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1984-03-17 第101回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月十七日(土曜日)    午前九時三十分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月十五日     辞任         補欠選任      柄谷 道一君     田渕 哲也君  三月十六日     辞任         補欠選任      野末 陳平君     宇都宮徳馬君  三月十七日     辞任         補欠選任      成相 善十君     田沢 智治君      立木  洋君     神谷信之助君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田沢 智治君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 土屋 義彦君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 増岡 康治君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 中野 鉄造君                 和田 教美君                 神谷信之助君                 立木  洋君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君                 秦   豊君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  住  栄作君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        労 働 大 臣  坂本三十次君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       中西 一郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官) 稻村佐近四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君    政府委員        内閣参事官    中村  徹君        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣官房内閣調        査室長      谷口 守正君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        国防会議事務局        長        伊藤 圭一君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        任用局長     鹿兒島重治君        内閣総理大臣官        房会計課長        兼内閣参事官   渡辺  尚君        内閣総理大臣官        房管理室長    菊池 貞二君        総理府人事局長  藤井 良二君        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁交通局長  久本 禮一君        行政管理庁長官        官房総務審議官  古橋源六郎君        行政管理庁長官        官房審議官    佐々木晴夫君        行政管理庁行政        管理局長     門田 英郎君        行政管理庁行政        監察局長     竹村  晟君        北海道開発庁総        務管理官     楢崎 泰昌君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁次長  小谷  久君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        経済企画庁物価        局長       赤羽 隆夫君        経済企画庁総合        計画局長     大竹 宏繁君        科学技術庁原子        力局長      中村 守孝君        沖縄開発庁総務        局長       関  通彰君        国土庁長官官房        長        石川  周君        国土庁長官官房        会計課長     安達 五郎君        国土庁土地局長  永田 良雄君        法務省民事局長  枇杷田泰助君        法務省刑事局長  筧  榮一君        法務省訟務局長  藤井 俊彦君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長        堂ノ脇光朗君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済局長  村田 良平君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        小野 博義君        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       田中 泰助君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        国税庁次長    岸田 俊輔君        国税庁税部長  渡辺 幸則君        国税庁調査査察        部長       冨尾 一郎君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部大臣官房審        議官       齊藤 尚夫君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省体育局長  古村 澄一君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省援護局長  入江  慧君        社会保険庁長官        官房審議官    小島 弘仲君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済          局長       佐野 宏哉君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        通商産業大臣官        房審議官     棚橋 祐治君        通商産業大臣官        房会計課長    山本 雅司君        通商産業省立地        公害局長     石井 賢吾君        運輸省港湾局長  小野寺駿一君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        郵政省電気通信        政策局長     小山 森也君        労働大臣官房長  小粥 義朗君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        建設大臣官房長  豊蔵  一君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省計画局長  台   健君        建設省住宅局長  松谷蒼一郎君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治省行政局長  大林 勝臣君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        外務大臣官房調        査企画部長    岡崎 久彦君        日本国有鉄道総        裁        仁杉  巖君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○公聴会開会承認要求に関する件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会開会いたします。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ―――――――――――――
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) まず、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十九年度総予算案審査のため、来る三月二十九日に公聴会開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認めます。  つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、これより立木洋君の残余の総括質疑を行います。立木君。
  7. 立木洋

    立木洋君 総理、先日私がお尋ねいたしました総裁声明に関連して、田中氏の影響を一切排除するという問題ですが、あのとき、この点については、総理は御答弁極めてあいまいでした。そして同時に、田中六助幹事長田中総理に会っているという問題についても、あなたは答弁を回避されました。しかし、きょう一斉に新聞が報道していますように、田中六助幹事長がきのうの記者クラブ講演会の後、記者団質問に答えて、田中総理とたびたび会って意見を聞いています、そして大変その意見が勉強になると述べています。  そこで、私は二つの点をはっきりさせたい。一つは、このような田中六助氏が田中角榮氏にたびたび会って意見を聞いているという問題をどう考えているのか。もう一つは、極めて大きな影響力が存在しているということを幹事長が認めている、この点どうお考えになっているか。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、田中幹事長田中角榮氏に会っているかどうかは全然聞いておりません。それから新聞で読んだところでは、あれは昔の話が大部分じゃなかったか、そういうふうに読んで感じておりました。
  9. 立木洋

    立木洋君 今後どうされるのかという点。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、党の問題につきましては党の機関及び党員の考えに基づいて党が運営するべきことは当然で、それは今までどおりそういう主義にのっとってやるつもりであります。
  11. 立木洋

    立木洋君 田中六助氏は幹事長でありますね。あなたの総裁声明から見て、これが正しい状況だというふうに判断されるのかどうなのか。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まあ自民党のことは自民党にお任せください。私は約束したことは実行するのであります。
  13. 立木洋

    立木洋君 あなたの態度はよくわかりました。  田川さん、こういう状況についてどのようにあなたはお考えでしょうか。
  14. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) おっしゃられた問題は自民党内部のことでございまして、私どもとは党が違いますから、外部の問題として見ております。ただし、今おっしゃられたように、政治に大きな影響力をもし及ぼすとすれば、私どもは無関心でいるわけにはまいりません。
  15. 立木洋

    立木洋君 もう一点、二階堂氏が副総裁になったならば自民党内部で激変が起こるというふうなことも言われておりますが、こういうふうになったら田川さんどうされますか。
  16. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 新聞推測でありまして、そのようなことを申した覚えはございません。  それから、二階堂さんが自民党の副総裁になられるとかなられないというような問題は他党の問題でございまして、新自由クラブの代表に河野洋平がなるのがいいか悪いかという問題と同じでございます。
  17. 立木洋

    立木洋君 次元が違いますよ。田川さんが、田中氏の影響力が排除されるということを前提にして連合したと言われましたけれども、よくわかりました。  それでは、きょうは平和の問題、特に非核原則の問題についてお尋ねします。  最初に、今アメリカで行われています民主党の大統領候補を選ぶ経過を通じて起こっているハート現象というものがたくさん報道されていますが、このハート現象について、総理、どのようにお考えでしょうか。
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ほかの国の内政にかかわる、特に政治にかかわる問題につきまして、外国が、ほかの国の総理大臣がいろいろ論評するということは国際外交上も好ましくないことであると思いますから、差し控えたいと思います。
  19. 立木洋

    立木洋君 それはロンヤス関係からですか。
  20. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ロンとかヤスなんという関係ではない、日本アメリカとの関係です。
  21. 立木洋

    立木洋君 お答えになりたくないことがたくさんあるようでございますが、今、国民が最大の関心を持っておるのは、今日依然として軍備拡張が、この悪循環が停止されていないということ、それから核が大量に配備される、そういう危険な状態世界が置かれているということ、こういう国民が大変な憂慮を持っている問題について、総理、どのようにお考えですか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 核兵器は業の兵器であって地上から廃絶しなければならないということは、私は一貫して申し上げておるのでありまして、そういう方向に向かってますます努力していかなければならないと思っております。
  23. 立木洋

    立木洋君 鈴木総理が、この極東への核の配備について、アメリカの核であれソ連の核であれ好ましくないというふうに国会で明言されておりますけれども総理はこの点どうお考えですか。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 鈴木総理が言われました言葉には前後がいろいろあると思います。すなわち、アメリカの核だけ言っているのではなくして、ソ連の核の存在も言っておる。言いかえればゼロベース、地上からみんななくしてしまおう、そういう大きな理想から見れば、ソ連も核をなくしなさい、アメリカもなくしなさい、そういう趣旨のことをおっしゃっておるのであって、一方的に片方がおれはやめたと言ってなくすということは、それは国際的に見てかえって危険が出てくる、そういうお考えも根底にはあるように思いました。
  25. 立木洋

    立木洋君 総理のお考えはどうですかと聞いたんです。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、前から申し上げているように、地上から核兵器は廃絶さるべきである、そういう考えてありますから、ソ連アメリカも、あるいは持っている国も、全部核をやめてもらった方がいいと思っております。
  27. 立木洋

    立木洋君 アメリカ海軍省ホステットラー巡航ミサイル計画主任が、ことしの六月から核のトマホーク、これを新たに配備するということを言われていますが、この核トマホーク対地攻撃用長距離ミサイル、これがどういう性能でどういう特徴を持っているのか、御説明ください。
  28. 古川清

    政府委員古川清君) お答え申し上げます。  トマホークと申しますのは、アメリカゼネラルダイナミックスという会社がつくっているミサイルでございます。巡航ミサイルでございますけれども、このトマホーク特徴といいますものは、まず巡航ミサイルである、したがって音速以下で飛ぶということでございますけれども、この今御質問核トマホークにつきましては、これは射程距離が二千五百キロと言われております。それから、載せますところの核の弾頭、これが、私ども調査をしておる限りでは約二百キロトンという威力を持ったものと聞いております。  それからこの大きさ、これは直径が五十三センチ、長さが六メーター四十、これはブースターを入れての長さでございますけれども、実は五十三掛ける六百四十というのが実際意味を持っているわけでございます。これはとりもなおさず二十一インチの魚雷の大きさと同じでございまして、そもそもトマホークというものは一九七二年から開発が進められておるわけでございますけれども、基本の設計としましては、潜水艦魚雷発射管から打ち上げる。それで、空中に出ました後に畳んでおりますところの主翼も出てくる。これは伸ばしますと二メーター五十ぐらいになります。それから尾翼も出てくる。それから、ジェットエンジンでございますから空気の取り入れ口もつくらなければならない、これも下に出てくる。そういった設計上のいろんな難しさもございまして、恐らく十年以上かかったと思います。  もう一つの大きな特徴と申しますのは誘導装置でございまして、これは非常に高精密の慣性の誘導装置に加えまして、核のトマホークにつきましては、TERCOMと言われておりますけれども、テレン・カンター・マッチングと申しまして、地形を照合して進む。すなわち、二千五百キロの射程巡航ミサイルが超低空を飛ぶと言われておりまして、大体レーダーの死角をくぐり抜けるような形で飛んでいくわけでございますけれども地形を絶えず見ながら、これは当然ディジタルでインプットされていると思いますけれども、照合しながら進んでいく。したがって非常に誤差が少ない、非常に確度の高い命中率を持っておる。こういった点が特徴ではないかというふうに思います。
  29. 立木洋

    立木洋君 今、世界の核を保有している国で海軍にどれぐらい核が配備されているのか、つまり海にどれだけ核が配備されているのか。
  30. 古川清

    政府委員古川清君) これは各国のいろんな軍事上の機密というものがございますので、私ども実は正確にはお答えできない。それだけの材料を持っていないわけでございます。
  31. 立木洋

    立木洋君 アメリカ民間研究機関である政策研究協会ウィリアム・アーキン部長の調べたところによりますと、世界海軍には一万三千個以上の核が配備されている、大変な状態にありますと。今言われましたように、核トマホーク、これは広島原爆の二十倍近くにも上る威力を持っており、北海道の北端から沖縄まで飛んで、そして誤差がわずか三十メートル、言うならば百発百中です。しかも安上がりでできますから、これは大量に配備が可能である。今、一万三千発もある大変な核が海洋に配備されている中で、これ以上核がふやされ、さらにそれに対抗するといって、またソ連が核を極東配備するというふうなことになれば、これはまさに大変な事態になる。日本が核に囲まれた国、こういうふうにならざるを得ない。国民は大変な憂慮をしているわけであります。こういう事態は何としてもやめさせなければならないと考えるわけですが、総理いかがですか。
  32. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) でありまするから、地球上から核兵器を廃絶しなければならぬ。それはソ連であろうがアメリカであろうが、どの国と言わず、地球上からやめてもらいたい、そういう強い願望を持ち、そういう方向に推進してまいりたいと思っておるわけです。
  33. 立木洋

    立木洋君 では、改めてお聞きしますが、あなたは就任直後に、非核原則ができたときは一時寄港は事前協議対象外だったと述べて、現状については本来の我が国の選択とは違う、将来検討事項だと言って、非核原則を見直すかのような発言をされたという報道がありますが、これは事実でしょうか。
  34. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が発言したことはありません。それは「という」という推測引用文のようでございます。
  35. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 内藤功君の関連質疑を許します。内藤君。
  36. 内藤功

    内藤功君 今の中曽根総理発言と伝えられるのは、昨年の三月二十一日の日本経済新聞、ここに書かれている記事なんですね。  それで、私はこれに関連してお尋ねしたいんですが、安保条約の事前協議条項、核の持ち込みの中に、核積載艦船の通過、寄港が含まれるかどうか大きな問題であります。私は、日本政府、日本外務省は、一九六〇年の安保条約ができてから六八年ぐらいまでの間、この期間明らかに核積載艦の通過、一時寄港は持ち込みに当たらない、こういう見解をとっていた時期があったと、こういうふうに指摘せざるを得ないんです。  それは、昨年の十一月二十五日付の日本経済新聞の「私の履歴書」で、当時の外務次官、第二次佐藤内閣――中曽根総理も運輸大臣をたしかやっておられたと思うんですが、このときの牛場信彦次官がこう言っています。「問題になったのは「持ち込まず」の解釈で、当初は通過や寄港までいけないとはいっていなかった。」と。そして、核の持ち込みと酒の持ち込みですね、これを例え話として出しまして、「料理屋に酒を持ち込むというのは、持ってきた酒をそこで飲むことであって、ただ持っていって、そのまま持ち帰るのは、持ち込みではない」と、こういう諭理で言っておるんですよ。私はこれで、外務次官の言うことですからね、日本政府がそういう見解をとっていたことは明らかだと思うんです。この点、外務大臣と当時の大臣でもあられました総理、いかがでございますか。
  37. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 核積載艦の一時寄港あるいは領海通過は、これは核の持ち込みだと、こういうことで事前協議の対象にいたしております。
  38. 内藤功

    内藤功君 そういう時期があったかという質問なんですが。
  39. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) たしか、あれは昭和四十三年ごろでしたか、領海に関する条約か何かの問題があって、それを批准するか何かのときに、当時の三木さんであったか外務大臣が、今までいわゆる国際法上は軍艦については無害航行の権利があった、しかし日本の場合は領海通過も同じようにいけないんだということをさらに明確にしたことはあったと、当時私は記憶しております。たしか四十三年ごろじゃなかったかと思います。
  40. 内藤功

    内藤功君 外務大臣にお伺いしますが、今私の言った見解をとっていた時期はなかったのかあったのか、その点だけひとつ。
  41. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、今総理答弁されましたように、いわゆる核積載艦の寄港につきましては、安保条約の審議の中で、当時の赤城防衛庁長官が明快に事前協議の対象になるということを答弁をいたしております。それから、いわゆる核積載艦の領海通過につきましては、今お話しのように、三木外務大臣のとき、海洋法との関係で無害通行の問題に絡んで、これもやはり核の持ち込みと認めるということで、事前協議の対象とするということをはっきり言っております。それ以来日本としましては、核持ち込みの対象にいわゆる寄港それから領海通過をいたしておるわけであります。
  42. 内藤功

    内藤功君 それ以前がどうもはっきりしないんですね、今の答弁では。私は、牛場さんの発言というのは重大だと思うんです。元外務次官、外務省の最高首脳ですね。そうして駐米大使をやりまして、福田内閣では対外経済の担当大臣を務められた。そして今は外務省の法律に定められた顧問でございましょう。顧問というのは、その人に意見を聞くのが顧問なんです。条約の運用の裏表に通じている人ですよ。しかも去年の十一月二十五日といえば、ライシャワー発言その他が十分あることを承知の上で発言なすっているわけです。  そこで外務大臣、この牛場顧問に聞いていただいて、そうして当委員会に速やかに、当時どういう見解だったのかということを改めて御報告いただきたいと思うんです。いかがでしょう。
  43. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この核積載艦の寄港あるいは領海通過につきましては、これは岸・ハーター交換公文、それから藤山・マッカーサー口頭了解に基づきまして、事前協議の対象になるということを、政府はこれまでもしばしば答弁をいたしておるとおりでございます。したがって、この点については、いささかも今日まで日本の方針というものは変わっていないということをはっきり申し上げておきます。
  44. 内藤功

    内藤功君 当時の外務大臣の三木武夫氏も、実は四十三年三月十二日の衆議予算委員会で、すうっと通り抜けるということは持ち込みじゃないですからね、事前協議の条項にはかからない、こういうふうにちゃんと言っておるわけであります。私はこれは、変わったというふうに言いますといつ変わったか、どうして変わったか、アメリカに言うたのかということを突っ込まれるから、変わらない変わらないと言っておるんだと思います。  私は、最後に総理に伺いたいんですが、総理の胸の内にはやはり事前協議なしに通過や寄港はできると、これが本来の解釈だというお考えがあるんじゃないんですか。それた基づいて今後もそういうような解釈を公然と打ち立てていきたい、あるいは少なくとも通過や寄港の艦船については厳しくチェックをしないというお気持ちがあるんではないかと私は思うのですが、その点、率直に明確に伺いたい。
  45. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前から申し上げているとおり、一時寄港あるいは領海通過も事前協議の対象であり、もし核兵器を持っておれば断る、それは一貫しております。
  46. 立木洋

    立木洋君 では、具体的にお尋ねしますけれども、神戸市議会で一九七五年三月十八日に行われた核兵器にかかわる決議というのはどういう決議なのか、内容を御説明ください。
  47. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 神戸市議会は昭和五十年三月十八日に決議を採択いたしました。前文は省略いたしますけれども、結論の部分は、「よって神戸市会は核兵器を積載した艦艇の神戸港入港を一切拒否するものである。以上、決議する。」、そう書いてございます。
  48. 立木洋

    立木洋君 神戸市長もこの立場をとっておられます。したがって、神戸港には一切の外国の軍艦は、核を積んでいないということを証明する、そういう書類を市長に提出しない限り入港できない、こういうような状況になっているということを外務省御承知でしょうか。
  49. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 神戸市がそのような決議をしましたことは承知しております。その後の実態についての御質問でございましょうか。
  50. 立木洋

    立木洋君 そうですよ。
  51. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) これは一九七五年三月十八日の決議でございますけれども、それから現在に至るまで十六の海軍籍を持っている船が神戸港に入港しております。その中には、口上書をもって核を搭載していないと言っている国もございますし、我々としてはどういう措置が行われたか関知しておりませんけれども、あるいは神戸市に対して直接連絡をしている国もあるかと存じております。
  52. 立木洋

    立木洋君 核を積んでいないということを明確にする、そういうことになっているかどうかということですよ。
  53. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 神戸市の立場としてはさようでございます。
  54. 立木洋

    立木洋君 それじゃ、この決議が行われた後、外国の戦艦、どこどこの船がいつ神戸港に入港しているのか示してください。海軍のね。
  55. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) これは十六隻入港しておりますので、とりあえず主要艦艇で申しますと、駆逐艦以上、七五年にオーストラリアの駆逐艦、それから七九年にイタリアの駆逐艦、八一年にフランスのヘリ空母と駆逐艦、八一年八月にオーストラリアの駆逐艦が入っております。その他フリゲート補給艦、潜水艦、練習艦等が入っております。
  56. 立木洋

    立木洋君 これらの艦船の中で、外務省に対して寄港を要請してきたときに、その日上書の中に核を積んでいないということを明記して神戸市に連絡した船はどれどれですか。
  57. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 現在の主要艦艇の例で申しますと、オーストラリアの駆逐艦ブリズベン、これは七五年でございます。それからイタリアの、これは口上書には書いてございません。フランスのヘリ空母と駆逐艦は口上書で核を搭載していないことを通知してまいっております。八一年の豪州の駆逐艦は口上書には書いてございません。
  58. 立木洋

    立木洋君 一九八二年七月に神戸港に入港を要請してきたイギリスの軍艦モントンとヤントンの場合にはどうなりましたか。
  59. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 一九八二年七月上旬に英側から沿岸警備艇モントン及びヤントン、二隻の神戸港入港許可を要請してまいりましたけれども、同月下旬、右二隻の船の入港は取りやめることとした、そういう連絡がございました。
  60. 立木洋

    立木洋君 取りやめた原因は。
  61. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) それについては承知いたしません。
  62. 立木洋

    立木洋君 今、主要艦艇、これの十六隻言いましたが、私のところで調べましたのをここに掲載しておりますけれども、これらすべて核を積載していないということを明確に文書で神戸市に提出して初めて入港が認められたものであるということを神戸市当局は明言いたしております。外務省を通じて行われなかった場合には、外務省から回されてきた書類にその明細がなかった場合、直接在外公館に申し入れをして、その旨その証明書を手にする、それがない限り入港を認めないということになっております。今言いました一九八二年七月、イギリスの船が神戸港入港の申し入れをしてきましたが、その際にその証明書がなかった。だから神戸市当局はイギリスの大使館にその旨を通告し、イギリスの大使館は核を積んでいないという説明をしたけれども、文書を提出することを拒否したので入港を認めなかったということで、その七月の二十三日、寄港を取り消しております。  こういうふうな状態にあるのがまさに神戸港であります。核を積んでいないということのすべて当該国の証明書がない限り、軍艦の寄港は一切認めておりません。これこそ私は、日本の国是である、つまり非核原則を明確に貫く立場であり、総理が常に強調されている立場だと思いますけれども、こういう神戸市のやり方に対して当然総理は賛成されると思いますが、いかがですか。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは地方自治の本旨に基づいて神戸の市長及び市議会がとっておる一つのやり方でありまして、それはそれとして我我はよく理解できるところであります。
  64. 立木洋

    立木洋君 よく理解できるということですが、それではアメリカが、地位協定が発効された後、アメリカの軍艦がこの五十年に至るまでの間神戸港に何隻入港していますか。
  65. 北村汎

    政府委員(北村汎君) お答え申し上げます。  昭和四十五年一月一日から昭和五十年三月までの間に神戸港に入りました米国の在来型主要艦船の数は全部で二十二隻であると承知しております。この昭和四十四年以前は、外務省といたしましては米国の在来型主要艦船の寄港実績というものについての資料は作成しておりませんので、四十五年以降のことを申し上げました。
  66. 立木洋

    立木洋君 私の方で調べまして、外務当局からいただいた資料で調べますと、地位協定が発効された後、この決議が採択されるまで四百三十二隻の軍艦が神戸港に寄港しております。この決議が採択された後、アメリカの軍艦が神戸港に寄港したのは何隻ですか。
  67. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 昭和五十年三月以降、このような米国の主要艦艇は、神戸港への寄港はいたしておりません。
  68. 立木洋

    立木洋君 それじゃ北村さん、もし仮にアメリカ海軍の艦艇が神戸港に入港を要請してきた場合、今神戸市がとっておる立場を尊重して、当然核を積載していないという証明書を添付するように要請するということになるでしょうね。
  69. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 政府といたしましては、あくまでも安保条約及び関連取り決めに従って対処する所存でございます。
  70. 立木洋

    立木洋君 異本的にそれを要請するのかしないのか、はっきりしてください。
  71. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 安保条約上、米軍、米艦船の我が国の施設区域あるいは施設区域以外の港に対する出入りは自由ということになっております。ただし、施設区域以外の港に対して入ります場合にはしかるべき港湾当局に対する通告をするということになっております。それが安保条約及び関連取り決めに従った我が方の対処ぶりでございます。それに従って対処いたします。
  72. 立木洋

    立木洋君 神戸市の対応を理解できると総理おっしゃいましたが、どうですか。
  73. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は今の答弁で地方自治の本旨に基づきと申し上げました。これは国は国の政策、地方自治体は地方自治の本旨に基づいて、自治権に基づいてまたみずからいろいろな政策を実行している、独立にある程度やっております。それは当然のことで、国は国、地方自治体は固有の自治権に基づいて地方自治体の行為を行う、そういう次元が違うものであるというふうに御理解願いたいと思います。
  74. 立木洋

    立木洋君 神戸市当局も、いわゆる非核原則という国是に従って地方自治権の立場でこれを行使しているんですよ。あなた自身非核原則を厳守すると言われているならば、神戸市がやれるのがどうしてあなたができないんですか。はっきりしてください。
  75. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから申し上げているので、国は外交という関係あるいは防衛という関係で国事をやっているわけで、それは日本全体に及ぼす普遍的政策として行っておるわけです。神戸市は神戸市という自治体の固有の権限に基づいて、神戸市に関することについてそのような処置をしておる。それはやっぱりはっきり分けられて考えるべきで、それを混交すると地方自治が侵害されることも起きかねまじきことになります。
  76. 立木洋

    立木洋君 政府は外交上とおっしゃった。非核原則、国是であるこれを無視してもいい外交上の理由とは一体何ですか。
  77. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 先ほど来、私ども政府といたしましては、このような場合には安保条約及び関連取り決めに従って対応すると申し上げておりますが、そのことは要するに、核の持ち込みというものについては事前協議制度という仕組みがございます。それが確保されておりますので、核の不存在について改めて確認を取りつけるというような問題は起こり得ないわけでございます。
  78. 立木洋

    立木洋君 全くの詭弁ですね。総理事前協議というのは核を入れさせないための制度でしょう。事前協議があるから、核の存在をあいまいにして寄港されているかどうなっているかわからない状態だと。ところが、そうでない事前協議制度のない国には、神戸港みたいに非核証明書をちゃんととれて、核が積んでいないということが明確にされない限り寄港しない、そちらの方が非核原則が徹底しているじゃないですか。まさに事前協議というのは核を入れないなどという口実で、事実上核を入れることの隠れみのだ、そう思いませんか。
  79. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点につきましては、重ねていつも外務大臣あるいは政府委員答弁申し上げているとおりでございます。
  80. 立木洋

    立木洋君 事前協議をこちらから申し入れることがあるでしょうか。
  81. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 安保条約第六条の実施に関する交換公文における事前協議は常に米側から発議することになっております。
  82. 立木洋

    立木洋君 北村さん、この船に核があるかないかということをアメリカに直接的な形で聞くことがありましたか。または聞いたことがありますか。
  83. 北村汎

    政府委員(北村汎君) そういうことをいたしたことはございません。
  84. 立木洋

    立木洋君 事前協議でこちらからアメリカにどうなんだと聞くことを全然やらない、核があるかないかも聞かない。事前協議制度というのは一体何ですか。本当に非核原則、核を日本に入れさせない、持ち込ませないということを国是として徹底的にやるならば、神戸市のこうした例もあるわけですから、本当に真剣に国民の立場に立って考えるべきだ。まさに口先だけではなく、実行でそのことを示していただきたい。総理、真剣に考えていただきたいですが、どうですか。
  85. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事前協議制は、六〇年でございましたか、安保条約改定、そのときの岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解以下、諸般の両国の了解に基づいて行われておるのでございまして、ずっと今まで維持されてきているものであり、変える考えはございません。
  86. 立木洋

    立木洋君 じゃ、少なくとも地方自治体の権限は尊重するという立場であるならば、今後こうした要請が出てきた自治体に対しては、その自治体の立場を尊重してやるということは間違いないでしょうね。
  87. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自治体は自治体の固有の自律権がございますから、法律の範囲内において行うことについては我々もできるだけ協力するのが筋であろうと思いますが、しかしやはり非核原則のこの国策という国の外交法上の大方針というものは、国家としては基本にあるわけであります。
  88. 立木洋

    立木洋君 これまでのやりとりでまさに事前協議制というのは空文にすぎないと。現に神戸市がこうした形、住民の立場に立って非核原則を徹底して実施するということが実現できているにもかかわらず、国が非核原則を徹底して遵守しなければならない立場にあるにもかかわらず、そういうことがやられていないということはきわめて重大なことです。今後ともこの問題は明確にさせるために追及していきたいと思います。  次の質問ですが、昨日午前十一時に福岡高裁でカネミ油症事件についての控訴審判決が行われました。原告勝訴、国の責任を認めるという内容のものであります。この事件が発生してから今日までの間、患者の方々はまさに筆舌に尽くしがたい苦しみを味わわれ、被害者は六十四人も亡くなっておられます。国は単なる訴訟の当事者だけではなくて、国民の生命、健康、生活を守る義務を負っておるわけでありますから、これ以上被害者をさらに苦しめるべきではないというふうに考えます。国としては上告をやめるべきだと考えますが、厚生、農林、法務、最後に総理大臣、いかがですか。
  89. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 昨日の判決、大変厳しいものと私どもは受けとめております。食品中毒、このために大変長い間、十五、六年の間苦労しておられる患者の皆さんには本当に心から同情を禁じ得ないのであります。厚生省としては、今日までも患者の皆さんの健康を守り、何とか健康になっていただくために、その治療法の研究あるいは患者の皆さんの健康診断、こういうことに、また世帯更生資金の貸し付け十億余の国費を投じてこれまで対策を講じてまいったのでありますが、これからも御指摘のようにこの患者の皆さん方の一日も早く治療方法を確立したり、また生活困窮者というようなものが出てこないように、また出てきた場合はそれなりの厚生省としての対策を講じてまいりたいと思います。  ただ、この裁判についての上告するかしないかという問題は、これは食品中毒についての国の賠償責任という今後に大きな国民の負担に関するいろいろの問題があり、またこれは農林省、法務省、三省協議の上、相談してやることになっておりますので、今後法務省、農林省と協議していずれかに判断してまいりたいと思います。
  90. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 十六年にわたる患者の皆さん、本当にお気の毒ということを思っております。今回の判決、厳しくこれを受けとめておりますが、いま厚生大臣から御発言ございましたように、法務、厚生両省とも相談して、できるだけ早く対処したいというぐあいに思っております。
  91. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 昨日判決をいただいたのでございますが、今その判決内容を慎重に検討いたしております。今も厚生大臣、農林大臣からお話ございましたように、厚生、農林関係各省と十分よく相談した上で上告するかどうか考えていきたいと思っております。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 被害者の皆さんには心からお見舞いを申し上げます。これが対応につきましては、関係各省で早期に協議させたいと思っております。
  93. 立木洋

    立木洋君 被害者の方々は話し合いによる一刻も早い解決を望んでおられるわけです。被害者に対する賠償問題はもちろんですが、恒久治療対策等についても国は誠意を持って協議に応ずるべきだというふうに考えますが、厚生大臣並びに総理にお願いします。
  94. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 患者さん方とは従来からもいろいろの面でお話し合いをしてまいっております。今後もそれを従来と同じようにお話し合いをいたしたいと思っております。その上で、厚生行政として対応できるものがございますれば積極的に対応してまいりたいと思っております。
  95. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま政府委員答弁申し上げましたが、できるだけ早期に対応させるようにいたします。
  96. 立木洋

    立木洋君 総理、今度のこの問題というのは、いわゆる食品公害被害者の救済、これについての法的な処置ですね。これが非常に重要だと私は思うんですよ。この件に関して言いますと、昭和四十八年、さらには昭和五十年、衆議院で我が党の三浦久議員が質問いたしたのに対しまして、当時の齋藤厚生大臣が食品公害被害者救済のための特別の法を制定するという旨の約束がありました。それから今日まで十一年たっているわけですが、この法の制定を怠ってこられているのはどうしてですか。
  97. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 食品事故の救済制度の問題でございますが、御承知のように食品というのは本来安全なもので、医薬品のような副作用を前提とするものではない、あるいはまた食品事故の場合には加害者がほぼ常に明確であるというような特別の問題がございます。そこで、私どもこれまでこういった問題点を中心に検討を続けておるわけでございます。
  98. 立木洋

