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1984-02-10 第101回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月十日(金曜日)    午前十時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第五号   昭和五十九年二月十日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  第二 昭和五十八年度の水田利用再編奨励補助   金についての所得税及び法人税臨時特例に   関する法律案衆議院提出)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、国家公務員等任命に関する件  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 木村睦男

    議長木村睦男君) これより会議を開きます。  この際、国家公務員等任命に関する件についてお諮りいたします。  内閣から、中央更生保護審査会委員貞閑晴君を、  電波監理審議会委員前田陽一君を任命したことについて、それぞれ本院の承認または同意を、  また、日本銀行政策委員会委員村上素男君を、  社会保険審査会委員長加藤信太郎君を、同委員新津博典君を、  中央社会保険医療協議会委員伊藤善市君、伊東光晴君を任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。  まず、中央更生保護審査会委員電波監理審議会委員社会保険審査会委員長、同委員中央社会保険医療協議会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認または同意することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  3. 木村睦男

    議長木村睦男君) 過半数と認めます。  よって、いずれも承認または同意することに決しました。  次に、日本銀行政策委員会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  4. 木村睦男

    議長木村睦男君) 過半数と認めます。  よって、これに同意することに決しました。      ——————————
  5. 木村睦男

    議長木村睦男君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。二宮文造君。    〔二宮文造登壇拍手
  6. 二宮文造

    二宮文造君 私は、公明党国民会議を代表して、総理に若干の質問をいたします。  質問に先立ちまして、さき三井三池炭鉱火災事故に遭難された方々並びに御家族に対し、心からのお見舞いを申し上げますとともに、その対策の立て方あるいは再発の防止に懸命の努力をしてまいる所存でございます。  さて、代表質問もすでに三日目でございます。衆参を通じて私は九人目です。公明党竹委員長初め野党党首登壇をしました。論点はほぼ明確になりました。それらを踏まえて質問してまいりたいと思います。  言うまでもなく、政治国民のものです。その国民皆さんは、さきの総選挙自民党の一党独裁を嫌い、与野党伯仲政治を選択いたしました。その後、自民党は、保守系無所属追加公認、さらには新自由クラブを吸収して一応の多数は確保したものの、あくまでも不安定多数であり、伯仲という基調はいささかも変わっておりません。  総理は、「正直いって、和および自民党は、国民から熱いおきゅうをすえられた。ずいぶん熱かった。今後は、おきゅうをすえられないよう、注意してやって行きたい」と述べています。みずからの非を認めた率直な発言として、私はこれを評価するにやぶさかでありません。ぜひそうであってほしい。  そこで伺います。総理は、政治姿勢政策のどの点に、どのように国民からおきゅうを据えられたと受けとめておられるのか。また、今後注意してやっていきたいというのは、従来のように数と力の論理におごるのではなく、国民の声に耳を傾け、それを代弁する野党とも実質的に対話と協調を図るという姿勢を意味するのかどうかということです。  総理さきの総選挙は、発足以来一年、中曽根内閣の実績について国民の信任を問うものでしたが、第一に、いわゆる倫理解散けじめ解散のその名のとおり、実刑判決を受けた田中元首相の議員辞職と、政治倫理の確立を求める世論の高まりと政治不信、第二に、財政再建とは言いながら、中曽根政治が税金、健康保険年金など、暮らしと直接かかわる問題で中低所得者に実質的に大きな負担増を押しつけようとする不公平政治への不安、第三に、総理が進めている防衛力増強歴代自民党内閣から大きく突出していること、また、厳しい東西対立の中で、対米従属とも見られる一方で、対ソ強硬姿勢を思わせるなど、中曽根内閣外交防衛政策がもたらす平和に対する不安などの三点について、国民皆さんははっきりと金権腐敗ノー不公平ノー軍拡ノーと選択をいたしました。総理は、この国民の選択をどのように受けとめておられるのか、伺いたい。  以下、その趣旨に沿って質問をしてまいります。  政治倫理の焦点は、言うまでもなく田中問題です。総理は、国会召集を前に総裁声明を発表しました。その第二項には、「敗北の最も大きな原因は、いわゆる田中問題のけじめが明確でなかった」云々、また第三項の冒頭に、「いわゆる田中氏の政治的影響を一切排除する。」と明記しています。しかし、その後、総理の言動にも、また先日の自民党大会においても、総裁声明具体的措置についての説明はなかったやに記憶いたしますが、あえて伺います。  第一、政権政党総裁声明である以上、公党としても、また総裁としても、いうところのけじめを明確にする責任があると思いますが、どうですか。  第二、総理が「一切排除する」という影響の中身と排除のプロセスについて説明を願いたい。  第三、国会においても国民の納得のいく決着をつけなければならないのですが、総理考えはどうですか。  また、国民の期待する金権腐敗政治一掃のため、国会自浄能力を早急に確立すべきです。まず隗より始めよとは、まさにこのことです。公明党具体的提案につきましては、さき党首会談で資料を添えて説明し、また昨日も竹入委員長が触れましたので重複は避けますが、さき演説でもまた答弁でも、総理の受けとめ方は抽象的、消極的そのものです。例えば、一審で禁錮刑以上の判決を受けた場合、議員辞職の慣行を設けること。また、企業献金の禁止、政治資金収支明確化など早急に断行すべきです。衆参両院議員定数の是正も、党利党略を離れて、国民的合意の中で今国会で実現を図るべきです。総理所見を伺いたい。  ここで、総理が内政の目玉に据えようとしている教育改革について、まず、行革・中曽根から教育中曽根へと華麗な変身を目指す総理姿勢を、ともすれば純粋な教育的立場よりも政治的戦術、戦略にウエートを置く見方も少なくないのですが、どうですか。  言うまでもなく、教育改革は今日の国民的課題です。しかし、取り上げようとする学校制度改革は失敗が許されず、慎重にしかも時期を逸しないように、国民合意を形成していくことが必要です。公明党は、六・三・三・四制の改革に当たりまして、一、子供の成長に見合った、二、人間的な成長発達を阻害する要因を取り除く、三、社会の変化に対応できる人材育成という三つの視点から検討すべきだとしています。  その立場から、先導的試みとして五歳児就学、中学生並み成長した小学五、六年生の授業の形態、また、公立学校で六年間の中高一貫教育を試みるなど、パイロットスクールの設置を提唱していますが、これら学校制度改革についての総理所見を伺いたい。  また、大学入試制度について、すでに共通一次テストによる偏差値問題を初めさまざまな弊害があらわれています。そこで、入学窓口を複数化し、多様な能力を持つ学生の入学が可能になるよう改善すべきではないかと提案をします。すなわち、論文試験のみで入学する者もいる、推薦だけで入学する者もいる、また共通一次テストのみで入学する者もいるというように、大学、学部が個性に応じた入学方法を講ずべきではないかと考えますが、どうですか。  また、受験戦争の緩和と、生涯教育という学習社会を建設するための一案として提案をしたいと思います。  これからの社会は、学校教育だけで事足りる時代ではないと考えます。そこで、学校教育とは別の体系として、国家試験などを生かして公的資格制度を整備拡充してはどうか。能力、適性によっては学歴にかかわらず、試験等で資格を取ることができ、これに基づいて給与や職務内容が決められるという公的制度の拡充は、活力とたくましさを踏まえた自己教育という生涯教育の理念とも相まって、今後の日本社会に新たな活力をもたらすと考えます。所見を伺いたい。  公明党は、生命のとうとさということを根底に、学習する子供たち一人一人に焦点を合わせた生き生きした教育をつくり上げるため、今国会審議を通して懸命に努力をしてまいります。  総理、当面の財政経済運営については、すでに論点は明らかとなりましたが、結論から言えば、国民は一層不公平と不安をかき立てられているということです。後は五十九年度政府予算案の修正も含めて、国民の期待にどうこたえるか、総理の決断を待つばかりです。  主な点を整理しますと、第一に、政府の五十九年度所得税住民税減税は、増税、しかも大衆増税の抱き合わせで国民生活を圧迫する。これは総理がたびたび公約した増税なき財政再建にも違反するではないか。  第二に、赤字国債の借りかえ禁止の撤廃によって歯どめがなくなり、昭和六十五年赤字国債脱却政府計画がほごにならないか。  第三に、文教、福祉予算大幅後退、特に被用者保険本人負担の増大、各種年金引き上げ抑制私学助成大幅削減など教育費負担の増加、米、国鉄運賃など公共料金値上げは認められない。  第四に、昭和七十年を目途とした年金統合の不透明さは、高齢化社会を前に国民大衆生活不安に陥れている。  第五に、硬直した財政事情、さらに米ソ対立国際緊張の中での防衛費の異常な突出は抑制すべきではないか。  第六に、深刻な貿易摩擦を生み出す外需依存型から、公共投資減税追加を組み合わせて内需主導型の経済成長率実質五%成長を目指すべきではないか。  第七に、牛肉、オレンジを中心にしたアメリカ農産物輸入枠拡大関税率引き下げ問題、さらにはアメリカが強く要求してきている農産物輸入自由化にどう対応するか。  関連して、食糧の安全保障という点から、日本農業の自立を目指した抜本的改革が必要ではないか。また、経済摩擦の一環として金融及び資本の自由化が求められているが、どうするか等々になると考えます。改めて総理所見を伺いたい。  公明党は、この財政経済運営について三つの角度から、それぞれ対策を検討しています。すなわち、一、内需主導景気浮揚安定成長を実現する。二、安心できる生活福祉水準を確保する。三、行政改革による歳出削減増税なき財政再建を図る。この三点です。  まず、景気浮揚については、少なくとも五%程度実質経済成長を目指し、内需を喚起すべきです。具体的には、所得税住民税減税規模政府案より一段と大きくし、一兆四千億円以上とする。また国、地方合わせて公共投資事業費ペースで二兆円追加し、うち一兆円は五十八年度補正で措置できるように配慮する。その執行に当たっては、生活福祉関連中心に、用地購入費が少なく投資効率の高い事業を思い切って拡大する。なお、中小企業に対する設備投資減税は、少なくとも一千五百億円程度を実施すべきです。  減税については、政府案のように酒税などの間接税自動車関係税所得税住民税最低税率引き上げの抱き合わせでは、台所直撃生活圧迫型となって減税効果は期待できません。私どもは、不公平税制の是正という面も考えながら、例えば退職給与引当金の繰入率の縮小、有価証券取引税適正化で三千ないし四千億円、景気浮揚による税収増で三千ないし五千億円、毎年度歳出不用額予備費の使い残しが出てまいっておりますので、不要不急経費節減という意味で当初予算から節減して三千ないし五千億円、聖域化された防衛費を他の予算と均衡を図って削減し、一千八百四億円。また、住民税の財源は、電電、専売公社固定資産税納付金適正化行政経費の節約で賄うこととし、それらの組み合わせで十分に対応できると考えます。  公共投資二兆円の追加は、経済拡大均衡で期待される税収をあらかじめ一部建設国債で賄うことも考えております。河本経済企画庁長官もおおむねこの拡大均衡賛成というか、むしろ積極論者と見受けます。  このように、減税公共投資は、乗数効果を通じて民間設備投資を誘発する効果があり、それらの間接的な影響を含めれば需要は一層大きくなり、内需主導景気浮揚策になると確信しますが、総理いかがでしょうか。  なお、これに関連して、若干建設行政について伺います。  第一に、中小建設業の救済のため、分割発注の促進など受注機会の確保、拡大に配慮すべきではないか。  第二に、政府住宅対策はやや落ち込みかげんですが、五十九年度の新規住宅着工戸数見通しを伺いたい。  第三に、土地区画整理事業では、資金捻出のため事業地内の一部を完了前に保留地として売却します。ところが、購入者事業完了まで登記ができず、担保力を持たないという問題を抱えています。早期解決を検討願いたい。  第四に、いわゆる線引き以前に造成、分譲され、その後市街化調整区域に編入されたいわゆる歯抜け団地につきまして、住宅建設購入者の救済という立場から実態調査をし、対応策の確立を促進願いたい。  また、安心できる生活福祉の問題についてでございますが、総理は、社会保障政策について、これまで家庭中心福祉自立自助の精神を強調して財政面からの抑制を進めてきましたが、さき演説抑制の方向を一層鮮明にいたしました。それは五十九年度政府予算案でも明らかです。健康保険では、患者の負担強化国庫補助の縮小だけが目につく帳じり合わせの改悪です。生活扶助費算定基準引き下げ児童扶養手当所得制限の強化などもそれです。また、政府は、高齢化社会を前に基礎的年金制度への改革考えていますが、給付水準引き下げ保険料段階的引き上げ支給開始年齢の六十五歳への繰り下げなど、ここでも抑制方針が基本となっています。ことしはまた公共料金値上げメジロ押しで、国民生活防衛に一層追われるばかりです。  こうした医療年金など国民全般に直接かかわり、同時に将来のあり方までも決していくような問題について、制度の欠陥を改革することを先送りして、受益者負担の原則で一方的、機械的に国民負担増に転嫁するのは政治不在そのものです。したがって、一党での強行は避けて、超党派的な話し合いの場を設け、国民的合意に向けていくべきだと思いますが、社会保障、特に医療年金についての総理所見を伺いたい。  関連して、昨日も竹入委員長が触れましたが、我が国は、国連婦人の十年世界会議で婦人に対する差別撤廃条約の批准を約束しています。国内法の整備はもちろん、特にいわゆる男女雇用平等法立法措置が必要です。法案準備の状況と、今国会に必ず提出されるかどうか、伺いたい。  さらに、寡婦雇用促進法や、全国で三百万人にも達するパートで働く婦人のため、パート労働法の制定が望まれています。重ねて御説明をいただきたいと思います。  さて、総理行政改革は、単に財政再建の面ばかりでなく、安い政府、効率的な行財政運営という点から国民の望む時代的な要請です。総理のかけ声はともかく、歳出構造のむだを徹底的に洗い直し、肥大した行政組織制度改革し、整理合理化するという具体論になりますと、申しわけ程度としか評価できません。  まず、臨調第二部会報告行政機構整理をどのように具体化し、局の削減中央省庁統廃合あるいは地方への大幅権限委譲など、総理は臨調を超えた行革構想をお持ちかどうか、伺いたい。  また、総理は、五十九年度は三千九百人程度国家公務員人員削減を言明していますが、定員削減は向こう五年間で五%、約四万五千人程度を目標にすべきではないでしょうか。現在でも年間三・六%から四・二%離職をしています。そのうち一%に当たる分について補充しないでいけば、いわゆる首切りなして五年間に四万五千人以上の純減が実現できます。どうでしょうか。  さらに、総額十五兆円にも及ぶ補助金の洗い直し、大幅削減は、中曽根行革のバロメーターです。自民党補助金選挙の手段、集票マシンにしているとこれまでも厳しく指摘されてきました。この削減こそ増税なき財政再建のかぎでないでしょうか。公明党さきに、予算要望事項として、補助金総額抑制はもちろん、五十八年度で二兆六千億円にも及ぶ法律に基づかない予算補助、これを五年間で全廃する、必要なものは法律補助に切りかえて国会のコントロールを受けるようにする、法律補助についても大胆に統合メニュー化を図るなど政府に申し入れております。また、さきの総選挙国会補助金整理委員会を設置し、整理に取り組むことを提案していますが、総理考えはどうでしょうか。  総理、各種の世論調査でも明らかなとおり、国民は今、戦争の脅威あるいは核兵器という問題を最大の関心事として、平和への不安を危惧しています。世界には血なまぐさい国際紛争テロ行為が頻発し、さらに昨年末、米ソのINF、中距離核戦力制限交渉、引き続いてSTART、戦略兵器削減交渉が決裂するなど、東西関係は新たな冷たい冬の時代に突入しています。それにも増して国民がさらに一層身近に平和への不安を感ずるのは、ほかならぬ総理外交防衛についての考え、その行動に原因しています。  まず、総理は、昨年のサミット、日米首脳会談を通じて、日本西側同盟の一員などの立場を鮮明にしました。これは平和憲法平和国家を前面に押し立ててきた戦後日本外交一大転換を意味します。また総理は、日米安保を掲げ、対ソ脅威論を背景にしながら、アメリカと協調して赤字財政の中を防衛力増強に走っています。さらに総理は、就任早々、みずから改憲論者だと宣言をしました。これもまた歴代首相憲法観の枠を超えるものでした。したがって、総理軍事大国にならないとの内外に向けてのたびたびの釈明にもかかわらず、国民にはどうしても不安が残ります。あえて総理所見を伺います。  世界唯一被爆国として核軍縮に積極的であるべき日本が、国連での核軍縮決議案にこれまで棄権、反対を繰り返している態度は理解に苦しみます。他国の決議案賛成できないなら、なぜみずから決議案を起草して各国にアピールしようとしないのでしょうか。より積極的、より行動的な核軍縮への対応を具体的に示すべきだと考えます。  総理、つくらず、持たず、持ち込ませずといういわゆる非核三原則は、世界に誇るべき日本の国是です。ところが、最近、核の持ち込みについて重大な問題が明らかになりました。第一は、アメリカ潜水艦核兵器を積んだまま横須賀に入港したと示唆するものが、アメリカ海軍省発行軍艦事典に掲載されました。第二は、アメリカベッシー統合参謀本部議長は、さき軍事情勢報告で、年内に攻撃型原潜及び一部艦艇に核トマホークを配備する方針を述べ、さらにレーマン海軍長官はそれを敷衍する形で、すでにトマホーク戦艦ニュージャージーのほか四隻の攻撃型原潜に配備していると言明をしました。この種の攻撃型原潜はたびたび日本にも寄港しており、同長官核弾頭つき可能性を否定していないことも極めて注目すべきです。  政府はこれまで、事前協議制や核の存否を明らかにしないというアメリカ政策を盾にして問題を処理してきましたが、こうした情勢の中で核持ち込みにどう対処するのか、毅然たる答弁を伺いたいと思うのであります。  総理は、演説でも国際国家日本役割を強調しました。国民の多くは、その言葉を西側同盟の一員、日米同盟パートナーとして応分の軍事力負担と言っているようにも錯覚しそうです。私は、今日、日本役割は、米ソ両国が中断している一連の軍縮交渉再開に向けて米ソ首脳に積極的に働きかけることだと思います。そのためにも、冷却している日ソ関係の打開を図り、昭和五十三年以来中断している日ソ外相会議の再開を求めてはどうですか。これまでの経緯ではグロムイコ外相の訪日を求めることになっていますが、交渉によっては、第三国を開催地として安倍・グロムイコ会談が実現できるよう提案をします。  また、昨年末、アメリカはユネスコからの脱退を事前通告しました。運営あり方財政上の理由を挙げていますが、予算額の四分の一を拠出しているアメリカの脱退は極めて大きな影響が心配されます。総理は、アメリカを説得するよう働きかける考えはありませんか。  さらに、途上国の開発と生活水準向上のための政府開発援助もまた日本の大きな役割ではないでしょうか。五カ年倍増計画財政事情から伸び悩んでいますが、南北問題あるいは世界の平和と安定に寄与するという立場からも、とかく批判のあった質量ともに再検討を加え、対外公約を達成すべきです。  ここで日韓問題に関連して二点伺います。  第一は、朝鮮半島の平和的統一問題について、北朝鮮から三国会議案、またアメリカから四国案が提唱されました。日本、ソ連を加えて六カ国案も推測として報道されています。その見通し日本の対応について伺いたい。  第二は、韓国居留民団日本全国で百八十万人を超える署名を集めて、永住権を保証されている人たち外国人登録のための指紋の押捺と登録証の常時携帯を撤廃するよう政府に求めています。差別撤廃の上からも実現すべきだと思いますが、どうですか。  最後に防衛問題について。  まず、防衛費異常突出は、人事院勧告実施で今年中にもGNP一%の枠を突破する勢いです。巨額な後年度負担もその大きな要因です。軍事大国にならないというあかしとしてこれまで定着してきたこの一%枠を、総理はどう考えますか。  また、ワインバーガーアメリカ国防長官はその国防報告で、日本は一千海里シーレーン防衛能力を八〇年代に達成すると明記しています。総理はそのように約束をしましたか。シーレーン防衛を含めるとGNP比三%の防衛費を要すると言われていますが、どうですか。  また、同長官は、日本防衛計画大綱時代おくれと指摘しています。総理選挙中に、防衛計画大綱の見直しについて触れ、後で訂正されたようですが、あわせて見解を伺いたい。  総理施政方針演説を、「二十一世紀は日本の世紀である」という言葉を引用しながら、光は見え始めた、アジア大陸の東の岸に波打つ太平洋国家等々、持ち前のロマンあふるる美文調で結びました。国民皆さんはどう聞かれたでしょうか。  総理、ナチス・ヒトラーの腹心、ヘルマン・ゲーリングがこう言ったと伝えられております。「もちろん民衆は戦争なんか望んでいない。しかし、政策を決定するのは指導者である。民主制であろうと独裁政体であろうと、民衆を引っ張っていくのはいつの時代でも単純なことなのだ。民衆に侵略の脅威を訴え、平和主義者は愛国心に欠け、国家を危険にさらしていると非難すれば事足りるのだ」と。