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1984-03-09 第101回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月九日(金曜日)    午前十時三十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第七号     —————————————   昭和五十九年三月九日    午前十時 本会議     —————————————  第一 法人税法の一部を改正する法律案租税   特別措置法の一部を改正する法律案及び所得   税法等の一部を改正する法律案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      —————・—————
  2. 木村睦男

    ○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。  日程第一 法人税法の一部き改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案趣旨説明)  三案について、提出者趣旨説明を求めます。竹下大蔵大臣。    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  3. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案趣旨を御説明申し上げます。  まず、法人税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  法人税につきましては、現下財政事情等に顧み、延納制度を廃止するほか、課税の公平を一層推進する等のため、所要措置を講ずることといたしております。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  租税特別措置につきましては、現下の厳しい財政事情に顧み、臨時措置として法人税税率引き上げ等を行うとともに、租税特別措置整理合理化を進めるほか、所要措置を講ずることといたしております。  以下、その大要を申し上げます。  第一に、法人税税率を二年間の臨時措置として一・三%引き上げることといたしております。ただし、中小法人等に対する軽減税率につきましては、一%引き上げることといたしております。  第二に、法人税欠損金の繰り戻しによる還付制度につきまして、二年同原則としてその適用を停止することといたしております。  第三に、エネルギーの効率的利用中小企業事業高度化に資する設備等につきまして、所要投資促進措置を講ずることといたしております。  第四に、土地・住宅税制につきましては、一定の要件に該当する民間の再開発事業に係る買いかえの特例、二年間限りの措置として住宅取得資金に係る贈与税特例を設ける等の措置を講ずることといたしております。  第五に、企業関係租税特別措置等につきましては、所要整理合理化を行うことといたしております。  その他、普通乗用自動車等に対する物品税軽減税率を〇・五%引き上げるほか、所要措置を講ずることといたしております。  次に、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  所得税につきましては、最近における所得税負担状況等にかんがみ、その負担軽減を図るため、初年度八千七百億円に上る所得税減税実施するとともに、課税の公平を一層推進するための措置を講ずることといたしております。  以下、その大要を申し上げます。  第一に、所得税減税につきましては、基礎控除等人的控除をそれぞれ現行の二十九万円から三十三万円に引き上げるほか、給与所得控除につき所要の拡充を図ることといたしております。これらの改正により、給与所得者課税最低限は、夫婦と子供二人の四人世帯の場合で二百三十五万七千円となります。  第二に、所得税税率につきましては、その累進構造を全体として若干なだらかなものとすることといたしております。  第三に、配偶者控除等適用要件である給与所得等所得限度額を、現行の二十九万円から三十三万円に引き上げるほか、所要措置を講ずることといたしております。  第四に、課税の公平を一層推進するため、事業所得等を有する者の帳簿書類の備えつけ制度及び総収入金額報告書提出制度を設ける等の措置を講ずることといたしております。第五に、災害被害者負担軽減するため、所得税の減免を受けることができる災害被害者所得限度額等を五割引き上げることといたしております。  以上、法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)     —————————————
  4. 木村睦男

    ○議長(木村睦男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。竹田四郎君。    〔竹田四郎登壇拍手
  5. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました所得税等改正案など三法律案につきまして、総理並びに関係大臣質問いたします。  中曽根さん、あなたは昨年暮れの総選挙の結果を見て、国民の審判を厳粛に受けとめると、こう言いました。また、国民の声に謙虚に耳を傾けると言って、予算編成前に野党各党首とも会談をなさいました。しかし、今回具体的に予算修正要求案となって文書で出てまいりますと、あなたは一つとして聞き入れようとしておりません。あなたは言葉は極めて巧みでありますが、最後のところへ来ると、自分のメンツ最優先の、例の独善的だなと思われる中曽根式スタイルが今度も出てきたなという感を深くするものであります。  まず最初に、昨夜遅く自民党から口頭でありました衆議院における予算修正最終回答について、私ども社会党は極めて不満であり、了承するわけにはまいりませんが、審議はこれを軌道に乗せることにいたしました。自民党回答について中曽根総理自民党総裁竹下大蔵大臣確認を求めておきたいのであります。  その一つは、パートタイム労働者減税についてであります。  自民党側回答は、「減税については、給与所得控除制度基本的枠組みを害さない範囲においてその引き上げ方について協議し、その結果を議員立法により措置する。引き上げ幅は二万円とする。議員立法は、恒久的なものであり、五十九年中に、今国会中を含め成立を期する。」とありますが、政府もこれをはっきりと確認するかどうか、お伺いしたいのであります。  その二は、今国会を含め、今年中に臨時国会を開き、自民党から給与所得控除額最低額を五十七万円とするとの法案を必ず提出することを約束するかどうか。このことは、給与所得年収百四十二万五千円以下の者にすべて適用することになるのかどうか、お伺いいたします。  その三は、その他の事項、すなわち医療保険制度の改革、酒税物品税児童扶養手当最低所得税率一〇%据え置き問題あるいは公共投資中小企業投資減税、仲裁、人勧実施等についての野党要求についても、本年度中に前向きの結論を出すよう引き続き真摯に協議することを保証するかどうか。また、関係委員会自主性を十分に尊重するかどうか。総理総裁確認を求めたいと思います。  第二に、政府は、現行財政法違反赤字国債を発行し続けて十年、財政再建を唱えて数年たちましたが、何一つ解決することなく、ますます悪化しております。  二年前に我が党を中心とした野党所得税一兆円減税要求してようやく実現したのが昭和五十八年内減税千五百億という超ミニ減税にすぎませんでした。そして今回も、一般減税八千三百億円にとどまっており、課税最低限標準世帯サラリーマンで二百三十五万七千円であって、我が党の所得税一兆四千億円の減税課税最低限二百六十万円への引き上げ要求とは大きくかけ離れております。しかも、一方では、酒税など間接税大幅増税中小法人への負担増を強いており、景気回復への道を険しくしているのであります。  そこで、まず総理にお尋ねいたしたい。国民は長年にわたって、実質増税を食いとめてほしい、減税による内需拡大を熱望していたのであります。しかし、政府が公約してきた増税なき財政再建は完全にほごにされ、「財政再建なき増税」が実現されるのではないかと国民は見ております。国民のかかる判断は誤りであるのかどうなのか、総理お答えを願います。  次いで、総理大蔵大臣経企庁長官にお伺いいたします。  総理は、自分の任期中に大型間接税導入しないと我が党の和田静夫議員に答弁をなさいました。大蔵大臣は、いわゆる一般消費税(仮称)は否定しているが、課税ベースの幅の広い間接税勉強していると、大型間接税導入を示唆しております。そして経企庁長官は、大型減税、それも四兆円規模の減税を唱えて景気回復を主張しているのであります。一国の総理財政最高責任者経済運営最高責任者が三人三様の意見を述べ、財政政策についても自分勝手な構図を発表しております。閣内不統一ということだけでは済まされない問題でありますが、お三方の弁明を求めます。  第三に、ここで国債大量発行の継続によって将来の我が国財政構造に重大な変化を生じ、そのひずみがますます拡大していくであろうことを指摘し、それに対する政府の対応を求めるものであります。  最近の国債残高の累積に伴い、国債利払いが急激に増加し、五十九年度においては八兆三千九百七十四億円で、公共事業費をはるかにしのぎ、社会保障費九兆三千億円、地方財政対策費九兆七百億円にも迫る状況となっております。そして六十年度には、社会保障費をも上回ることになるでありましょう。国債利払い、それは、国民一般から徴収した税金を国債所有者利子として支払うパイプが急激に膨張してまいりました。国債所有者という金持ち層への資金配分の流れが急激に拡大しているということであります。  