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1984-03-31 第101回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月三十一日(土曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      藤田  栄君     園田 清充君      柳川 覺治君     徳永 正利君  三月三十日     辞任         補欠選任      徳永 正利君     大浜 方栄君      宮本 顕治君     吉川 春子君  三月三十一日     辞任         補欠選任      園田 清充君     柳川 覺治君      藤田 正明君     杉元 恒雄君      安井  謙君     水谷  力君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大川 清幸君     理 事                 竹内  潔君                 前田 勲男君                 山田  譲君                 飯田 忠雄君     委 員                 岩動 道行君                 大浜 方栄君                 海江田鶴造君                 杉元 恒雄君                 名尾 良孝君                 水谷  力君                 柳川 覺治君                 寺田 熊雄君                 橋本  敦君                 吉川 春子君                 柳澤 錬造君                 中山 千夏君    国務大臣        法 務 大 臣  住  栄作君    政府委員        法務大臣官房長  根岸 重治君        法務大臣官房司        法法制調査部長  菊池 信男君        法務省刑事局長  筧  榮一君        法務省保護局長  吉田 淳一君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   山口  繁君        最高裁判所事務        総局人事局長   大西 勝也君        最高裁判所事務        総局民事局長兼        最高裁判所事務        総局行政局長   上谷  清君        最高裁判所事務        総局刑事局長   小野 幹雄君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    説明員        警察庁刑事局保        安部防犯課長   古山  剛君        労働省労働基準        局監督課長    野崎 和昭君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 大川清幸

    委員長大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十八日、藤田栄君及び柳川覺治君が委員辞任され、その補欠として園田清充君及び徳永正利君が選任されました。  また、昨三十日、徳永正利君及び宮本顕治君が委員辞任され、その補欠として大浜方栄君及び吉川春子君が選任されました。  また、本日、園田清充君、藤田正明君及び安井謙君が委員辞任され、その補欠として柳川覺治君、杉元恒雄君及び水谷力君が選任されました。     —————————————
  3. 大川清幸

    委員長大川清幸君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は去る二十七日の委員会において聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 山田譲

    山田譲君 余り時間もありませんから、なるべく簡潔に御質問申し上げたいと存じます。  初めに、裁判官増員につきましてまずお伺いしたいのは、そもそも裁判官定員は一体だれが決めるのかという問題でございます。もちろん法律法務省から出してあるわけですけれども、中身は最高裁関係することも随分あるんじゃないか。そうしますと、増員を九名必要だと言っても、その九名というのはだれが決めたのか、決めて提案されたのかということについてまずお伺いしたいと思うんです。これはどなたになるか、まず最初法務省かと思いますが、大臣でなくても結構でございますけれども大臣だったらもっといい。
  5. 菊池信男

    政府委員菊池信男君) この増員内訳をまず申し上げますと、地方裁判所における特殊損害賠償事件等処理充実強化のために四名、それから同じく地方裁判所での民事執行法に基づく執行事件処理充実強化のため二名、家庭裁判所における少年一般保護事件処理充実強化のための三名という増員内訳になっております。この九名という関係につきましては、裁判所の方で人数を実質的にはお決めになったというような関係がございますので、その関係裁判所の方から御説明いただきたいと思います。
  6. 山田譲

    山田譲君 九名の内訳とか根拠は、またもちろん次にお伺いしますけれども、まず基本的に裁判官定員というのは一体裁判所決めるのですか、法務省決めるのですか。その問題なんです。
  7. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 裁判官定員につきましては、裁判所におきまして事件の適切な処理のためにどの程度の人員が必要であるか、種々観点から検討するわけでございます。片方ではいろいろな種類の事件係属状況をにらみまして、他方せっかく定員の枠をいただきましても、委員御承知のとおり、判事給源は極めて限られてございます。弁護士あるいは検察官から判事になられる方もございますけれども、原則として判事補十年たった方から判事になっていただく、こういう点がございまして判事給源制約がございますので、どの程度充員が可能であるかというようなことをかたがたにらむわけでございます。そのような観点で考えましておおよそ何名が適当だというふうな判断をいたしまして、それで定員法の一部改正の立法依頼法務省にお願いする、こういう仕組みでございます。
  8. 山田譲

    山田譲君 そうすると、実質的には全部最高裁でお決めになられて、後は、形式的にその法案を作成したり、法案を提案したりする、それは法務省がおやりになる、こういうことですか。
  9. 菊池信男

    政府委員菊池信男君) おっしゃるとおりでございます。
  10. 山田譲

    山田譲君 それでは次に参りますが、今もちょっと話に出ましたように、九人の判事増員が必要である、こういうことでございますけれども、九人というふうに決められたその根拠はどこにあるか、あるいは「適正迅速な処理を図る」というふうなことを言っておりますけれども、その九人で適正迅速な処理が図れるのかどうか、そこのところをお伺いしたいと思うんです。
  11. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 先ほど調査部長から御説明申し上げましたように、地方裁判所におきまして公害あるいは医療過誤であるというような特殊損害賠償事件が多数係属してございます。その事件の適正な処理を図るために判事四名の増員が必要である。それから、地方裁判所におきましては民事執行法に基づく事件も非常に急増いたしております。かたがた家庭裁判所におきまして少年一般保護事件もかなり増加いたしております。これらの充実処理というふうにそれぞれ柱を立てておりまして、二名、三名の内訳を示しでございますが、これはいわば増員の実質的な理由になっているわけでございます。かたがた先ほども申し上げましたように、せっかく枠を広げていただきましても充員ができませんようでは甚だ申しわけないわけでございまして、今年度における判事充員現実可能性を見ながら九名ということにしたわけでございまして、数は比較的少のうはございますけれども、これだけの増員措置をとっていただければ事件の適正な処理に寄与するところは大きいのではないかというように考えております。
  12. 山田譲

    山田譲君 現在の裁判官の数、これは定員で決まっているわけですが、実際にこの数が全体的に見て、裁判官の数、千三百幾らというのは多いというか、適正な数字と思うかどうか。それは当然裁判というものがどうも訴訟が長引き過ぎはしないかというふうなおおよその非難があるわけでありますけれども、そういうものにこたえるだけの人数となっているかどうか。この九人だけの増員だったら、どうもその答えにならないような、極端なことを言うと、もっとふやしたらどうかというふうな問題にもなると思うけれども、その辺はどうですか。
  13. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 裁判官としてどの程度の数が適正であるかというのは非常に難しい問題であろうかと思います。諸外国との比較において考えますと、諸外国比較しますと我が国の裁判官の数があるいは少ないのではないかという御指摘もあろうかと思います。たた、諸外国との比較で考えます場合には、それぞれの訴訟制度なり司法制度、あるいは国民法意識といったようなものを抜きにしては考えられないわけでございます。現在の日本裁判官の数からいたしますと、確かに訴訟遅延を問題にされる点もございますけれども、最近は逐次増員をお願いしてまいっておりまして、平均審理期間で見てまいりますと、徐々に短縮されている傾向がございます。したがいまして、現在の時点におきましては、現在程度裁判官の数で何とか国民の皆さんに御迷惑をかけないような形で裁判の適正な処理が図られているのではないかというように考えております。
  14. 山田譲

    山田譲君 これは単純に件数だけで割り切れないところもあると思うんだけれども、最近の傾向として、今ちょっとおっしゃられたのですが、裁判の時間が次第に短くなっているというふうなことをおっしゃったんですが、それははっきりそう言うことはできるわけですか。
  15. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 先ほどちょっと申し上げましたように、訴訟平均審理期間でございますが、既済事件に基づきまして平均審理期間を調べているわけでございますが、例えば地裁民事通常第一審訴訟、これで見てまいりますと、四十九年には十六・九月かかっておりましたのが五十七年には十一・五月というように短縮されております。それから、同じく地裁刑事通常審訴訟についてみますと、四十九年におきましては六・六月かかっておりましたのが、五十七年には三・八月というように短くなっております。それから、簡裁につきまして見てまいりますと、四十九年は、民事訴訟でございますが、五・五月かかっておりましたのが、五十七年には三・四月、それから刑事は四十九年が三・九月でございましたのが、五十七年には二・九月というようにそれぞれ短縮されている。これは既済事件について平均審理期間を見たわけでございますが、未済事件につきましてもやはり平均審理期問短縮傾向をたどっております。
  16. 山田譲

    山田譲君 短縮傾向にあるのは結構だと思うんですけれども、その理由ですね。それは裁判官を逐次増員していったからそうなったのか。それともほかに、まあこういうことを言っては失礼ですけれども裁判官がやっぱり少しでも早くやろうと努力した結果であるということなのか。それはどちらですか。
  17. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 山田委員指摘のとおり、裁判官増員が図られてきたというのも一つの原因であろうかと思われます。それから、訴訟関係人の御協力を得ることが訴訟の促進につきましては必要不可欠な前提でございますが、そういう訴訟関係人の御協力が得られて逐次短くなってきた、こういう面もあろうかと思います。それからもう一つは、事件内容が、最近でございますと、クレジット関係訴訟のように比較的類型的、定型的な処理になじみやすい事件がかなり多くなってきておる、そういうことも相まちまして平均審理期間短縮ということが出てきているのではないかというように考えております。
  18. 山田譲

    山田譲君 事件の数の問題ですけれども、例えばいただいたこの資料簡易裁判所の、とりわけ民事の問題ですけれども、特に民事事件について簡易裁判所のこの数字を見ますと、五十五年との比較したものがありますが、これは圧倒的に事件がふえているわけですね。そうしますと、常識的に考えると、やはり九名やそこらの増員、毎年九名足らずの増員をしているようでございますけれども、その程度増員で果たしてこれだけふえている民事事件をさばき切れるのかどうかという、そういう感じがするんですけれども、その辺いかがですか。
  19. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 御指摘のとおり、簡易裁判所における民事訴訟増加傾向は極めて著しいものがございます。ただ、この事件のほとんど多くは先ほど申し上げましたクレジット関係訴訟でございます。したがいましてこの種の事件につきましては非常に欠席判決の率が高うございますし、類型的な処理が可能であるわけでございますので、数字にあらわれたほどの負担増につながらないわけでございます。ただ、そうは申しましてもかなり数量的には多くなっておりますし、書記官事務官事務の面ではかなり負担が多くなってまいっております。したがいまして、そういう点につきましても、今回の法律案関係資料にもございますように、簡裁における一般職増員、これらの措置も考えているわけでございます。
  20. 山田譲

    山田譲君 事件がそのようにふえているけれども、中身的に比較的そう複雑な事件ではない、そういうようなお話でありますが、そういうことになりますと、今ちょっとお話に出たように、裁判官以外の書記官であるとか、あるいは事務官という人たちですね。こういう人たち負担はもうかなりなものじゃないか、こういうふうに思うわけです。それで、いわゆるその他の職員というふうな人たちが、これはもうふえていないわけでして、むしろとりわけ事務官の方については減らすような方向にあるようですけれども、そうすると書記官なり事務官負担というものは今以上にどんどん重くなってきはしないか。しかも裁判官の数はふえていくし、事務官の方は減っていくということになれば、やっぱりどうしてもその負担がいわゆるその他の職員人たちに非常にかかってくるというふうに考えられるんですけれども、その辺はいかがですか。
  21. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 事件処理には裁判官増員だけではなくて、裁判官を補佐する書記官事務官増員措置も必要であることは御指摘のとおりでございます。法律案関係資料の十七ページにございますように、本年度におきましても先ほど申しました特殊損害賠償事件あるいは民事執行法に基づく執行事件少年一般保護事件処理充実のために裁判所書記官につきましては七名、家庭裁判所調査官につきましては三名、それから事務官につきましては合計二十九名、この増員はお願いしているわけでございます。  他方政府定員削減計画というものがございます。私ども司法部でございますからそれに拘束されるわけではございませんけれども、現在の厳しい財政事情のもとでやはりそれ相応に考えていかなければならないということで司法行政部門というのがございまして、そこではいろいろ統計報告を出すとか、種々調査報告上級庁に出すとか、そういう司法行政事務がございます。ここら辺のところで合理化簡素化を図りまして、その分で三十九名減を立てまして御協力をいたしておる。差し引きプラス・マイナス・ゼロにはなりますけれども裁判部門充実強化につきましては司法行政部門を削りながら図ってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  22. 山田譲

    山田譲君 定員充足状況といいますか、資料の十八ページにございますけれども、これは十二月一日現在だそうですが、これによると、判事欠員が二十九名、判事補が一名、簡易裁判所判事が十九名、こういうふうになっておりますけれども、その後三月三十一日までに、きょうまでにこれはどうなるか、それから来年、あしたからどういうふうに欠員を埋められるか、そのことをちょっと御説明願いたいと思います。
  23. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者大西勝也君) 裁判官充員関係でございますが、ただいま御指摘のように、この資料の十八ページでございますと、昨年の十二月一日現在で判事で申しますと二十九名の欠員があるということでございます。それで本法律案を通していただくとしますと九名の増員ということになりまして、これとの関係では三十八ということになるわけでございますが、それ以外に特にこの二—三月あたりでおやめになる方というのは相当ございまして、それが大体三十人程度というふうにお考えいただければいいと思いますが、それで六十数名という数でございます。それを今度判事補から判事になってまいります者を中心に充員をするということで四月になりますとほぼこれは埋まる、そういう関係にあるわけでございます。
  24. 山田譲

