○服部信吾君 私は、公明党・
国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました
日本電信電話株式会社法案、
電気通信事業法案など
電電三法に関しまして
総理並びに
関係大臣に御
質問いたしますので、明快なる
答弁を求めるものでございます。
申すまでもなく、現在
我が国は工業化社会から
高度情報社会への移行期にあり、
電気通信はその中でいわば原動力として、その果たすべき
役割はますます重要となってくるわけであります。したがって、今回、
電気通信事業を自由化し、
競争原理の導入を図るとともに、
電電公社を民営化するという
電気通信制度
改革の成否いかんが、日本の将来の
発展を決定づけるものであると言っても過言ではないと思います。
総理は、
電気通信制度
改革に対してどのような
基本的認識を持たれているのか、まずお伺いをしておきます。
今回の
改革において最も重要な観点は、
電気通信の持つ
公共性、
公益性が
確保され、また
国民がこれまで以上に低廉で良質な
サービスを受けることができる制度でなければならないということでございます。
今日までの
電電公社を支え、育ててきたのは、言うまでもなく
国民・
利用者であります。したがって、今回の
改革によって
国民の利便向上、
公共の
福祉増進が一層図られるものでなくてはならないと思います。こうした視点に立って、今回の
改革が来るべき二十一
世紀の
高度情報化社会を先取りし、国際社会をリードするためのものでなくてはならないと思うものであります。たとえ
通信が自由化され、公社が民営化されたとしても、
通信の
公共性、
公益性が薄れるものではありません。むしろ
高度情報化社会における
電気通信の持つ
公共性、
公益性は、これまで以上に重要となってくるのであります。
私は、このような観点から、
国民・
利用者の
立場に立ち。以下の問題について具体的にお伺いをいたすものでございます。
まず第一に、
電電公社が民営化された場合、逆に
料金コストの上昇を招くおそれがないのかということであります。
現在、
電電公社に対しては、法人税、
事業税等租税が非課税となっているほか、道路占用料等も免除されているわけであります。しかし、民営化後にはこれらの優遇
措置は
原則的に
廃止され、しかも配当金の支払いが加わるなど
経営上の負担が増加するはずであります。これらの支出増加が仮にも
料金の値上げにはね返るようなことがあれば、
国民の反発を招くことは必至であります。一体いかなる
経営手段によって支出増加分を吸収するのか、果たして新
会社の
経営の合理化、
効率化でカバーできるのかどうか、具体的な対応を明示されたいのであります。
私は、民営化が
国民生活によりよい効果をもたらすと言われるならば、少なくとも最低、今後
見直し期間の向こう五年間は
料金の値上げをしないと、この場において
国民の前に
総理が確約すべきであると思いますけれども、その御所見をお伺いしたいと思います。
第二は、
電気通信事業の
競争原理の導入によって、
国民生活に欠かすことのできない
電話サービスが今までどおり低廉かつ安定的に
確保できるのかどうかということであります。
我が国の
電話料金は、歴史的経緯もあって、費用に見合った体系が実現されておらず、近距離通話の一部費用を遠距離通話の収入で補っているのが実情であります。しかしながら、
競争原理を導入した場合、こうした総合原価主義の採用は困難であり、勢い費用を重視した
料金体系とならざるを得ないはずであります。すなわち、東京−大阪間等の特定のもうかる地域のみ新規参入者が予想され、いわゆるクリームスキミングが起こり、その結果、市内通話の
料金値上げをもたらすとともに、過疎地域や
福祉、災害対策等の
電話サービスの低下を招くことは必至であります。したがって、今回の
改革が
利用者にとって果たして
利益をもたらすものかどうか、疑問を抱かざるを得ません。
現にアメリカでは、長距離通話
分野への新規参入が本格化するにつれ、長距離通話
料金は値下げされたものの、市内
料金が引き上げられ、
電話加入を取りやめざるを得ない事態が発生するなど大きな波紋を投げかけております。
総理はこうしたことは絶対あり得ないと
考えておられるのかどうか、あわせて明確な
答弁を求めるものであります。
第三は、新規参入によって有効な
競争が展開されるかどうかという点であります。
電気通信分野における
競争原理の導入を
電気通信改革の
基本に据えておりますが、新規参入が可能な制度をつくることと実際に有効な
競争が
機能することとは必ずしも同じではありません。そこで、今回の
改革によって有力な
事業体が誕生じ、有効な
競争が展開されると見ているのかどうか、
総理にお伺いするものであります。私は、実際に
競争が生じるのは、先ほども指摘した東京−大阪間等の主要幹線区間のみであり、その他の地域は相変わらず新
電電会社の独占が続くものと思わざるを得ません。これでは本当の意味の有効な
競争とは言えないはずであります。
また、現在、新規参入を意図している有力な
