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1984-06-18 第101回国会 参議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月十八日(月曜日)    午前十時三十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十八号   昭和五十九年六月十八日    午前十時開議  第一国務大臣報告に関する件(内閣総理大   臣の帰国報告)(第二日)  第二 湖沼水質保全特別措置法案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ―――――・―――――
  2. 木村睦男

    議長木村睦男君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣報告に関する件(内閣総理大臣帰国報告)(第二日)  去る十五日の報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。河本嘉久蔵君。    〔河本嘉久蔵登壇拍手
  3. 河本嘉久蔵

    河本嘉久蔵君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、総理帰朝報告に対し若干の質問を行うものであります。  まず、中曽根総理を初め関係者におかれましては、今日その目的を十分達せられまして多大な成果を上げられましたことに対し、深甚なる敬意を表するものであります。  申すまでもなく、今日国際社会が相互に深く依存している関係にありましては、世界の平和と繁栄なくして日本の平和と繁栄はあり得ないということであります。この観点から、我が国外交重要性がますます高まってきており、中曽根内閣は誕生以来、自由主義諸国一員、アジア・太平洋地域一員としての立場を基盤として世界平和外交を積極的に展開され、これまでの数々の実績は国内のみならず諸外国からも高く評価されており、私もこれを多とするものであります。  そこで、まずお伺いしたいのは、今次サミット意義と評価についてであります。  今般、ロンドンで開催されました第十回サミットにおきまして、総理は他の西側主要国首脳と忌憚のない意見交換を行われ、会議成功に大きく貢献されました。  今回のサミットは、先進国におきまして景気回復がまさに定着しつつある状況背景に、全体として明るい雰囲気の中で行われたと承っております。しかしながら、その中にありまして、種々の構造問題、保護貿易主義開発途上国における累積債務問題は、世界経済インフレなき持続的成長達成に対する足かせとして横たわっておりますほか、政治面におきましても、イランイラク紛争の継続、INF交渉ソ連による中断、ソ連等によるロサンゼルス・オリンピック・ボイコットに見られる冷却したままの東西関係等世界各国不安感を与える状況のあることも事実であります。  総理は、かかる状況下で開催された今次サミットにおきまして、経済面だけではなく、政治面におきましても、国際社会における我が国役割を十分に認識され積極的に対応されましたが、総理は今回のサミット成果意義をどのように受けとめておられるか、率直なお考えをお伺いしたいと思います。  以下、サミット以後の課題について順次お伺いいたします。  今次サミットでは、討議の結果として経済宣言が採択されましたが、この宣言は、前回のウィリアムズバーグ・サミットでの諸合意成功をおさめたことを確認するとともに、構造問題の是正、保護主義防圧の再確認、新ラウンド準備開始開発途上国に対する協力累積債務問題の解決のための協力アフリカ諸国に対する援助等について合意されました。サミット加盟国一員として、今後我が国はこれらの課題に対しどのように対処していくのか、国際国家日本としての責務は重いものがあると存じますが、総理所見を伺いたいのであります。  次いで、経済問題の第一といたしまして、米国高金利問題についてお伺いいたします。  米国高金利につきましては、ドル高による米貿易収支への悪影響、約八千億ドルに上る開発途上国累積債務金利負担圧迫等種々の問題が指摘されております。今回のサミットでも、各国の節度ある財政金融政策必要性につきまして首脳間で合意を見ましたが、米国高金利の今後の見通し我が国としてこれにどう対処されるのか、また本問題の日本景気対策に及ぼす影響について総理はどのように見ておられるのか、承りたいのであります。  関連いたしまして、経済宣言では、各国とも公共支出負担増を懸念して、その支出は「国民経済が負担しうる限度内にとどめておかねばならない。」と記述されております。ところで、国内では、来年度の予算シーリングを前にいたしまして、公共事業が五十五年度以降五年連続して抑制され、事業推進に重大な支障を来していることから、公共投資推進に関する動きが活発で公共事業の再検討が要請されております。また一方、経済団体ではこれとは逆に、聖域なきマイナスシーリングが提言されております。また総理は、去る十二日、ロンドンでの同行記者団との懇談におきまして、マイナスシーリングの緩和を示唆されておりますが、総理はこれらの点をどう受けとめ、来年度の経済財政運営の基調をどうお考えになっておるか、承りたいのであります。  次に、いわゆる南北問題でありますが、総理は常々、我が国は南北のかけ橋として積極的に貢献していく所存であるとの考えを表明され、今次サミットにおきましても、開発途上国からの要望を踏まえ、累積債務問題、対アフリカ援助等につきまして積極的に対応されました。累積債務問題の解決は、開発途上国経済発展のみならず国際金融体制、ひいては世界経済の健全な発展にとっても不可欠であります。  ところで、累積債務問題の解決には、債務国みずからの努力がまず第一に必要であることは言うまでもありませんが、これが債務国の政治的及び社会的諸困難を増幅させていることを考えますと、債務国自助努力にも限界があると言わざるを得ません。また、アフリカ等所得国におきましては、債務問題はもとより、その貧困問題の解決国際社会全体の責務考えられております。我が国といたしましては、今次サミット議論及び合意を踏まえ、債務問題等開発途上国が抱える諸問題の解決のためいかなる貢献を行っていく考えであるか、お伺いいたしたいのであります。  なお、総理主導的役割を果たしてこられました新ラウンド問題につきまして、その方向、対処の仕方につきましてお考え方を承りたいと思います。  また、世界経済発展にとって今や科学技術の振興は不可欠のものとなっております。そのため、科学技術についてのサミットを開催して、日進月歩の科学技術に関する国際的交流の増進を図るべきであると思いますが、これに関しての総理所見を求めたいのであります。  次は、政治問題でありますが、まず東西関係の展望についてお伺いいたします。  米ソ関係は極めて冷え切っております。かかる状態の中で、今次サミットで取り上げられました政治問題の中で重要な問題は、米ソ両国中心とした東西関係を今後どのように進めていくかでありました。先進国首脳は、今次サミットに際し討議を重ねた結果、東西関係軍備管理に関する宣言を採択しておりますが、同宣言は従来よりの我が国東西関係に対する立場から見ましてどのような位置づけとなるのか、総理の御所見を伺いたいのであります。  また、我が国といたしまして、現在の厳しい東西関係が一層悪くならないよう種々話し合いが進められるべきものと考えますが、サミットを踏まえ、総理は今後の東西関係をどのように展望されるのか、さらに日ソ対話についての所見を承りたいと思います。  次いで、我が国核軍縮に取り組む姿勢でありますが、今次サミットでまとまりました民主主義の諸価値に関する宣言あるいは東西関係軍備管理に関する宣言におきまして、平和と軍縮の問題に対する参加国の明確な意図が確認され、ともにソ連交渉核軍縮を行っていこうとの立場が表明されましたことは有意義なことであり、総理の御努力を高く評価したいと思います。  さらに、総理国際戦略問題研究所における講演におきまして、人類最大の問題は、いかにして核戦争を防止し、世界の平和を維持するかであり、核軍備につき有効かつ現実的な管理縮小の方式が合意されねばならない旨述べておられます。また、安倍外務大臣ジュネーブ軍縮会議における演説で、世界の平和と繁栄を子孫にいかに伝えていくかの観点から、米ソ両国軍縮、なかんずく核軍縮実現へ向けての率先した努力を求め、INFSTART交渉へのソ連復帰を呼びかけるとともに、核実験禁止に関する提言等を行っております。  我が国といたしましては、今後米ソ間核軍縮交渉の再開とその進展、さらには世界核軍縮促進のため具体的にどのように努力を行っていくつもりなのか、総理所見を伺っておきたいのであります。  最後に、イランイラク紛争解決についてでありますが、対話及び情報交換等を通じまして和平実現環境づくりに貢献するそうでありますが、そのためにいかなる努力をされるのか、お尋ねいたします。  あわせて、輸入原油の六割以上をホルムズ経由原油に依存している我が国といたしましては、万一の場合に対する備えを強化する必要がありますが、緊急事態における対応をどうされるのか、総理の御所見を求めたいのであります。  以上、今日、国際社会は政治的にも経済的にも厳しい現実に直面しておりますが、人類の希求する平和と繁栄達成には、先進国開発途上国も、世界各国協調と連帯の精神にのっとり一致協力してこれに対処しなければなりません。我が国国際的地位の高まりは、同時に世界我が国に対する期待の大なることでありまして、我々は国力にふさわしい責任と役割を果たしていかなければなりません。政府の一段の努力期待いたしまして私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 河本議員にお答えをいたします。  サミット意義いかんという御質問でございます。  今回のサミットに当たりましては、国民皆様方から多大の御声援をいただきまして、ロンドン外務大臣大蔵大臣とともに出張したのでございますが、御期待に反しましてなすところも少なく、まことに申しわけないと思っております。出張に先立ちまして、野党の皆様方の御意見も承ってまいりまして、できるだけその御意見実現するようにも努めたつもりでございます。しかし、サミット全体といたしましては、非常に多様性に富んだ、そして割合に現実的処理目的にしたサミットといたしまして、私は実りの多いサミットではないかと考えておるところでございます。  すなわち、今回におきましては、経済宣言、それから民主主義の諸価値に関する宣言、さらに東西関係及び軍備管理に関する宣言、さらに国際テロリズムに関する宣言、そしてイランイラク紛争に関する議長声明という五つの項目について合意を見た次第でございます。  これらの中におきましては、まず第一に、経済につきまして、インフレなき持続的成長を図ること、そしてその均てんを発展途上国やあるいは貧困のある国々にも及ぼすように皆で努力をするということ、さらに非同盟中立国々に対しても注意を払っていくということ、あるいは我が国として主張いたしました自由貿易推進して保護主義に対して徹底的に闘っていくということ、そしてニューラウンドにつきまして、過般行われたOECD理事会決定を再確認して、その必要性、それからその取り組み方、タイミング等について可及的速やかに決定を行うというようなことが合意されました。  さらに、平和の問題につきまして我々は大いに主張いたしたのでございますけれども、東西間の対話推進、そして軍縮等に関する速やかなる交渉開始、これを促進するということ、あるいはさらに世界的視野に立って武力の不行使を行う、そして紛争は常に対話によって解決していくという合意を見たということ。あるいはさらに、発展途上国の問題につきまして、特にアフリカ貧困諸国、飢餓に悩む国々に対する我々の行動を示そうとしたこと等々におきまして合意を見た次第でございます。  そのほか、イランイラク戦争につきましては、できるだけ速かやにこれを停戦に持っていき、そして和平に持っていくように関係国として努力をしていく等の合意を見たところでございます。  国際テロリズムにつきましても、これはウィーン条約との関連におきまして、十分なる注意を払いつつ、これらのことが再発しないように情報交換あるいは措置強化等協力しようということで合意をいたしました。  これらのいろいろな成果考えてみますと、私は、やはり現時点に対しましてかなり適切な回答を持った実りのあるサミットではなかったかと思う次第でございます。  次に、サミットにおきます保護主義防圧あるいは新ラウンドの問題、累積債務問題等について、これからどのように対応していくかという御質問でございます。  ただいま申し上げましたような線に沿いまして我が国も堅実なる努力をし、国際協調をやっていく決心でございますが、特にサミット合意した一つの顕著なことは、労働あるいは産業構造における硬直性を直さなければならない、あるいは大幅な財政赤字削減する努力を継続していかなければならない等々のことでございます。これらの点は、我が国は既に行政改革財政改革をもって先行してやっておる国でございまして、これらにつきましても我々は鋭意努力してサミット合意実現してまいりたいと思う次第でございます。  なお、東西軍備管理あるいは軍縮、あるいはイランイラクにおける平和の回復等につきましても今まで以上に努力をしてまいりたいと思っております。  その次の御質問は、米国高金利に対する御質問でございます。  米国高金利につきましては、これはサミット関係国全般関心事でございまして、準備段階よりいろいろ議論もされ、これらにつきまする金利低下努力各国とも共同して今後とも行うという意味合意を見たところであります。  この高金利というものの結果、結局は国際収支のアンバランスを引き起こして、大量の資本移動をもまた生んでおるところでございます。日本としてもこの影響かなり受けておるところで、一つ円安の原因であると指摘されておるところでございます。しかし一番の基本的な構えは、やはり財政赤字縮減するということが基本的な性格でございまして、我々はアメリカが今や本気になって財政赤字縮減につきまして努力してきたことを評価いたしたいと思っております。大体伝えられるところによれば、三年間に千四百二十億ドル程度財政赤字縮減を与野党協調してやらんとしておるようでありまして、ぜひこれが実現に向かって努力されんことを期待してやまないところでございます。  次に、シーリングの問題について御質問がございました。  今回のサミットにおきましても、節度ある財政金融政策維持強化という点が非常に強調されたのでございます。その言わんとするところは、高金利を回避するための財政赤字削減、あるいは公共支出のできるだけの抑制、あるいは産業構造の調整問題等々の問題が合意を見たところでございます。  我が国は、既に行政改革財政改革を実行中でございますけれども、やはり今まで申し上げました増税なき財政再建を堅持する、さらに六十五年度特例公債依存体質脱却に向かって毎年度努力していくということ、そして臨調答申を尊重する、この基本的軌道を我々は邁進していかなければならぬと思っております。  六十年度の予算編成につきましても、この大方針に沿って編成せらるべきでございますが、現在、行管長官から行革審に対しまして編成に興して所見を求めております。この所見の提出をまちまして党及び内閣におきまして検討してまいりたいと思いますが、臨調路線を堅持してまいるというところでありまするから、来年度のシーリング設定に当たりましてもやはり相当厳しい線を考えていかなければならないであろう、そのように考えております。  次に、債務累積問題あるいは発展途上国問題等に関する御質問でございます。これにつきましては、善意と協力精神に基づいて協力しようということでございます。  この債務累積問題の中で一つ考慮すべきはやはり高金利の問題でございまして、一%アメリカ金利が上がれば約四十億ドルの債務がふえるということが指摘されております。そういう意味におきまして、高金利問題を財政赤字縮減等によって着実に解決していくということが大事であると思います。  それと同時に、サミットにおきましては、IMFあるいはIDAあるいは世銀等国際機関がよく機能するということ、それからケース・バイ・ケースによりまして、国際機関中心にして関係国政府及び民間が協調してこれに対する対応を行ったらよろしい、そういう考えで今後も日本協力していくつもりでございます。  それと同時に、開発途上国に対する市場の開放を積極的にやっていかなければならないであろうと思います。我が国は特恵のシーリングを五〇%既に上げておりまして、その面におきましてはかなり前進している国でございますが、今後もこの途上国の輸出問題につきましては我々はよく考えて行う必要がございます。  なお、ODAの拡充は国際社会において果たすべき重要な責務であると考えまして、引き続き中期目標達成するように努力してまいりたいと思っております。  新ラウンドについて御質問がございましたが、なぜ我々がこの新ラウンドを提唱したかといいますと、これは至るところにおいて保護主義の芽が出ておるわけでございます。アメリカにおきましてもそうでありますし、ECにおきましても同様でございます。自由貿易推進するということは坂を車を押し上げているようなものでありまして、ちょっと手を緩めれば車は戻って、保護主義へ戻ってしまいます。したがって、各国協力してこの車を自由貿易の方へ向かって常に押し上げていかなければならない。その目標を設定することが重要なのです。そういう努力をみんなでやっている間はなかなか保護主義を唱えにくいという環境も醸成されます。  