言うまでもなく、財政機能として最も重視されなければならないのは所得の再配分機能であります。ところが、好むと好まざるとにかかわらず、利子支払い費の増大によって、現在の我が国財政所得の逆再配分が行われていると言わざるを得ません。したがって、財政機能回復のために最大の眼目として、その是正を図るための所得税総合課税化、大企業への補助金の交付の一時停止や特別措置の思い切った整理社会保険診療報酬特例廃止等不公平税制の抜本的な是正を行わなければなりません。保しかるに、今回の減税内容は、超高所得層適用税率引き下げ、中・低所得層に大きな影響のある最低税率引き上げるという全て不可解な措置を講じているばかりではなく、不公平税制に何ら手がつけられておりません。標準世帯給与所得佃百万円以下の層は、全体の四分の三を占めておりますが、間接税公共料金引き上げによる負担所得税減税分を完全に吹っ飛ばしてしまっているわけであります。所得配分機能をどう回復しようとするのか、説明を求めます。  第四に、このように財政再建緊急課題となっているもとで、公平確保観点から利子配当課税が適正になされることが必要であります。  ところが、グリーンカード制実施は三年間の凍結という事実上の廃止決定が、自民党の暴挙によってなされております。総理は、税制調査会具体策をつくるよう指示していると思いますが、利子配当所得課税をどのように考えているのか、方針をお聞かせいただきたいのであります。私は、とりあえず五十九年度は、源泉徴収税率及び源泉分離選択課税税率をおのおの五%程度引き上げるべきであると考えますが、総理大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。  また、今後の方向として、現行優遇制度零細預金者の保護や高齢化社会進展という立場から是認さるべきとは思いますが、その場合も所得制限を設けるべきであると考えますが、あわせてお伺いをいたします。  次に、今回の法人税引き上げによって実効税率は五三%となり、西ドイツに次いで高くなるということでありますが、今回もテクノポリス促進法に基づく投資減税などきめ細かい税の優遇措置が講じられており、実際の法人税負担率はそれよりも一〇%ポイント程度低いのであります。  そこで、退職給与引当金など各種引当金準備金を思い切って整理すべきでありましょう。また、欠損法人法人税課税を免れるという制度も改めるべきであると言えましょう。また、赤字佳人といえども行政サービスを受けており、その営業活動を通して費やす社会酌コストにみずからが支弁すべきであり、赤字独人だけでも売上高に着目して低率の課税を行うべきであります。また、大法人については法人税率累進構造を取り入れるべきでありますが、大蔵大臣の御所見を伺いたい。  次に、納税環境整備についてであります。  その一環として、記帳や記録に基づく申告資料収集制度整備課税処分取り消し訴訟における証拠申し出など法定化しようとしておりますが、これらは国税通則法改正案でありますから、年度末に成立が急がれている所得税等改正法案からは切り離し、十分な審議をし、納税者理解と納得を得るべきでありまして、どさくさ紛れに通過させることをしないようにすべきではないか。この際、切り離しを強く要求いたします。  法人税にせよ、所得税にせよ、いずれも我が国では他の先進国と同様に自主申告基本にしております。記帳に基づく申告などは法的に規律すべきではなく、納税者の自主的な記帳慣行を定着させることこそ大切であります。むしろ、国は青色申告のごとく記帳誘導をすべきであります。今日、国民の多くは、記帳義務法制化によって将来国税当局推計課税を行い易くなる、挙証責任納税者に求めるようになるとの心配が高まっております。今回の措置は時期尚早と言うべきであります。大蔵大臣見解を求めます。  また、徴税面においても、ここ数年所得税法人税などのごまかし所得が露見し、それに伴う告発件数も増加の一途をたどっております。税務職員が少ないため、実調率も極めて低水準であります。低実調率をそのまま放置することは、正直な納税者納税意欲を減退させることにもなりかねません。そこで、国税職員の定員問題についてはどのような御所見をお持ちか、伺いたいのであります。  また、最近十年間で還付申告件数が三倍にもなっているということであり、しかも、その大部分サラリーマン医療費控除によるものであると言われております。それによる国税職員事務負担も膨大なものがありますが、医療費控除を年末調整の対象にすれば、これが一挙に解決され、また、副次的な効果として、医療に係る領収書受領慣行が定着し、不透明な国民医療支出が明確化されることにも在ると考えますが、大蔵大臣の御所見をお伺いいたしたい。  納税国民の協力と信頼のもとに行わなければなりません。ところが、税法は、特に租税特別措置は全くの難解であります。今回の改正案等で、法人税率の一・三%引き上げ所得税最低税率〇・五%引き上げなど中途半端な数字を取り入れ、税額算出を面倒にしているし、物品、切手の免税点引き上げ大型自動車軽減税率ども予定しておりますが、印紙税法物品税法そのものを見ても実際の税率がわからない仕組みになっております。このほか、揮発油税自動車重量税現行税率本法を見てもわからないようになっているのであります。つまり、現行租税特別措置法では税の特例を一括して規定しており、税体系それ自体を難解にしていると言えるのであります。  そこで、現行租税特別措置を解体し、必要とされる措置に限ってそれぞれ本法に組み入れ、税体系を交通整理することが必要であると思いますが、総理並びに大蔵大臣の御所見を承りたいのであります。  最後に、先週末から外国為替相場が大きく円高に動き始めました。確かに今日まで、日本経済のファンダメンタルズがよいにもかかわらず円安が続いておりました。その上、米国の高金利が資本の米国への大量流入をもたらし、ドル需要を高めていました。このために佃本金融政策も機動的な運用をすることができず、長期金利も高どまりし、民間設備投資を阻害し、日本景気回復をおくらせるという大きな要因にもなっておりましたし、ドル高円安米国の対日貿易赤字の一因でもあったが、日本の対米輸出が大きく国内景気を引っ張ってきたことも事実でありました。  今度の円高の動きは、金利政策の面から経済活性化に役立つことを強く期待するものでありますが、政府は最近の外為相場をどのように受けとめているのか、そしてこれを契機に公定歩合や長期金利引き下げに積極的に行動していく御意思があるかどうか。また、ドル安円高輸出関係中小企業大型商社の倒産で荒れている貿易関係にどういう影響をするのか。また、さきの原油五ドルの値下げにも電力料金ガス料金引き下げがなかったわけでありますが、今回の円高は、前回の原油引き下げと合わせると一バレル当たり約六ドルに近い値下げになると思います。ドル高円安で長い間苦しんできた国民に対し、値下げをするように通産大臣は指導する気があるかどうか伺いまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 竹田議員お答えをいたします。  まず、昨夜、与野党間で話し合いが行われました件につきまして申し上げます。  与野党間におきまして、パートの減税等に関する諸般措置につきまして話し合いが行われました。また、そのほかの諸般の問題につきましても、協議、検討をしていくという趣旨話し合いが行われました。これらの話し合いの結果につきましては、我々は誠実に対応してまいるつもりでおります。税の問題等につきましては、これは議員立法で適当なときに行うという趣旨になっておりますが、それらの議員立法等協議も踏まえまして誠実に対応してまいるつもりでおります。  次に、増税なき財政再建等経済政策に関する閣僚見解の食い違いがあるではないかという御質問でございますが、政府といたしましては、臨時行政調査会答申を守っていくということ、それから先般決定いたしました経済運営に関する「展望と指針」に沿って経済運営を行っていくということ、これを軌道といたしまして、そして毎年毎年適切な経済運営措置を行い、財政政策を行っていかんとしておるものであり、増税なき財政再建というこの理念はあくまで堅持していくつもりでございます。  いろいろ閣僚は個人的な見解を新聞やあるいは雑誌等に述べるところもございますが、これらはいずれも党並びに閣議におきまして最終的に正確な公的な考え方が形成され、統合されていくものでございます。そのように御了承願いたいと思います。  大型間接税につきまして御質問がございましたが、中曽根内閣におきましては、大型間接税導入する考えはありません。  次に、今回の所得税減税法案等については、税の所得分配機能が失われているではないか等々の御質問でございました。  今回の税率改正は、「全体として、若干なだらかな累進構造とする方向見直しを行うことが適当である」、このような税制調査会中期答申に基づいて調整を行ったものでございます。現行最高税率七五%、住民税を含めますと九三%になりますが、この水準は主要諸外国と比べて相当高いところにあるのでございます。民間活力の維持、充実等観点からしても、高過ぎると思われるこれを若干なだらかに是正し、かつ中堅所得者等につきまして配慮を行ったというのが今回の趣旨でもございます。  次に、課税最低限等是正等を行うべきではないかという御質問でございます。  与野党協議につきましては先ほど申し上げましたが、政府といたしましてはともかく一兆千八百億円に及ぶ減税を行っておるのでございまして、この点も御了承願いたいと思うところでございます。  次に、先ほど申し上げました与野党間の税に関する部分を、もう一回ここで正式に申し上げておきたいと思います。  「減税については、給与所得控除最低控除額所得税負担公平や給与所得控除制度の拳不的枠組みを害さない範囲内において、その引き上げ方について協議し、その結果を議員立法により措置する。」