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1984-07-17 第101回国会 参議院 文教委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十七日(火曜日)    午前十時五分開会     ―――――――――――――    委員異動  七月十二日     辞任         補欠選任      本岡 昭次君     中村  哲君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 信君     理 事                 杉山 令肇君                 田沢 智治君                 久保  亘君                 吉川 春子君     委 員                 大島 友治君                 藏内 修治君                 山東 昭子君                 世耕 政隆君                 仲川 幸男君                 林 健太郎君                 柳川 覺治君                 粕谷 照美君                 中村  哲君                 安永 英雄君                 高木健太郎君                 中西 珠子君                 小西 博行君                 美濃部亮吉君    国務大臣        文 部 大 臣  森  喜朗君    政府委員        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部大臣官房総        務審議官        兼内閣審議官   齋藤 尚夫君        文部大臣官房会        計課長      坂元 弘直君        文部省教育助成        局長       阿部 充夫君        文部省高等教育        局長       宮地 貫一君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君    事務局側        常任委員会専門        員        佐々木定典君    説明員        大蔵省主計局主        計官       武藤 敏郎君        会計検査院事務        総局第二局文部        検査第二課長   倉田 建司君    参考人        日本育英会理事        長        三角 哲生君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○教育文化及び学術に関する調査  (国立大学における機器購入をめぐる不祥事件  に関する件) ○参考人出席要求に関する件 ○日本育英会法案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十二日、本岡昭次君が委員辞任をされ、その補欠として中村哲君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 教育文化及び学術に関する調査を議題といたします。  国立大学における機器購入をめぐる不祥事件について、まず文部省から報告を求めます。森文部大臣
  4. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) このたびの国立大学におきます機器購入をめぐりまして、文部省及び国立大学関係者において不祥事を生みましたことはまことに遺憾でございまして、深くおわびを申し上げる次第でございます。  特に文教行政が大変大事な課題を抱えております今日の時点におきましてこうした問題を生ぜしめたということにつきまして、国民信頼を失うということでございまして、まことに残念に思っております。後ほど官房長より経過そしてまたこれからの対応に対しまして御報告をさしていただきますが、今後ともかかる問題を生じないように十二分にその対応に注意をしてまいりたい、このように存じておる次第でございます。
  5. 長谷川信

  6. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) ただいま委員長から御指示がございました国立大学における物品購入不祥事件につきまして御報告を申し上げたいと思います。  まず事実関係でございますが、六月十九日、大阪大学経理部長中曽根武大阪地方検察庁特別捜査部収賄容疑で逮捕されました。七月九日付で大阪地方裁判所に起訴されたわけでございます。  この件に関しまする公訴事実の概要を申し上げたいと思います。  中曽根武は、大阪大学予算要求配分調整及び物品購入について、業者の選定、契約内容などの審査等に関する職務処理している者であるが、昭和五十八年二月ごろから五十九年五月ごろまでの間、計十三回にわたり、オリエンタルマシン社社長辻宏志から、同社大阪大学ワードプロセッサーを納入するに際し予算措置を講じ、同社随意契約を結ぶように有利、便宜な取り計らいを受けたことの謝礼、あるいは今後も同様の取り計らいを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、知人名義銀行口座に合計二百七十三万円の振り込み送金を受けたという点、公訴事実の概要でございます。  それから中曽根武に対する贈賄側の問題といたしましては、ただいま申し上げました辻宏志が六月十九日に、それからパシフィック科学貿易会社社長井上旻が六月二十九日に、フクダ電子取締役総務部長永田明巳が七月九日に、それぞれ逮捕されております。そのうち、辻宏志は七月九日に起訴されたと承知しております。  以上が大阪大学関係贈収賄に関する経緯でございます。  それから文部本省関係について申し上げますと、七月十三日に文部省大臣官房会計課総括予算班主査鳥野党博大阪地方検察庁特別捜査部収賄容疑で逮捕されました。  容疑事実の概要を申し上げます。  鳥野見は、各国立大学からの予算増額要求などを査定、配分する立場を利用して、ワードプロセッサー等購入国立大学数校に取り次いだ謝礼として、五月一日ごろ、金品の供与を受けたというものであります。  以上のような、大阪大学及び文部省本省に係る職員贈収賄に関連して容疑者として逮捕されたという事案につきましては、ただいま文部大臣から申し上げましたように、大変遺憾に存ずる次第でございますが、特にこれらの者は文部省におきましては予算に関する総括事務等担当者、ある意味では責任者でございます。それからさらに、中曽根氏は国立大学における幹部職員として経理部長要職にあるわけでございます。そのような意味におきましても、文部省国立大学に対する国民信頼を著しく損なうものとして極めて遺憾と申し上げざるを得ない次第でございます。  以上のような事実関係に基づきまして、私どもといたしましては、いろいろな点につきまして事態解明を図り、今後、このような事態が二度と起こらないような改善方策検討する必要があるわけでございます。  文部本省関係におきましては、昨日、予算執行その他の点に関しましての改善検討調査委員会というものを事務次官を長といたしまして組織いたしました。これらの諸点、予算執行あるいは服務あり方人事その他の問題について事態解明を図り、改善等のいろいろな手だてについて鋭意検討したいということで早速作業を始めておるわけでございます。  それから、大阪大学関係につきましては二つの点、つまり第一の点といたしましてはワードプロセッサー購入の点に関しまして、事務局長を長といたしまする事務局幹部による調査検討委員会を組織して事態解明に努力しておる次第でございます。  それから第二の大阪大学関係検討点といたしましては、ワードプロセッサー以外の問題として各学部に関するもろもろの点が世上においても指摘があるところでございまして、この点につきましては各学部教授学部長等をメンバーといたしまして綱紀等あり方についての検討委員会を組織いたしました。物品購入以外のいろいろな服務等に関する問題点改善検討課題についての検討も進めるというふうな点について鋭意作業を進めようという体制にある次第でございます。  全体の事実関係につきましては、現在捜査が進行中であるということや、書類その他を捜査当局に提供しているという関係で、必ずしもつまびらかでない点が多いわけでございまして、これらの点につきましては、また御質疑の中で、御報告なり、できるだけの御説明を申し上げたいと思う次第でございます。  全体、二つ国立大学及び文部本省に関する事実関係と現時点における我々の対応の主な点について御報告申し上げた次第でございます。  以上でございます。
  7. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 以上で報告の聴取は終わりました。  てれより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 久保亘

    久保亘君 ただいま官房長から御報告がございましたけれども文部省が今回の大阪大学ワープロ購入にかかわって起こりましたこの事件中心にして、その後、文部省責任ある立場まで及んでおりますこの収賄汚職関係して、具体的にどんな措置をおとりになり、責任をどのように明らかにされようとしているのか、その点を御説明いただきたいと思います。
  9. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) まず、大阪大学関係につきましては、具体的には経理部長である中曽根武収賄容疑に係る問題でございます。この点につきましては、捜査当局による捜査にまつだけではなくて、文部本省自体としても事態解明に当たる必要があるということで、先般人事課調査官キャップといたしまして三名の調査係官の派遣をいたしました。その係官を派遣し、若干私どもで事実関係を把握した内容はあるわけでございますが、その中曽根武に係る、今、起訴された段階の、これからの刑事事件の決着の動向というものもあるわけでございますが、本人に対する責任をどういうふうに私どもとして考えてまいるかという点が第一点。  それから、大阪大学にかかわる中曽根経理部長監督責任という問題について、大阪大学関係者についてどう考えていくかという点につきましても、中曽根武に対する責任の問題とともにあわせて考えてまいりたいと。これは私どもが、中曽根武が今勾留中でございますので、あるいは保釈という事態が参りました時点中曽根武に接触をし、その供述も得た上で私ども大阪大学関係者全体に対する責任の問題については当然考えてまいりたいというふうに思っております。  それから、第二の先生お尋ね文部本省に関する問題につきましては、同様な意味中曽根武は現在勾留中でございます。したがいまして、それが保釈という段階になりました暁に、やはり中曽根武からの供述を得て、私ども中曽根武に対する処分考え、そして同時に本省総括予算班主査という要職にあったわけでありまして、当然その点について文部本省幹部監督責任というものもあるわけでございます。この点については中曽根武に対する処分と同様に監督責任の問題も考えてまいるというふうに-失礼いたしました。本省総括予算班主査鳥野党博でございます。鳥野党博に関する処分とその監督者である本省がこの処分をあわせて考えてまいる、こういうことに相なろうかと思います。
  10. 久保亘

    久保亘君 昨日、何か文部省としては予算にかかわる改善検討委員会をおつくりになったということですが、いかにも取り組みが遅いのでありませんか。大阪大学でこの事件が発覚いたしましたのは、もう一カ月前でございます。大阪大学には調査委員会もつくられ、文部省もその報告を求められているはずなんですが、文部省自分のところに、直接本省関係するようになってからも、もう間もなく一週間もたとうかというときなんでございますが、そういうときになって、ようやく検討委員会をおつくりになるというのは文部省対応の仕方としては問題なんじゃないかと私は思うんですが、特に、今日、臨教審をつくって日本教育改革をやろうということで意気込んでおられる文部省文部大臣として、今回の文部省関係不祥事について、今のあなたのお立場からも、その責任というものをどういうふうにお考えになったらいいと思われますか。
  11. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 先にちょっと事実関係を私から申し上げますが、大阪大学に関連いたしましては、まず大阪大学に関する物品購入の問題なり、あるいは意思決定の問題なり、予算処理システムなり、こういう問題がまず検討課題でございます。そういう意味で、大阪大学に対しては事務局長キャップとする調査検討委員会をつくるべく慫慂をしまして、その点については私ども調査団を派遣し、そしてあちらでの検討委員会進捗に合わせて私ども検討をしてまいるという体制におったわけでございます。  先週の十三日の金曜日に、本省鳥野見総括予算班主査事案が起きましたので、土曜日に本人官房付人事がえをするとともに、月曜日に本省における検討のための調査会を組織したと、こういう経緯でございまして、金曜日、土曜日、そして月曜日ということでございますので、私ども事態の認識は大変厳しいもので考えておるということを御理解いただきたいと思います。
  12. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) ただいま官房長から申し上げましたように、確かに、大阪大学で起きました問題について、一カ月も前という御指摘でございますが、本省といたしましては対応が遅いのではないかという久保先生の御指摘でございますが、国立大学大学内で起きた問題でございますので、できる限り大学でその対策、そしてまたそれらの経緯等を十分に把握するように、そうした措置をとらせていたわけでございます。正直申し上げてまさか本省にこうして、言葉はなんでございますが、飛び火するというようなこと、私ども自体考えも及んでいなかったことで、その点につきましては本当に残念でいたし方ないというのが率直な私の気持ちでございます。官房長、申し上げましたように、金曜日にこうした事態になりまして、直ちに土、日と事務次官中心にして、いわゆる文部省幹部で十分な対応の非公式な協議を積み重ねておるわけでございまして、昨日、月曜日になりましたが、ただいま申し上げたように、その検討機関を設けることといたしたわけでございまして、遅いような感じもいたしますけれども、最初に起きた問題は国立大学の内部でございましたので、文部省としては重大な関心を持ちながらも、国立大学の中におきます大阪大学当事大学としてのその対応を私どもは指導していくという立場をとったわけでございます。こうして、本省に及んだものでございますので、本当にざんきにたえないという気持ちでございますが、早々にこうした検討委員会を置きまして、ただ、事実関係につきましては警察当局捜査の進展を待たざるを得ないという事情もございますが、幹部職員不祥が相次いだという事態につきましては、文部省として重大にこのことを受けとめて、今後の対応をしてまいりたいというふうに考えております。  なお、久保さんから御指摘のように、臨時教育審議会の発足を今お願いをいたしておりまして、国民全体として、教育に関する大きな国民関心を持っていただいております大事な時期だけに、先ほども申し上げましたが、本当に残念でしようがないというのが正直な私の気持ちでございます。しかし、教育をまさに大事に考えていく私どもといたしましては、今後の責任あり方国民に対するおわびあり方等々につきましては、調査解明等進捗状況を見つつ、その対応についても十分検討していかなければならぬと思っております。ただいまの時点ではこうして連日教育行政に関しまして大変御指導をいただいております参議院文教委員会皆さんにも心からおわびを申し上げますと同時に、この委員会を通じまして、国民皆さんにも深い私はおわびを申し上げたいと、こう思っているわけでございます。
  13. 久保亘

    久保亘君 この問題は、その後オリエンタルマシン社だけではなく、医療機器をめぐってのいろいろな問題も広がっておりますが、報道されるところでは、大阪大学では経理部長と称する人が予備費を五億円も留保しておいて、そしてそれを各学部事務局ですか教授会ですか知りませんが、そこに相談をして、その五億を経理部長が使わせる、こういう仕組みになっておるところを利用されたように報道されておりますが、そんなことが実際あるのでしょうか。国立大学本部経理部長なる者がその大学経費のうち五億円も予備費で握って、自分の思うとおりに配分できるんですか。
  14. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 一般的に申しますならば、国立大学予算につきましては、通常の場合、予算配分について評議会の議を経て、そして年度当初に配分を行うというところが通常でございます。ただし、年度途中に当初事態の予測がつきがたい経費、あるいは例えば教育研究年度途中で発生する場合とか、そういう年度途中で発生することが当初予測しがたいような経費がある場合には、一部経費本部において留保するということはあり得ると思うわけでございます。  今、先生指摘大阪大学に係る本部における留保経費の問題については、現在、私はつまびらかにしておらないわけでございますが、しかし、いずれにいたしましても、仮に本部経費年度途中に各学部配分する場合には、経理部長個人判断によることではなくて、当然、学内における予算配分の組織的なシステムによって意思決定を行い、そしてそれを各学部配分するというのが通常考えられるケースでございまして、大阪大学自体について五億の経費中曽根個人によって左右されたかどうかについては、なお私ども調べさしていただきたいと思います。
  15. 久保亘

    久保亘君 もう一点は、今度は本省官房会計課予算班主査なる者が、各大学文部省出先機関業者契約したものについて、その大学等から予算要求が出てくれば、その要求にこたえてやる権限を持っておったように言われております。文部省にどういう予算があるんですか。その予算班主査鳥野見という人が、例えば神戸商船大学なら神戸商船大学から、辻とワープロ契約をしたのでその予算を増額してくれないかという申請があれば、その鳥野見さんのところでそれが、その予算措置ができるということになるならば、一体その予算というのは文部省の何の予算なんですか。
  16. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 今、お尋ねの点につきましてお答えをいたしますのは、第一点といたしましては、文部本省にも国立大学関係予算で、年度当初に配分するものと、それから年度途中にいろいろな、年度途中の必要に基づいて追加配分するものと、これは大学における本部学部関係と同じようにあるわけでございます。  その配分に当たって、例えば仮にワードプロセッサーのような設備、あるいは特別設備で、各大学購入したいというふうな品目があった場合には、その品目とそれから金額でございますね、所要経費、それが本省に上がってくるわけでございます。本省といたしましては、その品目金額について判断をして、その品目についての購入追加においてしかるべしとして示達をすると、これが仕組みでございまして、本省における購入先判断というものは権限としてございません。したがいまして、御指摘の人物が、本省追加示達をする際に、追加示達するこの金額でどこの社から買えよというふうなことを申す権限立場は全くございません。そういうことを仮に言ったとすれば、まさにそれは職務権限外のことであり、そのこと自体があり得べからざる行為、あるいは言動というふうに私ども考えるわけでございます。
  17. 久保亘

    久保亘君 ところで、そのあり得べからざることをやらせた業者であるオリエンタルマシン社長の辻何がしは、これは大阪大学の場合に指名業者になっておったんでしょうか。
  18. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 私ども調べによりますと、一般競争あるいは指名競争入札についてはA、B、Cのランクがあるわけでございます。そのランクについて調べてみましたところ、オリエンタルマシン会社Cクラス業者であったようでございます。Cクラス業者というのは、五百万円以下の物品購入について信用がおける資格ある業者と、こういうふうな意味で一応登録がされておったというふうに聞いております。
  19. 久保亘

    久保亘君 それで、大阪大学はこのワープロを数十台購入するに当たって、全部五百万円以下に区切ってやっておりますね。一括いたしますと、このオリエンタルマシンはその契約をする資格がないんですよ。だから、中曽根という経理部長は、これを五百万円以下に全部区切って契約さしている。もっと巧妙にやってるのは、五百万円以下に区切って契約いたしますと、会計検査院の方も検査対象とされないということになっておるようですね。そういう盲点をたくみについてやっているんですから、本来なれば大阪大学ワープロ購入に関してはオリエンタルマシン契約資格を持たなかったということになりませんか。
  20. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 御指摘ワードプロセッサー大阪大学購入につきましては、全体、大阪大学購入実績といたしまして、私どもの今までの調べによりますと、四十二台、各学部にわたっておりまして、工学部基礎工学部教養部、それから言語文化部事務局と、こういうふうになっているわけであります。約六千万を超える金額でございますが、これにつきましては、資料が捜査当局に提供されておりまして、契約自体の個別の実態の把握が、先般、派遣いたしました調査団によりましてもつかめなかったわけでございますが、私どもが今承知している範囲では、随意契約によっておるということのようでございます。したがって、随意契約によっておるといたしますならば、限度としては百六十万円以下ということでなければ随意契約になじまないと、金額では。しかし、契約の種類とか品目によりましては百六十万円を超えてもいいという会計法上の規定がございますけれどもワードプロセッサーについて言えば、若干、メーカーによりましての品種と申しますか、それぞれの学部の希望があって、ぜひこのメーカーのものを欲しいというときに、随意契約が百六十万を超えてもいいかどうかという、また判断の分かれるところがございますが、先生、御指摘のように、随意契約に持っていくために契約を切っていたかどうか、この点はなお調査をさせていただきたいと思います。
  21. 久保亘

    久保亘君 いずれにせよ、この契約の仕方にも不自然な点があるし、それから経理部長という、大変、予算執行上の強い権限を利用して、そこに予備費を多額にプールして、実質的にプールしてやれるようになっていたし、また業者大学出先契約をすると、それに本省の方で予算追加措置ができるような仕組みになっている。そういうところに大変今度の事件が生まれてくる温床といいますか、要因があるような感じがいたしますが、これらの点について抜本的に検討をして改善を加えるというお考えはございますか。
  22. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 先生、御指摘の点で私どもが痛感しておりますのは、意思決定システムの問題でございます。これは確かに、大阪大学において中曽根経理部長職務立場に基づきオリエンタルマシンというものが契約金社に選ばれると。そのときに、その契約決定に至るプロセスで、なぜチェックシステムが働かなかったか。学内におけるいろいろな予算経理上の問題がそこにあろうかと思うわけでございます。その点におきまして、私どもは、大学における予算処理上の意思決定システム問題点として、今後大いに検討しなければならない点があろうか、こういう点を一つ痛感する次第でございます。  それから第二には、先生指摘のように、しからば、本省において連動して、そのような追加予算示達が行われたことについての問題点、これはまさに私どもの問題でございまして、会計課における追加配分システムとして、もちろん鳥野見何がしが、オリエンタルマシンということを意図してそういうことをしたということは、会計課あるいは本省内において公にされたことは決してないわけでありまして、知らず知らずのうちに結果としてそういうことになったということは、どこかにやはり意思決定本省におけるシステム問題点がありはしないか、この点も先生指摘のとおり、私どもにおける今後の大きな検討課題であるというふうに認識いたしております。
  23. 久保亘

    久保亘君 このオリエンタルマシンという会社は資本金九百万円、従業員八人の会社でございます。この資本金九百万円、従業員八人の会社は、つい最近、そう何年も前にもならないころに倒産もいたしておりますが、倒産するたびに起き上がっておるようですね。そして、五十七年度実績では三千七百万ぐらいの売り上げだったのが、五十八年には急に二億七千三百万に売り上げがふえております。非常に、そういう点では、関係方面に暗躍をすることによって業績を伸ばす。しかも、私がいろいろ調べておりますところでは、この社長は全国の国立大学の至るところに出没しておるようですね。従業員八人のこの会社が、こういうふうにして、その大学契約を結んでいく、そこに会社そのものにも私は非常に信頼に問題があるように思いますし、これがただ単にメーカーの代理店の資格を持っているからという理由だけで、大学出先機関契約業者として入っていけるところにも問題があるように私は思いますが、こういう面でのチェックについても、文部省としていろいろ今後御検討になられますか。
  24. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 大学におきまする物品購入意思決定システムの問題かと思うわけでございます。この点につきましては、どのような物品を選ぶかという問題が一つと、それから第二には、どのような契約の相手方を選ぶか、こういう問題が以上二つあると思うわけでありまして、オリエンタルマシンがいろいろな大学に食い込むプロセスには、なかなか私ども調査が及ばない点もあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、学内におきまして物品の選定であるとか業者の選定において、複数の組織的な人間による選定委員会と申しますか、そういうふうなものを設けて、一個人判断によって品目が選ばれたり、相手方業者が選ばれたりすることがないような、そういう組織的な手立てを講ずることが必要だというふうに私どもは思っております。  そういう意味におきましては、従来から、私どもも、国立大学における物品購入については、そういう組織的なチェックの組織をつくるべく指導しておるわけでございますが、それがまだなかなか全大学において確立していないというところが問題点でございまして、この事件を契機といたしまして、私どももその点についての指導等については十分留意してまいりたい、こういうふうに考えております。
  25. 久保亘

    久保亘君 会計検査院、おみえになっておりますか。  お尋ねいたしますが、今度のこの事件の中で、神戸商船大学事務局の証言として、今年の三月初め、鳥野見から電話で辻に会ってやってくれ、会計検査院からの紹介だという連絡があって、数日後、辻が同大学にあらわれてワープロ一台を随意契約で決めた。こういうことがございますが、会計検査院が、そんな業者文部省係官に紹介されるというようなことがあるんでしょうか。  それと、会計検査院は今まで私お尋ねしてきましたような、予備費などが五億円もプールされて執行される、あるいは文部省の一係官の恣意によって大学からの増額要求に対して予算追加される、こういうようなやり方について、これは予算の編成や執行上やむを得ないことで、会計検査院がそういうようなことにはタッチできない問題だとお考えになっておるんでしょうか。  それから、今度のように五百万円単位で切って契約されたら、会計検査院はこれに対して手を触れることができないのですか、その点をひとつお答えいただきたいと思うのです。
  26. 倉田建司

    説明員(倉田建司君) まず第一点でございますけれども、新聞で初めてそういうようなことがあったというのを承知した次第でございます。私どもといたしましては、そのようなことはなかったというふうに思っております。  第二点でございますが、予算配分の問題、あるいは広い意味での予算執行の問題につながる問題かと思いますけれども、特定の目的のために資金を追加要求された場合に資金を本省から出す、そういうふうなことは通常あることのようでありますけれども、私どもといたしましては、あくまでも決算を中心に拝見いたしますので、その予算配分とか、その予算執行の過程につきましては、実はタッチしないわけではございませんけれども、余り見ておらないわけでございます。  それから第三番目の問題。五百万円を限度として、五百万円を超えるものについてのみ見ておるというふうなことは絶対ございませんで、五百万円以下の契約の場合でありましても、私どもは、すべて見るべきものは見ておるつもりでございます。ただ、悉皆的に全部見るというわけにはまいりませんけれども、見るべき性質のものである場合には見ておるつもりでございます。
  27. 久保亘

    久保亘君 時間が参りましたので、最後に文部大臣にもう一回、今度のことに対しては、できるだけ速やかに、文部省としてその調査検討委員会で結論を得て、責任を明確にしながら、国民文教行政に対する信頼を回復するために全力を挙げるという御決意をお聞きしたいと思います。
  28. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 先ほども申し上げましたが、事態は極めて深刻なものであるというふうに私も受けとめております。昨日、発足いたしました検討委員会におきまして、今、久保さんから幾つか御指摘をいただきましたような契約上の問題、あるいは予算の執行の問題、こうした問題について十分検討して、確かに、そうした誤解を生じたり、過ちを生じせしめるような点があるとするならば、これはできるだけ早い検討を開始して、その対応策を考えていかなきゃならぬと考えております。  なお、先ほども申し上げましたが、事実関係につきましては、これは検察当局で今捜査をしておる段階でございますから、これらにつきましては、その結果を待たなければならぬと思っております。ただ、私を中心といたしまして文部省全員が、この問題については極めて私どもは深刻に受けとめて、そして国民信頼を一日も早く回復できるように一生懸命努力をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  29. 田沢智治

    ○田沢智治君 今日、政治家に政治倫理が厳しく国民から求められるさなか、国立大学における機器購入をめぐる不祥事、昨年は御承知のとおり、池園教授、東京医科歯科大学の問題が大きく世論に批判をされました。また公務員においては、自衛隊員が強盗を働いたり、警察官が銀行強盗を働く。一体、国民の公僕たる公務員は何を考えておるかというのが、今日、国民的世論の大きな批判の声でございます。  私は、やはり行政に倫理を確立するという声は国民として当然求めるべきことであるし、私たち政治家がみずからを律して、正しい政治を志向するということにおいては、それを支えていく公務員はしっかりした根性のもとに国民に対して期待にこたえていくという姿勢を出さなければならぬと思うんです。このように相次ぐ国立大学における不祥事というものに対し、文部大臣はどのように受けとめられ、今後どのような決意のもとにこういう問題に真剣に対処していくか、まず所見をお伺いしたいと存じます。
  30. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) まず、先ほど久保さんからの御覧間に対して申し上げましたように、ただただ残念のきわみである、こういうふうに思っておりますし、そしてまた、この問題が国民皆さんから信頼を失うような、しかも、教育行政を担当する文部省として、こうしたことを生じさしたということについてはまことに残念に思っておりまして、心からおわびを申し上げる次第でございます。  今後の対応等につきましては、先ほどから官房長からも申し上げたとおりでございますので省かしていただきますが、文部省といたしましては、事実の徹底的な究明を通じながら、服務規律の厳正な保持につき一層の徹底を図っていきたい。そして、こうした契約等いろいろ問題ございますし、過ちを行うようなそういうシステムがあるとするならば、これは改めていかなければならぬというふうにも考えております。いずれにいたしましても、今後ともこうした不祥事の根絶を期していきたい、こういう気持ちで、今、事務次官中心検討委員会で、文部省令貝に対しまして強い指導をいたしてまいりたい、こう考えております。  なお、田沢さんから御指摘のように、行政機関におります公務員はもちろんのことでございますが、国民信頼を一番大事に受けとめていかなきゃならぬ政治を担当しておる私どもといたしましても、先生からの御指摘どおり、かかる事態が起きないように、倫理の面でもなお一層注意をしていかなければならぬということは申すまでもないことであるというふうに考えております。
  31. 田沢智治

