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1984-05-17 第101回国会 参議院 文教委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十七日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  五月十一日     辞任         補欠選任      小島 静馬君     杉山 令肇君      村上 正邦君     井上  裕君  五月十六日     辞任         補欠選任      小西 博行君     三治 重信君  五月十七日     辞任         補欠選任      高桑 栄松君     刈田 貞子君      三治 重信君     小西 博行君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 信君     理 事                 杉山 令肇君                 田沢 智治君                 久保  亘君                 吉川 春子君     委 員                 大島 友治君                 藏内 修治君                 山東 昭子君                 世耕 政隆君                 仲川 幸男君                 林 健太郎君                 柳川 覺治君                 粕谷 照美君                 中村  哲君                 安永 英雄君                 刈田 貞子君                 高木健太郎君                 小西 博行君    国務大臣        文 部 大 臣  森  喜朗君    政府委員        文部省大学局長  宮地 貫一君        文化庁長官    鈴木  勲君        文化庁次長    加戸 守行君    事務局側        常任委員会専門        員        佐々木定典君    説明員        建設大臣官房官        庁営繕部建築課        長        佐藤 輝夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○著作権法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事杉山令肇君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 次に、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 安永英雄

    安永英雄君 私も久しぶりに、十四年ぶりに四十五年のあの著作権審議をしたときの記録をちょっと目を通してみましたけれども、この当時附帯決議が出されておりまして、この附帯決議等を見ましても、やっぱり今から技術革新といったものが進んでいくというおよその大体判断はその当時しておったんですけれども、もう現在のこの激しい技術改革革新、こういったものを見たときに、あの当時の附帯決議がどうされたかという質問を、ちょっと私ども自身もするような気にもうならぬぐらいに慌ただしい進歩を遂げておるわけであります。したがいまして、この著作権制度というものが大きく見直されるというような現在の情勢でございますけれども、どうもその方向が、著作者以外の者に著作者と同じような保護を与えるような方向が次々に出てきておるような状態を感じます。したがって、著作者保護立場から現行条約国内法を正しく解釈するということによって新しい事態に対処していくというふうな、こういった基本的な考え方を持っておる人もおりますし、あるいはまた、現在の著作権は伝統的な形のままでは新しい事態に対処し得ないというふうなことから、後で質問しますけれども通産省あたりは新法まで出してやろうかというふうな、こういう状態にまで来ておるということで、私の立場から言えば、この技術革新の進行によって著作者保護というものが今日ほど考えなきゃならぬ時期はないというふうに私は思います。もちろん社会の正当な要求というものがあれば、それとの調整は当然必要でありますけれども技術革新による新しい事態への対応について、これは基本的な態度として大臣のお考えをまずお聞きしたいというふうに思います。
  6. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 安永先生が今御指摘をされましたように、現行法を制定いたしました際に、著作物利用手段の開発に伴う新しい著作権課題に対処すること、こういった附帯決議を当参議院文教委員会において付されておるわけでございます。著作権審議会におきましては、そうした決議をちょうだいをいたしまして、また、今先生から御指摘のように、多くの著作に関する、技術革新とともに多くの問題が招来をいたしておるわけでございまして、必要な課題について今日まで検討を進めてきたわけであります。例えば昭和四十八年三月には第三小委員会、これはビデオ関係をやっております。四十八年の六月には第二小委員会コンピューター関係。五十一年九月には第四小委員会複写関係。五十六年の六月には第五小委員会、録音、録画関係。五十八年の九月には第一小委員会、貸与、私的複製関係。そして五十九年の一月の第六小委員会コンピューターソフトウエア関係。こういうふうに順次こうした委員会を設けながら、世の中発達科学技術発達、それに伴いまして著作権を大事にしていこうということで、こうした検討を進めてきておるわけであります。  昭和四十八年のビデオ関係を初めとして、一月のコンピューターソフトウェア関係に至るまで、それぞれ報告書で六件を今日まで取りまとめております。データーべース、ニューメディアに係る著作権というのは最近のまた大きな話題でございまして、これにつきましては、新たに第七小委員会を設けまして、検討を現在進めているところでございます。  先生の御指摘をいただきましたように、また先生も御心配な点がありますように、世の中がどんどん進んでまいりますので、大変著作権の問題というのは非常に難しい状況に置かれておるということも事実でございます。そういう意味で、こうした報告書に沿いまして必要な措置を今日も講じているわけでございますが、今後とも制度改正を含めまして、時機を失することなく内容の実現を図っていきたい、このように文部省としては考えておるところでございます。
  7. 安永英雄

    安永英雄君 実は大臣の方に茶本的な態度をお伺いしたい真意は、後でもずっと質問していきますけれども、ソフトウェアに関する問題等通産省側態度が出ていますけれども、私は通産省の発表した文書をちょっと抜き書きしているんですけれども我が国としては外国制度国際条約に配慮しつつも、ソフトウエアの取引の実態に最大限即した制度をつくるべきであり、将来誕生するであろう国際的なルールを論議する際、我が国主導的立場に立って制度づくりに臨んでいくべきであるという、これはもう不遜な態度だと私は思うんであります。十四年前にやっと世界著作権条約等に事実上加入をして、十四年前に初めて日本著作権らしいものができたという私は認識を持っているんですが、十四年しかたっていない、こういった日本立場からいって主導的役割を今からとっていくなどということは、特にソフトウエアという問題、産業という問題の立場から強調し過ぎてここまでいくというのは私は危険な状態にあると思うんであります。むしろ、これは必ず他の著作権関係からしっペ返しを食らってくる可能性もあるし、貿易摩擦ところじゃない、文化面摩擦というのがここから起こってくるわけでありますから、そういった意味で、どうしても文化庁大臣といたしましても、今もおっしゃったとおり、著作権者保護というものにあくまでも重点を置いていって、そして著作権の中で解決する。後でお聞きしますけれども、今おっしゃったような改正の点というのは、もうこれは手抜かりなくやっていかなければならぬと思うけれども、基本的には今後の著作権というものをどう守っていくかという立場で進んでもらいたいという気持ちがあったものですからお聞きしたわけです。  そこで、まず有線テレビ関係の問題についてお聞きをしたいと思うんですが、これはもともとがテレビ放送の難視聴の場所において、この有線テレビというもので、共同アンテナ、それに同軸ケーブル家庭にずっと送っていくというふうな非常に単純なものであったんですけれども同軸ケーブルというものの性能が非常に発達して、チャンネルの数もどんどんふえていっている。区域外耳信も行われておる。こういった状態に加えて、また光ファイバー、これを利用されてくるということで、際限なくこれは進歩していっているという状態です。実用国内通信衛星も打ち上げられたわけでありますけれども日本でも「さくら二号」これは故障していますけれども、三号の予定もあるということで、こういったものが加わってくれば、有線テレビ放送の分野で大きく利用されてくると、著作権の問題と非常に絡んでくるわけであります。極端な場合、国際通信衛星を使って国際中継が、オリンピックその他が行われますけれども、この番組の信号が送り先でないところまで行って、勝手にある胴のごときはこれをとっているというふうな状態もあって、国際的にも非常にこれは著作権との関係研究が進んでいるということを聞きます。したがって、直接お聞きしたいと思うんですけれども、もう時間がありませんから直接聞きますが、五月の十一日、郵政省は電電公社が申請しておったビデオテックス通信サービス、これを認可した。で、この内容を見てみますというと、これはもう利用者が手元のテレビ、これを使って、電話でまずコンピューターセンターを呼び出す、そして画面に出てきた自分の必要なところにこれを、またボタンを押すと必要な情報がどんどん入ってくる、こういうシステムになっておる問題ですが、これが発達してきたいわゆるテレビ関係の、今、日本におけるこれは画期的な認可のことだと思うんです。これによりますと、東京二十三区と周辺三十キロ、八王子、相模原、藤沢、横須賀、鎌倉、これを対象にして十一月からこのサービスを始められる、六十二年度は各全国県庁所在地都市、これに広げる、こういうことですから、先ほどお話ししましたように、テレビの電波が非常に入りにくい、そういったところにこじんまりとしておった有線テレビというのと違って、これはもうことしから、六十二年からもう一斉にとにかく全国にこの問題が実施される。しかも、やるのは強力な電電公社ですから、これはもう今から一気に広がっていくという状態であります。それから名古屋におきましても、セントラルケーブルテレビに対して、四十チャンネルの容量を持っている都市型の有線テレビ、これについても設置許可を与えておる、悪いことじゃないと思いますけれども。これは私はやはり著作権を考える場合画期的な出来事だと思うんです。今から先の日本著作権に関する問題は続々これから起こってくる。ただ、山合いの農協あたりテレビが入ってこないというんで自分同軸ケーブルからやっておったのが、自分でも番組つくって放送できるというふうなくらいの、まあ中小企業くらいの設置なら問題ないけれども、これはもう一斉に全国に広がっていくという状態であれば、これは文化庁として何か考えておく時期だと思うんです。今も大臣からお話があったように、この点についての研究は進めておるということですけれども、これはのんびりしておったらだめだと思います。私は、極端な場合、大臣、こういった著作権のかかわるような問題についての、通産であろうが郵政であろうが、認可というときには、これをひとつ念を押しておく必要がある。極端に言うなら、認可条件として、著作権をこういう、こういうものを守りなさいという条件にしてもいいんじゃないか。条件ということまではいかないでも、これは当然通知とか通達とか、認可をするときに対する後追いにならないようにやらなきゃならぬということを私は痛切に感じるわけなんですが、この点についてはどうですか。まずこの点について。
  8. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 各種の著作権産業あるいは知的情報産業というのがございますわけで、そういった業務開始というのは当然営業の自由があるわけでございますけれども著作権法上は著作物を利用する場合には権利が動くわけでございまして、そういった営業に伴いまして、著作物を利用する形態のものでありますれば、当然に著作者あるいは著作権者側との協議を行いまして著作物を利用するという当然の前提にあるわけでございますので、こちらから物を言うというよりも、むしろ利用者側の方から当然権利者にあいさつをし、話し合いをして営業開始するというのが本来的な形態でございます。そういう意味で、日本各地でも相当量のいろんな事業が新たに次々と開設されるわけでございますが、その際、法意識の点から申し上げれば、当然に権利者了解をとって処理をして、権利処理をしてから事業開始すると、そういう形でございますが、遺憾ながら、後から著作権者の方でクレームをつけるというケースが実態的には多いと、そういった問題もあるわけでございます。  そこで、先生おっしゃいますように、事業開始について文化庁としていろんな点の配慮をしろという御趣旨はごもっともでございますけれども、いかなる著作物をどういう形でどの程度使うのかということにつきましては、その事業内容等を実際に行ってみませんと、外からわからないわけでございますので、あくまでも建前としては、事業開始に当たって権利者に対する権利処理を行っていただくという基本的な精神を営業を行われる方全部が持っていただくと、そういう意味の一般的な形での著作権思想普及徹底ということで、迂遠のようでございますけれども指導を行っているというのが現状でございます。
  9. 安永英雄

    安永英雄君 私はそこが心配なんですよ。この法律改正の中のレコードにしたって、末端でとにかく血を洗うようなけんかがないと本気でやらない。私は、全部手おくれですよ、文化庁のこの著作権についての取り扱いは。それじゃ、今、大臣がおっしゃったように、ニューメディアデータベースによる著作権法上の問題、その対策検討するために文化庁著作権審議会の第七小委員会設置しているということですが、今との非常に関係があるので、どこまでいっていますか、これは。直ちに具体的にこれは発動できるような状態に来ていますか。
  10. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ただいまの大臣が御披露なさいました第七小委員会――ニューメディア及びデータベース関係分科会は三月三日に審議開始いたしておるわけでございますが、まだ審議の緒についたばかりでございます。ただ、この委員会におきましては、現状認識並びに現行法制対応できるのか、あるいは法改正が必要なのか、あるいは現行法制でいくとするならば、いかなる解釈、いかなる運用が適当なのであるか、その辺の問題でございまして、実務的に具体的な、どの著作物がどの程度の量、どういう形で使われるのかという実際問題に関与するわけではなくて、制度面対応あるいは解釈運用上の問題点の解明、そういったことを主眼といたすわけでございまして、先生がおっしゃっていますポイントと若干ずれますが、現実に起きている事態にどう対応するかは、権利者団体使用者側の実務的な話し合いあるいは解決によるということでございます。
  11. 安永英雄

    安永英雄君 何回言っても、私は、それじゃ文化庁は要りませんよ。あなたの考え方、いつでもそういう……。十四年前からそうだ。だから、後追い後追いでしょうが。研究だけしておいて、それから先は全然ない。事が起こって初めて出てくる。これじゃ私は、今からこんなに変化していく、発展していく、これはある程度見通し立てて具体的な細案をつくって、それを実施に移していくということで構えておかないと、これは文化庁の中のまた一つ著作権を取り扱っているところのこまい世帯でできるとは思いませんけれども、少なくともやっぱりそこまでのあれをやらないとだめですよ。実際にこれ、今の認可をしたこの問題については、これはもう著作権者複製権放送権、そうしてもう一回末端でこれがコピーできるというところまで来るんですから、ここでまた複製権と、こういったものがもう直ちに起こってくるんですよ。いつまでにやりますか、この審議会の結論というのは。
  12. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先ほど申し上げましたように、制度的な対応が可能かどうか、あるいはどのような制度的対応をすべきかということを中心といたして審議しますし、また新しい手段でもございますし、法律的な問題点も多々ございますので、時間がかかるということは申し上げなければならないことでございます。しかし、現実に、例えば先生指摘なさいましたような十一月から営業開始キャプテンシステムのような場合につきましては、具体的な事業がそこでスタートするわけでございますから、この問題に関しましては権利者団体として、例えば音楽著作権協会あるいは放送作家組合等のいろんな、文芸著作権保護同盟等の各権利者団体も関心を持っておりますし、当然そういった業務形態につきましては、権利者団体からのアプローチがあり、実務的なこれからの取り運び方等についても十分御相談があると思いますので、そういった点、問題点の喚起なり法律制度上の対応がどうであるのか。文化庁権利者団体十分連携をとりながら、いろんな問題点の提起あるいは指導等は常に行ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  13. 安永英雄

    安永英雄君 著作権保護について非常に重要なのは、秘密企業という形で、なかなかつかめないという。この問題には実際に文化庁の方、突っ込んだ検討の跡は私の知る限りでは余り見えない。辞書フロッピーあたりでは、あの膨大な辞書あたりが、もうコンピューターにばあっと一遍で一冊文が簡単に入ってしまう。それを調査に行くと企業秘密で、そのことを詳しく説明すると機械性能、能力、これを明かすことになるので、企業秘密ですと言ってこれから先は調査ができない。私はここまで法的に手の届くような産業関係企業秘密、こういった問題と著作権法関係が非常に今から出てくると思うので、これがないと、とにかく問題が起こってからしかどうにもならないという状態ですから、この関係検討する大切なテーマだと思うんですが、どうですか。
  14. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) これからの、特に情報産業等に関連いたしました著作権処理の問題に関しましては、ただいま安永先生指摘のような問題が非常に大きな事柄だろうと私どもも考えております。  一つの例といたしまして、例えばアメリカにおきましては複写複製関係権利処理をする団体としましてコピーライト・クリアランス・センター、いわゆるCCCという団体がございますけれども、その団体企業等契約を結びます場合には、どんな著作物をどの程度の量を使ったかということになると、当然企業でどんな情報処理しているかということがわかるわけでございますから、契約条項の中に守秘義務を入れまして、その調査結果によって著作権処理を行っていただくわけでございますが、その結果は秘密を守るということを契約条件として著作権処理をしているという一つの例もございます。そういったような形のものが今後日本におきましても当然著作権処理する場合に契約条項の中で入れていくというのが一つ解決の方策であろうと思います。しかし、それは企業側著作権者側との間の相互の信頼関係というものが前提となりますので、そういった意識、機運の盛り上げということからまず必要だろうと思いますが、そういった外国の例も参考にさしていただきながら、日本でのよりよき制度によって著作権処理に遺憾なきを期していきたいと考えているわけでございます。
  15. 安永英雄

    安永英雄君 次に複写機の問題について質問をいたしますが、これは当然我が国著作権法は私的な使用、それから常利を目的としない図書館、学校、その他の教育機関事業で行うもの以外は、著作物複写には著作者の許諾が必要である、これはもう厳然たる事実であるわけですけれども、この複写機の目覚ましい発展によりまして無断で複写が行われているという状態はもう私どもの目にも入ってくる。近い将来には家庭内で複写機による著作物複写が行われることも予測されます。今のところはまだ現実にそこまではいっていません。複写機家庭まであるというのは、これはまだテレビのように普及はしていないけれども、これは近々のうちに出てくる問題、先ほどのテレビもまた画面を撮れるというわけですから。  そこで、この著作権が非常に侵害をされるという可能性が非常に強くなってくるので、これに対する対策もよほど考えておかないと、企業やら事業所教育研究機関、官庁、ここではもう盛んに使用されておるわけであります。  それから、おとといも千葉の放送大学に行く途中も私ずっと数えていったんだけれどもコピー屋さんの看板がもうずらりあるわけでして、これはもう普通なら簡単なものを複写しているというわけじゃないんですよ。これは相当なものをやっておるわけです。  そういった点で、私は複写の問題について質問をしていきたいと思うのですが、本改正案は三十条の中に新たに「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製するときを除き」というふうに入っておりますね。しかし、附則では、当分の間、文献複写を除くとしておる。近年のこの複写機器発達普及によって多量の複写が簡単に行われる。これはもう険しい問題ですが、本改正案文献複写を除いた理由は何かということをお聞きします。
  16. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 文献複写につきましては、基本的に著作権制限規定にかからない部分についての文献複写は当然に権利が動くわけでございます。今回の附則五条の二の規定は、例えば私的使用のために本人コピーするかわりに、コピー業者のところへ行ってその機械を借りてコピーをするといった場合の業者につきまして、本人がとることももちろんいけないけれども業者もいけない、という本則の立て方で三十条の改正を行おうとしているわけでございます。  それにあわせまして、いわゆる今回の場合、文献複写機器だけについて申しますと、現実に、先生おっしゃいますように、この日本世の中コピー業者が相当普及してきたわけでございますが、その権利処理しようと思いましても、この文献についてはどの学者、この文献についてはどの先生という形で一々了解をとることは物理的に不可能でございますし、例えば音楽世界でございますと、音楽著作権協会のように集中的に一括して権利処理できる機構があるわけでございますが、まだ文献複写世界におきましては集中的に権利処理する団体ができていない。そういう意味におきまして、現実実態違法状態としても、違法状態現実に野放しになるということであっては法の立て方としていかがなものであろうかという観点から、附則五条の二におきましては、当分の間、文献複写機器を含まないものとするという取り扱いをいたしまして、この「当分の間」の趣旨といたしましては、先ほど申し上げましたような集中的な権利処理機構が設立されるまでの間、という含みで御提案を申し上げている次第でございます。
  17. 安永英雄

    安永英雄君 それでは、現在の検討されております集中的処理という問題ですが、五十一年九月の著作権審議会の第四小委員会報告、五十九年四月の著作権集中的処理に関する調査研究協力者会議報告、時間がありませんから、今検討されておる内容について概略説明していただきたいと思います。
  18. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先生今おっしゃいました五十一年九月の第四小委員会の報告におきましては、まずこの著作権問題に関する一般国民の思想を高め、国民の間に著作権思想普及させるという努力がまず先決である。それから続いて、この文献複写問題についての扱いでございますが、具体的には集中的権利処理機構を設立して権利処理を図るべきであるという基本的な考え方が示されまして、それを具体的にどうするかという問題が、五十五年に設置いたしました調査研究協力者会議におきまして四年間にわたる御検討を願いまして、本年の四月二十七日に最終報告書をちょうだいしたわけでございます。  その最終報告書におきましては、我が国においてどのような形で著作権の集中的権利処理をする機構があるべきであるか、あるいはその対象はどうすべきであるかというような問題点でございまして、簡単に申し上げますと、いわゆる学者等の著作者と出版社とが連携をして、とりあえず学術関係の、特に学術論文等を掲載される学術雑誌が中心でございますが、学術の著作物を中心とした形で権利処理を進めていくという形で、まず機構の設立へ向けての提言を、具体的な方法論等を含めまして提言をちょうだいしているという状況でございます。
  19. 安永英雄

    安永英雄君 これは急がないと先ほどの有線と同じように手おくれになりますよ。それから、私もちょっと見してもらったことがあるんですが、非常に雑ですね。すぐには使えませんよ、あれ。もう少し煮詰めていかないと。諸外国あたり、特にアメリカあたりですね、この問題にどう対処しておるか、集中的権利処理機構設置している国、これはどこか、徴収、分配なとどのような形で行われておるか、これについて簡単にお答え願いたい。
  20. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) このような学術的な著作物を中心とします諸外国における集中的権利処理機構システムでございますが、こういった制度を採用している国といたしましては、先生今おっしゃいましたアメリカ合衆国のほかに、西ドイツ、スウェーデン、ノルウェー、オランダ等の欧米先進諸国があるわけでございまして、アメリカの場合でございますと一九七七年にコピーライト・クリアランス・センター、いわゆるCCCと頭文字を取って呼んでおりますが、そういう団体が設立されまして、企業、大学、研究所などを徴収の対象といたしまして、主として専門雑誌、論文集等の学術関係の定期刊行物に掲載されております著作物についての権利処理を行っているわけでございます。契約の方式が一応建前としまして個別徴収方式でございまして、具体的にユーザー側でどのようなものをコピーしたかというのを報告をいたしまして、その報告した料金を徴収するわけでございます。ただ最近におきまして、これは昨年からでございますが、一部包括徴収という形でまとめたブランケットの徴収の方式も取り入れてまいったという状況でございますが、基本的には個別徴収、個別配分という立て方をとっているわけでございます。ただ、西ドイツの方におきましては管理団体のボルトというのが、これはアメリカよりずっと古いわけでございますが、一九五八年に設立されておりまして、対象は企業教育機関、それから管理著作物はアメリカと同じように学術関係の定期刊行物に掲載された論文記事等でございますけれども、こちらの西ドイツの場合は包括徴収方式をとっておりまして、つまり個々のものじゃなくて一括して契約をし、一括の料金を払うという形でございまして、配分は、出版者側につきましては個別配分でございますが、いわゆる著作者につきましてはその所属する学会に主として団体配分をされて、一部個別徴収もあるというように聞いておりますけれども、主として大部分は団体配分だというシステムのようでございます。そのほか、スウェーデンにはボーナス、ノルウェーにはコピノル、オランダにはリプロレヒトというような形でいろんな協会がございますが、大体、西ドイツと似たような方向での処理をされているものと理解いたしております。
  21. 安永英雄

    安永英雄君 この西ドイツ、アメリカあたりにおきましては、いわゆる無体財産に対する国民の意識、これが非常に強い、言いかえると著作権意識が非常に強いということですね。これは日本の場合この点が、文化庁の責任でもあるんですけれども、国民の意識が非常に低い。とにかく今のコピー屋さん見てごらんなさい。何持っていこうとどんどん注文に応じて瞬くうちに本一冊仕上げておりますよ。しかし、これのいわゆる集中的権利処理機関あたりをつくった場合に非常に難しい問題が意識の問題から生まれてくるだろうと思うんですね。それから、ここの複写する者の申告が前提になっているようですが、そうなってくるといよいよこれは実際の違法コピーの規制というのはなかなか難しいんじゃないか、ここらあたりに工夫はないかと私は思うんですけれども、どうですか。
  22. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先生おっしゃいますように、日本における著作権意識というのが欧米諸国に比べて高くないということは事実でございますし、ちょっと過去の歴史から申し上げますれば著作権が欧米、特にヨーロッパで著作権制度発達してまいったわけでございますが、日本の場合にはそういった土壌、素地がなかったとは申しませんけれども、どちらかと申しますと、明治三十二年の著作権法の制定と申しますのは日本が治外法権制度を撤廃する交換条件としてベルヌ条約、いわゆる国際著作権条約に加入するという見返りの形で、ある意味では若干押しつけの形で日本が入ったというような過去の経緯もございまして、そういう機運が盛り上がり著作権保護すべきだという考え方から著作権制度ができ上がっていったわけでは必ずしもないという過去の経緯もございます。それから日本人の国民性というものもございましょう。ただ、最近におきましては、著作権問題等が紙上をにぎわしている関係もございまして、かってに比べますれば著作権思想もだんだんに普及してくる、まあ、時間はかかると思いますがそういう感じを持っているわけでございます。  ところで、先生の、具体的に権利処理するといっても、申告制度では問題じゃないかというのは、まさに御指摘のとおりでございまして、そういった点では、やはりどうしても払う側からすれば安い方がよろしいわけでございますから、いろんな工夫が出てきたりする関係はございます。しかしながら、一般的に、特に申告制度と申しましても、具体的に基本となる額が決まれば、中身どんなものを使ったかというのはサンプリング調査等でそれは協力をいただくわけでございまして、むしろトータルな使用料額に影響するような幾ら使っているというのは、どうしてもこれは税金の申告と同じでございまして低目低目になるという傾向はあるんじゃないかという感じはいたします。要はやはり著作権を尊重する精神、気持ちというのが日本国全体に普及するかどうか、基本はそこにかかっているんじゃないかという気がいたします。
  23. 安永英雄

    安永英雄君 アメリカあたりのデータをちょっと見ますと、これは古いんですけれども、集中処理機構の徴収額が一億五千万円。これはたしか五十七年か八年。そうすると、この集中方式というのはやっぱり苦労しているらしいんですけれども、この機構を設立しても、その機関の経済的基盤というのは、設立基金をまず取るだろうと思うし、それから権利使用料が入ってくる、この二つだけであるわけですから、よほど権利使用料というのを具体的に文化庁あたりも示してやらないと、これは実際にこの運営にかかっていっても機構そのものの運営費でやっとだという形になってくると、もちろんそうなってくると著作者への配分なんというようなことは考えられないというふうなことになって、これはかえって怨嗟の的になってくるような状態になるわけですね。そうすると、これはもう野放し状態が続いていくということで、非常に私自身も心配をしているわけですが、この点について、今から出発早くしなきゃならぬし、そのために法律も別に定めるということでやっているわけですが、これは事態は急迫しているし、今からかかっていくというこのことについて、実際の動きとして日本書籍出版協会の動き等もあるようですが、これあたりの動きをちょっとお聞かせ願いたいと思う。ここらあたりがまず動かないとできませんよ、これは。
  24. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 今先生おっしゃいました問題点が一番悩みの種でございまして、確かにこの制度を発足させるためにかかる経費とそれから徴収可能な当初の額というのを頭の中で想定いたしますと、恐らくスタート直後あるいは当分の間というのは必要経費の方が上回るなんて事態も予測できないわけじゃございません。そういう意味で私どもも特に、書籍出版協会といった一つ団体が既に存在して、ある程度のスタッフをそろえ、機能し得るものが著作者のためにまず中核となって進んでいただきたいということをお願い申し上げているわけでございまして、書籍出版協会におきましては、著作出版権委員会という内部機構がございまして、具体的な機構づくりの検討を進めているわけでございますが、本年の一月に一応その集中的権利処理機構に関します第一次試案というのを公表いたしまして関係団体あるいは下部機関等の意見を聞いているわけでございまして、今後の予定としましては、特別の委員会設置いたしまして、その特別委員会で集中的権利処理機構の設立に向かっての具体的な方策を検討するという方向で進められると承知いたしておるわけでございまして、かなり意欲的な取り組みではございますが、いかんせん、問題としましてはそういった経費面をまずどういった形でカバーしていくのか、それはある意味では、書籍出版協会が自己持ち出しの形で著作権保護体制というか、権利処理体制をつくっていって、将来のための捨て石となるというぐらいの意気込みを持ってもらいたいなというのが率直なところでございます。
  25. 安永英雄