    立木洋君 総理、十一年間かかっているんですよ。本当にこの問題は、やっぱりこの判決を契機にして、国が責任を持ってカネミ被害者の救済とともに食品公害の根絶のためにも食品行政を厳しく見直していく、法的にもきちっと対応する、こういうことが必要だと思いますが、総理のお考えを聞きたい。
  99. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) カネミの問題が起きましてから食品行政に対する検討を厳しく見直すようにしておることは御存じのとおりでございます。今後も食品行政につきましては厳格に注意を行いながら対応してまいりたいと思います。
  100. 立木洋

    立木洋君 法的な対応を最後まで強く求めておきたいと思います。  もう時間がありません。私はきょうさらに教育の問題、そして健康保険法の問題、あるいは労働者の問題、さらには防衛問題等お聞きする予定でした。関係省庁にも準備をお願いしたんですが、時間がないためにこれ以上質問を続けることはできませんが、これらの残余の質問については次の機会に質問さしていただくということで、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
  101. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で立木君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  102. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、田渕哲也君の総括質疑を行います。田渕君。
  103. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、五十九年度予算並びにそれに関連する諸問題について質問をしたいと思います。  まず、財政問題についてお伺いをしたいと思います。  この五十九年度予算というものを見るときに、総理はこれは臨調答申を忠実に守って編成したということを言われております。しかし、私は必ずしもそうは思えないのであります。例えば臨調答申、臨調の最終答申でありますけれども、五十八年度の予算案についても、一般会計歳出の一部を特別会計や財政投融資に振りかえさせるようなやりくりが見られる、あるいは本格的な制度の改革は十分でない、こういう指摘がされておるわけであります。さらに、臨調第二部会報告によりましても、緊急避難的措置の回避ということがうたってありまして、制度の根本的改革につながらない一時的ないわゆる緊急避難的な措置については今後極力回避しろ、また既往の措置はできるだけ早期に解消しろ、こういうことが書いてあるわけであります。  ところが、五十九年度予算を見ますと、やはり五十八年度予算と同じような一時的なやり繰り、緊急避難措置というものがたくさん見られるわけであります。例えば、まず第一は国債整理基金への定率繰り入れの停止、第二は住宅金融公庫利子補給金の財投よりの借り入れ、さらには住宅・都市整備公団補給金の予算計上の停止、また一般歳出の見せかけの〇・一%のマイナス、こういった点を見ますと、私は臨調の考え方に全く反した予算であると言わざるを得ないと思いますけれども総理はどうお考えですか。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政が苦しい中で予算編成をいたすのでございますから、一〇〇%御満足のいくことは非常に難しいことでもあり、また恐縮に存じておるところでございます。しかし、今年度予算編成に当たりましては、いわゆるマイナスシーリングを設定しまして、いわゆる一般行政経費については三百数十億円前年度よりマイナスにいたしました。そのほか、医療保険とかあるいは中央、地方の財政負担等の問題につきましては制度にまで改革のメスを入れまして、将来的に財政を健全にする措置を講じたところであります。そのほか行政改革につきましては、電電公社の改組法案以下二十三本の行革法案を今提出しておるのでございまして、その点につきましては行革の道をまじめにたどっていると自分は考えております。
  105. 田渕哲也

    田渕哲也君 大蔵大臣、五十九年度の予算編成の基本方針というのが出ておりますね。「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」、そのしょっぱなに書いてあることは何かというと、国債発行というものを削って昭和五十年度以降の実績の最低の二五%とすることができた、だからこれは財政再建に新たな一歩を踏み出したというふうにも言っておられますけれども、私はこれは全くのインチキじゃないかと思うんですね。といいますのは、五十七年度から国債整理基金の定率繰り入れが停止されております。本来これを規定どおり繰り入れしますと、それは赤字国債でその分増発をして処理をしなくてはならない。だから、実質的に言うならば、これは規定どおりやったとすると赤字国債は二七・三%発行しなくてはならないことになるわけです。だから実質的には昭和五十六年度の予算の程度である。ところが、五十年度以降、財政再建特例公債が始まって以降最低水準だ、これは政府の財政方針の第一番に書いてあるというのはどういうことなんですか。全くこれは何の役にも立たないことじゃないでしょうか。
  106. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはおっしゃいますように、五十九年度予算と今後の財政改革の一番最初のところへ私ども考え方を申し上げてきたところであります。ただ、田渕さんおっしゃいます御指摘、すなわち定率繰り入れをやらなかったから結果として二五%になっておるではないか、この御指摘はそのとおりだと私どもも受けとめるべきであると思っております。私どももこの問題についていろんな議論をいたしましたが、最終的には一時これを停止するなどの措置をとることもやむを得ないという考え方を財政審等でも議論をしていただいてお示しをいただいたわけであります。したがいまして、結果といたしましてはぎりぎりの努力をいたしまして前年度当初発行予定額より六千六百五十億円減額した、そういうことになるわけでございますが、御指摘の数字からくる考え方は私どもはそのとおりでありますと素直に答えて結構だと思います。
  107. 田渕哲也

    田渕哲也君 私が申し上げたいのは、こういう数字のつじつま合わせのためのやりくりが多過ぎると思うんです。そしてそれがかえって判断を誤らせることになる。だから、いかにも国債発行が二五%で五十年以来最低だなんということを皆に思わせる、これは誤りだと思うんですね。それから定率繰り入れの停止も、これも全くこういうものを停止して歳出を削ってみても何の役にも立たないことである。もちろん赤字国債で利子を払わぬといかぬ、借金をするくらいなら落とした方がいいということもあるでしょうけれども、もう既に国債の償還がどんどん来るわけです。定率繰り入れをしなければその分予算措置をしなくてはならない。何にも実質的に効果のないことをやって数字面だけ格好のいいように見せかけておる、こういうことを私はおかしいじゃないかということを言っておるわけです。  住宅・都市整備公団の補給金の問題においても予算計上をなぜしないのか。これは五十八年度で千二百億余り行っておりますね。五十九年度でも千億円はやっぱり要るわけですよ。予備費でこんな多額のものは処理できないでしょう。そうすると、これは補正予算を組まざるを得ない。だから初めから補正予算を前提として出した予算なのかということになるわけですが、いかがですか。
  108. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この問題はかねて御指摘をいただいておるところでございます。結局、御案内のように省令等の問題がございますが、私どもといたしましては、一般論として、最終的にはこの臨調答申等の指摘を踏まえて、これを正確に対処さしていただきたいというお答えに今日とどまっておるわけであります。  基本的な考え方といたしましては、やはり決算払いということをいろいろ議論いたしました結果、とり方としてはそのような計上の仕方ではなく、計上しないという方向で対処したわけでありますが、現実問題としてどのようなことが適切かということについていま少し検討さしていただきたい。私は、この御指摘も、田渕さんのおっしゃいます、本来よしんば見込みであろうとも当初予算からのせておくべきであるという考え方も一つの私は考え方だと思います。やはり財政状況の中で今おっしゃいましたようなぎりぎりの努力、あるいはつじつま合わせという御批判もあるでございましょう、そういうことに対処して今年度は御指摘のような措置をとりましたが、省政令等から見ればそれはとってはならない措置ではないわけでございますけれども、正確な措置を行うという判断に基づいて私も答弁いたしましたので、どういう計上の仕方が最も正確な措置であろうかということについてはいま少し検討をしてみようというお約束をしておるところでございます。
  109. 田渕哲也

    田渕哲也君 いずれにしましても、これは五十九年度予算で措置をしなければならない問題でしょう。そうすると、今回の出された予算、当初予算というものはこの点に関しては補正予算を前提としておるということなんですか。
  110. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 必ずしも補正予算を前提としておるとは言えないと思います。ただ、およその義務的当然支出になるものがございますので、当初予算で計上するというやり方、それを後払いにする。そこのところに、もとより今現状において最善と信じて御審議いただいておるわけですから、補正予算というものを前提としたものではございませんが、どのような措置の仕方が最も正確であるか、いま少し検討さしていただきたいと思っております。
  111. 田渕哲也

    田渕哲也君 財政再建というのはやはり非常にこれは重要な問題ですけれども、私はこの財政再建というのはそう短期に簡単にできるものではないと思うんです。したがって、その年度年度でやりくりをして体裁を整えるなんということをやっても、そんなことは全く無意義のことだということをまず主張したかったわけであります。  そこで、財政再建ということについてお伺いしますけれども、これは一体どういう状態になれば財政再建されたというふうにみなされるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  112. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは私はやはり二段構えというふうに御理解いただかなければならぬではなかろうか。その第一段というのは、一般会計における単年度ごとの新規財源としての特例公債の発行をゼロにするということがやっぱり第一般である。今の場合、私どもはそれが一番念頭にあるところであります。第二段階としては、当然のこととして公債残高を可能な限り減らしていくということでございましょう。が、今のところ第一段階として考えるのはやはり特例公債発行をゼロにするということではなかろうかというふうに理解しております。
  113. 田渕哲也

    田渕哲也君 確かに、それは当面の目標でありまして、赤字公債の発行がゼロになったというのは、家計で言うならばもらってくるお金と出るお金が大体つり合ってサラ金から借金しなくてもやれるようになったという状態だ、確かにこれは第一段階です。ところが、今までのサラ金の借金がいっぱいたまって、その利払いだけで四苦八苦しておるという状態だと思うんですね。だから決してそれは健全な財政とは言えない。やはりこのサラ金の借金を返してしまう、そこで初めて健全な家計というものになるわけでありまして、そうすると国の場合、特例公債の残高をゼロにするというのにはどれぐらいかかりますか。
  114. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 特例公債の残高をゼロにするということがどれぐらいかかるか、これを正確に今答えるだけの我々に確たる目標が定まっておるわけではございません。やっぱりとりあえず発行そのものをゼロにする。今おっしゃったように、ただ従来いわば依存しております国債というのは言ってみれば国民の皆さん方の今日まで蓄えられた貯蓄等を国債という名において活用していただいておる、あるいは私どもの方の側から見ればそれをお借りしておる。だから、今後はやはりそれを上回って伸びていくであろうその貯蓄性向というものを当てにしない形で、これが産業等々に機動的に対応力になり得る状態を政府が妨げていくという考え方を持たないでいって、まずはそのことを第一にやる。そして第二段階の問題につきましては、やはり私どもは、非常に厳しい状態でございますから、まさに毎年毎年の予算編成を通じながら厳しくこれに対応しつつ、最終的には、いつも申し上げますように、負担するのも国民、受益者もまた国民でありますだけに、こうした国会の議論等を踏まえながら、最終的には国民の選択の問題になろうかと思うのでございますけれども、今第二段階の目標数値を定めるという状態には、残念ながら今後の議論を通じて検討していくとお答えする以上のお答えはできません。
  115. 田渕哲也

    田渕哲也君 大蔵大臣は、特例公債の借換債の発行の大体の予定というものは建設公債と同じように六分の五というめどを出しておられます。これでいきますと、六十五年に赤字公債の発行がゼロになっても、このとおりいきますとそれからさらに六十年かからないと残高はなくならないということになるわけです。建設公債の場合は家計で言うならば住宅ローンみたいなもので、子供の代も住宅は使うから子供にそれを引き継がせるということも考えられますけれども、特例公債の場合はこれは世代を超えてそれが残るというのはまずいと思うんですね、この点はいかがですか。
  116. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 基本的には私もその考え方のとおりであるべきだと思います。まさに建設国債は、何としても、それの重要の度合いこそ違え資産が残ってまいります。だから、世代間を継続して今日の代金を後の世の納税者に転嫁していくという性格でありますだけに御指摘のとおりであると思います。したがいまして、これが借換債、今、まずは建設公債と同じような考え方のことを申し述べておりますが、その発行の仕方についてはいろいろな工夫がまた必要ではなかろうかというふうに考えております。
  117. 田渕哲也

    田渕哲也君 世代を超えてというのは大体どれくらいの期間がというのはいろいろあるでしょうけれども、私は少なくとも三十年ぐらいの間にはこれはなくしてしまわぬとまずいと思いますが、いかがですか。
  118. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) それは大変好ましいことでございますが、それがいわば俗によく言われます、必ずしも経済学上の定義とは言えないが、調整インフレとかそういう形のものであってはならない。大変厳しい課題でございますが、おっしゃる御指摘は私どもは間違った御指摘ではない、そうあるべきだと、まあ三十年がいいのか四十年がいいのかという厳密な区分はそれは別として、考え方は私も変わりません。
  119. 田渕哲也

    田渕哲也君 それと、赤字国債であろうが建設国債であろうが国債であることには変わりがないので、財政的に見た場合にこれはそれほど分けて考えるべきものでもないという考え方もあろうかと思います。ただその場合に大事なことは、やはりGNPに比べての国債残高、これはひいては歳出の中に占める国債費、利払い費、そういうものにも関連してくるわけですけれども、これが余り高いと財政が硬直化してやるべき施策ができないわけであります。だからやはりGNP比の国債残高というものが適正な水準になるということが私は現実的な一つの目標にならなければいけないと思うんです。大蔵大臣は大体どれぐらいになれば適正だと考えておられますか。
  120. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 国債残高の対GNP比の問題でございますが、御案内のように、ことしが約四一%、こういうことになるわけであります。そして今度は一般会計に占める国債費は一八%、こういうことになります。御指摘のとおり、予算編成上大きな圧迫要因だと、確かにそのとおりでございます。私、いつも考えるのでございますが、国債政策というのは、今おっしゃいましたように、建設公債と赤字公債との間の資産が残る残らぬの相違はございますが、全体から見て財政の圧迫要因としては借金は借金に違いない。それと同時に、いつも矛盾に感じますのは、国債費とは言うなれば利払いである。予算というものは元来応能主義等によって徴収された租税をもって富の再配分が行われるというものであるとするならば、国債費は言ってみれば利払いでございますから、企業であれ個人であれ、不特定の人に対して富のいわゆる再配分とは別の機能で配分されていくというところに問題があると率直に思っております。  したがいまして、圧迫要因だけでなく国債政策そのものに対する問題も基本的にはあろうかと思うのでありますが、どういうふうなテンポでやるかということになりますと、不確定な要素が多うございますので具体的な数字を示すことは今の場合私は難しいと思います。従来からも、いや一〇%まではいいとか、あるいは一五%がガイドラインだとか、いろんな議論を続けながらこうなったわけでございますから。が、お示ししました仮定計算例等でやってみますと、これはあくまでも仮定計算でございますからこれが一つ方向を示唆するという性格におとりいただく性格のものではなかろうかと思いますが、七十二年度には三〇%以下と、こうなるような、一応仮定計算でいきますとそういうような形になりますと。だから、おまえはどれが適当だと思うかとおっしゃいましたが、この問題等をもこうして議論する中でその方向を模索し国民の合意を得ていくという意味においてあえて仮定計算をお出ししたものと申し上げるならば二八・七ぐらいに七十二年になるだろう、そういうものを基本に置いて御議論を重ねながらこの数値を見出していくべきではないかという考え方でございます。
  121. 田渕哲也

    田渕哲也君 今、三〇%というような数字も言われましたけれども、外国の例を見ましても、アメリカが三二%、イギリスが四五%、西ドイツが一八%。イギリスが非常に高いわけですけれどもアメリカもどんどん財政事情が悪化しつつある。それから予算に占める利払い比はアメリカが一二・五%、イギリスが六・三%、西ドイツが一一・四%。こういうことと同時に、日本予算、我が国の予算が以前はどういう形であったか。特例公債が出たときの五十年度は、GNP比の国債残高がこのときはまだ少なかったわけですけれども、それからしばらくたって五十四年度で二五%ですね。三〇%というのは五十五年度ということになるわけです。ということは、七十二年になってやっと五十五年の状態にまで戻るにすぎない。だから、いかに財政再建というのは前途遼遠であるかということがわかると思うんです。五十五年の状態に戻すにもまだ十三年かかるということになるわけです。こういう点から見ますと、本当に財政再建という、財政が健全な情勢になるというのは大変なことだと思うんですね。  中曽根総理は、総理大臣として何年ぐらいやられるつもりですか。
  122. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治は一寸先はやみだと言われますからいつだかわかりませんが、ともかく毎日毎日、今お約束した国策を遂行していくために全力を注いでまいりたいと思っております。
  123. 田渕哲也

    田渕哲也君 今まで一番長かった佐藤総理ぐらいやられたとしても、そのときはまだ日本の財政は健全な状態になっていないということなんです。竹下大蔵大臣もやがて総理大臣になられて、あるいはまたそれも卒業されるかもわかりませんけれども、そのときでも完全な状態になっているかわからない。自民党政権もそのときどうなっているかわからない。だから私は、財政再建というのはそれほど本腰を入れて取り組まなければできない問題である。今の内閣に与えられた責務というのは当面の予算のつじつま合わせをすることじゃないんです。後、十五年も二十年もかかる財政再建の方向が誤まらないようにその最初の基盤をつくることじゃないかと思うんですね。それをしっかりやっていただかないと困ると思うんです。その点、総理、いかがですか。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは全く同感でございまして、一政党、一内閣の問題を超えた国の基本に関する大事な問題であると思います。今の御意見には全く同感でございます。
  125. 田渕哲也

    田渕哲也君 後、十数年の間に野党が政権をとることがあるかもわかりませんけれども、そのとき野党の内閣がさすがあのときに中曽根内閣はちゃんとやっておいてくれた、だから我々もその方針を大体踏襲して財政再建ができる、そう評価されるようにぜひやっていただきたいと思うのであります。  それからもう一つ、そういう意味で考えますと、この財政再建というのは短期の問題ではなくて中長期の取り組みが大事だということになると思うんですけれども、そのための条件というものがあると思うんですね。この点についてどう考えられますか。総理、どうですか。
  126. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ちょっと御質問の趣旨、定かに理解していないかもしれませんが、財政再建、財政はまさに中長期でとられるべきであると基本的にはそう思います。だから、先ほど申し上げましたように、第一段階の目標は八〇年代の経済の「展望と指針」等を受けて我々が財政改革に当たっての基本的考え方としてお示ししておる赤字公債脱却の努力目標を六十五年に設定した。しかし、基本的にはおっしゃるようにこれは中長期の課題としてたゆまざる勉強を続けていかなきゃならぬというふうな理解は私もひとしくいたしております。
  127. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、財政再建をするために非常に重要なことは、中長期的に見て一定の経済成長というものがないとこれは非常に困難だろうと思うんです。過去の実績を調べてみましても、税収というものがそのときどきで上がったり下がったりして政府も非常に見込みが違う点が多々あったわけでありますけれども、大体どういうときにそうなっておるかというと、GNPの実質伸び率で見て三%台まで下がったとき、つまり四%を切ったときは、これは昭和四十一年から今日までの二十年足らずの実績でありますけれども、例外なく弾性値が一%を切っております。そして、その甚だしい例は五十六年、五十七年でありまして、三兆円、六兆円というような税収欠陥が出ておるわけですね。三%台になった、あるいはそれ以下になったというのは、四十一年以降考えてみますと、四十九年、それから五十年、五十六年、五十七年でありまして、いずれも税収は弾性値が一%を切ってがくんと落ち込んでおります。こういう点から考えましても、実質ではやっぱり四%台の成長を切ってはいけない、名目ですれば六%以上の成長を常にしなくてはならないということが言えるわけであります。これをもし下回るようなことがあると財政はたちまち失速してしまうというのが過去の例で出ておるわけでありますけれども、この点についてどうお考えですか。大蔵大臣と経企庁長官からお伺いしたいと思います。
  128. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今の税収についての見方、それは数字も示しておりますようにそういう傾向にあると思います。さらにつけ加えますならば、比較的名目成長の高いときに、またあるいは物価の上昇率の高いときに税収はふえるという傾向にもございますが、実質成長の面からとらまえますと、今おっしゃった傾向はそのとおりであると思っております。  そこで、いわば五十六、七という、予期せざるとでも申しますか、そういう試練の時代を切り抜けて、そうして五十八年度三・四%という実質成長というものがおおむね確保されたでございましょう。それで、それらを踏まえながら四・一%ということが一応このたびの予算審議に当たって政府が申し上げております五十九年度の実質成長率でございます。そうして、仮定計算でもあるいは財政の中期展望でも申し上げておりますように、大体六ないし七というふうに八〇年代の「展望と指針」で言われております。その中間値の六・五をとって、それに一・一の弾性値を掛けたもので仮定計算等もつくっておるわけでありますが、その数値自体が、これを目標でありますという数値として使ったものではございませんけれども、まさに名目成長六ないし七、そして実質成長四、それで一番大事なことは物価上昇率を三、もちろん全部に程度がついておりますが、失業率が二%程度、卸売物価一%程度というような中期展望というものが今田渕委員おっしゃったものとおおむね私どもの方から見ても整合性がある数値ではなかろうかというふうに理解をしております。
  129. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 経済成長の展望につきましては、御案内のように昨年の八月に一九八〇年代の「展望と指針」というものを出しております。これによりますと、八〇年代、これからの約七年間四%成長を目標にする、またそれが可能である、その場合の名目成長は六ないし七、今大蔵大臣がお述べになったとおりであります。  それから一昨年は、二十一世紀までの十数年を展望いたしまして、やはりこの十数年間は四%成長は可能であるということを約一年がかりの作業で結論を出しまして、これも詳細発表をいたしておりますが、今のお話は経済成長と財政再建との関係いかん、こういうお話だと思いますが、財政再建の定義が先ほど来議論になっておりますけれども、私は財政再建の定義いかんだと思うんです、財政再建ができるかできないかは。それは赤字国債を当初の計画どおり返していくということであればなかなか大変だと思いますが、借りかえていく、つまり俗な言葉で言いますと借金は返さぬ、しかも建設国債だけは引き続いて発行していくということを目標にするということであればこれはある程度可能になるのではないか、こういう感じがいたします。  それからもう一つここで注意しなければならぬのは、これも先ほど来議論をしておられますけれども、例えば「展望と指針」に言っております名目六、七%成長の上の方の七%成長がずっと継続するといたしますと、これからの十六年、二十一世紀まで考えますと、現在のGNP名目約三百兆ちょっと足らないところでございますが、およそ九百兆を若干超えるのではないか、こういう感じもいたします。現在の貯蓄率がそのまま持続されるといたしますと、年間の貯蓄の増加は百兆を超える、こういう経済が考えられるわけであります。その中においてどの見当まで国債が発行されておってもそれは健全なのか、こういう議論も別の角度からあると思うんです。でありますから、私は、この財政再建という問題は経済成長との裏腹の関係でございまして、いろんな角度から検討していかなければいけないと思います。  そして、国債の発行そのものを一概に不健全である、こういう議論もまたもう少し検討し直す必要があるのではないか。こう思っておりますのは、昭和五十年からざっと百兆余りの国債を発行いたしましたけれども、しかしその間日本の経済は二倍以上に成長しております。当時の五十年の税収は、国税と地方税合わせまして二十二兆だったんです。ところが、ことしの大蔵省の国会に出しておられます資料を見ますと五十七兆ということになっております。でありますから、税収は三十五兆ふえておる、こういうことにもなるわけであります。日本の経済の基礎的条件は世界で一番いい条件が維持されておる。こういうことを考えますと、これはやはり総合的に判断をいたしませんと、なかなか正確な議論にはならないのじゃないか、こういう感じがいたします。
  130. 田渕哲也

    田渕哲也君 私の言い方が少し悪かった面があるかもわかりませんけれども、政府の四%成長というのは、これは平均ですね。平均ですから、四%を超えるときもあれば、切って三%台あるいはそれ以下になるときもある。私が先ほど申し上げたのは、四%を切ると膨大な税収欠陥が出て財政が失速するということを申し上げたわけです。だから、最低でもやっぱり四%を切らないようにせぬといかぬ。ということは、平均ではもっと高くしないといかぬということなんです。やっぱり実質五%とか、それぐらいの経済成長をしないと財政再建はできないのじゃないか、こういう趣旨でありまして、この点はいかがでしょうか。
  131. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほど申し上げました「展望と指針」に四%という一応の目標を示しておりますけれども、過去三年は三%、非常に悪い数字が続いております。これは四年前、第二次石油危機が起こりまして経済が大混乱をしたその後遺症がずっと続いておったからだと思います。幸いに世界経済もようやく立ち直りの傾向が出てまいりましていい方向に進んでおりますので、これからはやはり四%以上の成長が十分可能になる条件が熟しつつあるのではないか、こういう感じがいたします。少なくともこの四%成長を維持するということは、結局いいときにはお示しのように四%以上の、あるいは五%あるいはそれ以上の成長が持続されませんと平均の四%にはならない、このように思うのでございます。世界経済のいい状態が続けばお示しのような四%以上の成長を継続することも可能でなかろうか、このように思います。
  132. 田渕哲也

    田渕哲也君 いずれにしても、これはやはり十年余り先を見ての政策でないといかぬと思うんです。だから、景気刺激策といいましても私は一時的なものじゃ財政再建の役に立たない、やっぱり中長期的に日本の経済が安定して、少なくとも五%程度の成長をするということが私は大きな条件のような気がするわけです。  そこで、政府に考えていただきたいことは、今後十年、二十年、日本の経済が五%程度の成長をしていけるような政策をとっていただきたいということであります。それにはどういうことがあるか。いろいろあるでしょうけれども、やっぱり一つは行政改革ということを徹底してやってもらって民間の経済に活力を与えてもらわないと困る、これが第一点だと思います。  それから第二点は、経済が成長する活力を持つためには、これはまた後でいろいろお伺いしたいと思いますけれども、やはりこれから先の新たな成長分野というものを伸ばしていくという政策をとるべきだ。例えばエレクトロニクスとか情報化社会とかバイオテクノロジーとか技術革新ということがどんどん出てきておりますけれども、そういう新しい分野の成長政策を思い切ってとっていかなければならない。  それから第三は、社会的なニーズというものがまだまだ我が国にはあります。住宅だっておくれておる、あるいは環境整備だっておくれておる、そういうところでやはり社会資本の整備ということも安定的にやるのも大事だ。  それからもう一つは農業でありまして。現在の日本の農業というのは非常に私は窮地に陥っておる。農業というものをもっと活性化する方法は考えられないだろうか。ただ単に、保護政策一点張り、保護づけ農業、補助金づけ農業じゃなくて、基盤整備にもっと力を入れることは大事でありますけれども、競争原理もできる限り導入して農業の活性化を図る。こういうことで中長期の経済発展という対策をぜひ立てていただきたいと思うのであります。この点、総理、いかがでしょうか。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今、御指摘になった方針並びに個々のこれから特に力を入れるべき項目等については私も同感でございます。ただ、成長の問題は少なくとも四%台を維持する、そういう考え方でいきたいと思っております。
  134. 田渕哲也

    田渕哲也君 経企庁長官、お願いします。
  135. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) ある程度高目の経済成長を続けるために、今幾つかの条件をお述べになりました。今お述べになりました幾つかの条件につきましては、またその対策もお述べになりましたが、それにつきましては私どもも全く賛成でございます。
  136. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから、それにつながる問題として私は具体的な提案をしたいと思うんですけれども、投資減税は今回の予算でも少し行われましたけれども、やはり投資減税にもっと力を入れるべきだと思うんです。その理由というのは、一つは、新しい分野というものを発展させるにはやっぱり投資というものがどんどん行われていかなくてはならない。それと、投資減税はGNP増への寄与率というのが非常に高い。これは通産省の資料でありますけれども、設備投資研究会の報告によりますと、公共投資に比べてGNP増に対する寄与率は倍ぐらいある、それから財政に対する貢献率は三倍以上あるということが言われております。この点はいかがでしょうか。
  137. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) ことしの経済成長の一番大きな柱はやはり民間の設備投資、これが非常に経済成長の上で大きな役割を果たす、こう思っております。この民間の設備投資を促すために投資減税が必要であるということはこれはお示しのとおりでございまして、政府の方でもいろいろ検討いたしました結果、本年の予算でも若干の投資減税を実施することにいたしております。経済政策の見地だけからいいますと、実際はもう少し投資減税の拡大をしてもらいたい。私はこのように思っておるのですけれども、ただこれは財政との関係もございますのでことしはこの程度におさまっております。  アメリカなどは、ことしは設備投資がGNPの一一%ないし一二%だ、こう言っておりますけれども、その背景には景気がよくなったということもありましょうが、しかし大規模な投資減税が背景にあると思うんです。日本の場合も設備投資は若干回復しておりますけれども、大体ごとしは前年に比べて約五%伸びるということでありますから、アメリカなどの伸び方から見ますと非常に低い水準だと思います。これまでは日本の方がはるかに高かったのですけれども、今はアメリカの投資の方がはるかに高い水準になっておりまして、こういう状態が続きますと経済の競争力が逆転するのではないか。そういう点を心配いたしますので、今御指摘の点は産業政策上の非常に大きな課題であろう、このように理解しております。
  138. 田渕哲也

    田渕哲也君 投資源税と並んで大事なことは減価償却資産の耐用年数の問題で、最近アメリカ、ヨーロッパはどんどん短くしてきている。これはやはり経済を活性化するために投資を促進するための措置だと思いますけれども、例えば鉄鋼の設備を見ても日本が一番耐用年数が長いわけですね。日本の場合は圧建設備が十五年の耐用年数、西ドイツが九年、フランスが八年、アメリカは五年、イギリスは一年というふうにしておるわけですね。これはもともと日本に対して設備が古くなっておくれておった、それを取り戻すための施策ということもあるでしょうけれども、こういう例になっておる。このままいくと、後、十年以内にアメリカの設備の方が鉄鋼に関しては日本よりずっと新鋭になるというふうに見られておるわけであります。それから特にエレクトロニクス関係では日本の耐用年数は非常にまだアメリカ、ヨーロッパに比べても長くなっておる。これは技術革新の進歩の激しいところですから陳腐化が早い。そういうことへの対応もぜひ考えていただきたいと思うんです。大蔵大臣、いかがですか。
  139. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、御案内のように資産の物理的寿命に経済的陳腐化を加味して、客観的に一応法定耐用年数は決定されておるものであるので、政策的な観点からの見直しは本来の考え方にはなじまないということではございますが、この耐用年数問題について去年の中期答申、税調からちょうだいしましたのにも、今の御指摘のありました、いわゆる技術的進歩による陳腐化の状況そのものが変化しておるからそれに配意をして資産の使用実態に応じた見直しを行うことが必要であるというふうな指摘になっておりますので、今後ともこれは見直しを行っていくべきものであるというふうに私も考えております。
  140. 田渕哲也

    田渕哲也君 それと、もう一つ大事なのはやはり住宅だと思うんです。仮宅に対する潜在的需要は非常に強いにかかわらず、これがなかなか顕在化しないのは土地の問題だと思います。やはり土地が高過ぎて、これが住宅対策とか住宅建設とかあるいは地域環境の整備の大きなネックになっておる。だから、地価安定対策が非常に大事だと思いますけれども、これについてどう考えておられますか。国土庁長官、お願いします。
  141. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村佐近四郎君) 宅地の供給、これは大変大事なことでありまして、最近は地価が安定の傾向にあります、これは経済の動きということもございましょうが。そこで、こういう安定をしたときにこそやはり土地の抜本的な対策が必要ではなかろうか、こういうふうに考えて積極的にこれから低廉な土地を供給するべく全力を挙げておるところであります。
  142. 田渕哲也

    田渕哲也君 最近の事例で住宅・都市整備公団の分譲宅地、これは柏並びに川越地区の例ですけれども、なかなか高くて売れない。だからそれをまた売り出しに出すときに去年の値段より一五%もアップしておる。三年前に比べたら四二%も高くして売っておる。一般の地価上昇率、最近はやや鎮静化しておりますけれども、一般の地価上昇率を上回る上昇率であるということが言われておりますが、この点はいかがですか。
  143. 水野清