    ○田沢智治君 特に私は、今日、二十一世紀に向かって活力ある日本を世界の中に位置づけたいということで、臨教審という教育改革に取り組もうとする中曽根内閣の主たる、大きな課題を抱えておる、またその課題に対して責任を果たさなければならないという重要な役割を果たす文部省が、全員一致して、そういう認識と使命感に燃えておるかどうか、この辺の認識について一つ問題があるんじゃないかと思うんですが、官房長いかがでございますか。
  32. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 大変厳しい御指摘でございますが、昨日設けました国立学校にかかる予算事務処理体制等の改善に関する検討委員会におきまして、四つの問題点を私どもは認識しておるわけでございます。  第一点といたしましては、先ほど申し上げたことに関連いたしますが、本省並びに大阪大学を含めまして、国立大学機器購入についてのいろいろな意思決定システムとか、事実関係とか、物品購入の例、これをぜひこれから究明していかなきゃならぬ、これがまず第一点でございます。何と申しましても事実関係の問題。  それから第二には、予算執行処理に関する意思決定システム、これが一番大きいと思うわけでありまして、この意思決定システムについて、本省並びに国立大学についてのあり方を再検討したい。  それから第三点といたしましては、本件事案についても若干反省をする点があろうかと思うわけでございますが、人事上、服務上の問題点につきまして、私どもは、本省あるいは国立大学全体に通じて、この際、反省すべき点は反省し、再検討の必要があるのではないか。  最後に第四点といたしまして、国立学校にかかわります服務でありますとか、予算処理その他運営に関する検討事項、こういうふうな問題点について、私どもも十分今後検討してまいらねばならない。  以上四つの点について、昨日、局長、私どもも含めまして、次官を座長として討議をいたしまして、これから、この四つの点については十分検討してまいらにゃいかぬということを考えておるわけでございまして、十分事態を厳しく認識しておる次第でございます。
  33. 田沢智治

    ○田沢智治君 総括予算班主査と言われる鳥野見さんが逮捕された。御承知のとおり六十年度の概算要求の取りまとめ時期が今日迫っておる。その中で、文部省といえども聖域じゃないんだと、教科書無償は有償にすべきであるというような、行革審の中にもそういう声がある。絶対これは無償を続けるということが、国家、国民に対する変わらない文教政策の基本であると私は思っておるんです。また、文部予算の中でも、あらゆる面で縮小せよというような、そういう物の考え方、私学振興予算においても一割カット昨年はやっておる、そういうことを見たときに、文部省予算が削られる実態はなぜかとすれば、やはり文部省そのものに活力をもって、かくある姿を打ち出していくという全員一致した意思の活力というものを、やはり多くの人たちが文部省はよくやっているぞ、これを助けなければ本当の日本はできないんだと言えるような、そういう気力あふれる文部省内をどうまとめていくか、これも大きな課題だろうと思うんですが、特に予算編成時にあるということで、予算の総括の主査が逮捕されるという事態、来年度予算は一体どうなるかという心配の声もございます。そういう点について支障があるのかないのか、その見通しについて御答弁を願いたいと思います。
  34. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 先生の御指摘のとおり、行革審に関する報告まとめも最終的に近日出る予定でございますし、シーリングにつきましての最終決定も月末近くに予定されておる。私ども文部省としての概算要求作業に入っておる次第でございまして、文教予算を今後、全体どのように教育政策の問題として確保していくか、私どもは現時点においても大変な努力が必要であるという認識を持っておるわけでございます。  総括予算班主査のポストといたしましては、財政当局との連絡調整を含めまして、省内における予算の取りまとめを行う大変重要なポストであることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、金曜日の段階本人が逮捕されたという時点におきまして、私どもは土曜日に鳥野見総括予算班主査官房付に移しまして、会計課副長を総括予算班主査に発令をいたしました。総括予算班としての仕事を専ら会計課副長がとり行うというシステムにいたしまして、机も移す、そして予算班の全体を総括予算班主査として副長が取りまとめる。早速、大蔵財政当局との折衝にも当たって現在やっておる次第でございまして、事務体制処理としては、この点で遺漏なきを期しておる次第でございます。  問題は、私ども活力を持って教育予算に取り組むというところが今後の課題であり、この点については、ただいま先生おっしゃいましたような教科書無償を含めまして、私どもは十分留意しつつ取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  35. 田沢智治

    ○田沢智治君 また、大阪大学調査班を三名送ったという報告でございますが、送った結果、報告書というものは手元に届いておられるんですか。
  36. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) ただいま御指摘調査団派遣の点につきましては、本省の問題が起きる前の段階におきまして、阪大に、人事課調査官キャップとしまして主たる者が三名、随行二名という形で派遣したわけでございます。  派遣をいたしました内容としては、事実関係の究明と、それからワードプロセッサー以外の問題として、世上、いろいろと御指摘がある点についての調査ということで参ったわけでございます。  しかし、第一点のワードプロセッサーに関する事案につきましては、書類が全部捜査当局に提供されておるというような事態でございまして、私どもが意図したような事実関係調査については難しい点がございました。したがいまして、なお継続してその点についての留意を促し、それから第二点のワードプロセッサー以外に、世上いろいろと指摘のある点についての問題は、学内で教職員を含めまして、教員も含めた綱紀等に関する調査委員会などを設置して、世上の疑惑をなくし、大阪大学としての社会的信頼にこたえるいろいろな検討なりその結果というものを出すべきではないかというサゼストをいたしまして、調査団としてはそういう強い勧奨をしたことにおいて、第二の仕事を果たして帰ってまいったわけでございます。日ならずしまして、大阪大学としては、私どもの勧奨に基づいて、綱紀等に関する委員会を設けて、ワープロ以外の問題についても検討を始めておる、こういうふうなことになっておる次第でございまして、調査団の派遣はそれなりの意味があったというふうに考えておる次第でございます。
  37. 田沢智治

    ○田沢智治君 ただいまの報告を聞きますと、一生懸命こういうような実態を解明しながら、これに類するものが出ないような物の考え方をしていきたいという調査の続行並びに処理については理解を私はいたします。しかし、ちまたには第二、第三のケースが発覚されるおそれがあるんじゃないかというようなうわさも聞いておりますが、そういうことは私はないと思うのでございますけれども官房長としてはどうお考えですか。
  38. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 現時点におきましては、大阪大学ワープロ購入に関連いたしまする本省職員収賄ということで、この二つの点について事実関係と、捜査当局捜査が実際に行われているという段階でございます。しかし、いろいろ世上で御指摘があるように、他の大学について、これらの点に関する波及ありや否やという点につきまして、実は私どもとしても事実関係調査を始めておったわけでございますが、捜査当局からの非公式な御連絡もございまして、現在、それらの点も含めて、捜査当局がいろいろ調査を進めておる段階である。したがって、文部当局が独自にそういう点について各大学関係調査を鋭意進めることについては、若干、時間的な、時期的な問題として差し控えてほしいというふうな点もございまして、現時点では、私どもは若干その点についての調査を差し控えておる次第でございます。  したがいまして、私どもとしては、そのような事態が他大学に波及すること、あるいはそういう事態が他大学においても起こるということがないことを祈っておるわけでございますが、その展開につきましては今後の捜査当局捜査あるいは調査にまちたい、またざるを得ない、こういうふうな感じでございます。
  39. 田沢智治

    ○田沢智治君 最後に、この事実の実態については、会計処理意思決定についてのシステムがチェック・アンド・バランスが実際とれているのか、現状でいいのかという組織構造の改正なども検討される必要性がある。百六十万円までは任意契約ができるというようなことでいいのかという問題が私はあると思うんです。また、公務員として、特に管理職者はそれなりの使命を持つ、また会計事務及び服務に関するこれまでの指導育成が文部省としてどういうような計画のもとにその使命を誠実に行うような要請をしてきたのか、研修をしてきたのかというようなことをひとつお伺いしたいと思います。
  40. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) この点につきましては二点ございまして、第一点といたしましては適正な会計事務処理執行上の問題でございます。  その点につきましては、毎年五月に国立学校における経理部課長会議というのをやっておりまして、その経理部課長会議の席で、私どもとしては、例えば契約については物品購入における機種の選定であるとか業者の選定について、いろいろと疑惑を招くことがないよう学内規程の整備を図り、契約事務の適正を期する必要があるとか、あるいは予定価格については他大学の実情とか社会的な価格の問題を調査してやれとか、そういうふうな指導を毎年徹底をすべくやっておる次第でございます。それが必ずしも徹底を欠いておったかということが、今回の事件で大変遺憾なことであろうかと思います。  それから第二点としましては、服務の問題、綱紀の問題としましては、人事課の方からの問題として、私どもは従来から事務次官通達その他によりまして、業者との接触その他においては、公務員としての社会的な疑惑を招かないような立場で十分気をつけて接触をするべきであるというふうなことも指導しておるわけでございますが、この点につきましても、なお、今後十分考えてまいらなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  41. 吉川春子

    ○吉川春子君 今、新しい事務とか医療の機器の開発が進み、そして高価な商品というものが大学あるいは高等学校にも非常に普及しつつあるわけで、そういうような状態の中で今度の事件が発覚したわけですけれども、報道によりますと、百億円程度の別途予算、とめ置き予算というものがあって、これを流用したという形で今度の事件が起こっているわけです。  この別途予算の性格というのはどういうものかという点について最初に伺いたいんですが、年度途中で必要な経費が発生したときに、それに対処するための予算だから、年度末には余ると全部またそれはそれぞれつけてしまうんだということなんですが、ワープロの導入というのは緊急的なものとして進められるのではなくて、むしろ各大学で計画的に進められる性格のものじゃないかと思うんですけれども、この予算の性格と、そしてそれでもってワープロ購入費に充てたという関係はいかがなものでしょうか。
  42. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 確かに先生指摘の点、私どもの御説明が必要であるゆえんでございますが、まず国立学校に関する予算につきましては、一兆六千億という、本年度で申しますれば多額の予算でございまして、五十八年度で申しますと一兆四千九百億というふうな予算でございますが、この点については、約七割程度は当初予算配分の問題として各大学示達をいたす次第でございます。  年度途中に必要なものとして、例えば途中採用の人件費であるとか、退職手当のにわかに必要があるとか、経費の性格上、当初に確定しがたいものがございます。それから、あるいは大学教育研究計画が進みまして、年度途中でこれだけの予算が欲しいというふうな大学の特殊性に基づく年度途中の需要の経費というものもございます。それからまた、例えば災害であるとか、その他大学年度途中の所要経費も出てくるわけでございますが、そういうふうな不測のいろいろな事態、あるいは長期計画の必要に基づいての年度途中の需要ということを目途にいたしまして、人件費、物件費、施設費につきまして、本省におきまして留保経費を持っておるというのがまず前提でございます。  それで、今、御指摘のそのワードプロセッサーにつきましては、二つ購入のやり方がございます。一つは、当初予算として配分された校費の中でワードプロセッサー購入するというふうな意味におきまして、文部省に対して追加概算要求をしなくて、当該大学限りで購入するということも可能でございます。それから、第二の問題として、当初予算ではワードプロセッサーを多く買うことが全体経費のやりくりで難しいから、ぜひ本省の留保の中からワードプロセッサー購入についで追加配分をしてほしいというやり方もあるわけでありまして、大阪大学等の場合には、その後者のケースとしてワードプロセッサー追加概算要求が出てきておると、こういうふうなわけでございまして、当初経費でなければだめだとか、絶対に追加概算ではなじまないというふうには現時点ではなっておらないわけでございます。
  43. 吉川春子

    ○吉川春子君 それで、この予算の使途は、鳥野見主査が自由に処分できるシステムなのか、システム上ですね。また、あるいは上司の判断を本来仰がなければならないものを仰がなかったのかというような点について伺いたいと思うんです。これは、まだ捜査の途中で、いろんなことがわかっていないわけですけれども、独自に判断してやったというよりは、もう少し上司、上の方の人のその判断を仰いで今度のようなことをやった可能性というのもあるのではないですか。
  44. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 追加概算要求が各大学から提出されますのは、文部本省会計課の、国立学校について申しますれば、第二予算班というところに出てくるわけでございます。したがいまして、直接、鳥野見総括予算班主査のところに書類が出てくるわけではございませんで、まず第二予算班の国立学校係に出てまいりまして、第二予算班主査がまずその点についての判断を行います。そして、第二予算班主査判断したものについて総括予算班主査の方に回ると。そして、それから会計課副長、会計課長というふうに回っていくわけでございまして、鳥野見主査一人のみが追加予算配分についての意思決定をしておるわけではございません。ただしかし、結果といたしまして、このオリエンタルという会社にかかわるワードプロセッサーについての問題処理鳥野見主査の若干恣意的な、表には出ないとしても、恣意的な配慮あるいはいろいろなあれに基づいて支出をされてしまっておるということは、会計課内部におけるそのような段階的な意思決定のプロセスがうまく機能していなかったということを申し上げざるを得ないわけでございまして、この点は、先ほど申し上げました意思決定システムの機能の問題として、私ども十分今後検討しなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  45. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと、あんまり、これしつこく聞くつもりはないんですけど、要するに、完全に一人の判断でこの鳥野見主査がやったということで、ほかの人が絡んでいる余地はないというふうに今おっしゃられたわけですか。
  46. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 国立大学から出てまいります追加概算要求の書類には、ワードプロセッサーの台数と金額が載ってくるわけでございまして、その契約の相手先であるオリエンタルマシンという名前がくっついて出てくるわけではないということでございます。したがいまして、鳥野見主査以外の会計課職員としては、大阪大学において、このような台数のワードプロセッサーが必要であり、そして、これだけの金額の所要であるというところでの判断は行うわけでありますけれども、それがオリエンタルマシンに結びついているいないという問題については、承知できない立場処理をしておると、こういうことがあるわけであります。その点については、鳥野見主査が、実は、そういう点を裏から承知しておったという実態があったと思うわけでありますが、鳥野見以外の会計課職員は、このワードプロセッサー追加概算要求が、直接オリエンタルマシンとのかかわり合いが強くあるということは、全く承知していなかったのではないかというふうに、私は信じておるわけでございます。
  47. 吉川春子

    ○吉川春子君 国立大学のOA化はこれからというふうに言われておりまして、非常に、今後ともこの機器の売り込み攻勢というのは激しくなると思うんですね。聞くところによりますと、製品を三割引きとか四割引きとかしてみたり、あるいはいろいろなロッカーとかそういうものをつけてサービスをして売り込むと、こういうようなことがやられているそうですけれども、このような事務機器等の購入に充てる予算が、大体、総額どれぐらいあるものでしょうか。そして、今、全国の各大学購入状況などについて文部省はどういうふうにつかんでおられるのか。そして、こういうようなOA化といいますか、そういうものについては、機器の購入等も含めてチェックする体制というのはあるのかどうか。その辺を伺います。
  48. 西崎清久

    政府委員西崎清久君) 国立学校特別会計予算における設備関係金額でございますが、これは項がいろいろ国立学校とか病院とか研究所とかございますが、項国立学校ということで申し上げますと、五十九年度予算におきまして全体でひっくるめまして、約六十九億という数字がございます。これは設備購入にも充て得る予算、校費の留保予算ということでございます。したがいまして、国立大学において当初予算配分したものの中で設備費にどれだけ充てられたかというのは、まだちょっと私ども数字として持っておりませんが、留保予算の中で設備費として充て得る予算というふうなことで申し上げますれば、国立学校で一応六十九億という数字があるわけでございます。  それから、第二点の先生のお話しの、国立学校においてそういう業者の選定とか、そういう点についていろいろと、また今後の問題の懸念があるわけでございますが、この点は、私が先ほど申し上げましたように、やはり単数の、一人の意思決定によって機種や相手業者を選ぶということではなくて、例えば機種選定委員会とか、そういうふうなものとか、業者の選定の委員会とか、そういうふうな組織をつくった上で、機種を議論したりあるいは業者の選定について討議をするというふうなことが必要かと思うわけでございまして、この件についての十分でない点があるとすれば、私どもも、これからの努力として指導を強化してまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  49. 吉川春子

    ○吉川春子君 最後に大臣にお伺いいたしますが、昨年私立大学でいろいろな不祥事があったということを理由に、国民の強い要求であった私学助成を一二%削減するというような、半ば制裁的な措置もやったわけなんですけれども、今後の国立大学について、この問題が何らかの決着がつくと思うんですけれども、そういう時点について、何かそういうようなことを今後おやりになるような考えがあるかどうか、そしてまたこういう事件を再び起こさないためにどういう決意で臨むのか、お伺いします。
  50. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 昨年の、私学予算が削減をされましたという理由は、今、吉川さんから御指摘をいただきましたような理由で制裁を加えたというようなものではございませんで、いわゆる一般的な政策経費として、一〇%のシーリングという、その枠の中で私学予算も同様な政策経費として考えて講じたものでございます。  ただ、私学全体としてはいろいろな不祥事等も起きておりましたから、国民に理解をされるような、そういう努力をしてもらいたい、こういうことを私どもは申し上げた経緯もございますけれども不祥事の制裁と予算の削減ということとは、これは関連したものではないというふうに申し上げておきたいと思います。したがいまして、今度の問題は、そういうことが行われ得るから国立大学経費、研究助成費等々について、予算配分等について今後いろいろな方法があるのかということでございましょうが、そうしたこととは全く関係がない。あくまでも、先ほどから官房長が申し上げておりますように、予算執行上あるいは物品購入等の仕組みの中に問題がないか、こうしたことを十分この機会に検討して改めるべきは改めていきたい、このことを早急に省内としてもまとめていきたい、こう考えています。  しかし、このことと、服務規定あるいはまた文部省全体みんなが、こうしたことが起きないように十分にこのことについてはお互いに覚悟をしていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございまして、今後とも、かかる不祥事が生じないように万全の措置をとりたい、このように考えておる次第でございます。
  51. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 本件の調査はこの程度といたします。     ―――――――――――――
  52. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本育英会法案の審査のため、本日、参考人として、日本育英会理事長三角哲生君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  54. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 次に日本育英会法案を議題とし、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  55. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは先週に引き続きまして質問をさせていただきます。  まず、私の手元に三和銀行の「教育ローン利用者事情」というものがございますが、これによりますと次のように書いてあります。教育費が年々アップしている中で、サンワ教育ローンは五十三年発売以来、幅広い方々に御利用いただいておる。そして二月下旬でローンの申し込みを行った人の中から東西百四十名を対象とした利用者の平均像をまとめると、主な特徴点は次のとおりである。利用者の年収は五百万から六百万という層が二八・三%と最も多い。しかし四百万未満の層も二五%、八百万以上の高所得届も一二・七%おり、年収の高低にかかわりなく広い層に利用されているが、ことしはおしなべて低所得者層の比率が上昇している点が注目されますと。そして、利用者の所要資金は百六万九千円と大幅に前年度よりアップしているのが目立つ、また返済期間も最長の五年という家庭が五十六年度に比べて三五・九%から五〇・八%に大幅にふえているのが目立つが、これは毎月の返済負担を軽くしようとする傾向が強まっているからであるというふうに指摘をしております。この銀行の調査に実は裏づけを与えるような分析が労働省から出されました。これは昭和五十八年の「労働経済の分析」というので、教育ローンがなぜ伸びるかという背景がここに文部省の資料に基づいて数字で示されています。それによりますと、一年間に支出された教育費が公立中学の子供のいる家庭では十九万五千円、公立高校では二十五万三千円で、私立の高校に通わせている家庭では五十三万四千円、公立の倍の金額になっているということを文部省調査指摘をしております。そしてさらに、これでは平均値ですから、子供のいない家庭も含まれているので、夫婦と子供二人のモデルケースを設定して数字を割り出しましたところが、親の年齢が四十七歳から五十三歳、つまり第一子が大学へ入学し、第二子が高校生以下、その家庭では年間百万円の教育予算がかかり、実収入のこれは二五%、四分の一に当たっているということです。また五十歳になりますと、第一子、第二子が同時に大学生であるという家庭になるわけですが、これは年間二百万円の教育費がかかり、実収入の四〇%弱に当たるというふうにこの政府の報告書で分析をしているわけなんです。  そこでまず大臣にお伺いしたいのは、こういう銀行の教育ローンが非常に伸びていって、こういうローンに頼らざるを得ない教育費の家計圧迫の事実についてどのようにこれをごらんになるかということについてお伺いします。
  56. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 吉川さんの御指摘をいただきました点について、詳細は私も読んでおりませんが、教育費が家庭の中で大変大きな比率を占めるようになっているという事態は、私もこれは認めなければならぬと思います。  ただ、教育費全体の占める比率の中にも、これはそれぞれの家庭が考え判断というものがあると思うんです。例えば義務教育諸学校に通わせているお子様、そのお子様に直接教育費として必要なもの、学用品を買いますとか、あるいは学校に校費として別に私的に負担をしていかなければならぬというもの、別途に参考書を買う、あるいは家庭教師を呼ぶ、あるいはどこかの塾に通わせる、あるいは教育に関し、教育を進めていく過程の中で必要以上に与えるという面もこれはなきにしもあらずだろうと思います。これは否定はできないし、批判もできない、親が子供に対する愛情でもあるわけでございます。  したがって、家計費全体に占める割合というものは、やはり多いか少ないかという判断というのは、これはやはりその家庭によって判断をしていくものでございまして、一般的には、確かに教育に占める比重、経費というものは大変大きなものになっておるということは事実でございますけれども、しかし、そのこと自体とローンとの兼ね合いといいましょうか、それによってローンを云々するということと直接結びつけるというのも、これもやはり家庭の判断だろうというふうに考えるわけでございます。  しかし、教育にかかわる経費が確かに増大をしていくということは、親が子供にかける期待感、愛情、いろんなものが含まれておるということもあろうと思いますし、そのこと自体は否定をしたりできるものではないということも承知をいたしておりますが、文部省といたしましては、そうした経費が家庭に大きな影響を与えないように、これはいろんな仕組み、あるいはまた努力はしていかなければならぬということは言うまでもないというふうに考えております。
  57. 吉川春子

    ○吉川春子君 進学ローンというものの必要性について、総理から文部大臣に対して、一九七七年に検討するようにというふうに指示が出されています。郵政省も昭和五十三年ですか、七八年に予算要求で進学ローン制度の創設の正式な要求を行い、五十四年度から教育ローンがスタートをいたしました。銀行のローンに先がけてといいますか、同時にといいますか、国でも教育ローンの制度に対して積極的な姿勢を示したわけなんですけれども、この総理大臣の指示に対して文部省はローンについてどういう検討をなさって、どういう考えを持っているかということを伺いたいというふうに思います。  そして、これは憲法の二十六条であるとか教育基本法の公費負担制度、あるいは国際人権規約で、高等教育というものについても無償化すべしという、こういう教育費の公費負担の原則があるわけですけれども、こういうものとの兼ね合いにおいて、この教育ローンについて政府が積極的な姿勢をとったということをどうお考えになるのか伺います。
  58. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 御指摘のお話は、いわゆる教育ローンというようなことで、銀行その他で取り扱うものについて、他省庁のいろいろ施策においても取り上げられてきておるわけでございますけれども文部省として実施をしておりますものは、もちろん先生御案内のとおり、文部省としては日本育英会の育英奨学事業として、これは国の事業として、教育の機会均等確保のために必要な基本的な教育施策ということで従来からも取り上げてきておるわけでございます。  かつて、文部省においても、金融機関によります融資の問題を、公的な制度として取り入れることはどうかということについて、四十七年当時であったかと思いますけれども、やはり調査会において検討されたことがございました。当時、いろいろ議論をいただいたわけでございますけれども、結論としては金融機関の返済についての公の保証をどうするかというようなことについて最終的に関係者の間で意見の一致を見なくて、その点は実現に至らなかったというぐあいに私承知をしておるわけでございます。  いわゆる教育ローンというのは入学時の学費負担の軽減のための事業ということで、先ほど御指摘のように、国民金融公庫の進学資金の貸し付けでございますとか銀行の教育ローン等がございまして、それぞれ父兄の需要に応じて活用されているということについては、それなりの意義はあることかと思うわけでございます。  しかしながら、いわゆるこれらの教育ローンというのは、これはあくまでも金融機関等で実施をされているものでございまして、もちろん、基本的には、そういう意味では営業べースに乗っかるものという形で実施をされております。そしてまた、その大半は学生の父兄が入学時の一時的な経費を借りて本人の在学中に父兄が返還をするものということでございまして、基本的に日本育英会の実施しております育英奨学事業と性格は異なるものというぐあいに理解をしております。それぞれ、そのこと自身の意味はあるわけでございますけれども日本育英会の事業で申せば、やはり一定の学力なり家計基準を満たす学生、生徒に無利子、または低利に貸与しまして、借りました本人が卒業後返還をするというのが育英会で実施をしております事業のいわば基本的な性格でございまして、いわゆる教育ローンとはその点では性格が異なるものと私どもは理解しております。
  59. 吉川春子

    ○吉川春子君 性格が異なるものということはもちろんなんですけれども、この教育ローンについて国が積極的に検討を開始して、金融公庫その他を通じてやっているわけなんですけれども、そういうことについて文部省としてはどういうふうにお考えになるのか。それは憲法、教育基本法、あるいは国際人権規約の立場から言ってどうかという点についてちょっとお答え漏れがあったので伺います。
  60. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 先ほどもお答えをした中で申し上げたわけでございますが、いわばそういう、いわゆる教育ローンには、父兄の需要に応じて活用されるということについてはそれぞれ意義があるというぐあいに私ども感じております。  お尋ねの点は、それがいわゆる憲法なり教育基本法に言っておる教育の機会均等確保という観点とそのローンとの関係文部省としてはそういうものが積極的に行われることが望ましいと考えているのかどうかというようなお尋ねかというぐあいに受けとめるわけでございますけれども、私どもとしては基本的には育英奨学事業というものが、教育の機会均等確保のために必要な事業であって、これはかねて文部省所管として拡充、改善充実に努めてきておるというのが今日までの基本的な施策でございます。いわば基本的には文部省の施策として実施をしているという観点で申せば、私どもは育英奨学事業というものを今後とも改善し、充実を図っていくという施策をとっていくことが基本的なことだと考えておりまして、教育ローン等については、それはそれなりに意義があるけれども、それはいわゆる先ほど申しましたような、その事業そのものはそれぞれの営業べースにおいて行われている事柄でございまして、私どもは、基本的に申せば、育英奨学事業が充実をされて、それが国民の要望にこたえられるだけのものになっていくということが望ましいというぐあいに考えております。
  61. 吉川春子

