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1984-04-06 第101回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月六日(金曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  三月三十一日     辞任         補欠選任      海江田鶴造君     上田  稔君      大浜 方栄君     徳永 正利君      吉川 春子君     宮本 顕治君  四月二日     辞任         補欠選任      上田  稔君     海江田鶴造君      杉元 恒雄君     藤田 正明君      水谷  力君     安井  謙君      柳川 覺治君     園田 清充君  四月六日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     吉村 真事君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大川 清幸君     理 事                 竹内  潔君                 前田 勲男君                 山田  譲君                 飯田 忠雄君     委 員                 海江田鶴造君                 徳永 正利君                 名尾 良孝君                 吉村 真事君                 寺田 熊雄君                 橋本  敦君                 柳澤 錬造君                 中山 千夏君    国務大臣        法 務 大 臣  住  栄作君    政府委員        法務大臣官房長  根岸 重治君        法務大臣官房会        計課長      村田  恒君        法務大臣官房司        法法制調査部長  菊池 信男君        法務省民事局長  枇杷田泰助君        法務省刑事局長  筧  榮一君        法務省矯正局長  石山  陽君        法務省保護局長  吉田 淳一君        法務省訟務局長  藤井 俊彦君        公安調査庁次長  岡村 泰孝君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   小野 幹雄君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    説明員        内閣審議官    照井 利明君        警察庁刑事局審        議官       於久 昭臣君        警察庁刑事局捜        査第二課長    上野 浩靖君        警察庁刑事局保        安部防犯課長   古山  剛君        警察庁刑事局保        安部保安課長   加美山利弘君        警察庁刑事局保        安部保安課長   竹内  隆君        大蔵省主計局主        計官       吉本 修二君        国税庁税部法        人税課長     谷川 英夫君        国税庁税部資        料管理企画官   中川 浩扶君        国税庁調査査察        部調査課長    木下 信親君        厚生省医務局総        務課長      古川貞二郎君        厚生省薬務局企        画課長      岸本 正裕君        労働省労政局労        働法規課長    廣見 和夫君        会計検査院事務        総局第五局審議        官        井上 隆夫君        日本国有鉄道新        幹線建設局長   田中 和義君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出、衆議  院送付)、昭和五十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付)、昭和五十九年度政府関係  機関予算内閣提出衆議院送付)について  (法務省所管)     —————————————
  2. 大川清幸

    委員長大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る三月三十一日、大浜方栄君及び吉川春子君が委員辞任され、その補欠として、徳永正利君及び宮本顕治君が選任されました。  また、去る二日、杉元恒雄君、水谷力君及び柳川覺治君が委員辞任され、その補欠として藤田正明君、安井謙君及び園田清充君が選任されました。  また、本日、岩動道行君が委員辞任され、その補欠として吉村真事君が選任されました。     —————————————
  3. 大川清幸

    委員長大川清幸君) 去る三日、予算委員会から、六日及び七日の二日間、昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所及び法務省所管について審査の委嘱がありました。  この際、同総予算中、法務省所管を議題といたします。  住法務大臣から説明を求めます。住法務大臣
  4. 住栄作

    国務大臣住栄作君) 昭和五十九年度法務省所管予算内容について、概要を御説明申し上げます。  昭和五十九年度予定経費要求額は、三千七百四十七億八千二百九十三万四千円でありまして、これを前年度予算額三千五百九十四億六千三百六十一万円と比較いたしますと、百五十三億一千九百三十二万四千円の増額となっております。  その内訳を大別いたしますと、人件費百六十七億八千五百八十九万七千円の増、一般事務費二千九百二万二千円の減、施設費十四億三千七百五十五万一千円の減となっております。  まず、増員について申し上げますと、第一に、検察庁において、検察事務官九十八人が増員となっております。その内容は、まず、特殊事件処理体制充実を図るため、検察事務官二十四人が増員となっておりますほか、財政経済公安労働国際犯罪等事務処理体制充実強化及び公判審理適正迅速化を図るため、あわせて検察事務官七十四人が増員となっております。  第二に、法務局において、法務事務官百七十二人が増員となっております。その内容は、まず、登記事務の適正迅速な処理を図るため法務事務官百六十五人が増員となっておりますほか、国の利害に関係ある争訟事件処理充実を図るため法務事務官五人、人権侵犯事件処理充実を図るため法務事務官二人がそれぞれ増員となっております。  第三に、刑務所において、保安体制充実を図るため看守部長二十人、看守九十四人、医療体制充実を図るための看護婦(士)五人がそれぞれ増員となっております。  第四に、少年院及び少年鑑別所において、処遇体制充実を図るため関係職員二十三人が増員となっております。その内容は、少年院分類保護体制充実を図るため教官十人、少年鑑別所観護体制充実のため教官十三人であります。  第五に、保護観察所において、直接処遇強化等のため保護観察官二十一人が増員となっております。  第六に、地方入国管理官署において、出入国審査及び在留審査業務適正迅速化を図るため、入国審査官十七人が増員となっております。  なお、前述の増員の中には、部門間配置転換による振りかえ増員として、法務局登記職員に二十七人、保護観察官に四人、入国審査官に一人計三十二人が含まれております。  増員内容は以上のとおりでありますが、御承知のとおり、昭和五十六年九月の閣議決定に基づく「定員削減計画(第六次)の実施について」による昭和五十九年度定員削減分四百四十四人が減員されるほか、その他の削減分として八人合計四百五十二人が減員されることとなりますので、差し引き二人の定員減となるのであります。  次に、一般事務費について、それぞれ前年度予算額と比較しながら御説明を申し上げますと、まず、全体としては、前年度予算額に比較して、旅費の類が六千九百二十四万五千円の減額庁費の類が十二億八百五十九万三千円の増額、その他の物件費が十一億六千八百三十七万円の減額となっております。  以下、主要事項ごとに御説明申し上げます。  第一に、法秩序確保につきまして、関係組織人件費を含めて二千百四億九千九百万円が計上され、前年度予算額に比較して三十三億三千四百万円の増額となっております。  その増額分内容について申し上げますと、まず、検察庁関係としては、十一億七千百万円が増額されておりますが、その中には、人件費のほか、検察費事務量増加分として六千七百万円が含まれております。  次に、矯正施設関係としては、十六億九千万円が増額されておりますが、その中には、人件費増額のほか、物件費として刑務所作業運営に関し、昨年七月から第三セクターによる新規事業が発足したことにより、五十八年四月から六月までの三カ月相当分原材料費九億四千七百万円が減額されている反面、保安機能充実経費六百万円、被収容者処遇確保に要する経費六億円等の増額が含まれております。  右の処遇確保に要する経費増額内容は、被収容者のための生活備品日用品被服等の改善に要する経費三億二千五百万円並びに被収容者食糧費における主食、副食の単価改定等に要する経費二億七千五百万円であります。  次に、更生保護関係としては、二億八千三百万円が増額されておりますが、その中には、人件費のほか、保護観察体制充実を図るための経費一千六百万円、保護司実費弁償金三千八百万円、更生保護委託費五千八百万円等の増額が含まれております。  次に、訟務関係としては、国の利害に関係ある争訟事件処理経費として、八百万円が減額されております。  次に、公安調査庁関係としては、一億九千八百万円が増額されておりますが、その内容は、人件費がほとんどであります。  第二に、国民権利保全強化につきましては、まず、法務局における登記事務処理適正化に関する経費として、関係職員人件費を含めて六百三十五億五千三百万円が計上され、前年度予算額に比較して十九億二千六百万円の増額となっております。  その増額分のうち、物件費に関する主な内容は、登記事務処理経費二千百万円、全自動謄本作成機等事務能率機器整備に要する経費一億三百万円、謄抄本作成事務の一部外部請負処理に要する経費一億七千四百万円等であります。  なお、第九十五回国会で成立した供託法の一部改正により、昭和五十七年四月一日から三カ年の間は、供託金利息を付さないことになったことに伴い、供託金利子二億四百万円が減額されております。  次に、人権擁護活動充実に関する経費としては、一千四百万円が増額されております。その内容は、人権侵犯事件調査強化を図るための経費であります。  第三に、非行青少年対策充実につきましては、一部法秩序確保関係と重複しておりますが、関係職員人件費並びに少年院等収容関係諸費を含めて三百二十億七千百万円が計上され、前年度予算額に比較して七億四百万円の増額となっております。  そのうち、事務的経費増額分内容について申し上げますと、まず、検察庁関係としては、二千六百万円が増額されておりますが、これは検察活動充実に要する経費であります。  次に少年院関係としては、三千六百万円が増額されておりますが、これは、生活教育備品整備等に要する経費であります。  次に、少年鑑別所関係としては、一千二百万円が増額されておりますが、これは生活備品整備及び日用品充実等に要する経費であります。  次に、保護観察所関係としては、八千五百万円が増額されておりますが、これは、補導援護活動充実に要する経費であります。  第四に、出入国管理業務充実につきましては、関係職員人件費を含めて百億五千万円が計上され、前年度予算額に比較して三億四千百万円の増額となっております。  その増額分のうち物件費に関する主な内容は、出入国審査及び在留管理業務充実を図る経費二千六百万円、在留外国人登録事務処理経費六千万円等であります。  第五に、施設整備につきましては、矯正施設整備費二十九億八千百万円、法務合同庁舎整備費二十三億四千九百万円及び登記所等単独施設整備費二十六億四千四百万円を含め九十二億九千九百万円が計上されておりますが、前年度予算額に比較して十四億三千七百万円の減額となっております。  なお、このほか、大蔵省及び建設省所管特定国有財産整備特別会計において、大阪池田法務合同庁舎ほか十九施設施設整備費として八十億七千七百万円が計上されていることを申し添えます。  なお、この際、昭和五十九年一月二十五日の閣議決定行政改革に関する当面の実施方針について」に基づく昭和五十九年度における法務省関係改革案について、概要を御説明申し上げます。  第一に、内部部局再編合理化といたしまして、公安審査委員会事務局について、業務実態等にかんがみ、その内部組織を簡素化いたしますとともに、定員四人を縮減することといたしております。  第二に、附属機関整理合理化といたしまして、少年院及び婦人補導院について、業務を停止している少年院一カ所、婦人補導院二カ所を廃止することといたしております。  第三に、地方支分部局整理合理化といたしまして、矯正管区及び地方更生保護委員会について、内部組織を簡素化いたしまして、十六の課を整理統合し、あわせて定員二十人を縮減することにいたしております。  次に、公安調査庁地方公安調査局について、総務庁設置法等の一部を改正する法律の施行によりまして、これを廃止し、必要最小限現地的事務処理機関といたしまして公安調査事務所を配置することといたしております。これに伴いまして現行の地方公安調査局事務整理合理化を図りますとともに、定員につきましては、公安調査局及び公安調査事務所を通じまして二十五人を縮減することといたしております。  また、法務局及び地方法務局出張所について、七十二か所、地方入国管理局出張所について一カ所を整理統合することといたしております。  終わりに、当省主管歳入予算について御説明いたします。  昭和五十九年度法務省主管歳入予算額は、八百九億七千三十一万八千円でありまして、前年度予算額七百二十六億六千八百五十八万九千円と比較いたしますと、八十三億百七十二万九千円の増額となっております。  以上をもって、法務省関係昭和五十九年度予算についての御説明を終わります。
  5. 大川清幸

    委員長大川清幸君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 今国会日切れ法案としまして、三月末日に所得税法の一部改正法案が可決されたわけであります。その中に国税通則法百十六条の改正が含まれております。これは現下の財政難にかんがみまして、税制調査会で「今後の税制のあり方についての答申」というものが五十八年十一月に出されておりますが、その中に「立証責任その他の争訟手続関係」、第一として「立証責任に関する基本的な考え方」というような部分がありまして、第二にまた「証拠申出の順序に関する整備」というものがうたわれておりますが、こういう専ら国税の領域から眺めて、裁判関係における各当事者の立証責任の分配でありますとか、あるいは立証責任転換でありますとか、そういうことがあっという間もなく実現されますと、現実訴訟を担当しております弁護士としましては大変困るわけでありまして、ですから日弁連もこれに対しては異議の申し立てをいたしておる。殊に日切れ法案は非常に衆参とも急ぎますから、予算がまだ成立してない段階で、急げ急げということで審議が行われる。民事訴訟の根幹に触れるような問題をそう早急にばたばたと議決したのじゃ困るわけですが、これは法律改正方法に関連して、私どもは大変困る事態だと思っておりますが、このような法改正につきまして、まず法務省はどのような事前の協議を受けたのでしょうか、それをお伺いしたい。
  7. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 事前大蔵省の方から、こういうような形で百十六条を改正したいという話がございまして、私ども内部的に検討いたしまして、そして結果的には今度の改正案のような内容改正することは差し支えないであろうという見解を大蔵省の方に伝えたということでございます。
  8. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この改正によりますと、税務署側課税処分基礎となった事実の主張があれば、納税者側は反対事実を具体的に主張すると同時に、その事実を証明すべき証拠申し入れをしなければならないということになります。これは従前の規定が、裁判所税務署側主張を合理的と認めたときに、初めて原告である国民が先に証拠申し入れをなすべきものとしておるに対しまして、裁判所判断を不必要にしたものであります。で、裁判所判断を不必要にする、あるいは裁判所判例を覆すというようなことを軽々に行政官庁がやってもらっては困るわけであります。  これは先般のサラ金規制法案、具体的に言えば貸金業法の四十三条で、最高裁判所が営々として築いてきた経済的な弱者保護判例昭和三十九年の利息制限法制限利率を超えた利息の返還は無効である、したがってそれは元金の弁済に充当されるという画期的な判例、これを覆して、たとえ利息制限法制限利率を超過した利息の支払いといえども有効な利息弁済とみなすということで、最高裁の判例を覆してしまった。こういう一連の行政官庁による、特に大蔵の分野からの判例であるとか訴訟方法であるとか、そういうものに対する攻勢が目立つわけであります。  これは税務当局説明によりますと、今回の改正は、百十六条の規定が活用されていないから、この規定の活用を図るためであるというふうに説明せられておるわけであります。それでは裁判所訴訟指揮が不満であるから法律裁判所判断を不要なものにしてしまおうというのと同じであります。これは訴訟の実際が税務当局の言うようなものであったかどうか、民事局長としてはどういうふうに眺めておられますか。
  9. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 現実訴訟で旧百十六条がどのように運用されておったということの実態は必ずしも十分に把握いたしておりませんけれども、旧百十六条の規定が非常にわかりにくい、合理的な主張といいましてもそれがどういう内容であるかはわかりづらいわけであります。それから、税務署側の方の主張があったときに原告側の方で立証するといいましても、立証方法を出す前提といたしましてはやはり被告側の方としての主張というものが当然なければ立証申し出をしても裁判所判断のしようがないわけでございます。そういう点から考えますと、どうも百十六条の意味合いがはっきりしないという面で余り活用されなかったといいますか、百十六条にのっとったという形での訴訟運営がなされなかったのではないかというふうに今考えております。しかし一般のいわば裁判所訴訟指揮、それから主張立証提出時機というものは一般民事訴訟原則がございますので、それにのっとってやりましても、そう大して違いはないわけでございますので、そういう形で実際はなされておったのではなかろうかと思います。  したがいまして、今度私どもの方で百十六条の改正について現在と余り違いはないのではないかというふうに考えて大蔵省の方に特に異議は述べなかったわけでございますけれども、それはただいま申し上げましたように、実際の訴訟といたしますと、まず税務署側の方から課税の認定をいたしました根拠についての主張をいたします。そうしますと、それについて当然原告側の方でそれに対する認否、反論というものが出てくる。通常そう出てくるわけでございます。そしてそれに基づいての立証が出てくるということでございまして、それが旧百十六条でもそのような形を想定するということだろうというふうに考えられますので、それをわかりやすく今度の条文で書いたもの、少なくとも一項の方はそのことをわかりやすくしたものだというふうに理解をしたわけでございます。
  10. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 民事局長の御説明によると、果たして税務当局の言うように百十六条が活用されていたかどうか、国税当局は活用されていないのでということを言っておるわけですが、果たしてそれが現実にはどうなのか、十分把握しておらなかったという御説明であったようですが、やっぱり少し税務当局に引きずられているような印象を受ける。果たして税務当局主張現実に合うのかどうか。やっぱりその現実を確かめて、そうしてなるほどそうなんだということで同調なさるならいいけれども、よくわからないけれどもどうも規定がはっきりしないのでということで同調したのでは困る。やはり少し法務省民事局側余りおとなしいのではないかという印象を受けるので、これからは少し自己主張を強くしてもらいたいと私は考える。余り大蔵に引きずられないように。  それで、いまの抗告訴訟、つまり申告納税制度を基本としておる税制では国民が確定申告いたします。税務署側がそれに対して更正決定をする。納税者申告が事実と異なると主張している税務署側がまずその事実の異なるゆえんを主張立証すべきものであるというのが判例の示すところでもあり、大方の学説の唱えるところでもあるわけであります。ところが、今回の改正によると、この原則が変更されて、まず立証責任原告である国民の側に第一次的にある、こういうふうになったものと解釈せざるを得ないのですが、民事局長としてはどういうふうに考えられますか。
  11. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 課税処分に対します取り消し訴訟におきまして立証責任あるいは主張責任がどちらにあるかということにつきましては税務署側にあるというのが判例、それから多数説のとるところでございます。私もそのとおりだと思います。今度の百十六条の改正はその点については何ら変更を加えているものではないというふうに私ども了解をいたしております。
  12. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その了解が間違いなんじゃないだろうか。というのは、税務署側のまずこれが「事実を主張」すればと書いてある。立証すればと書いてない。だから事実の主張だけをしっ放しで立証はしなくてもいい。ところが、事実の主張をすれば、今度は国民の側が事実の主張証拠申し出をしなければいかぬ、立証をしなければいかぬと、こういうことになっているわけでしょう。だから、あなたのおっしゃるように、税務署側主張立証を先にするというその主張だけはつかまえたけれども立証は外してしまって、国民の側に主張立証を押しつけてきている、こう見ざるを得ないでしょう。どうですか。
  13. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) その点は旧百十六条でもはっきりしない書き方でございますのでわからない点はございますけれども、まず税務署の方で主張をいたします。そして、それに対して必要経費等、そういうふうな、何といいますか、いわば課税基礎に間違いがあるというようなものにつきましては、訴訟の実際からいたしますと原告である納税者側の方から積極的な否認なら否認をしていただく、こういうふうな必要経費がかかったということを主張していただきませんと、これは実際上の訴訟にならないわけでございます。そういう面で主張し、また同時にその裏づけとしての証拠というのはもともと納税者の手元にあるべきものでございますので、そういうものも同時に申し入れていただくというだけのことでございまして、いわば争点とそれから証拠方法につきましてどういうものがあるかということを裁判所の方に提示してもらって、そして今後の訴訟の進行を早く進めようという、何といいますか、いわば準備手続でまとめるような事柄を、早くこういう手順でやるべきだということを百十六条で決めているだけであって、立証責任とか主張責任とかというものをこの条文で決めたものであるというふうには私ども了解をいたしておりません。
  14. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 民事局長のそういう解釈は実務をなす場合の一つのよりどころになるから、それはもしそういう御意見であれば一応そういうふうに承っておいて、次に移りたいと思うんです。  次は、立証責任転換があるかないかという点は、私は私の主張が正しいと思うんだけれども、必ずしも民事局長はそうではありませんというので、そのことは有利に私の方が受け取って、次に、納税者が遅滞なく証拠申し出をしなかった場合に、今回の改正は民訴法の第百三十九条第一項にいう「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法とみなす。」としておりますが、これは裁判官が判断すべき事項を法律規定しているということになってしまって、やはり税務当局の裁判官に対する不信感を表明したことの帰結のように思うんだが、局長どういうふうにお考えですか。
  15. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 旧百十六条の規定におきましても、納税者側の方の主張立証申し出をすべき時機に関する規定であることは間違いないわけでございます。ただそういう時機を決めておるわけでございますが、いわばその時機を逸したという場合にどうなるかということについては旧百十六条には規定がないわけでございますので、民訴法の百三十九条の一般問題として考えなければならない。そのときに国税通則法の方でこういう防御方法提出時機についての規定があれば、それは民訴の百三十九条の解釈適用の場面においても一つの根拠になるということは変わりないだろうと思います。ただ、それが直に結びつくかどうかということになりますと若干問題がある。したがいまして、せっかく国税通則法の百十六条でこういう防御方法提出時機を決めていながら、その時機を失した場合の効果といいますか、そういうものが必ずしもはっきりしていなかったという面があるわけです。それを今度の新百十六条の二項では時機におくれた攻撃防御方法だというふうにみなすというところ、その辺はかなり強く結びつけたという点は否定できないと思います。しかし、そうなりましても、一項の方で税務署側の方の主張が出た後遅滞なくという「遅滞なく」の判断はこれは裁判所が当然判断すべきことでございます。それからまた百三十九条の適用に関しましても、その「時機に後れた」ということについては今度の二項でみなされますけれども訴訟の完遂を遅延せしめるというふうなもの、あるいは実際上の訴訟指揮といたしますと、この百三十九条は申し上げるまでもありませんけれども訴訟の迅速処理という面に着目した規定でございますが、もう一方、訴訟として重要な適正な処理という面についてはまだ別の法理が民訴法自体にあるわけでございます。したがいまして、真相を明らかにした判決をするという意味での主張立証方法をむげに却下をするということは、これは民訴全体の精神からも反するわけでございますので、そういうところから総合判断をするということは、これは訴訟指揮をいたします裁判官にとっては重要部分がもう残っておるわけでございまして、ただごく一部分について今度の規定ではみなすということになって、旧規定よりは少し強くなったという面があろうかと思いますけれども、全体として裁判官の認定とか訴訟指揮とかというものを不信感を持ってそれを狭めていこうという性質のものではないというふうに理解をしております。
  16. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その点が私がきょう質問した一番のポイントだったわけだけれども、それじゃ、局長のお考えを縮めると、仮に時機におくれた立証方法であってもそれが真実発見のために必要な証拠である、この立証を許すべきであると考えたら、時機におくれた申し出であっても裁判所はなおかつその立証を許すという判断をすることができる、裁判官にはその権限がまだ残っている、こう理解してよろしいですね。
  17. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) それは当然のことだろうと思います。
  18. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それではその点はその辺にとどめておきます。  大臣、今民事局長との質疑応答をお聞きになったと思うんですが、やはり事が裁判所判例に関する問題であるとか、裁判官の訴訟指揮に関する問題であるとか、こういう司法の本来的な領域に属する問題ですね。これを余りほかの他の省庁の守備範囲の法律の中でいじると非常に司法の分野にある者は困るわけですよ。それがまた日切れ法案なんかで急いでわあっとやってしまうのじゃ困るわけです。その点は大臣としてもこれからやはり十分考慮していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  19. 住栄作

    国務大臣住栄作君) 私、一般論といたしましてまさしくおっしゃるとおりだと思います。私もこの立法理由、今民事局長と先生とのやりとりを承っておったのでございますけれども、税金関係の訴訟でございますので、先ほどから聞いておりまして、これも余りだらだらやるのもというようなことから、そういう裁判官の権限を侵さないというような範囲内で訴訟の迅速化、もちろん公正は大事なことでございますけれども、そういうことを図った規定である、こういうように理解をしておったわけでございます。一般論としてはおっしゃるとおりだと思います。
  20. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、恩赦関係についてお尋ねしたいと思います。  恩赦の中で特に注目すべきものはやはり大赦であります。これが法律上の効果から見て最も大きいわけであります。殊にまだ裁判が確定しなくても公訴権を消滅させる効果を持つというのでありますので、これは非常に注目すべきものでありますが、従前の大赦はいかなる国家的な慶弔時に発せられておるのか、これをまず御説明いただきたいと思います。
  21. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 大赦令につきましては、いわゆる戦前にもございますが、さしあたり戦後について御説明いたします。  戦後、大赦令は四回公布されておりまして、昭和二十年の十月、第二次大戦の終局の際でございます。第二回目は昭和二十一年十一月、日本国憲法公布の際でございます。第三番目は昭和二十七年四月、平和条約発効の際でございます。次に第四番目は昭和三十一年十二月、国際連合加盟の際に行われたものであります。それ以後、大赦令の例はございません。
  22. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大赦令の発せられた今御説明になった時期における政令を見ますと、刑法犯については、皇室に対する不敬罪のありましたときはその問題、皇室に対する罪、内乱罪、外患罪等に限られておるようであります。そのほかこの特別法を見ましても、主として刑事犯というよりは行政犯に限られておるようでありますが、そういう犯罪に限定してきたいわば伝統的なもの、それにとどめました合理的な理由というのはどこにありましょうか。
  23. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) ただいま御説明しました四回の大赦令の対象となっている罪は、ただいまお尋ねのようなことに近いわけでございます。それぞれの国家の慶弔事の性質によりましておのずから大赦の罪名も異なっておるようでございます。御指摘の皇室関係に対する不敬罪、あるいは内乱等の外患、こういうような罪につきまして、この四つのうち平和条約に至るまでの三つのものにっきましては、それぞれ少しずつ罪名が違うものでございますから、大ざっぱに申しますと、おおむねそういう罪が大赦の該当になる一つの罪名として挙がっております。  これにつきましては、結局それぞれの時の内閣において、その恩赦の性格について談話等を発表しておるわけでございますが、この点につきましては、例えば平和条約の際の法務総裁の談話を見ますと、「独立回復というこの未曾有の時期に当り、主として占領下に罪に陥った国民を或は赦免し、或はその刑を減じ」云々ということが挙げられております。この中にはただいま御指摘の点は、罪についての説明は必ずしも直接にはないのでございますけれども、そういうただいま申しましたような国家の重大な慶弔事におきましてその種の罪についていわば恩恵的な意味合いを込めて大赦が行われたものであるというふうに理解しております。
  24. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 刑法中のいわゆる破廉恥罪であるとか、あるいは公務員の規律を守ろうとする贈収賄罪であるとかというようなもの、なかんずく贈収賄罪が過去に大赦の対象となったことがありますか、戦前戦後を通じて。
  25. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 大日本帝国憲法、旧憲法でございますが、施行後行われた大赦に御指摘のような先例はございません。
  26. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 戦後においてもないわけですね。
  27. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) ありません。
  28. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 特赦は有罪の言い渡しを受けて裁判の確定した特定の者に対してこれは常時行われる場合と、それから常時でない特別な恩赦とに分かれておるようでありますが、従来は特別な場合というのはどのような場合に行われておりますか。
  29. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 特赦につきましては、ただいま申し述べました大赦令などが出た場合の国家の慶弔事、ただいま申し上げました四つのことでございますが、それ以外にも、大赦令は制定されませんでしたが、特赦の基準を内閣で決めまして、政令ではなくて内閣で決めて、内閣指令という形で発布している事例が他の慶弔事においてございます。
  30. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この特別な恩赦というものは、恩赦法第十二条によりますと、中央更生保護審査会の申し入れが法務大臣に対してなされた場合に限って行われておりますね。したがって、内閣の政治的思惑によってこの制度が乱用されるおそれというものはまずないと我々は考えてよろしいでしょうね。
  31. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 御指摘のとおり、中央更生保護審査会において個々の個別恩赦、これは基準をもって定めた場合も最終的には個別の基準で個々に行うわけでございますので、個別恩赦に属するわけでございますが、それについて中央更生保護審査会が審査をして、そして相当であるというものにつきまして申し出を法務大臣に行いまして、法務大臣がこれを子とすれば内閣へこれを提出する、こういうことになっております。従来中央更生保護審査会が申し出をしたものについて大臣がこれを申し出ないとか、そういうような例はございません。中央更生保護審査会は法務大臣の附属機関でございますが、独立した機関として公正に審査を行っておると考えております。
  32. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大臣、今保護局長のお答えになったところでおわかりのように、従来恩赦、その中で特に重要な位置を占める大赦、これは帝国憲法以来ずっと伝統がありまして、余り刑法の破廉恥罪であるとか贈収賄罪というようなものは対象になっておらぬのです。これは司法の一貫した伝統なんですが、やはりこれは恩赦というものは行政と司法とのいわば接点にある制度でありますので、これを乱用されては困るわけです。ですから、これはやはりそういう意味の制度であって、従来の伝統というものを十分尊重していくべきであるという点は、これは大臣の御在任中にそういうチャンスがめぐってくることは恐らくないとは思いますけれども、しかし大臣のやっぱり国務大臣としてのお考えとして、そういう伝統は尊重すべきものだという点の御所感があってしかるべきだと思いますが、その点どうでしょう。
  33. 住栄作

