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1984-02-24 第101回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月二十四日(金曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  二月二十三日     辞任         補欠選任      柄谷 道一君     小西 博行君  二月二十四日     辞任         補欠選任      増岡 康治君     矢野俊比古君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 金丸 三郎君                 亀井 久興君                 初村滝一郎君                 藤井 裕久君                 村上 正邦君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 伊藤 郁男君     委 員                 安孫子藤吉君                 長田 裕二君                 海江田鶴造君                 梶原  清君                 古賀雷四郎君                 沢田 一精君                 志村 哲良君                 杉山 令肇君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 竹内  潔君                 土屋 義彦君                 内藤  健君                 成相 善十君                 鳩山威一郎君                 真鍋 賢二君                 宮澤  弘君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 糸久八重子君                 久保  亘君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 瀬谷 英行君                 高杉 廸忠君                 矢田部 理君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 中野 鉄造君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 小西 博行君                 喜屋武眞榮君                 秦   豊君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  住  栄作君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        労 働 大 臣  坂本三十次君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    田川 誠一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)             (沖縄開発庁長        官)       中西 一郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官) 稻村佐近四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局長官  茂串  俊君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        内閣総理大臣官        房管理室長    菊池 貞二君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        行政管理庁長官        官房審議官    佐々木晴夫君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁次長  小谷  久君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        経済企画庁調査        局長       廣江 運弘君        沖縄開発庁総務        局長       関  通彰君        沖縄開発庁振興        局長       藤仲 貞一君        国土庁長官官房        会計課長     安達 五郎君        法務省民事局長  枇杷田泰助君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省条約局長  小和田 恒君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        運輸省航空局長  山本  長君        建設大臣官房会        計課長      牧野  徹君        建設省河川局長  井上 章平君        建設省住宅局長  松谷蒼一郎君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君    事務局側        常任委員会専門           員        桐澤  猛君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十八年度一般会計補正予算(第1号)(  内閣提出衆議院送付) ○昭和五十八年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十八年度一般会計補正予算昭和五十八年度特別会計補正予算の両案を一括して議題といたします。  それでは、これより順次質疑を行います。伊藤郁男君。
  3. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 最初に、防衛庁にお伺いをいたしますが、今ソ連空母ノボロシスクが東シナ海を北上中でございますけれども、この空母は一体どのような能力を持つ空母なのか、その点をまず御説明をいただきます。
  4. 古川清

    政府委員古川清君) お答え申し上げます。  これはキエフ級と申しますところの航空母艦でございまして、基準排水量が四万三千トンということになっております。これは普通の航空母艦よりははるかに小型ではございますけれども、VTOL、垂直離陸ができますところのフォージャーを十三機、さらには主として対潜用のようでございますけれども武装ヘリコプターを十九機、合計三十二機の搭載ができ、かつSSN12というふうな対艦ミサイルを四基、さらにはSAN3という対空ミサイル二連装を二基、さらには対空ミサイルSAN4という別のタイプのものを二基、それに対潜ミサイルをさらに一基持っているというものでございまして、ソ連のこの種のタイプとしては三番目にできた船でございます。  なお、けさ六時四十五分現在では、奄美大島の北西百三十マイルのところを北上中ということのようでございます。
  5. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 もちろん、このノボロシスク太平洋艦隊に回航されて配備されるだろう、こういうことは当然だと思うのですが、ソ連は三隻しか空母を持っていない、そのうちの二隻を太平洋艦隊配備しようとしている、そのねらいを何と考えられるか、その点を御説明いただきます。
  6. 古川清

    政府委員古川清君) お答え申し上げます。  ソ連は、現在艤装中のものを含めますとこの種のものを四隻持っておるわけでございますが、現在海に泳いでおるというのは三隻でございます。ただ、このノボロシスクがウラジオに入りますのは恐らく確実であろうと私ども判断しておるわけでございますが、その後、このノボロシスクと、先におりますところのミンスクという二隻体制を果たしてソ連の方でとるのかどうか、これは私ども注目はしておりますけれども、現段階においては何とも私は答えられない問題であろうと思います。しかしながら、一番新しい新鋭の航空母艦をはるばる喜望峰を通って約半年近くもかけましてぐるっと回してきたということは、近年特に顕著でございますソ連極東方面における核非核両面を加えた軍事力の非常な一貫した増強、この一環をなすものではないかと私どもは判断をしております。
  7. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 ミンスクと編隊がえするかもしれないということだと、ミンスクに何か支障があるのかどうか、その点は何かつかんでいるのですか。このノボロシスクミンスク編成がえをするかもしれないということになると、ミンスクに何か故障があって編成がえをしようとしているのか、そういう情報をつかんでいるのか。
  8. 古川清

    政府委員古川清君) その点は、私どもといたしましては注目はしておりますけれども、まだ確たることは答えられないということでございまして、ミンスクに欠陥があったかどうかというような結論につきましては、私どもはっきりしたものを把握しておるわけではございません。
  9. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 いずれにしても、当面は空母二隻体制太平洋艦隊がなってくる、こういうことは当然だと思います。  そこで、ソ連極東軍事力増強、これは北方領土の軍事力増強もありますし、ミグ31戦闘機配備もありますし、そしてこのノボロシスクと、このごろ極東ソ連軍増強というものがさらにまた急速に進んできたように感じておるわけでありますが、このソ連極東における軍事力増強、このねらいを何と防衛庁は考えておられるのか、御意見をお伺いしておきたいと思います。
  10. 古川清

