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国務大臣(竹下登君) ここに、
昭和五十九年度予算の御審議をお願いするに当たり、今後の
財政金融
政策の基本的な
考え方につき所信を申し述べますとともに、予算の大綱を御説明いたしたいと存じます。
今や、
我が国は、これまで
実現してきた物の面の豊かさを超えて、「ゆとりと
活力のある安定
社会」の構築に取りかかるべき時期を迎えていると考えられます。
顧みますと、
世界経済は二次にわたる石油危機を経て、成長率の鈍化や失業の増大、インフレの高進や
財政赤字の
拡大、国際通貨の動揺や
貿易摩擦の激化といった幾多の
経済的困難に逢着し、今後の進むべき道を模索し続けてまいりました。この間、
我が国は、
国民のすぐれた英知とたゆみない
努力によって、インフレを早期に鎮静化し、高度成長から安定成長への円滑な移行と国際収支の赤字解消をなし遂げ、
経済大国としての地歩を固めてまいったのであります。
昨年三月に、それまで上昇する一方であった原油価格が引き下げられたことを
一つの契機として、
世界経済には明るい展望が開けてきた観があります。この原油価格の低下に加え物価の安定等の好条件を背景に、米国で予想を上回る
景気回復が見られるほか、主要先進国は、総じてインフレ克服と成長回復に自信を深めております。
我が国経済につきましても、生産、出荷や企業収益等の動向を
中心に顕著な改善が見られ、
景気は緩やかながら、しかし着実に回復の過程をたどりつつあります。
我が国経済は、第一次石油危機発生以来約十年の歳月を経て、今ようやく大きな節目を迎えるに至ったように思われるのであります。
この十年間、
我が国は、二度にわたる試練を乗り越える過程で、
経済活動の面でも
社会意識の面でも、大きな
構造的変化を遂げてまいりました。そして、ソフト化、成熟化とも呼ばれる多彩な動きが現に進んでおります。これは、多様性の尊重と
個性の発揮を通じて新しい
活力や自立自助の精神を生み出す動きであり、また一方では、物の豊かさとともに心のゆとりと精神的豊かさを希求する動きでもあります。
我が国が今後進むべき安定成長の道は、かつてのような量的
拡大を強く指向する道への回帰ではなく、
人々に物の面の豊かさに加えて、精神的な潤いや生きがいをもたらし、進取の
活力を生み出す新しい道でなければなりません。この
目的のため、我々は、
国民の英知と
努力を結集して、「ゆとりと
活力のある安定
社会」を二十一
世紀に向けて築き上げていきたいと考えるものであります。
このような
社会を
実現していくため、私は、
社会経済の大きな変化に
対応すべく、三つの課題、すなわちインフレなき持続的成長の
確保、
財政改革の一層の
推進及び調和ある対外
経済関係の形成、これを念頭に置いて今後の
財政金融
政策の
運営に当たってまいりたいと考えております。
昨年五月に開かれましたウィリアムズバーグ・サミットにおいても、インフレなき持続的成長の
実現を目指し、
財政赤字を削減するとともに、金利の一層の低下に
努力するほか、
貿易や国際金融面等におきましても先進
各国が
協調していくことが確認されたところであります。
まず第一は、引き続きインフレなき持続的成長の
確保を図っていくことであります。
申すまでもなく、物価の安定は、
経済の
発展と
国民生活安定の大前提であります。現在は物価が戦後最も落ち着いた動きを示している時期の
一つと言っても過言ではありません。今後ともこのような安定した
基調を
維持し、持続的成長の基盤としてまいりたいと考えております。
景気の面では、先行きに一層明るさを増してきておりますが、昨年十月には総合
経済対策を策定したところであり、さらに
昭和五十九年度予算におきましては、
民間資金の活用等による事業費の
確保、投資
促進のための税制上の措置の導入など、できる限りの
配慮を行っているところであります。また、
所得税及び住民税の大幅減税を実施することといたしておりますが、これは
社会経済情勢の変化に
対応して
所得税制を見直そうとするものであり、
経済に対して好ましい影響を与えることになると考えられます。
また、金融
政策の面では、昨年十月、一年十カ月ぶりに公定歩合の引き下げが行われ、これを受けて預貯金金利を含む金利全般の引き下げを図ったところであります。
今後の金融
政策の
運営につきましては、従来同様、物価、
景気、
内外金利の動向、