    国務大臣住栄作君) この大赦については国家的な慶弔、重大な事件、こういうところに限られておる、これは現行憲法あるいは帝国憲法時代とも変わっていないということは承知いたしております。そしてまた対象となっている罪の種類も、これも先ほど来御説明申し上げておりますように限られております。今後どういうことがあるかわかりませんけれども、やはり大赦という大きな、特に司法権との関係で重大な関係のあることでございますから、やはりそういう過去の例その他というものが大変大きな要素になる、こういうことは当然のことだろうと考えております。
  34. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、スモンの問題についてお尋ねをいたしたいのですが、これは過去に約七千五百名に及ぶ患者が裁判に訴えまして、しかしこれは裁判所の大変な御努力でほとんど大部分が和解で決着を見ております。もちろん国の方も裁判所の意向を十分理解して、和解に協力して不幸な患者を救ったという努力があったことは申すまでもありません。しかし現在においてなおかつまだ和解が成立していない当事者、これが約百四十一名ですか、これは鑑定が既に済んでおるにかかわらず、なおかつ百四十一名の者が未解決で残っておる。未鑑定者はさらにそのほかに百三十八名おるということのようであります。この鑑定済みの者はなぜいまだに和解ができないのだろうかという点の疑問を持つのでありますが、これはどういう理由によるものでしょうか、御説明いただきたいと思いますが。
  35. 藤井俊彦

    政府委員(藤井俊彦君) スモンの和解につきましては、ただいま御質問がございましたように、鑑定が済みましてなお和解が成立していないというのは現在百四十一名でございます。この人々につきまして、なぜ鑑定が済んだのにまだ和解ができていないかというお尋ねでございますけれども、この理由は事件によりましていろいろございますけれども、主なものは、鑑定によりましてこの患者さんはスモンによる症状であるということはわかっておりますけれども、それではどこの会社の薬を飲んだのかという点がはっきりしない。そのためには裁判所証拠調べをいたしまして、それぞれその証拠調べの結果に基づきまして当該製薬会社が昭和五十四年九月の三者合意に基づく損害金額を支払う、そういうことになりますので、そのために時間がかかっているというのが最も主なる理由でございます。  そのほかに、鑑定が済みますと、逐次裁判所におきまして和解期日を定められまして、和解が成立していくわけでございますけれども裁判所の方の御都合によりまして、和解期日を入れられる日にちが一月先とか二月先とか、そういうケースもございまして、そのために鑑定が済んで報告書も出ているのに、なお正式な和解はまだ成立していない、そういうケースもございます。大体主な理由はそういうところでございます。
  36. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 今訟務局長の御説明を承りますと、スモンであることは間違いない、スモン患者であることは間違いない、キノホルム剤との因果関係も間違いない、しかしチバガイギーの薬か、武田の薬か、田辺の薬か、そのどっちを飲んだのかわからないという、これは国民としてはそれがすぐわかれば大変好都合でありますが、それがわからないというので遅延しておるのが大部分のようでありますが、これは公害訴訟で、A会社の工場、B会社の工場、C会社の工場のどの排出する煙によってぜんそくが生じたかというような場合、これは共同不法行為の理論で、みんなに連帯責任を負わせるということが可能なようでありますが、この場合はちょっとそれと趣を異にしておって、やはりどこの会社の薬を飲んだかということが大事だということになりますと、これはなかなか救済が得られないおそれがある。  そこで、厚生省の薬務局の方でやはりこの点の指導を各製薬会社になさって、厚生省の指導でその点の解決をなるべく速やかに行うように御努力願えないものだろうかというのが私どもの考え方でありますが、これはいかがでしょうか。
  37. 岸本正裕

    説明員(岸本正裕君) 先生御承知のとおりに、このスモンの問題の解決につきましては、厚生省といたしましては裁判所の指揮のもとに行われますいわゆる裁判上の和解という方法で解決に努力をいたしているわけでございまして、今先生の御指摘にございましたように、スモンであるという鑑定は下ったけれども、どこの会社の薬を飲んだかその辺がはっきりしない、こういう患者がいらっしゃるわけでございますが、この患者につきましては、その負担等につきまして、私どもといたしましては、なお裁判所におきます指揮に従いたい、こういうことを考えているわけでございまして、その裁判所判断に従いまして早期に和解が実現できるように努力をしていきたいというふうに今考えております。ただ、従来、どこの薬を飲んだのかはっきりしないとされておりました患者につきましても、お互いの立証の努力を重ねることによりまして、順次はっきりしてくるというケースがございますので、私どもといたしましては、当事者の間でそういう証明につきましても協力していきたいというふうに考えておるところでございます。  なお、製薬企業につきまして、この和解へ向かっての姿勢の指導を厚生省として行うべきではないかという御指摘でございますが、私どもといたしましては従前からそのような方向で行ってきておりまして、製薬企業につきましても和解の促進方を定期的に指導してきているところでございます。
  38. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは国においてもこのキノホルム剤の製造、販売を許可してきた、したがって、それがやはりスモン患者の発生をもたらしたという点の責任を認めていらっしゃるわけだから、だから裁判所の和解勧告に応じて今まで和解を進めてきた、何とかして早期に解決をしよう、そして不幸な患者を救おうというその熱意が、どうも当初の訴訟提起や確認書ができた五十四年当時と比べると少し落ちてきたんじゃないかというような感じも受けるんですが、やはりそうではなくして、できるだけ早くこの問題に決着をつけるという熱意を失わないようにしてもらいたい。これが一つ。  それからもう一つは、鑑定をいまだ経ていない者について、どうしたらこの解決が早くできるのかという点のあなた方のやっぱり御努力なり御方針なり、そういうものをお伺いしたいと思いますが。
  39. 藤井俊彦

    政府委員(藤井俊彦君) 鑑定をもっと早くする方法はないかということでございますが、簡単に考えますと、昭和五十四年当時に三者合意ができて、それからもう四年半たっているのだから、まだ鑑定ができないのはどういうわけかというような御疑問が生ずるかもしれませんけれども、事実はこの昭和五十四年の三者合意ができました当時の原告患者数、これは約五千人、たしか四千八百十九人だったと思いますけれども、それから四年半の間に逐次新たに訴訟を提起する方がございまして、この四年半の間に約千六百人増加いたしまして、現在総原告患者数で六千四百三十一名に増加しているわけでございます。  そういうわけでございまして、あの五十四年当時の患者さんの鑑定がおくれているというわけではございませんので、ことしに入ってからもこの二月から三月、二カ月の間にも患者さんの数が、新たに訴訟を提起されたのが二人ございまして、そういうふうに次々に新たな訴訟が提起されている、そういうことでございまして、その都度早急な鑑定実施法務省といたしましても全力を傾けておるところでございます。今後ともそのつもりで運営をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。
  40. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 厚生省、特に何かありますか。
  41. 岸本正裕

    説明員(岸本正裕君) 今法務省の方から申し上げたとおりだと思います。ただ、私の方から未鑑定の患者の鑑定の促進ということについて、これはやはり当事者間の和解でございますので、患者側からの必要な資料の提供ということも不可欠だというふうに考えているわけでございますが、この点につきましては原告側においても一層の努力をお願いしたいと思っておりますが、私どもの方といたしましてもできるだけの協力をするような姿勢で考えているわけでございます。
  42. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは今の点はもう結構でございます。  刑事局長にお尋ねをしたいのですが、福島交通の退職金の未払いの問題です。これは昨年八月十五日に退職した人々が大部分でありますが、これらの人々の退職金は会社と組合との間に労働協約がありまして、退職後十日以内に退職金を払わなければならぬという定めになっておりますが、それが払われておらない。そこで判例によりますと、これは東京地方昭和三四年(ワ)第二一〇七号、昭和三十五年六月十三日に判決が出ているわけですが、これによると「支払期限に退職金を支払えないことが相当であると認められる情況にある場合に限って、」退職金の支払いの時期を変えることができるということになっております。最高裁判所判例でも退職金というのは給料の後払いとしての性格を持つ場合があるといういろいろな判例がある。したがって、こういう政治家につけ届けを盛んにやっているというような、そういう経理状況のもとで退職金の支払いをしないということは労働基準法の二十三条に違反をするのではないか。したがって、これは労働基準法上の罰則の適用を受けざるを得ないのではないか。これは労働基準法の第百十九条の二に二十三条違反の犯罪は十万円以下の罰金に処するという罰則がありますね。当然これに該当すると思うけれども、刑事局長のお考えは。
  43. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 御指摘のように、福島交通で昨年八月以降の退職者の退職金を支払っていないということの新聞報道がなされております。また、その後の新聞報道によれば半分払ったというようなことも出ておりますが、いずれにいたしましても事実関係がどうもまだ明らかでございませんので、ちょっと確定的なお答えはいたしかねるわけでございます。  と申しますのは、今先生御指摘のまず当該期日に本当にその退職金が支払われなかったかどうか、これは一般論でございますが、一般論としてその点がまず一つ重要であろうかと思います。それともう一つは、一般論としましては労働者と会社との間の労働協約等の取り決めの内容、あるいは退職金の支払いをめぐっての労働者あるいは組合と会社側との話し合いの経過とか、いろいろな事情があるわけでございまして、その点がまだ私も現在事実関係が明らかでございませんので、責任があるかないかということは申し上げかねるわけでございますが、要件を満たせば当然この百十九条の二違反になり得る場合があるということであろうかと思います。恐らく、私確認はいたしておりませんが、それらの点を含め、あるいは当該の労働基準局等において行政指導も含めて現在調査でもなされているのではないかと考えておりますので、その結果を待ちたいと考えております。
  44. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは労働法というものはやっぱりこれを守ろうとする国家の意志が働かないとなかなか守れないんで、どうでもいいわということで見過ごしたんでは労働関係の法規というものはなかなか守れない。これは基準法にしろ労働組合法にしろ皆そうです。したがって、局長、やはり労働協約にあって、そういう支払いの義務があるということは間違いがないわけですから、私も調査したんです。罰則に触れる場合もあるわけですから、支払いができないということが相当な理由がある場合でなければこれは罰則に当然触れますので、これはやはりよく御調査願いたいと思います。いいですか。
  45. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) ただいま申し上げましたように、恐らく所轄の労働基準局等でこの新聞報道等に基づきまして所要の措置が講ぜられているかと思いますので、それを待って私どもとしても必要があればその事実に即応した措置をとりたいと考えております。
  46. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、これは恐らく時間がないので最後になるかもしれませんが、岡山県で全国に先駆けて拡声機等による暴騒音規制条例というものが生まれました。この条文は刑事局の方からいただいたので刑事局長お持ちと思いますが、この条文の第四条、「何人も、拡声機放送により、午前七時から午後八時までの間に、別表に定める基準を超える大きさの音」、これは八十五ホンですか、八十五ホンを「超える大きさの音を発してはならない。」という規定があります。この条例は、右翼の車が物すごい音を立てて走る、それで大衆が、国民が非常に困って、何とかしてくれという請願を県にして、ようやくこれが生まれたのですが、右翼というのは一台で来る場合ももちろんありますが、何かを妨害してやろうと思うと何台も車を連ねてやってくる。一台では八十五ホン以内だけれども、三台も四台も車を連ねるとこれが八十五ホン以上になるという場合があります。その場合、刑事局長のお考えでは共同正犯の理論でこの何台もの車を一度に取り締まるということができるとお思いになりますか。これは法律上の解釈を伺っているんですけれども
  47. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 最初に、お断り申し上げるまでもないのですがお断りしておきたいのですが、この岡山県の条例は岡山県の県議会で成立されたものでございまして、その立法趣旨あるいは審議経過等についても私は全く承知しておりませんので、入手しております条例の条文を読んだだけの一般論としての解釈ということでお許しをいただきたいと思います。  第四条に、御指摘のように、八十五ホン以上のものを発してはならないということになっております。これを二台、三台でやった場合にどうであるかということですが、条例の内容を見ますと、次の第五条でそういうことを予想いたしましたのか、「二以上の者が相五に近接した場所で拡声機放送を行っている場合で、これらの」全体が暴騒音つまり八十五ホン以上「となっているときは、これらの」「者に対し、」「発生の防止のために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。」という勧告の規定があるわけでございます。  それから、罰則といたしましては第十一条にございますが、その十一条は「第七条の規定による公安委員会の命令に違反した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金」となっておりまして、そのもとになります七条は「第四条第一項の規定に違反して拡声機放送による暴騒音を発している者」に対しては「当該違反行為の停止を命ずることができる。」ということで、普通の場合ですと措置命令を発し、それに従わない場合に罰則という建前になっております。第五条ではそれとは別に、二つ以上のものが合わさると八十五ホン以上を超えるという場合に必要な勧告をすることができるという措置、建前といいますか規定がとられているようでございます。  それで、今先生御指摘の点でございますが、二つ以上のものが相互にお互い自分では八十五ホンにならないけれども合わせれば八十五ホンを超す、しかし共同して騒音を発生させようとする意思がない場合には、当然にこの第五条の勧告には該当すると思いますが、第七条といいますか、停止命令あるいは罰則にかかるという方向には該当しないのではないか。当初から二台、三台の宣伝カーを動員しまして、その三つで八十五を超えて百、二百という騒音を出してやろうというお互いの意思が合致いたしまして、そこで行った場合にはやはり該当するのではないか。該当すれば措置命令、停止命令があって罰則ということになるのではないか。あくまで事実認定がもとになるかとは思いますが、やはり一般論としてはそのように解すべきではないかというふうに考えております。
  48. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 今の刑事局長の御説明はこういうふうに伺っていいんですか。つまり一台なら当然第七条の規制命令が出ますね。これは純粋な法律解釈をこの条例でやっていただければいいんですよ。だから二台、三台で超す場合に、共同正犯の理論で七条の規制命令が出せるかどうかということを伺っているわけです。私は、共同正犯というのは犯罪構成要件の修正形式ですからね。だから、音を発すること自体は犯罪じゃないんだから、それに犯罪構成要件の修正形式である共同正犯の理論を適用するというのはそもそも考え違いで、無理だと思っているわけです。そこのところをお伺いしているんです。
  49. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) どうもやはり具体的な事実関係がないと明確なお答えいたしかねるわけでございますが、確かに一台ということを予定しておりますので、共同正犯という修正形式を用いるということは慎重になされるべきであろうかとは思います。
  50. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 局長、余り御遠慮なさらないで。共同正犯の理論を適用するということは慎重でなければならぬと言う。私は、共同正犯の理論というのは犯罪構成要件の場合に適用があるものだがら、音を発することが犯罪でない場合に共同正犯の理論を適用するのは法律上無理じゃないかと言って伺っているわけですが、どうでしょう。
  51. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 確かにその点につきましては、第七条は当該違反行為の停止ということを命ずる、そのもととなる当該違反行為でございますから、それは犯罪行為ではないわけです。したがいまして、いわゆる共同正犯の理論がそこに適用されるということは、厳密に言えばそうではないということになろうかと思います。あとはこの措置命令あるいは罰則を適用する場合の事実認定の問題に落ちつこうかと思います。
  52. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうもちょっと今聞き取れなかったんですが、共同正犯の理論も第四条の複合騒音に適用して取り締まるというのは法律上無理だとおっしゃったんですか。
  53. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 法律上無理がどうか、その辺どうもやはり事実認定の問題で、法律の適用というよりは私が考えておりますのは、二台あるいは三台のものが共同していろいろな八十五ホン以上の音を出した場合にどう措置されるかということでございまして、その場合に一人が八十五ホンでなくても二台、三台合わせて八十五ホンの場合でも七条あるいは十一条の罰則がいくということはあり得るであろう、それはあくまでも事実認定の問題であるというふうにお答えしたわけでございます。
  54. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはどういうのですか、その一台一台全部が八十五ホン以内なんですよ。それが二台、三台合わさって初めて八十五ホンになるのに、八十五ホン以内で音を立てている各人についてこの四条によって取り締まることが可能かどうかという点は、ちょっと犯罪構成要件になってないものを共同正犯の理論で取り締まるということは法律上不可能じゃないかと私は思うんですよ。それが事実の場合、それが取り締まる場合もあり得るというのはどういう場合にあり得るのでしょう。
  55. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 共同正犯の理論というむずかしいことになりましたけれども、拡声機一台で八十五ホン出した場合は典型的な普通の場合であろうと思います。しかし、二台を連ねてやった場合は、一つ一つ八十五ホン以下だから三台なり五台なり横に並べてやっても当たらないというのもおかしいのではないか。そうすれば拡声機そのものは二台で放送しておりましても、そこでの拡声機放送というのはやっぱり一つの行為で、そこに八十五ホン以上を超えれば四条に当たる場合も事実のいかんによってはあり得るのではないかというふうにお答えしているわけでございます。
  56. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうもちょっとそれは共同正犯の理論というものを何か勘違いしておるんじゃないでしょうか。これは私は問題は法理論だから、刑事局長が間違ったことを答弁なさると、これは非常に影響するところが大きいですからね。共同正犯の理論というのは犯罪構成要件の一つの修正された形だという点はお認めになるんでしょう。
  57. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) それはおっしゃるとおりだと思います。今私が申し上げましたのは、二つあるいは三つの拡声機があった場合でも、それが一つの行為と見られる場合の、そういう見られる事実が前提とされれば、そういう場合でも四条に当たる場合もあるのではないかということを申し上げたつもりでございます。
  58. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうも私どもはこれ随分この問題で学者と議論をして、四条自体は犯罪構成要件にならない、七条の規制命令で犯罪になるんだから、犯罪構成要件にならないのにどうして共同正犯の理論が適用になるか、それはならないよと。これは学者と十分討議した上で私は結論を出している。しかし、やっぱりこれは公の国家的な判断が必要で、これは法務省はやはり刑事局長がこういう犯罪の場合の大元締めでいらっしゃるから、それで確かめる意味でお尋ねしたわけで、まあ局長も、これ犯罪にならない、共同正犯というのは構成要件の修正形式だから、犯罪にならない場合に共同正犯の理論は適用ありませんと、こうおっしゃっておきながら、しかし具体的な場合では、全部が八十五ホン以下でも三台合わさって超えた場合にはこれが七条の規制の対象になる場合があるとおっしゃる。そこがどうも法律的に私納得いかぬのですよ。もう一遍、間違いないですか、その点で。
  59. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) その共同正犯あるいは構成要件の修正理論というのをそのまま持ってくるという趣旨ではございませんで、ただ、事実認定として、拡声機が二台あっても、それが最初からその二つで八十五ホン以上出して暴騒音を発しようという意図で並べてやったような場合に、その事実のいかんによっては、仮に拡声機が二台であっても四条に当たる場合もあるのではないかということを申し上げて、あくまでも事実のいかんによっては四条にそういう場合でも当たる場合があるのではないかということを申し上げているところでございます。
  60. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 四条に当たる場合があるんじゃないかといいますと、そうすると、当たる場合には七条の規制命令も出せる、こういうふうに伺ってよろしいんですか。
  61. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 四条に当たるとすれば、また七条に該当するということになろうかと思います。
  62. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 警察当局の方、この点はあなた方はどういうふうに考えていらっしゃるか。
  63. 竹内隆

    説明員竹内隆君) 私どもといたしましてはこの条例の規定はいわゆる間接罰でございまして、直罰ではございません。したがいまして、今刑事局長の方から答弁がありましたように、刑罰理論をそのままは適用できないというふうには思っておりますけれども、しかし七条の停止命令の対象となります暴騒音を発している者は単数には限らない、したがいまして意思を通じて暴騒音を発している複数の者がいる場合はまとめて一つとして停止命令をかけられる、したがってそれに違反した場合は罰則がかかる、こういうふうに考えております。
  64. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、あなたの、まあ刑事局長のお考えもそうかもしれぬが、各人がみんな八十五ホン以下であっても、一緒に来てバーッとみんなが一度に音を立てて合計して百ホンになったという場合には、その各人にやはり命令を出して、七条の規制命令が出せる、こういうふうに聞いてよろしいですか。
  65. 竹内隆

    説明員竹内隆君) ただいまの御質問の場合は意思を通じてということが証明されればのことでございまして、これは今まで私ども軽犯罪法の適用で取り締まっておりますけれども、実際上は証明が非常に困難でございまして、したがいまして、先ほど御質問がありましたような五条の同時放送のような規定が要るわけでございます。現実には不可能と申し上げた方がいいかもわかりませんけれども、理論上といたしましては、意思を通じてということがはっきり証明できますれば停止命令がかけられるというふうに解釈いたしております。
  66. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 現実には不可能ということになると、これは非常に困るわけで、やはり大衆は右翼の暴騒音を何とかしてやってくれと。一台なら規制する、しかし何台も来たときに、意思を通じてということは立証困難だから現実には不可能だということになると、右翼は何台でも来てワーワー言って、おれは意思を通じてない、別々だと言って不可能なことになってしまっては困るので、そこのところはそういうあいまいさを残す指導をこれから各県にしてもらっては困る。各県でもやはり右翼の取り締まりをやる場合には、そんな現実に不可能なものでやってもらっては困るので、やっぱり現実に右翼を取り締まるそういう規定で指導してもらいたい。いかがですか。
  67. 竹内隆

    説明員竹内隆君) 意思を通じない複数の者に対する措置は非常にいろいろ問題がございまして、岡山県におきましてもいろいろ考えた末、五条の同時放送の規定をつくったと聞いております。この規定の活用によりまして御心配のような事案に対処したいということで岡山県警からも報告が来ておりまして、私どもはそういうふうな形で運用されるものと期待しているところでございます。
  68. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大変山田先生の時間を取って申しわけないんだけれども、第五条というのは、我々が平穏な集会をしておるのに右翼が来てガーガー言って、右翼のワーワー言うやっとこっちがマイクで演説しているのと合わさって百ホンになった場合に双方に勧告するということになると、それじゃ元も子もないじゃないか、妨害する悪いやつを取り締まるようにしなければ意味ないじゃないかと言っておる。この点どうです。
  69. 竹内隆

    説明員竹内隆君) 法律的な解釈の問題は別といたしまして、現実といたしますと、八十五ホンを超える音を複数で出す場合は、音といいますのは二つを重ねましても二倍にはなりません。例えば八十ホンを二つ重ねましても八十三ホンにしかなりません。したがいまして、御心配のような場合は極めて限定されているのではないかというふうに考えております。
  70. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、限定されてもいい、絶無じゃないんだから。八十五ホンを二つ合わせて八十三ホンというのはちょっとおかしい。それはおかしいじゃないですか。
  71. 竹内隆

    説明員竹内隆君) 八十ホンを二つ重ねても八十三ホンにしかならない。また距離の問題もございまして、音は距離が遠くなりますと急に軽減してまいります。したがいまして、距離の問題もございまして、それらを考え合わせますと、御心配のような例はごく少数例ではないかというふうに考えております。
  72. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ごく少数であろうと、あなた方のようにそうそうのんきにいられちゃ困るんです。それで八十ホンが二つあれば八十三ホンかもしれないけれども、八十五ホンを三つ合わしたら百ホンになるかもしれぬ。だから、そういうときに妨害をする悪いやつと妨害をされるいいやつとを一緒くたにして、みそもくそも一緒くたにして勧告しては困るというんです。それをよく指導してくれということです。
  73. 竹内隆

    説明員竹内隆君) その点は岡山県警におきましても、十分県議会における議論等を踏まえまして理解をいたしておりますので、岡山県警の方ではそういうふうに運用したいと言っておりますので、私ども期待しておるところでございます。岡山県警におきましても、よく議論を踏まえて承知いたしておりますので、そのように運用されるものと考えております。
  74. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 終わります。
  75. 山田譲

    ○山田譲君 時間も余りありませんから端的に質問をいたしますし、端的にお答えをいただきたい、こういうふうに思います。  実はこの前の法務委員会でもちょっと触れた問題でありましたけれども、神戸に神戸精糖という精糖会社があります。これが五十七年十一月、おととしに全員解雇を会社が一方的にしてきた。個別の労使関係についてここでいろいろ言うつもりはないんですが、とにかくそういう事実がありました。この解雇が不当だというので労働組合はいまだにずっと解雇無効を訴えているし、会社側としてはそれなりに頑張っていて、紛争がちっとも解決しない、こういう状態にあるわけであります。神戸精糖というのは資本金が十億円ばかりの会社で、解雇当時は三百人ばかりの労働組合員がおりました。現在でもその紛争は続いている、こういう状態であります。いろいろな問題がありまして、こういった労使関係全般の問題をここで議論するわけにはいきませんけれども、私は特にその中でお伺いをしたいのは商法の解釈の問題なんです。もちろん事実関係についてはこちらは調べたものがありますから自信はあるけれども、そちらのお答えとしてはやはり一般論でお答えいただくよりほかないかと思いますけれども、きょうはそういうわけですから一般論で結構であります。  つまりどういうことかと言いますと、神戸精糖はその解雇の理由として、会社側の経営が苦しくなった、そして苦しくなったし、労働組合側の姿勢がよくない、あるいはまた賃金が高過ぎるんだ、あるいはまた人員が多過ぎる、そういうことで組合員を一斉にこの際解雇したい、こういう主張をずっと徹頭徹尾続けているわけであります。ところが組合側としてはそれはおかしい、労働組合の姿勢が悪いとか賃金が高過ぎるとかいうのは一つの口実であって、実は会社側は砂糖の原糖を買うわけですが、これは非常に投機性の強いものでありますけれども、それを非常に高く買い過ぎた、それでその後砂糖の値段が物すごい勢いで暴落したわけでありますけれども、その損失を補うためにむしろその経営者側の失敗の犠牲を労働組合側に押しつけて、それでこの際一気に労働組合をつぶしてしまおう、こういうねらいがありありで、見え見えでございます。それで問題は、もっと問題なのはその精糖会社というのはいわゆる商社、丸紅の完全な子会社である、九五%くらいはみんな丸紅が株を持っている。それで精糖会社の社長も丸紅の部長クラスの人を出向きして、そしてそれを形式的に社長に押し当ててきているだけあって、事実は完全に丸紅の言うとおりになっている、こういう実態があるわけであります。したがって、労働組合側としても形式的な社長と幾ら議論をしても全然らちが明かない。会社側に言わせれば、これは丸紅が言うとおりおれはやっているんだ、こういう話で、丸紅に行けば、丸紅は労使関係は一切精糖会社に任してあるんだからおれは知らない、こういう言い方であります。  そこで、いろいろ問題ありますが、商法でまずお伺いしたいのは、会社が経営上いろいろ決算をしてそれを出している資料によりますと、あたかも、これは非常に粉飾決算もいいところだと思うんですけれども、会社側はどっちかというとそう経営状態は悪くないような資料が提出されている。つまり非常に高く買った原糖を、時価がずっと下がっていってしまったわけですから、本来ならば商法によってこの時価を貸借対照表に書かなけれぱいかぬ。それが高く買ったやつを、実際時価は安いのにもかかわらず、高い買い値といいますか、その値段をいわば粉飾的に貸借対照表上つけてある。実際は物すごい時価は安くなっている、そういうような貸借対照表のつくり方が、いわゆる商法に言うところの、商法第三十四条ですか、貸借対照表については時価を書かなければいかぬ、こういうふうな商法の規定があるわけだけれども、その規定に明らかに違反していると思われるんですが、まずそこら辺の問題について、これはどうお考えか、お伺いしたいと思うんです。商法との関係、商法のほかにも会計規則とか、会計原則とか、あるいは商法の第二百八十五条の二、流動資産の評価というふうなところでも時価をちゃんと書かなければいかぬと書いてあるんだけれども、時価でないものを書きかえている。こういう事実がはっきりしているんだけれども、こういうことについて、まず商法の解釈上こういう点はどうであるかということをお伺いしたいと思うんです。
  76. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 時価を書かなければならないものにつきまして、時価と違う高い価格で財務諸表をつくる場合には、もちろんそれは法令に違反する行為であると思います。
  77. 山田譲