    山田譲君 それじゃついでに、いわゆる司法官の司法試験がありますね。あれの応募状況というふうなものは最近どうなっていますかということと、皆さん合格した者は研修所に入れて二年間研修をおやりになるわけですね。それを判事とか、検事とか、弁護士、そういうふうに分けられると思うんですが、その内容というか、傾向ですか。つまり判事になる入がふえているか減っているか、あるいは弁護士さんの方がふえているかというふうな問題についてちょっとお願いします。
  25. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者大西勝也君) まず司法試験受験者の数、これは実は法務省の方で御所管でございまして、私ちょっと正確に今宙で覚えておりませんが、ここのところはそんなに受験者の数がふえているという状況ではないというふうに考えております。  司法試験合格者ということになりますとこれは年度によっていろいろでございますが、最近では四百五、六十名くらいが合格しておるというのが最近の大体の傾向というふうに申し上げてよろしいかと思います。それがただいま御指摘のように司法研修所というところに入りまして一緒に修習を二年間やるわけでございますが、やった後どういう志望状況かと申しますと、私どもの方の関係裁判官——判事補でございますが、判事補について申しますと大体六十人前後、六十人を超えたり六十人を若干切れるということもございます。まあ切れたのは昨年だけでございまして、それ以前は大体六十を超えております。ことしも今もう試験が終わりまして、来月になりますと面接で採用の手続をやるわけでございますが、大体六十人ちょっと切れるというところがことしの志望状況ということでございます。
  26. 菊池信男

    政府委員菊池信男君) ただいまの司法試験出願者でございますが、五十三年の年に二万九千ほどでございました。ピークでございまして、その後減少の傾向をたどっております。昨年五十八年には二万五千ちょっとという数になっております。  それから、その中で検事任官者は大体このところ年間四十名から五十名程度ということになっております。したがいまして、その余の者が、先ほどお話のございました判事補になります者と含めてのその余の者が弁護士になっておるということでございます。
  27. 山田譲

    山田譲君 そこで、裁判官の質の問題をちょっとお伺いしたいんですが、毎年資格試験をやっているわけですから資格試験に合格したのはみんな何らかの弁護士なり判事なり検事になれる、こういうことだと思いますが、裁判官の質は大体一定しているものなのか、それとも若干質を落として、そして増員を、まあ増員というか判事をふやそう、裁判官をふやしていこうというようなお考え方があるか、それとも質的にはもうずっと一定して現状を維持していこうというお考えか、そこら辺はどういうものですか。それとまた、そういう裁判官の質的な面は、例えば諸外国なんかに比較して、またなかなか難しくて簡単に言えないと思いますけれども、大体の考え方としてほかの国並みということは言えますか。
  28. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者大西勝也君) まず裁判官の質を過去から現在、将来にわたってどういうことかということから申し上げますと、これはまず結論から申しまして、質は従前と同じように維持していくということでございます。まあ何をもって裁判官に最低限必要な資質がということは、これは非常に難しいわけでございます。一概に申し上げることは非常に難しいわけでございます。抽象的に申しまして私どもとしては真に裁判官にふさわしい資質を持った人ということで、能力、人柄、その他いろいろな面から考えるわけでございますが、それは司法試験合格者の推移にかかわらず、少なくとも今までのところは同じような質を維持するということで採用しておるわけでございまして、そういう意味最初総務局長から申し上げましたように、どんどん揺れば幾らでも採れるかもしれないけれどもそうはいかないという意味から、充員の面からの制約というものがあるわけでございます。  それから、後で御質問になりました諸外国との比較ということ、これもまだまだ非常に難しいわけでございます。それぞれの国によりまして司法制度のあり方というものも日本国とは非常に違うわけでございまして、それぞれの裁判制度との関係でどういう資質の人が必要かということも決まってくるということでございまして、一概にどちらが上とか下とかということは非常に申し上げることは難しいということであろうかと思います。
  29. 山田譲

    山田譲君 司法研修所教育基本方針といいますか、何を教育されるか、もちろん専門的なこともやられると思うんですけれども、私はやっぱり裁判というものの性格から考えて、倫理というか、そういうものが非常に重要になってくるんじゃないかと思うんです。それはもちろん裁判官に限らず、検事はもちろんでしょうし、弁護士さんについてもそういうことが言えるんじゃないかと思うんです。そういう裁判に携わる者の倫理、道徳的な面についての研修というんですか、それはやっぱり相当やっておられるわけですか。
  30. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者大西勝也君) 司法試験を通りました者につきまして司法研修所で二年の修習をやっておるわけでございますが、その二年の修習のうちで八カ月間は司法研修所というところに集めまして修習をする、あとの期間はそれぞれの所属地へ参りまして、裁判所、検察庁、弁護士会というふうに回りまして、現実に実務を裁判官検察官弁護士等がやっておられるのについ て学んでいく、そういうやり方をやっておるわけでございますが、ただいま御指摘のように、裁判官について申しますと、裁判というものは単に事実に法律を適用してすぱっと出てくるものだけではございませんで、法律知識だけではなくて、広い知識、教養というようなものが必要であるわけでございます。御指摘のように、裁判というものは情理相兼ね備わったものでなければいかぬということでございます。したがいまして、司法研修所におきましてもそういう意味での修習教育ということは常々心がけておるところでございまして、いろいろカリキュラムの中にもそういうものを取り組んでおりますし、現地で修習をしていただく際にも、そういうことを指導官が十分留煮の上で修習をさせていく、こういうことを考えておるところでございまして、そういう意味での配慮というものはやっておるつもりでございます。
  31. 山田譲

    山田譲君 私、役人としての裁判官、あるいは検事さんというふうな人たちももちろんですけれども、それ以外に私は非常に重要なのは、やっぱり弁護士さんだと思うんです。弁護士さんはもちろん自由にいろいろな自分のお気持ちでもってやるので、役人じゃありませんから、その面では違いますけれども、やはり裁判を担当する弁護士さんの倫理道徳観というようなものはこれまた非常に大事な問題だと思うんですけれども、そういうことについて司法研修所ではやはり何か教えておられるわけですか。
  32. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者大西勝也君) 御指摘のように、裁判というのは裁判官だけでできるものではございませんで、弁護士その他の訴訟関係人の御協力というものがあって初めて立派な裁判ができるわけでございます。そういうことで、弁護士さんについてのただいまおっしゃいますような倫理教育というものも必要なわけでございまして、先ほど申し上げました二年間の修習期間でそういうことをいろいろ教えていく。それから現実研修におきましても民事弁護とか刑事弁護とかという科目がございまして、弁護士さんから来られた教官が担当しておられるわけでございますが、例えばその中にも弁護士倫理というふうなカリキュラムがございまして、そういうふうな講義、まあ講義だけで済むわけのものではございませんが、そういうものも行われておるということでございます。
  33. 山田譲

    山田譲君 とりわけ、私がある程度お聞きしたいのは弁護士さんについてなんですけれども弁護士さんは国会議員の中にもたくさんいらっしゃるから、国会議員の弁護士さんはそんなことないと思うんですけれども、やっぱり田舎、まあ田舎というか、ちまたへ行きますと、いわゆる昔言われたような悪徳弁護士というふうな感じのするのがときどき見えてしょうがないわけです。  私、基本的に聞きたいんですけれども、非常に難しい事件もあるだろうけれども、中には単純な事件がある。例えば、わいろをもらったかもらわないかというふうなことは、これはもう極めて単純な、事実は一つしかないわけですから、その一つの事実をめぐって、こっちはもらわないと言うし、こっちの人はもらったと言うわけですね。これは一体どういうことかと思うんです。つまり、もらってないという弁護士をする人は、もし事実が本当にもらってあったとした場合の話ですが、もしもらった場合、もらってないという弁護をする弁護士さんというのは、恐らくは真実を知っていると思うんですよ、この人はもらってあるということをね。弁護士さんはそうでなければ弁護できないと思うんです。それにもかかわらず、もらわないもらわないという弁護をするということは、これは非常にけしからぬ話だと思うんですよ。多少でも罪を軽くしようということならわかりますよ。だけれども、もらった、もらわないということは、これ、事実は一つしかないにもかかわらず、しかももらっているんだということを知っていながら、この人はもらってないというふうな主張をなさるということは、これは非常に世の中を毒するものじゃないかと思うんですが、その辺あなたに聞いても困ると思うんですけれども、その辺についての裁判をやっておられる方の気持ちというのはどういうふうに考えておられますか。
  34. 菊池信男

    政府委員菊池信男君) 今御指摘刑事事件の弁護人でございますが、確かに被疑者あるいは被告人の利益を擁護するという立場もございます反面で、裁判所の真実発見に寄与する、それによって刑事司法が適正に実現されることに協力をするという公的、いわば公益的な立場も持っておるわけでございます。この二つの立場というものは本来それ自身矛盾するとは言いがたいものでございますけれども、おっしゃいますように、ある場合には矛盾あるいは対立するような形に見える場合が出てまいります。その最たるものが今おっしゃいましたように被告人あるいは被疑者が犯罪事実を否認する、弁護人自身は何かの関係で、あるいは本人が自分に打ち明けたことによって実は有罪であるということを承知しておるという場合に、果たして弁護人としてはどういう態度をとることがよろしいのか、どういう態度をとることが許されないのかという点は、これは実は非常に古くからある、いわば難問中の難問と言ってもよろしいことだろうと思います。弁護人としての弁護義務というものがある反面で、真実義務を負っておるということの兼ね合いの問題でございます。  もちろん弁護人の任務と申しますのは、被告人あるいは被疑者の利益の擁護と申しましても、それは正当な利益でなけれぱならないということはもちろんでございまして、したがいまして、例えば日弁連が定めております弁護士倫理というものがございますが、その中でも偽証の教唆だとか虚偽の証拠を提出しての立証のようなことは弁護士としては絶対してはならないということを定めでございます。こういうような形の場合には明らかにこれはもう犯罪に該当するような違法な手段を用いての弁護でございますから、それが許されないということは間違いないわけでございますが、ただ、そこまでまいりません形で、要するに弁護人としては有罪だというふうに思いますのに被告人、被疑者が否認しております場合にどういう態度をとるべきか、その場合に弁護人も否認するということが果たしてどうかということになりますと、これは実は非常に微妙で難しい問題だろうと思います。  実はその点について直接に法律に規定があるということではございませんで、これは先ほど弁護士倫理の問題でございますとか、あるいは弁護士法の一条というのが弁護士の使命を挙げます中に、基本的人権の擁護ということも掲げる反面で、社会正義の実現ということも掲げてございますので、その辺の兼ね合いの問題になると思います。そういたしますと、やはりこの問題についての弁護士の立場というのは、弁護士法律上の義務のあり方の問題なのか、それとも弁護士としての職業倫理の問題に帰するのかという点も含めて、どういう態度が結論として正しいのかというあたりは、これは日本でも昔から議論がございますようでありますのみならず、諸外国でもいろいろ考えの分かれるような点のようてございます。したがいまして、そういうデリケートな問題でございますので、私どもここで割り切ったことを申し上げることはちょっといたしかねることでございますので、お許しいただきたいと思いますが、それがやはり弁護士法で予定しておりますような懲戒事由に当たるというようなことになりますと、弁護士会の方での懲戒手続が進むというようなことにもなろうかと思います。
  35. 山田譲

    山田譲君 もちろんこれは重要な問題ですから、ここで割り切ったってどうしようもない問題だとは思うんだけれども、何回も言いますが、とにかく事実は一つしかないわけですね。こっちの方はもらったと言うし、こっちはもらわないと言うような場合、さっきも言ったんですけれども、恐らく弁護士は当然この人はわいろをもらったということははっきりわかっていると思うんです。わかっているけれども、もらわないもらわないというような弁護をする。もらったんだけれども、こういう情状があるから勘弁してやってくれと、こういう弁護なら話はわかるんですけれども、そうじゃなくて、事実そのものを否定するというふうなことは、これは明らかにその弁護士さんというのはもらってあるということがわかっていながら、もらっていないもらっていないというふうな言い方をすることは、これは非常に社会正義に反するどころか罪悪にも近い問題になると思うんですよ、弁護士という商売をいわば利用してそういうことをやるということは。ですから、私は研修所あたりでも、やっぱり弁護士さんになる場合の人たちも入っているわけですから、そういう人たちに対しても、やっぱり弁護士倫理といいますか、弁護士のモラルみたいなものをよぽどしっかりやっていただきたいという気がしてならないんですよ。ただ金さえもうければいいというんじゃなくて、金ももうけていいけれども、やっぱり真実は真実として扱ってもらわなければ困る。真実だけれどもこの点はひとつ許してやってくれと、こういう弁護なら私はわかるんだけれども、そうじゃなくて、事実そのものを、もらったことがわかっていながらもらわないというふうな、そういうことをやるという弁護士さんはこれは私は許せないと思うんですが、その辺どんなものでしょうか。
  36. 菊池信男

    政府委員菊池信男君) おっしゃいます御指摘のところは非常に微妙な点でございますので、余りはっきりしたことを申し上げかねるわけでございますが、確かに弁護士は真実義務を負っておる反面で、被告人に打ち明けられたことを被告人の意思に反して手続の中で述べていくことはどうなのか、それがそのまま許されないとして、その場合に被告人に実はやっているのであればやっているということをおまえ打ち明けるべきではないかというふうなことで説得をすべきではないかという問題もあろうかと思います。  ただその場合に、それに応じて被告人があるいは被疑者が自分みずから進んで自白するということになればよろしゅうございますけれども、それになりません場合に、その意思に反して弁護士が独自の立場で認めていくということは果たしてどうなのかということはやはり大きなジレンマになると思います。それからもう一つ、やはり被告人、被疑者に認められました憲法上の黙秘権ということの関係もございますし、それからやはり犯罪事実の立証については検察側が証拠を提出する責任を負っておる。そうすると、その証拠として出されたものとしては立証としては十分ではないのではないかという場合には、弁護人としてはやはり無罪の弁論をする義務もあろうかというような問題ともいろいろ絡んでまいると思います。  御指摘の点は先ほど来申し上げますように非常に難しい点だと思いますが、そういういろいろな難しい点も含めて私ども承知をしておりますところでは、研修所刑事弁護の研修あるいは現地での修習の際に事案に即してそれぞれの指導官が指導していらっしゃるというふうに聞いております。
  37. 山田譲

