対策がとられていると思います。
  260. 糸久八重子

    糸久八重子君 差別撤廃条約の批准をするためには、国籍の問題とか教育の問題とか、それから雇用の問題で法案の整備が迫られているわけですけれども、まずその雇用平等法についてお伺いしたいと思います。  総理並びに労働大臣は今国会に法案提出を明らかにしているわけですけれども、そのタイムリミットはいつですか。
  261. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) この雇用の機会均等、平等法というものを五十三年ごろから勉強を始めまして、審議会でも取り上げて、そうして五十五年に署名をいたしましたので、五十七年ごろから本格的に勉強を始めております。それで現在に至っておる。そこで、審議会の審議状況を見ますと、今、公益委員からたたき台が出まして、そしてこのたたき台を中心にして鋭意審議を詰めておるというところでありまして、なるべく早く結論もいただいて、そして今度私ども責任を持って今国会にもなるべく早く提出をいたしたい、こう心待ちに審議の結論を待っておるというところでございます。
  262. 糸久八重子

    糸久八重子君 現行労働基準法以外に、今日、男女雇用平等法という単独の特別立法がなぜ必要なのでしょうか。
  263. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 労働基準法には賃金に関しましては規定がございますが、賃金以外の労働条件その他については労働基準法の中には規定がございません。一方、差別撤廃条約の方は、雇用の場に入る前の段階から既に差別をなくすという意味のことが書かれているわけでございまして、これでは、労働基準法の現在の規定では満足することができないというふうに考えるわけでございます。
  264. 糸久八重子

    糸久八重子君 雇用平等法策定の基本的な考え方についてはいかがですか。基本的な考え方
  265. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先ほど大臣がお答え申し上げましたように、雇用の場での男女の機会均等、待遇の平等を確保するということにつきましては、かなり時間をかけて討議をしていただいているわけでございますが、この審議会に審議をお願いするに当たりまして、基本的な考え方として、現在問題になっております婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約が要請をいたしております内容を満たすことができるようにということ、それから、この審議会の中で審議を深めるために、男女平等問題の専門家の方にお願いをいたしまして、基本的な考え方というものをまとめていただいたものがございます。これが昭和五十七年の五月に報告を受けておりますので、この中に盛られております基本的な考え方と、そしてこの条約との両方を基礎にして、雇用の機会均等、待遇の平等を確保するための法制を策定いたすべく準備をしているわけでございます。
  266. 糸久八重子

    糸久八重子君 婦人問題審議会婦人労働部会での進捗状況はどうなっておりますか。
  267. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 昨年の暮れに中間的な審議状況を発表いたしましたので、御承知いただいているかと存じますが、労使の見解がかなり離れておりました。そのために、ことしになりましてから公益委員の方々の試案というものを一応のたたき台としてまとめていただきまして、それを二月二十日に発表したところでございます。現在それを中心にいたしまして、これに労使のそれぞれからどの程度歩み寄っていただけるかということで詰めを行っているところでございます。
  268. 糸久八重子

    糸久八重子君 二月二十日に提示されましたたたき台の内容の概略をお示しください。
  269. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) このたたき台は、それ以前に示されました労使の見解の中でそれぞれ異なった点があったわけでございますが、法制を整備して、つまり法律という形でこの問題を進めるという点と、それから労働基準法にございます女子保護の規定につきましては、母性保護の部分を除いては見直しを行う、この点については既に見解が一致しているところでございますが、その後さらに法律の雇用の機会均等の面につきましては、その範囲をどの程度とするか、また規制の強さをどの程度とするか、またそれを効力あらしめるための方法と申しますか、救済手段のようなものをどうするかという点について、それぞれ見解を明らかにされております。また、労働基準法の保護規定につきましては、労働時間、深夜業等女子の保護につきましては、大きく工業的業種とそれ以外の業種とに分けて、工業的業種については原則としてただいまの規制を残し、それ以外については廃止をする。その他生理休暇、産前産後の休暇等につきましても、具体的な見解が示されております。
  270. 糸久八重子

    糸久八重子君 入り口での募集、採用の部分をたたき台では当面努力規定として、そのかわりに労働大臣が事業主に対する指針をつくり、それをもとに行政指導をするということを提案しているわけですけれども、(3)のイのところですが、これは具体的な内容はどういうことを意味しているのでしょうか。
  271. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 採用、募集のところを努力義務、入って以降は強行規定というのがたたき台に示された考え方でございます。そこで、努力義務規定の場合には、それだけでは十分に効果が上がりにくいのではないかという考えに基づきまして、さらに具体的になくしていくべき差別というものはどういうことかということを、内容を明らかにして、それに基づいた行政指導をするということによって効果をあらしめようとしたものだというふうに理解をいたしております。
  272. 糸久八重子

    糸久八重子君 企業側が努力をするという恩恵でしかない規定では、女性の職業差別の中で最も深刻な入り口の差別をさらに助長し、固定することにはなりませんか。
  273. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 募集、採用につきましては、現行の法制では何の規制もないわけでございます。そこで、このたたき台のように努力義務規定が課せられ、またその内容につきまして指針によってさらに具体化するということになりますと、現在ある募集、採用における男女の異なった取り扱いというものは、はるかに条約の要請しているような平等の方向に向かうものというふうに理解をいたします。
  274. 糸久八重子

    糸久八重子君 例えば、商社や銀行などでは採用の段階で女子を補助的業務、そして男子を基幹職務と最初から分けて採用されているのが実態なわけです。努力を怠ったかどうかという判定は現在よりも困難となって、そして裁判による救済は難しくなるのではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  275. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先ほども申し上げましたように、現在は採用あるいは募集の段階では何の規制もないわけでございますから、これに努力義務規定が加わり、そしてその内容が指針によって明らかにされるということになれば、そういう 点でははるかに前進が期待されると存じます。
  276. 糸久八重子

    糸久八重子君 努力義務というだけでは、これまでの男女の別建て採用をさらに固定化するだけでなくて、むしろ差別問題が起こったときに、使用者が努力したか、それともしなかったかということだけが争点になってしまって、性別によって差別してはならないという男女平等の原則がなおざりにされる可能性を残すのではないかと非常に心配になるわけです。この点についてはどうですか。
  277. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 今までは確かに差別が先ほどの質問答弁の中でもございましたが、しかし今度男女の機会均等法、その結果の平等、待遇の平等というような法律が制定をされますと、法律でございますから、これはもう今までの野放し状態、社会慣行の状態、企業の効率性に任されておりました分野が今度は国民の名において努力をしなければならぬということになるわけでありまして、これはもう大変大きな転換になるということであります。まあしかし、現実はそれはなかなか実情に合わして一歩一歩と進んでいかなければならぬでありましょうけれども、行政指導というのは、糸久さんも御存じのように、農協、総評、経団連、行政指導、世界にも有名な英語になって日本語が通用するくらいでありまするから、日本の行政指導は相当なものであろう、こう思っております。  それで、法ができますと、今まではもう女性を採りつけていないわけで、管理職にしたこともない企業でありますから、急にというと面食らって、努力したしたとか言って、そして逃げるのじゃないかとおっしゃるかもしれませんけれども、やっぱりそういう国民の名において努力規定がかかるといえば、今までとはこれは違う。そこで、女性の中でも優秀な意欲のある人を入れて活力を発揮させる方が企業にとってもプラスになる。そういう展開を私ども期待し、また指導もしていきたい、こう思っておるわけです。とにかく、今までの経過が余り女性を使わなかったということで、企業もちょっと面食らって、急に原理転換あるいは面食らう点もありまして、そして今まではすぐ女性の方は子供ができたり結婚するとやめる人が多かったものですから、今までの例ですが、これからは意欲のある人がどんどんあなたのように出ておいでになると思います。それから、子育て済んだらまた働きたいという人もどんどん出てこられる。これは最近の情勢でありますけれども、そういう新しい時代も企業は非常に敏感に受けとめて、そこへ行政指導をすれば相当な結果が出るのではないか、そう私ども期待しております。
  278. 糸久八重子