    ○山田譲君 そこで、法令に違反すれば今度はどういうふうになるんですか。つまりその決算を見た公認会計士は当然見ている。その公認会計士はしかも親会社と同じ公認会計士なんだけれども、だから公認会計士が知っていてやったか、あるいは気がつかないでこれほど重大なことを見過ごしたか、どっちにしても公認会計士の責任はあると思うんですけれども、お伺いしたいのは、その公認会計士の責任と、それからもう一つはそういう決算をした会社側の責任、これはどうなるんですか。
  78. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) ただいまの公認会計士というのは、商法上では会計監査人のことだと思います。その場合には、いわゆる商法の特例法の九条によりまして、虚偽の報告書を作成したことによって会社に損害を与えた場合には会社に対して損害賠償の責めを負う、それからまた第三者に対して損害を与えた場合には第三者に対して損害賠償の責めを負うということに決められておりまして、その点につきましての民事責任はこの特例法で明定されておるわけでございます。  それから一方、会社の責任でございますけれども、会社それ自体というよりは、そういう行為をしたのは取締役ということになりますので、取締役につきましては商法の二百六十六条の規定で、そのような場合には会社に対して責任を負うということになっております。そしてまた、先ほど申しました特例法の関係では、会計監査人とそれから取締役とは連帯して損害賠償の責めを負うということに規定されておるわけでございます。
  79. 山田譲

    ○山田譲君 その刑事上の責任というものはないのですか。
  80. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 会計監査人につきましては刑事上の責任の規定は商法上はございません。ただ、過料の制裁はございまして、百万円以下の過料に処すということになっております。それからもう一つ、公認会計士でございますので、公認会計士法上、大蔵大臣の懲戒権がございますので、その懲戒権による登録の抹消であるとかいうような懲戒を受けるという可能性を持っているだろうと思います。
  81. 山田譲

    ○山田譲君 いや、その会社側の刑事上の責任です。
  82. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 取締役につきましては、これはやはり民事責任のほかには過料の規定がございまして、同じく百万円以下の過料に処せられるということになっております。あと取締役の刑事責任といたしましては、これはその財務諸表に虚偽の記載をしだということが構成要件としての規定はないのでございますけれども、そういうようなことに基づいて特別背任に当たるとか、あるいは利益があるというふうに仮装して不当な配当を行うというふうなことになりますと、これは商法違反ということで刑事責任を負わなければならないということになるわけでございます。
  83. 山田譲

    ○山田譲君 商法に違反した貸借対照表をつくったという責任は、やっぱり商法上も過料か何かになるという、そういう規定になっているんじゃないですか。
  84. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) それはただいま申し上げましたように、取締役も百万円以下の過料ということになっております。
  85. 山田譲

    ○山田譲君 そうすると、それは裁判所が過料に処すのだろうけれども裁判所に対してはだれか告発することができるわけですか、利害関係人もちろんそうだけれども
  86. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 過料の制裁は裁判所が職権によってやるという建前になっておりますが、その職権の発動を促すという意味で、何びとでもそういうことがあると思料すれば裁判所にその旨を通告する、通知する、まあ上申書を出すというふうなのが一般の例かと思いますけれども、そういうことによって裁判所の職権を発動することになると思います。
  87. 山田譲

    ○山田譲君 そうすると、労働組合もそこで言う利害関係人の中に入るというふうに考えていいでしょうね。
  88. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 労働組合もそういう事実があると考えれば、裁判所に対して過料事案であるということを通知して、過料の制裁なりを求めるというふうなことは当然できると思います。
  89. 山田譲

    ○山田譲君 じゃ、続いてもう一つお伺いしたいのは、実はそういうことは一切合財親会社である丸紅から言われるとおりにやったということがもし事実であるとすれば、それは一種のロボットにすぎない、社長を幾ら責めてもしようがないので、やっぱりその背後にある丸紅なら丸紅を押さえなければ何らの効果も効力もない。社長は全く親会社から言われるとおりにやったんだというふうなことになりますと、今度は商法上の責任はその親会社にあるということを言うことはできないですか。
  90. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) これは商法といたしますと、法人が別の場合にはその法人限りで完結的に処理をするという建前でございますので、事実関係といたしまして、親会社が実質上強力な支配権を持っておってやったという場合でも、いわば子会社の取締役はその子会社の取締役としての責任を果たすべきであるということで、子会社の取締役の責任を追及するということで処理をするという建前でございますので、商法上は直接には親会社に対して、あるいは親会社の取締役に対しての過料だとか、あるいは先ほど申しました取締彼等の商法上の責任がいくというふうには考えておりません。
  91. 山田譲

    ○山田譲君 もちろん直接的にいくなんということは思わないけれども実態を見て、それでどう考えてもこれは形式だけの社長であってその取締役そのものはすべて親会社の言うとおりになっている、そしてまた会計監査人についても全く親会社と同じ同一人物がやっているというふうなことが明らかになっているとすると、そうすると、商法がもしあなたの言うような解釈だとすればいかにも形式府であって、それでは会社の実際の経営状態なり責任をだれが一体負うのだという問題になると、これは非常に問題ではないかと思うんだけれども、その辺どうですか。
  92. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 商法上は各法人独立的に考えた規定を設けておるわけでございますが、親会社の方が不当にいろいろな強迫とか強要とかというふうなことで子会社に対して義務のないようなことを事実上させてしまう、そのことによって会社なりあるいは第三者に対して損害を与えた場合には民法上の不法行為の責任が生ずるという余地はあろうかと思います。
  93. 山田譲

    ○山田譲君 まだいろいろ議論したい点がありますが、それはその程度でやめておきます。  もう一つ、ここで労働省に一つお伺いしたいのは、労働法上、労組法あるいは労働基準法上、今言ったような実態でもって全くロボットにすぎないような社長がいる。例えば団体交渉しても、そこヘテープレコーダーを持ってきて、普通は労働組合側が持ってくるので、それを持ってきてはいけないとかなんとかという文句が出るのが普通だけれども、会社側が持ってきて、それをそのまま親会社に持っていって放送させる。親会社が今度言えば言ったとおり紙に書いてきて、それをロボットの社長が読み上げるというような、そんな団交は労組法七条が期待している団体交渉にならないと思うんです。そういうような団体交渉をやっていたのじゃ組合側としてはいつまでたってもけりがつかない。親会社の方に行けば、親会社はあれは一切合財神戸精糖に任せてある、神戸精糖に行けば神戸精糖は親会社の言うとおりだからしようがないと。こんな団体交渉はこれはやったって意味がないんです。ですから、そういう団体交渉は労組法七条でいうところのいわゆる団交拒否に相当すると言われてもしようがないと思うんですけれども、またそういうふうに解釈していかなければ労働者は浮かぶ瀬がないと、こういう問題が出てくるんだけれども、そういう場合、その辺労働省としてはどういうお考えでおられるか。
  94. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) 労働省といたしましては、労働組合法上の使用者の考え方につきましては労働者との間で雇用契約の当事者になっている者、これを使用者と考えるというふうに解しております。その場合の雇用契約の当時者であるかどうかということを見る場合につきましては、これは単に形式的にそれを判断するだけではなくて、そこではやはり実態的な事実関係をどう見るかという問題が出てこようかと思います。したがいまして、労働条件がどのような形で決められているか、あるいはまた実際の職場でどういうふうな勤務になっているのか、あるいは使用者としての指揮監督がどういうふうに行われているかといったようないろいろの事実を実態に即しまして総合的に考えまして使用者を決めるといいますか、使用者を判断する、こういうことがあろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても当該労働者との間で使用者との関係、使用者になる者、すなわち雇用契約の当事者となる者だけが使用者となり、その使用者と団体交渉の問題が出てくる、かように解釈いたしております。
  95. 山田譲

    ○山田譲君 どうも初め言ったことと終わりの方がちょっと違ってきたような気がするんだけれども、そうすると、雇用契約というのはあくまでも形式だけの問題であって、実態はどんなであっても、雇用契約がないやつは全然使用者になれませんと、こういうことですか。
  96. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) 雇用契約の当事者になる者ということで一応契約の当事者は形式的にはまず第一にもちろん判断するわけでございますが、しかし、それは全く形式だけであって、事実上の使用者がほかにいると判断されるような場合は、それは全体として判断しまして事実関係がその問題である使用者が当該労働者にいろいろな事実支配力を及ぼしている、雇用関係がそこの間にあるというふうに判断される場合には、事実判断実態判断からその人が使用者になってくる、こういうこともあり得るかと思います。
  97. 山田譲

    ○山田譲君 最後に、じゃ、要するに単なる形式じゃなくて、実態をよく見て、そうして実態上なるほど実態的にはこれとこれとが雇用関係にあるんだというふうに見るわけであって、必ずしも形式が会社の社長だからとか、それにはこだわりませんということですね。そうかそうでないか、はっきりそれだけでいいから返事してください。
  98. 廣見和夫

    説明員(廣見和夫君) 一般的に申し上げれば、形式的に雇用契約があるかどうかだけではなくて、そこは事実判断として、事実上の雇用関係にあるかどうかということで判断することになろうかと思います。
  99. 山田譲

    ○山田譲君 はい、わかりました。
  100. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 私は、きょうは免田事件、財田川事件等の再審無罪判決が次々と相次いておりますが、そういう問題についていろいろお伺いしたいと思いますけれども、まず最初に、けさのサンケイ新聞に「司法問題でマスコミの報道姿勢に問題ないか」という特集が出ております。これは前法務大臣の秦野さんに対するインタビューでございますが、ただ、この中で「「悪党変じて英雄」に疑問」と、こう出ておりまして、犯罪を犯したと見て被疑者になったときには悪人のように新聞、マスコミ等が報道し立てるけれども、また無罪になると英雄扱いにするというようなことで、司法問題でマスコミの報道姿勢にいろいろ問題があるということの特集でございます。私は昨年八月と本年三月の当委員会でマスコミのこういう問題に対する扱いについていろいろ御質問をし、御要望申し上げましたけれども、新聞がこれを取り上げてきてくれておることについて大変うれしく思いますし、法務当局も特に被疑者の人権擁護という立場から今後も一生懸命やっていただきたいと思います。  昨年の免田事件に続きましてことしの財田川事件の再審無罪判決が出まして、私も、一線、まあ一線と言うとおかしいですが、全国の各地を回りまして、特に警察等におけるこの問題についての意見、感じ等を聞いておるんでございますけれども、何か割り切れぬ気持ちといいますか、新聞報道等に対しましても、このようなことでいいのかというような意見がありますので、そういう問題を中心にきょうは御質問し、裁判所当局並びに法務省当局の御意見等お考えを承りたいと思っておりますが、免田事件の判決でございますけれども、自白によって得られた証拠、これが自由な自白によるものではないと認められたということと、もう一つは、一つの証拠に対する判断というものがあの再審の無罪判決の理由になっておると思います。  そこで、これは非常に素朴な一般の人々の疑問でありますけれども、免田事件無罪判決になったのだが、三十数年前の第一審の判決から三十年間にわたるこの最高裁の判決に至るまで裁判官が誤判をしたんだ、誤った裁判だったんだと、そういうふうに報道されておるわけでございますが、私どもこの免田事件のみならずそれ以外の事件等見ておりまして、ここで無罪というふうに判決を得た場合に、その場合には真犯人は別におるのか、犯人ではなかったのか、真犯人は別におるのかと、そういう疑いを持つし、また新聞報道等ではそういうことを報道する向きもあります。この点について、無罪判決というものは真犯人ではなかったんだ、犯人は別におるんだということを意味するものであるかどうか、裁判当局にまずお伺いをいたしたいと思います。
  101. 小野幹雄

    最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 非常に難しい問題で、私がお答えできるかどうかちょっとわかりませんが、私の全くの私見を申したいと思います。  普通、無実ということがよく言われておりますが、この無実と無罪とどう違うのだというようなこともよく言われております。この無実という言葉、私どもこれは法律用語であるのかどうかということで、いろいろ法律辞典なども調べてまいりましたけれども、この無実というような言葉、あるいは無事というような言葉は、こういう法律学辞典などにはございません。どうもこれは法律用語ではない。これは辞書なんかを見てみますと、事実がないこと、あるいは罪がないのに罪があるとされることというようなことが書いてあります。ところが一方、無罪といいますのはこれはもう明らかに法律用語でございまして、現に刑事訴訟法の三百三十六条に無罪が規定されておるわけでございまして、「被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。」ということでございますので、結局罪とならない、あるいは犯罪の証明がないときに言い渡されるいわゆる実体裁判であるというふうに普通理解されているというふうに思います。  ところで、刑事裁判におきましては、もう御承知のとおり、疑わしきは被告人の利益にといいますのがこれは刑事裁判の鉄則というふうにされておりまして、検察官におきまして、被告事件について被告人が有罪であるということを合理的な疑いを入れない程度までに立証しなければならない、そういう立証がない限りは被告事件について犯罪の証明がないということで無罪の判決が言い渡されるということになっているわけでございます。で、被告人の方では自分に罪がないということを積極的に立証する責任も義務もないわけでございまして、要するに合理的な疑いが残る限りは常に無罪の言い渡しがされるということに法律上なるわけでございます。  ただ、ですから、無罪の言い渡しがなされる場合でも、この裁判官のいわゆる心証形成の程度と申しますか、あるいは事実認定というものに関しましては、いろいろな差があることは当然でございます。例えて申しますと、被告人とされている人が全く犯行当時にその犯行現場にはいなかった、いわゆるアリバイがあったとか、あるいは真犯人が別にあらわれているというようなこと、その他いろいろありますが、少なくともその被告人がその犯行を行ったのではないということが積極的に明らかになる場合はもちろんございますし、あるいは有罪とさるべき証拠もあるけれども疑わしい証拠もたくさんある、いわば五分五分というような場合もありましょうし、かなり疑わしい証拠はいっぱいあるのだけれども、しかしまだ合理的な疑いを入れない程度まで立証されたとは言えない、どうも一抹の不安が残る、疑わしきは被告人の利益にということで無罪とするという場合もあると考えるわけでございまして、判決をする場合には、どういう事実認定であったかということで、無罪の理由として判決にその程度などがいろいろと書かれるわけでございます。  で、先ほど申しました普通、無実であるというような場合には、今申しました別に犯人がいるとか、全く被告人がそういうことを行ってないのだということが積極的に明らかになる、あるいはそれに近い場合を普通言っているように思われますが、いずれにしましても、法律的に無罪というのは、裁判官の心証形成、あるいは事実問題としてはそういういろいろな過程ということが公表されるわけでございますけれども、少なくとも被告人に対しまして無罪といたしましたら、それはいわゆる無実であるとか、あるいはいわゆる世間で言われております灰色でありますとか、そういうような差別はない。むしろ、とにかく罪人としては、罪ある者としては扱わないのだということで一律でありまして、無罪となる以上はもうそれでその被告人はその犯人ではないということになるわけで、それ以外にいる、被告人以外の者が犯人であるということが断定されているわけでもないし——ただいまのちょっと訂正させていただきますが、要するにその被告人とされている人がこの被告人事件については有罪とはされていないのだということを言うだけでありまして、それ以上でも以外でもないというふうに私は考えております。
  102. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 免田事件は三十数年前の事件でございます。これは刑事訴訟法によれば、証拠の能力は裁判官の自由な判断にゆだねる自由心証主義でございます。したがって、三十数年前には、それから一審、二審、三審と裁判官はその証拠について、この証拠証拠能力ありという判断をした。しかし三十数年たって、もう当時の問題について情勢がかなり違ってきておる。そういう中で証拠についての裁判官の判断というものが変わってくるということがあり得ると思われますか。
  103. 小野幹雄

    最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 具体的事件のことでございまして、私どもこの事件については証拠等、全然証拠資料に触れることがございませんので、この具体的な事件のことにつきましては何とも申し上げかねるわけでございます。  ただ、一般的に申しますと、これはいかなる場合でありましてもその判断が同じ判断資料に基づく場合には違わないはずのものでありまして、何かミスがあったということであればともかく、そうでない限りは普通は違わないというふうに考えるわけでございます。これは再審の場合でなくて、例えば一審で有罪が二審で無罪というふうなこともあります。ですから、全くないとは言い切れないわけでございますけれども、普通の場合としては、そういうことは裁判官によってそう大きく違うというようなことはないというふうに考えております。
  104. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 私は、やはり犯罪というのも当時の事情が生んだものでありますし、あの終戦爾後の大変な混乱期、そのときに犯罪が発生して惨劇があった場合には、やはり裁判官の証拠に対する心証というものも若干やっぱりあると思いますし、三十数年たった現在とはちょっと違うような気がいたしておりますが、この問題についてはお答えもしにくかろうと思いますのでやめますが、ただ、先ほどおっしゃいましたように、裁判というのは検察官が提起した証拠だけで判断をされるのではないか。それ以外に判断の材料がなければ、提出した証拠が不十分であれば、あるいはその判断として、どうしても判断をしにくいということもあろうかと思います。  そういう点で非常な裁判官各位の苦悩というものがいろいろな事件であると思うのでありますが、私は昨年の八月も一応質問申し上げましたけれども、昨年のピース缶爆弾事件の裁判長の判決と所感、ちょっともう一回少し見てみますけれども、「犯人であるとの疑いがあるが、犯罪の証明はなく、」と、これは刑事訴訟法に言われるとおりであります。それから「本件犯行に関与しているのではないかとの疑いは残るが、犯罪の証明はない。」と。そして裁判長がこの宣告を終えるに当たり裁判長として一言せざるを得ないという判決後の所感というものを出しておられまして、そこで、いろいろ「証拠及び法との板ばさみになって心の重い数年を過ごしてきたというのが、偽らざる気持ちである。しかし、すべては法に従って行う裁判であるがゆえに、まことにやむを得ないと申し述べるほかはない」、こういうふうに言っておられます。これを当時の新聞報道等は無実なのにいかにも灰色であるというふうに言ったのはけしからぬと、こういうような報道もなされておったようで。ざいます。私はこの辺に裁判長の非常な苦悩、苦しみ、そこに証拠というものによって判断をせざるを得ないということで、この辺は検察、警察の捜査の不十分ということも反省されるわけでございますけれども、非常な苦悩が読み取れるわけでございます。私は昨年五月のピース缶爆弾事件の裁判長は極めて良心的な判決でその所感を言われたと思うんでありますが、こういう所感を述べることが当時ちょっと新聞その他で非難をされておりましたけれども、この点について裁判当局は、最高裁としてはどうお考えか、ちょっとお聞かせを願いたい。
  105. 小野幹雄

    最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) これはどういう経緯でどうして述べられたのか、私ども必ずしも明らかにしておりません。また、それがどういうことであるのかも私どもちょっとわかりかねるわけでございまして、要するに裁判の延長としてお述べになったのだろうと思うわけでございますので、裁判官が裁判の延長の言い渡しの一部としてお述べになっていることのように思われまして、それについて私どもそれがいいとか悪いとかということは申し述べる立場にはないということで、恐縮でございますが、答弁は差し控えさしていただきたいと思います。
  106. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 庶民といたしましては、国民としては非常に重大犯罪のときに無罪、こうこうだから無罪という、犯罪の証明がないあるいは証拠がないという無罪のほかに、気持ちとしてはやっぱりこれはもう完全な無罪であって真犯人は別におるんだというようなことがうかがい知れるような判決、あるいはまた、なかなかこれは疑わしきは罰せずだというようなことの判決等があってしかるべしと、これはもう本当に一般の庶民感情の気持ちでございます。そういうふうにあってしかるべしだと思うので、そういう意味ではこのピース缶爆弾事件についてはやはり私どもは何かそういう裁判長の良心というものが出たように思うんで、まあこれは言いわけみたいな判決だという非難もあるでしょうけれども、私自身はちょっとそういうふうな希望でおるわけでございます。この点について、もう最高裁当局はお忙しいでしょうから結構でございますが、住法務大臣はこの点についてどう思われるか、ちょっと御意見を承りたいと思います。
  107. 住栄作

    国務大臣住栄作君) 最近捜査当局、検察当局、大変な苦労をして起訴に持ち込み、そしてまたそれが無罪とかあるいは再審というようなことで、立件できないというようなことでいろいろ問題を起こして、まあ起こすというか、いろいろ違った結果が出てきておる、そういう例があるということは、私ども法秩序を守るという立場から大変遺憾なことと思っておるわけでございます。捜査当局にしても検察当局にしても全力投球をし、そしてまた裁判官も英知を絞って結論を出されておるわけでございますが、それが疑わしきは罰せず、こういうようなこともこれは非常に大事なことでございますし、そこらあたりの兼ね合いというものに当事者非常に私は悩んでいるところが多かろうと、こう思っておるわけでございます。  この具体的なことについてどうのこうのということは差し控えたいと思いますけれども、こういうことがないように常日ごろ、今までも全力を挙げてそういうことのないようにやっておるわけでございますが、人間でございますのでそういう事例が起きる、こういうことでございますけれども、そういう点は本判に他山の石として肝に銘じてやっぱり今後の戒めとしていかなければならない、こういうように考えておるわけでございます。答弁になったかならぬか、よくわけわからぬようなことを申し上げまして大変恐縮でございます。
  108. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 苦衷はよくわかりますが、私は検察当局、捜査当局の反省が随分なされておると思います。ただ、やはり例えばこれを非常な教訓として、今後は適正捜査ということに一生懸命努めるというふうにやっておられるように承っておりますけれども現実に最近では西宮で江崎グリコ事件が発生しまして、私も若干状況をいろいろ聞いておりますけれども、ああいう重大事件が発生しますと、被害者はもちろん、家族はもちろんマスコミも大変な騒ぎでございまして、一日も早く逮捕しろと、こういうことでございます。これは本当に捜査員、寝食を忘れて不眠不休でやるわけでございます。世の中もそれを欲しているんでしよう。  そういう中でいろんな事件を見てみますと、これちょっと刑事局長にお伺いしたいんだけれども、今の重大事件の犯罪が起こって解決した場合に、ほとんど被疑者自身、犯人自身、まあ犯人と言っていいかどうかわかりませんが、被疑者の自白というか供述というものが非常に大きなウエートを占めておって、そこから、その供述から証拠をまた整えていく、こういうことが極めて多いように私は見受けるわけでありますが、私自身、被疑者の供述というもの、自分が犯した罪に対して本当に悔い改めてそれを言うということ、これは非常に犯罪の解決に大きな力を持っておると思う。特に現在のような世の中が非常に複雑かつ交通も発達し、いろんな点で複雑になっておりますと、犯罪の検挙はこれからますます難しくなります。そういう意味では捕まった容疑者の供述というものが事件の早期解決に大きな役割を果たすと思いますし、その方面はやはりこれからもあると思いますが、この点について刑事局長いかがでしょうか。
  109. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 自白につきましては、いろいろ問題あろうかと思いますが、まず任意性と申しますか、自白を得るのに強制等にわたってはならないということはこれも一つの原則と申しますか、常に心がけなければならないことかと思います。また信用性と申しますか、自白に対する裏づけと申しますか、そういう点も常に配慮しなければならないという点は重要かと思います。  しかし、それと別に任意性があり、かつ信用性に富む真実の自白を得るということは、今海江田先生御指摘のとおり、犯罪の解明並びにこれに基づいて事実を解明して形跡を追及する上では極めて重要な、必要不可欠とも言えるものではなかろうかと思います。その真実の自白を得ることによりまして、当該事案の真相の解明が可能になるわけでございますし、また当該被告人と申しますか、犯人と申しますか、それに対する適切な処置を考える上におきましても、刑事政策的な配慮を加えるという面から見ましても、やはり真実の自白を得て、それをもとにして効果的な刑事政策的な配慮を加えるということも可能になるわけでございます。そういう意味におきまして、自白を得るということは犯罪の捜査並びにその処理におきましてやはり極めて重要なものであるというふうに考えております。  最初に申し上げましたように、自白は強制にわたってはならないということ、さらに自白を得たからと言ってそれを偏重してはならない、自白を得たに伴いまして、その物的証拠の裏づけ、あるいは科学的な捜査によってこれが本当に真実であるということを十分に確認する、いわゆる自白の吟味を行うということはもちろん必要でございます。そういう点を配慮しながらということで、自白というものがやはり極めて重要な意味があるというふうに考えております。
  110. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 おっしゃるとおりだと思うんですが、やはり私が一番心配しておりますのは、これからも大変いろいろな重要犯罪が起こってくると思います。後でちょっと警察庁の方に凶悪事件の検挙率というのを聞いてみたいと思うんですが、恐らく日本は世界に比べて検挙率が極めて高いと思います。ただ、その陰に、こういう犯罪者に対する非常な一般国民の怒り、またそれを受けて捜査員の怒りというものがあって、それが捜査の執念となってかなりな困難を克服していくわけでございますが、御承知かもしれませ人が、皆さんもテレビで見ておられると思いますが、あれはかなり現実離れしておりますけれども、極めて凶悪な犯人がいろいろなことをやる、それを捕まえた刑事が、あれは映画ですから、テレビですから、犯人を捕まえたときにぶん殴るというか、憎しみを込めてやりますね。あれを見て、一般国民は快感を覚える、満足を覚えるというような場面があると思いますが、現実にはああはできないわけでございますけれども、やはり私聞いたところでは、凶悪犯人が警察に捕まって、警察の調べの段階ではまさにトラかライオンである、検事の前に行くとオオカミか犬ぐらいになる、裁判官の前に行くと大体羊になる、こう言われております。そういう意味では、私一番心配しておりますのは、捜査員がこれだけの検挙率を誇っている陰には若干無理をしているんじゃないかと思うんですね。その無理が絶対に、今自白の強要、これは刑事訴訟法で無効でございますから、だからそういう無効なそういう自白を求めてはならない。しかし、反面地道に丹念に真心を持って供述を求めていくということが必要ではないか、こう思うんです。  ただ、残念なことに、凶悪犯人であれば、またその調べの中においては、これは非情に荒っぽい者もおるわけでございまして、そういう点で私は、口では適正捜査と言うのは易しいけれども、本当に凶悪な被疑者に対して警察はどうすればいいのか、これから供述を得られるにはどうしたらいいか、その辺の本当のテクニックというものをやっていかなくてはならない。ただ、強制にわたってはいけない、あるいは黙秘権は認めてやらなくてはいけないとか、あるいはおとなしく調べなくてはいけないということだけじゃなくて、やはりもう少しそういう暴虐な被疑者に対してはどういうふうにして取り調べたらいいのか、供述を得るにはどうしたらいいのか、この点について本当に取り調べの技術についての具体的な指導がなされておるのかどうか、警察庁に承りたいと思います。あわせて、ちょっと検挙率も言ってください。
  111. 於久昭臣