    国務大臣(水野清君) 住宅・都市整備公団が宅地分譲をいたします際の分譲価格というのは、宅地の取得及び造成に要した費用並びに分譲事務費などを基準として決めることになっております。この場合、物価その他、経済情勢の変化に伴って必要のある場合には必要な調整を加えることもある、これは御理解をいただきたい。  そこで、前回募集の際抽せんで当たった方が辞退をなさいました。そこで再募集をしたのがこの柏及び川越の例でございますが、今回、価格の決定に当たっては造成原価の上昇、種々の店舗や住宅の立地による市街地としての地区の熟成状況を加味いたしまして決めた。不動産鑑定評価によりますと、周辺の地価よりもこれでもまだかなり低い妥当なものだと考えております。ちなみに、北柏の場合は最初のときには十万二千円余り、今回は十一万六千円で売って一三%余り高いじゃないか、こういう御指摘だと思いますが、標準の周辺の地価はそれでも約十五万近いということでございますので、そう地価をつり上げたということには相ならぬと、こう思っております。
  144. 田渕哲也

    田渕哲也君 最近、国鉄の品川駅の貨物跡地を売却されましたけれども、この売却価格は幾らですか。
  145. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 千十二億余りでございます。
  146. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは、その辺の地価との関係はどうなりますか。それから国鉄が当初売ろうと思っていた価格との関係はどうですか。
  147. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 地価との比較は、その場所そのものにはございませんが、品川駅前の公示価格より少し高いというような感じでございます。予定価格といたしましてはちょっと公開いたしておりませんので御勘弁願いたいと思います。
  148. 田渕哲也

    田渕哲也君 大体、地価の三倍ということだと思います。  それから予定価格というのは発表されておりませんからわかりませんけれども、区役所等で、国鉄の方が言っておられたことから判断しますと、大体坪二百五十万から三百万で売れないだろうかということを言っておられた。だからそれに比べるとやっぱり三倍ぐらいの高値で売れた。国鉄に対しては非常にこれはいいことであったと思うんですけれども、ただ地元の港区では非常に困っておりますね。あの周辺をやっぱり地域開発を何とか進めたい、区でもやりたいと思っておったけれども一挙に相場の三倍もの高値がついてしまうと、後、区としては何にも手の施しようがなくなると非常に困っておるわけであります。これは本来なら国土利用計画法というもので知事に届け出をして、余り地価から離れた場合には知事から勧告が出されるということになっておりますけれども、国鉄の場合は該当しません。この辺どうですか。
  149. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 私ども、該当しないというふうに理解をいたしております。
  150. 田渕哲也

    田渕哲也君 なぜ該当しないんですか、国鉄は。
  151. 永田良雄

    政府委員(永田良雄君) お答えいたします。  国土利用計画法で一定の規模以上の土地の取引をする場合は都道府県知事に届け出をすると、こういう規定になっておりますが、国それから国鉄、特殊法人、都道府県についてはこれは適用除外になっております。     〔委員長退席。理事初村滝一郎君着席〕 その理由は、国とか政府の特殊法人とかあるいは都道府県というのは、恐らく法律の趣旨を十分踏まえてその法律に合致したような取引をやられるであろうと、こういうことを想定して除外してあるわけでございます。
  152. 田渕哲也

    田渕哲也君 今回の国鉄のこの土地の売却は、そういう点を十分踏まえたものだというふうに判断されておりますか。国土庁長官にお伺いします。
  153. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村佐近四郎君) これは安く売ればしかられるし、国鉄の方も財政再建というときですし、それからまあ高く売ればこれまたしかられますしね。ただ問題として、やっぱり適正というものがありますから、いま御指摘のように、これはやはり適正を欠いておるとはっきり言うことはできると思います。そういう意味から、あの辺をこれから開発をしていこうという場合におけるところの、周辺だけでなく、私はこれからの土地価格に影響が大であると、こういうふうに受けとめております。
  154. 田渕哲也

    田渕哲也君 今後この問題、これはどういうふうに処理をされるんですか。なかなかこれは難しい問題だとは思うんですけれども、どうされますか、この問題は。
  155. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村佐近四郎君) 既に入札も終わっておりまして、一昨日契約も終わっておりますから、これからこれをどうするこうするということよりか、今後やはり各省庁に呼びかけてこういったことの厳にないようにと。過去においても各公共団体は国土庁の国土利用計画法にのっとって地価の安定を図ってきたわけであります。今後は特にこれを機会としてそういうことのないように指導していく必要があるのではないかと、こういうふうに思っております。
  156. 田渕哲也

    田渕哲也君 国鉄は、これくらいの規模の土地を売る場合には運輸大臣の承認が要るわけでしょう。
  157. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) 運輸大臣の認可をちょうだいしております。
  158. 田渕哲也

    田渕哲也君 運輸大臣はどういうお考えで認可されたわけですか。
  159. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) お答えいたします。  今御質問の中にもございましたように、予想された価格よりも非常に高く売れたということで実は正直のところ驚いておるわけですが、またある意味では困惑しておるわけです。という意味は、国有鉄道は今御承知のように大変な累積債務をしょっておるわけでございまして、今後、貨物の今度の改善等で相当土地が出てまいります。これは相当大きな累積債務をなくするための財源に考えておるわけなんですけれども、こんなでんで全部いくというふうに思われたのではこれはまた大変なことだと実は思っておるのでございまして、私は、今度の場合はやや例外的な他の何かいろんな事情が、周辺の事情がこういう高値の結果になったんではなかろうかと、かように思っておるので、その意味でむしろ安易に土地をどんどん売っていけば債務がすぐなくなってしまうんだというふうに思われることの方が非常に危ないと私の立場からは考えております。  それから価格が土地の価格に及ぼす影響その他の問題につきましては、国土庁長官からお話がございましたが、今後どうしたらいいのか。先ほども稻村長官からお話があったように、国鉄としては、処分する場合にはなるべく高く処分しなければなりませんので、そこらの調整をどういうふうに考えるかは、国土、建設両省並びに大蔵省、よく御相談しなければならないと、かように思っておる次第でございます。
  160. 田渕哲也

    田渕哲也君 国鉄の再建の立場から、高く売れるということはそれはいいことだと思うんですけれども、片一方、国土利用計画法というものがあって、土地には完全な自由経済にやや規制がかかっておる。そういう点について国土庁の立場と運輸省の立場と全くばらばらじゃまずいと思うんですね。私は、運輸大臣が国鉄から聞かれたときに、やっぱり国土利用計画法の精神に沿った考え方からどうすべきかということを閣内で相談すべき、少なくとも国土庁長官とは相談すべき問題ではなかったかと思うんですが、いかがでしょうか。
  161. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 売却については承認をいたしておりますけれども、競争入札で売却することを承認しておるわけでございますので、その結果がどうなるかということについての承認はいたしておりません。  そこで、全体の問題としては今私が答弁の後段でお答えしたとおりでございまして、今後どうやっていくか、こういう問題が初めてあらわれてきましたわけでございます。今まででありますると、通常安くたたかれて買われておるのが通例なんでございまして、そういう点から十分相談を今後しなければならない、この件に関して直ちに相談するというわけにはまいらないのでございますが、今後の問題を考えてまいらなければならぬと、かように考えておる次第でございます。
  162. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは運輸省、国鉄、さらに国土庁、それぞれの立場がある問題だと思いますけれども総理大臣はどう判断され、どうされるおつもりですか。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、民間活力の増大ということを主張して、それで一生懸命今までも努力してきたところであります。そういう意味で、割合にどっちかといえば衝撃を与えたようなケースになりました。しかし、このことがやはり一種の民間活力の増大の一つの認識を得ると、またこういう問題を今後どういうふうに処理すべきかという課題を投げかけたという意味においては、私たちは慎重によくこれを考えてやる必要があると思いますが、しかし国鉄にせよあるいはその他にせよ、契約の自由とか、あるいは一たん入札したものを直させるとかということは、私は日本の自由主義経済の上から見てどうかと思うんです。しかし、周辺の土地やあるいは公共団体に将来迷惑を及ぼすというようなことは、これはよほど国土利用計画の面からも考えなければなりませんし、将来のことについてもこれは考えていかなければならぬ。各省庁において将来の問題についてもこれは相談してもらったらいいと思っていますが、しかし基本的にはやはり民間活力の増大と、それによって新しい成長を目指すという我々の一つの政策というものが今実施されつつある。そういう意味においては私はこれは一つの政策の出現として見守ってまいりたいと、そう思うものでございます。
  164. 田渕哲也

    田渕哲也君 確かに、買う方はそれだけの価値があると思って買うわけでしょうから、民間の活力という面から見ればそれでいいと思いますが、そうすると国土利用計画法というのはだんだんこれは死文化してしまいます。国とか国に準ずる国鉄がそういう方針でやると、民間を取り締まるということはこれは不可能になりますね。この点はいかがですか。
  165. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、いま申し上げましたように、市とかあるいは都とか区とか、そういう公共団体の仕事について迷惑を及ぼすようなことがあってはなりませんし、あるいは周囲の地価の将来性の問題、近郊との問題、そういう問題も考えなければなりませんので、将来の問題としては各省庁でこれはよく相談して対策も講じてもらいたいと思いますと、そういう意味のことを申し上げた。しかし、この行為自体、済んだ行為自体については、やはり私は自由主義経済下の国家、今まで私たちが言ってきた政策といたしまして、この問題を扱うについては慎重に行うべきであると考えます。
  166. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、増税なき財政再建というものについてお伺いしますが、まず増税なきという定義、今までからも言われておりますけれども、もう一度総理に再確認をしたいと思います。
  167. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは臨時行政調査会の瀬島委員が本院においてたしか考えを申し述べたことがあると思います。その線及び臨調答申の内容にも書かれております。私の記憶しているところでは、基本的に租税負担率に変化を及ぼさない、そういう範囲内において新しい税目を起こすとか、新しいそういう措置をやらない範囲内において変動があることはこれは認めると。しかし、国民所得に対する今申し上げたような範囲の租税負担率を変えないというそれが増税なきと、そういう意味であるというふうに理解しております。
  168. 田渕哲也

    田渕哲也君 今まで過去五年ぐらいとってみましても、この方針は守られておりませんね。いかがですか。
  169. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 過去のことは知りませんが、中曽根内閣出現以来はその線を守ろうと思って努力しておるところでございます。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕
  170. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは大臣も、中曽根内閣が続く限りは大型間接税はやらないとたびたび言われておりますけれども、中曽根内閣の続く限りは増税なき財政再建を守っていくというふうに理解していいわけですか。
  171. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのために一生懸命努力してまいりたいと思っております。
  172. 田渕哲也

    田渕哲也君 中曽根総理は、答弁の中でも再再、財政再建という言葉は使わないんだと、財政改革だということを言っておられますけれども、その真意はどこにありますか。
  173. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政再建という言葉は鈴木内閣のころから使われた言葉でありますが、あれは五十九年度赤字公債脱却を目途にして、そういうものとの符合において財政再建という言葉は使われたという性格があると思います。私は内閣を組織しまして、今度新しい「展望と指針」というものをつくりまして六十五年度に赤字公債依存脱却というものを目指しまして、しかも経済の運営につきましては、数量的ないわゆる定量的な性格よりも定性的な性格を持って指導方針としていく。そういう形で先ほど申し上げました八カ年計画に延ばし、かついまのような定量的なものから定性的なものへ性格変更いたしましたのに伴いまして財政改革という言葉も使っておるわけです。これにはやはり歳出歳入構造全般の見直しから、諸般の今後出てくるいろいろな問題も考えて申し上げておるところなのでございます。
  174. 田渕哲也

    田渕哲也君 臨調答申は、当面はやはり増税なき財政再建を堅持して歳出のカットをやるという方針が出されております。しかし、より長期的には社会保障関係とかそういう面があるから増税というものは避けられないだろうということも書いておるわけですね。総理は中曽根内閣が続く限りは増税なき財政再建の方針を守ると。ということは、先ほど言われたように租税負担率を上げるような新たな税制上の措置をとらないという方針を堅持されるということですね。
  175. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中曽根内閣が続く限りという言葉は、その点については正直に申し上げて、言ってないのであります。それはいつまで続くか、あしたやめになるか一寸先はやみでありますから、そう僭越なことは余り申しておりません。しかし、ともかくも臨調答申を守り、そして臨調によって示されました増税なき財政再建というこの理念を全力を奮って守ってまいりたい、そう申し上げておる次第でございます。
  176. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、やっぱりこの増税問題と社会保障関係の問題とは考え方を分けるべきではないかと思うんです。将来はやはり高齢化社会に向かう。そうすると、それは保険料という格好で負担するのか、税という格好で負担するのか別にして、国民の負担というものは高まっていかざるを得ない。しかし、この財政再建に当たって、あるいは赤字国債をなくするというようなことについて、そのための増税はやるべきではない、新たな国民のそういう需要にこたえて負担を上げるというのならわかるけれども、現在の財政を再建するために、赤字国債をなくするために増税ということは、やはり増税なき財政再建の方針を守るべきだと思いますけれども、そのお考えはいかがですか。
  177. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨調答申におきましても、いま田渕さんがお示しのように、将来の問題として日本国民負担率、GNPに対する負担率は租税及び社会保障負担、両方合わせて西欧の水準よりかなり下回ったラインにとどめるように、そういう抽象的な表現があるわけです。それがこの国会におきましては四〇%なのか、あるいは四〇%の前半、四五に至る間なのであるか、あるいは現在の三五から四〇に至る過程なのか、いろいろ御質問がございました。それに対しては定量的なお答えはできないから申しておりません。しかし、臨調答申に関する限りはそういうような将来のある程度の余裕と申しますか、変動性、流動性というものを認めておるのでございます。それはいまおっしゃったような社会保障関係というものが考慮にあるからではないかとも思われます。そういう点は意識しつつ今後の政策運営というものも考えていかざるを得ないのではないかと思いますが、しかし増税なき財政再建というものは私は一生懸命守ってまいるつもりでおります。
  178. 田渕哲也

    田渕哲也君 大蔵大臣にお伺いしますが、中期的な財政事情の仮定計算例というのを出されて、借換債を発行する場合と発行しない場合、それから一般歳出の伸びを五%、三%、〇%、それぞれのケースを出されておりますが、六十五年の時点で借換債を発行してなおかつ一般歳出の伸び率をゼロにした場合にのみ要調整額は要らない、こういうことになっておるわけですね。この一般歳出伸びゼロということが果たして可能なのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  179. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、お尋ねのとおり、あくまでも仮定計算でございますので、この一般歳出全体の伸びをゼロにしておくという想定というものは、実際問題としては大変困難な問題が含まれておるということは私もそういう認識はございます。ただ、お示しする仮定計算例とすれば、やはりわかりやすい三つのケース、五、三、○というものの中でいろいろ比較していただいたりして議論をしていただく土台としてお出ししましたが、実際問題としてゼロというのはこれはそういう想定を置くということについてもちょっと議論をいたしましたが、大変困難な問題が含まれておるというふうに理解をいたしております。
  180. 田渕哲也

    田渕哲也君 そうしますと、ゼロの場合は困難だとすると、六十五年赤字国債をゼロにするためには増税は不可避だということを言っておられるのと同じだと思いますが、いかがですか。
  181. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、それぞれの予算の費目によっていろんな議論をしてみますと、やはりまず第一はそれこそこの歳出削減、制度、施策の根源にさかのぼってなおやっていくという姿勢を毫も失ってはならぬ。そしてやっぱりぎりぎり議論をした上でないと国民の皆様方に負担の増を求めるというのはなかなかむずかしい問題だと。したがって、そういう議論の中で、されば受益者も国民、負担する者も国民という段階において、その合意と選択の問題に対してのめどをつけなければならぬという姿勢で対応していきたい。だからその辺も議論いたしました。ゼロは非常に困難な要素が多い、なかんずく、高齢化社会等を考えればそういうことが出てくると。さはさりながら、やはりそれだけの努力というものはしていかなければならぬ。それには増税という問題、いわゆる負担増の問題が自然増収という形になってあらわれるのが最も好ましい。しかし税収そのものも、仮定計算に基づいて名目成長率六・五と見て弾性値一・一として掛けたものを出して仮定計算例ではお示ししておる、そういうものを総合して議論をして詰めていかなければならぬ課題だというふうに考えております。どういう組み合わせでいくかということであります。
  182. 田渕哲也

    田渕哲也君 大蔵大臣は再々、どういう方向を選択するかというのは国会の論議とか国民の合意を踏まえてやる、そういう判断をしてもらいたいと言われておりますけれども、少なくとも今までお出しいただいている資料ではなかなかその判断ができないのであります。ゼロの場合、要調整額はどうだとか、そういうことだけあらわしているわけで、ゼロにした場合、一体行政サービスはどうなるかとかそういう点の姿がよくわからない。そこで、やはり私は、五十六年の参議院予算委員会にお出しいただいたような「財政の中期展望」についての主要経費別内訳というのをお出しいただかなくては困るのではないかと思いますが、いかがですか。
  183. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、中期展望は将来に向けての財政の全体像を描くことによりまして、いわば検討の手がかりとしてお示しした試算でございます。その主要経費別内訳というのは、御案内のように、これも田渕委員と本委員会でございましたか、御議論をしたことがかってもございますが、各経費別の正確な姿は必ずしも反映されずに、実態とやや異なった点もございます。それは人件費、物件費、そのうちの国庫債務負担行為の歳出化経費、性質別にグループ分けした経費についてそれぞれ年次計画やマクロ指標を用いて推計したものを合計したものでございますから必ずしも正確な姿を反映されていない。それで予備枠というものを設けておるわけでございます。したがって、いろいろ議論いたしまして、中期展望に関しては、主要経費別内訳ではございませんが、中期展望の経常部門と投資部門別分割表と、それの中の社会保障移転支出と、また公共投資、そして後年度負担推計値をごらんいただけると。これがお出しできる限度ではないかという考え方でお示しいたしたわけでございます。
  184. 田渕哲也

    田渕哲也君 その程度でもなかなかどういう姿になるかということが判断できにくいわけですね。まして私は、国民の皆さんにはなおさらわかりにくいんじゃないかと思うんです。だから大蔵大臣が、これはみんなで論議して、みんなで選択してもらう問題だと言われるならば、もう少し明らかにそれを出してもらわないと議論のしようもないし、選択のしようもないと思うんですが、いかがですか。
  185. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 非常にまた、この出し方によってはあるいは混乱とか誤解を生ずることも間々ございます。したがって、田渕委員と私の御議論の中でいろいろ工夫して、その辺まではお出しできるというふうに思いました。だから、さらに今国会等々を通じた議論の積み重ねの中で、あるいはこの分とこの面におけるこういう前提のもとの試算を作業してみるとか、そういうような形にこたえる形でお出しするか、もう少しお互いの議論の積み重ねと私どもの部内の勉強の余裕をお与えいただきたいと思います。
  186. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、「財政の中期展望」自身が、政策とかそういうものについては大体従来のを踏襲するということで、変更を加えないということですから、これまた一つの仮定であって、必ずしも現実に即したものと言えるかどうか疑問だと思うんです。私は政府に本当に要望したいのは、やはり自民党政府としての政策内容を盛り込んだ一般歳出ゼロの姿を一遍出してもらいたいということなんです。それでこそ初めて論議ができると思うんですね。いかがですか。
  187. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはまさに中期にわたっての政策の、政党の思惟といいますか、政党の考え方に基づくもろもろの施策をその中に埋め込んだ形で中期展望なりを裏づけする資料と、こういうことになりますですよね。それはなかなか実際難しい問題だと思います。だから、あるいは自由民主党が、あるいは民社党が、こういう形のものでむしろ一遍作業してみると、土台に置いて議論しようじゃないかというような形が限度がなと。しかし、もう少し工夫さしてみていただきたい、それなりのいろんな中期展望あるいは年次計画等もあるわけでございますから。ただ、今もおっしゃったように、現行の施策、制度をそのままに置いたというところがあくまでも仮定になるわけでございますから、その施策、制度の根源にたとえば健保法とか、それなりに今度工夫して御審議をいただいておるわけでございますが、なおまだそうしたものもあり得るとは思うのですが、今それではどれとどれだと言われても、そこまで煮詰まった段階にはない。もう少し財政改革論議というものは、こういう問答の積み重ねの中に、国民としてもやはりこの方向だなというコンセンサスが得られるにはそれなりの経過と時間というものほかかるんじゃないかと、こういう感じがしております。議論の土台に置くべきだとおっしゃる御趣旨は私は理解ができるという前提であえて申し上げたわけであります。
  188. 田渕哲也

    田渕哲也君 私が心配するのは、そういった政策面の詰めがないままに間接税の問題が出てきたり、増税問題が出てくるというのが困る、それからなし崩しに増税が行われるということになると困ると思うんです。  例えば、物品税の問題がいろいろ問題になっておりますけれども、私は物品税の今までの論議なりあるいは今までやってきた物品税の増税の問題を考えましても、一つは、つまみ食い物品税の増税があります、これは税のひずみをより一層拡大するというアンバランスをつくるということになりかねない。それから、つまみ食い的にやると、その物品税に関連のある業界とか圧力団体の力の強弱によって、実際には取りやすいところから取るということになっておるわけですね。それから、それなら、そういうつまみ食い的じゃなくて、物品税の範囲を拡大するということになると、物品税は本来奢侈税のはずなんです。それが、範囲を拡大すると奢侈税の性格が変わってくる。そうすると私は、これは既存の税制の改革じゃなくて新税と同じようなことになる。そういうことも困ると思うんですね。だから、六十五年度を目指してどういう政策をとらなければならないかということをお示しいただいて、それなら増税はやむを得ないという国民の納得がなければ増税は私はすべきではないと思うんです。そういうものがないまま、なし崩しにどんどん増税されるというのは絶対避けていただきたいと思いますが、いかがですか。
  189. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 物品税の持つ性格、生い立ちからいいますと、奢侈税的な方向から生い立ちしてきたと思います。それは、現在はまさに大衆課税だと言われる性格の対象物も、かつてはまさに奢侈のうちに入ったかもしらぬ。性格は大いに変化してきております。とはいえ、担税力を消費の段階、所得の段階、いずれかに求めるかという場合に、総理からよく例示としてお出しになる、投網をかけたような形の間接税というものに対しては、中曽根内閣はこれをとらない、こうおっしゃっているように、いわゆる既存の物品税そのものの中のいわば範囲の拡大ということには、また、それの持つ担税力からして、絶えず見直しして検討を続けろということが一方で言われているわけですね。だから、ただ注意しなければならぬのは、業界の圧力等は別といたしましても、いわば比較的捕捉しやすいところに着目するという傾向が我々そのものにあってはならぬというようなことは注意して対応すべき問題だと思っております。
  190. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、当面の経済政策で、積極政策をとるのか縮小均衡でいくのか、この点についてお伺いをしたいと思いますけれども、大蔵大臣は、この問題は結局日本の経済の潜在力をどう見るかの違いだというふうに言われております。この潜在力についてどう判断されておるのか、大蔵大臣と経済企画庁長官からお伺いしたいと思います。
  191. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは私は議論するたびに率直に言ってそこへ突き当たるわけでございます。いわば設備投資力あるいは労働力、それから高度化、近代化するためのいろんな総合した能力等を基礎にして潜在成長力というものが考えられるとしたら、他のどこの国に比しても私はそれは低いものではないというふうに思います。しかし基本的に、また客観的な問題の中には、国土が狭隘であるとかいろんな問題もございましょう。しかし、これを定量的にさて幾らかということになりますと、やっぱり私どもも勉強してみても議論倒れに終わってしまう。したがって、ああして「展望と指針」で示されておる四%程度、きょうの御議論をいろいろ承っておりますと、四%を最低としての程度でございますね、三%にならない四%程度。ちょっと表現が適切ではございませんが、そういうことが示されておるというのは、やはり我々として妥当な議論の中に求められた数値だなと、こういう感じはございますが、潜在成長力を幾らに見るかということについては、定量的に申し上げる自信はございません。ほかの国よりもいいということだけはお互いの自信の中にあってもいいんじゃないかと思います。
  192. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 潜在成長力を定量的に数字で計算する仕組みは今ありませんので、政府の方でもそういう計算はいたしておりません。ただ、今大蔵大臣がお述べになりましたように、先進工業国と比べますと、経済の基礎的な条件はいずれもすぐれた状態にあると、これは言えると思います。したがって、欧米諸国よりも潜在成長力は高いと、これは言えるのではないかと思います。それから日本の経済は世界経済と非常に密接な関係にありますので、世界経済の状態がよくなりますと、その持っておる潜在成長力は非常に発揮しやすくなる、実現しやすくなる、こういうことも言えると思います。
  193. 田渕哲也

    田渕哲也君 河本経企庁長官は、衆議院の予算委員会その他におきまして、財政の力は弱っておるとはいえ、経済成長に対してゼロの効果しか持たない予算は大変残念だと、そうはいってもしかし現状ではやむを得ないんだということを言っておられます。本当にやむを得ないとお考えですか。
  194. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そういうことを確かに言いましたが、現時点では一応やむを得ないと思っておりますが、しかしそれではなかなか将来の政策が展開しにくいものですから、予算編成の最終段階で大蔵大臣とも相談をいたしまして、財政政策と金融政策を機動的に運営していこうと、こういうことを決めております。したがって、これからの経済の動向を見ながら財政政策を今後どのように進めていったらいいかということは、これはもう経済政策と表裏一体の関係にございますので、これは政府全体として相談すべき課題だと、このように思っております。
  195. 田渕哲也

    田渕哲也君 場合によっては補正予算を組むことも必要だということも言われておりますが、場合によってはというのは大体どういう場合ということになりますか。
  196. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 例年御議論のあるところでございますけれども、補正予算というものを、本予算を審議していただいておる段階で補正予算を前提の議論をしたら、おまえすぐ書き直してこいと、こういうことになるわけですよね。だから、どういう場合に補正予算があるかというと、一般論として、それこそ大災害がございますとか、あるいは経済社会上のいろんな変化がございますとか、そういうことで補正予算というのは間間あり得るものでございますけれども、今の段階で補正予算を諭ずることは大蔵大臣としての初歩的ミスを犯すということになると若いころから教えられております。
  197. 田渕哲也

    田渕哲也君 河本長官にお伺いしますが、公共事業の前倒しをやるということを伺っておりますが、前倒しをしても補正で追加を出さなければ意味がないというお考えを河本長官も言っておられたこともあると思います。その問題が一つですね。  それからもう一つは、最近の円高の傾向ですけれども、日経ニーズの計算によりましても、円高はやはり成長率を下げる要因として働くということを言っております。だから、これは当然、例えば二百二十円のときには成長率〇・三%下がる、もし利下げなら一・二五%、公共投資なら七千億円の追加が必要だと、こういう計算もしておるわけでありますけれども、例えば公共事業を前倒しして後追加しなきゃ全くこれは効果がない。それから円高による経済の影響をカバーするためにも金利の引き下げが公共事業の追加が必要だと、こういうことも言われておりますけれども、この点はどう判断されますか。
  198. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 財政を機動的に運営するということを原則論からだけ言いますと、時には公共事業を前倒しをすることも機動的運営だと思いますし、時には後ろ倒しをすることも機動的運営だと思います。昭和五十四年は経済の力が非常に強くなったものですから、予算の数字をそのまま実行いたしますと過熱状態になるということで、後ろ倒しをしたことがございます。現在のところはなかなかそういう経済には急速にいかないのではないかと思いますが、可能性が全然ないわけではない。そこで、先般与党と野党との予算修正の場合もこの問題が議論されたようでございまして、自民党の方からは情勢いかんではやはり公共事業の追加を、野党から要求されておる公共事業の追加がございますが、金額は別として、そういうことも考えなければならぬような事態が来るかもわからぬと、そういう趣旨の説明をされたというように聞いておりますが、前倒しをするということは、経済成長に効果があるように、経済に効果があるようにやるわけでありますから、前倒しをして後もし経済の状態がよくなれば大変結構ですが、経済の状態が依然として悪いのに後は知らぬと、そういうわけにはいかぬのではないか。その時点でやはり具体的に経済の状態を見た上で相談すると、こういうことになるのではないかと、このように思っております。  それから円高の影響いかんということでございますが、今程度の円高でございますと、そんなに経済に影響は出てこないんではないか、こう思っております。
  199. 田渕哲也

    田渕哲也君 では、河本長官の、場合によってはというようなことは、つまり経済成長が予定どおりいかないような場合、例えば四%いかないような場合には補正予算と、そういうふうに理解していいわけですか。
  200. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私から今の段階で具体的にそういうことを申し上げる立場にはございませんが、要するに経済政策を機動的に運営していく、財政政策と金融政策もしたがって機動的に運営していくと、こういうことが政府の基本方針であると、こういうことでございます。
  201. 田渕哲也

    田渕哲也君 大分時間もなくなりましたが、次に行政改革の問題についてお伺いをしたいと思います。  行政改革が最近ちょっと後退しておるのではないかということも言われておるわけでありますけれども、私もどうも行政改革についてまだなまぬるいというような気がするわけです。そこで二、三お伺いしますが、昨年総務庁の設置法というものができまして、中央省庁の最初の統廃合計画ができたわけです。しかし、それにとどまらず、今後中央省庁の統廃合計画があるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  202. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 中央省庁の統廃合、これは行政改革の重要な課題の一つでございます。そこで、総務庁の設置が本年の七月ということで準備を進めておりますが、同時に、国家行政組織法の改正を受けまして十省庁の内部機構の再編合理化と、これも七月一日をめどにして各省で準備が進められております。  そこで、これ以上中央省庁をどうするかという御質問でございますが、御案内のように国土庁それから北海道開発庁、沖縄開発庁、この三省庁の統合につきましては、これは臨調としては統合すべしと。しかしながら、これらいずれもいろんな事情がある。北海道は北海道、御案内のような特殊な環境にあるし、また沖縄はこれまた米軍の施設が数多くあるといったようなこと、さらには長い間施政権下にあったという特殊な事情がありますから、これらはひとつ三省庁の行政の進め方についてお互いに調整をしながらやりなさいということで、これは三省庁で今そういった機関をつくってお互いにそごのないようにやっていく。これから先行きどうなるかということはもう少し検討をさしていただきたい。  あと、中央省庁がどうなるかということについては、中長期の課題としまして、外交、総合安全保障の問題であるとかあるいは交通の問題であるとか、いろんな点についての御指摘を受けております。これらはやはりまだ臨調としても機が熟していないと、しかし重要なこれから先の課題であるから政府においては十分勉強しなさいと、こういう御指摘を受けておりますから、これらについてはやはりこれから先の行政の課題がどのように変化していくかといったようなことも考えながら勉強をさしていただきたい、かように考えているわけでございます。
  203. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、中央省庁の設置では一つは総務庁の問題、それから今御答弁にありました国土庁、北海道開発庁、沖縄開発庁の問題、これは臨調で出てきたわけですけれども、二つともこれは満足にできないんですね。総務庁の方も臨調の答申からかなり違った形になってきておる、やっぱりまず隗より始めよで、一番率先してやるところがこんなにもたついておったんじゃ行革なんかできるはずがないと思いますが、いかがですか。
  204. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) ただいまの総務庁の設置は臨調の答申と違っておるというお話でございますが、私ども考え方は臨調の答申よりはいま一歩進んだ統合である、かように考えております。それはなぜかといいますと、中央省庁の統合で一番重要なことは、現在の縦割り行政、これをどのように是正していくか、つまり内閣全体としての総合調整機能の発揮にあると思うんです。そこで、臨調は簡素なやり方でその点について配慮すべしということがございましたので、今やはりその点を考えますと、フリーにそのときどきの国政の重要課題について総理を直接補佐して仕事をしていただく大臣が必要だということで、無任所大臣制度を設けたのはそこなんです。御質問の中には、国務大臣の数を減らせないからそんなことをしたんだろうと、こういう御質疑もありましたけれども、これは絶対そうではないんです。これは第一次の行政調査会の答申の際も、総合機能の発揮の組織を考えろということで、総理の補佐官制度とかいろんな御答申があったんです。しかし、これはいずれも手をつけてみるとかえってマイナス面が多いんじゃないかということでなかなか手がつけられなかった。今度はそこらも考えながらそういう制度もやり、そして同時に総理府をできるだけスリムにして、そして行管庁と一緒になって総務庁をやるということで、これは私は臨調の答申以上だと思っておりますから、その点はぜひ御理解していただきたい。  沖縄と国土庁と北海道は、先ほど言ったように特殊な事情がございますから、これは統合という方針は決まっておるので、現時点においてはその三省庁の行政にそごを来さないように開発行政についてそこで連絡調整機関を設けておるんですが、先行きの私は一つの目標として政府としては検討していきたいと、こういうことでございます。
  205. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時委員会を再開し、田渕君の質疑を続けます。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時開会
  206. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十九年度総予算三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き田渕哲也君の質疑を続けます。田渕君。
  207. 田渕哲也