    安永英雄君 やっぱりそこにちょっと引っ込み思案なところがあるわけですよ。これは強引さがある程度ないと、とてもじゃないが文化庁、仕事になりませんよ。逆に、後から言うけれどもコンピューターみたいなことで通産省から横やり入れられて、ねじ込められるような態度というのはここらから出てくるんですよ。本当ですよ。今おっしゃっておりますけれども、実際、配分の方法その他の問題については、これはもう紹介にとどめるだけじゃないですか、今あなたのところから。これじゃだめですよ。もう少し自身が指導しなきゃ。本当に、原則だけを示して、例えば当面、「学術関係著作物のようにある程度複写頻度の高い著作物から順次対処していく方が現実的である。」というふうな言い方で突っぱねて、ここから先がないんですよ。出版協会の方では、一つの組織の関係があるもんですから、あなたのところはそういうふうに示しまして、「頻度の高い」というそういうところだけやっておって、出版協会というものは、もう小さいところから大きいところからいろいろあるんですから、取り扱いも違うんだから、これは出版協会はとてもじゃないが、今からそういったものをつくろうとしても、あなたのところで示しているような「頻度の高い」ものからなんて、そんな悠長なものじゃないですよ。小さいことだけれども、ここでもう食い違いが出てきて、にっちもさっちもいかないんです。思い切って、頻度の高いのも低いのも、とにかく早くこの組織をつくらせることですよ。そんなことが案外この協会の会議の中で、むしろあだになっていますよ。あなたのところで親切に出しておるかもしれぬけれども、障害になっておる。そういった点も、きめの細かい指導を相当中に入ってやらなきゃだめ。そうしないと、とにかくこの複写機関係についてはもう野放し、手がつけられない。  私は、例をいろいろ申し上げたいと思うんですけれども、先日、野村総合研究所を私ども視察に行きました。私は特別、図書館を見てきたわけですが、非常にプライドがあそこは高いですけれども、図書館をよく見ますと、あらゆるデータが全部、発刊物入っていて、とにかくそれからどんどんとってきて、平気でコピーやってどんどんコンピューターに打ち込んで、できた計画書なり委託事項というのは一千万から二千万ですよ。要するに、あそこは営利の目的でしょう。そうして、とにかく勝手に世界各国どこからでも持ってきてやっておる。平気ですよ。著作権に触れているというふうな意識は全くない。私はそういった点を見てきたんですけれども、これは早く手をつけないと、著作者を守っていこうなんていうような状態はできませんね。一奮発文化庁がやらないと、これは紛争が起こって、それから中に入って、これだけ出しなさい、これだけ出しなさいの仲介者みたいな仕事をしようといったって、とてもじゃないが、これは追っつかないというふうに私は感じます。  これはちょっと別な関係からお聞きするんですけれども、ごく最近、図書館から図書館に委託してその図書館がコピーをやっているという、この問題がちょっと頻度が多過ぎる。なるほど図書館と図書館の協力体制というのは一見非常にいいようだけれども、そこに問題点があるような気がするんですが、その点どうでしょうか。
  26. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 著作権法の三十一条におきましては、図書館における複写サービスを一定の条件のもとにおいて認めておるわけでございますが、法律の厳密な意味で申し上げれば、図書館相互のサービス、いわゆるA図書館にお願いをしてB図書館にある文献複写をA図書館を介してもらう、そういった形態のものが出てきておるわけでございまして、これは現行法三十一条の規定意味から申し上げれば、実態的には適法と解釈することはできないんじゃないかと考えておる次第でございます。  ただ、この問題につきましても、当然一つの範疇として、先ほど申し上げた集中的な権利処理機構の中におきましては、三十一条でカバーされるもの以外の、いわゆるはみ出るものについても当然処理の対象として考えていく方向でもございますし、いずれ集中的権利処理機構が確立された段階におきましては、線引きなり具体的な区分けなりルールなりというものは当然できていくだろうと考えておるわけでございます。
  27. 安永英雄

    安永英雄君 いろいろ文付庁で検討されておりますが、今の検討の中で権利者利用者及び複写機設置省、これは対象になっておるわけですけれども、私は一歩進めて機械メーカー、これに触れていく必要があるのではないか。私に言わせれば、これは盗用機ですよ、著作権侵害機ですよ。ここまで手を入れなきゃいかぬのじゃないか、どうですか。
  28. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) その問題は、特に既に録音、録画関係におきまして、いわゆる機器メーカー等に対する制度的な対応ということが大きな課題にはなっておるわけでございます。ただ、複写機関係につきましては、まだ論外開でも例がないわけでございますが、なぜ例がないかと申しますと、そういった賦課金のような形で機器メーカーから一律に取るということが結果的に、権利者側にとってみれば安い料金でコピーがはんらんするという事態になるのではないかという懸念も一つあるわけでございまして、むしろ具体的にコピーをとっている実態に合わせて権利処理していく方が権利者サイドにとって経済的には有利である、あるいはコピーのはんらんを防ぐというような認識もあるんじゃないか、それが諸外国でも制度的対応にまだ踏み切れないという事情ではないかと私ども推測をしておるわけでございます。  ただ、先生おっしゃるとおりに、この問題というのが将来的にどうなっていくのか、録音、録画機器と同じように複写機俗にもという考え方が機運として盛り上がるかどうか、あるいは実態を見きわめながら一つの御意見として十分私ども検討の材料にはさしていただきたいと考えるわけでございます。
  29. 安永英雄

    安永英雄君 今、鎌倉にあります総合研究所の話をしましたけれども、博士号の人をあの所員の中でここは十人抱えていますとか、とにかく相当インテリが集まってきておるシンクタンクですから、この人たちでも、企業の内部資料用として複写することを著作権法三十条で認められた私的使用のための複写だと、これは簡単に考えているような傾向が非常に多い。またそのことも知らずにやっているところもある。  これは要するに、今の対策を進めてもらわなきゃならぬけれども一つの大きな対策としては、著作権法が遵守されて公正な利用を図っていくためには、これは著作権思想普及ということが必要だと私は思うんですよ。これが最終的だろうと思うんです。そのために、大臣にお尋ねしますけれども、その著作権思想の一層の高揚を図るためには、学校教育の場でこれはやらなきゃならぬのではないかというふうに思います。例えばおととい行きました放送大学、今盛んにカリキュラムに従ってつくっておりますけれども、あの放送大学の中に著作権法についてのカリキュラムを組ませる、あるいは教員養成大学関係のカリキュラムの中に必ず著作権法についての一つの課程を設けさせるというふうなことが必要ではないか。これはただ文化庁がパンフつくって国民に配ったってなかなかできるものじゃないんで、まず今からの子供、学生、そういった者が発達したこの情報化社会、あるいは技術革新の中に生活していくわけですけれども、これは著作権の問題についての一通りの認識というものを持たないと大変なことになるような気がするし、学校教育が果たさなければならぬこれは面ではなかろうか。文化庁だけに任せる問題じゃなくて文部省全体としてこれは著作権の問題についての取り組みをそういった形でやらなければならぬではなかろうかというふうに考えますが、その点が一つ。  もう一つは、いよいよ予算の概算要求の時期が来ておりますけれども、今さっきも次長の方からいろいろ話がありましたけれども、どうしても文化庁の現在の実態をつかむといういわゆる調査活動、これが必要なんですよ。それは今の通産と太刀打ちできるような問題じゃありませんよ。通産が一つの結論出すためには全国にずっと組織持っていますから、出先も。あそこの工業地帯を調べにいったら一晩のうちに帰ってくるぐらいの力を持っていますよ。文化庁は、文化庁の中に入っておいてよそのデータそのまま持ってきてつなぎ合わせてみたり、外国の資料持ってきたりして、とても対抗できるような状態じゃない。私は文化庁に一番予算で必要なのはこの著作権関係では調査費と思います。私は、これはぜひともひとつ明年度の予算の中で獲得してもらいたい。今どれだけの調査費があってどうだというふうなことは聞きませんけれども、この点はぜひ大臣にお願いしたい。この二点について大臣のお考えを聞きたい。
  30. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 先ほどから安永先生著作権者を大変大事にしていただいて、著作権法というのはまさにその国の文化のバロメーターである、こういう御認識文化庁を督励をいただいておる、そういうふうに受けとめさせていただきまして、大変ありがたいことだと思っております。  今、御提案がございました学校教育におきまして著作権の基本的な理解を、そしてまたそれを尊重する基本的な態度を培うということにつきましてのお話でございますが、私もまさにそのとおりだと思いますので、極めて大事なことであるというふうに考えております。ただ、今具体的に御指摘がございました放送大学につきましては、昭和六十年四月からの授業開始に向けまして今逐次授業科目の内客を固めているところでございますが、現在までに内容が固められました中には直接著作権に関する科目はございません。しかし、御指摘趣旨は非常に大事なところでございますので、もちろん大学のカリキュラムといいますか、教育内容につきましては、もちろん大学自体で自主的に判断をしていただかなければならぬことでございますが、今後、まだ授業科目の内容が固まっておりませんけれども、法律関係につきましては社会生活と法、あるいは経済活動と法あるいは国際社会と法、日本の社会と法、日常生活と法というふうなこうした科目を検討しておるようでございますので、こうした中で十分に著作権の問題を配慮していくように大学当局に促していきたい、こういうふうに文部省としても考えているところであります。  教員養成の中での課程につきましては、最低基準が定められておりますものでございますので、これもまた大学の自主的判断に任さなければなりませんが、現状におきましては著作権に関する科目を開設いたしております教職員養成大学はございませんけれども、今後の課題として先生の御指摘は極めて私は大事なところでございますので、留意していきたいと、こういうふうに考えております。  なお、第二の調査費につきましては、今日までそうした項目はないようでございますが、確かに御指摘いただきますことは大事なことでございますが、一面、各省がいろんな意味で仕事を進めていく中で著作権との関係が出てくるものも、これから当然予想されることでございますが、果たして調査費という形でどの程度、どういう範囲で、また文化庁としてはどういう調査を独自で進めていくかというようなことについては、またそうした考え方をまとめておりませんので、これまた先生から御指摘いただきました大事な問題として省内で少し検討してみたいと、こういうふうに考えます。
  31. 安永英雄

    安永英雄君 今、全国の小学校、中学校、高等学校もそうですが、著作権法の中で適用除外になっているという著作権内容を知っている先生はほとんどいませんよ。よくよく見れば、例えば学級担任だけが自分の授業を行うときにコピーどんなところでも持ってきて使っていいというのはわかっているけれども、校長さん、学校全部でやったらこれは違反ですな。教育委員会自分の管轄について印刷をして配ったら、これは違反なんですね。こんなこと全然知ってないその先生から勉強し直さなければならぬのじゃないかということで、今教育大関係のカリキュラムあたりに入れたらどうかというふうに私は申し上げたわけです。  ちょっと横道にそれますけれども著作権法で多少改正したらどうかと思うんですが、学年ぐらいはいいんじゃないですか。私ども昔のガリ版という、このガリ版が一通り書けるようになったら先生大体一人前だと言われるくらいで、夜も星もとにかく暇さえあればガリ版を切ってやっとった、あのころの著作権ですよ。学級担任が幾ら頑張っても一冊の本まで書き上げることはできぬですが、今、簡単にどんどんやって非常に便利になっている。したがって、小学校でいえば一の組から五の組まであって学年主任が集まって同じような問題で何か印刷をやろうと、こういったときに厳格に言えば直接教える学級担任その人がやらなければならぬと言うんだけれども、ここらあたり多少緩めてもいいんじゃないかというふうな気もするんですが、どうですか。
  32. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 現行著作権法の三十五条におきまして「教育を担任する者は、その授業の過程における使用目的として「複製することができる。」と。もちろん複製の目的、それから部数、態様等それぞれ厳格な条件等はかぶってまいりますけれども、一応建前としては自分が教える子供にという意味でございまして、先生の御提案の場合でございますれば、学年ごとに例えば五クラスあれば五人の先生が共同してそれぞれ自分のクラスに使うためにという理解の仕方で現方法の解釈上は私は不可能ではないと考えております。
  33. 安永英雄

    安永英雄君 コンピュータープログラムの問題についてお聞きをします。  これはもう新聞等で随分派手にやって通産省文化庁が大げんかやっているようなことしょっちゅう出ておりますのでわかっておりますが、まず文部省文化庁という立場からいって、通産省態度等を見て、基本的にコンピュータープログラムについての著作権の問題について大臣のお考えをまず聞きたいと思うんですが。
  34. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 安永さん、今御指摘いただきましたこの通産省のいわゆるプログラム権というような問題、この国会でもかなり話題になりました。いろんな方々とお話をいたしておりますと、コンピューターのソフト、これが著作権なんですかということはかなり一般的に皆さん不審がられておりまして、私も少し勉強してみました。確かにプログラムのソフトというのは、これはコンピューターに特定の機能を果たさせることができる一連の命令でありますから、これは学術的な思想であって学術論文や設計図や建築物と同様な著作物でありますと、こういうふうに私もいろんな議論をしながら理解を得ましたから、かなり一般社会においても最近やっとこういう理解が少しずつこうした国会の中の話題、あるいは新聞等の話題の中で、いろんな方から伺ってみると、なるほどなと、ソフトプログラムというのはなるほど著作物なんだな。私どもの党の商工関係の皆様方、どちらかといいますと通産省サイドに立つそういう議員の皆さんも、いろいろ勉強されればされるほど著作物であるということがよく最近は理解をされてこられるようになりました。そういう意味で、決して通産と文化庁とけんかをするということであってはなりませんけれども安永さんから御指摘を先ほどからいただいておりますように、文化庁ももっと胸を張って著作物に対し啓蒙しなきゃならぬという点では確かに御指摘のとおりなのかもしれませんが、著作権というものはだんだん国民の中にも産業界の中にも今理解されつつある、私はそういうふうに今受けとめているわけでございます。特に新聞でも御指摘がありますように、最近の裁判の判決のこれまたそういうふうな取り扱いということでございます。  それから、もう一つ安永さん冒頭に、この今の委員会の御質問の中に出ましたように、やはり国際間という問題が大事でございまして、そういう意味で国際的な相互保護ということが極めて重要でございますので、アメリカやドイツ、フランス等、ほとんど主要先進国はプログラムにおきましては著作権法保護されているということでございますので、これからも先進諸国と同様著作権法保護することによって国際的な相互保護体制というものを形成していく必要がある、こういうふうに私どもも考えているわけでございます。そういう中で御承知のように通産省の方におきましてコンピュータープログラムの保護のために著作権と工業所有権との間の中間の第三権法みたいなものをお考えになっていることが今度の問題になってきているわけでありますが、通産省としてもそうしたお考え方を持っておられること、私は必ずしもこれは間違いであるとは言い切れない面もあると思うんです。産業政策上、また日本のこうした先端産業の育成ということを考えますと、当然こうした問題は私は出てくるということは、これは産業の発展の意味から言ってもこれは全く否定してはいけない、政治家の私ども立場からそう考えるわけであります。したがって、そういう意味使用権の創設や裁定制度の導入や保護期間の短縮、そういう点でいろんな相違点はございますけれども著作権というものが大事なんだし、プログラムに命令をするソフトの、命令をするというこのこと自身が、これは創作されるもの、文化創造のものであるということが理解されつつある中で、文化庁著作権を大事にしていくという考え方については通産省も理解をだんだんしてきているような感じでございます。したがいまして、今度の国会につきまして、この問題を上程するとかしないということは別といたしまして、もう少し通産も検討して勉強していただくということが大事だと思いますので、文化庁とは事務的に今さらに十分に、単にこれはいけないんだというんじゃなくて、著作権を大事にしてください、著作物ですよということを通産に理解をしていただいて、そういう中で事務的に積極的な話し合いを進めなさいと、私はこのように指示をしているところでございます。
  35. 安永英雄

    安永英雄君 もう少し強気で行ってもらわなければ押されてしまう。と申しますのは、別に通産省文化庁文部省のけんかじゃないわけで、お互いに今の技術発達、これにどう対処していくかという問題で、その中で著作権を守っていこう、これはもう文部省文化庁以外にはないんですから、官庁は。まだ郵政からも来ますよ、これは。郵政も来るし、どこからもとにかく著作権に関するもの、これを一手に引き受けてやらにゃならぬのですから、相手の気持ちはわかるけれども、とにかく相当の強気でやらないと日本の文化というのは守れないというふうな気がするわけで、今強い御意思をいただきましたので、わかりました。  大臣も大分研究をされたようですけれども、これは専門家の方にもう一回コンピュータープログラムが著作物であるという文化庁の積極的な理由というものを整然と述べていただきたい。
  36. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 御承知のように著作権制度と申しますのは、人間の知的な頭脳活動によりまして生み出されたもの、具体的に表現の形で生み出されたものを保護することによりまして、人間の創作意欲あるいは文化発達のための意欲を奨励するということにあるわけでございまして、これを具体的な法律表現で申しますと、著作権法規定におきまして、人間の思想、感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものをいうというのが著作物の定義でございます。コンピュータープログラムを具体的に当てはめてみますと、この場合、人間の学術的な範囲に属する思想を表現したものという定義にぴったりはまるわけでございまして、そういった法律的な解釈としても当方はそう考えているということと、それから著作権審議会におきましては、昭和四十八年六月に第二小委員会で同趣旨の御結論をいただき、かつ一昨年の東京地裁、昨年の横浜地裁、本年の大阪地裁と三つの裁判所におきまして、コンピュータープログラムについて著作物性を認める判決が出ているということ、それからアメリカ、イギリス、フランス、ドイツといったような欧米先進諸国におきましても、当然にコンピュータープログラムを著作物と考えているという、そういった世界的な思潮の流れというのもございます。基本的には、私、繰り返しになりますが、人間が知恵を絞ってこの世の中に表現として生み出したもの、それはすべて、すべてというと語弊がございますけれども、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものであれば、著作物として当然の保護の対象になるということでございます。
  37. 安永英雄

    安永英雄君 プログラムを保護する方法として、通産省使用権というものを考えているようですけれども、この使用権を創設したときにいろんな問題が起こると思うんですが、文化庁としてはどういう問題が起こると反論していますか。
  38. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) この使用権の問題につきましては、実務的にソフトウェアの取引におきまして使用を許諾するとか、使用を許可するという形で取引が行われているわけでございますが、その前提として使用権の議論が出ているわけでございますが、実務的な取引の場合におきましては、一種の債権、債務行為といたしまして、権利者が債権を持ち、使用者が債務を持つという形で、お互いの取引関係の中で成り立っている関係でございます。一方、使用権という、例えばこれは著作権にいたしましても、あるいはプログラム権にいたしましても、こういった排他的な権利、言うなればプログラムの作者のみが権利を持ってその他の人が持たないということは、取引関係にない第三者に対してどこヘプログラムが流れていこうと、プログラムは使う限りは、使うに際して作者のあるいはプログラムメーカーの許諾を得なければならないと。そういう排他的な物権として規定しようとするわけでございますから、この場合、いわゆるプログラムの流通というのを考えてみました場合に、そのプログラムを適法に入手しても、機械を一回操作するたびに許諾を得なければならないと。それほどの強力な権利を設定することはプログラムの円滑な流通を阻害することになりはしないかという懸念、あるいは、現在の取引実態でカバーできない分野がもしあるとすれば、そういった一部の手当てで処理すれば足りることであって、こういった強大な権利を設定することがコンピュータープログラムの保護上適当かどうかという点についての疑問が多々ある。そういう意味におきまして、文化庁としては使用権の導入には賛成しがたいということで通産省には申し上げたわけでございますが、このところはもう少し実際問題として、例えばメーンマシンとホストマシンというのがございまして、それを端末で利用する場合に、一つのラインによってつながってプログラムを使うというようなことについて、それは複製という行為が伴わないから、その場合には使用権の設定が必要だというような論理も一つはあり得るわけでございます。基本的には、プログラムに使用する場合には通常プログラムの複製という行為が介在いたしますので、一般的には、複製権があれば使用権を設定する必要性というのは認められないわけでございますけれども、特殊な例等につきましても、なお考究の余地ありといたしましても、基本的に、そういった使用権を排他的な物権的な権利として設定することについては問題が極めて大きいというのが文化庁認識でございます。
  39. 安永英雄

    安永英雄君 コンピュータープログラムの利用形態が次々改変されながら利用されると。そこから通産省の方は改変権というのを認めようというふうにしておりますが、文化庁の方はこれはもう翻案権でとにかくできるんだというふうなことを言っておるようですけれども、翻案権で処理する場合には、翻案権の及ぶ範囲というものを明確にする必要があるわけですけれども、ここでちょっと問題が私は起こってくるような気がするんですが、その範囲というのはどういうふうに考えていますか。
  40. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) かなり翻案権の議論は著作権法上も難しい議論の存するところでございまして、プログラム以前に一般の作品についての翻案の問題も、これが翻案に該当するかしないかというのはなかなか解釈上難しい問題があります。ましてプログラムの場合には、なおより困難性を伴うということは事実でございます。ただ、具体的なケースをとらえて、これはこうである、これはこうであるという書き分けは法律上不可能でございまして、要するに原プログラムを変えて新たなプログラムをつくった場合に、前のプログラムの主要な部分の考え方を受け継ぎながら、かつ、そこに新たな創作性が加わっているかどうか、それが翻案という行為に該当するかどうかという解釈に結びつくわけでございます。  そういう意味で、確かにこれからの解釈指針というのは、先般報告されました第六小委員会の報告の中でもある程度解釈指針は示しておりますし、今後解明が必要でございますが、基本的には私どもは、判例の積み重ねによって定着していくことが一番望ましいわけでございますけれども、具体的な条文の書き分けというのは極めて困難である。しかしながら、こういう点でこういう考え方であるということを一般的にユーザー側にもあるいはメーカー側にも了解してもらうという努力は続ける必要はございます。ただ、通産省の主張しておりますような改変権というような形で処理しようとしたからといって、改変権の中身が具体的に書けるわけではない。それが書けるとするならば翻案権の中身が具体的に書けるという同様の論理に結びつくだろうというのが私たちの理解でございます。
  41. 安永英雄

    安永英雄君 通産省の方はいわゆる開発者から許諾が得られない、こういったときには裁定制度というものでこれを導入して解決しようというふうな考え方があるようですけれども、こういった強制手段をとってくるということになってくるとプログラムが保護されない、プログラムの開発に意欲がだんだん薄れてくる、こういう私は心配があるような気がするんですが、断じて裁定制度はこういう問題については入れてはならないというふうに私は思いますが、どうですか。
  42. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先生御承知のように、この裁定制度につきましてはアメリカ並びにECからクレームがつけられたということ御承知と思いますけれども、基本的に裁定制度の基本といいますものは、原作をある一定の行政機関、例えば通産大臣等の許可を得てそれを利用することができるという制度でございますから、原権利者にとって非常に権利保護が不十分になる。今、先生おっしゃいましたように創作意欲をそぐ。人のものを許可をとって使えばいいじゃないかというような形、行政機関の許可をとって使えばいいじゃないかという制度というのは好ましいわけではございません。  問題はその裁定制度というのは、私ども二つの理由で問題ありといたしましたのは、原権利者のプログラムメーカーの保護が弱くなるということが一つと、同時に国際条約上この裁定制度というのは著作権制度でいく限りは条約違反になるから導入できないというこの二つの論理であったわけでございます。  もちろん、一つ考え方としましては、先ほど大臣申し上げましたように、日本の現在のソフトウエア産業実態を見てまだまだソフトウエアについては後進国であるから、先進国の制度を行政機関の許可で導入しなければ太刀打ちできないんだという考え方もある意味一つの論理は持っていると思いますけれども制度自体として日本国の長い目で見たときに、この裁定制度というのが本当に我が国にとってプラスなのかどうかということを大局的に考える必要もあるんじゃないか。これはむしろ文化庁通産省に申し上げるにしてはちょっと余分なことではございますけれども、そういった意識もあったわけでございます。要すれば、裁定制度というのは仮に導入するとしてもそれは極めて限局された事例で、こういった公益上の何かやむを得ざる事情ということが対外的にも説明できるようなものでなければ国際的に裁定制度を主張することについては日本としていかがなものであろうかという感じを私ども持っているわけでもございます。
  43. 安永英雄

    安永英雄君 保護期間の問題でも食い違いがあるようですけれども、これは私、素人が考えましても、十五年と、こう言っておる、著作権では五十年と、こうなるんですけれども、五十年の中に含まっておるわけで、途中から必要のなくなったのは自然消滅やっていくわけで、五十年残るものがあれば、当然これは今の著作権法保護できるというふうに思うんですが、この点は常識じゃなかろうかと思うんですが、余り長い答弁は要りませんので、どうですか。
  44. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 保護期間の点に関しましても、今、先生がおっしゃいましたように、私どもも考えているわけでございますし、具体的なそういった保護の必要性があるものであるならば、それだけの価値として保護することが創作者の保護になるであろうということと、もう一つ条約上も死後五十年、公表後五十年という五十年の期間が義務づけられている期間でございます。  ただ、一つの問題として保護期間が長過ぎるというのは、印象的なそういう感じが実際上業界の中にもあるわけでございまして、また立法論として将来著作権条約におきまして、例えば写真が、保護期間が二十五年というようなことが条約上の最低限で書いていますけれども、プログラムについても二十五年まで保護すればよろしいというような条約改正があり得ないとは言えません。ただ、今の段階におきまして五十年というのは、著作物は大体いかなる著作物であろうと人間の生み出したものの価値については同様な期間保護するという著作権条約あるいは著作権制度の整合性から言えば五十年が望ましいというのは現時点でございますが、ただ将来のいろんな技術発達あるいは取引の慣行あるいは実態等を踏まえた場合に、私は条約上の世界各国が合意した上で五十年を短縮するということはあり得ることだとは理解しております。ただ、現時点で私どもは、今の制度的に見れば五十年が適当ではないかという考え方を捨てておりません。
  45. 安永英雄