為替相場の状況等を見守りながら、適切かつ機動的に対処してまいる所存であります。
第二は、
財政改革の一層の
推進であります。
石油危機後の
経済の停滞と税収の伸び悩みの中で、
政府は巨額の公債発行に踏み切り、
景気の下支えと
国民生活の
安定向上に力を尽くしてまいりましたが、これは
財政に大きな傷跡を残しました。
まず公債の発行残高は、昨年ついに百兆円を突破し、
昭和五十九年度未には約百二十二兆円にも達する見込みであります。その利払い等に要する経費も
昭和五十九年度予算においては予算の一八%強を占め、
公共事業関係費をも上回り、
社会保障
関係費にも迫る状況にあります。また、歳出総額に占める税収の割合は六〇%台と先進諸
外国に比べ著しく低く、このような状態が
昭和五十年度以降十年間も継続しているのであります。
このため、
我が国財政は、本来
期待されている諸機能の発揮を十全には行い得なくなっており、このままでは、人口の高齢化や
国際社会における
我が国の責任の増大など、今後の
社会経済の変化に
対応する力が失われることは必至であります。
したがって、
財政改革の
推進を通じて新しい
時代の
要請にこたえ得る
財政の
対応力を回復させることは、今後の
我が国経済の
発展と
国民生活の安定の基盤を確かなものとするため、ぜひともやり遂げなければならない緊要の
政策課題であります。このことは同時に、自立自助の精神に基づく
民間の創意とエネルギーを
最大限に発揮し得る
社会経済の構築にもつながる道であります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
このような考えのもとに、
政府としては、先般策定した「一九八〇年代
経済社会の展望と指針」において、その対象期間中に
特例公債依存体質からの脱却と
公債依存度の引き下げに努めるという
努力目標を示したところであります。
この
努力目標に向けて、今後とも、
財政改革を
推進するため
最大限の
努力を積み重ねていく所存でありますが、このため、歳出面におきまして、
政府と
民間、国と
地方の間の役割と責任を明確にする見地から、既存の
制度、
施策についても引き続き
改革を行うなど、その節減合理化にさらに積極的に取り組んでまいりたいと存じます。また、歳入面におきましても、
社会経済構造の変化に
対応して、歳入
構造の合理化、
適正化に努めるほか、行政サービスの受益と負担の
あり方という観点から基本的な
見直しを行う必要があると考えております。
このように、歳出歳入
構造の合理化、
適正化について
最大限の
努力を続けるとともに、今後、多額に上る特例公債の償還財源をいかにして調達するかという問題に対処しなければなりません。この問題については、
我が国経済の着実な
発展と
国民生活の安定を図りながら、どのように
財政改革を進めていくかという観点から検討する必要がありますが、今後の厳しい
財政事情を考えれば、特例公債の償還財源の調達について借換債の発行を行わないという従来の方針については、遺憾ながら見直さざるを得ないと考えるものであります。
これらの問題に対処し、今後、
財政改革を進めていくに当たっては、中期的な展望をもって幅広い
視野から検討を行う必要があります。このような検討に資するため、
昭和五十九年度予算を踏まえた中期的な
財政事情の展望を作成するとともに、
財政改革を進めていく上での基本的
考え方を明らかにいたしたいと考えております。
社会経済情勢は、今後ともなお極めて流動的なものと考えられ、
財政改革への道は決して平坦なものではありません。これまでも連年血のにじむような
改革努力が重ねられてまいりましたが、今や行
財政改革についての
国民の関心は、これまでになく高まってきているとの感を深くするものであります。私は今後とも引き続き、
国民の一層の御
理解と御
協力を得ながら、さらに着実に
財政改革を
推進するため渾身の
努力を重ねてまいる所存であります。
第三は、調和ある対外
経済関係の形成に努めることであります。
最近における
我が国社会経済の
国際化の進展にはまことに顕著なるものがあり、また
我が国経済の規模は、
世界経済のほぼ一割を占めるに至っております。
我が国経済の
繁栄と
発展は、
世界経済との調和ある
関係を欠いてはもはや考えることができない状況にあり、同時に、
我が国が相応の国際的
責務を果たさなければ
世界経済の
繁栄と
発展は望み得ません。
このような
環境のもとで、
昭和五十八年度の
我が国の