    ○吉川春子君 中央教育審議会の第三の教育改革答申、昭和四十六年の六月十一日なんですけれども、ここで受益者負担主義という考え方を公然と打ち出しました。すなわち、昭和五十五年度の高等教育の受益者負担の水準を国民一人当たり個人消費支出に対して、国立大学では二〇%、私立では四〇%となるように昭和四十八年から漸進的にその水準に近づけるという内容です。そして一九七〇年代の学費の値上げは、国立大学の学費の値上げは、この答申に忠実に行われてきたわけなんです。その結果、大学授業料と入学金の個人消費支出に対する割合は七一年度が、国立が三・七%、私立が三四%でした。ところが八〇年度になりますと、国立大学が二一・一%、私立が四四・二%、まさに中教審の打ち出したとおりに国民の負担が、もう何というんですか、物すごい勢いで伸びてきているわけですね。全くこれは国民の経済負担あるいは生活圧迫ということを考えると、非常に重くのしかかっておりまして、本当にけしからぬというふうに思うわけです。  ところで、中教審は受益者負担主義を一方では出して、しかし、同時に、教育の機会均等という歯どめを、歯どめとして奨学制度の充実ということについても同時に言及しているわけですけれども、その内容についてちょっと御説明いただきたいと思います。
  62. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 四十六年の答申では、ただいま先生指摘のように、受益者負担の問題、教育の機会均等の確保の問題触れているわけでございます。基本的には、高等教育経費がどのようにその経費負担を考えるかという点が問題点として指摘をしておるわけでございます。この点は四十六年の中教審答申でも具体的に指摘をしておりますが、なお私どもとしては、高等教育についての経費負担の分担をどう考えるかということは、基本的にこれは今後の文教政策を進めていく上においても考えなければならない非常に大きな課題であるというぐあいに考えております。  ただ、今日まで行われてきております、先生指摘では、いわゆる中教審路線に沿って国立大学の授業料等値上げをやってきたのは、まさにその路線に沿ったのではないかという御指摘でございますけれども、私ども、もちろん四十六年答申というものについても十分意味のあるものとして受けとめておりますが、しかしながら、それ以降の学費の値上げ、特に国立大学の授業料等について引き上げを図っておりますものは、もちろん、そのときそのときの事態対応して教育に要する経費あるいは私立大学との均衡等、諸般の状況を総合的に勘案して全般的に判断をしておるものでございまして、先生指摘のような四十六年答申そのものを実行しているというぐあいな御指摘でございますが、もし、そういうふうな御指摘であるとすれば、その点は、私ども、その時点時点で必要な判断を行って実施をしているところでございまして、いわゆるその路線に沿って事柄を進めているという御指摘については、必ずしも、そのように判断をしていないということでございます。
  63. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと、私の時間はそんなにないんで、端的なお答えで結構なんですけれども、四十六年の中教審の答申の中で、奨学制度の充実について数字を挙げて指摘をしているんですけれども、その点を一言おっしゃってください。
  64. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 四十六年答申の全体のものを私ただいま手元に持ってきておりませんので、本文の抜粋のところを持っておりませんので、あるいは御指摘の点は参考資料として添えられていたものではないかというぐあいに記憶をしておりますが、ただいま手元に資料を持ち合わせておりません。
  65. 吉川春子

    ○吉川春子君 資料が手元になくても中教審の答申ですから、よく御存じのはずと思うんですけれども、この中で奨学金の制度についても、大学の授業料の値上げだけを言うのでは歯どめにならないと考えて、それで奨学金の受給率を三八%に引き上げるようにということを中教審は提案しております。ところが、現在の時点では、この日本育英会の奨学金の利用者の数を見ますと、大学と高校と平均して、公立も私立も平均して一〇%なんですね。私はここでひとつ強くお伺いしたいことは、国立大学の授業料の値上げとは、まさに中教審の数字に沿って、それを超える値上げをしてまいりまして、確かにそういう点では私立との差は縮まっているわけですね、二対一になっているんですけれども、これは私立と国立と両方の大幅な授業料の値上げの結果そうなって、一方では同じときに奨学制度の充実ということも答申しているのに、そのことについては全く手がつけられないでいるというのは非常に片手落ちではないか、それはどうしてそうなったんでしょうか。
  66. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 先生の御指摘は、授業料の値上げという点で受益者負担の点は実施をしていて、他方、育英奨学事業の充実について必ずしも十分ではないんではないかという御指摘のように受けとめるわけでございますけれども、育英奨学事業全体の拡充についても、私どもとしても、その後、年度を追って努力はしてきておるわけでございまして、確かに全体の、先生指摘の貸与率と申しますか、採用率と申しますか、それがなお低いではないかという御指摘は、私ども今日まで育英奨学事業の拡充について努力はしてまいってきておりますけれども、確かにその点が採用率なり貸与率の充実という点で必ずしも十分でなかったということは、数字の上でも御指摘になる点はあろうかと。思います。しかしながら、他面、採用率という点で申し上げますと、全体で十八歳人口全体、あるいは大学で申せば大学の進学者全体の数の伸びが大変伸びてきておるということもございまして、もちろん、中教審で、その当時試算したものも、そういうことも前提にした数字の上であることは承知をしておりますけれども、私どもとしては、それらの点も踏まえまして、しかも、今日の財政状況下で、どうすれば採用人員の拡充を図れるかということを総合的に勘案しまして、今回御提案申し上げているような形で採用人員の量的な拡充を図るということで対応をしてきておるわけでございます。先生の御指摘の点が、受給率の点でいえば、四十六年答申で言われたものに比べて実態が低いではないかという点については、御指摘の点は私どもとしてもそのように認めます。
  67. 吉川春子

    ○吉川春子君 認めるというか、数字がはっきり出ているわけですからそれは認めざるを得ないんですけれども、問題はやはり繰り返して指摘しております、また局長も言われているように、教育の機会均等ということを考えたときに、その大幅な授業料の値上げだけをやって、そして育英奨学金の方は全然力を入れないというのでは、これは非常に機会均等が損なわれるという点を指摘しておきたいと思うんです。  今回の法改正が、そういう意味で充実なんだというお言葉でございますが、そこで伺いますが、有利子と無利子の比率が一対六、そして利率が三%というのが今度の中身でございますが、将来、この比率、例えば有利子の率がふえたり、あるいは利息も三%以上になるという可能性はあるんでしょうか。
  68. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 御指摘のように、五十九年度の事業としては先生指摘のような人員の規模、それから利率についても本人負担については返還開始後三%の低利という形で事業を計画いたしたものでございます。新規の採用人員の二万人ということについては、私どもこの事業が学年進行完成度まではそういう規模で対応をいたしたいと考えておりますので、全体の数字で申しますと、数字の比率が、二万対十二万という数字が若干動く点はございますけれども、しかしながら、考え方において無利子貸与事業を基本的に根幹として考え、有利子貸与については大学、短期大学に限定をして対応するということについては、そのことについて、将来とも、少なくとも今の事業が学年進行完成するまでは、そういうことを動かす考えはございません。そしてまた、金利の卒業後の返還の利率につきましても、財政当局とも学年進行完成時までの全体像ということ、あるいは将来の一般会計からの利子負担というようなこと、それらも全体十分財政当局とも議論をいたしまして、私どもとしても、この五十九年度事業を通して御提案申し上げているわけでございまして、それらの将来とも低利とするということについては維持をしてまいるつもりでございます。
  69. 吉川春子

    ○吉川春子君 低利ということは抽象的な言葉ですから、四%でもそれは七%から比べれば低利じゃないか、七%でも市中の銀行ローンの一〇%から比べれば低利じゃないか、これはもう非常に抽象的ですから、低利でいくということ自体は全然意味を持たないと思うんですね。  それで、具体的に、もうこの育英奨学金制度を充実させるという観点に立てば、例えば有利子と無利子の比率を半々にまではしないとか、利息だったらば三%以上は絶対にしないとか、こういう、何かこれ以上は後退しないという具体的な歯どめを聞かせていただきたいと思うんです。
  70. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 全体の事業量、量的な面で歯どめというものをどう考えるのかというお尋ねでございますけれども、その点は既にお尋ねもございまして、お答えもしているわけでございますが、有利子の貸与事業については、当面必要とされる大学、短期大学に限定をし、かつ採用人員についても、現在の規模を学年進行完成時で見ますと、先ほど御指摘の二万対十二万という数字は若干変動はございますけれども、もちろん、無利子貸与事業が制度の根幹として、量的にもそういうことが示されるだけのものを私どもとしては、今後とも確保をしていくつもりでございます。そして、有利子貸与の利率について今後とも三%を絶対動かさないというようなことについてどうかというお尋ねでございますが、これは金利の構成そのものというものが全体的な問題でございますので、私どもとしては、そういう全体の枠の中で、将来とも有利子貸与制度が、奨学生の返還の負担能力ということから考えて、可能な限り負担の重くならないような形で維持をすることが必要であるという観点はもちろん貫くつもりでございます。そして、先ほども説明しましたように、現在二万人という規模で五十九年度予算で計上いたしておるわけでございますが、当面、その二万人で学年進行完成時まで私ども対応をするつもりでございまして、もちろん、それらについては三%の金利ということについては確保するつもりでございます。それ以後の時点においても、その点は先ほども申しましたように、基本的な考え方としては、将来奨学生が返還をするに当たりまして、返還の負担能力という観点から、負担のない形で低利を維持することが必要であるということを私ども考えておるわけでございまして、その点は先ほど申し上げましたように、数字として三%を動かすことがないということは、金利政策全体の中での問題でございますから、その点は申し上げかねるわけでございますけれども、文教政策として、この育英奨学事業を考える以上は、私どもとしても、奨学生の負担感ということがまず考慮すべき第一の観点というその考え方に立って、将来とも低利とするということについては確保していくつもりでございます。
  71. 吉川春子

    ○吉川春子君 三%の利率という点については非常に微妙なお答えで、全体の財政政策の枠によっては動かされる可能性もあるという心配を私は打ち消すことはできません。今度の法改正が出てまいりましたときに、日本育英会に一人の大学生が電話をかけてきて、奨学金に利子をつけるならそれはもうローンなんだと、これからは奨学金とは呼ばないでほしい、こういうふうに言ったそうです。まことに厳しい指摘であると私は思います。もし今度の利子つきの奨学金も、ローンも奨学金というならば、有利子の奨学金と銀行などの教育ローンとの差がどこにあるんでしょうか。将来、全体の財政事情の中で、文部省は負担能力の範囲と考える利率をお決めになったとしても、銀行ローンの利率に近づいていくことも可能性としてはあるわけですが、どこまでを奨学金と呼ぶのか、外国ですとスカラシップとローンというのは明確に分けて考えているようですけれども、有利子もこれを奨学金と呼ぶというのが今の文部省のお考えなわけですけれども、どの辺にその限界があるのか、教育ローンと。いかがでしょう。
  72. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 現在の育英会の奨学金は、御案内のとおり無利子の貸与制度で、一般貸与、特別貸与という形で現在も実施をしておるわけでございます。奨学金のあり方については、それは議論はいろいろあるわけでございますが、現行の日本育英会で実施をしておりますものは、基本的にはそういう無利子の貸与制度ということで、そのこと自身は現行制度も広い意味でのローンという形のものであると私どもは理解をしております。問題は、先生指摘の点は、銀行等で実施をしているものと育英会で実施をするものとの性格の差はどこにあるのかというお尋ねのように伺ったわけでございますが、その点は先ほどもお尋ねがあってお答えをしたことの繰り返しになるんでございますけれども、いわゆる銀行ローン等というのは、入学時の学費負担の軽減のための事業ということで、国民金融公庫なりその他進学資金の貸し付けその他で実施をしているものでございまして、この点は基本的には父兄の需要に応じて活用されるという点が一つあろうかと思います。しかしながら、育英会の奨学事業というのは、本人が勉学のために、もちろんそのために学力なり家庭基準というものを満たす学生生徒に無利子あるいは低利で貸与をし、本人が卒業後返還をするという形での育英奨学事業でございまして、私ども低利の有利子制度を今回創設いたしますものについても、これはもちろん基本的には広い意味での育英奨学事業の範疇に入り得るものというぐあいに理解をしております。もちろん、そのために、今回の制度では在学中は無利子とし、卒業後も御案内のとおり三%の低利で、財投資金との利率の差については一般会計から利子補給をするという形で実施をするものでございまして、いわゆる民間で行われております教育ローンとは基本的に性格を異にするという点は御理解をいただけるかと思います。
  73. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと時間もあれですから余り突っ込めないんですけれども、銀行ローンだって、卒業後本人が払うというような制度が出てくれば奨学金に近づくわけですね、これは。そういう意味では非常に今度の有利子制導入ということは、銀行の教育ローンとそれから奨学金との差をあいまいなものにした。どっちが歩み寄ったか、それはあれですけれども、非常にあいまいなものにしたということは否めないし、こういう形で今後ローンの利用者もだんだんふえてくるではないかというふうに思うわけなんです。  それで、この問題について文部大臣にお伺いしたいんですけれども、私は本質的には教育ローンなどに頼らなくてもいいような文教政策こそやるべきなんじゃないかというふうに思うわけです。先ほどの労働省の分析によっても、非常に教育費が家計を圧迫しているということは、政府自身が分析して国民報告しているわけですから明らかなんです。それで、今、臨教審の教育改革ということが一つの大きなテーマになっておりますけれども、臨教審の中で検討されるべき課題の一つとして教育費の父母負担の軽減ということが非常に教育改革の重要な柱になるべきではないかと思うんですが、その点についての大臣のお考えはいかがでしょうか。
  74. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 今の御指摘は大変大事な問題だと思います。結論から申し上げますと、臨時教育審議会でどうしたことを審議するかは、今の段階では私から申し上げる立場ではないわけでございますが、高等教育を含めまして、教育全般にわたる検討をされるわけでございますから、当然やはり教育に対して国がどの程度これはかかわり合いを持つべきなのか、あるいは公費、私費どういう形でやっていくべきなのかというようなことは、私は当然論議されるべきであろうというふうに期待をいたしておるわけでございます。  今日の国全体の教育費、よく先生方からも、聖域論であるとか、そうでないとかという議論も出てくるわけでございます。そういうことの観点から考えましても、教育というのは、国の全体の財政の仕組みの中でどうあるべきであろうかなどというようなことも、私はこの際教育全般を見直すためには十二分に議論をしてもらいたいなあ、こういうふうに私自身はそんな感じを持っておるわけでございまして、繰り返すようでございますが、今の段階でそのことは議論されるテーマであるというふうに文部大臣立場から申し上げるということは越権でございますが、そうしたことの議論が恐らくなされるのではないかというような、そういう期待を私はいたしておるわけでございます。  先ほどから、幾つか御指摘いただきました先生のお話はとても大事なところだと思いますが、これはもう先生も十分御承知だと思いますが、奨学資金というのは、奨学資金を求める学生がたくさんあればあるほどいいのか、奨学資金を求めなくてもいいというような事態になることが本当はいいのか、これなんか私は、どちらがいい悪いということではなくて、大事な問題だというふうに思うんです。  ローンができました経緯も、先生御承知だと思いますが、当時、これは先ほど、大学局長立場からは、他省庁の政策的なことだからというふうに、言及をいたしませんでしたが、私は政治家でございますから、当時、ゆうゆうローンという形でこれは郵政省がスタートさせたわけでございます。この郵政省が考えました一つの方法としては、もちろん一時的に入学金等が大変御家庭でお困りであろうからお貸しをしますよという制度からスタートしたんですが、逆に言えば、郵便貯金をふやしていきたい、ある程度郵便貯金をしてもらった方に優先的にお貸ししますよという制度だったわけなんです。だから、当然、郵政省として貯金をふやすという政策的な方途に使われたと。それに対抗して大蔵省は、それは困るというような立場も、当時、経緯はいろいろあって、そして、国金とかほかの金融機関を使いながら、一般市中銀行もそれに対応したと。本来言えば、一般市中銀行がもう少しそういう点は柔軟に、入学金等いわゆる一時的にお金の要る、そういう時期には、もう少し柔軟にお金を貸してあげればよかったんだろうと思うんですが、そういうことのいろんな背景から、こうした制度ができ上がったということだと思いますので、おのずからこれは、教育に対するいわゆる奨学資金的なものと比較していくということにはスタートの時点で私は違っておると思うんです。  しかし、いずれにいたしましても、先生から御指摘のように、確かにスカラシップとローンというのはそう変わらないじゃないかと、今日のこの制度では、という点は私ども十分考えていかなければならない問題でございますので、先ほど局長も申しましたように、あくまでもこれは教育的配慮ということは十二分に今後とも考えていく、そうでなければ、また文部省としての施策ということは言えないということは、これはもう当然のことであろうというように考えておりますから、今後とも、そういう点については十分留意をしながら、あくまでも奨学資金、その資金をできるだけ拡大をしていくということについて、経済的にいろんなお立場で、もちろん無利子であれば一番いいわけでありますが、有利子でもいいから、ぜひその制度を利用したいという方々がおるということであれば、その方々に対する一つのやはり量の拡大という意味からいえば、これもまた一つの方途であろうというふうに考えてきているわけでございます。しかし、あくまでも、たびたび申し上げるようですが、教育的配慮と、その点についての留意は、今後とも文部省は十分な検討をしながら施策を進めていかなければならぬ、こういうふうに考えているわけでございます。
  75. 吉川春子

    ○吉川春子君 今度の有利子制の導入の一つの理由として財政難ということが言われているわけなんです。私が言うまでもありませんが、育英奨学金制度がスタートしたのが昭和十八年、一九四三年である。その当時は第二次世界大戦、太平洋戦争の末期で、非常に財政的には厳しい時代であったというふうに思うわけなんです。もちろん、戦争に勝利するために有為な人材を育てようと、そういう意図でこの制度がスタートしたという側面はあると思うんです。そのときに無利子でスタートしたと。本来ならば給付制がいいんだけれども、貸与制にして無利子でスタートした。その制度がずっと何十年か続いてきまして、この時期に、いよいよ財政難だから、今度は利子をつけるということを加えたわけですけれども文部大臣の御判断といたしましては、昭和十八年当時よりも今日の方がさらに財政的に逼迫しているとお考えなのかどうか、いかがでしょうか。
  76. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 昭和十八年というと、私は六歳だったものですから、どういう状況であったかわかりませんが、私の郷里の、また大学の先輩でもある永井先生が主宰をされてこの制度を設けられたことについて県人として誇りを持ちますし、政治家としてすばらしいなというふうに思います。しかし、当時の経緯はまたいろいろあったんだろうと思います。先生が今御指摘になったような点もあったのかもしれません。しかし、当時の問題としてどうだったであろうかということは非常に難しい問題でございますが、当時は量的にはそう多くなかったし、学問を進めていこうという方々も少なかったろうと思います。また、若き学徒に相当する年齢はかなり兵役にもとられていたという、そういういろんな環境もございましたから量的に極めて少なかったと。詳しい数字は私は承知をいたしておりません。しかし、今の場合は、高等教育だけ考えましても三五%の進学率、そしてまた、逆に言えば、経済的に日本の国が大きく伸びておりますし、個人個人の家庭の状況も変わってきております。学問を学んでいこうというその目的もそれぞれ皆多種多様だろうというふうに考えますから、    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕 そういういろいろ比較検討いたしてまいりますと、どちらが財政的にどうであったかというのは非常に難しいと思います。ただ、戦時体制という中では、財政的には当時の方が大変厳しかったであろうというようなことの予想はできるわけでございます。制度といたしましては、当時の状況であったから、恐らく給付制がとれなかったんだろうと思うんですね。ですから、それからスタートしたということでありますが、全体的に考えてみて、日本の文明度といいましょうか、確かに世界で一流の国になったとはいうものの、民主主義、平和、自由主義を取り入れたのは昭和二十年以後でございますし、例えば、今、地方都市などでは積極的に進めておりますような下水道なども、フランスなどではナポレオンの時代にあったと、こう言うんですから、日本の国は大きく伸びだと言いますが、そういう皆文明を取り入れたのがわずか百年前という歴史から考えてまいりますと、そういう奨学制度というものも取り入れたのが昭和十八年ということでございますから、まだまだ、これから成熟の段階に行くには相当の時間もかけなきゃならぬだろうと、こういうふうに考えます。  そういう中で、さはさりながら、財政というものはあるわけですから、財政があって、その中で量的に伸ばしてあげる、機会をできるだけ多くするんだということになれば、やむを得ない措置判断として、これは大学局長の言葉をそのまま言うて恐縮でありますが、やはり根幹として無利子はしっかり残して、そして、有利子でもいいからぜひその方向で恩典に浴したいという方に対してはその領域を広げていくということをとらざるを得ないというのは、今日的財政の中ではまたやむを得ない一つの方途なのかもしれませんが、しかし、このことも、ことしから、この制度が国会で、この参議院でも御了承を賜って制度としてスター小をしていく、そして、育英奨学資金として国民皆さん、学生の皆さんがどれだけ利用なさるかということも非常に大きな私は関心だろうと、こう思うんです。そういうことの事態の推移を見て今後の奨学制度全体にも十分に検討を加えていかなきゃならぬ、あるいは改善も加えていかなきゃならぬだろうと、こういうふうに考えます。
  77. 吉川春子

    ○吉川春子君 私も、大臣よりは、もうちょっと小さかったわけですね、昭和十八年は、生まれてはいましたけれども。それで、財政的な困難度といえば、やはり今日と比較にならなかったというふうに思うわけですね、これは客観的に。財政的に困難だから、いろんなものができないかどうかという判断よりも、むしろ政策選択の問題ではないかということで私はお聞きしたわけなんです。  その点でもう一つ伺いたいのは、欧米諸国におきまして、つまり中曽根総理のお好きな西側諸国ですね。西側諸国では、高等教育の国の負担はどうなっているんでしょうか。例えば、フランスとかドイツとかイギリス、ノルウェー、スウェーデンなどで、授業料とかあるいは奨学金制度、そういうものについてどういうような立場をとっているのか、御説明ください。
  78. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) それぞれの国における教育制度というのは、先生、御案内のとおり、伝統なり歴史、そういうものがありまして、それぞれ異なるわけでございます。しかしながら、高等教育の分野で考えますと、例えば高等教育について基本的に公費で賄う仕組みをとっているというのが、もちろんドイツなど、そういうところではそういう仕組みになっておりまして、授業料負担というようなものはないわけでございます。それらの点については、高等教育の制度をどう考えるかという基本的な点があろうかと思います。もちろん考え方はいろいろあろうかと思いますが、授業料無償という考え方の基本には、やはり、高等教育を受ける人材というものがやはり将来国の発展のために必要であって、それは公費をもって賄うという考え方が基本にあって、そういう体制をとっているということも考え方としては考えられる一つでございます。アメリカと日本の場合には、いずれも授業料を徴収するという形での高等教育ということになっているわけでございますが、それらの点、さらにそれぞれ育英奨学制度、奨学金の制度が、外国で言えば、多くは給付で実施をされているというような形がございます。いずれも考え方がそれぞれ異なるわけでございまして、一概には議論ができないわけでございますが、私どもも、奨学制度の基本として給費制度ということも考えられるべきもちろん一つの形というぐあいにも思うわけでございます。しかしながら、こういう教育に要する経費をどう考えるかという問題の基礎には、やはり基礎から考えれば、それぞれの国において租税負担率がどのようになっているかという基本的なところからさらに検討を要するという問題もあるわけでございまして、その点は一般的な国民の負担をより多くして、教育なりそういうような分野で個々の国民が負担を要する点をより軽くするというような基本的な仕組み考えていくのかどうかというようなことも関連をすることであろうかと思います。現時点では日本の場合、高等教育について考えれば、やはり積極的に高等教育を受けようとする個々の国民の負担能力ということも一応考えるという考え方に基本的には立っているわけでございまして、高等教育全体をすべて公費で賄う方向で事柄を、政策全体を考えるという方向ではございません。それらの点については、先ほども指摘のありましたように、教育費の負担区分というものをどのように考えていくかという基本的な問題と絡む点があろうかと思います。あるいはお尋ねの点について十分なお答えではないかもしれませんが、諸外国の授業料なり育英奨学の仕組みについて申せば、ただいま申し上げたような方向であろうかと思います。
  79. 吉川春子

    ○吉川春子君 今、局長が御答弁になりましたように、ヨーロッパ諸国では高等教育において授業料は取らない、それから奨学金は貸与ではなくて給付だということですね。日本におきましては、高額な授業料を取られて入学金も取られて、そして奨学金については後で返還しなきゃならない。しかも、今度はそれにさらに利子がついたと、こういう物すごい違いがあるわけですね。それから、アメリカの例を言われましたけれども、アメリカでもやはり貸与ということが基本で、特にGNPに占める高等教育の公財政支出の比率などでは、アメリカでは一・六%、オランダが第一位で一・九%ですけれども、そういうふうに多額な教育費を支出しております。これでずっといきますと日本は十一番目でして、GNPに占める高等教育への公費の支出の割合が〇・四%ということで、非常に低くなっているわけです。それから、各国の国家財政の中の教育費の比率などでも、トップのオランダが二三%ですけれども日本では、フィリピンとかイラクとかあるいはベネズエラとかタイとか、そういう国よりもはるかに少なくて九・四%、南アフリカよりは少しいいと、そういう位置を占めているわけなんですね。このことば、同じ学生でも、日本に生まれた不幸ということを嘆かざるを得ないような実態が今あるのではないかと思うんです。  それで、これも文部大臣の御意見を伺いたいんですが、時間が迫りましたので短くて結構なんですけれども日本よりもはるかにGNPの低いこういう国々で、教育費をかなりたくさん支出している。公費負担の比率が非常に高い。一方、世界で有数の経済大国、GNPは、ソビエトは社会主義国ですからこれを除けば、アメリカに次いで第二位なんですね。こういう高い日本で、どうしてこんなに教育費の支出が少ないのかと、この点についてのお考えを伺いたいと思います。  そして、私の希望を言えば、西側諸国の一員ということを強調されるのであれば、教育費の分野では西側諸国の一員としての、そういうぐらいの比率を保つべきではないかと。私は西側諸国の一員論とりませんけれども、そちらでそういうふうにおとりになるので、そういう立場から言えば教育費の水準もそこへ持っていかれるべきではないかというふうに思うんですけれども
  80. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 奨学金とか、そういう面だけで取り上げてまいりますと、今のような比較の諭旨も成り立つだろうと思いますが、予算教育費全体というものを見ていった場合に、そこだけ取り上げていくのはいかがなものか。公教育全体にかかわるもの、そしてまた日本の国の教育というのは非常に幅広く、非常に奥行きも深いわけでございます。いろんな角度で検討して比較すべきであろうというふうに考えます。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕  ただ、確かに高等教育の面については、若干先進諸国とは、劣っている、要するに少ないというような点は私どもも承知をいたしておるわけでございます。  ただ、先生がお話の中にございましたように、日本の学生は日本に生まれて不幸だということに果たして当たるか。日本の国にこうして生まれて、いろんな角度から見て、やはり、ぼくは日本の学生は幸せだなと思っていてくれるだろうと、こう思っているわけでございます。
  81. 吉川春子