    安永英雄君 まだたくさん質問したいんですが、時間がありませんので、明確なとにかく文化庁態度というものを私は全面的に支持したい。今、いろいろただしてみましたけれども、しごく明確な立場をとっているわけですから、これは一歩も引いちゃならないというふうに思います。この点は以上で終わりますけれども、もう時間がありませんから最後に……。  当初申しましたように科学の進歩、技術改革、こういったことで、今、文化庁としてはてんやわんややっているようですし、対策もまだ紙に書いたところで、実施には進んでいない。ただ、私は十四年前振り返って腹に据えかねるのは、しかも附帯決議の中に書いてあるのは、映画と写真の問題については、これは十四年たっておるんだから、今どうなったと私は聞きたいんですよ。十四年たっているんです、あれから。この委員会で一晩のうちに、どこから力が入ったのか知らぬけれども著作者でもない製作者に著作権がぽんといってしまう。映画そのものをつくるという立場にない。監督も俳優も、これは著作権者じゃなくて、全くそれに携わっていない、金だけ出しておる製作者に著作権がぽんといったというのはどうしても納得できない、十四年たっても。この点はぜひひとつ検討は続けてくださいよ。あのときには大臣立ち上がって、これはたくさんな問題がありますと、この映画の問題、写真の問題は。これは今から検討していきますなんて、一つも動かない。この点は私は不満ですよ。映画俳優だって、あの人たち、実際映画の製作をするときの著作者の中心じゃないですか、監督だって。そして今みたいに具体的に、背の映画が倉庫からごみかぶった跡を払いながらまたテレビや何で再放送されておる。きちんと製作者はその著作権取っているんですよ。たった一つ映画俳優そのものについては人格権だけ認めて、再編集するときに勝手に切っちゃならぬという、それだけが文句言えるというけれども、今の状態ではそんな文句言うような状態はない。聞くところによると監督だけにはそうっと製作者が監督にはやっているそうですな、幾らか。俳優まではいかない。私は、何といっても俳優、監督、これは著作者ですよ。これに格付けをして、それなりの著作権というものを認めなければ、私は解決できないと思うんです、これは。俳優さんだって、ここに来ましたけれども、主演をやっておるような人はもうあの当時でも発言したように、会社と契約をするときのそのギャラ、これの中に入ろうが入るまいが実力で取ってみせると、こういう形でうそぶいておる。わき役、切られ役、この人たちは一生涯ずっとやるんですからね、著作権欲しくてたまらない。これはやらなきゃうそですよ。私はもう時間がありませんけれども、映画が始まったときに初めにずっと監督から名前が出てくる。あれは全部発言しているんですから。映画の中でこれはせりふを言った人間だから――その他通行人まで取る必要はないですよ。しかし、あの中に出てくる俳優には著作権はやるべきだと思うんで、その制限はやってよろしいと思うんですよ。この人格権だけで、そしておまえたちはとにかく実演者なんだと。だから実演者でおまえ雇われてきて、その契約のときに既におまえは権限がないんでというふうな切り捨て方というのは、映画の芸術性あたりをどう考えるのか。その点あたりは、あのときの安達さんですか、安達さんあたりも、まさにこれは政治的な解決だったと、これは今後解決をしなきゃならぬというふうになっているんですが、この点は今どうなっておるか聞きたいところですよ。あの俳優と監督と製作者と、あのときのようにもみ合うような状態が来ないと、十四年たってもそのままになっておる。  それから写真の問題については、死後五十年というのは認めてやらないと、写真は芸術なんですよ、あれは。それは偶然性があるとか写真機を使うとか、こういったことで絵というものと写真が違うといって、死後五十年と公表して五十年という、こういう差をつけるべきじゃない。これはあのとき我々はもう腹に据えかねてとうとう附帯決議で一文化庁も頑張ると、解決しますと、こう言っておったんだが、これだけは十四年たった今はっきりお聞きしたい。どうするつもりですか。
  46. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 昭和四十五年の法改正におきまして、特に映画の問題で御議論があったことも事実でございます。ただ、世界の各国におきましても、映画製作者を著作者としたり、あるいは著作権者としたりとするのが大勢でございまして、そういった考え方を受けてベルヌ条約の一九七一年のパリ改正におきましても、映画の著作権につきましては同盟国の法令の定めるところによるというような規定が、改正が行われている状況でもございます。ただ基本的には、今の監督あるいは俳優さん方についてこれでいいのかということの問題意識はあるわけでございまして、一つは、当時四十五年改正のときに大問題になったがゆえに、翌年でございますが、昭和四十六年の十二月に日本映画製作者連盟と日本映画監督協会の間に協定書が締結されまして、いわゆるテレビ放送等に利用する場合にっきましては映画監督には追加報酬を払うというような協定ができたのも、一つには当時の激論の産物であったと理解するわけでございます。  ただ、俳優さん等の場合につきましては、これは全く何らの手当てがないわけでございますが、基本的にはいわゆる隣接権制度の中におきまして、映画の再利用あるいは目的外利用について、当然、俳優さん方もその報酬にあずかれるというような考え方一つの立法論あるいは主張論としてあり得るわけでございまして、今後の一つ検討課題だと。いい意味におきましては、先般、この法案を提案いたします前の著作権審議会の第一小委員会におきましても、この映画の目的外ビデオ化の場合等についての俳優、実演家の権利について何かの配慮という問題点の議論はあったことも事実でございますし、今後、いろんな形での御議論がなお積み重ねられていくものと考えております。  それから写真の問題でございますが、確かに附帯決議にございますけれども、非常に極めて難しい問題がいろいろございます。それはなぜかと申しますと、当時写真を記録的な性質が強いから早く開放した方がいいとか、著作者の表示がついてないのが多いから、なかなか死後五十年にしにくいなんという議論もございましたが、基本的には、映画が公表後五十年であるのに写真は死後五十年というのは、ここはバランスを失するじゃないか。映画の一こまをとってみれば写真じゃないかという意味の映画とのバランスでの公表後五十年という議論がまだありますし、それから世界各国が公表時起算をほとんどとっているわけでございまして、死後起算が少ないというのはそれなりの何かがあるのかなという感じもいたしますし、また著作権条約上も二十五年の保護義務になっておりますという関係もありまして、そういった点では写真が確かに一般の著作物とは若干ランクの違う扱いを世界各国で受けていることは事実でございます。そういった意味で、写真の問題を死後五十年という形で日本が先頭を切ってするというからには、それなりの今の論理を打破できる説得性のある理屈づけなり、あるいは実態なりが出てくる問題が必要ではないかという感じはいたします。ただ、実際問題としまして、実は写真は、御承知のように、旧著作権法時代には発行後十年でございましたために、現在は、昭和三十二年以降につくられた写真について公表後五十年の規定が動くわけでございまして、昭和三十一年以前の写真は全部著作権が切れちゃっているわけです。といいますと、いわゆる公表後五十年では短いという議論は、昭和八十三年になりますと、そこで期間が延びるか延びないかという、実益の問題としてはそういうことでございますが、ただ、観念的ということで恐縮でございますが、理論的に死後五十年であるべきか、公表後五十年であるべきかということは時間をかけて十分検討すべき事柄だと考えております。
  47. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 大臣は、昭和五十七年の自民党の文教部会の著作権プロジェクトチームの主査をやっていらっしゃって、幅広い立場からお考えのことと思いますけれども、きょうは、私は大体貸しレを中心にして質問をいたしますので、その点についての大臣のお考えをお伺いしたいと思うんです。  今、安永委員質問もありましたが、本当に理論的に考えれば、どうしても著作権保護しなければならない。だれが言ったってもうそのことは否定する人はいないんですけれども現実産業政策あるいは商売、こういうものとひっ絡まってきますと、その辺で文化庁の苦悩するところが私にはわかるような気持ちがするわけであります。現に、これは日本レコード協会が出している機関誌なんですけれども、その五月の機関誌の中に、西ドイツで国営放送がビデオクリップの補償条件に合意というのがわざわざ出ているんですが、とにかくプロモーション用ビデオの、今まで交渉しながら、定額で五百マルク。それから八百、九百、千と、こういうふうに要求が出てくるわけであります。それに対して今回一回放送につき千五百にしてくれと、こういう要求があったというんですね。ところが、それについてのいろいろな経過が書いてありまして、とにかくどんどん値上がりをしていくので、放送局がビデオクリップを放送に使うのを制限してしまった。今まで六〇%だったのを四〇%にカットした。そうすると、スタジオ製作に切りかえたものだから、レコード会社の方は、今度はアーチストをテレビに出演させるために余計な手間が必要になったり、レコードの売り上げにも微妙に影響してきたというようなことがあったりして、お互いに折れ合ったと、こういうことが書いてあるわけですね。ですから、理論は非常に大事なことでありますけれども、具体的な問題になりますと、この辺は関係団体が仲よくやっていく、円満に事を処していく、秩序をつくっていく、このことは本当に大事なことだというふうに思うわけでありまして、最近貸しレコード店とレコード協会と芸団協との間にとにかくいろいろな話し合いが行われつつある、そのことも踏まえながら、暫定法から今回の本法改正に至る大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  48. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 五十五年の夏に貸しレコードというのが出てまいりまして、そして、これは私の理解なんでちょっと間違っているのかもしれませんが、当時は、そういう著作権を持つ方々よりも、どちらかというとレコードを売る商売の皆さん、そういう方々が大変これに危機感をお持ちになって、そしてたしか日比谷野外音楽堂がなんかで大会などをやっておりまして、私もそのとき始めてそのテレビを見て知ったわけです。そしてこの問題でかなり私の党の中でも大変な議論が出まして、たまたま私がそのまとめ役をやれという政調からの命令でありましたので、それから各団体の皆さんにお話を聞いてみましたら、とても難しい問題だと思いました。貸しレコードのレンタルの皆さんは、別に貸しているだけであって、それをどのように複写しようと、そんなことは我我は勧めているわけではありませんと言う、それは一つ考え方です。しかし、そのほかに、どんどんダビングをさしたりいろいろする業者も確かにございます、それは後から出てきたわけですがね。そういう人たちの立場から考えると、憲法上職業の選択、商売をやられることについては、これは間違いないわけでありまして、私は、本来、これは通産箱で指導すべきことだと思ったんです。通産省は一体どこに所属するんだろうか、私もちょっとわからなかったので調べてみましたら、日用品課がどうもそうらしいというんです。日用品課長に会って聞いたら、いや、実は我々も困っておるんですと、こういうことでございました。しかし、そうは言いつつも、実際にはどんどんーレコード屋さんがもうかるとかもうからないなんというようなことを文化庁文部省心配する必要はないと私は思うんです。  ただ問題は、レコードの売り上げがどんどん下がっていくということは、文化をつくる、音楽をつくるという意欲が失なわれていくということになる、そのことはとても大事なことだというふうに当時私たちは考え、そういう中で何とかして規制ができる方法はないだろうか、こういうことで私は、いろんな関係者の皆さんに随分お会いしましたし、レンタルレコードの中もばらばらでしたから、大阪の業者、東京の業者、何か一部では学生さんみたいな人たちもやっておられますし、できるだけその皆さんにも、私も大阪まで足を運んで反対する方ともいろんなお話をして、本当に皆さんが正しい職業としておやりになるなら、ちゃんとしてみんなが法律を守るということは大事ですよというようなこともかなり申し上げて、そして取りまとめをさしていただいたわけであります。今、粕谷さんがお話をされましたとおり、何とか関係者が寄り集まって、みんなが円満に話し合ってもらいたい、こういうことで、できるだけ文化庁が裁定を下したりということではなくて、業者間がお互いに法を守ってやっていく。いい音楽をつくる、つくる皆さんの、作曲家や作詞家や歌い手さん、その皆さんがあってこそ、またレンタルという商売も成り立つんだということをどうぞ皆さんも理解しなさいというようなことで、どちらかというと党の立場でありますから若干高圧的なこともございましたけれども関係者の皆さんを説得申し上げて、その中で暫定法案というのをつくらしていただいて、五十七年の八月にまとめさしていただいた。確かに、足らざるものでございましたけれども、そのことが、衆議院、参議院の文教委員会の皆さんに大変御議論いただいて、そして暫定的に成立をさしていただきました。そのことが一つの引き金になって、まず業者が、業界の皆さんがお話し合いをされようというべースもできましたし、それから今度、今お願いをいたしておりますこの改正一つの先導的な役割を私は果たしたと思います。そして、非常に難しい微妙な問題でありますが、与野党通じてこの問題に大変先生方が国会で議論をされました。そのことは私は大変大きな効果を生み出してきたと、こういうふうに私はこの問題を通じて認識をしておるところでございます。  したがいましで、今の、特に参議院の文教委員会附帯決議もございまして、許諾権の行使につきましては、公正な使用料によって許諾するように関係者間の円満な秩序形成を図るべきであるという、こういう御指摘をいただいて、現在も文化庁がこの中に入って、そして適正な話し合いが進められるように、そういう努力をするように現在もなお文化庁として指導いたしておるところでございまして、今後ともこの精神で、できるだけ関係者が話し合って円満に進めてもらいたい。非常にこの問題はどこからとってもなかなか微妙なところで、どの辺にニュートラルを置くかというのは非常に難しいところでございまして、自分なりに感想も含めて大変長くなりましたけれども、どういう見解をお持ちですかということでございましたので、とにかく円満に話し合っていただきたい、そして何とか、今国会で、きょう御審議をいただいておりますこの法案につなげていただいて、そして本当に、先ほど安永さんもおっしゃったように著作権を大事にする、まさに文化のバロメーターであるというようなことに、なお一層国民の意識がそのような方向に走っていってもらいたいなというのが、文部大臣としての一番私が願っているところでございます。
  49. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 文化庁にお伺いいたしますけれども、今大臣がお話しになったように、文化庁もその暫定法の精神が生きるように間に入っていろいろ苦労をしていると、こういうことでございますが、この日本音楽著作権協会、JASRACと言っていますね、JASRACと日本レコードレンタル商業組合――これは簡単に貸しレ組合と言った方がいいんでしょうか、その間に、許諾に係る使用料についての円満な合意がなされたということを伺っておりますけれども、具体的に内容はどんなものになっておりますか。
  50. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 日本音楽著作権協会日本レコードレンタル商業組合との話し合いが四月十三日にまとまりまして、四月十六日付をもちまして、日本音楽著作権協会から使用規定の申請が出されている状況にございます。話し合いに基づきました結果としての使用規定の申請でございますが、具体的には、LP盤については五十円、シングル盤については十五円、コンパクトディスクについては七十円、録音テープについては五十円という基本料金でございまして、これはレコード一枚一回の貸与についての使用料額でございます。ただし、年間契約を締結して月額使用料を取り決める場合の使用料につきましては、これよりも、割引といいますか、若干いわゆる包括的な形で金額の安い料金での取り決めが行われるという見通しでございます。  なお、この当面の問題といたしまして、新法成立までの間の暫定措置法期間が約六カ月あるわけでございますが、その期間につきましては、今の月額使用料額想定額の百分の六十の範囲内という形で暫定的な適用をし、かつ、基本料金に達するまでの間につきましては段階的に上げていくという形で、円滑な実施、施行への形の内客の話が細部にわたってこれから詰められるという状況でございますが、現時点の段階におきましては、今使用規定がそういう形で出ているという状況でございます。
  51. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 貸しレの「NEWS」を見てみますと、今、御報告があったことのほかにいろんなことがつけ加えられているような感じがいたします。とにかく、この両者の話し合いというのが初めて行われたのが一月の二十三日ですね。当初、LP盤二千八百円一枚につき五・五%、これは、レコード製作会社と同じという割合で百五十四円という話だったんですが、最終的な緒論が五十円ということになりますと、三分の一を割っているわけですね。大幅なJASRAC側の譲歩だったというふうに思います。そのほかに、この「NEWS」を見ますと、「組合が使用料の徴収を代行することはありますか。」ということに対して、「原則としてはJASRACの各支部単位で徴収することになりますが、組合が代行することによって、さらに優遇措置がつくのであれば前向きに検討したいと思います。」と、こういうことが書いてあるんですね。この内容はどういうふうに理解をしていらっしゃるんですか。
  52. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) それは、これから音楽著作権協会とレコードレンタル商業組合との間で話は詰めていく事柄でございますが、要すれば、日本音楽著作権協会が直接に徴収するのではなくて、レコードレンタル商業組合の方が取りまとめて使用料を包括的に音楽著作権協会に渡すということになりますと、その事務的な処理経費等がずいぶん安くつくわけでございますから、音楽著作権協会側でいえば、使用に関する手数料に相当する額が減るわけですね。そういう意味におきまして、それに相当する額はもちろん使用料自体から割り引く、優遇というような形での措置ということが相談されているのではないかと考えております。
  53. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私もこれは、聞くところによればですけれども、JASRAC側は全国に四百名ぐらいの集金の人たちを採用している、といいますか、持っていると。その集金の方々に対するいろいろな経費というものがJASRACにとっては非常に赤字になっている。だから、今回、レンタル商業組合がそういう制度をとって出してくれるということであれば非常に助かるということですね。しかしこの内容というのは、レンタルが正しく統計をし、正しくお金を納めてくれるという、こういう信頼関係がなければできない問題だというふうに思います。本当にそういう点では、お互いにお互いを、きちんとした市民権を持って認めた――まあ、JASRACは長い伝統があるわけですけれども、レンタル協会のこの商業組合というのは、そういう点では大変私は感謝しているんじゃないか、非常に喜んでいるわけですね。ぜひ、他の団体もそういうふうにあってもらいたいと思うのですが、芸団協は一体どんなふうになっておりますか。
  54. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 芸団協につきましては、今のレンタル商業組合と話し合いの場、二回でございますが、このほかに実は東京地裁でレコード協会側と貸しレコード側との訴訟がございまして、三月に裁判長から和解の勧告が出ました以降、いわゆる関係人という形で、その和解の内容に自主的に芸団協が参加しておりますので、その和解の場におきまして三回レンタル商業組合側の実質代表者と話し合いをするというような状況に入っておるわけでございまして、今のところレコード協会側とレンタル商業組合側との話し合いの動向を若干並行というよりか、少しステップおくれた形で対応している状況にあるというぐあいに私どもは理解しております。
  55. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 芸団協は大体六月二日までにまとまるという見通しは文化庁としてどうですか。
  56. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 私ども音楽著作権協会がある意味のプライスリーダー的な立場著作権処理についての合意に達したと。今度は著作隣接権側の問題でございますが、やはり最大の被害者であり、最大の関心を持ち、最大の主張をされているのがレコード協会側でございますので、芸団脇のケースとしましては、レコード協会側と同時、または若干の時期のおくれをもって合意に達するというような観測でございまして、キーポイントは、何と申しましても、レコード協会側とレンタル側とで話がつくかどうかという問題にかかっていると理解しております。
  57. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そうなんですね。やっぱりキーポイントはそのレコード協会だというふうに思います。  先日の参考人に私がお伺いした際、六月二日の暫定法の施行開始期日に話し合いがまとまるか、このことに対しては富士山の登山で言えばまあ大体八合目ぐらいでしょうと。私はまとめる気持ちがないんだなあということをそのとき感じたわけでありますけれども、この内容、今までの文化庁のつかんでいる状態、それから、その六月二日までにどうだろうかという分析、いかがでしょう。
  58. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 私どもといたしましては、レコード協会、あるいはレコードレンタル商業組合側両方に対しまして、昨年のこの暫定措置法成立以来精力的にたび重なる会合を重ねまして、個別的に双方が歩み寄るように、六月二日までに何とか話がまとめられるようにということで、いろいろな指導なり助言なりは申し上げてきた次第でございます。したがいまして、私ども文化庁立場といたしますれば、当然六月二日までには合意の成立を見るということを心から期待しているわけでございます。  現状分析というお話でございましたので、御承知のように、この問題は先ほど大臣がおっしゃいましたように、もう昭和五十五年から火を噴いた話でございまして、当時はレコード協会側としては貸しレコード悪なりという考え方で、非常に強いいわゆる全面禁止の姿勢からスタートしたという当時のいきさつもございますし、それから訴訟が係属中ということで、ある意味では敵味方に分かれていたという、そういった感情的なしこり等もございまして、私どもはまず感情のしこりから解きほぐし、そして具体的な内容の詰めにという形で移行している段階でございます。ただ、もちろん双方の思惑はかなりまだ懸隔がございます。それは事実でございますけれども、交渉事というのはいわゆる当事者側、特に代表者側のある意味の良識と英知によりまして、一気がせいに話がつくということは、交渉の場合大いにあり得ることでございまして、まだ六月二日ということにつきまして私ども望みも捨てておりませんし、ぜひとも頑張っていきたいと考えておるわけでございます。
  59. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 先日、おいでになったレコード協会の会長さんのお話を伺う限りにおいては、非常に人格円満な方で、私も懸隔あるけれども、何とかまとまるのではないかという、その期待はわかるんでありますけれども、しかし、なかなかそうはいかないのではないかという私自身の見通しの方が大きいんですね。それで五十六年の十月に訴訟が起きた。その訴訟から随分時間たっているわけで、三月に和解の勧告が出たというんですけれども、この問題に関連して私は先回の暫定法のときにちょっと質問しているんですね。どういう質問をしているかといいますと、「附則の経過措置、「2第四条及び第五条の規定は、この法律の施行前に国内で販売された商業用レコードについては適用しない。」と。これはわかりやすく言うと、どういうことを言うのですか。」こう質問しました。それに対して文化庁の方では、「ちょっと法律技術的な事柄でございますので、私どもの方の理解を申し上げさしていただきたいと思いますが、」これは石橋衆議院議員の答弁ではなくて文化庁の答弁になるわけであります。「この法律案、議員立法の中で書いております事柄は、レコードが最初に発売されてから政令で定める期間までの間の貸与行為について権利者の許諾を得なければならないものといたしておりますので、通常の法体系といたしますれば、さかのぼって適用いたしますということを避けた考え方がこの附則二項であろうと理解しております。」わかりやすいですか、この答弁。私は非常に頭が悪くて何度読み直してもどういうことなのかわからないのですけれども、要はあの暫定法が成立する以前の貸しレコード屋の行為についてはどういうことだということなんですか。
  60. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) わかりにくい説明で大変恐縮でございました。具体的に申し上げますれば、この暫定措置法の施行が六月二日でございますので、六月一日までに発売されたレコードにつきましては暫定措置法は動かない。つまり許諾を得なければならないという行為はかからない。六月二日以降に発売された商業用レコードについてのみ暫定措置法の規定が動く。つまり権利者の許諾を得なければならないこととなると、そういう趣旨附則でございます。
  61. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 もうちょっとわかりやすく答えていただきますと、貸しレコード屋は六月二日前は今までのように営業していていいんですよと、こういう説明なんですか。
  62. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 六月一日までに発売されたレコードにつきましては、権利が動くか動かないかは現行著作権法そのものによって判断をされるということで、そのことにつきましては先生今おっしゃいましたように五十六年から訴訟が起きておりまして、両当事者が争っている事柄でございますので、現行著作権法上の解釈上どうなるかということについてはコメントできないわけでございまして、暫定措置法はとにかく六月二日から動くということは六月二日から許諾を得なければならないことは明らかである。ただ、六月一日以前のものがどうかということについては、これは法律で明文の規定はないけれども、法の趣旨上どうなるのかというのは裁判所で争われていると、そういう実態がございますので、六月一日までに発売されたものは全部自由にやれるんだとまでは今申し上げるわけにはまいらないということでございます。
  63. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そこのところが非常に微妙なところだというふうに思うんですね。裁判所も困っているんじゃないですか、暫定法ができて。もう間近にその問題が出てきて、そして今このような正規の法律が、本法が出てきているんですね。だから和解という言葉が出てきたんだというふうに思うわけであります。私は、しかし、適用されないというのだからいいんだというふうに思うのが、大体の国民の考え方だというふうに思うんですね。文化庁がいろいろな点を御心配になってそういう答弁をされるのは構いませんけれども、私自身はそういう立場に立って質問しました。それでどのようにまたお答えがあったかといいますと、「そういう意味で直接的に、現在係争中の事案の解決にストレートに結びつくわけではございませんが、考え方としてこのような法秩序ができ上がっていけば、訴訟上の問題も当然和解その他の方法によって手打ちがなされることになるのではないか」と、なかなかいい答弁をしていらっしゃる。そういう意味の期待もあるわけでございますね。  さて、その期待、手打ちなんですけれども、今なかなか前進していないようですね。これに対して五月の九日、訴えた側の日本レコード協会の和解案が提示をされています。暫定法ができた後ですね、五月の九日ですから。法律は成立――まだ動いていませんけれども、和解案が提示をされています。貸しレ側はこれを到底受け入れられないと、こういうふうに言ってるんですね。私もそれを見てみました。まあ、二項目には、「原則として貸レコード利用を許諾する。」と、こういうふうにあります。これはよろしい。三項目に、「第二項の原則の例外には、次の種類がある。」として、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、四項目、これは例外なんですから、許諾しないと、言葉をかえて言えばそういうことになるのじゃないでしょうか。教育・教材用レコードだとか、あるいは邦楽、民謡、民俗芸能、そういうようなものだとか、開発途上のレコードだとかあるわけですね。そして四項に、「貸レコード利用を許諾しないレコード等は、第三項に属するレコード等を除く全新譜ダブル数の十五%~二〇%を限度とし、期間は三ケ月ないし六ケ月を限度とする。」。あの暫定法の審議の中で、貸しレコードの人たちが一番言っていらっしゃったのは、この三カ月から六カ月間というのが、一番そのレコードが出る、それだけにまた小売店にとっても大変手痛いところだということであったわけでありまして、    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕 貸しレコード屋にとっては、これはもう生死の綱を握られる部分が許可をされないということになったら大変なことになってくるわけですね。これではとても六月の二日の私はあれまで円満解決にはいかないというふうに思いますけれども、もし円満解決にならなかった場合、そして六月二日を迎えた場合に、一体貸しレコード屋はどのような対応をするのでしょうか。
  64. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 今の和解案につきましては、これは裁判長が示した和解案ではございませんで、裁判長の勧告に基づきましてレコード協会側が提示をした案でございますが、ある意味では言い値でございます。物事は、やはり交渉事でございますから、これに対して貸しレコード側はもちろん全部、オール許諾ということで御主張なさるでしょうから、その間で歩み寄りが期待されると思うわけでございます。  そこで今の御質問、仮定の質問でございますが、六月二日までに話がつかなかった場合どうなるかという御質問でございまして、私どもの気持ちといたしますれば、六月二日までに話がつくことがこれは望ましいわけでございますが、万が一、話がつかなかった場合におきましては、レコード協会側に対して、現在も事前でございますけれども、仮定の話として六月二日までの話がつかなかった場合に、利用の禁止をしては困ると、つまり貸しレコードの営業が六月二日以降も成り立つようにそこは十分な配慮を願いたいということを申し上げているわけでございまして、わずか、本法が成立いたしますれば来年の一月一日からの施行でございますので、半年間のことでがたがたがたがた争うということは、私どもは望ましいこととは考えませんし、またレコード協会側の幹部もその辺の意向はある程度理解はいたしていただいているものと考えております。しかし、話がつかなきゃいつまででも自由にやらせるんだというような形になりますれば、逆に貸しレコード側で、話がつかないからと言って自由にやるんだという形になりますと、これは何のために暫定措置法が成立したかわからなくなるわけでございまして、しかしながら、話がつかないから全面禁止という形で貸しレコード営業をとめるような事態には立ち至らないように、文化庁としては十分配慮したいし、またレコード協会にも指導してまいりたい。要するに早く話をつけていただくということを期待しているわけでございます。
  65. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 両者の協議ですから、何も国会がこういうふうにしたらいいとか、私どもがこういうふうにしたらいいとかということではないと思いますけれどもね。例えば、このレコードは貸し出したくないという場合には、五十円ではだめだと、これは二百円だとか三百円だとかっていう、それなら貸しますよというんだったら、これは非常にわかるわけなんですね。これはもう一切認めませんというようなことでない方がいいのではないかなあという感じがするわけであります。  さて、そういう中で、私は幾つかのレンタル会社を黙って見てまいりました。ダビング機器を置いてるところあるんですね、本当に。それで、この商業組合ができてこういうふうになってるんだがどうだと言ったら、いやあ、わかりません、と言ったから、多分その店はそこには入っていなかったんだと思いますけれども、そこへ来る人たちに聞いてみましたらね、とにかく自分のお小遣いではとても千五百円、二千円、二千五百円、二千八百円なんていうレコード買えないって言うんですね。特に親元から仕送りを受けている大学生なんていうのはもう大変だ。千円出して四枚借りる、五百円出して二枚借りる、これがもう一番いい値段だって。だから、これにプラスアルファされたら、千円で三枚だとか二枚だなんてことになったら、やっぱり貸しレコード屋へ行くチャンスも少なくなるって言うんですね。そして、その借りてきたあれは全部入れるんではなくて、この人の歌のこれ、それからこれ、というふうにして、自分自身のテープを編集するんだ、これがナウいんだって言うんでね、私どもにはわかりませんですけども、そういうふうにして自分のテープ、人がつくってくれたテープでないものを持ってる、そういう何ていうんですかね、やっぱりその生徒たちにとっても若者にとっての文化の創造っていうんですかね、ああ行われてるんだなあっていうことをしみじみ思って、多分給料取るようになったら、ああ、あのときの歌が入ってるっていうんで、レコードってのはやっぱりこれはすばらしいものですから、買うようになる、レコードを本当に買う人口の一人に入ってくるんではないかというような感じがするわけであります。  それで、貸しレコード屋に聞きました。あなたのところはもうかってる、もうかってるっていうけど、本当にもうかってるんだろうかっていうことで。まあ、だれももうかってますなんて言わないですけれどもね。しかしまあすばらしい車を持ってる貸しレコード屋の社長さんていうものも私は余りお目にかかりませんでした。それから、一つのレコードについてどのくらい買うのかって聞きましたら、やっぱり十枚とか十五枚とか、物すごく出るのであれば二十枚っていう単位で買い込むって言うんです。ただし、そのレコードが借りてくれるお客がいなければ自分のうちの損害になる、これがレコードの小売店だったならば返品でいうことできるんだけれども、貸しレコード屋は返品ができない、それだけに一発勝負で、どのレコードをどれだけ買うかっていうのはもう一発勝負だって言うんですね。そういうことができないで、例えば貸しレコード屋はもうかりそうだなんていって、ビル屋、ビルのお掃除をするような人がお金を出して貸しレコード屋をやったって、センスがないわけですからやっぱりつぶれていくわけですよね。つぶれるのは何もレコードの小売店だけではなくて、貸しレコード屋もやっぱり新陳代謝があるわけであります。そういうお店が今商業組合に千百幾つ加入をした。これ多分千五百は軽く突破するんじゃないかと思うんですけれども、十枚買えば一万五千枚のレコードがばあんと売れてくということになるんですね。ちょっとヒット曲に準ずるようなレコードの売り上げになるじゃないかと、こういうことも言っておられましたんで、ぜひ話し合いが円滑に動くように、文化庁はさらなる御努力をお願いをしたいと思っているわけであります。  しかし、もう一つ考えてみますと、JASRACがオーケーをした、ところがあとの二つがオーケーをしないばかりに、JASRACに入ってくるであろう――普通であればね、著作権者に入ってくるであろうその使用料が入ってこないっていうことになる、あとの二つのために。そういう意味で、逆に無理な拒否をする団体は私は世の指弾を浴びるんだろうというふうに思いますけれども、文部大臣はこの辺はいかがお考えですか。
  66. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、この問題は私が五十五年に調整に当たったときに、商売をやらせるとかやらぬとかいうようなことは、これはもう文化庁文部省が考えることじゃないんだと、したがって、大変申しわけないが、当時としては一番反対をした、貸しレコードに反対しているのはレコードの販売屋さんですね。変な話ですけど、自民党の立場からいえば、販売店主というのはみんな商店街の有力者ですから、その皆さんの立場をもっと考えてあげにゃいかぬのですが、私はまずこれは離すべきだと。そして、著作権を持っておる人たち、それから著作権の隣接権者たち、この人たちの立場を考える。もう一つは、ちょっと私的な話になって恐縮なんですが、この問題がテレビや新聞に出たら、私の子供がお父さんやめた方がいいと言うんです。上の息子はその当時高校生でしたが、おかしいと言うんですよ。そんな、レコードを貸してテープに復元できるというのは、CBSソニーは文句言っているけれども、ソニーという会社は親会社じゃないかと。コロンビアと日立と一緒じゃないかと。東芝はレコードをやってて機器もつくっているじゃないかと。自分たちの文化が破壊されるようなことを親会社がつくっているんじゃないかと、こう息子は言うんです。なるほどなあとこう思ったんです。下の娘はまだ中学生だったんですが、もっとおもしろいんですね。今、粕谷さんがおっしゃったとおりなんです。本当は欲しくないと言うんです、十曲も。あれ十曲ぐらい入っているんですね。一曲だけ欲しいんですと言うんです。その曲だけ欲しいのに、三千円か五千円ぐらいするんですか、あれは一枚、二千八百円ですか、買わされる。お父さん、小遣い半分それに使うんだから、私たちは自分たちの防衛のために三百円で借りてくるんです。そんな子供たちの夢を奪わないでくださいなんて、こう言われまして、難しい問題だなあとこう思いましたが、要は著作権というものが大事なものなんだよということを子供たちにも、さっき安永さんの御質疑の中にありましたけれども、このことを通じて著作権というのは大事なものなんだと、このことを教えさせる意味でも私は適当な代価を払って、人様が一生懸命つくった音楽、絵というものは大変大事なものなんですよということを教える教育的な意味がある、私はそういう意味でこの法案をまとめることは教育上も大変意味のあることだ、こう思って調整をしたわけでございますので、何とかみんながそのことを大事に考えて理解をしてもらうということしかないわけでありますから、まあとにかくいろんな理屈はあるだろうと思うし、今、粕谷さんがおっしゃったように、一番欲しいときに一番売りたい、逆に言えばまた一番借りたいときにと、そこのところの一番の利害が非常に難しいところでありますから、お互いに大事にしていく。また、レコード協会も初めからあいつら敵だとか、初め党で一緒に会わそうとしても口もきかないですしね、もうあいつらはとにかく悪人なんだという考え方じゃなくて、やっぱりレコード協会もレコード制作者も少し頭を変えて新しい方法を考えないと、靴屋がどんどん出てきたからげた屋がけしからぬと言っているのと同じことになりますよと、私はそんな話も当時して調整をさしていただいたわけでございますが、そういう意味で、何とか今、加戸次長に督励をいたしまして、とにかくみんなが話し合ってやるように、そしてレコード制作者もレンタルの皆さんもお互いに共存共栄を図ることによって、今、粕谷さんがおっしゃったJASRAC、いわゆる著作権者に対して、そのことがみんなで代価を大事にするという思想をみんなで大事にしていく、この考え方に徹していただきたい、こういうことで党の時代からも私はそのことで調整をしてまいりましたが、今、文部大臣という立場でありますから、私が余り出ることは適当ではございませんので、文化庁の事務当局に鋭意とにかく一生懸命に話し合って進めていただくように、営業上、商売ができるとかできないということは、もう文化庁は関知するなど私は言っているんです。そのことはもう文化庁の問題ではない。さっき粕谷さん大変いいことをおっしゃった、市民権を得たんですから、これは通産省が私は指導していくことである、あるいは中小企業庁が指導していくことである、こういうふうに思って、そういう協会の組合ができるようになったことも大変よかったなと。私は大阪なんかへ行ったとき、いろんな連中がいまして随分怒られましたよ。おれたちが勝手にやっているのに一々政府は構うなとか、国会は構うなと。何しろ若い学生諸君みたいな人が多いわけですから。私は大阪へ行って、その皆さんとも随分議論もいたしました。しかし、国会であのとき衆参で大変皆さんが御議論していただいたことでレンタルの皆さんにも、やはりそういう気持ちに私はなっていただいたということで、私は本当に国会で御議論いただいたことに敬意を表しておりますし、なお一層みんなで話し合って大事に、こうしたことをみんなで守っていくという風潮をぜひつくらしていただきたい、そういう意味でなお一層我々も努力して、その期日、六月一日までには何とかまとめたい、なお一層の努力をしていきたい、こう考えておるところであります。
  67. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 使用料について、もし協議が不調の場合には、本法律案によれば、「文化庁長官の裁定を求めることができる。」と、こうなっておりますね。今は間に合わないわけで、来年からということになるわけですけれども、しかし、この裁定というものは著作権審議会に諮問をすると、こういうふうになっておりますけれども、裁定の持つ権限、それから内容といいますか、どういうこと、使用料だけについての内容なのかどうなのか。それから著作権審議会のメンバーだとか、その即応性といいますか、随分時間がかかるようでは困るわけでありまして、その辺のところは具体的にどういうふうに考えておられますか。
  68. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ただいま御提案申し上げております改正案の中では裁定制度を取り入れているわけでございますけれども、手続的に申し上げますれば、当事者の方で話がつかないからといって文化庁長官に裁定の申請があり、文化庁側で両当事者からの意見を聴取をし、そして補償金額について著作権審議会に諮問をする。著作権審議会におきましては、中に使用料部会という専門の部会を設けておりまして、その使用料部会で御議論いただいた報告を受けて著作権審議会の総会において答申として……、これは失礼いたしました、使用料部会の議決をもって著作権審議会の答申にかえるという規定がございますので、その著作権審議会使用料部会におきましての判断を受けて、それを著作権審議会の答申として、その答申が得られました場合に、文化庁長官がその答申結果に基づいて裁定をして、両当事者に通知すると、こういう関係になるわけでございます。  そこで、この法律的な効果でございますが、この裁定に基づきまして両当事者間で債権債務が発生するわけでございますが、裁定自体につきましては行政不服審査法による異議の申し立てができるわけでございますけれども使用料額、つまり補償金額とか使用料額についての異議の申し立ては認められておりません。つまり金額の争いにつきましては、直接裁判所に対しまして訴訟を提起する、つまり訴願前置主義を排しまして裁判所に対して、今度は文化庁を相手ではなくて、両当事者間、つまり裁定を受けた額に不満のある方が相手方の当事者に対して訴訟を提起すると、こういうことになっておりますので、訴訟によって争う道はございますが、訴訟で争わなければ、そこで債権債務額が確定すると、こういう状況でございます。
  69. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 文化庁のそれに対して不満で裁判ということになれば、随分長い時間がかかるわけですから、非常に強力な力を持った裁定であるということを理解いたしました。  さて、本法律の中に使用料の期間に関して一月以上十二月以内と、こういうふうに書いてあるわけであります。普通この上限だけ書いておくはずなんですけれども、一体わざわざ「一月以上」と、こう入れたその真意はどこにありますか。
  70. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 幾つか理由がございますが、一つは、暫定措置法では、御承知のように、期間を定めずして政令で包括委任をしておりますけれども、事は権利の主権に関する事柄でございますので、本来は財産権の内容は法律で定めるべきものと憲法上されておるわけでございますから、政令でゆだねる場合も、ある程度の幅を持ったゆだね方でなくて、包括的なゆだね方というのは必ずしも適当ではございませんので、暫定措置法の場合には暫定措置法という性格上、政令で包括委任をしたんでございますが、政府立法の場合には政府がどこまでの幅で権利を定められるのかという期間を法律で明示しないで書きました場合には、極端に申しますと、一カ月から十年でも二十年でもという定め方が可能でございますので、そこの幅は一月以上十二月以内という書き方をするという、ある意味の法律の書き方のスタイルとしての問題がございます。  それから第二点は、暫定措置法上の政令は、御承知のように、一年と定めさしていただきましたけれども、まあ法律の性格からすれば、暫定措置法からの移行ということでございますれば、なるべく暫定措置法と食い違いを少なくして実態的円滑に、スムーズに移行措置ができるような形が望ましいわけでございますので、私どもの気持ちといたしますれば、十二カ月を一応想定いたしております。ただ、なぜ一月以上十二カ月以内かという実質的な理由につきましでは、十二カ月で円滑に機能するということを期待するわけでございますけれども、場合によりましては、許諾の期間を、例えば禁止期間を十二カ月にするとか、六カ月にするとか、そういうようなケースが将来起こり得るわけでございますから、一たんスタートのときに決まった話が未来永劫に続くわけではございません。それはそのときの諸般の情勢によって動き得るということになりました場合に、余りにも禁止期間が強烈な禁止が行われるような事態が幾ら指導しても起こり得るということがあり得た場合には、政令で定める期間を極端に圧縮するということもあり得るという態勢をとっておくことが適当だ。ある意味では一種の抑止力としての意味は持ち得ると考えているわけでもございまして、基本的には私ども暫定措置法の考え方を受け継いで十二カ月という線で当面は定めさせていただきたいと思っているわけでございますが、そういった権利乱用的な意味合いが強い場合には、許諾権は短縮することあるべしという制度的な立て方が妥当であろうと考えた次第でもございます。
  71. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 簡単に聞きますけれども、そうすると、「一月以上」と入れたのは、権利乱用を戒めるということの含みを持って入れたと、よろしいですか。
  72. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) それも一つの理由でございます。  ただ、この場合、非常に問題がございますのは、仮に一月といたしました場合には、いわゆるアウトローといいますか、許諾をとらないで無断でやる業者もあり得るわけでございますから、その業者を禁止しようと思っても一カ月しか禁止できないということになって、あと一月たてば自由に野放しでできるということになるわけでございますから、政令で定める場合には、それは両刃の剣になるわけでございます。  そういう意味で、その期間は言うなれば許諾を得ないで無断でやる業者を規制する期間でもあるという二つの意味があるわけでございますから、単純にはそのとおりとはお答え申し上げかねますけれども、基本的には余り長い期間のために、その長い期間をフルに禁止するというような状況が出ることを想定して、そうなれば両刃の剣になりますが、アウトローも野放しにする結果になりますけれども、やはり期間は短くせざるを得ないですよというような考え方もあり得るわけでございまして、その辺はケース・バイ・ケースによって違いますが、弾力的に考えていきたい。基本的には十二カ月で円滑に実施してもらいたい。それがうまくいかない場合には短縮もあり得る、そういう意味規定でございます。
  73. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 ちょっと戻りまして、この使用料の問題なんですけれども、貸しレコード側が六月二日から暫定法が生きてきて使用料をJASRACに払おうとする、協議が整いましたから。しかしJASRAC側は、今レコード協会もだめ、芸団協もだめというときに、うちだけがもらうわけにはいきませんと、こう言っているように聞いております。  そういうふうになりますと、本当に大変なんだなと思うんですが、どちらにも払わない。そうしてその後法が出るまでの間に十月なり十一月なり、ぎりぎり十二月なりに協議が整ってお金が決まった。まさか六月二日からお金払いなさいというふうに遡及させないんだろうなと思いますけれども、その辺はどうですか。といいますのは、高校生、大学生が行きます。幾らで借りるんですか、今までどおり二百五十円ですと。そして、もしかすると著作権料を払わなければいけないと思いますから、あそこに幾ら、ここに幾ら、ここに幾ら。幾らになるとも決まってないのに使用料を上乗せして貸すなんということはできないと思います。そんなことを言ったら借りる人が怒ってしまいますよね。そしてどんどんどんどん貸し出して何カ月か過ぎた。話し合いました。既にもう借りているときには現行のお金で貸しているのに、協議が整った段階では使用料を上乗せして、その分ずっと払いなさいなんて、そういう遡及するお金の取り方はないと思いますが、いかがでしょう。
  74. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ただいま申請が出ております著作物使用規定は、文化庁長官認可します場合に、六月二日から効力を発するものとして認可するわけでございますので、六月二日からはその料金に従って使用料が支払われるという状態を想定しているわけでございます。  今、粕谷先生のお尋ねは、著作隣接権者側の話し合いがつかない場合に、JASRACの場合でも取れないのではないかというような意味の御覧間でございましたが、私ども仮に著作隣接権者側の話し合いがつかなかったとしても、著作権だけに関しましては六月二日から現実に機能するというぐあいに理解をしているわけでございまして、その意味では多分六月二日からの使用料金といいますか、レンタル料金自体が著作権使用料あるいは一著作隣接権使用料はまだ金額不明ですけれども、そこを想定した形でのある程度のレンタル料のアップは、私はあり得るだろうと考えておりますし、隣接権の話がつかないから著作権の方は金を払わなくてもいいんだということにはならないと思っております。
  75. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私が伺ったところでは、JASRACの方が遠慮されているんですね、やっぱり強大な力を日本レコード協会が持っているわけですから。そこらがうんと言わないのにこっちだけ先行してということにはならないのではないかというふうに言っているということを聞いているわけです。取れないとか、そういうことではないんですね、力関係だと思います。  そうしますと、JASRAC側が、では六月二日からもらいたいということになれば、取り決めに従って上乗せをして貸しレコード商業組合はお金を取る。これはそのときに一人一人に説明をして、上乗せするか、自分のところの経営合理化で今までどおりに貸すかは別として、説明をするわけですから、一千万の会員に説明するというのは大変な著作権に対するオルガナイザーという役割を果たすわけですね。非常に大きな教育の役割を果たすというふうに思います。  先ほどから聞いているのは、私はそうすると隣接権者ですね、レコード協会と芸団協の間に、もし十月なり、十一月なりに話し合いがついたということになったら、六月からということにはならないのではないかということを伺っているんです。ついた時点からの上乗せになるのじゃないでしょうか、どうでしょう。
  76. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 私、先ほどお答え申し上げましたのは、六月二日からJASRAC側と貸しレコード側とで契約が締結できるかという問題はちょっと別だと考えております。  と申しますのは、通常の場合、著作権者著作隣接権者三者の許諾をとって使用するという形態になろうと思いますので、JASRACは多分許諾を出しにくい状態が、もし話がつかなければそういう事態が起こり得ると考えております。  ただ私が申し上げましたのは、その場合、仮に話が何カ月か後に延びたとしても、JASRACに関しては六月二日にさかのぼって使用規定に定める料金をちょうだいするという形になろうという意味で申し上げたわけでございます。  そこで、ではその場合に隣接権者側がどうなるかといいますと、これは現実営業をやって、しかも後から決まった料金は高くてそれは払えないなんてことがあり得るわけでございますから。そこは暫定措置としてその間の措置は当然貸しレコード側の営業の成り立つ範囲内においてさかのぼっての料金徴収ということになろうと思います。  いずれにしても、話し合いがつかなければ料金の支払い義務がなくなるということであれば、貸しレコード側は必死に頑張って、延ばせば延ばすほど払わなくて済むのだから得をするということになるわけで、それはやはり困るわけでございまして、さかのぼった場合の金額の問題というのは、その手打ちができた時点でさかのぼった料金は幾らであるべきかということをある程度想定できると思いますし、また貸しレコード側も六月二日からの営業に当たってレンタル料金については当然支払うべかりしものというのを想定した形で進められるんじゃないかと考えている次第でございます。
  77. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 時間が来ましたので終わります。
  78. 田沢智治