東京ラウンドも大体終わりに近づきまして、次のニューラウンドにつきましては、ハイテクとかあるいはサービスであるとか新しい分野に関するルールを決める必要が出てきているわけでございます。VANの問題その他を見ましても、高度情報社会を目指して各国が進んでおるわけでございますから、新しい国際的ルールづくりも必要になってきているわけであります。これには相当時間がかかります。したがって、できるだけ早目にその準備に入ろうというので、日本が主唱して努力してきたところでございます。  我々は、昨年十一月にレーガン大統領コール首相あるいはカナダのトルドー首相訪日の際にこの話をいたしまして、その賛成を得ておりまして、それらを背景途上国等にもよく説明をしてロンドンサミットに臨んだ次第でございます。しかし、EC側かなりの強い抵抗もありました。また、発展途上国の一部におきましても、やや疑心暗鬼の面もございます。そういう面におきまして、あの程度の妥協がまあまあ適当なところであろう。ややもすると日本経済力に対する恐れを持っておりますから、無理押しをするということは非常にまた考えなければならぬ面があったのでございます。アメリカ及び日本は、来年準備に入る、そして再来年から交渉を開始するという期限を明示した主張をしたのでございますけれども、EC側の強い抵抗に遭いまして、その日本全体の立場を考慮いたしまして、先ほど申し上げましたような線ならばニューラウンド見通しがつくということで妥協した次第で、御了承いただきたいと思っている次第でございます。  次に、科学技術についての大臣会議の御質問でございますが、サミワトにおきましては、あるいはOECDあるいはG10という蔵相会議等を通じまして、常に協議が行われております。科学技術につきましてもOECD等におきまして協議が行われておりますが、関係各国の動向も見まして、この科学技術大臣会議については検討してまいりたいと思っております。  次に、東西関係に関する御質問でございます。  今回のサミットにおきましては、当初は民主主義的諸価値、つまり自由や民主主義に関する強調というものが非常に大きな柱であったのでございます。しかし、我々は、この自由や民主主義を保障するためにも、かつ経済発展させるためにも、その基礎は平和である、そういう考えに立ちまして、平和問題の必要性を強く準備段階から主張して、かなりの部分に我々の主張が取り入れられたものと考えております。そういう意味におきまして、東西関係軍備管理等におきまして米ソ対話回復あるいはINFSTARTに対する交渉のテーブルヘの復帰等々が強く打ち出されておるところでございます。  レーガン大統領ダブリン演説におきまして、たしか六月の四日でございますか、均衡ある条件のもとにソ連と核兵器の削減をやろうと、かなり思い切った大胆な提起もしておるわけでございます。我々は、そのような対話が至急復活して、そして世界の緊張を緩和することができますように、今後とも努力してまいりたいと思っておる次第でございます。  日ソ関係につきましては、やはりこれは東西関係の一環でありますけれども、日本独自の事情もございます。領土問題というものを踏まえまして、あくまで粘り強くソ連対話を継続して打開していくというのが私の建前でございます。議員交流あるいは経済人交流あるいは文化人交流等からできるだけ糸口をつくりまして、対話を拡大する方向に今後努力してまいりたいと思っております。  さらに、世界核軍縮促進の問題でございます。  これにつきましては、東西関係軍備管理に関する宣言で十分盛られておるところであり、INFあるいはSTARTに対する交渉進展ということを強く我々は主張し、また努力してまいりたいと思っておりますが、他面におきまして、安倍外務大臣ジュネーブにおける国連軍縮会議に初めて日本外務大臣として出席いたしまして、特に核実験具体的禁止に関する提案をいたしまして、関係各国かなり影響を与えたと思っております。今後とも核実験禁止あるいは核不拡散条約推進等につきましても努力してまいりたいと思っております。  イランイラク戦争につきましては、この両国対話ができる先進国ただ一つ日本といたしまして、まず紛争の拡大を防止すること、そして停戦、そして和平という順序でいろいろ話し合いをしてきたところでございます。  今回のサミットにおきましても、この問題につきましては日本側としての考え方主張かなり述べてまいりました。今回、国連事務総長による言明に対しまして両国はこれに賛成をして、そして国連検証チームが派遣されるようになりましたことを非常に我々は歓迎し、これがさらに拡大されるように努力してまいりたいと思っておるところでございます。  次に、輸入原油の問題でございます。  日本としては、今備蓄が百二十三日分ございます。そして、万一の際のこれの法制的あるいは行政的体系も先般の石油危機の際にできておりまして、日本としては万全の態勢ができて心配はございません。しかし、今回のサミットにおきましても、それだけではいけない、いかなる不測の事態が起こるかもわからぬから関係国はいつでも協調して、そして世界的に危機的状態を起こさないように十分連絡を取り合っていこうという線で話し合いをいたし、そういう考え方にも決めていただいたところでございます。  今後も石油備蓄推進あるいは給源の多様化あるいはIEA等を通ずる国際協力促進等につきまして努力してまいりたいと思っておるところでございます。(拍手)     ―――――――――――――
  5. 木村睦男

  6. 対馬孝且

    対馬孝且君 私は、日本社会党を代表して、第十回主要国首脳会議をめぐる中曽根総理帰国報告等について質疑を行うものであります。  本題の質疑に入る前に、今日国民生活に重大な不安を与えている米の問題で総理及び農林水産大臣質問いたします。  米不足が起こることは、単年度需給を基本とした減反政策、天候不順による不作の連続で当然予測できたことであります。明らかに自民党政府の農業政策の失敗であり、その直接の責任者である農林大臣らの政治責任は、極めて重大かつ罷免に値すると言わなければなりません。当面の米不足に対し、中曽根内閣は韓国米の輸入で対処しようとしていますが、これは米の輸入は行わないと言明してきた公約の違反であり、断じて許すことはできません。また、安全性が確認されないまま臭素汚染の五十三年産超古米を食用米とすることが許されないのは当然であります。一体、米の不足量はどれくらいなのか、また、汚染米はどれくらいあるのか、はっきり示してもらいたいのであります。  私は、これを契機に減反政策の見直しを図ると同時に、食糧の安定供給のため米を中心とする食糧備蓄制度を確立し、我が国の農政の大転換を進めるべきと考えるものでありますが、総理の明快な答弁を求めるものであります。  本題に戻って質疑をいたしますが、総理報告を伺った感想を一言で申し上げれば、ロンドンサミットは大成功と自画自賛し、総理みずからも大変な役割を果たしたごとき誇大宣伝をいたしていますが、これはまさに「功むなしき時は言葉を飾る」という先哲の教えを思い出すのであります。まさに今回のサミット各国の利害対立を糊塗し、抽象的な言葉で飾った政治ショーの感を深く抱かざるを得ないのであります。  以下、具体的にお伺いいたします。  私は、まず、ロンドンサミットが極めて危険な政治サミットに終始した事実を強く指摘しなければなりません。我が党の石橋委員長は、サミット出発前の総理に対して、少なくとも本来の経済サミットに立ち戻り、東西南北の交渉と和解を促進するサミットへの転換を強調し、核軍縮発展途上国援助に大きな一歩を踏み出したサミットにすべきことを力説したのであります。しかるに、我々の期待に反し、再び政治的色彩を強く持ったサミットでありました。  総理は、その帰国報告の中で、ロンドンサミットが採択した東西関係及び軍備管理に関する宣言が、あたかも「西側諸国の平和への意欲を強く表明したもの」であるかのように自画自賛し、この「西側諸国の真摯なる対話の呼びかけ」にソ連、東欧諸国がこたえるべきであると主張しているのであります。しかし、サミットの閉幕直後の六月十日、米国防省は大陸間弾道ミサイルを大気外の高空で破壊するICBM迎撃実験を強行いたしたのであります。レーガン政権が危険な核戦略を着々と進めているのはこの迎撃実験によってさらに明確となりました。この危険な実験が果たして西側諸国の平和への意欲を強く表明したものと言えるのかどうか、総理の見解を求めたいのであります。  また、続いて今度は、核つきトマホーク装備の疑いの濃い米原子力潜水艦タニーが横須賀基地に強行入港したのであります。総理は、去る二月十四日の衆議院予算委員会において、トマホーク積載艦については非核であることを確認した上で入港を認める旨の言明を行いました。ところが、この原潜については、外務省当局は、米側からの事前協議の申し出がない以上核の持ち込みはあり得ないとの立場から、この必要性がないことを言明しているのであります。総理は、トマホーク積載艦の横須賀入港をも西側諸国の平和意欲のあらわれであると考えているのでありましょうか。  また、今回入港した原潜タニーは、トマホークを既に搭載しているのではありませんか。トマホークは単なる武器の一つという以上に、日本国民にとって重大な関心の的であり、少なくともその積載の有無は政府の責任において明らかにされるべきであります。  さて、これらの一連の出来事から見て、ロンドンサミットが対ソ優位の力の立場からする西側同盟の政治的、軍事的結束の場であったのは否定できない現実であると言わなければなりません。総理みずからもロンドンの国際戦略研究所で、米欧旦二極の政治的連携と連帯の必要性を強調し、三極の共同戦略の追求が日本の国策であるとまで言い切っているのであります。これでは「真摯なる対話」をソ連、東欧諸国に呼びかけても、それは実りなき試みであることは明らかであります。もし米ソ核軍拡競争の危機を抑えるために核軍縮への道を切り開く意思があるならば、日本みずからが行動においてその模範となるべきではないでしょうか。核の使用は核保有国の勝手であるという議論などは断じて許されるはずのものではありません。  総理、核巡航ミサイル積載の米艦艇の日本寄港拒否を初めとする非核三原則の厳守を内外に宣言し、アジア・太平洋核軍縮会議の開催や非核地帯設置のイニシアをみずから発揮すべきと考えますが、いかがですか。  こうした言行一致の日本政府のイニシアに基づいて、今こそ米ソ両核大国に対して、中距離核制限交渉米ソ戦略兵器削減交渉の即時再開を求めるべきだと考えるものですが、これらの点について総理の見解をただしたいのであります。また、ソ連との対話協調を打ち出した東西に関する宣言でも明らかなように、これを具体的に実行することが緊要であります。  近くフランスのミッテラン大統領を初め各国政府も、モスクワとの独自の対話の道を開きつつあります。翻って、我が国の対ソ関係は、冷え切ったままで雪解けの兆しもない最悪の状況になっており、いたずらに対ソ脅威論を振り回すのではなく、これを打開するために、総理みずからの訪ソを含めて、積極的に日本の独自の交流の道づくりに着手すべきでありますが、国民の前に明らかにしていただきたいのであります。  安倍外務大臣ジュネーブ軍縮会議において、「世界の諸国民にとって、平和と軍縮の問題が今ほど重要である時は、かつてなかった。」と主張されているのであります。真実そのように認識しているならば、なぜ米原潜の横須賀入港を核積載の事実調査もなしに認めたのでしょうか。米ソ核軍拡競争の現実は、もはや言葉をもてあそぶだけではいかんともしがたい状況であります。米ソ核軍縮への具体的展望と日本役割について、外務大臣の見解を求めるものであります。  また、イランイラク戦争停戦についても、米国ソ連、フランスなどの主要先進国よりの武器輸出を中止することが先決であります。これこそ我が国が提案をし、サミットで議決をしたソ連との対話協調を図るべき緊急課題ではないでしょうか。所見を求めるものであります。  総理は、ロンドンサミットで、石油緊急時の対策として具体的にいかなる対応策を提案されたのか、お伺いいたします。  我が国原油輸入の六五%をペルシャ湾五カ国に依存しているだけに、石油供給が中断した場合、真っ先に困るのは我が国であります。したがって、国内エネルギーの安定供給を確保するための石油備蓄政策を初めとして、総合エネルギー対策を今後どのように展開されようとしているのか、総理所見をお伺いいたします。  次に、米国高金利開発途上国累積債務問題で伺いたいのであります。  政府は、しばしば、米国高金利政策が世界経済混乱の火種であることを主張し、対米交渉及びサミットの場を通じその是正を図ることを約束してきました。総理米国高金利の弊害を厳しく指摘したとの報告はなかったようですが、どこまで本気で主張され、米国以外の国々合意形成に努められたか報告をいただきたいのであります。米国高金利がドルの異常高、西欧の景気回復のおくれ、日本の貿易不均衡の助長と、いわば諸悪の根源であるのに、その根を断ち切ることを棚上げにしたとしか思えないロンドンサミットは、まさに画竜点睛を欠いたのではないでしょうか。  また、報告の中で、善意と協力精神で南の繁栄促進することが再確認されたと述べているのであります。しかし今、開発途上国が一番苦しんでいる累積債務問題は、米国高金利が原因であります。金利が一%下がれば四十億ドルの金利負担が軽減されると言われております。この問題を抜きにして口先だけの「善意と協力」を何遍繰り返しても、開発途上国繁栄も南北の格差も縮まらないのであります。あすの百円よりきょうの一円、こういう例えのごとく、何よりも今日の異常金利負担の苦境救済の具体策を示すべきなのに、それができなかったサミットは、開発途上国関係で完全に失敗であったと言わざるを得ないのであります。総理、本当に開発途上国の要請にこたえる成果を上げてきたと断言できますか。ひとりよがりのひとり芝居の危険はありませんか。具体的にお伺いをいたします。  次に、ロンドンサミット経済宣言我が国経済財政運営についてお伺いをいたします。  まず、総理は、今次サミットに課せられた課題達成され、今後の世界経済の展望に確信を持ったと去る十五日報告がございましたが、これは過大評価に過ぎるのではないでしょうか。経済宣言を詳細に読みましたが、率直に言って、参加国の利害が鋭く対立しており、その表面化を回避することに精いっぱいで、抽象論を並べてお茶を濁したにすぎず、世界経済が抱えている困難な問題の解決の具体策は何一つ決まらなかったのではないでしょうか。総理国内向けの誇大宣伝をされてはおりませんか。重ねて具体的にお伺いします。  報告の中で、先進国インフレなき持続的成長のための格段の政策努力を重ねることが合意されたと述べられておりますが、西側諸国に先んじて経済回復の過程を歩んでいる我が国の政策努力とは何をなさるのか、何を約束されたのか、具体的にお示しを願いたいと思います。  我が国景気回復は、アメリカの景気好転に助けられ輸出主導の大幅な貿易黒字の上に成り立っており、内需はわずかに回復の兆しは見えるものの著しくゆがんだ景気の回復なのであります。これは、総理の緊縮一本やりの財政運営と、財界の我慢の哲学などによる賃金抑制策の結果であることは明らかであり、内需拡大による景気回復は内外からの強い要請となっているのであります。総理は内需振興の景気回復にどのような努力をされてきたか、具体的にお伺いをいたします。  既に来年度の予算をめぐって、総理の一枚看板のマイナスシーリングとけちけちの財政再建策は、既に保守本流を自認する宮澤氏は資産倍増論を打ち上げ、河本経済企画庁長官は積極拡大均衡の経済政策を主張されております。また自民党の幹部の間にも、政党政治を貫くためにも大蔵省に引き回されてはならない、政党政治の基本が揺らいでいると正論を述べ、来年度予算編成では与野党こぞって一律マイナスシーリングの反対を表明しております。総理サミットで持続的経済成長を図る約束をされた立場から、六十年度予算編成に当たる政府の基本的な心構えについて明確にしていただきたいのであります。  なお、経済企画庁長官に対して、六十年度予算の基本的な態度として緊縮財政の見直し、一律マイナスシーリング方式についてどのように考えられておるのか、また宮澤提言について、資産倍増論についてもどう受けとめているのか、所見をお伺いいたします。  大蔵大臣、来年度予算シーリングについて政府の方針を明示すべきであります。また、マイナスシーリングを今年度に引き続いて設定するお考えなのかどうか、あなたは内外経済持続的成長を図り赤字財政をどうしようとするのか、ひとつ明らかにしていただきたいのであります。  総理並びに大蔵大臣、厚生省は福祉予算の圧縮にもはや耐えられないとして、来年度七千億の当然増を含む要求を提出するとしてゼロシーリングに反対だとしています。この三年間無理を重ねて予算削減をしてきましたが、もはや福祉予算は逆さにしても鼻血も出ないというのではないでしょうか。その点について明らかにしてもらいたいのであります。総理並びに大蔵大臣、文教予算も同様であります。将来の教育改革は必要でありますが、その前に、凍結してきた政府の四十人学級を来年度より実施に移し、現在の教育を考え政府は責任を果たすべきであります。また社会資本整備の立ちおくれを回復するために公共事業費は増額をすべきであります。このような国民生活に深いかかわり合いを持つ切実な声をどのように理解し、対処されるのか、お伺いをいたします。  総理、最後に政治倫理についてお伺いをいたします。  第百一回国会は、昨年末の総選挙の結果を受けて政治倫理に決着をつけるべき国会であったはずであります。総理も、総選挙における自民党の敗北は田中問題のけじめが明確ではなかったからであるとした上、今後田中元総理の政治的影響を一切排除するとの党声明を出されたのであります。