私は胸の痛む思いでノートに書きとめたことを申し添えて、質問を終わります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  7. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 二宮議員お答えを申し上げます。  広範な問題について御質問をいただきましたので、順次お答えを申し上げます。  まず、選挙の結果に関する御批判でございますが、やはり政治倫理に対する政治姿勢において国民皆様方の御納得を十分得ることができなかった点を大いに反省しておる次第でございます。  これにつきましては、どういう方法でこれを直していくかという御質問でございますが、やはり政治家自体が自分の良心に従い、責任を持った行動をとるということでありまして、私以下閣僚、あるいは政治家全体がそういう心組みで進むべきではないかと思っておりますし、また、国会運営等につきましても、国民皆様方の御意思を尊重して、与野党協調していけるように、対話話し合いで極力進めるように今後謙虚に努力してまいりたいと思っておるところでございます。しかし、政策面におきまして、行政改革やあるいは外交や、あるいは選挙のときに訴えました教育問題等につきましては、私は国民の皆様に力強く支持していただいていると、このように確信しておるところでございます。  いわゆる田中問題のけじめにつきまして御質問をいただきました。  私は、選挙の結果に対する深い反省の上に立ちまして、いわゆる総裁声明を発出いたしまして、自後自粛、それから挙党一致の党内運営等につきまして考えを新たにして進むと申し上げたのでございます。さらに、政治倫理確立等を中心にして新自由クラブとの間に政策合意を行いまして、それを実行するということで今実行しつつあるところであり、たとえば閣僚の財産公開等もその一つのあらわれでございますし、また声明に関しましては、その後の内閣及び党の運営につきまして編成がえ等を行いまして、私の意のあるところもお示しした次第でございます。  さらに、党内に総裁直属の政治倫理問題調査会をつくりまして、具体的に政治倫理を進める方策を今探求してもらっております。既に党の幹部に対しましては、私から六項目にわたる検討課題をお示ししておりますが、各党各派のお考え等もよくその検討の中に加えていただきまして、国会にできました政治倫理協議会にいろいろお諮りもし、また各党と相談をしてその実を上げるように私からもお願いいたしておるところでございます。  次に、一審有罪議員の辞職の慣行を設けよという御質問でございますが、この問題は国会法の改正等々を伴うものでございまして、議会の運営の基礎に関する問題でございます。したがいまして、両院に設けられた政治倫理協議会等でしかるべく御協議願いたいと思っております。  企業の政治献金の問題につきましては、前から申し上げておりますように、企業も労働組合と同じく社会的存在の一つでございまして、政治活動の自由も保障されておるわけでございます。したがいまして、企業献金を最初から悪であると決めてかかることはどうかと思っております。ただ、政治資金についてはできるだけ公明正大にこれが扱われるべきであり、それらの問題につきましては、自民党はもとより、各党とのいろいろな御相談の上で改革すべきものは改革すべきであると、このように考えております。  定数の問題につきましては、これも議会政治運用上の基礎的な重大問題でございます。これらにつきましても、衆参両院の定数を含めまして各党の合意が形成されるように、わが党の内部におきましてもこれを督促しておるところでございます。できるだけ早く法案の提出ができるように私たちの方も督促いたしたいと思っております。  教育改革につきましては、思いつきや政略でやっているのではございません。私は、一年前の昨年の通常国会におきましても、行革が軌道に乗った暁には、次には教育改革に取りかかりたいということも国会で申し上げておるのでございます。行政改革も、相当数の法案も成立し、また今国会におきましても約二十三の行政改革の法案を提出する予定でございまして、軌道に乗っておると思いますので、いよいよ教育改革の順番が来たと考えて、選挙を通じて国民にもお訴え申し上げた次第でございます。教育改革の目的とするところは、これは二十一世紀を目指した新しい時代に十分対応できる国際国家日本にふさわしい日本人を形成していただく、そういう考えに立ちましてお願いをしておるところでございます。  さらに、パイロットスクールや、あるいは五歳児入学の問題あるいは入試制度改革等の問題について極めて示唆に富む御指摘をいただきましたが、これらにつきましては、いずれできまする適当な機関において十分御審議願うべき問題であり、これらの御提言は極めて含蓄のある御提言であると考えております。  大学入試につきまして多様性を持たせろというお考え、今のような単線進行型というものでなくして、平素の業績であるとかさまざまな要素を入れよと、そういうような御指摘は、私はまことに当を得た御指摘であると思って、私も同感なのでございます。入学試験というような問題あるいは教育問題等につきましては、今弾力性、あるいは多様性、あるいは国際性、あるいは生涯教育等を通ずる社会性、こういうことが要請されていると思っております。その中の一つの多様性、弾力性として今のようなお示しの点も国民世論になっているのではないかと思いまして、十分検討していただきたいと思っておる次第でございます。  そうして、入試等につきまして公的資格制度を活用せよ、学歴だけにとらわれるなというお示しも、本人の実力が社会で正しく評価されるようになることが大切でありまして、必ずしも学校を出たということだけが資格要件であるという必要はない。それも一つの要件ではあり得ますけれども、それだけではない、ほかの場合もあり得る、そういうような弾力性を持たせることが適当であると考え、これらもしかるべき機関において検討していただくべき問題であると思っております。  次に、財政政策増税問題等について御質問がございましたが、赤字公債をできるだけ減らそうという考えに立ちまして、歳出歳入構造全般を点検いたしました厳しい予算を組まざるを得なかったのでございます。政府といたしましては、今回編成いたしました予算は現時点におきましては最善のものと考えまして、これを修正する考えはございません。我々は、できるだけ現在の行政あるいは財政の状態を簡素効率的なものにやりかえて、そして将来に向かって弾力性のある財政構造に至急切りかえなければ、二十一世紀に向かって日本は有効な施策を行い得ない。それからさらに、年金医療等につきましても、今年金あるいは掛金を負担している青年たちが我々の年になっても、安心してよりよき医療その他を受けられるようにしてあげるという世代間の公平を維持していく、これらの制度を長期的に安定させていくという責任を持っておるわけでございます。そういう観点に立ちまして、今日我々は自分たち自体に対しても厳しい措置をある程度とらざるを得ぬ事態に来ておる。そういう認識に立ちまして改革を行ったのでございまして、御了承をいただきたいと思う次第でございます。  特例公債の借りかえの問題でございますが、現在の厳しい財政事情のもとにおきましては、急激な変動を経済界に与えないようにする必要がある。そして漸進的にこれらは改革を行うべきものである。経済財政問題について非常に大事なことは、急激な変動を与えてはいけないということなのでございます。そういう意味からも、この借りかえ問題につきまして踏み切らざるを得なくなったのでございまして、まことに遺憾ではございますが、事情を御了承いただきたいと思っておるわけでございます。我々としては、六十五年度までに特例公債依存体質から脱却するという努力目標を掲げまして、今後とも最大限努力していく考え方でございます。  次に、福祉や文教政策公共料金の問題について御質問をいただきましたが、今申し上げましたような財政構想によりまして厳しい措置をとらざるを得ないという反面に、このような措置をやらざるを得なかったのでございます。政府としては、一般歳出を前年度から三百三十八億円も減額しておるわけでございます。そして国民生活に関係の深い福祉や文教、あるいは高齢化社会の進展に対応する各種の施策につきましては、できるだけ慎重な配慮を行うように努力してきたところでございますが、この程度までは我慢していただかざるを得ないというような程度までは今回はある程度行わざるを得なかったのでございます。  例えば、育英制度等につきましても、一部の人には利子をお願いする、しかし、それだけ育英の適用する人の範囲を広げる、そういうような措置も実は行って、できるだけ公平と、それから制度の趣旨を維持していくという考えに立って行ったところでございます。  公共料金につきましては、独立採算制ということが基本でございまして、受益者負担原則というものもわきまえていかなければなりませんが、物価や国民生活に対する影響等も十分考えまして厳正に取り扱ったところです。これらの公共料金値上げがどの程度物価に影響するかという点は、試算によりますれば大体〇・三%程度であると考えております。  年金の統合につきましては、行政改革の一環といたしまして、臨時行政調査会の指針に基づきまして営々と努力してまいりました。秋の臨時国会におきましては、公社の年金、それと国家公務員年金、この統合を行ったところです。今度の特別国会におきまして、国民年金、厚生年金、それから船員保険の統合を、公明党がかねて御主張なさった基礎年金という構想を入れましてこの統合を行わんとして法案の御審議を願うことになっております。そして、最終的には七十年におきましてすべての年金を統合しよう、そういう方向を確立いたしまして鋭意努力しておるというところなのでございます。  防衛費につきましては、GNPの一%以内にとどめるように努力をいたしました。その努力と、それから防衛計画大綱の水準にできるだけ早く到達するという政府のかねての言明を両立させ、かつ、ほかの経費とのバランス等も考えまして六・五五%という増加率を認めたわけであります。この中には、特に自衛隊員の練度の低下ということが憂うべき状態にありました。例えば戦闘機等の搭乗員の搭乗時間あるいは艦船の外洋訓練の時間等が、ほかの経費の圧迫を受けまして減ってきておったのであります。アメリカやNATOあるいはそのほかの国と比較しますと、非常にこれが落ちてまいっておりました。燃料の使用等もそうでございます。しかし、最近は石油の値段の低下等もありまして、それに加えて若干これらの練度を向上させるように留意した経費を配当した次第なのでございます。  経済成長につきましては、中期展望におきまして、四%を維持する、四%程度ということで、大体四%台を頭に置いて八カ年の展望指針を先般来つくったところで、その線を実現すべく、ことしは四・一%という目標をつくった次第でございます。赤字公債に頼る膨張政策は不適切であると政府考えております。  日米農林水産物問題等につきましては、かねて申し上げますように、できることとできないことがある。特に農業という問題は、私の申し上げますような生命産業であり、普通の加工工業関係の仕事とは違う。また、農村というものには社会性というものもある。そういう点も考え、かつ食糧の自給度の向上、長期的安定も考慮しつつ、対外関係の調整もまた次に考えながらこの問題は解決してまいりたいと思います。あくまで日本の農業を守るという基本的立場に立ちながら、妥当と思われるお互いの話し合いの合意をつくっていきたいと考えておるところでございます。  関税率引き下げ問題につきましては、昨年十月の総合経済対策を踏まえまして、昭和五十九年度の措置を決定いたしました。農林水産物に関する米国の追加要望品目の関税引き下げ等々は、昭和六十年度の検討課題であります。  日本の農業につきましてまた御質問がございましたが、先ほど申し上げましたように、食糧の安定供給と安全保障の確保という要請等も踏まえ、国内の生産性の向上、産業としての自立性を確保していく、そういう点で今後とも努力してまいります。  金融及び資本の自由化の点につきましては、我が国の特性を踏まえつつ、主体的かつ積極的に取り組んでまいるつもりであります。資本並びに金融の自由化につきましては、大蔵省に対しまして私から、中長期のプログラムを示しなさい、断片的にものをやってはいけない、そういう意味において中長期のプログラミングを示すようにと課題を出しておりまして、これらの提出をまちまして具体的に検討してまいりたいと思っております。  減税につきましては、今回は一兆千八百億円というかなり大規模のものを行い、かつ税率構造の是正も含む本格的減税に入ったわけでございます。現在、予算におきましては約二五%の公債発行依存に頼らざるを得ぬという状態でございまして、今回の減税規模はぎりぎり精いっぱいの努力であるというふうに御理解願いたいと思います。  公共投資につきましては、財政がこのような事情でございますから、公共投資による景気の振興という面は制約を受けざるを得ないのは残念でございます。しかし、民間資金の活用や財投資金等々あらゆる面を動員いたしまして、五十八年度を上回る実質的工事量を確保しておるつもりでございます。なお、地方単独事業につきましても、住民生活の基盤となる社会資本の整備を重点的に行えるように、地方公共団体に対して要請しておるところでございます。なお、事業の配分に当たりましては、用地の手当て済みの事業事業効果の高いものに重点を置く。それからさらに地方の中小の建設業者等の立場も十分考え政策を行うように、従来に引き続きまして努力してまいりたいと思っております。  投資減税につきましては、今回は厳しい財政の中ではございましたが、投資促進税制を実現いたしました。代替エネルギー関係、それからハイテク関係、それからテクノポリス関係、この三つにつきまして投資減税を織り込んだわけでございまして、総額においてたしか一千億円以上になると推定をいたしております。  減税財源につきましては、退職給与引当金あるいは有価証券取引税等についての御指摘がございましたが、現在我々が検討したところでは、今回の予算でこれらを盛り込むことは適当でないという考えに立って行わなかったところでございます。有価証券取引税等については、既に過去十年間で株券の税率は大体三倍以上に引き上げられておる次第でございます。  防衛費につきましては、先ほど申し上げましたように必要最小限の防衛目的達成のための経費を計上いたしております。  電電公社や専売公社の市町村納付金あり方につきましては、納付金の性格等を考慮しつつ、引き続き検討すべき課題であります。  それから、新規住宅政策につきましては、住宅金融公庫の無抽せん制度の維持、貸付限度額の引き上げ、民間活力を活用した再開発促進、あるいは親子間の住宅取得資金の贈与の特例、これらの措置を新しく講じまして、全体として緩やかではあるが増加をさせるように努力をしております。  なお、土地区画整理事業の保留予定地等につきまして、担保力を持たないためこれを補完するための実効的な措置につきましては、関係方面をして検討させたいと思っております。  社会保障の問題でございますが、この点は先ほど申し上げましたように、世代間の公平及び長期的安定を考えまして、厳しい財政の中で必要な措置をとったところでございます。これらの点につきましては、幅広く御意見を拝聴しながら改革に取り組んでまいるべきであると思い、与野党の御意見も関係委員会等を通じて十分承り、論議を尽くしてまいりたいと思っております。  婦人差別撤廃条約は、六十年に批准する目標で諸般の整備を行っております。  雇用平等の問題につきましても、労働省を中心に今鋭意関係各省と詰めを行っております。その上は、審議会の結論を得た上で、できるだけ早期に国会に提出したいと思っております。  パート労働法の問題でございますが、当面は雇用の整備あるいは環境の整備を図る必要があり、職業相談あるいは職業訓練の充実等の条件をできるだけ改善していきたいと考えております。このために、労働条件の明示の徹底、職業紹介体制の充実、相談、指導の充実等について積極的に努力してまいりたいと思います。  行政機構の問題でございますが、中央省庁の改革につきましては、今国会十省庁の内部改編を実行いたしたいと思っております。臨調以上の仕事をやれというお示してございますが、さきに成立を見ました総務庁の設置は、これは臨調以上の仕事でありました。  また、お示しの人員削減あるいは補助金等の問題につきましても、鋭意努力してまいりたいと思っておるところでございます。公務員の定員は六次にわたる定員削減計画を十七年間にやっておりまして、ネットで一万六千人減らしておるという現状でございます。今後につきましてもさらに積極的にこれは取り組んでまいりたいと思っております。今回は三千九百五十三人のネットの減員を行った次第でございます。  予算補助法律補助かの問題でございますが、法律補助にいたしますと弾力性を失いまして、これをやめるとか変更するという場合に非常に硬直性が出てくるわけでございます。やはり予算補助という性格は奨励的な指導的な要素が込められているわけでございまして、必ずしも法律補助がいいというわけではございません。そういう意味におきまして、その補助の内容をよく点検いたしまして、一つ一つ点検の上これは決定すべきであると思っております。  次に、平和の維持の問題でございます。  私は前から、遺憾ながら世界の平和は抑止力と均衡によって維持されていると申し上げました。我々の目標が世界平和の維持にあることはもちろんのことでございます。日本のように貿易で生きていく国にとりましては、平和の確保は死活的重要性を持っておる国家存立の基礎条件であると思っております。それを実行するために、総合的安全保障対策外交政策等あらゆる手段を使いまして総合的にやりたいと思っておりますが、安全保障上の問題から見ますと、やはり抑止力と均衡、これによって戦争は起こらない、大戦が起こらないということが担保されているのが実情であると思います。やはりこの冷厳な現実の上に立ちながら、現実的な実効性のある仕組みをつくりながら平和を維持していくというのが実際的な立場であり、そのような態度をとっておるわけでございます。  核軍縮決議につきましては、昨年の国連総会で核実験全面禁止米ソ間の核軍縮交渉等、五本の核軍縮決議を共同提案いたしました。今後も積極的に対応いたします。昨年の核軍縮決議案は合計二十九本当ておりますが、我が国は賛成十一、反対七、棄権十一という実績でございます。  トマホーク、ニュージャージー等を通ずる核の持ち込み等の御質問がございましたが、非核三原則一を厳然と守ってまいるつもりであります。  軍縮交渉と日ソ関係でございますが、INFやSTARTは、ソ連側の事情によって一方的に中断あるいは無期休会となっていることは甚だ遺憾でございます。しかし、日ソ関係につきましても、ここで申し上げましたように領土問題を解決するということが基本であります。しかし、その上に我々といたしましてはできるだけ対話の窓口、糸口を広げて、お互いが現状を打開するために誠意を持って相話し合うべきものである、そのように心がくべきものであると、そのように考えておる次第です。  三月には日ソの事務レベルの協議が行われます。グロムイコ外相の訪日が懸案でございますが、一日も早く実現されるように期待をしております。目下のところ第三国で日ソ外相会談を行う考えはございません。  米国のユネスコ撤退は甚だ残念でございました。日本は関係国とも相談をして、撤退しないように米国にも随分話し合いをやったところでございます。しかし、ユネスコの内部におきましても、政治性が過剰であるとか、あるいは予算の使い方がむだが多いとか、批判さるべき点は確かに最近出てきておるのでございます。したがって、ユネスコ自体も改革をする必要もあり、内部的に我々はそのような努力も行い、それと相応じてアメリカができるだけ早期に復帰するように今後とも努力してまいりたいと思っております。  海外経済協力につきましては、新中期目標のもとで今後とも努力してまいりますが、五十九年度予算においては九・七%増と特段の配慮をいたした次第であります。防衛費突出と、こう言われますが、一番突出しているのは九・七%の海外経済協力なのであります。  朝鮮半島の問題につきましては、第一義的には南北の両当事者が話し合って解決すべき問題であります。北朝鮮の提案につきましては関係各国の動向を注目しておるところでございます。  いずれにせよ、本日は、朝鮮半島の平和及び安定維持に重大な関心を持っておるところでございます。できるだけ北と南が話し合って緊張を緩和させ、融和していくことが望ましいと思っておりますが、仮に関係国が話し合いをするという場合には、アメリカ提案したように、休戦会談の当事国である国、すなわち北と南及び中国及びアメリカ、これが話し合うのがまず妥当ではないかと考えております。関係国をふやすということは、一面においては問題を複雑化する危険性がありますが、話ができれば安定性をより持たせるという効果もございます。そういう面もございますが、日本としては重大な関心を持ちつつも、日本の憲法あるいは個別的自衛権の国家であるという、そういう考え等も十分わきまえて慎重に対応すべきであると考えます。  外国人の登録問題は、これは列国が慣行として行い、あるいは法律をもって行っているところでありまして、差別とは別の性格の問題であります。外国人登録法は一年余り前の国会において改正がなされまして、指紋の押捺とか登録証の常時携帯というようなことは、これはそのときも十分審議が行われましたが、これは各国が大体行っておるところであります。指紋の採取を全面的または部分的に採用している国は、米国、韓国を初めとする三十三カ国が実行しており、また常時携帯はほとんどの国においてこれを実施させておるところであります。  防衛費GNP一%の枠は、これは五十一年の閣議決定でございますが、現在のところ変える必要はありません。  米国国防省報告によるシーレーン防衛の問題は、これはもちろん日本が自主的に決むべき問題であります。国防報告を読んでみますと、アメリカが期待しているということであって、日本に対してこれを強制するとか、あるいは日本が早急にこれを実行するように督促しているというような性格のものではございません。あくまで日本防衛の一環として日本が独自に決めていくべき問題であると思います。  将来必要な防衛費の問題につきましては、もちろん自主的判断のもとに、防衛計画の大綱に定める防衛力の水準にできるだけ早く到達できない。しかし、一面においては我々は、憲法及び財政状況、他の経費とのバランス等も十分考えてやらなければならないと思っております。  防衛計画の大綱の見直しということは考えてはおりません。(拍手)     —————————————
  8. 木村睦男