    糸久八重子君 努力を義務づけるだけの勤労婦人福祉法というのがあるわけですけれども、やはりこれは行政指導の対象になっているわけですが、これがよい例だと思うんですね。やはり努力義務だけではだめだという例が今までにあるわけです。  それで、今まで権利を確保していくには訴訟を起こしていたわけですけれども、それにはたくさんの時間と費用を要しているわけですね。労働問題訴訟で最も長くかかった判例と、それから短期間で決着のついた例、そしてなお、今までに賃金や定年等でどのくらいの訴訟が行われているか教えていただきたいのです。
  279. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) これまでの裁判例でございますが、一番長くかかった例。短かった例というのはちょっと手元に資料がございませんので、長くかかった例というのは最高裁まで行った例がございます。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕 これは、一審から三審まであるわけでございますから長くかかったのかと思われますが、昭和四十四年たしか訴えが提起されて、一審が四十八年、二審が五十四年、最高裁で決着がついたのが五十六年であったと記憶いたしております。まあ長いということになるかと思いますが、あと、一審で決着がついたもの、二審で決着がついたもの、それぞれあると存じますが、男女の雇用における差別の問題で最高裁まで行ったのは、あるいはこれだけではなかったかと記憶いたしております。その点につきましては、あるいは間違っていたらお許しいただきたいと思いますが、現在持っている資料ではそうなっております。  それから、どういうものがあるかというお尋ねでございますが、これもすべてというわけではございませんので、代表的なものを申し上げますと、まず最初昭和四十一年に住友セメント事件というのがございまして、これは結婚を理由とする解雇というものについて争った例でございましたが、これがこのような種類の判決としては最初のものではなかったかと記憶いたしております。その後、男女差別定年、若年定年、差別定年というようなものが相次ぎまして、その後、賃金における差別を争った秋田相互事件というようなものもございます。同種の判決が出まして、それに促されてその後の訴えも引き続き出てきたというように承知をいたしております。
  280. 糸久八重子

    糸久八重子君 労働大臣、今の御説明にもありましたとおり、とにかく裁判で争いますと、十年も十二年もかかるわけですね。そう長くかかりますと、それに伴って費用もかさんでしまうわけですから、結局いままでもなくさんの泣き寝入りがあったんじゃないかというふうに思うわけです。だから、努力規定でなくて罰則規定でなければいけないと私は思うんです。雇用平等法をしり抜けや骨抜きにさせないためにはやはり懲役や罰金を伴う強制法にすべきだと思うのですけれども、いかがですか。
  281. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 先ほども一般的に申し上げましたけれども、日本の企業には日本的な相当すぐれたと思われる特色がございまして、例えば終身雇用、外国のように景気が悪くなればすぐ首を切るとかそんなことはしない。我慢して社員を大切に守っていく、しかし景気がよくなればまたそれだけ働いていただくというような終身雇用制とか年功序列とかこういうのがございまして、今、原則を直ちに男女平等に変えたといいましても、雇用の方ではちょっと、これはまあ女性の活力は利用せにゃいかぬなと、なるほどプリンシプルが変わったと、観念的にそう思いましても、実際の経験を積み重ねていないものですから。また就職しても、よさそうだと思って採ったけれども、すぐやめてしまわれるのでは、会社の経営、事業計画、人事管理が立たぬとかという、そういう心配もあるのではないでしょうか。そういうような意味で、急に強行規定に、罰則をつけたりするというようなことになりますと、かえってその辺がうまくいかないのではないでしょうか。  日本の労使関係というものは非常に今世界的にも評価せられておりまするので、そういう点なども私はこれは当分緩やかな、まあ成熟してしまえば、それはあなたのおっしゃるようなこともまた検討することも必要ではないかとも思いますけれども、現段階ではやっぱり努力規定にしておいて、そして企業がこの法律のもとに一生懸命努力をしていく。そして細かい労使関係は、これはもう企業は終身雇用、年功序列という意気込みでございますので、そこに労使関係の細かい点は譲って、私どもは原則論で行政指導をやっても成果は上がるのではなかろうか。徐々に徐々に、スロー・バット・ステディーかもしれませんけれども、そういう実情に合わして一歩一歩進む方が結果としては私は成功するのではなかろうかと、そういう気持ちでおります。
  282. 糸久八重子

    糸久八重子君 労働大臣、先ほど総理答弁の中にもありましたけれども、やっぱり新しい時代の流れとして婦人労働問題をとらえていかなければならないとおっしゃっておられたようですから、ここで罰則規定も伴った男女雇用平等法をつくるということが、やはりこれからの日本の働く者たちにとっての新しい大きな流れになってくるのじゃないかと思うんですね。そういう意味では、やはり内容については篤と、そう消極的におなりにならないで、内容を十分検討をしていただきたいと、そう要望したいわけでございます。  次に、保護規定の改廃についてお伺いしたいと思います。  日本の国は非常に経済大国になっていると言われていますけれども、男子の労働基準法の地位、特に労働時間とか休日とかそれから休暇関係は、発展途上国も賛成したILOの水準以下であるわけですが、先進諸国の労働時間と比較して日本の国の労働時間はどうなっておりますか。
  283. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 労働時間につきまして男女別に欧米諸国との間で条件をそろえて比較するのは非常に統計資料的に制約がございまして難しいのでございますが、各国の資料によりまして、製造業の生産労働者について一九八二年の男女別の一週間の過労働時間を見てみますと、日本が三十人以上規模事業所の実労働時間で男子が四十二・二時間、女子が三十八・一時間でございます。西ドイツが、これは十人以上の規模の事業所の支払い労働時間、これは難しい言葉でございますが、年次有給休暇なんかを与えた場合に年休を与えた分も入るわけでございますが、支払い労働時間で男子四十一・一時間、女子三十九・一時間。それからイギリスが、やはり西ドイツと同じで十人以上の規模の事業所のフル労働週の実労働時間、これは祝祭日が入らないフルの労働時間、ウイークの週間でございますが、フル労働週の労働時間で男子が四十二・○、女子が三十七・八時間でございます。なお、アメリカ、フランスについては男女別のデータがいま把握してございませんので御了承願いたいと思います。
  284. 糸久八重子

    糸久八重子君 私の調べました年間の労働時間によりますと、これは男子の場合だけなんですが、日本は二千百四十七時間で、一番少ないのが西ドイツの千七百六時間というデータがあるわけです。これから見ますと、日本人は非常に世界一長い労働時間、長い時間働いているということがわかるわけですけれども、働き人間とかエコノミックアニマルとかと言われているのがこのゆえんだろうと思うんですけれども、日本におけるこの長時間労働の要因は何であるのか。その理由は何でしょう。
  285. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 日本の場合、今、先生おっしゃったのは男女込みの労働時間の比較だと思いますが、その中で日本の労働時間がやや長目であるというのは、欧米諸国と比べまして第一は週休二日制の普及状況が若干遅いという違い、それから欧米先進国のように夏にまとめて長期の年次有給休暇をとる慣習がないというようなこと。それから第二番目には、わが国では終身雇用慣行から、景気の好不況について生産調整を、終身雇用制なものですから雇用によって調整をいたしまして所定外労働で行う傾向があるという点、それで所定外労働時間が多少長くなるというような点。それから第三は、欠勤がほとんどなくて諸外国に比べて良好な出勤率を維持しているというような点などがございまして現在のような状況になっておると思います。
  286. 糸久八重子

    糸久八重子君 そこで、日本の年次有給休暇の日数と、また休暇の消化率はどうなっておりますか。諸外国の年次有給休暇についてはどうなっておりますか。ちょっと教えていただきたいのです。
  287. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 日本の年休の消化率は、五十七年は五七・六%でございます。それから取得日数につきまして数字がございますが、日本は年休が九・六日、それからアメリカが十九・五日、イギリスが二十二・五日、西ドイツは三十・二日、フランスが二十五・〇日ということでございますが、消化率については外国のデータはちょっと手元にございません。
  288. 糸久八重子

    糸久八重子君 日本の長時間労働の要因の中に、ちょっと私が聞き忘れたのかどうかわからないのですけれども、時間外労働というのが非常に多いわけですよね。だから長時間労働になると思うのですけれども、その長時間労働について、まあ労働時間と言っていいでしょうね、ILOや、それから主要国での女子保護規定については、労働時間等についてどのぐらいになっているか、概略で結構ですから教えていただきたいと思いますし、また超勤労働に対する割り増し率はどのくらいになっておりますか。
  289. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) お答えいたします。  主要国における女子保護規定のうちで、労働時間について主なものを見ますと、アメリカでは男女の平等を確保するために女子保護規定は州法でいろいろとございましたが、これを撤廃しておりますのでございません。イギリスでは工場労働者について労働時間一日九時間、または一週四十八時間を超えてはならない、日曜日の就業を禁止する。深夜業についても二十時から七時までの就業を禁止しております。西ドイツでは、ブルーカラーの女子労働者につきまして二十時から六時までの深夜業を禁止。フランスでは、休日、祝祭日の労働の禁止、工場等における二十二時から五時までの時間帯を含む継続十一時間の就業の禁止をしております。  第二番目の御質問は、主要国において時間外労働の割り増し率ということかと存じますのでお答えをいたしますと、アメリカでは週四十時間を超える労働については五〇%以上の率による割り増し。西ドイツでは一日八時間を超える労働について二五%の割り増し。フランスでは一週三十九時間を超える労働について、八時間を上回る部分までは二五%増、それ以上の部分については五〇%増の割り増しを払わなければならないというふうに規定されております。
  290. 糸久八重子