    説明員(於久昭臣君) 最初に、凶悪犯の検挙率の方から申し上げますが、凶悪犯、これは殺人とか強盗、放火などでございますけれども、昨年の検挙率は八七・五%でございました。ちなみに、殺人だけで手元にあります五十六年の国際比較で見ますと、我が国は九七・四%であるのに対しまして、西側と言われております諸国はこれよりも低いということで、まあまあ一応凶悪犯につきましては、またこれで十分とは思いませんけれども、一応の成果をおさめていると思っております。  それから、ただいま先生から御質問のありました最近の凶悪犯を中心にした犯罪の実相、それに対する警察の取り組みの仕方でございますけれども、先生御承知のように、最近の犯罪は手段において非常に巧妙化をしておりますし、悪質さも増しております。それからまた、非常に足が速くなったと申しましょうか、したがって犯行自体、それから犯行後の逃走行動を含めまして非常に広域化しております。また捜査の環境自体も、大都市におきます匿名性が日々増大をしてくる、あるいは聞き込みなどに対する一般的な協力がなかなか得られにくくなっているといった困難性も加わっております。そういったことで、私ども警察といたしましては、先ほど申し上げましたような検挙の水準を維持し、さらに高め、国民の期待にこたえるために、いろいろな意味でこれからも研さん、工夫を凝らしていかなければいかぬと思っております。  犯人を捕捉するために、いろいろな科学的な手段、方法に磨きをかけていく。捕捉した場合の犯人の取り調べにつきまして、犯罪を犯す犯人側の方が巧妙になればなるほど、我が方もプロといたしまして、その責めに従事している者といたしまして、ルールを守るという非常に厳しいそれを大前提といたしまして適正捜査、すなわち被疑者の人権を守り、法律に従った手順にのっとって被疑者の調べを進めていく。そういう意味で、取り調べの技術にも一属磨きをかけるということ、さらにはあわせてその裏づけ捜査を徹底するといったようなことで、十分な責めを果たすべく、これからも努力をしてまいりたいと思っております。
  112. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 私はどうも今の捜査指導というのはまだまだ不十分だという気がいたします。現実の場合に即して、いろいろ巧妙なのもあれば暴れ回るようなのもいるわけでございますから、そういうものに対してただ書類的なそういう指導だけじゃなくて、本当に実務的な手をとった指導をしていかないといけないんじゃないか。特に最近の若い人はと言って非難しますけれども、執念というか、根気、そういうものが非常になくなってきておりますから、犯罪が発生しても余り後で怒られたり問題になったりしたら困るということで、ついつい逃げのような態度に出てもらったら、これからの我が国の治安上非常に大きな問題があるわけであります。そういう面で、本当にこれから皆さん方捜査の指導に当たる方は見通しと英知をもって、一方では最大限人権を守りながら、また一方ではできるだけ熱意と執念を持ってやっていかなくてはならぬ、このように思います。  私、実はよく町で耳にするのでございますけれども、温泉場等へ慰安旅行に出かけると、そこの女中さんなんかがおっしゃるのに、どうも一番嫌らしいのは、これは非情に悪いことですけれども、学校の先生と坊さんと警察官だ、これが一番嫌らしいというような話を聞きます。私は、なぜだろうかと思うと、やはり人間には本音と建前がありますけれども、どうも建前に縛られておる人たちは何かのときにはけ口を求める、そういうことではなかろうかと、このように考えます。警察もやはりノルマを課されて一生懸命やる、そしてそこで一方では本当に血の通った、かゆいところに手の届くような捜査指導をしておかないと、建前論的な指導をしておったんでは、私はどこかはけ口が出るんじゃなかろうかと、このように考えます。そういう意味で、特に私治安については非常な心配をいたしております。けさの新聞にもありますけれども、マスコミは非常に何か犯罪があったときには警察は何をしておるかということで一生懸命責める、容疑者を捕らえるとマスコミで犯人扱いにしてしまう。それに乗せられてしまったらやはり大きなミスを犯すことになる。そういう点をぜひ心していただきたいと思います。  ひとつちょっと個々的な問題に入りたいと思っておりますけれども、私は先般の予算委員会で建設暴力というものについて質疑をいたしました。最近建設、土木、建築等についてその入札からまた仕事を請け負った会社に対する下請その他の問題、あるいは現場の公審防止の問題等で暴力団がまことにくまなく入り込んできております。ところが、これに対する会社側の照度、またそういう暴力団犯罪に対する警察の態度について極めて至らない面があるようでございまして、ただ私はその過程で会社側が暴力団の被害に遭っても被害届を出さない、幾ら金を出したということも言わないのが非常に多いわけであります。しかし、よく反省してみますと、なぜ会社側が被害届を出さないかというと、それはもちろんその金をどこから支払ったかとかいう問題がちょっと嫌らしいでしょうし、また、会社のイメージダウンにもなるということもありましょう。しかし一番大きな問題は、警察に捜査協力して暴力団を捕まえるということになれば、後で怖い、仕返しがある、これが一番大きな原因のようであります。特に関西方面では同和ではないのに同和団体とか名乗って、それだけで怖がらせて脅迫したりするというような問題も相当出ております。私はそういう点について、もう少し警察、検察の配慮があってしかるべしと、そうなれば会社側も相当協力して、まことに民主主義社会にあるまじきこの事態を少しでも改善することができるんじゃないかと、このように考えております。  よく言われますのが、裁判所の法廷に出されて、そこで暴力団の被疑者と顔を合わせるのはもうどうしてもかなわぬ、こういう話がよく出るわけでございます。刑事訴訟法には何条でございましたか、そういう場合で、しかも犯罪の立証に不可欠な証人の場合には事前に裁判官がそれをやることができるという規定がたしかありましたね。これは検察官のだしか要請によって裁判官がそれをやるということになっておりますが、どの程度検察官がそういうことをやっておられるのか、もし何かわかったことがありますればお教えをいた、だきたい。
  113. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) ただいま御指摘の件は刑事訴訟法二百二十七条のことかと思います。同条によりますと「検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調に際して任意の供述をした者が、公判期日においては圧迫を受け前にした供述と異る供述をする虞があり、且つ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができないと認められる場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。」、まさしく海江田先生御指摘のように、暴力団等の関係で警察あるいは検察庁においては真実の供述をした被害者が、公判期日では傍聴席等に暴力団関係者等がいるということが予測されるために、まず出たら私はもうとても言えませんというような状況がある、しかしその者の供述がなければ犯罪の証明が十分にできないということが認められる場合に裁判官に検察官から証人尋問を請求し、裁判官の面前で宣誓をした上で供述をするということになっております。まさしくこの規定は、今御指摘の趣旨に出るものであろうかと思います。  検察庁におきましては、事案に応じて必要がある場合にこれを請求しているというふうに承知しておりますし、この規定の趣旨から見ましても、今後も必要があるときは大いにこれを活用を図るべきものというふうに考えていると承知いたしております。ただ、これまで個々にどれだけの請求をしたかという点については別に報告を求めておりませんので、私どもではその数字は把握いたしておりませんので、お答えいたしかねるところでございます。
  114. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 現実に関西方面では、私はそういう建設暴力というものがどれだけ明るみに出ておるか、時々出るわけですけれども、もうこれはたまりかねて出てきたというもので、ほとんど私は一%ぐらいじゃないかと思うんですね。そういう面では特に関西方面に対して、法務省並びに警察当局の方ではよくそういう面についての御指導を賜りたいと、このようにお願いをいたしておきます。  別件逮捕ということが時々言われます。これは新聞等でよく非難をされます。これは別件逮捕について法務省どうお考えですか。これはいけないことですか。
  115. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) いわゆる別件逮捕ということで非難といいますか問題になり、あるいは具体的な裁判の過程におきましてその別件逮捕に伴う、伴うといいますか、いわゆる別件逮捕に関連する証拠であって、その証拠能力がないというような主張がなされて問題になっていることは承知いたしております。  ただ、そこで挙げられておりますいわゆる別件逮捕についてもいろいろな形があるわけでございますし、それがどういう点でいけないのだと、いけない場合はいけない、どういう点があればいいという点については判例上いろいろ言われて、ほぼ固まっているように考えております。  一つの例を申し上げますれば、いわゆるその別件と称せられる被疑事実について、逮捕勾留の必要が客観的にはないのにまさしくその本件といいますか、ねらいとする本件の取り調べのために逮捕勾留するというような場合はこれは違法である、しかしいわゆる別件についてそれだけで逮捕勾留する客観的な必要性があるという場合には、これを別件逮捕と言われる場合でありましてもこれは何ら違法なものではない、その他いろいろな要件がございますが、そういうことでございますので、いわゆる別件逮捕が全部いかぬというふうには考えておりませんが、違法にわたるようなことのないように運用されるべきものというふうに考えております。
  116. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 今お答えのとおり、本当のねらいは本件にあるんだけれども、どうしても逮捕するなり、そういう決め手がないという場合に別件をまずやって、それによって突破口を開くというようなこともあるかと思います。私自身は重要な犯罪であれば社会正義のためにもあらゆる手段を尽くすというのがやはり検察、警察の責務ではないか、このように考えて、あえて本当に今言われたような違法な別件逮捕はやるべきじゃないと、実はこのように考えておるわけでございます。その言わんとすることは、これからの犯罪は大変検挙がしにくくなるので、もうできるだけの努力をすべきであると、このように考えるのでございます。  実は、先ほど最高裁がおられるときに聞こうと思っておったわけですが、適正捜査の中で自白強要ということについて、私はっきり覚えていませんけれども、免田事件、それから財田川事件について警察の留置場、まあ監獄法によれば代用監獄という言葉を使っておりますけれども、この留置場に入れられたので、そこで不法な取り調べが行われて、そしてああいう無罪判決になったのだと、こういうようなことを何かでたびたび聞いたことがあるんでございますが、両方について、警察当局でそのようなことであるかどうかをお聞きをしたいと思います。
  117. 於久昭臣

    説明員(於久昭臣君) 免田事件につきましては、昭和二十四年一月十三日に逮捕いたしまして、人吉市警察署で取り調べを行っております。同月の十八日に送致した後は、熊本刑務所八代拘置支所に拘留されております。それから、財田川事件につきましては、昭和二十五年八月一日に逮捕しておりまして、送致した後も三豊地区警察署の高瀬警部補派出所に拘留されておるというように承知をしております。
  118. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 私ちょっと話がそれますが、かつてたしか昭和二十年代の終わりか三十年代の初めだと思いますけれども、交通事故を起こして人を死に至らしめた場合には、当時は証拠隠滅のおそれもないし逃亡のおそれもない、しっかりした引受人もおるという場合には実は逮捕しなかったのであります。ところが、その後、最近はずっと交通事故で死に至らしめた場合には何か逮捕しておられるようでありますが、これはまあ交通関係で刑事は関係ないかもしれませんが、もし何でしたらお教えをいただきたいと思います。
  119. 於久昭臣

    説明員(於久昭臣君) 交通警察の関係で具体的なことはちょっと承知をしておりませんけれども、警察が逮捕権を運用します場合には、個々の事件につきまして逮捕の理由、必要性について慎重な検討を加え、裁判官の令状を得て逮捕する、そういう意味で逮捕権の運用については、重ねて言いますけれども、適法であることはもちろん、妥当かつ適切な運用ということに努めております。これが一般的な警察の考え方でございますので、交通警察もその範囲内での運用を図っているものと思います。
  120. 海江田鶴造

    海江田鶴造君 当時は一般の被害者並びにその周囲から、人の子供をひき殺しておいて、そしてのうのうと自宅に帰っておる、これ何事だと、こういう非難もあったのは事実です。しかし逮捕の条件に合わないけれども、結局責められて本人も自殺するおそれもあるというふうなことで、何かそういう手続をとったと私は聞いております。ただ私自身は、これ言わんとすることは、やはり法律も、またそこの中で動く制度も人も、やはり大きな国民感情というものを離れてはないのだ、したがって、やはりそういう場合に、ただ法律条文解釈だけでやるべきではない、やはり大きな国民感情の流れがある、そういうものが大事なのであると、こういうふうに私は言わんとしておるわけでございます。  先ほど来、無実とか無罪とかいろいろ申し上げましたけれども国民の中にはいろいろな考えがありまして、マスコミの悪口言って憩いんですけれども、必ずしもマスコミが騒ぐようなものではないと思うんです。世の中でこれからもどんどん犯罪、特に凶悪犯罪が出てくると思います。そういう中にあって、私どもは、ここに秦野さんも新聞で言っておられますけれども、第一審、最初にそういう被疑者が捕まったときは報道はできるだけ控え目にやれ、二審、三審になるほど大きくやれと、こういうような御示唆でございますけれども、私は特に検察、警察の、あるいは裁判の職にある方々が余り世の、いわゆるマスコミというとマスコミが全部悪いわけじゃございませんが、そういう世の中の軽薄な動きに惑わされずに着実にやっていただきたい、それがやはり我が国の一番基本をなす法を守る者の責務であろうと、そう思いまして、あえてタブーと思われる無実、無罪論について質疑をいたした次第でございます。本日はどうもありがとうございました。
  121. 大川清幸

    委員長大川清幸君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      —————・—————    午後一時三十二分開会
  122. 大川清幸

    委員長大川清幸君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十九年度総予算中、法務省所管を議題とし、質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  123. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 本日、大臣の御説明を受けました中に、検察庁経費のことがございまして、検察運営に必要な経費という事項で、検察業務庁費という目の中で「国際犯罪処理体制確立経費」といたしまして若干の経費が上げられております。国際犯罪処理体制といいますのはどういうものでございましょうか。
  124. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 国際犯罪の増加に伴いまして、これに対応するための経費でございまして、国内の体制といたしましては当局に国際犯罪対策室というものがございます。その関係の経費と、それからさらに旅費の関係では、捜査の必要があるときに外国へ出張いたします検察外国旅費というようなものもございます。
  125. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、「検察情報管理経費」とございますが、検察情報というのはどういうような情報でございますか。
  126. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 検察の業務運営するための情報でございますが、外からの情報と、中で、例えば犯歴用と申しますか、前科といいますか、犯罪歴を収集いたしまして管理し、必要に応じてこれを取り出して裁判その他で利用といいますか使っておるわけでございます。その他、いろいろな情報を検察庁自体として管理いたしておりますので、それに要する経費ということであろうと思います。
  127. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そうしますと、検察情報といいますと検察官の身分の問題だとかいうものもございましょうし、行動の問題もございましょうし犯罪に関する情報もございましょうし、いろいろございますが、それを類別して管理するということになると、管理する箱が必要ですね。その管理体制というものにつきまして、特別の施設をお考えでございますか。
  128. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 特別の施設は持っておりませんで、それぞれの庁において必要に応じて部屋を設けてやっております。それから、いま先ほど申し上げました例えば犯歴等については、現在ではコンピューターで管理をいたしております。
  129. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 わかりました。これは外国あたりではコンピューターでやるといいましても、いろいろファイル組織がございますね。そういうものまでこれ考えておやりの経費ですかということをお尋ねしたんですが、つまり情報管理と言いまして、もうこれは情報を整理分析しまして管理するわけですが、その場合に管理する道具が必要でしょう。ファイルしてコンピューターでどこかボタンを押したら自分の必要な情報がすぐ出てくるとか、そういうような設備、あるいは一つの情報と他の情報との関連情報が出てくるとかいったような設備のこともお考えの経費でしょうかと、こうお尋ねしているのですが。
  130. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) まだそこまで科学的というか効率化はいたしておりませんで、犯歴用につきましてはコンピューターで中央管理いたしておりまして、各地の例えば青森地検におきましても、あるいは鹿児島地検等におきまして必要があれば端末機において直ちに当該人物の前科と犯歴が利用できるということをやっておりますが、それを相互にいろいろ比較、分析、検討というところまではまだ将来の問題でございまして、現在ではそこまでには立ち、至っておりません。
  131. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、ついでにこの予算書についてお尋ねしますが、検察費の中に刑事補償という目が設けられておりまして、そして要求額も若干出ておりますね。この刑事補償金というのは裁判所の方にも出ておるわけなんですが、裁判所の方の刑事補償金と検察庁の刑事補償金との違いはどのようでございますか。
  132. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) いわゆる刑事補償法によります刑事補償は、裁判所経費に入っております。裁判所の決定で額が決まって支出されるわけでございまして、私どもの方では被疑者補償というのがございまして、被告人ではなく被疑者補償についてその所要の額を支出するわけでございまして、その分の予算が計上されておるかと思います。
  133. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 わかりました。  それでは、次に移りますが、法律の解釈についての適正化について少しくお尋ねをいたしたいと思います。  恩赦法という法律がございますが、恩赦法は元来字のごとく国の恩恵によって犯罪を許すための法律だと、こう書いてありますね、恩赦というのは。ですから、恩赦の本来の性質というものは許してやるというんですから、裁判の確定ということは含んでないのがこの法の趣旨なんでございます。だから恩赦法という法律には「言渡を受けた者」ということは書いてありますが、その言い渡しは裁判が確定しなければならないということは原則として出ていないわけです。だから出ておりますのは、復権の場合に「刑の執行を終らない者又は執行の免除を得ない者に対しては、これを行わない。」ということでそこで始めて出ておるわけですね。  それで、恩赦法の趣旨は、大赦の規定を見ましても明らかなように、言い渡しを受けない者、罪を犯して裁判にかかったのだから起訴されたのだけれども、まだ言い渡しを受けない者についても恩赦をする、こうなっております。その場合は「公訴権は、消滅する。」となっておりますね。それから「有罪の言渡を受けた者については、その言渡は、効力を失う。」と、こう書いてありまして、この場合の「言渡を受けた」ということは裁判の確定は関係ないのです。裁判が確定しようがしまいが青い渡しを受ければ大赦を行いまして、言い渡しが効力を失う、第三条はこういう趣旨の規定でございます。  それから同様に第四条、第五条、第六条、ずっと書いてあります。特赦の場合も、それから減刑の場合も、有罪の言い渡しを受けた者に対して行うと書いてあるだけでありまして、裁判の確定ということは書いてないんです。裁判が確定した者に対して特赦を行うということは法の運用の問題ですね。法は裁判の確定とは書いてないけれども、法を運用するに当たって政府の方で特に裁判の確定した者だけを特赦するという運用をなさっておるというだけのことでございまして、法の条文からは出てこないものでございます。運用はどういう運用をしてもよろしいから、それは構わないんですよ。それを悪いと言うているんじゃないんです。それから、減刑の場合も刑の言い渡しを受けた者に対して行うと、こうなっております。  それで、こういう精神を受けまして、この恩赦法の施行をするところの政令、それにおきましてそれぞれの規定がなされておりますが、特に減刑に関する昭和二十七年の政令がございますが、その政令では第一条の第一項では禁錮以上の裁判を受けた者について書いておりますが、第二項の方ではっきりと言い渡しが確定する前の罪について減刑をする旨の規定がございます。この場合に、減刑の方法として、まだ確定していないのだからそれを基準にするわけにいきませんので、将来確定したならば、その確定した犯罪で減刑する、しかもその減刑する根拠となる政令は昭和二十七年の政令だと。ある人が上訴をいたしまして、その上訴が最高裁まで行って決着がついたといたしましょう。最高裁で有罪が決まった。この場合には、そのときの確定判決に基づいて昭和二十七年の減刑令で減刑すると、こういう意味であって、それは減刑の方法の問題であります。減刑の対象の問題ではない。どういう罪の者について減刑するかという対象の問題じゃないわけですね。これはもう法律を読む知識があるならば当然出てくる。法律家の常識としてそう解釈せざるを得ないものでございます。もともとこの恩赦法というのは裁判の確定というものは関係がないんです。そういう趣旨でつくられておる。裁判の確定を持ち出すのは運用の段階だと、こういうふうに解さざるを得ないわけでございます。  そこで、お尋ねをいたしますが、実はこの問題について、従来から裁判が確定しなければできないんだという、そういう風説が流れておりますのでお尋ねをしたわけでございます。減刑を決めた第六条の「刑の言渡を受けた者に対して」減刑すると書いてあるその「刑の言渡を受けた者」とはいかなる意味であるかということをお尋ねをいたしましたところが、刑の言い渡しを受け、裁判が確定した者であると、こういう御答弁をいただいたわけでございます。ところが法にはそう書いてないのです。また、その御答弁のとおりに読みますと、この第六条を施行する減刑令が意味がわからないものになるわけでございます。法で裁判が確定しなければ減刑しないぞと言うておいて、政令で裁判が確定しない者についての減刑の仕方を決める、これは矛盾であります。こういう矛盾した解釈をあえてしなければならぬという、これは何かほかにあると思うんです。この減刑令とか恩赦法というものじゃなくて、ほかの問題、敵は本能寺という、そういう関係のことを頭に描いてなされておるところの白を黒と言い、馬を鹿と言うところの解釈ではないかと、こう思いますが、いかがでございますか、お尋ねいたします。
  134. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) この点については、再三のお尋ねでございますので、整理して私どもの考えていることを申し上げたいと思います。  まず、基本的に恩赦法の法律の立法の趣旨でございますが、これは当然憲法からきているわけでありますが、この恩赦法の立案をしました帝国議会の議事録によりましても確定判決の効力を緩和するというのがこの恩赦法の基本的な立法趣旨でございます。その例外といたしましては、ただいま御指摘の第三条が唯一の例外であるというふうに私どもは解しておるわけであります。そのことは第三条の明文に明らかでございますので、「まだ有罪の言渡を受けない者については、公訴権は、消滅する。」というふうに記載しているところからも明らかであるわけであります。そこで、それ以外の恩赦につきましては、この恩赦法の前身である旧憲法時代からの恩赦令、そのまた前身を尋ねましてもすべて確定判決を前提にして立案されて立法されておるのでございます。このことはどうしてそうかという根本的な点を御説明申し上げなければならないと思います。  まず第一に、恩赦というものは行政権によって司法権の判断した裁判の内容を変更したりあるいはその効力を減少するという趣旨のものでございます。そこで、恩赦法では大赦を除いては確定判決について恩赦を考え、それから唯一の例外として大きな効力を持つ大赦というものを当初から考えてきておるわけであります。  そこで、この点について司法権との関係を少しく具体的に申し上げさせていただきたいと思います。もし係争中の事件につきまして一審の例えば有罪があって、まだ二審が係争中であるという者につきまして仮に特赦があったといたします。そうすると裁判所は裁判のしようがなくなるわけでございます。本人はいろいろ争っている、あるいは検察官も事実あるいは法律問題で争っているという場合に、裁判所は、一審の有罪の言い渡しありましたが控訴されている、で、いよいよ裁判ということをする段階におきまして特赦というようなことになりますと裁判のしようがなくなるわけであります。で、刑事訴訟法は……
  135. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 まことに済みませんが、私の問うたことに答えてください。私は今減刑の問題を問うておるんですよ。
  136. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) はい、そのことについても申し上げさせていただきます。
  137. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 減刑令の第一条第二項についてお尋ねしている。
  138. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) はい、もうちょっと説明させていただいて、それに触れさせていただきたいんでありますが……
  139. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 いや、私はよく知っていますので。おっしゃることはよく本も読んでいるし、研究しているので、よく知っています。
  140. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) じゃ、はしょります。  大赦につきましては、刑事訴訟法三百三十七条で免訴の判決をその場合には言い渡せとあります。例えば特赦になった場合に刑事訴訟法は全くそういうことは係争中の事件について予定しておりません。減刑についても、仮に懲役二年なら懲役二年ということがあった場合に、その二年が一審で言い渡されているけれどもいろいろ争いがあるという場合に、その二年について何か減刑ということが政令であれ個別恩赦であれ行われた場合に、例えば一年というふうにしたら、裁判所は一体どういうふうにしたらいいのかという措置が全くなされておりません。これは裏から私が申し上げておるのでありまして、結局そのような係属中の事件について特赦なり減刑というものが行われるというような仕組みにはなっておらない。もともと司法権を尊重して確定判決について恩赦を行うという趣旨で旧来立法されておるわけであります。  そこで、減刑令一条二項との関係でありますが、減刑令一条二項は、おっしゃるとおりに、その減刑令が施行された際に確定していない者についても減刑の対象にしております。ただし、ここの規定にございますとおりに、その裁判が確定したときにその確定裁判について減刑するという趣旨でございます。  ところで、恩赦法六条は「減刑は、刑の言渡を受けた者に対して政令で罪若しくは刑の種類を定めてこれを行い、」というふうに前段で書いております。したがいまして、いやしくもその者に対する刑が確定している限り、その刑の言い渡し、ないしあるいは確定の時期が減刑令施行の日の前であるとあるいは後であるとを問わず、その刑を減軽し得るものと解することができるわけであります。したがいまして、先ほど申しましたように、第六条は確定裁判であると私ども解しておるわけでありますが、まさしくその点においては矛盾していないというふうに考えておるわけであります。
  141. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 どうもあなたの論理は全くわからぬ論理ですわ。法の方で、減刑はこれは有罪の言い渡しを受けた者に対して行うよと、こう言っておるだけなのに、解釈で、その言い渡しを受けだということは裁判が確定したことだと、こうおっしゃっている。裁判が確定しなければ減刑しないよということでしょう。裁判が確定しなければ減刑しないよと言っておる、法律がそうなっておるのに、なぜ政令で裁判が確定しなくてもやるぞということになるんですか。これはあなたはあの中に確定裁判で減刑すると書いてある言葉を正確に読む力がありませんね、あなたは法律を。あれは方法の問題なんです。そういうシロをクロと言いくるめるような言い方で、なぜこういう抽象的に書いてある法律の問題の解釈をごまかそうとなさるんですか。一度読んでみてください。減刑令の一条二項を読んでみてください、あなた。
  142. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 朗読はもちろんいたしますけれども、十分これを熟読玩味した上で申し上げておるわけであります。で、「刑の言渡を受けた」とかあるいは「有罪の言渡を受けた」と書いてある場合に、それが確定裁判を含む趣旨なのかどうかということは、それぞれの法律条文あるいは法律の趣旨によっておのずから決まるわけでありまして、確定と書いていないから、それは確定は指さないんだということにはならないと思います。一条二項につきましては、再三……
  143. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 わかりましたから、そういう時間を浪費する作戦はやめてください。時間を浪費して私の質問を阻止しようという、そういう作戦はよくないですね。
  144. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 決してそんなつもりはございません。減刑令一条二項につきましては、確かに確定した……
  145. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それはもうわかっているから、要りませんよ。読んでください。読むだけ読んでもらえればいい。
  146. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) それじゃ、読むだけ読みますが、「基準日前に禁こ以上の刑の言渡を受け、この政令の施行の際まだその裁判が確定していない者に対しては、この政令の施行後その裁判に係る罪につき裁判が確定した時に、その確定裁判につき、この政令により、その刑を減刑し、及び執行猶予の期間を短縮する。」というふうに書いでございます。
  147. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それを、ひとつ冷静に考え直していただきたいわけです。私は決して無理を言おうとしておるわけじゃないんです。  そこで、先ほど刑の言い渡しは条文によって確定裁判の意味を含むと、こうおっしゃいましたが、そういう御答弁は私は納得がいかない。刑事訴訟法の中で、「言渡」という、そういう文言が書いてありますが、それが裁判の確定を意味するというふうに解釈されるところは一つもないのです。  この前私が質問をしましたときに、刑事局長は再審の規定を挙げられました。再審の規定は、これはもう最初から裁判が確定してしまっておる、裁判が終わっている事件について行うところの再審について再審権者を決めた規定です。再審権者をどう決めておるかというと、まず最初に検察官を決めてある。それからその次に「有罪の言渡を受けた者」と、こう書いてあるんです。これは「有罪の言渡を受けた者」というのは資格なんですね。検察官というのと同じことなんです。もう土俵は、裁判が終わったというそういう土俵において、それじゃ再審をやる者はだれかというときに、有罪の言い渡しを受けた者ですよというだけですからね。その「有罪の言渡を受けた」ということは、文字どおり有罪の言い渡しを受けたことであるわけなんです。この再審の規定の中に、四百三十五条に「再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。」と書いてあります。この場合、「有罪の言渡をした確定判決」とわざわざ書いてある。ということは、「有罪の言渡」という言葉と「確定判決」は別なんだ。それと、四百三十九条には「再審の請求は、左の者がこれをすることができる。」と書いて「検察官」、「有罪の言渡を受けた者」でしょう。再審というものはもともともう事件が終わってしまっておるものなんですから、そういうものを土台にして有罪の言い渡しという場合は、これは確定判決ということは含んでない。その証拠に四百三十五条でわざわざ「有罪の言渡をした確定判決」、こういうふうに言葉を区別して書いておる。ですから、ここのところが紛らわしいふうになっておるけれども、これは法律の常識のある人ならば間違うはずはないのです。素人をだますための御説明はこれは大変迷惑であると思います。そのほかのところは、どこ探しても間違うようなところさえないのです。私は刑事訴訟法の専門家です。刑事訴訟法じゃプロなんだ。そのプロに対してだます説明をされるということはいけませんよ。どうですか、その点について御答弁を求めます。
  148. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 先般申し上げましたのは「有罪の言渡を受けた者」という言葉自体が確定と書いてなくて確定した場合を当然に指すのだという例の一つとして、ただいまの再審の請求権者の規定をお話ししたわけでございます。  それを離れまして、刑事訴訟法の全条文にわたりまして「有罪の言渡を受けた者」あるいは「刑の言渡を受けた者」あるいは「略式命令を受けた者」、「死刑の言渡を受けた者」、要するに「有罪の言渡を受けた者」と同一内容と思われる言葉を拾いまして、それが裁判が確定した場合を言うのかどうかを検討いたしてみますと、確定とかその他の言葉を書いてないのがほとんどでございます。その場合に裁判の確定を意味するということになっておるわけでございます。ただ、刑事訴訟法の条文の中では、何とかの言い渡し、「刑の言渡」、「有罪の言渡を受けた者」と言っている場合に、それが確定を意味しない場合が幾つかございます。その中には、刑の言い渡しを受けまだ確定しない場合とかというふうに念のために書いてある規定がございます。もう一つは、確定ということは書いてございませんが、その当該条文から当然にそのことが予測される、まあ予測といいますか解釈されるまことに明白な場合、これも断ってはございません。  未確定の場合で、その確定という言葉が書いてない場合の一つとしましては、例えば四百六十五条で申し上げますと、「略式命令を受けた者又は検察官は、その告知を受けた日から十四日以内に正式裁判の請求をすることができる。」、これには「略式命令を受けた者」という言葉、これはまだ確定していないことはその後の「その告知を受けた日から十四日以内に正式裁判の請求をすることができる。」と書いであることから、これはまさしく明白でございます。そのように明白な場合には書いてない。今の場合は未確定の場合でございます。その余の場合は確定したことがその条文の趣旨から明白であるということで、それが明白でなく紛らわしいというような場合には確定した場合というふうな言葉がその後についている、そういう例も一、二ございます。  いずれにしましても「刑の言渡を受けた者」あるいは「有罪の言渡を受けた者」ということが確定を意味するという事例は相当数ございまして、それはその条文の趣旨から明白であるというふうに理解いたしております。
  149. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 刑事訴訟法の中で「刑の言渡」という言葉と「裁判の確定」という言葉を混同して決めてあるところはないのですよ。それはあなたがそういうふうに解釈をなさる。何かの目的があってなさる解釈だから、私はそれに対しては異議を申しませんが、ただ見解の相違という程度のことではない。刑事訴訟法でははっきりと「刑の言渡」と「裁判の確定」は区別しておるのでありまして、そうでなければいわゆる三審制の可能性がなくなるんです。言い渡しと確定が一緒だというようなそういう解釈をされるならば、どうして控訴期間それから上訴期間を決めることができるんですか。そんなことはあり得ない。どんな場合でも刑事訴訟法では区別しております。また厳格にそういう区別して解釈をするのが刑事訴訟法の建前なんだ。それを崩して解釈されるということは、ほかに目的があるとしか私には思われないのです。そういうことはもう私は納得いきませんけれども、ここで議論をしましても時間を費やすだけですから、これでやめておきます。あなたの御答弁は絶対に私は納得できない。これはもう白を黒と言い馬をシカと言う答弁であるというふうに私は受け取ります。  それで、次の方へ移りますが、角膜及び腎臓移植法に、死体から角膜とか腎臓を抜き出してもいい、摘出してもよろしいと、こう書いてあります。ところが死体の定義が書いてないんです。死体の定義が書いてないものですから、新聞によりますと、もう既に心臓が死んでなくても脳が死んだ段階で移植を行うということが非常にしばしば行われておるということが出ております。昭和五十九年四月一日の朝日新聞によりますと、脳死状態での腎臓摘出は全国で既に三十八例もあると、こう書いてあります。これは三十三の病院で調査したと書いてあります。心臓が死ななければ人の死でないというその判断でいきますというと、脳死状態で脳が死んでも心臓が生きておればこれは生体であるということになりますが、それから腎臓摘出をする例があって、しかも新聞に堂々と掲載されております。これが殺人罪として起訴されていない。非常に不思議なことであります。  私は殺人罪として起訴しない方がこれは正しいと思いますよ。人間というものは、人間の本質は脳にある。心臓にあるのではない。心臓は取りかえがきくが脳は取りかえがききません。ということは、人間の本質は脳にある。脳が死ねば人間が死んだことなんで、ほかの細胞があるいは臓器が生きておってもそれは人間は死んでおる、こういう解釈を私はとりますので、検察当局で起訴なさらないことは了承をいたしておりますが、しかし心臓死をもって死であるというお考えならば、当然これは殺人であります。殺人として捜査をなさったかどうかお伺いいたします。
  150. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 御指摘の報道記事につきまして、報道記事は私も読みましたけれども、まだその報道記事に出るものでございませんので、これは学会における発表ということでございます。その内容も承知いたしておりませんし、三十何例あると書いてございますけれども、その内容についても全く承知しておりませんので、殺人に当たるかどうかというような点については明確なお答えは差し控えたいと思います。
  151. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 刑事訴訟法で犯罪の端緒を得たときは捜査するとなっていますね。そうでしょう。捜査官は当然犯罪の端緒を得たんだから捜査しなければいかぬ。これはもう犯罪の端緒じゃありませんか。はっきり新聞に書いてあるんだから。それをやらないということは私は怠慢であると思いますが、いかがですか。
  152. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) この学会でそういう発表があったという記事をもって直ちに犯罪の端緒というふうには考えられないかと思います。
  153. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは学会の発表という問題じゃないでしょう。これは学会でこういうことが言われたにしても、調査をした結果なんだ。三十三の病院で調査した結果、三十八例もあると、こう書いてある。そうすると、これに基づいて真実かどうかということを調査しなければならぬ。真実かどうかを調査する義務は当然検察当局に私はあると思います。それは調査をされたでしょうか。
  154. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) その学会の記事、調査されたという記事ではございますけれども、そのそれぞれの例がいかなる状態でのものから臓器を摘出し、いかなるものでどういう手術をしたか、その辺が全く詳細は明らかではございません。したがいまして、心臓死説をとるかどうか別にいたしましても、そこに犯罪の嫌疑があるという段階にはまだ至っていないというふうに考えております。
  155. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは当然法を守るものが捜査しなければならぬ問題です。それは怠慢だと私は思います。ただ死体でないという御判断ならば捜査する必要はありませんね。  病院で人が死にますと病理解剖ということを行います。この場合に、厚生省の御見解では家族の了承を得ればできると、こういう御見解でございます。医師が臨終に臨んで脈をとって脈がとまった、呼吸がとまったからというわけで死の宣告をいたしますが、死の宣告をいたしましてから二十四時間は火葬に付したり埋葬してはいけないと法律には書いてあります。そうしますと、この法律がむだな法律ではないはずでございますから意味があると思いますが、病院で医師が死んだという診断をいたしまして、そして家族に了承を求める。しかし医師が死んだという判定をしても二十四時間は生き返る可能性があるというわけで死体埋葬法がのる。そういうことになりますと、病院での判断そのものを医者に任せて、医者が死んだと言えば死んだということにしてすぐ解剖にしてしまうということが正しいかどうかということが起こるわけですよ。この場合でも、ちょうど和田教授によるところの心臓移植の場合と同じような状態があるわけです。  本来生き返らないという保証がない限り燃したり解剖にしたりしてはならないはずなんですね。生き返らないという保証がなければならぬ。生き返らないという保証は脳が死んだときです。脳の中でも大脳だけじゃだめなんです。小脳だけでもだめなんです。脳幹が死ななければいかぬ。大脳、小脳以外の脳を脳幹と言いますが、その脳幹が人間の意識しない部分の問題を取り扱っておる。心臓の動きも肺臓の呼吸も脳幹の指令によるわけです。ですから、心臓がとまっても脳幹が死なない限り人間は生きておるんですよ。そうしますと、二十四時間は生き返る可能性がある、なのにその少し前に解剖してしまうということはおかしいじゃありませんか。こういう問題は当然、脳幹がとまって機能を喪失したかどうかを検査して、その上で解剖をするのが正しいわけであります。ですから、当然脳死の判定をして解剖する、そうすれば心臓がたとえ動いておっても、腎臓が生きておっても、それは死体の摘出であるということになります。こういう見解が当然医学界の常識になっておるのに、それを法の世界で取り入れないということはいかなる理由でありますか。その理由をお伺いいたしたいのであります。
  156. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 人間の死というものがいつどういう状態で死と認定されるか、生き返らない状態を死と言うか、あるいは確実に個体の喪失に至ることがもう確実だというのか、その辺いろいろ定義の仕方はあろうかと思いますが、いずれにしても基本的には医学の問題であろうかと思います。したがいまして、現状におきましては、先生御指摘のいわゆる心臓死の三兆候説と申しますか、脈拍の停止、心臓の停止と呼吸の停止、それから瞳孔の拡散、この三兆候による心臓死がいま医学界ではまだ、まだといいますか、医学界における常識といいますか、通説であるようでございます。  したがいまして、私どもといいますか、法律上の死につきましても、基本的な問題である医学的な立場が基本になるわけでございますかも、医学界の通説であり、それが社会的にも是認せられておるという説をもって、キャパシティー、それが死を判定する基準になるというふうに法律の世界といいますか、刑法あるいはその他の法律を適用する場合の一応の通説といいますか、基準としているわけでございまして、先生のおっしゃる脳死云々という問題、専門的なことでよくわかりませんが、今後医学の発達あるいは検討の結果脳死に類するある状態が医学的にも死と判定すべきであるというような合意といいますか、通説が形成され、それが社会的にも合意が得られるということになれば、法律の解釈もおのずからそれに従うということになろうかと思います。
  157. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 いまの問題について、厚生省の方おいでになったら御答弁願います。
  158. 古川貞二郎