    ○吉川春子君 先ほど局長も強調されましたけれども考え方の違いというのがあるわけですね。要するに、教育についてどういうふうに考えるか。予算編成の場合にその考えの違いが欧米諸国と日本との間ではっきりあらわれているということを私は指摘したわけです。それで、やはり、財政難というよりも政策選択の問題、まあ考え方の違いですね、局長の言葉で言えば。ですから、私としては、考え方を転換していただいて、もっと教育にお金を注ぎ込むような、そういう立場に立っていただきたい。育英奨学金に利子をつけるという発想は、そうすれば出てこないのではなかろうかというふうに思うわけです。  それで、例えば防衛計画の中で四次防、五次防というのがあるわけですね。御承知のように四次防、五次防の達成状況を見ますと、F15とかP3Cとか、そういうものを見ますと、超過達成をしてきているわけなんです。同じ政府のもとにあって、防衛庁はいろいろな計画を立てて着々と実施して超過達成をしていると。それで、例えば文部省においても、幾つかの教育に関する計画があるわけですが、教材整備計画、四十人学級の計画の達成状況について御報告いただきたいんです。
  82. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 教材費と、それから四十人学級についてのお尋ねでございますけれども、まず教材費について申し上げますと、先生、御案内のように、既に第一次の教材整備計画を達成いたしまして、昭和五十三年度から第二次の教材整備十カ年計画に入っておるわけでございます。しかしながら、最近の国の財政事情の悪化等のことから、予算が抑制基調となりまして、特に昭和五十七年度以降、臨調答申による指摘等もございまして、補助金等の原則一割削減というような方針もとられてきたというようなこともございまして、整備計画全体がある程度スローダウンをいたしておりまして、その結果、現在、昭和五十九年度段階で申しますと、全体の目標額の約五割相当が達成されているという状況でございます。  なお、別の見地から、当初計画として、昭和五十九年度までに達成する予定であった部分に対する達成率という見方で申しますと、約八割程度達成しているというような状況にあるわけでございます。また、四十人学級についてでございますけれども、これも御案内のように昭和五十五年度から四十人学級の実現を含む第五次の教職員定数改善十二カ年計画を発足したわけでございますが、その後、御承知のような財政事情と、特に行革関連特例法によりまして、昭和五十七年度から五十九年度までの特例適用期間中、その実施を抑制するということとなりました結果、この計画も、現段階では、ごく一部の実施を見た程度にとどまっているわけでございます。
  83. 吉川春子

    ○吉川春子君 文部大臣のお考えを聞かせていただきたいんですけれども、防衛計画が非常に成績よく超過達成している中で、四十人学級はまだ予算も棚上げにしておけというような最近答申が出ましたし、教材費の整備計画自体が、内容はきょうは立ち入りませんけれども、非常に不十分なものであるにもかかわらず、達成が五割相当という段階にあるわけですね。同じ政府のもとで、一方の省庁では非常に超過達成して、もう一方では全然達成できないでいる、こういうことについてどういうふうにお考えですか。
  84. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 防衛費と教育費という予算のことで比較検討していくということは、これは一つの立て方として立論はなり得ると。防衛庁と文部省との予算の立て方、これを比較していくということ、これまた一つの角度から見ますと、いろんな見方があろうと思います。  ただ、日本の国はまさに無資源国でございますし、貿易立国でもございます。ごうして学生たちがまさに自由を謳歌して、今日の自由主義の国を維持をしていく。そうしたことを考えますと、国際社会の中での日本立場というものもあるわけでございます。先ほど日本に生まれて不幸だというふうに吉川さんは御指摘を例示としておっしゃいましたけれども、逆に言えば、日本の若者たちは徴兵の義務もございません。戦争に行くという心配もございません。そして、まさに自由を謳歌しながら学問を進め、そして大いに青春をエンジョイして、将来の日本の国をしっかり背負ってくれる、国際社会に役立つ、そしてまた国際社会に対応でき得る、そういう主体性を持つ青年として大きく伸びてほしい、こういう私たちの願いを受けて彼らは頑張っているわけでございます。したがいまして、そういう日本の国の国情、それとまたよその国との比較、いろいろあろうと思います。防衛費だけが着々と整備が進行していく、それに比べ文部省はそういう対応してないではないかという、そうした御指摘との比較検討というのは、私は比較対照する立場ということから考えますと、必ずしもなじみにくいお話ではないだろうかというふうに考えます。しかしながら、今日与えられた環境の中で、私どもとしては、教育予算が少しでも伸びていくように、また教育を受ける立場国民皆さん立場も十二分に文部省は配慮しながら、なお一層、文教政策推進上、必要な予算の確保には最大の努力をしていかなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。
  85. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、教育費あるいは奨学金制度の問題について、やはり日本の子供たちが非常に負担が重いという点について不幸だというふうに言ったわけなんです。戦争の危険がないかどうかという問題については、またいろいろかなり緊迫した条件もありますし、トマホークの配備、あるいは核戦争の戦場というような危機も迫っているということで、国民の反対運動も盛り上がっているんで、それは私としては文部大臣とはもちろん考え方が違うわけなんです。しかし、やはり教育というものも非常に重要な分野でありまして、国の防衛ということを一般論で非常に重要だというふうに考えれば、教育というのは、まさに次代の日本を背負っていく子供たちを育てるものですから、非常に重要だというふうにはお考えになっていらっしゃると思うんです。しかし、この教育に、じゃどういうふうにお金をかけるかという点で、全く不十分であるということを私は指摘せざるを得ない。  それで、五十六年当初、ゼロシーリング以前の予算をゼロといたしますと、予算の伸び率を比較した表が新聞に出でおりましたが、本当にグラフで書くと明確なんですけれども、文教とか科学費はわずか二・六%しか伸びていない。それから社会保障費も五・五%しか伸びていない。それに対して防衛費は二二・三%伸びている。こういう、今、日本予算というのは全くバランスを欠いているというふうに思うわけです。  それで、最後に文部大臣にお伺いしたいのは、これから予算編成の時期に向かって教育予算を削れというようなことがさまざまなところから言われていると思うんです。  それで二、三日前の臨教審の本会議質問で、私も中曽根総理に質問をいたしましたけれども、そのときに、必要な予算は取っていくんだということもちらっとおっしゃったように記憶しているんですね。それで、全体の財政状況でということになれば、言われれば言われるまま縮んでいくわけですね。どこまでも縮んでいくのか、やっぱり、ここ以上は譲れないという線が文教予算の場合あってしかるべきだと思うんですけれども、そういう歯どめといいますか、とにかく、いろいろなところかと言われれば、もう予算は削っていくということではなくて、これ以上はもう絶対に削れない、あるいは最低この程度は文教予算を確保しなきゃならないんだと、たとえどんなに財政事情が困難でも確保しなければならないのだと、そういう立場にやはり文部大臣としては立っていただきたいと思うんですけれども、そのことを最後にお伺いいたします。
  86. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 深刻な財政事情でございますので、やむを得ず幾つか縮減したものもございます。しかし、必要に応じましては科学研究費、あるいはまた新しく施行いたします放送大学等々についての予算は逆に増額をいたしているという面もあるわけでございまして、全体といたしましては、所要の経費を十分に確保するように努力をしてきたわけでございます。行革審の報告等もいろいろございますが、私どもといたしましては、個々の問題につきまして、詳細に、文教予算全体が非常に厳しい状態になるというようなことの事態を踏まえながら、なお一層それぞれの個々の立場で努力もいたしておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、文教政策を推進する上において必要な予算というものは、これはあくまでも確保していきたい、このように考えているわけでございます。今後とも、私どもなお一層努力をしていかなければならぬし、六十年度の概算要求の編成も目前でございます。いろいろと御指摘をいただきました点なども十分留意をしながら、なお一層努力をいたしたい。このように申し上げておきたいと思います。
  87. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  88. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時十六分開会
  89. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本育英会法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  90. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 最初に文部大臣にお伺いをいたします。  本会議で大筋質問いたしましたので、きょうはそれに関連をする部分について中心的な質問をしていきたいと思っております。  今、来年度予算編成をめぐりまして、マイナスシーリング、これは大蔵省は堅持していく、いやそれではならないというようなことがいろいろと報道されておりますが、きのうのマスコミ関係の中で一番私の目を引いたのは、大蔵省が、教科書無償を廃止していくために文部省に強く働きかける、こう出ておりました。自民党の教科書問題プロジェクトチームが去年の八月、有償化の方向でこの問題を検討するという結論を出しているわけでありますが、当時の文教委員として先頭に立って頑張られた森文部大臣は、その大蔵省の攻勢に対して、今回はどのようにして対応されていくのか、文部省の態度を私はきちょっと伺っておきたいなという気持ちでいっぱいであります。  といいますのは、臨教審の設置法は二十一世紀を展望して、教育全般にわたる改革を断行するためだと、こう中曽根総理はおっしゃっております。ところが、一方で教育全般の改革のために、この奨学金の制度というのは非常に大きな要素を占めているわけですから、私は教育全般の改革問題とあわせて審議をすべきではないかと、こう思っていたわけですけれども、それに先立つことに今回の法律が出されてきた。しかも、この法律の中には有利子制の導入、返還免除制の廃止等、文部省自身が奨学事業の根本にかかわる問題だと、こういうふうに言っているその法律を出してきたわけですね。そして私学助成も抑え込まれておりますし、また行革審は四十人学級を来年も凍結をしなさい、こういうこと宣言っているわけです。そうしますと、もうどんどん、臨調の教育政策はあっても、政府そのものの文部省教育政策というのは臨調の中に抑え込まれているのではないかという心配がいっぱいであります。その点に関しての文部大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  91. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 臨時行政調査会からは、財政全般にわたりまして、また行政改革につきまして、いろいろと御指摘をいただいておるわけでございまして、内閣全体として行政改革にこれは取り組んでいかなきゃならぬということについての基本的な考え方は、たびたびこの委員会でも私は申し上げておるところでございます。今、御指摘の中にございました今回の育英奨学制度の改正、これに関しまして臨調の指摘を受けてやっているのではないか、それも含めて臨調の枠の中にいるのではないか、こういう御指摘でございますが、これもたびたび申し上げて恐縮でございますが、臨調からの指摘も受けましたが、文部省といたしましても十分なる議論をし、検討機関を設けてその中で検討いただいて、今回の改正法をお願いをいたしておるわけでございます。内容については省かしていただきます。  そういう立場をとっておるわけでございまして、したがいまして、教科書につきましても、いわゆる有償化の問題につきましては、臨調では、そうした御指摘もございましたが、中教審では、引き続きこれを堅持すると、こういう考え方をちょうだいをいたしました。しかし、ことしの、五十九年度予算編成の際に、自民党がその調整の経緯をいろいろと提起をいたしまして、しかしながら、私どもといたしましては、教科書無償供与は引き続き堅持していくべきだと、こういう考え方を持って五十九年度予算にもそのような措置をとったわけでございます。    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕 引き続き私どもといたしましては、再三申し上げておりますように、義務教育の、いわゆる憲法あるいは教育基本法の精神を反映していくという立場から考えまして、教科書の無償継続は、これは進めていくべきであるという考え方を文部省としてはとっているわけでございまして、引き続き、この方向を堅持するように最大の努力をしてまいりたい、こう思っているところでございます。  なお、新聞等で、大蔵省云々というようなことを私も見ましたけれども、具体的にそういう、今、働きかけでありますとか、そうしたことは行われているようなことは文部省にはございません。ただ、新聞等によりますと、我が党の文教関係の議員の皆さんなどには、そうした働きかけをしたいというようなことも書いてございましたが、本店お見えの田沢理事初め我が党の文教関係皆さんには、無償継続を強く主張しておられる方々がほとんどでございまして、まず有償は皆無と言ってもいいのではないかというぐらいの議論展開を今日までしてきておるわけでございますが、十分、党とも協議をして進めていかなければなりませんし、私自身も基本的にはそのような方向を続けていきたいと、こう考えております。
  92. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 文部大臣の御決意はよくわかりましたので、ぜひ憲法、教育基本法にのっとっての、この教科書無償の制度は堅持をしていただきたい、そのために頑張っていただきたいということを要望いたしまして次に移ります。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕  育英会の三角参考人にお伺いいたしますけれども、衆参両院の文教委員長からの要望を受けまして、文部省は五十九年度入学一般奨学生の採用について措置方針を育英会に伝えたと思いますけれども、いつどのような形でどなたからお伺いになりましたか。
  93. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 今、御指摘要求がありました後、文部省検討が行われまして、ちょっと、今、正確な日取りが手元にございませんけれども検討を経ました上で、文部省の担当課であります学生課の方から、私どもの方の担当の理事並びに部長の方に対して、口頭で指示があったわけでございます。
  94. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 口頭の指示というのは、どういう指示だったでしょうか。
  95. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 具体的には、既にこの委員会で御説明があったかとも思いますけれども、まず御指摘がありました在学採用予定者につきましては、緊急に救済するために、現行法の何と申しますか、現行法にのっとって可能な措置をできるだけ速やかに行うために募集を開始するということでございます。その募集の基準といたしましては、原則として従来やっておりました特別貸与相当の基準とする。そして採用は、それを一般貸与の形で採用するということでございます。それから、採用を予定する学生の数といたしましては、現在、この改正法が提案され御審議中でございますので、そのことも考慮いたしまして、なるべく多くの数を割り当てて大学対応してきてもらうと、こういう形でございます。
  96. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そうしますと、この具体的な措置文部省の方針にのっとって育英会が忠実にそれを実行した、こう理解してよろしいですか。
  97. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 私どもとしては、ただいまおっしゃいましたように心得ております。
  98. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 こういうものをやる法的な根拠っていうのは、これは何条でやられるんですか。この事業をやりますね。募集なんかやりますね。この法的な根拠は法律の第何条でやられますか。
  99. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 法律関係につきましては、これは文部省の方で本来お答えする事柄ではないかというふうに思いますけれども、私どもとしては、今回のこのいわゆる救済措置が法律のどこに相当するかということを、そう決めなきゃならないとすれば、第十六条ノ二というのがそれではなかろうかと。第十六条ノ二ですね。ただ、まあ状況は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、新しい方法が提案されているわけでございますので、それをもにらみ、かつ、これまで従来やってきたやり方をもにらみながら、その中で法律の趣旨に反せず、しかも実行可能なところを探りでいくということであったと思うんでございますけれども、どの条文かということでございますと、私は第十六条ノ二という条文ではないかと思いますが、これは法律関係は、本来は文部省の方で考えていただく事柄でございます。
  100. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 それじゃあ文部省どうでしょう。
  101. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 現行法の規定の根拠から申せば、十六条ノ二でございます。十六条ノ二の規定でございます。
  102. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私もそう思います。第三章業務、第十六条の②「日本育英会ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項二掲グル業務ノ外典ノ目的達成上必要ナル業務ヲ行フコトヲ得」、こうあるところだと思います。  それで、その主務大臣の認可を受けたかどうかというところが一つの問題点でありますが、文部省措置方針が主務大臣の認可である、このように理解してよろしいですか。
  103. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 先生おっしゃられたのは、第十六条の規定そのもので申せば、「日本育英会ハ左ノ業務ヲ行フ」ということでございまして、「学資ノ貸与」というのがございます。一号から四号まで、第十六条の第一項の規定に書いてありまして、「学資ノ貸与」ということがございます。条文を追って申せば第十六条に書いてございます「日本育英会ハ左ノ業務ヲ行フ」とございまして、学資の貸与を行うわけでございまして、その業務でございます。そして次の条文に、第十六条ノ二という規定がございまして、「前条第一項第デ号ノ規定ニ体ル学資ノ貸与ハ一般貸与及特別貸与ノ二種トス」、「一般貸与ハ特別貸与ニ体ル学資ノ貸与ヲ受クル者以外ノ優秀ナル学徒ニシテ経済的理由ニ因リ修学困難ナルモノニ対シ之ヲ行フモノトス」という条文があるわけでございまして、もちろん、現行法で実施をしておりますのは、育英会の学資の貸与でございまして、事柄としては、それを従来から御説明をしている点でございますけれども、貸与としては一般貸与として行い、ただし、その基準につきましては特別貸与相当の基準を適用して、改正法成立後において混乱を生じない範囲で実現できる範囲内という形で実施をしたということでございます。
  104. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 第十六条と第十六条ノ二でやられたと文部省はこう考えていらっしゃるわけですね。  それで参考人にお伺いいたしますけれども文部省の方針というのは三つあるわけですね、救済措置方針、一、二、三あるんですけれども、先ほど、私は忠実にやったのかとこう聞きましたら、そのようにやった、こういう御返事であります。一項と二項と三項、これみんな同じじゃないんですね。一項と、二項と三項というのは、これ相反するものだというふうに思います。忠実にならぬのだと思うんですけれども、どうでしょうか。
  105. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 二項、三項というのは何をおっしゃっておられましょうか。
  106. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 参考人がそれ知らないで、やりましたというお言葉をいただくのは私は本当に残念だと思うんですけれども。じゃ、文部省措置方針というのをちゃんとお読みください。
  107. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 二項とおっしゃいますのは、募集の基準を特別貸与の基準として一般貸与の金額で採用する、こういうことでございますね。これは先ほど大学局長も申し上げておったようでございますけれども、今、政府の方から提案しております新しい方式、それをにらみながら、ここまでを実施しようということでございますので、この二項の趣旨に基づいて私どもとしては各大学にそういう募集をやってもらうように通知をしたわけでございます。  三項の方は、これはまたやはり同じようなことでございますけれども、新しい仕組みになりますと、いろいろ基準の問題についても改善措置も盛り込まれておりますので、その場合に、やはり改善措置に均てんする学生も出てくるわけでございますから、ある程度のそのための幅も見込みながら、しかし、できるだけ多くの人数がこの際手を挙げることができるようにということでございますので、この三項も私どもは受けまして大学に割り当ての数字というようなものをお示ししたわけでございますので、文部省の指示に対して、これもまあ忠実にと申しますか、できるだけそれに沿って具体の事務が行われるようにやってまいったつもりでございます。
  108. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 この文教委員会の中でも、一項目についてはどの会派も了解をしているわけです。「現行法に基づき、可及的速やかに募集を開始する」、それで文部省にもやりなさいということを申し入れている、この点についてはいいんです。だから、これだけで私は育英会がやったとするならば何もお聞きすることはないんです。ところが、二項目というのは現行法でないわけでしょう。先回の委員会でも、これはもうある程度超法規的なものだと、こういう御答弁があって一時中断が起きるような大変な問題なわけであります。そのことをおたくでは文書に出しているわけです。三角理事長の名前で七月七日付ですか。  例えば第三項の「採用予定者数は、改正法成立後、改正法に吸収することを考慮して、可能な限り採用するものとする」、「可能な限り」というのは一体どういう理解をしていらっしゃるんですか。
  109. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) これは採用予定者数のことを言うておるわけでございますから、そして「吸収することを考慮して」という前提つきの上で、できるだけ、予算上定められております人数の中で多くの学生を採用するということだろうと思っております。
  110. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 理事長がそんな詳しい細々したことをおやりになるということはないと思いますから、明確に御答弁いただけないんだと思うんです けれども、理事長名でお出しになったこの文書によれば、きちんともう「推薦内示数」というのがあって、何名とこう――これは育英会の方で書いて相手側に送るものだというふうに思っているんですけれども、そうしますと、「可能な限り」というものをどのくらいの人数として把握をされたんですか。
  111. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) これはもう以前にも文部省の方からも御説明があったのではなかろうかと存じますが、私どもとして文部省の指示に基づいて一応のめどといたしましたのは、既に御承知のように、予約採用しておりました学生については前の段階措置をいたしました。それが約三万六千人でございます。全体の予定者数十一万八千人でございますけれども、今回は五万八千人というのをめどにいたしまして、そういたしまして、申し上げました三万六千人と合わせた約九万四千人、これが全体数十一万八千人の八割という形になっておるわけでございまして、御引用になりました三項の「可能な限り採用する」というのをその辺にめどを置いたわけでございます。
  112. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 この文書ですね。前段に「標記のことについて、昭和五十九年七月二日付育奨総第三十九号で通知しましたように、下記により、とりあえず、前年度の特別貸与奨学生の基準に合致する者を御推薦願います。」と、こうあって、「記」として「推薦対象及び推薦内示数」、ここは特別貸与奨学生ではなくて「一般貸与」となっていて、「推薦内示数」になっているんですね。  そうすると、文部省の指示をした、方針を示されました第一項目と違うじゃないですか、やっぱり。二項でやっていらっしゃるんじゃないですか。おかしいですね。
  113. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) さっき二項、三項というふうに私はお聞きしましたので、ちょっと御趣旨がとりにくかったんですが、ただいまは一項と二項の関係がちょっと矛盾しているのではないかという、そういうお考えのようにも受けとめましたけれども、一項で全般的なことを述べておりますけれども、その具体の中身について二項、三項で言っているのだというふうに私は理解するわけでございまして、要するに、現行法の決めております全体の事業、あるいはそれに基づいて従来やってまいりました手法、そういうもので、現在の時点で可能な限り採用できるやり方で実施をしようということで、ですから、二項がそのことを具体的に言っておるというふうに理解しておるのでございます。
  114. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そこが問題なんですよ。この文教委員会でも、二項は一項を忠実に表現をしていない、こういうことで分かれているわけなんですね。それを育英会としては、現行法に基づいて二項でやっているんだ、二項で実施をしても、これは現行法でやっているんだというふうに理解をされたとするならば、私は大変なことだというふうに思います。  その責任は、育英会が実施をしたわけですから育英会にあるわけですね。方針を提示した文部省ではない、こう理解をしてよろしゅうございますか。
  115. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 国会の両院でいろいろ御議論がありまして、そして緊急の措置として御要請があったような、そういう非常に重要な事柄でございますので、私どもとしてはこれは文部省からの口頭の指示を聞いて、勝手に私どもなりに案を立ててそれを実施したということではもちろんございませんで、中身についても十分文部省とも打ち合わせをいたしまして、そしていわば両者で十分に考えを煮詰めて一致したところで、こういう処置をしたわけでございます。
  116. 久保亘