    糸久八重子君 いまの産業界の中では、大変マイクロエレクトロニクス化、つまりME化が進行していて、人間が機械を動かすというのではなくて、機械に人間が動かされているという面がふえてきているわけですが、機械というのは二十四時間動かすのが有効な使い方であって、こういう中で、例えば深夜業禁止の保護規定というのは改廃するというような話もあったわけですけれども、そういうことを廃止するということは、かえって乱用の危険が大き過ぎるのではないかと思うのですけれども、労働大臣いかがでございますか。
  291. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 私もMEの工場というものを余り知らなかったものですから、この間視察してきたばかりなんです。東芝工場へ行きまして、そして見てまいりました。そうしたら、今まで七十大使っていた工場を今はMEで無人化しておると、こういうことでした。しかし保守要員は五、六人でしたか、要るのだそうです。そうしたら大変な人減らしになるわけですね。しかし、そこはうまいこといっていましてね、今度は、その工場労働者じゃなしに、MEを動かすためのソフトの技能者の数がまたある程度要るんだそうです。しかし、差し引きすればやっぱり人減らしになると、こういうことでございまして、配置転換も結構うまくいったということを言っておりました。そういうようなことで、MEによっては危険な労働とか汚い労働とか長時間とかというようなことを機械がやってくれますので、私は、それが直ちに労働時間の延長とかそういうものには結びつかないような気持ちが、この間行ってみましたらいたしました。だから、それが女子の深夜労働の延長になるというようなことは、私はちょっと感じられませんでした。
  292. 糸久八重子

    糸久八重子君 とにかく日本の国は長時間労働であるということは先ほどのデータでも明らかになっているわけですけれども、そういう長時間労働の悪弊の中に結果として婦人を引きずり込むというようなことになってしまうわけですけれども、これは男子労働者にとってもプラスにならないのではないかと思います。日本人は働き過ぎであるという指摘をどうお考えになりますか。
  293. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) よく、働き中毒だとかいって貿易摩擦などに関して悪口を言われることもそれは聞いております。もちろん労働の成果というものはこれは時間だけでははかれませんし、その中身の質がまたこれはもっと大切なことだろうとは思っております。確かにヨーロッパなどから見ると、いまの答弁にもございましたように、日本の方が長いことは承知をしております。働き過ぎと、こう一概に言われましても、さてしかし、勤労の精神だけはこれは私は非常に大事だと思います。日本は資源もないんですし、人的資源が最高の宝でございますから、勤労の精神だけはこれは大切にしなければならぬと、こう思っております。しかし、やはり労使協調をもってなる日本でありまするから、労使協力でありますから、ですから生産性を上げた部分を賃金の方ばっかりにウエートを置くというようなことでなしに、賃金もそれは上昇を期待をするでありましょうけれども、労働時間の方の短縮も図って、そしてよく働き、よくまた家庭でリフレッシュするというようなことも大切なのではないかなと、そう思っております。
  294. 糸久八重子

    糸久八重子君 労働大臣続けて、生理休暇の必要性についてはどう思いますか。
  295. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 生理休暇につきましては、従来からいろいろと議論の多い問題でございましたが、労働省としては、いろいろと研究もいたしてまいりましたが、お医者様の御意見でございますが、これが医学的な見解からは、生理休暇というものが絶対必要というような根拠は見当たらないというような御報告をいただいております。  また、先ほど来お話の出ております差別撤廃条約との関係で考えますと、差別撤廃条約が差別には当たらないとしております母性保護の観点から見た休暇であるというふうに、差別撤廃条約の審議の過程で生理休暇が取り上げられたというような経過はないように理解いたしております。
  296. 糸久八重子

    糸久八重子君 今までいろいろたたき台の中に書かれました保護の撤廃の問題についてお伺いしたわけですけれども、保護の歯どめをなくせば、無制限に残業している男子の労働条件がそのまま女子に適用されて、昔の女工哀史の時代に逆戻りしてしまうんじゃないかというような、そういう危険性があると思うのです。  また、深夜残業ができなければ働いていただかなくても結構と、逆に雇用の場が狭められるということも考えられるわけです。そしてその分が、じゃ働く場所はどこにしようかということで、パートがふえて全体の労働条件が引き下げられる状況にはならないのでしょうか。その辺はいかがでしょうか。
  297. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 労働市場の状況その他、全体の労働条件との関係で労働時間のただいまの規制をどうするか、あるいは深夜業の規制をどうするかということは当然考えるべきで、そういう状況を全く無視してただいまある規制をなくすということは弊害が大きいというように考えております。
  298. 糸久八重子

    糸久八重子君 二月二十日に出されましたたたき台を受けまして、経済界では男女雇用平等法について慌てて条約批准をすべきでないと反対の意思を表明していますけれども、今日まで審議会では使用者側代表はどのような意思表明をしていたのですか。
  299. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 審議会には経済界からの代表ももちろん参加していただいているわけでございますが、かなり長い期間にわたって議論がございましたので、多少のニュアンスの違いというようなものもあるかと思いますが、当初は法制化そのものにも賛成をなさらないというような傾向があったわけでございますが、その点につきましては理解をしていただくことができたというふうに考えております。したがいまして、法制化を前提としてその内容の具体的な規制の強さなどをめぐっての発言になっておりますので、法制化そのものに反対するというようなことは、最近では審議会の場ではございません。しかし、一律に強行規定にするということにつきましては非常に混乱を起こすであろう、時間が必要であるということは繰り返し発言をされております。
  300. 糸久八重子

    糸久八重子君 去る三月二日に日経連から、総理大臣、外務大臣、労働大臣にあてまして、文書で質問が出ましたね。この内容はどういうものか説明をしていただけますか。
  301. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 御指摘のように、総理大臣、外務大臣、労働大臣に御質問が出されておりますが、その内容は、政府が条約を批准したときには財界には御相談がなかったが、影響が少ないと思っておられたのかという点と、それから第二点といたしましては、条約を批准するための最低の条件はどこまでか、この二点であると承知いたしております。
  302. 糸久八重子

    糸久八重子君 それに対して政府は、どのようなお答えを用意して、また回答をなさったのでしょうか。
  303. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) ただいま申し上げましたように、総理、外務大臣、労働大臣の三省にわたることでございますので、御相談をいたしているところでございます。
  304. 糸久八重子

    糸久八重子君 三月十二日に審議会が持たれたようですが、そこには回答は出さなかったわけですね。
  305. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 三月十二日の審議会には回答いたしておりません。
  306. 糸久八重子

    糸久八重子君 こういった点について今日時点で使用者側が疑問を持つことは、この条約批准のための国内法整備に前向きの努力をしているのかどうかということが非常に疑わしくなるわけです。この問題を検討してきた審議会の使用者側委員には日経連の労務管理部長さんも入っておられて今日まで審議が重ねられてきたのではないかと思うのですけれども、今さらこのような質問書が出ること自体がおかしいと思うのですが、その辺はいかがでしょうか、労働大臣。
  307. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 日経連から質問状が来まして、その内容は今申し上げたとおりでありまするが、私もお会いした感じでは、絶対反対とかという感じではなしに、どうもいろいろ政府も六十年に向けて批准をしようという姿勢だし、それから国内でもいろいろ男女の雇用平等機会均等法は関心が盛り上がってきておるし、いろいろの情勢を考えられて、先ほども局長が言いましたように、これはその批准のための国内法の制定は避けられぬ、やっぱりそれは覚悟しなければならぬという判断から、これは考えようによっては大変な転換期になるのだから、経営側としてもよくよくどういう内容になるのだろうか批准のための最低基準は何なんだろうかというところをひとつ確かめてこられたのではないか、こう思っております。経済界だけが非常に慎重だというわけではございませんので、この問題はもう各方面いろいろ御意見を持っておられるわけでございまして、何さまこれは原理的にはコペルニクス的転回でありまするから、ですから非常に各方面からいろいろな御意見が出ておることは事実でありまして、経済界からもそういう法制定は覚悟した上でいろいろ今後の経営について確かめたいところを確かめにきたのだと、私はこう思っております。
  308. 糸久八重子

    糸久八重子君 差別撤廃条約署名の時点から平等法の制定は必至のものであったはずであります。政府はこの問題のすべてを審議会任せにしたままでした。婦人問題企画本部長である総理としての御責任はいかがですか。
  309. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろたたき台もあり、また公益委員の意見等も出まして、労働省にせっかく調整を早めて法案提出の運びに至るように努力さしたいと思っております。
  310. 糸久八重子

    糸久八重子君 総理は先日のこの予算委員会答弁の中で、雇用平等法制定については、日本の社会の実情に即したようにしないと雇用の機会をかえって減らすことになると答弁なさっていらっしゃいましたけれども、これはどういうことですか。
  311. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、余り初めから厳しい内容のものにしておきますと、どうしても雇う方は敬遠してしまって、男の方を採用の方にどうしても傾く危険性が出てくる。法律でこれこれの女性を採用せよと強制するわけにはまいりません、経営の自由という面もございます。その辺の促進の方策が実は難しい点があるのでありまして、そういう意味においては漸進的にこれを改革を進めるということが賢明である、そういうように思って申し上げた次第であります。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕
  312. 糸久八重子