    理事(田沢智治君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時十五分開会
  79. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、著作権法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  80. 久保亘

    ○久保亘君 文化庁御存じだと思いますからお尋ねいたしますが、レコードが再販価格維持制度になっている国は日本以外にどこがございますか。
  81. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 私どもの知る限りにおきましては、外国ではこのような制度は余り採用されていないと聞いております。
  82. 久保亘

    ○久保亘君 そのこととも関連して、レコードが消費者のいろんな動向といいますか、ニーズというものと関係を持ちながら値段がある一定の幅で動いてくるというのではなくて、どのような曲であろうと何であろうと、その盤の種類や大きさによって値段が決まっておる、そしてこれは、どこで売られても動かないというところに、一つレコード業界の今の営業実績に問題が出てくる点があるんじゃないかと思っておるんですが、そういう問題を離れて、レコード業界は一方的に営業実績の低下をレンタル業の進出にありと、こういうことで考えておられるようですが、文化庁はこの法改正に当たっていろいろ調査をされる中で、レンタル業界とレコード業界との営業上の相関関係というのをどのように分析されたんでしょうか。
  83. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) レコード協会側におきましては、貸しレコードによって自主的にレコードの生産枚数あるいは販売額が減少したと主張しているわけでございまして、私ども考え方といたしましても、その精密な分析はできませんが、たまたま、昭和五十五年に貸しレコード業がスタートしたその時点を境にしてレコードの発売枚数、売り上げが落ちていったということは事実でございますし、もちろん、録音による被害という観点から見ますれば、FM放送等による、いわゆるエアチェックと呼んでおりますけれども、放送を録音するというような分野もあるわけでございますが、一概に、貸しレコードによって借りた人が家庭ですることのみが主原因と思いませんけれども、ある程度の数字の上から見ますと、そういった相関関係が出てくるのかなというような理解の仕方をしておる状況でございます。
  84. 久保亘

    ○久保亘君 私は、どちらの肩を持つというようなことではなくて、できるだけ実態を正確に知って議論すべきだと思いますものですから。  例えばレコード業界の方では、レンタル業界の進出は小売店の大量り倒産につながり、営業成績の上では深刻な影響を及ぼしたと、その影響は三割にも達するというような意見もございますね。ところが、レンタル業界の方では、そのような深刻な影響を与えているとは思われない、そして、もし営業面での業績の低下というのがあるとすれば、それはレンタル業界がもたらす影響ではなくて、他に大きな原因がある、そしてその実証として、一つは、通産省の「レコードレンタル業の影響度に関する実態調査報告書」を例示しているわけですね。これでは、レンタル業界の与えた影響度というのは一〇%程度というのを挙げているんですが、しかしこれに対しレンタル業界の方は、レンタル業の普及によって全体的に今度はまた音楽や文化に対する国民全体の関心度が上がってきているから、そういう面ではプラス、マイナスあるんだという見方もしているわけです。  それで、これをどう見ていくかということになれば、私はこういうことも一つ考えるんです。レンタル業の出現というのがレコード業界の実績に影響がなかったとは思わない。しかし、その大きな影響をもたらした流れといいますか、そういうものは、考えてみると、レンタル業が始まりますのは高度経済成長の終わりと軌を一にしておるわけですね。そして今度はレコード業界の営業実績が低下し始めるのもまた低成長時代の始まりと符牒を合わせておるわけです。だから、経済の大きな変化の中で起こってきている問題、それを一つに余り凝集してあれが原因だと、こういうことで議論をしているとこの問題はなかなか解決しにくいんじゃないかという感じがいたします。そして今度は消費者の側から見ますと、高度成長から低成長時代に変わるにつれて消費者の動向が大きな変化を来している、そしてその消費者の動向の変化がまたレンタル業界の出現を求めた、そういう傾向を生み出したということもまたあるのではないかという感じがするんですが、こういう全体の動きの中でとらえていくということでないと非常に問題がややこしくなる。  そこでお尋ねしたいのは、レンタル業界とレコード業界が両方がいろいろな機関誌を私どものところへも届けてくれます。また、両方の意見もいろいろな機会に聞くことがございますが、やっぱりこの両者に著作権法改正に当たっての共通の理解というのがなかなかないんじゃないか。この前、参考人でお見えになりました高宮さんはレコード業界でも大変信頼の厚いお方だと聞いております。しかし高宮さんも業界を代表されてここで発言をされる場合にはかなり厳しかった。レンタルに対して見方は厳しかった。また、レンタルの方を代表している牛久保さんも、レンタル業界の立場というものをレコード業界とは非常に違った立場で主張された。この共通の理解というものをつくってやることができるのはどこか。これはこの法律の立案者である私は文化庁ではないかと思うんですが、そういう面ではどういう努力をされ、その共通の理解というのはどの辺まで来ているとお考えになっているんですか。
  85. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) おっしゃいますように、レコード協会側あるいはレコードレンタル商業組合側の認識に相当なずれがあることは事実でございますし、もともとこの問題が起きました時点からのいろんないきさつ等もございますし、お互いにそれぞれの理屈は主張されるわけでございまして、双方の主張がそれぞれ全部正しいとは私ども思いません。しかし、その中にはやはりそれなりの真理も含まれているであろうと。  そういった点で考えているわけでございますが、具体的には両団体間の問題というのは御承知のように訴訟を提起して以来のお互いに敵味方の関係にあったわけでございまして、文化庁といたしますれば、レコード業界側に対しましてはもう少し貸しレコードに対する認識、理解を深めてほしいと。一方、レンタル商業組合側に対しましても、権利者サイドの考え方も十分酌み取ってほしいということで、個別的には両団体に対しまして数重ねましていろんな指導、助言等は申し上げてまいったわけでございまして、そういう意味では、暫定措置法の成立を契機といたしましてこういった法秩序ができ上がった中で、お互いにお互いの立場を尊重し合いながら共存共栄の道を探っていこうという方向性が現在出ているわけでございまして、それは、話し合い自体は、お互いに公式のテーブルに着いた時点は遅うございましたけれども、そういう方向へ向かって両者間の努力が現在積み重ねられているわけでございます。その間、私どもは、その両者の間には入りませんでしたけれども、個別にレコード協会側あるいはレンタル商業組合側といろんなお話し合いで、相互の意思疎通のパイプ役としてのいろんな話し合いの糸口あるいは取り次ぎというような意味での機能は果たさしてきていただいていると考えておりますし、また今後ともそういった力を尽くしたいと思っておるわけでございます。
  86. 久保亘

    ○久保亘君 それでは、少し今度は具体的に文化庁考え方を聞いておきたいと思います。  午前中も安永さん、粕谷さんの方から御質問ございまして重なる点もあると思いますけれども、レンタル業界というのは新しい業種と言えば言えるんですが、レコードレンタル業というのは現行著作権法ではこれは違法で規制を受ける対象なのか、現行著作権法上では認められる業種なのか。それは文化庁はどうお考えになってこられましたか。
  87. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 午前中にもお答え申し上げましたが、この問題は昭和五十六年以来訴訟になっている事柄でございまして、文化庁としてはそれを、訴訟係争案件につきましてはコメントを差し控えてきたわけでございます。しかし、既に三月に裁判長の和解の勧告が出ておりますので、解決の道へ向かう段階でございますので、ある程度の感想を申し上げさしていただきますれば、レコードを貸すこと自体は現行著作権法では明文の規定を設けておりませんので、そのことをもって直ちに違法だと、著作権法に反するということはかなり言いにくいと思います。しかし、例えばレコードを貸し、その店においてダビング業、高速ダビング、いわゆる録音行為を現実に行っている、リンクしている場合には当然に、録音を前提として貸し出しているという状態の場合には、これは相当な言うなら一連の行為としてとらえる中の一つの行為、分野ではございますけれども、レコードレンタルが複製に、録音に直接結びつくという視点だけ見ますれば、一種の録音物作成に手をかしているというような観点からしますと、現行著作権法上も大いに疑義があり、むしろ違法性の疑いが強いというぐあいに考えられると思います。ただ、あくまでもまだ、和解勧告は出ておりますが、係争中の事柄でございますので、厳格な断定は避けさせていただきたいと思います。
  88. 久保亘