    説明員古川貞二郎君) お答えいたします。  我が国におきましては、先ほどお話がございましたように、法律上の死についての定義はないわけでございますけれども、医療の実際の場におきましては、心停止とか呼吸停止、あるいは瞳孔の散大、こういうふうな三兆候をもって死とするといういわゆる心臓死が一般的な例でございまして、私どもとしてはこの心臓死につきましては、国民の共通的な認識があるのではないかというふうに理解しているわけでございます。  なお、この脳死につきましては、御案内のように、医学的にはその状態がもちろん認められておりまして、いわゆる早晩心臓死に至ると、こういうふうに承知しておるわけでございますけれども、その取り扱いあるいは判定の基準というものにつきましては、先生御案内のように、現在種々議論があるわけでございまして、今後十分に議論をしていく必要がある。私ども厚生省としてもこういった脳死の判定基準については、いろいろ研究班を設けて検討を続けているということでございますが、いずれにしましても、こういった死の問題については医学的な検討の結果を踏まえまして、法律倫理その他宗教、国民感情、そういった観点、幅広い分野からの国民的な議論が行われて、国民的なコンセンサスが得られるということを私どもは期待しているわけでございます。
  159. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは重要な問題なんですよ。現在、殺人が行われておると認定するかどうかの問題なんですから、いいかげんなことで済ますわけには私はいかないと思いますよ。当然角膜腎移植法をつくったときに死体の提供なければ処置ないわけだ。死体とは何であるかということを決めないで死体から取り出してもいいよという、そういう法律では困るわけですね。  御承知のように、今医学界では、精神医学者の間では脳が死ねば死んだので、それを基準として人の死を認定するのが一番いいのだということになっておる。死というものは点じゃない、段階的なものです。ぼつぼついろいろの細胞が死んでいって、そして全部死んでしまうのですが、全部死んでしまうのを待つのは腐乱してしまって腐ってしまうまで待たなければならぬ。それでなかったら、そうならなければ死でないということでありますと、病院で行う病理解剖は生体解剖だということになります。また、現在実際に行われておりますところの腎臓移植、これも生体解剖だということになる。皆犯罪です。その解釈で、物事の解釈で犯罪をつくることになるわけです。真実はどこまでも科学的な真実なんです。それを認めないために解釈で犯罪をつくる。こうした状態を一日も放置しておいていいかどうかという問題です。  和田教授の心臓移植の問題、あれはどの点が悪かったかと言いますと、脳幹の機能停止をしたかどうかを確かめてなかったからです。脳波ははかった、脳波ははかって脳波は絶えた、だから大脳皮質、一番上の皮のところ、そのところが死んでおるということはわかった。しかし脳幹の死は確かめないで行われたからこれが殺人容疑ともなるわけです。そういう点も明らかにしないで放置しておかれるというところに私は問題があると思う。こういう問題は多くの人が今臓器移植をしてもらいたいために望んでおる時代です。心臓も腎も皆望んでおる。わざわざアメリカまで行って心臓移植をしてもらわなければならぬというこういう現状を一体どうお考えになるかということです。これはわざわざ解釈で科学の進歩をとめておるわけです。  和田教授のあの問題の影響の大きさは、心臓移植に対して医者が震え上がって手をつけなくなった、そういう状態をつくった。外国ではどんどん心臓移植の技術が発達するのに、日本ではそれができないというところが、なぜそうなんだと言いますと、言うまでもなく法の解釈であります。法の解釈によってそういうことをつくり出している、ここに私は問題があると思います。私は法務省がかたくなにそういう態度をおとりになることはおやめになった方がいいと思う。  裁判所はもっと頭が広いですよ。裁判の判例を私調べてみましたが、広島の高裁の判例では既に脳死をもって死とする趣旨の判例がある。それはある人がライフル銃で人の頭を撃った。撃ったそのときに、その人に恨みを持っている人が、よく見たらまだ顔の色もいいし、さわってみたら温かい、だから生きておるということを確信して刀で切り殺した。これが事件になりまして問題になったのですが、これは一体殺人であるかどうかという問題について殺人未遂の判決があったのですよ。殺人ではないと言うわけだ。なぜ殺人でないかと言うと、切り殺したときには既に死んでいた、弾が脳に出たって脳が機能を停止しておる、そのときが死であると、こういう判断をいたしております。脳死という言葉は使ってないけれども、そういう判例があるのですよ。  もう少し自由な頭でこういう問題を考えて処置をしていただかないと、我が国の科学の発達、技術の発達はとまる。多くの人が迷惑するんですよ。皆さん方の解釈、その解釈は憲法十三条に反する解釈だ、私はそう思います。これは憲法を持ち出すと、あんなものは何だと皆さん冷笑される傾向がありますが、すべての行政、すべての政治は憲法に基づかねばならぬでしょう。そういう点で死とは何であるかという問題は真剣に取り上げて、法律上の死を決めていただきたいわけです。これは特にこのことを要望をいたしておきます。これは質問してもだめですから、この辺にしまして次に移ります。  保護司の問題が大臣のところでも出てまいりましたが、現在、保護司の実態はどうなっておるでしょうか、その経費、保護司にどれだけの経費が与えられて、保護司は十分な働きをしておるかどうか、あるいは保護司は現在どういう職業の人で、年齢が幾つぐらいで、本当に保護司の職務を遂行するのに適切であるかどうか、こういう問題についてお尋ねを申し上げます。
  160. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 保護司は現在全国で実数四万七千七百人余おります。年齢は平均いたしますと六十・五歳ですから、約六十歳ということでございます。その年齢層の一番多いところは五十歳から七十歳の間の方が両方合わせますと約七割方おいでになるというのが現在の実情でございます。職業の点につきましては、農林漁業の方が全体の約二割、それから宗教家の方が約一三%でございます。それから家庭の主婦の方が約一二%近いということでございます。そのほか商業の方あるいは教員の方、その他多種類の職業の方になっていただいております。  この保護司についての実費弁償金がどうなっているかということでございますが、実費弁償金は現在一件当たり三千七百四十円というのが最高でございます。で、現在予算案の中に盛り込まさせていただいておりますのは、それを最高三千八百二十円まで上げていただきたいということについて御審議をいただいております。この実費弁償金が必ずしも私どもも十分であるとは思っておりません。しかし、この保護司の方々は、それぞれいわばボランティアとして「保護司には、給与を支給しない。」という保護司法の建前にのっとりながら自発的に犯罪もしくは非行を犯した者たちの更生保護を図ろうという熱意で仕事をしていただいておるというのが現状でございます。私どもとしましては、この実費弁償金について予算の許す範囲内において今後もその改善に努めたいと考えております。
  161. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 実は私の親戚にも保護司がたくさんおりまして、事情を聞いてよく知っておりますが、余り行動に十分なほどのお金はないようですね。保護司の会がございまして、その保護司の会の方で支給されるものはある程度管理されてしまう、それが実情のようです。お金が出ないのならほかの方面でひとつ面倒見てやっていただきたいんですよ。保護司もひとつ褒めてやっていただきたい。少しぐらいいい勲章を与えてその功績に報いるということでもしてあげないとお気の毒だ。励みが出てこないんですね。そういう点も御考慮をお願いいたしたいのですが、いかがでございますか。
  162. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 私どもとしましては実費弁償金につきましても今後努力するつもりでございますが、ただいま御指摘の点につきましてもさらに考えていかなければならない。ただ、現状におきまして、法務省の中で民間篤志家のこれらの方々の、保護司さんが一番中心でございますが、この保護司の方々に対する叙勲が法務省の中で春秋受ける方の数が一番多いというのが実情でございます。その点は十分御趣旨は承っておきます。
  163. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは次に移りますが、公安調査庁の問題でございますが、公安調査庁の機構を縮小なさるわけですが、その場合に職員もある程度現実に減るように御報告を受けております。この公安調査庁の職員の再就職とか配置転換についてはどのような御方針でございますか、お伺いいたします。
  164. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 今回の行政改革におきまして、公安調査庁といたしましては昭和六十三年度末までに定員二百人を縮減することといたしております。この定員二百名といいますのは、二千名足らずの当庁にとりましては極めて大きい縮減ということになるわけでございます。その実施に当たりましては、各年度にそれぞれ退職者がございますので、その範囲内で順次縮減するということで実施いたす方針でございます。したがいまして、定員縮減のために特に職員を退職させるとか、あるいは希望退職者を募るというようなことをする必要はないと、かように考えておる次第でございます。
  165. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 大臣の所信表明にもございましたと思いますが、国籍法を改正なさるわけですね。国籍法を改正をいたしますと当然事務が増大をいたしまして、予算措置を講じなければならないわけでございますが、特に市町村における事務の増大というものは大きいのではないかと思います。そういうような国及び県、市町村における国籍法改正によって生ずる事務の増大に対する予算措置、これについてはどのようになさっておられましょうか、お尋ねいたします。
  166. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 御指摘のとおり、ただいま衆議院で御審議いただいております国籍法の一部改正法案が通りますと届け出事件数がふえてまいりまして、法務局及び市町村の方に事務が増大してまいります。それに伴いましての予算措置でございますが、法務省側におきましては、昭和六十年度の予算要求の際にその点についての所要経費を要求していく考えております。また市町村側におきましては、従来から戸籍に要する費用につきましては地方交付税の中において国から予算措置をするという建前になっております。その地方交付税の配分の際にその事務量を加味した予算措置が、まあ予算措置といいますか、地方交付税の交付がなされるというふうな予定にいたしております。
  167. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは次に、この予算書を拝見いたしましたし、また大臣の御説明の中にもあったんですが、旅費を減らされたということが書いてあります。旅費を削減して予算提起をするということは、それだけ仕事を節約するということにならないかどうか。節約しても、旅費を減らしても十分活動できるというのであれば、従来の旅費が多く取り過ぎておったということになりますが、そういうことなのかどうか御答弁を願います。
  168. 根岸重治

    政府委員(根岸重治君) 一口に旅費と申しましても、その中にはいわゆる一般の行政事務に要する行政旅費と、業務処理に直接必要な業務旅費の二種類があるわけでございますが、まず行政旅費につきましては、行政事務の簡素合理化を図る趣旨から最近は増加を抑制することとされておりまして、昭和五十九年度要求につきましては原則として前年度予算額の範囲内とされております。ただ、法務省におきましては所管全体で三億八百十七万円余りでございまして、前年度に比しまして四百三十六万円余りの増となっております。一方、業務旅費につきましては業務量の増減に応じて計上されるべきものでございますが、五十九年度は全体といたしまして業務量が増加しております関係上、三十四億五千四百三十一万円余りでございまして、前年度に比しまして四千二百八十四万円余りの増加となっております。もちろん業務量に比しましてこれで十分かということになりますと、いろいろ考え方あると思いますが、この業務旅費の範囲内で十分効率的な執行を図って、業務に支障のないように処理したいというふうに考えておるわけでございます。
  169. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それじゃ、次の問題に参りますが、刑事補償金を支払いますと、当然その金額は莫大なものでございますが、その刑事補償金に対して課税をしない、あるいは課税をする、どちらであるかという点についてでございますが、もし課税をするならどの法に基づいてする、しないならどの法に基づいてしないのか、お尋ねをいたします。
  170. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 税法の解釈、運用でございますので、私所管外でございますが、刑事補償法は私どもの所管でもございますので、私の承知しております限りでお答えをいたしたいと思います。  いわゆる刑事補償金につきましては、その性質が抑留または拘禁によって生じた損害を補償するための賠償金である、簡単に言えばそういうことになると思われております。そういう性質から、所得税法の第九条第一項第二十一号でございますが、「損害保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発砲な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」という条文並びにこれに基づきます所得税法施行令第三十条によりまして所得税の課税対象とはならないというふうに理解いたしております。
  171. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 今の問題で、大蔵省の御答弁伺います。
  172. 吉本修二

    説明員(吉本修二君) まことに恐縮ですが、国税庁なり主税局が参っておりませんので、私は同じ立場の財政当局としての立場でお答えするのもいかがかと思いますが、恐縮でございますけれども
  173. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 何と今おっしゃいましたか。
  174. 吉本修二

    説明員(吉本修二君) 税法の問題でございますね。税法の問題では、所得税法上非課税ということになっておるということは私ども存じておりますが、税の問題について責任を持って答弁できる立場にちょっとございませんので、恐縮ですが。
  175. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 最後に一つだけ。  今の問題は、所得税法に刑事補償金とは書いてないんですよ。損害賠償金と書いてあるんです。ところが損害賠償金についての政令を見ますと、これは所得税法の政令ですよ。書いてないでしょう。細かいことは書いであるけれども、わざわざ刑事補償金は書いてない。それでお尋ねするんですから、ひとつ御研究になって、あすひとつ御答弁願います。よろしくお願いします。  では、これで終わります。
  176. 橋本敦

    ○橋本敦君 前回、福島交通グループに関して質問をいたしました。その後の幾つかの問題の進展もありますので、続いてこの問題についてお伺いをしたいと思います。  まず、何といってもまことに政治的にも不明朗なのは、巨額の使途不明金の問題であります。この問題については、前回も五十億円に上る使途不明金の行き先についての徹底的な究明が、政界との癒着の解明も含めて、犯罪の成否にもつながる可能性のある重大な課題として検討すべきであることを指摘したんですが、この使途不明金が前回お聞きしておった五十億にとどまらないで、福島交通グループの使途不明金は百億に近い巨額のものが使われておったという事実が明らかになってきておるのではないか。この使途不明金が一体どれくらいあるかについては、税務当局もいろいろとこれまでの調査で追及をなさってきたことと思うし、国会でも税務当局にこの点についての徹底した調査を各委員会を通じても要望してきたところであります。  そこで、まず国税庁に伺いますけれども、福島交通並びに福島交通不動産を中心とする使途不明金について、今日まで調査の結果、どういうことが明らかになっておりますか、この点をまずお述べをいただきたいと思います。
  177. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) お答えいたします。  お尋ねのいろいろな使途不明金の額につきましては、さまざまな報道が各紙でされておることは承知しているところでございますが、その法人につきましては昨年調査を下しておりまして、個々の具体的内容につきましては個別にわたることでございまして答弁を差し控えさしていただきたいと存じますが、先ほど先生のお話もありましたように、使途不明金ということにつきましては、税務調査に当たりまして、その把握というものと解明につきましては特に重点を置いてやっておるつもりでございます。特に、その解明ということにつきましては、まさに真実の所得者に課税するというのが税の本旨でございまして、その点について格段の努力をしております。どうしても企業の方でその使途を明らかにしないという場合がございまして、その場合につきましては、その損金に算入される経費に当たるか否かということが確認できないという現状でございます。その場合には法人税を課して処理するというふうなことも一般的にはございます。
  178. 橋本敦

    ○橋本敦君 今お話しのように、力を入れて調査をなさっていることはわかりましたが、要するにこの使途不明金が、私が今指摘した前回まで問題になっていた五十億を超えて、それは昭和四十七年から以降をとってみますと九十億を超す金額になっているという、この状況は間違いないのではありませんか。
  179. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 先ほども申し上げましたが、新聞等でその額について種々報道がございました。個々の幾らであるということについては御答弁を御勘弁いただきたいと思いますが、極めて大まかなところにつきまして、内容についてはあえて否定をしないというふうなことでひとつ御勘弁いただきたいと存じます。
  180. 橋本敦

    ○橋本敦君 五十七年に東京国税局と仙台国税局が協力をなさって、異例のプロジェクト体制をしいてこの調査に力を尽くされたけれども、結局は使途不明金の行き先はなかなかこれはつかめなかったという状況に終わらざるを得なかったという報道もありますが、これはそういう状況だったですか。
  181. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 本件につきまして調査の内容にわたることでございますので、たびたびで恐縮ですが答弁を差し控えさしていただきますが、税務調査一般につきましては、先ほども申し上げましたように、格段の努力をこの面に注いでいるということについてはあえて申し上げられると存じます。
  182. 橋本敦

    ○橋本敦君 結論的に言えば、新たな課税を必要とするような行き先をつかんだとか、あるいは課税対象にならなくても行き先が明確になったとか、つまり使途不明金の行き先が使途不明でなくて大部分解明されたという状況ではなくて、大部分未解明のまま推移しているという状況だと、このことはお答えいただけるのじゃありませんか。どこへ行ったかと個別的に聞いているんじゃない。
  183. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 使途不明金と申しますのは、先ほども申し上げましたが、要するに企業等を調査した際にその支出が書類上は経費として計上されておりますが、その内容が明らかにされないということから、損金に算入される経費でないというふうに税務上見ております。そういう意味の場合に一応使途不明金として課税上法人税課税処理するというふうなことでございます。
  184. 橋本敦

    ○橋本敦君 その税務処理はおっしゃるとおり私も知っておりますが、要するに私が聞いているのは、使途不明金というグループに入る部分の行き先が解明されたというような状況はほとんどないのではないかと、こういう意味です。
  185. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 極めて一般論でございますが、使途不明金全体につきましては、その調査に当たりまして解明されたものもございます。解明されないものも相当あるということでございます。
  186. 橋本敦

    ○橋本敦君 解明されないものが相当あるというところがまさにこの疑惑の一つの焦点になってくるわけですが、重ねてお伺いしたいのは、この福島交通並びに福島交通不動産に関して、これまで税務の申告に当たって税務署が過少申告だと、こう考えて更正処分をしたこと、あるいは修正申告をさしたこと、こういう事例は四十六年あるいは四十七年以降今日までありましたか、ありませんか。
  187. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 先ほど調査につきましては昨年行い、かつ下しているというふうに申し上げましたが、その期間でありますとか内容にわたる部分でございますので、答弁を控えさせていただきたいと思います。
  188. 橋本敦

    ○橋本敦君 金額幾らでいつの時点、何年度決算というふうに私は聞いてない。これまでの四十六年から七年以降今日までの期間にわたって修正申告をさした、あるいは更正処分をさせた、こういうことが福島交通または福島交通不動産、この会社に関してあったかどうかと。何年度の金額幾らとは聞きません。そういう事実だけはこれはお述べいただけるんじゃないかと思いますが、いかがですか。調査をなさったんですから。
  189. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 調査をいたしました結果、適正に処理されていないということにつきましては何らかの課税上の処理ということを通常も含めましてとっておるわけでございまして……
  190. 橋本敦

    ○橋本敦君 この福島についてもあったということですか。
  191. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) この本件につきましてのいわゆる調査の結果のそれが修正でありますとか、更正でありますとか、非違があったとかなかったとかということにつきましては、大変恐れ入りますが御答弁を控えさしていただきたいと思います。
  192. 橋本敦

    ○橋本敦君 なかったとはっきり否定なさらないということで私は受け取らざるを得ないというように思いますが、こんな程度のことまでお述べにならないということは、私は国政調査に対する協力度が極めて足らぬというように思わざるを得ませんよ。  そこで、もう一点聞きますけれども、それじゃ、この福島交通グループについてこれまで脱税を問題とせざるを得なかったこと、脱税容疑で調査をしたことがあるのかないか。この点はどうですか。
  193. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 昨年でございますが、税務調査を行ったということではございます。
  194. 橋本敦

    ○橋本敦君 極めて歯切れが悪い答弁しか返ってこないから、あなたも苦労されておるけれども、解明をする方も苦労するんですよ。  じゃ、巨額の使途不明金がつくり出される一つの仕掛けとしては、現実にそれだけの金がどこかにキープされていくわけですから、会計経理上はその金をどうして生み出すかということになると、一つは、税の過少申告ということをやって、そこでつくり出すという仕掛けが会計処理上なされ得る可能性があるのではないか。そういう問題意識はお持ちになりませんか、調査の観点として。
  195. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) お答えになるかあれでございますが、使途不明金と申しますのは一般的には、先ほども申し上げましたが、会社の方で会計処理経費ということで計上しております。それにつきまして税務の申告といいますか、課税面で申しまして、それが損金に算入される経費というものには当たらないということで、場合によっては、一般的なお話で恐縮ですが、企業がみずからそれに対しまして法人税を納めるというのもございますし、あるいは調査の過程におきましてそういうものが出ますと、それにつきましては過少申告税を加えて課税をする。同時に、それが仮装、隠ぺいにわたるというような場合でございましたら重加算税等、行政機関としてでき得る処理というものについては懸命に解明をしておるということでございます。
  196. 橋本敦