    政府委員古川清君) これは単に極東方面のみならず、ソ連が非常に大きな予算を投入いたしまして、一貫して国防力の、軍事力増強ということをやっておることは事実でございまして、こういった世界的なグローバルな規模におけるソ連軍事力の一貫した増強の一端をなすものであると私どもは考えておる次第でございます。
  11. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 次に、シーレーン防衛関連をいたしましてお伺いをしておきたいんですが、アメリカシーレーン防衛日本に求めている装備の量につきましては、これは八一年のハワイ協議等で、ある程度は明らかになっている。例えば潜水艦で言えば、日本防衛大綱で言う計画では十六隻だけれどもアメリカ政府要求は二十五隻、こういうようになっている。しかし日本防衛大綱以上に出ることはできない。とすれば、アメリカ日本がどのような防衛体制をとれば満足し得るのか、その全体像を防衛庁は把握をしておるのかどうか、この点をお伺いをいたします。
  12. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) お答え申し上げます。  我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合はおおむね千海里程度の海域で、自衛の範囲内におきまして、米軍支援を受けながら海上交通の安全を確保するということを目標にいたしまして海上防衛力の整備を進めているわけでございます。アメリカ側といたしましては、こういった我が国の基本的な政策を十分理解をした上で、シーレーン防衛につきまして、一般的に我が国も、日本防衛努力を進めてくれということをかねて言っておりますし、期待もしているところでございます。その点につきましては、米側から具体的に数字をもって要請をされているということはございません。  ただいま先生御指摘の、五十六年の第十三回のハワイにおきます日米安保事務レベル協議におきましてどういう話があったのかということかと存じますが、アメリカ側から日本防衛力に関するいろいろな対話の中の一つの過程におきまして、若干の数字を交えた意見が出たということはございますけれども、これはあくまでもそういったフリートーキングという会議性格からくる一つの話題ということでございまして、それはアメリカ側が具体的に要求をしたとかなんとかいうようなものじゃございません。また、この内容は、会議性格上、米側との約束もございまして、これは外部には公表しないということになっておりますので、具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。この点は何回も国会におきましても既に御説明をいたしておるところでございます。
  13. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それでは次に移りますが、シーレーン防衛には洋上防空が不可欠だと、これはもちろん申すまでもございません。我が国空母を建造する予定がないわけですから、したがってこのシーレーン防衛には大半を航空自衛隊F15F4に頼らざるを得ない、こういうことですね。ところが、このF15あるいはF4行動半径というのは八百二十海里ないし四百五十海里程度装備をすればもっとこれは行動半径が少なくなる、こういうことですが、これでは千海里の洋上防空を十分に行えないのではないか、こう思うんですが、その点はいかがでしょう。
  14. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) シーレーン防衛を進めてまいります際の洋上防空の問題でございますけれども一つには、我が国周辺の空域でありますれば航空自衛隊戦闘機が可能な範囲でこれを行うことができるだろうということでございます。それからさらに遠方になった場合にどうするかということでございますが、これは海上自衛隊の艦艇に搭載いたします対空ミサイル、ターターとかシースパローとかの種類がございますけれども、そういうものでございますとか、あるいはCIWSと申しまして、近接してきたミサイルを撃ち落とすための高性能の二十ミリ機関砲でございますが、こういったもの等を活用して対処していくということを考えておるわけでございます。もちろん米軍との共同対処によってシーレーン防衛を行うわけでございますから、そういう際に米軍支援を期待することも可能ではないかというふうに考えておるわけでございまして、今後ともこういった総合的な対策を進めていきたいというふうに考えている次第でございます。
  15. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 とすれば、例えば有事において自衛隊機アメリカ空中給油機から給油を受けることはあり得るのか。当然あると思うんですが、その点いかがでしょう。
  16. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) この空中給油の問題は、既に何回か御議論がございますが、現在のところ私どもとしてはこれを行う計画は持っていないわけでございます。  我が国戦闘部隊というのは本土防空ということをまず主体に考えておりますので、そういう観点から中心に考えてみた場合に、将来の問題といたしまして、航空技術の進歩によりまして低空侵入でございますとかあるいは高高度高速侵入というふうな性能が非常に世界的に向上しているという状況がございます。したがいまして、これに有効に対処するためには、空中におきまして警戒待機態勢をとるということの必要性が将来の問題としてあり得るわけでございまして、そういう場合に、この空中給油ということがあり得ないわけではないというふうに考えておるわけでございます。そういった将来の可能性の問題として見た場合に、空中給油米軍給油機によってそれを満たすという可能性はあり得ないわけではないというふうには思っておりますが、いずれにいたしましても、現在防衛庁といたしましては空中給油機を今ここで持つという計画は現在のところ持っていないということを申し上げさせていただきたいと思います。
  17. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 現在はその考えはないけれども、将来はあり得ることなんだ、こういう話ですが、そうなると、有事というのはいつ来るかわかりませんから、そのためにやっぱり空中給油機から給油を受ける訓練も行っていなければならぬと思うわけでありますが、その訓練計画というものはありますか。
  18. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) この問題につきましても、現在のところ航空自衛隊戦闘機につきまして空中給油訓練を行うという計画は持ってはおりません。  ただ、先般二月十五日の衆議院予算委員会におきまして、塚本委員の御質問に対しまして総理大臣から御答弁を申し上げましたように、硫黄島におきます訓練についての問題でございますけれども、その安全に万全を期するために現在までに考えられております措置で十分であるかどうかという点について、改めて空中給油の問題も含め、いま一度幅広く研究はしてみたいというふうには考えております。ただ、現時点においてその空中給油訓練を行う計画を持つという段階ではございません。
  19. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 今F4給油装置を取り外したまま、そしてその八十八セット分を岐阜の第二補給処保管をしておるわけでありますが、このF4給油装置保管しているというのは、先ほど言われましたように、将来に備えたことなのかどうか。
  20. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 御指摘のように、かつてF4から空中給油装置を取り外した経緯がございまして、そのものは現在航空自衛隊補給処保管をしておるという状況でございます。現時点におきましては空中給油を行うという計画がございませんので、この空中給油装置を取りつける必要があるというふうに今判断しているわけではございません。航空自衛隊補給処保管してあります空中給油装置はまだ新しいものでございまして、不用決定するまでの事態に立ち至っておりませんので、これはそのまま保管をしておるという状況でございます。
  21. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 これ当面使う可能性がないというものだったら保管をしておく必要がないのではないかと思いますし、だからそれはもう廃棄すべきものではないかとも思うのですが、その点いかがでしょう。
  22. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) この取り外しました空中給油装置は、これは先ほども申し上げましたように、まだ新しいものでございますから、物品管理観点から申しまして、これを廃棄処分するというところには至っていないわけでございます。したがって、これはやはり保管をしておくということではないかと思っておるわけでございます。将来の問題は、先ほども申し上げましたように、空中給油態勢をとるかどうかということは、またその時点で改めて検討されるべきことではないかというふうに思っております。
  23. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 もう一つこの点についてお伺いだけしておきますが、矢崎防衛局長は、十七日の衆議院予算委員会で、空中給油機の導入は否定しないと、この旨を発言されておりますし、先ほど来もそのような将来に向かってのお話があったのですが、仮に空中給油機部隊編成するとした場合、これは現在の防衛大綱の枠内でも可能なのかどうか、枠を外れるものなのかどうか、この点だけお伺いをしておきます。
  24. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 先般お答え申し上げました趣旨は、将来の問題として、空中警戒待機の姿勢をとるというような戦闘機の運用が必要になった時点におきまして空中給油機というものを持つ可能性があるかという点について、それは可能性としては否定はできない、しかし現在はその計画は持っていませんということを申し上げたわけでございます。したがいまして、この空中給油機の問題については、私どもとして何もまだ検討していない状態でございますので、ただいまの御質問大綱との関係がどうであるかということは全く研究をいたしておりません。それはそういう計画が具体化してきた時点において、改めて関係各省とも協議をしながら検討するという課題ではないかというふうに思っておる次第でございます。
  25. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 空中給油部隊というものを編成するとすれば、大綱の見直しが必要ではないかと私は思っておるわけですが、次に移ります。  総理にお伺いをいたしますが、アメリカは二月一日に軍事情勢報告を発表いたしました。ことし原潜や水上艦核弾頭つきトマホーク配備する、そして戦艦ニュージャージーは最も早くこれを装備する予定であると、こういうように発表をしておるわけですが、これはアジア太平洋地域アメリカソ連のSS20等の戦域核に対抗して戦域核のバランスをとろうとする計画であると、こういうように思っているわけですが、政府はこのアメリカ計画をどう評価しておられるのですか。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆるトマホークには核、非核両方の弾頭があると我々は承知しております。それからニュージャージーはその核、非核トマホークを着装する第一艦である、そういうように報道されており、また我々の方もその情報を承知しておるという次第であります。アメリカがそのようないろんな措置をとってきた背景には、やはり極東におけるソ連空海軍等々の増強対応して均衡維持しようと、そういう配慮から一般的に行われておるものと私は考えております。
  27. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 もう一つだけお伺いしておきますが、我が国は核は持たない。しからば核の脅威に対してどう対処するかというと、アメリカ核抑止力に全面的に依存する、これ以外にないわけですが、そういうような政府の方針からいきますと、今日のアメリカがとっておりますアジア太平洋における核配備、これはもちろん積極的にこれを認めていくのが当然だと私は思っておるわけでありますが、総理の御見解、もう一度お伺いしたい。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我々の最大の関心事は平和の維持であります。それと同時に軍縮及び核軍縮の推進であります。しかるところ、最近における極東周囲状況を見ますと、今の話のように相当な防衛力増強周囲では行われておる、こういう情勢にかんがみて、アメリカもそれに対する対応を考えているのだろうと思います。我が国は核を持たずに核の抑止力についてはアメリカの力に依存しております。そういう意味において、極東及びアジア地域におきまして平和を維持するために防衛力における均衡状態維持し、そして抑止力を効果的にあらしめて戦争の勃発を予防しようと、そういう平和維持努力というものについては我々は当然あり得ることと考えておるわけであります。
  29. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 トマホーク搭載アメリカ艦船日本に寄港を求めてきた場合に、政府対応は従来どおりこれをノーと答えるのかどうか。これは外務大臣
  30. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 御承知のように、我が国非核三原則を持っておりますし、日米安保条約、その関連規定によりまして、核の持ち込みにつきましては事前協議になっておりますから、事前協議を受けた場合においてはこれはノーということははっきりこれまでもしばしば言明してきたところでありますし、我々としてはニュージャージー日本に寄港するというような場合におきましても、事前協議があった場合にはこれはノーということははっきりいたしておるわけでございます。
  31. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それでは、もう一つ伺いするんですが、トライデント潜水艦ですね。これは核搭載、これはもう取り外しができない潜水艦ですが、これが日本近海でもし事故を起こして、そして人命の損傷も起こり得るということで緊急に日本に寄港したい、こういうように言ってきて、SOSを発してきたときにでも、これをノーと答えるのかどうか。この点をお伺いしたい。
  32. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本はいかなる場合におきましても非核三原則は堅持していかなきゃなりませんし、また、いかなる場合においても日本は核持ち込みに対しては、事前協議があった場合はこれはノーということをこれまでもしばしば内外に対して明らかにしてきておるわけでございます。したがって、トライデント型の潜水艦のそうした緊急避難的な要請があるかどうか、これは今の国際情勢あるいはまたトライデント型潜水艦の態様から見まして、日本近海でそういうことは具体的にはあり得ないのじゃないか、こう思っておりますが、しかしそういうことがあったとしても、我々は非核三原則、そして事前協議に対する我々の基本方針を貫いてまいる決意であります。
  33. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それ程度の答弁以上に出ないと思いますので、それでは次に経済問題に移りたいと思います。  河本長官にお伺いをしたいのですが、アメリカの景気が昨年の後半以来急速に回復をしている。どこにその理由があるとお考えか。
  34. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いろいろ理由はあると思いますが、大きな柱を挙げますと、一つはまず物価が安定をしたということだと思います。物価が安定をいたしますと、レーガン政権が進めております所得税の大減税、これが非常に大きな効果が出てくる、こういう経過でなかろうかと思います。
  35. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 次に、また河本長官にお伺いいたしますが、アメリカと比べ日本経済の基礎的条件は劣っていると思われますか、すぐれていると思いますか。すぐれておるとすれば、との点がすぐれておるか。
  36. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 基礎的条件というといろいろございますが、たとえば技術力、それから経済の国際競争力、国民の貯蓄の大きさ、それから労働者の素質、いろいろあると思います。しかし技術の面ではごく特殊な分野を除きまして日本アメリカに劣っておるとは思いません。総じて私は基礎的な条件ではアメリカよりも日本の方が相当いい条件のもとにあるのではないかと、このように判断をしております。
  37. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 アメリカよりいい条件があるということになれば、アメリカより活力のある経済に当然日本もならなきゃならぬ、こう思うわけでありますが、しかし日本は依然として成長率三、四%水準に低迷をし、これからもそう伸びていくという将来展望もない。とすれば、アメリカより条件がよいのにもかかわらず、日本の経済がなお低迷をしているというのは一体どこに根本的な原因があると長官はお考えか。
  38. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私は、レーガン政権の進めてまいりました所得税の大減税、そのほかに投資減税、これも相当大規模なものでございますが、これが非常に大きな刺激になっておると、こういう感じがいたします。
  39. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 とすれば、日本ももっと積極的な、今までは均衡縮小型経済運営をやってきたわけですが、長官の考えておられるようにもっと積極的な、政策を転換する、こういう日本の経済に欠けておるものは、日本の潜在力を生かし切れないというのは、そういう意味の政治的決断がいまだに行われていない、こういう意味ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  40. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 我が国の経済の推移を見ますと、昭和五十四年に、石油危機が起こりまして、それ以降経済は低迷を続けてまいりました。三%成長に落ち込んで、それが三年ばかり続いたわけでありますが、ようやくアメリカ経済の立ち直り等の背景もございまして、私は五年ぶりで日本経済はよくなる環境にあるのではないかと、こう思います。世界経済が悪いときには幾ら工夫をいたしましてもなかなか日本経済はよくなりませんが、しかしアメリカ経済を中心とする世界経済がよくなってまいりますと、少し工夫をいたしますと日本経済も急速によくなる、こういう可能性がございますので、そこでことしの経済運営の基本的な取り組み方といたしまして、政府の方ではまず物価の安定を図りまして、そして財政と金融を実情に応じて機動的に運営をしていこう、こういうことを予算編成の最終段階政府部内で決めております。  なお、私は、そのほかに税制問題をこの際抜本的に検討するということが経済政策の見地から見ても非常に大きな効果があるように思います。そこで、所得税の大幅減税を含む税体系の根本的な見直しと改革ということにつきまして、先般大蔵大臣や自民党の執行部に対しまして意見を提案いたしまして、今研究、検討をしていただいておる段階でございます。
  41. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 先ほどアメリカ経済の回復状況について原因をお聞きしました。結局物価を鎮静さして、それに今度は大減税、レーガンが周囲の反対を押し切って二五%の所得税減税をやった。結局物価が鎮静し、そういう減税が効果をあらわして、自動車を買いかえる、住宅を買いかえる、そして全般的にそういうような景気回復がぐっと高まってきた、こう思うわけですね。だから、したがって先ほども申し上げましたように、縮小均衡型ではなしに、やはり政策をこの際思い切って転換をしたい、転換をすべきだ、こういうことを長官は自民党の中で提起をされておる、こういうように私は受け取ったわけです。  そこで河本長官長官は、赤字国債を六十五年にゼロにする場合にも、何も景気の力が弱いときに一兆円だ一兆八百億円だと、そういうような年度ごとの同じ額を別に減らさなくてもいいのじゃないか、景気の力が強くなってくれば三兆円でも四兆円でも減らしていって、結局六十五年の段階でゼロにすればそれはいいのだからという極めて機動的な考えを持っておられるわけです。そして、今の税の問題につきましても、直間比率を見直す、七、三を六、四にし、五、五に見直していくためには、とにかくできるだけ早い機会に大減税をやる必要がある、しかもその大減税の規模は四十九年の経験から照らして大体四兆円くらいの規模の大減税をやったらいいのじゃないか、そのことによって景気の回復は急速に進むのではないかという見解をお持ちですけれども、この考え方には変わりはございませんか。
  42. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) その考え方には変わりはございませんので、そういう内容につきまして、先ほど申し上げましたように、税制のことでございますから、大蔵大臣や自民党の政策責任者に意見を述べて今検討していただいておる、こういう段階でございます。
  43. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それで、大蔵大臣にお伺いしますが、大蔵のサイドでは依然として、日本の潜在成長力というものを過大に見て期待を寄せることは結局は財政に過度の負担を与えることになるんだ、したがって財政による景気政策の具体的な発効については慎重な判断が必要だということで縮小均衡型の経済運営にこだわっておられるようでありますが、今はどのような御見解でしょうか。
  44. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今の伊藤さんのかねての御議論と私ども意見と基本的にどこに相違といいますか、感触の上における相違があるかというと、潜在成長力を何ばに見るか、この違いだと私は思います。一概に潜在成長力というのは、これは資本、労働あるいは設備革新、技術革新、そういうもので正確に数字として出すのはなかなか難しいという問題でございますが、私どもといたしまして、これからも勉強を続けていかなければなりませんけれども、第二次オイルショック後の四年間の成長率を見ますと、日本は一五・四、アメリカはマイナスの時代がございましたので三・七、八〇年の平均でもアメリカは三・三、だから言ってみれば五%台の成長を見込めるというのは土台が低かったからかなと、こういう見方も一つはあり得ると思うのであります。  そうして、基本的に私ども考えてみますときに、この税の問題について経済運営の責任者である河本大臣からも問題提起があって、我々政府部内においても、党サイドはもとよりでありますが、これに対し引き続き検討していこうということでありますが、今日、私どもはいろんな国との比較をしてみましても、やはり日本の場合、アメリカが今日大きな財政赤字を抱えておるとはいえ、まだ七〇%台の歳出に対する税収の割合がある。日本の場合、ここのところずっと六〇%台しか貯えないという状態でございますだけに、まずはやはり財政の対応力をつけるための施策として、縮小均衡という言葉については、縮小と拡大均衡との差がどこにあるかという接点の問題は難しい議論でございますけれども、やはり今度本格的に五十九年度予算を御審議いただくに当たってお出しいたしました中期展望なり仮定計算というようなものを土台にして国会でも議論したり、あるいは政府部内でも議論したり、その中に将来の方途を国民がどういう形を選択するかというコンセンサスを得るための積み重ねをやっていきたいと、こういう考え方に立っておりますので、非常に参考になるアメリカの景気回復とか、そういうものをもこれまた議論の中でいろいろすり合わせをしながら今後のあり方について方途を模索していきたい。  ただ、基本的に言えますことは、八〇年代後半における経済運営の指針として「展望と指針」が出されております。いわゆる六ないし七%の名目成長、四%の実質成長、三%の消費者物価の上昇率、二%程度の失業率、あるいは一%程度の卸売物価というようなものをやはり念頭に置いて、これからいわゆるサミットでも各国が誓い合いましたインフレなき持続的成長という路線を模索しながら継続していかなければならぬではないかというふうに考えております。