    ○久保亘君 裁判所の判定ということを言われますけれども文化庁がこの裁判所の判定の基準となる法律を立案した役所なんですね。だから、文化庁がどう解釈するかということが非常に重要だと私は思うんですが、文化庁でこういうことをおっしゃっているというのが業界のパンフレットなどに出ているんですね。「録音テープを公衆に貸与する事自体は、それが有償であると無償であるとを問わず、著作権及び著作隣接権を侵害するものではない。」、これはかって文化庁が述べられたことに間違いありませんか。
  89. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) かつて図書館からの照会がございまして、そのような回答をしたという事実はあるようでございます。
  90. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、録音テープというものを広義に解すれば、これはレコードも私はその範囲に含めて解釈できると思うんです。そうすると、「録音テープを公衆に貸与する事自体は、それが有償であると無償であるとを問わず、著作権および著作隣接権を侵害するものではない。」ということになれば、現行著作権法上はレコードレンタル業はこれは容認せらるべきものであるという解釈になりますね、このかつての文化庁の出された見解に従えば。そうなりませんかね。
  91. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 御承知のように著作権法はすべての著作物利用行為をカバーしているわけでございませんで、著作物利用行為のうち、経済的効用性の高いもの、あるいは権利者の利益を甚しく損ねるおそれのあるもの、そういったもので権利内容を列記しているわけでございます。そういった点で、著作権法の四十五年制定当初におきましては、この貸しレコード業なるものは存在してもいなかったし、また想定もしなかったということは事実でございます。  そういった業種が出てきました場合に、今の著作権法ではカバーし切れない、しかしそれは放置してよろしいかというと、著作権者の利益を損ねるという観点からの今回の改正提案でございまして、現行法上はもちろん今申し上げたように、貸す行為のみをとらえて見れば法律上の規制はないと、しかし貸すことによって結果的には大量の複製が行われているという実態を考えたとき、そこの相関関係をどう理解するのか、その録音行為に重点を置いて考えるのか、あるいはまた実態的に見て、そのままで著作権を手直ししなくてもいいのか、いろんな議論があり得るわけでございまして、例えば現在の法律のもとにおきまして、今後別の新たな利用態様が出てまいりましたときに、法律に書いてないからそれは適法で許されると言えるかどうか、そこのところはまたそのケース・バイ・ケースで判断さるべき事柄であろうと思います。
  92. 久保亘

    ○久保亘君 文化庁が先ほど申し上げたような見解をお出しになったころは、レンタル業なるものは存在せず、想定もできなかった、それは事実そうだと思いますね。しかし、そういう著作権法に違反せず、法律の条文上容認せられる業種として出現してきた、しかしそれが著作権をめぐる問題でいろいろやっぱり調整を行う必要が生じてきた、そこで暫定法をつくり、法改正をやると、こういうことになってきたわけですね。そうすると、その根本で考えなきゃならぬのは、認められざる団体を規制するというものではなくて、著作権法上認められる業界といいますか、業を著作権法の中で秩序立ててやっていけるように調整をする、こういう目的で今度の法改正は行われる、そういうふうに考えでいいですか。
  93. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 御承知のように、著作権は国際的にも百年の歴史を持っている制度でございまして、一八八六年にできましたベルヌ条約におきましても、当初は複製権だけを規定していた。それがその後放送、映画、レコード、いろんなメディアが発達することによりまして、放送権あるいは映画化権あるいは録音権と、いろんな権利が追加されていったわけでございまして、それもある意味では利用手段発達に伴いまして、後追いで権利がつくられていった。その趣旨とするところは、著作物著作権着の許諾を得て適正な使用料で正当な利用関係が形成されていくということで、その手段が出現したから放送を禁止する、あるいはレコード業が出現したから録音を禁止するという形態ではなくて、お互いに著作権立場も尊重しながら産業の発展を期していく、そういう考え方に立っていろんな法制度が設けられてきた。その意味におきまして、今度著作物の貸与権という創設に伴いまして、今後起きる、あるいは既に存在する貸与業につきましても、著作権者立場を十分尊重しながら著作物の利用を図り、かつそれが著作権者の究極的な利益、経済的利益にもつながると、そういう形態運用されるべきことは、もちろん同じような考え方であるわけでございます。
  94. 久保亘

    ○久保亘君 そういう立場に立てば、この許諾権というのは、レコード業の側、レコード協会の側が基本的権利として所有するものと解すべきではなく、許諾権というのは、両者の秩序ある著作権をめぐる問題を解決していくために、使用料を発生させる根拠として許諾権という権利が設定されるもの、こういうふうに解釈した方がいいんじゃないですか。
  95. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 基本的には久保先生おっしゃるとおりだと思います。ただ、いろんな利用態様の中で許諾権を認めている趣旨と申しますのは、すべて利用の許諾は与えるべきであるということにはつながらないわけでございまして、これはケースによって違いますが、例えば、現在音楽著作物でも基本的には全部許諾を出すシステムでございますが、例えばオペラ楽曲とかオーケストラ楽曲のようなものにつきましては、許諾を与えないで、楽譜を自分のところで持っておいて、そしてレンタルによってそれは利用させると、つまり複製の許諾はしないと、物を貸すことによって経済的な利益を得ると、そういうようなシステムもあるわけでございまして、いろんな利用態様がストレートに全部許諾を与えて全部使えるようになるかと言いますと、ケースによりましては、著作権者にとってライセンスを出すことがかえって自分たちに損失になるというようなケースについては、ライセンスを出さないということがあり得るわけでございますので、基本的に、原則的には久保先生のおっしゃるとおりでございますが、例外はあり得るということでございます。
  96. 久保亘

    ○久保亘君 これは、文部大臣もこの著作権の問題には非常に深くかかわっておられて、大変造詣の深いお方だとお聞きしておりますが、この許諾権というのは、今、文化庁の方がおっしゃることもわかりますけれども、レコード協会とレコードレンタル商業組合との関係で見る場合には、これは余り例外が存在するものとは考えられないんだけれども、どうでしょうかね。
  97. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) このケースは非常に難しゅうございますのは、要するにレコード協会側の立場といたしますれば、レコードをつくる、つまり音源をつくるためにいろんな知恵、工夫、あるいは労力、あるいは経済的投資等が総合されて、まあ、ある意味では経済的にペイするようなレコードの音源をつくっていくわけでございますので、それが複製物を販売する、つまり具体的な商業用レコードとして発売して、その収入によってまた次の音源をつくっていくというプロセスを経るものでございますので、ある意味では、レンタル行為自体は、借りて聞くというだけの実態であるならば問題ないわけでございますが、実態は借りた人が家庭コピーをされるという実態が存在する以上、そのことによって複製物の販売が利益が上がらなければ、次のレコード音源をつくろうにも収入源がないという状態ではこれは困るわけでございまして、そういう意味の、つまり音楽創造のリサイクルという観点から、やはり経済的投資を回収するための期間はしばらく待ってほしいというのがあるのは、主張として私はある意味で当然なことではないかと理解もしてるわけでございます。
  98. 久保亘

    ○久保亘君 いや私、期間の問題ではなく、期間とか使用料の問題について両者が合意して共存すべきものだということを言ってるんですね。そうでないと、許諾権というのが一方の側に一〇〇%握られておって、そしてこちらの要求どおりいかぬなら貸さないよとか、売らないよとかね、そういう、権利が上下関係で存在し過ぎることは、これは文化や音楽普及の上からも私は余り望ましいことではない。共存共栄という立場に立てば、原則として許諾権というものは、使用料やその使用に当たっての条件を発生させるための権利として設定されたものである、こういう理解に立っていかなきゃいかぬじゃないか、こう思うんです。  時間がないのでね、最後に聞いておきたいのは、先ほどもお話がございましたけれど、両方が合意に達しない、しかし法律の施行日は既にやってきたと、こういう場合にどういう裁きをされるのかね。これは例えば、合意に達しなければレンタル業は全部店じまいさせられるのかね、1そうはいかぬだろうと思うんでね。そうかといって今度は、それなら合意に達しないようにして、今までの権利をそのまま継続させるということになっても、なかなかこの法を改正した趣旨に沿わぬと、こういうことになるんだけれども、そこのところの裁定は公正に文化庁が判定を下せるのかどうか、どうですか。
  99. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 暫定措置法のもとにおきましては文化庁の権限が書いてございませんので、法律上の権限はないわけでございます。例えば今回の改正案のような裁定制度その他もございません。ただ、事実問題として、来年の一月以降、この法律が成立いたしますれば来年の一月からは改正された著作権法が施行されるわけでございますので、そこででき上がるルールというのを遠く見通しますれば、六カ月のこの暫定期間の間でいたずらにトラブルを発生させていくことは両当事者も考えていないと思います。  そこで、合意に達するのが六月二日を過ぎた場合のことでございますけれども、その場合に達します合意というのは、もちろん暫定措置法下でこれからどうするのかという合意であると同時に、六月二日から経過した期間における過去のその合意に達するまでの期間の取り扱いはじゃどうしましょうかということも含めた合意に当然なるだろうと思いますし、今までの著作権紛争につきましても、これからどうするということと、じゃ今までのやつはこの程度でこうしてくださいという二つの条件が重なって通常合意に達しておりますので、恐らくは同じような合意に達するであろうという考え方を持っているわけでございます。
  100. 久保亘

    ○久保亘君 いずれ、私、念を押しておきたいのは、その合意に達せざることによって、誠意を尽くしてなお合意に達しないことによってレンタル業界の方が一方的に営業できなくなるというようなことはございませんですね。
  101. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 私ども権利者サイドから受けております感触といたしますれば、録音業務も一緒に実施しておりますいわゆる高遠ダビング業を併営しております貸しレコード店については六月二日以降許諾は出さない。しかし、そのほかの、高速ダビング業を併営してないで、権利者側と権利所有をするという意向を持って話し合いに乗ってくる貸しレコード側につきましては営業が継続できるように私ども立場といたしまして権利者サイドに指導したいということを先ほどの粕谷先生の御質問にもお答えしたわけでございます。
  102. 高木健太郎

    高木健太郎君 大臣が二時にはここをちょっとお外しになるということでございますから、最初に大臣にお伺いをしておきたいと思います。  今度の著作権の問題は、非常に文化的な色彩の強い反面、もう一方では非常に物質的な利益あるいは商業的なにおいの強いものである。その意味からいうと、余りここでは今までには珍しい法案の一つだろうというふうに思います。  私、何回か皆さん方のお話を聞いておりまして、私なりに理解したことをちょっと申し上げますので、間違っておりましたら御訂正の上、大臣のお考えもお聞きしたいんですけれども、今度のレコードの方でございますけれども著作者という人が、作曲、作詞をする人がある、それから実演者というようなJASRACという団体がある、そして隣接権者のレコード会社がある、それから利用者があったんですけれども、その間に貸しレコード会社というのが挟まったということだと思うんですね。それで、著作者という側からいいますと、物質的に報酬を受けたいという気持ちももちろんあると思いますけれども自分の思想なり、あるいは自分の気持ちなり、あるいは自分のつくったものなりができるだけ多くの人に影響を与えるという、かなり精神的な報酬を望んでおられる面も非常に多かろうというふうに思うわけです。また利用者の側からいいますと、その音楽を聞いて楽しむとかという、あるいはその音楽の中に含まれている思想だとか、心だとか、人間性だとか、そういうものをそこから酌み取ることによって自分自身が文化的に成長していくという、いわゆる著作者利用者の間は割と心の面が、精神面が多いんじゃないかなと思うわけですね。ところが、その間にJASRACであるとか、JASRACにも幾らか心の面があるでしょうけれども、――ちょっと間違えましたですが、著作者の方はそういう心の面が多いが、その間に挟まったレコード会社と、それから貸しレコードというところは、全くもう物質的なものしかそこにないんじゃないかと思うんですね。現在この法律で問われているのは、一方では最初につくった人、いわゆる著作者あるいは実演者のある部分を含めて文化的のものが非常に大きくなっておりますけれども、法律の大部分は何か実益がどういうふうに配分されるかという、その配分的な不公平があってはいけないというようなことになっているように思うわけですよ。だから、私はその配分はいろいろ両者のお話し合いで貸しレコード屋さんとレコード会社の方でいろいろお話し合いになった上、あるいはそこに文化庁の長官も時々お入りになるんでしょうか、そうやっていつから再生していいかとか、何日間貸すかとか、値段はどうするとかというお話し合いができると。ところが、著作者としましては、やはりできるだけ広く自分の思想がこう行き渡るということにも非常に大きな欲望というか、希望を持っておられるのじゃないかなと、こう思うわけですね。きょうの私はレコードの方をお聞きするよりも、むしろ著作物、いわゆる文書、著書、その著作者と、それからいわゆる読者、そちらの方のことをお聞きして、その間にコピー会社、コピー業者というのが挟まっておりますから、そういうものとの関係を主として後でお聞きいたしますけれども、私は著者というものは自分の思想あるいは自分の考え、心、精神というようなものをできるだけ多くの人によく理解してもらいたいということが私は非常に大きいんじゃないかと、こういうふうに思うわけです。そういう意味では、どこでどういう利益配分があろうが、そういうことよりも自分の思想をできるだけ広げてもらいたいという、しかも、今度はそれを利用する側の読者とか、そういうものにしましては、こういう思想というものを、この人が初めて我々にそういう思想を与えてくれたという意味で、その著作者というものを尊敬するなり、その人に対する感謝の志なり、そういうものが報酬となってあらわれるものじゃないかなというふうに思っておりますが、大臣はこの五つの団体がありますかね、いわゆるJASRAC、芸団協、それから隣接権者、貸しレコード、利用者と、この五つの関係を私が考えておりますのとどういうふうにお考えか、先ほども何かちょっとそういうお話がございましたね、お子さんの話まで出ましたが、原則的にはどういうふうにお考えであるか。それから、また、文化庁で、あるいは文部省で、こういうものを取り上げたという、それのことについて大臣のお考えを聞いておきたいと。これは繰り返しになるかもしれませんけれども、最初にお聞きしておきたいと思います。
  103. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 私も学者じゃありませんし、専門家じゃありませんので、極めて現実的な対応しか実はできなかったんです。先生、今御指摘になりました中で私も大変同感なのは、例えばいい音楽をつくる、いい流行歌なり、もうちょっとわかりいい演歌でもつくる、「矢切の渡し」ができる、これが恐らく売れようと、レンタルでコピーしょうと、「矢切の渡し」が日本じゅうをずっと席巻していく。これは石本美由起さんの作詞者を初めとして作曲家も、歌い手さんもうれしいことだろうと思うんですね。ですから、私はそういう意味で、例えば出版物でもそうだと思うんですが、ちょっと安永先生の午前中の御質問に逆らって、安永先生におしかりをいただくかもしれませんが、勝手にとってきてコピーして、そのコピーを資料に使って、高木健太郎先生がこういうふうに書いておられますよというそのコピーをどんどん使っていくことも、ある意味では高木先生、喜びに通ずるところもあると思うんですね。ただ、それを売って商売するといいますか、利益を得るということになったんでは、これはもう安永先生が午前中非常に強いお気持ちで、守ってあげなきゃならぬという御指摘がありましたが、そういう意味では、私は権利というものはどんなことがあっても利益に通ずる商売上の行為として人様に無断でやる、これは断じて排さなきゃならぬ、こういう基本的な考え方があります。  そこで、これ今私は大臣という立場で言いますと、さっきから加戸次長も裁判係争中で、ちょっと文化庁として言いにくいことがありますというんで、これも私も大臣という立場でああだこうだという断定はできませんので、当時、暫定法を取りまとめたときに、さっきもちょっと粕谷さんのときにも申し上げましたが、まず私は、レンタル業がきたのでレコードの販売業が成り立たない、ここからスタートしていると思うんです。そのことが販売業とレコードをつくる製作者との長い関係、その関係――私はこれは想像ですよ、レコード製作者も必ずしも一〇〇%レコード販売店のおっしゃる気持ちにはなっていなかったと思う。だけれども、これは長い自分たちのっくったものを売ってもらっているというお得意様でもあるわけですから、販売店の気持ちというものを十分に製作者は酌んでこの問題に対応してこられたと、私はこういうふうに思います。  だから、商売ができなくなったから、あの商売をやめさせろということは、これは通産行政のことであって、文化庁は香り高い文化を抱えでそんなことを私はやるべきではない。しかし、それを征伐できないから著作権で縛れ縛れ、征伐しろと、こう言って我が党に要求してこられたんです。もちろん皆さんの政党にも行かれたと思うんです。  私は、これは断じてだめだと。だから私は、まず初めにレンタル業という商行為ありき、私はこれは認めざるを得ない。その中でどうルールをつくっていくのか。私はこの考え方でなければこの問題は解決しないだろう、当時そういう気持ちを私は持って、そして先ほどから久保さんのお話にもございましたように、正しくお互いに秩序づくりをしよう、これしか解決の道はないだろう。JASRACの著作権を持っておられる方々も、本当を言えば今高木さんおっしゃったように、逆に貸そうと売ろうと、自分たちの表現したものがどんどん出ていくことは、本当は喜びに通ずるところであるが、これも自分らが幾らいいものをつくったって、レコード製作者がつくってくれなければどうしようもないことですから、これも長い昔からの関係で、何となく販売業、製作者そして著作権者-この中にはもちろん実演家も入るでしょう、みんなが一体になってレンタルレコードをやっつけろという格好になってきたのが一つの経緯だと思いますので、私は、レコード商には大変申しわけないが、外していただいて、そして著作権というもので物を考えるなら、著作権中心に考える、著作権と直接かかわり合いある団体の皆さんが正式な秩序をつくってもらうんだと、こういう考え方で暫定法をつくったわけでありまして、したがって、私も先ほど申し上げたように、そのことが衆議院、参議院で御論議をいただくということも、また国民的な合意にもなり、また国民の関心も生むことにもなる。  そういう意味で、文化庁としては、当時、私はちょっと及び腰であったということに対しては、党の立場で非常に不満だったわけですが、しかし国会で論議されたというこのことが、そして暫定法が国民全体の合意の中でこれが成立をしだということが、文化庁が一歩進むことになった。そういう意味で、私は衆参文教委員の皆さんの大変大きな功績がある。私はこういうふうに考えているわけでありまして、これから新しい秩序づくりをみんなで、この法律や国会の論議というものを踏まえて皆さんが考えていただきたい。あくまでも著作権というのは商売との関係ではないんだ。著作権というのはあくまでも自分たちのつくったものが、さっき次長が言いましたように、リサイクルされて、そして次のまた新しいものを創造していこうという意欲につなげるようにしてあげることが大事だ。あるいは製作者側もそのことによって利潤を上げて、できたレコードが全部売れてもうかるわけじゃありませんから、また次のレコードをどんどんつくっていこうという意欲を持ってもらえるようにしてあげるということが、文化を守り、そして文化を香り高いものにしていくというふうに私は考えているわけで、そういう意味で基本的には創作者の経済的な利益あるいは人格的利益を保護していくことなんだ、こういう観点でこの問題を私は整理というと大変おこがましいことでございますが、大変難しい問題でございましたから、特に当時各党の皆さんの御意見も伺いましたけれども、社会党さんの中も、公明党さんの中も、民社党さんの中も、共産党さんの中も、みんな意見がばらばらでした。こんなに皆さんのお考えが違うんだろうということで、とても私は興味深い問題として、まずは商売はどっちも認めてあげなければならぬ、問題は文化がどんどん輩出し、創出できるような国でなければ文化国家ではないんだと、そういうことの立場でまとめをさしていただいたわけでございます。  ちょっと回りくどい話でありますが、大変御質問が難しいものですから、当時の感想などを含めて申し上げさせていただいたわけでございます。
  104. 高木健太郎

    高木健太郎君 私は言葉が全然間違ってまして失礼いたしましたが、それほど私はよく知らないんです。全体アバウトのことしかわからないんですが、背の歌を歌う人あるいは作曲家も一つ一つ書いたのが、印刷術というものができて、その間に利益配分が行われた。また印刷物でも印刷所ができて、それが多くの人に見られるようになった。そこでまた利益配分というものが起こってきた。今度はそこに貸しレコードというようなものができてきた、あるいはダビングですか、そういう高速ダビング機器というものが文化の発達とともにできてきた。これはやむを得ない一つ方向であろうと思うんですね。だから、それで悩まされてこの法律をつくらざるを得なかったというふうになっているので、その間が今まであるものが力が強いんだとか、新規の、新参者は弱いんだというんじゃなくて、それは文化の一員としてそこで働いている者であると、こういうふうなお考えで今度の法律はおつくりになったろうと思うんですね。だから、著作者もそれによって得をし、レコード会社もまた貸しレコード会社も、利用者も全体が文化の恩恵にそれによってあまねく浴する。その間に利益配分をうまくするということで、私はどんな法律で、どんな利益配分すれば一番いいかということはわかりませんけれども、これは時代とともにまた変わっていくと思いますので、その点をひとつお考えをいただいて、この法律の運用をひとつ全体をお考えになった上でこれを運用していっていただきたい、それだけの希望を申し述べておきます。  大臣はもうそろそろお出かけになる時間でございますので、私の希望を申し上げまして失礼いたします。  それでは、次に次長にお聞きします。  私は、主として著書あるいは原著といいますか、そういうもののことについてお尋ねしたいんですが、このごろ複写機とかコピー機、そういうものがたくさんできてきまして、いろんな出版物があるいは学術的な専門雑誌、そういうものもコピーが簡単にできるようになりまして、我々研究者も非常にこれによって大きな恩恵を受けているわけでございます。しかし、書籍、雑誌のコピーが広く行われることになって、学術的なものを中心に出版物の販売に影響が出てきているのではないか、こう思われますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
  105. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 御承知のように、いろんな複写、複製手段発達しますれば、それに伴って当然著作物であるいろいろな学術文献その他もコピーされるわけでございますから、本来ならば学術論文あるいは学術雑誌等を購入すべき方々が安易にコピーが手に入れば出版物を買わないという状態が起こり得ることは当然のことであろうと思います。  そこで、こういった実態について、私ども十分に調査をしたことはございませんけれども、自然科学書協会というのがございまして、そこで一応の会員を対象に行った調査がございまして、これは学術雑誌の発行部数の増減といった観点での調査でございまして、昭和四十七、八年の時点の指数を一〇〇といたしますと、発行部数が昭和五十七年では約八五ということで、十年の間に一〇%程度の発行部数の減少を来しているということは、今の学術、いろんな科学技術の進歩等を考えますれば、あるいは読者のニーズ等も考えれば発行部数は当然増加傾向に向かうべきところが減少方向であるということは、とりもなおさずこういったコピー複写機器等の発達によりまして、コピーが手に入るから学術雑誌は買わないというような事態が出てきているんじゃないかということが当然に推察できるところでもございます。
  106. 高木健太郎

    高木健太郎君 私らの経験でございますが、日本の書籍はもちろん今おっしゃったように一〇%ぐらいの影響があるかもしれないということでございますけれども外国の書籍というのは非常に高いわけなんですね。特に外国為替との関係で極めて高くなることがあるわけです。そういう意味では、全部じゃございませんが、部分部分をコピーするとか、あるいは御存じのような上海版というようなものが出ているわけです。外国図書についてだけお調べになったことはございますでしょうか。
  107. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 外国図書についての調査はございません。ただ、私ども著作権世界でおりますと、特にアメリカで発売されるものが入ってくるわけでございますが、これは日本ではかなり高い料金で入ってくるわけです。ところが東南アジアに向けまして、いわゆる開発途上国の場合には経済的にそういうのが買えないだろうということでエーシャン・エディションということで-アジア版ということでございますが、日本に来るよりも非常に安い価格でエーシャン・エディションが東南アジアの諸国に出るということで、かってはそういったエーシャン・エディションを日本へ輸入する、いわゆる海賊輸入業者というのがいたわけでございますけれども、そういうような形で――日本は先進国でございますので安い形ではこちらには売ってくれない、輸入さしてくれない。そのために実際に学術研究者の場合にもコピーをとるということが少しはやっていたという時代もございましたし、また現在でもあるだろうと思います。そういった点で正確な数字の調査はございませんけれども、恐らく日本の国内学術論文に比べまして特に外国から輸入された学術文献についてのコピーの頻度は高いのではないかというのが私たちの推理でございます。
  108. 高木健太郎

    高木健太郎君 もうエーシャン・エディション出ているかどうかわかりませんが、学生は、あるいは若い助手の人なんかではエーシャン・エディションをよく買っていたわけです。それでその著者が来たときに会ってサインをしてくれと言って随分感情を害しだということも聞いているわけなんです。しかし、これなんかは今後どうなるのか私わかりませんけれども、最近はないんでございましょうかね、エーシャン・エディションというのは。  そういうことですからして、外国図書が例えば本屋を通じますと、今ドルが二百三十円ぐらいです。それがそういう外国図書の輸入の本屋によりますと三百円なんですね、ドルが。こういうことは何とかなるんでございますか。
  109. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) これは要するに大量販売のものでございませんから、限られた部数を輸入するということになりますと、そのためにかかる経費が相当高くつくということで、一ダースなら安くなるということわざがございますけれども、少ないものを輸入しようと思いますればコスト高のためにどうしても料金は高くならざるを得ない。そうでないと実際には輸入してももうからないということになるわけでございますから、その傾向はいわゆる経済法則からいいましても改められる可能性というのは私は確度的には低いのじゃないかという感じがいたします。
  110. 高木健太郎

    高木健太郎君 二百三十円でもうかなり長い間ドルは下がっているわけですが、それでも同じように三百円というのは使用者側にとりましては大変不便なことであるわけなんです。  それはそれとしておきまして、貸しレコードの場合、貸しレコード屋ができるとレコード小売店の売り上げが二、三割減ったということが出ておりますが、貸し本屋さんの場合にその近隣の本屋さんの売れ行きが下がったということはございますか。いわゆるコピー業者じゃなくて貸し本屋さんとそれから小売店ですね。
  111. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) これももちろん調査はないわけでございますが、長年続いた貸し本屋さんのおかげで近隣の新刊本の売れ行きが落ちてくる、あるいは落ちたというような話は余り聞かないわけでございます。むしろ図書館業の発達、いわゆる各地にいろんな図書館ができることによりまして図書館で借りる方がだんだんふえてまいりましたから、そういう意味においての影響というのはある程度はあり得るだろうと思われますが、そのことの相関関係調査結果はございませんし、ある程度勘なり推測で物を言われているんじゃないかと思います。そういった意味でこの分野におきます分析というのはまだちょっとこれからの課題であろうと考えております。
  112. 高木健太郎