    議長木村睦男君) 上田耕一郎君。    〔上田耕一郎君登壇拍手
  9. 上田耕一郎

    ○上田耕一郎君 私は、日本共産党を代表して、施政方針演説に関し、総理並びに関係大臣に質問いたします。  総理は、演説の冒頭、現代を大きな歴史的転換期とし、戦後三十八年のもろもろのひずみを是正して、二十一世紀に挑戦する軌道の敷設について語られました。しかし、国民は、美辞麗句の陰に隠された二十一世紀への軌道が、実は不幸な戦前型政治の復活とレーガン路線への追従ではないかという不安を抱いております。  そこで、私は、以下五つの問題に絞って見解を伺いたいと思います。  第一は、昨年の総選挙結果の総理の受けとめ方についてであります。  国民批判が最も厳しかった田中問題について、総裁声明では田中氏の政治的影響の一切排除を明言しながら、なぜ総理演説で一言も触れなかったのですか。昨日の瀬長副委員長質問に対し、総理は党内問題だからと答えましたが、一月十七日の不破委員長との会談では、総裁声明は党内外向けだと、そう述べています。改めて答弁を求めます。また、自民党大会総裁一任となった副総裁も、田中派の二階堂会長選任かと報道されています。もし事実とすれば、世論田中問題批判を、選挙中と同じように、依然として本心ではスズムシの鳴き声程度と聞き流していることとなります。  特に重大なのは、田中辞職勧告決議案の決着であります。なぜなら、ロッキード疑獄で一審有罪判決を受けた田中角榮君を総理に選出した国会責任として、辞職勧告は不可欠のけじめだからであります。総理は、自民党総裁として従来の態度を変えるべきではないか。また田川自治相は、仮に自民党決議案上程に反対した場合、どういう決意をお持ちなのか。昨日の瀬長質問にお二人とも答えられませんでしたが、お二人の明確な態度表明を求めるものであります。  総選挙結果は、中曽根内閣の一年に対しても厳しい審判を下しました。しかるに、総理は、組閣後の記者会見で内外政策自体は国民の支持を得たと強弁されました。その判断の根拠をお示しいただきたい。もしも総理が、新自由クラブとの連立で人為的な過半数をつくり上げた過信から、これまでの軌道をそのまま直進しようとするのであれば、それは国民に対する許しがたい挑戦と言わざるを得ません。また、中曽根タカ派路線の助け役となった新自由クラブの政治責任も大なるものがあります。一体、選挙中の田川代表の田中批判中曽根批判国民を欺くものだったのか、田川自治大臣にお伺いしたい。  第二に、私は、八〇年代中葉を迎えた世界の現状とわが国の国際的責任について質問したい。  世界経済は若干の景気回復が見られるとはいえ、OECD諸国の失業者数は三千三百万人に、発展途上国の対外債務は六千六百億ドルに達するなど、危機は何ら解決しておりません。その主な原因は、超大国アメリカの大軍拡と、その結果生まれている巨額の赤字財政、高金利、ドル高であります。こうして今、全世界民衆は、軍拡から軍縮への転換、莫大な軍事費を福祉と援助に回すことを求めています。  世界GNPの一割を占める国の首相としてこの切実な声にどうこたえるのか。軍縮は主張するだけで実行しない、そういう理由と、今一番突出していると総理自身が自慢された政府開発援助費の対象国に、なぜ子供たちが飢えに苦しむ悲惨なアフリカ大陸の諸国が選ばれないのか。ジャマイカ、ホンジュラスなどアメリカが介入する紛争当事国ばかり選ばれていくのかという理由とを、ぜひ承りたい。  特に憂うべきことは、米ソ両大国の誤った対処によって、核戦争脅威がさらに大きくなっている事態であります。  中距離ミサイル交渉などの中断で、核軍拡競争はさらに危険な段階を迎え、アメリカの科学雑誌の表紙の「運命の日の時計」は、四分前から三分前に針が進められまして、人類への警告を発しています。日本共産党の宮本議長は、先日、レーガン訪日の際の国会演説の一節に注目して、立場の相違を超えて核戦争の阻止、核兵器廃絶の努力を要請する書簡を、レーガン米大統領とアンドロポフ・ソ連共産党書記長に送りました。世界でただ一つの被爆国首相として、全世界核兵器全面禁止を呼びかける用意がおありかどうか、総理にお尋ねしたい。  二月一日に出された米国防報告は、映画「スター・ウォーズ」さながらに宇宙兵器開発を明らかにしました。このままでは、米ソの核軍拡競争は引き返し不能点を越えかねません。ロンとヤスの親密さを誇る総理は、この友人に対し、このような核瀬戸際政策を放棄することを勧告すべきではないか、総理の態度を問いたい。  特に、我が国の国際的責任として重視すべきことは、日本がこのレーガン戦略のもとで、限定核戦争準備の不沈空母化されつつある事態であります。本年六月、アメリカ第七艦隊に核巡航ミサイル・トマホークを実戦配備する計画が公表されています。戦艦ニュージャージートマホークを積載して、日本寄港が予想されています。  第一の質問は、総理が述べた非核三原則が完全に空文化される問題であります。  政府は、第七艦隊のトマホーク積載の攻撃型原潜、巡洋艦、駆逐艦、さらに戦艦ニュージャージーについて、どのような方法で核弾頭の有無を確認するつもりか。NATO諸国には一九六七年以来毎年説明しているという報道が事実だとすれば、アメリカ政府が核の存否を明らかにできないという理由はすでに失われているではありませんか。非核三原則に照らして米政府が核の存在を否定しない限り、トマホーク積載のすべての米艦艇の日本寄港を当然拒否すべきではないか。事前協議がない以上核持ち込みはないなどといった詭弁は、もはや通用しません。  第二の質問は、極東における戦域核ミサイル配備に対する政府の態度についてであります。  トマホークの太平洋艦隊配備とは、日本の周辺海域に、社会主義国やアジア諸国を攻撃できる射程二千数百キロの戦域核ミサイル数百基を配備する計画のスタートを意味しています。これはソ連のSS20配備と相まって、西ヨーロッパと同じように、アジア・太平洋地域が限定核戦争の戦場となる危険の恐るべき増大にほかなりません。  鈴木前首相は、五十七年三月十六日、参議院予算委員会での私の質問に対し、極東からソ連がSS20などの撤去を行い、極東においてもアメリカのこの核の配備がなされないことを強く望んでいると答弁しました。総理は昨年のウィリアムズバーグ・サミットで、ヨーロッパへの中距離ミサイル配備を強く主張しましたが、極東への配備について、鈴木前首相国会で述べたこの態度を変えるつもりなのですか。  この重大事態に直面して、世界の原水爆禁止運動の発祥の地となった我が国で、今大きな反核運動が広がっており、二月六日には「トマホークくるな!国民運動連絡センター」も発足しました。横須賀、佐世保、沖縄のホワイトビーチだけでなく、米艦船が寄港する一般港も核攻撃の目標になりかねないという、国民の運命にかかわる問題であり、核心を外さない誠実な答弁を求めるものであります。  総理施政方針演説で、「国際国家日本」という言葉を六回も繰り返しました。しかし、総理の言う国際国家なるものは、日米運命共同体論、四海峡封鎖論、グレナダ侵略理解論などの示すとおり、ひたすらアメリカの期待する軍事分担を果たすことではありませんか。中曽根内閣のもとで、日本はいよいよ深く、いよいよ強くアメリカ戦略体制に巻き込まれてきました。  シーレーン防衛について、昨日総理は、日本の必要のためにやるのであってアメリカのためにやるのではないと答えましたが、おととしのハワイ事務レベル協議での米側説明によれば、中東、韓国で紛争が発生した際、米本土からの大規模な軍事力投入とその長い補給路確保のためだというのであります。  日米共同演習も異常な速度で拡大されています。昨年秋の北海道での米陸軍と陸上自衛隊との共同演習は、ソ連軍侵攻を想定していました。昨年の防衛白書は、海峡周辺地域戦場化もあり得るとしています。防衛庁は一体何を想定し、何をしようというのですか。陸上自衛隊は専ら対外進攻用の米海兵隊とことしの秋北海道で初めての実動共同演習を行うと発表されましたが、中曽根流の国際国家の赴くところ、これが海外派兵、日米共同作戦の準備とならない保証は一体どこにありますか。国民の知る権利を尊重した答弁総理に要望したい。  日本の安全と世界の平和にかかわる以上の問題は、第三に私が取り上げたい五十九年度予算案の最大の焦点ともなっております。  予算案の一般歳出は、前年度比マイナス〇・一%なのに、軍事費はプラス六・五五%という聖域ぶりです。後年度負担も初めて二兆円を超えるに至った軍事費異常突出予算案であります。復活折衝の終幕、総理はみずから数字を挙げて裁断したとのことです。  しかも、政府案決定の翌日、ワインバーガー米国務長官は異例の声明を発表し、防衛予算がふえたのは中曽根首相の個人的イニシアチブの結果だとお世辞まで言っている。実質伸び率四・七五%はNATO諸国以上と評価しました。NATO諸国の実質伸び率は二%未満ですから、実にその二倍以上なのであります。今回のアメリカ国防報告は、日本シーレーン防衛について八〇年代中の達成と期限まで明記しました。要求を突きつけておいて、褒めたり、けなしたり、アメリカ政府のこの態度を総理日本を属国扱いする内政干渉だと感じないのですか。軍事費を削って福祉教育をと求める国民とともに、私は外国からの軍拡要求に唯々諾々と従って、国民生活を犠牲にして顧みない中曽根首相の態度を断固として糾弾するものであります。  この財政破綻と長期不況のときに、このように軍事費を最優先させる根源が、レーガン政権の危険な政策日本全体を縛りつけている日米安保条約にあることを私は強く指摘したい。  日本共産党は、二兆九千億円余の軍事費のうち、一機百億円を超えるP3C対潜吟戒機八機、F15戦闘機十七機など、アメリカシーレーン防衛用の正面装備の増強の中止、日米共同演習費その他の削減、在日米軍のための思いやり予算の削除など大幅な削減を要求するものであります。  こうした軍備拡張と臨調行政改革強行の結果、予算案が国民に押しつけようとしている犠牲は前代未聞のものとなっております。私は、幾つかの問題に絞って政府の施策をただしたい。  その第一は、この予算案が突きつけているものは、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなるという国民諸階層の間の格差増大だということであります。  所得税について政府案は、最低税率を一〇%から〇・五%引き上げ、逆に最高税率は七五%から五%も引き下げました。余りにも露骨な金持ち減税ではありませんか。増税の大半を占める間接税が低所得層にとって負担がより大きいことは自明の話です。健康保険の一割本人負担、雇用保険の改悪も、児童扶養手当の切り下げも、低所得層ほど耐えがたい重荷となることも間違いありません。差額ベッド料、付添看護料の上に差額徴収が一層広がり、金の切れ目が命の切れ目となっていくことは目に見えています。厚生大臣、これで国民の健康が守られるとでも思っているのですか。  大蔵省は昨年、昭和六十年代半ばには公的医療保険に対する国庫補助の全廃を厚生省に申し入れましたが、今日でもその方針なのですか。大蔵大臣、厚生大臣双方の見解を求めます。  失業対策予算は、増額どころか減額され、特に失対事業費は七・七%、四十四億円も削られ、六十五歳以上の就労日数は無慈悲に減らされました。総理施政方針演説は老人や障害者にきめ細かい配慮を約しているのに、万八万円を下回る低収入となる六十五歳以上約三万八千人の失対労働者に対し、どうやって生きていけと言うのですか。  以上のように、五十九年度予算案は、歳入の面でも歳出の面でも、財政の持つ所得再配分機能を大きく損なうものとなっています。大蔵大臣の所見を承りたい。  政府は、財源の対案はあるかと言うかもしれません。日本共産党は毎年、軍事費の大幅削減、大企業と大資産家を優遇した不公平税制是正など具体的対案を示してまいりました。我が党が二兆円減税の財源として指摘してきた株式時価発行による莫大な差益への課税、源泉分離課税の廃止などに政府はなぜ手をつけようとしなかったのですか、大蔵大臣にお聞きしたい。  その第二は、本予算案が財政破綻を促進するものにほかならないという問題であります。  国債の利払い費は九兆円余、とうとう社会保障費に匹敵し、今後も毎年一兆円ずつ確実にふえていき、来年度からは赤字国債の償還が始まります。政府は借りかえによって乗り切ると言いますが、百二十二兆円となる国債残高、一万円札を積み重ねますと富士山の三百倍、国民一人当たり百万円という天文学的残高を一層累積するだけであります。まさに国家財政の破綻としか言いようがありません。自民党政府のいまのやり方では、大型間接税導入か、それとも財政インフしか、二つに一つとなるおそれが強くなっています。ではどういう方途を持っているのか、総理財政再建の根拠ある見通しを示していただきたい。  この際、一月末に行われました安倍外相の日米農産物交渉についても質問したいと思います。  会談を終えた外相は、ルビコンを渡った、火中のクリを拾ったと述べたといいますが、みずからもやけどしそうなどんな熱いクリを拾ったのか明らかにしていただきたい。二日に公表された米大統領経済諮問委員会の年次報告は、対日貿易赤字はアメリカ側に主因があるとし、牛肉、オレンジ問題は日本の貿易黒字の主因ではないと分析しています。自由化に反対する農民の主張は当然であり、不当な譲歩の必要はどこにもないと思いますけれども、どう考えるのか。  第四の問題として、与党内からまで批判の出ている教育改革についてお聞きしたい。  この問題で教育界と国民が最も懸念するのは、中教審さえ休眠させられてしまい、首相主導の戦後教育の見直しとなれば、日本の未来を担う教育まで中曽根政治と財界の道具にされかねないという問題であります。  六・三・三・四制についていえば、七年も前に我が党は、「教育改革への提言」の中で青年期を二つに分ける制度が生む弊害を指摘し、高校教育を準義務教育とするなどの提言をすでに行っています。しかし、総理の言う戦後教育の見直しとはそういう性質のものではありません。総理の著書「新しい保守の論理」の中での「占領軍によって指導された外来種の教育理念」、そういう総理批判が示すように、戦前の国家主義教育の深い反省に立った憲法と教育基本法の理念そのものの見直しを意図したものではありませんか。また、教育基本法に言う教育行政の政治的中立性と、首相の直属機関としての教育臨調設置との関係をどう考えているのか、お伺いしたいと思います。  質問の最後として、施政方針で七回も強調された「二十一世紀」と我が国の進路の問題に触れたいと思います。  総理が敷設しようとしている二十一世紀への軌道とは、これまで私の質問でも明らかにしてまいりましたように、日米安保体制を基軸としたレール以外の何物でもないようです。総理は、二十一世紀にまで日米軍事同盟を延長固定化するつもりなのですか。国連加盟百五十八カ国の三分の二以上を占めている諸国がとっている非同盟の路線の国際的役割をどう評価しているか、お尋ねしたい。  振り返ってみると、あの敗戦後数年の間、日本国民はポツダム宣言と新憲法の当然の帰結として、講和後の中立日本という道について国民的合意を形成していました。当時の西村熊雄条約局長は、一九四九年まで外務省も中立必至と考えていたと証言しております。ところが、中国革命に伴うアメリカの対日政策の急転換によって、日本は単独講和と日米安保条約を押しつけられるに至りました。それがいかに不幸な選択であったかは、二度にわたって熱い戦争の拠点となった日米安保体制の三十三年間、その帰結としての中曽根内閣のこの一年間が如実に物語っているところであります。  こうして今日、日米軍事同盟をめぐる問題が、日本の平和と主権、国民生活と権利のあらゆる分野にわたって政策選択の決定的な分岐をなすものとなっています。日本共産党は、三十三年前の強制された不幸な選択を今こそ総決算して、敗戦後、あの侵略戦争への国民的反省の中で選ばれようとした中立の道を、今日の内外情勢のもとで、新たに日米安保条約をなくした非核・非同盟、中立の日本への道として選択することが、二十一世紀に向けての真の国民的軌道であると確信するものであります。  中立日本として非同盟諸国会議に参加するこの道こそ、日本国民の平和と希望を保障し得る唯一の道であるとともに、アジアの諸国民と平和と主権の相互尊重を通して共存することのできる唯一の道であることを強調して、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 上田議員にお答えをいたします。  選挙の結果と政治姿勢の問題でございますが、私は、選挙の結果につきましては厳粛な反省の上に立ちまして、党の団結及び党の運営等に関しまして自分の心境を表明いたしました。これがいわゆる総裁声明でございます。これは主として党の団結や運営等も考えて発出したものでありまして、施政方針演説で触れるべき内容のものではございません。  次に、田中氏の影響排除の問題でございますが、組閣やあるいは党の運営等のその後の変化を見ていただければ御理解いただけるであろうと思っております。  さらに、辞職勧告決議案につきましては、やはり先般の臨時国会においていろいろ御議論がございましたが、その後総選挙がございまして、政治倫理の問題が非常に国民の関心を呼んだわけであります。国民のこの直接の審判というものは主権者の最終審判であり、それは極めて権威があるものであると考えなければならない。決議等の問題につきましては、今後政治倫理協議会等におきまして各会派等でいろいろ御相談を願うべき問題であると思います。  また、どの政策が支持されたかという御質問でございますが、行政改革、あるいは外交政策、あるいは選挙で訴えました教育改革等は極めて力強く支持されたと確信しております。  次に、軍縮の問題でございますが、平和の維持は貿易国家である日本の死活的重要性を持つものであり、日本存立の基礎条件ですらあると私は考えておりまして、平和の維持については全面的に今後も努力していくつもりでございます。このために、米ソ間の対話の回復あるいは核軍縮の推進その他の諸点につきましても引き続き努力してまいるつもりであります。  海外経済協力につきましては、相手国の体制いかんにかかわらず、当該国の開発の要望、我が国との全般的関係等も総合的に勘案して行っておるものであります。我が国の二国間ODAは、アフリカが第一で約九・三%、中南米は七・八%でありまして、アメリカが重視している中南米ばかりやっているというわけではありません。  核兵器廃絶の問題は、この問題はかねて私も唱えておるところでございます。サミットの声明の精神も、また東京声明を発出した精神も、同じように核兵器の廃絶を最終に目指してこれを推進しておるのであります。レーガン大統領も衆議院における演説におきまして、核戦争においては勝者はないと、そういうことを言って、最終的の廃絶を強く訴えておるところであります。INFにおきましても、我々はいわゆるアメリカのゼロオプションを基本的に支持しておるのでございまして、いかなる妥協等が成立しようとも、最終的にはこれは廃絶する、そういう目標に向かって今後とも力強く進めてまいりたいと思っております。  ニュージャージー等を中心にする核の持ち込みの問題は、非核三原則を厳守するということを申し上げておるとおりであります。  次に、国際国家の性格でございますが、これは国際平和を探求して、世界の各国と協調して平和と繁栄のために貢献する共存共栄の道を歩む日本の進路を目指して言っておるのでございまして、アメリカ一辺倒の性格であるということは邪推であると考えております。  海峡防衛アメリカとの共同防衛、共同訓練等について御質問がございましたが、五十八年度版の防衛白書の趣旨は、我が国に対する武力攻撃を行っている国が、通峡の自由を確保するため、我が国の海峡防備のための施設の破壊や海峡周辺地域の占領を企図するおそれがあるという想定を一般的に述べたものであります。我が国が武力攻撃を受けた場合におきましては、日米安全保障条約等に基づきまして共同対処をする、そういう場合に備えていろいろ研究もし、あるいは訓練もするということは当然のことでございます。  防衛予算に関するアメリカの反応について御指摘がございましたが、日本防衛力の増勢は、日本独自の見地に立って日本のためにこれを行っておるということを重ねて申し上げる次第でございます。  NATOの経費との比較を御指摘になりましたが、大体NATOは、諸国ともGNPに対する防衛費の比率は大体四%ないし五%を出してきておるわけです。日本は一%以下であります。そういう意味において過去の蓄積がまるっきり違います。そういう点におきまして、日本防衛費がNATO諸国以上に突出しているということはないのでございます。  失業対策の問題を御指摘いただきましたけれども、失業対策は、本来は次の仕事につくまでの間臨時的な就労の機会を補足するために行われている、そういうのが失業対策であると思います。現在、失対事業を受けているのが六万八千人おりまして、年齢の平均が六十五・三歳になる由で、二十四年ぐらいもう引き続いてやっておるという例が多うございます。このような事態は甚だ遺憾な事態でありまして、できるだけ早くこのような事態を解消するように努力してまいりたいと思っております。  財政再建につきましては、臨時行政調査会の答申を尊重いたしまして、歳入歳出構造の全般な見直し、それから赤字依存体質からのできるだけ早期の脱却等々を中心に、先般公にいたしました日本経済の中期的展望指針、あの線に沿いまして財政計画をこれからもつくっていくつもりでございます。近く当面の財政構想について国会にお示しすることができると思います。  次に、戦後教育の見直しの問題でございますが、もちろん憲法、教育基本法の精神を基本としつつ、二十一世紀を担う青少年の育成を考えてこれを行わんとしておるものでございます。これを行うためには幅広い国民世論をわきまえ、各党各派の御意見もよく拝聴し、国民的な広場の中で、国民的支持のもとにこれを行おうと、そういう考えが基本にあります。いろいろ青少年の非行とか、試験問題とか、さまざまな問題がございますが、そういう臨床的な問題を考慮することはもとよりでございますけれども、やはり二十一世紀を目指した日本の青少年、あるいは教育のあるべき本来の姿がどこにあるかということを中心に我々はこの問題をとらえていきたいと考えております。  教育臨調という言葉は不適切であると私が前から申し上げておりますのは、行政改革教育改革とは質的に非常に違う点があるということを考えておるからでございます。教育の根底には普遍性と個別性と両方があると思います。我々は世界に通用する普遍性、人類共通の理念というものを最大限に尊重しつつ、かつまた、我が民族の精神文化や伝統の基礎の上に立った教育でなければ本当の長続きのする教育にはなり得ない、そのように考えて、普遍性と個別性とを十分にわきまえた教育制度考えていかなければならないと思っております。  二十一世紀に向かいましては、我が国は平和の維持を大きな目標に掲げ、自由と民主主義をあくまで擁護しながら、健全な国家、国際国家として進んでまいりたいと思っております。第二次世界大戦が終わりましてから、朝鮮戦争あるいはアフガニスタンに対する侵略等々の不幸な事件も起こりまして、やむを得ず抑止と均衡という理論によって戦争を起こさせまいという努力を行っておるのが実情であります。非同盟運動につきましては、東西いずれにも偏しない本来の非同盟路線を維持するということは世界の平和と安定に貢献するであろうと私は考えまして、非同盟諸国とも友好を深めてまいりたいと思っておる次第でございます。  あとの答弁は関係各大臣からいたすことにいたします。(拍手)    〔国務大臣田川誠一君登壇拍手
  11. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 最初に、田中辞任勧告決議案が上程されるのに反対されたらどうするかということでございますが、私ども新自由クラブの決議案に対する態度は、もうしばしば表明したとおりでございます。ですが、決議案が一体国会に果たして提出されるのか、また各党会派がどういう態度をお示しされるのかわからない今の段階で、私がここで意見を申し上げることは差し控えさせていただきます。  もう一つ、批判した政党と連立を組むのはおかしいではないかという御質問でございますが、政党が存立をしている以上、その政党がよその政党と違う点を鮮明にするのはこれは当たり前のことでございまして、政党の特色を鮮明にすれば他党の批判をどうしても申し上げるようなことになってしまいます。私どもは、何も自民党ばかりでなく、他の野党もこれまで批判をしてまいりました。お互いに批判をし合いましても、重要な政策について公党間で合意が成立すれば、お互いに共同で政権を担当することは民主主義議会政治では普通行われているルールでありまして、ヨーロッパなどでは日常茶飯事にこうしたことは行われているのであります。  我が国でも、首長の地方選挙をごらんになればおわかりのように、上田議員の属しておられます共産党でも、イデオロギーの全く違う自民党と御一緒に同じ首長候補を立てて共闘して、共同して地方政権をつくっているではございませんか。それに比べますと、同じ自由主義政党であり、同じ民主主義の保守政党であります我々同士が、政局の安定どこの難局を打開するために連立を組んでいることは決しておかしいことではございませんで、国民皆さんも理解してくださると思っております。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  12. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問お答えをいたします。  所得税改正について、最低税率を上げて逆に最高税率を下げた、これは金持ち減税ではないかと、こういう趣旨でございます。  御案内のように、この税制調査会の御答申等をごらんいただきますならば、諸外国との最低税率の水準との比較においても、この際最低税率引き上げることが適当である、なおまた主要諸外国に比べてもかなり高い水準にあるところから考慮すべきである、こういうことも書かれてあります。そして、課税最低限の国際比較をいたしましても、我が国の税制が一番高いところに存在しておるわけでございます。しかも、中堅所得者層の負担の緩和にも配慮しながら、なだらかな累進構造とする方向で見直したわけでございますので、これはまさに適正な負担が確保されたと、こういうふうに私は考えております。  次の問題は、大蔵省が公的医療保険への国庫補助の全廃を厚生省に申し入れたという趣旨の御発言でございました。  とにもかくにも、この厳しい財政状況に顧みますならば、あらゆる制度について根底から見直しを行うことは必要であると思われます。したがって、医療保険制度におきましても給付と負担の見直し等、制度の合理化を図るということは必要であると思いますが、医療保険について諸外国においては原則として国庫負担は行わないということを申しただけでございまして、別に大蔵省が御指摘のような申し入れをしたという事実はありません。  それからその次の、所得再配分機能を大きく損なっておるという御指摘であります。  所得再配分機能を含む財政の諸機能を今後とも適正に果たしていけるような財政改革を進めることが、まさに緊要な課題であると思っております。したがいまして、歳出面でも、厳しい財政事情のもとでも在宅福祉対策の拡充でありますとか、老人、心身障害者等に対する施策の充実でありますとか、また先ほど申しました所得税の課税最低限の大幅な引き上げとか、障害者控除とか、そういういわゆる社会的弱者に対するきめ細かな配慮はそれなりに行っておるつもりであります。  次は、共産党が御主張なさっておりますいわゆる減税財源の株式時価発行とか源泉分離課税の御指摘でございます。  時価発行増資による株主の払込金は資本そのものでございますので、法人の稼得した所得に対しての課税を行います法人税の課税対象とすること、これは理論的に適当でないということであります。そして源泉分離課税をどうするかを含めまして、利子配当課税のあり方につきましては、税調の五十九年度答申におきましても、この問題は大変に関係するところ多いから今後なお時間をかけて検討を進めることが適当であるとされております。今後検討を進めるべき問題であるというふうに考えております。したがって、御指摘の項目を減税財源とするということはこれはまさに適当でないというふうに申し上げておきます。(拍手)    〔国務大臣渡部恒三君登壇拍手
  13. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 医療保険制度改革についての御質問でありますが、今回の改革は本格的な高齢化社会に備え、医療保険制度の基盤を揺るぎないものとするもので、将来にわたり国民の健康と医療の確保につながるものであります。その重要な柱である健康保険本人の給付の見直しは、乱診乱療の排除など医療費の適正化や給付の公平化などを図る上で必要なものであります。その際、患者負担については過重な負担とならないように配慮し、また、特に低所得者に対しては特別の配慮を払っております。また、高度医療や差額徴収については、今回の改革によって患者負担が増加するというようなものではありません。  次に、大蔵省が医療保険への国庫補助の全廃を申し入れたという御指摘でありますが、ただいま大蔵大臣が答弁されたように、そのような公式な申し入れがあったという事実はございません。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  14. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) 上田議員にお答えをいたします。  まず、私の今回の訪米で、私がアメリカと何か農産物に関して譲ったとかあるいは約束をしてきたとか、そういうことは全くありません。これははっきりと申し上げておきます。だれか一言二言言ったからといって、それで全体を誤らないでいただきたいと思います。  確かに、私はアメリカの関係閣僚と日米間の懸案について話し合いましたし、あるいは農産物につきましても話し合ったわけでございます。その際私から、牛肉であるとかあるいはかんきつの問題については、我が国の直面している厳しい国内事情を詳細に説明いたしまして、米国側に対して日米間の総合的な協力関係の中で本問題を位置づけなければならないということを指摘いたしました。同時にまた、日米関係の重要性にかんがみまして、本問題の円満な解決のためには、米国側も柔軟性を持って協議に臨むことが不可欠であるということを指摘したわけでございます。その結果、米国側も弾力的にこの交渉には対処してくると、こういう心証を得たわけでございます。そういう意味において、私の訪問は成果を上げ得たと私は確信をいたしておるわけであります。  同時にまた、先ほどお話がございました米国大統領の経済諮問委員会の年次報告では、牛肉、オレンジ問題は日本の貿易黒字の主因ではないと、こういうことが指摘されておる、分析されておるということでありますが、確かにそのとおりであります。しかし、一方におきまして、この日米農産物問題というのが両国間の、何といいますか、一つの象徴的な問題になっておることもこれはもう事実でございます。したがって、我が国としましては、この厳しい国内事情に十分に配慮するとともに、日米の全般的な関係の重要性というものも踏まえ、さらにまた自由貿易体制を維持、堅持していかなければならぬ。そういうことも配慮しながら、できる限り努力を重ねて、何とかこれは円満に解決をしていかなければならないと考えて、今後ともできるだけの努力を払ってまいる考えでございます。(拍手
  15. 木村睦男

    議長木村睦男君) これにて午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ——————————    午後一時二分開議
  16. 木村睦男

    議長木村睦男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。三治重信君。    〔三治重信君登壇拍手
  17. 三治重信