  45. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 総理、二人のお考えを聞いておりますと、依然として意見が大きく分かれているように思うんですね。縮小と均衡とまあ言葉のことを言いましたけれども、やっぱり縮小型と拡大型と意見が分かれていると思うんです。したがって、やはりレーガンが政治決断をやったように、総理、私どもは拡大均衡でいくべきだと、こういうことを強く主張しているわけでありますが、ぜひひとつそういうような政治転換をこの際やるべきではないか。財政にこだわるがゆえに慎重に慎重にということもわかりますけれども、もっとダイナミックな方策もあってしかるべきではないかと、こう思いますが、総理の御見解を伺いたい。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、予算性格等見まして中立的な性格を持っていると一般に言われており、そうだとは思っておりますが、しかしこれはやり方によっては積極性を持たせることができると思っています。今景気がやや上昇に向かいつつあり、これに弾みをつけるということは非常に大事でございますから、いろいろ政府も機動的運営について考慮しておりますけれども、一面において一兆円の減税をやるということは、他面におきまして物品税あるいは酒等において御迷惑をおかけしておりますが、この相互間の関係を見ると、一兆円減税という方は、そのマイナスを差し引いても私はプラスの方の可能性、差し引きプラスという意味において景気にプラス面で動いてくる可能性がかなりやり方によっては出てくると、そう一つ考えております。その上に民間活力という点を非常に重要視いたしまして、いろいろな諸般の仕事を第三セクター等も使いつつ今実行しようとしております。そういうようないろんな諸般の政策を総合いたしますれば、私は景気に対しては積極性を持たせる性格も持たせることができると思っておりまして、必ずしも中立的なものではない、それは政策者の心がけにもよると、そういうふうに考えております。  しかし、来年の三月には百二十二兆ばかりの大きな国債を抱えるという国債の圧力等を考えてみますと、赤字国債を増発してそして予算を膨張させるということは非常に危険性とリスクを伴うことであると思って、それは決して後代、後世の子孫のためにならぬと考えておる次第でありまして、建設国債をある程度使うということは今でもやっておることでございますが、赤字国債をさらにさらに減らしていく、六十五年度にはこれに依存する体質から脱却しようということを考えておるのでありまして、この政策はやはり一貫して堅持していくべきものであると考えております。
  47. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 河本長官は、減税に見合うような増税なんというものはこれはもう意味ないんだと、こういうことを言われておるわけであります。まず大減税をやって、そして景気を回復して、景気の力がついてきた段階で間接税にもまた手をつけていったらいいのじゃないかと、こういう機動的な考え方を持っておられるわけですが、もっと積極性を持ってその点は考えていただきたい、このように思います。  時間がなくなってまいりましたので次に移りたいと思うのですが、この五十九年度の予算編成の過程で各省庁の担当官の努力には非常に頭が下がるわけですが、大蔵省の主計官は時には手品を使って各省庁の顔を立てるというような芸当もやられておるわけですが、ところで、五十九年度予算編成に当たりまして、よく言われる隠し財源なるものはあったのかどうか。
  48. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 伊藤さんおっしゃいます意味は、いわゆる官房調整財源の意味ではなかろうかなと、こういうふうに考えます。  それで、予算編成に当たりまして、まず公開財源、これは千六百億円、これは復活財源として例年と同じように置いておいたわけでありますが、いわゆる官房調整財源というのはこれは多年にわたる予算編成の私は知恵の集積ではないかと、こういう感じがいたしておりますが、この大蔵原案を内示しますときに各種施策の優先順位について各省庁の選択を求めるという段階がどうしても出てまいります。それが言ってみればいわゆる第一次の復活、二次の復活というふうにつながっていくわけでございますから、大蔵省がどちらかといえば指名手配的にこれは多過ぎるとかというような姿よりも、むしろ省内原局の皆さん方が基本的には一番詳しいのでございますから、その方々のいわゆる政策選択の優先順位というものをぎりぎり詰めていらっしゃる段階における、いわば予算額の一部を特定費目に固定しないで官房に保留をするお金でございますので、私は予算編成の過程においてこういうことがなされておるということそのものが長い間の知恵によってできたものではなかろうか、したがってこれが隠し財源という性格のものではもちろんないというふうに御理解をいただきたい。  これは、ことしは特に党の方で御配慮がありまして、大蔵原案の内示の前に各党の党首会談が行われ、それに引き続いて政調、政審関係レベルのお話し合いが行われたというような段階から見ましても、やっぱり長い知恵の集積がこの官房調整財源と、こういうものになっておるというふうに私は理解しておりますので、そのような形で御理解をいただきたいというふうに思っております。
  49. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 それでは公開の復活財源、ことしは千六百億円、これ以外に大蔵原案から復活したもの、あるいは金額が上積みされたもののその件数と金額はどのくらいになりますか。
  50. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) ただいま大臣からお答え申し上げましたように、予算編成の調整のプロセスの話として今のような現象があるわけでございますが、何分ともにプロセスの一過程の話でございますので、これを公にすることは従来から一貫して御勘弁いただいているところでございます。なお、こういう折衝過程を経まして内閣として決めました予算、これを国会に提出して御審議いただいているわけでございます。内閣としての予算はこれですべてあらわされておると、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  51. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 とにかく、公開のこの復活財源以外に、先ほど大蔵大臣が言われましたような官房調整費からいろいろなものが復活をし、あるいは金額の上積みがされているわけですよ。だから、そういう復活したもの、あるいは上積みされた金額のその件数と総計がどのくらいになるということは出るはずなんだけれども、どうして出ないのか。隠す必要はないのではないですか。
  52. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはまさに、いわゆる官房調整財源によりまして、ぎりぎりのところ最終的にこの程度の資金の中でお互い知恵を絞ろうじゃないかということになりますと、やっぱり原局の中でおのずからそこに議論された結集としてはいわゆる優先順位が出てくるわけでございますので、どれが最初どうであって中間にどうなってということになりますと、これはまさに予算編成の間における一過程でございますので、数字とか件数でお示しすることが必ずしも適切ではないじゃないかと、こういう感じがいたします。また、件数、数字を算定するということにもなかなか難しさがございますので、これはまさに長い間の経験の累積による予算編成の知恵だというふうに理解していただきたいものだと、こういうふうに思います。
  53. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 ちょっと納得ができませんが、いずれにいたしましても、新聞にしばしば復活折衝の過程でいろいろなものが出てきていますよ。そしてそれらの金額も出ていますね。これは千六百億円以外のものの官房調整費の中からこれらはこういうように復活したのだということが出ていますよ。それを総計すれば出てくるはずなんですよ。そういう資料というものは当然出てしかるべきだと思うんですが、それがやはりよく言われる隠し財源だ、不明朗な原因、もとをつくっているのだと、こう言われるわけですから、この点についてはその程度のものはすぐ資料として提出すべきものだと思うんですが、いかがでしょう。
  54. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは伊藤さん、今後ともこの場所においても、また別の場所においてもいろいろ御意見も聞かしていただきたいものでございますが、予算委員会における審議の資料としてお出しするにはなじまないものだと私は率直にそういう印象を持っておりますので、今後とも伊藤さんと私どもの間で話を続けてみたいと思います。
  55. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 私はこれだけにこだわっているわけじゃありません。私どもはこの財政問題はまじめに真剣に討論をしたいと、こう考えているわけです。したがって、衆議院段階でもしかりですが、私どもはこれのみにかかわらず五点にわたる資料要求を行ってきているわけですね。  その一つは財政の中期試算、これは五十七年度から六十一年度におけるその主要経費別の内訳はどうなんだと。あるいはもう一つは、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の最終年度、つまり昭和六十五年度における租税負担率や国民負担率の目標値はどうなるのかと。そのほかさまざまな資料要求をやってきているわけです。これはもちろんいずれも財政論議の基礎をなすものだと私は思っているわけです。それらがことごとく大蔵省から資料の提出が拒否されている、まことに私ども残念なんですね。きょうはその理由をお聞きし、その問題点をさらに追求しようと考えたわけですが、残念ながら時間がありませんのでこれでやめますが、もう一度大蔵大臣の御見解をお伺いして、終わりたいと思います。
  56. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 伊藤さん所属の民社党からその都度資料の要求をいただいております。それで、それもすり合わせを行いまして、出し得る可能の限度いっぱいのものをお出しするという姿勢には変わりありませんが、今例示されました問題につきましてはかねてからも議論をいたしておりますが、かつて昭和五十六年でございますか、一度出したことがございますが、あの種のものは用意をいたしておりません。しかし、別の形においてそれらのことが御参考になるような資料についてはいろいろ今工夫しておりますので、いよいよまた本番のときに御議論の糧としていただきたいと、このように思います。
  57. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 どうもありがとうございました。
  58. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で伊藤着の質疑は終了いたしました。
  59. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、喜屋武君の質疑を行います。喜屋武眞榮君。
  60. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 初めに、総理にお尋ねいたしたいと思います。  中曽根総理はよく、ことしは戦後処理総決算の年だとおっしゃいます。私は基本的には賛成です、一ところが問題は、その姿勢をどこに置いて、どういう姿勢で、何をどのように決算するかということ、国民が最も知りたがっていることはそのことだと思います。そのことについてまずお尋ねいたしたいと思います。
  61. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦後政治の総決算と申します私の意味は、戦後三十八年を経過いたしまして、日本日本歴史上まれに見るぐらいの立派な社会、歴史的な社会を建設したと思っております。それはやはり平和主義、民主主義、基本的人権の尊重、男女平等あるいは国際的調和、そういうあらゆる面におきまして日本は大きな前進もいたしましたし、また経済力の上昇に伴いまして、富の均衡、中央と地方の格差の是正等々今までの日本にないような新しいいい社会が建設されつつあると思って、非常に私はそれを重視し、評価しておるものであります。しかしまた他面、高度経済成長の結果、行政機構その他で水膨れしてきているのもありますし、三十八年の長い歴史の中には諸般の制度のひずみも出てきており、物によっては明治以来の中央集権制とかあるいは官庁の縄張り争いであるとか、さまざまなそういう弊害もまた出てきております。  そういう意味から、この際全部見直して、いいものは残し、悪いものは直す、そして特に二十一世紀に向かって今新しい時代が訪れようとしております。特に高度情報時代という、エレクトロニクス等を中心にする全く新しい時代が訪れようとしておりますし、バイオサイエンスの面におきましても非常にまた大きな前進が見られつつあります。そういう新しい時代に対応し得るような日本、あるいは政府、社会というものをつくる大事なスタートに来ている。そういう意味において、過去のオーバーボールと未来に向かっての体制整備を行おうというのが、私が申し上げている真意でございます。
  62. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、もう一つお尋ねしたいのは、戦後三十九年、我が国は文化的にも経済的にも今や国際的に優位を占めてきた。ところで、内を省みて、戦後三十九年、戦後処理が山積みしておると私は思っております。恐らく総理もそのことについて大変心を痛めていらっしゃるとお察しいたします。ならば、どれをどのように戦後処理をしていきたいかということについて、余り問題が多いですので、その柱になるような立場からお答え願えれば幸いだと思います。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大ざっぱに申し上げまして、日本の国際的姿勢の問題、つまり外交の問題、あるいは行政改革の問題、あるいは財政再建の問題、あるいは今提起いたしておりまする教育改革の問題、こういうような大きな筋の問題を主として取り上げて申しておるわけであります。
  64. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今述べられた問題と直接触れ合うということにはならぬと思いますが、私は今国民の中で求めておる戦後処理の中で、この一つの問題について、外地引揚者の在外財産の補償に関する問題について伺いたいと思うんです。この問題は、総理府でその問題をめぐって検討されておると聞いておりますが、総務長官にその問題について、現時点でどうなっておるか、お聞きしたいと思います。
  65. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) お答えいたします。  さきの大戦に関連しまして、すべての国民が何らかの犠牲を余儀なくされたところでございます。これを完全に償うということは大変に実際上不可能な問題であるという考え方もあります。国民の一人一人に、それぞれの立場で受けとめていただかなければならないことが大変多いようにも思います。  政府といたしましては、これらの中で一般国民と異なって特別に何か施策を講じなければならないといったような点につきまして、いろいろやってまいりました。引揚者については応急援護措置、また給付金の支給の法律をつくった、また四十二年には特別交付金の法律をつくった、いろんな経過がございます。それで、一応四十二年で戦後処理は終わったんだということでございましたが、最近またいろいろ問題が出てまいっております。在外財産の処理の問題、その他恩給欠格者の問題とかシベリア抑留者の問題とかいろんな問題が出てきておりますが、そういった点につきましては懇談会を設けまして、有識者の御意見を伺って、どうしていこうかということを目下検討しておるところでございます。といって、余り長く検討ばかりしておるわけにはいかない。その懇談会も二年計画ということでやりました。したがって、ことしの夏ごろまでには何らかの結論を得なければならないのじゃないかということで、精力的に仕事をいたしておるところでございます。
  66. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 何らかのとおっしゃられたが、何か六月をめどに検討されつつあるということなんですが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  67. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) 七月になりますと、行革関連総理府が行管と一緒になって総務庁ということに組織がえがございます。したがって、それまでに結論を出したいなと私ども思っていますし、懇談会の先生方もその目途で努力をしていただいておるところでございます。
  68. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この問題は、古くて新しい、新しくて古い問題でありますので、でも、憲法に照らし解決しなければいけない、ねばならない私は国の義務である、責任であると、こう思っております。そこで、近くテーブルに上がると思いますが、今度はそうなると、私は先ほど総理に心を痛めていらっしゃるということを言いましたが、次には頭を痛めておられるのが大蔵大臣だと思いますので、大蔵大臣のひとつ御見解を伺いたいと思います。
  69. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この問題につきましては、昭和四十二年にこれにて打ちどめという一応の決定をした。そうしてその後、私が自由民主党の幹事長代理をしておりますときに、私も立会人の一人として今の懇談会の問題の提起ということになったわけであります。ただ、今財政当局としては懇談会でせっかく検討中のものでありますので、それをやっぱり静かに見守っておりますという以上のことは、大変偉い先生、お忙しいところ回数も本当にたくさん開いていただいております、各団体との懇談から総合会議から。したがって、あらゆる予見を挟まないで、今先生方の御検討の推移を見守っておりますというのが私のお答えする限界ではないかなと、こういうふうに思っております。
  70. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひ見事にこれが解決されることを期待いたします。  次に、これも戦後処理の一つとして今国籍法改正要綱が詰められつつあるわけでありますが、そのことについて現時点でどのようにまとめつつあられるのであるか、法務大臣にお願いしたい。
  71. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 国籍法の改正の問題につきまして、実は法制審議会に諮問をいたしておりまして昨日答申をいただきました。その答申に基づいて今国会に国籍法の改正、それに伴って戸籍法の関連する部分がございますので、改正案をつくりまして本国会に提案したいと考えております。
  72. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次にお尋ねしたいんですが、今、日本全体で、ずっと全国的に答えができれば幸いですが、いわゆる国際結婚の統計がどのようになっておりますか。
  73. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 細かな数字は把握しておりませんけれども、大体最近年間八千件ぐらいの国際結婚があるように承知いたしております。
  74. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そのうちでいわゆる無国籍の状態はどうなっておりますか。
  75. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 国際結婚が無国籍には直ちにつながらない問題でございますが、国際結婚と絡みまして無国籍の問題が若干出ているというふうには承知いたしております。
  76. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄の無国籍の状態はどのように理解しておられるか。
  77. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 沖縄では、現在五十名か六十名の無国籍児がいるというふうに承知いたしております。
  78. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そのような無国籍児が全国府県単位で比較すると一番多いわけですが、なぜそのような結果になっているか、どういうふうに理解しておられるのか。
  79. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) これはいろいろな形のものがございますけれども一つには沖縄の女性が米国の軍人と結婚をするということによって、日本の国籍法とそれからアメリカの国籍法とのはざまに立って無国籍児が生ずるというようなケースもあるというふうに承知いたしております。
  80. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄の女性が米国の男性と結婚した、そのことで特に沖縄に無国籍児が多くなったということは、もっと理解しておられませんか。なぜそうなったのだろう、多いだろうかということについて、理由をおわかりですか。
  81. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) アメリカの方と日本の女性とが結婚いたしまして、そこに子供が生まれますと、日本の国籍法では、現行法では母系主義をとっておりませんので、その子供については日本国籍が取得されない。一方、アメリカの方の杉氏及び国籍法によりますと、その父親になるアメリカ人が成人に達しているとか、あるいは十数歳から何年間かアメリカに居住している者でなければ父系からくる国籍は与えないとかというふうな問題もあります。  それからもう一つ、これは法律的な意味ではございませんけれども、結婚をして子供ができた後で、当該夫であるアメリカ人が本国に帰ってそれから行方知れずになるとか、あるいはかつてのベトナムの戦争に行って死んでしまうとかということによって、そういうアメリカとの血統によってアメリカの国籍が取得されているんだということをアメリカ側で証明する方法がないというような結果が生じて、事実上無国籍になっているというふうなことが生じているというふうに承知いたしております。
  82. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 特に沖縄の一例ですね。一九七〇年のカップルの中でこの国際結婚が一四%を占めておるんですね。この無国籍児の母のできたころ、一四%を占めておる。このことが、今ちょっと触れられましたが、父がベトナム戦争に駆り出された、戦死した、無事に帰ったのがアメリカ本国に転勤をした、その置き去りが今日まで悲劇を生んでおるということなんですね。そこで、このたび父系優先血統主義から父母両系平等主義に改正されるということは、これはまことに国民の立場からも、また沖縄県民の立場からも、これは両性平等の趣旨に沿って改正されるわけですから、非常に喜ばしいことであります。  ところで問題は、二十歳以上の者に問題がさらに大きく出てきておるんですね。そこで、経過措置の適用を受ける人の範囲を二十歳未満とする要件を削除することによってこれが全面的に救済されるわけですが、いかがでしょうか、そのことについて。
  83. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 先ほど大臣から御答弁ありましたように、昨日の法制審議会の答申によりますと、新しい制度が施行されるときに未成年であって、そして日本人を母親とする子供は意思表示によって日本国籍を取得することができるという経過措置がその答申の中に盛られているわけでございます。それによりますと、ただいまの沖縄の無国籍児の問題の大半は、それによって、意思表示によって日本国籍を取得することができるということに相なろうかと思います。  私どもの調査では必ずしもはっきりしておりませんけれども、現在成人に達しているという無国籍の方がどれほどおられるかわかりませんけれども、それほど多くはないようには承知しておりますが、そのような方々につきましては、ただいまのような経過措置によりますと当然に意思表示によって日本国籍を取得するわけにはまいらないことになります。しかし、その関係につきましては、従来からも考えているとおりに、帰化の申請をしていただいて、簡易帰化の手続によって日本国籍を取得するということで処理ができる、したがって全体として問題が解決できるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  84. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今それほど多くはないという御発言があったのだが、人間一人の人権は地球よりも重いと言われておるのじゃないか。一人や二人だからどうでもいいというこの物の考え方を改めてもらわぬというと、国民は、県民は救えませんよ。いまの発言、わずかであるというお言葉に対しては私はどうしても承知できない。たとえ一人であろうがこれは許されないことなんです。また、わずかでもありません。もう一遍大臣。
  85. 住栄作