    久保亘君 今のはちょっと違いますよ、理事会に報告されたことと。  ちょっと休憩してください。
  117. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 休憩いたします。    午後一時四十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時五十三分開会
  118. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいまから文教委員会を再開いたします。
  119. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 先ほど育英会の理事長の方から、参考人の方からお答えをいたしましたこの具体的な七月六日付の依頼の文書の件についてでございますけれども、先ほど来御議論のございます三項目の口答の指示に従いまして、具体的措置は育英会理事長名で出しておるものでございますけれども、もちろんその実施に当たりましての具体的事柄についても、先ほど理事長から御答弁ございましたように文部省と十分相談をされて実施をされたものでございまして、もちろん各大学に対して具体的に依頼をすることについては文書として育英会理事長が責任を持ってお出しになっておるわけでございますけれども、具体的措置につきましても、もちろん、この内容については文部省責任を持っているものでございます。
  120. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 しかし、結局、育英会に責任がある、文部省にも責任があるけれども育英会に責任があるんだと、こういう今の報告と承ってよろしゅうございますか。
  121. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 実際に大学に出しますのは、もちろん、これは育英会理事長が文書をお出しになる立場にあるわけでございますが、その具体的内容について、私どもに十分御相談をいただいた形のものでございますので、私どもももちろん実質的な内容についてはすべて文部省責任を負うものでございます。
  122. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そういたしますと、現行法第二十九条なんですけれども、「左ノ場合に於テハ日本育英会ノ会長、理事長、理事又ハ監事ヲ三万円以下ノ過料ニ処ス」というのがありますね。「一 本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ」、「二 本法二規定セサル業務ヲ営ミタルトキ」、この「二 本法ニ規定セサル業務ヲ営ミタルトキ」に該当するのではないか。これはいかがですか。
  123. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) あるいはお尋ねの点、私明確に把握していないかもしれませんが、先ほど申し上げましたように規定的に申せば十六条で育英会が学資の貸与を行うということであり、そして十六条ノ二で一般貸与の規定があるわけでございます。その具体的な学資の貸与を行う事業として、しかも、本件措置は非常に特殊な事態に置かれている状況を受けての行政的な措置ということでとったわけでございまして、事柄そのものは一般貸与として行い、ただし、貸与基準を特別貸与の基準で行うという形で実施をしているものでございまして、このことが二十九条に書いておりますような違反に該当する事例とは理解をいたしておりません。
  124. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 特殊な条件下だからそれは該当しませんということは、これは私は文部省としてはそんな答弁はすべきではない、こういうふうに思っております。特に十一万八千人のうちの約八割に当たる、あと二割は留保をしていらっしゃるわけですけれども、それを各学校あてに指示をしているわけですね。しかもその指示内容そのものが現行法にない、そういう指示内容であるわけですから、私は育英会としては非常に重大な誤りを犯した、こういうふうに考えますけれども、三角参考人いかがですか。
  125. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 現行法にない指示というのがちょっと私どもつかみかねるわけでございますけれども、現行法の許容する範囲内で事業を執行しているというふうに思っております。
  126. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そこのところが私はもう全然意見が違う。大体、「特別貸与奨学生の基準に合致する者を御推薦願います。」と、この「基準に該当する者」というのは学力基準それから収入基準、きちんとしているわけでしょう。それでいながら、「記」のところには「一般貸与」と明確に書いてあるわけです。どこの現行法に合致しているんですか。
  127. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 採用の基準が従来やっておる一般貸与、特別貸与という二つの種類の奨学金のやり方と違うではないかということでありますれば、それは御指摘のとおりだと思いますけれ ども、基準にっきましてはこればいろいろ考えることができるわけでございますから、現在の時点で、先ほど来申し上げておりますように、もし新しい制度が適用になった場合をも、その余地を残しておくとすれば、特別貸与の基準でもってとりあえず、いわゆる救済措置を講じておいて、そしてその金額は一般貸与という形で支給すると。ただし、改正法が成立した場合を考えますと、その場合には、御提案申し上げておりますような新しい単価に直すというような、そういう含みでやっておりますことでございますから、私どもとしては、これはやはり現在の法律が設けております日本育英会の業務として許容されておる範囲内で事柄を考え、そして大学の方に、でき得る限りの早い期日に急遽通知をしたということなのでございます。
  128. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 最終的に、文部省の私はこれは責任であると同時に、やっぱり育英会としても責任をとらなければならないというふうに思います。明確に、文部省の指示の第一項目は、現行法に基づいてやりなさい、こう書いてあるわけですから、そのとおりにやるべきであった、こう考えます。これについては、先回の委員会でも質問をいたしました安永委員及び本岡委員も留保をしているわけでありますので、私もこの点については留保をしておきたいと思います。  そして、しかし、それにしても、その現行法で予約学生をやった、ここのところは私どもは高く評価しているんですよね。その次もこの現行法に基づいて全部やっていただければこれまた高く評価するのに、二項でやられたと。三項につきましても、可能な限りということがやや問題のある採用方法になったと、こういうふうに思っておりますが、今度具体的な事務内容についてお伺いしますけれども、その文書を出されまして、現在までの進捗状況、予約学生も含めて御報告をいただきたい。
  129. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) これまでの状況でございますが、六月の二十九日に、先ほど来御指摘の方針が決定をして指示がございましたので、それに基づきまして私どもといたしましては七月の二日に、とりあえず、各大学に募集を開始するというあらかじめの通知をいたしました上で、七月の六日に具体的に各大学に推薦を依頼した次第でございます。でございますから、恐らく各学校におきましては七月の十日前後から奨学生の募集を始めまして、そしてこの通知にございますように、推薦はまず一つの期限として八月三十一日ということでございますから、それに間に合わせようという学校は、今、目下募集をし、そして、その後、八月には学校の中で選考を行うという段取りになるのではないかと思っております。  なお、予約学生の分につきましては、大学院の該当者につきましては六月の二十日、それから学部関係につきましては七月の十一日に支給をいたしております。
  130. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 この人数の割り振りなんですけれどもね。これ何を基準にしてこの内示をされますか。
  131. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) これはまず第一に、大学の学生定員がございますけれども、それから毎年毎年その推薦をしてまいります学生で基準に該当する者、該当しない者が出てまいるわけでございます。該当する者もあれば、中には該当しない者もあり、そういう基準に該当する学生の具体的な数、これもにらみ合わせまして決めるわけでございますので、最初に申し上げました学生定員と、それから前年度までの実績というようなものも加味をいたしまして、若干ではございますけれども、年々調整をいたします。それに基づいて各学校ごとの割り当て数を定めております。
  132. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 調整のための人数などは手持ちを持っていらっしゃるわけですか。何かお返しがあった部分を動かすようなことになりますか。また、ある大学に限っては四五%もの奨学生の採用率だとか、ほとんどもうないような学校もあるとか、そういうことはありませんですか。
  133. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 先ほど申し上げましたようなやり方でやっておりますと、大学間で、比較的採用率の高い学校と、それからそこまでいかない学校、特に新設の学校なんかでは若干そういうところがあるかと思いますけれども、そういう意味の相違は当然ございます。それと、やはり奨学生につきましては、入学直後だけではなくて、途中からやはり奨学金が必要になってくる学生もおるわけでございますので、その一番はっきりした例は、災害に遭いましたとか、あるいは保護者に事故があったとか、そういう場合でございますけれども、そういったことも見込みまして、年度当初、必ずしも全部割り当てないで若干留保しておくと、そういう手法は従来からもやっております。
  134. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 留保もあり得ることだろうというふうに思いますし、そのときにどういう家庭環境の子供が入ってくるかなんということは想像ができないわけでありますから、そういう操作は私はあり得ると思いますけれどもね。ちょっと私も調べてみたんですけれども、特定の大学に限って異常に採用率が高い。ちょっと不思議なんですね。採用に当たっては大分面接なんかもやったりして十分御注意をなさっているようでありますけれども、この辺のところも調査をして、資料などをいただけますでしょうか。
  135. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 具体的な選考については、やはり私どもはそれぞれの大学、あるいは予約の場合には、私どもの支部が中心となって、高等学校の協力を得てやるわけでございますけれども、そういう現に学生と直接接しておるところの責任者なり、あるいは担当の方々に、個々の学生について奨学金の必要性なり、あるいはその学生の学業に対する態度なり、そういうものを十分に見きわめて選考し、推薦をしていただきたい、それが非常に大事なことであると、こういうふうに思っておりますけれども、予約の制度なんというのがございますと、予約に入っておる学生が特定の大学に割と多く行くというようなこともございまして、若干、さっき御説明申し上げました、私どもの割り当ての人数と、その辺のところが、予約生が行った分だけだんだんにふえていくとか、そういう緩やかな変化というものは出てくるわけでございます。割り当てというのも余り単純にできにくい問題でございますので、ですから、仰せの調査といいますか、私どもとしても大学ごとの配分がどういうぐあいに現実になっており、その推移がどういうふうに来ておるかということは十分見きわめながら、不合理なアンバランスのようなものがもしあるとすれば、それは何らかの形でまた手直しをする、そういう手法を考えなきゃいけないだろうと、こう思っております。
  136. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 手法を考えるだけではとても追いつかない部分があるんですね。やっぱり量を拡大していかなきゃならないんです。  私もたまたま縁ありまして、甲子園で大活躍をした某高校の野球部のキャプテンが申請をしたんです。ところが、その学校は早い着順に出しちゃうから学校割り当てに入らなかった。それで最終的に早稲田大学の学校の奨学金をもらってやってますと、こういうことを報告をいただいているわけですけれども、やっぱりアンバランスがあるとかないとかの前に、もう絶対量が圧倒的に足りないんだという感覚に立って育英会は大きな努力をしていかなければならないというふうに思っております。もうそれは育英会の努力じゃなくて文部省自体の努力でなければならないわけですけれどもね。そういう問題も含めまして、さっきから私が言っていますのは、各学校ごとにどのくらいの採用率があるのかということの調査をして御報告をいただけますかということについてはいかがですか。
  137. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 大学ごとの採用人数と申しますか、そういうものは私ども当然持っておりますので、必要がございますれば粕谷委員の方にお示しできると思います。
  138. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 必要があるから先ほどから申し上げているわけでありまして、ぜひ早急にお届けいただきたいと思っております。  それで、学力基準の問題なんですけれども、Aという高校とBという高校と、たくさんある高校の中で学力基準をどのように判定し、どのように正確にその人数の中に割り当てるか一番頭の痛い問題だと思うんですね。育英会はそういう点では割とスムーズにあれができているというようにお考えですか。例えば学力基準三・五以上、三・五というのは一体何かですね。例えば障害を持っていて体育ができない。平均すれば三・五にならない。しかし家は貧しい。頭はよろしい。そういう子供たちを奨学生に該当させていく特別の配慮などというものはあるのでしょうか。
  139. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) まあ、よりどころといたしますと、やはり今おっしゃいました三・五とかそういうものに頼らざるを得ないわけでございまして、その範囲内で各県で選んでもらっておるわけでございます。  今、御指摘のありましたような特殊な事情をどう考慮するかということは一つの問題であろうと思っております。
  140. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 文部大臣にお伺いしますけれども中曽根総理が偏差値よりも能力を生かす教育をと、私はこれもう本当大賛成なんですよね。ぜひ、その人の持っている能力を生かすようにしてもらいたいと思います。  今の点数というのは一、二、三、四、五、あるいは学校によりましては十段階の点数評価をやっているわけでありますけれども、これが必ず一と五は何%、二と四は何%、こういう曲線を描くような中に配分をしなければならない、こういう矛盾があるんですね。みんながよくできた場合にでも一と五は要る。そして四と二は比率に応じてつけなければならない。この五段階相対評価による学力基準というものは絶対に正しいというようにお考えになりますか。
  141. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 基本的には、今、粕谷さんが御指摘になりましたように、総理も、私も単なる一つの試験の判断だけで人間を評価すべきではないという、こうした考え方は、あなたと同じなんです。ただ、今、奨学生の採用に当たっての条件ということになりますと、それぞれ学校が募集し推薦をするわけでございますから、十分学校で多様な評価をしてくれることを私としては期待をしておるところでございます。限られた予算があって、奨学生を募集する枠も決まっておる。教育基本法あるいは憲法に規定をすることを精神として生かしていくことであるならば、能力を持っておるけれども、経済的な理由があって学べない人たちを奨学資金によって学べるように、そういう機会を与えるということがこの法律の精神でありますから、その能力のある者というのはどう判断をするのか、お金を上げた、だけど遊んでいたということでは困るわけだし、ある程度能力の評価を見るということ、やはり努力をしているということを見ていかなきゃならぬわけですから、その間の過程でどれだけ勉強し、どれだけまじめにやっているかということをやはり一つの指針として検討せざるを得ないと思うんです。そういう意味で育英会の奨学生の採用は進路指導の問題とはちょっと方向は違うかもしれませんが、学生生徒を最もよく理解をするという、そういう立場では学校であり学校の教師であるわけでありますから、そういう長期間にわたる評価をするということで三・五、三・一という数字、単に、今、試験をやってその試験の数字だけでやるという偏差値的な物の考え方ではなくて、やはり、ある一定の期間、三年生の場合は一年生、二年生を見る、そういう形の中で努力をしておるんだな、学んでいるんだなということを学校の先生が知る材料として、こうした基準を設けざるを得ないということだろうと思うんです。そういう面は先生も御専門家ですから、十分御承知の上であって、なお改めて御指摘をなさるということは、そうした点数だけで評価をするということあってはならぬという、そういう御注意もあるんであろうかというふうに考えますが、文部省としては十分そういうことを指導していかなければならぬというふうに考えております。
  142. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 育英会の出されました「調査時報」の第八十号、これを見ていきますと、本当に成績優秀なのがいっぱいいるんですね。四・六から五・〇、四・一から四・五、三・五から四・〇、これが学力平均で、そういう子供たちの採用のパーセンテージも実によく事細かに分析がされて出ています。私は、すばらしい成績を持つ子供たちがいっぱいいるんだということには喜びを感じながらも、この成績にならない子供たちは育英会に奨学金もらえないわけですね。それじゃ、今、文部大臣のおっしゃった能力を生かすということにはほど遠いなという気持ちがいたします。そういう中でこの「調査時報」の六ページに「父なし家庭のものについて」という非常に不思議な言葉があるんですね。普通母子家庭とかなんとか言うんですけれども、わざわざ「父なし家庭」というのを使っている育英会のこの気持ち、理由は何ですか。
  143. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) これは私も、今、御指摘あって見たわけでございますけれども、読んで字のとおりでございまして、だろうと思います。これは語感とかそういうことで、もっと適当な字を考えるという御指摘であれば、それは私も何も気持ちとか何とかでこういう字を使ったんじゃないと思いますので、それはもし御注意があれば十分に承りたいと思います。
  144. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私も、御注意があればって言っても、母子家庭と言うのがいいのか、片親の家庭というふうに言うのがいいのか、それはまたあれですけれども、問題はやっぱり父親、働きの中心である人が亡くなった場合のそういう子供たち、特に父親が亡くなったそういう子供たちに対する言葉だというように受け取っておりますが、やっぱり平均収入が非常に少ないんですね。これは母子家庭であったら優先的に住宅が割り当てられる、あるいは保育所に優先的に採用してやるというような問題も含めて、これは何か特別な配慮が必要なのではありませんか。私はお金だけじゃなくてね、「また、学力平均値は、各採用区分の平均値と比べ、全体的に低く、特に一般一年一次で○・二九の差がある。」というんですから、大変学力が低いということを言われていると思うんですね。塾に行くゆとりもないような家庭の子供たちだと思うんです。こういう家庭についての育英会としての配慮はどうなっておりますか。
  145. 三角哲生

    参考人(三角哲生君) 基本は先ほど来御指摘のとおりにいたしておるわけでございますけれども、学力と家計と二つの基準があるわけでございますが、その中で従来やっておりました一般貸与の分につきましては、例えば、今、問題になさいました父親のいない、あるいは父親が亡くなった場合とか含めまして、主たる家計の維持者と申しますか、これを失った学生でございますとか、あるいは災害を受けた家庭の学生でございますとか、あるいは生活保護の世帯の学生でございますとか、あるいはこれは先ほど御指摘あったわけですが、身体障害者である学生、これらにつきましては、両方の基準のうちどちらかが定められたものまで達しない場合も、学校側で十分検討した上で特例として推薦をしていただくというような方途は従来もやっております。
  146. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 思いますではなくて、私は、そういうことを明確に文章にして周知徹底をするということが非常に重大だというふうに考えておりますので、御配慮をいただきたいと思います。  それで、次に移りますが、文部省にお伺いしますけれども、この奨学金の基準というのは、一体、何を基準にしておりますでしょうか。最初に諸外国の例を御報告いただきたいと思います。
  147. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 諸外国の例で、奨学金の額についてのお尋ねであったかと思いますが、先般文部省に置かれております調査会で外国の事情を調査いたしました際に得ております資料で申し上げますと、アメリカの場合でございますが、アメリカの例では、ペル給与奨学金というのは年額で四万ないし四十二万という金額でございます。それから、補助的教育機会給与奨学金は同じく四万ないし四十一万というような金額になっております。イギリスの場合でございますが、イギリスの場合にはやや仕組みが異なっておりまして、標準学生生活費が設定をされておるんですが、例えば一九八○年度では、ロンドン在住者が、日本円で約八十五万円、その他の地域在住者は約七十二万円というものが設定されておりまして、奨学金の給与額はその標準学生生活費から学生本人、親及び配偶者の負担可能額を控除した金額を奨学金として支給するという形になっております。そして、その場合に最低保障金額が定められておりまして、八○年度で申し上げますと日本円で約十九万円というような形で定められております。そのほかフランスの場合には、高等教育一般給費奨学金として、年額で三十五万というような金額が定められております。
  148. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私は、額については、それぞれの国の生活水準なんかもありますから、余り興味がないと言っては申しわけないんですが、お伺いしたくもなかったわけですが、例えば井上さんの報告書ね、実に詳しく、私立派な報告書だと思って読んでいるわけですが、アメリカあたりでは「学生生活費の最低限必要な部分については、給与奨学金で措置する」、原則があるんですね。そして、「さらに個人的に必要とする者には、有利子貸与の機会を与える」と、こういうふうになってますね。イギリスのような、今、局長おっしゃったとおりであります。そうすると、我が日本の国の奨学金というのは、そういう諸外国に比べて、額を決める水準というのは、一体、どこに置いているのでしょうか。
  149. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 日本の場合、日本育英会の奨学金の貸与月額の決め方でございますが、抽象的なお答えになるんでございますが、従来から学生生活の実態あるいは経済情勢等を見まして、総合的にそれらを勘案して決めておるわけでございます。なお、学生生活費に対する奨学金の割合は従来おおむね学生生活費の三割の前後で推移してきているというのが実態でございます。例えば、ただいま御提案を申し上げております五十九年度の単価で申し上げますと、国公立大学の自宅通学者は今度は奨学金の単価としては月額で二万二千円でございますが、学生生活費の推計としては、おおよそ七万円弱ということでございまして、その比率が三一%余りという状況でございます。それぞれ種別によって多少異なりますが、実質的な学生生活費のほぼ三割前後というものが従来日本育英会の奨学金の単価の実態というぐあいに私ども把握をしております。
  150. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私は東京都の生活文化局が六月に出しました「「教育に要した費用」の調査結果」というのを見てみました。個人的にもいろいろありますし、統計的にもきちんと出ていますけれども、どうも文部省のおっしゃる学生生活費よりは高いようですね。逆に言うと、文部省の方が低い。その低い統計に基づいて何割程度などというのは非常に問題があることだというふうに考えているわけですが、大体本当に学生生活費そのものを補おうという考え方がないわけですね。  ちょっと、いただいた資料でここ十数年間のものを見てみましたが、昭和四十七年度は六千円ですね、一般貸与が。十二カ月で七万二千円になりますが、当時の授業料は三万六千円。だから授業料の二倍ぐらい出ていた。入学科、検定料含めても五万三千円ですから、奨学金はいわゆる学納金を上回っていたということになろうかと思います。  ところが、五十年ごろからあやしくなってくるわけです。特に、五十一年は授業料が二・六倍に上がって、そのときに奨学金は一万一千円ですから、これは二倍弱に上がっているわけですね。そして、五十二年になりますと、また大幅に入学科、検定料が上がっていきまして、奨学金は上がりませんから学生生活は厳しくなる。五十三年に確かに一万八千円に奨学金は上りましたけれども、これまた大幅な授業料のアップがある。そして検定料も上がっていった。ですから、学納金よりは奨学金の方がはるかに下回るという状況が出てきているわけです。五十五年に入りまして一万八千円になったのが五十六年になって今度は急に入学料も上がり、また検定料も上がっていく。ようやく五十七年になりまして授業料が二十一万六千円、そのときの一万八千円の奨学金を十二倍しますとちょうど二十一万六千円。この年で奨学金イコール授業料というパターンができてくる。  ところが、五十八年は入学料と検定料がさらに大幅にアップいたしまして、また学生生活はこれは大変だという状況になる。そして、今度の二十五万二千円の授業料アップでありますから、奨学金がこの授業料アップにようやく追いついていく。学生生活を補うものであるなんというようなことは考えられないと思いますけれども、この辺のところの奨学金を拡大し、つまり拡大しということは量を拡大するんであって奨学生をふやしていくということである。充実するということは奨学金をアップするということだと思いますけれども、これについての、これからも大蔵省交渉があるわけでありますが、文部省としてはどのような決意で臨まれるのでしょうか。
  151. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 奨学金の単価の引き上げが、先生指摘のように四十七年以来の経過を御指摘をいただいたわけでございますが、五十五年相当大幅に引き上げられたんでございますが、その後、単価が据え置きになってきておったというのは御指摘のとおりでございます。私どもとしましては、育英奨学については単価の引き上げも非常に大事な事柄だ、特に、先生指摘のように、学生生活費の全体の状況から見れば単価の引き上げも非常に重要な事柄だというぐあいに受けとめているわけでございます。ここ一両年、特に財政的に非常に厳しい状況を受けまして、育英奨学金の財源でございます政府貸付金の伸びがマイナスシーリングというような形で非常に厳しい状況下にあるということを受けまして、今回は単価の引き上げについても特別貸与、一般貸与を一本化いたしまして特別貸与の単価にすべて引き上げ、さらにその上単価の月額について上乗せを図るということで、今回の予算では単価の引き上げを図ったわけでございます。かつ、量的な拡充の面も対応するということで、その両者をこういう厳しい財政状況下で実現をするとすれば、ただいま御提案を申し上げておりますような形で実現を図るということしかできなかったわけでございまして、私どもとしては、育英奨学金の貸与月額の増ということは奨学金としては非常に基本的に大事な事柄でございまして、今後とも、それらの拡充、拡充といいますか、充実についてはできる限りの努力をしてまいりたい、かように考えております。ちなみに、現在の仕組みで申し上げますと、貸与制をとっておりまして、返還金が順次、これは単価の増あるいは人員の増がございまして、それそれぞれが循環運用されて今後の奨学金の原資になるわけでございますが、その返還金の額も今後増額の見通しがあるわけでございます。もちろん全体的に非常に厳しい状況下でございますので、私ども、そのことは、大変こういう財政状況の厳しいときでございますと、簡単なことだとは考えておりませんが、貸与月額の充実ということは大事な課題だと受けとめて今後とも努力をしてまいりたい、かように考えております。
  152. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 財政が今厳しいことはお互いに認め合っているところであります。しかし、いつまでもこんな財政の状況であるはずはない、いつかは財政を好転させていかなきゃならないし、また、そういう状況が来るものだというふうに考えているわけですけれども、そういたしますと、今の局長の御説明にありましたように、こういう状況下だからこのような制度をとらなければならなかった、この御説明は、私は財政が好転した場合には検討することがあるというように承ってよるしいかどうか。私の本会議における質問に対して竹下大蔵大臣は、恒久的な制度である、こう一つはお答えになりました。しかし、恒久的であるとは言っても、どのような制度もやはりいつかは時代が変わり、情勢が変わってくるのだから見直しがある、制度全体はそういうものだという御答弁もあったわけですが、文部省としてはその点どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  153. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 先ほどお答えしましたように、大変、こういう厳しい情勢を受けて、こういう仕組み対応しなければ、月額の増と人員の増という二つの要素菅解決するためには、こういう対応策で対応せざるを得ないということを申し上げたわけでございます。もちろん、この低利の有利子制度は私どもとしても制度として今回つくうたものでございまして、そういう意味では制度的に、私ども、これが今後実施をされまして、先ほど大臣からもお答えをいたしましたように、日本育英会の奨学事業として、どういう形でこの仕組みが実際に受け入れられ、またその仕組み、それに対する奨学生の受けとめ方、そういうことについての全体的なことは、今後推移、ある程度の経過を経なければその評価というものが出てこないのではないかというぐあいに考えておるわけでございまして、私どもとしては、制度の仕組みとしてはこれは先ほど大蔵大臣の御答弁では恒久的な制度ということでお答えがあったというぐあいでございますが、私どもも、制度としてはそのように受けとめでいるわけでございます。ただ、その点は衆議院の附帯決議でも触れられている点でこぎいますけれども、将来時代が変化をしましてそのあり方の見直しということが必要となった場合におきましては、その時点において検討されるということはあり得るのではないか、かように考えております。
  154. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 あるのではないかと。将来のその時代に局長責任を持てるような位置にいらっしゃるかどうかも含めての問題でありますから、お答えはそういうことしかないだろうというふうに思いますけれども、私は衆議院の、この附帯決議が全会派一致で行われているわけでありますから、国会の意思として受けとめて、そして文部省としては今後も対応をしていただきたいと、こういうふうに考えているところであります。  ところが、こういうような問題を審議をするに当たって臨調の意見というのは非常に大きな影響を与えるわけですね。それでその臨調の中の専門委員のお一人であります東京大学の教養学部教授、科学史をやっていらっしゃる公文俊平さんという方が民主教育協会誌「IDE」二百三十四号にこういう文章を寄せていらっしゃるんですね。「臨調の文教政策をめぐって」「-私の主張したかったこと」、多分主張しなかったのですね、きっと。「主張したかったこと」と、こうあるわけですから。この方が、こういうことを言っているんですね。「もちろん、現在でも相対的に貧しい学生達が少なからずいることは事実である。その人達のためにより多くの奨学金を用意することには、私も賛成である。ただし、それは当然利子付き、しかも通常の利子率のものでなければならない。そうでなしに、特別低利で貸すとすれば、どんなことが起るか。誰もが奨学金を貰い、定額貯金や定期貯金にしておくことになりはしないか。それで確実に利鞘が稼げるからである。」私は、これびっくりいたしましたね。こんなこと想像することもなかったです。文部大臣は、よく御答弁で、在学中に返せば無利子なんだから、有利子はそう影響ないとおっしゃいますけれども、奨学金をもらっている生徒が卒業と同時に、卒業の一日前にでもお金が返せるような条件なんかとてもないわけであります。それなのに、こういうような方々を。専門委員に任命されるということは、私はどういうことになっているのかと思いますね。久保委員の質問に対して永井元文部大臣は、審議会の委員などというのは政府が都合のいい人をお願いをするんだというような意味のことを言われております。そんなことを考え合わせてみますと、例えば、これからも臨教審、私たちは、この問題については深く意見のあるところですけれども、会長さんについては総理がもう任命をする、国会の同意人事にするということについては結構なことでありますけれども、しかし任命そのものについては、やっぱり総理の御都合のいいような方がなるんだろうというふうに思うんですね。こういう専門委員だとか審議会の委員だとかに対する文部省としてのこれからの臨教審の委員の選任に対して、いろいろと新聞紙上に、いや、だれだれが会長になりそうだとか、だれだれがどうだこうだというふうなことはありますけれども自分の御都合のいいようなところにだけ任命をされるおつもりでありますか。文部大臣どうでしょうか。
  155. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 臨時教育審議会は、もちろん、まだ国会で御同意をいただいておりませんので、委員の人選については、国会で法律が成立をいたしましてから、その作業を開始することは言うまでもありません。そして人選を進めるに当たりましては、広く国民各界各層からお選びを申し上げたいし、特に留意しなきゃならぬのは、国会でいろいろと論議を尽くしておるわけでございますので、その論議を踏まえて進めるということは一番大事な留意点であろうというふうに考えております。したがいまして、今、御指摘がございましたように、いろんな審議会等の委員につきましては、都合のいい方を選ぶというようなことを毛頭政府としては考えていないわけでありまして、幅広くそれぞれの部門に、そしてまた、いろいろな識見、またいろんな御経験、そうしたことを、それぞれ諮問をする問題に深みのあるそうした議論ができるようなことを十分配慮してお選びを申し上げているわけでございます。  今、公文さんの御発言を引用されたわけでございますが、いろんな御意見を持っておられましても、恐らく、それは前後にいろんな問題点もあるだろうと、いろんな発言もあるだろうと思いますし、こういう議論を持っておられますから、この人は誤った考えを持っておるというふうには一概には片づけられない面もあるわけでございまして、そうした議論というのは、いろんな角度から、いろんな経験を踏まえての議論でもあるわけでありますから、十分そうしたことをしんしゃくし、また、みんなで、そのことも十分判断の資料として議論をまた多くの方々から進めていくということが、審議会のあり方としても重要なことではないかというふうに考えております。
  156. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 最後に、我が国の民間奨学事業について質問をいたしますが、この民間奨学事業の実態について御報告をいただけますか。
  157. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) やや資料が古いのでございますけれども、五十四年度文部省が実施をいたしました実態調査によりますと、日本育英会を除きまして、地方公共団体、公益法人、学校その他を合わせまして全体で二千七百二十六の事業主体によりまして、約二十万人の奨学生に対し、事業としては約二百十九億の事業が行われております。これは五十年度調査と比べますと、事業主体数で五十九、奨学生数で九千人、奨学金で百十億の増加が見られております。なお、その中で育英奨学事業を行っております公益法人は六百七十三法人でございまして、約七万五千人の奨学生に対し、奨学金約八十八億の事業を行っております。  育英奨学事業を行う法人につきましでは、寄附金の受け入れ等について税制上の優遇措置がとられておりまして、既設の法人についてはこれを生かしまして、個人ないし企業から寄附金を受け、事業の充実を図るように従来から私どもも指導しておりますが、日本育英会の育英奨学事業ばかりではなくて、我が国の育英奨学事業全体で申し上げますと、このような民間の育英奨学事業、あるいは地方公共団体の奨学事業ということも大変大事なものでございますので、それらが一層充実いたしますように、私どもとしても、ただいまの税制上の優遇措置の活用の問題その他について、十分、今後ともそれらの法人の事業が伸びてまいりますように積極的な対応をしてまいりたいと、かように考えております。
  158. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 その調査の中で、民間会社だとか個人、その他というのは、ロータリークラブなんかでしょうけれども、これは減っているんですね。これが伸びない理由というのはどのように分析をされておりますか。
  159. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 従来、個人の場合も、大体、公益法人を設立をいたしまして、それぞれ資産家が寄附をして、財団法人なり、そういう組織をして育英奨学事業を実施しているというケースが基本的には多いのではないかと思うのでございますけれども、我が国の場合に、そういう個人的な資産が教育とかあるいは育英奨学事業というような形で社会的に還元されるということが諸外国その他に比べればやや薄いんではないかということは一般的に言われているところかと思います。  御指摘の点は、どういう点にその理由があるかというお尋ねでございますが、必ずしも明確に私ども把握はいたしておりませんが、個人なり企業そのものには税制上の優遇措置がなくて、公益法人なり学校法人という法人組織にすれば税制上優遇措置がされるというようなことなどもその一つの原因ではないかというぐあいに考えられます。
  160. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そういうことについてこれからの努力というものを私はとっていただきたいという立場で本会議で質問したのですが、どうもそういうふうには受け取っていただけなかったものですから、これからの研究課題として文部省としては考えていただきたいと思いますけれども、奨学制度をとる公益法人あるいは個人、その他たくさんある方がいいと思うんですけれども、今、各県で、労働組合で随分奨学金出してますね。つくってますね。私の新潟なんかも、新潟県の高等学校の教職員組合が奨学金の制度をつくって、申請をしてやっているわけですけれども、小中の義務制の方でもやっぱりそういう、返してもらわないという奨学制度をやっているわけです。全国的に調べてみたんですけれども、結構たくさんあるんですね。ところが、その税金がかからないような制度でやってもらおうと思って申請をお願いしますと、だめだと答えられることがあるんですね。こういう問題について文部省きちんと指導してもらわぬと困ると思うんですが、どうでしょう。
  161. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 基本的には、育英奨学事業を実施いたします際に、先ほど御説明しましたような育英奨学事業を実施する公益法人という形で実施をされますれば、税制上も優遇措置があるということでございまして、基本的には私どもそういう形で育英奨学事業が今後とも伸びることは期待をしているところでございます。  ただいま先生指摘の、地方において組合等が育英奨学に資金を出すというようなケースについては、私直接には、ちょっとお語だけでは十分実態がつまびらかでないわけでございますけれども、育英奨学事業という形で実施をしていただくことについては大いに奨励すべきものと考えます。何らかの、それが特定の目的のために拠出された金額等をそれに充てるというようなお話でございますれば、それはそれでまた事柄として別の政策的な判断というものが出てまいろうかと思います。
  162. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 ちょっと、それはおかしいんじゃないですか。交通遺児だとか、あるいはサラ金で親が逃げていったとか、直接そういう生徒を見ている学校の教師たちが、自分たちの金を出し合ってそういう制度をつくっていこうと、そのことについて、何も、要らないことを一言つけ加える必要ないと思いますけれども、どうですか。
  163. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 御指摘のように、例えば交通遺児、その他、置かれている学生、生徒の状態について十分事情を把握できる人たちが、そのための奨学事業を実施するということについて、私は否定したつもりではございません。ただ、育英奨学事業として実施していただく形について申し上げれば、公益法人の形で実施をしていただければ、先ほど申し上げたような税制上の優遇措置というようなこともございますので、育英奨学事業というものを所管しております私どもから申し上げれば、そういう形で実施していただくのが望ましいということを申し上げたかったわけでございます。
  164. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 最後に、文部大臣にお伺いをいたします。私は、この有利子制の導入が、たとえ人数の拡大に大きく寄与するところがあったとしても、育英奨学事業の本質そのものからは外れているんだという考え方をどうしても捨てることができないわけであります。その意味で、有利子制の導入には反対をいたします。しかし、この拡充をしていくという立場に立っている、有利子制の二万人の問題なんですけれども、今後、文部省としてはどういうふうに前進をさせていこうという大きな展望を持っていらっしゃるのかどうなのか。それとあわせまして、先ほども局長が、この制度は今のところ変えることはできないと、このままいくんだというお考え方に立っていらっしゃるわけでありますけれども、私は時期が来たらこの辺のところは見直して、世界の各国に伍して引けをとらない日本の奨学事業であるように努力をするのが文部省としての役割だと思いますけれども、お考えを伺って終わりたいと思います。
  165. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) ただいまお願いをいたしております有利子制度を併用していきますこの制度は、先ほど先生の御覧間に対して大蔵大臣も本会議で申し上げておりましたように、私どもとしては恒常的なものだというふうな考え方はいたしております。しかし、制度や法律というのは、すべてこれは絶対的なものであるとはだれも考えていないわけでありまして、先生も御心配なさっておられますように、でき得る限り奨学生が拡大をしていくように、また条件が少しでも学生にとって有利になるように、十分今後とも配慮をしていかなきゃならぬということも、またこれも基本的には大事なところだというふうに考えております。  先ほどもちょっと吉川さんのときでしたか、ちょっと申し上げたような気がいたしますが、いわゆる、初めてとる法制度でございますから、有利子制度のような奨学資金では学生さんが全く相手にしないということもあり得るわけでございます。しかしまた、それでもいいという考え方もあるのかもしれません。確かにこれは有利子よりも無利子、無利子よりも当然給付制、これはもちろんベストであることは言うまでもありませんが、我が国がとってきた方途としては、無利子貸与ということを基本にこの事業をスタートしたわけでございますので、それを中心に私どもとしては、ある意味では、考え方の違いは、先生と同じく、できないかもしれませんが、むしろ量的拡大と機会均等という両面を十分に機能させるということで、今度の制度を、財政的なことも考えて改めてスタートをさしたわけでございますので、しばらく、こうした方向の推移を見きわめていかなきゃならぬというふうに考えております。そうした中で、文部省といたしましても、学生さんということを一番念頭に置いて、この事業を伸ばしていかなきゃならぬということは言うまでもないことでございますので、今後とも十二分にそうした学生の動向、対応の仕方等々も十分育英会とも協議をしながら、なお一層改善ができるように努力をしていきたいと、このように考えております。
  166. 久保亘