    ○三治重信君 私は、民社党・国民連合を代表して、総理施政方針演説並びに三大臣の演説の重要課題について質問をいたします。  質問に先立ち、先般八十三名もの犠牲者を出した三井有明鉱の火災事故に対し、深く哀悼の意を表するとともに、かかる事故が再び繰り返されることがないよう、政府並びに当該企業が万全の措置をとるよう強く要請するものであります。  さて、私は、内政、外交にわたり若干の質問をいたしたいと思いますが、個々の問題に触れる前に、総理政治姿勢について一言伺いたいと思います。  総理は、その政治姿勢の基調として戦後政治の総決算ということをよく口にされますが、その内容はいま一つ具体性を欠き、一体これまでの政治のどこをどう変えられんとするのか、施政方針演説そのものが総決算を意味するのか、まずお答えを願いたいのであります。  質問の第二は、行政改革についてであります。  政府行政改革は第一歩を踏み出したにとどまり、国民の期待する行革からはまだ不十分、不徹底なものがあります。行政機構整理縮小を図る上において最も有効な方法は、行政機関の職員の定員の最高限度を定めた総定員法を改正し、その最高限度を引き下げることであります。定員の規模は行政規模におおむね比例し、人減らしは仕事減らし、金減らしに直結するからであります。  昭和四十三年度末の行政機関の職員の定員を最高限度として定められた現行の総定員法は、その後行政機構の膨張を防止する歯どめとして多大の役割を果たしてきたのであります。しかし、政府は、四十七年には沖縄の国の行政機関の職員、四十八年には新設国立医大の教職員などを総定員法の対象外とする暫定措置を講じ、職員をふやす抜け道を講じてきたのであります。これに法制定当初から適用除外とされてきた地方事務官を加えると、この法律の適用外となる職員は四万五千人と全体の〇・八%にも達します。  少なくとも、臨調の最終答申でも指摘するように、法の対象外とする暫定措置は廃止すべきものであります。そのため、総定員法の地方事務官の国家公務員となる数を含めた改正案を今国会に提出すべきであると考えます。今回、地方事務官制度の廃止に伴う関係法令が提出される予定になっております。政府行政改革の一環として必ず実施するよう、強く要望するものであります。政府の明快なる方針を求めます。  国とともに地方行政改革も重要な課題であります。  特に、地方自治体の非常識な高額の退職金、給与の支給や、制度の趣旨に反した違法な各種手当の支給などの実態は、住民の行政不信を著しく増大させ、民主政治の基本である地方自治の発展を阻害しております。かかる現状の是正は急務であります。四十七年以来十二年も行政指導を続けながら、事態は一向改善されてないという事実が示すように、行政指導のみではもはや限界であります。したがって、地方交付税の減額といった制裁措置を含めた法的是正措置を講ずべきであります。このため地方公務員の給与適正化に関する臨時措置法(仮称)というようなものを制定すべきであると思いますが、総理所見を承りたいと思います。  地方の行革で第二に重要なことは、地方公務員の定数を大幅に削減することであります。そのためには、国が法令等によって地方自治体に必置義務を課している制度改革が不可欠であります。地方公務員の数は、昭和四十三年から五十七年にかけて約九十万人もふえております。その約八五%、七十六万人は法令等により国が強制したものでありまして、地方に責任がないものであります。総定員法による国家公務員抑制は、まさに地方に肩がわりさせられてきたのではないでしょうか。地方の行革を一層促進するため、これを阻害している国の法令等による職員の必置規制の制度は、特に必要あるものを除いて原則としてこれを廃止すべきであると考えます。  また、電電公社、専売公社改革には、労働関係の規制はどのように考えておられるのか。公共企業体等労働関係法の適用を除外いたしまして、労組法、労調法の適用法人とするのか。全株政府持ちの特殊法人とはいえ、民間の長所を持とうと思えば、賃金等労働条件の労使自主決定は必要なことと思いますが、いかがでございましょう。政府の御所見を承りたいと思います。  第三に、財政改革の問題であります。  昨年秋の政府税調中期答申は、現在のような財政状況の悪化を招いた原因として、まず第一に経済成長率の低下に伴う税収伸率の鈍化を挙げております。かつて実質五%程度経済成長を続けていた五十五年に出された前回の中期答申においては、「ここ当面、毎年の自然増収はおおむね三兆円ないし四兆円程度と計算される。」としたのが、三%台の低成長経済のもとにおける昨年の中期答申においては、「現在のように税の自然増収が年々二兆円程度に止まる状況」と指摘されているのであります。この二つの対比は、我々に大きな意味を持つ方向性を示しております。それは、実質三%台の低成長を続けていては財政再建は達成されない、こういうことであります。  すなわち、自然増収のうち一兆円は国債の利払いの増加に、一兆円は地方交付税交付金及び当然増経費に、マイナスシーリングで出た財源は防衛費の増加に食われて、赤字国債減額の財源は出てこないことであります。四・一%の経済成長率と所得税、地方税の減税に見合う増税をして初めて六千六百五十億円という公債の減額ができたという事実であります。経済成長率三—四%で国債減額を実行していくためには、歳出の大幅カットが毎年続けられていかなければなりません。赤字公債の減額を一兆円ずつ実行していくと仮定しますと、大型間接税の導入等が余儀なくされ、増税なき財政再建は不可能になることは必至であります。かかる事情にありますから、特例公債の償還財源をつくることは到底でき得ることではありません。すなわち、特例公債の償還財源を借換債の発行に求めることはまことにやむを得ないところであります。  さて、所得税住民税の一兆円減税に対して法人税、酒税、物品税、自動車税等の増税は、七〇対三〇%の直間比率を少しも改善しておりません。税関では税の直間比率の改善を指示されていたのではないのでしょうか。大蔵大臣、いかがでございますか。  また、今新たに地方交付税特会においても、今日までの地方交付税不足分として特別会計が借り入れた額は何と十一兆五千二百億円に及んでおり、これを今回棚上げすることになっております。五十九年度予算で特会の借り入れをやめ、地方交付税交付金の特例措置として加算額を上乗せし、また棚上げ額の利子については、中央、地方それぞれ持ち分を定めて、国は国債費に、地方は特会に計上する改正をしたことは高く評価いたします。しかし、従来一般経費で負担した臨時地方特例交付金、いわゆる臨時の約三千五百億円を、制度改正することによって一般経費の節減に見せかけて、一般歳出を前年度に比し三百三十八億円削減しましたというようなことは、まやかしも甚だしいものと言わざるを得ません。地方交付税交付金の特例措置を講ずることによりまして実質的に地方交付税の率が毎年度変わるものと了解してよろしいものか、お伺いいたします。  中曽根総理は、昨年末の総選挙のさなか、来年度予算編成に関する構想を発表されました。その内容は、臨調答申を守り増税を行わない、赤字国債発行額を極力大幅に削減する、公共事業の適切な確保を図る、民間活力を最大限に発揮させる、高目の成長を期するなど、まことに立派な構想でございます。しかるに、今回の中曽根内閣の手になる来年度予算案なるものは、減税規模を上回る約一兆三千億の増税が行われる、国債発行額は一兆円減額の予定を大幅に下回り、約半分の五千二百五十億円にとどまっている、一般会計の公共事業関係費は二%の削減となっている、民間活力を発揮させる具体策は乏しく、むしろ民間活力を減退さすような一・三%の法人課税の強化などを図っておる、来年度実質成長率の目標は高目とは到底言えない四・一%になっております。このようなことは、選挙中の公約が全くほごにされてもいいと、こういうことになりませんか。公約違反ではありませんか。  また、自民党前幹事長の二階堂さんは、景気回復に役立つ所得税、地方税の減税を、暗に野党の統一要求一兆四千億に同意せんばかりの与野党間の公約をなされました。これもまた公約違反ではないかと思います。  また、経済企画庁長官は、二年前同じく同長官であられたときに、行革財政再建について、この二つの概念は別の概念として明確に区別する必要がある、景気回復は財政再建の絶対条件である、行革と景気対策の双方を並行して成功させるのが一番大事な道だと述べられておりました。また最近においても、経済拡大して税の自然増収を基礎に財政を再建するやり方が必要だ、潜在成長力を引き出すような政策を進めたい、予算経済成長に何ら貢献できないという事態は非常に残念だとも述べられておりますが、経済運営拡大均衡へ転換すべきか否か、臨調答申の増税なき財政再建路線は拡大均衡の道と矛盾するものかどうかについて、河本長官の御意見をお伺いいたします。  「一九八〇年代経済社会の展望と指針」では、六十五年には赤字国債の脱却と国債依存度の低下を指示しております。大蔵大臣の財政演説で言う中期的な財政事情の展望は、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の期間に合わせ、しかも六十五年度赤字国債ゼロの計画が含まれていると考えられるが、どうか。大型消費税等増税を織り込んだものとなるのか、お伺いいたします。  次に、歳出歳入構造の合理化、適正化について最大限の努力を続けるというが、その具体的措置はいかなるものがありますか、お伺いします。  質問の第四は、経済問題についてであります。  我が国経済は、アメリカ経済の回復や原油価格の下落などによって最近ようやく景気回復の兆しが見られるとはいえ、公共事業の息切れ、貿易摩擦の激化、倒産件数の増加など、多くの懸念すべき材料を抱えております。なお楽観を許さない状況にあります。政府は、来年度において実質四・一%の経済成長を掲げ、これまで三年間にわたって続いてきた三%成長にようやく終止符を打とうとされております。  しかし、この四・一%の実質成長は、民間設備投資や個人消費、貿易拡大などに依存するものでありまして、公共事業など政府みずからの政策努力による寄与度は全くゼロなのであります。すなわち、政府は、来年度において、我が国経済の行方を全く民間とアメリカに頼り、みずからはただ傍観するだけの、まさにあなた任せの経済運営に終始しようとしているのであります。しかも、そればかりでなく、政府は、政府自身がその拡大を期待している民間設備投資の一部に対し投資減税を行いますが、一・三%の法人税率の引き上げ等をやって投資意欲を著しく阻害する行動に出ております。また個人消費の伸びは、所得税住民税減税による刺激効果を酒税、物品税、自動車税等の増税で相殺するのみならず、受益者負担という名目の公共料金を軒並み引き上げる等、むしろ消費意欲をそぎ、抑えられるものとなっております。  このような国内事情に対しまして、我が国の対米、対EC貿易黒字幅は八一年以降拡大を続けまして、昨年はそれぞれ百八十一億ドル、百四億ドルと史上最高の黒字幅となっております。このような大幅な貿易アンバランスを是正するためには、ドル高の問題が処理されるとともに、内需中心経済成長を達成しなければなりません。円安ドル高問題の是正策が、日米間で慢性化しつつあります経済摩擦の緩和策の一つとして昨年の日米首脳会談でクローズアップされました。しかし、現時点におけるまで何ら是正されていないのではないかと思いますが、現在までどのような措置がとられ、今後どのように改善をしていくのでありましょうか。  米国の景気上昇は、本年十一月の大統領選挙を迎えまして、確実なものとなりつつあります。しかし、二千億ドルに及ぶ財政赤字と貿易入超による経常収支の赤字を、高利子と不安定国からの巨額の資本流入によって賄っております。今年いっぱいドル高が続けば、世界経済はがけから転げ落ちるようなことになってしまうという心配をする向きもあります。いわゆるシグマ論であります。円高ドル安は、再びスミソニアンの恐怖を招くようなことなく、軟着陸するよう両国は緊密な協議を必要とします。また、ドル安はアメリカ貿易収支の改善にも役立つことであります。  さらに、我々はこれまで、資源輸入の多角化、貿易アンバランスの是正策として、アラスカ原油やガスの輸入を正式に検討することを主張してまいりましたが、この点についてどうなっておるのかお伺いをいたします。  また、輸出超過による膨大なドル資金の流入は、資本輸出によってゼロサムにする努力が必要であります。わが国の金融・資本市場の自由化が急がれなければなりません。大蔵大臣は、我が国の対外資本投資、円借款、円建て融資、民間のドル資金借り入れ等国際資本の流出入は激しさを加えていますが、日本の国際貸借の状況と円為替の拡大についてどうなっているか、御所見をお伺い申し上げます。  質問の第五は、教育改革についてであります。  総理総理はこのたび我が佐々木委員長提案を受け入れられまして、新たな諮問機関を法律によって設置をすることを決定されましたことは、まことに英断であり、我々は率直にこれを評価するものであります。  第三の教育改革とうたわれた昭和四十六年の中教審答申が、一部を除きほとんど実行されなかった愚を再び繰り返してはなりません。これは日教組などの勢力とのあつれきを恐れ、事なかれ主義に終始した政府姿勢に原因があります。政府が今後ともこのような姿勢をとり続けるならば、新たな諮問機関も中教審答申と同じ運命をたどるであろうことは必至であります。  今や校内暴力は、公立中学校の七校に一校、公立高校の十校に一校で発生し、また、一年間五十日以上欠席の中学生は二万人を超え、ここ四年で倍増しております。少年非行の件数もこの四年連続して記録を更新しております。しかもその非行、犯罪は凶悪化の一途をたどっております。まさに操然とする思いを抱かざるを得ません。  また、新たな諮問機関の成否は、教育改革が広く国民の声となり、運動として盛り上がるかどうかにかかっております。そのために、委員の構成を教育関係者に偏らず国民の声が結集できるよう配慮することが必要であります。少なくとも産業界や労働界の代表は委員に加えるべきであると思いますが、総理委員の構成についてどのような方針をお持ちか、お伺いいたします。  第六に、外交防衛経済協力について質問いたします。  昨年十一月のINF交渉の中断、これに続くSTART及び中欧兵力削減交渉の中断などによりまして、東西関係はさらに冷却化し、米ソ両国は軍事力の増強に一段と拍車をかけつつあります。  言うまでもなく、今や世界の平和と日本の安全は不可分であり、我が国にとって最高の安全保障世界平和の実現であります。したがって、今後我が国は、自由と民主主義を共通の価値とする西側諸国との連帯をさらに強化するとともに、積極的に世界平和をつくり出すための努力、すなわち平和戦略を力強く推進していかなければなりません。同時に、これと並行して、独立国家としての主体性を持った防衛努力を進めることが必要であります。  しかし、それはあくまでも国民合意を踏まえた、国民に理解されるものでなければなりません。その意味では、来年度の防衛予算の伸び率は福祉教育など他の重要政策とのバランスを欠くものであり、国民的理解を得られないものと言わざるを得ません。特に、五十九年度の給与改定いかんによってはGNP一%の枠を突破しようとしていることは大きな問題であります。  現に我が国の防衛費は、旧軍人恩給、遺族扶助料等や海上保安庁の予算を含めたNATO方式で計算をしますと、本年度で四兆三千八百一億円に達しまして、対GNP一・五七%となっているのであります。歯どめなき防衛費の膨張は、防衛に対する国民合意を妨げ、国論の分裂を招くものであり、断じて避けなければなりません。一九七六年十月に決められた防衛計画の大綱について、政府は当初GNP一%以内で大綱の水準をつくり上げることができると考えたのですが、その後の経済成長の鈍化や人件費、兵器の高騰によって、GNP一%以内に抑えることが非常に難しくなってきた条件が生まれてきたことは確かであります。  我が国は今、防衛力整備をめぐって一つの選択に迫られております。それは、財政事情を重視して防衛力整備を見直すのか、あるいは防衛力整備に緊急性があると見て大綱水準の達成を目指すのか、防衛力整備の優先順位、すなわち侵略に対する国土防衛が、海上交通路の防衛なのか、はたまた防空なのか、また主要装備を重視するか、指揮、統制、通信、情報や補給等後方分野の重視の問題等、検討を要する問題が山積をしております。政府はこの問題についていかなる検討を行っているのか、総理の明快な御答弁をいただきたいと存じます。  朝鮮半島の平和戦略は、我が国に最も近接している地域でありますから特別の関心が持たれます。韓国、北朝鮮の対話はこの点から最も望ましいものであります。東西ドイツのごとく、南北ともに相互承認国連加入が期待されるよう、両国の対話に積極外交を展開していただきたいと思うものであります。  続いて経済協力についてお尋ねいたします。  政府は、来年度予算において、経済協力の中心であるODAを対前年度九・七%増といたしております。にもかかわらず、我が国が再三にわたって国際的に公約をしてきたODAの五年倍増計画は、最終年次である八五年度において対前年度二五%の伸びを確保しなければ達成できない状況にあります。  しかし、さらに大きな問題は、経済協力に対する基本姿勢であります。我が国は、世界GNPの一〇%を占める国家として、途上国に対しさまざまな協力を行うことは当然であり、今後とも積極的に進めていかなければなりませんが、単にばらまき的な援助を行うことは許されないのであります。すなわち、今後は我が国の安全保障確保という立場を踏まえ、途上国国民生活向上、経済の発展、技術の向上に真に役立つ協力を進めるとともに、その成果を一層公正にチェックすべきであります。この点に関する総理方針をお尋ねいたしまして、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  18. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三治議員にお答えを申し上げます。  まず、戦後政治の総決算という意味であります。  私がこのようなことを申し上げますのは、戦後政治を否定的に見て言っておるのではございません。戦後三十八年間の日本の歩みを見ますと、日本歴史の中におきましても非常に輝かしい金字塔を打ち立てたと私は申し上げておるのであります。それは、自由主義、民主主義、平和主義あるいは基本的人権の尊重、国際協調主義等々の分野におきまして輝かしい成果を上げてきております。特に、基本的人権の尊重という部面については原則確立してきております。このような輝かしい成果が、単に都会のみならず全国民に普遍的にこれが広がってきている。しかも所得格差が諸外国に比べてみて非常に狭まりてきておる。文化の普遍性、それから日本の文化の非軍事性、こういうような点におきまして、日本歴史の中にまれに見る大きな金字塔を打ち立てたと私は認識しておるのであります。このような成果を護持して、次の世代へ伝えるという大きな我々は誇りと責任を一面において持っております。  しかし、また他面、いろいろ点検して見まするというと、明治以来の蓄積あるいは戦後三十八年の歴史の過程において、必ずしも満足すべきものばかりではございません。それはいろいろな面で噴出してきております。例えば行政の肥大、水膨れ、あるいは明治以来の中央集権、統制国家的性格の削除がまだできていない。それがために民間活動の活発化が阻害されているという部面、あるいは中央と地方との関係の調整がまだ必ずしも十分でない、民間活力の発揮が十分にできていない、あるいは財政におきまして、特に石油危機以後、公債の累積によって今や国家財政が機動力を失ってきておるという状態、こういうような諸般の情勢に加えて、教育問題についても今三治議員御指摘のようなゆゆしい事態も出てきておるわけであります。  この教育問題の今日の結果は、ここ一、二年の結果できたのではないのでありまして、やはり三十八年かかっておるわけです。これを直すにはやはり三十八年かかると考えなきゃならぬでありましょう。教育というものはそれぐらい根深いものであります。そういうような視点に立ちまして、われわれが守るべきものは守り、改むべきものは改める。そして次の世紀に向かって日本を、世界に対して貢献もし、かつまた日本自体が平和と繁栄を享受できる、そのような国家を夢見て戦後政治の総決算という言葉を使っておるのであります。このことをまず明確に申し上げておきます。  その具体的な行動の指針として、まず平和を志向する国際国家ということを申し上げております。それから内政の問題につきましては、行政改革財政改革教育改革、この三つの大きな基本的改革に挑んで、次の時代に対する用意をしようということも申し上げておるのであります。そして、その目標とするところは、自主と連帯と創造力に富んだ、そして思いやりのある、たくましい文化と福祉の国をつくろう、そういうような理念を申し上げて戦後政治の総決算ということを申し上げておるのでありまして、すぐこれを憲法改正に短絡するような、そういうお考えはこの際払拭していただきたいと思う次第であります。  次に、総定員法の問題でございますが、過去十七年間に一万六千人以上の減員をやったところでございます。五十九年度は、昭和四十四年の総定員法施行以来最高の三千九百五十三人の純減をやったところでございます。今後もこの定員管理につきましては、厳しい姿勢をもって、より徹底的にやっていくという覚悟でございます。  地方事務官制度の改正によりまして、地方事務官から国の行政機関の職員となる場合には、これは当該定員分につきましては総定員法に組み入れて最高限度を引き上げるのがしかるべきであると考えております。  次に、地方公務員の給与等の適正化の問題でございます。  この問題は最近非常に世論の関心を呼んでおる問題で、中央、地方相ともども行政改革の実を上げていかなければならぬ中で、地方が受け持つべき重要な問題点に登場していると思います。不適正な給与あるいは高額な退職金、これらのものに対しましては自治省において是正措置を強力に指導しております。もちろん地方自治の本旨に基づきまして、地方の自治権というものはあくまで尊重しているところでございますけれども、全国的な横並びの関係あるいはラスパイレス等々も見まして、やはり常識というものがあると思うのであります。その常識の範囲内においてものをおさめるように、自治体の首長がぜひとも中央の姿勢をよく検討して見習っていただきたいと考えておる次第なのでございます。  次にまた地方公務員の問題でございますが、地方公共団体の職員配置に係る法令等の規制、関与については積極的に見直しを行ってまいりたいと思っております。  地方事務官制度につきましては、去る一月二十五日の閣議決定におきまして、「それぞれ新行革大綱の方針に沿って引き続き鋭意調整を進め、所要の法律案を今国会に提出する。」このように決定したところでございまして、速やかに成案を得るべく政府部内において調整しておるところでございます。  電電公社、専売公社の労務問題でございます。  私は、これらの電電公社やあるいは専売公社改革の一つの趣旨は、前から申し上げておりますように、労使双方が自主的な責任を持った体制をつくるべきであるという考えであります。したがって、経営者の側におきましては経営者としての自主的責任体制をとれるようにできるだけの手を打つ、言いかえれば政府による人事統制あるいは予算統制というものをできるだけ緩和するということが自主性を持たせるゆえんであります。また一面において、労働関係におきましては、これを民間の労調法等の世界にできるだけゆだねていくということが正しいやり方ではないかと思っております。そういう方向でこの問題は法案作成をやりたいと今調整している最中でございます。  増税なき財政再建の理念はこれを堅持いたしまして、最大限の努力を今後ともしてまいる予定であります。  次に、減税問題でございますが、この厳しい財政の中におきまして約一兆一千八百億円の大幅な減税を今回は実施をいたしました。しかし、これらのツケを後世の子孫に及ぼすということは避けなければなりません。そういう意味におきまして法人税以下の若干の税収増を図ったところであります。これは、財政事情をこれ以上悪化させないという健全財政立場からの措置なのでございまして、赤字公債には頼らないということは前から申し上げているとおりで、ぜひ御了承願いたいと思うところでございます。  米国とのエネルギー輸入問題につきましては、民間企業の自主的判断に基づいてこれはあくまで行われるべきものでございます。しかし、政府間の話の対象にもこれは既に登場しておりまして、ワーキンググループの中におきまして作業しておる最中でございます。日本としては、国のエネルギー供給源の多角化及び両国の経済関係の緊密化等の考えから十分考慮しておるところでございます。  しかし、アラスカ原油につきましては、米国国内法制上の問題がございます。また、LNGの輸入量の増大につきましては、今後のわが国の需要見通しとの関係等もございます。そういうような点をよくわきまえまして、両国のワーキンググループによりまして作業も行い、またアメリカ議会等における審議情勢等も見守っておるというところでございます。  教育改革につきましては、この申し上げている機関の設置形態や委員構成等についてはしかるべき時に今後十分検討していくというところでございますが、御提言の労働関係者を加えるようにという御発言につきましては十分考慮してまいりたいと思っております。  防衛費の問題につきましては、これは防衛計画の大綱水準に近づこうという努力と、それに対しまして、一方においては財政の問題や他の経費とのバランスの問題、あるいはGNP一%の枠、こういう諸般の問題を考慮いたしまして今回のような決定をいたしました。GNP一%に関する五十一年の閣議決定は変える必要はないと考えております。  なお、防衛力整備の方針につきましては、平和憲法のもとの国是を実行していくという原則に基づいて行うと申し上げているところでございますが、やはり陸海空の三自衛隊の均衡のとれた体制の整備、あるいは練度の向上、継戦能力の増強、その他行うべきことは多々あるのでございます。そういう面におきましては今後とも引き続いて努力を自主的にしていく考え方に立っております。  次に、海外援助の問題でございますが、これは開発途上国経済社会開発に対する自助努力を支援して、民生安定、福祉の向上に資するという目的でやっておりまして、我が国の重要国策として取り上げており、今後も努力していくところでございます。  先ほど上田議員に対するお答えの中で、一番がアフリカ、次が中南米と申しましたが、あれはアフリカ、中南米の対比だけを申し上げたのでございまして、総計で見ますと一番はアジアであります。アジアが約七割、それから一割前後がアフリカ、次いで中南米、中近東、こういう順序になっておりまするので、先ほどの発言を正確に申し上げておきます。新中期目標のもとで今後とも努力をしてまいる予定でございます。  あとは関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  19. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、昭和五十九年度予算の中の直間比率は、これは七〇・九対二九・一となっております。昭和五十八年度予算におきましては七〇・七対二九・三でございましたから、わずかながら直接税の比率が上昇しております。所得税減税を行う一方、それによる減収額の一部に相当する額を酒税、物品税で賄うこととしながらも、このような結果になっておりますのは、基本的には景気回復による法人税の自然増収が見込まれるためでございます。  直間比率につきましては、さきの中期答申でも述べられておりますとおり、種々の考慮に基づいて税制が形成された結果を総括的に示す一つの指標でございます。したがって、あらかじめ特定の目標を設定して、専らその観点からのみ税体系を論ずることは適当ではないではないか。したがって、直間比率の見直しというよりも、最近、税体系の見直しという言葉が税制調査会等においても使われておるわけであります。究極的には国民の合意と選択によって決められるべき問題であろう。今後、国民各層の御意見を伺いながら幅広く検討していくべき課題であるというふうに認識をいたしております。  それから、中期的な財政事情の展望は八〇年代の経済社会の展望と指針の対象期間に合わせるかという問題でございます。  これは経済全体が流動的であります中で、経済の一部門である財政の将来についてのみ、あらかじめ定量的にリジッドな実行計画を策定するということは大変むずかしい問題でございます。しかし、今後財政改革を進めていくに当たりまして、中期的な展望を持って検討を行うことが必要であるということは考えを同じくしております。したがって、五十九年度予算を踏まえました中期的な財政事情の展望を作成いたしまして、財政改革を進めていく上での基本的考えを明らかにして、本日、予算委員会の両院における趣旨説明の際に提出したいと思っております。  この中期的な財政事情の展望と財政改革を進めていく上での基本的な考え方、これは「展望と指針」で示されました六十五年度までに特例公債依存体質から脱却するという財政改革努力目標に向けて、今後どのように中期的な財政運営を進めていくかということについて検討を行う際の手がかりになるものであるという認識をいたしております。  それから、地方交付税の特例措置についての御批判を交えた御意見がございました。  地方交付税交付金の特例措置は、今回の地方財政対策改革によりまして、五十年度以来の地方財政措置であります交付税特会に今後新たな借入金措置や臨時地方特例交付金にかわる新しい方式として制度化されたものであります。これは国と地方の財政運営の中期的な展望に立ちまして、地方財政の健全化に資するとともに、国、地方の円滑かつ着実な財政再建を確保するための改革でございまして、地方交付税制度の地方財源保障機能を弾力的かつ安定的に発揮させるための施策であるというふうに御認識をいただきたいと考えておるわけであります。  その次の、地方交付税の改正とその特会の借入金の棚上げは、一般歳出節約の見せかけに利用したではないかということでございます。  今回の地方財政対策改革は、国と地方の財政運営の中期的な展望に立って、五十年度以来の地方に対する財源対策の方式を改めまして、まず地方の自主責任原則を踏まえながら地方行財政改革の徹底を期するとともに、次には、国の段階で借入金を行いこれを地方交付税として配付するというやり方を改めて、そうして地方交付税について当分の間、総額の特例措置を講ずるという、いわば抜本的なものでございます。  この改革の結果としての五十九年度予算におきましては、一般歳出が減少する一方、国債費や地方交付税が増加しておりますが、これは改革に伴う過渡期の一時的な姿にすぎないというものでございまして、これを一般歳出を節約するための見せかけのものとお考えいただくことは適当ではなかろうというふうに考えるわけであります。  なお、交付税特会借入金の償還繰り延べ措置は、今回の改革の一環として、今後特会における新たな借り入れを廃止することに伴いまして、財政再建がなされるまで借入金残高を凍結して、円滑で着実な財政再建を確保するために講じた措置にほかならないわけでございます。  それから、歳入歳出構造の合理化、適正化について最大限の努力を続けると述べておるが、具体的な措置はどうだと、こういうお尋ねでございます。  今後とも財政改革を推進するためには、それこそ最大限の努力を積み重ねていく所存でございますが、このため、歳出面において政府と民間、国と地方、この間の役割責任明確化するという見地から、引き続いて制度改革を行うなど、その節減合理化に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  また、歳入面におきましても、社会経済構造の変化に対応して歳入構造の合理化、適正化に努め、言ってみれば受益者も国民であり、また負担するのも国民でございますので、社会経済情勢の変化を踏まえながら、公平、適正な税制のあり方について検討を行う必要があると考えております。このようにして歳出歳入構造の合理化、適正化に最大限努力する所存でございますが、具体的には、それこそ今後の国会論議等を通じながらよく検討してまいらなければならないというふうに考えておるところであります。  さらに、いわゆる大幅な輸出超過に関係して、流入してきた金は援助、海外投資等どういう方向に出ているか、資本輸出の中で円建てで行われるものはどれぐらいの割合かと、こういう御意見を交えたお尋ねでありました。  五十八年の我が国の経常収支は二百十億ドルの黒字となっておりますが、他方、御指摘のように、長期資本収支は百七十八億ドルの赤字となっております。その結果として、両者を合計した基礎収支は三十二億ドルの黒字にとどまっているわけであります。長期資本収支のうち、本邦からの資本流出の主な内訳を見てまいりますと、対外証券投資が百六十億ドル、借款が八十四億ドル、対外直接投資が三十六億ドルの流出超過となっております。こうした本邦資本の流出は、さまざまな形で受け入れ国の経済発展などにそれなりに重要な役割を果たしておるであろうというふうに考えられます。  そこで、我が国からの資本流出のうち、円建て対外貸し付け、円建て外債など円建てで行われます取引は近年相当増加しておりまして、昭和五十八年には両者合計して二兆二千二百六十七億円、前年度に比べますと一四・六%増に達しております。円建ての取引は、我が国の取引当事者にとりましては為替リスクを負担しないという利点がございます。しかし、一方また取引をどのような通貨で行うかということになりますと、これは内外双方の取引当事者間によって決められるべき事柄であると考えられますが、我が国としましても、資本取引の円建て化を初めといたしまして、いわゆる円の国際化については今後その進展を期待し、そしていろいろな角度からこれを前向きに受け入れてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  以上でお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇拍手
  20. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 第一の御質問は、経済拡大路線を図ることは臨調答申に矛盾しないかということでございますが、臨調答申を読んでみますと、その目的として、第一に活力ある福祉社会をつくること、第二に国際社会に積極的に貢献すること、この二つが目標として掲げられておりますが、この二つの目標を実現するためには、我が国の潜在成長力をできるだけ実現をいたしまして、この二目標を実現するための経済的、財政的基盤というものを確立する必要があろうと思います。したがいまして、経済拡大路線といいますか、正確に言いますと、潜在成長力を高めるというその経済政策というものは臨調答申に矛盾するものではないと、このように考えております。  次の御質問は、円、ドルの。問題でございますが、最近、円の動向を見ておりますと、ヨーロッパ通貨に対しては非常に高くなっております。ドルとの関係はずっと安定状態が続いておりますが、しかし、現在の円、ドルの関係が妥当な水準であるかということになりますと、これはまた別の問題であろうと思います。日本経済の基礎的な条件等から考えまして、果たしていまの水準が妥当であるかどうか、むしろ安く低い水準に評価されているのではないか、こういう議論も多いのでございます。  そのためには、先ほど大蔵大臣からもいろいろお話がございました資本の流出がアメリカの高金利のためにずっと続いておりまして、そういう状態をなくするためには、やはりアメリカに対して高金利の是正を求める、こういうことも必要だと思いますし、円の国際化を図っていくということも必要だと思います。同時に、海外に資金が流れていきますのは国内に資金が余っておるからでございまして、やはり内需拡大をいたしまして、余った資金が国内で消化される、こういう対策も必要であろうと思います。  以上のようないろいろな対応をいたしまして、円が妥当な水準に一刻も早く評価されることを期待したいと思います。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  21. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) 朝鮮半島における緊張の緩和を図るために我が国として何をなすべきかという御質問でございますが、もちろん政府としましては、朝鮮半島における平和と安定が確保され、平和的統一が一日も早く実現されることを願っておるものであります。  そのために、御指摘がございましたように、かつて東西両ドイツが互いに独立国として認め合い、国連に加入した、こういう経緯もあって、いわゆるこのドイツ方式といいますか、これを南北両鮮が同時に行うということになれば緊張緩和に大きく役立つのじゃないかというお話でありますが、こうしたいわゆる南北が同時に加盟を考慮し、また国連がこれを受け入れるということになれば、それはそれなりに朝鮮半島の緊張緩和には大きな前進である、こういうふうに思いますが、なかなか現実はそう簡単にまいらないというところに難しい点があるわけでございます。  いずれにいたしましても、朝鮮半島の問題は、第一義的には南北両当事者の直接対話により、平和的に解決されることが大事である、こういうふうに考えます。  最近、御承知のような朝鮮半島をめぐっての種々の話し合いの動きがありますが、我が国としては、こうした動きが緊張緩和及び南北間の実質的な対話再開の醸成に役立つことを希望いたしております。我が国としても、関係各国と緊密に協力をして、こうした緊張緩和への環境整備のための努力をこれからも精力的に行っていきたいと考えておるわけでございます。(拍手)     —————————————
  22. 木村睦男