こういう考え方につきまして誠意を持って対処するということでございます。  納税環境整備に関する御質問がございましたが、これは大蔵大臣から御答弁申し上げます。  利子配当課税について御質問がございました。  政府といたしましては、政府税調及び党税調の今後における審議の結果を見守って対処いたしたいと思います。  赤字法人に対する課税に関しましては、所得が生じないいわゆる赤字法人法人税負担を求めることは困難であると思います、この問題は企業に対する他の租税との関係等、幅広い観点から考える必要があると思っております。  為替相場円高等々に関する問題につきましては、関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  7. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず第一番目は、総理から御回答のありました党の回答に関する見解であります。  総理から申されたとおりでありますが、なお、御意見としてございました百四十二万円の問題は、御指摘のとおりであるというふうに理解をいたしております。  いずれにいたしましても、今後の与野党間の協議の動向を見守っておるというのが、現状における財政当局立場であろうというふうな認識をいたしております、  それから二番目は、大型間接税問題等につきましては総理からお答えがあったとおりでございます。  私どもが絶えず申し上げておりますのは、一方、政府税制調査会等においていわゆる勉強は続けるべきであるという御指摘がなされておるのは御指摘のとおりでございます。したがって、私どもは絶えず税問題については勉強を重ねておるべきものであって、これが直ちに立案とか執行に結びつくという問題とは別の課題として勉強を続けておるということを申し上げておるわけであります。  三番目の金持ち優遇の問題でございますが、その中の意見として申されておりましたいわゆる国債大量発行所得配分機能変化をもたらしておる、この意見は私も同じような意見を持っております。が、今回の減税法案そのものは、ただいま総理からお答えがございましたとおりの内容のものであります。  次に、利子配当課税の問題についてお尋ねがございました。  これは、竹田議員の御意見は正確に税制調査会にお伝えすべき御意見であると思いますが、政府といたしましては今まさに鋭意具体的に税調審議をしていただいておるさなかでございますので、私からあらかじめ予見をもって申し上げるわけにはまいらない立場にあるのではなかろうかと思っております。  次に、企業課税のあり方について御意見を交えての御質疑でございます。  引当金等につきましては、従来から繰入率等の縮減を行ってきておるところでございますが、今後とも実態に即して見直しを行っていく考え方であります。  それから租税特別措置につきましても、今後とも税負担公平確保観点から、社会経済情勢変化に対応して必要な見直しを行っていくということは当然のことであります。  また、赤字法人課税の問題につきましては、法人の稼得いたしました所得に対して課税することを建前とする法人税負担を、所得のないいわゆる赤字法人に求めることはこれは難しい問題である。この問題につきましては、企業に対する他の租税との関係等幅広い観点から考える必要があると思います。  法人税累進税率導入をと、こういう御意見でございました。  税制調査会中期答申におきまして、「累進税率適用を妥当とする考え方基礎にあるとされる限界効用逓減所得の再配分という観念は、本来、自然人である個人についてのみ適用できることであり、法人についてはあてはまらないと考えられる。」という御答申もいただいておりますので、私ども基本的にそのような立場をとっておるというわけでございます。  それから、納税環境整備に関する問題につきましても御意見を交えた御質疑がございました。  今回の改正におきましては、近年におきますところの我が国社会経済情勢の著しい変化進展に即応するために税負担見直し納税環境整備を図るものでございまして、この両者が相まって初めて税体系中の基幹的地位を占めます所得税制について、実質的な公平が確保されることになるという考え方に立ったわけでございます。したがって、両者を切り離して審議するということは難しい問題であるというふうに思っております。  申告納税制度は、納税者自身による税額計算とその自主的納付を内容とするものでありますので、納税者みずからがその計算に必要な資料を持って、これに基づいて適正な申告を行うことが、これが根幹でございます。したがって、今回の記帳制度導入は、この申告納税制度に内在する納税者の責務を明確化しようとするものでございまして、申告納税制度そのものに反するということにはならないというふうに考えております。  それから次が、税務職員の問題でございます。いつもこの増員について御激励いただいておりますことをありがたいと思っております。  国税職員の増員につきましては、従来からも可能な限りの配慮をしておりますが、五十九年度においても五百十三人を増員、純増は十六人でございますが、今後とも実態に卸してこれは不断の努力を続けていかなければならぬ課題だというふうに考えております。  それから、医療の問題の御提案がございました。これについては種々難しい問題がございます。御意見として承らせていただきます。  それから、税制簡素化の中に、租特で扱うべきものを本法にという御提案でありましたが、それぞれそのときどきの実態に応じて、今御指摘の御趣旨を踏まえながら対応していくべき課題だというふうに考えております。  それから、円相場の問題についての御意見を交えた御指摘であります。  御意見については私ども考え方と大きく相違はないと思っております。全体的な我が国経済の良好なファンダメンタルズを反映しまして、円が徐々に円高方向に向かうことは好ましいと考えておりますが、確かに急激な相場の変動は経済に与える影響が大きいため、今後とも円相場の動向には十分注目していかなければならないことであると思っております。ちなみに本日の寄りつきは二百二十二円五十銭、こういうことでございます。  それから、それに伴いましてのいわゆる金利問題についての御発言がございました。  公定歩合操作は、これは日本銀行の専管事項そのものでございますが、金融政策運営に当たって、景気、金融動向等各般の状況を見守りながら、適切かつ機動的に対処していく必要があるのではないかというふうに思っておるわけであります。長期金利につきましては、公社債市況の動向等を十分にこれからも注意してまいらなければならない課題だというふうに私も理解をいたしております。  以上でお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇拍手
  8. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は、税制について若干の発言をしておるが、どういう趣旨がということでございます。  今回の税制改正は、財政が非常に弱体化しておるという現状から見まして万やむを得ない、このように思っておりますが、経済政策から見ますとなお一考を要する、こういう面もあろうかと思います。そこで、この観点に立ちまして、税制の抜本的な見直しをできるだけ早く検討していただくように大蔵大臣と自由民主党の政策責任者に若干の提案をいたしまして、今検討していただいておるというのが現状でございます。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣小此木彦三郎君登壇拍手
  9. 小此木彦三郎

    国務大臣(小此木彦三郎君) お答えいたします。  まず、円高相場の我が国貿易に対する影響でございますが、円高相場が我が国の貿易にどのような影響を与えるかにつきましては、円相場の上昇が始まってからまだ日が浅いこともございまして、軽々に判断できません。ただ、一般的に申し上げれば、円高は輸出に対しては抑制的に働き、輸入に対してはこれを促進する方向に働くことは言うまでもございません。この結果、円高は中長期的には経常収支の黒字を縮小させ、通商摩擦の緩和に寄与することが期待されるところでございます。なお、現在程度の円高であれば、我が国の輸出関連産業に大きな影響はないものと思われます。  次に、中小企業に及ぼす影響でございますが、代表的な輸出型産地から状況を聴取いたしておるところでございますけれども、現在程度の円高であれば、当面深刻な影響を与えるものではないと判断いたしております。なお、今後の変動幅いかんでは輸出型産地等への影響もあり得ますので、円高の動向及び影響につきまして十分注視していく必要があると考えております。  次に、電力及びガス料金値下げということの問題でございますが、電気・ガス料金につきましては、原油価格の値下げといった要因がある一方、資本費等のコスト増要因や、中東情勢の行方等の不確定要因もあり、さらには為替レートにつきましても今後の円相場の動向を十分に見きわめていくことが必要でございます。電気・ガス料金の取り扱いにつきましては、料金の長期安定を念頭に置きまして慎重に対処してまいりたいと存じます。  以上でございます。(拍手)     —————————————
  10. 木村睦男

    ○議長(木村睦男君) 塩出啓典君。    〔塩出啓典君登壇拍手