    ○橋本敦君 この福島交通不動産は、日本債券信用銀行から直接の融資を受けているのが私どもの知っている限りでも百六十六億円以上、この福島交通がトンネルになって日本債券信用銀行から福島交通に融資がなされ、それが子会社の福島交通不動産に行っているのが五百七十六億円を超すと言われている。合わせれば七百四十二億ですが、巨額の金が動いているわけですね。その中で、あなたは金額はっきりおっしゃいませんが、否定なされないのでも九十億前後と、こういきますが、こういう巨額の使途不明金がつくり出されてきた。それが経費の名目で、裏づけなくいわゆる使途不明ということでやられてきたというその金は、こういう巨額の融資の金がその使途不明金とされる部分に流れ込んでおる、こういうふうに見るのは、この会社の企業形態やあるいはこの会社が赤字決算をしておるというようなことから見ても私は推定ができると思います。その点どう見ておられますか。
  197. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 貸し付け借り入れの件と存じますが、調査に当たりましては資金の流れと申しますか、貸付金あるいは借り入れというものの流れは念査しているところでございますが、それについてその関係といいますか、それと使途不明との関連ということであろうかと思いますけれども、当法人の個別の内容であろうかと思いますので、答弁を御勘弁いただきたいと存じます。
  198. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点は具体的にどういう状況でどうなったというのじゃなくて、一般的に状況として巨額の使途不明金は巨額の融資、この金のトンネルから流れている会もそこには流し込まれている可能性があると見るのは常識ではありませんかと、こういう質問ですから、あなたの常識で答えていただいて結構です。それ以外どこから金が来ているかというと、それはもう考えられぬのですから。いかがですか。可能性否定されますか。
  199. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 本件は昨年調査をいたしたわけでありまして、貸付金の流れ等当然のこととして通常税務調査に当たってはそういうことについても見ていくということでございますが、その関係ということについては、重ねて恐縮でございますが、私の見解というわけにもまいりませんので御答弁を控えさしていただきたいと思います。
  200. 橋本敦

    ○橋本敦君 しつこいようですが、それじゃ、私の見解は全く当たっていない、間違っているとあなたは断定できるでしょうか。あなたの見解は述べなかったけれども、私の見解は全く間違っていますか。完全に否定できますか。
  201. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 先生の御見解も御拝聴いたしているわけでありますが、また一般的に新聞報道でもかなりそれぞれ論評等がされております。そのことについて先生の御意見あるいは御主張について、ここでそうですというふうに申し上げられないのが非常に残念でございますが。
  202. 橋本敦

    ○橋本敦君 否定はしないと。  この福島不動産は累積赤字が五十五年三月現在で七十八億という数字もありますが、同じく福島交通の繰越欠損を五十五年で六十四億円持っている。どちらの会社も累積赤字を持っている、金額は問いませんが。そういう会社である現状は間違いありませんね。
  203. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 福島交通不動産について申し上げますと、最近五年間の例で申しますと、申告、御承知のとおり四千万以上所得がありますと公示がありますが、公示はございません。
  204. 橋本敦

    ○橋本敦君 ちょっといまの答弁はっきりしなかったけれども、もう一遍正確に答えてください。
  205. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) 福島交通の方については調査課長にかわります。今福島交通不動産について申し上げました。
  206. 木下信親

    説明員(木下信親君) 福島交通につきましては、調査課所管でございますのでお答えいたしますが、過去五年間公示所得に達するまでの所得はございません。公示所得というのは四千万を越した場合に公示されるわけでございます。
  207. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはわかりましたが、結論として、かなりの累積赤字を福島交通不動産も持っているという状況で決算をしているんじゃありませんか。どうですか。
  208. 中川浩扶

    説明員(中川浩扶君) いま申し上げましたように、公示等がございませんという状況でございます。
  209. 橋本敦

    ○橋本敦君 国税当局としてはそれ以上は答える範囲を超えるという意味でおっしゃっているわけですね。私どもの推定では、こういう使途不明金を巨額につくり出すというのは、ある意味で言えば経営の乱脈であります。そして、こういう巨額の使途不明金をつくり出す、このことが、資本金をはるかに超えた巨額ですし、しかもこれが借入金からそこへ流し込まれているという意味で、利息をつけて返さなくてはならぬ金という意味で、会社の経理を一層圧迫して累積赤字を生んでいく、そういう条件も付加をしている。端的に言えば、こういう不明朗な使途不明金を巨額につくり出すというそのこと自体が会社の経営を悪化させて赤字経営の要因になっている、こういうように見れる状況があると、こう思うわけですね。  そこで刑事局長に伺いますが、商法上の特別背任罪というのはどういう法律上の要件で成立するのでしょうか。
  210. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 商法上の特別背任でございますが、条文規定されております取締役その他の役員等でございます。これが主体で、そういう者が「自己若ハ第三者ヲ利シ又ハ会社ヲ害センコトヲ図リ」、これがいわゆる図利加害の目的でございます。そういう目的を持って「其ノ任務ニ背キ」、そこに背任行為が入ります。かつ「会社ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタル」という結果、これが必要でございます。
  211. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで刑事局長、この巨額の使途不明金をつくり出して、それを自分が政界工作に使う、あるいはいろいろな会社事業のリベートやその他にも使うということになりますと、自己の利益を図る目的ということにこれはなりますかなりませんか。
  212. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 事実関係いかんにもまたよりますけれども、なり得るかと思います。
  213. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、会社の経営管理については、会社をできるだけ円滑に運営するという一般的責任が取締役には商法上も課せられているわけですが、そういう任務に背いて乱脈な経理をやって多額の使途不明金を運用して、そしてそのことが会社の累積赤字の要因となるという状況にまでなっているとすれば、それは任務に背いて会社に損害を与えたという、そういう法律要件に該当する可能性も出てくると思いますが、どうですか。
  214. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 「任務ニ背キ」というところも、これも事実関係いかんによるかと思います。仮にほかのリベートと申しますか、いろいろな工作として金員を交付するという場合も、会社の利益といいますか、利益のために渡す場合もあり得るかと思いますので、一概に他へ金員を、まあ使途不明金の一部がどうかわかりませんが、渡したからといって任務に背いたかどうか、そこは総合的に会社の取締役としての会社に利益をもたらすように運営するというその任務に背いたかどうか判断されなければならないかと思います。それから、会社に財産上の損害を加えだということも、この会社で赤字が出たから直ちに損害というわけにもまいりません。そこらの点、まだいろいろ事実関係によって厳密に判断されるべきことかと思います。事実関係のいかん、場合によってはなり得るという意味ではなり得るかと思います。
  215. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、事実関係によってはという限定をおっしゃいましたが、まさにそれはそのとおりでございますけれども、要するに巨額の使途不明金をつくり出して乱脈な会社経理をやって、そして片方では労働者に退職金も支払わないとか、片方では交通事業は赤字で国の補助金を受け取るとか、そういうことをしておきながらこういう巨額の使途不明金をつくり出していろんな工作に使うとすれば、これは私はまともに会社の取締役もしくは役員としての商法が期待している賓任を果たしているものとは到底思えないですね。しかも、これが会社の赤字原因と、こういうことになっていれば、株式会社は利益を上げること自体が本来の目的ですから、上がるべき利益を上げ得なかったという会社経理のそういう要因の一つになっているとすれば、私は法律で言う損害を与えたということに該当する可能性が出てくる。こういう意味において、刑事局長も事実関係によっては商法上の特別背任の成立は否定しないというお話をなさったと思うんですが、私が考えているような理解は間違っていないと思いますが、いかがですか。
  216. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 先ほど申し上げましたいろいろの要件について、事実関係といいますか、事実認定上いろいろ複雑な問題があるかと思います。それらを前提とした上で、場合によってはなり得るという趣旨でございます。
  217. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、前回のときには、日本債券信用銀行の方が、大蔵省がしばしば警告を発している状況であるにもかかわらず漫然と巨額の融資を進めてきて、その融資が円滑に回収されない可能性もつくり出してきたとすれば、それは日本債券信用銀行の側においてその役員が商法上の特別背任に該当する可能性があるという問題を追及したんですが、今度、今私が追及しているのは、まさに福島交通あるいは福島交通不動産の小針氏についても、この使途不明金の問題を通じて、事実関係いかんによっては商法上の特別背任が成立する可能性があるということを私は今指摘をして質問をしたわけであります。したがって、刑事局長も事実関係によってはということはおっしゃいますけれども、こういう可能性があるというこの問題について、今度はこの使途不明金の問題をめぐって小針氏に商法上の特別背任罪の疑いがないわけじゃないという立場に立って、今後国会におけるこの論議や国税庁の調査等、すべての関係について厳重に検討を加えていくという立場で見ていただきたいと私は期待をするのですが、いかがでしょうか。
  218. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 御指摘の福島交通等をめぐる事件につきましては、連日と申しますか、新聞等にも報道されておりますし、また国会でもいろいろ御議論があるところでございまして、そのことは検察当局においても十分承知しておるわけでございます。今後の推移を見守っておることかと思います。
  219. 橋本敦

    ○橋本敦君 特に私がこの点を強調しますのは、先ほど国税当局にも追及をしてお伺いしたんですが、この使途不明金というのは、税務調査で小鉢氏及び会社関係者が口を割らなければ出てこないんです。それで脱税容疑で国税犯則取締法で強制調査をやればまた別ですが、それもやっていないわけです。だから、この不明な問題を徹底追及する一つの環になるのは事実関係をしっかり調査をする必要がありますけれども、商法上の特別背任で小針氏を追及するプロセスの中でこの使途不明金の解明が一層進み、流れ先がはっきりしてくるという、捜査の進展、事実の解明が進む大きなステップがここにあると見ているから私はこの点を極めて厳しく追及し、要求をして、刑事局長にも今言ったようなことを申し上げている次第であります。今後とも我々も調査をいたしますけれども税務当局の調査とも相まって、厳重にこの点についての検察庁としての今後の動きに対する御注意をお願いしておきたいと思うのであります。  次に、私はこの間問題になりました新白河駅の用地の交換問題についてお伺いをさしていただきたいと思います。  まず、国鉄当局にお伺いをいたしますが、この新白河駅用地の交換に当たりまして登記を見ますと、交換契約がなされましたのは、五十六年三月三日の交換を原因として、五十六年四月二十一日受付で国鉄から福島交通への所有権移転が宇都宮駅前の土地についてなされています。この事実は間違いございませんか。
  220. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 国鉄と福島交通との間の新白河の福島交通所有地に関連しまして用地交換をいたしましたのは五十六年の三月三日でございます。
  221. 橋本敦

    ○橋本敦君 実際にこの新幹線及び駅建設等の工事がどんなふうに進んでいたかという状況を国鉄が出しておられます工事年表で見てまいりますと、まず第一に、昭和四十六年十月十二日に初めてルート決定並びに駅の設置が公表になる。具体的に言えば「東北新幹線の工事実施計画書国鉄本社より運輸大臣に提出」されるということから始まるわけですね。そこで、その年の十一月六日に「関係市町村説明会開始」と、こうありますから、恐らくこの十一月六日ごろには新白河駅の問題についても、関係市町村である西郷町ですか、市ですか、このあたりの関係市町村を集めた会議がなされたのではないかと思いますが、いかがですか。
  222. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 先生御指摘のとおりでございまして、昭和四十六年十月十二日に国鉄から運輸大臣に認可申請がなされまして、同時に公表されたという形でございます。四十六年十月十四日に運輸大臣の認可をいただきましてから直ちに諸準備を整え、各地区でできるところから事業説明会を開催いたしました。当西郷村でございますが、当西郷村、白河市につきましては四十六年の十一月になりまして事業説明会をいたしておるということでございます。
  223. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、さらに進みますと翌四十七年三月に「福島県下最初の立入測量(白河、泉崎、大信地区)」という記載がございます。したがって、四十七年三月にはこの白河地域も立ち入り調査測量が開始をされたというようにこれでうかがえますが、間違いありませんか。
  224. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 先ほど御説明いたしました四十六年十一月の第一回の事業概要説明会以来数回にわたりまして各地域ごとに説明会をいたしまして、四十七年三月……
  225. 橋本敦

    ○橋本敦君 立ち入り測量。
  226. 田中和義

    説明員(田中和夫君) センター測量だと思います。新幹線の位置を示すといいますか、真ん中の線を示します測量をいたしまして、以降、これに基づきまして地元協議等を進め、四十七年の七月に用地測量を開始いたしております。
  227. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、四十七年七月に用地測量をやって、同じ四十七年の十二月に「白河工事区開設」、こうありますから、いよいよ工事に着工する態勢に入ったというのは間違いありませんね。
  228. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 私ども、通常工事区の設置につきましては、用地買収と並行いたしまして、特に用地関係の職員の足がかりと申しますか、遠くから通ったのではなかなかお話が進まぬということもございまして、工事区の設置をかなり早目にいたすということがございます。当地区につきましては、私どもの調べでは五十二年の二月に至って一部工事にかかったというふうに承知いたしております。
  229. 橋本敦

    ○橋本敦君 じゃ、一部工事にかかったのは五十二年の初めのころと伺いましょう。この記載によりますと、今話した四十七年十二月二十二日に「工事計画書その七提出(新白河駅、認可四十八年三月一日)」と、こうなっておりますから、四十七年の十二月の終わりころには駅建設の工事計画書ができ上がっておるということは明らかではないでしょうか。
  230. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 先生お調べの記録が私ちょっと確認をいたしておりませんが、これは国鉄部内の扱いでございますが、工事区設置と工事計画の最終決定ということと必ずしもリンクはさしておりませんけれども、その時点において工事の細部についての計画が決定されているというふうに考えております。
  231. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで私が聞きたいのは、つまり測量、工事計画、それから今おっしゃったように、工事が四十七年の春ごろから実際に進んでいくわけですが、それを進めるためには、用地の取得のめどなしには、これは私は進められないだろうと思うんです。ところが、今お伺いしたように、この白河駅の駅舎用地の福島交通所有土地との交換契約ができたのは五十六年の三月三日と、こういうことですから、五十六年の三月三日といえば、もう実際に現場では駅舎は建設どんどん進んで、土地の利用は国鉄がやっている状況ですよ。そうでしょう。そこで、私は不思議に思うのは、なぜ交換契約が五十六年三月三日という遅い時点になったのか。それより以前に交換契約ができないから工事も測量もできないならわかるけれども、どんどん事業は順調に進行しておる。一体どこでこれがそういう状況になったのか、不思議の一つなので、これを説明してもらいたい、これがまず質問です。
  232. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 通常、工事を進めます場合に、その地域といたしまして大方の皆さんの御了解をいただいた場合には、必ずしもその地域全体の用地の買収が終了しない状態でも工事を始めさしていただいているということがまず一点ございます。
  233. 橋本敦

    ○橋本敦君 了解を得られたら。
  234. 田中和義

    説明員(田中和夫君) その地域の大方の皆さんの了解を得られた場合です。一部用地が解決されていない箇所につきましては、その解決を待って、その部分について工事を始めるという形が通例行われております。  したがいまして、先ほど御説明いたしましたように、四十七年七月から用地の測量に入りまして以降、用地協議を進め、一方、工事区を設置するとともに、五十二年二月から工事にかかったわけでございますが、その中では、起工承諾と申しまして、いろいろな御事情があって必ずしも用地の契約ができない場合でも、工事については協力をしていただけるという方につきましては、起工承諾という形で相手さんの土地のところで工事を始めさしていただいているというケースがございます。今回のケースにつきまして、当該福島交通につきましては、起工承諾をいただいて工事に入ったという事情がございます。
  235. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、交渉は事前に進み、一応承諾がなされて福島交通が取得しておる六千平米の土地についても順調に工事を進めてきた、こう伺っていいですね。  そこで、もう一つ伺いますが、では、なぜ交換契約が五十六年三月三日まで延びたのですか。その原因はどこにあったんですか。
  236. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 当福島交通所有の土地につきましては、仮登記がなされておって、それが本登記に切りかわるまでの間に時間がかかったという経緯がございます。それから、さらに用地の交換に関連しまして、その協議等の時間を要した等々がございまして、五十六年の三月までかかったということでございます。
  237. 橋本敦

    ○橋本敦君 ところが、この土地については仮登記ができておって本登記になるまで時間がかかったというお話ですが、私はここに登記謄本を持っておりますので、これに基づいてお話をいたしますと、福島交通は地主さんに対して、この土地を、農地ですから知事の転用許可を得ることを条件にして取得をする契約をしたわけですね。それで、仮登記をつけておるのが四十六年十二月十八日受け付けでやっております。つまり福島交通は四十六年の早い時期からこの土地を取得するのにかかったわけですが、仮登記は十二月十八日付です。これが知事の転用許可がおりまして、所有権移転の登記がなされましたのが四十九年八月二十日受け付けです。ですから、交換登記は五十六年ですから、四十九年から五年もおくれているんです。いいですね。だから仮登記がついておった、それが本登記になるのがおくれたのが原因の一つだとおっしゃるが、それが原因の一つであったとしても、それは四十九年に解決済みなんです。ところが交換契約ができるまで、そこからさらに五年もかかっている。そこで、この原因はあなたがおっしゃった福島交通側との協議で交換そのものについての協議が難航したのではないかというように推測されるんですね。  そこで伺いますが、この駅の用地を国鉄が取得される交渉は、これは福島交通となされたと思いますね。仮登記がついているということで、前の地主さんたちとやられたのじゃなくて、福島交通と初めから交渉されたと思いますが、それは間違いないでしょう。
  238. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 福島交通と交渉はいたしております。それからなお、仮登記、私どもの調べでは五十五年の六月まで本登記に切りかわるのにかかったものが含まれておるようでございます。
  239. 橋本敦

    ○橋本敦君 含まれておっても、私が指摘した登記もあるのはわかりますか。答えてください。知っておられますお。
  240. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 一部、先生御指摘のように早い時期に本登記に切りかわったものもございます。
  241. 橋本敦

    ○橋本敦君 この交換は、国鉄がこの用地を駅舎敷地に欲しいということに対して、福島交通が、売りません、使うならば国鉄所有の土地との交換でやりたいという、初めからこういう申し出で出発したことですか。
  242. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 福島交通との間の交渉では、初めから用地の交換の希望が出されております。
  243. 橋本敦

    ○橋本敦君 この東北新幹線あるいは上越新幹線関連契約で、用地取得について買収ではなくて国鉄所有土地との交換、国鉄が新しく代替土地を買って交換したんじゃないですよ。もともとの国鉄所有土地との交換で処理したというケースはどれぐらいありますか。
  244. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 全体につきまして現在手持ちの資料ございませんので、明確なお答えになりませんが、そういったケースにつきましてはある程度の割合では起こっております。
  245. 橋本敦

    ○橋本敦君 たくさんあるという意味ですか、割合というのは。
  246. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 数としましては、これ、そう多くないというふうには思っております。
  247. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、国鉄は見込み違いをしましたか。つまり新白河駅をここに建設するということを選定したその理由の一つに、東北新幹線工事誌をひもといてみますと、この新白河駅の選定をした理由に、駅の位置としては現白河駅交差新設案などに比べて現在線との連絡がいい、道路交通の便など、これも勘案したとありますが、特に「用地買収も比較的楽」であるというのが書いてあるんです。御存じと思います。で、私はほかの福島駅、白石蔵王駅、郡山駅、ずっと読みましたが、用地買収が比較的楽だからという理由で駅の位置をここに選定したというのはほかには見当たらないんです。まさに新白河駅だけ。ところが、福島交通が持っている土地は簡単に手に入るのじゃなくて、今言ったように何年も協議をして、交換ということの強い希望があって難航した。これは不思議なんですが、どういうことなんでしょう。比較的楽だと国鉄はおっしゃっていたのに、見込み違いをしたんですか。福島交通が途中から無理難題を言い始めたんですか。どうですか。
  248. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 今先生御指摘の新白河の駅の位置でございますが、国鉄といたしましては、いわゆる白河地区におきまして駅の設置が必要である。これは那須塩原—郡山間約六十キロございます。白河地区につきましては福島県南地域の中心地である、こういったことから駅の設置を検討いたしたわけでございますが、今お話ございましたように、現在の白河の駅につきましては、新幹線の路線の方向と……
  249. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはいい。用地買収が比較的楽だという判断について言ってください。
  250. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 旧来の白河駅周辺につきましては線路とほぼ斜めに路線を引かざるを得ない、こういったことから、非常に市街地を分断するという問題がございまして、福島、郡山等、現在の路線に沿った形でルートを通すのと違いまして、線路にほぼ直角に近い、斜めに市街地を分断するという問題、それから城址がございまして、そういった問題等から、一つ東京寄りでございますが、磐城西郷駅付近でございますとほぼ現在の路線と並行した形で、沿わした形で、しかもその当時その付近につきましてはほとんど畑、田んぼであると、そういった地域の状況を外から考えましてこのルートに選んだわけでございます。
  251. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の質問にお答えになってないが、もう時間がありませんから次に進んでいきますけれども、じゃ、福島交通が金で売るよりもかわりの土地をくれと言ったそのかわりの土地は、宇都宮の駅前と交換しましたが、これは福島交通の希望の土地ですか。
  252. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 福島交通が宇都宮の駅前に当時営業所を持っておりまして、その隣接に国鉄の用地があったわけでございますが、その営業所の隣接地をぜひ欲しいというお話で交換契約をいたしたわけでございます。
  253. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。だから、したがって福島交通は希望どおりの土地の交換ということに成功したわけですね。この土地の交換について、端的に言いますと福島交通が駅用地に出したのが六千三百三十九平米、そういうことですね。そして宇都宮の土地はわずか二百二十三平米、こういうことですから、面積にしたら大変な違いがある。しかし、これは等価交換でやったんだと、こういうお話である。  そこで、等価交換をする場合に、価格の問題ですが、これは不動産鑑定士によった鑑定を基準としたということでしょうか。
  254. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 交換に当たりまして当然おのおの土地の評価を適正にいたさなければなりませんので、新白河につきましても宇都宮につきましても鑑定士の評価をとり、あるいは従来からの経緯あるいは公示価格等に準拠いたしました価格、比準価格と申しますが、こういったもの等を総合的に判断いたしまして、おのおのを評価いたしまして交換をいたしまして、なお差金が出まして国鉄が収受いたしております。
  255. 橋本敦

    ○橋本敦君 国鉄は幾ら収受しましたか。
  256. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 約二百五十六万円でございます。
  257. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういう価格算定をする場合に、不動産鑑定士の鑑定結果だけではなくて、それも重要な参考にして諸般の状況を判断して部内で決定する、こういうことですね。違いますか。鑑定価格そのままではないでしょう。
  258. 田中和義

    説明員(田中和夫君) はい、そのとおりでございます。
  259. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで国鉄に聞きますが、この新白河は私も国土庁に路線価格公示等で資料をさんざん求めてやったんですが、このあたりは国土庁は路線価格のポイントは置いておりませんから簡単にわかりません。そこで一つの判断として、この新白河駅が発表される直前に福島交通が地主から幾らで買い受けているか。つまり福島交通が買った金額が幾らであるか。これは御調査なさったはずだと思うんですが、契約書を見て金額幾らで福島交通が取得したか、これは参考にされましたか。参考にしたかしなかったか、簡単に。
  260. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 参考にいたしておりません。
  261. 橋本敦

    ○橋本敦君 ここに一つの重大な問題があるんですよ。いいですか。実際は福島交通がこの土地を地主から坪当たり二万一千円ですから平米に直せば一平米当たり約六千円で取得しておるんです。ところが、国鉄が交換する場合にこの福島交通の土地の評価は一平米当たり二万一千円で評価しましたね。約三倍少しですね。六千円が二万一千円になる。そこで、この交換契約をするについて鑑定をした時点は何年の時点で鑑定しておりますか。まず何年の時点、これ言ってください。
  262. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 福島交通と交換をいたす直前に鑑定評価をいたしております。  なお、先ほど参考にいたしませんと申し上げましたが、大変恐縮でございますが、これは確認を私いたしておりませんので、用地買収につきましては先ほどのお話のように四十七年ごろから始めておりますが、その時点での調査内容、評価の中身につきまして、福島交通以外の土地を取得しておりますので、その関係でどういうやり方をしたかにつきましてはちょっと確信が持てませんので、訂正さしていただきたいと思います。
  263. 橋本敦

    ○橋本敦君 いや、訂正せぬでもいい。ほかと直接買うた時価を参考にしたという程度なら、それは構いませんよ。  福島交通がこれを地主から買い取る契約を締結したのは発表される直前の四十六年九月二十九日付の契約です。それで駅の工事にはもう積極的に協力している。実際交換契約をやったのは五十六年でしょう。だから五十六年の直前の時点で鑑定してもらったら、このお百姓の皆さんから一平米当たりわずか六千円で手に入れた土地は五十六年現在で鑑定してもらったら非常に高い鑑定にしてもらえますよ。それで等価交換で二百何ぼお金渡したとしても、希望する宇都宮の一等土地が手に入りますよ。だからこの二万一千円という鑑定をする場合に、実際は国鉄は四十七年から買収交渉をやり、四十七年から承諾を得て土地を使っているんだから、本来なら四十七年に交換契約が成立して四十七年の時点の鑑定結果で交換するということも可能であった。ところが五十六年に延びた。そこで、鑑定やったら高い金になって、福島交通は平米六千円で手に入れたものを二万一千円で鑑定をしてもらっている。このことだけで概算差益約一億ですよ。私の計算では一億一千万ここでは利益が上がった。そして宇都宮の土地は現在では平米当たり百万ということですから、これは御存じのとおりにもう大変な巨額の土地になっている。二億二千三百万以上するということになっている。こういうことが本当に交換契約としてこの土地でやられてこういう利益を与えでいいのだろうか、こういう問題を私は言わざるを得ないわけですよ。もしも交換ではなくて買い取ったとしておったら、国鉄は四十七年時点で買い取りに成功しておれば、福島交通が売っておれば、平米当たり二万一千円どころかもう少し安く買えていますよ。で、福島交通がその金でかわりの土地を買ったとしても、国鉄はあの宇都宮の土地を福島交通に簡単に売ってやりませんよ。まさにこの駅の土地が欲しいから宇都宮の土地をくれくれと言われれば出さざるを得なかったんでしょう。まさに小針戦略にうまくはまっておるわけですよ。そして巨額の利益を得ておるという、この問題は私は見過ごすことができぬと思うんです。  そこで、国税当局に伺いますが、土地を売ったり買ったりすると税金はどうなりますか。交換をすると税金はどういうような扱いになりますか、まず簡単に。
  264. 谷川英夫

    説明員(谷川英夫君) 法人が土地の交換をいたしましたときの税務関係でございますけれども原則といたしましては土地の譲渡があったというふうに観念いたしまして、もらった土地の方は対価と見る、これが原則でございます。しかしながら、一定の要件に該当いたします場合には圧縮記帳という制度がございます。この特例が認められるわけでございますが、要件といたしましては、固定資産として所有しているということ、それから両者とも一年以上にわたって所有しているということ、それから三番目といたしまして、交換の差額が二〇%以内であること、それから四番目といたしまして、同一の用途に供する、この要件を満たしておりますときには、先ほど言いましたような圧縮記帳の適用が認められまして、その時点での課税は繰り延べられます。ですから法人税がかからない、こういう形になるわけでございます。
  265. 橋本敦

    ○橋本敦君 今のお話でいきますと、本件の福島交通と国鉄との交換契約はどうなりますか。課税処理しているかしていないか。簡単に、もう時間ありませんから。
  266. 木下信親

    説明員(木下信親君) 個別の法人の問題でございますので答弁を差し控えさしていただきたいと思いますが……
  267. 橋本敦

    ○橋本敦君 いやいや、言ってくださいよ、これ大事だから。国鉄がかかわっているんだ。私人同士じゃないですよ。国鉄がかかわっているんだから。
  268. 木下信親

    説明員(木下信親君) まず一般的に申し上げますと、法人が資産を取得したりあるいは譲渡した場合には、特に関連会社間でそういうことが行われた歩合には価格について厳重な調査をして処理することになっております。本件の場合も、このような観点から十分に適正な処理をしているつもりであります。
  269. 橋本敦

    ○橋本敦君 課税したんですか、しないんですか。いまのお話の圧縮記帳でいったんですか、それとも税金を取ったのかと聞いているんです。
  270. 木下信親

    説明員(木下信親君) 適正に処理しております。
  271. 橋本敦

    ○橋本敦君 どっちなのか。どっちに処理したのか。国鉄に関係あるから。答えられませんか。
  272. 木下信親

    説明員(木下信親君) 適正に処理しているということで御勘弁いただきたいと思います。
  273. 橋本敦

    ○橋本敦君 もう一つ聞きますが、そしてこの福島交通は交換して得た宇都宮の土地を自分が使いたいからと、こう言っておって、自分が使わずに自分の関連会社である株式会社フクコーに一年足らずで売却しておるんですよ。これは国鉄が予想しておったことかしないことか私わかりませんが、こういうふうにすぐ転売されることは国鉄は予想しておりましたか。知りませんでしたか。
  274. 田中和義