    議長木村睦男君) 志苫裕君。    〔志苫裕君登壇拍手
  23. 志苫裕

    ○志苫裕君 社会党を代表して幾つかのお尋ねをいたしますが、通告をした質問の前に、今も降り続いております雪の対策について政府対応をお伺いいたします。  日本海側を中心とする雪は、既に五六豪雪を上回る地域も出て、人命を失うなど大きな痛手を受けております。政府は、災害救助法を発動するなどそれなりの手を打っておりますが、なお万全を期されるとともに、特に交通確保のための除雪費用が底をついてしまった自治体も多いので、とりあえずは五六豪雪の例に倣って特別の措置を講じられるよう、即席で恐縮ですが、雪国の人々のために総理の言明をお願いしたい、かように考えます。  さて、本題に入ります。  まず、新聞の投書欄から下関市、六十五歳の方の声を紹介しましょう。「中曽根さんはよく弁が立つ。が、人気がない。今度の選挙では歴代首相中ただ一人トップ当選を果たせなかった。また、選挙中の言の葉は水に流してと言ったのには驚いた。世間のうわさどおり、発言に責任を感じない口先だけの首相だとつくづく思った。」  総理、実は私もあなたの言動には真意をはかりかねることが多い。そこできょうは、その場限りではなく本音を国民に語ってもらいたい。  総理は、選挙結果について、政治倫理では国民納得を得られなかったが、政策の方向は支持されたと言い張っておりますが、これは牽強付会の論理であります。せっかく気負い込んだ選挙田中問題を抱え込んでしまったことの未練を言うよりも、率直に中曽根政治国民批判を受けたと言うべきではありませんか。まさか解散の時期がまずかったなどとは言いますまい。確かに今度の選挙では田中問題が大きな焦点になり、倫理を見くびった自民党とその政権が厳しい非難にさらされましたが、そうだからといって、中曽根政治一年の評価を問うた選挙の性格にはいささかも変わりがないのであります。  総理もそのことを意識して、信任に必要な低いハードルを用意し、積極的に外交防衛、文教など、持論の「戦後政治の総決算」を争点に据えました。首脳会談の成果を誇示し、国際信用を殊さらに強調したことは記憶に新しいところです。だが、国民は、そんな中曽根さんのイメージ、政治スタイルに不安を示し、伯仲の意味を承知でブレーキを踏んだのであります。  総理、民意は明らかに中曽根政治の総路線に修正を迫ったと受けとめて、政策見直しのスタンスをとるべきであります。  なお、政治倫理のことで府に落ちないのは、いわゆる田中排除の声明まで出しながら、田中影響などは受けていない、マスコミで国民が誤解しているのだと力説をしたことであります。いかにその場限りの口先宰相とはいえ、これはひどい。自民党の運動方針もその脈絡にあるようだが、ならば、一体あの声明は何だったのでありますか。政権維持のためには、どんな芸当をしてもいいというものではない。納得のいく説明を求めます。あわせて、施政方針にもないのですが、田中首相責任に触れないのはなぜなのでしょう。もうみそぎが済んだとでも思っておられるのでしょうか。どう決着をつけるのか、明快にお答えをいただきたい。  次に、新自由クラブとの連立についてお尋ねいたします。  この連立が、単独政権を続けた自民党にとって一つの時代を意味するものなのか、単に数を補う現時点での選択なのか。総理はいろいろのことを言うので、はっきりした認識を伺いたいと存じます。  新自由クラブは選挙直後の談話で、宿願の与野党伯仲状況をつくり出すことに成功したとの認識を示しましたが、そのこととこの連立とはどうかかわるのか。この際、同クラブの代表である田川自治大臣にお尋ねいたします。  また、あなたは中曽根首相姿勢が変わり、田中問題の決まりもついたのでと語っておりますが、その後の政局運営のどこが変わり、本当に田中問題が決まりがついたと思いますか。政権の基盤を依然田中派に支えられながら、一方では乳離れを強いられるジレンマの政権の中で何を目標とされるのか、立党の精神にも触れて時代認識と所信をお聞かせいただきたい。  利益誘導型の選挙がピークに達した観があったのも今度の選挙の特徴でありました。利益とは主に公共事業、つまり国費を使う土建事業のことでありますが、それを武器にした政治あるいは選挙のやり方を世間では田中型と呼んでおります。報道によりますと、さすがに自民党内でも批判が相次いだということですが、私は有名な新潟第三区にかかわりのある者として、地域、生活絡みにからめ捕る集票作戦を日の当たりに見て、公正に選ばれるはずの代議制に疑いさえ抱きました。  しかし、それは大なり小なり政権党の選挙の構図であります。地域、特に疎外され、農家の多くが土木作業員となった地域の住民がこのような利益を選択する実態は一概に否定することはできませんが、利益誘導の果ては国家財政つまり税金の負担であり、政治家が利権と隣り合わせに住むことから起きる選挙政治の腐敗構造を容認することはできません。国から仕事を持ってくる与党の先生の話はたやすく信じられる向きもありますが、もし特定のところに厚いのであればほかには薄いのであって、行政の公正と合理性を確保する上でも、また国民的利害の総合調整という議会民主制役割の上でもゆゆしい問題であります。総理のこの問題についての問題意識をお伺いしたいと思います。  我が国は、GNPの一割以上も公共事業に使う世界最大の土建国家とも言える国で、そのこと自体は非難されることではございませんが、それが利益誘導の手段となるのは、財源配分の中央集権的仕組み、すなわち税の七割を集める国が実際には七割以上を使う自治体にその差をくれてやる制度、言いかえれば、政治家が利益の運び屋として介在する余地が根源なのであります。国の行政機構の肥大化も、政治家が首を突っ込んで権限を持つ官僚と癒着をするのも、建設業界の政治献金がトップを占めるのも、そして地域の自立が妨げられるのも、ここに由来すると言ってよい。  したがって、改革の結論は、国と自治体の仕事の領域を区分けした上で財源配分をし直し、分権自治を確立することであります。当然に国庫補助金等は、教育社会保障などナショナルなものを残して全廃し、すべて地方の一般財源に振りかえられます。  追いつき型の日本特有に発達した集権システムは既に役割を終え、地域社会のニーズや経済の効率化の上からも分権自治に席を譲らなければならなくなっております。そうした時代認識をもとに、かつて大平さんは田園都市を構想し、総理も「集権から分権へ」を行革の柱に掲げたのではありませんか。しかし、事柄が政権の基盤にかかわるせいか、実効は全くなく、ことしの予算編成ではその視点さえも後退して、もっぱら自治体の領域を狭めております。行革大綱のように補助金総額抑制だけでは誘導合戦が激しくなるだけであって問題の解決にはならず、まして自治体を禁治産者のように扱って得るものはありません。  総理、既に問題点も改革の方向も出尽くしておるのでありますから、要はこれを優先課題とするかどうかです。決断を示してください。大蔵、自治両大臣にはその手順を求めます。  なお、これは政治倫理とも絡みますが、高級官僚の政界転出が少なからず利益誘導システムとかかわっておりますが、これに対する所見もお伺いをしたいところであります。次に、税制改正と地方財政対策について若干のお尋ねをいたします。  今度の税制改正の特徴は、減税の一方でそれを上回る増税をしておること、所得の低い人の税率を上げて高額所得者を優遇していることであります。その上、お酒や物品税の引き上げが納税者の大宗である勤労者の負担増になることは明らかでありますから、少々の投資減税があったとしても、およそ景気効果を期待できるとは考えられません。これでは政府経済見通しに対し中立型の予算どころか、足を引っ張る中身ではないかと思いますが、納得のいく説明を求めます。  なお、高額所得者の優遇は、減税要求をすりかえたやみ討ちのようなものでありまして、これは容認できません。この層の税率手直しは、利子配当所得との総合課税とあわせて行うべきで、それもこの夏ごろまでには結論を得たいというのでありますから、それなら少なくともことしの税率引き下げはストップをすべきであります。  ところで、大蔵大臣、今度の法人諸課税によって国と地方の配分割合はどのようになりますか。あなたは厳しい財政事情のもとで制度改革を行ったことは評価できると自画自賛いたしておりますが、それは多分に自治体の犠牲の上に成り立っておるのであって、増税額の配分はもちろんのこと、一般歳出でも、私の計算によりますと、三千五百二十三億円を地方財政対策の転換でカットしているのであります。もしこれを加えれば、一般歳出の伸びは〇・一%減どころか、逆に一%近くふえるはずで、このからくりが制度改革の意味ではありませんか。  とまれ、今度の制度改革によって地方財政対策はさま変わりを始めました。八三年度末で約六十兆円、国に劣らず厳しい地方財政にとって、これ以上の借金をふやさないために交付税の特例措置を講じたことにはそれなりの意味があります。しかし、これが現行法の本則、建前の特例になるということから、事実上交付税率の変動相場制になりまして、財政調整制度の性格が一変するばかりか、絶えず下方傾向をたどるという懸念があります。そうでないというのであれば、地方税源の充実を不可欠の前提とし、自治体の財政需要を自立自助立場で自治体側がまず算定をして、国と対等の関係で調整される制度的保障が必要であります。  私は、地方制度調査会を改組してそれに充てることを提案いたしますが、以上の諸問題について、国の地方財政対策が地方自治の角を矯めて牛を殺すことのないように、総理初め大蔵、自治両大臣の真摯な答弁を期待します。  最後に、外交防衛の問題についてお尋ねいたします。  日本防衛についてアメリカがあれこれの評価を言い、総理がそれへの気兼ねを優先させることは異常であります。日米関係が大事なことは言うまでもありませんが、軍事は主権に関すること、日本の国是からも軍事協調を主軸にすることは許せません。また、貿易面での対日本満は、我が国の防衛努力で緩和される性質のものではなく、論理のすりかえであります。  それにしても、総理のタカ派志向はほとんど病気に近い。レーガン流に、世界は東西の二極に対立しなければならないものとして一方にくみし、アメリカ戦略に沿って果てしない軍拡競争に踏み込んでおります。国民は、そのような政府の行為が引き返すことのできない地点に来ることを恐れてブレーキを踏んだのであります。  そもそも西側の一員論が落とし穴なのであって、今の世界は東西二大陣営対立という構図ではなく、多様な主権国家の集まりなのであります。確かに八〇年代に入って第二次冷戦時代とも言える緊張が生じましたが、それは、かつて米ソ二大国がそれぞれの率いる世界体制を代表してしのぎを削った時代への回帰ではありません。あくまでもアメリカとソ連、NATOとWTO、及び他の地域の個別的対立なのであって、どこの国とも軍事的争点のない我が国とは直接のかかわりのないそれぞれの歴史的、地理的事情によるものなのであります。  防衛白書は、そのような世界のトラブルを東西ブロックの対立に置きかえて、「軍事バランスは、東側優位に傾くすう勢」とし、日本防衛努力が西側の安全保障に寄与すると位置づけて、いつの間にか自衛隊を西側の軍隊に格上げしてしまいました。明らかに憲法が禁ずる集団自衛の発想であります。  総理、日米関係は二国間の大事な問題であって、軍事的にほかと事を構えるものではないでしょう。日本の支配はアメリカ人の血であがなった軍事的権益であり、その延長線上に安保条約があることは歴史的事実でありますが、それはアメリカの論理ではあり得ても、日本はソ連や他の国々と何一つ軍事的争点を持たないのでありますから、安全保障の仕方が違って当然であります。日米韓の軍事同盟でNATOのようなアジアにおける対ソ正面を形成することは断じて避けて、軍拡競争と対立を緩和する新しい原理が確立されるべきであります。  総理は、依然として抑止力と均衡安全保障の哲学としておられるようでありますが、この立場は、際限のない軍拡のシーソーゲームから抜け出せないのみか、当然に抑止力がきかなくなったときの用意をすることによって論理が破算をいたします。事実、このゲームは宇宙への軍拡に至り、「抑止から勝利」への戦略転換が始まりました。かくて米ソは、世界じゅうに約五万発の核兵器を配備し、もし勝利のためにこれを投げ合うことがあれば、第一撃で十一億人が即死、十億以上が死に至る重傷、気温や生態系の変化で人類は絶滅に近いという。「ブレティン」の「運命の日の時計」は三分前を指しております。だから、米ソは核に訴えるほどの対立をしながら、核に訴えない信頼関係を求め合っているのではないでしょうか。こういう時代の軍事、防衛にどれほどの優先順位や現実性があるのでしょう。  総理、国際国家役割を言うのであれば、現代世界が抱えるこのような核の狂気、国境を越えて広がる環境破壊、経済を停滞させる南北格差など、グローバルな問題に先見性を発揮すべきであります。  途上国の人々は、世界人口の四分の三を占めながら、富の二割をも持ち得ず、四、五億が飢餓にあえいでおります。一分間に三十人の子供たちが死んでおるのに、同じ一分間に軍事費は三億五千万円、日本の自衛隊だけでも来年度五百五十八万円も使います。核搭載可能な潜水艦の建造費は、発展途上二十三カ国の児童生徒一億六千万人の年間教育費に等しいのであります。このような、同じ人類が抱える緊急で深刻な問題の解決に役割を果たすことによってこそ、経済的に大をなした国際国家責任ではないでしょうか。この立場外交の基軸にしてこそ、平和国家、貿易国家日本が国際社会の信頼と支持を得、米ソ両超大国に核廃絶を主張する発言権も確保できると信じます。  以上、幾つかの指摘、主張をいたしましたが、総理世界観をも含む答弁を求めます。  総理、あなたは戦後政治の総決算を声高に唱えますが、その中には当然に中曽根政治の総決算も含まれておることを申し添えて質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 志苫議員にお答えを申し上げます。  まず、豪雪対策でございますが、ことしの冬の豪雪は五十六年の豪雪を上回るところも多く見られる状況で、被害も甚大でございます。そこで、政府は本日、国土庁長官を本部長とする豪雪対策本部を設置いたしまして、緊急の諸般の措置をとることになりました。御報告を申し上げておきます。  次に、世論の問題でございますが、選挙の結果につきましては謙虚に耳を傾けて、野党との対話に努め、国民皆様方の御期待に沿うように努力しているということは申し上げたとおりでございます。  いわゆる政治姿勢の問題につきましては、総裁声明を出しましたが、これは挙党一致の体制をつくり、政局を安定させていこうという考えに基づきまして、組閣や党の運営等につきましてそのような考えを発表した次第でございます。  なお、決議案等の問題につきましては、その間に総選挙という厳粛なる事実がありまして、この総選挙の審判は、主権者である国民の最終かつ最高の審判ではないかと私は考えておる次第でございます。  新自由クラブとの連立につきましては、政策協定を行いまして、政策政策の遂行、それから政局の安定、これを目途に合意が成立して、それを実行しているというところでありまして、政党政治の一つの型を新しく開いたものではないかと思っております。  利益誘導型の選挙について御質問がございましたが、補助金等を通ずる権力の介入する利益誘導というものは行ったことはないと確信しております。しかし、高級公務員等が天下りしたり、ややもするとそのような誤解を受ける前もございますから、今後厳重に注意してまいりたいと思っております。  次に、国と地方との事務分配あるいは財源配分につきましては、臨調答申の線に沿いまして鋭意努力しておるところでございます。委任事務の整理等は今懸命にまたやっておるところは御存じのとおりでございます。  次に、地方財政対策でございますが、地方制度調査会等の御意見を踏まえて制度の改正を累次行ってきておりまして、今後も地方公共団体の御意見もよく伺いまして、地方行財政の健全、円滑な運営を確保するように努力してまいりたいと思います。  防衛費の問題でございますが、私のことをタカ派の病気というふうにおっしゃいましたが、診断が誤っているのではないかと思っております。私が前から申し上げるように、我が国は貿易国家でございまして、平和を確保するということが死活的重要性を持っておる問題であるということを申し上げているとおりでございまして、ひたすらに日本戦争に巻き込まないように、そして平和を確保するために苦心惨たんしているということを御注目願いたいと思うのでございます。  さらに、西側一員という御質問がございましたが、現在のINFやあるいはSTARTが中断されて、世界がかたずをのんでアンドロポフ書記長の健康やレーガン大統領の出方、選挙の結果等を見守っております。なぜ世界がこんなに緊張して見ているかと言えば、結局、均衡と抑止の問題がどう推移するかということから来ていると思うのであります。世界の平和が今維持されているということは、嫌なことではありますけれども、米ソの核戦力等を中心にする均衡と抑止の機能というものによって維持されているからこそ、INFやSTARTの推移に重大な関心を持っておるのだろうと思います。そういう点も考えてみますと、我々が防衛にとっておる基本的態度というものは、現実的に見て間違っていないと確信しておるものなのであります。  次に、NATOとワルシャワ条約との関係をアジアに類推して持ってくるべきではないというお考えは同感でございます。  NATOとワルシャワ条約との関係は古い因縁がございまして、通常兵器、核戦力等におきましても、ある意味においては、計数的に対比できるような物理学的な条件に既にある程度なっております。あるいは政治物理学、軍事物理学的状況になっております。しかし、アジアの場合には非常に流動的な要素もございますし、また文化や伝統も異なりますし、非常に複雑性を持っておりますし、その流動性とそれから緩衝的要素がかなりあるわけであります。これがアジアにおきましては非常に重要な部面でございまして、我々がアジアにおける平和の維持にとりまして忘るべからざる要素であるのであります。そういう点はよく認識いたしまして、NATOとワルシャワ条約の対決型をアジアに持ってくることは、私は適当でないと考えておるわけであります。  次に、国際国家日本役割でございますが、これは累次申し上げますように、平和を目途にして、より広い国際的な役割日本が行いつつ、しかも日本の発言権も強めていく、世界の平和と繁栄のために貢献していく、それが国際国家日本の目標でございます。今回、この三月十九日から東京及び箱根におきまして生命科学と人間の会議を開催して、世界各国、サミットの構成国の元首あるいは首脳部からの御推薦をいただいて世界的な方々においでいただく見込みでございますが、これらも国際国家日本の重要な役割の一つであるとして推進した次第でございます。  あとの御質問は関係閣僚から御答弁申し上げます。(拍手)    〔国務大臣田川誠一君登壇拍手
  25. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 志苫議員の私に対する質問は多岐にわたっておりますが、まず所管の問題からお答えをいたします。  地方分権の今後の推進方策についての御質問でございますが、民主政治の健全な発展のためには、地方の特性や創意を尊重した地域づくりを進めることが大事であります。このためには、住民に身近な行政はできるだけ住民に身近な地方公共団体で処理ができるように事務を再配分させていくべきであると思います。同時に、地方公共団体の行財政を強くしていく必要がございます。このような方針は既に地方制度調査会が明らかにしておりますけれども、第二次臨時行政調査会の答申もほぼ同じような考え方を示しております。    〔議長退席、副議長着席〕 政府としては、臨調答申を尊重し、答申事項について順次その実現を図ることとしております。  それから、国と地方の財源配分のあり方につきましては、総理お答えになりましたので、省略をいたします。  五十九年度の地方財政対策についての御質問でございますが、来年度におきましては、地方財政の健全化を図るために、交付税特別会計における新たな借入金制度をやめまして、それにかわって地方交付税の総額の特例処置を講ずるなど、地方財政対策の見直しを行いました。この措置は、五十九年度におきまして国、地方の新しい財政環境のもとで必要な地方交付税の総額を確保をするために行ったものでありまして、決して交付税率を変えようとするものではございません。地方財源の保障と財源の均衡化を図る地方交付税制度の基本的な性格を変えるものとは思っておりません。地方財政は巨額な地方債、交付税の特別会計借入金を抱えておりまして、今後ともその健全化にできる限り努力をしてまいるつもりでございます。  財政需要の算定の手続についての御質問でございますが、地方行財政全般のあり方につきましては、従来から地方制度調査会の御意見を承りつつ制度改正等を行ってまいりました。また、地方交付税の算定の決定などに際しましては、地方財政審議会にお諮りをするなどして、具体的な算定方法につきましては毎年度定期及び随時に地方団体の意見を聴取しつつ改善を加えております。このように地方団体の意思を十分尊重することとしておりまして、その適正、公正な執行を期しておる次第でございます。  いわゆる高級公務員の立候補制限につきまして、この問題については選挙制度審議会でも取り上げられたところであります。しかし、高級公務員に限ってその立候補そのものを一定期間禁止することは、憲法上また法律技術上にも問題がありますので、審議会の答申に基づいて行われた三十七年の公職選挙法の改正では、公務員の地位利用による選挙運動の禁止、地位利用による地盤培養行為の禁止、連座制度強化という形を入れまして今日に至っております。しかし、御指摘のような問題もいまだにあるようでございますので、今後引き続いて慎重に検討をしてまいるつもりでございます。  次に、新自由クラブ代表としての私に質問がございましたが、与野党伯仲に成功したという談話は、これは私の談話ではございません。幹事長が選挙の終了時に機関紙に出した談話でございまして、これはもう当然、野党が与党の議席を減らそうと努力するのは当然のことでございまして、ただこの談話が今回の連立とかかわりがあるというようなことはございません。何らかかわりのないことでございます。  それから、連立と新自由クラブの立党の精神とどういうふうに関連があるかということでございますが、先ほども上田議員の質問で一部お答えをいたしましたけれども、私どもの立党の大きな柱というのは、政治倫理確立であり、行政改革の推進であり、教育改革の見直し、そして平和外交の推進という四つの大きな柱を七年前につくりまして今日までずっと来ているのでございます。今回、連立につきましては、先ほどの総理のお話のように、両党間の党の代表が正式に文書を交わしまして、党幹部の立ち会いのもとで政策の合意をなされたのでございまして、その政策の合意によって今日このように連立をつくったわけでございます。  それから、総理の態度の変化がどういうふうに見られたかということでございますが、これも総理がたびたび国会で言われておりますように、自民党総裁としての総裁声明、あるいはまた総選挙への謙虚な反省、政治倫理の取り組みに積極的な態度を示されている問題、あるいはまた野党との協調、対話を大変強く求められ、表明をされているなど、私どもは評価をしております。今回の施政方針演説にも、前回の施政方針演説と比較をしていただければわかりますし、私の新自由クラブ代表の入閣を見ましても、総理の態度に変化が見られたということも明らかな事実でございます。  私どもの時代の認識と所信はどうかということでございますけれども、私は自由民主党に十数年籍を置いたこともございますし、今回これまで野党に七年有半おりました。野党生活を振り返ってみますと、野党の中ではどうも対立と抵抗と反対だけを繰り返して、そうして自党の政策を本当に政治の中に生かそうという努力が見られない、こういうことがただ保革対立だけの政治を生んで、万年与党と万年野党を繰り返すだけであるということを私は痛感いたした次第でございます。私どもは、我々の考え方が一〇〇%生かされなくても、六〇%でも七〇%でも生かしていけばこれが国民政治のためになる、こういうことで私どもは今回妥協すべきところは妥協し、そして自主性を樹立することを明らかにして、そして連立に踏み切った、こういう次第でございます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  26. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 簡単にやれというお言葉でございますが、言うべきことはきちんと申し上げます。  地方分権制度に対する考え方についてでございます。  これは御案内のように、臨調答申におかれましても、「国の行政と地方の行政とは対立するものではなく、共通の行政目的の実現を分担し責任を分かち合う関係にあるという考え方に立つべきである。」、このようなことがまず前文に書かれております。したがいまして、この問題につきましては、臨時行政調査会の答申にさらに指摘されておりますところの、地方分権化の重視と地方行財政における選択負担の理念のもとで提言がなされているところでもございますし、それは行財政改革を推進するための現下の重要な課題と考えております。したがって、政府として従来からも地方自治の尊重、国、地方を通ずる行政の簡素効率化を推進するため、国と地方公共団体間の事務配分の適正化と、それに見合う適正な財源配分、補助金統合メニュー化等の措置を講じてまいったところであります。  今後、行財政改革を推進するに当たりましては、住民生活に密接な行政はできる限り地域住民に身近な地方公共団体において進めて、地方公共団体の自主性、自律性が十分に発揮できるよう、国と地方の役割分担の合理化及び補助金の見直し等について配慮していく、まさに車の両輪であるという考え方の上に立っていきたいと考えております。  次の問題は、景気に中立な予算と言うが、いわゆる景気の足を引っ張る予算ではないか、こういう御趣旨の御質問でございます。  今回の所得税減税は初年度八千七百億円と、こういう大規模なものでございまして、かつ、その内容もいわゆる本格的なものとなっております。したがって、回復しつつある景気をより確実なものとする、そういう期待が持たれるものであるということになります。  減税の財源を赤字公債に求めるということは、たびたび総理からもお答えがあっておりますように、現世代の負担軽減のツケを後世代に回す、こういうことでございますので、財政改革の趣旨に反するものと考えます。したがって、これ以上財政事情を悪くさせてはならないというところから、負担率の低下しております酒税等についての税率の引き上げ等をお願いすることとしておりますが、その場合にも、法人税にある程度負担を求めるほか、負担の増加とならない増収措置をできる限り活用しておるところでございます。  いずれにしましても、今回の税制改正は、全般の景況感が回復していく中で、財政赤字が拡大することによる悪影響を排除しながら、全体として経済に好ましい影響を及ぼすことが期待されるということであろうかと思います。  それから、高額所得者に対する税制改正は利子配当所得の総合課税を含めて考えるべきであると、こういう御意見を交えた御質疑でございます。  我が国の所得税の最高税率、これは諸外国に比べて高いということが、今年度の中期答申においても指摘されておるところでございます。したがって、適正な負担が確保されるものであると今回の改正は考えておるところであります。  それから、法人課税による国と地方の配分割合ということについての御質疑でございます。  なお、志苫さんは、一般歳出の伸び率を〇・一%にしたというが、計算では三千五百二十三億円地方財政対策の転換でカットしているから、これを含めれば逆に一%増になるのじゃないかと、こういう御計算もなさっておりますが、計算上は私はそれを否定するものではございません。  いずれにいたしましても、この問題につきましては、いわば抜本改正の結果、五十九年度予算において一般歳出が減少する一方国債費や地方交付税が増加しておりますが、まさに改革に伴う過渡期の一時的な姿であります。これを一般歳出を抑制するためのからくりとしてやったという考えは全くございません。  以上でお答えを終わります。(拍手)     —————————————
  27. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 丸谷金保君。    〔丸谷金保君登壇拍手
  28. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 日本社会党を代表して、御質問いたします。  総理は、施政方針の中で、「人々が求めているものは精神的豊かさであり、日常生活における安心、安全、安定である」と申しております。ところが、二月四日総理府は、今日本人の持っているイメージの中で、三割の人が「危険」と答えているという報告を出しております。残念ながら危険の中身までは出ておりません。  そこで、私は、今日本で危険と感じられること、三つの問題を提起してみたいと思います。  第一の危険。核軍拡や資源の浪費がこんな状態で続いていくと、資源小国日本、それからまた人類も、そして地球もこのままではだめになってしまうのではないかという不安です。第二は、人間関係が崩壊していること。過疎や過密の中で人と人との温かいつながりがなくなり、心の病が一般化しておることです。第三は、計画性のない行財政運営社会保障制度まで崩壊し始め、老後や暮らしの先行きが心細くなってきている。そしてこれらの背後にあるもの、これは急テンポで発達してきた科学技術過信に対する心配であります。  以下、具体的な事例で申し上げます。  三井有明鉱、コンピューター管理のモデルケースとして世界一安全だと言われてきた炭鉱ですが、それにもかかわらず、災害で多くの方々が犠牲になりました。生産第一主義で、人よりも機械の方が安全だという安全軽視がこうした人災を生んだのです。  そこでお尋ねします。  この事故はどこまでが会社側の責任で、どこから政府側の保安監督責任であるのか、お答え願いたい。また、鉱山保安監督局には、マイクロエレクトロニクス、これらのわかる職員が一体どれだけおるのでしょうか。  また、原子力船「むつ」の問題にしてもそうですが、一体、会計検査院の中にこうした原子力のことのわかる技術者が何人いるのでしょうか。総理は昨日、八百板議員の質問の中で軍事産業からの献金に答えられております。しかし、八百板議員が質問したかったのは、政治資金規正法の原則論じゃないのです。もう一遍この点について御質問申し上げます。  例えば、千歳で七四式戦車一台三億八千六百万と言われております。これが十台、約四十億です。二十台八十億。普通のものですと余計つくれば安くなるのです。しかしこの場合、一体それが安くなっているのかどうかというふうなこと、比べる方法がない。なぜなら軍事機材というのは全部国が買うからなのです。こういうところで一台で二千万ずつ高くても、一体今の会計検査院、先端技術でここのところがこういうふうに高くついているのだ、原材料が安くたってわかりません。そして政治献金と会社と両方にこにこ、こういうことになったら困るから質問したのです。軍事産業関連企業から、政治資金規正法でなくて、中曽根政治自身は献金をもらうか、もらわぬか、このことだけをはっきりお答えいただきたい。一般論に埋没させないように。  それから、この機会に会計検査院、こういうことですからやはり高度の知識を必要とします。民間の高級技術者に委嘱して専門の分野の検査モニターを採用すること。それからもう一つ、予算編成に当たって、これまで会計検査院が指摘してきた事項についてどこまで改善したかを、予算編成に当たって前年度の指摘をどう反映したか、各省庁にリストをつくらせること。右を要求いたします。  次に、食物をめぐる危険について申し上げます、  アメリカ政府が、小麦やトウモロコシに発がん性のある殺虫剤EDBが残留していることを突きとめまして、昨年から新たな規制に乗り出しました。日本政府は、アメリカから輸入している穀物の残留EDB、これは当然調査していると思います。しかし余り国民は知りません。意図的に発表しないのか、あるいはまた、この事実を知らないということはないと思いますが、もし知らないとすれば国民は食べ物について政府に安心して任せることができない。お答えを願います。  一九七七年、マクガバン・アメリカ上院議員は五千ページにわたる食物に対するレポートを発表しております。そしてその中で、日本の食事のことについても、厚生省も知らないのではないかと思うくらい詳しく報告も出ておりますし、アメリカ上院の調査能力を駆使した非常に貴重な文献です。この中で、カナダやアメリカの小中学校で食品添加物をつけない自然の食品を与えることにしたところ、校内暴力や家庭内の暴力ががたっと減ったという、極めて貴重な実は報告がなされているのです、マクガバン報告にですよ。自国の中でこのことは今大きな問題になっております。それにもかかわらず、アメリカ政府日本に食品添加物の追加承認を要求し、厚生省は十一品目認めました。こんなことでは困ると思うのです。  また、アメリカだけでなく、日本でも昨年、愛知県はアメリカから輸入した小麦に日本のお米の数十倍のスミチオンあるいはマラソン、これらの含有量があることを報告しております。淡路島の猿の奇形児、それから牛乳からも汚染された薬品が出る。こういうふうなことについても、私たちは輸入農産物の問題について、総理の言う日常生活における安全と矛盾しないだろうか、食物安全対策立場から、牛肉やオレンジばかりでなく、輸入農産物の問題を根本的に考え直す必要があると思いますが、総理並びに厚生大臣いかがでしょうか。国内の農業を大事にしないと、二十一世紀、かたきをとられますよ。  毎日使っている飲み水についても大変です。昨年、東京都内の市営水道の水源井戸から発がん性のあるトリクロロエチレンが検出されました。世界保健機構が定めた基準の百四十倍。さらに、環境庁は日本列島の地下水が広範囲に汚染されていることを明らかにしております。調査した井戸水の三〇%近くから発がん性物質が検出されたのであります。これに対し、政府は一体どのような措置をとったのでしょうか。汚染された井戸の使用禁止をした、これだけでは困ります。汚染の経路、水質の浄化対策にまともに取り組んでいないではありませんか。工業用にやたらに地下水をくみ上げた結果、今そのツケが回ってきているのです。政府は、地下水の涵養及び活国策を早急に打ち立てるべきだと思います。  食品添加物や汚染飲料水の問題が重要なのは、これらの中に発がん性の物質が多数含まれているからです。総理、対がん十カ年総合戦略、発がん性物質その他食品添加物、こうした問題を総点検するお考えはございませんか。おへそがお茶沸かすという話があります。こういうことをちゃんとやらないと、この十カ年計画、そのようなことになる心配がありますので、特にひとつこの点は総理にお願いします。  それから、同じように森林資源。環境や水質保全からも大変です。臨調絡み、林政審議会の答申を隠れみのにして、ことしの予算案でも立木の販売の拡大を進め、山を裸にするようなことが行われるのはもってのほかです。国有林野事業の中には、生産性の低いもの、あるいは直接収入に結びつかないもの、当然に含まれております。治山治水、水源涵養、保安林整備、国の事業なるがゆえに採算を度外視して遂行できるのです。  こうした状況が生まれるのは、一つには林業特別会計の単年度帳じり合わせをしなければならない。そのために木を切らなければならない。植林や下草刈りの経費を賄うためには、財政上の必要から木を切って売らなければならないのです。また、水を節約させますと水道会計は赤字になります。薬や検査に頼らないと収入の上がらない病院。薬害や医療費はこれから出てくるのじゃないでしょうか。  総理、このような財政システム、これは単純な単年度収支均衡原則が中長期的な経済効果を軽視する風潮を生み出し、財政の硬直化を来したのではないでしょうか。森林では保水力による治山治水の効果を、水道は水質や節水を、医療では健康指標をそれぞれ加味したような財政原則を新たに打ち出さない限り、総理の言う財政改革は、結局、国家百年の大計を誤る単なる帳じり合わせに終わってしまう心配があります。  この際、太政官布告以来続いておる日本国家財政の単式簿記、つまりは大福帳です、これを改め、民間ではもう当たり前になっている複式簿記の原理を加味した新たな国家会計制度確立することを提言いたします。  三十兆円と言われる農業や林業の国土保全に果たしている役割がこれによって正当に評価され、国家予算の中で明らかにされていくようになれば、農業の過保護論なんというものは消し飛んでしまいます。今のような帳じり合わせだから農村は何だというふうな声が出るのですが、農村の果たしているこういう役割をはっきりそうした複式簿記会計というふうな形の中で出していく、このことが私は今こそ必要だ、かように考えます。  次はグリーンカード。このことについては再三大蔵委員会で私は大蔵大臣に質問しております。かわるべきものは、郵便貯金の非課税や少額貯蓄の非課税制度の精神、庶民を守る、ささやかな貯金を守る、この精神を生かしながら一括課税、そしてサラリーマンには年末調整、その他の人には税額還付。主税局長は事務文書がふえるから大変だと難色を示しておりますが、大蔵大臣、これは市町村の窓口などを利用すればそう面倒なくできるのです。市町村長も、取る方を協力せいはなかなか大変ですが、渡す方に協力すれば割と抵抗ありません。市長さん、おかげさんで返ってきました、こうなるのですから。こういう行政の知恵をひとつ働かしていただきたいと思います。  私は、人と人との温かいつながりが今欠けていることを申し上げました。そして、そのためには何といっても人々にゆとり、至るところに出会いの場所、地方自治体の対応、これが必要だと思っております。  まず、そのためにゆとり、大人も子供も週休二日制、いかがでしょうか。それから地域の広場を生かす。一昨日の新聞で、六本木で一万二千平米林野庁から売りに出す話があります。ざっと二百億円。業者の熱いまなざし。こういうものを売っちゃいかぬですよ。あそこに総理の言う花と緑、この空気がきれいになったのを複式簿記で計算してごらんなさい、大変な利益になるのですよ。これもやはり会計制度、今のままではだめなのです。  東京都の現在のペアについてもいろんなことを言っておりますが、とんでもない。人件費の問題は財政のトータルの中でこそ問題にすべきであって、量より質の人材を養成したり、長い目で見て知事が財政的にこの方がいいと思って労使で決めたことに国がそこまで圧力かけてはいけないと思います。私は何も東京都のやっていること、全部いいと言うのじゃないですよ。しかし、この点ではやっぱり知事の意見を国は認めて、地方自治を醸成しなきゃいかぬと申し上げておきます。  時間がありません。領土問題。  領土の問題で総理が発言しております。しかし、抽象的で単なる国内向けとしか受け取れません。ソ連は、千島列島とその周辺に安保条約による軍事基地をつくられることを極度に恐れております。そこで私は、返還後の千島列島は完全非武装地帯であるという宣言をまず行い、これによってソ連との外交交渉の糸口をつかむべきだと思います。  もともと千島列島はサンフランシスコ条約調印国に対しては放棄したことになっておりますが、その帰属は国際法上いまだにあいまいです。この条約に調印していないソ連の占拠は、不当不法と言わなきゃなりません。政府はポツダム宣言受諾の趣旨にのっとって全千島返還の交渉を行うべきですが、そのためには、反ソキャンペーンととられるような国内向けの四島返還、こんなこと言わないで、あくまで親善友好を旨としながら、国際法にのっとって堂々全千島の返還要求をすべきですし、その出発点として千島列島非武装宣言を提案するものであります。  また、それと並んで、竹島を韓国が不法占拠しております。このことについて言及しないのは遺憾です。どうかひとつ、日韓定期協議の場で日本の外務大臣はどのように要求しているか、韓国は何と答えているか。これらに対する韓国側の態度がはっきりしなければ、これはもう経済援助は打ち切り、こういうふうな手もあるじゃないですか。日本海沿岸の漁民はこのことを非常に心配している。申し上げておきます。  最後に、二十一世紀論が今国会花盛りでした。そこで私は、この宇宙船地球号に乗り合わせた生きとし生けるものが、大国間のエゴの衝突や為政者の見識のないことによって死滅への道へ向かわないように、ひとつみんなの知恵を、特に被爆国日本平和憲法の精神を掲げて世界に訴える、そのことを中曽根総理、しっかりやっていただきたい。お願い申し上げまして終わりにいたします。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 丸谷議員にお答えを申し上げます。  まず、日本のイメージに関する世論調査の御報告がございましたが、「危険」が二八%というイメージだそうですが、この調査を調べてみますと、「現代的」というのが三二%で一番多いようです。それから「危険」が二八%、それから「国際的」というのが二四%、「便利」というのが二四%、「雑然」というのが二六%、「伝統的」というのが一八%、「安全」が一八%、大体日本に対する今のイメージはこういうような調査が出ております。危険よりも現代的というのがかなり強く出てきているというのは、若い人たちの意識が非常に変換してきているのではないかと思っております。  その危険という意味から幾つかの点をお示しいただきましたけれども、私はこのような意識のもとに、一年前の施政方針演説等におきましても、安心、安全、安定の社会をつくろう、そういうことを申し上げて、安心、安全、安定ということを積極的に申し上げておるのでございます。こういうような考えに立ちまして今後とも政治をやってまいりたいと思っております。  三池有明鉱の事故は甚だ遺憾な事故でございまして、心から被災者の皆様、御遺族の皆様方に哀悼の意を表する次第でございます。  現在、責任の所在等につきましては専門家を動員して調査中でございますので、ここでまた明言申し上げる段階ではございません。いずれにせよ、国は鉱山保安監督というものを通じまして石炭企業に対する保安上の監督を行う責任を持っておりまして、今後ともこのような事故を引き起こさないように原因を徹底的に究明し、かつ体制の万全を期したいと思っております。  その際に、電子機器等が最近は非常に利用されておる、その運転状況あるいはガスの濃度の検知、それらの問題について技術的な究明を行えという御指摘でございますが、これらはまことに同感するところでございまして、このような技術的な究明等については今後とも力を入れる必要があると思っております。  なお、軍需産業からの献金のお話がございましたが、いわゆる防衛庁に納入をしている物品等につきましては、いずれも厳重な原価計算をやって購入をしておるものでありまして、不正はないと確信しております。仮に、軍需産業から私に献金があった場合どうするかという御質問でございますが、法に違反しないという条件で受け入れることもあり得るということを申し上げる次第であります。  食品添加物の点について御質問がございましたが、食品添加物と校内暴力との関係は、米国のその資料をいろいろ調べてみましたが、因果関係は確認されなかったと聞いております。なお、農産物や食品添加物につきましては、今後とも厳重によく注意していく必要があると思います。特に発がん性物質に対する監視につきましては、十分注意をしてまいりたいと思っております。  財政システムについて複式簿記等を採用せよ云々の点につきましては、大蔵大臣から御答弁申し上げます。  週休二日制につきましては、学校教育について週休二日制を行うのは検討を要すると思います。これはカリキュラムの関係とか、あるいは家庭の受け入れの関係、社会の受け入れの関係その他万般の問題がございまして、現状では困難ではないかと思っております。  遊休土地等を公共団体に利用させよという御議論は同感でございまして、できるだけそれらを市民の広場とか、あるいは森林であるとか、緑の地帯、花の地帯というふうに活用できるように私たちも協力していきたいと思っております。  北方領土の問題につきましては、粘り強く交渉して、そしてこれを回復して平和条約を締結しようと我々は考えております。サンフランシスコ平和条約に加入した国と加入しない国がございますけれども、我が方は千島列島を放棄したと書いてあるのは、これは得撫までの千島。であって、歯舞、色丹、国後、択捉は固有の我が国の領土である、このような確信と主張をもって貫いておるわけでございます。  竹島につきましても、これは我が国の領有権に属するという認識を持ちまして、あらゆる機会を通じまして相手側に対してはこれを通告して注意を喚起しておる次第でございます。  次に、平和の維持の問題でございますが、この問題は先ほど来申し上げますように、貿易国家である日本にとりまして平和の維持は死活的重要性を持っておる基本的条件でありまして、今後とも懸命に努力をしてまいるつもりであります。  残余の答弁は関係大臣から御答弁いたします。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇拍手
  30. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問お答えをいたします。  検査院の問題が一つございましたが、検査院の指摘事項、これを予算編成に反映させるためには、今日までも三月、八月、かなり長い時間をかけまして事務連絡会議を開いて、この指摘事項が予算編成に関連するという問題について、それを徹底を図るよう努めております。これからも御趣旨を生かしたいと思っております。  それから次に、そもそも財政というものが単年度収支均衡原則に固執し過ぎておるではないかと、例えば複式簿記原理を加味した会計制度等について御意見を交えた御質問でございます。  まず、財政改革に当たって中長期的観点が必要であるという点は、御指摘のとおりであると私も認識をいたしております。そこで、我が国のよって立つ財政民主主義の観点から財政制度を見ますと、言ってみれば国民の税の使途について厳正かつ適正な運用がなされるような仕組みとなっておりまして、したがって、いわば企業会計的な方式にはなじまないというわけでございます。ただ、しかしながら、国の会計でありましても、例えば造幣とか印刷とか国有財産とか、そういう企業特別会計のように企業的な経営を前提としたものについて、現に企業会計原則を取り入れた会計処理が行われておるという例はございます。ただ問題は、今御指摘のような中長期的観点に立って取り細めということを念頭に置いて、そうして現実の財政運営の問題でそのことを生かしていくべきではなかろうかというふうに考えております。  それから、次の問題はグリーンカード制についてでございますが、丸谷さん、五十五年、五十七年、五十八年、私また渡辺大蔵大臣、私に対してグリーンカード問題についてはたびたび御質問をいただいております。したがって、今日グリーンカード制度の凍結期間との関連から、できれば今年夏ごろまでに結論を得ることが望ましいと、このようにされておる今日でございますので、たびたびの御提言、あるいは年末調整等によって返納するという制度等の御提案があっておりますが、これらのことも正確に報告をしながら税制調査会で鋭意詰めていただこうというふうに考えております。  それから最後に、遊休地の緑の発見、出会いの広場、こういう御提言を交えた御質問でございます。  都市の再開発に資するために有効に使用されるよう処分することを基本的な方針として、また、その処分に当たっては、一方厳しい財政事情にかんがみて、極力売り払って税外収入の確保に努めておるということでございます。したがって、これらの土地は極めて貴重でございますので、地方公共団体の利用要望があったときには、その必要性、妥当性等を十分に勘案しながら調整を図っていくという考え方で対応してまいります。(拍手)    〔国務大臣渡部恒三君登壇拍手
  31. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) 丸谷先生の御質問お答えいたします。  殺虫剤EDBについてのお尋ねでありますが、先生のお話のとおり、米国では、EDBの貯蔵穀類等への使用禁止と穀類等への残留許容量に関するガイドラインの設定を行うものと聞いております。このため、厚生省といたしましては、直ちにそのガイドラインの科学的根拠、これら穀類の対日輸出の有無等詳細な情報の提供を依頼したところであり、その情報に基づいて必要に応じ御指摘の調査を行ってまいりたいと考えております。  食品添加物行政につきましては、ただいま総理お答えしたとおりでございますが、従来から安全性の確保を最重点として進めてきております。今後ともこうした姿勢を基本としながら、食品の多様化、食品の国際流通の増大など国民の食生活環境の変化等をも勘案し、適切な施策を講じてまいりたいと思います。御了承願います。(拍手)    〔国務大臣上田稔君登壇拍手
  32. 上田稔