    久保亘君 私は、育英奨学資金の問題と広い意味でかかわりを持ってまいります産学協同の問題で最初にお尋ねいたしたいと思いますが、昨日から各紙に報道をされ始めております、慶應大学における企業の委託研究費をめぐる問題でございますが、この委託研究費の使途などに関連をして、学界でも大変名のある教授辞任をするという事件が起きているということが報道されておりますが、文部省は、この委託研究費をめぐる慶應大学教授辞任事件について御承知でありますか。知っておられるとするならば、どういうふうに内容を把握しておられるか、御報告をいただきたいと思います。
  167. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 新聞報道を拝見をいたしましてから、問題となっております慶應工学会あるいは慶應大学関係の方に問い合わせをいたしまして、多少細部にわたって若干の違いはあるようでございますが、ほぼ報道をされておるような事実があったということを一応確認をいたしております。
  168. 久保亘

    久保亘君 報道されているような事実があったということは、教授が引責辞任をしなければならないような問題であったということでございますか。
  169. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) その報じられております教授が、慶應工学会の委託契約の研究担当者ということで十数件の研究を引き受けておられまして、その研究にかかわる受託研究費の一部を会合費等にお使いになったということ、及び同教授が本年三月十六日付で辞職をしておる、こういう事実でございます。
  170. 久保亘

    久保亘君 この問題については、慶應大学の塾長ですか、学長ですか、石川先生はちょっと使い方が行き過ぎだったかなという程度の談話をコメントされているようでございますが、少なくとも大学教授が、まだ若い教授が、教授の座を去らなければならぬということであれば、やはり相当な委託研究費をめぐっての問題が発生していると見なければならぬのではないでしょうか。
  171. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 受託研究に伴いまして、企業等から払い込みがなされた経費につきましては、契約内容によるわけではございますけれども、その趣旨から見まして、研究に必要な経費に充てるということが当然想定をされでいるわけでございまして、研究に直接関係のない経費に一部をお使いになったということがあるのではないかというふうに承知をしておるわけでございます。
  172. 久保亘

    久保亘君 ということは、やっぱり、これは研究に関係のない使い方をした。もし、これが国立大学に関しての問題であれば、文部省はそのことは一種の不当といいますか、不正といいますか、そういうものに該当するとお考えになりますか。
  173. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 国立大学で受託研究を引き受けます場合には、払い込みのありました経費は、歳入予算ということで国庫に受け入れまして、それに見合います経費を歳出予算として配賦をするという仕組みになっております。  歳出予算の執行につきましては、一般の国費と同様に、その目的に従った支出をいたすわけでございますので、研究に必要な経費に充てるというために支出するということが当然のこととなるわけでございます。
  174. 久保亘

    久保亘君 それでは、少し話をもっと基本の問題に戻しまして、文部省としては、大学の研究、教育、企業という、こういうものを結びつけていく産学協同というものについて、そのあり方をどう見ておられるのか、つまり、産学協同にかかわる文部省の基本的な認識というものをどう持っておられるのか、これは大臣でもよろしいですが、文部省の産学協同に対する根本の考え方をきちっと答えてください。
  175. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 大学学術研究に対しまして、産業界から多様な協力の要請があるということは、これは従来も行われでおるわけでございますし、また、学術研究を伸ばしていくためには、産業界のそうしたニーズということに対してこたえていくことに対しても、これはまだある意味では科学技術が進歩していく、あるいは学術研究が進展をしていくということによっては、ある意味では有意義なことだというふうにも考えております。大学は本来の使命というものを、いわゆる学術研究の使命というものを十分踏まえて、そして大学が主体的に協力をしていくということは、これは有意義なことであるというふうに考えております。  文部省は、こうした観点から、学術研究の社会的な協力の諸施策を積極的に推進をしている、こういう立場でございます。
  176. 久保亘

    久保亘君 今回の、この委託研究費をめぐる慶應大学の問題に関連して、産学協同憲章をつくろうというような動きがあるように報道されておりますが、産学協同憲章ということになりますと、これは一大学と企業との問題ではない。また、特定の幾つかの大学と企業との問題ではない。やっぱり産学協同憲章ということになれば、日本教育の全体の問題と企業とのかかわりの問題でありますから、当然、文部省としても、これは自分たちとは関係のないところのものだというふうにはまいらぬと思うわけですが、産学協同憲章をつくろうという動きに対して、文部省はどのように考え、どういうかかわりを持とうとお考えになっておりますか。
  177. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 大学学術研究に対しまして、これは産業界に限りませず、地方公共団体、その他いろいろ御協力の多様な要請があるわけでございます。そういうものに対して、どういう対応の仕方が一番望ましいかということにつきましては、先般、学術審議会に学術研究体制改善のための基本的施策について御諮問申し上げました際に、一つの重要な問題点として御検討をお願いをいたしまして、先般、本年の二月でございますが、御答申をいただいておるところでございます。その中では、大臣からただいまお話がございましたような趣旨の考え方の整理がされておるわけでございまして、その趣旨につきましては、当時、国公私立大学全体に送付をいたしまして、御参考にしていただくようにしておるわけでございます。  それで、私立大学連盟におきまして、学術研究体制特別委員会が昨年の八月に発足をしたと承っておりますが、その検討課題の一つとして民間資金の導入問題というものが課題の一つとされておるというふうに伺っております。産学協同憲章というような具体的な検討段階までにはまだ必ずしもいっていないようでございますが、そういう学術審議会の御答申の趣旨も踏まえまして、私大連盟等の動きには十分私どもとしても御連絡をし、また連携をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  178. 久保亘

    久保亘君 産学協同、具体的には委託研究費という名目による企業から大学への資金の供与については、私は、先ほど文部大臣がおっしゃいましたように、大学の主体的立場を失うことは大変問題だと思いますね。そして、大学の主体的立場というのは、あくまでも教育の場としての観点が欠落するようなことになっては相ならぬと思うのであります。したがって、この研究費というのは、でき得ればひもつきでなく、企業が大学の研究を助成をするという立場に立って大学に寄附する、あるいは国立の場合には国庫に入っていくわけでしょう。そういうような形をとって、あくまでも教育立場、研究の立場が尊重され、その上で企業の側も必要な研究の成果を受けられるものについてはそれを受けていくというようなものでなければならぬと、こう思うのですが、一体、今大学の研究委託費というのはどんな現状になっているんでしょうか。この管理、運用というのがどういう状況になっているか、国立の場合、さっきお話になりましたけれども、私立の場合にはどういうふうにやられておりますか、それは文部省として把握されておりませんか。
  179. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 国立の場合について、まず申し上げますと、企業その他、大学の外部との関連にっきまして三つのタイプがございまして、一つは、先生おっしゃいますように、研究の助成をしてやろうということで、いわば寄附をされる場合でございまして、この場合には奨学寄附金という形で受け入れをいたしているわけでございます。それから、二番目には、特定の研究等を頼みたい、それでその成果を得たいという場合でございまして、これは委託研究という形で、いわば契約関係でございますが、受け入れをいたしております。それから、五十八年度から新しく取り入れました制度といたしましては、むしろ、大学側でもやりたい、外部でもやりたいという、いわば共同で研究をするという方式を新たに五十八年度からは取り入れておるわけでございまして、その性格によりまして、その三つのうち、いずれかによって実施をしておるというのが状況でございます。  国立大学の受託研究につきましては、五十八年度で申しますと千二百八十五件でございまして、金額にいたしまして二十六億程度の金額になっておりますが、委託者につきましては、むしろ、一般会社等よりは公社、公団等、あるいは都道府県、国の諸機関というようなものが数としては多い状況にございます。  私学につきましては私ども、恐縮でございますが、現状を把握してないというのが実情でござい ます。
  180. 久保亘

    久保亘君 国立大学の場合で、千二百八十五件の二十六億ですか、その程度の委託研究費が出されているという。私学の場合には、おおむね、どの程度になっているかという推測も全くできませんか。私学の委託研究費については、これまで文部省としては一切がかわりを持たなかったということなんでしょうか。その一方で、こういう委託研究費を企業から受けるような大学に対しては、かなり莫大な国の助成が出されておるんですよ。だから、そういう意味では、私、今、やっぱり、そういう実態を知っておくということぐらいは文部省としておやりになってもいいんじゃないかと思うんです。その内容に一々干渉するかどうかという問題じゃなくて、一体、委託研究費というのがどれぐらい企業から私学に対して出ているのか。それはもう、全然、今までは文部省としては関心をお持ちになっていなかったわけですか。
  181. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 個々の具体的なプロジェクト等につきまして承知をいたすということはございましたが、全体としての把握という点につきましては、従来、私どもとしていたしておらなかったというのが実情でございます。
  182. 久保亘

    久保亘君 それでは、今度、慶應大学で問題になりましたように、委託研究費というのが、国立大学のように大学に直接入らない、外部の慶應工学会のような別の財団法人に入る。そして、その財団法人を通して、主として委託を受ける研究者の自由裁量によって使われる。そのことによって会合費となったり、あるいは学会の出張旅費になったり、新聞に報道されるところでは、学部長選挙の運動費になったり、こういうようなことで問題を起こしてきていると言われているわけですね。  そうすれば、委託研究、これは私、私学の自主性に国が権力的に関与することはよくないと思うが、しかし、学生がそこで学び、研究者が研究をやっているという立場から見るならば、企業が委託研究費をもって大学をある面では金で支配していく、動かす、その中で大学の中で教授がやめなければならぬような問題を生じてくるということはやっぱり問題があるんじゃないか。その点に関しては、産学協同による委託研究費の管理や運用については一定の基準というか、ルールというものはあってもよいのじゃないかなという感じがするんですが、どのようにお考えでしょうか。
  183. 大崎仁

    政府委員(大崎仁君) 私立大学の場合に、例えば慶應工学会で受け入れております委託研究というのは、私、先ほど国立につきまして申し上げました三つの型のうちの委託研究というものにそっくり相当するものかどうかということは、なお詳しく調べてみないとわからないところもございまして、受託研究、委託研究という形ではございますが、かなり研究助成的な色彩のものも、あるいは大学によってあるのではないかという感じもいたしておるわけでございます。ただ、いずれにせよ、先生お話しのように、そもそも、大学が本来の使命でございます教育研究というものを立派に達成をしておくということと、それから、それを踏まえて大学がみずからの判断で、大学の目的、使命にふさわしい形で外部と対応していくということは基本的に重要であろうと思いまして、その意味では受託研究等の受け入れ、あるいは企業等との対応につきましては、適正な手続による判断、決定の方式というものが慣行としてあってよろしいのではないかと思っておるわけでございます。  ただ、これは大学の専門分野あるいは伝統、慣行等、特に私立大学の場合はまちまちでございますので、それを一つのパターンに直ちに決めてしまうことが適当かどうかということにつきましては、私どもといたしましても、もう少し勉強さしていただければありがたいというふうに考えておるわけでございます。
  184. 久保亘

    久保亘君 この産学協同という名前で呼ばれる委託研究費の場合に、やっぱり、基本は企業が、日本の科学技術を初めとする学術文化の進歩に役立つように大学で大いにひとつ使ってくださいというので、研究費をひもをつけずに提供する、そういうことが、私は助成ということが一番基本になるべきものだと思うんですが、余り企業が、何かの特定の研究成果が欲しくて、あるいは、そこの優秀な研究者や研究者の卵を自分の企業に確保したくて、このひもつきでお金を出すということになれば問題が起こりやすい。したがって、委託研究費の基本的なあり方というものについては、産学協同の中で、かくあるべしということはやっぱり文部省として一つの方向を示す、それをどのように受けとめられていくかというのは、これは私学の自由であろうと私は思うんですね。しかし、国立大学の場合にはその方針に基づいておやりになることになるだろうと思うんですが、そうしないと、教育よりも企業メリットが優先する委託研究費、産学協同というものになっていくことになれば、産学協同の問題が過去には随分論ぜられたことがございますが、そういう意味で弊害を生むことが多いと私は思うんですがね。文部大臣、これだけ大きな問題で産学協同や委託研究費の問題言われるようになりますと、文部省としても何らかの考え方をまとめて、そして一定の基準というものをお示しになる必要はないんでしょうかね。
  185. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 文部省の基本的な今の立場考えといたしましては、先ほど大崎局長から申し上げただろうと思います。しかし、私は、今、久保さんが御指摘ありますように、こうした問題が出てきて、あたら有為な学者さんが世間からおかしな目で見られなきゃならぬようになるというのは、私はとても気の毒なことだと思うんです。学術研究を進めておられる学者さんには学者さんなりのお考え方もあるだろうと思いますし、    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕 私ども外から見ておっても、この委託研究費というのも、確かに直接研究にかかわる経費も――厳密に言えば直接かかわる経費しか言えないのかもしれませんが、例えば、それにかかわる機材を買ってみたり、あるいはそのための調査研究をする旅行のための旅費に使うことは、直接の研究費じゃないかもしれませんが、やはりそれも大まかに見れば経費だと見てもいいと思いますし、新聞では一万円の飲み食いがいいのか、三万円の飲み食いがいいのかというようなことも書いてございましたけれども、やはりお互いに若き学徒も一緒になって、仮に研究の成果が上がって、みんなで一杯やろうやということになった場合に、ここまでは飲んでいいけれども、これからはお前自分で払えよと言えるものでもないだろうし、私は、もう少し、そういう面で、おおらかにあってほしいなとは思います、個人的には。しかしながら、何らかの基準みたいなものは検討していかなきゃならぬと思いますが、できれば、これは先生も先ほども指摘されましたように、私学の自主的なお立場でやることが私は一番いい方法だろうと考えます。新聞では慶應等でも何かお考えになるようなお話があるようでございますし、大学連盟あるいは私大協会等々でも、こうした問題も、一つの基準なども明確にできるのは非常に難しいと思いますが、国立大学の取り扱いの基準というのも一つの目安になるかと思いますが、何らの方策をみんなで検討してみていただいたらいいのではないか。それができるまで文部省は何もしないということであってもならぬと思いますが、文部省としては大学の自主性というものを尊重しながら、何らかの方策は、私は学際局長個人のお立場ででもお考えになって、示すことも大事なことじゃないかなというような考え方を持っております。  基本的には、ちょっと長くなって恐縮ですが、寄附金は、私は、私学の場合は、もっとおおらかであっていいなと思うんです。どうも、日本には、ある意味では物すごく厳密に、そしてまた非常に敏感に考え過ぎて、私学の寄附というものに対しては何となく抵抗を感ずるという面がありますが、私は、おおらかに考えて、大学全体が大いに研究も進め、伸びていくことが大事だと思うんです。  ただ問題は、企業と学校との、こういう企業の委託研究をするということを明白にすればいいじゃないかということにもなりますが、企業秘密というものもあるわけですし、それから、学校の立場から見れば、学生採用という就職の問題もありますから、学校の立場と会社の立場、それからまた会社からお願いする立場、その中にはこういう学問、こういう研究をぜひやってもらいたいということで、企業間の競争というような問題もあるでしょうし、その点が余りおおらかにできない問題もあるのかもしれませんが、ある意味では、先ほど申し上げたように、学問研究、学術研究が伸びていくということは、企業の、産業の大きく前進しようという気持ちと裏腹の関係にもなっていくものでございますから、私の、基本的には冒頭に申し上げたように、こうしたことですばらしい学者が意気消沈をしてしまったり、そして社会から非常におかしな目で見られるようなことがあってはお気の毒だという見地から見れば、そういう立場で、何らかの基準といいましょうか、みんなの目安を独自でできるだけお考えになる方がいいな、そういう時期が来ておるという感じは、私は率直にこの事件をもって感じたところです。
  186. 久保亘

    久保亘君 やはり、日本の産業界も、今の文部大臣が言われるように、日本の科学水準が全体でレベルアップしてくることが企業にとってもメリットなんだというぐらいのおおらかな気持ちを持って、どうぞ自由に使ってくださいというぐらいの出し方に私はなるべきだ。それを、何かあそこに金を出しておけば学生のいいのを何人か採れるだろうとか、あそこへ金を出しておけば研究成果を、まだ世の中に問われる前に自分のところにもらえるんじゃないか、そういうような根性が余り前に出過ぎると、この産学協同というのは大学教育をゆがめる、私はそう思います。これはなかなか文部省としてもかかわり方の難しい問題だと思います。やりようによっては、研究の自由とか私学の自主性というものに触れてくる問題でもありますから、その辺のところ非常に難しいところだと思いますが、あくまでも、それらのものを保障しつつ、しかし、文部省国民全体から見た場合に納得のいくようなものを出す。そうしないと、どうも象牙の塔の中はどろどろとしているような印象だけが残ってはよくないと思いますので、これならば一つのルールだとか、あるいは委託研究費の基準だとか考えられるようなものを文部省としても御検討になる。それが一つの参考になって産学協同憲章というのはどういうものをおつくりになるのか、私もわかりませんけれども、これは恐らく抽象的な概念を並べてのことだと思いますが、具体的ないろいろなやり方というものについて、これならばいいんじゃないかというものは出ていいんじゃないか。使い方については、もちろん私は大臣言われるように、純然たる研究室の中で試験管をやっているその経費だけだと、そんなことではなかろうと、こう思いますね。それだから、いろいろ協議をされるときの会合費とかいろいろなものがあるでしょうが、それが少し常識を外れてくると今度のような問題になる、その辺をどう考えていくかという問題であろうと思います。  また、この問題については、少し慶應大学における今後の問題とか産学協同憲章のつくられていく過程などにも十分注目をしながら、これからも機会がありましたら、また文部省のお考えもお聞きしたいと思います。  次に、育英法に関しまして、私奨学資金というのも、今、大臣が言われたように、もっとおおらかに、利子なんかつけずに、国がどうぞ自由に研究し、勉強してくれ、それで、あなた方、経済的に困っているんならば国が援助するから自由にやってくれ、それで一生懸命勉強して、その成果を社会に返せばいいんで、金は返さぬでいいと。こういうのが奨学資金の根本のあり方だと私は思っている。ところが、どうもこのごろ文部省もちまちまとして、非常にサラ金のような考え方が出てきてよくない。  そこでお尋ねしたいのは、育英法の今度の改正法案というのは、これは行革関連法案なのかどうか、これは文部省はどういうふうに考えておられますか。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕
  187. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 今回、御提案申し上げている法案でございますが、経緯から申し上げますと、臨調で育英奨学事業の見直しが提言をされまして、いわば、そのことも受けまして文部省調査会を設けまして今後の育英奨学事業のあり方につきまして、外国の制度その他、教育関係団体等からも意見を聞いて、慎重に調査研究を行いまして、報告が取りまとめられ、それを受けて、私ども、今回、御提案を申し上げておるわけでございます。  もちろん、その報告の中では、教育の機会均等の確保という観点から、育英奨学事業の拡充が必要であり、そのため外部資金を導入して低利の有利子制度を創設することを提言されておるわけでございます。もちろん、今回の制度改正、臨調の趣旨は踏まえておるわけでございますけれども、私どもとしては、調査研究会の報告を受けて、育英奨学事業が基本的な文教施策として大事なものであるということを十分踏まえて、今回御提案を申し上げておるわけでございます。  なお、この法案が、いわゆる、ことし一月二十五日の閣議決定で五十九年の行革大綱に基づく法律案ということで一覧にされたものがあるわけでございますけれども、それに関連する法案という意味では行革関連法案ということで取り扱われておるわけでございますが、いわば、その閣議決定に基づきます法律案の中ではございませんが、関連する法案という取り扱いでは行革関連法案という扱いになろうかと思います。
  188. 久保亘

    久保亘君 政府は、折に触れて、この百一国会に提出された行革関連法案三十件ということを言っておられますから、その百一国会行革関連法案三十件の中の一つが育英会法の改正、これは間違いありませんね。
  189. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) その点ではそのとおりでございます。
  190. 久保亘