  11. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案外二法案に対し、総理並びに関係大臣質問をいたします。  中曽根総理財政改革にさらに新たな一歩をしるし得たと自画自賛している来年度予算案も、その実態は、酒税物品税等の増税、健康保険の本人負担導入等の福祉の切り捨て、各種公共料金値上げなどの受益者負担の強化、一方で防衛費のみ前年度比六・五五%の突出で、まさに国民不在の予算でございます。  歴代の自民党内閣は、財政再建を内政の柱とし、特例公債依存体質の脱却を当面の目標としてきました。その脱却の目標年度も、昭和五十五年が五十七年に、さらには五十九年と後退に後退を重ね、さらに中曽根内閣によって昭和六十五年度に変更されました。しかも、来年度において、特例公債の借りかえをやらないという財政の歯どめも取り払われようとしております。このような約束違反の連続では、政府の言うことは全く信頼できません。総理の政治姿勢を明らかにしていただきたいのであります。  また、所得税等減税財源として減税規模を上回る増税措置をとり、増税なき財政再建のスローガンも大きくトーンダウンしております。総理増税なき財政再建の堅持についての見解を明らかにしていただきたいのであります。  今回の所得税減税のねらいは、一つには、五十三年度以来本格的減税が見送られたために生じた実質的増税是正、二つには、内需の不振の原因が消費支出の停滞にあるところから、可処分所得を増加させるため、三つには、所得種類間の不公平の是正などであったはずであります。しかし、政府案は、そのいずれをとっても中途半端であり、昨年の与野党合意に基づく景気浮揚に役立つ規模の減税という公約にも反するものであります。このような内容で五十九年度経済見通し実質成長率四・一%のうち内需の寄与度三・六%の目標は達成できるのか、経企庁長官のお考えを承りたい。  また、最近の円高傾向が我が国経済にどのような影響をもたらすのか、あわせてお伺いしたいのであります。  今回の所得税法の改正は、課税最低限引き上げ税率構造の見直しが中心となっております。  まず、課税最低限引き上げが不十分で、減税見送り六年間の物価上昇から考えても、物価調整分を補うものにもならず、減税規模が少ないことを指摘せざるを得ません。  また、税率調整では、最高税率五%引き下げ最低税率〇・五%引き上げとなっております。特に最高税率引き下げは、グリーンカード制により利子所得等の総合課税実施が問題となった際にクローズアップされたものであります。グリーンカード制実施が見送られる中で最高税率引き下げ最低税率引き上げのみが先行することは、金持ち減税、低所得者いじめの印象を否めません。再考するお考えはないかどうか、お伺いをいたします。  さらに、今後の所得税減税実施について、数年に一度は見直す必要ありと税制調査会中期答申で述べております。せめて物価調整分だけは絶えず行っていくべきだと考えますが、政府見解を伺っておきます。  また、今回の改正で、パート収入者の非課税限度額は引き上げられますが、我が党の要求する百万円とはかなりかけ離れております。特に、非課税限度額をわずか超えると実質所得は逆に減少し、逆転現象を起こすことは大きな矛盾であります。非課税限度額を超える部分を、夫の配偶者控除額を徐々に減少させるという方法も考えられるわけでありますが、大蔵大臣見解を承りたいのであります。  次に、法人税についてお伺いしたい。  当初は、退職給与引当金の累積限度額の引き下げや交際費課税の強化が俎上に上っていたようであります。法人税引き上げの前に、現状に合わなくなっておる引当金、準備金制度見直し、その繰入率の是正をすべきであったと思います。また、民間活力導入が重視されているときに、法人税率の上昇は民間活力の低下につながるおそれはないか。さらに、法人税率引き上げの二年間の暫定措置が今後も継続されることはあり得るのか。これらの諸点について大蔵大臣の御見解を承りたい。  さきに国会に提出された中期的な財政事情の仮定計算例では、特例公債の借換債を発行しても、かなりの要調整額が見込まれています。大蔵大臣は衆議院予算委員会などで、課税ベースの広い間接税導入を検討、その場合にはEC型付加価値税を示唆したと伝えられております。これに対し中曽根総理は、大型間接税導入には否定的答弁を繰り返し、お二人の間には見解の相違が見られますが、総理大蔵大臣の明快な見解をお伺いをいたします。  国民は、総理の発言の裏に大増税が隠されているのではないかと危惧の念を持っております。大型間接税導入を避けみのであるならば、総理御自身、仮定計算例で明らかにされておる要調整額を何によって埋めるおつもりであるのか、国民に明らかに示すべきであります。お考えを承りたい。  今、政府が早急に行うべきことは、増税のための勉強等をすることではなく、税の法制面の不公平、執行面の不公平等の是正であります。  五千万円以上の高級マンション購入者、あるいは八百万円以上の高級車あるいは一千万円以上のゴルフ会員権等の購入者等、さらにはソフト。産業、また農業、漁業従事者等に対する税務調査が行われたわけでございますが、その結果を見ても、申告漏れや不正申告が多いことが発表されております。また、いわゆるマル優や郵便貯金が資産家によって悪用され、本来の制度の目的に反している例は枚挙にいとまがありません。このような実態は、善良な大半の納税者から見れば到底許されるものではございません。総理はこのような点の是正にどう対処されるのか、お伺いをしたい。  最近の税務調査等の結果から見て、いわゆるクロヨンという問題について大蔵大臣はどのような認識を持っておるのか、お伺いをしておきます。  今回、税務職員が官公署及び政府関係機関に対し、所得税調査の参考となる帳簿等の資料提供の協力を求めることができるということがつけ加えられているわけでありますが、このような規定を設ける理由、具体的にはどのような機関に調査機能が及ぶのか、お伺いをいたします。  また、いわゆるマル優等の不正使用を追放できるグリーンカード制度が凍結されていることは、まことに残念であります。ポスト・グリーンカードの新制度実施する期限は二年後に迫っているわけでありますが、政府としてはどういう方向で対応するのか、いつごろまでに結論を出すのか、お伺いをいたします。  最近の我が国経済発展に呼応して国際取引は急増しており、我が国の税務体制の国際化の強化、外国政府との連携等もますます必要になってきておるわけでありますが、どう対応しているのか、お伺いをいたします。  最後に、今日までも論議されてまいりました国税職員と地方税職員の協力体制、税務調査の一元化等の問題につきまして、効率の面から考えて、自治、大蔵両大臣に今後の方向をお伺いいたしまして、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 塩出議員にお答えを申し上げます。  まず^財政再建に関する私の政治姿勢いかんという御質問でございます。  特例公債依存体質からできるだけ早く脱却しようという考え方に従いまして、まず臨時行政調査会答申を尊重する、さらに、先般決定いたしました経済運営に関する「展望と指針」の線に沿って経済運営を実行していく、その二つの軌道の上に立ちまして、毎年毎年適切な財政政策を運用してまいるつもりでありますが、特に歳出歳入構造の思い切った見直しも続けていく、あるいは税外収入を確保するために全力を尽くしていく、あるいは経済活性化民間活力の促進等による経済運営を適切に行っていく等々の措置をもちまして、これらの問題を解決してまいりたい。いわゆる要調整額に対する対応も、これらの措置をもって実行いたしたいと思っているところでございます。  増税なき財政再建のこの理念はあくまで堅持して、旗はおろしません。  次に、大型間接税につきましては、中曽根内閣におきましてはこれを導入する考えはございません。  さらに、グリーンカードについて御質問がございましたが、これは大蔵大臣から御答弁申し上げます。  税務職員の増員や機械化の問題につきましても大蔵大臣から御答弁いただきたいと思いますが、政府といたしましても、国税庁の職員の増員につきましては、いままでいろいろ努力してきたところでございまして、過去十七年間を見ますと、国家公務員等においては一万六千人減らしておりますが、千二百十二人の国税関係の職員、第一線の職員の増員を行っております。また、コンピューター化につきましても、全国五首十一の税務署の中で四百十三、すなわち八一%は機械化、コンピューター化を実行しておる、これをさらに拡大する考え方でおります。  残余の答弁は、関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇拍手
  13. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は、ことしの四・一%成長と最近の円高の関係はどうか、こういう御趣旨でございますが、今回の円高傾向が定着するかどうかはもう少し様子を見ないと何とも言えないと思うのですが、もし仮にこの傾向が定着するといたしますと、我が国金融政策を機動的に運営することのできる一つの条件が整ったことになろうかと思います。そうなりますと、四・一%成長にはプラスの材料になろう、このように考えております。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  14. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず最初に、金持ち優遇税制の御指摘でございますが、このたびの所得税最低税率引き上げ最高税率引き下げという問題は、「全体として、若干なだらかな累進構造とする方向で見直すことが適当である」という税制調査会中期答申考え方に基づいて行ったものであります。  最低税率については、課税最低限が国際的に見てかなり水準引き上げられることを考えてみますならば、ある程度の引き上げを行ってしかるべきではないか。そして最高税率につきましては、これまた主要諸外国と比べて高い。民間活力の維持、充実等観点にも配慮いたしたところであります。  それから、物価調整減税的な考え方を絶えず持っておるべきだ、こういう御意見を交えた御質問でございます。  