国民はそれを忘れておりません。ところが、総理は政治倫理確立という国民的大義を捨てて、みずからの延命のために、事もあろうに田中派の元締めで灰色高官でもある二階堂氏を副総裁にするなど、何をもって田中元総理影響力排除と言われるのか、明確に説明を求めたいのであります。  我が党は、とりわけ国会の自浄作用を高めるために、禁錮以上の実刑判決を受けた議員や政治倫理綱領に著しく違反した議員について辞職勧告を慣例化すべきであると提案し、その実現方を迫ってきました。ところが、自民党は、百五十日に及ぶ会期があったにもかかわらず、この問題にけじめをつけることなくしかも大幅な会期延長を強行するという暴挙に出たのであります。この間の責任は挙げて政府・自民党にあると断ぜざるを得ません。  そこで、我が党は国会正常化の条件として、政治倫理を重視し、自民党の反省を求めてきましたが、六月十一日に至り、辞職勧告のルール化には賛成はできないが、懲罰対象拡大について協議を行い、本会期中に国会法の改正の手続を完了する決意である旨の回答をしてきました。我が党は、田中元総理に対する辞職勧告の決議を提出する権利を留保するなど明確にした上、大乗的見地から国会の正常化に踏み切りました。  そこで、総理としてはいまだ決着のついていない田中元総理の政治的、道義的責任にどのようにけじめをつけるつもりか、自民党の提起した懲罰対象の拡大をめぐる約束をどう実現するのか、政治倫理について厳しく問いただしておきたいと思います。  さて、私は質問を終わるに当たり、総理の反省と決断を求めてやまないのであります。最近イギリスの有力紙に、「一見断固とした風貌にもかかわらず、政治的な実質を著しく欠いている」と総理を評しております。政治倫理問題、とりわけ田中問題の決着について我々は重大な関心を持って見守り、約束に反した場合重大な決意で臨むことを申し添え、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  7. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 対馬議員にお答えをいたします。  まず、米の問題でございますが、詳細は農林大臣からお答え申し上げますが、今回の問題は、五十三年米に起因する限られた問題でありまして、主食用の米の需給につきましては万全を期して不安はないのであります。すなわち、せんべいであるとか、あるいはみそであるとか、そういうものに対する補給として五十三年米を考えておりましたところが、残留農薬の問題等がありまして、これは使わない方が適当であろう、そういうところからこの問題が起きまして、今韓国に対しましていろいろ折衝をしておるところでございます。  食糧は国民生活の基礎的な物資でありまして、食糧の安定供給と安全保障の確保は国政の最重要課題一つであると考えております。したがいまして、総合的な食糧自給力の維持強化を基本として、今後とも農業の生産性の向上、需給の動向に応じた農業生産の再編成推進努力し、特に国際価格へ接近するような生産性の向上に努力してまいりたいと思っております。なお、適正な備蓄につきましても今後努力してまいりたいと思っております。  次に、今回のサミットに関する評価及びアメリカのレーガン政権の核戦略推進、平和への問題でございます。  今回のサミットは、世界経済回復の機運に乗じまして、希望のあるサミット、明るいサミット、そうして発展途上国にも均てんされ得るサミットということを目指して私たちは努力した次第でございます。  アメリカの防衛、安全保障に対する考え方は抑止と均衡にあるということは前から申し上げたところでございます。レーガン大統領も国会に来まして、我が国会で演説をいたしまして、核戦争には勝利者はないとはっきりここでも断言しておるように、核戦争に対しては重大なるやはり責任を考えておると思っております。  最近におきまするレーガン大統領のアイルランドにおけるダブリン演説、あるいはサミットでの東西関係軍備管理に関する宣言に見られるように、米国はいつでも前提条件なしに核軍備管理話し合いを再開することを申し出ていると申しておるわけなのであります。ダブリン演説におきましても、相互均衡を条件として削減をやろう、それについてはソ連といつでも話し合う、そういうふうに申し出ておるのでございまして、ソ連がこれに応じて積極的対応をとることを期待してやまない次第であり、我々はこのような信頼醸成措置に向かって努力してまいりたいと思っております。  次に、トマホークの問題でございますが、トマホークの弾頭には核、非核両方があるということは前から申し上げたとおりであり、大部分は非核であるとアメリカは言っておるのであります。しかし、いかなる核の持ち込みも事前協議の対象でありまして、その事前協議が行われた場合には、政府はこれに対しては拒否するということは前から申し上げておるとおりでございます。  核軍縮に向けまして、アジア非核地帯を設けるなど非核三原則の拡充を図り、アジア・太平洋軍縮会議を提唱してはどうかという御質問でございますが、我が国は、従来より国連軍縮会議等を通じまして軍縮のために積極的に努力もし、INFやあるいはSTART交渉につきましても、これを早くやるように努力しているところでございます。  先般のウィリアムズバーグにおきまする日本の行動は、やはり核戦力の問題というものはグローバルに解決しなければできない、今世界関心事であり、世界的に解決しなければ核兵器の問題は解決できない、特にアジアや日本の犠牲においてこれは解決されてはならない、そういう観点から、声明の中にもその点を入れてもらいまして、そしてこれらのINF交渉を速かやに成立させるように、もしソ連がこれに応じないという場合には、やむを得ずNATOで決めておるパーシングⅡを展開するという既定の事実を実行しようということを私は支持したのであります。そのポイントには、やはりこれは世界的規模で解決し、アジアや日本の犠牲においてこの問題が解決されてはならないということを確保したいという真剣な考えから申し上げたということをここで重ねて申し上げる次第でございます。  アジア非核地帯の構想というのも、これは検討に値する考えのようには思いますけれども、ややもすれば現実性がまだないのではないか、そう思うのであります。それは中国一つを見ましても、中国は国連におきましても、あるいは最近における趙紫陽首相の言動等も見ましても、まず米ソが相当量の削減を先に行いなさい、国連においては五〇%という数字を挙げておりました。この核兵器を米ソがまず削減して、その事実を見届けた上で軍縮会議を開こう、こういうことを言っておるのであって、そのためにはINFを早く開始して、あるいはSTARTを早く開始して削減合意が先に成立するということを言っておるわけであります。こういう状態を見ますと、アジア全体の太平洋非核会議というようなものはやや現実性がないと思うのです。しかし、今後とも我が国は非核三原則は堅持してまいるつもりでおります。  次に、防衛費の問題でございますが、昭和五十一年の三木内閣の防衛費に関する閣議決定の方針につきましては、これを守ってまいる所存であり、かねてから申し上げたとおりでございます。  次に、フランスのミッテラン大統領が訪ソして緊張緩和に努力するが、日本も行ったらどうかという御質問でございますが、我々はソ連との友好を願い、そして対話促進したいと考えております。先ほど来申し上げているとおりです。  しかし、国際関係というものは相互主義でありまして、グロムイコ外相が実は日本に来る順番になっておりまして、先方も来たいと言い、来てよろしいと言っておる。ただ時期を見ておるということであります。日本側では総理大臣が既に三人もモスコーへ行っておるが、向こうからはまだ一人も来ておりません。そういうような情勢も踏まえ、また領土問題等考えてみまして、グロムイコ外相がまず見えるということが先決条件である、現時点において私が訪ソすることは適当でないと考えております。  次に、イランイラク紛争のための武器輸出の禁止の問題であります。  実は、私はサミットにおきまして、イランイラク戦争のエスカレーションを防止し、そして停戦に持っていくために何が大事か。片方のイラクの方はもう戦争をやめたいと言っておる、片方のイランの方は戦争責任を追及しておる。この戦争責任を追及してフセイン大統領を追放するまでは戦いをやめないという戦争責任の問題になると、これはなかなか戦争がやまらない状況にあります。しかし何とかして早くやめさせなければいかぬ。そういう点から考えてみますと、この両国との話し合い等によりまして、あるいは国際協力等によりまして、両国の物心にわたる戦争エネルギーを減衰するということが大事だ、精神的にも、物質的にも。そういう意味において我が国両国に対していろいろ話しもし、努力もしておる。そして我が国両国に対して武器の輸出はしていない。これはやはり今のようなエネルギー減衰に役立っておるのだ、そういうこともサミットの席上ではっきり申したのであります。関係各国の中にはそれにややショックを受けたような感の状況もございましたが、我が国は断固として自分たちの所信を守っていくということも申したのでございます。今後におきましても、今のような考えに基づきまして具体的、現実的に戦争を終結させるように努力してまいりたいと思っておるところでございます。  どの国がどの国に武器を輸出しているかというようなことは、いろいろ情報がありますけれども、その国固有の主権に基づいてやっておることで、私たちは適当であるとは思っておりません。しかしこれに対して干渉する権限は日本にはない。しかし、あくまで早く戦争を終結させるために日本を見習うように私は強く期待しておるところでございます。  石油の備蓄等の推進につきましては、先ほど申し上げましたとおり、今後も引き続いて努力してまいるつもりであります。  サミット経済宣言につきましては、先ほど来申し上げましたように、重要な問題を幾つか決めまして、特に債務累積国に対する処理、これにつきましては政府も民間もその国の実情に応じて、短期的なリスケ、返済延期という問題でなくして、やや多年度にわたるものまで考慮すべきであるというような考え方が打ち出された点は今回新しいことでございます。  なおまた、財政赤字削減についてはっきりこれをうたっておりますし、高金利の問題につきましても、ロンドン宣言の中におきましてはこういう文章をはっきり出したのであります。「高金利、並びにインフレの一層の低下及びインフレ期待の鎮静化の失敗は、景気回復を危険にさらすこととなりかねない。我々をここまで導いてきた節度ある金融・財政政策は、今後も維持され、又必要な場合には強化されなければならない。」こう言っておりまして、高金利を下げて低金利に持っていく、こういう主張はこれに明示しておるわけなのであります。我が国も、一面におきましては国際収支のバランスの問題あるいは債務国債務の大幅累積にこれがつながってくるという問題等々も考えまして、この高金利に関する発言を準備段階及び本会議におきましても強く主張してきたところなのでございます。今後も努力してまいるつもりでございます。  次に、インフレなき持続的成長のための内需拡大の問題でございます。  景気はまだばらつきがありまして、地域的にも業種的にも考えなければならぬ面もありますが、全般的には先般の経済企画庁の中間報告のように、景気は著しく回復しつつあると思っております。先般、減税を行いました。さらに今後とも適切かつ機動的な経済運営、それから物価の安定をあくまで確保していくという考え方、さらに民間需要を中心とする民間活力の回復等々を通じまして今後とも努力してまいるつもりであります。  来年度のシーリングにつきましては、先ほど申し上げましたように、節度ある財政金融政策維持強化ということが合意もされております。いずれにせよ、聖域を設けることなく、節減合理化というものを基準にして臨調答申の線に沿った予算編成を行うべきである、そのように考えておりまして、行管長官から臨行審に対して今意見を求めておりますが、この御意見を伺った上で党、内閣で慎重に検討してみたいと考えておるところでございます。  福祉、文教、防衛、公共事業等につきましては大蔵大臣から御答弁申し上げますが、いずれにせよ増税なき財政再建、あるいは六十五年度赤字公債依存脱却、この目標実現する線に沿って努力してまいりたいと思っております。  開発途上国債務累積の問題でございますが、これは七〇年代以降、特定の開発途上国国内の積極的な開発推進等に必要な資金を、特に外国の商業銀行等から多量に借り入れまして受け入れたところです。その後、第二次石油ショック等による石油価格の高騰、それから世界的な不況、あるいは高金利等が生じまして、開発途上国に対する資金流入が減少した等によって今日このような事態が起きているものと考えます。この債務累積問題の責任を特定国の政策にのみ帰することは妥当ではない。この点につきましてはロンドン宣言に沿いまして、私たちは国際駒協力をもって対処してまいりたいと考えております。  次に、二階堂副総裁の問題等のいわゆる政治倫理の問題であります。  私は、二階堂さんは国際的見識もあり、政党政治家としても円熟された非常に立派な方であると尊敬いたしております。私は大事につきましては超派閥的に、派閥にとらわれないで人材を簡抜する、そういう考えに立ってやっておるのでありまして、二階堂さんをお願いした次第であります。  政治倫理に関する問題につきましては、政倫協を中心にいたしまして今各党が御努力願っておりますが、これらの各党の折衝の状況を見守りながら善処いたしたいと考えておる次第でございます。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣山村新治郎君登壇拍手
  8. 山村新治郎

    国務大臣(山村新治郎君) 米問題と食糧施策についての御質問にお答えいたします。  五十三年産米の問題に関連し、関係各界、そして国民の皆さんに多大の不安と混乱を与えたことはまことに遺憾でございます。最終的には私の責任において処理すべきものと考えております。  今回の問題は、加工原材料に必要な米穀について生じているものではありますが、いずれにしましても、私としましては、今後とも米の需給につきましては需要に見合った供給が確保されるよう万全を期し、国民に対する米の安定供給責任を果たしてまいりたいと思います。  五十三年産米の薫蒸剤の残留問題につきましては、先般の厚生省の食品衛生調査会残留農薬部会の報告におきまして、薫蒸剤の有効成分残留は認められなかったものの、その分解物である臭素の残留が認めら九、人の健康に影響するものとは考えられないとしながらも、今後より一層の安全性を確保する観点から、米の残留臭素につきまして暫定基準が示されました。五十三年産米の当該基準への適合状況等につきましては、現在調査中でありますが、農林水産省といたしましては、同部会報告の趣旨及び厚生省の要請を踏まえ、当該基準に適合するものであるということを確認した上で売却を行うことといたしております。  これに伴いまして、加工原材料に必要な米穀の一部につきまして不足する事態も予測されることから、韓国との間で貸し付け米の現物返還の協議が今行われておるところでございますが、これは国民の安定供給責任を果たす上で必要なことと考えております。もとより米は我が国民の主食であるとともに、稲作は我が国農業の基幹をなすものでありまして、米の供給については国内産で全量自給をするという方針は何ら変わっておりません。  米の生産調整でございますが、米の生産力は依然といたしまして潜在的には需要を大幅に上回っております。今後とも需要に見合った米の生産を確保し得るような所要の対策を着実かつ的確に推進することが必要であると考えております。このような観点から、本年四月スタートいたしました水田利用再編第三期対策におきましては、適正な在庫水準を確保する見地から在庫の積み増し、これを行うことを含めましてその万全を期したものでございますが、何分にも米は気象状況等の影響を受けやすい面もございますので、今後とも米の需給や作柄等に応じた適切な需給計画のもとで、弾力的にこれを推進してまいりたいというぐあいに考えております。御理解のほどお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  9. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) お答えをいたします。  まず、十二日のジュネーブ軍縮会議で私が行いました演説におきまして、我が国が非核三原則を堅持しつつ軍縮促進に努めてきた旨を述べておるが、その立場からしても、トマホーク積載艦の入港に際しては核の有無をアメリカに対してはっきりと確かめる必要があるじゃないか、こういう御質問でございます。  この点については既に総理からもお答えをしておりますが、水上艦艇または潜水艦配備のトマホークは、通常弾頭及び核弾頭の双方を装備できる核、非核両用の兵器でございます。また米国政府は、しばしばトマホークの大部分は通常兵器である、こういうふうに述べております。さらに、トマホークの搭載能力を有することと、実際にトマホークを装備することとは別個の問題であると考えております。  いずれにいたしましても、日米安保条約上、艦船によるものを含め、核の持ち込みが行われる場合はすべて事前協議の対象であります。また、核の持ち込みについての事前協議が行われる場合には、政府としては常にこれを拒否する、こういう考えでございますので、非核三原則を堅持するとの我が国立場は十分確保されておると確信をいたしておる次第であります。  次に、米ソ核軍縮への具体的な展望と日本役割についての見解いかんということでございますが、我が国は、ロンドンサミットにおける東西関係軍備管理に関する宣言で明らかにされておるとおり、ソ連により中断をされておりますINF交渉あるいはSTART交渉の早急な再開とその実質的な進展を強く希望してきております。そして、いつ、どこでも前提条件なしの話し合いの再開を表明しておる米国にこたえて、ソ連が建設的かつ積極的な態度をとるよう、機会あるごとに我が国としてもソ連側に対して働きかけていく所存でございます。  最後に、イランイラク戦争停戦のために、米、ソ、仏等からの武器輸出中止を提案するとともに、これをサミットで議決してソ連との対話協調を図るべきではなかったかと、こういう御質問でございますが、これに関しましては、今総理の御答弁のように、今度のサミット首脳会議におきまして、総理から積極的に、そうした意味も含めた各国に対する自制、自粛措置イランイラク戦争に対する自粛を強く働きかけた次第でございます。私は、それはそれなりに各国に対する影響はあったというふうに考えておるわけでございます。  同時にまた私も、ジュネーブから帰途モスクワに立ち寄りまして、空港でカービッツァ次官と会談をいたしましたその際、イランイラク戦争について会談をしたわけでございますが、ソ連も、その際にカピッツァ次官が発言をいたしましたが、日本と同じような立場イランイラク戦争に対して自制、自粛を促しておる、今後ともそういう立場で働きかけてまいりたいということを明確に述べたわけでございます。  我々は、こうした諸外国の関連した動きによってイランイラク戦争の拡大の阻止、拡大の防止を行うとともに、これがさらに停戦、そして和平へとつながっていくことを強く期待し、そして数少ない、我が国イランイラク両国と友好関係を持っておりますので、特に我が国の外交的な、国際的な責任を強く感じて、これらの点に対して働きかけを強化してまいりたいと、とういうふうに考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇拍手