    国務大臣(上田稔君) 丸谷先生の地下水の汚染に対する質問に対しましてお答えを申し上げます。  環境庁は、先生に大変御心配をいただいておりますが、全国主要都市に対しまして実態調査を行いました。そして、その結果を昨年の八月に発表させていただいたのでございますが、その結果によりますと、洗浄剤などに使っておりますトリクロロエチレンなどの化学物質による汚染が広範囲に認められたのでございます。しかし、幸いにWHOの基準を大きく超えておりますものはごくわずかでございました。この基準を超えました井戸水を水源としております水道に対しましては、水源を表流水へと転換を図りまして、また、飲み水に使用しておりました井戸に対しましては飲用禁止をするように措置をとってもらいました。今後さらに五十九年度以降におきまして、汚染原因の究明調査並びに水質保全対策を実施するようにいたしております。  先生は地下水に対して非常に御苦労をしておられますので、大変いい御注意をいただきましてありがとうございました。心して対処いたします。ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  33. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) 竹島の返還について、外務大臣は韓国政府交渉しているのかと、こういうお話でございます。  竹島が、歴史的な事実から見ましてもあるいは国際法上から見ましても、れっきとした日本の領土であるということは間違いはございません。韓国側によるところの不法な占拠はまことに遺憾であると考えております。こうした我が国の考え方は、種々の会合を通じまして、機会をとらえまして韓国側に伝えております。昨年だけをとってみましても、一月の両国外相会談において、私からこの問題を提起しました。そうして日本立場を明らかにしたわけであります。また、八月末の日韓閣僚会議の際の外相会談及び十一月末の外相会談におきましても、それぞれ日本側よりこの問題を取り上げております。  このような日本側の累次にわたる抗議、申し入れに対しまして、韓国側は今のところ応ずる気配がないことはまことに残念でありますが、政府としては、竹島問題につきましてあくまでも平和的な手段によって解決を図る、こういう基本的な方針に立ちまして、外交上の経路を通じ今後とも粘り強く話し合いを続けていく考えであります。(拍手)     —————————————
  34. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 伏見康治君。    〔伏見康治君登壇拍手
  35. 伏見康治

    ○伏見康治君 私は、公明党国民会議を代表して、特に国民会議立場から、さらには科学技術者の立場から意見を申し上げ、総理並びに関係閣僚に対して御意見を求めたいと思います。  参議院と衆議院とは違った性格と役割を持つべきものだと思いますが、このようなプロフェショナルの立場から物を言うことがあるいはお役に立つかと考えているわけです。  まず最初に、日本学術会議改革問題について申し上げたいと思います。  私は、日本学術会議の会長としてその改革に長年従事してきたものでございますが、その経過を申し上げますと、二百十名の会員の方々が、自己改革という旗印のもとに改革の議論を長い間闘わせました誠意と熱意というものは評価を惜しむものではございませんが、その究極においてでき上がった自己改革案というのは、結果において甚だ保守的なものにとどまりまして、世間の期待にこたえられなかったわけであります。しかし、省みてみますと、自分の座っているいすは自分では持ち上げられないと申しますように、純粋な意味の自己改革というものは元来無理な注文でございまして、適当な第三者の判断に任せるということが必要であったのであろうかと今になって思います。この国会選挙区定数是正などの改革を迫られているように伺っておりますが、その案を練る場合にも、第三者機関の判断を請うという謙虚な姿勢が必要であるとひそかに考えておるわけであります。  日本学術会議の改正法案は、昨年、皆様のおかげによって成立いたしました。しかし、制度改革がいかに進んでも、政府日本学術会議の勧告を従来のように無視し続けるのであるならば、結局国民の期待に反することになります。十分ではなかったにしても、過去の日本学術会議にいたしましても厳粛な討論の末にまとめた幾つかの立派な勧告をしております。  例えば、昭和五十五年に医学教育会議の設置を勧告しておりますが、これがもし早期に設けられていれば、今日国会でも時々問題になります文部、厚生両省の間にまたがる諸問題は、もっと円滑に解決したであろうと思うわけであります。  科学技術の創造的発展が強く要望されている今日、日本学術会議の存在を評価し利用していただき、その勧告を行政に反映されることを切に切に望むものでございますが、総理はどのように考えておられるか、伺いたいと思います。  さらに、日本学術会議国民の期待に十分にこたえ得るためには、制度改革を進めると同時に、財政面でも格段の配慮が必要と考えます。ちなみに、昭和五十八年度の国会予算額は六百二十五億円で、日本学術会議予算はわずか八億円で全くわずかな額でございます。このような財政面の不備に対し、総理並びに総理府総務長官の御意見を承りたいのであります。  次に、臨時行政調査会による改革について申し上げたいと思います。  国鉄に関してすこぶる臨調は厳格であるように思われます。経営面のことはさておきまして、国鉄の改革を論じる際に、そこに蓄積されている科学技術について余りにも考慮がなされていないことに科学技術者の一人として疑問を持たざるを得ません。新幹線の技術は日本が生んだ世界に誇るべき技術財産であります。東海道、山陽新幹線について申しますれば、創設以来二十年余、その間に運んだ旅客数は二十億人になります。これだけの人を毎時百キロ以上の速度で運んで、その旅客の中に一人の死者をも出していないということは、まことに称賛すべき実績であります。国鉄についていろいろ批判はありましょうが、申し上げたい点は、角を矯めて牛を殺すことのないようにしていただきたいということであります。  また、電電公社も行政改革の対象となって相当の大変革が起こるように伺っておりますが、その際、電気通信研究所を中心とする科学技術研究開発の伝統がどこまで守られていくのか心配であります。超LSIや、近ごろでは光ファイバーの開発研究はまさに世界に先駆けたもので、もちろん民間のメーカーの協力も無視するものではありませんが、中心となった電気通信研究所の技術の高さを称賛しないわけにはいきません。行政改革に際して、このような高い技術水準をどういうふうに温存し、またさらに発展させるおつもりか、総理のお考えを伺いたいのであります。  次に、「むつ」問題についてであります。  「むつ」のあり方については、当然臨時行政調査会の審議を受けるべきであったと思うのでありますが、自由民主党内でも辛らつなる批判があるように伺っております。「むつ」という開発プロジェクトが、当初から失敗続きであったことはだれでも認めるところでありますが、その失敗の原因を探って、再び失敗を繰り返さないことが大切であります。私に言わせれば、「むつ」のプロジェクトには科学技術者が不在でございました。また、その廃船論の中にも科学技術者が不在であります。  なるほど、初期の原子力船開発事業団にも形の上では工学系の方がいたわけではありますが、ちょうど政治家の中に有能な政治家と無能と言われている政治家がおありのように、科学者の中にも有能な科学者と無能な科学者があるのであります。初めの事業団の構想ではそれでもよかったのでありました。というのは、事業団というのは単に発注団体でございまして、予算をとってきてメーカーに一括発注するだけでよかったのでありますから、そこに科学者がいる必要はあるいはなかったのかもしれません。ところが、一括受注するところが見つけられず、船と原子炉とを別々に発注するようなことになりましてから、破綻が生じてきたわけであります。  私は、ここで行政の論理と科学技術の論理との違いを強調しておきたいのであります。  アメリカの科学者の間で言われている例え話を引用いたしたいと思います。一人の産婦は十カ月で一人の赤ん坊を産みます。そこで行政的な方はこう考えるわけです。十人の産婦を連れてきたならば一カ月で赤ん坊ができるだろうと。それだけの差があるわけであります。役人は予算をとることが身上でありますから、予算をとりさえすればそれで万事は解決したと考えがちですが、科学技術者の仕事はその予算がとれてから始まるわけであります。  現在の原子力船の事業団は、名称にも開発の上に研究という文字が加わり、本物の科学技術者を入れようと努力しておられます。しかし、私から見ればまだ十分ではありません。それは同じ原子力分野の仕事である原子力発電の事業の現状と比べてみるとよくわかります。「むつ」を残すか、廃船にする方がよいかについて、私はここでは申し上げませんが、とにかくこの問題について科学技術者の声を十分に聞くべきであると考えますが、この点について総理並びに科学技術庁長官のお考えを承りたいのであります。  また、「むつ」問題は、研究開発計画というものが中途段階での評価のいかんによっては中断することがあり得ることを示したものであり、昨日、中山太郎君が指摘いたしましたように、アメリカではたびたびそういうことが起こっております。日本ではこれは極めてまれなことでありますために、その処理に戸惑っているように思われます。  総理が座長をしておられる科学技術会議は、そのような問題についてあらかじめ一般論を行っておき、個々の案件で判断を誤ることのないようにしていただきたいと思うのであります。科学技術会議は、ジャーナリストの間ではホッチキス委員会と言われております。それは、各省から提出された計画書をただ束ねているだけだという意味であります。巨大科学、私はあえて巨費科学と言いたいのですが、それを取り上げ、どう始末するかの問題は、科学技術会議に最もふさわしい課題だと思いますけれども、総理に重ねてその御意見をお伺いしたいのであります。  次に、安全性の問題について質問いたします。  最近では三井三池有明炭鉱の死者八十三名という大事故が思い浮かびます。また、昭和五十六年に起きました北海道夕張炭鉱では九十三名の死者を出す大惨事がございました。その教訓がまだ忘れられていないのであります。日本学術会議は、夕張の事故を契機にそれまでの審議をまとめ、炭鉱の安全確保にはガス突出のような現象を基礎的に研究するのが大切であるという観点から、試験炭鉱を設けて研究することを昭和五十八年に政府に勧告したばかりであります。この勧告に対し、総理並びに通産大臣の明快な答弁を求めるものであります。  また、この場合、鉱山監督局が安全性確保について許認可の権限を持っていろいろ指図をしているようでございますが、この際、役所側の責任が一体どういうことになっているのか、国の機関は絶対無謬主義で、何か不思議な感じがいたします。真に責任をとれるような民間の第三者による検査機関の設立が臨調の報告には勧告されております。この鉱山保安の問題はそれにふさわしい問題であるかどうかはわからない面があると思いますが、少なくとも多くの製品の製造に関する安全、品質の保証などの検査業務は、民間第三者検査機関に任せるような政策を樹立すべきだと考えるのであります。日本の製品の検査が外国の検査機関を通らなければ輸出ができないというような点は改めるべきだと思います。この点について総理のお考えを伺いたいと思います。  次に、核戦争の回避についてであります。  人類全体にとって最も重大な安全性の問題と言えば、核戦争の回避が可能かどうかという大問題であります。核抑止という恐怖の均衡によって戦後四十年近くが大戦争を引き起こさずに済んできたという現実、しかしまた、同時に、とめどもない核軍備拡大競争の現実、このまま進めば全人類が終えんに至ることは明らかであります。これに比べれば小さな例え話ですが、赤字国債を続ける糊塗策によって国の財政が覆滅するに至るのとよく似ております。今のうちに何とかしなければなりません。従来の日本の核戦争に対する態度はダチョウに似ています。ダチョウというのは、頭だけ砂の中に隠しておきますと、体全体が隠れたものと思っているそうであります。日本国内での核兵器の排除によって何か戦争が回避できるもののように考えていた嫌いがあります。  ここで、昔、若き中曽根代議士が原子炉予算を初めてつけられたとき、日本学術会議が唱えました原子力平和利用三原則を原子力基本法の中に取り入れられました当時の中曽根代議士に敬意を表するものでありますが、それらの原則はもちろん重要な一歩ではありますが、それだけでは本来国際的、全地球的な問題に対して全く不十分であります。幸いにして中曽根総理は、日本は今や国際国家であると申されておられるわけでありますから、核軍縮に向けて積極的に発言を国際的な場で行っていただきたいと思います。核軍拡競争を刺激し、鼓舞する方向にではなく、それを食いとめ、核軍縮に向かわせる具体的努力です。例えば、核保有大国を一応除きまして、極東の諸国を糾合し非核地帯を設けるような提案をすることなど、総理のお考えを伺いたいと思います。  また、ヨーロッパでは、今までも言われておりますように、INFとかSTARTとか超大国間の話し合いの場が現実にございますが、そういう対話の場があるのに対して、極東地域にはそのような話し合いの場がないのは国際国日本努力が足りないのではないでしょうか。総理並びに外務大臣に、今後における平和への姿勢について具体的な答弁を求めるものであります。  最後に、国際的学術交流について質問をいたしたいと思います。  基礎科学の分野における科学者の交流の重要性を指摘したいと思うのです。国際的軍事緊張のさなかでも、基礎科学の分野ではその国境を越えて交流が行われましたことは、ヨーロッパの歴史の中に幾つも例がございます。科学技術という言葉はいささかあいまいではございますが、技術に近い方はいわゆる国益が絡みまして話が複雑になりますが、純粋科学の方では「真理は万人に共通の宝」という言葉が当てはまります。それゆえICSU、国際学術連合会議では、科学者の自由な交流を大原則といたしまして、国際会議に出席のためビザが発行されないような場合には、その国に抗議し、その措置を撤回させたことが親だびかあります。このような純粋学問の場での国際的連帯感の涵養をうまず屈せず続けることは、迂遠ではありますが、国際間の軍事的緊張を和らげる基礎となるのではないでしょうか。国際間の学術交流を積極的にこの意味において行うことについて、総理並びに外務大臣の御意見を伺いたいと思います。  総理は、本年六月にヨーロッパに行かれる機会があるようでございますが、その際、ジュネーブにありますCERN、ヨーロッパ原子核研究センターのような基礎研究の国際協力機関を見学されることをお勧めしたいと思います。このセンターは、ヨーロッパ連合ECの結成に先立ってつくられ、ECという政治的連合が結成されるその雰囲気を醸成するのに大いに役立ったのであります。また、過去に多くの日本の科学者がお世話になったところでもあります。こういう基礎科学の交流を通して平和への準備をするという点について、総理はどういうお考えであるか、承りたいと思います。  発展途上国に対する貢献ももちろんいろいろ大切でありますが、この場合、とかくするとその寄与が有効に使われるかどうかの不安がつきまとうのが残念であります。この点を考慮いたしまして、発展途上国の現場の科学技術者に対し直接に研究援助を与えようとするIFS、国際科学財団というのがございますが、こういう事業に対しても適当な貢献をすることが大切と思いますが、総理にあわせてお尋ねするのであります。  最後に、教育改革問題について一言だけ申し上げます。  今や日本の科学技術者は、従来の後追いの科学技術ではなくして、真に創造的な科学技術というものを求められておりますが、それを涵養する意味からも、画一教育を改められて、創造的な人間をつくるようにお願いいたしたいと思います。  これをもって終わりといたします。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  36. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 伏見議員にお答えを申し上げます。  まず、学術会議でございますが、学術会議につきましてはとかくいろいろ批判がございましたが、また、非常に重要な貢献も行っておると思います。私の記憶では、極地研究所とか霊長類の研究所であるとか、あるいは伏見議員が御関係になったプラズマ研究所であるとか、そういう研究所は、学術会議の勧告を受けて大規模に設立されたものであり、日本の学術に非常に貢献しておると思います。また、学術会議は国際交流の場としても外国との交流の中心的存在でもあったと思います。しかし、昭和三十年代、四十年代等におきましては、ややもすると政治的な決議や何かがありまして、我々を困らせたこともしばしばあったと思います。  しかし、今回新しい学術会議法が成立いたしまして、新たなる発想をもちまして再出発をいたすことになりました。私たちは非常に大きな期待を持っております。願わくば、全国民のこの期待にもこたえまして、新しい装いの学術会議が立派な成績をおさめていただくように期待もし、かつ、その貢献度に応じまして御協力も申し上げたい、そう思う次第であります。  次に、国鉄及び電電公社の技術の保存の問題でございます。  まさに御指摘のとおり、国鉄の持っておる技術水準というのは世界最高レベルの中に入っておると思いますし、電電公社も同じであります。鉄建公団にもあるだろうと思います。そういう意味におきまして、これらの特殊法人の改革問題を議する際に当たりましては、これらの技術がワンセットとして維持、保存されていくということが非常に大事である、これが分散してはいけない、そういうように考えまして、注意していきたいと思っております。  原子力船「むつ」につきましては、先生のような権威者のお考えをよく承りまして将来の措置等も考えてまいりたいと思っておりますが、確かに、御指摘のように行政の論理と科学の論理と、これが完全に整合性を持っていく場合、いかない場合という、こういう問題もあったのではないかという気もいたします。これらの問題はほかの機関にも十分応用され、類推されるところであります。宇宙開発事業団は衛星を上げておりますし、そのほか政府関係機関で大型プロジェクトをやっているところも多々ございます。そういう中におきまして、行政の果たす役割と科学の果たす役割とを完全に調和させるというところに大きな我々の仕事がございまして、科学者の意見をよく聞いて進めるべきであると思っております。  次に、試験炭鉱の件でございますが、この点につきましては、政府でもいろいろ検討したようであります。しかし、日本の炭鉱は、北海道、九州、各地におけるものは皆鉱床であるとか構造が違うわけでございます。そういう意味において、画一的な試験炭鉱というやり方ではとてもカバーできない。そういう点から石炭技術研究所におきましてそのような種々の対応、応用等をいろいろ検討してきておるところでありまして、こういうやり方が私は適当であると思っております。  なお、検査事務等の民間委託あるいは民間活用という面は、これは採用してしかるべきであると思っております。最近の情勢を見ますと、電子機器あるいは光ファイバーやその他の部面におきましては、むしろ民間技術の方が先行している場合があると思います。そういう面も考えまして、十分にこれらの民間の技術の力というものを国が活用させていただくという措置を考えていくべきであると考えております。  次に、核軍縮の問題でございますが、先ほど来申し上げますように、平和の維持というものは、日本にとりましては死活的重要性を持っておる基本的課題であると思っております。そういう方面の一環として、核軍縮を進めるということも我々真剣に取り組むべき課題でございます。しかし、これを有効に進めるにはいかなる方法がよろしいかといえば、これが行われるような場をつくる、あるいは仕組みをつくっていくということが大事であります。そのような場と仕組みをつくるというのが政治技術の問題であり、あるいは世界世論というものが影響して行われるのであろうと思っております。  我々は、そういう現実的な立場に立ちまして、まず緊張を緩和すること、それからお互いに信頼できるような仕組みと場を次第につくり上げていくということ、そして現実的に核兵器削減しあるいは廃絶する方向に持っていく、そういう実際的な努力を今後も積み重ねてまいりたいと思っております。  学術、教育等の国際的交流の円滑化につきましては全く同感でございます。近年、日本においてこれらの国際会議が頻繁に開かれるようになったことは、まことに御同慶にたえません。それらに際しましては、査証免除等の問題につきましては、条件の許す限りその方向で措置するように努力してまいりたいと思っております。  最後に、CERNの問題及びIFSの問題について御言及がございました。  CERNの存在は、ヨーロッパにおいてはかなり大きな機能を発揮していると思います。私のロンドン・サミット以降の日程につきましてはまだ未定でございますが、御提言は頭の中に置いて考えてまいりたいと思っております。IFSに対する財政援助は、目下のところは考えられておりません。  我々は、十二月には、ASEAN諸国との間におきまして科学技術の交流をさらに促進をしようというので、ASEAN、日本の科学技術関係閣僚会議を実行いたしました。非常に大きな期待を先方からは持たれて、毎年開いてくれというような御要望もございました。近隣地域からこのような考え方を次第に確実に固めていきたいと思っておるところでございます。  創造的人間をつくる教育をせよという御提言は全く同感でございまして、今度の教育改革につきましても、大いなる関心を持って措置していきたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣中西一郎君登壇拍手
  37. 中西一郎