    説明員(田中和夫君) 当時は全然存じません。
  275. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、もう一遍税務処理を聞きますが、こんなふうに今度は福島交通が株式会社フクコーに、五十七年八月六日登記受け付けで、つまり交換してからほぼ一年足らずで売買しておりますが、この福島交通から株式会社フクコーへの土地の売買については、課税処理はどうなっておりますか。
  276. 谷川英夫

    説明員(谷川英夫君) まず税務の取り扱いについて一般的に申し上げますと、交換によりまして先ほど申しました圧縮記帳の特例を認められた場合、その土地を売却いたしました場合、そのときには先ほどの制度によりまして課税が繰り延べられておりますので、売った時点でその課税の繰り延べ分を取り戻す、そういうような課税処理一般的になるわけでございます。
  277. 橋本敦

    ○橋本敦君 そのとおり処理しましたか。
  278. 木下信親

    説明員(木下信親君) 適正に処理しておるつもりでございます。
  279. 橋本敦

    ○橋本敦君 それがわからぬ。適正なら幾ら金額徴収できましたか。
  280. 木下信親

    説明員(木下信親君) 個別のことは差し控えさしていただきたいと思います。
  281. 橋本敦

    ○橋本敦君 全く同族会社、同一会社ということで、これは事実上同じ資本、同じ役員の会社だということで税を免れるというようなことはあり得ますか、あり得ませんか。
  282. 木下信親

    説明員(木下信親君) ちょっと御質問の趣旨がわからなかったのですが。
  283. 橋本敦

    ○橋本敦君 同族会社間の売買という形式をとっているが、同じ資本系統の会社だから実質的には他人への所有権移転はないのだというような抗弁で税を免れることはあり得ないでしょう。そうですね。
  284. 木下信親

    説明員(木下信親君) そう思います。
  285. 橋本敦

    ○橋本敦君 ところが、実際これがどうなっているかということをお話しにならないので、私は疑問を持つのですが、本当ならばこの交換で繰り延べよりも福島交通が国鉄に土地を売ってということならここで税金がまずかかり、そしてその売った金で別の土地を買えば、そこでまた税金がかかると、こうなるんです。ところが、この交換で、いまおっしゃったように、繰り延べが可能かどうかということも含めて、税務処理上もこれは適正にやったかどうかはっきりしてもらわないと困る問題を含んでいるんですね。何しろ四千万ほどの投資で十年ほどで二億を超す利益になったんですから。  そこで、私は、こういう不明朗なことについて税務当局は明快に国会の調査に応じて御答弁になりません。そうなりますと、まさに現実に調査していただくのは、私は会計検査院の調査を煩わす以外にないと、こう思うんですね。会計検査院は、これは法第二十三条でも必要と認めるときは国鉄に対する検査ができますし、また現にこれまでおやりになってまいりました。また「日本国有鉄道の会計については、会計検査院が検査する。」と、日本国有鉄道法第五十条にも書いてあります。今までも検査をなさってはおるわけですが、この福島交通の土地交換に関しては私が指摘をしたようなそういう疑問もありますので、適正な処理であるかどうかについてこの問題は会計検査院として特に調査をしていただきたい。その結果必要な問題があれば是正勧告していただく、意見を出していただく、そしてまたその検査の過程で犯罪があると思料するならば、会計検査院法第三十三条に基づいて検察官への犯罪の通告もしていただく、こういうことも可能でありますから、会計検査院にこの白河駅土地交換に関連をする適正な処理がどうかについて厳しく重ねて検査をしていただくことを要望するわけですが、いかがでしょうか。
  286. 井上隆夫

    説明員(井上隆夫君) 私ども、この用地の交換の件につきましては、五十六年六月に仙台新幹線工事局の会計実地検査の際に調査いたしております。そしてその用地の交換につきましては、新白河及び宇都宮の用地の評価額を不動産鑑定評価書等の関係書類によりまして調査いたしましたわけでございますが、特に指摘するような事態は見受けられなかったわけでございます。しかし、交換受けをした新白河駅の帯状の用地につきましては、この用地の利用方法につきまして調査いたしましたが、雪害対策用の待避線として利用する予定ということでございましたので、その推移を見守ってきたところでございます。先生御指摘のとおり、このように問題になっている土地でもございますし、取得の適否及びこの用地の有効な利用方法につきまして検査院としても重大な関心を持っておりますので、今後ともなお検討してまいりたいと思っております。
  287. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間が参りましたので、これで終わります。
  288. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これから私がお聞きをしていくことは、大臣がけさも予算説明で三千七百四十七億という法務省予算説明がありました。国家予算から見れば一%にも満たないですから、そういう点でいろいろ私はこれからお聞きしたいようなことがなかなか難しいとは思うんですけれども、御説明を承りたいと思うんです。  私は、この法務省のお仕事というものは、これは素人ですから、それでも私なりにわかることは、法務省というところはいろいろ問題が起きたり事件が起きたりすれば、そういう問題に対応していって、法に基づいて裁判にかけるなり何なりをして一件落着をさせていくということをなさっておると思うんです。だが年々犯罪がふえるばかりなんです。事件に対してそれの対策を講じることは当然なんですけれども、そういう犯罪、事件が起きないような予防措置ということについてどの程度のことをおやりになっているんだろうかということが知りたいんです。  昭和五十七年の刑法犯を見ましても二百万五千二百九十二件、人口千人当たり十七人になるんです。極めて単純な計算ですけれども、これを全体に広めていけば五十九年間に国民が一度犯罪を犯すという、そういう数字になってくるんです。私は大変なことだと思うんです。したがって、いろいろな犯罪が起きたそういう事件に対して対策をいろいろおとりになっていると思うんだけれども、そういうものが発生する前に起きないようにするための対策、予防措置、そういうことについて法務省としてどれだけの御努力をなさっているのかということをまず第一にお聞きしてまいりたいと思います。
  289. 住栄作

    国務大臣住栄作君) 日本における刑法犯の発生件数年間二百万、こういうことでございます。この件数は毎年若干ずつ伸びてきておるということも事実でございます。と同時に、これは諸外国と比較いたしまして、必ずしも高いというようには理解しておりません。もちろん犯罪があった場合に適正迅速な処理を行うのは当然でございますが、そういうことが起こらないようにどうやっていくか、これもまた極めて大事な問題でございます。そのためには法務省はもちろんでございますが、関係各省の御協力もいただいて、国民に対する規範、法を守るという、こういう意識を高めていかなければならぬわけでございまして、そういうようなことで一生懸命に努力をしておるところでございますけれども、それをはかる予算の尺度がどうかということになりますと、私も法務省へ参りまして、そういう点について本当に十分でない金でよくやっているなと、こういうような気持ちも実は持っておるわけでございます。非常に大事な問題でありますだけに、私ども与えられた条件の中で、来年度の予算を今審議していただいておるわけでございますが、その中で人の面あるいは金の面、そういうことを最も有効に生かして、先生今御指摘のようなことに努力をしていかなければならない。そしてまた、私も常に機会あるごとにそのことも申し述べておるところでございます。
  290. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私が一番知りたい点は、予算の——だから法務省予算なんというのは、ある意味においては少ないほど本当はいいんだと思うんですよ。そんなに予算なんか要りませんというくらいならばいかに国の中が治安がいいかということになるんだから。そうは言っても、さっきから言うように、いろいろの統計見てもどんどんふえてくるわけですよ。  次に、少年犯罪の問題なんですけれども、その国の青年の姿を見ればその国の将来がわかるとこれ言われているわけなんですね。そのくらいに青少年のあり方というものが日本の国の将来にとっては非常に重大だと思うんですけれども、これも統計から見た数字ですけれども昭和五十年には十九万六千九百七十四人、これは十歳から二十歳のいわゆる十代のところなんですが、それが五十七年になると三十一万八百二十八人、十代の人口千人に対してこれも十七・二人と大変な数になっているわけです。このように若い青少年というか、特にそういう若い十代の中でも低い年齢層の方の犯罪というか、そういうのがどんどん急激に今ふえてきているんだけれども、それについての対策はどういうことをおとりになっておりますか。
  291. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 先生御指摘のように、最近ここ五年あるいは六年、いろいろの統計を見ますと、少年犯罪が一般にふえておりますほかに、これを二歳ずつ年長少年、中間少年、年少少年、触法少年といろいろ分けてございますけれども、年齢の低い層の数がふえているということはもう統計上明らかでございます。まことに遺憾といいますか、国の将来を憂うべき一つの事柄であろうかと思います。その原因につきましては教育の問題でありますとか、家庭の問題でありますとかいろいろ言われておりまして、各般の施策が必要であろうかと思います。  法務省といいますか、我々の立場としてできますことといいますと、やはり少年の非行の取り調べ処理を通じましてその少年に対する適切な事件処理を行う、あるいはその後、少年院簿を含めた矯正関係あるいは保護の関係等の社会外あるいは社会内処遇充実を図ること、あるいはさらに少年を取り巻く環境、これも大事でございますので、暴力あるいは風紀事犯、そういう方面のいわば少年の環境浄化、まあ浄化といいますか、環境を害するような事犯の取り締まりを強化する、あるいは関係諸機関と協力いたしまして非行少年の更生にいろいろ方策を練るというような形で努力を続けておるところでございますし、今後ともこれらの諸点について最善の努力を払ってまいりたいと思います。
  292. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 難しいことを聞いているんだということは私もわかるんですよ。だけれども、私が一番知りたいのは、そういう中で、今言われたように、少年非行に走らないようにとか、非行が起きたならばそういうのをすぐ適切な処置をという、そういう抽象的なことでなくて、それで私たちも心配しております、これこれしかじかの問題についてはこういう手を打って、そうして何とかしてそういうふうな方に走らぬように今私たち法務省としても努力をしているんですという、そういうお答えを聞きたいんです。  次にお聞きしたいのが、もうこれもかなり前からなんですが、シンナー遊び。昭和四十九年にシンナー遊びでもって検挙や補導されたのが二万一千百三十七名おるんです。五十七年には四万九千六百三十八名、二・三倍になっているんですよ。これはもう少々の伸びているとか伸びてないとかの生易しい数字ではないんです。そして、今ここの問題で私がお聞きをしたいのは、これは検挙をしたり補導した人の数がそこへそれで挙がってきている。実際にどのくらいあるというふうに御推定なさっておりますか。  昔、私はまだこういうところに出てくる前に労働組合やっていた方ですけれども、大会をやって、そうしたら昼休みに、休憩している間にやっぱりこういう問題に関心持っている男がその近所の公園を歩いてきて、そうしてシンナーのなにした袋を持ってきて、しゃべらしてくれと言った。大変な量なんです、そのときの量は。私どももびっくりしたんです。だから、今私が申し上げた数字というのは、これは皆さん方のところにも当然お手元にあるはずの数字だと思うんだけれども、実際はどのくらいなんでしょうか。私は恐らくこの十倍を超えると思うんです、今とてもそんなものに手が届きはせぬのですから。そういうことを推定していったならば、シンナー遊びというものがあの少年の体をどれだけ侵していき、むしばんでいくかということはおわかりだと思います。そうしたら、将来の日本の国を背負って立つこういう青少年がこういうことでもって遊んでいることについて何らかの対策をということをお考えになられると思うんです。  もちろんこれは法務省だけの問題ではない、もう内閣挙げて取り組まなければならないような問題なんですけれども、そういう点について一番関係がお深い法務省としてどういうお考えを持っているんでしょうか。死亡事故だけだって大変な数が出ているはずなんですけれども、そういう点についての御見解をお聞かせください。
  293. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 私ども、今先生最初に御指摘になりましたこの数が三万とか四万とかございますが、推定は実質十倍もあるんではないかというお話でございます。そういうことも考えられますが、正確な推定は私どもとしてはちょっと難しいかと思います。それに数倍するものがあるだろうと常識的には考えておるわけでございます。また、最近の傾向としてはシンナー等乱用少年の中でも特に中学生の数がふえておるようでございます。そういう点についてはやはり重大な事柄であろうと思っております。最近では昭和五十七年でございますが、シンナーの関係につきまして罰則を強化いたしております。まあ罰則を強化すればそれで済むというわけではございませんことはよくわかりますけれども、やはり罰則の強化ということも一つの方策として、昭和五十七年に乱用事犯に懲役刑を付加したということがございます。
  294. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 刑事局長、もう中学生がじゃないんですよ。小学生まで行っちゃっている。だから、その辺のところを私がいろいろな角度からきょうは取り上げて、お考えをいただきたいと思っているのもそこにあるんです。  今、数倍と言われたけれども、私は十倍超えているんだろうと。数倍にしたって、仮に五倍にしたって五万の五倍といったら二十五万でしょう。年々そういう格好でもって、そしてどんどん広がっていくわけでしょう。このまま放置をしておったら、中学生から小学生のその辺みんなもうそういうことの遊びというものが常習のようになって、それで、普通の子供の遊びなら私は別にこんなところで取り上げて、こんなことを言うつもりはございません。大人ならばまだ体がなにしていますから、そんなでもないと私は思うんですけれども、あの小さい子供の十や前後のその辺の子供がシンナー遊びしているということが、どれだけ子供の体をむしばんでいるかということは、もう少し御研究をなさっていただいて、ことしの予算、来年の予算がどうなるかも大切かわかりませんが、日本の国の将来のために、どれだけこれが大きな問題になるかというふうな、そのくらいのことはお考えいただきたいと思うんです。  それで、そういうものに関連をして、その次に私が取り上げていきたいと思うのは、学校における校内暴力、これもお考えいただきたいのは、昔は大学紛争といって大学だけだったんです。それで、警察官を入れるとか入れないとか、入れちゃいかぬとかといって、よくもめていたわけなんですよ。それがいつの間にか大学から高校へ来て、高校から中学というので、今小学校まで入ってきた。生徒が先生を殴るなんということは考えられましたですか。小学校が卒業式に警察官に来ていただいて、警察官が立ち会いでもって卒業式をやるなんということが考えられましたですか。それで、ことしなんかでも、卒業式のときに卒業生がみんな校舎の窓ガラスをぶち割って、そうして出ていく。それをやられても学校はどうにもならないでいる。もちろん、それがすべてではないわけなんですけれども、そういう風潮というものがどんどん広がっていくんですけれども、それについてどうすべきかというお考えをお聞かせいただきたい。そして、もう少し実のある御答弁を聞かせていただけませんか。
  295. 住栄作

    国務大臣住栄作君) 御指摘のように、覚せい剤にいたしましても校内暴力にいたしましても、言われてから既に久しいものがございますし、そういう傾向がますます助長されていくわけでございます。これはもう次代を担う青少年の健全育成、こういう観点から見ても、まことにゆゆしき問題だと、もうみんなそう考えておるわけでございます。  これは弁解にもならない、こういうことを言っていいかどうかも私疑問に思っておるわけでございますけれども法務省の立場は、どちらかと申しますと起きたときの事件の処理をするというようなところにとかく重点というか任務を持っておる。そして例えば犯罪を犯した者をどう社会的に更生させていくか、大体その面に重点があるものですから、一般的にそういうことをどうやって考えていくか。先ほどもお答えしましたように、これは教育の問題であり家庭の問題であり、社会環境の問題であるわけですから、これは私は政府挙げて総合的にこの対策を講じなければ、一つの法務省が、もちろん努力をしなければなりませんけれども法務省のなし得る面は限界もある。そういうことで、総理府等においても青少年対策本部等も設けていただいておりますし、総合的な対策を練っておるわけです。そしてまた、具体的にこれをそれぞれの所管において努力をしておるところでございますから、政府全体の施策として見ていく。その中で法務省のやっていることは、どちらかというと、どうも起きた問題の処理というようなところに力点があるということもまた御理解をいただきたい。そして、私もまたそういうことを通じて、それがそういうことの起こらないように、これまた一般的にも啓蒙していかないといかぬ、こういうようにも思っておるわけでございまして、決して怠る怠らぬということじゃなくて、それなりにやっておるわけでございますが、法務省のやっておることはどうも過去のものというようなことに重点があるということも御理解いただきたいと思います。
  296. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大臣、率直な御答弁いただいて本当に感謝申し上げますけれども、今大臣おっしゃったとおりなんです。この間も予算委員会でもって、あえて教育の問題、それはもう文部省にすれば当事者が一生懸命考えて、今度もいろいろ教育臨調というものもやろうとしているのだろうし、これはもうわかっている。法務省というのは、今言うように事件が起きたのを取り扱うところなんだという、そういうお考えを皆さん方もお持ちであるんだろうが、あえてここでもって、もうそれじゃいけないんですと。起きたらそれどうするかはやっているんだけれども、何とかそこのところを起きないようにおれたちも一生懸命になってやらなければ、この日本の国がおかしくなっちゃうという気持ちをお持ちをいただきたいというので、きょうはこういう問題ばかり出しているんです。  大臣、大学紛争であの神田のところが、みんなもうバリケード築いて、そして舗道の石をみんなぶち割って投げてやった。あのときは警察官もあそこは入れなかったんです、あのバリケードの中へは。じゃ、何であれがあれからぴたっと静かになってしまったか、起きなくなっちゃったか、端的に言って私なりの分析からいけばこういうことなんです。あの当時は、あの大学生が騒いで出てきてバリケード築いてやるものだから、テレビが出ていってニュースで生中継やっていたわけですよ。それでそのことで、そんなことやるから彼らがますます英雄気取りになってやるといって、ぴしゃっとテレビが中継放送をやめた。そうしたら、放送局に文句言ってきたそうですよ、何でおれたちがやっているのを放送しないのかと。しかし、やらなかった。テレビの生中継の放送をやめたら、彼らもあそこへ出てきて、街頭へ来て石をぶち割って投げる、ああいうふうなことをやらなくなって、もういつの間にか大学紛争は起きなくなっちゃったんです、もちろんそれが一事じゃないですけれども。ですから、そういうふうに校内暴力、これは文部省のことだとかなんとかじゃなしに、そしてもう皆さん方もやっぱり本気になってお考えいただきたいと思うんです。  そして、そういう暴力の問題に絡んで、暴力団の関係ですけれども、警察庁が把握をしている数字というのが、五十七年末で二千三百九十五団体、組員が十万二百三十七人、こうなっておる。この数字は間違いないんですか。まずお答えいただきたいんです。  というのは、昭和四十八年以降警察が検挙をしている数というのが毎年五万人ちょっといるんです。もちろんそれは全部そのまま刑務所へ入れるわけではないんですから、調べられて不起訴になって帰される者もいると思うんです。暴力団員が十万ちょっとであって、毎年五万人捕まえて、そうして調べて、何をやっておって、依然としてその十万からの組員がいるということは、これはどういうことですか。先ほども午前のときの海江田先生の御質問の中でも御答弁なさっておったように、私は日本の警察というものは世界に冠たるものだと思うんです。多少の行き過ぎはあるときもあるかもわからぬけれども、しかし治安を維持するためにといって日本の警察の果たしている役割、努力というものは私は立派だと思うし、それなりに敬意を表したいと思うんです。それだけの日本の警察がどうしてこれだけのわずか十万そこそこの暴力団の退治ができないのですか。ここのところはっきり答えてください。
  297. 上野浩靖

    説明員(上野浩靖君) 最初にお尋ねございました警察で把握しております暴力団の団体数と構成員数でございますが、先生御指摘のとおりでございまして、団体といたしましては五十七年末でございますが二千三百九十五回体で、構成員が十万二百三十七人でございます。  なお、ただいまお話ございました毎年五万人近い検挙がありながら、なぜ減少しないのかということでございますが、私どもといたしましては常日ごろから強力な取り締まりを今国に指示しておるところでございまして、短期的に見ますれば大幅な減少というものは数の上ではなかなか出てこないわけでございますが、年々着実に減少していることは間違いないところでございます。五十八年は五十七年に比較いたしまして固体で五十七団体、人員で三千二十六人減少しておるわけでございますが、暴力団勢力のピークを記録いたしました昭和三十八年と比較いたしてみますと、当時は十八万四千人ほどおったわけでございまして、そういうところからいたしますと、現在、先ほど申し上げましたように約十万人でございますので半減しているというところに来ておるわけでございます。直ちに大幅な減少というものは期待できないわけで、その点につきましては私どもももどかしさを感じておるわけでございますが、この問題につきましては着実に年々厳しく取り締まって少しでも減少させるよう努力する以外にないというふうな考えでやっているところでございます。
  298. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 減ったことは認めますけれども、警察がまさか暴力団の存在を認めているわけないんでしょう。みんな暴力団取り締まり本部をつくって、それで何年かに一度は暴力団の撲滅なんて言ってやっておって、何でこんなに二千三百九十五団体もの暴力団が存在するのか。彼らの生きているその温床は何ですか。それは私が言わなくたって皆さん方の方がおわかりだと思う。その息の根をとめるということさえやれば、こんなものはほっておいたって、私は何も捕まえてきて豚箱へ入れるよりかも、彼らが存在をする温床の息の根をとめることをおやりになれば、そんなもの黙っていたってみんなばらばらになるんですから、そこのところにどうして皆さん方がメスを入れないんですかと聞いている。  その関係の中の一つが私は覚せい剤だと思う。これは私が言うと、またさっきと同じみたいに先生おっしゃるとおりですと、私は調べてきて言っているんだから、そんなものわかり切っていることだから、私は今度は言わないから、覚せい剤はどのくらい押収しておるんですか、その末端価格はどのくらいになるんですか、それでその覚せい剤をもしも使われたならばどれだけの人間が利用するほどの量ですかということをお答えください。
  299. 加美山利弘

    説明員加美山利弘君) お答えいたします。  昨年じゅうに押収しました覚せい剤は約九十九キログラムとなっております。覚せい剤の末端における取引価格は一概には言えませんが、我々の捜査の過程から判断して一回分が約五千円であります。一グラム当たりに換算しますと約二十万円ぐらいで取引されているのではないかと思っております。覚せい剤の一回の使用量は通常〇・〇三グラムくらいと言われておりますが、昨年の押収量九十九キログラムを例にとりますと約三百三十万人が同時に使用できるものと推定されます。
  300. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 末端価格。
  301. 加美山利弘

    説明員加美山利弘君) 一回分が約五千円であります。
  302. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大臣おわかりだと思うんです。それで、これはいろいろと税関や警察や、そういうところが網を張って捕まえて押収した量が今の量で、それ以外にまだあることは事実です。これだけの量でも九十九キログラムで、それをもしも使えば三百三十万人がということになるんですから、もちろん一人が一回だけということはない。しかしともかく大変な量のそういう覚せい剤が流れているということが、それでまた、それは警察の努力でもってそうやって押収されているから未然に防がれているということも喜ばしいことなんですけれども、ですから本気になってそういうものにお取り組みをいただきたいと思います。  時間もないので、もう一つサラ金二法の問題で、これはサラ金二法ができるときに、ここでもって自殺をしたり何したりしておるといって申し上げたときには、まだそれなりの数字が把握されておらなかったからきちんとした御答弁もいただけなかったんですけれども、これは警察庁がまとめられたんですから、昨年七月から十二月までの半年間、自殺をした人が八百十三人、家出をした人が七千九百三十二人、これはみんなサラ金地獄に遭った人たちだけの数字なわけなんです。毎日四・四人の人が自殺をしておって、四十三・一人の人が家出をして蒸発をしていっているんです。昨年のときも申し上げましたように、こういうふうに追い込まれて、どうにもこうにもならなくて、そうして暴力団に押しかけられて苦し紛れに自殺をしていけば、それは自殺として始末をするだけでしょう。その逆に、今度サラ金の貸した業者のところに行って強盗したり、それから中には今度は逆にそれを殺してしまったりする人もいるわけなんです。そういうことをすると、それは殺人罪であり強盗犯であり、捕まって豚箱へ入れられるわけです。私は、サラ金を借りて苦しくなって、それで自殺をしていくという人も、間接的にはこれは殺人と同じじゃないんでしょうか。どうして警察がそういう判断で見ていただけないんですか。それで、こういう事態になるについて、そういうふうな自殺まで追い込まれずに済むようなことの手を打っていただきたいと思うんですけれども、いかがですか。
  303. 加美山利弘

    説明員加美山利弘君) お答えいたします。  サラ金苦による自殺とか家出とかという問題でございますが、これにつきましては、我々としましても大きな社会問題であるという認識をしておりまして、犯罪、自殺等の原因となる高金利、強引な取り立てに絡む不法事犯に重点を置いて厳正な取り締まりを行っているところでありますが、また従前より各都道府県警察におきまして、困りごと相談という窓口も設けてあります。またサラ金一一〇番という電話も設けてあるところもございます。そういうようなところにおきまして、サラ金にかかわる困りごとあるいは苦情等の受理、解決にも努めているところでございまして、今後ともサラ金にかかる不法事犯を厳しく取り締まっていくとともに、これらの相談業務充実強化を図るとともに広報活動も一層展開いたしまして、サラ金返済苦にかかわる犯罪とか自殺、家出の未然防止に努めていく所存でございます。
  304. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 お忙しいから無理ないけれども、昨年ここでサラ金二法の法案審議のときに、ここで審議をされて、そのときに私がいろいろ発言をしたわけなんだけれども、せめてその辺のところぐらいはお読みになってきて、そして御答弁をしていただきたいと思うんです。  去年のときも申し上げたように、人の名前をかたって住民登録をとって、そして至るところのサラ金業者のところへ行って金を借りてしまった。だから、サラ金業者は借り主と全然関係のない人のところへ押しかけていって返せ返せと言って夜に昼にやった。そんなもの借りちゃいないと言ったって、おまえら、しらばくれるのかと言って、とうとうだんなは、その奥さんの名前でやられたんだけれども、だんなが会社へも行かれなくなったんです。最後にどうにもこうにもならなくなって警察へ飛び込んで行ったときに警察が何て言ったか、あんた運が悪かったねと言われたっていうんですよ。私は今さらそれもう一回ここで何しようとは思いません。だから、今程度の御答弁を聞いて納得するならば、私はきょうはここでもってそんなこと聞きやしませんので、これ以上申し上げませんけれども、せめてあのサラ金二法が不十分であっても一応あそこへ出たんだから、せめてあの法律の、言うならばこの夜や朝やなんかのおどしをかけたり、脅迫の電話をしたり、そういうことだけはやらしてはいかぬ、法律をきちんと守れ、それから過剰貸し付けはするなといった、そういうことについて法を厳正に守るような御指導はせめてやっていただきたいと思います。  最後に、もう時間もありません。これは大臣からお答えいただきたいことは、司法行政の抜本的改革をお考えいただきたいんですけれども、お考えいただけますか。要するに、大臣、例えば二十五年前というと今五十九年だから三十四年になるんですか、この四分の一世紀の、そうすると三十四年のころと今とで、この世の中というものは全くと言っていいほど変わっているわけですよ。別に新幹線もあったわけじゃない。今みたいに飛行機もなにしてない。まだあのころだったらマイカー持っている人もごく少なかったと思うんですよ。ほとんどないと言っていいくらい。ICなんというものも出てきはせぬ。だから、皆さん方も私もそうだけれども、今持っている時計なんというのは二十五年前なんかありゃせぬ時計です。ここに中山千夏先生もいらっしゃるけれども、女性が着る服なんというものも、今着ておる服なんというものはほとんど二十五年前は私はなかったと思うんですよ。どれだけそういう生活の環境、自分たちの周囲が変わってきているか。そのときに、司法行政に携わる皆さん方の物の考え方は、そういうものを、この前もちょっと触れたんだけれども、やっぱりそれに対応して変化をしていっていたのではならないんだけれども、昔のまま司法行政というのは行われているように思うんだけれども、思い切ったそういう抜本的な改革はしていただけないんだろうかということです。お聞きしたいんです。
  305. 住栄作