    久保亘君 そうなってまいりますとね、やっぱり、いろいろと文部省もつらいとこだと思いますよ。あなたがたもね、これは本当はやりたくなかったんだと言えば後藤田さんの方にぐあい悪いでしょうからね。それはわかりますが、行革関連法案というのはどこから出てきたか、これは財政再建というものを根底に据えておるんです。財政再建という立場から育英会法を改正せざるを得ないと、こうなってきているんですから、その根拠がきちっとしている以上、やっぱり、これは財政上やむなく有利子制度を導入するものである。そして、特に臨調の考え方というのは、これはまたあなた方の考え方とは大分違っておりましてね。将来は、奨学資金は有利子に転換すべきであるという立場検討されたはずです。  そして、その考えはどこから出てきたかというと、日本の大蔵省から出てきた。粕谷委員が本会議で質問されましたように、大蔵省は、まだ第二臨調が組織される前に、大蔵省の「歳出百科」という有名な本を出版をしております。この「歳出百科」の中に、もう明確に書いてあるんです。育英会の奨学資金は有利子制度にしろ、それから返還免除制度は廃止しろと書いてある。これがそのまま臨調に受け継がれ、そして、今日、行革関連法案として百一国会に提案されてきた、こういうことなんじゃないですか。文教政策とか、教育的視点から考えられて出たものじゃないんじゃないですか。この経過を手繰ってみる限りね。このことを文部省があんまり言い張らぬ方がいいです。あなたのところは非常に対大蔵省で艱難辛苦をなめておられることは、私はよく知っておるから。大臣がこの間、我が省の局長以下全部、一生懸命、大蔵省と、それこそ血の出るような闘いをやっているんだと言われた。その血の出るような闘いの結果、ついに敗れて出てきたのがこの育英会の改正法案じゃないですか。
  191. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 敗れて出できたものだというふうに私ども考えておりませんが、確かに、臨調としては、この育英奨学制度について検計を要するという指摘はあったわけでありますが、その結果を受けてというよりも、私どもは、そういう考え方もあるということを踏まえて、文部省の中に独自な調査研究機関を設けて議論をいたした結果、財政があっての国全体の諸制度でございますから、その財政を乗り越えて、いわゆる質的に単価をアップするということ、あるいは量的に拡大をするということをいろいろ加味して、逆に言えば、臨調がそういう指摘をするならば、逆手に取ると言うと、大変言葉よくありませんけれども、むしろ、その力を利して、逆に外部資金を導入することによって量の拡大をすると。敗れて出てきたということよりも、そこから新しく装いを新たにして生まれ変わって出てきたというふうにぜひ御理解をいただきたいというふうに思うんです。  確かに、そういう意味で、私どもとしては最初の法案は、行革大綱というこの二十三の法案の中には入ってないわけでございます。しかし、この法律が皆さんの御理解を得て成立いたしますと、国全体から見れば行革関連に関連することになります、結果として。したがって、そういう意味で三十法案の中に入るということになるのかもしれませんが。若干、苦しい答弁で、正直申し上げてつらいところでございますが、どうぞ、この制度を、むしろ、また一つの大きな育英奨学制度をさらに飛躍をさせる一つのスタートにしたいと、こういう気持ち文部省にあるんだということをぜひ御理解をいただきたいと思います。
  192. 久保亘

    久保亘君 まあ、お気持ちはよくわかります。  そうするとね。十三万八千の中の二万人、先ほどたしか局長でしたか、十三万八千の中の二万人という比率は変えないと、こう言われた。そして、今、大臣が将来にわたって奨学制度対象人員はふやしていくと、そういう努力をしたいと、こういう意味のことをおっしゃった。そうすると、それをつなぎ合わせますとですね、将来、奨学、この有利子の者が仮に四万人になったとするときには、無利子の方は二十三万六千になっていないといけないわけですね。そうしないと、比率を変えず人員をふやすという芸当はできないわけです。今後、だから、有利子部分がふえたときには十三万八千の中の比率でふえ、比率が壊れない範囲で十一万八千の無利子の方も当然それに数倍して伸びていく、そういうことでないと今の局長と大臣の答弁は整合性を持たないと思うんですが、そういうふうに理解していいですか。
  193. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 五十九年度の姿では、先ほど御指摘いただいたとおりでございます。そして、私ども、ただいま、この有利子制度について、新規採用で二万人の人員で考えておりますので、それで学年進行でふえていくことになるわけでございます。なお、入り口の点で申し上げますと、無利子貸与の点については、例えば教育学部の採用枠について若干縮減をするというようなことなどを受けまして、九千人の減ということが、今回の五十九年度の事業で御提案申し上げておるわけでございまして、これも同じく学年進行で、そういうことで進行、新採用のところについては、そういう形で進んでいくわけでございます。学年進行で申し上げますと、以上の数字で、私どもとしては、今後、人数の増ということは、それらの比率で行われていくというぐあいに理解をしておりまして、その点が、正確に申し上げますと、ちょっと今数字の点では、ただいま御説明申し上げたような形で推移を私どもとしてはさしていって、人員増ということは図っていくということになるわけでございます。  したがって、今後とも、それらの点は、従来からも御説明をしておりますように、無利子貸与事業が事業の根幹として、私どもとしては今後も十分残していくと、少なくとも臨調の言っているような転換その他というようなことは毛頭考えていないということは、予算で御説明をしているとおりであり、かつ今後の学年進行の想定をしている姿から申し上げても、そのことは御説明をできるかと思います。今後とも無利子貸与制度を事業の根幹として維持していくという形は、五十九年度の比率そのものが、そのまま今後もその比率というぐあいには御理解されるとやや正確を欠くかと思いますが、そういう形で推移をさせてまいるというのが、ただいま考えております私どもの事業計画でございます。
  194. 久保亘

    久保亘君 いや、そういう言い方をするとね、やっぱり、だんだん比率が変わってくるんでね。だから、やっぱり十三万八千の中の、仮に有利子をですよ、私は反対であるが、仮に認めたとしてもです、その比率はこれはあくまで補完的なものだから崩さないんだと、衆議院の附帯決議によれば、将来、財政が好転したら考え直すんだと、こうなっておるんですから、少なくとも今の比率よりね、その部分が率で大きくなるということはない。しかも、奨学生全体としては減ることはない、ふえていく。こういうことなら、無利子貸与の学生の数もふえていく、こういう理解でないとね。これから先あなた方も大蔵省との折衝でも随分難儀されるんだろうけれども、一遍こういうとりでをつくらせてしまうと、必ずやられますよ、こっちをもう少しふやせと。それは大蔵省はもう手くすね引いて待っておるんだから、それでずっと押し込まれていく。  そこで、あなた方のこれからの長い大変な奨学制度を守るための闘いが始まるんだけれども、その最初の突破口をあえて、あなた方自身が今この法改正によってあけてしまうんだから、後の戦いは非常に困難になるということを自覚しておかにゃいかぬと思うんですね。そういう意味では、この国会の論議の中で、いかなる事態があっても、この提案している今日の基準を有利子と無利子の比率を崩すことはない、こういうことをぴしゃっと答弁しておいた方が今後あなた方の戦いのためにも大変よろしいと私はこう思っているんですがね。
  195. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 新規採用人員の枠については、私ども学年進行完成まではこの数字を動かす考えはございません。
  196. 久保亘

    久保亘君 今の問題は、また、もう少し念を入れてやりましょう。  そうすると、利息はこれ法定利息になっておりますかね。
  197. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 金利の定め方としては、それは政令事項といたしております。
  198. 久保亘

    久保亘君 ほかの制度融資などで利率が法定になっているのに、なぜ育英会が政令にさせられているんですか。どうせやるんなら法定にしておけば、そうすると、めったなことで変えられぬのですよ。それを政令にしているから国会の了承なく財政事情によって利率を動かすことができる、それでは困る。住宅金融公庫だって法定でしょう、金利が。農業関係の制度融資だって皆法定です。ならば、法定で定めなかった理由は何ですか。
  199. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 利率の規定の仕方についてのお尋ねでございますけれども、有利子貸与制度の賞与利率でございますけれども、私ども従来から御答弁申し上げておりますように、奨学生の返還能力その他を考えまして、負担の大きくならないように低利でということは基本的に将来とも堅持をすることは当然でございます。ただ、社会情勢の変化等に応じて改定する必要が起こることもあり得るわけでございまして、法律で利率を定めることはそういう機動的な貸与を困難にするという一般的な事柄を受けまして政令事項としておるわけでございます。  そこで、ほかの最近の立法例でございますが。貸付利率については、例えば金融を行う特殊法人の例でございますと、貸付利率については業務方法書等の法人の内部規定で定めているのが通例でございまして、最近の立法例では貸付利率を法律で定め、あるいはその上限を法律で定めているものはないと私どもは理解をしております。なお、住宅金融公庫法では昭和四十八年までは貸付利率を法律で定めていたところでございますけれども、機動的に対応することが困難であるということで法律で上限を定めて、具体的な利率は政令で定めるということにいたしておりますが、これは本件については従来からの経緯を考慮した特別な例というぐあいに理解をいたしております。
  200. 久保亘

    久保亘君 それでは、奨学資金の方も上限を定めておけばいいじゃないですか。三%を上限とする。そうすると、あなた方、頑張って将来二%にしよう、一%にしよう、もう面倒くさいから無利子にしよう、こういうことにすればよいんでね。それで、なぜ政令にしているか、財政状況に機動的に対応するためというのは、いつでも上げられるようにということに聞こえてしようがないんですよ、あなた方の言い分聞いたとき。これは下げてもいいときが来たらもうすぐ下げるんだ、こういう決意で言うておられるんなら大変結構ですが、そのときにはもう局長はいないんだな。それで困るんですよ。やっぱり将来にわたってきてっと歯どめをかけるところはかけておかなければいけない。そのためには法定にしておくことがよいと私はこう思うんです。  きょうは時間がありませんので最後にもう一点だけ聞きます。  行革審の行財政改革小委員会報告が土光さんに提出されました。その中に幾つか文教についての問題がございます。特にこの育英会ともかかわりを持っておられる局長に一番関係の深い国立の大学学部・学科の転換再編を進めよ、そして大学の入学定員の増員は厳しく抑制しろというのがございます。ここは厳しくというのがわざわざついております。四十人学級などは当分の間抑制しろと書いてある、これもけしからぬ。しかし、大挙入学定員の増員は厳しく抑制しろと書いてある。こうなればあなた方がこれまで国会で説明されてきたこの急増期に向かって定員増を計画し、各大学に既に定員増の計画を立案さして、このことは一体どうなるんでしょうかね、これをひとつお聞きしておきたいと思う。
  201. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 御指摘の表現になっていることはそのとおりでございます。私どもとしては既に臨調で言われておりますことを受けまして全体的な抑制基調、そしてまた、学部・学科の転換再編成という事柄も取り組めることについては既に取り組んできておるわけでございます。  そこで、この六十年度はおいてはという表現で入学定員の増員は厳しく抑制するということについての受けとめ方でございますが、私ども既に報告をいただいております点は、一つは十八歳人口の今後の増減に対応する高等教育の計画的整備ということで、それは具体的に今後取り組んでいかなければならない課題でございますが、ある点で言われておりますのは六十一年度以降の問題でございまして、六十年度というのはたまたま年度的に申せば、いわゆるひのえうまの年に当たっている年でございます。十八歳人口はたまたまそこは落ち込む点はございますが、しかしながら、私ども厳しく抑制する姿勢は保たなければならないと思いますけれども、しかし、真に必要なものの入学定員の増員については今後概算要求の過程において十分検討いたしまして、私ども文部省予算要求の全体の中で真に必要なものとして要求すべきものは要求していくという考え方で対応したいと、かように考えております。
  202. 久保亘

    久保亘君 本日の審議時間等の関係で、私の残余の質問は後日に譲らしていただきます。
  203. 中西珠子

    ○中西珠子君 まず一番先に、有利子貸与制度創設の理由に関連して文部大臣にお聞きしたいと思うのでございますが、日本国憲法第二十六条は「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と、国民教育を受ける権利を保障しております。教育基本法第三条第一項は教育の機会均等を規定し、その第二項は「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない」と、御承知のとおり規定しております。  今回の育英奨学金への有利子制の導入を、文部大臣はこの憲法二十六条と教育基本法三条に照らしてどのように位置づけておいでになりますかお伺いしたいと思います。
  204. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 憲法は第二十六条で教育の機会均等を規定をいたしております。ただいま先生から御指摘をなされたとおりでございます。  また教育基本法は第三条第一項におきまして、憲法第二十六条の趣旨を踏まえまして教育の機会均等の原則を明示をいたしますとともに、第二項におきましては「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない」、こういうふうに規定をいたしております。ここのところも、今、中西さんの御指摘のとおりでございます。  育英会の事業は、憲法と教育基本法の教育の機会均等の趣旨を実現するものの一つであるというふうに私ども考えておりまして、教育の機会均等の精神を踏まえまして従来から事業の拡充を図ってきたわけでございます。  今回の育英会法の全部改正に際しまして、こうした憲法や教育基本法の規定を考慮いたしまして、事業運営の実態を踏まえて大樹の育成に加えて教育の機会均等に寄与することを目的規定として掲げ、同時に、たびたびこの委員会でも御議論をいただいておりますように、財政全体の事情がこうした逼迫した状態でもございます。質的にも中身を濃くしていかなきゃならない、そういう意味で単価の増額もしていかなきゃならぬ、あるいはまた育英奨学を求めている学生さんの人員もできるだけ広げていかなきゃならぬ。そういうことから、従来のいわゆる無利子貸与制というものを根幹として、そのことは主力といたして置きますが、新たに事業の拡大ということで有利子制を採用することによって、先ほど久保発生からも御指摘をいただいたところでございますが、その辺の無利子貸与というものを根幹というこの位置づけは明確にいたしつつ、新たに有利子制を採用することによって、なお事業量全体を大きく伸ばしていきたい。そのことによって財政事情のことも考慮いたしながら、なお単価アップという点でも十分に考慮していこう、こういうことで今度の法案の改正をお願いをいたしたわけでございまして、基本的には憲法二十六条あるいは教育基本法三条等々について十分この精神を体して、この制度の改正をいたしておるものである、このように理解をいたしておるわけでございます。
  205. 中西珠子

    ○中西珠子君 私には、どうも育英奨学金制度へ、今回、有利子制が導入されますのは、第二臨調が財政再建という名のもとに教育とか福祉を抑制する路線のあらわれであるような気がしてなりません。受益者負担主義というものを教育教育財政、教育行政の分野に適用しようというものだという気がしてならないわけであります。受益者負担原則というものを教育面に持ち込むということは、憲法や教育基本法が定める教育の機会均等、教育における差別禁止の理念を否定するものであり、非常に重大なものだと考えるわけであります。大蔵省や臨調が利子つきの奨学生という発想をされているのは、教育に投下した資本で得をするのは、その奨学金を受けた本人なんだから、得をする分は本人が負担して利子を払うのは当然だという論法で、投資と利益という考え方を教育に適用しようとするものだと思うのです。教育の投資と、その成果の収支決算を、ただ単に個人の損得のレベルでしかとらえないという受益者負担主義というものがもたらす社会的な損失は大きいと思いますが、いかがでしょうか。
  206. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 御指摘の点で受益者負担という考え方をとるのは、基本的に教育の機会均等の精神に反するのではないかというような趣旨のお尋ねがあったかと思いますけれども、その点は、必ずしも私ども、そうは考えないわけでございます。そして、投資と利益というような考え方で個人の損得を考えるのはという御指摘でございますが、実は、今回、御提案を申し上げております有利子貸与制度の創設でございますけれども先生、御案内のとおり、これは文部省に置かれました調査会で御検討をいただきまして、臨調の指摘もございましたけれども、基本的な点では「育英奨学事業は教育の機会均等を確保するための基本的な教育施策であり、国の施策として育英奨学事業を実施しなければならないものである以上、先進諸外国の公的育英奨学事業が給与制を基本としていることにも留意し、現行の日本育英会の無利子貸与事業を国による育英奨学事業の根幹として存続させる必要がある。」ということをまず言っておるわけでございます。それを受けまして私どもも、無利子貸与の奨学事業を制度の根幹として考えております。  それからその次に触れている点は、「育英奨学事業の量的拡充を図ろうとする場合、国の財政事情を勘案すると、一般会計からの政府貸付金を資金とするだけでは限度があり、一般会計以外からの資金の調達方法を考える必要がある。この場合、国が実施する事業であること、長期安定的な資金の確保が確実であること、比較的低利であることが望ましいこと等の諸条件を勘案して、日本育英会の育英奨学事業の資金を確保することが必要である。その際、財政投融資資金の活用についても検討すべきである。」というのが調査会からいただきました報告でございます。  したがって、私どもとしても、もちろん、無利子貸与制度の政府貸付金の枠が、さらに伸ばすことが可能な状況であるならば、無利子貸与制度としての育英奨学事業は伸ばせるわけでございますけれども、今日の財政状況からすれば、その政府貸付金を資金とするだけでは限度があるということで、どうすれば、この奨学事業の量並びに質の拡充を図ることができるかという観点から、今回一般会計以外からの資金の導入という形で、この財政投融資資金の活用を図ることにいたしたわけでございます。  もともと、利等つきの有利子制度を新たに興すというような形で事柄をとらえているわけではございまぜんので、日本育英会の奨学事業の量的な拡充を図る際に、一般会計の資金だけでは限度があるんで、どうするかということが事柄の、今回、御提案を申し上げております、いわば考え方の基礎にあるわけでございます。そういうことで、いわば本来、先ほど、先生、御指摘のような、投資と利益というような考え方を根っこに持っているものではないことは御理解を賜りたいと思います。
  207. 中西珠子

    ○中西珠子君 育英奨学事業に関する調査研究会が無利子貸与を根幹とはするけれども、有利子制を導入するという緒論を出したので、それで文部省は今回のような措置をとったとおっしゃっておりますけれども、私は実は調査研究会の中にも少数度対意見もあったということを申し上げたいわけでございます。  私は、実は、昨年の三月末までメンバーとして加わっておりまして、これは先ほどお話にありました文部省にとっては都合の悪いメンバーだったと思いますけれども、有利子制導入には大変反対いたしまして、これについては賛否両論がありますけれども、賛否両論を報告書作成のときには併記していただきたいと強くお願いしたわけでございます。研究会の席上お願いしたわけでございますが、六月に出てきました報告書におきましては両論併記にはなっていないということで、大変びっくりして、がっかりしたわけでございますけれども調査研究会の席上では、投資と利益というお考えの方もおいでになったということで、受益者負担主義導入を図っていらっしゃる方もあるのではないかという印象を受けたものですから先ほどのようなことを申し上げたわけでございます。  少数反対意見などというものは、また私が最後の六月までおりませんでしたから、そんなものは無視していいのだ、また調査研究会で意見聴取をした教育関係の十七団体のほとんどすべての代表も反対意見であったんだけれども、これも取り上げることができなかった。それで、財政事情が厳しいから、奨学金を拡充するために有利子制導入を行ったということは、文教政策の担い手としての文部省も、非常に臨調だとか大蔵省に抵抗されたということは私も存じておりますけれども、とうとう負けてしまったというふうな感じじか持たないので、それで教育の機会均等を確保するためには、文部行政の中で最も重要な施策である奨学金制度が財政上の理由で後退されたということは大変残念でもありますし、また、長期的に見れば、日本の将来にとって損失になるのではないかと考えるものですから、そのようなことを申し上げたわけでございます。  それから、有利子制はどうしてもとらなければならないという前提に立ちまして第二十二条の学資の貸与、これを無利子制を第一種学資金として、また有利子制の方は第二種学賢金というふうになすっておりますけれども、この比率の問題は、先ほどから何回も出てまいりまして六対一だとかということでございまして、また、局長も絶対この比率を変えないつもりであると、御努力をなさるというお考えをお示しになりましたけれども、ここの二十二条を見ますと、結局、政令事項ということになっていまして、閣議決定で、この有利子制の枠というものも変えることができるということになっておりますので、臨調答申が有利子制に転換という言葉を使っているのを考えますと、今度は無利子制の方が小さくなって枠が縮められ、有利子制、いわゆる「第二種学資金」とこの法律の中に書いていらっしゃいますが、その第二種学資金の枠の方がどんどん広がっていく危険があるのではないかという心配がございますが、これに対する歯どめというものはどのようになさるおつもりでいらっしゃいますか、お伺いします。
  208. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 第二種学資金が将来の奨学制度に占める割合なり、その利率についての今後の歯どめはどうかというお尋ねでございますが、基本的には、従来から御答弁申し上げております事柄の御説明の繰り返しになるわけでございますけれども、一つには、この有利子貸与制度は、当面、量的な拡大が望まれております、大学、短期大学に限定しておるわけでこぎいます。それに対しまして、無利子貸与制度は、もちろん、高等学校から大学院まで、そして、専修学校をも含めまして、育英会の奨学事業として取り上げております、すべての学校を対象としておるわけでございますけれども、有利子貸与制度は大学、短期大学に限定をして考えるという点が一つございます。それから、量的な面では、先ほど来、御説明をしておりますような形で、先ほども特に繰り返しお尋ねがございまして、新規採用人員については、現在の規模を学年進行完成までは維持するということを明確に申し上げたわけでございますが、そういう形で全体で申し上げますと、ほほ約十二万人に対して二万人というふうな新規操用人員の割合でございます。利率の点については、基本的には、奨学生が卒業後返還をするに際しまして、その負担をできるだけ軽減するというような観点から、在学中、無利子、卒業後三%という金利で考えておりまして、財投の利率との差については一般会計からの利子補給金で、五十九年度で申し上げますと、約二億の予算も計上しておるわけでございます。そういうことで具体的に対応をするわけでございまして、これらの点については、無利子貸与、有利子貸与の双方について、私どもとしては、育英会の育英奨学事業の今後の姿といたしましては、従来から御説明をしているような形で、無利子貸与制度を制度の根幹として堅持をするという考え方についてはいささかも考えの変わる点はございません。
  209. 中西珠子

    ○中西珠子君 先ほども久保委員からも御指摘がありましたけれども、利子というものが法定にはなっておりませんから、現在は有利子制の利率が三%でありますけれども、将来、これ政令事項として変えることができると、また、利子補給を初年度は二億円一般会計からなすっているんですけれども、数年でこれが十数億円ということになりますし、また、利率を上げなければならなくなるという情勢が出てくるのではないかと大変危惧されるわけでございますが、その利率が上がらない保証というものはどこ値もないので、これを純とかお考えいただかなければならないと思います。  それから、有利子制の貸与人員ですが、大体、二万人ということでございますが、無利子貸与制は根幹として存続させるとはいうものの、九千人減員となっているわけです。  それから、二万人の有利子制の採用人員の中で、私立の学生が私立大学と短大の学生の割合が一万五千ということになっておりますが、この有利子制に私学をふやしたのはどういう意味ですか。
  210. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 基本的には、大学生の在学生の全体の数の比率が基本的にはございまして、従来から国公立大学と私立大学の採用率につきまして、私学の方が近年非常に大学の数並びに学生数が伸びてきたというような実態を受けまして、現実問題として、私立大学の方が非常に採用率が国公立に比べて低いというようなことが言われておるわけでございます。したがって、それらの点も勘案をいたしまして、全体の在学生の総数から見て、私立大学の人員をふやすために、今回、全体の二万人の割り振りについては国公立を五千人、私立の大学、短期大学については、それを一万五千人ということで、いわば四分の三を私学に充てたというのは、全体の在学生の比率を持ってきて見まして、私学に重点を置いて人員増を図るということで考えたわけでございます。
  211. 中西珠子

    ○中西珠子君 有利子制と無利子制の貸与につきましては、結局、学力基準というものも、収入基準というものも適用になるということだそうでございますけれども、私学の学生の方が学力基準が低いから、だから有利子制に多く回しておいたということなのか。それから、また、私学の学生の家庭が、結局、国公立の学生の家庭よりもよいというふうに考えられているのが一般的な考えかもしれませんけれども、最近の調査によると、東大のような国立の大学の学生の家庭の方が裕福であるという調査結果も出ているわけでございますので、やはり、私学の方にも無利子制の貸与というのをもっとふやしていただいて、国立の方に有利子制の貸与の採用人員をもう少し振り分けるということが望ましいのではないかと思うのです。日本では、私学が非常に教育制度において圧倒的な割合を示しでいるわけでございますから、私学への配慮というものも、もう少しやっていただきたい。私学助成は削減され、授業料も上がる、それから奨学資金も有利子制の方が私学が多いというのでは、どうも私学に対する配慮が欠けているのではないかという気がするわけでございますが、いかがでしょう。
  212. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 先生、御指摘のような形で私ども、この有利子制度の人員の割り振りについて考えたことではないことは、先ほど御説明をいたしましたような、基本的に私学の学生の数が多いということを受けまして考えたわけでございまして、例えば学力基準の点でございますとか、あるいは家計基準の点などを考えて、そういう割り振りをしたということではないということは、ひとつ、御理解を賜りたいと、かように考えます。
  213. 中西珠子

    ○中西珠子君 奨学金貸与人員の総数で、結局、有利子制が二万人新設、無利子制が九千人減ということで奨学金の枠が非常に拡大した、一万一千人もふえたとおっしゃっておりますけれども、私学振興財団が援助している私大の奨学事業のうちで、奨学金貸与事業というのは、今度は育英会の有利子貸与事業の中に吸収されるということになるそうでございまして、これが五十八年度は約五千人いたということでございますから、一万一千人増ということを言いましても、実質は約六千人の増加としかならないのではないかと思いますが、いかがですか。
  214. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 私大奨学事業の中で、学資金貸与事業については、御指摘のように、今後、五十九年度から、学年進行で、この事業に吸収をするわけでございますが、御指摘の数字は全体の数字では、ほぼ五千人弱でございますけれども、新規採用の数字で申し上げますと約千五百でございますので、先生指摘の五千人がこれからさらに減るのではないかという点は、やや、全体の数字では、そのとおりでございますけれども、一学年といいますか、新規採用の枠で申し上げると約千五百でございますので、その点は、ただ育英会で実施をいたします奨学事業の人員としてはこういう数字でございまして、実質的にはそちらの方が落ちるから、全体の奨学事業としては、確かに落ちるという御指摘もわかるわけでございますけれども、これは、従来、それぞれの学校法人が実施をしておりました私大奨学事業のことでございます。それから、人数のところは、ただいま申し上げたとおりでございます。
  215. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、特別貸与制度、それから特別貸与返還免除制度を廃止なすって、特別貸与と一般貸与とを一つになさったメリットは何でございましょうか。
  216. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 現行制度は、一般貸与と特別貸与があるわけでございますが、この特別貸与制度が創設をされました当初は、単価の点でも二倍以上というようなことで、一般貸与と特別貸与という二本立てで対応することが相当制度的にも意味があったわけでございますが、その後の経過で、単価増が、それぞれ同じ額の単価増を図ってきたというようなこともございまして、特別貸与の自宅と、一般貸与の単価とを比較いたしますと、現実には、今日では、一割程度しか差がなくなってきておるという点がございます。そこで、特に一般貸与と特別貸与とを区別を設けるという必要性がだんだん今日では薄れてきておるということが一つ言えるわけでございます。それから、今回、無利子貸与制度に加えまして、新たに有利子貸与制度を創設をするわけでございますので、無利子貸与制度を二本立てにすることを一本立てにいたしまして、それも特別貸与の単価にすべて合わせるという形で、貸与月額の改善をすることによって、無利子貸与の、貸与月額の改善が、一般貸与の、貸与月額から見れば、引き上げられるということになったわけでございます。なお、このことに伴いまして、臨調答申でも返還免除制度についていろいろ見直しということが言われてきておったわけでございます。私ども教育職、研究職の返還免除制度というものについては、それぞれ必要性があるということで、この制度を残していくという結論に、調査会でも、そういう御結論をいただいたわけでございますが、特別貸与、一般貸与を一本化することによりまして、現行制度で申しますと、一般貸与相当額の返還を行いますと、残額を免除してきました従来の特別貸与返還制度というものを、今後、一本化することによりまして、その返還免除制度は廃止をするということにいたしたわけでございます。このことは、それによりまして返還額、将来返還されてまいります金額が、その分だけ返還額がふえるということになるわけでございまして、そのことは、さらにその返還されましたものが、後々の奨学生のための財源になるというような意味においては、育英奨学制度を安定的に運用していく際の確保する財源として、その面が将来ふえてくるという観点からすれば、無利子貸与制度の財源としては将来の観点から見ても有用なことではないか、かように考えております。
  217. 中西珠子

