○飯田忠雄君 わかりました。
それでは、次に移りますが、
法律の解釈についての
適正化について少しくお尋ねをいたしたいと思います。
恩赦法という
法律がございますが、恩赦法は元来字のごとく国の恩恵によって犯罪を許すための
法律だと、こう書いてありますね、恩赦というのは。ですから、恩赦の本来の性質というものは許してやるというんですから、裁判の確定ということは含んでないのがこの法の趣旨なんでございます。だから恩赦法という
法律には「言渡を受けた者」ということは書いてありますが、その言い渡しは裁判が確定しなければならないということは
原則として出ていないわけです。だから出ておりますのは、復権の場合に「刑の執行を終らない者又は執行の免除を得ない者に対しては、これを行わない。」ということでそこで始めて出ておるわけですね。
それで、恩赦法の趣旨は、大赦の
規定を見ましても明らかなように、言い渡しを受けない者、罪を犯して裁判にかかったのだから起訴されたのだけれ
ども、まだ言い渡しを受けない者についても恩赦をする、こうなっております。その場合は「公訴権は、消滅する。」となっておりますね。それから「有罪の言渡を受けた者については、その言渡は、効力を失う。」と、こう書いてありまして、この場合の「言渡を受けた」ということは裁判の確定は関係ないのです。裁判が確定しようがしまいが青い渡しを受ければ大赦を行いまして、言い渡しが効力を失う、第三条はこういう趣旨の
規定でございます。
それから同様に第四条、第五条、第六条、ずっと書いてあります。特赦の場合も、それから減刑の場合も、有罪の言い渡しを受けた者に対して行うと書いてあるだけでありまして、裁判の確定ということは書いてないんです。裁判が確定した者に対して特赦を行うということは法の運用の問題ですね。法は裁判の確定とは書いてないけれ
ども、法を運用するに当たって政府の方で特に裁判の確定した者だけを特赦するという運用をなさっておるというだけのことでございまして、法の
条文からは出てこないものでございます。運用はどういう運用をしてもよろしいから、それは構わないんですよ。それを悪いと言うているんじゃないんです。それから、減刑の場合も刑の言い渡しを受けた者に対して行うと、こうなっております。
それで、こういう精神を受けまして、この恩赦法の施行をするところの政令、それにおきましてそれぞれの
規定がなされておりますが、特に減刑に関する
昭和二十七年の政令がございますが、その政令では第一条の第一項では禁錮以上の裁判を受けた者について書いておりますが、第二項の方ではっきりと言い渡しが確定する前の罪について減刑をする旨の
規定がございます。この場合に、減刑の
方法として、まだ確定していないのだからそれを基準にするわけにいきませんので、将来確定したならば、その確定した犯罪で減刑する、しかもその減刑する根拠となる政令は
昭和二十七年の政令だと。ある人が上訴をいたしまして、その上訴が最高裁まで行って決着がついたといたしましょう。最高裁で有罪が決まった。この場合には、そのときの確定判決に基づいて
昭和二十七年の減刑令で減刑すると、こういう意味であって、それは減刑の
方法の問題であります。減刑の対象の問題ではない。どういう罪の者について減刑するかという対象の問題じゃないわけですね。これはもう
法律を読む知識があるならば当然出てくる。
法律家の常識としてそう解釈せざるを得ないものでございます。もともとこの恩赦法というのは裁判の確定というものは関係がないんです。そういう趣旨でつくられておる。裁判の確定を持ち出すのは運用の段階だと、こういうふうに解さざるを得ないわけでございます。
そこで、お尋ねをいたしますが、実はこの問題について、従来から裁判が確定しなければできないんだという、そういう風説が流れておりますのでお尋ねをしたわけでございます。減刑を決めた第六条の「刑の言渡を受けた者に対して」減刑すると書いてあるその「刑の言渡を受けた者」とはいかなる意味であるかということをお尋ねをいたしましたところが、刑の言い渡しを受け、裁判が確定した者であると、こういう御答弁をいただいたわけでございます。ところが法にはそう書いてないのです。また、その御答弁のとおりに読みますと、この第六条を施行する減刑令が意味がわからないものになるわけでございます。法で裁判が確定しなければ減刑しないぞと言うておいて、政令で裁判が確定しない者についての減刑の仕方を決める、これは矛盾であります。こういう矛盾した解釈をあえてしなければならぬという、これは何かほかにあると思うんです。この減刑令とか恩赦法というものじゃなくて、ほかの問題、敵は本能寺という、そういう関係のことを頭に描いてなされておるところの白を黒と言い、馬を鹿と言うところの解釈ではないかと、こう思いますが、いかがでございますか、お尋ねいたします。