    田渕哲也君 初めに、行管庁長官にお伺いしますが、公務員の定員削減の今までの実績と五十九年度の計画をお伺いしたいと思います。
  208. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 定員管理につきましては、四十三年から今日まで十七万名の削減をいたしておりますが、増員等の要求に応ずるという関係で、ネットが大体一万六千名でございます。私どもの役所でこういったことを申し上げるのはどうかと思いますが、今日まで一番成果が上がっているのは定員管理ではなかったかなと思います。といいますのは、わずか一万六千のネット減ではないかと、こういう御意見が当然あるのですけれども、この間まさに高度成長時代を経験しているわけです。その際にどんどんふえているんですね。そういったことを考えますと、それでもやはりこの間に一万六千ネット減があるということは、やはり相当の私は成果であったであろうと、かように考えます。  そこで、五十九年どうなるのかといえば、五十九年は総理の御指示もございまして、各省にできるだけひとつ定員削減に協力してもらいたい、そして新規増員は極力圧縮してもらいたいという御要請をした結果、三千九百五十三名のこれは過去に例のないネット減、しかもその中、一千名を超す非現業の職員が減ったということは、私は相当なやはり成果を上げておるんではないかなと、御批判はいろいろありましょうけれども、さように考えておるわけでございます。
  209. 田渕哲也

    田渕哲也君 ことし、非常に従来に比べて努力されたということは数字を見るとわかるわけですけれども、それでもまだ少ないと思うわけです。特にこの内容を見ますと、五十九年度の削減計画でも地方支分部局の方は四千五百八十三人削減しておるけれども内部部局の方はたった八十六人。ちょっとこれは努力が不足しているのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  210. 門田英郎

    政府委員(門田英郎君) ただいま委員お示しになりましたとおり、地方支分部局、いわゆる出先機関の定員縮減ということには特に重点を置いた次第でございます。これは御案内のとおり臨調の答申におきましても、今後五年間という中期計画で出先機関、一般の出先機関については七%、公共事業関係の出先機関については八%というふうな縮減を図るべきであるという御答申もいただき、来年度昭和五十九年度がその初年度に当たるということで特に重点を注いだわけでございます。この点については今後とも着実に実施してまいりたいと願っているところでございます。  御質問の第二点、中央省庁におきましては全体としてたった八十六人の縮減ではないかというお話でございます。私ども中央省庁について特に甘い定員管理を行っているというつもりはございません。御理解いただきたいのは、ただいま第六次の定員削減期間中であるわけでございますが、この定員削減というシステムのやり方なんでございますけれども、各省それぞれ目標数字を閣議決定いたしまして、その目標の削減数というものにつきまして、それぞれ各省におきまして合理化を図るべき部門、あるいは合理化を図るべき職、こういったことに着目してそれぞれ独自の御判断で削減をしていく、私どもとしてはそれを全体プールして新しい行政需要にこたえていく、こういうやり方をとっているわけでございます。各省におきましてやはり行政の非常に複雑多様化、こういったこともございますので、本省庁内部部局におきましてなかなか削減がしづらかったというふうな事情があったものだというふうに考えている次第でございます。
  211. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 伊藤郁男君の関連質疑を許します。伊藤君。
  212. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 総理は、昨年の行革特別委員会におきまして私の質問に答えられて、四段階に分けた今後の行革スケジュールを明らかにされました。あの方針が五十九年度予算編成の過程で、あるいはまた本特別国会に提出しあるいは提出されようとしている法案の中でどのように反映されておりますのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。
  213. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政面におきましてはマイナスシーリングを設定いたしました。それから制度改革にメスを入れるという点については、医療保険問題、あるいは中央と地方との財政負担区分問題、こういうような問題に手をつけ、それから年金の統合問題につきましても法律を提出するということでございます。そのほかに、この前の臨時国会で七つの法案を成立さしていただきましたが、今回は二十三の行政改革の法案を提出する予定でございます。その中の大きなものといたしましては、電電公社の改組案、専売公社の改組案、あるいは年金統合問題等々がございますし、地方事務官問題も今回法律として提出さしていただきたく考えておる次第でございます。
  214. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 五十九年度予算編成でマイナスシーリングをやられましたけれども、六十年度におきましてもマイナスシーリングをやられますか。
  215. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今、五十九年度予算の御審議を願っているときでございますから、来年度にまで言及することは甚だまだ不確実性を持っていると思いますが、しかし臨調答申の線に沿いまして歳出歳入構造の思い切った見直しを続けていかなければならないであろうと。そしてやはり来年度の問題としては補助金の問題とかあるいは人員の削減の問題であるとか、こういうような問題をよく考えてやらなければならぬのではないかという気がいたしておりますし、それから不公平税制の問題あるいは税外収入の増大、こういう問題についても力を入れなければならないのではないかと思います。
  216. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 行革審の存置期間は六十一年の六月まででございますけれども、それまでに本格的な行革をやり遂げられるのかどうか。そのためには国鉄再連等々を含めまして毎年行革国会が必要になるような重大な課題が山積をしていると思いますけれども、それをやる決意がおありかどうか、お伺いをいたします。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これから幾つかの大きな問題が残っておりますが、最終的な大問題は国鉄の問題であると思います。これにつきましては今せっかく審議会で御審議を願っておるところで、その答申を待ってこれを誠実に尊重して実行したいと思っておりますが、そういう大きな仕事をやる間にも幾つかの重要問題をやらなければならぬと思っております。そういう意味におきまして、もし必要が起こり、また野党の皆さんの御賛同等が得られるならば、そのような国会をまたお願いするということも十分あり得ると考えております。
  218. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 行管庁長官にお伺いをいたしますが、歳出の三分の一を占める補助金に大胆なメスを入れることは、これの必要は当然でございます。その第一段階といたしまして補助金申請事務の大幅整理はできないものだろうか。地方の事務のうち四〇%程度がこの補助金の申請事務に費やされているわけですね、まさしく忙殺されている。そしてトランクいっぱいに申請書類を詰め込んで地方から中央に上京を余儀なくされている、これが実態だと思うんです。そこで、この事務の二、三割も減らせばかなり地方は身軽になるのではないかと、こういうふうに思うんですが、その点いかがでしょう。
  219. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 仰せのとおり、補助金の事務が大変何といいますか、複雑といいますか、あるいは場合によればここまでやかましく補助金の交付申請なんかの手続をとらなくても、思い切ってやったらいいではないかといった面が随分ございます。この問題はしたがって第二臨調以前に既に行政監理委員会等からも御指摘がございまして、行管庁としては各省に補助金事務の簡素合理化を図ってもらいたいということでお願いをし、各省もそれに従って随分改革いたしております。しかし、まだまだ私はこの問題についてはもう少し事務の簡素化、これをやる余地があるのではないのかと率直に考えております。そういった点については今後さらに各省庁とも十分お話し合いをさしていただいて、御趣旨にできる限り沿うように事務の簡素化を図ってまいりたいと、かように考えております。
  220. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 もう一つ行管庁長官にお伺いをしたいんですが、行革は仕事減らしが優先されなければならないと、こう思っているんです。仕事が減れば人が減り金が減る、こういうことになるわけです。そこで、これは現在進められておる定員削減計画と同様の期間でありますが、向こう七年間程度の期間で事務合理化計画を立てるべきではないか、私どもはそう思っているわけですが、そして絶えずこの事務の見直しをやっていく、こういうことが必要だと思いますけれども、その点の御見解をお伺いいたします。
  221. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 七年間という期限を切ってそういった事務の見直しをやるべしと、私、貴重な御意見だと思います。拝聴さしていただきたいと思いますが、この問題は、期限を切ることも一つの方法でしょうけれども、私はやはり毎年毎年そういう点については政府全体として取り組んでいくべき課題であろうと、かように考えておるわけでございます。せっかくの御提言でございますから検討さしていただきたいと、かように思います。
  222. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 以上で終わります。
  223. 田渕哲也

    田渕哲也君 行管庁長官にお伺いしますが、総定員法というのがあるわけですが、暫定措置で四十八年以降設置される国立医大、それから沖縄関係職員、これは除外されておりますが、これはやはり入れるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  224. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 沖縄関係については、御質問のように総定員法の枠外ということになっております。総定員法はできるだけ広い範囲をこの中に含めてやるのが私もいい方法だと思いますけれども、沖縄は御案内のような事情で沖縄開発庁等をつくり、やったわけでございまして、一応総定員法の枠外ということになっておりますが、ならば一体総定員法の枠外にあるから定員管理の外にあるのかといえば、そうじゃございません。これはやはり私どもの政府全体の定員削減計画の中に入れて毎年合理化をやっておりまするので、そういった関係で今直ちに沖縄関係の定員を総定員法の中に入れるといった考え方は持っておりません。
  225. 田渕哲也

    田渕哲也君 地方事務官は五十九年度で廃止ということになっておりますが、そうするとこれも国家公務員ということになるわけで、これは総定員法の枠とはどうなりますか。
  226. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 地方事務官もこれは総定員法の枠外になっておりますが、御指摘のように今度の国会で地方事務官、長い間の懸案は廃止をして地方と国に振り分けて整理をしようということで、せっかく今法律案を検討いたしておりますが、そうなりますと、この地方事務官、これは今でも国家公務員でございますから、これまた沖縄と同じように定員管理の枠内で整理はしているんですよ。整理はしているんですが、これは私は今回けりがつくのを機会に総定員法の枠の中に取り込むべき筋合いのものであろうと、かように考えております。
  227. 田渕哲也

    田渕哲也君 国立医大も沖縄もこれは暫定措置ですから、その期間一緒に枠内に入れてしまったらどうですか、その分を含めて総定員法の数を変えればいいわけですから。
  228. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 沖縄の方は、先ほど午前中にもお答えしましたように、まだ開発庁自身の問題もございますしするので、これは総定員法の枠外として従来どおり模様をしばらく見たいと、かように考えているわけでございます。
  229. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、防衛予算についてお伺いをしたいと思います。  総理は、昭和五十一年の閣議決定、すなわち防衛費はGNPの一%を超えない方針を守っていくと言われておりますが、五十九年度の防衛費が一%を超えるかどうか非常に微妙であります。いろいろ不確定要素があるから今の段階でははっきりしない面がありますけれども、いつの時期になるとこれが確定しますか。
  230. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、五十一年のその件に関する三木内閣の閣議決定の方針は守ってまいる考えでおります。これはGNPとの対比の問題でございますので、GNPが年間を通じてどういうふうに変動していくか、あるいは為替相場や景気の状態にも非常に関係いたしますので、今のところ、いつということを限定的に申し上げることは困難であると思います。
  231. 田渕哲也

    田渕哲也君 常識的には五十九年度のGNPがはっきりするのは来年の四月過ぎということだと伺っております。それから防衛庁の予算の決算ができるのが来年の秋ぐらい、そのころにならないと確定しないことになりますね。
  232. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やってみないとわかりません。
  233. 田渕哲也

    田渕哲也君 もしそのとき計算してみてGNPの一%を超えておったという場合はどうされますか。もう一%を超えたから新しい歯どめが必要だから新しい歯どめを考えるのか、たまたま五十九年度は超えたけれども、その後も一%の枠というものは守っていくのか、どちらなんですか。
  234. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今、超えないように努力をしている最中でございまして、その先のことはそのときに考えたいと思います。
  235. 田渕哲也

    田渕哲也君 五十一年の閣議決定というのは、ちょうど防衛計画の大綱ができた時期で、同じときに防衛計画の大綱と関連してこの一%という閣議決定がされたわけです。現在は防衛計画の大綱を政府は当分見直さないという方針と伺っておりますが、防衛計画の大綱を変えない限りは一%枠も守るということでいいわけですか。
  236. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 防衛計画の大綱とこの一%というのは直接関係はないと思います。防衛計画の大綱ができたときにGNPの一%ということをめどとするという閣議決定をしたことは事実でございますが、防衛計画の大綱と一%が直接結びついていると、そういうふうには考えておりません。
  237. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、この一%の枠を守る努力は非常に結構だと思うんですけれども、ただ、一%の枠があるためにしわ寄せはある部分にきております。一番しわ寄せがきているのは人の面だと思うんです。どうしても正面装備に力を入れて、人の面がおろそかになっておる。その中の二、三の例を質問したいんですけれども、五十二年に策定された自衛官の停年延長計画があります。これに従ってずっと停年延長が逐次されてきたわけですけれども、昨年八月に突如としてこれに追加がされて、将補から三佐までの停年延長がされました。この理由は何ですか。
  238. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 御案内のとおり、一般社会におきまして六十年六十歳定年というのがございます。そういう時代的な背景のもとに、自衛隊におきましても隊員の処遇改善、あるいは場合によると人材の活用、またある意味においては士気の高揚、そういうものにつながるということから、御案内のとおり五十四年度から六年間の計画で停年延長ということをやってきたわけでございますが、ことしの五十九年度の予算では、今御指摘のとおり将補から三佐までの停年をまた一年延ばすということでございますが、これはいわゆるただいま申しました思想の延長線上でございまして、まあ一%問題云々を言われませんけれども、恐らくそういうこともお考えになっていると思いますが、その問題、一%があるからそういうふうに停年を延長したと、こういうふうには考えておりません。
  239. 田渕哲也

    田渕哲也君 停年の延長計画は五十三年に既に長期的な計画があるわけです。これが、去年の八月というのは、ちょうど概算要求の時期にそろばんをはじいてみたら、どうも一%を超える可能性がある、これはそのまま停年になりますと、該当者が六百名から七百名、金額は約百四十億、この分だけでも助かるというのでこれをやったのじゃないですか。
  240. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) ただいま少し早回りしてお答えをしたようでございますが、そういう意味でやったのでなしに、五十四年度から六年の間に停年延長をやる、そのときの思想ですが、ただいま申しましたように、隊員の処遇改善、あるいは人材の活用、あるいは場合によっては士気の高揚につながる、その延長線上の問題として五十九年度もそういうふうにしたというふうに御理解を賜りたい。  なお、詳細につきましては、もしこれ以上の御答弁が必要ならば政府委員からさせます。
  241. 田渕哲也

    田渕哲也君 いや詳細なことは結構です。まあこういうことを言えばそういう言い方にならざるを得ないでしょうけれども、実態はやっぱり、ちょっとでも防衛予算を減らしておかないと危ないということでやった可能性があると思うんです。  それから自衛隊員の隊舎とか宿舎というのは実に老朽化して古いところが多いわけですね。私も今まで二、三度基地を視察に行っておりますけれども、そのたびに感ずるわけです。昔の軍隊のものがそのまま使われておる。アメリカが最初に日本に進駐してきたときのかまぼこ丘舎がまだ使われておる。これも私はそういう予算面のしわ寄せがそういうところにきておると思いますが、いかがですか。
  242. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 御指摘のとおり、自衛隊の隊舎あるいは自衛隊員の宿舎というものが大変古くなっておるということは事実でございまして、私どももこの点については非常に頭を痛めておりまして、御案内のとおり防衛予算全体が国の財政事情その他いろいろ勘案をしてやりますので、非常にその点について頭を痛めておりますけれども、まあぎりぎりの線を確保してきておる、さらに一層の御鞭撻をいただきまして、後年度におきましてはそういうことについても改善を考えたい、こう考えております。
  243. 田渕哲也

    田渕哲也君 防衛予算が乏しい枠内でやりくりしておると言われますが、私はバランスが大事だと思うんですね。正面装備に重点を置き過ぎて人の面がおろそかになっておる。何ぼ優秀な装備を買っても、それを使うのは人なんですから。この間も自衛隊員の乱射事件がありましたけれども、やっぱり人を大事にしないとまともな防衛ができるわけがないと思いますね。この点をぜひ考えていただきたいと思うんです。  それから、充足率は現在どうなっておりますか。
  244. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) お答え申し上げます。  陸上自衛隊の場合と、海空の自衛隊の場合と違っております。陸上自衛隊の場合は、定員十八万に対しまして充足率は八六・三三%ということになっております。それから海上自衛隊及び航空自衛隊の場合は充足率が九六%ということになっております。
  245. 田渕哲也

    田渕哲也君 なぜ一〇〇%にしないんですか。
  246. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 例えば陸上自衛隊の場合で申し上げますと、陸上自衛隊の定員十八万人と申しますのは、これは陸上自衛隊全体を常時有事即応態勢に置いておくということを前提にして定められているものでございますから、部隊の精強性あるいは即応性というものを保つためには、できればなるべく高充足であることが望ましいということは御指摘のとおりであろうと思います。しかしながら、同時に各年度の防衛力整備に当たりましては、装備と人件費とのバランスの問題でありますとか、あるいは正面と後方の問題でありますとか、いろんな観点からの調整が必要だという問題がございまして、そういう観点から言いますと、陸上自衛隊の場合は、有事に対処し得るものは確保しながら平時の訓練に差し支えのない程度で、ある程度は充足を下げておくのもやむを得ないというような観点から、四十年代の後半から約八六%という水準を維持してきているというのが現状でございます。  今後の問題といたしましては、こういった事情を踏まえながらやはり充足率というものは高めていくということも重要でございますので、毎年度の予算編成の過程におきましてこれは検討していきたいというふうに考えておりますし、現に五十七年度におきましては、先ほど申し上げました八六・三三%と申しますのは、それまで八六%でありましたのを北海道の部隊に重点を置いてふやそうということで〇・三三%の引き上げをしたという経緯もあるわけでございます。
  247. 田渕哲也

    田渕哲也君 これも財政上の理由が大きいと思うんです。現在、陸海空で不足数が二万八千六百名、大体人件費、糧食費、それに維持費を含めるとこの二万八千六百名でどれぐらい年間に費用がかかるかというと、約二千億かかるんです。もしこれを一〇〇%にすれば、もう既に数年前からGNPの一%を防衛費は突破しているわけです。だから、この一%の枠をくぐるために充足率を落としているんじゃないですか。
  248. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) これは先ほども申し上げましたように、四十年代の後半以降八六%程度の水準を維持してきておりますという状況を踏まえまして、毎年度の防衛力整備の場合に、全体としてどういうふうに財源を重点的に配分していくかということを考えながら予算の編成をしてきた経緯があるわけでございまして、防衛費全体としての姿は、ただいま御指摘のように、充足率で申しますと八六%が五十七年度に八六・三三に上がったという経緯はございますけれども、確かに若干低い水準でまだ維持されておるということでございます。しかし、これはGNP一%に抑えるためということじゃございませんで、やはりただいま申し上げましたような防衛力整備、国の諸施策との調和を図りながらやっていくという全体的な総合調整の過程で決まったものであるというふうに私どもは理解をいたしております。
  249. 田渕哲也

    田渕哲也君 もし有事の場合にはどうするのですか、足らぬ分は。有事の場合。
  250. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 有事に際しましては、この充足率を埋めて、できるだけ高充足の部隊を早急に編成するというための手当てをする必要があるというふうに考えております。
  251. 田渕哲也

    田渕哲也君 そんなことじゃ間に合わないのじゃないですか。今、有事になったらどうするんですか。
  252. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 有事の際は、まず最初に充当するのは予備自衛官の活用でございます。
  253. 田渕哲也

    田渕哲也君 予備自衛官は、陸の面はまあいいですよ。海の面は六百の予備自衛官がいるけれども、足らぬのは千八百です。航空自衛隊は二千八百人足らぬけれども、予備自衛官はゼロです。どうするんですか。
  254. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 予備自衛官につきましても、これは二十九年に当初一万五千名で陸上自衛隊が発足したわけでございますが、その後逐年増強をいたしまして、現在は陸上自衛隊四万三千名、海上が六百名ということになっております。これにつきましても、私どもはこれを逐次増強したいと考えております。陸上自衛隊のみならず海上自衛隊も増強をしたいと考えておりますし、それから航空自衛隊についても、現在ございませんが、これをさらに新しく設けるようにしたいという考えを持っておりまして、今後できる限りの努力を払ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  255. 田渕哲也

    田渕哲也君 今後の努力はわかりますけれども、現在もし仮に有事になれば日本の防衛の状況はどうなるか。飛行機はいっぱい余る、戦車もいっぱい余る、乗る人がおらぬということになるわけですよ。こういう状態をつくっていくこと自体私は問題だと思うんですけれども、いかがですか。
  256. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 現実は今御指摘のとおりでございまして、有事の際には我が国の場合はアメリカの支援を受ける、そういうことになります。それから、それはそれではございますが、充足率が不足しておるということは事実でございますので、今後の防衛予算の中にはこの充足率をできるだけ確保するように最大の努力をいたしたい。田渕さんのお言葉は激励の言葉とお受けいたしまして、頑張りたいと思います。
  257. 田渕哲也

    田渕哲也君 激励の言葉ではなくて、限られた防衛予算をより有効に使ってもらいたい、有効に使うにはバランスがとれていないとそれは非常に、むだな使い方をしておることになるという意味なんです。
  258. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) ごもっともでございます。正面と後方とのバランスということについては最大の重点を置いてまいりたいと、こう思います。
  259. 田渕哲也

    田渕哲也君 外国でも充足率は必ずしも一〇〇%にはなっていない。これはなぜかというと、戦時編成と平時編成と分けておるからです。それで我が国も、防衛費というものをより有効に使って有事に対応できるためには、これはやっぱり区別した態勢を考える必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  260. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 御指摘いただきました戦時編成と平時編成の考え方でございますが、例えば今の陸上自衛官十八万人の定数よりある程度低い水準での平時編成というふうなお考えかもしれないと思いますが、この点につきましては私どもは次のように考えております。  陸上自衛官十八万人の定数と申しますのは、御承知のように、日米安保体制を基調といたします我が国の防衛体制の中で有事に所要の陸上防衛力を発揮するための基本的な枠組みというものをそれで定めておるわけでございまして、これを前提にして部隊を編成し、それから所要の装備の種類とか数量といったようなものを決める、そういう基本的な枠組みとしての性格を持っていると思うわけでございます。したがいまして、これを変更するということになりますと、一つには我が国の陸上防衛力の構想そのものの変更につながりかねないという問題もございます。  それからもう一つには、平時編成というものを別のレベルで設定をするといたしますと、定員、人員の面だけではなくて、装備そのものもまた低いレベルのものを想定するというふうなことにもなるのではないかと思いますが、装備と申しますのは、これはやはりいざ調達ということになりますと、これは人の場合よりもさらに一層長期の準備期間が必要であるというふうなことにも相なりますので、そういういろいろな問題がございまして、平時編成というものを別途設けるということについては私どもとしてはいかがかなという感じを持っております。それよりも、私どもといたしましては、基本的には現在の八六%程度の充足率というものをできる限りさらに高める努力を払っていくという方が本筋じゃないかなと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  261. 田渕哲也

    田渕哲也君 戦時編成、平時編成というのは、装備の面というよりもやはり人の面の考え方が強いと思うんです。いつも有事に要るような人を自衛隊員として抱えて、給料も払い食事も面倒を見るということは費用が物すごくかかっているわけですから、だから防衛費を有効に使うためにそういった検討が必要ではないか。それで、そういったことをするのは決して私は我が国の防衛計画の方針と矛盾するものではないと思いますけれども、いかがでしょうか。
  262. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 有事の場合にどういうふうにするかということの一つの研究課題として今後検討してみたい、こう思います。
  263. 田渕哲也

    田渕哲也君 終わります。(拍手)
  264. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で田渕君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  265. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、村上正邦君の総括質疑を行います。村上君。
  266. 村上正邦

    ○村上正邦君 十六年後、歴史は新しい世紀を迎えます。私は、やがて来る二十一世紀が、世界人類にとって相争うことのない、乏しき者のない、オオカミと子羊がともに草をはむ、本当に平和な世界が実現する世紀でありますよう心から願うものであります。日本はそのような理想世界をつくるために大いなる貢献をしなければなりません。そのためには、私たちは活力あふれる道義国家として、また高い教養ある文化国家として、世界の国々から信頼され、尊敬される国際国家日本を建設しなければならないと信ずるものであります。そのために今は何をなすべきか、そのような観点から総理初め各閣僚に質疑を行います。  まず、政治姿勢についてでございます。  ドイツの偉大なる歴史家、あの「大ローマ史」の著者でもありますランケは、その著書「世界史」の中で、「古今東西の興亡の歴史を見るとき、共通したものがある。それは滅びた国は外からの力によって押しつぶされたかに見えても、その国はすでに内部が腐敗していて、一押しすればガタガタと崩れ去るところまで来ていた」と指摘いたしております。さらに、「国家や民族のエネルギーの根源は道義にある。道義のない国は自ら腐敗して滅び去る運命にある。道義こそ国力である」と繰り返し繰り返し力説いたしております。総理は、このランケの歴史的教訓を日本の現状に照らしましてどう受け取られますか。まずお伺いしたいと思います。
  267. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 道義はやはり国を支えている非常に大事なエネルギーであると思います。特に、青少年の間におきまする道義の力というものは、将来その国の運命を決する大きな力になるだろうと思っております。
  268. 村上正邦

    ○村上正邦君 昨年暮れの総選挙の国民の審判は、我が自由民主党に対して政策よりも政治姿勢が問われたものと率直かつ謙虚に反省しなければなりません。総理もそのように厳粛に受けとめておられるようですが、ならば、私はその回答を明確にする責任があると思います。国民は手の込んだマジックや美辞麗句、国会用語などあいまいな態度では納得しない。そのあいまいさが今日の政治に対するぬぐいがたい不信を助長させているものと思います。不正を憎み悪を除去するに積極的な姿勢が今こそ望まれるときであると思います。政治家は国民の代表として重い責任と立場にあります。したがって私は、政治家の道義、倫理というものは、本来法律や規則で縛る以前に、議員はみずからを律し、政党もまた自浄能力を発揮する必要があると思いますが、総理の見解はいかがでしょうか。
  269. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私もそのように思います。
  270. 村上正邦

    ○村上正邦君 そこで、具体的な質問に入ります。  この一月に実行されました閣僚の資産公開が政治倫理確立にどのような意味を持っているか、まずお尋ねしたいと思います。私は、国民が知りたいのは、ここにお並びの大臣の財産が、それぞれの大臣がどのくらい持っておられるかというようなそういうことではなく、政治家がその地位を利用して蓄財しているのではないかという疑問であろうと思うのであります。資産公開という方法を生かすならば、まず閣僚には義務づける。これは既に義務づけられておりますが、全議員、与野党を問わず義務づける、そうして当選時ごとに公開するというやり方であれば意味があると思います。もちろんこれは全議員の資産公開ということになりますと、両院の倫理協の協議にまたなければならないところでありますが、総理はどうお考えですか。
  271. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公の立場にある人間が政策についてこれをガラス張りにする、同じように自分の身辺、特に財産問題についてこれをガラス張りにするということは、同じように倫理、道義の上から大事なことであるだろうと思います。ただ、具体的にそれをどういうふうにやるかということになりますと、技術的な問題もございますし、政党間でいろいろお話しを願って、そして早く合意を形成させて実行に入ったらいいと思います。
  272. 村上正邦

    ○村上正邦君 政治において、わかりやすいということが一番大事なことだと思います。わかりやすいということは、政治家同士で話し合って政治家だけが納得すればよいというものではだめなんです。永田町だけで理解し合ってもだめなんです。例えば、議員歳費はお手盛りではないかという問題、国鉄の無料パス使用の問題、議員宿舎の使用上の問題について国民の批判が出ております。この三つについてどのようにわかりやすくこたえていくつもりか、この件は国会自身の問題でもありますけれども、官房長官いかがでしょうか。
  273. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 議員宿舎あるいは議員会館、歳費、国鉄パス、いろいろ議員が議員活動をしていくについてそれぞれ必要な施設、制度はいろいろあるわけでございます。国民の皆さん方から見て、どのような目で見ていくか、政治家というものの立場、あるいは任務なども頭に置いてどのように考えていただくかというようなことが非常に大きな意味を持つと思うのでございますけれども、いずれにいたしましても、今、先生が御指摘になりましたように、これは議院の問題、院の問題でございますので、それぞれ院の方でいろんな角度から御検討いただくのがいいかと、そして国民の皆さん方から見て、信頼をして、そして政治家がしっかり頑張ってくださっている、そんなふうに見ていただけるような形がとれれば非常にいいなと、こういうふうに思いますが、政府の側からコメントすることはこの際控えさせていただきたいと思います。
  274. 村上正邦

    ○村上正邦君 私は、こういう問題を申し上げた以上、私もこれは深くは考えて申し上げておるわけではございませんが、議員歳費については第三者機関を設置してそこで決めていただく方法はどうだろうか。国会議員の無料パスについては、国鉄の累積債務が二十兆円、これは一日の利子にしますと三十四億円という、こうした中で、国会議員という名で国鉄全線無料パスを使うというのはどうかという批判で、このことは特に随分前から出ておりますが、私はこれが国政に必要なものならば申告制度をとって国会が負担するという方法をとったらどうだろうか。それからまた、議員宿舎につきましては、衆議院と参議院を分ける必要がないのではないだろうか。衆議院の方が、これは新聞にも出ておりますが、何か五十四戸も余っている、そして参議院が今新築している、こういうことが新聞に出ておりますが、これは衆参に分けるからこういうことになるのでありまして、これは衆参話し合いの上でやったらどうだろうか、そして適正な家賃を払うというようなことにすればどうだろうかと、こう思いますが、官房長官どうでしょうか。私見で結構です。
  275. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 議員の活動が力いっぱいに行えるというふうな環境を整えるというのは非常に大事なことでございますけれども、しかしいろいろな制度の中でむだ遣いがありましたり、あるいはこれはどう考えてみても議員だけが非常に特権を得ているではないかというふうに、国民の皆さん方から見てそんな判断になるというようなことでございますと、お互いにやっぱり自粛をしていかなければならぬ面もあろうかと思うのでございますが、これはあくまでも個人的な考えでございまして、ぜひそういった問題を含めて両院のいろいろ議運を中心とした政治倫理の協議会等も出発をされておることでもございますし、御議論が進められればと、こんなふうに思う次第でございます。
  276. 村上正邦