    山田譲君 非常に難しい問題ですから、そう簡単にはっきりとお答えできる問題でももちろんないんですけれども、ひとつぜひ研修所教育に当たってもそこら辺の問題を特によくやっていただきたいと思うんです。  その次に、裁判所の、特に簡易裁判所ですけれども、これの配置の問題です。これは議員の定数の問題じゃありませんけれども、二十二年に簡易裁判所が設置場所が決まって、そのときの基準は何か当然あって、こういう基準に合致するところに置こうというふうに決まったと思うんですが、その基準、それからもう一つ簡易裁判所の数、それをまず教えていただきたいと思うんです。
  38. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) まず最初に、簡易裁判所の数の問題でございますが、御承知のとおり簡易裁判所比較的少額軽微な事件を簡易な手続で迅速に処理する第一審裁判所といたしまして昭和二十二年五月三日に設立されたものでございますが、発足当初は五百二十七庁でございました。その後ふえまして現在五百七十五庁でございます。その発足当初の、つまり現在の簡易裁判所にもなるわけですが、その配置をどのような基準でお考えになったのか、実はその辺のところは必ずしも正確なことはわからないわけでございますが、少なくとも戦後いわゆる令状主義というものが強調されまして、簡易裁判所刑事事件に関する令状発付の役割が期待されたわけでございます。そこで、その令状発付の事務の便宜上、対応いたします区検察庁とかあるいはそのもとになります警察署を標準にした行政区画を基準としておおむね二つの警察署に一つ簡易裁判所の割合で設置することが考えられたようでございます。もちろんそのほかに当時の交通事情などの地域の実情も設置の基準とされたように見受けられるわけでございます。  以上でございます。
  39. 山田譲

    山田譲君 いずれにしても三十年以上も前の話ですから、その後日本は非常に変わっているわけです。人口ももちろんふえたでしょうし、あるいはまた交通機関も物すごく発達した。こういう中で、大分つくった当時と配置が変わってきているというところがかなりあるんじゃないかと思うんですよ。資料なんか見ましても、わずか三十分以内でもって隣のところへ行けるというふうな、そういうものがかなりの箇所数あるというふうな事実ですね。そしてまた、警察署二つのところに一つというふうなことですけれども、警察署の場所も大分変わってきちゃっている。それから人口も、いわゆる都市集中化でもって片方は過疎が極端になってくると、かわりに片方は非常に多くなってくる、そのためにほとんど事件を扱わないようなこういう簡易裁判所もできているんじゃないかと思うんです。そうかと思うと、こっちの方では、簡易裁判所でありながら、物すごく事件がふえて、もうどうにもならないというふうな状況のところもあるようですけれども、その辺について再検討をして、配置場所、設置場所を再検討するというふうな、そういうお考えがあるかどうか、その辺はいかがなものでしょうか。
  40. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 山田委員指摘のとおり、簡易裁判所の設置に当たりまして考慮された諸事情、たとえば人口分布でございますとか、あるいは交通事情でございますとか行政区画、さらには警察署の配置といったもろもろの事情が現在までの三十七年の間に非常に著しく変動いたしております。したがいまして、現在の時点で考えますと、現在の簡易裁判所の配置が今日の地域社会の実情にそぐわなくなっているのではないかということが考えられるわけでございます。その結果、これはもう御指摘ございましたように、簡易裁判所の利用度を示す事件数に端的にあらわれてまいりまして、例外もございますけれども、人口の異動事件異動を伴うようでございまして、一方では大都市地域にある簡易裁判所におきましては非常に事件は増加しておる。他方、いわゆる過疎地にございます小規模の独立簡裁における事件数はかなり減少してまいっておりまして、御指摘のようにほとんど事件のない庁もかなりある。交通事情が非常に発達しておりますので、いわゆる日常生活圏というものも拡大しておりまして、日帰りの範囲もかなり広まったわけでございます。そういうふうな結果、裁判官職員の配置、あるいは庁舎の維持管理等々裁判所運営上のいろいろな問題が生じてきているようでございます。  結果的には、たとえば余り事件数の多くない庁には、やはり全国的に見て効率的な配置も考えなければならないわけでございますから、裁判官を常駐させずに、月に一、二回てん補をして事件処理していただくというふうな庁もあるわけでございます。そういうところでは、裁判所を利用する方々は、その裁判官がいらっしゃる日をお待ちするよりしようがない。こういう点で、やはり国民の皆さんにも実質的に御不便あるいは負担をおかけしている面もあるのではないか、こういうふうな反省も出てくるわけでございます。したがいまして、そういう現在の簡易裁判所の抱えておりますもろもろの問題を解消いたしまして、簡易裁判所の実質的な充実強化を図るためには、全国的な視野からその配置の見直しをする必要があると考えられる次第でございます。  そのような考え方から、私どもといたしましては、簡易裁判所の配置の見直しをぜひやりたい、ただ、これは下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の改正を伴うわけでございまして、法制審議会等で御審議を煩わす必要もあろうかと思われますが、その前に、やはり司法制度にかかわるかなり大きな問題でございまして、最も直接的な関係を持っております日弁連、法務省最高裁のいわゆる法曹三者の間で議論いたしまして、大筋の方向について御検討をいただくのが相当ではなかろうか、かように考えまして実は去る二月二十日、この三者協議会におきましてこの簡易裁判所、それから支部も含まれるわけでございますが、その配置の見直し、適正配置の問題を正式議題として取り上げていただきたいというように申し入れたわけでございます。現在、この問題提起につきまして、日弁連におかれましては内部でどう対応するか検討しておられるようでございます。私どもといたしましては、当面は三者協議会での協議の進行を期待しているところでございます。
  41. 山田譲

    山田譲君 大分法務省、最高裁判所におかれましても、この問題の検討が始まっているようでありますからこれ以上言いませんが、ぜひ速やかに配置についてお考えをいただきたい、検討をお願いしたいと思います。  それから、最後になりまして時間もないのですが、実は個別な問題として、私は例を一つ挙げて、それから一般論的なことをお伺いしたいのですが、神戸に神戸精糖という会社があって、これがおととしですか、解散というか、工場閉鎖して全部解雇してしまった、で、会社だけが残っている状態で、その解雇した人をめぐっていろいろ今労使紛争が続いている最中であります。  それで、私はここで個別の労使関係について云云するつもりは今のところありませんが、問題はたまたま一人の人が、使用者が黙っていてもことし三月三十一日に定年退職になる人がいまして、その人について退職金を払わなければならないという問題が出たわけですね。ところが、なかなか使用者側としてもごたごたしていますからそれを認めない。こういうことで退職金払ってないわけで、ところが、労働省の監督署が調べた結果、明らかにこれはもう基準法違反であると、こういうことで使用者を送検したわけです。これは去年の十月初旬であったわけですね。ところが今だにそのままずっとたなざらしになってきている。  それで、私はどうしてもおかしいので、ある検事さんに参議院議員会館へ来てもらって、その事情の説明を聞いたわけですけれども、そうしたら、ちょうどその日に本人を呼んで向こうの神戸の方で何か調べたというのですけれども、何か余りにも偶然と言えば一致し過ぎる感じがするのだけれども、要するに私の言いたいことは、少なくとも労働基準法のいわば番人である専門の監督官なり監督署が、これは明らかに基準法違反であると言って送検したそのものに対して全然ほうっておく、あるいはまたほうっておかないにしても、何か検討しているかもしれませんけれども、やはり国の同じ機関で、しかもこちらが専門の機関があって、そこでもって調べた結果基準法違反であると決めたものを、それを送検した、それに対して片方の検察庁がどういうふうな態度でおられるか。つまり何か聞いたところによると、たくさん順番があってまだなかなかそこまで回ってこないのだというふうなことも言っているようですけれども、仮にも労働者の生活の問題がこれかかっているわけですからね。ほかのこそ泥や交通違反の事件とは違うのであって、そういう場合に国の監督署たるものが認めて送検したものについて検察庁がいつまでもこれをただ機械的に長引かしているというふうなのはどうしても私は納得できないのですけれども、それについてまず労働省にお伺いしたいのは、労働省としてそういう自信を持ってこれこそ基準法違反であると言ってやったものが検察庁の方でもってずっとただ長引かせられるというふうなことでは、基準法が記載している労働者の保護ということができなくなっちゃう。これについて労働省は、まずどう思っておられるか、それを簡単に聞かしてください。
  42. 野崎和昭

    説明員(野崎和昭君) ただいまお尋ねの事案は、昨年の四月に定年退職いたしまして、その直後に私どもの方へ退職金不払いについて申告のあった事案でございます。  私どもといたしましては、それから夏ごろまでにかけまして何とか使用者の納得を得て争いのない額について払っていただこうということで説得を重ねたのでございますけれども、どうしても納得が得られないということでございます。それで、この問題につきましては、実は通常の事案と違いまして、法律問題として若干問題もございます。それから、労使紛争の中の事案でもあるということではございますけれども、退職した労働者が退職金を受け取れないということは、労働者の保護という見地から放置できないと判断して、検察庁の方へやむを得ず書類送検したものでございます。
  43. 山田譲

    山田譲君 労働省のお考えはわかりました。  法務省、まあ検察庁といいますか、お聞きのとおりであって、労働省としては労働者保護のためにこれは一刻も猶予ならぬ、しかもその前何回是正勧告をしているかわからない、早く払ってくださいということを使用者側に言っているわけですよ。それにもかかわらず、やらないから、もう最後のだんびらでもって送検したという、そこまで思い詰めて監督機関としてはやってくれたわけですが、それに対して検察庁は、私は個別的な事案の問題としてではなくて一般論としてお伺いしたいんだけれども、そういうふうな場合に、検察庁としては、労働者の保護とか、労働者の生活実態というふうなものを考えないのかどうかということなんですね。あるいはまた、労働基準法の専門機関である監督署がやってくれたということを考慮に入れないで、それこそイロハのイの字の最初からまたずっとやるような、時間かかってもしようがないというような態度でいるのかどうか、そこのところをお伺いしたいと思うんですが。
  44. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) お尋ねの事件、昨年十月に神戸地検で送致を受けております。当方の事情をまず申し上げて申しわけないのですが、神戸地検におきまして、昨年年末にかけて大規模な選挙違反が発生いたしております。そのような関係で、捜査が当初若干おくれたということは事実のようでございます。ことしに入りましてから、会社側あるいは当該労働者の方を呼びまして事情を聴取いたしておりまして、さらに今後それに引き続き補充の捜査をいたしまして、できるだけ早い機会に結論を出すということになっておるわけでございます。  なお、一般的な方針といたしまして、すべての事件は適正にかつ的確に迅速に処理しなければならないということは申すまでもないところでございます。現にこの争議といいますか、紛争が起こっておる問題でございまして、その意味からも一日も早く結論を出すということは当然であろうかと思います。また、労働基準監督局からの送致という点でございますけれども、もちろん労働基準監督署からの送致でございまして、しかもその事柄はこれを主管いたします行政機関でございますので、そこにおきます運用の実態あるいは、解釈というようなものについては十分の尊重を払わなければならない、また払うということで、従来対処しておるわけでございます。ただ、最終的には検察官法律判断、必要であればそこでしなくてはなりません。そのためには、やはり使用者側の言い分があればそれも聞いた上で最終的に結論を出す、その際に主管の行政官署でございます労働基準監督署の意見は十分に尊重するという態度で進んでいるものと考えております。
  45. 山田譲

    山田譲君 もう時間が来ましたから、この辺でやめたいと思いますけれども、最後に法務大臣、どうですか、労働省の大先輩でありますから。だから、ただ頑固なことを言っていないで、やっぱり労働者保護ということを十分考えた上で、労働省の大先輩らしいひとつお考えを法務大臣としてお伺いしたいと思うんです。どうですか。
  46. 住栄作

    ○国務大臣(住栄作君) この件につきまして、事実最近私実情を伺いました。今も労働省の方からも御説明がございましたように、若干の労使紛争等もあったようでございます。それだけに監督署、基準局の方でいろいろ検討もされ、努力もされた、そして最後の判断として検察庁ということになったわけでございますので、山田先生おっしゃられますように、事労働者の生活の問題であり、退職金という問題でもございますので、一般的に申し上げますならば、それは迅速な結論を下して処理すべきだ、こう考えております。具体的な事件につきましては、今刑事局長が申し上げましたように、これはもうおっしゃられたからどうだこうだというのも大変あれでございますけれども、ひとつ迅速に処理してくれるものと、こういうように考えております。
  47. 山田譲