貿易・経常収支は、原油価格の低下、ドル高及び米国を
中心とする
世界景気の回復を主因として大幅な黒字を続けており、諸
外国では、
我が国に対しその不均衡の是正を求める声が高まってきております。
このような最近の
我が国の
貿易・経常収支の黒字は、必ずしも
我が国のみの
努力では制御し得ない要因によるところが大であります。しかし、
世界経済の重要な一翼を担う
我が国としては、この際率先して、
自由貿易体制を
維持強化し、調和ある対外
経済関係を形成していくため積極的な
努力を行うことが緊要な課題となっております。
以上のような
情勢を踏まえて、
政府は昨年十月総合
経済対策を策定し、市場開放、輸入
促進のほか、資本流入の
促進、円の
国際化、金融・
資本市場の
自由化及び
国際協力の
推進等、広範多岐にわたる
施策を講ずることといたしたところであります。
まず、市場開放につきましては、
我が国はこれまでに一連の
対策を実施してまいりましたが、さらに
昭和五十九年度関税
改正において、鉱工業品に関し東京ラウンド
合意にのっとった関税引き下げの繰り上げ及び特恵関税シーリング総枠の
拡大を行うとともに、諸
外国の関心の強い半導体、再生木材等の関税の撤廃または引き下げ等を行うことといたしております。
次に、円の
国際化及び金融・
資本市場の
自由化の問題につきましても、
さきの
対策において種々の具体的措置を盛り込んだところでありますが、
我が国の金融
制度等の有する長い歴史と伝統あるいは
日本の土壌を踏まえて、主体的かつ積極的にこの問題に取り組み、引き続き
内外経済の今後の進展に柔軟に
対応し得るよう金融・
資本市場の形成を図ってまいりたいと考えております。
為替相場の動向につきましては、昨年十一月以降、ドイツマルク等の欧州通貨は、米ドル金利の反騰懸念や国際
政治情勢などを反映し記録的な安値となっておりますが、円相場は昨年十月以降比較的堅調に推移しております。今後、円相場につきましては、
さきの
対策に盛り込んだ資本流入の
促進等を初めとした各般の措置の着実な実施と相まって、
我が国経済の良好なファンダメンタルズを十分反映したものとなるよう
期待しております。
今後とも
関係諸国と密接な
協調を保ちながら、円相場の安定に努めてまいりたいと考えております。
債務累積問題につきましては、これに端を発して国際金融面で混乱が生ずることのないよう注意深く
対応してきたところであります。債務累積問題の解決のためには、今後とも、
世界経済の持続的な回復や
世界的高金利の是正とともに、債務国自身の厳しい自助
努力による
経済調整、債権国の
政府及び
民間銀行並びにIMF等の適切な
対応が必要であり、
我が国としてもこのような見地に立って対処してまいる所存であります。
また、先般の世銀の増資交渉におきまして、
我が国が米国に次ぐ第二位の出資国となることが
合意されました。これは
我が国の世銀グループに対するこれまでの積極的な
協力の結果であり、同時に、
我が国の
国際社会における責任が従来以上に重大となることを意味するものであると考えております。このような認識に基づき、
我が国としましては今後とも
国際協力の一層の
推進に努めてまいりたいと考えております。
なお、調和ある対外
経済関係の形成を図るとの観点から、
さきの
対策に掲げられた措置のうち、一括して
法律改正を提案することが適当な事項につきましては所要の
改正法案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
次に、
昭和五十九年度の予算の大要につきまして御説明いたします。
昭和五十九年度予算は、
財政改革を一層
推進するため、特に
歳出構造の徹底した
見直しを行うことを基本とし、あわせて歳入面についてもその
見直しを行い、公債の減額に
最大限の
努力を払うこととして編成いたしました。
歳出面におきましては、
制度の根本にまで踏み込んで徹底した節減合理化を行い、その規模を厳に抑制したところであります。
概算要求の段階におきましては、前年度よりさらに厳しいマイナスシーリングを採用し、各
省庁において所管予算の根本的
見直しを行ったところであり、その後の
予算編成に当たりましても、聖域を設けることなく
見直しを進め、
地方財政対策の
改革、
医療保険制度や
年金制度の
改革を初めとする種々の
制度改正を行うなど徹底した歳出の削減を行いました。また、食糧管理費の節減合理化、国鉄経営の合理化等をさらに
推進したところであります。