    高木健太郎君 この著作権法の三十条に、現在の著作権法ではその三十条では出版物のコピーを著者に黙ってとることは許されないということになっておりますが、この規定の明確化あるいは厳格化を今後やっていきたいというふうに書いてございますが、どういうふうにおやりでございますか、あるいは現在どういうふうになっているものでしょうか。現在の著作権法では出版物のコピーを著者に黙ってとることは許されないということになっているんですが、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  113. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 著作権内容としまして二十一条で「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」という規定がございまして、これは著作物を、例えば出版行為等で印刷製本というようなものも含まれますし、あるいは先生、今おっしゃっているコピーの問題も当然複製権内容になるわけでございますから、原則的には複製権によりまして規制されるわけでございます。しかし、著作権制限規定がございまして、個人が家庭自分のためにのみコピーをとるということは一応許されております。しかしこれは音楽の場合のテープのような場合と違いまして、家でゼロックス、リコピー等の機械を持っている方はまずいませんから、こういうケースはほとんどないであろうと。それから三十一条では図書館で利用者のための複写サービスということで著作物の一部分についてそれを一部提供するという行為が認められております。  それから三十五条で学校等の教育機関におきまして授業の過程において用いる場合には、その授業のために生徒用のコピーをとるということが許されております。  それから四十二条で司法、立法、行政の目的のために必要なコピーをとるということが許されておりますが、今市し上げた三十条、三十一条、三十五条、四十二条等の制限規定以外のケース、つまりそれに該当しない場合にはいかなる場所でいかなる目的であれ、コピーをとることは許諾なくば許されないということは先生指摘のとおりでございます。
  114. 高木健太郎

    高木健太郎君 例えばビデオであるとかテープであるとか、そういうものでいろいろの講演なんかをやられるわけですが、そういうものを文字にするということはどういうふうになっていますか、その権利は。
  115. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 著作在がどんな形であれ自分の意見なり考え方を発表され述べられたものを録音し、それを例えば印刷の活字として製本出版するということは、この世の中に有体物としてある人の考え方なり論文なりを載せた印刷物なりコピーなりをつくるという行為団体は、今市し上げた複製権に抵触するわけでございますので、著作者の理解、了解なしにはできない事柄でございます。
  116. 高木健太郎

    高木健太郎君 そこで、次は新聞、雑誌にいろいろ掲載されます論説あるいはコラムというようなものがございますが、これは転載してもよいということになっているわけで、特別の、例えば署名入りであるとか、転載禁止という条項がなければ普通はそれを転載してもよいということになっておるようですが、そのときに学術的性質のものを除くと、こういうことになっておりますが、その学術的な性質というものはどういう基準で、だれがそれを判断するんでしょうか。
  117. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先生おっしゃいました問題は著作権法の三十九条の規定でございまして、新聞、雑誌に掲載された政治上、経済上、社会上の時事問題に関する論説というのは、他の新聞、雑誌に転載することができるということになっておりまして、代表的なのが新聞の社説であるとか、雑誌の巻頭論文とかいった一つの政治、経済、社会に関します一定の方向づけを持った考え方世の中に広く周知させる必要があるということで、著作権を制限いたしまして転載を認めているわけでございます。  そこで、今先生おっしゃいましたように、「学術的な性質を有するものを除く。」と、つまり論説であっても、こういった学術的な性質のものを除くとしておりますのは、端的に申し上げますと、その社の方針とか、あるいはある政党の考え方というような形で出ているものでなくって、個人が自分の学術的な研究の成果として結果的には一つ方向性を示すものでございますけれども自分の学術的な研究の成果としてつくり上げた作品についてはこの適用を除外しようという趣旨でございまして、具体的には新聞等にも大学の教授であるとか、あるいは時事評論家という方が一定の政治、経済、社会上の問題についてお書きになったものが論評とかいろいろな形で載りますけれども、そういった性質のものは、社説や巻頭言とは違って一つの社の主張というものではなくて、個人の学術的な研究の成果であるということで転載は認められない。転載する場合には、執筆されたその大学教授なり評論家なりの許諾を必要とすると、こういう趣旨で、著作権法上の書き方は「学術的な性質を有するものを除く。」でございますけれども、具体的には書いた人によってこれは学術的なものであるというのが結果的には判断の基準になってこようかと思いまして、その判断するのは最終的には裁判所でございますけれども文化庁としてはこういうような方々、あるいはこういうようなものが該当しますよという一般的な周知をするということでございますし、争いがありますれば、最終的には裁判所の判断によって決められると、そういうことであろうかと思います。いずれにいたしましても、学問上の見地から書かれたものであるかどうかということが一つの決め手になろうかと思います。
  118. 高木健太郎

    高木健太郎君 ちょっと十分私わかりませんでしたけれども、通常発表されたものというのは、公開されたものというのは、その人の名前をつけてだれだれ氏によればと書けばどこでだれが書いてもいいんじゃないかなと、私たちはそういうように簡単に考えておりますけれども、今のようなことをお聞きしますと、なかなかその人に、一々著者に許諾を得なきゃならぬということになると、おいそれと引用はできないというようなことにもなって、それが文化のいわゆる浸透ということには逆行するようにも思うわけなんです。これも一つございますし、もう一つ、例えばある講演者を頼んでそして講演をしていただくと、それを録音をすると、そういうことがございますね。その録音したものをそこに大勢おられる人たちに、あるいは欠席しておられた方にそれをお分けしたいと、できるだけその人の意見を皆さんにお聞かせしたい、これは大学なんかではよくあることじゃないかと思いますけれども、そういう場合には、今のように高速ダビング機というんですか、いわゆるそういうものを持っている業者がいるということは我々にとっては非常に都合のいいことなんですね。それがダビング機がどっかへ行っちゃったとなると、それを今度は一々自分でやってた日には非常に長くかかるというようなことになりまして、そういう機械を何か貸しレコード屋さんが置いているからそれはもういけないんだと、いきなりこれは違反だというようなことをやられると、せっかくの文化を広めるそういうメディアがなくなっちゃうと、方法が。だから法律をつくるのも結構ですけれども、余りこれ厳しくやられますと非常に不便なことも一方で出てくるわけです。著作者の意向は十分これ私は尊重はしますけれども、不便なことがかえって多くなってくるんじゃないかなという気もするんですが、その点についてはどのようにお考えでございますか。
  119. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ただいまの御質問にお答えいたします前に、先ほどの学術論文について引用の話ございましたので、先ほどのケースは他の新聞、雑誌に転載自由というわけではないという意味を申し上げたわけでございまして、人の論文を自分著作物の中に引用するということは、著作権法上正当な範囲内であれば許されているわけでございまして、人の論文を丸々別の雑誌に載せるとか、新聞に載せるということは学者先生の場合はだめですよと、そういう意味で申し上げたわけでございます。  そこで、ただいまの他人の講演等を録音してそういうのをお分けしたいというようなケースでございますが、これはもちろんその講演をされた方が著作権をお持ちですから、当然録音物をつくるについては了解が必要なわけでございまして、それで本人了解をされた場合に、それを高速ダビングを使ってテープをとるということは理論的に言えば可能なわけでございます。しかし、この高速ダビングを禁止すると申します趣旨は法律上の禁止ではなくて、ダビング業者も高速ダビング業者利用者に録音行為をさせるということが結果的には自分が録音していることと同じですよ、だから著作権が動きますよというのが今回の法改正趣旨でございますので、主として音楽テープの高速ダビング業を意図したものでございます。結果的には、先生がおっしゃるように、そういった音楽作品のダビング業ではなくて、そういうもののほかのダビングをやるという専門の店が――まあ存在はしてませんけれども、そういうものが出てくるということはあり得るわけでございますし、先生の御質問趣旨は、あるいは音楽テープ用の高速ダビング業者のところに行かれてとりたいというようなケースの場合に、結果的には著作権侵害が九十何%で著作権侵害でないものが何%あるとしてもそれは押さえられる結果になるから、確かにそういう店が禁止されると利用しにくいという面はあるかもしれませんけれども、しかし逆に申し上げれば、そういうのをいいということにすることは、九十何%の被害を受けている音楽の作詞・作曲者の人たちにとってみれば甚だ迷惑な語でございますので、大乗的な見地から見ますれば、やはりそういった業種体が存在しない、あるいはしない方が私どもにとっても著作権世界としては望ましい実態ではなかろうかと思うわけでもございます。
  120. 高木健太郎

    高木健太郎君 著作者権利というのは十分我我も保護していかなきゃならぬ、これは確かなんですけれども、余り法律で締められちゃいますと、何もかもせっかくいいところまでみんなどっかに飛んじゃいまして、それで文化が広まらない。それは初めの著作者でも望まないところじゃないかなというので最初に申し上げたので、お金も大事だけれども自分著作権というものも大事だけれども、それをお金にかえることも大事だけれども自分著作したということが明らかであるなら、それはできるだけ大勢の人に知ってもらうということの方が著作者の本当の意向ではないか。それをあんまり法律で締められると、その面までがやられてしまうから、角を矯めて牛を殺すというようなことにならないようにこの法律を運用していただきたいと、こういう意味で私は申し上げているわけなんです。これはもう絵画でもあるいは音でも著書でもすべて同じことじゃないかなと思います。  もう一つ、最後にちょっとお聞きしておきたいことがございます。  それは、一般に著作物とその人の著作権というのは、それがオリジナルであるからだと思うわけなんですね。だから、ほかの模倣でないということが非常に重要なことであろう、模倣であればそれそのものが余りよくないということをよく言いますけれども、さてオリジナルというものの定義が非常に私、難しいのではないか。例えば音楽の場合でも、よく中学や高校の校歌に背の作曲をとりまして文句だけ入れて応援歌で歌っているというような場合もよくございます。一高の校歌なんか随分方々でとられているわけなんですね。そういう場合はどうなのかということ。それから、オリジナルがいろいろありまして、そのうちの一部分だけ組み合わせます。この場合はどうなるのか。それから、音楽のリズムをいろいろ変えちゃう、あるいはそれを変奏曲風に変えてしまうという場合、その変奏するというのも一つの私は技術でありオリジナルじゃないかなと思うんですが、そういう場合はどういうように判断されるんですか。
  121. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 著作権世界では、実は先生のおっしゃったオリジナリティーということは要件にはなってないわけでございまして、これは工業所有権の世界ではオリジナリティーが必要なわけでございます。著作権世界ではたまたまだれかがオリジナルというのか、独創性のあるものをつくられても全く別の場所で知らない人が同じようなものをやっぱりつくられて、それはどちらも独創性があるけれども、どちらも著作物として存在し得るわけです。ただ、こちらのものをまねしてつくることはだめですけれども、そういう点で、著作物世界ではクリエーティビティーと言いまして、むしろ創作性という言葉を使います、そういう意味ではちょっと工業所有権の分野とは違う。ですが、先生のおっしゃったように、オリジナルというのは、確かに、人間が新しく考え出したものという意味に理解いたしますれば、そういうものがもちろん著作権として保護されるわけでございますが、また、一つの曲の例として、先生今おっしゃいましたのは一高の寮歌の例、この「アムール川の流血や」という寮歌がございまして、これが文句が変わりまして、「万朶の桜か襟の色」という「歩兵の本領」になり、戦後はメーデーのための「聞け万国の労働者」という歌で、曲は全部同じなわけでございます。これも著作権世界で申し上げれば、この作曲者に著作権が残っておれば全部待ったがかかるところでございますが、現在著作権が切れておりますので、そういう形で一高の寮歌あるいは「歩兵の本領」、あるいは万国労働者の歌という形でさまざまな世界で同じメロディーが使われている実態はございます。もちろんこれは、著作権が存在すれば当然規制されることでございます。  そこで、そういった一つの創作的なものの組み合わせでございますけれども、あるものを抜き出して組み合わせたという場合に、使った材料がそれぞれ素材としてやはり著作物性を持ち得るものかどうか、つまり、著作物の主要な部分、これは外国の言葉で言いますとエッセンシャルパートと言いますけれども、その著作物の本質的な部分であれば、全部じゃなくても、一部分をつまみ食いして寄せ集めてもそれぞれの著作権を侵害するということになります。ただし、組み合わせたものが組み合わせ方におきまして、材料の、素材の選択、配列においてやっぱり創意工夫があるわけですから、組み合わせたものもまた編集されたという観点から見れば一つ著作物たり得る。しかしそれは、前の素材である著作権を侵害はしておりますけれども著作物としては存在し得る、著作権も主張できるという考え方になるわけでございます。  それから三番目の変奏曲等の場合でございますけれども、これは、原作をアレンジいたしまして趣を変えて――典型的な例は、ベートーベンの「エリーゼのために」というのが戦後、日本で「情熱の花」という歌謡曲になりましたけれども、この場合は、もちろんベートーベンの著作権は切れているからよろしいんですが、著作権があればベートーベンの了解なしでは使えませんけれども、この場合にはもちろん、「エリーゼのために」をつくられたベートーベンの作曲の原著作物と、それからそれを編曲したという意味におきます「情熱の花」の作山者、ある意味で言えば編曲者的な方でございますけれども、その方も著作権がある。そして、厳密にこの利用関係から言いますと、原作者と編曲された二つの権利が複合して、その「情熱の花」の場合であれば動くというシステムになるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、ベートーベンの著作権は切れていますから、その「情熱の花」を編曲されたといいますか、その方の権利だけが動くというような体系になるわけでございます。
  122. 高木健太郎

    高木健太郎君 もう一つだけ、次長は大変何でもお詳しいのであれですが、最後に、私が言いたかったのは、オリジナリティーとかクリエーティブとか、いろんな話が出ますけれども日本は非常に模倣が多かったわけなんですね。それで、文化というのは、最初は我々はみんな大人のまねをし、いろんな歴史の先人のまねをして、その中からまたクリエートしていくとか、そういうことをやっているわけですから、先ほどの録音も、ダビング機もどこかへ持っていっちゃう、できるだけそういうことを模倣もさせない、いろんなことを全部法律で囲ってしまいますと、そうすると、かえって私は文化を盛んにしないんじゃないか。だから、お金の面があれば、できるだけ損失のかからぬようにして、そして模倣があれば、模倣はこういうようにすればこれは違反ですよと、これは初めにつくった人に対して失礼だからしてはいけないとか、そういうことは私大事だと思いますけれども、何だか、余り法律というものをつくると、いつでも法律つくると、かえって人間が伸び伸びしないで、それで、あれもできない、これもできないというふうになってしまう。特に著作権の場合はそういうことがあると。だから、文化を伸ばす意味で法律を運用していただきたいと。模倣もこれも文化の一つであると、組み合わせも文化の一つであると、変奏も文化の一つであるんだというようなお考えで今後この法律を運用していっていただきたいというのが私きょう御質問した趣旨でございますので、そのようにひとつ取り計らっていただきたい、こういうふうに思います。     ―――――――――――――
  123. 長谷川信

    委員長長谷川信君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま、高桑栄松君が委員辞任をされ、その補欠として刈田貞子君が選任をされました。     ―――――――――――――
  124. 吉川春子

    ○吉川春子君 大臣がいらっしゃらないので、最初、著作権の問題について一、二お伺いいたします。  著作権保護と文化の普及という問題を解決する上で重要な方策として、西ドイツなどで取り入れられている録音・録画機緒に対する賦課金制度が考えられると思います。しかし、著作権審議会の第五小委員会でも、両者の利益対立もあってこの制度について結論が得られなかったというふうに聞いています。著作権法の三十条の問題を根本的に解決するためにもこの賦課金制度というのは重要な課題ではないかと思います。また、賦課金をテープに課すべきだという考え方もあるわけですけれども、この点について文化庁のお考えをお伺いいたします。
  125. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) この非常に日本の社会において行われております現在の録音・録画の状態というものにつきましては、この貸しレコード問題も一つの問題ではございますけれども、基本的には、先生おっしゃいますように、録音・録画機器の存在自体を問題とする声は、日本のみならず世界各国でも強いわけでございます。外国におきましても、西ドイツが既に一九六五年から録音・録画機器そのものに課徴金制度を設けて権利者保護を図っている実態もございますし、最近におきましては、一九八○年代に入りまして、オーストリアとかスウェーデン、ハンガリーで、こちらの方は生テープでございますけれども、そういうものに賦課金を課すという形で対応しておりますし、またアメリカ、フランス等におきましても、こういった立法化の動きが進行中でございます。  そういう状況の中で、我が国にありましては、昭和五十二年に著作権審議会の第五小委員会というのを設けまして、この録音・録画関係の御審議を四年間にわたってお願いしたわけでございますが、五十六年六月に御報告をいただきました。  その中でまず基本的に、この録音・録画問題というのは、ヨーロッパ諸国のように日本についてはまだ十分関係者の理解が得られていない、今性急にこれで踏み切ることについてはかなり抵抗が強いであろうと、そういう意味で、まず関係者の合意形成のための前段階として、国民の理解を得るために、つまり、著作権制度がいかなるものであり、著作者権利はいかに守られるべきであるか、そういった著作権の性質に対する認識というものが国民の間に理解され、やはり録音・録画機器に対する基本的な解決がなければこの問題というのは本当の解決にならないんだということの周知徹底のための努力を講ずべきであるというのが基本的な考え方でございまして、と同時に、将来こういった問題を制度的に対応するために、関係者の合意形成に向けて今後文化庁関係者の話し合いを推進する必要があるというような御報告をちょうだいしたわけでございます。  それを受けて、現在、著作権に関する私的な懇談会という形で、権利者側それから利用者側といたしましては、日本電子機械工業会並びに磁気テープ工業会と、それから学識経験者の三者構成によりまして今話し合いを十五回ほど重ねてきているという状況でございまして、私どもの気持ちといたしましても、方向づけといたしますれば、録音・録画機器あるいは生テープ、そういったものを含めまして、こういった機器、機材に対する課徴金制度というのが基本的な解決の大きな手がかりとなる有力な手段だという認識を持っておりまして、そのための努力を今続けている状況でございます。
  126. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、その方向検討して早急に解決に向かっていただきたいと思うわけです。  次に、許諾権及び報酬請求権による使用料について、著作権者間で適正に配分されるかどうかという問題ですけれども文化庁はこの点でもあっせんの労をとられるのかどうか、端的にお答えいただきます。
  127. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 実は、この貸しレコード問題、レンタル使用料をどうやって配分するのかというのは、実は議論としては余り正しい意味の事柄ではないような感じがいたしまして、本来、権利者は別でございますから、著作権者了解をとれば幾らの使用料、著作隣接権者側なら幾らの使用料と、個別的に権利者の性質が成り立っておりまして、三者間で相談してトータルが幾らだからうちの取り分はこうしようというべき性格のものでは本来ないわけでございます。ただ、経済法則から言いますと、貸しレコード料金の中から幾ら幾らを削るということでございますから、ある団体が、A団体が幾らで、あるいはB団体幾らという横並びでそこは眺めますけれども、本来的な性質はそれぞれの権利ことによって使用料が決まるべきものだと思います。ところが、三つ一遍にセットされたわけじゃなくて、御承知のように、音楽著作権協会、いわゆる著作権者側だけの取り分が決まったわけでございますから、残る一つのパイをもう既に先に切っちゃっているわけですね。ところが、パイの大きさがまだわからないというのが率直なところでございまして、著作隣接権者側の幾ら入るのかというのは、著作権者があれだけ取ったんだから私のところはという思惑があるでしょうし、一方、貸しレコード側も思惑があってその思惑がまた違うというのが現実実態でございます。ただ、すべて一つ営業が成り立っためにはどの程度のレンタル料金であるならば営業が成り立ち、その中で使用料に相当する額はどの程度であるべきかというのは話し合いの中で解決されて実態が積み上げられていくと思いますし、そのための文化庁としても余り今一遍に究極の理想を決めることは難しいでしょうと、むしろ暫定的に試行錯誤を繰り返しながら将来のあるべき姿がだんだん時間の経過とともにでき上がっていくんではないか、そんな気持ちを持っておりまして、当面は両者の言い分の間、間をとってという言葉は語弊がございますけれども、かなり思惑の差があります中を中に入る形で両者を近づけていくという努力を、今、文化庁としてはさしていただいている状況でございます。
  128. 吉川春子

    ○吉川春子君 わかりました。それで三番目に附則の第四条の二で、新法の第二十六条の二第一項の規定は書籍または雑誌による著作権の公衆への貸与について当分の間適用しないというふうになっておりますけれども、この「当分の間」という規定を入れた理由について伺います。  貸し本業の実態というのは貸しレコードの実態とは明らかに異なるのではないか。また歴史的に見ましてもそうトラブルがあったというふうな事態でもないので慎重に対応されたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  129. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 附則四条の二を設けました趣旨は、現在我が国におきまして貸し本業というのが長い長い百年以上の歴史を持って今日まで来ているわけでございますので、それを一挙に権利規制対象とすることはまだ貸し本屋さんの理解も得られにくいだろうという状況が一つあったわけでございます。  もう一つは、この貸し本業というのがそれほど大きな経済的利益を上げているという状態でもまだないし、そのことによって著作権者側が重大な被害をこうむっている実態もまだ生じていないのではないかというのが第二点。  それから第三点目といたしましては、じゃ貸し本業に対して規制をする場合に音楽著作権協会のように窓口が一本化されてぽんとそこへ行けばもう全部貸し本が行えるというような形の権利処理が実務的に可能かどうかということになりますと、権利処理体制というのはそこまではまだ行ってないのではないかというような三つの理由もございまして、「当分の間」という形で一応外さしていただいているわけでございまして、ただ、この「当分の間」の考え方は、今申し上げましたようにいろいろ日進月歩の時代でございますから、貸し本業も非常に経済的な利用行為の高い貸し本業という新たな企画をしたものが出てくる可能性もございますし、あるいは貸し本業が発達することによって出版物の方の被害がふえるというような、売れ行きが減少するというような事態も起こり得る可能性もありますし、そういったような状態が出た場合には外す、「当分の間」を削除するという意味でございます。さらには権利集中処理機構体制が確立されておれば、一定の月決めで幾らという安い料金でお金を払えば貸し本業ができるんだ、しかも、それは貸し本業には、実態的には影響しない程度のものだというようなルールづくりというものが可能な段階であれば、もちろんまた「当分の間」を外すということも考えられるわけでございまして、要因としては権利者側にある程度貸し本屋さん側の認識を得ていただくこと、あるいは被害といいますか、権利者側の経済的利益が侵されるような実態、あるいは、そういう事態が生じた場合、あるいは集中的権利処理機構ができた場合とか、幾つかの要因が「当分の間」を削除するファクターとしてあり得るだろうと考えております。
  130. 吉川春子

    ○吉川春子君 その点については慎重に対処されるように要望しておきます。  著作権法というのは文化について定めた唯一の形式的な意味の法律であるとか、あるいは文化の基本法であるというふうに言われているのですけれども、次に私は文化の問題について伺いたいと思います。  すぐれた芸術、芸能が鑑賞できる現代舞台芸術のための劇場として、オペラの殿堂の建設へ国民の期待が非常に大きいわけです。この期待にこたえて、第二国立劇場がより早く、よりいいものとして建設されるべきだというふうに私は思いますし、国民の皆さんも願っているだろうと思うのです。しかし、残念なことには建築界、音楽、芸能界などから文化庁の構想に対して、劇場の基本的性格、敷地の環境条件、座席数、設計協議を国際的に公募する問題などについていろんな問題点指摘されているわけなんです。  大臣がお見えになりましたので、最初にこのことについて基本的なお考えを伺いたいのですけれども、この問題は十数年にわたって関係者の必死の努力で今日までこぎつけてきたという経過があるわけで、建設に当たっては将来に禍根を残さないためにも、今、各方面から上がっている声に真剣に耳を傾けて、よりよい第二国立劇場をつくるべきじゃないか、しかも早くつくるべきじゃないかと、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  131. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 詳しい経過は先生も御承知でありましょうし、また加戸次長から必要でございましたら御説明を申し上げますが、国立劇場、現在古典芸能をやっておりますが、あの国立劇場ができました際、その法律が国会を通りましたのが四十一年に衆参両文教委員会で、いわゆるオペラ、バレエあるいは、ミュージカル等々現代舞台芸術、現代演劇、こうしたものを一堂に会する、そうした劇場をつくろうというのが当時の決議でございました。そこから準備をいたしてきたわけでございます。具体的には国立劇場設立準備協議会をつくりまして、まさに十余年考えた、十有余年になりますが、本当に専門家の皆さんで議論を尽くしてきたわけです。  場所にいたしましてもいろんな意見はございをすけれども、東京で大体考えられるようなところ、予想できますようなところ、もちろんかなり広い面積も必要でございますし、そして何といいましても安くするということですから、民間の用地というわけにはなかなかまいりませんので、そうした公共の用地、まずそれに準ずるものというようなことで二十七カ所ぐらい場所を選定をいたしまして、それぞれ直接専門家の皆さんの意見を聞きながら選定をいたしましたのが今の新宿のところでございます。  いろんな意見はございますけれども、私は政治家の立場ですから、当時から党の文教部会の立場でこの問題に何とかして念願を果たしたいということでお手伝いもしてきた立場でもございましたので、今いろんな意見はございますけれども、今さらとやかく私の方から、大臣という立場もありますから申し上げたくはございませんが、いろいろ御意見を言われている方々も、このいわゆる専門といいますか、設立準備協議会の中でいろいろ議論を交わしてきておられるわけでございます。  ただ、それぞれの立場、あるいはいろんな思惑を持った方々があると思いますので、そういう方方からあるいはいろんな動きをされて、確かに先生が今御指摘のような、あたかも何かみんなが望んでいないような、そんなような雰囲気が出ておりますが、これは全く私どもはそういうふうではないという現実の問題を承知をしておるわけでございまして、まあ幸い、関係者方面とも十分文化庁話し合いましてほぼ了解の線に達しておりますので、さらに今まではどちらかといいますと、そうした有識者による準備協議会の皆さんにある程度お任せをしながら進めてきた経緯はございますが、今日ではむしろ文部省が建設省とも十分相談して行政がもう少し積極的に前に進めていきたいと、こういう考え方で今対処をしているところでございます。
  132. 吉川春子