    糸久八重子君 次に、諸外国の平等法についてお伺いしますけれども、一九七〇年代末から八〇年代にかけまして、ヨーロッパでは続々と雇用平等法の制定をしていますけれども、その国名を教えてください。
  313. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 男女雇用平等法、いわゆる平等法でございますが、制定している国の名前でございますが、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、アイルランド、デンマーク、ベルギー、スウェーデン、オランダ、その他私ども内容の必ずしも十分に把握していない国があろうかと存じます。
  314. 糸久八重子

    糸久八重子君 大変たくさんの国が制定をしているようですけれども、これらの国が平等法をつくったきっかけは何であったと理解していらっしゃいますか。
  315. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 今お答え申し上げましたように、たくさんの国がございますので、それぞれの国がそれぞれの背景や動機があったかと思いますが、まあ主なものを申し上げますと、アメリカでは一九六四年に公民権法の第七編として規定されたわけでございますが、これは一九六〇年代に非常に公民権運動が強い盛り上がりがあったわけでございまして、その中で六四年の公民権法がつくられ、さらにその後、婦人運動の強化ということを背景にいたしまして七二年の改正が行われたというふうに承知いたしております。これがヨーロッパにも波及いたしまして、七五年のイギリスの性差別法、さらに七六年に、EC加盟国に対しましてはEC指令というものが、男女の雇用の機会均等についての指令が出されましたので、EC加盟国としてはこの指令にある程度拘束をされるという事実がございますので、この指令が直接の契機になったというふうに理解をいたしております。
  316. 糸久八重子

    糸久八重子君 ヨーロッパで平等法が成立して以後、どういう点で男女の雇用平等が促進されたと理解していらっしゃいますか。つまり、効果を上げた点は何ですか。
  317. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) たくさんの国がございますので、それぞれの国でどのような効果があったかということは必ずしも私どもはつまびらかにいたしておりませんが、男女の雇用の平等を進めるという点で多かれ少なかれ効果があったものというふうに認識をいたしております。
  318. 糸久八重子

    糸久八重子君 私の手元にある調査では、採用面での平等化が最も促進されたとしているわけですが、やはりそれが単なる努力規定では改善はおぼつかないと言わざるを得ないわけですね。そういう意味でやはり雇用平等法の内容については十分に検討なさっていただきたいと、そう思うわけであります。  次に、最近増加の著しいパート労働者についてお伺いしたいと思います。  現在、パート労働者の数はどのくらいと把握しておりますか。そして、最近四、五年間の推移はどういう状況になっておりますか。
  319. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) パートタイマーという定義が必ずしも調査によって同じでございませんので、この場合便宜、平均、週の就業時間が三十五時間未満というふうに定義をさせていただきまして、その短時間の雇用者は、昭和五十八年には四百三十三万人でございます。そのうち女子の短時間雇用者は三百六万人でございまして、女子雇用者の中で占めるこれら短時間雇用者の割合は二割を超えております。  また、企業でパートタイマーあるいはパートタイマー類似の名称で呼ばれる者、またこれは定義が違いますので別の観点でございますが、その者は女子の割合を見ますと、パートタイマーと呼ばれている人たちのうちの女性は九五%というふうに、大部分を占めております。  また推移をという御質問でございますので、振り返ってみますと、昭和五十年には短時間雇用者は百九十八万人でございましたが、五十五年には二百五十六万人、五十八年には三百六万人というふうに年々増加をいたしております。
  320. 糸久八重子

    糸久八重子君 パート減税につきましては先般与野党間の合意がありました。そこで伺いますけれども総理、パート減税はいつどのように実施するお考えですか。
  321. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆるパート減税、これは給与所得控除の最低限の引き上げと、こういうことに正式に言えばなりますが、これは各党の先般の申し合わせ、こういうことでございますので、まず議員立法で行う。したがって、各党間の協議がこれから進んでいくであろう。もちろん私どもも税の執行をする立場にある者としてそれの御議論に当たってはお手伝いをさせていただきますが、基本的には党同士のお話で決まりますので、私から時期とかいうようなことをここで予測を申し上げるのは適当でなかろうというふうに考えます。
  322. 糸久八重子

    糸久八重子君 パートの問題は、この非課税限度だけではないと思います。雇用や労働条件及び雇用労務管理について改善すべき点はどんなものがありますか、労働大臣。
  323. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) パートタイマー対策につきましては、就業条件が、就職をしたけれども後で労使でトラブルが起きるなどというようなこともありましたので、まずその就業規則の整備とか、主要な労働条件を書面で明示する雇い入れ通知書の普及というようなことで労働条件を明確化するということがまず第一点であります。それからパートタイマーの職業紹介を専門機関で、パートバンクでございますか、パートバンクで職業紹介体制を充実をしていく。それからパートタイム就労についての相談、啓発も、今までやってまいりましたが、いろいろ今申し上げたように三百万を超すということになりますると、これはやはりパートタイム労働対策要綱という政府としての統一的な指針、ガイドラインを盛り込んだものを作成いたしまして、労使に対して啓発普及をやっていきたいと、こう思っております。雇い入れ通知書につきましては、今までは大都市中心でありましたが、五十九年度から全国的に普及をする。それからパートバンクも十九カ所でありましたが、五十九年度には二十七カ所にふやすとか、それからパートタイマーの労務管理の手引を各企業にも差し上げて指導を密にしていくというようなことをことしもやっていきたい。そしてパートタイム労働対策要綱で全般的にパートタイマーにつきましての遺漏のないようにできるだけのお世話をいたしたいと、こう思っております。
  324. 糸久八重子

    糸久八重子君 パート問題についてはかなり積極的でいらっしゃいますけれども、同じように、やはり雇用平等法につきましても積極的な姿勢をお願いしたいと思うのですが、パートについては社会保険の適用も除外されておりますけれども、この辺についてはいかがですか。
  325. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) パートタイマーについても、就労の実態がその事業所の同種の常用的な就労者に準ずる場合は既に適用してあります。御参考までに申し上げますと、パートタイマーの健保、厚年への適用基準、労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を総合的に鑑定して認定することとなり、その場合、一日または一週の所定労働時間及び一カ月の所定労働日数が当該事業所において同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間及び労働日数のおおむね四分の三であるということになってございます。
  326. 糸久八重子

    糸久八重子君 我が党はいわゆるパート労働法案の提出を予定していますけれども、男女雇用平等法案とともにその制定を図るべきではないかと思うのですが、労働大臣いかがですか。
  327. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) パートタイム労働というのはこれからますます大きくなると思っております。しかし、今いろいろ調査検討すべき点も多々ございますので、法律の制定ということは今のところでは考えておりませんが、先ほど申し上げました統一的な全国的なパートタイム労働対策要綱というもので行政指導を密にしていって、その後にまた考えたいと思っております。
  328. 糸久八重子

    糸久八重子君 次に、文部大臣にお伺いします。  先日の予算委員会でもお尋ねをしましたけれども、差別撤廃条約十条(b)項に抵触する部分、つまり高校の家庭科、女子のみ必修の現行教育課程についてなんですけれども、先般の答弁では、女子に過重な負担というのなら検討と、こう申されたわけです。先ほどの質問でも申し上げましたけれども、婦人労働者が非常に過重な家事、育児という家庭責任を負わせられているわけですが、このことが婦人の職業生活を短くし、そうしてパートという安い労働力に振り回されている結果となっているとはお考えになりませんか。
  329. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お答えをいたします。  我が国の家庭科教育は、長い我が国の実情、歴史、そういう伝統の中から展開をされてきたものでございます。しかし、今御指摘ございましたように、また先般も先生から御指摘がございましたように、婦人差別撤廃条約第十条のところに問題ありというふうに指摘はされております。したがいまして、この条約の妨げにならないように、私どももこれから関係方面の意見を聞きながら、教科課程全体のことでございますので、いろんな各方面との調整もございますので、努力をしてまいりたいと、こう思っております。  今、御質問をいただきました点で、家庭科の教育の結果、こうした家庭に女性が閉じ込められて家事をやられる、その中でまたパートタイマーとして働かれるということの接点といいますか、関連性を御質問いただいたというふうに理解をいたしますが、必ずしも家庭科ということは、女子が家庭の中にということよりも、やはり家庭の中の女性としての基本的な指導、そうしたことを教育を通じて指導していくということでございますので、そのこととパートタイマーとのつながりには私はならないというふうに考えております。
  330. 糸久八重子

    糸久八重子君 その問題で議論をしていますと長くなりますけれども、一言やはり言わせていただきたいのですが、現在の学校で使っております教科書の中には、先ほども話題に出ました、男は社会、女は家庭という精神で貫かれた記載事項が非常に多いわけなんですね。そこで私はいまの質問を申し上げたわけです。  とにかく、一個の自立した人間として生きていける力をつける、教育を受ける権利というのは男女ともに持っているわけですから、やはり女生徒には職業訓練の機会を与え、そして男生徒には生活者としての自立する能力とともに、両方とも家庭責任を負うことのできる力とその機会を与えなければいけない。それがやっぱり新しい意味での教育ではないかと思うんです。文部省としては、この十条に抵触する部分についての事務的な進めはまだ全く進んでいないのですか。
  331. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) カリキュラム全体との関連がございますので、内部ではいろいろ議論をいたしながら調整をいたすような方向で努力をいたしておるところであります。
  332. 糸久八重子