    山田譲君 終わります。
  48. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 御質問申し上げます。  裁判所職員定員法の一部改正に関する法律案、このものにつきましては、九名増員ということにつきましては私は反対するものではありません。賛成です。ただ、その根拠については、どうもこれ読んでみますと、民事の方がふえただけだから九名でいい、こう書いてありますが、最高裁の方でいただきましたこの資料によりますと、必ずしも民事だけがふえたことにはなっていないようでして、民事刑事を比べますと、刑事の方が大変事件が多いところもあるわけですね、少ないところもありますが。増員をいたします場合に、民事の方だけ考えての増員というのでは不公平ではないかというふう。に私は考えざるを得ないのですが、いかがですか。
  49. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 私ども裁判官増員をお願いいたします際には、やはり裁判所に係争しております各種の事件の係争状況を十分検討するわけでございます。御指摘のとおり、昨今におきましては民事訴訟の増加が著しゅうございます。それに比較いたしますと、刑事は増加いたしておりますものの、ほぼ横ばいの状況にあるのではなかろうか。そのような認識から、本年度増員要求におきましては主として民事関係、それから家裁における一般保護事件の増加もございまして、家裁も柱には立てておりますが、そういう形で増員のお願いをしているわけでございまして、決して刑事の方をないがしろに考えているわけではございません。
  50. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 その点はよくわかりましたが、まだこれだけの九名の増員でいいかどうかという点については根拠がどうもはっきりいたしません。しかし、ここでいろいろ議論しましてもらちが明きませんので、この問題はこの辺にしておきます。  ただいま同僚議員から御質問のありました点で、少しく補足的な御質問を申し上げたいのでございますが、刑法の百三十四条秘密漏泄罪というのと、それから百三条の犯人蔵匿罪というのがございまして、秘密漏泄罪の方は犯人蔵匿罪よりも法定刑が軽いわけですが、その重い方の犯人蔵匿罪につきまして、ただいま同僚議員は御質問なさったと思います、弁護人が真犯人であることを知りながらこれの無罪の主張をするというのは、これは真実発見を目的とする刑事では話が合わぬではないかという趣旨の御質問であったと思いますが、この辺につきまして案は私も、古い判例がありますので、ちょっとその判例との関連でお尋ねをいたしたいと思います。  これは犯人蔵匿罪、犯人隠避罪についての大審院判例です。最高裁の判例じゃないので申しわけありませんが、罰金以上の刑に当たる犯人、これをそうであると認識しておりながら隠した場合に成立するのが犯人隠避罪なんですが、弁護人が真犯人の処罰を免れさせるために真犯人が自首をしたい、こういう決意をしようとしておるのに、その真犯人の意思をとめて、そして裁判を進めさせて結審させた場合に犯人の隠避に当たる、隠避罪になるという、これは昭和五年の大審院判例のようでございますが、こういう考えでいきますと、先ほどの同僚議員の御質問もごもっともだと思いますが、どういうことになるでしょうか、お尋ねいたします。
  51. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 突然のお尋ねで、御指摘の判例、私も記憶いたしておりませんので、その事実関係等定かでございませんので、ちょっと今それについてどう考えるかということはお答えいたしかねるかと思います。
  52. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、これはひとつ御研究願うということで、ここではもうこれ以上追及はいたしません。  そこで、せっかくの機会で時間が少しございますので、恩赦法について御質問をちょっと申し上げたいと思います。この恩赦法は法務省の御所管であると思いますが、恩赦法の第二条、第三条で大赦を決めておりますが、この大赦というのは政令で罪の種類を決めればそれでいいわけでして、その言い渡しをしたかせぬかということは論外であるというのが第三条の規定でございますね。大赦をする場合、大赦の効力、これは言い渡しを受けた者については言い渡しの効力を失う、また言い渡しを受けない者については公訴権を消滅させる、これは大赦でございますが、恩赦のこういう規定は、私はやはり国が行う恩恵的なものでありますので、それでいいのではないかと、こう考えるわけでございます。ところで、第四条に特赦というのがございますが、「特赦は、有罪の言渡を受けた特定の者に対してこれを行う。」と、こう害いてあります。そこで、「有罪の言渡を受けた」ということは、これは裁判が確定したということを意味しておるかどうかお尋ねいたします。
  53. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 第四条の特赦についてのお尋ねでございますが、恩赦法第四条の「有罪の言渡を受けた特定の者」と申しますのは、お尋ねのとおり有罪の裁判が確定した者と解しております。
  54. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 法文を見ますと、確定という言葉は書いてないんですが、「有罪の言渡」というだけでございまして、第三条の方も「有罪の言渡を受けた者については、その言渡は、効力を失う。」とありますね。もし確定という言葉が含むといたしますと「有罪の言渡を受けた者については、その言渡は、効力を失う。」というその意味内容の中に確定が含むということになりますと、確定以前の者は大赦しないということでしょうか。
  55. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 私はただいま特赦についてお尋ねでございましたのでそう申し上げたわけでございます。大赦につきましては、第三条の二号で「まだ有罪の言渡を受けない者については、公訴権は、消滅する。」ということで、例えば、一審の言い渡しがあって上訴中などでまだ公判係属中であるという場合、こういう場合は「有罪の言渡を受けない者については、公訴権は、消滅する。」ということで、大赦ができる場合に該当するということになると考えております。
  56. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 言い渡しを受ける前については、まだ言い渡しがないのですから、その罪を消そうにも消しようがないわけですよ、あるのは公訴権だけですから。だから言い渡しを受ける前については公訴権をなくしてしまうよと、これは大赦ですね。みんなもう、例えばある罪があると、その罪の者は現在検察官が取り調べ中の者であってもこれは許してやるということでしょう。それだったらましてや裁判中の者も許してやるということじゃありませんか。裁判中の者は言い渡しを受けても確定しなければ許してやらぬぞ、確定した者だけを許してやる、なぜそんな裁判中の者に対してとそれから言い渡しを受ける者に対しての間に区別を設けるのか。大赦であれば同じく適用をすべきじゃないか。もしそういう区別を設けるということになりますと身分によって区別をしたことになる。憲法十四条に違反しますが、いかがですか。
  57. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 大赦につきましては、御指摘のとおり、一号で「有罪の言渡を受けた者」、すなわち有罪の裁判が確定した者についてその対象とすることができるというふうになっておりますし、二号ではまだ裁判が確定していない者について「公訴権は、消滅する。」という形で大赦の対象になるというふうに立法がなっておるわけでございます。そこで、特赦につきましては「有罪の言渡を受けた特定の者」ということになっておりまして、これは有罪裁判が確定している者というふうに解しておるわけでございます。  その実質的な根拠は何かということでございますけれども、これは言うまでもございませんが、裁判というものはやはり確定をいたしませんと効力を一般的には生じないということが刑事訴訟法の基本原則であると思っております。もちろん刑事訴訟法には、裁判が確定しない場合でも有罪の裁判があった場合に勾留上の効力をどうするとか保釈の効力はどうするとか、そういう趣旨の特別の定めをしている場合があることは確かでございますけれども、一般的に裁判がその言い渡した内容について効力を生じてくるというのは裁判が確定した時点で生ずると、そういうふうに考えておるわけでございます。この点につきましては、やはり有罪の言い渡しを受けた者について特赦を行う、そういう形の恩赦法が戦後新憲法のもとで制定されているわけでございますが、旧憲法においても同じような恩赦の種類があったわけでございまして、従来ずっと一貫した法律の形になっておるわけでございます。これは恩赦というものは、確定した裁判についてその裁判を行政権の作用によって変更するという趣旨の性質を持つものでございます。特に、この第四条につきましては、いわゆる個別恩赦でございまして、「特定の者に対して」と申しますのは、大赦のように政令で定めるのではなくて、個別に情状をしんしゃくして、中央更生保護審査会という、まあいわば独立ではございますが一種の行政機関がそこで判断をするわけでございます。したがいまして、もしまだ裁判の確定していない者、あるいは二審でどういう裁判になるかわからない者、こういうような者につきまして中央更生保護審査会が個別の恩赦ができるということになりますと、これは司法権との関係で重大な問題を生ずると思います。そういう、私がるる申し上げるまでもなく、特赦につきましては、従来から有罪の裁判が確定した者について特赦を個別の情状をしんしゃくして行うというふうに法律が定めておりますし、そのもとに一貫して運用してきているところでございます。
  58. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ただいま御説明いただきましたが、もうあなたは法律の専門家ですからね。そんな、あなた、法律の解釈の大原則を無視した解釈をされちゃ困りますよ。  私は今大赦のところで「有罪の言渡を受けた者については、その言渡は、効力を失う。」、「まだ有罪の言渡を受けない者については、公訴権は、消滅する。」という、これにつきまして御質問申し上げたんですね。「言渡を受けない者」、これはもちろん裁判官の言い渡しがないんですから確定ということはありません。だから、それはそうですが、「言渡を受けた者」ということになりますと、「言渡を受けた者」というのは言い渡しを受けてから裁判が確定するまでの間の者と、こういうふうに今おっしゃったけれども裁判が確定する以前はどうなるのか。つまり言い渡しを受けたのだがまだ裁判は確定していない、それについては一体大赦は行わないということかということをお尋ねしたんですよ。余りくどくどした説明要りませんので、その点だけ、言い渡しを受けて裁判が確定しない者については大赦は行わないのか。それについて簡単に御答弁願いますよ。
  59. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) その点に限って申しますと、お尋ねが一号の「有罪の言渡を受けた者」にそういう場合が含まれるのじゃないかということじゃないかと思うんですけれども……
  60. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 いや、簡単にひとつやってください。
  61. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) はい。  そこで、一号には含まれません。一号では大赦の対象にはならない。おっしゃっているお尋ねの件については二号で「まだ有罪の言渡を受けない者については、公訴権は、消滅する。」というものに該当するというふうに申し上げて、それは大赦の対象になり得るのだということを申し上げておるわけでございます。再三申しますように「有罪の言渡を受けた」というこの意味は、裁判の効力として有罪の言い渡しを受けたという効力が発生したもの、そういうことで従来から考えられておるわけでございます。
  62. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私が今御質問申しましたのは、大赦というものは罪について大赦するんですよ。そう書いていますね。例えば窃盗罪、窃盗がなるかどうかしりませんが、窃盗罪というふうに書いたらその窃盗罪について全部大赦を行うと、こう言っているんでしょう。窃盗罪を犯した者はまだ言い渡しを受けなくてもこれは大赦になる。それから、言い渡しを受けた者はもちろん言い渡しの「効力を失う。」と、こう書いていますね。言い渡しを受けた者が言い渡しの効力を失うということは裁判官が言い渡せば足ることであって、その裁判が確定するか否かということは関係ないじゃありませんか。  もしあなたのように裁判が確定しなければいけないということであるならば、大赦の恩恵を言い渡しを受けて確定するまでの者は一切受けないということになる。そういうことになりますと、この罪について、ある罪について大赦をすると言っておきながら、言い渡しを受けない者についてまで大赦をやっておきながら、言い渡しを受けた者については確定しなければ大赦しないということはどういうことですか。そういう身分によって差別するということはそれは憲法十四条が禁止しているでしょう。昔の解釈ならあなたの解釈でいいですよ。今の現行憲法下ではそういう解釈は許されないと思いますが、いかがですか。
  63. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 私のお答えの仕方が悪いので誤解を招いたのかもしれませんけれども、私が申し上げているのは、例えば一審で言い渡しを受けてまだ確定していない者は大赦できるのかどうかというお尋ねでしたら、それは大赦の対象になりますということを申し上げているつもりでございます。それは、ただお尋ねは第三条の一号を根拠にしておっしゃいますので、そうではなくて二号の方に当たるのでございますということを申し上げているつもりでございます。そこで、有罪の確定裁判を受けた者について、確定裁判になっている者となってない者とでどうするのかという問題については、ただいま大赦の関係では少なくとも捜査中からあるいは確定した者についてまで大赦ということができるというふうにこの法律は定めておりますし、その点には問題はないわけでございますが、重ねて申し上げますが、それは一号ではなくて二号の場合に該当することによって公訴権は消滅するので、そういう意味で大赦の対象になっているということを申し上げているわけでございます。
  64. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 どうもあなたの解釈がおかしいのは、裁判というものと公訴権というもので、裁判の効力と公訴権の効力と、裁判の効力の方が弱いというふうにあなたはお考えですか。
  65. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 今のお尋ねに適切かどうかわかりませんが、ここで一号で「言渡は、効力を失う。」と書いてありますその「効力」というのは、裁判が確定して初めて裁判としての効力を生ずる、その効力を失う、そういう趣旨であるというふうに申し上げているわけでございます。
  66. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 裁判の言い渡しがありますと、言い渡しということでもう既に効力があるんですよ。一定期間上訴期間というものがあるために保留しているだけだ、ないということはないでしょう。言い渡されればもう効力があります。これはどうですか。
  67. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) その点はおっしゃるとおり刑事訴訟法に特別の定めを置いて、例えば自由刑の実刑の言い渡しがありますと、それまでの保釈の許可決定の効力が失われるとか、あるいは罰金の言い渡しがありますと、勾留されていた者の勾留上の効力が失われるとか、そういうふうに確定しなくても言い渡しによって、その内容によって効力が生ずる場合があることは、その特別の定めの場合に限っであることは間違いありません。しかし、裁判内容が懲役何年という、そういう主文の内容がその主文の内容として確定し執行する力を持つというのは、確定をして初めて裁判としての効力が生ずる、そこを恩赦法が対象にして大赦あるいは特赦といろいろ規定を置いているというふうになっておると理解しておるわけでございます。
  68. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 大赦につきまして、第二条にはっきりと「大赦は、政令で罪の種類を定めてこれを行う。」と書いていますよ。政令で罪の種類を定めれば足ることですね。その規定に基づいて大赦になるんです。そうでしょう。もうほかの裁判要らないんですよ。政令で決めたらその政令が根拠で大赦になる。これは最高裁の判例がありますよ。その辺のごまかしをしてはいけませんよ。ただ、私はあなたがそういう詭弁を弄して一生懸命やられるその立場は、苦しいことはよくわかります。上から何かおっしゃられておるからだと私は思いますが、こういうふうに恩赦法についてそうした特定の、普通の解釈じゃない特別の解釈をしなければならないような政治的背景は何ですか、お伺いいたします。
  69. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 罪を定めて大赦を行う、そういうことで足りることは私は先ほどから認めておるところでございます。ただ、それが一号の「有罪の言渡を受けた者」になるのか二号になるのかという点で私が申し上げておるだけでございまして、その点誤解のないようにお願いしたいと思います。  私が今申し上げていることにつきましては、何かあってというようなことではもちろん全くございませんで、これは恩赦法制定以来あるいはそれ以前にさかのぼって、そういう大赦というものはこういうもの、特赦というものはこういうものという形で規定されておるわけでございまして、私が口幅ったいので申し上げてないのですけれども、有罪の言い渡しを受けた、あるいは刑の言い渡しを受けたというような表現で確定裁判を指している条文は刑事訴訟法にも刑法にも幾つかございまして、それはその法の趣旨等から見て、前後の状況から見て、そういうことを指しているんだということがおのずからわかる場合でございますけれども、そういうふうに私の申し上げているのは、何かがあって申し上げているということでは決してございません。
  70. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この問題はそういうふうに法解釈の根本原則を無視した答弁で終始されますので、これは私は納得できませんよ。納得いたしません。納得いたしませんが、これ以上時間を費やしますと質問の時間がなくなりますので先へ進みますが、大赦で「有罪の言渡を受けた者については、その言渡は、効力を失う。」と、こう書いてあるこの「有罪の言渡」、これと第四条の「特赦は、有罪の言渡を受けた特定の者に」という「有罪の言渡」ということ、それから第六条の減刑のところで「刑の言渡を受けた者に対して」云々とあるこの「刑の言渡を受けた」という言葉、こういうものははっきりと「言渡を受けた」とありますから、言い渡しですからね。裁判が確定したとは書いてないのですよ。法律の中で書いでないことを持ち込んで、恩赦法の本来の趣旨に反するような解釈をあえて行うということは、これは法律解釈の原則に背くものだと私は思います。もし、これが刑の確定ということであるなら、裁判の確定ということであるなら、そのような法律の条文でなければならぬのですよ。大赦、これは「有罪の言渡を受けた者」でなくて、有罪の言い渡しが確定した者とすべきですね。そういう法律にしていない以上は、この法の条文どおり読んで運用するのが忠実じゃありませんか。この恩赦法というのは国会がつくった法律でしょう。その法律を行政官が勝手に自分の都合で、書いてない解釈をなさるということは一体どういうことですか。その目的をお伺いいたします。
  71. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) どうも御理解いただけないので残念なんでございますが、「有罪の言渡を受けた」というのは、有罪の言い渡しを受けた、すなわち有罪の言い渡しとしての効力が生じた、そういう者について恩赦を行うという趣旨であり、この恩赦法の趣旨については昭和二十二年に第九十二回帝国議会貴族院におきましても、その趣旨のことが政府側である大臣の方からも説明がなされております。大赦を除きましてはいわゆる確定判決の効力についてこれを少なくする、あるいはそれに伴う効果を減少するというところに恩赦の本質があると考えております。  例えば、こういう言葉のことは余り申し上げたくないのですけれども、例えば恩赦法の第九条を見ていただきますと「復権は、有罪の言渡を受けたため法令の定めるところにより資格を喪失し、」とございますが、有罪の言い渡しをして、まだ確定もしていないという場合には、それは資格の喪失ということはあり得ないわけでございます。やはり有罪の言い渡しをして、その裁判が確定したために、その刑に処せられたということで、いろいろ各法律で欠格事由を規定している、それによって資格を喪失するということを法律が予定しているわけであります。したがいまして、恩赦法の「有罪の言渡を受けた」とかという言葉につきましてはそのように解さざるを得ないと思うわけでございます。この点は恩赦法の前身である恩赦令当時も同様でございまして、従来から一貫しておるわけでございます。  そこでひとつお考え願いたいことは、こういうことでございます。もし未確定の者につきましてなお特赦ができるということになりますと、現在裁判が係属中のものについて、大赦なら政府が政令で定めるわけでございますけれども、特赦というのは政令ではございません。個別の上申に基づいて中央更生保護審査会という行政機関がこれを審査して、それを法務大臣に申し出をして、閣議で決めるという仕組みになっております。そういう裁判所が現在係属中の事件につきまして、まだ確定もしていないのに行政権が関与するというのは、やはり大赦というこういう方式以外にはこの法律は考えておらないし、従来からも考えていないわけでございます。やはり行政権と司法権というそこの両者の関係を十分考えて法律がつくられているものと私は考えております。
  72. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これはきょうはやるまいと思ったんですが、それじゃ、ちょっとお尋ねいたしますが、私がこの問題、恩赦法について質問主意書を出しました。恩赦法の六条に規定する「刑の言渡を受けた者」とはどういう意味がということをお尋ねしましたところが、それに対しまして、これは総理大臣からの答弁書ですが、答弁書には「その裁判が確定した者をいう。」と書いてあるんですよ。ところが、同じ質問書の中で、減刑令の第一条第二項に規定しておるところの「基準日前に禁こ以上の刑の言渡を受け、この政令の施行の際まだその裁判が確定していない者」、こう書いてあるので「裁判が確定していない者」とはどういうことかと、こう聞いたんです。そうしますと、それに対して、言い渡しを受けたが上訴中などの理由により裁判が確定していない者を言う、こういうわけですね。答弁書に書いていますよ。上訴中の理由裁判が確定していない者、それについても減刑をするというふうに政令は書いているじゃありませんか。これはどういうことですか。法の方で裁判が確定しなければならぬというふうに政府は解釈しておられる。その解釈しておられる恩赦法の六条を施行するための政令でどういうふうに言っておられるかというと、上訴中の理由などによって裁判が確定していない者についても減刑を行うよと、こういう趣旨だという御答弁ですね。これは矛盾しませんか。一体政令というものは法律よりも強いんですか。いかがですか。
  73. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) ただいまの御指摘の点は、一つの例にとりますと、平和条約発効の当時だったと思いますが、減刑令が出たわけであります。これは政令で定めたわけであります。減刑は政令と個別恩赦と両方ができるように法律がなっているわけでありますが、その減刑令の第一条第二項の規定の趣旨についてのお尋ねでございます。この質問書の答弁書にもありますとおり、このように回答しているわけでありますが、「基準日前に禁錮以上の刑の言渡しを受けたが、同令施行の際、上訴中などの理由により、まだその裁判が確定していない者をいう。」ということを言っておるわけでありますが、これはお尋ねがこの政令施行の際まだ裁判が確定していない者とはどういうものを言うのかというお尋ねでございますので、まさしくそこをお答えしたわけであります。しかし、この減刑令の第一条第二項を見ていただければおわかりのとおり、続きまして「その裁判が確定していない者に対しては、この政令の施行後その裁判に係る罪につき裁判が確定した時に、その確定裁判につき、」云々と書いてあるわけであります。したがいまして、あくまでも減刑の対象にするのは、なるほど減刑令を出したときにはまだ裁判が確定していない者であっても、その後裁判が確定した、それで効力が生じた、そういう状態になれば、基準日前に確定した者は減刑になるのに、そういう者は減刑にならないのは、均衡上の問題からいって、そういう者まで救済する必要があるだろうということで、その確定した裁判という状態になったときに減刑令の対象にするということを申しておるわけであります。したがいまして、この点については、要するに恩赦法の規定にありますように、先ほど来申しておりますように、確定した裁判というものについて減刑を行うという基本の原則はそのとおりになっているわけでございます。
  74. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 減刑令の第一条二項といいますのはどういうのかというと、刑の言い渡しを受けた者について実は減刑するというふうになっているんだけれども、政令を施行した際に、刑の言い渡しはしたのだけれどもまだ確定していない、こういう場合に、それじゃ、どういう方法で減刑するかという減刑の方法を決めたものですよ、これは。とにかく、刑の言い渡しを受けておれば減刑するという趣旨なんですよ。今政令を出したときに刑の言い渡しを受けておれば確定しなくても減刑するという趣旨なんです。  ただ、その場合に減刑のしようがないので、将来確定した場合の裁判を基準にして、そして今のこの減刑令で減刑する、こういうことなんですね。そういう趣旨でしょう、これは。ですから、上訴した者について減刑になるわけです。上訴して確定していない、減刑になるじゃありませんか。ということは恩赦というものは当時の政府の解釈では言い渡しさえあれば、その言い渡しについて行うものであって、確定したかどうかは関係ないということなんです。その方法ですよ。方法の問題でしょう。これはこういう解釈を自分の都合で、政府の都合で勝手な解釈をされたのでは困りますね。これ減刑令というのは恩赦法に対する政府の解釈です、出した当時の。この解釈に反する解釈に今政府がなってきたということでしょう。そうしますと、どうしてそういう解釈を変えなければならぬことになったか、その政治的理由を聞きたいということを私は質問しているんです。
  75. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 何も私どもは解決の変更をしているつもりはございません。この減刑余第一条第二項につきましては最高裁裁判一つあります。これで第一条第二項につきまして少数意見がございまして、これはまだ基準日の当時に確定して……
  76. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私の聞いていることにちょっと答えてくださいよ。私は裁判のこと、みんなよく知っています、判例は。
  77. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) それでは省略いたしますけれども、要するに最高裁の決定におきましても、基準日前に禁錮以上の刑に処せられてその裁判が確定した者にその宣告された刑を減軽するというのがまず本来である、しかしそのときに確定していなくても、ただいまのような要件で裁判がその後確定したときにその確定裁判について刑を減軽するという趣旨である、この減刑令一条二項はそういう趣旨であるというふうに理解しておるわけでありまして、恩赦法の規定とは矛盾しておらないというふうに思います。
  78. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 恩赦法の規定と矛盾していないことは当然のことでしょう。減刑令というのは恩赦法を執行するものですから、矛盾しておったらえらいことですよ。だから恩赦法の解釈は、減刑令と一本のものとして解釈しなければならぬということなんです。そうしますと、恩赦法に書いてある「刑の言渡」という言葉は確定ということを含まないという解釈にしなければ筋が通らぬではないかと申し上げているんですよ。どうですか。
  79. 吉田淳一