  10. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は二つございますが、第一は、先般の宮澤論文に対する感想いかんということでございます。  先般の論文は中間報告でありまして、全体像がまだ明らかになっておりませんので全体的な判断はできませんが、中間報告に関する限り大変結構な内容である、私はこのように考えております。  第二は、シーリング問題についての考えいかんという御質問でございますが、過去三カ年間厳しいシーリングの中で、国の平和と発展についての四項目につきましては別枠が設けられておりましたが、今回のシーリング問題は、その別枠のほかに二、三の項目についてさらに別枠を追加すべし、こういう議論でございます。  この問題につきましては、行財政改革を進める中におきまして当面の経済政策をどうするのかという判断をしなければなりませんが、その判断の一環として決定すべき課題だ、このように考えております。ただいま党と内閣との間でいろいろな議論が進んでおりますので、その推移を見ました上で判断をしなければならぬ課題だと、このように考えております。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  11. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問総理から詳しくお答えがございました。  基本的には財政が今日景気拡大に積極的な役割を果たす余力はないということは、サミット参加国を比較してみましても、一般会計公債依存度、あるいは対GNP比の単年度赤字、さらには対GNP比の長期債務残高、いずれも我が国が残念ながら一番高いわけであります。しかし幸い今日までこれまた一番高い貯蓄率に支えられて財政運営ができてきたわけでありますが、したがって、今の段階において、景気拡大に財政そのものが積極的な役割を果たす余力はないと考えなければなりません。  そうしてロンドンサミット合意、これまた総理から経済宣言の一部を引用してお答えがございましたが、「必要な場合には財政赤字削減するための諸政策を引き続きとり、必要な場合にはこれを強化すること。」、このようなことで合意を見たわけであります。インフレなき持続的成長を確保し、そうしていわば良質な資金が開発途上国等にもその期待にこたえる態勢をとることが世界全体のあるべき姿であるという合意に達しておるところであります。  そこで、私どもがかねて申し上げておりますとおり、六十五年度までに特例公債依存体質からまずは脱却して、そうしてその後公債依存度の引き下げに努めるというこの努力目標、まさに予算は単年度主義でありますが、毎年度最大限の努力を積み重ねていく考えであります。したがって引き続き、制度の根本にまで踏み込んだ改革を行うなどの努力を行っていかなければならないと考えております。そこで、当然のこととして、厳しい概算要求枠を設定する必要があろうというふうに考えております。  さらに、具体的に福祉、文教等々についての例示を挙げての御質問がございましたが、そもそもシーリングというのは、昭和三十六年度予算からいわば予算編成の進め方としての技術的なあり方として今日まで継続しておるところであります。したがって、なかんずくここ数年はいわゆる総枠をお示しして、専門家であられます各省がその中で政策の優先順位を決定していく、こういういわば内なる努力期待して行われてきたものであります。  したがって、六十年度予算編成一つ一つにつきまして、具体的な方法についてはしばらく勉強させていただきたいというように考えておるわけでございます。したがって、今後ともこれらの方向に従って各方面の理解と協力を求めていかなければならない、このように考えております。(拍手
  12. 木村睦男

    議長木村睦男君) 答弁の補足があります。中曽根内閣総理大臣。    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 六月十日のアメリカのICBMの実験に関する御質問について、補充して申し上げます。  我が国は、前から核兵器の削減並びに廃絶を主張しておるところでございまして、今後とも一貫してこの立場を我々は貫いてまいりたいと思っております。  今回のICBMの実験は、攻撃してくるICBMに対して、これを要撃して途中で破壊しようという実験であったように覚えております。つまり、これは攻撃的なものにあらすして防御的なもののようには思いますが、しかし、いずれにせよ基本的なことは、ICBMあるいはその他中距離弾道弾等につきましても、STARTやあるいはINFにおきまして攻撃用のICBMなり中距離弾道弾をできるだけ早く削減し、廃絶するということが基本であるように思います。そういう面におきまして、米ソが今まで交渉してきたところでございますが、できるだけ早期にそのような根元を断つ方向で全力を尽くしてもらいたいと期待して、また我々もその環境醸成に努力してまいりたいと思っておるところでございます。(拍手)     ―――――――――――――
  14. 木村睦男

    議長木村睦男君) 和田教美君。    〔和田教美君登壇拍手
  15. 和田教美

    ○和田教美君 私は、中曽根総理ロンドンサミット報告に対し、公明党・国民会議を代表して質問を行い、総理初め外務、大蔵各大臣の見解を求めるものであります。  総理は、サミットが終わった直後の記者会見で、サミットは大成功であった、中身の多い、しかも中身の濃い内容であったと自画自賛されました。また国会の報告でも、サミット課題達成されたと述べておられます。なるほど今度のサミットでは、ロンドン経済宣言初め、合計五つの文書が採択、発表されております。中身がにぎやかだったことは事実でしょう。しかし、中身の多さが必ずしも中身の濃さを意味しないことは言うまでもありません。  例えば、民主主義の諸価値に関する宣言は、すべての市民の権利と自由の保護、自由な選挙を通ずる真の選択、武力不行使など、それ自体は文句のつけようもない抽象的な文章が並んでおります。しかし、我々がこの宣言を読んである種のむなしさを感じるのは、世界現実政治の中で、この宣言が強調している民主主義の理念と現実との格差が余りに大き過ぎるからであります。また、ここに掲げられている民主主義の諸価値をいかに実現するかについての行動計画という面では、五本の文書を通読してみましても、具体性に乏しく、問題解決の決め手を欠いているからであります。総理は何をもってサミットは大成功だったと言われるのか、まずこの点をお聞きしたいのであります。  さて、私は、採択文書の内容に即して、以下幾つかの問題点を指摘したいと思います。  まず第一の問題は、世界の平和と軍縮の問題についてであります。  サミットが採択した東西関係軍備管理に関する宣言は、西側の結束を強調する一方で、ソ連との対話姿勢を打ち出しております。そして去年末以来中断が続いているINF交渉STARTなど軍備管理交渉の早急な再開をソ連に呼びかけております。力による対決をあらわにいたしました去年のウィリアムズバーグ・サミットの政治声明に比べますと、今回の姿勢はかなり柔軟で、対ソ融和的であって、一歩前進と評価できるものであります。しかし、サミット後の状況は依然厳しく、ソ連は西側首脳対話呼びかけを何ら新味のない提案と批判して、これを拒否しました。  平和と核軍縮の問題は、総理自身が認めるとおり、経済問題などすべてに優先する緊急の課題であります。私は、今次サミット対話呼びかけの姿勢は正しいが、さらにこの際、レーガン流の抑止と均衡論から大きく踏み出して、ロンドン宣言に目玉を入れる具体的な軍縮のスケジュールを示す必要があると思います。それはソ連核軍縮交渉のテーブルに引き戻すため、西側が核兵器の現状凍結を真剣に考えるべき時期に来ているということであります。  INFについて言えば、昨年末以来現在まで西独、イギリス、イタリアに四十一基の米国製中距離核が配備されましたが、ここでその後の配備計画を一時棚上げにすることであります。もちろん、ソ連のSS20などの中距離核も現状で凍結し、この凍結を出発点として早急に軍縮交渉を前進させることであります。この場合、アジアも対象として、ソ連のSS20などの凍結に見合って、今月から米国が太平洋海域で始めました巡航ミサイル核トマホークの配備を見合わせるべきであります。  これに関連して、トマホーク積載対象艦の米原潜タニーが横須賀に入港しました。アメリカ海軍は、核つきの配備はまだ始まっていないと言っているそうですが、トマホークが核つきであるか非核かの区別は、外見からは全くつきません。今後も同種の艦船の寄港について核の有無を確認する意思はないという政府の態度は、非核三原則の空洞化につながると思いますが、どうですか。  西側あるいは非同盟の国々で核の凍結を求める動きは最近目立っております。スウェーデンのパルメ首相を中心とするパルメ委員会は、ことしの一月、「米ソ両国による一年周の核兵器配備凍結」との報告を行っています。また、インド、ギリシャなど六カ国首脳による「四大陸平和イニシアチブ」の呼びかけもその一つであります。オランダは米国製巡航ミサイルの配備を予定の八六年より二年おくらせることを決めました。さらに米国の下院では先月の末、条件つきながら米海軍の核トマホークの配備をことし十月から一年間見合わせる旨の決議を行っています。  核軍縮交渉再開の前提条件として、西側が欧州に配備を始めた中距離核の撤去を要求するというソ連の態度は、余りにかたくなであって到底支持できません。しかし、西側は軍拡を軍縮の流れに変えるため、勇気を持って東西双方による核の現状凍結に踏み切るべきだと私は思います。  総理及び外務大臣は、サミットで平和と軍縮の問題についてどのような役割を演じたのか、また、私が提起した核凍結構想をどう受けとめられるか、さらに、これらの問題を話し合うため米ソ首脳会談の早期開催を日本は働きかけるべきだと思いますが、どうですか。明快な答弁を求めるものであります。  さらにもう一つ軍縮問題についてお聞きしたいことがあります。  それは、総理の平和と軍縮の追求という考え方は核兵器の分野に限るのであって、通常兵器は別問題という考えかということです。軍縮問題に関するロンドン宣言は、「我々の目的は安全保障であり、可能な限り低い水準の兵力である。」と強調しております。この考え方はもちろん核兵力だけでなく通常兵力にも適用されるものと思いますが、どうですか。といいますのは、現実日本の防衛力は年々増強され、防衛費はGNPの一%以内という歯どめを本年度中にも突破しそうな勢いです。としますと、サミット軍縮に関する理念と、実際に政府がとっている軍拡路線との間には明らかに矛盾が存在します。もし総理考えが、核保有国には核軍縮を強く求めるが、こちらの通常兵力の方はそれこそ勝手だ、総理お得意の勝手だというのでは余りに身勝手だと私は思います。  次は、イランイラク戦争についてであります。  イランイラク両国は、最近国連事務総長の提案を受け入れ、都市の住民居住地への攻撃停止という限定停戦に応じました。これが全面和平への糸口になることを心から望むものであります。しかし、石油輸入の六五%をホルムズ海峡経由分に依存する我が国にとって、楽観は禁物であります。サミットでは、各国首脳からイランイラク双方にパイプを持つ日本の調停的努力を求められたと聞きますが、外務大臣はどのような展望と対策を考えられているか、お尋ねいたします。  また、サミットでは、米国主張していた緊急時における石油備蓄の一斉放出案は通りませんでした。我が国石油備蓄は現在約百二十日分で、総理は現状では大丈夫と今おっしゃいましたけれども、万一の緊急事態が起こっても切り抜けられますか。  次に、サミット経済宣言が強調しているインフレなき経済持続的成長についてお尋ねいたします。  二年目を迎えた世界経済景気回復をなるべく長く持続させるため、当面取り組むべき課題は少なくありませんが、まず欠かせないのは、米国の巨大な軍事費の削減を軸とする財政赤字の縮小と金利の低下、ドル高の是正の問題だと思います。現在、千九百億ドルに上る財政赤字高金利ドル高を生み、これが西欧の景気回復をおくらせ、また日本の貿易収支の不均衡を助長するなど、世界経済をゆがめていることは明らかです。  ところが、サミットでは、選挙を控えたレーガン米大統領に気兼ねをして、他の各国首脳があからさまな批判を差し控えた、日本は批判さえしなかったと伝えられるのは、一体どういうことですか。経済宣言でも、財政赤字高金利の問題については名指しのアメリカ批判は影を潜めております。総理並びに大蔵大臣から論議の推移をかいつまんで御報告願いたい。  米国高金利で最も直撃を受けるのは、債務の累積した開発途上国であります。開発途上国の対外債務残高は、短期を含めて約八千億ドルに達しております。米国金利が一%下がれば途上国の利息負担が約四十億ドル軽減されるのですから、累積債務の多い国にとって米国金利引き下げは切迫した要求であります。確かに経済宣言は、債務国自助努力をしている場合には、累積債務の多年度にわたる繰り延べを認めるなどの対応策を列挙しております。しかし、これらはしょせんこう薬張りの対策です。この際、中長期的な解決策づくりを急がなければなりません。政府はこの問題にどう対処するつもりか。また、累積債務問題が今後国際金融不安に発展するおそれは全くないかどうか、大蔵大臣の見解をお聞きしたいと思います。  サミットでは、日米両国が多角的貿易交渉の新ラウンドについて八五年準備、八六年開始で合意するよう主張しましたが、失業問題、ハイテクノロジーの分野でのおくれなどの構造問題を抱える西欧諸国の抵抗によって成功せず、経済宣言準備開始の時期さえ盛り込めませんでした。貿易立国に生きる我が国として、西欧先進国の間に頭をもたげている保護貿易主義の傾向を巻き返し、貿易自由化を進めることは重要であります。しかし、日本ニューラウンドの主唱者である以上、今後西欧はもとより、開発途上国の言い分にも十分耳を傾けることが必要です。  そこで、外務大臣にお聞きしたいのは、新ラウンドに関する経済宣言の表現はまことに回りくどいのですが、ずばり言えばどういうことか、新ラウンドをいずれ開始すること自体は決まったのか、それとも開始するかどうかの問題を含めて将来に持ち越しになったのか、お答えを願いたいと思います。  最後に私が指摘したいことは、ロンドンサミットで明らかになった経済大国としての日本の国際的責任という観点から見ても、日本経済運営を過度の輸出依存型から脱却させ、内需主導型に転換させる必要性が一段と強まったということです。常に対外経済摩擦の火種を抱える日本にとって、内需主導の経済成長は最大の課題ですが、そのためには個人消費、民間設備投資などの順調な回復が必要です。  我々は、内需主導の景気回復実現するため、所得減税とあわせて公共事業予算の確保、投資減税の実施を要求いたしております。財政再建行政改革はもちろん必要ですが、政府が実質上の増税、福祉後退など財政赤字の帳じり合わせを一方的に国民生活にしわ寄せし、それが内需中心景気回復を著しくおくらせてきたことは明らかです。  ところが、大蔵省は、サミット経済宣言が節度ある金融財政政策、公共支出をふやすことへの懸念を表明している点をとらえて、引き続き財政再建最重視、マイナスシーリングの路線を堅持すると主張いたしております。このように経済宣言をつまみ食いして、国内政治に利用する態度を認めるわけにはいきません。今後の財政経済運営、特に来年度予算編成マイナスシーリング問題などをめぐって、最近財政当局と自民党との対立が伝えられ、また総理大蔵大臣の間にも若干考え方の違いがあるやに伝えられていますが、この点についての総理大蔵大臣の見解をお聞きして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  16. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 和田議員にお答えをいたします。  まず第一に、今次サミットの評価いかんという御質問でございます。  私は、今回のサミットにおきまして、先進工業国の首脳部が集まりまして、特に経済政策並びに平和、軍縮管理の問題、あるいはイランイラク戦争東西対話促進発展途上国問題、累積債務国問題、これらの大問題に対しましてその方針を明示して、その合意した方針に基づいて協力し合おうと、そういうことを全世界に明らかにした、そして全世界の理解を求めたという点に非常に大きな意味があると思っておるのであります。  これだけ複雑多岐な難しい時代でございまして、どの国々も自分たちの政策方向についていろいろ検討を加えているときでございます。それでアメリカEC日本を加えますと、ほとんど全世界のGNPの半ばに達するぐらいの大きな力、経済力を持っている国の首脳部が集まりましてそのような大方針を明示したということは、世界国々に対しましてもかなり見通し、あるいは検討の余地を与えたという結果になるのではないかと思いますし、それは必要なことではないかと思うのであります。その点について合意ができたということは、たとえその合意が非常に厳重な細かい合意でなくても、大きな方向ははっきりしたという意味において非常に大きな意味があった、このように考えておるところでございます。  第二に、核兵器の現状凍結の問題でございますけれども、今の焦点の問題、INFの問題は、これはSS20をまずソ連が先に配備をした、そしてこれの均衡を回復するために西欧側がパーシングⅡあるいはクルージングミサイルを慌てて展開し始めたというところの状態なのであります。そしてソ連がテーブルから去ってしまった。こういう状態のもとに、西欧側が自分たちで核凍結を行ってソ連交渉のテーブルに引き戻すという、そういう筋合いのものではないのではないかと私は思うのであります。まず話し合いを始めることがその前に大事であります。  そして、この凍結を行うとかいうアイデアがありましても、一体それではその検証をどうするのか、その検証ということが両方が安心感を持って凍結を行う前提にもなります。これはまた核の削減にも通ずる基本的な一つ課題でもあるわけです。この検証をソ連側は今まで拒んできておるようであります。そういう基本的課題について一致がないという状態のもとにおいて、凍結を一方的に行うということはいかがなものであるか、そう私は考えて、現実性がないと考えておるところであります。  トマホーク積載艦の問題は先ほど申し上げたとおりでございまして、非核三原則を今後も一貫して守っていくつもりでございます。  サミットにおける平和、軍縮の問題につきましては、実は、恐らくこれは私らの想像でもあり解説でもそう言われておりましたが、サミットは六月七日から行われましたが、前の日の六日はノルマンジー上陸作戦成功の記念日で式典が行われた日であります。そういうような翌日サミットが行われるという点において、ドイツやイタリーあるいは遠くは日本というような問題もあるいは考慮に入ったのかもしれません。そういう意味においてみんなでがっちり行けるという、しかも今非常にサハロフ博士の問題やその他で大事である民主主義と自由の問題について強力な見解の一致を示そうという考えが出るのは無理もないところであります。  しかし、もう一つ大事な問題がある、それは平和の問題である。民主主義も平和なくしては成立しない、経済繁栄も平和が基礎である、そういう意味におきまして我々は平和を強く主張いたしまして、そしてそれは単に核兵器だけではない、東西だけではない、これはイランイラクも入り、全世界を含めて核兵器、非核兵器を込めて対話交渉により物を解決すべきである、そして削減していくべきである、武力は行使すべきでない、そういうような大原則を今回の宣言の中に盛ったのでございまして、私は歴史的意味を有すると考えておるのでございます。  米ソ首脳会談の促進につきましては、昨年のウィリアムズバーグ・サミットのとき以来私は主張して、その環境をつくろうということで努力しておるのでございますが、今後も引き続いて努力してまいります。  軍縮につきましては、通常兵力を入れるということはもちろんのことでありまして、総合的な戦力について我々は軍縮を行わなければならない、こう考えておるのであります。我が国は、憲法及び基本防衛政策に従いまして、自衛のために必要最小限の防衛力の整備を行っておるものなのでございます。我が国の防衛力の機能、あるいは予算の限度枠、予算におけるその割合、あるいは文民統制の現状、こういう状況を見るならば、御指摘のような矛盾は存在するとは考えておりません。一財政赤字等の問題につきましては大蔵大臣から答弁していただきたいと思いますが、高金利の問題、財政赤字問題等についても我々は忌憚なき意見交換をやり、我々の段階のみならず、準備作業をやる事務当局の間でもかなりこれは熾烈な議論も実はあったのであります。  特に、輸出入のバランス、円安ドル高という問題、あるいは債務国債務の増幅の問題等々を考えてみまして、財政赤字縮減するということは基本的に非常に重要な問題である。現在の世界経済全般の問題を考えてみますと、一番大事な問題は、一つ財政赤字の問題であり、もう一つ累積債務国の問題であります。あとの問題はそこから派生している問題であります。そういう意味におきまして、我々は基本的な点もとらえまして、サミットの現場において私自体もこれを主張してきたところなのでございます。今後も主張していくつもりです。  しかし実際は、財政赤字の問題を言いますと、これはレーガン大統領もそり場で指摘しましたけれども、サミット参加国の中でアメリカよりも財政赤字の率の少ない国はドイツしかないのです。日本財政赤字はGNPに対してたしか四・五%ぐらいですが、日本の方がアメリカよりも財政赤字の率は多いのであります。だといって遠慮する必要はありません。我が国はこれだけの大きな貯蓄率を持っておる国でございます。そういう点においては性格は違いますが、単に率だけで言うというと余り大きな声では言えないのであって、財政赤字の率をもっともっと削減していかなければならない、そういう立場にあるのであります。  内需依存による景気の回復等については私も賛成でございまして、今後の経済政策もこの線でやり、今までもやってきたところでございますが、今後とも努力してまいるつもりでございます。これには民間資金の活用あるいは民間活力の活用、こういう点によりまして、さらに機動的な経済運営というものを考えまして努力してまいりたいと思っておるところでございます。  来年度の財政運営及びシーリングの御質問でございますけれども、増税なき財政再建を堅持する、あるいは六十五年赤字公債、特例公債依存体質を脱却する、臨調答申を尊重する、こういう面において聖域を設けず節減合理化に努力してまいりたいという基本的な構えを持っておりまして、大蔵大臣とは少しも変わってはおりません。私は今後も大蔵大臣の方針を尊重してまいる考えでおるのでございます。  残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  17. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) お答えをいたします。  まず第一に、平和と軍縮の問題につきまして、日本サミットにおいていかにその役割を果たしたかという御質問でございます。同時にまた、和田さんがかねてから御提起されております核凍結構想をどういうふうに受けとめておるのか、こういう御質問でございますが、今回のサミットにおきまして、我が国は平和と軍縮の問題を重要視いたしまして、平和の達成のために東西間の対話を進めるとの姿勢で臨んだわけでございます。私としましても、このために積極的な努力も行ってまいりました。東西関係軍備管理に関する宣言等において、現在の厳しい国際情勢のもとにおける西側諸国の積極的かつ一致した姿勢が示されたことを評価いたしております。  また、INF交渉に関しましては、そもそもSS20等の中距離核ミサイルの配備を推し進め、また現在話し合いそのものを断っておる、拒否しておるのがソ連でございまして、西側諸国として、アメリカINFミサイルの現状凍結等を行ってソ連交渉のテーブルに引き戻すというふうなことはちょっと筋が違うのじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございまして、我々はゼロオプションが最も適当であるということをかねがね主張しておるわけでございます。  いずれにいたしましても、我が国としては、いつどこでも前提条件なしの交渉再開をアメリカは表明をしておるわけでございますので、これにこたえましてソ連が建設的かつ積極的に行動するように希望いたしております。そして、これはサミットにおきましても各国の共同の合意として表明をされてきたところでございまして、我が国としては今後とも機会があることにソ連に対しまして働きかけていく考えでございます。  それから次に、米原潜タニーの横須賀入港において、トマホークを積載しているかどうか、そしてトマホークが核であるかないか、核を持っているかいないかということについて確認をすべきであるという御質問でございます。  これは先ほどもお答えをいたしたわけでございますが、日米間には御存じのように日米安保条約、そしてまたその関連規定におきまして、核の持ち込みは事前協議の対象となっておるわけでございます。そしてアメリカは、我が国の非核三原則を尊重する、そしてまた日米安保条約、その関連規定を遵守するということをはっきり言っておるわけでございますので、したがって、核つきトマホークを持って入るということになれば、当然事前協議の対象になるわけでございます。また、日本はこれに対して拒否するということは天下に明らかにしておるところでございまして、私たちはそういう事態はあり得ない、こういうふうに確信をいたすものであります。  次に、イランイラク戦争でございますが、このイランイラク戦争は、現在国連事務総長の提案を両国は受諾いたしまして、部分的ながらも戦闘行為の停止が実現をいたしたわけでございます。これは従来から我が国がペルシャ湾航行問題と並んで強く働きかけてきた点でございまして、こうした動きを心から歓迎いたしております。当面この都市相互不攻撃の実効性を確保していくことが肝要でありまして、我が国としても、今後本件に関しまして国連より何らかの協力の要請がある場合には、我が国として可能な限りの努力協力をする考えでございます。  しかし、これでもって一挙に戦闘が終息に向かうということは考えられません。紛争の平和解決には関係各国による一層の外交努力というものがこれから必要であると考えます。我が国としましては、かねて申し上げておりますように調停とか仲介を行う立場にはないわけでございますが、しかし、我が国は諸外国の中でも、世界の中でも両国と友好関係を持っておる数少ない国でございます。いわゆる先進主要国の中でも全く日本だけが両国に対して太い政治的パイプを持っておると言っても過言でないわけでございます。これまでも両国に対しまして積極的な紛争の拡大防止、早期平和解決環境づくり努力をしてまいりましたが、これを機会にさらに外交努力を進めてまいる、懸命に進めてまいりたい、そして最終的には停戦から平和へ持っていきたい、こういうふうに考えております。  また、今一時的な、部分的な停戦が行われておりますが、しかし予断は許さないわけでありまして、万一に緊急事態が生じた場合はいかに対応するかということでございますが、エネルギー、石油の問題につきましては、我が国は約百二十数日分の石油備蓄を有しておりますことに加えまして、IEAを通ずる国際協力及び湾岸以外の諸国の増産に期待できることなどを考えあわせれば、的確な対応によりまして我が国経済及び国民生活への影響を最小限に抑えることが可能である、こういうふうに考えております。  なお、先般のロンドンサミットにおいても、世界の石油事情が比較的安定していること、相当量の石油備蓄があること等にかんがみまして、万一の場合でも十分な石油供給の維持が相当期間可能である、こういう旨が表明されておりますが、この問題につきましては、関係各国とも密接な連絡をとりまして協力を進めてまいる考えでございます。  また、ニューラウンドの問題でございますが、回りくどい表現になってしまったのではないかということでございますが、このサミットで、我が国としては時期につきましては八五年に準備を開始して八六年から交渉のスタートを切るべきである、こういう主張をいたしたわけでございますが、意見が分かれまして、最終的には今回のような表現に落ちついたわけでございます。私は、やはり最終的なこの表現は、今日の客観的な情勢を見、また日本立場考えますと妥当ではなかったかと、先ほど総理も申し上げましたが、そのとおりに考えております。  しかし、新ラウンド目的、取り組み方及び開始時期につきましては、早い時期に決定を行うべくガット加盟国と協議を行う、こういう方針がはっきりと打ち出されておるわけでございますから、新ラウンド開始へ向けて新しい推進力を与えたものでありまして、新ラウンド早期推進という我が国立場は貫かれた、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、平和と軍縮実現するために米ソ首脳会議を行うべきである、こういうことにつきましては、総理が答弁をされましたように、その環境が熟することによってこの首脳会議実現されることを我々としても期待をいたしておる次第でございます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  18. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、私に対する御質問の第一は、いわゆる米国財政赤字高金利問題等についての論議の推移、これを聞かせろということであります。  サミットは特定の国を名指しで批判する場ではございませんので、本来参加国の共通の政策目標について協議するためのものではあります。しかしながら、米国はその経済規模の大きさ、また基軸通貨でありますドルの役割等から見まして各国経済に与える影響が大きく、米国財政赤字削減金利低下のための努力が大切であるということは、これはもちろんであります。  この点につきましては十分認識をして、まずは、今総理からも詳しくお答えがございましたが、事務当局の会議あるいは私どもの大蔵大臣会議ということになりますと、各国がいわば多角的サーベーランスとでも申しましょうか、相互にいろんな経済指標に対する協議を行っていくわけであります。その場合、参加国の共通の課題としてこの問題はいろいろ議論いたしました。結局、節度ある財政金融政策維持強化を図って、財政赤字削減の確固たる見通しを明らかにするということがインフレを抑制し、金利の低下を図っていくことであるという確認に最終的には至ったわけであります。米国のみならず、いわば財政赤字につきましては先進国それぞれが今大変な重要な問題に当たっておるところでありますので、重ねて共通認識を深めた次第であります。  次の開発途上国累積債務問題についてでございますが、債務累積問題につきましては、これまでは国際機関あるいは債権国、債務国あるいは民間等々関係当事者が適切に対応して大きな問題を生じないで今日まで来ました。しかし、債務累積問題はまさに中長期的な視点に立って解決策を実施していく必要があるということは御指摘のとおりであると私は思います。  したがって、この問題を一挙に解決することは困難でありますので、さきのロンドンサミットにおきましても、債務国については関係者協力に基づいてケース・バイ・ケース対応していこうというこれまでの戦略を確認いたしました。我が国としては、サミット宣言に述べられておりますような現実的な努力の強化を通じて今後ともこの問題の解決に当たってまいりたい、このように考えます。  なお、債務累積問題が今後国際金融不安につながるような事態を回避する、これはぜひとも必要であります。これに国際金融面で適切な対応が必要とされるわけでございますので、今日、主要国間の密接な連絡と協議がますます深まっております。この問題が国際金融不安に発展することはないものと期待して、私どももそういう綿密な連絡、協議の場に加わっておるわけであります。  それから三番目には、サミット経済宣言の一部をつまみ食いして国内政治に利用するのはけしからぬと、本当にそう思います。まさにこのサミット宣言をごらんいただきますと、一貫してとられておりますのは、いわば健全な経済財政運営の維持ないしは強化、これが一貫した精神として貫かれております。その精神は、もとより私どもの、我が国経済財政運営にも生かすべく合意をしたものでありますが、しかし、中の個別的な問題についてこれをつまみ食いして国内政治に利用するという愚か者であってはならぬと、我と我が身にも言い聞かせておるつもりであります。  それから、総理と財政運営についての意見の相違がありはしないか、こういうことでございます。  私は中曽根内閣大蔵大臣であります。常々総理からはその都度御指示をいただいております。財政経済運営について私と総理との間に考え方の相違があろうなどということはおよそ考えられないことであります。(拍手)     ―――――――――――――
  19. 木村睦男

    議長木村睦男君) 小笠原貞子君。    〔小笠原貞子君登壇拍手
  20. 小笠原貞子