    国務大臣(中西一郎君) 伏見議員の御質問でございますが、日本学術会議予算についてのお話でございました。  総理から、貢献度を見てというお話もございましたが、昨日中山太郎議員の代表質問の中では、科学技術研究の評価委員会のようなものが要るのではないかというようなお話もございました。長期的にはそういったことが問題になると思います。  なお、本年度、これから御審議いただきます五十九年度予算につきましては、制度が変わりましたので、そこで何か弾みを持って前向きに積極的にお仕事を願いたいという意味での研究連絡委員会、これは国内の学会あるいは国際的な他国の学会との連携を保ちながら絵を描いていく、そういった研究連絡委員会の予算を大幅にふやしまして、とりあえずの措置といたしております。将来のことは十分適切に措置させていただきます。(拍手)    〔国務大臣岩動道行君登壇拍手
  38. 岩動道行

    国務大臣(岩動道行君) 伏見識貝にお答えをいたします。  私に対する御質問は、「むつ」のプロジェクトにかかる議論は、その廃船論も含めて科学技術者不在の議論である、この問題についてもっと科学技術者の意見を聞くべきであると、こういう御質問でございました。  既に総理からお答えを申し上げておりますが、この件につきましては、科学技術の研究開発プロジェクトを進めるに当たりましては、御指摘のとおり専門家の意見を十分に聞きながら進めることが重要であると考えております。原子力船「むつ」につきましても、放射線漏れを契機といたしまして総理府に「むつ」放射線漏れ問題調査委員会が設けられまして、専門家によって原因究明と今後の施策が検討されるなど、これまでも科学技術者を含む関係各界の御意見を聞きながら慎重に進めてまいったところでございます。  今後の原子力船「むつ」による舶用炉の研究とそのあり方は、自民党内において政府の意見を聞きながら検討が行われることになっております。科学技術庁といたしましても、御指摘のように科学技術者を含めて、関係各方面の御意見を承りつつ対処してまいる所存でございます。(拍手)    〔国務大臣小此木彦三郎君登壇拍手
  39. 小此木彦三郎

    国務大臣(小此木彦三郎君) 試験炭鉱の勧告に関することでございますが、先ほどの総理大臣の答弁を補足しつつお答えいたします。  その前に、私あの災害の翌日の閣議の後、急遽現地に赴きまして状況を視察し、関係者の方々の説明をよく聞いたのでございますが、悲惨な状況あるいはたくさんの方々の犠牲になられたありさま等々を調査しまして、今さらながら犠牲者の方々の御冥福を祈る気持ちでいっぱいでございます。  そこで、日本学術会議の試験炭鉱に関する勧告についてでございますが、勧告そのものは私は非常に御見識のあるものと思います。しかし、御承知のとおり、国内炭鉱は地質等の自然条件が複雑で、かつ炭鉱ごとに相違があるのでございます。このため、一つの炭鉱での試験研究の成果を他の炭鉱にそのまま適用することは困難でございます。したがいまして、政府としても操業中の炭鉱を活用して、種々の技術課題につき各炭鉱の現場特性に応じた実証試験等を行っているわけでございます。かかる試験研究の進め方が実情に合った効果的かつ現実的な対応と判断いたしております。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇拍手
  40. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) お答えいたします。  まず第一に、核軍縮について外務大臣の考え方を問うということであります。  世界の平和と繁栄の中でのみ、みずからの平和と繁栄を確保し得る我が国としましては、軍縮の促進を初め平和で安定した国際環境づくりに今後とも幅広い自主積極外交を展開してまいる考えであります。軍縮につきましては、実現可能でかつ検証措置を伴うところの具体的な軍縮措置の積み重ねを重視しておるわけであります。具体的には米ソ核軍縮交渉の進展、核実験全面禁止、核不拡散体制の維持強化が重要であります。かかる観点から国連軍縮会議等の場で積極的に今後努力を続けてまいる決意であります。  なお、極東INF交渉等は、この地域の国際政治状況等にかんがみましていまだ実現性がなく、まず緊張緩和の方が大事ではないか、緊張緩和がまず大前提であると、こういうふうに考えておるわけであります。  次に、国際的な学術交流につきまして申し上げますが、これは既に外交演説でも申し上げましたように、諸外国との相互理解を増進し、安定した国際社会を築くためには、やはり学術を初めとするところの教育、芸術、スポーツ等の文化面における交流や協力を促進することが重要であると考えます。特に、諸外国との科学者の交換等を通ずる学問における国際交流の促進は、互いの学術の振興をもたらすとともに、共通の学問を通じ互いの理解を深め合うものとして非常に重要な役割を果たしておるものでありまして、我が国としてもこうした観点から、このような交流を今後とも積極的にひとつ推進してまいりたいと存じます。  以上でございます。(拍手)     —————————————
  41. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 前島英三郎君。    〔前島英三郎君登壇拍手
  42. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 私は、参議院の会を代表いたしまして、総理並びに関係大臣に対し、福祉教育の問題を中心質問をいたします。  質問に先立ちまして、先般の異常気象により豪雪の被害に遭われた皆さんに、参議院の会同志とともに心からお見舞いを申し上げます。  四年前、私は、散大平総理に対しこの演壇から質問する機会を与えられました。その際、車いすの私が遠回りをして登壇せざるを得なかったことから述べ始めたのでありますが、本日、その四年前と同じように、私は遠回りをしてこの席に着きました。この間、何の進歩も変化もなかったのでしょうか。  いや、そうではありません。この目の前にある六段の階段は、四年前にはまだ、社会に存在する多くの障壁、お年寄りや障害者の社会参加を阻む多くの壁の一つの象徴にほかなりませんでした。今日ではどうでしょうか。確かに階段そのものは当時と同じであります。しかしながら、この階段は、もし将来、議事堂が改修される場合、必ず何らかの工夫と配慮が加えられるに違いない、それまでのいわば暫定的な存在へとその意味するところが変わったと思うのであります。  四年前、私は、新しい福祉社会づくりの基本的な考え方をノーマライゼーションという言葉に託して訴えました。それはお年寄りや障害者など何らかのハンディキャップを持つ人は決して特殊な存在ではなく、むしろそういった人々が存在する社会こそ、ありのままでノーマルなのだというのが大前提であります。このような前提に立つならば、これらの人々がハンディキャップを感じないで済むような配慮を社会全般にわたってあらかじめ行き渡らせてあるような、そういう社会であるべきだ、こういう考え方であります。  ですから、私はこうも申し上げました。すなわち、障害を受けることそれ自体は必ずしも不幸なことではない。それよりも不幸なことは、障害を受けることによって、ともに学び、ともに働き、ともに地域社会に平等に参加することが妨げられている現状こそが不幸なのだと。  散大平総理は、今日我が国の社会は今なお健全者を標準としてその仕組みができていると言わざるを得ないが、今後は、政治経済、文化各般にわたり十分な配慮を行き渡らせていく必要があると答弁され、従来の社会あり方から発想を大きく転換していく姿勢を示されたのであります。以来、国際障害者年初年度をピークといたしまして、ここ数年間にこうした考え方は急速に広まりました。社会の実態の改善はともかくといたしましても、その理念としては、政治や行政の場においても一応のコンセンサスを得つつあると言えるのではなかろうかと思うのであります。  この新しい理念からすれば、今なお存在する各種の障壁は、いずれも改良と工夫を待つ仮の姿であり、暫定的な存在と解されなければならないと思うのであります。そしてさらに、本年新たにこの議事堂に設けられました手すりは、陛下への敬愛の念をあらわすとともに、これからの時代の環境のあり方を指し示す一つのシンボルとして、そこにしみじみと温かなものを感ずるのは私ばかりではないと思うのであります。  総理、まず伺いたいのであります。いま申し上げたことについて、あなたはどのように受けとめ、どのように評価しておられるのか、また、新しい理念に現実をどのようにして近づけていくお考えなのか、率直に御答弁をいただきたいのであります。  さて、総理、ノーマライゼーションの理念は、決して障害者だけを念頭に置いたものではありません。継続的であれ、一時的であれ、日常生活に制約を受けるすべての人々が念頭に置かれるべきであります。中でも高齢者に対する配慮は、今日極めて重大な課題であります。ところが、政府高齢化社会への対応は、この新しい理念に沿ったものとは言えないと思うのであります。  昨今の老人福祉政策の根底に流れるトーン、いろいろ聞いておりますと、その特徴は、高齢化社会の到来を主として危機としてとらえているところにあるのではないでしょうか。その裏には、高齢者自身のことよりも、年金医療などの財政問題を優先させて考える発想が潜んでいるのではないでしょうか。一例を挙げますと、老人保健法がそれであります。眼目であるはずのヘルス事業の体制は数年後に一定のレベルに達することを目標としながらも、負担だけは直ちに待ったなしでのしかかってくるというものであります。これでは財政本位に考えていると批判されてもやむを得ないと思うのであります。  高齢化社会の到来があたかも危機であるかのような感覚から脱却して、むしろ高齢化社会の到来を我が国の持つ底力としてとらえ、ノーマライゼーションの理念に沿って老人福祉あり方を見直す必要があると考えるのですが、総理の御所見を承りたいのであります。  次に、具体的な問題を幾つかお尋ねいたします。  第一に、障害者の所得保障対策についてであります。  今般、政府年金改革の一環として障害基礎年金の新設に踏み切られたことは画期的なこととして十分評価するのでありますが、しかしながら、私の理解によれば、今回の改革は決してゴールではありません。介護制度との関係、なお残される無年金障害者が生じる可能性等々、今後に残された検討課題は少なくありません。今後さらなる前向きの御検討を総理並びに厚生大臣にこの場でお約束いただきたいのであります。  第二に、身体障害者福祉法の抜本改正についてでありますが、身体障害者福祉審議会は一昨年三月、同法改正を前提とした十二年ぶりの答申をいたしております。新しい理念に基づいた適切な指摘をしているのであります。障害者の「更生」あるいは「収容」といった旧態依然とした用語のほか、今日の行政実態からもかなりかけ離れたものになっていることは明らかであります。この際、同法の目的あるいは理念を初めとして抜本的な改正を図るべきだと考えるのですが、総理並びに厚生大臣の見解を承りたいのであります。  第三に、障害者の雇用対策であります。  身体障害者雇用促進法は、昭和五十一年の大改正の際、精神薄弱者の雇用促進対策を検討課題としてその附則に盛り込んでおります。当時から心身障害者雇用促進法もしくは単に障害者雇用促進法とすべきなどの声があったように、いよいよそれを本格的に検討すべきときが来ているのじゃないでしょうか。  一方、昨年の報告によりますと、障害者の雇用の伸びはがくんと鈍化しているのであります。私は到底納得できません。総理並びに労働大臣の答弁を求めるものであります。  最後に、教育改革について伺います。  施政方針演説の中で総理は、今日の校内暴力などの激増の背景として、戦後の教育学校教育のみに強く依存している点を挙げておられます。しかし、より根本的には、学校教育そのものが教育工場とまで言われるようなゆがんだ姿になっていることこそ重大な問題なのではないでしょうか。総理自身、偏差値教育是正共通一次試験の改革などを再三にわたって強調しております。これはすなわち、学校教育そのものがゆがんでいるとお考えだからではないでしょうか。  同時に、教育改革の中には当然障害児教育改革も含まれなければなりません。地域でともに育ち、ともに学ぼうとする障害児が、しばしば就学指導の名のもとに地域の普通学校から切り離されているのであります。このことは今日の学校教育のゆがみと決して無縁ではありません。端的に申し上げれば、就学指導という名の振り分けが、障害児のためというよりは、実は教育工場と化している今日の画一的な学校教育を守るために機能しているという結果を生んでいるのではないかと思うのであります。  障害者やお年寄りのいない社会がかえって不自然なように、障害児のいない学校もまた、かえって不自然な状態と言わねばなりません。こうした不自然な状態の中で、受験競争に追われ、偏差値でランク付されていくとすれば、子供たちは学校で一体何を学べばよいというのでしょうか。総理、荒廃しているのは子供たちなのではありません。このように子供たちを追い立てている今の学校教育あり方そのものだと私は思うのでありますが、いかがでしょうか。  総理が総合的かつ人間的な教育あり方を探求しようと考えるのであれば、この際、統合教育を軸とした障害児教育の再編、弾力化に踏み出すことが不可欠であると考えるのでありますが、総理並びに文部大臣はどう見詰めているのか、お答えいただきたいのであります。  そして、財政難であればあるほど、人の心というもの、車いすを押したり押されたり、あるいは手を引いたり引かれたりする中に、私は心という財源がまた健康な子供たちの中にも大きく教えられていくことこそ、これからの新しい時代福祉の施策の一環だと思うのであります。財源は至るところにあるという知恵もまだこれからの福祉政策には大切ではないでしょうか。  もう一つ、最後に申し述べたいのであります。  この特別国会衆参両院代表質問は本日私をもって終わるわけでありますが、上程された来年度予算案を一言で表現すれば、福祉と平和が危ない予算と言わざるを得ません。今や大砲かバターかの時代ではないと思うのです。福祉外交の展開を含めまして、真の福祉こそ真の防衛、真の福祉こそ真の防衛である、また、そういう時代が到来しているのだということを強く申し上げまして、私の十分間のわずかな質問時間でありますが、質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘登壇拍手
  43. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前島議員にお答えいたします。  まず、福祉社会に対する根本的な考え方としまして、ノーマライゼーションというお言葉をいただきましたが、私も全く同感でございます。障害は暫定的なものであるという基本的なお考えをお聞きいたしまして、非常に敬意を表し、同感に思うところでございます。  我々といたしましても、この関係者、障害者等に対しましては、普通社会、我々の仲間、我々と一緒に行こうではないか、そういうような分け隔てのない、そしてお互いが同じような生きがいを追求しているという立場を基本的にとっていく必要があると思いまして、近来はそういう考えが非常に普遍化してまいりましたが、非常に結構なことであり、政府としてもそういう考えをさらに強めてまいりたいと思う次第でございます。  次に、高齢者の問題も同じではないか、高齢社会が近づくのを危機であると感じているのは間違いであると、全く同感でございます。  私は、前から、人生八十年になった、だから人生八十年に設計変更をしなければいけないのじゃないか。今までは人生五十年で大体すべてのものの仕組みができておった。最近は、定年制とかそういうものが少しずつ変更になってきているけれども、やはり人生八十年ということをじっくり考えつつ、すべての社会的なインスティチューション等について設計変更の準備をしていく必要がある、そのように実は考えておりまして、老人というものあるいは高齢者というものは特異の存在ではない、日本ではもう八十になるのは当たり前のことなんだ、そういう社会にしていきたいと考えております。いずれ私もそういう仲間に入りたいと思っておるわけであります。  次に、障害者の所得保障の問題でございますが、御指摘のように、今回、障害基礎年金あるいは特別障害者手当を創設するために法案を今国会に提出する予定でおります。なおさらに努力を続けてまいりたいと思っております。  それから、身体障害者の福祉法の問題につきましても、審議会の答申を踏まえまして、本国会福祉法の改正法案を提出すべく努力しております。  それから、精神薄弱者につきましても、やはり適職の開発社会生活面での配慮を要する問題、こういう問題に対する政策を充実していく必要があり、将来、身体障害者雇用促進法の雇用率制度を適用することを検討していきたいと思っております。  身体障害者の雇用改善は進みつつあるが、最近は全体の雇用抑制の中でこれが鈍化しております。極めて遺憾でありまして、この改善に努めてまいりたいと思っております。特に、今後は重度障害者に重点を置きまして、雇用促進に一層の努力をしてまいりたいと思っております。  教育の問題で、学校は工場ではない、まさにそのように思います。私は、学校は学園である、花園である、庭である、そういうふうに思います。考え方をそういうふうに持ちかえる必要があると思うのであります。しかし、教育は学校だけに頼ることはできないので、家庭もございますし、社会もございます。そういうような意味において総合的にこれを見直す段階に来ておると思いまして、そのような検討の機関をつくろうと思っておるところでございます。  心身障害児の教育につきましては、私は先般、ねむの木学園の宮城まり子さんの子供たちの作品を見に行きましたけれども、非常に独特の知能を開発して、感動すべき立派な絵をかいているのを見て非常に打たれました。みんなそれぞれすばらしい能力を持っている。それをいかに引き出すかということがやはり問題なんだなと。むしろ障害児が持っておる直感的なセンシビリティーというものは、我々から見れば非常に貴重な人間の宝のようなものが自然にそこに埋蔵されているということを感じた次第でございます。特にそれらの能力を伸ばすことと、先ほど申し上げました仲間として社会一員に我々は当たり前のこととしてお迎えする、そういう態度で政治も実行してまいりたいと思っております。  今回の予算福祉と平和のための予算であるということ、そのために最大限の努力をしているということを重ねて強調いたしまして、答弁を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣渡部恒三君登壇拍手
  44. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) ただいま総理からおっしゃられたとおりでありますが、私は、障害者の方々のように、本人の責任によらずして非常に恵まれない立場あるいは不便な生活を強いられている方々に対しては、社会全体として最大限の配慮が必要であり、私のお預かりする厚生行政の最大の眼目であるという決意で予算折衝にも当たってまいりました。このため、障害者の所得保障につきましては、総理答弁のとおり、年金制度改革の一環として、基礎年金を創設するとともに、あわせて特別障害者手当を創設することとしており、今後とも障害者の方々が安心して生活できるよう全力を傾注してまいりたいと思います。また、難病患者の方々などのために、発病後五年以上経過して障害の状態になっても年金が支給できるよう早急に措置したいと考えております。  次に、身体障害者福祉法の改正については、御指摘の審議会答申の理念も踏まえ、本国会に身体障害者の範囲の拡大等を内容とする所要の改正法案を提出すべく鋭意検討しておるところであります。御了承願います。(拍手)    〔国務大臣坂本三十次君登壇拍手
  45. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 日の当たらぬところに日を当てたり、正直者がばかを見ないようにしようというのは、私ども政治家の原点であります。前島さんも精神薄弱者にまでいろいろ思いをいたされるというのは、まことに私は政治家にとって共鳴する点が多うございます。  しかし、今のところ、現行の身体障害者雇用促進法におきましては、普通の身体障害者は雇用率の対象になっておりますが、精神薄弱者は雇用率の対象にはなっておりません。それは非常に普通の障害者から見れば難しい点が多々あったからだろうとは思っておりますけれども、しかし、いろいろ今モデル的にも実験的にも第三セクターをつくりまして、そして長崎県には水産加工でやっておりますし、神奈川県では自動車だとか電気部品の組み立てで精薄者の皆さんに一生懸命に職業開発のノーハウを与えようということで頑張っております。  こういう第三セクターの精神薄弱者能力開発センターなどを一生懸命育成することによりまして、能力開発の機会を広げていくという努力をしながら、いろいろ職業訓練、職業紹介、就職後の指導、事業主に対する財政援助等は、これはもう今までも身体障害者、普通の障害者並みに精薄者にもこれは努めてきておるところではありますけれども、今後一層ひとつ努力してまいりたいと思っております。近い将来に精神薄弱者につきましても雇用率制度を適用することを検討をいたしたい、だんだん潮どきは近づいておるということであります。  それから、雇用率の伸びが鈍化しておる、納得できないとおっしゃいますが、なるほど昭和五十七年は一・二二、昭和五十八年は一・二三、たった〇・〇一でありますから、これはやっぱり私どもうんと努力をいたさなければならぬと思っております。雇い入れ計画の作成命令制度というものもありますから、これをひとつ指導を強化いたします。それから公共職業安定所におきましては、職業の指導、紹介もやります。  特に、重度障害者に重点を置きまして、きめの細かい対策をやる。またこれも第三セクターでひとつ突破口を開きたい。重度障害者を雇用する企業、これを第三セクターでやって、逐次広げていきたいものだと思っております。すでに東京ではコンピューターの会社もありますし、京都では電子機器の組み立てもありますし、兵庫では小売業までやろうということでありまして、逐次広げていきたい、これによって雇用率を上げていきたいと思っております。(拍手)    〔国務大臣森喜朗君登壇拍手
  46. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 前島議員の御質問お答えをいたします。  心身障害児の教育につきましては、ただいま総理からもお答えをいたしたとおりでございますが、その児童生徒の可能性を最大限に伸ばして、可能な限り社会での自立の達成を図るために、その障害の種類、程度能力、適性等に応じて、小中学校の通常の学級もしくは特殊学級、または盲学校、聾学校、養護学校においてそれぞれ適切な教育を施すことといたしており、その整備充実に努力をいたしてまいったところでございます。  私も、ちょうど文部大臣に就任いたしましてから、最初に中野区のある養護学校を訪問いたしてまいりました。生徒さんたちの生き生きした目を見て、改めて教育の成果のすばらしさを感じました。たくさんの皆さんが本当に輝かしい目をしておりました。校長先生のお話によると、学校に入るまではこんな目ではなかったのです、教室に来て仲間と一緒に学んだり、いろいろな作業をしているうちにこんな生き生きとした目になるのです、両親が大変喜んでいらっしゃいました、こんなお話も伺ってきました。ちょうど私の学校を辞しますときに、生徒のみんなが私にたくさんのお土産をくれたのです。ティッシュペーパー入れとかペン皿とか、あるいはテーブルクロスとか、すばらしいものです。文部大臣の私の丸いテーブルの上に飾ってありますので、おいでになった方々に全部これをごらんに入れて、特殊教育を一生懸命に理解してもらうように私は努めております。  私はその中でやっぱり一番感じたのは、先生だと思いました。本当に自分の弟のように、妹のようにして、我が子のようにして、一挙手一投足を一生懸命教えてくださる。その先生によってそれだけすばらしい生徒さんたちの成果が上がるのだなというふうに感じました。  御指摘の統合教育でありますけれども、乱そうした場面を見てまいりましても、心身障害児に対しましては、一人一人の障害に応じまして、特殊教育諸学校等で手厚い、きめ細かい教育を行うことがより効果的であると私は考えております。(拍手
  47. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) これにて質疑は終了いたしました。      ——————————
  48. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 日程第二 昭和五十八年度の水田利用再連奨励補助金についての所得説及び法人税臨時特例に関する法律案衆議院提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長伊江朝雄君。     ━━━━━━━━━━━━━    〔伊江朝雄君登壇拍手
  49. 伊江朝雄

    ○伊江朝雄君 ただいま議題となりました昭和五十八年度の水田利用再編奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、衆議院大蔵委員長提出によるものでありまして、昭和五十八年度に政府から交付される水田利用再編奨励補助金について、個人が交付を受けるものはこれを一時所得とみなし、農業生産法人が交付を受けるものは、交付を受けた後二年以内に固定資産の取得または改良に充てた場合には圧縮記帳の特例を認めることにより、それぞれ税負担の軽減を図ろうとするものであります。  なお、本法施行に伴う昭和五十八年度の租税の減収額は、約十一億円と見込まれております。  委員会におきましては、奨励金依存の水田利用再編対策の見直し、奨励金の性格と交付の実態等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。  質疑を終了し、討論なく、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  50. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) これより採決をいたします。  本案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  51. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。  よって、本案は可決されました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会