    ○村上正邦君 まず、自己を正してしかる後に他をただす、ここが国民政治の信頼関係を取り戻す最初の入り口ではないだろうか。政権政党として政治に高い道義と名誉をとうとぶ精神を今こそ回復しなければならないと私は信ずるものであります。総理いかがでしょう。
  277. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も村上議員のおっしゃることに全く同感でございます。自由民主党の総裁という立場でもございますから、まず自由民主党は率先してあなたの主義に沿っていろいろな改革を進められんことを望むし、また努力してみたいと思います。
  278. 村上正邦

    ○村上正邦君 次に、教育改革の問題に移ります。  今ちょうど卒業式の時期ですが、教師にとってこの時期が一番恐ろしい時期だと言われます。先生方は卒業式が済んだら生徒につかまる前にいち早くどこから逃げようかとおのおの研究にこれ努めているということを聞きます。これは笑うに笑えない事実であります。全国至るところの学校で起こっている現状であります。仰げばとうとし我が師の恩と目に涙をいっぱいためて歌った教師と生徒の関係は既に昔のこと、とっくに正常な師弟関係が壊れてしまっている現状であります。こうした状態で満足な教育ができるとお思いでしょうか。総理はこうした現状をどう受けとめられ、今後の教育改革にどのような理念を持って臨まれようとなさっておられるか、お伺いをいたします。
  279. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 卒業式の日の先生に対する暴力等の新聞記事が出て胸を痛ましめておりますが、私は日本の学校はすべてそういう状態にあるとは断じて思いません。大多数の学校は、やはり先生は子供を思い、子供は先生を尊敬して、そして一生懸命やっているだろうと思うし、卒業式の日には、やはりみんな別れるのがつらくて涙しつつ別れる学校が大多数であると思います。しかし、そうでない学校もあるものでありますから新聞に出てこれが目を引くのでありまして、大多数の学校は、やはり先生は先生として尊敬され、子供は子供として大事に育てられていると、そういう関係にあると確信しております。しかし少なくとも、目に余るようなことが行われる学校もなきにしもあらずで、そういう傾向が増大しつつあることは甚だ遺憾であり残念にたえません。そういう意味におきまして、教育の改革に心がけまして、そういうことを起こさないような卒業式を全校が迎えるように早く持っていきたいと思っております。
  280. 村上正邦

    ○村上正邦君 私は、教育改革で一番大事なことは、制度の改革もさることながら、心の改革であると思います。心の改革というのは、一つは教師と生徒、親と子の関係に秩序と礼儀を復権させることであると思います。戦後教育で間違って、一番大切なところであります。教師と生徒の関係は、いわゆる平等で横並びではなく、教える者と教えられる者との厳然とした違いがあり、縦の人間関係なんです。ここをしっかり教えることです。親と子の関係も同じことであります。  二つには、自己本位の教育を正すことです。戦後急速にいわゆる自我の自覚が広がりましたが、共同体の自覚が欠けたものでありましたために、自我の自覚、個人がただのアトム、原子になってみんなばらばらになってしまっているところに問題があります。そして、ばらばらの個人がおのおの他を顧みることなく自己を主張するという極端なエゴ社会になっているのが今日の状況ではないでしょうか。こうした点は教育によってぜひ正さなければならないと思います。  三つには、戦後教育は誤った自由主義とでも申しましょうか、礼儀作法や服装などは余りやかましく言わない、むしろどうでもよいというようなことで、日本人が昔から大事にしてきました姿、形の美というものを乱してしまいました。教育の中で礼儀作法、すなわち生活の美というものをしっかり教えることであると思います。  四つには、戦後の悲劇は、余りにも保守なき革新のために民族的伝統を失い、民族の自己同一性を失ってきたところにあります。愛国心教育が叫ばれて久しいのでございますが、民族の個性をバックボーンにしたものでなければ国を愛する心を養うといいましても効果は上がらないのではないでしょうか。例えば一カ月前、私たちは建国記念の日をお祝いいたしました。学校教育で建国記念の日の意義についてどう教えているでしょうか、あるいは教えていないのでしょうか。神武建国という国の成り立ち、文化、伝統のもとについてしっかりそうした教育のない愛国心教育などおよそ意味のないことだと思いますが、以上四点について総理の御見解、文部大臣の御見解を承りたいと思います。
  281. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お答えをいたします。  学校におきます問題行動がいろいろ起きておりますが、これにつきましては、ただいま総理からお答えをいただきましたように、すべての学校は正常に、特にこの三月期は入学、進学あるいは卒業という学生生活にとって大変歴史的に大きな意味を持つ時期でございまして、それぞれ正しく正常に行われていると、文部大臣としてもそのことを最も望んでおるところでございます。しかしながら、確かに今村上さん御指摘のようなそういう社会的な風潮は全くないとは言えないと思うんです。私も村上さんも大体同じような世代でありますから、みんな一生懸命礼儀作法も教えておりますし、また先生と生徒との関係というのは敬けんで、そして本当に教える者と教えられる者との敬けんな関係でなければならぬ、とうとい関係でなければならぬということは我々も理解をいたしております。  しかし、学校でも努めてそのように指導はいたしておりますけれども、このことは単に学校の教育だけで徹底できるものではなくて、社会や家庭がやっぱり大変大きな意味を持つものだと思うんです。学校でそういうことを一生懸命学んでまいりましても、家に帰って、つっぱりが横行して、あたかもつっぱっていることが格好のいいようなテレビを見ておれば、やっぱり心身の発達の程度によって子供たちにはそのことをまねをしてみようかなという、そういう気持ちになってくる。それを家庭でテレビを見ながら父や母がどのように指導していくかということもこれは決して怠ってはならぬことだと思うのでありますが、そのようなことがどうもうまく今の家庭生活の中でも行われていないのじゃないか。昔は兄弟もたくさんいましたから、弟や兄の関係、姉、妹の関係もその中で自然に人間の理屈を教えたと思うんです。あるいはおじいちゃん、おばあちゃんというそういう三世代の家庭が大体平均でございましたから、お父さんやお母さんは家事や仕事で忙しいわけですが、おじいちゃん、おばあちゃんが教えるという機会もともすればやはり欠落しておるというのも今日の家庭状況でございます。そういうことをもう少しやはり単に学校教育だけではなくて、生涯教育全体の中で文部省としてもさらに考えてまいりたいと、こう思っております。  もう一つは、私は、これも村上さんにおしかりをいただくかもしれませんが、同世代の者として大事に考えておかなければならぬことは、今の日本の国は、いい悪いは別でございますが、昔の教育勅語を受けて育ってきた人と、その人をお父さんお母さんに持った人たちと、全く新しい民主主義の教育を受けた人たちと、もう一つ、その教育を受けた人たちの子供たちが今やもう社会の中で活躍しているという、そういうやはり価値観が全く違った四世代の考え方を持つ人たちが今日本の中に一緒に生活をしている。そこのところにやはり価値観をめぐっていろんなトラブルが起きているのではないだろうか。こんなことを文部省としてはやはりいろんな教育の角度の中で考えてみなければならぬ、そういうことを私は今痛切に考えておるわけでございます。適切なまた御指導をいただきながら、文部省としても特に来年度は学校・家庭連携推進校なども設けまして、社会と学校と家庭が連携して、子供たちが本当に正しく大人になる道をみんなで諭してあげられるような、導いてあげられるような、そういう教育体系をぜひ努力していきたいと、こんなふうに考えておるところであります。
  282. 村上正邦

    ○村上正邦君 私は、さらに観点を変えまして、宗教実践政治家の立場から、教育改革の中心にぜひ据えてもらいたいことを申し上げてみたいと思います。  この世の中で人間として何が一番大事なことか、第一義のものは何かということをしっかり文部大臣教えることだと思います。仏教では、三宝を敬うというのが根本の教えてあります。三宝すなわち仏法僧の三つであります。仏は仏教の仏と書きます。法は法則の法であります。僧は僧侶の僧であります。仏とは真理の体現者を言い、法とは真理そのものであり、僧とは申すまでもなく真理を得ようと努力する人であります。仏法僧以外の例えば権力や財力や名声を空とするものは邪道であると仏教は説いております。こうした真理、目に見えない心の問題をきちんと教えることが大切であろうと思います。  さて総理、今教育改革を内閣の最大の課題として取り上げ、教育に関する臨時教育審議会を設けて取り組む意向を表明されていますが、教育改革について既に昭和四十六年の中教審の答申があり、これは第三の教育改革と言われた画期的な内容と言われております。しかし、結果的には大部分が実行に移せなかったままお蔵入りとなりました。新たな審議会でこの問題に取り組もうとするときに、その原因を考えるのも意義があると思いますが、その原因は何か、責任はどこにあるのか、そこのところがはっきりしませんと今度の改革も同じわだちを踏むことになりませんか。これは三月十七日の日経の新聞でございますが、「動き出す教育改革」、この中に、この中教審の答申について実行に移されなかった極秘メモがあると、こういうことが報道されておりますが、この点をしっかり、総理、どうしてほごになったのかお考えになることが私は一番大事だと思いますが、いかがでしょうか。
  283. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろ原因はあるでしょうが、一つは、当時は高度経済成長のさなか、昭和四十六年ですから、さなかでございまして、人間が満ち足りておる、また希望は非常に未来に向かってにじのようにあった、そういう時代であったのだろうと思うんです。そういうわけですから、非常に立派な答申が出てもそれほど必要性というものを国民が直観的に感じなかった、多少は感じておったにせよ、全国民的な重大な関心事項として取り上げられるまでに至らなかった。また、政治の側におきましても、政治的迫力において、それを本当に国家の命運に関する重大な答申が出たというような意識で強くこれを推進するという決意が少しなかったのではないか。今日の事態になりますと、もう余裕はなくなって、そして状態は行き着くところまで行きつつある、そういうような状態にまで追い込まれてきておりまして、もう父兄もまた一般の先生方自体ですらが、場合によっては生徒に追いまくられるというような事態も出てきておって、そして、もうここで何かしなければ国がだめになるし、教育がだめになるというところまで来ておるものですから、国民関心も非常に強く広くなっておりますし、政治の側における責任感も今までにないまれに見るぐらいの大きな責任感で政治が動きつつある、そこに差があると思っております。
  284. 村上正邦

    ○村上正邦君 教育基本法の見直しについてお尋ねいたします。  総理は本委員会において、教育改革は教育基本法の精神を尊重して行う旨述べられました。もちろん教育改革は教育基本法の精神を生かしつつ、また根幹にすることは何ら異存ありません。しかし基本法は、御承知のとおり終戦直後の占領下に、教育資材も学校施設も極端に少ない時代に、しかも今日のような高学歴化が進むとはだれも予想もしなかった時代に制定されたものであります。したがって、当然見直してしかるべきなどの意見があります。教育基本法に全く問題がないならば、今日のような教育問題が国民的課題になって、総理の言う教育臨調のようなものを設けて洗い直す必要はない。やはり基本法そのものに何か欠けているものがあるのではないか。例えば基本法を幾ら読んでも、先ほども申し上げました心の改革の四つのテーマを満たすような箇所はどこにもありません。教育臨調においては、けさの新聞でございましたか、教育基本法を柱にするというようなことが報道されておりましたが、私はまず教育基本法の見直しから臨調は入っていただきたい。いかがでしょうか。
  285. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、憲法及び現在の教育基本法のもとにおいてこれからの教育改革を論じていただきたい、そう思っております。教育基本法の中を読んでみますと、私はなかなか立派な内容であると思います。しかし、人によっては物足りない点があるいはあるかもしれません。今まで言われておるところは、その国の伝統とか、その国の精神的文化性とか、そういう面の強調が足りないではないかということが指摘されておりました。人によってそういう御指摘があるいは出てくるかもしれませんが、これは読み方によって、私は十分にそういう問題も重視して読めるものであると考えております。もとよりこれは、人間の制度というものは万代不易であるとは限りません。それはその国民のそのときの合意によって適正に改正すべきものは改正すべきでありますが、今回の教育改革につきましては、憲法及び教育基本法のもとに改革を考えていただく、そういうふうにしていただきたいと思っております。
  286. 村上正邦

    ○村上正邦君 これは総理と議論の分かれるところでありますが、時間がございませんので、深く私の考えをこれ以上申し上げませんけれども、私はあの基本法では、先ほど申しましたように心の改革という点については、これは全然ゼロに等しい、こういうふうに考えております。教育は国家百年の計に属するものですから、国民各層のコンセンサスに基づく改革であることが望ましいことは申すまでもありません。しかし、拙速を慎むとして、結局は何もできずに機会を失うことのないようにしなければなりません。この言葉を特に逃げ道に使っておられることが多々あるということを私は申し上げておきたいと思います。  知識は五年先を見ることができるが、その人に見識があれば五十年先を見通すことができると言われます。私は、おまえ、おべんちゃら言うなと後ろから声が出てくるかしれませんが、中曽根総理はすぐれた見識のある総理であると思います。教育改革に当たっては見識を持って方針を決められたと思いますので、断固これは突き進んでもらいたいと思います。いかがでしょうか、その決意は。  それと同時に、教育臨調のメンバーについて大体人選が進んでおると承っておりますが、こういう場所でお聞きするのはどうかと思いますが、会長にはどのような立場の人を据えようとお考えなのか、お聞かせいただければお聞かせいただきたいと思います。
  287. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いやしくも教育改革を行わんとするという場合には、やはりしっかりとした定見あるいは見識というものを持ってやらなければならないと思います。私にそのような見識やしっかりとしたそういうものがあるかどうか、じくじたるものがございますけれども、しかし、自分が今まで政治家になり心がけてまいりました全能力を傾けて、最大限の努力をしてみたいと思っております。  それから新しくできる機関につきましては、これは前から申し上げているように、国民的広場の中で国民総がかりで教育を論じ、教育を改革しよう。今まではややもすれば政府とか文部省とか先生とか、教育をやる側の方の考え方がかなり表へ出たけれども、むしろ今度の場合には受ける方、生徒とか父兄とか、あるいは一面においては先生もその中へ入りますが、そういうような受ける方の立場もよく考えて教育というものをやらぬと混然一体としたいい制度にならぬ、そういう反省も持ちまして、国民的広場で、みんなで総がかりでやろうという気持ちでおります。したがいまして、この新しくできる機関の人選によりまして、この教育改革の運命が支配されるというふうに私考えております。したがいまして、人選につきましては慎重に、全国民の皆さんがこれならひとつやるだろう、やってくれというような人々を各分野から選びまして、各会派等の御意見もまたよく承りまして、そういうような構成にいたしたいと思っております。やはり会長になります方の人間的権威というものも非常に重要でございますから、やっぱり行革臨調の場合が土光さんという、あの人格に非常に大きく頼った点もございます。そういう面もよく考えまして、会長以下の人選につきましては慎重を期してやってまいりたいと思っておる次第でございます。
  288. 村上正邦

    ○村上正邦君 教育問題の最後に、数点について具体的提案を申し上げてみたいと思います。これは文部大臣はお答えにくいことだろうと思いますので、まず第一点は聞き流すだけにしていただいて結構だと思います。  それは、教科書を有償にすべきだという意見を私は持っております。一年間の教科書代は一人当たり小学生で二千二百円、中学生で三千三百円、全国で約五百億円であります。ちなみに年間の、今いろいろ問題になっております俗悪な漫画本でございますが、この漫画本の売り上げが一千五百億円と言われております。こうした本を買う金のわずか三分の一で教科書が買えるのでございますので、決して世の親にとって私は無理ではない。大蔵大臣、こう思っております。お喜びいただけることじゃないかと思いますが、私は最低限のことは社会に対する自己の責任として親の力でやるということが大切なことだと思います。生活保護家庭、母子家庭などはこれは当然除外するとして、私はぜひ文部大臣、有償化への努力をひとつしていただきたい、こう思います。これは、だからお答えは要りません。  二つ目は、専門学校、英才教育の充実と、そのための入試制度の改善であります。実例を挙げますと、東京芸大という国立大学があります。将来を嘱望される優秀な画家、音楽家の卵でも、国立大学共通一次試験の影響で芸大を受験しにくくなっておると聞きます。絵や音楽に関して天賦の才能を持っている青年も数学ができないばかりに芸大に入れない、こういう悲劇が出ております。すなわち、今日の受験制度であってはモーツァルトやベートーベンは東京芸大からは育たないということになるのではないでしょうか。特異な才能を持つ青年がすくすくとその芽を伸ばせるように環境を整えることが私たちの仕事でもあると思います。専門学校、英才教育の充実、そのための受験制度の改善、特に国立大学の共通一次試験などという画一主義は直ちに廃止して、入試のやり方は各大学、各学部に任せるべきであると考えます。特に芸大の受験生に数学、理科等を受験させ、解答を提出しないと失格させるという方針を大学入試センターがとり続けておりますが、こうしたことは早急にやめるべきだと思います。どうも最近における一部の大学生を見ますと、入試のためには青春を犠牲にして勉強するが、合格すると勉学に対する熱が冷めている嫌いがあるようであります。これは東京大学の木村尚三郎教授の話でございますが、最近の学生たちは日常的な身の回りのことについては強い関心を向けるが、社会や国家の将来などについて熱気のこもった議論を聞くことがほとんどなくなったと嘆かれておられます。大学は入学したならばそれでよいというような風潮が強いのではないかと思います。私は、入試はある程度軽くして卒業は厳しくし、いたずらな留年を認めないぐらいの毅然たる姿勢を大学当局はとるべきではないかと思いますが、文部大臣、どうでしょうか。
  289. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 一般的な概論と言うと生意気なようですが、そういう角度から見て、村上さんの御指摘のとおりだと私は思います。ただ、この入学試験というのは絶対完璧というものはないんです。日本人というのは特に潔癖性が強いですから、村上さんと私が一点違いで村上さんの方が上だったといえば私はあきらめるんです。ところが、これが歌を歌ってその歌の上手下手さを仮に総理が判断をされたときに、私の歌った歌が演歌であなたがニューミュージックだった場合、どこに一体その判断の基準を求めるのか、こういうところは非常に難しいところだと思うんです。ですから、日本人は潔癖性ですから点数できちっと分けてしまった方が最もわかりがいいと考える。しかし、それでは今おっしゃったようなそういう矛盾も確かに出てきておるわけです。  もう一つは、共通一次すべてが悪だと、こう皆さんおっしゃるんです。しかし、共通一次が出てきた当時のことを思い起こしていただければ、今、村上さんがおっしゃったように、各大学がみんな個々に自主的に試験問題をつくったときにどんな問題が出たか。難問奇問で提出した大学の先生が答えられなかったじゃないですか。結局どんどん深みにはまるといいますか、表現はよくありませんが、どんどん真理の追求をしていけばそれだけ難しい問題をつくらざるを得なくなったという当時のそういう背景があります。  もう一つは、高度経済成長が軌道に乗ってきて大学の進学率が三〇%を超えてしまった。そのために今の制度を生み出したわけです。ただ問題は、この共通一次のその後に、これは大体の学力の、高等学校の進達状況を大体見て、この程度の問題が解ければ大学に入っていただく資格がありますよということを見る試験だったわけです。そして、第二次でできるだけ工夫を凝らして芸大や体育大学にかわってやってもらうということだったんです。ところが、そこのところがやっぱり大学の先生というのは非常にいろいろと難しくお考えになる方があって今のような問題になってきたと思います。  そこで、共通一次を改善する方向で今考えるべきだということで、芸大のような指摘もございますが、これは点数を申し上げられませんけれども、どうしても御納得いただけなければ、この点数を村上さんには見せて差し上げてもいいと思いますが、芸大必ずしも学力本位でやっておりません。かなり芸術の方の専門的なところに傾斜配分をした採点をやっておるんです。それはみんな努力しております。ただ、でき得ればもう少しこれがシステム的に、でき得ればこれからの共通一次と二次のあり方、そして共通一次は選択方式をもう少し幅広く採用する、あるいは一回、二回と国立大学にチャレンジする機会をもう少し幅広く与えてやる、こういうようなことを少し多様性に、もう少し自由化して考えるように、今国大協の入試改善委員会で検討していただいております。必ずいい結果が私は出てくると信じております。
  290. 村上正邦

    ○村上正邦君 人間はそれぞれ天分を持っております。その天分を伸ばしてやるということ、それを引き出してやるというのが私は教育だと思います。ですから、私の申し上げているのは、そうした天分をすくすく伸ばしてあげる学校の環境づくり、そうした制度のあり方というものを考えてほしい、こう申し上げておるわけであります。  そこで三つ目は、学歴偏重の社会を是正するためにはどうしたらいいかということであります。既にソニーでは創立以来、また毎日新聞社でもこの数年前から実施されておりますが、入社試験において学歴を問わないというやり方であります。そこで、国家公務員上級試験も形式的には大学卒程度の実力があれば一応だれでも受験できることになっておりますが、では一体この五年間で大学卒以外の人が何人上級職試験に合格し、何人採用になったか、人事院ちょっとお願いをいたします。
  291. 鹿兒島重治

    政府委員鹿兒島重治君) お尋ねの数字についてお答えを申し上げます。  まず、昭和五十三年度におきましては、短大以下の学歴の方で合格しました方が五名でございます。採用者は三人、五十四年度は七名中三人、五十五年度は三名中一人、五十六年度は三人中二人、五十七年度が八名中四人ということになっております。
  292. 村上正邦

    ○村上正邦君 今お答えがありましたが、お聞きになっておわかりになるように、これは形式的に門戸が開かれておるだけであって、大学卒の人でないとなかなか入るのが難しい。こういうことがおわかりになられたと思いますが、私は、その道のエキスパート、あるいは専門学校で学んだ人でも国家公務員上級職に採用されるよう試験の内容、採用の方法について再検討をお願いしたい。そうすることによって、実力社会がより早く加速度をつけて私はできるのじゃないだろうか、こう思います。このことをお願いを申し上げて、以上、教育改革について数点、提案なり私の私見を述べさせていただきました。  次に、優生保護法改正の問題につきましてお尋ねをいたします。  国税庁が発表するいわゆる脱税白書によれば、産婦人科医の脱税が絶えずワーストテンに入っている。昭和五十七年度はワーストスリーに入っておるわけであります。ワーストスリーなんですね。昭和五十七年度の全国の産婦人科医の脱税額は全体で幾らか、なぜ産婦人科医にこうした脱税が多いのか、その見解について、国税庁
  293. 渡辺幸則

    政府委員渡辺幸則君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、産婦人科医につきましては、いわゆるワースト業種ということで、ここ五年の間そのいずれの年におきましても入っておるわけでございます。産婦人科医と申しましても、中には記帳もきちんとしておられるし、また誠実に申告をしておられる方も多々おありになるわけでございます。青色申告の方もおいでになります。しかしながら、今御指摘になりましたように非常に申告漏れが多いわけでございます。五十七年度におきましては総体で六十六億円の申告漏れということになっております。これによります税額が四十一億円でございます。  この原因というお尋ねでございますが、これはまあ産婦人科医に限りませず、お医者さん全体に共通した問題でございますが、収入の除外あるいは仕入れの架空計上といったような事例が多いわけでございますが、特に産婦人科医の場合におきましては、私ども調査で知り得る限りは自由診療収入、特に妊娠中絶収入あるいは分娩収入といったようなものの除外が多いわけでございます。これには領収書を出さなくてもよろしい場合もある。そういうようなことが原因になっておるのではないかと私ども推察をしておるわけでございます。
  294. 村上正邦

    ○村上正邦君 私はここへ新聞を持っております。これは仙台国税局が摘発した秋田市内の某産婦人科医の八千八百万に上る脱税の新聞記事であります。御存じですね。この新聞報道によりますと、二年間で一億三千五百万円を現金で自宅のたんすに隠していたものと報じられております。事実はどうでしょうか。
  295. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) お答えをいたします。  御質問新聞記事は、秋田市所在の川原医院を経営しております産婦人科医川原浩の脱税事件に関する報道だと思いますが、これにつきましては仙台国税局で査察調査を行いまして、昭和五十八年の六月に告発をした事件でございます。事件の内容につきましては、今先生御指摘のように、昭和五十六、五十七両年にわたりまして合わせて一億三千四百万円の所得を隠し、八千八百万円の税額を免れたという事件でございます。
  296. 村上正邦

    ○村上正邦君 中絶件数は何件か、おわかりですか。
  297. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) ただいま申し上げました脱税額等の数字につきましては確定判決が出ておりまして、それで明らかでございますが、中絶件数の問題につきましては判決も言及しておりませんし、個別の事件の内容にわたりますので、御答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  298. 村上正邦

    ○村上正邦君 この新聞によりますと、厚生大臣、二年間で約二千件の中絶手術の所得を云々と、こう書かれておるわけでありますが、こういうことから見ますと、やはり優生保護法の盲点と申しましょうか、欠点と申しましょうか、そうしたものが脱税行為を行わしめる原因になっているんじゃないだろうか、こう思います。答えは後で一緒に。私も予算の理事でございますのでスピードアップをいたしますが、そういうことで、そういう面から私申しましても、これはお考えいただかなければならないだろうと、こう思います。  私は、一昨年三月十五日の本委員会の総括において、生命尊重の立場から、あるいは個人の尊厳を規定した憲法解釈の観点から、そしてまた安易な中絶蔓延による社会的、教育的悪影響を及ぼすそうした立場から、優生保護法改正の必要性についてただしたわけであります。当時森下厚生大臣は私の質問に対しまして、経済的理由はほとんどその存在意義を失っている、優生保護法の改正問題につきましては厚生省としてもよく検討して早急にこれを出したい、こう言明されたわけでございますが、大臣はかわっても自由民主党の政権でございます。政府が国会の場で約束したものは私は生きているはずだと思います。法案の準備はどうなっているか、それから二年たっておるわけでございますが、一向に出てまいりませんが。
  299. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 今、村上先生御指摘のとおり、私も今聞いておりまして大変なことだなと思うようないろんな問題が出てまいりまして、現行の優生保護法にはもう先生御指摘の経済的問題等、現在の社会的諸条件に適合しない面が多くなってきたということは御指摘のとおりだと思います。特に人工妊娠中絶制度については、現代の性風俗の状況や、また若年層の中絶件数の増加等を考えますと、その制度のあり方について真剣に検討していかなければならないと、こういうことでございます。ただ、今森下厚生大臣の答弁からなかなか進まないのではないかという御指摘でございますが、これは一つの条文を手直しすればそれですべて解決すると、こういうようなことではなく、現実的にはこれは望まない妊娠をいかにして防ぐか、また子供を安心して産み育てることができる環境をどのようにしてつくっていくか、こういった諸対策を一緒に検討していかなければ、これ一つ手直しをしただけで解決する問題でございません。また、この問題は、個々人の倫理観や宗教観等と密接に関連するものであり、国民の間にいろいろの御意見があることも先生御存じのとおりでございます。こういう条件の中でできるだけ国民のコンセンサスが得られる形となるように今慎重に検討を進めておるところでございます。
  300. 村上正邦

    ○村上正邦君 慎重にと言いましても、これもう二年も前の話でございますが、慎重にと言いましてもこれはやっぱり程度の問題でございますので、こうして議論をしておる間、やみからやみ、とうとい命がこうして心ない、倫理観のない、全部とは申しません、そういう産婦人科医もいらっしゃるわけですから、やみからやみへ葬り去られておる命というものを考えましたときに、早急に私はこの優生保護法の問題は厚生省が責任を持って国会へ出していただきたいということをお願いを申し上げておきます。  中央優生保護審査会において各方面の意見を聞いたはずでございますが、何回開いたのか、どういう検討が行われたのか、審議会の結論はどうなったのか、こういうことをお聞きしたいのでございますが、時間も迫っております。後の問題もございますので、これは後ほど厚生省へ私参りましてお尋ねしたいと思います。  総理大臣に伺います。優生保護統計によりますと、未成年の中絶はふえる一方で、届け出だけでも五十七年度には二万四千件で、前年より二割も増加いたしております。実際はこの二倍か三倍あると言われておりますことは御承知のとおりであります。私は、優生保護法改正問題を本委員会で取り上げてから二年間、生命に関するいろいろな問題が提起されてまいりました。厚生省では生命倫理懇談会を設けたことは御案内のとおりであります。安楽死、遺伝子組みかえ、体外受精、男女の産み分け等々多々ありますが、その背景にありますのは、人間が人間の生命をどうにでもできるという生命に対する冒涜的な考えではないでしょうか。これは親が都合悪ければおなかの中の子供は始末してもよいという身勝手中絶論の延長線上にあると私は考えます。日本人が年間数百万という大量中絶を続けてきた結果、端的に申すならば生かすも殺すも自分次第という考えになっているのではないでしょうか。性風俗産業やポルノ雑誌を規制する新立法が考えられておりますが、私は同時に日本人の生命に対する考え方を根本的に正さなければならないときであると思います。優生保護法の改正が急がれるゆえんがここにあります。総理大臣、どうかひとつ厚生大臣を督促していただきまして、お願いをすることにいたしまして、この答えはもういただきません。よろしくお願いを申し上げます。  次に、防衛問題に移りますが、防衛予算をGNPの一%枠以内に抑えることを決定した昭和五十一年当時と今日の国際情勢、我が国を取り巻く極東の軍事情勢について政府はどう認識しているのか。特に最近はソ連の新脅威論が言われております。防衛庁長官
  301. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) ソ連の新脅威論というものはどういうものか承知をしておりませんが、ただいまの御指摘のありました昭和五十一年防衛計画の大綱のできたときから比べてみますと、ソ連は一貫して軍事力を増強しておる、そしてその増強の累積効果も最近は非常に顕著になってきておるというふうに思います。なお、ソ連の周辺岡のみならず、第三世界の方にもいろいろと勢力を広げておるというふうに思っております。特に我が国として重大な関心を持っておりますのは、ソ連極東軍の最近の増強でございます。SS20とかバックファイアとかノボロシスクとか、そういうものが参りまして、私どもは非常にこれについては重大な関心を持っております。ただ、防衛計画の大綱をつくりましたときと現在ではそのように国際情勢は変わっておりますが、基本的な大きな意味の国際情勢の枠組み、これは変化がない、こういうふうに認識をしております。
  302. 村上正邦

    ○村上正邦君 国際情勢が大きく変わったということでございます。GNP一%枠にこだわるべきではないと私は思います。そして、総括最初の田中先生の質疑の中にもありましたが、私もGNP、経済成長のこれは一つの指標でございますので、これを基準にして防衛費を決めるということは、これはいかがなものかと思っております。このことについては既にお答えが出ておりますのでここでは省きますが、正面装備を整えること以外に二つの私は大事なことがあると思います。  一つは有事法制の整備であります。昭和五十六年四月に中間報告が行われておりますが、その後どうなっておるかお聞きしたいと思います。
  303. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 有事法制の研究につきましては、第一分類につきましては既に中間報告を出しております。第二分類につきましては今検討中でございますが、その詳細につきましては政府委員の方から御答弁をさしていただきたいと思います。
  304. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  第二分類と申しますのは他省庁の所管にかかわる法令でございますが、五十七年の夏ごろから、建設省ほか約十の省庁に対しまして関連の法令の有権解釈あるいは除外規定、例外規定の有無等約七十項目についてその照会を行っておりました。その後この問題についての御理解が次第に深まってまいりまして、現時点においては、照会事項の約七〇%についての同答に接しておるところでございます。残りの問題につきましても、現在鋭意関係省庁にお願いを申し上げて、その有権解釈等をちょうだいすべく努力をしている段階でございます。
  305. 村上正邦