    国務大臣(住栄作君) 二十歳未満の方につきましては意思による選択制度をとることになる。二十歳以上の方、これは成年の方でございますのでいろいろ御判断があると思うのです。少ないか多いかという、そういう問題は別問題として、成年に達しておられるのならば、それなりの判断によって国籍問題を考えていただいた方がいいのじゃないだろうか、しかし本人が希望されるならば、簡易な帰化手続によって国籍の取得を認めた方がいいのじゃないか。そういうことでこれは法制審議会でもいろいろ議論があったということを聞いておるわけでございますが、法制審議会も慎重に議論された上での結論、そういうことになっておると聞いておるわけでございます。
  86. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひ私の要望が取り上げられまして、一人と言わず二人と言わずみんなを、この戦争の落とし子といわれている悲劇が沖縄に多いわけでありますから、ぜひ救ってくださることを心から願って、この問題を終わります。  次の二つの問題も簡単に現状認識をただしたいと思います。  遺骨の収集について、戦後三十九年になりますのに、沖縄の山野にはまだ遺骨が掘り起こされず埋まっている、このようにマスコミも頻繁に報じております。平和日本を志向するならばこのことこそ優先的に早く処理されなければいけない、こう思っております。その遺骨収集に対する御計画予算措置を承りたい。
  87. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 御指摘のとおり、遺骨収集の問題は極めて大事な問題であるとの認識で私どもこれに取り組んでおります。  現在、沖縄では伊江島、宜野座村、勝連町に政府の収集団を派遣して収集を実施中であります。昭和五十九年以降は沖縄本島南部地区を重点に遺骨収集を実施する計画を持っております。予算は、五十八年は遺骨収集事業費として三千五百二十六万円を沖縄に充て、政府は毎年収集団を派遣するとともに、沖縄県に対しても委託費として、収集に必要な経費四百九十五万円を支出いたしております。  御参考までに申し上げますと、沖縄戦没者遺骨収集状況は、五十九年一月一日現在で、戦没者数十八万六千五百人、収骨数十八万七百四十柱、九七%ということになっておりますが、まことに重要な問題でありますので、これからも目的達成のためにできる限りの力をいたしてまいりたいと思います。
  88. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 一日も速やかに処理されることを希望いたします。  次に、不発弾の処理について。これまた頭の痛い話でありますが、その不発弾の処理について、現時点でどのような計画で、そしてその予算の裏づけはどうなっておるか。
  89. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) 沖縄県の不発弾の問題、これは全国的にもございますのですが、特に沖縄県では問題が大変多いという関係もございます。いままでは住民の方々から不発弾の埋没箇所について情報をいただくようなことが多うございました。それに基づきまして計画的に探査、発掘等を行っております。そのほか、土木工事をやっておる現場で発見される場合もございます。その都度、自衛隊による処理が行われておるのでございます。  特に、昭和五十年度から今日まで不発弾処理の予算も計上してまいりました。合計で四億七千七百万円になっておりまして、三百五十カ所ほどでございますが、探査、発掘を行いました。このほか、先ほど申し上げました土木工事中に見つかったものなどを合わせますと、毎年約六十トンほどの処理が行われておるわけでございます。今後とも引き続きまして所要の措置を続けてまいりたい。沖縄開発庁におきましては、五十九年度も五十八年度とほぼ同額の予算を計上しておるところでございます。
  90. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 あと何年がかりで処理される見通しなんですか。
  91. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) その都度やっておるという関係がございます。したがいまして、現在わかっておる分については予算を計上して逐次やってまいりますが、また新たに発見されるということもございます。  御参考までに申し上げますと、発掘箇所数は昭和五十年度のときには七十二カ所ございました。五十一年には七十三カ所。その後、五十二年、三年、ずっと経過を見てみますと、だんだん減ってまいりまして、五十八年度は十二カ所ぐらいじゃないか、だから六分の一ぐらいに減ってまいりました。したがって、これから数は相当減っていく、したがって予算額も同様なんですが、だんだん減少してまいっておりますが、あと何年ということは、また新たに発見されることもあると思いますので、少し明確には言い得ない要素もございますので、御了解いただきたいと思います。
  92. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 地下に埋まっておるのを明確にということは難しいでしょうが、経過からしますと、年間六十トン、そうすると、その埋没しておる量はあと五十年から六十年今の調子でいくとかかると言われておりますが、そのように認識しておられますか。
  93. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) 先ほど申し上げましたが、お気持ちよくわかるのでございますが、発見されていないものが出てくるケースもございます。といって、経過を見ますと毎年発掘処理は減少してまいっております。したがって、六十トンというのは現場で発見されたものについてでございますが、全体として見ますと発掘箇所が五十年に比べて六分の一に減ってきているということを考えますと、だんだん先細りにはなっていく、しかしその都度それは処理しなければならない。それで、何といいますか、この探査の方法というのも金属棒で何か地下を探るのだそうでございます。磁気の関係でわかるのだそうでございますが、それをどこでやるかという、その地点を探すのもそう簡単な問題ではないということもございますので、あと何年でということについては少しお答えをしにくい点があることを御了解いただきたいと思います。
  94. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私が申し上げたいのは、宅地造成や道路工事の途中で出たものを処理するという、町のせいではなく、地下一メーター二十まで埋まっておるものはガイガーで調査できるようになっていますね。そういうふうに積極的に取り組んでもらわぬと、県民はいまだに爆弾をまくらに寝ておるようなものだと私はよく言うのですが、そういう不安、危険を一日も早く取り除いてもらわぬというと困ります。そのことを私は重ねて御決意のほどをお伺いしたい。
  95. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) 御期待に沿うように努力をいたしてまいりたいと思います。
  96. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、総理にお尋ねします。  沖縄の基地は海も陸も空も強化されて、米軍優先の様相を呈しておる、こういうわけでございますが、総理はどのように認識しておられますか。
  97. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 沖縄の基地が強化されておるではないかという御指摘でございますが、安保条約、地位協定の円滑かつ安定した運用を図っていくということのために、関係地元住民との調整、あるいは米側の駐留目的達成上の必要性といったようなものとの調整を図りながら、施設区域の存在、あるいは米軍の活動に伴う住民の生活に及ぶ影響といったものを最小限度に食いとめるといったようなことがもちろん重要であるというふうに私どもは考えております。現在、沖縄にございます基地は、私どもとしましては計画によりまして逐次減少させる方向で努力はいたしておるつもりでございまして、御指摘のように、基地がその後強化されておるということは具体的にどういう点を御指摘かわかりませんけれども、そういう全体的な動きの中で、私どもとしましては、今申し上げましたような住民との調整ということを図りながら、適切な運用を図ってまいりたいというふうに考えております。
  98. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それで、外務大臣にお聞きしたいのですが、沖縄のそういった基地から派生する矛盾というのは、すべて日米合同委員会の場で具体的には合意事項がなされておるのですね。それで、きょうは時間がありませんので、具体的なことについては申し上げません。基本的な姿勢として日米合同委員会の中で、沖縄の今現状に照らして、県民の生命、財産、人権にかかわる重大な問題については見直すという、こういう姿勢があられるかどうか、外務大臣
  99. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今施設庁長官も御答弁いたしましたように、沖縄における基地は日米安保条約を堅持していく上において、日本の平和と安全を守っていく上においても極めて重要であります。そういう中で同時にまた沖縄の民生の安定、あるいはまた沖縄県民の権利の確保といったものにつきましても十分配慮していかなきゃならぬ。その安保条約とのいわゆる調整といいますか、調和をとっていかなければならないわけでありまして、そのための合同委員会も議論があるわけでございまして、我々はそうした基本的な立場に立って、今後とも安保条約との調和あるいは調整を図るという立場から、県民の立場を踏まえながら議論をして、解決を経なければならない問題はこれを解決していくということで努力を重ねてまいる考えであります。
  100. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄の現状に照らして私が指摘したいことは、安保条約といえどもその枠外にはみ出しておる。ましてや憲法を空洞化した形で沖縄県民の生命、財産、人権が惜しみなく侵害されつつあるという事実が幾らでもあるということなんです。そのことを認識して合意、見直す面があるならば  あるならばじゃない、ありますから、後で具体的に指摘いたしますから取り上げてもらいたい。もう一遍そのことについて外務大臣、姿勢だけで結構です。
  101. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどからお答えいたしましたように、我が国としては安保条約の枠内におきまして、いわゆる安保条約と沖縄県民の権利義務、あるいはまた民生の安定、そういうものとの調和、調整を図るという意味での安保の委員会等の運営をこれからも図っていかなきゃならぬし、今日までも図られておる、こういうふうに我々は理解をいたしております。
  102. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄の陸も海も空もと言いましたが、きょうみんなに触れるわけにまいりませんので、空の問題として、沖縄の上空はニアミスが余りにも多い。これは日本全体の問題でもありますけれども、特に沖縄の空のニア、ミスの現状、ひとつどのように運輸大臣は理解しておられるか。
  103. 山本長