御案内のように、「国民所得に直接負担を求める税である」、したがって「今後とも税体系の基幹税たる役割を担うためには、国民理解と信頼によって裏付けられることが必要である」、こういうふうにいわゆる所得税そのものを定義づけられておるわけでありますので、「社会経済情勢変化に対応して、数年に一度は、適宜その見直しを行う必要がある」、このようにも指摘されていることであります。政府としましては、今後ともこうした考え方で対処してまいりたいというふうに考えております。  次の御指摘は、いわゆるパート課税問題でございますが、配偶者控除を徐々に縮減するといった仕組みは執行が極めて複雑でございます。「税制の簡素化の観点からも現行制度のように、一種の免税点的な仕組みとすることが適当である」というふうに指摘されておるところでございますので、問題になっております給与所得控除と配偶者控除の適用限度額の組み合わせという現行制度の枠内で対処していくことが適当であろうというふうに考えておるわけであります。  それから、退職給与引当金等の問題についてでございますが、退職給与引当金は、五十五年度改正において、累積限度額を期末退職給与の要支給額の五〇%から四〇%にまで引き下げたところであります。それから税制調査会の五十九年度答申においても、「勤労者の平均予定在職年数は長期化する傾向があること、また、大規模の企業に雇用されている勤労者については、全体の平均よりも平均予定在職年数が長いと認められること等を勘案し、」この引当金の累積限度のあり方について引き続き見直しを行っていく必要があるというふうに指摘されております。したがって、私どもはこれも引き続き検討を続けるべき課題だというふうに認識いたしておるわけであります。  それから、法人税率が二年たったらという問題でございますが、これは二年後の期限到来時においてこれをどうするか、その際の経済動向や財政事情を考慮して、税制全体の見直しの中で検討さるべき課題だと思っております。  それから、法人税率引き上げ民間活力という問題について御意見を交えての御質問でありました。  今回の法人税率引き上げは、所得税等減税実施しながら財政事情をこれ以上悪化させないという観点からとられた措置でございます。これは税制調査会中期答申において、「法人課税負担水準については、既に相応の水準にあるが、総体としてみた我が国企業の国際競争力や主要諸外国における法人課税負担水準からみて、厳しい財政事情の下で」「若干の負担の増加を求める余地も残されているのではないか」、こういう考え方を踏まえまして、若干の負担増をお願いするということにしたものでございます。御理解をいただきたいと思います。  それから、大型間接税の問題でございますが、総理からお答えがありました。私どもといたしましては、税調等で指摘されておりますように、税そのものはいつの時代にも検討を絶えず続けていかなければならぬ問題でございます。したがって、私ども勉強と、そして立案と執行というものは、おのずからそこに分けて考えなければならぬ課題だという認識は十分にしておるつもりであります。  それから、要調整額の問題でございますが、これは負担する者も国民、受益者もまた国民でございます。最終的には国民の選択に任すべき問題でございますが、私どもは、毎年度予算編成過程におきましてそれぞれ慎重に対応すべきものである、したがって要調整額の処理の中身をあらかじめ定量的でまたリジッドな処理計画を立てるということは、やはり難しい問題だというふうに考えておるところであります。  それから、税務調査における官公署の協力要請の問題でございます。  この規定は、税務職員所得税等の調査上参考となります資料の提供等について、官公署に対して協力を求めることができるとするものでございまして、税務当局は、従来から他の官公署等に対して資料の提供要請等種々協力をお願いしてきております。厳しい財政状況のもとで課税の公平が一層求められる現状にかんがみまして、税務行政の円滑な執行に資するためこのような明文の規定を整備したということでございます。  それから、いわゆる外国での多国籍企業等の問題についての御指摘がございました。  この多国籍企業の税務調査では、特に海外取引関係に重点を置きまして徹底した調査を実施しておるところでございます。国税庁では、海外取引調査体制の整備を図るとともに、租税条約に基づきます情報交換、また国際会議の開催等によりまして国際協力の強化に一層努めておるところであります。  それから、クロヨンというお言葉をお使いになっての御質問でございました。  クロヨンと言われる言葉ほどの所得捕捉の格差は、現実にあるとは私は思っておりません。しかし、感覚的には私にも理解できます。過少申告を行う納税者がいるという事実、このためにも今後も税務調査の充実に一層努力をしなければならないというふうに考えております。  それから、マル優問題、グリーンカード問題、そして利子配当等に対する御質問でございました。「貯蓄奨励のための政策税制としては、現行の非課税貯蓄制度は往時に比べてその意義が薄れてきていると考えられておる」、あるいは「預金、貯金等の種類別を問わず、仮名、借名等による非課税対象の濫用が少なからず見受けられる」などの問題が指摘されております。したがって、今後税制調査会において、非課税貯蓄のあり方についてもさらに掘り下げた検討が必要であろうというふうに考えておるところであります。  また、グリーンカードの問題、そしてポスト・グリーンカードの問題でございますが、何にいたしましても、「今年夏頃までに結論をうることが望ましい」というふうに今日までも御指摘を受けているところでありますし、今税制調査会で鋭意検討を行っていた虎いておるところでありますので、その推移を見守っていかなければならぬというふうに思っております。  それから、税務職員の問題と機械化の問題等総理からお答えがございました。御趣旨を体して、一層の努力を重ねていかなければならないと思います。  そして最後に、いわゆる地方税務職員との協力体制という問題についての御指摘でございますが、今後とも地方団体と十分協議を行いまして、そして、さきに御案内のような了解事項が出ております、これを着実に実施するという考え方で対応してまいりたい、このように考えておるところであります。(拍手)    〔国務大臣田川誠一君登壇拍手
  15. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 国と地方自治体の税務職員の協力関係につきましてお答えをいたします。  地方税の賦課徴収に当たりましては、従来から国税当局とも納税相談とか申告受け付け等を共同で行うほか、必要な情報交換を行うなど、協力をしてまいっております。また、臨時行政調査会の国、地方を通ずる税務行政の効率化の促進という御指摘もございましたので、一昨年十二月には、さらに国税と地方税との間の一層の税務協力を行うことといたしておりまして、その旨、地方団体に指導しているところでございます。今後とも地方税務行政執行に当たりましては、今回の改正点をも含めまして、国税当局と相互に密接な連絡をとるよう地方団体を指導してまいりたいと思っております。  なお、国税と地方税の徴収事務の一元化等の問題につきましては、国民経済上かえってコストが余計かかるというような問題もありますし、地方自治の基本のあり方にも触れるということで、どうも賛成しかねるのでございまして、御理解をいただきたいと思います。  以上でございます。(拍手)     —————————————
  16. 木村睦男

    ○議長(木村睦男君) 吉川春子君。    〔吉川春子君登壇拍手
  17. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました所得税法の一部改正案等につき、総理並びに関係大臣質問いたします。  総理、今国民の暮らしはいよいよ大変です。大企業の一部に景気回復基調が見られるなどと言われる一方で、中小企業の倒産件数は依然として高水準を続け、庶民の失業や生活苦、サラ金悲劇もますます広まっています。どこへ行っても私は、苦しい台所の声を国政に届けてほしいという国民の切実な声を聞くのですが、五十九年度予算案でもまた軍事費は大突出させ、国民の福祉や暮らしを大きく切り詰めようとする総理には、この痛切な国民の声が聞こえないのでしょうか。  まず、見かけ倒しの減税について伺います。  今回、七年ぶりの本格減税と宣伝して打ち出された政府減税案は、初年度わずか八千七百億円にすぎず、六年間減税見送りによる実質増税四兆八千四百億円の二割にも満たず、国民の期待を全く裏切るものです。例えば、課税最低限引き上げ率はこの間の消費者物価上昇を下回っていますし、また申告納税者課税最低限を百四十一万円に引き上げるといっても、それは生活保護基準の七三%にすぎません。これでは勤労者の生活費そのものにまで課税されていることは明らかであります。これでは大多数の国民にとっては実質増税にほかならず、さきの総選挙での大幅減税という総理の公約に違反するのではありませんか。明確な答弁を求めます。  さらに、今回の税制改正の重大な問題は、富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなるという金持ち優遇減税になっているということであります。すなわち、最低税率を〇・五%引き上げ最高税率は五%引き下げるという金持ち優遇減税であります。  これについて、政府は高い税率が勤労意欲を阻害していることを理由にしています。しかし、勤労所得に頼らず、利子配当等を主な所得とする年収八千万円以上の大資産家の勤労意欲阻害とは、そもそも一体何を意味するのですか。このような人々への減税を考える前に、額に汗して働く大多数の勤労国民の勤労意欲こそ最大限尊重すべきです。その意味でも、いわゆるパートの非課税限度は九十万円程度ではなく、百二十万円に引き上げよという主婦の願いに今直ちにこたえるべきだと思いますが、いかがですか。  