    ○村上正邦君 市民防衛についてでありますが、市民防衛の所管はどこですか、官房長官
  306. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 市民防衛あるいは民間防衛につきましては、たびたび国会でも御論議をいただいてきておりますが、例えばこれは警察が非常に関係深いから自治省である、あるいはこれはいろいろな施設を伴うものだから建設省である、いやそれは何といっても防衛庁だ、あるいは放射能の問題はこれは科学技術庁だろうと、こんなふうにいろんな角度からいろいろな御意見があるわけでございますが、やはり市民防衛という事柄を考えました場合に、内閣総理大臣のもとで内閣官房が連絡を取り合って政府全体として取り組むべきものである、このように考えております。
  307. 村上正邦

    ○村上正邦君 内閣全体でということになりますと、これなかなか後の質問がしにくいのでございますが、市民防衛の具体的な課題といたしまして、核シェルターの整備について主要諸国と我が国の状況をちょっと知らしていただきたいと思います。
  308. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 核シェルターの問題につきましては、米ソ両国を初めといたしまして主要諸国、さらにスイスなどの中立国などにつきましても、随分政府やあるいは自治体が指導をいたしまして整備が進められておると、このように聞いておるところでございます。  我が国におきましては、いわゆる民間防衛、市民防衛といったような考え方につきましても、そのことの重要性を認識をしておられる国民の各位は多いと思うのでございますけれども日本独自のいろんな市民防衛ということについての過去に経験がございまして、その言葉からだけでもいろいろなことのすぐに記憶がよみがえってくるというようなことになっておるものですから、なかなか市民のコンセンサスが市民防衛あるいは国民防衛というような民間防衛という形でまとめられるようなことになっておりません。それだけに核シェルターの問題につきましては具体的にこれを検討するという時期に至っておりません。
  309. 村上正邦

    ○村上正邦君 私がお尋ねしたのはそういうことじゃなかったんですが、まあいいです。今そういう状態ではないということでございますが、現在、人類が保有している核は全人類を滅ぼすだけの破壊力を持っていると言われます。核戦争は人類の滅亡につながるものでございますから絶対に起こしてはなりません。それは当然といたしましても、現在では、今お話がなかったわけでございますが、諸外国では核シェルターをつくって万が一に備えております。今資料を配付いたしておりますが、この資料の右側の端にございますが、こうして各国とも核に対する備えをいたしておるわけでありますが、私はやっぱりこれは重大なことだと思いますので、専守防衛という立場をとるわけですから、守りはやっぱり固めていかなければならないと思います。  それで、私は一つの提案ですが、これは建設大臣、おれの所管じゃないと、こうおっしゃるかしれませんが、東京駅の近辺が、この官庁街の地下にでも一つのモデル核シェルターをこしらえてみたらどうかと、こう思いますが、おれの所管じゃないとおっしゃらずに、国務大臣というお立場もあるわけでありますので、私が申し上げていることの重大さを御認識いただくならば、前向きにひとつお考えいただきたいと思います。
  310. 水野清

    国務大臣(水野清君) ただいまの村上委員の御資料を拝見しましても、また私どもでも調べてみましても、市民防衛という立場から核シェルターが西欧諸国では非常に普及をしている。スイスのような永世中立国でも先生の御資料でも八三%を超える普及率がある。こういうことから市民防衛ということを考えれば確かに必要だということを私は考えます。ただ、現在の建設行政は、実は核シェルターを整備するという何物も法制的なものを持っておりません。ですから、これは先ほど内閣官房長官からもお話がありましたが、政府全体として国防上の立場から必要だという判断が出たその場合においては、もちろんその範囲で建設省としてどういうふうにやるかという研究をすることについてはやぶさかでございませんが、その大前提の問題は私どもで云々する今資格はないので、お許しをいただきたいと思います。
  311. 村上正邦

    ○村上正邦君 この問題については官房長官、ひとつ所管をやっぱりはっきりしてもらわないといかぬと思います。それから核シェルターにつきましても、やっぱり所管がはっきりした、その所管でしっかりひとつ考えていっていただきたいということをお願い申し上げます。  次に、参議院改革、そして定数是正についてでありますが、総理は昨年六月、比例代表制を導入した最初の自由民主党の総裁としてその名簿順位の選考に当たられたわけでありますが、この制度の意義と成果について、そしてまたその選考に当たられて何か改善すべき所見がありましたならば、所感ではなくして所見でございますが、承りたいと思います。
  312. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昨年初めて政党本位の比例代表的全国区制度を実行いたしました。各党各派及び新聞等々の評論の傾向を見ますと、多少欠点もあるけれども、一応始めたのだからもう少しやってみたらどうか、欠点があれば直して続行した方がいいと、これが大体のその後の世論の帰趨であったと私は思います。私もそのように考えておりまして、ただ問題点は、いかに順列をつくるかという問題、これがやっぱり各党の非常に大きな悩みの問題であるだろうと思います。これをいかに公正につくり上げていくかという点について、自民党といたしましてもこれから大いに研究していくべき問題であると思っております。
  313. 村上正邦

    ○村上正邦君 総理は二院制の意義をどう受けとめられておられますか。また、財界などに参議院無用論が出ておりますが、それについてどうお考えになりますか。
  314. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 二院制が設けられましたのは、一院というものは大体非常に戦闘的な場所であって、民衆の世論というものに直接反応して、かなり激しく応酬し合い、あるいは言論を競い合う、そういう性格を持っておる。それに対して第二院はチェック・アンド・バランスを行う、そしてより高い見識とよりゆっくりとしたバランスのとれた感覚で一院の行き過ぎを是正する、そしてでき得べくんばそれは外交とかあるいは教育とか長期的な問題について広い視野で取り組むのが二院の性格である、こういうふうに教えられでまいりましたが、まさにそうであると思います。
  315. 村上正邦

    ○村上正邦君 今後、比例代表制が定着すればするほど参議院にはすばらしい人材が集まると思います。  そこで総理、参議院から大臣、政務次官は出すべきではないという意見もありましたが、私はむしろ進んでこれを受けることの方が議院内閣制のもとでの国政発展に寄与する道であると思います。この二十人近くおられる閣僚の中で参議院から三名でございますが、もう少し積極的に参議院から登用なさったらいかがか。また、政務次官大事については、衆議院と参議院の政務次官のポストが固定されておるかに感じられるようなポストの配分でございますが、私はこれは固定化はいかぬと思います。各省にまたがって参議院からも政務次官を配列していただきたい、いかがでしょうか。
  316. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今の御意見に賛成でございます。閣僚、政務次官ともに議院内閣制でございますから、参議院からも出ていただきまして、一体となって政治を進行させるのが適当であると思います。また、ポストにつきましても、どの院にそれを固定するという性格のものでなくして、適材適所で選ぶべきものであると考えます。
  317. 村上正邦

    ○村上正邦君 定数是正の問題でございますが、我が国の国会議員の定数は衆議院は五百十一名、参議院は二百五十二名であります。総理は、この国会議員の定数はどの程度が適正と考えられておられますか。また、諸外国と比べて多過ぎるという意見もありますが、どうでしょうか。  続けて申し上げます。衆議院の定数是正については最高裁で違憲状態であるという指摘が出ておりますが、各党がそれぞれ今党内で協議中であります。衆議院の定数是正については衆議院にお任せするといたしまして、参議院についてもいわゆる一票の重みについて逆転現象が出ているわけでございますが、総理として参議院地方区の定数是正問題についてどういうお考えを持っておられるか。  私は、選挙区改正や定数是正問題は、議員や政党の利害損得が絡んでまいりますのでなかなか合意は得られない。こういう問題は第三者機関に公平な検討をゆだね、その結論には与野党とも従うという姿勢が必要ではないかと思います。参議院は昨年比例代表という新しい制度が導入されたところでありますが、参議院の定数是正について思い切った方法、例えば参議院が地域の声を反映させるということと同時に、高い立場で国政を論ずるという役割から、人口比にとらわれずに地方区は各都道府県に二名の一律配分でよいのではないかというような意見もございますし、首相の諮問機関であります選挙制度審議会を活用して、早急に第八次選挙制度審議会を発足させ、こうした意見を踏まえて衆参の抜本的な定数是正について諮問したらいかがかと思いますが、どうでしょうか。
  318. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 専門的なことは政府委員あるいは自治大臣から御答弁をお願いしたいと思いますが、定数の問題はこれは各党各派でいろいろ相談をして決めるのが適当であると思います。要するに、グラウンドルールを決めることですから、参加チームがみんなで相談し合って決める、これが私は民主的であろうと思います。第三者機関をつくってその言うことを聞くというのも一つの案で、これも傾聴すべき案であると思いますが、やはりグラウンドルールは出場チームがみんなで相談して決めるべきものではないかと、そう思います。それから定数の問題で最高裁からいろいろ警告的判定が出されておりますが、これらの最高裁の判決というものをよく尊重して、それに合うようにやはり両院あるいは政党が自律的に動いて、そしてその問題を解決するのが適当であると思っております。  そのほかの問題は自治大臣、あるいは政府委員から御答弁申し上げます。
  319. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ほかの大臣に答弁を求めますか。
  320. 村上正邦

    ○村上正邦君 自治大臣。
  321. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 議員定数の不均衡の是正につきましては、今両院で各党各会派でそれぞれお話し合いをされております。したがいまして、今、選挙制度審議会をすぐまた継続してやられるというのもいかがなものかと思います。しかし、選挙制度につきましては、抜本的に検討をしなければならない問題も控えておりますから、御提案の趣旨については検討をさしていただくことにいたしたいと思っております。
  322. 村上正邦

    ○村上正邦君 参議院先議は極端に少ない状況でありますが、官房長官、これは提出法案については衆参いずれに提出するか、これは官房長官あたりの裁量だと思いますが、どうか参議院先議法案につきまして積極的にひとつやっていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  323. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) なるべく早い段階から参議院におきましてもいろいろ御論議をいただくというような形になるのがいいと思いまして、政府といたしましても、各省庁と十分連絡をとって参議院の先議案件をふやしていくようにというふうに指示をいたしておるところでございます。これは衆参両院と十分連絡をとらせていただきながらという仕事になりますので、主として政務次官会議などで特に要請をいたしまして、十分連絡をとらせていただくようにということで今日まで努力をしてきておるところでございますが、先生の御趣旨に沿うようにさらにひとつ努力をしてまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
  324. 村上正邦

    ○村上正邦君 次に、農産物自由化問題についてお尋ねいたします。  我が国が貿易立国として今後も繁栄を続けていくためには、自由貿易体制の維持強化を基本といたしまして、調和ある対外経済関係を続けていくことが極めて重要であると思います。特に我が国にとって最大の安定した貿易パートナーであります。アメリカとの間では、種々の経済上の懸案事項を抱えていますが、政府は農産物輸入自由化問題を考えるに当たり、農業政策と対外協調との関係をどのように調和さして対処しようとしているのか、まずお伺いを申し上げます。
  325. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) お答えいたします。  私は、農産物の輸入というものは、我が国農産物の需給動向、これを見た上で我が国農業が着実に発展していくというのと調和のとれた形で輸入すべきものというぐあいに考えております。
  326. 村上正邦

    ○村上正邦君 何かちょっとわかりませんけれども、しかしまあ私は与党だからこれ以上は農林省へ行って次は聞くことにいたしますが、日米農産物交渉は三月末の期限切れを間近に控えて大詰めを迎えておりますが、アメリカ側との意見の隔たりは大きいと聞いております。三月末までに合意が得られない場合は、日米相互間は無協定の状態になり、アメリカ側がガットに提訴する場合も予想され、日米貿易関係全体に大きな影響を及ぼすものと思われますが、農林大臣は今月中に合意にこぎつけるめどがあるのか。新聞報道によるとなかなかむずかしいと、こういうことでございますが、いかがでございますか。
  327. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 現在、眞木国際部長を渡米さしております。そして、引き続き来週二十二日から二十四日、この間佐野経済局長とスミス通商次席代表との間で交渉をさせるということでございまして、何とか今月中にということは、アメリカ側もまた当方もこれは強く望んでおります。今、先生おっしゃいましたように、ガット提訴というようなことになるか、またどのような対抗措置がとられるかわかりません。何とか今月中にということで、佐野局長の交渉の経過を見た上で、もし話がまとまればということでございますが、ただ、現在まだ日米間の隔たりはかなり大きなものがあるようでございます。しかし、三月末という期日にとらわれて無理な決着をするというようなことはしないようにしてまいりたいと考えております。
  328. 村上正邦

    ○村上正邦君 農林大臣、私はこの農産物問題については国内農業を守るという受け身一方の対応だけでは、我が国の農薬は遠からずじり貧になることは避けられないであろうと思います。国内農業も国際競争に耐え得る足腰の強いものにしていきますのには、今後一定の期間が必要であるとは思いますが、早急に体制整備をしていくことが肝要であります。政府は、我が国の農業の国際競争力を高めるためにどのような見通しを持って、どのような対策を講じ、また講じようとしているのか、お伺いしたいと思います。
  329. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 先生おっしゃいますように、内外の農林水産業を取り巻く情勢、まことに厳しいものがございます。外からは市場開放の要求、これが一層強まるものと思われますし、また行財政改革の推進ということから見ますと、効率的な農業、これが強く望まれておるわけでございます。これにかんがみまして、今後生産性の高い、今、先生が言われました足腰の強い農業ということで、具体的には需要の動向に応じた農業生産の再編成、そしてまた農地流動化の推進等による中核農家の育成と経営規模の拡大、そして現状の五百五十万ヘクタール程度の農地は確保していきたい。そしてまた農業生産基盤の整備、技術の開発、これらの施策を講じながら、我が国農業の生産性の高い着実な発展というものを目指していきたいと思っております。
  330. 村上正邦

    ○村上正邦君 次に、労働省にお伺いいたしますが、基準法の改正については審議会において検討中でありますが、女子保護規定の見直しの中で、タクシーの女性運転手の問題についてでございます。  タクシーの女性運転手は、この保護規定のために、夜十時以降という一番稼ぎどきに働きたくても仕事ができず、自立できるほどの収入が得られない。これでは働くよりも生活保護を受けた方がましだということになって、女子保護規定が逆に女性就労者の生活を圧迫し、働く意欲を失わしめるという、実に矛盾したことが起こっております。こうしたことは一日も早く是正すべきであると思います。また、これらの方々にとっては死活問題でございますので、どうかひとつ、早くこのことについては御解決をお願い申し上げたい。  労働基準法改正案の提出準備状況と、こうした矛盾解決の具体策についてお尋ねをいたします。    〔委員長退席、理事初村滝一郎君着席〕
  331. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) ただいまのタクシーの女性運転手さんが深夜も働きたいというお話は、よく承っております。今、男女雇用の機会均等及び待遇の平等に関する法律、その提案の準備のために、審議会で鋭意検討をせられておりますが、その中で労働基準法の女子保護規定のうち、深夜業の就業制限の問題なども検討をせられておりまして、これは当面、肉体的な負荷の大きい労働が多くを占める工業的業種、職種に従事する者については、管理職とか専門職を除いて現行規定を存続する、しかしそのほかの者については現行規定を廃止する方向で、たたき台がただいま検討をせられております。  そこで、タクシーの運転手さん、このことにつきましては、その深夜の女子保護規定の問題について審議会で今一生懸命練っておる最中であります。それはその審議会の結論をいましばらく、もうすぐでありまするから、見て、適当な結論を出したいと思いまするが、大きな方向としては、女性が自分で意欲を持ち、能力を持ち、みずからの責任において男性に負けないで働きたいという場合におきましては、これは原則的にはこれを認めていく。その能力、活力を引き出していく、これが大きな流れではなかろうかと私は思っておりますが、しかしタクシーのこういう環境その他は非常にいろいろ現場の問題もございましょうから、せっかく今審議会でやっておりますから、その結論を見て善処したいと思っております。
  332. 村上正邦

    ○村上正邦君 余りこれは難しく考えなくてもいいことじゃないかと私は思っているんです。スチュワーデスと同じような扱いを、あの中へひとつ、このタクシーのあれを入れればいい問題だと、私はこう思っておるわけでありますが、それは素人の考えで、なかなか法律的には問題があることと思いますので、どうかひとつ、こういう人たちの勤労意欲をやはりそがないように、寡婦手当をもらったらいい、生活保護をもらったらいいというような考え方が出てくるのではいかぬと、こう思いますので、どうかひとつお願いを申し上げておきたいと思います。  最後に、中国残留孤児の肉親捜しについてでございますが、今回の肉親捜しは五十人のうち半分の二十五人しか肉親にめぐり食えませんでした。これまでの最低の確率であります。ところで、残留孤児は全部で今どのくらい残っているんでしょうか。これから日本に来る予定の孤児はどのくらいいらっしゃるんでしょうか。
  333. 入江慧

    政府委員(入江慧君) これまでに厚生省に肉親の調査依頼のございます孤児の数は千五百二十七名となっております。このうち七百三十三名は既に身元がわかっておりまして、このほか既に訪日している者もございますので、現在のところ肉親調査のために訪日していない孤児の数は六百九十三名ということになっております。
  334. 村上正邦

    ○村上正邦君 私は、ここで間を置かないで、中国側に申し入れて、一挙にこの六百九十三名を来ていただいたらどうだろうか、こう思います。そして、より効果あらしめるために、政府は事前に事情聴取班を現地に派遣し、次に帰国する孤児たちの周辺をビデオにおさめ、事前に日本関係者と思われる人に見せたりテレビで放映したりして、より効果を上げるということを考えていただいたらどうだろう。そのことを中国側に申し入れていただきたい。そしてまた、総理大臣も訪中なさるわけでありますが、養父母に対して謝意を表すべきだという意見がありますが、どういう謝意をなさるとすればお考えになっていらっしゃるのか。そしてまた、日本に来られた孤児の人たちを厚生省サイドの役人だけに任せるのではなくして、総理官邸に総理が招かれて昼食をともになさりながらいろいろと慰めたり励まされたり、過去三十数年のそうした労苦に対して、総理ひとつ温かい言葉をかけてあげていただきたいと、こう思いますが、どうでしょうか。
  335. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 中国へ参りましたら、残留同胞のいままでの扱いにつきましていろいろお礼を申し上げたいと思っております。また、今後の両親捜しの問題につきましては、いろいろと先方とも話し合ってよりよき道を発見したいと思っております。ただ、一遍に呼ぶということは、こちらの収容施設の問題等々もありまして、厚生省ではなかなか難しい問題も出てくるようであります。それらの点もよく検討してみたいと思っております。それから総理官邸に呼ぶということでございますが、そのことも大事ですが、何といっても早く両親を見つけることの方が大事であると思います。そっちの方へともかく力を注いでみたいと思っております。
  336. 村上正邦

    ○村上正邦君 時間がなくなりましたが、最後に大蔵大臣、サラ金問題についてでありますが、これはもう連日のように、これだけ最近、毎日カラスの鳴かない日はあってもサラ金で自殺したとかいろいろな記事の出ない日はないわけでありますが、これはサラ金二法を改正したばかりでありますけれども、何かやはり法に問題があるんじゃないだろうか。借りる方が悪いのか、貸す方が悪いのか、ここらあたりよくわかりませんけれども、そこらあたりをちょっとお尋ねしてみたいと思います。  そしてまたもう一つは、保険金詐欺を目的とした殺人、放火、こういう悲劇が出ておるわけでありますが、保険業法に問題はないのか、あわせてお尋ねをさしていただきます。
  337. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆるサラ金規制法は議員立法でもって成立さしていただいた法律でございますので、それが施行されてから、関係方面と連絡をとりながら、法の趣旨が徹底するように、それなりの効果を上げておる向きもあるやに承っておりますが、言ってみれば、あの法律そのものからの効果、あるいは法律そのものに対する批判、あるいは考え直しをする以前の、今施行されたばかりの状態でございますので、いま少し厳正な法の施行の環境、実施、もろもろが整うまで、現行法体系の中で各方面の協力を得て進めていきたいと、こういうことであります。  それから保険金詐欺の問題でございますが、これは私、保険の専門家でございまして、本当を言いますと、議論しますと難しくなりますが、勉強さしていただきます。
  338. 村上正邦

    ○村上正邦君 どうもありがとうございました。(拍手)
  339. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 以上で村上君の質疑は終了いたしました。    ―――――――――――――――
  340. 初村滝一郎