    政府委員(山本長君) いわゆるニアミスと言われておりますものは、航空法によりまして、そういう航空機の衝突、接触のおそれがあったときには機長が運輸大臣に報告しなきゃならぬという制度になっており、その報告のあったものについてニアミス、いわゆる異常接近のおそれがあるものとして我々は調査の対象にいたしておるのでございます。  最近五カ年間に機長から沖縄周辺におきまして報告のあったものは五件でございます。五件のうち、民間機と米軍機が二件、民間機対自衛隊機が二件、民間機と、相手が不明で、調査の結果、何かがあったけれども相手機は不明であったというのが一件、計五件でございます。これは機長からの報告でございますが、その五件のうち、調査の結果、異常接近、空中衝突の危険があったと認められるもの、判断されたものが一件でございます。  以上でございます。
  104. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 具体的に詰める時間を持ちませんが、とにかく結論は、日本全国の空でニアミスがありますが、沖縄の空は全体の三分の一のニアミスを占めておることはおわかりでしょう、どうですか。
  105. 山本長

    政府委員(山本長君) 沖縄周辺においてこういったいわゆるニアミスと言われているもののウエートが多いということは事実でございます。
  106. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 大臣おられませんかね。
  107. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 大臣に答弁求めますか、今の問題で。
  108. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 はい。
  109. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) お答えいたします。  ただいま航空局長がお答えしたとおりでございますが、沖縄では、特に米軍機と民間機との間の調整については十分注意をいたしまして、危険がないように全力を尽くしているところでございます。どうしても機数が多いものですから、そういう危ないチャンスが多くなるということは、今、航空局長が申し上げたとおりでございます。それだけに一層の注意をいたしておる、こういう次第でございます。
  110. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私が言いたいことは、結局沖縄の空の管理権が米軍にあるのか、あるいは運輸省に航空管理権があるのか、どちらがその主導権を持っておるかということを言いたいわけですが、大臣どうですか。
  111. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) お答えいたします。  我が国が航空の管制権を持っておるということでございます。
  112. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 根本の問題はそこにあるんですよ。沖縄の空の航空管理権は米軍優先になっておるんですよ。運輸省航空局の管理権は限られた局部に制限されておる。そこからニアミスが網の目のように絡んでくるということなんですね。そのことを私は指摘し、具体的にはまた次に譲ります。  次に、爆音の問題。爆音も、これは全国的な問題であるわけです。ところが、特に沖縄の爆音の問題について、特に沖縄の爆音の中でも、北谷町をめぐる爆音についてどのように理解し、どのように対策を講じておられるか。
  113. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 御指摘の北谷町は、御承知のように嘉手納飛行場に隣接する地区でございまして、嘉手納飛行場は当該地区におきます米軍の中心基地でございますので、大変な騒音の高い地区であることは御指摘のとおりでございます。嘉手納町、北谷町付近が一番騒音の高い地区であると承知しております。
  114. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、この施行される根拠があるわけですが、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律の第一条の文をまず述べてほしい、防衛施設庁。
  115. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 御指摘の第一条でございますが、「目的」、「この法律は、自衛隊等の行為又は防衛施設の設置若しくは運用により生ずる障害の防止等のための防衛施設周辺地域の生活環境等の整備について必要な措置を講ずるとともに、自衛隊の特定の行為により生ずる損失を補償することにより、関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目的とする」。
  116. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の「目的」、まことによろしい。ところが、原点はそのようによろしいですけれども、次の第四条に基づいて防衛施設庁長官の地域指定の告示というものが出ておるわけですね。その矛盾が生じておるところから、私はどうしても納得がいかぬので質問主意書を出しました。その答弁書によって、さらに私は理解できないことがあります。「区域指定の後障害を承知して建設されるものである」となっておる。このことに私はどうしても納得がいきませんので、その趣旨を話してほしい。
  117. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 御指摘の第四条が「住宅の防音工事の助成」に関する規定でございますが、この中に「防衛施設庁長官が指定する防衛施設の周辺の区域(以下「第一種区域」という。)に当該指定の際現に所在する住宅」「について、その所有者又は」云々の人に助成をする、こういう規定がございまして、この規定によりまして告示が行われたときに、その告示の中に、現在所在する人に対しては助成をいたします、しかしその告示の後そこへ移ってきた人にはこれは助成はいたしませんというのがこの法律の趣旨でございます。
  118. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それは日本全体の立場からはよく理解できます。ところが、神奈川県に近い面積の沖縄にアメリカの基地が五〇%を占めております。しかも、嘉手納町と北谷は嘉手納空港によって村が分離されている、断ち切られた。その北谷町は五八%が基地に接収されております。そのようにひしめき合っておる情勢の中で、二、三男も結婚すれば分家しなければいけない。それを自分の土地にしか家もつくれぬ。こういう状態の中で、後で来たからそれには適用しない、どうしてもそこ以外に住めないんです。ならば、裏を返せば、これは我々の土地だから、それを許さぬならば基地はなくしてほしい、こう言いたいところなんですが、そのことを理解してもらわなければいけない、防衛施設庁長官
  119. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 今お挙げになったようなケース自体は、私どもも御趣旨がわからないわけではないんですけれども、私どもの今とっております立場は、先ほど申し上げました法律にも書いてあるとおりでございますけれども、いずれにしましても、現在私どもが対象として工事の助成をしなければいけない世帯数が二十五万三千世帯という大きな数でございまして、現在までのところ十万九千世帯しかできていないというのが実情でございまして、これに対しまして毎年二万数千戸の助成を現在行って、なるべく早く多くの人に一室でも二室でも助成工事をしてあげたいというのが現時点の私どもの考え方でございまして、そのために目下全力を挙げているという状況でございます。  したがいまして、今御指摘のようなケース、そのほかいろいろなケースがあろうかと思いますけれども、今私どもの立場としては、全力を挙げて現在の法律による対象者に対してなるべく早く実現をさしてあげたいというのが現在の私どもの立場であります。
  120. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もっと追及したいんですけれども、次に譲ります。  次に、那覇空港を中心とした降下訓練が、すなわち陸上救難訓練と称して航空自衛隊が那覇基地においてバートルヘリと落下傘降下による訓練計画しておりますが……
  121. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 喜屋武君、時間がなくなりましたから簡潔に。
  122. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この種は、従来は海上で降下訓練をしておった。これを陸上に移した、この理由は何なのか。  そうすると、沖縄那覇空港を中心とする空のニアミスがさらに危険きわまりないものになるわけですが、これは運輸省の立場からもまことに重大な問題でありますので、そのことについてまず問いてさらに進めたいんですが、時間が参りましたので、従来、海上で訓練しておったものをなぜ陸上に、しかも陸上もニアミスの多いその空でやらなければいけないか、このことをお尋ねして私の質問を終わらしていただきます。
  123. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  那覇基地には航空自衛隊の救難隊が所在をいたしておりまして、救難ヘリコプターを運用いたして離島の患者輸送、その他さまざまな救難活動に従事いたしておるわけであります。こういった救難活動に際しましてヘリコプターが直接着陸できないといったような状況も当然予想されるわけでありまして、そういったときのためにパラシュートによる降下訓練というものが救難訓練の一環として必要なわけでございます。  ただ、先生御承知のように、現在のところ、沖縄におります救難隊はそういった降下訓練を本土で行っております。したがいまして、現地部隊としては、救難訓練訓練の効率性と申しますか、あるいはまた救難機の稼働率を上げるといったような意味で、できるだけ近間でやりたいという希望を持っておることは十分わかるわけでありますが、いままでのところ、降下訓練を沖縄でやるというようなことが具体的な計画に上がっておるわけではございません。
  124. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 実は、この計画はごく最近私どもの方に言ってまいったものでございまして、航空の安全の立場からいろいろな点で検討をいたさなければならないということでございます。まだ聞いたばかりでございます。
  125. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これはやめてもらいたい。
  126. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で喜屋武君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  127. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、野末君の質疑を行います。野末陳平君。
  128. 野末陳平