    国務大臣住栄作君) おっしゃるとおり、これは社会が刻々変化しておりますし、それからそれに対応して、例えば二十年前予想されていなかったようなコンピューターによる犯罪等なんかも出ておりますし、とにかくどんどん世の中が変わっていく。これはおっしゃるとおりでございます。検察としましても、あるいは法務行政としましても、そういう事態に対応して、それぞれ例えば法律の問題にしても、あるいは実際上の業務処理の問題にしましても、そのように変えていかなければ、世の中の、国民の期待にこたえられない、こういうことは当然でございます。  そういう意味で、実はきのうも新任検事五十人の皆さんの辞令交付があったわけでございますけれども、私もそういうような立場から激励をしておいたわけでございますが、私は、第一線の諸君はそういうことをよく勉強して、研修等もかなり密度高くやっておるわけでございますが、そういう変化に対応してそれぞれ対処しておると、こう思っております。しかし制度そのものがやはり対応してないということもこれは否定できません。その制度を動かしていっておる、それに限界もあるということでございますから、いろいろ私ども所管している法律の中にはまだ明治二十何年の片仮名法律なんか幾つもございます。こういうようなことについても新しい時代に即応するように、法務省の諸君は本当に毎晩遅くまで勉強をしておるわけでございますけれども、何せそこらあたりになってきますと、やるとなるとやっぱりいろいろな障害等もなきにしもあらずでございますが、そういうことで私が一番恐れておるのは、そういう面から職員あるいは検察官の士気というものが衰えていかぬかということを実は非常に心配をしておるわけでございます。  おっしゃるように、司法制度の抜本的改革というのはなかなかこれ大変なことでございますけれども、やはり早急に手をつけなければならないいろいろな問題もあると思っておりますので、御趣旨を体しまして、ひとつ法務省の英知を動員して考えてまいりたいと、こう思っております。
  306. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 終わります。
  307. 中山千夏

    ○中山千夏君 今行政改革ということが言われておりますけれども、細かい難しいことはよくわかりませんが、どうも拝見していると、確かに入ってくるお金をたくさんにして、それから出ていくお金を少しにするというようなことも、行政財政改革の方では重要なんでしょうが、行政をやっていく上で、やっぱり急いでやること、それからきちんとやること、それから今の質疑の中にも出てきましたけれども、時代に合わせて適正な処置をしていくことというのが大変必要なんだろうと思うんです。私もそういうことに関連しているのではないかなと思うことを二、三お伺いしたいと思います。  最初に、朝、五十九年度予算説明をしていただきまして、その中に、「附属機関整理合理化といたしまして、少年院及び婦人補導院について、業務を停止している少年院一カ所、婦人補導院二カ所を廃止することといたしております。」という御説明がありました。この中の婦人補導院について少しお聞かせいただきたいんですが、たしか今度の予算でも一億数千万というお金が経費として計上されていたと思います。国家予算からするとちょっとなんでしょうけれども、我々の感覚からするとすごく大切な国民の税金でもありますし、大事なところだと思います。この二カ所を五十九年度末までに廃止するということだそうですけれども、この二カ所は既に業務停止になっていると聞いています。この経緯をちょっと教えてください。
  308. 石山陽

    政府委員(石山陽君) お尋ねの二カ所の婦人補導院と申しますのは大阪と福岡の二カ所でございます。婦人補導院は、御案内のとおり昭和三十三年の売春防止法施行に伴いまして、まず全国で三カ所に設置されましたけれども昭和四十四年ごろから在院者の減少傾向というのが出てまいりましたため、施設の合理的運営の見地から、昭和四十六年に大阪をまず業務停止いたし、昭和五十年に福岡の婦人補導院業務停止した、これが経緯でございます。
  309. 中山千夏

    ○中山千夏君 その停止になってからきょうまではどうなっていたんですか、その二カ所は。
  310. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 大阪婦人補導院につきましては、昭和五十四年七月に矯正研修所の大阪支所というものの新営問題がございましたので、その整備のための特別会計の財源という形で大蔵省に既に所管がえ済みでございます。福岡婦人補導院の建物につきましては、現在近くにございます筑紫少女苑という女子を収容している少年院がございますが、そこの院外補導施設として活用をまだいたしておる、こういうのが現状でございます。
  311. 中山千夏

    ○中山千夏君 ちょっと重ねて伺いますが、大阪の方は四十六年に停止になったんですね。それで、五十四年までは、そうすると、どうなっていたんですか。
  312. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 大阪は五十四年で引き継いだと申し上げましたわけで、四十六年に業務停止でございます。
  313. 中山千夏

    ○中山千夏君 ですから、四十六年に停止になって、引き継ぐまでの間はどうなっていたんでしょう。
  314. 石山陽

    政府委員(石山陽君) その間は結局建物の警備措置を講じまして、いわゆる施設の保管管理ということを中心にやっておりましたので、特に業務は行っておりませんでした。
  315. 中山千夏

    ○中山千夏君 もう相当十何年という年月がたっているわけですね。その間、私ちょっと去年でしたか、おととしでしたかにも、婦人補導院について少し調べたいことがあって聞いたんですけれども、そのときもたしか三カ所あるというお答えをいただきまして、それで、非常に人間が抽象性がないものですから、補導院と書いてあると三カ所あるんだなと思っていたわけですね。そうしたら、十何年前に停止になっていて、停止になっているうちにもう使い方も違う使い方をされている。それが我々がいただく書類ですと、やっぱり補導院として出てくる。この辺の処理というのは何かとっても変な感じがするんですね。簡単な組織じゃないから大変なんでしょうけれども、私たちの常識で言いますと、停止したらすぐに何か活用を別に考える、それからまたなるべく早く廃止なら廃止に持っていく、それから転用するならするというふうなことがもっと早く決まりそうなものだと思うんですね。その辺が何かとってもテンポが遅いという気がするんですが、いかがでしょうか。
  316. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 行革に関連して厳しい御指摘で恐れ入りますけれども、結論的に申しますというと、私どもの部内の扱いでは、業務停止ということと組織そのものの廃止ということは明らかに使いわけておるわけでございます。つまり業務停止というのは、例えば施設が老朽化しておりますために、すぐ新営したいのでありまするけれども予算措置が講じられないので、一時収容者を他に分散してその施設の機能だけを停止するという業務停止もございますし、それから全般的に収容者が減ってしまったので、しばらく三つは要らないから一つ二つだけでやっておいて、将来の収容者の動向を見て再開するかどうかの最終決断をいたしたい、こういう場合があるわけでございます。私どもの場合には、その二つ申し上げました理由のいずれもが実は重なりまして、しばらく様子を見ておりましたが、最近でも皆様御案内のとおり収容者余りふえてまいりません。そこでこの際、行革に絡みまして正式に廃止の方向を打ち出した、これが結論が出たという段階では今日に至ったわけでございます。
  317. 中山千夏

    ○中山千夏君 そういうお話を伺いますと、それでもやっぱりちょっとゆっくりなんじゃないかという気はしますが、行革だということを提唱して何かあるのかなと思っていましたら、そういうきっかけがないと、ばんと踏み切れないというようなところはあるんでしょうか。
  318. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 私ども必要ないものをいつまでも行革のかけ声がかるまで残しておこうという気持ちは毛頭ございません。しかしながら、これも御案内と思いますけれども、矯正関係の施設というのは一遍廃止してしまいますとなかなか二度と再開することは極めて困難になります。施設を一つ獲得いたしますにしても周辺住民の方々の御協力を得るのは大変難しい。そこで、私どもとしては律儀にあらゆる可能機を見きわめて、どうしてもこれはもう時代の要望にそぐわない、新しい行政の発展に伴って要らない施設だというきわめつけができるまでは見守りたい、これが少しテンポが遅いと御指摘されれば、まことにその御非難は甘んじて受けざるを得ませんけれども、私どもなりにいろいろ考えた末の措置であったという点について御賢察をいただきたいと思います。
  319. 中山千夏

    ○中山千夏君 それで、残る一つですね。東京の婦人補導院の収容業務状況というのを事前にちょっと伺いました。そうしたら、五十七年の繰り越しが十一名で、五十八年に入ってきた方が五名、それから出ていった方が九名、ということは現在七名になるんだろうと思うんですが、それで、定員は九十九名のところを二十一名にして、八王子鑑別支所を併設しているというふうに伺いました。一つ残っているところも、もちろん本当に売春というものが根絶しているのならばこういうものは繁盛しない方がいいに決まっているんですけれども、繁盛しているという感じではないわけなんですね。  そこで、検挙をして裁判にどのくらいかけられている人たちがいるのか、そこの補導院に入ってくる方はそういう全体の売春という売春防止法の網にかかった人たちのうちのどのくらいなのかということをちょっと知りたいので、数を教えていただけますか。裁判所の方の資料はいただいているんですけれども、検挙の方の数をきょうちょっと教えていただきたいと思います。
  320. 古山剛

    説明員(古山剛君) 昭和五十八年中におきます売春防止法違反で検挙いたしました数字は六千八百五十六件、二千二百九十八人でございます。違反態様別に見ますと、件数で申し上げますと周旋が三千七百八十三件と最も多くなっておりまして、次いで、売春をさせる契約が二千四十九件、勧誘が五百七十六件、場所提供業が百三十四件、場所提供が百三十一件、売春をさせる業、これは管理売春のことでございますけれども、これが百十七件の順となっております。また違反態様別の人員でございますけれども、これは周旋が八百三十六人、次いで、勧誘が五百六十九人、売春をさせる業、これが二百八十三人、売春をさせる契約が二百三十四人、場所提供業が二百二十一人、場所提供が百十七人の順となっているところでございます。
  321. 中山千夏

    ○中山千夏君 その数を見ましても、決して売春自体が減っているという感じはしないんですね。それと世の中を見ていて大変強く感じますのは、売春がちょっと売春防止法ができた当時とは随分形が変わってきているんじゃないか。そこに携わると言うと変かもしれませんけれども、携わる婦人も随分性格が変わってきているんじゃないかと思うんです。テレビなんか見ていましても、夜のテレビなんかでは大っぴらにある種売春組織のような宣伝をしているし、週刊誌なんかちょっと見ましても、いわゆるトルコ情報というか売春情報のたぐいが載っていない週刊誌というのは本当に数えるほどしかない。だから世の中では、もう売春があるというのは当たり前みたいなことになっているわけですね。  その売春防止法というのは、もともとこれ読ませていただきますと、一口に言いますとこういう法律でもって売春をなくする、なくしていく方向に持っていこうということだと思うんです。そのために「売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによって、売春の防止を図る」というふうに言っているわけですね。ここから出てきたのがこの婦人補導院だと思うわけです。ところが、今お話ししたような世の中の状況にもかかわらず、婦人補導院の方は年々寂れると言うと変ですけれども寂れて、そして今現在もほとんどあってなきがごとしというような状態である。ということは、これどうもどこかぐあいが悪いんじゃないかと私は思うんですね。  実際、じゃ、婦人補導院がやってきたような仕事が必要とされてないかというと、決してそうじゃないと思うんです。幾ら世の中売春の形態が変わっても、現に民間の宗教団体なんかでは婦人補導院がやっているような仕事をもっと年月をかけてやっているところがあるわけですね。そうすると、婦人補導院は六カ月という期限があります。大体この辺から、果たして六カ月という期限で更生をしてもらうということができるんだろうかという疑問もありますし、この婦人補導院というもの自体がちょっと時代といいますか、売春のあり方といいますか、そういうものとマッチしないで役割をうまく果たせていないのじゃないかしらという気が非常にするんですが、その辺どうお考えでしょうか。大臣はこういう問題いかがでしょうか。
  322. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 施設側の方から先に申し上げます。これも中山委員御案内のとおりでございますけれども婦人補導院といいますのは、ただいま売春関係でお預りする婦女の質的内容が非常に限られておる、こういう特色がございます。いわゆる婦人補導院は売春防止法第五条の違反者、即ちストリートガール、これを専門に処遇する施設でございます。ですから、密室売春とかと売春の形態が違いますので、そういうものは私どものもともと収容者の対象にならない。しかも、そのような形で街頭で売春の客引き等をした者が、執行猶予の判決ではありますが有罪判決を受けて、かつ補導処分に付せられた者と、こういう要件がかかっております。ですから、同じストリートガール式の売春勧誘でも、たび重なりまして前科の関係で執行猶予がつかなくなりますと、これは女子刑務所へ直送してしまいます。したがいまして、最近の売春形態でいわゆるストリートガール形式が少なくなっているというようなことが私どもに対する収容者の減につながり、売春全体の実態とそぐわなくなっておる一因ではないかというふうに考えます。
  323. 中山千夏

    ○中山千夏君 私も全く同じ意見を持っているんですが、そぐわなくなったからといって、これは法律があって、婦人補導院法があって、だからやらなくちゃいけないのでやっているという感じの行政というのは余り実効がない、そういうものについてはもう一度考えていただきたいというのが私の本当のところなんですよ。世の中にそぐわない、それから、もちろん売春防止法自体も女の側から見ますと少し問題があるという気がするんですが、婦人年の最終年でもありますし、厚生大臣ともこの辺のところ大臣、何かの折に御相談になっていただけないものでしょうか。売春が実際はびこっているという現状はあるわけですから。
  324. 住栄作

    国務大臣住栄作君) 売春の実態の問題につきましては、先ほどからも議論がございますように、とにかく非常に巧妙化してきておる。それからまた隠密と申しますか、密室というか、そういうようなことで売春と見られるような現象も決して少なくなっているとは私思いません。そういう意味で、これは厚生省とはもちろんでございますが、その取り締まりという面でも売春防止法という法律があるわけでございますから、ざる法なんと言われていることもありますけれども、この売春防止法自体は、これはでき上がったときは諸外国の法令も参考にしてつくった法律でございまして、それは人権との関係なんかも非常にバランスをとってつくられた法律だろうと思っております。そういうようなことで、この運用というものをうまくやれば、その対策についても効果を上げ得ると思います。そういう意味でせっかく厚生省、厚生大臣ともよく話をしろということでございますので、もちろん御趣旨を体しまして対処してまいりたいと思います。
  325. 中山千夏

    ○中山千夏君 よろしくお願いします。女の人の側ばかりが傷つくというような規制では非常に困るので、ある種、女の人は被害者というところがあるので、それの受け皿をつくる、更生してもらう受け皿をつくるというのは、とても考え方としては大事なポイントだろうと思うのですね。それが時代にマッチしない、先細りになっているというところが非常に気がかりなわけです。よろしくその辺のところを考えていただきたいと思います。  次に、国有地の問題で、法務省の南青山の東京矯正管区というところが国有地等有効活用の対象の土地に挙げられているというふうに聞いています。この計画についてちょっと短目に御説明をいただきたいんですが。
  326. 石山陽

    政府委員(石山陽君) まず、私ども施設の問題でございますので、私どもの今の計画だけについて簡単に御説明申し上げます。  今、中山委員おっしゃいましたのは東京矯正管区の建物だと思いますが、これは昭和二十五年に建築されました木造建築物でございまして、老朽化が非常に著しくなっております。しかも、その間の時勢の推移によりまして周辺がいわゆるマンション等住宅地になっておりますので、機能的にも周辺環境とマッチしないというようなことがございましたので、現在地の改築をあきらめまして、先般移転を終わりました東京都中野区にあります旧中野刑務所わきの用地へ移転整備するという形で現在作業を進めておるわけでございます。管区の移転計画は、ただいまの事務的な予定では五十九、六十年の二事業年度をもって完了する予定でございます。  以上、私の方の関係からはそのようにお答え申し上げます。
  327. 照井利明

    説明員(照井利明君) それでは、今国有地等有効活用の関係をおっしゃいましたので、この推進本部でどのようにしていくかということにつきましてお答えを申し上げたいと思います。  国有地等有効活用推進本部という本部、昨年の十月二十一日の閣議で設けられたわけでございますが、その後、十月二十八日、それから二月三日、二回にわたりまして推進本部の会議を開いておりまして、第一回の会議におきまして、本部長でございます総理から、国有地等の有効活用を積極的に進めていく必要がある、そのために現在使用中の行政財産等も含めて幅広く総点検をしなさい、それからその有効活用の可能性あると認められる財産にっきましては民間活力の活用という点に重要を置いてその有効活用の具体的な方策を検討しなさいという御指示をいただいたわけでございます。  それ以来、関係省庁の方にその総点検をお願いいたしますとともに、いろいろ打ち合わせをしてまいったわけでございますが、その結果、その第二回目の二月三日の会議におきまして、まず第一に今後の有効活用を進めていくに当たりましての手順とかあるいは民間に処分する場合のその処分の方法等についての申し合わせをいたしました。それとあわせまして、それまでしていただきました総点検の結果、民間活力の導入の可能性があると考えられる財産についての報告を受けたわけでございます。今おっしゃいましたその東京矯正管区もその中の一つとして挙げられてきたわけでございます。それで、これらの財産につきましては先ほど申し上げました今後の進め方の手順等の申し合わせに基づきまして、ただいま関係省庁におきまして今後どのような形でこれを活用していくかということを検討していただいているわけでございます。  それからまた、この本部の会議におきましては、本部の活動に資するために、内閣官房副長官を主宰者とする企画小委員会を設け、その国有地等の有効活用の具体化の促進のために必要な事項の企画推進に当たっており、その企画推進を行うに当たっては、民間の有識者から成りますアドバイザリーグループというものの意見を求めながらそういうことをやっていくということが決められたわけでございまして、そのアドバイザリーグループの第一回の会議を実は先般四月三日に開いております。今後このアドバイザリーグループ等の御意見をお聞きしながら、それぞれの施設、財産につきましての有効活用の具体的な方策を関係省庁において検討していただくという段取りにしている次第でございます。
  328. 中山千夏

    ○中山千夏君 矯正管区を移転して、そして中野に新しくつくる、その費用の一部を今度の予算に計上していらっしゃるということなんですが、大体どのくらいかかるものなんでしょうか。
  329. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 具体的な金額はただいま御審議中の五十九年度予算、これが成立をまって実施計画で確定することになろうかと思います。ただ、五十九年度の私どもの今承知している限りでは、ちょっと概数で申し上げることをお許しいただきたいのでございますが、十数億というふうにただいま承知しております。
  330. 中山千夏

    ○中山千夏君 私全くこういう予算書なんか見ていると頭がおかしくなっちゃうぐらいに素人なんで大変苦労したんですけれども、大体法務省が移転をして建物を建てる、それに幾らお金がかかるというのが当然どこか私がいただいた資料の中に出ているかと思って探しましたら全然出てこないんですね。何かこれはもう管轄が大蔵省の方に移してしまったからということで、大蔵省と建設省の国有地についての特別会計ですか、そういう書類の中に出ていたんですが、そこも大体全部の概算ぐらいしか出ていなかったんですね。これはどうしてそういうふうになっているのかというのが非常に不思議だったんですけれども
  331. 吉本修二

    説明員(吉本修二君) ただいまの御質問の件でございますが、正式の名称は特定国有財産整備特別会計というところですけれども、実は現在の財政法に規定がございまして、予算の成立後それの具体的な実施内容については計画をつくる、それはこの場合でしたら法務大臣と大蔵大臣が協議して決める、こういう制度になっておりまして、したがって現在御審議いただいている予算は、総枠としては御審議いただいている枠は決まっているわけですが、中身についてはまだ未定である、こういうふうな内容になっておるわけでございます。
  332. 中山千夏

    ○中山千夏君 それで、今大体概算の新築の費用というのを教えていただいたわけなんですけれども、最初に単純に幾らぐらいかかるのかなと思って問い合わせましたところ、どうもそれは言うのはよくないというふうに言われたんです。これは公表してしまうと、今度業者との関係で、業者が非常にそれを知りたがっているので、それを知られてしまうと困るんだと。私はそういうこと全然気がつかないものですから、お話聞いてなるほどと思ったんですが、でも法務省に関して予算審議をしようというときには法務省がどのくらいの見積もりを立てて例えば新しい物を建てようとしているのかというようなことは、変な意味じゃなくてやっぱり知りたいと思うわけですね、審議する側としては。ところが、それが往々にして業者に漏れるからなかなか明らかにできないというような話を聞いて、なるほど新聞なんかでもよく入札の前に大体業者が値段を知っていたというようなことも聞きますし、それからいろいろなそういう関係の人に話を聞いたら、そういうことが多いということも聞いたんですね。  だからといって、やっぱり私たちが審議をするときにそれがとってもわかりにくく、その値段がわかりにくくなっているというのもぐあいが悪いし、お話を聞くとなるほど隠しておかなければいけないというのもわかる気がするし、これはとてもぐあいの悪いところだというので私も考えたんですが、つまるところは、戻っていくところは関係者の何といいますか、今はやりの政治倫理というのですか、例えば特定の業者にだけそういうものを漏らさないというような姿勢が、もちろん行政に携わっていらっしゃる議員の方も大臣の方も含めてそういう姿勢があれば大丈夫な話なんですね。それがないために何かとっても秘密が多くなってしまったり、審議の場で何となく言いにくいことができてしまったりというのがやっぱりあるんだなということをこの質問を思いついたばかりに今度経験しまして、その辺のことはどう考えていらっしゃるんでしょう。ちゃんと伝えなければいけない、審議の場にちゃんとしたことを言わなければいけないということと、それからそういう簡単に言えば汚職を防ぐために余り出せないというようなこととの兼ね合いというのはすごく苦労なすっているんでしょうね。
  333. 吉本修二

    説明員(吉本修二君) 大変難しいお話でございますが、予算というのは御審議いただくわけですから、その内容はできるだけわかりやすいものでなければならない。それは一つの基本的な考え方です。そのとおりだと思います。したがって、私どもとしても例えばこの特特とも略称いたしますその特別会計の施設がどの程度の数をやるか、きょうの予算の御説明でも申し上げておりますが、特待で約八十億、十九施設というのを御説明しておりますけれども、そういうような話で、ある程度との程度のことをやるかというのはできるだけお話しするようにしております。それから、特に個別の問題になりますと、今お話がありましたとおり国会審議は公開でございますから、細かなことまではいろいろ支障があるかと思います。ただ、できるだけの、個別の問題についてといいますか、きょうの御質疑のような点について個々具体的なケースについてどの程度お答えするかという御判断は法務当局の方でやっていただく、こういうことかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
  334. 中山千夏

    ○中山千夏君 ちょっと話戻りますけれども、小委員会の方でアドバイザリーグループという方たちをお頼みになっていらっしゃると聞きましたけれども、リストいただいたのですが、ちょっと私も不案内なものですからどういう方たちか余りはっきりわからないんですけれども、その中に環境問題の専門家だというふうに言えるような方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
  335. 照井利明

    説明員(照井利明君) アドバイザリーグループの人選に当たりましては、この本部が先ほどもちょっと申し上げましたように国有地等について民間活力を活用してその都市の再開発あるいは住宅の建設等を促進していくということを目的としておりますので、そういう観点から見ましてその方面で特に高い識見あるいは経験等をお持ちの方ということでお願い申し上げた次第でございまして、特に環境という面といいましょうか、広くその都市計画等の観点を考えるに当たりましては当然環境問題等も考えるわけでございますから、そういう面も含めた形での識見をお持ちの方々であるというふうに考えております。
  336. 中山千夏

    ○中山千夏君 ちょうど今度の予算の時期に法務省矯正管区があったところが処分対象になるということがあったわけですが、新聞なんかでも国有地の処分に関していろいろと不正があったとか、それから先ほども国鉄白河駅の福島交通の問題が出ていましたが、不当にだれかがもうけてしまったというようなことが後々になって出てくるんですね。そうすると、やっぱり一つの会社が何だかとても得をしちゃった、法的な手続やなんか皆さんがなさる手続一つ一つは正しかったにせよ、だれかが不当にもうけてしまったみたいなことがあると、ほかの一般国民というのは税金を納めるのもばかばかしいという気になっちゃうんですね。だから自分たちもなるべくごまかしてやろうというふうな気になりがちですから、ああいう事件は本当によくないと思うんです。だから、殊に今度は法務省に関係した土地でもありますし、ぜひ後々になって何か変な話が出てこないように、これはまた管轄がいろいろあって、どなたに責任を持って約束していただけばいいかというと、法務大臣だけに全責任というのも申しわけないのかなと思いますけれども内閣のお一人として法務大臣にこの土地の処分に関して適正に、国民が不当感を持つようなことのないように、処分をきちんと見守っていくという保証をいただきたいと思うんですが。
  337. 住栄作

    国務大臣住栄作君) この特定国有財産整備特別会計の問題でございますけれども、売却した金で建てていただくわけですから、私どもできるだけ高く売ってもらって、回していただく予算が多くなった方が実は大変ありがたいんです。とにかく行政をやっていく城ですから、できるだけ立派なものをつくってもらいたいわけなんです。それにいたしましても、処分につきましては私専門外でございますけれども、公正な売り渡しでございますか、そういう方法でやっていただく、これはルールとして決まっておるわけでございますから、そういう方法できちっとやっていただいて、我々に回ってくる金が多くなれば大変ありがたいと。ですから、そんなような疑惑を招くようなことでこういう国有財産の処理は行ってはいけない、慎重の上にも慎重にやっていただかなければならない。これはもう大蔵省の方でも十分やっていただいておると思います。
  338. 中山千夏

    ○中山千夏君 よろしくその方針でお願いいたします。  最後に、これはちょっとこの間も触れましたけれども、死刑執行についてお伺いしたいですが、先日質問いたしましたときに執行者に手当を出しているというお話を伺いました。その手当はどのくらいお払いになるものなのか。  それから執行に当たる担当者をどのように決めていらっしゃるのか。だれがどのように決めていらっしゃるのか。  それからもう一つ。三番目に、そうたびたびあることじゃないですし、それから大変微妙な問題ですから、法務大臣はお一人しかいらっしゃらないから執行命令は嫌だというわけにはなかなか、法務大臣がお一人しかいられないためにそこのところは非常に責任は重いわけですが、執行担当になられる方はたくさん人数がいらっしゃる。その中から選ばれたときに、自分はちょっと嫌だ、この職務は外してほしいというふうに担当の方が言われたときにはどういう処置をおとりになるのか。その三つの点です。それについて教えていただきたいと思います。
  339. 石山陽

    政府委員(石山陽君) まず一番目の手当の額でございますが、五十八年度予算において認められておりますこれまでの死刑執行手当という名前の手当は、本務者が一回につき五千八百円でございます。それから補助者が三千二百円ということになっております。  それから、二番目の配置といいますのは、実際の執行に当たるときの職員の人数とか、どういう部署につくかというような意味でございましょうか。
  340. 中山千夏

    ○中山千夏君 いいえ、そうじゃなくて、担当者をお決めになるわけですね。つまり、ある役職についていれば当然これをする、例えば所長が立ち会うとか、そういう方は別として、担当の方をお決めになるんだと思うんです、執行があるときに。それをどなたがどのような考えてお決めになっているか、どのような方法でお決めになっているかという質問です。
  341. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 質問の意味を十分理解しませんで失礼申し上げました。  その意味の配置ということでございますれば、これは各施設によって多少運用は異なりますが、順点と申しまして順番で割り当てるという方法をとっております。  それで、それにかわりまして三番目の御質問でございますが、担当者がそういう執行作業に従事せよということを断った場合ということなんでございますが、これは私御質問に驚きまして過去に前例がなかったかよく調べさせましたけれども、幸いにも我が矯正職員には職務命令を断った者は一人もこれまでございません。仮定の問題になりまするけれども、そういうことは万なきようふだんから、厳粛な作業であるけれどもこれはつらい職員の義務であるという教育をしておりますので、今後ともそういうことはないものだというふうに確信いたしております。
  342. 中山千夏

    ○中山千夏君 そうすると、やっぱり義務だということになりますと、これはもちろん前例がないということですから仮定になるわけですが、兵役拒否などというものが世の中にはありまして、どうしても自分は自分の宗教なり信条なりで鉄砲を持つのは嫌だといって兵役を拒否するという場合がありますね。そういう方が看守になられないとも限らないという気がするんです。もしそういう方が出てこられた場合は、これはやはり首しかないんでしょうか。
  343. 石山陽

    政府委員(石山陽君) 実際問題としては仮定のことになりますので何とお答えしていいかちょっと困るのでございますが、例えば先ほどの意味での配転、作業の配転でございますね。その際にも、私ども、そういう作業の性質にかんがみまして、例えば本人自身の家族が重い病気であるような人は順点から外して配転するとか、そういった細かな気配りを実は上司はして、つらい仕事だがやれというふうに看守に命じておるわけでございます。それで、いろいろ説得いたしましても、仮定の問題として、どうしても服務しないという者が出た場合、これは、私どもの仕事の関係からいいますと、国家公務員であります以上職務命令をかけてなおかつ従わないということになれば、その職務命令に対する不服従という意味で先生おっしゃる懲戒というふうな問題が起こり得る可能性はございますと、そのように思います。
  344. 中山千夏

    ○中山千夏君 わかりました。どうもありがとうざいました。終わります。
  345. 大川清幸

    委員長大川清幸君) 以上をもちまして法務省所管に関する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会