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久保亘君 私は、ただいま議題となりました
学校教育法及び
教育職員免許法の一部を改正する
法律案について、その提案の理由と内容の概要を御説明申し上げます。
本
法律案は、盲学校、聾学校及び養護学校の寄宿舎における寮母の
教育的役割の重要性にかんがみ、その専門性を確立し、もって障害児
教育の一層の充実を図ろうとするものであります。
昭和五十七年度において、全国の盲・聾・養護学校八百八十二校中、約二百九十校に寄宿舎が設置され、約一万四千四百名の子供たちがそこで生活しております。そして、四千七百四十六名の寮母がこれらの子供たちの生活
指導と世話に当たっているのであります。
障害児
教育においては、教科等に関する
指導のほかに、基礎的な生活習慣と社会的自立の基礎を育成するための生活
指導が極めて重要であります。また、これが教科
指導を支える基礎でもあります。この生活
指導が成果を上げるためには、在校時における教
職員の
指導だけでは不十分であり、寄宿舎または家庭において、教
職員と十分な連携と協力のもとに一貫した
教育が行われる必要があります。特に、寄宿舎においては、子供たちの生活全面にわたる
指導に当たる寮母が、子供の特徴はもちろん、その
背景となる家庭環境等についても把握するとともに、教
職員から子供の成長発達の過程や
具体的な
指導の方針について密接な連絡を受けて、子供の
指導に当たることが必要であります。また、寮母が寄宿舎における生活
指導の中で
感じた問題、
意見等が積極的に教
職員に提供され、学校生活に生かされることが重要であります。このように、教
職員と寮母が協力して子供の
教育に当たって、初めて子供の全面的な成長発達が期待されるのであります。
なお、このような経験・知識が教
職員や寮母から障害児の父母に提供され、家庭における
指導に役立てられることもまた極めて重要であります。
したがいまして、寮母は、単に子供の生活の世話に従事するものではなく、子供の成長発達に直接かかわる極めて重要な
教育専門職と位置づけられるべきものであります。当然にまた、寮母がこのような
職務を十分に果たすためには、障害児
教育及び教職に関する専門的知識と識見を持っていることが必要であります。
障害児の
教育を受ける権利を実質的に保障するために、寄宿舎とそこで果たす寮母の役割はますますその重要性を増してきております。
しかしながら、
現状は障害児
教育における寄宿舎の重要性が十分に認識されるに至っておりません。現行の
学校教育法においても、寮母の
職務について「寄宿舎における児童、生徒又は幼児の養育に従事する。」こととされており、寄宿舎における寮母の
教育的役割を十分に反映した定めとはなっておりません。また、寮母の名称も必ずしも適切でないばかりでなく、近年における男性の寮母がふえつつある
現状から見ても、実態に合わなくなっております。さらに、その重要な
教育上の役割にもかかわらず、寮母については
教育職員免許法に基づく免許
制度がなく、その
教育的
職務にふさわしい専門性が確立されるに至っておりません。
このような
現状を改善するためには、寮母の
職務と名称を
教育専門職にふさわしいものに改めるとともに、その資質の保持と向上を図るために
教育職員免許法による免許
制度を新たに設けることが必要であると考えるものであります。
以上が本
法律案を提出した理由であります。
次に、本
法律案の内容について申し上げます。
第一に、寄宿舎を設ける盲・聾・養護学校に置く寮母の名称を寄宿舎教諭に改めるとともに、その
職務について寄宿舎における児童、生徒または幼児の
教育及びこれに必要な世話を行うことといたしております。
また、寄宿舎教諭の
職務を助ける寄宿舎助教諭を置くことができることといたしております。
第二に、寄宿舎教諭免許状及び寄宿舎助教諭免許状を設けることといたしております。
すなわち、寄宿舎教諭一級普通免許状は、学士の称号を有する者で特殊
教育に関する科目二十単位及び教職に関する単位十単位を
大学で修得した者に、寄宿舎教諭二級普通免許状は、
大学に二年以上在学して六十二単位以上修得した者で特殊
教育に関する科目十単位及び教職に関する科目十単位を
大学で修得した者に、それぞれ授与することとしております。
また、
教育職員検定によって寄宿舎教諭免許状を授与する場合についても、所要の規定を設けております。
第三に、本法施行の際に現に寮母である者は、寄宿舎助教諭となり、十五年の間、引き続きその
職務を行うことができることとするとともに、当分の間、この寄宿舎助教諭をもって寄宿舎教諭にかえることができることとしております。
また、このようにして、寄宿舎助教諭となった者に対して、
教育職員検定により寄宿舎教諭免許状を授与する場合における特別措置についても定めております。
その他
関係法律に所要の規定の整備を行っております。
何とぞ、十分御
審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
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