    糸久八重子君 とにかく早く進めていただかないと間に合わなくなりますので、よろしくお願いしたいと思います。  それから先般実施されました共通一次試験の倫理・社会の問題で、問い3のところですが、青年期の発達課題には職業を選択し、準備することのほかどんなものがあるかという設問に対しましてのその選択肢の中から正解として選ばせるものに、「男性として、また女性としての社会的役割を学ぶこと」という文言があるわけです。これは正解なんですけれども、この「男性として、また女性として」という男女の役割分業を肯定するこの文言について、大臣はいかが思われますか。
  333. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 御指摘の点は、ことしの共通一次の倫理・社会の問題で、青年期の発達段階に応じて達成しておく必要のある課題についての出題でございまして、入試センターに早速照会をいたしました。この問題の出題の意図は、まず第一に職業を選択し、準備すること。二、男性や女性としての性の違いを自覚し、相互の理解と協力を培うこと。三、責任ある社会人としての人生観を形成すること。四、家族からの独立と自主的態度を形成することなどにつきまして、一般的、基礎的な理解度を見ようとしたものでございました。いささか誤解をいただいた点もございますが、その後、一週間後の追試験におきまして、同じ出題者が次のような問題を出しております。ちょっと長くなって恐縮ですが、早く読みます。   男は仕事、女は家庭といった表現も、男性交配の社会がつくりだした社会通念の典型であると言えよう。社会的活動における男女平等が強く主張されている今日、女性のみを一方的に家庭に縛りつけ社会的活動の場から締め出そうとする姿勢は決して妥当なものとは言えず、改めて見直す必要に迫られている。  こういう問題が一週間後に出ておるわけでございまして、出題者の意図もここにあるわけでございますので御理解をいただきたいと思うわけでありますが、今後とも問題作成に当たってはこうした誤解を招かないように十分注意をしなければならぬことだと思いますが、試験問題につきまして文部省からとやかくまた言えない仕組みにもなっておるところもどうぞ御理解をいただきたいと思います。
  334. 糸久八重子

    糸久八重子君 次に、国籍法について法務省にお伺いしたいと思います。  現時点での二重国籍者数と、今回法改正があったとして予想される二重国籍者数を教えてください。
  335. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 現在、二重国籍者がどのくらいおられるかということについては、私ども正確な数字をつかんでおりません。したがいまして、推測的な数字になって恐縮でございますが、現行法のもとにおきまして二重国籍が生じます主たる理由は、生地主義の国におきまして日本人の子供が生まれたという場合に留保届を出していただく、その数がまあ二重国籍者の主たる数字になろうかと思います。その点で申し上げますと、最近の数字では年間に約二千八百人でございます。そのほかに血統主義によっての二重国籍者も若干あろうかと思いますので、二千八百に若干の数を足したものが現在年間に生ずる二重国籍者の数であろうと思います。  それから次の御質問でございますが、現在の父系血統主義を父母両系血統主義に改めますと、重国籍者の数が血統主義の面からふえてまいることになりますけれども、これもどの程度の数がふえるかということははっきりしたことは予測つきませんが、国際結婚されます方が年間八千組あるというところから推計をいたしますと、その関係から年間七千人ないしは一万人程度の二重国籍者が生ずることになるのではないかと推計をいたしておる次第でございます。
  336. 糸久八重子

    糸久八重子君 父母両系主義を採用している国はどのくらいありますか。
  337. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 今はっきりした国の数は資料を持ち合わしておりませんけれども先進諸国におきましては一九七〇年の後半から父母両系主義を採用するようになりましたので、恐らく十数カ国がこの数年の間に父母両系主義になったのではないかと思います。
  338. 糸久八重子

    糸久八重子君 アジアではどうですか。
  339. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) アジアでも数カ国が既に父母両系主義に切りかえているように承知しております。
  340. 糸久八重子

    糸久八重子君 それらの国では重国籍者発生防止の対策としてどのような方法がとられていますか。
  341. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) これもいろいろなやり方を考えておりますので一概には申し上げられませんけれども一つには、国外出生児につきましての国籍取得の制限を設けるという方法が一つございます。それからもう一つは、重国籍になられた方についてのある一定の年齢に達したときにどちらかの国籍を選択するという選択制度の採用、あるいはまた、ある一定の条件のもとに、例えば国内に居住する年数とか、そういうような事柄を考慮した上で国籍を喪失するというような法制その他のもろもろの措置が各国ではとられているように承知いたしております。
  342. 糸久八重子

    糸久八重子君 重国籍者に対する国籍選択制度を採用している国というのはありますか。
  343. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 国籍の選択制度をとっております国は、例といたしますと、イタリアとかメキシコ、ブラジル、インドネシア、シンガポールその他の国において選択制度を設けておるように承知いたしております。
  344. 糸久八重子

    糸久八重子君 国籍の選択制度は、一見、個人の自由を尊重しているように見えますけれども、当事者にとってみればそれをしなければ日本国籍を失うという強迫的選択制度だという声もあるわけです。それで、国籍離脱の自由を認めているのだからそれで十分ではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  345. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 選択制度と申しますのは、既に御理解いただいていると思いますけれども、重国籍というのがいろいろな問題を生ずるところから、それを解決する一方法として考え出されているものでございまして、一方では離脱という方法もございますけれども、しかし各国の法制によりましては、必ずしも自由の意思によって離脱をするということができない国もございます。日本の国の方の国籍を解消したいということでございますと、これは離脱によって簡単にできますけれども、日本の国籍を残しておきながらなおかつ二重国籍の問題を何らかの形で解消したいということになりますと、選択ということが必要になってくるということになろうかと思います。そういう面で、ヨーロッパ理事会におきましても、そのような考え方でヨーロッパ内部はまとめたらどうだというふうな意見も出されておるのでございます。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕
  346. 糸久八重子

    糸久八重子君 国の垣根を越えて育つ子供たちを国籍という壁に閉じ込めないで、その特性を自由に生かすことのできる多民族共存の社会を目指すことが国際化時代に求められる国籍法の改正のあり方ではないかと思うのですけれども、その点につきましては、法務大臣いかがですか。
  347. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 国籍制度は御承知のように、どこの国籍を持つか、これは各国大変重大な問題だと思うんです。先ほど来御説明もいたしましたように、それぞれの国で二重国籍を防止するような措置をとっておることも事実でございます。二重国籍によって生ずる国際間の問題等も考えられますし、そういうことを慎重に配慮しながら国籍の問題を考えておるところでございまして、私どもはそういうことから考えて、やはり選択制度が一番妥当なのじゃなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。
  348. 糸久八重子

    糸久八重子君 続きまして、児童扶養手当について厚生大臣にお伺いいたします。  児童福祉問題懇談会というのはどういう性格のものですか。
  349. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 児童福祉問題懇談会といいますのは、五十八年の三月に、児童福祉に関する諸施策の進め方につきまして御検討いただく、御審議をいただくということで設置をされた懇談会でございまして、学識経験者の方を中心にして五十八年度に約十五回ほど御審議をいただきまして、昨年の十二月の末に御報告をいただいたわけでございます。
  350. 糸久八重子

    糸久八重子君 それは公的な機関ですか。
  351. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 法律上に基づく機関ではございませんで、厚生省のいわば私的な諮問機関、御懇談、御意見をいただくための機関として設置をさしていただいたわけでございます。
  352. 糸久八重子

    糸久八重子君 厚生省には公的審議機関はありますか。
  353. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 児童福祉につきましては、児童福祉審議会という法律に基づく審議会はございます。
  354. 糸久八重子

    糸久八重子君 その中央児童福祉審議会は現在どういう動きをしておりますか。
  355. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 中央児童福祉審議会、手元に正確な資料、きょう今すぐ持ち合わせませんので、大体のことを申し上げますと、保育に関する部会でありますとか、あるいは障害児に関する部会でありますとか、あるいは児童の健全育成に関する部会でありますとか、あるいは児童手当に関する部会、そういった幾つかの部会におきまして、それぞれの当面する諸問題どこれからの施策のあり方について御検討いただいているわけでございます。
  356. 糸久八重子

    糸久八重子君 中央児童福祉審議会では、六月までに何か調査を出すという話を伺っているのですが、その辺はいかがですか。
  357. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 六月までに調査ということは、私ども承知をいたしておりません。
  358. 糸久八重子