事業体として道路公団や国鉄等の国の関係機関が名乗りを上げていますが、これらの
事業体が果たして臨調答申で言う民間の創意と工夫、活力の導入に値するものと言えるでありましょうか。この点についてもあわせて
総理の御
見解をお聞かせ願いたいのであります。
また、今、民間では第二
電電一本化の
構想もあるやに聞いておりますが、この点についての
政府のお
考えをお伺いしたいと思います。
第四は、
料金決定のあり方についてであります。
料金認可の
原則は、
電気通信事業法で抽象的に述べられているのみで、具体的な
認可基準は明示されていないのであります。
競争原理導入後の
料金認可はこれまでとは異なり、具体的な
認可基準がなければ恣意的決定となるおそれが十分あり、早急に明確な決定基準を定め、公表すべきであります。この点、
政府の明快な御
答弁を求めるものであります。
さらに、運賃や
電気料金などの
公共料金の
認可に当たっては、法的に
公聴会が義務づけられ、広く
国民の声が反映できる仕組みとなっておりますが、
電気通信料金は
事業法、
整備法にも
公聴会設置の
規定は全く盛り込まれていないのであります。これでは
国民・
利用者の声を無視したものと言わざるを得ないのであります。
政府は
料金認可の際、当然
公聴会を開催すべきであります。また、なぜ
法律上設置を義務づけなかったのか、あわせて
政府の納得のいく
答弁を求めるものであり
ます。
第五は、VAN等の特別第二種
事業の
外資規制の問題であります。
アメリカでは、VAN
サービスを
開始以来十数年を経て、ようやく一年前、市場原理にゆだねたところであり、いわばこの十数年間は完全な
競争市場にする前の準備期間であったわけであります。
我が国においては、一昨年十月、中小企業VANを臨時暫定的
措置として自由化したにすぎません。このような
状況下で
内外無差別の参入を認めることは、アメリカの企業が圧倒的優位な
立場で
我が国に進出することが懸念されるのであります。これで果たして公正な
競争と言えるのでしょうか。特に、ATTやIBMなどのアメリカ大資本によって市場が一度席巻されますと、
電気通信の特質上、後発の
国内企業の進出は極めて困難となり、国益上からもゆゆしき事態を招来することが予想されるのであります。
我が党といたしましては、
国家による特別
保護を求めるものではありませんが、少なくとも
我が国企業が対外的に公正な
競争に耐え得るまでの期間は当然
外資規制が必要であり、国際的にも認められるものと
考えますが、
政府の
見解を伺いたいのであります。
第六は、
電電公社の
株式会社移行に伴う
株式の
公開とその
売却益の使途についてであります。
電電公社の資産は長年にわたり蓄積された加入者の貴重な
財産であり、
株式の
公開に当たっては、いやしくも利権の対象になるようなことがあってはなりません。この問題は、厳正公平、かつ慎重に対応しなければならない問題であります。そこでまず、新
電電会社の
政府保有株式の
処分に当たっては、
国会で十分慎重に
検討を加えるため、
予算に盛るばかりでなく、個別案件として
国会に提出すべきものと
考えますが、
総理並びに
大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。
また、
株式売却益の使途については、
政府は六十年度以降の問題であると
先送りの
態度を示しておりますが、これには全く納得ができません。加入者の
共有財産の見地から、
株式の
売却益の
一定部分については、
電気通信分野への振興、
研究開発及び
福祉電話のための
設備投資等に充てるべきであります。この点についても
総理の明快なる御
答弁をお願いいたします。
第七は、新
電電会社の
効率化についてであります。
現在、従業員三十二万人、総資産は帳簿価格で十兆円を超えるという巨大な企業であります。これがそっくり民営化されれば、
我が国最犬の超マンモス
会社になることは言うまでもありません。しかも、
競争原理が導入されるとはいえ、当分は独占的状態が続くのは必至でありましょう。それに安住することになれば、
経営の合理化、
効率化は単なるうたい文句にすぎません。新
電電会社の
経営の合理化、
効率化計画を明らかにし、これを
国会に報告するという
措置を講ずるのが
国民に対する
経営者の当然の
責務ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
また、新
会社が大
資本力とか
技術力をバックにあらゆる
分野に進出し、既存企業と摩擦を起こすことは避けるべきであります。新
会社は、特に
電気通信機器の製造
分野への進出は行うべきでないと思いますが、いかがでございましょうか。
以上の諸点について、
総理並びに
関係大臣の明快なる御
答弁を求めるものでございます。
最後に、私は、今回の
電気通信の大
改革が将来に禍根を残さぬよう慎重の上にも慎重な
審議が必要である、このことを強く訴えまして
質問を終わらせていただきます。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