    ○小笠原貞子君 私は、日本共産党を代表し、ロンドンサミットに関連して総理質問をいたします。  総理、あなたは昨年のウィリアムズバーグ・サミットに際して、アメリカの新型中距離核ミサイルの欧州配備を断行せよと主張しました。このサミット合意によって米中距離核ミサイルが次々に配備され、米ソの核交渉の中断という事態を生んだのであります。まさに、ウィリアムズバーグ・サミットが新しい米ソの核軍拡競争激化の口火となったのでありますが、この重大な責任の一端が、総理、あなたにあることは明らかであります。    〔議長退席、副議長着席〕  ところが、あなたは今回もまたイギリスの国際戦略研究所の演説において、アメリカの新型核ミサイルの実戦配備を謳歌なさいました。総理、あなたは昨年に引き続き、レーガン米大統領の積極的な協力者としてさらに核軍拡の旗振り役を果たしたことについて、核兵器廃絶を願う日本世界国民に対して何の責任も感じていないのか、まず、この点を明確にしていただきたいのであります。  米国防総省は十一日、宇宙空同でICBM迎撃実験に成功したと発表しました。レーガン政権は、核戦争のもとでも生き残るという戦略に乗り出し、宇宙核軍拡の激化と宇宙戦争の恐怖という重大な事態をつくり出しつつあります。このようにレーガン政権がいよいよ宇宙核軍拡にまでのめり込もうとしている新たな重大な事態について、総理はどのように考えておられますか、お答えください。  さらに重大なことに、十四日には核トマホークを積載できるアメリカの原潜タニーを横須賀に入港させたことです。このことは、非核三原則を完全に空洞化し、核トマホーク持ち込みに道をあけるもので、断じて容認することはできません。総理サミットで口先だけの平和を語る前にあなたのなすべきことは、核がないことを確認しない限り、核トマホーク積載可能の米艦の入港を一切拒否することではありませんか。  今日、米ソの核軍拡競争をやめさせ、核兵器の廃絶は国際政治の上で緊急焦眉の課題と言えます。だからこそ、国会でも核兵器の廃絶を緊急の課題とする決議を行ってきたのであります。しかし、サミットが採択しなどの文書にも核廃絶、核軍縮は全く述べられておらず、単に核軍備管理と言っているにすぎません。世界国民の願いとは完全に逆行するものとなっています。総理、あなたはロンドンサミットで、世界唯一の被爆国日本総理として、なぜ核兵器廃絶を主張しなかったのですか、明確な御答弁を求めます。  次に、民主主義宣言についてお尋ねいたします。  この宣言は、民主主義や社会正義の追求などについてたくさんの美辞麗句をちりばめています。しかし、総理我が国の民主政治について言うなら、今問われている最重要課題の第一は、田中問題のけじめをつけ、その政治的、道義的責任を国会で明確にすることであります。そのためにも、我が党が衆議院に提案している田中辞職勧告決議案は直ちに採択すべきであります。これに反対し、背を向けておきながら、サミットでは民主主義や社会正義の追求などと言う資格が、総理、あなたにはおありでしょうか、はっきり御答弁ください。  第二は、市民の権利と自由の尊重、自由な選挙などをうたいとげていることと政党法の問題です。  総理は、政治腐敗防止ということで西ドイツの政党法の検討を指示されましたが、その西ドイツではどういうことが起きているか御存じでしょうか。与党のキリスト教民主・社会同盟は円に換算すれば約六十六億五千万円、社民党は約五十二億五千万円の多額の国庫補助をもらい、一方で大企業からも政治献金を受けています。驚くべきことに、その献金に絡む脱税事件の捜査をやめさせたり、刑の免除を求める脱税恩赦法案が提出されようとするとんでもない事態が生まれました。このように、政党法は政治倫理の確立に何の役にも立たず、政治腐敗はなくならないのであります。一方、なくなったのは政党法で解散させされた西ドイツ共産党と四百を超える民主団体でありました。これこそ、まさに民主主義存立の根幹である結社の自由を踏みにじる暴挙であります。  総理、この西ドイツの事態は、民主主義宣言で言っている自由な選挙と正反対の事態ではないでしょうか。いかがですか、明確にお答えいただきたい。  私は、憲法の結社の自由を破壊する政党法制定の画策を直ちにやめることを強く求めるものであります。総理の見解を伺います。  次に、経済宣言に関して伺います。  まず第一に、今日深刻な発展途上国累積債務問題は世界経済に重大な危機的状況をつくり出しています。その重大な責任がアメリカ高金利財政赤字、レーガンの超核軍拡政策にあることは明白ですが、総理の認識はいかがでいらっしゃいましょうか、お答えください。総理は、ロン、ヤスの関係で、アメリカ高金利問題等については全く発言しなかったのではありませんか。明確な御答弁を求めます。  次に、この宣言では新しい職業の創造をうたっていますが、先進国でも今や三千万人を超すという深刻な失業を生み出しております。サミットが開かれて十年、この間失業者は約三倍に増大しています。日本でも二倍以上となっており、同様に深刻な状況を示しております。このように、これまでのサミットは失業問題についても何ら解決策を見出せず、失敗だったことは明白でございます。総理はどうお考えでしょうか、お答えください。  最後に、私は今世界で深刻になっている飢えの問題について伺います。  最近ユニセフが発表した世界子供白書によれば、栄養不足と病気によって年間一千五百万、一日にすれば四万人の乳幼児が死亡しています。この数は、日本で言えば毎年七歳以下の子供すべてが死んでいくことになるのです。「生命を生み出す母親は生命を守り、生命を育てることを望みます」、これは三十年前から叫び続けている世界母親大会での言葉であり、世界の母親の切なる願いです。今この瞬間も子供の命は飢えと貧困により失われています。民主主義宣言でも、「我々は、世界中の飢餓及び貧困と闘う決意を再確認する。」とうたわれていますが、何の具体策も示されておりません。総理、あなたはこの決意を具体的にどうすべきだと提案されたのか、伺います。  総理が出発される前、我が党が申し入れたように、サミット参加国の軍事費を大幅に削って飢えと貧困を克服するために回すべきです。総理はなぜこのような提案をされなかったのか、明確な答弁を求めます。  総理、あなたは昨年に引き続き日本は大きな国際的役割を果たしたと自負しておられます。しかし、今世界の人々が願っていることは、限りない軍拡と核戦争の恐怖、経済的危機から命と暮らしを守りたいということであります。これにこたえる道は、あなたがレーガン大統領とともに進めている危険な方向ではなく、非核、非同盟、中立への道を進むことによってこそ保障されるのであります。もしも唯一の被爆国であり、また大きな経済力を持っている我が国がその先頭に立ては、日本世界の歴史の新しい平和で明るい転換への巨大な一歩になるでしょう。私はこのことを強く指摘して、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 小笠原議員にお答えをいたします。  まず、軍縮問題に関する所見並びに責任いかんというお尋ねでございますが、昨年のウィリアムズバーグ・サミットにおける私の言動は、要するに今や核兵器の問題は全世界的レベルにおいて解決しなければ解決にはならない、しかもこれがアジアや日本の犠牲において解決されてはならない、そういうことを主張いたしたのでございます。そして、既にソ連側がSS20を展開し終わっておって、西欧側は著しい不均衡のもとにさらされておった。その危機感からNATOの諸国が昨年の十一月二十三日以降パーシングⅡの展開を行い、クルージングミサイルの展開を行うという決定を既にしておった。それをNATOの諸国が実現する、タイムテーブルは崩さないと、そう言ったのを私は支持をし、しかも、その場合にアジアや日本が犠牲になってはならないということを担保してやったのでありまして、決してこれは軍拡のためにやったのではない。むしろ防衛的な考えに立って、ソ連をそれによって現実的な話し合いの場に入れて核兵器の削減を進めよう、そういう意味においてこれは行ったということを御理解願いたいと思うのでございます。今後ともそのような努力をいたすつもりであります。  次に、宇宙軍拡の問題でございますが、私は前から申し上げましたように、抑止と均衡の理論に基づいてアメリカの国防政策が行われていると申し上げましたが、今回のICBMの実験も、これは非核ミサイルで、攻撃してくるICBMを破壊するということを行ったものであると承知いたしております。しかし、いずれにせよ、宇宙というものが軍備競争の空間にさらされるということは重大な関心を我々は持たなければならず、そのような問題の防止について今後とも我々は慎重に対処してまいりたいと思うところでございます。  トマホーク積載艦の問題は、先ほど来申し上げましたように、今後とも非核三原則を厳守してまいるつもりでおります。  次に、ロンドンサミットにおいてなぜ核兵器の廃絶を主張しなかったかという御質問でございますが、我々は既に核兵器廃絶を強く主張していることは御存じのとおりであり、アメリカもいわゆるゼロオプションということを今まで言ってきておりまして、それが究極的な目標であることはもう自明の理であります。そして可能な限り現実的な、実行可能な案を提示してソ連側をテーブルに戻すということが現実政治としては必要である。そういう意味において可能な限り低い水準の兵力で我々は話し合いをまとめようではないかということで、第一歩としてそれを特に明示した次第なのでございまして、そのような現実策について御理解をいただきたいと思っておるのであります。  政治倫理の問題につきまして御質問をいただきましたが、今回のサミットにおきましては、民主主義、自由、市民の権利、雇用の機会均等等、これらの民主的自由の問題を一つの大きなテーマにして実行してまいってきたところでございます。このような大きなテーマについて全世界にこの機会に訴えるということは、私は非常に意味があると思っております。なぜならば、我々はプロレタリア独裁には反対しておる立場であるからであります。  次に、政党法の問題でありますが、この政党法につきましては、これは選挙制度あるいは政治資金等との関係において党で御研究を願っておるところでございまして、政倫協その他におきまして各党でも十分御検討願いたいと考えておる次第でございます。  次に、レーガン政権の問題についていろいろお触れになりましたが、今回のサミットにおきましても、平和あるいはソ連との対話という問題につきましては、アメリカは著しく前進してきたと思っております。特に、サミットの前に行われましたアイルランドのダブリン演説におきまして、レーガン大統領は、ソ連と均衡のある核兵器の削減をやろうではないかということを積極的に提議し、そして対話を呼びかけて、首脳会談を辞せず、話し合いをやろうと、そういうことをはっきり明示したということは、私は画期的な前進であると思っております。  なお、そのほかに、開発途上国債務累積の問題につきましても、我々は正式にサミット宣言の中でこれらに対する対策を明示したところでございます。先ほど読み上げたとおりでございます。  高金利の問題につきましては、私はこれが国際収支に及ぼす影響、それから債務累積国の債務がこれによって増幅されるという問題、それからこれが根本策は赤字削減である、そういうような趣旨の発言を強くしてきたのでありまして、高金利の問題に全然日本が触れなかったなどということは全くございません。さればこそ、先ほども申し上げましたように、高金利の問題がサミット経済宣言の中にも特に取り入れられてきておるものなのであります。  失業問題の解決にはならぬではないかという御質問でございますが、米国中心とする景気の回復は、各国の景気の回復を著しく前進させまして、失業問題の解決には非常に役立ってきておるわけであります。アメリカの失業は一〇%を超していたのが、今や七%台に落ちております。また、ヨーロッパにおきましても徐々に解消されております。しかし、何といっても失業問題が一番頭の痛いところであることは事実でありまして、景気をさらに回復して失業問題を解決する必要はあるのであります。  しかし、日本アメリカの場合には、これは私はサミット首脳会議でも言ったところでございますが、ハイテクあるいは流通産業の発展等によりまして、過去十年間にアメリカでは千八百万人の雇用増がもたらされておる、日本は三百八十万人の雇用増がもたらされておるのであります。このように、産業の新しい構造改革、あるいは労働市場の硬直化を是正することによってアメリカ日本のように雇用増をもたらすことができるのだということをサミットの場所におきましても私は主張して、今後ともそのような共同の行動に出るように大きく訴えてきたところなのであります。  飢餓と貧困の問題につきましても、私は強くこれを実は取り上げたところでございます。我々はアフリカからは遠い国であるけれども、座視するに忍びない。日本は既に約一億ドルの金を出しております。しかし、今後とも各国協調してやろうではないかというので、アフリカの飢餓の問題については特にサミットの文章の中に入れてもらいまして、こういう文章になっております。「アフリカのいくつかの地域における貧困と早魃という危急の問題に大きな懸念を有する。我々は、世界銀行により準備されているアフリカのための特別行動計画を非常に重視している。この計画は、対アフリカ支援のための国際社会の共同の努力に新たな推進力を与えることとなろう。」と、こういうふうに言っておりまして、各国ともアフリカの干ばつの問題には力を入れておりますが、さらに我々はこれを正視して対策を講じようという考えに一致したのでございます。  軍事費を削って飢餓と貧困の方に回すべきであるという基本的考えについては、私は全く同感であります。そのような平和な世界を馴致して、そして飢餓や貧困をなくしていくということが人類共通の大きな望みでなければならぬし、責任でなければならぬと思って、着々と現実的な対策を講じまして、その面に向かって今後とも努力してまいるつもりでございます。  以上で御答弁を終わります。(拍手)     ―――――――――――――
  22. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 関嘉彦君。    〔関嘉彦君登壇拍手
  23. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ロンドンサミット会議成果について若干の質問をいたしたいと思います。  今回十回目を迎えましたところのこの首脳会議意義は、自由世界の代表的な国の首脳が一堂に会しまして、それぞれの国の意見の差異は理解しながらも、共同の利害関係を見出し、共同行動の指針を決めることにあると思うのでありますが、その観点からいたしますと、今回の会議におきましても、諸宣言にあらわれた限りにおきましては、決して優をつけるわけにはいきませんけれども、まあ合格点をつけていいのではないかと思いますし、中曽根首相以下出席閣僚がこの会議で果たされた役割につきましても、先ほど総理は、総理としては珍しく謙遜の美徳を発揮されましたけれども、私はまあ合格点を差し上げてもいいのではないかと思っております。  しかし、この合意の表明であるところの共同宣言が、もし口先だけのものにとどまって何ら実行を伴わないといたしますならば、かえって世界の人たちに混乱と失望を与えるのみであります。したがって、会議の真の成果は、今後この諸宣言がいかに具体化されるかにかかっていると言って差し支えないと思うのであります。その観点から、私は総理に対して、日本は今後どのようにこの宣言を具体化していくつもりであるか、その点に重点を置きまして質問いたしたいと思います。  第一の質問は、デモクラシーの価値宣言についてであります。  今日、自由世界がよって立っているところの自由民主主義の政治哲学を要約し、しかも同時に、自由世界はその政治社会体制を異にする国とも平和共存することを望んでいるのだと、そのことを述べた宣言を私は評価するものでありますけれども、今までになく今回初めてこの宣言が発表されるようになった背景及び動機はどこにあるのか、そのことをまずお伺いいたします。  さらに、いま一つは、日本においてこの宣言の言うところの自由民主主義の制度をいかに機能させ、国民のこの制度への信頼を高めていくかということでございます。日本の場合、残念ながら政治家の倫理に対する国民の不信の念、議会政治の非能率性に対する国民の批判の声がようやく高まりつつあるわけであります。これを放任しておきますと、議会制民主主義が土台から崩壊し、この宣言の言葉は空に帰してしまう危険がある。総理は、この宣言の言うところの価値実現をいかにして行うつもりであるか、その点について質問いたします。  第二は、東西関係宣言、すなわち自由民主主義体制を擁護しつつもソ連圏諸国といかにして平和共存を図っていくかという問題についてであります。  国際間の紛争はあくまで平和的に解決する必要があります。しかし、独裁政治の国との話合いが成功するためには、その背後に力がなければなりません。それゆえ、自由世界が東側からの武力侵攻を抑止し得るだけの武力を持つこと、そのことは必要ではありますけれども、しかしそれだけにとどまっていてはならないと思うのであります。その土台の上に立って相互に軍備を縮小し、特に核兵器の全廃に努力しなければならない。東西関係宣言ソ連圏との政治的な対話と長期の協力の探求を呼びかけていることは評価できます。しかし、この冷え切った東西関係実りのある対話回復することは、必ずしも容易ではないと思うのであります。今後、日本としては、どのような基本方針で西側の団結を図りながら東西間の対話促進に寄与していくつもりであるか、そのことをお尋ねいたします。  第三は、東西対立以外の平和の問題でございます。  