    ○野末陳平君 私は、参議院の選挙区の定数是正のこと、あるいは歳費の凍結問題、それから租税負担率と社会保障の負担率、それらについて質問をしたいと思います。  その前に、一問だけなんですが、最近、世間をにぎわしております例のロサンゼルスの事件ですね。「疑惑の銃弾」というあれですが、マスコミの取材合戦ばかりがエスカレートしておりまして、国民の間には、当局はどうなっているんだろう、どういうふうにしているんだと、そんなような関心も高まっているようなんでして、それについて当局に一問だけお伺いしたいと思うんです。この件に関して、特に渦中の人物に関して、その疑惑をどういう形で当局は捜査を進めているんであろうか、それをお答え願いたいと思います。
  129. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お答えいたします。  ただいまお尋ねの事件でございますが、昨年の十一月に山口県警察の方に白石千鶴子さんの家出人捜索願が出されたわけでございますが、その捜索願に関係をいたしまして、現在、関係警察で事実調査を含めまして実態の把握に努めておるところでございます。
  130. 野末陳平

    ○野末陳平君 伝え聞くと、アメリカの方にも依頼して協力の捜査態勢をとっているかのごとき話もあったんですが、それについてはどうなんでしょう。
  131. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 具体的な調査の内容、それから依頼先等につきましては、関係先のそれぞれの都合がございますので、この席でお答えをするというわけにはまいらないと思いますが、いろんなことを含めまして警察といたしましてはできる限りの調査をやっておる、こういうことでございます。
  132. 野末陳平

    ○野末陳平君 いずれにせよ、早くけりをつけてほしいと当局にお願いしておきます。  さて総理にお伺いいたします。  定数是正は、もはや衆議院でも作業が進んでいるようですが、参議院においても避けて通れない問題であります。この参議院における選挙区の定数是正、現行枠の中で増減を調整するというような考えも一部にあるようなんですが、こういう中途半端な改正はこの際やめるべきだと思うんですね。やるならば、ここで思い切った是正をしなければ意味がない。いまがそのチャンスだと、そう思うんです、次の選挙までに。ですから、私はここは現行枠を切り込んで定員を減じるという形の中で是正していく、これが望ましいと考えますが、いかがでしょうか。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は、議会政治、政党政治の基礎構造に関する重要な問題でございまして、各党間でいろいろ樽俎折衝されて合意の成立を見ることが望ましいと思っております。私といたしましては、現行の枠以下、以内においてこれを処理することが望ましいとは思います。言いかえれば、増員を行うということは好ましくないと思っております。
  134. 野末陳平

    ○野末陳平君 それだけでは消極的だと思うんですね。増員は到底やるべきではないことですが、しかし減ずる、定員を減にする手だてがないかどうか。まあ私考えますに、やはり今度制度が変わりましたが、比例代表区ですね、これがなぜ百である必要があるのか、すぐれた人材なら八十ぐらいでも何ら支障がないではないか、そういう考え方もあるんですね。私もそう思うし、国民の間でもかなりこれは支持を受ける考えだと思うんです。それはどれだけ減ずるかという意味ではないんです。定員そのものの枠を縮めるということがいま求められていると思うんです。  ですから、総理にあえてお聞きしますが、比例代表区はなぜ定員が百でなければいけないのか。百である必要はありますか。少し減らしていいと思うんですが、いかがですか。
  135. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは地方区とのバランスを考えてああいう割合になっているんだろうとは思いますが、やはり一つの検討課題であるとは思っております。
  136. 野末陳平

    ○野末陳平君 私、考えますに、やはり非常に人口の移動が激しくなった結果、アンバランスが生じたわけですね。となると、当初決めた全国区から移った比例代表区のこの百ですが、これを仮に二割ぐらい削減しますね、そうするとその分を地方区に回していくという、そしてまあ定員枠の中で結構ですけれども、現行の。そのくらいの大胆な是正でなければ、今や直したということにならぬと思うんですね。ですから、あえて個人的な見解を聞いていただきますが、二割は少なくも減らしていいんじゃないか。その中ですぐれた人材に出ていただく。そしてその減じた分は地方区の是正に回す。いま一部で検討されているほんの一部の手直し、それだったら中途半端でやめた方がいい、むしろ大胆にやるべきだ。この考えについて総理の御意見を重ねてお伺いします。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一つの貴重な御提案として検討してみたいと思います。
  138. 野末陳平

    ○野末陳平君 それでしたらば、去年の参議院選挙を振り返りまして、比例代表という新しい制度、これはやはり一度経験すればいろいろな反省点も生じたと思うんですね。  そこで総理は、あの比例代表の去年の夏の選挙でどういう点がまずいと、これは直すべきだというような御意見をお持ちだったと思うので、その辺をお聞きしたいと思うんです。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろ改革案もあるとは思いますが、私は基本的には維持すべきである、経験がまだ一回ぐらいだけでは不足であると、そのように思います。
  140. 野末陳平

    ○野末陳平君 もちろんそうですね。一回の経験ですぐあれこれと言うには余りにも見識もないと思いますけれども、しかし、基本的に維持すべきである。では、次の選挙を迎えるあと二年ちょっとの間に、どの点が特に手直しすべき検討課題であるとお考えか、それだけをお答えいただいて次にいきたいと思うんです。
  141. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私からいまどこの点に欠点があるかというようなことを御答弁申し上げることは、まだ少し勉強不足でありますので、少し差し控えさしていただきたいと思っております。
  142. 野末陳平

    ○野末陳平君 では、それほど勉強をしなくても答えられるような質問をさしていただく方がいいと思いますけれども、最近国民の間で話題になっています歳費の問題ですが、不愉快だと。こういうことですけれども、僕は凍結が今回解かれると、まあそれほど突拍子もないような話じゃないとは思うんですが、しかし余りにも評判がよくないということも考えなきゃいかぬと思うんですね。ですから、この歳費の凍結が解かれまして上がる、それはそれでいいと思うものの、この際これが全国的にも波及していく、そしてせっかくの総理努力を重ねられているこの行革に水を差すということにもなりかねませんね。ですから私、思いますのに、やはりこの凍結はもう少し、もうしばらく続けるべきだと、こう考えておるんですが、これは総理いかがでしょうか。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は、行政府の側からとやかく言うべき問題ではなくて、立法府の内部において各党各会派がいろいろ御相談の上決めるべき自律主義の問題であると思っております。
  144. 野末陳平

    ○野末陳平君 実際そのとおりなんですが、しかしこれが決まりますと、総理も私も、自分の考えがどこにあろうが、これはやはり法律に従ってもらわなきゃならない、こういうことになりますね。  そうなると、この際私は、できればいまからでも総理が指示していただいて、再検討する余地があると、こういうふうに考えまして、やはり財政再建中だからこそ我々はもうしばらく我慢しなければいけないんだというごく常識的な立場に立つべきじゃないか。行革の精神はやはり隗より始めよではなかったかと、こういうふうに考えますので、改めて、いまのような答弁ではちょっと不満なんで、重ねてお願いします。
  145. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行政府内閣総理大臣としていろいろこれは論評すべき対象ではなくして、むしろ政党各派等において御論議願うべき問題であると思っております。  ただ、いろいろな御論の中にも、たとえば国会議員につきましてはもう三年ばかり我慢していただいておる。それで、国会法等の規定によれば、国会議員は一般行政職の事務次官より低い給与は受けないと、そういう基準が示されておりますが、三年間停止しているために、片っ方がたしか九十四万円近くであるが、国会議員は八十八万円、現状にとどまっておると、三年もこうやって我慢しているんだから、もうその辺は多少是正してもいいんではないかというような議論もあります。また、野末さんのような御議論もございます。そういう意味におきまして、各党各会派で自主的にどういうふうに合意を形成するか見守ってまいりたいと思うのでございます。
  146. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあ民間の赤字会社であればもう三年我慢なんてあたりまえのことなんでして、どうも総理のはちょっと身びいきな見方だと思いますが、これ以上はお話ししてもお答えをいただけないので……。  次に、租税負担率が議論になっておりますが、これからの時代は租税負担率だけで議論をしても始まりませんね。やはりこの社会保障の負担率を合計した数字で国民に理解を求めていかなきゃならぬと思うんですね、中長期的に。だからこそ臨調の答申の中にも西欧の水準をかなり下回ると、こういうような文言が出てきている。大蔵省の基本的な考え方にも、かなり水準は低くと、こういうのがありますね。  そこで、この租税負担率とそれから社会保障負担率の合計の行方なんですが、いまのところは五十九年はたぶん三五%ぐらいだと思いますが、さてここで総理が臨調のあの西欧の水準をかなり下回るというこの表現の、かなり下回るというこの辺をどう解釈なさっているか。総理の個人的解釈ですから、日本語の、これをちょっとお聞きしたいと思います。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 西欧の水準がたしか平均して五〇%前後、超えるのもあるし、それから以下という点もあると。それが一応論議の対象になった西欧の水準でありましょう。それからかなり下回るということで、かなりという点は、三五なのか四〇なのか、四二、三なのか、それはいまのところ容易に判定しにくい問題ではないか。西欧の関係あるいは日本の他の諸経費、そのほか諸般の問題を考えて決めるべき問題であろうと思います。
  148. 野末陳平