    政府委員(吉田淳一君) 要するに減刑令一条二項も確定裁判を対象にして減刑をするという規定でございまして、まさしく私が先ほど申しましたように、減刑は刑の言い渡しを受けた者という、確定裁判で効力を生じた者、そういう者を対象にするということと一致していると思います。
  80. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これはよく静かにひとつ考えてください、今ここでやっておってもけりがつかぬから。しかし私が申し上げることはよく考えていただかなければならぬ問題ですよ。この問題は恩赦の本質に関する問題ですから。きょうは時間があと三十秒くらいしかありませんので、これ質問しようと思ったことができなくなりました。ちょっと遠慮しましょう、あと時間がないですから。実は保護司のことについて御質問しようと思ったが、遠慮します。それでは、きょうはこれで遠慮して質問いたしませんけれども、本日御質問申しましたことについてもっとまじめな御研究とまじめな御答弁を将来いただきたいと思います。これは将来必ずもう一回質問いたします。  それじゃ、これで終わります。
  81. 橋本敦

    ○橋本敦君 きょうは裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に関連をして、法案に即しての質問をさしていただきますが、その前に法務大臣に一、二点お伺いをしておきたいと思うことがあります。  その第一は、近年再審の問題が非常に大きくクローズアップをされておりまして、免田さんの事件、そして近くは谷口さんの財田川事件というように、いずれも再審の結果として三十年にわたる死の恐怖から解放されるという画期的な事態があらわれてまいりました。私はこれは余りにも遅きに失したとは思いますけれども、我が国司法が無実の人の命を奪うようなことをしなかったという意味において誇るべき事例だと、こう思っておりますが、こうした事件からの教訓として司法行政は一体何を酌み取るべきか、この問題をこの機会に明らかにしておかなくてはならぬ、こう思うわけでありまして、その第一は、私はやっぱり捜査の過程における自白中心主義をなくすということに徹底をする、これが一つ。  もう一つは、再審の白鳥決定の最高裁の御判断からこういう事態が発展したことにもあらわれておりますけれども、再審開始の要件を合理的な範囲で広めて、再審開始を一層可能にする方向に思い切って踏み込む必要がある。  それから第三の問題としては、再審開始決定がなされたら死刑の確定判決を受けた者の身分は、同時に刑事被告人としての身分をも元に戻って取得するという考え方もありますから、その身柄については訴訟の当事者主義の原則に立ち返って保釈の手続なりあるいは釈放ということを思い切って行う必要がある。その点で法務省は谷口さんの事件でも免田さんの事件でも再審無罪の判決が出た場合に身柄については釈放するという前向きの姿勢をとられたことは大変結構だと思いますが、今私が指摘をした三点について今後の教訓として酌み取るべきだという私の意見に対して法務大臣としてどうお考えか、お伺いをさしていただきたいと思っております。
  82. 住栄作

    ○国務大臣(住栄作君) 今御指摘の免田事件あるいは谷口事件について私ども本当にこれは深刻に受けとめまして、これを今後どう生かしていく か、こういうことについて私は真剣に考えていかなければならない。免田事件、谷口事件につきましては三十数年前のことでございまして、若干旧刑訴法の考え方その他も残っておった嫌い、あるいは当時のいろいろな情勢等もあったのじゃないかなという感じもいたしておりますけれども、三十数年来、そういうことについて検察なら検察がそれなりに私は努力をしてきていただいておると思うのでございますが、さらに再審無罪ということが続きますと、これはもう各検察官それぞれこれを他山の石として繰り返さないように、こういうことでやっていってもらえるものと思っておりますし、私も検事長会同等の際に、事務次官、刑事局長からもそういう点についてのことについてもよく相談するようにと、こういうことも申しておきました。  それから第二点の御質問は、これは制度の問題だろうと思います。現在の再審の手続というのは果たして適当かどうか、それから再審を争う段階の問題等もございます。入り口なりその後の進行状態、手続の問題ですね。こういうことについても私はいろいろ問題があるのじゃないだろうか。現にそういうようなことから法務省でも検討を始めております。直ちに法改正にまでいつ持っていけるかどうか、それはなかなかこれ難しい問題でございますので、そういうことも考えまして再審制度全体についてこれは真剣に検討しなければならないのじゃないかと、こういうように思っております。  第三の点につきましては、これは御指摘のとおりでございまして、これも実際問題として具体的な事件に対してどう処理していくか、これは第一のことについてお答え申し上げました趣旨のように、これはもう心構えの問題として対処、受けとめていく、こういうことにしていただかなければならないと思っております。
  83. 橋本敦