すなわち、イランイラク戦争以外にも、一触即発の危機をはらんでいるところの中東地方あるいは中南米地方、インドシナ半島、さらには隣国の朝鮮半島にも、あるいは砲声がとどろきあるいはその危険なしとしないわけであります。ロンドンサミットの諸宣言が中東湾岸地方以外の問題に何ら注意を払っていないということは、私は極めて遺憾に存じます。これらの地域の紛争は、東西の対立の影を宿している場合もありまして、日本が果たし得る役割も必ずしも大きいとは言えないのでありますけれども、非同盟諸国とも協力して、これらの地方の平和の回復に応分の努力をすることは日本の義務であると思う。  特に、ペルシャ湾岸諸国に対する石油の依存率がほかの国に比べてずば抜けて高い日本としましては、イランイラク戦争の終結に最大の努力をする責務があると思うのであります。イランイラク戦争の展望はなお流動的でございますけれども、もし停戦が全面的に実現して、その停戦を効果的に守らせるために国際連合から要請があった場合に、日本はその監視のために要員なり器具を派遣して、その平和解決に寄与する用意があるかどうか。また、他の地域でも同じような要請が国連からあった場合に、それに応ずる用意があるのかどうか、これを質問いたします。  最後に、しかしそれに劣らず重要な問題は、経済問題、西側陣営でも必ずしも意見の一致していない経済問題であります。  総理は、南の繁栄なくして北の繁栄はないということを言われました。確かにそのとおりであります。しかし、また同時に、北の不況は南の飢餓を意味すると言えると思うのであります。経済宣言は、不況からの回復参加国の間で定着したと見てよろしいと楽観的に述べております。確かに、昨年に比較いたしましてアメリカの景気が回復し、それとの関連で先進工業国の回復の兆しがあることは事実であります。  しかしながら、慢性的な財政赤字世界的な高金利、欧米の失業の問題、途上国債務累積の問題等々、いわば慢性化したところの病的な体質はほとんど改善を見ていないと言っても差し支えない。経済宣言のそれについての処方せんも極めて抽象的であります。今こそ日米欧三極が思い切った改革による持続的な繁栄を図り、それによって発展途上国経済成長を助けなければなりません。  その点について、日本世界経済回復促進のために、一層の市場開放による経済の自由化、国内需要の拡大による景気回復等々、なすべきことは極めて多いと思うのでありますけれども、それにもかかわらず、最近、閣内あるいは自民党の内部においてその方法について不協和音が見られるように思うのでありますけれども、総理は今後どのような具体的な方法でこの経済宣言に書かれていることを具体化していくつもりであるのか、それを質問して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 関議員にお答えをいたします。  サミットにつきまして御理解ある御発言を感謝いたします。  まず、民主主義宣言が発表された背景と動機は何かということでございますが、ちょうどサミットが十回目になりまして一つの区切りを迎えたときでもあり、かつまた世界的に見て、イランイラク戦争とかあるいはアフガニスタンに対する侵入であるとか、民主主義価値をもう一回ここで再確認して世界に宣揚するということは意味がある、そういう意味におきまして民主主義宣言を発したということであると思いますし、さらに平和と対話必要性もそれと同時にこれを踏まえて行ったということでございまして、自由と民主主義、それから平和と対話というようなものがこれからの世界の構造の大きな柱になるべきであると考えております。  次に、ソ連との対話について御質問をしていただきましたが、先ほども申し上げましたような基本駒立場を堅持して、グロムイコ外相の来日を強く要請しておるところでございます。とりあえずは、議員交流あるいは経済人文化人交流等を通じまして、対話の糸口をさらに拡大していきたいと考えておるところでございます。  次に、中東湾岸地域以外の問題には注意を払っていないのではないかというお示してございますが、そういうことではございません。特に、これは私からも強く主張いたしまして、アジアを見渡しても、イランイラク戦争、アフガニスタンに対する侵入、ベトナム・カンボジア問題あるいは朝鮮半島における潜在的危機、こういうものがアジアにはまだくすぶっておるのでありまして、全世界的規模において武力の不行使や平和と対話回復ということを強く主張すべきであるということであのような宣言にもなったということを申し上げる次第なのでございます。  非同盟との関係を重視するということも同じでございます。前に申し上げましたように、非同盟諸国というものの中には反植民地主義とか反大国主義とか、あるいは民族主義的主張というような新興国が持っておる特性によるものが多いのでございまして、そういう点については我々も十分理解を持っていかなければならないと考えておるところでございます。  次に、国連監視軍あるいは停戦実現のための監視制度等について御質問がございました。  今回のイランイラク紛争につきましては、幸いに、国連事務総長の提案によりまして、国連による検証チームの派遣という形になりました。十五日、国連安使理事会におきまして、国連パレスチナ休戦監察機構の監視員と国連職員で構成することに決定をいたしました。我が国といたしましては、国連より協力要請がある場合には、憲法及び既存の法令の範囲内におきまして可能な限り協力いたしたいと考えておる次第でございます。  次に、経済宣言をいかに実行するかという御質問でございます。  この問題につきましては、日本といたしましては幾多の大きな問題を抱えておりまして、誠実に実行してまいりたいと思っております。  例えば、いわゆるニューラウンド推進の問題がございます。これはできるだけ早期にこの内容、取り組み方あるいはタイミングを決定するという合意が成立しておりまして、これを実現するということは日本自由貿易推進のためにも非常に重要なことでございます。あるいはさらに、発展途上国に対する経済協力等につきましても、ODA予算の増額というような問題も努力してまいりたいと思っておりますし、あるいは債務累積国の問題につきましても、IMF、世銀、IDA、その他の国際機関の充実についてまた我々は努力し、かつまた債務累積問題について問題が起きた場合には、これらの国際機関協調して各国とともに適当な措置協力して行っていくということも大きな仕事であると思っております。  そのほか、経済宣言に盛られました諸項目につきましては、各国とともに誠実に実行してまいりたいと思っておるところでございます。(拍手
  25. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 答弁の補足があります。中曽根内閣総理大臣。    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自由の諸価値に関する宣言の中で、議会政治というものをいかに活性化し、この宣言を具体化していくかという点について答弁漏れがありまして失礼をいたしました。  議会政治の活性化という点につきましては、まず第一に大事なことは、議会政治の重要性及び民主主義、自由というものに対する価値重要性について国民皆様方に十分御理解を願い、そしてはっきりとした自覚を持って議会政治を支持していただくということがまず基本的に大事であると思います。  第二番目には、これに盛られましたような言論の自由、雇用等に対する機会の平等あるいは対話必要性、こういう問題につきまして効果的な措置を講ずるように、各党各派との協力のもとに政策を実現していく必要があると思います。  さらに、これらの中には議会政治の能率性という問題も最近新聞等で指摘されているところでございまして、政治倫理の問題と同様に、この議会政治の効率性という問題についても我々は努力してまいらなければならないと考えておる次第でございます。(拍手
  27. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) これにて質疑は終了いたしました。      ―――――・―――――
  28. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 日程第二 湖沼水質保全特別措置法案趣旨説明)  本案について提出者の趣旨説明を求めます。上田国務大臣。    〔国務大臣上田稔君登壇拍手
  29. 上田稔

    国務大臣(上田稔君) 湖沼水質保全特別措置法案について、その趣旨を御説明申し上げます。  湖沼は、古来人々の生活と生産活動を支えてきたかけがえのない国民的資産であり、現在及び将来の国民がその恵沢を享受することができるようにこれを保全していくことが必要であります。  しかしながら、湖沼の水質の現状を見れば、閉鎖性水域という自然的条件に加え、湖沼周辺で営まれている生活及び生産活動に起因する汚濁が近年特に著しく、その水質の改善を図るためには、水質汚濁防止法による排水規制等の従来の制度では不十分な状況にあります。  この法律案は、こうした状況にかんがみ、湖沼の水質の保全を図るため、湖沼水質保全基本方針を定めるとともに、水質の汚濁に係る環境基準の確保が緊要な湖沼について水質の保全に関する計画の策定及び汚水その他の水質の汚濁の原因となる物を排出する施設に係る必要な規制を行う等の特別の措置を講じようとするものであります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、湖沼水質保全基本方針の策定であります。国は、湖沼の水質の保全に関する基本構想等を内容とする湖沼水質保全基本方針を定めることといたしております。  第二は、指定湖沼等の指定であります。内閣総理大臣は、水質の保全に関する施策を総合的に講ずる必要がある湖沼を指定湖沼として、指定湖沼の水質の汚濁に関係のある地域を指定地域として定めることといたしております。  第三は、湖沼水質保全計画の策定であります。都道府県知事は、湖沼水質保全基本方針に基づき、指定湖沼ごとに、湖沼の水質の保全に関する方針、下水道の整備その他の湖沼の水質の保全に資する事業に関すること等を内容とする湖沼水質保全計画を定めることといたしております。  第四は、指定湖沼の水質の保全に関する特別の措置であります。  その一は、指定地域内の工場または事業場に係る排出水の排出の規制であります。従来の濃度規制のほか、都道府県知事は、指定地域内の工場または事業場について、排出水に関する汚濁負荷量の規制基準を定め、水質汚濁防止法の特定施設等の新増設に係る排出水がこの規制基準に適合しないと認めるときは、改善その他必要な措置をとるべきことを命ずることができることといたしております。  その二は、みなし特定施設に係る排出水の排出の規制であります。一定規模以下の浄化槽等、湖沼の水質にとって生活環境に係る被害を生ずるおそれのある汚水等を排出する施設として政令で定める施設を水質汚濁防止法の特定施設とみなし、同法の規定を適用することといたしております。  その三は、指定施設の設置の届け出等であります。一定規模以下の畜舎等、排水基準による規制によりがたいものとして政令で定める指定施設を設置しようとしている者等について、届け出の制度を設けるとともに、都道府県知事は、その者が構造等の基準を遵守していないと認めるときは、改善の勧告、さらには、命令することができることといたしております。  その四は、汚濁負荷量の総量の削減であります。人口及び産業の集中等のため、排水規制等によっては水質環境基準の確保が困難な指定湖沼については、汚濁負荷量の総量を削減するための措置を講ずることといたしております。  その五は、指定湖沼の水質の保全に資するよう、緑地の保全その他湖辺の自然環境の保護に努めなければならないとしていることであります。  以上のほか、湖沼の水質の保全を図るために必要な指導、援助、関係行政機関の協力等について所要の規定を設けております。  以上が湖沼水質保全特別措置法案の趣旨でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  30. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。菅野久光君。    〔菅野久光君登壇拍手
  31. 菅野久光

    ○菅野久光君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました湖沼水質保全特別措置法案について、内閣総理大臣並びに関係大臣に対し、その所見をお伺いいたします。  我が国は、亜寒帯から亜熱帯にまたがる大小さまざまな島々からなり、屈曲に富んだ海岸線、起伏に富んだ地形、そして日本特有の四季の変化によって美しい景観を生み、恵まれた自然環境の中で多種多様な動植物相を育ててきたことは申すまでもありません。  しかるに、この美しい自然環境が破壊され、汚染されて公害列島と化し、まさに危機的状況にあります。  特に湖沼は、その自然的条件からして閉鎖的であることに加え、工場廃液、残留農薬、生活雑排水、酸性雨など汚染された水が今現在も絶え間なく流入し、その汚染度を増しているのであります。また、全国湖沼の過半数は環境基準すら達成しておらず、さらに、百四十を超える湖沼が富栄養化問題を抱え、水産被害、飲料水の異臭、自然景観の破壊などに見舞われている状況にあります。全国的に見れば比較的自然環境が保たれている北海道においてさえも、阿寒湖、網走湖などでは依然環境基準は達成されておらず、アオコの発生が見られるのであります。我が国湖沼の現況を一言で言うならば、国富みて山河死すと言っても過言ではありますまい。  かかる湖沼の危機的状況を招いた最大の原因は、長年にわたる無計画な経済成長政策と、利潤追求にのみ目がくらみ、予測された環境汚染に対する対策を怠った歴代自民党政権の誤った施策の結果であると言わなければなりません。  環境破壊は、人類の生存に重大な影響を与えることは申すまでもありません。このような事態に対処するためには、国を挙げて一大決意をもって臨まなければ、湖沼を含め日本の自然環境の悪化を防ぎ、美しい自然をよみがえらせることは不可能であります。  そこで総理、第一に、現在我が国における環境汚染についての総理の認識についてお伺いをいたします。  今や我が国における環境汚染は相当深刻な状況にあり、生態系が破壊されつつあって憂慮すべき事態であると思います。淡路島のモンキーセンターにおいて、えづけされた猿から生まれた奇形猿の問題を御存じだと思いますが、同じ食べ物を食べている人間に影響がないとは言えないと思うのであります。環境汚染の問題は、まさに民族の、人類の生存にかかわる問題であると思いますが、総理はどのように認識され、どのように対応されようとしているか、お伺いいたします。  第二に、環境保全に関する総理の基本姿勢についてお尋ねしますが、あなたは花と緑で人の印とか、緑豊かな自然環境とか、スローガンめいたことを言われますが、ここで総理の自然観についてお述べいただきたい。  あなたは、道路の中央分離帯に植えられた花や、ビルの屋上の植え込みを自然の中に入れてお考えでしょうか。庭園に植えられた松は自然でしょうか。自然とはそういうものではないと思うのであります。自然が豊かとは、そこに生存している生物の種類がいかに多いかということだと思います。生物を分解する腐敗菌、分解された生物を肥料や餌として成長する昆虫や植物、それを食物とする動物など、すべてを含めて自然があるのです。そういう生態系を無視して一部だけを切り取った花と緑では、むしろ自然破壊と同義語と言えると思うのですが、いかがでしょうか。  第三に、花と緑で人の和をとおっしゃいますが、人の和が環境保全にどのようにかかわり合うのか、御説明いただきたい。  人の和が大切なことは言うまでもありませんが、和ということで少数者を否定したり切り捨てた上での和であってはなりません。経済開発に反対する、自然を愛し守ろうとする人々を排除するための和ではないのか、お聞きしておきます。  第四に、いわゆる環境アセス法案の再提出についてであります。  総理は、四月十九日の衆議院本会議において、各方面と調整中であると答弁されております。しかし、今国会召集以来六カ月を超えているというのにいまだに結論が出ていないとするならば、いかように弁解されようとも、怠慢そのものであるか、あるいは故意に結論を引き延ばしているかのいずれかでありましょう。ここで、今国会で法案を成立させる意思があるのかどうか、お伺いいたします。  次に、環境庁長官にお尋ねいたします。  湖沼の環境問題については、昭和五十六年一月、中央公害対策審議会から環境庁長官に、「湖沼環境保全のための制度のあり方について」という答申が提出されたのは御存じのとおりであります。また、昭和五十七年には参議院公害及び交通安全対策特別委員会において、湖沼環境保全対策の促進に関する決議が自民党を含む全党一致で行われ、その中において、「中公審の答申の趣旨に沿って湖沼環境保全のための法制度を確立」すべきことの意思表明がなされ、政府はこれに対して十分に努力することを約束した経過があります。しかるに、今回提出された法案と中公審の答申を比較すると、各所に対応の後退が見られるのであります。時間の関係上、幾つかの点に絞って長官の所見をお伺いいたしたいと思います。  第一に、本法案は、その名の示すように湖沼の水質保全に限定し、湖沼周辺の環境保全についてはこれを削除した点であります。その理由として、環境庁は、湖辺の環境保全を図るためには、自然環境保全法とか自然公園法など現行諸制度を活用すれば足りるとしているようでありますが、だとすれば、現在までにこれらの現行法を大いに活用し、湖辺の環境は保全されているはずであります。