次に、政府減税財源は酒税物品税、石油税など大衆課税の増額がほとんどを占めていますが、これは働く国民の肩に直接重くのしかかるものであります。それ以外にも、国鉄運賃の値上げなど公共料金値上げ約四千億円、福祉後退約一兆円など、国民負担増は計算できるものだけでも二兆円に達するのであります。  例えば、三菱銀行の調査では、地方公共料金などの負担増を除いても、年収三百万円の世帯減税分を考慮しても、年六千二十五円の負担増になるという結果が出ています。  一月二十七日の朝日の「声」欄には、「五十九年度予算案に医療費の負担増物品税の対象品目拡大、酒や運賃の値上げ等々が盛られ、退職金、年金等の将来を考え合わせると、私たち勤労者はお先まっ暗で、「自分でなんとかしなくては」と新年早々たっぷり緊張感を味わいました。」という母子家庭のお母さんの投書が載っていました。その中で、そのお母さんが加えて、児童扶養手当の支給制限など福祉の後退はもはや弱者の生存にかかわる問題であり、また、九十数%も高校に進学する日本で、母子家庭の子は義務教育だけでいいと言うのかと怒りを込めて訴えておられるのを、私は胸が締めつけられる思いで読みました。  経企庁長官、これでは国民を苦しめるだけで、内需は伸びず、かえって景気回復に重大な障害となるのではありませんか。  次に、企業関係税制改正について質問します。  今日、未曾有の財政危機のもとで、国民本位の財政再建を図るためには、高度成長期を通じて至れり尽くせりの恩典が与えられた大企業にこそ、その適正な負担が求められるべきことは言うまでもおりません。しかし、今回の改正では、法人税率が一・三%とわずかばかり引き上げられるものの、二年限りの時限措置で、しかも当初検討されていた退職給与引当金見直しなどの企業課税強化は、財界の反対の一言ですべて見送りとされました。他方、中小企業法人税率引き上げに加え、延納制度の廃止によって負担はますます重くなるのです。  法人税率引き上げは、法人税本法改正ではなく租税特別措置法による時限立法になりましたが、なぜ二年限りの異例の措置となったのか、また、なぜ退職給与引当金見直しが見送られたのか、大蔵大臣の明確な答弁を求めます。  また、今回租税特別措置法改正で見逃すことができないのは、特別措置の新設拡充は行わないという政府みずからの方針に反して、新たな大企業向け特別措置が設けられている点であります。  すなわち、今回の改正で、専ら大企業が利用している試験研究費の税額控除や技術等海外所得の特別控除などが延長されるばかりか、新たにエネルギー関連投資減税やテクノポリス減税が行われるほか、金融機関の海外債権を準備金の対象に加えることによって、およそ二百億円に上る減税の恩典を与えようとしているのです。政府はなぜみずからの方針を捨ててまでこのような大企業優遇をするのですか。明確な答弁を求めます。  次にお尋ねしたいのは、今回の所得税法等改正案に含まれている申告納税制度改悪の問題についてであります。  政府案によれば、年収三百万円を超える商工業者に記帳の義務を課し、また、すべての確定申告をする者に帳簿等を保存しかつ申告書に総収入金額及び必要経費の内容を記載した書類を添付することを義務づけています。さらに、総収入金額報告書提出制度を新たに設け、たとえ赤字でも年五千万円を超える総収入があれば、合計額その他関係資料を税務当局に提出しなければならないこととしました。もちろん、商工業者が自主的に計算し記帳することは望ましいことには違いありません。しかし、政府記帳義務を法律で強制するねらいは、多数の中小零細業者に対して一方的な推計課税を強化する手段にほかなりません。  これは、大企業の大口脱税や使途不明金には積極的に手をつけず、中小零細業者にのみ厳しくする弱い者いじめであると同時に、申告納税制度の根幹を大きくゆがめることになるではありませんか。大蔵大臣の答弁を求めます。  また、この記帳義務は、労働組合など営利を目的としない団体にも適用しようとしています。これは大小さまざまな団体の自由な活動に対する政府の介入を許す重大な危険があります。そうならないという明確な保証がありますか、はっきりお答えいただきたいと思います。  そしてまた、総収入金額報告書の提出や記帳義務、帳簿保存などの一連の義務化は大型間接税導入の布石ではありませんか、明確にお答えください。  日本共産党は、軍拡から軍縮への根本的転換、二兆円減税を初めとする国民生活を守る予算への転換、そして大企業奉仕の仕組みにメスを入れ、民主的な行財政改革を進めるという三つの転換を柱に五十九年度予算の抜本的な組み替えを求めています。  我が党のこれらの要求をまじめに検討し、誠意ある答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 吉川議員の御質問お答えをいたします。  まず、五十九年度所得税減税について御質問をいただきましたが、これは初年度ペースで所得税八千七百億円、住民税三千百億円、総額一兆千八百億円に上る大規模なものであり、しかも税率構造の是正も含む本格的なものでございます。五十九年度の予算におきましても、なお歳出の二五%は公債発行により賄わざるを得ないという、この財政収支のアンバランスを考えてみますと、これは精いっぱいの減税をしたものとお考え願いたいと思います。  パートの問題について御質問がございましたが、先ほど申し上げましたように、「減税については、給与所得控除最低控除額所得税負担公平や給与所得控除制度基本的枠組みを害さない範囲において、その引上げ方について協議し、その結果を議員立法により措置する。」という協議につきまして、誠実に対応してまいりたいと思っております。  なお、今回の租税特別措置法改正は大企業優遇措置ではないかという御質問でございますが、租税特別措置につきましては、五十一年以降連年にわたって見直しを実行し、五十九年においても実行しておるところでございます。今回の措置は、エネルギー対策、中小企業対策等の観点から重点を絞って実行いたしたものでございまして、中小企業等につきましては十分配慮をしておるところでございます。  なお、今後も租税特別措置見直し、特に不公平税制是正等につきましては努力してまいるつもりであります。  残余の答弁は関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  19. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、今回の税制改正は、先ほども申し上げましたように、「全体としてなだらかな累進構造とする方向見直しを行うことが適当である」、この税制調査会中期答申考え方に基づいて行ったものであります。したがって、最高税率の問題でございますが、民間活力の維持、充実等観点に配慮しながら改めることにいたしたということでございます。  次が、法人税の問題でございます。  法人税率引き上げは、所得税減税実施しながら財政をこれ以上悪化させないという観点からやむを得ずお願いをした措置でございます。  それから、退職給与引当金の問題でございます。  確かに五十九年度の税制改正におきましても、とにかく引き続き見直しを行っていく必要があるという御指摘をいただいておるところでございますので、今後も引き続き見直しを行っていくべき問題であるという認識をいたしておるところであります。  次が租税特別措置でございます。  租税特別措置は、昭和五十一年度以来ほとんどについて改善措置を講じてきております。さらに整理合理化を進める余地はもうかなり限られた状況にございますが、五十九年度におきましてもこれを行おうとしておるところでございます。  他方、エネルギー利用の効率化、中小企業事業の効率化等に資する設備についての投資促進措置など新たな措置を講じておりますが、これはエネルギー対策、中小企業対策等の観点から重点を絞って認めることとしたものであります。また、エネルギー利用効率化等投資促進税制の対象設備の相当部分中小企業用設備でありまして、中小企業には十分配慮してきたところであります。  なお、特定の海外債権、いわゆるカントリーリスクであります。これにつきましては、海外投資等損失準備金の積み立てを認めることといたしましたのは、国際金融協力の見地からのものでありまして、大企業優遇、そういう角度からのものではございません。  記帳義務強化の問題について御意見を交えての御質問であります。  納税環境整備は、あくまでも申告納税制度の定着と課税の公平の一層の推進を図ることを視点として行うものでございます。したがって、納税者の実態等に十分配意して、特に中小零細事業者に過大な負担とならぬよう配慮してきておるところでございます。したがって、課税の強化と結びつくという考えは適当でございません。  それから、労働組合などの営利目的の問題についての質問でございました。  労働組合を含めまして、公益法人等及び人格のない社団等が収益事業を営む場合に限り法人税納税義務がございます。したがって、労働組合等については、収益事業を営む場合に限って収益事業に関する取引について記帳や帳簿等の保存をすることが必要となるわけであります。このように記帳等は適正な課税所得の計算に必要な範囲に限定しておりますので、種々の団体の自由な活動に政府が介入するというような性格のものでは全くないということであります。  それから、総収入金額報告書の提出の問題でありますが、あくまでも申告納税制度の定着と課税の公平、重ねて申し上げますように、これが基本的な視点にございます。したがって、これは大型間接税の問題とは全く関係のない問題でございます。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇拍手