    糸久八重子君 今回の児童扶養手当の法改正の経過や手続につきまして、大変疑問があるわけです。法案として急に具体化したのは昨年十二月の先ほども申されましたとおり児童福祉問題懇談会の報告があってからだったわけですけれども、その公的審議機関でどういうことをするのか私もわからないし、また御回答もなかったわけですけれども、そこでの答申を待たないで法制化、予算化したというのは、やはり私的な懇談会の報告にのっとって国家予算の編成の中で制度そのものを改変するということで、行政指導の一方的な押しつけではないかと思うのですけれども、大臣、これについていかがですか。
  359. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 児童扶養手当制度のあり方につきましては、五十七年度予算編成のときからいろいろ問題にされていたわけでございまして、臨調の答申におきましても制度の基本的なあり方についての検討をし、その費用は現在全額国庫負担でやっておりますけれども、その二割相当額程度を都道府県に持っていただいてはどうか、そういったことも検討するようにという指摘がなされていたわけでございます。  そういった経緯を踏まえまして、私ども五十八年度の予算編成のときに学識経験者を中心にして、先ほど申し上げましたような懇談会を設置してこの制度のあり方について検討するという方針が決まりまして、その方針に基づきまして懇談会を設置し、昨年の暮れに御報告をいただいたわけでございます。  今回の改正案は、その御報告、御意見をもとにして私ども関係省庁の間で案を作成したわけでございますけれども、正式の審議会との関係につきましては、法律の改正案につきまして社会保障制度審議会に正式に諮問をいたしまして、その御答申をいただいているわけでございますし、従来は中央児童福祉審議会には諮問をしない、毎年法律改正を出しておりますが、この法律については諮問しないということになっておりますけれども、今回は特別に中央児童福祉審議会も開催をしていただいて法案の内容についての御説明をし、御了承を得ているわけでございます。
  360. 糸久八重子

    糸久八重子君 時間が大変残り少なくなりまして、児童扶養手当につきましてはまだまだたくさんお伺いしたいんですけれども、次回に譲りたいと思います。  もう一つ、婦人の問題では年金についてのことがあるわけですけれども、今回の年金改正案によれば、婦人は国民年金全員加入で年金保障が実現することは評価をするわけですが、しかし四十年加入で月五万と現行よりも非常に大幅な切り下げである。これでは婦人の間には老後の不安が非常に高まっているわけなんですね。そこで厚生大臣、婦人の年金保障実現と言っていますけれども、被用者の妻の被保険者としての地位扱いには全く触れていないわけです。それで、妻の保険料は夫の被用者としての保険料に含まれるとしても、妻の扱いは独立の個人として処遇をすべきであると思うんですけれども、妻自身に被保険者番号とか、それから年金手帳とかを交付して、夫とは別に妻個人の年金記録台帳をつくるという、そういうお気持ちはあるのかどうか。
  361. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今回の年金改革は、婦人の年金権の確立というのを我々目玉にしておりまして、御要望のありました妻個人の婦人の年金台帳をつくりまして、また年金と手帳も妻個人に交付するつもりでございますので、どうぞ御協力のほどをお願いいたします。
  362. 糸久八重子

    糸久八重子君 婦人のパートタイマーの厚生年金加入についてのその考慮は、先ほどもちょっとお伺いしたんですけれどもいかがでしょう。
  363. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 先ほど申し上げましたように、就業の状態がありますから無制限というわけではありませんが、一定限度の就業状態を見ながら、できるだけやはりパートの方々にも入っていただくようにしたいと思っております。
  364. 糸久八重子

    糸久八重子君 大変時間が残り少なくなってしまいましたが、本日取り上げました事柄は、今日的婦人問題の基本にかかわる問題の数々でございます。  最後に、再び総理にお伺いしたいわけでありますけれども、日本は今、世界有数の経済大国になっておりますけれども、貿易摩擦だとか、それからエコノミックアニマルとかという言葉で象徴されるように、さまざまな面で諸外国から非難を浴びているわけです。総理衆議院での答弁で、世界から孤立しないように努めるとおっしゃっておられたわけですけれども、日本の経済活動に対するこの諸外国の批判をどう受けとめていらっしゃいますか。
  365. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の経済力が非常に急激に伸びました結果、必ずしもその経済力にふさわしいような出処進退といいますか、周囲に対するおもんぱかりとか、そういうようなものにおいて不足しておる面が指摘されたと思っております。しかし、最近におきましてはそういう点に対する自覚も深まりまして、矯正する活動も活発にもなり、政府もそういうことを明確に自覚して政策を進めておりますので、漸次解消しつつあると思います。
  366. 糸久八重子

    糸久八重子君 諸外国の批判の中には、日本の労働条件、先ほどもいろいろ質問を申し上げましたけれども、そこで明らかになったように、労働条件に対する批判がやはり大きな要因になっているのではないかというような気もします。経済摩擦の問題もやはり労働者の問題に関係しているのではないかと思うのですけれども、その点は総理いかがですか。
  367. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) かつて労働条件の不平等ということが指摘されたと思いますが、最近は非常にそれは少なくなったと思います。むしろ国際レベルに近づいてきているか、あるいは国際レベルに入っていると、そういうように私考えております。ただ、男女平等とか婦人に対する扱い等につきましては、まだ我々はおくれている面があるのではないかと考えております。
  368. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 糸久君、時間になりました。
  369. 糸久八重子

    糸久八重子君 もう少し。今度策定されようとしております男女雇用平等法は、やはり日本の後進性を脱するか否かという意味で内外の注目が集まっていると思います。国連婦人の十年の世界会議、そしてESCAPの会議が三月の末にも東京で行われるわけでありますけれども、その人たちにも恥ずかしくないような憲法理念に基づいた姿勢を世界に示す。そして総理も申しましたとおり、新しい流れを見詰めていくというそういう立派なやはり立法を目指していかなければならないと思うのですが、総理の御決意をお聞かせください。
  370. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御趣旨に沿って積極的に努力してまいりたいと思います。
  371. 糸久八重子

    糸久八重子君 じゃ、最後にもう一つです。  総理は訪中を予定されておりまして、一番最初答弁の中にも、天の半分を支える婦人のお話がありましたけれども、中国は本当に完全な男女平等のもとに天の半分を支える婦人が生き生きとした活動をしているわけですけれども、そういう様子をつぶさに見てきていただきまして参考にしていただきたいということをつけ加えまして、私の質問を終わります。(拍手)
  372. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で糸久君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  373. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、秦豊君の総括質疑を行います。秦君。
  374. 秦豊

    ○秦豊君 私は、参議院の会を代表して質問するわけですけれども、本論に入る前に国家公安委員長に一つだけ伺っておきます。  さきには宮澤事件、今回はまた財界人のあの異様な拉致事件など、犯罪の手口がかなりヨーロッパ化するというか、新手というか、これが相次いでいるわけですけれども、このような事件は必ず事件が事件を誘発する。したがって、政府としても広範な的確なさらに新たな対応をぜひ考えおくべきではないかと思いますが、公安委員長いかがですか。
  375. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 今回の事件はまことに特殊な事件でございまして、大変残念なことでございます。私ども警察としては、こういうような犯罪を防止するのは、犯罪を犯したら損だと、つまり検挙をすることによってこういうような犯罪を防いでいかなければならぬ、こういう気持ちで取り組んでいるわけでございます。まあ過去のこういう身の代金要求の事件は、戦後百二十二件起きておりますけれども、ほとんど検挙をしておりまして、たった一件未解決でございます。四件ございますけれども、その四件のうちの三件はこれは救出しているわけですね。たった一件だけ未解決になっている。それも終戦直後でございます。そういう意味で、とにかくこの種の犯罪は検挙に万全を期して一日も早く検挙するということが大事である、このように思っております。
  376. 秦豊

    ○秦豊君 総理、私先ほど犯罪が犯罪を呼ぶと申し上げましたけれども、今後は政府要人、財界トップ、あるいは言論界等々に対するそういうものが誘発されることを甚だ恐れます。総理としてはどういうふうにお受けとめでしょうか。
  377. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 確かに誘発させる危険性がなしといたしません。特に春先はこういう事件が多いように思います。そういう意味におきまして警察当局にも警備を厳重にさせると同時に、また我々、それに該当すると思われる者がよく注意を怠らないということが大事だと思います。
  378. 秦豊

    ○秦豊君 ところで、田川さん、引き続き質問させてください。  やがて大臣のそのいすにお座りになって三月ですけれども、こちら側から拝見していると余り座り心地がよさそうではない、いかがです。
  379. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) どういう意味の御質問だか私にはよくわかりませんので、もう少し具体的におっしゃっていただきたいと思います。
  380. 秦豊

    ○秦豊君 おいおい申し上げましょう。かといって針のむしろというふうなお顔でもない。なかなかジャーナリスティックな、それこそしたたかな答弁もときに楽しんでいらっしゃる。ただ、わかりにくかったのは、衆議院サイドで、調和あるタカ、中曽根康弘氏と言ったあの辺はちょっとよくわからなかった。あれはどういうことですか。
  381. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) これまでの御質問の中に、中曽根総理を批判していることだけ取り上げておっしゃっておりましたから、私は人を批判したり政党を批判する場合には、必ずまたいい面もあるということを申し上げて答弁をした言葉の中に、今、秦さんがおっしゃったような言葉がある。例えば、私ども中曽根さんをこれまで批判した中に、やっぱり中曽根さんという人は国際的な感覚が従来の指導者の中で比べてかなりあるというようなことも、実は選挙の演説の中にも申し上げているわけです。そういう中の一つの言葉でございました。
  382. 秦豊