    ○吉川春子君 劇場施設として、多目的ホールではなくてオペラ専用のホールにしてほしいと、こういう要望が出ているわけですけれども、計画では三つのホールを建築するということになっておりますが、三つともオペラ専用のホールにするという御計画なのか、それとも、大劇場をオペラ、バレエを主とする設計にするけれども、そのほかのホールについてはまだマイクなどを使ってやれるような施設にするのか、その点文化庁としてはいかがでしょうか。
  133. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) この第二国立劇場の構想につきましては、ただいま大臣申し上げました設立準備協議会というところで専門家の英知を集めましていろいろ御協議、御審議を願ったわけでございます。回数にいたしますと、準備協議会、下の専門委員会あるいはその構成する部会等で延べ七十五回にわたる会合、参加されました実人員が二百名を超えるというようないろんな有識者のすべての知恵を結集したわけでございますが、昭和五十一年に基本構想というのをちょうだいいたしました。その五十一年の基本構想におきましては、今考えております大劇場、中劇場、小劇場のほかにコンサートホールを合わせた四つの施設を想定してたわけでございますが、その後五十四年に途中一部構想変更を行いまして、コンサートホールは見送るということで大中小の劇場群セットで今日まで来て、昭和五十六年には一応設置の規模、概要あるいは建築規模というものも御決定いただいたわけでございまして、いわゆるオペラ、バレエ班用の大劇場、それから現代演劇中心の中劇場、それから実験劇場的な小劇場という構想は既に昭和五十一年の設立準備協議会の構想以来今日まで来ているわけでございまして、オペラ専用というつもりではございません。ただ大劇場自体について言いますれば、実質的にはオペラ中心でございますので、オペラが最優先、言うなればオペラのために舞台設備その他も整えるということでございまして、私どもは言うなれば、この大劇場をオペラハウスに相当するものと考えているわけでございます。それから中劇場につきましては、主として現代演劇の公演を考えておりますけれども、一部オペレッタ等の言うなれば軽歌劇というようなものにつきましては中劇場でも公演が可能であるという考え方をとっておるわけでございます。小劇場につきましては、これは言うなればオープンスペースの実験劇場でございまして、オペラ、オペレッタになじむような性格のものではない。申し上げますれば、大中小を総合いたしますとオペラ、バレエ、舞踊、現代演劇等の現代芸術を総合的に劇場群としてつくろうという考え方で八年間推移してきているということでございまして、ただいま出ています、一部にありますオペラのみという考え方で、中小切り離せという御意見もあるようでございますが、第二胴立劇場が今何まで参りましたのはすべてオペラ関係者のみならず、バレエ関係者あるいは現代舞踊関係者、現代演劇関係者、そういった芸術、文化、現代舞台芸術関係者の総意によってこれだけの盛り上がりを見せて今日まで来たという推移があるわけでございまして、今の段階でオペラのみにするという考え方を当方としては受け入れるということは甚だ困難であろうと考えている次第でございます。
  134. 吉川春子

    ○吉川春子君 オペラとかオーケストラとかバレエに使う劇場というのは、私も素人なんですけれども、マイクを使わないので反響してはならないという設計だそうですね。それに反してミュージカルとかといったものはマイクを使うものですから、マイクを使うにふさわしい設計にしなきゃならないと、こういうことだそうですけれども、例えばオペラ点用という大劇場は、そうしますとマイク施設を使わないで使えるようなそういう設計にするんでしょうか。
  135. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 大劇場につきましても当然マイク設備は用意いたしますが、オペラを実施する場合にはマイクは使わないわけでございます。そして、先ほど申し上げましたように、舞台設備自体はまさにオペラを念頭に置いて最高のオペラがそこで実演、公演できるようなという考え方でオペラハウス的な発想で取り組んでいるわけでございます。ただ、三百六十五日オペラがやれるわけじゃございませんから、その間バレエをやる場合もございましょうし、現代舞師をやる場合もございましょうし、そういう意味で主体はオペラを想定した舞台設備をつくりたいという考え方で進めているわけでございます。
  136. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと時間がないんで余り突っ込めないんですけれども、要するにオペラをやらないときはいろんなものに利用するということは当然なんですけれども、とにかくオペラをやるのに一番ふさわしい内容で設計をするというふうに理解してよろしいわけですか。一言でいいです。
  137. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先生おっしゃるとおりでございます。
  138. 吉川春子

    ○吉川春子君 それから、オペラハウスの評価は演出とか大道具、小道火、衣装、照明、美術といったような仕事に携わる専属のスタッフ、専属のオーケストラ、合唱団、指揮者などが備わっているかどうかに今はかかっていると言われていますけれども、この点についての明確な方針はあるんでしょうか。
  139. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 将来の人的構成等につきましてはまだ今のところ確定しているわけではございません。ただ、既に五十六年の設立準備協議会の報告の中で述べられております事柄は、現代舞台芸術の制作行為に必要なスタッフ等を置くという考え方でございまして、当方といたしますれば、一応企画部門というような分野、それから公演に必要な分野といいますのは、照明、音響、舞台機構あるいは舞台装置、衣装関係のそれぞれ専属のスタッフを置くということを前提として考えているわけでございます。
  140. 吉川春子

    ○吉川春子君 座席数の問題なんですけれども、建設予定地の広さの問題とまた採算面からも論じられているというふうに聞いていますが、西ドイツの場合などは運営徴の五〇%から六〇%は国庫で賄われているそうです。日本におきまして国の補助についてどういう方針を持っておられるのか。建物をつくって後は貸し小屋にするのか、赤字が出たときなどはどこが責任をとるのか、そういうような問題について簡単で結構ですがお願いします。
  141. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) これからの公演形態あるいは運営形態につきましては、それぞれ専門の委員会を設けまして十分専門家の知恵を拝借しながら、あるいは関係者の総意を結集しながら取り運んでいきたいと考えているわけでございますけれども、単純に事務レベルだけの今の時点での考えといたしますれば、この第二国立劇場の運営につきましては、主催公演、つまり第二国立劇場が全経費を持って行う主催公演、それから共催公演、そのほかに余裕がある場合には言葉は憩うございますがいわゆる貸し小屋という形で一般の公演にお貸しをする、そういう三つの分野を想定しているわけでございまして、少なくとも今後の立ち上がってからの運営ということになりますれば、これからの財政折衝でどの程度まで国費で面倒見れるのかというまた非常に大きな難関を控えているわけでございますけれども、私どもの今想定しておりますのは、三つの分野における、主催公演、共催公演それから貸し小屋方式、貸し劇場方式ということの三つでバランスをとっていきたいと思っておるわけでございます。
  142. 吉川春子

    ○吉川春子君 四月二十六日の設立準備協議会で設計競技について条件がついたと聞いています。日本建築学会、日本建築家協会、日本建築士会連合会など三会が、第二国立劇場がオペラ、バレエを主とする劇場であるという性格から、日本世界に対して文化的に貢献をなし得る好機でもあるので設計案を公募する方法を国際コンペの形でというふうに要求しているわけなんです。まあ外国でオペラハウスを建設する場合には国際設計競技に諮られてやられていると聞きますし、昨年のパリ・バスチーユの新オペラ劇場も国際コンペでやられて、日本の建築家も参加して三名入賞しだということも聞いています。ちょっと時間がないので大臣と両方にお伺いしたいんですけれども、オペラというのは日本で生まれたものじゃ全然ないんだけれども、でも日本の設計家も参加させてオペラハウスの競技に応募できるということを外国はやるわけですね。それに対して日本は今までの情報ですと国際コンペにはしないで国内コンペでやるというようなことをちょっと聞いているんですけれども、ぜひこの機会に、やはり今まで日本の建築家も外国でお世話になって腕を磨いてきたということもあるし、それから、とにかく外国で発生したオペラですから、そういうものを上演するために、よりいいものをつくるという観点に立てばどうしても国際コンペで、設計競技は国際的に開かれたものでやるべきじゃないかと思うんですけれども、この点について、大臣、いかがでしょうか。
  143. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) まず、技術的な問題点から私どもの方で説明させていただきますが、現在、設計コンペの意図いたしますものが、設計コンペを通じて最優秀作品に選ばれた設計者によっていわゆる基本設計、実施設計、工事監理というものを全部お願いする、そういうお願いする人を選ぶことが主目的でございまして、そういった意味合いが一つございます。日本の建築法規でございますが、建築士法によりますと、一級建築士でなければ五百平米以上の劇場を設計あるいは工事監理することができないシステムになっておりますので、法律上の制約からしますと、一級建築士といいますと自動的に日本人にならざるを得ない、そういった諸種の制約があるわけでございますが、今の御意見等も踏まえまして、なるべく国際的な色彩のある、あるいは国際性の強い国際的なコンペを実施する方向で今、建設省にお願いをしている段階でございまして、あるいはペアで参加するとか、いろんな仕組みというものを考えながら、外国人も実質的にこの設計コンペに参加できる方向への協力方、努力方を建設省にお願いしている段階でございます。  ただ、先生今、パリのバスチーユの新オペラ座の国際コンペのお話ございましたが、この場合につきましては厳密な意味の国際コンペではございませんで、実質的には国際的なコンペという性格のもので、いわゆるUIAの規定に基づきますような国際コンペではなかったと理解しておりますし、また今回、ちょっと余分でございますが、賞金額の問題、七千万円が安いという御指摘も建築家協会からつけられたわけでございますが、今回考えております建築規模一平米当たりの単価に換算しますと千二百九十円になるわけでございまして、パリのバスチーユの新オペラ座におきます賞金額は一平米当たりに換算しますと千三百十円でございまして、ほとんど実質的な差がないという感じは私ども持っておるわけでございます。
  144. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 専門的に詳しく次長から申し上げましたので、かえって私がそれ以上申し上げることは御迷惑をかけることになると思います。  ただ、本当にみんなで協議をしてやってきたことでございまして、確かにマスコミ等を通じて、あたかも文化庁が独断専行しておる、だれの話にも耳を傾けないんだということではないわけでありまして、先ほど延べ人数から時間から、十何年でありますから、いろんな意見を聞いてやってきたわけでありますし、今の建築士法のことも、これは文化庁が責められるのがそもそもおかしいわけでありまして、むしろ建設省の所管に関することでございまして、そういう中で文化庁として十分多くの皆さんの意見が反映できるようにその仕組みも考えているところでございます。  建物全体ではそういうこともあり得るかもしれませんが、先生からお話しのように、中の舞台とかそういう専門的なことは、確かに日本人ではなかなかできない面があるでしょうから、そういうところに外国の皆さんの知恵をかりるという方法だってあるではないだろうか、そういうふうにして、これから仕組み、方法に十分知恵を働かせて、国費で立派なものをつくる以上は国民の皆さんの賛同が得られるように、なお一層、文化庁もそしてまた建設省も、協議をしながら、間違いのないいいものになるように、そしてまた先生から御指摘がありますように、一日も早く完成ができるように、みんなの意見を聞いて、それはある程度の意見を全部やっていましたら、また何年たつかわからない、そういうものでもあると思います。  藤原義江先生が亡くなられるときに、自分は舞台は踏めないだろうけれども、何とかして残しておきたいとおっしゃったそうですし、予算折衝をやっておりましたときも、先般亡くなられたバレリーナの服部智恵子さんも、何とか一遍自分たちの教え子たちを乗せてあげたいと言って亡くなられたそうでございます。  いろんなことを今度の場合に異議を申し立てておられる方々、芥川先生初め、そういう方々とも私はずうっと党の関係で議論をして、ここまで来たわけでございます。学者もそうですけれども、そういう専門的な方々というのは、いよいよ具体的な問題に入ってくると、いろんな異論が出てくるんじゃないかなと思うんです。いつの間にか、オペラはオペラ劇場、オペラ劇場とこう言いますが、じゃオペラだけやったら、ミュージカルやその他のバレエや現代演劇の皆さんもまたつくってくれということになってくる。そんなことが今の日本の財政的なことから考えてもでき得るはずがない。ここまでみんなで盛り上げてきたのは、当時確かに藤原義江先生が中心になる、その後は團先生とか、そういう方がみな中心になって、いろんな現代舞台の方々が集まってここまでこれだけの大きなエネルギーになった経緯があるんだ、それがいよいよ具体化になったら、オペラじゃなきゃだめだとか、いやミュージカルは入れないんだとか、そういうセクショナリズムな考え方というのは、芸術の世界というのは私もわかりませんけれども、みんなの気持ちでそうやって、少なくとも国民の血税でやるわけでありますから、やはりいささかの我慢もしていただかなきゃならぬ面もあるんではないか。だからといって、全く文化庁文部省も耳を傾けないということではないわけでありまして、十二分に協議をしながら、むしろ一日も早い完成をさせるためには、ある程度のところで折り合いをつけていくということでなければ、現実的な対応はできないんじゃないかと、こう思っているところでございます。
  145. 吉川春子

    ○吉川春子君 バスチーユのオペラハウスの設計競技は厳密に規定によっているものではないということでしたけれども、厳密な規定によってなくても外国人の設計士を参加させた国際コンペにはなっているわけで、そういう方向でも日本はできるんじゃないかと思うんです。  建設省もお見えになっていると思うんですけれども、今の一級建築士じゃないと日本ではできないんだから、絶対にそうすると、今度いかなる建物を建てるにも日本の場合には国際コンペという形で設計案を募ることができないというふうになるんですけれども、今度の問題でも各方面から意見が出て、そして文化庁の方でもいろんな意見を聞いてやるということも述べられておりますけれども、国際的に開かれたコンペにするということで技術的にどの辺まで可能なのか、ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  146. 佐藤輝夫

    説明員(佐藤輝夫君) これから行われますコンペにつきましては、正式には建設省に設置される予定になっております第二国立劇場設計競技審査会において決定していくことでございますけれども、私どもといたしまして、建築界からの要望も踏まえまして、外国人の参加を阻むことのないようにコンペの国際化を図る所存でございます。  先生、先ほどなぜ日本の一級建築士でないといけないかということでございますが、諸外国、特に欧米で建築士といいますと、いわゆるデザイン専門で通るわけでございますが、日本の場合には一級建築士となりますと、日本の自然条件、これは地震災害の防止であるとか、それから夏における高温多湿の対処であるとか、それから日本独自の建築基準法、都市計画法、そのほか消防関係法規、これらを全部マスターした人を一級建築士としております。したがいまして、一級建築士である以上は、これらの防災面、対法規面、これらを全部マスターした人が設計しているんだという関係で、日本の法規としてはそういう規制を設けておるわけでございます。  ですから、私どもとしては、このコンペの国際化に当たりまして、外国人がもし最高の栄誉をかち取って当選した暁には、実際の設計をやるときには、耐震の問題そのほかをお手伝いする意味で設計に協力する立場をとるとか、あるいはコンペに参加するとき、もう初めから日本人の一級建築士と一緒にタイアップしてコンペに参加していただくとか、いろいろ方法は考えられますが、先ほど私申しましたように、拒まない方向でコンペの一層の国際化を図る、こんなつもりにしておりますので、よろしくお願いいたします。
  147. 吉川春子

    ○吉川春子君 地震、高温多湿とか言いましても、外国でもそういうところあるわけですし、日本の設計家だけに任せないと地震に耐えられる建物を建てられないということはいかにも失礼な話だと思うんですけれども、今のお答えで微妙な言い方ですけれども、とにかく外国の設計者の参加を拒まないと、入賞した場合にはお手伝いをしていくというようなことでしたので、そういう方向をぜひもっと拡大して世界的にも恥ずかしくない方法でやっていただきたいというふうに思うわけです。  その場合に、日本でオペラハウスの設計の競技をやるということを知らせる方法なんですけれども、国内はもちろんすぐ知れると思うんですが、外国の設計者にそういう内容を知らせるためには具体的にどんな方法を検討していらっしゃいますか。
  148. 佐藤輝夫

    説明員(佐藤輝夫君) 具体的な方法としてはまだ検討はしておりませんが、何らかの形で外国にコンペの開催をお知らせするような手段をとるつもりでございます。これはお約束できると思います。
  149. 吉川春子

    ○吉川春子君 大使館を通じたり、あるいは建築関係の雑誌に広告を出したり、日本は経済大国でもあり文化の水準も高いわけですから、いろんな方法があると思いますので、ぜひ広く世界に知らせていい案が集まるような方法をとっていただきたいというふうに思うわけです。  さっきの国際建築家協会の基準で言うと審査員の中に国籍の違う人も入れなきゃならないという規定があるわけですけれども、今度日本でおやりになる設計競技については、審査員の構成などについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  150. 佐藤輝夫

    説明員(佐藤輝夫君) これはまだ審査員の検討段階に入っておりませんので、私からは決定としては申し上げられませんが、審査員に関しましては一応日本人の審査員で構成する予定にしてございます。
  151. 吉川春子

    ○吉川春子君 そのバスチーユとかあるいはオーストラリアのオペラハウスの例を見ましても、審査員の国籍はもちろんいろいろあるんですが、そのメンバーも建築家だけには限っていないわけですよね。オペラハウスの総支配人であるとか、あるいはいろんな分野の方も審査員に加わっていて、もちろん設計の専門家も加わっていらっしゃる、こういう構成になっておりますので、私はむしろさっきおっしゃいました一級建築士じゃなきゃ応募できないとか、そういう問題よりはもっと簡単に審査員の方には国籍の違う、もっとはっきり言えばオペラの発生した地域の経験を十分に持ったそういう方の参加も可能であるというふうに思うんですけれども、技術的に可能であると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  152. 佐藤輝夫

    説明員(佐藤輝夫君) 先生の御趣旨は全くよくわかるんでございますが、何と申しましても言語の障害の問題がこの場合一番大きいかと思います。フランスの場合、日本の応募のお話が出ましたんですけれども日本の人たちは器用なものですから応募図面は全部フランス語で応募する、そのぐらいのことはみんなやってしまうわけです。この場合日本の場合にもそれがそっくりひっくり返して当てはまるかどうかについて問題が一つございますし、それから先ほど私申しましたように、審査員というのが日本の気候、風土から何から一応了解していただく人をどう選ぶかということも実際としてなかなか難点かと思います。  なお、審査員の構成でございますが、先ほど先生おっしゃいましたように、建築の専門家ばかりでなく広く集めておりまして、過去建設省でやられました三つのコンペにつきましても、審査員の過半数が建築の専門家で、その他は文化人も含めました一般の方たちを審査員にお願いしているという実績はございます。
  153. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は信じてはおりませんけれども、一部週刊誌などで利権絡みの話とかいろいろ伝えられております。こういう五百億からする大きな建物ですから当然利権の絡む可能性というのはあると思うんですけれども、しかし、せっかくのオペラハウスですから、本当に利権の絡まない、そして内容の充実した、世界に向かっても恥しくないものを、さすがに経済大国日本が建てたオペラハウスだと、こういうようなものをつくっていただきたいというのが多くの国民の気持ちだと思うんです。  それでもう時間が参りましたので、最後に大臣にお伺いしたいんですけれども、各方面からいろいろ意見がある、それは不愉快だというお気持ちがちょっとさっきの答弁にも少しあらわれておりましたけれども、しかし、このそれぞれの各専門家からの意見というのはよりいいものをどうやってつくるかという立場でのそれぞれの意見だということだと思うんです。いよいよ具体的になってきたときに本当にいいものをつくりたいという声が各方面から上がってきたということは、これは歓迎すべきことであって、だからもう予算も削った、やめたなんというのは論外ですけれども、なるべく早くつくってほしい、しかもいいものをという、そういう国民の声に十分こたえて民主的にこの計画を進めていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  154. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 私は別に不満の意を表明したんじゃないんですが、先ほどから次長も申し上げたし、私も申し上げておりますように、十数年近く、そして芸術、文化関係者のまさに長年にわたる悲願なんですね。いろいろ御意見を言われておられる方の、建築サイドの方は別だと思います、これは文化庁じゃないわけですから、芸術関係の皆さん方からいろんな御意見が出る。確かに吉川さんおっしゃるように、いいものをつくりたいという悲願かもしれませんが、そのジャンルの皆さんは長い十数年の間に議論の中に入っておられるんですね。だから、そういうことがいよいよまとまりつつあるときに、何かあたかも、おれたちの言い分が入らなければ、それはノーなんだということであっては、これはなかなかまとまらぬし、現に今吉川さんがオペラ劇場、オペラ劇場とおっしゃいますけれども、オペラ劇場じゃないんです。第二国立劇場、オペラを含む現代舞台芸術の皆さんの総意でつくるものなんです。だから、あたかも何かオペラだけの人たちがオペラの基準に合わないんではないかというふうな意見が非常に出てくるというふうなことでは私はこれは不満の意を表さずにはおられないわけであります。多くのジャンルの皆さんはみんなこのことに熱意を燃やしてここまでこられたんだということであります。まだ、これからは財政当局との厳しい我々文部省文化庁対応していかなければならぬわけであります。そんなにいろんな意見があるものなら当分待ちなさいよと、これ財政当局が一番言いやすい理由になってしまう。そうしたらこんなにまでみんな悲願を燃やしてやっておられた皆さんのその気持ちがなかなか実現しないことになるのではないか。私はそういう心配をして、余計なことを言いなさんなよと言っているわけじゃないわけでありまして、その言っておられた方は直接入らなかったかもしれませんが、それぞれの業界ということはよくありませんけれども、私は専門的にわかりませんが、それぞれの分野の皆さんの代表が何回も何回も議論をされてこられたんだということであって、自分がその意に合わないからだめなんだということはせっかくのみんなの盛り上がってきた今日、そして具体的に盛り上がってきたら、自分たちのジャンルのものでなかったらだめなんだ、ほかのものはこうなんだということであってはこれも現実みんなの気持ちがやっぱりそこに盛り込んだものにはならぬのじゃないか。吉川さんおっしゃるとおり、いろんな意見が私のところに、手紙だけでも本当にもう一日にこの問題だけでも二、三通来ます。こんな意見もあるんですよ、吉川さん。これはもちろん、すぐこんなものは一笑に付しましたけれどもね。パリやローマでじゃ日本の歌舞伎や古典芸能の劇場をつくってくれるんですか、こんな財政の厳しいときに何なんですか、何わがまま言わしているんですかというような、そんな手紙までありました。私はあえて御披露申し上げておきます。これは全くナンセンスな意見ではございますけれども、国民感情としてはそういう気持ちにもなる人だってあるわけでありますから、みんなで議論してみんなの気持ちでここまで盛り上げてきたことですから、何とかみんなで力を合わせて財政当局との対応もしっかりやって一歩でも二歩でも近づけるように私も努力したいし、文化庁も皆その気持ちでございます。  なお、建築士関係につきましては、これは今建設省から申し上げたとおりで、柔軟な対応をするとこう言っているわけでございますから、どうぞそういう意味で私たちもまた建設省にもそのことを十分お願いをしていきたい。こういうふうに考えているところであります。
  155. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと一言。  オペラ専用劇場というのは最初からの計画にあったということですし、オペラ専用劇場が一つもないんですよね、日本には、文化国家としては。そこでオペラを中心に上演できるものをということで、オペラ以外は何もやらせないとかそういう意味じゃなくて、オペラ専用の劇場をというのは各方面の強い意見だというふうに私は聞いているわけなんです。  時間がないのでもう御意見は承らなくても結構ですが、とにかくたらいの水と一緒に赤ん坊も流しちゃうというようなことじゃなくて、必ず建てていただきたい。しかもすばらしいものを建てていただぎたい。そして多くの人の意見を聞いて建てていただきたい。そのことをお願いして質問を終わります。
  156. 小西博行

    小西博行君 貸しレコード法案につきましては既にかなり意見も出ているようでありますから、時間の関係でまずコンピューターのソフトの問題を先に質問をさせていただいて、そして時間がございましたら図書館における複製の問題、こういう問題に入らしていただきたいというふうに考えます。  まずコンピューターの関連でございますが、管理社会というものがこれどんどん進展していきますと、一般産業もそうでありますし、研究分野でもコンピューターというのがかなり応用されて、さらに今後も大いに発展するんじゃないか、このように私は考えるわけです。  そこで、特にコンピューターのハードの部分以外のいわゆるソフトの部分、プログラムですね。この保護に対して文化庁は基本的にどういう態度を持っておられるのか、考え方を持っておられるのかこの辺からお聞きしたいと思います。
  157. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 午前中の御質疑の際にも触れたわけでございますが、コンピュータープログラムはコンピューターに特定の機能を果たさせる、そういうことをする一辺の命令をするわけでございますから、次長も申し上げておりましたように、学術的な思想の創作的な表現である、こういうふうに私どもは考えておりますので、基本的には学術論文、設計図あるいは建築物と同じように著作物であると、こういうふうに考えております。同時に、このことも地方裁判所、三つの裁判所でもそのように判例が出ております。それから、もう一つは、アメリカ、西ドイツ、フランス等主要先進国におきましてもプログラムは著作権法保護すべきである、こういう考え方をいたしておりますので、プログラムも国際間の全体的な保護というのは非常に大事なことでございまして、日本独自の考え方といたしましても、それはこれから百何カ国の国とそれぞれと交渉していかなきゃならぬということにもなるわけでございますので、国際法の中にもこれは著作権法保護すべきだと、こういうふうにお互いに相互保護ということは大事なことでございますので、文化庁としてはそういう認識の上に立って判断をいたしておるところであります。
  158. 小西博行

    小西博行君 そこで、これもお聞きしたいわけでありますが、コンピューターの貸しソフト営業というんですか、レコードを貸すというのと同じようにソフトを貸すと、こういうような営業というのは実際にかなりあるというふうに聞いておるわけですけれども、その辺の実態についてどのくらいあってどういう分野で営業が成り立っているかということもあわせてお聞きしたいと思います。
  159. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) パソコンソフトウェア協会と申しまして、いわゆるパソコンをつくっている権利者サイドの協会でございますが、そこが昨年十二月現在での調査によりますと、現在のところ貸しソフト店の店舗数が三十四店だというぐあいに一応調べられております。ただ、その後もう既に半年近くを経過しておりまして、現在では四十店ぐらいにのぼっているんじゃないかというような話も聞いておるわけでございます。そこで、こういった貸しソフトで行われております形態は、いわゆるビデオゲームと言われますゲーム用ソフトが八、九割を占めておりまして、ビジネス用ソフトのレンタルは一、二割にしかすぎない。いわゆる主流はゲームソフトであって、個人が自分のマイコン操作のために借りてかえって、そこでコピーをしている状態ではないかと推察されるわけでございます。  それから、レンタル料金が一日借りた場合にソフトウエアの定価の一割程度ということでございまして、ゲーム用ソフトは価格的に言いますと、三千円ないし五千円程度でございますので、レンタル料金も三百円ないし五百円程度ということでございます。ビジネス用ソフトになりますと、料金が一万円から二万円高くなりますので、もちろん使用料、レンタルでも高くなるというぐあいに思われます。  それから、大体一回当たりの借し出し本数は通常二本程度、つまりパソコンソフトを二本程度借りてかえるというのが大体多い傾向のようでございまして、一応私どもで把握しております状態としては以上でございます。
  160. 小西博行