補助金等につきましては、すべてこれを洗い直し、
制度改正を含め従来にも増して積極的に
整理合理化を行い、真にやむを得ない
増加要素に対処してなお、総額において前年度に比べ四千三百五億円の減と厳しく圧縮いたしました。
国家公務員の定員につきましては、定員削減計画を着実に実施するとともに、増員を厳に抑制いたしました。この結果、行政
機関等職員については三千九百五十三人に上る大幅な縮減を図ることといたしております。
以上の結果、
一般歳出の規模は、三十二兆五千八百五十七億円と前年度に比べて三百三十八億円の減に圧縮いたしております。
これに国債費及び
地方交付税交付金を加えた一般会計予算規模は、前年度当初予算に比べ〇・五%増の五十兆六千二百七十二億円となっております。
次に、歳入面につきまして申し述べます。
まず、歳入の大宗をなす租税につきましては、
昭和五十九年度税制
改正において、
社会経済情勢の変化に応じ
所得税制全般を見直すことにより、初年度一兆一千八百億円に上る
所得税及び住民税の大幅減税を行うことといたしております。具体的には、扶養家族のある中堅所得者、給与所得者等の負担の軽減に
配慮しながら、課税最低限の引き上げや税率
構造の
改正等を行うことといたしたところであります。
また、エネルギー利用の効率化、中小企業の設備投資等を
促進するため所要の措置を講ずることといたしております。
それとともに、現下の厳しい
財政状況をこれ以上悪化させることのないよう、
法人税、酒税、物品税について税率の引き上げ等の措置を講ずることといたしておりますが、これは歳出削減、税外収入の
確保等に
最大限努めてもなおかつ必要な措置であることを
国民各位にぜひとも御
理解いただきたいのであります。
以上のほか、
所得税制において、
制度及び執行の両面にわたり実質的公平
確保が強く
要請されてきていることを踏まえて、申告納税
制度の一層の
定着と課税の公平を図るため、納税
環境の
整備に向けて所要の措置を講ずるとともに、今後とも、
国民の
信頼と
協力を得て一層適正、公平な税務行政を実施するよう
努力してまいる所存であります。
また、税外収入につきましては、
さきにも申し上げたとおり、極めて厳しい
財政事情にかんがみ、
特別会計及び
特殊法人からの一般会計納付等の措置を講ずるなど思い切った増収を図ることといたしております。
公債につきましては、以上申し述べました
歳出歳入両面の
努力により、その発行
予定額を前年度当初予算より六千六百五十億円減額し、十二兆六千八百億円といたしました。その内訳は、
建設公債六兆二千二百五十億円、特例公債六兆四千五百五十億円となっております。この結果、
公債依存度は二五・〇%となっております。
この公債につきましては、その円滑な消化に
配慮し、国債引受団による消化は六兆八千億円、中期国債の公募入札による消化は二兆二千八百億円、資金運用部資金による引き受けは三兆六千億円とすることといたしております。
特例公債の発行等につきましては、別途、
昭和五十九年度の
財政運営に必要な財源の
確保を図るための特別措置等に関する
法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
財政投融資計画につきましては、厳しい原資事情にかんがみ、対象
機関の事業内容、融資対象等を厳しく見直すことにより、規模の抑制を図り、
政策的な
必要性に即した重点的、効率的な資金配分となるよう努めるとともに、
民間資金の活用を図り円滑な事業執行の
確保に
配慮したところであります。
この結果、
昭和五十九年度の
財政投融資計画の規模は二十一兆一千六十六億円となり、前年度当初計画に比べ一・九%の
増加となっております。
次に、主要な経費につきまして申し述べます。
昭和五十九年度予算におきましては、異例に厳しい
財政事情のもとで、
さきに申し上げたように
制度の
改革を行うなど経費の合理化、効率化を図っておりますが、その中にあって、真に恵まれない
人々に対する
施策等については、きめ細かな
配慮を行うとともに、中長期的観点から
充実を図る必要があるものにつきましては特に配意いたしました。
まず、
社会保障
関係費、文教及び科学
振興費につきましては、今後における高齢化
社会の進展等
社会経済の変化に
対応して、今後とも
各種施策を安定的に
維持する等のため、
医療保険、
年金、児童扶養手当、
雇用保険及び育英奨学事業について本格的な
制度の
改革を行うなど、合理化、効率化を図るとともに、老人や心身障害者に対する
