○峯山
昭範君 私は、公明党・国民
会議を代表して、ただいま議題となりました
昭和五十八年度補正
予算二案に対し、反対の立場から討論を行います。
初めに、中曽根
総理に一言申し上げたい。
昨年末に行われた総選挙において、主権者たる国民は自民党政権による金権腐敗政治に対して極めて厳しい審判を下し、中曽根
総理は自民党総裁として総選挙敗北宣言を余儀なくされたのであります。すなわち、総選挙敗北の最も大きな原因は、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかったこと、政治倫理への取り組みについて国民に不満を与えたことであるとして、中曽根政治の誤りを
総理自身が認めたところであります、しかるに、その後の政治倫理確立に対する
総理の姿勢は、日を追って後退するばかりか、田中問題のけじめについても言を左右にし、国民の期待を大きく裏切っているのであります。総選挙の反省などみじんも見られず、あくまでその場しのぎで取り繕おうとする姿勢は国民を冒涜する以外の何物でもなく、断じて許されません。私は、
政府・自民党が両院に設置された政治倫理
協議会において、国民の審判を厳粛に受けとめ、一審で禁錮刑以上の有罪判決を受けた国
会議員の政治的、道義的責任の明確化を初め、政治倫理確立のための具体策等が速やかに実現されるよう強く
要求するものであります。
以下、補正
予算に反対する主な理由を申し上げます。
反対理由の第一は、国民の期待する所得税、住民税の減税が五十九年度に先送りされ、五十八年内の所得税減税規模がわずか千五百億円
程度と大幅に圧縮されたことであります。昨年、共産党を除く与野党間において五十八年中に景気浮揚に役立つ相当規模の大幅減税を行うとの合意がなされていたことは御承知のとおりであります。この合意は、五十二年度以来課税最低限が据え置かれていることにより、国民の実質増税を解消し、景気回復に役立てるという認識のもとに行われたことは言うまでもありません。
このような背景があるにもかかわらず、与野党合意を一方的に破棄し、五十八年中に大幅減税を実施しなかったことは公党間の約束をほごにし、議会政治を踏みにじるとともに、景気浮揚の
観点からは全くの論外であり、景気停滞を長期化させ、国民生活を窮地に陥れており、強く糾弾されるところであります。
我が党は、当初から昨年夏の
時点で早期補正
予算の提出を求め、所得税一兆円、住民税四千億円の減税
要求を行ったわけでありますが、
政府・自民党はこれに耳をかそうともせず、五十八年内の減税を十カ月分近くも値切るなど、国民が強く要望した早期大幅減税の実現を葬ったことは到底認めることができません。
反対理由の第二は、
政府による経済運営の失敗が
我が国の景気回復を大幅におくらせると同時に、外需依存型の経済政策が貿易摩擦を激化させていることであります。
最近の経済動向を見ますと、輸出が回復するなど若干上向きの指標も見られますが、これは原油価格低下や米国の景気回復といういわば海外要因にそのすべてを依存した景気回復に陥っており、輸出は増加したものの、内需が依然低迷していることから輸入は不振をきわめ、五十八年度の貿易収支は
政府見通しの九十億ドルを大幅に上回る三百四十億ドル
程度が見込まれており、膨大な貿易黒字を背景とした海外批判の高まりを
政府自身の経済運営の誤りがもたらしたのであります。
五十八年度当初経済見通しとその実績見込みを対比すると、個人消費が当初実績三・九%増に対し実績見込み三・二%増、住宅投資に至っては当初実質二・六%増に対し実績見込み五・一%減と極度の不振に至っており、
政府のねらった内需主導型経済運営の破綻が明白にあらわれております。五十九年一月の企業倒産件数は千四百九十四件、前年比一九・三%と大幅増加を示し、内需の低迷は大幅な失業、倒産の増大をもたらし、国民生活を大きく圧迫しております。
我が党は、公共事業費の大幅追加等早期の景気対策を主張しましたが、
政府の景気対策は常に後手後手に回り、昨年十月にようやく出された総合経済対策も、その効果はほとんど期待できません。公定歩合の引き下げも景気の実態からすれば既に遅過ぎ、しかも大幅に下げられて当然であったにもかかわらず、円相場に固執し過ぎ、「動かせない公定歩合」とした
政府、日銀の姿勢は問われなければなりません。
反対理由の第三は、
政府・自民党の財政再建策が明らかに失敗したことであり、しかも赤字国債脱却を六十五年度に先送りしただけで何ら具体的な手順と方途を示さず、大型間接税の導入を虎視たんたんとねらい、国民の先行き不安を増大させていることであります。
財政再建の破綻は、
政府が財政再建の名のもとに、六年間にも及ぶ減税見送り、福祉、文教
予算の圧縮など、高圧的な歳出削減に偏り過ぎた政策の失敗に求められるべきであります。すなわち、五十六年度以降の実体経済の不振に対し、近視眼的発想にとらわれ、財政に出番なしとして景気対策を怠り、さらに五十五年度以降、公共事業費を同額に抑え込むという徹底したデフレ政策をとり続けたことが第二次石油ショック後の不況を長引かせ、大幅な税収不足をもたらし、五十八年度も二千六百三十億円の減額修正を余儀なくされております。歳出削減が財政再建の重要な役割を果たすことはもちろんでありますが、より重視されるべき点は、経済を適正な成長軌道に乗せ、そこから生ずる自然増収によって財政再建の基盤を整えることが肝要なのであります。このため、我が党は、景気対策を重視する立場から本補正
予算において一兆円の公共事業追加を強く
要求いたします。
反対理由の第四は、五十八年度補正
予算にも見られますように、既定経費節減の恒常化が見せかけだけのものとなっていることであります。最近の
予算執行方式は、当初から数%の留保分をあらかじめ確保しており、それを補正
予算で計上するという実態にあります。これは真に経費を節減したということではなく、あらかじめ
予定していた額を計上したにすぎず、経費節減は見せかけだけであると言わざるを得ません。当初
予算であらかじめ留保分を確保するならば、当初
予算においてその分を削減した
予算編成を行うのが当然の責務なのであります。
以上、五十八年度補正
予算二案に反対する理由を幾つか申し上げましたが、
政府はまず景気を無視した財政運営を改め、内需主導型の景気回復による国民生活の安定と、経済の安定成長がもたらす自然増収による財政再建を図るため、積極的な財政運営への政策転換を行うべきであり、この点を強く
要求して私の反対討論を終わります。(拍手)