  20. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は、物価上昇止景気回復の関係についてでございますが、まず、物価が上昇いたしますと実質所得がそれだけ減りますから、これは景気には非常に大きな影響がございます。ことしは、広い意味での公共料金、これには増税分、予算関係の公共料金、地方の公共料金、それから政府の認可料金、これらが全部入るわけでございますが、ことしこれらを全部含めまして約一%物価を押し上げるものと見ております。一般の物価は安定しておりまして、大体一・八%ぐらいと想定をしておりますので、合わせて二・八%の消費者物価、五十九年度を想定をしておるわけでございますが、今申し上げましたように、景気回復と非常に大きな関係がございますので、この線でおさまるように政府は全力を尽くすつもりでございます。(拍手)     —————————————
  21. 木村睦男

    ○議長(木村睦男君) 抜山映子君。    〔抜山映子君登壇拍手
  22. 抜山映子

    ○抜山映子君 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております法人税法の一部を改正する法律案等につきまして、総理並びに関係大臣に御所見をお伺いいたします。  まず、当面必要だと考える税制改正についてお伺いいたします。  将来の我が国の社会を展望するとき、女性の職場への進出と、欧米にも類を見ない高齢化社会への突入という二つの時代の流れは、今後ますますその勢いを増大させ、我が国社会が新たな対応を迫られることは必至であります。そのような時代の流れに沿った税制をつくり上げることが今要請されていると思うのでございます。  このような観点から、以下の質問をさせていただきたいと思います。  まず、パートタイマーの主婦の問題についてお伺いいたします。  現在は、夫が働いていて妻がパートに出る場合、妻の収入が七十九万円を超えますと、妻の収入には所得税がかかり、さらに、夫の方は配偶者控除が受けられなくなり、また配偶者手当も受けられなくなるのでございます。その結果、妻が一万円頑張って働きますと、何と夫婦の合算収入が二十万円も減ってしまうというケースが珍しくありません。  このような矛盾に満ちた現状を解決すべく、パートの非課税限度額の引き上げが急務であります。これは単に働く女性の要請であるのみにとどまりません。企業サイドにおいても女性就業の安定化のため、すなわちパートの女性が収入を七十九万円の枠内にとどめるため、故意に出勤率を落としたり、年度末に一時職場から去るという傾向を防止するため、枠の引き上げが望ましいという声があるのでございます。  今回の政府原案は、八十八万円にまで引き上げるとしております。また、このたびさらに二万円を上積みするという自民党見解が示されましたが、これではまだまだ不十分であり、少なくても百万円程度まで引き上げるべきだと考えますが、総理はいかがお考えでしょうか。  また、内職者についてもこれに準じて税制上の優遇措置を講ずべきだと考えますが、いかがでしょうか。  また、女性の職場進出促進のための保育費控除制度の創設、子弟の教育に要する過重な負担軽減のための教育費控除制度の創設、夫が単身赴任した際に家族のもとへ帰るときの交通費や別居手当の非課税化など、多くの女性が今日強く要望している税制改正について政府はどのように対処していくつもりなのか、総理並びに大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。  さらに、今後の高齢化社会のもとにおいて、国民の福祉を十分確保する意味におきまして、税制面においても寝たきり老人に対する控除の大幅拡充、公的年金を補完すべき個人年金について控除を、政府案のわずか五千円ということでなく、大幅なものにすることが不可欠だと思いますが、総理並びに大蔵大臣はいかがお考えでしょうか。  次に、増税なき財政再建についてお伺いいたします。  政府は、今回、減税財源確保の名のもとに、法人税酒税を初めとする約一兆円の増税を強行されようとしておりますが、中曽根総理は、減税減税と宣伝しながら、増税は増収だから構わないのだと言い逃れをしておられます。総理が何と弁解されようとも、約一兆円もの増税国民の目からは増税以外の何物でもなく、増税なき財政再建の方針はすでに五十九年度から崩れたと考えられますが、総理はいかがお考えでしょうか。  また、大蔵省が先般出されました財政についての中期的試算によれば、昭和六十五年度赤字国債脱却のためには六十年度は少なくとも三兆円、六十五年度においては五兆ないし十兆円にも上る要調整額、すなわち資金不足が見込まれているのですが、政府はこれをいかにして穴埋めしていくおつもりなのでしょうか。そのための具体的展望と方策を明らかにしていただきたいと思います。  特に、六十年度からEC型付加価値税や一般消費税などの大型間接税導入することによって対処しようとするお考えがあるのかどうか、総理の率直なお考えをお聞かせ願います。  さらに、我が党は、増税なき財政再建昭和六十五年度赤字国債脱却という中曽根内閣の二大公約の同時達成のためには、経済運営をこれまでの縮小均衡型から拡大均衡型へ転換させることが不可欠だと考えますが、総理並びに河本長官はいかがお考えでしょうか。  次に、税負担公平確保についてお伺いいたします。  今回の改正案におきましては、申告納税制度基本とする我が国税制に見られる制度面、執行面の不公正を是正するための納税環境整備として、記帳義務制、総収入報告制が実施されることとなっておりますが、これに対しては対象範囲や罰則等の点で公正確保のためには不十分との批判がなされております。政府は税制上の不公正は今回の改正で十分是正されると考えておられるめでしょうか。今後、対象範囲の拡大や罰則の強化などをさらに実施していくつもりなのかどうか、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。  また、利子配当課税制度について、大蔵省はマル優制度の廃止、グリーンカード制度の復活、高率源泉徴収と確定申告時の還付、マル優への所得制限導入などの方策を検討されているようですが、政府の方針についての大蔵大臣の具体的な御所見をお伺いいたします。  次に、産業基盤強化のための税制改正についてお伺いいたします。  我が国経済の発展を図る上で、設備投資を促進し民間企業の活力を引き出すことは焦眉の課題だと存じます。このような観点からすると、電子機器や自動車の製造設備の償却年限が技術革新のテンポに見合っていないという実情を見逃すことはできません。すなわち経済的陳腐化の問題です。例えば鉄鋼製造設備については、我が国の償却年限が十五年なのに対し、アメリカは五年、フランスは八年と短く、さらに短縮する動きすらあることにかんがみれば、国際競争力の維持向上のだめにも法定耐用年数の早急な短縮が急務だと思われますが、通産大臣、大保蔵大臣はいかがお考えでしょうか。  また、河本長官は、かねてより投資減税実施に積極的な見解を述べておられますが、それはいかなる対象についてのいかなる内容による減税がよいと考えておられるのか、お考えをお聞かせいただきたいと存じます。  最後に、中小企業の承継税制についてお伺いいたします。  近年、中小企業者の世代交代に当たって、過大な相続税負担のため、後継者が資産の売却、事業の縮小、廃業を余儀なくされる事例が多く見られます。我が党は、かねて中小企業の承継税制の思い切った拡充を主張してまいりました。私は、中小企業の安定は社会の安定と発展を支えるものだと思います。この点について政府見解をお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 抜山議員にお答えを申し上げます。  まず、パートの減税について御質問をいただきましたが、先ほど来申し上げておりまするように、国会におきまする与野党協議を踏まえまして適切に対処してまいるつもりでおります。  なお、パートと並んで、内職者について税制上の優遇措置を講じるべきではないかという御質問でございます。  内職による所得は、パートと違いまして、雇用契約に基づくものでなくして、むしろこれは雑所得あるいは事業所得の性格を持ってまいります。したがいまして、給与所得控除、給与所得系統のものと系統が違うものでございますから、これを同列に取り扱うことは税制上も難しいということがございます。したがいまして、一般の事業所得者とのバランスも考え、またパート等との対比等も考えながら、内職者の対応については適切に配慮してまいりたいと思っております。  増税なき財政再建の「増税なき」の意味につきましては、臨調答申にありますように、「当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率(対国民所得比)の上昇をもたらすような税制上の新たな措置基本的にはとらない、ということを意味している。」というふうに解しております。  また、今回の法人税法改正等は増税ではないか、増収と言っているけれども増税ではないかと、こういう御質問でございます。  法人税酒税等の税率引き上げを行いましたので、実質的な負担増をもたらしておることは否定できないと思います。法人税延納制度の廃止などのようなところは、これは実質的な税負担増ではなくして、これは繰り延べということで、増収措置と言われでもいいと思うところでございます。いずれにいたしましても、所得税減税実施いたしまして、財政をこれ以上悪化させない見地から努力しておるものであることを御了承願いたいと思います。  いわゆる要調整額の穴埋めにつきましては、先ほど来申し上げますように、歳出歳入構造の徹底的な見直しをさらに続けていく、あるいは税外収入の確保、あるいは経済政策を適切に運用し、特に民間活力、これを増進していく等々の政策によりまして対処してまいりたいと思っております。  大型間接税導入につきましては、先ほど申し上げましたように、中曽根内閣といたしましてはこれを導入する考えはございません。  次に、財政赤字の穴埋めについては、これはむしろ景気政策を行うべきではないかという御質問でございます。  五十九年度予算におきましては、徹底的な節減合理化等も一面において実施いたしておりますが、しかし、国内民間需要を中心とする景気の自律的な拡大が現在見込まれており、このようにして財政金融一体の機動的運営を今後とも考えてまいるつもりでございます。  残余の答弁は関係大臣から御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  24. 竹下登