    ○橋本敦君 今後この問題については、大臣もおっしゃったような司法制度そのものをどうするかという重大な問題も含むので、我々としても積極的な検討をさらにともに続けていきたいと思っております。  そこで、きょうの本題の職員定員法の一部改正案に関連をしてお伺いをいたしますが、新聞も大きく報道しておりますが、去る二月二十日に、最高裁裁判所の統廃合の検討の問題で日弁連と法務省に三者協議の議題とするように申し入れをされました。これに対応してそれぞれ検討することが開始される状況だろうと思いますが、さしあたり最高裁がこの時点でこの三者協議を申し出られた背景といいますか、その趣旨の根本的な内容、これを伺いたいと思うのであります。といいますのは、新聞報道に見ますと、大きな見出しで「過疎地裁判所を大幅統合」という見出しもあれば、「裁判所も行革」、「最高裁が旗振り」、「過疎は間引き、都市に厚く」、こういう見出しもあるわけですね。こうなりますと、我々としては一体これは最高裁何を言おうとしているのか、やっぱりきちっと受けとめていかないといけないと思うんですね。ですから、最初にこの趣旨についてお話しいただきたいと思います。
  84. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 橋本委員よく御承知のとおり、支部それから簡易裁判所等戦後の裁判所が設置されましてから四十年近くを経過しているわけでございます。その間に裁判所の配置についての前提条件でありますところの人口分布、交通事情等の社会事情が大きく変化しております。  発足当初簡裁は、その令状裁判所的な性格から、警察署の行政区画を基準にしましておおむね二警察署に一庁の割合で設置されたようでございますが、その後四十年近くの間に産業構造の変化に伴いまして農村から都市への人口集中といったような人口動態の変化がございます。四十年と五十五年とを比較しただけでも百七十庁の独立簡裁で管内人口が減少いたしております。中には四〇%も減少しているところがございます。それから、市制施行のもとになっております人口五万に達していない独立簡裁も約九十庁あるようでございます。一方、交通事情について見ますと、鉄道あるいはバス路線、道路網の整備は申し上げるまでもなくまことに目覚ましいものがあるわけでございまして、自動車の保有台数の激増も顕著でございます。マイカーの保有台数を見てみますと、四十年当時国民五十六・八人に一台の割合でありましたものが、五十七年になりますと五・二九人に一台、いわば一世帯で一台ぐらいの割合になってきているようでございます。これらによりまして地域住民の日常生活圏域というものが非常に拡大しておりまして、いわゆる日帰りの範囲は二十二年当時に比較しますとかなり拡大しているわけでございます。  それから、警察署の配置につきましても社会事情の変化によって変わってまいっておりまして、五十七年八月現在、管内に警察署のない庁が九庁ございます。一警察しかない庁が百五十八庁に及んでいるわけでございます。こういう社会事情の変化は裁判所の利用度に端的にあらわれてくるわけでございまして、例外がないわけじゃございませんけれども、やはり人口の異動に伴って事件異動も生じてくるようでございます。昭和三十年当時、民訴事件が年間三十件以下の庁が四十九庁しかなかったわけですけれども、五十七年度で見てみますと百二庁に増加いたしております。他方民事調停事件について見ますと、年間三十件以下の庁が三十年当時六十九庁でございましたのが、五十七年には百三十四庁に達する、こういうふうに事件の過密過疎の状況が生じているわけでございます。国民裁判を受ける権利の保障は重要でございます。裁判所としましては、国全体の裁判所運営の観点から効率的な人員配置というものもまた別に考えなければならない。その結果、事件数の少ない裁判所には必要最小限度の職員を配置せざるを得ないという状況がございまして、その結果、裁判官が常駐していない庁が独立簡裁では約百四十庁というような状況もあるわけでございます。こういう点は、裁判所を利用される住民サイドについて考えますと、いろいろ御迷惑をおかけしている面もあるのではないかなという反省もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、社会事情が大きく変化しておりますので、それに応じて現在及び予想される将来の社会事情にマッチするように裁判所の配置を見直すべきではないかという問題意識から、裁判所の適正配置の問題、これは具体的には小規模独立簡裁の支部の集約化、それから大都市簡裁の集約化、管轄区域の見直し、支部の甲乙区別の見直し等を考えるべきではないかという問題意識で三者協議会に正式議題として取り上げていただくようお願いしたわけでございます。もとより集約化と申しまして、ある程度の廃止というものもあろうかと思いますけれども、今申しましたように、管轄区域の見直しとか、場合によりましては新設というようなことを多角的に検討いたしまして、司法全体としてのより充実を図りたいというように考えております。
  85. 橋本敦

    ○橋本敦君 問題は、今指摘をされたような事情がないわけではないとしても、肝心な問題はやっぱり国民への司法サービスをどう充実させるかという観点を抜きにしては、これはまさに経費節減の行革ということ一本になってしまう。これはやっぱり私は司法行政としてまずいと思うんですね。そこで、私は国民が求めている司法サービス、これは今一体どういう状況であるかという点からもう一遍見直してみたいという立場できょうは質問をしてみたいと思うんです。  まず最初に警察庁にお越しいただいておりますので伺いますが、最近の大きく報道された新聞によりますと、離婚調停というのが一つの業として成り立っておって、具体的には東京の新宿にある離婚相談室愛幸センターというのがこの問題で非弁活動ということで関係者が弁護士法違反で逮捕されているという事件が起こっております。これ今捜査がどういうように進んでおりますか、この事件の概要はどうなのか、お話しいただける範囲でまずお述べいただきたいと思います。
  86. 古山剛

    説明員(古山剛君) お尋ねの件でございますけれども、マスコミでも取り上げられました離婚相談室愛幸センターにつきましては、所長の成田克之外二名を、離婚に絡む慰謝料の決定等について報酬を得る目的で関係者の代理人として関与していたとして、警視庁におきまして去る三月二十二日に弁護士法違反で逮捕しております。詳細につきましては現在捜査中でもございますので、答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  87. 橋本敦

    ○橋本敦君 新聞によりますと、結局中身は、いろいろ離婚の関係の相談に応じ、そして慰謝料も取るというようなことになれば一定の報酬ももらう、そしてこの会に入るときは入会金も取るということで、業としてこういう法律事務を扱っていたということが一つと、そういうことを公然とチラシあるいはテレビその他に宣伝をして、そういう宣伝をしてはいかぬという弁護士法の非弁活動に触れるというようなことが容疑になっているということですが、具体的にはそうですか。
  88. 古山剛

    説明員(古山剛君) そういった容疑で現在捜査中でございます。
  89. 橋本敦

    ○橋本敦君 ところが、私がここでお尋ねしたい中心は、これがどういう結果になるかじゃなくて、これを利用する方がかなり多かったということに注目しているんです。新聞報道によりますと、そちらの捜査で、これまでのところ四、五百人が入会しているということと、一件平均三十万円として実際一億円ぐらいの金が動いている。私は金額よりも四、五百人というたくさんな方がこの会に入会されているということに注目しておるんですが、実際それぐらいの数はあったんでしょうか。
  90. 古山剛

    説明員(古山剛君) その辺につきましてはまだ現在捜査中でございますので、ちょっと申し上げる段階ではないわけでございます。
  91. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、一体なぜこういう問題が起こってくるか。これは確かに弁護士に頼めば手数が高くつくとかなんとかいうことも言われておりますから、そういう意味では今日の庶民の暮らしが厳しいことから見れば、私ども弁護士としても一定の反省をしなければならぬ面もあるかもしれません。しかし、問題は司法サービスを求める国民のニーズが非常に広い。それが単に弁護士だけの問題じゃなくて、裁判所、我が国司法制度の側がこれにこたえられる体制になっているかどうかということも反省させられるのではないかという意味で取り上げているわけですね。  例えば家庭裁判所について考えてみますと、全国で簡易裁判所はかなりの数ございますけれども、独立簡裁だけで二百を超えるでしょうが、家庭裁判所事務を扱う家裁の出張所がある簡裁はどれぐらいございますか。
  92. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 家庭裁判所の出張所は九十六ございますので、九十六の簡裁に出張所が置かれております。
  93. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから、地方裁判所の所在地にある家裁あるいは出張所を含めても、全国で言えば数が知れているわけですね。簡裁よりもはるかに少ない。  そして、もう一つお伺いしますが、その家庭裁判所の出張所が併設をされておる簡裁で、この家庭裁判所事務を専任に扱う、つまり家庭相談あるいは家事問題、離婚も含めて、それに堪能な専任できる人員配置というものは特別にありますか、ありませんか。
  94. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 出張所でございますので、原則的には裁判官それから調査官、書記官がそこへ出向いて仕事をする体制でございますけれども、非常に受件数の多い出張所におきましては家裁の関係事務を担当する書記官の配置もあったかと思います。
  95. 橋本敦

    ○橋本敦君 ちょっと、正確な答弁を求めたいんですが、あるかと思うと言うのは、それなら九十幾つの中で幾らあるか、こう聞きたくなるんですが。実際ないというのが現状じゃないですか、私が調べた限り。
  96. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 確かに御指摘のとおり、ない方が多いかとは思いますが、例えば市川の出張所のように、非常に受件数の多いところではたしか配置していただいておると記憶いたしております。
  97. 橋本敦

    ○橋本敦君 私も職業柄家庭裁判所で離婚の調停その他扱うことは多々ありますが、なかなかやっぱり調停委員の御都合なり裁判所の御都合なり弁護士の御都合なりで期日が延びたりして事件の解決が遅くなることもあります。それからまた弁護士を通じないで駆け込み訴えで簡裁へ行きましても、いまお話しのように人員配置として十分相談に乗ってもらえないということもあります。あれやこれやで、こういうところが実際は相談を受けるということで法違反を承知でやっておるところへ多数の人が行かざるを得ないという状況がつくり出されている。ここに問題が一つありますね。  警察庁お越しですから、ついでにお伺いしたいのですが、警察庁では各所警察を通じて困りごと相談というのを施行されておられますが、年間何件ぐらい今困りごと相談を扱っていらっしゃるでしょうか。
  98. 古山剛

    説明員(古山剛君) 昭和五十七年中におきます困りごと相談の受理件数は二十一万九千六百九十三件でございます。
  99. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから、かなりの数がやっぱり最寄りの警察やその他に相談に行っているわけですね。五十八年警察白書を見ますと、結婚離婚問題がそのうち三・七%あります。生活困窮三・二%、金銭貸借八・二%、土地家屋四・六%、物品取引八・七%、これ合計いたしますと今おっしゃった二十一万九千、約二十二万件に上る困りごと相談のうち七二%が、これがいわば小口の小さな事件、生活事件、身の回り事件の相談に行かれている。こういう状況ですね。こういう状況処理について警察もかなり対応には苦労されておられるのですが、実際の処理状況どうですか。
  100. 古山剛

    説明員(古山剛君) 警察といたしましては、困りごと相談を受けましたときにはよくその内容を聞きまして必要な指導助言をいたしておるところでございます。場合によりますと、その相手方と気軽に話し合える場を設定いたしまして、双方の意見を公平にしかも十分に聞いて指導または助言をしているわけであります。警察の職務の範囲を越えるもの、あるいは警察の段階で解決しないものにつきましては、積極的に裁判所その他の関係機関に照会、連絡するなどいたしまして解決への一助とするという方向で対応しているところでございます。
  101. 橋本敦