しかし、現実は違います。湖辺の環境は日々悪化してきているからこそ、湖沼の環境保全が問題になってきているのではありませんか。本法案のように水質保全に限った対応は、現状認識を欠いたものであり、本質的な対応策にはならないと考えますが、長官の御見解をお伺いいたします。  第二に、中公審答申では新増設の工場等については許可制とするという答申に反して、本法案では届け出制になっていることは明らかに後退であると考えますが、長官の見解をお伺いいたします。  聞くところによりますと、その理由として、湖沼の集水域においては工場、事業場の汚濁負荷の割合が低いとか、中小規模の事業者が多いとかの理由から届け出制にしたのだと説明しているようでありますが、全く理由になっておりません。許可制より届け出制の方が湖沼の水質、環境保全上、より効果的だという明確な根拠を示していただきたいと思います。  さらに、この法案では、既に活動している工場、事業場については規制の対象にしていないが、現在の湖沼の汚れの一端は現在動いている工場、事業場等が原因をなしていることは明白であります。それらを対象としないで、これから新増設するものだけを対象として湖沼のよみがえりを図ることが本当にできると考えるのかどうか、お伺いいたします。  また、本法案では、全国で数百を超える湖沼の中から汚れの著しい湖沼に限定して、これを指定湖沼とし、規制の対象にしようとしておりますが、何カ所ぐらいと予定しておりますのか。指定外の湖沼についてはどのように対応していくつもりであるのか。現に環境基準に達していない湖沼で指定の対象とならないものについては、どのような方法で汚濁を食いとめる考えでいるのか、お伺いいたします。申すまでもなく、湖沼は一度汚濁が進行すると、もとに戻すのは容易なことではありません。汚れが著しくなる前に手を打つことこそ緊要であると考えるのであります。  第三に、湖沼の富栄養化対策として、その要因物質である窒素及び燐について昭和五十七年十二月に環境基準が設けられていますが、排水基準については現在中公審に諮問中で、一年半も放置されたままになっています。当初一年程度で結論を出すと言われていたのが、なぜおくれているのか。また、その結論はいつごろ得られ、具体的に排水規制が実施されるのはいつになるのか、見通しをお伺いいたします。  第四に、本法案に基づく各種の施策の実施に当たっては多額の費用が必要であり、全国湖沼環境保全対策推進協議会においても、「既に補助の対象となっている事業について、事業費の大幅確保、国庫補助率および補助単価の引上げならびに補助対象わくの拡大を行うこと」などを盛り込んだ決議がなされております。また、中公審の答申でも、「国は地方公共団体に対し、財政上できる限りの援助措置を講ずべきであり、」としておりますが、本法案は、これらを一切無視して財政援助にかかわる規定は置かず、「助言その他の措置」という条文しか起こさなかったのであります。このようなことで本法の目的達成できると考えておられるのか、所見をお伺いいたします。  特に、地方公共団体に対する財政援助なしという点はまことに重大な問題であります。例えば、琵琶湖を抱える滋賀県が国に対してかねてより次の施策を切望してきたことは御承知のとおりであります。すなわち、湖沼の環境保全対策に要する費用について、地方公共団体に対する補助制度を創設拡充するとともに、国、上・下流を含めた新たな費用負担制度を創設してほしいというのであります。また、湖沼の汚染ワースト一位の手賀沼、二位の印旛沼はいずれも千葉県でありますが、千葉大学が県に協力し、この七月から二つの沼について総合的な調査研究を始めようとしております。この千葉大学のプロジェクトは、全学部を横断する約六十人の研究者が参加するという大がかりなものですが、これまた国の財政援助の裏づけがありません。  以上、滋賀県と千葉県を例にとりましたが、政府としてどのように対応する方針でありましょうか、また、その際この湖沼法はどんな役に立つのでしょうか、お伺いいたします。  では、環境庁長官に対する最後の質問として、科学的見地から答弁をいただきたい。  すなわち、現在湖沼の危機が叫ばれておりますが、この法案が成立し、規制が実施されることにより、その効果をどの程度考えておられるのか。よもや、法の効果のことよりも、周囲の顔色をうかがってできた法案だから効果のほどは予測できませんなどとはおっしゃらないと思いますが、長官の明確な答弁をお願いいたします。  次に、建設大臣にお尋ねいたします。  第一に、湖沼は、申すまでもなく河川法の適用を受けることになっておりますが、いわゆる一般河川と異なり、湖沼は水の滞留時間が長く、一般の流水部分としての河川とはおのずとその性質が異なっております。にもかかわらず、さらさら流れる河川も、水をたたえて動かない湖沼も、同一法規で「流水の正常な機能の維持」という目的から管理しようとしているところに無理があるのではないかと考えます。すなわち、河川法のみでは、いわゆる湖沼の水質並びに環境保全という観点からは極めて不十分であり、むしろ湖沼を河川法の対象から外して湖沼管理に関する特別法をつくるなり、あるいは河川法の目的規定等を改正して、湖沼の自然環境を保全できるような措置をとるべきではないかと考えますが、建設大臣の御所見をお伺いいたします。  第二に、湖沼が閉鎖性を有することから、長年にわたる土砂、廃棄物の流入によりヘドロの堆積が著しいと考えられますが、全国湖沼のしゅんせつ計画はどのようになっているか、お伺いいたします。  次に、厚生大臣にお尋ねいたします。  アメリカ政府の専門機関がまとめたレポート、「西暦二〇〇〇年の地球」の「水資源予測と環境」の中で、「水にかかわる病気が今世紀の残存期間中に大流行することは、ほぼ確実になってきている。」と述べられています。今世紀の残存期間といえば、残りはわずか十六年しかありません。私たちの日常生活に欠かせない水が、汚染されている河川や湖沼を水源地として飲み水など生活用水や食品工業などに使われていることを考えたとき、慄然としつつ、残念ながらあり得べきことと思わざるを得ないのであります。水問題は直接健康問題であり、民族の将来にかかわる最も重要な問題であります。厚生省として今日の水問題をどのようにとらえ、どのように考えておられるか、大臣の御所見をお伺いいたします。  最後に、このように多岐にわたる水問題を、現在のような各省庁ごとの対応では抜本的、根本的な解決は到底でき得ないと思うのであります。今回提案されている法案も、関係各省庁の調整が難航したと仄聞しております。そのことが、結果的に中公審の答申からははるかに後退した内容になってしまったものと思います。大事な水の問題です。総理、水関係の部門を統合した機構を一日も早くつくり、きれいな水、きれいな環境をよみがえらせて国民の不安を取り除くことが肝要と考えますが、いかがでしょうか。総理の御所見をお伺いして質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  32. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 菅野議員にお答えをいたします。  環境汚染の現状及び将来の見通しいかんということでございます。  環境状況は、近年、一時の危機的状況から一応脱して、全般的には改善が顕著なものがあると思います。特にNO2あるいはSO2等につきましては、大体九八%から九九%程度まで回復されておるということであります。問題は、粉じんであるとか、それから閉鎖性水域等に大きな問題が残っております。したがいまして、これらの点について今後とも大いに力を入れたいと思っておるところでございます。  日本人は、元来自然を愛する国民でございまして、天地と一体、万物と同根という哲学を持っておるところでございます。自然を大事にせずしていかにして子孫に相まみえんやと、そういう気持ちで努力してまいるつもりであります。  次に、環境政策に関する基本姿勢でございますが、汚染の防止及び自然の保護というものを積極的に努力する必要があり、特に二十一世紀までを見通した、先取りした問題として取り組んでいく必要があると思います。過般のロンドン宣言におきましても、この環境問題というものは一項目掲げられまして、世界的にも協力すべきであるということが確認された次第でございます。  次に、環境に熱心な人々、コミュニティー、全力を挙げて行うべきであるというお考えにつきましては、全く私も同感でございます。積極的に国民皆様方に御参加を願い、また政府としても広報、啓発に努めるほか、国民各層の一致した御協力のもとに、永続的に末長くこの努力を継続していくべきであると思っております。  アセス法案につきましては、今、党内におきまして各方面との調整に努力しておるところでございます。  水問題という問題は大問題でありますが、これが行政機構につきましては、治水、利水、環境等多様な側面を有しており、それぞれの政策目的に応じて所管省庁等によって対処されることが適当であり、その間、各省庁間の連絡を密にして、水に関する行政を円滑に実施してまいりたいと思う次第でございます。  あとの分は長官から御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣上田稔君登壇拍手
  33. 上田稔

    国務大臣(上田稔君) 菅野議員の御質問に対しましてお答えを申し上げます。  第一の質問は、湖沼周辺の環境保全を削除して水質保全に限定した対応策であるが、本質的な解決を望むことができるのか、その見解はどうだ、こういう御質問でございます。  湖沼を取り巻く環境問題の中で最も深刻なものは、湖沼の水質汚濁の進行どこれに伴ういろいろな障害でございます。これが一番緊急を要する湖沼の水質保全を中心としてこの湖沼水質保全特別措置法案を取りまとめさせていただきましたゆえんのものでございます。  いろいろ先生がまた、環境保全というものを削除したじゃないか、だから後退ではないかと、こういうことでございますが、決して後退というようなことを考えておりませんで、今の水質が悪くなってきておりますのは、特に生活雑排水というものが非常に大きくなってきておる。そういうことでございますので、それをとにかく抑えて、そうして水質をよくしていこうじゃないかということでございますので、この法律を成立をさせていただきまして、根本的な解決を図るようにしていきたいというふうに考えておるのでございます。  次に、第二の質問といたしまして、新増設の工場等が許可制ではなく届け出制になったのは後退ではないかと、こういうことでございます。  現在、湖沼の周辺に立地いたします工場というのは大体中小規模のものが非常に多うございますし、その汚濁をする原因になる量と申しますか、そういうものが比較的大工場に比べまして低うございますので、そうして生活雑排水から来る汚濁というようなものに比べて低うございますので、これは水濁法のときに届け出制をとらせていただいて効果を上げておるのでございますが、そういうことを受けまして届け出制にさせていただく、こういうことにしたのでございますので、この点をひとつ御理解いただきたいと思うのでございます。決して後退とは考えておりません。  それからまた、水質環境基準が確保されておらない、または確保されないことになるおそれが著しい湖沼であって、水の利用状況、それから水質汚濁の推移から見て特に水質保全施策を総合的に講ずる必要のある湖沼を指定させていただくのでございまして、今考えておりますのは、琵琶湖であるとか霞ケ浦であるとか、あるいは手賀沼であるとか印旛沼であるとか、あるいはまた相模湖であるとか、そういうようなものを考えておるのであります。  それから次に、指定湖沼以外の湖沼につきましてどういうふうに考えていくかということでございますが、湖沼につきまして必要ができてまいりましたら、これはもちろん指定をして適切にやっていく考えでございます。ひどくならない周に早く手を打ってまいりますので、常に調査をいたしますから、どうぞその点は御心配なくお願いをいたしたいと存じます。  それから、窒素、燐の排出基準につきまして、これはいつごろその排出基準が決まるのだと、こういう御質問でございます。  これにつきましては、先生御指摘のとおり、今中公審に御審議をいただいておるのでございますが、その答申はこの夏ごろに得られるのじゃなかろうかと思うのでございますが、それを受けまして、そして今これから御審議をいただこうというこの法案が成立をいたしまして、そして施行されるそのときまでには必ずこれを定めさせていただきまして、ともに働いていくようにさせていただきたい、そういう決意でございます。  それから第四問といたしまして、地方公共団体への財政援助はどう考えておるのかということでございますが、この琵琶湖を例にとりましても、計画を立てさせていただいて、それに基づいてやっていただいておるというのが今の現況でございますけれども、この法律によりまして計画を立てていただきましたならば、それは必ず関係閣僚会議にかけさせていただきまして、各大臣にも十分にこれは理解をしていただいて了解をいただきまして、それに基づいて実行をしていく、こういう考え方で進ませていただきますので、非常に強力にひとつやらせていただきたいということでございます。そういうことで地方の公共団体の方にも喜んでいただこうと、こういうことでございます。それから援助の努力も規定されておりますので、そういう点もひとつ御理解をいただきたいと存じます。  それから、湖沼法の効果でございますが、この効果につきましては、これは私どもは水質基準の確保の必要な湖沼につきまして、下水道の整備を大いに促進していただきまして、いろいろな汚濁源に対する特別の規制等をやらせていただきまして、総合的に、計画的にでき上がるというところにこの法律の効果があるわけでございます。先ほどの各大臣にも相談をいたしますから皆認めていただくということになるわけでございますので、非常に効果があるわけでございます。総理大臣もこれはこの計画をちゃんと御承認をいただく、こういうことでございますので、どうぞひとつその点もお願いを申し上げたいと存ずる次第でございます。  また、その効果でございますけれども、この湖沼の汚濁というのは急に、何といいますか、ある工場ができて、そして急にばあっと湖が悪くなるというような、そういうこともないことはないですけれども、今の日本の湖沼におきましてはそういう例がございません。ということは、湖沼の汚濁というものは非常に長時間かかって起こってくるということでございます。したがいまして、これをもとどおりにしていくということはまた長時間を要するというのも、これがまた自然の理でございます。したがいまして、この法律を成立させていただきまして、この法律によりまして計画を立てていただいて、その計画を実行していく。そういうことによって、今汚濁の進行をしておる状態の湖沼、それをとめさせていただくとともに、だんだんと今度はよくしていくということに移っていかせていただこうと、こういうことでございますので、余り早急の特効薬というわけにはまいりませんけれども、これは慢性的に治させていただくという、つまり漢方薬というようなものでございます。(拍手)    〔国務大臣水野清君登壇拍手
  34. 水野清

    国務大臣(水野清君) 湖沼を河川法で管理することは無理があるのではないかという御質問でございますが、河川は上流から河口まで水系として一貫しており、この管理は湖沼を含め一体的に行う必要があることから、河川法では湖沼につきましても河川の一部としてその管理を行っているところでございます。また、河川法による河川の管理は、河川の持つ諸機能を十分に発揮させるように行うこととされており、湖沼を含む河川の環境の管理も当然その目的、内容に含まれているものでございます。  次に、湖沼の環境保全について特別立法ないしは河川法の抜本的改正を行うべきではないかという御質問でございますが、本法案は、閉鎖性水域である湖沼の特殊性から、水質の保全に関し、汚濁源対策として特別の措置を定めようとするものであります。本法案による措置と相まって、良好な湖沼の環境の保全が図られるように、河川法による水及び空間の環境管理を適正に行ってまいる所存でございます。  さらに、湖沼のしゅんせつ計画についての御質問でありますが、湖沼には流入河川からの汚濁物質が流入し、それがヘドロとなって湖沼の水質の悪化を招いている事例が多く見られているところであります。したがいまして、特に水質悪化の著しい湖沼におきましては、河川環境管理の一環といたしましてしゅんせつ計画を立て、計画的に湖沼のヘドロしゅんせつを実施しているところでありますが、今後とも努力をいたしてまいる所存でございます。(拍手)    〔国務大臣渡部恒三君登壇拍手
  35. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 飲料水等の生活用水の安全性確保の問題については、国民の健康の保護の観点から極めて重要な問題と認識しております。そのため、従来から衛生的な水の供給のため水道の普及と水源の確保を図るとともに、国民の皆さんが常に安心して飲める水質基準を定め、水質検査の定期的な実施等を行っております。  今後とも水質汚染の実態等に配慮し、水質基準の充実、監視の強化等により水道水の安全性の一層の確保に努めてまいります。  また、生活用水の安全性確保のためには、河川、湖沼、地下水等の水質保全が不可欠であることは御指摘のとおりでございます。そのための対策が適切に講ぜられることが必要であると考えております。  以上でございます。(拍手
  36. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時一分散会