    国務大臣竹下登君) お答えをいたします。  まず、各種控除の問題について御意見を交えての御質問でありました。  一つは、保育費控除あるいは教育費控除等々の問題でございますが、特定の条件や特定の家計支出を抜き出して、これを税制上しんしゃくするということは、これはさまざまな国民の生活態様がございますのでなかなか難しい問題がございます。  また、教育費の問題ということになりますと、現行の教育に対する政府基本的な考え方は教育そのものに対する助成方式、こういうことでございますので、これを基本的に変更するということになりますと、軽々に結論を出し得ない問題だということであります。  例示として申し上げますならば、教育費控除等が税制上の問題点としてございますのは、税金を納めていない貧しい家庭の父兄にはその恩典が及ばないじゃないか、あるいは義務教育のみで社会に出て働いていらっしゃる若年勤労者の方は税を納めていらっしゃる、この方々との負担バランスをどうするか。いずれにしても、個別の事情を税制においてしんしゃくするにはおのずから限界があるではないか。いろいろな問題がございますので、今後とも勉強してまいる課題であると思っております。  また一方、寝たきり老人の問題等になりますと、常に就床を要して複雑な介護を要する方、いわゆる寝たきり老人については、すべて特別障害者控除の対象とされております。また、いわゆる寝たきり老人に認められる控除としては、現在、一般の扶養控除二十九万円のほかに特例障害者控除三十一万円が認められて、さらに被扶養者と同居しておる場合には同居特別控除として五万円、合計六十五万円、こういうことになります。これらの控除は、今回の改正においてそれぞれその引き上げが行われ、全体として八万円アップの七十三万円が控除されることになっておりますので、これは一般の人々の場合の人的控除引き上げ幅四万円に比べますと八万円と、倍額の引き上げということになるわけであります。  それから、単身赴任者の問題等の問題もございます。その実態から見て、自宅とその赴任していらっしゃるところの往復旅費を、例えば交通費でございますが、これを通勤手当と見ろということもなかなか同列に議論しがたい。あるいは別居手当というものも、その名目がどのようなものであれ、やはりいわゆる税制上は給与である以上は同様に取り扱う。まあいろいろな問題があるわけであります。  個人年金控除の導入でございますが、これは今回の税制改正においても、御指摘になりましたように、老後生活安定のための自助勢力の奨励という意味、それから老後生活に対する相互扶助の推進と社会的連帯の意識の助長という観点から、一定の要件に該当する個人年金保険、個人年金共済及び郵便年金の掛金については、現行の生命保険料控除と別枠で年五千円の所得控除を認めることとしたところでございまして、この控除額の水準は、現下の厳しい財政事情のもとにおいてな最大限の配意を行ったものであって、自助勢力、相互扶助への配慮ということにおいて十分な意味があると御理解をいただきたいと思います。  その次の問題は、納税環境整備に当たっての問題でありますが、これは重ねて申し上げますように、中小零細事業者に過大な負担とならないように配意しております。したがって、記帳制度等については罰則を設けておりませんし、記録及び記帳に基づく申告制度の確立、総収入金額報告書提出制度、過少申告加算税の二段階制の採用等によって申告水準の維持向上に十分資することではないかというふうに考えております。  それから、マル優の廃止問題等々の問題でございます。  これは、今後の税制調査会での検討を見守っていきたいという立場を貫いておりますが、御存じのように、夏ごろまでにはと、こういうことになっておりますので、国会でいろいろ行われます議論等を中心にして税調の推移を見守っていくつもりでおります。  それから耐用年数、また法定耐用年数の短縮等の問題についての御意見を交えた御質問でありますが、我が国の耐用年数は諸外国と比べましても相応の水準にございます。また、我が国企業現行の法定耐用年数のもとで強い国際競争力を持っておって、GNPの民間設備投資の割合を見ましても、主要諸外国と比較して高い水準にあるということは御案内のとおりでございます。  なお、法定耐用年数というのは資産の物理的寿命と、それから経済的な陳腐化を加味して客観的に定められるものでございますので、技術的な進歩によって陳腐化の状況変化がございます。そういうことに応じて見直しを行うことは必要でございますが、政策的な観点からの見直しということにはなじまない課題ではないかというふうに考えます。  それから、事業の縮小とか廃止を結果として余儀なくされる中小企業承継税制、これは絶えず御指摘のある問題でございます。  この問題につきましては、五十八年度の税制改正で一応この措置をしたところでございますが、さらに、仮に農地における納税猶予制度と同様の措置を講ずべきではないかということでございますと、農地と同様の事情には、これは率直に言ってございません。したがって、その問題はなかなか難しい問題であるというふうに考えておるわけであります。また、税調答申にございますことを一言参考までに申し上げますならば、中小企業者の事業用財産と農地とは事情が異なる、しかし新たな措置を仮に講じたとしたならば、結局給与所得者のみに通常の納税を求める、こういう結果になって、税制としてはゆがんだものになるではないかというふうに指摘されておるところでもございますので、なかなかこれは難しい問題であるというふうに御指摘を申さなければならないわけであります。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇拍手
  25. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は二つございますが、その第一点は、財政再建のためにも経済運営を積極的にやる必要があるのではないか、こういうお話でございます。  過去十年間の税収を調べてみますと、景気の悪いときには前年に比べて税収が減った年もございますし、税収がほとんど伸びない年もございました。しかし、景気のいいときには税収が予想以上に大きく伸びた年もございます。そういうことから判断いたしまして、経済の力が強くなる、景気回復をいたしますと税収はふえるということでありますので、景気対策を私はよほど工夫する必要がある、このように考えておりますが、幸いにことしは、第二次石油危機が起こりまして五年ぶりに経済がいい方向に向かっております。条件も熟しつつございますので、物価の安定を図りながら、財政、それから金融の機動的運営によりまして、我が国の潜在的な成長力が十分発揮できるような、そういう経済政策を進めることが必要であろう、このように考えて拘るところでございます。  それから、投資減税の問題についてお話がございましたが、現在の我が国の設備の状況を調べてみますと、およそ半分以上がいま設備の更新期に来ております。設備が古くなって新しい設備に切りかえる、こういう必要が生じておりますし、それからさらに、最近の技術革新から新しい技術革新投資の必要も焦眉の急になっております。  今回、五十九年度予算で若干の投資減税が行われております。省エネ投資あるいは中小企業投資、あるいは先端技術投資等の一部に対して投資減税が行われておりますが、現在の財政事情から見ますと、私は、規模は小さいですけれども万やむを得ない、こう思っております。しかし、先ほど申し上げましたように、財政の条件が許す、財政がもう少し強くなる、こういうことになりますと、投資減税を現在以上に拡大することが産業政策上は望ましい、このように考えております。(拍手)    〔国務大臣小此木彦三郎君登壇拍手
  26. 小此木彦三郎

    国務大臣(小此木彦三郎君) お答えいたします。  まず、生産設備の法定耐用年数を短縮すべしとの御質問でございますが、法定耐用年数は現実の設備の使用期間の実態に基づいて客観的に設定しており、今後もその方針を続けることといたしております。御質問趣旨が、設備の使用実態を離れて法定耐用年数を短縮すべきであるというのでございますれば、現行の減価償却制度基本的枠組みに関連する問題でもございますので、慎重な検討が必要と考えます。  次に、中小企業承継税制を拡充すべしとの御質問でございますが、これは大蔵大臣の御答弁と多少重複いたしますけれども昭和五十八年度中小企業事業承継の円滑化のための税制改正を行ったところであり、これはかなりな効果があるものと期待しております。  なお、中小企業に農業と同様の生前贈与の特例を設けることにつきましては、農業者の農地は中小企業者の事業用財産とは性格的に異なりますので、いろいろな問題があると存じます。したがって、生前贈与の特例については、これらの問題を踏まえて、昭和五十八年度事業承継税制の改善の効果等を見きわめながら適切に対処する所存でございます。  以上であります。(拍手
  27. 木村睦男

    ○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十五分散会      —————・—————