福祉施策の
充実、保健事業の
推進、高年齢者の就業機会の
確保、基礎科学研究の
充実など
施策の
推進に努めております。
経済協力費につきましては、国際
情勢等を考慮して積極的にその
推進を図ることとしており、
防衛関係費につきましても、他の諸
施策との調和を図りながら質的
充実に配意することとしております。またエネルギー
対策費につきましても、石油税の税率引き上げ等により所要の財源を
確保しつつ、中長期的な需給見通しを踏まえ、
各種施策を計画的かつ着実に
推進することといたしております。
中小企業対策費につきましては、中小企業を取り巻く
環境の変化に
対応していくため、その近代化、
構造改善を
促進していくための措置を講じております。また、農林水産
関係費につきましては、需要の動向に即応した生産の再編成を行いながら、
生産性の高い農業の
実現を図ることを基本に
施策の重点的、効率的な
推進に努めております。
公共事業関係費につきましては、厳しい
財政事情にかんがみ、
国民生活充実の基盤となる
社会資本の
整備に重点的に配意しながら、総額として前年度を下回る水準としておりますが、一般
公共事業の事業費につきましては、
民間資金の活用など種々の工夫を行うことにより、前年度を上回る水準を
確保することといたしております。
昭和五十九年度の
地方財政につきましては、約一兆五千億円の財源不足が見込まれますが、
地方財政対策について、国と
地方の
財政運営の中期的な展望に立って、
地方の自主責任の原則を踏まえ、抜本的な
改革を行い、
地方交付税について当分の間総額の特例措置を講ずることとし、その適正な
運営に支障の生じないよう
配慮しております。
地方団体におかれましても、歳出の節減合理化を
推進し、より一層有効な財源配分を行うよう
要請するものであります。
この機会に、
昭和五十八年度補正予算につきまして一言申し述べます。
昭和五十八年度補正予算につきましては、
昭和五十八年分の
所得税の臨時特例等に関する
法律の実施に伴う減税一千五百億円等に対処するとともに、災害復旧費の追加、義務的経費の追加等やむを得ない歳出の追加等の措置を講ずることといたしておりますが、現下の厳しい
財政事情のもとにおいて、これらに必要な財源の捻出には極めて苦慮したところであります。
すなわち、特例公債の増額を行わないことを基本として、既定経費の節減、予備費の減額、税外収入の
増加、前年度剰余金の受け入れにより、財源の捻出に
最大限の
努力を払った結果、これらによって義務的経費の追加等通常の追加
財政需要を賄うことといたしました。しかし、
昭和五十八年の相当規模の災害につきましては早期にその復旧を図ることとし、これに要する経費については、
建設公債四千四百五十億円を発行することによりその財源を
確保することといたしました。
この結果、
昭和五十八年度一般会計補正後予算の総額は、歳入歳出とも当初予算に対し四千五百九十八億円
増加して五十兆八千三百九十四億円となり、その
公債依存度は二七・一%となっております。
以上、
昭和五十九年度予算及び
昭和五十八年度補正予算の大要について御説明いたしました。何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願い申し上げます。
我が国の
社会経済は、現在絶えざる変化の過程にあります。私は、この変化に適切に対処して、将来、私たちの子孫が生まれた幸せを感じ、ゆとりと
活力を持って過ごしていくことができるような安定した
社会を築き上げたいと念願するものであります。
そのためには、勇気と
決意を持って、今なすべきことを毅然として実行していかなければなりません。
財政改革への取り組みにおいてまたしかりであります。私たちの子孫に大きな重荷を残すことのないよう、一歩一歩
改革の実を上げていかなければなりません。
また、
我が国経済の
国際化への
対応に際しましても、私たちが自信を持って守り育ててきた
日本の土壌の中において、今後のあるべき姿を主体的に模索し、
創造していく必要があります。
我が国が抱える課題解決のための今日の私たちの
努力と忍耐は、必ずや新しい
時代における
我が国の一層の
発展と
繁栄の礎となるものと確信をいたしております。
国民各位の一層の御
理解と御
協力を切にお願いするものであります。(
拍手)
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