    ○理事(初村滝一郎君) 次に、佐藤三吾君の総括質疑を行います。佐藤君。
  341. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 私は、この予算委員会が始まって以来各種の論議がございましたが、その論議の中でなお解明されていない部分があるように思いますので、そういった問題を含めまして、特に政治倫理の問題、行政改革の問題、さらに財政再建、地方財政の問題、警察関係、原子力船「むつ」の問題、こういった問題についてこれからただしてまいりたいというふうに思います。  そこで、その問題の前に、先ほど質問がございまして総理並びに関係省庁の答弁もいただいたわけでございますが、けさの福岡高裁におけるカネミ油症の判決の問題について、まず厚生大臣からお聞きしたいと思うのでありますが、十六年間にわたって苦しんでまいった患者に対して、裁判の判決の中を見るまでもなく、早急に完全な救済、とりわけ行政責任を問われた判決であるわけでございますだけに、私は、治療体制なりそれから治療の方法の研究体制の強化であるとか、こういった問題が急がれておるのじゃないかと思うのでありますが、大臣の見解をお聞きしておきたいと思うんです。
  342. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) お答えいたします。  患者の皆さん方の健康の回復、維持、これは大変大事な問題でありますので、今日までも厚生省といたしましては患者の皆さん方の健康診断また治療法の確立等に一生懸命努力をしてまいりました。世帯更正資金の貸し付けとあわせて十億近いお金を使ってやってまいったのでありますが、まだ完全な治療法の確立等を得られておりませんので、今後もこれらの患者の皆さん方の健康を守り、また生活を守るために御相談相手になり、また厚生省としてできる範囲のことについては全力を尽くしてお務めしてまいりたいと思います。
  343. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 総理は、さきの答弁では、この上告の問題を含めて早急に省庁で協議をして結論を出すと、こういう指示をしたという御答弁ございました。  それで、今度の判決の内容を見てみますと、まだ私は新聞情報程度でございますから詳細にわかりませんけれども、この中身を見ると明らかなように、例えば農林省のいわゆる肥飼料検査所であるとか家畜衛生試験場であるとか、こういうところであのダーク油事件についての調査からカネミ倉庫に立入検査までしている、そして事実をつかんでおったのが厚生省の方に連絡していない。立入検査の結果が生かされていない。こういったいわゆる縦割り行政の問題点までこの判決の中では言及されておるわけです。そして、同時にまた厚生省の国立予防衛生研究所の主任担当官の証言によりますと、これは大変だ、これは人体に影響すると、こういうことで厚生省の食品衛生課長に直ちに調査を要求した、農林省に資料要求した。ところが、農林省はこれに対して拒否した、同時にまた課長は取り上げなかった。こういったことがこの裁判の中で決定的に国の行政責任を問われる原因になっておるわけでございますが、これは私はそういう経緯から見ましても、本来、和解に応ずべきだったと思うんですけれども、和解でなくて今度の判決になったとすれば、むしろそういった事実に照らして、最高裁に持っていってもこれは書類審査が中心でございますから事実審査はないわけですから、私は上告は取り下げて、上告をせずに患者救済を含めて判決に服すべきじゃないかと、こう思うんですが、再度ひとつお答えいただきたいと思うんです。
  344. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 判決の内容を論評はいたしませんが、ともかく国の側における落ち度について裁判所から指摘される点というものを我我もよく読んだわけでございます。これに対していかなる対応を行うべきかについては、関係各省で至急に相談させまして対応を決めさしていただきたいと思っております。
  345. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そういった点については、私は患者の立場なり国のいろいろメンツもありましょうが、一日も早い救済が求められているわけですから、その点はひとつ要請しておきたいと思います。  そこで、政治倫理の問題でございますが、田川さん、新聞によりますと、自民党の顧問でもあり、また元首相である三木さんとか福田さんとかを歴訪なさって、そしてこれは大臣就任のあいさつも兼ねてであるようでございますが、その中で、福田さんとの会談の新聞情報によりますと、政治倫理の確立がすべての政策問題解決の前提である、こういうことで御意見が一致をした。具体的には田中問題のけじめが最優先されなければならないと、こういうことで御意見が一致なさったということが出ておるのでございますが、私も同感に思うんですが、そのように理解してよろしいですか。
  346. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 福田さんや三木さんばかりにお会いしたのではございませんで、たまたま新聞がああいう形で扱われました。御指摘の福田さんとのお話の中には、今、佐藤さんがおっしゃったようなお話が出たことは間違いございません。
  347. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 いや、その中身を聞いておるわけです。
  348. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 私的な話でございますので、ここで余り詳しくお話を申し上げるのはいかがなものかと思いますけれども、今、佐藤さんが申されたようなことをお話ししたわけでございます。
  349. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そこで、田川さん、田中問題のけじめというのは、これはあなたは具体的にどうお考えになっておるんですか。
  350. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 田中問題というのは田中さん個人だけの問題ではございませんで、自由民主党と新自由クラブの間で政治倫理について合意をいたしました、その合意をいたしました政治倫理の第二項目にございますけれども、一審有罪を受けた人に対する何らかの国会における処置を考えていくべきではないかという項目がございます。もちろんこれはいろいろな問題に疑義がございまして、第二項に、憲法第五十八条で言うところの「院内の秩序をみたした議員を懲罰することができる。」との解釈の範囲内で国会法改正の措置を検討する、こういうような項目がございまして、こういうような項目が一つの問題でございます。
  351. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 あなたが今おっしゃったように、自民党とのいわゆる政策協定ですか、それに基づいてその一項目があるし、同時にまた、あなたが自民党を脱党して、そして政治腐敗を国民に訴えて選挙を闘ってきた。    〔理事初村滝一郎君退席、委員長着席〕 それが、あなたの言葉によりますと、外から言っておったのではどうにもならない、中からひとつ改革しなきゃならない、こういうことで連合を決意なさったと。そういう意味では私は、あなたは政治生命をかけてこの問題を追及なさろう、こういう決意だというふうに伺ったんですが、いかがですか。
  352. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) ほぼそのとおりでございます。
  353. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そこで、それが今、中に入って、そして約二カ月、もう三カ月たちますか、実現できる具体的なめど、こういったものについてあればお願いしたいと思うんです。
  354. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 先ほど申し上げましたように、新自由クラブと自由民主党との間に合意をされました幾つかの政治倫理の問題につきましては、今のところ一つ一つ緒についているわけでございます。  具体的に申し上げれば幾つかございますが、例えて言いますれば、政治倫理協議会については各党の賛同を得て速やかに創設する、こういうようなことも実現の緒についたわけでございます。また、政治倫理の第三項目にあります総理大臣及び国務大臣に資産の公開を義務づける、こういうようなことにつきましても、決して十分ではございませんけれども、一応実現ができたということで、まだ二カ月か三カ月足らずでございますので、十分な成果を得たと申し上げることはできませんけれども、少なくとも両党の間に結ばれました協定の幾つかが少しずつ実現に移されているということでございまして、私といたしましてはかなりの期待を持っている、こういう考えでございます。
  355. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そこで、もう一つお聞きしたいのでありますが、今あなたの情熱でもって一歩一歩実現できる、こういうことなんですが、今、自民党の中で、新聞報道によりますと、お手盛り法案で高額所得公示制度を納税額一千万超に変えるという、こういう法案が用意されておるということが報道されておるんですが、これはある意味ではますます政治倫理と反するというか、不鮮明な方向になるわけでございますが、どういうお考えですか。これは、新自由クラブ代表としてお聞きしておるわけです。
  356. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 大変勉強不足で、私よくその内容も承知しておりません。
  357. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 五十九年度の税制改正の一環といたしまして、現在国会に所得税法の改正を御提案申し上げておるわけでございますが、その中で、今、委員が御指摘になりました高額所得者の公示制度を五十九年度から改めさせていただく。現行の制度は、所得税法で所得額が年間一千万円を超える方、これはその年の確定申告の時期でございますが、五月から公示するという制度になっております。この制度は昭和二十年代からあるわけでございますが、現在の一千万という額ができましたのが四十五年でございます。したがいまして、もう十数年たっておりまして、毎年この制度で公示される人の数が昨今では年間五十万人近くなっておるということでございまして、従来から税制調査会でもいろいろ御議論がございまして、今回その所得額を引き上げるという点が問題になったわけでございます。  税制調査会の中でも、この制度が部分的には形骸化しておって興味本位に扱われがちであるので、むしろ廃止すべきではないかというふうな御意見から、むしろ所得額よりも税額を公示すべきである、あるいは税額と所得額を一緒に公示するべきである、いろんな意見がございまして、結局のところ、この制度は所得を公示いたしまして、相互に所得額のチェック機能と申しますか、そういうことで申告納税の水準が上がるというのが基本的な制度の目標でございますので、税額を公示することによってやはりそういう機能は期待できるということもございます。かたがた、そういうことによりまして高額の納税をしておられる方の納税意欲をさらに推し進めるというふうなプラスの効果も期待できるということで、結局五十九年からは所得公示にかえまして税額公示に変えるということでございます。
  358. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そういうことですが、田川さんどうお考えですか。
  359. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 個々のいろいろな政策については、私も自由民主党と新自由クラブの間で連立を組んでやっておりますけれども、政策ベースで検討をしております。  今、御指摘のことにつきましては、私も大変知識が浅うございますから、ここで論評を加えるというだけの自信もございませんので、私どもの政策の担当者と一応打ち合わせをさしていただかなければちょっとここで論評を加えるわけにはいきませんので、御理解していただきたいと思います。
  360. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 ひとつ楽しみにお待ちしておきたいと思います。  そこで総理総裁声明を出して、新自由クラブと連合を組んで、そしてスタートを切ったわけでございますが、田川さんの先ほどの答弁もございました。そこで私は、ある意味ではこれは総理総裁としてあなたにも責任はあることだと思うんですね。そういう意味で、この田中問題のけじめ再優先に対してどう対処するか、これについて総理の見解をいただきたいと思うんです。
  361. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 過ぐる臨時国会におきまして、例の決議案の問題がいろいろ問題になりました。そういう問題の取り扱いについて、国民の皆さんの御理解を十分得られなかった点があったと考えておるわけであります。その結果、非常に熱いおきゅうを据えられたと申し上げましたが、やはり選挙というものは、主権在民の国家におきましては最高、最終の国民の判定を得た審判である、そういうふうに考えまして、これも一つのけじめである、自民党はおかげでひどいおきゅうを据えられたという一つの結末も得た、そういう形にもなると思います。  またしかし、政治倫理をさらにこれを進めていかなければならぬという面から、諸般の政策を推進するという決意を持ちまして、いろいろ資産の公開とか、あるいは党内にも政治倫理委員会をつくりまして、いろんな政策を今検討していただき、各党ともいろいろ御相談もしてきて、団体として、組織としてみんなで総がかりで政界浄化のためにも我々は努力し始めている、そういうことでございます。
  362. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 ちょっとこれは聞き漏らしたわけですが、大蔵大臣、さっき言った高額所得の公示変更の問題ですね。これは新自由クラブとの間に政策的な詰めはやられていないわけですか。
  363. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今の問題は、今度出している税法改正の中に入っていることですから、したがいまして、これは閣議決定もしておるわけですが、今田川自治大臣のお答えを聞いておりますと、要するに今佐藤委員の御指摘なさった内容を自分は詳しく承知してないし、政策段階でどういう議論がなされたかを承知していないものだからと、こう言って謙虚にお答えになったわけだと思うんです。これそのものは当然のこととして、政府税調、党税調、それから自由民主党、いわゆる新自由クラブ、与党の政調、政審、それから閣議をクリアしたものでありまして、いろいろ問題になっておりますのは、四十五年当時、いわゆる所得額で一千万超を公示することになった。それが五十九年、ちょうど一人当たり所得がアメリカのまだ半分ぐらいの時代のものですから、それからやってみますと、人数もうんと膨大になりましたし、いわゆる俗に言う高額所得者という感じが徐徐に当時とは違ってきております。したがって、これを上げるのが適切ではないか、その際いろんな議論をして、所得で示すよりも納めた税額で示した方がいいじゃないか、こういう議論になったわけです。  世上いろいろ言われておるのは、そうすると平均的国会議員が公示されないようになるという意味の批判がいわゆる社会面なんかに出ておったことはございますが、これそのものの持つ意味は、そうした倫理関係とは余り関係のない、極めてノーマルな議論から積み上げられた税法上の改正である、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  364. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 なかなか私は納得できないんですが、これは田川さんから後ほど検討するということをいただいておりますから、今聞くと閣議決定にあなたもおられたような感じもするんですが、ひとつ期待しておきますから、きちっとしてください。  そこで、先に進みますが、総理、今あなた政治倫理の問題について、特に田中問題のけじめについての見解がございました。そこで、そういう上に立って聞くんですが、田中角榮さん、それから佐藤孝行さん、このお二人は自民党を離党しておる、これは知っています。しかし、田中派というか、自民党の議員の中における派内もしくは中曽根派、こういうところに所属しておることも事実、この点はどういう御理解ですか。
  365. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 佐藤孝行君は、自民党を離脱しておりまして、中曽根派、いわゆる政策科学研究所というところに入っていないのじゃないかと私は思います。ただ、友人同士でありまするから、交流はありますし、勉強し合うこともそれはもちろんあると思っております。田中角榮氏につきましても、私その辺よく調べてありませんが、自民党を離脱しておられるので、同じじゃないかという感じがいたします。
  366. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 それでは、私が調べた中では二人ともお入りになっておるということですから、これはひとつその結果をぜひ御連絡いただきたいと思うんですが、よろしいですか。
  367. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 調べまして御通知申し上げたいと思います。
  368. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 おとといも質問があったと思いますが、一〇・一二判決で二階堂さん、それから加藤六月さん、この二人がロッキードわいろを受領したという認定は住法務大臣からの判決内容の説明の中にあったわけでございますが、これについてどのように総裁として措置をとろうとするのか、この点ひとつお聞きしたい。
  369. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 裁判所の判決の内容について一々論評することはいたさないという方針でございます。
  370. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 これは裁判所の判決といっても、政治倫理が最優先ということで掲げておる中曽根内閣として、倫理問題としてはこれは解決されていないんですね。そういう意味で見解を聞いておるわけですから、総裁の見解をいただきたいと思います。
  371. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) このことはもう何回も御質問いただきまして、加藤六月君にしても国務大臣になりましたときにいろいろ御質問をいただきました。その際に、二階堂さんについても御質問をいただきました。そのときに国会でお答えしておるところであります。  私は、何回か選挙もあり、国民審判もあったわけで、事件の有無等々については、最終的には我我は今、国会におり、あるいは行政府におる者としては確認し得ないものでございます。なぜなら、本人が本院において否定していることでもあるからであります。これが裁判で争っているという問題になれば最終的には確認することもできる、法的確認ができると思いますが、そうでない、それができないという場に置かれておる問題でもございます。そういう意味におきまして、本人が既に数回の選挙で試練も受け、また国会議員として非常に一生懸命努力もされ、勉強もされ、また選挙民の負託にこたえて国政のために一生懸命働こうとしておられ、かつ能力も抜群の能力を皆さんお持ちの方々でございます。そういう方々につきましても適材適所で働く場所をこちらの方で考えてあげるということも、やはり選挙民、選出してきた主権者である国民のお考えにも沿うことになりはしないかと私は思っております。
  372. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 私は、総理が本会議やその他でしばしば判決と政治倫理の問題は別だと、こういうことで自民党には倫理綱領があるからそれで正す、こういうことを強調しておることを聞いておったんですが、事実はそうでないようでございますが、いずれにしましてもこの問題は国民が注視をしておる問題ですから、そこら辺はひとつぜひ踏まえて対処を見守ってまいりたいと思います。  そこで、総理にお聞きしたいと思うんですが、先ほど私はちょっと留守をして聞き漏らしましたが、唯一具体化した問題として、閣僚の資産公開がやられました。これは組閣条件にまで総理が加えて資産公開に踏み切ったわけですから、相当な決意とあれがあったんじゃないかと私は思うんですが、ひとつその決意なり目的なり、それはいかがですか。
  373. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治倫理のことが叫ばれまして、諸外国の例等も調べてみまして、これは政治家の思想や政策をガラス張りにすると同時に、財産という問題もガラス張りにする方が政治倫理の道に沿う、そういう考えに立ちまして、国務大臣につきまして御協力を願って行ったものでございます。
  374. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 官房長官ね、今総理のお話を聞きますと、政治家の政治、財産を含めてガラス張りにして政治不信を取り除きたい、こういう目的でされたのでございますが、それにしてはこの公開基準が余りにも制約が多くて、調整期間を加えたりして不鮮明な部分が多いという国民の不評が強いわけですね。これは特にこの中で国民が指摘しておるのは、なぜ調整期間を置いたのか、なぜ資産の購入の時期とか価格とかこういった点を明示しないのか、こういったいろんな御批判があるようでございますが、どういう目的ですか。
  375. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 今、総理からお答えを申し上げましたような趣旨で閣僚の資産公開に踏み切ることにしたわけでございます。それぞれの資産を公開するということは、基本的にはやっぱりプライバシーに属することでございまして、あくまでも本人の意思によってこれを発表するということである筋合いのものかと、こう思うのでございます。したがいまして、第二次中曽根内閣が出発をいたしますときに、中曽根総理からそれぞれの閣僚に対しまして、まず資産の公開ということをやろうと思うので御賛成を願いたい、こういうふうにお話しになりまして、それを受けてそれぞれの閣僚が申し合わせてこれを公開する、こういう形にいたしたのでございます。  そこで、総理から今申し上げましたような趣旨に沿いまして、どういうふうな基準で発表したらいいのか、これはそれぞれが個人個人ばらばらでやりましても、基準がありませんとなかなかいろんな見方も出てくるものでございますから、内閣官房で、外国の例あるいは従来内閣総理大臣が資産公開した例等もいろいろ参考にいたしまして基準づくりをいたしたのでございます。それをいろいろ検討いたしておりましたので、少しその間に時間が経過をいたしまして、したがいまして、これは調整するという期間を持ったのではありませんで、その基準をつくるという作業に時間がかかりましたので、それをそれぞれの閣僚に対しまして、こういう基準で公開をしようと思うと、それぞれ記者会見等の場で発表していただきたいということを私の方から申し上げたのでございます。したがいまして、その基準ができ上がりました時点を一つの基準といたしまして、そこでひとつ発表してもらいたい、こういうふうにお願いをした次第でございます。  考え方によりますといろいろな御批判もあるかと思うのでございまして、今度は一つの基準をつくってそれを発表した次第でございますが、いろいろな御批判や御指摘等もございますので、それらも十分今後参考にさせていただきまして、次の機会にはそれらも取り入れて、さらに総理が今お話しになりましたような、そういうガラス張りでという趣旨に沿うような方向でさらに検討を進めればと、こんなふうに考えておる次第でございますので、御了承いただきたいと存じます。
  376. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 今お聞きしますと、基準をつくった意味はわかりました。  しかし、ねらいはもっとやっぱりガラス張りにして、閣僚の資産をありのままをひとつ国民に見せてもらおう、見てもらおう、そしてまた批判もいただこうと、こういうのが趣旨でしょう。そういう意味ではきわめて絞った内容になっておるわけですからね、国民から疑問が出るわけです。  しかも、この調整期間、あなたは時間かかったというけれども、その中で閣僚の中で一人か二人、財産分与の調整をやってみたり、こういう事例も出てきておる、こういうことでなお一層それを印象づけたということは事実だと思うんですが、いかがですか。
  377. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) これはもう基準づくりにはそれぞれ私情を差し挟まないようにいたしまして、厳正にいろんな角度から検討してみてくれ、こういうことで、内閣官房でいろんな資料を集めて実は基準づくりを進めたのでございます。  例えば、それは資産の取得をした時期の価格などというのはやっぱり非常に重要じゃないかというようなお話がございますけれども、これは先祖代々伝わってきておる資産を持っているというような例もございますし、いろんな総合的に考えてみて、例えば夫人名義のものも公開すべきではないのかというような御指摘もちょうだいをいたしましたけれども、御主人が政治家で奥さんがいつもそばにいて、内助の功で家庭で一緒にいると。それで政治家の方が自分の名義でなしに奥さんの名義にこれをしたらどうかというような例も全くないことはないでしょうけれども、その奥さんがまた社会人として活躍をしておられて、堂々と自分の資産を持って、夫人名義のものを持って活躍をしておられるというふうな例もありましょうし、それを、夫人名義のものをもうこの際公表するんだということで強要するというのもまた男女同権という立場から考えていかがなものかというようなこともありまして、そんなことを一生懸命論議をいたしまして、これからのやっぱり政治世界で、これだけ政治倫理が叫ばれまして、そして閣僚の資産公開というのが、一つの非常にそういう政治の信頼をつなぎとめていく大事な場だと、大事な考え方だということにいたしますと、今度の閣僚の資産公開というのは、そういう意味でもこれからも非常に参考にされるべき大事な基準だろう、こんなふうに思いましたので、慎重を期していろんな角度から実は進めてきたのでございます。  御批判をいろいろちょうだいをしておる向きにつきましては、今後それを参考にいたしましてさらに検討をさせていただくようにしたいと思いますが、ひとまずの基準といたしましてはまあまあ何とか一つの基準づくりということにはなったのではないかと。それに基づいて、それぞれの閣僚が良心に基づいて公開をした、こういうことになっておりますので、どうかひとつ御了承をいただきたいと思うのでございます。
  378. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そうしますと今、官房長官のお話を聞きますと、この基準は、言うなら自由意思で発表するのに最低限ここまで発表しようじゃないかと、こういう申し合わせだと、これ以上については各閣僚の自由だと、こういうことですか。
  379. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 閣僚の資産公開は法律に基づいて行うものでもありませんので、あくまでもその閣僚の申し合わせと、こういうことになっております。したがいまして、その申し合わせに基づいてそれじゃ公開をしようと。しかし、みんな基準もなしにばらばらでは、公開という場合にいろいろ、それぞればらばらになってしまいますので、内閣官房の方で基準を示してはどうかというような各閣僚のお話もございましたので、基準をつくって、こういう基準でそれじゃ公開をしていただいたらどうでしょうかと、こんなふうに申し上げたところでございます。それぞれの個人でまた別の意思があれば、それは例外だけれどもといって御発表になるのはそれはあくまでもその本人本人の問題、それを申し合わせによって公開をすることにした、基準をつくることにした、こういう筋合いのものかと思うのでございます。
  380. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そこで、せっかく総理がガラス張りにしたいというのが、実際は曇りガラスじゃないけれども、板のように先が見えないと、こういう公開では意味がないわけですから、私はきょう若干時間がかかりますけれどもお聞きしますと、これは一つの最低基準であって、これから以上は各大臣のいわゆる自由意思だということでございますから、ひとつお聞きしたいと思うんでありますが、資産の取得をした原因ですね、公開資産の中で。それから時期、価格、資金の調達方法、この四点についてまずお聞きしておきたいと思います。  そうして、同時にもう一点は、この公開の中に出ていない未公開の資産、例えば親族であるとか子供さんであるとかに分与した、こういった資産があればそれのあるなしの問題とあわせて、あればひとつその名義人、時期、価格、資金調達の方法、この四点についてまず総理から順次ひとつお聞きしたいと思うんです。
  381. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 資産公開につきましては、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、そういういろんな国の例も相当官房で研究いたしまして、それで国によってみんな性格が違うわけです。例えばイギリスであったかアメリカであったか、不動産は入れない、土地や家屋は入れないという国もたしかあったと思います。大体そういう国々の重点とするところは、公的地位についてそれで不正蓄財をしたのではないか、それを中心に物を見て、個人が先祖代々どういう財産を持ってきたかという点は見ない、不問に付する、公的地位になってから財産がふえたんではないかということを中心に物を見るという、そういう性格の国も多々あったように思うんです。日本の場合は、しかしそれだけではいかぬと。そういう面も大事だけれども、やはりどの程度現状において持っているか、そういう点でつくろうということで、折衷いたしまして大体今度内閣官房でつくったような制度にしたわけでございます。それで一応やってみて、まあその後、これで最終というわけではないのであって、また財産が一年ごとにどう動いていくかということもその地位についている場合にはあるいは示す必要があるんではないかと、そうも考えておるわけでございます。  したがいまして、せっかく内閣官房で統一的基準を決めて、それによって申告したというのが今回の自主申告の内容でありますので、それ以上の点につきましては答弁は差し控えさせていただきたいと思いますし、また、将来改正する必要があるという場合には、その基準自体を内閣官房としていろいろな世論やらその他も聞いて改正をして、それに基づいてまた申告していただく、そういうふうに統一的にやっていきたいと思っております。
  382. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 そう言いますと私も言わなきゃならぬわけですが、先ほどからお聞きしておるのはそのことなんですね。総理は、ガラス張りにしなきゃいかぬ、全部透明にしなきゃいかぬ、それがやっぱり政治倫理の一番大事な点だということを強調なさる、またこういうことを本会議の際にもあなたはおっしゃっておったようですが、しかし、あけてみたところが統一基準なるもので全然わからない、不透明だ、これが今の国民の実感だと私は思う。ですから、味つけのしてないお雑煮みたいなもんだとか、単なるジェスチャーとか、こういういろいろな批判がございますし、さらにまたこういった内容ではなくてもっとやっぱり財産形成過程をひとつ明らかにすべきだとか、いろいろな御批判があるのはそこにあると思うんですね。ですから、そういった点をなぜしないのかということでさっき聞きますと、なかなか閣僚の自由意思で、そして最低の申し合わせをしたんだと、こういうことですから、それならひとつ私が聞けば自由意思で答えていただけると、こう私思ったから聞いたわけです。いかがですか。
  383. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 政治倫理に関しまして、やはりある程度財産関係も明らかにしておく必要がある、そう考えまして、私は内閣官房に統一的な基準をつくってくれと頼んでやったものなのでございます。しかし、明らかにするといっても、それはいろいろ限度はあります。さっき話がありましたように、じゃ、奥さんの財産をどうするかと、そういう場合に政治家の奥さんであるがゆえに、自分が嫁入りのときに持ってきた財産もあれば、その後自分が収益を正当に得たものもございましょう。それを奥さんであるがゆえに財産を公開しなければならぬというのは、これは妻が主人に隷属するようなことで、男女平等に反するじゃないかと、そういう婦人差別撤廃条約に反するような議論も実はあるわけです。また、じゃ、資産の中には営業や事業をやってきた政治家もおります。そういう人たちが営業とか資産でやってきて持っている財産と、それから個人が持っておる財産と、じゃ営業用の財産まで一緒に出すのかと、そういう問題がある、それは個人の資産とは別じゃないか、そういうものまで出せば、会社の秘密とかいろんな面なりにも関係してくる問題があるじゃないかと。事ほどさようにいろんな議論がありまして、そして、じゃ値段をどうするかという場合に、いまの時価といってもいろいろ動きます。また、いつ取得したかというような問題についてもいろいろ変動があります。  そういうようないろんな面から、これは固定資産税のその課税基準、それが評価額というものが、やはりある意味において公的性格を持っておる。そういうので、それならばそれで大体いいじゃないか。そういう一つ一つ割合に合理的な偉観的な基準というものを持ってやろうという意味であの基準がつくられておるのでありまして、その点をぜひ御了解いただきまして、もしこれを改正する必要がある場合には、内閣官房として改正点をちゃんと決めて、それにのっとって閣僚にまた申告するように協力していただく、それが筋であると思っております。
  384. 佐藤三吾

    ○佐藤三吾君 あなたは財産分与の問題までいろいろ言っておりましたが、私は第一点に聞いたのは、いま公開しておる内容について、公開しておる資産について、その購入時期、そして購入したときの資金、さらに購入した原因、その資金の調達内容、こういった点をまずひとつ明らかにしてほしいと、こう言っておるわけです。いま総理は祖先伝来といいますけれども、あなたたちのあれを調べてみると、祖先伝来から継承をしておるというのはわずかに一人か二人しかございませんよ。あとは全部皆さんの腕で購入しておる経緯のようでございますから、ひとつ遠慮なくお願いしたいと思います。
  385. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 祖先伝来もあるし、私のような場合には、おやじが死んで相続で入ってきたという山林原野等もいろいろあります。皆千差万別であります。こういう問題は、やはり内閣官房として統一的基準によってやるのが正しいと私思いますので、その点で御了解をいただきたいと思います。    〔佐藤三吾君「だめですよ、私はさっきから言っておるとおりですから。せっかくやっておるわけですから」と述ぶ〕
  386. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 佐藤君、立ってやってください。    〔佐藤三吾君「いや、押し問答したってしようがないですよ。総理からずっと始めてくださいよ、待っておるんですよ。公示価格の範囲で結構ですよ、出してください」と述ぶ〕
  387. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔午後四時速記中止〕    〔午後四時十一分速記開始〕
  388. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは速記を起こして。  じゃ、佐藤委員質問に対しまして、官房長官からひとつ御答弁願います。    〔佐藤三吾君「どういう意味です」と述ぶ〕
  389. 西村尚治

    委員長西村尚治君) いや、今おっしゃったでしょう、資産の内容問題ということ。    〔佐藤三吾君「総理じゃなくて官房長官……」と述ぶ〕
  390. 西村尚治

    委員長西村尚治君) いや、総理はさっき答弁なさったから。
  391. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 先ほども答弁申し上げましたように、それぞれ閣僚のプライバシーがございまして、それを資産公開するかどうかということは個人の自由だと思います。それを今日の政治倫理を大切にするというこの政治状況、非常にこの大事な時期ということを考えられまして、総理からぜひ資産公開をしようと思うのでそれに御参加を願いたいと、こういうことで個々の閣僚の御同意を得て、申し合わせによりましてこれを公開する、こういうことにいたしたのでございます。  そのためには、基準をつくってひとつ発表しようということになりまして、先ほど来御答弁申し上げておりますように、内閣官房で基準をつくって、その基準に基づいて公表させていただいたところでございます。  今、私に御指名がございましたのは、総理答弁をしたけれども、その次、官房長官はどうだと、こういう委員長の御指名を受けたかと思いますが、私も総理と同じ理由で、この調達の時期、そして調達の資金の金額あるいはその調達の方法、原因について、今ここでお答えすることは差し控えさしていただきたいと存じます。
  392. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 佐藤君、どうでしょう。田川自治大臣、何か答弁ございませんか。
  393. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 勘違いをせられていらっしゃるんじゃないかと思いますけれども、資産公開は継続性と比較性が問題なんで、本当なら公開された財産が多過ぎるじゃないかということをおっしゃるのが当たり前ですけれども、少ないというお疑いをかけていらっしゃるように私にはとれるんです。次の段階で、閣僚の地位についたためにふえたじゃないかと、ふえたときにこれは何でふえたのかという疑惑が残るわけですね。ですから、本来ならおまえのところは少し多過ぎるじゃないかというのが私は当たり前ではないかなという感じがするわけでございます。  ですから、この資産公開は今スタートしたわけで、これからあと一年なり一定の期間にもう一度資産公開して、そしてそれが変化があるということのために今度資産公開をされたものと思うわけでございます。入手した時期とか、それからそういうようなことは今官房長官が言ったとおりでございますが、私の場合はほとんど相続でございます。
  394. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  395. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  住法務大臣。この順序で申し上げますから、ひとつ住法務大臣。
  396. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) お尋ねの件、どうするこうするという問題でございますが、先ほど来、総理、官房長官がおっしゃったと同じような考えを持っております。
  397. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 総理、官房長官発言をされたとおりの考えを持っております。
  398. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 安倍外務大臣が申したとおりでございます。
  399. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 総理以下お答えになりました大臣のとおりでございます。
  400. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 森文部大臣と一緒でございます。
  401. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 私は、元来、資産公開ということには反対でございました。なぜ反対かというと、それは後で申し上げますけれども、大臣になる条件として資産公開しろということでございましたので、正直申し上げて大臣になりたいから資産公開をするということに応じたのでございます。(笑声)  じゃ、なぜ資産公開をすることに反対かと申しますと、私は横浜で百年近い商人をしておりまして、三代目でございます。その資産をつくるためには祖父や父が一生懸命築いたものをここに発表して、ただ単に数字的な興味にさらされた人たちに見られるということは祖父や父に対して非常に申しわけないと、そういう気持ちで反対であったのであります。  二番目には、なぜ反対かというと、閣僚だけがなぜ資産の公開をしなきゃならないか。衆参両院の全部が公開すべきではないかと。閣僚以外の者はよろしいんだと、野党はよろしいんだということになれば、野党は将来政権をとって閣僚にならないという気持ちがあるからなんですよ。したがって、衆参両院全部が資産を公開すべきだと思うんです。  三番目の反対理由は、これは私とあなたと見解が違うかもしれないけれども、国会においてそのようなことを聞く権利があるかどうか、ここらをお調べ願いたいのであります。と申しますのは、私は長年国会対策をやってまいりましたので、そのような与党と野党とのいろいろな考え方、いろいろな論争を数限りなくやってまいりました。したがって、国会の中で、例えばこの資産公開ということは総理が官房に命じて一つの基準をつくったと。基準の中でやったことであって、これは法律ではないのであります。法律ではないものに対して自発的に我々が出して、さらにあなたがそれに対してもっと追及するということが果たして権利があるかどうか。これは今後の国会において重大な問題でありますので、委員長や理事の皆さんがひとつ、私は結論として言っているわけではございません。大切な問題であるので御論議いただきたいと、こういうことを申し上げているわけでございまして、したがって、この際結論から申し上げれば、委員のおっしゃるような具体的な発表は申し上げられないということでございます。
  402. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それじゃ、細田運輸大臣。
  403. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 総理大臣、官房長官からお答え申し上げたとおりでございます。
  404. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 運輸大臣の考え方と一緒でございます。
  405. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 五十年前に祖父から相続したものであります。
  406. 水野清

    国務大臣(水野清君) 私は御質問の向きは用意をしております。しかし、先ほど官房長官も申されましたし、ほかの閣僚との関係から私は今ここでお答えをするわけにはいきません。しかし、概念的に申し上げますと、私の持っている資産の大半は親からもらったものでございます。それから、資産もありますが、同時に借金もございまして、大体差し引きゼロだなというのが感じでございます。  それからもう一つ。ただいま通産大臣も申されましたが、資産公開の問題は、私どもは閣僚が襟を正すためにみずからやっていることでございまして、もしお調べ、御追及をなさるならば、私は、全国会議員がやはり資産公開をした上で議論をするのが当然だと、そういう確信を持っております。
  407. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) 総理、官房長官と同じような考えを持っております。
  408. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) お答えをすべき事柄ではないと、かように考えております。
  409. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村佐近四郎君) 官房からの閣僚資産公開の基準に基づいて御報告をしてあるとおりであります。
  410. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 結論的に言うと後藤田さんと同じでございます。私は資産公開の際に記者クラブでこう言ったんです。私は全部基準に基づいてお話をするけれども、私の一番危惧するのは、やはりマスコミの報道いかんによっては非常に興味本位にとられる、そういうことは資産公開の本当の意味と違ってくるんじゃないかということだけ私の感想として申し上げました。結論は今申しましたように行管庁長官と同じでございます。
  411. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 総理と官班長官と同じ意見でございます。
  412. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 総理、官房長官と同じでございます。
  413. 上田稔