    ○秦豊君 何回か田川さんと街頭演説をともにしたことがあります。また、ジャーナリストの先輩としてよく存じ上げているつもりです。しかし田川さんは、私のこれ偏見かもしれませんが、大変原理原則にからっとした方で、松村謙三さん以来ですね。やはり中曽根さんの内閣にとどまっておれる許容範囲というものはあると思うんですよね。閣内にとどまっておれる必要にして十分な条件というのはどうお考えですか。
  383. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) これまでももう何回も申し上げましたように、私どもがこうして連立をつくったということは、公党間の政策合意があるわけです。ですから、この政党間の政策合意の基本を貫いていくというのが、私どもが共同会派をつくっていく、あるいは連立内閣をつくっていく 一番の基本でございます。
  384. 秦豊

    ○秦豊君 少し話を具体的にしましょう。例えば定数是正で一番シビアなのは新自由クラブです。しかし、例えば自民党が一対二・五とか一対三とかいうものに固執をしたという場合はどうされます。
  385. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) これも従来からしばしば述べましたように、定数是正は国会議員の基本的な問題であり、また政党にも政治生命にかかわる問題でございますから、各党間の合意というものが大事でございます。ですから、そういう基本的な態度でおりますから、私どもの新自由クラブの案というものを、もちろん私どもはそれがいいと思ってつくったわけでございますけれども、それに拘泥するものではございません。
  386. 秦豊

    ○秦豊君 さっきも同僚委員がしばしば論議を挑んでいたわけですが、例えば田川大臣、自民党が資産公開法案をネグる、避ける、立法化に踏み切らない、現状のようなあいまいもことした姿勢を長々と続けた場合はどうされますか。
  387. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 私は、今度中曽根内閣がやられたこの資産公開の基準というものは、佐藤さんが前回言われたのとちょっと感じ方が違うんです。むしろ基準を見ますと、とても我々が想像している以外にシビアな公開をしている。例えば閣僚がゴルフの権を幾つもあるとか、車だとか、あるいは貯金がどのくらいあるとか。私どもは当初閣僚の資産公開を考えたときはそんなシビアなことまで考えていなかったんです。ですから、そういう意味で、私はこの資産公開というのは私どもが予想していたよりも非常にシビアな、ほとんど全財産をさらけ出すようなものだというふうに思っております。ただ、これまでも言われたように、これは継続性がなければ意味ないんで、そして比較性がなければ意味がないと、こういう考えでおるわけでございます。  また、ちょっと長くなりまして恐縮でございますけれども、私どもは、資産公開をやるならやっぱり議員も一緒にやるべきだ。そして、資産公開をやれという主張をする者は、やっぱり主張する方も一緒にやらなければならぬ。ですから、私ども新自由クラブは主張した以上やろうじゃないかということで、今月末全員が資産公開をすることになっているわけです。そういう考えでございます。
  388. 秦豊

    ○秦豊君 これも最後のところは私も共感いたします。  それから田川大臣、これももう何万回となく口にされたと思いますけれども、改めて伺わしてください。  田中問題にはけじめは依然としてついていない。この認識はかなり強固なものでしょう。いかがですか。
  389. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) けじめがついてけるかいないかという問題よりも、私どもはそれも含めて、これまでも申し上げましたように、自民党との間に政策合意したその政治倫理の中に、一審有罪を受けた者が謹慎をしていないとすれば、そういうことをどうやって謹慎させていかなければならないか。こういうことを制度化してやるということは国会議員として非常に恥ずかしいことだけれども、しかし現実にそういう者が出た場合には、国会の中で何とか謹慎をさせるような方法はないだろうかということが、国会法の改正によってあるいはできるかもしれないと、こういうことを自民党との間の政治倫理の項の中に具体的に挙げて政策合意をしたのでございます。ですから、こういうことがこの政策合意の中にありますから、これを重点に私ども考えていかなければならないと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  390. 秦豊

    ○秦豊君 それにしても田川さんは、このところ一連、かなり能動的な活動をしていらっしゃいます。例えば福田元総理、例えば三木元総理とお会いになったと伝えられていますが、それは事実なんだと私も思います。これはどういうお気持ちで行脚を続けられておりますか。
  391. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 私の一挙手一投足が新聞に出ることは、光栄なようでもありますし、また大変煩わしいことでございます。おっしゃられた人物とお会いをいたしましたけれども、それだけではございませんで、総裁派閥の櫻内義雄さんにも三十分以上お会いもいたしましたし、いろんな方にお会いをしているわけです。従来、自民党とは野党と与党との関係、与党と野党との関係でございましたから、なかなかお会いする機会がございませんでした。そして、今度共同会派をつくりました。私も連立内閣の一員に入りましたので、やはりしかるべき先輩にはごあいさつをして御意見を伺わなければならぬということでお会いをしているわけでございますし、ただ、予算委員会のこうした会議で行動を拘束されておりますので、十分にお会いできないでいるというようなことで、これからも機会があり次第、先輩からいろいろお教えを請い、ごあいさつもしたいと、こういう気持ちでお会いをしているわけでございます。
  392. 秦豊

    ○秦豊君 非常に謙虚なお答えなんですよね、先輩の意見を、教えを請うと。単にそうではないでしょう。何を目指してアプローチを積極的になさっていらっしゃいますか。
  393. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 私は、そういう何といいますか、策略的と言うんですか、舞台裏でどうこうするというような性格には合わない性格でございまして、先ほど申し上げましたことが本心でございまして、特定の意図を持って人と会っているということではございませんで、もしそういうような意図を持っているとすれば、わからないようにやるはずでございます。
  394. 秦豊

    ○秦豊君 田川さん、けさの朝刊、毎日が六段抜きで「「田中決議案再提出を」 田川自治相 社公民に要請へ」という、これはまあ誤報でないと思いますがね、これは事実なんですか。そういうお気持ちがおありですかな。
  395. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) そういう御質問があるというので、私も新聞記事を見ましてびっくりいたしましたが、最近、毎日新聞の政治記者にそういうことに関して取材を受けたこともございませんし、コメントも求められたこともございません。
  396. 秦豊

    ○秦豊君 河本長官、突然ですけれども、あなたの政治認識の中では、田中問題なるものは決着済みというお考えですか、とんでもないという御認識ですか。
  397. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 昨年十二月二十四日の中曽根総裁の声明のとおりだと思います。
  398. 秦豊

    ○秦豊君 法務大臣の住さん、法務大臣としてではなくて、一個の政治家として、同じ問題についていかがです。
  399. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 私、政党間あるいは与党内でどういう動きがあるのかということを必ずしも十分承知いたしておりません。したがって、片づいたとも片づかないとも判断する材料を持ち合わさないのでございます。
  400. 秦豊

    ○秦豊君 田川さん、もう一問だけです。  あなたがどうアプローチされようとも、あなたのことだから真っすぐいらっしゃると思います。それで、仮に野党共同提案による田中辞職決議案が再提出された場合は、言うまでもなくあなたは賛成の態度を表明していらっしゃる党の代表である。そうなった場合に中曽根総理のもとにあるという立場と矛盾は来しませんか。
  401. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 私どもは、田中辞任勧告決議案のような種類の問題についての賛否というものは、議員が個人個人で判断してその良心に従って賛否を決めるべきものであるという考えでございます。私たちはこの決議案に対する態度は国会でも何回も申し上げましたように毫も変わりません。といって私ども衆議院八人の参議院は一人でございますけれども、そうした八人、参議院一人を拘束するものではない。拘束するものではないけれども、それぞれが従来と態度は変わらないというようなことを申し合わせているわけでございます。
  402. 秦豊

    ○秦豊君 中曽根総理、近ごろ体調はいかがですか。
  403. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別に従来と変わりません。
  404. 秦豊

    ○秦豊君 お見受けするところ、その調子ならば中国訪問、ロンドン・サミット、そうして総理再選まで大丈夫でしょう。  総理、あなたの日本語をずっと長年私、拝聴しているのですが、なかなか華麗でいらっしゃる。特に副詞と形容詞の使い方に特徴があります。「たくましい」という日本語と「平常心」はやや乱発ぎみです。総理のことを自分の言葉にお酔いになるナルシストだと書かれた学者もおられますけれども、私はそうは思ってないんですよ。あなたはむしろクールなリアリスト、おのれ並びにおのれのお言葉にお酔いになるほど甘くはない、こういうふうに見ていますが、いかがですか。
  405. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まことにありがとうございます。
  406. 秦豊