    小西博行君 では、今度の法案が通過いたしますと、貸しソフトといいますか、これは法律的な扱いというのは、当然貸しレコードと同じような扱い方になりますか。
  161. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 今回、提案申し上げております一部改正案では、貸し本業を除きまして、全著作物の複製物について貸与権を及ぼす考え方でございますので、コンピュータープログラムが著作物であるという前提をとりますれば、当然に貸与権が動くわけでございます。もちろん、この点に関しましてはコンピュータープログラムの保護問題をめぐりまして通産省考え方の相違がございまして、今後調整の必要がございますが、今の判決の流れから言いますれば、この著作権法上貸し本以外は除いておりませんので、当然に貸与権が動くということになります。その場合には、許諾権として許諾をするかしないか、これは権利者側の考え方でございまして、今度の今までの流れ自体が貸しレコードについては公正な使用料を取って許諾をしろというお考え方をいろいろお示しいただいたわけでございますけれども、その考え方がパソコンソフトのレンタルについても当然同じような考え方で及ぶものとするかどうか、そのことはまた当委員会では御議論いただいておりませんので、実態的に考えますと、こういった問題につきまして両当事者間で話し合いがついてレンタルを認めるか、あるいは禁止するか、その辺はまだ予測がつかないという状況でございます。
  162. 小西博行

    小西博行君 何かちょっと貸しレコードと大分感じが違うんじゃないかという私気持ちがするんですね。例えばレコード協会というのが一つありますね。ところが、何でしょうか、実際レコード協会と同じようなものがソフトの分野の中でも当然一つ企業なら企業ということで発生すると思うんですが、さっきのパソコン、子供のゲームなんかになりますと、個人個人がどんどんアイデアといいますか、プログラムというのは設計できるわけですね。ですから、やや形態が違うんじゃないかと、管理非常にしにくいんじゃないかとか、あるいは指導はどういうふうにうまくやればいいんだろうかというようなちょっと心配をするわけですがね。一方では、ソフトといいましても、例えば専門的に企業の中の管理技術のソフトなんかといいますと、かなり大がかりなものもありますし、これはA社が工程管理のこのシステムを考えたといいましても、それに少し違ったようなのは幾らでも開発できるわけでしょう。その辺が果たしてこれはどうなんだという判定する場合の基準、私非常にむずかしいじゃないかなと、どっかへ登録してそれをやらないとわかりませんし、その辺の扱い方の問題はどうなんでしょうか。これは指導も含めてちょっとお聞きしたいと思うんですがね。
  163. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 通常このソフトウエア、特にパソコンソフトも同様でございますけれども、いわゆる電磁気的な方式で入っておりまして、中身がまねたものであるかどうかということは識別することは極めて技術的にむずかしい問題を伴います。ただ、通常今市場に流通しておりますパソコンソフトの場合でございますと、一定の方式で結果がすぐビデオとして出てくるものでございますから、そういうものでありますと、先ほどのゲーム用ソフトについて見ますれば、アウトプットされるものを見れば、ああ同じプログラムだなということがわかりやすいという点はあるわけで、また商品としてもそういうイミテーション物という形で流通しますから、わりかし海賊版も押えられやすいと。そこで、こういって貸しソフト以外の分野でのプログラムの複製かどうか、模倣かどうかというのは、これは本当に訴訟になった場合、相当むずかしい問題があろうかと思いますが、今社会問題化しているパソコンソフトだけについて言えば、ゲームとして可視的にわかるという点では、アウトプットを見れば、インプットされているソフトはこういうもののまねだ、この海賊版だなということが容易に理解できるんじゃないかと、そういう区別はあろうかと思います。
  164. 小西博行

    小西博行君 それで、あれは複製は技術的に非常に簡単なんでしょう。テープで簡単に貸しレコードを借りてきてダビングするというと同じように非常に簡単なだけに、またその辺も指導がこれから非常に大変になってくるんではないかなと、こういう感じがしておりますし、同時にアメリカでは最近は何か子供さんあたりがそういう企業を設立しまして、いろんなゲームについてどんどん売っていると、えらい利益上げているという、こういう特殊な産業もどんどん出ているようでありますから、これから先恐らくこういう問題が大きな問題になってくると思いますので、その辺をよく研究していただきたいと、このように考えます。
  165. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 今、先生おっしゃいましたように、ソフトのレンタルによりまして借りました場介に、これは瞬時に個人が家庭コピーできますから、もう借りてすぐ返して、残って、ソフトはコピー自分が持つことができるわけですから、そういった点ではパソコンソフトの売れ行きに大きな影響をしているわけで、実態的には、そういう意味では貸しレコードと同じような現象というのがこれから広がっていくだろうという懸念があるわけでございます。そういう意味で、一方またこういったものがソフトのレンタルが今回の法案が成立いたしまして法規制が及ぶようになりますと、当然あつれき、トラブルが起こり得るわけでございまして、そういったことを想定してマイコンソフト側のにつきましても、日本マイコン・ソフトウェア・レンタル店協会という自主的な、任意団体でございますが、設立して、これを商業組合にしようというような動きが現在あるようでございますし、そういった一つの組織ができ上がりますれば、その中でこれからの方向づけなり、考え方なり、あるいは実務的処理の道行きなりというのがいろいろ相談が出てくることになってこようかと考えております。
  166. 小西博行

    小西博行君 それでは図書館における複製の問題について数点お聞きしたいと思うんですが、先ほども法律のいろいろな条文について次長の方から二、三点御説明がございましたけれども現行法は第一条で述べていますように、その目的著作者権利保護、あるいは著作物の公正な利用を図り、文化の発展に寄与することとしておりますね。この著作物の公正な利用の具体的な措置として著作権の制限が規定されているわけでありますが、現行法規定されている著作権の制限事項、これは随分たくさんありますけれども、項目と主な点だけについて御説則お願いしたいと思います。
  167. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 著作権法の中におきましては第三十条から第四十一条まで各種のいろいろな著作権制限規定が設けられております。  この基本的な考え方は、著作物の公正な利用という観点からのものでございまして、立法理由からまず申し上げますと、幾つかの考え方がございます。  一つは、著作物の利用の性質からして著作権が及ぶということは適当でないと考えられる分野のもの、第二番目は、公益上の理由に基づきまして著作権を制限することが必要であると考えられるもの、三番目に、ほかの権利との調整のため、例えば所有権と著作権の調整のために著作権を制限する必要があるもの、四番目に、社会慣行として従来から行われてきており、著作権を制限しても著作権省の経済的利益を不当には害しないと思われるもの、そういったようなものの視点に立ちまして幾つかの制限規定を設けております。  第一が三十条の規定でございまして、これは御承知のように私的使用のために、個人が自分のためにとることができるもの。  三十一条は「図書館等における複製」でございまして、利用者のために複写サービスとして著作物の一部分について一部だけコピーをとってあげるということが許される。  三十二条は「引用」の規定でございまして、自己の論文の中に他人の論文を引っ張ってくる。つまり書く方が主体性を持って、従たる要素として他人の著作物を利用するということが引用として認められております。  三十三条は「教科用図書等への掲載」でございまして、学校教育の公教科書には著作権者了解をなしに掲載ができる。そのかわり著作者に通知をする義務と補償金を支払う義務を課しておりますが、これは一応文化庁文部省の一外局でございまして、文部省立場も配慮したという面はございます。  三十四条が「学校教育番組の放送」でございまして、いわゆる学校教育番組を、教育放送を行います場合にも教科書に準じた形で利用を認めるという趣旨でございます。  三十五条は「学校その他の教育機関における複製」でございまして、授業を担当する教育者が授業のプロセスとして児童生徒に教材としてガリ版、プリント等で配って使うというようなケースを認めております。  三十六条が「試験問題としての複製」で、入社試験等の問題で一々著作権者了解をとっていますと、これは試験問題がばれますので、そういった点についての利用を認めております。  三十七条が「点字による複製等」でございまして、盲人用の、若干社会福祉的な観点でございますが、点字複製並びに盲人用の録音ということを認めております。  三十八条が「営利を目的としない上演等」でございまして、営利を目的とせず、入場料等も徴収しない場合には演奏等は自由にできるという規定でございます。  三十九条が「時事問題に関する論説の転載等」で、先ほど高木先生から御質問がございました政治、経済、社会上の時事問題に関する論説の他の新聞雑誌への転載を認めております。  四十条が「政治上の演説等の利用」でございまして、いわゆる政治家の方々がいろいろなところでお話になることは内山に利用できるということでございます。  四十一条は「時事の事件の報道のための利用」でございまして、ニュース報道をする場合にはその中にあらわれていく著作物はよろしい、使うことを認めております。  四十二条は「裁判手続等における複製」でございまして、いわゆる司法、立法、行政の目的のための必要最小限度の複製を認めております。  四十三条は「翻訳、翻案等による利用」でございまして、今のような四十二条までの著作権制限規定によって使う場合には翻訳、翻案をしてよろしいという規定でございます。  それから四十四条は「放送事業者による一時的固定」と申しまして、放送のための便宜的な手段として、生で放送するところを何日間寝かせて放送する、そういうような録音、録画の暫定的な利用を認めております。  四十五条は「美術の著作物等の原作品の所有者による展示」でございまして、いわゆる絵画等の原作品を展示することは所有者であれば許されるという規定でございます。  四十六条は「公開の美術の著作物等の利用」でございまして、彫刻等が屋外に置かれている場合にはそれは自由に写真に撮ってよろしいとか、そういうような規定でございます。  四十七条は「美術の著作物等の展示に伴う複製」でございまして、展覧会を開催するときにはカタログとしてその展示作品のカタログをつくってよろしいという規定であります。  四十八条はそれに関連いたしまして、いろんな利用のときには出所の明示をしろというような規定でございまして、そういったような一応三十条から五十条までの間におきまして各種の著作権制限規定を設けている。その立法理由は冒頭申し上げたとおりでございます。
  168. 小西博行

    小西博行君 今、大変詳しく説明いただきましたが、著作権が制限されるには一定の場合に一定の条件のもとにおいて行われるということでございますね。ですから、そのときどきの経済とか社会、文化の発展というそういう変化に応じて相当いろいろ考え方を変えていかなきゃいけない面もあるんではないかというふうに私考えるわけですけれども、こういう問題に対しては文化庁はどのようにお考えになっているのか、これは余りたくさんありますものですから、何か焦点を一つ絞ってお答え願いたいと思います。
  169. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) この著作権制限規定を整備いたしました昭和四十五年の法律、実はでき上がりまして国際的な著作権の会議に参りまして英文でこれを配って外国の方に御披露申し上げたんですけれども、大変ほめていただきました。といいますのは、世界で冠たる整備された法律だということでございます。そこは一つ認識の差がございますのは、例えば英米の法律でございますと、かなりアバウトに書いてあるわけでございまして、その社会の良識が存在するところにおきましては非常に抽象的な書き方でも大体皆さんが良識を持って対応するからトラブルが起きない。ところが日本というのはおもしろい国で――おもしろいと言うと語弊がございますが、条文に書いてあると、書いてないことはいいからということで脱法行為を非常に考える国でございまして、厳密に書けば書くほど、書いでないことは利用できるんだとか、これはだめだとか、その辺のいろんな工夫があるようでございまして、そういう意味でどうしても日本の法律は精緻にならざるを得ないという宿命を持っているわけでございまして、そういう面が欧米の方から見ると日本は非常に厳密に書いているなと。しかし、そのとおりじゃ外国でまねするかというと、まねはしないですね。こういう考え方は非常に大いに参考になる、ということは、その国の法律の運用に当たってのガイドライン的な意味として使われる、そういうようなことございまして、本来、法律というのは余り細かくない方がいいんじゃないかという感じがいたしますが、ただこういう私権の問題でございますので、権利が及ぶか及ばないかということはやはりきちんと法律的に疑義のないように詰めて書くということが必要なわけでございます。  ところが、今、先生がおっしゃいましたように社会、経済が変化してまいりますと、今まではこの辺のラインだったのが、実はこちらに動いている、あるいは逆に動いているというようなことがあるわけでございますから、本当は流動的にその時宜時宜に合わせて幅を緩めたりあるいは強くしたりというようなことが当然あってしかるべきでございますが、ケースが例えば貸しレコードのような大きな問題でございませんから、個別の対応というのはなかなか時代の進展に適合しない。  典型的な例が、昭和四十五年に改正されます前の今の三十条に相当します私的複製でございますと、手書き以外は認められなかったわけです。ところが当時もう既にゼロックスとかリコピーというような手段が出てまいりまして、手書き以外はだめというのはほとんどナンセンスに近かった状態があります。そういう意味では著作権法制限規定というのは実態に適合して綿密に書こうとするとなかなかタイミングを失するという点はあろうかと思います。ただ、今回のケースでは、三十条の改正を提案申し上げていますのは、今までの私的利用でいいと言っても、それは例えばダビング業者のところへ行ってテープをとるなんというのは幾ら私的目的でもだめじゃないかというようなそういう大きな問題、社会問題化しますと改正の提案ができますけれども、なかなか大きな社会問題化しない段階では著作権制限規定というのはいじりにくいというような宿命を負っているということが言えようかと思います。
  170. 小西博行

    小西博行君 今、次長から言っていただいて、これは余分なことになりますが、この間実は中国と経済特区問題で向こうへ参りましていろいろ折衝しておりましたら、まさに法律ですね、法律の整備が十分でたいんで日本企業は行きにくいんですなんという話をしますと、そこは信頼ではないかというようなお話がございまして、まさに日本の法律というのは非常に繊細に万全を期しているというのが特徴ではないか、そのことがいいか悪いかは別にいたしまして、そういうことをちょっと今感じさしてもらいましたが、先ほどおっしゃいました三十一条ですね、図書館の関連ですが、その中で、まずこれお聞きしたいんですが、調査研究の用に供するために、図書館の利用者の求めに応じて複製すること、コピーですね、これができることになっておりますが、次の二点についてひとつ質問いたしますので、答えていただきたい。  まず一点は、政令で認められた複製を行うことのできる施設の種類とその設置数ですね。これが一点。それからもう一点は、現在図書館などで行われている複製の実態ですね。その二つについてお聞きしたいと思います。
  171. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) この著作権法三十一条の規定に基づきましてコピーサービス、いわゆる複写サービスができます施設は政令で定めることとされておりますが、政令で定めておりますものの第一が国立国会図書館でございます。それから、図書館法第二条第一項の図書館、いわゆる公共図書館でございますけれども。それから、大学または高専に設置された図書館。それから四番目に、大学類似の教育機関設置された図書館。それから五番目に、図書等を収集し、一般の利用に供する目的で法令によって設置された施設。これは図書館という名称は使いませんけれども、図書等を資料収集、提供するといういわゆる法令設置の施設でございます。それから第六番目が、法令により設置された学術研究目的とする研究所等でございまして、その研究所の中に図書室というのがございまして、そこが実質的に図書を一般利用に供しているという場合には、その研究所の図書室が貸すことができると。それから七番目が、国、地方公共団体それから公益法人が設置した施設で文化庁長官が指定したものということでございまして、これは財団法人その他の各種の機能で一種の図書館に準じたようなコピーサービスをしております、一般――特定の企業だけじゃなくて全国民に開放しているというような施設につきましては、現在三十二施設が文化庁長官が指定しておりますが、これらをひっくるめまして、正確な数字ではございませんが、約三千程度の施設がこの政令に上って指定された範囲に包含されると考えております。  それから第二点の御質問でございますが、今のような図書館等で行われている複製の実態についての認識でございますけれども、詳細な把握をしたわけではございませんが、私ども、図書館等の職員の著作権講習会を毎年実施しておりますし、そういったあたりでのいろいろなお話等も伺ってみまして、もちろんもう入ってくる職員は著作権法を守ろうという気持ちが強い方でございますからでもありますが、この著作権法三十一条の制限規定の範囲内でなるべく厳格に運用されているものと理解しております。
  172. 小西博行

    小西博行君 その複製を行うのは、さっきも法律の説明がございましたように、調査研究用というのがこれ一つなんですね。それから、その一部分という、研究用に一部分だけ抜いてそれを使うと、こういう二点ですね。その場合には当然いろんな一般の方から、ぜひ頼みますなんという要求が非常にありますから、このサービスを提供する場合に、十分その辺のことがわからずにやるというようなことが現実にあるんではないかなと、提供サービスオーバーになるんじゃないかと、そういう点がちょっと思うわけですが、その辺はございませんか、まあ指導も含めてなんでしょうけれどもね。
  173. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 先ほど申し上げましたように、私どもで開いております講習会といいますのは、こういった政令で定められております施設にっきましては文化庁著作権講習会を修了していただくことになっておりまして、毎年全国二地区三日間の講習を行っております。そういうことで、こういったいわゆる図書館等職員著作権実務講習会を受講し、修了された方というのは、相当程度著作権認識を持ってお帰りいただいているというぐあいに考えております。もちろん、法律では「調査研究」となっていますから、本当はこの人は個人目的じゃないか、自分の娯楽目的じゃないかということは確かにあり得ると思いますけれども、これは顔を見て判断はなかなかできませんし、それから、一応著作物の一部分といいますのは単行本の学術論文の」部分という意味でございまして、雑誌の場合には論文全部をコピーすることは認めておりますが、一応そういった論文の一部分ということに限定しておりますけれども、それを全部とってほしいというその要望もあることは事実でございます。法の遵法精神の強いところではお断りになっているようでございまして、知り合いだからといって情にほだされてあるいはコピーしているケースがないとは言えませんけれども、そういった方向性は、少なくとも著作権法意識に関しましては、講習を受けられた図書館講習会の受講者の方々というのはかなり理解をして厳格に運用していただいている実態が多いと私どもは理解しております。
  174. 小西博行

    小西博行君 一部の図書館ではコインを入れて自動的にコピーができるようなことをやっているというように聞くんですけれども、これ実態はどうなんでしょうかね。
  175. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) ケースとしては、そういう話は時たま来ますが、非常に限られた少ないケースではないかと思っております。ただ、コインサービスの場合も、物理的に申し上げれば、例えばこの資料のここの部分をコピーしたいという形で、そこをコピーをとってあげるという、実務的なコピー部分だけをコイン式にゆだねて、いわゆる図書館資料の管理、例えば申請なり交付なりの手続等が、実態的には図書館でサービスするのと同じような実態のものであるとすれば、一応その辺はある程度認められてもしかるべき事柄ではないかという感じはいたしますけれども、本来的に申し上げますれば、この三十一条の規定といいますのは、図書館がコピーをとってあげるということでございますので、図書館の主体性があるのかないのか、そこは単にコピー業者がやっぱり稼ぐ場になっているのかどうか、その辺の実態的な識別が必要だろうと思います。今のコイン式サービスが幾つあるかという調査はまだ行っておりません。
  176. 小西博行

    小西博行君 もう一点は点字ですね。点字といわゆる録音といいますか、文学作品なんかを録音でもって貸し出しするといいますか、そういう二点について、少し内容が変わりますね。録音ということになりますと、テープで聞きたいということになりますと、どなたでも聞けるということもあるんでしょうけれども、法律の規制が多少厳しくなっておりますね。この辺の感じについてどうなんでしょうかね、この法律ができたときのいろんな理由ですね、これちょっと説明していただけませんか。
  177. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) これは著作権法三十七条で、盲人用について、点字にっきましてはすべて可能であると。それから録音テープにつきましては、盲人用の貸し出しに供する場合という限定をつけております。その趣旨といたしましては、点字につきましては、これが盲人以外のところへ流れて目の見える人が点字で読むわけでございませんので、これは盲人専用だということがわかりますから、当然に限定をしない。ただ、録音テープでございますと、盲人であろうと目の見える方であろうと、聞けばわかるわけでございますから、言うならば正常な暗服者の方々も使えるという意味で乱用の危険ありという点で、ここは盲人用の貸し出しに限定をしたという趣旨でございます。
  178. 小西博行

    小西博行君 このような録音ですね、さっきのテープなんですけれども、これはボランティアによって現在行われているというように言われておりますね。そのために法律的に、現行法の三十七条第二項ですか、これ録音が認められた施設の種類とこの施設の数ですね、これが一体どのぐらいあるものか、これをあわせてちょっとお聞きしたいんです。
  179. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 政令で定めております施設としては、第一の分野が児童福祉法に規定します精神薄弱児施設と盲聾唖児施設でございまして、これが二十九施設ございます。それから二番目が身体障害者福祉法の規定によります失明者更生施設、点字図書館、点字出版施設といったものでございまして、合わせまして九十九ございます。それから三番目が学校図書館で盲学校に設置されたもの、いわゆる盲学校の中にあります学校図書館でございますが、それが七十二ございます。それから四番目が老人福祉法に規定します老人福祉施設でございまして、これは専ら盲人を収容するものでございますが、四十ございます。合計いたしますと、今のところこの政令による施設といたしましては一再四十施設でございます。
  180. 小西博行

    小西博行君 これ、どうなんですかね。もう少し拡大をして全国の国公立の図書館、あるいは学校図書館ですね、こういうようなところでは自由にある程度できるような体制を組むことはできないのかどうなのか、いかがでしょうか。
  181. 加戸守行

    政府委員加戸守行君) 実はこの三十七条の規定改正の際に、私、著作権課におりまして担当いたしたわけでございますが、そのときの記憶を呼び戻しますと、これ日本文芸著作権保護同盟というのがございまして、作家の方々の同盟、強い反対があったわけでございます。当時石川達三先生日本文芸著作権保護同盟の理事長をなさっていたと思います。あの方が、「流れゆく日々」という本を出されておりますが、日記風でございますが、あの中でも随分何カ所にもわたりましてこの三十七条はけしからぬということを書かれました。当時の理由としては、私たちも社会福祉に貢献することを拒むものではないと、しかし、それは許諾をとりに来ればライセンスは与えると、ただ、盲人用の福祉だからただにしろと、自由にできるというのは、そうすると、それは我々作家のみが、著作権者のみがなぜ盲人に、福祉に貢献しなければならないのか、それを義務づけられるというのはけしからぬというような大論文を何回も書かれまして、私も名指しで相当しかられた記憶を呼び戻しますけれども。そういう意味で、この三十七条の規定というのは、いわゆる社会福祉的な観点から規定したということにつきましては当時相当の批判があったわけでございます。  ただ、日本人の感覚としては、実際問題としても、当時、点字出版をやはり断られたケースというのが幾つかございました。そういう意味ではこの法律の必要性というのを強調したわけでございますけれども、今先生おっしゃいますように、範囲を広げるということの趣旨は、ある意味では社会福祉的な観点からは理解できますけれども、一方、著作権者の側の立場から言えば、著作権者は何ゆえに社会福祉を義務づけられなければならないのかという反論が出てくるという感じはいたしまして、ちょうど三十七条が悪戦苦闘したことを思い返しますと、これ以上の範囲拡大というのはなかなか難しい、むしろ著作権者側の自発的な意思というのを期待すべきではなかろうかと。特に現時点でも、日本文芸著作権保護同盟というのがございますけれども、図書館等から、そういうこの範囲に属さない部分についての盲人用の福祉という観点からの依頼があるようでございまして、ほとんど、おおむねの了解は与えているということでございます。  そういう意味で、中には自分の作品は活字で読んでもらうものであって、音にしてもらっては困るんだという、そういう特異な立場をとられる方もなしとはしませんけれども、一般的に、やはり著作権者の意思によって、こういう協力するんだという姿勢の方が本来的な姿ではないかという反省を今は持っておるわけでもございます。
  182. 小西博行

    小西博行君 最後、これで終わりますけれども大臣に今の御意見をいただきたいと思うんですけれども、作家の方といってもいろんなタイプの方がいらっしゃいますから、確かに文章を読みながら自分の思想を展開していくというか、広げていくというか、そういう意味では文学の意味がまたそこに新しく出てくるんじゃないかというように私も思いますけれども。しかし、目が不自由であると、できるだけたくさんの作品を聞きたいと、こういうような切なる願いがあるわけでしてね、ここに。私は、そういうようないろんな理由があるとしても、何かその辺にいい方法はないんだろうかなと、こういうのが率直な気持ちなんです。点字は確かに限界があるからこれは自由にやりなさいと、録音の方はちょっと困りますと、実は、こういう感じが現実の法律になっておりますね。その辺のことを大臣の方からちょっとお聞きして、これで質問を終わりたいと思います。
  183. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 私も、加戸次長のように専門的に精通いたしておりませんのですが、要は、先ほど加戸次長もちょっと申し上げたように、諸外国では、お互いの相手の立場を考え、良識的に、やはりこうしたものを余り法で規制をしたり、余り悪用、という言葉はよくありませんけれども、何かそのことを商売に利したり、そういう前提でどうも成り立っていないということでございますが、日本人の場合は、初めから性善性悪で、性悪だという意味ではございませんが、日本人というのは、そこのところは日本人のやはりきめ細やかさであり、同時にまた物事に対する意欲のあらわれでもあるというふうにも考えますから、そういう意味ではある程度厳しく律していかなきゃならぬ。そういう意味では、この著作権法というのは、まさに私は、文化と文明の間に常に立って、その中で大変苦悶をしている法律だな、文明というのは、どんどんどんどん新しい科学技術で文化危機ができていく、文明が伸びれば伸びるほど文化が破壊されていく、そんな感じがしてならないんです。緒先生方の御質問をいただきながら、政府委員の答弁にじっと耳を傾けながら、文化と文明というのは大変これから難しいものだな、そんなことを感想としてもまた持ったわけでありまして、お互いに、思想、文化そして芸術、そういうものを守ってあげるということは大事なことでありますが、そのことが、先ほど高木先生からもお話がありましたが、逆に言えば、いろんな意味で広がりを見せるということもまた喜びであることも間違いない、そういう基本的な認識著作権を大事に守っていきたい、こんなふうに文部省としても指導していきたいと、こう考えております。
  184. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。-別に御意見もないようですから、直ちに採決に入ります。  著作権法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  185. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。  田沢君から発言を求められておりますので、これを許します。田沢君。
  186. 田沢智治

    ○田沢智治君 私は、ただいま可決されました著作権法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。  一、著作者等の貸与権の行使に当たっては、公正な使用料によって許諾し関係者の間の円満な利用秩序の形成を図るよう指導すること。  なお、実演家等の貸与権の期間に関する政令を定めるに当たっては、関係者の意見を十 分聴取し、適正な期間とすること。  二、著作隣接権保護の徹底を図るため、「実演家、レコード製作者及び放送事業者の保護に関する条約」への加入について検討を急ぎ、その条件の整備に努めること。  三、複写機器及び録音・録画機器の急激な発達普及実態と今後の動向にかんがみ、文献複写にかかわる著作権集中的処理の方法の確立に努めるとともに、録音・録画機器等に対する賦課金制度の導入など諸外国制度も参考にして抜本的解決を図るための対応をすすめること。  四、コンピュータ・ソフトウエア保護については、その特性と条約前提とした国際的整合性に留意して早急に関係省庁の意見の調整に努め、適切な法的整備を行うこと。  五、著作権法趣旨にのっとり、著作物の公正な利用について良い慣行が育成されるよう著作権思想の一層の普及に努めること。  右決議する。  以上でございます。  委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  187. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいま田沢君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  188. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 全会一致と認めます。よって、田沢君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会決議とすることに決定をいたしました。  ただいまの決議に対し、森文部大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。森文部大臣
  189. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) ただいまの御決議につきましては、御趣旨を体して今後努力をいたしたいと考えております。
  190. 長谷川信

    委員長長谷川信君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 御異議なしと認め、さよう決定をいたします。  本日はこれにて散会をいたします。    午後三時四十九分散会      ―――――・―――――