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国務大臣(
森喜朗君) 私も学者じゃありませんし、専門家じゃありませんので、極めて
現実的な
対応しか実はできなかったんです。
先生、今御
指摘になりました中で私も大変同感なのは、例えばいい
音楽をつくる、いい流行歌なり、もうちょっとわかりいい演歌でもつくる、「矢切の渡し」ができる、これが恐らく売れようと、レンタルで
コピーしょうと、「矢切の渡し」が
日本じゅうをずっと席巻していく。これは石本美由起さんの作詞者を初めとして作曲家も、歌い手さんもうれしいことだろうと思うんですね。ですから、私はそういう
意味で、例えば出版物でもそうだと思うんですが、ちょっと
安永先生の午前中の御
質問に逆らって、
安永先生におしかりをいただくかもしれませんが、勝手にとってきて
コピーして、その
コピーを資料に使って、
高木健太郎先生がこういうふうに書いておられますよというその
コピーをどんどん使っていくことも、ある
意味では高木
先生、喜びに通ずるところもあると思うんですね。ただ、それを売って商売するといいますか、利益を得るということになったんでは、これはもう
安永先生が午前中非常に強いお気持ちで、守ってあげなきゃならぬという御
指摘がありましたが、そういう
意味では、私は
権利というものはどんなことがあっても利益に通ずる商売上の行為として人様に無断でやる、これは断じて排さなきゃならぬ、こういう基本的な
考え方があります。
そこで、これ今私は
大臣という
立場で言いますと、さっきから加戸次長も裁判係争中で、ちょっと
文化庁として言いにくいことがありますというんで、これも私も
大臣という
立場でああだこうだという断定はできませんので、当時、暫定法を取りまとめたときに、さっきもちょっと粕谷さんのときにも申し上げましたが、まず私は、レンタル業がきたのでレコードの販売業が成り立たない、ここからスタートしていると思うんです。そのことが販売業とレコードをつくる製作者との長い
関係、その
関係――私はこれは想像ですよ、レコード製作者も必ずしも一〇〇%レコード販売店のおっしゃる気持ちにはなっていなかったと思う。だけれ
ども、これは長い
自分たちのっくったものを売ってもらっているというお得意様でもあるわけですから、販売店の気持ちというものを十分に製作者は酌んでこの問題に
対応してこられたと、私はこういうふうに思います。
だから、商売ができなくなったから、あの商売をやめさせろということは、これは通産行政のことであって、
文化庁は香り高い文化を抱えでそんなことを私はやるべきではない。しかし、それを征伐できないから
著作権で縛れ縛れ、征伐しろと、こう言って我が党に要求してこられたんです。もちろん皆さんの政党にも行かれたと思うんです。
私は、これは断じてだめだと。だから私は、まず初めにレンタル業という商行為ありき、私はこれは認めざるを得ない。その中でどうルールをつくっていくのか。私はこの
考え方でなければこの問題は
解決しないだろう、当時そういう気持ちを私は持って、そして先ほどから久保さんのお話にもございましたように、正しくお互いに秩序づくりをしよう、これしか
解決の道はないだろう。JASRACの
著作権を持っておられる方々も、本当を言えば今高木さんおっしゃったように、逆に貸そうと売ろうと、
自分たちの表現したものがどんどん出ていくことは、本当は喜びに通ずるところであるが、これも
自分らが幾らいいものをつくったって、レコード製作者がつくってくれなければどうしようもないことですから、これも長い昔からの
関係で、何となく販売業、製作者そして
著作権者-この中にはもちろん実演家も入るでしょう、みんなが一体になってレンタルレコードをやっつけろという格好になってきたのが
一つの経緯だと思いますので、私は、レコード商には大変申しわけないが、外していただいて、そして
著作権というもので物を考えるなら、
著作権中心に考える、
著作権と直接かかわり合いある
団体の皆さんが正式な秩序をつくってもらうんだと、こういう
考え方で暫定法をつくったわけでありまして、したがって、私も先ほど申し上げたように、そのことが衆議院、参議院で御論議をいただくということも、また国民的な合意にもなり、また国民の関心も生むことにもなる。
そういう
意味で、
文化庁としては、当時、私はちょっと及び腰であったということに対しては、党の
立場で非常に不満だったわけですが、しかし国会で論議されたというこのことが、そして暫定法が国民全体の合意の中でこれが成立をしだということが、
文化庁が一歩進むことになった。そういう
意味で、私は衆参文教
委員の皆さんの大変大きな功績がある。私はこういうふうに考えているわけでありまして、これから新しい秩序づくりをみんなで、この法律や国会の論議というものを踏まえて皆さんが考えていただきたい。あくまでも
著作権というのは商売との
関係ではないんだ。
著作権というのはあくまでも
自分たちのつくったものが、さっき次長が言いましたように、リサイクルされて、そして次のまた新しいものを創造していこうという意欲につなげるようにしてあげることが大事だ。あるいは製作者側もそのことによって利潤を上げて、できたレコードが全部売れてもうかるわけじゃありませんから、また次のレコードをどんどんつくっていこうという意欲を持ってもらえるようにしてあげるということが、文化を守り、そして文化を香り高いものにしていくというふうに私は考えているわけで、そういう
意味で基本的には創作者の経済的な利益あるいは人格的利益を
保護していくことなんだ、こういう観点でこの問題を私は整理というと大変おこがましいことでございますが、大変難しい問題でございましたから、特に当時各党の皆さんの御意見も伺いましたけれ
ども、社会党さんの中も、公明党さんの中も、民社党さんの中も、共産党さんの中も、みんな意見がばらばらでした。こんなに皆さんのお考えが違うんだろうということで、とても私は興味深い問題として、まずは商売はどっちも認めてあげなければならぬ、問題は文化がどんどん輩出し、創出できるような国でなければ文化国家ではないんだと、そういうことの
立場でまとめをさしていただいたわけでございます。
ちょっと回りくどい話でありますが、大変御
質問が難しいものですから、当時の感想などを含めて申し上げさせていただいたわけでございます。