    ○秦豊君  「調和あるタカ」は私、おきますけれども、いつか武藤さんにですかね、三百六十度見ろよとおっしゃいました。私はせいぜい九十度ぐらいですけれども、やっぱり拝見していると、旧制高校、海軍、旧内務省、禅、ナショナリズム、ヒロイズム、そして若干のロマンチシズム、こういうものが不思議な比率でコンバインされて、まじり合っているのが中曽根康弘総理と、カクテルですね。しかし、率直に言わしていただきまして、これ、褒め言葉なんですがね以下は、政治家に対する。歴代数代の宰相の中では最もしたたかな宰相でいらっしゃる。これが私のひが見、偏見です。国会を含めて国内よりも外国でのあなたの方がより精彩があるし、めり張りもある。ただし、あり過ぎるという声がないわけではない。それにサミットのときの写され方が大変いいんですよね、タイミングと体さばきが。ぐっと出てきて、いいカメラアングルに出ていらっしゃる、大変いいと思います。ロンドンでもそのように堂々となすっていただきたい。この部分は答弁を要しません、私の独自部分です。  以下は質問なんですが、今の、現代のテンポからいたしますと一期二年以上は既にして長期政権である。しかし、現実に総理のいすにお座りになってみると、一期二年というのはいかにも中途半端であり物足りないというのが、いかがですか、実感ではいらっしゃいませんか。
  407. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の属性を挙げられましたが、不満が一つあります。大事なのが一つ抜けておる。
  408. 秦豊

    ○秦豊君 何でしょう。
  409. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはフェミニストということであります。(笑声)
  410. 秦豊

    ○秦豊君 伺っておきましょう。
  411. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それから、総裁の任期というのは党則で決められております。総理大臣というものは総裁とは直接関係ありませんが、議院内閣制では与党の総裁が総理大臣になる、そういうことで決められておりますから、私の私見でこれをどうこう論評することは差し控えたい。これは自民党内部の総裁の任期との絡みがあるからでございます。
  412. 秦豊

    ○秦豊君 そういう御答弁が成立します。そのとおりだと思います。しかし、少なくとも中曽根路線の貫徹を目指される以上、むしろ再選を目指すという方が普通ではないでしょうか。いかがですか。
  413. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今、私は行政改革あるいは財政改革あるいは今度教育改革という大事業を抱えておりまして、毎日毎日精いっぱい努力するのがまさに精いっぱいでありまして、毎日毎日をこれでできるだけ人事を尽くして進もう、それのみであります。
  414. 秦豊

    ○秦豊君 しかし、ある時期が来ればどうせ直面せざるを得ない問題です。ちょうどあなたが禅堂にこもって御自分と向かい合っていらっしゃるように、直面しなければならない。例えば今国会終了後とか、周辺が動いているわけですから。やっぱりその場合には、常識的ですよこれは、総理。やっぱり田中派の協力態勢というのは必須の大きなものであるというふうに御認識ですか。
  415. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう問題は一切考えないで、ともかく今自分が与えられている仕事に全力を尽くす、そう考えておる。それを平常心とも言っておるのでありまして、どうぞ御理解願いたいと思います。
  416. 秦豊

    ○秦豊君 早速得意のボキャブラリーが出てまいりましたけれども、やっぱり世上、運命共同体というふうな言葉がこれも乱用されていますけれども、軍事的な日米運命共同体、私も防衛問題をやっていますけれども、きな臭さを直感します。しかし、田中派と中曽根派は客観的に見て運命共同体ですか。
  417. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何派何派と別に拘泥する必要はないので、自民党員はみんな私の親愛なる同志諸君であると考えております。
  418. 秦豊

    ○秦豊君 しかし、衆目の見るところ、万人の見るところ、やはり田中さんの支えと、また角中運命共同体こそがあなたの再選を確かなものにする。あなたの得意の言葉を引用させていただければ、これが政治的不沈空母ですよね。私はそう思っています。今、自民党内では、田村元会長を会長とする会があって予備選の見直しが行われています。これも党内問題だというが、総理・総裁を実質的に選ぶ予備選挙みたいなものですから、国民の関心なきを得ません。総裁・総理としては、予備選はあった方がよいとのお考えでしょうか。
  419. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題も今党内でいろいろ御議論をしていただいておるところでありまして、私は総裁という地位にあり、それはそういう手段によって選ばれた地位にある人間でございますから、こういう問題について私見を差し挾んで予断を与えるようなことは言わない方が適当であると、そういうことを衆議院でも申し上げまして、差し控えさせていただいております。
  420. 秦豊

    ○秦豊君 河本長官、やっぱりこの秋にかけてのあなたの執念と決意のほどを伺っておきたいんですが。
  421. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今、内閣で私の担当しております仕事は非常にたくさん問題が山積をしております。しかも、緊急の課題等も山積をしておりますので、私の当面する責任の仕事以外は何も考えておりません。
  422. 秦豊

    ○秦豊君 確かにそうでしょうね。坂本労働大臣、労働大臣のお立場を離れて、河本派の政治家として今の河本さんの言い分に対しておっしゃりたいことがあるでしょう。
  423. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 河本先生も、それから中曽根総理もやはり政治家として今の一点では、日々是好日たらんとして努力を集中しておられると、こう思っておりますが、まあしかし、やがて時節が参りますれば、それはまたお考えが出てくることだろうと思っておりまするけれども、政治家として今職責に集中をするという時期であるということだけは私も信用をしております。
  424. 秦豊

    ○秦豊君 剣の達人らしい切れ味は感じられませんでしたがね。安倍外務大臣、大変恐縮ですが、やっぱりあなたもプリンスと言われ、ニューリーダーと言われて久しいのですが、やはりことしこそは行動と勝負の年ではありませんか。
  425. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も今大事な外交の責任者ですし、外交問題が山積をしております。九月まで外遊日程ももう詰まっておりますから、まず日本のためにそうした外務大臣としての職責を全うする、全力を尽くすということに今かけております。
  426. 秦豊

    ○秦豊君 竹下大蔵大臣、恐縮ついでにちょっと。やっぱりこれは、十年たったら竹下さんと聞かされてから幾年になりましょうか。このままならば、口さがない人々は、失礼ながら、竹下登じゃなくて竹下下がるだと言うんですね。大変失礼じゃないかと私は思っている。私は反論を加えたいと思いますが、やはり家康の御心境ですか。
  427. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 家康さんかどういう心境であったか確かめるすべもございませんので、その問題に対しては直ちにお答えするだけの心の準備はございません。ただ、先ほど来いろいろな御発言があっておりますが、まさに私は財政改革の第一歩を印しなければならぬという重要な役割を 今与えられておりますし、なかんずく今年度予算を精力的に御審議いただいている参議院の皆様方に心から感謝をしながら、戦々恐々、厳粛な気持ちで毎日を務めておるという心境であります。
  428. 秦豊

    ○秦豊君 鈴木派は既に宮澤さんがスタートラインについていらっしゃるんですよね。これは衆目の見るところです。今回の事件では専守防衛に徹しながらなかなかの抗堪性と持久力を実証されたわけですけれども、ただ、事前の戦術情報の解析、収集がまずかった。しかし軽傷で幸いでした。これは栗原防衛庁長官に伺いましょう。あなたの方は、前進あるのみでしょう。
  429. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) これは秦さんに対して大変不満足になると思いますが、切れ味のよいお答えはできませんが、それは私がいわゆる我々のグループを代表する立場にございませんし、党の機関でいろいろやっておりますので、御答弁を差し控えさせていただきたい、こう思います。
  430. 秦豊

    ○秦豊君 総理、大統領選挙をアメリカが終わった直後がまさに自民党の総裁選です。ロンとヤスというのはさんざん出てきましたけれどもね、そういう盟友関係だから、心からレーガン氏の再選を願っても不思議ではない。その御心境はいかがですか。
  431. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 他国に干渉がましいことを、そういう疑いのある言葉は総理大臣として控えたいと思います。
  432. 秦豊

    ○秦豊君 そうあるべきだと思います。しかしまああなたの再選は間違いないにしても、アメリカの方はわかりません、どんなドラマが起こるか。もちろんハート旋風が伸び悩むかそれはわかりません。モンデール氏かもそれはわかりません。わからない要素がありますけれども、どなたがホワイトハウスに入ろうとも日米関係の基調は揺るがない、これは常識論でしょう。
  433. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは当然のことであります。
  434. 秦豊

    ○秦豊君 この項目については最後の質問にいたしますけれども、来る七月には総務庁が発足をいたします。後藤田さんがそのまま座っていくのかどうかそれはわかりませんが、総理大臣の決めることだから。しかし、そのことを一つのてことして、やはり内閣改造というふうなことはこれからの総理大臣の範囲の中では一つの検討課題でしょうか。
  435. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく予算を成立させることに懸命の努力をしているときでございまして、そういうところまで考えを持ち合わせておりません。
  436. 秦豊

    ○秦豊君 以上で、概論のところはこのあたりでとどめたいと思いまして、それは与野党の理事にも了解を得ております。  私の本筋である外交、防衛は次の機会を待ちたいと思いますが、いかがでしょう。
  437. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  438. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  秦君の残余の質疑は後日に行うことといたします。  明後二十一日委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十三分散会