    ○中西珠子君 教育職と研究職の返還免除制度が今回は残りましたということは大変結構なことでございます。教育職、研究職の返還免除制度はこれまで学校教育学術研究の分野で優秀な人材を確保するために大変大きな役割を果たしてきたと思うわけでございますから、大変、結構なことだと思いますが、今回は、無利子制度については、これが残っておりますけれども、有利子制度については、こういった教育職、研究職の返還免除制度はないわけでございまして、そして、死亡と心身障害免除制、これは無利子制度についてもございますけれども、有利子制度については死亡と心身障害免除制だけということになっているわけですね。これはどうしてでしょうか。
  218. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 今回の改正に当たりまして、御指摘のように死亡、心身障害返還免除については有利子貸与制度にも適用することにいたしたわけでございますが、教育、研究職の返還免除については無利子貸与制度について適用するという考えをとったわけでございます。この点は、教育職、研究職の返還免除制度についても、先ほど臨調の指摘ということで申し上げましたが、いろいろと議論をされまして、その点は、私ども教育職、研究職の返還免除制度は、やはり大事なことであるということで、存続を図るということで、置くことを考えたわけでございます。今回、一般会計の貸付金を原資とした枠では、育英奨学事業の制度改善なり、あるいは、貸与月額の増というような形での改善というものが図れないということで、有利子の財投を導入して、有利子の貸与制度を設けるということで、私ども量的な拡充と貸与月額の増ということを図ることにいたしたわけでございまして、そういう点で非常に資金の効率的な運用を図るということも、片や非常に緊要な課題でございますので、そういう観点から返還免除制度を設けるということは、今回はこの新たに創設をする有利子貸与制度には適用しないという考え方で対応をいたしておるものでございます。
  219. 中西珠子

    ○中西珠子君 財投資金の効率的な運用を図るために、今回は、有利子制については、教育職と研究職の返還免除の制度はとらなかった、こういうわけでございますね。  それでは、教員養成学部の特別枠の廃止をなさいました理由はどうでございましょう。これは教員の需給関係考えると、先生になり手がうんとあるから、もう、こんな特別枠は要らないということでございますか。
  220. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 基本的には、教育職に対する返還免除制度そのものについても、臨調答申等では、その廃止が求められたわけでございます。そこで、私どもとしては、調査会で御検討いただきまして、教育職に対する返還免除制度については、人材確保の点から役割が重要であるということで、制度としては存続をさせることにしたわけでございます。しかしながら、御指摘の点で、一つには財政状況を勘案いたしますと、返還免除額が相当多額に上っているという現状から考えますと、やはり資金の効率的な運用についても配慮することは必要であるということで、教員の全体的な需給状況も勘案をいたしまして、従来、一般学部よりも教育学部については優遇しておりました貸与率を、一般学部並みに引き下げるということで対応したわけでございまして、それらの点については制度全般の運用を考えれば、その点についてはやむを得ないことではないかというぐあいに考えております。
  221. 中西珠子

    ○中西珠子君 教員養成学部の特別枠を廃止して、教員養成学部の新規貸与人員を二千七百八十八人お減らしになったわけですね。これだけ減らせば総返還免除額が縮減するということになりまして、資金の効率的な運用も図れるし、また、臨調あたりが盛んに言っております返還免除制の廃止というものそのものはしないけれども、これによって総返還免除額を減らしていますという言いわけができるというわけでございましょう。ですけれども、これがだんだん拡充していったり、また、将来、返還免除制を教育職についてはやめるとか、また研究職についてはやめるというふうなことはございませんように、文部省としては大いに頑張っていただきたいと思います。強く御要望申し上げます。  それから、少し法案の内容についてお聞きしたいのでございますけれども、四十三条ですね、四十三条に、「文部大臣は、次の場合には、あらかじめ、大蔵大臣に協議しなければならない。」と、こう書いてありまして、もう本当に、育英会の、ありとあらゆる業務について文部大臣が認可を与えたり、また省令を決めたりするときに、一々相談をなさらなければならないということになっておりますので、私は、ちょっと、これは何か、教育学術の振興を目的として大いに頑張っていらした文部行政の主体性は損われないかと心配なんですね。  例えば、認可事項としては、育英会の目的達成に必要な業務の認可、それから、育英会の業務方法書の作成、変更の認可、また業務方法書の記載事項に関する省令を定めようとするとき、これは、もう、もちろん、文部大臣が大蔵大臣に協議しなくちゃいけないと、こんな細かいことまで書いてあるわけですね。それから、毎年の事業計画、予算、資金計画の作成や変更、こういったものを文部大臣が認可なさるときは、その前に大蔵大臣に協議しなければならないということになっていますし、また育英会の長期、短期の借入金、債券の発行――債券の発行は、これは新たに法案の中に入ったことでございますから、まあ、御相談になるのも、きっと必要なのだと思いますけれども。償還計画、それから短期借入金の借りかえについて、また、債券発行に関する事務を銀行または信託会社に委託する場合の文部大臣の認可について、これも全部大蔵大臣に御相談にならなきゃならないということが法律に書いてありますね。  それから、もっと驚いたのは文部省令で、第一種学資金、これは無利子の方ですね。この貸与の基準及び方法についてお定めになるとき、また、第二種学資金、有利子制の方、これの貸与の基準及び方法についてお定めになるとき、これも大蔵大臣と協議をなさらなければいけないと、そういうふうなことになっていますし、それから私立大学の医科系、歯科系、薬学系の学生への、いわゆる増額貸与月額、これは七・一%の利子つきなんですけれども、これの貸与の基準と方法についても、文部省令をお出しになるときは、その前に、大蔵大臣に御相談にならなければならないということになっているし、また、学資金回収の業務の方法に関する省令、これについても大蔵大臣にまず御相談になると。また、育英会の財務及び会計に関する省令、これについても大蔵大臣にまず御相談になると。それから決算報告の承認をなさるとき、これについても、まず大蔵大臣に御相談になって、協議をしてからでないと承認ができないと。また、余裕金の運用のための有価証券を指定なさるとき、これについても、まずまず大蔵大臣に御相談にならなければならないと。またその三十六条には、育英会の役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準の決定及び変更、これを文部大臣が御承認になるときは、大蔵大臣に事前の御協議が必要ということになっております。  こういうふうに見てきますと、大蔵省の財政政策によって文教政策が相当制約を受けるのではないかと、文教政策の責任者であり、主務大臣でいらっしゃる文部大臣と、文部行政の主体性が損われるのではないかと大変心配になりますけれども、いかがでございましょうか。
  222. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 中西さん、いろいろと例を取り上げて御指摘でございますが、最近の立法例によりますと、特殊法人の財務会計に関する重要事項につきましては大蔵大臣と密接な連絡を保つ必要がありまして、そのために、これらの事項につきましては大蔵大臣と協議することになっておるわけでございます。文部省の所管をいたします健康会あるいは放送大学、私学振興財団、いずれもこうしたことを大蔵大臣と協議すると、こういう規定があるわけでございます。現行の日本育英会法には大蔵大臣との協議の規定がなかったわけでございますので、今回、全部改正をいたします際に、これらの立法例にならいまして規定の整備を行おうというものでございますので、いろいろ御心配をいただきました点は十分よくわかるわけでございますが、文部省の主体性がそれによって損われるということはないと思います。また従来、こうした法の規定がなくても、当然、財務当局とはいろいろと協議をして文部省として文部行政を進めてきたところでございまして、先生の御心配の点は私も十二分に、先生のお立場からもよくわかるわけでございますが、大蔵財務当局と十分協議をすることによって、なお一層文教行政がよりよく進んでいくということも十分あり得るわけでございまして、御指摘をいただきましたこと、御心配のような点はないように文部省としては十分その文部省の主体性をしっかり打ち立てて進めていきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  223. 中西珠子

    ○中西珠子君 文部省の主体性を確立していただ きまして、大蔵省にお負けにならないようにお願いいたします。  それから三十六条でございますけれども、これには、「育英会は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、文部大臣の承認を受けなければならない。」とあるわけですね。先ほど申し上げたように、文部大臣は、これを承認する前に大蔵大臣と協議しなければならないということでございますが、この支給の基準というのはどういうものを指しておりますでしょうか。
  224. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 第三十六条の育英会の役職員の給与、退職手当の支給基準についてのお尋ねでございますが、これは具体的には役職員の給与規定、退職手当規定を指すものでございます。  この育英会の役職員の給与、退職手当につきましては、この育英会の公共的性格と申しますか、特殊法人として置かれているわけでございますが、他の同種の法人の役職員の給与等との均衡等も考慮して決定をする必要があるわけでございまして、その支給基準の制定に当たって、他の特殊法人の例にならいまして文部大臣の承認を必要とするということにいたしたわけでございます。
  225. 中西珠子

    ○中西珠子君 給与規定の基準ということでございますけれども、その給与規定が改定される場合、例えば、毎年春闘などがありまして、春闘に加わらなくてもベースアップ要求というふうなのが出てきまして、組合と使用者側の団交ということも出てくるわけでございますけれども、そういうふうなベースアップの問題などに関連してきますと、それから、そのほかの給与、手当の基準の改定というふうなことにも関連してきますと、育英会の労使の団体交渉における当事者能力が非常に損われてくるという危険があるのではないかと思うんですけれどもね。文部大臣の御承認が必要、その前に大蔵大臣と協議をなすって、そして文部大臣が承認なすって、それから労使の交渉が妥結するというふうなことになりますと、当事者能力が非常に損われるというおそれもありまして、また、育英会の労組の労働基本権の制約というものにもつながってくるのではないかと思うわけでございますが、この点は杞憂でございまして、心配はないということでございましょうか。
  226. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 支給基準の制定に当たりまして、先ほど御説明をいたしましたように、他の特殊法人の例にならいまして文部大臣の承認を必要とすることとしているわけでございますが、さらに、その点は大蔵大臣との協議も必要といたしております。これらの点は、いずれも、具体的には、それらの給与が直接予算にかかわり、かつ、それらの法人が公共的性格を持っているというようなことを受けまして、他の同種の法人の役職員の給与等との均衡ということも考慮して決定する必要があるからでございます。もちろん、私ども、労使の間のそれぞれ給与上の扱いその他について従来から行われております折衝というものが尊重さるべきことは当然のことでございまして、私どもとしては、この育英奨学事業の充実のためにも、日本育英会そのものの労使の関係が良好な関係にあるということは必要なことだというぐあいに理解をしております。私どもも、それらの点については十分育英会の立場も考慮した上で対応すべきことは当然のことでございますが、規定の上から申せば、ただいま御説明をいたしましたような点から、このような規定を設けているものでございます。
  227. 中西珠子

    ○中西珠子君 ただいまの御説明よくわかりまして、予算面とか、それから、他の特殊法人との均衡もあるからということでございますけれども、一層の御注意をなさいまして、労使の団交における当事者能力がなくなるようなことがゆめございませんように、よろしくお取り計らいを願いたいと思います。  それから、次に、また奨学金の問題に戻りますけれども、奨学金の収入基準というものは、これは私は大学にも関係しておりまして、専修学校にも関係していたわけでございますけれども、この収入基準というものが、大変、給与所得者に対しては不利になっていると。父兄が給与所得者であるという場合には非常に不利で、給与所得者ではない自営業者の子弟の方が有利だということになっておりまして、これは現在の不公平税制というものを反映しているわけなんでございますが、もちろん、この法案が通りましたら、収入基準は改定なさるということでございますけれども、現在の不公平税制というものを何とかしないと、これは解決が実際にはできないのではないかと思うんですけれども、大蔵省の方がおいでになってましたら、ちょっとその点の意見を聞かしていただきたいと思いますが。
  228. 武藤敏郎

    説明員(武藤敏郎君) ただいまの御指摘の点につきましては、給与所得者に対しましては、いわゆる収入基準を積算するに際しまして特別の配慮も行っておるわけでございます。そういう問題意識を十分に持った上で基準を作成しておるわけでございまして、できる限り、そういう不公平の生じないように考えていきたいというふうに考えております。
  229. 中西珠子

    ○中西珠子君 本当に困っているサラリーマン家庭の人が奨学金がもらえなくて、そして、中小企業とか自営業者の人たちが、結局、所得証明で、源泉徴収票とかそんなものがないわけですからね、どのようにでも説明ができて、大変、うちが困ってもいないのに奨学金をもらって、それで遊んでいるというふうなのがいやに目について、何も今の学生は困っちゃいないんじゃないかと、奨学金なんかそうたくさんやることもないということにもなるし、また、利子ぐらいつけてやった方がいいんじゃないかということにもなりますので、その点を大蔵省の方としても文部省とよく御相談いただいて、その点の御考慮をお願いしたいと思うわけでございます。  それから有利子制の導入にまた戻りまして、ちょっとしつこくて申しわけないんですけれども、地方公共団体なんかが、二千七百ぐらいの団体で、育英奨学事業を行っているというふうに聞いておりますけれども、こういった地方公共団体も財政事情が全然苦しいというところも多いわけでございまして、また、行財政改革に協力しないと制裁措置をとられるというふうなこともありますので、有利子制がどんどん導入されていくという波及効果はどうでございましょうか、そんな心配はございませんでしょうか。
  230. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 地方公共団体、公益法人等がそれぞれ育英奨学事業を行っておるわけでございまして、これは、それぞれ設立の目的に従いまして、独自の判断で特色のある事業が行われているというぐあいに私ども承知をしております。  今回の日本育英会の育英奨学事業の改正によりまして有利子貸与制度が創設をされるわけでございますが、直ちに地方公共団体なり公益法人等の育英奨学事業がそのことで影響を受けるというぐあいには考えておりません。例えば、地方公共団体等が育英奨学事業を行っている場合は、もちろん、大学生を対象とする場合もございますけれども、高等学校の生徒を対象とするケースが多いというようなことなどもあろうかと思います。  なお、従来、育英奨学法人に対する許認可に当たりまして、奨学金が、貸与制の場合には、償還については利子を付さないということを、指導条項と申しますか、そういうことを指導をしてまいってきておったわけでございます。  そこで、民間の公益法人等で育英奨学事業の拡充の方策として、将来考える際に、そういう有利子奨学金の取り扱いを実施したいということが、実際問題として、今後出てまいった場合の取り扱いでございますが、それらの点については、私ども、この日本育英会の有利子貸与制度の実施の実態その他も十分見ました上で、その点は検討をさしていただきたいと、かように考えております。
  231. 中西珠子

    ○中西珠子君 よく御検討くださいまして、御指導をお願いいたします。  それから、先ほどから先進諸外国の公的奨学金の制度につきましていろいろ御質問がありまして御説明がございましたけれども、支給率の方はどうなっておりますでしょうか。
  232. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) 奨学金受給者の割合でございますが、大学について見ますと、イギリスで約九割、アメリカが約六割、西ドイツ約四割、フランス約一割ということでございます。なお、日本の場合には約一割となっておるわけでございます。もちろん、これは、大学と申しましても、それぞれの国における大学の実態なり、あるいは大学への進学率の問題、いろんな要素もあろうかと思いますが、基本的には、諸外国の場合、奨学金を受けている率は相当高いということは、ただいま御説明申し上げたとおりでございます。
  233. 中西珠子

    ○中西珠子君 奨学金を受けている者の率が高いばかりでなく、やはり、諸外国では、貸与制ではなく給費制と申しますか、給与制の奨学金が圧倒的に多いと。また、その貸与制があってる、それは全く補完的なものであって、ほとんどが給費制であるということは、もう文部省局長も大臣も御承知のことと思いますので、何も申しませんけれども、しかし、現在、日本が、国際社会の中でGNPが自由主義国の中では第二位と、ソ連も入れれば第三位というふうな、本当に経済大国になったときに、やはり、諸外国の奨学金よりもうんと劣っている貸与制である上に、有利子制というものが新たに導入されるということは日本の国際的な地位というものを高からしめるものでは絶対にないと思うので、やはり、この有利子制の導入ということは大変残念なことであり、また財政上仕方がない、そしてまた有利子制を入れれば拡充されるのだから、それでいいのではないかということではございますけれども、やはり衆議院の附帯決議にもありますように、財政状態が少しでもよくなったときには、これは検討するということを考えていただきたいし、できれば廃止するということも考えていただきたい。そして貸与制ばかりではなくて、給費制、給与制というものを導入するという努力をしていただきたいと思います。いわゆる教育職と研究職の返還免除制は実質的にはこれは給与制と同じだということも言えますけれども、もう少しこれを拡充していただきたいし、そして給与制というものを導入していただきたいと。奨学金というのは、やはり、奨学金で勉強した人が、修学の成果を金銭で利子つきで返還するのではなくて、卒業後の社会的な活動、社会に対して奉仕することによって還元してもらうということこそ奨学金の趣旨であると思いますので、有利子制導入には反対し、給費制の導入を強く要望する次第でございます。私の同僚委員も同じようなことを申したと思いますけれども日本は資源小国でありまして、日本にとっては人的資源が最も大切なわけでございますから、有為な人材の育成というものを国家百年の計に立って推進しなければならないと思うのでございますが、国家財政が厳しいからといって、目先の利益のためというか、目先の効率的な運営のために有利子制の導入というふうなことでは、本当に中期的な視野には立っていない、いわば近視限的なやり方ではないかと思うわけでございます。有利子制は、将来、財政事情が好転したときは検討をするということを大臣にお約束願いたいわけでございますが、いかがでございましょうか。
  234. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 今、中西さんからいろいろと例を引用しながらお話しいただきまして、確かに日本の国は人的資源が最大の資源でございます。したがいまして、よその国々と比較いたしますと、確かに奨学制度の面ではやや劣っているという、そういう見方もできるわけでありますけれども、それぞれ国の存立の基盤というものも違うわけでございます。日本のように狭い国土で、そして大変多くの人口を持っております。その中で、まさに平和国家として多くの国々と連携をして、これからまた繁栄をしていかなきゃならぬ、こういう立場でもございます。したがいまして、奨学生制度全般も、確かに給付制あるいは無利子貸与制というものを大きくこれを伸ばしていくということは大変大事なことでございますが、限られた資源というものがあると同じように、日本の国も、卒業して、そしてまた返還をしていただいたその資金が、また後輩育成のための大きな一助にもなっている、こうした利点もあるわけでございまして、お互いに助け合って、そして日本の国をみんなで維持し、繁栄をしていくということも、一つの見方から見れば大事なことではないかというようにも考えるわけでございます。当然、衆議院の附帯決議もございまして、私どもといたしましては、この根幹になっております無利子貸与というものを大きく伸ばしていきたいという気持ちは、私どもも持っておるわけでございます。財政が好転をして、そして制度をまた改めていくということを今ここで明言するということは非常に難しいことでございますが、基本的には無利子貸与制という、この奨学生制度というものを大きく伸ばしていきたい、こういう気持ちは私どもは常々から申し上げているところでございまして、今後とも、先ほどの久保先生の御質問のときにも申し上げましたけれども、今ある制度は恒常的には持ってはまいりますが、全く、これは不変のものであるという考え方は私ども持っていないわけでありまして、今後とも十分に充実した方策を見出していかなきゃならぬと、こういうふうに考えておりますので、御理解をいただきたいと思う次第であります。
  235. 中西珠子

    ○中西珠子君 何度もこの委員会指摘されたことでございますけれども、この奨学金制度が創設されたときは太平洋戦争の開始後二年目で、軍事経済下で財政事情も緊迫していた。それなのに、奨学金のあり方についての論争は給付か貸与がであって、利子つきということは論外であったわけでございます。また、日本の経済が、敗戦後、荒廃して焼け跡のバラックに住んだり、食事もろくに食べられなかった時代でも、奨学金に利子をつけようと言う人はなかったわけですから、経済大国になった今日、財政事情を理由に奨学金に利子をつけるということは国際社会でちょっと恥ずかしいのではないかと思いますので、財政事情を理由に、ますます有利子制を拡大するというふうなことがなく、なるたけ早い時期に有利子制をやめていただきたいと、そして貸与制というものばかりでなく、給費制を導入していただきたいということを強く要望いたします。  それから、OECDの教育調査団日本に来まして「日本教育政策」という報告書を出しました。その中に、これはもう一九七〇年のことでございますから、もう大臣は既に昔お読みになったのでお忘れかもしれませんけれども日本教育というものは非常に経済の必要性というものと結びつけて、そして近代化達成のためには大変役には立ったけれども、「「経済」という機関車に連結されている「教育」という車輌を、いまや機関車から引離すべき時期にさしかかっているのではなかろうか。」と。これは調査団員の一人のフォールという人が冒頭意見として述べたわけでございますが、こういう外国人のコメントに対してどういう御感想をお持ちになりますか、大臣。
  236. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 今御指摘ありましたように、昭和四十五年の一月のOECD調査団の一員としてフォールさん、元フランスの首相の発言でありますが、承知をいたしております。御指摘いただきましたように忘れておりましたので、先生から御質問の趣があるということでございましたので抜粋だけはちょっと読んでみました。この指摘にありますように、我が国の教育が経済の発展に果たした役割について評価をしておると、これについては同感できるものがあるというふうに思います。あえて感想はということでございますから、同、フォール氏の指摘が専ら経済の発展のために教育が従属していたと、こういう趣旨であるとすると、いささか納得しかねるというところがあるわけであります。なぜかと言いますと、フォール氏の見解を読んでみますと、外国の方でございますから、しょせん日本人と価値判断も違うわけでありますし、文化性も違うんだと思いますが、フォールさんの書いておられますところはフォールさん個人としてのお考え方がかなり入っている。 例えば「封建的な形をもつ資本主義に結びつけられた。専制主義を清算しながらも個人的自由は依然として抑圧する、」と、こういうふうに日本を見ているわけでございますが、その一つの例示として「一度就職すると、会社は当人に対し一生にわたる忠誠心を当然のこととして要求」している。これは終身雇用制度を言っておるんだと思いますが、一つの見方としては、そういう見方ができるのかもしれませんが、一遍会社へ入ったら生涯とも忠誠心を尽くせと、しかし、今日の日本の経済を諸外国から比較してみると、諸外国のいろいろな企業と日本の企業との差というのは、会社に対する忠誠心というよりは、会社に対する社員の何といいましょうか、使命感みたいなものを持っている。オイルショック以来、諸外国の経済が大きな破綻を来しましたけれども日本の場合は、終身雇用制というのは、大変雇用の関係から見ると、経済界、企業にとっては大きな負担ではありましたけれども、逆に、この厳しい経済情勢を乗り切ったという、そのことに対する大きなメリットもあったわけでございまして、フォールさんはあたかも「信者に対する宗教的秩序にも比すべきものであろう。」と、こういう見方をしておられる面もあるわけでございますから、一概にフォールさんのこういう見方で、「経済」と「教育」とが連結されているんだという見方は私はとり得ない。そういう意味で納得しかねる面があると、こういうふうに申し上げたわけであります。しかし、いずれにいたしましても、私としては日本の「教育は、人格の完成を目ざし、」、教育基本法に明記をしてあるわけでありまして、「平和的な国家及び社会の形成者として、」「心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。」ものである。こういうふうに理解をいたしておるわけで。ございまして、そういう意味で、今後とも日本教育につきましては、今、申し上げましたが、人格の完成を目指す、そして平和的な国家の構成する一員として健康に育成を期してもらいたい。こういう考え方で教育を進めていきたいと、こう思っておるわけでございます。
  237. 中西珠子

    ○中西珠子君 今、大臣から御決意のほどを伺ったわけでございますけれども、どうも行財政改革が推進される中で、教育行政、また教育そのものが経済主義に屈服しているのではないかと、また財政政策に非常に制約されていくのではないかという心配を非常に感ずるわけでございまして、これから始まります教育予算編成におきましても大変御苦労があると思いますけれども教育予算の獲得のために文部大臣は大いに頑張っていただきたいと。教育基本法の第十条に、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」、また、「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」というふうに規定しているわけでございますが、この教育基本法十条の精神を尊重していただきまして、大いに頑張って日本教育の振興、学術の振興のためにお力をかしていただきたいと、大臣、局長文部省の皆様方にお願いいたします。
  238. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 中西さんのいろんなお考えを示しながら私どもに対する御激励をいただいた、このように受けとめさしていただきまして、もちろん我が国の将来は教育がまさに左右するという、こういう考え方を私ども持っておるわけでございますし、そのためへの文教予算というものは、十分に私どもは、政策を推進していくためには必要な上で必ず確保していかなきゃならぬ、こういう考え方を持っておりますので、どうぞ先生もいろんな意味で、今日までの長い間の先生教育に対するお考えも十分いろんな面で私ども承知をいたしておりますが、十二分に御支援を賜りたいということもあわせてお願い申し上げておく次第であります。
  239. 中西珠子

    ○中西珠子君 これで終わります、もう皆様もお疲れでしょうから。
  240. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会をいたします。      ―――――・―――――    午後四時五十一分散会