    ○橋本敦君 ということで、本来なら民事調停に手続的になじんでよい事件が随分そこへ行っているという実情が一つあるわけですね。日弁連も昨年十月に国民裁判を受ける権利ということで特集をしておる資料を出しておりますが、その中を見てみますと、無料法律相談事業、これが非常に近年ふえている状況が明らかになっております。この日弁連の資料で申しますと、昭和五十二年で一万五千件程度であったのが五十六年は一万九千件というように非常に増大をしておることが明らかであります。しかも、その相談の傾向について日弁連のまとめによりますと、常設相談件数は前年に比べて八・五%の伸び、実績としては大幅に増加、いずれの種類の相談もふえているけれども、特に金銭事件が多くなって、底辺における国民生活の現状を反映しておるということと、家庭事件が四・四%の伸びということで、これの増加傾向も大きいということを指摘しております。  そこで、こういうような国民的なニーズというのがあるものですから、たとえば今の愛幸のような離婚相談とは別に、サラ金共済あるいはサラ金互助会といったようなものを業として、町を歩きますと、サラ金にお困りの方は解決いたしますと。それサラ金会社なんですね。だから、これは何のことはない、また泥沼にはまり込むのですが、そういう笑えないような状況も出てきている。庶民の簡易に法律相談をしたい、解決してほしいという広範なニーズ、一体司法制度のどこがこれを受けて立って国民のために機能するかという問題がいま問われている。そういう状況になっております。そういう一環として愛幸事件を見る必要があるということを指摘したわけであります。  そこで、それを受けるとすれば、私はいま最高裁がおっしゃった全国的な裁判所の統廃合ということの中でも、中心が簡裁になっておりますように、簡易裁判所だと、こう思います。まさにいまこそ簡裁は駆け込み寺内な民衆裁判所としての機能を持たなくてはならぬということが私は強く迫られていると思うのであります。そういう認識を最高裁がお持ちなのかどうか。いま提案をなさった背景は聞きましたよ。聞きましたが、その理念として、過疎と集中との整理統合という有効性、効率性だけじゃなくて、国民のニーズにこたえる本来の簡裁としての駆け込み寺的な民衆裁判所としての機能、これをどう充実をさせて国民にこたえるかというこの理念抜きに、私は三者協議は理念のない協議になる、こう思っておりますが、最高裁のお考えを聞きたいのであります。
  102. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 簡易裁判所は、仰せのとおり比較的軽微な事件につきまして手続でも地方裁判所のそれに比較いたしますと簡略化を図ってございますし、非定型的に迅速で低廉に紛争が解決できる調停事件のほとんどを取り扱っておりますし、全国的にも数多く設置されているというところから、国民一般に親しまれるという性格を持っていようかと思います。  今回の問題提起につきましては、簡易裁判所成立以来の社会事情が変わっているのに裁判所の配置が変わっていないという点から、こういう問題提起をいたしておりますけれども簡易裁判所の理念、性格というものは変えることなく現在及び予測される将来の社会事情にマッチするように配置の適正化を図りたいというのが私ども考え方でございまして、そのことによって簡裁支部の充実強化を図って、一層適正迅速な裁判の実現ができるよう努力してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  103. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点は結構だと思います。そういう理念をお互いに大事に育てるという観点を抜きにしては私は三者協議というのは基本を欠くと思っております。  そこで、最高裁自身も、簡裁の機能とは別に、国民の司法サービス要求にこたえるために、調停センターを設けて努力してこられた経緯があるんですね。私はこれは非常にいいことだと思うんですが、近年これが逆にしぼんでいくという傾向があるということで、私はちょっとその点を気にしておるんですが、この最高裁の調停センターを設けられた経緯と、やってこられたことと、近年の現状を簡単にひとつ説明してください。
  104. 上谷清

    最高裁判所長官代理者(上谷清君) 調停センターは、民事調停関係事務をできるだけ集約をいたしまして、それで制度を効果的、能率的に運用していこうという発想から生まれたものでございます。御承知のとおり調停事件地方裁判所簡易裁判所双方ございますが、利用される市民の方から見ますと、地方裁判所へ持っていったらいいのか簡易裁判所へ持っていったらいいのかというようなこともなかなかおわかりにくいということで、地方裁判所簡易裁判所との調停事務を統合いたしまして、利用される方の便宜を図ろうと、こういう発想から生まれたものでございまして、各庁で創意工夫してそういうセンターというようなものを発足させたわけでございます。  ただ、センターとは申しましても、実は別に新しい組織をつくったというわけではございませんでして、地方のたとえば支部と簡裁が、一人の専任の書記官が調停事件の相談等に応ずる、そういうふうな体制を設けまして、地方裁判所簡易裁判所の双方の調停事務処理を集約化する、そういうことでやってきたわけでございます。現在、全国の裁判所では十五庁に調停センターが置かれております。一番古いものが昭和四十五年の五月に発足いたしました高松でございますが、その後昭和五十一年ごろにかけまして設置する庁がふえてまいりまして、現在十五庁に設置されております。  設置された当時の事件処理状況でございますが、これは全国的に実はでこぼこがございますので、ある庁においては非常に事件がふえたというところもあり、ある庁ではそれほど事件がふえていないというところもございまして、全国ならしてみた概観でございますが、大体やはり調停センターを設置することによって事件がやや増加するというのが原則的な傾向と見てよろしいかと思います。最近、昭和五十一年以後新たなセンターを設けられた庁はないようでございますが、それも調停センターとは申しましても、今申しましたとおりそう特別の人員、大きい組織をつくるということではございませんので、それ以外のむしろ努力でいろいろ調停のPRを図っているというのが実情かと思います。
  105. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の質問時間が十六分までで、もうあと十分ほどしかないものですから全く予定が狂ってしまって、はしょらなくちゃならぬので、ずばりとはしょってまいります。  そこで、現在の簡裁がこういった国民のニーズにこたえる体制になっているかどうかということからまず反省をして出発しなければならぬのですが、最近の簡裁事件の激増ぶりというのは大変なものですね。過去五年をとってみて、簡易裁判所でいわゆる民事調停事件、それから督促事件、それから民事訴訟事件、それぞれこの五年間どれぐらい伸びておるか、端的にまず数字を教えていただけますか。
  106. 上谷清

    最高裁判所長官代理者(上谷清君) それでは、昭和五十四年度からの数字で申しますと、全国の簡易裁判所でございますが、昭和五十四年度訴訟事件が七万四百四件ございましたのが、昭和五十八年度では十七万九千三百九十六件、これは五十八年度はまだ概数でございますが、これは御了承願いたいと思います。
  107. 橋本敦

    ○橋本敦君 約何倍というように言ってもらえませんか。
  108. 上谷清

    最高裁判所長官代理者(上谷清君) したがいまして、約二倍強になっております。それから督促事件は昭和五十四年度が二十七万八千四百二十二件ございましたのが、昭和五十八年度では五十五万八千件でございますから、これもほぼ倍になっております。それから調停事件でございますが、昭和五十四年度に六万八百八十二件ございましたのが、昭和五十八年度では十二万九千六百五件でございますから、これも二倍強という数字になっております。
  109. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、簡易裁判所がこういった事件の激増ということになった背景に私は二つあると思う。一つはいわゆる国民がそういった簡易に解決してほしいという司法サービスを求めている事件がふえている。それから生活困窮その他を反映して、サラ金、クレジットもありますけれども、金銭事件が激増している。こういう国民的ニーズと、もう一つ簡易裁判所の事物管轄が拡張された結果、事件簡易裁判所に広くふえていくという、こういう二つの結果が総合的に反映されていると思いますが、いかがですか。
  110. 上谷清

    最高裁判所長官代理者(上谷清君) 御指摘のとおりだと思います。
  111. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、事物管轄がこういった形でこれ以上ふえれば、いよいよ簡易裁判所は駆け込み裁判所ではなくて、それこそ地方裁判所の小型化、こういう現状になっていかざるを得ない。そこで、一つの問題として三者協議に出される背景的重要な柱として、私は今後これ以上事物管轄の拡張は現体制では行うべきでないということはひとつ踏まえなくてはならぬと、こう思っておりますが、最高裁いかがでしょうか。
  112. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 前回お願いいたしました事物管轄の拡張は、いわば経済事情、物価等の変動がございまして、物価スライドという形でお願いしたと承知いたしております。今後の問題といたしましては、現在のところ消費者物価指数等の動きはほとんど変わらないような状況で推移しておりますので、現在の段階ではそのような必要もなかろうかとは思いますが、将来の点につきましては将来の問題でございますので、現在の段階で答弁することは差し控えさせていただきたいと思います。
  113. 橋本敦

    ○橋本敦君 という答弁は私はお役所答弁だと思うんですよ。簡裁の駆け込み民衆裁判所としての機能を本当に守るという観点から、抑えていかなければならぬという考え方を持ってもらわないと、物価スライドだけで私は解決しないと思うんです。  例えば不動産事件で、物価スライドで事物管轄を上げますと、今九十万ですが、九十万の不動 産事件といったら、これは小さな事件だなと思うかもしれませんが、しかし九十万という訴額の算定は、これはもう言うまでもありませんけれども、固定資産評価額に基づくし、所有権の争いなら全額だけれども、占有権なら二分の一だと、こういうことですから、あの簡裁で実は何千万という資産の現実価格のある財産をめぐって不動産事件をやられるわけでしょう。これは大変なことですよ。これは駆け込み訴えというような、国民の簡易なサービスとは別の次元で非常に大きな事件であるわけです。これをふやすと、それに手をとられて、駆け込み訴え、口頭受理、督促、そういった簡易な状況のサービスが低下するんですから、そういう意味で抑えるという理念が当然出てこなくちゃならぬ。私の考えは間違っているでしょうか。いかがですか。
  114. 上谷清

    最高裁判所長官代理者(上谷清君) ただいま不動産関係訴訟お話が出ましたので、私から答えさせていただきたいと思いますが……
  115. 橋本敦

    ○橋本敦君 事件の説明じゃないですよ、考え方として。
  116. 上谷清

    最高裁判所長官代理者(上谷清君) はい。前回の管轄の改正の際にも、委員御承知のとおり、不動産の事件につきましては地方裁判所簡易裁判所の競合管轄の規定を設けていただいておりますし、それから必要的移送、裁量移送に加えまして必要的移送というふうなことを定めていただいておるわけでございますし、そういう意味で、私どもといたしましては、事件の種類によりまして簡裁負担が特に重くならないような配慮も同時に加えてまいっていると考えておる次第でございます。
  117. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の質問にやっぱり大所高所から答えてくださいよ、事務的な説明はもう聞きましたから。  そこで、もう一つの問題は、その簡易裁判所の窓口で実際に国民のサービスに応じるためには、私は弁護士に頼らない当事者訴訟がうんとふえることも承知で体制を国民のために組まなければならぬと思いますよ。そのために必要なのは訴訟の口頭受理、もう一つは、訴訟の定型化がクレジットその他であるという話ですから、訴状の定型化をやって、非常に訴えがしやすくなる、そういう状況をつくること。それからもう一つは、調停事件をうんとふやして、調停前置とまではいきませんが、できるだけ話し合いで解決できるような、そういう機会と機能をうんとふやしてあげること。そしてそのためには、調停委員増員はもちろんですが、まず第一に、裁判所そのものが書記官の数をふやすなりして、国民のサービスに親切に応じる体制を組まなくてはならぬ。こう思いますが、この点の考えは、これは最高裁とも一致するはずだと思うんですが、どうですか。
  118. 上谷清

    最高裁判所長官代理者(上谷清君) 簡易裁判所の窓口でできるだけ親切に対応いたしまして、例えば口頭受理、準口頭受理をするということにつきましては私どもも非常に努力はいたしておるつもりでございまして、現実に口頭受理件数も年々増加しておりますし、定型訴状、それから調停申立書の定型用紙、そういうようなものも各簡易裁判所の窓口に備えまして、簡易に申し立てができるということはやっておりまして、だんだんそういう申し立て件数もふえてまいっております。できる限りの努力は現に続けているつもりでございますし、今後もできるだけ皆さんの利用しやすいような相談窓口を充実していくというようなことを努めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  119. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういうことを実際にお言葉どおり充実させるということになりますと、これはやっぱり私は体制が要ると思いますよ。  そこで、もとへ戻りますが、今度の裁判所職員定員法の改正法律案にも関係するんですけれども、過去五年をとってみましょう。裁判官増員は毎年わずかずつながら必要に応じて定員法改丁でやってきましたが、裁判所職員の皆さんの定員は過去五年間いかがな状況ですか。ふえていますか、減っておりますか。
  120. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 過去五年でございますので、五十三年からまいりますと、五十三年には十名、五十四年には十二名、五十五年は十五名、五十六年十三名というようにふえてまいっておりますが、ここ数年はゼロでございます。
  121. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうですね。つまりここ数年ゼロなんです。これはまさに、今の総定員法の枠と行革のあおりを受けるということで、そこへしわ寄せがいき、国民サービスが低下して、本当の民衆裁判所の機能が全国の至るところの地域で低下していけば、示談屋だとかいろいろな者が出てくるという、こういうことで、司法全体がやっぱりゆがんでくるということを私は指摘しておるわけですね。だから裁判官増員結構ですが、今後力を入れられて裁判所職員増員に一層力を入れていただきたいということを強く求めておきたい。それについていろいろきょうはお聞きをする準備をしておりましたが、時間がありませんので、その点は強く要望しておきます。  そして、この簡裁の統廃合という観点について言うならば、これは初めに説明がありましたけれども、非常に事件が減った、そして過疎になっておるというところで、交通の便がマイカーの増大その他でよくなったからどこかへ持っていってもというようなお考えがあるかもしれませんけれども、私は、簡裁についてはこれはそれなりにその地方でやっぱり根づいておるわけですし、その統廃合ということになれば、原則としては、私は、第一に議論をした簡裁の理念を守ること、そこから出発をして、簡裁として現在の簡裁は僻地であっても廃止しないで、僻地の住民に奉仕する体制をとる、それからもう一つは、都市集中地域の事件の過密に対応しておっしゃいましたけれども、新設も含めてこれの解消を検討するというようなことで、機械的に有効性を問題として削減だけに目を向けないでやっていかなくてはならぬというように思っておりますが、そこらあたりはどうお考えか、最後に伺って質問を終わりたいと思っております。そして、さらにこの問題については三者協議はもちろんですけれども、私が指摘したふうに、国民的ニーズにどうこたえるかですから、統廃合その他については法制審議会の議論もさることながら、地域住民の意見も十分に吸収し得るような体制で進めること、このことを約束していただけるならばお約束していただいて、私の質問を終わります。
  122. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 御指摘のとおり、簡裁支部の適正配置の問題は国民の権利保護にかかわる問題でございますので、単に行政効率の面からのみで律し切れる問題ではないということは十分承知いたしております。私どもといたしましては、配置の見直しの結果、単に小規模簡裁支部を統合、廃止、集約化するにとどまらず、管轄区域の見直し、裁判所所在地の変更、場合によりましては必要に応じまして新設も考えまして、適正配置のもとでの裁判所の人的物的充実を図りたいと考えておりますし、この問題の実現の過程におきましては、各方面の御意見を十分伺いながら進めてまいりたいと考えております。
  123. 橋本敦