    ○野末陳平君 いや、しかしそれは余りにもあいまいだと思いますね。西欧が五〇%前後としても、それをかなり下回るというからには四〇%台を示唆しているのだと思うのが常識ですね。だっていま三五%ですね、我が国は。それがもし四〇%以下なら我が国のいまの水準を少し上回ると言った方がいいわけですからね。ですから、かなり下回るということを数字に置きかえてみなければだめですね。中長期的ですから、もちろんここまでということじゃありませんが、財政再建の議論の中で、これを頭に置かないわけにはいきませんね、具体的な数字を、努力目標としても。  そこで、あえて総理に、最後になりますが、この租税負担率、そして社会保障負担率の合計の数字努力目標として四〇%台の前半か後半かと。少なくも四〇%以下の努力目標というのはもう破綻しているんですね、年金法改正によってもうそれ以上になりそうなんですから。そこで、あえて数字に置きかえて、いまのかなり下回る水準をお答えいただきたいと思います。それで終わります。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 臨時行政調査会が答申を出す際に、いまのような定性的な表現をして定量的な表現をしなかったのは、なかなかこれは決めにくい問題であると。そういう配慮から、まあ検討課題という意味もありまして、そのような表現になったのであると、私は行管長官のときから拝承しております。  政府は、ただいま数量的にこれがどの程度であるかということを示すことは、まだ適当でもないし、またなかなかむずかしい問題で、しばらく検討を要すると思うのでございます。
  150. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で野末君の質疑は終了いたしました。  これにて質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。     —————————————
  151. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、これより昭和五十八年度補正予算二案に対する討論に入ります。  討論の通告がございますので、順次これを許します。  なお、発言者は賛否を明らかにしてお述べ願いたいと存じます。糸久八重子君。
  152. 糸久八重子

    糸久八重子君 私は、日本社会党を代表して、五十八年度補正予算二案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。  現在、我が国経済は回復の兆しが見え始めたとはいえ、個人消費は相変らず伸び悩みの状態にあり、中小零細企業の倒産、失業は今なお高い水準にあります。このようなとき、景気振興のため、内需拡大策を積極的に推し進める必要のあることは言うまでもないことであります。政府におきましても、昨年十月、総合経済対策でそのように決定したはずであります。しかしながら、昭和五十八年度補正予算二案は、そうした内需拡大を推進するような内容とはなっておらず、まことに不満足であると言わざるを得ません。  以下、具体的に反対理由を申し述べます。  まず第一に、公共事業費についてであります。一般会計の公共事業費は、昭和五十五年度以降は毎年追加が行われ、前年度を上回る状況になっていましたが、五十八年度補正後は前年度を上回るどころか、六百億円近い減額となり、前年度を下回るものとなっています。内需拡大を政策目標に掲げておきながら、公共事業費を前年度以下に抑制するということは明らかに矛盾しており、納得できません。  第二の理由は、本格的な五十八年度内減税を実施せず、国民の期待を大きく裏切ったことであります。昨年、我が党は五十八年度中に所得税、住民税合わせて一兆四千億円の減税を要求したわけでありますが、政府が行った減税額はわずか一千五百億円にすぎません。これでは景気浮揚はおろか、国民の期待を大きく裏切るものであります。これは明らかに、昨年二月二十六日の景気浮揚に役立つ規模の大幅減税を五十八年度中に実施するという与野党間の約束を無視するものであり、断じて容認できません。  第三の理由は、人事院勧告の完全実施を行わなかったことであります。人事院が五十八年度において六・四七%の給与引き上げを勧告したにもかかわらず、政府はその三分の一にも満たない二・〇三%を引き上げただけで、残りの四・四四%を実施していないのであります。二年連続の政府の暴挙により、年収四百万円の公務員は年十八万円もの給与をカットされているのであります。人勧の値切りや凍結は、公務員を苦しめるだけでなく、年金の据え置き、民間賃上げの抑制に波及し、国民生活を圧迫し、内需中心の経済回復をおくらせたのであります。  反対の第四の理由は、年金や福祉の引き上げに必要な経費を計上していないことであります。五十八年度当初予算編成に際して、我が党は年金の物価スライドや老齢福祉年金を月額三万円に引き上げる等必要最小限の社会保障の確保を要求しましたが、政府はこれを拒否してきました。五十八年度の消費者物価は二%上昇が見込まれますから、年金、福祉は確実に実質二%の減少になるのであります。このような弱者切り捨て、不公平拡大をもたらす補正予算案に賛成することはできません。  以上のように、本補正予算案は我が国経済の実情と国民の要求を無視したものであり、我が党はこれに反対せざるを得ないのであります。  最後に、防衛費を突出させておきながら、財政難を理由に国民生活を犠牲にする中曽根内閣の政策の転換を強く要求して、反対討論を終わります。(拍手)
  153. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、藤井裕久君。
  154. 藤井裕久

    ○藤井裕久君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和五十八年度補正予算二案について賛成の討論を行います。  財政改革を強力に推進することは、我が国の将来の安定と発展にとって緊要不可欠な国民的な課題であり、中曽根内閣の最重要政策の一つであります。昭和五十八年度当初予算は、その財政改革の第一歩として編成されたものであり、歳出規模の徹底した抑制が図られているところであります。今回の補正予算は、この基本的姿勢を堅持しつつ、当初予算作成後に生じた事態の推移に応じ、国民生活を守り、経済の回復を図るため、これに適切に対応しようとするものであります。  まず、所得税について、昭和五十八年分の所得税の臨時特例等に関する法律により総額一千五百億円の減税が実施されたことに対処しておりますが、これは国民の強い期待にこたえるとともに、昨年十月に決定された総合経済対策の重要な柱をなすものであり、五十九年度に予定されている大幅減税と合わせれば一兆二千億円を超える大幅な減税であり、我が国経済の回復にも大きな貢献をなすものと考えております。また同時に、これは与野党間の従来の協議にも沿うものでもあります。  さらに、この総合経済対策に決められた措置の一環として、この補正予算においては昭和五十八年発生の災害によって必要となった災害復旧事業や債務負担行為による一般公共事業の追加等の措置が講ぜられております。災害復旧事業については、五十八年発生災害の初年度の復旧進度を高めるほか、五十七年災害についても、五十九年度実施予定を本年度に繰り上げて実施し、被災地の強い期待にこたえることとしておりますし、また海岸とか漁港、住宅、下水道などの一般公共事業について総額三千百億円の国庫債務負担行為の追加措置を行っております。一日も早く本補正予算を成立させ、これらの措置の実施を通じて、ようやく三年ぶりに軌道に乗り出した我が国経済の回復を本格的なものとし、持続的成長への道が確実なものとなることを強く期待しているところであります。  以上のほか、農業保険費の追加、国家公務員の給与改善費、また義務的経費等の追加が行われておりますが、これら所得税の減税や歳出の追加を行うに当たっても、特例公債を増発しないということを基本の命題とし、既定経費の節減、予備費の減額、税外収入の増加、前年度剰余金の受け入れといった手段により財源の捻出に最大限の努力を行い、財政改革を進めようという基本的方針が貫かれていることを多とするところであります。  なお、本補正予算で追加措置をいたしました災害復旧事業の財源に充てるため建設公債を増発することといたしておりますが、災害復旧をできるだけ早期に行うことは、被災地の皆様方の生活の安定に資するとともに、景気の着実な回復に役立ち得るものであり、妥当な措置と考えます。  以上申し述べてまいりましたように、現下の経済社会情勢のもとにおいて、本補正予算は選び得る最善のものと信ずる次第であり、一日も早くその成立することを望むものであります。  最後に、財政改革の問題について一言申し添えます。  我が国財政は、昭和四十八年以来、二度にわたる石油ショックと、これに伴う経済危機を乗り切るため、この間にあえて大量の国債発行に踏み切り、経済の成長を維持し、雇用の確保、国民生活の安定に大きく寄与いたしましたことはこれは紛れもない事実であります。しかしながら、同時にこの五十八年度末には国債発行残高は実に百十兆円に達し、その利払い費はかさみ、財政の機動的運営に支障を来していることも事実であります。我が国は、これからの避けることのできない高齢化社会に向けて、また成熟した経済の中でみずみずしく、たくましい社会を築き、また国際社会の重要な一員として世界平和のため大きな役割を果たしていかなければなりません。そのような将来に向けて、国の財政は一定の節度を保ちつつも、これら事態に強力、適切に対応する力を持たなければならず、その力を回復するためにも財政改革は何としてもやり抜かなければならない重要な課題であります。  政府は、先般、昭和六十五年度までに特例公債依存体質の脱却に努めることを目標として設定されましたが、我々もまた政府と一体となって、国民の皆様の御理解と御協力のもとに、あらゆる困難に耐え、この目標の達成に向け渾身の努力を傾け、国民の負託にこたえることをお誓いいたしまして、私の賛成討論にいたします。(拍手)
  155. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、峯山昭範君。
  156. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十八年度補正予算二案に対し、反対の立場から討論を行います。  初めに、中曽根総理に一言申し上げたい。  昨年末に行われた総選挙において、主権者たる国民は自民党政権による金権腐敗政治に対して極めて厳しい審判を下し、中曽根総理は自民党総裁として総選挙敗北宣言を余儀なくされたのであります。すなわち、総選挙敗北の最も大きな原因は、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかったこと、政治倫理への取り組みについて国民に不満を与えたことであるとして、中曽根政治の誤りを総理自身が認めたところであります、しかるに、その後の政治倫理確立に対する総理の姿勢は、日を追って後退するばかりか、田中問題のけじめについても言を左右にし、国民の期待を大きく裏切っているのであります。総選挙の反省などみじんも見られず、あくまでその場しのぎで取り繕おうとする姿勢は国民を冒涜する以外の何物でもなく、断じて許されません。私は、政府・自民党が両院に設置された政治倫理協議会において、国民の審判を厳粛に受けとめ、一審で禁錮刑以上の有罪判決を受けた国会議員の政治的、道義的責任の明確化を初め、政治倫理確立のための具体策等が速やかに実現されるよう強く要求するものであります。  以下、補正予算に反対する主な理由を申し上げます。  反対理由の第一は、国民の期待する所得税、住民税の減税が五十九年度に先送りされ、五十八年内の所得税減税規模がわずか千五百億円程度と大幅に圧縮されたことであります。昨年、共産党を除く与野党間において五十八年中に景気浮揚に役立つ相当規模の大幅減税を行うとの合意がなされていたことは御承知のとおりであります。この合意は、五十二年度以来課税最低限が据え置かれていることにより、国民の実質増税を解消し、景気回復に役立てるという認識のもとに行われたことは言うまでもありません。  このような背景があるにもかかわらず、与野党合意を一方的に破棄し、五十八年中に大幅減税を実施しなかったことは公党間の約束をほごにし、議会政治を踏みにじるとともに、景気浮揚の観点からは全くの論外であり、景気停滞を長期化させ、国民生活を窮地に陥れており、強く糾弾されるところであります。  我が党は、当初から昨年夏の時点で早期補正予算の提出を求め、所得税一兆円、住民税四千億円の減税要求を行ったわけでありますが、政府・自民党はこれに耳をかそうともせず、五十八年内の減税を十カ月分近くも値切るなど、国民が強く要望した早期大幅減税の実現を葬ったことは到底認めることができません。  反対理由の第二は、政府による経済運営の失敗が我が国の景気回復を大幅におくらせると同時に、外需依存型の経済政策が貿易摩擦を激化させていることであります。  最近の経済動向を見ますと、輸出が回復するなど若干上向きの指標も見られますが、これは原油価格低下や米国の景気回復といういわば海外要因にそのすべてを依存した景気回復に陥っており、輸出は増加したものの、内需が依然低迷していることから輸入は不振をきわめ、五十八年度の貿易収支は政府見通しの九十億ドルを大幅に上回る三百四十億ドル程度が見込まれており、膨大な貿易黒字を背景とした海外批判の高まりを政府自身の経済運営の誤りがもたらしたのであります。  五十八年度当初経済見通しとその実績見込みを対比すると、個人消費が当初実績三・九%増に対し実績見込み三・二%増、住宅投資に至っては当初実質二・六%増に対し実績見込み五・一%減と極度の不振に至っており、政府のねらった内需主導型経済運営の破綻が明白にあらわれております。五十九年一月の企業倒産件数は千四百九十四件、前年比一九・三%と大幅増加を示し、内需の低迷は大幅な失業、倒産の増大をもたらし、国民生活を大きく圧迫しております。  我が党は、公共事業費の大幅追加等早期の景気対策を主張しましたが、政府の景気対策は常に後手後手に回り、昨年十月にようやく出された総合経済対策も、その効果はほとんど期待できません。公定歩合の引き下げも景気の実態からすれば既に遅過ぎ、しかも大幅に下げられて当然であったにもかかわらず、円相場に固執し過ぎ、「動かせない公定歩合」とした政府、日銀の姿勢は問われなければなりません。  反対理由の第三は、政府・自民党の財政再建策が明らかに失敗したことであり、しかも赤字国債脱却を六十五年度に先送りしただけで何ら具体的な手順と方途を示さず、大型間接税の導入を虎視たんたんとねらい、国民の先行き不安を増大させていることであります。  財政再建の破綻は、政府が財政再建の名のもとに、六年間にも及ぶ減税見送り、福祉、文教予算の圧縮など、高圧的な歳出削減に偏り過ぎた政策の失敗に求められるべきであります。すなわち、五十六年度以降の実体経済の不振に対し、近視眼的発想にとらわれ、財政に出番なしとして景気対策を怠り、さらに五十五年度以降、公共事業費を同額に抑え込むという徹底したデフレ政策をとり続けたことが第二次石油ショック後の不況を長引かせ、大幅な税収不足をもたらし、五十八年度も二千六百三十億円の減額修正を余儀なくされております。歳出削減が財政再建の重要な役割を果たすことはもちろんでありますが、より重視されるべき点は、経済を適正な成長軌道に乗せ、そこから生ずる自然増収によって財政再建の基盤を整えることが肝要なのであります。このため、我が党は、景気対策を重視する立場から本補正予算において一兆円の公共事業追加を強く要求いたします。  反対理由の第四は、五十八年度補正予算にも見られますように、既定経費節減の恒常化が見せかけだけのものとなっていることであります。最近の予算執行方式は、当初から数%の留保分をあらかじめ確保しており、それを補正予算で計上するという実態にあります。これは真に経費を節減したということではなく、あらかじめ予定していた額を計上したにすぎず、経費節減は見せかけだけであると言わざるを得ません。当初予算であらかじめ留保分を確保するならば、当初予算においてその分を削減した予算編成を行うのが当然の責務なのであります。  以上、五十八年度補正予算二案に反対する理由を幾つか申し上げましたが、政府はまず景気を無視した財政運営を改め、内需主導型の景気回復による国民生活の安定と、経済の安定成長がもたらす自然増収による財政再建を図るため、積極的な財政運営への政策転換を行うべきであり、この点を強く要求して私の反対討論を終わります。(拍手)
  157. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、内藤功君。
  158. 内藤功