    国務大臣(上田稔君) 総理、官房長官と同じ意見でございます。
  414. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  415. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 速記を起こして。  佐藤君の残余の質疑は後日に留保することといたします。
  416. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、宮澤弘君の総括質疑を行います。宮澤君。
  417. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 まず、核軍縮の問題について伺いたいと思います。  本題に入ります前に、総理アメリカで核戦争を扱いました「ザ・デー・アフター」という映画がつくられました。日本でもことしの一月に封切られたわけでございますが、総理、それをごらんになりましたか。
  418. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 映画は見ませんが、テレビで部分的に見ました。
  419. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 ぜひひとつ映画を見ていただきたいと思います。  これは、私どもの友人の広島の被爆者あたりが言いますと、とてもあんなものじゃない、生易しいものじゃないと申しますけれども、核戦争の悲惨さをリアルに描いております。ぜひひとつ機会があればごらんをいただきたいと思います。  核軍縮につきましては、総理もこれは我が国の最大の問題であるとしばしばおっしゃっておいでになりますし、また施政方針演説を拝見をいたしましても、「日本のように核を持たず、専守防衛の節度ある防衛力を持つ国にして、初めて平和と軍縮は強く主張し得ることである」と、こう述べておいでになります。しかし、世界の実態は、ヨーロッパにおきますSTARTとかINFの制限交渉が中断をいたしておりますし、軍縮よりもどうも軍拡へ向かう危険さえ感じられます。  そこで、外務大臣に伺いますが、ソ連で政権交代がございました。これがINFの制限交渉にどういう影響があるかお見通しを伺いたいと思います。
  420. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) チェルネンコ新政権ができまして、われわれはこの新政権が核軍縮の交渉再開へ向かって動き出すことを期待をしておるわけでありますし、アメリカもレーガン大統領が強く呼びかけておるわけでございますが、現在のところは対話ということに対してはチェルネンコ新政権もこれまでと違って柔軟な姿勢は示しておるようですが、しかしINF交渉とかSTARTの交渉の再開をするというところまでは踏み切れないということでありまして、特にチェルネンコ新政権におきましては、アメリカのいわゆるパーシングⅡであるとか巡航ミサイルだとかヨーロッパに配備いたしました。これをもとに返すならばこのINF交渉をやろうということを言っておるわけで、今のそういう状況から見ますと、直ちにINF交渉が始まると、そういう可能性が出てくるとは思えないわけであります。
  421. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 昨年来のヨーロッパにおきますINFの制限交渉に関しまして、総理も外務大臣も、これはグローバルな観点から解決をしなければならない、こう言っておいでになります。ソ連のSS20を極東に持ってくるということはこれは認めるわけにはいかない、アジア地域の犠牲の上において交渉が行われることは認めることはできない、こういう態度をとっておられる。これは私は正しいと思います。しかし、現在のINF交渉は、これはしょせんヨーロッパが主体でございまして、どうしてもアジアは従になりがちでございます。アジアの犠牲においてというような表現が行われるのもまさにそういうことではなかろうかと思います。ヨーロッパ各国も結局自分の国がかわいい、これは当然なことであろうと思います。  そこで、外務大臣に伺いますが、アジア太平洋地域におきまして、INFの制限交渉について米ソが話し合いをする機会をつくることに我が国が積極的な役割を果たすべきではないかと思いますが、いかがでございますか。
  422. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) INF交渉につきましては、やはりおっしゃるように、当初はヨーロッパサイドに配備されておるソ連のSS20を中心にしましたいわゆる米ソの交渉というふうなとらえ方であったわけでありますが、日本がこの問題に関しましては、このINFの問題はヨーロッパだけの問題でない、極東においてもソ連のSS20が大規模に配備をされておる、同時にまたこのSS20は移動可能である。そういうことから見ると、やはりこのINF交渉というものはグローバルな立場でこれはとらえて、そして交渉しなければならないということを日本が強く主張をいたしました。昨年のサミットにおきましても、中曽根総理もそういう立場からいわゆる政治声明にも積極的に参加するということになったわけでございます。これはやはりINF交渉というものをグローバルな立場で、そして極東を犠牲にしないで、アジアを犠牲にしないでこの決着をつけるべきであるという日本の主張を、アメリカもヨーロッパもこれに賛意を表した、こういうことから日本の参加になったわけでございます。  現在では、私は、アメリカの姿勢はあくまでもINF交渉はグローバルで行う、この姿勢は基本的に変わっていない。レーガン大統領も何回も確認しておりますし、変わっていない、こういうふうに思いますし、もしINF交渉が再開をされるということになれば、その基本的な方針のもとに行われると思うわけであります。むしろ、こういう段階で極東におけるINFをめぐってのいわゆる米ソの交渉にこの交渉を限るということになると、むしろ私はアメリカのいわゆる交渉力といいますか、力を弱めるということになるんじゃないだろうか、こういうふうに私自身は判断をいたしております。あくまでもやはりグローバルな立場で、全地球的な姿勢でこの問題が解決をされるべきであるというのが私ども考え方でございます。
  423. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 アジアに非核地帯を設定せよとか、あるいは最近は日本非核国家宣言をしたらいいだろう、こういう提案がありますけれども、外務大臣どうお考えですか。
  424. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは一般的に言いまして、適切な条件がそろっている地域において、その地域の国々の提唱によりまして非核地帯が設置されるということは、核拡散防止の目的に資し得るものと考えます。しかしながら、アジア・太平洋地域に非核地帯を設置するための現実的な条件、具体的、現実的な条件がまだ整っていないと、こういうふうに考えておるわけでございまして、我々はそういう意味で非核地帯構想というものはまだ具体的、実証的といいますか、実効的でない、現実的でないというふうに判断をいたしております。
  425. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 非核国家宣言。
  426. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 非核国家宣言のお話がございましたが、日本は御承知のように、非核原則というものを堅持をいたしておるわけでございまして、そしてこれは日本だけではなくて、内外に今周知徹底をしておると、こういうふうに判断もいたしております。さらにまた徹底もさせなければならぬ面もあるわけでございますが、我我はそうした国是とも言うべき非核原則を明らかにいたしておる以上は、この非核国家宣言ということをするまでもないと、こういうふうに思うわけであります。
  427. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 総理に伺いますが、昨年秋、カナダのトルドー氏が参りましたね、そこで、米、ソ、中国、英、仏五カ国の核制限会議を開いたらどうだろう。総理もお会いになって、新聞によりますと賛意を表されたというふうに聞いておりますが、このトルドー提案、どう評価されますか。
  428. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) トルドー首相が核兵器を廃絶し、あるいはその前提として縮減するために精力的に世界を回って努力されている努力について非常に敬意を表しましたし、その理念につきましては全く同感であって、トルドー首相を激励したわけであります。  ただ、現実問題といたしましては、まず米ソ両国間のINFあるいはSTARTが再開されて、そしてある程度の見通しができることが前提になるでしょう。INFもできず、STARTの交渉も行われないという状態で五カ国を集めると言ったって、それは無理な話でしょう。それから、中国はたしか国連総会におきまして同じような核兵器保有国の国際会議を提唱したことがありますが、その主張の前提には米ソが五〇%まず削減して、その後で核保有国が国際会議をやろうということを言っておる。米ソは五〇%削減するということすら、まずそのINF、STARTすらまだ席に着かないという状況のもとに中国が参加する可能性はないと思いますし、それからイギリスやフランスにいたしましても、同じようにそれは米ソの超大国がまず話を合わせなければ、我々が持っているのは微々たるものなので話にならぬというのが彼らの腹の中にはあると思うんです。やっぱり米ソが何といっても席に着いて世界を安心させる、そうして次の段階が考えられるというのが現実的な考えではないかと思います。しかし、その理念については私も同感でありますから、そういうものの積み上げの中で、次第次第にものは醸成されていくとも思いますから、激励したわけであります。
  429. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 ただいま中国の話をされましたが、近く中国を訪問されます。首脳部と話し合いをされると思うのでありますけれども、その際にアジア・太平洋地域の核軍縮についても話題にされると思いますが、いかがでございましょう。
  430. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アジア・太平洋地域における平和の確保及び繁栄の振興等につきまして、もちろんいろいろ話してまいりたいと思います。核の問題が先方はどういうような話をお持ちになっているか、それらも見きわめてやりたいと思いますが、世界的な核の廃絶及び軍縮問題等については、もちろん共通課題として話してみたいと思っております。
  431. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 もう一つ総理に伺いたいと思います。  申し上げるまでもなく、日本世界唯一の被爆国でありまして、中曽根首相はその被爆国の総理大臣でいらっしゃる。そこで、日本が核軍縮につきまして具体的に何ができるのか、また何をなすべきか、こういうことについて総理大臣、どう思われますか。
  432. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり日本は、広島、長崎の悲劇を持つ国でございまして、ほかの世界にはそういう国はございません。そういう経験を持っている国民として、心の底から核兵器を再び爆発さしてはならないという声を世界に訴えるべきであると思いますし、政治的にもそういうような理念に基づきまして、具体的な諸般の政治方策を適切に推進させていくべきであると考えております。
  433. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 質問の性質上一般的なお答えしか得られない、これはやむを得ないと思いますが、核軍縮につきましてもやはり一歩でも二歩でも具体的な行動が必要だと私は思います。  そこで、現実的にできる問題ということで以下二、三点承りたいと思います。  一昨年、鈴木総理が国連の軍縮特別総会に行かれまして軍縮キャンペーンについて二つの提案をされました。一つは、我が国の貴重な被爆資料を国連で常設展示をすべきである。それからもう一つは、国連の軍縮フェローシップでございますね、特別研修生、この人たちを日本に招待をして、広島、長崎で研修をしてもらったらどうだろうか。この二つのことは現実に移されたわけでございます。  そこで、まず外務大臣に伺いますが、その国連の軍縮の被爆資料の常設展示、そのオープニングの際に外務大臣は出席をされたと思います。どういう印象、感想をお受けになりましたか。
  434. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私、昨年の九月二十八日に行われました国連の原爆資料展示会に出席をいたしました。デクエヤル国連事務総長も出席をいたしまして盛大な開会式が行われたわけでございますが、その際私からも、またデクエヤル事務総長からもこの意義についてのスピーチを行ったわけでございます。広島それから長崎の代表者の方もお見えになっておられました。大変感銘的な展示会であったと思います。これは世界の各国の国連で働いておられる、あるいはまた国連に関係のある方々もお見えになっておられまして、この展示会がその後聞いてみますと、非常に深い感銘を与えておると、こういうことを聞いて大変喜んだ次第であります。これは、御承知のように、今お話しのように一九八二年国連の軍縮特別総会の際に我が国が提案をいたしまして、その提案が軍縮展として実現をしたような次第であります。
  435. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 核軍縮につきましては、グローバルな立場での各国の交渉も必要でございますけれども、草の根の民衆レベルの積み上げということも必要だと思います。例えば広島、長崎両市は世界平和都市連帯の呼びかけを世界の七十四の都市にいたしておりまして、被爆実態の普及を行っておりますけれども、自治体としては、これは努力に限度があると思います。私は、政府としても被爆資料の国際的な普及に積極的に乗り出すべきであると思います。  そこで、まず外務大臣に伺いますが、国連の被爆資料の常設展示、現在ではニューヨークだけでございますけれども、これをジュネーブ、ウィーンに拡大することについて国連に積極的に働きかけていただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  436. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ジュネーブ及びウィーンにおける原爆資料の展示に関しましては、昨年夏に国連が各方面の協力を得て在ジュネーブ国連欧州本部及びウィーンの国連センターにおいて原爆展を開催をした経緯がございます。政府としましては、こうした展示によりまして被爆の実情に関する客観的な知識が普及することは有意義であると考えております。  御指摘がございました常設展示というものにつきましては、いろいろと予算的な問題もあるわけでございますが、今後ともその可能性につきまして国連との間でひとつ相談をしてまいりたいと、こういうふうに思います。
  437. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 総理に伺いますが、国連を通ずるだけでなく、我が国独自で被爆資料の国際的普及を図るために、例えば巡回展示を世界で行うとか、そういうことをお考えになるわけにまいりませんか。
  438. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはり国連との協力のもとにやるのが普遍性及び効果的なやり方ではないかと思います。
  439. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 政府が直接行うこともいずれ御検討を願いたいと思います。  次に、開発途上国への政府の開発援助について承りたいと思います。このうちODAの中期目標達成の問題は既に議論が出ておりますので、私は青年協力隊の問題に絞って伺いたいと思います。  青年協力隊の事業は、技術協力を通じて隊員が派遣された国との友好を図るということが目的でございますけれども、私は、同時にこの事業は日本民族のバイタリティー、これを養う上からいっても極めて有益だと思います。若い人が電気も水道もないような土地に飛び込んでいきまして自分を試していく、人間形成のためにも個人的に貴重な経験でございますし、同時に、個人に有益であるばかりでなく、帰国した隊員が住む地域社会やそれから就業先の事業場、こういうところにまた活力を与えていく、こういうことだろうと思います。  そこで、まず外務大臣に伺いますが、派遣隊の数の問題。五十九年度は五百人から六百五十人に増加しまして、大変これは結構なことだと思いますけれども、まだアメリカの例えば五千人というような数に到底及びません。そこで六十年度に八百人にするという計画をお持ちのようでございますが、これをぜひ実現をしていただきたいと思いますけれども、所信のほどを伺いたいと思います。
  440. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) お話のように、青年海外協力隊の活動につきましては開発途上国から大変高い評価を受けておるわけでございます。そして、そうした諸国からも協力隊派遣に対する要請はますます増加をしておる、大変そういう意味では喜ばしい。我が国の海外協力というものが本当に何か地についたといいますか、評価をされたということで我々は非常に喜んでおるわけでございますが、そのために国際協力事業団では、昭和五十八年度より六十年度までの三年間で年間の新規派遣隊員数を五十七年度派遣規模の倍増の八百名にする計画を打ち出しておりまして、その初年度に当たる五十八年度は前年度比七十名増の五百名分の予算が認められました。また、五十九年度の政府原案におきましては、百五十名増の六百五十名に拡大するための予算を計上をいたしておるわけでございます。そうなりますと、あと八百名までには百五十名ということですから、これはもう十分可能性のあるところまで来ておるわけでございますし、これは必ず倍増は実行をするために今後とも努力をしてまいる決意でありますし、また倍増ができる、こういうふうに思っているわけでございます。
  441. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 協力隊派遣の問題は、隊員の帰国後の就職等の身分保障の問題、これが一番問題でございます。現職の身分を持って行ければいいのでありますけれども日本のように終身雇用、年功序列の国ではなかなかそういうわけにまいりません。そこで、試験に受かりましても参加を断念をしたり、あるいは退職して参加することを余儀なくされる、こういう事例が少なくございません。  そこで、事務当局にまず伺いますが、五十七年度の参加者で、現職で参加した者と退職して参加した者と、それから職がなくして参加した者、この人数とパーセンテージを伺いたいと思います。
  442. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 昭和五十七年度におきまして、協力隊への年間参加者総数は四百五十八名でございました。そのうち現職参加者は九十名で全体の二〇%、退職参加者は二百三十三名で五一%、無職者の参加者は百三十五名で二九%となっております。それ以前の大体の傾向を見ましても、大体現職参加者が二〇%、退職参加者が五〇%、無職参加者が三〇%という比率になっております。
  443. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 退職参加者が五〇%以上いるということが問題だと思います。昨年、総理がASEANに行かれまして、それ以来、この協力隊員の身分保障につきましては指示を行われて随分事態は改善をされたと思いますけれども、依然として問題が残っております。  多少伺ってみたいと思いますが、まず国家公務員につきましては、協力隊に参加をいたします場合、派遣法という国家公務員が国際機関等に派遣をされる場合の身分に関する法律がございます。派遣法の適用はございますが、その場合に、どうもこの派遣法を適用されますと、定員外の枠というのがありまして、枠に制約をされて希望者の中では断念をする者が少なくないというふうに聞いております。受験をいたします際に上司の許可を求めに行きますと、役所の都合が悪いとか、あるいは派遣法の定員の枠がある、こういう話が出てくるようであります。  そこで、これは各省の問題でありますが、代表して外務大臣に伺いますが、派遣法に言います定員外の枠の運用を弾力的にしていただいて、希望者は全部受験できるし、試験に通った者はひとつ派遣法の適用を全部受けられる、こういうような弾力的な運用をしていただきたい、いかがでございますか。
  444. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 過去におきまして、青年海外協力隊の選考試験に合格しながらも派遣法の適用が受けられないで参加を断念した者もおりましたが、関係省庁の御理解をいただいた結果、五十八年度におきましては、試験に合格した八名全員が派遣法の適用を受けたわけであります。今後とも派遣法の適用につきましては関係各省に働きかけていく考えであります。  他方、協力隊への参加を希望しながら受験できなかった、いわゆる門前払いとなった例があるか否かにつきましては、まだ十分実態を把握していないわけでございますが、しかしながら、協力隊の事業というのが我が国の内外から非常に高い評価を受けておるわけでありますので、したがってこのような事例があるとすれば残念でありますし、今後こうした事態が避けられるように関係各省に働きかけてまいりたい、ぜひともこの事業をやはり関係各省庁の協力のもとに積極的に推進をしていきたい、こういうふうに存じております。
  445. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 門前払いの例はあるようでございますから、どうぞ善処をしていただきたいと思います。  それから府県の職員につきましては、県が休職条例をつくって身分を安定させて派遣をする、こういうことになっておりますが、現在四十七の府県のうちで三十条例ができております。十七はまだできておりません。これをつくることにつきまして、どうも自治省の事務当局は消極的であるというような話を聞いておりますけれども、これは私はどうも了見が違うと思うんです。自治大臣、あと残っております十数の府県の条例をつくることにつきましてぜひ前向きに指導をしていただきたいと思います。いかがでございますか。
  446. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 青年海外協力隊の事業は大変日本にとって大事なことでありまして、私も以前から評価をしております。地方自治体の職員の中からも随分今まで行っておりますが、御指摘のように地方自治体の中には、まだ休職条例をつくっていないところもございます。聞いてみますと、国庫補助の基準の問題とか、あるいは最近定員の管理の問題、人員をどんどん削っていかなければならぬという苦しい問題もございます。しかし、事柄の重要性から残る団体に対してもそういうような機運が醸成されるように指導してまいりたいと思っております。
  447. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 民間の人たちにとりましては、やはり休職のまま行けるということと、それから帰ってからの就職の問題、これが重要でございます。  そこで、総理に伺いますが、政府あるいは自治体の職員あるいは民間の職員を問わず協力隊を志す者は受験が容易にできて、それから合格をしたならば後顧の憂いなく行けるというようなことにさらに政府を挙げて努力をしていただきたい、いかがでございましょうか。
  448. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は全く同感でございまして、海外へ行ってみまして、協力隊員の皆さんが現地に溶け込んで涙ぐましい努力と成果を上げておるのを見て感激をしておる次第でございます。身分保障をしっかりやっていただきまして、安心して海外で働き、また帰ってきてからも心配のないようにしてあげることは国家の責任であると思いまして、官庁たると民間たるとを問わず、そういう方面に今後とも努力してまいるつもりでおります。
  449. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 次に、行政改革について承りたいと思います。  マスコミ等はどうも行革熱が冷めたのではないか、こういう報道をしている向きもございますが、私は決してそうとは思いません。行革は中曽根内閣の金看板でございますし、今国会の施政方針演説でも総理は、行革はいよいよこれから正念場だと、不退転の決意を持って当たりたい、こういうふうに言っておいでになります。どうぞ大いに強力なリーダーシップを発揮をしていただきたいと思います。  そこで、まず行管庁長官に伺いますが、行革につきましては仕事減らしであるとか、人減らし、金減らし、機構減らし、いろいろ言われておりますけれども、行革の基本と申しますか本質、これは一体何だとお考えでございますか。
  450. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 行政改革というのは肥大化しておる今日の行政組織を簡素効率化するということ、同時にばらばらになってはいけませんので、総合性を発揮をするように改めるということ、それから変化に対する対応力をつけていくということ、こういったことが私は行政改革の基本であると思いますけれども、さらにその基本ということになってくると、やはり行政改革というのはまず行政の守備範囲を見直す、これが私は基本であろうと思います。行政の守備範囲の見直しから入って組織、機構、定員、これに及んでいって、そしてその結果、最後には経費の効率性を発揮させると、こういった順番で進むべきものと、かように考えておるわけでございます。
  451. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 行政の守備範囲をどう考えるか、これが行革の基本だと言われましたが、私もそう思います。私も知事として地方の行政の第一線におりまして、行政が一体何をなすべきかということに随分いろいろ考えさせられました。一、二例を挙げて申し上げますと、例えばお米の問題、最近、昨今はちょっと様子が違いますけれども、米の生産調整ということをこのところずっと国を挙げてやっております。ところが、知事は現在でも食管法の規定によりまして、米飯提供業者の登録というような仕事を依然としてやらされておる。もう一つ例を挙げて申しますと、例えばトラホームというような伝染病はもうほとんど出ておりません。私の広島県でも昭和四十七年に一人出ただけで、それ以来出ておりません。厚生省の統計をもらって見てみますと、昭和五十七年が新しい統計でありますが、全国で十七人発生をしておる。参考までに申しますと、厚生大臣、そのうちで十五人は大臣のおひざ元の福島県で発生をいたしております。そういうように、もう行政需要としてはほとんどないものについて、知事は予防でありますとか検診とかの義務を負っております。この法律はやっと昨年廃止になりました。そういうことで、第一線におりますといろいろ新しい行政需要が出てまいりますので、どうしても今までの仕事というものを見直しまして、やめるものはやめるということにしていかなければ、これは行政というものはおよそ成り立たない。私は痛切にそういうことを感じてきてまいりました。臨調もこの行政の守備範囲論をいたしましたけれども、時間がやや不足で、徹底を欠いたと思います。どうかひとつ、これから政府を挙げてこの行政の守備範囲論というものを徹底的にやっていただきたいと思います。  そこで、行政の守備範囲論を考えます場合に、私はポイントが二つあると思います。一つは、政府と民間との間の関係をどう考えるか。もう一つは、中央政府と地方政府との間の関係をどう考えるか。  まず、政府と民間との間の役割分担の見直しでありますけれども、これの中心課題は何といいましても許認可でございますね。許可とか、認可とか、登録とか、試験とか、届け出とか、いろいろ国民が行為をするに当たって政府が関与をしているものがありますが、この許認可をどう合理化し、見直していくかということだろうと思います。  行政管理庁の事務当局に伺いますが、現在いわゆる許認可というのは総件数がどのぐらいありますか。それから省庁別に、多い方から三つ四つ、省庁の名前と件数をひとつ教えていただきたいと思います。
  452. 竹村晟

    政府委員(竹村晟君) 許認可等の総数でございますが、昭和五十五年末の時点で約一万事項ございます。この場合、許認可等と申しますのは、許可、認可のほか、免許、登録、裁定、届け出、申告、こういったもの全部で二十一の類型を含んでおります。これを省庁別に見ますと、多い順から申しまして、運輸省が二千二百三、通商産業省が二千八十、農林水産省が千四百四十六、以下大蔵省九百七十一、厚生省八百七十四、こういう順になっております。
  453. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 ただいまありましたように、一万件ありますね。  それで、前国会、法律が出まして、そのうち臨調が答申をしております二百二十二件ですか、このうちで前国会で二十六の法律で改正が行われておりますが、行管庁長官、この答申中の未処理のこの問題、今後どう処理をなさいますか。
  454. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) おっしゃるとおりに、大変許認可事項が多いわけですが、これは何とか整理をしなければならない。先国会でもその整理が手ぬるいといったような御指摘を受けたことは事実でございます。ただ、本年度の分は大体今日まで七割ぐらい処理をいたしておりますが、あと三割ぐらい残っておりますが、これはぜひやり遂げるつもりでございます。しかし同時に、変化への対応力を役所は欠いておりますからね、ところが新しい行政に対するニーズはどんどんふえてくるわけですね。ところが、古くなって先ほど御指摘のあったような事項についてもなかなか役所がやめない、そうするとだんだんふえる。事情を聞いてみると、万一起きたときどうするんですかなんというような愚かな質問が出てくる。こういうことで大変厄介でございますけれども、これは私の役所としては監察をさしていただいて、できる限り思い切って各省の協力を得て整理改廃をやりたいと、かように思っております。
  455. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 総理、許認可の整理合理化というのは行政簡素化と同時に、総理がよく言われる民間の創意工夫を発揮させるということのためにも非常に必要でございますので、どうかひとつ各省庁のしりをたたいて徹底して行っていただきたいと思います。  次に、中央、地方の役割分担の見直しについて伺います。  まず総理大臣に伺いますが、施政方針の演説の中で総理は、「国と地方の関係の見直しの一層の推進を図りつつこと、こういうことを言っておいでになりますが、具体的にこれは何をお考えでございますか。
  456. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今まで知事さんから、また市長さん等から一番苦情が多かったのは、必置義務の問題であるとか、あるいは機関委任事務が多過ぎて整理がまだできていないとか、こういうような問題が多いと思います。あとは、補助金等につきましても非常に煩瑣である。各省みんな各系列でむだをやっておる、これをメニュー化せよとかあるいは一本にせよとかというそういう御議論を伺っております。そういう点について今後改革すべき分野が大きくあると思います。
  457. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 自治大臣に伺いますけれども、これまで進められてきた行政改革について地方自治体は満足していると、こういうふうにお思いですか。
  458. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) まだ行政改革が緒についたばかりであって、決して満足してはおりません。
  459. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 そのとおりでございまして、全国知事会の要望というのがございます。これは昨年の五月に政府が行政改革大綱を定められた直後に出ております。ちょっと読んでみますと、「行政改革大綱においては、国と地方の機能分担について答申の趣旨に沿って推進するとしているが、具体的には若干の許認可権限の委譲、機関委任事務の概ね一割程度の整理合理化を図ることとしているに過ぎず甚だ不十分な措置」であると、「甚だ不十分な措置」と、こう言っております。行革の視点は、無論簡素化とか合理化とかという点がございますけれども、同時に地方分権化ということも行革の有力な視点であるはずでありますけれども、臨調の答申等も総論はとにかくとして各論ではどうも地方自治が重視されていない、こういう不満を地方自治体が持っている、それがこういう形であらわれてきているのだと私は思います。総理大臣、行管長官、ともにかつて内政に関係をされて、地方自治については大変高い見識をお持ちだと私はそう思いますので、行革はまだ入り口でこれからでございますので、どうかひとつその分権的視点でこれから行革の各論をぜひ推進をしていただきたい、こう思っております。  以下、二、三具体的な問題について伺います。  まず、国の地方出先機関の整理の問題でありますが、これは昨年法律改正が行われまして、府県単位の国の出先機関につきましては、地方行政監察局や財務部が廃止をされました。それにかわって必要最小限の現地的事務処理機関が置かれるということで、これは多分ことしの十月一日でございますか、施行されることになっております。これが単なる看板の塗りかえであっては、これは行革になりません。  そこで大蔵大臣に伺いますが、財務部も対象になっておりますけれども、五十九年度では定員を百人減らす、さらに事務の整理合理化を行うと、こういうふうな閣議決定になっておりますが、どういう事務をどう整理合理化をされるのでございますか。それからその場合に、地方団体に権限移譲というようなことを考えておいでになりますか。
  460. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私が初め、五十四年の時点で財務部の問題を議論しましたときに考えてみましたのは、大ざっぱに言って財務部というのは三つ仕事がある。その一つは金融機関の指導とか検査であり、それから地方団体等に対する起債業務であり、もう一つが国有財産の管理かなと。それで、まず起債業務を考えてみますと、対象が三千三百二ですか、それで一部事務組合があっても、いわば金融機関に例えれば貸出先の数は三千数百だと。それで、資金は第一勧銀の資金量と大体一緒で、さて支店の数はどっちが余計あるかといろいろ調べてみました。しかし、いずれにしても貸出先ということになれば、それは民間金融機関の方がはるかに大きい。そうするとやっぱり各県にいわば支店のようなものの必要はないではないかというような角度から一つは議論してみました。  それから二番目の問題は金融機関の指導。まあ検査業務は毎日やるわけじゃございませんからこれは引き上げてもいいが、信用金庫等の指導となれば、やはり現地性があるのかなと、そういう考えを持ちました。  それから三番目の国有財産の管理につきましては、当時大平総理が、昔は税務署でやっておったと、こういう話がありました。そういう角度から検討をしてみました。そこへ持ってきて正式に今度臨調の答申をいただいた、こういうことで、今宮澤先生のおっしゃったような経過で今日に至っておるわけであります。したがって、結局、現地性のある国有財産の管理・処分事務、そして地方公共団体の融資事務もかなり局の方へ引き上げられますが、やはりそれなりには残るのかなと。それから信用金庫のまさに検査業務はいいが監督業務というのはやはり残るというようなことで、そこまで一応来て今日に至っておるわけであります。  まだこれから考えなければいかぬ問題はあります。ありますが、地方へ移譲をする問題等、あるいはいわゆる公務員宿舎の問題でございますとか、財産の問題でございますとか、そういう議論も過程においてはやりましたので、これからスタートするわけですが、さらにそういう方向のものがその中から見出されるかどうか、大いに引き続き勉強はしていかなければならぬ課題で、今具体的に、これは宮澤さん移せますよと、こういうことは判然と私の頭の整理はできていないという現状でございます。
  461. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 この際、出先機関、特にブロック単位の地方出先機関のあり方について一、二注文をいたしたいと思います。大臣方お疲れのようでございますけれども、特にブロック機関所管の大臣は、よくお聞きをいただきたいと思います。  出先機関をつくりますのは、申し上げるまでもなく行政の現地主義と申しますか、なるべく地方のことは地方で片づけさせる、こういう趣旨だと思いますが、しかし現状は、まず第一点に、本来地方でやっていいことでまだ本省が権限を握っておられることがたくさんあります。それからもう一つは、権限を移譲されましても、例えば補助金の交付事務のように、本当は出先で片づかないですね。地方団体の補助金係というものは、出先に行くと同時に本省にも行って陳情をしなければならない、いわば二重行政になっている、これが実態でございます。  そこで総理、その多くの仕事が現地機関で実質的、最終的に片づきますように、この際ひとつ本省と地方出先機関との間の権限配分の再点検を各大臣に指示をしていただきたい、こう思いますがいかがでございますか。
  462. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は同感です。二重行政とよく言われ、特に補助金に至っては三段階を渡ってこなければ最終的に入らない、そういうことも言われて、その弊害は前から言われておりますが、今御指摘がございましたから、この際に行管庁を通じましてさらに各省庁に対して簡素化するように、御趣旨に沿って指示したいと思います。
  463. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 もう一つ、ブロック単位の地方出先機関の長、局長ですね、この在任の期間がいかにも短いのです。私は広島県知事をしておりましたから実態を持っておりますので、ちょっと御披露をいたしたいと思います。  中国地方の在勤のブロック機関局長の在任期間ですね。これは四十八年の四月から五十八年の五月まで十年間をとっております。そういたしますと、大蔵大臣、まず国税局長ですね、これは十年間で十人ですから、在任期間は一年です。郵政局長も一年。それから通産局長はちょっと長くなりますが一年一カ月余り。地方建設局長も一年一カ月余り。それから財務局長、農政局長は一年三カ月。これが実態でございます。  総理、これでは私はおよそ仕事にならないと思うのです。あいさつ回りをいたしましてね、それから管内を一回りすると終わりです。これは、御本人としては出世の踏み台でいいかもしれませんけれども、地方にとってはまことに迷惑なんですね。  そこで、ひとつ総理にお願いをしたいのですが、出先の長は、地方におけるこれは政府代表でございますから、まあ最低二年ぐらいはひとつ勤務するように御配慮をお願いをしたいと思いますが、いかがでございますか。
  464. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まさに御指摘のとおりであると思いました。そのように指示いたします。
  465. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 次に、機関委任事務の整理について伺いたいと思いますが、これにつきましては前国会で臨調答申に従いまして一〇%余り整理をされました。結構だと思います。しかし内容はどうも非常に軽微なものが多いんですね。  そこで、一例として厚生大臣に伺いたいと思います。  厚生大臣、民生委員というのがございますね。全国に十七万人ぐらいおりますか、市町村におりまして、生活保護等のお手伝いをしておりますが、これの任免というか、委嘱の手続。御承知のように、市町村の民生委員推薦会というのが知事に推薦をいたしまして、今度は知事は府県の民生委員審査会の意見を聞いて、それから厚生大臣に推薦をする、厚生大臣が委嘱をされる。こういう手続をとっておりますが、今日こんな煩雑な手続で十七万人を厚生大臣が委嘱されるという必要があるかどうか。この辺を少し市町村にお任せになるというようなことをお考えになりませんか。
  466. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 私も先生御指摘のようなことを考えてみたのでありますが、実質的には、今先生おっしゃるように、村長さんがお決めいただくものでありますけれども、全国の民生委員の皆さん方がやっぱり委嘱を受けるなら厚生大臣がら委嘱を受けることに非常に誇りと責任を持ってやっておるということで、民生委員の皆さん方の希望が非常に強い。実質的にほとんどボランティア活動でありますから、そういう心理的な面も大事だというようなことで残っておるものと思っております。
  467. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 今、一例を申し上げましたが、住民に身近な仕事はなるべく身近な地方団体で処理をさせる、これは臨調答申にもございますし、総理の国会の答弁にもございます。また、昨年の新行革大綱にもございます。  そこで、これから一体そういう国と地方との事務配分を具体的にどうお進めになるのか、自治大臣、いかがですか。
  468. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 宮澤さんがおっしゃられた今までの御意見のとおりでございまして、そういう問題をできるだけ私どもとしては実現をしていっていただきたいと思います。  特に、機関委任事務の整理統合化、事務と財源の移譲、それから必置規制の縮小、さらに国の関与をできるだけ避けていっていただきたい、こういうようなことを中心にぜひ実現するように努力をしなければならないと思っております。
  469. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 次に、地方事務官の問題について承りますが、今回臨調答申の方向に沿って大部分を国家公務員にして国の組織の方に入れていこうとしている。府県はこれに反対をいたしておりますが、これについて行政管理庁長官は御就任のときにある新聞でインタビューに応じておいでになります。前段に、答申というのは神様がつくったものじゃないというふうなことを言っておいでになりまして、続いて、例えばこの「地方事務官制度でも、臨調答申は身分を国に移せとしているが、これは地方に移す方がスムーズだ、ただ、ぼくの個人的見解としてはの話ですよ」と、こう書いてある。長官、まだ個人的にはこうお思いですか。
  470. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) この問題とは私は縁が深うございまして、この地方事務官制度、昭和二十二年に自治法の附則八条をつくったんですが、その条文を書いたのが私でございます。ところが、この「当分の間」というのが今日まで続いておるわけですね。  実は、今論議せられておる中で、当時なぜ地方事務官制度を都道府県の職員として置いたのかといった議論に、半分ぐらいしか議論されてないんです。当時は仕事の関係上どうしても公務員、当時の官まですね、置いた方がよかろうといった主張があったんです。もう一つは、御案内のように、身分制に対する非常な郷愁があったんですね。つまり官吏というものと吏員というものについての身分制の問題で、当時随分私のところに組合の諸君から、どうしても官吏として置いてもらいたいといったような強い要求もあって、そういったようなことで置いたわけですよ。しかしながら、今日そんなものは全然なくなっているわけですね。  私は、個人的には新聞に書いてあるとおりでございます。私は私自身の率直な見解を述べたつもりでございますけれども、私は今は行政管理庁長官でございます。しかもこの問題については、第二臨調の中でも実際は賛否両論いろいろな意見が出たんですよ。しかしながら、それらを総合判断した結果ああいった答申が出て、その答申は、政府、同時にまた自由民主党も最大限にこれを尊重すると、こういうことを決定しているわけですね、したがって私は閣僚の一員としてやはり決まった路線で改革をしたい。したがって、今日この国会に法律案をお出し願うということで、関係各省で準備を今急いでいただいておるということでございますので、そこは御理解をしていただきたい。私やめたらまた別でございます。
  471. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 いつおやめになるかと聞きたいんでありますけれども、それはよします。公私の立場をお使い分けにならなければならない、大変おつらいだろうと思いますが、しかしこの問題は、今の方向で解決されるにしても、国と地方団体との間の事務をうまく連絡してやりませんと大変混乱が起こりますから、ぜひその辺は関係大臣とともに御留意をいただきたいと思います。  中央機構の改革につきまして、それに関連をして総理大臣に一点だけ伺いたいと思います。  それは、ことしの七月一日から総務庁が設置になります。そういたしますと、それによって大臣のポストが一つ浮くわけでございますね。これをどういうふうに有効活用されるか、これについて御意見を承りたいと思います。  これにつきましては、昨年の行革の国会で総理大臣はこういう趣旨の御答弁をなすっておいでになるんです。まだ法律も通っていないから、それをどういうふうに使うかということを言うのは大変僭越だ、まだ白紙の状態だと。こういう御答弁をしておいでになりますが、もうすでに法律は通っておりますからおっしゃっても決して僭越ではない。それからあともう数カ月で総務庁も発足するわけでございますから、総理のお考えの中にはもう多少具体的なものがおありになるだろうと思います。その点についてひとつ御見解を承りたいと思います。
  472. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、法律が成立しましてから篤と考え続けておりますが、まだ発表する段階に至っておりません。
  473. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 宮澤君、時間が参りました。簡潔に願います。
  474. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 これで質疑を終わりますけれども、最後に総理大臣に一言申し上げたいと思います。  行革も総論から各論になりますと、いよいよ反対の風が強く吹くだろうと私は思います。ところで、総理大臣は風に向かって走るというお言葉が好きだと承っておりますし、また恐らくお若いときから上州の空っ風で随分訓練、鍛錬をしておいでになるに違いない。空っ風に向いて走られてその肺活量は相当なものだと承っております。そこでひとつこの行政改革につきましては蛮勇を振るっていただきたいんです。リーダーシップを発揮していただきまして、ぜひひとつ行革の中曽根という名前を後世に残していただきたい。これを御希望申し上げまして、質疑を終わらしていただきます。(拍手)
  475. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で宮澤君の質疑は終了いたしました。  明後十九日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十九分散会