    ○橋本敦君 ありがとうございました。終わります。
  124. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 時間が余りありませんから簡潔に聞いてまいりますが、何といっても、定員法の問題で最近のところの数字はこれずっと出ているんですが、民事刑事で、事件の数で十年前と比べてどういう傾向かという、その傾向でもってお聞かせいただきたいと思うんです。
  125. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 事件と申しますと、訴訟とか調停、略式とか、いろいろさまざまでございますが、まず全裁判所民事事件総数について申し上げますと、昭和四十八年には百二万件でございましたが、十年後の昭和五十七年には約百八十二万件でございました。件数にいたしまして八十万件、率にいたしますと七九%の増加となっております。刑事事件の総数は、昭和四十八年に約二百七十六万件ございましたが、五十七年度は二百七十八万件でございまして、これはほとんど変化がないと言ってよろしいのではないかと思われます。事件の中心的な存在でございます地方裁判所訴訟事件について十年間の比較をいたしてみますと、民事訴訟事件は昭和四十八年に約九万件ございました。これが昭和五十七年には約十四万件でございまして、件数にして約五万件、五五%の増加となっております。刑事訴訟事件は、四十八年には約八万件でございましたが、五十七年は九万件ということで一万件、一六%の増加となっております。やはり民事訴訟事件の増加が著しいわけでございます。
  126. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 同じように、今度は裁判官なり裁判所職員の数ですね。そういうのもやはり十年前と比べての対比でどういうふうな変化を起こしているかということです。
  127. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 十年前、昭和四十九年と比較いたしますと、現在、五十八年の時点で裁判官は合計九十一人、裁判官以外の裁判所職員は九十二人、合計いたしますと百八十三人の増加でございます。
  128. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 刑事事件の方はそうするとほぼ横ばいできているけれども民事の方は全体では約八割増し、地裁関係見ても五五%からというんで、相当ふえている。だから、事件がふえている割合にはそれを担当する職員なり判事さんはそれほど十分ではないのだという結論になると思うんですね。ですから、その関連でいろいろお聞きしたいんですけれども、なかなか時間もない関係ですから、選挙違反の中で、その選挙違反の中でも私が聞きたいのは事件の数じゃないんです。いわゆる第一審なりそれは最終的にでも候補者本人が身分を失うというふうな、そういう重い罪の判決がおりるのは、そう数があるわけじゃないんだけれども、そういう場合は第一審の判決が出るまでの期間がどのくらいかかるものか。さらには最終的な刑が確定する、そしてその身分を失うというようなところになるまでの期間はどのくらいかかるものなんですか。
  129. 小野幹雄

    最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) ただいま御質問の事件は、いわゆる百日裁判事件であろうかと思いますが、第一審で申しますと、これは五カ年間の終局事件を平均して出してみたものでございますが、平均の審理期間は四百二十六日ということになっております。同じく控訴審におきます五年間の平均を出してみますと百七十三日、上告審におきますそれは九十四日というふうになっております。大体七百日ぐらい、一審から上告審の判決までということになりますと、全部これを足しますと大体七百日ぐらいということになります。
  130. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これ平均で七百日間というのならば二年くらいということになるんだけれども、実際問題としては、私が先ほども言ったように、数は少ないけれども、いわゆる有罪が確定して、そうすると議員としての身分を失うようなことになる。その議員としての身分を失うときには次の選挙が行われておって、その判決というものが効力を持たないようなことになってしまう。そういうことが間々あるわけですね。だから、そういうふうな裁判の実態だということになれば、いよいよ選挙になって危なくなってくればお金をばらまいて、買収であろうが何であろうがやって、それで捕まっても、そうしたら三審判があると言ってとことんまで争っておれば、その議員としての身分を失わないうちに次の選挙が来てしまうという、そういう実態にあるわけです。だから、その辺のところを何とか短縮して、それでそういう買収の選挙なんかやって違反を犯したならば結局ばかを見た、損をしたということでないと、やっぱり次から次からいつまでたっても、私はそういうあれがなくならないと思うんです。だから、その辺は先ほど橋本先生も言っておられたけれども、私も行政改革はいろいろ言う方ですけれども、必要な人たちはふやしてでも、やはり裁判というものは一般の民事刑事も同じですけれども、極力短縮をして、それで能率を上げて結論を急ぐということに御努力をいただきたい。  それで、そのことはそういう要望にしておきまして、次に私がお聞きしたいことは、あのにせ電話事件で鬼頭判事がいらっしゃったですね。あのにせ電話事件ということが明らかになったときに、人事権をお持ちなのは最高裁だと思うんだけれども、そこではどういう処置をとられたんですか。
  131. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者大西勝也君) いわゆる鬼頭判事事件は五十一年の秋に新聞にまず報道されまして発覚したわけでございますが、それにつきましては最高裁判所が人事権を持っておるわけでございますが、とりあえずはそういう人事権そのものではなくて、当時鬼頭裁判官は京都の裁判所におりましたが、京都の裁判所であの裁判官がやっておりました事件をどうするかということがまず一番の問題でございまして、すぐその翌日に会議を開きまして、これは裁判官会議で決めるわけでございますが、事実上は常任委員会というところで決めたわけでございますが、すぐに鬼頭判事補がやっておりました事件を他の裁判官にやらせるという措置、これは鬼頭判事補の承諾も得てのことでございますが、措置を講じまして、翌日以降すべての事件を他の裁判官が取り扱う、こういう措置を京都地裁でとったわけでございます。
  132. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 それは大変適切な処置をおとりになられたんだと思って敬意を表しますけれども、同時に今度どのくらいに上るのか私知らないんだけれども、あの鬼頭さんに裁かれて判決を受けた人たちは、あんな事件になったらたまったものではないと思うんですよ。狂ったとは言わぬけれども、正常じゃなかったんですから。そういう正常でない裁判官に裁かれてこういう判決なりあるいは決定なりを下された、そういう人たちの救う道というのはあるんですか、あったんですか。
  133. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者大西勝也君) 確かにああいう事件が起きまして、既に裁判等を受けた皆様方の感情はまことによくわからないわけではないわけでございます。国民感情としてはそういうことはあるだろうというふうに思いますが、ただ実際問題といたしましては、もう既に行われました裁判につきまして、例えば司法行政上とるべき措置というのは実はないわけでございます。これは当該事件についての判決についての控訴でございますとか、和解がありました場合に和解に何か問題があればそれについての救済の措置というのがございますが、それぞれ法律で救済の措置が決まっておるわけでございまして、そういう個別的な救済措置、もう一遍やり直すとかいうようなことをやる以外にはないわけでございまして、恐らく彼の行いました事件についても当時控訴、上告とも若干係属しておったと思いますが、具体的にそれがどうなったかということは私は存じませんが、そういうことでいわば救済を図られたということになるわけでございます。
  134. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは法務大臣、本当に私は大事なことだったと思うんです。それで、先ほど山口さんは橋本先生の御質問のときに、これは簡易裁判所の問題だけれども簡易裁判所の理念は変えないんですと、こうお答えになっておったんですけれども、私がお願いしたいのは、今も鬼頭さんの場合もそういう一例で出したんだけれども、むしろ変えていただきたいんです、考え方、理念を。法務省なり裁判所というところはこれは法の番人であって、法に照らして物事をやるところですから、どうしても法律に縛られるところだと思うんですよ。しかし、それだけで果たしていいのかどうか。どちらかというならば私ども余り詳しくわからない、こう見ておって、その法のお城をつくって、お城の中に閉じこもって、それで法がこうなっているからといって、それだけでもって物事を処理するというふうな傾向が多過ぎないだろうか。それで、法務省のあるセクションなんかが、私のところに来て、それこそ血も涙もないような人たちだといって、非常にあそこは冷たいといってどれだけ聞かされたかわからないですよ。ですから、そういう点から立ちますならば、どうかお願いしたいことは、法律のそういうお城をつくって法にさえ照らして間違っていなければいいんだという扱いをするのではなくて、もう少し人間味のある、もっと端的に言うならば、人間が人間を裁くのですから、その辺のところを忘れないでもって、どうしなければいかぬか。だから法で裁くというよりかも、私に言わしていただくならば人間の心でもって裁くということをやっていただいて、そして何らかの事件を起こしたんだから、そういうことでもって被告というか、扱いを受けるわけだけれども、その人たちが最終的にどういう判決を受けようとも、ああ、本当にこの人たちはよくやってくれたといって、感謝と言ったらおかしいですけれども、自分はこういうことを犯したがゆえにたくさんの人たちに御迷惑をかけたと、にもかかわらずこういう扱いをしてくれたということをありがたく思って出ていくというか、従うというか、そういうことにならなければ私はいかぬと思うんです。  ですから、そういう点でもって法務省は冷たいなんて大臣言われないようにしてほしい。やっぱり日本法務省はいいなあと言って、そしてだれも好き好んで、喜んであんなところへ行きゃせぬことだと、行っても、ほかの官庁よりかも法務省へ行った方が人間味があって、温かいといって、そういうふうに感謝されて、それでいろいろと皆さん方が問題を持ち込んでいって扱ってもらえるような、そういう法務省なり裁判所になってほしいと思うんです。そういうことについて私はむしろ希望を申し上げたんですけれども大臣の方とそれから最高裁の方と両方からそれについて御見解を賜って私は終わりたいと思うんです。
  135. 住栄作

    ○国務大臣(住栄作君) 難しく考えれば法治国家でもございますし、やはり法に対する国民の信頼、これをどう守っていくか、これも非常に私は大事なことだと思います。それと同時に、そういう中にあって、今先生のおっしゃいました人間的な温かさと申しますか、本当に法によって処理されるにしても、本当に納得できると申しますか、そういうようなところがあるということを私は一つの理想だと思っております。そういうようなことで、大岡越前守だとか遠山の金さんみたいないきな計らいができるかどうかわかりませんけれども、やはりそれは一つは個々の検察官の人柄あるいは扱いと申したら言葉は悪いかもしれませんが、そういうようなところにも影響されるところが非常に多いと思います。ですから、そういう意味で常に検察官ばかりじゃなくて、検察庁の職員等の研修等についてもこれは絶えずやっておるわけでございまして、そういうようなことで法が運営されるように、運用されるようにひとつぜひやっていきたいものだと考えておるわけでございます。
  136. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者大西勝也君) 裁判と申しますものは、御指摘のように、大体法律というものを媒介として裁判をやっておりますものですから、どうしても冷たいというふうに思われがちになるといいますか、そういう宿命を持っておる面があるというふうに思うわけでございますが、柳澤委員指摘のように、裁判も血の通ったものでなければいかぬ、理屈ばかりではいかぬ、情理備わったものでなければいかぬということはまことに仰せのとおりでございまして、今大臣法務省職員について仰せになりましたと同様のことで、私ども裁判官を初め裁判所職員、結局人間が裁判をやっておりますものですから、その人間がそういう意味で温かい人間になるということが一番大切なことでございますので、いろいろな面で裁判官及びその他の職員がそういう温かみを持って仕事をできるような、そういう研修もそうでございますし、環境もそうでございますし、そういうことに努めてまいりましたし、今後もそういう面にますます努めるようにいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  137. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 もう一つ。  私の言わんとしていることはおわかりいただいたと思うし、ですからやっていただいて、別に私言葉じりをとらえませんけれども先ほどもじっと聞いている中で裁判の過疎過密という言葉があったんです。事件の数から見ると確かにそうかとは思うんですよ。しかし、これも人口の過密過疎はわかるんだけれども裁判が過疎になったといったときに、あるいはそこの地方自治体の市長さんだとか町長さんだとか、そういう人たちだとか、あるいは警察官だとかという人が本当に親身になっていろいろやって、そこは事件が起きない。それは裁判が過疎になるんです。だから人がただ減っただけなのかどうなのか。  これは大臣、何年か前になるんだけれども、愛知県で、ちょっと場所忘れましたが、タクシー乗っておったら、その運転手が言うのには、この町には暴走族がいないんですと。それで私はどうしてだと聞いたら、何とかという名前はもう覚えていませんけれども、普通のお巡りさんが、あの暴走族が突っ走るのを全部捕まえちゃう。捕まえてただ取り締まるだけではなくて、それで懇々とお説教もするけれども、それで今度はその家にまで行くそうですよ、夜。任務が、夜の自分の仕事が終わってから。そうして親も一緒になって、仕事がないというならば職も探してやり、そうやっていって、それでそういう暴走族を端から捕えてやっていったがゆえに今そういう者が一人もいなくなりましたと。むしろあれだけの暴れん坊の若い小僧っ子たちが今そのお巡りさんのところへ行くというわけですよ。私本当に聞いていて立派だと思う。だから、警察官と言えばみんな何か悪者みたいに思ったり、それから裁判所と言えば一つのイメージがあるんだけれども、やっぱりたくさんの警察官の中には、そういう立派な警察官もいてやってくださっているんだから、そうすると、そういうところは事件が減るわけだから、それは結果的には裁判は過疎になっている。だからその辺のところもよくお調べになっていただいて、それで模範となるようなところは、大臣笑ってないで、本当にそういうところは表彰してでも、そうして治安がよくなっていって、こういう事件なりが減っていくようにという格好での御努力をくれぐれもお願い申し上げまして、そうして法よりかも人間が大切なんです。人間が人間を裁くのだということを忘れないで、本当に人間が自分の心で、愛情でもって、そういうものを扱うのだということを考えてやっていただきたいと切にお願いして終わります。
  138. 大川清幸

    委員長大川清幸君) ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 大川清幸

    委員長大川清幸君) 異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  140. 大川清幸

    委員長大川清幸君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 大川清幸

    委員長大川清幸君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十分散会      —————・—————