    内藤功君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の昭和五十八年度補正予算二案に反対の討論を行います。  本補正案の審議を通じ、中曽根内閣が、総選挙で示された国民の願い、要求に背いて、レーガン戦略に加担しての軍備拡大、大企業優先、国民生活無視の路線を拡大推進しようとしていることが一層明らかにされました。さらに、中曽根内閣は、田中議員辞職勧告決議案の本会議上程に消極的姿勢をとり、政治倫理の名のもとに政党法制定を前面に押し出すなど、政治倫理確立についても甚しく国民の期待に背いております。  本補正予算案は、臨調行革の路線に基づいて、軍事費を上積みし、総額を対GNP比〇・九八八%に引き上げる一方で、福祉、教育費を削減し、これを軍備拡大、増税、国民生活破壊の昭和五十九年度本予算に連動させようとする中曽根内閣の性格をまさに示すものであり、到底容認できるものではありません。  以下に、その反対の理由を具体的に述べます。  第一は、国民が切実に求めている大幅減税を盛り込んでいないことであります。本補正予算案の年度内減税は、わずかに一千五百億円にすぎません。前国会において政府・与党が明言した景気浮揚に役立つ相当規模の減税は一体どこへ行ったのか。国民を欺く結果となったことについての中曽根内閣の責任は重大であります。さらに、昭和五十九年度本予算案は、減税額を上回る増税を国民に押しつけようとしているばかりか、中曽根内閣は昭和六十年度へ向けて最悪の大衆課税である大型間接税導入の意図さえ隠そうとしていないのであります。まことに大増税路線と言わなければなりません。  反対の第二は、新たな国民生活への打撃が加えられることであります。公務員給与は、二年連続人事院勧告を踏みにじって、わずか二%の引き上げしか措置されていません。また、人勧無視に伴い、年金、恩給の物価スライドも見送られております。さらに、既定経費の節減の名のもとに、私学助成費、社会福祉施設整備費、中小企業対策費、畜産振興費、農蚕園芸費補助金等々の削減は国民の切実な期待を顧みないものと言わなければなりません。  反対の第三は、減税に伴う地方交付税の減額分を従来全額国が負担していたことをやめ、地方自治体に責任を転嫁したばかりか、来年度以降の地方財政制度改悪の第一歩にしようとしていることであります。これは住民の負担をさらに増大させるのみならず、一層の地方自治破壊を進めるものであります。  以上、私は、中曽根内閣が総選挙で国民の厳しい審判を受けながらその施策を何ら顧みることなく、軍備拡大、増税、福祉と教育の犠牲の道を推し進めようとしているその政治路線を厳しく糾弾し、補正予算二案への反対討論とするものであります。(拍手)
  159. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、伊藤郁男君。
  160. 伊藤郁男

    伊藤郁男君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和五十八年度補正予算二案に対し、反対の討論を行うものであります。  我が国経済はようやく景気回復の方向に向かいつつあるとはいうものの、中小企業を中心とする企業倒産は一一・八%増の一万百五十五件と過去最高を記録し、また失業率も二・六%と過去最悪であり、実質賃金の伸び悩みとともに国民生活に大きな不安を与えております。さらに、内需の冷え込みの影響は国内面だけにとどまらず、経常収支の黒字が五十八年度政府実績見込みでも二百三十億ドル、来年度においてはOECDが三百十五億ドルを予想するなど、対外経済摩擦を激化させてまいりました。  その一方で、財政破綻はますます進行し、増税なき財政再建は今や空文と化しつつあります。経済成長の鈍化によって税収は著しく伸び悩み、税収欠陥は五十六年度が約三兆三千億円、五十七年度は実に約六兆一千億円となり、五十八年度においても二千六百億円の不足が見込まれております。その結果、赤字国債の発行額はこの三年間六、七兆円と横ばいで、財政再建が進んでいないだけでなく、国債費が九兆円と社会保障費と並んで一般歳出のトップを占めるまでになってしまったことは周知のとおりであります。こうした景気回復の立ちおくれ、雇用不安、対外摩擦、財政破綻はいわば一連の悪循環であり、その主たる原因が金がないから何もしないという政府の縮小均衡型経済運営にあることは明らかであります。  我々は、昨年来、政府に対し、こうした縮小均衡型経済運営をやめ、一方において一兆四千億円の所得減税の実行、三兆円規模の公共事業の追加なと思い切った積極経済政策を実行し、それによって大幅な自然増収を確保するとともに、他方において抜本的な行政改革を進め、それによって増税なき財政再建を達成するという拡大均衡型経済運営への転換を強く要求してまいりました。これしか景気回復と増税なき財政再建を真に実現する道がないからであります。しかし、政府はこうした我々の主張に耳をかさず、大蔵省主導による帳じり合わせ優先の縮小均衡型経済運営に終始し、その結果五十八年度は三%台の低成長にとどまったことは極めて遺憾と言わざるを得ません。  この補正予算案もこの縮小均衡型路線から一歩も出ておりません。すなわち、第一に、大幅な所得減税を見送ったことであります。これは内需拡大による速やかな景気回復にさお差しただけでなく、大幅減税の実施という昨年の与野党合意を全く踏みにじるものであり、まさに言語道断であります。すなわち、減税は景気浮揚に役立ち得る大幅な規模とするという与野党間の合意がなされたにもかかわらず、年内減税はわずか千五百億円にとどまったことであります。我々は、公党間の信義からしても、このような暴挙を断じて容認できないことをここで改めて申し述べておきたいと思います。  第二は、公共事業の思い切った追加がなされなかったことであります。我々は、景気回復に弾みをつけるため三兆円規模の追加が必要であると考えますが、政府は事業費ベースで一兆八千八百億円にとどまり、しかもその半分は国庫債務負担行為や地方単独事業で見せかけの実効性の乏しいものであり、極めて不十分、不徹底な措置と言わざるを得ません。  第三は、人事院勧告を無視し、これを一方的に抑制、カットしている点であります。すなわち、平均六・四七%の引き上げを求めた人事院勧告を大幅に削り込み、平均二%の引き上げにとどめたことであります。  本補正予算案には、特に以上述べましたような重大な欠陥があると言わなければなりません。我々は、政府がこの際一日も早く縮小均衡型経済運営から拡大均衡型経済運営に転換し、日本経済の潜在的成長力を引き出し、景気回復の本格化と増税なき財政再建達成への道を選択されんことを強く要求し、私の反対討論を終わります。
  161. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で討論通告者の発言はすべて終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  昭和五十八年度一般会計補正予算昭和五十八年度特別会計補正予算の両案を一括して採決いたします。  両案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  162. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 多数と認めます。よって、昭和五十八年度補正予算二案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十八分散会